外務委員会 第18号
- 発言数
- 154 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1962/04/26
会議録
○委員長(井上清一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 昨日佐多忠隆君が辞任され、その補欠として戸叶武君、曾祢益君が辞任され、その補欠として田畑金光君が選任されました。本日森元治郎君が辞任され、その補欠として吉田法晴君が選任されました。 —————————————
○委員長(井上清一君) 日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定の締結について承認を求めるの件、以上衆議院送付の両件を便宜一括議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(井上清一君) 速記を始めて。 御質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
○羽生三七君 最初に総理の来られる前に、簡単なことで外務大臣に一つお伺いしたいのですが、今朝の新聞によると、イラク駐在日本大使が国外退去を要求されたという報道がありますが、これは日本政府がさきに、イラクの欲しないクウェートの新任駐日大使の信任状を受理したために、こういうことになったようですが、この間の事情を少し御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) イラク側におきましては、クウェートは自国の領土の一部であるという主張を持っておりますが、新任大使をわが国において接受いたしましたので、本邦に駐在しておりましたワヒードというイラクの大使は引き揚げまして、代理大使をこちらに置いておるわけであります、先方から、わが国の八木大使に対して、これと同等の形をとってくれ、こういう申し出があります。しかし、イラクの側において、クウェートの大使を接受しております他の国に対して、必ずしもさような措置をとっておらぬのであります。これは差別待遇ではないかとも考えられるので、この点をさらに明らかにしたいというふうに私どもは考えております。
○委員長(井上清一君) 速記をやめて。 〔速記中止〕
○委員長(井上清一君) 速記を始めて。
○羽生三七君 議題に入る前に一、二他の事項でお伺いをいたします。 それは、米国がケネディ大統領の指令に基づいて太平洋クリスマス島で核実験を行なったわけでありますが、さきのソ連の核実験再開による悪循環の結果にしても、はなはだ遺憾なことであります。日本としても出先の朝海大使を通じて抗議をしたり、あるいは昨日は大平官房長官の談話の発表もあり、また小坂外相もアメリカ大使館を通じて抗議される等、それぞれの処置はとっておられますが、まだこれでは弱いという気がいたします。政府が適切な今まで処置をとったことは、事実としてこれを認めますけれども、この際、さらに政府、池田総理としても強い抗議の処置を考慮すべきではないかと思います。特にウ・タント国連事務総長も核兵器保有国の実験再開を思いとどまるようにということを昨日も述べておりますが、国連中心主義の日本としては、これに呼応して一段と強い意思表示をなすべきであろうと思います。しかも、この二、三ヵ月間にわたってクリスマス島、ジョンストン島を中心に約三十回にわたる実験が行なわれるのではないかと言われておりますので、なおさらであろうと思います。この際、政府の決意のほどを知りたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) お話しの点もっともでございまして、私といたしましては、できるだけの措置をとり、また今後もそういう方向で進んでいきたいと思います。具体的な問題につきましては、外務大臣よりお答え申し上げます。
○国務大臣(小坂善太郎君) なお、私といたしましては、本日朝も現実に核実験が行なわれましたので、口上書をアメリカ大使館を通じてアメリカ政府に伝達するように要請いたしております。内容につきましては、従来の問題についてのわれわれの一貫した態度を述べまして、もうしばしばの要請にもかかわらず、一連の核実験が太平洋で行なわれるということを、深く人類の福祉を衷心から念願する日本政府と日本国民としては遺憾に思っておる、ここに厳重にこれが中止を要望し、かつ、抗議するという趣旨のものを出したわけでございます。 ただ、それより先、こういう、核実験がだんだん近くなるという事態を総理も非常に憂慮されまして、総理とされましては、特にアメリカの政府に対して、ジュネーヴにおいて核実験停止の交渉をやっておるアメリカとして、おくまでしんぼう強くこの交渉を進めるべきであって、何か悪循環的に理由づけをして核実験を再開するということになれば、これはさらに悪循環を呼んで、人類の福祉のためにも非常に遺憾なことになるのであるからということを特に伝達されたのでございますが、アメリカ政府としては、従来日本に対して、十分日本の気持もわかっておることだと存ずるのでありますが、今回は特にそういう実験の断りを言うというのではなくて、やむにやまれずやるから通報するという、こういう態度に出ておるのでありまして、非常にこの点私残念に思っております。
○羽生三七君 私この前の予算委員会の際に、総理、外務大臣に、質問を兼ねて所見を開陳しましたが、この理由はいずれにもあれ、米ソそれぞれの核実験競争をこのままにしておく場合には、力の均衡の縮小ではなしに拡大になってくる、際限のない力の均衡の拡大になる、悪循環はさらに悪循環を生むということになってきますので、このままにしておくことは適当でないと思います。 そこで、国連加盟国の中には、核実験中止を求めるための緊急総会開会を要求する動きもあるように聞いております。またそういう意味から、日本としては率先してそのための緊急総会の開会を要求するとか、あるいはまた、すみやかに東西首脳会談を持つよう呼びかけるとか、場合によっては、総理の親書を持つ特使をアメリカに送るとか、単に日本において出先大使やあるいはアメリカ大使館を通じて一片の口上書を手渡すというようなことでなしに、また日本がそういう世界の核兵器を持つ大国と違った、ある意味においては圏外にある国として、非常に消極的になるようでありますけれども、そういう問題を超越して、率先してこの種の、今私が提案いたしました国連緊急総会の開会の要求、あるいはすみやかなる東西首脳会談の提唱、あるいは首相の親書を持つ特使をアメリカに送る等のこと等について何らかの考慮を払われる御意思はありませんか。
○国務大臣(池田勇人君) 私としては先ほど申し上げましたごとく、アメリカが始めたからまあやむを得ぬということじゃなしに、今後もあらゆる努力を続けていきたいと思います。具体的にどういう措置をとるかということは、ここではお答えすることを遠慮させていただきます。自分としてあらゆる手段を講じたいと考えております。
○羽生三七君 この際、ここでこれ以上のことを申し上げるのもいかがかと思いますが、結局、既成事実としてやむなくこれを承認して、勢いそれに引きずられていくという結果に今までずっとなっておるので、さらに日本の政府とアメリカとの関係ということは私はよく承知はしておりますが、私の言うのは、何もアメリカだけではない、ソ連の場合も同じことを要求するわけで、どうかそういう点についてはもっときぜんたる態度をもって十分な処置をとられるよう要望いたします。 それでは、これでこの問題に関してはこの程度にいたしまして、本論に入りますが、このガリオア・エロアの問題についてお尋ねいたしますけれども、実は私は昭和二十九年の参議院本会議以来、予算委員会、外務委員会等過去四回お尋ねしておりますので、同じことを重ねてまたここで繰り返すのもいかがかと思いますので、また衆議院の速記録も一応調べてみましたので、なお私として不明確な点二、三だけをお伺いをいたします。全部総理がお答え下さる必要はございませんから、必要によって総理にお答えを求めます。 最初に、アメリカがガリオア・エロアの返済請求をしてくる場合、日米間の数字上の食い違いはどうして起こったのですか、これをお尋ねしたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) これは、先方の言っておりまするのは、支払いベースでこれだけのものがある、こう言ってきたわけでございます。これは、昭和二十九年の交渉当時から、そう言っておるわけでございます。わが方といたしましては、先方の言う数字は先方なりに根拠があるかもしれぬけれども、わが方としてはわが方の基礎の数字を出したいということで、司令部が残置いたして参りました資料をいろいろ計算をいたしまして、そして非常にこまかい資料を作りまして、何かこのくらいの厚さになると記憶しておりますのですが、こういうふうな計算で、われわれの調査したものはこうなるのだということで、それをアメリカ側に手交いたしました。われわれのほうとしては、これは計算してこうなるのだ、その額は十七億九千万ドルであるということを申しましたところが、まあそれなら日本の言うその数字でやりましょうということを先方は承諾してきたわけでございます。しかし、先方としては、この総額は十九億五千四百万ドルである、こう言っておるわけでございますが、しかし、計算の基礎はわが方に置く、わが方の資料による、こういうことになりました。
○羽生三七君 アメリカは日本に対して正確な資料を提示したのでありますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) わがほうでは、いろいろ問題となる資料というものの要求をいたしまして、これは昭和二十九年から始めて、事あるごとに要求したのでありますが、なかなかわれわれの主張する資料というものはよこしません。よこさない以上は、われわれのほうの資料でやる、こういうことにしたわけでございます。
○羽生三七君 この自民党の対外経済協力特別委員会で、当時の賠償特需室長平岡氏が述べておるところを見ましても、アメリカは資料を出してこないであろうと言っております。これは自民党の議員の方の質問に答えて、そう述べておる。どうしてアメリカは資料を出さないんでしょう。債権者が資料なしに請求するということは非常におかしいが、なぜ資料を出さないか。
○国務大臣(小坂善太郎君) これは先方の言い分でございますと、十九億五千四百万ドルまるまる請求すると、こういうことであれば、これは資料を出さなければならぬ、しかし、いろいろ減額する方式を考えて、そしてその計算に基づいて出すんだし、その基礎は日本の資料によるからいいじゃないか、もし出せと言うんなら、自分らのほうもそれはこれからやるけれども、何しろカンサス州の陸軍省の倉庫に山と積まれておる書類の中からそれをあらためて出してくることになるので、全部返してもらえるなら、その労をいとわないけれども、こうした一部返還という場合には、そこまでしなくても、しかも日本の資料というものをわれわれ基礎に置くんだから、資料を出すことはやめたい、こういうことでございました。われわれも、それならそういうことは理屈がある、こう考えたわけです。
○羽生三七君 これはまたあとに触れますが、私は一部とか全部とかという問題でなく、債権者が請求する以上は資料を出すのはあたりまえだと思いますが、それはあとにいたします。 対外援助は通常グラントとクレジットの二つに分類されておるわけであります。グラントの場合も、返済を要しない純粋のギフトと、米国の返済条件未定のまま与えられる援助もあるわけであります。いま一つはクレジットであります。このクレジットの場合も、正式の貸与に基づく援助というように、いろいろなケースがあると思います。そこで私の知りたいことは、米国の請求の基礎となるべき法的な根拠、つまりグラントなりクレジットなり、それぞれの条件ですね、その条件に基づく内訳を示していただきたい。そうでないと、よく言われておるどんぶり勘定ということになるので、債権者が債権として請求する以上、どれとどれはクレジット、どれとどれはグラント、グラントの場合でも純粋のギフトはどれ、それから、あるいは政府があとから答えられるかもしれませんが、グラントの中で、あとにクレジットに移されたものがどうと、私はそれは移されることは不当だと思いますが、それは別として、そういう内訳を詳細に示していただきたい。
○政府委員(安藤吉光君) ただいま先生のおっしゃいました分類というのは、これまでも衆議院においてお答えいたしましたいわゆる商務省のフォーリン・エイド誌の統計の仕方のことをおっしゃっておるんではないかと拝察いたします。フォーリン・エイド誌というのは商務省の刊行物でございますが、この分類の仕方はいわゆる対外援助に対する統計を、便宜そのように分けたわけでございます。その中には、大きく言いまして、グラントとクレジットに分ける。ただしかし、そのグラントの中に、今仰せられましたように、全然無償のもののほかに、他日交渉した結果、債務額等確定してクレジットの中に入れるものを含んでいるんだということが言われており、その同誌によりますれば、ドイツあるいは日本に対します援助は、みなグラントに入っておるわけでございます。しかし、それは一応分類の便宜のため、統計の分類の便宜上の問題でございまして、アメリカの、要するに債務性に対する根本的な問題といたしましては、米国の軍事予算法によってこれらの援助がなされておるわけでございますが、その軍事予算法の審議の過程におきまして、一九四七年第一次追加予算法の審議のときに、実はこれに対して他日返済させるという条件を入れようとしたのでございます。ところが、実際の政策上、一銭一厘までも返させるということはアメリカの政策としてよろしくない、したがって、これは将来返済を受ける性質のものだけれども、そこまでかたく書くことはやめてほしいという政府の要望によりまして、この軍事予算法にはそういうような条件ははっきりしておりません。しかし、日本との関係におきましては、たとえばプレ・ガリオアが参りますときには、そのつどスキャッピンに、支払い方法等はあとで決定する、あるいはガリオアにつきましては明らかにスキャッピン一八四四に、一九四六年の七月三十九日のスキャッピンに、「支払い方法及び清算については後日決定する」ということがうたわれております。その他のものも同じくでございます。 それから、お手元にお配りしましたようないろいろな債務性を表わす諸種の事項等によりまして、これは債務性の強いものであったということでずっと来たわけでございます。もっとも、初めから純粋にこれはギフトであると言って、いわゆる無償として出してきました、たとえば学童給食用の小麦とかあるいは粉ミルクというものは、これは初めから無償ということがはっきり言われております。その他のものにつきましては、先ほど申しましたような「支払い条件等はあとできめる」ということが言われてきた次第でございます。
○羽生三七君 私は日本の場合は被占領国でありますから、受け取った物資はわかっておっても、それがどういうケースでどういう基礎に基づいて日本に贈られたものかは、なかなか法的といいますか、行政的条件、基礎を明白にすることはなかなか困難だろうと思います。ところが、贈るほうのアメリカがその点が不明確ということは、私はどうしても了解できない。どういう条件に従ってどれとどれが与えられ、どういう条件でどれとどれがどういうことになったか、これは明白でなければ、私は債権として成り立たないと思います。ですから、その点を申し上げておる。ですから、あとからグラントの中からクレジットに清算をして移行するというようなものもあるかもしれませんが、最初の場合、それはアメリカの法的な基礎あるいは行政的な処置、どういうもので幾ら何が日本に来たかということが私は明らかでなければならぬと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) アメリカ側が日本に品物を贈って、日本側においてそれを仕分けした。これは当時司令部のやったことでございますが、その資料が日本側に残置されておったわけでございます。そこで、わがほうの持っておる資料の中で、これが全部だということで、先方と交渉して認めさせて、そしてこの基礎をはじき出した、こういうわけでございます。そこでわがほうが受けております覚書、その指令書等の中で、これは完全にギフトであったというものが、この資料で差し上げてありますものの中にございますように、千六百三十三万九千九百三十ドルあるわけでございまして、この内訳はたばこが……。
○羽生三七君 いや、それはいいです。
○国務大臣(小坂善太郎君) 内訳がずっとございます。要するにその内訳に、スキャッピンの中に、日本政府に対する代金の請求なしに輸入される、そういうような断り書きが書いてありますものは、全部初めからギフトであるということで差し引いたわけであります。
○羽生三七君 私は常識から申し上げますが、通常貸借の場合は債権者が具体的に貸した品目、金額、それから年月日、これを正確に債務者に通告して、それによって取り立てるのが世間の常識であります。ところが、日米の場合は、相手国の債権者のアメリカが資料を出さない、債務国たる日本のほうが一生懸命にいろいろな資料を探し集めて、なおかつ、それが立証不十分で、いろいろな理屈をつけてやっております。これが債務として有効でありますということを一生懸命言っている。主客転倒といいますか、非常に妙な印象を受けるのですが、そういうふうにお感じになりませんか。債権者が、それは貸したもの、それはやったものということについてそれぞれの区分けなしに、大まかな請求だけで約十九億五千四百万ドルなどと言うのは了解できない。それを払う必要があるとかないとかいうことは、全然別の政治問題ですから……。
○国務大臣(小坂善太郎君) 要するに、向こうでは十九億五千四百万ドルというものの内容は全部出してきたわけであります。ところが、通常構成する基礎になるヴァウチャーが、それが先ほど申したように、カンサス州の倉庫に入っておって、一々仕分けするのはなかなかたいへんだというわけです。わがほうは先方の要求にもかかわらず、こちらが持っておる資料を全部向こうに認めさして、その資料を根拠にして数をはじき出して、返還すべきと考える数を算出したわけです。でございますから、これはちょっとおかしいじゃないかとおっしゃいますけれども、われわれはその先方の言い分にちょうど羽生さんがおっしゃるようなことを言って、そしてこちらの言い分を認めさしたわけでございます。認めて合意いたしました以上は、これはおかしいじゃないかという御質問に対しては、実はこういう理由がございますと、こう言ってお答えしておるのでございまして、交渉以前の形においては、私は羽生さんと同じような気持で先方と交渉した、こういうことでございます。ただ、気持であるといいますと、誤解があると思いますが、私どもはちゃんと心得ておって、その範囲内で交渉したわけでございます。建前としては、先方がそれの要求をするなら、その根拠を全部出せと言ったところが、向こうは、こちらの出した資料で、それをのまざるを得ないというふうに認めざるを得なかった、こういうことになっております。
○羽生三七君 商務省発行のフォーリン・エイド誌のなには、ここに私は持っております。これによりますと、日本に関する項目の中に、さらに大量の贈与は不要になるという個所があります。これはおそらく私は米国の対日援助の多くがグラントで、しかも文面から推して、純粋な贈与をこれ以上大量に継続する必要はないと、そう言っているように思われる。したがって、この援助の大部分は、当時の米国は——当時であります、その後の変化は別でございます——当時としてはこれがグラントであり、しかもグラントはギフトと心得ていたんではないかと思うのですが、その辺はどうですか。
○政府委員(安藤吉光君) 先ほども申し上げましたように、商務省のフォーリン・エイド誌というのは商務省が発行した雑誌でございまするが、そのグラントとクレジットとの分け方というのは、先ほども申し上げましたとおり、統計の便宜の建て方でございます。したがいまして、その雑誌でいうと、グラントというのは、いうなれば、対日援助ということを広く言ったと解釈すべきで、そういった字句の使い方で、そのグラントをこまかく言うと、完全なる無償のものと、それから後日クレジットになるものと両方あるということを、はっきり初め言っているわけです。したがいまして、そこのフォーリン・エイド誌が、グラントを日本にこれ以上やることは必要がないということは、必ずしも無償であったということではなくて、この上対日援助を多くする必要もないように日本もだんだん回復してきたというふうにとるべき性質のものかと思います。
○羽生三七君 私の言うのは、そのフォーリン・エイドの中の統計のとり方を言っているのではない。ですから、純粋のグラントで、つまりギフトになっているものと、そうでなしに、返済条件は後日定めるといったようなもので、その部分に関してはあとクレジットに移されるわけですね、そういう清算がどういうふうにできて日本に請求されてきたかということです。今外務大臣から、そういうことは、日本が私の質問と同じことをアメリカに言ったけれども、アメリカが十分な答えをしないので、総額で大づかみになったと言われますが、私はアメリカというような近代国家が、封建的な国ならいざ知らず、近代国家が国の予算で対外援助をする場合に、何年何月の何はどの法に基づいて、あるいは日本の承認をすぐ求め得ない場合には、行政措置によって、それはどのケースでどれだけどこの国へということがわからないわけはないと思う。そんなばかな国は、私は少なくとも近代国家の中にあり得ざることだと思う。それがおかしいと言うのです。私は重ねて申し上げますけれども、返す必要がないとかなんとか、そういう議論に立っておらない。なぜアメリカはそれはわからないと言うのか、なぜ資料を提示しないのか。政府とアメリカとの関係はわかりました。しかし、アメリカがどうしてもそれを出せないのか。とにかくアメリカほどの、そういうことに対してやかましい国が、そういうことに対して何ら基礎なしに大づかみの勘定をするということは、どうしても了解できない、その点を。
○国務大臣(小坂善太郎君) これはアメリカの場合ドイツと一九五三年に協定を作っておりますけれども、そのときはもうドイツはアメリカの決算資料をそのままのんで、支払いベースでもって話をまとめてしまったわけです。それ以後九年たっているわけでございますが、まあアメリカとしてはおそらくドイツの先例もあり、決算資料に基づいて日本も、まあ要するに、経済復興があの当時の援助のために順調にできたということを考えて、それによってやるだろうと、こう思ったのではないかと思うのでございますが、当時の資料というものは、全部倉庫に入っちゃった、こういうことなんでございます。
○羽生三七君 アメリカの倉庫に入っている……。
○国務大臣(小坂善太郎君) アメリカのカンサス州の倉庫へ入った。そこでわがほうが、こっちの持ついる資料で分析したものを出したところが、これに対してカウンター・プロポーザルをアメリカもすべきなんです、おっしゃるとおりです。しかし、それをするには、日本の出したのと、自分のほうはまだこれだけよけいにあるということを、一つ一つ突き合わして出さなければならぬ、それにはとても手数が繁雑でなかなかその資料が出ない、そこで、それじゃ、日本の言い分も認めようと、こういうことになったのです。アメリカとしては、日本との交渉は若干予期せざるものがあったのかもしれませんが、われわれとしては、こっちの持っている資料でわれわれが計算したものより、さらに少なくなるということは考えられないのです。先方としていろいろのものを出されて多くなるのじゃ、われわれ交渉する意味もないわけですから、先方の言い分をそのままのむということにいたしたわけです。
○羽生三七君 私はカンサス州の倉庫へ行って内訳をこまかくという議論をしているわけではないのです。アメリカ議会なり政府なりが日本に送る場合には大づかみ——大づかみと言っちゃ語弊がありますが、どういう基礎に基づいてどういうふうに送ったということはなければならぬと思うのです。内訳は、古い話だから、カンサス州の倉庫へ行ったということはわかるけれども、どうしてそれが、アメリカほどの国が、なぜそれができないか、こういう問題。
○国務大臣(小坂善太郎君) それは向うは決算をして、予算に組んだものを決算しているわけです。決算の資料に基づいて数を出してきた、こういうわけでございます。
○羽生三七君 私はこの長い占領期間中のアメリカの対日援助のうち、純粋ギフトが、言うに足りない総額千六百万ドル何がしということは、どうしても了解できない。そんなことは絶対ありません。アメリカの純粋ギフトが千六百何十万ドルというようなばかなことは、私はどうしてもないと思う。 そこでそれに関連して承りたいことは、阿波丸協定の了解事項では、「借款及び信用」となっていますね。これは衆議院で戸叶委員も聞いたようですね。防波丸協定の了解事項では「借款及び信用」となっています。商務省のフォーリン・エイド誌では「グラント及びクレジット」となっている。これは同義語ですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) その前に、先ほど私のお答え申し上げたのが不十分だと思いますので、補足さしていただきますが、アメリカの、今おあげになりましたフォーリン・エイド誌によりますと、予算の段階では二十億八千万ドルぐらいになっております。決算してみたら十九億五千八百万ドルという数字になったので、決算の数字のほうが正しい数字ということになろうかと思いますが、ですから、数字が動いているのはけしからぬと言えばけしからぬかもしれませんが、先方としては、予算に計上し決算をしてきた数字を出してきた、こういうことだろうと思います。 それからその阿波丸の協定の附属了解事項、この中にございます「借款及び信用」というものについては、当院で当時の外相を兼ねておられました吉田元総理大臣が……
○羽生三七君 総理大臣が言ったことはいいです。
○国務大臣(小坂善太郎君) この十九億並びに降服後日本に供与された「借款及び信用」、ローン及びクレジット、これの中にはガリオア・エロアというのは当然含まれているのだ、これはこの際確認するという意味じゃないけれども、当然そうあるべきものだが、あらためて念のために確認したという、こういう答弁をしているわけでして、まあそれに入っておるということは、これは当時の協定を作った当事者の了解事項だと、こういうように思います。
○羽生三七君 阿波丸協定の了解事項による「借款及び信用」と、それからフォーリン・エイド誌に言う「グラント及びクレジット」とを見た場合、阿波丸協定のほうの「借款及び信用」というのはただクレジットと解釈していいんですか、「クレジット及びローン」というんですか。その場合に、ガリオア・エロアのグラントの中の返済条件は追ってきめるというやつがクレジットに移るんですか、その場合。
○国務大臣(小坂善太郎君) これは、先ほどアメリカ局長が申し上げたように、一九四七年の予算を審議いたしまする際に、このグラントは一体クレジットとすべきものじゃないか、将来返済を予定しているんだからというお話もあったようですが、そうすると、一銭一厘全部取り上げられてしまう。そこでグラントという言葉を使って、グラントの中には返済条件は後日決定されるという了解事項がついている、こういうふうに説明されておるわけでございます。そこでローン・アンド・クレジット——ローンであるかというと、ローンでないと思うんです。クレジットの中にそうした債務と心得るべきものも入っておった、これが当時協定の了解事項を作られた吉田さんのお考えであって、そのことが国会に報告されておるわけです。したがって、広義に言えば、その当時のクレジットの中にこういうものが予定されておったんではないか、こういうように思うわけでございます。
○羽生三七君 それなら阿波丸協定の中で「贈与及び借款」とかなんとかしないと、これでは私は非常に不明確だと思う。 それから、私は外国のことはまるで全然わからない人間ですが、グラントということは直訳すると、何ということになるんですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 供与するんですね、何かこう与えることを供与するわけですから、その行為そのものになるかと思います。それが無償であるか、無償でないか。通常のものは無償のものが多いと思います。特にここに断っておるように、「返済条件は後日決定される」ということはグラントの中に入っておるという了解でなされておるわけですから、そういうことになろうかと思います。
○羽生三七君 それと関連して、フォーリン・エイドの中には、クレジット・ベーシスで日本に供給された援助の合計は、累次の返却分を差し引いて、一九五一年六月までに純計残額は一千百万ドルに達した、こう述べておるわけです。そうするとそのときの一九五一年六月現在において、日本の資料に基づいて、当時のクレジットで返済残は一千百万であるというのは、これは日本の資料と符合いたしますか。
○政府委員(安藤吉光君) フォ−リン・エイドで今御指摘になりましたのは、各種の綿花借款をさしているわけでございます。
○羽生三七君 綿花であると何たるとを問わず、少なくともクレジットで、綿花の場合でもいいですよ、綿花の場合でも、これと日本の資料とは符合いたしますか。
○政府委員(安藤吉光君) 私の了解いたしますところでは、それは総司令部でやっておりました時代でございまして、ただいま数字を持ち合わせておりませんが、フォーリン・エイド誌と突き合わせてどうなりますか、ちょっと今私日本側の数字を持っておりません。
○羽生三七君 それは、かりにそれが綿花であったにしても、フォーリン・エイドを商務省の雑誌々々とおっしゃるがね、これは少なくとも日本でいえば官報に準ずるものです。そんなにでたらめな、そこらの週刊雑誌と同じものではありません。そこでちゃんと、累次の返却分を差し引いて一九五一年六月現在純計残額は一千百万ドルに達したと述べておるんですから、少なくとも、他の部分はいざ知らず、それじゃ綿花借款について、これと符合するかどうかぐらいのことは調べなかったらおかしいと思うんですね。
○政府委員(安藤吉光君) 先ほどもちょっと申し上げましたとおり、当時外貨は総司令部が管理いたしておりまして、したがいまして、おそらくフォーリン・エイド誌のその数字というものは、事実上の数字だと存じますけれども、われわれとしては、ちょっとそれを確認いたしかねる次第でございます。
○羽生三七君 これはそれとちょっと違いますが、今の答弁と関連して承りたいことは、やはりこのフォーリン・エイドの日本に関する項目の中に、日本の商品が米国政府の手で米国市場で販売されたそのドル純益は、日本の経済復興に緊要な輸入品の調達に用いられた。そこで、これはどういうことなのか、これは私はわからないから承るのでありますが、当時これはコマーシャル・ベースで行なわれた場合、貿易が復活して通常の商業ベースで行なわれた場合、ところが、米国政府の手で米国市場に販売されたそのドル純益は日本の経済復興に云々となっておる、これはどういう形のものだったか、これは私自身がわからないから、自分がのみ込むためにひとつ詳しく伺いたい。
○政府委員(安藤吉光君) 私もずいぶん前でございまするが、フォーリン・エイドを全部読んだことがございます。そのときの記憶では、当時日本がいわゆる管理貿易と申しますか、外国貿易は総司令部がやっておった。したがって、総司令部が主として出しておる先はアメリカであった。それは商業輸出でもちろんございましょう。ございましたのですが、それが日本の外貨にプラスになり、日本の復興に寄与した、そういうふうに書いておったと私記憶いたしております。
○羽生三七君 そのドルは、今の御説明はどうもわからぬのですが、日本から商品を送って、アメリカ政府がそれを管理して、それで上がったドルというものは、それはアメリカが持っておった、こういうことなのか、それとも日本の収入になったということか、どういうことですか。
○政府委員(安藤吉光君) 日本のために総司令部が管理しておったということです。
○羽生三七君 そうすると、コマーシャル・ベースじゃないんですね。
○政府委員(安藤吉光君) コマーシャル・ベースでございます。コマーシャル・ベースと申しますか。いわゆる通常の貿易でございます。しかし、当時は御存じのとおり、占領軍時代は総司令部が外貨を管理していた。しかも、それはアメリカのためじゃもちろんございませんで、日本のために総司令部が管理していたということだと存じております。
○羽生三七君 時間がないので、全く飛び飛びの質問になってしまうのですが、やはり阿波丸協定にある占領費と終戦処理費の関係は、これは衆議院でも総理が、それは平和条約十四条(b)項で言う問題とは全然違うと言っておられますが、どうも速記録を読んでみても、その間の区別が明白でないのですが、これは総理から占領費と終戦処理費はどう違うのか、御説明いただきたい。
○国務大臣(池田勇人君) 今お話しの問題は、貿易資金特別会計というものがございまして、これは占領軍がやっておったわけであります。そうして日本の品物を特別会計で買いまして、それをアメリカへ持っていっておった。そのドルは、今度アメリカの援助資金以外の民間での輸入の代金に充てられるということを言っておるのであります。御承知のとおり、そのころ日本の為替がきまっておりませんでした。綿花なんというものは二百五十円くらいのものが一ドルで輸入される、生糸が四百二十円で一ドルとして輸出される、こういうふうになっておった。複数為替レートでございますから、損をして売る場合もございます。それからどちらかというと、綿布はこれを輸出した金で向こうのものを買ってきてこちらで安く売るために使う、いわゆる輸入補助金といったことになっていたわけなんでございます。今の終戦処理費とは事柄が全然違う。
○羽生三七君 それは全然別のものなんです。価格差補給金の問題です。今のそれとは全然別なんです。阿波丸協定に言う、中にある占領費、これを衆議院の外務委員会での質問に答えられて総理は、それは平和条約の十四条(b)項で言う、中にある日本の直接占領費と終戦処理費は全然違うのだという御説明をなさっておる。ここに速記録を持っております。どう違うのか。
○政府委員(中川融君) 条約の解釈でありますので、私からかわってお答えいたしますが、まず占領中のいわゆる占領費がどう支弁されたかということから御説明いたしたいと思うのでありますが……。
○羽生三七君 もう私五分しかないから簡単にひとつ答弁して下さい。
○政府委員(中川融君) じゃ、簡単に御説明いたしますが、要するに、米ドルで払うものはアメリカが全部自分の予算で支出し、円で支払うものは終戦処理費で日本政府に出さした。したがいまして、このうちの米ドルのものにつきましては、占領費を被占領国から調達することがあり得るという国際法上のいわば一つの慣習から言いますれば、アメリカはこれをも日本に負担させ得るという、いわば要求し得るような請求権があったのであります。これは平和条約十四条(b)項によりまして、その分は請求権をアメリカが放棄したわけであります。また日本は終戦処理費を出したわけでございますが、もし場合によれば、アメリカがこれをも自分の占領費から自分が払うと言ってあるいはアメリカが出してくれるということもあり得たわけででございますが、これは十九条(a)項で、日本のほうが占領に基づくあらゆる請求権を放棄しておる、こういうことでございますので、日本は終戦処理費をそのまましょい込んだ、こういうことが平和条約の解決方式になっておるわけでございます。したがって、両者おのおの別々に出したものをそのまましょい込むというのが、平和条約の解決方式になっておるわけでございます。
○委員長(井上清一君) ちょっと申し上げますが、もう時間もたっておりますので、結論をお願いいたします。
○羽生三七君 最後に総理に。このガリオア・エロアの結果としてアメリカに返済する主たる部分を対外援助に充てるようにするわけですが、その場合に、この前もちょっとお尋ねいたしましたが、従来の東南アジアが東アジアに変わってきておるわけです。東アジアと言う場合には、私が予算委員会でお尋ねしたように、韓国、台湾等をさす、そのほかの国も入ると思いますが……。そうすると、日米間で今後この問題について、海外援助について協議する場合には、その主たる目標は韓国——台湾はどうか知りませんが韓国等にほとんど限られるような感じがするわけですが、そういう形のものになるのかどうか、これは最後に一つお伺いいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 私は全然そうは考えておりません。東南アジアと申しますと、インド、パキスタン等を含みます。御承知のとおり、インド、パキスタン等には自由国家群のおもなる国が団体をこしらえまして貸し付ける。したがって、東アジアというのは、ビルマから東のほうのことを言うのでありまして、これはインドネシアもビルマもタイも、あるいは台湾とか韓国も考えられる、こういうのでありまして、韓国、台湾を主体にして東アジアと言ったのじゃない。
○羽生三七君 それは、常識でそうあるべきだろうと思います。予算委員会で私がお尋ねした際の総理の答弁は、それは主として韓国、台湾、もう一国どこかあげておりましたが、それは速記録に載っておりますが、東南アジアとどう違うのかと言ったら、東アジアはこれとこれだと言って、韓国、台湾、もう一つどこかあげておりましたが、限定されておったので、お尋ねいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 私がお答えしたのは、東アジアと申しますと、東南アジアと違って、パキスタン、インドを除いてそれから東でありますから、台湾も朝鮮も入ります、こう答えたと思うのですが、もし今の、あなたの誤解か、あるいは私の言葉が足らないか——私らの考えは、東アジアと言ってもインド、パキスタンを含まないその他のものだと、こういうふうに答えたと思います。
○田畑金光君 限られた時間でありますので、私、昨日わが党の曾祢委員がガリオア・エロアの問題について質問したようでありますので、タイ特別円問題について政治論的な立場で総理に二、三お尋ねしたいと思うわけです。今回のタイ特別円の改訂問題は、率直に申しまして、これは国民の利益を無視し、国民感情に反したものであり、言うなれば、総理の独善的外交だと、こう考えるわけです。この協定が昭和三十年の八月に両国それぞれ憲法上の手続によって処理され、八月五日効力が発生しておるわけです。ところが、すでにその年の十二月にタイ国の外相が国連総会の帰り道日本に寄って、第二条はこれは無償供与なんだ、こういう話を申し入れたと言っておりますが、常識から見まして考えられないことです。結果においては、タイ国の主張を日本政府はいれたということになるわけですが、私は明らかにこれは保守内閣の、あるいは池田内閣の外交上の失政であった、こう見ておりますが、率直にひとつ総理の見解を承りたい。
○国務大臣(池田勇人君) これは皆さんのお考えは御自由と思いますが、私はこの措置は、日タイ関係のみならず、日本の東南アジアまた世界的に見まして、決して失敗とは考えておりません。後世の人が批判すると思います。私はよかったと今でも考えておるのであります。
○田畑金光君 戦争中の同盟国間の債権債務関係というものは、敗戦の場合放棄するというのが通例のようでございます。これはヨーロッパにおいても、第二次大戦後の処理にあたって幾多そういう例を見ますが、日本の平和条約を見ましても、十九条(c)項では、相互放棄を前提としてドイツに対する請求権というものをわが国は放棄しておるわけです。タイ国とわが国との関係では、戦争終結の年の二十年九月十一日に、タイ国から一方的に、すべての条約、協定の廃棄が通告されてきておるわけです。こういういきさつから見ますならば、当然タイ国に払うべき特別円というのは、この際一切これは無効になったのだ、こういう見解も成り立つわけで、ある時期には政府もそういう立場をとっていたとわれわれは見ております。結果から見ますと、譲ったのは日本側であるわけなんです。なるほど、ガリオア・エロアについては、これは現在の産投会計の運用によって、あるいはその利息によって返済するから国民に迷惑をかけない、こういうようなことが言われるかもしれませんが、タイ協定については、これは明らかに国民の税金によって払うものだとわれわれは見ているわけです。これはお認めになりますか。
○国務大臣(池田勇人君) 同盟国との債権債務は、これは全部戦後においてはなくするということは、そういう例もありましょうが、そうしなきゃならぬというふうなものではないのであります。したがいまして、この関係をどうするかということについては、昭和三十年の日タイ協定によって、こういう条件のもとに処理するということになったのであります。だから、同盟国間の債権債務の問題は、ここではもう議論の点はないと思います。三十年の協定と変わったことをやったらどうかということでございますが、三十年の協定は、御承知のとおり、五十四億円の無償と、九十六億円の資本、労務を提供する二つになっておる、二条で。九十六億円の資本、労務を提供するその仕方、条件、貸与条件につきましては四条できめることになっておるのであります。これが、二条と四条との現行の協定が実施せられない、この事実をまず考えなければならない。実施せられなければ、そのままほうっておくかという問題、いつまでもほうっておかれる問題かどうかということ、ほうっておくことが日タイ関係にどういう影響があるかということを考えたのであります。したがいまして、衆議院のほうでも申し上げましたが、九十六億円の資本、労務を提供する——いろいろな石油精製工場等も考えました。その点はやったのですが、もし九十六億円の資本を提供して、いつまでにこの資本が返ってくるかというふうなことを考えますと、私はこの際、大所高所から長い年月で少しずつ払っていったほうが、タイの国民もそれで喜ぶし、日タイ関係も非常によくなる。ことに日本とタイとの問題は、貿易につきましても、向こうが日本のものを輸入する額は、日本が向こうのものを輸入する額の倍以上、五、六千万ドルの日本の輸出超過であります。それが悪影響をこうむりますということになりますと、年に十億円、三百万ドルぐらいの問題じゃない。そこで私は、実施できない二条、四条の規定にかわるに、年に十億円程度のものはこれは無償という格好で払っても、行く行くは日タイの関係と、そうして日本が東南アジアに伸展する上からいって、これはほんとうに両国のために利益になると考えたので、私はやったのです。したがいまして、この金は日本の国民の税金から払うことは当然であります。私はそれを考えながら、長い間で財政上ひどく負担のかからない程度のものとして協定を結んだわけであります。
○田畑金光君 私は額の多いとか少ないとか、そろばん勘定で日本が得とか損だとか、そういうことを聞いているわけじゃないのです。これが昭和三十年八月に条約の効力が発生して、その年の十二月にはタイ国の外務大臣が来て、あれは無償なんだ、こういう解釈の変更を申し入れたそれ自体に問題があるということ、これをどう皆さんは国民が納得いくように説明しておられるか、これはなぞみたいなものであります。同勘定は両国の憲法上の手続を経て効力発生の条件としているわけであります。わが国は憲法に基づいて国会の承認を経ております。タイ国の場合には、タイ国の憲法は当時は王国憲法であったと言われておりまするが、なるほどその王国憲法で議会の承認を得る必要はなかった、閣議決定によって条約承認の手続はとれたのだ、こういっても、閣議においてこの条約の成文が議論され、それが承認された。にもかかわらず、その年の十二月には、あれは有償じゃなくて無償なんだ、この解釈の百八十度の転換、これをわれわれ国民としては一番疑問に思っているわけで、この点はどのようないきさつでそうなったのか、総理からひとつ真相を明らかにしていただきたいと思うのであります。
○国務大臣(小坂善太郎君) 今御質問の中にありましたように、タイ側では、三十年協定を作りまして四ヵ月ぐらいしてすぐに、あの協定の二条はあれはもらったものだという主張をしてきたわけであります。これを、わがほうとしては、そうじゃないと押し返した、そうしてあの協定を実行すべくいろいろな現物出資をする案とか、あるいは両国の金利の利ざやによって九十六億円返す案とか、クレジットとか、投資とかの方法によっていろいろ手当を考えて先方に話したのでありますが、自来六年間この協定は動かずに今日に至ったわけであります。つい昨年に至りまして、タイ側では、あの協定文をそのままに読めば日本の解釈のとおりである、しかしながら、そういう協定を結んだということについては、これはわれの責任でもあるのだけれども、しかし、日本側がどこまでも協定をたてにとって押してくるならば、これは日タイ関係が悪くなっても仕方がない、自分はあえてタイ国民の感情に沿うてこの問題の措置をしなければならないというふうに、タイのサリット首相自身が言い出したわけでございます。そこで総理もいろいろ考えられまして、私どもも十分御相談さしていただいて、今総理からお話しのございましたように、日タイの友好関係、また両国の貿易関係、タイにおります千人をこえるわが同胞の立場、そうしたものをいろいろ考えまして、大所高所に立ってこの解決案をしたわけであります。総理の言葉にもございましたように、九十六億円を八年間に分割して払うということになりますれば、この時点で一ぺんに払ったということにしますれば、これは複利計算で八年後に九十六億になるのですから六十数億でいい、こういうことになるわけでございますし、そうすることによりまして非常に今後の貿易が進む。現にタイのほうではトラックの輸出が非常にふえておるということは、最近の新聞にも出ておるので御承知と思いますが、さようなことで、長く両国間で係争中でありましたが、解決することによって、さらに大きく日本の貿易または東南アジア全体における日本の信用というものは高まるのでありまして、私どもはこの解決の方法が最も妥当なものである、適切なものである、かように考えております。
○田畑金光君 これを払えば貿易量がふえるとかなんとかいう問題じゃなくて、外交交渉には一本の筋が入っていなければならぬ、国民に納得ができる道理というものがなければならぬ、そういう角度からお尋ねをしているわけです。しかし十二月九日の毎日新聞で解説記事を読んだわけでございますが、その中にこういうことがあります。三十年の交渉当時、日本側の某交渉委員が、日本国内の常識で、金を借りるということはもらうのと同じことだということで、交渉が急転直下解決を見た云々と、こう書いておりますが、おそらくこのあたりが当時の真相であったろうと思うのです。でなければ、八月に妥結して、四ヵ月後には、いや違っていたなどということは、およそ考えられないことだが、私は、これこそこの外交交渉における大きな責任問題だと、こう考えているわけで、総理はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(池田勇人君) 私はその記事を見ておりませんし、またそういうことが実際あったことかどうかわかりませんので、これにつきましての批評は差し控えたいと思います。
○田畑金光君 政府が国家間の条約として、しかも国会で一たん決議をしてその実施が進められておる、そういう重大な問題に関して、私は、たとえ今の憲法のもとにおける総理の権力は非常に大きなものがあるといたしましても、総理が東南アジアの旅行の最中にサリット総理と話し合って、そうしてこういう協定を結ばれるということは、私はどうかと思うのです。低姿勢内閣と言われておりますが、事こういうようなことを見ますと、まことに高姿勢であり、あるいは独裁的なやり方だと言っても、これは言い過ぎではないと思うのです。新たに条約を結んだという場合なら、その条約案を国会に提案して、国会の承認を経るという手続きをとるのは、これは憲法上の建前でしょう。しかし、この国会において承認をされて、すでに実施されておる条約協定を変更するということならば、少なくとも、政府は現行条約についてこういう方針で、こうありたい、こうやりたいくらいの報告ないし国会の承認を求めるという手続くらいは、とることが立法府と行政府との正常な姿であると私は考えるわけで、この点について総理はどういう御見解を持っておられるか、承りたいと思うのです。
○国務大臣(池田勇人君) 三十年の協定が締結せられてこれの実施が進められておるというお言葉でございますが、五十四億円のものにつきましては実施される、しかし九十六億円の、二条、四条に基づくものは一切、実施されるどころか意見が対立してどうもこうもならない。私はその間に、三十一年、三十二年にかけまして大蔵大臣をしているときに、このときも非常に折衝いたしましたが、まとまらないのです。それを、まとまりませんから議会でどうしましょうかと議会に案を出すといっても、それには向こうと話をしなければ案が出せません。条約は一たん締結せられたが、これが実施せられないというときに、せられませんがという報告をするのでございましょうか。私は、そうではなしに、もうみなタイの特別円は大問題だということは世間周知の事実でございます。したがいまして、この問題を解決しなければならぬということは、今の日本といたしましては一つの重要な問題であります。したがって、交渉をずっと重ねると同時に、何とかこれを片づけたいというので、私は、組閣以来、外務大臣、大蔵大臣と常に相談をしておるのであります。私は、一たん締結せられたものであっても、実施せられずに、それが両国関係に非常なマイナスになるという場合におきましては、やはり変えるということは、新協定を結ぶと同じような気持で私は言っておるのであります。何も私は、これが憲法違反だとか、非民主的なやり方だとは考えておりません。
○田畑金光君 実施されないというお話がありましたが、タイ特別円協定というものは、五十四億の無償供与と九十六億の有償供与、この二つで成り立っておるのでしょう。五十四億はりっぱに実施したじゃございませんか。私は、時間の関係で追及することもできませんけれども、とにかく内閣において外務大臣と大蔵大臣と相談なされたというお話でありますが、国会において、国会を通じ国民に話をする、こういうことは何らなされておりません。私は、こういう政府の態度というものが今後いろいろな面に波及してくると、こう思うわけです。たとえば四月十五日の朝日新聞の記事によりますと、シンガポール政府は、第二次大戦中日本軍がシンガポール在住の中国人を殺害した事件について、シンガポールの外交権を持つ英国政府を通じ非公式に日本政府の意向を打診してきた、ちょうど三月のエカフェ総会の際に、英国政府から非公式にわが国に対してこの問題についての打診が行なわれた、またその総会に出席しておりましたシンガポール政府の呉大蔵大臣からも同じようなことが申し入れられた、こう聞いておりますが、事実であるのかどうか、これに対して政府はどういう態度をもって臨んでいかれようとするのであるか、これを率直に承っておきたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) ただいまの問題は、実は日本の新聞に出たということでシンガポールの新聞には非常に大々的にこのことが伝えられまして、非常に多額の賠償を要求するごとき記事になって現われておるというふうに承知しております。こういう問題について、私からこの場で何ともお答えすることは適当と存じませんので、否定も肯定もせずに、この場合においては、この答弁をもって御了承願っておきたいと考えるのであります。
○委員長(井上清一君) 田畑委員に申し上げますが、総理の退席の時間が参りましたので……。
○田畑金光君 まだ二十分になっていない。私の割り当ての時間二十分になっていない。
○委員長(井上清一君) ちょうど時間が参ったように思います。結論をお急ぎを願います。
○田畑金光君 まだ二十分になっていないよ、あなたがそうしているうちに時間がたつ。 私は、総理にお尋ねしたいわけですが、この問題がかりに事実とすれば、道義的責任論からいっても、これは政府としては考えなければならぬ問題だと思う。その朝日新聞の記事の中にも、日本商品に対するボイコット運動が起きるとか、あるいは東南アジアにおける華商と友好関係をこれから持っていこうとか、こういうような点からして、日本政府もこれを考慮しなければならぬというような方向に態度が向きつつある、こういわれておりますが、私は、いわゆる総理の大所高所論ですね、大所高所論の裏づけは何かというと、今お話しのように、毎年十億払うよりも貿易によって大いに日本のために外貨をかち得たほうがよろしい、これも一つの理屈だと、私はこう思います。そういう立場からすれば、シンガポールの場合だけでなくて、その他の国々についても同じようなことが私は言えると思うのですが、総理としてはこの問題についてどのようにお考えになっておられましょうか。
○国務大臣(池田勇人君) シンガポールの問題が新聞に出ておる、政府はどうしましょうかということを国会に報告いたしまして、意見を聞いて、それから後シンガポールと協定を結ぶというふうなやり方にすべきだというのが、このタイ特別円の議論になるかもしれませんが、そうは参りません。われわれは外交権を持っているのですから、そういうことが新聞に出ていることは承知しておりますが、シンガポールとどういう格好でいくかということは、これは政府が政府の責任において考える、そうして善処するのがほんとうであります。シンガポールについては、今外交権は英本国が持っているようでありますが、私は、こういう問題はやはり政府の責任において慎重に考えなければならぬ問題と考えております。いたずらにこういう問題を国会で議論いたしますと、日本のためにならぬのみならず、両国の将来のためにもならぬ場合が予想されないこともないのであります。われわれは慎重に考えていかなければならぬと思います。
○田畑金光君 時間がないのでまことに残念ですが、総理に私は申し上げますけれども、外交権は政府が持っているということ、それは百も承知でございます。私が伺っているのは、最近の政府のとっておられる外交措置をながめてみますと、その根底には、それはもちろん国民の利益になるかもしれませんが、常にそれが、外交上の筋がどうであろうとも、経済上のプラスとか利益だとか、こういう立場で国民の納得ができないような措置がとられている、これは遺憾なことだと、こう思うわけです。ちょうど国内において、これは総理にとっては耳の痛い話でございますが、高度経済成長政策というものは、確かに国民にとっては魅力のある政策であったわけです。しかし、それが今日どういう事態になってきたかということは、総理自身も言っているわけです。経済閣僚懇談会等を通じ苦慮されておる、そのことがよく物語っていると思うのです。貿易のためにプラスになるから、日本の経済力に寄与し得るからと、こういう考え方ですべての外交案件を取り扱ってもらうと、国内における高度経済成長問題と同じように、大所高所理論というものが、やはり外交上の破綻を招くおそれがある、私はこう考えているわけです。こういう点について、総理としてはいかようにお考えになっておられるんでしょうか。 ことに私は、これに関連して小坂外務大臣にお尋ねしておきますが、ビルマ賠償問題です。このビルマとの平和条約も昭和三十年の四月に効力が発生しているわけです。同じ年です。タイ特別円協定と同じ年に効力が発生しております。しかも、ビルマとの協定においては、第五条の(a)の第(III)項に基づいて、再検討条項というものが、はっきりこれは約束しているわけです。ビルマとの関係では、条約上再検討を約束しておきながら、今日までこれを解決されていない。ところが、タイ特別円協定の場合には、そんなものはございません。このように、タイにはないのに、積極的に問題の解決が進められ、ビルマとの関係では、協定にちゃんと載っているが、話がなかなか片づかない、こういう点等について、外務大臣としてはどのように考えられているのか。ビルマとの再検討問題はどのように進捗しているのか。前のお尋ねは総理大臣の所信を承り、あとは外務大臣のひとつ最近までの報告を承りたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) タイの特別円と日本の高度経済成長とを合わせて御質問でございますが、高度経済成長というものが失敗したと言うのは独断でございますが、私は日本の高度経済成長が、きょうもある新聞に言っておりますように、世界の人が驚くようなことをやっているのであります。しかも、この高度経済成長の余沢は国民のほとんど大部分が受けているのであります。今のごとく所得がふえ、社会保障制度、教育制度がどんどん行なわれているのも、過去三、四年、四、五年の高度経済成長政策の結果でございます。それが一時行き過ぎのためにこれを非難して、高度経済成長そのものが悪いように考えることは、私は間違いと思います。しかし、人の意見をどうこう言うわけではございませんが、私はちょうど今から十何年前にあったあの超均衡予算につきましても、非常な非難を乗り越えてきました。今回の高度成長に対しまするいろんな批評も、五年先、十年先には、これがよかったか悪かったかということは、後世の人が判断するでしょう。私は全責任を持ってこれをやっている。ビルマの問題につきましても、十分事情をお考え下さるならば、これが非常な好結果だったということを、私は確信しているのであります。また、ビルマの問題につきまして、私が東南アジアから帰ったときには、タイには非常に恩恵を施したが、ビルマについては何もしなかったじゃないか、ひどいやり方だった、こういう議論がございました。しかし、今ビルマが日本に対しまする信用は、私が賠償交渉を、今は早いと言って断った、私が行く前と、断って帰った後の日本とビルマとの関係をごらん下さったならば、タイをやり、ビルマを断ったこの態度が、いかに日本とビルマとの間に好影響を及ぼしているかということは、これまた私は一年後、二年後にはわかってくると思います。政治というもの、また日本の外交というものは、長いもので見なければなりません。一時のことで、批判は私は甘んじて受けますけれども、私は自分のやっていることは国家、国民のためにこれが一番いいことだと考えてやっているのであります。
○国務大臣(小坂善太郎君) 総理のお答えでもう尽きていると思いますが、ビルマの関係は、その後各種のルートを通しまして、いろいろ先方の意見も聞き、当方の考え方も、両方でさらに一そう深くよく知り合うようにいたしているのであります。御承知のように、わが国は再検討条項に基づいて、ビルマの経済並びに福祉に関する有効なる協力を、無償供与の形において行なおうということを申し出ているのでございまして、その内容については、今相互で慎重に考えているという段階でございます。
○委員長(井上清一君) ちょっと速記とめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(井上清一君) 速記を始めて。
○吉田法晴君 ガリオア・エロアが債権債務であるかどうか。まあ「債務と心得る」という話なんですけれども、「債務と心得る」にしても、「債務である」というにしても、債権債務というものはこれははっきりしていなきゃならぬ。世間でも、とにかく、いわば得意貸しといいますか、得意貸しについて取り立てる、あるいは道義的に支払うというなら別問題ですけれども、証文なしに金を支払うということはないと思う、常識的に考えても。「債務と心得る」という話でありますが、債務なのかどうか、それからいつ債務となったのか、明らかにされたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) この協定を御承認いただきまして、そして相手国との間にこの協定について文書を交換いたしましたときに債務になる、債権債務の関係はそこで発生する、こういうことと思っております。その前の関係は、いわゆる「債務と心得ておる」という関係で、この債務と心得た根拠については、従来しばしば申し上げましたように、先方のこの予算ができまする経緯においてアメリカ側がどう考えておったかということは、当時の各要人のアメリカ議会における証言、あるいはスキャッピン、この中で、「支払い及び計算の方法は追って決定する」と、こういうことがきまっておりまして、そのことを承知で、わが方の政府が輸入食糧の放出を懇請して、そして食糧の放出をさしておる。こういう関係から、これは債務性の濃いものである、こういうことを言っているわけでございまして、資料等で御提出申し上げておるとおりでございます。
○吉田法晴君 予算法その他、あるいはアメリカ側の従来の発言で「債務と心得る」、こういうことですが、「債務である」というはっきりした法律的な性格は今までなかった。協定が成立し、批准をされて、交換をしてそこで債務になる、こういうお話です。で、今まで根拠として、アメリカ側から言われた云々の点は、スキャッピン一八四四号、あるいは阿波丸事件の際の交換公文ですか、了解事項その他ですが、それらを見ても、はっきり債務とは書いてないわけですね。今まであげられた、向こう側なりあるいは公になった文書としては、どういうものを論拠としてあげられておるわけですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 公になった文書といたしましては、資料を御提出申し上げておるのでありますが、先ほど申したように、「支払い条件及び受け入れ方法については後日決定する」と、こういうことを書いた覚書がそのつど出ておるわけでございます。これについては、資料で申し上げておるように、プレ・ガリオアの点もそうですし、ガリオアの点もそうですし、QM、SIMについても同様であるわけでございます。アメリカ側がこれをどういう意図で出したかということでございますが、これはとにかく日本に対するこの援助は、まず第一に非軍事的輸入である。そしてこの非軍事的輸入というものは、これは一九四七年の六月の極東委員会の決定、これが一番代表的なものだと思いますが、これは降伏後の対日基本政策、これについて言っておるのでありますが、「日本の輸出代金は、占領に必要な非軍事的輸入であって、降伏以来すでに行なわれているものの費用に対して支払うために使用することができる」、すなわち非軍事的輸入であって、しかもその費用を弁済するために使用することができる、ただし、ただではないのだ、こういうことを極東委員会の対日基本政策としてきめておるのであります。その他にも、これはいろいろの機会で申し上げておりますように、マッカーサー元帥の証言であるとか、ヒルドリング国務次官補の証言であるとか、あるいはドレイバー陸軍次官の証言であるとか、ヴォルヒーズの証言であるとか、ドッジ連合軍最高司令官財務顧問の証言であるとか、それからダレス国務相の顧問の演説であるとか、いろいろなものがあるわけでございますが、皆一様にそういうことを言っておるのであります。
○吉田法晴君 まあ、いろいろあげられました。私もまあ一通りは見たつもりですけれども、このスキャッピン一八四四号、これは今まであげてこられた文書の中ではあれですが、しかし、それでは、「支払い及び経理の条件はあとに決定する」ということで、債務とは書いてございません。それから極東委員会の決定は非常に重要なものだというお話ですけれども、その該当部分は、資料に横線が引っぱってありますから、そこが一番中心かと思いますけれども、「日本国の輸出品の売得金は、国民の最低生活水準を確保した後、占領に必要な非軍事的輸入であって、降伏以来すでに行なわれていたものの費用に対し支払いをするためにこれを使用することができる。」、こういうことで、これは日本の輸出品による売得金を、降伏以来すでに行なわれてきた費用に対する支払いのために使用するということであって、援助物資なり何なりというものは、これが債務だということはこれは書いてありません、文書を読めば。
○国務大臣(小坂善太郎君) 要するに、これは占領以来いろいろ支払ってきた費用ですね、これがただかどうかということで、ただではないのである、そして、そのただではない、すなわち、金を払わなければいかぬということでありますが、いかなるものから金を払うかというと、日本が輸出して獲得した代金から払うのだ、こういう趣旨の決定でございまして、ただではないのだ、払うのだ、こういうことになれば、払うべきものはアメリカの援助、これが大部分でありますが、この援助を将来どうするかというと、払うべきものである、こういうことになってくるわけであります。なお、もっと非常にはっきり言っておりますのは、ヴォルヒーズ陸軍次官補の証言でありますが、われわれは従来ガリオア資金を議会に要請するにあたって、これがすべてドイツ経済に対する貸付金となると述べたが、これは日本についても同様である、こういうことを言っております。
○吉田法晴君 ヴォルヒーズ陸軍次官補の言葉を引かれましたが、私は、これはそのとおりであるかどうか信憑性を確認してもらわなければならぬのですが、一九五一年、アメリカの第八十一国会の下院歳出委員会で、ヴォルヒーズ次官以下、アイケルバーガー中将、ガーヴィン博士、フォックス少将、アリソン氏等を招いて予算の公聴会を開きました際の、これは何といいますか、速記録の翻訳文であります。その中には、今言われた、ドイツに対する援助、これと同様に債務であったということでありますけれども、私の読むところでは、そうは証言をされておりません。これは古い文書ですけれども、東京銀行協会の調査部で作った資料でありますが、その中には、これはその文書の百九ページですけれども、ヴォルヒーズ次官が経済復興に使った、初め救済であったものがだんだん経済復興の役に立つように使われてきた。そして「日本政府の手に届く食糧やその他を事実上無料で与えている。つまり、これらの買付に相応する日本側の金の支出なしに与えている。」、こういう言葉もございますし、それからドイツの場合には、ECAの計画のもとに、それから規定に基づいて供与されたけれども、日本の場合にはECAのような規約がない云々という点が出ておりまして、明らかにドイツの場合と日本の場合とは違うと証言をされておるようですが、これは違いますか。
○政府委員(安藤吉光君) 一九五一年のそれは、私ずっと前に見たことがございますが、私の記憶では、ドイツのことを述べております。しかし、むしろそのいわゆる今のECAの問題、この点なんかについては、確かにおっしゃるように日本の場合と違っておるわけです。と申しますのは、日本にはECA法の適用がございませんで、ドイツにはいわゆるガリオアとECAと両方適用されるわけでございます。したがいまして、その意味におきましては、ECA法の適用内容においては日本とは違っておったわけでございますが、ヴォルヒーズの言っておるところも、結局これを全額そのまま返済するということじゃなくて、結局他日やはり処理するのだということを、これはその前のことを振り返ってみますと、そういうことを述べておると記憶しております。
○吉田法晴君 ドイツの場合と全く同じであるというわけにはいかぬという点は認められたわけでありますが、外務大臣どうですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) ドイツの場合にはECA法の適用があり、日本の場合にはない、それはそのとおりでございます。ドイツの場合、ガリオア、プレ・ガリオアの時代に十五億三千万ドルですか、ECAができましてから十五億二千万ドル、合計三十億ドルでございますね、これを三分の一にして十億ドル返したということで、この基礎になりまする法規が違っていたということはありますが、援助の性質、したがってその返金の方法、こういうものは大体似たような形になっておるわけであります。
○吉田法晴君 このECA法の適用がない云々は認められましたが、最後の返すべきものかどうか、支払うべきかどうかという点は同じだというお話ですが、その証言を見ていると、無料、無償で供与された云々という点は、これは幾つかの場所で見えるわけでありますが、そういう点では、規定あるいは供与に基づくドイツの場合と日本の場合とは本質的に違っているのじゃないか、こう考えられますが、いかがでしょう。
○政府委員(安藤吉光君) 今おっしゃいましたところは、ヴォルヒーズは非常に長い証言をしておるのでございますが、私の持っております資料によりますと、ヴォルヒーズはこういうことを言っておるように承知しております。すなわち、詳しく言えば、われわれは日本に食糧その他の物資を提供するが、現実問題として日本政府は、さしあたり日本側の資金からそれに見合う支出を要求されず、しかも援助物資は国民に売却されるので、政府は円価による売り上げ金を得るので、その金を見返り資金として積み立てるというように、いわゆる見返り資金の説明のところで言っております。しかし、今申し上げましたところでも明らかなように、さしあたり現金決済はしないということを言っておりますが、無償ということは言っていないと私は承知しております。 〔委員長退席、理事木内四郎君着席〕
○吉田法晴君 この全体を通じて、日本を敗戦後共産主義の侵略から守るかどうか、そこでこの日本に対して貧困と飢餓の状態から救うかどうか、それには救済資金を出さなければならぬということで、いわば占領政策としてなされておりますが、その根拠になっておるのは、ヘーグ議定書ということもございますけれども、ヘーグ陸戦に関する条約の精神に基づき、いわば人道主義的な立場から、当時の日本の飢餓と貧困と申しますか、極端な状態に対する援助をしたのだ、そして、その目的を十分に達して、日本をアメリカの側に引きとめることができた、世界で一番従順な国民に、アメリカに協力する従順な国民にすることができた、こう証言がなされており、その出される根拠については、ヘーグ議定書その他が引き合いに出されているところを見ると、有償としてあとからその債権の代金を取り上げるということでなされたものでないことは明らかだと思うのであります。ヴォルヒーズの一九五一年の下院予算委員会の言葉の中に、さっきまあ、あとのことは触れておらぬけれども、少なくとも無料で引き渡されたということは、これははっきり言葉の中に出ている。あるいは一九五一年の十一月、ドッジ顧問の離日にあたっての声明にも、無料で受け取ってきた云々という言葉がございますだけに、その当時の日本への引き渡しが無料であったかどうかという点は、これは明らかだと思うのであります。いかがですか。
○政府委員(安藤吉光君) ドッジの証言も、たびたび国会では問題になり、われわれも全部読んでおりまするが、よくお読み下されば、あれは無料ということは言っていないのであります。陸戦法規とかアメリカの占領政策に関連して言っておりまするが、こういった証言のバック・グラウンドといいますのは、きのうまで敵であった日本に援助を出すということに対して、当時アメリカで相当な反対があったことは容易に予見されるわけでございます。想像されるわけでございます。それに対して、アメリカの納税者に、やはり日本に援助資金というものを出す必要があるのだ、また出すほうがいいんだということを納得させるために、いろいろ言ったことも事実でございましょう。ただしかし、ヴォルヒーズにしてもドッジにしても、これを無償で、完全なる無償でやると言ったということは、証言を何回読みましても、ございません。ただ、直ちに現金で返済を受けるとか、そういったことは、もちろんさっき申し上げましたヴォルヒーズの証言にも、直ちに日本の資金からそれに見合う支出をさせるということは、言っていないのでございます。むしろそのときにはヴォルヒーズは、さきの場合には、そのかわりに見返り資金を積み立てて、そしていわゆる日本復興等に資せしめるのだという意味のくだりでそういったことを言っております。決済に直ちにならないということは、必ずしも後日に決済されるということを否定しているわけじゃございません。
○吉田法晴君 これはまあ私も全文を読んだのですが、そのバック・グラウンド云々という今お話がございますけれども、なるほど、この見返り資金を積み立てて、ドルを要しない援助については、マッカーサーなりあるいはドッジの監督のもとに使われた、こういう点はわかりますけれども、日本語で読む文章の中には、それは「無料で」とか、あるいはドッジ氏の離日声明の中にも、手元にあります日本語の文章によりますと、「数十億ドルに上る物資あるいは原料を無料で受け取ってきた」と、こう読めるのですが、それに間違いございますか。
○政府委員(安藤吉光君) 私もこの証書については、ずいぶん前でございましたが、全部読みましたけれども、無料、ただということは、どの証言でも言っていないことを私は記憶しております。 〔理事木内四郎君退席、委員長着席〕
○吉田法晴君 そうしたら、第八十一国会の下院の歳出委員会での証言の部分を、原本と日本語で資料としていただきたい。それからドッジ顧問の十一月二十九日の声明を日本語と原文でもらいたいのですが、私の手元にあります、先ほど述べた資料の中には、これは見返り資金に関するヴォルヒーズの証言ということで、見返り資金の性格が述べられておりますけれども、その中に、「ガリオアの中で救済費的部分は?」というウイグルスワース氏の質問に答えて、「救済及び経済復興です。」、これは、前のほうに、救済が主であったものが漸次経済復興に移った、こういう点の説明をされているところの繰り返しです。救済及び経済復興です。その点をきわめて簡単に申し述べますと、本質的には次のようになるのであります。すなわち、「われわれは日本政府の手に届く食糧やその他を事実上無料で与えている。つまり、これらの買付に相応する日本側の金の支出なしに与えている。日本政府は、食糧その他を国民に売り、円貨を受け取る。この受取額が現在見返り資金として控除されている。」、こう翻訳されておりますが、それが間違っているのでしょうか。それから、ドッジ氏の離日の際の声明には、「過去六年間、日本は占領という庇護のもとにあった。この間に、日本はみずからの輸出によって支払うことなしに、数十億ドルに上る物資原料を無料で受け取ってきた。」、短いからあとも読みますが、「しかも、米国政府は、その他の地域が危機的な状態にあったときにすら、日本が輸入する大部分の物資原料の購入機関として奉仕してきた。また日本は、国内の進歩改善に無制限の技術的援助を受けてきた。」、こう書いてございまして、無料で渡した、あるいは無料で与えた、事実上無料で与えたという点は、これは翻訳にさえ間違いがなければ、間違いない声明であり、あるいは証言だと思うのですが……。
○政府委員(安藤吉光君) ヴォルヒーズ、ドッジの証言というのは、相当膨大なものでございます。私その東銀が訳されたものというのは読んだことございませんけれども、私の持っております資料によりますれば、先ほど申しましたように、直ちに金を支払うことなくして、ということは言っております。その意味のことは言っております。しかし、これがあくまで完全に無料であるということを言ったということは、私は全然なかったと記憶しております。したがいまして、英語とよく突き合わせてみれば、何かのいわゆる訳が、何と申しますか、必ずしも正確でなかったのではないかというような感じもいたすわけでございます。
○委員長(井上清一君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(井上清一君) 速記をつけて。
○吉田法晴君 それでは今の資料を出して下さい、日本語訳とそれから原文と。おそらくドッジ氏の離日声明は、これはその当時新聞に載ったものだと思うのです。それいいですね。資料の点は。
○政府委員(中川融君) われわれの持っておる限りの資料をお届けいたします。
○吉田法晴君 渡すときには、ただであった、あとのことは、そのときには触れていないのだ、こういう説明。ところが政府は、従来の答弁によると、スキャッピンその他支払いの方法等をあとできめる云々ということで、それは広い意味の債務だ、こういう説明をしてこられたと思うのです。ところが、法的に債務でない点は、先ほど大臣から認められたところですが、これはその証言の中にも結局債務になるかどうかは平和条約で、こういう発言がございます。そのことはこれは吉田内閣のときですか、池田大蔵大臣の言葉の中にもあるようです。一九四九年の四月、見返資金特別会計の際に、これは速記録をまだ見るに至っていないのですけれども、ガリオア援助が債務であるかいなか未確定で、債務でないとされる外国の例もあるが、この点は平和条約できめられる、こういう答弁をしてこられた。したがって、占領中あるいは見返資金特別会計を創設される一九四九年ころも、その当時はこれは債務であるかないかはまだ未確定、こういうことであったと思うのですが、これは今の説明じゃない。今の説明じゃないが、当時のとにかく政府の解釈というものは、アメリカ側のあれからいっても、まあ必要であれば言葉を引き合いに出してもいいですが、債務であるかどうかははっきりしなかった、こういうことだと思うのですが、どうですか。
○政府委員(中川融君) 政府としては当初からやはり債務と心得ていたわけでございまして、ただいまいろいろ御指摘になりました一九四九年ころのいわゆる国会答弁のお話もございましたが、ちょうどその国会答弁がありましたころが阿波丸協定の国会での御審議のあったところでございまして、ちょうど、御承知のように、四月の十三日ころの参議院、衆議院両院の本会議におきまして、吉田総理大臣からはっきり、ガリオア・エロア等はもらったものであると誤解する向きもあるので、阿波丸協定の了解事項にはっきりそれを念のために書いておいたのだという吉田総理大臣の御答弁もあったのでございまして、池田大蔵大臣がほとんどときを同じくして、ただいま御指摘のような御答弁をされた事実もございますが、これはその国会の速記録でも明らかなように、当時池田総理大臣はいろいろほかの条約、たとえばイタリア条約等で見ると、これが棒引きになった例もあるようだ、これは債務かどうかということは、平和条約のころになってきまるだろう、今これ以上言うことは適当でないと言っておられるのでありまして、「債務と心得ている」こと自体を何も否定した御趣旨ではなかったかと思うのであります。したがって、政府といたしましては、やはり当初から、最初のスキャッピン一八四四が来ました当時から、やはり債務と心得ていた。はっきりした債務ではございませんが、何らかの形で処理を要するものであるという意味でのやはり債務と心得て、以来ずっと続けてきている、こういうことでございます。
○吉田法晴君 吉田総理か外務大臣か知りませんが、諸君は大蔵省の出身だが、何でも負けてもらうことに熱心だけれども、そうはいかぬのだという発言があったということは、私も読みました。読みましたけれども、それは最初からの話ではなくして、平和条約締結前ぐらいの機会に述べられたことではないか。見返資金特別会計の審議の際に、大蔵大臣として、ガリオア援助が債務であるかいなかは未確定で、債務でないとする外国の例もあるから、その点は平和条約できめられる、こういう話があり、それから米下院の予算委員会での公聴会の席上でも、この点、ヴォルヒーズ氏の言葉の中に同様の言葉がございます。それからゲーリー委員から、「日本における見返り資金の五%が、ヨーロッパの場合と同じように米国へ行くのか。」——これは行くのか、来るのか、まあ日本語の表現の仕方だと思うのですが、見返り資金が五%程度ヨーロッパの場合と同じように米国に返るのかという質問に答えてヴォルヒーズ氏が、「そうではありません。経済協力局の法令には五%までが、米国の費用に使われる条文がある。ガリオア支出に関する公的な法令はないから、そのような条文もない。昨年、本委員会及び上院にガリオア歳出要求を提出するにあたって、見返り資金の一定部分を米国の目的のために利用するのが望ましいこと、これはやがて講和条約で日独に課せらるべき負債としてではあるが、日独両国に対してドル支払いを課せざる方式で利用すべきことを指摘した。」云々という点が、はっきり出ておりますが、だから、その当時においては、向うも債務であるとはっきり主張はしないし、それは講和条約できまることだ。それから、それに対応して日本の政府としても、正式には債務であるかどうかは未確定で、平和条約できめらるべきだ、こういう公式態度であったと考えられるのですが、違いますか。
○政府委員(中川融君) ただいま御指摘の、見返り資金のうち行政費にどれくらい使うことになるかというような点は、これは見返り資金の運用の問題で、ECAの見返り資金では、ECA法というので、その中の五%をいわば天引きでアメリカが行政費に使えるという規定があるわけでございまして、それに基づいて、欧米各国との協定では五%の天引き行政費という制度があるわけでございますが、日本の場合の見返り資金については、そういう制度がない、そういうことを言ったことであろうと思います。なお、ヴォルヒーズ証言の中で、対日援助というものが平和条約の際に片づけられるんだということを言ってる点は確かにあることでございまして、たとえば一九五一年度の予算を審議いたしました一九五〇年二月二十八日のヴォルヒーズの証言によりますと、この対日援助というものは平和条約の際に日本に請求するという了解で行なわれているということをはっきり言っております。平和条約の際請求するというのが、おくれて今になったわけでございますが、こういうところを見ましても、無償かどうか全然わかぬというのではなくて、むしろ平和条約の際には何らかの形で請求するのだという意図でアメリカ予算を請求しておるのがわかるのでございまして、もちろん、平和条約当時にこの問題が日本として現実問題として起きたことは事実でございます。それまでの間は、受け取っていたわけでございまして、一八四四のスキャッピンに基づいて受け取っておるという時代が続いてありまして、現実に返済の問題が幾らかでも起きてきましたのは、だんだん講和が近づいたころでございます。したがって、発言等もそのことが多くなったのは事実でございまして、性格的には変わっていないということでございます。
○吉田法晴君 初めから性格が変わってないと、こう言われるのですが、問題は、債務であるかないかということをお尋ねをしておるのです。債務であるかどうかは未確定だと言うのなら、初めから債務であったという説明、あるいは債務と心得ておったという説明は、これは事実に反するじゃありませんか。なるほどスキャッピンには、その支払い等云々はあとできめると、こう書いてある。ところが、そのきまったときがない。いわば債権確定といいますか、債権を確認をされたのは今日に至るまでなかった。阿波丸のときにしたって、「借款及び信用」と書いて、この中に援助が含まれるかどうかという点は、これは含まれているという解釈をしようとしておられますけれども、ちょっとやっぱり無理。それから、平和条約の中にも、解釈として含まれるんだという解釈をとろうとしておられますけれども、これもやっぱり実際問題としては無理じゃないですか。それから、その際に、十四条ですか、十四条に含まれるものとしてガリオア・エロアが入っておる。入っておって債権と確定をしているならば、これに対する協定等があると思うんですけれども、それらはない。イタリアやあるいは敗戦国相互の賠償については、今度の大戦後の賠償についてはこれを取り上げない、あるいは相殺をするというか、こういうことで来られた。そうすると、明らかでない場合には、債務者のためにといいますか、敗戦国のために、利益のために解釈されるべきが当然ではないかという、いわば法律とは言わないにしても、法律とまでなっているかどうかわかりませんけれども、第二次大戦後の国際慣行、賠償なり債務についての支払いの慣行、それからその慣行を裏づけておる理由といいますか、敗戦国のために、あるいは債権国のために有利に解釈すべきが当然ではないかという理由からすれば、今からさかのぼって、日本のほうで進んで「債務と心得ている」と、こう言われるけれども、それはその当時においては債務であるかどうかわからぬ、あるいは未定と言うならば債務ではなかったんだ。道義的に支払うなら別問題です。債務であるかどうかという点になりますと、これは法律的な問題です。いかがです。
○政府委員(中川融君) もちろん、これは「債務と心得る」状態であったわけでありまして、確定した債務ではなかったのであります。その意味では吉田先生の言われること、われわれ決して反対の考えを持っているわけじゃございません。要するに、債務と確定しない形で、しかしながら、債務性の濃い形でずっと続いてきておった。いつからこれが続いてきておったかと申しますと、受け取ったときから。その受け取ったときは一九四六年のスキャッピンの一八四四で、「この支払いの条件、勘定はあとできめる」、そういう格好のままもらってきておる。これから起こっておるわけでございます。具体的には講和条約締結一、二年前からこれが問題になって参りまして、アメリカとの間の協定なり条約の形ではっきり約束したものは、阿波丸協定附属了解事項以外にございませんが、しかし、国会において政府の当局者からはっきり、債務と心得るんだ、いつかは何らかの形で支払いする義務がある、いつかは支払わなければならぬと思っているんだということを繰り返して国会の席上で政府当局者から言明しておられるのでありまして、そういう機会が講和発効後も続いてきて現在に来たっておる。また平和条約の際には、われわれとして、平和条約はこの問題に触れていないと心得ております。平和条約で、これが含まれて、債務性を確認しているということは考えておりません。むしろ平和条約できめずに、そのまま、政府の言明があったままずっと残されてきておる、それを今日ここで債務とはっきり確定するという段階になりまして、その間の政府の態度はわれわれは一貫しておると思います。
○吉田法晴君 債務と心得えて支払う、いわばそれは初めから、「債務と心得ておった」という言い方をされるでしょうけれども、その義務のないものを支払わなくもいいじゃないか、こういう立場からしますならば、「債務と心得た」云々というお話はこれは途中から出てきた、あるいは今からさかのぼっているという説明にしかすぎぬのじゃないか、こう考えられるんですし、それから、先ほどヘーグ条約あるいは議定書に基づいて云々ということがございますが、占領政策として出されたというならば、なおさらこっちからとにかく支払うべきものだとして申し出るという点は、このタイの場合にも九十六億でしたか、問題になりましたが、さっき総理に田畑君が質問したところですけれども、結局日本のいわば屈辱的な態度、あるいは卑屈的な態度と思う。もう少し向こうの発言を引き合いに出してみますと、これは大臣、答弁ものだと思うんですけれども、最初のころの一九五一年のガリオア予算の公聴会の初めのほうにこういう言葉がございます。「ガリオア計画が救済計画として出発した」、いわば「旧敵国に食糧を与えるために多額の金が必要であった、……本質上は逆賠償ともいうべき支出だったけれども、しかもそれが必要だったのである。」それは「この予算を持つことによって、非共産主義のドイツと日本を作り上げ保護することが可能になった。これらの食糧輸送は共産思想の進出に対する最良の抵抗であり、きわめて有効なものであった。」。同様の趣旨が、アイケルバーガー将軍から、あるいはフォックス少将からも、あるいはダレス氏からも述べられておるわけでありますが、最も世界で最少限の費用をもって最大の効果を得たというか、他に類を見ないほどのアメリカの言いなりになる日本を作り上げることができた。こういうまあ証言の一部として「日本は占領費として明会計年度に、約一億九千七百万ドルに相当する円を予算に組み込んでいる。だから、われわれが本予算で日本のために要求している経済援助額は、大ざっぱにいって、日本が米軍の費用として組み込んでいる額よりも約五千万ドル少ない。日本の支払うこの占領費がなければ、現存の兵力維持は米軍の経費から払い出されるわけだが、この占領費によってそれだけ米軍の経費が減少するのだ」、これは占領費を戦敗国である日本に一部負担させたわけだが、もしそれがなければ、米国内で同じ軍人に対する支払いをするとするならば、もっと高くつくだろう、「だから、日本は明会計年度においてわれわれの軍事支出の軽減の点で、米国の対日経済援助よりも約二〇%よけいの金を出しているわけで、これは意味深い数字である。」と書いている。いわば、占領費についてもそうだけれども、、占領政策のために出した金、それはヘーグ条約に基づく精神によって出されるものであるが、その援助の額が駐留軍に終戦処理費として出された、出す金よりもむしろ少ないのであります。そういう意味でたいへん経済的なという表現がなされておる。そういうものをすら債務と心得なければならぬのか、こういう基本的な問題と、それからもう一つは、その中で援助資金と、それから終戦処理費とは、これは相殺を考えてもいいという論拠、向こうのほうから実は言っているところだと思うのですが……。
○政府委員(中川融君) そういうことをヴォルヒーズ陸軍次官が証言したことも事実でございますが、これは前後の関係を見てみますと、やはりどういうわけでアメリカの国民が自分の税金を使って日本のいわば救済のための援助を出さなければいけないのか、それを国民に納得させる意味で、日本も決して何も出さないでいるのじゃないのだ、日本は非常に相当額の円資金を実は占領費で受け持っているのだ、ちょうどその額が、比べてみると、今度援助費としてアメリカの国民が出す額よりも、ちょっと多いくらい出していると、こういうことを言ったのでありまして、したがいまして、アメリカとしてやはり出すべきものである。それから陸戦法規の点などを援用いたしましたのも、やはり占領地の生活を維持してやる、あるいはそういうことをするのが占領国としてやはりするべきことだというふうなことを言っているのでございますが、いずれにせよ、これは経済援助が無償になるという論拠には必ずしもならないのでありまして、陸戦法規につきましては四十三条にそういう意味の、従来の社会生活をできるだけ維持させろという規定はありますけれども、それは無償でやれという結論はこれから出てこないということで、この委員会で参考人の榎本教授から詳しく説明のあったとおりわれわれも考えているのでありまして、どうも、どこから見ましても、無償でいいじゃないか、返さなくていいぞということを日本からアメリカに言う根拠にはならないのじゃないかと考えるわけでございます。御指摘のような法律的な義務は、まさしくございません。法律的な義務として平和条約に書いてあるものもないし、契約もないわけでございますが、もらったときのいきさつがああいうスキャッピンで、将来何らかの形でこれは決済するときの条件はきめるのだというようなことを承知の上でもらっておるということから見て、やはり日本としては法律的な義務はないにしろ、政治的な義理合いというものはあるわけでございまして、これはもちろん大臣から言われる筋合いでございますが、やはりそういう大きな政治的見地に立ってこの問題を積極的に日本として処理しようというのが、歴代の政府の考え方であったわけでございます。
○吉田法晴君 その辺は、まあ大臣からもう一ぺん答弁をお願いします。政務次官がおられるが、政務次官に聞いてもよろしいですが、どうですか。
○政府委員(川村善八郎君) ガリオア・エロアの返済問題につきましては、相当な複雑性を持っておりますので、総理大臣からも社会党の方々の質問に十分お答えもしておりまするし、所管大臣からもお答えをしておるのでございます。しかし、私は十分勉強もしておらないのに、内容にわたってお答えすることはいかがかと思いますので、どうか事務当局に十分御質問をお願い申し上げます。
○吉田法晴君 正直な答弁をいただいて……あとで大臣にもう一ぺんお尋ねをしてみますが、これは常識問題です。占領政策として、日本の戦後のあの食糧の足らぬ、食糧メーデーも起こったわけですが、そのあと放出をした。それは向こうから言えば、占領政策として、日本を共産主義の侵略にまかせるべきではないとして出されたものである。しかも、外国に比べてみてたいへん効果のある成果をおさめた。まあドイツ以上にというのですか、駐留の費用を日本に出させるのよりも少ない金で救済をし、それによって日本がソ連の側に立つのを防ぐことができた、最も従順な国民を確保することができた、こう言われるものを、それをとにかく債務と心得て、そうして喜んで払いましょう、こういうことになるかどうかという、まあいわば常識問題でございますが、あとでもう一ぺんお尋ねいたします。 それから、この終戦処理費との比較は、それはアメリカに対して出させるための説明だということですけれども、これは至るところで出てくるわけです。向こうから言われるあれは道義的な責任にしろ、これは国民感情もあります。国民感情もあってガリオア・エロアは債務と心得て支払う必要はないという議論の底に、同額以上の終戦処理費を出しておるじゃないか、アメリカの兵隊のための経費の負担をしておるじゃないか、こういう感情がございます。これを条約局長に聞くことはないかもしれませんが、そういう、やはり法理的な問題以上の問題です。 それでは、さっき条約局長は、阿波丸事件の際の交換公文でしたか、あるいは講和条約の条文の中でも、ガリオア・エロアの問題は論議もされなかったし、あるいは含まれてもいない、これを基礎にしてガリオア・エロアの援助資金が「債務であると心得る」わけではない、これは阿波丸事件の交換公文も、それから平和条約も、この問題の法的な根拠ではない、こういう御答弁であったようですが、これは間違いないですか。
○政府委員(中川融君) 平和条約では、この問題には直接触れていないと考えております。阿波丸協定の了解事項として、やはりこの問題に触れておる。これはその当時の吉田総理大臣の御説明ではっきり言っておられますので、あそこの借款、何か、クレジットという中にやはりガリオア・エロアが入っておるのだというふうに考えるわけでございます。しかし、これは単なる了解事項に書いてあるものでございまして、これからすぐに法律的な効果が発生するというものではないわけでございまして、あの阿波丸協定の了解事項は、従来結局「債務と心得ていた」というその状況を、そのままあそこに再確認しておるだけの効果を持っておるものであると考えておるのであります。あれがあるから債務性があそこできまったのだというような意味合いのものではない、こういう意味でお答えいたした次第でございます。
○吉田法晴君 阿波丸事件の際の了解、これは国会の決議をとって、野党は全部反対をしたようですが、与党の多数でとにかく決議をとって、それで阿波丸事件に関する請求権を放棄されたようですが、しかし、了解事項の中にある言葉は、「借款及び信用」ということで、私はこの「借款及び信用」の中にガリオア・エロアが債務として入るかどうかは別として、入るというようにはこれは解釈されないのが、文字の解釈としては当然ではないかと思うのですが、先ほど羽生委員からも、グラントという言葉もあり、それから、この「借款及び信用」は、ローン・アンド・クレジットという言葉で表現されていますけれども、吉田総理ですかの本会議での答弁の中で、含まれておるんだという解釈は、これは読みました。読みましたけれども、その了解事項の中に、ローン及びクレジットの中に入るというのは、少し牽強付会ではないかと思われるのですが、どうですか。
○政府委員(中川融君) 吉田先生御指摘のように、どうも借款とか信用とかに入るとすれば、信用に入るでしょうが、信用というものに、「債務と心得る」というような程度のものが入るかどうか。文字からいうと、いろいろ疑義も出るわけでございますが、両国政府の間で、ある種類の約束あるいは了解事項をいたしました際に、その使っている文字がどういう意味を表わすかということは、結局、どういう意思を両国政府がそのとき持っていたかということがやはり一番大きな要索になるわけでありますが、吉田総理大臣が、はっきりあの中にガリオア・エロアというものも含まして言っているのだということを言っておられますので、これはやはり日本側としては、当然あのときガリオア・エロア、こういうものも含ませる意味で「借款及び信用」という言葉を使ったのだと解釈するのが筋であろうと思うわけでございます。われわれもやはりそういうふうに解釈しているわけでございます。
○吉田法晴君 了解事項に関連をして、日本の政府は、吉田総理はこうだということですけれども、条約局長として文書を了解するときには、これは条約あるいは法律を解釈するときの常識で考えなければならぬのでしょうが、そうすると、さっき前半にお答えになりましたけれども、「借款及び信用」の中にガリオア・エロアが含まれている、債務性のはっきりしないものも含まれていると解釈するのは、これは解釈としてはおかしいじゃないですか。少なくとも文字を解釈するときには、文章を解釈するときには、常識で解釈しなければならぬ。吉田さんが含ませたつもりだというのですけれども、あとでものを言うものは文書である。あるいはその了解事項そのものである。あなたが条約局長として、「借款及び信用」の中に文字として入るものはこれは少しおかしいと言われるのが解釈上の常識だと思うのですけれども、その際に関連をして、あるいは吉田総理から意思表示されたかどうか、これは別問題、了解事項そのもの、その文章の中へ含まれていると解釈するのは、これは少なくとも法文の解釈といいますか、あるいは条文の解釈としてはおかしいということは言えるのじゃないかと思いますが。
○政府委員(中川融君) クレジットという言葉をどういう意味に使うかという問題でありますが、普通クレジットといえば、やはりある程度条件等もはっきりして、将来こういう条件で返すということがきまったものをたいていクレジットと言うわけでありますから、私が若干あれがないでもないということを申しましたのは、やはり普通使う言葉としては、クレジットという言葉を使えば、大体返す条件等もある程度はっきりしているものをクレジットと言うわけでありますが、しかし、クレジットという言葉自体には、必ずしもそれだけに、狭い意味だけに解釈すべき言葉とも限らないのでありまして、要するに、ある人を信用するという言葉がクレジットでありますから、とにかくお前これを受け取れ、あとでどう返すかということは、あとで相談しようというようなやり方で、物を要するに人に渡した、こういう行為もこれはクレジットと広い意味で言えないこともないのでありまして、阿波丸事件の了解事項に、広い意味でのクレジットという言葉を使っているとも解釈できるわけでありまして、吉田総理の御説明を一方に置いて考えてみれば、あそこに言うクレジットという言葉は、むしろそういう広い意味に使ったのだというふうに解釈するのが適当である、そういう意味でわれわれは解釈しているのであります。
○吉田法晴君 当時の総理の言葉だから、少しおかしいけれども、無理にとにかく解釈をしよう。これは政府委員としてしようがないのかもしれませんけれども、そういうとにかく答弁と承ります。したがって、そこで、ガリオア・エロアの援助資金が債務であると確定したわけではないという点は、これはお認めになったようです。 それからガリオア・エロア、それから見返り資金とはもちろん違いますが、先ほど聞きました中に、アメリカに返せるか、あるいは使えるか、それから見返り資金を日本、沖繩以外の、たとえば問題になっているような韓国だとか、それから東南アジアのよその国に使えるかという問題については、これは法律の改正がなければ使えないのだ、援助資金そのものは、これはアメリカの予算から出るものだから、日本、沖繩以外には使えない、しかも、それはどうしてもドルでなければならぬものに使う、見返り資金のようにドルを要しないで、逆に言えば、ドル以外の日本円で買えるものは、対日政策についても、マッカーサーなりあるいはドッジの管轄のもとにおいてではあるが使う、対日関係だけに使う、こういう説明もございました。ガリオア・エロアと見返り資金とは、これは全然別のものである、見返りに積み立てたものであるけれども、使途その他については、大きな制約において違いがある、こういうのと、それから、見返り資金そのものを、それは日本及び琉球以外には使えない、こういう説明がなされておりますが、そうすると、見返り資金の運用資金の中から、いわば利子というか、あるいは返済されたものの中から返していく、そしてそれを東南アジアなら東南アジアのほうに使っていくということは、少なくとも従来のアメリカ側からすれば、これは使えない、こういうことになるものだと考えられますが、その点はいかがでしょうか。
○政府委員(安藤吉光君) これは大蔵当局からお答えすべきことかと存じますが、私の承知しております範囲において御説明申し上げたいと思います。 御存じのとおり、このガリオア援助が始まりまして以来、昭和二十四年の三月までは、要するに総司令部が全部貿易を管理しておりました。ところが、昭和二十四年四月にスキャッピンが出まして、いわゆる対日援助に見合う円貨を積み立てるということになったわけでございます。そういうふうになりました経緯につきましては、当時のことを調べますと、要するに、この経理を明らかにし、この積み立てた金をもって日本の産業復興とか、そういったところに使ったほうが有益であり、そしてまた日本の経済建設になるのだというような趣旨からだと承知しております。従来、そういう見返資金特別会計法ができまして、そういったところに使ってきたわけでございます。それで、見返り資金を、従来までのところでは、お説のとおり、日本の産業復興にずっと使ってきたわけでございますが、余談になりますが、米側諸計画というのに、見返り資金から二千七百五十九万ドルを出しております。しかし、これは当時のスキャッピンによってやったわけでございますが、それは、連合国の国民の住宅とか、あるいは日本に対する特定教育計画、あるいは学童の給食といったものに対して、見返り資金から、本来ならば終戦処理費あるいは他の資金から出すべきものを出しております。しかし、こういったものは、今度は米側と話し合いまして、援助総額から引いておるわけでございます。したがいまして、こういった関係から、見返り資金が、さっき申しましたように、産業の復興、発展に使われるということを趣旨として実行されてきたわけでございます。今御質問の点は、そういった見返資金特別会計法以来、ずっと引き続いてきたこの見返り資金が、その後は産投会計になっておるわけでありますが、それを、アメリカに払うのは、それからまた東南アジアのほうに行くのはおかしいではないかというお説のように思いますが、私の承知しておりますところでは、産投会計法の改正をお願いしまして、この中からガリオアの返済ができるようにという改正を、当国会に御審議願っておるというふうに承知しております。したがいまして、その審議で通りました暁には、この産投会計の運用費からガリオアの返済ができると、そういうふうになっておる次第でございます。 —————————————
○委員長(井上清一君) ただいま委員の異動がございました。田畑金光君が辞任され、その補欠として曾祢益君が選任されました。 —————————————
○吉田法晴君 産投特別会計に関する法律の改訂と、それから産投特別会計の中から支払っていきたい、こういう点は私も承知をしております。しかし、それは二重払いになるではないかという話から、いや、国民からは代金を徴収したけれども、それを積み立てた見返り資金から払うんだから、二重払いにならないのだと、二重払いの非難に対する言いわけから、防止策から、そういう方法がとられているのだが、条約なりこの交換公文の中にある、見返り資金から返済するものについては、日本以外のアジア各国で使われるということを期待すると、こういう建前になっているけれども、援助資金とそれから見返り資金とは違うが、対日占領政策として使われているという点は同じである。それから対象が日本及び沖繩に限定をされたという点も、これは少なくとも今までの性格からいって、これはアメリカ側からいってそうではないか。そうしてこの証人としての公述の中に、「日本以外の復興目的に使用できるのか?」という問いに対して、「できない。今のガリオア予算D条項ではできないと思う。換言すると、ガリオアは日本の救済及び経済復興資金の目的で、また一部は教育用資金としてわれわれに与えられたものである。別な指示があれば話は違ってくるが、現在のところでは、講和条約において日本が右の金額を負課されるという諒解のもとに、以上のことはなされている。 それ故、見返り資金は日本で使用さるべきものである。でなければ日本は、二度の支払いをせねばならぬことになる。われわれは、ガリオア予算のドルも、それから生ずる見返り資金も、日本と琉球以外の地域で使用する権利はない。」「しかし、たとえば朝鮮やインドシナあるいはわれわれが利便を得たいと思う他地域に同じことを行なう権利はない。」——全面的な立法上の変更があれば別だと、こう言われているところから見れば、アメリカの建前としては、この見返り資金の中から返済されるものを他の地域の援助に使うということは、これはできないのではないか、こういうことを実は大臣が来られるちょっと前から質問をしている。
○政府委員(中川融君) 見返り資金の使い方につきましては、講和発効前と後とで、やはり区別して考えなければいけないと思います。いろいろ、今アメリカの議会の証言等で、見返り資金というものは、日本と琉球にしか使えないということがございましたが、これは占領中に、要するにアメリカの方針として、見返り資金はあのときの指令に基づきまして、アメリカと相談しなければ使えなかったわけであります。日本の金ではありますが、アメリカと相談しなければ使えなかったわけでありますが、アメリカとしては、日本の金だから日本の利益のためにだけ使おうという方針でいたわけであります。しかし、それは講和発効後、見返り資金は完全に日本の金になったわけであります。アメリカから指示を受けないで、日本が、いわば勝手に使えるわけであります。その際に、しかも、見返り資金というものがなくなりまして、今は産業投資特別会計に入って、形が変わっているわけであります。日本政府としては産業開発に使いたいというわけで、産業投資特別会計を作ったわけであります。しかし今回は、これはアメリカに返すことにも使おうということで、改正案を国会にお出ししているわけでありますが、これをアメリカに返せば、返したあとはアメリカの金になるわけであります。このアメリカの金をアメリカがどう使うか、これまたアメリカの自由であります。したがって、アメリカがこれを後進国開発に使おうという方針を立てているわけであります。したがって、それが東南アジアに使われましても——日本ももちろんそれを希望しているわけでありますが——一向差しつかえない、こういうふうに考えるわけであります。
○吉田法晴君 産投会計への変化というものは、これは私どもも了承をしておりますが、しかし、この交換公文の中にうたわれる東南アジアは、東アジアになっていますが、東アジア諸国の経済のすみやかな、かつ、均衡のとれた発展に寄与するために、アメリカの法律を経ることを条件として使いたい、こういう意図を有すると書いてありますけれども、見返り資金が産業投資特別会計の大部分である。その見返り資金については、条約局長はそれは占領中の話だと、こういうようなお話でありますけれども、少なくとも見返り資金についても制約があった。法律の変更がなければ、ほかには使えない、こういう建前があって、その出るときの制約が、見返り資金なら見返り資金にもあるならば、見返り資金の中から返済をするその金を、どこに回すかというときには、やっぱり問題になるのではないか。これはアメリカの適当な立法措置を経ることを条件としてということで、立法措置が講ぜられれば差しつかえないということになりますけれども、しかし出した金の性質その他から言って、立法の際に議論になることは間違いない。その議論になってそして出した金の見返りだから、その点が問題だということになって、法律ができなければどうか、これは使えないことは間違いない。ですから、その議論は、これはなされることは間違いないと見て差しつかえないと思います。
○政府委員(中川融君) この点も吉田先生御指摘のあったとおりでございまして、アメリカが日本から受け取った金を何に使うかということは、一応アメリカの自由でありますから、これを必ずしも、交換公文に書いてあるように、後進国の経済開発に使わなくてもいいのじゃないかという議論も、当然アメリカの国内ではあるかと思います。その関係の問題が、結局今アメリカの国会に法案として出ておるわけでありまして、日本から受け取る支払い金は後進国援助に使おう、こういう法案が今アメリカの議会に出ておるわけでありますから、おそらくそういう反対論がありとすれば、アメリカのこの法案を審議する議会の席上で、そういう議論がなされるかと思いますが、しかし、アメリカ政府は、そういう法案を出しておるようなことから見ましても、やはり日本側と同じ考えで進んでおるわけであります。
○吉田法晴君 その問題も、それはアメリカで論議をする際に、日本の占領中に占領政策として出した、それをこちらから債務と心得て返還をするというのですけれども、向こう自身からいっても、取り立てるべきであるかどうかという議論もなされるかもしれませんが、日本の経済の復興のために使われるべき金の中から取り立てる云々という点も、問題になりましょう。あるいは他に転換できるかどうか、こういう議論もなされるのではないかという話をしたわけでありますが、日本と同じような考えで法律を出しておるからそのとおりになるのじゃないか、少なくとも政府は同様に考えておるのだという答弁でありますけれども、問題がありますこと、それから交換公文がそこまで建前をくずしてまで通るかどうか、疑問もないわけではないわけでありますが、その問題と、それから、先ほど大臣が中座された間に、条約局長は、債務であるということは、あなたが答弁されたように、この条約が通ってからきまる、今までは債務ではなかった、法的な債務ではなかった、スキャッピン一八四四号なりあるいは平和条約の中では、この問題は触れられなかった、阿波丸事件の際の了解事項の中で、条文の解釈としては少し無理があるけれども、総理がそう言われたのだから、まあ入っているだろうという、政府委員として政府に協力する苦しい答弁をされました。常識的に言って、あなたたちは債務性が相当あると言われるけれども、債務でないもの、しかも向こうでも占領費以下であるもの、それから占領費に日本から出したもの以下で、日本をいわば共産主義の侵略から防衛をしたという占領政策に基づく費用、そういうものをこちらから進んで債務でございます、あるいは返済しますという話は、常識的に見ておかしいのではないか。国民感情の中にもこの点があるから、私どもはお尋ねをしておるわけでありますし、常識的なこの国民感情に対してどういう答弁をされるか、この点を外務大臣にお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) まず、第一の点についてお答えいたしますが、これは一九六二年の対外援助法という法律の中に六百十八条という項目がございまして、これは日本のガリオアの返金ということが規定されておりまして、これが経済援助に使われる、こういうことになっておるわけでございます。すなわち条約局長御答弁申し上げましたとおり、アメリカ政府としては、交換公文の趣旨にのっとったこうした趣旨の法律案を議会に提案しておるわけでございまして、おそらくこれが議会の承認を得られるだろうと私ども期待をしておるわけでございますけれども、その議会の承認を得られた段階におきましては交換公文の趣旨が実現される、こういうことになるわけでございます。 それから、第二の点でございまするが、これはアメリカが援助した、こちらがかりにそれをただだと言った場合、アメリカもただだと言えば、ただになるわけでございますが、アメリカのほうは、そうじゃない、こう言っているわけでございます。その根拠については、もう繰り返しませんが、スキャッピンの一八四四を初めとする諸種の文書があるわけでございます。アメリカ側としては、講和条約後に直ちに、マーフィー氏が大使のときに、岡崎外務大臣に対してこの返還の交渉を要求してきたわけでございます。一九五三年に池田・ロバートソン会談が行なわれまして、その際にも、先方からそうした督促がございまして、その翌年五四年になりまして交渉が五月から十月まで行なわれまして、その翌年重光・ダレス会談において共同声明があったというふうなことで、終始一貫その後においてもアメリカから、債務と心得ておったものを幾ばくを債務とするかということについて交渉しようじゃないかという話が実はあったわけなんでございます。そのたびに日本側としては、これは非常に国内的にもむずかしい問題がある。日本の今の経済、国力ではこれを返すに至っていない、いろいろなことを言って延ばしておったわけでございます。そのうちには今度は安保条約の改訂がかかったら、とてもこの問題まで引き受けられないということで、延ばし延ばし来たわけでございますが、いつまでもただ延ばしただけで、そうしてアメリカ側から非常に督促されて、前の関係もあり、どうしてもこれを承知せざるを得ないというふうなところまで追い込まれてそうして承諾するというようなことでは、これはかえって国民感情上おもしろくない。ことに私ども幾多アメリカとの間には交渉すべき案件をたくさん持っておりまするので、何か日本のほうが「債務と心得ている」と言いながら、日本としてそれを逃げ回ってばかりいるというようなことでは、私はよくないと思う。やはりこれは返すべきものは堂々と返して、そうしてそれについて、その後において全く終戦の古傷というものを忘れて、対等の立場に立って交渉を、他の案件について交渉して解決していくというほうが日本のとるべき道であると、かように考えまして、むしろこちらから今度は催促するから、自分らの準備ができたらこちらから申し出るということで、諸種の準備をしまして、そうして解決をした、こういうことでございます。国民感情上から言いますると、やはりあの当時アメリカが旧敵国に対して非常に寛大な経済援助をしてきた、これは現地徴発をしても国際法上別に違反ではないわけでございまして、それをしないのみならず、非常に大きな援助を与えてきた、それをわれわれも感謝しつつ、返すべきものについてはこれは交渉して、妥結したものについては返して、そしてさっぱりとして大いに今後の発展をはかろう、こういう気持でおるわけです。国民感情はこれを納得してくれると、かように思います。
○吉田法晴君 少し前の質問との関連で、単刀直入でなかったから、前の答弁を繰り返されたわけですが、お話の中に、対外援助法が適用される云々ということ、これは先ほど来条約局長なり他の委員との間にやり取りをしていたのですけれども、援助法によって返すべき云々という規定は私はなかったと思います。申し上げておるのは、アメリカ自身の中でさえ、援助についても、あるいは見返り資金についても、アメリカに返ってくるかといえば、いや、今の法律では法的根拠はないし、ドイツの場合とは違うから、それは返らない、いわば日本から取り立てる必要がないのだ、こういう話があっている際に、それから向こうの話自身の中でさえ、終戦処理費といいますか、駐留軍の費用のほうが援助費よりも額が上だという話があっている際に、日本で返さなければならぬ法的な債務でないと言いながら、いや「債務と心得てきた」ということで返すというのは、それは国民感情として納得できないではないか、こういう質問をしているのです。
○国務大臣(小坂善太郎君) あれは、日本から取り立てることはできないものだというふうなことを言っているという話は、私はアメリカ側においてそういう話があるということは聞いておらないわけでございます。むしろ、この協定に署名を行ないました直後に、アメリカの有力な議員が、日本からそればかりしか取り立てないのかという趣旨のことを言った、非常にドイツに比して日本に有利過ぎるじゃないかという趣旨のことを言ったことは、新聞にも出ておりましたし、そういうことを言ったと聞いております。むしろ、私たちは、これは法律的に確定した債務でなかったということを前から言っているのでございますが、さればといって、全部ただということにする根拠は何もない。むしろ先ほど申し上げましたように、覚書に書かれておることを承知して、いつか支払い方法並びに金額の点については協議する、こういうことを言って受け取っております物資の決済は、いずれかの時期にせなければならぬ、こう考えておったわけでございます。しかも、先ほどから経過を御説明申し上げたとおりに、これは払うものだと、アメリカ側はそう思いまして日本にたびたび督促している。われわれは戦後十年を迎えるに際しまして、この機会に、そろそろ従来の債務にケリをつけるのが適当ではないかと、こう思うわけで、国民感情もこれを納得してくれている、支持してくれている、こういうふうに思うわけでございます。
○吉田法晴君 もう一ぺん条約局長に御答弁願いたいが、見返り資金からアメリカに返すということは、これは従来の法律のもとにおいてはこれはできぬのだ、それから東南アジアの各国に対しても、日本以外のところにもこれを振り向けるわけにはいかぬのだ、こういう点は従来のアメリカのとにかく制度なりあるいは法律の建前としてはそうであったという点は、これは先ほど答弁をいただいたのだけれども、これは間違いありませんか。
○政府委員(中川融君) 先ほど御答弁いたしましたのは、護和発効前と後で区別しなければならないと考えております、講和発効前は、御指摘のように、アメリカが承知しなければ使えないわけで、そのアメリカの方針としては、日本及び琉球だけに使うという方針をとっていたわけでございます。しかし、講和発効後は日本の金でございますから、日本の法律にきめるところに従って使うことができるのでありまして、現在は産業投資特別会計になっておるわけでございます。産業投資特別会計法の定めるところに従ってそれを使うことができる、そういう趣旨をお答えしたつもりでございます。
○吉田法晴君 国内的にはそうです。国内的にはそうですが、それじゃ、産業投資特別会計から返すというときに、その産業投資特別会計の中の金の大部分は何であるか、それは見返り資金。その見返り資金は援助の資金なり、あるいは物を売った金でできた代金。そうすると、その援助をするときに出た目的からいって、これをどういう金だと、こういう議論は必ず出るんじゃないかという話についてはどうですか。
○政府委員(中川融君) これはアメリカであまりそういう議論は出ないんじゃないか、と思いますのは、やはり見返り資金を作ったときはアメリカが日本を占領していたわけでありますから、見返り資金といういわば日本の金についても、アメリカがくちばしをいれて、これに対していわば一種の統制を行なっていたわけでありますが、日本が独立してから後は、そういうことの権利がないことは、これは当然アメリカの人はみなわかっておるわけですが、今日本がどこからこの金を出してこの返済をするかということ、これは全く日本の国内問題であって、そういうようなことは考えないと思います。と同時に、行った金は完全にアメリカのものでありまして、これも日本からくちばしをいれられる筋合いのものではないというのがアメリカの考え方であると思います。その後の使途については、日本の希望もあり、交換公文になっており、したがって、交換公文の内容についての是非の論議等は、あるいは議会等であるかもしれませんが、見返り資金からそもそも出た金で払っているから、その金の使い方について日本のために使えとかなんとか言うことは、そういう議論はもう出てこない。
○吉田法晴君 その点は、これはさっきからやっていて並行線のところですから、それは一応おきましょう。基本的に、アメリカでさえ、占領政策のときに使った金で、その見返り資金の中から日本から取り立てるべきじゃないという議論があるのに、こちらで債務と心得て相当のパーセンテージについて返す云々という点は、これは国民感情が許さぬ。証言の中に五%程度云々という点がありますが、ドイツに比べて割がいいじゃないか、あるいは三分の一程度という説明がありますけれども、その点についても、これは向こうでの発言その他を考えてみて、日本の何といいますか、債務と心得た心境と同じような卑屈な態度が出てる点がはっきり認められるという確認を申し上げるにとどめておきます。 もう一つは、産業投資特別会計の中から払ってゆくから、その大部分が見返り資金だから、いわば見返り資金の運用なり、利子の中から払えるから二重払いにならぬ、こういう答弁がなされておりますが、産業投資特別会計の中には、これは一般財政から相当出ておる、あの貿易特別会計のしりも入っておるし、それからバナナや何かの特別会計のあれもあるし、一般財源の中から入ってる金も、あるいはことし入れようという金もあって、総額からすると、これは計算上になりますけれども、一千億に近い金が出ていると考えるんですが、その点はこれはどういう工合いに説明をされますか。
○政府委員(宮川新一郎君) 御指摘のように、産投会計の資金は、見返り会計から引き継ぎましたものと、一般会計から引き継ぎましたものと、二つあるわけでございます。そのうち今回支払い代金に充てようといたしておりますのは、見返り会計から引き継ぎました開発銀行に対する出資金から出て参りまする配当収入と申しますか納付金と、開発銀行に対する貸付金の利子と、貸付金の回収金をもって、合計二千二百二億円をもって返済財源にいたそうというものでございまして、御指摘のように、たとえば見返り資金に積み立てました金は、貿特会計から三千六十五億という金が入っております。この中には、資金繰りとしては一般会計からの繰入金等もございますが、貿特会計から見返り資金に積み立てました金は、援助物資のドル価格に相当する円金額でございまして、国民の税金を直接見返資金特別会計の中に入れたものじゃございませんので、二重払いでないと、このように解釈いたしておる次第でございます。
○吉田法晴君 産投特別会計の中には、開発銀行その他の出資金も含めて一般財源からの出資金も入る、あるいは三十六年度、三十七年度と、一般会計なりあるいは特定物資納付金会計からの受け入れがあるが、いわばその分について、その分からは返済しないんだ、こういう答弁のようですけれども、それは会計全体として、産投会計は産投会計として三十六年度末で六千十四億、三十七年度で六千二百四十七億とあれば、これは六千余億円の金にそれぞれ札がついているわけではないんで、産投特別会計なら産投特別会計から返していくということには間違いはない。それは少し詭弁もはなはだしいんじゃありませんか。別々に分けてちゃんと、とにかくこれは一般財源からの、あるいは特別会計からの、特定物資納付金からの、これは見返り資金分からのと、ちゃんとしるしがつけて別々に入れてあるんですか。
○政府委員(宮川新一郎君) 御指摘のように、金に色はございませんが、全体の六千億の資産のうち、産投会計が見返り資金から引き継ぎました二千二百九十四億、これに六百二十五億という復金債の償還のための出資金をもとといたしまして支払いまするので、御指摘のように、金に色はございませんが、一般会計からの分で支払うということにはならぬわけであります。
○羽生三七君 関連して。事情によっては繰り上げ償還ということもあるんですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) それはなし得ることになっております。
○羽生三七君 いや、条約にはそうなっておるが、経済の事情……。
○国務大臣(小坂善太郎君) ただ、今のところさような考えは私どもは持っておりません。将来はまだわかりません。
○吉田法晴君 その産投特別会計からこの協定にありますような返済をしていきますと、産投特別会計自身に相当の穴があくといいますか、資金源が減るわけでありますが、そうすると、さっきの一般財源からの従来の追加といいますか、開銀その他を通じての一般財源の金も資本として入っていますが、将来にわたっても一般財源からの填補というものがこれは当然考えられるでしょう。そういう意味からいって、小坂外務大臣、その二重払いにならぬという点は、これは言いわけにしかすぎぬと思うんですが、どうですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私は、その二重払いそのものが実はあり得ないことだと思っておるのであります。ということは、国民に売り払った代金、これが政府のふところにあるのでございますので、そこで政府としてはアメリカに対して、いつかこれを支払うということを言っておるわけでございます。で、今回それを支払う額をきめて、これを債務と確定いたそうとしているわけでございます。これはまだ一度も払ってないのでございますから、二重払いということはアメリカとの間にあり得ない、こういう考えでおるわけであります。国内的には、国民に品物を売りながらその金を使わないで、さらにまた新たに税金の負担を課すると、こういうことであれば、これは二重払いという議論が国民と政府との関係で出るかもしれませんけれども、そういうことは、先ほどから御説明申し上げておるように、ない。今、開銀の納付金あるいは回収金の範囲で払える、こういうことになっておるから二重払いにはならない、こう申しておるのであります。
○吉田法晴君 産投特別会計それ自身に、見返り資金以外の一般財源からの填補もあり、それから将来にわたっても、産投特別会計への一般財源からの填補もあるという点は、これは必然的に予想しなければなりませんが、そうすると、その税金のうちから産投会計を通じて、あるいは産投会計のうちの運用というものを通じてかもしれませんけれども、そのうちにも税金が入っている。そうすると、二重払いはないのだ、見返り資金の運用だけで返していくのだという、この点はうそになりませんか、こういう点をお尋ねしておる。
○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほど大蔵省の宮川局長がお答えしておるように、対外援助物資特別会計法ですか、これの第三条に、見返り資金というものは、援助を受けた物資の代金を積み立てると、こういうふうに書いてあるわけであります。したがって、それだけの代金が積み立てられておるわけでありますが、金繰りといたしまして、当時、国民の経済力が非常に疲弊しておる戦後でございますから、まあかりに百ドルの品物を百ドルのまま国民に渡すということでは、国民の負担になることが大きい。そこでこれを八十ドルにして国民に渡し、あとの二十ドルは担税力のある国民の層から税金によって入った一般会計の資金を、その二十ドル分を援助物資特別会計法による見返り資金の積み立てに入れたと、こういうことでございますから、一般会計の分が五百八十六億円ですか、入っておるからといって、それで直ちに税金を二度使っておる、こういう議論にはならないと思うのです。百ドルのものを百ドルで国民に売って、そのほかにまた二十ドル分のものを税金で埋めたと、こういうことになりますれば、あるいは御立論のようなことになるかもわかりませんが、それは、事実そうしておらない。そういう事実がないのであります。 それから、将来の問題について仰せがございましたけれども、私どもは現在この金繰りで、開銀の納付金、回収金で払っていける、こういうことでございますから、将来、これを払うために一般会計からまた繰り入れると、こういうことにはいたしませんわけでございます。したがって、二重払いの議論は起こらない、こういうことであります。
○吉田法晴君 直接税金から払う云々ということがあるということを申し上げておるわけじゃないのですけれども、産投特別会計には見返り資金以外の、いわゆる一般財源からの金もあるし、これはひもがついておるわけではなし、それから将来にわたっては填補が予想されますが、そうすると、租税からの産投特別会計を通じての支払いというものが、間接的ではあるけれども、できるではないか、そういう意味で、二重払いではないという説明は、これはこじつけであり詭弁でしかないじゃないかということを申し上げておるわけですが、あとタイ特別円関係の質問もございますけれども、時間も五時近くになりましたから、きょうはこの程度にいたしたいと思いますが、以上の質問を通じて、平和条約を通じても、あるいはスキャッピン一八四四号等を通じても、債務であるとは考えておらない、その法律的な根拠というものはなかったという点が明確になりましたから、きょうの質問は、この程度で終わります。
○委員長(井上清一君) それでは、本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十一分散会