P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
40回国会衆議院1962/02/16

外務委員会 第4号

発言数
26
登壇者
5
会派数
1
開催日
1962/02/16

会議録

森下國雄自由民主党

○森下委員長 これより会議を開きます。  日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定の締結について承認を求めるの件、国際民間航空条約の改正に関する議定書の締結について承認を求めるの件及び日本国とアルゼンティン共和国との間の友好通商航海条米の締結について承認を求めるの件、以上四件を一括議題となし、質疑に入ります。正示啓次郎君。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 私は、本日は時間の都合もございますから、ただいま委員長がお述べになりました議題のうち、いわゆるガリオア・エロア並びにタイ特別円関係につきまして御質問を申し上げたいと思います。  まず、ガリオア、エロアの問題でございます。本件については今までたびたび本会議あるいは予算委員会等においても御議論があったのでありますが、私は、本件の性格につきまして、これをかねてお手元に配付いたしております私の質問要項の第一に書いておりますように、まずその債務性について第一に日本国民及び国会の立場から、第二に日本政府の立場から、第三に米国の政府・議会及び納税者の立場からの三つの角度から明らかにいたしたいと思うのでございまして、この点につきまして外務大臣を初め政府当局の御答弁をお願いしたいと思うのであります。  申し上げるまでもなく、民主主義というのは一つの立場を固執することによっては前進をいたさない、どうしても民主主義には自分の自主的な立場と同時に相手方の立場を尊重するということがあって初めて民主主義の前進があるものと私は心得るのでございます。  そこで、今申し上げたようないろいろな角度からこの問題について御質問を申し上げたいのでありますが、最初に、一番大切な、政府がこれを仲介したのでありますが、現実には、援助を受けた日本国民、その代表者である国会の立場から見るならばどうであるかということを申し上げてみたいと思います。それにつきまして、御承知のように私もまだ新米でございますが、かねてこの問題につきまして私はできる限り直接国民に接触をして参りました。昭和二十二年七月五日、衆議院の本会議場において全員一致の感謝決議がされておりますが、この決議というものが、一体どういう状況のもとに、また国民のどういう感情のもとに行なわれたかということを、一つ皆様と一緒に思い出してみたい。私は、国民の方々にも、この点について率直な考え方を機会あるごとに聞いておるものであります。時間がありませんが、この決議は大事でございますから、ちょっと私はここに一言一句自分で書いたものを朗読してみたいと思います。    食糧放出に関し連合国最高司令官に対する感謝決議   終戦後わが国は、今までかつてない食糧の飢きんにおそわれ、国民の生活は、日に窮乏の度を加えている。この時にあたつて、連合国最高司令官は、昨年の夏以来、しばしば米国よりの輸入食糧を放出されて、わが国民を餓えと困窮から救われた。全国民は、ひとしくこのことを感謝し、その高い人道精神に感激している。ここに、われわれは、乏しきに耐え、足らざるをわかち、いよいよ同胞愛を深くして、最高司令官の厚意に報い、この苦しみを切り抜けようと決意している。   衆議院は、院議をもつて連合国最高司令官に対し深い謝意をあらわす次第である。右決議する。というのでございます。  そこで、この決議について注意すべき点でございますが、この決議がなされたとき、国民は、いわゆる放出せられたる、そして配給せられたる食糧に対しまして、これを受け取る際にはそのつど対価を支払っておる。対価を支払った国民の代表として国会がこういう感謝決議をしたということが、私はきわめて重要な点であると思うのであります。当時の日本の食糧事情というものは、御承知のように、いわゆるやみ生活、命がけの買い出し、まさに混乱の極致でございまして、道義は地を払っておったころであります。しかしながら、日本国民のいわゆる最低線の道義と申しましょうか、昔は武士は食わねど高ようじと言ったのでございますが、この連合国最高司令官の指令によって放出せられた食糧その他に対しましては、国民はきん然として相当の対価を払って、その上に自分たちの選んだ代表に国会において感謝決議をしてもらったのであるという事実、この事実は私はきわめて大切な点であると思うのであります。この点に対しまして、すでに政府側もいろいろ御答弁があったのでございますが、一つ外務大臣の所見を伺いたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまガリオア、エロアの問題に対しての御質問中、まずこれが債務性について考えてみたいと前提されまして、当時日本国民並びに国会の立場からこの問題をどう考えるかというのが御質問の御趣旨だったように思います。  仰せになりましたように、日本の国民は、あの当時の窮乏の中にアメリカの占領軍から食糧その他の放出を受けまして、これを対価を払って買っておるのであります。しこうして、国会はあの当時の状況下において輸入食糧の放出ということに対して感謝決議をいたしております。輸入でございますから、もとより対価を払って入れているということがその前提にあるということが、これは一般通念として考えられるのでございまするが、あの当時の食糧事情からいたしますると、とにかく、日本は外貨がない、輸入もできない。そのときに輸入してもらった、食糧を放出してくれた、そうして国民の飢餓を救ってくれた。このことに対して、対価を払っておる国民の代表としての国会が決議したということは、われわれとしては、債務性ということから言いますると、国民の立場から、そのことはある程度頭に置いて決議がされたものである、こういうふうに言わざるを得ないと思います。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 今外務大臣の御答弁の通りであると思います。また、私はさらにあとで申し上げますように、国民としてはすでに払っておるのだ、この自分たちがもうすでに払ったものを政府は一体どう処理してくれるかということが、これが私は今日の国民の率直な感じ方であるということをまず第一に申し上げたのであります。  そこで、第二に、今度は国会の立場でございまするが、今申し上げたような決議の行なわれた前年、すなわち、昭和二十一年に、いわゆる援助物資が引き渡された当時に発せられた総司令部の覚書、これはいわゆる占領軍スキャッピンでありまして、いわば憲法以上の力を持って、国会、政府、一切の日本の機関がこれに拘束されたことは申し上げるまでもございません。その一九四六年七月二十九日付スキャッピン一八四四−A、これには、これは政府からたびたび申された通りに、支払い及び計算の条件は後日これを決定せられるであろうということが明記されておる。この事実は、その後歴代内閣、もちろん社会党内閣を含めまして、これを十分御承知の上で向こうからのいわゆる輸入食糧その他の放出を受領し、その受領したものに対しまして、いわゆるレシートを出しておる。こういう事実に立脚をして国会が決議をしたのでありまするから、私は、ここで、あまりにも健忘症と申しましょうか、この事実を考えるとき、今さら無償論というものが出てくる余地はないのじゃなかろうかと、こう思うのであります。私は当時国会に席を持っておりませんが、幸い小坂外務大臣は古くから議席を持っておられた先輩であります。当時の国会議員としての一つ率直なる感じ方をお伺いしたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 国会の決議が行なわれましたころは、占領下で、いまだかつて喫したことのない大敗戦のさ中でございましたので、国民はある程度虚脱状況にもあり、また、一方において、このままでは大へんだという気持もありまして、私どもこの国会のまわりはほとんど焼け野原でありまして、そこにジープが右往左往するというような情勢の中でございましたので、まあとにかくこれだけの放出物資があって飢えをしのいでいけるということに対する感謝、これをまず第一にしたのでございます。しかし、輸入食糧をこれだけ放出さして、あとそれでは全部これを払うのかということになりますと、全部が全部債務であるというふうにも実は考えなかったのであります。いずれ日本が立ち直りましたならば何がしかのことをして返さねばならないのじゃないかという気持はあったわけでございますけれども、まあ感謝をしつつ、将来の日本のことを考えながら、いわば複雑な気持で感謝決議をした、かようなことが偽らざる心境であったように思う次第でございます。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 当時の国会議員の一人として率直なお感じ方、まさにそうであろうと思うのでありまして、これは、すでに国民が対価を払って、アメリカ側からは、最高司令官の指令、あるいはあとで申し上げるように、アメリカの議会における論議等によって、これは後日何らかの処理をしなければならぬものであるといういわゆる債務性、この点については、私は、すなおに考えれば、これは当時の日本国民の代表がだれ一人として疑点はなかった、こういう点をまず第一に申し上げた次第であります。  そこで、今度は、さらに進みまして、日本政府の立場からもう一回これを考え直してみたいと思うのであります。日本政府は、一方におきましては、今申し上げたような総司令部からのスキャッピン、あるいはあとで申し上げるような米国議会その他の関係の本件に対する態度、こういうことを十分承知しておった。他方において、国民からは、当時の困窮の中といえども、日本国民として、いわゆる餓死を救ってもらうということに対して、精神的な感謝はもとよりでございまするが、物質的にも対価を払って、そしてその対価は政府の収入になっておる。こういう両方のものによって規定せられた日本政府の立場としましては、当然にこのガリオア、エロアの債務性を認識して、後日これについて適当なる、また公正なる処理をしなければならぬと心得ておったことは、これは当然であろうと思うのでありまして、この明白なる事実をほんとうに確認した一つの例証が、戸叶委員も本会議で御指摘になりましたが、昭和二十四年四月六日のいわゆる阿波丸事件に基づく日本国の請求権の放棄に関する国会の決議、この決議に基づまして当時の政府が国会に報告をしておる。この報告は、もう申し上げるまでもなく、ガリオア、エロアの債務性を確認した、後日何らかの処理をしなければならないものである、法律上のどうこうというものではなくて、いわゆるその将来において何らかの処理をしなければならぬものであるということを確認したものにすぎない、こういうことが言えると思うのであります。その考え方が、国会における答弁、その他の機会の関係大臣の答弁においても、いわゆる債務と心得る旨の表現がとられたゆえんだと思うのでございますが、この点、外務大臣の御所見はいかがでありまするか、お伺いしたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 お話のございましたように、国民は代金を払っておるのであります。しかし、政府はこれに対してまだ支払っておらない。そこで、アメリカ政府と日本政府との関係においては、スキャッピンをおあげになりましたが、これはまさにその通りでございまして、後日何らかの形においてこの決済をしなければならぬ、こういうことでございます。  そこで、今の阿波丸についての決議に関連しての御質問でございまするが、当時の吉田外務大臣は、参議院におきまして、これは明らかに債務であるということを言っておられる、債務性が濃いものであるということを言っておられるわけでございます。その答弁は、ガリオアと申しますか、エロアと申しますか、そいうようなものが、あるいは世上ただでもらったような誤解を与えているものでありまするから、政府としては後日何らかの形においてこれを支払うものと心得ておる、すなわち、債務と心得ておるものであるということを言っておられるのでございます。政府と政府との関係においては、まさにそういうことでございまして、常に一貫して、政府側としては、この問題に関しては債務と心得ておる、すなわち、後日何らかの形においてこれを決済するということを言っておるわけでございます。  まあ、たとえ話で恐縮でございますけれども、私はかように思っておるのであります。私が非常に困りまして、正示さんから援助を受けた。正示さんはお金でなくて物で援助して下さった。そこで、私が川村政務次官にその物を売りまして、お金をちょうだいした。そこで、私はそのお金をもって家を建てた。その家から家賃が上がってくるわけでございます。正示さんから援助物資を受けましたときに、これは非常にありがとうございますと申し、また、同時に、将来何らかの形で何しましょう、こういう話もしておるのでございまして、幸い家作もふえ、家賃もたくさん上がってきますので、その家賃でもって一つこの間いただいた物の代を払わさせていただきましょう、こういうようにしたのが今度のガリオア、エロア関係の解決のように考えております。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 ただいまの外務大臣の御答弁、私は政府の立場を一つの例示をもって物語られたものと思うのでありますが、このほかに、これは基本的な政府の立場でありますが、アメリカ政府としては、昭和二十七年の十月に、在京米国大使館を通じまして、正式交渉を開始したい、こういうことを日本政府に申し出ておる。それから、二十八年には、わが国と同様のポジションにあったところの西独が、米国との間に返済協定を締結しておる。こういう事実。それから、二十八年に、池田・ロバートソン会談ということで交渉を行なうことに意見が一致いたしまして、二十九年五月から米国側と数回にわたって正式交渉をやっておる。さらに、三十年の八月には、故重光外務大臣が訪米されましたが、このときには、日米共同声明という形式において、東京における本件交渉を早期に妥結せしめるため極力努力することに意見の一致を見たということが天下に公表せられておることは御承知の通りであります。ただ、当時は、御案内のように、賠償問題その他対外債務の全貌もまだはっきりしない、その他わが国の経済力も十分回復していないというふうな理由で、だんだんとおくれたのでございますが、今日、経済力の向上、対外債務等に関する懸案の大体の解決ということで、今回、昨年の五月、小坂外務大臣が在京米国大使に交渉再開を申し入れ、今回の決定になったと思うのであります。  そこで、私は、政府が今回こういう交渉の妥結に至り本国会にこの協定案をお出しになりましたこの処理は、日本国民としては、非常に苦しい環境の中におきまして、しかし待ってくれと国民が言ったわけではございませんで、国民は即刻その場で代金を支払っておる、この国民のプライド、矜恃と申しますか、あるいはさらに進んで日本国民たる栄誉であると思うのでありますが、そういうものを傷つけることなく、政府は国民のお払いになった金を今日まで有効に管理し、運用し、そして今回のような交渉妥結にまで持っていったということで、これは当然政府として国民に対する責任を果たしたことにすぎない、私はかように論ずべきだと思うのでありまして、この点については国民の側には異論がない、私はこう思うのであります。ただ、今まで、本件を解決するにつきましては、今申し上げたような関係と同時に、できれば、せっかく日本国民がこういう苦しい中で払った対価の中からこれを返済するのでありますから、返済したものがさらに後進諸国の開発とかあるいは日米教育文化交換計画等に十分活用せられまして、ほんとうに生きた金としてこれがまたさらによく効果をあげていくということが望まれておったことも御承知の通りだと思うのであります。しかし、何よりも大切なのは、日本国民のプライド、栄誉、そうしてわが国の国際的信用を保持し、これを高揚するということが一番大切なる条件であったかと思うのでありますが、今回のこの協定妥結に当たられた外務大臣としては、そういう点についてどういう心況で当たられましたか、この点を率直にお述べいただきたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 お話のように、西独と日本とに対する援助は、これは全く同じアメリカの陸軍予算から支出されておるわけでございます。一方、西独の方は、九年前にすでに協定を結びまして、十億ドルのうちほとんど大半の七億ドル以上のものを支払っているわけでございます。一方、余剰物資協定を別に結びまして、二億ドル以上のものをこれも支払っている、こういうことでございます。同じ立場にございます日本が、あのときありがとうと言ったからもうただだというような言い方は、これはやはり日本と西独との間に格差を生ぜしめるものである。日米の関係は、あくまで対等の関係で、友邦としてつき合っていかなければならぬのでありまして、何かしょっちゅう敗戦面後のからを背に背負って、負い目を感じながら日米関係を続けるということは、私は、日本政府のみならず、日本国民の矜恃の許さぬところであろう、かように思いまして、この点正示さんと全く同様の感じを持つのでございます。しかしながら、なお、その使途についても、、せっかくこういう日本が敗戦後立ち直ったとはいえなおなかなか問題の多い財政の中からやりくりして返すというものでございますから、この金は、やはり、同じく前途に対して大きく胸をふくらまして自分の国を開発しようと考えている幾多の国国の開発に使うようにしてもらいたい、こういうことを申し込んだわけでございます。アメリカ側は、これに対して、ごもっともです、ただ、アメリカも議会制度の国でございますから、議会の承認を得て、憲法上所定の手続に従ってこの金を回しましょうと言っておりますし、なお、日米文化交流というものにも使いましょうということで、御承知のごとく、二千五百万ドル相当額のものを円貨で積み立てて、そうしてこれを使って参ろう、こう言っておるのでございます。  私は、実は、この交渉をいたすのに際しまして、自分としましては非常に重大な交渉をすることであると思いまして、能力の許す限りいたしたつもりでございます。幸いにいたしまして、アメリカ側の理解も得まして、西独に対しまする際よりも割合においてはずっと有利な協定ができた、かように考えておる次第でございまして、どうぞ、この上は、一つ十分御審議の上、日本国民の誇りを傷つけぬように、りっぱに返すものは返して、いよいよ日本国民が世界に尊敬される国民になりますよう、一つ御協力をわずらわしたいものと考えておる次第でございます。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 なお一、二これを繰り返したいのですが、時間がだんだんございませんので、その次の、米国の政府・議会及び納税者の立場からこの問題がどういうふうに見られておるか、この点に進みたいと思います。  申し上げるまでもなく、ガリオアというのは、、ガバメント・アンド・リリーフ・イン・オキュパイド・テリアズ、このかしら文字を綴った呼称でございまして、一九四七米会計年度から一九五三米会計年度まで続いた米国の予算の科目であり、通俗に、占領地救済資金、こういうものであり、その目的は、占領地における飢餓、疾病または社会不安の防止をはかるため、主として食糧、肥料、医薬品など、救済的性格の物資を買い付ける、こういうことにあったかと思うのであります。それから、一九四九年から一九五一年度までこのガリオア資金の一部が占領地の経済復興の目的のために使用されたが、特にこの目的のために貸し付けられて共与された物資をエロア、——エコノミック・リハビリティション・イン・オキュパイド・エリアズ、こういうふうに呼んでいるかと思うのでありますが、このエロアというのは、申すまでもなく、いわゆる経済協力法の一般目的に合致するようなものであった、こういうふうに言われております。その内容は工業用原材料、機械等が主であったことは御承知の通りであります。  そこで、このガリオア予算が米国議会で審議されましたとき、米国の政府関係者が、日本及び西独に対するガリオア援助は後日返済せらるべきものであるということをはっきりと証言している。これは、日本の占領の最高責任者であったマッカーサー元帥が一九四七年二月に米国議会に送ったメッセージ、このメッセージは、御承知のように、同年の二月二十四日総司令部の渉外局から日本の国内においても発表せられまして、日本国民の大部分は新聞紙等の報道によって承知していることは言うまでもないのであります。このメッセージにマッカーサー元帥はこう言っておられる。米国予算からの支出は日本の債務となる、援助は慈善ではなく、また日本国民も慈善を欲していない、こうはっきり言っていることは御承知の通りでございます。また、一九四九年五月、時の陸軍次官補のヴォルヒーズ氏は、下院の歳出委員会におきまして、われわれは従来ガリオア資金を議会に要請するにあたって、これがすべてドイツ経済に対する貸金となると述べておったが、これは日本についても同様であるということを述べているのであります。そこで、このガリオア予算審議の過程におきまして、米国の納税者の代表たる議員から、ガリオア援助取り立ての義務づけ条項が提案せられたという事実があったかに聞き及ぶのでありますが、この点はどうであったか。さらに、しかしながら、今申し上げたように、ヴォルヒーズ次官補も述べたように、政府当局としては、後日これは必ず貸付金になって適当な処理はせられるということを議会にいわばギャランティするといいますか、そういうことの確約をすることによって、今これをびた一文も残さず取り立てるというようなことを米国議会がすることは適当でないということで、これはさたやみになったというふうに私は聞いているのであります。この点について事実を大臣なりあるいはほかの方からでもお答えいただきたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 アメリカ政府としては、このガリオア予算を取得いたしますために、議会に対して証言を行なわなければならなかったわけでございます。その証言は、今正示さんがお述べになりましたように、日本の占領の責任者が、これは将来返済さるべきものであるという趣旨の証言をいたしまして、この陸軍予算が獲得されているという経緯がございますことは、その通りでございます。私もさように心得ております。また、議会との関係におきましては、ガリオア予算におきまして、これを取り立てるべきものであるということをはっきり書け、そういう規定を設けよという主張もございましたことを承知しております。こういうふうに書きますと、将来この援助は一分一厘くまなく取り立てなければならぬ、こういうことになるということを政府が反論いたしまして、結局それは一つ政府に一任する、その採択権は政府に一任する、かようなことになりましたようでございます。なお、よくこの委員会あるいは予算委員会でもドッジ氏の証書というのが言われるのでございますが、議会の立場としましては、納税者であるアメリカの国民を代表する立場から、旧敵国に対してそういう大きな負担を納税者にかけるのはいかがかというような議論も当然出たわけでございまして、それに対する反論といたしまして、援助物資の大部分はアメリカにおいては余っている余剰農産物である、あるいはCCCという機構が現行法上買い上げざるを得ないような立場になっているものであるという意味の証言をして、これはさらに新たに大きな負担を国民に課するものではないと言ったというようなことがあるようでございますが、いずれにしても、この支出というものは、米政府の支出であって、わが国としては、アメリカの国内の事情によって、アメリカの議会の議論によってこのガリオア、エロアの援助の債務性を否定することにはならない、かように考えておる次第であります。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 大体米国の議会の論議等はその通りだと思いますが、なお、一、二本件の債務性について疑義をさしはさむ方々が、たとえば、ヘ−グの陸戦の法規慣例に関する条約第四十三条、あるいは平和条約十四条の(b)によるいわゆる占領の直接軍事費に関する請求権放棄の条項、あるいは逆に(a)によりましてわが国がいろいろ請求権を放棄するしていること、あるいは終戦処理費、これは大へんな額に上って、五十四億ドルと言われておりますが、そういう関係から、あるいは占領軍の直接当然の義務じゃなかったか、あるいはすでに相殺せられておるのじゃないか、放棄せられておるのじゃないか、あるいは相殺せらるべきじゃないか、こういう御議論が一部にあるのであります。私は、それらはすべて全然別個の問題であり、ことに、このへーグの陸戦法規のごときは、これは絶対的なものであるから、あるいはかりにこれをしたといたしましても、無償の義務づけをしておるというふうな観点から言って、これは問題にならないのじゃないかと思うのでありますが、時間がないので一々これらに触れられないのは残念だと思います。  結論的に申しますと、米国のタックス・ペイヤー、納税者が旧敵国に対するグット・ウイルで出した、窮乏を救ったガリオア、エロアに対して、敗戦国民であった日本国民は、苦しいといえども、食うがためには背に腹はかえられぬという状態にあったけれども、しかもこれに対してちゃんと代価を払ってこれを受け取ったというプライド、こういう二つの、グット・ウイルとプライド、これを結ぶ国と国との問題の一つの歴史的な事実をわれわれは公正に解決をいたしまして、そして、日米関係の一そうの改善、それから後進国の開発等の進歩発展に貢献をしていこう、こういう立場でありまして、私は、どうか野党の方々におかれても、最初申し上げたような民主主義の原理に立脚いたしまして、一つ広く胸襟を開いて理解していただきたい、かように思うのでありまして、この点につきましては御答弁をいただくことを省略いたしまして、第二の、二重払い論という問題に移りたいと思います。  そもそも、この二重払い論がかねがね一部の方々によって言われておりますが、そのよって来たるところを考察しますと、すでに述べましたように、まず第一には、日本国民は援助物資を受け取るにあたって必要な代価を払っておるという、この事実をまず認めておるということが一つであります。これを認めなければ二重払い論は出ない。ちゃんと代金を払っているのだぞ、その上にさらに今度税金をとって返すということになると、これは二重払いになる、こういうことがこの二重払い論の根基というか、そういう前提がなければ二重払い論は出てくるわけはない。これは当然言えることだと思うのでありますが、今回の協定を実施する財源を、いわゆる産投特別会計、この資金の運用収入等によって十分まかなうことにしておるのは、私は大蔵省にいましたのであまり大蔵省のことをほめたくないのですが、大蔵省としては非常によくできておる、こういうふうに思うのでありますが、一つ、宮川理財局長から、これは二重払いにならぬのだということを大蔵大臣の代理としてお答えをいただきたいと思います。

宮川新一郎大蔵事務官(理財局長)

○宮川政府委員 ただいま正示委員がお述べになりましたように、国民はすでにガリオア物資を受け取るにつきまして代金を払っております。今回その責務を支払うにあたりまして、一般会計から、すなわち税金でもってやりますと二重払いになるのじゃないかという議論もございますので、政府といたしましては、ガリオア債務の支払いにあたりましては、これを避けまして、援助物資の代金を積み立てまして運用をいたしました見返り資金の収入をもって充てることにいたした次第でございます。御承知のように、ガリオアの債務の支払額が、十五年間に、元金が一千七百六十四億円、利子が三百二十一億円で、合計二千八十五億円に相なるわけでありますが、二十八年の八月に産投会計が承継いたしました見返り関係資産は二千九百十九億円でございまして、これだけでも支払額を十分上回っておるわけでありますが、その後、二十八年八月以降産投会計が運用いたしまして多額の利益を生んでおりまして、三十六年度末千四百三十三億円という利益を生んでおります。そのうち、全部が見返り関係のものではございませんが、相当部分が見返り関係のものと申せますので、二千九十九億円と合算いたしますと、二千八十五億を相当上回ることになりますので、十分支払いができるのではないかと考えている次第であります。  なお、もし資産がそれだけありましても、たとえば出資金をつぶすとか、貸付金を期限前に償還させるような無理をいたしますと問題はございますが、私どもの計算によりますと、見返り関係資産のうち開銀出資金に対する毎年度の納付金、これは十五年間で千七百五十七億円でございます。それから、開銀貸付金の約定に基づく回収金これが三百五十四億であります。これに利子収入九十一億円を合わせますと二千二百二億円になります。十五年間で二千二百二億をもって二千八十五億円の債務の支払いに充てる、こういう計算になっているわけであります。  かように、返債いたしました後もなお見返り関係の出資はそのまま残りまして、運用収入を得まするので、今回のガリオア債務支払いは見返り資金の運用収入以外に税金をもって充てる必要はございませんので、二重払いにならない、かような解釈をとっておる次第でございます。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 時間の関係上次に進みます。  第三の、今次協定の合憲性の点に進みたいと思います。ガリオア、エロアを以上申し上げたような債務と心得てきた政府といたしまして、米国と交渉して、最も妥当公正と信ずるところで国会の議決、これは一番大切な要件ですが、その他の所要の手続を経て、初めて憲法八十五条による法律的に確定した有効な債務を日本国は負担することになる。だから、今まで別に日本国としては法律による債務を持っていたわけではない。その点は明らかなところかと思うのでありまして、さらに、ここに提出せられました協定案は、今申しました憲法八十五条によって法律上有効なる債務を負うための国会の議決を求める案件であると同時に、本来の外務委員会の機能というべきいわゆる憲法第七十三条にいう条約として国会の承認を得て初めてこれは成立するものである、こういうことは問題はないと思うのであります。この点について、一部に、そういう債務であるならばとっくに国会の議を経べきであるという議論がありますが、そういう人たちに私はお伺いをしたいと思うのでありますが、一体、どれだけの金額でどういうふうに債務を負うということにすべきであったという御議論なのか。私は、先ほど米国議会の当時の動きをリマインドして、一部から取り立て義務を課そうとした動きに対してこれをさたやみにさすというようなことも、いかにも今回のような結果と照らし合わしますとまことに興味の深いものがある、こういうふうに思うのであります。それから、西独の場合と比較いたしまして、西独はどうもあらかじめ協定等で国際的に債務性が明確になっておったというような議論をする方も一部にはあるようであります。これが日本のやり方の合憲性を疑わせるようなふうにミスリードする作用もあるようであります。これらの点につきまして、外務大臣から明確に、合憲的であるということの御明説を伺いたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 仰せの通りでありまして、債務と心得ておったものを、心得ておるのじゃいけない、全部成規の手続をもって債務を確定しておくべきであったということになりますと、これは、下手をすれば、アメリカの申しまする金額、すなわち十九億五千四百万ドルが債務になるという場合もあり得るわけでございまして、それでは困りますので、ずっと債務と心得て、外交交渉によって債務額を決定して、債務を国会によって御承認を願う、こう考えておりました。すなわち、今回の協定の締結によって四億九千万ドルが債務となるわけでございます。これは、皆様方の御審議の結果御承認をいただければ、ここに債務が確定するわけでございます。  西独の場合は、御承知のように、終戦直後は単一政府がなかったわけでございます。御承知のように、ポツダム四カ国協定によりましてそれぞれ占領地区が違っておる。アメリカの占領地区、ソ連の占領地区、イギリス、フランスの地区とあったわけでございます。一九四九年にアデナウアー政権ができて単一政府ができたわけでございます。それができました後におきまして、このガリオアの単一の協定もございましたし、あるいはそれと前後いたしまして、ECAの協定も与えた、こういうような事情でございまして、日本は当初から一つの政府があったわけでございますから、若干事情が異なっておるのでございます。しかし、西独の場合も、債務を確定いたしましたのは、一九五三年にガリオア処理協定を結んだそのときに債務が確定している、かようなことと心得ております。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 時間の関係で、かけ足で参ります。  第四の、今次協定の妥当性という点に進みたいと思いますが、先ほど大蔵省から支払財源から見た場合のことは御説明がありました。また、われわれ、すでに、先ほども外務大臣からお話のあったような交換公文等によりまして、この返済された資金の活用の方途、こういう点も明らかにされております。日本国の立場として妥当である。それを今度は西独の先例から見ても、決して不利なものではない。日本の国力、当時の西独の経済力、こういうような比較から見ても、決してこれは日本として不当なものではないというふうにわれわれ考えるのであります。この点、政府委員からでもけっこうですが、西独との比較上日本の場合これは相当妥当なものであるということを一言数字をもって御説明していただきたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 西独のガリオア処理にあたりましては、まずアメリカの決算ベースによる援助総額が唯一の交渉基礎であったわけであります。わが方の場合は、アメリカの決算ベースによる資料は十九億五千四百万ドル、わが方が受け取りベースでいろいろ計算をいたしましたのが十七億九千五百万ドル、従って、わが方はわが方の計算を受け取りのベースで出発しておりまするので、出発点からしてわが方が有利であるわけでございます。  次に、西独のガリオア処理協定において、援助から生じたアメリカの西独に関する請求権の額を三十億一千四百万ドルと規定いたしておりますが、これは、アメリカの決算ベースによる援助総額三十三億五千百四十万ドルから、見返り資金支出分、転送分等を控除した額でございまして、わが国の場合、これに見合う額は、アメリカの資料に基づくと十八億九千四百万ドル、日本の資料に基づくと十七億一千八百万ドル、かようになっております。しかるところ、西独の場合は、この三十億余ドルに対しまして十億ドルの支払いとなっております。従って、その返済率は三三・一七八%でございます。これに対して、わが方の返済率は、アメリカ側の資料を基礎にすれば二五・八%、わが方の資料を基礎にすれば二八・五%であります。いずれも西独の場合よりも有利でございます。なお、返済金の使途等についての注文は、西独側は入っておりませんし、また、教育交換計画に基づきます二千五百万ドルも、西独の場合は、余剰物資協定の中で一千万ドルというものが充てられておりまするが、その金額もわが国の方が多い、こういうような点で有利であると考えております。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 最後に、第五として、協定案文につきまして若干技術的な点をお尋ねしたいと思います。  まず一括してお答えを願います。前文に、「単一の協定」という言葉が使っておりますが、一体どういう趣旨であるか。それから、第一条に、戦後の経済援助の提供から生じた懸案となっておる問題、それから、またはこれに何らかの関連があるすべての懸案となっておる問題、こういう二つのことがうたわれておるのですが、これは一体どういうことを、言うのか。それから、同じく第一条に、「合衆国の法貨」——リーガル・テンダーとい言葉と、「合衆国ドル」という言葉を使っておる。この使い方はどういう意味であるか。それから、第四条に、日本国政府及び日本国民に対する」という表現があるのですが、ここで「日本国民」という表現をわざわざ使ったのはどういう趣旨であるか。その点につきまして、政府委員からでけっこうですが、一括御答弁を願います。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 条文につきましてのお尋ねでございましたが、「単一の協定」ということを特にここに書いてあるのでございますが、これは、御承知のように、西独の場合は、実は戦後の経済援助についてアメリカに支払います際に二つに分けて協定を作っております。日本の場合はこれを一本にまとめてやっております。その関係でここに「単一の」ということを特に書いてあるわけでございまして、別にそれ以上の意味がある規定ではないのでございます。原文でごらんになりますと、「アン・アグリーメント」ということになっておるわけでございます。  それから、第二の点は、第一条第一項におきまして、「戦後の経済援助の提供から生じ又はこれになんらかの関連があるすべての懸案となっている問題の最終的処理」ということを言っておるわけでございますが、これは、「戦後の経済援助の提供から生じ」ということは、まさしく、ガリオア援助から生ずるという意味でございまして、ガリオアそのもの。なお、ガリオアの金額を計算するにあたりまして、一応援助としては来ましたが、いろいろの事情から日本の実質的援助にはなっていないものがあります。たとえば、琉球にそのまま送ってしまったり、アメリカに返したり、こういう種類の品物はこれを差し引いておるわけでございます。こういう問題もガリオア援助そのものから生じた問題ということになっておるわけでございます。それから、「これになんらかの関連があるすべての懸案となっている問題」というものは、ガリオア援助そのものから出た問題ではないのでありますが、ガリオアの援助について何らかの支払いをなす際、何らかの解決をする際は、これも一緒に片づけようじゃないかということで、戦後長い間の日米間のこの問題の交渉において提起されておる問題が幾つかあるわけでございます。簡単に申せば、反対請求権の問題と申しますか、こういう問題が幾つかあるのでございまして、それらをこの際一括あわせて解決するという趣旨でございまして、これらについても四億九千万ドル払うことによって全部片づいてしまうということをここで明らかにした趣旨でございます。  なお、第一条三項でございますが、「合衆国の法貨」、四項には「合衆国ドル」、二つやはり使い分けてあるのでございますが、「合衆国の法貨」ということは、原文でごらんになりますと、「ローフル・マネー・オブ・ザ・ ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ」とあるのでございまして、これは、アメリカの法律用語といたしまして、アメリカのいわゆる法定通貨ということを表わす際にローフル・マネーということを言うのでありますが、内容は、今アメリカで法定通貨として認められておるものは、いわゆる合衆国ドルにほかならないのでございまして、その次に言う「合衆国ドル」と同じことでございます。第四項で「合衆国ドル」と言いましたのは、これは、具体的な支払いに関する問題でございますので、支払いの際には通常用いられる合衆国ドルという用語を使ったわけでございます。従って、最初の方はむしろ法律的用語で、次の方は一般的な通常使われる用語というふうに御解釈下すってけっこうだと思うのでございます。  なお、第四条に、「日本国政府及び日本国民に対する合衆国政府のすべての請求権を……放棄する。」とアメリカが言っておる。ここにどうして「日本国民」ということが書いてあるかということでございますが、これは、ガリオア援助のいわば性格、内容にも関連するわけでございます。ガリオア援助というものは、まさしくアメリカ政府から日本国政府に与えられた援助であることには間違いないのでございますが、占領のごく初めのころには、日本国政府の手を通じないで、あるいは府県における現地の軍政官から直接に府県の病院とかあるいは府県自体とか市町村とか、そういうものに渡された援助物資も実はある程度あるのでございまして、そういうものに関するアメリカの持っておるかもしれぬ請求権も、この際一括してここで放棄してしまうということをはっきりさして、あとに少しも尾を引かないようにという趣旨で、ここに「日本国政府及び日本国民」という字句が入っている次第でございます。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 時間がだんだん切迫しましたので、その次のタイ特別円問題に移りたいと思います。  まず第一は、特別円問題の特異性とそこに書いてある問題であります。これは、申し上げるまでもなく、戦前からのタイとの長い歴史的な関係、それから戦時中の特別の関係、一時は同盟国というふうな関係でございました。こういうものを背景として特別円勘定という特殊なものが設置された、それがタイ国における日本の軍事費の支払いにまで活用せられた、こういう歴史的な事実を考慮しつつまた、戦後におきましては、タイ国は平和条約の発効後いち早く対日国交の再開に踏み切っておる、これらの点を考慮しつつこの特別円問題のことを考えなければならぬと思うのでございまして、すなわち、特別円問題というものは、これは戦時中に日本が特別の便宜を提供されてタイ国で軍事費によっていろいろなものを調達した、その代金の未払額、当然返済をするものを、これを返済するものである、こう考えますとき、この特別円問題の特異性というものが非常にはっきりとクローズ・アップされるわけでありますが、今回、あとで議論されるような案によってこれが解決されるということが、ほかの、たとえば賠償あるいは経済協力というふうなものにも波及しないかという御議論が一部にある。しかし、これは性格が全然違ったものである、特異なものである、こういうことから、この問題の処理が、ほかの、類似と言い得ますかどうか、性質は違うのだが、しかし、何か日本からの支払いにも波及するおそれがあるのじゃないかという議論に対しましては、これは一つこの際外務大臣からはっきりと、そういうことは全然考えられない、また政府としてもそういうことは毛頭考えていないという点を第一に明らかにしていただきたい。  なお、関連いたしまして、特別円の経緯等について簡単にここでお話を伺えれば幸いだと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 仰せの通り、特別円は全く特異の性格を持ったものでございまして、日本の戦争中の費用の調達のために、タイとの間に特別円というものを設けてある。この特別円とは何ぞや、なぜ特別円と言ったかというようなことにつきましては、全く事の特異性から発しているものと考えるのでありまして、類似のものはございませんし、また今回の特別円の解決によって他の問題に累を及ぼすということは、これは絶対にないものであるというふうにかたく信じておりますし、また、かりにさような問題が起きましても、政府としては、これはまったく別個のものとして、この特別円協定の解決を例にしないということをはっきり申し上げさせていただきたいと思います。  この特別円の協定につきましては、すでに正示さん御承知のように、先方は千三百五十億円というものを当初要求して参り、そのうちこれが五百四十億円になり、そしてこれが百五十億円、これは最低の線だということが三十年の協定を作ります当時強く言われておったことは御承知の通りであります。しかしながら、この百五十億円をいかにして解決するかということで、御承知のような、五十四億円はスターリング・ポンドでもって支払う、そしてあとの九十六億円は投資及びクレジットの形式においてタイ側に供給するということになっておりましたのでございますが、どうも、今申し上げましたような性格上、タイ側としては、自分の方で用立てておったと思ったものが、今度話がついてみたら逆に自分らの方が日本から用立てを受けるという形になりますので、貸したと思っていたのが気がついてみたら借りになっていたというのでは、どうしてもタイの国民感情が納得しないのだ、日・タイ友好関係にかんがみて、条約上に言っていることはまさに日本の主張の通りで、条約文をたてにしてこられるならばもう一言もないのだけれども、どうか一つ大所高所に立って、将来の友好のためにタイ側の国民の気持も考えてくれということを強く言って参ったのでございますが、これは、全く、今仰せのごとく、特別円の持つ特異の性格によるものと心得ております。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 今お述べのような特殊なものの処理でありますから、今回のような異例の措置をしても、これは全然ほかに連鎖反応というようなことも起こさすべきじゃない、また、起こり得ない、こういうことが言われたわけであります。  さて、昭和三十年の協定、——実は、私は、三十年の協定締結には直接は全然関係はしておりませんが、その跡始末でずいぶん頭がはげた。大臣の前で頭のはげたことを申し上げると大へん恐縮でありますが、(笑声)自分も苦労した一人なんであります。自分の親愛なる辻原弘市委員が予算委員会で、御承知のように米人の顧問の問題を取り上げておりますが、私は実は辻原さんとも話したのですが、当時、タイが、外務大臣がわざわざアメリカ人の顧問を連れてこないと日本と貸した金の交渉もできなかったという点、これは、これから後進国の開発等に大いにわれわれお互いに協力していこうという立場の者としては、あの顧問はどうだこうだという御議論の前に、タイのそういう弱い立場であったことを、われわれとしては今度のような措置をとるにあたっても考慮しなければならぬ一つの点じゃなかろうか、こう思う。今外務大臣がお述べのように、最初はゴールド・クローズをつけて千三百五十億というような計算をした。その四割の五百四十億を払え。ところが、日本の方じゃ、一円は一円だと言う。これはまた大蔵省なかなかしっかりしておる。(笑声)そこで、十五億だ、こう言って、五百四十億と十五億で四つに組んでがんばった。とうとう百五十億に減額させた上で、しかも、この五十四億円は、今お話しのようにスターリング・ポンド、九十六億円はクレジット・アンド・インベストメント、——イン・ザ・フォーム・オブ、こういうことなんです。これは、私が採点をしますと百何十点。百点以上の大蔵省は得点をした。ところが、大蔵省というところは気をつけなければならぬので、予算案にしても、あまり渋くやっていると、政党に反発を食らって、かえって予算が大きくなる。われわれも苦い体験を持っておるわけでありますが、百何十点もとって安心しておると、なかなかその結果はよくないということになる。そこで、私は私の質問大綱の横に、「ベニスの商人の物語を想起しつつ」と書いた。ベニスの商人の物語は、今さら申し上げるまでもなく、もうしめたと債権者は思っておった、さて、いよいよ裁判になると、とんでもない結果になった。この場合はわれわれは債務者の立場であったので逆かもしれませんが、とにかく、百点以上とるということについては、これからも心しなければならぬ一つの教訓をここにみんなで銘記しなければならぬ、こう思う。大へんな得点を得たと思っておると、あにはからんや、通俗の言葉で申しますと上手の手から水が漏れると言いますか、この三十年の協定を読んでみますと、「イン・ザ・フォーム・オブ・インヴェストメント・アンド・クレジット」、そういうことを言いながら、しかし、そこに、「合意される条件及び態様に従い」と日本文にある。「サブジェクト・トウ・サッチ・タームズ・コンディションズ・アンド・モダリティ・アズ・メイ・ビー・アグリード・アポン」というのですか、ここが私は上手の手から水が漏れたのじゃないかと思う。実は、われわれもいろいろな案を外務省と一緒になって作って提示する。向こうはどうしてもアグリーしてくれない。そうすると、どういうことになるかというと、アグリーしないでがんばっていると、日本政府はサプライする義務がある、ところが、アグリーしないからサプライするにもできない、債務不履行が残る。三十年の協定をずっと読んでいく、また、その協定によって実際にこれを動かそうとしていろいろ努力してみますと、そういうことがわかるのであります。そこで、私は、そういう事態をそのまま放置して四つに組んでさらにがんばり通すということであるならば、一体どういう結果になるか。これはベニスの商人の物語りによく似たようなことになってしまうのでありまして、ここに名判官が現われてこれをさばかなければならぬ、こういう感じ方をするのであります。そこで、三十年のいわゆる有償で供与するということをどこまでも貫くためには、日本が単独にアグリー・アグリーで幾ら交渉してもどうしても妥結しない場合には単独で提供して債務を免れるような手を作っておくこと。これは先輩の議員さん方がそのとき御審議になったので、私は実は審議にあずかってないのですが、そういう手も考えられなかったかどうかということも今から反省の材料としては言えるのじゃないかと思うのです。  いずれにいたしましても、私はここで一つ野党の方にもお考えいただきたいのですが、こういう動かないものを作って、それで借金を返したんだといっていつまでもいつまでも言ってみても、提案しても、向こうはアグリーしてくれないという事態をそのままに放置するということは、一体どういう結果に相なるか。野党の方も、まさか、そのままいつまでもほうっておいてがんばれ、タイとはどんな関係になってもいいんだということはお考えになっていないだろうと思うので、そこに窮通打開の名判官の手を打たなければならぬということは、森島先輩としても十分外交界の御体験を持っておられるからおわかりだと思います。  そこで、今申し上げたような一、二の点を私は指摘したのですが、これらの点について、外務省の専門家の条約局長、どういうふうにお考えか、御所見を伺いたいと思います。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 今正示先生から非常にいい御注意を受けたのでありますが、この三十年協定があまりに日本の要望が聞かれ過ぎているために、またこれを実際上は改定しなければならないようなことになっているじゃないかというただいまの御注意は、今後、われわれといたしまして、大蔵省も御同感だと思いますが、一つ大いに肝に銘じていきたいと思うのでございます。  なお、との三十年協定の条文の書き方が、上手の手から水が漏るというようなことで、しり切れじゃないか、どっかに水が漏るようなところがあるのじゃないかというお尋ねでございますが、これは、その当時の気持としては、日・タイ友好関係に基づいて作り、これによって日・タイ友好関係を増進しよう、こういうことがそのときの前文にも出ておりますが、そういう趣旨でございますので、これの実施にあたって両国政府の意見が違ったために実行できなくなるというようなことは、実は予測していなかったのでございます。従って、そういう場合にどう措置をとるかというようなことを特に規定は書いてなかったのでございます。結果的に申しますと、まさに、正本先生の御指摘になったように、そういう点の規定がないということは不備であったということになるのでございますけれども、その当時の気持はそういうことでありましたので、その点御了承いただきたいと思うわけであります。

正示啓次郎自由民主党

○正示委員 三十年協定についてはもっといろいろ議論をいたしたいと思うのでありますが、どうも時間がありません。その点はさらに議論いたすことにいたしまして、今回の新しい協定の交渉が、昨年十一月ですか、総理大臣がタイ国を訪問し、いかにも急にきまったようなことを一部で言われております。これは私は実に事実に反すると思います。実際、長年、われわれもさっき申し上げたように頭がはげる思いでこれをいろいろ動かすべく努力をした。あらゆる手を講じたのですが、結局、そのベニスの商人のように、最後のところで、タイ国としては、イン・ザ・フォーム・オブ、ここのところの形式でひっかかってしまう。そこで、形式と実質の話をいろいろいたしますが、これがわからない、わかっていただけないというのが長い長い悩みの種でございました。やっと今回のような形でこれを打開するということになったことは申し上げるまでもありません。  そこで、まず、今回のこの新しい協定ですが、これがまた、いわゆる有償が単純無条件の無償になったかのごとく議論されたのでは、交渉に当たられた方々はとても浮ばれまいと思うのです。これはもう大へんな苦労をしておる。私は、その一、二の例といたしまして、まず第二条の第二項を見ますると、今度日本国が支払うわけですが、それは特別勘定に払い込み、その特別勘定は協定に基づく調達契約の決済にのみ使われる、こういうことになる。それから、第三条では、その第一項によって、特別勘定は資本財及び設備を主とする日本の生産物及び日本国民の役務の支払いに充てられることになっておる。第二項では、協定に基づく調達は、通常の商業、貿易及び役務の取引に適用される日本の関係法令に定める手続及び方式以外の制限または規制を受けないことを定めている。第四条第一項では、タイ政府は、この協定に基づく調達のために日本国民またはその支配する日本の法人と円建で契約を締結する旨、第二項では右の調達契約は確認のため日本政府に提出される旨、こういうことが書いてあります。  それから、さらに、利子論というふうなものが一部にあったのでありますが、利子がつくじゃないかということ。これは、合意議事録のところを見ますると、はっきりと、利子のごときは最小限度にするがごとき配意が行なわれておる。また、日本国の生産物のことも、合意議事録で、特に外国為替上の特定の追加の負担は課さない、外貨払いにならぬというようなこともうたわれておる。それから、一部の週刊誌等で議論されたことですが、設備の規定のところでは、タイの調達する設備には、武器、弾薬は含まない、こういうことを、至れり尽くせり、がんじがらめに、実に八方から条件をつけておるので、これは単純無条件なる無償供与ではなくて、これは三十年に先輩方のおやりになった条約第二条の精神というものは、形式は変わったかしらぬ、しかし、その精神というものは、すなわちサブスタンスというものは、実質というものは厳として今回の新しい協定に生きている。しかも、タイ国は喜んで、日本とタイ国との間の貿易関係、あるいはタイの経済開発というようなものが日本国の協力によって大いに進展をするということなのでございますから、私は、これはそれこそ大所高所から、このことに反対されるのはどういうことか、野党の方は一体どういう対案をお持ちなのか、実はこういうふうに考えるのでございます。  そこで、最後に、時間も参りましたから、外務大臣から、日本とタイとの現在の関係、それから、今回の協定が成立いたしまして、これが動き出しましたときにはどういうふうな利益があるのか、そういう点を明らかにしていただきたいと思います。  それから、もう一つ私は関連をして申し上げますが、賠償と伴って各国と経済協力の協定があるのでありますが、こういうものがだんだん動かないのじゃないかというような議論も一部にあるようでございますけれども、これらは一つ大いに努力をして、やはり一日も早くりっぱに機能するようにしていただきたいということ、これが第一。それから、第二には、この委員会では、実にりっぱな先生方から、先般も沖繩問題等について大へんりっぱな御議論があった。ところが、私は、いわゆる議論とともに実行ということがきわめて大切であると思う。さっき大蔵省に対しては一言苦言を呈したのですが、実行できないものでは何にもならぬ。絵にかいた餅ではだめだ。どうか、これからの外務委員会の御議論も、私は先輩の先生方にお願いいたしますが、一体実行という点から言ってどうであるか、現在の国際情勢その他から言って、実行という面を考えるならば、われわれの議論というものも、議論は議論、実行は実行として、やはりそこに限界のある問題がたくさんあるということを、今度のこの一事からも学びとっていかなければならぬのじゃないかと思うのであります。  それから、さらに、最後には、ガリオア、エロアはアメリカからのグラントだ、こう言っておる。タイ特別円は、これはインベストメント・アンド・クレジットだ、こう言っておる。ところが、実質はこれはちょうど逆なんだ。アメリカは日本よりレベルが高い。日本はアメリカに比較しては低いが、タイよりは高い。われわれは、高い立場から低い立場を見る場合には、やはりそこによほど心してやるべき問題があると思うのであります。私が冒頭申し上げたように、民主主義の原理というものは、常に自分の立場だけに固執せず、相手の立場に立って考えるところに進歩発展の原動力がある、かように思うのでございまして、どうか一つ大臣から、今最後に申し上げた点につきまして御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○小坂国務大臣 いろいろ御質問にあわせて御意見を拝聴いたしまして、深く感銘をいたしました。全く同感でございます。実は、このタイの三十年協定は、七月九日に署名を行ないまして、八月五日にはすでに批准を終わっております。非常にスムーズに諸般の手続を了したわけでございますが、そこには、正示さんの仰せのように、非常にこちらはうまくいったという感じが強かったと同時に、先方にしてみれば、先ほどもお話がございましたように、気がついてみたら貸金がいつの間にか借金になっていたというような事情を生みましたかと思うのであります。しかし、あの第二条に投資またはクレジットの形式によってという言葉がございますが、これは今言うように先方が動かなかったわけでございますが、かりに動いて、これが投資され、あるいはクレジットの形になって先方に行った場合に、先方が返さなかったらどうなるか、この規定も実はないわけであるのでございます。でございますから、三十年から今日までの七年の間、このことが動くべくして動かなかった。その間には、日本としてはそれだけの金を動かしておったことになるわけでございます。それだけたったのだから、ここで一ぺんに払うということは向こうの強い要望であったわけでございますが、いろいろ話をいたしまして、御承知の通り、八年間に払う。日本の財政事情等も勘案いたしまして払っていくわけでございますが、一ぺんに九十六億円ここに払いますのに比較いたしまして、こう分けて払って参りますと、正示さん御専門でよくおわかりと存じますが、利子を考えていけば十何億か安いものになるわけなんで、これは若干こまかい話でおそれ入りますが、日本側にとっては、タイ側の言うほどには妥協してないということにもなるわけでございます。しかし、とにかく、九十六億耳をそろえて出します、こういうことですから、タイ側は大喜びなわけです。しかも、それは、金ではございませんで、日本の物資、資本財あるいは役務でいくわけでございます。そういうふうになって参りますと、それがタイ国において動いて、タイ国の経済興隆の基礎にどんどんなっていく。これはタイとしては日本との関係をますます大事に思う原動力になるわけでございますから、物質的なものもさることながら、より多く精神的な寄与をすることは申すまでもないと思います。  そこで、タイとの貿易でございますが、一九六〇年度は一億一千百一万ドルでございます。わが方はそれだけ輸出するわけでございますが、タイ側は六千八百八十六万ドル、差引四千二百十五万ドル日本側の出超になっております。日本が出超になっておりますので、タイ側としては、このアンバランスの点を非常に言っておるのでございますが、それを越えて、この特別円の関係が妥結したら、もっともっと日本から物を買おう、こういうことでございます。なお、池田総理と向こうのサリット首相との会談におきましても、タイ側は、今までどこの国にも見せたことのない鉱産物の調査を、これは日本にはお見せいたします、御一緒に調査いたしましょう、こう言っております。なお、先方のタナット・コーマン外務大臣から、これは日本の新聞社の方に語っておられますが、日本とタイ側とは無限の協力の道が開けた、通商航海条約を初めとし、通商の分野でも、技術の分野でも、資本の分野でも無限の道が広がったと言って狂喜乱舞いたしておるのであります。まことに、われわれといたしますれば、これで向こうが喜んでくれるなら大いに協力のしがいがあることを思う次第でございます。  さらに、租税協定でございます。これは、今まで日本の商社が租税協定ができませんために非常な難渋をいたしておりましたが、これはすでに二月六日から先方は協定に入っております。これができますれば、さらに、東南アジアの日本人が今一番多く行っておりますタイにおいて、日本というもののいわゆるブームができる。このブームが広く東南アジア全体に広がって参りますことをわれわれは大いに期待いたしておる次第でございます。  どうぞ一つよろしくお願いいたします。

森下國雄自由民主党

○森下委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十七分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗