外務委員会 第12号
- 発言数
- 42 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1961/03/29
会議録
○堀内委員長 これより会議を開きます。 国際情勢に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。黒田寿男君。
○黒田委員 きょうは題目を日中関係の基本問題に限定いたしまして、池田首相に質問いたしたいと思います。 池田内閣になりましてから、内閣の態度としまして、日中関係の改善を希望するという態度を表明しておられます。岸内閣時代の冷淡な静観政策や、それからあの激しい、硬直した敵視政策のもとでは、日中問題の打開ということはどうにもこうにもならなかったのであります。池田内閣になりまして、日中関係の改善を希望するという態度が表明されましたことは、それ自体としましては私どもはなはだ歓迎すべきことであると思います。しかし、残念ながら、今日までの間に日中関係の改善のための具体的政策がまだ何も打ち出されておりません。岸内閣の時代の対中国政策が、池田内閣になりましてどのように改善せられるのであるかということは、まだ実はわからないのであります。ある者は変わるものかと申しますし、ある者は変わるだろうというように申しておりますが、まだわからない。岸内閣時代の政策を変えるのか変えないか。変わるとすればどのように変わるのかというようなことをわれわれは知りたいのであります。そういう目的で、きょうは日中関係の基本問題について首相の考えておられますところを承りまして、池田内閣の日中関係の改善の希望というものが、具体的には岸内閣時代の政策とどういう違った政策になって現われてくるのであるかということを、前向きの姿勢で一つ明らかにしていただきたいと思います。それには基本問題と考えられますものを取り上げまして、それについて政府の態度を示していただくという方法が適当だろうと思いますので、順次そういうふうにさしていただきたいと思います。 その前に、ちょっとお伺いしておきたいと思いますが、池田首相は来たる六月に渡米されまして、ケネディ大統領と会見される、そういうことが新聞に出ておりまして、そのときの重要な話題の一つが中国問題であるというように報ぜられておりますが、大体そのようなプログラムを持っておいでになるのでございましょうか。ちょっとその点について……。
○池田(勇)国務大臣 御質問にありますように、六月の十八、九日に立って、ワシントンでケネディ大統領と、また関係者と三日間会談する予定になっております。
○黒田委員 そのときの話題の一つとして中国問題が取り上げられるだろうというようなことが新聞に報ぜられておりますが、大体そういう御予定でございましょうか。
○池田(勇)国務大臣 ケネディ大統領との会談の題目につきましてはまだ打ち合わせいたしておりません。日米間の一般的問題のみならず、世界の情勢にかんがみまして、せっかくの機会でございまするから、十分話してみたいと考えております。
○黒田委員 私は、大体、新聞に報ぜられておるような問題の取り上げ方がなされるだろうということを前提といたしまして質問をしてみたいと思います。アメリカ政府は、御承知のように今日まで長い間中国を国際社会から締め出しておこうという方針を取り続けてきております。中華人民共和国政府の不承認、また国連における正当な代表権の確認の拒否、こういう政策を長い間アメリカ政府は固執し続けてきております。それから、また、先ほど申し上げましたように、わが国では岸内閣の時代に中国に対する静観政策がとられまして、さらに、それが進んで、日米新安保体制の敵視政策というようなところまで発展したのであります。おそらく、首相がケネディ大統領と会見をされまして、日中問題について必ず話し合いがなされるものだと私は推測いたしますが、大統領がかわったので、あらためて、従来の対中国政策について再確認をするというだけなら、私はあまり意味がないと思います。必ず、そこに何か新しい路線を打ち出すための話し合いがなされるものだろう、こういうように常識的に想像しておるのであります。ただ、日程がはっきりしないということでございますので、この点につきましては私の予想だけを申し上げておきます。 そこで、私は、世界情勢から見て、この際、アメリカの政策も、日本の政府の政策も根本的に転換しなければならぬ時期がきておるのではないかという見方を持っております。それについて私の考え方を申し述べまして、総理のお考えを聞きたいと思います。 私どもの見るところでは、世界の大勢は、アメリカの政府にも、またわが国の政府にも、中国に対する従来の政策をそのまま維持し続けるということを許さないような情勢になっておると思います。たとえば、アメリカ政府がいかに中国を国際社会から締め出しておこうといたしましても、多くの諸外国がこの政策を支持しないようになっております。その政策を支持しない国が次第にふえてきております。それだけではなくて、アメリカ政府の重要な地位にある政治家の間にも、将来国際的な軍備管理制度を確立いたします場合に、中国がこれに加わらなければ無意味であるというような考え方が支配的になりつつあるというようにも伝えられておるのでありまして、また、国連における中華人民共和国政府の正当な代表権の確認問題につきましても、アメリカ政府の反対にもかかわらず、急速に確認の方向に向かって情勢が展開しつつあるということも、これは周知の事実でございます。わが国の国内事情を見ましても、政府の態度いかんにかかわらず、アジアの平和をこいねがう者という立場から、あるいは貿易促進という立場から、あるいは文化交流という立場から、日中両国人民の友好促進の動きは日に日に盛んになってきておるのであります。これらの運動は、いずれも両国の平和と友好に事実上貢献してきておるのでありまして、このままの状態が続きますと、政府が国民から取り残されていくという形になるのではないかとさえ考えられるほど国民運動が展開されてきておる。だから政府与党でも、だれが日中問題の打開に先べんをつけるかということが、次の内閣の主導権を握る条件になるのだというようなことさえ新聞に報ぜられるような状態でございます。このような内外の情勢は、わが国の政府にも、岸内閣時代と同様な静観政策ないし敵視政策を中国に対して取り続けることを許さなくなっておる、こう私は客観的情勢の分析をなすべきであると思います。池田内閣はその成立後、先ほど申しましたように日中関係の改善を希望すると言明しておられます。それが単なる言明だけでなく、真にこれを欲しておられるならば、この際わが国の政府は、岸内閣時代のような敵視政策をやめて、平和と友好の政策に向かって路線の切りかえを行なうべきであると思う。日中関係の改善の政策は、私の目から見れば、きわめて簡単明瞭である。それは中国政府に対し平和と友好の政策をもって臨む、私はこれだけで十分であり、またこれが絶対に必要条件であると思う。手の込んだ政策を弄するようなことは、かえって私は有害無益であると考えます。池田内閣は岸内閣時代の対中国政策を、はたして、踏襲されるのか、それとも改善されるのか、私はいろいろ手の込んだ外交技術を弄するということでなくて、はっきりと、この辺で、世界情勢及び国内情勢にかんがみられまして、根本的に中国に対し平和と友好の路線に政策を切りかえるというように決断すべきである、こう考えます。もしこうなって参りますと、岸内閣当時の政策と非常に違った新しい路線が出てくるのでございますが、この点いかがでございましょうか、あとからも少し具体的な問題についてお尋ねいたしますけれども、根本的に、前提としましてこれだけのことを質問させていただきます。
○池田(勇)国務大臣 岸内閣が中共を敵視しておるという前提で御質問のようでございますが、私の見るところでは岸内閣は敵視してはいない、やはり友好関係を打ち立てたいという気持は私はあったと思います。従いまして、そういう意味におきまして岸内閣の外交方針を切りかえるという考えは持っておりません。ただ中共に対しましての今の世界の各国の見方につきましては、いろいろの変化の様相が見えつつあるのであります。従いまして、私はこの世界情勢の変化を見きわめつつ中共問題を片づけていきたい、こういうので、せっかくただいま慎重に情勢を検討しておるのでございます。
○黒田委員 ただいまの池田総理のお話では、岸内閣の対中国政策は敵視政策ではない、こういうお話でございます。日米新安保条約がどういう条約であるかということにつきまして、私どもは、申すまでもなく、徹底的に反対したのでございますが、これは政府と考え方が根本的に違っております。われわれは岸内閣の新安保条約締結、それに基づく新たな新安保政治体制というものが、従来の敵視政策をさらに強化したものである、こういうように見ておる。これは意見の相違になることでございましょう。しかし総理の、岸内閣が中国に対して敵視政策をとったものではないという御見解は、私どもから見ますればはなはだ意外な御答弁のように思います。しかしこれは議論になりますからこの程度にしておきます。そこで、私どもとしますれば、岸内閣の政策は敵視政策である、こういうように考えておりますから、それを転換しなければならぬ、そこに池田内閣が日中関係の改善に努力するという意味があるのである。私はそういうところに日中関係改善の意味を認めたいと思うのであります。しかし池田内閣の成立以来今日までの経過では、日中関係改善の希望を具体化した政策がまだ何一つ出ておりません。日中関係改善を希望するというお話が出ておりますけれども、これを裏づける具体的な政策がまだ出ていないのであります。かえって、実は、その逆のことが行なわれております。私はただ一つだけ例をあげてみますと、池田内閣になりましてからのことでありますけれども、昨年の秋、十月の八日に、国連総会が開かれまして、そこで毎年の例でございますが、国連における中国政府の正当な代表権の確認問題に関連いたしまして、いわゆるアメリカのたな上げ案が上程されましたときに、日本政府は米国の提案に賛成票を投じておる、これは一例にすぎないのでございますが、これでは口でいかに日中関係の改善と申しましても、これは改善にはならぬ、こう私は考える。具体的な政策の上で、中国不承認の態度を、アメリカの政策に従うてとり続けるというのでは、両国関係の改善を希望するという言明を事実によって裏切るものであると私は考えます。ただ私はきょうは過去のことを論ずるよりも、前向きに問題を解決するという態度で質問を続けたいと思いますので、将来の問題といたしまして、この問題について質問をしてみたいと思います。 ことしの秋の国連総会におきまして、われわれの予想では、必ず中国政府の国連における正当な代表権の確認の問題が提起せられます。アメリカの国連における中国排除の態度は、私は、ケネディ大統領になってからも変わっていないと思いますので、この根本政策についてはアイゼンハワー大統領からケネディ大統領にかわりましても、何ら政策の変更が見られませんから、アメリカによって必ずまた中国代表権問題のたな上げ案が提出される、こう私ども当然に予想しておるわけであります。このときに池田内閣はどういう態度をとられるのであるか、ことしの秋のことでございますけれども、大体今からこういうことにつきましては考えておられることと思います。もし私は池田内閣が文字通りに日中関係の改善を望むというのでございますならば、将来中華人民共和国政府の国連における正当な代表権を認めるという前提に立って、アメリカのたな上げ案に反対すべきである、私はそう思う。そこまでいかなければ、日中関係の改善に資するという具体的な政策が出ない、私はそういうふうに考えておるのであります。これはやがて政府がいずれとも意思表示をなされなければならぬ問題でありますから、この問題につきまして、政府の方針を聞かしていただきたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 御意見は承りましたが、今、昨年のたな上げ案が出るか出ないかわからないし、またその前の年等におきましては、中華人民共和国を国連に加盟させるというソ連かインドからの案が出たようであります。どういう案が出るかわかりませんので、この問題につきまして日本政府の意見を今申し上げることは尚早であると考えております。また私自身としてもこういう問題につきまして、せっかく各国の情勢を検討中でございますので、申し上げかねる次第でございます。
○黒田委員 私としましては、もう少し積極的な方針が述べられてしかるべきであると考えますけれども、今の御答弁はそのままに聞いておきましょう。 そこで今度は、一つ情勢判断の問題についてお聞きしてみたいと思います。これは情勢判断でございますからはっきりとお答え願えると思います。私どもの考えでは、正しい外交政策を樹立するためにはどうしても客観情勢の正しい分析が不可欠の要件であると考えますが、池田内閣だけでなく、それ以前の内閣におきましても、私どもの目から見たところを率直に申しますならば、わが国の歴代の保守党内閣はアメリカの中国不承認政策に追随してきた、私は率直にそういうふうに申し上げてよろしいと思います。私どもはそういうふうに見ておる。しかしこのアメリカの中国不承認政策はいつまでも成功し続けるものではない、そういう状態が現われておると思います。いつまでもこういう不承認政策が国連の総会でアメリカの考えておりますような結論において結末を告げるというものではなくて、それとは逆に、アメリカの中国不承認政策は世界の大勢から孤立してきておる。孤立しつつある。この政策の世界政治における影響力はますます弱まってきておる。中国政府の国連代表権の確認はとうてい阻止しおえるものではないという情勢が明らかになりつつある。私どもはそのように情勢の判断をしておるのであります。この点につきまして池田内閣の国際情勢の見通し、国際情勢の分析を聞かしていただきたいと思います。先ほど申しますように、私どもとしては、もうアメリカの政策はこの政策に関して、近い将来に事実上それが維持できなくなる。こういう見通しをもって進むべきである。こう考えております。この点について私は総理のお考えを聞きます前に多少私の知り得ましたアメリカの事情を、これは私の判断の材料にもなったのでございますが、申し上げてみましょう。ケネディ大統領周辺の政治家がこの問題に関してどういう考えを持っているかということでございます。これはことしの一月十八日に、現在国連大使になっておりますスチブンソンが、任命直前の上院外交委員会の聴聞会で次のように証言をしております。中国政府の代表権確認問題——この代表権確認問題という言葉づかいは私が言いかえたので、アメリカでは中国の国連加盟問題という言葉を使うております。私はそれは正確でないと思いますので中国政府代表権確認問題と言いかえます——その中国政府の代表権、国連における正当な代表権確認問題につきましては「アメリカの立場に対する支持が近年減退してきておるように見える。中国の代表権承認を防止することは不可能かもしれない。」このように証言しております。それからまたケネディ大統領側近者の一人でありますハーバード大学のシュレジンガー教授もこう言っておる。「どのような軍備管理も中国を除外したらほとんど無意味になる。ソ連だけでなく、中国をも信頼できる軍備管理制度に加えることができれば人類にとって大きな収穫であるから、国連加盟くらい支払う代価として高くはない」、こう言い切っておるというように、これは日本で出ております国際問題専門の雑誌が報道しております。さらに重要なことは、アメリカの政治家のこういう見方だけでなくて、中国政府代表権問題に関する世界の情勢の進展であると考えます。昨年秋の国連総会で辛うじてアメリカのたな上げ案が通過しました。しかしその通過たるやすこぶる不安定なものでありまして、この秋はおそらくその通過は不可能ではないかというように、これは一般の常識的な見通しになっております。こういう周知の——これは私は大体の周知の事実であろうと考えますが、こういう情勢があるのだということを私は頭に置いて中国問題も考えていただかなければならぬと思うのであります。政府はこういう状態についてどのようなお見通しを持っておいでになりますか、情勢分析をされておりますか。アメリカの中国たな上げ案がまだまだ今後引き続いて国連において認められるものか、それはやがてそういう案としては維持できないものになるか。これは日本の政府並びに、政府だけではございません、私どもにとりましても見通しといたしまして非常に重要な問題でございますから、一つはっきりした総理の御見解を承りたい。
○池田(勇)国務大臣 いろいろ見通しをお話しになったようでございますが、私は自分の見通しをいろいろきめる前におきまして、ただいまいろいろ研究をいたしておるのでございます。アメリカ合衆国がソ連を認めた場合におきましても各国に数年おくれて認めましたように、いろいろと条件をつけておったということは御承知の通りでございます。私は今のところ確たる見通しを、情勢判断を申し上げる段階に至っておりません。
○黒田委員 私は、一国の総理大臣の御答弁としましては非常に遺憾に思います。しかし池田首相は外交に関する専門家ではないというように言われておりますので、ただいま申されましたように聞いておきますけれども、しかしこのくらいの問題で一国の総理大臣が現在の情勢のもとにおいて一応の判断を下すことができないということでは、私は総理の御答弁としましては非常に不満足に感じます。もう少し権威のある御答弁があってしかるべきだ、こう考えます。しかしこれもこれ以上はお尋ねいたしません。 次に一つ根本問題と考えられますものを申し上げて政府の態度をお聞きしてみたいと思います。私は、池田内閣が中国関係の改善を要望しておられますならば、中華人民共和国の承認問題について、もうそろそろお考えになる、ならなければならぬ時期にきておるのではなかろうか、こう考えます。そうしてこの承認問題につきまして前向きの態度を示される用意が私はなければならぬと思います。中華人民共和国の場合は、中国におきまして革命の結果新しい政府が樹立された場合でございますが、私どももいろいろの国の歴史、こういう場合の歴史を研究いたしまして、こういう場合に革命政権が領土及び人口の大部分を支配しておりまして、そうしてその支配権に永続性があるということが一般に判断せられる段階に至りましたならば、国際法上諸外国は適法にこれを承認できますし、またすべきものである。ただ承認が義務づけられておるというところまでは現在の国際法及び国際間の実情ではなっておりませんけれども、しかし、承認の義務を認めるべきだという学者さえ少なくはないのであります。私は義務があるとまでは申しませんが、しかし、少なくとも外国が自国の、何と申しますか、恣意的にとでも申しますか、自分の勝手な考えだけに基づいて、客観的に見れば承認の条件を備えておる政府について、その承認を回避するというようなことは、違法でないとしても、私は少なくとも不当だと考えます。中華人民共和国の政体を好むと好まざるとにかかわらず、すでに今日まで長い間政府としての存在を続けて参りましたし、六億人民のかたい支持を受けておるということは、これは客観的に認めなければなりませんので、その意味で、日本も、いつまでもこれに対し承認の目を閉じ続けるということは、世界政治の立場から見て許されない、そういう客観情勢になっておると思います。私は、従来わが国の政府が承認を拒んできた理由は、他の場合に承っておりますから、別にここであらためて質問はいたしません。ただ、しかしながら、従来の政府の御説明は、アメリカの中国不承認の理由と全然同一でありまして、大体私はアメリカの不承認理由として述べるところにならっておるのだと思います。私どもはこういう見方に承服することはできない。しかし、過去のことは私はここでは論じません。将来のことを問題としたいと思うのであります。私は、池田内閣が日中関係の改善を希望するというのであればもちろん今日直ちに池田内閣に中国政府を承認せよというようなことは申しません。いろいろ保守党としての事情もあるわけでございましょうから、そしてまた、いろいろと客観的な事情なり条件もあるわけでございますから、今日直ちに中国政府を承認するべきであるというようなことは、池田内閣に対しては、私は申しません。しかしながら、少なくとも近い将来において承認するというくらいの意思表示は、最小限度のこととしてなさらないと、世界の歩みにおくれる、世界的な情勢におくれる、それは日本の名誉にもならないし、不利益にもなる。われわれはこのことを懸念しておるのであります。私は先ほども申しますように、国連において中国政府が正当な代表権を確認される時期は決して遠くないと考えております。そういう確認がなされましたあとにおいては、中国政府を承認するもしないもありません、これは承認せざるを得ないのであります。しかし、そうなってからの承認では国際政治の上における日本外交の一大失敗になる、私はそのことを憂えるのであります。いつまでも日本政府が中国に対する問題においてアメリカの政策に追従することをやめて、自主性を取り戻すべきだと思う。中国の承認と国連における中国政府の代表権確認の問題に日本政府は、アメリカの政策に追随することなく、独自の、自主的な積極的な、態度をもって臨んでもらいたいのであります。決して私は今すぐ承認しろというような無理なことは池田内閣に対しては申しませんが、少なくとも承認の方向へ向けての意思表示だけはこの際なされることが、日本の国際政局の上に立っての立場を有利にもいたしますし、またそれが日本にとって利益でもある、こういうように私は考える。これについて、総理の御見解を一応承っておきたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 今すぐ承認の点につきましてはそれを要求しない、ただ、日本が自主的にやっていかなければならぬ、こういう御意見でございます。これは同感でございます。私は、どうすることが一番日本のためになるか、これが第一でございます。そうしてそれが世界の平和、ことに極東の平和に通ずる、これを考えて言っておるのでございます。あくまで自主的に私はきめていきたいと考えております。
○黒田委員 今すぐでなくても、少なくともあまり遠くないうちにこの問題について積極的に解決するというようなところまでの後見解の表明はできないものでしょうか。私は、そういう表明ができますならば、実にりっぱなものだと考える。そこまでは、もう、いかなければならぬ、私はそういうふうに考えるのですが、念のためにもう一度お伺いいたします。
○池田(勇)国務大臣 世界の情勢を見ながら私はきめていきたいと考えております。
○黒田委員 それだけ聞くだけにしておきましょう。 それから、これもやはり大体同様の問題でございますけれども、承認の見通しというような立場に立ちまして、池田内閣も中国との国交回復、平和条約締結という問題について、やはり、この際、積極的な態度を表明されるべきではなかろうかと私は思います。むろん自由民主党の内閣でございますから、先ほどの問題と同じように、今直ちに中国との国交回復、平和条約の締結というようなところまで、踏み切れというようなことを申しません。そういうことを申しますと、かえって常識に反する——池田内閣にそういうことを今要求するということは常識に反すると思いますけれども、しかし、日本と中国との国交回復、平和条約の締結は早晩必ず実現するものです。これは日本の内外にどんなにこのことに対する反対勢力がありましょうとも、私は両国の平和条約の締結は必ず近いうちに実現すると確信しております。それは両国人民の心からの願いでもありますし、また歴史の進行の必然の方向でもあると私は考えるからであります。そこで、今直ちにとは、先ほども申しましたように、申しませんけれども、しかし、その方向に向かって——国交回復、平和条約の締結という方向に向かって進むという態度くらいは明らかにされるべき時期が来ておるのではないか、私は、この問題につきましても、少なくとも最小限度そこまで池田内閣として方針を明らかにせられますならば、この点につきましても、岸内閣とはだいぶ違った政策が出てきた、こう見ることができるわけです。内外の情勢からいたしまして、いつまでもこの問題について静観的態度をとることは許されない、この際、決断をもって、前向きの姿勢を示していただき、日中関係の改善ということに対する政策の裏づけにしていただきたいと思う。これにつきましても、一応総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 中華人民共和国との国交につきましては、私は、過去のいろいろな点もございますし、また将来の世界情勢の見通しもありますので、今この問題につきましてどうこうするということはお答えしかねるのであります。
○黒田委員 それだけに承っておきましょう。 それからもう一つ私はまだ根本的な問題があると思うのでございます。これは非常に困難な問題でございますけれども、問題にしてみたい。政府としては非常に困難な問題だと考えられておいでになると思いますけれども、問題にしてみたいと思いますのは、二つの中国という問題であります。日中関係の正常化のためには、この二つの中国を作ろうとしておるアメリカの政策、私はアメリカの政策は二つの中国を作ろうとしておるものであると考えてよろしいと思いますが、そういう二つの中国を作ろうというアメリカの政策にわが国が加わらないということが私は必要であると思う。アメリカはケネディ大統領になりましても、先ほども申しましたように、いろいろ手のこんだ政策が技術的にとられるかもしれませんけれども、中国政府不承認という政策は、私はアメリカは基本的には変えていないと思います。世界の情勢はそれを許さないようになっておるにかかわらず、アメリカはこういう態度を固執し続けるだろうと私は考える。また台湾を軍事基地にしておくという政策も、私はアメリカが今も近い将来も変える考え方は持っていないように考えます。しかしながら先ほど申しましたように、アメリカの中国政府不承認政策は、アメリカのこういうがんこな態度にかかわらず、近い将来、世界情勢の進展によって、そういう政策を持ちこたえることができなくなる。私はこのことをも見通しております。そのときにアメリカが、それでは中国大陸の政府を承認しよう。そのかわり台湾を中国より離して、台湾に対する支配権は続けていこう。ケネディ政策のこれはせいぜいの限界で、これ以上にケネディ政権が出ていくということはできない。そこにケネディ政権の政策の限界があると思うのでありますが、実はこれが二つの中国の実現ということになる。これは長い間ダレスが考えておったことと結論において同じである。こういうところに帰結するというのが、中国の警戒しております二つの中国という問題であります。こういう政策には中国政府は断じて承服しないことは明らかでございます。日本政府といたしまして、これは非常に重要な問題でございますけれども、アメリカ政府のこういう二つの中国の政策に日本は乗っていくのかどうか。中国からいえば、乗っておるのではないかということも言っておるわけでございますが、私どもは、あくまで中国は一つであるという立場に立って対中国政策を展開すべきであると考えるのでございます。この問題について政府はどういうふうにお考えになっておりますか。これにつきましても、御考えを承っておきたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 この台湾の問題から来まする二つの中国ということは、単にアメリカだけでなしに、ほかの国にもいろいろ議論されておる問題で、あなたのおっしゃっておられるように、なかなか厄介なむずかしい問題でございます。従いまして、私はこの際、こういう問題につきまして、自分の意見を申し上げることは差し控えた方が国のためになると思います。
○黒田委員 それもそういうように承っておきます。しかし私は、総理大臣とされましてはもう少し確信のある御答弁を願いたいと思います。むずかしいからというのでは、少しくきぜんたる態度に欠けるところがあると思うのであります。そういう態度が許されればいいけれども、いつまでも許されないと考えるから、どんなにむずかしい問題でも、ここで頭を突っ込んで考えなければならぬ。ほっておこうと思ってもほっておけない問題になっているわけでありますから、そこで私はこの問題を取り上げておりますので、何もむずかしい問題をことさらに出して政府と議論しようなどと考えて言うているのではなく、ほんとうに日本のことを考えてこれを問題にしておる。そこで、これは、ちょっと、ついでに念のために承っておきたいと思うのですが、一体日本の政府としましては、台湾の帰属をどう考えておいでになりますか、台湾は中国領土の一部であると私どもはそう思うのでございますけれども、念のためにここでもう一度、池田内閣といたしましての台湾の領土帰属問題についての御見解を承っておきたいと思います。私どもは中国の一部だと考える。そうして中華民国もそう言っております。蒋介石政府もそう言っておる。日本政府の見解はどうかということを聞いてみたい。
○池田(勇)国務大臣 台湾の問題につきましては、すでに御承知の通り、サンフランシスコ講和条約によりましてわれわれは放棄いたしたのでございます。しこうして中華民国とはわれわれは平和条約を結んでおるのでございます。私は、先ほど来いろいろ御質問がございました重要な問題につきましては、十分研究をし、考慮いたしております。しかもこの中共問題、台湾問題につきましては、日本が最も大事な立場にあるわけで、アメリカもそうでございます。他の国とよほど違うわけです。日本の意見というものは、世界を支配するということはなんでございますけれども、各国が非常に知りたがっておるところなのでございます。私は、そういう立場にございますので、重要な問題につきましては、いろいろ考慮いたしておりまするが、その問題について今先ばしってどうこう言うことは私は差し控えたい、こういう気持でおるのでございます。
○黒田委員 私の質問に対しまして御答弁が要点をはずれておったと思います。私の質問は、台湾は中国領土の一部であると私は思いますが、どうでございますか。これは必ずしも総理大臣でなくてもけっこうでございます。(「総理がいい」「総理でなければだめだ」と呼ぶ者あり)台湾は中国領土の一部であると私どもは考えますが、日本政府の解釈はどうでありますか、この問題。
○池田(勇)国務大臣 私は、さきの衆議院(しゅうぎいん)の予算委員会で金門、馬和島が問題になりましたが、われわれはこれをチャイナと心得ておる、こう答弁いたしておるのであります。
○黒田委員 私はチャイナという英語はよく知っておりませんので、よくわかりませんが、私は日本語で質問しましょう。台湾は中国領土の一部であると思うが、どうでありますか、という質問です。だから、領土であるかどうか、領土でないかどうか、領土でなければどこの領土であるか、こういうことでございます。
○池田(勇)国務大臣 中国領土というのが私にはよくわからない。中国領土というのはどういう意味なのでございますか。
○黒田委員 私に対する御質問だったのですか。私に対する何か御反問だったのでしょうか。——中国といえば、常識上中国大陸、それに台湾、澎湖島を含めての中国という国のことである、その大陸の方に、今、中華人民共和国政府が存在しておる、そういう意味の中国です。台湾はその中国の領土の一部であると私は考えますが、政府はどうお考えになりますか、こういう質問でございます。
○池田(勇)国務大臣 御承知の通り台湾につきましては、台湾、澎湖島はサンフランシスコ講和条約によって日本は放棄したのでございます。そこで沿革的に申しますると、カイロ宣言あるいはポツダム宣言になりまして、われ受諾した関係上、われわれは台湾は中国である、こう見ておるのであります。
○小坂国務大臣 総理大臣のお答えの通りでございますが、若干補足させていただきますると、今のお答えのように、わが方としては、ポツダム宣言を受諾いたしまするときに、この前提となっておりまするカイロ宣言において、この条項は履行せらるべくという前提がございまするが、その前提に基づきまして台湾は中国の領土となるとの前提で日華条約を結んでおるわけでございます。しかしなおつけ加えますると、その帰属をめぐって力が行使される。その武力を行使される結果によって極東の安全というものが危殆に陥るようなことがありますれば、これは単純にそうしたことだけで割り切れない問題であるというふうに考えるのであります。
○黒田委員 総理の御答弁によりましても、それから小坂外相の御答弁によりましても、台湾は中国の一部である、こういうお答えでございましたが、私もその点では初めからそう考えておる、こう申し上げておるのであります。そこで私が中華人民共和国との平和条約の問題ということを先ほどから申し上げておりますのは、この問題に関連することでございます。私は実は日華条約ほど奇妙な条約はないと思うわけです。この日華条約は、その適用地域が台湾及び澎湖島ということになっております、だから中国のごく一部でございます。将来支配権の及ぶ地域ということがございますけれども、これは故ダレス国務長官が金門、馬祖の事件のありました直後に蒋介石を説得いたしまして、武力による中国大陸への反攻はしない、させないという話し合いが両者の間にできた、後って日華条約の適用区域はせいぜい台湾と澎湖島ということになるのでございますが、これで中国大陸に適用せられるという見込みは現在では全然ないということになっております。従ってこれをもって中国大陸に適用せられる条約とすることはできぬわけであります。私はそういうふうに考えますから、現在の日華条約というものは一体どこの国との条約であるか、適用地域は中国の一部である台湾ということになっており、中国本土には適用されないということが明らかになってしまっている。そうすればこれは中国の領土に適用せられる条約でないということは明らかでありますから、こういう状態のままで日本と中国との、あの酷烈な被害を日本が与えました中国大陸との間の平和条約が締結されたものであるというような解釈はどうしてもできないわけであります。そういう意味におきましても、どうしても中華人民共和国政府との間に平和条約を締結しなければならぬ、私はそう考える、これに対して総理大臣は一体どういうようにお考えになりますか。
○小坂国務大臣 これは法律的な適用の解釈の問題でございますから…… 〔「総理大臣から答弁々々」と呼び、その他発言する者あり〕
○池田(勇)国務大臣 外務大臣並びに条約局長より答弁させます。
○小坂国務大臣 これは法律的な適用の解釈の問題を含んでおりますから、便宜私からお答え申し上げます。 日華条約は、法律的には中国を代表する政府としての国民政府を相手方として結んだものであります。従って国と国との関係の問題、たとえば戦争状態の終結、それから戦前条約の廃棄、在支権益の放棄、中国の賠償放棄等は中国全体を対象といたしております。なお性質上この適用の地域的に限られる事項、たとえば請求権の処理というものは国民政府の支配下にある地域を対象といたしております。そこでこの点を明らかにするために、黒田さんも言われたように中華民国政府の支配下に現にある、また今後入るすべての区域に適用があるというふうに日華条約にうたっておるわけであります。そこでこの台湾政権においては、今度はダレスとの話し合いによって、これは本土の方の進攻をしないということになったんだから、適用地域は限定されておるじゃないか、こういうことでありまするが、それじゃ一体いずれの国が正統の政府かということになってくるわけであります。これは一つの領土に二つの正統政府を主張する政権があって、そうしてその国のいずれかに政権がいくべきであるということは、これは内政問題としてはそう言えると思うのですが、先ほどお答えしたように、少なくとも法律的には台湾の帰属は未決定であるということ、またこのいずれもが正統政府であるということを主張する場合に、その解決のために武力が行使されるということになりますれば、ひいてはその実力行使というものが世界の平和に重大な影響があるということでありまするから、ここでそうしたことをいろいろ申し上げるということは、総理大臣の言われるように、国のためにならぬのではないか。この問題はもっと慎重に、国際的な背景というものを十分に配慮して決定すべき問題ではないかこういうことであるのであります。
○黒田委員 私はこの問題は、ただいまの外務大臣の御説明では承服することができません。中国との間にすでに戦争終結ができておるというようなこと、これは外務大臣のあげられた問題の中の一つでありますが、私どもから申しますならば、それは中国全域にわたる問題であります。ことに台湾などというものは、日本と戦争した地域ではないわけですから、そういう台湾にだけ適用せられる条約によって、中国大陸全体に利害関係のある戦争終結条項などというものが決定さるべきものではないと私は思う。この議論は、またあらためて後日ぜひもっと詳しく外務大臣のお話しをも承り、私の所信をも申し述べたいと思います。事実上の台湾政府と条約の締結をしたときに、この政府は台湾と澎湖島しか支配していない、その後、その政府にはそれ以上の領域の支配権がないということが明らかになりましたような、そういう政府との日華条約をもって、先ほど外務大臣が一、二御指摘になりましたような重要な事項——戦争終結に際して問題になりますような重要な事項——が解決されたものだという解釈は私はどうしてもとることができません。やはり中国との平和条約というものはまだできていないのである。そうして中国大陸と台湾を含めて、これが一つの中国と見るべきでございます。そういう場合にごく小さい勢力しか持っていない地方政権と、六億人民の支持を受けております中国大陸の政権とが併存いたしまして、そのいずれをその国の正統政府と認むべきものであるかということは、これは私は過去の他の国の例もあると思います。やはり中国の大陸を支配しておる政府、これが台湾をも含めた全体の中国の統一政府と認めて、これとの平和条約を締結すべきである。しかし、そういう平和条約を今すぐ締結するということを、自民党として主張することは、これはむずかしいことだと思いますけれども、そういう政府を相手にしての平和条約というものを考えなければだめです。そんなことをぼんやり考えておったら大へんなことになる。私はそれを心配するのです。ぼんやりしておる間に、国際連合において中国政府が正統な代表権を認められる、それまで日本はぐずぐずしていて、中国の人民政府を承認していない。そういうことになってから平和条約ということをいわれたらどうするのですか。そのときにおける日本に対する条件というものにつきましての考慮も私どもはしなければなりません。これは、日本のために真剣に考えなければならぬ問題でありますから、それをいいかげんに考えて、台湾と条約を結んでおるからというようなことから、あるいはアメリカに対する考慮というようなことから、条約に関する無理な解釈をすべきではない、私はそう考えます。中華人民共和国の政府を相手にしての平和条約の締結ということを、今すぐできなくても、やがてはやるんだというところまで踏み切った意思表示をされないと、大へんなことになると思う。これを国民の一人として憂えるわけです。その意味で私は御質問申し上げておるのでございますが、これに対しまして総理の御意見を承っておきたい。
○池田(勇)国務大臣 お話の点は、私も十分考えて善処いたしたいと思っております。
○黒田委員 大体この二つの中国問題は、これは先ほど申しましたように、非常に困難な問題であります。そのことは私自身も認めておる。日本政府とアメリカ政府との関係というものが絶えずまつわりついておる問題でございます。相当に決意を持って日本政府がアメリカの政策に、率直にいえば反抗し、独自の政策をとるというところへ踏み切らなければ、この問題の解決はなかなかむずかしい、アメリカに追随するというような態度ではとても簡単には問題は解決できぬと思います。しかし、日本と中華人民共和国政府との平和条約の締結ということ、このことは、どんなにむずかしい問題であるからといって、この問題についてのはっきりした考えを示さないで放置しておくこと、私が申しますような意味においての政策転換をいつまでも放置しておくということは、私は許されぬと思う。大体、アメリカは台湾を軍事基地にしております。日本の沖繩をもアメリカは軍事基地にしておる。日本本土にもアメリカの軍事基地を作っておる。こういう戦略体制の中にアメリカは日本を巻き込んだ。このアメリカの政策が中華人民共和国を除外したサンフランシスコ条約を締結させたり、またダレスの強要によって日華条約を作らせたり、また日米安全保障条約を作らせたのである。だから二つの中国というアメリカの中国分割政策は、これは日華条約とも関係があるし、日米安全保障条約とも関連しておる問題であります。二つの中国を作る陰謀には参加しないということ。日本の立場から、中華人民共和国政府を台湾を含む全中国の統一政府と認めて、これと平和条約を締結するのだ、やがてはそういう条約を締結するのだという意思表示をすることによって、日本は二つの中国という中国分割政策に加担していないのだという態度を表明することができる、そういう踏み切り方をするよりほかに、一つの中国という方向へ日本が進む道は他にないと考えるのでございます。そういう意味におきまして、私どもは中華人民共和国政府と平和条約を締結する、その方向へ政策を切りかえるということを意思表示すべきである、こう申すのであります。私の意見に対しては先ほど総理大臣のお答えになった以上には答えは得られないと思いますので、これ以上追及いたしません。 私は次に、これは現実にわが国の利害に関することでございまして、自民党の皆さんも大へんに関心を持っておいでになることだと思いますので、中国貿易の問題につきまして、若干政府のお考えを承りたいと思います。 これは私の記憶違いでございましたら失礼いたしますけれども、池田首相は、岸内閣の閣僚でおありになりました時代であったかと思いますが、中国貿易は重視するに足りないというような御意見を談話の形で新聞に御発表になったようなことがあったと思います。これは私の記憶違いかもわかりませんが、現在中国貿易についてどういう認識を持っておいでになりますか。相当積極的にこれを進めるべきであるというように現在はお考えになっておるようだと思いますが、中国貿易一般論に対する総理の御見解を最初にちょっと承っておきたい。
○池田(勇)国務大臣 私は、主義、政策のいかんを問わず、やはり貿易はどの国とも盛んにしていきたいという気持でおるのであります。幸いにソ連との貿易は逐年非常な増加を来たしておる状態であります。中国とも私は貿易の拡大をはかっていきたいという気持はございます。
○黒田委員 中国貿易につきましては、これはもう私どもだけではございません、自民党の方々も非常に熱心な関心を持っておいでになりまして、超党派でやろうということで、議員の貿易に関する連盟もできておるというような状態でございます。国際貿易はやはり政府間の協定が成立いたしませんと、正常化された貿易とはなり得ませんし、また本格的な発展も望まれないのでございます。しかも日本国民の大多数は、大資本なども含めて、政府間協定の実現ということを熱望しておりまして、そのために、業者あるいは一般の国民の政府間協定実現のための国民運動というものも現在行なわれておるような状態でございます。しかし、過日池田首相が国会において御答弁になった御趣旨を承りますと、政府間協定を中国と結べば、中国政府の事実上の承認となるからという理由で、政府間協定の締結の意思はないというような御見解であったと思いますが、現在もやはりそういうような御見解でございましょうか。
○池田(勇)国務大臣 ただいまも政府間の貿易協定でなしに、積み上げ方式でいきたいと考えております。
○黒田委員 積み上げ方式とおっしゃいましたが、その問題について私は申し上げようと思っておりました。それはあとから申し上げます。とにかく現在では、いろいろな政治上の関係から、国民の望んでおりまする政府間の協定というものは成立しておりません。これは非常に残念なことでございます。岸内閣の時代には、御承知のように中国敵視政策をとりましたために、約二カ年半貿易が中断されておった。ところが現在では、積み上げ方式ではなく、いわゆる貿易三原則中の民間契約という方法で中国の公司と日本の友好商社との間で経済上の取引が行なわれるようになっておるのであります。中国との貿易は、今申しました友好商社という言葉で表わされておりますように、あくまで両国人民の友好という見地から行なわれるという建前がとられておるのであります。日中貿易の本質は、政経不可分の原則のもとで行なわれておる貿易であるというところにあると私は考えます。こういう原則に基づく友好的態度を明瞭に示すものであります限りは、商社の大きい小さいということは向こうは問題にしないで、積極的に個別的な民間契約を締結するという道が開かれております。しかしこれはただいま総理のおっしゃいました積み重ね方式ではない、政治三原則を離れてただずるずるべったりと無原則的な個別的な民間契約を結んでその積み重ねが正常な貿易に発展する、それによって貿易問題が事実上解決できるというような考え方は、もしこういうことが考えられておりますとすれば、私はそれは非常に大きな間違いであると思います。「中国との貿易は経済的に有利であるからこれを行なうのだ」というだけの理由でやろうといたしましても、それはなかなか相手が応じてこない。そこには政経分離という考え方がひそんでおるからでありまして、友好的態度を示さないで貿易ができると考えてはならぬ。これは中国貿易の一つの特徴であります。これは積み重ね方式というものとは全然違う。友好的態度というものがなければ中国貿易はできないのだという観点に立って政府は貿易のことをお考えになりませんと、せっかくいろいろ努力をなさいましても、私はむだになると思います。中国側は日本との貿易に関しましてこう考えている。日本の友好商社との貿易は日本の中小企業やあるいはアメリカのドル防衛によって苦境に立たされておる大小の企業の利益のために行なうのである、こういう考え方を中国側は持っております。時間がありませんから質問を続け、最後に総理のお答えを承りたいと思います。日本と貿易をしなければならない何らかの特別の事情が発生したためにこれを行なうものだというようには、中国側としては考えていないわけであります。日本と貿易をしなければならない何らかの弱味が中国側にあり、それがために中国をして日本と貿易をさせるのだというふうに考えますと観測を誤ることになります。ところがどうも、従来、日本政府や外務省筋は、日本政府の中国に対する政治的態度をそのままに維持しておっても、相手の態度の変化によって貿易関係の好転もあり得るというような考えがあったのではないか。あったというだけでなくて現在もあるのではなかろうかと私は考えます。しかし中国側としましては政経不可分の原則をくずしてまでも日本と経済的取引をしなければならぬという事情はないと私は見ておる。中国は原則を重視する国であります。政経分離の観念の上に立って平和原則というものを無視して貿易政策を中国に対し推進していこうというようなことは、私は成功しないと考えます。この点は政府においても十分に考慮していただきたいと思います。中国貿易はあくまで友好の原則の上に立つということを政府としても確認をされまして、政経分離の考え方を捨てて、国民経済の利益のために平和原則を確認した上でやがては政府間協定を締結する、そうして正常な貿易に発展させるのだという考え方で中国貿易に臨んでいただきたいと思います。このことが忘れられて、原則を抜きにして、大きな商社中心に売り込めばいいというような態度で臨んでは、向こうが受けつけてくれないのであります。このことを私は特に申し上げておきます。私は自民党の諸君にもよくこのことは御理解いただきたいと思います。現在の友好商社の貿易方式では技術的にも不便だということは私もよく知っておる。どうしても政府間の協定まで押し上げていかなければなりません。けれども現在では両国の政治的な事情によりまして友好的商社という関係を通じての貿易という方法以外には望めない状態である。これをあえて無視して、こちらにはこちらの事情があるのだというようなことを言っても、相手があることですからそれでは成功しないと思います。特にこれは自民党の皆さんに申し上げておきたい。私の考えは間違っていないと思います。 もう時間がだいぶ超過しておりますので、総理にも御迷惑をおかけいたしました。私の質問はこれで終わります。もしお答えできますならば答えていただきたいと思います。ただいまのような政経分離の考え方では中国とは現在の国際情勢のもとにおいては貿易は成功しない、あくまで友好原則に立つべきものである、政府はこういう方針に基づいて貿易政策を推進していただきたい、こう思うのであります。
○池田(勇)国務大臣 お話の政経不可分ということの解釈につきましてはいろいろニュアンスが違うようであります。私は先ほど来申し上げましたごとく、政府間貿易協定ということは今のところできないが、お互いに友好的な気持を持って——恩に着せるというわけではございません、経済の原則として物資の交流をはかるということはお互いのためにいいことでございますから、私は積み重ねという言葉が悪ければあれでございますが、友好商社のみならず以前にやっておりました日中輸出入組合等を再建いたしまして、そうしてできるだけ今の貿易の拡大をはかっていきたいという気持でおるのであります。
○黒田委員 日中輸出入組合のお話が出ましたが、私はいろいろな方法によって貿易をやるということを悪いとは決して申しませんが、いわゆる友好商社としてでない日中輸出入組合との貿易というものも、これを中国との間に実現させようと思えば友好原則の上に立ってやることが必要である。そうであればこれもある意味において友好商社ということになるのであります。これだけ申し上げまして私の質問は終わります。
○堀内委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後二時四十八分散会