社会労働委員会 第19号
- 発言数
- 212 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1961/04/06
会議録
○委員長(吉武恵市君) それではただいまから社会労働委員会を開きます。 労働行政に関する調査の一環として、労働福祉事業団の運営に関し、本日の委員会において参考人として、労働福祉事業団理事江下孝君、同経理部長岩沢克男君及び同第一事業部長国吉文雄君の出席を求めて、意見聴取を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉武恵市君) 御異議ないと認めます。
○坂本昭君 委員長、ちょっと待って下さい。 理事を私は求めたのではなく、理事長を求めたので、たまたまかぜで病気であるということで、理事がかわって出るということは、この際明らかにしておいていただきたい。そうしないというと、これは理事長が労働大臣から任命をされて、そうして理事は理事長が指名するものであって、責任の軽重、また、この審議会における意見のウエートの点においても非常な違いがあると思いますので、この際その点だけは明らかにして、病気がなおった場合には、当然責任者である理事長の出席を私は求めたい。この点を一つ明らかにしておいていただきたい。
○委員長(吉武恵市君) ただいま坂本委員から御発言がございましたように、本日、社会労働福祉事業団の理事長中西実君の出席要求があったのでございますが、病気のため出席ができないとのことでありましたので、かわって理事江下孝君が出席されることになったのであります。理事長中西実君につきましては、また別の機会に出席を要求するつもりでございますので、さよう御了承いただきたいと思います。 ――――――――――
○委員長(吉武恵市君) 次に、失業保険法の一部を改正する法律案(衆第一九号)を議題といたします。 提案者衆議院議員小林進君から提案理由の説明をお願いいたします。
○衆議院議員(小林進君) ただいま議題となりましたわが党提出の失業保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びにその要旨を御説明申し上げます。 本案の目的は憲法第二十五条並びに失業保険法第一条の精神にのっとってその給付の改善をしようとするものであります。 元来失業保険制度は、再就職するまで、失業保険金を支給することによりその生活の安定をはかるとともに、労働力の維持保全をはかるものであります。 それにもかかわらず、現行法における給付期間は最長のもので二百七十日であり、給付日額は我が国賃金水準が先進諸国に比してきわめて低位にあるにもかかわらず、平均賃金の六割であり、しかも最高日額が三百円に押えられています。 日雇失業保険金の日額は二級はもとより、一級の場合ですら最低生活が保障されない実態であります。 現在のごとく失業保険特別会計は黒字の多大の累積があり、かつ黒字基調の伸びつつあること等を考えますならば、この際大幅な給付の引き上げをいたすことが、失業保険の建前から当然であります。 われわれはこのような考えに基づき失業保険の給付改善をはかろうとするのがこの法律案を提出いたしました理由でありますが、以下その概要を御説明いたします。 第一に失業保険給付日数の延長であります。 現行法では離職の日まで同一事業主に継続して十年以上雇用された者には二百七十日分、五年以上十年未満の者には二百十日分、一年以上五年未満の者には百八十日分、一年未満の者で被保険者期間が十カ月以上の者には百八十日分、それ以下には九十日分が支給されています。 それを継続雇用期間が三年以上の者には七百三十日分、一年六カ月以上三年未満の者には三百六十五日分、十カ月以上一年六カ月未満の者には百八十日分、九カ月未満の者には九十日分をそれぞれ支給することに給付内容の改善をはかることとしたのであります。 それに伴って第十八条の受給期間を現行一年より三年に延長いたしました。 第二に失業保険金の日額の引き上げであります。現行法は賃金日額の六割を基準とした賃金日額表によって定められておりますが、それを四百八十円までは百分の八十を乗じ、四百八十円をこえる金額に対しては百分の六十を乗じた額の合計額とすると同時に、最高額を現行三百円から一千円まで引き上げることにいたしました。 第三に国庫負担でありますが、現行の四分の一から三分の一に増額することにいたしました。 第四に日雇労働者の失業保険金の日額の引き上げであります。現行の第一級二百円、第二級百四十円を第一級三百五十円、第二級二百六十円に増額しようとするものであります。 第五に日雇失業保険料日額の改定ですが、現行第一級十円、第二級六円を第一級十四円、第二級十円といたしました。また第一級、第二級の保険料日額の区分は、日雇労働被保険者に支払われた賃金が四百五十円以上の場合は第一級、四百五十円未満の場合は第二級といたしました。 なお、日雇労働被保険者及び事業主の負担すべき保険料は、それぞれ第一級については七円、第二級については五円といたした次第でございます。 第六は、日雇失業保険と一般失業保険との受給資格の調整制度の改善でございます。現行制度においては、日雇労働被保険者が二月の各月において十八日以上同一事業主に雇用されたときは、その翌月において離職した場合にのみ当該二月を一般失業保険の被保険者期間として計算する取り扱いをすることができることとされていますが、これをその翌月のみならず、その後において離職した場合にもその取り扱いを行なうことができることとし、日雇労働被保険者についてその保険料の掛け捨てを少なくするとともに、一般失業保険金が受けやすくなるようにはかったものでございます。 以上がこの法律案の要旨でございますが、何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いするものでございます。
○委員長(吉武恵市君) 本案に対する質疑は、次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉武恵市君) 御異議ないと認めます。 ――――――――――
○委員長(吉武恵市君) 次に、最低賃金法案(衆第一五号)を議題といたします。 提案者衆議院議員五島虎雄君から提案理由の説明をお願いをいたします。
○衆議院議員(五島虎雄君) 私は、日本社会党を代表いたしまして、最低賃金法案の提案理由を説明いたします。 本法案を提案いたします理由は、第一に、現行最低賃金法が非常に致命的な欠陥を示していること、第二に、社会党案が最低賃金制の本来の精神に立脚するものであること、この二点にあるのであります。 第一の理由を具体的に例示してみますと、大体五つの点に要約できると思うのであります。 一は、現行法が労使対等の原則を否認しているということであります。 ILO第二十六号条約を見れば明らかなように、最低賃金制の運営にあたっては、労使が対等の立場で参加することを規定しております。最低賃金制というものが、労働者の最低生活を保障しようということにある以上、このILO第二十六号条約のいうところは当然守られなければならないものであります。しかるに政府は、なおILO第二十六号条約も批准せず、従って、現行最低賃金法がILO条約に違反し業者本位に運営されているという致命的欠陥を露呈するに至ったのであります。 二は、現行最低賃金法の運営の実績を見ますと、最低賃金額を算定するにあたって、労働者の生計費が全く考慮されていない、という欠陥であります。 現行最低賃金法第三条は「最低賃金は労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」と規定されております。この規定は、最低賃金決定の基準として国際的通念となっている三原則、すなわち、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力の三原則を総合的に勘案すべきことと一致しておるのでありまして、この第三条の規定そのものは別としまして、この第三条の実際の運営面に大きな欠陥が露呈されていることに問題が存するのであります。 それは、最低賃金額を実際に決定するにあたって、企業の賃金支払能力が優先的に考慮されているという実情であります。こういうことになる根本的な理由は、監督行政機関に必要な予算が確保されておらず、従って、当局が適切な指導、監督ができないこと、従って、費用の面で業者におぶさる結果、業者に都合のよい調査がされ、都合のよい資料が作られ、その業者本位の資料によって実際に最低賃金額が決定されることになるわけであります。つまりこういう業者本位の資料によっては、企業本位の考慮が優先し、労働者の生計費が無視されるに至ることは当然のことであります。 このように、現行法の運営が実際には法の規定に違反し、労働者の生計費を考慮せずに最低賃金額の決定がされてきているのでありまして、これはまことに重大な問題であるといわざるを得ないのであります。 三は、現行法が、労働者の組織化を妨げる役割を果たしているということであります。 周知のように、諸外国の最低賃金法制定の動機を考えてみますに、一の大きな動機として、労働者の組織化の促進ということがあげられているのであります。この諸外国のことと考え合わせましてわが国の現行最低賃金法の運営を見ますとき、全くこれと逆行する傾向を示していることが明示されているのであります。 たとえば、大企業労働組合が高賃金の労働協約を結び、その協約下に未組織の労働者を組織しようと努力している最中に、業者間協定を結んで労働者の組織化の努力を水泡に帰せしめるということは、これはまことに遺憾なことでありますが、事実としてあげられていることであります。 もしこのようなことがたびたび行なわれるに至りますれば、事はきわめて重大でありまして、われわれはこれを無視することはできないのであります。本来、労働行政の目的は、労働者の組織化を育成し、それによって労働者の生活向上をはかることにあるのであります。この労働行政本来の目的に違反して現行最低賃金法が運営されている限り、私どもは根本的立場から現行法の廃止を要求せざるを得ないのであります。 四は、現行の最低賃金制が最高賃金制化しつつある、ということであります。 このようになる理由は、現行の最低賃金協定が、過当競争の排除と求人難の打開ということに基づいて決定されている実情の中にあると思うのであります。過当競争を排除するために業者が協定し、一定の賃金以下は支払ってはならないことを決定はするが、一たんその事態を排除すれば、この決定した最低賃金額が標準賃金として固定化し、結局頭打ち賃金としての作用を持ってきているのであります。このことは、現行最低賃金額が業者本位にきめられている結果当然のことでありました、このような事態が一般化していく傾向を私たちは深く懸念するものであります。 五は、現行法が右のような欠陥を持ちながらも運営されていくことは、結局全国一律の最低賃金制は成立し得なくなることであります。 右の五点はごく大まかに見た現行最低賃金法の欠陥でありますが、このような欠陥を持つ最低賃金法は、むしろわが国の低賃金構造の維持に役立つものでありまして、私どもの容認し得ないものであります。なお、現行最低賃金法成立以後の施行状況を見ますと、昭年三十六年二月末現在で賃金最低額を定める業者間協定の締結数は四百九十五件、適用使用者数四万七千人、適用労働者数は七十九万人であります。 このうち、最低賃金法第九条(業者間協定による最低賃金決定方式)による最低賃金の決定状況を見ますと、二百七十九件、その適用者は使用者で二万七千人、労働者五十万九千人であります。 この実態から見ますと、現行法は雇用労働者全体のきわめて微少の部分にしか適用されていないわけでありますが、これは実質的に現行法が、低賃金構造には一指も触れ得ず、かえってその維持の役割を果たしていることを示すものであります。こういう見地に立ちますとき、私どもは現行法を廃止し、本来の意味の最低賃金法を成立させるほかないと考えるわけであります。ここに日本社会党があらためて最低賃金法案を提案し、わが国の低賃金構造を打破し、健康にして文化的な生活を実現しようとする意図があるのであります。 次に私は、日本社会党提案の最低賃金法案の目的と、法案の内容について申し上げたいと思うのでありますが、まず第一に、その目的は、わが国の低賃金構造を打破し、労働者に対して憲法第二十五条に規定する「健康で文化的な最低限度の生活」を営ませることにあるのであります。 周知のように池田内閣は、所得倍増論を宣伝し、好況を謳歌しております。しかしながら、わが国の実態を見ますときに、最低限の生活すら保障されない貧困者が一千万人も存在しているのであります。これを賃金の面から見ますと、最低限の生活をするに必要な賃金すら得ていない不完全就業者が八百万人もいるのであります。池田内閣は日本経済の繁栄を謳歌しながら、社会の最下層に呻吟するこれらの貧困者、低賃金労働者に対して、何ら救済の措置を講じていないのであります。これは道義的に見てもきわめて問題でありますが、このような低賃金労働者を一掃しない限り、わが国の全般としての賃金水準の上昇はあり得ないのであります。 こういう実情に立つとき、この低賃金構造の打破のためには、全国一律の最低賃金制がまず必要であり、これなくしてはわが国の賃金実態を正しい方向に向けることはできないと思うのであります。 要するに日本社会党の最低賃金法案は、日本の低賃金構造の実態に目を向け、その構造打破が急を要するとの観点に立つとともに、また、ILO第二十六号条約の精神をもくんで提案されたものであります。 次に私は、おもな点について、法案の趣旨を説明いたしたいと思うのであります。 第一に本法案は、労働基準法第二十八条第二項に基づいて作られたものであります。御承知のように、現行法が成立の際、第二十八条は修正され、第二十九条から第三十一条までは削除されています。 社会党案は附則において、労働基準法第二十七条を削除し、第二十八条から第三十一条までを修正して復活しておりますが、その意図は次の点にあるのであります。 すなわち、労働基準法の最低賃金の規定は、憲法の精神を受け継ぎ、労働者の最低生活を保障すべき立場から作られたものであります。しかるに政府は、この憲法の精神を無視し、労働基準法の最低賃金規定を骨抜きにした現行最低賃金法を作ったわけでありますが、私どもは、現行最低賃金法は、憲法、労働基準法の精神に違反していると信じるものであります。ここに私どもが、憲法、労働基準法の精神に沿った、正しい意味の最低賃金法を提案する理由があり、労働基準法第二十八条から第三十一条までを復活させたものであります。 第二に、最低賃金額決定の基準を、生計費、一般賃金水準その他の事情を考慮して定めることにしました。 第三に、雇用されている労働者は、原則としてすべて一律に一カ月最低八千円を保障されることにしました。 第四に、最低賃金の定めを含む労働協約が一定の地域の事業の大多数の労働者によって結ばれた場合、この協約をその地域の他の同種の労働者にも拡張適用できる道を開いたのであります。ここで「一定の地域」とは全国または府県、あるいは一行政上の単位をも含むものであります。 第五に、この協約の拡張適用の場合、適用を受ける方の労使に異議申し出の権利を認めたことでありますが、この異議申し出が賃金審議会に認められた場合、その意見に基づいて一年の猶予と、一年の範囲内で別段の定めをすることができることにしました。 第六に、本法案では中央賃金審議会に勧告権を与え、スライド制を規定し、労働大臣がこの勧告を受けたときは、必要な措置を講ずべき義務を規定しました。 以上はごく概略の本法案の内容説明でありますが、何とぞ慎重審議の上、本法案を御採決あらんことを望むものであります。
○委員長(吉武恵市君) 本案に対する質疑は、次回以降にいたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉武恵市君) 御異議ないと認めます。 ――――――――――
○委員長(吉武恵市君) 次に、労働組合法の一部を改正する法律案(参第一一号)を議題といたします。 発議者村尾重雄君から提案理由の説明をお願いいたします。
○村尾重雄君 ただいま議題となりました労働組合法の一部を改正する法律案の提案理由を御調明いたします。 労働組合法において規定される労働委員会の制度は、中央労働委員会と地方労働委員会とに分かれておりますが、いずれも労使間の紛議の調整並びに不当労働行為の救済をつかさどる行政機関として、労働組合または労働者の利害に重大な影響を持つ制度であります。それがため労働委員会を構成する委員の選出については、労使委員については、それぞれその関係団体よりの推薦により、公益委員については、学識経験者中より労使委員の同意を経て、労働大臣または都道府県知事が任命することになっております。現行労組法においては、労働組合が労働者側委員を推薦するためには労組法第二条並びに第五条第二項の規定に適合する旨の労働委員会の立証がなければならないことになっており、また、同法施行令によって、これが推薦手続について二以上の都道府県にわたって組織を有する労働組合は、中央労働委員の、一つの都道府県の区域内のみに組織を有する労働組合の場合は地方労働委員の推薦手続に参与できることになっているのであります。従って、現行法並びに同施行令によりますれば、二つ以上の都道府県にわたって組織を有する労働組合が労働委員の推薦手続に参与できるのは、中央労働委員についてのみであって、都道府県に所在する当該単位組合の支部、分会等の組織は、当該都道府県の地方労働委員の推薦手続に参与できないことになっているのであります。ところが現実には、二以上の都道府県にわたる組織を有する単位労働組合の支部、分会等は、当該都道府県の労働運動に大きな影響力を与えており、当該都道府県の労使紛争の調整機能の上に及ぼす影響をも決して見のがすことはできないのであります。のみならず、不当労働行為の救済については、労組法第七条第一号の組合員個人の救済の場合、これら単位労働組合の支部、分会等が、事実上単位労働組合にかわって当該組合員の利益のための主張をする地位を有しているのであります。しかるに現行法によれば、これら単位組合の支部、分会等にあっては、その組織がいかほど大きくても、独立した労働組合でないとして、当該都道府県の地方労働委員の推薦手続に参与できないことになり、労働委員会制度の本質からいってもまた現実の労働行政の実施上からいっても、現実に即しない制度であるというべきであります。しかも、この現実に遊離した現行法のもとにおいては、すでに労働行政の実施に事実上障害を与え、同一の単位労働組合の規約でありながら、都道府県を異にすることによって労働委員会がその解釈を異にし、単位労働組合のいわゆる支部、分会等に対して資格あるものと認定するものあり、また、これに反する解釈をするものがあって法の運用に混乱を生じ、また労働組合は、この混乱を避けるため心ならずも二都道府県にわたる組織を有する労働組合は、形式上連合団体たる労働組合になす等の無理を来たしているのが現状であります。かくては、労働行政の正常な運営に障害を与え、また、本来労働組合が任意にその組織形態を選ぶべきに対して、地方労働委員の推薦手続に参与したいがため、あえて連合団体の形式を選ばなければならないということは、労組法の趣旨である自主的組織の指導理念にも反するものといわなければなりません。 ここに労組法の一部を改正して、これらの障害を排除し、もって、労働行政の円滑な運用と、労組法の本来の趣旨である労働組合の自主的組織の機運を育成しようとするものであります。 以上が、この法律案の提案理由及び大要であります。何とぞ、慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことを望みます。
○委員長(吉武恵市君) 本案に対する質疑は、次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉武恵市君) 御異議ないと認めます。 ――――――――――
○委員長(吉武恵市君) 次に、労働情勢に関する調査の一環として、労働福祉事業団の運営に関する件を議題といたします。 御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。 速記をやめて。 〔速記中止〕
○委員長(吉武恵市君) 速記を始めて下さい。
○坂本昭君 まず、大臣に伺っておきたいのですが、労働福祉事業団の新しい理事長の就任、これは労働大臣が任命することになっておりますが、いっこの任命をされたのでありますか。
○国務大臣(石田博英君) 二月十五日であります。
○坂本昭君 今度の国会に雇用促進事業団の法案が提出されようとしていますが、おそらくはこの新しい事業団の新設と相待って、新しい理事長には新しい構想を持たしたのだろうと思うのですが、労働大臣のお考えはいかがでありますか。
○国務大臣(石田博英君) 現在直ちに直結して考えておるわけではございませんで、雇用促進事業団が御審議を経て可決されましたならば、別途の構想で、新しい構想でものを考えたいと思っております。
○坂本昭君 労働福祉事業団法の三十二条に、監督の項目があって、これに、「事業団は、労働大臣が監督する。」、それから次に、「業務に関し、監督上必要な命令をすることができる。」、こういう二つの項目がありますが、この事業団の重大な任務にかんがみて、大臣として今までにいかなる監督をし、また、特別な命令をしたことがあるか、その事実について御説明いただきたい。
○国務大臣(石田博英君) 今までのところ別にございません。命令をしたことはございません。
○坂本昭君 雇用促進の問題やあるいは労災の問題や、非常に重大な時期になってきていると思いますので、今まで特別なことをしたことはないということは、これは監督の大臣としてはなはだ私は怠慢のそしりを免れないと思うのであります。で労務災害もかなり頻発しておりますし、また、雇用促進問題も出ておるのでありますから、今後は従来よりももっと厳格な監督と十分な命令を下していただきたい。 そこで、昭和三十二年にこの団法が制定されるまでは、三者構成の労災協会で事業団のいわば仕事というものは運営されてきたのであります。ところが、新しい団法が制定されてからはその三者構成の内容は変わってきている。むしろ私は、運営の実績は前の三者構成の方がよかったのではないか、そう思うのであるが、大臣はどう考えられますか。
○国務大臣(石田博英君) 現在でも労働者側から三名、使用者側から三名の参与委員が運営に参与をいたしておるわけであります。
○坂本昭君 いやその参与というのは、ただ参与はしているけれども、別にこれは給料をもらっていませんし、それからまた、手当ももらっていないし、たかだか昼飯か晩飯かによばれるくらいのことであって、それらのことは大臣も知っておられると思うのです。前の三者構成の場合の方が労災病院の運営についてももっと実績があったかと思う。かえってこの団法ができてから古手の役人ばかりついてしまって実が上がっていないのではないか。当然団法が制定せられてから内容がよくなり、労災病院の運営の面において実が上がらなければならないのであるが、どうも上がっていないために、最近病院ストが起こったりいろんな事故が起こっておる。私はそういう点で三者構成の方がよかったのではないか。単なる昼飯か晩飯を食わせるだけの参与ではなくて、もっと内容のある三者構成にしてはどうか、そういう点についての大臣の考えを承っておきたい。
○国務大臣(石田博英君) 制度の問題も研究の主題になると思いますが、昼飯か晩飯を黙って食べてくるのではなくて、その機会に十分御意見をお聞かせいただければ幸いだと思っている次第でございます。
○坂本昭君 そんないいかげんなことでは、次の雇用促進事業団もこれは少し大臣をしぼらなければ、そういうことでは、この法案を本委員会では円滑に通すわけにはいきません。私はこの際、新しい理事長に実は承りたかったが、――それはだんだん事業団の仕事の内容が重大化してきたので、結局労災関係とそれから雇用促進関係とに仕事を二つに分けてきた、で、この考えそのものは私は悪いとは思わない。こういう段階に至って、一体あとに残る労働福祉事業団の方の理事者は労災一本になった場合、どういう決意とプランを持ってこれを運営していこうと思っているか、これは大臣ではなくて新しい理事長に承りたかったのですが、きょうはかわりの人が来ているようですから、次回にかぜがなおってから、ゆっくり私はその意見を承りたいと思いますが、きょうはとりあえず理事の方に、新理事長を迎えて新しい構想持っておられると思うから、その辺の決意とプランを一つ御説明願いたい。
○参考人(江下孝君) 理事長が欠席いたしまして、私からそれではお答え申し上げます。 ただいま御質問になりました点に関連いたしておりますが、参与制度の問題でございますが、労使の制度の問題でございますが、これは大臣からもお答えいたしましたように、諮問機関として労使各三人ずつから構成いたしております。大体毎月最低一回はこの参与会議を開催いたしまして、そうしてその機会に当面の重要事項につきまして十分御意見を拝聴いたしているわけでございます。実質的にも――単に昼飯、晩飯だけでなくて、実質的には相当お話を承っておるつもりでございます。この点につきましては、将来も十分参与制度を活用して参りたい、かように考えております。 新しい理事長を迎えまして、目下その理事長のもとにおきまして、新しい構想のもとに労災病院の運営につきましていろいろと考えておるわけでございますが、基本的には今まで私どもが実施して参った線を、大きく変わるということはないと思います。ただ来年度予算におきまして、本部に従来医師の関係の職員がなかったということからいたしまして、いろいろと問題解決に不便な場合もございました。来年度予算におきましては医監制度をとりまして、まあ具体的にどうするかということはまだきめておりませんが、本部に医監を置いて、十分医療問題等につきましてはこの意見を聞いて運用していく、かように考えております。 なお、これは本年度の運営に関連いたすわけでございますが、本年度の収支の関係が非常に悪うございまして、相当な赤字を出しております。そこで来年度におきましては、医療単価の引き上げはもちろんでございまするが、極力収入の増加ということにつきましても、無理のない程度に一つこれは考えて参らなければならぬ。あわせまして、経営の合理化と申しますか、何しろ全国に二十五というようにあちらこちらに散在いたしておりまして、地域的にも必ずしも恵まれた条件にないものでございまするので、これらの一つ一つの病院を運営して参るということになりますと、非常な困難を感ずるわけでございまするので、合理化という点からいたしまして、来年度におきましては、でき得るならば一つ、二つの試験的な、模範的な病院と申しますか――語弊があるかもしれませんが、そういうものを中心といたしまして、そうしてそとでいろいろな実験をいたすというようなことからいたしまして、全国の病院にその例を及ぼしていく、こういうような考え方でやったらどうかというようなことを、今、相談をいたしておるわけでございます。 一応、理事長にかわりましてお答え申し上げる次第でございます。
○坂本昭君 ただいまの説明では、新しい段階を迎えた事業団の新構想としては、十分なものとはとうてい考えることはできません。少なくともその参与制の問題についてもう一度お伺いいたしておきたいと思うのですが――まて石田労働大臣の程度になれば、飯を食っただけで政治を進めて重大な解決をすることもできるでしょうが、少なくともことしになってから参与は一体何回くらい集まって、どういう内容を検討して、その結果が事業団の業務推進の中にどういう形で現われているか、その具体的なものをまず御説明いただきたい。
○参考人(江下孝君) お答え申し上げます。 毎月最低一回は行なうということにいたしております。第三水曜が一応の定例日になっております。しかし、どうしてもその日が都合が悪いというときには――今まで過去三年八カ月の間に二、三回はやらなかったことはございますが、そのあとは全部これは実施したのであります。 それから具体的に何をかけたかというお話でございますが、これは来年度予算の大綱につきまして御協議を願ったことを覚えております。
○坂本昭君 やはりこれは新しい理事長にもう少し次の機会に詳しく尋ねましよう。 ただ、労災病院の運営の点で収入を上げる、それについて二点触れておる。一点は、これは医療単価が引き上げられるであろうということに期待を持った点。それからもう一つは、極力ふやしたいのだけれども、その極力ふやしたいふやし方が少しも具体的に説明されていない。たとえば労災の単価をあなたの方で契約を引き上げて、そうして収入をふやすとか、あるいはもっと別の面で運営のために予算をふやすとか、何かそういうことを実際におやりになるならばともかく、今のように極力ふやすという抽象的な言葉では納得できないので、その点、明確に御説明いただきたい。
○参考人(江下孝君) 労災関係の医療単価につきましては、御承知の通り、これは事業団の業務方法書によりまして、労災患者につきましても健康保険の単価に準じてこれを行なう、かように相なっております。労災患者以外の健康保険患者は当然健康保険に上って扱う。それ以外の労災診療に特有なものにつきましては、特別に労働省で単価を決定して実施している、かように相なっておるのであります。そこでこれらにつきまして、寄り寄り、もちろん労働省にもいろいろお話を申し上げまして、実情に合う単価の決定ということにつきましては、両三度相談をいたしております。 それから私の方の本来の収入の増加ということにつきましては、これは具体的に申し上げよというお話でございますので、具体的に一、二申し上げますと、たとえば請求技術の問題があると思うのです。近ごろ病院におきまして二、三調べてみますと、やはり相当請求漏れがあるようでございます。それからいま一つは診療支払いの焦げつきがやはり相当ございます。こういうものもできるだけ一つ焦げつかないようにしていくというようなこと、そのほかもう少し医薬品の使用というような面につきましても、できるだけむだを排除するというようなこと、そのほかまだございますが、おもな点はさような点を中心に考えておるわけでございます。
○坂本昭君 日本の二千万労働者の労災をいわば実質的に扱っている事業団の理事としての答弁としてはまことにお粗末であります。何か小さい診療所の所長あたりが言うことならば当てはまるのですが、あなた方、給料を一体幾らくらいもらっているのですか。今度医監制ができるという。医監制の医監の給料が幾らで、理事長並びに理事の給料は幾らですか。理事並びに医監の給与が与えられるのかどうか、権限が与えられるのかどうか、その給与の点で理事長、理事、それから新しい制度の医監の給料を一つ比べてみて下さい。医療金融公庫についても説明を求めたのですから、ちゃんとして下さい。それから退職金のことも全部言って下さい。
○説明員(村松伍郎君) 医監の方の待遇は、これから事業団でお考えになると思いますが、大体平理事さん程度の水準にいくように考えるつもりでございます。それから理事長の方の俸給は、全部合わせまして、つまり勤務地手当とか扶養手当とかなしで、一本になっておりまして、これは十三万円でございます。それから理事さんは十一万円でございます。監事は八万円になります。
○坂本昭君 それから退職金はどうなって――また、恩給との併給があると思うのですが、この事業団の恩給はどうなっておりますか。
○説明員(村松伍郎君) 事業団には恩給制度がありませんので、従って、国家公務員くらいの恩給をもらいます。事業団の方としましては厚生年金保険の適用を受けます。以上であります。 退職金は、これは各公団で統一した役職員の退職の規程がございまして、それに基づいて積み立てております。
○坂本昭君 その内容は幾らですか。
○説明員(村松伍郎君) 六五%です。
○坂本昭君 それから理事の任期があるはずだから、その任期が切れた場合の、今の理事長でいえば幾らになるのですか。
○説明員(村松伍郎君) 任期は四年でありますから、四百……ちょっと計算してよろしいでしょうか。――約三百九十五万円であります。
○坂本昭君 今、江下理事から新しい雇用促進事業団が新設された場合、今度は一本になって労災病院運営になるのであるが、その場合のまあ構想と計画をお聞きしたところ、はなはだ貧弱であります。こんなことでは、労災という非常に大事な問題をささえているこの事業団としての私は使命にもとると思う。もう少ししっかりした考えを持って出直してもらいたい。それから新しい理事長の意見は、大臣これは監督権があるのだから、労務災害ならばともかくとして、かぜ引きなどで国会に出てこないというのは、そんなことはいけません。十分監督し命令を出して、次回に明確にしてもらいたい。 特に名称がどうなるかということですね。たとえば今まで労働福祉事業団ですが、今度は労災福祉事業団になるか、労災補償事業団になるか、その点もう少し明らかにしていただきたい。
○説明員(村松伍郎君) 労働福祉事業団の名前はそのままでございます。残ります。
○坂本昭君 先ほど、その役職員の退職金の説明がありましたが、職員の場合は、これは国家公務員でないので、この場合の退職金はどうなりますか。年金は、つまり厚生年金がつくわけですね。
○説明員(村松伍郎君) ええ。
○坂本昭君 退職金は十年、二十年、三十年勤務した場合、各年ごとにどうなるか、説明していただきたい。
○説明員(村松伍郎君) 詳しい数字はあとで御報告いたしますが、五年までは一年にきつ本俸の一カ月分、五年から十年までは本俸の一・四カ月分、十年から二十年までは本俸の一・八カ月分、二十年から三十年までは本俸の二カ月分、三十年をこえる期間は一年につき本俸の一カ月分です。
○坂本昭君 そうすると、かりに二十年事業団で勤めて、やめるときの給与が四万円であったとすると、幾らになりますか。
○説明員(村松伍郎君) 四万円であったとすると、二十年ですと三十カ月分になりますから、百二十万円であります、四万円だとすると。
○坂本昭君 いずれにしても、理事が四年勤めて約四百万近いことになる。比べると非常に少ない。
○説明員(村松伍郎君) 先ほどのは理事長でございまして、理事はそれより安くなります。
○坂本昭君 やはり給料が高くなれば、それだけ責任が大きいはずですから、その点よく労働大臣、監督の立場から十分徹底させてもらいたい。 次にお尋ねいたしますが、事業団は、労災法の二十三条と団法の十九条、これで規定されておると思うのですが、この点いかがですか。
○説明員(村松伍郎君) 事業団の業務の範囲は、御指摘の通り、十九条に規定してある通りであります。
○坂本昭君 この際、大臣に伺っておきますが、この労災法の二十三条には、「政府は、この保険の適用を受ける事業に係る業務災害に関して、左の保険施設を行う。」として一から五までをあげてあります。そうして、団法の十九条では、これを受け七療養の施設、職業再教育施設、その他を設置しまた運営を行なうということになっておりますが、この二十三条の一から五まであげた項目、たとえば外科後処置、あるいは義肢、あるいは休養の施設、そういったことをなぜ事業団に団法の中で規定をしていないか、御説明いただきたい。
○説明員(村上茂利君) 二十三条の関係と事業団法の十九条との関係でございますが、労災保険法二十三条の第一項第一号の外科後処置に関する施設という例を申し上げますと、これは外科の手術をした患者が一応治癒いたします。治癒いたしました上にさらに整形外科的な処置をする、こういう場合の保険施設でございます。これは労災病院のみならず、国立病院あるいは日赤病院などでもその外科の処置を行ないまするので、労災病院だけがこの外科の処置を行なうのだ、こういうふうにいたしますと、運用が適切に参りません。つまり労災病院がないような県の労働者は、その外科の処置に関するサービスを受ける場合に非常に不便を感ずる、こういうことでございますので、労災病院以外にも適当な病院にやらし得るように残しておかなければいけませんので、包括的にこの外科の後処置に関する施設をこの事業団にやらせるということは不適当である。同時に、義肢の支給に関する施設につきましても、これは義肢の製作所で義肢を支給するのでありまして、その義肢の支給を受けた場合、必要経費は労働基準監督署で支払う、こういう建前にする方が運用上適切でございます。これを労働福祉事業団に全部やらせるということにいたしましても、義肢の支給がはたして適切にいくかどうかということにつきましては、問題がございます。そのような意味で、包括的に事業団にやらし得るもの、行なわせることが適当なものと、そうでないものとありますので、現在のところは、職業再教育に関する施設と療養に関する施設、これを行なわせることにいたして一おるわけでございます。しかしながら、将来におきましてはどうなるか、こういう問題がございますので、必要が生じました場合には、政令の定めるところによりまして、新たに事業団の行ない得る業務を付加するということが法律的に可能になっております。
○坂本昭君 いや、私は、それは今のつまり、労務災害に対する療養について、何も労災病院だけやっておるのじゃありません。一般の開業医でも指定を受けたらやることができるし、だから、特にこの際に、一から五まであげた中を委託業務として別に規定をしておる、そのことが少しおかしいではないか、むしろ初めから外科の後処置も労災病院に当然含まれてやるということにしておいてもよかったのではないかと私はそう思うので伺ったわけなんです。というのは、この外科後処置、これは全部私は労務災害の補償の内容に入ってくると思うのです。あなたの方ではこういうことは労務災害の補償の中に入っていないとそうお考えになっているわけではないと思うんですが、いかがですか。
○説明員(村上茂利君) 外科後処置が医療給付の内容に入るかどうかという点につきましては、これは専門医の方にもしばしば御意見を伺っておるのでありますけれども、医学上の治癒という概念をどうとるか、治癒という考え方に関連いたしまして、一応外科的には創面がいわゆる癒着したというような状態をとらえて治癒という概念に扱うというような考え方が一般にとられておるようでございまして、そのあとに、さらに整形外科的な処置をする場合にそれを別途外科後処置というような形で処理するというふうな従来慣行とされておるその考え方をとったわけであります。しかしながら、今坂本先生御指摘のように、最近のように整形外科が発達した場合には当然それを療養補償の一環として行なったらどうかという有力な意見もございます。で私ども事務処理の場合にはたしてどこからどこまでを療養補償とし、どこからどこまでを外科後処置にするかという点につきましては、いろいろ判別困難な複雑な問題がございますので、その点についてはかねがね専門医の方々の御意見を聞きまして検討しておるところでございます。しかし、まだ明確な結論は出ておりません。しかし、いずれにしましても労働者の労働能力をできるだけ回復するというのが労災の精神でございますので、外科後処置を労災病院はもちろん、委託契約に基づきまして外科後処置をやっておりますが、労災病院以外におきましても、国立病院であるとか、あるいはその他適当な病院に委託契約という方式によりまして実施しております。しかし、いずれにしてもその場合の法律的な責任は労働省が実施するのだ、それで法的には委託契約に基づいて労災病院のみならず適当な病院に委託契約でお願いをしておるという形をとっておるわけでございます。
○坂本昭君 その今の委託契約の問題は三十四年の六月の一日に出されてから、これは当時の基準局長とそれから事業団の理事長との間になされて以来ずっと改訂が行なわれておりません。その後ずいぶん内容的にも変わってきていると思うので、どういうことはすみやかに改訂を必要とすると思う。その点が一点と、もう一つはこの委託契約の場合には外科後処置診療承認書あるいは義肢支給承認書、こういったものを労働基準監督署長からもらって、これを呈示して処置を受けなければならないということになっておるのですが、こうした場合に承認書を与えないということもあり得るんじゃないか、そういう事例は今までに起こったことございませんか。
○説明員(村上茂利君) 外科後処置の請求がございました場合には、その治癒に至るまでのかかりつけたお医者さんとよく相談いたしまして、監督署長が証明を出すわけでございます。従いまして、従来は拒否したという例を私ども承知しておりませんですが、かりに本人がしたいと希望いたしましても、その患者を扱いました専門の医者が不必要だというような意見をかりに持っておるとしましたならば、証明を出さぬということも理論的にはあり得ると思います。
○坂本昭君 今の外科後処置の費用の決定のことについて伺いたいのですが、今の委託契約書の中の四条に、健康保険の甲表によるというふうな意味のことだと思いますが、そういうふうな説明が書いてあります。ところが、実際上労災の外科後処置の場合には甲表にほとんどないようなものが非常に多いのではないかと思う。でそのために特別に三十三年の九月の十九日に基準局長から事業団の理事長あてに理学療法診療報酬の計算方法の改訂についてというものを出しておられますが、それを見るというと、たとえば運動浴は十点ということになっております。私もたびたび労災病院に行きましたが、この部屋ほどありませんが、この部屋の三分の一ぐらいのプールに、その中に湯を入れて、そうしてその中で運動させる、たった一人運動させるためにもその大きなプールに湯をためて、そして運動させるのですから、相当な費用がかかる、それがたった十点だというようなことは、これは非常に非常識ではないかと思う。これらの点について改訂のお考えを持っておられるかどうか。これは労働省と並びに団の方と両方伺いたい。
○説明員(村上茂利君) 事業団の方からは、今先生方御指摘のように、理学療法を行ないます場合に相当経費がかかりますので、適当な改訂を要望して参っております。これについては私どもといたしましても実情がよくわかりますので、適当な機会にこれは是正せざるを得ないという考えを持っております。ただ理学療法をいたします場合に、労災病院では、先生御承知のように、労災患者以外に健康保険の患者も全く傷病の状態が同じでございますと、労災患者のみに理学療法を行ない、健康保険の患者には行なわないというような差別待遇が実際問題としてはなはだ困難でございます。そのほかに将来の問題もあわせ考慮いたしますと、一体健康保険の患者をどうするのか、従いまして、かりに健康保険の患者にもサービスをいたすということになれば、基本的に健康保険の理学療法の点数単価をある程度手直しをしなければ労災患者と同じようなサービスは困難だと、こういう問題もからんでおりまして、私どもはいろいろな角度から検討いたしまして、適正な形に近い将来是正いたしたい、かように考えておる次第でございます。
○坂本昭君 ただいまの労働省の説明では、はなはだ不満な点がありますが、その点はあとで質問して参ります。 次に、業務方法書の五十一条に委託のことが書いてあります。ところが、ここで障害等級等の認定に関する諸検査料及び認定意見書料、こういったものの検査料金が甲表でやることになっておりますが、実は労災病院の場合は治療を前提としない場合が非常に多く、ただ検査だけを求めるというような場合が多いから、そういう場合には初診療と一緒になってしまう、従って、正当な報酬を受けられない、つまり病院収入が非常に不当に減少してくる、そういうことが実際上の問題としては起こってくると思う。そしてまた特にあなたの方で、これは団の方の理事長から障害等級等認定に関する諸検査料及び認定意見書料についてというのが各病院に回っておりますが、それを見ると、認定意見書料などは五百五十円ということになっておる。非常に低い額にこれは固定されておって不当ではないか、こういうことがたくさんあちらこちらにあって、しかも労災病院の場合には、一般の開業医と違って単価も安い。また、長期療養の場合には一割引もされている。そういうことが労災病院の収入を不当に低下さす。不当に低下させられた結果、独立採算制のもとに働いている職員の給与あるいは超過勤務あたりが悪くなってきて、結局患者に対するサービスが悪くなるという悪循環が起こってきているのではないかと思う。それらに対して、先ほど団の理事者は積極的な意見というものを何ら述べておられない。が、今私の申し上げた点について何らか新しい見解を持っておられるか、一言説明をいただきたい。
○説明員(村上茂利君) 御指摘の問題は、たとえば業務障害認定とか、あるいは障害等級の認定という場合の認定料金でございますが、これには正確には二つございます。一つは実際に検査するという場合の検査料金的なもの、これは実費を支弁する。従いまして、先生が御指摘の五百五十円といった問題は、これは別のいわば認定書の作成料ということでございまして、検査業務を行なう場合にいろいろな機械なり薬品が必要だ。それも全部五百五十円でまかなうということになりますれば、それは非常な過重な負担を課すことになりますわけですが、それは別途実費を補てんする、こういうことにいたしております。文書作成料が五百五十円ということに一応考えておるのであります。これは実は労災病院のみの問題ではなくて、一般の指定病院に対しましても、実費を支給して、別に文書作成料ということで五百五十円という基準が出ておるわけであります。ただ、これは予算の単価の問題と関連をいたしておりまして、先生御承知のように、たとえば労働保険審査会の鑑定料五百円、あるいは裁判の場合の鑑定料五百円というものと一連の関係を持っております。一応文書作成料として、今申し上げましたようなことで、決して十分とは申せませんが、ほかの制度との関連においてきめておるというわけでございます。
○参考人(江下孝君) ただいまの点につきましては、私の方でも十分承知いたしておりまして、この点は労働省にわれわれの意見を申し上げておるわけでございます。
○坂本昭君 大体労災補償に要する療養費の支払算定基準、これは一体だれが、どこで、いかにして、いかなる法的根拠で決定しているか、この際説明していただきたい。
○説明員(村上茂利君) 医療費の支払いにつきましては、法律的には必要な医療を行なう、こういう文言があるだけでございまして、その医療がはたして必要であるかどうかという認定につきましては、非常な困難があるわけでございます。この点につきましては、法律上のその認定権限は監督署長にあるわけでありまして、監督署長が、補償費を払います場合に必要であるかどうかという認定をするという法的権限は持っておるわけでありますが、しかし、何分にも医学的な判断を行政官がするというのは実際上困難であります。従いまして、現在の制度といたしましては、地方労働基準局に適当な専門医をお願いしまして、どの程度が必要な医療であるかどうかという点について、特別に医療費がかさんでおるというようなものをピックアップいたしまして、専門医の御意見を伺っておるということでございます。しかしながら、大体の相場と申しますか、通常のものは指定医なり、あるいは労災病院の請求を大体において信用いたしまして、通常の請求の額でございますならば支払う、こういう形になっておるわけでございます。
○坂本昭君 今の必要な医療を行なうということの監督が、一行政官である監督署長がやるというのは、これはたとえ費用がかさばろうがかさばるまいがおかしなことですよ。あとまたこれに関連して伺いますが、労災の医療というものはこれは必要な医療であるということがこれは基本であって、今日の健康保険がこれは制限診療であるということは、これは大臣もよく知っておられることだと思いますし、従って、今日の社会保険医療は、これは制限診療である、しかし、労災保険の医療は必要にして十分な医療であり、さらに労働者に対する生活保障、従って、これは家族に対する生活保障にまで、死ぬまで続くものである、こういう考えが私は一番基本だと思うのですよ。だから、当然この労災の医療というものは画一的にやっていけないだろうと思うのですが、これは少し専門的になるから労災部長から伺いましょう、今後といえども画一的ではあり得ないと思う、どうですか。
○説明員(村上茂利君) 御指摘の点でございますが、健康保険法も法律の文言は必要な医療という文言を用いておりまして、労災保険の場合と同様でございます。ただ、しかしながら、たとえば医療指針のようなものを出して、医療内容を規制するといったような点につきましては、労災ではとっておりません。従いまして、制限しないと申しますか、その指定医の医学的判断に信頼いたしまして、たとえば使用する薬物にいたしましても、たとえばまた、輸血の量にいたしましても規制をせずに、できるだけ早く治癒いたしますように使用していただくとか、こういうことをいたしておるわけでございます。なお、今先生のお話の、ケース・バイ・ケースで扱うだろうという御意見でございますが、その点ちょっと私十分理解できないのでございますが、たとえば脊損患者でございますと、大体脊損患者としてどのような治療を行なうかということについては、一定の計画的な水準あるいは常識があると思うのです。そういったものはやはり現在におきましての水準から見て、適当と思われるような療養をしていただきたいということを、私どもは希望しておるわけでございます。
○坂本昭君 時間の関係で次の質問を進めますが、労災保険医の指定と契約、これはどういう法律に基づいて行なわれているかということが一点と、もう一つは、労災保険医のいない、無労災保険医地区といいますか、そういうものが今日あるか、場合によれば地区がこれを拒否して、そういう地区が生まれているかどうか、この二つちょっと説明していただきたい。
○説明員(村上茂利君) 指定医制度でございますが、法律的には、必要な療養を行なうか、または必要な医療費を支給するという、お金を支給するか、療養という現物で与えるか、この二つの制度が療養のその内容になっておるわけでございます。指定医でない方につきましては、医療費のその請求額を指定医、お医者さんに対してではなくて、労働者が請求した、その請求に対して労働者に支払う、こういう形をとっておりますが、指定医につきましては、直接指定医契約に基づきまして指定医に払う、そうしてそれが政府の行なう必要な療養を行なうという、いわば現物給付として私どもは考えておるわけでございます。その二つの制度があるわけでございますが、指定医の制度につきましては、法律には根拠がございません。従いまして、行政的に適切に処理いたしますために、施行規則におきまして地方基準局長が適当に医師と指定医契約を結びまして、医療給付を政府にかわってやっていただくという、いわば契約に基づくところの制度として指定医制度を今運営しているわけでございます。
○坂本昭君 そうしますと、現実の問題として、今の指定医の契約というのは、普通二、三年になっている、この二、三年で一応打ち切りといいますか、更新するというか、その根拠はどこにありますか。
○説明員(村上茂利君) ただいま申し上げました通り、地方の労働基準局長が指定医と契約をする場合に、それぞれの実情に応じましてある地方では二年、ある地方では一年といったような、画一的でなくて、地方の実情に応じて期間を定めておるわけでございます。
○坂本昭君 さらに今の労災保険の保険金の徴収、それから支払い、それから審査、これについての機構、これの法的な根拠並びに実際はどうであるか、御説明をいただきたい。
○説明員(村上茂利君) 保険金という意味がちょっとわからないのでございますが、保険料でございますか、補償費でございますか。
○坂本昭君 メリット制ですね、出してきたものを集める窓口は、どこで集めているかということです。
○説明員(村上茂利君) 保険料の徴収につきましては、これは法的に政府に権限が与えられておるわけでございまして、その徴収機関といたしましては、地方労働基準局に徴収事務を行なわしておるというわけでございます。それから支払いにつきましては、補償費の支払いでございますが、これは先ほど申し上げましたように、労働基準監督署長にその職務権限として与えておるわけでございますが、これは法的に明確にいたしております。
○坂本昭君 労災法十二条並びに施行規則の十条に、療養に要した費用が千円以下という、その千円というところで切ってありますね、この金額の根拠はどこにあるかということと、それから千円ということで切っているのは少しこれは私は不都合ではないかと思うので、これを撤廃する意向はないか、その二点をお伺いしたいと思います。
○説明員(村上茂利君) 千円という金額で切りましたのは、千円程度の医療費であるならば、いやしくも事業を経営し労働者を雇用しておる者であるならば負担し得るであろう、かつまた、そのような千円未満の療養費につきまして、一々行政機関で支払うということになりますれば、業務量が非常に増高いたしまして、取り扱いまする金額に比較いたしまして業務取扱費が非常にふえるという面もございます。そのような二つの理由からいたしまして、千円以下のいわば低額な医療費につきましては、使用者がみずから支払っていただきたいという制度をとっておるわけでございます。
○坂本昭君 ところが、低額だとそういう事務費が非常にかさばるということでそういう措置をとるというと、今度は医者の側からいうと、未払いが非常にふえてきているのです。これは未払いがどの程度になったかお調べになったことがあるかどうかということと、それから未払いの場合に、一体責任はだれがとるか。それから一体監督署が私は当然取り立てをやらなくちゃいかぬと思うのだが、その責任区分を明らかにしておかないというと、監督署もほっぽらかしになる。そうすると、被害を受けるのは医者になるということになるわけですね。これに対する対策はどうしていくお考えですか。
○委員長(吉武恵市君) ちょっと速記をやめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(吉武恵市君) 速記を始めて。
○坂本昭君 それでは大臣がお急ぎのようですから、二、三大臣に直接お尋ねしておきたいのは、病院ストの中で、全労災のストがずいぶん長く続いております。これについては後ほどいろいろ給与の実態や何かの、労働条件の実態については事業団からいろいろ詳しく聞こうと思いますが、その中で今問題になっているのは、外来ストを三月から始める。その外来ストに関連をして応量カットをやってきているわけです。これは労働協約の違反にもなろうし、また労働組合法八条の違反にもなろうし、また、労働基準法の二十四条の違反にもなるだろうし、すでに昭和二十九年にこういう実例を炭労が行なって、問題を起こしたことがある。いやしくも労働省が、労働大臣が監督をしているこういうところでこういう問題を起こしたことについて、私は大臣としても十分責任をとっていただくべきではないかと思う。でありますから、こまかな点については、後に所管の局長なり事業団に返答を求めますが、まずその点を、大臣から意見を伺っておきたい。
○国務大臣(石田博英君) そういう事実があったことは聞いております。そういう事実の法律的根拠について、労政局と打ち合わせをして行なわれたような報告も聞いておるわけですが、最終的な合法性非合法性の問題は、私はただいまこれに関連しての訴訟等が行なわれておりますので、その判決等を待ってきめたいと思っております。 ただ、先ほどから御発言の中にありました、一般的に私の方の役所の関係をしておる病院に起きた争議がいつまでも解決しないで延び延びになっていることは非常に遺憾に思います。これの早期解決方について努力をいたしますように終始指示をいたしておるところであります。
○坂本昭君 もう一つ。去年からの病院ストの中で一番問題になるのは、労調法三十六条の安全の問題ですね。この安全の問題をめぐって去年以来再三警察官も出動しており、地域によっては機動隊を出すぞなどと言っておどかしておる。私はそういう現場にも行ったことがあります。この三十六条の安全という内容については、これは非常にむずかしい問題があるのであって、これはこの前労働大臣と厚生大臣との間で十分に協議をされ、また、出先機関の専門家の間でも協議をするということになっておったにもかかわらず、この三月の二十八日に団のこれは理事長の命令ではなく、総務部長名で給食業務の拒否については労調法三十六条に関連をして処罰をするというふうな通牒が出ている。もちろん今の大臣の説明を伺うというと、これは労政当局とも十分検討相談の上、こういうことをしたのではないかと疑われる。で私は、こういう通牒を出した根拠と、それから出した結果、実際にどういう処罰をしたかも、これは団から伺うと同時に、こういう労調法三十六条の非常に微妙な扱いについても、この際労働省としてのたくさんの病院ストを通じてある程度まとまった見解があるのではないかと思うので、団の実情を伺った後、大臣の御説明をいただきたい。
○参考人(江下孝君) お話の通り、総務部長名で給食業務のストは労調法三十六条に違反するおそれがあるのでしないようにということをあらかじめこれは通告という意味で申し上げておるのですが、処分するというようなことよりは、もし組合があやまってそういうことをやられて労調法三十六条違反に問われるということは、私どもといたしましても困りますので、そういうことのないようにということをあらかじめ警告をいたしたのでございます。病院におきまする給食業務につきましては、もちろん御意見はございましょうが、一応私ども十分労政当局とも相談いたしましてこの通達をいたした次第でございますので、その点は御了承願います。
○坂本昭君 大臣にちょっとその前に。 これは労調法三十六条の点というのは非常にデリケートな問題であって、私たちも幾たびかこういうものを経験してみないと具体的なものが出てこないと思うのですね。だから、今度団が出されたということは非常に興味があって具体的に内容的にどの程度までがいかぬのか、ある意味では一つのモデルとして出していただきたい。そうして実際に検討してみて、療養する人の安全にどこまで関係があるかどうか、こういう点をはっきりしないで、ただ、その三十六条に反するから警察官を出すとか何とか言って議論しておったのでは、これはいつまでたっても話がつきません。だから、そこでせっかく今度出された以上は、もうちっと明確なものを出しておられて、また、その背後にはたとえば応量カットについてはかなりこまかい計算方式を作っておられる。あのくらい作っておられれば三十六条違反についても一つ労政当局と相談して一つ模範的な病院ストのケースとしての判例でもないが、作っていただきたいのです。だから、今のお話では、何だかそういう点が必ずしも前に進んでおりませんが、一応それでは三十六条の安全に関して、その後大臣としてどういう御見解ができたか伺っておきたい。
○国務大臣(石田博英君) これは単に労災病院の争議だけでなく、全般の病院争議に関しましてその三十六条の適用を具体的にどうすべきであるかということは、これはどうも私どもの方の役所だけではきめられない問題であります、特に専門的知識、経験を必要といたしますので。それで昨年のまだ中山厚生大臣の時代に、厚生省において一つ実質的な検討を加えられてそして厚生省の意見というものをまとめていただきたいということをまあ再三再四閣議その他で申し入れたのであります。それに直接の御返事ではないようでありますが、病院経営、病院管理についての懇談会を設けてその結論は出たのでありますが、この三十六条のことについては非公式に、これはいろいろな病気の種類、それから病院の種類、その他いろいろのものがあって、一般的になかなかきめられないという非公式のお話だけで、私どもの方では非常に残念に思っておるわけであります。確かにその通りだとは思いますけれども、そうだからといって無基準にほっておく性質のものでもございませんので、これは今給食の問題だけが出てきておりますけれども、もっとさらに、たとえば精神病院においては保安要員というものは看護婦何人、医師何人を置くべきか、あるいは外科の病院はどうすべきか、産婦人科の病院はどうすべきかということをやはり専門的に作ってもらいたい。この点について今後督促し、具体的な措置をとって参りたいと思っております。ただ、全般的に申し上げまして、そういう状態であるにかかわらず、病院争議の中では比較的良識をもって行なわれておるという認識で……その問題については良識をもって行なわれている、比較的この種争議の規模、参加人員の数等に比較をいたしましてそういう問題が比較的少ないという私は認識を持っておる次第であります。 給食の問題については、これは私は非公式に聞いた程度でありますが、二、三赤十字関係の病院で行なわれた。ある短い期間のときは駅弁を買って間に合わせるということでどうやらそう被害が、実害がなくて済むが、駅弁ももう三食々々何日も続けば患者の方からも問題が起こって、そうして自発的に争議の方法をとることがやめられたということを聞いておるわけです。これはやはり給食という問題についての良識からする一つの結論ではないか、そういうところからやはり給食という問題は、やはり三十六条に触れる問題として考えなければならない。それはまあやってみた経験からということではありますが、そのやってみた経験がどうも組合側もそういうところに落ちついてきたのではないかというふうに私は思っている次第であります。
○坂本昭君 まあさすがは、といってあまり大臣ほめるわけにいかないけれども、この病院スト全般に対する石田大臣の考え方は正しく判断しておられるように思うのです。それに反してむしろ団のこれは理事者ではなくて総務部長ですが、三十六条に関連して給食の問題についてこれは御注意を促したという程度だということですが、どうもこのストライキの間にこれは注意を促したって、これくらいのことはみな知っているのですからね。組合側も知っているし、常識をもってやっているということを大臣も認めているのですから、その認めているときに団の方からこういうことを出したということは、どうも僕は一種のいやがらせというか、あまりいいこととは思いません。その趣旨から、当面の問題のトラブルを回避するという私はよすがにはならないと思う。だからつまらぬことは一つよしていただきたい。 それから最後に、大臣に一番大事な点でこれは先般来からもたびたび大臣の意見は聞きましたが、失業保険の積立金が九百数十億にも及んでいる、これも問題になったのですが、労災の積立金の問題について、これは労働省では実はそれは赤字なんだということも言っておられますが、大体この金そのものは私は事業主のものではない、手を離れたらあとはこれは労働者が、労務災害を受けた労働者がもらうべき金であり、また受けるであろう労働者のものであって、この金を安全設備を推進するために使うとかという考えは私は根本的に間違っておると思う。安全設備を――たとえば炭鉱についても安全施設を整えるためにこういう金を使うのであったら、初めから別の国の予算を出せばいいのです。労災の金は、あくまでも労務災害によって――たとえば死んだ患者さんの一時金もさることながら、特に遺族の方の長い間の生活保障のために、あるいは脊損とか、あるいは塵肺とかによって働けなくて長い間苦しむ人たちの生活保障のために回すべきであって、また、労災病院はほんとうにその労災の患者をよく治療できるために使うべきであって、私はその点、金のこのあり方、使い方については、この際、特に明確にしておいていただきたい。その点を最後に大臣に確かめて、一応時間の関係もありますので、質問を終わります。
○国務大臣(石田博英君) 労災保険という制度は、いろいろ今御議論になって問題があると思いますが、これは私どもは経営者の個別責任をかわって負担をするという制度であると認識いたしております。従って、その限りにおいてどっちの金、こっちの金という、こういう性質のものでもなかろうと思います。それから安全設備、保安設備を行なう責任は当然経営者にあるわけであります。従って、この金が支払われて特別会計に入った以上は、もう労働者が受け取る金であるという観点からいけば、経営者が当然行なうべきものをその金を特別額で持ってくるのは筋が違うという議論は成り立つと思いますが、私どもは、経営者の負わなければならない個別責任を代行するからという認識に立って考えたいと考えている次第であります。その点が一点。 それからもう一つは、これは現在考究して、今各省間の調整を行なっておりまする中小企業及び中小鉱山の保安設備及び安全設備に対する低利融資の原資をどこから持ってくるかということはまだ結論を得ておりません。従って、あるいはこれを対象にするか、あるいは一般会計あるいはまた、財政投融資の他のものを回すか、これは別といたしまして、当初私どもが昨年度、前年度の予算折衝の際に、この中から資金、原資を調達するという案を持ったことは事実でございます。この案は私どもから出た案というよりは、労・使・公益三者からでき上がっております。産業安全協議会ですか、審議会の御答申に基づいたものであることもこれは御承知の通りであろうと存じます。従って、私どもは、この金について、労働者の金、経営者の金というよりは、経営者の個別責任を、労働者に対して負わなければならない個別責任、これを代行する、こう考えておる次第であります。 そこで次に出て参ります問題は、死亡あるいは半永久的な――半永久的というのは実質上永久的になりましょうが、災害にあった場合における遺族あるいは本人及びその家族の将来の問題、これは諸外国においてはほとんど年金制を採用しておるのであります。わが国におきましてはこの制度で一時金を負担し、年金等は、厚生年金その他に期待しておるというのが実情でありますけれども、私は、これはやはり特に死亡とか永久的災害というものの補償については、やはり諸外国の例に準拠した方が望ましい、これは私の個人的見解でありますが、そう思っておりますので、そういう方向について検討を命じておるところであります。
○坂本昭君 今の大臣の基本的な考え方は正しいと思いますが、現段階でも労災の補償というものは内容的にきわめて不十分です。これは塵肺法の制定のとき並びに昨年の労災法の一部改正のときに相当議論をしてこれでいいということにはなっていない。附帯決議までついております。従って、そういう方向にもっと金を使い、さらにまた、大臣の言われた年金制を確立し、あるいは死亡した場合の補償金ももっとふやす。そうしたあとで、なおかつ余った場合には、今の審議会の意見に基づくこともそれは私はまああり得るかもしれない。しかし、それでさえも今日国民年金あるいは厚生年金のこの積立金については特別勘定を設けろというのは厚生大臣としても相当強い考え方のようであります。少なくとも私は労働大臣としても、これだけは特別に特別勘定のワクを設けて、ほかのものには使わない。現実にはいろいろな基準監督署の庁舎を建てたり、あるいは職員の給料にも回っている。それが厳格に監督署の労災業務のために使われているかどうか。僕は非常に疑問だと思う。あとでこの点についてはこまかい資料を出してもらおうと思っておりますが、そういう際ですから、なおさら私は、せっかく大臣の考えておられる労災本来の方向に向って全力をあげていただきたい。そしてあと石炭鉱業の安全施設を作るということなどは、企業家自身に出させるとか、あるいは別の予算を国として取って、それでやったらいい。私は、大体その監督署の予算だってこんな労災の金を使わないで、別に予算を組んだ方がいいと思っているのです。そうして実際労務災害で倒れていく労働者並びにその家族を見るということにもっと重点を注いでいただきたい。石田大臣なら十分その点を理解してやっていただけると思って、あえてもう一ぺんこの点を繰り返して要望しておきます。
○国務大臣(石田博英君) 後段のお話のことは、私は先ほど私の考えを申し述べているので御了解いただけると思います。前段の問題でありますが、これは確かに十分なことをやって、なおさらに余裕金ができたらという御議論は、これはそうだろうと思いますけれども、これを一般の短期の資金運用部資金の運用利子よりもうんと安くするとか、あるいはやってしまうとかいうような運営でないのでありまして、ほかの資金運用部で運用されているやつを、むしろそういうところに限定をして、つまりこの特別会計の金の目的に沿うように限定して運用して、しかも所期の運用利子を上げようというのでありますから、私はそのこと自体は、御指摘のように間違いではない。こう考えておる。どこかで運用しなければならぬ。どこかで運用しなければならぬとすれば、直接労働者の安全、保安を維持するために運用して、同じ運用利子を期待するという方が正しいのじゃないか。こう私は思っておる次第であります。
○相馬助治君 私は、労災病院のストの問題に対して患者側の立場に立っての訴えを聞いたものですから、一点御質問をして、この際石田労相の善処方を期待するものです。と申しますのは、ただいま同僚坂本委員の質問にも答えて、労災病院のストというものが他の病院のストよりも比較的表面的には平静に行なわれてきたという意味の発言がありましたが、そのことは確かにそうですけれども、現実の問題として相当長期間になったものですから、いよいよ現場では患者が不安に耐えられない状態が起きてきているのです。具体的に実例を申し上げますと、一昨日労災病院の鬼怒川病院から患者代表の大沢君というのがわざわざたずねて参って私に訴えるところによりますと、職員組合の代表、それから病院長、そういう間での話し合いというようなものは相当円満に進んで、その病院の施設内における紛争めいたものというのは取りたててここで言うべきものでないというのです。ところが、福祉団の方が医療費値上げ等を待っているためなのかどうなのか、積極的にこのストの解決について動かない節が見えるので、鬼怒川病院なんかについて見ると、現実にどういう事態が惹起しているかというと、医者の定員が欠けている。手術をやる優秀な先生がただいま欠員なんです。そうすると、普通の形でも患者に医者が足らないということから不安を起こさせているところにもつてきて、このストが長引いているものですから、いよいよこのなすべき手術もできない。それから病院間の医者の交流めいたことも行ない得ない、患者はいよいよやり切れない気持になっているのです。従って、この際、鬼怒川病院なんかから見ますと、遊覧地にありますために非常に職員の生活が大へんなんです。そこへもってきて優秀な医者がなかなか得がたい、優秀な医者を得たと思うと適当に研究を積むというと他にもう転じられるというふうな空気にある、これはすべての労災病院が持つ悩みかもしれないけれども、ストを契機としてこういうことが非常にはっきりと露呈されて、患者に対して異常な不安を与えて、いよいよその極限にきているというのが姿なのです。それで療養中の患者が東京まで来て私にそういうように訴えるところを見ますと、労働組合の悪口も言っていない、病院長の悪口も言っていないというところは、一体福祉団が本気でこの問題を解決して下さるんでしょうか、こういう印象なのです。一つ労働大臣、こういう悲痛な、と言っていいと思うのですね、悲痛な患者の訴えもあることの事態を認識されて、積極的に福祉団を督励して、この問題の解決に善処方をこの際期待をしたいと思うのです。
○国務大臣(石田博英君) あとで速記をお読みいただくとよくおわかりいただけると思います。特に労災病院の争議を取り上げて批評したものではございません。労災病院の問題も含めて一般的に昨年来から行なわれております病院ストについて、一般的かつ概括的な認識を申し上げたのであります。特にその際も申し上げましたが、労働者の所管に属する病院の争議がいつまでも解決を見ないことは私どもはなはだ遺憾に存じます。この早急解決方を通じて事業団の善処を常々要望いたしておるところであります。私が接受いたしております報告によりますと、そう長い時間を要せずして解決の方向への具体的な歩みが見られるというふうに聞いておりますけれども、なお御趣旨を尊重いたしまして、早期解決方を督促いたしたいと思います。
○委員長(吉武恵市君) ちょっと速記やめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(吉武恵市君) 速記始めて。 それでは午後は一時半から続行いたします。 暫時休憩いたします。 午後零時三十五分休憩 ――――・―――― 午後一時五十二分開会
○委員長(吉武恵市君) それでは社会労働委員会を再開いたします。 午前に引き続いて質疑を続行いたします。
○坂本昭君 それでは、先ほど質問しておりました千円以下のところでの境になった問題ですが、単に事務的な煩瑣ということだけでこの問題を千円で区切るということは、僕はいろいろな問題があると思うのですが、たとえば千円以下はどの程度の支払い額があるか。少なくとも労災保険をやっている以上は、金額は少なかろうともやっぱり労災保険として見るのが至当なので、これは外国との比較も私はこまかく調べたことはありませんが、千円をたとえばもっと五百円以下にするということも考えられるだろうし、それからまた、千円以下の分が現在どの程度あるかということも、私は一つの問題であろうと思うのです。この千円の問題については、全然あなた方の方で考慮する余地がないのかどうかということが一つと、それからもう一つは、千円以下の場合の未払い、労災保険医の側に支払いが行なわれない、そしてそれをどこに最終責任を持っていっていいか困っている向きがかなりあると聞いておる。従って、これは当然監督署が事業主を督促して最終責任を負わすべきだと思うので、その間の処置並びに方針について、この際承っておきたい。
○説明員(八木高生君) 監督署で千円未満のものは事業主から直接指定病院なりあるいは労災保険病院ということになっております。その支払い状況は現在どうなっているか、件数はどうなっておるかは実態はつかまえておりません。これは非常に困難なことと思いますけれども、今後そういう方面を調査をしてやっていきたいと思います。
○坂本昭君 千円の問題を五百円にする問題。
○説明員(八木高生君) との問題は、今のところそういう問題は考えておりませんけれども、今後そういう問題についてはさらに考えていきたいと思います。
○坂本昭君 未払いの問題の最終責任はどうするか。
○説明員(八木高生君) 最終責任の問題は、監督署が指導するより仕方がないと思うのですが、現在は支払いする責任はもちろん事業主が責任を持つわけであります。事業主としては、補償費の災害補償が完全になされるかなされないかは、一応基準局の監督の責任でございます。今後そういう方も積極的に研究してみたいと思っております。
○坂本昭君 今非常にこまかい数が全然わからないので、場合によれば私こまかく調べて、そうして具体的な例をとって、そうしてその最終責任をとってもらうように労働省に具体的な行政指導をお願いします。これは当然やるべきだと思うのですね。もちろん事業主が払わなければならないのだけれども、それを払っていない。そうした場合に、医者の方ではいつまでも未収入となって残るわけですから、具体的な例があればそれを一つ取り上げて……、これは実際あるのですね。あるので、今後十分な行政指導をお願いしたいと思います。 それでは次に、労災保険の年間の件数と、それからそれに支払った願を、労災病院とそれ以外とに分けて、大まかな統計の数字がわかればこの際御説明をいただきたい。
○説明員(八木高生君) 現在手持ちの資料として持っておりませんが、直ちに調べまして一つ御報告いたします。これは直ちに、すぐわかると思います。
○坂本昭君 すぐわかりますね。ここで問題になるのは、労災関係の診療あるいは認定、これらの費用算定の基準がないということですね。この費用算定の基準がないということは、結果的には労災の患者に対して十分な補償が確定されないということになるおそれが多分にある。こういう基準をお作りになるお考えがあるか、また、現在どういう基準でやっておられるか、その実態を御説明いただきたい。
○説明員(村上茂利君) 医療補償費の支払いにつきましては、負傷疾病の種類がさまざまでございますので、一律に必要な医療費の基準をきめるということは非常に困難でございますので、午前中にも御答弁申し上げましたように、ケース・バイ・ケースで処理する。つまり医療費の請求がございましたときに、あまり不当に高額であるというふうに判断が持たれるものにつきましては、専門医の意見を聞きまして適当な是正方を勧告する。その結果、多少の手直しをするということは行なっておりますが、一般的には適正な医療が行なわれておるという判断に立ちまして、監督署長が支払っておるというようなことでございます。
○坂本昭君 少なくとも、この労災病院のようなところで相当の設備を持ち、それから研究的に、また系統的に治療をするような施設では、研究的にでもある程度そういう基準というものはでき得るのではないか。そしてまた、そういうための研究の費用を出すということは、これは私は労災保険の積立金から出しても、これは別に間違ったことだとは思わない。ところが、実際は労働衛生研究所あたりには研究費は出るが、労災病院にはこの種の研究費というものは出されていない。従って、そういう点で今の医学的な算定の基準といったようなものが、放置されていると言うと語弊がありますが、もっとより合理的な、より水準の高い一つの基準というものが設定されていないのではないか。だから、将来こういう点で労災病院自身にそういう研究をさせて、基準を作ってもらう、そういうことは考えられませんか。
○説明員(村上茂利君) 先生の御指摘の点は、私どもも痛感をしておるのでございますが、その前提として医療内容の基準というものができませんと、医療費が適切であるかどうかという判断はできないと思います。つまり外傷性脊髄損症の患者でございましたら、一般的にはこのような療養を行なう、けい肺ならばけい肺についてはこのような療養を行なうという療養内容が大体固まりますと、その療養を行なって、これだけの費用がかかる。それは適正なる医療費であるというふうに、医療費そのものが医療内容の基準がある程度固まらなければ非常に困難ではないかというふうな感じもいたしておりますが、しかしながら、私どもとしましては、脊損であるとか、あるいはけい肺につきましては、特殊な専門家でない方も医療に当たられますので、その場合にはとのようなものを御参考にしていただきたいという脊損、けい肺の医療する場合の参考書を印刷したことがございます。それを作成するにあたりましては、けい肺につきましては、特に労災病院の先生方なり専門家が多うございますので、労災病院の専門医、それから各大学の専門の教授などにお集まりいただきまして、そういった参考書を作成したということもございます。そういう面でも一歩前進であると私どもは認められるのじゃなかろうかという考えも持ちまして、実は労働福祉事業団におきましては、たしか一昨年かと存じますが、特別研究費というのを三百万円計上していただきまして、特殊なテーマにつきまして御研究願う。それからまた、三十六年度から労災特別会計の中に災害医学研究委託費、金額はわずかでございますが、新しい項目が出て参りましたので、それをどのように使うかという使い方も問題がございます。おそらくこれは将来継続して認められると思いますので、今先生が御指摘なような点につきましても十分考えまして、こういった問題の解決のために一歩前進になりますように努力して参りたいと思います。
○坂本昭君 今の災害医学特別研究費というのは、厚生年金病院あたりで医師に対する特殊な手当として、いわゆる研究費というものが組まれていますが、そういう研究費と同じものですか、違うのですか。
○説明員(村上茂利君) これは事業団の方から御答弁するのが適当かと存じますが、普通の研究費は研究費として計上いたしておりまして、それ以外に特別研究費というのがございます。これは労災病院の病院長が集まりまして、毎年研究テーマを策定いたしましてグループ研究いたすわけでありますが、そういうものに対して特別に出す研究費でございます。一般的な研究費は別でございます。それは別途支出いたします。
○坂本昭君 今の一般的というのは、つまり今例をあげました厚生年金病院医師手当を研究費という名目で出しておる、こういうことをかりに一般的な研究費と言うならば、それは事業団としてどういうふうに配分されておるのですか。
○参考人(江下孝君) お答えをいたします。ただいまの個人に対する研究費というものの支出の方法でございますが、院長に対しましては月額八千円、副院長が七千円、それから部長五千円、その他の一般の医師が二千円、かように配分をいたしております。
○坂本昭君 午前中から質問をしてきまして、労災病院というものは一般病院とは性格が違った特殊な病院であって、当然非営利病院でなければならない、私はこう思っておるのですが、一体労働省はこれをどう考えておりますか。
○説明員(村上茂利君) おっしゃる通りでございまして、公益性の強い、つまり労災保険施設を国にかわって行なうものでございますから、そういった意味におきまして、営利性よりもむしろ公益性を中心にした団体であるというように考えております。これは恐縮でございますが、適正な医療費が支払われた場合、つまり適正な収入が得られた場合に労災病院が一般的に言うて赤字になるかあるいは採算が成り立つかというような問題になりますと、医療費の問題とからんでくるのではなかろうか。医療費が適正に支払われ、それを収入源にいたしますならば何とかやっていけるのではなかろうかというようなことも考えられておるわけでございます。過去十年におきましては、労災病院が減価償却費を除きますと黒字であったわけでございます。三十五年度初めて赤字になった。こういうような状態になっております。営利性を強調するという立場でなくして、適正な医療費と関連いたしまして病院経営が何とか独立してやっていけるというような姿が形としては望ましいのではなかろうかというふうに思っております
○坂本昭君 労災補償部長の御意見わからぬでもないのですが、先ほど来の意見を聞いておると、健康保険と労災保険との考え方が、あなたの方では健康保険を主にして労災保険は従になって、たとえば医療費の単価の問題にしても健康保険にならって作られていく、そういった印象を受ける。これは労災というものは健康保険などとは全然違った立場でやるべきだ。そうしてまた、そういう考えのもとにやってきたために制限診療というような面から少し画一的でない違った面がすでにもう現われておる。現われておるけれども、これが不十分であるために労災病院あたりの経営がきわめて不振な、また同時に、いろいろな労働問題が起こってくる。私は、当然この非営利機関であるということがはっきりしてくれば、まず独立採算制というようなことを私は停止すべきではないか。独立採算制の上に立ってやっていくということは労災保険の本来の姿を誤らせるのではないか、私はそう思うのだけれども、独立採算制の問題についてどうお考えになりますか。
○説明員(村上茂利君) いわゆる営利性を追求した意味の独立採算制という点につきましては、これはいろいろ御意見もあろうかと思うのでございますが、かつまた、その独立採算制という言葉の意味もいろいろ問題があろうかと思いますが、今労災病院でとっております独立採算制は一病院ごとの独立採算制ではなくして、全体の病院が、個々に見た場合に全体として独立採算がとれるかどうかという観点からいろいろと検討しておるようなわけでございます。もとより個々の病院につきましては、立地条件その他の理由によりまして独立採算が非常にむずかしい、客観的に見てもむずかしいという病院がございますので、そういった意味の独立採算ではなくして、全体として赤字なしにやっていけるかどうかという点についての考え方を持っておるわけでございます。ただ、その場合に、先生の御指摘のように、健保の点数単価を基準にしてやって、つまり制限診療的な形を強く出して独立採算制をとらすというのは、そこは労災病院の建前から見ておかしいじゃないかというような考え方もあると思います。ただ、私ども健保の点数単価を採用すると申しましても、医療内容について制限はしておらないわけでございます。ただ、計算の基準といたしまして何らかのものさしが必要でございますので、一応厚生省も含めました政府として認めておる健康保険の点数表甲を採用いたしまして、処理をしておるわけでございます。しかし、現実には、たとえば労災患者の外科患者などには緊急に多量の輸血を必要とするというような患者もございますが、そういった場合にはこの輸血の使用量も制限いたしておりませんで、これは制限せずに使用さしております。従って、健保の点数単価を採用するといたしましても、結果的に出てきます診療費の総額自体が健保の点数単価でそのまま計算した場合と異なりまして、必要な医療費を結果的に見るというような形になっておるわけでございます。従いまして、将来健保の点数単価が改訂されました場合には、労災病院の収入にも直接響いて参ります。しかしながら、それは点数単価という計算の基準が変わるというだけでありまして、内容そのものには、制限診療でございませんので、内容は制限しておりません。まあ健保の点数単価をそのまま採用しておるという点は若干質的には違うのじゃなかろうかというふうに私ども考えておるわけでございます。
○坂本昭君 それは部長の説明わからぬことはないが、やはりこの健康保険に引きずられてやっておって、労災保険としての特殊な立場と任務とが十分私は発揮されていないと思うのです。これは最近事業団の理事が労災病院の運営について、厚生省で今度きめる単価の引き上げに期待をしておる、そういうふうなことを率直に漏らしておられた点でもよくわかるので、私はそういうことに関係のない独立採算制、非営利制の労災保険の診療をやるべきではないか。従って、そういう中から生まれてくるものはどういう点が生まれでくるかというと、たとえばこの看護の基準、今あなたの方では甲表をとっておられると言うが、そうすると、たとえばこのごろは病院の看護の基準が一類看護、二類看護、三類看護とあります。それによってその点数が違う、こうしたことも当然に労災保険の場合の一つの基準、たとえば脊損の患者さん、あるいはじん肺、けい肺の患者さん、特に脊損の患者さんの場合についてはどういう特殊な扱いをしておられるか、これは具体的に一つ事業団の理事者にお尋ねをしたい。そういう場合に看護の基準はどうしておられますか。
○参考人(江下孝君) 事柄があれでございますから、国吉君から答弁させます。
○参考人(国吉文雄君) 事業部長でございます。ただいまの御質問につきましては、御指摘のように、甲表を採用いたしておりますが、看護の基準といたしましては、大体第一種の基準をとり得るようにいたしております。二十五の病院のうち大体二十四は一類看護をいたしております。それからけい肺等につきましての看護につきましては、労働省の方の御配慮によりましてつき添い人を配置していただくことにいたしておりまして、これは患者に一応払っていただくことになっておりますが、相当数のつき添い人をつけまして、それによって脊損等の特殊患者に対する看護に遺憾のないようにいたしております。
○坂本昭君 実際を言うと、その遺憾のないようにしておると言いますが、かなり遺憾な点が多いと思うのですね。たとえば今のつき添い看護については四人に一人とかいう、そういう何か基準が通牒で出されているのじゃないですか。それから今の脊損の場合、関東労災病院に私行きましたが、あすこの看護婦さんが、何か困ることはないかと言ったら、もう一番困ることは看護力が足らないことだと率直に言っているのですよ。だから、今の御答弁では、一応それは一類でやっているということはわかるのですけれども、それではほんとうに具体的な、特に今の脊損の患者さんというのは、こういう人をたくさん集めているところに対する懇切丁寧な措置だとは思えない。今の四人に一人というつき添い制度、それから今の関東労災の脊損の場合、具体的に例をあげて、もう少しあなた方の今後の御方針を承っておきたい。
○説明員(村上茂利君) これは事業団の方針というよりも、私どもの考えでございますから、と申しますのは、先生御承知のように、第一類看護の資格を取得いたしておりますとつき添い人は認めないという厚生省の建前がとられております。従いまして、労災病院が、また厚生大臣の、設立について許可がいる、また、第一類看護について許可を受けているわけであります。そういう関係で近代的な病院形態をとってつき添いを置いてはどうかということで、厚生省でも非常に意見がありました。四人に一人という基準を認めさせること自体も非常な議論の結果なんでございますが、一応の基準として、四人に一人くらいはどうであろうかという一応の基準を考え出したのであります。と申しますのは、労災病院を見ましても、つき添い看護婦の患者に対する比率が非常にまちまちでございまして、あるところは二人に一人、あるところは五人に一人というように違って参ります。しかも、同じ脊損患者と申しましても重度の者がうんと多い、また、なおり方がおそいということで、また実態が違います。ですから、こういう問題は固定して考えるべきではなくて、一応の基準を示しつつ、その病院の入院患者の実態に即応してやるべきではなかろうか、こういうことでございます。従いまして、四人に一人という考え方を一応基準として出しましたけれども、労災病院の実態に応じまして処理すると、こういうふうにいたしておるわけでございます。なおかっこの問題は、労災病院のみに限らず、指定病院におきまして脊損患者を扱う場合につき添いをどうつけるかという問題にも関連しておりますので、これは事業団がきめたのではなくて、労働省として民間の指定病院も含めて一つの基準を出した、こういうわけでございますので、それはかたくなに実施しておりません。一応の幅がつけられております。現にそういうような形になっておるわけでございます。
○坂本昭君 今のあなたの御説明はそれでいいと思うのですよ。実際に四人に一人という厚生省のこのきめ方が、これはたしか昭和二十三年のころの日本のベッドの総数と出動看護婦の数が一対四であったということで、それより悪くさせてはいかぬという占領軍の考えである医療法できめられた基準ができたんであって、実際は患者さんに脊損の人が多ければ、また、重度の人が多ければ多いほど看護力をふやしていくというこの基本的な考えが、これが一番正しいのですよ。だから労災については、それは徹底的に、ほんとうにケース・バイ・ケースでやって、この労働者である患者さんの補償を十分にしてもらえばいいのであって、その今の基本的な考えは何も一対四ということにとらわれなくてもいいのです。その点はけっこうなので、むしろ厚生省の考えている一対四のワクを私は破っていただくのが、これは労災本来の行き方としても正しいと思います。ただ、労災病院などは、いろんな、マッサージの人だとかあるいは特殊な訓練をやる、リハビリテーションをやる技術者だとか、あるいは認定検査というむずかしいことをやる、そういう特殊な人が必要になってくる。こういう人たちの定員制といったもの、こういったものは定められておるのですか、これはどちらへ伺ったらいいですか。
○参考人(国吉文雄君) ただいまのリハビリテーション関係、すなわち物理診療関係の物療師等の定員、それから認定に必要な定員につきましては、それぞれその病院の患者の参り方等によって多少違いますので、その患者の状態に応じまして、それに必要な職種と定員はそれぞれきめまして配るようにいたしております。
○坂本昭君 一応説明だけ伺っていると、なかなかうまくいっているような印象を受けるのだが、先ほどの独立採算制のことにちょっと返りますが、あなたの方では、独立採算制じゃなくて、非営利的な、労災本来の立場で指導していると言われているが、実際はベッドをあけてはならない、なるべく満床にしろ、そして収入をあげろ。そして実際入っている患者さんは、労災病院のうち入院患者は半数以下が労災の患者で、外来は二割程度しかいない。ほかの方は全部労災に関係のない人が入っている。私は大体本来から、この間労働大臣は立地条件で労災患者ばかり入れるわけにはいかぬ、無医地区だと一般の人も入れなくちゃいかぬと言われている、そういうところだったらほかの病院でもけっこうやっていけるのですよ。労災病院がやる以上は労災病院として本来の趣旨に合うような行き方をとってもらいたい。何もほかのことをやってそれで収支を合わすというのは、これは正しい労災病院の行き方ではないと思う。そういう点では、部長の考えと実際に指導しておられる人との間には大きな食い違いがあるのじゃないですか。
○説明員(村上茂利君) 私どもが事業団に要望しております労災病院は、土地から建物から機械から一切がっさい全部国でもっておるわけでございます。それからまた、病院の改築などにおきましても、全部労災特別会計の方から出資金として金を出している。しかも税金はかかりません。従って、通常の民間の病院で健康保険の点数単価でおやりになって、かつ税金も払っておるというような状態と比較しますと、最も好条件の病院じゃなかろうか、おそらくこの病院が成り立っていかぬということであるならば、これはちょっと極言で、言い過ぎかもしれませんが、ほかの病院が経営が成り立つということは非常に困難なことになるのではなかろうか、こういうことも言えるわけであります。無理をして独立採算をとるという前に、そういった建設費、機械設備その他費用は全部国でもっておる、それから設立一カ年の間は交付金で運営費も見る、税金もかからないといったような点からみて、一つ正常な努力をしてやってもらいたい。そしてしてなおかつ赤字であるというようなことであれば、これは基本的な問題があるのでございますから、それは十分検討するにやぶさかでないと思うわけであります。それからまた、これは病院ごとに見ましても労災患者を収容している比率の高い病院、それから低い病院、差があります。これは一律に論ずるわけにはいきませんので、私どもは、病院を個別的に指導しまして本来の目的にかなうように運営して参りたいということを言っておるわけでございますが、御承知のように、労災病院に労災患者が自然に来ます場合と、そうでなく民間の指定医と競合しまして、労災患者の奪い合いになりそうだという地区がございまして、そういう点はやはり民間の病院と協調してやっていかなければなりませんので、あまり労災患者の奪い合いというような形になるのも好ましくない、というようなこともありまして、先生御指摘の通り、労災患者中心であるべきでございますけれども、いろいろな立地条件あるいはその地区におきますところの民間病院の状況などによりまして、なかなか一律にうまくいかないという点がございます。まあそういう意味で個別的に見ますと差があるわけでございますが、しかし、先ほども申しましたように、その病院、独立採算じゃなくして全体でペイするような形にやっていけぬか。非常に民間病院と比べまして条件がいいはずでございます。それでなおかつやっていけないか。そういう点を無理じいではなくて、創立以来三年半の間努力していただいたわけでございます。これがどうしても採算が成り立たないということでありますれば、何らかの形で処理していかなくてはならぬじゃないだろうか、というふうに思います。
○坂本昭君 大へん部長はその採算の問題をあげておられますが、では、労災病院が現状のままで採算が成り立つようにするには、今の労災保険の単価を一体幾らにすればいいというお考えですか。これは参考までに伺っておきたい。
○説明員(村上茂利君) これは労災病院のみならず、一般の指定医の問題もあると思うのですが、その場合にまあ労災患者を治療いたしまして、幾らであればペイするか、こういう問題になりますと、先生御承知のように、労災医療費として支払う額は、健保も何も全部ひっくるめれば、全医療費の約二%程度でざいます。従いまして、労災の診療費でペイできるかどうかという問題を考えます場合に、人件費とか、病院の建設費、減価償却費というようなものも労災独自でペイするというようなことでございますと、実はほとんど計算が困難であると言えるかと思います。ただ全然別な角度から、ペイするという点とは別にですね、健康保険と労災保険とで何らかの特殊性がないか。たとえば指の切り傷にいたしましても、一般の私病でございますと切った傷が多うございます。しかし、労災の方は石ではさんだとかつぶしたとかいう挫創が多うございます。従って、指の傷につきましても切り傷を中心とした健保の点数単価をそのまま採用することはどうであろうかということでございますが、挫創を中心にいたしましたところの創傷処理の点数というものを考えるというような考えも出てこようかと思います。あるいは午前中も御質問になりました理学療法につきまして、特殊なものを考えるということが出て参ります。そういう点につきましては、健保の点数表の改正といえ問題とにらみ合わせて、どうしてもこれは労災患者の特殊性から見て、よけい見なくちゃならぬというものが出てさましたら、そういう点を将来労災の医療費の関係を見るべきではないだろうか。こういう考えがございます。そういう点につきましても専門医の方々に点数の問題としてじゃなくて、労災の負傷疾病と一般の私病の疾病と比べまして、特別に薬がよけい要るとか、包帯がよけい要るとか、手術が困難を感ずるとかいったような問題につきましては、専門の医師の意見を拝聴いたしまして、寄り寄り研究しておるわけでございます。
○坂本昭君 それでは事業団に伺いますが、今労災病院は事業団と労働省との間の契約で先ほど伺うと、長期療養患者の一〇%減というのは去年の終わりからやめたということですが、そうすれば単価について何も健康保険の甲表にとらわれる必要は少しもないので、あなたの方で独得な点数を作り、独得な単価を作って、そうしてそれによって労災病院の運営が硬調にいき、そうして労災病院がストライキをやったり――外来ストをやったりしていろいろと労災患者さんにも若干の迷惑を与えることのないようにする手段というものを講じられ得るはずだと思う。そういう点について、事業団として労働省との間の契約を変更して甲表よりもずっとよくすればいいじゃないですか。そういう努力をされるおつもりはないのですか。
○参考人(江下孝君) 現在事業団の労災病院でとっております診療単価につきましては、先ほど来のお話等もございまして、まだまだ合理化の必要があると思っております。従いまして、そういう点につきましては、実は労働省とも最近いろいろと御相談を申し上げておりますが、実はまだ急なために話が進まないということでございまして、決してその今のお話のような点をおろそかにいたしておるわけではございませんから、この点は御了承を願いたいと思います。
○坂本昭君 先ほど管理課長さんに伺った点まだわかりませんね。たとえば昭和三十六年度のこの労働者災害補償保険特別会計を見ますと、歳出の保険費は三百九億、三百億ちょっとになります。この三百億のうち労災病院にくる分が大体どの程度か、その点私は伺いたかったわけなのですよね。従って、場合によればこの歳出を上げることだって、労災病院についての分を上げることもできると思う。そういう契約を結べばできるのじゃないですか。そうすれば労災病院の収入は上がって、労災病院の運営は楽になる、こんな明白なことはない。何も健康保険の甲表にとらわれていつまでもうるさい思いをするというのはずいぶん窮屈なことだと思う。その点はいかがですか。
○参考人(江下孝君) その問題は非常に根本的な問題だと思う。つまり今までとっております労災病院の診療単価につきまして一応白紙に返して、お話のように、実際診療に必要な経費をどういうふうに算定して、それに必要な単価を出すか、こういう白紙に戻ったやり方を検討したらというお話のように承ったのですが、実はそれも一つの私は確かにこの労災病院の行き方としてあると思います。しかしながら、現在労働省で考えておられますやり方は、先ほど村上労災部長が申し上げましたように、基本といたしましては、やはり健康保険の単価に準じていく。しかし、労災特有なものにつきましてこれは十分御相談に応じる、こういうことでございますから、その点については十分相談をいたしておりますと、こういうふうにお答え申し上げます。
○坂本昭君 だからなおおかしい。先ほどのように、普通の病気だったら、たとえば手を切っても、部長が言った通りナイフで切っただけだけれども、労働災害の場合には挫滅というようなことが多い。だから、同じただの点数でいったのでは非常に手間だとか、衛生材料だってうんとかかる。だから、そういう点で単価を何も健康保険の甲表に準じなくて、あるいは甲表そのままでなくて、もっと高い三割とか、四割とか、あるいは五割増しの単価でやったってかまわぬじゃないか、何も根本的に変えるのじゃなくて、もっと合理的なことに変えたら労災そのものの本来の姿に変わるし、同時に、労災病院も運営が楽になるんじゃありませんかと言っておるわけです。
○説明員(村上茂利君) 健保の点数単価をそのまま採用するというのが問題になっておるようでございますが、実は国立病院、地方公共団体におきましても、これは契約に基づきまして国立病院は健保の点数単価でよろしいということで、国立病院は健保の点数単価でやっておるわけでございます。労災病院のみがそれ以上のものでなけりゃならぬということになりますと、お気持はわかるのでございますが、しからば一割上げるか二割上げるか、これはなかなか問題がございますし、かたがたこれはずいぶん古い以前の話でございますが、労災病院の設置をする、たとえば東京労災病院を始めていくといったようなときに、その設立の目的は、労働者保護とあわせまして、保険経済に寄与する――あのころは赤字でございましたので、労災病院を全額国で建ててそうして運営するということに上って医療費の軽減を通じて労災保険特別会計に寄与するといったようなアイデアもあったようであります。私ども今何もそれを固執する考えはありません、ありませんけれども、今申し上げましたように、国立病院、地方公共団体病院におきましては、税金がかかりませんので、健保の点数単価そのままやっても民間の指定病院との税金の差だけはプラスになっていこうという点から、従来とも健保の点数単価を実施していただいた、こういう経緯になっております。そこで今御指摘のように、労災病院をどうするか、もう少しふやしたらいいじゃないか、ふやせば多々ますます弁ずでございまして、事業団としてはけっこうなことだろうと思いますが、理論的にそこら辺むずかしい問題がございます。そこで先ほど申し上げましたように、指の挫滅に関しましてもこれは決定ではなくて、そういう問題がありますから、寄り寄り検討いたしまして、近い将来適当なときにそういう問題についても逐次改善をはかって参りたい。理学診療についても同様でございますが、そのような形で逐次改正いたしまして、しかもそれは単に労災病院のみならず、労災医療一般に通ずることでありますから、私ども一つ良心的に考えて、客観的にそういう面の研究を進めたいと、かように思っているわけであります。
○藤田藤太郎君 関連。私は、今御議論を聞いておって思い出したのですがね、病院に入院の場合、同種の労災患者と、それから健保の患者と国保患者という工合に同じ条件のもとにおける入院費用について差がないのかどうか。今私の記憶では、二十三年から二十五年、二十八年ころまでの労災患者の扱いというものは完全看護の面から言っても、相当の開きがあったと記憶――労災患者に対する扱いというものは労災協会が運営をしておったときには開きがあったと記憶しているのです。それが今は健康保険の甲表一本だというのをさっきから聞いていると、少しそういう点がどうなのかという疑問を持ってきたわけです。ちょっとお伺いしておきます。
○説明員(村上茂利君) 労災病院の診療費と申しますか、そこの……。
○藤田藤太郎君 患者が入院した場合、一般とどういう工合に費用が違っているかということです。
○説明員(村上茂利君) 一般患者と労災病院の患者の費用の額はちょっと今資料を手持ちいたしておりませんが、基本的には労災協会時代と現在とは変わりはありません。と申しますのは、労災協会自体は委託契約という契約で全部労働省の方で委託条件を明示しまして、その通り労災協会にやらせておったという形になっているわけでございます。委託契約の内容が医療費関係患者の診療関係の条項はそのまま福祉事業団の方に移行しておりますので、取り扱いとしては変わっておらないというふうに申し上げてよいかと思います。
○藤田藤太郎君 だから、一般の患者と労災患者との扱いについて労働災害を受けた患者については特別な一般患者よりか優遇するという形で扱ってきたという私は記憶があるが……。
○説明員(村上茂利君) その点につきましては、たとえば新薬を使用するというような場合におきましては、健康保険の制限がございます。従いまして、新薬は健康保険の患者には使わない。労災患者につきましては、制限がございませんから使用する。あるいは輸血の使用量についても同様であります。それからまた、先ほど申しましたつき添い看護婦をつけるといったような点につきましては、これは医療費の問題ではなくて、労災保険の給付の問題で特別扱いをしておるという点において差があると言えるかと思います。現状におきましてもそういう格差はそのまま存続しておると思います。
○坂本昭君 要するに、労災保険というものは健康保険と違った立場をとってもよろしい。法文の上においても制限診療というワクをはずされているので、私はその点で労災病院の運営というものは、当然ほかの病院の運営とは違った方途をとることができ得る。やったって別に人から悪く言われる点はない。そういう点を積極的におやりになっていないが、はなはだ不十分だと思うので、特に今度事業団が労災病院に専念していくわけですから、私は根本的にできるだけ近い将来というようなことよりも当然今から考えておいていただくべきであると思う。 この際さらに伺いたいのは、先ほど職員の定員について必要なものはそれぞれ入れていると言っておられましたが、一つこれは現在の職員の現員を分類別して、医師が何名、薬剤師が何名、それからマッサージ師が何名、そうした一覧表を出していただきたい。これは今御説明を聞いても非常に長くかかると思いますから、当然そういうものがあるはずだと思います。そうして労災病院に独得のものがあっていいと思う。この点は事業団にお願いしますが、できますか。
○参考人(江下孝君) できます。
○坂本昭君 それでは次に、労災病院の労務管理についてお尋ねをしたい。大体五つほどあります。 先ほど医療法の基準と、労災病院の定員の問題については先ほど申し上げましたから、この点はあなた方の方の分類表を見て、もう一ぺん検討したいと思います。 二番目に看護婦の三交代の実情がどうかということ 三番目に看護婦及び女子職員、ことに看護婦の産休――産前、産後の休暇の問題及びそれに対する代替要員、交代要員の問題。 四番目に、四十四時間制の看護婦の勤務の問題。 五番目に看護婦の自由通勤制の問題。ことに労災病院における看護婦は世帯持ちが何%ぐらいおって、そしてどういうような通勤制をとっておるか。これらの点について簡単明瞭に御説明をいただきたい。これは事業団から説明いただくのがいいと思います。
○参考人(江下孝君) 看護婦の最初の問題は、三交代制の問題でございますね――。これは御承知の通りだと思いますが、八時間交代ということで実施をいたしております。特にこの点につきましては、現在のところそう大きな問題はないように、私聞いております。これと関連いたしまして四十四時間制の問題があるということじゃないかと思うのですが、実は看護婦は今、週四十八時間制をとっております。従って、これを四十四時間制にするという、労働時間短縮の方向に向かって私どもも検討はいたしておりますが、相当大きな予算をこの点は要しまするので、十分なお検討いたしたい。かような考えております。 それから看護婦の通勤の問題でございますが、これは従来から労災病院はもう寄宿舎制をとっておりまして、ごく一部の方でやむを得ないという事情のある方だけは通勤を認めている。こういう建前をとっております。これにつきましても全員通勤制を調めよという組合の要求がございました。いろいろ現在話し合っている段階でございますが、これにつきましても、今の制度をいつまでも私は固執するつもりはございませんで、適当な話し合いがつけばこの問題は解決できると考えております。 それから産休の関係につきましては部長から説明いたします。
○説明員(国吉文雄君) 看護婦の三交代につきましては、一般の病院に行なわれていると同じように三交代制をとっておるわけでございます。 それで産休につきましては、まあ今日まであまり例がございませんが、当然これは基準法において定められたところの産前産後休暇は与えるように、従来若干の例はあると思いますが、まあきわめて例は少ないのでございますが、与えておりますし、当然与えなければならないと考えております。これらの代替の定員につきましてはそれぞれ必要の生じた病院につきまして、病院からの連絡によりまして認めておるような次第でございます。
○坂本昭君 ただいまの理事並びに部長の説明を聞いて、大体労働省出身の前局長とか、その道の専門家の労務管理としては、これは全く落第点なんですね。そんな説明を聞いたって全く何の足しにもならないので、むしろ病院の従業員がそんな説明を聞いたら怒りますよ。理事者がこの程度の理解しかない。こんなことではとうていわれわれは働けぬぞということになりますよ。もっと少なくともこの労務管理の専門家であるあなたたちがやっておられる病院である以上は、この三交代についても、三交代についてあまり問題はないのだ。そんなことはないですよ。これはどこだって問題があるのです。みな定員が足らなくて困っている。その中でまたお産というような婦人に必然的に伴う問題があってなお困っている。それに加えてこのごろは世帯持ちが多くて、子供ができて、それで通勤の問題か出て当てて困っている。これらは全部今日の日本における婦人労働者における共通の非常に重要な問題なんですよ。そういう重要な問題をかかえた労災病院で、あなた方労務管理の専門家の人たちがこの程度の認識では、これははなはだお粗末過ぎる。この点はもっと現場に行って、よく現場の声々聞き、そしてその中から、たとえば定員が足りない。病院診療が足りない。だからそのたとえば今の労災保険の単価を上げるとか、そういう切実な皆さんの要求として、私は理事者は責任を持って問題解決に当たらなければならぬと思う。今のようなことだったら、これは労災病院のいろいろな問題についてなかなか僕は解決できないと思うのですよ。私がかりに労災病院の医者だったら、あるいはその従業員だったとすると、腹を立てますよ。もっと実際のことを知ってもらいたい。少なくとも労務管理の専門家の人たちがまあいわば管理者であるのだから、その点これはあとまた問題がありますから私は御忠告申し上げておいて次の問題に移りますが、昭和三十五年度の人件費の予算、それから単価はどういうふうに組んでおられますか。人件費予算の単価と、それから定員をどうお組みになられたか。それから三十六年はどうなっているか。
○説明員(村松伍郎君) 三十五年度の人員の定員は四千三百九十七人であります。人件費の総額は労災病院におきまして十二億四千万円であります。それから予算単価は本俸が一万四千三百八十一円。扶養手当が四百三十二円、勤務地手当が千九百十一円。これを含めました基準内賃金が一万六千七百二十四円。以上であります。
○坂本昭君 それからその三十五年の実際の状況、現員並びに今の本俸その他の内容、さらに三十六年度の計画はどうなっていますか。
○説明員(村松伍郎君) 三十五年の状況は、これは三十六年二月――三十五年度で三十六年二月現在の状況で、人員は四千四百四十九名、それから本俸が一万三千七百九十円、それから扶養手当が三百八十二円、勤務地手当が千七百九十三円、平均基準内賃金が一万五千九百六十五円であります。
○坂本昭君 三十六年度の計画。
○参考人(岩沢克男君) 三十六年度の予算は目下編成中でございますが、定員は平均いたしまして四千四百四十人ぐらいになる見込みでございます。
○坂本昭君 それから、今の本俸その他は。
○参考人(岩沢克男君) 本俸は、現在の積算といたしましては確定いたしておりませんけれども、大体の見込みといたしましては、現員のただいま申しました給与の一二・四のアップという形で一応整理いたしております。それから定期昇給の原資といたしましては、基本給の四%をば年間を通じて見ております。従いまして、一二・四のベース・アップと四%を加えた二八・四%が三十五年度に比べてアップするという計算で現在整理いたしております。
○坂本昭君 今の四千三百九十七名、四千四百四十九名というのは、これは間違いのない数字だと思いますが、なぜ干ての最初の本俸その他を含めた予算一万六千七百二十四円が約八百円低い一万五千九百六十五円にとどまったか、その理由を一つ御説明いただきたい。
○参考人(江下孝君) その問題は予算単価をきめますときに、大体現実の俸給そのものを全部各人にはじいてその平均をとればそういう格差はないわけでございますが、現実にやりますときはある程度その年度のベース・アップなりあるいは人間の動き等も見て単価というものを決定するわけです。従って、若干単価が――単価と実際の単価が上下があるのはこの種の団体においては当然なわけです。ただ、まあ非常に差があるということになりますとおかしいんでございますが、この程度のことはやはり人件費に弾力的な意味を持たせるということで普通とっておる予算の立て方でございます。
○坂本昭君 次に、今のことに関連して伺いますが、昨年の春以来、労災病院は中労委のあっせんを受けて、六月の十七日にあっせんを受けて、給与の内容も変わってきております。その変わってきた内容を、昨年の春から現在に至る間の変わり方を御説明いただきたい。 〔委員長退席、理事高野一夫君着 席〕
○説明員(村松伍郎君) 三十五年度には六月に中労委のあっせんが出まして、千百円の原資をもって給与の改善にしなさい。しかし、現に事業団から提示されている俸給表についての改善の話し合いがまとまるまではその俸給表を使いなさいということで、結局千百円の中労委の昨年六月のあっせんは、六百五十円を俸給の改善に使いまして、四百五十円を一時金、臨時手当として毎月支給しております。従いまして、先ほど申し上げました三十六年二月現地の一万五千九百六十五円の基準内賃金のほかに、四百五十円が臨時手当として加算されます。この額は結局予算にはございませんで、今の予算を食って四百五十円がこれに加わっておる、こういうことになっております。そうして現在のところはその千百円の、六百五十円の俸給表の改正とそれから四百五十円の一時金と、年額およそ平均しまして、四%の定期昇給が加わっているのが現在の俸給の姿であります。こういうことになっております。
○坂本昭君 そうしますと、ごく最近のその平均の給与額は結局幾らになるのですか。
○説明員(村松伍郎君) この一万五千九百六十五円に今の四百五十円の臨時手当が加わった数字でございます。
○坂本昭君 一万六千四百十五円ですね。 そこで伺いますが、労災病院における給与というものは、これは公務員に準ずべきものか。準ずべきものとするならばその法的根拠はどういうところにあるか、その点の説明をいただきたい。
○説明員(村松伍郎君) 労働福祉事業団法におきましては、労働福祉事業団の職員の俸給の基準については何ら規定してございません。ただ関連する規程としましては、給与に関する規程あるいは退職金に関する規程を制定する場合には労働大臣の承認を受けなさい。また、そのあとの条文によりまして、労働大臣は、それらの給与に関する規程あるいは退職金に関する規程を承認する場合には大蔵大臣に協議しなさい。こういうことでありまして、間接に労働大臣と大蔵大臣の行政的なコントロールを受けると、こういうだけでありまして、たとえば国家公務員でありますと国家公務員法に「職員の給与は」云々とありますし、あるいは三公社五現業のようなそれぞれの給与の基準についての規程、そういうものはございません。従いまして、結局、結果としましては大蔵省にこの俸給表を持ち込んで相談しました結果、同種の政府機関、たとえば公団あるいは事業団、こういうふうなものとの均衡をとりまして俸給表制定当時にありました国立病院の職員の俸給表、つまり国家公務員の俸給表より一二%高い額で俸給表を作って、それで労働大臣は承認しておりまして、それが現在行なわれております。その後、三十二年に国家公務員に比べまして一三%高い俸給表で俸給が出発しましたが、その後毎年四%の定期昇給、あるいは三十四年の初任給是正、あるいは三十五年の中だるみ是正、こういうふうなものを含めまして、現在までのところ三二%のアップになっております。以上であります。
○坂本昭君 そうすると、必ずしも公務員に準じなければならないという、こういう見解は必然的に生まれてくるというものではないのですね。
○説明員(村松伍郎君) 必然的には生まれて参りませんが、法律上は生まれて参りませんが、御承知のように、労働福祉事業団は大体国のの行政の代行機関でありまして、まあいわば国の行政の一部を事業団という性格のものが代行している、こういう建前から、ある程度国家公務員に均衡をとったものがよろしいという条理的な判断はできると思います。それからもう一つは、国家公務員の俸給につきましては、人事院がたえず同種の産業の職員の俸給等と均衡をとりまして、法律上の責任として国家公務員の俸給について国会並びに政府に勧告することになっておりまして、その勧告に基づいて、国会と政府内部の論議を経まして、たくさんの人の目を経ましてでき上がり、かつそれは国家公務員だけでなく、地方公務員、あるいは同種の職員に相当――数でいいますと、私の考えでは三、四百万の機関労働者に適用されておりますので、これをとりますことが現在のところでは、事業団並びに労働省としては一番よい方法ではないかという立場から、国家公務員よりも二二%高く、かつ、昇給その他も国家公務員に準ずる、こういう制度をとったのであります。もう一つ蛇足ながら加えますと、今のような赤字の場合に、かっこの昇給をするという理由をかりにつける必要があるとしますならば、赤字でも赤字でなくても、とにかく国家公務員に準じてやるということになっておりますれば、こういう場合にも国家公務員等が上がった場合には上がる、こういう点もありますので、私たちは国家公務員に準じた俸給表を作ることが今のところはやむを得ないのではないか、むしろよろしいのではないか、というふうに考えております。
○坂本昭君 そこで伺いますが、当初は国家公務員にプラス一二%で出発して、それから現在は三二%……。
○説明員(村松伍郎君) 現在までに三二%上がっております。国家公務員より二二%高い俸給表を作りまして、その後その俸給表は改正されたものもありますし、それから定期昇給もありまして、その俸給表ができたときから現在までのところに三二%上がった、こういうことでございます。
○坂本昭君 そうすると、そのときから三二%上がっているのであって、現在国家公務員のそのレベルから三二%上がっているのではないのですね。
○説明員(村松伍郎君) 国家公務員のレべルからは二二%の格差をずっと維持しておるわけであります。
○坂本昭君 そうすると、今二二%の格差を現在も維持しているという、それは数字的にも間違いありませんか。
○説明員(村松伍郎君) 間違いございません。
○坂本昭君 そうしますと、先ほど来労災問題についていろいろと議論をしてきましたが、私は別に労災病院の当事者でも何でもない。事業団の人でもない。しかし、いわゆる労災というものが非常に特殊のものだということの認識だけは持っている。従って、なるほど政府の代行機関として労災病院が一つの大事な労働者の保護、労働者の生活保障をやっていく上において、私は特殊な一つの立場を持つべきだと思うのです。持っておっても不思議ではない。そういう面は給与の中に出てきてもいいと思うのです。ことにだんだんと労働者の保護立法が発達してくれば、私はますますそういう面が出てきてもいいと思うのです。そういう点は給与の面では一体二二%プラスだという、その一点に出ているだけで、別にほかには何も出てこないのかどうか、その点の研究はいかがでしょうか。
○説明員(村松伍郎君) 給与ではございませんが、先ほど申し上げましたように、医師につきましては院長八千円、それから副院長六千円、医師二千円というふうな研究費を配付しまして、普通の国家公務員と違った研究についての助成を行なっております。
○坂本昭君 ただいまの答弁だと、それ以外にはないということになりますが、それではベース・アップをする場合の原資は、一体これはどこから得ることができるか。今までの朝からの話を聞いていると、病院収入からも得ることができる、それからまた、予算的な最初からの措置によっても得ることができる、何か二通りあるように思うのですが、ベース・アップの場合の原資はどこから得るかについて御説明をいただきたい。
○説明員(村松伍郎君) 先ほど申し上げました三十五年度の人件費は、十二億四千万円でありますが、このうち政府の交付金でまかなっておりますのは、三千万円だけでございます。あとは全部自前でまかなっております。自前でまかなっておりますのは、先ほど来御議論がありました診療費でまかなっております。三千万円はどういう基準で国が交付金を出しているかと申しますと、これは看護婦養成所、それから傷疾者訓練所というような収益の全然見込まれない事業並びに労災病院を新設しまして、新設して一年間だけ患者が十分入らないその差額の分を合わせて三千万円でありまして、普通の平常の状態における労災病院の費用は、人件費を含めた全部の費用を一応現在のところでは診療収入でまかなっておる、こういう建前できております。
○坂本昭君 そうすると、新設した最初の一年だけは、政府の交付金で見て、それからあとは見ないというその理論的な根拠はどこにありますか。
○説明員(村松伍郎君) 最初の一年たてば、病院の設備を完成しまして、それから病院の存在も周知されるだろうということでありまして、その一年の客観的な確実な数学的な根拠は必ずしもございませんので、大蔵省と労働省当局の予算の折衝の過程でその辺に落ちついたと私は考えております。
○坂本昭君 そうすれば、労災病院の本来の使命である労働災害によって負傷した患者さんの治療を、あるいはリハビリテーションのためにこの病院を役立たせるというそういう本来の使命の面から、この政府から交付金を出した方がその任務に非常に都合がよろしい、だから出すということではないのですね。
○説明員(村上茂利君) 交付金を支給する考え方は、労災協会時代から一定しておりまして、病院が完成するまで交付金を出す、こういうことであります。過去におきましては、病院が開院いたしましてから二年間かかるという場合には、要するに一年とか二年とかということじゃなくて、完成するまで交付金を出す、こういうことでございます。ところが最近は、病院の設置計画が進みまして早く完成いたしますので、一年間という基準をとっているわけでございまして、一年とか二年とかというのを別こしいてきめたわけじゃなくて、完成するまでは交付金を支給する、こういうことにいたしておるわけでございます。完成するあとは、労災病院全体として大体やっていけるだろう、先ほど申しましたように、建設費、機械設備その他一切国で見ておる、それから税金もかからぬということから、一般的には何とかやっていけるのではなかろうかという期待が持てる、こういうふうに私ども考えておったわけでございます。
○坂本昭君 今の点は非常に僕は問題だと思うのですよ。労災病院本来の使命ということで出発しているけれども、業務方法書には施設の設置の基本方針として設置する場所だとかいろんな問題があげられています。が、必ずしも労災病院の建っているところは患者さんがたくさん来そうなところだとは思われない、かなり不便な場所もある、従って、一般病院のように一応施設が完成したらすぐ運営がうまくいく、現在のような低い単価の時代には完成してもうまくいかないで医師会などが問題を起こしていますが、あなたのようなお考えだというと、当然労災病院にそれぞれの施設で独立採算のために本来の使命以外の無理なことをしなくちゃならぬということが私は当然要請されてくると思う。その結果が私は労災本来の目標から遠ざかってくるおそれが十分にあると思う。その反面において今のように病院収入で全部やると言いながら、単価の方は健康保険の甲表で束縛をしている、私は何か自縄自縛というか、そういう形でみずから苦しんでおる感じがする。何もあなた方が不当にもうける必要はありません。が、病院本来の目的の達成せられるために――ということはいろいろ病院のトラブルを起こさないということもその中に含まれてきますよ。そういう点で何か私は、今のこの交付金は最初の一年だけで、あとは全部自前でやるという行き方自身に問題があるのじゃないか、さらにまた、そうなってくるというと、前に労働大臣は、労災病院の運営がうまくいかない場合には政府がこれを見るということは、一体どこで見るかということ、労働大臣がいないからこの点直接聞けませんが、労働大臣としては具体的にこの三千万円という三十五年度予算をかりにこれをふやすとかあるいはこの名目を変えてもう少し――新設後一年というのを何も新設後一年ということにとらわれないで、労災病院の運営を円滑ならしめるためのこの甲表というようなものを考えられるのではないか、その点いかがですか。
○説明員(村上茂利君) ちょっとこれは御議論にわたるかと存じまして恐縮に存じますが、労災病院の特殊性とは一体何であるかということでございます。 〔理事高野一夫君退席、委員長着席〕 私どもは労災患者に対しまして迅速適切な医療を行なう、特に外科とか整形外科の面におきまして十分なる医療を施すといったようなところに本質的な特色を見出して、被災労働者に対するサービス、医療の徹底という意味で、たとえば機械施設にしましても、レントゲン、手術台等につきましてはほかの病院よりは若干いいような施設を私どもは完備したい、こういうふうに思っているわけでございます。そういった労災患者に対しますところの医療が十分行なわれない、こういうことになりますればこれは非常にゆゆしい問題でございまして、現在のところ、一般病院あるいは他の国立病院などと比較いたしまして、労災病院のそういった治療が不十分である、あるいは至らないといった点につきましては、比較的そういう非難を私ども聞いてないのでございますが、将来ともそういう点につきましては、十分一つ注意をして参りたい、かように思っております。その交付金の問題につきましては、これはまあ将来の問題としてどう考えるかという点につきましてはいろいろ御議論があると思いますが、私ども過去十数年の間、開院しましてまだ完成しない病院に対して交付金を支給するという建前をずっと一貫して貫いてきたのでございますが、三十四年度までは減価償却費を除きますと黒字になったことが一度もないのでございます。従いまして、この問題を考えます場合には、健康保険の点数単価も含めまして収入すべき医療費があるべき姿に正されていないというところに一つの問題があるのじゃないか。そこで、健康保険の点数単価も含めまして、医療費が適正な改訂をされたあとにおいてなおかつ赤字が消えないというようなことになりますれば、さらに医療費の適正か不適正かということを労災の面から検討する必要もございましょうし、あるいはまた、交付金で考えるというような面も検討しなければならないと思いますが、いずれにいたしましても、私どもとしましては、近い将来行なわれますところの医療費の改訂の状況を見まして、そうしてこの赤字補てんの問題を具体的に検討して参りたい、かように考えておる次第てございます。
○坂本昭君 そこまで部長が言われるならば、今厚生省の原案の一〇%引き上げということを適用した場合に、それだけでどの程度のベース・アップの可能性があるのですか。
○説明員(村上茂利君) これは病院収入を、医療収入をどう見るかということでございますが、これはベッドの利用率の問題、あるいは外来患者等の今後の伸びの問題、いろいろございまして、そういった要素を抜きにしてちょっと考えられないと思いますけれども、 かりに一二・四%のベース・アップをするということに相なりますれば、三十五年度の赤字を解消するためには一、二年ではちょっと困難ではなかろうか、解消するにいたしましても若干年数を必要とする、長くかかるということになろうと思います。ですから、その赤字を当該年度で直ちに解消するか、あるいは一定の計画を立てまして、三カ年で償却するとか、いろいろ考え方があると思います。いずれにいたしましても、健康保険の点数単価改訂の模様を見まして具体的に研究したい、こういうふうに思っております。
○坂本昭君 どうも事業団は全部労働省におぶさってしまって何ら意思表示がありませんが、私は当然あなたの方でも計算をしておられるだろうと思う。あなたの方は、言いかえれば、病院の経営者であり、病院の運営管理の責任者であるのだから、今度の単価の引き上げに伴って、どの程度のベース・アップができるかという計算は当然しておられると思う。今部長の説明だというと、一二・四%の引き上げだけでも一、二年かかるようなそういう説明ですけれども、もしそうだとするならば、それは健康保険の甲表の引き上げだけではこれは運営がうまくいかぬということですよ。やはり先ほどから私が言っているように、労災保険としての特殊な単価を制定する必要があるじゃないか、そういう点の考えは事業団としてはいかがですか。
○参考人(江下孝君) ただいま補償部長からお答えしましたように、現在非常に大きな赤字をかかえております。赤字という観点からいたしますと、これは職員のベース・アップということはできないということになります。しかし、これは従来事業団が申しておりましたように、必ずわれわれは国家公務員の基準にならって、国家公務員が上がれば上げるということを言っておりました建前をわれわれはくずしたくないということのために、一二・四%のベース・アップをわれわれはやろう、こういうことでございます。従って、もしこれをやりますと、今年度の赤字はさらに九千万円ふえるわけでございます。従って、来年度におきまして、かりに一割程度の診療単価の値上げでございましたならば、この赤字は今の単価でいく限りはほとんど解消できないであろう、こういうことでございます。従って、これは今補償部長も申し上げましたように、今後事業団の運営が円滑にいきますように、先般来補償部と何度も相談をいたしまして、一つ単価の問題あるいは交付金の問題、これらもかねあわせて現在相談を実施している最中でございますが、何しろ単価の改訂がまだはっきりいたしませんので、今のところどういうふうにこれを持っていくというお話ができないというのが実情でございます。
○坂本昭君 どうもいろいろ事業団に伺うというと、二十幾つかの病院を持っているその管理者として、病院自身についての知識や、あるいはこの運営を改善しようとする熱意のほどが非常に乏しいと思う。私はもっとしっかりやってもらいたいと思う。今一二・四%の問題出ておりますが、私はこの数はただあなた方が試みに言われている数であって、この数自身についていろいろ検討を要するものがあると思うのです。しかし、もう少し質問をしたい点がありますから、次に移って、先ほど労働大臣に直接聞きましたけれども、外来ストに関連して現在行なわれている応量カットの問題ですね。これはかなりこまかいことを事業団としては指示しておられますが、まずこの点について、第一番目にこれは労働協約の違反ではないか。このことについての御説明を事業団からいただきたい。
○参考人(江下孝君) 労働協約の中に、スト中の賃金は支払わないという明文がございます。その条文によりまして、外来ストでございましてもこれはストでございますので、その分の労務の提供が行なわれなかった部分につきましては賃金を支払わない、かようなことに相なっております。
○坂本昭君 いやそうじゃないでしょう。外来ストやっておっても保安要員は出しているんですよ。その出している、就労している保安要員がおるにもかかわらず、応量カットをやっているんじゃないですか。
○参考人(江下孝君) 外来ストをやりながら保安要員を出すということ自体が私はおかしいと思うのです。当然外来ストをやれば外来患者がうんと減るわけでございますから、全員を保安要員に出すということは、組合の方からは都合がいいかもしれませんが、われわれの方から見ますと、当然その部分については、業務量の減った部分については保安要員を減らすべきだと考えております。
○委員長(吉武恵市君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(吉武恵市君) 速記を始めて。
○坂本昭君 それじゃ、幾つも問題点があるから少し伺っておきますが、江下さんの考えはどうも僕たちとは違うようだね。 それでは次に、労働組合法の八条の違反の点、この点はどうなんですか。損害賠償の……。
○参考人(江下孝君) 今回の外来ストによります賃金差し引きは、私の方は損害賠償という考え方ではございません。
○坂本昭君 そうすると、あなたの方での今の応量カットの考え方の根拠は最初に言った点なんですか。
○参考人(江下孝君) さようでございます。
○坂本昭君 労働基準法の二十四条の違反の点についても同じような御見解ですか。
○参考人(江下孝君) さようでございます。
○坂本昭君 あなたの方で応量カットの計算方式を出しておられますが、これは事業団から各病院に指示をされた、それに基づいて各病院が計算方式を作って、これによってカットしているわけですか。
○参考人(江下孝君) さようでございます。
○坂本昭君 たとえば、東京労災病院で賃金カットの基準として、医師について外来を四時間というふうにきめておられるのですが、この、医師について四時間ときめられた根拠はどこにありますか。
○参考人(江下孝君) この部分ストに対しまする賃金カットでございますが、これは先生もよく病院の実態からおわかりになると思いますが、現実の問題といたしまして、なかなかこの各個人別にその部分ストに対する部分を正確に計算するということはまことに困難な事情がございます。従いまして、私の方は、まあ、できる限りの正確さを期すると、こういう意味で実は作成したものでございまして、それを実は小さくいろいろやられますと、あるいは若干病院によっては不合理な点が出るかもしれませんが、しかし、私どもとしてはできる限りのこれは正確さを期してやったわけでございます。これにつきましては、現在組合の方から裁判所の方に文書が提出されておりますので、これによって、もし私どもの賃金カットの仕方が悪いということならばその判定に待ちたいと考えております。
○坂本昭君 先ほどの管理課長の報告まだ出ませんか。
○説明員(村上茂利君) 御質問は、労災病院を含みました療養補償費の支払い総額及びその内訳というふうに承知いたしておりますが、療養補償費の総額は、三十四年度の実績で申し上げますと七十六億四千万円でございます。このうち労災病院に対して支払った額は七億五千万円でございまして、全体の九・八%に相当いたします。
○坂本昭君 この際、もう一度あらためてこの剰余金の額について御説明いただきたいと思います。
○説明員(村上茂利君) 労災保険特別会計におきます剰余金と申しますか、これは支払い備金というのと、積立金という二つのものがございます。現在余裕金と一般的に申しておりますのは支払い備金でございます。支払い備金は、三十六年度当初に繰り越し額は約三十億でございます。しかし、一応計算上必要な支払い備金はもっと多うございまして、そういう意味では法定の額だけまだ準備しておらない、こういうことに相なりますので、決算上は赤字になっております。その支払い備金が積み立てられて、なおかつ余裕がありました際に初めて積立金というものを設ける、こういう制度になっておりますが、労災保険創設以来まだ積立金を設けたという例はございません。
○坂本昭君 今の支払い備金の計数上の根拠はどこから出てくるのですか、今の百三十億という根拠は。 それからもう一つ、法定額ということを言われましたね。その法定額というものの金額の根拠はどこから出てくるか、御説明を願います。
○説明員(村上茂利君) これは長期傷病者補償を除きまして、従来通りの療養補償で申し上げますと、原則として三年間療養を継続いたします。そこで三十六年度の支払い備金を考えます場合には、三十五年度で発生した災害につきまして労働者が何人おるか、そうしてどういう疾病であるか、補償費幾ら払ったかということが具体的にわかります。さらに三十四年度に発生したものもわかります。それから三十三年度までわかるわけであります。過去三年間におきまして発生した災害につきまして療養費が今後三年継続療養するとすればどの程度必要であるかという計算をいたします。これは過去の実績を基礎にいたしまして計算しておるわけでございまして、一応具体的にはその人数等は現に療養を受けておりますのでわかります。ちょっとくどい説明でございますが、そういう具体的な人につきまして過去三年間の分について今後さらに継続療養すれば幾ら必要であるかという計算を出しまして、それを支払いの所要額として算定しておるわけでございます。法定と申しますのは、特別会計法上そういう支払い備金を設けろという規定がございますので、そういう意味で支払い備金というのは法律上義務づけられておるという意味でございまして、計算方法はもっぱら今申しましたような形で計算をする、そして決算上もそれによって行なう、こういうことになっておるわけでございます。
○坂本昭君 それでは今の支払い備金百三十億というものの計算が出てくる根拠としては、労災の患者の数と、それから一人平均幾らの療養費が要るという金額が出てくるはずだと思うのです。それを一つ参考までに資料として出していただきたい。それがなければこういう金額というものは出てこないと思うのです。ただばく然と百三十億という支払い備金が要るんだと言われたのでは、われわれとしては見当がつかない、なぜ百三十億が出てくるかというその根拠を一つ資料として出していただけますか。
○説明員(村上茂利君) 百三十億と申しますのは支払い備金の額ではなくて、昭和三十五年度末におきまして現実に保有しておる金額で、支払い備金に充当されるものとして百三十億があるということでございます。で三十六年度におきましては、さらに具体的な計算をいたしまして、おそらく百五十八億ぐらいの数字になると思います。百三十億自体はその計算した数字じゃなくて、計算した数字となりますと百五十八億でございます。百三十億というのはつまり昭和三十四年度から繰り越された九十三億に、昭和三十五年度に余りました約四十億ばかりの剰余金を合算したものが約百三十億になるということでありまして、支払い備金の所要額は百五十八億ということで、その所要額にはまだ達していないということに相なります。なお、つけ加えますと、形は支払い備金でございますが、労災保険では年度が変わりますと、現金が入って参りますのは五月十五日が一応法定期限になっております。それまで金が入って参りませんので、年度当初の運転資金が必要でございます、従いまして、決算上の形は支払い備金になっておりますけれども、その金は年度当初の運転資金を予想しておるということでございまして、百三十億そのものが確実に使えるということじゃありません、そのうちの一部は絶えず流動しておるということに相なっております。
○坂本昭君 もう一つ、業務取扱費として二十三億八千万円がたしか今度の三十六年度の予算に計上されておったはずですが、これのこまかい内訳というものは出していただけますか。
○説明員(村上茂利君) すでに予算審議をいただいたときに、簡単な資料といたしまして一般会計のほかに特別会計の方も出しておるはずでございますが、あれの細目といったようなものでございますれば、できるだけすみやかに作成いたしまして御提出申し上げたいと存じます。
○坂本昭君 この前の予算の資料では、ただ労災の事業を運営するため、本省、都道府県労働基準局及び労働基準監督署の経費である、こうなっておりますので、それをそれぞれ別個にできるだけこまかく一つあげていただきたい。 それでは最後に、委員長にお願いしておきますが、きょうはこちらから要求しました参考人が病気のために出席できませんでしたので、これは病気がなおり次第、また、一応新しい事業団の出発の時期に当たっておりますから、新しい決意やプランについて直接伺いたいと思うので、一日も早く病気をなおしていただいて当委員会に出席のできるよう、委員長においてもお取り計らいを願いまして、時間の関係で質問を終わります。
○委員長(吉武恵市君) 本件に関する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉武恵市君) 御異議ないと認めます。 それでは、失業保険法の一部を改正する法律案は、次回の木曜日に議題といたすことにして、本日は、これにて終了いたします。 午後三時三十六分散会