法務委員会 第1号
- 発言数
- 54 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1960/10/17
会議録
○委員長(松村秀逸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 この際、委員の異動について報告いたします。 十月十四日付、佐野廣君が辞任、泉山三六君が選任。 本日付をもって江田三郎君が辞任 し、坂本昭君が選任。 以上であります。 —————————————
○委員長(松村秀逸君) まず調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。 検察及び裁判の運営等に関する調査承認要求書を、本院規則第七十四条の三により、議長に提出したいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(松村秀逸君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。 —————————————
○委員長(松村秀逸君) 次に継続調査要求についてお諮りいたします。 ただいま議長に要求することに決定いたしました調査事件につきましては、今国会はきわめて短期間で、会期中に調査を終了することは困難でありますので、議長からこの承認がなされた後において、本院規則第五十三条により、継続調査要求書を議長に提出することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(松村秀逸君) 御異議ないと認めます。 なお、要求書の作成、手続については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(松村秀逸君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 午後一時から再開することとし、これをもって休憩いたします。 午前十一時五十一分休憩 —————・————— 午後一時三十五分開会
○委員長(松村秀逸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。竹内刑事局長は、先般来英国のロンドンにおける第二回国連犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する国際会議——これは少年問題が中心でございます——それからロンドンにおける国際廃娼会議——これは売春問題が中心でございます——及びオランダのへーグにおける国際犯罪学会議に出席されましたので、委員会としても本調査の一環として、その会議の模様、中心問題及びそり結果等を聞くことにいたしたいと存します。
○説明員(竹内壽平君) 本年八月から九月にかけまして、ただいま委員長かり御紹介のありましたように、ヨーロッパで三つの国際会議がございました。私も日本側代表の一人としましてヨーロッパへ参りまして、三つの会議に出席をいたしました。まだ会議の際に配付されました書類が全部届いておりませんので、私が荷物の中へ持って参りました結論と日程表のようなものだけを仮訳いたしまして、ただいまお手元に配付をいたしました。私は話をなるべく簡潔にいたしまますために、このような措置をとりましたが、誤訳のものもございますので、後日間違っておる点がございましたなら訂正さしていただきますことをお許し願いたいと思います。私は、去る八月四日夜東京を立ちまして十月三日の夜に東京へ戻って参りました。第一回の会議はこの「第二回国連犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する世界会議」というつづりをごらんいただきたいと思います。この会議でございますが、八月八日から二十日までロンドンのウェストミンスター寺院の一角にございますチャーチ・ハウスという所で開かれました。世界各国から約八十三の各国とテリトリーから代表が参って、おりまして、日本からも十名参加いたしましたが、各国の出席者は千人を突破いたしておったように記憶いたしております。 まずこの会議の模様を申し上げたいと思いますが、第一口に開会式がございましてこれは大法官といわれているロード、チャンセラー上院議長の開会のあいさつから始まりまして、午前中はその開会式で終わりました。午後から三つの部会に分かれまして、さっそく討論に入ったわけでございます。二つの部会と申しますのは、この最初の所に書いてありますように第一部におきましては「少年非行の新しい形態——その原因、防止及び処遇」という題、それから「少年非行の予防のための特別の警察行政」、この二つが論題になりました。それから第二部、第三部、それぞれここに書いてある通りでございますが、私はこの第一部の方に終始出席をいたしております。従いまして、この第一部の点につきましてやや詳しく御説明を申し上げたいと思います。 まず第一部におきまして私どもがあらかじめ出しておりましたナショナル・ペーパー各国からそういう報告書が出ているのでございますし、それからさらに各その道の権威者に国連が依頼いたしまして調査報告を求めております。それらの各国のナショナル・ペーパー、あるいは研究調査報告、そういうものを全部閲覧をいたしまして、総括報告書というものを西ドイツのウォルフ・ミッデンドルフという判事が国連の依嘱を受けまして報をまとめております。そのウォルフ・ミッデンドルフ判事がまず議長の呼びかけに応じまして、約一時間にわたって報告の内容を紹介いたしました。その紹介の後に、約十分間ずつ希望者に時間を許しまして、それぞれの国から約三日間にわたって、三回のセッションにわたって発言がございました。その発言の結果を取りまとめましてその次のページにございますが、第一部会と書いてあり律すが、「少年非行の新しい形態—その原因、防止及び処遇」という題で、「第一部会の討議から引出される問題」というクェスチョンズをつけまして、そしてこの問題点の一から十一までございますが、この問題点につきまして、さらに順を追いまして、五分間ずつの討議で各国から発言をいたしました。この会議にはソ連及びソ連圏からの各国からも代表が来ておりまして、各国から五分ずつの意見の開陳がございました。これらの意見をふんまえまして、最後にこの結論と勧告というものを協議をいたしました。これは本会議の席上で討議をしたわけでございますが、この結論と勧告につきましては、第一部会以外の第二部会、第三部会に出席しているところの人の発言ももちろんあるわけでございまして、だいぶここで議論が出たわけでございますが、一応全部採択されております。ただ、これは総会に提出されましたドラフトを翻訳したものでございまして、若干の字句の修正等がございましたものについては、決議の成文というものは、私どもいただいておりませんので、いずれ国連の会議録に載ると思いますけれども、ここにおきましては総会の席に出されました案につきまして翻訳をいたしたのでございますが、私のつたない語学の力では十分でございませんけれども、あまりこの案と違った結論にはなっておらないと考えております。こういうような経過で、約二週間の会議を終わったわけでございますが、ここで申し上げてみたいと思いますのは、少年非行につきましての各国の現状、考え方でございますが、ウォルフ・ミッデンドルフ判事がまとめました総括報告書は、非常に詳細に、しかもりっはな報告であったと私考えております。その報告はプリントになって出ておりますので、それに基づきまして、概略御説明申し上げてみたいと思います。 まず、現下の少年犯罪でございますが、この少年犯罪あるいは少年非行、ジュベナイル・デリンクェンシーという言葉を訳しておりますが、このジュベナイル・デリンクェンシーという言葉の持つ意義、定義、これが問題であるということで、特にヨーロッパでは、この言葉はおとなが犯した場合には犯罪となる行為を意味しているのに対しまして、アメリカでは、かなり広くこれを使っている。学校をなまけたり、不純な性交をしたり、あるいは夜間徘回したりというような不良行為もをジュベナイル・デリンクェンシーという用語の中に含めて考えているようでございまして、まあ日本などはこの中間的な立場で、虞犯少年という言葉を使っておりますが、罪をおかすおそれのある行為をもジュベナイル・デリンクェンシーの中に入れておるわけでございまして、日本はその中間的でございますが、ヨーロッパとアメリカがややこの広さ狭さの点において対照的になっておりました。従いまして、その統計もやや広いのとやや狭いのとの間で議論がされますので、若干の多いとか少ないとか申しましても、そこにそういうニュアンスがあることを頭に置いて理解しなければならぬと思います。 まず、この少年犯罪が増加している国はどういう国かといいますと、アメリカ合衆国、イングランド、ウェールズ——これは英国であります。南アフリカ連邦、オーストテリア連邦、ニュージーランド、西ドイツ連邦、東ドイツ、オーストリア、ギリシャ、ユーゴスラビア、フランス、スエーデン、フィンランド、日本、フィリピンがまあ掲げられておるわけでございます。この詳細は省略をいたします。 それから少年犯罪が減少しているという国、この部類に属する国としましては、スイス、イタリア、ベルギー、カナダがあげられております。ただカナダでは少年裁判所に出頭した少年の数を一九四七年と一九五五年とを比較してみると、全体で約八十人減少したということを申しております。もっとも罪種別に申しますと、財産犯罪と性犯罪とが全体に対する比率におきましてはふえておるという報告になっておすます。 次に、再犯の状況でございますが、これはオーストリア、アメリカ合衆国、英国、オーストラリア、日本、スイス、スエーデン等で、それぞれ再犯の問題に触れておるわけでございまして、要するに総括的な結論といたしましては、少年犯罪の一般的傾向は多くの国においてその増加が著しく、またある幾つかの国における累犯の増加という点が特徴であるというふうに指摘をされておるわけでございまして、この問題についての研究がきわめて緊要であるということを申しおります。 さらに新しい研究といたしまして、アメリカ、ルイジアナのサウザンド大学における黒人と白人との間における再犯原因についての比較研究などもこの点に触れております。 そこで、これが一般概況でございますが、新しい少年犯罪の形態といたしまして、財産犯罪、交通違反、集団犯罪、特にギャング、野蛮な粗暴行為—ヴァンダリズムというふうに英語で書いてありました。それから性犯罪、アルコール中毒、麻薬等の薬物中毒というような点に新しい形態の犯罪をとらえております。 まず、この財産犯罪でございますが、ここで特に問題になりましたのは自動車窃盗でございます。アメリカにおきましては一九五五年の統計によると、自動車窃盗のうち六八%は十八歳以下の少年によって犯されているという報告になっております。カナダ、英国等においても急激な増加が報告されております。同様なことは、フランス、ベルギー、スエーデン、イスラエル、オーストラリア、ギリシャ、タイ—タイはこれは自動車でなくて自転車でございますが、同じようなことが報告されております。 なおこの点で少年裁判所の裁判官の国際協議会事務総長という肩書きのあるロック氏、これはブラッセルの人でございますが、この方が自動車窃盗についてのかなり詳細な報告書を出しております。それからまたスエーデンのエリクソンという人の報告によりますと、これまた非常に興味のある、たとえば自動車窃盗は多分性的な敗北を埋め合わせるための行為と言えようというような興味のある報告でございますが、またイスラエルやオーストリアの報告あるいはギリシャ、いろいろな角度から社会学的、心理学的に解剖いたしまして、自動車窃盗の実態の分析、解明をいたしております。ただ全体として見まして、自動車窃盗でございますが、これがほんとうの窃盗じゃなくて借用なんであります。借りるという、まあ使用窃盗でございます。多くの国においてこの使用窃盗に終わってほんとうに取ってしまってこれを売り飛ばして金にしようというのでなくして、乗りたいほうだい乗って捨ててしまうという形の自動車窃盗であることが特徴的でございます。そして、この分野におきましては、刑事学的な研究も不十分であることを指摘しておりますし、西ドイツでは自動車窃盗で刑務所に収監された百十一人の少年について研究があるという紹介がございました。なお、そのほか財産犯罪につきましては、イスラエルからくだものの窃盗について、また、イギリスからはレコード屋からレコードを盗むという万引の問題、ベルギーからはデパートメント・ストアーからの万引、こういうものが多くなっている。そして、これらの万引のうち九〇%までが十二才代の少年、特に男のグループによって興味本位に安価な物をねらって行なわれているという報告がございます。しかもこれらは、通常よい家庭の少年によって、また、監督の不十分な、両親が共に働きに出ているような家庭の少年によって犯されているというところが特徴であるという報告になっております。 詳しく申せば切りはありませんが、次に、交通違反でございますが、少年による交通違反が非常に増加しておる国として、アメリカ、ニュージーランド、日本、ギリシャ、スェーデンがあげられております。アメリカの上院の少年非行に関する委員会がございますが、この委員会の報告はなかなか興味のあるものでございまするけれども、交通違反について少年裁判所が管轄を持つ所とそうでない所とがある。交通違反の少年を少年犯罪者として特別な取り扱いをすべきかどうかという点については非常に見解が分かれておる。これは日本でも同様でございます。一方では、社会が交通違反を道義的に責むべき犯罪と考えていない以上、交通違反は他の犯罪と同様に考えるべきではないという意見があるとともに、他方では、成人の交通犯罪については社会が寛大な見方をしているとしても、人格の形成期にあって、あらゆる法の順守の必要性が強調されなければならない少年の場合については、成人と同様に考えてはならないというような意見がある。さらにまた、第三の意見としましては、重大な交通犯罪や素質上の問題を持つ少年による交通犯罪につきましては、少年裁判所の熟練したスタッフによって真の犯罪者として取り扱うべきだという意見、この三つの意見が出されております。なお、アメリカの人ですが、ラーソンという人の常習的な交通犯罪者という報告がございますが、この人は、一般犯罪者に有効であるグループ・セラピー、これに必要な修正を加えて少年の交通違反者にグループ・セラピーを施すのが有効だというようなことを申しております。 それから第三としましては集団犯罪でございます。非常に少年の間に集団で罪を犯す傾向が増大している。この集団は、町かどのグループ、ストリートコーナー・グループという言葉を使っておりますが、町かどのグールプ化または緊密な、階級的な、組織的団結であるギャングの形態をとって現われている。で、これら二つのグループの組み合わせもありますし、また、可能であるし、特殊な現象としましては第三の犯罪集団の出現である。それは、このストリートコーナー・グループのギャング活動とも関連するのであるけれども、青少年による集団騒擾——マス・ライオティングという言葉を使っております——ないしは反社会的な行動形態がこの第三の集団犯罪として指摘されるということを言っておりまして、いろんな国でいろんな名前がついております。どういうふうに翻訳するのがいいかわかりませんが、ドイツでは、青二才と日本語で訳せば言えるような名前のついたニックネームがついておるわけでございますが、フランス、英国、イタリー、ポーランド、ロシアなど、それぞれあだ名がつくほど有名な、日本で申しますとマンボ族とか何とかいうような名前のものだと思いますが、そういう名前がそれぞれ各国につくほど集団的な青少年のグループというものは有名であるようでございます。 これももう少し内容を詳しく申し上げますとおもしろいと思いますが、時間の関係で、はしよりまして、次に、青少年のギャングの問題でございます。これはロックスという方の報告でございまするけれども、青少年のギャングにつきまして、これは多くの国においてまさに真実である。反社会的行動をとる、青少年ギャングの起源にさかのぼると、われわれは十才から十八才までの少年たちは両親の監督からのがれて秘密の社会をつくることが特に好きであることを発見する、という心理分析をいたしております。このような年令層の少年特に男子は、集団を形成する傾向がある。先生や少年団の結成者などは、その教育方法としてこのような自然の少年たちの傾向を利用している。それらの団体のあるものは、かなり健全なものもあるし、あるものは反社会的行動に出る前に消滅してしまうようなものもある。ところが、あるものはばか騒ぎや残忍な行為の段階を通っておそらく軽微な犯罪をまき散らし、そうして突然予期しないような伝染病にかかったように、社会に対する反逆の性格を持った積極的な犯罪集団に軟化していくのだ。このようなギャングのメンバーは、主として両親の短見、無関心または敵意によって家庭から追い出された少年たちから編成されるのだ、という見方をしております。その子供たちは、家庭から追われて自分の父母は自分を愛してくれない、自分は要らない子供だといったような観念にとりつかれて街頭をさまよい歩いて、いわゆるストリートコーナー・グループに転化していくのだという分析でございます。ギャング活動は一番多くはアメリカ合衆国に見られるのでありまして、このアメリカ合衆国の状態も細かく報告がございます。そのほか、英国、ニュージーランド、オーストリア、西ドイツ、フランス、ユーゴスラビア、インド等からそれぞれ報告が出ております。フイリピンの報告もアルゼンチンの報告も、やはりギャングがふえているということになっております。 それから、最後にヴァンダリズムでございますが、乱暴な破壊行動が世界の多くの国で問題とされている。特にアメリカの上院の少年非行委員会がこの点について強い意見を出しているのでございますが、マーフィーという人からの報告によりますと、犯罪原因は主として少年の家庭と少年を取り巻く環境のうちに見出されるということでありまして、実際問題としてヴァンダリズムに巻き込まれる子供たちのすべては、漫画本、映画、最近はテレビジョン等を通じて犯罪的破壊行為を感情的に誘発するような環境において品目養育されているというようなことを申しております。それで、ここ十五年間ほどわれわれは暴力と汚職頽廃のもとに生活している子供が成長するということは一つの冒険である。道徳観念は薄れ、子供たちはとほうにくれている。両親はこの道徳の混迷した雰囲気、価値の転換しつつある社会で子供たちを導くのに困難をしている。しかし、子供たちが従う矛盾のない健全な価値体系を教え、その模範を示すのは両親たちの義務である。われわれはよりよい家庭と、より賢明な家族を持つことによってヴァンダリズムはより減少するであろうというのがマーフィの結論になっております。なおイスラエル、スエーデン、オーストリア、カナダ、フランス、フィンランド等からもそれぞれ大体今のような意見に近い意見が述べられております。 それから次が性犯罪でございますが、今7までの自動車窃盗あるいはギャング、ヴァンダリズムと性犯罪とは、またこれ別々にあるのではなくて、しはしば結びついておる。この性犯罪につきましては、いずれまた売春のところで触れたいと思いますので、ここは省略いたしますが、ベルギーの報告によりますと、十四才に達しない年少者による性的非行の著しい増加を報告しておりまして、ときにはこれらの非行者は相手方の名前さえも知らないほどに頻繁に不純な関係を持っているということを報告しております。そういう原因といたしましては、裁判官たちは映画、小説、ポピュラー、ソング等によって促進される自由と享楽の雰囲気、両親の冷淡さと優柔不断、ダンス・ホールその他の歓楽の場所における頽廃的な影響等による成熟の早期化に注目をいたしております。特に私、気がつきましたのは、ダンス・ホールが開かれるやいなや、小さな町や村に非行が増加するということは驚くべきことであるという報告がなされております。そのほか南オーストラリアの性的非行の増加、特に年少少女で上・中流家庭の少女による不純性交を指摘しております。それからヒモの問題、コール・ガール組織なとがスエーデンから報告されております。アルゼンチン、フィリピン、ドイツのハンブルグで行なわれた男の少年の売春の調査などが報告をされております。 アルコール及び薬物の中毒の問題でございますが、スエーデン、フィリピン、カナダ、ユーゴスラビア、西ドイツ——特にユーゴスラビア、西ドイツでは、少年犯罪者は罪を犯すとき、しばしば半ばめいていしているとされております。それからインドでは、禁酒地区に酒類を密輸入するため少年たちが利用されているといわれ、その理由は、少年たちに対しては処分が一般に寛大であるからであるというふうに報告されております。それから毒物中毒の点は、アメリカ合衆国では非常な重大な問題になっているということでありまして、ニューヨーク、シカゴ、デトロイト、ロサンゼルスにおきましては麻薬中毒者が増加しており、現在アメリカには約五万の中毒患者がある、そのうち約六〇%は二十一歳から五十歳までの者、その一二%は二十一歳以下の者、一〇%は十八歳以上二十歳までの者、残り二〇%は十八歳にも達しない若者であるというようなことを申しておりました。日本からは鎮静剤のことを報告して、これが三年ばかりの間に跡を結ったという効果のあった施策の報告をいたしまして、これも国連で取り上げて報告書の中に出ております。 以上が大体大づかみに申しまして世界各国の少年犯罪の現況でございますが、これに対しまして、犯罪原因は一体何であるかということが一番大事な問題になって参ります。通常この犯罪原因を三つに分けております。生物学的な原因、社会学的な原因、心理学的な原因でございます。この犯罪の遺伝ないしは人格形成面における原因ということは、ヨーロッパ各国においてはいまだに根強いのでございましてここにも出ておりますが、イギリスのケンブリッジ大学の刑事学会の会長をしておられますラジノヴィッツ教授は、そういう方面の方でありますし、先般日本へ招聘いたしましたアメリカのハーバード大学のグリニッタ教授とか、あるいはイギリスのマンハイム教授などは、むしろそれとは違いまして社会学的原因が重視されておるわけでございます。つまり社会学的な原因論の方は、家族とか近隣とか文化とかマス・メディア等の影響をより重視したものの見方をしておるわけでございます。フィンランドの報告によりますと——これはきわめてつまみ食いのような報告で申しわけございませんが——一九五六年に三週間にわたって行なわれたゼネストが、法を軽視する風潮を生んだことを指摘しております。フィリピンの報告は、十代の少年犯罪の増加に影響を及ぼした原因といたしまして、貧困な境遇、失業その他の経済問題、少年の精力のはけ口をつけ、それを指導育成する方策の不十分さをあげております。それから刑事学者でございますが、ほとんど一致をいたして、少年にとって最も重要なのは家族の影響であることを認めております。このことは、高い生活水準と多くの欠損家庭を持つ西欧諸国において特にそうであります。家族関係が破壊されていく原因は、権威の危機、いわゆる進歩的教育、両親の間における権威衝突、そうして心理学の新しい傾向等の中に見出されるというようなことを申しております。アメリカのそれは、婦人が旧来の社会的、法律的な従属的な地位を解放されたことの一つとして、両親の間における権威の混乱が生じている、いわば軍隊にあまりにも多くの将軍ができ過ぎたようなことになってしまっておるのだというようなことを申しております。それからマス・メディア、マスコミの関係でございますが、この点の影響については意見は一致しておらないのでございまして、いろいろの意見に分かれております。メキシコの報告によりますと、アメリカ映画が少年犯罪に及ぼす影響として、学生が教師を侮辱したり攻撃すること、若者たちが目的を達成するために一時的のギャングを構成したこと、個人の自宅や通行人に攻撃を加えたこと等をあげて、アメリカ映画の影響であるということを申しておりますが、ただ、もう一つの考え方は、これは国連の社会防衛課長口ペッレイなんかの考えですが、現在の少年犯罪に対する研究の態度が、あまりに精神医学的、心理学的な理論や方法に偏し過ぎておる、それは早急に改めなければならぬとするような意見もあるわけでございます。むしろそういうものに災いされて対策を誤まっているのではないかというような反省でございます。 要するに、少年犯罪の原因についての意見は、今申しましたようにいろいろ分かれておるのでございますが、原因論についてはもっと掘り下げて研究がされなければならぬ。これらの研究が積まれれば積まれるほど犯罪防止の計画をよりよく作ることができ、さらに多くの研究を発展させることができるというのが皆さんの一致した意見でございます。 それからもう一つ申し上げたいのは、これらの学問的な研究と犯罪防止の点につきましていろいろな意見、対策が述べられておるのでございますが、世界各国でいろいろな研究をやっております。特にアメリカにおきまして集中的な研究が行なわれておるのでありまして、英連邦諸国のそれと比較しながらいろいろ説明をされておるのでございますが、少年非行の防止に関する研究をミッデンドルフは次のように分けております。第一は少年非行の原因に関する研究、第二は現在及び過去の処遇効果に関する研究、つまり少年裁判所制度、プロベーション・パロールとアフター・ケアの問題、それから次には短期の処遇、それから次には長期の収容処遇、それから次にはグループ・ワークの効果、もう一つは将来の行動の予測研究でございまして、刑の宣告、これは裁判所による処分、再犯の防止、潜在非行者の早期発見、これは現在及び過去の処遇効果の研究、少年裁判所制度の問題にも触れるわけでございまして、この点は日本でも非常に大事なところでございますが、時間の関係もございますので、ここはまた後日御質問の機会にさらに詳しく述べさせていただくことにいたしたいと思います。 あとは短期処遇の問題、長期の収容処遇の問題、グループ・ワークの問題、予測研究の問題、それぞれ研究並びにその方面の権威者の報告が詳細に報告をされております。こういう報告に基づきまして、先ほど申しましたように、各国がそれぞれ十分ずつの討論をいたしまして、三日間くらいそれを続けました結果、問題点をここへ十一掲げてございます。これも一々詳細に読みますことは省略いたしまして、お目通しを願うことにいたしたいと思います。 それから最後に結論と勧告になったわけでございますが、これはそう長いものではございませんから、結論という意味で読んでみたいと思いますが、「少年非行の問題は一国の社会的構造を離れては考察することができない。少年非行は多くの国において旧来の型においてか、机らしい型態の外観をとってか、いずれにしろ再び上昇を示すという基本的性格をもっている。これらの統計上の上昇は、部分的には、犯罪の防止と犯罪者の処遇に関する組織がよりよく作られるに至ったために多数の事件が発覚するという事実と、さらに、ある国々においては、非行の中に一群の軽微な規律違反行為や社会不適応が含まれている事実とに起因することを注意しなければならない。しばしば余りにそれは誇張されすぎているのであるが、新らしい少年非行の型態は、必ずしも重大な反社会的行動であるとは限らないが、社会秩序という観点からみて重大でありうるギャング活動、無動機犯、ウァンダリズム、自動車等の面白半分の無断使用などといった特徴のある型をとっている。 「従って、次の結論が採択された。本会議は、 (1) 少年非行問題の領域は不必要に拡げられるべきではないと考える。各国において少年非行として考慮さるべき事柄について一つの基準となる定義を形ち作るかわりに、本会議は、次のことを勧告する。(a) 少年非行という文言の意味は、できるかぎり刑罰法規(CriminalLaw)の違反に限定さるべきである。そして(b) 少年保護の目的のためであっても、大人であれば訴追されないような軽微な規律違反や社会不適応行為について少年を処罰するような特別な罪を作るべきではない。 (2) 公刊されている統計資料によって或る国々においては、これらの犯罪を防止するためにとられた大きな努力にもかかわらず、或る型の少年非行が出現し、それが最もすみやかにしかも重大に増加しているようにみえることに注目し、かつ、このような外観的に見た増加が真実の増加であるかどうか、もし、そうとすればその原因は何であるかを確かめることを希望し、かつ、少年非行の防止と犯罪者の処遇についてよりよい対策を作り、実施するために、この問題が国際連合の社会防衛部門の仕事のうちにとり入れられ、この問題に直接の関心をもつ専門機関と非政府機関との協力のもとに遂行されるように勧告する。 (3) 少年の再犯の問題は、たんに厳重に法を施行することと、とくにより長い期間、少年を拘禁することのみによっては解決しえないと考える。予防と処遇に関する各種の方法が必要であり、矯正施設に収容されている少年に対する釈放及び社会復帰(社会への再適応)についての諸準備について特別の注意が払わるべきである。この目的を達するために、施設出所後の援護を組織立てることが重要かつ必要である。 (4) 新らしい型態の少年非行の出現は、継続した研究と犯罪の予防及び犯罪者の処遇に関する継続的であるとともに実検的な方策をより強力に推しすすめることを必要ならしめているとの結論に達する。ゆえに、 (a) ギャング活動をも含めて集団非行の問題を処理するに当っては、公的、半公的及び地域的、社会的組織が若者のエネルギーを建設的な方向に向けるよう一致して助力しなければならないと考える。コミュニティ・センター、青少年ホステルなどといった制度や余暇時間活動、スポーツ、文化的活動、家族の休暇プログラム等々といったその他の方法がもっと広く採用せらるべきである。 (b) 特殊の型の非行や非行者に特別の注意を集中するばかりでなく青少年犯罪者の人格や社会歴についてより深い調査がなさるべきであると考える。 (c) 社会的、経済的、政治的機構に応じて異った国の間にあって少年非行を防止し非行者を処遇するためにとらるべき方策については幾分の相違があることを認めるが、問題は、多く、学校及び家族を通じての教育にあると考える。ここで教育というのは、知識を与えることと人格の形成との両者を含む意味で用いられている。適当な両親による指導監督が欠けており、かつ、子供達の自律が欠けているところには、大人のレベルと子供のレベルとの双方における強力な教育が必要である。このような教育は、大人と子供の間に理解と同情とを増大せしめ、世代の間のギャップに架橋し、かつ道義的、社会的責任の観念を拡げるように向けられなければならない。 (d) 或る種のフイルム、出版、漫画本、センセーショナルな犯罪や非行に関するニュース、低劣な型の文学、テレビジョン及びラジオ番組といったようなものが或る国々においては少年非行の一つの原因とみなされていると考える。故に、それぞれの政治的社会的、文化的諸制度や諸観念に従って、各国はマス・メディアの濫用と考えられ、かつ、少年非行を発生せしめる一要素と考えられるこれらのものの影響を紡ぎ又は減少させるために、合理的な手段をとることを妨げない」——と訳しましたが、Maytake。という字を使っております。とってもよろしいという意味でございましょう。 「(e)職業指導と職業訓練についてのより適切な施設が設けられるべきであり、また、当該労働施設や学校を卒業した青少年の当該施設における仕事のために財政的援助が行わるべきであることを勧告する。 (f) 公的と私的の社会福祉機関の協力及び少年非行の防止と非行者の処遇に関する専門的機関と民間の機関との協力が強化さるべきであることを勧告する。地域社会の協議会、地域計画、少年局青少年委員会といったようなものは、このような協力関係に貢献するところが大であろう。」 これが新しい型態の少年非行とその原因、防止及び処遇についてのコンクルージョンでございます。 それから同じ第一部会の少年非行の防止に関する特殊警察部門の結論でございますが、これはその次の紙に翻訳してありますように、簡単なものでございますが、 「本会議は、 一、警察官は、犯罪を防止するというその一般的任務の遂行において新らしい型の少年非行の防止に特別の注意を払うべきである。しかし、警察官は、社会教育的その他のサービスの分野によりよく適する特殊な機能を引受けるところまでゆくべきではないと考える。二、少年非行の分野において警察によってなさるべき防犯活動は、人権保護に従属しなければならないと考える。 三、国家的必要に応ずる差異を認めつつも、国際刑事警察機構が、少年非行の防止における特殊警察部門という表題で提出した報告は、少年非行の防止のためにそれが好ましいと考えられるところでは、特殊警察部門の組織と構成についての適当なよりどころを提供すると考える。 四、しかしながら、若年犯罪者の指紋の採取及び警察によって善良市民賞及び不良マークの制度を設けることの勧告については、幾分の留保をする。 五、少年非行防止のための手段について警察、各種の国家機関及び一般大衆との間の最も広い協力が極めて大切であると考える。」 結論を申しますと、特段目新しいところもないのでございますが、関係の報告などをいろいろかみ合わして考えますと、なかなか貴重な研究であると考えます。 これをもちましてこの第二回の国連の世界会議の御報告を終わりたいと思います。 その次は、九月五日から九月十日までオランダのへーグにおいて行なわれました犯罪学会議でございます。この会議におきましては約五百名くらい参加をいたしまして、国連の会議とともにこれに参加した方が多かったように思います。日程等はここにごらんの通りでございますが、この会議におきましては私は第二部会に参加をいたしました。第二部会の第一問は、てんかんと犯罪という題でございまして、その次は性的犯罪、その次は万引の問題でございます。で、これは特に御報告申し上げるには、あまりに、刑事学と申しましても、他の精神病学、心理学といったようなあらゆる学問を動員してこの刑事裁判の方に十分反映させるべきだ、そういうものを幾ら援用しても裁判に悪い影響を与えるものでないというのがどうも結論のようでございました。これは簡単にとどめさしていただきます。 次は第二十一回国際廃娼会議、九月二十七日から三十日まで四日間、これはイギリスのケンブリッジで行なわれました。ケンブリッジのセント・キャサリン・カレッジという所を提供して下さいまして、私どもはその学生の泊まる寄宿舎に入りまして、カレッジの講堂か会議場になっておりました。正式のメンバ一で、リストに載っていましたのは、私勘定しましたところ百二名か三名でございましたが、そのリストができてから後に参加をされた方が二十数名あるということでございましたので、百二十名くらいが参加者であったように思います。ここにおきましては、この日程表でごらんいただくとわかりますように、開会式のあと「べルギ一領コンゴにおける売春」ということで報告がございました。それから「ギリシャにおける売春」、それから「オポルトにおける売春の現代的地位」という説明、それから「インドにおける売春の社会学的条件」、「米国における売春の現状に関する報告」、そのほか、イギリスの道路犯罪法というのが売春取締法なんですが、その「法律とその機能」について国会議員から報告がございました。私も「日本の売春防止法の運用」について報告をいたしました。「イタリーにおける売春の現代的地位、フランスの売春関係立法の現代的改革」というような報告、講演がございまして、これを中心にして各参加者の討論が行なわれたわけでございますが、特にその討論が終わりましたあとで、各グループに分かれて討論をいたすことになりました。私はこの三つに分かれたグループの中で「売春による搾取に対する刑罰法規の研究」という部会に出席いたしました。そのほか「売春に関し、世論を構成する方法」とか、「売春婦の更生」とかいう部門がございました。私の出席しました刑罰法規の研究につきましては、夜、午後八時ごろから始めまして、翌日午前二時ごろまでぶっ続けにこの会議をやるというので、いささか閉口したわけでございますし、それから会議がほとんど七〇%フランス語でやられまして、私フランス語はわかりませんですから非常に難渋いたしまして、イギリス人でフランス語のわかる人と仲よしになって、その人に隣にすわってもらって、英語で翻訳してもらうということもやりまして、結局まん中辺にプリントいたしましたように、第一討議グループでの問題点がここに出てきております。「売春の行なわれる場所」。街路、公共の場所、私宅、もぐりその他の娼家、旅館、アパートなど、これらにつきまして、ホテルはいいとか悪いとかいうような議論まで出て参りまして、なかなか売春の行なわれる場所がどこかということの議論さえもなかなか意見が尽きませんでした。 第二は、「ヒモの存在と機能」。第三が、「婦女を売春のために募集すること、または売春婦(コールガールも含む。)のために客を募集することを助長する周旋人の種々のカテゴリー」。第四が、「もぐりその他の娼家の経営方法。」第五が、「外国人によるまたは外国における売春の範囲と起源——現在の婦女売買機構と用いられている手段。」第六が、「各種の売春婦の顧客。」第七が「売春等周旋事件において要求される証拠」。第八が「売春等周旋に対する刑——現在の地位と将来の修正——警告方法の採用。」こういうことを二日間にわたりまして熱心に討議をいたしました。このチェアマンになられましたのは、パリ大学の法学部の教授のルヴァスールという方で、非常に熱心におやりになりました、 なおその次に、国際廃娼会議案としてA条と書いて翻訳してございますが、これはパリ大学の法学部の教授と、この廃娼会議が一応売春の搾取を処罰するということで、一つの提案、議論の根拠にするために、向こうから私どもに示された案でございましてこれをごらんになりますとわかりますように、日本の売春防止法は、これをさらに分解しまして幾つかの条文になっております。ここに「他人の売春を助長し又は他人の売春によって利を得る者は…に処する。」という簡単な条文で書いてございますけれども、日本ではこれが分解されて売春防止法の罰則の中に幾つかはすでに現行法としてなっております。 そこで決議の要旨でございますが、これをちょっと読ましていただいて私の報告を終わりたいと思います。ここに三十日、ロンドンとございますが、これはロンドンは要らないので、ケンブリッジだけでよろしいわけです。 「一、人身売買及び売春搾取の禁止に関する条約ヘの加入、批准及び国内法の整備を要望する。とくに右条約未加入国であっても、娼家の禁止及び娼家を経営し又はこれに財政的寄与をする者を罰すべきことを要望する。 二、娼家の管理及び娼家よりの搾取を処罰する法を厳重に適用することに留意し、とくに、カモフラージュされたものの発見と断圧に特別の注意を向ける必要がある。 三、新らしい型の売春に適合する処罰立法が緊要である。周旋屋の経営者、コールガール組織の結成者等は秘密の娼家経営者として処罰されるべきである。 四、売春を継続させるために売春婦の更生を妨げる者を処罰する必要がある。 五、単純売春そのものは処罰さるべきでないことを強調する。但し、売春の実施方法が社会秩序をみだすようなものは罰すべきである。新聞や店頭の広告などで売春の勧誘や売春の要求を内容とするものは、擬装されたものをも含めて、厳重に取締らるべきである。 六、ヒモや売春搾取者に対する取締が強化さるベきである。情を知りながら全部又は一部他人の売春に依存して生活する者をヒモとし、その立証を容易ならしめるため、売春婦と同居し又は常時これと行動を共にする者、売春を助け、すすめ又は強要する等売春婦の行動を規制し、指導し又はそれに影響を及ぼす者は、反証のない限り情を知って売春に寄生するものと推定する旨の規定を設けるように勧告する。 七、立証を容易にし巧妙な娼家の経営や周旋組織等に対処するため、売春や性に関する罪が行われている合理的な疑のある場所を司法機関の発する令状によって昼夜をとわず捜索しうるような刊事訴訟手続きを設けることを勧告する。」 この六と七につきましては、日本の法律では若干問題があるわけでございます。 なお決議の第一、第二でございますが、これは最後のところが「法律で、売春を助長しまたは売春により利益を得るすべての者を罰するために売春という言葉を定義するのが、便宜である場合があるが、売春婦(Prostitute)という言葉は、その人格ベッ視的な性格の故に、法文においてこれを用いてはならない。」ということを申しております。日本の売春防止法には売春婦という言葉はもちろんないわけでございます。 決議の第二でございますが、「売春は現存の社会的諸条件を反映するものであるから、次の方法によって一般世論を変えるために強力な行動をとることを要求する。 a 新聞及びその他のマス、メディアをより広く教育、宣伝のために利用する。 b この問題についての科学的及び心理学的研究に十分の注意を向ける。 c 一人一人が自己の責任をしかと抱き、かつ男と女とが相互に尊敬しあうように、家庭、学校及び宗教的、文化的及び社会的諸団体が子供の教育に努める」。こういうことになっております。 これで私の報告は終わるわけでございますが、もう一言つけ加えさしていただきますと、廃娼会議におきまして、私どもはアドミニストレーション・オブロ・アンチ・プロスティテュション・ロイ・イン・ジャパンという英文のパンフレット、これは日本の売春法運用の実情を詳細に書いたもので、その附則としまして、日本の売春防止法が書いてございます。この書類をこの会議の席で配付いたしまして参考に供したのでございましたが、この日本の売春防止法が非常に各国の注目するところとなりました。その第一は、日本の売春防止法第三条の「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。」という売春禁止の規定でございます。これは非常に日本のは進歩的である。各国ともここまでは踏み切れないのでございまして、ちょうど単純売春を罰してはならないということの考え方、つまりこれは道徳の規律の問題であって、法律が入ってくる分野ではないという考え方が一つあると思いますが、この考え方がありましてせいぜいここに書いてありますように、売春というものは道義的によくない行為だというところまでは皆言えるわけでございますが、違法であると、法律に反するというところまではなかなか会議に来ておった人は言えなかったのでございまして、日本がここまで踏み切ったことについて非常な敬意を払って、私はそのためにいろいろ質問を受けまして、実は英語が十分話せませんので、説明に困難をし、まあ非常に困ったほどでございましたが、また非常に誇りにも感じた次第でございます。御承知のようにオランダ、ドイツ、ハンブルグ等にはまだ娼家、公娼がございまして、私どももこの会議の関係上、見せていただく機会を得ましたが、日本にはそのような青線、赤線が今日ではございませんので、何かこう胸のふくらむような思いがいたして、それを見て参りました。それからイギリスにおきましては、昨年の八月十五日から先ほど申しました法律が施行されたのでございますが、それまではハイド・パークのそれこそ町かどにはたくさんの売笑婦が客を待っていたそうでございますが、今日では全く街娼はロンドンからは姿を消しております。ただロンドンの盛り場のピカデリー・サーカースの裏の方にはソーホーとか申します浅草のような遊楽街がありますが、そこにはたばこ屋だとか新聞売り場等に、この決議の中にも出ておりますように、売春婦、コール・ガールでございますが、名前と番地と電話番号などを並べて登録してありまして、そこへ電話をかけますと、英語を教えますとかフランス語を教えますとかいうようなカムフラージュをしてありますが、それに電話をかければコール・ガールが来るというようなことで、現に私も最初のロンドン会議のときにはそんなリストを見たのでございますが、二度目にケンブリッジの会議でもう一回私がロンドンに参りましたときには、そのコール・ガール・システムのリストを全部寄せ集めて出版をいたしました。新聞屋に広告するのが合法であるならば、それを寄せ集めて一冊の本にするのが違法であるはずがないじゃないかというのが、その事件で検挙されました被告側の介護士の言い分でありましてこれが新聞にも載っておりましたが、しかしながらイギリスの方ではこれに対して有罪の判決をするだろうというのがその会議の席で私の伺いました話でございました。 まあそんな話をすれば切りがございませんが、一応以上をもちまして会議の模様の報告を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○委員長(松村秀逸君) 種々有益なる御報告を承り、まことにありがとうございました。 —————————————
○委員長(松村秀逸君) 次は六・一五事件をめくる人権問題、特に樺美智子さんの死亡を中心とする調査について、これを続行することといたします。 本件に関し御出席の方は、竹内刑事局長、河井刑事課長の諸君であります。 御質疑の方は順次御発言をお願いいたします。
○坂本昭君 前回八月十日の本法務委員会における答弁及び文書による回答に対しまして、私は残念ながら十分なる誠意ありと認めることはできがたいのでございます。従いまして次に逐次質問をいたしたいと思います。 まず、刑事局長代理の説明によりますと、上野鑑定人は、過去における胸部圧迫による窒息死の解剖事例を引用して、詳細な検討を加えてあるということであります。しかしながら過去の解剖事例と申しますと、イギリスにある四例にしかすぎません。しかもこの四例のうち、一番上は十八才であって、成人は入っておらないということはもう前回に私申し上げた通りであります。さらにまた文書回答の中にもあげてありますが、朝日ジャーナル、八月二十八日、これに東大教授上野正吉として、樺美智子さんの死因について触れてある点を見ましても、圧死の所見についてはすべて知り尽くされてある、そういうふうな表題のもとに、実は中を読んでみるというと、何が知り尽くされているかというと、たとえばタルジューの法医解剖の例をあげている。これは驚くなかれ一八六六年ナポレオン祭りの事故のときに窒息した九例——今から百年前の事例をあげている。およそナンセンスであります。またさらに、八月六日東京地検が発表しました不起訴処分決定理由書には、東京都監察医務院医師渡辺富雄が多数の圧死体を検案した経験により、とあって、前回、私の質問に対して刑事局長代理は、「十数例のこういう点についての事例を経験している」ということを答えております。「こういう点」というのはまことにあいまいであります。正確に申しますというと、人なだれについての解剖例は一例も持っていない。実際の解剖例を持たない医師に、あたかも大家のごとく装わしめて、法医学的判断の権威を持たせようとしているのではないか、非常なこれはインチキである、法医学並びに地検の不起訴処分に対して多大の疑惑を抱かざるを得ないということを私は申し上げざるを得ないのであります。しかも、その一方で、この文書回答をいただきましたが、この文書回答の第八問から第十一問までに、私の方では重要な点をお伺いしたにもかかわらず、最も重要な法医学的質問に対しては一切回答しておりません。たとえば八問では、潜水夫の水圧死の場合には頭部の出血と首の筋肉の出血とどちらがひどいかということを一つ答えてくれといったら、そういうことは監察医務院の医師の意見書には触れていないから返事ができないと、そうなっている。また第九問では、胸部圧迫による窒息死の場合、頭や目などに出血するが、首の前の方には特に多く出血することがあるかどうかといってお尋ねしていることに対して、中館教授、上野教授の鑑定書には何にも書いてありません、そういう回答であります。また第十問の、樺美智子さんのように十二指腸の下がるところとすい臓の頭のところに出血している例が一例でも実際にあるかと、こういう質問に対しても、両教授の鑑定書には触れていません、そんな回答であります。およそこういう不誠意な回答は私はないと思う。一体、地検には、責任をもってこういうことの回答のできる人がいないんですか。私は、この第八問からさらに第十一問については再度回答を求めます。まず、以上の点について御見解を披瀝していただきたい。
○説明員(竹内壽平君) ただいま御指摘の点でございますが、「いわゆる樺美智子死亡事件について」という文書回答でございますが、この回答を出しました経緯につきましては、私留守中でございましたが、帰りましてから刑事課長から速記録とともに事情を伺いまして承知したわけでございます。この八、九、十、十一問の法医学的な問題点についての私どもの答弁が非常に親切を欠いているじゃないかというただいま御指摘の点でございますが、これは私の感じといたしましては、私ども法医学のもちろん専門家ではございませんし、ただ私どもが今回の事件に関連しまして、われわれの目に触れる鑑定書なりあるいは意見なりというものを、この事件に関連してのいろいろの意見などから、公式のものとして検察庁が捜査の資料に供しておりますものの中で、今、坂本先生のおっしゃる点に触れたものがあるかないか、ないのをあると申し上げたり、あるのを隠したりするということになりますと、これは非常に不誠意なことでございますが、ないものはない、あるものはあるとお答え申し上げることは、私どもとしてせいぜいなことでございまして、非常に専門の問題につきましては、専門家の意見を聞く以外にはないわけで、それはおそらく本件とは——あるいは捜査の参考になる事項でもありましょうけれども、直接には経験豊富な法医学の先生にお伺いするほかないと思うのでございまして、特にこの不誠意だという点につきましては、私文字を見ると、一行とかあるいは数行を出ないお答えになっておりまするが、ないものはない、あるものはあると正直にお答え申し上げている点におきましては、誠意を持ってお答えしているように私は考えているのでございますが、なお答えてほしいとおっしゃいますことは、どういうふうにして私はお答え申し上げたらおよろしいことになるでありましょうか、その点を重ねてお教え願いたいと思います。
○坂本昭君 地検の発表によると、最初から監察医務院のいろいろな意見書を採用したこと、そういった点がるる述べておられる。そしてその述べておられる内容が、私が先ほど指摘した通り十数例の経験を持っているというが、実は今度の具体的な人なだれの例については一例も実は持っていない。だからそういうようなうそ、偽りを言っている医師の意見というものを、あなた方が高く評価しているという点は不当ではないかという点をまず私は指摘をして、さらにそれほどあなた方が法医学に対する、評価に対するあなた方の自信を持った見解を持っているならば、一番大事な八、九、十、十一問についてあなた方独自の見解を述べていただいてよろしいと、私はそういうふうに考えます。だからあなたが今ここでお答えできなくても、地検の名において明らかな説明、答弁を出すべき義務がある。私は何も鑑定書の中にこういうことがあるかないかということを聞いているのでなくてむしろ法医学的な内容を皆さんにお尋ねしている。あなた方のところにも専門の人がおられるのだから、それに基づいて回答せらるべきである。私はそう思ってあなたにお尋ねしているわけです。ですから、もし今ここでお答えできないならば、改めて八、九、十、十一については、あなた方の専門的な見解を、地検を通して一つ表明していただきたい、こういうことなのです。
○説明員(竹内壽平君) 御質疑の御趣旨はよくわかりましたが、お言葉を返すようでございますけれども、検察官は、捜査の結果に基づきまして、それが科学的に見ても裏づけがあるかどうかという点を検定する職能を持っておりまするけれども、法医学的な、専門的な知識を持っているかどうかという点につきましては、残念ながら持っていないのでございます。かりに個人的に医者の経験あるいは法医学の知識を持っている者があるといたしましても、それは検察官として持っているんじゃなくてその人の特殊な知識、才能として持っているにすぎないのでございます。従って、公にこれを利用します場合には、検察官としては、それぞれの専門家に委嘱して鑑定をしてもらう、その鑑定の結果と捜査の結果とを比べてみて、そして真実はどこにあるかということを検定するのが検察官の任務でございます。従ってこの八問の終わりの方に書いてありますように、「解剖主要所見は、昭和三十五年七月二十七日検察官が東京都監察医務院院長宛に照会した「行政解剖事例について」の回答内容の一部を引用したものである。」こう書いてございまするので、これの行政解剖事例があるかないかということにつきましては、もちろん回答を得たからこういう答えになっておるわけでございまして、この行政解剖から引っぱり出して、御質疑のように法医学的な見解を検察庁として述べることはすこぶる困難でございます。それからあと九問、十問につきましても、御質問の点は非常に専門的な、法医学的な御質疑でございまして、この点がたまたま鑑定書に触れられておりますならば、この鑑定書には——上野鑑定にはこうなっているとか、あるいは中館鑑定にはこうなっているというお答えができると思いますが、検察官がその法医学的な見解はどうかということになりますと、私どもできないので、専門家にお願いをしておるということでございます。この点は、裁判所が法律の解釈についての鑑定を学者に求める場合もあるくらいでございまして私どもが私的な知識でなくて、公にされた知識を基礎にして判断をするというのが検察官の職能でございますので、この点は、決してちゅうちょするわけでありませんが、問題がむずかしいように思うのでございまして、十分お答えができますかどうか、もう少し研究をさせていただいても一もちろん研究させていただきたいと思いますけれども、御満足のいくようなお答えができますかどうかは、非常に私としましては危惧の念を抱いておるのでございます。
○坂本昭君 それでけは八、九、十、十一問についてはさらに検討をしていただくということを一つ申し上げておき、さらに、私は何も専門的なことで皆さんを追及しているのでは実はないんです。それは犯罪の捜査にあたっては、あなたの方のいわゆる今度は医学を離れた捜査専門の立場での一つの結論というものが出てくる。それと、もう一つは、人が死んでいる、あるいはけがをしているという具体的な事実を通じて、医学的な真実というものがそこにある。だから当然捜査の方も万全を期しており、また医学的な鑑定も万全を期しておる、その間にあってあなた方当局がこれに対して最後の断を下す、これは私たちおまかせせざるを得ない。私がなぜこういうことを申し上げるかというと、両方とも万全を期していないということなんですよ、両方とも。つまり地検のこの捜査や検討は、非常にずさんだ、だから私はあえてこの法医学的な検討についてほんとうに検討をやっていますかということを念を押して今まで追及をしてきたわけです。今後も追及をしていきます。またきょうの委員会は、私はその事実を若干明らかにして皆さん方の反省どころではない、皆さん方の、場合によれば責任も一つお問いいたしたい、そういうつもりでこれから申し上げていこうと思うのです。特に今あなたも触れられた、この東京都監察医務院院長からの行政解剖事例についてという回等がある。これはあなたの方ではいろいろと引用されても、私たちわからないのです。何が書いてあるのかさっぱりわからない。特に私は東京都監察医務院というものは信頼しないのです、信頼できない。監察医務院の正式の名前をもって普通の一般雑誌にインチキな記事を書いたりしている、院長がそんなことを私はする資格もないと思う、権限もないと思う。そういうことをやっておる人が、あなた方に対して、行政解剖事例というものを、報告を出している。私は非常に内容について疑念を差しはさむ。もしこの週刊新潮でない医学専門のものに書いておられるならば、私も取り上げますよ。それを官職、氏名は正確に東京都監察医務院の、医師として書いたものが出ている。しかもあなた方もそれをここに引用している、こういう監察医務院の解剖事例というものを。そうしておりながら、私たちにはこの内容を見せない。そこで、これは前回から、鑑定書を一つ公開しろということを何回も繰り返して言ってきた。特に最近も医学の方面では、鑑定書を公開すべきだ。また行政解剖事例についても明らかにすべきだという要望の声は強いのです。そこで、もう一度お伺いしておきたいのは、この鑑定書の公開あるいはこうした回等内答の医学的な内容を公開する、あるいは当法務委員会に提出をすることを拒む法的な理由がどこにあるか、その法律があったら、この際、どこの何条に基づいてこれはできないということを、一つ明らかにしていただきたい。
○説明員(竹内壽平君) 鑑定書の公開の問題でございますが、これは鑑定は捜査の段階でもございますが、裁判の段階でももちろんございます。本件は捜査段階で、事件は起訴になっておらない事件でございます。そういたしますると、この書類は捜査資料でございまして、このような捜査資料は、関係者並びに被害者等の名誉の問題もございまして、これは公開しないというのが刑事訴訟法の基本的な考え方でありまして、それを受けて、大臣の訓令だったと思いますが、もう長い間そういうふうに取り扱われてきているのでございます。もとより学問的な進歩を、公開しないことによって妨げるという考えは、さらに私ども持っておらないのでございまして、鑑定書と申します以上は、検事から委嘱されました鑑定事項全部についての鑑定書なんで、そのうちの一部を省略したり、あるいはそのうちの一部を摘記したものは、これは鑑定書のコピーではもちろんないことは、先生も御存じの通りであります。内容が、全部が全部学問的な進歩に貢献することもありましようし、そのうちのある判断が貢献する場合もあるのでざごいまして、これを鑑定書としてではなくて、鑑定の結果についての各専門家の意見を公表されることは、何ら私どもはこれを妨げる意思はさらにないのでございますが、刑事訴訟法の規定に基づきまして、鑑定を委嘱し、その鑑定書として答申されましたこの書面そのもののコピーを公表いたしますことは、今申しますような理由で、いたさないことにいたしておるのでございましてもちろんこれによって妨げられるという結果も起こりましようけれども、私どもとしては、学問の進歩に貢献することは希望はいたしますが、妨げるというような考え方はいたしておらないのでございまして、この点、御了承願っておきたいと思います。
○坂本昭君 そうしますと、鑑定書の公表ということは、これは刑事訴訟法の基本的な考え方であって、別にこれを公表してはならぬという、法律の何条による定めというものはない、従来の慣習に基づくものだ、そう理解してよろしいのですね。
○説明員(竹内壽平君) そうではございませんので、刑事訴訟法の基本的な考え方でございまして、刑事訴訟法の四十七条を見ますると、訴訟書類の公開禁止という規定がございまして、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」という書き方になっております。そこで、本件は公判前の書類でございます。これによりまして、一般の訴訟記録というものは公開をいたさないで、私どもとしては厳重に真実を守っているというのが私どもの取り扱い方でございます。
○坂本昭君 しかし、一応これはもう不起訴処分になったのですね。でありますから、あらためて公益上の必要、特に圧死というのは私は世界でとにかく数例しかない、日本ではおそらくはこまかい検査としては最初の一例になろうと思う。そうすれば、公益上の必要から、今これを公表しても私は差しつかえないと思う。その点はいかがですか。
○説明員(竹内壽平君) 私どもとしましては、まあ残念ながら先生の見解と異なるのでございまして、先ほど申しましたように、上野鑑定人、あるいは中館鑑定人が、学者の立場で、自分の取り扱いました事件の鑑定書としてではなくて、自分の見解を述べられるということは御自由でございます。鑑定書の中には、検事が特に訴訟のために必要だという事項を指定して鑑定を命じておりますので、その点が公表になりますことは、やはりなくなられた方でありましても、私どもとしては秘密を守っていくというのが、これは捜査官の義務だというふうに考えております。で、「公益上の必要その他相当な事由がある場合」というようなものを、今急にこういう場合には相当な事由があるのだということを御説明しにくいのでありますが、もちろん特殊な事情のもとにおいて、あるいはその中の部分的なものでもいいからというようなことや、いろいろな制限のもとに公にせざるを得ない場合もあると思いますが、その場合には、慎重私どもでは検討した上で、名誉その他に関係ない、むしろ公益に役立つのだということを確信した上でありませんと、公表はいたさないことにいたしております。
○坂本昭君 それでは二つ申し上げて伺いますが、被害者の御家族の方が特にこれは発表していただきたい、そういう御希望のあった場合はどうするか。もう一つは、純粋に医学者の立場でこれを述べるについてはよろしいとあなたの方では言っておりますね。今後純粋の医学的な問題として、たとえば窒息死の場合におけるすい臓出血の問題、こういうものが議論せられた結果、鑑定人の意見が変わってきた、具体的に言いますと、上野鑑定人の見解は誤りであるということに医学が結論づけられた場合、そういう場合は、一体当局はどういう処置をおとりになりますか。その二つを伺います。
○説明員(竹内壽平君) 前の、遺族が承諾した場合はどうかという御意見でございますが、これは犯罪の中にも親告罪という罪がございまして、これは個人が処分をしてもいい、利益だと、まあ公の利益でありますけれども、特に個人的な色彩が強い場合、たとえば強姦罪は親告罪でございますが、ちっとも秘密にせぬでもいいのだというような考え方をするとか、あるいは器物毀棄罪は親告罪でございますが、そのような、被害者が告訴をするかしないかということ、そういう利益は個人の処分にまかせるのが相当だという考えでございますが、ここに言う訴訟の関係資料として集めたものを公表するかせぬかということは、公益、公のものでありまして、被害者がかりに承諾をしておりましても、他の同種の事件について先例になるというようなことを考えた場合にどうするかという問題もございますので、これは私人の処分にまかせられない理由だと考えるのでございます。従いまして、かりに遺族の方が承諾をなさいましても、それでもって直ちに公表していいことになるというふうには私は結論づけられないと思うわけでございます。 第二の、将来、学問的に鑑定の結果が違っておるということが明らかになった場合にはどうするかという御質問でございますが、もちろん、これは検察官の良識によってその可否をその際に決定すべきだと思います。もし間違っておるということが、検察官としても十分納得のいく結論でありましたならば、もちろん訂正されたものに意見を変えるということになろうかと思います。これは真実の前には検察官はすこぶるハンブルな態度で臨んでいきたいというふうに考えております。
○坂本昭君 それでは次に、前回刑事局長代理の方の説明によりますと、本件は警察官による暴行凌虐行為により窒息死に至ったと認むる根拠は全くないという説明をしておられますが、その全くないという説明はいささか独断に過ぎると私は思うのです。で、たとえば地検の説明にはきわめて一方的な説明が多い、証拠の明らかでないものも多々ある、たとえば前回の説明の中にも、南門から門扉を破りこれを押し倒し、トラックを引き出し、火をつけて燃やしてデモ隊が入って来たというふうに説明がありましたが、その場合に、どこのだれという学生が門扉を破り、それからまたどこの学生が火をつけたか、そういうことが一体明らかになっているかどうか、これは一例としてこの際お尋ねしておきたい。そこにおったものみんな学生であったかどうかということなんです。あなたの方では火をつけたのはどこのだれという学生、門扉を取りはずして押し破ったのはだれという学生——明確にしておられているのかどうか。あの辺におったのは全部学生だから全部学生がやったのだろう、非常に漠然とした考えのもとに今度の真実を追求してきておられるのではないか、今の点、これは一例として具体化されているかお尋ねしたい。
○説明員(竹内壽平君) ただいま御質問に直接お答えができる答弁になりますかどうか、今刑事課長の意見も聞いてみたわけでありますが、この事件は、全くないというその結論でございますが、それには当然検察庁として、あとう限りの捜査を尽くした結果に基づいて判断すればこうだという、前の方に、当然なことでございますけれども、そういう前提がついて初めてそういう結論に私はなっておるものと考えるのでございます。ただいま犯罪捜査は、先生も御承知のように捜査は非常に困難でございます。ことに六・一五事件の樺さんの死因の問題につきましては、関係者多数から告訴告発も出ておるのでございますし、告訴告発を待つまでもなく、検察庁独自の立場でも捜査いたしたのでございまして検察官として許される範囲で最大の努力を尽くしました結果によるものでございます。これは私も信じていただきたいと思いますが、非常に熱心に捜査をした結果でございますが、もとよりこれは検察官の可能な限りの捜査の結果によるものでありまして、あるいは検察官の知らないという事実というものがないことはないと思う。この点はいかなる犯罪捜査におきましても常につきまとう宿命的なものでございます。で、そこにいた者は学生のだれだというふうに御追及いただきましても、その名前がわからない場合もあるのでございまして、これは目撃証人からあそこにいた学生がこういう態度をとっておったというようなことから、いろいろな関係者のその場に居合わせた者の、みずから手を下してやった人ではなくて、そばでたまたま見ておったという人の意見を聞いて、それらの供述内容を科学的に検討された鑑定の結果、それから地理的な状況その他いろいろの点から総合いたしまして、一応こういう事実認定、事実をこういうふうに見るという結論を引き出しておるのでございます。従って、その結論は全くないという——客観的に全くないという結論というのではなくて、可能なる限りの捜査を尽くした結果によればこうだという意見を申し上げておる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
○坂本昭君 局長はその当時おられませんから、私はその辺の事実については詳細を御承知にならないと思いますが、ならないといって、私はこれは許すことはできない。今一例をあげますよ、この南門で火をつけて燃やした、これは一体学生かどうか御返答いただきたい。
○説明員(河井信太郎君) お尋ねの点につきましては、地検の報告によりますと、当日あの集団の大部分が学生であった。そうしてその学生が国会の南門の前に集まりまして、そうして六時三十分までの間に——六時ごろから六時三十分までの間に南門から、正確に認定されたところでは六時十七分、こういうふうに認定されておるのでありますが、北側の方から南門の前に阻止事両としてありましたものを引っ張り出してきた。それがどこの学生であり、何年生であったというふうなことは、証拠によって確定されていないのでありますが、学生集団によって引き出されてそこで放火されたということは、証拠によって認められた事実である、こういう報告を受けておるのであります。
○坂本昭君 あのときに、最初にこの新聞の先に火をつけてほうり込んだ写真は明らかに残っております。ですからこれが学生かどうかおわかりになるはずである、さらにまたあの晩多数の車両が焼却された事実は、これは明確であり、それらについて、その焼いた人たちがだれであるかということの御調査は当然なさったはずです。それらが全部学生で正しくあるかどうかそれを伺っておるのです。それについて、皆さんの方ではまさしく学生である、そういう証拠を持っておられるのかどうか。それを伺っておるのです。
○説明員(河井信太郎君) お尋ねの点につきましては、全部学生であるという証拠はございません。もちろんそれはそこにおった者一人々々全部調べて、氏名、住所、年令、学籍の有無ということを調べることが可能であればもちろんできることですけれども、そういうことができないことは申し上げるまでもないことでございまして、ただ、持って参りました旗とか、あるいはその後の捜査で判明したところによって、どこの大学に在籍するものであるというふうなことがわかりましたこと及びそれら関係人の供述等からいたしましてそこにいた者の大部分が学生であるということは認定できたのでございますが、それがどこの大学のどういう者であるとか、あるいはその学生が何名で、あと何名学生でない者であるというふうなことを正確に確定したわけではございません。また、事実そういうことはああいう集団の場合に、あとからの捜査によってこれを確定するということは不可能でございますので、さよう御承知願いたいと思います。
○坂本昭君 私が、新聞、報道関係の人々から聞くところによると、ある車両の焼却については特別な一部のグループがいたと思われる多くの事実がある。そういうような話を聞いております。それからの点については御調査されたのですか、いかがですか。
○説明員(河井信太郎君) 一部の、学生でない特別のグループがあって、それが引き出された車両について放火をしたというふうなことについては、今日まで報告を受けておりません。今まで受けました報告では、学生集団によって、南門に並べられておった阻止車両が引き出されて、その集団によって放火をされた、こういうふうに報告を受け、さような認定になっておるのでございます。もし必要がございますれば、さらにその点について確かめるなり、あるいはもしさような点について取り調べの端緒でもございますれば、もちろんお聞かせ願えれば、当局地検におきましては十分捜査を尽くしたいと存じております。
○坂本昭君 それでは具体的に、最初に車が出たときに、新聞の先に火をつけて投げ込んだ。これは写真に残っているのですが、それをどの程度お調べになったのか。その後、四十数台の警視庁の車両が焼かれた。その焼かれた事情についてどの程度まで捜査されたか、これはまた先般のように文書をもって御報告をしていただきたい。よろしゅうございますか。
○説明員(河井信太郎君) その点につきましては、実はまだ教授団その他から告訴告発になりました十数件の事件の目下捜査中でございまして、今日までに御報告いたしました点は、樺美智子さんに関する事件だけでございますので、まだあとの部分につきましては、もうしばらくお待ちをいただいて、そしてその結果が判明いたしますれば、当然お答えする機会がくるかと思いますが、今直ちに書面でお答えする点は、しばらくお待ちいただきたいと存ずるのであります。
○坂本昭君 ただいまお答えの点は、樺美智子さんの事件、またその他の事件ともいろいろと相錯綜をする点があるのです。たとえば次にお尋ねしたいのは、前回の回答の第二問の第三に「警察官が警棒で女子学生を殴打する等の暴行を加えていることが認められる写真は、一枚も発見されていない。」こういうことが出ております。しかしこの前私は週刊サンケイに出ました私服警官が三名で一人の女子学生を……。これは正当なる態度だとは思えません。これはすでに皆さんにお見せいたしておる。これは私はむしろ暴行に近いものではないか。なるほど警棒は持っていない。が、こういうことはあなたの方では写真は一枚も発見されていないと非常に断定しておられるが、私はこれが学生の一部だとは思いません。当然これは私服警官だと思う。今のこの写真は前回もお見せいたしたことであり、皆さん御承知のことだと思うのです。これらの点についてはどういうふうなお考えを持っておられますか。
○説明員(竹内壽平君) なるほど第二問の答の第三項に、「警察官が警棒で女子学生を殴打する等の暴行を加えていることが認められる写真は、一枚も発見されていない。」と書いてございます。この点につきまして、今お示しの写真は、私服のものでございますが、これはどういうところを写したのかよくわかりませんが、逮捕するところでございますか、実力で排除するところを写したのかわかりませんが、要するに、「警察官が警棒で」とここに書いてありますように、警棒というのは、普通、私服の警察官は警棒なんか持っていないので、おそらく制服の警察官が警棒でなぐりかかっているような写真が一枚も発見されていないという趣旨をそのまま書いたのじゃないかと、私、想像するわけでございますが、これは「発見されていない」といっておるのであって、そういう写真がございますならば、大いに捜査当局としましては参考にしたいわけなんで、まだ事件も、二十数件のうちの大部分はまだ捜査中でございますので、大い 捜査当局としては見せていただきたい写真だと思います。「発見されていない」という書き方に御注意を願いましてないのだということを申しているわけではございません。
○坂本昭君 どうも、刑事局長、今のはちょっと詭弁だと思うのですよ。「警棒で」と——警棒のことを言っているのじゃない。これはむしろ暴行の事実の写真のことを言っておるのであって、そんなふうに言われるのは、ちょっと私は逃げ口上だと思うのですね。私はこの際申し上げておきますが、それは無抵抗の女子学生が旧議面の玄関前から逮捕拉致される状況の写真であって、ただ連れていけばいいのに、そういう連れ方をしている。ズボンは破れている。さらにあのときには頭の髪の毛をつかんで引っ張ったりして、国会議員にたしなめられた例もあるのです。そういう事実がある。さらに私は、その今の私服警官の中に栗原という人が入っている。私はこの際この栗原という人の官、氏名、所属、これを後日明らかにしていただきたい。そうしてこういう写真はあとからまたわれわれとしても出して、そうして皆さん方、特に地検の捜査について、私は、万全を期していなかったという点を実は指摘をしていきたいと思うのです。今の写真の問題は一応これで……。 そのあとに、先ほど刑事課長が指摘された通り、「告発に係る警視総監小倉謙等に対する特別公務員暴行凌虐致傷の事件として東京地検において現在捜査中である。」ということでありますから、私は、鋭意捜査中である皆さん方に、十分資料を検討して間違いのないことを、この際特に要望しておきます。 さらに次に第三問、いよいよ具体的な問題に入ってきますが、第三問では、ここに将棋倒し、人なだれの場所について(イ)(ロ)(ハ)(ニ)とあげてその中で、(ハ)として「デモ隊後退の際の旧議院面会所東北角付近」における地点、この点を樺美智子さんの致命的受傷をした地点としてここにあげておられます。この前、私は皆さん方に、法務大臣の前で、一枚の写真をお見せして——この写真です。その写真をお見せして、人なだれの状況はこの写真に示された通りであるということを申し上げておいた。あなたの方では、この写真は御検討になっておられるか。それからまた、今回の答弁の中には、この地点において判明しておるのは負傷者最小限六名だ、六名だということを書いてある。この負傷の程度は、一体どの程度の負傷をしておったか、私はそのことをあわせてお伺いいたしたい。
○説明員(竹内壽平君) ただいま見せていただきました写真でございますが、もし拝借することができますならば、地検当局にも見せて、これがどういうときに写した写真であるかというようなことを——もちろんこれと同種の写真を持っておるかどうかというようなことも検討さしてみたいと思いますが、いかがなものでございましょうか。ただこれを見たことがあるか、検討したかとおっしゃられましても、検討しておるのは地検当局でございますので、もし拝借できれば、そういうふうな処置をとってみたいと思いますが、その点を一つお許しを得られますかどうか、その点を伺いたいと思います。 それからなお、負傷六名の点でございますが、これは何か字句にとらわれて、詭弁のようにとられては相済まぬわけでございますが、最小限六名、六名はわかっておるというふうに御理解願えればいいと思いますが、それ以上かももちろんしれませんので……。そうしてしかも樺美智子さんもここで傷を受けたというふうに検察当局は諸般の証拠上考えるという趣旨のことをここに書いたつもりでございます。
○坂本昭君 大体、地検にさせておる……きょう地検の人、だれか来ていますか。留守にしておる局長が、よくわからぬから貸してくれ——あなたたちは捜査が専門ですよ。国会議員から資料をもらわなければわからぬというような、そんなことで、ほんとうの捜査ができますか。その写真は裏を見てごらんなさい。町で売っている写真です。それだけの写真の資料もあなた方は手に入れることができない。そんなことは私は地検の怠慢だと思う。
○説明員(竹内壽平君) 地検では現場写真は、これは新聞発表のようでございますけれども、約千四百二十枚を見ておるようでございます。フィルム三本あるということが新聞発表に出ております。でございますので、検察庁として入手できます限りの可能な写真は見ておるようでございますが、ただ、坂本先生が、これを見ておるかという御質問でございましたので、それを見ておるかどうかは、お貸し願えれば確かめてお答えを申し上げますと申しただけでございまして、それ以上必要ないとおっしゃれば、私どもの方は、検察庁はこの点については結論はすでに出しておりますので、十分現場写真も見ての上のことだというふうにお答え申し上げるよりほかないと思います。
○坂本昭君 あまりいいかげんなことを言っては、あとでつじつまの合わないようなことになりますよ。私は特に一枚の写真を出してきておるのは、その写真の中には、後退していく学生の一番最後部と、それからここでなだれを打って倒れる学生たちと、救いに行く学生の先頭部とが、ちょうどここで写真に写っている。その場所はこの写真で見るところ、旧議面の確かに東北角付近です。東北角と七トン、トラックの最先端を連らねる線がここである。これをこの際はっきり申し上げておかなければならないという理由は、あなた方の方では、次の問題に移りますが、南門に向かって左側のさくから搬出された樺さんを学生Pが受け取り、それを学生Qによって首相官邸前の十字路付近まで運んだということになっている。そしてPが左側のこわされたさくの所で受け取るまでのことは一切不明になっている。これは前回の説明でもそうです。ところが地検の発表では、遺留品が植え込みの地帯から出たというので、倒れた場所はこの地帯であると言って皆さんの方では図面に示しておられる。つまり地検の最終的な報告は、これが南門ですね、そして彼女はこの向かって左のこわされたさくからここを出されてきて、ここでPが受け取って、次に学生Qに引き継いで、このQが首相官邸の前の十字路まで運んだ、こういうことになっている。そしてPが受け取るまでの遭難現場からのこの途中が消えているのです。にもかかわらず、地検の発表では、この地帯、ちょうど赤土の盛り土があって植え込みがある。この地帯に人なだれが起こって、ここで多分遭難したものであろうという推定をしている。そしてそれを裏づけるために、この植え込みの中から定期券が発見された、こう言っている。で、私がこの写真を皆さんに御注意申し上げたのは、これだと旧議面の東側であって東北角ではないのです。つまり人なだれの起こったのはもっと北寄りの所だということを確認していただきたいために私はたびたびこの写真を申し上げた。でありますから、この点は——きょうだれも地検の人は来ておらぬですか、あなた方何にも知らない人に説明をさせておいて、いろいろなことを調べた人は知らぬ顔をしているというのですか。この点、一つ明らかにして下さい。きょう検事正はどうして来られなかったか、来られなかったら少なくともだれかよく事情のわかった人、そういう人に来てもらったら、ああこの写真は見ております、見ておりますが、これはこう判断をしているという御答弁がいただける。それを持って帰るから貸してくれと、そうはさせません、私としては。今のこの点いかがでございますか。
○説明員(河井信太郎君) 地検の発表によりましても、坂本先生御承知のように、樺美智子の受傷時の状況といたしましては、樺美智子の受傷時の状況については直接その状況を目撃した者及び受傷の状況を認め得る現場写真等の捜査に全力を傾注したが遺憾ながらこれを発見し得なかった。しかしながら、次のような資料によってほぼその状況を明らかにすることができた。そして樺とともに国会構内に突入した学友とか、構内突入後の混乱状況、遺留品の発見場所、救出経路、検死の結果、一見致命傷と認められる外傷はなかったこと、検死の結果認められる着衣の泥土付着、水分の吸収状況あるいは当時の降雨状況と警察官の放水状況、それから樺の疲労状況こういうようなことを総合して合理的に判断すれば、大体ここらで受傷したんであろう、こういうふうに言っておるのでございまして、先ほど先生御指摘のように、ここでこういうふうになったと断定しておるわけではございませんで、その点は御了承を願いたいと思いますが、それからそういう状況でございますので、今図面にあげられましたように、東側であるのか、あるいは東北のすみであるのかという点につきましても、明確なこの地点であるということの確定はできないのでございます。ただ、樺美智子さんが受傷されて人事不省の状態で、あのお示しの図面のように点線の個所を数名の者にかかえられてきまして、南門の横の所で、舗道のところへ出る土手の上でその体が授受されて、そこからPが受け取って宣伝カーの所まで持ってきたという、その受け取った所からは証拠上きわめて明確になっておるんでございますが、それまでのところは明確になっていないのでございまして、その点につきましては、今申し上げましたような資料によりまして、東京地検としても事実の認定をしておるのでございます。さよう御承知願いたいと思います。
○坂本昭君 先ほど局長はその地点における負傷者の最少数が六名であったということにすぎないという説明でしたが、なぜ私がこれを問題にするかといいますと、人なだれで人が死ぬときには、たった一人死ぬということは普通ないんです。単独死の圧死というものは私たち医学で見ていない。数人死ぬなり、重傷がある。だから私はこの最少数六名という負傷は一体どういう負傷であったか、非常に重傷の人があったかどうか、その点を確かめることが必要だから、せっかくここに六名という数をあげた以上は、私はこれは名前もわかっているはずだから、これについては名前はあなたの方ではなかなか説明されないから、病名、症状の重さの程度、これはつけて後日報告していただきたい。
○説明員(河井信太郎君) もちろん御指摘のように、この六名というのはちゃんとわかっておるのでございます。ただ、先ほど来申し上げましたように、樺美智子さんの事件は一応捜査が終了したわけでございますが、その他のものにつきましてはまだ捜査中でございまして、これをここで書面をもってあとで御報告申し上げるということをお約束いたしますよりも、十数件の告発事件の捜査が終了いたしますれば、いずれ起訴なり、あるいは処分がきまると思いますので、その際には当然この件も明らかになることと思いますので、できるだけ早い時期に東京地検でも捜査を完了したいと申しておりますので、そのときまでお待ちいただきたいと、こう思うのであります。
○坂本昭君 それはちょっと解しかねると思うんです。この樺美智子さんの死亡という事実と他のこの五名ですね、他の五名という意味なんでしょうね、負傷者とはこれは直接の関連にある。従って樺さんの不起訴処分を決定するときには、当然同時に取り上げなければならないものであって、これだけを切り離すということは、これは不当であります。でありますから、名前は私は要求しないが、その負傷の程度、負傷の個所、これは当然私はこの際われわれに対して報告する義務があると考えます。
○説明員(竹内壽平君) 先ほど刑事課長が申し上げましたように、他の事件の捜査中ではありますけれども、これは発表して、まあ名前はよろしいというお言葉でございましたので、御説明申し上げていいかどうか一つよく検察庁と打ち合わせまして御返事申し上げることにいたします。
○坂本昭君 それでは次に一つ問題の写真をお目にかけます。非常に暗くて、わかりにくいんです。わかりにくいのですが、大体この写真が現場写真に私は近いと思います。現場写真に近いところで、この画面の中央部から樺美智子さんはかぎ出されたと私は見てよいのではないかと思ういろいろな根拠を持っているのです。この写真を見ますと、七トントラックの前輪のうしろのごく接した所に数人の人が集まっております。そうしてこのトラックの上からは、その直下をながめている人が数人おります。さらにそのすぐ前の所には、私が見ましても二人の鉄帽をかぶった警官が写真の上に写っております。そうしてちょうどこの画面の中心には、非常に特徴のある昔の戦闘帽のような帽子をかぶった人の頭が見え、そのすぐ横に学生服を着て、学生帽の角帽をかぶったと思われる人が立っております。この点を一つ皆さんで見ていただきたい。 速記をとめて下さい。
○委員長(松村秀逸君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(松村秀逸君) 速記を始めて下さい。
○坂本昭君 今の写真に引き続いてこういう写真がございます。これは今私が特に委員長にもお示ししました通り、戦闘帽をかぶった人と、学生の角帽をかぶった人が二人で一人の重傷者と思われる人をかつぎ上げている写真です。さらにそのかつぎ上げられた人が数歩前進をしているのが次の写真、同じく戦闘帽をかぶった人と、角帽をかぶった学生が抱き上げて運んでおります。あとの写真でわかることは、七トン・トラックのエンジンの前面が写真にとれているということです。そうしてその前の写真で、ここに白く光っているところ、これは今のトラックの前輪の上にかぶさっている、バンパーというのですか、上にかぶさっているところがここにとれている。従って、この写真はもう自動車のすぐ前に接している。そうしてその前の写真と比較すればおわかりになるように、自動車の車の下からとまでは言いませんが、このトラックの前輪のうしろあたりから引き出された。一人の学生が引き出された直後に、この写真にとられ、さらにその輸送された経路は、もっとあります。その最後の経路で見ると、運ぶ人がちょっと変わってきています。しかし戦闘帽をかぶった人は依然として、抱きかかえ、角帯をかぶった学生はそのうしろについている。これをカメラの位置、その他から判断しますと、最初のこのカメラマンの位置は、南通用門のそばの小さい詰所の上から望遠レンズでこうとっています。それから次の前輪の上のバンパーの光っている写真は、ここからこうとったのです。こうとりましたので、旧議面の入り口の上のとびらが実は写っています。で、場所からいってこの辺に来ているということがわかる。それからその次はもうこのエンジンの前の所に来ているので、ここへ来ていることがわかる。最後の写真は南門の門柱のそばの詰所の前の所をとっている。この四つの写真で、ここから出てきて、こういうふうに運ばれてきたということが明らかになっています。ただ、そこで問題は、このかつがれている学生が樺美智子さんであるかないかという点です。私はいろいろな状況から、この学生は樺美智子であるという確信を持っています。そうすると、地検の発表する彼女はこの辺で倒れて、この辺の植え込みの所に遺留品を残して、さくの上から運ばれたということは、これは違っている。彼女は大体このトラックの下、あるいはごく近くのところで遭難して、そうして南門から搬出されているということに相なっております。私はこれらの写真はすでに公開されたものもありますし、決して私一人が独占しているものではないのです。でありますから、あちらこちらの写真を集めることによってこういう結論に到達し、地検が確信を持って言っておられることが非常な違いをきたしてきている。また最初の自動車に接したところを見ますというと、明らかに鉄かぶとの警官と思われる姿が二人ある。また輸送されてくる途中を見ますというと、学生と思われない二人の人があとをついてくる。以上をもって、地検が発表せられた点について、私は信用がなかなかできがたい、納得しがたい、これについてどのような御見解を持たれるか伺いたい。
○説明員(竹内壽平君) ただいまいろいろと写真に基づきまして、御質疑をいただきまして、ありがとうございました。私どもとしましては、今、坂本委員から御指摘の点は、また拝見しました写真の点もあわせて地検当局にお伝えをしたいと思いますが、ただ、私どもの所見を求められますと、身びいきという意味ではなくて、やはり捜査の経過などもよく聞きまして、そうして出されました結論に私ども一応賛成というか、それを信用するという立場にありますけれども、真実を発見する、追求するというのが検察官の任務でございますから、御趣旨のあるところをお伝えし、真実に違うものであるということになれば、いさぎよく訂正して、真実に合致したような見解に直してもらわけなればなりませんから、そういう意味におきまして、私どもは地検の捜査の結果を信頼いたしてはおりますけれども、なお御趣旨のあるところをお伝えして、まだ地検が最終的になっているわけではございませんから……。
○坂本昭君 不起訴になっている。
○説明員(竹内壽平君) 樺美智子さんの分につききましては不起訴でございますが、六・一五事件に関連しました事件につきましては、まだ未済になっておりますので、真相発見のためにさらに努力していただくように私は伝えたいと思います。ありがとうございました。
○坂本昭君 この樺美智子さんの事件は不起訴処分になっております。そして、不起訴処分の理由としては、いろいろと資料をわれわれは見せていただきました。それについて今のような点を指摘いたしたのでございますから、私どもは皆様方の自主的な考えに待って、真実を明らかにし、また捜査を的確にし、いやしくも検察庁が怠慢なりあるいはあやまちを犯しているというそしりを免がれるように全力をあげていただきたい。その点を申し上げて、なおかつ委員長には、この問題は続いてまた審議をしていただきたい。このことをお願い申し上げたいと思います。
○委員長(松村秀逸君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(松村秀逸君) 速記を始めて。 ほかに御発言がなければ、本件につきましては、本日の調査は一応この程度にとどめておきたいと存じます。 以上をもって本日の審議を終わります。 本日はこれをもって散会いたします。 午後三時五十四分散会