予算委員会 第8号
- 発言数
- 121 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1961/03/06
会議録
○委員長(館哲二君) これより予算委員会を開会いたします。 委員の変更について報告いたします。本日、田畑金光君並びに小平芳平君が辞任されまして、その補欠として山田節男君及び白木義一郎君が選任されました。 —————————————
○委員長(館哲二君) なおこの際、政府に御注意を申し上げておきたいのでありますが、本日から参議院において予算を審議することになるのであります。どうか一つできるだけ御勉強を願いたいと思います。ために開会の時間がおくれますことは、はなはだ遺憾に存じます。 昭和三十六年度一般会計予算、昭和三十六年度特別会計予算、昭和三十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。 これより総括質疑に入ります。羽生三七君。(拍手)
○羽生三七君 三十六年度予算の審議に際しまして、予算の前提となるべき国際情勢を中心にして若干の質疑を行ないたいと思います。 最初に、いささか意見にわたって恐縮でありますが、政治のあり方について一言総理の所感をただしたいと思います。政府は、施政方針演説におきまして日本経済の高度成長を誇示されておりますが、確かに成長率だけでいえば世界で最も高い水準にあることは、これは事実であります。しかしそれにもかかわらず、日本経済の二重構造は依然として解消されず、繁栄の陰にかくれた暗い断面も多方面にわたって存在をしております。しかるに政府の態度は、いいことずくめの発言が多くて、高度成長と繁栄の陰にある問題を率直に認める勇気に欠けております。また国際情勢については、ほとんどあらゆる場合というくらい国際情勢待ちであります。私は、ケネディ大統領やフルシチョフソ連首相等の演説の高い格調の内容に接するごとに、日本の政治について実に多くの感慨を禁じ得ないのであります。これは政府だけに言うことではなくて、私自身も含めて考えなければならない問題と思っております。ケネディ大統領とフルシチョフ首相の見解そのものについては、人おのおのその評価が違うと思います。しかし、そこで語られていることはどんなことかといえば、たとえばケネディ大統領が一般教書で語る言葉の中には、次のように述べられております。たとえば「企業の破産は大恐慌以来最高水準に達した、五一年以降、農家収入は二五%減少した、五八年の短い時期を除いて失業保険の給付を受ける失業者数は史上最高の記録を続けた、約五百五十万の失業者のうち百万以上の人々が四カ月以上の長期にわたって職を探し求めている。約百に上る不況地域では、失業者の約八分の一がほとんど希望のない状態に置かれている。」これはその一節であります。こういうように、現状認識についてその率直さは驚くべきものがあります。また、フルシチョフ首相の演説も、人類の未来について、あるいは平和、戦争の問題について、あるいは完全軍縮、植民地解放等の問題について、これから世界人類が取り組まなければならない重要な問題について、最大限の知性と創造的意欲をもって述べられております。 ところが、日本の場合はどうでありましょうか。確かに平和という言葉はいつも施政演説の中に出て参ります。自由陣営の一員としてということもそのつど語られております。しかもそれは十年一日のごとく、ちょうど国会の開会式の議長の式辞と同じように述べられております。もちろん私は、うまい言葉を羅列すれば事足りると言うのではありません。日本の政治に高い格調がないということは、たとえば平和について語る場合には、具体的にどうすれば可能であるかという創造的意思が伴わなければならない。経済について語る場合には、いいことづくめになるという現状認識の不足、語る勇気の不足、そういうものが何か砂をかむような感じを与える原因であろうと私は思います。繰り返して申し上げますが、これは決して表現技術の問題ではございません。今日の東西の冷戦、資本主義と社会主義が相競う現実の世界の中で、人類や世界の未来に対する創造的な英知がさらに必要なのではないかと思います。日本の政治の姿勢を正す問題はたくさんあると思いますが、私は今その一つ一つについて取り上げることはいたしません。今、日本に不足しているものは、問題についての透徹した見通しと判断、世界観ともいえます。実行する場合の勇気、問題に処しての責任感、そういうものが日本政治に欠けているのではないかと思います。外交や経済の問題だけでなくて、テロの問題も根本的には私は政治の姿勢の問題であると思います。青少年の犯罪の問題も、せんじ詰めれば、おとなの世界の問題だと思っております。選挙違反の問題も、基本的には法の不備というよりも、政治に携わるもの自身の政治哲学、政治姿勢の問題だと思います。こういう基本的なものが日本の政治には欠けておる。政府のことだけを言うわけではありません。われわれ自身もそれについて十分考えなければならぬということを含めて申し上げておるのであります。いささか抽象的な言い方でありますが、日本の政治家、政府の総理として日本の政治の権威を高めるにはどうしたらいいと考えるか。まずこの基本的な問題について、非常に意見にわたって恐縮でありますが、最初に、まずこれについてお答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) お話のように、政治家の態度その他につきまして御注意、反省の言葉がございましたが、私も全く同感に思っております。お話の初めにありました高度の成長を遂げておるということは認めるけれども、その高度の成長に立ちおくれた人がおる。こういうことについていわゆる認識とその感覚が足らないのじゃないかというお話。私は、一昨年のアメリカのある雑誌に、日本の高度成長を非常にたたえながら、しかも終わりに、まだ一日一ドルの生活をしている家庭が日本の全体の家庭の一割を占めておると。一日一ドルというのは、アメリカの高等学校を出た十七、八歳の女の一時間の給料にも足りない、こういう一ドルで生活しておるのが一割おる、これは全くその通りでございます。私は高度の成長が遂げられたけれども、まだそういう世帯があるということは十分認識しておるのでございます。かるがゆえに、この高度の成長を訴えながら、実現しながら、その谷間の人を上げていこうといたしておるのであります。発表の点におきまして欠くるところがあることは私も認めまして、今後十分注意いたしたいと思います。 また外交問題につきましても、言い方が少ないのじゃないか、自信がないのじゃないか、こういうおしかりもございます。これは、アメリカあるいはソ連のように力を持っていない日本、また敗戦の日本といたしまして、国際的な活躍が今まで十分じゃなかった点も私は受け入れなければならぬと思います。ただ問題は、何と申しますか、日本とか、ドイツとかという敗戦国で、しかも立ち上がろうとしている国が、私はドイツも日本と同じだとは申しませんが、なかなかそこが、外交面でアメリカあるいはソ連のような立場をとるのもむずかしいのでございます。かといって、新興国のように力以上に非常な発言をするという国もございますが、こういうことのまねもできにくい立場にございます。ただいまの羽生先生のお言葉につきましては、十分われわれも反省いたしまして、そういう点を是正していきたいと考えております。政治家としてはまだ未熟でございまするが、私はたびたび申しておりますごとく、まず自分をおさめ、そうして国民とともにまっすぐな道を元気よく進んでいきたいという考え方で言っておるのであります。
○羽生三七君 外交問題について順次お尋ねをいたします。 中国の国連加盟は、今日では、すでに時間の問題であると思います。しかし、日本と最も深い関係のアメリカの動向は、相当複雑だと思います。たとえば、スチブンソン、ラスク、ボールズ等外交首脳の上院外交委員会における証言を見ましても、今直ちに中国承認とか、国連加盟支持とは言っていないようであります。しかし、それにもかかわらず、これらアメリカ外交首脳は、中国の国連加盟を支持する国の数が増大することを防ぐことはできない、こう述べております。もっとも英国の動き等から見て、最終的には、アメリカがどういう出方をするかわかりませんが、またどういう出方をしましょうとも二つの中国論であります。これは最近では一つの中国、一つの台湾という言い方をしておりますが、それはとにかく世界の大勢とアメリカの動向、今申し上げたようなことから、アメリカは複雑でありますから、世界の大勢とアメリカの動向と食い違った場合、日本としては、アメリカ外交、アメリカの決定いかんにかかわらず、独自の立場をとる、これが総理の言う弾力性と理解してよろしいかどうか、この点をお伺いいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 中華人民共和国の国連への加入問題につきまして、加入の前提であるそれを審議することにつきましての議論は、従来たびたび戦わされ、また昨年の状況によりますると、その差が非常に少なくなった。しかも棄権が二十二カ国もある。かてて加えまして、昨年の暮れごろから今年にかけまして、お話のイギリスにおきましても、また最近におきましてはブラジル大統領の宣言におきましても、いろいろの情勢の変わったことが見られるのであります。変わりつつあることが見られるのであります。また、おとといのケネディ大統領とニュージーランドの首相との共同声明にいたしましても、また昨日の上院議員の発言から見ましても、アメリカの考え方は、中は変わっていないようであります。私は、こういう世界の現状を見ながら、日本のとるべき態度につきましては十分検討を加えまして、独自の考えでいくことはもちろんでございます。
○羽生三七君 中国承認の問題と、国連加盟の問題と、これを国連の総会の議題にする問題と、それぞれ違いますし、またアメリカの動きも今総理のおっしゃる通りでありますが、しかし、それにもかかわらず、私は日本が近くこの問題についての決定を迫られる段階が近づいておると思います。そこで総理は、さきに衆議院の予算委員会で、中国の国連加盟問題について、イギリスの同問題に対する態度を一つの手がかりとするような——手がかりとするようにも受けとれる、そういうニュアンスの発言をなさっておられますが、最近、問題の英国は、中国の国連加盟が議題となった場合には、賛成投票するかもしれないということを、非公式にケネディ大統領に通告したとも伝えられております。この動きは、これは日本としても一つの手がかりになると思いますが、どうかということ、それからまた日本としても、この辺で対中国政策について、何らかの具体的な方針を確立すべき段階にきていると思います。その意味で、総理の言う弾力性とは、国際情勢の推移をさすと思いますが、どういう場合が転期の、つまり転期を画する契機となるか、永久に国際勝勢を見ているのじゃないのですから、その弾力性というのはどういう点にこの転期の契機をなす要素——弾力性ということに当てはまるわけですが——それはどういうところからくるか、たとえば米英の会談とか、あるいは国連の場ということもあるでしょう、あるいはブラジル等の最近の動き、こういうところから見て、つまり総会の議題の問題となって、そこで態度がきまるのか。その前でも、何らかの国際情勢の推移ということを意味するような転機を画される時期があるとすれば、一体、どういう時をさすのか。非常に抽象的な質問で恐縮ですが……。
○国務大臣(池田勇人君) 英国におきまする議論も御承知の通りでございまするが、英国におきましても、もし中共が国連に参加したときに国連が割れるというふうな場合がある場合におきましては、考えなければならぬということもつけ加えて言っておるのであります。それは、すなわち国連におけるアメリカの地位を考えているからでございます。また、英国の立場とわが国の立場とは、もうすでに御承知の通り、中共を承認しておる英国と中華民国と平和条約を結んでいる日本とでは、歴史的にもかなり違ってくるわけでございます。しからば、日本の態度をきめるのに、国連総会以前に態度がきまるか、あるいは国連総会の様子によって態度をきめるか、こういう点につきましては、これはなかなか、今いつきめるとは申せません。世界の情勢を見ながら私は考えるべきだと思っております。しかし、イギリスを初めとする西ヨーロッパ側の態度、あるいはAAグループ、あるいは中南米、ことにアメリカの態度なんかはよほど参考にしなければならぬと思っております。
○羽生三七君 いや、実はこの問題はもっといろいろ伺いたいと思いますが、あまり具体的に触れて聞くのもどうかと思いますので、次の問題に移りすが、昨年の十二月、この予算委員会で私が触れた問題に関連するわけでありますが、この日中貿易の政府間協定の問題は、もしこれが中国の国連加盟と見合いになる場合、その場合には、そういうときに政府が何とか弾力的に対処をするということになりますと、この問題は、今の政府の御答弁にもありますように、現在では非常に不確定な要素であります。しかし、日中間の貿易協定は緊急の課題だと思います。この日本経済の見通しは、政府の楽観論にもかかわらず、明年度以降、世界景気の動向、アメリカのこの輸出強化策等々と関連して、必ずしも楽観を許さないと思います。そんな極端な大変化ということを私は言うわけじゃありませんが、まあそういう趨勢にあると思います。そういう意味からも、これを中国の国連加盟の見合いとせずに、これを可分な要素として決断した方がよいのではないかと思います。総理は、昨年末私の質問に答えられまして、郵便、気象協定等については、いつでも話し合いをする用意があるという意思表示をなさいましたが、これに対する中国側の反応は御承知の通りであります。総理のせっかくの意向もいささか残念なことになりましたが、しかし、何としてもこれでは現状が打開できぬということでは、これは仕方がありません。そこで、政府間協定はやらないんだというように断定的に言わず、それこそ総理の言う弾力性を持ちながら、局面打開のために、さらに何らかの方途を講ずべきであると思いますが、そういう前向きの姿勢の場合の一環として初めて気象協定あるいは郵便協定等も生きてくるのではないかと思います。先方が、これは小坂外相が先日衆議院の外務委員会で御発言なさったこととも関連をいたしますが、先方が承認につながらない限り、政府間貿易協定はやらないというなら、これは問題は別であります。私は中国へ行ってだれと話したわけでもありませんから、そういうことはわかりませんが、つまり政府間貿易協定は承認につながらない限りやらないということを中国が言うなら別でありますが、政府間貿易協定そのものを先方が考慮する場合、日本も決断をしてよいのではないか、こう思いますが、先日の小坂外相の御答弁を見ておりますというと、これは不可分だからそんなことをやっても意味がないと言われますが、いや、政府間貿易協定だけやってもよろしい——うらはらの問題でありますが、これはどういうことになるのか。最初に総理からお答えをいただいて、続いて詳しく小坂外相から御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 政府間の貿易協定をしないというのが、それが中共を承認した格好になるということにつながるという前提では私は、今のところむずかしい。そういうことでなくて、向こうは政府貿易でございますから、向こうの政府貿易とそしてこっちの民間団体、その民間団体に対しまして政府がある程度補助を加えていく、こういうふうな民間団体との私は協約なら、これは第四次積み重ねのときも大体そういうふうな格好でいったのでございますから、私は貿易促進の意味からいってやぶさかではないと考えるのでございます。従いまして、ただいま考えておりますのは、以前にありました日中の輸出入組合、こういうものを再建するとか、あるいはジェトロ関係で貿易促進の具体的措置を向こうさんが受け入れるならばやってもいいという前向きの考え方で今検討を加えている次第でございます。
○国務大臣(小坂善太郎君) お答え申し上げます。ただいまの総理のお答えで大体尽きておると思いまするが、要するに日中両国間においての貿易が、政府間協定というような、政府対政府の形をとらざる場合は、われわれ十分これを推進して参りたいと思っておるのでありますが、ただ政府間の協定ということになりますと、これはこちらだけではありません。先方の政府の意思も問題でございまするので、そういう場合、承認につながるということに解するのが一般論でございまするので、そういう点は今のところできないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
○羽生三七君 いや、これは承認につながるとかつながらぬということをこっちが確かめる必要もありませんが、黙ってやって、解釈は自由だ、そういうやり方もあると思います。ですから一々確かめてみて、政府間貿易協定をやるが、それは承認につながるかというようなことを聞くやぼな外交はないと思う。黙って協定はやって、その解釈は自由だ、こういう立場もあると思うのですが、それはとにかく、一つの方法として、これは新聞なんかに若干伝わっておりますが、中国で商品見本市を開催することを通産省に総理が指示されたという説も伝えられておりますが、これも一つの提案みたいなことになりますけれども、中国で商品見本市を開催して、その場合に閣僚級の人物を送って話し合いをしてはどうか。たとえばソ連に日本が見本市を開いたときには、石井さんが向こうに行きました。それから今度の日本で開かれるソ連の市には、ミコヤン副首相の来日も伝えられております。これは儀礼的に各国よくやることです。ですから私はこの場合、中国に見本市を再開して、そうして閣僚級の人物を送ってはどうか。これは一つの提案でありますが、そういうことをお考えになる用意があるかどうか、これは一つ総理から伺っておきたい。
○国務大臣(池田勇人君) ソ連と中国とを同じように取り扱うという立場でございますが、遺憾ながら今そこまでいっていない。ソ連とは平和条約は結んでおりませんけれども、共同宣言をいたしまして国交を回復しておる状況であるのであります。従いまして、モスコーの見本市に石井前通産大臣が行かれたのと私は立場が違うのじゃないかと思います。だといって、全然向こうから政府の者と話をしたいというときに、今それをすっぱり断わるか、あるいは断わらないか、こういう問題につきましては、私はもう少し検討をいたしたいと思います。見本市を開いてこっちの国内の財界の有力者が行くとかなんとかいうことなら、これはもう結論は出ますけれども、政府の職員が表向き向こうに外交交渉するということにつきましては、これはなかなか今のところむずかしいのじゃないか。しかもまた、御承知の通り、アメリカと中共とがワルソーで百回以上やっておるのじゃないかと思いますが、なかなかおいそれといってもすぐどうこうはなりにくいのでございまして、見本市を開き、財界の有力者が行っていろいろ話をするということにつきましては、私は反対をするものじゃございません。政府間でどうこうということにつきましては、今直ちにお答えすることはむずかしいと思います。
○羽生三七君 そのほかに私はいろいろ方法があると思うのでありますが、あまり具体的になるのもどうかと思うけれども、そうすると閣僚級あるいは大使級でとにかく接触をしてみる、岸内閣のときの静観からずいぶん久しいのですが、弾力性をということを総理は言われながらもなかなか進んでいない。だから、この辺で私は世界の大勢がきまったら、あとから日本もついていきますということでなしに、私は、何らかの転換の方途を講ずべきだろう。従って、私は場所は問いません、閣僚級または大使級で接触をしてみる。向こうがどういうことを言うのか、それは社会党の代表や労働組合の代表が行って話をすることはわかっております。しかし、政府は政府自身として——われわれには外交権がないのですから、外交権を持つ政府自身がとにかく接触をしてみて相手の意見を聞く、そういう機会を持つことはできないとおっしゃるのでありましょうか、どうでありましょうか。
○国務大臣(池田勇人君) 中国問題につきましては、わが国が最も関心があり、また、この問題につきましてわが国が十分の知識を持っているということは、絶対必要でございますし、また世界各国も中共の問題については、日本が一番よく知っているだろうと期待をいたしておるのでございます。従いまして、社会党の方々のお会いになりましたことも注意して私は見ております。われわれ自身としても、何とかして中共の問題を経済的に、あるいは外交的に、また今の当路者がほんとうにどういうお考えを持っておられるかということにつきまして知りたいという気持はもう人後に落ちません。また、そうすることが私は世界各国に対しても日本の立場ではないか、こう思っておるのでございます。しからば、それじゃどうするかという問題につきましては、今しばらく私に考えさせていただきたいと思います。今は大使級の人をどうするとか、あるいはどこかの中立国でアメリカがやっているようなことをやるかどうかという具体的な問題につきましては、しばらく申し上げることを差し控えたいと思います。
○羽生三七君 そのほかに私、具体的にいろいろな方法があると思うのです。これは私の単なる意見でありますから御答弁はあえて求めませんが、たとえば、これは相手がこれを認めるかどうかわかりませんが、しかるべき場所で日中が会談をして、日中双方が輸出可能な品目のメモを提示し合い、合意に達した場合には、協定はなかなか政府は困難でしょうから、その場合に北京、東京双方で別個にそれぞれ合意に達した品目を発表する、これは正式な政府間協定以前の次善策として一つの方法であると思う。だから、これは単なる私の私的な意見ですが、何らかそういう具体的なことを進めることなしに、ただ世界情勢が変わったら日本もあとから何とか考えようというようなことでは、何としても私、この日本の外交が創造的意思といいますか、能動的なものに欠けておるということを感じますので、あえて申し上げるわけですが、これは答弁を求めません。しかし、いずれにしても政府としては近い機会に日中問題について、単なる弾力性ということでなしに、何らかの結論を得るような形でことを進められておるのかどうか、この点はいかがでありますか。
○国務大臣(池田勇人君) 中共には、社会党の方ばかりでなしに、さきに石橋さん、松村さん、また最近は高碕君が行かれましていろいろ話されたことも、私は御三方から直接聞いておりますが、皆さんの意見でも、中共の為政者がほんとうにどういうことを考えているということのわかりにくい点がまだあるわけでございます。従いまして、先ほど申したような日本の立場でございますから、できるだけの機会をとらえて、あるいは今お話のように、貿易の問題からでも機会をとらえて中共に対しての考え方をはっきりきめたいと思っているのであります。たとえば政経不可分だということを言われております。そんならば政府間の貿易協定以外は一切下へおりないかといったら、そうでもないような点もあるのでございます。従いまして、こういうものを原則として突き詰めずに、機会あるごとに接触をしていくということは、私、先ほど来お答えいたしたところでおわかりいただけると思います。そうして努めてそういうふうにやっていきたいと思っております。
○羽生三七君 次に、ソ連との貿易も拡大の基調にあるわけですが、最近の日本の貿易の趨勢、それからアメリカが輸出競争を強化する場合等も考えて、私はソ連貿易が大いに拡大したことは非常に歓迎しているのですが、さらにミコヤン副首相の来日も伝えられている今日、一そう日ソ貿易強化のために備えなければならないと思いますが、政府に何かお考えがあれば伺いたい。
○国務大臣(池田勇人君) 一昨年までは日ソ貿易は片道二、三千万ドルくらいだったと思いますが、昨年は六、七千万ドルになって参っております。これは見本市の開催の関係と、もう一つには、やはりシベリア開発の関係等がございまして、よほど明るい見通しがついてきたと思っております。ことに最近は船舶の輸出が非常にふえまして、えてして片貿易であったのが大体とんとんにいくのではないか。ただ問題は何と申しますか、西欧側が相当の延べ払いをやっております関係上、日本にも延べ払いをという強い要望があるのでございます。やはり資金の関係で西欧側と同じような条件ではなかなかむずかしいのでございますが、今までの片貿易の関係とか、あるいは資材がシベリアというようなことになりますと、ある程度私は西欧側よりも条件が悪くても伸びていくのではないか、できるだけ伸ばしたいという気持でやっております。今年東京で見本市が開かれるということは、私は日ソ貿易の伸展に非常に貢献することと期待いたしておるのであります。
○羽生三七君 ちょっと今の問題からそれますが、西欧諸国が中国の国連加盟にかりに踏み切るとすれば、私はその最大の要因は、中国の参加しない軍縮会議は無意味だ、こういうことだと思います。もし中国の国連加盟が実現した場合、日本は日本、中国、ソ連、アメリカ等を含む非核武装地帯の設定を考慮されてはどうか。これは地理的にどこで線を引くかということは非常にむずかしい問題でございますが、この前も申し上げたように中国も核兵器を持ち、また、アメリカもそれに対抗して日本への核兵器の持ち込みを考慮するというようなことになれば、私は将来非常に問題であろうと思いますので、日本、ソ連、中国、アメリカを含む、しかも、地理的に設定する場合は非常に現実的に問題が多いと思いますが、そういうことを考慮する意思はないかどうか。これは将来の問題でありますけれども、一つの見解として承ってみたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 非核武装地帯というものを考える考え方についてでございますが、御承知のこれをいたしましたラパッキーに私も話を聞いたことがございますけれども、最近あのことを言い出した当時から見ますと非常に核兵器というものが進歩してきた。局地的な非武装地帯を設けることがどれだけ意味があるかということについて、御本人自身が相当懐疑的な意見を漏らしておられました。私は今の羽生さんの御意見は大いに傾聴いたしますけれども、しかし、やはりそれにもまして核武装というものの全面禁止に向かって日本は邁進すべきものである。そのまず第一段階として核実験の停止を提起する、それから拡散を防止する、それから製造、そうして使用の禁止という方に向かってまっしぐらに努力したいというふうに考えておる次第でございます。
○羽生三七君 お答えの核兵器の全面的禁止ができれば、もうこれ以上のことはないので、これは単にゼスチュアでなしに、真剣にその問題と取り組まれることを要望いたしておきます。 次に、政府の言う国連外交の強化と日本外交のあり方について伺いたいと思いますが、さきに松平国連大使の発言は、多くの波紋を呼んだわけでありますけれども、私は、この松平国連大使の問題をここで蒸し返そうとは思いません。しかし問題は、この松平発言のように、派兵でもしなければ、日本の外交が何かひけ目を感ずる、その感覚の古さであります。これは驚くべき感覚の古さであります。こういう問題のあるごとに、日本は、憲法上、国内法上の制約があるから、正確にいえば、自衛隊法の制約があるから、ただいまのところはと、こういうあいまいな態度になるわけであります。ところが、たとえその制約がないにいたしましても、ハマーショルト国連事務総長でさえ、日米安保条約でアメリカと軍事ブロックの関係にある日本よりも、軍事ブロックに属さぬ国々の軍事協力を求めるのが好ましい、こう考えておるとも言われております。だから、最近独立する植民地諸国の気持や、あるいはこれに関連するアメリカの動向等から見て、日本の国連協力がどういう性質のものであるかということが、今の一例でもよく判断できると思うのであります。この際私は、日本が海外派兵をしなければ気がひける、そういう古い感覚を一掃して、AA諸国と東西間の橋渡し、あるいは物資、医療等の面での積極的な協力、これらを日本外交のあり方として根本的に検討すべき時期であると思います。特にコンゴー、ラオス等の問題は、今後なお予断を許さない事情にありますし、さらにこの種の問題は今後絶無とは申せません。中立国あるいは国連における発言の増大する植民地独立国、あるいは国連におけるこれらの発言力の比重の増加、さらにまた、世界平和の問題とも関連して、日本外交のあり方、特に植民地外交に関連をする日本外交のあり方というものを私は根本的に検討すべきではないかと思います。政府のこの際見解を承りたいと思いますが、特に、伝えられるところによると、日本はAA諸国と西欧陣営の橋渡しをやるという、私はそれはまずいと思います。AA諸国と東西間の橋渡しをやるべきである、そうあるべきだと私は思います。それはともかく、今後問題となるべきこれら独立諸国に対する国連外交のあり方は基本的な問題になると思いますが、政府の見解を承りたいと思います。特にその前に、総理から、一体派兵をしなければ国連協力にならないというような、こういう古い感覚でいいのかどうか、ひけ目を感ずる、これは私はもうこんな感覚は一掃すべきだと思いますが、まずその点、総理大臣から承って、あと外務大臣から伺います。
○国務大臣(池田勇人君) 私はそういう考えを持っておりません。外務大臣から答えられると思いますが、日本として協力することはたくさんあると思います。たとえば、コンゴーの方にも以前に技師を二人出したのであります。また、最近も問題になっておりますが、分担金などにいたしましても、日本は弱小国といいますか、あまりよくないというので、半分に削っておるような状況でございます。こういうようなのは日本としては考えなければならぬ問題だと、外務大臣には検討を命じておるのであります。松平発言というものは、私は同感だとは思っておりません。そういう考え方は、お話のように古いと申しますか、足らぬといいたいくらいに考えております。
○国務大臣(小坂善太郎君) 総理から言われましたように、国連におきまして、日本が特殊の憲法があって、その制約上派兵などはできぬのであるということは、よく認識されておることでございます。さような点で、この点は御心配は要らないのみならず、また、総理からはっきりとこう言われておるのでありますから、この問題は問題ないと思うのでありますが、松平君の話が非常にいろいろな波紋を呼びまして、恐縮いたしておりまするけれども、彼は——例のETAPというのがございまして、拡大援助計画をわれわれ受けておるわけです。たとえば、東京のこの交通状況を視察してもらったり、大阪の港湾の視察をしてもらったり、国連にそういう協力を頼んだことがございますのは、羽生さんも御承知の通りであります。そういう関係がございますので、国連に対しまする義務的な経費の支出、これは、義務的なものは、日本も二・一九%というものは出しておるわけですが、その他任意の拠出があるわけです、この任意の拠出が半分になっておるわけです。そこで、これをやっぱり全額のみならず、できればもう少し、それ以上に奮発できれば非常にいいわけでございまして、その点は、総理大臣からも御指示をいただきまして、さしもの大蔵大臣も了承したのでございます。ただ、松平君の言ったのは、これはインドに関しまして例をとりますと、インドは派兵をしております。派兵をしておるかわりに、今の特別の分担金は出しておらないのでございます。そういうことを言うつもりで、ちょっと舌足らずになったのだというふうに御了解を願っておきたいと思っております。さようなことで、この問題は、われわれ大いに国連のこの分担金を出して、そうしてわれわれとして考えておりまする医療あるいは技術的な面での援助ということをもっと幅広く、直接協力を今後行なって参りたいと思っております。AA諸国、ことに最近独立いたしました諸国に対する日本の協力というものも、これははなはだ十全とは言いがたい状況でございまするので、われわれとしましては、独立してきた国の国民の持つ繁栄への強い欲求、それからその国の秩序維持に対する、あるいはその進歩に対する希望というものに沿うて、十分同情をもってこれに協力して参りたいと思っておるのであります。これが日本の国連における尊敬をかち得る最も必要な手段であろうと思っておる次第ででございます。 それから、東西間の橋渡しを日本がやるという考え方でございますが、私も、できればそれは非常にけっこうなことであると思まいするけれども、現在の国連は、御承知のように、国連憲章の番人であるべき事務総長までが不信任されておるというような状況でございまして、これについては、一つわれわれとして、国連そのものを構成国の一員としてまじめに盛り立てる努力をやってみたいと、かようなことから始めるべきではなかろうかと現在考えておる次第でございます。
○羽生三七君 実は、この問題は、この前の外務委員会でも、松平発言のあったときにいろいろ論議をして、たとえば、佐藤尚武さんが、日本の立場は遊んで割勘を出さないようなものだと、こう言われましたから、割勘を出さなくとも、米やお茶菓子を出して済ませることもあると、そういう立場もある、それが日本に通ずるものだということを申し上げました。それからもう一つは、金の問題でありますが、大蔵大臣は今度認められたと言うけれども、経済の高度成長を誇り、四千億に近い自然増収を持つ国が、僅々何億というような国連拠出費でもたもたしてたということは、私にはどうしても受け取れませんが、それは余談であります。 次に、大平官房長官は、松平発言に関連をして、記者会見の席上世論次第では方針の変更もあり得ると、こう語っております。私は、これはおかしいと思うのです。世論がどうあろうとも、憲法上の制約に変わりがあるはずはないと思います。また、真の世論の把握の仕方は、私は国民投票以外にないと思います。従って、この官房長官の発言でいくと、今後この憲法の拡大解釈もあり得ると、こういうことでしょうか。この点はどうでありましょうか。これは、政府がそういうことをやるかやらぬかを聞かしていただけばいいのです。拡大解釈をしていくかどうか、その考えを……。
○国務大臣(池田勇人君) 私は、純然たる憲法論として、自衛隊法の規定をはずしまして、純然たる警察目的のために行くということにつきましては、私は必ずしも憲法はそれもいかないのだといっておるのではないと思います。その国連警察隊の目的、組織あるいは編成等々で、私は憲法第九条で許し得ることも考えられるということを言っておるのであります。今、そういう国連警察隊というものの目的とか、あるいは編成、権能、組織という点を見ずにどうこうということは言い過ぎじゃないかと思います。しかも、片方、自衛隊法で自衛隊員は外に出ることは相ならぬとなっておりますので、今のところでは問題にならぬと思います。官房長官の申しましたのはどういう意味で言ったか私は聞いておりませんし、あれでございますが、政府としての解釈は、ただいまのところ、派兵する考えは毛頭ございません。
○羽生三七君 だから、先ほど私が質問の際に申し上げたように、ただいまのところと、こういうことになるわけで、それで問題は完全な軍備撤廃が実現をされて、現在の国連軍が文字通り治安警察隊の性格を持った場合、問題はありません。社会党でもその場合のことは考えております。そうでなしに、現在の国連機構は憲章の四十二、四十三条などで、国連の武力活動に対する加盟各国の協力を一応義務づけておるが、これは常設的に国連警察軍の発生の場合を想定しておるのでありますから、実際、現状では一種の死文になっております。ところが、死文でなしにこの部分が生かされてきた場合です、前段申し上げた完全な軍備撤廃が行なわれて、治安警察隊ができた場合は別でありますが、そうでなしに現状の場合において、国連憲章四十二、四十三条が生かされてきた場合、そういう場合に、日本がやはりその場合には、松平発言というようなことが起こるかどうか、これをお聞きしておる。その場合には、やっぱり国内法というものの手直しをするのか、拡大解釈をするのか、そういうことを具体的に私はお伺いをしておるのであります。
○国務大臣(池田勇人君) 現状におきましてはそういうことはいたしません。
○羽生三七君 将来はそういうこともあり得るということですか。
○国務大臣(池田勇人君) 将来のことはなかなかむずかしいので、私はそういうような場合には、今のところ、理論的には今の国連憲章にいっておりまするように、軍備がなくなって、ほんとうの警察隊だけでやるというふうなことが起こるか起こらないかということもなかなかむずかしい問題であります。しかし、国連憲章にうたっておるようなことが、現在ある武力を使わずに、ほんとうに選挙の監視とかなんとかいうような場合にはどうするかということになりましても、その程度では私は今出すという気持はございません。
○羽生三七君 次の問題に移ります。日本が国際問題で新しく火中のクリを拾うということになれば、私は日韓交渉だろうと思う。時間の関係でこれは簡単にしておきますが、四月危機説も伝えられておるおりから、私はしばらく日韓交渉は見送る方が賢明ではないかと思いますが、そういうお考えはございませんか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 日韓交渉は終戦以来、日本が独立して以来、非常に長くやっておりまして、今度で五次の会談であるわけでございます。しかし、今までの会談と違いまして、今度の予備会談は非常に双方の間の気持がほぐれまして、従来、全然触れられなかった問題がいろいろ議題となっております。たとえば漁業の問題、これを一つとりましても、韓国側は全然これに触れることを避けておりました。また財産請求権の問題もこれはもっと深く話し合ってみようということになっております。そこで、従来長い経緯を持ってきております問題でありますから、拙速ということは避けて、十分双方の意見を出し尽くして、その上で目的を達成するということでなければならぬ、こう考えて、十分な討議ということを経て後にこの問題を解決するようにしたいというのが私どもの考えであります。
○阿具根登君 関連。さきの問題に関連してですが、非常に気にかかる問題がございますので御質問申し上げます。先ほど総理は、松平発言について派兵はできないが、それにかわるために分担金をふやす、こういう言葉を申されたと思うのです。そういたしますと、日本の憲法は、派兵はしないけれども、他国の派兵に対しては日本が分担金をふやしてもよろしい、援助してもよろしいという結果になる。もう一つは、国連の方から派兵を要請されているのか。派兵を要求されておるのに、それができないから分担金をふやす、そうすれば松平発言というものを、舌足らずであったとか、あるいは肩身が狭いということにならない。結論から申し上げますと、松平発言が、肩身が狭いということには、舌足らずとはいえ、派兵ができないから金を出すんだ、金で派兵のかわりに日本は義務を務めるのだ、こういうことになって参りますと、私は非常に重大だと思うのですが、この点御質問申し上げておきます。
○国務大臣(池田勇人君) できないもののかわりに金を出すということはございません。これは派兵はすべきでない。だから、そのかわりに金を出すという考え方ではございません。これは日本として、経済の高度成長があり、外貨も相当持っている状態でございますから、今までのように半分に切り下げて出すということをせずに、これは出すべきものは、われわれは国連協力という意味から思い切って出す。派兵というものにつきましては全然関係ない。 それから今まで要求されておったことがあるか。これは二年か三年ぐらい前の中近東の場合にはあったと聞いておりますが、コンゴ——問題につきましては、日本は憲法上できないということを向こうも知っておりますから、そういう要求は全然ございません。
○羽生三七君 韓国問題は慎重にはやるが、これは今見送る意思はないということでございますけれども、私は日本外交に必要なことは、世界全体あるいはアジア地域において、今日の冷戦をどうして終結するか、あるいは平和に寄与するかという大局的な総合的な判断が欠けていると思うのです。韓国を韓国という孤立した角度だけからしか見ない。それがもたらす影響を大局的に判断することが失われているために、いつも日本は失敗をする。だから、韓国に私は義理は悪くても見送った方がいいと思いますが、これはあえて答えを求めません。 次に、総理の六月訪米、アメリカ訪問はほぼ大体固まったようでありますが、総理がアメリカの意見を聞くだけに渡米されるとは思いません。日本としてはこう考えるのだ、あるいはかくありたいという見通しを持ちながら、この日米会談に臨まれるものと思います。私は会談の内容について立ち入って質問することを控えます。そんなやぼなことはいたしません。しかし、日本としては何を指向するのか、総理の会談に臨む意欲は何か、それをお聞かせいただきたいのです。たとえば日本の総理や首脳が訪米する場合には、いつも必ず緊張緩和とは逆に、むしろ対米依存度を増しておる。何らかの責任を負わされる方向で会談が持たれる。たとえば岸内閣における日米共同声明や、引き続く安保新条約がそれであります。日米の関係も政府としては大事だ。それはよくわかります。政府としては大事なことでしょう。しかし、やはり平和共存あるいは冷戦緩和という方向の中で、大局的にどういう判断をするか、これが大切ではないかと思う。もちろんこの道はたんたんとしたものでなしに、なかなかけわしい。野党が気楽に質問するようなわけにはいかないとは思いますが、しかし、私はさきにも触れましたように、会談の内容に触れるわけではない。もちろん中国問題、多くの問題に触れられると思いますけれども、その内容はともかく、方向としては、総理の意欲としては、この前向きの冷戦の終結とか、あるいは緊張緩和という一般的な方向に寄与する、そういうことを指向されておるのかどうか。総理の訪米に際して、単なる儀礼的なものとは思いませんので、しかも、その方向は今後の日本の進路、アジア外交等に重要な影響を与えるものと考えますので、この際、池田総理が日米会談に臨まれる、その意味するものを、総理の意欲をこの際お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 向こうに参りましたら、日米共通の問題、あるいは世界の平和、極東の平和につきまして、十分の所信は言う考えでございます。少しでも国のために、また世界のためになることを期待しているのが私の念願でございます。
○羽生三七君 非常に簡単な抽象な、世界のためにならないようなことはもちろんしないと思いますが、さらに具体的に私は内容に立ち入らないのですから、その辺をお考えになって、やはり今問題になってる中国問題もあるし、あるいはいろいろな影響の深い国際間の問題があるが、それをさらに一般的な世界——もちろんアメリカの立場はやや異なりますが、そういう中でも、世界の大局に合うように、そういう積極的な意欲をもって臨まれるのかどうか。これは抽象的な質問であるから、お答えも抽象的になるのはあたりまえではありますが、内容の一々をこまかく言うわけじゃないのですから、その点はよその国の総理だってある程度——私は、この間スチーブンソンやラスクやチェスター・ボールズの上院における証言を見て驚きました。実によく、日本であんなことを言ったら失言問題ということを、あえて堂々と述べておられる。私は根掘り葉掘りこまかいことを言うわけではない。少なくとも日米会談に臨んで、新しい内閣の成立後の新しい国際間の話をされようというのですから、もう少し何らかの大局的意欲をお持ちになってると思うので、重ねてお伺いいたします。
○国務大臣(池田勇人君) せっかく行くのでございますから、相当の意欲を持って行くつもりでございます。しかし、それが向こうと話し合いができるか、あるいはこっちで話をするか、この話はよしてくれと、言いっぱなしになることもあるかもしれません。しかし、どの問題をどういうふうに持っていくかということにつきましては、遺憾ながら、まだ私としても十分研究を済ましておりませんので、今後行くまでに十分検討いたしますが、とにかく相当の意欲を持っていくということだけは申し上げておきます。
○羽生三七君 そこで、意欲がうしろ向きになっては困るので、これは総理としてもむずかしい問題だと思います。与党の中において、古い頭の実力者がおって、うしろ向きの考え方が総理を牽制する場合もあると思います。しかし、私は、この総理の立場を維持することも大事だが、歴史の創造はもっと大事だと思うのです。私はこれは非常に重大だと思う。だからこのことがやはり政治家に非常に重要な問題ではないかと思う。私は身分の保障のことを言っておるのじゃありませんが、とにかくその立場を守ることもよくわかります。いろいろなむずかしさも党内にあることはわかりますが、しかし、世界の大局的な立場から、歴史の創造については、総理の立場を守る以上に、これに劣らぬ価値あることでありますので、ある程度の困難があっても、私は、前向きの立場で世界の発展的方向に沿って会談に臨まれることを強く期待いたします。 これに関連する問題ですが、この前のこの委員会で、特に国策上重要な問題については、野党の責任者と、ときに会談の機会を持ってはどうかということを申し上げたところが、これは一般的にはもちろん異論がないと、こうおっしゃいましたが、そういう一般論じゃなしに、日中問題に限定して、近く野党の責任者とお会いになるお考えはありませんか。お伺いいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 池田内閣総理大臣としての立場は、私は全然考えておりません。私は、もう九千万国民の代表だ、この立場以外には就任以来考えておりません。とにかく日本国家のために、そうして、それがひいて世界平和と全世界の繁栄に役立つことしか全然考えていないことをはっきり申し上げます。 なお、野党の党首とお会いすること、私はしごくけっこうでございます。中共問題につきましての話し合いも私はやってみたいくらいに思っております。最近、外交問題懇談会、多分あしたくらい中共問題につきまして結論が出るのじゃないかと思います。その結論等を聞きまして、私は、その結論につきましては、野党にも一つお考え願い、これは各界の代表とも申し上げられませんが、しかし、相当右のみならず、相当中立的、また、相当ある程度左と言っちゃ何でございますけれども、総評の関係の方がお入りになっていないようでございますが、社会党の右というのは何でございますが、相当網羅している。あすくらい結論が出るようでございます。今も私は中山伊知郎先生その他と会っておりまして、あす出るのだ。こういうのが出ましたら、お互いにその結論を検討し合いまして、要すれば社会党、民社党の方々と会談するに何らやぶさかでございません。十分御意見を聞いてみたいと思います。
○羽生三七君 外交問題は一応これで終わりまして、これに関連する問題でございますが、ガリオア、イロアの問題につきましてお尋ねをいたします。 ただ、私、御質問する前に、私の立場を申し上げておきますが、実は私はもうこの問題につきましては、七、八年前から数回にわたってお尋ねをいたしました。ところが、私は具体的な問題にあまり触れることを避けてきた。というのは、それが既成事実となって外国に反映しては困るというので、今日まで差し控えてきたのです。 それからもう一つは、私は、返済の方法については、きょうは全然お尋ねいたしません。それは債務と確定した場合に、債務かどうかが確定した場合は、国内問題として論議すればいいことで、従って、私はこの問題に触れません。そういうことを前提にして、これは債務であるかどうかという基本的な問題についてまずお尋ねをいたします。 この問題は、総理の訪米前にも何か折衝することがあるのでしょうか。その辺は差しつかえない限り、その事情をお聞かせいただきたい。訪米後か、その前にも何らかの折衝をされるのか。
○国務大臣(池田勇人君) 私も、ずっと以前からこの問題については頭を悩ましておったのでありますが、その時期にあらずとしてやってきております。しかし、最近の情勢、すなわち、重光さんが向こうにおいでになってから、その後こちらの方々が行かれるつど話が出ておるようであります。そうして日本も賠償問題全部が済んだわけではございません。ビルマの問題が残っております。大体私が昭和二十八年に向こうに行ったときの状態とはよほど変って参っております。日本としても、この問題につきましては、結論を出すのに適当な時期じゃないという気がいたしておるのでございます。従いまして、関係各省に資料その他を精査してみるようには言っておりますが、まだその結論も出ておりません。債務と心得ているだけで、どれだけの金銭的な何か物資が持ってこられたか、この統計は十分ではございません。今調査中でございます。 アメリカに行く前に交渉を始めるか、行ってからか帰ってからにするか、この問題も、今結論を出していない状況でございます。
○羽生三七君 これは手続的な問題ですが、政府がかりにこれを債務と見て国会の承認を求める場合には、私は、債務かどうかについての承認の方がいいと思うのですが、小坂外相の先日の衆議院での答弁から察すると、つまり米国と交渉した金額についての協定なりこの予算化について国会の承認を求める、こういう段取りのようですね。
○国務大臣(小坂善太郎君) おそらく何々支払協定について国会の承認を求める件というようなことになろうかと思います。
○羽生三七君 そうなりますと、国会が論議をするときには、対米交渉が終わったあとで、しかも結果はおのずから明白であります。従って、米国との交渉の妥結の前に、内容的にそれがどうなっておるのか、どういう性質のものか、これを明らかにすることは私どもの責任と思いますのでお尋ねするわけです。すでに外交的に決定したあとでの論議は、私は実質的に無意味だと思います。もう実際問題として国際協定ができた場合に、われわれは少数でありますし、与党は多いし、国際信義の上から、それを減らしたりあるいは否認したりすることはできるはずはないという立場に政府は立つでありましょうから、もうこの次の国会での論議は意味がないのです、私に言わせれば。だから、この国会でこの問題の性質を私は明らかにしておく必要があると思います。 そこでお尋ねに入るわけですが、まずお聞きしたいことは、政府がガリオア、イロアを債務と心得るというその具体的な根拠であります。それは法的な根拠に基づくものなのかどうか。それとも政治折衝によってそういうふうになったものかどうか。これは池田総理が、吉田内閣のときに答弁された際のことも伺っておりますから、そういうことはとにかく、法的にか、政治的な話し合いの結果なのか、それが債務を確定させる条件となっているのか。つまり、要するに債務と認めるというその基本的な条件は何であるか。
○国務大臣(小坂善太郎君) この問題は、アメリカの方から言いますれば、その四つの費目から支出されておるということも考えるようでございます。こちらといたしますると、あの終戦直後の非常な混乱期、しかもインフレの高進しておる時期に援助物資を受けた、それをどう見るかということでございますが、先方からの文書がございまして、それには、一応この支払いの方法等は追って協議するということが書いてある、スキャッピンと当時言っておりました。そういうものが書いてあるのであります。しかし、ないのもあるようでございます。そこで、プレガリオア、ガリオア、エロア、それから民間のサプライとかいうような言葉がございまして、そんなようなふうに四つくらい分かれておるのでございますが、そういうものが書いてありますものでございますから、これをこちらでどの程度債務として考えるかということを先方に申しまして、そして合意に達したものが債務と確定するということになろうと思うのでございます。なお、先方の根拠といたしましては、このガリオア、エロアその他を放出いたしまするに際して、先方の有力者がいろいろ国会で証言をいたしておりまするが、これはくれるのではないのだ、贈与ではないのである、援助であって、いつかこれを支払われるものであると考える趣旨を、これは借款——今の御質問から離れまして、政治的な何になりますが、そういうことをたびたび証言しておりまして、しかもその証言後に、これはずっと政治的な話になりまするが、こちらの政府もそれを受けて、返済に応ずる交渉をしているわけでございます。昭和二十九年に数回やっております。その後、アメリカへ当時の重光外務大臣が行かれましたときに共同声明をしておりまして、この問題はできるだけ早く決着する、こういう共同声明を出しております。すなわち、政治的にはこちらは全部はもちろんそういうことはないと思いますが、何がしかのものを債務と確定して支払いましょうということを政治的に約束しているわけであります。それから、一方国内的に、この物資は国民が金を払ったじゃないかということがございます。その通りでございますが、ただ、日本政府対アメリカ政府の関係におきますると、これが完全に贈与ということが法律的に明らかになっておりません場合には、やはり日本政府が金を国民から徴収しておりましても、アメリカの政府に対しては何も払っておらないわけでありますから、これを何らかの形においてけりをつけるということが必要であろうかと思っておる次第でございます。
○羽生三七君 私は、それだけでは法的な根拠が乏しいと思います。 それからもう一つは、あと順次お尋ねいたしますが、債務であるかないか、どの時期、あるいは時限と言ってもいいです、どこへ線を引くかということです。たとえば講和条約締結までを一応の目安として、その間にわが方を拘束する法的な根拠、あるいは政治的な折衝というものがあったかどうか。つまり相手国からそれを申し入れた時期はいつかということです。敗戦国が十五年も二十年もたてば復興してくるのですから、経済状態がよくなったから払うというのは、それは世界中どこでもそういうのは通用することになるので、向こうが明白に債権を主張した年限はいつか。これは一つの重要な問題になると思うのですが、それはおわかりになりませんか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 少し長くなって恐縮でございますが、一応経緯を申し上げます。 法的性格は今申し上げたようなことで、何らかの形において、いずれかの時期においてこれを支払うという前提のもとになされた援助であるということでございます。これを裏づける資料といたしまして、二十九年の交渉当時、先方から出してきたものがございます。これは一九四五年九月二十二日付降服後における米国の初期の対日方針、それから次に同年十一月一日付日本占領及び管理のための連合国最高司令官に対する降服後における初期の基本的指令、一九四七年六月十九日付の極東委員会決定、降服後の対日基本政策及び米国政府関係者の国会における証言等を提出いたしておるのであります。それで、この証言といたしまして、一九四六年九月マッカーサー元帥が、日本の輸出によって得た収入は、米国の援助資金に対する債務を履行するに十分となるはずであるということを言っております。それから、一九四七年二月二十日、やはりマッカーサー元帥が陸軍省の要請によって、米国下院に対し発したメッセージは、米国予算からの支出は日本の債務となるが、これは日本国内にあるすべての資産に対する第一義的債権によって保証されなければならない。援助は慈善行為ではなく、また、日本国民も慈善を欲していないということを述べております。それから、その他にもだいぶございますのですが、あまり長くなりますから省略いたしますが、ヒルドリング国防次官あるいはヴォーリス陸軍次官、ドレーパー陸軍次官というような人たちも同じようなことを言っておるわけでございます。それから一九四九年四月十四日の阿波丸協定にわれわれは署名いたしました。そのとき占領費並びに日本国降服のときから、米国政府によって日本国に供与された信用及び借款は、日本国が米国政府に対して負っている有効な債務であるということを両国政府が確認をいたしております。このことに関連いたしまして、四月二十七日参議院の本会議におきまして、この了解事項の趣旨について質問がありまして、当時の吉田外務大臣が、これはあたかも米国政府から日本が種々常に無償でもらっておるような誤解を与えておりますから、この機会に了解事項としてつけ加えたものであります、こう答弁をしておられるのでございます。すなわち、日本政府の立場は、この了解によってガリオア、エロア等の債務を負担したものではなく、従来から、時期がくれば外交交渉によってその内容を確定する必要があるというので、債務と心得ていることを念のために確認しておるのであります。援助総額すなわち債務と確定しているわけじゃなくて、債務と心得て、その幾ばくを債務と確定するかということとは外交交渉によってきめよう、こういう了解のもとになされておるのであります。
○羽生三七君 昭和二十四年の阿波丸請求権処理のための日本国政府及び米国政府間の協定と、これによる吉田・シーボルト書簡の了解事項では、日本国に供与された借款及び信用と、今政府も、外相もそう言われておりましたよ、それのみが債務であると明白に規定しておる。だから贈与、特にガリオア、これは正式に含まれないというのは当然の解釈だと思う。明確に借款及び信用と、こうなっております。クレジット、これが中心であります。ですからこれは阿波丸請求権の処理のための日米間の交渉というものは、私は必ずしも返済を義務付けておらないと、そう了解しておりますが、どうですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えが長くなりますので、私は端折って申し上げたのでありますが、当時の吉田外務大臣のときに、このクレジットあるいはガリオア、エロア等の費用と申しますか、あるいは日本に対する綿花その他のクレジットというようなものが、あたかも米国政府から日本政府へ、無償でもらっておるように誤解をされておりますので、その点、はっきり確認いたしております。
○羽生三七君 終戦後、日本が米国から受けた物資は、御承知のように、小麦、大麦、綿花、そのほかさらに余剰物資として米軍食糧とか衣料、そういうものでございますが、これについては援助を行なったアメリカ側では、日本へ贈与したものである。援助を受けた日本側にアメリカ側から贈与されたものである、そう了解されてきたことは占領当時事実であったと思います。この事実を証明するものには、これは政府も御承知の、アメリカ政府の閣議承認を得て発行されるブルー・プリントにも、一九五一年版の通商年鑑の付録、海外援助の付録のあることは明白であります。しかも当時の海外援助は——海外援助という付録です。「これは一般に贈与、グラントを借款、クレジットの二つに分類して、グラントは支払いを望まない純粋贈与であり、クレジットは通常利子をつけて一定期間に支払わなければならないある種の協定である。」同書第一章第一ページであります。日本に対する贈与、借款の内訳すらその中に出ております。どうですか、少なくとも当時は援助分、すなわちそれは贈与、純粋贈与であるということを確認して、返済を期待していなかったのではないか。また、それゆえに、日本の国会も感謝決議をしたのではないかと思います。この点はどうですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) グラントは、お話のように、くれてしまうものでございますから、これはそうした債権ではないと思います。そこでこれは通産省所管でございますが、その当時のスキャッピンというものを今精細に調査しております。ところが、グラントに当たるべきものはさようなことはないわけでございますが、大部分のものに、この返済については追って支払い方法を協議するということが書いてございまして、支払いを前提とする文書は、見合っておるわけであります。それに対して、日本の政府は、終戦後の歴代の政府が請書を出しておる。そこに全部もらったものだというふうに言い得ない点が、どうもわれわれとしてもなるたけこれは出したくない気持がございますけれども、どうもやはり日本も今後対外的な立場がございますから、やはりそうした約束事は約束事として、履行するということが必要ではないかと思う根拠があるのでございます。 それから一九四七年、昭和二十二年七月五日の、食糧放出に関し連合国最高司令官に対する感謝決議、これが行なわれておりますが、当時は戦禍の直後でございますし、わが国の食糧事情はきわめて悪く、国民は死線を防徨するというような実情でございました。このためにアメリカの物資の輸入ということが非常にありがたかったわけでございまして、有償であっても時宜に適した供給と思われた状態であります。かつまた、その支払いは延期されておるわけでありますから、当時の日本国民としては、アメリカ側に感謝をしても不自然ではなかったと思うわけですが、そのとき、無償でもらったということがはっきりしておれば別でございますが、この放出してもらった、当時足りない食糧を出してもらったという決議でございますので、これはやはり無償でもらったというふうには、残念ながら根拠は弱いのではなかろうかと思うのであります。
○羽生三七君 私は、グランドとクレジットを明白に区別して、どれがそれに相当し、これがどういうふうになるかということを明らかにしようとしているわけです。それから向こうのブルー・プリントの通商年鑑の付録にちゃんと二つに分類をして、贈与を借款に分類をして、しかも日本政府に出したものの内訳が出ている。借款の返済分というのは、千何百万ドルと出ているのです。これは私、原書を、原本をここに持っておらないからはっきりわかりませんが、一部分は写真版でそれを手に入れております。ですからそういうことが明らかに、明白なのに、だれが何とか言った、かれが何とか言ったということが返済の条件になるとすれば、私は非常におかしいと思うのですが、そういうことを確認しておるのかおらないのか。 それからもう一つは、ヘーグ条約は、占領国は、被占領国民の保護の義務を規定しているわけですが、援助は——もちろんクレジットじゃありませんよ、援助はそれに該当すると思うのですが、それはどうでしょうか。
○国務大臣(小坂善太郎君) ヘーグ条約は五十年前の条約でございますので、今度の戦争後のいろいろな取りきめには、かなりヘーグ条約にない新たな規定があるわけでございます。たとえば第四条の規定(b)項であるとか、あるいは十四条、あるいは十六条というような点は、これはヘーグ条約に見られなかった点でございますが、それはそれといたしまして、援助でありますものはこれはグラントであるということは、条約からは出てこないように思うのでございます。先ほどのこれをグラントとブルー・プリントに書いてあるというのは、私はよくそのものを承知いたしませんが、われわれといたしましても、すでにわれわれが受けているスキャッピンの中に、これは返済するのだ、返済する条件は話し合ってきめるのだ、こう書いてございまするので、それに対して日本政府が請書を出しておるから、どうもグラントとはこれを言い切れないものがある。それで一つ一つその問題について、その指令について調査をしておる、こういうのが現在の状況であるわけでございます。 なお、平和条約十九条で、御承知のように、請求権を放棄しておりますから、どうも占領中のものに対してわれわれが新たにこれに対して不平を述べるということはなし得ないと思います。
○羽生三七君 もう一度私は問題を明白にしておきたいと思います。グラントについては、これはもちろん、私、その問題は明らかにして、これは返す必要はないと思う。それからクレジットということで、明白に何らかの協定なり約束があって支払うという部分については、これから私が後段に申し述べるいろいろな日本の各種の事情から、これは政治的話し合いで私は了解がつけられる性質のものじゃないか、こういうふうに問題を正確につかんだ上でお話をしておるわけであります。 これは、もう一つは、衆議院で横路君も少し触れておるようでありますが、アメリカのヨーロッパに対する援助の根本をなすものは、一九四八年の経済協力法であります。この百十五条のB項第六号には「商品または役務が本法に承認された手段により参加国に贈与として提供される場合には、右に該当する金額を当該国の通貨をもって、当該国と合衆国政府との間において協定される条件に基づき、特別勘定として預金する。」と、こうあるわけです。だから新たにまたいわゆる見返り資金積み立ての贈与として提供された場合に限り、こういう特別会計ができるのです。借款または条件つき援助に対しては、見返り資金の積み立てを必要としていないのです。従って、日本がこの見返資金特別会計を作ったということは、これが純粋なグラントであるということを私は証明していると思う。これは横路君も若干触れておりますが、この点はいかがでしょうか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 欧州に対しまする経済協力法というものはその通りだと存じまするけれども、欧州はこれは日本の場合と違いまして、戦争を一緒にやった国に対してそれがあるわけでございます。日本の場合、そういうことを言うのは非常に残念でございますが、当時日本は旧敵国でありましたから、これは欧州経済協力法、欧州復興のために作られました法律の適用とに日本の場合はこれは残念ながら違うと言わざるを得ない。
○羽生三七君 その問題につきましては、たとえばヘーグ条約が五十年も前なので、その後だんだん変わってきているわけであります。私の立場に立ったような変わり方をしておるのです。これはアメリカがイタリアとの講和条約及びその後の諸協定で、三億五千万ドルに上る在米軍の駐屯費及び援助計画に基づく民需品の供給費用を負担したばかりでなしに、イタリア側の負担する占領費は、当然に負担するものではなく、イタリアの自主的な請求権を放棄することによって、その負担に帰するという形式をとったことは御承知の通りでございます。さらに、その米国とオーストリアの協定では、一九四五年四月から一九四七年六月までの間の米国軍隊の口頭に基づく両国間の請求権の最終決定として、米国がオーストリアに約三億八千万シリングを支払っております。逆に支払っておる。ところが日本は周知のように、アメリカに対して終戦処理費として五千二百三億円余を支払っております。これを当時のドルに換算すると、これは暫定換算率でありますが、これは政府御承知の通り四十七億七十七万ドルであります。今アメリカが請求されるものは、十九億ドルとか、二十一億ドルとか、言われておりますけれども、当時の交換レートで言えば、日本が支払った終戦処理費は四十七億七十七万ドルであります。これは政府御承知の通りであります。従って、私は少なくともこの終戦処理費は米軍の対日援助を償ってなお余りあるんじゃないか、こういう気がする。また純粋のグラントの場合においても、これはこの援助法には、アメリカもしくはアメリカと協定している諸国、アメリカを支持するか、もしくはアメリカと協定している諸国を支持するという精神的義務を伴うもの、これはグラントで出されておりますが、ところが日本は今日まだアメリカに対して軍事基地を提供し、外交上に非常に大きな協力をしてきた。実にあらゆる面にわたっての協力をしてきた。これはクレジットの場合ではありません、グラントの場合の協力規定であります。そういうことになるとすれば、日本の場合はあらゆる協力をしてきておるのだから、このグラントはその代償を償ったもの、そう了解をしていいんじゃないか、こう思うのでありますが。ドイツの場合は若干事情が違いますが、今申し上げたオーストリアあるいはイタリア等の場合は実に驚くべき寛大なものでありますが、政府はその点どういうふうにお考えになりますか。また、日本の終戦処理費は、アメリカのグラントについては完全にその代償としての義務を果たしたものと了解していいんではないかと思いますが、いかがでありますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 今お述べになりました中で、イタリアとオーストリアの分でございますが、イタリアの場合は、これは日本と趣を異にしておりまして、例のバドリオ政権が寝返って連合国になった。こういう関係が終戦の時点において日本と異なっておるわけでございます。五億四千四百万ドルをイタリアに対して出しておりましたのですが、このうちガリオアは千三百万ドルに過ぎないのでございます。その他陸軍の救済計画は、わが国のプレガリオアに相当いたすものでございますが、これが約四億ドルに達しておる。その全体の額としても非常に少ないし、しかも連合国である。こういう解釈のようであります。それから、オーストリアの五千六百万ドル、これはガリオアだけでございますが、オーストリアは御承知のように、占領が長きにわたりまして、一九五五年に独立したわけでございますが、このときに東西両陣営によって占領されておった。これを中立を条件として解放したわけであります。そうした解放地区とする条件の一つとしてこれがなされたものである、こういうふうにわれわれは理解しているわけであります。そこで日本の場合、どうも金額も大きいのでございまするが、一方、今お話がございましたように、占領費を負担しております。五千二百余億円ですか、負担しておりまするが、日本の場合は、一番ドイツの場合と同じように扱われているのでございまして、ドイツをとってみますると、ドイツの場合は占領費は六百六億マルク、ドルに換算いたしますと、当時のレートで百二十七億ドルというものをドイツは支払わされているのであります。しかも、なおガリオア、エロアの関係は三十億一千四百万ドルでございましたのですが、これを十億ドル払う。五年据え置き三十年年賦ということで現在支払わされているのであります。日本も占領費を払ったじゃないかという御議論がありますが、ドイツの場合にも、今申し上げたように百二十七億ドルの占領費を持たせられ、しかも十億ドルのガリオアを払う、こういうふうにいたしておりますが、どうも同じ条件にある日本だけが、これを免れるということは困難かと思います。
○羽生三七君 ドイツでは、これはマーシャルプランで非常な大きな援助を受けているのです。その点で根本的に事情が違います。私、西ドイツに行った場合にも、その間の事情は聞いて参りました。マーシャルプランは莫大なものでございました。それから援助の内容が質的に違います。それは日本は終戦直後の混乱のときに食糧を補給してもらったのはありがたいが、皆さんはそういうことは御経験ないかもしれないが、われわれの食べたものはグリーンピースとか、ああいうものが多くて、ドイツの経済復興に寄与した援助とは質的に違うのです。あのマーシャルプランうといものは莫大なものです。それと同一に論ずるということは適当でない、これは意見ですが。そこで、政府は敗戦日本の復興にアメリカの対日援助が役立っておったと強調されるわけであります。私も率直にそういう一面を認めます。しかし、終戦処理費がどういう影響を与えるかということになりますと、これはその当時の事情が詳しく出ているのでありますが、 たとえば昭和二十六年度の国の予算、大蔵省から出した国の予算、その中には、この占領費の負担は、敗戦の結果極度に弱体化したわが国経済にとって非常な重荷だった、ことに終戦処理費による石炭等の不足物資の調達は、わが国経済に大きな負担となった、こう記しております。そのほか一ぱいありますが、これは池田総理が大蔵大臣当時、終戦の言葉を書かれて発行した昭和二十六年度の国の予算の中に明白に出ております。でありますから、そういうふうに非常に大きな日本としては負担をしてきたわけであります。そこで、もう一つは、そういう立場から私は何らかの対米折衝をする場合には、そういう事情を、今日でいえば復興をしておりますけれども、当時の事情をよく考えて、この対米折衝の際には最善を尽くすべきだと思います。これはあとからもうちょっと触れますが、そこで、一体政府の基本的立場は、向こうが言うこの十九億ドルとか、あるいは二十一億ドルとかというものについて、相対的な立場で交渉されようとするのか、明確に贈与は贈与、借款は借款と区別して、つまり純粋の借款と考えられる分についてのみ交渉の対象とするのか、これは非常に私は重大な問題だと思いますが、大づかみで、つかみ勘定で西ドイツ方式の三分の一とか何とか、そういうことは私は非常に不見識だと思う。この点はどうでありますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 今資料を非常に精密に当ってみておりますが、その中で、われわれが払う必要がないと思われるものは省いていくことは当然のことだと考えまして、そういう方針で、どこからみてもわれわれとしては一応返済の交渉はしなければならないと思われるようなものは、これはそれだけにとどめていくべきであると考えております。なおその後におきまして、たとえば韓国に対する債権、そういうようなものもあるわけであります。そういうものはもちろん考慮してもらうことが当然だと考えております。
○羽生三七君 これは重ねて申し上げますが、大づかみの目分量の勘定で十九億ドルだ、二十億ドルだ、その三分の一の五、六億ドルが西独方式だ、これは私は非常に不見識だと思う。やはり借りたものは借りたという資料があるなら明白にする。それからそんなものでないなら、贈与であるなら贈与だと明白にする。資料を出して、その上で筋の通った交渉をすべきものであると思います。 そういう意味からもう一つ、まだあと続けてお尋ねしますが、終戦処理費は、今の四十七億七十七万ドルというこの終戦処理費は、これは朝鮮動乱の際に特にその負担が重くなったわけです。これは日本以外の地域におけるアメリカ軍の行動の負担でありますから、日本以外の地域における——日本の防衛ということじゃないのです。それ以外の、日本以外の地域における米軍の行動費を日本が終戦処理費で負担をしたわけであります。その分について百八十二億アメリカが返してきておる。何で一体返す必要があるかといえば、非常に大きな矛盾がそこにあるから、アメリカは日本にそれを返さざるを得なくなった。これは当時非常に問題になったのであります。たとえば占領軍の調達費の歴史の中にこういうことがあります。それが占領目的のためのものであるか、朝鮮作戦のためのものであるか、この調達目的を積極的に調査するということは軍の機密に立ち入ることであり、また、それから調達物件が最終的にいかなる目的に使用されたかを知ることは事実上不可能であった。全然つかむことができなかった。しかもその日本の負担した終戦処理費は莫大なものであります。しかもこれは日本に何も関係のない朝鮮事変に日本の終戦処理費で莫大な負担をした。さらに歴史にはこう書いてあります。講和発効後も、これら賠償金の使途内容について調達庁長官より極東軍司令部会計経理部長あてで、それが支払いの対象となった内容を説明されたい旨を申し入れたところ、米軍側より連合軍総司令部関係記録はすべて回収され、従って回答の基礎となるべきファイル類を引用することは不可能であったとの回答に接し、その後再三の調査依頼を申し入れたのであるが、すべて回収されてしまっているので説明は不可能である旨の回答に終始した。これら償還金の使途内容は何ら明瞭にならなかったのである。これは占領軍の調達費であります。だから、このときに日本にかかわりのない朝鮮動乱の米軍行動費をほとんど日本が負担した。だからアメリカはさすがに気が引けて、そのうち百八十二億円を返済した。なお四千七百五万ドルあるということで、河野一郎氏が当時の吉田総理の際に七人のさむらいとして反旗を翻して、いわゆる重大な発言をした。だからこれらのことも明白になっておらなければ処理なんかできっこないのです。何回請求しても、アメリカは資料が全部失われたから明らかにすることはできないということを言っておるそうであります。この朝鮮動乱の際の終戦処理費の処理というのはどうされたか、この経過について一応承っておきたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私どもは資料についてあくまで正確に調べようとして努力をいたしております。正確に調べてわからないものがありました場合、われわれはわれわれの立場で主張すべきところを強く主張したいと考えております。決してやみくもに資料を出してどうこうというようなことはせぬでやりたいと思って努力いたしておると思いますが、根本はこれは債務と心得ておるということがいいか悪いかという問題で、かりにいいというふうにしていただけまするならば、私どもはその方針でやりたいということを申し上げておるわけでございます。 それから終戦処理費には日本の占領に対して必要経費を払うべきものでございます。それ以外の行動のものは別だというふうに考えておる次第でございます。例の朝鮮動乱の際の……そうではございません。韓国に対する請求権河野氏の言いました四千七百五万ドルですか、この問題は私どもは当然考慮してもらうべきものだと考えます。これは、ただあのとき私も議席で聞いておったのでございますが、何かあれはあとで問題を解決したときに処理すると言われたのを、現在処理していないではないかというふうなことで問題になったようでございますが、私は解決すべき際には当然この問題は考慮してもらうべき問題だと考えております。
○羽生三七君 この五千二百三億円余、四十七億ドルという計算は、これは、現在でも生きているのですか、このレートの算定、計算は。
○国務大臣(小坂善太郎君) 日本の場合ははっきりしておりまして、これは講和条約でケリがついておる問題であります。五千二百三億円ですか、ちょっと端数が違っておると思います。何かついておると思いますが、それだけのものは終戦処理費で明瞭にケリがついております。
○羽生三七君 ケリをつけていることは明らかなんです。ただ問題は少なくとも当時の換算レートあるいは軍暫定換算率で行くというと五千二百三億円余、四十七億七十七万ドルという計算です。そうすると、それがもし換算がずっと変わったということになると、私は非常に不等価、高価になると思う。しかもそれが生きているとすれば、私は対米折衝の場合にやはり一つの重大な手がかりになると思いますので、これを承るわけであります。
○政府委員(石原周夫君) 終戦処理費の二十一年以降決算額、二十八年まででございますが、五千二百二億二千百万円、これはこの数字は決算額の数字でございまするから、はっきりしております。お尋ねの四十七億ドルとおっしゃいます数字は、私も今ちょっと記憶がございませんが、各時期におきまして軍票の換算率というものがございます。あるいはその換算レートで見られた数字かと思っております。正確には今ちょっと手元にはございません。一応の見当で申し上げた次第であります。
○羽生三七君 私は当て推量を聞いているのではないのであります。大蔵省から発行した、池田当時の大蔵大臣の推薦の言葉を載せたこの「国の予算」の中に、ドルと円の交換レートは暫定的軍換算率によったとして五千二百三億三万を四十七億七十七万ドルと暫定的に換算した。ちゃんとこれは印刷して載っておる。だから四十七億ドルを払ったとするならば、今アメリカが請求してくる二十億ドル前後というようなものは、たとえレートの秘密があったとしましても、私は話し合いに出ますそのときはそのときだ、今は今だということはいかぬと思う。これは私は十分当時の日本の価値から言ってそれだけのものを払っている。ですから私はちゃんと支払いの義務があるものと明確にきまったものを払わなくてもいいという議論をしてはいないのです。払わなくてもいい純粋贈与と借款と分けて、その払わなければならない分についても、今朝鮮動乱の場合のように、朝鮮動乱の終戦処理費も、日本が払っている終戦処理費の費目になっている。そうして今申し上げたように、その総額というものは五千二百億、四十七億ドルに達している。だからその後換算レートが変わってきてしまって、そんなものはそのときに済んだ話だといえば、それまでの話でありますが、当時はそれだけの価値を持っておったのです、日本の支払いは。これは簡単に済まされる問題ではないと思いますが、いかがでございますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) その四十七億ドル終戦処理費で払っておるわけでございますが、一方、日本と対照的の立場に立ちまするドイツにおいては百二十七億ドル払っておる。その点は、やはり変更状況がございまして、ドイツの場合ガリオア、エロア三十億ドルを約三分の一にして、十億ドル支払っている。現にこれは繰上げ償還までやっている。こういう状況がございまするので、われわれといたしましては、やはりそろそろこの問題はこの問題としてけりをつけたらどうかというふうに考えざるを得ないのでございます。
○羽生三七君 私、重ねて申し上げますが、ドイツは非常に事情が違うのです。マーシャル・プランで非常な援助を受けておるし、それから援助を受けた物資についても経済復興に非常に役立つ重要なものが入っている。そこが日本の場合と非常に違う。特に日本が今申し上げたようなこういう多額の返済を終戦処理費でしておるのでありますから、私は明白に借款、何らかの協定によって通常利子をつけて支払うべきものときまったもので契約があったものについて、それを払う必要なしというやぼは言いません。だから、前の物資のグラント、援助は援助として、これは払う必要がない。払うべきものは払う。しかし、その場合にも、日本はこういう多額のものを支払っておるのであるから、これは政治的話し合いの対象になる、こういうことを言っている。だから、私はやぼなことを絶対に言っているわけじゃない。従って、明白に今計算をされておると言いますけれども、純粋な贈与と、それから借款と信用とに分けて、そうしてどの部分が支払うべきものか、それを明らかにして、それから支払い部分については、明らかに日本がその義務を負っているものについては、今申し上げたようなたくさんの問題が山積しておるので、これについて私は政府が十分なる考慮をする。こういう場合に、総理大臣に伺いますが、相殺をしてもらう、米国の負担と日本の負担との相殺をしてもらう、そういうことは政治的折衝の話し合いの場となりませんか。いかがでありましょう。
○国務大臣(池田勇人君) 終戦処理費が直ちに占領軍の負担すべきものであるという結論は私は出ないと思うのであります。終戦処理費等は、多分、昭和二十年の九月の四日の命令で日本銀行から円資金を出すということにきまったと思います。しこうして、その後におきましても、日本国民の負担としてわれわれは出しておったのであります。この終戦処理費の問題につきましては、御承知の通り、平和条約第十九条(a)項で日本ははっきりこれを日本の負担とする、こういうことにいたしておるのでございまして、終戦処理費をこっちが負担しているから、ガリオア、エロアと相殺するとか何とかということは、私は過去の法的のあれから言えないのじゃないか。しかし、それは実際問題として、日本もドイツも終戦処理は相当負担しているということは、事実は事実でございます。これと相殺すべき性質のものじゃないと考えております。
○羽生三七君 そういうふうに言われますが、私はそういうことも政治的話し合いの場になるのではないか、対象になるのじゃないかということを申し上げておるので、その権利があるとかないとかということとは、これは全然別の問題であります。これは日本国民の利益のために、私は十分考慮すべき問題だと思います。 それから、これと関連して、衆議院でも問題になりましたが、私は通産省に前もって資料を要求いたしてあります。見返り資金特別会計設定以前の分ですね、二十四年以前の分は、これは記録にあるんですよ。アメリカの一方的な記帳を根拠としているんです。日本には何も記録がないわけであります。ですから、これはどのように確認されんとするのか。何か今国会中に出されるということを答弁されたようですが、私は、前もって、わかっているだけの資料は出してもらいたいということを申し上げたい。それから、どっかに記録がありますんですが、非常な多くの、これ以前の、見返り資金特別会計設定以前のものは大体十一、二億くらい、十二億ちょっと欠けると思いますが、この援助物資に相当する円価は、もちろん当時輸出入物資の価格調整金として使われたわけです。ところが、もう私は、実は数日間かかってこの占領軍調達史を読んでみて驚きました。あらゆるスキャンダルですね。もう至るところ腐敗堕落、ものすごいものです。そういうものが出てきたということをここで言っているんです。ですから、そういうことが全然わからないということは、これは日本としても、非常にわからないままいろいろな問題を処理するということはどうかと思いますが、そんなスキャンダルのことはどうでもよい、——どうでもよかないけれども、この際あえて問いませんが、しかし、今国会中といわれておりますけれども、すでに対米折衝を何回もやって、十年もたって債務と心得るとお考えになっているのに、まだ国会に資料が出ないということはおかしいのではないですか。私は前もって通告してある、二十四年以前の部分について。これは通産大臣からお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 二十四年三月以前のものにつきましては、御承知の通り、商業物資、援助物資、みな込みで来ている、こういう関係で、アメリカが引き揚げるときに残置した資料に基づきまして、それをあらゆる角度から検討を加えて、そうしてこれは払うべきものであるかないかということをたんねんに一つ一つ検討して、非常な時間をかけているのでございます。これにつきまして、衆議院におきましても質問がございました。これらは、今後の対米折衝の資料になるべき重要なものでもありますので、この取り扱いについてはきわめて慎重を期する必要がありますが、これを考慮しつつできるだけ早く取りまとめて、今国会に提出するように努力いたしますということを申し上げているわけでございます。(「委員長、はっきり具体的に言うように言いなさい。」と呼ぶ者あり)
○木村禧八郎君 関連。前にドッジ公使が日本に参りましたが、ドッジ公使はですね、アメリカの国会でこう証言しているわけです。日本に対して援助物資を与えた、それは主として農産物が多かったんですが、それによって、アメリカが余剰農産物であったものを日本に援助することによって、アメリカの農産物の価格の暴落、これを防ぐことができたのだ、そういうことを証言しているんですよ。ですから、ただ日本に与えたということでなく、アメリカの農産物の国内の価格支持政策の一環として行なわれたので、決してアメリカとしては、日本にただこれをやってもむだではないのだ、そういうことを証言しているんですよ。そういう点から見ても、私はこれはやはり贈与であるように解釈できるんですが、そういう点もこの折衝する場合ですよ、アメリカは決して損をしていないのだということをですね、その点はやはりこちらで強調する必要があると思う。そういう点ですね。 それから、もう一つの点は、これは前に質問したことがあるんですが、これも大蔵省で出しております「国の予算」の中に、吉田総理が講和条約のときに、債務と心得るということを約束したということが書いてあるんです、「国の予算」の中に。先ほど御答弁を伺いますと、いろいろその資料をお読みになりましたが、大蔵省の「国の予算」に書かれているところでは、講和条約のときに吉田総理が債務と心得るということを約束したということがはっきり書いてあるんです。この二点についてお伺いしたいのです。
○国務大臣(池田勇人君) アメリカに食糧その他が余っているからといって、それが直ちにわれわれがただでもらうべきものだということにはつながりません。これは経済上、向こうの物資が余っているからといって、日本へ送っても、これはただにしなさいということは当然出てくるものじゃございません。 第二の点は、債務と心得るということは、私は大蔵大臣時代、本国会におきましてもたびたび言っております。それから、サンフランシスコの講和条約に表向きこのガリオア、エロアの問題は出ておりません。ただ、私はドッジ氏あるいは向こうの国務省の者と非公式に会いまして、もしガリオア、エロアを払えったって、そうはいきませんよ。自分としては、二十四年の見返り資金特別会計ができてからの分ははっきりしておりますから、その分を財源ということならば考えられぬことはない、しかしそれ以前の分は僕らはよくわからない、これは私は言いました。しかし、幾ら払うということは、講和条約の際に会ったときも、また二十八年のロバートソンとの会談のときも、全然触れておりません、金額の点につきましては。
○羽生三七君 重ねてお尋ねいたします、念のために。この大づかみで十九億ドルだ、二十一億ドルだということで、西独方式で、その三分の一を何十年賦ということでなしに、明白にこの純粋贈与として受けたものがどれだけ、それから借款として協定の上でもらったものはどれだけということを区分して、で、支払いの義務があると明白に義務づけられたものについてのみ交渉するのかどうか。この点だけをもう一度明らかにしてもらいたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) その点を明確にしたいと思って、資料の一つ一つに当たっておるわけでございます。われわれは、根拠のないものについて大づかみということでなくて、根拠を持って交渉したいということでございます。
○羽生三七君 さて、そういうことになった場合に、いよいよ今度は借款と明らかに——だんだん整理していきますから、政府が整理してきて、いよいよ借款はこれとこれだ、金額は幾らになる。さて、その部分について交渉する場合に、その場合に、私は、先ほど申し上げた五千二百三億円が四十七億ドルだといわれておるのであるから、これは権利として言うことはできるかどうかわかりません。しかし、私は、政治的話し合いの場になって、日本も当時の金で四十七億ドルも払っておるのだから、これは何とかしてもらいたいという話し合いの材料になるというのです、私の言うのは。もしその当時の換算レートで四十七億ドルだが、今にしてみれば幾らだといったって、それはだめであります。私はここに資料を持っておりませんが、置いてきましたけれども、実に一つ一つの品目について当時の交換レートは詳しく出ておる資料がある。そうすると、日本は驚くべき不等価交換をやっておる。ですから、私は四十七億ドルも払っておるんなら、権利として言えるかどうか、それは疑問でありますが、政治的話し合いをする場合には、純粋借款部分についても、この点は日本が当時の苦難の時代にこれだけのものを払っておる。また朝鮮動乱のときも終戦処理費でアメリカの軍行動費も日本が払っておる。あまりアメリカが気が引けるから、その中の百三十二億円日本に払った。その残額が四千七百五万ドルまだ残っておる。こういうことです。ですから、かれこれ勘案をして、私は十分これは政治家の話し合いの対象になり得ると。権利義務を決して言っておるわけじゃありません。政治的話し合いの対象になる。つまり、アメリカが日本の経済が復興したことをもって話し合いの対象にするならば、また同時に、日本も今のような材料をもって話し合いの主張の中に貫くことがでるんじゃないか、こう考えるわけですが、外務大臣、いかがです。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私は、あらゆる場合、日本国民の利益というものを中心にいたして交渉いたしたいと思います。もとより、権利義務の関係からいいますと、私は残念ながら四十七億何千万ドルかの終戦処理費は、われわれが払ったということをもって、われわれが権利として主張することは、法律的にはできないと思います。しかし、あらゆる場合において正確な資料に基づき、日本国民の利益というものを十分に主張しつつ、さらに日本の国際信用ということも頭に置いて善処したいと思います。
○羽生三七君 通産大臣にお伺いをいたしますが、なるべく早い機会と言われておりますけれども、それはどうなんですか、作業が進まないんでありますか。何か政治的なことからおくれておるのか、作業は一体今どういうふうに進んでおるのか、いつごろまでにその作業は仕上がるのか。そんなのが十何年もたって急にできるんですかね。なぜ今までそれができなかったのか、非常に私は奇怪に思うんですが、この点はどうですか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) ただ、残置されておる資料だけではなかなか判定に苦しむわけでありまして、判定に苦しむ問題につきましては、あらゆる使途あるいはそのときの事情、いろいろな点を考慮し、よく調査いたしまして、そうして一件々々積み重ねて今結論を急いでおるという状況でございまして、それで繰り返して申し上げますが、事外交交渉のきわめて重要な資料でございますから、その取扱りいにつきましても慎重な考慮を払うという前提のもとに、できるだけ今国会に提出するよう努力したい、かように考えております。
○委員長(館哲二君) 羽生君に申し上げます。時間は終わっておるんですが。
○羽生三七君 もう一、二問で、社会党の持ち時間であれしますから、もう暫時で終わります。 瞬間が切れましたからやめますが、一説には、これはちょっとえげつない質問で——質問というか、意見みたいになるんですが、ちょっとえげつなくて恐縮ですが、韓国が非常に日韓交渉を急いでおる。日本も急いでおる。韓国の商工大臣が、今驚くべき韓国の政治危機、インフレ、これを克服するために、このガリオア、イロアの返済が韓国の経済復興に回ってくることを期待しておる、そういう旨のことを言っておるそうです。日本政府がそれに関知するかしないかは別の話でありますが、そう言っておるそうですから、これらのこともあって、私、なかなかこの問題は重大だと思います。 それから、今度、ちょっと非常にこまかいことになってこれは恐縮ですが、非常にこまかいことになります。実は終戦直後、終戦になったすぐあとに、私の家に数百メートルというところの公民館に、アメリカの兵隊が三十五、六人進駐して参りました。約一カ月駐屯しておりました。何をやっておるかわからなかったが、いよいよ引き揚げるときにわかったことは、外務大臣の御承知の下伊那郡の松尾村です。その農業倉庫に銀が、貨車に何車分かあった。それを進駐軍がみな持っていきました。こういうものは一体どう処理されておるのか。これは事実ですよ。私の母校のあるその公民館へ駐屯して、そこの農業倉庫にあったやつを、貨車何ばい、みな持っていった。そういうものは一体どう処理されておるのか。こういう問題はどういうことですか。これは莫大なものです。
○国務大臣(池田勇人君) 第一の御質問の、朝鮮の経済状況とガリオアとは全然関係ございません。 第二の、長野県において、そういう事実は私は存じませんが、いろいろそういうふうな事例を耳にしておりますが、進駐軍がそういうふうにした分はやはり日本政府が引き継いでいると思います。
○羽生三七君 これは、なぜ私がそういう質問をしたかと申しますと、もう七、八年前、十年くらい前、私が国会でこの質問をした際に、政府の答弁は、中国から押収した銀であるから中国へ返しましたという政府の答弁、これは速記録に載っております。それでは一体そういう記録は、中国から取ってきたので中国に返したという記録が一体あるのかどうか、非常に疑問に思う。それ以外にもいろいろなことがある。きょう一々私はこまかいことを言う意思はありませんから、あえて多くは申しませんが、どうかこれらの点も勘案をされて、おりおり重ねて恐縮でございますが、純粋贈与分は贈与分、それからクレジットとして制約を受けておるものは制約を受けておるものとして、しかもその場合に、今申し上げた終戦処理費四十七億ドルの負担を初め非常な多くの問題があり、当時の不等価交換、円レートの秘密です、当時の。不等価交換、それから当時それをどういうふうに使われたか、非常にこまかいことがありますが、それを一々申し上げませんけれども、かれこれ勘案をされて、権利とか何とかいうことでなしに、政治的な話し合いの場として日本国民のために私は十分この対米折衝をされることを期待するわけです。 さてそれが、かりにですよ、話がそれは債務はとにかくあるかないか知らぬが、日本はまあそういうことなら払わないでいいということになればけっこうですが、かりに払うということになった場合、初めて水田大蔵大臣が言われましたが、それが二重払いであったかどうか、それはどういう方法をもって支払うかということに、そういう技術的な国内問題になるので、私はきょうはそれには触れないわけです。そこでまあ結論をいたしますが、とにかくまあここで質問をやめておきます。これは私は要望でありますけれども、いずれにしても急速に増大をしたこの日本の経済というものが、どういう形で国際的に寄与するかということが非常に大きな問題だと思います。特に私はさきに、冒頭に申し上げましたような力の均衡というような政策に関連をするいろいろな対外援助、そうでなしにどうかほんとうに文字通り純粋のこの冷戦緩和、平和共存の線に沿って日本経済がさらに一そうの発展をし、それに関連をして外交交渉が、日本の外交が進められることを心から期待をするわけであります。私の質問は、これはお答えを要しません。希望であります。そういうことを心から念願をして私の質問を終わりますが、先ほど来私が述べておることについての資料は、すみやかに一つ御作成をいただきたいと思います。これは委員長にもお願いをして、資料要求をしておきます。というのは、もう対米折衝が全部終わってしまったあとで何のかんの言ったって、もう論議する意味がないのです、これは。そのときは今言う国内問題になるので、それは別な話で、どうか総理が六月渡米の際に触れられるかどうか知りませんが、かりに触れらるとした場合、あるいはその前後、外務大臣が折衝される場合においても、事がきまってしまってはあとの祭でありますから、どうかそれ以前において国会で十分なる論議をする機会のあるように資料の提供を求めるわけです。重ねて日本の正しい外交のあり方を要望して、私の質問を終わります。(拍手) —————————————
○委員長(館哲二君) この際、委員の変更について報告いたします。大矢正君が辞任されまして、その補欠として久保等君が選任されました。 —————————————
○委員長(館哲二君) 杉原荒太君。(拍手)
○杉原荒太君 若干の問題について、主として池田総理大臣に質問いたします。 質問の第一点は、国連に対する政策についてであります。政府は国連に特に力を入れるという方針をもって臨んでおられることは、これは日本外交の大きな柱である平和外交の線を太くしていく施策の一環としてわれわれの賛同するところであります。私のお尋ねいたしたい点は、政府は、その方針のもとに国連において特にどういうことに重きを置いてやっていこうとしておられるのかということであります。
○国務大臣(池田勇人君) 国連外交の強化につきましては、施政演説で申し上げた通りでございます。私はいろんな点で今までの国連外交は十分でなかった。やはり国力の点もございましょう、陣容の点もございましょう、また、経費の点でもあると思うのでございますが、日本もここまで参りました。また、国連のあり方につきまして非常に世界の関心を持たれてきている状態でございますので、できるだけの力を入れていきたい。まず陣容につきましては、今強化につきまして考慮を重ねつつあるところでございます。こまかいことは外務大臣から……。
○杉原荒太君 今総理の言われたような代表部の陣容を整えるというようなこと、もちろん大事であります。また、国連自体の目標とするその大目標に向かって努力するということは、施政方針演説で私けっこうだと思う。私は、ここで特にお尋ねをしたい点は、現実の今の国際情勢で、国連の今の実情、それと結びつけてもう少し具体的に近接目標を求めて、現内閣としては少なくともこれこれのことはぜひ特に力を入れてやっていきたいという、その具体的な国連対策というか、その点があってしかるべきものだと思うが、その点を一つ御説明願いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 現在緊急の問題となっておりまするのは、御承知の通り、国連が二つの力の激しい争いの場になっておるということでありまして、その結果として国連憲章の番人であるべき事務総長までが植民地主義の手先であるというような誤解を受けておるのであります。また一方において、ネオ・コロニアリズムというような言葉も出ておりまして、そうしたことをすることが新しい植民地主義じゃないかというような反発があるわけでございます。私どもはあくまでも国連というものをほんとうに国際平和を維持する、また、国際平和のための唯一最高の機関として盛り上げるために、国連を各国が胸襟を開いて話し合いのできるような、静かな話し合いの場にすることであろうと思うのであります。 〔委員長退席、理事梶原茂嘉君着席〕 そのためにはやはり現作の安保理事会、この機構等についてももっと検討する必要があろうと思うのであります。現在は御承知のごとく、国連加盟国の少ない時代においてなされた機構でございまして、何といっても大国主義に偏重しておる。特に常任理事国等はさようでございます。この人員の数をふやす、あるいは新しい国連の機能でございまするところの、各国の経済に寄与するという目的からいきますと、ECOSOCの人員も数が少な過ぎるというような点も考えまして、そういう機構の問題にも触れる必要があろうと思っておりまするが、さしあたりの問題といたしましては、現在国連の内部に持ち込まれておりまする激しい東西の争いを、いかにして緩和していくかということが一番大切ではないかと考えております。
○杉原荒太君 国連の実情を見ますと、国連憲章起草者の意図しておるところと違って、国連の中心は、実際上安保理事会から総会に移ってきておる。そうしてこれはおそらく私は、阻止することのできない大勢になってきておると思う。しかも総会のメンバーたる国々のグループの構成が、御承知の通り、革命的な変化を来たしてきておる。同時に、東西の対立のほか、地球の南半分と北半分との間のギャップから生ずる国際政治の激しいクライメートが、国連総会に集中的に表現されてきておる。今外務大臣のおっしゃったことを私は了承するのでありますが、しかしその間にあって、東西対立のほかに、今、南北の問題というものは非常に私は取り上げていく必要があると思う。こういう点について外務大臣はどう考えられるか。
○国務大臣(小坂善太郎君) やはり南北の問題は、これは新たなる問題でございまして、総理大臣も、この国会の施政方針の演説においても、特にこの点に触れられたわけでございます。やはり各国が非常に連帯性を持つようになっておりまして、一国の貧困というもの、あるいはその疾病というものが、世界全体に累を及ぼすというのが、今日の時勢でございまするから、何としても、新たに独立して参りました国の、その独立後に要求されておりまする政治、経済、諸般の問題についての欲求を満たすように、できるだけ先進といいますか、すでに開発しておりまする国が、同情を持ってこれに対処する必要があろうと思います。それからまた、政治的には、新しく独立したという国のアスピレーションが、とかく矯激な言論も誘致しがちでございますから、やはり、その点については、十分説得すべきところは説得していく要があろうかと思うのでございます。いずれにしても、国連が各グループに分かれて、圧力団体的な行動で国際的な問題が議せられるようなことになりますことは、国連本来の意義にたがうものと考えられまするので、できるだけさような傾向をためるように、われわれとしては努力してみたいと思っております。
○杉原荒太君 私かぜを引いて、非常にのどを痛めておりまして、十分声が通らないと思いますので、失礼いたしますが、国連を強めていくということは、もとより望ましいことでありますけれども、国連の現実を見てみますというと、少なくとも、さしあたりは国連の弱化を防ぐ方途を真剣に考えなければならない事態に私はきておると思う。その方途を考えるにあたって、われわれとしては、過去の失敗から学ぶことが私は近道だと思う。連盟時代からの失敗の教訓を私は生かしていくということが大事だと思う。その点から見て、私は国連の税状とにらみ合わせて言うのでありますが、第一に、国連が理想や理論に走り過ぎたり、または逆に、過去のいきさつにとらわれ過ぎて、そうして他国のことにあまりに立ち入り過ぎるということは、私は国連が墓穴を掘るゆえんだと思う。第二に、国連は、大同の問題を取り扱うと同様の慎重さをもって小国の問題を取り扱うということが、私はきわめて大事だと思う。一国の外交にいたしましても、小国を侮る外交は、亡国の原因になるということは、歴史の教えるところである。国連の取り扱う問題の内容は、直接には小国の問題が大半を占めるという実情のもとにおいて、国連における小国の問題の取り扱いと、この小国に対する外交を誤まらないようにしていくということが、私は特に肝心であると思う。政府は、国連の現状をにらみ合わせて、以上の点についていかなる方針をもって対処しようとしておられるか、その点を総理大臣からも一つ御答弁願います。
○国務大臣(池田勇人君) 杉原さんのおっしゃることは全く同感でございます。小国の問題も大国と同じ、ことに今のような時勢になって参りますと、その点が必要だと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 国連憲章にございますように、内政不干渉、相互の立場尊重ということは大原則でございます。しかし、現在の問題の取り扱い方において、さような御意見があることは、私も同感でございます。できるだけ小国の立場というものを十分反映するように運営されなければならぬと思います。
○杉原荒太君 次に、国連の強化に努めるということは、政府も言っておられますし、また、安保条約の中にも約束をされておる。しかし私は、これは実際は非常にむずかしいことだと思う。その点特に、どういうふうに具体的に構想しておられるかということについては、私は質問を差し控えます。 次に、核実験の停止などを含む広い意味における軍縮問題に対する政府の基本態度について、外務大臣の外交方針演説で述べられたところは、われわれも同感するところであります。しかし、軍縮問題と国連強化との関係につきましては、外務大臣はお触れになっておらない。それはどういうお考えからか。たとえば両者は切り離して考えていく、そういう行き方をとっておられるのか。御承知の遡りケネディは、軍縮と国連強化とを結びつける必要があると言って、その具体的構想を述べておる。これは、どちらがいいか非常に研究問題だと実は私自身も思っておるのですけれども、政府は、軍縮と国連強化とを切り離して別々に考えていくという行き方を今とっておられるのか、それとも両者をある程度結びつけていくという考え方、その両者のうちでいずれが国際政治の実情から見て適策であると見ておられるか、その点お伺いしたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) さしあたりの考え方と将来の考え方と二つございますと思いますが、さしあたりの考え方は、軍縮問題というものは、やはり国連の場の中において、また、国連の外におきましても、そのワクの外でも中でもいいから、できるだけ精力的に皆で考えていかなければならぬだろうと思います。国連強化の問題は、将来の行き方としましては、国連というものが、ほんとうに世界平和維持機構としての国連警察軍を、国連憲章四十二条にあるようなそうしたものを持つという方向で努力せねばならぬと思います。
○杉原荒太君 外務大臣は、その外交方針演説の中で、国連を国際社会の良識と理性の場として成長させることということをうたっておるのです。これはきわめて私はよい着眼だと思います。しかし国連の現実は、ひっきょう世界の現実の縮図である。さればといって、国連がその生命とする国際社会の良識と理性の場として成長するということを忘れて、それ以外のことに欲を出し過ぎたり、それ以下になり下がっては、私は国連の自殺になる危険があると思う。国連の現状を見ると、私は、現に一つの大きな試練の場に立ってきておると思う。政府の一そうの努力を私は希望いたしまして、次の問題一に移ります。 次に、ケネディの防衛政策と日本の安全との関係についてお尋ねいたします。 御承知の通りケネディは防衛政策について、軍の組織の再編成のほか防衛力そのものの補強策の重点として、第一に長距離弾道弾におけるソ連に対するおくれを取り戻すための方策と、第二にそのおくれを取り戻すに至るまでの期間における補充措置として、長距離爆撃機を交代でしょっちゅう空中に飛ばしておいて警戒に当たらせるという方策、第三に、在来の通常兵器をもって装備した軍隊の火力及び機効力を強化するということ、この方策の三本の柱を打ち出しておる。このことは安保条約をもってアメリカと結ばれている日本としては、単なる人ごとではないことはもちろんでありますが、私のお尋ねいたしたい点は、このケネディの防衛政策と日本の安全保障との関係を政府はどう見ておられるのであるか。特にケネディの防備政策が実施に移された場合に、いろいろな条件があるけれども、少なくとも軍事的条件の角度から見て、日本の安全を保障されているという状態にあるかどうか。少し言葉をかえていえば、よその国が日本に対し武力攻撃を加えようにも企て得ないような、アメリカ側の軍事的条件が満たされていることになると見ておられるかどうか、この点は防衛庁長官から政府の所見をお答え願います。
○国務大臣(西村直己君) お答えいたします。ケネディといたしましては、ただいまお話に大体ありましたごとく、ミサイル・ギャップがあるかどうかというような問題につきましては、もちろんこれは論争があったのでありますが、アメリカ全体としては多少ミサイル・ギャップというものは、総合的戦力としてはないが、しかしながら、できるだけやはり従来の各既存の長距離弾道弾等にも依存すると同時に、それに対する依存度を高める間におけるいわゆる警戒体制をとると。いま一つは通常戦力というもの、通常兵器を中心にした戦力の空輸能力であるとか、言いかえますれば、近代火器をふやすとかというようなことによって、アメリカを中心にした戦力の増強をはかっていることは御承知の通りであります。これと日本との関係であります。もちろんこれはアメリカ自体の守りでありますと同時に、世界全体に対するアメリカの私は戦略であると思います。特に極東の安全平和に対しましては、日米安保体制でアメリカの立場においては極東の安全という、それを受けまして、日本といたしましては、日本の立場から日本の平和を守り安全を守ると。その限度におきまして、日本は、私の方といたしましては、日本の自衛力というものを漸増、整備して参りたいと、こういう考え方であります。さらにこの際に申し上げますが、私どもの方といたしましては、あくまでも国土の安全、平和、こういうことを安保体制と相待ちつつ、国内問題として整備して参りたい、こういう考え方であります。
○杉原荒太君 私の質問は、政府として、はっきりお答えにくい点もあるかもしれませんが、私の質問の趣旨、目的とするところは、国民の間にはロケット製造の面におけるアメリカのソ連に対するおくれをもととして、安保条約の裏づけによる日本の安全保障について心配しておる者もある、不安に思っておる者もある。そういうことで、そういう心配や不安が一般化するならば、共産側の威嚇や政略工作の乗ずる好機会を与えることになる。そういう見地から、私は今その点について政府の見ておられるところを率直に述べられた方がいいと思うから、デリケートな問題と承知しながらあえて質問している次第であります。
○国務大臣(西村直己君) ただいま杉原委員の御質問の趣旨が十分にあるいはとれていないかもしれませんが、アメリカとソ連にいわゆるミサイル・ギャップがあるのではないか。言いかえればそういった面において、少しアメリカの方がおくれをとっているのではないか、という前提からくる共産圏との力の抑制力の差が安保体制に響くのではないかと、こういうふうに私はちょっととったのであります。私どものこれは見解もありましょうし、またアメリカのケネディのものの見方もありますが、少なくともミサイル・ギャップそのものがあると、こういうふうに見ているのではないと思います。総合的なものとしてはアメリカは差がないというふうに現在見ております。ただしかしながら、個々の、たとえば長距離弾道弾等におきまして、特にロケットの特殊な研究等におきましては、ソ連の方が多少優位性を持っているという点から、やはりその努力はケネディ政権としては加えて参りますが、と同時に、いわゆる限定戦争と申しますか、局地戦争に対する力というものをやはり相当充実して参りたい、こういうふうに考えて、さほどの強い変化を私は受け取っていないのでございます。そういう意味でもちろん従来の改定されました安保体制の基調の上に乗りつつ、わが自衛隊のあり方というものを考えて参りたいというのが私の考えであります。
○杉原荒太君 次に対外経済協力に関することで簡単に御質問いたします。御承知の通りケネディは、この地球の南半分の経済のおくれた国々と、北半分の進んだ国々との間の経済的のギャップこそが世界不安の一つの大きな根源であると見て、そうしてその世界不安の根源を除くことを一つの大きな目標として、対外経済援助を拡充していくということを彼の外交政策の一つの大きな柱として打ち出しております。またインドをもって経済のおくれた国々の代表的のモデルであると見立てて、インドの新五カ年計画を助けて成功せしめるかどうか、その結果の影響は、単にインドのみではなく他の後進国全体に及ぶとして、もしインドにおいて失敗するならば、他の後進諸国は、自分たちの運命を開拓するのには共産制度によるほかなしとするに至るであろうとまで、インドに対する経済援助をそういった角度からして特に重視していることは御承知の通りであります。そこで私がお尋ねいたしたい点は、インドに対する経済協力の面における日米提携の前途を政府はどう見ているか。また、どういう指導方針をもってやっていこうとしておられるか。
○国務大臣(小坂善太郎君) ただいま杉原さんのお話のように、アメリカは特に対外経済政策の一環として、低開発国援助を一般に強化しようという構想を持っておりまするが、またわが国も、東南アジアを初めといたしまする世界の低開発国に対して、これを援助し、この繁栄はまたわが国の繁栄につながるという見地から、海外経済協力基金その他経済協力体制の整備強化を行なっておりますのであります。低開発国が今日必要としておりまする援助なり経済協力の規模というか、あるいは種類というものは、これはわが国はもちろんのこと、アメリカその他一国の経済力をもってしては負担し切れない大きなものでございまして、われわれといたしましても自由圏諸国の一員といたしまして、アメリカに限らずその他の諸国とも協力いたしまして、東南アジア等の諸地域に対する援助が、より効果的に有効に行なわれるように努力したいと思っておるのであります。米国はただいまお話のように、人口も多く貧困の度合が著しいインドに対して重点的援助を実施してきておりまして、その援助総額は昨年十二月末で三十億ドルを上回っておるのであります。 〔理事梶原茂嘉君退席、委員長着席〕 わが国といたしましても、インドは東南アジア中で最も重要な貿易市場でありますので、七千万ドル以上の援助額を与えて経済協力の推進に努めて参っております。インドにおきまする日米提携の例といたしましては、御承知のルールケラー鉄鉱山の開発がございました。この件に対しましてはアメリカの大統領資金から二千百万ドル、わが国からも八百万ドルの資金援助がそれぞれ与えられておりまして、昭和三十九年から年間二百万ドルの鉄鉱石がわが国に積み出されることになっております。わが国としましては、今申し述べました通り、アメリカのみならず他の先進工業諸国と協調して、経済協力を進めていくべきであると考えておりまして、インドについてはかかる趣旨に基づきまして、対インド債権国会議に最初から参加してきておりますパキスタンについても債権国会議に参加しておりますが、そういう次第でございまして、政府はこの四月から始まりますインドの第三次五カ年計画に対しましても、引き続いて債権国会議に参加して、わが国の国力に応じた協力をいたしたいと考えております。インドに対する協力によって大いに他の自由諸国と協力し、ことにアメリカの新方針にも十分協力して、この開発経済繁栄に寄与して参りたいと考えております。
○杉原荒太君 次に経済協力の政策に関してお尋ねいたします。私の質問の趣旨を明らかにする意味において、前置きとして簡単に二つの事実を指摘することをお許し願いたい。 その一つは、ケネディの提唱したアフリカに派遣するいわゆる平和隊のことであります。御承知の通りケネディが昨年の選挙の際、アメリカの青年たちに呼びかけて、アフリカの新興国を助けてりっぱに育て上げていくということは、歴史的の大業で働きがいのある仕事だとして、アメリカの大学を出る若い人たちに予備教育をほどこした上、これに平和隊と名付けて、この平和隊を国の経費をもって三年交代でアフリカの原地に、技術指導や教師などとしてやる計画を発表しましたが、これはアメリカの青年たちに大いに受けて、彼は大統領就任後直ちに実行に取りかかっております。 もう一つの事実は、これと対照的にきわめてささやかなことで、実はこういう席で触れるのもどうかと思われるような小さなことでありますが、それは数年前有田焼の出るところの工業学校を出たという青年が、ぼろぼろの服装で現れて自分は将来海外に出かけて焼きものの指導に当たりたい、それがためにはまず英語の会話を習いたいということで、それから進駐軍の雑役夫として働きながら英語の会話を勉強して、一通りの話も通ずるようになってきたところに、アフガニスタンから焼きものの技術指導者がほしいということで、アフガニスタンに行って四年ばかり勤め、昨年からはフィリピン政府からの招請で現地に技術指導に行っておるのであります。 そこで、私の質問いたしたい点は、政府は学校を出る青年たちに所要の予備教育をほどこすなど、適当の援助措置をとって、それらの青年たちが技術指導などのために海外へ出ていって活動し得るような道を開いてやることを、国の政策として組織的計画的にやっていく考えはないか。こういうことは農村の二三男対策の上からして、また青年にいわゆる希望を与える政治の上からしても、一つのともしびを掲げることになるとも思われるが、池田総理は政府の政策としてこういうことを打ち出していかれるお考えがあるかどうか、その点をお尋ねいたします。
○国務大臣(池田勇人君) ごもっともな御意見でございます。すでに御承知と思いますが、海外青年開発隊というのを設けまして、今月も七十数名ばかり出るようになっております。数年前からこういう海外開発青年隊というものを育成拡大をはかっております。またこちらから出ますこともさることながら、低開発国の青年学徒をできるだけ多く日本に来るように慫慂いたしまして、その施設等につきましても今後大いに拡大していきたい。やはり経済協力には人のつながりが金のつながり以上に必要であると私は考えまして、御意見の通りに進んでいきたいと思います。
○杉原荒太君 最後に中共問題について若干政府の見解を伺う次第です。 質問の取り運びの便宜上中共との関係について第一に貿易関係、第二に中共の承認や国連代表権の問題などを含む政治的関係、第三に両者を通じての問題の三つの部類に分けて質問いたします。 第一の貿易の関係についてまずお尋ねいたしたいことは、中共との貿易をやっていくにあたって、わが国における中共貿易の窓口といいますかその窓口となるものが、特殊の傾向にあるものによって独占されるとか、あるいはそれが特別の取り扱いを受けるようなことがあっては、中共貿易の健全な発達のためにかえっておもしろくない結果を招くことになると思われるが、その点について政府はいかなる対策を講ぜんとしておられるのか。まずその点をお尋ねいたしたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 御指摘のようにわが国において中共との貿易をする場合、友好商社というものがあって、この人たちだけが中共に対して好意を持っておるとか、というようなことになりますことは非常に困ることだと思います。これはすべてにおいてさような内政が二つにそのために割れるというような傾向を避けることが必要と考えておる次第でございます。先ほど総理から御答弁ありましたように、今の日中輸出入組合を強化するとか、あるいはジェトロとの関係を考慮するというようなことで漸次この問題を改善して参りたいと思います。
○杉原荒太君 次に中共貿易に関連いたしまして、よく世間では政府間の貿易協定と中共承認との関係が問題に議されておるようであります。これは法理上または条約上からすれば、典型的ないわゆる通商航海条約はともかくとして、単なる貿易協定が承認の効果を伴うかいなかということは、要するに協定を作る当事者たる政府の恩恵決定、意思及び内容いかんによってきまる問題だと思う。その協定を作る当事者たる政府が、承認の意思表示を含ましめればもちろん承認の効果を伴うことになるし、その意思表示を明示的、黙示的にせよ、全然しなければ承認の効果を発生しない。ただ承認の意思表示を含ましめないものでも、政府間の協定は作りたくないとか、または相手方が承認の意思表示を含ましめなければ、政府間協定はいやだとかいうような場合は、これはもはや承認なるならんの法理論上の問題とは別個の政策論である。以上のことはこれは法理から見ても先例から見ても、一点の疑いもいれないことだと思うが、実は私、わかり切ったことだと思うけれども、念のために以上の点について、政府の見解を確かめておきたい。 私の確かめておきたいのは法理の面だけでありまするから、政策論のことは私触れていません、その点だけでありますから、外務大臣からでけっこうです。もしそうでなければ、私は、政府委員からの答弁でもけっこうと思っているくらいなんです。
○国務大臣(小坂善太郎君) 法理論としてだけお答えを申し上げますと、ただいまお話しのように、純理論として、承認でないということを留保しておれば、貿易協定を政府間に結ぶことも考えられるわけでありますが、しかしまあ、必要ないことでございますが念のため申し上げますと、ただ現在、中共との関係が、このような条件のもとに、この貿易協定を結ぶことを提案することが、はたして妥当であるかどうかということは別の問題だと思っております。
○杉原荒太君 次に、総理は施政方針演説の中で、本年の課題として中共問題を取り上げ、日中関係の改善、中国大陸との関係の改善ということをうたっておられる。貿易の増進のみならず、日中間の一般的関係の改善をうたい、「本年はこの問題への接近がわれわれの一つの課題である」と述べておられます。 そこで、その本年の接近を予見されるその日中間の一般的関係の改善の中には、この貿易の増進以外に、具体的にどういうことが予想されておるのか。その点をお示し願いたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 貿易が主でございまするが、先般もこの席で答えたかと思います海難救助、郵便協定、気象通報等、私は、できるだけ各方面におきましての接触は望むところでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、これが承認とつながるということにつきましては、現段階におきましては、検討を要すると申し上げておるのであります。
○杉原荒太君 中国の承認や国連の代表権を含む、この政治的の、いわゆる政治的の関係については、単に中共との関係だけでなく、わが国の全般外交の上から、総合的に見てその利害得失をよく計算し判断して、大局を誤らないようにやっていくというこの政府の行き方には、われわれも、これはよく理解し得るところであります。しかし政府もむろん漫然と成り行きにまかすという態度ではないことは、もちろんのことだろうと思う。 そこで、国際関係など客観情勢の推移のうちで、特にこういう点をにらんでいくんだというポイントがあることだと思う。政府は、特にどういう点に着目していくことが、中共問題処理上大事だとしておられるのか。その点を、あまり詳しくなくていいから、お触れ願いたいと思う。
○国務大臣(池田勇人君) われわれは、自由国家群の一員としての立場を持っております。そういたしますると、西欧諸国、ことにアメリカ、そしてまた、日本の置かれた地位といたしまして、台湾政権というものと日華条約を結んでおります。そうしてまたAAグループの情勢も見なければならぬ。こういう点を私は主に考え、そうして情勢の推移を見ておるのでございます。
○杉原荒太君 外務大臣、補足される点がありませんか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 総理の御答弁で尽きておると存じますが、われわれとしては、世界全体の平和の問題としても、この問題を見ていくというふうにも考えております。
○杉原荒太君 次に、貿易段階だろうと政治的段階だろうとを問わず、この中共関係を処理していくにあたっては、日本側としては、こういう点が、中共側でどうしてもぜひ守ってもらわなければならぬという、国内の党派などを超えた、国としての必要最小限度の基本的要求があって私しかるべきものだと思う。そうして、そういう点を含めての日本側の真意というものを誤りなく中共側にわからせるようにするためには、政府としても、新たに工夫すべきことがありはしないか。国際関係において最も留意すべきことは、相互の誤算——ミスキャルキュレーションから生ずる危険を防止するための方途をゆるがせにしないことだと思う。 そういう意味において、私の質問の趣旨はおわかりと思うので、ごく簡単に、一言でよいから、お答えいただきたいと思う。
○国務大臣(池田勇人君) お話の点は、ごもっともでございます。前の羽生委員の御質問に対しましても、世界の人は、中共の問題については、日本が一番よく知る立場にあるのだ、こういうことを言われておるのでございます。 しこうして、われわれがそんなら中共の方々の考え方を十分に知っているかというと、まだまだ至らざる点が多いと思うのであります。われわれは、今後この外交問題、ことに中共問題につきましては、十分の検討、研究を積んでいかなければならぬと思うのであります。
○杉原荒太君 最後に、このケネディの中共政策に関する意見を、政府はどう把握し、理解しておられるか。私の特にお伺いしたいのは、ラスクとかチェスターボールズだとかスチーブンスンだとか、他の要人の言っていることでなくして、ケネディ自身の発表しておる中共政策に関する彼の意見を、どう把握しておられるかということであります。 それは、大事な点でありますから、これは精密にお答え願いたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) ケネディ大統領とされては、いまだにこの問題について、最終的な結論を得ておられないのではなかろうかと思っておりまするが、まあ関係のある諸国と、いろいろ懇談をしていきたいというふうに思っておられると思います。 しかし基本的に申せますることは、やはりケネディ大統領としては、アメリカ国内の世論の関係もあり、この問題について、どう扱うかということについては、いまだ私は発表されることは差し控えておられるということではなかろうかと思っております。
○杉原荒太君 私は、これは申し上げようかどうかと思ったんですけれども、一つ申し上げますが、ケネディは御承知の通り、選挙の四年くらい前から、大統領に出た場合、自分のとる政策や、その選挙対策とかも、ずっと研究して、そうして、彼がその後上院その他でなしておる政策に関する言説というものは、自分が大統領候補や、あるいは大統領になった場合、一つの政治的なコミットメントになることを予想して、深い思索と研究の結果、これを発表しておる。これは周知の通りである。特に昨年六月十四日に、彼が上院でなした外交政策に関する言説は、彼の外交政策に関する意見の骨子を述べたもので、そうしてその意見は、チェスターボールズがまとめた党の政策綱領の中にも取り入れられておる。いやしくも中共に対する政策を考えていく場合、ケネディがこの中で述べておる中共、台湾に対する彼の意見、これは私、見のがすことのできないものだと思うのです、こういう大事な問題は。 これは私、少し言い過ぎになるかもしれませんが、こういう大事な点は、また事務当局を督励されて、特に大臣にも私やっていただきたいという要望をつけて、私の質問を終わります。
○委員長(館哲二君) 明日は、午前十時に開会いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後四時三十一分散会 ————・————