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40回国会参議院1962/04/24

外務委員会 第17号

発言数
107
登壇者
10
会派数
3
開催日
1962/04/24

会議録

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告申し上げます。昨日、田上松衛君が辞任され、その補欠として曽祢益君が選任されました。   —————————————

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定の締結について承認を認めるの件、以上衆議院送付の両件を便宜一括議題とし、引き続き質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 初めに総理大臣にお伺いします。池田総理は総理大臣になられてから三つの国会をやっておるわけですが参議院の外務委員会にはさっぱりおいでにならない。安保条約のあとに総理になられて、このときはとうとう出ない。昨年の暮の臨時国会にもおいでにならない。数日前初めて総理のお顔を当委員会で拝見したのですが、それは一体どういうことなのか。まあ簡単に言えば、参議院の軽視ということになるわけですが、もちろん、われわれも一理事として委員長にお願いをし、総理の御出席を再三求めておったのでありますが、とうとうおいでにならないのははなはだ遺憾だと思うのだが、その点についての釈明をひとつ聞きたい。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) どの委員会へ出てどの委員会に出ない、というふうな考えは持っておりません。私は党執行部、国会対策の方々の要求によりまして、努めて委員会には出る気持で進んでおります。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 努めて出るつもりでおられるけれども、二つの通常会と臨時会のどっちにもおいでにならない。これは非常にわれわれとしては不満であります。こういうことのないように、今後とも総理の間はぜひやっていただきたいと思います。  それから、今度のガリオア・エロア、タイ特別円、二つの協定を、総理が幹事長なりあるいは官房長官なりをして自然成立に追い込んだというようなことは、これは私はまずいので、やはり自由に衆議院段階でも論議させて、そしてしかる後参議院でまた論議をする、総理は出席をする、そういうふうにありたいものだと思うのですが、どうですか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 同感でございます。したがいまして、十分御審議願うようにいたしております。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 この自然成立という——大事な安保条約あるいはタイ特別円、こういうものが自然成立というワクをはめられるということは非常に私どもおもしろくない。単なる国会のかけ引き、あるいは憲法、国会法の技術的な利用ということが非常に多いと思うのですが、どんなふうに総理、総裁はお考になりますか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 御質問の点、ちょっとわかりにくいのでございますが、予算あるいは条約案の自然成立と申しますか、衆議院で議決されたのが三十日で成立するという、この憲法の規定についての御批判でございますか。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 私はどうも、国会のことは国会のことだと言いながら、総理大臣が、あるいは自民党の総裁である池田さんが、早く打ち切ってしまえというようなリードの仕方は間違いじゃないかということです。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 私は、早く打ち切ってしまえとか、自然成立をさせろというようなことを、一切言ったことはございません。これは衆議院におきましても相当長い間論議され、そして議決を経たような状況でございます。無理にやれというようなことは一切言ったことはございません。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 本日は時間がだいぶ限られているようで残念ですが、少しスピードをかけます。  私はタイの特別円協定についてお伺いするわけですが、どうもわけのわからない点においては、ベトナム賠償と双壁だろう。自民党の方も、私はそのように御理解のように見えまするが、そこで私のわからないのは、タイが本協定のもとの協定——三十年協定の第二条を初め誤解した。しかし、三十年の協定の調印のときの共同声明では満足であると言いながら、これを誤解し、政府の説明によると、昨年あたりから正解するに至った理由がどうもわからない。衆議院の審議においてはとうとうこの点が解明されないまま、依然なぞに終わっているのであります。このなぞを不問に付したままでは、ほんとうの国会の審議ができないと思うが、どうですか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) タイの特別円につきましては三十年の協定、またその後の経過につきまして、十分衆議院におきまして私は説明いたしたつもりでおります。なぞとおっしゃるのは、どういう点でございましょうか、御質問があればお答えいたします。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 総理は去る一月三十日の衆議院の予算委員会で、このように申しております。どうしてタイが誤解したか、そのもとがどうかということよりも、三十年協定に変更を加えたことの是非を国会で御審議願いたい。また小坂外務大臣は同日の予算委員会で、なぜさような誤解をしたかはわからない、しかし不明であるからといって、そのままにしておいては、日タイ関係はこれ以上よくならないので、大所高所——これは総理の言葉を拝借したと思うのですが——大所高所に立って今回の決断をしたということです。こういうふうになっております。お二人の答弁を聞いても、なぜということはあまり聞く必要はないじゃないか、いいか悪いか、お前たちがこの国会で審議して、悪かったら否決すればいい、よかったら通せばいいじゃないか、そのもとのタイ特別円協定にかわる協定、タイ特別円問題に関する日タイ間の協定のある規定にかわる協定、こういう問題が起きたのは、そもそもはこの誤解といいますか、この点から起こったので、この点がわからなければ、現協定にかわる協定の審議というものは意味がないと思うのでお伺いするわけです。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 三十年協定の二条の規定について、向こうは協定締結後数ヵ月にして、無償だ、われわれ無償でもらうのだと思っておりますと、こう言うわけです。そうして数年間かかって、日本政府は無償じゃないのだ、これは資本、労務を提供するということなので、その資本、労務は無償であるということはあの協定では出てこない、こういうことをわれわれ説明したわけです。向こうは、だんだん日本の説明で、それじゃ日本の言うことはわかりました「しかし、そういうことならば、自分らとしてはあの三十年協定について実行してもらっても困ると、こういうことを言い出したのであります。どういう点を向こうが誤解したかということにつきましては、私は向こうの考え方でございますから、間違った、なぜ間違ったのだ、間違ったのですと、こう言えば、これは仕方がないことではございますまいか。間違ったのが悪いと言っても、それまでじゃないかと思うのです。それは投資またはクレジットの形式で資本財、労務を提供する。その形式というところで間違ったのかもわかりません。向こうの間違ったそのもとはどういう理由だということは、とにかく間違ったと言うのですから、これを究明すると言ってもいたし方がない。ただ、われわれ察するに、投資またはクレジットの形式というので、無償ぐらいに考えたのじゃないかと想像するわけでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 この点はなかなかむずかしいデリケートな問題も含んでおるようですが、総理の今の答弁でも、その点がはっきりしない。わからないのはあたりまえだというようなことは、われわれとしては納得はとうていできません。そこで、総理や外務大臣の説明では、タイは自分のほうが間違ったのだ、自分のほうに落度があったのだと言っている、こういうふうに説明をしておられます。ところが、この新しい規定にかわる協定というものを見ますると、タイ側が間違っていたとか、あるいは落度があった、遺憾であるということはどこにも見当たらない。どこにもないのです。そうすると、何か日本のほうに落度があるのではないか。弱い立場はむしろ日本のほうにあるのではないかという疑惑が当然起こってくると思うのです。条文に書いてあれば、三才の子供でもわかることが、一向にわからないで、六年間ももたついておる。間違ったということは、どこで言ったか知りませんが、一向に書いてないとすると、そして改定をするのだとなれば、日本のほうがどうも歩が悪い。何か日本が間違ったのではないかという感じがしますが、どうですか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 歩のいい悪いという問題でなしに、三十年協定では、第二条で、資本財、労務を提供することに同意すると、こう二条によってきまる。それと、そのやり方につきましては、四条で両国が協議してきめようということになっておるのであります。その協議がととのわないのです。これをこのままやっておくということが両国のためになるか、あるいは東南アジアに対する日本の活躍が阻害されやしないか、こういうことを考えまして、私は協定を改めたのでございます。どっちが歩があるとかないとかいうのじゃなしに、両者協調して両国の親善、利益向上のためにやっていこうと、こういうことなんでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 しかし現協定は、これは二条と四条がなくなるだけで、現協定は残っておるのですから、どうしてこうなったかということは、当然新しい規定にかわる協定の中のどっかに書かなければならないのです。この新しい協定を見れば、「伝統的友好関係及び経済協力関係を強化」とありますが、こういううたい文句は、もとの協定、現在ある協定にも書いてあることで、ここにどうしても、なぜこうなったかという理由が当然書かれなければならない。これは議事録ではなく、やはり本文に記載さるべき内容のものだと思うし、どうしても入れたほうがはっきりするのだ、こう思うのですが、どうですか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 私は、両国が交渉の結果新しい協定を結んだとき、向こうが間違ったとかどうとかいうことを書くということはいかがなものかと思います。条約の書き方でございますから、条約局長から答弁させます。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) ただいま御指摘の点でございますが、今回交渉いたしますにあたって、先方が、三十年協定の解釈については、日本の言い分のほうがほんとうであって、自分らの言い分は間違っていた。しかしながら、タイの国民感情からして、何とか変えてくれないかと言った経緯につきましては、これは交渉の過程ではっきりしておるのでございます。しかしながら、それを新しい今度の協定に、前文なり、どことなりに書くということは、総理が言われましたように今度の協定によって、三十年協定をいわば自主的に改訂することによって、今後の日タイ関係を親善な基礎の上に置くということが一番大きなねらいでございますから、そういうねらいのあります際に、わざわざ自分のほうが間違っていたのだということをタイに書かすということは、これは、せっかくこの協定を作りながら、その趣旨を全く滅却することになるわけでございまして、したがいまして、これは外交のやり方として、そういうことを特に新しい協定に書かすということは適当でないと考えるわけでございまして、そういう事情から、今度の協定にはタイ側が間違った解釈をしていたんだということは書いてないのでございます。交渉の経緯でその点は明らかになっておるわけでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 関連。この三十年協定の場合に、その協定を結ぶについては、日本もタイ側も合意したのでしょう。日本の国会は批准したけれども、向こうでは解釈の違いが起こってきた。そこでこまかい技術的な点ならいいですが、この種の基本的な問題で一たび合意したものが、あとから事情変更で、解釈の違いということで御破算になるという前例はあるのですか。合意したのじゃないですか、そのとき。タイというような国が、いやしくもこの種の協定を結ぶについて、こういう基本的な問題について、何かごくさまつな技術的な問題と違い、根本的な問題について、あとから解釈の相違というようなことで、こういう条件の変更が起こっていいのかどうか、そういう前例はありますか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 三十年協定を結びました際には、まさしく羽生先生御指摘のとおり、日タイ双方ともこれに同意いたしまして、日本も国会の御承認を得ましてこれを承認いたしますと同時に、タイ側でも、正式に政府の通告をもって、これを承認の通告をしてきて、そこで発効したわけでございます。それでその後三ヵ月くらいで、タイ側は、いや、これは無償でもらったものと考えているということを言って参ったことは、先ほど総理の言われたとおりでございますが、この点につきましては、その後の交渉によって、最近に至りましては、タイ側の解釈は間違っていたということを認めてきたわけでございまして、したがいまして、今回の協定は、タイ側が誤解をしていたから、それに基づいて変えたというのではなくて、タイ側の解釈は、それを向こうは間違っていたと撤回したわけでございますが、タイの国民感情から見まして、何とかこれを無償にできるものなら切りかえてもらいたいと、いわば政治的な要請があったわけでございまして、それに対して日本側といたしましても、政治的な見地から、日タイ親善関係という大局的見地からこれに同意いたしまして、ここに今回の改訂になったのでございます。したがって、解釈が違っていたから、その解釈の違っていた事実に基、ついて、協定を改訂したというのではなくて、要するに、新しい見地に立ってこの協定を改訂したということになるわけでごいざます。一たんできました条約をその後改訂するということは、これは決して少ない……前例は幾らでもあるわけでございまして、いつか参議院の本会議におきまして、外務大臣からヴェルサイユ条約の賠償条項の例を出されましたが、これはアメリカといいますか、連合国——第一次大戦当時の連合国から見れば、要するにもらう分がそれだけ少なくなるように改訂をしたわけでございます。経済的にはいわば損失になる改訂をその後の情勢に応じていたしたわけでございます。そのほかにも、実際上いろいろな見地から協定改訂をするという例はあるのでございます。まあ、現に安保条約あたりもこのような改訂をしておるのでございますが、したがって、むしろ、そういう見地で改訂したわけでございますので、解釈の誤解、そういうことから改訂をした、こういうわけではないのでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 それは安保条約の改訂ということとは根本的に違いますよ。あれは双方合意の上で改訂をしたので、根本的に違う。そんな大所高所論で一たび合意して、一方の国が批准したこの種の協定なり条約を、大所高所論から再びこのように改訂をするという新しい道を今後開くことになるのではないですか。外交上の条約、協定の純技術的な問題で、ほんとうに見解の相違があって、そこで改訂が起こるということは、これは私もないとは言いませんが、大所高所から全部前の協定を御破算にして、新しいこういう形で結ぶということに今後新しい道を開くことになりませんか。大所高所論でどうでもできるということになりませんか。これは局長、あなたではまあいかぬわな、総理大臣にひとつ。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) これは、今回改訂いたしましたのは、条約局長の申し上げましたとおりでございます。この前の分が実行に至らない、そうしてまた向こうとしてもこれを何とか無償にしてもらいたい、そういう要求があれば常にやるというわけのものではございません。いろいろ事情を考えまして、そうしていろいろ新しい協定を、いわゆる前の分を変えるのがいいか悪いかという政治的判断によって私は決定すべきものである。今回やったからといって、将来こういうことをどんどんやるということは、これは絶対避くべきものである。そのときの政治情勢によって、私は改訂することは絶対に将来ないとは申しませんが、それは政治的に十分考慮しなければならない問題だと思います。

加藤シヅエ日本社会党

○加藤シヅエ君 ちょっと関連して。総理大臣にちょっとお伺いいたしますけれども、今、タイ国の国民感情ということを非常に考慮されましてこういうような処置をおとりになるということを伺っておるのでございますけれども、それでございましたら、ガリオアの返済の問題も日本の国民感情から参りましたら、今まで総理大臣並びに外務大臣からいろいろ、これは債務と心得る、その後債務となり、今度返済することになったということを御説明になっておりますけれども、やはり国民感情としては、これはもらったものだというようなふうに感情的に考えている人もたくさんあると思うのでございますね。そういう国民感情については、こちらはがまんせよ、それで、タイのほうの国民感情だけはよくお取り入れになるというようなことは、少し不思議ではないかと思うのでございますけれども、このガリ・タイを返済することに対する日本の国民感情というものに対しては、総理大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 私はこのガリオア・エロアの問題につきまして、もらったものだから返さなくてもいいのだというお考えの人もあるかもわかりません。しかし、私は全体の考えとして、日本がああいうような困ったときに援助を受けた。そして日本が払えるようになった。しかも、その額は三分の一余りだということになりますれば、日本の国民感情として、今となっては払うほうがすっきりしていいのだというのが国民感情だと考えております。

加藤シヅエ日本社会党

○加藤シヅエ君 そうでございましたら、私はむしろ池田総理大臣の大先輩でいらっしゃる吉田元総理大臣がおっしゃいますように、日本は払えるような立場になっているのだから、日本国の名誉として払うというような建前をおとりになったほうが、日本の国民感情としてはすっきりするのではないか。それを債務であるというようなことをだんだんだんだん御説明なさるということは、どうも国民感情の面から言えば、すっきりしないのではないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 吉田さんだって債務ではないとは言っておられません。債務だと言っておられる。そして、債務だから、いつ払うかということについてはこうやって払う。これが日本人の、とにかく恩を返すことになるのだという、両方を言っておられますので、われわれも債務——法律的のことにつきましては今説明しましたが、これを払いまして、実はすっきりした気持になっている。私だって、昭和二十八年の池田・ロバートソン会談のときに、直ちに交渉を始めようというときに、直ちにはいかない、将来交渉を始めようということで、しかし伏せて帰った。そのときには、私はまだすぐ払う気持はございません。しかし、今回内閣を引き受けまして、この状態ならば、われわれは恩を恩として返すということが実行できるということになりました。そして、債務と心得ておったし、両方の意味でやった。吉田さんだって私と同じお気持だと、私は思います。

加藤シヅエ日本社会党

○加藤シヅエ君 まだ申し上げたいことはございますが、森委員の時間を取るといけませんから、この辺で御遠慮いたします。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 日本の国民感情という問題に触れられたが、速記録をさっと見たところで、総理大臣が日本のためと言うのは一ヵ所ぐらいあったかと思うので、あとはタイの国民感情の御説明だけがあったようです。この点は別として、どうも相手国がどう出るかということについて、割合に甘い認識が外務省あるいは政府にあると思う。タイの場合でもそうである。そこで、フィリピンに関してちょっと承りたいのですが、昨年の十月三十日、私はこの委員会でフィリピンの総選挙があるが、一体勝つのか勝たないのか、ナショナリスタ党のガルシア大統領が当選できるのかどうか、もしフィリピンの議会において、来年の選挙の結果にもよるけれども、もし負けるようなことがあったならば、この日比通商航海条約は宙に浮いてしまうと思うが、そういう点について考えを深くされたことがあるかと言いましたら、そのとき小坂外務大臣はそこにおられて、政府側の説明員が大胆なる御答弁をしております。「ガルシア大統領閣下の率いられるナショナリスタ党というものがまた勝つのではないかという見通しでございまして、」と、非常にたいした選挙通が日本におりまして、ひとの国の選挙をちゃんと見きわめているのですね。それから、「われわれが収集いたしました情報によりますと、選挙の結果も、」、上院議員二十四の議席の中で、「その十六は動かないということでございます」、これもたいしたものであります。ところが、やった結果は負けてしまった。マカパガル大統領が出てしまった。上院の議席もおかしく変わってしまった。一体日比通商航海条約はどこに行くのか、宙に浮いているのか、もぐったのか。こういう見通しについて、ひとつ総理あるいは外務大臣から御答弁いただきたい。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 日比通商航海条約につきましては、この条約を作るについて双方から全権団が出たわけであります。フィリピン側の全権団は、当時の与党のナショナリスタ党の人もおりましたが、野党であった自由党の人もおったわけでございます。双方の意見を代表しておる。こういうことで、いわば超党派的な基礎の上に作られた、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。その後マカパガル氏が大統領になられまして、当時副大統領であったわけですが、自分としてはその問題についてことごとく知っておらない、知悉しておらない、したがって、それについてよく検討してみたい、研究してみたい、こういうお話でございますが、検討されました結果どういうふうになりますか、おそらく今申したような代表団の構成からいたしまして、この条約の妥当性ということについては十分御理解が得られることだと期待をいたしておるわけでございますが、現在フィリピンのほうの上院では、御承知のとおり、与野党が非常に接近して同数になっているわけで、そんな関係もございまして、われわれのほうとしては、適当なるフィリピン側の考えがきまるのを待っておる、こういう状況であります。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 日比通商航海条約がどうなるかということはまた別の機会に譲りまするが、どうもひとの国の計算がさっぱりなってない一つのりっぱな例だと思うのです。  そこで総理大臣に伺いますが、総理は数字には強いと——近ごろあまり数字も強さがなくなってきたようですが、外交は弱いというので、どこかでその転機をかけてやろうというので、タイに行ったときに、サリット首相と会って、この一発でこの現協定の改訂を断行してしまった。小坂さんのほうの事務当局は、別な方針で交渉態度をきめて現地でも交渉していたと思うのですが、その間の事情を総理から伺いたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) この特別円の問題につきましては、私の関与しましたのは、昭和三十一年暮れから三十二年の石橋内閣のときに、大蔵大臣として向こうの代表者とも話し合いをしたことがあるのであります。そうして三十五年組閣いたしましてから、やはりこの問題は随時出て参っておる。昨年の一、二月ごろからいよいよ交渉に入りまして、向こうは九十六億一度に払え、こちらは一度に払うなら減額すると、こういうので、いろいろ交渉を去年の春ごろからずっとやってきておったわけです。そうして、この問題につきましては、関係各省で十分話し合いをし、これに対して大江大使が中に入って、向こうと交渉していたのでありまして、私が向こうに行きましてから急にどうこうというあれではないのであります。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 あのときは、十一月の二十七日に第一回サリット会談、それからラングーンに来られた小坂外務大臣を呼んで会うところを、二十八日第二回に、小坂外務大臣の来着を待たないでやってしまったという、そのせき込んだところは、どういうところにあったのか。これは小坂外務大臣に伺いたいのは、大臣の心境は複雑だったと思うのだが、ああいうふうな支払い方になるとは思っておられなかったのじゃないかと思うので、外相の心境をひとつ伺いたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 小坂君は、ビルマで私と会う前に、もうすでにタイに行って交渉を始めておるので、そのことも私はもうビルマで聞いて知っておるわけで、そうして、もうビルマで小坂君とも十分打ち合わせをして行っております。小坂君もあのときに交渉に入る予定だったのですが、ビルマが、もう一日残って賠償のほうの交渉をしたいと言うので、小坂君は残ったのですが、小坂君と私との間に意見の相違とかなんとかいうことは、私はなかったと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 今総理大臣からお話しございましたとおりでございまして、何ら私もこれと違う感想を持っておるものじゃございません。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 とにかく百歩を譲っても、条約尊重の立場をとっての改訂というようなものはとれなかったものかどうか、総理に伺います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 先ほど申し上げましたように、この特別円問題は、五、六年間交渉し、考え抜いたことなんでございます。しかも、私も、せっかく行く場合におきまして、いろいろ考えたなにで、できれば早くまとめたほうが両国のためにいいと、こういう考えで交渉に当たったわけでございます。いろいろ交渉の経過におきまして、これならば日本としても将来のことを考えて妥当なものだと、こう結論を出した次第でございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 そこで、総理大臣は、大体このくらいで、賠償その他日本の対外支払いに関する大きなものはもう済むものと考えるということを、衆議院の本会議で答弁されているようですが、そのとおりですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 賠償とは違いますが、ガリオア・エロアも済みまして、そうして懸案の特別円もこれで相済みます。今残っているものはあまりございません。ビルマとの再検討条項で今折衝しておりますが、大きいものといっては、その程度のものでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 イタリア関係に四つ、五つあるように聞いておるのですが、その点は、これはイタリアに払わなければならない問題が四つ、五つあると思うのです。イタリアは、昭和二十七年四月の日本との外交再開にあたって、商業勘定の四つ、五つをあげているはずであります。そうして向こうはこれを解決する約束を取りつけたかったけれども、日本のほうでは、とてもそんなものはできないということで、約束はできないままになってきておるようであるけれども、債務性は否認してないというように聞いておりまするが、どうでありますか。

木本三郎外務省欧亜局西欧課長

○説明員(木本三郎君) 仰せのとおりでございまして、この件につきましては、イタリア側から二、三の件につきまして提起がございましたけれども、日本側のほうでは、これは支払うことができないということで、立ち消えになっておる状態であります。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 立ち消えというのは一体どういうことなんですか、立ち消えというのは。

木本三郎外務省欧亜局西欧課長

○説明員(木本三郎君) これはよくあることでございまして、(笑声)クレームの提起がございますと、両方やり合うわけでございます。向こうは向こうで主張する、こちらはこちらで主張する、しかし、自然に向こうのほうで言わなくなってしまうということでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 その件名を言ってもらいたいと思うのだが、イタリア外交官の受けた損害というのは、これは三万ドルくらいで話がついたというようなことは聞いておるのだが、その件名を言って下さい。

木本三郎外務省欧亜局西欧課長

○説明員(木本三郎君) 外交官関係のクレームのほかに、船舶関係、それからイタリア側で日本において買い付けておりましたお茶の件、それから、上海のイタリア船会社で金塊及び米ドルを持っておったものが日本海軍のために没収されたということ、そのほかに個々のイタリア人で戦時中に日本側によって財産を没収されたとか、あるいは船舶関係で損害を受けたとか、そういうものがございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 立ち消えたと言うけれども、私は立ち消えではないと思うので、約束はできなかったけれども、日本の立場は弱いと思うのですが、外務大臣どうですか。いつか向こうから催促を受けて、また話が再燃して請求されるかもしらない、こういうような状況にあると判断するが、どうですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 木本西欧課長が申しましたように、当方の主張について、先方はこれを直ちに反駁しないで、そのままに立ち消えたというわけでございますから、これはそのままになるということかと私は思っております。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 それは、金額にしてど  のくらいになりますか。

木本三郎外務省欧亜局西欧課長

○説明員(木本三郎君) 個々の、一件々々の金額について、この件は幾ら、この件は幾らというところまで、イタリア側で私どもにはっきり言って来たものはございません。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 もっとはっきり、時間がないのだから。大体このくらいという額ぐらいは参るでしょう。隠しているから、そうやって声を出さないのじゃないか。声出しなさい、これはもう表に出ちゃったのだから。

木本三郎外務省欧亜局西欧課長

○説明員(木本三郎君) 隠しているわけではございません。この件が立ち消えになります場合には、個々の実際の金額を、クレームの交渉をいたしますときには、実際に個々のケースについて入る前に、その根拠について争うわけであります。したがいまして、その実際の数字を提示して来るというところまでは入らなかったわけです。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 それから、イタリアで、戦時中日本の陸海軍武官府が戦時物資の調達に当たった金額は相当莫大なものだと聞いておりますが、その点はどうですか。

木本三郎外務省欧亜局西欧課長

○説明員(木本三郎君) これは正金関係のものでございまして、その分は政府とは関係なく、旧正金閉鎖機関の問題として解決したわけでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 ドイツ関係に何かこの際言うことはないかと思うのですが、私はなかなか忙しいので十二分の勉強ができておらないのだが、何かドイツが——ドイツの船舶だと思うのですが、ドイツが日本に何か請求権を持っているらしい。これは戦前であるのか、その間のことはあなたから説明を伺いたいのだが、そのドイツの対日請求権を、アメリカやイギリス、フランス、この三国が一緒になって、イギリスがその代表として、ドイツの権利を代位して日本に支払いを督促をしているという案件がありますか。

木本三郎外務省欧亜局西欧課長

○説明員(木本三郎君) ドイツの請求権につきましては、平和条約第十九条によりまして、相互放棄ということは原則になっております。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 そういう事件はありませんか。戦時中あるいは戦前のそういう問題は、商船三隻ぐらいのもの、価格にして向こうの要求額が百億というものを要求して来て、これを立ち消えだというのかもしれませんが、これは立ち消えていない、相手はイギリスですから、ちゃっかりしているから。こういう事件は知りませんか。

木本三郎外務省欧亜局西欧課長

○説明員(木本三郎君) お話しの件は、おそらく日本にありましたドイツの在外財産といたしまして、英米仏がこれを没収と申しますか、没収いたしまして、ドイツに対する英米仏、その他連合軍のクレームに対する引き当てとして取り上げた、そういうことではないかと思います。日本とドイツとの間のクレームの問題は、十九条によりまして相互放棄という格好になっておりますから、問題はないわけであります。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 速記をつけて。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 それでは一問を長くやります。(笑声)  この件は、ドイツはまだ平和条約ができていないので、この十九条C頃というものを、関連して今のような議論において援用するのは時期が早いと私は思うのですが、時間に迫られておりますから、これは次回に譲りますが、だいぶ支払いが、向こうが要求すれば取られそうなものがたくさんあるわけでありまして、総理が言うように、もうこれで済んだなどと思ったら大間違いなんです。一体戦後の処理というものは、昔からですよ、総理大臣、昔から次の戦争までかかると言われている。おっかないことです。なかなかかかる。今の外交は戦後処理外交と言ってもいいんで、これは長くかかるので、まだまだ取られますから、これで済んだと言うのは私は間違いだと思うのです。  そこで、最後の一問になるわけですが、一体取るもののほうはどうか。支払うものは、何かあればどんどん払う。しかし、取るもののほうは、たとえば焦げつき債権でも、韓国とインドネシア合わせて一億ドルまだ残っている。一文も取れない。一国々々聞くのもたいへんだから、ところで、イギリスのクリスマス島での水爆実験、日本では五千万円か何か要求したはずだが、これは取っていないのでしょう。取るものは一銭も取っていない。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) いわゆるオープン・アカウントの関係での焦げつき債権、これはアルゼンチン、ブラジルのほうにつきましては、債権者会議を開きまして、そして整備に入っております。ブラジル、アルゼンチン、これは予定どおりにずっと債権が入っております。一昨年から昨年にかけてのパリ会議の結果、一部延期したのもありますけれども、大体において予定どおりにいっておると言い得るのであります。韓国のほうにつきましても、オープン・アカウントをやめることにいたしまして、そうして今後の貿易は現金払いということで、だんだん終戦後におけるあのオープン勘定というものは徐々にやめていって整理を続けて、順調にいっておると思います。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 クリスマス島の答弁、三十二年から始まった。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 一番最初のビキニの原爆につきましては、御承知のように、アメリカに交渉いたしまして、ある程度双方の満足する解決を得られたわけでございますが、その後アメリカのいたしました第二回あるいは第三回の太平洋における原爆につきましては、日本としてはこの損害についての権利を留保し、その後船舶の迂回等に基づく損害を計算いたしまして、たしか第二回の分は先方に提出したと思いますが、これはアメリカとの間に話し合いがつかないまま、実はそのままになっておるわけでございます。なお、アメリカといたしましては、この太平洋上における原爆実験が国際法上合法であるか、あるいは合法でないかという、そういう法律問題については、日本と意見が必ずしも合致していないのでございまして、したがって、アメリカとしては損害補償の責任なしという立場をいわばとっておるわけでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 イギリスのクリスマス島の五千万円は。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) イギリスにおけるクリスマス島の第一次実験、三十二年に行なわれましたクリスマス島の実験につきましても、やはり五千万円ほどの補償要求——これもやはり先ほど申しました船の迂回等に基づく損害でございますが、算定して出しておりますが、これもイギリスとしては、やはり実験の合法か違法であるかということについて日本の見解と合致しておりません関係上、解決を見ていないわけでございます。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 初め委員長に伺うのですけれども、総理は大体何時ぐらいまでおいででございましょうか。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 前から総理にお願いを申し上げておりますのは、十二時五分まで要求しております。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 私、それじゃ困るのですけれども、むろん委員会の議事進行に御協力はしたいと思いますけれども、客観的に見て、片方は四十五分、片方は二十分、そんな取り扱いは私は了承できません。ですから、私は三十分とか四十分とか、リーズナブルな時間なら御協力はしますけれども、二十分以内というなら、次の会議のトップに総理に対する質問を留保いたしまして、進めたいと思います。そこは適宜御判断願いたいと思います。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 十七分までいらして、三十分お願いいたします。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 最初に一点だけ、議題外のことに触れるので、お許し願いたいのですけれども、非常に差し迫った重要な問題ですから、ぜひ総理のお考えを伺いたいと思います。  それはジュネーヴの軍縮会議が非常に決裂に近いような段階になっておるわけであります。言うまでもなく、アメリカは、そういう場合には、四月末にはいよいよ中部太平洋におけるいわゆる大気圏内の核実験をどうしてもやるということを言っているわけです。しかも、ジュネーヴにおいては、先般中立国の一種の妥協案がございまして、幸いにして米ソ両国がそれを一応討議の基礎にすることに賛成はしておりますけれども、まだこれの解釈等をめぐって非常にむずかしいと思います。で、ソ連のほうは昨日から最高会議を開いて、また二十七日にはマクミランがケネディをたずねる。いよいよ何とか中立国案等を中心にして核実験を一応引き延ばすといいますか、アメリカの核実験をやめさせて、とりあえず、核実験禁止に関する国際査察等を伴った協定ができるのかできないのかという、今や、せとぎわに来ていると思うのです。そうなりますと、ただ便々として待っているわけじゃないと思いますけれども、アメリカに対して実験をやめろ、こういう抗議の申し入れをしてみるだけでは曲がないわけです。ここで非常な手段をとって、たとえば総理みずからがワシントンに乗り込む、少しとっぴなような感じがしますけれども、そのぐらいのひとつ手を考える必要があるんじゃないか。あるいはジュネーヴにも、会議のメンバーではないが、使いを出す、あるいは逆にソ連にも使いを出すというぐらいの、外交でどういうことをやっておられるかわれわれはよく知りませんが、国民にもこたえるような、せっぱ詰まった一つの思い切った手段を講ずべきではないか、いたずらに二、三日あるいは四、五日をそのままに済ますことは許されないのではないか、こう考えまするが、総理の所信と並びに当面の措置を伺いたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) お気持は私には十分理解できます。私としてとるべき方法はとっておるつもりでございます。今どういう方法をとっているかということは申し上げかねますけれども、自分といたしましては、日本の在外公館員によりまして、できるだけの方法をとっておるのです。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 まあ方法のことですから、むろん内閣のおやりになることですから、こまかいことを指図するわけじゃありません。しかし、通常の外交チャンネルを通じてやるぐらいの手段では足りないのではないかというのが、私の質問のポイントです。したがって、これ以上は申し上げません、が後世に、あらゆる手を打った、悔いはなかったと言うだけのことをひとつやられることを、単なる通常の外交チャンネルからの措置でないぐらいな非常手段をとられるということを強く要求しておきます。  ガリオア・エロアとタイ特別円問題について重要な点だけを短い時間で伺いたいと思います。  まず、ガリオア・エロアなんですけれども、国民の疑惑といいますか、疑問といいますか、一つは援助の性質そのものにかかっている問題だと思うのです。それで援助の性質についてやはりこの際きわめて明確にしておかなきゃならないのは、これが無償であるという議論ですね。その無償の議論にはいろいろございましょう。あるいはヘーグの陸戦法規を引っぱってくる人もいるだろうし、国会の感謝決議、いろいろありましょうけれども、まず、この無償であるという議論と、無償でないという議論とあるわけです。そしてその無償でないと言うのなら、はっきりした債権債務のものなのか。大体むろん関連はありますよ、うらはらみたいな問題ですけれども、三つの議論がからまり合って、そして援助の性質が明確になっていない。これが私は一番の論点だと思う。そのほかにも、計算の基礎が明らかでないとか、いろいろございますけれども、根本は、援助の性質が何であるか、そこでこの点について総理は無償ということは間違いであるとはっきりおっしゃるのかどうか、この点を、まず伺いたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) これは、全体として私は無償ではないということでございます。ただ、結果として、また途中において、無償のものもありました。しかし、根本は、昭和二十一年の七月の覚書によりましておわかりいただけるように、この援助というものは、援助の支払い条件、計算は追って定める、この原則がございますので、私は全体として無償ではないと考えております。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 おっしゃることは、たとえば国会で放出物資に対する感謝の決議があったから、だから無償であるというような議論、あるいはヘーグの陸戦法規の四十三条等を引っぱってきて、占領者の当然の義務であるから、すなわち無償であるべきだという議論等は、これは認められない。しかも、アメリカ側の記録から言えば、あるいはアメリカから日本に、占領中であったけれども、渡した記録もあるでしょうし、とにかくこの問題について、あとで支払いをきめるというようなことが、はっきり初めから記録が残っているので、むしろ無償ではない。それから先がどうなるかは別として、全体として無償なりという議論は成り立たない、あとで支払いをきめるのだから、それは完全の債務になるかどうかは別として、何といいますか、無償ではないというほうの証拠のほうがまずはっきりしている、これをあなたは言われますか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) そうです。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 それでは、無償でないならば、普通の場合には、これは当然に有償である。有償であるならば、いわゆる普通の債権債務として、はっきり債権債務として、援助を与えられた当時から成立したものと考えられるのか、これも非常に重要な点だと思う。その点はどうですか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 一般の通念の債権債務といっても、占領治下でございますので、そういう系列に入らないかもわかりませんが、全然無償だという結論は出ない、しかも無償じゃないのだ、それなら普通の債権債務かと言ったら、そこまではいっておりません。普通の債権債務なら、国に関係がございますから、憲法上の手続をとらなければならない。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 そうすると、総理の見解、すなわち政府の見解は、無償の議論は成り立たない、無償でないという証拠はある、かといって、それは通常の債権債務ではない。いわば無償と有償の中間的なものというか、これをどう法的に説明するかは、いろいろ議論がございましょうけれども、一種の道義的な責任といいますか、何らかの、ある種の債務性というものがあったのだと、初めから、こういうお考えですか。

林修三法制局長官

○政府委員(林修三君) 結局もとになりますのは、占領当時にいろいろ司令部から覚書を受けておるわけでございます。その中心になりますのは、二十一年のスキャッピンの一八四四でございます。これだと思います。これはさっき総理からもお答えがありましたとおりに、支払いの条件及び計算は追ってきめるということが書いてある。結局、これの解釈問題になると思うわけでございます。この文言からいっても、これは無償だということには、どうしてもなりません。結局は向こうがきめたところによって払わなければいけないだろうという問題があるわけです。まあそういう意味においては債務性はある。しかし、それが確定的な債務でないということは、この文言からはっきりしております。それから、何らかの客観的要件で債務の金額がきまってくるような不確定債務でないこともはっきりしております。要するに、それを日本にくれた当事者、援助を出した当事者の意思によってきまると、そういう非常に特殊なケースです。そういうところから、これを、はっきりした確定されておる債務と言うわけには参りません。債務性が強い。単なる道義的債務は越えております。道義的債務と言うのに——道義的債務と言いますと、払っても払わなくてもいいのだという、債務者の側からいっても、払うも払わないも自由だという意味にとられますが、そういうものではやはりないのだ、要するに、向こうがこれだけと言えば、あの占領当時における状況では、日本は払わなくちゃいけない、そういう事情だったと、かように考えるわけであります。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 関連して、阿波丸事件の解決の際の了解事項というものは、これはどういうふうに解釈するのですか。つまり、はっきりとこれは債務を認めたことになるのですか。

林修三法制局長官

○政府委員(林修三君) これは私どものこの協定の了解事項の解釈としましては、何回も今までも国会で外務当局も答弁いたしておると思いますが、要するに、あすこの文言どおりでございまして、要するに、アメリカとしては一つの有効な債権である、しかもアメリカだけの意思によって減額し得るものである。そういう趣旨であることが了解されたということでございます。了解事項で、日本としてもそういう性質のものであろうということを了解した、文字どおり了解したと、そういうふうに考えておるわけでございます。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 これもはっきりした債権債務の性質を認めたという国際法上の効果があるわけじゃないけれども、アメリカのほうからは、これはアメリカが、あれをやめない限りは債権は持っているのだという建前をとっている、こういうことは一応了承した、こういうことですか。

林修三法制局長官

○政府委員(林修三君) あの当時に、国会において当時の吉田総理が衆参両院において阿波丸協定について報告をされております。あの文言を見ますと、要するに、あの了解事項は、今までのそういった事実をはっきりさせたにすぎない。つまりガリオア・エロア等について、一部で、これは債務じゃないというようなことを言う者があるから、そういうものではないのだ、債務性を持っているのだという従来からの事実をはっきりさせたものだ、そういうことを報告しておられます。あるいは答弁をしております。そういうことだと考えておったのであります。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 これはむろん中心となる議論ですけれど、非常に政治的見解が必要なんで、もう一ぺん総理に伺いますが、阿波丸事件の、一種の占領中のああいう協定あるいは了解事項が、憲法上有効であるかどうか、いろいろ疑問はあると思うのです。最終的には、これは平和条約の問題になるのじゃないかと思うのです。いずれにしても、ああいう文句があったけれども、少なくとも債権債務としてはっきり認めたものじゃない。政府の言われる債務性を認めたということですね。全額が債務になるわけでもないだろうし、部分的の解決の支払いもあるだろうし、いろいろなことを含めて債務性を認めるものの根拠にはなるけれども、これを通観して、この援助の性質は、ガリオアとエロアでも違うでしょうけれども、全体を通観して言うならば、これは無償ではない、しかし、債権債務の成立ではない、そういう特殊の一種の債務性のあるものである、こういうように考えて今まで政府はこられたと思うのですが、池田総理もそういう考えでおられるのか、これを伺いたいのです。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 先ほど申し上げましたように、昭和二十一年の七月に、この援助に対しての支払い条件及び計算は追ってきめる、これの思想と私は大体似ているので、これは有効な債務なんだ。しかし、アメリカ政府のみ減額し得るということを了解する、こういうことになっておるのです。これは法律的の債務がここでできたのだと言うのはいかがなものか、私はやはり「債務と心得る」という今までの政府のあの気持で、将来これは債務として減額せられる性質のものだ、債務であるけれども減額される性質のものだ、いずれはこれは正常な形での債権債務を確定する前提にない確認だ、了解事項だと、こう考えております。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 私は、途中までは政府の考えに同意できる点があると思うのです。本件は無償だと言うのは、これは私は成り立たない。全部が無償とは言えない。しかし、これが債権債務でないと言うことは、これは政府の御答弁を伺っておりますというと、債権債務というと、少なくも新憲法施行後では、それだったら、すぐ国会の議決を求めないで債権債務とは何か、これをおそれて、実際は債務負担くらいに心得ておったけれども、「債務と心得る」と言って逃げておられたのです。相当まあ債務性があったことは、これは事実認めなければならない。ただ、その場合に、これを解決するにあたって、今総理の言葉の最後のほうの、だから債務性があったから、いずれは債権債務としてはっきりしてやらなければならぬ、こうお考えになるのか。先ほどの加藤委員の言葉を拝借するわけじゃございませんが日本人の名誉の問題だから、かりに無償であっても、苦しいときに無償で援助してもらったのに、こちらが出世したときに黙っていていいということは、日本人のプライドが許さない。だから、無償であっても、何かひとつ返したい。いわんや、これは無償だということが成り立たない以上、それはむしろこれは一種の債務性を認めて、将来いわゆる出世したら出世払いをするということは、私は妥当だと思う。ただ、その場合に、出世払いをする方法が、もう一ぺんさかのぼって、債権債務でございます、むろん金額は本件の内容から見て差し引くでしょうけれども、そういう形で過去の援助は債権債務であるとがちんときめて、アメリカにお返しする。しかし、アメリカにお返しはするけれども、アメリカの使い方について、後進国援助、あるいは特に東南アジア援助等に回してほしいというような、ややこしいことをやらずに、これも出世払いの一つのアイディアからいけば、まあアメリカに債権ありとするならば、その債権は放棄してもらう、日本は債権を放棄してもらったら、そのまま済ますというのじゃなくて、日本より恵まれざるいわゆる後進国の援助に、アメリカの好意によって、アメリカの債権放棄に対応して、これを日本から援助資金として出す。その金額及び使途等については、むしろ日米両国間の話し合いによって、要するに、委員会等を作ってやる。例は悪いかもしれませんが、かっての団匪賠償金の、この使途に関してアメリカと中国側が合同委員会を作ってやったようなやり方もあろうと思うので、そういうようなアイディアでやるのがいいんではないか。これはしかし、むろん議論になることですが、私どもはそういう議論を持っておった。政府としては、当然に債権債務である、いつかは債権債務として確定して払おう、一応の政府の考えとしはわからぬではありません。いかにも昔の古傷を問題にして、そしてきちんとした債権債務をアメリカに返す、これは日本人の感情に合わないし、日米両国の良好な関係から言ってもマイナスじゃないか、こう思うのですが、いつの間にか債権債務として確定して、それを払おう、ただしまあドイツ方式があるから、三分の一に負けてもらおうというように考えていかれたのは残念だ。昨年の四月、小坂外務大臣が、本件の妥結に至る最後の交渉される前に、民社党のほうでは、少なくとも、先ほど申し上げたような出世払いの形式としてアメリカに返さずに、いわゆる三角決済的な形でやったらどうかということを申し上げたのが一顧も顧みられないで、そしてアメリカとの債権債務を確定した、いわゆるドイツ方式でいかれちゃった。何ゆえにそのドイツ方式にいったのか、従来、池田内閣の成立前から、池田さんは池田・ロバートソン会談の経緯もあって、本件に関して熟知されておる。熟知されているがゆえに、かえって池田・ロバートソン会談、あるいは重光・ダレス会談等々の過去の経緯があって、今さら抜き差しならないので、それで債権債務として、まあ約三分の一でお返ししましようということにしてしまった。そこに何ら政治性がない。もっとそれをゆるやかに考えて、そして私が申し上げたような方式をなぜ考える余地がなかったか。従来の、過去の交渉の経過の積み上げなるがゆえに、そういう余地がなかったのか。それとも、私どもの考えがあまりしろうとくさくて甘っちょろいというのか。その点に関する総理の政治的判断をひとつ聞かしてもらいたい。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) アメリカ側としては、債権を放棄するという気持は全然ございませんでした、初めから。で、お話しのようにいけば、これは非常に日本としてはいいことでございます。債権を放棄してもらい、そして日本がアメリカと相談して、日本の発意でやるということは、非常にいいことでございます。しかし、これはアメリカ側として、そういうような考え方は受け入れる様子も何もありません。初めから、ございません。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 まあ、交渉の当事者ではないから、どうにもしようがありませんけれども、にべもなく言われれば。アメリカ側としては、債権を放棄するということは通常はない。通常はなかなかないということはわかりますけれども、しかし、われわれは真に日米間のよき関係を考えるなら、あえて債権は放棄する、しかし、こういうようにするというようなことをなぜやれなかったのかということを、その点は非常に残念に思うのですが、これに関連して、ドイツの形式というものは、非常に本件をきめるにあたってほとんど絶対的な条件になっておったのですかどうですか。これは総理の最初のロバートソン会談のときには、まだ、たしかあれはドイツの前だったと思いますが、どうですか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) ドイツがきまってからあとでございます。ドイツは昭和二十七年か八年の初めだったと思います。私がロバートソン会談をしたのは、二十八年の十月でございます。ドイツはもうきまっておりました。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 そういたしますと、初めからドイツ方式でやるというような話だったわけですね、池田・ロバートソン会談のときには。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 大体そういう方向でございました。ただ、私はドイツと違うのは、この日本が払った金を東南アジア低開発国に使うようにしてくれということは、常に言っておったわけであります。で、これは私が総理になる前から、通産大臣のときから、アメリカの要路の人と会うたびに、このことを私的にはずっと言っておりました。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 これはもう意見の相違だから、これ以上あれしても並行線になりますけれども、そこで、一応政府のやったような方法でいけば、実質的に私の言っておるような点とどう近づくかということを検討してみたいと思うのですが、なるほど、この協定によれば、適当な立法措置によって返還金の大部分がいわゆる後進国に対するアメリカのプログラムに使われるようにしよう、こういうことを言っておるのですが、この問題について、これはあとで資料を出していただきますけれども、こまかいことは別として、今アメリカのほうでそういう立法措置に入ったようですが、その見通しはどうなのですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 一九六二年の対外援助法によって六一八条というところで、日本からの返還金はこれを低開発国に充てるという条項があるわけでございます。これは大体そのとおりで通るのではないかというふうに、私ども期待をいたしております。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 それは、何と言いますか、返還金の全額じゃないでしょう。あれとの関係はどうなっておりますか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 返還金の中で二千五百万ドルはこちらに円で積み立てるわけでございます。その他のものは大部分そうなるのではないかというふうに考えておりますが、この対外援助法の六一八条というのは、進歩のための同盟のためにあった条項だそうでございますが、それが日本からのガリオアの返還金ということに当てられましたので、日本からの返還金もそう多額のわけではございませんから、こういうところに書く以上は、おそらく大部分は使われるだろうと思っておるわけでございます。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 今のとこは推計ですね。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) そうです。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 これはあとで資料を出していただきますが、日本の気持としては、主として東南アジア、主として低開発国と言っても東南アジアということだと思うのですが、ところが、協定によると、東アジアについて相談しよう、随時と、こういうことになる。東アジアと東南アジアでは大違いで、東アジアになると、むろん韓国、台湾なんかが入ってくると思うのですね。それからもう一つは、そっちはただ相談しようというので、アメリカのほうから低開発国に回すというのには、進歩のための同盟も含めて、むしろ中南米に回ってしまうかもしれない。そこら辺の問題も、ほんとうの政府の腹とアメリカのやることとが相当私は違うのではないか。むろん国民の多くは、少なくも援助金の返ったものは、主として東南アジアに向けられるということを期待しながら、あとはまあ外交文書のことだから、よくわからないからということだろうと思うのです。現実には、必ずしもそういかない。つまり、東アジアですらなくて、ほかのところにも相当使われる。東南アジアでなくて、結局韓国、台湾等に多く使われてしまうというきらいはないのですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この対外援助法は年間に十五億ドル出すわけでございます。五年間に七十五億ドルになります。そのうち四億九千万ドルから二千五百万ドル引いた分がどう使われるかという問題でございますが、おそらく私は全体の金額からいいまして、七十五億のうち四億九千弱のものが入るということは、大部分がわれわれの所期するアジアの開発のために使われる、こう思うのであります。東南アジアだけですと、いかにも範囲が限定される。北東アジアも含めて考える。パキスタンとインドにはコンソシアムがございまして、この分はまた別途にやっていくと、こういうことに考えられているわけであります。大体御希望といいますかは、曾祢さんの御意見のようになるのじゃないかというふうに期待しているわけです。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 その点はかなり私はどうも意見の食い違いがあって、見通しとしてはそう甘くないのではないかというふうに考えるわけですが、この点については、さらにあとで外務大臣にでも御質疑申し上げてみたいと思います。  最後に、意見は留保いたしますが、タイ特別円の問題についてはいろいろございますが、私は何といっても、先ほども羽生委員が指摘されたのは非常に重要な点だと思うのですが、向こうが勝手な解釈をまあしていたことはやめた。しかし、勝手な解釈があの協定から出ていないことを承認したけれども、協定はできたけれども、合意は成立していなかったということですね。これは非常に重大なことです。それは現内閣の責任でないと言えばそれまでですけれども、そういうような国際協定ができ、国会の承認を得ておったけれども、双方の合意はできていなかった。だから、もう一ぺん相談する必要が出て来たのでしょう。相談の結果がいい悪いは別として、そういう特殊な事態については、これは国民も納得しないだろうし、国会に対して何らの事前の了解も得ないで、これは内閣が外交に関する責任があるからというだけで、いきなりこういう問題をタイ国のほうと協定を作ってきてしまって、憲法の手続によって国会はあとで承認してもらえばいいじゃないか、これは私はやはりそういう便宜的取扱いはよくないのではないか。やはりこういう特殊の事態が起こった。協定はできた。三十年協定……。ところが、幾らあれしてみても、解釈上は日本の解釈が正しかった。つまり、有償である、有償援助である、九十六億円のほうは。ところが、そうすると、向こうがそういうつもりで作ったのではないのだ、無償であるという解釈は無理なことは認めても、そこで不合意が明らかになった以上は、協定が事実上履行できなくなった。その重大な時期にしからばそのことを国会に報告し、総理が行かれるときに解決するなら解決するで、やはり国会の意思を確かめた上にやるのが、これは私は憲政の常道でもあるし、外交、条約についての国会と政府のスムーズな関係を作るゆえんではないか。総理大臣が行かれるときに、いかにも大物が行ったから大盤ぶるまいとして九十六億円をただでやってきたと言わぬばかりの形をとることは、これは国民が納得しないのは、私は当然だと思う。だから、憲政の常道から、こういう履行ができなくなった条約というものは、そうたくさんあっていいものじゃありません。その責任は現内閣じゃないから、これは追及しませんが、そういう事態に当たって条約を改訂しなければならなくなったら、それに即応する手続というものは、まず国会の意思を確かめてからおやりになるのが、私は当然だと思います。その点が、私は第一に総理に伺いたいところです。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(池田勇人君) 三十年の協定は、これは完全に成立いたしたのであります。しかし、向うに誤解がありまして、これを改めてくれということは、もう五、六年間にわたって周知の事実でこれはわれわれは改めないと、こう言っておったのであります。しかし、今の現状から申しまして、このままにいつまでもしておくということは、両国のためによくないというので、私は決意したのでございますが、その決意の前に、こういう問題があるからどうしましょうかということを国会へ相談するということは、これは私はいかがなものかと、これは急じゃありません、五、六年の間の懸案でございますから、私はそういうことはいかがなものかと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほど私四億九千万ドルが五年間と申しました。が、これは十五ヵ年です。訂正いたします。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 しかし、私は総理に率直に申し上げたいのは、こういうことは異例なので、まだこれからタイとこういう問題を論議しようというそのときに、一々国会にこういう方針でやりますということを議決をとってからやれなんという、そんな窮屈なことを言っているわけじゃないのです。日本の国会の意思を求めて、それはきまったわけでしょう。それが何年間かかってついに合意しなかった、しかも、議論としては向こうを屈伏させた、しかし、そこに両国間の実際上の合意がなかったことが明らかになり、それを放置することは両国の関係によくないとなった以上は、総理として、大体かくかくの方針でこれを打開したいと思いますが、どうですかということを国会に問うのは、私は当然だと思う。これを私は言っているのでありまして、それから先は、これは意見の相違だから申し上げませんが、私はきょうは、時間の催促をされますから、これで総理に対する質問は終わります。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 外務大臣に対する質疑はございますか。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 質問じゃありませんけれども、先ほどお願いいたしました、法律そのものは、簡単でしょうけれども、対外援助法ですか、あれに関連する法律、それから政府の説明とかなんとかありますれば、これを出していただきたい。それからもう一つ、この条約の協定の附属書の了解事項の第一ですか、交換公文の。この英文のほうはついてないのですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 調べまして、なかったら、お出しいたします。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) それでは、本日はこれにて散会いたします。  午後零時二十四分散会

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