商工委員会 第7号
- 発言数
- 99 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1961/03/14
会議録
○委員長(剱木亨弘君) これより商工委員会を開会いたします。 本日は最初に、内閣から送付されました石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案及び衆議院から送付されました石炭鉱業安定法案についてそれぞれ提案理由の説明を聴取し、ついで内閣送付の原子力損害の賠償に関する法律案外二案について同じく提案理由の説明を聴取いたします。 なお、右ののち、先般の福岡県田川郡上清炭鉱における災害事件並びに昨年発生いたしました豊州炭鉱の災害についてのその後の経過に関し調査を行なうことといたします。 それではまず、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題として、提案理由の説明を聴取いたします。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び法律案の要旨について御説明申し上げます。 わが国の石炭鉱業が、石炭の販売価格を昭和三十八年度までに昭和三十三年度に比較して千二百円程度引き下げることを目標として、現在高能率炭鉱の造成及び非能率炭鉱の休廃止を中心とする生産構造の抜本的な合理化に努力しつつあることは、御高承の通りであります。 最近、鉱工業活動の好調、渇水等のため石炭の需給がやや好転しておりますが、これにより石炭鉱業の合理化の必要性はいささかも減少するものではなく、むしろ石油の長期的な値下りの傾向からみて、今後一そうの合理化努力を傾注することにより石炭鉱業の安定をはかる必要があると考えております。 石炭鉱業の急速な合理化を進めていく過程におきましては、生産の集約化などに伴ない、相対的な過剰雇用が発生することば避けられないところでありますが、このような過剰雇用をなくして合理化効果を発揮してゆく段階においてやむを得ず発生する離職者に対し、退職金その他の支払を円滑に行なえるようにすることは、ぜひとも必要であると考えます。また非能率炭鉱を閉鎖する場合には、このほかにすでに発生した鉱害を処理する必要があるわけでありまして、今後石炭企業がその事業を整備するために調達すべき資金は莫大な額に上るのであります。 しかしながら、このような事業の整備に必要な資金につきましては、銀行の融資が必ずしも円滑に行なわれていないのが現状でありまして、石炭鉱業の合理化がこの面で制約されるおそれがあると考えられます。このためこのような資金の融資について何らかの措置を講じて、これを円滑化することが特に必要になるのであります。 今回の改正案は、このような考え方に立って、石炭鉱業合理化事業団に、政府出資を行ない、これを基金として石炭鉱業の整備に必要な資金の借入れについて債務保証を行なわせることとしたものであります。 次に本法案の要旨について御説明申し上げます。 第一は、石炭鉱業合理化事業団に、従来の非能率炭鉱の買収業務及び近代化資金の貸付業務に加えて、新たに債務の保証の業務を行なわせることとしたことであります。石炭鉱業合理化事業団が行なう債務の保証は、石炭鉱業の整備を促進するために行なうものでありまして、離職する労働者に対し支払うべき退職金その他の賃金の支払のため必要な資金、あるいは事業を廃止するときの鉱害の賠償に要する資金を石炭業者が銀行から借り入れる場合に、その弁済の保証を行なうことといたしたのであります。なお、石炭鉱業合理化事業団が保証する債務の総額は、保証基金に一定の倍率を乗じて得た額を限度といたしております。 第二は、政府が石炭鉱業合理化事業団に保証業務のため追加出資する場合には、従来からその業務の一つとなっておりました近代化資金の貸付けのための出資と区分して保証基金に充てることを明らかにし、石炭鉱業合理化事業団は、これにより保証基金を設けることとしたことであります。 第三は、債務の保証の条件等に関する規定であります。石炭鉱業合理化事業団は、債務の保証を行なう場合には、石炭業者から保証の委託手数料に相当する保証料を徴収することといたしまして、その石炭業者が弁済期において債務を履行しなかった場合等には、銀行に対してその弁済されなかった借入金の二分の一を石炭業者にかわって支払うことといたしました。 石炭鉱業合理化事業団は、石炭業者にかわって銀行に債務の弁済をした場合には、その石炭業者に対して求償権を取得することとなるのでありますが、この権利の行使の業務は、銀行に委託することができることとし、以後において銀行が回収した金額については石炭鉱業合理化事業団と銀行が折半することといたしております。 第四は、石炭鉱業合理化事業団のこの債務の保証の業務は、昭和三十八年度末までに廃止することとしたことであります。この債務の保証により石炭鉱業の整備の円滑化をはかることは、石炭鉱業の合理化の目標年次である昭和三十八年度まで継続して行なう必要があるからであります。 以上簡単でございましたが、この法律の提案理由及びその要旨について御説明申し上げた次第であります。 何とぞ慎重御審議の上御賛同あらんことを切望する次第であります。
○委員長(剱木亨弘君) 本案の質疑は後日に譲ります。 —————————————
○委員長(剱木亨弘君) 次に、石炭鉱業安定法案を議題として、提案理由の説明を聴取いたします。衆議院議員勝間田清一君。
○衆議院議員(勝間田清一君) ただいま議題になりました石炭鉱業安定法案につきまして、提案者を代表し、その提案理由の説明を申し上げます。 政府はさきに石炭鉱業の合理化について石炭鉱業合理化臨時措置法を制定し、実施してまいりましたが、石炭鉱業の危機は依然として解消せず、むしろ深刻化の方向をたどっております。 この重大な危機をもたらしている原因は、最近の抗術革新によるエネルギー消費構造の変化と、競合エネルギーの無計画な輸入により、石炭需要が相対的に低下していることにあります。しかも政府の石炭鉱業に対する総合的政策の欠除と、炭鉱資本家の無為無策はこうした危機の深化を一そう助長しているのであります。 申すまでもなく高炭価の解決は、わが国石炭鉱業の最大の課題であります。鉱区が錯綜し、賦存地域が偏在しているばかりでなく、生産が弾力性に乏しいという石炭鉱業の特殊性は、わずかの経済変動でも、大きく需給関係に影響し、著しい価格の不安定を招来して、消費市場を喪失するという構造的な欠陥を持っているのであります。 政府は、こうした構造的な欠陥を抜本的に解決しようとせず、昭和三十八年までに十一万名の首切りによる合理化案のみを提示し、資本家は首切りと大幅な労働賃金の切り下げ、労働条件引き下げのための租鉱権への分離政策等一連の労働者への犠牲のみを強行しているのであります。 しかるに炭鉱離職者援護法の施行も「死の町」「飢餓の谷」といわれている炭鉱地帯の失業問題の解消には何ら役立たず、相次ぐ閉山、首切りによる失業者のはんらんは、炭鉱労働者のみでなくその周辺の商工業者の倒産をひき起し、今日、重大な社会問題となっているのであります。 今回、本院に提案されました政府の保証基金の設立も、首切りによる合理化の助長政策以外の何ものでもありません。今こそ、石炭需給を長期に安定させて、しかもコストを切り下げ、雇用を拡大させる政策をとることこそ、今日われわれに課せられた緊急の政治的課題であると考えるのであります。 石炭鉱業の重要性は、今日依然として減じておりません。その一つはわが国将来のエネルギー需要の面から指摘できます。 エネルギー総需要の伸びは、国民経済の成長テンポとほとんど平行して増加の一途をたどり、政府の所得倍増計画におきましても昭和四十五年度には石炭換算で二億八千万トン以上と見込まれているのであります。 このエネルギー需要の驚異的な拡大に対する供給源としての水力はその開発がすでに限界に達し、また原子力にしてもその実用化に相当の曲折が予想される状態において、輸入燃料にのみ依存する考えは間違いでありまして、石炭鉱業に課せられた役割は依然として無視することはできません。 しかも、わが国の石炭は、今日の出炭ペースで進んでも、なお百年以上もの確定炭量を埋蔵しており、国内エネルギー資源に乏しく、また国際収支に弾力性が少ないわが国においては最大のエネルギー源であります。 その二は雇用の面から指摘できます。 石炭鉱業における雇用吸収率は他産業に比して非常に高く、機械工業とともに今後もその傾向を低めるものではありません。 一千万人に及ぶ潜在失業者を有し、年々百万人以上もの生産年令人口の増大するわが国経済において、雇用問題は経済政策の中心課題であり、かかる観点からも石炭鉱業の地位はゆるがせにできないのであります。このように重要なエネルギー産業である石炭鉱業に対して、わずかな資金融通による細々とした近代化計画や、弱小炭鉱の買いつぶし等の消極策で解決できるほど、問題は簡単ではありません。石炭鉱業はすでに資本主義的経営自体に対しても、鋭い改革のメスが加えられねばならない段階にきているのであります。 イギリスにおける炭鉱国有化政策をはじめ、西欧各国とも公有化その他の特殊な経営型態のもとに、国民経済の拡大発展に寄与させるものであります。こうした世界的な傾向から、ひとりわが国だけが遅れたなげやりな石炭政策を進めることは許されません。 従って社会党は、今日石炭鉱業が当面している危機を打開し、構造的欠陥を克服して、これを将来のわが国重要エネルギー源としての要請にこたえさせるため、長期的な展望をもった抜本的対策を講ぜんとするものであります。 まず第一に、石炭の生産過程に対するわれわれの基本的な考え方を明らかにいたしたいと思います。 わが国の石炭鉱業は稼行の進捗にともなって、採掘地域が漸次深部に移行し、坑道の維持、通気、排水運搬等の経費が増加するため生産費の増大をみております。これを最小限度に食いとめ、さらに高炭価問題を解消するためには、合理的、計画的な開発を行なって炭鉱の若返り策が講ぜられねばなりません。 生産体制の集約化はそのための前提条件であります。前近代的な古い生産機構である鉱区の独占はすみやかに排除し、鉱区の整理統合を断行して、炭鉱を適正規模に再編成することが最も肝要であります。さらに休眠鉱区の解放も行なわれねばなりません。これらの諸課題は業者間の自主的解決では不可能であり、法の強制力を必要とするものであります。 第二は、流通過程における整備の問題であります。 石炭の流通機構は昭和年代になってからだけでも、過剰貯炭を処理するために昭和石炭株式会社、戦時中の日本石炭株式会社、戦後経済再建のための配炭公団、そして最近では新昭和石炭等の設立を見ているのであります。このことは単に石炭が重要物資であるためのみでなく、石炭需給関係の調整の困難性を物語るものであります。需給関係を調整し、価格の安定をはかるためには、流通機構の一元化こそ絶対に必要なのであります。 第三は、石炭の需給を計画化し、その安定的確保をはかることであります。 石炭鉱業はその持つ特性から必然的に需給の計画化を要求いたします。しかもその計画化は長期に進められねばなりません。政府は今日、石炭需要の減退に対して縮少生産の方向をとっているのでありますが、これでは問題の高炭価をも解決できないのであります。高いレベルの拡大生産こそ必要なのであります。さらに積極的に新需要の開拓等が講ぜられねばなりません。このためには社会党は固体燃料としての石炭を流体化し、電気やガス等の流体エネルギーに転換して石炭需要の拡大をはからんとするものであります。 以上の見地から、石炭鉱業の当面している危機を打開し、その安定を期するため、本法案を提案する次第であります。 以下本法案の内容を簡単に御説明申し上げます。 第一章、総則は、目的と定義についての規定であります。 石炭鉱業の基幹産業としての重要性にかんがみ、石炭鉱業の継続的安定を期するには、石炭の生産の近代化を推進するとともに、流通機構を整備して、その価格の低下をはかり、その需要を拡大するための諸施策を実施することを目的といたすものであります。 第二章は、石炭鉱業近代化計画に関する規定でありますが、五年ごとに石炭鉱業安定基本計画及び、毎年、石炭鉱業安定実施計画を定め、政府は実施すべき工事に必要な資金の確保に努めるよう規定したのであります。 第三章は、未開発炭田の開発についての規定であります。石炭資源の開発が十分に行なわれていない地域であって、石炭鉱業の安定のためにはその開発を急速かつ計画的に行なう必要がある地域を指定し、基本計画に従って石炭資源の開発計画及び実施計画を定める旨の規定をいたしたのであります。 第四章は、石炭鉱業開発株式会社に関する規定であります。未開発炭田の開発を目的として石炭鉱業開発株式会社を設立し、政府は常時会社の発行済み株式総数の二分の一以上を保有する等のほか、会社設立に伴う所要の規定を設けたのであります。 第五章は、採掘権及び鉱区の整理統合並びに坑口の開設の制限についての規定であります。鉱業権の交換、売り渡し、鉱区の増減については鉱業法に規定するところでありますが、特に、安定実施計画で定めるところに従って急速かつ計画的な開発を行なうために鉱区の整理統合はきわめて必要でありまして、政府は適切な措置をとらねばならないといたしたのであります。坑口の開設についても許可制といたしました。 第六章は、需給の安定についての規定であります。 政府は、毎年石炭関係及び学識経験者よりなる石炭鉱業安定会議の意見を聞いて需給計画を定め、その需給計画に基づいて鉱業権者、租鉱権者に対し生産数量の指示をするものといたしたのであります。 石炭の需要を増加させるため、都市ガス、火力発電、石炭化学等に対し、資金の確保その他適切な措置をとるべき旨の規定を設けたのであります。 さらに前述のごとき観点よりして石炭販売の一元化を行なうこととし、それがために石炭販売公団を設け、石炭の一手買い取りを行なうことといたしたのであります。しかし石炭販売公団が全生産量を取り扱うことは実際上困難でありますので、鉱業権者または租鉱権者をしてその販売の業務の一部を代行させることといたしたのであります。また小口需要については販売業者を指定して、その販売をさせることといたしたのであります。 近代化による生産費の引き下げが価格に反映するために、政府は買取価格及び販売価格を決定することといたしました。買取価格をもってしては石炭の生産費を償うことができないものにつきましては価格調整金の制度を設けたのであります。 第七章は、石炭販売公団についての規定であります。 公団の資本金は百億円とし、政府が全額出資することといたしまして、役員、業務、会計、監督についてそれぞれ規定を設けました。 第八章は、炭鉱補償事業団についての規定であります。 政府の石炭の需給調整措置の実施に伴い、石炭調整金を含む買取価格をもってしても採算がとれなくなったため、事業を休廃止するのやむなきに至った鉱業権または租鉱権者の事業について、採掘権の買収、鉱山労働者に対する救済、鉱業等に対する善後措置を講ずるため炭鉱補償事業団を設置することといたしたのであります。 これに要する財源としては石炭販売公団からの納付金のほか、国庫補助の道も講じたのであります。 離職する労働者に対しては平均賃金の六十日分を支給すると同時に、未払い賃金については債務者たる採掘権者または租鉱権者と炭鉱補償事業団との連帯債務としたのであります。 また鉱業賠償に関する裁定についても必要なる措置を講じました。 第九章は、石炭鉱業安定会議についての規定であります。 この安定会議は石炭鉱業安定基本計画並びにその実施計画の決定、採掘権または鉱区の整理統合、需給計画の決定、生産量の決定、買取価格、販売価格の決定、雇用の安定その他この法律に関する重要事項を調査審議するため、鉱業権者及び租鉱権者、労働者、石炭の消費者、炭鉱所在の地方公共団体を代表する者、学識経験者をもって構成することといたし、これに関する規定を設けました。 第十章雑則、第十一章罰則といたし、法律施行期日は公布の日から九十日以内に政令で定めることといたしたのであります。 以上、この法案の概要について説明申し上げた次第であります。 日本社会党といたしましては、わが国エネルギー源における石炭鉱業の重要性にかんがみまして、石炭鉱業の安定をはかり、もって国民経済の健全な発展に寄与せんとするため、本法案を提出いたした次第であります。 議員各位におかれては、何とぞ御審議の上、本法案に賛意を表されんことを切にお願いするものであります。
○委員長(剱木亨弘君) 本案の質疑は後日に譲ります。 —————————————
○委員長(剱木亨弘君) 次に、原子力損害の賠償に関する法律案、原子力損害賠償補償契約に関する法律案、新技術開発事業団法案、以上三案を便宜一括議題として、提案理由の説明を聴取いたします。
○国務大臣(池田正之輔君) ただいま議題となりました原子力損害の賠償に関する法律案について、その提案理由及び、要旨を御説明申し上げます。 原子力の開発利用を進めるにあたりましては、その安全性の確保が絶対的な要件であることは申すまでもなく、不測の事態の生じないよう政府といたしましても原子炉の設置等に際しましては、原子炉等規制法以下諸般の法令等により万全の対策を講じて参りました。しかしながら原子力の開発利用という現代科学の最先端を行くものだけになお技術的に未知の点があるとされており、万々が一に災害の発生する可能性を理論的に完全に否定することは困難な事情にあるのであります。同時に、原子力の災害が発生いたしました場合には、放射能による被害規模が広範となる可能性をも想定し、また後発性というような特異な放射能障害をもたらす危険性について考慮する必要があるのであります。かかる特殊性にかんがみ、安全性の確保を第一義としつつも、万一の際における賠償制度を確立いたしませぬ限り、住民の不安は除去されず、原子力事業の正常な発展は望むべくもないのであります。国際的に見ても、すでに、アメリカ及びヨーロッパ諸国におきましては、原子力損害の賠償に関する法制が整備または準備されております。 かかる情勢に対応いたしまして、原子力委員会におきましても、昭和三十三年以来鋭意検討を続け、昨年三月には原子力損害賠償制度の確立について決定を行なったのであります。政府といたしましても、すでに、原子炉等規制法の一部を改正し、暫定的に賠償措置を講ぜしめてきたのでありますが、原子力委員会決定の趣旨を尊重いたしまして、ここに本法案を国会に提出することといたした次第であります。 以下本法律案の内容につきまして、その重要な点を御説明申し上げます。 第一に、この法律の目的は、原子炉の運転、核燃料の加工、使用及び再処理等を行なうことによって万一原子力による被害を第三者に与えました場合、その損害の賠償に関する基本的制度を定めて、被害者の保護に遺憾なきを期するとともに、原子力事業の健全な発達に寄与しようとするものであります。 第二に、原子力事業者の賠償責任につきまして民法の不法行為責任の特例としてこれを無過失責任とし、かつ、原子力事業者に責任を集中することといたしております。これは原子力の分野においては、未知の要素が含まれるという実情にかんがみ、原子力損害の発生について過失の存在しない場合も考えられ、また、かりにこれらの要件が存在するといたしましてもその立証は事実上困難と認められるからであります。また、原子力事業者が広範な産業の頂点に立つ総合産業でありますだけに損害発生時における責任の帰属が不明確になる場合が予想される点を考慮したものであります。 ただし、異常に巨大な天災地変等によって損害が生じた場合まで原子力事業者に賠償責任を負わせることは公平を失することとなりますので、このような不可抗力性の特に強い特別の場合に限り、事業者を免責することといたしております。 第三に、損害賠償のための一定の措置を講じない限り原子炉の運転等を行なわせないこととし、損害賠償責任を担保するための措置を原子力事業者に強制することといたしております。この措置は、原子力損害賠償責任保険にかけるか、または供託をするか、あるいはこれらに相当するその他の方法により一事業所または一工場当たり最高額五十億円を限度として損害賠償に充てることができるようにしなければならないこととしたものであります。 第四に、現在の原子力損害賠償責任保険につきましては、その大半を外国保険市場の再保険に依存しているのでありますが、一定の事由、たとえば日本における地震、正常運転等による損害は外国保険業者がこれに応じないという実情にあるため、保険のみをもってしては賠償責任の全部をうめることができない場合があります。このような場合における損害賠償の履行を確保するため政府といたしましては、原子力損害賠償補償契約を原子力事業者との間に締結し、被害者の保護の完全を期することといたしました。なお、この補償契約の詳細につきましては別に原子力損害賠償補償契約に関する法律案を本国会に提出し、あわせて御審議願うことといたしております。 第五に、五十億円をこえる損害がかりに生じた場合の問題であります。 政府といたしましては、このような場合はまずあり得ないと考えておりますが、万々一このような事態に至りました場合は、被害者の保護と原子力事業の健全な発達をはかるというこの法律案の目的を達成するために必要と認めますときは、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において原子力事業者に対し、賠償に必要な援助を行なうことといたしました。 また、原子力損害が異常に巨大な天災地変等によって生じたため原子力事業者が損害賠償の責任を負わないような場合におきましても、政府は、原子力損害の被災者の救助や被害の拡大防止のために必要な措置を講ずるものとして、住民の不安を取り除くことといたしております。 さらに、原子力損害に関する国民的関心、損害の特殊性等にかんがみ、相当規模の原子力損害が発生いたしましたような場合には、わが国原子力政策の帰趨にもかかる問題でありますので、国家的規模において、すなわち国民の代表たる国会の意思が十分反映されるような形態で処理されるのが適当であろうと考えます。このため政府は相当規模の原子力損害が生じた場合には、できる限りすみやかに損害の状況及びこの法律に基づき政府のとりました措置を国会に報告するものとし、また、専門的立場から原子力委員会が損害の処理、損害の防止等につき内閣総理大臣に意見書を提出いたしましたときは、政府は、当該意見書を国会に提出しなければならないことにいたしております。 第六に、原子力損害の賠償につき紛争が生じました場合、その迅速な処理をはかり、被害者の保護に資するため紛争に関し和解の仲介及びそのための損害の調査評価を行なう特別の機関として必要に応じ原子力損害賠償紛争審査会を設置するものといたしました。 以上が原子力損害の賠償に関する法律案の提案の理由並びに要旨であります。 何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことをお願いいたします。 次に、ただいま議題となりました原子力損害賠償補償契約に関する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。 別途御審議を願うこととなっております原子力損害の賠償に関する法律案、いわゆる賠償法案により、原子力事業者に講じさせる損害賠償措置の一部である責任保険は、海外保険市場に再保険している関係等から一定の原因による原子力損害についてはこれをてん補し得ない事情にありますため、責任保険のみをもってしては、賠償措置として完璧を期し得ないのであります。このため政府といたしましては、このギャップをうめ、被害者保護に遺憾なきを期し、かつ原子力事業の健全な発達に資する見地から原子力事業者と補償契約を締結し、民間の責任保険によってはうめられない原子力損害についてこれを補償する制度を定めるものとし、ここにこの法律案を提出するものといたした次第であります。 以下本法律案の要点について御説明申し上げます。 まず、この補償契約により補償する原子力損害の範囲は、地震または噴火によるもの、正常運転によるもの、事故があってから十年以後に賠償請求の行なわれたいわゆる後発性障害及び原子力損害賠償責任保険ではうめられない原子力損害であって政令で定めるものであります。正常運転の際に損害の生ずることは現在の科学的知識では全く予想されないものでありますが、原子力には未知の要因のあり得ることも考慮し、万一の場合に対処したものであります。 次に、原子力事業者が納付すべき補償料につきましては、損害発生の見込み、政府の事務取扱費等を勘案の上、その料率を政令で定めるものといたしております。 第三に、政府は、原子力事業者が、損害賠償措置を講ずることなぐ原子炉の運転等を行なった場合、補償料納付を怠った場合、保安のために講ずべき措置違反等、原子力事業者に義務違反があった場合には、補償契約を解除できるものといたしております。しかしながら原子炉の運転等に伴う危険が直ちには解消しない点を考慮し、この契約解除の通知を原子力事業者が受けてからなお九十日の間に生じた損害については政府は補償するものとして被害者保護に遺憾なきを期しております。また、この解除通知後の損害のほか通知義務違反事項に基づく損害等についても政府は補償するのでありますが、かかる事業者につきましては補償金に相当する金額を後に返還させることとしております。 なお、政府の締結する補償契約の限度につきましては、会計年度ごとに国会の議決を経た金額の範囲内としており、三十六年度予算案におきましては二十億円を予算総則に掲げ御承認を求めておるものであります。 以上が原子力損害賠償契約に関する法律案の提案の理由並びに要旨であります。 何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことをお願いいたします。 なお、ただいま議題となりました新技術開発事業団法案につきまして、提案理由を御説明いたします。 近年、日本経済の発展は、目ざましいものがありますが、これには遺憾ながら外国技術の導入が大きな役割を果たしております。そのため対外支払額は、毎年増加の一途をたどり、昭和二十五年以来の累計は一千億円を突破しておりまして、日本経済の健全かつ自主的な発展の上からも憂慮すべきことであります。このような外国技術依存の体制を脱却し、国民経済の向上をはかるためには、この際、わが国の新技術の開発を強力に推進することが必要であります。 新技術の開発とは申すまでもなく、わが国独自のすぐれた研究成果を開発育成することでありますが、これが企業化に際し不安が大きいために、企業化することに多大の困難と支障を伴うものについて、実際的規模において行なうことをいうのであります。従来わが国には、すぐれた研究成果が少なからずあることは、一般に認められているところでありますが、その研究成果を、産業に導入できるようなところまで発展させ、開発することに遺憾の点が多かったのが実状であります。 英国においては、昭和二十四年に研究開発公社が設立され、国の投資による資金をもとにして、公共的発明を企業化する事業を開始しておりますが、現在は百億円の投資限度ワクに拡大されるという段階にまで発展し、多数の成果を上げております。 わが国では、英国の例などを範とし、昭和三十三年、理化学研究所法施行にあたり同研究所に開発部を設け、新技術の開発業務をも担当せしめたのであります。その業務は、国の研究機関、大学、その他の研究機関において上げられた研究成果のうち、民間企業の危険負担によっては、開発することが困難である重要な新技術を企業に委託して開発するとともに、その開発の成果をできるだけ広く、民間企業に活用させるという新しい事業であります。以来今日まで三年間に三億四千万円の政府出資金で七件の新技術の開発を委託し、そのうち三十三年度に開発を行なった二件はすでに成功の域に達しました。 このように委託開発事業について明るい見通しを得ましたので、より強力にこの業務を推進させるため、この際、理化学研究所の開発部を分離独立させ、新技術開発事業団を設置するにいたったものであります。これが本法案を提出するにいたった経緯であります。 本事業団の、業務は、理化学研究所の開発部で行なってきた事項をそのまま踏襲しております。ただ、事業団として独立するにあたって、従来理化学研究所に置かれておりました開発委員会を開発審議会に改め、諮問機関としての責務を明確にさせる等若干の改訂を加えております。 次に、本法案の概要を御説明いたします。 第一に、同事業団の設立の目的は、新技術の効率的な開発、及びその成果の普及の事業を行なわしめることにあります。 第二に、同事業団は全額政府出資の法人であって、その資本金は三十六年度に予定されている出資金三億円と理化学研究所の新技術開発関係資産約三億四千万円の合計すなわち約六億四千万円であります。 第三に、役員は内閣総理大臣の任命する理事長、専務理事各一人、理事四人以内、監事一人であります。 第四に、開発審議会は、科学技術に関する学識経験者十名以内をもって構成され、新技術開発の基本方針の決定、新技術の選定、開発実施の結果の認定など重要事項について理事長の諮問に応ずることになっております。 第五に、同事業団の業務は、企業化が著しく困難な新技術について企業等に委託して開発を実施すること、新技術の開発の成果を普及すること、新技術の開発についてあっせんすること等であります。 第六に、同事業団は、内閣総理大臣が監督いたします。 第七に、同事業団に対しては、登録税、印紙税、所得税、法人税、事業税、不動産取得税を非課税とする等、税制上の助成措置をとっております。 最後に、理化学研究所から同事業団への権利及び義務の承継についての規定、その他経過規定並びに理化学研究所法の関係条文の改正等を定めております。 以上、本法案の提案理由、及びその内容に関する概要の御説明を申し上げました。 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことを切望する次第であります。
○委員長(剱木亨弘君) 三案の質疑は後日に譲ります。 —————————————
○委員長(剱木亨弘君) 次に、経済の自立と発展に関する調査を議題とし、炭鉱災害問題に関する件について調査を行ないます。
○吉田法晴君 去る九日、福岡県田川郡香春町上清炭鉱において坑内災害が発生し、当時入坑者九十一名のうち七十一名が死亡した事件が突発し、本院におきましても事態の重大性にかんがみ、本会議においても問題が取り上げられましたが、十日参議院より院議による議員派遣として当委員会の剱木委員長と私、他に鹿島俊雄、小柳勇、村尾重雄の三君と計五名が現地に参りまして、つぶさに災害状況を視察するとともに、犠牲者に弔意を表して昨日帰京して参りました。正式報告は別に院に報告することとして、本会議における通産大臣の報告は簡単にして形式的であったという不満も一部にございましたし、災害の原因、対策、あるいは防災努力、監督行政の実情等、福岡通産局鉱山保安監督部から、現地でも詳細な説明を伺いましたが、まだ正確でなかったところもございますし、その後の事情の判明をいたしましたところをあわせて大臣より御説明をお願いいたしたいと存じます。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 今回の災害はまことに遺憾でございまして、その後通産省並びに現地機関において現場に出向きまして詳細調査をしたのでございます。その状況は担当局長から申し上げたいと思います。
○政府委員(小岩井康朔君) 今回の上清炭鉱の災害につきましては豊州炭鉱に続きまして戦後最大の災害を起こしまして、直接の担当責任者としましてまことに申しわけなく感じております。私さっそく現地に参りまして状況を調査して参りましたが、ごく概略を御説明申し上げます。上清炭鉱は福岡県の田川郡香春町にあります字中津原にある上田鉱業株式会社の炭鉱でございまして、三十六年三月九日十一時半ごろ坑内の坑口から四百五十メートルばかり離れておりますところにあります坑内のコンプレッサーが、ここには百馬力と五十馬力と二つあるのでありますが、五十馬力の方のコンプレッサー室の中から火災を起こしまして、当時坑内に入坑しておりました−その後訂正がございまして九十五名になっておるようであります。九十五名当時入坑しておりまして、二十四名がかろうじて脱出して、残りました七十一名が犠牲者となってしまった。災害の原因はコンプレッサー座の坑内火災でございます。労務者は大体三百人余りで、出炭が月三千数百トンを出炭しておるのでございます。 この坑内火災の原因でありますが、目下監査部から監督官が派遣されまして原因究明中でありますが、現在ほぼ原因を究明できておるのではないかという連絡がございますが、まだしかし証拠固めの関係もあり、また検察側の方の指揮も受けております関係で、原因の詳細な内容につきましては、そう長くかからずに判明するという程度にとどめさしていただきたい、かように考えております。災害の概況といたしましては以上でございます。
○吉田法晴君 一応私どもが参りますまでにわかっておった、五十馬力のコンプレッサー座の火災が原因である、こういう点は御説明がございましたけれども、それだけの説明は行かぬ前からわかっておる。それはあなたが行かれるまでもなくわかっておったことであります。 なお、一般に、私どもが坑内に入ってみて、あの程度の火災では七十一名を犠牲にしなくても済んだんじゃないか、こういう感じがございます。これは見た者、あるいは報道陣、その他一般について感ぜられておるところでありますが、コンプレッサー座の火災がどうして起こったかという点は究明に待つとしても、あの火災がどうしてあれだけの犠牲を生まなければならなかったかという経過と、それから措置については何らの説明がございません。直接原因もですが、間接の原因、事故を拡大した原因と経過、それから炭鉱及び鉱山監督機関においてとられました責任について、もう少し御説明願いたいと思います。
○政府委員(小岩井康朔君) こまかい点につきましては御質問があると思いまして、ごく概略を一応御説明申し上げました。ただいまの、なぜかく多数の犠牲者を出したかということにつきましては、御存じのように坑内火災は坑外の火災と違いまして、坑道が一つの煙突のような状態になりますものですから、非常にわずかな煙でも非常に強い煙のように感じますし、また事実わずかな煙でも濃縮された形で坑道を通過してくるわけであります。そこで、まあ私コンプレッサー座の中を拝見したのですが、やはり部屋の中の坑木はほとんど全般にわたってまつ黒に燃えておりますし、特に部分的には相当燃焼の進んだ個所もございます。あの程度の燃焼では、坑内では坑道の中に集約されますから、非常に濃い煙になって流れたんではないかということが想像されるわけであります。ただ、坑内の係員のうちに沖島係員というのがちょうどハッパを終えまして昇坑する途中であったようでありますが、七片辺を歩いておりますときに、ちょうど上の方から煙がきた。いつものように、坑内は、ときどきハッパをかけますと、ハッパだけでも相当な煙が出るものですから、当初はハッパの煙ではないかという感じでおりましたようでありますが、少し昇坑を続けておる間に、どうも煙がちょっと普通と違うということを感じたようであります。これは火災ではないかというふうに本人感じたと申し述べております。ちょうどそのときに炭車が上がってきたものですから、これはちょうどよかったというので、それに飛び乗りまして上へ上がったところが、その五十馬力のコンプレッサー座のところで燃えておった。そこで、その陳述が多少食い違っておるようでございますが、本人すぐ消火したようでありまして、コンプレッサー座には通常消火器あるいは砂、そういったものが必ず備え付けることになっておりますので、直ちに消火器を投げ込んだようでありますが、それでもあまり消えなかったので、百馬力のものを、コンプレッサー座に置いてあるものを同様に中につぎ込んだけれどもうまくいかぬ。そこですぐ引き返しまして、坑内におるほかの係員と共同してそれぞれ坑内並びに門扉の開放を命じたようであります。この門扉の開放についても、陳述をそのまま申し上げますと、三カ所の門扉を開放して煙を短絡させるという方法をとったようであります。しかしその間、時間的にどれくらいの時間がかかったかという点については十分にわかりませんので、まあ、多少時間がかかったのではないかと、そこで火災を見ましたときにすぐ各作業所に連絡をとっておれば、あるいはもう少し脱出者が多く出たのではないかという感じはいたします。これは係員個人の感じでございまして、係員としては自分で消火ができるという考えをまず固めたようであります。坑内の火災の場合に私どもが通常まずとります段階といたしましては、まず直接消火するということが第一段階であります。で、直接消火ができなければ密閉をするとか、密閉をしてもなおかつ火災が消えないという場合には注水をするというのが鉱山の一つの消火と申しますか、技術的な段階になっておるわけであります。そういった関係で、係員としてはまず自分たちで直接消火ができるという認定をしたようであります。まあ、その間の実情につきましてはなお一そう綿密な調査を目下いたしておりまするので判明するのではないかと、かように考えております。 私どもの方の責任はどうかという御質問でありますが、坑内の五十馬力のコンプレッサー座を見ますと、五十の方は中が焼けておりますけれども、消火その他で災害前と少しも一もちろん変わっておることは事実でありますが、大体まあ私の方の規則上から申し上げますと、耐火構造にしなければならぬ。耐火構造の内容としましてはトタン板とかあるいはモルタル、こういうようなもので室内をおおうということになっておるわけであります。そこで五十馬力の方はもう災害後はほとんど鉄板なども取れてしまって、おそらく災害前を想像いたしますと、まあ低く、ごく腰し回りくらいな程度には鉄板があったようであります。特にトランスの近辺は鉄板がかなり張ってありましたが、部屋全体としては鉄板が張ってあったようには思えません。同じように百馬力の室内を見ますと、これも部分的には張ってございますが、全面的に張ってあるという状態ではもちろんございません。従いまして私の方の規則上から見ますと、やはり規則違反というような状態になっておると私どもは考えております。なお、この点は全般を総合しまして現地で判断をつけておりますので、的確な違法性の判定は後日に待ちたいと、かように考えております。
○吉田法晴君 われわれが聞いた報告でも、いわゆるコンプレッサー座には消火器、これはまあ消火弾のようですが、砂が備えつけてある、こういうことですが、砂の使われた形跡はない。消火設備が十分であったかどうかという点も問題ですが、コンプレッサーに欠陥があって、コンプレッサーあるいはモーターから火が出たのではないか、こういう検察当局の見込みもございましたが、それは燃えていてよくわからぬ、鉄板その他部屋が耐火設備が十分でなかったという点等は指摘がありましたが、事故の十日ほど前にコンプレッサーに事故があった。そこでコンプレッサーが原因ではないかという疑問が一般に持たれ、それから一週間ほど前に監督官が、これもなくなられました谷さんのようでありますが、検査をしておられた。検査をしておられれば、欠陥は検査の際にわかっておったではないかという疑問を持たれる。私どもの説明には、十分その点が出ておりませんでしたけれども、その後聞きますと、保安検査をした際に、保安状況についての欠陥を指摘された報告があるように聞いておりますが、これらの点について監督当局としてどういうように今まで調べてこられたか、あるいは認識しておられるか伺いたい。
○政府委員(小岩井康朔君) 監督官が現場を見ましたときに、十日前に故障があったという点につきましての報告は、まだ監督表の中には記載されておりません。私どもが一応聞いております範囲内の状況では、本人は八日ばかり前に一日、二日とやっておりますから、変災が九日ですから、一週間あまり前に現場を見ておるわけです。本人は監督部では一番最古参の機電の担当者であります。機械、電機は非常に詳しいエキスパートであるのでありますが、本人非常にまじめで、かたく従来仕事をやるごく内気な性格の者でありますので、特に中小炭鉱巡回監督の場合には、機電関係と採鉱関係と分けずに、どちらかが両方をやるという建前をとっておるわけであります。もちろん大きい炭鉱ですと、採鉱関係の者は複雑な機電関係の内容が十分にわかりません。また逆に機電関係の者は採鉱関係のことはわかりませんので、大きい炭鉱にはそれぞれの専門の者を別々に派遣しておるわけであります。ところが中小炭鉱には、これは専門の者をわざわざ分けてやるほどの内容がございませんので、機電の関係の者も採炭関係を一緒に見てくる、また採炭の関係の者も機電の点を見てくる、こういうような多少無理な形をわれわれ従来とっておるわけであります。従って谷君も自分は機電の専門家でありまするけれども、当然中小の山でありますので、機電その他採炭関係全般を見てくるという責任をもって現地監督をやっておるわけであります。 そこで私どもが聞いておりますのは、本人もちろん坑内に下がりまして、その五十馬力の前へ来ましたときに、ちょっと中をのぞいたようでありますが、案内人が先へ行ってしまった関係で、あまり十分見ずに、自分も専門でありますので、ごく簡単に見て、そうして中の方に入っていったということを課長には本人が報告したのであります。従ってそんな点で、本人が非常にまた逆に自分の責任を感じて、そうして自殺するに至ったのではないかというふうに、私どもは逆に見ておるのでありますが、そういうような関係でコンプレッサー座の内容につきましては、まだ報告も出ておりませんし、監督表にも内容が記載されておりませんし、本人あとで書くつもりでおりましたかどうか、監督簿の方にはまだでき上がっておりませんので、監督表にはその点が触れていない、こういう結果になっております。
○吉田法晴君 谷監督官は責任観念から自殺されたと思うのですが、谷監督官には大へん気の毒に思いますが、その意思を生かすためにも、原因と欠陥を明らかにしなければならぬと思いますので、関連をして伺うことをお許しを願いたいと思うのです。 コンプレッサー座の周囲の囲い、あるいは天井等について御本人は、新聞によりますと、部長に上の囲いは不十分だったと漏らされたように聞いているのですが、その点はいかがでしょう。 それからもう一つは、監督表の中にはどういう点が指摘をされておったか。関連があるかないか。まあないというお話でございましたけれども、明らかにしてもらいたいと思います。
○政府委員(小岩井康朔君) 谷君が部長に話したという内容は私は聞いておりません。しかし私どもが拝見しましても、天井にはもちろん鉄板その他の防火構造という体裁のものはしてなかったということは、私どもも認めておりますので、もちろん本人も私ども以上の専門家でありますので、十分に承知をいたしておったと、かように考えております。 それから本人の監督表の内容でありますが、ごく簡単でありますので、ちょっと読ませていただきますと、一としては、坑内巻きおろし斜道の切り広めは計画通り行なうこと、これが一であります。それから二番目としまして、本おろしの掘進については、仕繰を規定通りにすること。これはまあ鉱山用語で、非常にわかりにくいことと思いますが、坑道のワクがおそらく小さかったのだろうと思います。これを規格通りに大きなワクにしろ、こういうことであろうと思います。それから三番目としまして、十片以深の繰業については、鉱業法による諸手続をなし、合法化の後に本務を行なうこと、これが記載されて、以上が本人が監督表に書き込んできた内容であります。 この監督表は、監督官が山に監督に参りますと、自分の伝えなければならないポイントを、こういうふうに個条書きにしまして、そうして山に置いて参ります。それから自分もこれと全く同じものを持ち帰ります。そうしてまあ監督簿にまたほかに記載する内容のものがございますから、それを監督簿につけまして、上司に供覧と申しますか、内容を回すわけでございます。その内容が回りましたときに、さらに監督部としまして強く経営者側に訴えたい内容のものがあれば、通達書といたしましてまたあらためて別に、別途通達をいたします。かような次第になっているわけであります。
○吉田法晴君 監督表の内容は、読まれるだけでは皆さんにはわかりにくい。少し説明を願いたいのですが、巻きおろしの切り広め、それから本おろしの掘進のワクは規格通りに広めていく、こういうことですが、十片以深の繰業については、法的な手続を云々という点はどういうことなのか、御説明願いたい。
○政府委員(小岩井康朔君) この上清炭鉱の内容を調査いたしますと、もうすでに鉱区内は一応採炭終了の形になっております。従って現在採炭いたしております——右十片という称号になっておりますが、現在採炭しておりますところは田川八尺層というところに二払、田川四尺層というところに一払ありまして、払が三つあることになっておりますが、この十片にあります十片払というものは、もう鉱区外に出てしまっているわけであります。それがただいま申し上げましたように、鉱区内の採炭は現在終了してしまって、もう堀るところがないわけであります。そこで隣鉱区の、三井田川が隣鉱区になっておりますので、その三井関係とお話を進めまして、話し合いがついたと、こう聞いております。そうして書面も手続申請を現在しているようでありますが、この手続がまだ完了いたしておりません前に十片という払がつきまして、これは鉱区外を採炭している、こういう内容のものであります。
○吉田法晴君 大臣も聞いておられたと思うんですが、国民も、あるいは現地に参りました報道関係者も、この上清炭鉱の坑道その他実態を見て驚いておる。監督表の中にあります巻きおろしの切り広め、あるいは本おろしの掘進施枠は規定通りにすること云々という点は、巻きおろしあるいは本おろしも規格通りになくって、そしてわれわれが入るにも〇・四トンぐらいの箱のふちから頭を上げては危険なぐらいの、とにかく小さい坑道、それが巻きおろしであり、あるいは本おろし。風道のごときは、これはあとで聞きますけれども、人がほとんど通れないぐらいの状態、そして災害が起こっても、災害について、関係者あるいは鉱業権者、あるいは保安管理者には会いませんでしたけれども、鉱業権者等には会ったんですが、十分のとにかく責任と申しますか、この従来の施設あるいは保安関係、あるいは訓練等について十分でなかったから、こういう事態を起こしましたという十分な反省は、私ども残念ながら見ることができない。あるいは新聞記者諸君に言わせると、災害というものについてなれっこになって、人命を軽んずる風潮があるのじゃないか、少なくとも人命尊重の風潮がないということを指摘をしておったのでありますが、鉱業のあり方、特に中小炭鉱、この終掘に近くなって、買い上げ、合理化法の適用等は、その中でむしろもう最後なんだから、どんなことをやっても、保安のこと、あるいは保安の施設は十分にしなくっても、やるだけやってあとは買い上げてくれるんだと、こういう精神が山の作業、あるいは保安問題にあったのではないかという疑問を実は持たされたわけです。そういう空気の中で、監督表に出ておるだけでも、巻きおろしあるいは本おろし等が切り広めなければならぬ、また規格通りに施枠をしなければならぬような欠陥があったという点は出ております。それから十片以深の操業についてもそうでありますが、具体的に五十馬力のコンプレッサー座について、鉄板のほかに施設が悪くなかったか、あるいは欠陥がなかったかどうかという点についてはいかがでしょうか。さらに保安局長の御答弁をお願いいたします。
○政府委員(小岩井康朔君) これは、まあ私が今ここで御答弁申し上げますよりも、現地で今調査しておりますから、現地ではっきりその点明確にさせることと思いますが、まあ私の見ました個人的な感じといたしましては、もちろんコンプレッサー座としては少し天井も低いし、普通ですと機械がもっとずっとゆったり入るのが普通の姿であります。しかしまあ中小炭鉱では、なかなか大手で見るような姿ばかりではございません。まああの上清炭鉱に似たような場合もほかにはなお多少あるように聞いておりますので、もちろんその後の処置としましては、私どもさっそくわかっているものについては、直ちに直すようにという命令をいたしておりますが、まああの程度の山のあの程度のコンプレッサー座としましては、もう少し天井を高くすることと、それから腰をもう少し一ぱいに鉄板を張る、まあ天井は、普通ですと岩盤で、岩盤の強いところですと、何にもワクがないところがございます。あそこは低い関係でワクが相当入っておりますが、まあああいうふうに木材がたくさんある場合には、もちろんその天井も鉄板にぜひしてほしいというのが私どもの希望でありますので、あのままではもちろん好ましい姿だというふうには考えておりません。
○吉田法晴君 火源がどこにあったか、あるいはその火がどういう工合に伝わったかということは、保安部としても、監督官としても調べておる、あるいは警察でも調べておるところでありますけれども、その火源を生んだ、あるいはこの火源があったとしても、それが延焼をしてあれだけの火事に至りました経過につきましては、設備あるいはその他について欠陥があったのではないか云々という点が問題になるわけでありますが、それらの点については、その設備あるいはコンプレッサー座の何と申しますか、状態、ボロきれとか油とかいうものが四散しておったのではないかという疑問が持たれるわけでありますが、そういう点について欠陥があったかなかったか。それから、それについての従来の、点検あるいはこの設備の改善を命ぜられ、あるいは注意されてきたあれがあったかどうか。鉄板の点については、問題が起こってから天井の囲いは不十分であったと、こういうまあ監督官の意向がもらされておるわけですが、小岩井局長として今までのところどういうように調べてこられたか、あるいは所見を持っておられるか承りたい。
○政府委員(小岩井康朔君) まあ原因が、先ほど申し上げますように、目下調査中でありまするけれども、坑内火災でありまして、原因と目されるものはもう数少ないわけであります。一応考えておりましたのは、まあコンプレッサー、機械そのものにあるのではないかという点、それからもう一つは、ケーブルが燃焼して切れておるのがございましたので、そのケーブルの火花発火、こういうものも当然考えておりました。それから電気関係の機械類、トランスもあります。スターターもあります。スイッチ類もありますので、まあそういった電気関係、あるいはまた全然別途に考えますと、先ほどお話もちょっと出ましたように、労務者の火器、たばこ、そんなものが考えられるわけでありますが、あそこの部屋は、私は相当部屋も狭いし、機械が運転しておりますと、かなり暑いのじゃないか、かつて監督官の巡回のおりにも四十度前後あったという報告がなされております。そこで、風が入るようにいたしまして、その後、三十五度前後になったという報告もありますので、相当部屋が暑かったのではないか。そうすると、四十度の部屋にわざわざ入って休むということもあまり考えられませんし、部屋自体もそうゆっくり休むほどの余裕もございませんので、私どもは当然、いよいよ何ら原因がないという場合にはそういったことも考えざるを得ない場合もあるかもわかりませんが、まあ労務者があそこへ入ってたばこその他の火器で火災が起こったということは、まあ一応一番最後に考えるなら考えたいと、かように考えております。で、現在発火したのだと、火をふいたと思われるものが、そうしますと、あと電気関係と機械そのものと、大きく分けて二つになるわけでありますが、機械そのものの故障につきましては、けさほどの新聞もあったようでありますが、これは警察の方で機械を中で調べるようになっておったようでありますが、その後また話が変わりまして、九大に送ったようであります。九大で試験をしました結果は、機械そのものにはまず故障がないのじゃないかという報告のように聞いております。また詳細な報告を受けておりませんが……。おそらく私どもの方の認定もコンプレッサーの機械そのものには故障がないと、もう学校に送る前から私どもの方で断定をしておりました。そこで、学校の結果と私どもとは全く一致したということになるわけでありますが、そこで、コンプレッサーそのものについては故障なしということになりますと、あとは電気関係、スイッチ類、ケーブル、こんなところに限られるわけであります。ここであの中を全部捜査いたしまして、火をふいたと思われる点は、もう二個所しかないわけでありまして、その二個所については、目下確証を固めておりますので、それがどういうふうになるかにつきましては後日に待ちたい、かように考えております。
○吉田法晴君 そうしますと、機械、特にコンプレッサーについては原因がなかった、この点は監督官庁においても警察においても論証ができた。自信を持っておる。そうすると、電気関係の二カ所が原因ではないかというお話でありますが、その具体的な点は今後の究明に待つとして、そこに原因があり、そうしてそれが類焼する、火を呼ぶ状態であった。いわばコンプレッサー座の中が乱雑であったか、あるいは火源といいますか、火源から引火するあれが多かった、こういうことは否定できないと思う。われわれに鉱業権者は、持っていくべきでない火器あるいはたばこ等を持っていって、それを使ったために、腰かけに使っておった木あるいはむしろ、ぼろぎれ等に引火したのではないかということが強く言われましたけれども、今の御説明によると、四十度近い温度が過去にはあったし、減っても三十五度はあった。従ってそこにしょっちゅうおるということも考えられないし、また事実火事の直前にはいなかった。十二時前に百馬力のコンプレッサー座で飯を食っておった。そういう意味において電気設備、あるいは電気関係、あるいは周辺の状態、あるいは天井の鉄板を含んで、火事の原因は五十馬力のコンプレッサー座の施設にあったのだということがいえるのではないかと思いますが、その点はどうですか。
○政府委員(小岩井康朔君) 私どももさように考えております。
○吉田法晴君 もう一つ、設備の点検については、これは監督官庁ですが、五十馬力あるいは百馬力、特に百馬力は十日前に故障を起こして問題になっておるところでありますが、十分であったかどうかということについてはいかがですか。
○政府委員(小岩井康朔君) 施設の点検が十分であったかという御質問のようですが、施設の点検につきましては、点検の日誌がございまして、今それを領置しておりますので、いずれ山側の点検の状況につきましては、内容詳細に判明すると思います。
○吉田法晴君 そうしますと、火事の原因については一応設備が問題であったろうという点は局長も認められたところですが、災害発生後の処置に手落ちはなかったか。七十一名を全部死なせなくてもよかったのではないかという疑問についてはまだ十分の回答が出ておらぬ。そこでお尋ねをしたいのですが、警報のベルはなかったようであります。それから電話が十分使われたかどうか。最初に係員が下から上がってきつつあって、坑内火災ではないかという疑問を持ち、現場を確認して連絡をしたようですが、その後の電話連絡等はあったという話を私ども聞きません。それからもう一つ、訓練についても十分なされておったという認証はどこにも得ることができない。そうして消火には最初軌道大工、それからコンプレッサー座の責任者の津川二カ所一人で受け持っておった六十才に近い担当者——これは係員でなくて労働者のようですが、その津川氏か軌道大工が大声を出して知らせてくれたので出ていって消火弾を投げた。消火弾を投げたのも軌道大工が投げたのか津川氏が投げたのかよくわかりませんけれども、あと救護隊が来るまで係員の指揮をしてこの消火に努めたのかどうか、その辺も明らかでありませんけれども、保安管理者が連絡を受けて、これは一時間近くもかかっておるようでありますけれども、消火にはかけつけた。しかし人命の救助のために全鉱を指揮をして、そうしてこの救命あるいは救護あるいは誘導退避のために十分な指図がなされた、あるいは手配がなされたという感じは私ども受けぬ。消火に頭を奪われて九十一名の——今の訂正によると九十一名でなくて九十五名ということでしたが、九十五名の人間を救い出すことについてはどうしなければならなかったかということに十分の頭が働かなかったと、態勢がとられなかった。救護隊が入って救護に当たったとか、数時間後に、消火が終わって素面で入れるようになって初めて救出に当たった。しかしそのときにはすでに七十一名が全部死んでおったと、こういう、初期のころに二十名が辛うじて——二十四名ですか、辛うじて出たということはあるようでありますが、こういう経過を考えますと、災害を早く知らせて退避をすべきこの訓練も施設もなかった。あるいは保安器具等もなかったということでありますが、訓練もなかった。そこで、火を消すことと人命とはいずれが大事かという疑問が起こって参るわけでありますが、こうした訓練あるいは施設等についてはどういうふうにされておったか。あるいは欠陥はなかったか。七十一名を殺すのは——この火事を消すのと併行して行なわなかった点についてどういう欠陥があったか。こういう点については局長としてどういう工合に考えておられますか。
○政府委員(小岩井康朔君) 警報装置の点でありますが、警報装置ではありませんけれども、電話施設は上部とそれから一番下部の方にもポンプ座にございまして、電話連絡はできるような態勢になっておりました。しかし、係員が煙を見まして、そうして、直接一応消火と同時にまあ連絡をしたことにはなっておりますが、その間の事情がまだ明瞭になっておりませんので、いずれ、私どもも、鉱外には一応連絡し、そうして係員なら係員としての任務を果たしたと思うのですが、まあ保安管理者の責任でありますが、保安管理者がそういう事故の内容を聞きましたときに、もちろん全責任をもって指揮をする責任が保安管理者にあるわけであります。従って、保安管理者——私どもも資格を持った適格者でなければもちろん任命をいたしません。山側が任命をしてきましても、もちろん解任をすることもできるようになっておりますので、一応その山のいろいろな保安上の問題の判断というものは保安管理者におまかせしてあるわけであります。従って、あの場合も管理者は連絡を受けて、まあ自分の最善の方途を講じたものというふうに考えておりますが、まあ結果から見まして一その間の事情が十分に判明いたしておりませんが、割合に、火を発見してから、まあ少し時間がかかったような感じがいたしますので、一応各作業個所から、ばらばらではありますけれども、二十四名の人が脱出いたしておるところを見ますと、もう少し徹底して連絡がとれたらまだほかの方も脱出できたんじゃないかということは結果から一応判断はつきます。これはまあ豊州の場合も全く同じなのでありますが、そこで私どもも、今後この警報装置につきましてはでき得る限り完備させたいという気持を持っておりますが、現在では警報装置を特に規則でうたっておりますのは、海底炭鉱の場合には、これは特に頭に海水を持っておりますので、何かの工合で抜けた場合には、これは全員亡くなってしまいますから、海底炭鉱のような場合には規則で警報による伝達装置というものは厳重に連絡がとれるように規則がされておるわけでありますが、一般の炭鉱につきましては、普通は電話で一応の連絡をやっておるわけであります。しかし電話は御承知のように大がい坑内詰所とか、今のコンプレッサーだとか、そういったところに設置されておるところが中小では多いのでございまして、特に坑内事務所というものを各所に持って、電話設備がございません。そこで一般のものは作業についておりますと、大体あまり危急の場合には直接の連絡がとれない場合の方がむしろ多いのではないかというふうに考えておりますので、一応電話で連絡がとれるような態勢にはなっておりますけれども、警報装置として十分であったかどうかという点については、もちろん十分だとは思っておりませんけれども、ただいま申し上げましたように、特殊な炭鉱以外に規則ではつけておりませんで、今後特に危険を多く予想されるような炭鉱につきましては、部長の特に指導で、警報の連絡装置の完備できるような方法を今後講じて参りたい、かように考えております。
○吉田法晴君 保安管理者は採鉱課長、詳しく聞きませんでしたけれども、お見受けしたところ三十幾つか四十前後だと思うのですが、年令、それから学歴と、資格等はどういうことですか。
○政府委員(小岩井康朔君) その点まだ現在わかっておりません。もちろん現地では十分わかっておりますのですが。
○吉田法晴君 それから警報施設については、海底炭鉱の場合には海水が入ってくる云々という危険もあるから、その警報施設を命じておる、こういうお話ですが、これは本会議でも問題になりましたが、鉱山における危害防止に関する勧告というものを労働省の基準局長から通産省の鉱山保安局長あてに二へん出ておる。これは本会議で答弁されておるところですから大臣も覚えておられると思うのですが、労働省に人命を尊重するという意味で、生産行政にくっつきあるいは生産行政の従となる危険性のある鉱山の人命問題、保安問題については、労働省に所管を移すべきではないかという議論に対して、そういう議論も前からございますけれども、今のところはそういう勧告で労働省は人命尊重を通産省の担当者の鉱山保安局長に勧告をしている、こういう答弁があったのですが、その二つの勧告の中に、昭和三十五年十一月二十五日、昨年の十一月二十五日、坑内災害特に水による大きな災害が頻発をしたので、「出水及びガス爆発の災害防止に重点を置いて」云々ということで具体的に指摘がなされた、「ガス噴出」だとか、「地下水の温度上昇」、「陥没等」あるいは「盗掘、侵掘」等の行なわれた地域、そこで「出水指定の強化」あるいは「巡視の強化」等をうたわれておりますが、3の「ガス爆発災害の防止に関する事項」として、「乙種炭坑における電気施設の防爆化」、「可燃性ガス自動警報装置の使用の促進」に引き続いて「緊急時における対策に関する事項」として「警報装置又は電話装置の整備」、それから「緊急時におけるすみやかなる連絡、合図及び退避の方法の周知徹底」それから「退避訓練」それからガスのあるところにおける「救護隊の設置」特にこれは「乙種炭坑における救護隊の設置」を具体的に書いてございますが、こういう勧告がなされたのですけれども、この勧告の精神に従って通産省でも検討をされ、あるいは訓練に入る、あるいは設備を強化することに入られておったならば、災害もこれは繰り返されなかったのではないかという、私どもこれは疑問が起こるわけであります。全然訓練はなされていなかったと判断する以外にない。あるいは電話はございますけれども、上の方のところの払い跡といいますか、払いの跡に電話が一台、それから一番おろしの底のポンプ座に一カ所、しかもポンプ座の電話は、全然使われた形跡はございません。そうすると、保安管理者の責任もですけれども、こういう最近頻発する鉱山の大災害にかんがみて勧告をしたその勧告の一項目も取り上げられておらぬ、こういう感じがするのでありますが、これは本会議でも問題になったところですから、通産大臣から御答弁を願い、あとから局長に補足を願いたいと思います。いかがですか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 勧告の趣旨は、各職場に通達してやらしておったわけであります。詳細は局長から……。
○政府委員(小岩井康朔君) 労働省の基準監督局長から私に参りました勧告の内容につきましては、特にただいまも問題になりました警報の関係につきましては、勧告よりももうずっと以前に私ども痛感いたしておる問題でありまして、特別な、先ほど申し上げました海底炭鉱のようなものはやっておりまするけれども、中小には簡便であまり金のかからなくてできるようなうまい連絡方法ということで、もうすでに数年前から担当者に研究を命じておったわけであります。ただ、その連絡方法が、簡単なベルか何かでいくのですと、これは非常に簡単にできるのでありまするが、炭鉱の場合は、一方から、たとえば坑外から坑内の作業個所に連絡ができると同時に、各作業個所からまた逆に坑外なりまた別の作業個所に連絡ができるような装置でなければ完全と言えないわけであります。それはどういう理由かと申し上げますと、たとえばガスの突出なんかの場合がたくさんございます。ある一つの個所でガスが突出してきますと、粉炭が一緒に飛び出しますので、そこに働いておる三人なり五人なりが埋まってしまって、全然埋まってなくなってしまう場合もありますし、その中で助かる場合もある。そこで働いておる者は別にいたしまして、ガスを突出しますと、ガスが濃厚のやつがどんどんほかのところへ流れて参ります。ところがほかのところはわからない。そこで、各作業場所からほかの関連を持った作業場所に連絡がとれないと、完全な警報装置にならないわけでございます。従って、坑外で考えるならば、簡単で、ベルを押しさえすれば、ベルなり簡単なものでできるのでありますけれども、坑外から坑内へ、坑内から坑内の各作業個所間の連絡も自由にできる、こういうようなものを作るためには、簡単にできないのであります。そこで数年前からその研究をされておりまして、大体目鼻がつきそうな状態にはなっておるのでありますが、これを今すぐ炭鉱に向けるというわけにも参りません。そこでそういう理想的なものはできるだけ早くはやりたいのでありまするけれども、すぐできない関係で、ごく小さい炭鉱には、一方的なものでもいいから、一つ今後暫定的に必要とあるものについては監督部長に認定をさせまして、一斉待避のできる態勢だけは必要炭鉱についてはとりたい、かような考えであります。 それから訓練の点でありまするけれども、訓練の点は、今わずかではありまするけれども、災害の場合の退避訓練はガス、炭塵の爆発のおそれの多いところ、あるいは先ほど申し上げました海底炭鉱のごとき出水の非常に危険の濃厚な山、こういうような山については、訓練を規定してあるのであります。しかし一般炭鉱についての非常訓練というものは、保安に特に強い意識を持っておる炭鉱以外は、なかなかこれはやらないわけであります。そこで私ども、災害ではありませんけれども、もう従前から救急法の訓練というものをやっておりまして、災害が起こりましてけが人が出たときに、これをまあ最も早く現場で処置をつけて、そして病院に運ぶ。これはまあ私どもが一番悩んでおりますのは、日本が死亡者が多いということであります。この死亡者というのは、重傷後死亡する数がかなり多いものですから、そういった訓練を徹底すれば、日本の炭鉱の死亡者というものの数が減るのではないかという見方から、最近非常にまあこの点を重視しまして、救急法の訓練をいたしておるわけであります。これは過般は金属関係ではありましたけれども、各地方の者を中央に集めまして訓練をいたしましたり、石炭関係はどうも金属ほど熱心になかなかいかないので苦心をしておりますが、各地区別にはそれぞれ訓練に入っておりまして、その訓練の結果の協議もいたしております。これはもうできるだけ早急にこれを普及させまして、いずれ中央に全国から集めまして、一つその技を競うというような方向にぜひ持って参りたい、こんなふうに考えております。
○吉田法晴君 こうしたい、あるいは訓練についても炭鉱は金属ほど熱心ではないが、また地域的には救急法の訓練をやっておる、こういうことですけれども、勧告があったにもかかわらず、勧告の前から考えておったけれども、実際にそれでは上清炭鉱で訓練がなされておったか、あるいは何らかの警報措置がなされておったかと、こういうことになると何にもなされていなかった、これが現実じゃないか。大臣、本会議で答弁をされたところのものと、これは通産大臣であろうと、あるいは労働大臣であろうと、政府がこの問題について責任を追及されて、あるいは機構の改革まで論議をされて、これでやりたいという答弁をされた関係からいうと、このやりたいという方針と、それから現実の大災害が起こった、あるいは災害を拡大した原因との間には大きな矛盾があります。現実との間には矛盾がございますが、いかがですか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 機構改革の問題につきましては、やはりこの生産の問題と不可分に考えなければ、なかなかこれを可分的に二省の間に分けるということは事柄の性質上適当ではないという判断のもとに、労働省にこれを一本化しておらないのが現状でございまして、ただいまでも政府としてはそういう考えをまだ持っておるわけであります。しかし、それはそれとして、御指摘の災害防止に万全を期するという点につきましては、御指摘のように十分に行き届いておらぬというのが何と申しましても残念ながら現実の姿でございますから、この点につきましては十分な反省をして対策をさらに掘り下げて検討したい、かように考えております。
○吉田法晴君 この簡便な方法、あるいは坑外から坑内へ、坑内から坑外、あるいは坑内で各作業個所に連絡ができる簡便な方法云々というようなお話がございましたが、実際にはどういうようにしておられるのですか。先ほどは職場に通達して云々というようなお話がございましたけれども、今実際にやっておるこの施策としては、救急法を一部において訓練をしておる、あるいは地域的に訓練をしておるというだけで、問題の筑豊なり、あるいは筑豊に近い山なり中小鉱山、そんなところで今後とにかく現地に行ってみて、こういう災害が再び発生しないという保証はない、こう言われておる実情の中で、気がついておっても、その研究をしておるということじゃ間に合いません。どういうことがなされておるのか。具体的にその方法を御説明願いたい。
○政府委員(小岩井康朔君) 救急法の訓練は……
○吉田法晴君 そうじゃない、救急法じゃないですよ。
○政府委員(小岩井康朔君) 警報でございますか。警報の点につきましては、特殊炭鉱以外は従来規則では別にうたってございませんので、積極的にやっておりませんのを、私どもの方で豊州炭鉱以来、連絡がもっと密にとれば罹災者を少なくして済むのではないかという結論から、今後簡単なものではあってもぜひさせたいと、従来は主として電話連絡以外には、あとは人間の伝達でやっておるので、特に施設といったものはございません。大手炭鉱では普通の電話連絡のほかに特殊なにおいのするもの、あるいは電灯の点滅、こういうものでやっておりますが、中小炭鉱はいかんせん電灯の点滅もほんのおろし近辺でありまして、なかなかこれらのサインがまだ十分にできておりませんから、これは電灯の点滅で知り得る範囲内の者は一斉退避には明滅をどうするかというような点で退避をさせたい。特に大きい炭鉱では電灯の点滅も当然ありますが、特殊な臭気のものを通気の風の中に入れまして、そして退避をさせるという方法もとっております。しかし、中小炭鉱ではなかなか施設が十分に参りませんので、古洞その他の関係で人気から風を送りましても、それがほんとうに最前線に行くのはその何パーセントかになってしまいまして、従って、なかなか技術的にも風が十分に行きかねるという場合が多いのであります。そういうような炭鉱には臭気のものを相当多量に入れませんとなかなか現場には行かない。またその効果も十分にありませんので、現在とっておりますのは点滅——ごく簡単にできるのは点滅でありますが、こういったものでは不十分でありますので、電話線から先の連絡につきましては、一応簡便なものでも、豊州炭鉱で現在使っておりますようなベル・システムでもとる以外には当座はないのではないか、こんなふうに考えております。
○吉田法晴君 警報関係の施設についても実際には電灯の点滅以外にないと、それもとにかく全部に周知するほどの施設がない云々というお話でありますが、これは法の欠陥ですか、それとも勧告がなされたけれども、実際に行なわれないというのは、監督機構、あるいは監督官の欠陥ですか。あるいはおどかざれたり云々ということも覆われたようですが、そういう欠陥によるのですか。
○政府委員(小岩井康朔君) これは私どもの考えとしては、実情から来ている結果でありまして、今までそういった十分な必要性がなかったということだと思います。あらゆる炭鉱が全部作業個所まで警報装置をつけろということは、少し技術的には私は酷ではないかと、しかし、豊州炭鉱以来、連絡が密にいきさえすれば助かったんではないかということが予想されますので、今後少し従来の観念を強めまして、そういった懸念のある炭鉱には、少し強制的ではあるかもしれませんけれども、部長の指導によりまして、そういった施設をしてもらうというような考え方でございます。
○吉田法晴君 あとでやろうと思ったんですけれども、実はこの対策について現在の施設あるいは訓練と関連をして問題になって参りましたからここで取り上げるのですけれども、政府では中小企業における災害の頻発を防ぐために、保安施設については融資をしよう、こういうことで労災基金から三十億を融資資金として確保しよう、こういう方針をきめられたようですけれども、こういう今の実情からとか、あるいは山自身のとにかく必要性から云々ということになりますと、これは自分ではしない。まして借りてまではやらぬ。せっかく対策として保安融資を考えられても実際に借り手がない。そこで別の方法を考えなければなりませんが、これは問題点として指摘をしておきますが、問題は炭鉱の自主性にまかせて、借りたいところは貸してやる、こういうことでは問題の解決の方法にならぬという点を指摘をして、関連をしてお尋ねをしますが、まあ今の局長の話だと、最小限度のものはやや強制的になっても施設をするように指導をしたい、こういうことであります。これについて法の改正をする必要があれば、私どもは法の改正をしなければならぬと思うのですが、もう一つ法に関係しますが、救護隊の設置という点が勧告の中にあるのですが、この上清炭鉱には救護隊は全然なかった。それは甲種炭鉱でないから豊州炭鉱なりあるいは糒あるいは田川等から救援にかけつけてきておるのですが、救援に入るのがおくれた理由はあとでまた問題にいたしますけれども、局長にお尋ねをしたいが、なぜ上清炭鉱にはなかったのか、理由は甲種炭鉱でないということですが、最近の頻発する炭鉱災害にかんがみて乙種炭鉱にも救護隊の設置をせよという勧告があったのを、それをどういう工合に従来は受けとめあるいは実施をしておられるか。
○政府委員(小岩井康朔君) 私どもで扱っております範囲内では、甲種炭鉱は救護隊を設置しなければならぬということになっております。甲種炭鉱以外の部乙のような場合には、共同救護隊という形で甲種炭鉱と一緒に共同救護という形になっておる場合がございます。豊州炭鉱にはありますが、上清には救護隊がなかったようでありますが、おそらく私の想像では、上田鉱業の中の救護隊を持っているところと共同救護隊になっておる、これは私、その実情をくわしく調べておりませんけれども、当然そういうふうな形になっておるはずであります。そこで特に労働省からも共同救護隊の設置につきまして勧告がございまして、私どももこの共同救護隊をすでに作っておりますし、大手の炭鉱の救護隊を災害のときになりますと必ず救援に願うという場合が非常に多い関係で、この勧告がありましてから後も今計画を作っておりまして、新しく共同救護隊が十数カ所できるわけでありますが、この共同救護隊のできますときに一つ問題があるのでありますが、たとえば変災がありまして、救護隊が応援に参りましたときに、その応援隊が罹災する、こういう場合には全く何の手当もないわけであります。従って上清炭鉱の場合で申し上げますと、あそこで変災が起こって田川とか島廻とかそういったところの救援隊が応援に行っております。これは非常に危険な作業でありますから、応援に参りまして罹災する場合ももちろんございます。そういうようなときには何にも罹災した本人には手出がないわけであります。そこで私どもの方は、過般も基準局長と御相談しまして、ぜひ応援に行った場合も当然そこの山の救護隊が罹災したと同じような手当ができますようにということで、私と基準局長の間では実現の方向で話をまとめようということになっておりますが、現在まだ少し下部で問題があるようでありまして、まだ実現に至っておりませんが、これは間もなく実現できると思っております。この点がはっきりいたしますと、比較的大手の方からも中小の災害に救護隊の応援が行きやすくなるのではないか、かように考えておりまするけれども、私どもは中小だけでできることなら始末をつけたい、大手の方もあまり好感を呼んでおりませんので、できますことならもう少し従来の共同救護隊の範囲を広めると申しますか、もしできることならステーション式の何カ所か大きいステーションを持ちまして、そして変災の場合にはいつでもその所属の炭鉱の救援に行かれるというような方途を講じたいという気持は持っておりますが、現在共同救護隊の数をふやすということで目下進めております。
○吉田法晴君 救援隊もなかった、救援器具も何もなかった、コンプレッサーに消火弾が幾つかあったという程度の実情でありますが、これらの施設についても、労働省が指摘しただけの施設もしていない、救護隊については共同救護隊の必要がある、あるいは他山の変災の場合の出動についても労働基準法あるいは労災法上の規定の改正が必要であるということが言われながら、何も実現されておらない。そうして今度の場合についても、鉱業権者もそうですが、保安管理者についても、率直に言って、小岩井さん、局長の持っておられる観念について、あるいは私どもにもあるかもしれないと思いますが、変災というものについて、これは変災が人命を犠牲にする程度、それが拡大することについて十分の責任を感じてこなかったのじゃないか。初めて筑豊の山に入った新聞記者の諸君が驚くような変災についての感覚、責任感の薄さ、人命の尊さについての感じ、一人の命といえども地球より重いという感じがないのじゃないか、山にもないかもしれないが、監督官にもないのじゃないかという点があると思うが、今度の場合についても災害になれ過ぎていたのじゃないかという感じが監督機関を含めて言えると思うが、いかがでしょうか。
○政府委員(小岩井康朔君) 大へんその点は申しにくいのですが、私どもは鉱山の保安のことだけしかやっていないわけでございます。従いまして私ども当事者といたしましては、災害をいかにして防ぐかということだけに終始をしているわけでございまして、これができなければ私どもは仕事が満足にいかぬという判定になるわけでございます。決して私どもが人命尊重の点でほかの方に劣るということであるならば、これは当然責任をとらなければいかぬ、かように考えているわけであります。私初め保安局、監督部の職員におきましては人命尊重の点だけは絶対に他に劣らないという自信を持ってやっておりますが、いかんせん力不足で十分な成果があがりません点につきましては深くおわびを申し上げます。かように考えております。
○吉田法晴君 気持の上で人命尊重は他に劣らぬと、こう言われますけれども、他省からまで指摘をされたのに、訓練も何もやっておられない、あるいは消火施設については消火弾が一、二あった程度、乙種炭鉱ということで救護隊の設備もなければ、それから共同救護隊が、それでは豊州なら豊州の場合にはどういうように出動するかという点もはっきりしない、おそらく豊州からの加勢があった、あるいは三井から加勢があった、あるいは島廻、糒その他他山からの加勢があったということで、救護の施設については、坑内で使う施設については何にもなかった、こういう点は、これは気持の上では人に劣らぬと言っておられるけれども、実際にやられておることは労働省からの指摘があるけれども、何にも行なわれておらぬじゃないですか。監督行政ということは、ことに坑内の施設についても、指摘するだけでなくて、直さしていくのがその任務じゃないですか、あるいは救護の施設についてもあるいは隊の設置について、あるいはそれが自由に置くかあるいは共同救護隊であろうと、万一の場合に救護隊がとにかく活動できるようにしておかなければ、この任務が果たされたといえないじゃないか。気持があっても気持だけで済みません。監督行政というものはそういうものじゃない。そういう点について、これは結果かもしれませんけれども、そのよってきたるところは私ども除かなければならぬ。それについて原因をはっきりして、制度上の改正もしていかなければならぬけれども、しかし今度の場合に、何にも救護施設もなかった、あるいは救済、救援の手も向けられなかった、数時間の後に素面で入り得るようになったときには七十一人全部死んでおった、こういう事態からするならば、原因についてもですが、救護の訓練、施設については、山にもあるいは監督官庁にも欠陥があったという点は明らかじゃありませんか、どうですか。
○政府委員(小岩井康朔君) 今御指摘の通り、私どもが規則にきめられた範囲内の最低限度しかやっていなかったという点につきしましては、十分今後反省したいと考えております。ただ労働省から受けました勧告につきましては、それぞれ具体化の交渉は続けて参っておるのでありますが、解決がすみやかに参りません点、その他の事情があって、すみやかにその勧告の内容が実施に移されていなかった点につきましては、今後早急にこの解決ができますように、話を進めて参りたいと考えます。
○吉田法晴君 労働省からは労災補償部長お出になっておるので、直接の担当者ではございませんが、今の救護隊の他山についての出動の場合の取り扱いについて了解は得てあるということでありますが、まだ実現をしておらぬ。そのことが現に、それこそ何といいますか、担当者の間では相談をされておったけれども、下の方でも異議があって、問題があって実現をしておらぬ。従って今度の場合でも、私ども現地に行って、火事を消そうとする努力はなされたようだけれども、九十何名の坑内に入っておる人間を救援するためには、あるいは救援、退避、誘導して、その安全をはかるためには、努力か足らなかったのじゃないか、こういう質問をしますと、鉱業権者は、これは火災の原因は個人の責任であろうと、自分の鉱業権者としてあるいは保安管理者の上の責任名としての責任の反省の言葉は聞くことができないで、そしてこう言われた。それは必死になって下から出てくる人間の気持と、外から救援をしてやらなきやならぬ、何とかしなければならぬという気持の違いでしょう、こういう話です、上田さんの話は。そうすると、救護隊は来たけれども、危険なところに入るについては、やはりこの足を踏まれたという小岩井さんの先ほどからの話からすると、救護隊の問題については解決をしなければならぬとは思っておったけれども、局長同士で話はしておったけれども、それは実況しなかった。実現しなければ、まさかのときには他山から来ました救護隊も危険を冒して入るということには現実にはならぬ。その点は直接担当ではございませんけれども、労働省からお出になりましたが、今の救護隊の取り扱いについて、これは法の改正を要するならば改正をしなければなりませんが、その点についていかがでしょうか、御意見を承っておきます。
○説明員(村上茂利君) 救援隊の隊員が救援作業に従事しておりますときに負傷した、あるいは煙その他によって中毒症状を起こしたというような場合に、そのいわゆる災害補償をどうするか、こういう問題でございますか、これは先生十分御承知の通り、それを労働者災害補償保険で見るかどうかということに、問題が具体的に扱われておるようでございますが、労災保険は使用者の災害補償責任を基礎にして成り立っておる保険でございますので、救援隊とその隊員との関係がいかなる関係にあるか、つまり労働関係を前提にしております保険でございますので、これは単に運用とかそういった問題でなくして、労働者災害補償保険法のワク内で行なえるかどうかという点につきましては、そういった救援隊の性格なり、救援隊と隊員との関係あるいは救援隊の出動を要請する者の立場といったような点につきまして十分な検討を加えなければならないというふうに考えておるわけであります。まあ、具体的に申しますならば、災害の発生いたしました炭鉱におきますところの労働者が、当該炭鉱における作業に従事するという場合におきましては、当該事業におきますところの業務の範囲に属しておりますけれども、他の鉱山から労働君が派遣せられました場合に、その当該鉱山との間のいわゆる業務の関連関係につきましては、その点か明確でないわけであります。従いまして、私どもとしましては、一般的に申しまして、当該事業主の災害補償責任に属せしめるような根拠のない災害につきましては、当該使用者に災害補償を行なわしめるということは、これは法律的にも不可能でございますので、かりに使用者の業務命令が明らかであって、その業務命令に基づいて救援作業をした。業務命令が出ておりますから、賃金とか超過勤務手出も支払われるといったような関係が明確になされております場合には、いわゆる業務に基づくところの災害といたしまして労災補償の対象になる、こういうことになって参るわけでございまして、この関係は鉱山関係のみならず、一般の火災とかあるいは火薬爆発といったような場合にも生じ得る問題でございますので、なお、理論的にも十分検討いたしたいと、かように考える次第でございします。
○吉田法晴君 今の労災補償部長の説明を聞きますと、小岩井局長がさっき、基準局長との間に意思の統一を見て、実施の方向に努力中であります、こういうお話でありましたけれども、そうはなっちゃおらぬじゃありませんか。問題があるということ。それかららこれは労働省との間に意思の統一をはかって、今の労災部長の話ではありませんが、業務命令をとるかどうかにかかわらず、救援に行く場合には、自由の救援でなければ、他山の災害の救援に参ることは明らかであります。その救援に行った場合に心配をしなければならぬ。まさかのときにはとにかく、だれが見てくれるかということがはっきりしないで救援に十分の活動を期待するわけにはいかぬと思う。通産大臣の御答弁を願いたいが、鉱山保安局長は、労働省との間に意見の一致を見て実施のために努力中と言われるけれども、必ずしも今の答弁を聞くとそうではない。これについてどうせられるかはっきり一つ答弁して下さい。
○政府委員(小岩井康朔君) これは非常にこまかい問題でありまして、長年労働省とは実は交渉を続けてきた問題でありまして、今お話のように、簡単に参らない理由もあることは私も存じておるわけであります。いろいろ最近具体的にそういった事態にぶつかるものですから、私最近——最近と申しましてももうちょっと前でありますが、基準局長に申し入れをしまして、こういう実際に大手の炭鉱から中小の救援隊に出る場合が、具体的にどんどん起こりますので、今お話のように、やはり何かこういつた補償がはっきりきまっておりませんと、なかなか十分な活動をしにくいという点も十分に考えておりますので、私基準局長とお話しましたところ、まあ基準局長は、非常にわかっていただきまして、まあ、これはもうもっともだから、これを実現するという方向で一つ検討いたしますというお話は承っておるわけであります。私どもも非常に喜んでいると同時に、労働省からもこの共同救護隊についての勧告をいただいておりますので、私どもも、この勧告を実現する上におきましても、ぜひこの話し合いをつけたいということで、基準局長と話し合いをいたしたわけであります。基準局長は、ただいま申し上げましたように、何とか実現しよう、実現する方向で自分も検討させてみるから、もうしばらく、まあ待ってほしいということで、検討をしていただいているわけであります。 長年の問題でありまして、むずかしい問題が中にあることは、私も十分に承知いたしておりますが、何とか実現できますように、一つ、特に労働省の方にも、さらに重ねて私どもの方から基準局長にも申し入れしたいと、かように考えております。
○吉田法晴君 研究している、長年研究して、まだ実況するために努力をしようということですけれども、そういうゆうちょうな答弁を聞いてすましているわけには参りません。あるいは労働基準法の中に明文をうたって、使用者が責任を負えるようにするか、あるいは救護隊法という法律を作って十分な裏づけをするか、具体的な方法は、ここでは指示をいたしませんが、早急に、とにかく具体案をもって何日かまでに、とにかく御答弁をしていただきたい。 この次の機会までに具体的にお打ち合わせをし、具体的な法律措置を講じて答弁がいただけるかどうか、念をおしておきたいと思いますが、いかがでようか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 大事な問題でございますから、両者の間で、できるだけ早急に話を進めるようにいたします。
○吉田法晴君 その点は努力を願って、次の機会には答弁のできるようにお願いをしておきます。 それから、これは災害のまあ遠因ですが、上清炭鉱は中小炭鉱では上の部、少なくとも経営者の経理能力あるいは資産状況、この点は、これは新聞にもしばしば出ることでありまするから、みんなよく知っております。それに山は、ああいう坑道から、主要坑道から問題のような炭鉱、そうして昨年この買い上げ申請を一ぺん決議しただけに、あがり山——そこで、合理化法の適用と関連をして、もう炭がなくなったら——終わりに近ずいたら、保安が何であろうと、坑道がどうなっておろうと、排気がどうなっておろうと、とにかく掘る、だけ掘って、あとは買い上げてもらえばいい、こういう空気、あるいはこういう態勢になりがちなのは、これは当然であります。 そこで、こういう大災害の遠因に対しては、これを、再発を防ぐためにどうすればいいかということ、これは合理化法にも関連をして参ります。あるいは坑木費の節減、あるいは人件費の節減に、一番、とにかく手っ取り早い方法として、食いついてくる今の炭鉱の経営の仕方というものとも関連をして参ります。合理化政策とも関連をして参りますが、この大災害の遠因について、これを根本的に除くためには、どうすればいいか考えておられますか、通産大臣、承りたい。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 合理化の実施が、災害の遠因であるとは私は考えておりません。豊州においてしかり、上清炭坑においても、まだ調査中でございますから、断言はいたしませんけれども、おそらく合理化とは関連はないものと考えます。合理化は合理化で進めていかなければならない。 ただし、中小炭鉱においては、経済力の弱さから、あるいは災害防止に関して、これを軽視するというような傾きがあるいはないわけでもない。そういう懸念もされるのでございます。でございますから、すでに他の機会において明らかにしたように、保安の教育等については、十分さらに強化するとともに、保安施設については、保安融資をこの際考えまして、そうしてその面から保安上遺憾なきを期して参りたい、まあかように考えておるわけであります。
○吉田法晴君 現地にはあなた、行っておられぬから、豊州あるいは上清、その辺の空気といいますか、あるいは常識ある人の覆っていることについては、耳に達しておられぬと思いますから、先ほど申し上げたのです。 終わりに近づいた山、この中小炭鉱の最終段階では、保安がどうなっておろうと、あるいは坑道がどうなっておろうと、掘るだけ掘って、そうしてあるったけのものを、かすり取ってかき集めておけば、それで金になる。あとはどうなろうと、結局買い上げてくれるのだからと、こういう空気が大災害を起こしている原因ではないか。これは皆がそう願っております。炭鉱の実態を児ながら、あるいは炭鉱の空気を見ながら、あるいは人命を軽んずる空気を見ながら、そう言っているのです。 そうすると、あなたは経済力の弱さから保安軽視がくる云々と言われますけれども、上田さんがとにかくどれだけの所得を取っているのか、あるいはどういう生活をしておられるのか、あるいはどういう経済的な能力を持っておられるかは、これは私が言うまでもありません。上田さんは経済力が弱いということは、これは常識的に考えて言われません。問題は、終わりに近づいた山を買い上げてやるからということで、まあ乱掘をするといいますか、保安やあるいは坑道の問題、保安施設の問題は問題でなく、とにかく掘り上げて、あとは買い上げてくれるのだということが大災害を起こしているのだと、私はその通りだと思うのですが、それを否定なさいますか。そういう合理化法の適用、あるいはこれは筑豊全体が終わりに近づいておりますが、その盛りを越えた、峠を越えた中小炭鉱、あるいは炭鉱全般についてもそうですが、そういう炭鉱の実態に対して融資をしようたって、おそらくこれは局長——石炭局長もおられますが、両局長に聞いて、ああいう買い上げを申請しようというような炭鉱で融資を中講ずるところは、おそらく出てこぬだろうと思う。それでも出てこられると思いますか。そういうとにかくほんとうの原因に対して、どうしてこの再発を防止しようとせられるのか。保安融資では対策になりませんよ。実際にそれは行ってみて、皆そう言う。いかがですか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) その危険が非常にあるのです。それで買い上げの制約も同時におりまして、残鉱量が五年未満であれば、買い上げの対象にならない。この残鉱量五年未満というような山が御指摘の通り、非常に問題をはらむ危険性がある。五年以上であれば、これも買い上げて買いつぶしがきくわけでありますけれども、五年未満の残鉱量であれば、これはどうにもしようがない。どうせこれは買い上げてももらえぬ、掘るだけ掘って、できるだけ出すものは出さぬで、取るものは取っていこうと、こういうような考え方でやられると、これはもう大問題になるのでありまして、この点を二体、どういうふうに措置するか。問題は、買い上げの制限をもう少し考え直すか、あるいはまた、それはそれとして、従来通りの規則を守って、そうして最後に、その山の炭を引っかき集めるというような現状に対して、きびしい監督規定を適用するかという二つしかない、当人が非常に心持ちが直って、そうしてみずから自粛するならば、これは別問題でありますが、そうでない限りは、まあ二つの方法しか考えられないのであります。 それで、これらの点につきましては、これはただ監督規定が存在するからと言って、これを簡単に強行するというわけにも参りません。それぞれ準備態勢を整える必要もありますので、それらの点につきましては、今回の災害を機会に、関係省との間で産業災害対策連絡会議なるものを作ったわけでありますが、こういったような点につきまして、もっと掘り下げて、しかもじんぜんとしてただ研究に時を過ごすというのでなしに、ほんとうに具体的な結論を得たい、こう考えておるわけでございます。
○吉田法晴君 局長にも関連して聞きますが、保安融資をしたいという、まあこれは閣議ですか、決定があったのですが、今問題にしているような、終わりに近づいた炭鉱が保安融資を受けると考えられますか。
○政府委員(今井博君) これは条件にもよると思います。非常に低利あるいは長期の融資という場合には、われわれとしては、これは一方において、やはりこの保安法の厳重な適用と、保安法というものを十分に活用するというものの前提がないと、そういう前提があって、しかも保安設備を強化しろという場合、政府としても、これだけ援助するのだという格好でやはり指導していく場合においては、これは保安設備の強化というものは、やってみなければわからぬ点もございますが、私は相半効果を発揮すると、こう考えます。
○吉田法晴君 保安設備の強化をすれば援助すると、援助するということならばそれは援助を受けるでしょう。しかし融資をするということと金を借りる、保安設備を強化するから金を貸してくれ、これは勧奨されても、終わりに近づいた山が、これは借りるはずはないじゃないかということを申し上げておる。そこで、これはもういいです、あなたの答弁は……。実際に考えてみて、援助ならば受けますけれども、実際に終わりに近づいた山が、あと半年もない、こういう山が、上清なら上溝の場合にしても、あと掘り続けていくなら別問題です。しかし昨年のように、一応自分の鉱区は掘ってしまった、あるいは三井の鉱区に入るか入らぬかという段階に、合理化法の適用を一応考えて申請をした、そういう段階に、保安施設を強化すれば金を貸してやろう、こう言っても金を借りるはずはない、ですから通産大臣は、閣議の決定もあるから、保安融資ということも言われたのだけれども、今の局長の答弁のように、保安施設を強化するなら援助なしてやろう、こういうことなら援助を受けるでしょう。実現の可能性もあると思うのですが、これは局長にも意見を承りたいが、融資を決定をされたが、その具体的の点は、あるいは施設の強化その他については、あるいは訓練等についても、産業災害連絡会議はやろうということですが、研究をしておる間にも、また次の大災害が起こるかもわからぬ、保証ができないのが実情です。 従って、今の保安施設の強化についても、きめるなら、石炭局長の言うように設備を強化するなら、それに援助してやろう、あるいは補助してやろうということならば、これは実現の可能性があります。この融資の点について、融資の精神が、保安設備を強化するということであるならば、あるいは訓練を強化するということであるならば、あるいは救護の体制についても強化するということであるならば、監督行政についても強化するということであるならば、その強化が実現するような具体案を考えてもらわなければならぬと思うのですが、その点はいかがでしょう。融資という方針を変えて、もう少し保安関係について、予算を振り向けるという方針に変えるお考えはありませんか。
○政府委員(今井博君) 融資といいましても、いろいろ方法があると思いますが、これはまあ非常に低利、ある場合においては無利子でするという場合もございましょうし、ある場合においては貸与するという方法も、いろいろございましょうし、われわれは、そういうものをひっくるめて低利融資というふうに呼んでおる場合が多いわけでありまして、これはまあ援助という言葉とどう違うかというと、非常にこれは人によって意見が違うかと思いますが、そういう広い意味での融資というものを、われわれとしては考えております。
○吉田法晴君 大臣の……。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 援助であるから、補助金をもらうというふうにお考えのようでしたが、局長の言うのは、つまり融資にもいろいろよりけりで、低利融資といったようなことは一つの援助である。こういう意味で申し上げたようでありますが、ただいまのところは、この保安施設に対して補助金を云々というところまでは考えておりません。 でありますから、もうあと一年もたてば、炭がなくなるというような場合でもしかし保安施設に非常に多額の金がかかるというなら別問題だけれどもどうも鉄板を張るとか、何かそういったような程度のものであれば、あと一年掘る掘らぬのところへきている場合に、単独では融資はできないけれども、政府の口ききで低利のものが借りられるというなら、やはりそこに、私はそれだけの利益を感ずるのではないかと考えます。
○吉田法晴君 ただ融資と聞きますと、先ほどのように、筑豊全体あるいは筑豊だけでなく、佐賀、長崎あるいは常磐、山口等についてもでありますが、貸してやるぞというだけでは、実際にはなかなか借りられぬという、あるいは実現をしないということになりますので、この融資の方法、低利もあればあるいは貸与もあると、こういうお話ですが、それは今までのような考え方、あるいはやり方でないやり方も、とにかく実現をし得るように再考を願いたい。 これは保安局長にも強く要望をしておきたいと思うのですが、この要望については、おそらく異存があるはずはありません。たとえば、思い起こすのですが、漁業に出ます船に、無電設備がない、あるいはラジオもないということで設備を勧奨したことがあります。この無電設備を勧奨をするときに、全額ではなかったと思いますけれども、援助をした例がございます。これは言われるような融資一本ということではなかったと思います。問題は、人命の問題でございますし、それから大災害も再発させないために、具体的に保安施設を完備しよう、こういうことですから、その精神が実現するように、具体的な方法について検討を願いたいということを要望をしておきます。 なお、上清炭鉱においても、あるいは豊州においても、保安要員を合理化のために減らしたことはないと、こういう答弁を本会議で通産大権はなさいましたが、実際に行ってみると、二つのコンプレッサー、百馬力と五十馬力のコンプレッサー座に一人の六十に近い、五十九と書いてあるのもあるし、六十と書いてあるのもありますが、一人ついておったと思うのですが、こういうことで保安の体制が十分であると考えるかどうか。それから合理化、コスト・ダウンで、千二百円をコスト・ダウンするというときに、まずくるのは人件費、それから超勤を切り捨てる、あるいは上清炭鉱を見たのですが、小さい坑道の坑木、支柱は必ずしも十分ではない、少なくとも、規格は谷監督官が指摘をしたように狭い、規格通りではないということがまあ明らかですが、それにかかわらず、人件費については、坑木費の節減ということで坑木費を節減しようとする。これが実態。これに対してはどういう対策を持っておるか、大臣か石炭局長から一つ御答弁いただきたい。
○政府委員(今井博君) 合理化を促進するという問題と、まあ保安との関連の問題でございますが、まあ合理化を促進する場合、やはり企業としては、保安を手を抜くというようなことがあるんじゃないかということは、われわれも想像ができますし、実際にも、そういう例があるように聞いております。 しかし、これはやはり保安というものを、今後優先的に考えて、保安の方を、生産と保安は、まあ両輪といいますが、保安を優先的に考えていくという考え方で、鉱山保安法というものをやはり十分に活用していって、保安設備というものが十分でないところについては、従来以上にもっと強度のまあ監督をやっていくということは私は必要であると思います。それがやはり、それは生産の方に、若干関係あるものかもしれませんが、これはやはりやむを得ないことだと思います。この点は鉱山保安局と、今そういう観点から、一つ十分まあ連絡をとってやっていきたいと思います。 その結果、一体、現在の合理化がどうなるのだ、こういう問題が出てくると思いますが、私は、これはまあ中小炭鉱につきましては、まあ先ほどから大胆の御答弁にありましたように、やはりそれ相応に国が、先ほどまあ融資の問題、あるいは援助の問題等もございますが、とにかく、中小炭鉱については、国がやはり相当援助しながら、この保安というものを強化していくということが、やはり必要だと思います。しかし、全体のやはり大企業も含めての合理化の促進という、千二百円を下げるという基本路線については、私は保安と両立すると考えますので、別に合理化を変えるとかという必要は私はないと思います。
○吉田法晴君 大臣がされるべき答弁を、石炭局長が、しかも生産よりも合理化、保安を第一にして今考えるという答弁を願ったのですが、前段の答弁は、これは総理の答弁そのままのようで、私どもも納得いたしますが、さて具体的に合理化の第一のしわが労働者に、それから、あるいは坑木費に、あるいは保安費にきておるのではないかという実情をあげての反駁に対しては、いや合理化は進めなければならない、合理化を進めるについても、なお保安が犠牲にならないように努力をしたいというお話で、具体案は出て参りません。まあ援助と融資しか出ておらないのでありますが、これは、大臣に強くその点を具体的に指示をして反省を求めたい。あなたは本会議で、人員は整理をしておらぬと、こう言われるけれども、行ってみると、不完全なコンプレッサー座の防火壁、あるいは古いコンプレッサー、故障を起こした百馬力のモーターもですけれども、五十馬力のモーターも火をふくほどに、モーター自身じゃなかったかも知れないけれども、その付属施設にはあったということ、しかも、その監督をしておるのは、六十近い一人の労働者が、両方をかけ持ちをしておるために、いるところもないから、大部分百馬力のところにおって、そうして事件が起こったときには、弁当を食っておった。そうすると、労務費の節減ということ、あるいは坑木費の節減ということ、あるいは保安費の節減ということが、合理化政策の中で実際に行なわれておる。 そこで、合理化政策の推進というものについて検討をして、保安が犠牲にならないように、労働者が犠牲にならないように、労務費あるいは保安費、坑木費等がとにかく節減されないで、保安が確保されて生産が行なわれるように、あるいは合理化政策自身が、ここで全体に悪いというわけではありませんが、労働者に犠牲をかけ、あるいは生命の犠牲を払わなければ進められぬような実態を直すために、十分の検討を願いたい。合理化法自身も再検討しなければならぬ、あるいは合理化の適用の態様についても考えなければならぬ、こういうことを申し上げておるわけでありますから、具体策は、この次でけっこうですから、十分な反省を願いたいと思います。 それから最後に、保安監督行政についてですが、この保安監督行政について少ないではないかという質問を同僚阿具根議員がしたときに、これについての具体的な答弁はございませんでした、本会議では。行ってみますと、この上清炭鉱に十日ほど前に行ったときに、谷監督官というのが一人で、筑豊に三カ所の派遣班はあるが、三人ずつぐらい。前には二人ずつ行っておったと私は記憶をしますが、二人ずつ、あるいは採鉱関係、あるいは電気関係、機械関係という工合に二人行くことが望ましい。あるいは保安監督部等が行っておるけれども、一人しか行けぬ。これは、この場合には、電気、機械関係のようでしたが、一人しか行けぬ。担当の山を全部回っておると、二年に一ぺんとか、三年に一ぺんとかしか行けないで、末端までは目が届きませんというのが実態のようであります。 それで、予算は十分とはおそらく言えぬでしょう。数年前に、ようやく各班に一つずつジープを買えるようにしたのが数年前の話。その後、これだけ大災害が頻発して問題になっておるけれども、その関係の予算が飛躍的に増大をしたということはございません。所得倍増計画、その所得倍増計画も片寄っておるが、こういう人命に関する部分については、逆に比例的に言うならば減っておる。全体がふえておりますから、全体の予算がふえただけは、決してふえてはおらぬと思うのであります。経営者に対しても、あるいは馬を買ったり、あるいはその所得の一部分を保安に回してくれたら、あれだけの災害は起こらなかったのじゃないかという世論の批判があります。政府に対しても、それだけの非難というものは当然私どもも聞くところですし、感ずるところです。 それから監督官の処遇の問題について、入坑する際に、一時間八円の入坑手当、こういうことも言われております。それから監督官に私的に聞いたところでありますけれども、生産行政には行きたがるけれども、しかし、保安監督行政にはなかなか希望者がございません。それは助長行政をやりながら鉱山業者にまあ喜ばれておる。将来は、あるいは会社の重役というか、あるいは部長ぐらいになっていけるでしょうけれども、鉱山保安監督官には、そういうあれはございません。けがをしても、あるいは指一本なくなった云々ということで、労災に適用されれば処置がありますけれども、高松で坑内災害にあった場合には、ガス爆発にあったのですが、内臓を悪くして、今日まで出たり出なかったりしておると、内臓の器官の故障については、何の補償もございません。そうして、やっておる間には、あるいは鉱業権の取り消しをやろうとすれば、従業員はどうしてくれるのだ。これは論理だけでなしに、脅迫も受けるという話も聞いておる。あそこに欠陥がある、ここに欠陥がある、保安施設が、ここが悪いんだと気がついておっても、それを言えぬようなことにしておって、どうして保安の管理ができますか。監督体制にも、私は十分の施策がなされておるとは思わぬ、待遇の問題。先ほど救護隊の問題について欠陥が明らかになりましたけれども、監督体制についてもございます。人員の問題、十分の巡回ができるような人員の増加、あるいは待遇、将来の保障。裁判官のように身分的な保障もあり、あるいは将来についても不安がなければ、もっと言えると思うんですが、新聞に谷さんの自殺に対してこう書いておる。上の方では鉱業権者等と結びつきがあるかもしらぬ、あるいはこれは通産大臣も関係があるかもしれませんけれども、上の方は結びついておるが、まん中は下からの突き上げと、上の方との圧力の間にはさまって谷監督官は犠牲になったんだ、こういう話がございます。 そういう状態をおいでおいで、ただ、人命は尊重したい、あるいは保安設備の改善については努力したい、借りたい者には金を貸そうと、こういうことでは問題の根絶はできませんよ、これは。保安監督行政について、幾多の欠陥を私どもは見て参りましたが、これらの点についてどうする、どう改善していくつもりか、これは通産大臣にお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(椎名悦三郎君) こういう保安監督官の苦心というものは、目に見えないところにあると思います。私も就任して間もないのでありますが、まあいろんなことを耳にするのでありますが、今回の谷君の死によって、一そうそういう点を痛感させられておるわけでございます。谷君の死が、単なる犬死にでなしに、広く鉱山の保安監督体制のためにいわゆる転禍為福になれば、これは本人も瞑目ができると思うのであります。私は、この点につきましては十分に根本的に一つ考えてみたい。予算等の措置でございますから、これは一省でどうにもなることではございませんけれども、こういったようなことがやはり広く人の胸を打つものがあると私は思うのであります。 こういう機会に一つ監督体制の強化をはかりたいと考えております。
○吉田法晴君 労働省の村上労災補償部長も来ていただいておるし、それから人事院の厚生課長も来ていただいておりますが、監督官の処遇について、あるいは入坑手当、危険手当と申しますか、それから身分保障、災害補償等について具体的に承りたいんですが、新聞では、入坑手当一時間八円、それから災害の場合に、内臓の疾患ではどうにもしようがない、治療費は保険で出るけれども云々ということで、国家公務員災害補償法の規定その他が疑問になって参るんですが、今の取り扱い、問題点は今指摘した通り、これに関連して現行を御説明願いたい。
○説明員(小西宏君) 国家公務員の災害補償制度におきましては、公務に基因をいたしまして職員が災害を受けた場合には補償をするという定めになっております。鉱山保安監督局の職員が検査に参りまして、そして、そこで災害を受けたといたしますというと、その職員の行為が、公務に基づいて行なわれていて、その遂行中に災害を受けたということになれば、当然その補償の対象になるわけでございます。 その補償の種類といたしましては、ただいま国家公務員災害補償法におきましては、療養補償、それから休業補償、障害補償、遺族補償の四種類がございます。けがをいたしました場合には、そのけがの治療をいたしますための療養が国の負担で行なわれるわけであります。休業補償は、これは常勤職員の場合には普通は適用の対象にほとんどならないのでございます。そのけがの結果障害を残したといたしますというと、その障害の程度に応じて障害補償が出るのでございます。障害補償は、現在年金と一時金等からなっておりまして、障害等級十四等級区分のうち、一級から三級までに該当すれば年金、四級から十四級までは一時金一、こういう定めになっております。さらに死亡した場合には遺族に対して遺族補償が出る、千日分の遺族補償が出る、こういう姿になっております。
○吉田法晴君 そうしますと、大体規定の仕方は、たとえば遺族補償の千日分というように、あるいは障害補償の一級から三級、四級から十四級といったような、区分の仕方も、障害の程度は、労災と同じだということですね。
○説明員(小西宏君) 労災と同じでございます。災害補償では、労災法とバランスをとって運用するということになっております。その等級区分の分け方等も、労災保険とほとんど同様でございます。
○吉田法晴君 これはどちらですか。この入坑手当、危険手当とかいうのも、これはやはり人事院の所管ですか。
○説明員(小西宏君) ただいまの御質問の点は、これは給与局の所管になっております。災害補償は、職員局の所管になっております関係上、所管が違いますので、ちょっと私からお答え申し上げかねます。
○吉田法晴君 そうしますと、これは担当じゃない部分もあるようですが、鉱山保安局長に今の点お伺いしたいと思いますが、これは入坑手当やあるいは危険手当や、それからそういうものは、平生の給与——それにも新聞で報ぜられたように、やはり問題がある。それから身分保障あるいは待遇等についても、もっと考えなければならぬ面があるように思うのですが、現行と、それから所管をされた局長として、問題点と、それからこういうようにしてもらったらという希望と申しますか、ありましたらお伺いしたいと思います。
○政府委員(小岩井康朔君) 監督官の入坑手当あるいは危険手当と申しますか、そういった特別給与につきましては、人事院の方と交渉いたしているのでありますが、まあ金額、私どもにとってはもちろん十分だとは思っておりませんけれども、まず、まあほかの点とバランスをとりまして、人事院の一応決定いたしましたのが、入坑手当が一時間八円、災害などの調査のためのときには、まあ三倍の二十四円と、こういうふうになっておるのでありますが、これはもう、私どもにどうかという御質問ですと、もっともっとたくさんいただきたいのであります。しかし、まあいろんなほかの関係もありまして、そうまあ鉱山だけ無謀に多くということは言えないわけでありますけれども、従来のものよりも、もっとはるかに一つ増額していただきたいという気持は、私ども十分持っておるつもりでございます。
○吉田法晴君 入坑手当あるいは危険手当一時間八円、あるいは災害の場合の何といいますか、今度の場合は火災あるいは水害、爆発というときに坑内に入らなければならないときは、まあ三倍だけれども一時間二十四円、こういうことで、これは十分監督官の任務を遂行せい、あえて危険に入れというわけにはやはり参らんかと思いますが、身分保障あるいは給与の点について、裁判官と同じように、ときには脅迫があり、あるいはいわば逆に責任を問われるようなことがあるのに対して、十分任務が遂行できるように身分保障、あるいは待遇の点について考えてやらなければならんと思うのですが、大臣の、これは他省にも関係しますが、人事院にも関係することですが、一つ災害防止のために、こういう大災害を頻発させないために、監督体制を完備するために監督官の処遇について根本的に再検討し、改善をする御決意であるかどうか、一つ。
○国務大臣(椎名悦三郎君) ほかの振り合いもございまするので、十分にその点は配慮しつつ、監督体制の強化に努めたいと考えております。
○吉田法晴君 人事院の厚生課長に伺いますが、内臓の器官の故障等は、これは労災と全く同じだというと、その今の規定では十分まかなえないということがあるのではないか。実情は、ガス爆発があって現場に参りましたところ、あとに再発をしましたガスのために内臓をやられた。一年以上二年近くになると思うのですが、なおぶらぶらしていると、こういうことですが、そういうものについては、目に見える障害がない云々ということでどうにもしようがないと、こういう実情だと聞いておりますが、そういうことですか。
○説明員(小西宏君) ただいまおあげになりました事案につきましては、私具体的に承知しておらないわけでございますが、一般的に申し上げますというと、内臓の疾患についてもその災害に基因して障害を残した場合には、その程度によりまして補償ができるようにこの災害補償の対象の身体障害の種類の中にはあがっておるわけでございます。 ただしお尋ねのその事案の実態が、どういうことでございますかわかりませんが、すでに本人が前から病気を持っておりまして、で、それが増悪したというような場合に、公務上と私傷病との関係、この辺の判断が非常にむずかしいわけでございます。その辺の判断によりまして、それを公務上の災害と結びつけるかどうかという問題になってくるかと思います。
○吉田法晴君 これは監督官だけでなくて、あるいは労働省について言えば、基準局等にも関係があります。こうした災害を防止するために、あるいは大事故を起こさないために人命保護のために従事せられる行政官については、これは再検討する必要があると思うのですが、労災の問題、あるいは待遇の問題、あるいは身分保障の問題、あるいは給与の問題等について、大臣は概括的に再検討をしたい、努力をしたい、こういうことですが、これは関係者の間で、一つ機関を設けて協議をして具体案を作ってもらいたい、その具体案を次の機会に私承りたいと思うのですが、大臣として、先ほどの言明から協議立案を、改善の立案を具体的な協議をされる用意があるかどうか承りたい。
○国務大臣(椎名悦三郎君) できるだけ早く、この連絡協議会において研究いたしまして成案を得たいと考えております。
○吉田法晴君 労災補償部長にお尋ねしたいのですが、本会議で阿具根君から七十一名の罹災者については、その遺族補償の総額が五十万円か六十万円だろう、こういうお話がありました。これを聞いて同僚議員がすぐに感想を漏らしたことですが、五十万円六十万円が六十万円七十万円になろうと、これは半年ぐらいしかもたぬじゃないか、遺族が生活をするとしても、半年かそこらの生活費にしかならぬじゃないか、こういう感想が漏らされた。これは当然の感想だと思うのです。その後六十日分を支給するとしても最高が、これは上清炭鉱の場合に八十万になるかならぬくらいだと思います。 そうすると、遺族補償について、これだけのとにかく大災害、しかも施設の欠陥もあり、あるいは救援の態勢についても不十分で、これだけの犠牲が出た。遺族が一酸化炭素あるいは煙の中で苦しかったろうといって、この感想を述べておりますが、こうした事態によって起こった災害に対して、一千日分ということで妥当であるかどうかという点は直ぐに問題になってくるところですが、再検討をする用意があるかどうか。 それから鉱山保安監督官について、ずいぶん聞いたのですが、具体案は後ほど出していただくとして、関係者として、監督行政に従事するものとして、どういうように考えられますか、あとで保安監督局長にも意見を承りたいと思う。
○説明員(村上茂利君) ただいまの御指摘は遺族補償千日分、すなわち労働者の平均賃金の千日分が遺族補償として支払われるわけでございますが、上清炭鉱の場合につきましては、これは個々の労働者ごとに賃金が違いまするので、多い人もありますれば、少ない人もあるわけでございますが、平均大体六十五万円程度ではなかろうかというふうに私ども推定をいたしておるわけでございます。これは吉田先生御存じの通りでございますが、労災保険で平均賃金の千日分の遺族補償費を支給するわけでございますが、これは労働基準法の災害補償個々の使用者の補償責任におけるところの災害補償の遺族補償の額と全く同額になっておるわけでございます。従いまして、この千日分が適当であるかどうかという問題点を検討する場合には、基準法上の使用者の災害補償責任が現在の程度で足りるかどうかという問題と関連してくるわけであります。その点につきましては現在の基準法上の災害補償責任が、いわゆる無過失責任という考え方に立脚してできているわけでございます。そういった無過失責任の理論との関連におきまして、いろいろむずかしい問題があるわけでございます。 従いまして、直ちにその千日分が適当であるか、あるいは不適当であるかということにつきましては、いろいろむずかしい問題があると私は考えております。ただ労働基準法上の制度は、いわゆる労働基準の最低基準を定めたものでございまして、これはどの使用者にも共通して守っていただきたい最低基準でございます。それ以上のものにつきまして、どのような形の補償を上積みするかどうかという点につきましては、労使の団体交渉その他にゆだねられているのでありまして、現に基準法で定めるところの災害補償額以上に、労働協約などによりまして、上回った補償を受けているというような例もあるわけでございます。 従いまして、その最低基準という意味における災害補償を、遺族補償につきまして千日分を直ちに引き上げるかどうかという点につきましては、なお慎重に検討を必要とする、かように考えているわけでございます。
○政府委員(小岩井康朔君) 労災の関係につきましては、私ども直接関連はございませんけれども、労務者が罹災しましたときに、私どもがいつも痛感しますのは、大手の炭鉱では、まあ百数十万円、百万円をこえる場合が大体普通なんであります。百二十万円、百三十万円と、かなり多額の金をもらいますけれども、中小では、豊州が六十三万円平均と聞いておりますし、ただいまの上清でも六十万円前後と聞いておりますが、まだまだ少ない実例も聞いております。 そういうふうに特に中小の労災補償については、大手と比べまして賃金が安い関係で、賃金ベースで計算いたしますと、そういう結果になると思いますが、中小の労災補償については、私どもの希望としては、大手と同じように、もう少し十分引き上げてもらいたいものだという気持は持っております。
○吉田法晴君 村上補償部長からは建前だけをお話になり、その千日分、それが最低であるということ、労働基準法に規定してあるということは、私は聞いておりますし、知っております。ですから、そういうことをお尋ねしているのじゃないのです。千日分で幾らになるかという実例をあげて、本会議でも問題になったときに、六十万円やそこらで、とにかく半年そこらしか生活できないじゃないか、これがとにかく端的な、これは国民の代表——あるいは国民の感情ですから、労基法上の千日分というものも再検討すべきであるが、こういう災害の場合に、小岩井さんが今いわれるような、六十万円やそこらでは、やはり不十分ではないかということは、問題になっている以上、やはり真剣に考えなければならぬ問題じゃないか。あるいはそれ以上のものについては、労使の団体交渉云々ということですけれども、それは労働省の立場としてはいささか冷たい。しゃくし定木な話じゃないかと私思うのです。実際に大災害あるいは多少施設者、開設者について責任のある場合については、労働基準法あるいは労災法にきめられているもの以上のものが支給されているのが実情。ところがそれが、いわば鉱業権者なり経営者の温情にとにかくまかせられている、あるいはすがっているというような実情。端的に会社としても、天下に聞こえた上田のことだから、できるだけしてやって下さいということを申し上げ、あるいは残された家族、これは七十一名の、学校に行っている子供だけでも、中小学校で百八十名もある。この大家族をかかえて、これからどうしようか。筑豊の実情の中で、おそらくその生活の前途については、不安があるでしょうが、その今後の生活についても十分考えてもらいたい。あるいは炭鉱で使うなり、あるいはあと世話をするなり、最善のことをして下さいといったが、そういう問題は、あげてその国の責任だとか何とかいうことじゃなくて、経営者の温情にまかされている。そういう中で六十万円は、これは少ないのでございますから、それ以上は、それでは鉱業権者の善意に待ちたい。これで済みますか、労働省として。われわれとしても、六十万円そこそこで切られて気の毒だと思う。それでは、半年ぐらいしか生活ができないから、これから家族をかかえて、どうなるかということを考えるから、そういう点について再検討し、あるいは千日分についても検討しなければならぬが、千日分以上のあれについては、これは法上考えられないか、こういうことをお尋ねをしておるわけです。千日分を含み、再検討をして、災害にあった遺族の生活をもっと補償するように、労働省として検討をし、努力をする気持がありますかどうか承りたい。
○説明員(村上茂利君) 六十五万円程度の金で、遺族が今後生活しなければならん、非常に気の毒じゃないかという点につきましては、私も全くさように存じます。 ただ問題は、現行制度における災害補償制度を改定し、さらに増額をすべきかどうかという点になりますと、それは二つのファクターがあるわけでございまして、一つは平均賃金の問題でございます。賃金が一般的に低ければ、かりに日数を相当増加いたしましても、補償額の実額は上がらぬのであります。そういう意味合いにおきまして、平均賃金の実額が、どのような形で今後上昇していくかという、こういうことが、今後の一つのファクターではなかろうかと思います。 それからいま一つは、今の千日分が適当であるかどうかということでございます。この点につきましては、いろいろこれは御議論もあることと存じますけれども、一応数十年にわたりますところの災害補償の建前から見まして、現在の遺族補償制度が、一時金として成り立っておるわけでございますが、これを別な角度で、どのように扱ったらいいかと、こういう点になりますと、これは私が個人的意見を述べるにいたしましても、事柄がはなはだ重大でございますので、私の立場からは、これをどう改正すべきかということについて申し上げることは、差し控えさせていただきたい、かように考える次第でございます。
○吉田法晴君 まあ局長として、現行の法律を実施しているだけの立場からいえば、そうかもしれません。しかし労働省として、こういう問題について出てこられたんですから、労働省を相手にしてお話をするには、あなた以外にないから、そういうことを申し上げたのですが、あるいは同僚議員とか世論が端的に申しますように、六十万円やそこらでは、ほんとうに気の毒じゃないか、これから半年も生活ができるかできないかわからないじゃないか、あるいは現地でいうと、これから大ぜいの家族が、どうして生活をしていくだろうか。その生活の問題については、ただ温情にすがるだけでなくて、あるいは政府として、あるいは政治としてどうしなければならんかという課題が投げかけられておるから、平均賃金の問題も、あるいは千日分の問題も、一時金でいいか、あるいは年金にすべきか、あるいは生活の保障、国が就職あっせんをするというか、あるいは特別弔慰金について、事業主だけにまかせるだけでなくて、労働省からも勧告をするかという点も考えて、この残された遺族について、もっととにかく考えるべきじゃないか、こういう問題を投げかけたわけです。はなはだ木で鼻をくくったような態度でしたけれども、強い要望をして御検討をお願いしたいと思います。 それから最後に、この問題について大臣と局長とに伺いたいのですが、こういう大災害は、私は最近の合理化政策、その合理化政策が炭鉱に現われた場合に、労務費あるいは坑木費、保安費等を犠牲にして、大災害の原因をなしておる。あるいは炭鉱の中における、特に中小炭鉱の中における人命尊重の精神の足りなさが、この大災害を頻発さしておる原因になっておる点からいって、われわれはわれわれで報告を取りまとめ、あるいは院においても決議をしたいと考えておりますけれども、政府として、総合的に、これから研究していくというだけでなしに、あるいは保安融資をするということだけでなしに、過失に対しては、これはやはり十分責任を問うて、鉱業権の停止命令等々も考慮するということですが、これは結果からみて、とにかくこれだけの災害を頻発させる鉱業権者等については、鉱業権の取り消し、あるいはそれが何であるかは知らんけれども、やはり経営上の責任を問う、こういうことをしなければ、これは災害の頻発を防ぐわけには参らぬのじゃなかろうか。 それから政府の全体の責任として、こういう災害頻発のために抜本的な対策を立てる、あるいは鉱業法の全面的な改正もですが、ことに合理化法なり、鉱業法なりも再検討し、修正すべきところは修正しなければならぬと思いますが、私どもも、具体的に検討して案を立てていきたいと思いますが、政府として、どういうふうに考えられるか。最後に伺いたい。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 先ほど申し上げましたが、合理化問題が原因であるとは私は考えません。 ただ、合理化の方法によって、根本の問題じゃなくて、合理化——いわゆる三年の後に千二百円なら千二百円の炭価引き下げを考える、その考え方いかんによっては、とかくこちらの方に心持を奪われて、そうして保安管理の方を怠るというような懸念もなくはない。そういう点は懸念されないこともないのでありますから、そういうことのないように、十分に指導をして参りますと同時に、この災害防止に関しましては、先ほど来、だんだんと御質問に対しましてお答え申し上げた通り、各般の施策を、この際、いわゆる転禍為福と申しますか、この機会において検討を進めて、すみやかに結論を得るようにしたい、こう考えております。
○吉田法晴君 責任は、はっきりさせたいという御答弁であったと了承いたします。 以上で、上清炭鉱の問題については、一応時間も経過しますし、質問を他日に譲りたいと思います。 関連をいたしまして、これは院が付託をいたしました調査の任務ではございませんが、私ども団として上清炭鉱に参りました機会に、調査に参りました豊州炭鉱の問題について伺いたいと思います。 一昨日の本会議で、豊州炭鉱の残っている六十七名の遺体についても、その救出に最善を尽くしたいと総理大臣から、答弁をいただき一ました。いわば総理から言明されたと思うのですが、そうしたら、調査に参ります飛行機の中で、豊州炭鉱は閉山になるのではなかろうか、こういう話を聞かされた。そんなばかな話があるか。総理が、国の最高責任者として、遺体の救出についても努力をすると言ったばかりじゃないか。こういう話をしておりましたところが、だんだん救出の断念あるいは閉山という方向が、衆議院の調査団の、これは個人か団長か知りませんけれども、口から漏れた。それからだんだん聞いて参りますと、合理化の申請、買い上げの申請が、昨年からしてあった云々ということで——事故の前からしてあったということで、この鉱業権者ですか、あるいは鉱業権者の代理人が上京されたり、あるいは昨日でありますが、前から言ってあった通産省からの連絡で、上田清次郎氏が上京しておられる。それは、通産局がお呼びになって、もし遺体の救出作業が続けられないとすれば、遺族補償について特に考えてくれるだろうか、そういう意見を聞きながら、遺体の救出の中止あるいは善後策を協議するためにお呼びになったようです。通産大臣は、あの本会議の席上、横におられましたが、総理大臣が遺体の救出については最善を尽くしたいと言われた方針は、まさか、この通産大臣は知らぬ、そういう気持はなかった、通産大臣としては、別なことを考えておった、ということではなかろうと思うのですが、この経緯と、それから総理から遺体救出については最善を尽くしたいという言明を、どういう工合に今後やっていかれる、あるいはあの災害の原因が、陥落の原因が、あるいは入水の原因等が、盗掘その他にもよるから、鉱業権者に責任を負わせようとするならば、国で責任をもって遺体の救出に最善を尽くすという方策を立てておるのか。総理大臣の言明があったから、おそらくその方向で協議をされておると思うのですが、総理が示された政府の方針と、その後通産大臣のやっておる方針と、まるで裏腹——逆の方向のように思うのですが、通産大臣、御答弁を願います。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 遺体の収容については、最善を尽くすという根本のねらいは変わっておりません。 ただ、具体的な問題といたしましては、遺体収容のために、もっと掘り下げていかなければならぬ。ところが、どうも危険な状態であるから、われわれは、この作業に従事することはできないといって労務者が協力を拒んでおる。こういう状況でございますので、このまま放置しては、いつまでも解決しない、こういうことで、根本的に、これは調査をする必要がある。はたして労務者が協力を峻拒しておるようなことが正当であるかどうかというような点につきまして、専門家にお願いして、現地調査団を派遣したことは御承知の通りであります、いろいろ各角度から調査をして先般帰って参りまして、その報告を受けております。この報告については今ここで申し上げませんが、はたしてこの報告通りに従って、この方向に沿うて措置すべきかどうかというような点について、慎重にこれは検討する必要がある。そういう段階に立ってるわけであります。 そこで、その慎重考究する一つの方法として、上田清次郎氏の上京を促して、先般私は、時間がございませんで、予算委員会も始まる少し前、わずかの時間、上田氏に会いまして、そして私は大体の報告を聞いて、あとは担当の局長におまかせをして別れたわけでありますが、そういう状況でございます。 それで、上京を促したその後においてまた上清炭鉱の災害が起こった、こういうことで、その問題についても、話がそれまして、決して今、政府の遺体収容の方針、その方針を見切りをつけたというような段階ではございません。結論を慎重に出したい、かように考えておる状況であります。
○吉田法晴君 豊州炭鉱の大災害が起こった、そして、それの原因はどうか、あるいは遺体の救出に最善を尽くすべきだということできておられる、半年を出でずして、同じ会社、同じ経営者——これは直接責任者は違いますけれども、しかし上田さんの一門がやっておるものじゃないか。同じ系統の会社で、再びとにかく七十一名を犠牲にする大災害が起こった。ですから、その原因と責任を追及しているときに、豊州炭鉱の遺体の救出については最善を尽くしますと、本会議で総理が言われたのですよ。しかもそのときには通産大臣は、その総理の言明に従って遺体救出のために最善の努力をするのではなくて、もうあきらめようかという話を、上田氏を呼んでとにかくしようという。これは関係者あるいはその遺族にしても、泣いて衆議院の調査団に食ってかかっており、取り消さざるを得なかったと新聞は報じております。新聞関係の連中にしても、報道関係の諸君にしても、この最中に、遺体をもうあきらめるという動きがあるのか、こういって、私どもにも聞いて参りました。災害についても、人命を軽んずる空気があるから、大災害が頻発をする。遺体についても、最善の努力をしない。あるいは国といえども、一緒になって人道上の問題、人命の問題だから、その防止のために最善を尽くす、万一の場合には、それが心配のないようにと、国民の一人々々について——これは監督機関も、そういう点についての十分の考えがない。一人々々の命は、地球より重いという考えが、政府自身にもない。通産省自身にもないから、そういう問題が起こってくるのです。 少なくとも、とにかく総理の言明があったら、国も協力をし、通産省としては、県を通じあるいは建設省を通じて、あの陥落地における作業、工事だとか、あるいは燃えておる石炭をとる作業等はやっておられるようだけれども、あの総理の言明のあとに、本腰で遺体を上げる努力をした形跡というものはない。予算を計上し、あるいは大臣も責任を感じて遺体救出のために努力をする。どうしてもいかぬという場合には話し合いに入られて、どうしたらよいかという話し合いをされるならば別問題だ。遺体救出に全力をあげたいと総理が言った。その裏ではあなたたちは、その豊州の遺体救出については、やめる相談をしておられる。はっきりとにかく総理大臣の方針に反する。通産大臣の責任問題ですよ、これは。 では、どういう工合に遺体の救出をしようとしておられるのか。あるいは消火委員会は、消火できる、消火ができるならば、とにかく具体的にああせよ、こうせよと、この消火をすることができるという、方針だけじゃなしに、具体的にやってみなさい。あるいは現場に行った議員の諸君にも、それではとにかく中へ入ってもらいたい、こういうことまで言っておる。それは予算の審議もありましょう。予算の審議もありましょうけれども、態勢が——決意が、遺体の救出に最善を尽すという態勢ではない。具体的にどういう工合に、遺体の救出に最善を尽くされようとしているか。予算措置あるいは具体的な方法を、一つ承りたい。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 先ほど申し上げました通り、とにかく遺体の収容については、これは作業をしなければならない、その作業を労務者が危険であるからといって、これを拒絶している、そういうことでは、一寸も事が進みませんので、それでとにかく権威ある調査団を編成して、現地について調査をしたわけでございます。 その調査の結論が出て参りまして、その調査の結論は、きわめて悲観すべき結論でございます。それではたして、この調査の結論をどういうふうに考えたらよろしいかということを検討している、こういう状況でございます。そのために上田氏の上京を促して、その状況を聞いたわけです。 決して遺体収容に不熱心である、総理が言明している裏から反対の行動をとっているというようなことは全然ございません。
○吉田法晴君 私は、人命は一人といえども地球よりも重いという観念が、経営者にもないけれども、通産省自身にもないのが、災害の原因でもあるし、あるいは遺体の救出問題についても、それが現われているのじゃないかと思う。そういうことでは、口では大災害の防止に最善を尽くしたいと言われても、これはなかなか容易ではない。言うべくして実際は実現しないと考える。予算の審議もありましょうけれども、政府の方針として言明したものは、予算の裏づけをし、それから通産省として最善を尽くして、そうして、そのうちに云々というならば別問題である、それだけのことをやられておらない。これは東長鶴の場合は、出時の通産大臣であった高碕さんも行かれましたが、しかし椎名通産大臣の場合は、それだけの決意もない、態勢もない、ただ呼んで聞くだけ、これは上田さんの意向は、呼んで聞かなくてもわかっている、あと遺族の意見を聞かれたり、あるいは労働組合の意見を聞かれたりという話でありますけれども、ただ大臣、この際、あなたの決意です、口では、反対の方向はとっておらぬというけれども、実際にやられていることは、総理の言明の反対のことです。それでは人命を尊重し、あるいは災害を繰り返さないという大臣としての任務も勤まりません。責任も果たされません。具体的にどうされるか、一つ説明して下さい。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 具体的に今申し上げた通りでございます。
○吉田法晴君 呼んで聞くということだけで、それはあきらめようとしているじゃないですか。
○委員長(剱木亨弘君) 他に御質疑はございませんか。他に御発言がなければ、本日の調査は、この程度にとどめます。 本日は、これにて散会いたします。 午後五時八分散会 ————・————