予算委員会 第4号
- 発言数
- 162 件
- 登壇者
- 22 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1961/10/16
会議録
○委員長(小山邦太郎君) これより予算委員会を開きます。 昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)、以上両案を一括して議題といたします。 質疑を続けます。北條雋八君。
○北條雋八君 私は、主として農林行政について、農業構造の改善、米価問題、林業政策、河野構想を伺いまして、最後に、輸出の振興について若干質疑をしたいと思います。制限された時間内で多くの質問をしたいと思うのでありますの、で、質問はなるべく簡単にいたしますけれども、御答弁はできるだけ詳細にお願いしたいと思います。 第一は、農業構造の改善に関しまして、四点ばかり伺いたいと思います。その一点は、経営規模の拡大がはたしてできるかどうかということにつきまして、総理大臣並びに農林大臣に伺いたいと思います。農業基本法は、その関連法案がまだできでおりませんので、実施の段階に入っておりませんけれども、農業基本法の根本の目的とするところは、農業と他産業との所得格差を少なくするためには、農業生産の選択的拡大と農業経営の近代化を強力に推進していく、農業基本法の第十、五条にありますとおり、できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように育成強化をするということが骨子であると思うのでございます。御承知のとおり、わが国の経済は、ここ三年の間に非常に高度の成長をいたしまして、最近ついに景気調整対策を講じなければならないまでに至ったのでございます。農業従業者人口は、政府の見通しどおり、自然に第二次、第三次産業に移動しまして、農業従事者数は、逐年その数を減少しておりますけれども、農家の戸数は、その減少がきわめて少ないのでございます。農業センサスによりますると、過去五カ年間における減少率は、農業従卒者八・二%の減少に対しまして、農家の戸数は、わずかに〇・三%減にすぎないのであります。耕地の移動の統計から見ましても、これは明らかでありまして、今後もこの傾向はあまり変わらないと推測されるのであります。もしそうだとすれば、農業基本法の一つの目標であります経営規模の拡大によって農業所得を増加させるというようなことは、将来も期待することが困難と思うのです。政府は経営規模を拡大させるため、どういう施策を持っておられますか。総理並びに農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(河野一郎君) 御指摘のとおり、経営規模はなるべく拡大することが望ましいことと思います。しかしながら、あえて無理して経営規模を拡大するということが必ずしも適切であるかどうかということは、私は疑問に考えております。ただいまお話のとおりに、農家戸数は減りませんけれども、農業労力は都市に、他産業に移動しておるということは、御指摘のとおりでございます。これはひとりわが国だけでなしに、世界的の一つの傾向である。これは、道路管理もよくなりまして、交通機関も整備されましたし、また農機具等の導入によりまして、余剰労力が非常に出て参るようになった。これらが他産業の方面へ一部労力を移動いたしまして、そうして農家の収入を拡大いたしておるという非常に望ましい傾向におる。そうする、うちに、基本的に農業経営もしくは農業構造の改善に政府といたしましては力を注ぎまして、そうして理想の方向に持っていきたい、こう考えておる次第であります。
○国務大臣(池田勇人君) 農林大臣がお答えしたとおりでございまして、つけ加えることはございませんが、やはり農業の近代化、構造の改善ということになりますると、やはり規模、それから経営の多角化等が必要であると思います。こういう点につきましては、農業基本法の精神を生かしまして、その方向に向かって進んでいきたいと思います。
○北條雋八君 その第二点は、老齢化、婦人化した農家に近代化の農業が期待できるかどうかという点につきまして、総理大臣並びに農林大臣に伺いたいと思います。 最近地方工業の振興というものはまことに目ざましく、既設工場地帯を初め、今まで農村地帯であった地域まで、大工業あるいは中小工場が新設、増設されまして、工場ブームの現象を呈しております。従来雇用機会に恵まれなかった農家にそのチャンスを与えまして、農外所得を増大して、他産業従業者との所得格差を縮める上からも、また、他産業に転業し、離農することによりまして、今申しました経営規模の拡大もでき、基本法の目的も達せられるわけでありまするけれども、しかし現実には、これら他産業に流出する労働力のほとんど大部分は、青年、若年層の者であるために、農家の零細化、兼業化は一段と進みまして、農村におきまする労働力というものは、婦人化老齢化となりまして、近代的な農業への適応性を著しく困難にしつつある現状でございます。農林大臣の所信にもありますとおり、農業構造の改善事業を強力に推進するには、まず農業技術の飛躍的な高度化をはかる云々ということがあります。そのとおり、農民も高度の技術の習得を必要といたしますし、多額の資本の投下も必要でありますゆえに、これらの零細規模の農家や兼業農家の片手間にやれる仕事ではないのであります。一人立ちのできる、頭脳的にも、また肉体的にも経営能力のある自立農家が積極的に実行しなければならないという性質のものであると思います。ますますこの増加傾向の見られる零細農、しかも老齢化、婦人化するこれら農家に対しまして、協業の助長、経営の近代化を、どういうような施策によって促進しようとするのか。総理並びに農林大臣に御意見を伺いたいと思います。
○国務大臣(河野一郎君) ただいまの点につきましては、すでに他の機会にも申し上げたことでございますが、私といたしましては、現に非常に農村の労力が老齢化、婦人化したという点もその通りでございますが、しかしながら、今年度の稲作について調べてみますと、決して稲作面積が減少いたしておりません。昨年度よりも実はふえておるのでございます。そういうふうに、農業経営そのものは、決して手を抜くとか、粗放になるとかというような事実はないのでございます。これは、一にかかって機械化したとか、もしくは技術化したとかという点が既存の面においては現われておると思うのであります。しかし、それだけでは適当ではないのでございまして、今考えておりまする農村の構造を改善していこう、そこで、そこに新しい技術を取り入れた農業、つまり果樹、園芸、蔬菜ないしは畜産というような、技術を主体にした農業に切りかえていく、そこに農民、農村青年に農業に希望を持たせて、そうして固定した農業を建設していきたい、こう考えております。
○北條雋八君 しかし、場所によりましては、やはり地方工業化の進展のために農業構造を改善する契機とならない。逆に青年、若年者労働力を失うことによりまして、農地を荒廃させ、農業を衰退させるというおそれがあるのではないかと思うのです。「農政調査時報」によりますと、四日市あるいは諏訪地方、それから黒部市、この三つの例をあげて報告してございますけれども、その結果によりますと、やはり地方工業化の進展がかえって家族経営農業を衰退させて、そうして農業基本法の目的に逆行さしておるという所見が述べてあるのでありますが、この三カ所についても、そういう心配はないのでございますか。
○国務大臣(河野一郎君) 御指摘のように、四日市とか黒部とか諏訪とか、それぞれ異なった原因によるのでございますが、黒部は、電力のために、非常に高賃金の労力が一時的に要求される。もしくは四日市とか諏訪地方においても同様のことがいえると思うのでございます。これらは、道路工事であるとか、鉄道の工事であるとかというもので、局地的に一時的にそういうものもあることは事実であると思います。ただ私は、そういうものは別にいたしまして、大都市周辺におきまして、または新たに急激に工業都市として発展する所等を除きまして、そういう所につきましては、別途また考究するということにいたしまして、一応全農村について構造改善を一つ明年度からやっていきたい。そこに基本的な計画を立てて、その上に安定した農業、近代化した農業を育成していくようにいたして参りたい。まあ、今御指摘の点は特殊地帯でございまして、これらが安定した上で、農業にしても施策をするということでなければ、ちょっとやり方がないのじゃないかと、こう考えておるわけでございます。
○北條雋八君 第三点は、工場の分散について、通産大臣、農林大臣に伺いたいと思うのであります。工場の地方分散、地方工場の新設にあたりましては、労働力の調整を通じまして、工業の種類、場所の選定をいかなる計画と構想をもって定めるのか。また、工場の設置に対しまして、政府は、農家の労働力の活用方法や、残った農家の将来性という点を考えて、いかなる立場に立ってこれを監督するのか。知事が許可する前に、通産省、農林省との協議連絡が非常に必要だと思いますけれども、どういう順序と手続によって適正配置をさせようとするのか、伺いたいと思います。
○国務大臣(河野一郎君) 御承知のとおり、今の農地法におきまして、五千坪未満は一応県知事に、五千坪以上は農地事務局長にその権限を与えて、農地の転用を認めておるわけでございます。ところが、最近の傾向、特に昨年から今年度にかけまして、急激に設備投資が過剰になりまして、農地の転用が今お話のような傾向でございます。そこで私は、この点を特に慎重にいたすようにということで、その各府県知事もしくは農地事務局長に対して、意見を具して私に申し出するように、その上でよく慎重に検討していこうということで、まだ一件も参っておりませんが、参りましたらば、通産大臣とよく相談をして、そうして通産省の方から適当な行政指導をしてもらいたい、こう思っておるわけでございます。
○委員長(小山邦太郎君) 北條委員に申し上げますが、あなたの通産大臣に対する御質問は、あなたの御了解を得て、今、通産大臣が炭労と会見中でございまするので、さっそく登院してお答えのできるように通告をいたしましたので、しばらく……。
○北條雋八君 はい。そういうお話でありまして、知っております。 次に、経済成長と所得格差の関係につきまして、総理大臣に伺いたいと思います。池田総理の言われる、経済成長が伸びるときにはどんどん伸ばすという政策でありましては、農業と他産業従事者との所得格差はますます是正できないのじゃないかというふうに思うのであります。各種産業が均衡のとれた経済成長でなければならないというふうに思うのであります。三十五年各産業部門の所得の伸びを見ましても、国民所得の伸び率が二八・五%であります。また、それに対して製造業部門、これが二五・四%、それから建設業部門、これが二三・五%であるのに対しまして、農業部門の伸び率というものは、わずかに四・四%にすぎないのであります。このように、部門別では著しく差がありまするのみならず、近年経済成長に伴う労賃あるいは物価の上昇で、農家の所得率は非常に低下しているといわれます。これでは、農業と他産業との所得格差は、経済成長が大きくなればなるほど開きが大きくなると思うのであります。そこで、経済成長にもある限度を考えるべきではないかと思います。池田総理は、均衡のとれた成長を期すべきであるということは、しばしば申されておりますけれども、その限度につきまして、具体的数字でどのくらいに考えておられるのか、伺いたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 経済成長の段階におきまして、第一次産業が第二次、第三次産業の伸び率に比べて低いということは、これは歴史もまた東西各国にその実例がある。そういう宿命的な関係にあるのであります。したがいまして、その宿命的な後退性の農業を、できるだけ第二次、第三次産業のような伸び方に近づけるということが一つの方法であると思います。そうしてまた農業自体の所得ということもさることでございますが、われわれは農業従事者の所得ということを主眼に考えております。したがいまして、農業自体の所得を伸ばすと同時に、その農業の経営を合理化し、多角化し、適正な規模化して、そうして一人当たりの所得を他の産業の所得と均衡とれるようにしようというのが私の考えでございまして、農業所得の伸びを第二次産業の製造工業や建設業のような伸びにしようということはとうていむずかしいことでございます。だから先ほど申し上げましたように、農業自体をよくする従事者の所得をふやそう、こういうことに帰一すると思います。
○北條雋八君 そうしますと、農業従事者の所得を工業従事者の所得に一致させようというのではなしに、その開きをできるだけ縮めていこうということでありますか。
○国務大臣(池田勇人君) 農業基本法において均衡のとれるようにしようと、こういうことでございます。で、個人々々で申しますと、中小企業よりも農業の経営が合理化、多角化したときには農業の方がいい場合もございます。大体各産業別に均衡のとれたものにしようという考えでございます。
○北條雋八君 次に、米価問題について伺いたいと思います。まず第一に、米価審議会のあり方について、総理並びに農林大臣に伺いたいと思います。 三十六年産米価については、政府は審議会の答申のいかんにかかわらず、政府与党案をもって米価を決定しまして、米価審議会に対する諮問が単に形式に行なったように見受けられ、まことに遺憾に思うのであります。本年度の米価は初め農林省で専門的に精細な調査資料に基づいて大蔵当局とも慎重に打ち合わせてでき上がった政府案一万七百七円五十銭が、与党の米価問題懇談会と内閣の関係閣僚懇談会に付議されまして、そうして第二次案、第三次案、第四次案とだんだんに値段がつり上げられまして、ついに原案より六百四十七円値上げして、これを米価審議会に諮問された。しかも、非常に急いで答申を求めたように承知しておるのであります。審議会では委員のうちから、ことしの米価は政治的な配慮があまりにも強過ぎるとか、あるいは米価が政党の政略の材料になることは許せない、と言われました。また、米価が政治性に左右される非を追及批判されたようであります。また、米価の政府諮問案は閣議で最終的に決定されたようでありますが、諮問のあとでさらに変わったという例が今までない。これでは審議する余地はないと、米価審議会の存在を無視する政府の態度に非常に不満を表明されたようであります。それで中立の立場にある学識経験者の委員六人が辞表を呈している。その辞表の理由の中にも、明らかに審議会の存在意義を失ったということが表明されておるのであります。そこでお尋ねいたしますけれども、今までに審議会の方針によって政府諮問案の米価が変更されたという例はないのでありましょうかどうか。また、政府の諮問案が計数的にはっきりきめられる前に審議会に対して諮問したということはないのでしょうか、どうでしょうか、これを伺いたいと思うのです。
○国務大臣(河野一郎君) ただいまのような御意見、御質問が出ることも無理からぬことと私自身も思うのでありますが、実は前に農林大臣をいたしましたときに、私も同様に考えまして、この委員会に対して、明年度米価はいかに決定したらよかろうかという諮問を出したことがございます。そういたしましたところが、委員会のほうから、そういう諮問案では困る、具体的に数字をあげて諮問してくれなければ相談のしようがないという御意見で、やむを得ず私は政府部内において、また、関係方面の十分御意見を拝聴いたしまして、農林大臣として責任のある米価をきめまして諮問いたしました。かように農林大臣としてこれが適当な米価であろうといって一ぺんきめまして、これをもしみだりに変更するというようなことになりますれば、農林大臣の責任上私は責任とれぬいじゃなかろうか、こう思うのであります。したがって、委員会に対してどういう点を考慮すべきか、いかにしたらよろしいかという諮問をすることが適当と思って私はいたしたのでありますが、そういう前例がございまして、自来、米価を政府が定めまして、農林大臣としては各方面と折衝いたしまして、そうしてこれでいいか悪いかという諮問をいたしておることが慣例になっておるのでございます。そういうことでございますから、結論におきましては、やむを得ず政府が諮問いたしました米価で決定するということにならざるを得ない結果になっておるのでございます。このあり方のよしあしについては、私自身にも意見があります。しかし、慣例としてはそういうことになっておりますし、また、委員会の態度がそういう態度で今日まできておりますので、今日のような、今年のような結果になりました。これは根本的に一ぺん考え直したい、こう私は考えております。
○北條雋八君 いろいろな審議会がたくさんありますけれども、ほかの審議会と違いまして、国民生活に最も重大な影響を及ぼす米価をきめる米価審議会のあり方としては非常に間違っておるのじゃないかと思うのです。で、諮問するということは、委員の意見を尊重してこれを参考にする意味でありますから、きっちりした計数的な諮問案でなくてもいいから、政府が米価を決定する事前に、これが算定の基本的考え方について貴重な答申を求めるというのが正しいのじゃないかと思うのです。で、今農林大臣から御趣旨を伺いましたように、将来この審議会の委員の構成あるいはあり方について改正をなされる御意思があるのかどうか、伺いたいと思います。
○国務大臣(河野一郎君) 私はこの機会に十分に検討をいたしまして、何らか新しい考え方をすることが適当じゃないかということで、せっかく検討いたしておるわけでございます。
○北條雋八君 次に、米価について、主として農林大臣に三点ばかり伺いたいと思うのです。 第一点は、三十六年産生産者米価は、最初の政府案に比べますと、石当たり六百四十七円と大幅に値上げされ、決定されたのでありますけれども、生産者米価の引き上げにつきましては、農基法の建前からしても、農業従事者と他産業従事者との所得格差の是正が必要であるのでありますから、妥当なものである限り反対するものではもちろんございません。しかし、全国六百万農家の中に米作農家はその八九%であります。戸数にしますと五百四十万戸であります。そのうち米を作っている農家は、さらにその六四%の約三百四十万戸くらいでありまして、さらにそのうちの米だけの販売金紙が十万円以上という農家に至りましては、わずかに九十万戸出ないのであります。パーセンテージにすると一四%にすぎないわけであります。したがいまして、生産者米価を上げれば上げるほどその恩恵を受ける農家はこうした比較的裕福な農家でありまして、これと反対に約百五十万戸の配給を受ける農家や、あるいは百万戸の自給農家という、この合計二百五十万戸という農家はむしろ値段が上がれば被害を受ける側に立つものだと思うのです。また、このたびの生産者米価の値上がりによりまして農家が受けるその増収見込み額二百七十億円のうち、百五十億円は一ヘクタール以上の米作農家に帰りまして、八割の一ヘクタール以下の米作農家の人はたいした恩恵も受けませんで、かえって課税領がふえるとかというような結果を受けると思うのです。そこで、高米価によりまして農業所得の増大をはかるということは、農民各層間の所得格差をよけい作っていくという心配はないのかどうか。所得の均衡ある増大をはかる方法ではないというふうに思うのでありますが、その点につきまして農林大臣の御意見を伺いたいと思います。
○国務大臣(河野一郎君) そういう御意見をなさる方はございますけれども、私は実はそうは考えないのでございます。と申しますのは、米を売る農家は非常に少ない、高くして恩恵を受ける者は非常に少ないという御意見でございますが、私は、農業の基本農家所得の基本は米価にありますことは御承知のとおりであります。一般農産物の価格が、米が幾らになったからこっちはこのくらいだ、あれもああすべきだというようなことで、何にいたしましても農家経済の基盤が米価にあります。米が高いからといってほかの農家が迷惑する、これは今お話のようにそれで国家負担が多くなるから、それが税金ではね返ってくるじゃないか、そこまでいきますと、それが農家の税金にまでどのくらいはね返るかというようなことになりますと、これは私は非常に少ないものである。一般農家の計算にしますれば、米作農家でない者は配給によって非常に安い米で恩恵を一般国民と同様に受けておる。そうでない者は自給自足でこれは別に利害がない。しかし、これが幾らかでも再生産を補償するように決定されることによって初めて農家経済の基盤が確立するということになりますから、私は、今御指摘のようなことには農家の実情はなっていないのじゃないか、こう考えております。
○北條雋八君 次に第二点として、このたびの米価審議会でも農業基本法が農業と他産業との所得格差をなくすことを究極の目的としている点をよりどころにしまして、そうして諮問米価がまだまだ安いと主張したり、あるいは食管会計の赤字は農業政策費の変形にすぎないから多くなってもやむを得ないじゃないか。そうしなければ所得倍増計画に基づく農民の所得は補償されないというような議論も出たようであります。米作農家の方々の気持ももちろん十分理解できるのでありますけれども、ただ米麦によるところに問題があるように思います。そこで政府にお伺いしたい点は、基本法の精神は、生産性の増大と選択的な拡大によって所得格差の是正をほかろうとするものでありまして、すなわち、従来の米麦の偏重主義の農業から果樹、畜産あるいは高級野菜等将来成長農産物への構造改善を意味するものでありまして、成長部門への転換政策、なかんずくその価格政策を明確に打ち出さないで、そうして米価の値段のみを大幅に引き上げるということは、農民の米作に対する執着心を強くさせて、そうして基本法の根本の精神と矛盾することが考えられないかどうか、そういう意味におきまして総理並びに農林大臣の御所信を伺いたいと思うのであります。
○国務大臣(河野一郎君) 農産物の価格の問題でございますが、私は今年度の米価の決定が異常に高過ぎるという考えはないのでございます。適切な価格の決定であると。そこで、こういうふうに米価を引き上げることによって選択的拡大と申しても、他の部門への転換に支障を来たすのじゃないかと、こういう御意見でございます。私は、この点につきましては、一万一千五十二円五十銭という米価を基盤にいたしまして、さらにこれよりも他の選択的拡大をする農業が収入は増大するということに持って参ることが農業政策の基盤でなきゃならない。その意味におきまして、今適当でないかもしれませんが、斜陽農業とまで呼ばれておりまする養蚕にいたしましても、実は私は米作農家よりも今日の一俵の生糸二十三、四万円という値段でありますれば、かえって収入は多いと、そういうふうに他の農業についてみましても、畜産その他新興の農業はいずれも価格、技術もしくは設備等の改善によりまして農家所得を増大して参るようにするというところに、農業の所得の増大して参ることができるのでありまして、今お話のようなふうには考えていないのでございます。
○北條雋八君 そうすると、この成長農産物の価格を総合的におきめになるという、そういうお考えは今のところないのでありましょうか。この新農政を正しく進めるためには、また基本法が正しく理解されるようにもっと一段と努力が必要でありゃしないかと思うのであります。したがって、農政審議会にこういうものこそ諮って、そうして成長農産物の総合価格政策をこの際打ち出すべきじゃないかというふうに思いますけれども、その点につきましてちょっとお伺いいたしたいのであります。
○国務大臣(河野一郎君) 農産物は、御承知のとおり、米麦のようなものでございますと、保管は便利であります。保存に耐えます。したがって、価格政策の対象にいたして取り扱いやすうございますけれども、他のものは、おおむね非常に保管が困難でございます。保管によって品質が低下いたします。したがって、価格政策を適用いたします場合に、非常に困難性がございます。そこで放擲するというわけには参りませんけれども、なかなか困難な問題でございます。だから、第一義的には、需給のバランスを合わすようにして参るということに専念するということが第一で川あると思うのでありまして、政府といたしましては、現に御承知のとおり、畜産物の価格をどういうふうにしてこれを安定するようにしていこうかということについて、法律を用意いたしておることも御承知のとおりでございます。また、冷蔵庫その他の設備をいたして保管を奨励するということについてもやっております。また、野菜物につきましても、話はこまかくなりますが、タマネギあたりはやや保管に耐えますから、この価格政策をやったらどういうことになるだろうということで、明年度あたりからそろそろ試験的に実行してみたらどうかということで、目下研究しておる段階でございます。
○北條雋八君 時間がありませんから、次に進みます。 米価の算定基礎を合理的に決定できないかどうかということについて、農林大臣に伺いたいと思います。生産費及び物価その他の経済事情を参酌して、そうして米の再生産を確保するようにこの食管法で米価の算定は定められております。現在生産費及び所得方式によってやっておりますが、この同じ方式を使っても、政府がやった場合、あるいは全国農業会議所、あるいは農民細く口で計算した場合と、いろいろその結果がまちまちで、毎年ごたごたを繰り返し干ておるような現状であります。また、予約加算とか時期別格差とかは、今の米の生産状況からいたしまして、ちょっとセンスがはずれていやしないかと思われるようなものもあります。そこで、政府は、関係者の話し合いによって、賃金、地価等の算定基礎を慎重に検討しまして、また、加算金等も、米価に繰り入れられるものは繰り入れ、また、廃止するものは廃止しますといたしまして、米価体系をもっとすっきりと合理的なものに改めるべきではないかというふうに思いますが、これに対しまして御意見を伺いたいと思うのであります。
○国務大臣(河野一郎君) 実は、御承知のとおりに、北海道から九州の鹿児島まで米を作っております。その間に、山岡地といい、米作の適地といい、それぞれにおきまして生産費そのものが非常に違っております。そこで、これらをどの程度までとるか、逆に申しますと、収穫量がどのくらいあるものかというところからだけ考えましても、反当五俵、三石程度から反当四石程度まであるわけであります。そういうふうにいたしますから、再生産の補償方式をとるにいたしましても、そういうまず収穫について非常な相違がある、これを八〇%までをとる、九〇%とるというところで、実は団体ごとに非常に値段が違っておる。どれがうそで、どれがほんとうだというわけではございません。そういうふうに、一応学問的に、もしくは理論的に並べる場合、その並べる条件はいずれもいいのであります。しかし、それをどの線までとるかというところで、まず数字が違うわけであります。労働力につきましても、労働賃金を幾らにするというところで、まず非常に違いが出て参ります。そういうことで出てくるものでございまして、したがって、どういうきめ方をいたしましても、今申し上げますように、羅列いたしておりまするものにどういう数字を入れるかというところで違ってくるのでございまするから、私は、これをそのときどきによってどの程度にとることが一番時世に合い、妥当性があるかということできめる。世間これを政治的と申しておりますけれども、私は、必ずしも政治的じゃないのでございまして、そうして一番納得のできる数字でとることがいい、こういうふうに思うのでございます。 また、さらに時期別格差であるとか早場奨励であるとか、もしくはいろいろな要素を加えておるのは適当じゃないじゃないか。これは必ずしも初めに加えました当時の条件が、今日そのまま適当であるかどうかにつきましては疑問もございます。しかし、疑問がございますけれども、これとても、二面におきまして消費者価格を決定いたしておりまする要因等から考えますれば、単作地帯の米をどういうふうに扱ったらよろしいか、単作地帯の農家所得をどうしてみたらよろしいかというような点等を考慮いたしますと、全体の農政の上から申しまして、私は、必ずしも簡単に、これを補償する何であるといたしましても、この所得を急激に変更することが適当であるかどうかということについては、検討の余地があるのじゃないかということで、このままでいいということも主張いたしませんが、変えることがいいということに直ちに賛成するわけに参らない。せっかく常に研究を重ねつつ、その時期に適するようにやって参ることが適当であろうと、こう考える次第であります。
○北條雋八君 そうしますと、予約加算などは、これは米の非常に不足の時代に奨励としてやったわけじゃないかと思うのです。これは現在はもうその必要はないのじゃないかというふうに思いますが、これに対しましてお考えはいかがでしょうか。
○国務大臣(河野一郎君) 確かに御指摘の点はあると思います。しかし、私は、今私の考えておりますることを実行するといたしますれば、また一方、商人の方から青田取引というようなことで、思惑的なものが出てこぬというわけにもという心配が非常に各農村におありでございます。指導者の中にもそういう御心配が非常におありのようでございますから、これはある時期までは農協その他が予約もし、これを奨励して集米して参るということによって、ある時期まで必要じゃないかということも考えておるのでございまして、今後の米の政策をどういうふうに展開して参るか、その展開して参るその過程において、それぞれいろいろな施策が加わって参るということが今後については必要じゃないか、こう思っております。
○北條雋八君 もう一点伺いたいと思います。 米価決定の時期は、予算編成のために、予算編成のときまでにきめるべきものであると思うのですが、それができないとすれば、おそくも植付前に決定すべきじゃないか。農家自身としましても、いろいろ計画上からも非常に因るのじゃないか。予算の合理性からいって、ぜひそうしたいというふうに思いますが、これに対していかがにお考えになりますか。
○国務大臣(河野一郎君) 法律で規定いたしておりますように、生産者の生産費を補償して参るということでございますれば、なるべくおそいほうが収穫が明確になって、そうしてきめたほうが合理性があります。さればといって、今お話のように、生産計画その他を立てる上におきましても、どうしても植付前にきめることが適当である。予算編成当時ということも一つの議論でございますが、あまりに物価指数その他の点からいって早過ぎる、実情に適さぬ点がある。したがって、予算米価は一応予算米価として見込んで立てておきますけれども、実際きめることが一番私は適当なのは植付前、六月ごろにきめる。現行やっておりますことはおくれてはおりますけれども、多少早目に、六月ごろにきめるのがいいんじゃないか。たまたま国会でいろいろな問題が、国会終了当時非常に立て込みましたので、つい政府のほうが、決定がだんだんズレてきておりますけれども、なるべく努力いたしまして、早目にきめるということが適当じゃないかと、こう考えております。
○北條雋八君 次に、林業政策について三点ばかり伺いたいと思います。 第一は、価格の緊急対策について農林大臣から伺いたいと思います。木材の価格の異常な急騰に対しまして、政府は木材価格緊急対策を講ぜられたのでありますけれども、私は今回のこの処置が、ただ当面の価格上界を押さえることだけにとどまって、いわばさしあたりの価格の安定対策にすぎないんじゃないかというふうに思うんです。将来まで考えた適正な価格水準に安定させるというものではないと思うんです。農林水産委員会における林野庁長官の説明によりましてもそういうふうにとれるのであります。すなわち、長官は、どこが適正な価格水準であるかという問題はなお検討中であり、したがって、この対策は価格の安定に主眼を置いているのだと言われておるのであります。およそ過去の経験から考えてみましても、経済成長に伴い、木材の需要というものは非常に増大いたしまして、景気の動向に左右させられることが大きいのでありますが、またその反面、供給のほうは、生産のために多大な労力と、広大な地域と長年月を要する生産性の低い点から考えましても、おのずから限度がありまして、需要の伸びに供給の伸びが追随していくことは非常に困難なことと思うのであります。今後わが国の経済成長と森林資源の状況とを考えますときに、木材にかわる代替品の開発と、安価な輸入材の期待ができなければ、この二年はいいとしても、三年後には再び今と同じような事態に立ち至ると思うのであります。そこで、政府とされましては、価格対策として、木材価格水準の、長期的な望ましい高さと趨勢というものを想定しまして、そして、一つには激しい価格の変動を抑制するためと、また二つには、景気の変動に応ずるという、この両方の観点から供給面を考えて、適正価格の安定をはかるべきだと思います。これについての農林大臣のお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(河野一郎君) 今回の施策が緊急な木材の高騰を抑制するための処置でございますから、御指摘のように、これには永久性のものはない。そこで、私といたしましては、緊急な対策を講じつつ、その間に、たとえば外材の輸入の設備として、港湾の整備、もしくは輸送するための木材専用運搬船というようなものを整備しつつ将来の需要にこたえていこうということを考えております。もちろん、これは決して外材のみにそうしょうというわけではないのでありまして、御承知のとおり、わが国は山の面積が非常に大きいことは御承知のとおりでありますが、これに対する施策が、比較的従来政府の施策が国有林の経営に重点を置きまして、全体の林政に多少私は力が及んでいなかったうらみがあったのではなかろうかということを考えつつ、今後国有林、公有林、民有林というようなものを一貫して一つの林道を十分延ばして、そうして奥地山林の開発もしくは植林の徹底というようなところに非常な努力をする必要があるということで、さしあたり明年度といたしましても、従来にない造林計画をやりたいということで、せっかく予算の重点を林政の面に置いておるわけでございます。
○北條雋八君 次に、過伐対策について総理大臣と農林大臣に伺いたいと思います。 今回の緊急対策によると、国有林は二年間で素材で八百万立方メートルの増伐を行なうことになっておりますけれども、これは三十五年度実績の約二割五分以上の増伐であります。そうしてこの緊急対策が終わったからといって、生産量をもとの規模に縮小するということはとうていできないと思うのです。むしろそのころになりますと、もっと一そう増産が要請される見込みが大きいと思うのであります。今後二、三年間はこれで何とかなるといったような、将来の見通しを持たないでは問題にならないと思うのでありますが、河野農林大臣は、伐採したところは全部植林すると言明されておりますが、現在ですら、森林の年間成長量に対して伐採量きがわめて大きいことが問題になっておりますし、また、植林をしても、成長までには少なくとも二、三十年はかかります。最近。パルプ業者などが山を探すのに非常に困難をしておるくらいに資源が払底しておるわけであります。植林しても、これは問題左将来にゆだねただけでありまして、森林蓄積の枯渇がやがて表面化してくるのではないか。また、あわせて国土の荒廃を来たし、また、災害の因を将来に残すようなおそれはないかしらんと心配するものであります。これに対しまして総理並びに農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(河野一郎君) 私もその点は十分考慮いたしまして、たとえば今回の木材の対策にいたしましても、あわせて林道の開発を伴いまして、奥地林道を開発して、そこから切って参る。決してそれが災害の原因にならぬように、また、ただ切れるから切るということのないように、並行して施策をいたしております。また、そういうことが三年先からどうなるという御指摘でございますが、御承知のとおり、今回の木材の高騰は、設備の急激な増大から木材に対する需要が急激に増したということが主たる原因であると私は思います。それは最近の少し行き過ぎを多少是正しようというようなことから、また、われわれの緊急施策によって木材は価格が安定しておる。ごく最近は、室戸台風で多少また刺激を受けておりますけれども、全体的には先行き木材は安定し、もしくは弱含みであるという傾向になっております。おそらく私はこの傾向は順次深まっていくのではなかろうかと思っておるのでございまして、この間におきまして、ますます林道を十分に開発いたしまして、そこに山林の利用度を増大して参ることによって、まだまだ日本の山林は十分に利用する余地があるというふうに考えております。価格の問題は林道の開設、利用度の増大ということでやって参りますことによって、私は今御指摘のような心配なしにいけるのじゃなかろうか。特に最近どういう材種をどういうふうに処分することによって、どういうふうな伸び率が出てくるかということの研究が非常に進んでおります。従来の三十年たたなければ丸太にならないというようなものは、二十五年でいいようになるというような研究も、実は相当に林業試験場で研究が進んでおりまして、肥料をやるというようなことも実はやっておりますわけで、従来の森林利用の観念が相当に変わって参る傾向にありますことも、私は相当楽みを増してくるのじゃないか、こう考えております。
○北條雋八君 時間がありませんので、農林関係は委員会の方に譲ることにいたします。 最後に、輸出の振興につきまして二、三お尋ねしたいと思います。国際収支の悪化から、政府はその根本である経済成長の行き過ぎ是正のため、財政金融の引き締め、輸出の振興、内需の抑制、設備投資の削減等、いろいろ手を打たれておることはよく了解するのでありますが、そこで政府として最も重視されている輸出の振興について若干関係各大臣にお尋ねしたいと思います。 その第一点は、輸出増強の見通しについてであります。八月十八日輸出振興対策が経済閣僚懇談会で本ぎまりとなりまして、金融的に前進した助成策、すなわち延べ払い、保険率の引き下げ等が講ぜられております。これに対して業界では好意を示したのでありますけれども、一方政府の輸出振興策といえば金融、保険、表彰などきまりきった対策しかとられていないという批判があります。昨年政府、業界は米国の景気回復に非常に期待していたようでありますが、ことしに入って米国の景気が漸次好転してきましても、期待したほど輸出は伸びません。現在輸入は伸び率一〇・三%に対しまして三倍近くもなっておりますのに、輸出は九・三%の見通しに対し、わずかに六・三%しか伸びていないというありさまであります。最近の報道によりますと、米国の金保有高は戦後最低に落ちたと言われます。ドル防衛を一そう強化することも考えられ、また化学繊維、アルミ、ミシン等、一般に価格引き下げの傾向もうかがわれまして、全般的需要減退の心配もありますが、一方わが国輸出業者としては、貿易の自由化に対応していかなければならないとともに、人件費の高騰、人手不足に悩まされ、特に中小企業においては、なみなみならない苦労をしている状況で、今後輸出振興はまことに容易なことではないと思うのです。 そこで、金融的の措置だけでは輸出の倍増は期待できないと思いますが、政府はいかに考えておられるのか。この際特に重点的に考えておられる対策をお示し願いたいと思うのです。 また十一月の日米貿易経済合同委員会では、何を重点的に議題とされて審議されるのか、またいかなる心がまえをもって臨まれるのか、外交関係でありますゆえ、差しつかえない範囲で総理並びに通産大臣にお答えを願いたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 通産大臣がお見えになって御答弁願うのが適当だと思いますけれども、石炭の方に出ておられますので、私からかわって答弁いたします。 輸出貿易を促進して参らなければならぬということで、何か画期的な手があるかということが御質問の中心だと思いますが、ただ一つだけで画期的な手があるというわけには、これは御承知のとおりなかなか参らぬのでありまして、各種の施策を総合して、そうして輸出を奨励していくということをやり、輸出業者が相当国内に売りますよりもめんどうな手続、事務的にもめんどうな手続でこれをいたすわけでありますから、そういう意味において輸出マインドを非常に造成していく、できるだけ輸出の仕事に励んでていくということを一面ではして参らなければならぬと思います。同時に国内の景気をある程度抑制することもこれはやむを得ない輸出の奨励になろうかと思います。税制面あるいは金融面において十分な刺激的な措置をすることも当面必要があろうかと思うのでございまして、これらの問題についていたしますと同時に、輸出万般の保険制度、その他輸出を円滑に振興する制度を通産省としても十分お考えの上でこれを進めております。 ただいまお話のように、日本貿易の大宗、しかも赤字の原因が対米貿易に主としてあるように見られるわけでありまして、したがって、対米貿易の問題は相当重要でございます。アメリカの景気がどう動くかということを予測することは、なかなか困難でございますけれども、私どもといたしましては、少なくもこの七、八月ころには底をついて、上昇過程にあることは事実でございまして、ただ、先般も加納久朗さんが私に、アメリカは来年は史上空前の景気がくるのだというようなことを私に言って、お前、あまり消極的じゃいかぬぞと言われましたけれども、私はそれほどアメリカの景気がくるかどうかということについては、どうも加納さんほど強気にはなれないのでございますけれども、しかし、そうかといって、アメリカの景気が逐次上昇していきつつあることは、これは事実でございまして、そういう意味におきまして、対米貿易は過去の歴史から申しても、アメリカに左右されることが多いのでございますから、増加して参ると思います。ただ、今後市場の開拓という問題については、相当各方面にいろいろな手を打って参らなければならぬのでありまして、市場の調査等最近では学問的に相当な研究をしながら、各国の貿易業者が、あるいはメーカーが努力をいたしているのでありまして、そういう面につきましては外務省方面、通産省方面がそれぞれ御担当願いまして、十分な市場の拡大あるいは市場の状況の調査というものに対して全力をあげていただいて、そうして民間の貿易業者を側面から助けていく、メーカーを側面から助けていくということに相なろうと思います。 また、今日の低開発国におきまする開発計画の促進というものが、やはり日本貿易の将来の一つの支えになることは当然でございまして、それらの問題についても十分な考慮を払って日本としては参らなければならぬと思います。そうした総合的な対策の上に立って、当面の問題を解決しながら、恒久的な貿易の増進に向かって日本の力強い歩みを進めて参らなければならぬと、こう存じております。
○国務大臣(小坂善太郎君) 日米貿易経済合同委員会は、この席でも総理から御答弁がありましたように、目下議題について両国で調整中でございます。しかし、大きなねらいというものは、やはり最近のドル防衛に関連して、非常にアメリカ国内に保護貿易の思想というものを持つ者が勢力をある程度持ってくるようになった。その事情について非常に日米の貿易関係からみて、自由を世界に向かって叫んでおるアメリカとして、もう少しこちらの態度というものをよくわからせるということに重点があってよいのではないか、こういうふうに考えております。国務省当局は十分これをわかっておると思いまするけれども、やはりその他の関係各大臣において実際に日本に来てみて、そして日本の事情というものをよく認識してもらうことによって、大きな目から見て、日米貿易というものについてどうすればいいかという認識を深めることができると思うのでありまして、こういう点にねらいを置いていくべきだと考えております。
○北條雋八君 輸出貿易拡大のためには政府、民間が一体となって協力して、総合的、長期的な対策を講じなければならないと思うのであります。ただいま伺いますと、そういう施策も考えておられるようでありますが、今度箱根で日米経済貿易委員会というものが開かれますが、これは安全保障条約締結以来初めて第一回に開かれる意義のある会合だと思いますから、どうぞしっかり対米貿易について話し合いをして、日本に有利のように御努力を願いたいと思います。 なお輸出の中でも重化学工業品の占める割合が日本は非常に少ないように思うのであります。西独、米国、仏国などに比べるとほとんど半分以下になっております。その点なども将来大いに考えていただきたいと思います。 時間がございませんので、簡単に第三点として、外国の留学生及び研修生の取り扱いにつきまして外務大臣、文部大臣に伺いたいと思います、通産大臣おられませんが。今日本に約四千五百人の留学生がおりまして、そのうちの大半は私費留学生で、残りが政府の招待留学生制度によって国費で招いておる者と、賠償の一部として呼んでいる者であるのです。その大部分が東南アジア、中近東諸国の者と承知しております。また海外から受け入れておる技術研究生も今まで約三千人に及んでおるのではないかと思います。これらの留学生は、あるいは研修生は自国においてはいずれも優秀、有能な人で、帰国すればいずれもそれぞれの担任分野で指導階級の地位についている者であります。したがって、これらの人々に対する取り扱いにつきましては、日本の将来を考えても、十分手厚く、親切にできる限り優遇すべきものと思うのでありますが、ところが新聞で報ぜられたように、在日留学生に対する補助金が四カ月もおくれて、留学生の間に非常に不満な訴えがあったとか、あるいは日本の在外公館から、日本の留学生制度が海外で非常に評判が悪いと言っている点を聞くのであります。事実そういうことがあるのですかどうか。その点を一つ伺って、それからまた実際あったとすれば、至急それは検討、改正していただきたいとともに、かつて日本に来た中国留学生が反日家を養成するような結果になって、逆効果になるようなこともありますから、その点お調べを願いたいと思います。 これは一例でありますが、インドのバークラという発電所の建設に、米、英、西独、ユーゴに伍して日本が他国に比べて割高な機械にもかかわらず、他の四カ国よりも一番多く機械を売りつけているのです。モーターなどは五基のうち二基、タービンは五基全部日本の製品が使われております。このことは、インドの若い技術者が日本に来まして、同じかまの飯を食いながら、日本の機械になじませ、また日本の機械工業の水準を知ってもらっておったから、その努力が実ったものであると思うのでありまして、こういうことが結局日本の将来の輸出に影響をしてくると思うのであります。日本の将来の輸出市場、特に重化学工業製品の輸出貿易の拡大をはかるために、留学生、研究生の将来に期待されるところが少なくないので、こういう留学生の取り扱いを今後もっと慎重に取り扱って行くべきだと思います。この点につきまして外務大臣、文部大臣に御答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) お話のとおりに、せっかく日本に留学された方が、日本からよい印象を持って帰れないというようなことがもしありとすれば、これは非常に遺憾なことでありまして、われわれとしてはできるだけ日本に対する親しみを強く感じてこれらの方々にその本国に帰ってもらいたいと、こういうふうに思っているわけでございます。ところで現在お話しのように、政府の関係のものは国費留学生とコロンボ・プラン等による研修生がございまして、留学生が大学及び大学院課程までを対象としているのに対しまして・研修生はそれ以上の一応既成の専門技術者を対象とするもので、研修生に対する待遇は留学生よりも高いわけでございます。外務省の関係予算では、コロンボ・プランの受益国に対する各種の技術援助計画に基づいて毎年約千名近くの研修生を受け入れておりますが、このうち、日本政府が旅費、滞在費等を負担しておりますものについては、従来その地位に応じてA、B、C、Dの四階級に分けております。一日それぞれ二千円、千七百円、千五百円、千二百円という滞在費を給与いたしておりますが、この給与は昭和三十年にきめられたもので、その後の物価高騰等の状況、あるいは研修生の宿舎事情が変わっているにもかかわらず、ずっと固定したままになっているわけでございます。また集団研修の場合、同一の研修内容に対して研修生の待遇がいろいろ変わっているというような不合理が生じて来ておりますので、これらの点を是正するために三十七年度の予算の要求においては、これを一本化して、そうして若干修正をした日当額を要求をいたしているような次第でございます。主としてアフリカ、中近東地域等、比較的日本の技術水準事情にうとい諸国の開発計画責任者を対象としまして、わが国の技術事情を紹介する目的をもって短期視察の制度も新しく導入することにしてはどうかというふうに考えております。これらについては、また高級技術者として別の日当日額、費用を支給するようにそれぞれ大蔵省と今話し合っている次第でございます。
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。御指摘のような留学生に対しましてあまり芳しくないうわさが現地においてあるということも伝え聞いておるのであります。ことに先刻御指摘になりました、この年度初頭留学生諸君に対しまする給費の支給がおくれたという事実があるようでございます。私今日まで知らないで恐縮でございましたが、これはとりもなおさず予算の令達が――財団法人日本国際教育協会に対しまする令達がおくれましたことによるのでありまして、まことに恐縮いたしております。今後、こういうことのないようにいたしたいと思います。 さらに、お話のとおり留学生諸君が、日本の学校教育を通じまして本人の教養を高めるという反面、日本を認識いたしまして、その認識の上に立って、日本の貴重ないわば輸出市場の諸国の人々が日本の貿易上、日本側から見て好ましい影響を持つことを期待するのは、この制度の当然のことでございますが、評判が悪ければそれだけ不利益なわけでございますから、評判が悪くないように努力したいと思います。ことに、かれこれと申されまするおもな点は、第一に留学生を募集しますときに、募集条件と申しましょうか、日本側の受け入れ態勢、大学の設備、授業ぶり、あるいは宿舎の関係、交通関係等、十分な実情認識を持たせ得なかった点もあるやに聞いております。今後、出先の外交機関を通じて募集するわけでございますが、それらを通じまして、正確な認識を持ってもらって、非常にいい条件もあるが、事実問題として不利益というか、なれないために不便な点もあることを十分認識してもらって来てもらう。そうして改善すべきことは改善するということをあわせまして、事情の不知に基づく悪感情が起こらないようにしなければなるまいと思っておるのでございます。ことに留学生諸君の一番悩みの種は日本語の教育でございます。日本語教育上いろいろと考えねばならぬ点もあるようでございますが、ことに日本語教育のための、留学生に特にそのために作りました教科書がないために、非常に不便があると聞いております。ですから、留学生用の日本語教育に最も適切なものを作りまして、その間の不便を除きたいと存じております。その他受け入れの学校施設、設備ないしは宿舎の問題、あるいは給費の問題等にも幾らかの注文もあるようですが、できるだけのことはいたしたいと思います。 さらに人情風俗、ことごとく違います新しい環境の中に、日本で生活するわけでございますから、想像も及ばないような個人的な不安なり不満なんかあろうかと思われます。その点については財団法人日本国際教育協会が担当いたしまして、極力親切にということをモットーとしてやってはおりますが、もっと一人々々に親切味を滲透するような配慮が足りないかとも思われます。そういう点を十分注意をいたしまして、せっかくの国費を相当額つぎ込んでやりまする留学生でございまするから、私費留学生も含めまして遺憾なきを期したいと思います。
○北條雋八君 通産大臣がおいでになりましたから一点伺いたいと思います。 輸出秩序の確立について伺いたいと思うのであります。現在、輸出業者が大小五千以上もあると言われておる。これは輸出秩序の確立はなかなかむずかしいのではなかろうか。その過当競争防止について政府は現行制度で十分だと考えておられるかどうか。時間がないから簡単に伺いますけれども、その点を伺いたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまお尋ねの点でございますが、輸出を振興する場合におきましては、どうしても、秩序という言葉が適当かどうかこれは別といたしまして、もう少し過当競争をしないように指導していかなければならぬと思います。そういう立場から、これは十分ではございませんが、前国会にも輸出入取引法の改正を提案いたしておるわけでございます。今回も、もちろんその御審議をいただいておるわけでございます。私は、ただいま御指摘になりますように過当競争、しかも中小のいわゆる専門商社等がいるわけでございますから、これが団体を結成し、輸出秩序を確保できる、これを最も望んでおります。その大要等は輸出入取引法の中に一応規定いたしておるわけでございます。どうかよろしく御審議を賜わります。
○北條雋八君 次に伺いたいのは、わが国が低開発国に与えました円借款はどのくらいあるか、またその使用状況はどうなっているのか伺いたいのであります。昨年の外務省のお調べによりますと、まだよほど使い切れないで残っておるように思います。その点、大蔵大臣、外務大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(水田三喜男君) 御質問の低開発国への借款でございますが、御承知のように、この借款の方式が大別して三つございまして、相手国政府に対する直接借款という形式によるものと、それから賠償協定の締結に伴う経済協力という形をとるものと、それから通常の延べ払い形式のワクの設定によって援助を行なうものと、方式が三つございますが、まず一番最初の相手国政府に対する直接借款の形式によるものは現在一億六千百万ドル、賠償協定の締結に伴うものは七億九百万ドル、通常の延べ払い形式によるアラブ連合、イラン、インド、ユーゴ等に対する援助は九千万ドル、合計いたしますと、九億六千万ドルということになります。そのうちで現在までに実行済みの額が、直接借款が六千百三十万ドル、賠償に伴う経済協力が一億五百万ドル、通常延べ払いワクの設定によるものが三千九百万ドル、合計一億五百一三十万ドルというものがただいま実行済みの低開発国協力金頭ということであります。
○北條雋八君 三年前にエジプトに向けまして、円借款三千万ドルというものがまだ一千万ドルも残っているという話でありますけれども、どういうわけで残っておるのですか、伺いたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) そのアラブ連合については、延べ払いワクの使用対象プラジェクトがあっても、具体的な商議になりまするとなかなか商慣習、あるいは値段というような実際的な問題についての要求が先方にありますわけでありまして、これがどうもなかなか話し合いがまとまらないというのが実情でございます。
○北條雋八君 時間がありませんので、もう一問最後に伺いたいと思いますが、最後に海外経済協力基金の活用について伺いたいと思うのです。九月十二日、海外経済協力基金の投融資対策事業として二十七の事業が発表されました。亜軽工業とともに家庭工業をも考慮すべきじゃないかというふうに思うのです。今までに後進国に対する中小企業及び家庭工業の進出はどうなっているのでしょうか。また今後家庭工業の進出に対して、政府はこれをを重視して進める方針でありますかどうか。企画庁長官、通産大臣、大蔵大臣の御所信を伺いたいと思うのでございます。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 海外経済協力にあたりまして、日本の中小企業の技術経験というものが低開発国に非常に役立つことはもちろんでございまして、特に非常な最新の、合理化した工場を作るということも大きな経済援助ではございますけれども、日本の中小企業の知識をもちまして、現地の消費物資を作るというようなことは、現地における労働に対しての、労働力を吸収していく上にも必要でありますから、そういうような低開発国におきましてそういう計画が進行して参れば、当然日本としてはこれに協力して参らなければならんと思います。ただ、対象が小さい業者同士の関係になりやすいのでありますから、したがって、お互いに信用その他、あるいは海外進出の意欲等が必ずしも十分でない場合もございますので、現実にはなかなか話し合いがつきにくいのでございますけれども、政府としても将来こういう面について十分なことを考えて参らなければならぬと、こう存じております。
○北條雋八君 もう時間がありませんから……。
○委員長(小山邦太郎君) 北條委員に申し上げますが、持ち時間はすでに経過をいたしておりますので、簡単にお願いいたします。
○北條雋八君 はい。ただいまお話を伺いましたけれども、インドやタイは家庭工業の進出に非常に期待しておるように聞いております。で、日本の中小企業の現況から申しましても、この種の企業の進出ということは互いに益するところが多いのじゃないかと思います。特に輸出振興についても将来非常に役立つことと思いますから、十分ひとつ力を注いでやっていただきたいということをつけ加えまして、私の質問を終わります。
○委員長(小山邦太郎君) 午後一時に再開することといたしまして、これにて休憩いたします。 午前十一時五十四分休憩 ――――・―――― 午後一時十五分開会
○委員長(小山邦太郎君) これより予算委員会を再開いたします。 委員の変更について報告いたします。 北條雋八君が辞任され、その補欠として石田次男君が選任せられました。 ―――――――――――――
○委員長(小山邦太郎君) 休憩前に引き続いて質疑を行ないます。加賀山之雄君。
○加賀山之雄君 まず、北方領土の問題につきまして、総理並びに外務大臣に御所信を伺いたいと思います。 この問題は、長年にわたってわが国民の大きな関心事でございます。また、その解釈、見解につきましても、従来はともいたしますと統一されてきたとはいえないのでございまして、ここへ参りまして、この国会で私どもといたしましては、本会議の総理大臣の施政方針演説において総理が非常に明瞭にその見解を述べられ、そしてその所信をはっきり表明されたことは、われわれとしてまことに意を強うした次第でございます。何しろあの領域では、たび重なる漁船の傘捕が行なわれ、特に最近激化をしているような模様で、特に八月の二十三日に起きた大量傘捕のごときは、まことに、事情をよく聞きますと悲惨そのものであったようでございます。で、はるか遠隔の現地から、早く何とかしてくれという悲痛な叫びが聞こえてくるようにさえ感ぜられるのでございます。これは、問題を一日も早く解決をして、敗戦後残されたこの大きな痛手を早く直していかなければならない。これは国民の悲願であると存じます。今回の総理大臣の所信表明に伴いまして、日本社会党並びに民主社会党、それぞれ、にわかに見解を公然と打ち出されたのでございますが、これ自体は、私は非常にいいことだと思います。見解が非常にはっきりして参ったし、近づいてきておる点も大いにあるわけであります。特に一番そのポイントである歯舞、色丹、これはもとより、国後、択捉、どちらかというと、この二島がまことにどうしたものかというような状態にあったというよりは、さようなまぎらわしい見解がいろいろあったように思うのでございますけれども、国会の論議を通じ、両党の表明を通じて、この点だけは非常にはっきり一致しておる。少しの疑う余地もなくわが国の固有の領土であるということは、はっきりいたしたはずでございます。ただ、問題は、こういった確信のもとに、今後どういう方法、あるいは手段、あるいは手順でこれを主張し、これをわれわれの目的を達していくかということに論点があるだけのように私は解するのでございます。 そして、この問題につきましては、われわれはもちろん、われわれの領土である。しかも、いわゆる略取したり、奪取したり、暴力でこれを取り上げたり、そういったことをしていないのであって、そういう意味からいうと、南樺太も千島も同様にわが国の歴然たる固有の領土と主張していいように思いますが、これはサンフランシスコ条約当時の事情から見まして、今日これを云々いたしますことは、これは何と申しますか、あきらめなければならぬ。しかし、今後に問題はもちろん残っていると思いますが、少なくともこの問題のポイントである大きな四島、これについては、これはもうまぎれもないわが国の固有の領土であって、ソ連はそれに対する権利を主張する根拠は全然あり得ないと私は確信いたしますが、これは総理からもう一度この点について明確に御答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 本国会におきまして、参議院本会議で私ははっきり申し上げたとおり、また衆議院の予算委員会におきまして申し上げたとおりでございます。条約締結前後におきまして、いろいろな事由から誤解を得るような言辞があったやに聞いております。私は、最近の状況から申しまして、そしてまた、ことに講和条約に対しまして主導権を持ったアメリカの見解からいいまして、またわれわれの調査した結果から申しましても、歯舞、色丹はもちろん、択捉、国後もわが国の領土であることに間違いがない。この点は、今後ともソ連に向かって強く事情を説明し、了解を得るように努めたいと思っております。
○加賀山之雄君 およそ一国の領土として認められるにつきましては、私はいろいろの要件があると思うのでございますが、たとえて申しますならば、これは歴史的事実であるとかあるいは民族、国民としての確信、これは非常に重大なものでございましょうが、それだけでは足りないでございましょう。国際条約、あるいは国際慣行、あるいは国際的な認識といったものが非常に、領土として主張し、これを確認するには大切な要素になると思うのでございますが、今の問題につきましては、歴史的事実、国民的確信というようなことになりますと、これはもう当然問題のないことであり、また国際条約上の解釈といたしましても、これは疑念がない。いろいろ数次の、カイロ宣言、ポツダム宣言等から始まりまして、サンフランシスコ条約当時の記録を見ましても、間違いないのであり、問題があるのは国際的認識の問題があるのみであって、特にこの問題の最も重要な当事者であるソ連とは非常に食い違いを示しておる。一方、やはり利害の関係の非常に強いアメリカにおきましては、これは数次にわたる全権の演説等にもはっきりと現われておるし、また往復文書その他にも明らかにこれはソ連が領有すべきものではないということが確然としておるのでございます。したがいまして、最も利害の深い当事国であるわが国、アメリカは、これは意見が一致している。ただ、ソ連が非常に不一致を見ておる。その上に、私はサンフランシスコ条約に調印をいたしております諸外国――英、仏を初めとしてこれが四十数カ国、この当時は非常に確然としたものがあるいはなかったかもしれない。しかし、今日になって国内でこれだけの確信が、総理が言われた国論の統一がここまではできておるその問題について、必要である国際的認識という問題になって参りますと、この点は私は、利害関係が薄いだけに、諸外国にはわれわれがぴんと来るほどのことには響いておらないと思うのでございます。 そこで、私は、これは国際連合の場もございましょうし、あるいは政府の方が外国を訪問する、あるいは在外公館の主張、そういったものが非常な努力をしてこの問題を、単に人道的の問題ばかりではございません、法理的にも、いかなる意味からいっても、あまりにもはっきりしたる問題を心の底から打ち明けて、かようなことになっておりますという努力をして、そして各国の認識を深め、各国が、単にアメリカのみならず、日本の言うことは道理ではないか、日本の言うとおりであるという、こういうふうに持っていかないと、なかなかこの問題は、ソ連だけを相手にいたしまして、これはソ連との交渉につきましても私は卑屈な気持になる必要はごうもないと思う。堂々たる立場で、われわれの主張を主張として通すということは、ぜひやっていただかなければならないと思いますが、そのほかにさようなことが必要でなかろうかと私は愚考するのでございますが、その点について総理大臣の御意見を承りたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) サンフランシスコ条約に調印いたしまして、わが国が南樺太、いわゆるウルップ島以北の島に対しまするあらゆる権利、権原、請求権を放棄したのでございます。放棄した後の取り扱いにつきましては、連合国がきめるわけでございますが、お話のとおり、連合国の関心がないと申しますか、薄いと申しますか、それは今までそのとおりになってきているのであります。ただ、この問題をそれじゃ国連に持ち出すかということは研究に属しますが、なかなか今の状態で国連に出しても、なかなかこれが討議される段階にすぐ進むとも思えません。私は、今お話にありましたごとく、今回の国会でわれわれがはっきり北方領土に対しての政府の見解を表明したのでございます。この点につきまして、私は各国に向かってわれわれの考え方を啓蒙することが一つの手ではないかと思います。国連に持っていく前にそういうことを、各国の啓蒙に力を尽くしたらどうかという気がいたしているのであります。何分にも、領土という問題は民族的にもたいへんな問題でございます。私は今後、いろんな情勢を考えながら、善処していきたいと思っております。
○加賀山之雄君 総理は、まずサンフランシスコ条約締盟国に対して理解を深めることを努力したい、こう一声われている。これは私は当然のことで、国連へ提訴をするといたしましても、その前提として各国の、これは理事国でありましても、安保理事会にかかるにいたしましても、総会にかかるにいたしましても、これを取り扱う諸外国がわが国の立場を正確に理解し、認識し、そしてわが国の立場を正当と認めますと、単に国連へ提訴すれば事足るという問題でございませんので、第一前提としてその問題を真剣にやらなければならないのではないかという意味で私はお尋ねをいたした次第でございますが、これを前提といたしまして、私はこの問題の解決の手段として、先日は羽生委員から何かきっかけを作るべきではないか、それについての提案をされたようでございますが、私はここで先ほど申しましたことを繰り返しますのでございますが、こそくな考え方はごうもこれはとるわけには参らないと私は思うのでございます。堂々たる正式の法的手続、手段をおとりにならなければならぬ。しかも、これは平和的解決を求める以外に方法がないわけでございますから、いわんやそういうことを考えますと、さように存ずるわけでございます。 それで、その平和的解決の手段といたしまして、わが国ではすでに国際司法裁判所に提訴をいたされているのでございますけれども、これはもう相手国が応訴しない限り、なかなかこれは進まない。たとえば、この前の米機の撃墜事件のありましたときも、ソ連はその相手として応訴しない。また、強制管轄権にも賛成をしなかったわけでございますから、多少でも自国に不利と見れば応訴する気づかいはまずないと、これは推察にかたくはないのでございます。司法裁判所がもしだめであるならば、いわゆる国連憲章に申しますところの他の手段によってこれをやっていかなければならないと私は思うのでありますが、第一次的に申しますと、国連憲章第三十三条であったかと思うのでございますが――三十五条でございますか、国連加盟国でございますから、一切の国際紛争または紛争の発生するおそれある事態――これは私どもは、この北方において生じておりますことは、この領土問題に伴う国際紛争と見る。また当然国際紛争であると解釈しますが、まず、その問題について総理大臣の御見解を承りたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 国連にこの問題をどういうふうにして扱ってもらったらよいかということにつきましては、総理が答えられましたように、何といっても、十分にこの問題に対する理解を関係各国に深めておくということが前提であろうと思います。ただ、今仰せられましたように、三十三条あるいは三十五条の規定によりまして、国連にこういう問題を持ち出すについては、他の面、すなわち現実に国際紛争がもう終わっているというふうな形に認識される場合があるわけでございまするが、そういうふうな考え方を現在の時点において呼び込むほうがよいかどうかという考慮が必要かと存じます。 いずれにいたしましても、今の御質問の御趣旨は、われわれにおいてもよくわかる次第でございますので、十分研究させていただきたいと思います。 なお、もう一つその前提があろうかと思います。これは、何といっても国論の統一でございます。先般来からいろいろ国会において御論議がございましたが、やはり私は、外交問題というものは、党派が違うからといって争点をことさらに取り立てて言うよりも、一致点について、その中の公約数について一致する点をできるだけの努力をして見出していくということも非常に必要だと思うのであります。幸いにいたしまして、この国後、択捉――歯舞、色丹はもとより、これらの諸島は固有の領土であるということは、これは毫末も疑いをいれないように各党において持っておるように存ぜられますのでございますので、こういう点は、さらにもっと私どもとしては明確にする必要があろうと思います。
○加賀山之雄君 国論の統一が必要であることは、まず私最初に申し上げたところでございまして、われわれがかねがね超党派外交を主張いたしまして、また外交は必ず一元化し、波打ちぎわで議論があってもとめるようでないと、これは相手がある、しかもむずかしい国を相手としての外交折衝が、うまくいく道理がない、国内ではこういうことを言っておる者があるじゃないかと。現にこういうようなことでは、外交折衝ができるはずがないのでございまして、それは外務大臣が言われるとおり。しかし、私は最初に申し上げたように、国論がすでに統一している部分があるではないか。あると私は解釈するのでございますが、その部分については、もうすでにその実現をいかにはかるかという手段に入る方法を考える段階にある。私はかような前堤から申し上げているわけでございます。それで、もちろん国連提訴と申しましても、いろいろ政治的な配慮、あるいは外交として打ち出す適当な時期、それぞれいろいろの配慮はございましょうけれども、この問題は、ここまで来た以上は、もう先ほどの手段を選んで、各国、特にサンフランシスコ条約に締盟した国々の理解と認識を深めて、そうして国連に持ち出す。そうして先ほど伺いましたことは、国際紛争とこれをわれわれが解釈する。もちろん、紛争と言ってもチャンチャンバラバラはもちろんやっておりません。やっておりませんが、これは私は国際紛争と解釈し得ると思う。あるいはもし国際紛争でないとすれば、「国際紛争を起こすおそれのある場合」ということでもいいと思う。これはちゃんと国連憲章に「おそれのある場合」ということも規定をしておるわけでございますから、それとして、国連加盟国といたしまして、憲章第三十五条に基づいて総会または安保理事会に提訴し得る――得るはずであると思いますが、その点、もう一ぺん繰り返し外務大臣の御答弁を願います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 三十四条には、御指摘のとおり、おそれのある問題も含んでおります。ただ、安保理事会の構成もわれわれとしては見なければなりませんので、これをできるだけ有効ならしむるためにはどうしたらいいかということを十分に配慮してかからねばならぬということを考えねばならぬと思っておるのでありまして、御指摘の点については私も全く同感でございます。
○加賀山之雄君 現内閣、と申しますよりは自民党内閣といたされましては、特に国連中心主義ということを大きな外交上の柱にしておられる。こういう問題こそ国連を舞台にして、そして解決をはかることが、国連を重視し、国連中心をとるゆえんであると私は思うのでございます。そこで私は、三十五条に基づいて、まず総会あるいは安全保障理事会に持ち出すということができる。それを時期を見てやるのが正当であると私は思いますが……。 次に、憲章第三十三条によりますと、もし日本政府が、この紛争とその継続が国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれのあるものであると認めた場合には、第一次的には、日本の選ぶ平和的手段によってこの紛争を解決しなければならない義務があるわけです。そこで私は、平和的手段の一つとして、国際司法裁判所にも提訴されたろうと思う。あるいはこれを平和的にソ連と話し合って何とかきめていこうという、いわゆる日ソ共同宣言に現われるまでの努力をされてきたと思うのでございます。義務がある。そうしてその場合、日本の選ぶ平和的手段でこの紛争が解決しないときは――まだ私は解決しないとあきらめるのは早いと思いますが――安全保障理事会に提訴しなければならない義務を生ずるのであります。これは提訴しなければならない義務がある。「してもいい」じゃございませんで、義務があるのでございます。これは、憲章第三十七条の定めておるところでございますが、この点についてはいかがに御解釈になりますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 国連の条章に従えばそのとおりでございます。
○加賀山之雄君 国連の憲章にしてしかりとすれば、国連中心主義をとられ、そうしてほかにいわゆる平和的解決の手段がないとするならば、これは政府としては、この問題にいつ踏み切るかは別として、この問題と取っ組んで、どういうふうな時期を見、どういうふうにしてやっていくか、これは当然お考えにならなければならないのでございまして、世には安保理事会に持ち出したってヴィトーを使えばそれまでじゃないかということを言う人もございますけれども、これは明らかに紛争当事国はこのヴィトー――投票権がないわけでございますから、ソ連の得意の拒否権を行使するということはできないはずでございます。これは第二十七条第三項によって私は明らかであると思うのでございまして、安保理事会でもって解決するこの手段が、私は現在の国際正義の上では一番正しいし、また解決をなし得る道であるというふうに解釈するわけでございまして、その点御考慮をいただきたいと思うのでございます。 次に、領土として主張をいたします場合に、これはわれわれの確信においても、法的にも、明らかにわが国の領土であるといたしますれば、当然にわが国内法の適用が、あるいは行政的措置がそこに及ばなければならないという問題があるはずでございます。そこで私は、この国内法の適用あるいは行政措置としての施行に落度がありはしないかということをおそれるのでございます。私は法制のことはわかりませんので、もちろんああいった状態から見て、当然に法律の施行が意味をなさない場合もございましょうし、当然に停止したような運命になるような場合もございましょうが、しかし、実施が可能であって、たとえ多少の実益が薄うございましても、国内の領土だというためにも、やはり国内法、たとえば戸籍の問題でありますとか、地方交付税交付金の問題でありますとか、あるいは漁業権、鉱業権、いろいろあると思うのでございます。それらの問題について国内的な措置は万全であるかどうか。かつてこの委員会におきまして、辻政信委員が当時の岸総理と地図問答をされたことを私は記憶しております。地図を直すということも必要でございましょうが、それよりももっと大切なことは、国内的な措置は万全か、領土として確認されている以上は、とっているのかどうかという点でございますが、その点について総理あるいはどなたからでもよろしゅうございます。たとえば地方交付税の問題でございますれば自治大臣から御答弁をいただきたいと思う。
○国務大臣(池田勇人君) 敗戦直後からしばらくの間、お話のとおり択捉、国後に対しまする関心がある程度薄れておったことは事実でございます。しかし最近におきましては、各方面からそういうことのないように訂正いたしております。具体的の問題につきましては法制局長官から、あるいは自治大臣からお答えいたします。
○政府委員(林修三君) これは加賀山委員御承知と思いますが、法律の性質にもよりますが、たとえば行政法規の中で、いわゆる属地法と申しますか、当然その地域を前提とするようなものにつきましては、これは現実に施政権が及んでおりませんから、実は法律的に措置をしてもあまり意味をなさない点がたくさんございます。そういうものは、かりに将来この四島につきましての日本の施政権が回復いたしました際に、かつて奄美群島の施政権が日本に回復されましたような法律措置をとればいいということが多分にあると思います。そういうことで実は十分だと思っております。しかし、属人と申しますか、そういう属地的な施政権を前提とする法律はそうですが、今おっしゃるようなことは、立法上なるべくこの点は日本の領土権の対象であるということを誤解されないような措置をとることが必要だと思います。最近作ります立法においては、そういう配慮はやっておるつもりでございます。万全かと言われますと、多少古い法令で、特に占領中にできました――法律じゃこざいませんで――省令等で、多少問題のものもございます。これは一両年前に辻委員からも御指摘のあったところで、われわれとしてもそういう点、われわれも直接の権限は及びませんけれども、各省あたりに多少まぎらわしい表現のあるものは直してもらうようにしたい、そういうように考えております。
○国務大臣(安井謙君) 今、法制局長官からもお答えがあったのでございますが、国後、択捉、歯舞、色丹につきましては、行政が現実に及んでおりません。したがいまして行政上の経費を地方交付税等の形で配付するということは現在いたしておりません。ただし歯舞だけはちょっと特殊な事情にございまして、御承知かと思いますが、歯舞は、北海道のあの突端の花咲半島の歯舞村と歯舞列島とは一緒になっております。したがいまして歯舞村が根室市と合併いたしました際に、この五つの島も同様に合併をしておるものという解釈のもとに、北海道に対する基準財政需要額の際には、地域を計算上に入れておる次第でございます。
○加賀山之雄君 今の自治大臣のお話は、そこが私はおかしくないかと思うのであります。歯舞だけをやっているのだ、あとはやっていない、いわば地方交付税交付金は市町村を対象とされてのこととしてやっているわけでありますが、わが国固有の領土であるとすれば、北海道の一部に間違いない、それならば他をどうしてこういう別扱いにするか、今のお話によると、根室に編入されているからということでありますが、この算定の基準はいろいろございましょうけれども、その中で、もちろん適用のない基準もあるかと思いますが、たとえば面積は一つの基準になっているはずであります。そういうことになると、ほかは抜けております、これだけは別ですということになると、ちょっと一貫性を欠くのじゃないかと思いますが、これはどうであるか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 国後、択捉、歯舞、色丹につきましては、そこに住んでおった同胞は全部強制的に内地あるいは北海道に送還されてしまったわけで、この行政の対象となる同胞がいないわけであります。ところが戦前には、御承知のように北海道庁の管理下にありまして、南北千島、これに中千島、これを総称して千島として行政をやったのでありますが、そのうち歯舞、色丹というのは、条約上から見ても、いわゆる千島に入っておらぬということが明瞭になっておるわけであります。そこで、戦後にできました法律にその関係が十分に調整されておらないという点があるとすれば、法制局長官の言われたように、十分その点は、その後手をつけなかったものは手をつけなければならないと思います。
○加賀山之雄君 そういうふうに伺いますと大体わかりますが、住民が強制的に立ち退かされたというお話でございますが、まさにそのとおり、各地におりますが、一番多いのは北海道に住んでおられる、とするならば、北海道を対象にしたそういう措置が当然とられるべきではなかろうかというふうにも考えるのであります。これはあるいは法制的に間違っているかもしれませんが、当然お考えになっていい筋であり、またお考えにならなければならない筋のものではないかということでお伺いしたわけであります。 時間がどんどんたちますので、北方領土以外の問題につきましては、私は割愛しなければならないのでありますが、ともかく総理並びに外務大臣が国論をまず統一してと言われるのは、さもありなんことでありまして、これは当然のことであります。これだけのむずかしい問題が国内でがやがやしておって異説をなす者があっては、実現するはずがない、まず国論をしっかり統一していくということが必要でございますが、それについて三党のトップ・レベルの懇談をされるというようなお話も伝えられておる。私は、事が迫ってきて三党首が集まられるのでなくて、事、外交に関しましては、平常から必ずその政党の首脳が集まられて、隔意なくこの国際情勢の判断を遂げられて、そして意見の一致をはかっておかれる、そうして初めて外交の一元化が可能であるというように考える次第でございまして、この点は、特に国民のために与党野党の別なく、かような見地で外交をお進め願いたい、私はこれを強くお願いを申し上げる次第でございます。 次に、総理、大蔵、運輸等の各大臣にお伺いをいたします。 運輸、交通と申しますものは、経済、産業の発展の基礎であるのでございまして、私は、この最近の経済伸長、いわゆる成長の様相を見ましても、これに先行していくものでなければならない。そういう条件を持たないと経済成長を阻害することになると、私は前からかように信じておるのでございまして、これにつきましては、総理大臣はもちろん各大臣も御異論がないと思うのでございます。この運輸交通、たとえば海運にいたしましても、陸運にいたしましても、これはなかなか簡単に手直しができないということでございます。この間の公定歩合の問題にいたしましても、これも容易ならぬことではございますけれども、これは調整のためにそういうことができる。ところが、運輸交通の問題に至りましては、足りなくなった、そこでこれを急にふやそうといたしましても、あめちょこ細工のように急に伸びるものではない。したがいまして、経済の成長をはかるには、それに先行する条件として、運輸交通を整えていかなければならない。海運、鉄道、道路、すべてそうでございましょう。ところが、従来、ともいたしますと、これは私、ひがみかもしれませんが、これが主役といえなかったのじゃないか。例を申し上げますと、たとえばこれは旅客交通の面でございますが。勝手に――勝手にといっちゃたいへん語弊がございますが、団地がどんどんふえる、それ通勤だと、こうなって参る。工場立地、工場の問題にいたしましてもそうでございます。いわゆる景気が上昇して参りますと、各所に隘路ができて貨物が運べなくなる。非常な陳情をわれわれは受けるわけです。このことについて、運輸大臣が最も御心配でございましょうが、これは私の考えをもってすれば、一運輸大臣ではなかなか解決をいたしません。そこで私は閣内の有力な見解としてこれを取り上げられて、運輸交通というものは少なくともおくれないように、現在おくれております。できるならば、この経済成長に先行するくらいの心組みをもって予算を組まれ、施策を講ぜられることが私は必要であると思うのでございますが、総理の御見解を承っておきたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) お話のとおりでございます。私は昭和三十二年の予算を組みます場合におきまして、鉄道並びに港湾、道路につきまして、道路は一兆円、そうして港湾もやるし、鉄道も値上げをする、そういうふうにして、経済成長におくれているのをおくれを取り戻そうとしてやったのでございます。しかし、あまりにも経済の伸展が急速でございます。また昨年の予算のときにも、今度は港湾五カ年五千億円・道路はこの前の計画の倍の二兆三千億、こういうふうに、そしてまた、鉄道もやむを得ず料金を引き上げてやった。もう三、四年目ごとにはそのおくれが常に出てくるような状況でございます。また海運にいたしましても、今一番ネックになっているのは港湾施設でございます。しかし、港湾施設も、先ほど申し上げましたように、五カ年五千億でやっておりますが、まだ足りません。港湾のみならず、船舶問題につきましても、従来は一年に船舶関係の運賃は一億五、六千万ドル程度の赤字であったのでございますが、この状況で参りますと、二億五千万ドルないし三億ドルの運賃の過払いといいますか、運賃収入のアンバランスが出てくる。こういうことで、すでに御承知のごとく、二十五万トンを五十万トンにふやしまして、その運賃による赤字をできるだけ早く消していこうということで進んでおるのでございます。お話のように、どうも経済の伸長に運輸港湾関係がおくれがちであったということは過去の例でもわかる。それをためようと思いましてもなかなか経済の成長が早過ぎる。そうして、われわれの心がまえがまだ少し足りなかったという点もあるやに考えます。今後こういう、今一番ネックになっておる運輸という面では、私は来年も相当力を入れていかなければならないと考えております。
○加賀山之雄君 大臣から非常に率直な御答弁をいただいて私は満足いたしておりますが、つまり今までときどき足りないことがあった。これはやはり従来の設備投資、こういうものがおくれてきていたからだ、こう見ざるを得ないのであります。ほかの経済が伸び過ぎたからということでございますが、これをためる、運輸交通が整わないからこれをためるわけには参りますまい。設備投資は経済の過熱を来たして、これはある程度抑制されるという方策をとられるにいたしましても、運輸交通が足りないから、設備投資なり、伸びていく経済成長を押えるということは、これは本末転倒もはなはだしいことで、あり得ない。そうとするならば、私は平常においてこの心がまえ、総理はわれわれの心がまえが足りなかったと率直に言われましたが、確かにわれわれも努力が足りなかったように思うのでございまして、その点、この轍を繰り返されないように、特に私は電力や鉄鋼の設備投資に比べて鉄道の投資がいかに少なかったか。最近の五カ年計画は立てられております、近代化は着々と進んではおりますが、私はこれだって最小限度のものである。五カ年計画、ほんとうは五カ年後の経済成長に見合うためには、四年間に私はこの計画をなし遂げないとなかなかやっていけないのじゃないか。港湾設備もそのとおりでございます。港湾は大臣のほうからお述べになりました。これは私はあとで申し上げようと思っていたのでございますが、船舶の問題も大きな問題でございますが、現在は港湾が全く行き詰まっておる。これには私は港湾のいろいろな施設と、それからもう一つ大きな理由に、労務管理が非常におくれておるという問題があると思います。時間があればあとで労働大臣にその点についての所信を承りたいと思っておりますが、労務管理は非常なこれはおくれを見ておるということは事実でございまして、前の数量の少なかったときよりも、現在労務者が減っておるのが現状である。これでどうしてこの次から次へ入ってくる輸入の貨物がさばけるか、私はさばけたら不思議だと思うくらいでございます。しかし、これは日本の経済成長から見たらゆゆしき問題で、これは早くこれを解決、施設の面であれ、労務管理の面であれ、これの解決をはからないと、私はその面からの阻害が現われてくるということを申し上げたいと思うのでございます。そこで、また国際収支均衡の面から申しましても、総理は三億近くになる、これはわれわれの推定によれば二億六千万ドル以上に上るであろう。これは海運関係で赤字が、国際収支が赤字だということは、かつては第三の海運国であったわが国としてはまことにこれはお話にならないことでございまして、私はこの国際収支を均衡する面それ一つだけ取り上げても海運政策というものはもっともっと伸ばさなければならぬ、船舶保有をふやさなければならぬ。現在の輸入について四五、六%の積取率なんということは、これはとうていこれが望めないのでございまして、ところが船をどんどん作ればさらに海運事業から見て赤字が累積して、そうして海運各会社は現在非常な悲況にあるわけで、私は海運造船を含め、根本的な対策が必要であると思うのでございまして、少し前に利子補給という措置が復活されましたが、これは私は現在の海運事情から申しますと、焼け石に水の感、もちろんなきにまさることは万々でありますけれども、もっと根本的な海運の立て直し策が政府全体としてとられなければならないのではないかというふうに考えるわけでございます。日米貿易経済懇談会におきましていろいろ問題を御選定中だそうでございますが、いわゆるこれは羽生委員からも言及されたと思いますが、ボナー法の問題、これはすでに大統領によって署名を受けておりますし、またあの大きな持てる国、第一の海運国であるアメリカがシップ・アメリカンということでやって参る。これらは先ほどから私が申して参りましたことから申しますと非常に逆の働きをなすわけでございまして、ますます海運の関係の悲況を考えなければならなくなるということは道理でございまして、これはぜひとも私はこの会議におきましてアメリカ側の了解を得られ、大きな問題の一つとして取り上げていただきたいと思うのでございますが、お考えを承らさしていただきたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 昨日も外務大臣よりお答えをしたとおりでございます。私、先般アメリカへ参りましたとき、イギリス、ノルウェー各国が非常に関心を持って、われわれも強く要求いたしたのでございます。結果としてああいうふうなことになったのであります。ただ、二重運賃の問題その他これの緩和策につきましてもわれわれ主張し、またある程度は認められたところもあるのでございます。ただ、考え方として、将来大きい問題でございますから、この問題は懇談会のときに出してみたいと思います。
○加賀山之雄君 先ほど申し上げましたように、この運輸交通のうち、特に貨物輸送――これは旅客でも同じでございますが、もう一つ現内閣が非常に重要な施策としておられるいわゆる格差をなくするという問題に非常につながっているわけでございます。 都市集中を排除して各地方の開発をしていきますには現在のわが国の道路、国鉄ともに私はこれは力があまり強いとは言えない、弱過ぎると思う。国鉄の単線区間があまりにも多過ぎたり、各地方の輸送力が逼迫いたしまして、せっかく伸びようとする産業や経済を押えようとする傾向があるのです。あるいは東京都内で申しますと、この自動車の洪水は、これは旅客交通には甚大な影響をもって、いわゆるにっちもさっちもいかなくなったということで、これはだれしも非常に困惑し、強くこれを何とかする方法がないものかとしておりますが、これは旅客交通のみならず、トラック輸送につきましては非常に大きい影響を与えるわけでございまして、大型車が通行ができないとか、あるいはライト・ターンができないとか、あるいは一定時間通ることを禁止する、あるいは一定時間の荷おろしを禁止される、かようなことは特に中小企業者であるメーカー、あるいは商業者に非常な大きな影響を与えているのでございまして、そのためにバス、トラックあるいは乗用車、すべて運用の効率がきわめて悪くなって参る、これはすぐ運賃やトラック料金にはね返らざるを得ないというような事柄を、実情を現出いたしているわけでございまして、私はともすれば、これは運輸や交通は、私の見解をもってすれば、空気や水のようにだれでも自由に使える、ほしいときに使えるようにしておくのがこれは一番いいのでございますけれども、現状はそれどころではなくて、要るときにない、使おうと思うときに使えない。このような現状で運輸交通を放置いたしますと、それこそ金看板の経済成長に影響すること大なり、これは私はもう当然過ぎるほどに言えると思うのでございまして、ひとつ池田総理大臣の御経験と政治力をもってされまして、十分運輸交通の面に御配慮をいただきますようにお願いをいたしまして、時間も来たようでございますから、私の質問を終わります。 ―――――――――――――
○委員長(小山邦太郎君) 岩間正男君。
○岩間正男君 私はまず池田総理に対しまして、最近の政治情勢、とりわけ池田・ケネディ会談後における政府の政治方針についてただしたいと思います。 あなたは過般の所信表明演説で、今の日本は難局に当面していると言い、また内外きわめて多端であると述べております。これは強気の池田さんの弱気論とも、またその反対表現とも、聞きようによってはいろいろニュアンスに富んだ言葉であります。そこで私はまずお聞きしたいのですが、一体難局とは何をさすのか、難局の実体、その内容について詳しく述べてほしいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 外交問題、あるいは国内の経済問題、そうしてまたいろいろな社会的な考え方の違っている場面等々でございます。
○岩間正男君 もう少し具体的に述べてほしい。もっと具体的な内容を。
○国務大臣(池田勇人君) あれでお答えになると思いますが、もし何だったら具体的にお聞き願いたい。
○岩間正男君 きわめて抽象的な言葉です。そうして難局という言葉は、よくこれはまあ戦時中使われた言葉でありますが、そういう言葉をあなたはまたしておられる。おそらくいろいろ外交、さらにあなたの今当面している一枚看板の経済政策の破綻の問題をさしていられるのだと思うのです。しかし、私はここで言いたいのですが、あなたはいかにも国家や国民の難局というような言い方で言っておりますが、しかし、池田内閣のこれはむしろ難局なのじゃないか、池田内閣がアメリカとの関係でみずから作り出し、しかもみずからそこにはまり込んでいる難局としか受け取れないのです。私はこの点をまあいろいろの点からただしたいと思うのですが、時間の関係から今問題になっている日ソ間の問題についてお聞きしますが、あなたは過般の衆議院予算委員会で社会党河野密氏の質問、つまり領土問題については日ソ両国間では決定できないので、国際会議できめるべきである、こういう質問に対しまして、国際的にきめるのは私は同感です、日本はこれにタッチすべきものではございませんと答えているのでありますが、この義はどういうところにあるのか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 中、北千島並びに南樺太は日本がサンフランシスコ条約で放棄したのであります。他の国がやる……。
○岩間正男君 あとのほう、よく聞こえなかったのですが、もう一回。
○国務大臣(池田勇人君) 日本は放棄したのでございます。
○岩間正男君 外務大臣、その根拠を、今の根拠をですね、国際会議でなければきめられないと、こう言っている根拠を。
○国務大臣(小坂善太郎君) サンフランシスコ講和条約で日本は北方の領土について放棄したことになっております。それには千島と言っております。千島とはウルップから北の十八の島を言うということは、これは明らかになっております。そのウルップ以北十八の島は日本はこれを放棄しましたけれども、どの国に向かって放棄したということは書いてないわけです。したがって、その帰属は関係国においてきめるというのが筋であると思います。
○岩間正男君 私がお聞きしているのは、国際的にきめるのはこれは必要だと、しかし、日ソの間だけできめることはできないというようなこれは見解をとっていられるのですが、これは終始一貫なんですか。今までの自民党内閣になってからの態度ですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 終始一貫、そういうような態度であります。
○岩間正男君 それでは私はお聞きしたいのです。第二十五国会の日ソ共同宣言批准当時の特別委員会の会議録があります。ここで領土問題に関する政府の統一見解として、はっきり私はこの画院の論議を通じて確立された事項があると思うのです。それは今のような見解じゃないと思う。サンフランシスコ平和条約の条項にかかわらず、領土問題について、日本とソ連が今後交渉を継続し、また、ここでその最終的帰属を決定しても少しも差しつかえない、こういうことをはっきりこれは確認していると思う。これは速記録をあなたも御検討なったと思うのですが、速記録を私も読み、そういう点は、論議を通じてこれは出ています。そうしてこれは重光外務大臣を初めとしまして、政府の関係者が終始一貫してとってきた確定解釈であります。まあ私は時間の関係から、あまりここで例をあげる時間がないのですが、簡単に一、二をあげてみますが、たとえば昭和三十一年の十一月二十四日の衆議院特別委員会において、社会党の穂積七郎氏は、この点について決定的な質問をしています。こう書っておる。日ソ間の領土問題については、日ソ間だけで独自に話し合いをしてきめてよいのか、それとも国際会議を待たなければならないのか、この点についての質問に対しまして、重光外相は、はっきりこう答えています。「条約上のことなら、はっきりお答えをします。これは矛盾はないと私は申し上げる。矛盾はないというのだから、その意味はどうかというと、日ソの間にこの領土の問題について交渉をし、妥結をするということは差しつかえないと私は思います。」これに対しまして、穂積氏はさらにこれを追及して、二つの国の合意にさえ達すれば、それが必要にしてかつ十分なる条件である、こう解釈していいわけですね。念を押しておきます。こういうように追及をしております。これに対しまして、重光外務大臣は、「条約上そう私は解釈して差しつかえないと思います。」明白にこの点を答弁しておるのであります。そうして、このことは単に重光外相だけのこれは答弁ではございません。もっとも重光外相の答弁で十分なわけでありますが、さらにこれを確認するために、そのあとに下田条約局長がその理由を詳細に説明し、またそこにいる林法制局長官が「条約局長の答弁で尽きていると思います。」と、太鼓判を押しておる、そうしますというと、あなたの今の答弁とこれは全く食い違ってくることになるわけですね、この点いかがですか、池田総理にお聞きします。
○国務大臣(小坂善太郎君) 国後、択捉、歯舞、色丹、これはわれわれの固有の領土であります。これが不法に占拠されておる、こういう問題については、これは別であります。放棄した千島・ウルップから北の島については、これは日本は放棄したのでありますから、これは関係国が……、重光さんの答弁を引用されましたが、重光さんは、おそらく関係国の黙示的な了解があれば、その上で関係両国が交渉することはできる、こういうことだと思います。
○岩間正男君 まあこの速記録を見ると、あなたは、当時質問に対して、サンフランシスコ条約と抵触をするのだ、そういうような立場から、反対的な立場で質問をしておられるのだから、今のような答弁をされると思うのでありますけれども、それはほとんど確定的なものです。両院の審議を通じて明白になった点は決して――サンフランシスコ条約の条項にもかかわらず、明白にこれは日ソ間でこれを交渉して決定することはできる。そういうことの見解を明白にとっており、そうして林法制局長官も、そこでそれを念を押しておる。その間に政府側の答弁としては何らのこれは食い違いはなかったはずであります。ところが、今のこの説明を聞きますというと、これは国後、択捉は固有の領土とか……、こういうようなことでこの問題を新たにあなたたちは提起しているのですが、こういう問題についても、これは私はここで論議しようとは思いません。ただ問題は、これを国際条約でなければならないという、こういう政府の見解というものは、当時の二十五国会で明らかにされた政府の統一解釈、そうして全国会がこれを承認して、政府もはっきりそのような方針を堅持してきめてきた問題とは非常に違うのです。この点で私は、当時の全権の一人であり、しかもこの日ソ共同宣言については非常に力のあった河野国務大臣に、一体どのような方針をとっておられたのか。現在これは非常に私は食い違いがあると思うので、この点明確にあなたからお聞きいたしたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 河野大臣がお答えになります前に、ちょっと速記録に関係したことのお話がありましたから、その当時の速記録を読みまして、そうしてあなたの御質問がどうもちょっと問題をはずしていらっしゃるということを明らかにしたいと思います。 すなわち重光さんは、領土問題を最終的に決定する一番いい方法は、ソ連を含めて各国が集まってきめること、そういう考え方にもしソ連もアメリカも異存がなければそうしたいという意思表示は日本ははっきりさせてきたのであります。さらに下田条約局長は、日ソ間に、日本の主張どおり北方領土をすべて日本に取り返した場合には、サンフランシスコ条約締約国はおそらく黙っているでしょう、こう書っておるのであります。念のために申し上げます。
○政府委員(林修三君) 当時のことは私もよく存じておりますが、ただいま岩間委員のお読みになりましたところだけでなく、全体の速記録をお読み下されば全体の趣旨は出てくると思います。今外務大臣の言われましたとおりの大体考え方で、とにかく四つの島につきましては、これは日本が放棄していないから、日ソ間のもちろん交渉である、北方領土につきましては、これはもちろん連合国側の了解がいるのだということはもう前提としてやっております。ただそれが全部日本に帰属するというような場合に連合国が文句を言うかどうかということについては、今下田条約局長の言った答弁を引用されましたが、そういうことはないと思っております。
○岩間正男君 それは望ましいということを言ったのであって、現実にはそういかなかった。しかも、それなら日ソ間で交渉する道はないかというと、それはサンフランシスコ条約のこれは当事者じゃない、ソビエトは。したがって、日本はサンフランシスコ条約の条項の拘束を受けないで日ソ間で交渉することは何ら差しつかえない。これは何回も重光外務大臣が念を押しておられる、その点なんです。ところが、今日政府の解釈は、これは国際条約でなければできないとはっきり、先ほど申しましたように衆議院では答えておるのです。この点は、今後の日本の外交上日ソ間の問題を処理するためには、私は基本的なこれは重大な問題だと思うので、この点を念を押しておるのでありまして、先ほどのような、これは外務大臣の答弁は、希望としてはこうだと、しかし、そんなことでは政治にはなりませんよ。現実の問題は、はっきりそのような希望が実現できない、そういう態勢の中にあって、なおかつ日本の極東における平和と安全を切り開いていく、そういう態勢からあのような方式がとられ、そうしてしかもそのことは何らサンフランシスコ条約には抵触しない、こういう点では全くこれは一致しておる。あなた自身もなぜそれならこれに対してその当時明確に確認をされたのか。林法制局長官は確認しておる、間違いございません、こう言っております。これは時間の関係で、私は非常に時間が少ないので、この点をほんとうに詳細にすることができないのは残念でありますけれども、これは明白です。河野国務大臣から今の問題はっきり私はお聞きをしたい。あなたはとにかく鳩山内閣の屋台骨をしょっていた大臣でありますから……。
○国務大臣(河野一郎君) 当時私は国後、択捉、歯舞、色丹、この四つの島がわが日本の領土であるということをソ連側に交渉するために、私は鋭意その努力をいたしたのでございます。その他の点は、私も何分外交の問題はよく勉強しておりません。その四つの島を日ソの間において解決したいということで全力をあげて努力したことはまことにはっきりいたしておりますが、他のことについては、あまり記憶が明瞭でございません。
○岩間正男君 あなたは池田内閣の現在閣僚だという立場で遠慮をしておられるかもしれません。しかし、鳩山内閣が国民の多年の要望をになって非常にアメリカの圧迫のもとで、苦しい態勢の中で、しかも極東における平和と安全を切り開く道としてあのような政策を大きく前進されたということは、これははっきり歴史に残る問題であります。これは鳩山さんの功績であり、同時に、河野さん、あなたの功績だと考えることができるのです。ところが、あなたは今その点は明瞭でない、あなたは非常に記憶のいい方だと私は考えているのですが、この点もう一度、せっかく飛行機を延ばしてここに列席してもらって一おるのでありますから、この点もう一度お聞きしたいと思います。
○国務大臣(河野一郎君) 今お答え申し上げたとおりでございます。その当時の外務大臣の重光さんが、政府の考えを速記録に明瞭にしておられる、そのことが一番正しいことでございます。私は今突如としてここにお尋ねをいただきましても、当時の事情については、私の記憶は、歯舞、色丹、国後、択捉、この島についてフルシチョフ氏と交渉する、それに私は全力をあげてやった、それは私は明瞭に記憶いたしております。その他の点については、記憶が明瞭でございません。
○岩間正男君 今、重光外務大臣の答弁が唯一の正しいことだ、こう言われました。そして私はそのことをたくさん例証としてあげることができますけれども、時間の関係から省きます。これは両院の国会議員が、ほとんどの九九%が賛成をしておる。そして両院でほとんど満場一致でもって決定された問題であります。私は念のために、だからあのときの本会議における衆議院の特別委員長の植原悦二郎氏のこれは委員長報告を読んでみたいと思います。こう言っておるのです。「また、桑港条約によって、日本は、千島列島、すなわち国後、択捉を放棄している、それで、将来この島々の帰属を決定する場合、法理論士、連合国会議によってその帰属は決定さるべきものか、または、これに最も関係ある日ソ両国間で決定して、必要があれば連合国の了解を得るということでよいのか、そのいずれであるかとの質疑でありました。それに対して、政府は、これらの島々の帰属は、法理的に日ソ両国間で話し合い決定し、必要あれば連合国と政治的折衝すればよいと考えておるとの答弁でありました。」こういうふうに述べ、これに対して自民党の砂田重政氏は、無条件にこの鳩山全権初め各全権の言明を信頼してこれに賛成すると述べております。また、社会党の松本七郎氏その他のこれは賛成がありました。両院で考えますというと、自民党を初めとして社会党、共産党その他の会派がこれに全く賛成をして、政府国会の意思は全く決定されたのです。私はこのような決定を見るに至った背景には、そこにはソ連との間の戦争状態を一日も早く終結し、アジアの平和と将来にとって重大な日ソの関係を全面的に発展させることを念願する。多年にわたる国民の要望と運動があり、日ソ共同宣言が可決を見たものであります。このような明確な政府の確定解釈、それを承認して批准を可決した国会の意思並びに国民の意思を池田総理は今日否定し、まるで反対の立場に立って、国際会議でなければこの問題は折衝できないという見解に立っておる答弁をしておられるということは、非常に私はこれは国会の運営、さらに国策の一貫性から考えましてもどうかと思うのでありますが、この点いかがでございますか、池田総理にお伺いしたい。
○国務大臣(池田勇人君) 外務大臣のお答えしたとおりでございます。
○岩間正男君 外務大臣の答弁は答弁になっていないと思う、全然。そういう明らかな転換をやるそれだけの理由というものは、何も明らかでない。そうしてあなたたちは、勝手に、今日日ソ共同宣言できめられ、領土の帰属の最終的な決定の問題はあくまでも今後継続する、このやり方に対して、非常にこれは違った方向をとっているのですが、この点いかがですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) さっき申したように、連合国の黙示的な了解があれば、領土問題というものが両国間で決定できるであろうという前提に立って重光さんは発言している。そうして条約局長も、先ほど読んだように、日ソ間で日本の主張どおり北方領土のすべてが日本に取り返された場合には、サンフランシスコ締約国はおそらく黙っているだろう、こういう前提のもとにこの議論をしているわけです。 なお、領土問題の継続審議については、共同宣言の審議についての委員会で、当時の松本全権もこういうことを言っています。共同宣言には平和条約の継続審議ということがあり、領土問題の継続審議ということが出ていないで懸念する向きがありまするが、最初から先方は平和条約の継続審議に異論のないこと、この平和条約の中には当然領土問題の処理を目的とした条項が入るということは先方も十分考えているので、その点については何らの疑問も持っていない。ということを言っております。また、重光さんも、国後、択捉の現在の地位は、今回の日ソ交渉前の双方の主張に返るわけである。主張は一致しないままになるわけであるけれども、これは関係国間で当然調整する、こういう前提に立っているという趣旨を答えております。
○岩間正男君 私は先ほど申しましたように、明白に現実の問題をはっきり切り開く態度で、サンフランシスコ条約とは抵触しないという方針が、あなたいろいろなそういう解釈で違った点で、あなたたちの現在の政策がまるで変えたやり方を合理的に言おうとしますが、これは絶対に納得ができないところです。 私は、先ほどこれと関連して、あなたの答弁の中に不法占拠という言葉があったわけです。これはどういうことです。この不法占拠の根拠について……。
○国務大臣(小坂善太郎君) 正当な理由なくして占拠しているという意味であります。
○岩間正男君 もっと内容を言って下さい。そんな子供だましのようなものではだめだ。
○国務大臣(小坂善太郎君) 歯舞、色丹については、これはソ連としても日本の領土であることを認めておるわけです。ところが、たまたま、終戦当時に日本の兵営があったということで、そこに進駐してそのままに居すわってしまっておる、これは不法だと思います。国後、択捉についても、これは条約上も固有の領土である。暴力あるいは権力によって奪取した土地ということでないという意味であるならば、この樺太、南樺太並びに北千島についてもそうでございます。中千島、北千島についてもそうでございます。しかしながら、国後、択捉はこれは本来固有の領土でございまして、これはカイロ宣言、ポツダム宣言からいっても固有の領土を奪わない、領土拡大を戦勝国も意図しておるのではない、こういうことからいえば、当然占拠する理由はないわけです。しかも、占拠しておるから不法であるというのでございます。
○岩間正男君 河野国務大臣の意見をお聞きします。不法占拠と思いますか。
○国務大臣(河野一郎君) 私が交渉いたしました過程におきまして、今外務大臣が述べられたことはおおむね正しいと、こう思います。
○岩間正男君 これは非常にやはり違ってくるのです。それは日ソ共同宣言が結ばれないうちは、そういう解釈も成り立ったかしれない。しかし、これに対してははっきりやはり同じく審議の中に明確に出ています。下田条約局長はこの点について明確にしています。従来は、戦時占領であったが、日ソ共同宣言発効後はその第一項によって占領状態は終了したので不法占領ではない。歯舞、色丹は九項に引き渡し規定があり、日本は日ソ平和条約締結後は日本に返されることを条件として、それまでの占領を認めている。国後、択捉については、日本はすぐ取り返すという主張をやめて、継続審議で解決するという建前をとっているので、解決がつくまでソ連が占領することは不問に付すという意味合いで、これも不法占拠とはいえない、こういうふうに答弁をしているのですが、この解釈を今日くつがえすのですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 国後、択捉については、松本・グロムイコ書簡の趣旨から見まして、平和条約締結に至るまで継続審議に付せられるものでありまするから、日本の立場としては、領土権は日本に帰属する、ソ連がこれを占拠することは何ら法的に認めていない、こういうことでございますから。他方、この継続審議が終結するまでの間はソ連が占領することは、純粋に法的に突き詰めていけば不法占拠である、こういうことであります。しかし、まあ力関係で実情を黙認している、こういうことであります。なお、北千島及び南樺太に関しては、領土の最終属帰は未定でございますので、わが国としてはこれに対する一切の権利、権原を桑港条約で放棄しておるわけでありますから、ソ連の占領の合法性を否認するかいなかは、桑港条約の締結をいたした当時の連合国の態度によってきまる。
○羽生三七君 関連して。ちょっと疑問の点があるので承りますが、歯舞、色丹、国後、択捉は日ソ間で交渉ができる、それからいわゆる千島といわれる北方領土ですね、これはサンフランシスコ平和条約で放棄しておるから、これは国際会議でと、こういうのですか。千島列島全部、歯舞、色丹、国後、択捉を含めて、これは全部国際会議でと、こう言われるのか。明瞭に分けて、歯舞、色丹、国後、択捉は日ソ間の交渉対象。ソ連が何というか、これは別です。日ソ間の交渉。それ以外についてはサンフランシスコ条約で放棄しているから、これは国際間の話し合いの問題であろう、日本の関知するところではない、こういうことなんですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) さようでございます。国後、択捉、歯舞、色丹は、日ソ間の合意があれば決定できる。他の千島と樺太、これはウルップから北の島をいうのでありますが、これは桑港条約で日本が放棄しておる、したがってこれは関係国の会議である、こういうことであります。
○岩間正男君 あなたのさっき読んだのは何ですか。何による……。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私の意見でございます。
○岩間正男君 そうじゃなくて、さっき読んだの何ですか。何によったのですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) これはわれわれ研究の結果をまとめたものでございます。すなわち、政府の意見……。
○岩間正男君 こういうことではっきりしていますよ。あなたたちはあのとき反対して、おそらく退場した組でしょう。そういう連中がまるで、これに対して今のような解釈。そんな解釈を私は聞いておるのではない。国際法的に明らかになったその根拠について聞いておる。私は、なぜ一体こういう態度を今日政府がとっているか、その一体目的は何か、そのことをお聞きしたいのです。日ソ共同宣言でせっかくアメリカの介入と圧力をはね返して切り開いた独立、平和への突破口をふさいで、そうして領土問題を蒸し返して、これによって立ちおくれた国民層を反ソ反共にかり立てる、こういうねらいでないのか。さらに、ドイツの報復主義者たちがナイセ、オーデルの返還を要求して反動的な民主主義をあおった。それと同じように、このドイツやアメリカのやり方と呼応して、極東でも同じようなことを、同じような条件を作り出そうとしていること、このことこそが池田・ケナディ会談後の池田内閣の外交方針ではないのか、私はこう結論づけざるを得ないと思うのです。そうしてこのことは、日韓会談に対する政府の方針を見れば一そう明らかです。池田内閣は、目下日韓会談を急いでいますが、その理由はわれわれを納得させることのできない危険かつ奇怪なものであります。 そこで、まず私はお聞きしますが、今回韓国側の首席代表になって日本にくると伝えられている裴義煥氏の経歴について、どんなこれは人物なのか。外務省ではこれを調査したと思いますから、その内容を聞きたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) その前に、前段にお話のあった東にわれわれの問題、西の方でドイツのオーデル、ナイセを引っかけてといういろいろな議論が、先般の議員の国際会議でもしきりに共産党の諸君からお話のあったというようなことを聞きました。岩間さんもまたその線に沿ってお話しかと思いますけれども、私はその点は非常に違うと思う。これはもうわれわれ固有の領土であるということを主張することは当然のことでありまして、何もそれと報復主義を結びつけるということは毛頭考えておらないのであります。われわれ固有の領土をわれわれのものであると言うことにだれにはばかる必要があるか、私はむしろ、質問することは許されませんけれども、もし許されればこれを伺いたいぐらいでございます。 次に、日韓会談の代表でございますが、この代表については、これは先方が十分適格者と認められてお出しになったのでございまするから、私どもは外交上の常識として先方のお出しになる代表をりっぱな方と認めて、これと折衝する、こういう考えでございます。
○岩間正男君 この調査した内容を聞かして下さい。これは外務省、知っているはずだ。
○政府委員(中川融君) 今回新しく韓国側の首席全権に任命されましたペ義煥氏は、アメリカで教育を受けまして、ずっとハワイでビジネスをやっておりまして、韓国で著名のビジネスマンでございます。先般韓国銀行の総裁に任命されまして、今はそれを退いておる人であります。
○委員長(小山邦太郎君) 岩間委員に申し上げます。質疑の状況から、なお御質問があることとは思いまするが、時間もすでに切れましたので、なるべくひとつ簡潔に御質問を願います。
○岩間正男君 時間がないから、私は一々お聞きしませんが、国籍は一年前に韓国に戻ったのでしょう。二重国籍かどうか、これはわからない。アメリカに三十年いたのでしょう。アメリカの司法省勤務、それから米戦時検閲局勤務、米外国経済局勤務、米在韓軍軍政部に米国少佐として勤務した。その後一九五〇年から六〇年、一度李承晩のときに帰ったけれども、またアメリカに戻されて、そうして十年間アメリカに帰って、昨年、六〇年の五月に初めて、米国政府官吏としてでなく、韓国に帰って、初めて韓国の国籍をもらったという。これが韓国銀行の総裁になったときの国内の世論というものをあなたは御存じですか。たとえば京郷新聞、韓国その他の新聞に出た世論、そうして四カ月しか勤めなかったその理由、そういうものを御存じですか。これは外務省でやっぱり調査されたと思う。杉道助氏については彼らは非難をした。こういう前例もあるのでありますから、日本としては厳重にやるべきだと思います。外務省としては調査が行き届いておるかどうか、この点をお聞きします。
○政府委員(中川融君) 外務省といたしましては、韓国の首席、その他の人物の経歴等につきましては、もちろんできる限りの調査をいたしております。しかしながら首席に任命されました人自体について、あらためてその調査がどうであったとか、さようなことを言うのは国際礼儀上適当でございませんので、ここでお話は控えさせていただきたいと思います。
○岩間正男君 あなたたちがそう言われるのは、これはわかるのでありまするけれども、これは韓国銀行総裁に国民のうち十万人に一人くらいその顔を知っているような人物を出すべきではない、そういう形でごうごうたる非難があって三カ月でやめた人物です。このような人物を首席代表とすることで、日韓会談は、だれが一体これは陰であやつっているか、これは私ははっきりしておると思うのです。この首席代表の性格が何よりも雄弁に示しているように、日韓会談のねらいは、池田内閣がアメリカの肩がわりになって韓国のかいらい軍事ファッショ政権にてこ入れをする、これを大急ぎでやる、これが日韓会談だと思うのです。私はこう言わざるを得ないと思うのです。私は政情が安定したとか、二年後に文民に移すとか、そんな口実で今、日韓交渉を始めようとしていますが、私はこれはこんな口実は問題にならないと思う。現に朴軍事ファッシスト政権ができてから何人の韓国人が死刑を言い渡されているか。これは天下周知のことです。また二年後に文民にするというが、これは恐怖政権が二年も持つと政府は一体考えているのか。この前、去年の参議院本会議で、わが党の野坂議長が池田総理に対して、どんなに日韓会談を急いでも、そのときは相手の張勉内閣はなくなっているだろうということを予言しましたが、今日ではそのとおりになっています。朴政権が同じ轍を踏まないという保証は何もないのです。池田総理は一体最近朝鮮の三十八度線における切迫した怪しげな雲行きがアメリカを中心として作り出されている事実を知っているのですか。この点、防衛庁長官もおられることですから、この韓国の軍事情勢について池田総理並びに防衛庁長官から伺いたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) アメリカの云々の事実等は知りません。
○国務大臣(藤枝泉介君) 韓国の軍事情勢については、できるだけ調査をいたしておりますが、ただいまお話しのような三十八度線において非常な切迫した状態にあるということは聞いておりません。(「時間超過しているよ」と呼ぶ者あり)
○岩間正男君 時間はなるたけ何します。
○委員長(小山邦太郎君) 時間が経過しておりますので……。
○岩間正男君 防衛庁長官、あなたはこれを知らないと言っておられますが、私はこれじゃ困ると思うのです。われわれの情報でもこのくらいのことはわかっております。最近三十八度線の付近の米軍と韓国軍は大移動を行なっている。九月十六日には金浦と江華にわたる西海岸一帯で仁川作戦という核兵器を使っての磯波戦の訓練が行なわれ、ここには朴最高会議議長も参加しておられます。また朴最高会議議長はこう然と、北朝鮮政府つまり朝鮮民主主義人民共和国を打倒し、武力統一を呼びかけているのであります。このように死刑によって血ぬられた政権が国民の不満を招き、軍隊内部の矛盾が激化すれば、その行く道は戦争の火つけ役をする以外にないのではないか、さらに重大なことは十月十三日、つまり三日前に、米第八軍と韓国軍の特別合同会議で現在の世界情勢を前にして、直ちに作戦計画を検討するように指令しています。すでに韓国では、この八月から日本との時差をなくして東京、京城、台北を同一時刻にするNEATO時間ができ上がっております。こうした情勢に日本は決して無関係ではない。九月五日金浦で行なわれた駐韓米第四誘導弾司令部主催の作戦演習には、立川基地から第三百十五航空師団が飛んで行った。九月十五日の韓国の京郷新聞によると、デッカー米陸軍参謀総長はその記者会見で、最近の韓国軍はすばらしくなった。それは日本から装備を導入したからだと言っておる。戦争、砲火の危険は今や歴然としております。政府はこのような危険きわまりない事態のもとに日本を繰り込もうとしているのか、それで日韓会談を急いでいるのか、その点総理にお聞きしたいと思うのであります。
○国務大臣(小坂善太郎君) 今お読み上げになりましたことは存じませんが、その中で一つだけ私の知っていることがあります。それは最近日本と同じ時間に韓国が時間を直した、これはそのとおりでございます。従来は日本より一歩先へ進んでいるのだというようなことで、三十分間か時間を進めておったそうですが、これは種々の点で工合が悪いというので、同じ時間にした、これは非常に合理的になったと、歓迎すべきことだと思っております。 なお、日韓会談はあなたのお読み上げになった、そういうような趣旨でやろうとは毛頭考えておりませんことをはっきり申し上げます。
○国務大臣(池田勇人君) 外務大臣が答えたとおりであります。
○委員長(小山邦太郎君) 岩間委員に申し上げます。あなたの御質問については、この際、この質問を打ち切ることははなはだ遺憾でございまするが、すでに……。
○岩間正男君 最後に一問だけ……。
○委員長(小山邦太郎君) それでは簡単にいま一問だけ。
○岩間正男君 いま一問で打ち切りたいと思うのです。それは政防法の問題であります。政防法は前国会で国民の猛反撃を受けて政府の強引な態度ははばまれたのです。しかしこの国民の怒りは引き続き今さらに高まっております。すでに全国的な請願運動や労働者のストライキの熱意は高まっております。そこで池田総理にお聞きしたいのですが、あなたは政府の代表として、また自民党の総裁として何らの反省もなく、今国会で政防法の成立を強行しようとしているのか、大体この法案は右翼テロの取り締りを口実として国民の弾圧をたくらんでいるのですが、池田首相はこの強行成立をはっきり考えていられるのか、この点をお聞きしたいことが一点。 もう一点は、ここにこのようなビラがあります。これは見ていただきたい。これは「政防法に賛成する声明」という松葉会、国粋会、義人党による日本主義連合の共同声明です。この松葉会、国粋会、義人党というのは、昨年昭和三十五年十月警察庁作成の右翼テロなど治安上注意すべき右翼団体二十団体に入っている団体です。この人たちが政防法に賛成だ。政防法は右翼テロを取り締まるものだと、こういうことを政府は今まで説明をしてきたのであります。これが動機で作られた法案です。ところがこれに対してこのようなビラが作られ賛成の意思がここに表明されている。ここにこそ、私ははっきりこの政防法の性格が明確に出ていると思うのでr。こういろことをやって、この政防法の総体をおおい隠して国民をごまかしてはならない。これは全く労働者を初め、国民のあらゆる民主主義的現実を制圧し、弾圧するところの法案であることは明白だと思うのです。それでも一体これを池田総理は強行されようとするのか、これは非常に重大な関心を持っておるのであります。国民がこの問題について、国会の運営から考えましても、非常に注意を持っておるのです。われわれはこれに対してはっきりと池田総理の見解を表明していただきたい。その前にこれを見て下さい。
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。政防法につきましては、今国会で審議せられておるのであります。私はこれに対しまして意見を申し上げません。また民間団体についての意見に対する批評は差し控えます。
○委員長(小山邦太郎君) 次に、小柳牧衞君の御発言を求めます。
○小柳牧衞君 私は、本国会が災害対策を重要なる問題の一つにしておるという点にかんがみまして、このごろ日本におきまして非常に惨害をたくましゅうしておりまする集中豪雨を中心といたしまして、これに対する政府の対策をお伺いいたしたいと存じます。 集中豪雨は前からもいわゆる不連続線というような立場においてあったものと存じまするが、しかし最近特に著しくなったような感じをいたすのであって、さきには諫早におけるあの惨害、また近くは北海道室蘭を中心とする惨害をわれわれは見たのであります。またさきの年末年始におきまする北陸地方を襲いましたところのあの豪雪も、また集中豪雨の変態といわれておるのであります。気象庁のいうところによりますると、この状態はなおしばらく続くそうであります。すでにこの状態が続くということになりまするならば、この集中豪雨に対する災害対策を、国策として十分考究しなければならぬと思うのでありまして、そういう立場に立ちまして、関係の閣僚にお伺いいたしたいと存じます。 まず第一に、災害の予報なりあるいは調査なりに一番関係の多いのは気象庁でありまするが、前回気象庁におきましては、従来台風というものに非常に力を入れた、これは非常にけっこうなことで、将来も一そう台風に力を入れていただかなければならぬと思うのでありまするが、それと相並んでこの集中豪雨についても、研究の必要のあることは申すまでもありません。でありまするからこれにつきまして、私はまず第一に、最近この現象はどうして起こったのか。これはきわめてむずかしい問題と思いまするけれども、世間ではこのごろ急に集中豪雨の多くなったということについて、その理由をいろいろ憶測をし、あるいは流言等も起こっているくらいでありまするから、今日の状態において、気象庁等においてわかるだけの調査の結果を、国民に知らしていただきたいと思うのでありまするが、この調査はどういうふうになっておりまするか、まず第一にお伺いいたしたいと存じます。 さらに、この集中豪雨の非常な惨害をもたらしておるということは、ここに申し上げるまでもございませんが、これに対しましてどういう措置をやってきておるのか。私は先年諫早の集中豪雨を視察に参りましたので、そのときいろいろな話を聞いたのでありまするが、その一つには、あすこには無線ロボットの雨量計が設置されておりまして、これが非常に有効に働いたと聞いておりまするし、しかし普通の雨量計では役に立たぬというような話も聞いておりまするが、気象庁にきましては、これらの研究をされ、またそれに応ずるいろいろの施設をやっておるのであるか。最近この集中豪雨ということを対象といたしまして、北上川水系あるいは利根川水系におきまして、何と申しますか、簡易と申しますか、補助といいますか、小型のレーダーを作っているそうでありまするが、これももちろん有効と存じまするが、これはもっと、もっと各地に作る必要があるのじゃないか。これらの施設に対してはどういうことをやっておられるのか。 さらに第三には、将来どういうふうな計画を持っておられるのか。この集中豪雨の研究は、おそらくはあまり多く進んでおらないと思いまするので、なかなかこれは容易でないと思うのですが、私は日本の気象庁を非常に信頼するほうの立場なのであって、現にこの局地風については、日本の気象庁は非常によく研究しているのであって、ほとんど確定的に予言ができるということを言っております。また最もむずかしいといわれておりまする地震につきましても、もう一歩で予報ができるというくらい研究されているのでありまするから、こういうような有能な所員をもって、集中豪雨にあたったならば、必ずりっぱな研究もでき、調査もできるのじゃないかと思うのであります。しかし何分にも気象庁の予算というものは、大体どうも少ないように思うのでありまするし、また設備におきましても非常に遺憾であるではないかと、ついこのごろ襲来しました台風についても、設備が十分でないために完全な予報ができなかったということは、国民といたしましても残念しごくに存ずるのでありまするが、将来日本の災害は、主として風水害ということになるのでありまするから、その根本であるこの気象の問題については、十分力を入れなければならぬ。少なくとも文明国といわれる立場においては、もっとこれを助長しなければならぬし、科学時代といわれる時代に処しても、やらなければならぬのでありまして、私は集中豪雨ということを基礎といたしまして、従来の研究の状況並びに現在の状況、将来に対するお考えを、当局にお伺いいたしたいと存じます。
○国務大臣(斎藤昇君) 最近集中豪雨の被害がひんぴんとして起こっておりますことは仰せのとおりでございます。集中豪雨のよって来たるゆえん、またこれらの気象学的なことにつきましては、あとで気象庁長官からお答えをいたしまするが、今日わかっております限度におきまして、事前に予知をし、また豪雨があった際にできるだけ早く下流の方へこれを知らせる。そうして防災的な措置を講ずるという点につきましては、鋭意努力をいたしているわけでございます。しかしながら、今日の状況においては、これで完全とはとうてい申せません。まだ人の点におきましてもあるいは設備等の点におきましても、なさなければならない点が相当多くございまするので、今後できるだけこの方面に力を注ぎまして、そうして災害をできるだけ未然に防ぎ、あるいは軽減をいたしたいかように考えているのでございます。
○政府委員(和達清夫君) 近年集中豪雨の災害が非常に多いようでございます。集中豪雨はある地域に非常に強い雨が降ることでございますが、こういう現象は昔からあったものと私ども思っております。しかし近年その現象が多少多いかどうか、これはよく調べてみたいと思っておりますが、災害の多い原因は、一つには、そういう集中豪雨に対して、災害を受けやすい社会状態になっていることも原因していると思う次第でございます。 これに対しまして気象庁は、昭和二十八年の水害以来、鋭意雨の観測また特に山地に降りました雨を早く知らせるというために、鋭意設備を整えて参りました。水害を防ぐとともに一方水の利用を極力はかるために、たとえばダムを対象といたしまして気象施設をする、あるいは山地に降った雨の量を早く知る設備をするというようにいたして参っております。集中豪雨に対する対策といたしましては、第一に予報することが大切であります。この集中豪雨の予報という点は、現在の気象技術におきましては非常にむずかしいものでございまして、私どももまだ十分に豪雨の降る場所と時間とを予報するということはいたしかねる状態でありますので、基礎になる研究を必要といたし、数年間の計画をもちましてこの研究を開始したいと、昭和三十七年度の予算にもその計画を予算要求に考えております。なお、予報がある程度むずかしくても大体の傾向がわかることと、一たん降り出してからも対策ができるのでございますから、一たん降り出してから早くその実態をつかむためにレーダーを活用するとか、また先ほど来申し上げました雨量計が自動的に働きまして、早く降った雨を知らせるという装置を全国、特に山間部に備え、そして洪水予報、洪水警報を、主要河川につきましては建設省と協力いたしまして、極力集中豪雨による水害防止に対して万全の努力をいたしておる次第であります。
○小柳牧衞君 ただいまの気象庁のお話で大体了承するのでありますが、不幸にして日本は近隣なりあるいはシナ大陸あるいは南方、東南アジア等において気象観測の設備なり、そのまた連絡等において非常に困難な点があるのじゃないかと思うのです。また大洋における船舶の往復に際しましても、最近は台風を避けて船舶が他に行くんだそうでありまして、したがって、それらについての観測も非常に困難だと聞いておりまするが、要するに、日本を取り巻く大陸地方並びに大洋における観測なりその報告の連絡等については、どんなふうにお考えになっておりまするか。もしこれらのことをもっとよくすることについて御意見、御計画があったならば承りたいと存じます。
○政府委員(和達清夫君) 現在の各国の気象資料の交換におきましては、少なくとも国際連合に加盟しておる国はもちろんのことといたしまして、大陸の中国も含みまして、私どもは日々の気象業務に支障ない情報の交換をいたしております。海上の問題は、世界とも気象資料の不足に悩んでおるところでございまして、ことに日本におきましては広い海上を控えておりますので、台風その他の気象現象の把握には非常に困難を感じておる次第であります。これの克服には、お話の船舶の活用はもとよりといたしまして、陸地あるいは島に近いところはレーダーの活用をいたし、また特別の台風等に対しましては、現在は米軍の飛行機が観測しております、その資料をできるだけ活用する。また現在も四国の南方にあります定点観測を活用するというような方向に進めておりますが、この海洋の上の気象観測ということは、近代の科学の進歩とともに何らかの新しい技術をもってこれを開拓していくということについてわれわれが現在非常に努力しているところであります。
○小柳牧衞君 今日との災害対策が非常に重要視せられている際に、その一番の基礎をなすところの気象観測につきましては、一段と政府におきまして考慮をしていただきたいということを強く要望いたしまして、次の質問に移りたいと思いますが、集中豪雨の災害の特徴として私は三つあると思うのです。その一つは山くずれであります。第二は山くずれの結果と申しましょうか、土砂が堆積するということ。また河川のはんらんではなくて、高地そのものに多量の降雨があるために平地における冠水の問題であります。第三には、もちろん大河川もはんらんいたしますけれども、局地的であるという立場におきまして中小河川も非常にはんらんするというのが、私はこの集中豪雨の災害の特徴であると思うのであります。 まず第一にこの山くずれの問題についてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、わが国におきまして山くずれの問題は御承知のように一つは農林省の荒廃地復旧の仕事がございます。第二は建設省における砂防の工事でございます。この二つをもって大体やっているのでありまするが、まず第一にこの農林省におきまするところの荒廃地復旧の情勢を見ますと、これはどうも統計を私は十分手に入れることができませんので、非常に不十分ではありますが、大体非常に力を入れてないという感じを持つのでございます。 たとえば三十四年の治山の復旧費のパーセンテージは七九%であって、そうして予防的なものがわずかに一〇%にすぎない。それから三十五年度は復旧が七八%で予防がわずかに九%にすぎない。もちろん復旧は大切です。しかし復旧を予防するということはすでに災害がきているということであって、少しわれわれとしては遺憾に存ずるのであって、どうしてももっと予防の方に力を入れなければならぬのにこういうような状態であります。さらにまた十カ年計画を見ましても復旧が七六であって予防が二八、その他いろいろ地すべり等が八と、こういうような状況になっております。でありまするからいかにも、この重大な荒廃地の復旧の予防的の場合には、力が入っておらぬという数字から結論が出るように思います。さらにまたその渓谷と申しまするか、谷合いの工事と山腹工事を比較いたしますると、これは遺憾ながら統計が私の手には入りません。聞くところによると大体半額だというのです。われわれは渓谷の工事ももちろん必要でありますが、山腹の工事にうんと力を入れてもらいたいと思うのですが、それについてはさほどでない。これはあとでお伺いしたいと思いますが、こういうようなことは建設省との関連において自然そういうような関係になるんだといわれております。そういたしまするというと、われわれはますますこの荒廃地の復旧には、農林省としてたくさんの予算を持って、十分力を入れていただきたいと、かように考えるのでございます。まず、この点につきまして農林当局から御意見を承りたいと思います。
○政府委員(吉村清英君) お答え申し上げます。 先生のただいま御指摘のとおり、復旧治山と予防治山の比率でございますが、仰せのとおり、予防治山におきましては一〇%程度でございます。経費の面が一〇%程度でございまして、私どももここ数年来、特に林力増強、あるいは奥地林の開発という面から、この開発を進めて参りますためには、どうしても予防的な治山を特に進めまして、崩壊その他のおそれのないような手段を講じて参らなければならぬという考え方から、特にこの予防治山には力を入れて参らなければならないという考え方を持ちまして、努力をいたしておるのでございます。 仰せのとおり、年々なかなか崩壊等の災害が減りませんで、この予防治山に十分な力がいたせませんことを、まことに残念に思っておるのでございますが、今後なお一そう努力をいたしまして、この点はむしろ病気にかかる前に予防を、健康な森林を、からだを作っていくというような考え方を持ちまして、治山事業を進めて参りたいと、かように考えておりますので、御指導をお願い申し上げたいと思います。
○小柳牧衞君 さらに、建設省の破防工事の、治水事業費にどういう地位を持っておるかということを数字について検討いたしまするというと、昭和二十八年には、治水費に対しまして、破防は二〇・四%、二十九年は二〇・七%、三十年には一九・七%、三十一年には一九・七%、それから三十二年には一九%、三十三年には一九・三%、三十四年には少し増しまして二一・四%、三十五年には一八・九%、三十六年には一九・四%、大体にだんだん減少しておるような傾向であって、砂防工事に非常に力を入れなければならぬという集中豪雨を前にいたしまして、はなはだ心細いことと思うのであります。もちろん、これは復旧費が入っておりませんから、復旧事業が非常に多いから、もっと仕事をやっておるんだということはいわれましょう。しかし、それは何も予防的の立場において安心すべき数字ではないと思うのであって、私は農林省に対して要望いたしましたと同じように、集中豪雨の対策として、砂防工事にもっとたくさんの仕事をやってもらいたいと思うのでありまするが、これに対しまして、建設当局の御所見を承りたいと思います。
○国務大臣(中村梅吉君) 御指摘のとおり、最近の豪雨災害等にかんがみまして、われわれとしては、砂防に極力力を入れて参りたい、かような考えを持っておる次第であります。特に当局をわれわれは督励をいたしまして、砂防事業の緊急を要する個所などをできるだけ精密に調べて、そして予算を要求したり、予算編成の資料にいたしたいと考えて進めておる次第でございます。もう相当個所について、砂防工事の施行を要する個所を六、七千カ所、実は検討をいたしておるような状況でございます。
○小柳牧衞君 治山治水はきわめて重要なことであって、それに対しては、どうしても荒廃地の復旧なり、砂防工事に非常に力を入れなければならぬと思うのでございます。ところが、これがどうも思うようにいかぬということの一つの理由は、私は、これはもう明治以来より農林省の荒廃地復旧の問題と建設省の砂防とが相対立して、そうしていざこざを起こしてきたという、その点において大きな理由があるではないかと思うのであります。これらのために、昭和三年には、この両者の争いを調節するために閣議決定をやっております。さらに昭和四年には、次官通牒をもって、協力し妥協して、円満に仕事を運ぶように具体的ないろいろな指示をしております。それでありまするから、一応対立の深刻さは解消したようでありまするが、実際について、あるいは現場について考えてみますると、相変わらず両者が対立をしておるのでございます。その結果でありましょうか、行政監察局は二十七年、二十八年、それから三十二年に、あるいはその行き過ぎを勧告し、あるいはお互いに連絡なくしてやったということの不当を指摘いたしまして、これを通告しておるのであります。別の委員会におきまして、農林当局も、すでに行き過ぎがあったということを言明しておるような状態でございます。 先般決定いたしましたところの治山治水基本要綱によりまするというと、その第二項に、「上流水源地域等における治山及び砂防事業を有機的に関連せしめて強力に推進する。」と、あるのですが、有機的に関連せしめるということは、これらのいざこざをおそらくは察して言ったものと思うのであります。これはどうしてもこの問題を解決することが、治山治水の重要なる要諦であると私は思っております。明治三十年に砂防法を制定したときの提案の理由を見まするというと、実に非常な、何と申しまするか、雄渾な理想のもとに、日本の治山治水は、上流は森林法によってやる、下流は河川法でやる、その中間の木のないところはこの砂防法でもってやるということを言っておるのであって、今日のように予算が他の十分の一にもすぎないという状態と雲泥の差があるのであって、今さらながら、明治時代の非常に雄渾なる行政の理想に驚かざるを得ない状況でございます。 こういうようなことを考えますれば考えるほど、私はこの災害対策、ことに集中豪雨に悩んでおる際に、今の荒廃地なり、あるいは砂防にうんと力を入れる。ことにまた日本は、大陸と違いまして、山岳地帯が非常に多いのであって、この事業に力を入れなければならぬことは当然でございます。こういうような時代に際会いたしまして、単に行政の、まあ言葉はきわめて悪いのですが、なわ張り争いによって国民の福利を阻止するというようなことがあっては相済まぬと思うのであって、この際、池田総理大臣は、この多年にわたるいざこざの重要なる問題について、抜本的な革新、改革を加えられ、あるいは治山砂防局というようなものを設けるとか、あるいはそれを一括して処理をしまして、そうして砂防法のできた当時のような非常な高い理想を持って、この日本の国土の問題を解決するようにしていただきたいと思うのでありまするが、総理の御所見を承りたいと存じます。
○国務大臣(池田勇人君) 治山治水は、ことに、わが国におきましては政治のもとでございます。山を治めることが国を治めるもとであると昔からいわれております。私はその通りであろうと考えているのであります。したがいまして、重要な仕事でございますから、これを一元的にやったらいいじゃないか、こういう御意見、従来からも唱えられております。何と申しましても、河川法は明治の中ごろくらいに設けられて、もう五、六十年たっている状況でございます。いろいろ考えてみましたが、何分にも関係各省が多いので、これを一つにまとめるということはなかなかむずかしい。今御審議願っております水資源開発公団、これにいたしましても、よほどの努力をしてようやくまとまった程度なんで、一般の河川におきまして、治山治水、砂防、利用面、その利用も、やはり工業用水もありますし、農耕地の灌漑等もございます。水道、厚生関係もございますので、なかなか困難であります。私は、特定の大河川につきましては今、公団でやる。それから個々の問題につきましては、やはり関係各省が横の連絡を密にいたしまして、問題ごとに連絡協議会を開いて、個々の問題で処理をしていくよりほかに、今省を設けると申しましても、水資源開発公団で相当苦労いたしましたので、今後研究はいたしますが、今直ちにどうこうということはなかなかむずかしいのではないかと思います。
○小柳牧衞君 時あたかも災害問題が重要視せられるときであり、池田内閣は強力内閣として、内外に重きをなしているときでありますから、こういうような問題は、ぜひこの機会に解決をしていただきたいという希望を強く申し述べて次に移りたいと思います。 次は、山くずれ等によってできまする堆積の土砂の取り除きの問題、さらにまた、河川のはんらんによらないところの農耕地における湛水の問題は、集中豪雨としては非常に重大な関係を持っているのであって、どうしてもこの問題を解決するために、政府としても努力しなければならぬと思います。今度幸いに、堆積土砂並びに湛水の排除に関する特別措置法案というのが提案されているのでありまして、これによりまして、その施業者に対しましては、相当額の補助をすることになって、非常にけっこうだと思うのですが、しかしこれは、今回の豪雨による災害に限っているのであって、いわゆる臨時立法であります。しかし、先ほど来申し上げているように、集中豪雨というものは、将来そう簡単にやみそうもないのですから、これに対しましては、もう少し恒久的の研究をしていただきたいと思います。この耕地の湛水の排除につきましては、これまた農林省の用排水の問題が起こるのであって、これまた所管についていざこざが起こらざるを得ないと思うのですが、しかし、これも何とか克服いたしまして、一日も早く土砂を取り除き、湛水を排水するように努力していただきたいのであって、この法案の実施に当たりましては、特に御留意をいただきたいと思うのであって、この点につきまして、建設大臣の御所見を承りたい。
○国務大臣(中村梅吉君) 御知承のとおり、従来は農業排水あるいは都市排水という程度の排水施設でございましたが、最近の低湿地帯における災害の現状から見まして、この湛水を早く排除する必要が絶対にございます。さようなわけで、建設省としましても、河川に関連をした公共事業として、あるいは湛水のために道路が長期間にわたって不通になった個所もございましたので、あるいは道路事業に関連をして、公共事業としての大規模な排水施設を整備いたしたいという考え方で、目下いろいろ具体的な進め方あるいは予算措置等について検討をいたしておる次第でございます。小さい排水施設でございますと、湛水のために排水施設自体が水没してしまう、こういうような事例も最近見受けられますので、さようなことのないように、湛水をいたしましても、肝心な排水施設は厳として活躍のできるような基礎施設等をいたしまして、整備を進めて参りたい、かように考えております。
○小柳牧衞君 次に、中小河川の問題についてお伺いいたしたいと思いまするが、日本の河川行政を見まするというと、大きなのは、いわゆる直轄河川等につきましては改修が相当進んでおるようであります。もちろん、これでもって十分ではありませんが、大体緒についているといってよろしいと思うのですが、中小河川の立場を見まするというと、まことに私は遺憾に存ずるのでありまして、二十八年以来の河川改修費のうちで、中小河川費の率を見まするというと、二十八年には三三%四であり、二十九年には三一%六、三十年には二八・七、三十一年には二六・四、三十二年には二五・九、三十三年には二五・六、三十四年には二五・五、三十五年には二四・四、三十六年には二三・六と、かように河川改修費に対する中小河川の改修率は逓減しておるのであります。われわれは、大河川をどうでもいいというのではありませんが、大河川は大体その方針がきまっておりまするが、今後力を入れるのはこの中小河川であると思います。ことに、集中豪雨のような局地的の水害に対しましては、中小河川の改修というものが格別必要であるということは、これはもう申すまでもありません。当局におきましても、そういうような点を考慮されたのでしょうか、三十四年には小規模河川という一つの項を設けまして、これに力を入れておるのであって、これは非常にけっこうだと思うのですが、私は、この集中豪雨を対象にいたしまして、いわゆる準用河川というものの範囲をできるだけ拡大いたしまして、そうして小規模河川、さらにもう一歩進んで、小々規模河川にまでその改修の力を入れることが、集中豪雨を対象としてきわめて必要なことであると思うのです。そうしてまた、中小河川は、区域は狭いかもしれぬが、その災害の深刻の度に至っては、私もこのごろ実地に臨んで、まことに驚いたぐらいでありまするから、政府の河川行政といたしましても、この点に非常に力を入れなければならぬと思うのでありますが、この点につきまして建設大臣の御所見を承りたいと思います。
○国務大臣(中村梅吉君) 最近の豪雨災害の傾向が、確かに御指摘のとおりの状態にございます。そこで、私どもといたしましても、大規模河川も、もちろん相当整備はされてきておりますが、河川改修はまだまだ大いにやらなければなりませんが、特に中小河川及び小規模河川につきましては、現在実施いたしておりまする五カ年計画の、前期五カ年計画の中におきましても、これらの小規模河川、中小河川に大体四〇%ぐらいの経費を充当いたしまして、極力こういう小河川の整備をいたしまして、豪雨災害等にまずまっ先に惨害をこうむりますのが中小河川でございまして、これがまた大河川に影響してくるという状況にかんがみまして、小規模河川、中小河川等につきまして、極力この整備を促進して参りたいと思っております。
○小柳牧衞君 私は、どうしてもこの小河川に力を入れていただきたいと思うのですが、基本要綱の第四には、「治山治水事業の合理的実施をはかるため、基本的事項に関し、広汎な科学的調査を計画的かつ継続的に実施する。」、計画的かつ継続的に実施すると思うんですが、日本の河川の全体につきまして、一種の国勢調査式にその状態を科学的かつ計画的に調査することがきわめて必要であると思います。河川法は河川台帳という制度はありまするけれども、これは単に名目を並べるだけであって、こういうような河川の状況を調べておるのではありません。また、河川も始終変わりまするから、これはきわめて困難だと思うんですが、河川の工事をするためには、どこが一番必要であるかということを決定するには、どうしても基本的のいわゆる広範な科学的調査、計画的かつ継続的の調査を必要とすることは基本要綱の要望しておるとおりであると思うんですが、この問題は、どんなふうに取り運んでおるか、現在の調査状況を承りたいと存じます。
○国務大臣(中村梅吉君) ことに、豪雨災害による中小河川の現状を見ますると、やはりその地方の土質等に多大の影響があるようであります。ことに中央構造線に該当いたしまする区域は、同じ雨量の場合でありましても、中小河川、小規模河川等の被害が一そう激甚のようでございます。目下私ども、最近の災害の状態にかんがみまして、鋭意そういった緊急を要する中小河川、小規模河川等について調査をいたしておるのでございますが、前期五カ年計画のうちにおいてぜひ、大体五百五十カ所くらいが今見当をつけておりまする河川でございますので、これらの整備を促進をして参りたい、かように考えております。
○小柳牧衞君 河川工事の着手は、どうしても今申しましたような基本的の河川の調査に立脚しなければならぬと思うのでありますが、しかし、実際においては、それらの調査が十分でないということもありましょうが、一つには、この予算の編成の際、またはその計画を立てる際に、いわゆる経済的の効率があるということを非常に直視して決定するようであります。 これは、中小河川のごときは、もちろん大河川に比べまして経済的価値は少ないかもしれません。これと同じように、たとえば先ほど来由しました荒廃地復旧にいたしましても、あるいは砂防工事にいたしましても、経済的の効率という点から見まするというと、下積みになるおそれがあるのであって、この点につきまして、事務当局等の声を聞きまするというと、計画を立てる際にも、あるいは予算を要求する際にも、どうもいわば俗な言葉で申しまするならば、もうかることであれば、大蔵省なり当局も非常に快く取り入れてくれるけれども、あまりもうからんところの仕事については、下積みになるおそれがあって予算が取れないと、こういうことを言うんですが、これはどうも間違った考えとは申しまするけれども、ありそうなことだと思うのであって、これは単に建設省だけではなく、官界至るところ、そういうような空気がこのごろただようておるのではないかと思いまするし、さらにもう一歩進んでは、地方団体においても、公共事業をみる場合には、なるべくそれによって何か利益するところあるものを、まず第一に取り上げるような傾向が今日非常に強くなってきておると思います。 こういうふうに考えてみまするというと、私は、財政の投融資という考え方に、いろいろ疑問を持つのであります。かつてこの財政の投融資という言葉はあまり聞かなかったのでありまするが、昭和二十八年の予算編成のときに、この文字を使ったやに私は記憶しておるのでありまするが、これはどういうような思想系統で来ておるかということは、即断はできませんけれども、あるいはその当時の情勢からいいまするというと、ニューディールのパブリック・インヴェストメント、そういう思想から来ておるのじゃないかと思います。もしそうであるといたしますれば、これはできるだけ資金を効率的に使うというだけであって、それによって利回りを得るというような考えではないのであって、政府の資金をできるだけ効率的に使うということは、まことにけっこうなことでありまするが、さらに一歩飛躍いたしまして、できるだけそれによって収入なりあるいは利潤を得るというような考えがひそんであるということであったら、これはなかなか容易でない問題と思うのでございます。 もちろん、財政投融資には、あるいは公庫なり公社なりあるいは銀行等に融資をするという場合、あるいはまた地方団体に地方債をやると、こういうような場合には、利潤ということを第一の対象として、その緩急順序を定めるということは、これは私は決して間違った考えではないと思うのですが、一般の公共事業について投融資ということの考えを飛躍せしめまして、直ちに利益の上がる仕事であれば先に大いにやる、あんまり利益の上がらん、たとえば今申しました荒廃地の復旧であるとかあるいは砂防工事であると、こういうようなものには、金を入れることを惜しむと、こういうことになりまするというと、もう一歩進みまするというと、国という問題についての観念には違ってくるのではないか。申すまでもなく、国は営利会社でもありませんし、あるいはゲゼルシャフトでもございません。そういうような点から見まするというと、いわゆる国家百年の大計なり、あるいは民族の繁栄のために第一に公共事業を考え、それによって、幸いそれらの経費を償うような収入を来たすというならば、これはまことにけっこうなことですが、単に、もうかりそうな仕事だから第一に予算に計上する、あんまりもうからん仕事であるからして下積みにすると、こういうような風潮が、日本全体にびまんいたしたならば、私はゆゆしいことであると考えるのでありまして、この点につきまして、私は池田総理がこの財政投融資、ことに公共事業に対する政府資金を出すときの考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 財政投融資の問題とお話の治山治水とか、あるいは一般の公共事業とは、根本的に考え方が違っております。これは国の施策で、まあ社会保障あるいは公共投資というものは、これは国が当然なすべきことなんでございます。 それから財政投融資のほうでも、鉄道とか電電公社等は、これは一つの経済機構に入っております。それから国で行ないます道路工事にいたしましても、これは道路工事というものは、当然国がなすべきことでございます。しかし、今やっております有料道路、これは公共投資でやっておりますが、これはまた一つの経済的観念から来ておるものであって、国が財政投融資でやりますその事柄の仕事と、それから治山治水とか社会保障とか、いろいろな一般行政のもとの分とは、全然区別すべきものであって、砂防をやったら、これが将来国のためになるということは、これは考えますけれども、これによって、どれだけ損があるとか得があるとかいう問題では全然ないと私は考えていっておるのでございます。
○小柳牧衞君 今池田総理の言われるように、日本の行政におきましては、これは当然なことと思うんですが、このごろは、そういうような風潮が非常に強くなりつつあるということを御留意をいただいて、一そうこの点についてしっかりした態度で臨んでいただきたいと思います。 最後に私はこの河川法の、これは先ほど、総理もちょっと触れたようでありますが、日本の現在行なわれておる大きい法規のうちで最も古いものの一つは、河川法だろうと思うのです。明治二十九年にできたのであります。その当時は利水という問題があまりありませんで、大体、治水ということを基礎にいたしまして、しかも全般の河川に及ぼさずして、いわゆる選択方式をとって制定されております。ところが時代の進運は、さらに利水という問題が大きく取り上げられ、さらにまた河川の範囲も非常に広くなってきたのであって、従来の河川法ではずいぶん不便である。そのために、しばしば改正をし、あるいはまた次官通牒等をもって解釈を拡大してきておるのです。 〔委員長退席、理事苫米地英俊君着席〕 しかし、これは実際、時代の要求には不十分であります。最近、いわゆる利水――水資源の利用についていろいろ法規も出ておるようでありますが、それらの点を考えますというと、この機会において、この問題を十分に御考慮いただきたいと思いますし、いわんや災害という大きな問題が起きておる際には、その根本をなすこの河川法についても、手を入れていくということが必要であると思うのです。 ところが、これは先ほど総理からもお話があったように、こんな古いものが、こんなような状態にあるということは、結局これに関係する省が多くて、そうして先ほど言ったように、はなはだ悪い言葉ですが、なわ張り争いで、この問題を取り上げておるというために、時代の要求に合わない古い規則を、こうやく張りでやっておるという現状であって、まことに日本の行政としては、私は芳しくない状態であると思うのであります。 でありますから、この際、諸外国にありますようないわゆる水の法――水法というようなものを作るとか、あるいは選択方式について、さらに拡大の方法をとるとか、あるいは利水をとの調和はかるとかいうような方途を講じていただきたいと思うのでありますが、これについて総理の御所見を承りたいと思いますが、ある一部では、こういうような情勢であるからして、日本の国土を守るために国土省を置くとか、あるいは水政省を設けよというような叫びもあります。しかし、これはなかなか大きな問題でありますが、少なくとも河川法を改正するという立場において検討をしていただきたいと思うのでありますが、これについての総理の御所見を承りたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 先ほどもお答えした通りに、ほんとうに必要なことでございますが、それがうまくいっていない点が多いのは、やはり悪い言葉ですが、なわ張り争いといいますか、そういう点があるのでございます。 今度水資源開発公団、これには大体各省も一致いたしまして・これは大きい水系を主にしてやっておりますが、こういうものを運用して、だんだん私はほぐれてくるのじゃないか、こういう気持があります。みんな必要性を認めておるのですが、大所高所からいっているということにまで各省がまだいっておりませんので、今後、お話の点十分検討いたしまして、ほんとうにりっぱな水行政ができるようにやっていきたいと思っております。
○小柳牧衞君 先ほど来御意見を承って参ったのですが、日本の行政庁には、これはむしろ職務に熱心なる余りかもしれませんが、権限争いが非常に多いので、かえって元も子もなくするような情勢であるということは、非常に遺憾に存ずるのであります。この点については、ぜひとも総理の御手腕に期待する次第でありまするが、内閣法の第七条によりますというと、各省間におけるいろいろな権限については、閣議ですか、で決定するということを明記しておりますが、その実際の事務については、まだ決定がないようであります。これは前の時代にも、そういうようなやり方であったようでありますが、おそらくは法制局におきましてその研究をし、原案を作り、そうしてやるのじゃないかと思いますが、少なくとも内閣法の第七条に規定しておるところの事務的の規定がまだないと思いますが、もしはたしてしかりとするならば、早急に今後決定いたしまして、そうしてこの問題の解決に、政府が熱意があるという所信を一般に示すということも必要ではないかと思うのでありますが、この点につきまして、最後に総理にお伺いする次第であります。
○国務大臣(池田勇人君) 行政の最終の責任は、内閣にあります。内閣で決定するのでございまするが、問題が、そこへくるまでに大きくなりまして、こない場合が多いのであります。その点は、先ほども申し上げましたように、なるべくそこへきて、うまい決定ができるような情勢を作りたいと存じております。
○小柳牧衞君 私の質問は、これで終ります。
○理事(苫米地英俊君) 明日は、午前十時に開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時四十七分散会