農林水産委員会 第32号
- 発言数
- 51 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1961/04/21
会議録
○坂田委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、農業災害補償法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び予備審査のため付託になりました肥料取締法の一部を改正する法律案を議題とし、まず政府に提案理由の説明を求めます。八田農林政務次官。 ————————————— 2 植物の栄養に供することを目的として植物にほどこされる物については、肥料取締法第四条、第五条、第十七条から第二十条まで及び第二十七条の規定は、この法律の施行の日から起算して六十日を経過する日までは適用しない。 ………………………………… 理 由 最近における肥料の改良進歩の状況にかんがみ、新たに、植物に施用する物を肥料取締法の適用対象とするとともに、公定規格で定める農薬その他の物を公定規格で定めるところにより混入する場合に限つて異物混入を認めることとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。 —————————————
○八田政府委員 ただいま議題となりました農業災害補償法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明いたします。 農業災害補償法第百七条第四項の通常共済掛金標準率、異常共済掛金標準率及び超異常共済掛金標準率のうち農作物共済にかかるものについては、昭和三十六年にこれを一般的に改訂することとなっております。しかし、現在農業災害補償制度の改正を準備しており、農作物共済の共済掛金率の設定方法についても新制度に即して改善を加えるのが適当と考えられますので、本年は農作物共済についての通常共済掛金標準率等の改訂を行なわないこととした次第であります。 以上がこの法律案の提案の理由でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。 次に、ただいま議題になりました肥料取締法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。 第一点は、肥料の定義の改正であります。現行肥料取締法におきましては、植物の栄養に供することまたは植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地に施される物を肥料として認めているのでありますが、近時たとえば葉面散布剤のように植物の栄養に供することを目的として植物に直接施用するものが製造市販され、すでに農家の使用するところとなっております。このいわゆる葉面散布剤は今後生産消費とともに増大する見込みでありますので、その品質を保全し公正な取引を確保するため所要の規制を加えることができるよう肥料の定義の改正を行ない、新たに肥料として認めようとするものであります。 第二点は、一般的に禁止されている異物混入について例外を認めるための改正であります。現行肥料取締法におきましては、原則として肥料の品質を低下させるような異物を肥料に混入することを禁止しているのでありますが、近時、農家労働の軽減をはかる目的をもって農薬を混入する肥料あるいは肥効の増進をはかる目的をもって大谷石等の特定物を混入する肥料等が生産される見込みでありますので、公定規格で定める農薬その他の物を公定規格で定めるところにより混入する場合に限って異物混入をすることができるよう異物に関する規定を改正することといたしたのであります。 以上がこの法律案を提案する理由で及びそのおもな内容であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
○坂田委員長 ただいま提案理由の説明を聴取いたしました両法案に対する質疑は後日に譲ることといたします。 ————◇—————
○坂田委員長 次に、内閣提出、農業基本法案及び北山愛郎君外十一名提出、農業基本法案を一括議題として質疑を行ないます。 質疑の通告がありますのでこれを許します。野原正勝君。
○野原(正)委員 私は、前回、農業基本問題調査会が答申いたしました農業の基本問題と基本対策というものと関連いたしまして、政府案がこの調査会の答申をいかに受けたか、また、答申と政府案との関連はいかようであるか等について質問をしたのでありますが、その意を尽くし得ませんでしたので、今日引き続きまして大臣から所見を伺いたいと思います。 構造問題に対しましての総括的なお話を先般伺ったのでありますが、昨日の公聴会等におきましてもいろいろと意見があったようでございますから、あらためて二、三の点を指摘いたしまして見解をただしたいと思います。 今回の基本法案、自民党を中心としたいわゆる政府案と、日本社会党案及び民主社会党案の比較をいたしましても、他の部門においては、表現の違いこそあれそう大きな違いは見出し得ないのでありますが、構造問題については非常に大きく変化があるわけであります。政府案におきましては、特に自立経営農家というものを中心といたしまして、それが中心であるが、しかし、農業の近代化、農業の経営の合理化が進むに伴って、当然協業化は今後もますます盛んになるであろうし、そのことを大いに助長していこうという考え方が政府案の考え方のようでございます。社会党の案も、自立経営というものを否定はしていない。が、しかし、今後農業生産協同組合を中心とした一つの経営の方式にだんだんとこれを育てていく、やがては、土地の保有も、共同的保有というか、そうした協同組合等に持たせていくのだという考え方であり、また、新しい農地の造成も積極的にこれを行なって、三百万町歩という相当広大な開発を行なっていく、しかもこれは全額国の負担で行なっていく、これは、個人で分けてやるというよりは、むしろ、農業生産協同組合、それに共同的保有というか、——まあ、その陰には、国が全部やってやるのでありますから、おそらく国有でございましょう。国のものにしておいてそれを農業生産協同組合が経営する、こういうような考え方がひそんでおるように見受けられるのでありますが、これは、一つの考え方として、日本の長い間自立経営という形でやって参った自作農主義というか、日本の農業の実態から見ると非常に現実に合わない点があるようです。きのうの公聴会に出てこられた方々の非常に進歩的であろうと思うような方たちさえも実はその点を非常に心配しておったわけであります。この答申案によりましても、自立経営の育成ということを特にうたっておるわけであります。「わが国の農業構造においては、家族経営が絶対的といってよいほどの比重を占めており、少なくとも十年ないし二十年前後の間に家族経営以外の経営形態が相当の比重を占めるというような事態は考え難い。」ということをはっきりうたっておる。私どもも、この答申案に出されたこの考え方というものは、ものの見方がきわめてすなおだと思う。これを無理に共同保有というようなことにまで持っていこうということは、一つの理想を盛り込んだ、社会主義社会を建設しようという一つの理想に近づけようとする意欲が法案の中に社会党の場合は動いておると思うのですが、さすがに、政府案においては、そういう点は十分慎重に考えられて、この答申をすなおに受けて、そうして、あくまでも自立経営が中心ではあるが、しかし、農業の近代化、合理化に伴って協業を促進しようということについては、これをできるだけ援助していこうというような考え方で、これは私は正しいと思う。 そこで、御参考までに私この際ちょっと申し上げてみたいと思いますが、共産主義の国、これは共産主義を理想としてまだ社会主義をやっておるのでございますが、たとえばソビエトにおける農村の実態はどうか。昨年、私は、はからずもソホーズやコルホーズを親しく見る機会がございました。いろいろと見て参ったのでありますが、概して言えば、ああした大規模の共同経営というか集団農業経営組織というものは、土地の生産性というものについてはむしろ非常に低いということを私は見受けて参りました。また、同時に、ああいう広大な土地を持っておればああしたコルホーズやソホーズはできるけれども、しかし、日本のようなこういう地勢的に恵まれないところであっては、いかにそのことが理想であったとかりにいたしましても、とうてい実施のできないものだというふうなことを私は見て参ったのであります。考えさせられました一点を特に申し上げますと、ソ連では、ソホーズにおきましてもコルホーズにおきましても、最近においては、各農家というか、農民に、それぞれの家のうしろの方に、非常に少ない面積ではございますが、二アールあるいは三アール程度の土地を自己の専用地として、いわゆる家庭菜園というものを作らしておる、認めておるわけです。その家庭菜園の中で作られておる農作物あるいはくだものというようなものを見てみますと、実は非常にできがよろしい。驚くほどりっぱなものができておるのであります。そして、だれからも入ってこられないように、こんなに厳重にさくを結う必要があろうかと思うほど、その狭い自家菜園については一歩も敵を寄せつけないくらいの厳重なさくを実はやっております。その中は非常によく耕やしており、草なんかもきれいにむしり取ってしまっておりますし、また、くだものなんかもりっぱに剪定までしておる。肥料もやっておる。非常にりっぱな実がなっておる。ところが、そこを一歩出てコルホーズの農場へ入ってみますと、驚くなかれ、これは非常に粗放な経営、たまたまちょうど夏でございまして、リンゴの出回り時期でございますが、コルホーズにおいてはリンゴの枝を剪定しておる事実を私はちっとも見なかった。驚くべきものであります。リンゴは植えっぱなし、伸びっぱなしであります。全然薬剤の散布もしておりませんし、実に小さな実がなっている。それが市場に出ている。ところが、コルホーズに付属した各農民の自家菜園のリンゴなんかは非常にりっぱなものができております。自分のとったものは自分の所得になるわけでありますが、農家の方は、お休みの日などには、朝早くから、自分の家でとれたリンゴあるいはトマトあるいは卵などを持って町のバザールに行って売っている。バザールで自由販売してくれる品物は非常にりっぱなものであるということを市民もよく知っておりまして、少々高くてもそこで買うのであります。朝早く七時ごろ行きましても、みんな売り切れてしまう。そういうことで、バザールに持ち込む品物というのは、各農民が丹精して狭いところを耕して作ったものですが、非常に質がいいことを市民は知っております。高いけれども、みな買っていく。そうして、その得た自分の所得をもって、子供のものを買うとか、自分の好みのものを買って帰る。こういうのがソ連の農村における現実であります。私は、四十年以上の長い歴史にわたってソ連が集団農業というものを建設してこられたことに対して決してけちをつけようなんて思って行ったのではありません。むしろすなおな気持で見に行ったのですが、その中で、はからずも、ソ連のソホーズやコルホーズの実態と、そこに住む農民の気持、また現に営まれている家庭菜園の実態を見て、実は考えさせられるものが非常に多かったという事実を申し上げるのであります。 従いまして、これは、農民が自分の住む周辺の土地に愛着を持ち、これをほんとうに耕していく、また、肥培管理をよくするということによって、やはり生産性が高まり、単位当たりの生産を上げることができるというふうに考えておりますが、これが機械的に何時から何時までの勤務という形でいきますと、その農業に対する愛着、愛情というものはやはりわいてこない。ましてや、きまりきった所得だけでノルマだけ果たせばいいのだというようなことでは、ほんとうの労働の意欲は十分にわいてこないのではないかというふうに感じまして、そういう点から、現在ソ連が長い歴史の試練を受けながらあのコルホーズやソホーズが必ずしも成功してない。実は、ことしの一月二十七日でしたか、ソ連における中央委員会では非常な大論議がありまして、フルシチョフ首相は農業大臣初め各幹部を非常にしかったそうであります。一体、今までの農業の報告というものは非常に間違いが多い、なぜこういうでたらめなことを言うのだ、こう言ってしかった。ソ連のコルホーズやソホーズにおける今後の農業政策というものは、今までと非常に違った新しい一つの考え方でいくべきだということを非常に強く指摘しておる事実もございます。しかし、そうかといって、今のあの集団的な農業方式を急に改めるわけにはいかない。しかし、農民が求めているああした事実を無視してやり得ないところに、ソビエトが共産主義を目ざして社会主義をやっておりますが、非常に悩んでおる一点がそこにあるわけでございます。 それこれ考えてみますと、どうも、日本の国の農業というものの実態は、私は、土地の自然的・社会的・経済的ないろんな諸条件というものをできるだけ補正いたしまして、国が手厚い保護を加え、そして、国の全体としての価格政策なり、あるいはまた農民に対する流通対策だとか、あるいは農民に対するいろんな手厚い政策、いわゆる第二条に盛っておるような国の施策を十分にやるならば、まだまだ生産性は伸びる可能性があるということをこの間申し上げたのでありますが、この点について、世間で今自民党の案、いわゆる政府案を批判するのを見ますと、どうも自立経営だけかのごとくにその点に対して執着し過ぎているように思う。私どもは、先日の質問でも、決してそのようなはずはない、今後、農業の発展に即応して、あくまでも、協業組織というか、言葉をかえて言えば共同化というふうなこともますますこれはふえていくことになるであろうし、また、それを押えるようなことがあってはならぬ、むしろ保護助成を加えていかなければならぬが、しかし、農民の気持というものをあまりに拘束するような共同保有などということを持ち出すことはどうも心配があるというふうに考えておるのでありますが、その点に対する大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
○周東国務大臣 御指摘のように、農業というものが、日本及び各国の例に見ましても、家族経営を中心として行なっておる、そして土地の私有を認めて家族経営を中心としてやっておるということはお話の通りであります。そのことは、今お話しのように、土地に対する愛着、その土地からあがるものに対する非常な所有の熱望というようなことが現われて農業に対する熱が入るということが出ておると思います。御指摘のように、答申もまた、現在の日本の農業の実態から見て家族経営というものを中心にして考えていくべきだということで、私どもも、その趣旨は当然なものとして、農業基本法に、農業構造としては家族経営を中心とする、こういうことを言ったわけであります。私は、その意味において、今ソ連等におけるコルホーズ等の問題を御指摘になりましたが、この点は、立場を最も異にしております私どもとしては、あくまでも家族経営でいいと思っております。ただ、社会党の方におきましては、土地は耕作者に所有を認めるとたびたびお話がございましたが、それはそうかもしれません。しかし、第九条の意図するところは、原則として所有を認めるけれども、土地は漸次指導によって共同化させる方向に持っていくと書いてあるところにいろいろ疑点をはさむ点であると思います。私どもは、家族経営を中心といたしまして土地の所有を認めていくけれども、しかし、その家族経営をさらに発展せしめるために、農業を近代化し、技術を高度化し、また機械化するというような場面において、それらの施設その他を共同に持って、共同に農業を営んでいくということに関しては、従来から自民党はこれを指導し、これを奨励しているわけであります。こういう点ははっきり理解しなければならない点だと思う。私どもは、そういう共同の点と、土地を第三法人に出してそれに対する権利を共同保有するという立場になる面におきましては、農業者各自の意思に従って、それをやろうとする者に対してこれを認めていくという点。そういう意味において、農地法の改正等におきましては、家族経営におきましても規模の拡大というような面におきまして土地の獲得を容易ならしめ、また、土地を放して他の方面に出ていこうとする者に対する土地の移動を容易ならしめるということが農地法の改正その他に関連してくるものでありまして、決してこれは家族経営を中心とする行き方に対して矛盾するものでもなければ、規模の拡大ということに関連して必要な措置であるのであります。
○坂田委員長 静粛に願います。
○野原(正)委員 大臣の御見解でだんだん明らかになって参ったわけですが、私はいささか日本の国内の事情と異にしておる国の事情の一端を述べたのでありますが、率直に言えば、その国の農業の発展なり生産性を高める手段というものは、それぞれの国の持っておる条件というものを無視しては画一的なことはあり得ないということを言いたかったのであります。つまり、日本のような九州から北海道までの非常に長いいわゆる日本列島、そこにたくさんの島もございます。そういうような土地の事情の非常に違っておるところに、しかも何百という川が流れており、いわゆる機械化に適するような耕やすべき広大な土地というものはまことに狭い。しかもその狭いながらもそこに多数の人口が住んでおる。従って、そこに住む農民は、何とかしてそこで自立経営をしようということで、耕やしてついに山天に上るというような、ああいう田ごとの月を見るような土地、驚くべき高いところに田を作らしたというような事実もございます。従って、その意味から言うと、日本の土地の利用というものはまだ残っており、多少は生産を発展させる要素、余地が残っておりますけれども、しかし、現実には土地の利用というものはもう極限まで達したのではないかと思うほど実は余地がないのです。しかし、それかといって、現状でいいかと言えば、そういうわけにいかない。従って、われわれは、今後、治山治水の観点や、あるいは森林資源の培養維持というようなことも考えながら、また、水資源を今後の日本の産業経済の発展の上に十分確保するために水源林を涵養するというような施策もやりながら、しかも、現在において土地の利用が高度化されていない、土地の利用、管理の方式がまだ科学的でない非常に十分でないというふうなものについては、これは開発できるものは草地としても開発するし、あるいは開拓もして、畑にもする田にもするという考え方でいかなければならぬと思う。また、山林地帯等については、大いに造林をし、肥培を行なう。林業といえばもう自然の天然の力にだけたよってきたというような過去の略奪的な原始的な林業というものを改めて、いわゆる林業の近代化を行なうということも、これは農業基本法とはおのずから別な問題のようでありますが、実は不離一体だと私は思う。また、同時に、山だから農業的に利用できないというような考え方も間違いであります。つまり、山の斜面をもっと徹底的に開発するならば、それが、一面においては、林地であれ、あるいは牛馬を放牧させ太らせていくために、りっぱに農業的に利用できるでしょう。あるいはまた、それを牧野として、あるいは草地として利用するというふうなことも可能であります。従ってまた、林業においても、従来三十年、五十年かかっておったような林業政策を改めて、精英な生長の早い樹種をどんどん植えていくことにより、あるいは肥料をやる、灌漑をも行なうというふうなことによって、最近においては早期短伐期林、栽培林業というような方向が打ち出されておる。そうなるというと、林業も農業も境目がはっきりしません。むしろそれでいいと思う。つまり、土地の利用の高度化というものはそうであってほしい。また、木材を生産するのみならず、飼肥料木として家畜の飼料にもこれを当てるということも考え得るわけであります。いろいろな面で今後日本の農業というものは非常な速度で近代化が行なわれていく、土地の利用の高度化が行なわれていく、そこにまた当然開発も行なわれていくということでなければならぬと思う。そういうことに対して、この政府案は、第二条を初めあらゆる面で明確に、そのことを一々はっきりと文章の上には表現しておりませんが、この中で出ておることを通観しますと、遺憾なくその点が説明されておる。また、それをそう読まないということは、むしろこれはためにするもので、この解釈を非常に局部的に見ればいろいろな言い方もありましょうけれども、この全体を通じて見ると、私どもはきわめて明確だと思う。 そこで、今後の国の政策について、私どもは、あらゆる点から構造改善のための諸施策というものを積極的に進めてもらいたい。自立経営がいいとか協業がいいとかということは、これはあまりにもこだわった意見であって、そういう一つの観念にとらわれることなく、むしろ、構造改善を積極的にやっていくということは、要するに、日本の農業があまりに零細であり、耕すべき耕地が狭過ぎる、また、狭いところにあまりにもたくさんの農業人口が寄り過ぎているというところにあるのでございますから、それをすなおに受けて立つならば、一方においては開発できるものがあれば大いに開発をするし、また、生産性を高める手段も残されておるならば、畑地については畑地灌漑をやるとか、あるいは、もっとこまかく言うならば、土壌線虫を防除するとか、あるいは酸性土壌を緩和するための措置をとるとか、その他さまざまありましょう。湿田単作地帯に対しては二毛作田に切りかえていくための対策をやるとか、あるいはまた、積寒地帯については、これをもっと生産性の高いものとしていくように肥培管理その他にいろいろな努力を払う。これは、実は、よく考えてみれば、わが国の農業政策の中には、もうすでに、そういったあらゆる問題の要求を、積極的にやるならば満たし得るだけの準備があり、法律などもすでにあるわけであります。 〔委員長退席、秋山委員長代理着席〕 急傾斜地帯に対しては、急価斜地帯の農業の振興をやるためにはこういう方法でやろうというようなことがある。あるいは離島については離島振興のための対策もすでに用意されてあるわけであります。ただ、いろいろな特殊立法などがあるが、いろいろと各方面から不満があるゆえんは、そういう特殊立法があるにかかわらず、それに対する十分な財政的な裏づけがなかった。遺憾ながら、いろいろなりっぱな法律が用意されており、やろうと思えばできるはずにかかわらず、思うようにできないところに不満があった。たとえば、日本は海岸線が非常に長い。海岸地帯にはいわゆる海岸砂地がございます。だまってほうっておげば、その海岸の砂は付近の農村、田畑を荒らします。これをうまく安定させて、海岸の保全のための植林を行なう、また、一方においてはその地帯に対する客土を行なう、灌漑排水を行なうというようなことにしますと、それがりっぱな生産性を高めて、非常に豊かな農村地帯が建設できることは、すでに大臣は至るところの海岸地帯においてその事実を見ておると思う。海岸砂地地帯農業振興臨時措置法というものもございます。ところが、そういうものがいろいろあるにかかわらず、遺憾ながら、今までどうも非常にばらばらなふうに見られておったところに、実はわが国の農業政策というものが何となく一本くぎが足りないと思われておった。 そこで、それらを考えてみるというと、どうも、この農業基本法というのは、今までとかくまだ未完成だったようなものに、一本大黒柱を打ち立てて、そうして今までの個々のものを全部そこに大きく集めて、最後の仕上げだというふうにも考えます。また、その大きな柱を立てると同時に、今まであったものがどうもちぐはぐで十分でないとするならば、今度は、思い切って、今までの特殊立法とか各種の振興法のようなものもこの際一つ集大成をするとかあるいは改めて、もっと一つ勇敢にこれをりっぱなものに作り上げるとかというような措置が必要であろうと思うのであります。 話がちょっと脱線しましたが、この農業基本法を制定するということの中に、第二条において国の施策というものがたくさん並べてあります。私は、この施策については、農業基本法はもちろん通過しますが、これと関連のあるさまざまな法律というものを整備いたしまして、少なくともこの国会で、全部ということはできないとしても、今からでもおそくはないから、この国会で用意のできものは当然この国会で通過させると同時に、準備がまだ十分でないものも、本年はもうあらゆる総力を結集して、この基本法の精神を受けた国の必要な施策については全部これの立法措置を講ずるというぐらいな意気込みでいかなければならぬと思うのでありますが、大臣のそれに対する御所見を伺いたいと思います。
○周東国務大臣 野原さんがいろいろ御指摘になった点は同感であります。私どもも、農業基本法というものを制定し、前と違って、全体の農業の発展のために必要なる農業内部における施策というものはかくあるべきものであるということ、また、農業外における、あるいは交通、あるいは労働、あるいは取引、各般にわたっての農業外における施策を打ち立てることによって総合的に農業の発展を期し得られるというような事柄を、この法律の二条以下に総合的にはっきりと打ち出したわけであります。従って、この法案が制定を見ました暁におきましては、来年と言わず、私は、直ちに、三十七年度において実行されるべきこの法案に書いてある施策の内容として当然関連的に行なわなければならぬ実行的な法案というものに対して準備し、制度について着手するつもりであります。 往々にして、どうも政府案ははっきりしないということの御指摘があるやに聞きます。たとえば、今御指摘の中にありましたように、農業の基盤の整備、開発ということに関してはっきりしないじゃないかというお尋ねのようでありますが、しかし、私は、むしろ従来以上にはっきりしていると思う。というのは、私は、この法案を各別々に見ないで、二条において農業の基盤整備、開発と書いてあり、しこうして、その整備される基盤、開発される土地というものはどれだけでいいかということは、第八条で、将来にわたって長期の重要農産物に関する需要及び生産の見通しを立てて、それに向かって土地の整備をすることになり、従って、八条一項に書いてあるその見通しを受けて、九条においては、その見通しの上に立って農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大あるいは農業の生産性の向上をはかるために農業生産の基盤の整備、開発をやらなければならぬということを書いてある。この点はすなおに見ていただきたい。私は、二条あるいは八条、九条というものは、堅実なる調査の上に立って、必要に応じて、お話しのように、あるいは畑地の開墾、牧野の開発をはかっていく、しこうして、そういう場合に即しまして、国有林野の払い下げとか使用権設定ということは当然やっていく覚悟であります。たまたま、社会党の皆さんの方では非常に御親切な書き方でございますが、社会党案の何条かに国有林野の問題が書いてございます。しかし、これを書いただけでは問題にならぬのでございまして、書いてあることは、それに沿うて、いかなる手段方法によって国有林野の払い下げの基準をきめるべきかということは、当然法律が要ることは社会党の賢明な諸君は御存じになっております。この点、これを書いただけでは中途半端で、社会党の諸君は、農業基本法の中には一部実行できるものとちゃんぽんに入っておるということで、そういう点において社会党案でははっきりしておるかのごとくでありましたが、むしろ、政府案は、二条、八条、九条その他の運用によりまして、当然次の段階としてはこれらに対する処置を明確にする覚悟でございます。
○野原(正)委員 政府から提案されました基本法の第二十二条には、「国は、農業構造の改善に係る施策を講ずるにあたっては、農業を営む者があわせて営む林業につき必要な考慮を払うようにする」ということがございます。どういうような考慮を払うのか、これは御検討中であろうかと思いますが、日本の農業政策を今後発展させるのに一番緊密な関係にあり、また、それを無視しては日本の農業は成り立たないとさえ考えられるものは林業でございます。日本の国土の六七%からのものがいわゆる林野の面積でございます。従いまして、林野をいかにして農業の発展に役立たしむるかということが真に解明されるならば、それだけでも日本の農業というものは大きく飛躍をすると考えておるのでありまして、私どもは、その点で、今までの日本の林業政策は農業というものを十分に考えなければならないと思うのでありまして、今後の林業政策については、この農業基本法を受けていろいろと正しい林業政策というものが確立されるであろうことを強く期待してやまないところであります。ただ、考えなければならない点は、日本の国土は非常に急峻な地勢であるということと。そして、非常に降雨量が多い。しかも台風の常襲地帯である。台風によって南方から膨大な水資源を日本に運んできておる。これが一度に何百ミリというような降り方をいたしますために、河川はそれを十分に受け入れがたいので、そのために非常な被害が起こっております。今後水資源を十分に利用開発する、また、災害を未然に防止するための積極的な措置を政府はこれから講じなければならないと思うのでありますが、やはり、何と申しましても、国土の保全、国土の荒廃を未然に防ぐための一番大事なことは、林業の経営、山林について適切なる管理・経営を行なって、森林の保続培養に努めること、水源の涵養に努めることが一番大事であると同時に、崩壊の危険のあるところその他については思い切った治山治水のための工事を行なう必要があるわけであります。治山事業について十カ年計画で治山特別会計が設けられるというふうなことは大へんけっこうでございます。従来に比べれば一段と飛躍をしたわけでございますが、しかし、まだまだ不十分であると思うのであります。そういう点で、大事な水資源を国が求めており、日本の産業経済の大きな発展を今後考えるならば、水資源を積極的に開発する。もししなかったならば、これ以上の産業の発展はその面から非常に困難なことになるであろうというふうに言われておるのでありますが、従来一口に治山治水と言われ、水源林の涵養などと言われておりながら、実は山に対してはあまりに略奪的なことをやり過ぎたのではないか。たとえば開拓などにいたしましてもその傾向が多分にあったのでありまして、大事な山をまる裸にしてしまって耕地を作るというようなことをやりますと、かえって山が荒れてしまい、大事な表土が押し流されてしまって、そのために開拓そのものもうまくいかない。わが国の国土全体が戦後しばしば大きな災害に見舞われたことは、取り返しのつかないほど大きな損害であった。そういう災害の原因をも引き起こしたというような事実を考えてみますならば、いわゆる山林原野を農業的に大いに利用することはけっこうでありますし、また、そうしなければなりませんが、それとあわせて林業の近代化、林業の経営の合理化ということを積極的に進めなかったならば、そこにまた非常に問題が起こって参りますという点を指摘しておきたいと思います。この林業の経営の合理化ということは、言葉をかえれば林業経営の集約化ということであります。 日本の林業の中で経営が比較的うまくいっておりますのは国有林であります。ところが、国有林におきましても、経営の面積は一営林署当たりたしか一万四、五千ヘクタール、あるいはそれ以上になっておるかと思いますが、相当の面積になっております。一担当区についても二千ヘクタール、三千ヘクタールという膨大な面積を管理しておる担当区が少なくない。私は、先年西ドイツやフランスの国有林野の一部を見る機会がありまして、十年ほど前に行って参りましたが、非常に集約的な経営をしておる。一営林署の単位面積がわずかに千ヘクタール程度である。非常にりっぱな管理をしておったのを見て参りまして、うらやましく思っておったのであります。また、先日たまたまある民間の林業家が経営しておる山林を見て参りました。これは五百四、五十ヘクタールの民間の山林でございますが、なかなか合理的な経営が行なわれておりまして、その狭い面積のところに三十六家族かの人が入っておりまして、造林から伐採から林道から一切がっさいをやっているわけでございます。おそらく今後これを五十家族くらいにふやしても十分に近代的な生活ができるようになると言って自慢をしておりましたのを見てうらやましく感じたわけでございますが、それこれ考えてみますと、日本の林業の中で比較的進んでおる国有林の経営等についてもまだまだきわめて粗放である、近代化という点から見ると近代化には大へんほど遠いような管理・経営の実態であるように考えておりまして、むしろ経営の規模をもっと集約的に行なう必要があると思う。私は、いたずらに人間をやたらふやせというのではありません。しかし、その管理・経営によって山が十分活用され、生産が上がって、そこに多数の人が生活でき、豊かに山村が発展できるならば、これはやはり人が多いほどいいわけでありまして、その人口を収容し、ちゃんとやっていくだけの余地が非常に多い。そういう点は、農業基本法と並んで今後林業政策があらためて検討される段階のときにまたいろいろと検討してみたいと思いますが、大臣も林業問題については非常な関心を持っておられ、経験もお持ちでございますから、この際、わが国の林業政策についての、特に農業に関連のある事柄についての御抱負をお聞かせいただいたならば幸いだと思います。お漏らしを願いたいと思います。
○周東国務大臣 野原さんが豊富な経験でお述べになりましたことは傾聴に値するものと思います。御案内のように、日本は、大きな山持ちと農村とを見たときに、これらは別々の経営ということに考えられますが、多くの場合農業を営みつつ林業をやっておるという地方もかなり多い。そういう地方におきましては、当然、農業経営に関連してその人の持つ林業というものを育てていって、ともに所得の増加をはかるということが一つの方法だと思います。それにしてはあまりにも小さ過ぎる山というものを持っただけでは経営的に非常に損だということも御指摘の通りであります。そういう面におきましては、ある程度、農業というものを育てる一面におきまして、国有林、部落有林等を譲ったり、あるいは使用権の設定をするというようなことをなしつつ、農・林一体としての経営をよりよくしていくということを考えていく必要があろうと思います。 同時に、ただいまお話しのように、私は、日本の林業経営というもの及びその指導というものは非常に集約的になってないことは御指摘の通りだと思います。御指摘の中に、国有林すらというお話がございました。今まで、国有林経営につきましても、大きな、膨大な山をそれこそいわゆる親方日の丸の形で国で経営しておりますので、積極的にそれを合理化し近代化していくということについて考えが抜けておったんじゃないかということですが、それでも山からある程度の収益を得ておったということで、これを考えますときに、もしこれが私有林経営であったらずいぶん困難な経営になったんじゃなかろうかと思う。今後におきましては、私は、それらの事態を直視して、国有林につきましても近代化、合理化をしなければならぬし、同時に、民有林はなおさらのこと、切ったままに放擲されているという事態は、これは資金の寝る林業経営というものの実態からかくあるのでありますから、ことさらにこれに対して合理化させて、山を緑化していく。それについては、御指摘のように、営林署等の担当面積が非常に多過ぎて手が入らぬというようなこともあると思います。ことに、私は考えますのに、林業というものは、成長度合いを日本の需要に応じてもっと早めるという問題から、原始林といいますか、天然更新をやっておる山の雑木林、これを樹種転換をして栽培林に持っていこう、こういう計画で進んでおります。そのことを進めれば進めるほど、これが指導なり担当する営林署の担当区域というものが広過ぎては十分な世話ができない、こういう点に野原さんの御指摘の点があったと思います。そういう点は、やがて次の森林法の改正並びに森林組合法等の改正ということで、答申に基づいて十分慎重に考え、積極的にやっていく必要があると私は考えております。
○野原(正)委員 大臣が、今後森林法あるいは国有林野法の改正、あるいは国有林の管理・経営についての近代化について十分な御熱意のあることがわかりまして、まことに安心をいたしたわけであります。私は、特にこの問題を、国有林の管理・経営の問題と地元の農村あるいは漁村の生活が非常に不可分の関係にあることを身をもって体験をしてきたものでありますから、特にその感を深くするのでありますが、一つの実例をあげて見たいと思います。青森県に下北半島というところがありますが、そこに脇野沢という漁村がございます。ここは以前は非常に魚のとれるところでありまして、私のかつておりました当時は日本一のタラの漁場でありました。ところが、それが今日では、潮流の変化や、あるいはまた、その地帯に魚が回ってくる以前に、いわゆる漁獲方法の近代化によって、その地帯に魚が回ってくるまでにみなとられてしまう、そのために陸奥湾内において産卵をすべくやって参りますタラというものは途中で全部とられてしまう、今日では幾ら網をおろしましても、ほとんどその影も形も見ることができないというような事態に相なって、非常な窮乏に悩んでいるのが今のその村でございます。私は、学校を出ましてすぐにその土地に在勤しましたとき、命によりましてそこに部分林というものを設定するということをいたしました。ずいぶん古いことでございますが、大正十五年から昭和二年にかけましてそこで各部落ごとに部分林というものを設けた。私も、実は、若いころでありましたから、そういう部分林を作るなどということが今日かくのごとくなるということは夢にも思っていなかった。ところが、これは命によってやったのでありますが、とにかく、各地に国有林と部落との契約によりまして部分林を設定いたしました。各部落にいわゆる部分林の設定区というものを設け、そうして分収契約によって二官八民で部分林を作ったのであります。当時国有林は天然更新汎行という言葉が大いにはやりまして、一年生造林に切りかえるという時代でありました。妙なことでありまして、三年生の苗木を国有林ではどんどん燃やしてしまいまして、一年生の方がいいというような、いわゆる林業革新が、実は今にして思うと非常に誤ったことでありますが、そういうことが行なわれた。その当時、実は、余った苗木を、各部落に、燃やすよりはいいのですから、それをただで差し上げた。その苗木で造林してもらったのでありますが、今日ちょうどそれが三十五年生に相なりました。私の年がわかりますが……。(笑声)そこで、実は私数年前にその地方を旅行いたしましたら、部落の連中が総出で歓迎してくれ、感謝会をやってくれた。驚いたことには、部分林に入っていた村の方たちが毎年間伐だけでも三万、五万という収入を得ているということであります。 〔秋山委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことで、実は大へん結果としていいことをしたというような感じがしまして、国有林を開放して部分林を作るというようなことが、いかに漁村の生活に苦んでいるような人を救えるかということを実例をもって体験をしている。私のような者が、若いときに命令によってやったことながら、今日非常に喜ばれている。こういうような事実がございます。 でございますから、これは三年、五年の後では効果があがりません。三十年、四十年といえば大へん長い先のようでございますが、私が若いときにやった部分林が今日りっぱにそれだけの成果をあげている。私はこれからまだ五十年くらい生きるつもりでございますが、(笑声)そう考えてみると、国有林の管理・経営というものを適切にやるならば農村の振興発展に非常に役立つということを考えまして、この点は特に大臣が勇気と英断を持って国有林の管理・経営に一段と御健闘願いたい、そのことを指摘いたしまして、総理も参りましたから、私の質問はこの程度で終わりたいと思います。(拍手)
○周東国務大臣 ただいまもお答えいたしましたように、私は、森林法の改正というものを直ちに研究を命じておりますので、ただいまのように、必要な個所はまた払い下げというようなことをやって部落をにぎわしつつ、しかもそれに対する植林は徹底的に行なわしめるというのと両々相待ってものを考えていきたい、かように考えております。
○坂田委員長 次は、片島港君。
○片島委員 先日の質問途中で保留いたしましたので、引き続きまして若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。 政府の提案、また法案の基礎となっておる所得倍増計画なりあるいは基本問題調査会の答申などによって拝見いたしましても、まあそれ以外に私たちにはわからぬわけでありますから、そういう資料や、また、今日までの予算委員会なり農林委員会の質疑応答で明らかになっておるところからしましても、大体、自立経営農家というのは、二町五反以上、少なくとも二町歩程度以上で、これは目標としては百万戸ぐらい造成したいということでありますが、また、それらの資料に基づいて見ましても、周東農林大臣が幾ら強弁されましても、新しき土地の開発・造成というのは、われわれの今日までの資料では見当たらぬのであります。そういたしますと、現在、いろいろな資料から調べますと、現在の六百万農家のうち、二町以上というのは四十五万から五十万ぐらいが現存をしておるのでございます。二町以上とした場合に大体そのくらいになる。そういたしますと、あとの一町ぐらいの農家がさらに一町を手に入れるということになれば、反当たり二十万といたしまして二百万円ぐらいの資金が要るわけであります。そういうふうにして、またいろいろの数字で計算をいたしてみますと、現在の六百万町歩の農地のうち百五十万町歩ぐらいが移動しなければ、これは百万戸というものの造成ができない。百五十万町歩といいますと、反当たり二十万円として計算いたしました場合、総理は非常に数字に詳しい方でありますが、三兆円という資金が要るわけであります。現在でも農地の移動は大体年間九万町歩、まあこれは農地をつぶすのがありますから、つぶさないで農地だけで移動しましたものは約五万町歩。五万町歩というと、反当り二十万円として一千億円の金が動いておるわけでありますが、そういうふうにして現在の農地がただ移動する。移動したから、持ち主がかわったからといって、直ちに生産性が上がるわけでもなければ、所得が上がるわけでもない。——同じ農地でありますから。そういたしますと、経済合理性から言いましても、三兆円という、——三兆円がもっと少なくてもかまいません。二兆円でも一兆円でもよろしゅうございますが、ただ農地が甲から乙の所有に移動して自立経営農家を造成するだけで、それによって直ちに生産性が上がるわけでもなし、ただ経営規模が大きくなる。それで莫大なる資金が要る。政府の自創資金というのは今年の計画では約百億円でありますから、これは十年間続けてみたところで一千億円でありますから問題になりません。そうすると、相当金利の高いこういう莫大なる資金が動くのでありますが、ところが、公述人のいろいろな意見を聞いてみました。そうすると、現在の農家は一回負債整理をやってもらって、借金整理をしてもらってからならばいいけれども、その担保力あるいは返済能力、こういうものからした場合に、なかなか新しく金を借りるということが担保力の面なり返済能力の面でできない、こういうことを繰り返し聞いておるのでありますが、こういういわゆる農地の移動のための資金というものについて、一体総理は、こういう法案を出す以上は、どういうふうにお考えになっておられるのでありましょうか。
○池田(勇)国務大臣 農地の移動に伴いまする資金につきましては、これは、買う人の自己資金というものもございましょうし、また、助成方法として政府としてその事態に応じて適当な処置をとる覚悟でおるのでございます。
○片島委員 現在、農協の方に金を預金はするが、実際それが還元して農地の造成などに使われておる面が少ない。また、公述人の中にも、実は、農地の造成よりは、さらにこれをほかの方に投資した方がいいので、自分の持っておる金でさえそういうことに使わないで証券なりあるいはその他の方に投資をする傾向が出てきておるということを言われておるのであります。そういたしますと、これは莫大な金で、農家自体でこういう膨大なる——少々の金ではありません。兆とつくくらいな資金といろものを、それは何とか考えるという程度では、なかなか問題は解決しないと思うのですが、いかがですか。
○池田(勇)国務大臣 こういう相当長期にわたりまする農地の大移動につきまして、今ここでこうやるのだということはなかなかできにくいことなのでございます。ただ、問題は、農業自体が非常によくなってくるということになれば、農民の方々も過去の蓄積、また将来の見通しをもちましまして取得するようになるでありましょう。政府といたしましては、信託制度とか、あるいは自作農のあれをもっと拡大するとか、いろいろな方法をとって農民の期待に沿う考えでございます。今の一兆円、二兆円、三兆円、この金を今積んでおかなければならないことはないのでございます。実態に沿いまして、農業の近代化につきましての財政的措置は、法案にも書いておりますように、思い切った法的、財政的の措置をとる、こう言っておる。そうして、その状況を見ながら、毎年これを国会に報告いたしまして、そうして適時適切な処置をとろうというのがわれわれの考えでございます。
○片島委員 ところで、この土地の移動に伴う資金というのは、先ほどからも申し上げましたように、これから何かの企業、商売をやるその資本、資金ということならばこれはわかるのでありますが、しかし、先ほどから言いましたように、甲から乙に移動しても実際は生産性は上がらない。それだけの元をかけたからといって、総生産には関係のない内輪だけの移動であります。そのたびに一兆でも二兆でも三兆でも出す、——何兆でもよろしゅうございますが、そういう総理のおっしゃったようなことでは、私たちはどうも納得がいかないのであります。と申しますのは、一反歩かりに二十万といたしますと、これを年間七分五厘の利息でかりに借りたといたしますならば、一年間の利息が一万五千円であります。反当たり三石とれたといたしますと、一反歩を取得したために一石当たりの利子を五千円払わなければならぬ。三石を生産するために二十万円投資した、それが一万五千円の利息で、三石取れれば石当たり五千円の利息になる。ただで政府が貸してくれるならいいのでありますが、政府の自創資金などによってこういう期待は、今年度の予算から見ましても、また予算総ワクから見ましても、とうていできることでないから、何らかの方法で金を借りるかどうかして融資してもらって買うということになると、石当たり五千円の利息を払わなければならぬ。一方、米価は、総理は在任中は直接統制は撤廃しないと言明されましたから、総理在任中は撤廃せぬでありましょうが、しかし、米価をきめる場合に、こういうふうにしてせっかく構造改善をやって自立農家を政府の目標に向かって造成をした以上は、米価決定にあたって石当たり五千円の利息を付加して決定をしてくれる、こういうことになれば、無理をしてでも、反当たり二十万という投資をすると思うのでありますが、そうでなければ、一万円米価では、五千円の利息を払うと、五千円しか残らぬのであります。せっかく経営規模をふやしても、米価として五千円しか残らぬ。行当たり一万円のが、新しい分は五千円しか残らぬ。それによって、所得がかりに倍増はしなくても何割かでも他産業についていける、一町歩のものが二町歩になって、その一町歩というものに膨大なる五万円という利息を払ってついていける、他産業との均衡がとれるとお考えになりましょうか。
○池田(勇)国務大臣 農地を買って経営する場合に、現在の状態で七分五厘の利子ということにも問題があると思います。また、それが、今までの非能率的な耕作法でもっていくか、もっと近代的なもので収益力を上げていくか、いろいろな問題があります。一反二十方円というのが永久に続くわけではございますまい。これはやはり経済の原則によっていくでございましょうけれども、(片島委員「もっと上がる」と呼ぶ)もっと上がるという意味で採算が合わぬなら、それはお買いにならぬでしょう。私は採算が合うような値が出てくるのじゃないかと思います。 それから、金の問題でも、かりに一反二十万円でお話のように買った、その金はどこへ行くかということになってくれば、それが郵便貯金になり、またほかの方へ行くようになって、金融が相当だぶついてくる、こういうふうになってくるのでございますから、自由経済の原則というものは、ここで一つの現象をとらえられて、これでどうだ、あれでどうだというわけにはいかない。これは過去の経験でもわかりますように、やはり、自然の流れによってそこにいい道が見出されるということが自由主義経済のうまみであるのでございます。
○片島委員 七分五厘がかりに五分でもそれはよろしゅうございましょう。しかし、農地の価格が、現在でも相当農地がつぶれておりますが、そう下がる、他産業の成長につれて農地の価格が下がる、こういうことは、私たちはこれはどんなに考えてみても下がるだろうということは考えない。それに、今私が申し上げましたのは、五千円という利息が三千円でもよろしゅございます。一万円から三千円引いて石当たり七千円という米価にしかならぬ。今、総理は、さらに生産性が上がるような、そうしてまた、政府の言うような選択的な拡大生産、こういうことによって近代化をして、もっと所得が上がるように考える、こういうことでありますが、それをやろうと思えば、この一反歩二十万円のほかに、さらにまた投資をしなければならぬ。これを近代化をし、また資本装備をどうしてもここに相当集中しなければ農業の近代化もできない。生産性を上げ、また選択的に改造して生産を転換していくということにも、またそのほかに金がかかってくる。金を政府がただでめんどうを見るということなら、自立農家の経営を大きく、数多く造成することができるのでありますが、ただいまのような総理の御答弁では、私は、とうていこれは現在の農民としては踏み切れない。特に、価格政策について非常な不安を抱いておる現在の農民の立場から言ったならば、政府の目標としておる百万戸造成などというものは一朝の夢にすぎないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○池田(勇)国務大臣 私は、この画期的な考え方の農業基本法を成立した後に、あわせまして、今お話しのような農地取得の場合、またそれを近代化するための資本等々が要りますことを承知しておりますから、法制的に、また財政的にあらゆる手段を講じていこうというのでございます。だから、法案が通りまして、具体的な措置はこの事情の変化に応じてうまい手を打っていくのが私は政治であろうと考えております。
○片島委員 今の総理の答弁では、私は、今不安と言わなくても動揺しておる農民に対して安心感を与えることができないのではないかと思います。さらにこの問題については機会をあらためてお尋ねをしたいと思いますが、本日は限られた時間でありますので、この前の質問の問題について、どうも私が納得がいかなかった点をあらためて質問をいたしたいと思います。 戦前から、日本は諸外国に対してソーシャル・ダンピングをやる、いわるゆ低賃金がささえとなってソーシャル・ダンピングをやると言われておったわけであります。そこで、総理は、この前、現在において低賃金というようなことはこれはもう考えられない、こういう話でありましたが、アメリカは別といたしましても、西欧諸国イギリスあたりが大体日本の賃金水準の四倍、西ドイツが三倍、またフランスあたりが日本の現在の二倍、こういうような状態である。その経済成長のささえとなっておるのは、やはり、アメリカあるいはほかでもそうですが、大体種類を少なく大量な生産を一つの企業がやるということです。日本の場合は、競争力が弱いし、非常な欠点とされるのは多種少量生産、これは手工業関係などもありますから自然とそういうことになるのでありましょうが、そういったものをもさらに克服して世界一というような注目すべき経済成長を示しておるということは、これはどうしてもやはり賃金水準を低く保っておるということがささえになっている。総理は、きのう財界に呼び出されて、あまり春闘相場が高いというので、何か新聞を見ると前田さんあたりがえらい文句を言っておったそうであるが、非常に低賃金がささえになっておる。しかも、低賃金の中においても、全体の国内の労働賃金というものを見ますと、労働界そのものの中にまた賃金に二重構造があることは総理御承知の通り。最近大企業と中小企業との賃金格差がやや縮まっては参りましたけれども、なおかつ西欧諸国に比べました場合には所得格差というものが労働界そのものの中においても相当見られる。そこで、農村の中学の新卒あたりでどういうところに出ておるかということを調べてみますと、臨時工あるいは社外工といったようなものが多い。私はこの半年くらいの間に三十何名の就職をいろいろ世話しましたが、大体、中学の新卒とか高校の新卒は、学校が推薦するから、私たちに頼まないでそれぞれの学校の成績なり何かによって就職するのですが、入って半年、一年、二年ぐらいおって、いつまでたっても昇進の見込みがない、あるいは非常に不安定である、どうか一生涯安心して働けるようなところに世話をしてくれぬかというので、一ぺんそういうところにほうり込まれた者が、これはどうにもならぬというのでまたほかに職を何とか見つけてくれというのが非常に多い。ですから、そういう労働市場において、農村から出ておる新卒といったような者の多くは労働界の底辺部におる。やはり賃金もピラミッド式になっておりまして、そういう者が都会に行って中小企業その他の社外工といった賃金の底辺部におる。農村では食えなくなった。農村の人口はだんだん滅っております。現に中学新卒が減っておりますが、こちらでは食えないのでだんだん減っていく。しょうがないから今度はまたこっちに行くということで、底辺部から底辺部に移動しておるのです。そういうことになると、農民は、この前は国民の苗しろだと言われましたが、やはり他産業の苗しろとなって、農村におっても踏み台にされ、せっかく都会に移動しても踏み台にされる。こういうことでは農村は非常なる不安と動揺を来たす。他産業の成長によって吸収すると言うけれども、非常な不安と動揺を防ぎ得ないと思うのですが、いかがお考えですか。
○池田(勇)国務大臣 日本の労働界の過去の因習その他が今後もそのまま続くとお考えになるのはいかがなものかと思います。今農民のことばかりをおっしゃいますが、中小企業の子弟だってそういうようになるのじゃございませんか。これはどこに原因があるかと言ったら、日本の労働界における賃金制度が年功加算制のあれになったり、あるいは最低賃金制が今まで行なわれなかったり、いろいろな労働界における過去の因習がもたらしておる結果であります。それを変えていかなければならぬというのが国民所得倍増の根本なんです。現に、最低賃金制の問題も、労働省が初め考えておった線よりもよほど急速な進歩をしつつあるのであります。そして、中高年の人の失業問題等々、労働界の今までのあり方というものが、所得倍増による産業改革によりましてよほど変わっていくということを考えなければいけないし、変わっていくように仕向けるべきでございます。今までの悪いところばかり言って、今度もまたこうだというような結論にはならないと思います。
○片島委員 非常に高度な経済成長の中において、中小企業あたりは現在でも非常に不安定な状態にある。ですから、そこに雇われてくる農村の子弟も非常に不安定な状態なんです。一朝景気の状態が変わってきて、経済界が非常に困ってくるというようなときに、一番先に整理されるのは、そういういわゆる中小企業なりに雇われておる主として農村から出た者が多いのです。そういうものを解決しないで、ただ、今成長しておるからということでは危険である。今農村の人口は減っております。いやがおうでもこの法案が通ればそれはますます促進されるでありましょう。しかしながら、そういう底辺部から底辺部に移動しておるというような非常な不安な状態、これを、今総理は、何とかこれからいい方に改善していくと言う。最低賃金制の問題をこの前石田委員が質問したときに、それとこれとは別だというような御答弁があったと私は思うのです。そういうものもあわせて、しかも非常に安定したところを保障をするというならば、これは私はあと問題はないと思う。そういう保障をしないでおいてそういうところに追い込むということになれば、農村には非常な動揺が出てきます。現在、過去五カ年間の人口の移動を調べてみますと、二十八年から三十四年でありますが、十五才から十九才で農業に就業する人口は、昭和二十八年に二百二十三万、三十四年が百三十六万と、八十七万、四〇%農業に就業する若い人たちが減っております。また、中学卒業で農業に就業する者が昭和二十八年には三四%おりましたが、三十四年には一七%と半減をしておるという状態で、だんだんと農村人口は老齢化しておりますが、こういう形で若い人たちばかりが出ていくのに、労働市場の条件が非常に不安定であり低賃金であるということでは、農村はいつまでたっても浮ばれない。子供たちが何とかいいところにいくならそれでよかろうと言っておったのが、出ていったのはますます苦しいようなところにばかり出ていく。こういう点の総合的な施策を考えないで、農業は他産業の成長によっておくれておるから今度そちらの方に少しでも持っていくのだ、持っていかれたところはまた労働市場におけるごみ捨て場みたいなところ、こういう状態が続いておったのでは、農村は踏んだりけったりの状態です。時間がありませんから、私はまたこの点については機会をあらためて詳しくお尋ねをしたいと思いますが、その点について総理はいかがお考えですか。
○池田(勇)国務大臣 ただいま申し上げた通りでございまして、農村におきましても、中学校、高等学校、あるいは工業高等学校をふやし、都会と同じような教育の均衡をはかる。農民の子供さんだから他の月給取りやあるいは中小企業の子供さんより悪くなる、こういう前提で言われることは、私は考えものだと思います。われわれは、万民同じような立場にしていこう、政治でそういうようにするように、国民とともに進もうということでございます。政府と国民と対立しているのじゃない。国民の力によってものができ上がるのでございまして、政府は国民の気持を聞きながらその道作りをしようとしておるのであります。私は、そういうわけでございますから、農民の子供さんだけ虐待する、こんな政治は一つもしたことはないし、そういうことがあってはいけない。農民も、中小企業も、月給取りも、労働者の子供さんも、みな同じでございます。しかるに、今の経済発展、あるいは構造改革によりまして、農村がえてしておくれがちであるからというので、他の業種と同じような立場にしていこうというのが農業基本法の制定の趣旨でございます。今お話しのようなことがありまするから、それを直そうとしておるこの法案であるのであります。
○坂田委員長 次は、稲富稜人君。
○稲富委員 時間の制約ありますので、要約いたしまして御質問申し上げたいと思います。 ただいま提案になっております農業基本法についてお尋ねするわけでございますが、この法案の具体的内容につきましてはいずれ関係閣僚に十分お尋ねいたしたいと思いますので、本日は総理にこの法案の審議にあたりましての基本的な考え方について一つお尋ねしたいと思います。 それは何であるかと申し上げますと、先日来新聞の報道等を見ますと、総理は、党内において、本法案を今国会にぜひ通過させるように叱咤激励されておるという新聞記事がしばしば載っております。もちろん、これは、提案者としての総理としてはやむを得ないことだ、当然だと思うのでございますが、総理がこの法案を今国会に通過せしめたい、かように考えておられるその理由というものは、この法案に対する農民の期待があるだろう、その農民の期待に沿いたい、こういう気持からであると思うのであります。ところが、この内容を私たちが検討いたしますときに、はたしてこの政府案に対して農民がどれほどの期待を持っておるかということに対しましては、非常にこれは疑問があるわけです。それで、今日農民に少なくとも農業基本法を一つ出してもらいたいという希望があるということは、現在の日本の農村の経済の状態というものが非常に困難な状態に陥っている、農民はこの苦しい農業経営から何とかしてのがれたいという悲願を持っておる、その悲願を持っておるがために、その悲願によって、農業基本法が通ったら何とかなるだろう、こういう気持を持っておると思うのであります。それであるがゆえに、このお出しになる農業基本法というものは、その農民の期待に反しないような農業基本法を通過せしめなければ、これは将来農民に対しては非常に罪悪だと私は思う。そういう意味から、私たちは、今後、この内容に対しては、非常に吟味し、検討をしなければいけないと思うのでございますが、そういう点を十分わきまえた上で総理は本国会でこの農業基本法を通さなければいけないということを考えていらっしゃるのか、この点をまず基本的な考え方として承りたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 農業基本法を提案いたしました私の気持は、稲富先生のおっしゃる気持と同じ気持で、農業をこのままにしてはおけない、これでは農民に対して申しわけない、希望を持ってもらうような施策を講じようというのが私の考え方でございます。従いまして、農業の今後のあり方につきましては、いろいろなことを考え、また、今の考えで足りないところも出てくると思います。各方面からいろいろな知恵をしぼらなければならない。しかし、考え方として、このままではいけない、基本法を作って、これから向かうべきプリンシプルをまずきめようというのが今回の案でございます。だから、将来起こるべき事象を考えますと、あれにもこれにも、こういう条文でこういう法律も作りたい、こういう財政措置も作りたいということは、私はたくさんあると思います。しかし、今までの法律にない点を、われわれは、農業をもっと近代化し農民の生活水準をもっと上げるために、こういう考え方で、たとえば法制的にも財政的にもあらゆる手段をとりますぞと規定し、そうして、足らざるところは毎年の国会で報告して審議して、こういうところが足らぬじゃないか、こういうところを伸ばすべきだというふうな御議論が今後あることを期待して、まずここでスタートをしようというのが私の基本法を提案いたしました気持でございます。万全ではございませんが、まずここでスタートを切らなければ、おくれてはいかぬという考え方でございます。
○稲富委員 今、総理は、将来において考えなければいけないとおっしゃるが、先刻申し上げましたように、今回の農業基本法に対しては、非常に農民の中に期待があると同時に不安があるわけです。これは、私、総理にも責任が非常にあると思うのであります。たとえば、選挙前におきましての、今回政府が計画されている農業基本法というものが零細農民を削減するのだ、こういうような選挙前のいろいろなことによって農民は非常に不安を抱いた。そういうことを言ったのじゃないということを政府はしばしば弁解されている。ところが、農民の中には、やはり農地改革当時のように、二町歩耕作地ということになったならば、これは当然われわれは整理の運命にあうのではないかというような不安があるわけです。ところが、今申し上げましたように、政府はそうではないと言っておられますが、その不安は依然として残っております。ただ、問題は、今回のこの農業基本法の政府案を農民が見ますときに、先刻からも非常に御議論がありましたが、自立経営の農家を作っていくのだということを強く政府は主張されているが、これに対して、零細農家をどうされるかということを十分考えておられない。こうなりますと、口にはそういうことを政府は言っているけれども、やはり、結論は、この零細農家というものが農業上における犠牲を非常に払わなければいけないのではないか、こういうような不安が依然としてあるわけです。それで、この法案を通されて、あるいは将来の国会においてまたこれをいろいろ審議すると言われても、これが出たときには農民に不安が来ると思うのであります。それだから、今回この農業基本法を提出する以上は、その農民の不安をなくするような農業基本法をお出しになることが政府として当然おとりになるべき態度でなければいけない。ところが、今度はともかくも大あらましを出しておくのだ、将来はこれに対して何とか考えるのだということでは、私は将来の農民の不安というものは消えないと思うが、政府はそういう点を十分お考えになっているかどうかということをこの際重ねて承りたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 これは二つに分けて考えなければいかぬと思います。まず農業をどうするかという問題が第一点でございます。そして、第二点は、今まで農家が今後どうなっていくかということがあるのであります。この二つの問題がある。農業というものは国の産業として絶対に必要な根本であります。商業、工業が発達すると同時に、国として立つ以上は、農業の発達がこれとつり合っていかなければならぬということ、これはもう根本でございます。第二段として、つり合うりっぱな企業とした場合に、今の農家が六百万戸そのままで残れるか、こういう問題があります。今の御心配の点はそうだと思います。六百万戸が残ると、農業自体がうまくいかぬばかりではなしに、六百万戸の相当部分がじり貧になっていくから、この農家というものが専業農家で立つと同時に、第一種、第二種兼業農家にしても、ことに第二種兼業農家というものが相当多くなってきて、農家というものの、名ばかりで、実際上はもう労働者あるいは企業者、こういう格好になっていく、私はこれを見ているわけですから、農業自体をよくすると同時に、今まで農業に従事しておられた六百万戸の人を切り捨てではなくて切り上げて、これが第二種兼業としてりっぱに立っていくように、あるいは全部他の業種に変わっていくように、地方に工業を分散するとかして、農家の人に農業以外の所得がふえるような施策を立てていって、専業農家は専業農家としてりっぱにやっていく、あるいは農家を離れて他の仕事につく場合もありましょうし、あるいは第二種兼業として一応日曜農家として残られる人もあるでしょうが、そういうことで、農業自体をよくするということと、今のこの六百万戸をどう切り上げていくか、この二つの問題がある。農業自体をよくするということは、これはわかると思います。しかし、農業からだんだん実質的に離れていく人をどうするかという問題につきましては、今後いろいろな施策が行なわれなければならぬ。私は、この農業基本法を提案いたしました初めのころと比べると、現状においてはよほどおわかりいただいたと考えております。今後も、われわれとしては、PRをいたしまして、農民の協力を得まして改善上昇させていかなければならぬと考えておるのであります。
○稲富委員 切り上げ切り下げ、どちらでもよろしいのですが、問題は、総理は、この法案が出て農民が非常に理解ができたとおっしゃるが、私たちが実際農村の感情というものを見ますと、内容を十分知らずに、農業基本法に非常に期待を持っておった人はこれで何とか浮かび上がれるであろうと希望を持っておった。ところが、内容を見るにつけてますます不安が大きくなってきたというのが実情だと思う。これは一昨日からの公述人の御意見の中にもそういうことがあったのであります。そういうことになりますと、総理のお考え方と実際というものが違うということになってくる。それで、私が総理に言いたいのは、それならば、今後この審議の過程において総理の今考えていらっしゃることと実際が違うという場合があったならば、来年の国会において何とかするということではなしに、今国会においてこの政府案みずからを手直してでも、ほんとうに農民の期待に沿うような、こういうような法律案にしたい、するという、これほどのゆとり、これほどの雅量といいますか、こういう考えが総理におありになるかどうかを承りたい。
○池田(勇)国務大臣 私はずっといろいろな世論調査あるいは新聞の論調等を毎日見ております。そうして、公聴会の議論も私は新聞を通して拝見しました。問題はいろいろございましょう。しかし、これは、根本的にいかぬというのでなしに、こういう点を将来考えなければならぬ、こういう点はどうかということで、割に建設的議論が多い。頭からだめだというふうな議論は非常に少のうございます。私は、やはりPRとか、あるいは国会の議論が非常に効果的であったと考えております。地方新聞のあれを見ましても、大体賛成だとか、これはいいから、今後こうあるべきだという建設的賛成論が大多数と私は確信しております。それを私は今後実現していきたい。ただ、稲富先生のおっしゃるように、この審議中におきまして建設的な非常にいい案があったならば、これは民主主義の国会でございますから何らやぶさかではございませんが、私が今までここの議論あるいは所管大臣から承ったところを総合いたしますと、まあ大体これでいけるんじゃないかと思うております。しかし、いい意見がおありになるならば、つつしんで拝聴いたしまして、善処をいたすのにやぶさかではございません。
○稲富委員 この扱い方というものは、そのいけるというのは、あなた方の多数で押していけばいけるということなんでございますけれども、問題は、政府が農民に親切なるゆえんというものは、やはり、いろいろ意見があったら、あなたの方でその農民の期待に反さないようにてこ入れをして、そしてみずからこれを修正してでもやるんだ、このくらいの熱意と申しますか、これくらいの親切味が私は農民に対してなきゃいかぬと思う。ただこの法律を力によって通すとか通さぬということではなくて、今後の審議の過程において政府としても十分そういうふうなゆとりをもって処していただきたい、こういうことを私は申し上げておるのであります。
○池田(勇)国務大臣 この法律は、あくまで国のため農民のための法律でございまするから、農民の切なる希望によって私はこれを提案しておるのであります。そこで、不十分な点がありますれば、あるいは将来において直すとか、あるいは、今直ちに直すべき必要の問題が起こりましたら、これは善処するにやぶさかではございません。だから、十分御議論していただいて、よりいいものに、農民のために国のためにしようという私の考え方は、人は低姿勢と申しまするが、決して低姿勢ではないと思っておるのでございます。
○稲富委員 さらにお尋ねいたしたいと思いますことは、これは総理も御存じのように、この農業基本法というものは、これだけお出しになって通過せしめたところで、やはり関連法案ができなければ十分の実を結ぶことができないことは御承知の通りであります。それで、総理は、この関連法案との関係というものをどういうようにお考えになっておられるか。この関連法案というものと相待ってこそこの農業基本法というものは生きるのだということは十分御承知だと思うのでございますが、その関連法案はまだ国会には提出されていないというような状態でありながら、ただ法案を通せ通せとおっしゃる。こういうような考え方をどうお考えになっておるか、あらためて伺いたい。
○池田(勇)国務大臣 私は、農基法に関係したさしあたって必要な法案は御審議願っておると思っております。農地法の問題とか、あるいは金融関係のいろいろな措置とか、出ておると思います。ただ、私は、今後の進み方によりまして、今まで出しておる法案以外にいろいろなものが出てくると思います。従って、第四条に書いておりますように、法制上、財政上必要な措置をとると、画期的な条文を入れておるわけでございます。ですから、今国会においてはもちろん、われわれは、次の通常国会、また、その次の次、ずっと農村がほんとうにりっぱになるまで法制上、財政上の万全の措置をとろうということをお誓い申すのがこの農業基本法案でございます。
○稲富委員 いや、その点が、将来財政上、法制上の処置をとるのだという、実にばく然たる意見なんですね。それよりも、農民が一番期待しておるのは、この法案を通すときには、この通る法案の完璧を期するために、これと同時に関連法案もともに通過せしめるのだということで、これだけの処置をとらなければ、私は農民の期待はずれになるということを申し上げている。ところが、現在の審議状態から言っても、関連法案というものがはたしてこれとともにいけるかどうかということは、これは期日においても私は非常に疑問になるんじゃないかと思う。そういう点を、ただ、将来法制上あるいは財政上の処置をとるようになっておるから、それで包含せられて完璧を期せるのだということでは、この取り扱いというものは十分ではないということを私は申し上げておるのでございます。
○周東国務大臣 その点は私からお答えをいたしますが、今日すでに国会には必要なさしあたっての関連法案は提出いたしておりますから、皆様の御協力によってこれも一緒にどうか御審議をいただきたいと思うのであります。 それから、もう一つつけ加えておきますが、農家の方々が非常に不安を持っていらっしゃるという一例において、一町五反あるいは二町以下の人はやめさせるのじゃないか、こういう先ほどからのお話であります。しかし、あの法案をよく理解してよく説明すればわかりまして非常に賛成を得ているのは、現在五反とか三反とか六反とかいう非常に少ない方々の基盤では、これは経営上差しつかえがあるので、できるだけ基盤の拡大をして自立農家に引き上げようということがこの法案でありまして、それは、問題といたしましては、今お話しのように土地の問題もあります。それから、たびたび申しますように、今後、私たちの考え方といたしましては、将来の需給に従って必要なる土地の拡張はどれだけか、しこうしてそれに関連いたしまして財政上の処置をとり、それに基づいての基盤拡張をやると書いてあるのですから、一ぺんに抽象的に何百万町歩やるということよりは、農家に対して親切ないき方であろうし、また、地方的に申しまして、拡張がすぐできるところとできないところがあるので、その点は、ただ単に面積だけの問題にあらずして、経営の内容というものを近代化、合理化することにより、あるいは高度技術化をはかることによって収入を上げていくことは、地方的に現実の姿がたくさんございます。これは、ただ単に一つの目標として——面積を上げるということは一つの方法でしょうが、経営の内容を大きく改善することによって、必ずしも一町あるいは一町五反なくても実績をあげている人はたくさんある。そういう問題も私どもはあわせて今後の問題として考えていくわけであります。
○稲富委員 その内容の具体的な問題につきましては、いずれ農林大臣にお尋ねいたしまして、審議の過程において、そういう今の問題のようなことにつきましては、十分私たちの意のあるところも申し述べ、政府の意のあるところも、これは一つ専門的に承りたいと思うのであります。ただ、総理に私言っているのは、今申し上げましたのは、関連法案というものが並立していかなければ、この法案というものが効果を持たないということは、総理も御承知の通りなんです。ところが、今の過程において、はたしてこの関連法案というものでやっていけるかどうかということに対しては、自民党の諸君はいろいろおっしゃっているけれども、十分な関連法案が出ていない。これは私は十分じゃないと思うのです。それで、私の言いたいのは、並立しないために、せっかく農業基本法が出たけれども、十分農民がむくわれなかったというような場合に、非常に農民が期待はずれになりはせぬか、この点を私は憂慮するわけです。出す以上は、期待はずれにならないようにということで、並行してやっていかなければならないじゃないかと言っているのです。これが親切味のあることじゃないか、こういうことを私は聞いているわけです。内容に関する点についてはいずれ機会をとらえて農林大臣に聞きたいと思っております。
○池田(勇)国務大臣 先ほども申しましたように、さしむき必要な関係法案は御審議願っておるのでございます。しかし、それで今後十分か、こう言われても、農業は前向きのものであります。今社会党の方々が御指摘になりましたように、農地の移動その他につきまして今後どういうふうな財政措置をとったらいいかということは、今後の事態からいろいろ出てくると思います。ここでこういう画期的な仕事をやる、今ここでずっといくのじゃございません。自由主義経済というのは、そのつどそのつど適当な処置をとっていくことが一番いい方法なんです。だから、私は、差し向き必要な関係法案は御審議願っておりますし、また、今後におきましても、必要で可能と思うものはできるだけ早くやっていこうというのが私の考え方でございます。
○稲富委員 結論的に申し上げますと、審議の過程において十分尊重すべきものがあったならば、政府としては尊重してそれに対する手直しもけっこうだという御意見のようであります。さらに、関連法案に対しても、ともにこれを進めたいという意向もあります。ただ、来年度の予算編成等の関係もあると思いますが、それでは、もしもこの法案が通って関連法案が通らないということになりますと、やはりこれは十分な処置がとれないということになってくる。そういうことが生じた場合には、あるいは臨時国会でも開いてさらにこの問題を審議していく、こういう意図でもあるのかどうか、この点も承っておきたい。
○池田(勇)国務大臣 私は、農業基本法案が通りましたら、当然、やはり、常識的に、これに直接必要な関係法案も通ることと期待しておるのであります。いろいろな場合につきまして、総理としてこの場合はこうだということは申し上げられませんが、言い得ることは、あなた方の御協力によりまして、これが全会一致通ることのみ期待しておるわけであります。
○稲富委員 最後に、私は、法制局長官も見えておりますのでこの機会にお聞きしたいと思いますのは、今回の法律案で私たちが一番異様に感じますことは、これは総理にお聞きするわけですが、元来、法律案というものは、法律の目的というものがありまして、はっきりこの法律の目的はこうだということが述べてある。ところが、この農業基本法案においては、第一章に目的という言葉を使っておらない、目標と言っている。何がためにこの法律だけは目的という言葉を使わないで目標という言葉をお使いになったのか、こういう点を一つ承りたいと思う。
○池田(勇)国務大臣 これは法の格好で、戦後におきましては第一章第一条に目的を書くのが普通でございます。しかし、御承知の通り、この農業基本法は、その法律の性質、重要性から申しまして、前文を書いておるのであります。こういう法律は教育基本法と農業基本法だけだと私は思っておりますが、そういう関係でございまして、前文があります関係上、他の法律のように国の農業に関する政策の目的と書かずに、目標と書いたところが、前文を置いた意味でございまして、これは一つの進歩だと私は考えております。
○稲富委員 この問題は、そういう御答弁をなさいますと、またいろいろ将来この問題に対してもお尋ねしなければいけないと思うのですが、私が言っておるのは、どうも総理は目標と使ったことが今回の法律においては非常に進歩的なことのように言われておりますが、少なくとも、法律というものは、目的ということから受ける感じと、目標という言葉から受ける感じは非常に違うわけなんですよ。——これは一般概念において。それから、ほかの法律には目的という言葉があって目標という言葉はない、私は存じ上げておりません。なぜこれをお使いになったかというときに、本基本法というものが、あまりにも、目当てといいますか、その点が確信がなさ過ぎるのではないか、こういう気さえわれわれはするわけであります。これを進歩的だという言葉で片づけてしまえば、それで済むようなものだけれども、そこにわれわれのまず第一に非常に不安な点もあるわけであります。 その点、法律上では目的ということと目標ということはどういうふうに使うのであるか、法制局長官に一つ用語上の問題でお尋ねしたいと思います。
○林(修)政府委員 これは、御承知の通りに、ただいま総理も仰せられましたが、この法案は前文をつけたわけであります。これは教育基本法あるいは教育基本法以外の若干の法律にございます。現在、前文を置いている法律は、国会図書館法そのほかの法律も若干ございますが、そういう趣旨から、もう一ぺん第一条にこの法律の目的ということをわざわざうたうのはダブるのではないかという考え方が一つあるわけでございます。教育基本法の第一条は教育基本法の目的を書いているのではなくて、教育の目的を書いておりますが、ここではむしろ政策の目標、政策でございますから、政策の目的というよりは政策の目標、法律の目的じゃないので、今の御指摘は、目標という言葉をなぜ使ったかということでありますが、政策の目標でございます。法律の目的じゃない。法律の目標じゃない。いわゆる農業政策の目標というものを第一条に置いたわけであります。これは、法律全体の趣旨は前文で明らかになっております。今まで普通の法案で第一条に目的を書きますのは、法案全体の趣旨から目的を第一条に書くわけであります。その点が少し普通の法案と形を異にするわけでございますが、そういう点でわざわざ第一条にもう一ぺん法律の目的を書くのはダブる、かように考えたわけでございます。
○稲富委員 法制局長官の話によりますと、この法案は政策だ、農業基本法は政策だから目標を書いているんだとおっしゃる。この点、農林大臣はそれでいいのでございますか。
○周東国務大臣 ただいまの法制局長官のお答えは、第一条に政策の目標という表題のもとに書いてあるから、それを御説明したのであります。問題は、目的とか目標とか、そういう字句の問題にあらずして、この法律を制定する目的はどこにあるかということを前文に詳しく書いてあるわけであります。これをもってこの政策を達成する、目標を示すことがこの法律の使命であると書いてある。そうして、あとの問題といたしましては、その目標を達成するためにかくかくの施策を講じなければならぬということを書いて、施策をずっと羅列しておるわけであります。しかも、その施策を実行するについて必要なる財政上、法制上あるいは金融上の措置をとる。しこうして、また、とりっぱなしではいかぬので、国会に報告の義務を負わせ、その報告に従ってすべて農政というものを国会を通じて国民の審議の対象に持ってくるというような事柄自体が、この法律制定の目的であると思います。
○稲富委員 それではこの問題はいずれ機会を見まして農林大臣に聞きますが、どうも全体から言いまして、この法律の締まったところがない。どこがほんとうの勘どころだというところがない。ふわっとしている。ここに目標というのがあるだろうと思う。これが政策だと言いますと、この点があまりばく然としている。そういうことにどうもいかにも言葉のあやでこれをのがれるようなことを言われているんだけれども、そういう考え方がこの中全体にみなぎっているのではないか、この問題を基本的な問題として聞いておるわけであります。私に与えられた時間が来ておりますので、いずれ機会を見まして、さらに一つ十分この問題に対してもお尋ねしたいと思うのでございます。 いずれ機会を見ましてまた関係閣僚にお尋ねするということだけを申し上げまして、私は質問を打ち切りたいと思います。
○坂田委員長 次会は二十五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時二十九分散会