法務委員会 第11号
- 発言数
- 73 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1961/04/11
会議録
○委員長(松村秀逸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 軌条上の車両の逆転等に関する業務上の過失刑事事件の審判の特例に関する法律案を議題に供します。 本案につきましては、発議者小酒井義男君、同じく中村順造君、参議院法制局から菊井第一部長、安達第一部第三課長、最高裁から樋口刑事局長が出席しておられます。 本法律案について、逐条説明をお願いいたします。
○法制局参事(菊井三郎君) 軌条上の車両の運転等に関する業務上の過失刑事事件の審判の特例に関する法律案は参議院法制局で立案したものでございますので、私からその逐条につきまして御説明申し上げます。 第一条は、この法案の目的について規定いたしておりますが、鉄道及び軌道に関して生じました業務上の過失刑事事件の裁判において、事実の認定につきその業務に関する学識経験を必要とすることが通例であることにかんがみまして、かかる事件が第一審裁判所に係属する場合においては、裁判官でない鉄道及び軌道の業務に関する学識経験を持つ者を専門委員として裁判所の審理に立ち会わせ、事故発生の原因に関する技術的事項について意見を述べさせ、これを証拠とすることができることとすることによって、その裁判が適正に行なわれることを目的といたしております。 第二条は、この法案の適用範囲を明らかにした規定でございます。すなわち、「軌条上の車両の運転等に関内する業務」と申しますのは、軌条上の機関重、電動車もしくは気動車またはこれらの車両と連結した市町の運転に関する業務、線路または車両の保全に関する業務、運転保安装置の保全または取り扱いに関する業務その他列車の運転に直接関係のある業務といたしており、また、これらの業務に従事する者のいかなる事件に専門委員が立ち会うかということにつきましては、刑法第百二十九条第二項の罪、すなわち、業務上過失によって汽車、電車等の往来の危険を生ぜしめもしくはこれを転覆し、破壊した罪に当たる事件または訴因が汽車、旧車等の交通にかかる刑法第二石十一条前段の舞、すなわち、業務上必要な注意を怠って汽車、電車等による交通事故を起こし、その結果人を死傷した罪に当たる事件といたしております。 第三条は、専門委員の性格についての規定でございます。 専門委員は、民事訴訟法第三百五十八条ノ四に規定する司法委員、家事審判法第三条に規定する参与員のような公務員たる身分を持つ裁判所の補助機関ではなく、訴訟法上、証人、鑑定人と同様に人的証拠としての性格を持つものといたしたのでございます。従って、後述いたしますように裁判所の審理に立ち会い、裁判所の尋問に際しては事故発生の原因に関する技術的事項について意見を述べなければならないものとし、その意見は、証拠とすることができることといたしました。 第四条は、この種の刑事事件が起訴されました場合におきましては、裁判所は、簡易公判手続の決定のあった事件を除きまして、その公判期日における審理に専門委員を立ち会わせなければならないことといたしました。ただ、この場合におきましても最初の証拠調べの決定があるまでの間は、専門委員を立ち会わせなくてもよいことといたしております。しかして、これらの事件でありましても、被告人が公訴事実を認める旨の陳述をした場合または被告人が専門委員の立ち会いを辞退した場合におきましては、裁判所が、事故発生の原因に関する技術的事項について意見を聞くほどの事件ではないと認めたときには、専門委員を立ち会わせないことができることとし、この場合には、裁判所は、あらかじめ、検察官及び被告人または弁護人の意見を聞かなければならないものといたしております。 なお、裁判所は、専門委員を立ち会わせない旨の決定をいたしました場合におきましても、その後の審理の経過にかんがみまして、事故発生の原因に関する技術的事項について意見を聞く必要があると慰めましたときには、専門委員を立ち会わせることができることといたしました。簡易公判手続の決定の取り消しがあった事件につきましても同様でございます。 第五条は、専門委員の員数及び指定の手続に関する規定でございます。専門委員は、各事件につきまして一人以上指定されるものとし、毎年、あらかじめ、高等裁判所が選定したいわゆる専門委員候補者の中から各事件について裁判所が指定するものといたしております。なお、あらかじめ、高等裁判所が選定しておく者の資格や人数その他選定に関する必要な要項は、最高裁判所が規則で定めることにいたしております。 第六条は、専門委員が指定された場合に、その専門委員が職務を行なうに適さないと認められるときや、その他特別の事情がある場合には、裁判所はいつでもその指定を取り消し、さらにその事件について新たに専門委員を指定することができることとした規定でございまして、審理経過中に生ずる事情の変更に即応することができるようにいたしました。 第七条は、専門委員が人的証拠であることにかんがみまして、公判期日には専門委員を召喚しなければならないこととし、また、専門委員には宣誓をさせなければならないことを規定いたしました。宣誓の時期、方法等は、証人、鑑定人の場合と同様に最高裁判所の規則で定めるべきものといたしております。 第八条は、専門委員が公判期日外におけるこの種の事件の審理に立ち会う機会を確保するために設けた規定でございます。すなわち公判期日外において証人、鑑定人、通訳人もしくは翻訳人の尋問をする場合または公判期日外において検証もしくは鑑定をする場合におきまして、裁判所は、専門委員を立ち会わせることが事故発生の原因を探究するのに必要であると認めるときは、専門委員を立ち会わせることができることとし、また、専門委員自身も、事故発生の原因を探究する上にこれに立ち会うことが必要であると思うときには、裁判所、受命裁判官または受託裁判官の許可を受けて立ち会うことができることといたしました。 第九条は、専門委員は、裁判所、受命裁判官または受託裁判官が行ないます証人、鑑定人または翻訳人の尋問に際しましては、裁判所、受命裁判官または受託裁判官に事故発生の原因に関して尋問を求めたり、許可を受けてこれらの者に対しまして事故発生の原因に関して直接問いを発することができることとし、また、裁判長の許可を受けて、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧し、または謄写することができることとした規定でございまして、専門委員を設ける趣旨を十分に生かすことを考慮しているのであります。 第十条は、専門委員は、事件の審理の状況によりまして、自己の学識経験より判断いたしまして、事故発生の原因に関して、鑑定の必要があると考えますときは、積極的にその旨の意見を裁判所に対して申し出ることができることとした規定でございます。本条による意見の申し出があった場合には、裁判所は、鑑定を命ずる必要があるかどうかを判断しまして、その必要があると判断いたしました場合には、刑事訴訟法の職権による証拠調べとして学識経験のある者に鑑定を命ずることができるわけであります。 第十一条は、専門委員に対する尋問の規定でございまして、裁判所は、必要があると認めるときは、審理のいかなる段階におきましても、事故発生の原因に関する技術的事項について意見を述べさせるため専門委員を尋問することができることとし、また、この尋問が検察官、被告人または弁護人の請求にかかる証拠調べが終わるまでに行なわれなかったときは、検察官の論告前に必ず尋問しなければならないことといたし、公判廷において専門委員の意見が必ず述べられるものといたしております。専門委員を審理に立ち会わせた以上は、その者に事故発生の原因に関する技術的事項について意見を述べさせて裁判所の適正な心証形成に資せんとするためでございます。そして、この専門委員に対する尋問は、証拠調べとみなしまして刑事訴訟法の必要な規定が適用されるようにし、尋問に対する専門委員の意見は、鑑定人の鑑定の経過及び結果とみなしまして、これに証拠能力を付与することといたしました。 第十二条は、専門委員の旅費、日当、宿泊料等に関する規定でございます。専門委員には、最高裁判所の定めるところによりまして旅費、日当、宿泊料及び報酬を支給することとし、軌条上の車両の運転等に関する業務上の過失刑事事件の特殊性に照らして、その審理には、専門委員の立ち会いを要件といたしました趣旨から、これらの費用は、国庫が負担することといたしました。 第十三条は、刑事訴訟法との関係を明らかにいたしました規定でございまして、この法案に規定する過料、費用の賠償、決定及び即時抗告に関しましては、刑事訴訟法の規定を準用することといたしました。 第十四条及び第十五条は、罰則でございまして、刑法におきまして証人、鑑定人に偽証の罪が規定されておりますように、専門委員がことさらに真意と異なる意見を述べましたときには、三カ月以上十年以下の懲役に処することといたしました。 附則第一項におきましては、この法律は、若干予算を伴う関係上、昭和三十七年四月一日から施行することとし、ただ、専門委員指定のための手続を規定しました第五条だけは、この法律施行前に準備されることが必要でございますので、公布の日から施行することといたしました。 附則第二項は、経過規定でございまして、第四条におきましてこの種の刑事事件には、最初の証拠調べの決定があった後は、原則として専門委員を審理に立ち会わせなければならないことになっていますので、この法律施行前に、すでに最初の証拠調べの決定があった事件につきましては、この法律を適用しないことといたしました。 以上で、逐条の説明といたします。
○委員長(松村秀逸君) 以上で逐条説明は終了いたしました。 これから質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○井川伊平君 提案者に私より数個の事項にわたりましてお伺いいたします。 本提案の理由は、近年非常に多くなっておりまする軌条上のいろいろな車両の運転に伴いまする過失が刑事事件となる場合が多いのでありまして、しかもそれは、専門的なあるいは長い経験を有しておる者の意見を聞かなければ裁判所の審理ができないというようなものが多々あるという点は、私どもにも了解がつくわけでありますが、しかし、今日科学や技術が非常な勢いで伸びて参っておりまして、これ以外のすべての犯罪につきましても、手段方法、きわめて複雑になっており、裁判所の実例によりましても鑑定をしなければ、原因をつきとめ得られないといったような事件が非常に多いことは事実でありまするし、御了承も賜わっておると存じます。そうしたところにおきまして、特にこうした事件だけが専門家ないしは経験者の意見を聞かなければいけない。もしそうだとすれば、すべての犯罪について、犯罪別に専門の学識であるとかあるいは経験を有する者が立ち会うという一般的な制度にするというような考えになるんではないかと存じますが、特にその他のものは顧みないで、この種の事件のみにこうした制度をとろうとする特別の事情はどういうものであるか、お聞きしたいと思います。
○委員外議員(小酒井義男君) 御質問のありました点については、実はこの法律を考えました当初、いろいろ議論をしたところでありまして、たとえば業務上の過失刑事事件ということになりますと、工場内に起こった問題であるとか、あるいはたとえば医師が誤まって事故を起こした場合とか、いろいろあるわけであります。そういう点で業務上の事故ということになると、この範囲はお説のようにきわめて広範なものに及ぶわけでありますし、また、交通事故にこれを限定をいたしましても、陸海空、非常に多様な交通機関が起こす事故というものが非常に多いわけでありまして、それらの点をどうするかという点を検討をいたしたのでありますが、この軌条上に起こる交通事故というものは、たとえば車両の性能であるとかあるいはその事故発生当日の天候あるいは気候の関係であるとか、あるいは軌条あるいは電気等に関連を持つ点において起こる複雑性、こういうようなことを考えますと、この軌条上における事故というものを、まずかかる手続をとっていただく必要があるであろうと、それでは、そのほかのものはこういうことは考えなくてもいいかということには私はならぬと思っておりまして、この手続が裁判の方法として成果を上げる、結果的に非常に公正な判決を生み出すということになれば、その他の業務上のこうした事件に対しましても、これと同じような方法が考えられてもいいんじゃないか、かように考えておるわけであります。
○井川伊平君 今のお答えのうちで、この法案を法律として実施してみて、裁判所の事件の審理に非常に好都合であったならば、他の犯罪の種類のものにもこういうものを適用するという御意見がありましたが、その御意見それ自体が、提案者の方におきまして、これが必ずうまくいくのだという確信がないことを暴露しているように聞こえる。うまくいくとするならば、ほかの犯罪の種類にこういう同種の法律を作るであろうというふうにごらんになることは、この提案自体に御自信がないように聞こえますが、それはいかがでございますか。
○委員外議員(小酒井義男君) 提案者といたしましては、これは成果を上げるであろうという実は自信を持っておるのでありますが、全体的なものに及ぼすということになりますと、非常に問題が大きくなりますから、まず試験的といいますか、とにかくこれを実施をしてみることによって、それらのことが実証されてくると、こういうふうに考えておるわけです。
○井川伊平君 私が聞くのはその点でありまして、試験的にやってみるということは、これを実施した結果、必ずうまくいくのだという確信がないから試験をしてみてという言葉があるのじゃないか。言いかえれば、もう少し研究の余地が残っておったのじゃないか、こういうことを聞いておるわけなんです。
○委員外議員(中村順造君) 提案の人の中村でございますが、今の御質問でございますが、私が補足して申し上げますと、まず初めに一般の犯罪とどうかということでございますが、これは業務上の過失だ、こういうことを一つ冒頭お考えをいただきまして、しかも軌条上における一つの取り扱いの措置だ。そこで自信がないのではないかというお尋ねでございますけれども、従来、お手元に差し上げておりますが、私どもの出しております資料に基づきましても、こういう軌条上における業務上の過失事故というものは、大体昭和二十六年の四月から三十四年の十二月までに大体調べたものが五十二件あるわけでございます。そして現在公判で争っておるものも約十件ばかりあるわけでありますけれども、そういう事実から照らしまして、経験上どうしてもこういう一つの裁判のあり方、この種の事件に対する裁判のあり方では当事者としては満足できない、こういうことで、今のやり方を一つ改善をして、専門的な視野から事故そのものを十分掘り下げて検討をしていくこと自体が、将来の交通事故をなくする、原因を究明してなくするということにもなりますし、そういうことを考えまして、むしろ将来の自信と申しますより、過去の実例に照らして、そのやり方を改める、こういった考え方でございます。
○井川伊平君 実はこの業務上の過失によります軌条上の車両の運転に基づく犯罪あるいは過失でありますが、そういうような犯罪の数は非常に多くなっておりますことは、ただいま申された通りであります。しかし、他の犯罪を考えてみますると、これはあとから裁判所にお伺いをいたそうと思っておりますが、人命をそこなうところの犯罪ですね、殺人罪であるとか、過失殺であるとか、あるいは傷害致死であるとかいうような、人の行為によりまして故意または過失に基づきまして人命を失う事件は非常に多い。これは車両の運転に関する業務上の過失に比べることのできない非常に多い数字だと思いますが、これはあとで数字を裁判所の方にお伺いいたしますが、そうしてそれらの事件は、ほとんど例外のないように死因の研究は裁判官にはできない点が多いので、解剖し鑑定しておる次第であります。外部から見えたある一つの事柄が死因であるように見えても、ちょうどそのときに脳溢血が起きたかもしれぬし、心臓麻痺が起きたかもしれぬし、また、解剖して研究してみればその他の原因があるかもしれない。だから生命を奪うような事件は、過失であろうが、あるいは故意であろうが、ほとんど例外ないといっていいくらいに解剖し鑑定することが必要になってくる、こういう事実からいえば、先ほど申された車両のいろいろな組織の問題であるとか天候、電気こういうものの総合的知識や経験がなければその事件の真相を裁判官がつかみ得ない――それは事実かもしれませんが――つかみ得ないものならば、数年間に五十二件どころじゃない、一年間でも非常な大きな数字になる。人命に関する事件等についてのお考えはお持ちにならないで、単にそうした事件だけにそうお考えになるということは、あまりものの一部分をつかみ過ぎて全部を失っておるような感じがするのでありますが、まずこういう面について、これを度外視せざるを得ない事由、今回それを取り上げることができないで、そんなものはあと回しでいいのだ、まず第一には今言った、この問題を取り上げなければならないのだという特別な慕情がありますれば承りたいと思うのであります。なお、今人命を失うと申しましたが、傷害事件につきましても同様のことがいわれると存じます。それから火災の原因につきましても、これはもう火をつけてはっきり焼いたということがわかる場合はいいけれども、失火であるか放火であるかわからない。失火の原因が何であるかというような問題につきましても、これは裁判官は原因を法律知識だけではつかみ得ないのであります。そのほか、先ほどのお話しにもありましたけれども、水上における艦船の運転に関しまする過失に基づいてのいろいろのこともあるようでございますね。先年は洞爺丸の被害につきましても原因がどういうところにあるかという非常にむずかしい問題もございましたし、それから毎年学生生徒等が修学旅行の際に連絡船等が転覆いたしまして、非常なたくさんの被害を生じている点もある。これらは業務上の過失に非常に関係がある。既存の法律によって見ますれば、刑法の百二十九条によりましても、あるいは二百十一条でございましたかによりましても、汽車、電車のほかに、必ず交通機関としては艦船というものがつけ加えられておりますね、だから交通機関であっても、そして非常に大きなそういうような人の目を驚かすような事件のたくさんある艦船についての逆転、操縦、そうしたものの過失の場合を考えてみて、これはやはり被判官の法律知識だけでは何ともしようがつかぬのだということは、汽車や電車の場合と選ぶところはなかろうと思うのでありますが、これを特に区別する理由はどこにあるか、こういうことでございます。最近は飛行機の問題もだいぶございまして、この間も、四日の日でございましたか、北海道で自衛隊の飛行機が演習をしておって、天候が非常に険悪になったので基地に帰る。無事に帰った者と帰らぬ者がある。同じような種類の飛行機を操縦しておっても、二部の者が帰って二部の者が帰って来られない。そこに操縦者の技術上の巧妙なのと拙劣なものがあるのではないか、こういうように、飛行機を別にして、考えられますが、同じ一つの飛行機の操縦者でありましても、その操縦者が技術上非常にまずいものがある、あるいは技術上過失があるかどうかというような問題は、絶えず研究せねばならぬ問題だ、事故のあるたびにしなくてはならぬ問題だろうと存じますが、こういう問題で、裁判官の法律知識で過失があるない、こういうことはきめ得られないもので、やはりこれはどうしても専門的な意見を聞かなければならないことであります。こういういろいろのことを考える場合に、そういうような業務上の過失のことは問題にしなくても、とりあえず軌条の上を走るところの車の操縦、運転、こうしたものの過失のみを取り上げていかなければならぬというのが、特別に何かそういう事情があるんでございましょうか、承っておきます。ほかのものと区別して、比較して、お話しを承りたいと思います。
○委員外議員(中村順造君) 第一の御質問でございますが、これは、やはり御質問を承っておりますと、一般の犯罪、特に故意に犯した罪だとか、こういうものと今日まで事実混同されておるので、これを逆に、交通事故、しかも軌条上の交通事故に限定して、そうして人命あるいは傷害、さらに車両の破損だとかあるいは交通の妨害だとかいう、こういう従来取り扱われておりました罪名の審判をする場合に、これによって審判をする、こういう考え方でございます。従いまして、故意に犯した犯罪というものは、従来考えられておりましたような考え方でなくして、全然別にこれは区分けをして審判を願わなければならぬ、こういうことでございます。それから海上のことについてお話しがございましたが、これは先生も御承知だと思いますけれども、海には海難審判所がございまして、海の事故につきましては、ほぼこの法案を提出するような事態が、すでに長い間既成事実としてできておりまして、海上における交通事故、これにつきましては、ここにいわれておるところの専門委員というようなものでなくして、まだまだ権威のある裁判が行なわれておるように私どもは伺っておるわけであります。専門的にはあとで法制局の方から補足の説明をお願いしたいと思いますが、そういう陸上と海上とは違いますけれども、海上のそういう海難、審判所のようなものの考え方で、陸上の、しかも軌条上における交通事故については、業務上過失ということについては、こういう裁判をお願いしたらと、こういう考え方でございます。それから飛行機の話しがございましたけれども、これもお説のようにいろいろ高度な専門的な技術を有して判断することが望ましいと私は考えます、まして、飛行機の事故は割方少なうございますけれども、自動車の事故などは、御承知のように最近ひんぱんに、非常に数多いわけでございますけれども、これらの問題は非常に原因が多岐にわたりまして、なかなか専門と申しましても、はたして専門の分野だけで解決つくかどうか、こういうところに大きな問題があると思います。飛行機の方はきわめて高度な技術的な判断を必要とし、自動車の事故の力は、よって来たる原因が業務上の過失と限定した場合に、それに該当した事故が一体どのくらいあるのか、一般の事故が非常に多いようでございますけれども、自動車事故については、よって来たる原因が非常に多岐にわたるから、こういう法案で全部これを一括してやるということは事実上困難ではないかと私は考えておるわけであります。
○委員外議員(小酒井義男君) ちょっと補足的なことを申し上げたいと思うのですが、自動車の事故が、今説明をされましたが、私ども自動車の事故というのは比較的単純といいますか、事故の原因を判断するのには軌条上の事故と比べると単純な点があるというふうに考えているのです。軌条上の事故はそれ以上に複雑な内容を持って発生するものであるという、こういう理由から、自動車と軌条上の事故というものを少し区別してもいいのじゃないか、こういうふうに考えているわけです。 それから航空の問題については、やはりおっしゃっておりますように、これも専門的な知識を必要とする内容を多分に持っていると思いますから、将来はやはりこれと同じような性格のものを設けられることが必要ではないかというふうに考えております。 それから従来の裁判に対する考え方でありますが、非常に多くの件数を扱って多忙な裁判官がこういう専門的なことまで研究をせられるということは、なかなか容易なことではないと思いますし、鑑定人でやっている場合には、これは私などから申し上げるまでもなく、御承知の通り鑑定人の果たす役割というものは、ある程度限定をされているわけなんで、それよりも、もう少し自分の意見も述べられるというような立場の制度ができれば、その事故に対する内容の解明が十分専門委員を通じて行なってもらえるであろう。その解明した意見等を取り上げて判決が行なわれるようになりますと、今よりもさらに一そう完全な判決の内容が作り上げられることになるであろうという、こういう私どもは考え方をいたしているわけなんです。
○井川伊平君 ただいまのお話しを聞きまして、自動車に関しましてこの制度の中に入れなかった理由が、お二人の意見が違っておりますけれども、先には自動車の事故、過失による事故は多岐にわたるから専門の技術それから学識、そういうものの人たちをあらかじめ特定することが困難だという御趣旨であり、あとの方の御説明によりますと、自動車の過失の事故は単純であるからその必要はない。これは矛盾したようにわれわれの方には聞こえるのでありますが、統一していただけませんか。 私は、自動車による事故だって必ずしも単純とはいわれないと思います。ことに、これも先ほどの船の場合と同じように、生徒などを連れて観光地帯などを回っている、そうしたようなバスなんかが谷に落ちたりして、えらい目にあっておりますが、あれは運転上の過失であったのか、道路の幅員が狭いのか、舗装が不完全であったのか、そういうようなところがぎりぎり決着のところまできているのではないかということを考えますれば、必ずしも単純とはいわれないのではないかと思いますが、単純なことは、裁判官でそのくらいのことは一元してわかるであろうという御趣旨のようにも聞こえるが、はたして単純であるということが言い切れるかどうか。また、だからこれが非常に多岐にわたっているとするならば、その多岐の範囲で専門委員の選定を高等裁判所の方に注意をすれば足るのであって、高等裁判所の方では、それが多岐にわたるからもう仕方がない、投げていくほかないというようなお考えをとらなければならぬという根拠はどこにあるか。どちらにいたしましても、非常にむずかしい問題だと存じますが、納得がいかない。統一して理解できるような御説明を願いたいと思います。 それから先ほど、別のことでありますが、故意の犯罪についてはとにかく、業務上の過失による場合にこういう特例を先に設ける必要があるのだというのですが、その理由はどうしてものみ込めない。故意によりまして、故意の被告のために考えてみましても、何だ、過失の場合は制裁はきわめて軽い、三年以下の禁固、千円以下の罰金、こういうような軽い犯罪についてもあのように専門委員までつけて真相を究明してくれるのに、われわれの責任は重いのに、裁判官がしろうとでこうしたような専門委員をつけてくれないんだといったような不平がないか。二部の人が満足しても、他の者が必ず不平を抱くようでは、そういう法律はいい法律とはいわれない、こういうふうに思うのでありますが、どうしてもこれだけぬきんでてやらねばいかぬ、放念犯などはがまんしてくれとかいうような、こういう点の根拠を、もう一ぺん聞かせていただきたいと存じます。 それからもう一つの別の点でありますが、先ほどのお話しで、専門委員の性質、性格の問題でありますが、一方からいえば法廷の鑑定人の性格があろうと思います。裁判官が裁量によってきめるところの鑑定人じゃなく、法律できめておく鑑定人だというそういう証拠方法としての立場があるというふうに考えますが、同時に、初めからしまいまで大体ついておらねばならぬというところを見ておりますと、当事者の性格が現われてくると思うが、この性格があい永いではないかというように考えますが、この点はいかがでございましょうか。 それからもう一点。先ほどのお答えの中で、裁判官が非常に忙しいから、それでこの問題については特に専門委員を設けてやるんだという御趣旨があったが、ほかの事件は裁判官が忙しくてもかまわないが、これだけは裁判官が忙しいから困るんだと、これだけぬきんでておっしゃるのはおかしいではないかという気がいたしますが、お伺いいたします。
○委員外議員(中村順造君) 同じ発議者の意見が違っておるという御指摘でございますが、私の言葉が足らなかったかもしれませんが、私が申し上げたのは自動車の交通事故というのは非常に数が多い、しかもその原因ということを考えますときに、それがはたして業務上の過失かどうか、あるいはその運転者個人の一つの失策か、こういうことが非常に複雑だと、その判断が。こういう裁判をする、その中に含めることの判断が非常に複雑だ、こういうように申し上げた。まあ小酒井議員の方の御判断は、またあとでお話しがあろうと思いますが、これは私が聞いておりましたのは、いわゆるその事故そのものは、自動車は、事故そのものから見れば、一件々々を比較すれば単純だ、軌条上における事故は非常に複雑な原因、要素があって事故になるんだ、自動車の方では横から子供が飛び出てもこれは殺人になる、こういうような非常に単純でありますけれども、少なくとも軌条上における事故というものは、なるほど飛び込んで事故になるものも殺人にはなりますけれども、大体飛び込んでいけない場所でございますし、一方は道路でありますから、横から常時人が出るということを予想して運転する、そこにやはり一つの事故を取り上げて見た場合に、自動車事故は軌条上における事故よりか単純である、私の申し上げたのは件数、原因、それからそれになお業務上過失かどうかということを判断の中に入れた場合には、非常に複雑で繁雑多岐にわたる、こういうことを申し上げたわけであります。 それからこの性格については、これは専門的になりますので、あとで法制局の部長さんからお願いいたしますが、どうも質問では、一般の故意の犯罪でございますか、殺人犯と軌条上における交通事故によるいわゆる人命の喪失ということは、区別をして考える必要はないんじゃないかという御質問のように承るのですけれども…
○井川伊平君 殺人だけに限りません。
○委員外議員(中村順造君) 傷害でも殺人でも私どもはむしろ区別をして考えるべきだと、一般的にこれを全部――たとえば殺人犯と、あるいは結果的には人命の喪失ということになりますけれども、よって来たるものと。一方は、あえて相手の人を殺すという考え方でやったわけでありまして、一方は、それは全く不本意で、まあ法律上どういう言葉になるか知りませんけれども、不本意な事象としてできた事故だということでございますから、その裁判のあり方、さばき方にもおのずからそこに明確な取り扱いが出てくるんじゃないか、こういうことでございます。 それから裁判官が忙しいというお話しもございましたけれども、これは従来の実例から見まして、この種の事故は非常に裁判が長期にわたっておるわけでございます。先年起きました参宮線の事故あたりもまだ一審の段階でございます。三十一年の十月十五日に起きた事故でございますが、まだ一審で、当分判決の下される見通しもない、もうすでに五年になんなんとしておりますけれども、これは慎重に裁判をお願いすることはけっこうでございますけれども、一方の被告の立場から申しますと、これは鉄道の機関士でございますけれども、三十年勤めておる間に約十年間あるいは七年、八年、少なくとも五年以上の長期にわたる裁判を、被告として争う、こういうことになりますと、やはり全鉄道の準城中に少なくともその五分の一以上のものが被告の立場に置かれる、こういうこともございまして、裁判官がお忙しいということは、やはり何とかしてこういう業務上の過失事故でありますから、なるべくりっぱな結論を早く出していただく、裁判の技術士でございますから、そのためには裁判の進行について側面から一つお手伝いをする人がおってもいいんじゃないか、これは私どもの平易な考え方でございますけれども、そこに問題の考え方の出発点があるわけでございます。
○法制局参事(菊井三郎君) ただいま専門委員の性格について御質問がございましたが、この法案の内容におきましては、専門委員の性格につきましては、専門委員は証拠方法として常時公判に立ち会って事故発生の原因を究明し、裁判所の尋問に際しては技術的事項についての意見を述べるものと規定されております。そしてその意見は、「鑑定の経過及び結果とみなす」と規定されておりますが、このことは、専門委員をもって証拠方法であるということを規定しておるものと解釈できるのでございまして、専門委員は人的証拠方法であるというように考えて立案いたしたつもりでございます。
○井川伊平君 私は一般の故意犯についての必要を認めない理由を聞いておるわけでございますが、その点はそれでいいと存じますけれども、事件は初め故意犯として起訴されたものが、調べの結果過失犯になる場合がある、過失犯として調べておったものが、とんでもないものが出て故意犯になる場合もありますね、だから、判決は過失で判決になりましても、起訴の場合は故意として起訴されておる場合がありましょう、そういうことから考えてみれば、被告は、おれはどこまでも過失であったとがんばっておるが、検事の方は、それは未必の故意でやったんじゃないかというようなことで、故意犯として起訴された場合はどうなるんですか。そうして結果からいえばそれは過失犯の判決があったといった場合、そういう場合はどうなるんでございますか。
○委員外議員(中村順造君) 私は法律の専門家でございませんけれども、それは出発点が故意か過失か明確でないということは、起訴する場合に別な角度から判断がされるべきだと思う。私ども申し上げているのは、明らかにこれは初めから業務上の過失事故とはっきりわかったものを対象にしておるわけでございますから、そこにはおのずからやはり違った形が出てくると思う。
○井川伊平君 そうしますと、本人は、おれはどこまでも過失であったんだと、発生した事実は認めるけれども、私の全く気のつかないことだったと言うておる、検事の方はまんざら気がつかないとは言われまいと、そういう結果が発生することについては、希望はしないまでも、およそ認識はあったんでないか、こういうような観点から、過失ではない、故意だということで起訴した、本人はどこまでも過失であるとがんばっておる、そういう事件は非常に多いでしょう、そういう場合には専門委員はつけないんですか、そういう場合もつけるんですか、どちらですか。
○法制局参事(菊井三郎君) この法案では、起訴する際に軌条上の車両等に関する業務上の過失刑事事件に該当するものにつきまして専門委員をつける、こういうことになっておるわけでございます。そこで、たとえば殺人で起訴いたしましたといたしましても、それが公訴事実の範囲内において訴因または罰条の変更、こういうことになって、それが業務上の過失刑事事件になって参りますならば専門委員をつける、こういうことになります。従いまして、殺人で起訴して、そのままの状態では専門委員はつかないことになるわけでございます。
○井川伊平君 そうしますと、検事は、殺人ならかりに殺人罪とする、起訴された本人の方は、業務上の過失なんだ、こう言って強く主張しておるのに、起訴状に基づいて、これが業務上の過失ではないのだということがはっきりしているからというて専門委員をつけないということは――その事件がほんとうに業務上の過失であるかどうか、過失になるのか殺人罪になるのかということの認定をするのに専門委員の必要があるのじゃないですか。業務上の過失にきまっておることなら、もう必要がないのじゃないですか、きまらぬからこそ専門委員の必要を感ずるのではございませんか、いかがですか。
○委員外議員(小酒井義男君) 業務上の過失ときまっても、やはりその真相を確かめ、事実、原因等を確かめる上に専門委員を置いてやることがよりいい結果が得られると私どもは思っておるのでございます。
○井川伊平君 どういうわけでしょうか。
○委員外議員(小酒井義男君) おっしゃっておる業務上か故意かというそういう判定の場合の見解がどうかという御意見も一つありますが、もう一つ、業務上の市政だ、業務上の過失事件だとわかっておっても、その真相を確かめる上において専門の知識を持っておる者の意見を聞くということは必要だと出行えております。
○井川伊平君 それはこのあとの条文を見ましても、本人が業務上り過失だということを認めた場合、いいですか、そういう場合で、裁判所は特別の必要がないとすれば、専門委員をつけなくともできる、こういうのでしょう。だから、実際いうと、そういうことを認めない場合に、本人は殺人なんて認めないのだ、業務上の過失だと言うけれども、検事の方では――裁判官が専門知識がないように、検事もそういう面について専門的知識がない。だから――過失ではない、故意の犯罪だと言って起訴した。はなはだけしからぬと言った場合、これが過失であるかどうか、検事や判事でなしに、専門委員の意見がそういうところに加わってきまして原因がはっきりするという必要がないでしょうか。本人が初めから過失であるという事実を認めておるのだとすれば、裁判官は専門委員を用いないでおくことができましょう。そういうことから考えてみた場合に、どうですか、争いのある場合にこれは必要じゃないのですか。
○委員外議員(中村順造君) どうも私は、一般の放念の犯罪と業務上過失ということについては、まだ御趣旨はよくわかってないのですが、ただ、本人が業務上過失と認めた場合には専門委員の必要がない、こういうようなお話しでございますが、従来の経験からいたしますと、この出した資料にもございますけれども、そういう場合に略式命令ですぐそのままそれに服するということもございます。これはお説のように本人も自分の業務上の過失だ、それからもう一つ、業務上の過失であるかどうかという争いがある、同時に、何と申しますか、刑の量によってやはりそれが適正であるかどうかというところに問題が残ってくるわけであります。なるほど、私は業務上の過失事故を起こしましたと、しかし、これがいわゆる懲役六カ月に相当する罪であるかどうかというところに、やはり専門委員の判断を求めなければならぬ場面が出てくるわけでございます。そういう刑の量についても不服もない、それから明らかに業務上の過失だ、こう認める場合には、従来のやり方では略式命令、あるいは一審の判決に服する、こういう実例もございます。だから争いのあるところの一つは、業務上過失ということがはっきりして、一つはこの裁判の審理の中で、こういう裁判を進められたのでは非常に重い罪が判決として出るのではないかということでございます。また結果的に出る場合もございます。出たものに服しなければならぬ、こういう考え方が常に裁判の進行過程において伴いますから、そこで被告の立場としては、これは一つ専門的な知識をもって判決の中に、御判断の中に入れていただかなければならぬ、こういう趣旨からこの案が出ておるわけであります。
○井川伊平君 今までの話しは、この法案が適用される範囲を運転とのみ申しておりますが、法文の第二条を見ると、運転だけではないのですね。「運転、線路又は車両の保全」というようなのもありますね。それから「運転保安装置の保全又は、取扱い」とありますから、車を運転しているだけじゃなしに、各駅でこつこつやっている車の検査なども含まれるだろうし、転轍機の問題も含まれるだろうし、赤い旗や青い旗を振っているのも入りましょうし、その他いろいろなものが入ってきますね。そういうようなものをも考えてみると、これが故意になされたか過失によってなされたかということは、ストでもかりにやっているときに、胸くそ悪いといったような二とで、何をしでかすかもわからぬ、あるいはするようなことの気持になるかもしれない、検事はそれを意思があって故意にやったのだと、本人は冗談じゃない、全く私の過失のことでございましたといったような場合、この専門委員つけてやらなければかわいそうなんじゃございませんか、いかがですか。そのままうっちゃっておいていいんですか。
○委員外議員(中村順造君) お説のように、これはただ逆転の立場からだけではございません。資料の中にもございますように、先般の桜木町の事故あたりもこの判決の資料の中に入っておりますが、これは電車の架線をそのままに保持をするといういわゆるそういう職名の人も対象になりますし、それから踏み切り警手の遮断機の取り扱いが適切であったかどうか、これは割方単純でございますけれども、そういうところはしかし初めからもう原因も明確でありますし、争いもない場合もあるわけです。事故の複雑さと申しますか、単純さと申しますか、そういう面については、必ずしもこの専門委員を必要としない場面も想定はされるわけです。しかしこの提案の本旨というものは、やはり深い争いのあるところにどうしても慎重な配慮が願いたい、こういうことで出しておるわけでございまして、もちろんこれは軌条上でございますから、路面電車も含まれます。それから一般の私鉄あるいは国鉄全部含んで、その上における交通事故がどこから起きたのか、どこから起きてそこが交通妨害になった、あるいはこの汽車を破壊をした、あるいは人命に損傷を与えたか、傷害を与えたか、そのよって来たる原因を調べると、非常に複雑な、いろいろな原因が含まれるわけでありますが、これが判断の中に単純に加えられるということでは非常に裁判の適正を欠くのだ、ここに目的がございまして、御指摘のような、胸くそが悪いからストをやって、これが業務上過失か故意かというふうなことは、毛頭立案の中に考えておらないわけでございます。
○井川伊平君 考える必要があるのではないでしょうか。
○高田なほ子君 関連して聞かせてもらいたいのは、今の問答の中から、私もしろうとだから専門員の方に聞かしてもらいたいし今、故意か過失かというところから問題が発展していったのですが、私の聞きたいところは、この軌道上の業務に関する過失、故意という問題から出ているのですが、ただ、今の軌道法によると、軌道上の事故を防止するために国が特定の機関で監督を義務づけるという条項は、私は不勉強で実はどこにも見当たらない、ただ軌道法の第十三条の「(一般的監督)」という条項があります。この「(一般的監習)」の条項の中に主務大臣または地方長官が必要と認めるときに監査員を派遣して軌道の設備の実情等を監査せしむることを得る、この「監査セシムルコトヲ得」、つまりここでは軌道の設備ですね、この設備等について監査員を派遣して、そしてそれがいいか悪いか、完全であるか不完全であるか、そういう実情を監督させることができると、こういう条項です。私の考え方によると、この軌道法は、人命の安全、輸送の安全を期するために国が責任をもって軌道の設備が完全であるかどうかという点について、責任をもってこれを監督させなければならない、ここに義務があるのじゃないかという考えがするわけです。しかし、現在のこの軌道法の条文から見ると必ずしもこの設備の是非について義務づけておらない。そういうところにこの業務上の過失というようなものが胚胎するので、本法を制定されて業務上の過失という面について国がめんどうを見なければならない、こういうような建前がこの法案の精神に含まれておるのではないか、こういうような考え方を持つわけなんです。ですから、この軌道法における一般的監督と、この法が必要であると、こういうことの関係づけなんです。それが聞きたいのです。どうも専門家でないからよくわからないのですがね。
○委員外議員(小酒井義男君) 今お話しになっておるような監査ですね、これはやっておるのです。それぞれ出先の監督局が定期的に現地に出向いて監査ということをやっております。それで、この法律を出した動機といいますかは、そういうことではないのでございまして、これの少し沿革を申し上げますと、これはもう東京都の交通関係の団体などでは戦前から交通事故特別審判法を制定してくれという、こういうことを考えておったものなんです。それは何かといいますと、やはり交通事故に対して適正完全な判決を出してもらうには、何か専門的な知識を持っておる者の意見を十分聴取してもらいたい。事故の当事者というのは、これは、それぞれ個性がありますから違いますが、運転などの仕事をずっとやっておりますと、とにかく事故を起こしたということが非常に精神的なショックで、十分裁判所、検察庁などへ行って、説明されておる過程で、自分でその理由が説明できないというような人も相当おるわけなんです。そういう状態の中で裁判が進められますから、やはりそれを補うというような意味で、専門的な知識経験というものを持っただれかに述べてもらう、そうしてより完全な判決を出してもらいたい、こういう希望がだんだんありまして、実は私もここの中村議員もですが、そういう交通の直接運転の仕事に携っておる経験者でありまして、そういう立場から、何とかいい法律ができぬだろうかということで、実は数年前からいろいろ法制局をわずらわして、これは原案になったのですが、法制局をわずらわせる前に私どもが研究をした初まりには、実は例の三審法というものを一度考えて、これは素朴な、法律に対する知識が十分でない立場でいろいろ自分の立場だけを考えますと裁判にずっと参画をして、最終的なところまで意見を述べることがしてもらいたいというような希望も実は持っているわけなんです。ところが、今の日本の憲法の建前からいいますと、司法権に裁判官でない者が立ち入るということはできません。そういう点がいろいろ研究をせられて、幾たびか検討をした結果、今回提案をしておる程度でしたら、裁判に対する独立を侵すような内容のものではないし、これだけのことができぬだろうかと、こういうふうなあれでございまして、監督の関係とは直接の関係は何もない。
○高田なほ子君 いやそうじゃなくて、私はしろうとだから、今お答えいただいたのでなく、別の角度から聞いているわけです。今軌道法によると、軌道の設備については、それぞれの主務大臣あるいはまた地方長官が必要と認めるときに、「監査員ヲ派遣シテ軌道ノ設備」「実況ヲ監査セシムルコトヲ得」、こういうことになっておるわけですが、条文からいうと、監査せしめることが義務ではなくして、せしめることができると、こういうことになっている。今、小酒井さんに伺った御答弁によると、確かに監査員というものがあって常時監査をしているのだと、こういう御説明ですが、ただこの条文からいうと、その設備が安全であるか安全でないかという度合いについて、決定的な国が義務を持って監査させなければならない、こういう義務づけた監査ではないのではないか。それはしているでしょう。しているがしかし、そのしている結果が義務としてしているのか、また、ただ義務ではなく監査をしているのか。強い弱いということがあるかもしれません。しかし、責任の度合いということもあるかもしれない、そういう意味でこの条件をちょっと聞いて……
○法制局参事(菊井三郎君) ただいまの御質問の点につきましては、軌道法の十三条、それから地方鉄道法につきましては二十三条に、それぞれ監査の規定がございます。この規定の趣旨をそれぞれの法律全体の体系から考えまして、これは主務官庁としてそれぞれの軌道法による軌道事業あるいは地方鉄道法による鉄道事業というものが健全な運営をしているかどうか、その運営をはかるために、それぞれ監査の規定が設けられたのではなかろうか、こういうように考えるわけでございます。それで健全な運営をはかるというために、監督権の発動としてそれぞれの規定が設けられておる。その監督権の規定をどういうように読むべきであるか。国は義務としてやらなければならないがゆえにこういう監督権の規定が規定されたものか、あるいは権能の面から見て、個人のそれぞれの企業に対して干渉するために設けられた規定と見るべきかどうか、こういう両様の見方の問題がそこへ出て参るわけでございますが、やはり法律に監督権の規定が設けられました以上は、個人の企業に立ち入って監査することが主務官庁として必要だというように考えられるわけでありまして、ただ単なる立ち入ってその監査をすることができるというだけのものではなしに、やはり主務官庁としては「監査セシムルコトヲ得」という反面は、どうしても監査してその企業の健全な運営を主務官庁として考えなければならないのだと、こういうように考えられると思うのでございます。
○高田なほ子君 その点、もう一ぺんわからないところを聞きますがね、運営全体の問題としての監査権であるというお話し、見方ですが、私が聞きたいのは、この軌道法というのは、人を乗せて走るわけですから、どうしてもその軌道が人の生命の安全を保障するに足りるか足りないか、こういうような面についての、国が保安についての義務規定というのは、何だかどこにも見受けられないのです。軌条上の走る貨物でも汽車でもいいのですが、その安全を確保するために国がどうしなければならないかというような義務規定というものは見つからない。全般の運営についてはいろいろの法律で書いてありますけれども、その点を尋ねているわけです。ないのではないかというのです、そういうのは……。
○委員外議員(小酒井義男君) 法律的な点でなしに、実際的な点で私はお答えしたいのですが、そういう点で現場へ出て、そうして車両の状態であるとか、信号の状態であるとか、そういう個々の実情を監査するのですが、実際に。これは帳簿上の運営ということじゃなしに、実地におけるところのその監査をし、それにもし不適当なものがあればそれを直せという命令を出して、そうして直させるというようなことはやっております。
○井川伊平君 一つ、これは法律的なことになるかもしれませんが、確かめておきますが、そうしますと、この法案が実施される場合には、公訴事実が業務上の過失であるという場合に限ってこれは適用されるのだと、こういうのですね。
○法制局参事(菊井三郎君) さようでございます。
○井川伊平君 それから同じところに関してですけれども、初めの改悪犯としての公訴事実であったのが、中間に検事がこれは業務過失というようにその変更をした場合に、その場合には専門委員はいつからつけることになりますか。いつからかつけることになるとすれば、この法案の第何条の規定の適用によってそうなるのか、これを確かめておきたいと思います。
○法制局参事(菊井三郎君) 初め故意犯として起訴いたします場合には、業務上の過失刑事件に当たりませんから、その場合には専門委員を付する必要がないわけでございますが、審理の途中で訴因の変更をして、それが業務上過失刑事件に該当するようになりましたならば、そのときからつけなければならないということになるわけでございます。従いまして、第四条一項の規定によりまして、裁判所は専門委員を立ち合わせなければならぬ、こういうことになって参るわけでございます。
○井川伊平君 四条の一項によるわけですか。それは確かめるだけでございますから、その程度で……。 先ほどの御答弁のうちに、刑量の問題が出ましたですね、業務上の過失を認める、だけれども軽い罰金か何かで済ませることができるものか、非常な重い禁固刑をもって臨まねばならないものか、そういうような点につきまして、刑量の問題についても裁判官の方はそうしたことはしろうとだからこの制度を設ける必要があるのだといいますと、この専門委員は刑量の問題、幾らの罰金に処し、幾らの禁固に処することが相当だという刑量の問題についての発言、進言をする権利があるのかどうか。御承知のように陪審制度が――今休んでおりますが――行なわれていた当時は、陪審員は十二名立ち会って裁判を開くのでありますけれども、それは法律についてはしろうとのことであって、事実の認定、業務上過失と認めるとか認めぬとかいう事実の認定だけについての発言だけでなくて、決定権がありましたね、だけれども刑量の問題については裁判所が全く自由である。ところが先ほどの説明によると、この専門委員は刑量の問題についても意見を述べることができるというような御趣旨であったと思いますが、それに間違いありませんか。
○委員外議員(中村順造君) 私は、別量と申しましたのは、これはもちろん被告の立場で、一口にいえば裁判の適正という表現の方がよかったかもしれませんけれども、事実に照らして申し上げると、やはり同じような事故があるわけでございます。一方では非常に刑が軽かった、一方では非常に刑が重い、こういうことが同じような種類で同じような現象の場合にもありますし、それから今争い中のものでこれは御参考になるかどうか知りませんけれども、資料をお持ちかどうか知りませんが、昭和二十九年の一月十日に越美南線の契機太田で鉄橋上の死傷事故というのがございます。これは子供がたしか鉄橋の上に上がって遊んでおった、それが汽車が来たために飛びおりたために死んだと、こういうようなことがございますが、これがやはり今いった刑量の内容でございますが、これについて第一審では機関士に対しまして禁固六カ月、それから執行猶予は二年ついておりますけれども、そういう内容につきまして、これは不服を申し立てまして、第二審で控訴棄却になったわけです。現在最高裁で上告いたしまして争いを続けておるわけでありますが、これはほんとうに専門的な立場から見て、動機あるいは、もちろん列車でございますからブレーキを切って何メートル走るとか、いろいろな専門的なこともございますけれども、一体、鉄橋の上に子供が上がって遊んでおり、それも機関士の見通しがいいとか悪いとかいう問題に事実上はなると思いますけれども、そういう事件に対しまして禁固六カ月、こういうことは、前例を言ってはあれですが、裁判ではよく判決の前例が問題になりますが、おそらく私どもの聞き及ぶ範囲では、前例のないことだ、こういうこともございまして、もちろん私は、この今言っておるところの専門委員がその刑量に対しまして発言があるとかないとか、そんなことは私は考えておりません。もちろんないのが当然でございまして、これは最終的には裁判長がその刑の内容については何人にも拘束されず御決定をされるわけでありますけれども、その決定をされる一つの大きな御判断の要素にはなろう、こういうことを申し上げておるわけであって、この専門員が刑量の内容にまで発言権がある、こういうふうには毛頭考えておりません。ただ、従来の裁判のあり方、こういうもの、あるいは従来の経験からいたしますと、刑量の内容について被告の立場からして不服がある、こういう実例を申し上げたわけでございます。
○井川伊平君 被告の方から不服があるが、その不服を解くことにはならぬのですね、刑量の問題については。たとえばこの程度の過失だから、これは千円以下の罰金が相当だといったような意見、あるいは相当これは重い業務上過失と認めるから禁固刑に処すべきが相当だと思うといったような意見はつけられないことになる。つけたら、それはどうなる。つけられないことになる、それは。
○委員外議員(小酒井義男君) 法律の目的にもはっきりいたしておりますように、これは「事故発生の原因に関する技術的事項について意見を述べさせる」ということでありまして、それ以上、おっしゃっておるような刑量にまで意見を述べるという立場は先例がない。
○井川伊平君 了承いたしました。先ほど刑量について御発言があったから、異に感じましたので、お伺いいたしたようなわけであります。 それで、さらに聞きますが、先ほど来申しておりますように、一般の犯罪について、過失犯についても故意犯についても、裁判官の法律知識だけでは原因がわからない、だから解剖もし鑑定もする。これは非常に多いわけなんでありますが、今日までそういう鑑定であるとか、あるいは経験にも関係がありましょうが、過去の事実についての鑑定証人というやつもございますね、わしらが扱ったときはこうだった、こういうようなこともあったというようなことも含まれると存じますが、そういうように鑑定とか鑑定証人、そのほか証人、いろいろ証拠方法はございますが、そういうような鑑定や鑑定証人の制度が今日用いられまして、すべての犯罪に、故意犯においても過失犯においても全部用いられておりますが、今日までのあなた方の研究の結果によりますと、軌条上の車両の運転等によりまする犯罪については、今日までの鑑定の結果が不備であった、そのために思わざるところの不利益を被告に与えておるというような実例か何かお持ちになっておられましょうか、いかがでしょうか。
○委員外議員(中村順造君) 私は私の経験から申し上げますと、従来、国鉄の場合が主でございますが、鑑定人制度はございますけれども、こういうような際に鑑定人をつけたというふうなこと、有力な鑑定人をつけた、そのためにどうなった、こういうことは一回も聞いたことございません。それから私の関係いたしました案件につきましては、私どもの感じでございますが、それから弁護士なんかの意向も十分しんしゅくをいたしまして、どういう方向で裁判長に公正な御判断を願うか、これは一つの手段でございますが、特別弁護人制度というのがございまして、全部特別弁護人を申請をいたしまして、特に専門的な技術のある人、あるいはこれは必ずしも第三者的な立場にない人もおりますけれども、そういう手段を用いまして、特別弁護人の申請をして、特別弁護人でその事実の認定を承認をさせる、こういうふうな、これは適切であるかどうかわかりませんけれども、今日までそういう方法でもってやって参りました。
○井川伊平君 私は軌条上の車両の運転に、あるいはその地本法案の第二条にきめてありまする業務に関しまして、その取り調べの際に鑑定を命じたことがあるかないかは存じませんので、これはお役所の方々から裁判所の方かどなたからか承りたいと存じます。それはあとでけっこうですが……。 引き続いてお伺いいたしますけれども、先ほど、こういう事件で起訴されたとすると、おどおどして思うことを言うこともできないということがありましたが、そういうことは何かのお考え違いではございますまいか、すべて弁護士がついており、今お話しになったようなことで特別弁護人があらわれる。そして専門の知識がなければわからぬというようなことがあるとするならば、裁判所は鑑定――現在の法制のもとにおいても裁判所が自分の法律知識でわからぬことは鑑定をしなければならない。その鑑定をした例がないというのなら、鑑定をせぬ方が不都合なんだ、鑑定したという事実がないとすれば、鑑定をするようなむずかしい事実は既存の事実としては全然ないのだということになる。全然ないというのなら、こんな法案は要らぬということになる。こういうことが必要だとすると、くろうとの知識によらなければわからぬことがあるということが前提になる。それならば、過去においてそういう事実があるのに鑑定を用いなかった裁判があるとすれば、その裁判は非常に非難される裁判であると私は考えるが、そういうような非難をされた事実があるかどうか。弁護士がついておるのですから……。これをなぜ鑑定を命ずるか。裁判所が職権によってやる場合もありましょう。あるいは検事が申請してやる場合もありましょう。弁護人自身が申請する場合もありましょう、少なくとも弁護人につきましては、その事件について必要な鑑定だとすれば申請したはずです。した事実があるかないか、事実もないとすれば、そういうことは専門家の知識でやらないで法律知識だけでできることも過去の事実であったということになりましょう。そう考えてみますると、鑑定必要の事実があったならば、その鑑定をしなかった裁判官に非常な落度がある。その糾弾をしなかったその被告人の弁護人というものが非常なるそれこそ過失じゃありませんか。また、弁護人が申請したけれども裁判官が許さなかったというならば、その裁判官を糾弾する道がありましょう。その決定に対して抗告もできましょう。こう考えてみますと、何だか今までに鑑定する必要がない、法律知識だけですらすらといける事件であったのだと、こうおっしゃいますと、私は今日まで専門委員が必要な事件は一つもござらなかったということになると思うのです。この点はどうでありましょうか。
○委員外議員(中村順造君) 私が申し上げ方で何か間違って御理解を与えたようですけれども、私は非常に浅い経験でありますけれども私の聞き及ぶ範囲では、鑑定人を用いたということは聞いておりません。こういうことを申し上げたのでありますから、長い間の歴史でありますから、もちろんこういう交通市政については、鑑定人を用いて争ったことがあったかもしれません。これは皆無とは申し上げませんけれども、私の知る範囲では、ないと、こういうふうに申し上げておるわけであります。 それから裁判の争いの中で、その争い方が適切であったかどうかということについては、これは個々のケースで判断をしなければわからないと思いますが、一審身近かな現実の問題としては、参画線の先ほど申しました事件がございます。これは桜木町でも同じでございますけれども、交通事故というのは一体どうして起きたのかということが、やはり大きな問題にならなければならないと思うのです。そこから起きたいろいろな現象でございます。桜木町のごとき場合は、駅の予備助役が被告になっております。それから大船の電力区の電力工手、これは架線の関係でございますが、これも被告になっております。桜木町駅の信号係も被告になっております。それからもちろん電車の電車運転手も、これも被告になっております。もちろん電力副工手長、こういうものも入っている。そうして焼けた電車は六三型でございます。六三型を作ったものはどうか。これは非常に議論が発展しますけれども、非常に複雑多岐にわたりますから、これはもちろん鑑定人を求め、そのことによってほんとうに公正にやれるかどうか、こういうことが言えるわけでありますが、この参宮線の場合は、これはこの資料には機関士だけか書いてございませんけれども、駅の予備助役や信号係がやはり被告になっております。列車が転覆し、その上に列車が乗りかかって多数の高校生が、修学旅行中の生徒が遭難したわけでありますけれども、そういうものの原因がどこから一体求められるか、これは事実のものになりますけれども、すでに先ほど申しましたように、三十一年の事故で、五年に及んでおりますけれども、なかなか裁判が進んでこないというところに、やはり先生のお説では、そういう問題こそ鑑定人でやってみたらいいじゃないか、こういうように御判断をされるかもしれませんけれども、私どもの聞き及ぶ範囲では、やはり特別弁護人で十分被告の側の立場から裁判長に申し上げた方がいい、こういうことを言っておりますけれども、しかし弁護人というのはやはり被告の側の弁護人でございまして、相手が検事というこの相手のあることでございますから、検事のこの事実についてのいわゆる追及、これをやはり援護する、こういう性格でございますから、まあもちろん公正な裁判長の御判断に取り入れられる場合もあるわけでしょうし、取り入れられない場合もある、こういうようないろいろな面が事実上ございまして、まあ考えたわけであります。
○井川伊平君 ちょっと最高裁の刑事局長さんお見えになっておるのですね、お伺いいたしますが、本法案の第二条にきめられておるような職務にある方々が業務過失をやった場合、それが起訴されて審理中に鑑定を用いた事件は皆無であるかどうか、あるとすれば、それが事件数が幾つについて鑑定を幾らしておるか、それから弁護人及び被告の側から鑑定を申請したのだが、ところが裁判官はそれを許さなかったのだ、そういう事件は幾つあるか、こういうことがおわかりであれば承ります。今すぐわからぬければあとで資料でけっこうでございます。一応御意見を承りましよう。
○最高裁判所長官代理者(樋口勝君) この種の事件につきましては、従来最高裁判所の方に下級裁判所からの報告事項になっておりませんので、詳しい資料はそろっておりませんが、とりあえず調査いたしました結果だけを申し上げますと、昭和二十二年以降三十六年四月七日現在まで刊行されました判例集に登載されました事例、そのほか下級審から注目すべき事件として最高裁の方に臨時に報告のありました事件、そういうものを一応点検いたしたわけでございますが、そのうちで鑑定を用いましたのが、ただいま申し上げた範囲内で九件あるようでございます。それでその中に先ほど御説明のございました事件と存じますが桜木町駅事件、これは電車の車両に火災を生じ乗客を死傷させた、いわゆる国鉄桜木町事件、これだろうと存じますが、これは鑑定を命じておるようでございます。のみならず、これは判例集を見ますると、一番、それから控訴審双方とも鑑定人を採用しておるようでございます。原審における鑑定人中島某及び当審における鑑定人大槻某の各鑑定の結果というのが高裁の判決に出ておるようでございます。そういうわけでございますが、それで、ただいまの桜木町事件の鑑定事項としては、六三型電車の構造並びに霊力関係の設備というようなことが鑑定事項になっておるようでございます。でただいまの御質問のうちで、当事者が申請したけれども裁判所が鑑定を採用しなかった事件がどのくらいあるかということは、ちょっと裁判所の方では資料がございませんので、ただいまお答え申し上げかねます。 以上であります
○井川伊平君 提案者にお伺いいたしますが、まあ事件の数からいえば鑑定した事件は少ないということになりますから、提案者の場合において鑑定をしたことがないとおっしゃっても、私はその言葉を少しも意には介しないですが、むしろ鑑定の少ないことを考え、あるいは提案者の方で鑑定したことがないとさえ考えておったというこの事実は、専門の知識や経験が必要なくして、業務上の過失と判断できる事件が多い方へ分類されるので、こうした法案を通過せしめて、そして経験や知識で判事の頭を練り画さないといかぬといったようなことは、きわめて少ない種類の犯罪だということになりませんか。そうでないとすれば、鑑定を今日までのように用いなかったのは不思議ではありませんか。
○委員外議員(中村順造君) これは非常に感じの問題でございますから、適確にお答えできるかどうかしりませんけれども、一つは、やはりこういうことを考えてみたいと思うのです。非常に弱い者の立場でございますね、なるほど裁判を進める上については弁護人もおる、それから参考人の制度もある、それから鑑定人制度もある、これは若干開き直った言い方になれば、先生の言われる通りだと思います。だからそういう制度があるにもかかわらず、それを使っておらないじゃないか、だから必要ないじゃないかと、こういうふうにおっしゃっておるわけでございますが、弱い者の立場からして、はたしてそういうことが全部その被告の有利な方向になるであろうかどうかということも、やはり判断の中に入れて裁判を進めていかなければならぬと思います。で弱い者の立場という表現をいたしましたのでは、少なくとも二十六年以降今日までまとめられる資料をとりましても、こういうふうな最終的な判断については、あくまでやはり重過ぎるのだ、それから取り扱いがひど過ぎるのだと、こういうふうな、抽象的な考え方でございますけれども、肝心の御質問に対しましては、そういう考え方で物事を判断してやらなければかわいそうじゃないかと、こういうふうな気持がするわけでございます。まあ鑑定人と一がいに申しましても、桜木町の今の一審、二審の最高裁の方でお話しがございましたけれども、どういう鑑定をしたのか私も存じませんけれども、この今聞いた大槻某なんというのは、おそらく国鉄のその当時理事か何かしておった人だと思いますが、これらの――私の推測でありますから当たらないかもしりませんが、二審で使われたこの鑑定人は、国鉄の職員相互間の責任の分野と、こういう面が鑑定されたのではないかと思います。その人の職柄、これは推測で申し上げて恐縮ですけれども、いろんな方向にやはり鑑定がなされるべきだと思いますけれども、その鑑定をした分野というものがここはもうわかりきったことだ、ここはわからないからという、同じ裁判を進めていきます上についても疑問点が何カ所か出てくると思います。その場合に、やはりどうしても鑑定人を要しなければならぬ、総合的に判断をして、この裁判全体の取り扱いとして、やはり専門委員的な立場の者がいいのではないか、こういうふうに、いろいろ裁判を進めていく上の操作はあると思いますけれども、これは個々のケースについて検討してみなければわからぬ問題でございまして、ただ、私が申し上げているのは、全体的にこの種の限られた軌条上における、しかも業務上の過失刑事事件としては、やはりこのくらいの配慮をしてやらなければならぬのではないか、こういう考え方でございます。
○井川伊平君 調べられます被告に同情するという、かわいそうだという気持は私も全く同感なんです。同感でありますが、それは軌条上の業務者の被告に対するばかりではなくて、他の交通機関の業務上の過失についても、あるいはその他一切の業務上の過失についても同じであり、もっと進んでいえば、故意犯につきましてもそれはかわいそうなのはずいぶんありますから、かわいそうだという事情でこの問題を解決すべきではないと私は考えます。これはやはり犯罪の原因の真相をいかにしてつかむかの問題が重点でなければならぬと思う、そう考えてみると、かわいそうだという事柄につきましては、これは問題外にしていただいていいのではないかと思いますが、問題外にできない事情があれば、一つそれらの点と、それからその点はこだわって聞く――言葉じりを取るわけじゃございませんから、簡単でもけっこうですよ、私はしいて聞きたいと思うのは、このことを確かめます、今日までこうした事件に鑑定が用いられない、あるいは用いた例がきわめて少ないという事実は、そのために原因をつかみ得なかった判決がなされておったという、こういう御見解をとるのか、判決の結果はそう間違ってはいないという見解をとるのか、この点を一つ、一か八かのところをおっしゃっていただきたいと思います。
○委員外議員(中村順造君) かわいそうだという私のこの表現ですね、これは非常に適切を欠いたと思いますけれども、少なくとも国の法律として出す以上は、そういう気持はあっていいか悪いか、私存じませんですけれども、大体以前からもあったと思いますが、戦後でございますか、特に人命の尊重ということが非常にいわれまして、たとえば戦争を境にいたしまして、戦前では、軌道上における過失いわゆる傷害あるいは結果的に人が死んだ、轢死した、こういう場合になりましても、これは時代の流れと法律というものはどういう関係があるか知りませんけれども、おおむねその場合は、警察で調弁をとられて、そしてそういう事情だったかという程度で済んだわけであります。それは済んだことがいいか悪いか知りませんけれども……。戦後は、一方では人命の尊重ということが非常に強調されまして、戦前は、たとえば調書をとられる程度で済んだのが、戦後は、これが裁判にかけられて、何らかの刑に処せられる、こういう時代の一つの移り変わりからくる取り扱いもあるわけでございます。従いまして、まあこの点についてはそういう配慮をするべきでない、こういう意見もあろうかと存じますけれども、一つは時代の移り変わりと、いわゆる裁判の進行の過程こういうものも配慮をしなきゃならぬのじゃないかと考えておるわけでございます。
○井川伊平君 私の申しましたのは、それは先ほど申したように、すべての業務上の過失あるいはすべての過失の事件その他故意犯についても同情すべきものではないかと、こう聞いたんですが、すべきものじゃないんです。同情すべきものじゃないんだ。軌条の車両の運転に関するいろいろの職場についてのみ同情すべきものだという御意見ですか。もしほかの事件についても同情すべきものなら、一様にこうした法律は作るべきであって、これだけに作らんけりゃいかぬという特別の事情はわからぬでございましょう。意地悪で聞いているんじゃございませんが、教えていただきたいと思うのです。
○委員外議員(中村順造君) お答えいたしますが、これは逆に私の意見として考えますならば、それでは、こういう考え方は、いわゆる故意犯にも及ぼすべきだ、被告の立場からしてもちろんそれを、何と申しますか、先ほどはかわいそうだということであれになりましたが、それに対してもやはり適正な裁判をすべきだ、こういうことは私も賛成でございます、これはごもっともだと思います。しかし、そういう精神が全体の裁判の中に生かされていける場合といかない場合があると思います。だから、私どもは少なくとも不可能な面は別として、可能な面だけでもそれを取り上げてやったら、この場合、軌条における業務上の過失事件だとすれば、一つの限定されたものだけでもそのことは生かされてくるんだ、先ほど自動車のお話しがございましたけれども、これは非常に広範多岐にわたって不可能に近い、こういうことも考えられるんじゃないかと思います。従いまして、可能な分だけでも取り上げて、りっぱに裁判を進めていかれる、こういうことになれば、これは取り上げてやってよいのではないか、こういう考え方もいたすわけであります。 それから一か八かのお話しでございましたが、これ一かは八かは先生のお説の通り両方でございます。もちろん私だけ答弁申し上げて恐縮ですけれども、いずれもこれは取り入れてやって差しつかえないんじゃないか、こういうふうに考えております。
○委員外議員(小酒井義男君) 町に発議者の方で意見が分かれておるということじゃないんですが、今の中村委員の発言が少し不十分であったんじゃないかというふうに思いますから、あれですが、この法律の建前は、故意犯というものは全然考えておらぬのです。今、中村委員の言われたのは、個人的に何か意見を言われたことで、これとは関係がないということを一つ申し上げたいこと、それからこれ以外にも、そういう制度の必要なものがあるのじゃないかとおっしゃる意見は私もあると思うのです、それ以外にも。あると思うのですが、先ほど申し上げたように、業務上の事故ということにしても非常に範囲が広い、交通上の事故ということにしましてもいろいろあるのですが、まず私どもの考える交通に関係する事故の問題に一応限定して、そうしてこの中で、鉄道、軌道というものの事故にこういう制度を設けてやる、しかしそういう制度が、まだそれよりも以外の制度が必要じゃないかということができてくれば、そういうところにもやはりこれを設けるというふうに進めていく方がいい、こういうふうに私思っております。
○井川伊平君 今の、私は決して言葉じりなんか取っては申しません、もしそういうふうに聞こえたらお許しを願いたいと思うのですが、同じ業務上の過失であり、同じ交通上の業務上の過失であって、軌条上の場合だけの業務上の過失にこういう特別の法を設けるのだということになりますと、それ以外の業務上の過失、それ以外の交通に関する業務上の過失の方々と不平等の立場になりますね、同じ公平な立場に立つのが普通でございましょう。それに二部の業務上の過失だけは特例に扱うのだということは、平等の観念から遠ざかるのではないかということ。これを一つ。 もう一つは、先ほどお答えがありましたが、鑑定を用いない結果、軌条上の車両等を運転する等の行為についての過失を、それは判決がよかったとか悪かったとかということで、よかったのもあるだろうし、悪かったのもあるだろうというのは非常に抽象的ですが、実際はそういう一つ一つの判決を調べて、この判決は今から考えてみれば鑑定を用いない、あるいは判事が原因の真相をつかんでいない、だから粗末な判決だった、この判決はよかったという、個々の判決について十分御研究になっておっしゃっているのか、感じだけでおっしゃっているのか、それを一つ承りたい。私はむしろ感じだけでおっしゃっているのじゃないかといったようなふうにとれるのですが、いかがですか、今二点質問したわけです。
○委員外議員(中村順造君) 私は感じで申し上げているわけじゃございません。やはりここに資料を整えまして、そうしてこの内容についてそれぞれ集まりまして、長い時間かけて検討しているわけでございます。従いまして、個々の面で申し上げて、これは言葉としてはその裁判がどう申しましょうか、適正であったかどうかというところに問題があると思います。もちろんこれは裁判長の権威でございますから、最終的に出されたものについては、もういたし方がないと思います。しかし、はたしてこれが、五十二件ここに持っておりますけれども、これが適正であったかどうかということの判断については、やはり被告の立場からいえば、必ずしもこれは――略式命令でそのまま服した、あるいは二審で服した、こういう部分もあります、ありますが、その他の現在争い中の、約十件あるわけでありますが、それらの点を含めて、やはり適正でない、こういうふうに判断をしているわけなんでございます。
○井川伊平君 被告の立場から言えば、有罪の判決は全部不服です。それは被告の立場からこの判決が正しいか正しくなかったかということの判断は許されないと私は思います。後日その判断を、時を経てもよろしゅうございますが、済んだことだからそれを是正する道はないとしても、これが専門の委員がついておれば、あるいは鑑定を用いておったとすれば、この判決は変わった判決が出るに違いない、それにもかかわらず、専門委員がついていないために、真相をつかみそこなっておって、不当な判決であるという批判は、こうした研究の場合に、これは当然に御発表になっていいことだと思いますから、被告の立場からの意見でなく、提案者の立場からの御意見を承らなければならぬですね。それにつきまして、この判決、五十二件あるうちのどれとどれと――真実調べたとするならば、どの事件とどの事件は真相をつかんでおらぬ事件であったという批判を承らなければならぬことになります。そのお答えは次問でよろしゅうございますから、表ができているのだから、この五十二件のうちのこの与件は専門委員がつかなかったからはなはだおもしろくない、原因をつかまない、真相に合わない判決であったという分類をして、一つ急所だけ書いていただきたいと思うのです。そういう資料をちょうだいいたしたい。
○委員外議員(中村順造君) もちろん資料は御要求がございましたから整えて出します。若干日にちがかかることはお許しをいただきたいと思います。 それからもう一つ申し上げておきたいのでございますが、私が先ほど申し上げました裁判の適正という表現の中には、最終的な判決に対する考え方と、それから裁判の運び方でございますね、いわゆる非常に期間が長くかかるとか、そういう面も一つ含んで、私ども今度それが適正であったかなかったかという判断はいたしたいと思うのです。
○井川伊平君 それをその表に区別して作っていただきましたら、私ども十分研究いたしますから……。なおお伺いしたい点もございますけれども、そういう問題が急所になってくることと存じますし、そうして一般論が終わりましたら、法文についての質問があり、また当局に対します質問もありますから、特別のおさしつかえがなければ、時間もたったし、きょうはこの程度にしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
○委員長(松村秀逸君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(松村秀逸君) 速記を起こして。
○高田なほ子君 ちょっと一つ研究してもらいたいことがございます。それは海上の交通については船舶安全法というのがあって、それでいろいろ輸送について人命の安全を期するためにこういう法律があるように聞いております。それに基づいて海難審判法というものでいろいろの条項を掲げながら公正な審判をすることが法律でもきめられております。それから飛行機の場合は航空法というものの中で、安全をはかるために、第五章の中に保安施設というようなかなり明細な条文が記されております。しかし、国鉄法の場合は、事業の経営の面に対する条章がございますけれども、また、軌道法によっても必ずしも安全を確保するための内容を持ったものが実は出ておらないのです。私の聞きたいところは、国鉄軌道上においても当然安全が確保されなければならないにもかかわらず、それらの規定というものが、私の研究では見つからない。具体的に言うと、船舶安全法に該当するような法律というものはどこにも見つからないのです。従って、陸上輸送に対する、なかんずく国鉄に対する安全輸送を確保するための内容を持った法文がどこにあるのか、これを一つ御研究おきいただいて、この次にまたお知らせいただきたいと思います。
○井川伊平君 ちょっと最高裁の方に資料としてお願いを申し上げておきたいと思いますが、お開き及びのように、五十二件のうちで、この鑑定を用いたのが九件あるというのでございますが、その弁護人側から鑑定を申請して却下された――その鑑定を却下してついに鑑定をしなかったという事件が何件あるか、これを事件の件数でなく、どの事件、どの事件ということについてお調べ願いたいと思うのであります。というのは、今、提案者の方で、この事件は経過及び結果がおもしろくない判決であったということを表を作って参られるわけで、それに一つ一つについて御意見が出るわけでありますから、われわれといたしましても、その一つ一つに、弁護人や被告の方から鑑定を申請したけれども、用いなかった、あるいは弁護人や本人も鑑定を申請しなかったというようなことを、一つ調査する必要が生じて参りました。 それから、これは非常な御迷惑にならぬとすれば、非常に事件が延びた原因はどこにあったか、検事の都合で延びたか、裁判所の都合で延びたか、被告、弁護人の都合で延びたか、各公判期日の延びた理由、それも一つ各事件ごとにお調べを願いたいと存じます。
○高田なほ子君 ちょっと資料を一つ……。刑事局長さんいらっしゃいますか、最近、国鉄路線の上に石――異物を置くいたずらですね、あれがかなり多くなったというふうに聞いております。一部の犯罪統計の中にちょっと見たことがあるのですけれども、私の手元にそういう統計が最近はございませんから、もしあればそういう資料をちょうだいしたいと思います。
○政府委員(竹内壽平君) 軌条の上に石を置いたいたずら事故と思われるのが多くなったように思っておりますが、それは非常に多くなったが、こういうふうに統計上、何年は何件、何年は何件というのは、ちょっと出にくいと思いますけれども、最近の傾向として、そういう異常な事故として報告のありましたものを拾い集めまして御参考に供することはできるかと思いますが、昭和何年には何件というものは、はたしてはっきり出るかどうか、ちょっとわかりません。ただいま資料を持っておりませんので、その程度でよろしゅうございましたら……。
○高田なほ子君 その程度でけっこうです。
○最高裁判所長官代理者(樋口勝君) 先ほどの資料の件でございますが、先ほど申し上げましたように、従来はこれが必要の報告事項になっておりませんので、今手元にはございませんが、各地元の裁判所に照会などいたしまして、できる限り御要望に沿いたいと思いますが、多少期間はかかるかと存じますが、よろしゅうございましょうか。
○井川伊平君 期間のかかるのはかまいません。これは記録が保存されてあればすぐわかることですから、簡単に調べがつくのですから……。
○最高裁判所長官代理者(樋口勝君) これは記録によって調べたいと思います。
○委員長(松村秀逸君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は後日続行することとし、本日の質疑はこの程度にとどめたいと思います。 次回は四月十八日午前十時より開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後一時九分散会 ――――・――――