商工委員会 第2号
- 発言数
- 33 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1961/10/06
会議録
○早稻田委員長 これより会議を開きます。 通商産業の基本施策及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤清二君。
○加藤(清)委員 私はこの際通産、経企両相に二、三の質問を試みたいと存じます。 申し上げるまでもなく今国会の主たる目的は三つある。その一つが国会の正常化であり、またの一つが災害対策であり、またの一つが経済上の赤字の対策、この三つの柱を今国会で処理しなければならないのでございますが、私はこの際は主として赤字対策、政府の経済政策について質問をしてみたいと存じます。 申し上げるまでもないことでございますが、今度日本経済に現われましたところの赤字は、与野党を問わず一日も早く解消しなければならぬと思うのでございます。すでに打たれました対策に対する是非善悪もございますが、私は主として日本経済の異常な事態が一日も早く解消するように、それには一体どうすべきであるかという、そこに焦点をしぼって質問してみたいと存じます。 私はげさ何気なしに本屋の前を通ってみますと、週刊朝日と週刊読売が目につきまして、それをちょいと拾って見ますと、「池田さんにまかせられぬ」「低迷する景気調整」こう出ているのですわ。最初藤山さんに質問せい、こういうことでございますので、それで藤山さんにぜひこれを解明していただきたいと思います。中を見ますると「池田さんは「日本経済のことはわたしに任せてくれ」とかねがね、言っていましたが、近ごろ「池田さんに任せられぬ」という声が起こっています。やれ、所得倍増だ、高度成長経済だ、なんて浮かれているうちに、何やらむずかしい事態になってきたようです。」続いて隣にありました週刊読売を手にしましたら、こちらの方がもっと大へんなんですよ。「ヘソクリ・マダムの秋」「離婚されそう……助けてェ」こういう見出しがついています。「生命まで奪った大暴落」こう出ているのですね。わしが言うておるのじゃないのです。ところでこれはきのう発行されているのです。従って三日、四日の大暴落以前の話なんですから、三日、四日と続きましたあの大暴落、特に十月四日はダウが四十八円六十銭、東証開所以来の大暴落をしているわけです。二日、三日、四日の三日間で百五円七十二銭安に相なっているわけです。七月の高値と比較いたしますと、まさに四百余円の値下がりでございます。平均して大体二割から三割程度の安値に相なっているわけです。金額で見込んでみると、まさに一兆円の余だ。こういう話です。一兆円は日本の国民一人に対して一万円ずつに相当するわけです。過去三年間続きましたところの株高のムードは一ぺんに暴風雨にさらされて、泥沼の状態に落ち込んだ。まさに泥沼相場と相なったわけでございます。私が申し上げるまでもなく、株価は経済のバロメーターであると同時に、時の経済政策の鏡でもあると思うのでございます。この点は、私のようなしろうとよりも、その道の出身で、その道のベテランでいらっしゃる藤山さんの方がはるかによく御存じのところでございます。もしそれ池田さんがおっしゃるように、池田さんの経済のやり方は間違いないんだ、まかしてくれ、こうおっしゃることに国民がほんとうに信頼を寄せているとするならば、まさかかようなことは出来しないではないか。株価がこのように大暴落をしたということは、少なくとも経済界においては、池田さんの経済政策に対して危惧の念を抱いているということは、もうおおい尽くすことのできない問題である、かように思うのでございます。これは実は佐藤さんにも藤山さんにもお尋ねしたいところでございまするが、まずその道のベテランをもって自他ともに許している藤山長官に御高説を承りたいと存じます。
○藤山国務大臣 お話のように株価が経済の活動の一つの指標であることは申すまでもないことでございまして、景気が上昇し、あるいは景気が停滞するというような事情は、ことに産業面での活動というものは、ある程度株価に反映してくるわけでございます。今回株価が暴落をしたということも、先般来国際貿易の収支が均衡を欠いております関係からいたしまして、これを早急に改善をはからなければならないので、従って総合対策をいたしたわけでございます。ことに七月以来公定歩合の二回の引き上げあるいは輸入担保率の引き上げ等の措置をとりました。そういうことでありますので、やはりそれが当然将来景気の動向にも反映してくるということは、一応産業方面あるいは民間の直接産業に関係しない人でも株式投資等をいたしておる人の心持の上には現われてくると思いますが、そういう結果が今回の暴落を見たことだと思うのであります。しかし、暴落をしたということ自体は、今までにこれがある程度上がり過ぎておったということも言えるわけでありまして、現状においてどの程度の値ごろがいいかということは測定が非常に困難だと思いますけれども、少なくも今申し上げたような事情のために株価が暴落をしたということは否定し得ないことだと思います。
○加藤(清)委員 否定し得ない事実、おおい隠すことのできない事実によって暴落したことを認められたわけでございますが、しからば、これに対する対策いかんということに相なるわけでございます。戦争以前の株主と戦後の株主は相当の開きがございます。ことに株式が大衆化されて参りました今日におきましては、証券界にこのような大暴風雨が来たということは、国民一般の上に大暴風雨が襲来したということでございまして、この点すみやかに、これに対する対策と申しましょうか、転換策と申しましょうか、救済策と申しましょうか、それが行なわれてしかるべきだと思うのでございますが、私が特に心配をいたしまするのは、株価の最高が最も期近では七月の中旬ごろだったと記憶しております。そのときにもし信用買いをしておったといたしますると、御承知の通り三カ月後にこれは決済をしなければならない。その決済の時期が十月の中旬、いよいよこれから差し迫ってくるわけでございます。こうなって参りますると、十月中旬以降は今日以上に大ばてにばてる方々が出て参りまして、これはやがて、それこそ先ほどの週刊読売の見出しではございませんが、「助けてェ」ということに相なるでしょう。あるいは自殺者も続出することでございましょう。なおかつ本年の十先から一−三にかけての増資予定が、大企業にも非常に多いと聞いております。この点はあなたの方が詳しいところでございます。こんな調子で大荒れに荒れて泥沼に相なっておりますれば失権株が続出するではないか、さすれば計画は各企業家としても修正ないしは改変をしなければならない事態に差し迫るわけでございます。まして来年三月の会社の決算が悪いということに相なれば、減配、無配も続出するわけでございまして、これはやがてまた株価を下げる原因に相なるわけであります。ここに悪循環が悪循環を呼ぶということに相なって、その結果は、減配、無配であるから、一つ値上げを頼むということで、消費者にしわ寄せがされないとはだれも保証できないところでございます。その一番いい例は、東京電力の料金値上げのときの最大原因になったのが、無配、欠配、株価の値下がり、こういうととであったことはあなたがよく御承知の通りでございます。 そこで長官に承りたいことは、一体、物理的に参りますところの暴風雨に対しては臨時国会を設けてまでもこれを救おうというのが、由来日本国会の通例のようでございます。ところが、経済界に参りますところの大暴風雨は、物理的な暴風雨と比較いたしまして、写真にとったりあるいはその惨状を一目瞭然たらしめることは非常に困難である。その結果見送られてしまう、あるいは打つべき手を打たずに済んでしまうということが多いようでございます。それが歴史的な要素のようでございます。従ってこの際は、ほかの長官ならいざ知らず、経済界はえ抜きの御曹子のあなたでございますから、この点はよく心得て打つべき手を打たれてしかるべきである、かように思うのでございますが、長官の御高説を承りたい。
○藤山国務大臣 お話のように株価が暴騰しあるいは暴落するということは相当各般に影響がありますことは当然でございます。ことに今お話のございましたように、戦後の投資家というものは、かなり大衆に広く広まっておりますので、そういう意味からいいましても、その影響するところは非常に大きいのではないかと考えられます。ただ、御承知の通り、今日日本の経済は拡大し発展し、そうして本質的には決して悲観すべき段階ではないと思うのでございまして、最近におきます戦後の技術革新にいたしましても、あるいは合理化された生産性の向上にいたしましても、品質の改善その他が著しく進んでおりまして、従って経済の本質において悲観すべきものは私どもないと思っております。そういうことでございますから、従って貿易為替の上におきますバランスが回復して参りますれば、おのずから健全な産業活動が推進されていくわけでありまして、投資の面においても、そういう意味で長期的な観点をもって投資しておられる方が多いと思うのでございますから、投資家諸君は非常に強い確信の上に立って、将来をながめていただくことが一番大事なことではないかと思います。いたずらに危惧の念を起こして、毎日の株価の騰落だけに神経をとがらせるよりも、もう少し長期的観点に立って、日本経済の先行きを考えながら投資家としては態度をとっていただくことが必要だと思います。ただしかし、そう申しましても、結局株価の騰落の原因というのは、今申し上げましたように、今回の場合においてはやはり貿易為替のアンバランスというところからきておるのでございますから、そういう面を一日も早く直していきますことが基本的な対策でなければならぬのでございまして、私どもとしましては、そういう面から、できるだけすみやかに、日本経済の基盤がゆがみを持たないように、立て直していくということをやって参らなければならぬだろうと思うのであります。それが一番大きな、基本的な対策ではないか、そう存じております。
○加藤(清)委員 すでに今度の経済についての楽観論は、池田さんからさんざん聞かされておりますので、またぞろここでその復唱をお願いしようとは私は思っておりません。楽観論なら楽観論でけっこうでございます。問題はすでに台風のつめあとがあり、病人が続出しているのだから、これを一体どう始末してもらえるかという、その具体策をお尋ねしているのでございます。 そこで長官にお尋ねしたいのは、問題がこのように相なってきたところの原因でございますが、決してこれは投資家がとうしたわけではない。証券業界の業者がこのように安値を勝手に呼んだわけではない。結論は政府の経済成長政策、これに国民が危惧の念を抱き、いや気をさしたからこういうことに相なったといおざるを得ないわけでございます。もちろん過去において、株価がこんなに上昇してきたということも、それは政府の政策のおかげでございましょう。しかしそれには会社の企業努力とか、あるいは証券界のPRであるとか、国民の投資熱がそれにあおられた等々のいろいろな諸原因が総合されてこういうことになったと思いまするけれども、こんなに悪くなり、東証開設以来の暴落をしてきたという、この具体的な事実のよって来たる原因は、私はこれにあると思うのであります。すなわちあなたの方でお作りいただきましたところの所得倍増計画なるものが最もその元凶をなしている。つまり言うなれば、この計画はすでに私どもがさきの国会で迫水さんに対してその誤謬を指摘し、その修正を要望したにもかかわりませず、ちょうど今あなたがおっしゃるように、やはり楽観論をとっておられたのでございます。この計画によりますれば、御承知の通り石油産業、製鉄産業、機械産業ともに五倍、六倍の倍増を目ざしているわけでございます。ようやくこの倍増という字にとんとんになるところは糸へんのところだけでございます。こうなって参りますれば、お互いの企業家同士の競争心をあおることになって投資熱が過熱してくることは、これはもう理の当然でございます。ところが今日証券界の資金源になっているのは一体何であるかといえば、これは必ずしも企業家だけではない、農業所得がここに寄ってきている。わずかの月給を苦労してためたその金がここに寄ってきている。つまり農民、中小企業、勤労者の投資の協力があってこそ証券界は成り立っておる。特に投資信託のごときはそうでございます。ところが今日ではその投資信託のオープンはタコ配が続出している。ユニットも元本割れがざらに出てきている。はたして七分の安定配当はできるであろうか、こう危惧の念を抱かされざるを得ないところの今日の状態でございまするが、私はそういう意味において、この所得倍増計画の中には大企業の倍増はございまするけれども、中小企業の倍増、農民の倍増、労働者の給料の倍増は書かれていない、このことがやがて資金源の枯渇を呼んでいる。その結果、政府から、倍増の恩恵からはずされたものが、証券界にある程度なけなしの財布をはたいて協力した、その協力者が今日に至って大あらしにあって犠牲を背負わされた、こういうことなんです。それに対して、まあ長い目で見てくれ、経済は長い目で見なければならぬとおっしゃる。なるほどそのおっしゃる通りです。それはあなた、大企業家にして資金力を豊富に持っている人は、長い目で見てしっかりと耐え忍んで持続することもできるでございましょうけれども、零細な投資家は息が切れる、命が切れる。それに対して一体経済企画庁長官としては——それはあなたの責任でないかもしれない、これを作っていないのだから。ところが今やその最高責任者として、ここにその原因がありとするならば、あなたの責任なしとはしないわけなんです。具体策を承るゆえんでございます。
○藤山国務大臣 先ほども申し上げましたように、お話の株価に対する直接の何か施策ということ自体は、大蔵省がそのときの状況に応じて考えられることであろうと思います。またそのこと自体、お話のような非常な零細貯蓄性を持った投資に対して影響を与えてくるとすれば、総合的な立場においてわれわれとしても十分それらをどうしたらいいかということをむろん考えて参らなければならぬと思います。ただ株価自体をすぐ直接に対策を講ずるという大蔵省的な立場については別といたしますれば、経済企画庁としては、全体の日本の経済の今日の状況を一日も早く正常な状況に引き戻していくということについて、この対策について努力をして参らなければならぬと思うのでありまして、そういう意味から言いまして、私は七月就任以来、貿易のアンバランスを直していく、そして今日のような行き過ぎております成長をある程度押えていかなければならぬ、そういうことについて今日まで私の意見を申しましたし、またその意見が中心になってとは申しませんけれども、その意見も取り入れられまして、貿易の対策あるいは国際収支の改善に対する総合的な対策というものが、政府でも打たれつつあるわけでございます。ただこの打たれているということ自体の結果として、また今まで進んで参っております株価に影響してきたのが現在の実態でございます。しかしこれはやはり一日も早くそういったバランスをつけて参りませんければ、かえって将来に禍根を残すことになるのではないか、こういった観点から、私としてはできるだけな努力をいたしまして、諸般の対策を推進していくことに、ただいまいたしておるわけでございます。
○加藤(清)委員 長官が言われます通り、長期的に見れば貿易の振興であると思います。問題は言うまでもなく赤字がその主たる原因でございまするので、この赤字を解消すれば株価はもとのさやにおさまることは、これはもうしろうとでもわかることでござます。しかし暴風が来た、そこで被害をこうむった、けが人が出る、死人が出る、こういうやさきにあたって、せめてそれを救うところの特効薬はないものか。いずれ貿易の問題、赤字解消の問題については後段に詳細に質問を試みたいと思いますけれども、さしあたっての特効薬あるいは頓服薬というものはないのかということをお尋ねしているわけでございます。私がしろうと考えに考えますれば、最も期近に日本の株価の異常性を救い、同時に国民の日本経済に対する不安感を取り除くとすれば、まず考えられることは予約米代金あるいは供出米代金、これを農林省と協力して有効適切に利用する、こういうことではないかと思います。 第二は、これを例年のように行なわれることでございますが、年末のボーナス、これをどのように利用するかという問題でございます。これによって三十八、九度から四十度くらいの熱が、三十六度には下がらないでございましょうけれども、少なくとも一度や二度は下がるのではないかと思うのでございます。つまり、言うなれば国民に投資能力が期近に生まれて参りますのでそれの協力を願う、こういう問題だと思います。もっと基本的な問題をお話しすれば、それは国民に投資能力を育てていくということが先決であり、もしそれこの倍増計画の中に勤労者の所得はかくかくに伸ばすのだ、あるいは中小企業の所得はかくかくに伸ばしていくのだ、それに対して政府はこのように手当をするのだということが書かれておるとすれば、それは資金源の推定がつくことでございますから、これほどひどい暴落は来たさなかったのではないかと思うわけでございます。この意味におきまして私はちょっと風変わりなことを申し上げるかもしれませんが、もしできたならば増資の場合の株の一部を会社に働く労働者に無償交付をしてはどうか。そういうことをして非常に成績を上げている会社がございます。これはもちろんアメリカにもございますし、西ドイツのごときはそれが広く行なわれているところでございます。日本においても、特に名前をあげては失礼かと存じますけれども、すでに終戦後からいわゆる大倉一家なるものはこのことを実行に移して業績を上げていることは長官もよく御存じの点だと思います。こういうことを奨励する、あるいは推進させるというようなお考えはないものか。やはり拱手傍観をしていらっしゃるのか、その点をお尋ねいたします。
○藤山国務大臣 民間に流れました供米代金を株価維持のために使うということは、そういうことがはたして適当であるかどうかといろことを私どうも疑問に思います。ただ御承知の通り、十月になりますと供米代金の政府からの払い超が相当な金額で出て参ります。おそらくこれは農中を通じて、農村はむろんでございますが、農中の余裕金として一般経済に活用されることになろうと思うのでありまして、その程度以上に何かそういうものを株価維持対策そのものに使うことは必ずしも適当だとは存じておりません。 また今御心配になっておりますような会社が増資をするというような場合に、非常に困難になっておる時期には、ちょうど適当な機会でもあり、日本の労使関係を円満にしていくためにも必要な施策の一つとして、会社の従業員に増資の株を持たしたらいいじゃないか。これはこういう時期でなくても、平生でもそういうことが望ましいことでございまして、今御指摘のありましたように、一、二の会社はすでにそういうことを行なっておると思います。私の承知しております範囲でも、そういう処置を増資の際にとっておりますところが相当ございます。また組合関係の方からも、それぞれの自社株についての割当御要求等もあることでございまして、ただそれは必ずしも多きを期待し得ないという点があるわけで、そういうこと自体を併用して参りますということは、経営者のためにもあるいは従業員のためにも適当な処置と思うのでありまして、そういう傾向が出て参りますことは、われわれとしても望ましいことだ、こう思う次第でございますが、ただそのこと自体がすぐに株価の対策になるかといいますと、そう大きな影響は与えない、むしろ労使関係の将来の円満な産業運営の上における立場において望ましいことだ、こう考えておるわけでございます。
○加藤(清)委員 何べんお尋ねしても、今日の株価の暴落に対するところの手だてあるいは対策というものを承ることはできないのでございますが、経企庁としては、これに対する対策というものをまだ審議なり相談なりをしていらっしゃらないのでございましょうか。もしありとするならば、いつごろ手を打たれるのですか。それとも打たずにやはり拱手傍観をしていころ、こういう態度でございましょうか。その点をお尋ねいたします。
○藤山国務大臣 先ほど申しましたように、市場関係のすべての対策については、これは当然大蔵省が第一線に立って、現実にある場合には市場を育成強化する、ある場合には影響を起こす株価の暴落について注意を払っていくわけであります。私ども経企庁としては、総合的な経済の立場から見て、そうした株価の暴騰もしくは暴落というものが、将来の経済運営に支障を来たすか来たさないかという段階になりましたとき、われわれとしてはその意見を申すわけでございまして、直接の面における市場の問題については、これは大蔵省が日々の業務の一つとして当然考えておられるところだ、こう存じております。
○加藤(清)委員 考えていらっしゃるだけでなくして、経済界を吹きまくりました暴風に対する対策をすみやかに立ててもらいたい、かように申し上げまして次の方へ進みたいと存じます。 実は相似た態度であるから私はさきの国会のことを少し反省して参りたいと存じますが、さきの国会におきまして所得倍増計画の誤謬を指摘し、その反省を求めましたおりに、池田総理も、椎名通産大臣も、迫水長官も、ともに何とおっしゃったか。いつの場合でも経常収支の面では五、六千万ドルの黒、どんなに悪くても一千万ドルは黒である。総合収支の面では少なく見込んでまず初年度においては二億ドルくらいの黒字になるであろう。そうおっしゃるけれども、正月以来貿易の帳じりは赤を続けておるではないか。そんなことで黒字になるとは、諸原因を総合して考えてみると考えられない。あなたが黒になるとおっしゃるならば、二億ドルの黒があると言うならば、一体この帳じりはいつごろから黒字になりますかと尋ねますと、迫水さんいわく、まあせいぜいおそくとも九月、早ければ八月ごろには黒になるでしょう、こういうことなんです。そうしますると、今日の赤は、あなたは季節風的な赤だとお考えでございましょうかと言ったところ、それはそうだ、こういうことでございます。そういう答弁は、やがて企業投資家の投資熱をますますあおった結果に相なったわけです。赤字の累積の原因を作ったわけなんです。おれらの見込み違いはないんだから、従ってこの計画は変えないんだ。政策変更はあり得ないんだ、こういうお話でした。ところが今日では、このごろじゅうの答弁を総合してみますると、どう考えても、経常収支では十億ドルは赤になる。総合収支では、六億ドルくらいは辛抱願わなければならぬかもしれぬ。じゃ一体いつ黒になるかと野田氏が予算委員会で尋ねてみますると、総理は、まあ来年の十先ごろじゃないでしょうかというお話なんです。こうなって参りますると、結局は政府が本年度の経済計画を立てられたときに見込み違いをしていらっしゃった、実態の把握を間違えていらっしゃった、こう言わざるを得ないわけなんです。そこで私は、この期に及んで−−せっかく通産大臣も、あるいは長官も、新しくおかわりになりました。しかも、御両所とも大物中の大物ということに相なった。総裁ダービーの先頭は一体だれが切るであろうかと、国民が期待して見ている。そういう大物なんです。そこで今度のこの経済危機の打開策というものが、おそらく総裁ダービーのポイントになるではないか、私はそう思う。それで、これから一つそのトレーニングだと思って、しっかりお答えを願いたいと思います。 試みに、かつて日本経済を席巻しましたところのあの暴風、三十二年六月十九日、これと私は比較してみたいと存じます。あのおりには、池田さんが蔵相でいらっしゃって、河野さんが長官でいらっしゃったわけでございます。国際収支の改善緊急対策というものが、六月の十九日に打ち出されたわけなんです。実質収支面における赤字は三十一年の十二月に始まり、形式的収支面における赤字は一月から始まっておったわけです。つまり半年のうちに、六カ月目には対策が打たれたわけなんです。今度のこれで見ますと、名前は同じようなことでございますが、違うところは、八カ月もかかってようやく対策が立てられたということであると同時に、赤字が非常に多いということなんです。そこで先般行なわれましたその対策を振り返ってみますと、今度の場合と同じように、公定歩合の引き上げ、預金準備率の引き上げ、輸入担保率の引き上げ、と同時に買いオペ、やがて後にこれは売りオペと変わったわけでございますが、金融は一割引き締め、預金金利の引き上げ、と同時に長期金利の引き上げということが、総合的に行なわれたわけでございます。ところで、このたびの対策をながめてみますと、その是非善悪は別として、先と違う点は、預金金利の引き上げ、長期金利の引き上げということは、今行なわれていないようでございます。そこでお尋ねしたいのは、それは行なわれずにでも今度の景気調整ができるのか、できないのか。もしできないとするならば、預金金利の引き上げはするのか、しないのか。それは一体いつごろするのか。これも、敏感な株街には大きな影響を及ぼす原因でございます。私は、通産大臣がいらっしゃらないときに、長官に対して株価の暴落、これに対する対策をお尋ねしたわけでございますが、それ等もあわせ考慮して、通産大臣、長官の御両所に御答弁をわずらわしたいと存じます。
○藤山国務大臣 今回の場合と前回の場合と若干様相が違っておりますことは事実でございまして、今回の場合でも、絶対に在庫に対する思惑がなかったとも言えないと思います。しかしながら、前回は在庫投資というものに対して相当な行き過ぎがあり、そうしてそれに対する当然の手を打ったというのが、まず大きく考えられるわけであります。従いまして、今回の場合にやはり重点を置きますことは、貿易における経常収支を合わせる。しかも、それは輸入が——合理化を控え、あるいは産業人自身が意欲が増大して参りまして、いわゆる市場占拠率と申しますか、自分の市場のふえる立場を有利に展開するために、相当な設備投資が行なわれた、そういうことが刺激になりまして、輸入が著しくふえた。そうして輸出は、伸びてはおりますけれども、必ずしも予定した通りに伸びておらない。そこで今回の対策の中心は、やはり輸出貿易をできるだけ振興して、そうして輸入をある程度押えて、貿易のバランスをまず合わせるということが必要であろうと考えております。そうしたことを取り行ないますことが、今回の一番大きな眼目であろうと思うのでありまして、そういう意味において今回の国際収支改善対策をごらんいただけば、輸出貿易に対する振興、あるいは輸入に対する抑制という措置が強く打ち出されておる、こういうふうになっておる。むろん金利の問題は、経済界全体の指導的立場に立つ一つの指標でございますから、これ自体を操作いたしますることも、全体の経済界を動かしていく上におきましては、いわゆる警戒警報と申しますか、そういう意味の役割として必要であって、中核をなしておることは当然の話であります。ただ、それに伴ってすぐに預金金利を引き上げるかどうかという問題は、しばらく考慮をする必要があるのではないか、こう存じておるわけであります。
○佐藤国務大臣 参議院の本会議がありまして、大事な当委員会を欠席いたしまして申しわけございません。 ただいま企画庁長官から詳細にお答えいたしました通り、今回の緊急景気調整措置というもの、これは御承知のような幾多の手が打たれております。大へん時期がおくれたのじゃないかというお話が、まずございましたが、前内閣時分、すでに資金部会を通じて設備投資の一割縮減であるとか、あるいは公定歩合の一厘引き上げ、こういう措置がとられております。従いまして、政府自身が、三十二年のときと今回のときと比べて、特に今回手ぬるく、時期を少し過ごしたのではないかという批評は、必ずしも当たらないのじゃないか、私はかように考えます。それはいろいろ議論があるだろうと思います。 ところで、今回とりましたものは、国際収支の悪化の関係から見まして、その原因がどこにあるか、いろいろ追求してみますと、旺盛な内需、特に設備投資が過大だ、こういう点が指摘されるわけであります。ただいまお話にありましたように、三十二年の際は、特に在庫投資がふくれ上がった、原材料の在庫投資がふえた、こういうことで非常にわかりやすい状態でございましたが、今回は、在庫も幾分か、自由化その他が行なわれました結果、ふくれてはいると思いますが、前回のように非常に膨大な在庫投資を抱いたということでなくて、むしろ設備投資が非常に行き過ぎた、こういうことでございますから、この設備投資の抑制という意味において、各界に御相談をしておるわけであります。この設備投資を抑制する、その設備投資の供給源は、一体資材の面からはどうなるか。これはもう輸入に依存していることが相当大きい、こういうことが見られますから、輸入担保率を引き上げたわけでございます。しかも、これは緊急調整策といたしましては、今までに例を見ない、いきなり高度の担保率の引き上げをいたしたわけであります。御承知のように、三十二年の後の担保率の引き上げは三回くらいに分けて実施いたしておりますが、現在行なっておるような最高三割五分というような高い率は、三十二年のときにはその第三回目に採用いたしたのであります。今回は緊急調整措置としていきなり強いものを実施して、好転することを期待し、また好転すればこの担保率も緩和の方向へ持っていきたいということで、いきなり高い率、三割五分、あるいは一割、あるいは五%、こういう高い率を適用いたしたわけであります。 ところで、さらにいろいろ計画自身はありますが、その計画自身の浸透度合いがいかになるだろうか、十分に計画同様に設備投資の抑制ができておるかどうかということで、ただいま各業界についてトレースをしておる段階でございます。私、国会中ではございますが、それぞれ鉄鋼連盟であるとか、あるいは石油化学の面であるとか、あるいは石油精製だとか、あるいは貿易商社、これらと会合を持ちまして、設備投資への協力と輸出振興、また輸入を縮減するように、いわゆる行政指導をいたしておるのでございます。ただいま通産省としてとり得る措置として、三十二年の経験等に基づいて、ただいま申し上げるような各措置をとって参りましたが、やはり国内金融というものが産業を支配する力がまことに大きいのであります。そういう意味から、公定歩合の引き上げにつきましても、われわれは多大の関心を持っておる。しかし、御承知のように、金融は政府とは独立、いわゆる中立性ということが主張されておりますので、金融の実際を握っておる日銀と大蔵省で、公定歩合の引き上げ等はそのつど行なってきておるということで、他の関係大臣といたしましては、そういうことに直接触れる機会は実はないのであります。ただ、金利の姿としてどういう金利が望ましいか、もちろん通産省も関心を持っておりますから、こういう事柄について意見を述べることは当然だろうと思いますが、ただ金融を担当しておる方から申しますと、なかなか金利のあり方など、事前には話をしてくれない。これがいろいろ悪影響もあると言われますが、同時に金融の正常の姿としては、事前にそういうことを論議しないで、金融機関自身が金融の量とその質、二つを結びつけて処理するということが最も望ましいことのように思います。さような観点から、一般的なことを申せば、すでに御承知のように、日本の金利は大体高い。そういう意味から金利を引き下げる。私大蔵大臣をやっております時分もしばしば国会の委員会でお答えしたのでございますが、金利は国際金利水準にさや寄せする、その形が望ましいんだ、その態度を堅持して参りました。もちろん、さように申しましても、緊急調整の時期になれば、その原則通りには時限的にはなかなか行なわれない。しかしながら、長い一定の期間でごらん願えば、これは必ずちゃんと低金利、自由化、そういう方向に向かうということだと思います。 そこで、今の預金金利あるいは長期資金の金利の問題になりますと、これはもちろん公定歩合の融資金利との関係も考慮しなければならない問題だと思います。ただ、いろいろ国会の手続その他の——今の日本の預金金利の建前から見ますと、御審議を得なければならないような建前にもなっております。申すまでもないことですが、郵便貯金の金利は、国会の審議を経なければ、上げることも下げることもできない。これなどは金融の実態から申すと、私は、なかなか時宜を得た処置のできない今の制度上の一つの欠陥ではないかと実は思いますが、そういう問題もありますから、この金利の安いという一般的なことは望ましいことでありますが、調整段階においての融資金利と預金金利、あるいは貯蓄奨励だとか、いろいろな事柄と結びつけて見ると、そこでいかにしたらばいいかというものが自然に出てくるだろうと思います。ただ、今の段階におきまして、それじゃそういうものを引き上げる段階にすでに来ているのか、そういうことになりますと、今公定歩合を二回にわたって一厘ずつ引き上げたという段階では、まだ預金金利にさわらない方がいいのじゃないかというのが一応の結論ではないか、私はかように実は見ております。だから、現在とっております日銀なりあるいは大蔵省が、具体的にどういうように考えておるか、もう少しどうなったらどう考えるか、こういう点は私にわかりませんが、抽象的に申すと、ただいまの公定歩合の引き上げ程度で直ちに預金金利なり長期資金の金利なりを動かすというのは、やや早いんじゃないのか、こういう感じがいたします。ただ、それには重大な一つの条件がありまして、総体の資金量というものがどういうように変化しているか、十分つかんでおらない状況でございますから、私の答えが非常に抽象的であること、それだけ一つ御了承願って、佐藤はこう言ったじゃないかと言われることは大体当たらないという、前もって予防線を張るわけじゃございませんが、そういうものであることを御了承おき願いたいと思います。
○加藤(清)委員 前もって大蔵大臣代理として予防線を張ってお答えになったようでございますが、私がこの点に触れた原因は、大臣もおっしゃいまする通り、日本の金利は、国際的にながめて見ますると、なるほど仰せの通り高い。ところが、株の利回りを見ますると、これまたやはり世界に比べて日本の方が高い。どだい日本の経済は、金持ちに有利にできておるようでございます。従いまして、国民も乏しい金をなるべく多く利回りさせたいということで、銀行さんさようなら、証券屋さん今日は、という言葉がはやったわけです。これはやがて証券界にもまた過熱を来たさせる一つの原因になっておったわけです。この前の経済収支の改善対策とこのたびのものと比較してみますると、預金金利の引き上げということがうたわれていない。しかも、時期はといえば、先ほど長官にも申し上げましたように、十先は大幅な散超期に差しかかるわけです。この資金をどのように吸収し、どのように役立てるかということは、日本経済の立て直しには最も肝要なことである、かように思いまするがゆえにお尋ねしたわけでございまするが、さきの場合とこのたびとを比較してみますると、なるほど相違は各所に散見できます。さきは、在庫多くして、外貨が五・一億ドル程度で少なかった。それは、言いかえれば思惑買いが盛んに行なわれた結果のことである。ところが、このたびは在庫はさほどない。それはほとんど工場の設備にもう使われてしまっておるという点と、またの一点は、手持ち外貨が、きょうの新聞によれば十六億ドルを割ったと出ておりまするけれども、とにかく十六億で約三倍前後ある、こういうことでございます。しかし、私はここでお尋ねしなければならぬ点は、さきと今回との相違は、その対策とその政府の姿勢からして、どうもさきは短期に終わったけれども、このたびは長期化するではないかという点でございます。と同時に、おれにまかしておいてくれと、こう言われました池田さんは、今日では、どうぞ御協力を願います。まるで選挙を思い出すような言葉をときどきおっしゃる。御協力を願います。これはごもっともなことなんです。私は、さきの姿勢より今度の姿勢の方が、民主主義者としては適切な言葉だと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、御協力を願い、輸入担保率を引き上げて、国民消費の過熱をさまそうという行政措置が行なわれるようでございます。しからば、さきの場合と今回と比較して、もう一点念を押さなければならぬ点が出てくるわけでございます。すなわち、三十二年の八月、つまり総合施策が行なわれましてから六カ月目に、物価の一割引き下げ表明が時の河野長官によって行なわれたのでございます。金利の引き上げはしないかもしれぬとおっしゃいましたが、しからば物価の引き上げ、引き下げ、これは一体どうなるでありましょうか。長官にお尋ねしたいのでございます。
○藤山国務大臣 御承知のように、この数年来非常な生産意欲が民間で旺盛でありまして、従って、設備投資も非常に過大に取り行なわれました結果が、今日のような状況に立ら至ったと、一口で申せばそういうことでございます。従って、生産活動はあまり衰えておらぬので、これをある程度抑制していく、全体の経済の伸びを抑制していくということは、おのずからそこに問題が出てくると思います。が、同時に、そのためには消費をある程度規制して参る、抑制していくということが起こって参るわけでありますから、物価の面から申しますと、やはり注意しておかなければならないのは、供給の方がむしろある時期には非常にふえてくるのではないか。供給がふえてくるということ自体、国内の消費があるいは減ってくるということ自体は、一方から言えば輸出余力が出てくるということにも相なるわけでありますが、全体のバランスの上から見まして、今日までの事情から考えてみましても、物価が今度の抑制措置をやりましても、そう高騰するというものではなく、むしろ生産活動を低下する時期が若干ずつ長期にわたりますれば、依然として供給がふえて、そうして需要の方が不景気でもって押えられてくるというようなことでありますから、そういう意味において、ある程度物価にも影響してくるのではないかということが考えられるわけでございます。
○加藤(清)委員 この政策に対して、もう一点だけお尋ねしたいと思うのでございます。それは、今の長官の御答弁を承っておりましても、どうも前進してないようですが、さきの三十二年の三月に公定歩合の引き上げの第一次が行なわれまして、一里上げられたときの池田さんの発言は、この調子でいけばさほどむずかしいことはないのだから、四月ごろには金融の緩和をするのだ、こうお述べになっているのでございます。ところが、四月にバンク・イングランドと交渉をしたところが、貸し出しを拒否された。そうこうしている間に、手持ち外貨がだんだん減っていって、思惑輸入がとまらないおかげで五億ドルを割るのではないかという空気になってきた。そこで急遽IMFから借り入れをする。そうしてこの総合緊急対策でぶつ、こういうことになったわけです。しないだろうとおっしゃった三月から三カ月を出でざるに、手の裏が返ってきた。そこで私は、あなたたち御両所が金利の引き上げはきょうはしないとおっしゃる、物価の引き下げとかあるいは引き上げはしないとおっしゃる、はたしてこれをいつまで信用していいのやら、その言葉が何カ月有効なのやら、私はちょっと心配になってくる。 そこで一つ、次にお尋ねせんければならぬことがあるのです。池田さんがこのごろじゅうの答弁において、まあまあ黒字になるのは来年の十先だ、こういうことなんだ。ところが、それまでにお宅の方で貿易の自由化のスケジュールがどんどん進んでいきます。これは前とはだいぶ違うことなんです。前は制限していた時代、今度は御自由にどうぞというわけなんです。インスタント・コーヒーのごときは、一年間の使用量の何十倍と入っているという話だ。そういうやさきに、今日十六億を割ろうとしたその手持ち外貨が、来年十先黒字になるころまでに、一体どれほどになるとお考えでございましょうか、一体どのくらい残るとお考えでございましょうか、これを一つぜひ承りたいのでございます。その上に幾ら残るかということが大体押えられて、初めてわが党の政策審議会長成田氏、あるいはわが党の諸氏が委員会で質問したおりの総理の答弁に続いていくわけです。IMFはいつでも貸してくれるのだ、心配ないのだ、日本は信用が厚いのだからいつでも貸してくれるのだ、こういうお話でございましたが、ほんとうは私は、借りずにやるべきではないか、借りずに経済の建て直しができるほどけっこうである、かように思いますし、また、借りるとするならば、一体IMFからどの程度借りなければならぬのか。それこそ今から見通しを立てておきませんと、政府みずからの見通しが立たぬでは、以下右へならへで、投資意欲の旺勢な、しかも乗りかけた船の業界は承知しないと思うのです。幾らブレーキをかけなさったって、どうにもならぬのです。行きつくところまで行ってしまうと私は思うのでございますが、この点、貿易の自由化が九〇%に臨むその十月、そのときには黒字でなければ、これはいろいろな経済的な問題が出来してきます。そのときには、手持ら外貨は一体どのくらいになるか。借りるか借りないか、もし借りるとすればいかほど借りなければならないか。わずか一年先の見通しでございます。
○藤山国務大臣 経済の見通しを立てるということは非常にむずかしいことでございまして、第二室戸台風も、東京から新潟までの幅で予想されております。気象台が室戸台風の進路を予測いたしましても、これは台風の方には影響ないのでございますけれども、われわれが何かものを申しますと、それがやはり影響するものでございますから、正直に申し上げて、なかなか予測を申し上げるということは困難だと思います。ただ、来年の四月以降七月ぐらいまでは、御承知の通り季節的な輸入期でございます。従いまして、その期間において輸出が伸びましても、やはり季節的な輸入期の関係でございますから、外貨がふえていくというような予想は、これはできたら常識はずれな予想だと思います。従って、私どもとしては、まずやはり七月ぐらいまでは毎月どの程度の外貨が減っていくか——貿易バランスだけであります。総合収支は別といたしまして、貿易バランスの上で減っていくかということを一応測定しなければならぬのでございますが、これは今のような緊急の輸入対策なり、あるいは輸出の情勢なりを見て判断しなければならぬのでありまして、非常に困難なことだと思いますので、まず七月ぐらいまでは、少なくてもある程度——金額のところはどうか知りませんけれども、減らざるを得ないのじゃないか。少なくても秋口に入れば季節的な輸出期になりますから、そのころには見通しがはっきり立って、これでもう大体輸出輸入のバランスが健全な基盤に乗り得る基礎になったのだということが考えられ、またそれを目標にして私どもとしてはいろいろな対策を作っていかなければならぬ。どういう対策をこれからやるかについては、先ほどもお話がございましたけれども一経済の問題については、私はやはり大綱は、すでに輸出奨励とか、あるいは輸入抑制とか、内需の抑制とか、いろいろな意味で大綱はきまっておりますけれども、それらに対しては、やはり当面起こってきます影響等についてこまかい具体的な手を考えて参らなければ、実際のそういう対策の推進上、いけないのではないかと考えております。従って、そういう問題をしょっちゅう頭に入れながら、今後の経済の動きに対応しまして、それぞれの手を打って参る必要があると思います。 せんだっても予算委員会で申したと思っておりますけれども、たとえば輸出のドライブを非常にかける。輸出になれば税金もある程度免除になる、あるいは保険料も安くなるというので、輸出業者は非常に一生懸命になりまして、非常な勢いで——ことに内需をある程度抑制して参ります。また、先ほどのお話のように、生産事情も、どっちかといえば需要を長期化するような生産事情になってこやしないかと思われる節もありますから、そういう点で輸出のドライブが非常にかかりますが、かかっただけ出先でお互いにまた競争が始まる。たとえばAの商社がきょう百円のオファーを出せば、Bの商社は九十八円のオファーを出す。向こうとすれば、待っていればもっと安くなるだろう、九十五円で買えるだろう、こうなる。それが今までの現地における貿易商社の過当競争であったわけです。ある意味では内需の面、生産の面で過当競争が起こっているように、輸出ドライブをかけました結果として、過当競争が輸出先で起こらぬとも限らぬわけでございます。そういうような、今度の施策は相当強力にいろいろな手を打って参りますから、それから起こってきます弊害というものも、出ないとは限りません。そういうものも、われわれは十分に注意して考えて参らなければいかぬと思うのであります。通産省の方では、そういう点を十分お考えいただいていると思うのでありますが、そういうところで全体の動きをできるだけすみやかに持っていく。そうして望ましいことは、総理も言っておられますように、こうした状態が長く続くということは望ましいことでございませんから、できるだけ早い時期に、ある程度いわゆる底をついたと申しますか、そういうところに持って参らなければならぬ。そうかといって、今お話のように、この前と違いますから、なかなか三カ月や半年でこれがいくというわけには、どうもいかぬのじゃないか。やはり少なくても目標を来年の秋くらいまで置かなければ、とうてい基盤に乗せられないのじゃないか、こういうのが私の実感でございます。
○加藤(清)委員 そこで国際収支改善のいろいろの措置が行なわれておるわけでございますが、この際、私は、もっと積極的にこれを改善する策について二、三お尋ねしたいと思うのでございます。 何と申しましても、今度の赤字の原因は、いろいろあるのですけれども、輸出が輸入に伴わなかった、輸出が伸び悩んでいるということなんです。どんなに投資が行なわれ、どんなに輸入が行なわれても、輸出が輸入以上に上回っておりさえすれば、問題はなかったわけなんです。日本はそういう国柄であり、それが基盤に日本経済は成り立っていると私は思うのでございます。ところで、産業界の投資は非常に高度化したけれども、日本の貿易、特に輸出は、はたして高度化したかどうかながめてみますと、私は、日本の経済の高度成長と輸出とは必ずしも並行していないと思う。高度成長とは何かというたら、それは投資が高度に伸びたということで、輸出はそれに伴っていなかった。このギャップが赤字を生んできたではないか、こう考えられます。従いまして、私は、この際特に通産大臣に貿易の振興の工合についてお尋ねしたいと思います。 すでに政府の方は貿易の自由化を、スケジュールを繰り上げてまでも行なわれようとしていらっしゃるようでございます。日本経済の真の高度の発展が貿易にあることは、今申し上げた通り言を待たないことであります。しかしながら私はここに不可思議な状態を見るのでございます。すなわち今日行なわれておりまするところの政府の貿易の自由化というものは、これは輸入の自由化のスケジュールであって、輸出の自由化のスケジュールではないということであります。一体何がそうさせているのでございましょう。輸出が日本経済の大宗であるということは、これはもう新制中学の教科書の中にもあることなんです。何がゆえに政府の方々は、輸入の自由化のスケジュールはどんどん進めなさるが、こんな赤字が続くやさきに輸出の自由化のスケジュールは行なわれないのでございましょうか。貿易の自由化計画ということは、今私どもが受け取りますると、それは輸入の自由化計画でございます。はたしてそれでよろしいのでございましょうか。もしほんとうに輸出と輸入とを並行させていくということであるとするならば、ぜひ一つここで輸出の自由化計画をお示し願いたいのでございます。
○佐藤国務大臣 前提になることについてもいろいろ意見がありますので、申し述べるといいかと思いますけれども、ちょっと時間がございませんから、最後の輸入、輸出の自由化という問題について、お尋ねの点だけで答えてみたいと思います。 申すまでもなく、貿易自体は相互主義でなければならない、これはもう大原則であります。当方が自由であれば相手国も自由である。この相互主義の原則に立って日本の過去の貿易を見ますと、これは遺憾ながらいわゆる自由化が非常におくれていた、こういうことであります。そういう意味で今回自由化をやる。これが不幸にしてただいま御指摘のように輸入の方はどんどん自由化されるが、外国がうまくやってくれないじゃないか、相変わらず同じような制限をしているじゃないか、だから輸出の自由化にちっともならなくて、日本だけが輸入の自由化をしている、とんでもないことである、かような御指摘だろうと思います。また、この点は別な言い方をしますと、日本の輸出市場は非常に狭くて、しかもその輸出市場に対して深く浸透するがゆえに、その市場を撹乱する、各国が非常に迷惑をする、こういうような批判が日本の輸出についてはしばしば行なわれているのであります。ところで輸出が非常に狭くて深い、これは一体何か。外国が日本商品に対してガット三十五条初め幾多の制限を加える。そうすると、そういうもののない場所だけが日本の市場として出ていく。狭い市場でございますから深くならざるを得ない。その場所においては外国との競争が非常に熾烈になる、ならざるを得ない、こういうことに相なるわけであります。従いましてこの点の理解を各国に求めること、これが基本であります。今回も、この十月一日に実施する自由化の品目が四百品目ばかりあったわけでございますが、日本に対して制限を加えておる国に対しては、今回の自由化に際しても同一の条件で自由化をしよう、これは貿易相互主義の立場から当然のことだ、かように実は考えたのでありますが、これが一部、新聞の報道が誤りまして、日本は報復主義に出るという記事が出た。そこでがぜん問題を起こしました。しかし外務当局は七月以降この相互主義の立場に立って各国と交渉をしておる際でございますから、この際にその四百品目のうち、二百ばかりは実施を十二月一日までおくらす、このニナ月の間に外交交渉でその相互主義の立場に立っての暫定取りきめを至急しよう、こういうことをただいま指導しておるわけであります。最近イギリスの産業連盟の事務総長キッピングも参りましていろいろ話をしておりますが、ただいまのような、どうも狭い市場で深く浸透するから非常に困るということを言っておりましたので、それは君の方で三十五条その他の制約をいろいろ加えるから、日本が自由に行ける場所が非常に狭いのだ、それが広くならない限り因る、こういうことなんだからと言ったら、なるほど事情はよくわかりましたと向こうも了承してくれております。あくまでも貿易は相互主義に立つという基本原則、これは私どもも守り抜くつもりでございます。各国ではそれぞれの国内事情によりまして特殊産業についての保護をいたしておりますから、日本の場合においても自由化だからといって、何もかも無制限に外国品と競争を自由にさすというような考え方は毛頭ない。保護を必要とするものについては、いろいろ関税なりあるいは数量の制限なりそれぞれのものをもちまして、そうして産業の育成なり保護の点でも遺憾なきを基していく、こういう基本的な考え方であります。 ただ、この際に一つつけ加えて申しておきたいことは、ただいま申し上げるように、貿易の基本的態度については御理解いただき、同時に御鞭撻がいただけるだろうと思いますが、ただいまのような国内の内需が旺盛な場合だと、輸出になかなか品物が回っていかない、こういう心配が一つあるわけであります。そういう意味でやはりこの内需を押え、そうして輸出の玉をそろえる、これがただいま政府が調整している一つのポイントであるわけであります。これも一つつけ加えさせていただきたい。 それからまことにおそれ入りますが、参議院の本会議が始まるので、重ねて呼び出しが参りましたのでちょっと中座いたします。どうか御了承願いたいと思います。わずか、二十分か三十分程度かと思いますので、どうかお許し願います。
○早稻田委員長 加藤委員に申し上げます。今大蔵省の福田為替局長、それから奥村企画課長、企画庁の中野調整局長が来ておられます。
○加藤(清)委員 大事なところではずされてなんですが、そこで私がお尋ねしなければならぬ点は、輸出のスケジュールを組むにあたって最も困難とされるものは、これは先ほど大臣も触れられましたように、各国がそれぞれに制限をしているということでございますが、一番制限が激しく、日本国民に反映してくるのは、アメリカの国内における日本品排斥でございます。次には西欧諸国におけるガット三十五条の援用でございます。もっとも遺憾なことはすぐお隣の中国に対するチンコム、ココム、このおかげで貿易が自由に行なわれないということでございます。こういうやさきにあたって今日行なわれる貿易の自由化は、ほとんど輸入の自由化なんです。私は、輸出振興をするならば、進んでこの障害を除去してかからなければならぬと思うのでございます。そこで一例をアメリカにとってみますると、アメリカ側は日本国に対して貿易の自由化を促進せい促進せいと言われるのみならず、この品物を買え、この品物を早く買えるようにせいと盛んにサゼスチョンが何回かにわたってきておるのでございます。ところが日本からいく品物については、これも制限だ、これも制限だ、こういうことでございます。その結果、戦後十五年の統計をとってみますと、輸出は大体五十億ドル前後でございます。ところで輸入の方は、ことしを抜いて百億ドル余をこえておるのでございます。まさに貿易の帳じりから見まするならば、アメリカヘの輸出はアメリカからの輸入の半分にも満たないのでございます。その結果帳じりは年々赤でございます。赤字が漫性化している。漫性化しているがゆえに、もう日本国民はこのことになれっこになっている。毎年四億ドル前後の赤字が続いておる。いわゆる三十二年に経済緊急対策を行なわれましたときには、あのときは藤山さんも御存じの通り七億九千万ドル、約八億ドルの赤字を作っているわけでございます。ようやくにしてこれを埋めていたものは何かというと、経済援助でございます。ところが援助だ援助だと思ってもらったエロア・ガリオアの借金を返せということになった。あれは借金だという話なんです。そのエロア・ガリオアのいわゆる合わせて二十億ドル、それからもう一つがAPAとICAにおけるところの特需でございます。これが総合されて、ようやく帳じりがとんとんになっておる。ここに日本の経済家たちはやむなくアメリカの軍需体制に従わざるを得ぬ、それに協力せざるを得ぬ、こういうことであったわけでございます。ところが今日は今やもう事態が変わってきておる。すなわちここでお尋ねしたい点は、はたしてAPAやICAの将来は一体どうなるのか、通産省としてはこの点をどうお考えなのか、これをまず承りたいと思います。
○今井(善)政府委員 ICAにつきましては、御承知のようにアメリカがドル・ドライヴ政策を打ち出されましてから、ICA資金によるものはすべてアメリカの商品を買うということになりまして、そのためにわが国のICAに対する輸出は相当の打撃をこうむっておるわけでございます。従来はある程度既約定がございましたので、何とか維持できておったのでございますが、既約定がなくなりまして、新規の約定をしなければならぬ。ところが約定ができないという状態になりまして、非常に前途は先細りということに今のところ見通されるわけでございます。私どもといたしましては、アメリカのドル防衛も一応めどがついたように見えますので、従いまして、この政策は何とか転換してもらわなければならぬ、かように考えますので、この十一月に行なわれます日米合同閣僚会議、そういうところに持ち出しまして妥結をはかっていきたい、かように思っております。
○加藤(清)委員 そのことはきょうの読売にも経済トップ記事として出ているわけでございますけれども、ICA資金あるいはAPA資金による貸付は、かつては日米の貿易帳じりの赤を埋める役としていたわけでございます。ところが今日ではむしろ海外市場において後進国において日本の商品と競争する立場に相なっている、これを認識しなければなりません。そうなって参りますとこの貿易の帳じりなるものはますますこのままの状態では赤の累積を加えていく、こういうことに相なると思うのでありまするが、はたして日米の貿易はいわゆる通産大臣がおっしゃったように双務的になっているのか、なろうと努力していらっしゃるのかいらっしゃらないのか、あるいはそのために今度日米合同会議を開くのじゃ、こうおっしゃるでございましょう。しかしそんな言葉くらいでは私は承知ができないのでございます。さきの国会の予算委員会及び特別委員会におきまして、私は池田総理に、あなたは今アメリカに向かってケネディさんと会談しようとしているが、との問題についてほんとうにやる勇気がありますかありませんか、ことに差し迫っているところの日米の繊維関係これを解決すればよし、しからざればそれを言い出すことをしない、解決をようしなければ、私はあなたの愛国心を疑う、こうまで詰め寄りましたところ、経済はおれにまかしてもらいたい、おれは君よりも愛国心はよけい持っているのだ、ちゃんと完全にやってくるのじゃ、こういうお話でございます。私はそうなることを心ひそかに期待をしておりました。ところがあの結果はどうです。ケネディさんに軽くいなされました。これは世界綿業会談にゆだねましょうという。世界綿業会談は日米の綿花の輸出輸入のことを規制したり、あるいはサゼスチョンしたりするところの能力を持っておりまするか。能力を持たざるものに委譲されて、一体その結果はどうなるでしょう。今度は日本と米国とまたそのことで話し合いましょうということになる。それはそれでいいでしょう。長引いただけでいいということなら、結果さえよければ長引いただけでいいでしょう。しかしながら長引いたその結果はどうです。今までの線製品の輸出、これははたして伸びたのでございましょうか。今井通商局長もよく御存じの通りだ。あなたも繊維局長をやってみえたからよく御存じでございましょう。日米の綿関係というのは向こうの原綿をほとんど日本が買うのです。そしてできた品物、いわゆる日米合同の製品であるところの綿製品について、相手国は一体どれだけ買ってくれるのか、オール生産のときに百分の一、多くなったとしてなお二十五分の一、まるまるふえたとして二億七千万スクエアだ、こういうのです。こういう仕打を受けてなお綿花だけは買わされている。このやり方がはたしてよろしいでございましょうか。予算委員会の西村さんだったかの質問に対する答弁に、業界も認めてくれておる、こういうお話でございましょうが、これは認めたのではなくして業界は泣き寝入りなんです。おりがあったら何とか言いたい、泣き寝入りしているだけの話なんです。こんなことを片っ方ではやらされ、その面だけではないのです、乳製品しかり、陶器しかり、ミシンしかり、ベニヤ板しかりなんです。私はこの夏、燕へ行って参りました。燕の洋食器までがそうなんです。こんな仕打を受けて、はたしてこれで双務的な貿易だということが言えるでございましょうか。ほんとうに日米友好通商航海条約の精神にのっとり、あるいは日米の貿易のことを将来とも友好的にやろうとする、あるいは安保の第二条にうたわれたことが事実だとするならば、これはあまりにもひどい仕打ではないか。この赤字の累積が、すなわち日本の総合貿易の赤じりなんです。経常収支の赤じりなんです。一体これについてどうお考えでございましょうか。私はこの際数字をあげて品目別に問いただしたいのでございますが、これはやがて輸出入取引法が審議されまするおりに譲りまして、日米の貿易ははたして双務的に行なわれておるか。私の考えでは少なくとも過去においては片務的であった。これを直す勇気ありやいなや。その勇気がないとするならば、私は再びここで言いたい。愛国心を喪失したものである。 第二番目にガット三十五条の援用でございますけれども、このおかげで日本は西欧諸国から時に八十品目、多いイタリアのごときは三百六十品目をも制限を受けておるわけでございます。これをこのままに放置してはたして双務ということが言えるでございましょうか。すみやかにこれの撤回をはかることが西欧へ輸出をはかる原因に相なると思うのでございます。 次にチンコム、ココムの問題でございますが、アメリカは日米の経済を発展させるという。安保においても、あるいは友好通商航海条約においても、MSA協定においても同じ趣旨のことがうたわれておるわけでございます。にもかかわりませず、アメリカと日本との貿易においては半分以下の輸出しか許さずにおいて、せめてそれでは他国に対して貿易を行なわんとする日本の意欲を助長してくれるかと思いきや、共産圏貿易に対してはチンコム、ココムで制限をしておる。ここに中共貿易やソ連貿易が難渋するゆえんがある。私はこれも詳細な数字をもってお尋ねしたいのでございますけれども、その時間がございませんので、これも後段の取引法のときに譲るとして、こういう前向きの姿勢でもって輸出を進めようとするときに横たわっている大きな障害、これは失礼でございますが、本省の一、二のお役人さんあたりがどれだけ努力をなさっても効果は薄いと思う。これこそは総理と、大物であるといわれておるところの経済閣僚が、それこそ心を一にして立ち向かってこの障害を取り除かなければならぬ問題でございます。しかも国内の帳じりは赤の連続で、これがまた一年続くというやさきでございます。今にして奮起しなければ奮起するときがいつあるでございましょうか。切に長官の御高説を承りたいゆえんでございます。
○藤山国務大臣 通産大臣がおられませんので、何から何まで私が答弁することになってはなはだ恐縮でございますが、アメリカとの輸出入関係というものが、過去の歴史を見ますと、事実三十四年でございましたか、やや均衡を得た以外はほぼ日本が輸入超過でありまして、これは性質から申しまして、元来、原料品を日本が買って生産品をある程度出すという立場におりますものですから、日本よりも進んだ国に生産品を出すとなりますれば、相当程度国内工業が高度化されて参らなければならぬのでありまして、そういうような点から、多くの場合において対米貿易が輸入超過であることはやむを得ないことかと思いますが、しかし今後は日本の工業力も進歩して参りますし、製品の優秀性も出てきて参りますし、またそれらのバラエティもふえて参りますので、そういう面からいいますれば、今後さらに対米輸出貿易というものが大いに伸ばされてこなければならぬと思います。本年度は、かねてアメリカの景気が停滞いたしておりましたので、特に伸びが悪かったようでございますが、最近七、八月ごろからアメリカの景気も上昇過程に入ってきておりますので、若干ずつ伸びが多くなりつつありますが、しかしお話のように、必ずしも貿易バランスというものが対米関係において十分平衡を得るということには当然相ならぬ状況でございます。その間にありまして、今お話のようなアメリカの関税、もしくは輸入制限というような問題が過去においてたびたび起こっておりまして、御指摘のありましたような燕の金属洋食器のごとき、あるいはこまかいもので言えば体温計とか、いろいろ問題が出て参りまして、私自身も、アメリカに参りましたときに既製服の問題でだいぶ話をしたこともございますが、そういう意味でアメリカ側も非常に神経質になっております。特に、政府ではそれほどでもございませんけれども、アメリカの議会方面においては、各地域における業者、あるいはアメリカでもやはり斜陽産業的なものもございますので、そういう面からの陳情、請願等のために、議会方面でも相当強いいろいろな施策がとられることがございます。ただアメリカ政府としては、かなり好意的に、そういう法案が通りましたときに大統領自身がヴィトーを使ったこともございますので、全体として日本品を排撃するという立場をとってはおりませんけれども、そういう空気があって、間々そういうことが大きな声になって実現してくることは当然でございます。そういうことのために自主規制をしなければならぬということは実はまことに残念なことでございまして、輸出貿易の自主規制などということをやっております国というのは、日本を除いてはほとんどないのじゃないかと思うのでございまして、そういうことのないようなスムーズな貿易ができ得るような関係を打ち立てていかなければならない。それには日本の貿易業者その他にもさらに自戒をしていただきまして、いたずらな過当競争を現実においてする、あるいは、先ほど通産大臣が言われましたように、狭い範囲内において深度を深めて競争するというようなことのないように、日本自身も自制して参らなければなりませんが、しかし自主的な協定をするような状況というものは望ましいことではございません。従ってわれわれも今後ともそれを解消することに努力して参らなければならぬと思います。 またガット三十五条の適用の問題についても、絶えず各国と、特にヨーロッパ各国と日本の立場を話をいたしまして、通商協定のようなものができますときにも、ガットの場においても、あるいは二国間の話し合いの場においても、これを主張してきておるのであります。最近はようやく援用国がこの問題について大体適当な時期にはこれを解消しなければならぬという方向には向かいつつあるように思いますけれども、しかし現実にまだ十二国でございますか、その程度のものが残っておりますことは残念なことでございますが、今外務当局がせっかく通商航海条約なりあるいは貿易協定なりを締結する際に、援用廃止の問題を努力しておられますので、今後はだんだんそういう援用国の数も減り、あるいはそういうことの適用のないようになってくるということに相なるのではないかと思っております。またこれ自体政府が当然、ただいまお話のように、経済閣僚一致して努力をして参らなければならぬ問題でございます。 また共産圏の貿易につきましてお話がございました。御承知の通りチンコムは、昭和三十二年でございましたか、イギリスが強い主張をいたしまして、アメリカと意見が対立しましたけれども、結局イギリスがアメリカを引きずりまして、少なくともチンコムの制限だけはある程度緩和することになりました。ココムの問題は残っておりますけれども、そうした関係は国際情勢の推移とあわせて、漸次解消されることが望ましいことだと思います。共産圏の貿易につきましても、貿易自体を拡大して参ることについては、努力して参らなければならぬのでございまして、何と申しても、共産国というものは国家貿易主義でありますから、バランスの合った、大体においていわゆるバーター式な貿易でなければできぬ点がございますので、数量が伸びるということは困難でございますが、しかし、ソ連との貿易協定等について見ますれば、最近は著しく増加をいたしてきておるのでございまして、これはソ連の国内における消費物資の需要その他ともあわさって、将来とも相当伸び得るものではないかと考えます。中共との関係は、残念ながら政治的ないろいろな問題が並行して論議されるというようなことで、友好商社その他のこともございまして伸び悩んでおりますけれども、政府として、特に通産省御当局も先般来若干の緩和方策は、貿易事務の上においてはとってこられておるのでございまして、そういう面において、われわれも一そうの改善をはかっていくことは、望ましいことだと思います。
○加藤(清)委員 与えられた時間が参ったようでございまするので、私の質問はまだ途中でございまするが、これで終わります。 ただ最後に、今長官のおっしゃいましたことについてちょっと申し上げておきたいことは、なるほどチンコム、ココムにおいては、日本だけがワクをかけられておるわけではございません。ところが、同じようにワクをかけられておりながら、西欧のヨーロッパ共同市場国、これは一体どれだけ中国、共産圏と貿易をしているかというと、あなたのおっしゃるように、バーターではあるけれども、行きし戻りしで、毎年十六億ドルずつやっておるわけでございます。日本はと調べてみますると、一億ドルに満ちません。わずか八千万ドル。いわゆる経済合衆国と申しましょうか、これと比較すると二十分の一にも満たないわけです。中国貿易はと見ますると、西独は往復おのおの二億ドル以上やっておるわけなんです。イギリスもまたしかりでございます。日本はと見ますると、つい最近行なわれかけつつあるのでございますが、今までのところはゼロにひとしいわけでございます。つまりチンコム、ココムに関する限りは、他の国々はそれぞれの手だてをもってその条約を乗り越えていくわけなんです。日本ひとり、このチンコム、ココムを守るという点において、チンコム、ココムに忠実であるという点においては、模範生でございます、優等生でございます。はたして、この優等生は日本経済にプラスの優等生でございましょうか。このことは、日本経済の赤字を解消する上においてプラスでございましょうか。私は、あなたがこのたび行なわれんとする日米合同経済会議の重要メンバーの一人であるがゆえに、切にあなたの奮起を促したいゆえんでございます。
○早稻田委員長 加藤さんに申し上げますが、大蔵省の福田為替局長に対する質問はよろしゅうございますか。
○加藤(清)委員 それじゃやりましょう。ほんとうは大月君にも来てもらいたかったのですが……。あまり長談義も同僚の委員に御迷惑でございましょうから、為替局長に一点だけお尋ねいたします。 ただいま私の質問に対して、通産大臣は、貿易が難渋しているのは内需が旺盛で、内地に回ってしまうから、それで輸出ができないのだ、そういう面がある、とうおっしゃいました。その通りです。私は反対ではございません。そういう品目もあるということでございます。しかしそうでなくして、どうしても輸出せぬければならぬ、内地では売れないのだ、売ることが許されないのだ、輸出せい、こう言われておりながら、大蔵省の頑迷のいたすところそれができなくて、失敗に終わっておるという品目のあることを、大蔵省の為替局長さんなら御存じでございましょう。御存じでございますか。
○福田(久)政府委員 お話のように、輸出の停滞している一つの大きな原因としては、通産大臣からお話がありましたような原因も、大きな原因であると思います。またそのほかにもいろいろあろうかと思いますが、ただいま特に御指摘のございました品目について、私ただいま直ちに思い出せないのでございますが、品目そのものによっては、いろいろな事情によって、いろいろな原因から、輸出の伸び悩みということもあろうかと思います。
○加藤(清)委員 私があなたにぜひ御理解をいただきたい点は、ほかでもございませんが、これこそ輸出振興のポイントであるからでございます。すなわち、日本の繊維及び繊維機械は、少なくとも過去においては、日本の輸出の花形であったわけです。この業界の発展は、日本の経済に大きな貢献をしていたわけであります。ところが、おりあしく事志と異なる状態が、まま散見できるようになってきたわけでございます。特に繊維機械につきましては、通産省の縦維設備制限法によりまして、新規、増設などができなくなりました。あの際に、残るところは輸出よりほかに手はない、いや、いっそのことやめた方がいいじゃないかという意見も出ましたところ、時の大蔵、通産、経企庁長官も、人間が繊維を使う限り、繊維機械を抹殺するわけにはいかないのだ、今内地に売れなくなったからといって、ここ数年売れないからというてやめるわけにいかない、ぜひ生き残って進めてもらいたい、そのかわり輸出振興に努力しましょう、こういうことになっておったわけです。これは附帯決議にもついております。ところが、その後はたして大蔵省は、この繊維機械の輸出に対してどのような援助の手を差し伸べられたでございましょうか。輸出問題が起き、この設備を改善する問題が起きるたびに、ネックは大蔵省にあると言うても過言でないと私は思うのでございます。なぜさようか。輸出する場合には、繊維機械はひとり歩きができる、それでけっこうなんだ、そんなものに援助する必要はないのだ、こういう古典的な考え方が、戦前的な考え方が、今日なお横溢しておるのではないでございましょうか。 具体的に例をあげましょう。先般エジプトは、さきの経企庁の長官高碕さんの時代に、日本へオファーしまして四万錘の試験設備を行ないました。その結果、日本の機械はたいへんよろしいというので、今度十三万錘、金額にして二十六億円を入札させることになりました。日本の業者はここへ参りました。ところが、日本の政府はこれに対して何らの援助の手だてがないのでございます。一人歩きができるからという考え方だから。で、これに加わって参りましたのはイタリアであり、イギリスでございます。すなわち、後進国への機械設備のプラント輸出はまず繊維から、これはもう今や世界じゅうの相言葉なんだ。そこで、イタリアもイギリスも、ときにはアメリカまでが手を伸ばそうとしたわけでございます。が、コストは安い、性能はよろしい、そこで日本へきまりそうになりました。しましたら、イギリスがどうしたか。延べ払い七年間でいきましょう、こうきた。それと対抗しなければならぬので、それじゃ値を切り下げてでもいきましょう、こう出た。ついにこちらへ注文が落ちました。ところがイタリアはどうしたか。延べ払いをすると同時に、現地ポンドの決済でよろしい、こうきたのでございます。延べ払いとかクレジットとか現地ポンドでよろしいというが、これがはたしてメーカーや商社の力でできることでございましょうか。つまり、今日後進国が希望していることは、やはり日本の明治時代と同じように、工業化でございます。工業化の第一手段は繊維でございます。それについて繊維の先進国は、後進国へ後進国へとこれを輸出しようとする競争が行なわれている。戦前の競争とは違うのです。この認識をあやまちますると、ひとり歩きできぬ、こういうことに相なるわけでございます。この結果、ついにこの入札はイタリアに落ちました。準備した下請は資材にも困っているという状況でございます。一体責任は那辺にあるのでございましょうか。引き続いて、ただいま織機が行なわれております、同じ国によって。しかし、これと同じような問題が南米においても行なわれて、結果はまた同じ結果でございました。南米はイギリスにとられました。南米のごときは、日本の会社がすでにプラント輸出して、そこで製作の段階に入っているのでございます。にもかかわりませず、後進国は延べ払い、現地円、この魅力には勝てないのでございます。なぜかならば、後進国には外貨がないからでございます。このような状況において、はたして日本の機械輸出の振興ができるでございましょうか。所得倍増計画によれば、基準年度の五・八倍にも伸ばそうとしていらっしゃるわけでございます。はたして、ことしの機械輸出は、その初年度の計画を遂行できたでございましょうか。私はここに大蔵省の真摯なる反省を促すと同時に、ついで、今すでに行なわれている競争、すなわち織機の輸出についてどのような手だて、どのような輸出振興策を講ぜられるのか、承りたいのでございます。
○福田(久)政府委員 これは皆さんよく御存じのことと思いますが、プラント輸出につきましては、延べ払いをある妥当な条件で行なう場合にはそれを認めることにいたしまして、輸出入銀行からの融資もそれに応じて行なわれておる実情でございまして、何もひとり歩きでそういう延べ払いができるというふうには考えておらないわけでございます。これは釈迦に説法と思いますが、その点は、まず前提として何もしておらないのではないということだけ釈明さしていただきます。なお、いろいろ個々の取引につきましては、それぞれ何かと競争も激しくなったりする事態もあるだろうと存じます。従って、一応まあまあという妥当な条件に近い範囲のものにつきましては、基準につきましては、特に申し上げられないと言うと非常に失礼ですが、外に漏れますことも工合が悪いので、通産省、大蔵省でよく相談をいたしまして、先般の六月の輸出振興対策にありました延べ払い金融についての弾力的な運営の内容につきましては、すでに九月ごろからある線を相互に了解いたしまして、個々の案件について十分通産省と大蔵省と連絡した上処理をいたしております。しかしながら、ただいま御指摘のございましたエジプトの問題でございますが、私具体的にその条件その他についてつまびらかに承知いたしておりませんけれども、お話によりますと、現地のエジプト・ポンドで決済してもよろしいということのようでございます。これまたこんなことを申し上げると、お前なまいきなことを言うな、そんなことを言わなくても自分はよくわかると言われるかもしれませんが、日本が輸出を大いにふやして、それによって国の経済をますます発展させようというゆえんの根本は、輸出した代金で輸入に充てたいということにつながっておる問題でございます。その意味におきまして、やはり外貨もこういう事情でございますので、その面では、回収が確実であり、なるべく早く外貨を手に入れたいという強い要請が片方においてあることも、あわせてお含みおき願いたいと思うのであります。それら両方の要請を彼此勘案いたしまして、先ほど申し上げたように、通産省とも緊密な連絡をとりながら、事態の推移に応じまして適宜そういう延べ払い等についての案件の処理に当たっておるわけであります。そういう意味から考えまして、ただいまの現地ポンド払いという問題は、おそらくそういう面からあったではなかろうかというふうに存じます。そういうことで、輸出増強にももちろん非常な努力を傾けていきたいとは思いますけれども、頑迷固陋とおしかりを受けましたけれども、片やそういう悩みのあるということも同時にお含みおき願いたいと思う次第であります。
○加藤(清)委員 局長のお立場は私ようわかるのです。ところで問題は、後進国への輸出競争ということは、東京で言っているのとは違いまして、現地はものすごく競争が激しい。具体的には、先進国は融通無碍でやっているということです。あなたのおっしゃるようにこの国に対してはかくかくのことをするという企画でもって臨んでいるのではない。日本政府はとかく前例とか企画がおすきなようでありますが、そういうことで臨んでいるのではない、イギリスにおいても、イタリアにおいても、輸出の仕方は融通無碍である。幅が広い。どんな手を打ってくるかわからないわけである。従って、前もって予測するわけにはいかぬ。しかし、後進国に輸出をする限りにおいてはそういう相手と戦わなければならぬということなんである。従って、日本政府も融通無碍で行き得るかどうか、それが後進国輸出に対しての勝負に勝つか勝たないかということなんだ。これだけのことなんです。それはあなたのおっしゃる通りです。外貨をスイッチしなければならないとか、その外貨で現地物資を買わなければならないという問題になります。そういうことにも波及いたしまするから、それはあなた一人ではできないわけなんだ。だから、私はほんとうは大蔵大臣に来ておっていただきたかった。いずれ本件に関しては時を別にいたしまして責任ある答弁をお願いしたいと思っておるわけでございます。
○早稻田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十日火曜日午前十時より理事会、同十五分より委員会を開催することとし、これにて散会をいたします。 午後零時二十分散会