建設委員会 第32号
- 発言数
- 60 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1961/05/18
会議録
○瀬戸山委員長代理 これより会議を開きます。 委員長所用のため、委員長の指名によりまして、暫時私が委員長の職務を行ないます。 公共用地の取得に関する特別措置法案を議題とし、審査を進めます。 本日は、参考人より意見を聴取することといたします。本日御出席下さいます参考人は、東京大学教授雄川一郎君、一橋大学教授田上穣治君、早稲田大学講師高根義三郎君、以上の方々でございます。現在雄川参考人、田上参考人がお見えになっておりませんが、十一時ごろ御出席下さることになっておりますので、御了承願います。 参考人には、非常に御多忙のところ当委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございました。どうぞ忌憚のない御意見をお述べ下さるようお願いいたします。 議事の順序は、まず参考人から御意見をお述べいただき、御意見の開陳が終わった後、委員各位より参考人に質疑をしていただくことにいたします。 それでは、高根参考人にお願いいたします。 高根参考人。
○高根参考人 四つに分けまして、簡単に申し上げます。 この法律案を拝見いたしますと、収用される者の不服の申し立ての方法、こういうことが出ておらないと思いますが、それに考えられますのは、建設大臣が認定いたしますると、それを知りました利害関係人が訴訟ができると考えられるのであります。訴願もできるのかもしれませんけれども、訴願の話は飛びまして、訴訟ができる。その訴訟をした場合にどういうことになるのか。それからあとの収用手続というものが進行していくのかどうか、問題になるわけであります。おそらく現在の法律の建前からいきますと、訴訟を起こすということは、手続の進行には何の妨害にもならないで、手続は進んでいくというふうになっていると考えられるわけであります。はたしてそういう行き方でいいのかということが第一に問題になろうと思うのであります。建設大臣の認定というものは、少なくとも訴えを許すものとしますれば、まだ未確定なもので、適法なものと確定しているわけではない不完全な処分でありますから、もしも訴訟の結果、その認定というものが間違いであるということになりまして、取り消された場合には、収用された土地というものは、収用されない前の形、原状に回復されなければならないはずであります。それを、訴えを起こしても収用手続がそのまま進行していく。そうすると、訴えによって取り消しの判決がなされても、収用された土地の原状回復ということが不可能になってしまうようなことが考えられる。そういうように、公法上の行為であっても、未確定なまま進行して既成事実ができてしまうということは、しっかりした法律のもとに手続がなされるという建前に反する。憲法の条文から申しますると、七十六条に、行政機関というものは終審として裁判を行なうことができないと書いてあるわけでありますが、こういうふうにして、建設大臣の認定のまま、訴訟があってもそれが認定のまま手続が進んでしまうということは、結果において行政機関が終審として裁判を行なうことになってしまう。行政事件訴訟特例法の十条一項によりますと、「訴の提起は、処分の執行を停止しない。」というふうに書いてありまして、二項に非常に厳重な条件を置きまして、回復することのできないような著しい損害を生ずるような場合には、裁判所が執行停止できるというふうに書いてあるわけであります。これは非常に珍しい規定、あまり例のない規定、戦後司令部が日本の裁判官を信用しないでこういうものを作ったわけでありますけれども、平和になりましてもこの規定が相変わらず生きている。西ドイツにおきましては、昨年の四月から西ドイツ全部に通ずる行政事件訴訟特例法ができたのでありますけれども、これはちょうど逆になっておりまして、訴訟を起こしますれば、行政庁の処分というものは、起こしたというだけで停止してしまって、ごく例外の場合にだけ執行を許すということになっているのであります。こういう強力な行政庁の認定というものを立法いたしますと、やはりそれに相応して、収用される人間の不服の申し立ての方法についてもしっかりしたものがなければならない。現状のままで、非常に弱い救済方法しか被収用者に与えていない現段階において、収用手続だけなお一そう強くすることはいかがなものかと思われる次第であります。この行政事件訴訟特例法というものがあまりにも珍しい規定でありますために、私はこれをドイツ訳しまして、昨年の六月ドイツの雑誌に発表してあるわけであります。日本においても、母法でありますドイツ法に従いましてこの特例法の十条は近い将来直されるだろうということを書いて出したわけでありますけれども、ドイツの訴訟学者も、日本における法律がドイツ法にならってそういうふうに訂正されることを期待しておるように思われるわけであります。訴願についても同様でありますけれども、訴願のところは略すことにいたします。収用手続というものは、補償金の額を争うことも考えられるのでありますけれども、収用手続自体に公共性があるかどうかということを争うことが必要であろうと思うのであります。 第二番目に、補償金額の算定の時期が三十一条に出ているように思うのであります。これによりますと、ある一定の時期、早い時期を区切りまして、そのときの値段によって補償金額を定めるというふうに考えておるようであります。しかし、補償金額というものは、自由な取引における私法上の取引の値段をもって補償金額とするのが正しいというふうに考えられていると思われるのでありまして、訴訟になりますような場合には、そういう時期を限って値段をきめるのではなくて、事実審の最終口頭弁論のときまでの最高価額によって損害額をきめるというのが西ドイツにおける考え方であります。そういう考え方によりますと、最初の早い時期を基準にして価額をきめるというのはいかがかと思われるわけであります。 三番目に、補償の基準というものをこの法律の中には書いてないわけであります。収用手続と同時に補償金額の基準をきめなければならないというふうな考え方が、今一般の考え方であります。どうしてそういう考え方になってきたかというわけでありますけれども、補償の金額を収用する手続をきめた法律の中へ同時に入れるということは、収用が非常に重大なものであるということを立法の当初から認識して、収用の手続をきめるにあたってもそれだけ慎重になる。従って、収用手続と補償の基準と一つ法律に同時にきめなければならないというふうに考えられているわけであります。今度のこの法律におきましては、その基準も定められるように初め出られたそうでありますけれども、それをはずしまして、収用手続だけきめられたということは、そういう今日の収用手続をきめる法律に対する考え方に矛盾するのではないか。おそらく西ドイツにおきましては、ボン憲法の十四条の三項の二という規定の中からそういうことの立法的な基礎を探し出していると思われるのでありますけれども、そういう規定を待たないでも、日本においても二十九条三項というような規定からも考えられる。あるいはさらに進んでは、刑法の規定であります罪刑法定主義というようなものも、刑法の規定だけでなく、ほかの行政手続にも利用して同じように考えていいのではないかと思うのであります。 四番目に、農地の転用の許可の問題があったそうでありますけれども、許可の問題でなく、農地のうち自作農創設法によって創設された農地についてはだれに補償金を払うかということが、これから創設農地について転用をする場合が多いのでありましょうから、必要であろうと思われるのであります。創設農地というものは農業生産のために収用したのでありますから、制限された所有権を設定したのだと思われるわけであります。従って、道路や飛行場あたりに転用する場合の補償金というものは、新所有者と農地買収前の旧所有者の双方に支払われなければならないものだと考えるのであります。従って、そういう新旧の所有者双方に補償しなければならないということと、その率を定めるということが争いを避ける上に大事なことではないかと思われるわけであります。 これだけ申し上げます。
○瀬戸山委員長代理 それでは、参考人の御意見に対して質疑の通告がありますので、これを許します。 中島巖君。
○中島(巖)委員 高根先生には、大へんお忙しいところを御出席いただいて、ありがとうございます。実は私、法律関係に全くしろうとでありまして、いろいろお伺いすることがあるいは当を欠いておるかとも危惧されるわけでありますが、三、四お伺いいたしたいと思うわけであります。 これは、私が申し上げるまでもありませんが、土地収用法の特例であります。現在の土地収用法が適正に運用されておるかどうか、こういうような問題に対して深い研究もなくいたしまして今回の法案が出たわけであります。現在公共事業を大幅に推進する場合におきましては、私ども社会党といたしましても、ある程度の促進するところの法案はやむを得ないというような考えは持っておりますけれども、今までの土地収用法が適正に運営されていずにおいて、飛躍的にこういった規制の法案をこしらえたことに非常な関心を持っておるわけであります。 そこで、いろいろお伺いしたいのでありますけれども、ただいまも先生からお話のありましたように、緊急裁決の条項があるわけでありまして、この緊急裁決に対しましては、概算見積もりで仮補償金を定めてその土地を収用できることになっておるわけであります。そこで、先生にお伺いしたい点は、これはどう考えてみても、緊急裁決で仮補償金で土地を収用するということは憲法二十九条の三項に違反しておるのではないか、こういうことが考えられることが一点。 もう一点は、現在の土地収用法の百二十三条に緊急土地使用の条項があるのであります。これは当局に聞いて見ますと、過去において二十六件ありまして、そのうち十六件は駐留軍関係であります。これは六カ月以内に限って使用ができるのでありますけれども、この六カ月以内において起業者の所有もしくは賃貸関係が生じて、起業者の思う通りにこの六カ月以内は現行土地収用法の緊急土地使用の目的が達せられておるのだ。従って、この法案をことさらこしらえる必要はないのじゃないか、こういうように考えておるわけであります。 あとの件については、法律上の問題とは関係はありますけれども、若干はずれておりますので、この緊急裁決で概算見積もりの仮補償で土地を収用するということが憲法違反であるかないか。この点について御見解をお伺いしたいと思うわけであります。
○高根参考人 概算見積もりというものがどの程度になりますか、非常に名目的な金額しか出さないで、それも完全の補償だというようなことで概算見積もりをやりますと、それは金をやらないで収用することと同じことになりますから憲法に違反すると思うのであります。こういう概算見積もりの規定というものは、憲法違反の場合がたくさん出てくる基礎を与えるだろうと思います。先ほども申し上げましたように、基準というものを初めから法律の中できめておきますれば、 この基準がすでに補償を与えないに近いというような場合が考えられた場合には、法律にならないでございましょうから、概算見積もりでもあるいは憲法違反の場合が出ないかと思うのですけれども、補償の基準というものを法律の中に全然書きませんで、ただ取る手続だけ書いたということは、強く言えばそれ自体憲法違反になると思います。補償の基準を書かない収用手続というものはそれ自体憲法違反であると思います。 第二番目の、六カ月の使用ということでありますけれども、今日の法律において土地収用法でも建設大臣は十分なことができると思うのであります。なぜできるかといえば、訴願しても訴えを起こしても執行はとまらないのですから、やりほうだいがやれるはずでありまして、特にこの法律を作って、今でさえやりほうだいができるのに、なお一そうやりほうだいなことができる根拠がどこにあるか、理解に苦しむものであります。
○中島(巖)委員 先ほど行政訴訟法に関連して訴願の関係のお話がありましたけれども、私は法律家でなくてしろうとですから、よくわからないのでありますが、この法案の四十一条に、「土地収用法第百二十三条の規定は、適用しない。」ということになっておる。さらに四十二条において、「土地収用法第百二十九条第二項の規定の適用については、その裁決は、同法第七十八条の規定による請求に係る裁決とみなす。」、さらに二項において「緊急裁決のうち、仮補償金及び第二十一条第二項の規定により裁決書に記載された事項については、損失の補償に関する訴を提起することができない。」、こういうように行政庁の処分に対しまして、訴訟、訴願といういうことを著しく規制してあると考えるのでありますが、これに対する法律的の御解釈はどうであるか、お伺いしたいと思うわけであります。
○高根参考人 「訴を提起することができない。」と書いたのはどういう意味か、ちょっとわからないのであります。訴えをそれに対して提起することが適当だと思いますけれども、どうして訴えの権利を切ってしまったのか理解できないのであります。先ほど言った七十六条の二項で行政庁の裁決が終審になってはいけないというのですから、そういう規定を設けることはできないと思います。ただ、この事柄が何を言っているのか、まだ私には、はっきりわかりませんけれども、一般的に言って、損失の補償に関する訴えを提起することができないということは、どんなしさいなことであっても規定することができない事柄だろうと思います。
○中島(巖)委員 ちょうどこの責任者の計画局長が見えておるので、この四十二条の「訴願及び訴訟」について、四十二条の一項と二項とを具体的に説明してもらって、参考人の御意見をお伺いしたい。
○關盛政府委員 この四十二条の「訴願及び訴訟」の規定でございますが、四十二条の第一項の場合は「第二十二条の規定による請求に係る裁決があった場合」、この二十二条というのは、この法律の二十二条でございまして、「物件の収用請求権」、つまり取られる土地に物件を持っておる人、そういう人たちが逆収用の請求をこの特別措置法におきましては無条件にできることになっております。逆収用を一般化いたしたのがこの特別措置法の二十二条の規定でございます。その二十二条の規定による請求にかかる逆収用の裁決があった場合における土地収用法の百二十九条第二項の規定の適用につきましては、「その裁決は、同法第七十八条の規定による請求に係る裁決とみなす。」、こういうことで、この第七十八条というのは、土地収用法の規定でございまして、この七十八条の規定が実現困難な場合における収用の請求権を規定するわけでございまして、これと同様に取り扱う、こういうわけでございます。 それから、第二項の規定の趣旨は、緊急裁決がありますと引き続いて収用委員会が本裁決をいたすことになります。従って、緊急裁決によって定められましたところの仮補償金その他に関するところの不当なことであるとか、あるいは仮補償金が足りないとかいうふうな審理は、直ちに開始されるところの本裁決の審理において関係人が十分に意見を述べる機会が作られますので、緊急裁決の仮補償金等について直ちに被収用者に訴願なり訴訟の道を開くよりは、直ちに収用委員会において申し立てを陳述する方が中間段階における緊急裁決の取り扱い上から考えましても、関係権利者の権利を主張せしめる意味からいいましても――中間的な緊急裁決でありますので、損失補償に関する訴えの提起を直ちに行なうよりは、むしろ収用委員会の審査において意見を述べるのが適当であろう。こういう意味で第二項の規定ができておるわけでございます。
○瀬戸山委員長代理 この際申し上げますが、ただいま雄川参考人がお見えになりましたので、この際御意見を承ることにいたします。そのあとで御質疑を願います。 雄川参考人には、非常に御多忙のところお繰り合わせいたださまして、ありがとうございました。 それでは、これから公共用地の取得に関する特別措置法案につきまして、参考人の御意見を開陳していただきたいと思います。 雄川参考人。
○雄川参考人 ただいま御紹介にあずかりました雄川でございます。このたび公共用地の取得に関する特別措置法案について何か意見を述べろという御命令を受けたわけでございますが、そのときも私申し上げたのでございますけれども、実はこの問題が現実の問題となって起こりまして、それから調査会の方で審議をしておりました間、私ずっと公用で外国に出ておりました。それで、具体的な問題は何も存じませんものですから、ここに参考になるような具体的な意見は実は持っていないわけでございます。しかし、それでも意見を述べろということでございますので、印象批評の程度でとどまらざるを得ないのではないかと思いますけれども、現在私の考えているところを述べてみたいと思います。 この法案に対する私の意見の結論を先に申し上げれば、この法律案の基本的な考え方、それからそこに盛られました具体的な内容ともに、大体において賛成であります。 第一に、この法案は、御承知の通り、公共用地取得制度調査会の答申を基礎としているわけでございますが、この答申と法案との間には、御承知のように、若干の相違はありますけれども、大体において答申の趣旨をそのまま盛り込んで立法されたもののようでございます。この調査会は、相対立する利害の立場にある人、それから土地取得問題についての専門の方々によって構成されておりまして、そこで練られた結論を政府がそのまま大体において盛り込んで法律案を作られたことは、私は立案としてきわめて適当なやり方ではなかったかと思っているわけであります。 この法案に盛られた内容の中で注目すべき点が幾つかありますが、おもな点は次に述べる大体四つの点であろうと思われます。 その第一は、土地収用法との関係で単行の、いわゆる特別法の形式をとって立法されたという点であります。この土地収用法というのは、御承知のように、一方で公共事業のために必要な土地を取得するという公益上の要請と、それから他方で土地の所有者その他の利害関係人の権利を保護するといういわば私益の保護、そういう意味での公共の福祉の要請と私益の保護の調整をはかった手続法であるとわれわれ行政法学者の間では説明をしているわけでございますが、そういう見地から現行の土地収用法はできておりまして、手続法としてはある程度、というよりも、かなり整備した形をとっております。しかし、この土地収用法が本来の法律のねらい通りに円滑に動いていくためには、やはり恒久立法の性質上ノーマルな状態を前提として、そうしてまた土地所有者その他の利害関係人、それから起業者が、ある程度合理的に行動する、あるいは考えることを前提としてできているわけでございます。ところが、現実は必ずしもそうではないようでありまして、御承知のように、近来の土地に対する需要というのはきわめて異常なものがあるわけであります。それからまた、逆に土地所有者その他の利害関係人の行動がすべて合理的かといえば、必ずしもそうではない。どの程度まで私はごね得という現象があるのか存じませんけれども、そういう言葉で一部伝えられておりますような現象もあるわけであります。そこで、本来の一般的な制度としての収用法とは別個に、いわば眼前の需要に応ずるためにこの特別立法がなされたのではないか、そのように私は了解しているわけです。しかし、この中に盛られた規定なり制度なりによりますと、確かにそういう意味での眼前の需要に応ずるような規定もありますが、また同時に、恒久的な収用制度一般についても、いろいろ将来研究し、かつ考慮すべき問題を含んでいるように思われます。 それから第二の点が、いわゆる特定公共事業として公共性及び緊要度の特に高いものを幾つか選んで、これだけに限って認めるという点であります。この法案に特定公共事業としてあげられておりますものが全部妥当か、またそれでいいのか、ほかに漏れてないかという問題はもちろんあるかと思います。その点は実情に暗い私としては何とも言えないところでありまして、ただ、しろうとの目で見ますと、ここにあげられておりますのは、まあまあ妥当なところではないかと思われます。ただ問題は、特定公共事業の実際の認定にあるわけでありまして、この認定については、言うまでもないことですが、慎重かつ公正に行なわなければならないと思われますので、この点将来の運用、それからこの法律に予定しております公共用地審議会あたりが実際は主要な役割を果たしていくことになるのであろうと思われます。 第三の点は、手続の促進のための措置であろうと思われます。この中で気のつく第一の点は、事前の宣伝、いわゆるPRと申しますか、起業者が事前に宣伝をする義務を定めていることであります。これは土地の所有者その他の関係人あるいは広く一般公衆が、その権利、利益を正当に擁護する機会を与える意味から言いましても、認定手続に始まる一連の土地収用手続に参与する機会を現行法で与えられているわけですが、それ以外にこういう形でそういう機会を与えられるということは、将来の立法の方向としても適当なのではないかというように私は考えているわけです。 それから、手続の進行をはかりますために知事に代執行権を認めたり、あるいは土地物件の調書作成について特例を認めるということを考えておりますが、これは現在のいわばアブノーマルな状態に対する措置の意味を持つものであろうと思われます。もしそういう実情がありとすれば、こういう措置をとるのはあるいはやむを得ないかと思われますが、ただ、これらはいわば手続を進めていくための最後の保障のような意味を持っておるものではないかと思われますので、実際にこの規定を活用するには、実際問題としてかなり慎重にならざるを得ないのではないかと思われます。 それから、もう一つの点が緊急裁決であります。これは御承知のように、損失の補償というのが微妙な問題を含んでおります。そうして、なかなか損失補償額が確定しないことがございます。その場合に、補償額がいつまでもきまらない。そこで、必要な土地がいつまでも手に入らない。従って、卒業が動いていかないというのはやはり不合理でありまして、この制度は一種の概算払いを認めたものであろうと思われますが、この点は、補償に関して一方で具体的な補償基準を確立をするということを考えますとともに、収用制度一般についてもこういう点をやはり将来考慮する必要はないかというように私は考えております。 最後の点、損失の補償を現行の土地収用法よりもある程度拡張しておりますが、この点も現在及び近い将来の経済状態を前提といたします限り、将来の立法の方向といいますか、線に沿っているものであります。この点も、別に特別措置法ということに限らず、土地収用法一般としても考えていっていい問題ではないかというふうに私は考えております。 以上のような理由で、私はこの法案並びにこの法案の基礎になった調査会の答申の考え方、その措置に対しまして、これを積極的に否定するほどの理由はもちろん持ってはいないわけであります。
○瀬戸山委員長代理 それでは、ただいま田上参考人がお見えになりましたので、田上参考人の御意見を聴取いたします。お忙しいところで、どうもありがとうございました。
○田上参考人 今回の特別措置法案に関しまして、簡単に私の考えておりますことを申し上げたいと存じます。 まず、全体的に申しまして、土地収用法あるいは今回の特別措置法のような場合でありますと、ただいまも雄川教授がおっしゃいましたが、私権の保護と公共目的の遂行との調整ということが一番大きな論点であろうと存じます。憲法では二十九条に、特に第三項におきまして「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」ということでございまして、ここに一方では第一項で、財産権を侵してはならないという十九世紀的な個人の自由、財産の保障がございますが、これのやむを得ない例外として、代替性を持たない財産、特に土地のようなものにつきましてはそういう必要が多く生ずるわけでございますが、侵してはならないが、しかし、やむを得ない場合は正当な補償があれば公益のために用いてよろしい。こういう考えは、実を申しますと、明治憲法にもありましたし、また多く十九世紀の憲法に共通な規定でございます。新憲法におきましてもこのような考えは維持されているわけでございますから、たとい公益事業のためであっても、正当な補償がなければ人民の土地を取り上げることはできない。これは今回の法案におきましても当然問題でございまして、また、この点は立案にあたりまして相当慎重な考慮が払われているように思うのでございます。ただ、御承知のように、今日の憲法は二十九条第二項におきまして、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」とありまして、これは新しい二十世紀的な条文と言われております。このことは、突き詰めて申しますと、個人の自由あるいは人権は最大限度に尊重される、法律をもってもみだりに侵すことはできない。けれども、その中で経済生活の自由はやや例外でありまして、これは二十世紀になって特に経済的に国民の間に非常な不平等な状態が出てきておる。これを是正するために、一方ではいわゆる社会権の規定によりまして、いわゆる弱者の階級に対しては特別な保護を与え、一方でまた余力のある、経済的に余裕のある国民に対しましてはある程度の犠牲を忍んでもらう、こういう考えが二十世紀に出てきておりますことは御承知の通りと思います。多くの憲法にございますし、アメリカの判例においてもそういう傾向が特に一九三七年のころからは強く出てきているのでございます。だから、そういう意味におきまして、明治憲法時代の考え方とは幾分今日はこういう問題は違ってきているのではないか。言いかえますと、正当な補償の意味でございますが、必ずしも一〇〇%の損失を補償するというところまで強く要求されるのかどうか。むしろそうではなくて、今日、ある程度においては、幾分余裕のある、余力のある国民は経済的に公共の福祉のために犠牲を忍ばなければならない、こういうことが言えるのではないかと思うのであります。これは世界の大勢であり、新憲法の第二十九条でも第二項の趣旨から大体そういうことが言えると思うのでございます。この第三項は、実を言うと古い規定の表現でございますから、明治憲法には補償ということがないのですけれども、新憲法に入っておる点は、むしろ従来よりもさらに古い十八世紀的な考えが強く出てきていると思うのでございます。しかし、たとえば農地関係の判例を見ましても、二十八年十二月二十三日の最高裁判所の大法廷の判決を見ましても、かなり問題になっている。あの農地の買収、かつての農地の解放でございますが、あの補償価格、買い上げ価格が必ずしも憲法違反ではない、正当な補償と言えるということを判決は申しております。率直に申しまして、私は幾分疑問を持っておるのであります。農地の問題は本日の議題ではございませんから省略いたしますけれども、しかし、それくらいに裁判所においても正当な補償というものについての見方が従来の考えとは変わってきていると思うのであります。けれども、今回のような特殊な公益、特定の公共事業のために一般の民間の土地を取得いたしますにつきましては、もちろん十分な補償を考えなければならないのでありまして、みだりに公益のためあるいは公共の福祉のためということで、これをきわめてわずかな、あるいは手続上補償についての十分な調査もしないで収用するようなことは憲法の精神に合わないと考えております。しかし、繰り返し申し上げますが、こういった問題は、おそらく裁判所において、どういう立法をなさいましても直ちに憲法違反であるという答えは大体出しにくいのではないか。言論、集会の自由のようなものでありますと、公共の福祉に反するかどうか、こういう点が訴訟においても問題になり、そしてこれをもし不明確な判断でもって公共の福祉に反するというようなことで取り締まりますと、その立法は憲法違反になる可能性があります。けれども、財産権についての法令でありますと、大体は立法政策の問題になってくるのでありまして、どの程度に収用される者の財産権を尊重し、あるいはどの程度に事業者の方というか、公益事業の立場を尊重するとか、これをどの程度に調節するかということは、大体が私は政策の問題であって、直ちにこれが違憲というようなことは起こらないように思うのでございます。明白に憲法に規定に反する、あるいはその目的において立法権が乱用されているというような場合は別といたしまして、一般には経済生活に関するこの二十九条のような問題につきましては、訴訟で違憲を主張するという余地が比較的に少ないと考えております。 前置きが長くなりましたが、次にこの法案の内容につきまして二、三申し上げます。 第一は、この法案は、申すまでもなく土地収用法の特例を認めているのでございまして、土地収用法そのものを改正するものではないのでございます。これは先ほども雄川教授がちょっとお触れになったようでありますが、土地収用法そのものにつきましても私どもは改正の必要があると思っております。けれども、これを軽々しく動かしますることは、何か公共の利益ということに飛びついていって、反対の私有財産を尊重しないようなおそれがあるわけでございますから、非常に慎重に考えて、相当時間的に余裕がなければ土地収用法の改正はむしろ控えた方がよかろう。そこで今回は、私ども調査会の関係でございますが、特に公共性並びに緊急性の高いものにつきまして、しかも、それは法律であらかじめそのワクを狭く規定しているのでございますが、そういうものについて例外として特別な措置を認めようということになっております。これもいろいろ御意見がございまして、もっと広げた方がいいということもあったと思いますが、大体の考え方としましてはできるだけ範囲をしぼってあるつもりであり、また、答申に従いましてこの法案におきましても、部分的には通信のようなところがちょっとふえているように思いますが、大体はこの範囲においてかなり厳格に吟味してございますから、この程度の例外ならば、土地収用法のほかにこういうものを認めましても、憲法の精神には反しなかろうと思うのでございます。 それから、公共用地審議会というものがこの法案に織り込まれておりまして、建設大臣がこの審議会の議を経てこの特例を適用する、こういうことになっております。この問題につきましては、特別にこういうものではなくて、行政委員会を設けるべきである。建設省は、どちらかと申しますると事業を行なう立場にある、そういう面を持っておるのでございますから、それよりももう少し中立的な立場で判定できるように、行政委員会を設ける方が筋が通っているという意見が調査会ではかなりございました。けれども、結論的に申しますると、そこまでくれば、これは土地収用法そのものを根本から直さなければならなくなる。けれども、土地収用法を基本は動かさないで、これは特例を認めることでありますると、土地収用法による事業認定というものとの関係を考えなければならないのでありまして、この特例を適用するという認定と合わせて、土地収用法における事業認定というものを考えることになりますると、どうしても同じ行政機関が認定することになるのではないか、そうでないと非常な不便が生ずる、こう思うのでございます。もう一つは、蛇足でありますが、行政委員会ということになると、さしあたって総理府の土地調整委員会のようなものが考えられるのでございまして、この委員会そのままというか、あるいはむしろこれを強化してこの特例の措置の運用に当たるようにするという案でございますが、これは総理府の機構を幾分拡大することになるのであって、これは従来の行政機構の簡素化という歴代の内閣がとって参りました方針――これは何も内閣の方針をここで申し上げる筋合いではございませんが、われわれが行政審議会の方でほとんど公式論のように申して参りました総理府の機構の簡素化、あるいは行政委員会もできるだけ整理するという行き方と違うものでありますから、相当慎重に検討しないといけない。これもやはり時間をかけなければならないのであるから、とりあえず今回は特別措置であって、大体土地収用法の基本的な線に従いまして建設大臣が認定する。しかし、これは事重大であるから、そういう独任機関の判断では不十分である。そこで、公共用地審議会というものを作って、それが単なる諮問機関ではなくて、一種の議決機関的な、つまりこの議決がなければ認定できないというふうにしてあるのでございます。 次に、手続の簡素化のところを少し触れてみますと、たとえば市町村長が事業認定の申請書とか、裁決申請書の縦覧を怠った場合に、都道府県知事がこれを代行するということがございます。これは、そういう必要がこれまでの例で必ずしもなかったとはいえない、そういうところから出てきた案でございますが、これを広く考えますと、何か中央集権というか、地方の自治を侵すのではないかという懸念もないわけではございませんけれども、この法案を見ますると、今の事業認定なり裁決申請書の縦覧の事務の程度でございまして、この程度であれば、これは厳密に申しますと自治体の事務、自治事務とはいえない。むしろこれは国の事務であるから、従って、この程度であれば知事が代行しましても、市町村の自治権を侵すという心配はなかろう。今日の地方自治法におきましては、かなり慎重にこのような監督の作用を制限しておるのでございますが、この程度のことはこちらの特別措置でもって認めても、地方自治法の根本の体制に対して障害を与えることはあるまいという判断でございます。 それから、緊急裁決が一番御議論になることかと存じますが、これはわれわれも前の衆議院におきまして附帯決議があったことは伺っております。この衆議院におきまする附帯決議では、たしか補償額が決定される前に急いでこういう緊急の必要があるからということで、現在でも使用権を認める土地収用法百二十三条の規定がございますが、そういう緊急使用のような制度をあまりに広げると、今度は財産権、関係者の私有財産の保障を侵すことになるから、その点は十分気をつけてくれというふうな御決議であったように拝承しております。これにつきまして法案を見ますと、実は調査会の答申にも出ておるのでございますが、その考えにおきましては、どうも現行の土地収用法百二十三条というのが必ずしも額面通りに受け取りがたい。現行の制度は、六カ月を限って、とにかく緊急の必要のあるときに正式の収用委員会の裁決がある前にとりあえず使用をすることができる。これは収用委員会の許可は必要でありますが、補償をしないでとにかく使用できるという制度でございます。もちろん関係者から請求があれば、事業者としては一応自分の独自の見積もりによってある程度の使用についての補償を与えることになっておりますが、これは必ずしも常に使用料を払うわけでないし、いわんや今回のこの法案のような収用としての損失を補償するわけではないのでございます。単純な使用に過ぎない。けれども、実際は使用ではなくて、今回の緊急裁決の場合とほぼ同じ効果をねらっておるのでございまして、六カ月たたないうちに今度は正式の裁決があって、それがそのまま収用に持ち込まれてしまうという状況でございますから、それくらいならば、名目は従来は使用が今回は緊急裁決という名称をとっておりますが、しかし、実態は従来は使用料すら払うかどうかわからない状態であったのが、今回は一応正式に補償をする。ただ、しかし、その補償は、まだ補償の裁決をするように時期が熟してないのでございますから、従って、補償額は概算見積もりによる仮の補償ということになっておりますが、私はこれはやむを得ないものと思うのであります。だから、こういう点におきまして、とにかく補償は従来の現行法百二十三条の規定による緊急使用よりはさらに一歩進んでいる。この点は、今申しましたほかにも、たとえばあとで清算をいたしますときに差額が生ずると法定の利息の規定がある。担保の提供とか、いろいろほかにも条文がございますが、端的に申しまして、従来の現行の緊急使用に比べまして、ほんとうの補償に関する裁決なり、裁決の前の段階でございますから、もちろん御議論はあると思いますけれども、私はむしろ補償の点で一歩進んでいると考えるものであります。ただ、現行の規定はちょっと要件が違っているではないか、何か災害に関係があるような規定にちょっと見えるのでございますが、しかし、私はそう考えないのでありまして、現在の規定で緊急使用ができる。そういう場合が今回の法案におきましては緊急裁決の場合になると考えておるのでございます。現行の規定は、緊急の必要がありまして、しかも「裁決が遅延することによって事業の施行が遅延し、その結果、災害を防止することが困難となり、その他公共の利益に著しく支障を及ぼす虞があるとき」、こういうときに緊急使用になるのでございますが、「災害を防止することが困難となり、」というのは、それが唯一の要件ではなくて、「その他公共の利益に著しく支障を及ぼす虞があるとき」というふうになっておりますから、現在の規定でも緊急使用は相当幅の広いものと思われるのでありまして、それならば、特に今回の法案における緊急裁決が、緊急使用が現在できないようなことまで緊急裁決によって措置するというふうには私考えないのでございます。要件が格別拡張されたようにも思われないし、補償の方法におきましては、現行の規定よりは緊急裁決がかなり慎重になっているという点を御指摘申し上げたいのでございます。 時間もございませんが、補償につきまして、なお、現物補償の裁決の規定その他において整備されているということは、すでにこの法案の説明のときにほかでお話があったと思うのでございますが、ただ一言つけ加えますと、今回の法案におきましては補償の基準が必ずしも出ていない。明確でない。これが欠点でございます。しかし、現行の規定においてもやはりその点が明らかでないのでありまして、これは特別措置に入れることができればけっこうであったのでありますが、それができなければ、むしろ土地収用法そのものにつきまして将来もっと本格的に検討をし、規定を設けるべきであろうと考えております。この法案の中にも、もしこの法案が通過いたしますと、審議会によってその点をこれからさらに検討するようなことになっておりますが、単に特別措置に関するものだけでなくて、広く土地収用法そのものにつきまして、もっと補償の基準を明確にすべきである。しいて申しますと、この点がちょっと特別措置法につきましても不十分だと思います。しかし、これは、法案がこの意味において不適当だというわけではないのでございまして、土地収用法そのものについても当然将来検討すべき問題としてまだ残されていると考えております。 はなはだ不十分でございますが、一応簡単に申し上げまして、なお御質問を承りまして、足りないところを補足したいと考えます。 ―――――――――――――
○瀬戸山委員長代理 これで参考意見の御開陳は終わりましたが、これから委員の各位から御質疑をお願いいたします。 ただ、参考人の皆さんも非常に御多忙のところを切り詰めて御列席を願っておりますので、御質疑におきましては、どうか要点を簡明にお願いいたしたいと思います。 それでは、日野吉夫君。
○日野委員 まず、高根先生から順次お伺いいたしたいと思います。 この法律で緊急裁決がやられますと、一定の補償を立てて、ほかの異議やそうしたものをすることとかかわりなくどんどん進行いたしますことが、あとになって利子を付して清算をするような規定もありまするが、結局原状回復が不可能になる。先生の御指摘の通り、憲法七十六条では二項において、「特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」という規定があるのでございますが、結局原状回復ができないということになれば、建設大臣が最終決定をした、こういうことになるので、憲法上こういう法律の制定は許されない。財産権の問題は直ちに憲法違反とは言えないけれども、これは財産権ではない、一つの国民の権利でございますので、この点をこの法案はどう考えて立法しているのか。こう解することが至当だと思うのですが、これは憲法の趣旨に反する一つの立法だと考えるのですが、高根先生はそう考えることをお認めになられましょうか。私は、先生の話からいってそう解釈するのですが。
○高根参考人 お話と同じように考えております。行政行為によってできた結果をもとの完全な形に直すのを、結果の解除を求める請求権といいまして、行政行為によって被害を受けた人が持っておるところの完全な権利であります。それを実現できるようにして初めて民主主義の国家というものが考えられるわけでございまして、それができないようなことになりますれば、民主主義の憲法が一つあっても、その下の法律が民主主義でなく、かえってその反対の全くの暴政というものに近くなってしまうと思われるので、同じように、この七十六条二項に関することがきめられていると思うのであります。
○日野委員 私たちも実は、緊急な公共用地取得につきましてはいろいろな議論のあるようなことを承知いたしております。電力とか、あるいは鉄道とか、今日までいろいろやってきた。それらの諸君の私益の保護のために、またせっかく日本に育ちかけている民主主義の芽をつませない、そういう意味で、憲法違反の疑いがあるのではないか。そのほかにも二十九条関係の問題もありますが、その点はかなり明確に出ていると思うのであります。 そこで、雄川先生にちょっとお伺いしたいのですが、先生は調査会のメンバーであったように……。
○雄川参考人 違います。
○日野委員 そうですか。それで、今のような解釈もあるのですが、調査会の答申を見ると、もっと猛烈なやつがあるのです。裁定をやって、それに対して補償請求の訴えはできるけれども、その他の異議の申し立てはできないように解釈される。この立法にあたってはこれは削られたのですが、そういう調査会の決定もあるので、ごね符とか、あるいはデモをやるというようなことで立ち入りを拒むというようなことを防止するためにこういう憲法違反の疑いのあるような法律を作ることは、よほど慎重を要するのではないか。むしろ私たちは、現行法でも緊急裁決の条項もありまするし、もっと事前に用意をすればいいのではないか。とことんまでいって、どうにもならなくなってから土地収用法にかけるから期間がずれていくのであって、前もって用意をすればそういうことは短期間に、事業に十分間に合うようにできるのだ、こういうふうに思っているのであります。先生は大体賛成ということでおられますが、こういう内容を持った法律を特にここで作らなければならぬほど今の事情が緊迫し、緊急を要するのかどうか、そこらについてのお考えをちょっと伺いたいと思います。
○雄川参考人 御質問の趣旨がもう一つよくわかりませんが、最後におっしゃられた点、現在こういう法案を作らなければならないほどの必要が感ぜられるかという点については、正直に申し上げますと、私、最初にお答え申しましたように、留守もしておりましたし、現在の実情をそうよく存じておりません。ですから、積極的に是が非でもこういう法律を作らなければならないかと問われれば、それを肯定するほどの資料は持っておりません。しかしまた逆に、この調査会で検討された結果の結論、こういうものをこの段階において作らなければならないということを否定する材料もまた全然持っておりません。
○瀬戸山委員長代理 それでは次に、石田宥全君。
○石田(宥)委員 同根参考人にお伺いしたいのでありますが、私は特に農用地に関する電気事業の関係でお伺いしたいと思います。 電気事業関係で、電柱や鉄塔の敷地になりますところは、おおむね最近ではやや適正な補償が行なわれておるわけであります。しかし、線下補償といいますか、組下についてはほとんど無視されておる実情にあるわけです。農民の間にしばしば議論が起こりまして、会社当局に強硬に補償の要求をいたしますと、最近ようやく一部には多少の補償をするような事態も見受けられるのでありますけれども、おおむね無償でそれが使用されておるという現状であります。この点につきましては、実は会社側が調査したところによりましても、これは電気事業連合会の調査でありますが、昭和三十四年度で、ちょっと古いのでありますけれども、線下の総面積が一億二千八百万坪以上であります。そのうち有償契約は九百余万坪であって、それは主として都市となっているのであります。従って、無償使用を行なっている一億二千万坪というものは、これはほとんどただで使用されておる。こういう実情にあるわけです。電気事業団体は、それに対してやはり一定の法的な根拠を持っておるようであります。これはまた電気事業連合会が印刷をいたしまして、各事業所等にまで配付されておりまして、こういう統一見解のもとに処理されておるようであります。その要旨は、「農地上の上空占有は、空間のごく一部であり農耕等の土地利用に影響が少い。従来は、電気京業法」、これは昭和二十五年に失効しております。その「電気事業法第九条で当然公用使用権があり、使用権の認定が無用であった。」、こういう見解です。「従って、既設の」、まず第一番は、「大部分は使用貸借契約であり、口頭契約で無償になっている。」、こう断定しております。二番目は、「線路架設の際、踏荒料を実額以上に支払っている。」、こういうふうにやはり断定しておる。三番目には、「緑地地主は黙示の承認を得ている。」、まあ暗黙の間に承認を得ておる、こういうことにきめつけておるわけです。それから「都市周辺はケース毎に地価差損を補うのも止むを得ないが、これを農地にまで一般化する根拠は薄い。」、こういうふうに農民の要求を拒否しておるわけであります。 そこで、一点伺いたいことは、昔の電気事業法というものは二十五年に失効になりまして、その後は別の法律で、いわゆる公益事業令というものにこの電気事業はかわっておるわけでありますが、新しい法令の際には経過措置が何にもないのです。そういたしますと、昭和二十五年に失効になって経過措置がないという場合における法律的な関係はどうなのか、この点を一つお伺いしたい。 それから次には、この間、公益事業局長は、実害があれば補償するように指導監督をしておる、 こう言っておる。実害があるかないかということは、私はこれは非常に問題であろうと思うのでありまして、この間も申し上げたのでありますけれども、私の身辺だけで申しましても、私の宅地にくだものが植えてある。線下でありますから、適当に伸びて相当収穫がありそうになりますと、ただでぶった切っていく。昔からそうやっておるのだからどうも仕方がない、こういうことを主張しておる。それから、私の親戚で分家を出そうとしておる。ところが、高圧線の下でありまして、相当地ごしらえをして建築の準備をいたしましたところが、これは公益事業令に反するので建てさせるわけにいかぬ、こう言う。高圧線などがありますと、いろいろスズメがとまったり、しずくが落ちたりしても苗しろなどは相当被害を受ける。そういうことはその程度でわかりますけれども、自分の農地を売却をする、あるいは用途を何か転用するというような場合に、線下であるというと非常な制限を受けまして、ほかの土地のような転用というものは絶対的に不可能になる。そうなりますと、これはもう根本的に大きな実害が存するものではないか、私はそう考えておるのでありますが、まずこの二点についての御意見をお伺いしたいと思います。
○高根参考人 空間というものは、このごろ原子爆弾の問題が出ましてから、国際法で問題になっているわけでありまして、空間は自由でないということになっているので、どんなに高くてもその国の人の支配下にあるというふうなことになっております。それと同様に、電線のごときものは土地所有者の支配下にあるものでありまして、それを通す通さないについては、土地所有者の許可がなければ通せない。ただで許可する人は許可する。金を取る人は当然取れる。実需が起きて、実害に対する賠償を求めるのは別の問題であります。実害がなくても使用料は当然取れるということであります。そう考えます。
○石田(宥)委員 大へん有益な見解を伺いまして、ありがとうございました。 そこで、前の法律、昭和二十五年に失効した法律で公用使用権というものがあったから、農民は黙認をし、とにかく一応使わせておった。こういうことでありますが、しかし、その法律の効果がなくなったということとの関係ですね。今の御見解で、今度新たに起こる問題については明快でありますが、今までの、昔の法律の公用使用権というものが非常に強大でございまして、これはまた農民にほとんど権利思想もなければ、法律的な考え方も非常に弱いものでありますから、君たち、そんなこと文句を言えないんだぞと言われれば、はあそうですかと引き下がった時代に行なわれたものが、今日そのままに継承されておって、その実害を受けておる農民が、起業者に対して、今日となれば許可をするとかしないとかでなくて、今度は損害の補償を要求するというようなことになるのではないかと思われます。そういう点、やはり前に黙認しておったんだから、認めておったんだから、暗黙の間に認めておったんだから、今さら使用権というようなものを請求することができないものであろうかどうか。これを一つ法律上の見解を伺いたいと思います。
○高根参考人 黙認ということをおっしゃいましたけれども、私は暗黙に権利を放棄したというふうなことだろうと思うのであります。放棄ということは、ローマ法以来暗黙にはできないことであります。明示でなければ放棄はできないので、明示で放棄しているなら今でも拘束を受けますけれども、明示で放棄してない限り、いつでも権利は主張できると思います。
○石田(宥)委員 その点で大体明らかになったわけでありますけれども、従来私どもが関係をいたして参りました法律事案におきましては、たとえば農地の使用の場合でも、あるいは住宅の使用の場合におきましても、無償で使用するという場合は、農民の場合でありますと無償で耕作をしている者には耕作権は存在しない。人の家に住まわせてもらっておるが、無償で住んでおる者には居住権というものはない。こういうふうな裁判所の取り扱いが多かったように思うのでありますが、ただいま申し上げましたような事案について、そういう法律上の原則からいたしますと、やはり電気会社が持っておるものは正当な権利ということができないのではないか、農民は当然撤去を要求する――別な法律で撤去を要求できなければ、損害請求ができる、ということになるのではないかと考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
○高根参考人 上空を使用することを許可しない限り、撤去ももちろん求められると思います。使用してはいけないということであれば、向こうは撤去しなければならない。所有権に基づいて撤去が請求できると思います。
○瀬戸山委員長代理 石田さんに申し上げますが、本案に直接関係のある事項だけで、鑑定のようなことは一つお控え願いたいと思います。
○石田(宥)委員 委員長に申し上げますが、電気事業というものは、いろいろこの法案の中に入っておる。委員長も御承知だと思いますけれども、この法案の第二条にもございますし、政令の中にもある。電気事業というものが、特に発電所だけでなくて、送電線等も入っておるわけであります。同時にまた、先ほど田上参考人も言われたように、いわゆるごね得というようなものも巷間伝わっておる。でありますから、電気事業に関係するものは本法と直接関係があるのですがね。委員長は、電気事業と本法の関係について、関係がないとおっしゃるのでございますか。その点を明らかにしていただかないと、審議を続けるわけに参りません。
○瀬戸山委員長代理 関係はないとは言えませんが、既存の問題について法律問題を聞かれることは……。この法律の事項について一つ見解をただしてもらいたい、こういうことです。
○石田(宥)委員 これは直接の関係で、今後電気事業を施行する場合に、公用地取得がこの法律によって行なわれるのですから、関係があるとかないとかいうことは、これは委員長、ちょっとおかしいと思うのですね。法律に直接関係がないなら、何も私は聞いておりません。従来の問題があるところへさらにこういう法律ができるから、だから私は言っておるのです。関係がないなら私はやめてもいいのであるけれども、あるでしょう。はっきりして下さい。
○瀬戸山委員長代理 石田さんに申し上げますが、一つ参考人に意見を求めて下さい。
○石田(宥)委員 参考人に意見を聞いておる。 それで実は、これは委員長もこの間聞いておられると思いますけれども、こういう電気事業の指導監督というものは、公益事業局長が直接当たっておるし、通産大臣の所管なんですね。ところが、通産省の中の直接の責任者が、経過措置などについて私が質問したのに対して、実際知っていないんですよ。農地の関係というものについては、農地法の五十四条でちゃんと特例規定があるのです。そういうことすら知らない通産省の役人が、こんな公権力を強化するような特別措置法というようなものができたときに、一体何をやるか。だから問題なんです。この線下補償については、大体今の高根参考人の御意見で明確になったのでありまして、この見解は一般論としては正しい見解であると思うのでありまして、あとそういう見解のもとに通産省がどういう取り扱いをするかということが今後の問題でございます。特に今申しましたような特別措置法案が成立をいたしました暁において農民の権利がじゅうりんされるおそれが多分にある、こういう点で私はこれを重要視しておったわけであります。 要点は大体終わりましたが、委員長があまり審議権を無視するようなことをおっしゃるから、そちらの方に時間を食われたので、これはまたあとで委員会で質問を申し上げたいと思います。
○瀬戸山委員長代理 小松幹君。
○小松委員 私は田上参考人と高根参考人にお尋ねいたします。 問題は、この措置法で私権を最終的にどのように擁護していくか、そこのところだけでございます。特に最近は、公共性という名のもとに私権というものを圧迫してくる過程になっております。最終的には私は私権よりも公用性あるいは公共性というものが、勝ら負けでいえばおかしいけれども、勝利になる、正当性があると思っております。しかし、だからといって、私権というものを公共性あるいは公用性の名の本とに時間的に、あるいは書類的にも、あるいは訴願、訴訟の上においても圧殺していくというようなことでは、私は私権の保護というものが根本的にこわれると思うのです。やはり所有権には一つの私的な欲望というものもあると思います。しかし、私的な欲望とともに、やはり地域社会に生きていくためには、どうしても生活を守っていかねばならぬという追い込まれた、いわゆる生活上の私権というものが厳然とあると思う。特に鉄道を作るから庭先をくれとか、あるいは電柱を作るからこれだけの土地を分譲せよ、こういうようなときよりも、もっと大がかりなダム建設をするとかいうような場合には、生活の一切、家から屋敷から田地、田畑、山林、あるいは生活の居住の場所すらもすべて失うというような場合には、私権というものを相当守ってやらなければ、公共性の名のもとに一切が葬られてしまうと思う。その点土地所有というのは、最終的には収用されるという前提を持っても、相当時間と労力とをかけて私権というものを守っておる。 ところが、この特別措置法では、収用法の精神というものを根本的に変えようとしている。これは名前は収用法を残しておいて、特別措置をやるというようにうまく言っておるけれども、これは基本的には私権というものを公共性で圧迫する特別措置だと思うのです。その点やはり特別措置法の中にも私権というものをどういう形で、最後にはここで守るのだ、あるいはここで本人が納得する点を釈明しあるいは訴願、訴訟するなどということがなければならぬと思う。この特別措置法というのはその辺がまことにあやふやである。たとえば緊急裁決によって補償金を積み立てたら、もう有無を言わせずやれる。あるいはそういう場合には一切の訴願や訴訟は意味がないのだ。そうして、しかも、立ち入り調査もその認定申請書も内容が実にずさんでもいい。自分の好き勝手な事業計画さえぽんと出せば、あとは裁定委員なり、あるいはそこの委員会等にまかせておけばやってくれるのだ。こういうふうなことになれば、私は相当あやふやな土地収用ができると思う。特に土地収用というのはおおむね公共性でありますから、市町村、県、国、国でも農林省、建設省、あるいは公共企業体というものがやると思うのですが、そうした場合に、その責任の者というものが、どういう立場でこの法律をたてにとって私権を圧殺してくるかということを考えた場合に、やはり法律的にも相当守っていかなければならぬと思いますが、その点どういうような含みでこの法律は私権を擁護、あるいは私権に対して守っていこうという考え方があったのか。この点を一つ両者から御説明願いたいと思います。
○田上参考人 簡単にお答え申し上げます。私はやはり私権は訴訟によって守らるべきものであって、これは最終的には司法権によって基本的人権とかあるいは財産権というものが守られると思うのであります。そして、ただいま御指摘がございましたが、簡単な調書というか、土地物件調書を正確に作らないでいたしますことは、やはり私は私権の保護からいって許されない。しかし、おそらく御指摘になりましたのは、この法案の第十五条のところであろうと思うのでありますが、これはきわめて特殊な例外の場合でございまして、それは立ち入りをこばみあるいは妨げるために「測量又は調査をすることが著しく困難である」というふうな表現でございまして、事業者の方でほしいままに、正確な調書を作らないでというふうなことはむろん許されない。そういうことは私どもも考えないわけでございます。ただ、物理的に不可能である、実際に立ち入りをこばんで、調書を作成しようと思っても作成できない場合にどうか。その場合には、一応その事情を明確にすれば、調書にその旨を書きさえするならば、「知ることができる程度」において調書を作成してもよろしいということに法案は読めるのでございます。 それからまた、なお御指摘がございましたが、なるほど立案の過程においては、あるいは訴権を制限するという趣旨日の議論があったかと思うのでございますが、結論的に申しますると、この緊急裁決につきましても訴訟で争うことは当然許されるわけでございます。ただ、先ほどのほかの御質問の中にもちょっと私拝聴したのでありますが、実際にそんなことをいっても、緊急裁決で工事を始めてしまうと、あとになってどうにもならぬじゃないか、原状回復はおそらく不可能であろう、だから関係者、ことに土地所有者などの権利は十分救済されないという御指摘がございまして、私この御質問は、ある意味においてもっともなように思うのでございます。ただ、これはそこまで参りますと、現行の土地収用法における百二十三条の緊急使用、これもやはり同じことなのでありまして、現在よりこの点で法案が一歩退歩しておるというふうには思わないのでございます。また、ただいまの御質問がそういうことであったかどうか、ちょっと私理解が足りないのでございますが、事実その点、緊急裁決のあった後は原状回復が困難になるということは御指摘の通りだと思いまするけれども、しかし、常にそうであるかどうか。また事実困難であるとしても、私は訴訟で当然権利を主張することが許されると考えておるのでございます。ただ、この法案によりますると、確かに四十二条におきましては「訴を提起することができない」というふうな文章がございます。しかし、仮補償金について訴えを提起すること、これはいずれあとで補償の裁決があるわけでございまして、補償裁決においての補償額について争うことはむろんできるのでございますから、その場合で仮補償金について争うことを許さなくても、この点は十分救済できると考えております。御質問の趣旨は、その点あるいはそうではなくて、そもそもそういう収用を許すべからざる場合に、なお急速に緊急裁決によって一応仮の収用を始めたといたします。そしてあとになると、もう原状回復ができなくなるから、救済が手おくれになるということの御指摘ではないかと思うのでございます。この点は、確かに二面そういうふうにも思われるのでございまするけれども、とにかく訴訟で争うということは当然許されると思うのでございますし、また、現行の制度と比較いたしまして特にこの法案がその点において欠点を持っているようには思わないのでございます。
○高根参考人 この法律は、私権を擁護するという点はことさらに無視していると思うのでございます。どういうふうにしたら私権が擁護できるか。もともと土地収用というものは、非常に私権の擁護に薄いものでありまして、A、B、Cと三軒のうちの一軒をどうしてもこわさなければならないという場合に、どこをこわすかという場合に、どれでもいいはずということになりまして、その間に自由裁量に似たような処置が行なわれる。そもそもの初めから私権の保護ということは薄いのであります。補償の基準を法律の中に設けるということと、行政救済を完備するということによって私権は擁護されると思うのでありますけれども、行政救済、それはともかくといたしまして、訴えの段階において救済が私人にそう与えられるということはないので、行政事件訴訟特例法の十条二項で執行停止がありました事件を統計で調べますと、千件のうち六件でありまして、一%もないのであります。大体西ドイツにおきましては、千件が千件、原則として訴えを起こせば執行がとまるはずなんでありますけれども、日本では千件のうち六件しかとまっていないというようなことなのでありまして、こういうような現状におきましては、建設大臣が認定を慎重にやろうとしても、勢い慎重にいくわけにはいかなくなって、ルーズになってしまうだろうと思います。ルーズになったあとで、私人が訴えを起こしてみても、その訴えによっては収用手続はとまりもしないのです。どこまでいってもとまらないのですから、現在のこの特例法をそのままにおいては、私権の擁護の道はどこにもないと思われるのであります。
○小松委員 質問でありますから、意見は述べないつもりでございますが、やはりこの調査会のメンバーにおられた人もあると思いますが、今後こういう問題が出ると思います。やはり基本的には、ただ建設省が事業を遂行するためにこうだというので法律案を出してきた。その基礎的なものをいっても、やはり調査会のメンバーの方々は、私権という基本的な問題をどこで擁護するかということを、法律のどこかにがっちりと確保しておらなければ、今まででも各種の土地収用が行なわれておりますが、金でごまかすか、あるいはいろいろな政治権力なり、あるいは宣伝なりでこれを圧迫して、きわめて非民主的なやり方を過去において幾たびもしてきておる。たとえたならば、事業認定書を出してやれば、あるいは調査するのだからといって、黙って森林に踏み込んでどんどん立木を切ってしまう。こういうことが現実に今までにもやられておる。木というのは、立っているときに値打があるので、切り倒してしまったら、時価相場の半額もしない。そういうように、私有物件に対しても過去においてきわめて粗雑な扱いをしてきている。その上に持ってきて、こういうきわめてルーズなものを用意されたのでは、いよいよ被害者というものは泣くにも泣けないというのが、実情だと私は思うのであります。 次の質問は、先ほども申しましたように、おそらく公共企業の名のもとにやる起業者というのは、市町村か、県か、国か、公営企業体だろうと思いますが、そういうものの中で、特に建設省関係が起業者になることが多いと思います。その起業者になるものが、自分の省で委員会を持ち、審議会を持ち、何もかも自分のところに持ってきて、認定からすべてをやってしまう。自分が起業者で、自分が何もかもやる。そういう行政というものは、実際はあり得ないと思う。公共事業の認定にしても、たとえば私の知っている県で、今度農業関係の灌漑対策の総合開発でダムを作ります。そのいわゆる農林省のダム作りにしても、全部これを建設省に持っていかなければならない。そして一応建設省に儀礼を尽くしてやらねば何もできない。私は農林省がやり、建設省がやるということならば、もっとその背景にある国がやるのだということならば、何も建設省が責任を持つのじゃなくて、国全体というか、内閣そのものが責任を持つという意味で、特に土地の調整なり、土地の取り上げなり、そういうものの行政府というものは総理府なら総理府に持っていかなければ、建設省は、名前は公共性を振りかざしてやり、その補償をするときにはこう言うのです。――私の方はダムや堤防を作るのが仕事であります、道路を作るのが仕事であります。かえ地の選定は、それは知事がやって下さい。そして、かえ地をして、そこに公共水道を作り、下水道を作り、あるいは村落を作るのは厚生省の仕事でございます。部落の学校を作るのは文部省の仕事でございます。――特別措置法の中にも、今度は新しく環境整備とか、あるいは生活再建の措置とかいっておりますが、肝心な建設省が、生活再建の措置というて一体何ができるか。家くらいは建てるでしょう。しかし、土地を見つけてそこに村作りをするというには、農林省の予算が要り、建設省の予算が要り、厚生省、文部省に関係のある予算が要る。そうなると、少なくとも各省々々に行かなければ話がつかない。生活再建とか環境整備というけれども、しりはすべて知事にまかせている。起業者は建設省であるが、最後の生活再建なり環境整備の責任は知事にまかせたり、あるいは役所のセクショナリズムによって方々に分散されている。そうなれば、土地収用あるいは公共事業として認定する最終の責任者というものは建設省ではなく、少なくとも行政府の最高である。もっといえば、内閣総理大臣が国権をもってやるのだというなら、なぜ総理府に持っていかないか。そういうふうに持っていかないで、便宜的に建設省に持っていくけれども、建設省は大きな事業者であります。そういう誤りを侵していると私は思う。だから、この法律というものは実際生きてこない。現実に私が知っているダムでも、中部電力がやったあの大井川のダム補償のときには、一企業体であります社長みずからが乗り出して、土地も作りましょう、家も建てましょう、田も畑も作りましょうというので、全部ひっからめてやったからあの大井川の新農村ができて、非常にスムーズにダム土地から移行することができたが、建設省のやるダム工事というようなものは、補償をやるからどこへでも行け、ほとんどこういう式でやられている。それならば、生活再建とか何とかいっても、一体だれが責任をとるのか。そういうことから考えたならば、この行政責任というものは建設省ではない。少なくとも内閣自体がやるとするならば、こういう行政的な、生活再建ということは特に各省にわたっているし、土地そのものも各省にわたっているし、事業そのものも各省にわたっている。そういうものは、総理府なら総理府ががっちり持つべきである。そういうことから考えた場合には、私はこの行政責任というものは、建設省の諮問機関でいいかどうか。やはり総理府か何かのもっと高い見地からの、あるいは責任もとれる省、こういうところに持っていかなければつじつまが合わなくなると私は考えるのです。その点、調査会の方でもそういう考え方があったということを今あなたから御発表になりましたが、私は確かにその意見は正しいと思うのです。そういう点について、もう少し両者に、高根さんと田上さんに、調査会でどういう意見があったか、あるいはどういうふうにすることが正しいのか、この点についてお伺いしたいと思います。
○田上参考人 簡単に申し上げます。調査会では、土地調整委員会のあたりを大体強化して、建設省ではなくてそこで認定をするという意見がございました。けれども、最終の段階になりましたときには、大体答申と申しますか、あるいは今回の法案の線で一致したのでございます。これはただいま御指摘がございましたように、私どももこういう問題は、はたして建設省でよろしいかどうかは問題があるというか、むしろ疑問があると思っております。ただしかし、今回におきましては特別措置でございまして、そこまで参りますと、やはり土地収用法の根本に触れる、土地収用法そのものをまた再検討しなければならないと考えておるのでございます。この法案をごらんになりますると、特別措置を適用する認定が同時に土地収用法における事業の認定と結びつくのでございますから、どうしても本法の方まで変えないと、ちょっと実現が困難であるということが最後に一致した一つの理由でございます。 それからもう一つは、先ほど申し上げましたが、確かに御指摘のような点、これは率直に申し上げますると、日本のお役所は、やはりセクショナリズムというか、おのおの自分の権限を強く主張する、容易に妥協しないという非常な弊風がございます。けれども、これは大問題でございまして、たとえば防災基本法などの考え方においても、われわれはかつて主張しておるのでございます。そういうお考え、まことに私もそう思うのでございますが、どうしたらいいかというと、総理府と申しまするが、総理府にただ持ち込めば簡単に済むというわけではむろんないのは、もう御承知の通りでございまして、たとえば関係の各省から人を集めて、そこでいろんな総理府の外局を作るということが、従来はたして十分に効果、実績を上げているかというと、必ずしもそう簡単にいえない。この点、むしろ私どもはまだ研究がはなはだ不十分でございますから、あるいはお知恵を拝借したいくらいに思っておるのでございます。先ほどの総理大園ということも、確かに総理大臣一人で処理できるわけではないし、総理府の本府ではむろんこういう問題はできない。これは古い考えでありますると、都市計画法などでは、建設大臣が決定いたしまするときに内閣の認可を受ける。この趣旨は、御指摘のように各省が足並みをそろえて、内閣の認可があればそれに従わなければならないという拘束を受けるという考え方であったと思うのでございます。しかし、はたしてこの都市計画法のそういう構想が今日なお効果的かどうかは研究の余地がございまするから、私などはまだはなはだ未熟でございまして、もしそういう問題がございましたら大いに勉強したいと考えております。 今回の法案は、私の意見というか、あるいは調査会の立場におきましては、特別措置でございますから、今の問題は本法の土地収用法そのものと関連して、近い将来において本格的に検討すべきである、そういう意味で意見が一致したのでございます。
○高根参考人 私は調査会に関係ありませんので、お答えいたしかねます。
○小松委員 私は、こういう特別措置法を作るよりも、本法の土地収用法を改定するなら改定してもう少しやるべきだったと思うのです。その点については意見になりますから、差し控えたいと思います。 最後にもう一つ。調再会の中で補償の仮積み立てですか、これで緊急裁決をやったときに仮補償する、こういうことを許されております。そのときに出たのに、米の供出が最高裁で一応供出のあと払いを認めたから、それは憲法違反にならぬ、こういう論拠を出して土地と引きかえに考える。米なら幾らでもあります。そういう消費物資をもって最高裁の結論が出たから、この土地収用法の補償のあと払いが憲法違反になるならぬ、こういう論議はおかしいと思う。やはり所有物件は消費物件ではありましょうけれども、消費物件でないもの、オンリー・ワンの物件もあると思う。その人の持っておるオンリー・ワンの物件に対してそういう考え方で臨まれたということは、どういう考え方か。私はその点については、はっきり裁定があって補償がなされる額がきまったときに初めてそれが施行されるのでなくてはならぬと思うのですが、この点についてはどうか。特にまた、時価相場ということになりますと、さらにまた時価相場の考え方も相当区々だろうと思う。その点は抜きにしましても、やはり憲法違反の疑いがあるんじゃないか。この点についてお尋ねします。
○田上参考人 はなはだお言葉を返すようでありますが、私は、憲法二十九条は、事前に補償しなければならないということはそれほど明確に現われていないと考えております。従って、抽象論でございますが、事後の補償の支払いであるから当然憲法違反であるという議論はとらない。けれども、確かに御指摘のように、それなら、もうめんどうだから、みなあとで支払えばいい、こういうふうな立法がたくさん作られることになると、それはやはり憲法の精神というか、趣旨に合わない。けれども、それは国会で慎重にそういう点を御考慮いただきたいということでございます。私ども法律学者が違憲という場合は、大体裁判所における問題でございまして、裁判所で違憲とするようなことまではこないのじゃないか、こう考えているのでございます。 それからもう一つ、ただいまの御質問の中にございましたが、訴訟上の救済の点。これは先ほど高根参考人もたしか御指摘になったと思うのでございます。実際に一般的に政府あるいは当局の判断が間違っておる場合であっても、とにかく一応収用委員会の栽決によって緊急裁決がございますと、工事を始めてしまう。こうなると、どうも取り返しのつかないおそれがある。だから、裁決なら裁決、そういったことが確定した後でないと工事を始めてはならないというふうにすれば、比較的地主側、権利者の私権の保護においては徹底するというお考えであると思いますし、私もその点は同感でございます。ただしかし、ここまで参りますと、行政処分には、先ほども高根参考人も御指摘になりましたが、執行力なり執行停止の問題がございまして、実をいえば現在の制度で、一応行政処分は、取り消しの訴えを起こしてもなお執行できるということは当然問題になってくるわけでございます。もしそういう御懸念を強く申しますると、現在の行政事件訴訟特例法における執行力を持つということがそもそも憲法違反の疑いを持ってくるわけでございます。しかし、私は一応現在の制度は、行政につきましては必ずしも憲法違反でない。だから、あとで処分が取り消されるような場合でありましても、一応取り消しの判決があるまでは処分は有効であり、執行できる、こういうふうに考えるのでございます。もしそういう立場に立って考えますると、緊急裁決のようなものも必ずしも調子の合わない、きわめて異例であるとは言い切れないのでございまして、行政処分が執行力を持つということが、もしわれわれのように一応合憲と考えまするならば、緊急裁決の問題も一応お答えができると思うのでございます。しかし、この点は学説の上では確かにいろいろ違っている立場もございますし、実を申しますると、この点は高根参考人のお考えと私の申し上げておりますことがあるいは前提においてやや食い違っているかと思うのでございますが、私は一応そういうふうに一般的に行政処分が執行できるし、訴えがあっても一応なお執行停止しないという立場をとり、それで憲法上はそういうことが許されるという立場をとりますと、結果的にはこの緊急裁決も、事後に支払う、裁決がまだ争う余地があってもとにかく執行できるという考え方は、私はそれほど異例ではないと考えております。
○小松委員 普通のいわゆる私権とかいう民事に関係するものは裁判で争っているわけでありますが、こういう問題は最後の段階では、先ほど言ったように、行政裁判のような問題はやはり裁判上の仮処分の執行とか、そういうものができない。できないだけに、そこに到達する歩みというものはもう少し慎重な法律的処置をもっていかなければ、そこに至るまでの歩みがずさんで、いいかげんで、そして、最後になって私権を保護するのもそれは裁判の権利は及ばないということでは、どうにもならぬ。少なくとも、裁判において及ばない、仮処分の執行などが行なわれないとすれば、この法律案の建前として、もう少し慎重な書類、あるいは認定書の作成をする。緊急裁決などというようなことでなくして、慎重な処置をして、その慎重な処置があって初めて仮処分の執行などができないというところに追い込んでいかなければ、私は法律としては片手落ちじゃないかと思うのです。この点、調査会の方は何だか結論だけを先に急いで、何か無理だというような感じがしてならないのです。あまりこういうものを結論を急ぎ過ぎて、そして私権を最終的に圧迫しているのじゃないか、こう見るわけであります。 特に、この法律案で質問を最後にいたしますと、生活再建のための措置というようなことでございますが、この点について調査会はどの程度御判断になり、考えたか。その点をお伺いいたします。
○田上参考人 十分なお答えにならないかと思いますが、調査会といたしましてはかなり熱意を持っていたのでございますけれども、答申が建設省の関係でございまして、他の省にまたがることでありましたので、幾分その点が不明確になっていると思います。しかし、本来の答申の趣旨――これも、何も私が調査会の考えを正確に申し上げる能力があるかどうかわかりませんけれども――本来の趣旨は、農林省あるいはその他厚生省なり、各省がやはり歩調を合わせて、この意味において関係者の生活を擁護していってもらいたいというつもりであったのであります。しかし、文章の上では、義務づけるというか、そういうことが幾分弱くなっておりますので、確かに御指摘のように不徹底な感じがあるようでございます。ただしかし、繰り返し申し上げまするが、現在の土地収用法の規定と比べまして特に一そういう補償あるいは緊急裁決も私はそういうふうに思うのでございますが――特に退歩しているというふうには思わないのでありまして、かなり、限られた時間でございましたが、改善のため努力をし、またその結果が相当現われている。しかし、御不満はございましょう。完全なものとはとうてい思えませんけれども、しかし現状、従来の法律に比べれば相当進歩しているように考えておるのでございます。はなはだお答えになりませんけれども、一言だけ……。
○小松委員 最後に一つ。調査会のメンバーの方々は、今後もこうした問題について相当突っ込んだ研究をされると私は思いますが、取り上げるために一生懸命精を出して、取り上げるために好都合な法律を作っておられただけでは調査会は起業者の出店になっただけになる。起業者の出店になって、取り上げるだけの法律をうまく合法的にやるということ、それももちろん必要でしょう。しかし、取り上げるための合法的な法律の裏づけならばだれでもできる。しかし、それを最終的にどこの限界線で守っていくかという、その守るということもやはり今後は考えてもらわねばならない。ということと同時に、今度は、中間的に守るというのを、生活再建で守っていこう、あるいは現物給付で守っていこう、こういうところに、あなたは今幾分の進歩があると言われるのでしょう。それならば、現物給付にしても、あるいは生活再建の環境整備の項にしても、ほんとうに手がかゆいところに行き届く法律案にして下さらなければならぬ。取り上げるところだけは簡単にぱっぱっと、どんなことをやっても取り上げるのだ。一回ヘビがワクド(ヒキガエル)をにらんだらそれはどっちに動こうともぱくっとやろうという、その法律だけに集中しておる。やはり逃げるところのものを考えてやらなければいけない。この点は私はヘビがワクドをのむときのような法律案ではいけないと思う。この法律案というものは、ヘビからにらまれたワクドみたいなもので、どうにもならぬ。訴えもどうにもならぬ。その逃げ道は、この法律によりますと私は生活再建の項だろうと思うのです。ところが、その生活再建のところがまことにずさんであるという気がしてならない。このずさんさというものを私は指摘せざるを得ないのですが、これは法律案の意見になりますから……。今後調査会の方々もいろいろ関係してくると思うのです。こういう点、法律家としてもう少し責任ある態度を持ってもらいたい、こういうふうに私は申し上げます。調査会の方をいろいろ責めたってしょうがないが、実際は日本の官僚は、戦後民主主義というものをうまい工合にカムフラージュするくせがついておる。そして諮問機関、審議会というものをやたらに作りたがる。そうして諮問機関や審議会のいわゆる学識経験者の意見をさもうまい工合に逆利用して、私権を押えてくるというのが今までのやり方なのです。それはあなたたちも学者としておわかりだと思う。諮問機関なり調査会のメンバーになった方々が、うっかりそのペースに乗るならば、私は今後こういう問題は多く出てくると思う。この点一つお考えになっていただきたいと思うわけですが、午後はまた建設省の方に質問することといたしまして、以上で参考人に対する質問は終わります。
○瀬戸山委員長代理 北山愛郎君。
○北山委員 この土地収用の問題は、その中心が、私益と公益の法律的な、しかも民主的な調整というところに重点が置かれなければならぬと思うのです。 〔瀬戸山委員長代理退席、委員長 着席〕 そこで、収用を受ける土地の所有者なり権利者という人たちと、起業者あるいは国家権力というものとの力のバランスを考える。そうしますと、土地の所有者はそれだけの個人でありますけれども、相手方は巨大な資本力を持った起業者であり、それをバックアップする公権力である。国や地方公共団体、市町村、みんな土地の取得に協力をしなければならぬということで、総がかりでそういう土地の取得に努めるわけなんですね。そういう力のバランスから見てここで最も大事なことは、事業認定における審議会のあり方、これも問題でありますが、それと同時に、収用委員会というものが公正な立場に立って、しかもどちらかというと、準司法的な内容の裁決をするわけでありますから、そういう独立した強い能力を持ち、また立場も持てるような収用委員会にしなければならぬ、私どもはそう思うわけであります。そういうような強力な機能の発揮できるような収用委員会をこの法案の中で作るというのが、われわれ国会議員の任務だと思うんです。そうでなければ、現在のような力関係においては、どうしても土地の収用を受ける所有者というものは力がないのでありますから、そこで私権が公益という名のもとに圧迫を受けるという結果になりがちなんです。ですから、こういう法律を作る際に慎重に、ほんとうに慎重にやらなければ、この力のバランスがくずれると思うんです。 そこで、これは調査会の答申の中にもあるのでありますが、収用委員会は弱体だ、そこで、事務局を設けろという意見がございます。しかし、現在の収用委員会は、国の機関でありながら都道府県の県庁の片すみに寄生しているような格好で、知事というものの所轄のもとに置かれて、ほんとうに人に知られないような格好で存在しているというような、そういう非常に影の薄い存在になっておる。そういうものでいいのであるか、どうであるか。これは単に事務局を置くということだけじゃなしに、ちょうどイギリスに土地裁判所がありますように、もっと強力な裁判機関的な強い地位に置かなければならぬ、こう思うのであります。その点について調査会でも問題になったと思いますが、調査会の答申の中の事務局を置けというこの精神が、この法案では実行されておらない。その点については、田上さんはどのように思いますかという点です。 それから、時間がございませんから、あわせてお尋ねをします。今度の緊急裁決と現行の土地収用法の百二十三条の緊急使用ですか、それとは大体同じだ、こういうふうにお話しになったのです。大した違いがないようにお話しになったのですが、これは非常に違うと思うんです。収用委員会というものは、単に起業者の申し出を受けて、そして便宜的に仕事をするというような存在でない。もっと権威のある存在である限りにおいては、現行の百二十三条と今度の緊急裁決とは非常に違うと思うんです。なぜ違うかといえば、あそこの条項の中に、事業の執行がおくれるというだけじゃなしに、災害その他いわゆる公共の福祉に関係があるという理由がそこにある。と同時に、その使用の期間が六ヵ月ということでありますから、六ヵ月で済まないような問題を裁決するはずがないわけです。そういうようないろいろな理由からしまして、この現行の百二十三条と今度の緊急裁決というものは非常に違う。ただ、収用委員会がいいかげんな態度で便宜的に処理をすれば同じことになってしまう、私はそう思うんです。そういう点で、同じような、違いがないようにお話しになったのですが、私は非常に違うと思うので、その点をあらためてお伺いをしたいと思います。 それから、その他にも調査会の答申の中に、たとえば補償額についての課税の問題がある。これは売買じゃないのですから、この収用によって土地をとられるということは、これは法律の裏づけがなかったならば強盗と同じことなんです。強制的に取り上げられる。ですから、これは売買のような譲渡所得だというふうにみなして、そして現在の税制では税金をとられる。これはけしからぬというので、それは減免しろという答申案の内容がございます。それを実行されておらない。これについてどのように思うか。 それから、これは高根先生ですかのお話に非常にはっきりありましたが、あらかじめ補償基準というものを明らかにする必要がある。これはイギリスにおいても、こういう土地の収用についての補償基準に関する単独法があるわけなんです。土地裁判所が一方にあり、一方では補償基準についてのしっかりとした法律がある。そういう二つの柱の上に民主的に行なわれる、長い歴史を経てそういうふうになってきたと思うのであります。この答申案の最終のところに、補償基準についてもやらなければならぬというようなことをちょっとつけ加えただけなんです。そうじゃなくて、こういうように土地収用の仕事をスピード・アップする条件として、むしろ前提として補償基準というものを同時にやるのでなければ、私益と公益との力関係のバランスが失するのではないか。そういう点について、法律家としてどのようにお考えになっているか。 全体として、答申案と、そういう答申案の中で議論された問題がこの法律の中には入っておらない。それについて、これでもいいのか。今、先生は、これでもいいのだというようにおっしゃったようでありますけれども、私は厳密に言うならば、そういうお答えが少し不満なんです。もう一ぺんお伺いしたいと思います。
○田上参考人 お答え申し上げます。 収用委員会につきましては、調査会としてはその事務局なりその他、あるいは経費の点につきましても、政府の方でもう少しめんどうを見るようにして、陣容をふやして強化してもらいたいという、かなりはっきりした一つの項目を掲げておるのでございます。これは実を言うと、ちょっとまた問題もあるわけでございまして、それは、過去の実績を見ますと、非常に忙しいところも確かにあったと思いますが、また、各県とも同じように忙しいかというと、そうではなくて、ほとんど仕事のないような収用委員会もこれまでございます。そこで、一つの考えは、各県ばらばらでなくて、数府県にまとめて、そういう数を減らして、幾分強化された収用委員会を置くのはどうか、こういう案も一部に出ておったのであります。しかし、繰り返して申し上げますように、そこまでくると、土地収用法そのものに手をつけないとやはりやりにくいのでありまして、土地収用法の方では従来通りの府県の収用委員会、しかし、特別措置の関係でそれとは別に、また幾分強化された、あるいは数府県を統括するような委員会を作るということはちょっと出しにくかったのでございます。しかし、法案に載らなかったということは、必ずしもわれわれがそれでよかったというわけではなくて、できれば事務局なり、あるいは経費の点においても、もう少し考えていただきたかったと思うのでございます。そういう気持でございます。 それから、税の問題につきましては、免税あるいは譲渡所得の扱いでございますが、率直に申しまして、こういう点についてわれわれは何とか入れていただきたかったと思っております。そういう意味では、現在の法案がこれでまことにけっこうであるというのは少し私としては言いにくいのでありまして、なおそういうふうな点では入れていただきたいような条文、希望は持っているのでございます。御指摘の通りでございます。 それからなお、補償基準でございますが、これも実を言うと、調査会の方では、率直に申しまして時間が十分になくて、あれは昨年の九月からでありますから、約半年の間でありまして、補償基準の決定が重要であることはもうほとんど異論がなかったのでございますが、結局、これは次の段階においてできるだけすみやかに考えようということでございます。もっとも、そんなことを申しましても、私がこれからさらにそういう問題をやるというわけではないのでございまして、この法案によりますと、調査会とは全く別の機構になるのでございます。そういう新しい審議会においてできるだけすみやかに補償基準についても結論を出すことを期待し、また私どもはぜひそうしていただきたいと考えております。 はなはだ不十分な答えでございますが、お許しいただきたいと思います。
○北山委員 高根さんにお尋ねいたします。 高根さんは非常にはっきりした態度で、よくわかるのです。そこで、結論として先生はどのようにお考えになるか。この法律と、いろいろなこれに伴うたとえば補償基準の問題であるとか、そういうものも合わせたならば、先生のお考えになっているこの法律の悪さというものが若干よくなるのじゃないかというふうにお考えであるかどうか。それらの点について、結論的に高根先生にお伺いしたいと思うのです。
○高根参考人 補償基準と訴願法と行政事件訴訟特例法、この三つは少なくとも同時に規定して、それが十分な規定ができなければ、この法律だけ出てしまうことはとても賛成できないということであります。どういう法律ができるか、この訴願法も行政事件訴訟特例法も、今草案になっているものはとても賛成ができないものでありまして、そういうものが明治二十三年からありますところの訴願法にかわって新しく訴願制度になっても、それと合わせればこの法律も適用していいというようなものではなくて、今案になっているようなものはとても立法願うことのできないような大きな欠点を持っておるものと考えております。
○加藤委員長 木村守江君。
○木村(守)委員 大へん時間が過ぎましたので、私は簡単に三人の参考人の方に御意見を伺いたいと思います。 田上、雄川両参考人はおくれて参りましたので、あるいは高根参考人の意見の開陳の詳細を聞かなかったかと思われますが、高根参考人のこの法案に関する意見開陳の中に、こういうような法案の内容において緊急裁定によって事業の施行をすることは、これは裁判権の否定であるというようなことを明瞭に申されております。また憲法違反であるというようなことも申されております。御承知のように、この公共用地取得に関する特別措置法案というのは土地収用法を母体として作られたものであって、その特例措置をしようとするものでありまして、従って、土地収用法の百二十九条等には訴願の規定があることにかんがみますれば、この法案が裁判権の否定であるというような断定した言い方は、私は言い得ないのじゃないかというような考え方をしたのであります。そういうような点につきまして、御三人の率直な簡単明瞭な御答弁をお願いいたしたいと考える次第であります。 第二の問題は、これまた高根参考人の御所見の中には、この公共用地の取得に関する特別措置法案の中には、全く私権の擁護という問題はどこにもないというようなことを言われております。私どもこの法案を数回読んでおりますが、この法案の中には、私権の擁護をするためにいかなる方法をとることが最もよろしいかというような、幾多の苦労の足跡が盛り込まれてあると考えるのであります。この法案の中には私権の擁護はどこにもないというようなことを言われておりますが、これは一体言葉の言い過ぎであるのか、あるいはもう少しこうすれば私権の擁護ができるだろうというような考え方であるのか、またほんとうに、あくまでも私権の擁護がどこにもないというような考え方を持っておるのか、明瞭にお答えを願いたいと思います。
○雄川参考人 ただいまの御質問の第一点でございます。裁判権を否定するものではないか、裁判を受ける権利を否定するものではないかという御意見、高根先生おっしゃられる通りでございますが、私おくれて参りましたので、どういう理由でその結論が出たのか伺っておりませんので、それに対する御批評を申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、結論だけ申し上げれば、そうはなっておりませんということだけ申し上げたいと思います。 それから第二の点、私権を擁護する形跡がどこにもないのではないかという点でございますが、これは私の見るところでは、どうしてこういう法律ができたかといえば、現在の基本法であります収用法の考えました公益上の要請と私権との調整、その線ではなお私権の保護が強くて、特に公共度の高い、そして緊急に施行すべき事業が円滑にいかない。そこでこの法律ができたわけですから、私権の擁護を考えないわけではないといたしましても、どちらかといえば公共上の要請の実現に重点を置いた、これは当然であると思います。ですから、この法律と基本法とを土地収用法として一体としてながめれば、今御指摘になりました通り、私権の擁護に対する配慮が全然ないということは私は言えないというように思います。
○田上参考人 私も高根参考人のおっしゃることを直接伺ったわけではございませんが、平素から尊敬する学者でありまして、大体の御意見はわかっているつもりでございます。ただ、幾分私の考えておりますることとあるいは少し違っている点がございますのは、高根参考人が非常に優秀な裁判官であられまして、司法部という立場から参りますと、確かに現在の行政事件訴訟などにつきましても、行政権に対してもうちょっとコントロールを徹底できるのではないか、また憲法はそこまで考えているのではないか。つまり新憲法が司法権の優位を強く打ち出しておりまして、立法権なり行政権に対してかなり強く裁判所の審査が及ぶ、こういうお立場だと考えるのでございます。これは権力分立に関しまして、行政法を担当する私どもも、実を言うと裁判所とは必ずしも考え方が一致しないかと思いますけれども、私どもの方は行政権を幾分強く考えまして、必ずしも司法権によって行政権の自主性、独立を侵すことはできない、そこに一応司法権の限界が、ある程度あるように思うのでございます。しかし、これは学説の違いでございまして、こういう席上で優劣を御決定いただくというふうな問題ではないのでございます。たまたま私の申し上げましたことと高根参考人のおっしゃったこととがあるいは食い違っておるといたしましても、そういうのは学問的に申しますとふだんから議論があり、また始終お互いに啓発されて――お互いというのは失礼でございますが、私などそういう点において大いに勉強しているわけでございまして、将来あるいは和みずから反省をしてその考えを変えるかもわかりませんが、現在はそういう意味で司法権の及ぶ範囲につきましての見解から、御質問にありましたように、あるいは司法権を憲法の趣旨に反して特に制限しておる、だから憲法違反だというお考えをお述べになったかと思うのでございます。私もそういうお立場は大体わかるのでございますが、ただ、司法権を立法権、特に行政権との関係でどの程度に評価するか、これにつきまして、憲法問題といたしまして学説上いろいろの立場がございますから、それで私の申し上げましたこととの食い違いは一つ御了察いただきたいと存じます。 それからもう一つの、私権の問題であります。これも司法部というお立場でありますると、法廷に現われない一般公衆の利益というよりは、むしろ法廷に現われた被告人の刑事責任、あるいは民事、行政事件でありますと原告の権利をどこまで認めるかという、そこに司法の重点があるわけでございまして、そういう点で、私どもはどちらかというと行政法の専門でございますから、そういう少数の特定の個人の立場ももちろん考えなければなりませんけれども、一般公衆の利益ということも相当高く評価しておるわけでございまして、行政の本質は、どちらかというと司法と違って、一般公衆の利益、社会公共の利益を何とか擁護していく、ここに特色があると思うのでありますから、そういう意味で、同じ問題を究明いたしますときにも、幾分結論の食い追いがある。高根参考人が、あるいは私権の擁護にはなはだ欠くるところがある、こうおっしゃったかと思いますが、これは私も十分理解できるのでございます。しかし、行政法の立場では、公共の福祉というか、公益というものを、民事関係あるいは司法部の方よりは幾分高く評価する傾向がございますから、そういう意味で食い違いがございましたことは一つ御賢察いただきたいと存じます。
○高根参考人 特に申し上げることはないと思うのですけれども、今のお話で、もしもお読みいただけますなら、私が三年ほど前に書いた「行政訴訟の研究」、それから昨年六月には、その書物の内容をドイツの専門雑誌に発表しております。それには行政事件訴訟特例法の翻訳もつけてあります。 それから、私権の擁護はどこにもないと申しましたが、それも先ほど申し上げたように、四本そろわなければ私権の擁護にはならない。一本ではとても私権の擁護にはならないと思います。
○加藤委員長 これをもって参考人各位の御意見に対する質疑は終了いたしました。 参考人各位におかれましては、御多用中のところを長時間まことにありがとうございました。 この際暫時休憩いたし、午後二時より再開いたします。 午後一時三分休憩 ――――◇――――― 午後三時四十四分開議
○加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 公共用地の取得に関する特別措置法案を議題とし、審査を進めます。
○中島(巖)委員 議事進行について。実は午前中におきまして、私どもはきょう午後三時から建設部会を開いてこの法案に対する態度を決定するから、部会が済むまで待ってもらいたい、こういう申し入れをしてあったのですが、迎えが来て、顔を出せというわけで、私は理事会か懇談会をするの、だろうと思って顔出しをしたわけです。そうすると、自民党の諸君が集まっておる。委員長に対して理事会の開催を要求しても、委員長は理事会の開催をしない。こういう状態なんです。 それから、実は先ごろ農林委員会との合同審査がありまして、そして農林委員会から六名の質問の通告者があったわけなんです。そのとき石田宥全君と北山愛郎君の二人だけの質問で打ち切りまして、あと四人を残したわけなんです。合同審査を打ち切る条件としまして、これらの四人の諸君が建設委員会へ出席しまして、通産大臣その他の二、三の大臣に対して質問をする、こういう条件でもってその他の諸君の質問を中止さして、そして合同審査をあの日一日で終了して打ち切ってしまったわけです。過去においてこういうようないきさつがあるわけなんです。従って、今、石川委員に対する委員長のお話は、きょう審議の打ち切りをするというようなお話でありましたけれども、これは前からの話の筋道と非常に違うわけなんです。われわれとしても、今週中には態度をはっきりして、この法案のケリをつけたい、こういうことは早くから委員長にも言っておるわけで、その考えに私どもは変わりはないわけであります。従って、委員長がそういう態度に出られるということに対しては、その方針を変えるという場合には、われわれも考えを改めて委員長に対処せねばならぬ、こう考えるわけです。それが第一点。 第二点といたしましては、私どもの内部事情を申し上げますけれども、これに対しては相当な反対があります。しかし、反対であると賛成であるとは別問題として、この段階において十分な質問をして、その後において採決において決定すべき問題であって、それは国会のルールとしてわれわれも了承しておるのです。従って、きょう三時から私の方では建設部会を開いて態度を決定し、明日は全体会議を午後三時から一時間ぐらい開いて態度を決定する。そうして、明日の夕刻にもこの委員会を開いて、その決定に基づいてわれわれはこの結論をつけたい、こういうような考えを持っており、その考えも非公式ながら委員長の方に申し上げてあるわけであります。にもかかわらず、本日ここに質疑打ち切りというようなお考えであるとすれば、はっきりそのお考えを承って、われわれの態度も決定せなければならぬと考えるわけで、委員長の善処を要望してやまない次第です。なお、水資源公団法もこの委員会にかかるし、従って、より以上の摩擦を避けるように持っていくように御努力を願いたい。(「ほかの法案まで取り上げて言うことはない、おどしじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)おどしじゃないです。
○加藤委員長 ちょっと速記をやめて。 〔速記中止〕
○加藤委員長 速記を始めて。 都合により暫時休憩いたします。 午後四時五分休憩 ――――◇――――― 〔休憩後は会議を開くに至らな かった〕