法務委員会 第6号
- 発言数
- 41 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1961/10/27
会議録
○河本委員長 これより会議を開きます。 裁判所法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、提案者より提案理由の説明を聴取いたします。畑和君。
○畑委員 裁判所法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。 昭和二十四年六月一日に公布されました裁判所法の一部改正法律では、新たに裁判所法に第六十条の二を新設いたし、それまでの裁判所書記を裁判所書記官と裁判所書記官補に分け、書記官補は単に書記官の事務を補助するものとされたのでありました。その際、直ちに裁判所書記官に任命し得る資格を有する者が少なかったという事情がありましたので、当時の裁判所書記の大部分は書記官補に任命されたのでありました。しかし、それでは書記官が相当数不足しますので、経過的な措置といたしまして、その附則第三項によって、「当分の間」は「裁判所書記官補に裁判所書記官の職務を行なわせることができる」ものとされたのであり、これがいわゆる代行書記官の根拠法律になっておるのであります。 同様な事情は、昭和二十九年五月二十七日の裁判所法一部改正法律により、家庭裁判所調査官、同官補の制度が設けられた際にも存しましたので、同法の附則第五項によって、これまた、「当分の間」「家庭裁判所調査官補に家庭裁判所調査官の職務を行なわせることができる」ものとされたのでありました。 さらにその後、裁判所速記官制度が裁判所法中に追加される際にも同様に代行速記官の制度が昭和三十二年の法律第九十一号附則第二項として設けられたものでありました。 このようにして設けられた各代行官制度は、施行後相当の年月を経て、裁判所書記官等に昇任させ得る能力を有する者が実務経験及び研修等により多数増加したのにかかわりませず、実際に昇任された者はその一部だけに限られまして、大部分の者は依然として書記官補等のまま書記官等としての職務を行なっているのであります。 特に代行書記官制度については、昭和二十四年六月以来、満十二年を経過いたしました今日も、最高裁判所当局は、「当分の間」のみ適用すべき経過規定をそのまま清川して、当然、昇任させることのできる書記官補を詳記官に昇任させることを怠り、漫然と年月を経過してしまったのであります。そのために、全国の裁判所には、約三千名の者が毎日実際に従事している職務に比べまして、一段と低い地位、待遇のままに置かれているのでありまして、その結果、各裁判所における職員全体の勤務意欲にも重大な悪影響を及ぼしているのであります。そして、これらの状態につきましては、本委員会並びに参議院法務委員会等においても以前からたびたび論議がなされ、また昨年十二月、第三十七回の特別国会におきましては、衆議院において「裁判所の代行書記官等制度廃止に関する請願」として五件、参議院において「裁判所法附則第三項改正に関する請願」として十五件がそれぞれ採択せられまして、内閣に送付されたのであります 以上の経過にもかかわりませず、内閣及び最高裁判所においては、問題解決に十分な熱意を示していると思われず、代行制度を利用して相当数の裁判所職員を低い地位待遇にとどめている状態でありますので、もはやこの事態を打開するためには、その根拠となっている法律に検討を加えるべきであると考えられるに至りました。 ここに提出いたしました法律案は、最初に述べました各代行制度の根拠となっております各項の効力が「当分の間」とありますのを、「昭和三十七年三月三十一日までは」と改めようとするのでありまして、昭和三十七年四月以降は、現在の代行書記官等はすべてそのまま書記官等に昇任させ得るのであって裁判所法本則に規定される本来の状態が実現し、裁判所職員の執務全般に非常な好影響を与え、裁判の促進にも役立つものと考えられるのであります。 以上が、この法律案を提案いたします理由であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう御願いいたします。
○河本委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。 —————————————
○河本委員長 次に、本案の質疑に入ります。 質疑の通告がありますので、これを許します。稲葉修君。
○稻葉委員 提案者畑議員の提案趣旨の説明を承りましたが、この法律改正のねらいとするところは、おそらく三千名に余る書記官補を書記官に昇格せしめて、その大部分を昇格せしめてやろうというのであるようでありますが、それは人事行政が間違っているということを不満に思われるのであれば、そういう意味の決議案でもお出しになるというのがいいのではないか。もし法律を改正しまして、「当分の間」を「昭和三十七年三月三十一日までは」と改めてしまいますと、三十七年四月以降は書記官補という制度がなくなってしまって、今まで書記官補である者は身分を失うことになるのではないかそれは当然にすべてそのまま書記官に昇格させ得るとは限らないのじゃないか。法律上当然に昇格させ得るのじゃなくて、この法律に基づいて首になっては気の毒だから、書記官補を書記官に昇格させてやろうという行政措置が伴わなければいけませんね。その行政措置がこの法律改正によって当然伴うかどうか、予算の関係もありましょうし、いろいろな関係もありましょう。せっかくのねらいとするところが、かえって書記官補の首切りになってしまう結果になるようなおそれはないか。その辺のところはどうなるのでございましょうか。
○畑委員 ただいまの稻葉委員の御質問にお答えいたします。 その御質問はごもっともではございますが、確かにこの法案は立法措置だけでございまして、行政措置はもちろん含まれておりません。この法規を定めることによりまして、当分の間というのが日が限られてくるわけでございます。そういたしますと、もちろんそれらの代行書記官がこの法律によって当然に書記官になるというのではございません。やはり中には幾ら何でもどうしても書記官にさせ得る能力がないという極端な者もあろうと思います。その点も考慮いたしまして、実は最初の出発はもちろんそういった人たちを全部書記官に引き上げるというのが考えのねらいでございますが、それは同時に、一応研修等もございますし、それを一方においてこわすということもどうかと思いましたので、従って立法措置は「当分の間」を日限を限るということにして、それによって、それまでに現在代行している人々を、特別研修というようなものもございますので、そういう方法でできるだけ早くその期間内にどうしても書記官にせざるを得ない、そういうところに追い込もうというのが実は私たちのねらいであります。なぜかと申しますと、今まで何回もこれが問題になっておりますが、いつになってもできない。それで法務省あるいは最高裁当局の方は、目の前に置いてまことに相済まぬ話だけれども、どうも政治力が足りないというか、予算組みかえ関係の方のあれがなかなか大蔵省当局に対して通らない。それが何回も続いておるわけです。当分の間ということをいいことにしまして、代行書記官制度という逃避場所を便利に使ってしまっている。そして、この調査でもわかりますが、今の書記官の予算定員は千九百十八名です。ところで、代行書記官がそのうちの千六百七十九、ほとんど大部分でございます。もっともこのほかに、実際には事務官であって、書記官補の仕事をしており代行されておるという人が相当おる。従って、合計して三千名というのが実際です。ただ、数字上におきましては、書記官補の身分を持って、それで代行書記官をしておるのが千六百七十九名ということになるわけです。これはしばしば私が当選してからも問題になりまして、この前も極力やる、そして解消の見込みがあるということであったのですが、なかなかそれがいかぬから、結局われわれはやはり立法の上でこうして追い込んでおく。そうすれば最高裁もやるだろうし、法務省もやるだろうし、また肝心な大蔵省は法律できまったのだから最高裁の方の要求も認めざるを得ない、こういうふうに追い込もうというのが私たちのねらいであります。従って、結局法規的にいいますれば、もちろんこうきめても代行書記官制度がなくなるのだから、そうしますと、昇任させる者は昇任させるけれども、やはりできない者は書記官補に落とす。もともと書記官補ですけれども、ただ代行のあれを削るということになって、代行はできない。しかし迷惑するのは裁判所です。本人たちももちろん四%の調整がなくなります。それは困るのは困るけれども、しかし裁判所は実際に今代行をやっているその代行書記官がいなければ、裁判所の仕事ができない。それでは落とせばいいやと言って恐喝みたいな、自分の責任をたなに上げて、そしてそうなったら書記官補に落とせるぞ、そういうことはできないぞ、こういうことを言いながらやっておることは卑怯だと思う。それにはやはり大蔵省に働きかけて、予算の組みかえを今やっていることはいる。私の方で提案すると、かえって予算定員の組みかえの要求がせっかくうまくいっているのをまずくするというような御意見があるようですが、僕は逆だと思う。それによって追い込む反面に、予算の組みかえ、書記官、書記官補、その両方の組みかえ、書記官をふやして書記官補を減らすというようなことをやることは、別に矛盾はしていないと私は思っておるのです。その辺がどうもお役人の——こう申しては済まぬけれども、やはりお役目第一というか、そういった消極的な態度からきているのじゃないか。裁判所全体の空気がそういうことじゃないかというふうに実は私は思いますので、あえて提案をいたしました。 ただ、日限等につきましては、今になりましては若干無理だと思います。その点はわれわれの方としても実情合うように、しかもある程度てこ入れになるように、あまり先になっては何にもなりません。また便利で代行書記官制度を使ってしまうから、適当なところで区切って、特例研修をどんどんやらせる。、実際のところ、一番最初に例の法律が変わったときに、前の裁判所書記から書記官にしたときの何か話を聞きますと、簡単に三年以上書記をやった人は書記官にした。それ以下は、一カ月でも足りない人は書記官補になった。それが現状はずっと続いて、ひどい人は十二年もまだ代行しておるのですよ。実に気の毒です。四十になんなんとするような人がまだ実は代行でおるという人がいる。仕事がいろいろ忙しい、家事に追われて勉強ができないということで、実は非常に不満があるのです。そうした不満を解消しなければいかぬ、それだけの熱意を示さなければいかぬ、われわれがそれをバックするのはやはり国会の任務であるというふうに考えまして、建設的に実は考えておるわけですから、その辺を一つ御了解願いたい。日限等につきましては、お話し合いするにやぶさかではございません。 ————◇—————
○河本委員長 次に、閉会中審査に関する件について、各般の事項につき順次お諮りいたします。 まず、閉会中審査申し出の件についてお諮りいたします。 畑和君外八名提出の裁判所法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案、及び今会期中における国政調査事項 一、裁判所の司法行政に関する件 二、法務行政及び検察行政に関する件 三、国内治安及び入権擁護に関する件 の各案件につきまして、閉会中審査を行ないたい旨、議長に申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○河本委員長 御異議ないものと認め、そのように決しました。
○河本委員長 次に、閉会中審査小委員会の設置に関してお諮りいたします。 ただいま議長に申し出ることにいたしました閉会中審査すべき案件が院議によって付託されましたときは、その審査に当たるため、小委員十三名よりなる閉会中審査小委員会を設置することとし、その小委員及び小委員長の選任につきましては、先例によりまして委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○河本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。 小委員及び小委員長は指名の上、追って公報をもつてお知らせいたします。 —————————————
○河本委員長 なお、閉会中におきまして、理事、小委員長及び小委員から辞任の申し出がありました場合には、そのつど委員会に諮ることなく、委員長において許可することとし、また理事、小委員長及び小委員の辞任並びに委員異動に伴う難事、小委員長及び小委員の補欠選任につきましては、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○河本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
○河本委員長 なお、閉会中審査案件が付託された場合、審査のため委員会及び閉会中審査小委員会において参考人の出席を求め、その意見を聴取する必要が生じましたときは、その人数、人選、日時等の取り扱いは委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○河本委員長 御異議なしと認め、さように決しました。 —————————————
○河本委員長 次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。 閉会中審査のため、実地調査の必要がある場合には委員派遣を行なうこととし、派遣委員の数及びその選定、並びに派遣地及び期間、その他議長に対する承認申請の手続等すべて委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○河本委員長 次に、お諮りいたします。 閉会中における本委員会及び閉会中審査小委員会の審査または調査に関し、最高裁判所の長官またはその指定する代理者から出席説明の要求がありました場合には、そのつど委員会に諮ることなく、その取り扱いを委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ————◇—————
○河本委員長 次に、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。畑和君。
○畑委員 刑事局長に、武鉄の問題で簡単にお尋ね、いたします。 武鉄事件は、相当世間を騒がせました。多くの疑惑を持たれたのであります。最初に楢橋前運輸大臣が逮捕をされるということで、頂上作戦ということで、最初から偉いところからおっ始まった。案外最後に、だんだんやっていくうちに、大したものでもなさそうだといったような形になっておるようでございます。それで、贈収賄関係では、楢橋前運輸大臣だけで、あとは銀行贈収賄、そういったようなことだけで起訴になっておるようです。この間当局の方では一段落したというので、新聞発表をいたされたのでございます。その後また最後に残っておったものも全部起訴等を終わって、もう終局的に、ほんとうに今度こそ一段落ちついたというふうに見受けられるのでありますが、その辺はどうか、承りたい。
○竹内政府委員 世間で申しておりますいわゆる武鉄事件は、大体において捜査を終了いたしまして、処理も完結をいたした段階でございます。仰せのように、この事件につきまして世間では相当大きな事件じゃないかといううわさもあり、新聞等もそういうような趣旨で報道していたのでございますが、私どもこの事件を追及して参りました者から見ますると、問題は武鉄事件の本体をなしております武鉄の免許を得たいという趣旨で、その最も中心人物でありました滝島総一郎氏の手元にその趣旨の金として渡されたものは、帳簿の綿密な検討の結果によりますと、一億円でございました。この一億円がどういうふうに使われたか、促進のために有効に使われたかということが、この捜査の中心目標でございます。金額も一億円ということでありますし、その裏づけは全部できておるのでございます。従いまして、この事件はこれ以上大きくなる性質の事件でもありませんし、捜査が未完了のままで壁にぶつかったために手を上げてしまったというようなものは少しもない。この種の事件といたしましてもすりきりした事件として完結をいたしておるように私は見ておるのでございます。
○畑委員 そこでお聞きいたしますが、ともかく一億円もの金が促進のために使われた。そのうち楢橋さんのところへ二千万円渡ったとか、いやそれより少ないとか、彼の供述はもっと少ないんだけれども、ほかの証拠からするともっと多いんだ、多い方で起訴をしたというようにも聞いておりますが、それはそれといたしまして、そのほかに一億円の金がだれに渡ったか、やはりはっきりしてもらいたいと思うのです。まあ永田雅一氏が相当暗躍をしたというふうにも聞いておりますが、結局起訴されたものは銀行贈賄だけのことのようです。もっと政界等にも相当働きかけたというふうにうわさをされておりましたが、それは出ておりません。そのほかに、国会議員等にも金が渡っていることも事実のようでございます。ところがその国会議員については何ら——何か極秘裏に参考人として調べたというふうに聞いておりますが、非常に極秘裏であるので、国会開会中だということもあったとか聞いておりますが、非常に極秘裏であって、新聞記者もとうとうそれをつかめないで、最後になってだれとだれが呼ばれた、こういうことだけで参考人とか書いてありますけれども、しかし世間では相当疑惑を持っておる。従って、まず私が聞きたいのは、だれだれのところへ幾ら、だれだれのところへ幾ら、その趣旨はいろいろ違うでしょう、それは贈収賄ではないとかなんとかいうことで抗弁もするでありましょうけれども、一体だれのところに幾ら渡ったのか、結局その一億円の金の明細ですね、厳密に、事業促進の方の部面に使ったのは幾らである、その以外にだれに渡ったのが幾らであると、一つおもなるところを知らせてもらいたい。これは、申し上げにくいというようなお返事があるかしらぬけれども、それでは世間が承知しないと思う。少なくとも、何の縁故もない人に金を何百万円と渡すはずはないのでございますから、伝え聞くところによると、選挙のときに数百万円知らないうちに事務所の方で受け取っておる、こういったことも聞いておる。また、消火せんの権利を売った金である、こういうことを言っておる代議士もおると聞いておる。いずれにしても、そういう点がはっきりしないでは、国民は相当疑惑を持っておる。従って、検察庁あるいは法務当局の方で、適当に妥協して、この程度しかなかったのだと言っているようにとるおそれが僕は多分にあると思うのでございます。そういう誤解や何かを、もしそれが誤解だといたしますならば、その誤解を払拭するためにも、こういった、だれに幾ら渡ったというので不審を持って追及したけれども、結局、おかしいと思うけれども、これだけの証拠しか上がらないからどうだとか、あるいはこれははっきりした政治献金だったとか、そういったことをある程度はっきりさせた方がよろしいと思います。今までのところ、国会でもまだそういう点は一度もだれも聞いておりませんし、また法務当局の方でも積極的に疑惑を解くために発表しておるような様子が見受けられないのです。そこで、国会も終わりでありますから、法務委員としての立場といたしまして、その辺を聞いておきたいと思って御質問をいたしますが、一つその金の、大どころの何百万円というところはどこにいったかということを明らかにしていただきたい。
○竹内政府委員 先ほど申しました一億円の行き先につきましては、金の行き先を突きとめて参りますという捜査目的のために、これを調べまして、明らかになっておるのでございますが、ただいまおっしゃるところによりますと、犯罪になろうとなるまいと、その金がどこにいったかということを言うことが疑惑を解くのに役に立つというお話のようでございますけれども、検察庁の仕事には、いつも私がいろいろな機会に申し上げておりますように、限界があると私は考えておるのでございまして、犯罪になりますものにつきましても、公表しますことは最小限度にとどめなければならないと考えておるのでございます。いわんや、犯罪にならないという判断に到達しましたものにつきましては、関係者の名誉等もあるのでございまして、そういう点を私どもの口から進んで述べますことは、検察としては、行き過ぎになるというふうに考えておるのでございます。その点一つ御了承願います。
○畑委員 ともかく一億円もの金が出ておる。それで、人によれば、九百万あるいはまた数百万円の金が選挙中にいったとか、一度しか会ったことはないと、こう言うその人が、かつての運輸省の——実は私の友人なんです。官房長もしておる。私は、そういう点、そういったことのあれを越えて聞こうと思うのですが、今刑事局長の話によりますと、幾ら金が渡ったからといって、罪にならないと判断しているものを公表するのはうまくないから、その人の名誉のためもあるから、刑事当局としては最小限度の発表しかしないということですが、起訴になったものは公判になるのですから、これは当然発表せざるを得ないわけですが、起訴にならないものでも、やはりそういったくさいものにふたをするというような態度は、国民を納得させることにはならぬのだと私は思う。とにかく、一般の国民はきゅうきゅうとして働いておる、しかもわずか二万円でも首をくくらなければならぬような国民がたくさんおる。それを何百万円というものがぽっと入ってきて、それが何にもならぬ。あっせん収賄にも何にもならぬ。ならぬというのは、上手にやっているから何にもならぬので、犯罪の構成要件というものは厳密にできているから、なかなかそれにぴったり当てはまらず、言いのがれもできるということは、私も法律家であるからわかっておりますけれども、事実の程度をある程度明らかにして、これならばあっせん収賄になると思っていろいろ捜査したけれども、こういうことでならなかったのだというようなことをやはりある程度明らかにせぬと、ますます大きなところには適当にやっておるのだ、こういったような疑惑が広がるばかりだと私は思うのです。そういうことがすべての国民の心理にやはり相当影響すると思うのでありまして、永田雅一さんの執行停止の件についても、私は言えると思う。執行停止は幾らでも、一年間に何件もありますと法務大臣が高田君に対して答弁しておりましたが、それだから珍しくないのだということを言っておる。しかし、私も弁護士をしておったので知っておるけれども、執行停止というものはなかなかない。おふくろさんが病気になったというが、まだ生きておるじゃないですか。もっとも出してやれば立ち直ることもあるのだろうけれども、そういうことで非常に疑惑を持って見られておる。やはり相当あっちこっちから雑音が入っておるように聞いておる。楢橋さんのときには何にもなかったけれども、永田さんになったら、えらいあっちこっちからたんくさんいろいろなあれが当局の方に出たような話も聞いておる、それでこの執行停止になったのだというような話も聞いておるのですが、どうもその辺も相当圧力があるのじゃないかというふうにも考えられるわけです。しかも最後になって、銀行贈賄だけだ、それから今の政治家の方へも行ったことも非常に極秘裏にやって、しかも国会でわれわれに明らかにできないということは、どうしても私は納得できない。そういう態度が疑惑を持たれることになるのじゃないかということについて残念でたまらない。そうすると、どうしても明らかにできないというのですか。
○竹内政府委員 いろいろ御質問の御趣旨はよくわかるわけでございますが、検察権行使の限界と申しますか、検察庁としての立場と、また法務委員会その他政治の立場と立場が違います関係もありまして、検察側で強権力をもって収集いたしました資料の中で、公判維持上あるいはそういう観点から、事前に刑事訴訟法の建前上申し上げかねる点と、それからもう一つは、今の犯罪になるかならぬかにつきましては私どもは全責任を持って取り調べに当たったわけでございますが、その結果としてならないという結論に到達いたしましたものについての取り調べの内容、経過等を申し上げますことは、これは避けるべき筋合いであろうというふうに考えておるのでございますから、その点は一つ御了承願いたいと思うのでございます。 なお、ただいま御指摘の中にありました永田雅一氏に対する執行停止等の問題につきましても御疑念がございましたけれども、もしそういうことにつきまして何らかの配慮をするというようなことでありますならば、永田雅一氏を初めから逮捕するということはしないのでございまして、これは永田氏に限らず、家族なり本人なりが、執行を停止する相当の理由があります場合には、裁判所の許可によって執行停止になる場合があるのでございまして、大臣がおあげになった数字というものはよく存じませんが、私の承知しておりますところでも、東京地検の担当しておる事件だけについて見ましても、本年から約半年余りの間に五十数件の執行停止の事件があるようでございまして、その理由とするところは、家族等に死亡その他非常看護等で執行停止をしなければならぬというような人道上の見地から、執行停止が認められた、あるいは本人自身の病気のため執行停止をするといったようなケースでございまして、仕事のために差しつかえるとかいう理由で執行停止になった事例はございませんし、永田雅一氏の場合につきましても、母親の急病、重態というようなことでございましたので、やむなく執行停止の措置に同意した次第でございます。その間に何ら外部からの圧力によってそうしたといったような、そういう事例は少しもございません。現に検察庁に対してそういうことを言う筋合いはないわけでありまして、政治方面からそういう力がかかってくるなどとは、私のところのルートを通しまして検察庁に接触するわけでございますが、その衝に当たりました私自身、さようなことはどこからも伺っておらないのでありまして、しいていいますならば、新聞等でそういうことがあったのじゃないかという憶測の記事を読んだにとどまっておる状態でございます。この事件に関しましては、先ほども申しましたように、捜査としては完結——調べるところは全部調べ済みであるということと、それからまたそういう外部からのいろいろな陳情めいたこともほとんどなく、この種の事件としましては検察庁としてはすこぶる心行くまで調べさせていただいた、こういう案件でございます。
○畑委員 永田氏の執行停止のことにつきましては、しからばどういうことでそうした、どうしても執行停止しなければならぬほどの病状であったということを、どういう根拠によって知り得られたか、その点を明らかにしてもらいたい。
○竹内政府委員 永田氏が逮捕されたのがテレビの放送を通じて京都におります実母の目に触れたそうでございまして、それが一つのショックになって重態状態に陥ったということでございまして、永田氏担当の弁護人からその旨の申し出が地検の担当検事に対してございまして、それで地検の担当検事としましては、ただそういう申し出があっただけではそれをすぐ信ずるわけにはいかないということでございまして、弁護人の方は、それでは京都のしかるべき医者からの診断書を電送写真で送らせまして、そして検事の信用を得る証明資料とするということで、その旨の申し出があり、かつ電送写真を検察庁に出してきたのでございます。検察庁としましては、それでもなお念を入れて、実情を調査した上でないと判断ができませんので、直ちに京都地方検察庁にその事実の有無、状況等の調査を委嘱いたしまして、その調査の結果を待ちまして、弁護人の申し出のような実情であることがうかがわれましたので、一定の条件を理由にして、その条件をのむならばということで弁護人との間に話し合いができて、裁判所の方にも検察庁もこれに賛成であるという趣旨の意見を述べた結果、五日間の勾留執行停止になった、こういう実情でございます。
○畑委員 そうすると、京都の検察がどういう調査をしたのか、それまでわかっておりませんか。ただ信頼しているというだけで、ただ病気はその通りだという、調査の結果返事があったということだけか、それともどういう調査をした結果そうだったということまで報告が来ているかどうか。
○竹内政府委員 これは詳細な報告が参っております。
○畑委員 検察庁がいろいろ実際に調べた詳細な報告、それによってその診断書がその通りだということをお宅の方でも認定された、こういうことになりますか。
○竹内政府委員 大体においてそうでございます。ただ京都地検から参りました調査によりますと、今危篤状態だという状態ではない、しかしながら老齢でもありますし、もし途中で変化が起こってきた場合には、今執行停止にして帰らしてやる機会を与えておかないとあるいは死に目に会えないというようなことも起こり得るという判断でございました。
○畑委員 その辺がいろいろ問題なんです。人道上の問題だからあまりこちらも言いたくはないが、今言った通り、検察庁では危篤という程度ではないということだとの話、それでその後も別に何ともない、もっとも会ったからなおってしまったのかどうか知りませんけれども、どうもその辺が釈然と実はいたさないのであります。市井の一介の犯罪人の場合には、なかなかそうはいかない場合が相当多いのであります。そういう点で、ああした大物でありますから、自然の圧力というか、そういうことで京都地検の方でも適当にそういう答申をしたのじゃないかというふうに思いますが、いつまで議論していても仕方がありませんので打ち切るわけですが、先ほども、事件の全貌、とにかく金がどういったかということを明らかにすることについて検察当局の方でもいろいろ調べたけれども結局金の行方は全部わかった、その辺はよくわかったけれども、ほかの人の点については別に犯罪にふれるところはない、従って公表すればその人の不名誉になるからしないのだ、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
○竹内政府委員 その通りでございます。どうぞ御了承願います。
○河本委員長 坪野米男君。
○坪野委員 私は出る十月十九日の法務委員会で九州産業交通株式会社のいわゆる会社事件、背任、横領等の告発事件に関連して、検察当局の捜査方針、捜査の段階でいろいろ疑惑が持たれておるという点について、具体的な事実を指摘して刑事局長にお尋ねをしたわけでありますが、その後刑事局長の方で現地について調査をされた結果を簡単にお答えを願いたい。
○竹内政府委員 ただいまお話しの通り、去る十九日坪野委員から御指摘のあまりした。九州産交の事件についての検察のあり方について重大な疑惑があったということでございまして、逐一十項目くらいになるかと思いますが、御指摘のありました点については私どもも意外とするところの点に触れるものが多々ございました。もとより私どもつまびらかにしておる状況ではございませんでしたので、取り急ぎまして項目を整理し、さらに私どもとしても伺っておかなければならぬ点もございますので、それらを整理しまして、最高検察庁とも十分打ち合わせまして、福岡高検の検事長にこの調査方を委嘱することに決定をいたしまして、二十日その旨の書面をもって検事長に検事総長から指揮が出ておるわけでございます。それから今日まで一週間もたっておらない状況でございまして、まだもちろん調べが完結しておらないと思いますし、私どもの方にも報告が参っておりません。調査の報告が参りましたならば、できるだけ早い機会に御説明申し上げまして、もし疑念がありますならば疑念は晴らし、もし御指摘のような不都合な点がございますらなば私どもとしてしかるべき処置を講じまして、検察の威信に資したいかように考えております。
○坪野委員 前回質問した点は、検察行政あるいは捜査のあり方として非常に重要な問題点であります。その後にもわれわれは関係者から陳情を受けて事情を聞いておりますが、たとえば野田検事正が被告発人である九州産交の重役とゴルフ場でゴルフをともにし、会食をしたという事実についても、被告発人の竹林専務がホテルの宿泊のあっせんをしておるというような事実も、ホテルの宿泊台帳を調べて確認をいたしております。ですから、被告発人の方からの招待と申しますか働きかけで、名目はどういう名目か知らないけれども、会食している、あるいは宿泊しているという事実は明らかなようでありますが、こういうことはいかに検事正であろうとも不謹慎きわまる、あるいは多分に汚職の疑いすら持たれるわけでありますが、その他の問題点についても非常に重要な問題でありますから、早急に調査の上、閉会中にまた委員会を開く予定になっておるようでもありますので、一つその際に明らかにしていただきたいと思うわけであります。 なお、前回刑事局長が申された通り、会社事件としては非常に重大な事件のようでありますし、当事者間で示談ができれば本件が不起訴になる、あるいは起訴猶予になるという性質の事案でもないと思うわけであります。多数の株主あるいは従業員その他の関係者に与える損害も非常に莫大に上っているようでありますから、ただ会社内部の内紛から当事者間の和解でもって本件の告発が取り下げされ、あるいは捜査が打ち切られるという性質の素案ではないと思うので、そういった疑惑を一掃するためにも現場の検察庁に対して一つ適切な指導並びに指示を与えていただきたい。特に不明朗な捜査云々ということは別個にして、捜査の促進という点でも検察当局の適切な指導を要望しておきたいと思うわけであります。この九州産交事件については調査の結果を待ってさらに質問をしたいと思いますので、私の質問は留保いたしておきます。 もう一つの問題について刑事局長にお尋ねしたいと思うわけです。それは山口県下関市の事件でありますが、山陽電気軌道株式会社の労働組合、これは私鉄中国支部の山陽電軌支部ということになっております。この山陽電軌事件という労働事件から当長期にわたるストライキその他の労働争議が続いておったようでありますが、この山陽電軌の労働争議に関連をして起こった軽微な暴力事犯について、労働組合の組合員が三十四名、その中に婦人を含む三十数名の逮捕者を出す、しかも二十九名が起訴されるという事件がことしの六、七月ごろに起こったわけであります。この事件の全般的なことについては、もう起訴になてっおりますから、ここで特に問題にしようとは思いませんが、私はこの山陽電軌事件について、警察当局の行なった労働争議に対する不当な介入、不当弾圧という事実は、人権侵害の問題として問題にすべき事案だと思うのであります。この警察の労働争議介入、不当弾圧に関連をして、山口地検の下関支部でありますかの検察当局の検挙方針あるいは起訴方針についても、非常に行き過ぎの点がある。従来の労働事件あるいは一般刑事事件について、このような形の起訴がなされた前例を私は知らないわけであります。そういう点について一つお尋ねしたいと思います。 事件は、現場が五、六カ所に分かれておりますから、起訴の罪名あるいは起訴事実が相当分かれておるようでありますが、私はそのうちの一、二の点だけを指摘したいと思う。本来が労働争議から派生して起こった労働事件であります。その労働争議から起こった、いわゆる労働事件を通常の犯罪と同じような角度で起訴しておるという点で、非常に私は不明朗な点を感じるわけです。その一つは、ことしの六月二十八日に逮捕されて、七月二十八日の起訴となっておりますが、壮行人は梅田孝男という被告人で、起訴罪名は強盗傷人という罪名で起訴されておるわけであります。警察で逮捕されたときには、不法監禁、暴力行為等処罰に関する法律違反という被疑事件で逮捕されて、検察庁の捜査の結果強盗傷人という罪名で起訴されておるわけであります。何が強盗傷人かということで、われわれは現場で調査をしたわけでありますが、その起訴事実を簡単に申しますと、被告人は山陽電軌の従業員であり、組合員であるが、外三百名くらいと共謀の上で、同会社所有のバスを強奪しようと企てて、昭和三十六年五月三十日午前零時三十分ごろ、バスに分乗して下関市新地町明月旅館付近に押しかけ、同会社が営業に備え看守者を付して同所路上に駐車していたバスに襲いかかり、外百名くらいとともにその中の二両を取り囲んで云々と、こうありまして、その中におった第二組合員に暴行を加えて、そして同人らをバスから引きずり出して、もって町人らの反抗を全く抑圧して、同バスを強取し、その際右暴行により傷害を与えた、こういう罪名で、強盗傷人という起訴になっておるわけであります。私たちは、社会党で現場の調査をいたしましたけれども、これは要するに会社側がストライキ破りをやろうという意図を持って、会社の通常格納されておる倉庫から会社側が持ち出して、そしてこの明月旅館附近の路上にこれを置いて、そして第二組合員でもってこのバスを守っておったという状況のところへ、この本件の被告人らの組合員が、スト破りだということで、スト破りをやるのではないかということでもって、そのバスを説得して、そして少少の暴行事犯もあったようでありますけれども、とにかくそのバスを運転をして、ほかの、会社の営業所へ持ち込んだというにすぎない事件なんです。大体強盗傷人、あるいはもう一件起訴されておる四名ほどが窃盗罪、住居侵入及び窃盗で起訴されておりますが、窃盗罪といい、あるいは強盗罪といいいずれもこれは財産犯罪であります。従って、不法領得の意思が必要なんだ。ただ持って帰えるというだけでは、強盗罪あるいは窃盗罪にならないというのか、従来の判例なりあるいは学説の通説であろうと思うわけであります。ところが、本件のこの労働争議に関連をして、路上にある、そして第二組合員たちがスト破りのために確保しておるバスを、少々のトラブルはあったにしても、会社の所有の営業所に、もちろん組合員がそこを占拠いたしておりますけれども、その営業所内にそれを移動させたという事実だけでもってこれが強盗だというような起訴は、これは私は法律家としては非常識きわまる起訴だと思う。暴力行為で起訴され、あるいは傷害罪で起訴されるということは考えられますけれども、これが強盗傷人だ、あるいは窃盗だというような起訴をするものの考え方が、私は、労働運動に対して、労働組合あるいは労働者が強盗する、どろぼうする、初めから暴力団であり、あるいは犯罪団体であるというような間違った認識を持って労働事件を見ているのじゃないかと思うわけであります。この強盗傷人の起訴というものは、私は事実をつぶさに調査いたしましたけれども、これはまことに非常識きわまる、法律家の常識を逸脱した起訴だと思うのです。こういう起訴をする検察官が、いかに地方の検察官であろうともおるということは、私は非常に残念なことだと思うのです。こういう検挙の方針を一体最高検察庁が指示しておるのかどうか。最近の地方における労働事件、この山陽電軌に限りませんが、軽微な事犯でも徹底的に検挙する、そして起訴をする、起訴の結果、裁判で有罪になろうが無罪になろうが、そんなことは問題ない、ただ検挙すればそれで労働運動を弾圧する目的を達するのだ、あるいは検挙して起訴をすればそれで事足りるのだというような政治的な意図を持って検挙が加えられ、あるいは労働運動に対する弾圧が加えられておる傾向があるのではないか、そういう方針を最高検が下部に指示しておるのではないかという疑いを強く持つわけであります。この地検の下関支部の労働事件に対して、強盗傷人あるいは窃盗というような罪名の起訴は、私はおそらく一地方の検事の法律判断だけでしたものとはちょっと考えられない。あるいは最高検からこの種の労働事件に関連して起こった軽微な暴力事犯は徹底的に検挙をして、例外なしに起訴をせよ、あるいは罪名をできるだけ重くして、法律のへ理屈をつけてでも普通の町の暴力、あるいは町の犯罪常習者と同様に扱うような罪名で起訴をせよというような指示があるいは出ているのではないかというような疑いを私は抱くわけです。この山陽電軌事件に限らず、これに関連して、同じ山口県の防長交通の事件も同様でありますが、これは営業時間ではなかったようでありますが、営業所の中にかぎもかかっておらない、そして従業員が絶えず出入りする営業所の中に数人がスクラムを組んで押しかけたという事案でありますけれども、かぎも何もかかっておらない、しかも正当な抗議の理由があって抗議のために押しかけていったという事犯が、建造物侵入、住居侵入というような罪名で起訴されております。暴力行為その他の事案にかかるならばともかく、建造物侵入というような罪名で検挙されておるというのも関連しておるわけですけれども、私はそういう方針が最臨検の労働事件に対する扱いとして指示されておるのではないかという疑いを持つものでありますが、刑事局長として御承知であれば、一つお答えを願いたいと思います。
○竹内政府委員 労働関係事件で労働運動を逸脱いたしましたために刑法犯に触れる場合がありますことは、過去の幾多の事例で明らかでございますが、その場合に、暴力団などがよくやるような強盗とか窃盗とかいったような破廉恥罪をもって臨むことによって、何か労働運動がそういったような傾向を帯びておるということをわざと意識させるような検挙方針というものが最高検から指示されておるというようなことではないかという御心配でございますが、いやしくも検察庁におきまして、そのような、私から申しますならばまことにばかげたような検挙方針、あるいは処理方針といったようなものは、過去においてもございませんでしたし、将来もあるはずがないのでございまして、この山陽電軌の事件におきましても、そのような趣旨において検挙が指示された、あるいはそういう趣旨で現地の希望を最高検が支持していくといったような、そういう配慮のもとにこの取り調べ、検挙、処理が行われとたいうことは全然ございません。このことはもうはっきり私申し上げていいかと思います。ただ、御指摘のように、山陽電軌の事件におきましては、強盗傷人という罪名で起訴されておるのがありまして、私も異様に感じたものでございますが、なおその事実関係を、内容を、私ども事務当局としまして法律的に検討してみますると、これもやむを得ないかという結論になったのでございまして、これはその処理方針がそうだからそうなったのではなくて、法律的な観点からこれもやむを得ないかというような感じをいたしておることを率直に申し上げたいと思います。 ただいま御指摘のありましたように、強盗も窃盗も不法領得の意思がなければならないことは、私どもの不動の解釈の態度でございます。この事件につきましても、単にバスを奪ってそれを移動させたというだけでは、これは領得の意思を認めるわけにはいかないと思うのでございますが、私の聞いておるところによりますと、そのバスをあるいは組合員の宿泊所に使う、あるいは組合員側の物の運搬に使うというような趣旨でそのバスが奪取され、移動されたというふうに事実関係を見ておるのでございまして、こういうふうに事実関係を見まするならば、判例も示しておりますように、所有権者の意思を排除して、権限がないのに所有者でなければできないような処分をしようとする意思、こういう意思に当たるのではなかろうかというふうに解釈されておる次第でございます。
○坪野委員 私はこの強盗傷人の事件、それから窃盗事件、中原勇外四名にかかる窃盗その他の罪名で起訴されておる事件でありますが、最終的には裁判所で判断を受けるわけで、私たち法律家の常識からすれば当然無罪になる事案だと思います。今刑事局長が言われたように、なるほど場所を移動しただけでなしに、それを宿泊所に使うあるいは組合員の運搬、移動のために使うという意図があったかどうかということは問題ではありますけれども、 他にももちろん組合側か会社のバスを争議行為として占有しておるという事実はありますけれども、それは会社の従業員であります。第三者が赤の他人の所有物を不法に侵奪する、あるいは使用窃盗ということも、理論的には——私は疑問を持っておりますけれども、不法に使用するという場合には若干問題がありましょうけれども、その山陽電軌の従業員であり組合員が、しかも山陽電軌の会社の構内にそれが置かれておる状態で、その中に入って団体交渉あるいはすわり込み等をやってその中で夜明かしをやるというような使用状況は、第三者の所有物を不法に使用したというような事案とは全く類を異にすると思うのであります。本件の場合だって、路上において、そしていつ何時スト破りをして第二組合員の手によってこれが動かされるかわからないという状況にある場合に、これを会社の本来置かれるべき場所に移動させて、これを管理し、そしてスト破りを防止するという労働組合の正当な争議行為を有効に遂行するために、これはやむを得ない、通常許された措置だと思うわけであります。そういう移動の事実だけをとらえて、それが何に使われるかということは、使ってみなければわからないわけです、あるいは本人の主観的意図で、そのバスを奪ってこれを組合員が運搬用に使うのだというような意図がはっきりしておれば若干の問題は出てきましょうけれども、この場合はとにかく一定の場所へ移動させようという意図で押しかけていっている事実だけでありますから、後日それがどのような形でみんながそこで——団体交渉その他すわり込みなどの場合に第一こういった建物の中に寝泊まりをする、これだって極端に言えば会社の建物を不法に使用しておる、会社の意図に反して使用しておるという関係にもなり得るわけでありますけれども、こういった交通会社のバスだとかあるいは電車、汽車といった建物の中に、かぎがかかっているわけじゃない、従業員が自由に出入りをしておる。それをこわす、あるいはそれを使用することによってそのものが消耗するというような状況で使用すればそれは不法な使用ということになりましょうけれども、ドアをあけて中に入って夜明かしをするというような使用が、不法領得の意思を持ってやったというような解釈には私はとうていなり得ないと思う。そのバスをとるときのトラブル、そこに重点を置いて、そこに暴力的な要素があればこれが暴力行為その他で検挙を受ける、捜査を受ける、あるいは起訴をされるということはやむを得ないにしても、本来それが強奪して窃取してそしてこれを不法に処分しよう、あるいは不法な使用をしようというような悪因をもってなされている事案でない限りは、私は強盗傷人というような起訴は法律家の常識からしてまことに非常識きわまる、いわば不当な弾圧をねらった起訴以外の何ものでもないという感じを非常に強く受けるわけです。もちろん刑事局長の方でも十分調査されて、また現に今裁判中でありますから、裁判の結果判明するかと思いますが、私はこういう形の検挙、最高検が具体的な指示は与えないにしても、一般的に抽象的な事例としてでも、労働運動に対して三十数名の検挙者のうちほとんど大半が起訴されておるという事実にも問題がありますが、私は労働事件に対する検察当局の扱いが、非常に不明朗な点があるということを指摘しておきたいと思うのです。 これに関連して、この山陽電軌の会社側に雇われた右翼暴力団が、第一組合員に対して襲いかかった傷害事件がある。そういった事件について当時警察当局は極力捜査をして公平に処置をすると言っておりましたけれども、その後起訴になったかどうかということも承知いたしておりませんが、そういった点に関連して、最近の検察当局の労働事件に対する検挙方針、この山口県の山陽電軌に極端に現われてきたような、こういう形の検挙は非常に政治的な意図を持った労働運動弾圧の現われだということで私は強く抗議をし、警告を発しておきたいと思うわけであります。 なお、この事件についても後月再度の質問をしたいと思いますが、一応質問を留保しておきます。
○赤松委員 関連して——労働争議に関連するいわゆる刑事事件につきまして、最近の判決などを見ますと、非常に無罪になる場合が多いわけです。このことは、たとえば最初に警察権を発動する。この警察権の発動の場合は一般の刑事事件と同じような態度でもって取り締まっていく。それでまだ当初——当初といいますと終戦直後のことでありますけれども、その当時におきましては、検察庁は憲法第二十八条に基づく団体行動権あるいは団結権の行使というように理解をいたしまして、これに対する態度というものが非常に慎重でありました。しかしながら、最近における労働争議に対する態度というものは、ややもすれば戦前の状態に返ってくるような傾向が非常に顕著に見えるのではないだろうか。私はかつて岸総理大臣にこの問題について質問したことがある。それは検察庁が労働争議の事件でこれを起訴することはその権限上非常に簡単なんです。問題は、私どもは裁判所の良識に依拠いたしましてその事件の結果あるいは判決の結果を見るわけでありますけれども、たとえば電産争議の際に、電源スイッチを切ったということでもってやはり住居侵入とかあるいはその他の罪名でもって起訴をされた。たしかこの事件は三件もしくは四件ありましたが、ほとんど無罪の判決が下っております。無罪になっております。たとい検察庁に行き過ぎがあっても裁判所が正しい判決をすればいいじゃないか、こういうように見ることは私は法の権威を傷つけるものだと思うのです。同時にほんとうに人権を守っていくという法務当局の態度ではないと思うのです。問題は、実際問題としてそこに出てくるのは何であるかといえば、よしんば無罪の判決が下っても、その間の時間は五年間ある。あの事件は五年後に無罪の判決が下っておる。そういたしますと、会社は解雇になった。五年の間その生活権が奪われる。五年後にかりに無罪の判決が下ったといたしましても、再び会社え復帰するためには新しい訴訟を起こさなければならないというようなことで、むろんその判決の際に復帰命令及びその間の賃金の支払いなどが同時に判決されればいいのでありますけれども、そういう事例はあまりないと思うのであります。そういたしますと、五年間というものは生活権か奪われてしまう。そして会社へ復帰ができないということになりますと、これこそ人権に対する非常に大きな侵害ではないだろうか。従いまして、検察当局が起訴する場合におきましては、よほど慎重に起訴をしなければならない。先ほど言ったように、電源争議であの当時世論がごうごうと反対いたしました。あのスイッチを切った事件でさえも無罪の判決が下っておる。しかるに今坪野委員の現地調査の結果を聞きますと、会社の生産手段——この生産手段に常時労働者の手によりまして使用されておる道具であります。その路上の道具を会社の管理権が及ぶところの倉庫といいますか、そこへしまい込んだということが強盗になるという。今坪野委員が指摘したように、検察庁の方は、宿泊のためにそれを使用する、あるいは組合員の道具の運搬のために使用するのだ、こういうように判断をして、そこに強盗だというような見解を出しておるようでありますけれども、これは非常に不当だと思います。かりにそれを宿泊に使おうと、あるいはまた運搬に使おうと、私はその場合一般的な刑事事件として扱うべきものでないと思います。また傷害とかあるいは何かいろいろなものがくっついておるようでありますけれども、御承知のように憲法第二十八条の団体行動権の中には、ピケッティングに対する自由があるわけです。ピケとは、すなわち集団をもって相手に対して説得をするという行為であります。この行為につきましても、集団的な説得行為がどの範囲まで労働法上の保護規定を犯すのかどうかということにつきましては、もちろん議会があると思うのであります。しかし、通常ごらんなさい。東京都内で昨日も農林省その他で行われておりましたあのピケに対しましても、これは合法的なものだという解釈が行われておる。労働省自身だってそういう解釈が行われておる。そのピケの場合に、相手の意思を無視して、そうして集団でもってどこかに監禁をするというような場合におきましては、これはあるいは刑事事件になるかもわかりませんけれども、今言ったように、会社の生産手段であるところのバスを取り巻いて、そうして第二組合に対して説得をするということは、何の犯罪になりますか。そういうことが犯罪として扱われるということになりますと、ヨーロッパ、アメリカにおいて何百年という長い間、労働者がその雇用上の権利を作るために、いわゆる対等の立場で団体交渉をし、団体協約を結ぶというところの本来の労働者の権利を長い運動を通じて獲得したILO憲章とかあるいは日本の憲法とか、そういったものがじゅうりんされることになるじゃありませんか。従いまして、検察庁がそういうような労働争議に介入する場合においては、警察の行き過ぎがあるかないか十分事実関係を調べて、かつ憲法第二十八条の建前に立って、そうしてその事件を扱っていく。憲法第二十八条が制約を受ける場合は、御承知のように公共の福祉を侵す場合に限られております。あるいは財産権を侵害する場合です。しかし、その財産権の侵害といっても、それはむしろ従の問題であって、憲法の場合はむしろ公共の福祉とそれから第二十八条の団体行動権とのコントロールを常に考えていく。今の事件が一体公共の福祉をどこで侵害しておりますか。こういうことを考えますと、ややもすれば裁判所の見解とそれから検察庁の見解の間に食い違いが出てくる。すなわち、一方においては権力機関であり、一方においては独立した裁判所であるということのためにそういうような違いが出てくるとするならば、私は非常に大きな問題になってくると思うのであります。今刑事局長の答弁によりますと、必ずしもそういうような考え方はないという御答弁でございまして、私も検察庁の良識は信じたいのであります。このことにつきましては、今要求がありましたように、現地の模様を詳細にお調べ願って、この委員会に報告をされまして、そうして労働事件に対する労働者の権利なり自由というものがあくまで憲法の精神で保障されていくよりに、この委員会においてもいろいろ審議をしたいと思いますので、その資料として提示されることを強く望んでおきます。
○河本委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時十分散会