予算委員会 第23号
- 発言数
- 385 件
- 登壇者
- 27 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1960/03/31
会議録
○委員長(小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。 昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。 一昨日、鈴木委員から吉田元総理の証人喚問について言及されましたが、本件の取り扱いにつきまして、昨日、委員長及び理事打合会で協議いたしました結果、本日の会議の冒頭において再度外務大臣から吉田・ダレス書簡をめぐるこの間の経緯に関し説明を求めることといたしました。 まず、外務大臣の発言を求めます。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 先般、鈴木委員から吉田・ダレス書簡についての御質問がございました。当時、私からお答えいたしましたように、イーデン回想録におきまして申し述べられておりますところは、イギリスとアメリカとが話し合いをいたして、そうしてその場合に中国の問題につきましては日本の決定に従うというような話になっておったわけでありますが、今回の回想録によりまして、吉田・ダレス書簡が出ましたことについて非常に意外だったというようなことが書いてあったわけでございます。その点について、吉田総理が、はたして、ダレス長官その他アメリカ側の圧迫によってそうしたことがとり行なわれたのではないんだろうかという鈴木委員の御質問であったと思うのであります。先般申し上げましたように、吉田総理としては、前からやはり朝鮮事変も現実に起こっております関係、また吉田総理として前々から蒋介石政府を相手にして参っておりますその歴史的経緯あるいは終戦時におきます蒋介石が日本軍の帰還問題等について好意を持ってくれた立場から見まして、中華民国の方を承認したいという意向であったことは当然だと申し上げたわけでございます。同時に、しかし吉田回想録等におきまして、若干その点について吉田さんも公平な立場に立った考え方を持っておられるのではないかというような御質問も政府にあったわけであります。吉田さんの回想録等も拝見いたしました。むろん吉田さんとしては公正に考えられておったと思いますが、しかし経緯から申し上げますと、やはり吉田さん自身の御決意でもって、そうしてアメリカ側に対してこの点を申し入れた。それがまた同時にアメリカ上院におきます平和条約の審議に役立ったと思うのでありまして、当時の状況につきまして、昭和二十七年の五月二十三日の第十三回国会衆議院外務委員会におきます林委員の質問に対しまして岡崎国務大臣が答弁をしておられるのでありますが、その林委員の質問は、ダレス氏に吉田書簡を送った経緯等について何か誤解があるのではないかというような点で御指摘されておるのでありますが、それに対しまして岡崎国務大臣は、「これは誤解といいますか、アメリカ側で日本が一体どうするであろうかということについて、いろいろ違った意見を持っておったようであります。しかし日本政府の対中国問題はずっと前から方針がきまっておるのであります。そこでそのきまっておる方針、日本の考えはこうだということを書面にして渡したのであります。」こういうふうに答弁しておられるのでありまして、当時も答弁しておられますから、私ども今日からみまして、やはり当時早くきまっておった方針をたまたまダレス氏等の意向もあって、そうしてそれを書面にされたんだということに了解をいたしておるのでございます。
○鈴木強君 問題は、日本が自主的に中華民国政府を承認するという態度に踏み切ったかどうかということが問題であります。回顧録によると、イーデンはそうでなくて、やはりダレスの圧力が加わって、米英間の了解されておった日本の自主的に二つの中国を選ぶというその問題が、台湾政権に変わったんだと、こういうようなことになっておるのでありまして、その間の経緯を知っておるのはやはり吉田総理だと私は思うのですね。ですから藤山さんはその御答弁をなさいます前に、前から問題になっておりましたから、吉田総理とお会いになって経過をお聞きになった上で御答弁なされておりますかどうか、その点が一点ですね。 それから池田通産大臣にちょっとお尋ねいたしますが、あなたは当時大蔵大臣であったと思うわけであります、吉田内閣のときの。で、二十五年の四月二十七日にワシントンに行かれて、コリンズ陸軍次官とアイケルバーガー第八軍司令官、当時前のだったのですが、前の第八軍司令官と会見をしておるわけであります。その際に、もちろん当時アメリカにおいても、国防省と国務省の対日講和条約に対する早期締結論と慎重論と二つに分かれておりました。国務省は早期講和論であるし、国防省の方は非常に慎重論であった。そういうさなかに池田さんが行っておられるわけであります。しかも陸軍次官あるいは第八軍司令官等とお会いをしているわけでありますが、そういった一連の経過の中で、その年の六月十七日にダレスが日本に来ております。そうして吉田さんとも会っておる。その直後、朝鮮動乱が勃発をした。そういうような経過になっておりますので、私はこの際、池田通産大臣にも、当時のワシントンでお会いした際に、これらの問題が出ておりましたかどうか、こういう点も一つ確かめておきたいと思うわけであります。 それから総理大臣にお尋ねしたいのは、今申し上げたような経過によって、日本が昭和二十七年の七月、日華条約に調印をされたわけであります。そこで二つの中国のうち、日本は台湾政権を認めると、こういう態度になって、今日まで中華民国政府と、それから中共政権との間にいろんな問題が起きて、不幸にして中共との間にはまだ今日講和条約が結ばれておらない、こういう事態になります大きな原因が私はこの間にあったと思うわけであります。ですから、今あなたが政権をとられて日中との問題についても苦慮されておるようでありますが、こういった日本の外交路線の一番大事な問題が、この間において、いろいろ政治的にアメリカからかなり強く言われて、日本の政策が決定したという事実があるわけだと私は思うわけであります。こういう点について、総理はどういうふうにお考えでございますか。これを一つ御三人から承りたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私がただいま御答弁申し上げましたのは、先般鈴木委員から御質問がございまして以来「回想十年」も読みましたし、また当時の速記録等も、今申し上げましたように、調べてみたわけでございます。ただ吉田前首相には私お目にかかっておりませんので、そのお目にかからないままの答弁でございます。
○国務大臣(池田勇人君) 一九五〇年の四月末に、私が大蔵大臣としてアメリカへ参りましたときは、財政経済問題につきまして話をしたので、外交、軍事の問題については触れませんでした。
○国務大臣(岸信介君) 中国の二つの政権をめぐって、日本が進むべき道をどうするかということでございます。これを決定したことにつきまして、先般来いろいろと、イーデンの回想録等を引用されまして論議がかわされておるのでありますが、しかし、私どもはその当時の事情につきましては、外務大臣が申し上げたように考えておりますし、もちろん日本として時の政局を担当されておった吉田総理としては、各種の事情を十分私は考えて、そうしてもちろんアメリカの意向というものも日本として重視しなきゃならないことも事実であり、しかし日本としてこれを中華民国との間に平和条約を結ぶということは、あるいは国民の多数の感情にも反し、また中国と日本との関係からみても望ましくないことを、アメリカの強制によってやむを得ずやったという事情ではないのであります。従って私どもとしては当時の事情としては、外務大臣からお答えをした通りに考えております。と同時に、またどういう事情であったにいたしましても、すでに国際条約として、中華民団との間に有効な条約が発生している以上は、国際信義の上から申しましてこれを無視して考えるということはできない。しかしながら、将来この中国の六億の人民に対して、これと日本国民との間の友好親善ということを考えていく上におきましては、私どもはいろいろな点において、この国際的の問題も調整しながら、これを解決していかなければならないことである、かように考えております。
○鈴木強君 もう一つ、簡単に……。
○委員長(小林英三君) 簡単に、鈴木君。
○鈴木強君 さっき私が申し上げましたように、何といったって、これは吉田さんが当時の状況について一番詳しいわけでありますから、今日岸内閣も、今総理から御答弁がありましたような、中華人民共和国の現実に存在している問題については無視できない、従って十分考えなければならないという御答弁もあるわけです。まことにその通りだと私は考えるわけです。従って、私は吉田証人としての喚問については留保いたしますが、この問題については、やはり重大な問題でありますから、総理がみずから吉田さんにもお会いして、もう少しく当時の状況を国会に対して御説明をしていただくなり、また外務大臣がお会いをして当時の実情をよくお聞きになった上で、われわれに対して、いずれの機会か、また十分に納得のできるような御答弁をいただくように私はお願いをしたいわけでありますが、その点だけ簡単にやっていただけますか、どうですか、お答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま申し上げました議会等の速記録で、私ども明瞭であろうと存じておりますけれども、もし将来、前総理にお目にかかる機会がありましたら、なお重要な問題でありますから、お話は承っておきたいと思います。 —————————————
○委員長(小林英三君) これより本日の質疑に入ります。加藤正人君。
○加藤正人君 まず最初に伺いたいのは、わが国固有の領土である南千島、択捉、国後等は確保するという政府与党の従来の主張は、今日もなお何ら変更されていないと私は承知しているのでありますが、はたしてそうであるかどうかということを、この際総理から明快にお答えを願いたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 北方領土につきましては、私どもは、歯舞、色丹のみならず、国後、択捉に対しては、われわれの固有の領土であるという主張、これは自民党の党議でも確定いたしておりますし、政府もその方針で進んで参っておりまして、何らの変更はございません。
○加藤正人君 ただいま総理のおっしゃったようだといたしますと、私のはなはだ不思議に思いますのは、最近与党内の一部に、日ソ平和条約を締結するためには、ますそのネックになっている択捉、国後の領有は放棄してもいいというような発言がありましたが、私はこれを新聞で承知して、まことに驚愕した一人であります。これは全くわが民族感情を無視した著しい暴論であるからであります。これに対し一時与党内においても、多少の反論があったようでありますが、それも今日では全く雲散霧消しているような姿である。私の不思議とするのはこの点であります。政府与党の北方領土対策は、すでに確定しているはずであります。これはただいま総理が再認識された通りであります。しかるにこの既成方策に全然背馳するような発言が、もし不問に付せられるというようなことがありましたら、全国民のひとしく意外とするところであります。岸総理はこの際この点に関し、あらためて今日この種の無責任な発言を封ずるような明確な声明を私はなされたいと思うのであります。この点いかがでございましょう。
○国務大臣(岸信介君) 新聞の伝えるところによりますというと、今加藤委員の御質問になったような事実があったのであります。党といたしましては、直ちに執行部におきしてその実情を十分に調査検討をいたしたのでありますが、新聞の伝えたところと、この意見を発表した人の意思との間には食い違いがあることが明瞭となりましたし、しかしながら、事は国民の、今お話のように政党政派を超越して、われわれがこの国後、択捉について固有の領土としてこれの返還を要求しておるというこの強い考え方に反するような言動が、いやしくも誤解を招くようなことが将来ないように、十分に党としては党内のそういうふうな感じを国民に与えるような意見の出ないように万全の措置をとるということにいたしたわけでございます。加藤委員の御質問のように、先ほどまたお答え申しましたように、政府与党は、従来国民の前に明らかにいたしておりますように、この北方の固有領土につきましては、あくまでもこれを日本に返還を求めるという態度を今後といえども堅持いたしまして、そしてソ連側に十分にこの日本の正当な主強を理解せしめて、そうして平和条約を結ぶように今後努力するつもりでございます。
○加藤正人君 ただいま総理の御答弁によって私は完全に釈然と了解したわけではありませんが、しかし私の質問時間は僅々二十分でございますから、これにこだわっているわけには参りませんから進めますが、最初に自由化のスケジュールとIMF規約八条問題につきましてお尋ねいたします。 三年間に九〇%の自由化達成のためのスケジュールを五月中に策定するという政府の当初の方針が最近に至ってややぼやけてきた印象を一般に与えているのであります。ここで政府の方針がぐらつくようでは、いたずらに産業界に混乱を、好ましからざる動きを誘発するおそれがあります。三年間ということや五月中ということには必ずしもこだわる必要はないけれども、自由化が避け得ないものである以上は、方針は方針としてなるべく早く確定して、業界にそのための努力を求むべきであると考えるのでありまするが、総理におきましては、はたして当初の方針通りのスケジュールを策定する決意があるか、またその見通しはどうでございますか、伺いたいのであります。
○国務大臣(岸信介君) 自由化の問題につきましては、すでに政府として、また与党といたしましても、この国際的の大勢に順応して、日本の経済の将来を考えてみて自由化の方針に進む。ただこれが実施にあたりましては、いろいろな産業に対する影響もございますので、それらを十分に勘案し、それらに対する適当な措置を講じて自由化の立針を貫くということでございまして、これに対するスケジュールをきめるのを五月を目途としてきめるという従来の方針に従いまして、関係閣僚の促進の協議会を作りまして鋭意検討をさせております。政府としては、その方針には何ら変動はございません。ただ御承知の通り、産業の各般の面に及ぼす影響に対して十分な検討も加え、これに対する対策も用意して、そしてこれを実現することが必要である。私は必ずしも三年ということにはこだわっておりませんけれども、しかしスケジュールがどういうふうに最後的にできますか、なおそれらの点につきましては関係閣僚の間において鋭意検討させておりますが、立針としては何らこれがぼやけるというようなことはございません。
○加藤正人君 それでは大蔵大臣及び外務大臣にお伺いいたします。 かつてドイツやイタリーは、IMFからその輸入制限を撤廃するよう勧告を受けましたが、わが国も、貿易が順調に伸展すると、いっかは同様の勧告を受けるに至るであろうことは明らかであります。もしその勧告を受諾しなければ、わが国に対する差別待遇は一そう激しくなり、国際市場から締め出されるおそれがあるのであります。各国の特殊事情にもよることでありましょうが、わが国の場合どの程度外貨を保有するに至れば第八条の適用を受けることとなると思うか、またその場合どの程度の自由化率が必要となると思うか、さらに現在わが国の外貨保有は約十三億ドルであります。年間輸入額の二七%に当たっております。英国はわが国とほぼ同様の三〇%、フランスは一九%で、それぞれ自由化を達成しているのであります。IMF方式で外貨の保有高を計算いたしますと、わが国の場合はその割合いがもっと高くなっておるはずであります。IMFやガットの批判が今後急速に高まるものと考えておかなければならないのではないかと考えておるものでございます。この点いかがでございますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま御質問もありましたように、IMFの規約第八条によりますと、「経営的な支払いに対する制限の回避」というところで、御指摘のような、制限を課してはならない。すなわち為替上の問題が通常になったらそのような制限を課してはならないというような条項がございます。しかしながら、このIMF八条国になるかならないかということについては、特別に現在基準があるというわけではないのでございまして、その国の国内の雇用の状況でありますとか、対外貿易依存度でありますとか、そういうこともあわせて勘案して、特殊の事情を勘案いたすものでございます。ドイツなり、イタリーなりが勧告を受けましたときは、ドイツは約五十億ドル、それからイタリーは二十三億ドルでございますか、ほぼ一年の貿易量に匹敵する外貨を持っておったようなわけでございまして、そういう状況で勧告を受けたわけでございますがしかしながら、勧告を受けましても、特別の、自由化に必ずしも即応しないような国内事情、たとえば農業品というようなものにつきましては、特に申請をいたしまして許可を受ければそれから除外されることになり、適当な管理をすることができることになるのでございます。規約から申しますとそういうことであります。またそういう例を各国がとりつつあるのでございますから、現在、それでは日本の状況ですぐに指定されるか、あるいは勧告を受けるかということにはまだ考えられないだろうと存じております。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま外務大臣からお答えいたしましたように、第八条の適用国になりますための計数的な基準というものはございません。もちろん外貨の保有量がふえ、あるいはまた貿易の自由化も拡大されておらなければ、第八条の適用国になった場合に非常に支障になることは当然でございますが、ただいま第八条の適用国にするかしないかという場合には、計数的な基準があるわけではございません。御承知のように、ただいまは第十四条の適用国ということになっております。まあ今後の財政的な——国際収支、外貨の保有というような点を考えて、各国の例等と比べてみますと、わが国の外貨保有高はもちろん少額でございますし、また自由化にいたしましても、現在の状況におきましては、このままで第八条の適用国となることは大へんな支障がございますので、私どもはただいま直ちにさようになると、かようには考えておりません。
○加藤正人君 次に、通産大臣にお伺いしたいのであります。政府におかれましては、原綿、原毛の自由化に引き続いて、綿製品の輸入の自由化を考慮しているやに聞き及んでおるのでありますが、日本綿業が、非常に国際競争力が強いという先入観念で実施を急がれるようなことがあっては、はなはだ困ると思うのであります。たとえば中共のように、政治的な価格によって無限に近い競争力を持っておる国、あるいはインド、パキスタンのように、原綿の生産国であるために、非常に安い製品を輸出できる国、また、あるいは香港のように、自由港として貿易操作ができる国等々、わが国より競争力の強い国が少なくない。もっとも、これら後進綿業の製品は、いずれもわが国中小企業の製品と直接競合するものであります。わが綿業界は、ここ二、三年は原綿の自由化によりまして、不安定な過渡期にあるのであるから、製品の輸入の自由化は、これは急ぐべきではないと思うのであります。この点について見解を伺いたいと同時に、またわが国の綿製品輸入関税は極端に現在安いと思う先進諸国並みにこれを引き上げる必要があるかどうか。現在大部分の国々が何らかの形でわが国綿製品の輸入制限をしているが、それにもかかわらず、わが国だけが一方的に、かつ無差別に自由化を行なうということは、これは不合理であると思います。まず諸外国の輸入制限の撤廃をあらゆる機会に要求すべきではないかと思うのであります。また、極端な価格競争力を持つような若干の国々に対しては、特別の取扱いをする必要があると思うのであります。これらの諸条件をあわせて考慮すべきであるかどうかという点について通産大臣のお考えを伺いたいのであります。
○国務大臣(池田勇人君) 繊維製品のうちで、綿製品につきましての御意見は全く同感でございます。全体的に申しまして、日本の綿製品は、世界でも相当強い競争力が非常にあるとされておるのであります。こういう事情でございまするが、現在の貿易状況は、わが国の綿製品に対しまして、輸入制限を行なったり、あるいは自主規制を要求しておる状況でございますので、相手国が日本の綿製品に対しまして、自由にするかどうかと、こういうことを考えながらやっていきたいと思っておるのであります。原綿につきましての自由化と、製品につきましての自由化はおのずからここに差異があると私は考えております。
○加藤正人君 次に、財政政策の基本的考え方について大蔵大臣にお伺いしたいと思うのであります。あたかも自由化という画期的な時期に際会いたしまして、わが国の財政は三十五年度予算案に余裕財源を使い果たし、すっかり弾力性を喪失した感が深いのであります。従って、今後は公債によるか、あるいは経済を刺激して、税の自然増収をはかるか、こういうことになるおそれがないとしない事情もあることを考えますると、今後の財政の運営には、よほど細心の配慮が必要であると思うのであります。この意味におきまして財政政策に対する政府の基本的考え方といったようなものをただしておきたいのであります。昨秋のIMFの総会におきまして、当時アメリカその他で論議のやかましかった通貨価値の安定が先であるか、経済の成長が先であるかという問題を取り上げて、西ドイツの代表は、われわれの戦後の体験から見まして、通貨価値の安定こそ経済発展の基盤であり、そのためには一時的な経済発展の低下をも忍ぶべきであるという旨を力説して強い印象を与えたと、当時スペシャル・ゲストとして招かれておりました東京銀行の堀江頭取がレポートを寄せていたのであります。もちろん経済成長が先か云々と申しましても、通貨の安定は無視するものではないということは論をまたない。要は積極的なてこ入れをしてまで経済の成長を促進するのがいいのか、あるいは通貨の安定を維持して、堅持しておれば経済は自然に成長する。財政政策としては、それが望ましいのだという問題があろうと思うのであります。政府並びに与党においては目下所得倍増計画を策定中であるということであります。どのような計画ができるのかわかりませんが、要するに、それはある程度のてこ入れによって経済の安定的成長をもたらそうとするものであることは、間違いないと思うのであります。少なくともここ両三年の画期的な変動期に臨み、財政政策といたしましては、一時的な経済発展の低下をも忍ぶべきであるとする堅実さが要請されるのではないか。これらに関して基本的なお考えを伺いたいと思うのであります。
○国務大臣(佐藤榮作君) 経済発展に対しましての、また所得倍増という場合におきましての御指摘のように……。その柱となりますものは、申すまでもなく、通貨価値の安定でございます。通貨価値が維持安定されない限り、いわゆる経済の健全性もなければ、また所得増倍計画も十分その目的を達することはできないのであります。その意味におきまして、最近におきましては、特に通貨価値の維持安定ということに、特に意を用いて今の予算編成にも当たり、また予算の実行等につきましても、そういう点に特に留意するつもりでございます。ただいまのお話のように、通貨価値の安定のために経済の発展を一時低下させてもというような、これは表現の問題だろうと思います。経済はとにかく成長させていかなければなりません。その場合に通貨が安定せず、それが変動を来たすようなことがございましては、経済の拡大ということもはかりようがまずないと思いますし、また国民生活を向上させると、かように申しておりましても、通貨価値が維持安定されない限り、りっぱな安定向上はないものと、かように考えます。 ところで御指摘のように、ことしの三十五年度予算においては、あるいは弾力性を欠いておるじゃないか、こういう点も実は見受けられると思います。しかし私どもは、今日の経済の成長なりあるいは今後の見通し等も考えて参ります場合に、三十六年度以降についても十分経済の成長を継続し、しかも通貨価値も安定していくことができると、かように実は見ておるわけでございます。問題は、今後の予算の実行あるいは財政投融資計画の実行等にあたりまして、時期的な問題としてその適正を得ることが必要ではないか。そういうことによりまして、いわゆる時期的な調節によりまして、そういうことを——一そうこの上とも物価を安定させる、通貨価値を維持安定するということに留意して参るつもりでございます。
○加藤正人君 なるべくそういう調子でお願いいたします。 次に、税制について大蔵大臣及び通産大臣から御見解を伺いたいのであります。目下税制調査会におきまして、わが国の税制全般が再検討されているこの機会に、政府の基本的なものの考え方をお伺いいたしたいのであります。もちろん、現在、調査会に諮問中であるとはいえ、政府はその答申に拘束されるものとは思いませんが、率直にお答えを願いたいのであります。 戦後の西ドイツの経済の復興は奇蹟と言われるほどでありまして、その原因は政治に重点性があったということであろうと思うのであります。経済の復興には、何をおきましても、そのにない手である産業を育成助長するということでなければならぬということは、これは論を待たないのであります。このために、西独におきましては、その税制上、租税負担の公平の原則を一時たな上げしてまでも、徹底した助成策を産業に加えたのであります。当時、法人税は六〇%であったのに対し、所得税は実に最高税率である九五%という重税の上に、法人に対しては減価償却その他思い切った社内保留をも認めていたのであります。このために、ドイツの企業は設備を拡張するにも、近代化するにも、すべて自己資金によってまかない得たということであります。当時、ドイツを視察した人々は口をそろえて、町にはまだ戦争の惨禍が至るところに見えるにもかかわらず、ひとたび工場に足を入れれば、ぴかぴかと光った最新式の機械が勢いよく動いているありさまに驚いたと言って、賛嘆の声を惜しまなかったのであります。かくてドイツの産業の基盤が確固不動のものになったのを見きわめたドイツの政府は、一九五三年に至って税制を改め、社内保留には重く、配当には軽くして、利益金を株主に還元する政策に転換したのであります。理性に富むドイツ国民なればこそとの感が深いのであります。また、ドイツ政府の非常な英断であるとも思われるのであります。 要するに、租税負担公平の原則だけが租税政策のすべてではないということであります。今や自由化という荒波に乗り出そうとするわが日本丸はきわめて詭弱でありまして、これを強化するには、当面の急務であります税制上の措置に待つところきわめて大であると思うのであります。わが国の税制が全般的に再検討されつつあるこの機会において政府においては企業の体質改善のために、はたして重点的に配慮の用意ありゃいなや、ものの考え方としてこの点をお伺いしたいのであります。
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。西独が戦後の復興過程で数多い租税の特別措置をとったということは御指摘の通りであります。そういう事例があったわけでございます。しかし、これはその背景をなしますものにいろいろな問題がございます。ただいまのお話にもありますように、個人所得税などは九五%という非常に高い税率である。これは占領政策から非常に高い税率を設けた。これがドイツ国民の心理に非常な影響も与えたと思いますし、いわゆる納税者心理と合致しないものがある。そういう意味で資本蓄積なども十分できる方向に行かない。ここで全面的に変えることは望ましいのでしょうが、占領下の政治でございますから、そういう方法はとれない。そこでやむを得ず特別措置というものを幾つも設けて、そうしてこの占領政策に対する税制の行き過がをこれで是正した。これがただいま御承知のように非常に効果をあげたという結果に実はなっておると、かように思います。従いまして、この租税の特別措置というもの、あるいは西独の例から見ましても、これは全面的に取り上げろという説には、私は必ずしも賛成するものではございません。しかし、経済発展の過程においてある業種についての税の特別措置の必要なこと、またそれが効果のあること、これは御指摘の通りでありますから、そういう点で、私どもも今日相当多数の税の特別措置を講じて参っております。しかしこれはいわゆる特別措置でありまして、税制本来の建前から申せば、お話のうちにもありましたように、税負担の公平の原則、これに帰るのが当然だと思います。一般の税負担の軽減をはかるというような際に、順次税の特別措置は整理されていくべきものだ、かように実は私どもは考えております。そこで今回、税制調査会で取り上げまして、いろいろ税の基本問題と取り組んでありますが、そういう場合におきましても、この特別措置の効果は十分認めるが、やはり税制としては負担の公平の原則、これをやはり貫くところに重点を置いて参るつもりでありますし、一般の減税等とにらみ合わせた場合に、こういうものが、あるいは特別措置をやめたり、あるいはその特別措置もそういう意味でしばらく存続さすと、こういうような結論によってこの経済的な変動に対処して参りたいと、かように思っております。いずれにいたしましても、ただいま税制調査会においてせっかく審議中でございますし、ことに今回の税制調査会の主眼といたしますもののうちには、企業課税のあり方について特に検討してみる。あるいは国と地方との税源の分配の問題であるとか、あるいは総体の国民の負担についてどう考えたらいいかというようなことの問題等がございますので、その点から十分検討を願い、ただいま申し上げるような答申を幸いにして得ますれば、大へん仕合せに思います。まあ、いずれにいたしましても税制調査会の答申を持って処理していく問題でございます。この点を御了承いただきたいと思います。
○加藤正人君 租税の公平ということは、もう原則として望ましいことでありますが、少なくとも日本の経済、産業界における画期的なエポクであり、こういう場合でありますから、一時的にも、その原則は原則としても重点的に考えていただきたいと私は思うのであります。これは将来、財政経済を批判される場合には相当な問題だと私は思うのであります。 なお、通産、大蔵両大臣に具体的にこの際お伺いしたいのは、資産再評価の修正の実施についてであります。旧再評価の限度額は適正価格より著しく低い。かりに限度一ぱいに再評価を行なったところで、なお資産の食いつぶしが続いている現状であります。従ってこれを修正を実施する必要があるのではないかということ、それから次は、固定資産の耐用年数の改定についてであります。 由来、資源の乏しいわが国のような貧乏国ではどんな古いものでも修理をして使うということが、これは従来、美徳とされておったのでありまするが、今日のように技術の日進月歩の時代にはそのような考えはこれは適用すべきでない。耐用年数を改善するにいたしましても、物理的な耐用年数から経済的な耐用年数に考え方を切りかえるべきではないかという点、次は価格変動準備金の拡充について、今日まで政府はこれを縮小する方向でやってきたのであります。特に大蔵省の一部にかような観念を持っておられる人が多いように私は聞いております。しかし自由化の暁には、少なくとも綿花、羊毛、ゴム等、価格変動の激しい輸入原材料を扱う業界におきましては、その必要性が当然に増大するのであります。西独並みに二〇%にこれを引き上げてもいいくらいのものと私は思うのであります。 以上の三点につきましては、調査会の答申を待つまでもなく、考え方の方向をして政府はこれに踏み切らなければならない、こういうふうに私は思いますが、この点いかがでございますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 再評価の問題、並びに耐用年数それから最後は価格変動準備金制度の問題ですが、この三つとも非常に議論の多い問題でございます。一番議論の少ないのは耐用年数の問題だと思います。これにつきましてはただいま耐用年数の改正につきまして、積極的に諸準備を進めておりますが、第一の資産再評価の修正並びに価格変動準備金等については、理由はそれぞれ違いますが、第一の問題は、御承知のように非常な通貨価値の変動した際のあり方というもの、その後においていかに修正していくかという問題でありますし、これが一部だけにおいて特殊な取り扱いというものが許されないというのが本来の考え方だろうと思います。すでに一部再評価の修正をいたしましたが、さらに再評価をいたしました。今後さらにまた再評価の修正をするかどうかということは、そういう意味でこれは問題があるわけでございます。また価格変動準備金の問題は、一面自己資産の蓄積というような意味から申しますと、これは必要なことでございますが、課税の実態等から見まして、この利益留保の性格の強い準備金でありますだけに、これまたいろいろ議論がある、かように私どもは実は考えておるのでありまして、そういう意味から、ただいま加藤委員の御指摘のような効果のあることも認めますが、税制そのものといたしましては、さらに慎重に検討を要する問題ではないだろうか。で、もちろん大蔵当局といたしましてただいま申し上げておる三点のうち、最初と最後のものにつきましては、慎重にやるべきだと、かようなことを申しておりますが、これは税制調査会のやはり答申を待って最終的には私どもの意見もきめて参りたい。で、御指摘のように非常にいい点もあるわけです。また欠点を伴うとか、また弊害を伴うというような点もございますから、それらのあんばいについてもやはり工夫していかなければならぬ問題だ、かように私は考えます。
○加藤正人君 どうも人を一人使ったこともない、金を借りたこともない、経営をしたこともないような人の言説が、こういう政府のお考えのうちにまじっているようなことは、私ははなはだおそれております。なるべく、この点について慎重にお考えを願いたいと思います。 次に、独禁法の問題について総理に伺います。 自由化対策として産業界の最も強い要望は独禁法の改正であります。そうでなくても過当競争ということがわが国貿易上最も大きなガンであるということを思いますと、これが自由化の対策の最も重点的な問題であります。岸内閣は先に独禁法改正審議会の答申に基づいて、かなり大幅な改正案を国会に提出いたしましたが、不幸警職法と運命を共にして流れてしまいました。今やその改正が最も必要とされる段階になって、消極的な態度に変わったということは、何か積極的な理由でもあってのことでありましょうか。わが国の独禁法はアメリカともに世界第一級の品である、いわば貧乏人のくせに気位ばかり高いようなものであります。イギリスのように一応カルテルを認めておいて、弊害のあった場合にはそれだけこれをとめるというような考え方は、ぜひ取り上げて研究していただきたいということでありますが、この点いかがでございましょう。
○国務大臣(岸信介君) 独禁法の改正の問題は、産業界、経済界の非常な重要な問題でございますので、政府としては専門の委員会を設けて、その答申に基づいて一応立案し、御審議を願ったのであります。しかしこれが通過を見るに至らなかったわけでございまして、またその間におけるいろいろな方面の論議等もございましたので、政府としては自来この問題に関していろいろな方面のことをさらに慎重検討をいたしております。そういう事情でありまして、本国会に、もとのままで提案することは適当でないと考えて提案をいたしておりませんし、なおいろいろな点において、政府としては検討を加えて参りたい。 なお、具体的なことにつきましては、さらに通産大臣よりお答えいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 先ほど総理がお答えになりましたように、私は独禁法の全面的改正ということよりも、実情に沿いまして、最小限度におきまして是正していきたい。たとえば繊維関係につきましては、繊維工業設備臨時措置法の改正とか、あるいは輸出入取引法の改正によって、自由化問題に対して対処しようと考えておるのであります。
○加藤正人君 最後に、アメリカの対日綿製品輸入制限問題につきまして、外務大臣及び通産大臣に伺いたいのであります。 米国におきましては、農事調整法第二十二条に基づきまして、輸入綿製品に賦課金をかけようとする問題が起こりまして、これが全般的な輸入割当制にまで広がる懸念があるのであります。われわれは米国の関税委員会や大統領が、一部業界の運動に動かされて、不公正な措置をとるようなことがないとは信じておりまするが、事態のなり行きは、必ずしも楽観を許さないのであります。日本に自由化を要請している、アメリカがこのような輸入制限の動きをしているようなことははなはだ不当であって意外千万であります。また昭和三十二年に、わが国がアメリカ向けに実質的制限措置をとった際にも、米国政府はこれ以上の制限は加えないという旨を約束したのであります。こういう事情にもかかわらず、万一米国政府が賦課金を課するような決定をするようなことがありましたならば、日本政府としてはこれに対していかなる措置を講ぜられるか。少なくとも現在行なっているわが方の自主規制は、これは考え直さなければならぬというようなことになるのではないかと思うのであります。この点について、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) お話のありましたように、昨年六月、アメリカの綿業団体が農事調整法第二十二条によりまして、農務省に対しましてその発動を要請いたしたのでございますが、それ以来われわれといたしましても非常に重大な問題でございますから、アメリカ政府に対しまして十分な申し入れをいたしております。また先般ミューラー商務長官が参りましたときにも、マン国務次官補が参りましたときにも、私ども特に会見をいたしまして、その点については強力に日本側の立場を申しておるわけでございます。また三月一日から九日まで公聴会が開かれ、公聴会に日本の綿業団体の方からも御出席になりまして、それらを支援しながらやって参っておりますが、さらにこの十八日に朝海駐米大使をして、ミューラー商務長官に会わせまして、そして日本側の立場を十分に説明いたしたのでございます。政府といたしましては、事はまことに重大でございますから、近く国務省に対しまして正式に日本からの意思表示もいたしたいこう考えておるのでありまして、われわれは現状において万々そういうことはないのではないか。ことに、これは事務的に申しましても、非常にまあ混綿の場合に困難があるわけでございまして、そこいらの点につきましても、事実上実施の点につきましても非常に困難な問題がございますので、われわれとして楽観いたしておりますわけではございませんが、相当困難ではないか。しかし、万々一そういうことが起こります場合には今御指摘のような自主規制等に対して、日本が今日まで払っておった努力に反することになりますので、自主規制の問題等につきましては再権討いたさなければならぬ、こう考えております。
○加藤正人君 最後に一点。まことにこれは楽観は許さぬと思います。アメリカの繊維業界から出ておる国会議員の動き、また近くは大統領選挙というものがあるのでありますが、時の勢いでどういうことにならんとも限らぬ。そこで、私は政府にお願いしたいのは、近くアメリカ大統領が来られるのであります。国務省もけっこうでありますが、大統領に、大いに歓迎されると同時に、あらゆる機会にこの問題を強調していただきたい。この点を最後にお願いいたしまして、私の質問を終わります。 —————————————
○委員長(小林英三君) 岩間正男君。
○岩間正男君 まず最初にお聞きしたいのは、三井三池の労働者刺殺事件につきまして、その後の調査が進められておると思います。これまでの経過について伺いたいと思います。
○国務大臣(石原幹市郎君) 四ツ山坑におきますいわゆる山代組その他の暴行の調査につきましては、ただいま関係者の四十八名に逮捕令状を発付されまして、令状に基づいて厳重取り調べ中のようでございます。
○岩間正男君 そのうちに特にお伺いしたいのは、この犯人がもう見つかったのかどうか。それから大体暴力団体というのはどのくらいあったのか、その団体名、並びに人数、それからその背後関係、こういうような問題について、特に山代組、寺内組、こういうような点についての調査の結果をお聞きしたい。なおつけ加えて凶器はどういうものを使っておったか。それはどういうふうに押収されたか、その処理のやり方。
○国務大臣(石原幹市郎君) ただいままでの報告では、まだ犯人ははっきりわかってないようでございます。それから出てきております、現場に残されておった凶器、その他のものにつきましては、いわゆる言われております日本刀だったとか、そういうようなものはないようでございます。 次の問題につきましては、団体名は山代組、寺内組、大村組、中島一家、木村一家、浜田一家ほかいろいろおるようでございます。背後関係といいまするか……
○岩間正男君 人数。
○国務大臣(石原幹市郎君) 山代組の組織は約四十名ぐらい、寺内組は約十名ぐらい、大村組は約十名、中島一家は約三十名、木村家は三十名、浜田一家は三十名ぐらいでありまして、これらの中から若干名ずつ出ていっておったようであります。山代組は新聞等にも出ておりますように、興行師であるとか運輸関係の仕事、寺内組というのもややそういうような似たようなことで、大村組というのは、まあ大ざっぱにいえばテキ屋的なものではないか、中島一家、木村一家、浜田一家もややそういうものではないかと思います。
○岩間正男君 凶器はまだ見つからないというんですか、凶器の始末はどうしたか、これはどうなんですか。
○国務大臣(石原幹市郎君) 発見されておりまするものは、ジャック・ナイフ、肉びきぼうちょう、それからもう一つ二つでありまするが、問題のよく言われておりまする日本刀であるとか、ピストルであるとか、こういうようなものはございません。
○岩間正男君 十分にこの点の調査は行き届いていない、こういうふうに考えられるのですが、これはこの次に追及する問題にして、先に進みたいと思います。 それで一昨日の当委員会で暴力団の参加で不測の事態が起こりかねないことを指摘されました。そうしてその結果、緊急対策が要求された。これは岸総理も知っていられるだろうと思うところが、政府は暴力団の介入は不当である、こういうことを答えましたが、これに対してはたして適切な対策が一体とられたとお考えになるかどうか。その後の事態がこういうふうに悪化したということを考えますと、私は非常にこれは不十分であった、こういうふうに考えるんですが、この点、岸総理、いかがでありますか。
○国務大臣(岸信介君) こうした労働争議に暴力行為が行なわれるとか、第三者たる暴力団が介入するということは、事態の解決の上からいって、これははなはだ望ましくない事態でございますから、政府としては、こういうことのないようにあらゆる点から注意を喚起し、その他の措置を講じて参ったのであります。しかるに、ああした死人が出るというような事態が起こったことに対しましては、非常に遺憾に考えておりますが、なお暴力団の取り締まりについての事前措置につきましては、国家公安委員長より御説明申し上げます。
○国務大臣(石原幹市郎君) 福岡県におきましてもパトロール等を増強いたしまして、山代組のああいうのも警戒しておったのであります。不幸、熊本県境におきまする熊本県の検問所を突破されまして、ああいうことになったのでございます。その後は九州全県下にもいろいろ連絡をとりまして、まあ暴力団という言葉は悪いのでありますが、暴力行為等をやりそうな者が多数加わっておるような団体に対しましては、厳重今警戒をしておるのでございまして、今後そういうものがいろいろ蠢動するというようなことは、おそらくないと信じております。
○岩間正男君 私のお聞きしているのは、一昨日の当委員会でこの問題が追及され、そうして今の情勢では非常に不測の事態が起こるかも知れない、これに対する適切なる措置をとってほしいというのが、これは委員各位の、私たちの要望であった。それについて次の日にあのような事態が起こった。従ってこの政府の措置は適切であったとお考えになるかどうか、こういうことをお聞きしている。どうですか、岸総理。
○国務大臣(松野頼三君) 中労委のあっせん申請が出ました。この組合からのあっせん申請というのは、平和解決による趣旨でございます。従って、政府におきましては、その趣旨に沿って中労委の働きをよくやらせるように援助いたしまして、ただ、現地におきましてまだあっせん申請の翌日でございましたために、あの激突事件が起こりました。その中にあるいは第三者の暴力が介入しているんじゃないかという事実の報告もございましたので、従って、政府では、労使当事者はもちろん、第三者の暴力はなおいけないんだという警告も発しておりました。ちょうどそのときがあの事件の起きたときでございまして、政府としては、万全の策を講ずべきものは、万全の策を講じておったわけであります。ただ、あの事件が突発的な事件であったために、これは所管の治安当局の問題でもございましょうが、私たちの方としては、今回の労働問題というのは長い間のことでありますから、あらゆる策とあらゆる方法を講じて今日までして参りました。ただ、今回の問題は、必ずしも労働争議そのものではございません。第三者というものに対しては、特に今後とも私たちはよくこれは注意しなければならないことだと思います。政府としては、今日までとりました措置としては私たちのできる最善をとったと私は信じております。
○岩間正男君 最善かどうかは現実が証明しているのです。現に、警官の大ぜいいる前で殺されているのです、日本の労働者が。こういうことで、最善の方法をとったなんて言われておりますが、これは非常におかしいじゃないかと思うのです。それから、第三者の暴力の問題ですね、これは、労働法を守る労働大臣としては、もっとこの問題について、これは閣内でも十分に討議して、これの具体的な対策を講じて、そうしてはっきりした手を私は打たなければならなかったと思う。ところが、それが実際は役に立たなかった。それがいけないといって警告を発した。しかし、その結果はどうだ。警官の目の前で労働者が殺されたという事態が起こった。あの事態については責任をお感じにならなんいですか。どうですか、岸総理。
○国務大臣(松野頼三君) 私自身、今回の、ことにそれが組合員であったというこの被害者と、この現実を見るならば、これは痛切にわが身にしみて非常に大きな衝動を受けております。ただし、この問題が直ちにそれだからといって、政府の責任だと。政府としていかなる方策をとってもなおかつできなかった場合もございましょう。なおこの問題が、労働問題そのものというよりも、第三者の介入ということに非常に警戒をして参った。しかし、不幸な今回の事態が起こったことは、私は非常に残念に思っております。法律的に労働法はもちろん第三者の暴力もいかなる暴力も否定しているのであります。労働組合法の第一条には、暴力否定が一番に明記されておるのであります。そういう措置をなお一そう厳重にしなければならないということには、これは私も非常に身にしみるところがございます。
○鈴木強君 関連して。国家公安委員長に伺いたいのは、岩間委員も指摘しておりますように、三十日の日に警官隊を動員をされておったようであります。その警官隊の前において、ああいう右翼の暴力行動が起こったのでありますが、それに対して警察官が意識的にそういうところに出ていこうという気持を持たなかったように私たちは思うわけであります。手をこまねいて見ておったということは、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういう気がしてなりません。ですから、今松野労働大臣も言っておるように、第三者の介入を非常に警戒しておったと、こう言っておるのですが、警察官は何しておったのですか。 それから、岸総理に伺いたいのは、こういう右翼の暴力というものが、あなたの主張しているような三悪追放の大きな基本線であったと思うのです。こういう右翼の動きが、特に最近は顕著になってきている。たとえば、合法的に開かれたわが党の演説会で浅沼書記長に水をぶっかけるとか、そういうふうな目に余るものがある。こういうものがどこに原因があるのか、そうしてこれを具体的になくするような対策をどういうふうな対策をお持ちでございますか。この点を伺っておきたい。
○国務大臣(石原幹市郎君) 山代組につきましては、福岡県警察におきましても、当日トラックや車に乗って動いておりましたので、非常に気をつけておったのでありまするが、まあこれはいわゆる情報宣伝活動といいまするか、今回のこういう乱暴で入坑したりいろいろなことはいけないとか、いろいろなことで情報宣伝活動をやって従来からもおったのであります。それで、決して警察には迷惑をかけない、それからまた、だいたい想像されるところでは凶器等を所持しておるような状況も認められなかったが、代表者に対しまして厳重警告等も二、三回しておるのであります。それがまあ最後に四ツ山坑の所で検問所を突破して中に入って、ああいう事態となったのでありますから、その際曲警察官も出まして、四名、一人は重傷者も出しておるのでありまして、警察が全然こういうことに対して手をこまねいておった、そういうことはないと確信しております。
○国務大臣(岸信介君) 暴力の排除ということは、私かねがね申し上げていることでございまして、特に暴力行為を伴うような団体に関しましては、従来も警視庁におきましてその他警察当局等におきまして、その行動をいろいろと探査をいたしておりますし、また、現実にそういう事態がある場合におきましては、これに対しては相当検挙をいたして参っております。そうして同時に、その暴力をただ行なった当人だけでなしに、さらにその背後にある団体としてのなにに対しまして、相当に強くその内容を調べ、また、これに対して十分その責任者等に対しましてその団体の性格なり、あるいは行動というものを従来のなにを改めるように指導もいたして参っております。どうもこれはこういう団体が必ずしも思想的なバツクを持って、いわゆる右翼とかいうようなものもございますが、そうでないいろいろな商売上から来ておるなわ張り的な行動から、そういうふうな暴力的ななにをするというようなものもあるわけでありまして、ただ、ひとたびそういう団体に加盟した者がそれから抜けてそうして正常な行動につくということにつきましては、いろいろな困難があるようでありますが、これに対しましても十分な補導を加えていくということでなければ、ただ罰しただけではなかなか、ある意味から言うと、一ぺん刑務所に行ってくると何か箔がつくというような、その仲間の間に置いてあるというような状態で、いつまでも放任しておくというようなことは、これはいかんと思う。従いまして、十分その補導等につきましても、従来意を用いてやってきております。
○岩間正男君 この問題については、あとで私ももっと詳論したいと思います。 その次にお聞きしたいのは、現地の報告では、暴力団は会社の雇ったものであるということが言われておる。これはいろいろな証拠をあげてることができると思う。従って、この問題について当然これは警察の方で調べたとう。公安委員長のこれに対する結果お聞きしたい。
○国務大臣(石原幹市郎君) 会社で暴力団を雇っておったというようなそういうことは、今までのところでは全然ございません。また、おそらくそういうことは私もないと思います。ただ、一部の風評で、暴力団に会社の職員が何か凶器まがいのものを渡した者があるというようなことを言っておるようでございます。現在までのところでは、当時鎮圧に当たりました警察官でも、そのような事実を現認した者はいないようであります。また、今まで取り調べたところでは、まだそういう事実はあがっておりませんが、しかし、そういう職員がおったとか、あるいはそういう名前までも出ておるようでありまするから、そういう点につきましては、厳重に捜査を進めているようでございます。
○岩間正男君 まだ捜査が終わったのじゃないでしょうそうしてまだ捜査も、ほとんどされたのかどうかわかりません。その点したのかどうかまず伺いたい、どうですか、会社に対する捜査はどうしています。
○国務大臣(石原幹市郎君) 莫然たることで捜査はこれはできないのでありますから、そういう会社の者が連絡をしておったとか、凶器を渡したような疑いがある、そういう話を聞いておりますので、そういう事態について今捜査を進めておりまするが、今までのところでは、まだそういうことが何ら確認されていないのです。
○岩間正男君 これは十分捜査を進めてもらいたいと思うのですが、現に現地では、これはもう既定の事実のように言われております。会社側は莫大な資金を使って暴力団を雇って育成し、そして今度の事件は組織的、計画的に弾圧を加えてきているのだ、このようなことは全く世間で知っているのだ。従って暴力団の行動を徹底的に洗うためには、やはり私は三井本社並びにこの三井の現地の会社の帳簿その他を、はっきり今のうちに私は押えておく必要があると思うそういうことをしなければ、あとで、証拠隠滅をやっからこの問題はありませんでした、例のようななれ合いでは困るのでありまして、その点いかがですか、法務大臣、ちょっと伺います。
○国務大臣(井野碩哉君) 先ほど委員長からお答えいたしましたように、今調査の段階でございまして、警察庁としましても、令状をすでに執行して、現地においては犯人を捜査しておりまするから、そういう点につきましても、十分指導をして参りたいと考えております。
○岩間正男君 これだけの人命を失うという重大な問題を起こしているので、この問題については、もっと積極的に取り組む必要があると思うのです。私は現地の情報から聞いているのですが、たとえば二十八日に第一組合側の話し合いであのとき棒、竹きれなどを警察は労働者から取り上げているのですね。そして正当防衛の手段というものを取り上げておいて、そしてあそこの四ツ山の問題が起こっている。そのときは警察はどこにいたかというと、三百メートルも後ろの方にいる。これは交番の近くで起こった問題です、御承知の通り……。こういう事態については、警察はどういう責任を感じるか、私は重大な問題だと思うのです、これを伺います。
○国務大臣(石原幹市郎君) いろいろその話では、第一組合だけに警告をして、第二組合からは何をしなかったとか、あるいはいろいろなものを第一から取り上げて、第二からしないというようなことを、風評には言う人があるようでありますが、そんなことは断じてありません。右であろうが左であろうが、第一であろうが第二であろうが、もう警告すべき場合には逐次大牟田署、荒尾署に呼んで順次警告をしておりますし、また、取り調べなりあるいは対処するにあたって、甲、乙をつけるというようなことはこれは考えられないことであります。
○岩間正男君 なぜそんなら凶器を取り上げなかったのだ、暴力団の……、これが第一。それから暴力団の中には、警察のリストにあがっている者も非常に多い、この事実はあとで答弁をしていただきます。こういうものを、なぜ一体もっとしっかり取り締らなかったのか。 第三に、当夜二十九日の午後四時五十五分、検問所を通ったわけですね。ハス、トラック、それから乗用車二台でもってこれは通った、二百二十名暴徒が、暴漢が……。その検問所を自由に通らしたのはなぜか。 それから暴力団を、そのあとについて行きながら、警官がついて行きながら、なぜこれを取り締らなかったか。それから第五に、まあ先ほど言いましたように、交番のすぐ近くで行なわれた。それから第六にお聞きしたいのは、事件後逮捕した数十人の容疑者を、なぜその晩のうちに釈放したか、こういう事実についてあなたはお調べになったでしょうから、お聞きしたい、理由を、了解に苦しむのです。
○国務大臣(石原幹市郎君) いわゆる暴力団といいますか、暴力団という言葉は、先ほども申し上げましたように、暴力を行なう者が多数いる団と思っておりますが、そういうような情報宣伝活動、つまり第一組合があそこにピケを張っていろいろなことをして、入抗を阻止するのはいかんとか、炭住街に残っている人をいじめるのはいかぬとか、八分にするのはいかんとか、そういうようなことの情報宣伝みたいなことを向こうがやっておるわけでありますから、それだけの事態でこれをいけないということはできないのであります。しかし、今回の四ツ山坑事件の起こるあの直前等におきましても、一、二度車から、トラックに乗った連中をおろしたこともあるやに今聞いておるのであります。十分そういうことはいろいろ注意をしておりますが、最後に熊本県の方に入って、そこで検問所を突破された。それから検問所の問題でありまするが、検問所もいろいろと何か設けておるようでございますが、これはなかなか一々そこで全員を身体検査するとかどうとかいうこともできないので、通ったような者もあるかもしれないと思っております。 それから警察官の指導その他につきましても、今回三川坑と四ツ山坑にあったのでありますが、まあ三川坑のああいう場合でも、一触即発のようなことでぱっと起きるのでありまして、事前には流血の惨を起こさない、あるいはむちゃをやらないと両方がこう言うておって、それでも周囲まで警察官を進めて待機しておったのでありますが、肝心のその乱闘の場にややおくれた、こういうようなことであります。 それから、取り調べた者をその晩釈放したということでございまするが、これは非常に大ぜいの者であり、かつ被害者の方からも、その日はなかなか協力の申し出がなかった、つなかなかはっきりわからない。たしか逮捕令状もまだ出てなかったというようなことで、帰したようでありまするが、翌日、逮捕令状を発付を得まして、しかも被害者の方からも大体協力を得られる、こういう態勢になりましたので、ただいま厳重なる捜査を進めておる、そういう次第でございます。
○岩間正男君 ただいまの公安委員長の答弁というのは、どういう一体、あなたは情報網を持ち、現地の機関を持ち、そうして今のような御答弁では、非常にこれはたよりないですよ。第一に、検問所で通った者は一々これを調べることはできなかった、労働者の場合はどうしています、暴力団だけはいいんですか。車が通って、もうそのまま通っているのだ、そういうことをやっておる。それから今の現行犯ですね、この現行犯をなぜ一体これは釈放したのか、その晩に……。こういうことは国民はだれも了解しないです、このやり方は……。あなたたちは今のような御答弁でこれはできると、そうして暴力を実は憎んでいるのだ、これは追放したいなどとお考えになったとしても、追放できない。岸総理、今の御意見はどうです。岸総理に伺いたい。
○国務大臣(岸信介君) 総理大臣としては、先ほどお答えを申し上げました通りでありまして、現地の事実の処置等につきましては、それぞれの機関においてやっておるわけでありますから、私は一々その処置について承知はいたしておりませんが、公安委員長が現地の事情を十分把握してお答え申し上げておる通りでございます。
○岩間正男君 十分なんかしていない。不十分きわまりない。こういう格好でやられたのでは、これは話にならない。私たちの情報よりも警察情報がそんな貧弱な、一体実態をつかまえているのか、追及していないのじゃないですか。何かこの問題をごまかすような態度がある。大体この警察の態度を見ると、福岡が二千人、熊本が千人、三千人の警察官を集めて、そうしてその前に、先ほど申し上げましたように、労働者からはこれは竹きれとか棒を取り上げています。そうしておいて、そのとき今度はこの暴力団を通過させて、二十九日の五時ごろになって検問所を通って、それから三百メートルもあとについて行って凶行が行なわれて、全くそれを待っていたと、こう解釈されてもしょうがないようなやり方です。一体、そこで警察と暴力団のなれ合い、会社とを含めたなれ合いの問題が非常に出てきた。こういう問題をあなたたち論議を通じて明らかにすることができますか、この点どうです。
○国務大臣(石原幹市郎君) 会社と警察と暴力団がなれ合っているなんということは、そんなことはもう断じてありません。
○岩間正男君 これは調べもしないで、調べないでこういうことを言っている。あなたの立場としては、あなたは会社の味方ですか。そういうことは言えないじゃないか。
○国務大臣(石原幹市郎君) 会社と警察と暴力団がなれ合ってやっているなんということは、これは断じてないということは、警察は少なくともそういうことは断じてありません。
○岩間正男君 当然、公安委員長は国民の生命、財産を守る、そういう立場に立つならば、公平でなければならない。ところが、ありませんと断定している。どうして断定したのですか。この調査の不十分な段階において、断定することはできない。従って、あなたの言葉というものは、そんな前提的な条件ではだめです。
○国務大臣(石原幹市郎君) 警察がなれ合っているなんということはないということを言っているのであります。
○岩間正男君 そんなことを言ったって、事実今のような事態をどう説明するか。まあそこのところで、時間の関係があるから先に進みます。私はこういう問題については、「持兇器集合罪」というのが、一昨年、別府事件のあとに刑法の改正によって国会を通過しているはずです。これを私は適用されていくべきだと思うのです。ところが今度の事件ではこれをどういうふうにお使いになったのですか。何のために作ったんです。
○国務大臣(石原幹市郎君) ただいまは傷害及び暴力行為等違反処罰に関する法律違反の容疑でやっているようであります。最後の問題につきましては、法務大臣の方から答えていただきたいと思います。
○国務大臣(井野碩哉君) 今回の事件につきまして、最高検から公安部長を派遣し、また法務省からも公安課長を派遣して今調査しておりますが、その第一段の報告としましては今の刑法二百八条ノ二の持兇器集合罪、これによって令状を発付したようであります。
○岩間正男君 これは事前にもっとやるべきであると思う岸総理に伺います。岸総理は暴力は厳重に取り締まるということを何回も言っております。しかし、あなたは言われているけれども、実効は上がっていない。先ほども向こうからも声がありましたけれども、少しも上がっていない。口で言うだけであります。一昨年、高知で小林日教組委員長が殺されかけた。この問題については一昨年の十二月、決算委員会で私はあなたに質問をした。徹底的に調べてくれ、と。ところがさっぱりだめですよ。どうです。現にこの労働組合に対して、全く暴力団が、これは公然として出てきている例が大へん多いのです。苫小牧の問題、メトロ交通、最近の田原製作所、主婦と生活社、エスエス製薬、こういうところでは、全くこれは争議の特徴として、一昨年あたりから暴力団が介入するということになっておる。こういうようなやり方について、しかも、田原製作所では一人の労働者塙君が殺されています。あなたが就任されてからすでに二人も殺された人が労働者の間から出ているのです。この問題はあなた自身の言明にいかに実際の面で具体的には行なわれていないかということを、じきじきに証明するものであると思いますが、いかがですか。この点についての反省はどうですか、あなたは。
○国務大臣(岸信介君) 私は、実は三悪追放ということを申し、また、それについてはあらゆる面から努力をして参っております。しかしながら、今なおその一つである暴力につきまして、その跡を断たないということについては、非常に遺憾に考えております。真の民主政治を実行する上において申しまするというと、こうした暴力はあらゆる面においてこれを絶滅するようにしなければならぬし、また、その点について私の努力の足りないところは今後努力していくことは当然でございますが、各方面においてもまた国民におかれましても、十分一つその民主政治を、真の民主政治を完成するために、あらゆる面から暴力をなくするという心がまえと努力を一つしていただくようにお願いをしたいと思います。
○岩間正男君 総理の言明は、これが行なわれているかというと、これは逆な方向にいっているのです。私はずいぶん見ました。和歌山あるいは群馬、日教組の勤評問題の起こったところ、こういうところで暴力団が大衆が集会しているところにわざわざ三輪車をかつて来て、そうして肥だめを積んで来て、その両わきには日の丸を立てて来て、そうして大衆にこれをひっかけている、実際に。私はこれを県警に抗議をしたけれども、これは調べない。群馬ではどうです。凶器を持って暴漢がおどり込んで来て、女の先生が十人ぐらいいるところへ行って、お前たち刺すぞと言っておどかした事件が、新聞で大々的に報道された。校長さんが勤評に従わない先生にたばこの火をおっつけた、ほほに。こういう問題が起こっていることに対して、私は群馬の県警に行って社会党の諸君と抗議した。ところが、県警は何もしない。労働者対策は頼まれもしないうちから三日も前から出動させてそうして対策をとる。しかし、こういうものは新聞で大々的に報道されて一週間たってもこういうものについては何ら調査をしていない、人権に対して。これはどういうことになるのです。こういうことは許されますか。これは警察は暴力団となれ合いでないなどと石原委員長は言いましたけれども、あなたは実態を知らないのです。浮いているんです。こんなことではとても話にならぬ。浮いているんです。報告だけじゃだめです。実態をごらんなさい。 そこで私は岸総理はこれはどうしても今度問題を解決するために、はっきりこの際これは考えてもらいたい。あなたの言われている言明とは全く事態は違った方向にきている。この根本原因は何か、これは言うまでもなく最近の労働政策です。分裂政策と弾圧政策、そうして力をもって暴漢でも何でも使ってやる、そういうようなことが陰の方でどんどん行なわれているのをこれを見のがしている。しかし、私は根本的な最高の責任、最大の責任はやはり政府がこれは負わなければならないものと思いますけれども、これを単にそこの現地だけの責任だとか、ある機関の責任だということでは済まされない問題と思いますが、どうお考えになりますか。
○国務大臣(岸信介君) 今回の事件につきましては、先ほど来申し上げているように、徹底的にその真相を明らかにして、この法律に違反している者に対しては、厳重に処分をいたします。また、それによって将来かくのごとき事態を引き起こさないように、私どもは万全の措置を講ずるつもりでございます。
○委員長(小林英三君) 岩間君時間が相当超過しました……じゃもう一問。
○岩間正男君 今度の問題だって見てごらんなさい。石炭不況対策としては、これは基本は政府にある。そのしわがどこに行っているかというと、労働者にいっている。そうして炭鉱の労働者があなたたちの統計でも毎月二千人ちょっと切られている。今度は指名解雇で出てきた。これに対して、どうしたって日本の産業を守り、労働者の基本権を守るためには団結して戦う、こういうことになる。これに対して全く弾圧的な方法がとられてきている。この点でやはり私は深く反省をしなければならぬ。しかしこういう点から関連して、今度のこの一つの大きな不幸、日本の労働者が殺されたというこの不幸を私はこれをほんとうに再び繰り返してはならないのです。そうしてこの教訓からやはり前進しなければならないと私は考える。 そこで、私はお聞きしたい第一は、今の状態では、問題の解決策は、会社側が一方で生産再開をやろうとしています。きのうきょうは、これは世論の反撃があり、また政府の申し入れもあったりしてここで一応やめていますけれども、私はこの問題をもっと根本的に解決するまでやはり生産再開を許すべきじゃない、もう少しこの問題をはっきりいたすべきだ、政府は出すべきだと考えますが、この点どうですか。この点が一点。 第二の問題は、会社側はこれだけ世間を騒がせて問題の責任をしかもとろうとしていないのです。あくまで頑強にこの団体交渉、第一組合に対する団体交渉を拒否しています。これは労働者階級は非常にこれに対して全国の憤激は高まっています。私はこの騒ぎをほんとうに押えるためには、こういう形ではこれは解決しない。円満な解決の道というものは、あくまでも会社側が第一組合の団交に応じて、そうしてここで団交によって平和的に事態を解決するという基本方針をこれは確立しなければならぬと思う。そういう方向に努力させる、政府は責任を持ってこの問題を解決するという腹がまえでもってこの問題に私は乗り出していかなければならぬと、こう考えております。従ってこの二点に対して岸総理並びに労働大臣のはっきりした見解を伺いたいと思んです。
○国務大臣(松野頼三君) 二点について、明確にお答えいたします。 第一点は、自主交渉が、昨日からいわゆる団体交渉が開かれました。三鉱連と、これは三井の会社と。なお、昨日は約四、五十分でございましたが、さらに本日も開かれるという予定になっております。確かに、これは一日間の冷却期間がお互いに対して一歩前進した妥結の道に進んだことでございます。なお、もう一方の中労委は、二十八日あっせん申請を受けて以来、なお努力を続けております。会社側は拒否をいたしましたけれども、その当時の状況における拒否でございまして、永遠の拒否じゃございません。あくまで、翌日——あす、あさってと、毎日の状況に照らして、その後、今後の問題の推移は進むのでありまして、一回あっせんを拒否したから、もうこれはだめなんだということは、これは労働問題では断じてございません。一方は団体交渉、一方は中労委のあっせん、この二つの道が、今日平和的な道で開かれております。ただその期間に、ややもすれば、刺戟的な、お互いの感情が高ぶって、いろんな偶発的にもせよ、暴力事件が行なわれると、これが非常に、私は平和解決の道を遠ざけるものだ、一番早いことは、そういう暴力事件をなくして平和な姿になってこの交渉を進めるならば、私は必ずこの妥結はあると信じております。この二つの点について、明確にお答えいたしました。
○委員長(小林英三君) 簡単に一つ、総理大臣。
○国務大臣(岸信介君) 政府の方針につきましては、ただいま労働大臣がお答えをした通りであります。あくまでも、政府としては、こうした労働問題は、民主的に、平和的に解決するように努力をしたいと、かように思います。
○岩間正男君 委員長、まだ答弁漏れがある。私は二つ聞いたんです。
○委員長(小林英三君) だれの答弁漏れですか。あなたの時間は超過しておりますよ、岩間君。
○岩間正男君 労働大臣が……。
○委員長(小林英三君) 岩間君、発言中ですが、公安委員長が本会議に回るので、次の質問者との関係がありますから、中止を願います。
○岩間正男君 いや、いいんです。
○委員長(小林英三君) いいんじゃない。あなたがいいのじゃないんですよ。
○岩間正男君 生産再開しない、この問題を。平和的な事態に、ある程度ちゃんと平静になるまでは、再開しない
○委員長(小林英三君) 岩間君、中止を願います、時間の都合で。
○岩間正男君 いや、委員長……。
○委員長(小林英三君) あなたは相当超過している。次の質問者との関係がありますから、御中止を願います。
○岩間正男君 わかります。わかりますけれども、聞いていることに答えないから、答弁をやるぐらい……。
○委員長(小林英三君) あなたには相当超過を許していますから、次に関係がありますから中止を願います。
○岩間正男君 いや、ありがとうございます。(笑声)ただ、二つ聞いているんです。
○委員長(小林英三君) 公安委員長、ちょっと。
○国務大臣(石原幹市郎君) 本会議から再三の、道交法の……。
○岩間正男君 いや、いいです。
○委員長(小林英三君) あなたはいいけれども、次の質問者との関係がありますから。
○岩間正男君 ええ、わかります、あなたの気持は。わかりますけれども、ちょっと、答弁をしないことをね。それはいいんだけれども、今の答えないでもいいんですか。
○委員長(小林英三君) いや、あなたのは相当超過を許しているんですから、御遠慮を願いますよ。
○岩間正男君 ちょっとおかしいですよ、論議のあれとしても。労働大臣、どうですか、ちょっと答えて下さい、一つしか答えないのですから。生産再開の問題。委員長頼みます。その方が早いでしょうが。答えればいいんじゃないですか。
○委員長(小林英三君) じゃ、労働大臣。
○国務大臣(松野頼三君) 第二組合の就労について、強硬に行なわれることは好ましいことではございません。ただし、政府としてこれをとめるとかいうことはできません。なぜかと申しますれば、第二組合は今日ストもやってはおりません。同時にロックアウトもやっておりません。そういう組合の権利というものを侵害するわけには参りませんただ、この問題が、第一、第二と、組合二つの問題がございますから、いたずらに刺激的に強行就労をするということは好ましくないことだけは、これはわかっております。ただし、これを第三者がやるなとか、そういう権利は——また第二組合の権利を侵害するわけには参りません。しかし、第一、第二の現状から見るならば、強硬に就労するということは好ましくないというふうな感じは、それは常識的には持つべきだろうと私は考えております。
○岩間正男君 好ましくないを三回繰り返されたですね。 —————————————
○委員長(小林英三君) 秋山長造君。
○秋山長造君 ちょっと、公安委員長は何分したら来ますか。
○委員長(小林英三君) 約十分。警察庁の江口警備局長と、中川刑事局長が来ています。
○秋山長造君 労働大臣へお尋ねいたしますが、この問題は、今目先に起こっておるトラブルだけを何とか解決しようという、小手先のことをやってもだめだと思う。やはり相当長期間、この問題は続いてきているわけですからね。だから、この際、やはり権威ある機関が何か大きく手を打って、局面をはやり転換しなけりゃだめだと思います。そういう意味で、先日来、中労委の藤林会長があっせんに乗り出したということは、やはりその一つのきっかけだと思うのです。だからそういう意味で、私は政府としてもこれは中労委というものがその中心になるのはもちろんですが、政府としても、やはり国政の責任者として、また労政の最高責任者として、この藤林あっせんというものを一応軌道に乗せるべく、やはり最大限の協力、努力をなさるべきじゃないかと思うのです。で、この点についての熱意があるかどうか、もう一度はっきりさせていただきたい。
○国務大臣(松野頼三君) 中労委の藤林さんの機関は正式な機関でございます。従って、今回労使双方においての意見が一致しない場合には、中労委のあっせんというものが、当然これは合法的な機関として、私は最大のものだと存じます。ただ、政府でこれに乗れとか、乗るなとかいう奨励をするというときには、その方法と場合を考えなきゃいけないと思います。政府の権限、権能は必ずしもそういうところまで介入することは好ましいことじゃございません。それじゃほうっておくのかと言われれば、それはそういう場合は、ほうっておく場合もあれば、ある程度何らかの措置に出る場合もございます。しかし、いずれにしましても、労使双方において、その気持がないときに、権力をもって介入することは、これは慎まなきゃならないというので、いずれ、そういう気持があるにいたしましても、方法と時期というものを考えませんと、いたずらに政府が、どちらの意思も無視して強権介入ということは、これは労働問題には禁ずべきことだと私は考えております。
○藤田進君 関連して。労働大臣にお伺いいたしますとともに、総理大臣の所信もただしたいと思うのでありますが、労働大臣は、あっせんを会社が拒否しているのは、あの時点における状態であって、しかし、これはそういうふうに割り切ることはできないという趣旨の答弁がありました。若干その間の労働事情を通じて御答弁になったことと思う。しかし現実に今日ただいま会社側はそのあっせんに応じようとしていない。他面明日からの強制就労ということは、これまた再開されて不測の事態が予想される。ことにああいった殺人事件が加わったりいたしまして、かなり重大な緊迫した事態を見るほかはないと思います。にもかかわらず、労働大臣は、政府は超然として、そのいずれかにあっせんに応ずる——この際は会社ですが、応ずるべきそういうセンスをもっての政府の態度を示そうとしない。それは介入すべきでないという一点で逃げておられるが、しかし今日保守党内閣においても、昭和二十三年以来、時の労働大臣は労働組合側があっせんまたは調停に応じないまま争議行為に付している場合、しばしば政府声明、労働大臣声明を出して、事の平和的解決をすべきであるということを公表しながら追い込んできているのであります。なぜこの際に限って、あっせんの軌道に乗れということ自体は、問題の解決の本筋をどうしろということでなしに、その解決の手段を示唆するに過ぎない。この段階において、われわれずっと見てきても、労働大臣がこういう事態に立って、なおあっせんに乗らないという状態の、その窓口を開く、レールに乗せるだけの役割をすることが、決して不当に介入するということにはならないと思う中労委としても、従来ときには占領下においては占領軍の意向、占領が解けたあとにおいても、労働大臣声明を出したりして、そういう解決の軌道に乗せる努力はしてきていることは、過去の声明その他ではっきりしておる。私どもも体験してきている。私は明日のそういう事態に備えてお互いにあっせん——公的機関のあっせんによって円満に解決すべきであるという意思表示は、政府の所信というものは出されてしかるべきであろう。しばしばすでにあっせんを組合が申請しておるから、簡単に申し上げますが、平和的に解決することになったとおっしゃるが、法の定義から言えば、決して平和的な軌道に乗っているのではない。労調法、労組法の示すところでは争議行為の……
○委員長(小林英三君) 発言中ですが、労働大臣は、あなたに答弁する前に、本会議に行かれなくちゃならない。簡単に御質疑願います。
○藤田進君 やはり争議状態というものが続いた中で、問題はあっせんによって解決しよう、こういう状態なんですから、決して双方平和的な状態の中ではないのでありますから、この際、政府として首相が、担当大臣として労働大臣が、はっきりとしたあっせんの状態における会社側の態勢について、所信を明らかにされる必要がある。それが中労委に対するある程度の手助けにもなる、問題の解決の糸口にもなる、そのように思うのですが、どうですか。
○国務大臣(松野頼三君) まだその情勢がそういう段階に私はきていない。第一の問題は、今日団体交渉というものが再開されておるということが一つ。第二番目には中労委の委員会の活動がまだ残っております。中労委の委員会の活動がまだ十分今後やるべき方向と努力がまだ残っております。中労委の努力がもうすでに尽きたとか、あるいは今後において非常にもう望みがないとかいうような場合には、おっしゃるようなことも一つのあれかと存じますけれども、中労委の会長は依然として努力の余地をまだうんと残しております。同時に、団体交渉も昨夜以来三鉱連においていわゆる今日労使間の状況が進んでおります。この二つの情勢をごらんいただけばわかるように、自主解決の道というものを努力しておる。片方は中労委が努力しておる。この二つのものがまだ全然将来の見通しがないわけじゃございません。従って、私は藤林会長からどうしても今後においてはできないという報告はまだ受けておりません。まだまだ十分今後やり得るという見通しが中労委にあるのですから、私はその中労委の動きと見通しとを期待して十分まだ余裕があると私は考えております。ただ、暴力問題というものは、これは別個の問題であります。断じてこれはいかなる状況になろうとも、暴力問題だけは常々労使ともに慎まなければならない、私はそう考えて、暴力の問題は労使ともにこれはよく慎まなければならない。その上に立って行ないますれば、あっせんの問題も私は見通しがあると今日信じております。
○秋山長造君 労働大臣は……。
○委員長(小林英三君) 労働大臣は本会議へ参っておりますから、すぐ帰って来ますから……。
○秋山長造君 一番最後の総括質問なのに……。
○藤田進君 総理の答弁は……。私は総理の所信もこの際問題ですから、総理の所信を聞いたので、あっせんに乗るべきか乗るべきでないかという根本のところを聞きたいのです。
○国務大臣(岸信介君) 私はあくまでもこれが平和的に解決するということを終始望んでおります。ただ、先ほど来、労働大臣が答えておりますように、こういう問題についてのいかなるときにもどういうふうに出るかということにおきましては、これは慎重に政府としては態度をもっということは当然であろうと思います。ただ、平和的にあくまでも解決しなければならぬから、暴力を禁止することももちろんのことであります。あるいは中労委のあっせんというものがある段階になってきて、これは労使ともに当然このあっせんの線において平和的解決するということも望ましいことであります。しかし、事態そのものの推移というものをやはり見て、実際は政府としては行動しなければなりませんから、先ほど労働大臣が申し上げましたように、今、今日こうしろとか、ああしろとかいうことは、私はまだ適当でない、かように考えております。
○秋山長造君 総理大臣、せっかくの御答弁ですけれども、この問題はもうこれからの事態の推移を見るとか何とかいうような、ゆうちょうな問題ではないと思うのですね。事態の推移はもう今日までにすでに政府としては十分見尽くされているはずだし、おらなければならない問題だと思う。もう今血が流れている問題ですからね。ですから今の総理のお話にしても、さっきの労働大臣のお話にしても、どうも少し高みの見物的なゆうちょうさをわれわれ感ぜざるを得ないのです。もう少しこれは中労委というやはり一つの国の機関ですが、この機関が乗り出そうとしておるのですから、またそれ以外に、この際この事態を展開する道はないと思うのですがね。だから政府としてもこの大筋に従って、問題をレールに乗せる方向で一つ、政府が当事者でありませんが、あくまでも中労委が当事者ですけれども、政府としてもそれをバツク・アップをされるということが、その積極性を示されることがやはり世論の望んでおるところだと思うのです。それに対する御熱意が私はなければならぬと思うのですが、どうですか。知らぬ顔をして見ているという手はないと思う
○国務大臣(岸信介君) 中労委という機関が、こういう問題を平和的に解決する意味において、あっせんをするということは、その一つの方法でございますから、中労委が動き出しているという事態は、私はこれは十分中労委がその職責を尽くすようにできるだけ政府としても——直接にこれを支持するとか支援するとかいう、内容的には申し上げることができませんけれども、しかし中労委そのものの制度から考えてみて、政府がこれを平和的に解決するために、中労委が活動しているという場合において、その活動がスムースにいくようには考えることは当然であります。ただ、それでは今、先ほど申しましたように、会社側がこれを拒否しておるから、会社側は、これはあっせんに従うべきものだと、今日の状態で言うことがいいか悪いかという問題に関しましては、私は先ほど労働大臣が申したように、政府としては慎重な態度をとるべきものだと、かように考えております。
○秋山長造君 もう、これだけの事態になって、そうして中労委という公正な機関があっせんに乗り出そうと、世論もまたそれに大きく期待をかけておるにもかかわらず、会社が依然として、これに応じない。のみならず、会社としては、この際だれが何といっても、ねばればねばっただけ、ねばり得だと、こういうようなきわめて高姿勢に出ておるということが言われておるわけですね。私はその裏には、この会社をしてそうさせておるようないろいろな要素があると思うのです。で、そういうことならば、なおさら、これだけこじれにこじれた問題を、解決する方向とは全く逆に、ますます問題をこじらしていくことになりかねぬと思うのです。 ですから、この際ぜひとも中労委のあっせんというものを軌道に乗せ、成功させ、そうしてまた会社も、この際、こういう非常な事態を起こしておる実情にかんがみて、少し頭を冷やして、そうして、このあっせんに素直に応じると、こういうことでなければ、解決はしないと思うのですね。そうすることがまた、これは会社にとっても、私はほんとうに生きる道だと思う、長い目で見て。ですから政府としても、やはりこれは今のような消極的な態度でなしに、もう一歩積極的に出られるべきじゃないか、また出ることを世論は望んでおるし、出たからというて、政府がこの労働問題に容喙したというようなケースじゃないと思うのですがね。で総理大臣はILO条約なんかについても、四月の上旬には、ぜひ国会に提案したいというようなことで、積極的にやっておられる。ところが、部内の意見が、なかなかまちまちで統一しないために、もたもたしていると、こういう状況なんです。 この問題についても、総理大臣がよほど、これは積極的に立ち上がって、そうして労働大臣その他関係当局にハッパをかけられなければ、これは、もたもたしておっては解決しないで、また明日の生産再開強行ということをきっかけに、昨日一昨日のような不祥事を、もっと大がかりな不祥事を起こさないとも私は保証できぬと思う非常に現地の状態は、われわれは刻々情報をとっておりますけれども、非常に急迫しておるのですがね、これはどうされますか。
○国務大臣(岸信介君) 言うまでもなく、先ほど来お答え申し上げておりますように、こういう事態を昨日、一昨日等の事態を、さらに繰り返すようなことのないように万全を尽くしていくことは、政府として当然であります。 同時に、私の聞いておるところによりますと、会社側としては、一応自主的にこれを解決するという意味で、現地において団体交渉も開かれておるように聞いております。私は、これが必ずしも望みを、これに託しておるわけではございませんけれども、しかし会社側としても、いろいろな立場上、これを平和的に解決し、そのためには、一応自主的に話をしてそれが、どうしてもつかないという場合において、あくまでも徹底的にあっせんを拒否するという態度であるかどうかということは、これは私は、もう少し事態の推移を見る必要があるのではないか。 そうしてああいう不祥事を引き起こさないようにということにつきましては、政府としては、今後とも万全の措置を講じて、そういう事態の起こらないように、万遺憾ないようにやっていくつもりでございます。
○小林孝平君 委員長、関連。 総理は、万全の措置を講ずるとか、あるいは今後の推移を見てとか、こうおっしゃいましたけれども、今の事態は、非常な急迫した状態であるわけです。そこで、ただいま職権あっせんの問題については、いろいろ労働大臣からお話がありましたが、そういうのんきのことを言っていては間に合わないわけです。 そこで私は、総理にお尋ねしたいのは、政府は、いろいろの問題で、経営者側とは、この石炭産業に限ったわけではないのでありますが、始終懇談をされております。またその関係が、尋常一様でない、非常に深い関係であることは、これは世人がひとしく認めるところであります。従ってそういう職権あっせんということではなくて、非常に深い関係にあられるのですから、懇談されて、こういう事態は、もっと平和的に解決すべきではないかと、こういうふうに話し合いをされるのが当然ではないかと思うのです。日ごろ、いろいろの関係で懇談をされている、そういう間柄でありますから、こういうときにこそ、そういう関係を密にして、適当なところで御懇談なさってはいかがかと私は思うのです。これは全く、世人は不思議に思っているのです。日ごろの関係から、こんなにむずかしいことを言わなくても、どうだい、一つ、もう話をしたらどうだということで、岸さんが話をされれば、解決をするのではないか、それをやらないのは、なんか、このあとから尻押しと言っちゃ悪いけれども、何か関係があるのじゃないかと、こういうふうに、みんな思っているのです。 この疑惑を一掃する意味からも、岸さんは、そういうことをおやりになるのが当然だと思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(岸信介君) 私、実はいろいろな問題に関して、現実の状態をどういうふうに一応把握していくかということについては、大体所管の大臣から報告を聞いております。 労働大臣としては、労働争議につきまして、もちろん直接権力的な政府は介入すべきものでないことは言うを待ちませんが、しかし労働組合側の情勢が、どういうふうにあるかとか、意向はどうであるか、あるいは経営者側の情勢なり意向が、どういうところにあるかということについては、いろいろな報告によって情勢を判断していっておると思います。そうして、この問題を初めから平和的にあくまでも解決されるものだということについては、労使両方面に対して、従来からも、その意向は十分伝えてきておると思います。 ただ争議の実態としまして、それをどういうふうな時期に、どういうふうに政府が懇談したがいいか、あるいは政府の意見を言ったことがいいかというようなことにつきましては、情勢を十分に判断して私は処置すべきだと、幸いに平和的に解決しようという気運は、とにかく私はある程度動いてきていると思います。現に労働者側から、このあっせんを求めておるということから、中労委が活動を始めておる。それからまた現地において団交が始まっておるというようなことに対しまして、とにかく、ある程度平和的に解決しようという考え方が、労使ともに動いておるときに、政府がそういうことをすることは私は適当でないと、こう考えておるわけでございます。 なお情勢の点につきましては、労働大臣参っておりますから、一応お答えさしておきたいと思います。
○国務大臣(松野頼三君) 補足してお答えいたします。 昨日四時五十五分から約五十分間、三鉱連と会社側との正式団交を再開いたしました。相当久しぶりでございましたが、いたしました。なおこの問題は、三池の問題ももちろん三鉱連でございますから、三池の問題も、三鉱連が代表しての話であろうと存じます。 なお一方中労委には、炭労から三池問題についてのあっせん申請が出ております。この三つは、問題においては同じ問題で、関連のある問題でございます。 従って一方は自主解決、一方は仲裁機関、この二つが動いておると思うのであります。従って政府が関与する時期と方法は、やはり両当事者間の意向と方法を見きわめずに、いたずらに、ただ政府が、こうしろああしろというのは、これは非常にかえって解決の道ではございません。私も、早く平和解決をせんがために、こういう態度をとることもあるわけであります。従っていつまでも、これでいいのだ、労使問題は、常に一つの規格に当てはめることは——ことに労使問題はできません。しかし、法律の中において、今日、私はこれが最善の道だと信じて、こういうことを、労使間においての自主解決の道を進めながら、一方は、あっせん機関の働きを期待するということは、何も政府が手をこまねいているわけではないのです。 そういうことが今日の情勢であると、私は判断しておるわけであります。
○秋山長造君 情勢を見きわめるということを、さっきから繰り返しおっしゃるのですが、もう情勢は、ここまできておるのですから、見きわめを早急につけられてそうして政府として、もっと根本解決のために、局面の転換のために、積極的な手を打たなければだめだと思う これは、総理大臣にしても、労働大臣としても、ぜひその方向で、努力をお願いいたしたいと思います。 公安委員長が見えられましたので、お尋ねしますが、きょうは、生産再開ということは取りやめになったわけですけれども、しかし、われわれの情報によると、明日は、今度は警官隊を先頭に立てて、どうでもこうでも、生産再開を強行するということを聞くのです。この事態のもとで、まだきのう、おとといの、非常な興奮状態のさめやらぬうちに、明日、こういうように警官隊を先頭に立てて、ものものしく生産再開を強行するということを、もし万一おやりになったら、これは大へんな事態が起こるのではないかということを憂慮するものですが、そういう事実があるのかどうか。
○国務大臣(石原幹市郎君) ただいま秋山委員が言われたような話は、私は聞いておりません。私もでき得る限り穏便にやっていかなければならぬというふうに、会社の人にも、会った場合は言っておるのでありますが、しかし、仮処分なり、法律に基づくいろいろの行為が行なわれておるのでありますから、法に基づいた行為をやろうという場合に、警察の方で、それを全然知らないということも、これはいけない。警察官を先題に立てて、あすは、どんなことがあってもやるんだというような話は、私はまだ、ただいまのところ聞いておりません。
○秋山長造君 そういうことは、おやりになる意思はございませんか。おやりにならぬのですね、そういうことは。
○国務大臣(石原幹市郎君) どうも警察官がやるやらぬというなには、御質問は、ちょっと私も困ると思うのであります。会社で、あすどうしてもやるという話は、私はまだ、ただいまのところ聞いておりませんが、しかし、仮処分なりいろいろなことがあるのでありますから、それに基づいて適法な範囲内で、いろいろされる場合に、法を守る側の警察といたしまして、それを全然拱手傍観するというようなことはできないのでありまして、法に基づいて、いろいろな行動をする場合に、それを援護することは警察の当然の職務だと思うのです。今秋山委員の言われたような話は、私は聞いていないのであります。
○佐多忠隆君 関連……。先ほどから、岸総理もあるいは労働大臣も、この瞬間、この段階においては、あくまでも話し合いによって平和的に解決をすることを望むのだ、それを非常に希望しておられることを、先ほどから繰り返し述べておられる。 ところが、ただいま秋山委員もお尋ねしましたように、私たちの得ている情報によると、きょう、あるいは少なくとも明日になると、今言ったような形で、警察官を導入して、警察官の介入を申請をしながら、それを先頭に立てて、あるいはそれで護衛をされつつ、生産再開を強行をするという態勢にあり、その準備が着々進められつつある、こういうふうなことが、われわれの正確な情報では入っている。従って、私たちが政府に、特に岸総理、それから公安委員長に、特に要求をし、主張をしたい点は先ほどから繰り返して、平和的な解決によって、平和的に解決をする所存でおありであるのなら、経営者側が明日警察権力を使ってでも強行しようとすることは、少なくともこの際、やるべきでない、そういうことは絶対にやってならないということを、政府として、国家権力に指令をされることは、この際、当然であると思うのであります。 それをやらるべきだと思いますが、岸総理どういうふうにお考えになるか。(「労働大臣でなくて岸総理から」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(松野頼三君) 私が担当でございますから、便宜私からさしていただきます。 第二組合と第一組合というものは、御承知のごとく、第二組合も、これは合法的な組合でございます。また、組合員みずからが結成されている組合上の権利があるわけでございます。従って、就労する権利は、第二組合にございます。また、第一組合は、今日ストライキ中でございます。従って、会社側は、第一組合と会社側におきまして、ストと、いわゆる作業場閉鎖という問題がございますが、第二組合は、正常に、今日普通の状態の組合と解釈されます。従って、第二組合は、就労の権利は当然あるわけであります。 ここに問題は、それでは何がそこに騒動が起こるか、これはおそらくピケの問題だろう、ピケという限界をこえたものは、これは労働法上保護を受けないことであります。これは刑法上、司法上の問題であろうと私は考えております。従って、私は、いたずらに第二組合が強行といわれましたけれども、第二組合の権利を私はやはり守らなければならないのは、労働大臣の当然のことであります。従って、ともに権利を守る、法律の、合法の範囲で、公平に行なわなければならない、第二組合を圧迫することは、不当労働行為であります。また、第一組合を圧迫することも、これもいけません。しかし、権利を、お互いに立場を明確にしていかないと、議論の発展がややもすると間違ってしまう。しかし、いずれにしましても、いわゆる騒動が起こること、暴力が起こることは、これは好ましいことではございません。といって、第二組合の権利を押えることは、これはできません。従って、そういう強行が起こるときには、ピケの限界というものをこえたことは、これは違法の問題ということは、これは考えなければいけない。ピケの限界をこえることは、違法の問題であります。 そういうことも考えませんと、ただいたずらに、今日の場合は、本末を忘れるわけに私たちはいかないどちらの組合の問題、どちらの労働者の権利も、労働大臣は守らなければならならい立場でございます。
○佐多忠隆君 第二組合の権利も守らなければならないという論法で、明白そういう形で、双方対峙をさして生産再開を強行をされようとすれば、その間に衝突ができて、不測の事態が起こることは非常に明白であり明瞭なんです。 従って、今のこの段階、明日においては、そういうことをやらすべきではないから、労働大臣としては、その点を十分に配慮をされて、話し合いをやるべきことを考慮し、それを勧めるように手配をされるのが当然じゃないか。第二の、——労働組合でなくて——さらに私がお尋ねをしているのは、警察権力を介入さして、さらに再開を強行をしようという状態にあるから、そういう点は、何としてでもこの際絶対にやらせてはならない。 これは政府が国家権力に対する指令として、当然になさるべきことであると思いますので、これを繰り返し岸総理、公安委員長にお尋ねをしたいと思う。
○国務大臣(松野頼三君) 第二組合に、今日の場合、国家権力が介入するということは、厳に慎むべきことであります。 ただここに、生命、財産、権利を守るという正当な要求があったときに、どうなるかという問題だと思うのです。いたずらに第一組合を圧迫するために国家権力が入ることは、断じてこれはとるべきではございません。しかし、第二組合の権利というものも、これは当然同じ意味で、私は守らなければならないのであります。 従って、今後の問題でございますが、第一組合を圧迫のために、国家権力が入ることは好ましくない。ただし第二組合の権利を守ることも、国としては当然保護しなければならない。この二つは、別個の問題であります。従って、衝突するという場合には、合法的にいえば、ないわけなんです。どちらかがどうかによって、これは誘発しなければないわけであります。どちらとも、私は言いません。そういう立場から、私はこの問題に対処していかないと、ただ強行就労すると、必ず騒動が起こるのだ、その責任はどうだ、そういうことは、私は権利とその保護の立場から考えていかなければ、それじゃいつまでも、第二組合の就労権を無視するわけにはいかないのです。第二組合の就労権というものを、私は何の権限でそれを押える、これもできません。これは権利としては、当然守るべき権利であるのであります。第一組合のストライキ権、これも守るべき権利であります。しかし、今回は第二組合というものができております以上、第二組合の立場も守る。第一組合は、合法範囲内におけるストライキ権を、これは守るべきであります。 これをこえた国家権力というのは、どちらにも及ぼすべきではないと思う。そこの限界を、はっきりいたしませんと、今後の問題が非常に混乱すると、私は考えるのであります。
○国務大臣(石原幹市郎君) 警察といたしましては、従来から、労使問題にはあまり介入しないということを不変の原則としてきておるのでありまするから、その立場を堅持していくことには間違いはないのであります。 ただ、違法行為に対しましては、万全の警備をしていかなければならないと、かように考えます。
○秋山長造君 ただいまの労働大臣の答弁を聞いておりましてもどうも、非常に冷たい理屈をおっしゃっているだけであって、今の三井三池に起こっているあの非常な混乱した事態を解決するきめ手ということには、私はならぬと思うのですよ。そのためには、やはり藤林あっせんを何とか成功させて、会社にも、あまり強情をはらないで、この際は、とにかく世論に耳を傾けて、素直にあっせんに応じて、そうして問題を軌道にのせるという大筋は、これはやっぱり政府としても、これは積極的に推進をされるのが私は、その責任じゃないかと思うのですね。 だからその点は、たとえば、きのう労働大臣が労使双方へ、一日冷却期間をおくようにという勧告をされて、そのために、まあ事なしに済んだということでありますが、明日の事態ということを考えますと、やはりこれは冷却期間が、一日中二日の冷却期間で、すぐスムーズにいくものとは思えない。もちろん永久にということをわれわれは言うのでも何でもないのだけれども、理屈は理屈として、これだけ紛糾している問題、しかも非常に急迫したこの雰囲気の中での問題ですから、もうしばらくやはり冷却期間をおくべきじゃないかというくらいな発言、勧告は、これは、私は労働当局として当然すぎるほど当然のいき方ではないかと思うのですが、その御意思はありませんか。(「形式的なことばかり言ってちゃ駄目ですよ」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(松野頼三君) 私は、ただいま非常に基本的の問題でございましたから、形式的の、基本から理論を発展いたしまして、今日の問題、私は、基本的にはやはり、この中労委というものがあります以上、このあっせんというのが、平和解決の道だと考えております。私も考えております。ただ、それを政府が勧告するとかいう方法をとるか、とらぬかということは、これはその場合——その場及び今日の情勢で判断いたしませんと、政府が勧告しても、なかなか受けなかったというのでは、これでは効果がございません。従って、おのずからその時期と方法は、もう少し私たちは両者の気持がやわらぐ、一番やわらぐのは、やはり暴力問題で一番刺激しておりますから、お互い合法において、平和的の立場をとるということが、私たちは一番先決、その上に立って、御趣旨のようなことは、これは進められると思うのです。 そして今日の場合は、まだまだ平和的——ただいまの御質問のように、あすの問題という不安がある間は、なかなか両当事者ともに、刺激が多いのじゃなかろうか、かりに進めても、話が進まないというなら、これも意味のないことであります。 従って、中労委のあっせんの場というもの、終局的に、これが最善の道だと思っております。そこに乗せるには、どうするかというのが、今日労使間のいろいろな動き、いろいろな感情のもとに、判断をしなければならないところであって、基本的には、私はそんなにしかつめらしいことばかり言うのじゃございません。しかし、権利と権利を守るということも、これは政府としては考えなければならないということの基本を忘れるわけにはいかないということでございます。
○藤田進君 関連して……。どうも一貫しないので、どちらを、政府の態度としてとっていいかわからないのですが、労働大臣不在のときに、岸総理から発言されたことは、もう一度、念のためにお聞きし、かつ労働大臣にも念を押しておきたいのですが、岸総理は、地元においても自主的な交渉が再開されているのだから、ますこれでやるべきだという趣旨の御発言がございました。一方、国家機関である中労委も、藤林会長を中心に、日夜の苦労を今あっせんのレールに乗せるために、やっていることは御承知の通り。しからば、岸総理の所感としては、まず自主交渉によってやるべきだ、それができないときに、あっせんすべきだ、中労委がやっているのは、少し出過ぎているというふうにも、発展しがちでございます。 労働大臣の方は、中労委のあっせんによって、これを解決することが望ましいという趣旨の御答弁があったように思います。この点を岸総理あらためて、はっきりしていただきたいのが第一点。 続いて、労働大臣に念を押しますが、しからば、中労委も国家機関として、藤林会長も新任早々の努力をやっているのです。この立法が、中労委としては是なりとして、一立の申請もあるし、動いているのですが、政府としては、その中労委の労を多として、そのあっせんの努力が実るように、しかもそのあっせんのレールに乗って解決することが現時点において至当であるということが、なぜ答弁ができないのか、またできぬとすれば、その点を、はっきりしていただきたい。 それ以上、会社に対して、あっせんに乗れとか乗らないとかいうことは、これは第二の問題にしてよろしい。本予算委員会、国会における公式答弁としては、労働大臣も、中労委のあっせんの努力に乗って、双方とも乗って、この線で解決することが望ましいのだということが、はっきり言えるのか言えいのか、念のためにお伺いしておきます。
○国務大臣(岸信介君) ちょっと、先ほど申し上げました現地でというのは間違いでございまして、東京で行なわれているので、訂正をいたします。 労働争議の問題が、労使間において、自主的に話し合いで解決されるということが、いうまでもなく私は原則であると思います。一番望ましいことである。しかし、それがうまくいかない場合において、中労委があっせんしていく、労使の問題を、平和的に解決する、こういうことであります。 今の状態は、この二つの線が動き出している状態でございますから、しばらく情勢を見た上でいきたい、こう言った次第でございます。
○国務大臣(松野頼三君) ただいま総理のお答えの通り、基本的には、労使問題は労使間において話し合いをつけることが第一の基本でございます。ただ両者の話が一致しないときに、中労委というあっせん機関で、これを最終的にきめる、これが二つの道でございます。 ただいまの三井三池の問題につきましては、組合は、中労委にあっせんを依頼した。会社側は、自主交渉で、まだ自分たちは、自主交渉の余地があり、また見込みがあるという意味で団交が開かれた、この判断も、また多少の食い違いがあるやに私は聞いております。従って、中労委の藤林あっせんも、今日自主交渉が行なわれている今日でありますので、やはりその道においても努力する、双方で、今日努力しておるわけであります。 そこにやはりお互いの判断の多少の相違があるやに聞いております。会社側は、自主交渉で自分たちはやれるのだ、組合の方は、中労委のあっせんがいいのだ、そういう二つの道が同時に行なわれておる。(「中労委はどう言っているのだ」と呼ぶ者あり)中労委の方は、自主解決ができるならば、もちろんこれは労働問題の基本でございますから、中労委の方は、自主解決ができれば、それにこしたことはない、望ましいということが、中労委の基本的な態度でございます。 そういう二つの道が、今日行なわれているわけでございますから、私の、政府の判断というものも、私はその二つの、両方の判断を誤まらないように、しかも平和的に促進できるように、今日おるという意味で、ここに、また別の政府が案を出しますと、三つの案になってくる、これは、いいことではない。 従いまして、今日の場合は、中労委は中労委、団交は団交、この二つが、労使間における今日のあっせんでありますから、従って政府の、私の態度が、一番是なりと御了承いただけるのではないかと考えております。
○藤田進君 関連……。先ほど労働大臣は、中労委のあっせんの線で解決することが望ましいと、秋山委員の質疑に対しては答弁された。私があらためて念を押せば、両方がやっているのだから、何とも言えないのだ、あっせんの方は、中労委が現在努力しているのですね、それによって解決することが望ましいと、前段言われたが、あいまいだから念を押してみれば、もうどっちこっち、こっちは、何も言わないのだ——それではどちらがほんとうなのか。
○国務大臣(松野頼三君) ただいまの答弁も、明確に申したつもりでありますが、なお、もう一度明確に申し上げます。 労働問題でありますから、自主解決が基本で、一番望ましいことだと思います。中労委といえども、同じ立場であります。自主解決が望ましくても、なお一致しないときに、中労委のあっせんであります。今日、この二つが同時に出ておる。 従って、基本的には自主解決ができれば、これが第一私の希望するところ、できざるときには、中労委のあっせん、これが私が第二の希望する線で、同時に二つ出てくる、どっちがいい悪いではない、早く平和的に解決することができることが一番望ましいということが終局でありますから、私の議論は、少しも混淆しておりません。今日の実情は、そういう事情であります。
○佐多忠隆君 関連……。労働大臣は、二つの線で、平和的な話し合いが行なわれつつあるのだから、それが実現をして、平和的に解決することを望むのだ、こう言っておられる。 ところが実際の実情は、われわれの正確に把握しているところによると、三池の問題は、自主的な話し合いから除かれている、従って、われわれはこれを話し合いの中にのせなければならないし、ほんとうに政府が、話し合いをお考えになっているのならば、これこそ今、解決をしなければ、緊急に解決しなければならない最も重要な問題であるから、それを話し合いにのせるようにしなければならないし、そのためには、先ほどから言っているように、中労委のあっせんによってのせるということが、この際一番必要なことであり、重要なことであり、緊急な問題であるから、そういうふうに、政府は配慮されることが、ほんとうに平和的に問題を解決するということを実現するゆえんじゃないか、それでなければ、単に言葉で、そういうようなことを望みますと言いながら、その実は、何らそれを望まないで、放置しておられる、こういうことにしかならないと思うのです。その点を明瞭にお答えを願いたい。
○国務大臣(松野頼三君) 昨日の団交の内容を拝聴いたしますと、会社側は、三池の問題も同じように考えておられる。組合の方は、三池の問題は、中労委あっせんに依頼したのだから、自分の方は別だ、こういう議論が両方にあったやに私は聞いております。従って、全然除かれた、除かれないじゃない、団交は、まだその段階で昨日やられている。本日も、さらにやられるというのでありますから、それは、全然三池の問題は除外されたと、頭からきめるには、まだ両者の間に、意見が一致しないという意味で両方の意味を私は申し上げた。私の答弁が、あるいは非常に、混乱しているかもしれません、と同時に、今日の労使間の問題も、このように混乱していることも事実であります。これは事実の通り私は申し上げておる。私は、私見を入れておりません。そういう段階で、今度は、私が判断する立場であります。 そこに、おのずから私の考えというものを、おそらく皆さん方も御了解いただけるだろうこれから先どうする、こうするということは、なおきょう、あるいはこの後におきましても、進展があるわけであります。私が、ここで言うことはむずかしいということは、その事情を率直に申し上げれば、御理解いただけると思います。 従って私は、あくまで平和的解決ということは、何も手をこまねいているかというと、そうではございません。一番問題の障害は、暴力でございます。労使ともに、法律を守って、暴力行為をなくさなければ、この進行は、かえって私は進行しないと思うこれを私は真に考えて、憂えておるわけでございます。
○秋山長造君 そんなハムレットみたいな答弁を、これはこの際、のうのうとわれわれ聞いておるほど余裕がないのですよ。それだけ、ほんとうに血が流れておるのですからね。ですから、もう少しずばりやって下さい。そのための労働大臣ですから、ぜひもっと積極的に、この問題の平和解決に努力していただきたい。 それで、石原委員長に、もう一度重ねてお尋ねしますが、明日の生産再開のために、会社の方から警官隊の動員を要請しておるという事実がございますか。
○国務大臣(石原幹市郎君) 現在までのところ、そのようなことはございません。
○秋山長造君 われわれの、ただいまキャッチした情報によれば、会社から警察当局に対して、明日の生産再開に備えて、警官隊の出動を要請したということなんですが、もしそういうことは、ただいままでのところ、あなたは聞いておられぬとしても、これからそういう要請がなされたという場合に、ああいう非常な急迫した事態の中で、そういう要請に応じられるかどうか、お尋ねします。
○国務大臣(石原幹市郎君) 大牟田、荒尾、あの辺を中心としましては、いろいろ社会不安的問題もあるのでありますから、警備力は、万全の配置措置をとっていかなければならぬということは、私も警察庁なり、あるいは現地当局とも連絡をして、十分気をつけておるつもりでございます。先ほど来申し上げましたように、労使問題には、警察というものは介入すべき立場でもありません。労働大臣等と、緊密な連絡をとり、現地の情勢等、よく情報を受けまして、適切に判断をしていきたいと思います。
○秋山長造君 この際の警察のあり方、態度というものは、これは、きわめて重大だと思うのです。きわめて重要だと思います。そういう重大さにかんがみて、警察当局としては、この問題が、せっかく中央において先ほど来話が出ておりましたように、中労委のあっせんに向かって努力が進められておるわけですから、ですから、そういう情勢等も、十分に勘案されて、よほど慎重な態度で臨まれることを強く希望しておきます。
○鈴木強君 関連して、防衛庁長官にお尋ねしますが、一部に、自衛隊の出動を要請するかのごとき情報を聞くのでありますが、そういうことがございましたかどうか。 それから、私はそういうお話があったとしても、断じて自衛隊が出動すべきでないという判断を持っているが、もし要請があった場合、出すですか、出さぬですか。
○国務大臣(赤城宗徳君) 大牟田の市議会で、自衛隊の要請を議決したということを聞いております。しかし私どもに、まだ連絡はありません。それから、こういう問題について、自衛隊を出すという気持は持っておりません。公の秩序が破壊された場合は別であります。今の場合は、考えておりません。
○秋山長造君 それでは、問題を切りかえまして、一昨日問題になりました新安保条約における極東の範囲ということについて若干御質問したい。 総理は金門、馬祖を依然として含めるというこの当初の見解をついに変えられなかったわけなんですが、地図を見てもおわかりのように、あれだけ日本からはるかに離れて、しかし米華条約ですらその条約地域から除外しておる、しかもその領土権すらどこに帰属するのかいまだきまらないというような金門、馬祖を、なぜどうでもこうでも新安保条約の極東の範囲ということに含めなければならぬのか、その理由が私どもよくわからぬのです。その点についてもう一度御解明を願いたい。
○国務大臣(岸信介君) 何でもかんでもどこそこを入れなければならないという意味で申し上げているわけではございませんで、政府として一貫して極東の範囲につきましては、フィリピン以北、日本を含めて日本の周辺ということでお答えを申し上げておりまして、これが中心になっていろいろな具体的の島等について、あるいは範囲等につきまして御質問があり、政府としては大体極東という観念自体は抽象的なものである、地図に記入することは適当でないという感じで考えて終始きておるのでありますけれども、いろいろな質問の場合におきましてお答えした島嶼等の範囲もございます。しかしそれらにつきましてわれわれが一々の島等をあげて、入る入らないということを論議するということは適当でないけれども、従来極東の範囲として述べたものを総括して、二月二十六日に愛知委員に対して、衆議院の安保委員会におきまして答弁をいたしましたことが、政府の統一見解であり、そのことは具体的な島等をあげておりませんけれども、従来考えておるところのものを変えた意味ではない、いつも政府のっ答弁は二転三転しているじゃないかという御質問に対しまして、われわれがそういう意味において、表現は、説明の仕方はやや違っておるかもしれませんけれども、趣旨においては変わっておらぬということを一貫して申し上げているわけであります。従って従来具体的にお答えしましたことを矛盾するような見解を二十六日に述べたわけでない、ということを申し上げたわけであります。
○秋山長造君 私の聞いておるのはそういうことじゃないのですよ。この金門、馬祖を、これだけ問題の多い金門、馬祖をなぜわざわざ日本の安保条約に含めなければならぬのか、これを含めることによって、一体どういう利点があるのか、またこれを含めることによってどういう障害が起こるのかということを、比較対象して考えてみたらどうかと思うのです。金門、馬祖を含めるのだということを固執されることによって、たとえば今の日中関係なんかにどれだけ大きな悪影響を与ておるかということは、これは総理大臣もよく御承知なさっておるところだと思う。そういうことであるにもかかわらず、依然としてこの金門、馬祖を含めるという自説を固執されるということが、われわれは国民の一人として納得がいかないということを言っておるのです。だからこれを含めることによって得るものは何だ、失うものは何だということを十分考えられた上で、どうしても含めなければならぬ、ならぬという理由を説明していただきたい。
○国務大臣(岸信介君) 日本の平和と安全を守り、またそれときわめて密接な関係にある極東の安全と、平和というものを守っていくことが、この安保条約の趣旨であると思うのであります。そうした場合における極東というものの範囲は、実は地理的に明確なものではないことは申し上げるまでもないのであります。そこで私どもはこのフィリピン以北日本の周辺ということを申しまして、大体の地域的な観念をいろいろな御質問において明瞭にいたしてきたわけであります。それらを包括したものが二十六日のものだ、これをどこを入れたのが利益であるか、どこを入れたのが不利益であるかという意味でこの観念をきめるわけではなしに、やはり大体において今申し上げたような地域的な観念を抽象的でありますけれどもきめて日本の周辺というのにはもちろん海域は含まれており、また日米両国が関心を持っておる地域というものをこの指摘してみますと、私はこれらの地域、今まで述べたところの地域を含めておるという政府の従来の答弁が適当である、かように私は考えております。しかしながら現実に問題が起こったときに、日本の基地の、このいる米軍がどういうふうに作戦行動するかということは言うまでなく事前協議の対象になるわけです。そのときの事態によってこれは明瞭に極東の範囲に入っておりましても、その場合において日本がイエスと言うか、ノーと言うかということは事態からはっきりきまるわけであります。これに入ったからどうだ、入らないからどうだということは私は言えないのじゃないか、かように思っております。
○秋山長造君 一昨日の辻委員の質問に対して、金門、馬祖に再び一昨年と同じような事態が起こった場合には、これは事前協議を持ちかけられても拒絶するということをおっしゃったのですが、そうするとあれと同じような事態というのはどういう事態であるか、またそれと違った事態が起こった場合にはイエスと言う場合もあり得るのか、その点お尋ねします。
○国務大臣(岸信介君) 現にその一地域に起こったところの戦闘行為のごときものが、日本の平和と安全に直接もしくは密接に関連を持たないという事態であるならば、私はこれは拒否すべきものである、従ってこの前の事態というものは、私どもは日本の平和と安全に直接密接な関係のある事態だとは判断をいたしておりません。そういう意味においてこういうことが起こるという場合においてはノーと言う、こう申し上げます。(「明瞭だよ」と呼ぶ者あり)
○秋山長造君 明瞭じゃない、では金門、馬祖を中心にして起こった事態で、日本の安全に直接大きな脅威になるというような、こういう事態においてはどういうことを予想されておるのですか。
○国務大臣(岸信介君) 別に具体的に私はどういうことを予想しておるということは……事態を見ませんと別に今具体的な、ただ具体的にと申し上げたのは、かつてこれは事実があったわけです。ああいう事態はわれわれとしては直接関係ない、そして拒否すると申し上げたのです。どういう場合だと言われる場合は、ちょっと私全然空漠たることでありますのでお答えいたしかねます。
○辻政信君 関連。ただいまの総理の御答弁非常にけっこうだと思います。念を押しておきますが、アメリカからいかなる圧力が加わってもノーと言い切りますか。
○国務大臣(岸信介君) これはもちろん日本が自主的に判断して自主的にきめる問題でございますから、アメリカが圧力を加えるとか何とかいうものによって左右されるべき性質のものではないと思います。
○秋山長造君 総理大臣は三十日の朝日新聞に載っております「極東の基地を見る」、金門島のルポルタージュが載っておるのですね。木村特派員。この記事をお読みになりましたか。
○国務大臣(岸信介君) まだ読んでおりません。
○秋山長造君 この記事をお読みになったら、総理大臣がただいまおっしゃっているようなことがいかに白々しいかということがおわかりになると思います。私はこれをやると時間が食い込みますから、あまり読むわけにもいかんのですが、その趣旨は、金門、馬祖で事が起こった場合には、これはもう日本とフィリピンにいる空軍が直ちに出動するということは、もう既定の事実になっているのですね。これは、台湾政府の作戦計画もそうだし、第一アメリカの作戦計画がそうなっている。もう既定の事実だ、断定的な事実だということが、詳しく事実をあげて書いてあるのですが、そういうことであっても、総理大臣は、金門馬祖の問題については、これはあくまで日本が自主性を持ってノーということを貫き得るという確信がありますか。
○国務大臣(岸信介君) 私は金門、馬祖の状況は承知いたしておりません。が、しかしながら、この問題について辻委員にお答え申し上げたことに対しましては、これは私は責任を持って御答弁いたしたつもりであります。
○秋山長造君 台湾を中心にしたアメリカの戦略計画について、総理大臣はよく御存知じゃないのですか。国防会議の議長でもあるのですから。
○国務大臣(岸信介君) もちろん、国防会議におきまして、極東におけるいろいろな自由主義国、また共産主義国等の状況につきましても、できるだけ情報を集めてこれはある程度そういう情報に基づいて私どもは判断をし、考えていっております。
○秋山長造君 これはお貸ししてもいいですから、よく読んで下さい。また次の機会に読まれた上で質問します。今おっしゃるようなことは全く白々しい限りの御答弁だと、私はそういう印象を持つのです。 そこで、次にお尋ねしますが、これは安保条約の第六条と、それから事前協議に関する交換公文に関連してくる問題ですが、あらためてお尋ねしますが、この事前協議ということをなぜ第六条について取りきめられたのか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 事前協議をなぜ交換公文にしたかという御質問だと思いますが、かねがね申し上げております通り、一般的協議事項が規定されておりまして、一般的な協議をいたしますが、特にその中で事前に協議する問題を引き抜きまして、そして、いろいろありますから、それを交換公文にしてはっきりさしたと、こういうことでございます。
○秋山長造君 重要でありますからはっきりさせたということでは、まだ御答弁にならないと思うのです。どういう理由でこの六条の問題についてだけ事前協議ということを特にきめられたのか、その理由を御説明願いたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のように、日本の国民感情からいたしましても、核兵器の問題については非常に深い関心を持っております。また、日本の基地から作戦行動をするというようなことにつきましては、日本の国民も非常に関心を持っておるということでございまして、そういう点につきましては、はっきりわれわれの意思表示をしていくことを必要とし、また国民もそういうことによって理解をいたしておると思うのであります。そういう意味において、これらの点を取り上げて交換公文に特にいたしたわけであります。
○秋山長造君 結局、六条のままにしておけば、六条のアメリカ軍の行動によって日本が思わざる戦争に巻き込まれるという危険がある。だから、そういう危険のないようにということで、交換公文というものを作られたのではないですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、六条に施設及び区域を供与するということになっておるわけでありまして、それらの点につきまして、その使用方法等、日本人の関心を持っておる点について、これを交換公文にいたしたのでございます。
○秋山長造君 配置における重要な変更、あるいは装備における重要な変更、それから戦闘作戦行動、こういうような認定は一体だれがなさるのですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) この認定につきましては、かねがね申し上げておりますように、配置につきましては、大部隊が入ってくる場合にこれは当然事前協議をすることになります。大体一個師団くらいというようなことは、当然予想されるわけであります。また、装備につきましては、かねて申し上げておりますように、核兵器及び核ミサイル基地の設定、あるいは中長距離ミサイルというものについて事前協議をすると、こういうことになっておるわけであります。
○秋山長造君 私の言うのは、重要なという、その重要であるかどうかということをだれが認定をするのか、どういう機関が認定をするのかと、こういうことを質問しているのです。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、大体話し合ひにおきまして、今申し上げたことを標準にいたしておるわけであります。
○秋山長造君 そういたしますと、今外務大臣のおっしゃったことは、調印の当時すでに日米双方において、はっきり了解がついていることなんですか。この間国会でいろいろ問題になったので、自民党の方で三月の十五日ですか、何か会合を開かれて、国会を当面切り抜ける方便として、とりあえずこういうことでいこうということでおきめになったのではないですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) そうでございません。われわれは、アメリカと話をしておりまして、今申し上げた基準というものを話し合いをいたしております。
○秋山長造君 そういう具体的なことを合意されておるのならこれは当然、きわめて重要な問題であるだけに、合意議事録か何か私は記録に残されてしかるべきじゃないかと思うのです。なぜそれをおやりにならぬのですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん、こういう問題につきましては、将来日米安保委員会等、新たな委員会等ができますれば、はっきりしたものにして参りたいと、こう思っております。
○秋山長造君 日米安保委員会では、そのときそのとき、そのつどの問題を協議されるための機関であって、今外務大臣のおっしゃったように、初めからこういう、たとえば配置については一個師団以上あるいは装備については核兵器というような、初めからそういうことがきまっておるのですからね。何も安保委員会というようなものであらためて協議するのでなしに、初めからちゃんとこの基準というものは文書によって残しておくのがほんとうじゃないかと思う。そしてそれにもひっかかるかどうかわからないというような問題が起こった場合に、安保委員会で協議するということが、私は事の順序じゃないかと思うのです。いかかがです。
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん、この配置、装備等の問題について条約に書きます場合に、われわれとして、それだけの日本国民の上要望がございますことを伝え、それを向こうが十分了承っているということであるわけであります。その上に立ちまして、将来問題は日米安保委員会等できちんときめて参るのでございます。
○秋山長造君 そういたしますと、安保委員会、正確には安全保障協議委員会ですか、この安保委員会では、まず配置における重要な変更、装備における重要な変更、戦闘作戦行動、こういうものが具体的に何かそういうことをまずおきめになって、そうしてそれに従って運用していかれる、こういう順序になるのですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 安保委員会ができますれば、むろん安保委員会としては条約全体の実施について協議をしていくということは、これは当然でございます。その他お互いに情報の交換等もやって参ります。従って、条約運営の上におきまして諸般の問題を協議して参ります。でありますから、そういう点につきましても協議もして参ることは当然でございます。
○秋山長造君 軍事専門委員会ですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 安保委員会を作りました場合に、相当専門的な話が出ることになる場合があろうと思います。また将来、日本の自衛隊とアメリカ軍との間にはいろいろの情報の交換、その他必要であろうと思います。従いまして、あるいは下部的に専門家の委員会を作るというようなことが考えられる場合もあろうかと思います。現在まだ安保委員会が発足した後のそうした小委員会というものを作るか、作らないかというような問題については、まだ決定しておりませんし、またそれにつきましては、運営上の問題については、防衛庁の長官の御意見もございますので、そういう点もあわせて今後相談して参るわけでございます。
○秋山長造君 それは作ることにきまっているということを衆議院の予算委員会で答弁されたんじゃないですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 安保委員会は作ることはもう明瞭でございます。安保委員会の運営にあたりまして、軍事小委員会的なものを作るのは、ただいま申し上げましたように、いろいろ軍事上の情報の交換なり専門的な話し合いをするということも必要ではないかと私は考えております。従いまして、そういうものを作っていくかどうかということは、今後防衛庁長官等とも御相談の上で、日本側として考えて参るわけでございます。まだ確定的に作るということにいたしているわけではありません。
○秋山長造君 これから防衛庁長官と相談されるということではなしに、すでにこれはもう作るということは、アメリカとの間で合意ができてきまっておるんじゃないですか。ただ、今の国会中にそんなことを先々言うと、また何だかんだ言われるから、ぼかしておいて……。これは率直に言って下さい。そんなことをこれから防衛庁長官と二人で相談してどうこうされる問題じゃないんです。これはアメリカ相手の問題ですからね。きまっているんでしょう。
○国務大臣(赤城宗徳君) 率直に申し上げて、まだきまっておりません。それははっきりいたしております。むろん私はそういう意味で、ある程度専門家の会合が必要じゃないかと考えております。しかしながら、そういう問題については、今後小委員会を設け、いろいろ御議論はございます。経済小委員会を作ったらどうだとか、いろいろございます。そういう問題については、今後むろんきめていくわけでございます。
○秋山長造君 時間がないから……。まあ、これはきまっておるんですよ、ただ国会でこの際言えないだけの話なんです。 そこで、その次にお尋ねしますが、戦闘作戦行動ですね。戦闘作戦行動は事前協議の対象になるが、補給作戦行動はならぬと言っておられるのですが、これはもう皆さんがおっしゃる通り、戦闘と補給ということは全く不可分一体なものなんですね。本質的にそうだと思う。特にこれは、太平洋戦争を思い起こしていただいてもこれは明らかです。やはり近代戦は補給戦です。だから、日本が負けたのは、補給戦で負けたといわれておる。ソロモン海戦なんか特にそうです。だからそういうことを、ただ機械的に言葉使いだけで割り切って、そうしてそれでわれわれを引っぱっていこうとしても、それは無理だと思う。一体こういう、戦闘作戦行動であるか、補給作戦行動であるか、あるいはまた、移動ということも一つの大きな作戦だと思うのですね。部隊の移動ということ、こういう移動作戦行動、こういうようなものが、一体政府のおっしゃるように、実際問題としてせつ然と区別ができるものかどうかということをお尋ねしたい。
○国務大臣(赤城宗徳君) その目的等を勘案して区別できると思います。
○秋山長造君 目的というのは、これはいやしくも部隊であり、軍隊である以上は、すべて目的は一つじゃないのですか。別々な目的で別々に動いているんですか。そんなものじゃないでしよう。これはすべて一体なものですから、目的はみな同じですよ。目的によって区別するというようなことは、一たん等が起こった場合には、その目的にみな、いろいろな分野に分かれていても、みなその一つの目的に向かって集中していく。目的によって区別するということは、全くしろうとをごまかすことですよ。
○国務大臣(赤城宗徳君) 目的と申し上げたのは、たとえば移動でありますが、移動が、これは戦闘作戦行動のために移動するならば、戦闘作戦行動になります。ただ、そういうことでなく移動するということなら、これは戦闘作戦の目的でないのは、これは単なる移動であります。補給でもそうです。これは戦闘作戦と一体不可分ということであれば、これは戦闘作戦行動として見られて、その中に含まれるのでありますが、油を補給するとか、そういう単純なる補給、そういう目的は、すべてこれは戦闘作戦行動に入らない。これは区別していけばできます。
○秋山長造君 できませんよ、そんなこと。だけれども、長官のただいまおっしゃったことは、従来総理大臣や外務大臣がおっしゃってきたことと食い違いがあるのじゃないかと思うのです。今まで外務大臣や総理大臣は、これは戦闘作戦行動は入る、補給作戦行動は入らぬ、こういうようにきわめて明快に区別されてきたわけですが、今のお話によると、補給であっても移動であっても、これが戦闘作戦行動のための移動であり、戦闘作戦行動のための補給であるならば、やはり戦闘作戦行動としてこの事前協議の対象になるということを今御答弁になったんですが、その通りですか、総理大臣どうです。
○国務大臣(赤城宗徳君) ちょっと誤解があるようですが、戦闘作戦行動の中に入ってしまう、入ったものは、これは戦闘作戦行動、こういうふうなことになる。だから単なる補給作戦とかあるいは移動というものはこれは入らない。これははっきり違っております。私が申し上げるのは、もう戦闘作戦行動の中に入ってしまったもの、これを言うのであります。
○秋山長造君 入ってしまうというのはどういうことですか、具体的に一つ。
○国務大臣(赤城宗徳君) この間も申し上げましたように、戦闘作戦に飛行機部隊が出る。それと一緒に食糧とか弾薬等を補給する、これは戦闘作戦行動と一体になっているわけです。補給とはいいながら、こういうものは戦闘作戦行動の中に含まれているもの、こういうふうに解釈するのであります。でありますから、補給とか、あるいは移動というものは一般的には含まれておらない、こういうことであります。
○秋山長造君 では具体的に質問しましょう。極東のどこかで事が起こった場合に、アメリカ軍の飛行機がガム島かハワイか、そちらを根拠地として飛び立って、途中日本の基地を経由して、そうして前線へ出動したという場合は、この事前協議にこれは該当するのですか、どうですか。
○国務大臣(赤城宗徳君) そういう場合、日本の基地を戦闘作戦行動に使用する、こういうことになります。でありますから事前協議の対象となる、こういうふうに解釈する次第であります。
○秋山長造君 アメリカの艦隊が途中日本の港に寄港をして出かけていくという場合はどうですか。
○国務大臣(赤城宗徳君) 単に寄港して出かけるのは別でありますが、寄港しておって、ここを根拠地として戦闘作戦行動に出るということであれば、事前協議の対象になると思います。
○秋山長造君 ここに言う戦闘作戦行動というのは、これはただその場から飛行機が飛び立つとか、あるいは艦隊が出かけるとかという、その場の一回限りの点を取り上げて戦闘作戦行動というのか、あるいは一定の期間相当反復されるわけですね。たとえば出かけていかなければならないという事態が継続しておる期間全部を取り上げて、この戦闘作戦行動というのか、その点はどちらですか。
○国務大臣(赤城宗徳君) 大体第四条におきまして、事態についての緊密なる連絡協議等がされることになっています。でありますので、今御指摘のような事態が生ずるということになれば、大体継続的にそこを基地として使用することが多いと思います。
○秋山長造君 だから、継続的に基地を使用するなら使用するとして、それはただ一回事前協議をすれば、それであとはもうずっとその効果が続くものかどうかということを聞いておる。
○国務大臣(赤城宗徳君) 戦闘作戦行動のために日本の基地を使用する、これに根拠を置いて判断していけばよろしい、こう考えます。
○秋山長造君 具体的にこういう場合が私は起こると思うのです。一応最初は同意する。しかし、その事態が相当長く続くと、やはり刻々変わりますからね。だから、あらためて、一応日本は同意はしたが、あらためて検討した結果、これはこの程度でもうやめてもらいたい、こういうことができるのかどうか、いかがですか。
○国務大臣(赤城宗徳君) 協議を続けておって、そういう事態が生じた。最初に戦闘作戦行動に出る場合に許可する、こういうときの条件、そういうことに左右されると思います。それが変わってくれば、また違ってくると思いますが、それが継続しておればそのままでよろしい、こう考えております。
○秋山長造君 じゃ端的に聞きますが、この事前協議でイエスと言った場合にも、これは日本側の自主的な判断によって、いつまでもそれを取り消すということが、あるいは変更するということができ得るのかどうか、これは総理大臣にお尋ねしたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 最初に事前協議をいたしますときの条件でもって、こういう場合には再協議をする、あるいはこういう場合には今の状態を続けていいとか、最初の事前協議のとき、イエス、ノーを言う場合に、条件がつくと思います。それで適当に処置されると思います。 〔委員長退席、理事大谷藤之助君着席〕
○秋山長造君 そうすると事前協議をやる場合に、これは条件をつけてイエス、ノーを言うという形になるわけですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) つけなくてイエス、ノーを言う場合と、つけて言う場合とある。そのときの事情によってきまると思います。
○秋山長造君 条件つき同意もあり得るということですね。
○国務大臣(藤山愛一郎君) つまり、先ほど来御質問のありますように、事態の変化がいろいろ予想されるような場合には、変化が起こった場合には、もう一ぺん事前協議をしなければならぬということをつけることは、これはできると思います。また、できなければならぬと思います。
○秋山長造君 そして、あらためて事前協議を要求した場合は、それに対してはもちろんアメリカ側にも応ずる義務があり、そして日本が前の同意を取り消すという場合には、当然アメリカ側もそれに服する、こういうことになるわけですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん条件をつけまして、最初に事前協議をした問題につきましては、その通りでございます。
○秋山長造君 ただ最初に条件をつけると言うても、事が事だけに、最初からどう事態が発展するかということは、予想がされぬわけですね。ですから、初めからそういう条件をつけられない場合もある。しかし事態の経過にかんがみて、途中でまた日本側の態度を変更しなければならぬという事態が必ず起こると思う。そういう場合にも、日本の自主性、日本の発言権は、これは阻害されないか、制約されないかということをお尋ねしているのです。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 少なくも日本の施設、区域を基地として戦闘作戦行動に出るというように情勢が変化するならば、それは事前協議をなお変化によってはやることは当然だと思います。
○秋山長造君 事前協議と一口に言いますが、事の性質上、特に戦闘作戦行動についての事前協議の場合というのは、事が非常に早々の間に行なわれることが予想されるわけですね。そこでこの事前協議の場合、イエス、ノーをきめる場合に、一定の基準といいますか、一定の基準というものをあらかじめ設けておく必要があるのじゃないかと思う。そうでなければ、早々の間に事前協議を求めて、そうして日本側にはあまり詳しい情報はない、アメリカ側はいろいろな情報を握っている。そこで極東の平和と安全のためだというようなことで、大義名分論を振りかざされると、もう日本側としては四の五の言う余裕がない。結局その大義名分論に押しまくられて、万事オーケーということになってしまうのではないか、その点いかがですか。
○国務大臣(赤城宗徳君) これは第四条によって条約の施行について、また極東の平和と安全等について協議をしてあります。しかし、第六条によってそういう協議が前提となっておりますから、問題が突発いたしましても、これは明らかであると思います。態度をきめることは。たとえば戦闘作戦行動、それには出るということが、そのこと自体からはっきりしていると思います。しかし、その前に第四条の協議においてトラブルが起こる前にいろいろの協議がなされていることは考えられると思います。
○秋山長造君 第四条の協議で、そういうことが全部手ぬかりなくやられるのだったら、何もわざわざこの六条について交換公文までつける必要はないわけです。第四条の一般的な問題について協議をするという問題と、この第六条の戦闘作戦行動についてとっさの間に事前協議をやるという問題とは、これは違うのです、問題は。そうは考えられぬですか。
○国務大臣(赤城宗徳君) それは違います。第六条は、拒否することができることになっております事前協議で。第四条は万般のことについて協議するということですから、それは違うのは当然であります。
○秋山長造君 総理大臣にお伺いしますが、この事前協議の結果は公表されるのですか、どうですか。
○国務大臣(岸信介君) 問題によりまして、とにかく協議された事前協議の結果は、事実に現われると思います。従って、事前協議における協議の内容とか何とかを一々公表することは、これは適当でないものもあろうかと思います。しかし、結果としてこれはいずれにしても現われる問題でありますから、その点において公表される、周知されることは当然であろうと思います。
○秋山長造君 結果として現われるからわかるのは当然だとおっしゃるのですが、それは結果としてわかるというのは、国民にわかるという意味ですか、どういうことでわかるのですか。事前協議があったかなかったかということは。
○国務大臣(岸信介君) 問題は、事前協議がありましても、われわれが拒否すればその事態は実現されないのでございますから、これは事実としては現われないと思います。しかし、われわれがこれに対して承諾を与えるならば、そういうさっきあげましたところの三つの事項、すなわち配備における重要な変更が行なわれるということ、それから装備に重要な変更が行なわれる、あるいは作戦行動が日本の基地から行なわれるということになるわけでございます。
○秋山長造君 そうすると、実際問題としては、この六条に交換公文をつけ、事前協議というものを盛り込んだのは、これは政府が最初から考えておったことじゃないですよ。こういうことでやられると、日本が不測の戦争等に巻き込まれるおそれがあるという世論が強く盛り上がって、それにこたえ、納得させるという意味において、政府はこの事前協議ということを考えられたのだと思うのです。経過はそうだと思う。そうだといたしますならば、やはり事前協議があったかなかったか、また事前協議の結果、日本の政府がどういう態度をとったかということは、何らかの方法を通じ、機関を通じてやっぱり国民にわからなければ、事前協議をつけた意味がないと思うのですが、その点いかがでしょう。
○国務大臣(岸信介君) 問題は、ここに上がっております三つの事項、この点に関して現行の安保条約においては、アメリカ側として何ら日本の意思を聞くことなく、アメリカの思うままに行動できるという建前になっております。従って、たとえば核兵器の持ち込みということを、私は常にこれを認めないと言っておりますけれども、条約上何か明確に文章の上においてこのことがなっていないじゃないかという非難があり、また国民もそういう点について疑惑を持っておるわけでありますから、今後においては、この条約及び交換公文によって、そういうことは日本が自主的にイエス、ノーを言える事項で、日本との同意を得なければ持ってこれないのだ、従って、政府がはっきりとこれを断わっている。内外に明らかにしておる方針通りにいくことだと国民は信頼いたしておりますし、また、信頼に応ずるように政府としては行動するのは当然だと思います。そういう意味において、政府が核兵器の持ち込みに対しては、これは、従って持ち込みはしない。作戦行動についても、知らないうちに戦争に巻き込まれはしないかという不安に対して、事前協議があるから、日本が自主的に見て、日本の基地を使って作戦行動をすることはやむを得ないまた、それは認めることが日本の安全の保障のために必要だという場合において、イエスと言うわけでございます。私は、国民のなにから言えば、そういうことが日本の国民の意思、その意思は政府によって代表されておるわけでありますが、政府の意思に反して米軍が行動しないということが明瞭になっていることによって、国民は安心しておられる、こう思っております。一々の協議について、こういうことで事前協議があった、その事前協議に関してはこういう協議をしたというようなことを一々公表することは、事態によりまして私は適当ではないものもあろうかと思います。しかし、結果的には、今申しましたように、はっきり日本の意思によってわれわれの、国民の関心を持っていることが押えられているということは、これは明瞭になったと思います。
○秋山長造君 それは逆であって、そういうことが国民の知らぬ間に、うやむやに行なわれるおそれがあるのじゃないかということから、事前協議ということが出てきたのだと思うのですね。ですから、政府を信用して一切をまかしておけ、国民は何も知らぬつんぼさじきに上げられたままで、政府が知っているだろうということで、まかしておけということでお置きになるのかどうか。こういうことを私が質問するのは、戦闘作戦行動に日本が同意するということは、これは日本が共同責任を負うということになると思う。そうなると、やはり、日本がまかり間違うと戦争に巻き込まれる、不測の戦争に強き込まれる危険をあえて犯すということにもこれはなりかねないわけです。そういうことであるならば、結果的にはそういうことにも発展するような問題を、政府の一存できめて、そうしてそれは一切内緒にして国民には何も知らさないでおいていいものかどうかということに、私は非常な疑問と不安を持っている。いかがですか。
○国務大臣(岸信介君) 私は、特にこの結果を秘密にするという必要はないと思います。ことに作戦行動、こういう事態がある、そういうことは、先ほども防衛庁長官がお答えしているように、こういう極東の平和と安全が侵される、武力攻撃を受けるというような事態というものは、何か全然予期しない偶発的なものじゃなしに、やはり今の国際情勢から見まするというと、そういう脅威を与える事態があって、情勢を十分分析すれば、それがある時期にそういう非常の事態に発展するわけでございますから、もちろん、この国際情勢一般、極東の平和と安全が非常に脅威を受けておるというようなことは、これは国民が知っておる事態であると私は思います。そういうときに、この米軍が出動するということに対しては、非常に国民が関心を持っておるときでありますから、そういうときにアメリカと協議して、あるいは国連憲章の規定によって国連軍が組織されるとか、あるいは日本の平和と安全にきわめて密接な近い距離において実際の武力攻撃があったというような事態から、米軍が日本の基地をもととして出動するというような事態につきましては、それは私は結果的には、国民にもちろん秘密にすべきことじゃなしに、知らすべきことであると思います。ただ、いろんな協議の内容とか、あるいはその過程においてこれを一々公表するというようなことは適当でなかろうというようなことも申し上げておるわけであります。
○鈴木強君 ちょっと関連。 事前協議の問題で、総理、こういう場合を想定してお尋ねするのは早計かもしれませんが、まあ最悪の事態のことを考えた場合、米ソ問において不幸な開戦があった、で、ハワイあたりの米軍基地からソ連圏に対して原子爆弾を投下したということがあった場合、そうしますとハワイの基地を攻撃することもあるでしょうが、逆に日本に駐留している米軍基地をまずたたくということが想定されますね。その場合に、日本におる米空軍が、これは核兵器は持ち込まない、こういうあなたの強い信念でありますが、その場合に、第一線の戦闘部隊が原子爆弾を搭載して爆撃に行くというような事態が出てくると思うんですね。こういう場合に、私は法律の中にはっきり拒否権があるということをうたっておけば効果があると思うんですが、交換公文の日米合同声明の中で書いておるようなことでは、そういう事態になったときに、はたして米軍が核武装するという場合、日本がそれでも拒否できるかどうかという具体的な問題になってくると思うんですね。おそらくもう核戦争、ミサイル戦争ですから、そういうときには好むと好まざるとにかかわらず米軍の核武装を認めなければならぬような事態になるんじゃないですか。国民が非常に心配しているのはその点だと思うんです。こういう場合、まあ想定の問題ですからどうかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(岸信介君) 私はいろんなアメリカの極東における基地や、あるいはアラスカ等におけるいろんな基地から見て、日本が従来核兵器でもって自衛隊を武装しない、またアメリカの核兵器を一切持ち込みさせないということを終始一貫強く私が主張していることは御承知の通りであります。それに対してアメリカ側から何か反応を示して、それは困る、いざという場合にはこういうことがあるのだというような議論やそういう要望は、一切まだ日本に対してなされておりません。私はアメリカのなにからいうと、アメリカか持っておるいろいろな基地、及びアメリカのなにからいって、日本をそういう場合に必ず核武装するというような想定をすることは、私は適当でないんじゃないか、こういうように思っております。しかし、いろんな場合を考えていろいろの説をする人がありますけれども、事実上ソ連との関係を見まするというと、 〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕 私自体実は北極回りで行きまして、飛行機の故障のためにアラスカにしばらく……。アンカレッジに行きましたが、とにかくあすこの空軍基地というものは世界一の大きな空軍基地だということをあすこの司令官も言っておりましたが、非常ななにができております。これは天下周知のことだと思いますが、そういうなにをしておりまして、今のお話のような場合に対しては、これは米ソの関係については、日本の基地というものをアメリカが非常に重要視しているようには実は考えておりません。
○秋山長造君 そういたしますと、秘密にする必要はないとおっしゃるのですが、原則として、国民に事前協議の結果は知らせる方針ですか。
○国務大臣(岸信介君) 私は、まあこれはなにによりますから、(秋山長造君「なにじゃ困る」と述ぶ)事項によりますから、一切公表するということを今日申し上げることも、まだそれだけの検討をいたしておりませんけれども、原則としては私国民に明らかにしてしてよろしい、こう思っております。
○秋山長造君 国民に明らかにしてよろしいというのは、どういう方法でなさるのか。たとえば国会を通じてであるとか、あるいは自衛隊法の七十六条による防衛出動の場合には国会の承認を得るというきびしい制限がされておるが、おそらくこれは自衛隊の防衛出動にまさるとも劣らない結果的には重大な問題だと思う、戦闘作戦行動に日本が同意を与えるということはね、事と場合によっては…。ですから、その自衛隊の防衛出動の場合にまさるとも劣らない場合に、はっきりと国民に周知徹底させる——あるいは国会の承認を得るとか、国会に報告するとか、何かそういう具体的な方法を明らかにしておいていただかなければ、これは不安でしょうがないと思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(岸信介君) これは国会の承認を得べき事項では私はないと思います。ただ、それを明らかにする——これも事態によると思うのです。いかなる場合においても国会を召集して報告しなければならないとも私は考えておりませんが、必要によっては、事態によっては国会を召集してそうして国会に報告するという場合もございましょうし、その他の方法によって明らかにして、これを国民に対して秘密にしないというのを原則に考えてよろしい、こう考えております。
○秋山長造君 この点は、よほどはっきりしておいていただかないと、これはもう事態の性質上、また問題の性質上、事前協議なんかということは、これはあったようななかったような、うやむやになるおそれが多分にある。これはアメリカ側と日本側との力関係ということもあるでしょう。また事前協議を要するようなそういう急迫したという事態もあるでしょう。結局事後通告がせいぜいというようなことにならぬとも限らない。決してこれは杞憂じゃないと思う。ですから、事前協議があったかなかったか、事前協議の結果、日本の政府はどういう態度をとったかということぐらいは、これは国会に報告するなり何なりの手続によって国民にはっきり知らせるということをぜひやってほしいと思うし、やるべきだと思う。この点、もう一度総理大臣の方針をお伺いしたい。
○国務大臣(岸信介君) 日本の基地を使用しての作戦行動は、必ず事前協議にするということを、はっきりと日米の間で交換公文で明らかにいたしております。従って事後通知、通告というようなことになるということは、私は絶対にないと考えておりまして、国民に対して明らかにするということは、私は原則としてということを申しております。その方法等につきましては、必ずいかなる場合においても国会を召集して国会に報告しろというふうな——事態いかんによってはこれは考えなければならぬと思いますが、すべての場合にそうすることを申し上げることも、これは適当でなかろうと思います。
○秋山長造君 すべての場合というと……。大体原則としては国民に明らかにする、国会に報告するということにこれは承知してよろしいですか。
○国務大臣(岸信介君) 国民に原則としては明らかにするということは、はっきり私申し上げておきます。国会が召集され、国会において報告することも、これも考えられますが、いつも直ちに国会を召集して、国会を通じて国民に知らしめるという方法をとるかどうかということについては、事態いかんによってきめるべきものである、しかし次の最も早い国会におきまして報告することは、これは当然でございます。
○秋山長造君 時間がありませんから、さらに次に進みますが……。
○羽生三七君 次に進む前に、関連して……。政府は、この日米安保条約を、一応戦争の抑止的な力と考えているから、戦争が起こったら、政府も、これは日本は終わりだと思っていると思うのです。私はそう思っている。そこで案外、その点は安易に考えているんじゃないかと思うのですが、日米の事前協議の場合の協議会のメンバーですね、これは一応新聞等に伝えられておりましたが、その場合に、昔の戦争は侵略的な性格が多かったので、余裕があった。だから御前会議というようなものをやって、長い時間をかけて、ずいぶん同盟を作るとか作らぬということも協議したわけです。近代戦争ではそんな余裕はないから、協議会のメンバーがちょこっときめればそれで事がきまってしまうようなことになる。しかも、それが単に軍事的な判断だけではなしに、一国の運命を変えるような重大な政治的判断を唯一の条件とせんければならぬような、そういうような場合に、もう少しこの協議会のメンバーということについては政治的な配慮が要るのではないかということを私は考えるのですが、最終的には、事前協議のこれは、日米合同委員会のような性格を持つと思うのですが、その協議会のメンバーは、最終的にはどういうふうに固まっているのか。それと、もっとそれに政治的なウエートを置くとお考えになる必要があるか、その点をお伺いしたい。
○国務大臣(岸信介君) 日米合同安保委員会のメンバーというものについて、最後的には決定をいたしておりませんが、いずれにしても、重要な事項につきましては、私は閣議において政府が全責任を持てる形においてきめなければ私は、この安保委員会だけできめるという性質のものではない、こう思っております。
○秋山長造君 そうすると、今の御発言はおかしいと思うのですが、メンバーはちゃんときまっているんじゃないですか。往復書簡でちゃんときまっているんじゃないですか。
○国務大臣(岸信介君) 私、まだその委員が具体的にきまっているというふうには承知いたしておりません。安全保障に関する両国の委員——今、現在ありますのはこれはなんでありますが、今度の新しい条約についてのメンバーというものは、まだ最後的にはきまったと聞いておりません。
○秋山長造君 往復書簡で書いてあるじゃないですか。
○国務大臣(岸信介君) 書いてあるのですか。━━それでは私間違っておりました。安保委員会のメンバーはきまっているそうでございます。
○秋山長造君 あなたが首席全権で調印してきたことを、そんなことを言ってはだめですよ。大事なことですよ。
○国務大臣(岸信介君) なにの問題は(「なにじゃわからない」と呼ぶ者あり)今の事前協議の問題についての最後的の決定については、先ほども申し上げているように、内閣において最後的な日本の意思というものは決定する考えであります。(「よく相談して」と呼ぶ者あり)
○秋山長造君 往復書簡で、自分が判をついておきながら、まだきまっていないとは……。
○国務大臣(岸信介君) 私の記憶が明瞭でなかったことをおわびいたします。なにの方は、現在の委員会のメンバーでもってやるという交換書簡がございますそうですから、これは記憶が正確でなかったことをおわびいたします。
○秋山長造君 そういうことだから——率直なのはいいけれども、そういうことだから、やはりわれわれは根掘り葉掘り念を押さないとあぶないのですよ。どこできまるかわからぬ。自分が判こをついてきて、それでまだきまっていないなんということでやられては困るんです、この重大な問題を。 それでは次に進みます。事前協議ということから第五条を除いたのはどういう理由ですか。
○国務大臣(岸信介君) 第五条は、日本領土が武力攻撃を受けた場合でございまして、日本としては当然自衛権を発動すべきものである。また米軍が日本の安全を守るために必要な措置をとるということは、条約上当然のことでございますから、事前協議の対象から除いておるのでございます。
○秋山長造君 そういたしますと、この第五条の場合は協議の必要がないほどこれはもう当然自明なことであり、また協議なんかするいとまもないような緊急事態、このように理解してよろしいのですか。
○国務大臣(岸信介君) 事態そのものが非常に明瞭であるということ、それから性質上事前協議をすべきものじゃない。もちろんいろんなことにおいて協議するということは、これは四条に全体のことがかぶさっての協議がございます。連絡をすることは当然でございますけれども、いわゆる事前協議というものを対象とするべき性質のものじゃない、かように考えております。
○秋山長造君 自動的という言葉は適当かどうかわかりませんが、いわゆる武力行為とあれば自動的にこの五条は発動する、だから事前協議ということには含まれないのだと解釈してよろしいですか。
○国務大臣(岸信介君) 自動的というお言葉でありましたが、もちろん日米ともに国内法によるところの手続を経なければならぬことは、これは言うを待ちませんが、事態そのものはきわめて明瞭な、日本の領土が武力攻撃を受けるということでございますから、これは、いわゆる事前協議の対象にはならない。しかし国内法上いろいろな手続をすべきことは当然であります。いわゆる自動的というお言葉でありましたけれども、そういうことは当然じゃないかと思っております。
○秋山長造君 最後のところを……。
○国務大臣(岸信介君) 自動的というお言葉でありましたけれども、武力攻撃があったらこれをすぐ発動するという意味じゃございませんで、国内的の手続を踏むべきことは当然のことである、こういうことを申し上げた。ただ、事前協議としてアメリカから行動について日本の意見を聞くとか、あるいは日本側から向こうに何か事前協議の対象として考えるというべき性質のものじゃないということを申し上げたのであります。
○秋山長造君 憲法上の規定と手続を具体的にお伺いいたします。
○政府委員(林修三君) これはいつか御説明したことがあると思いますが、ほかのいわゆる集団安全保障条約におきましては、憲法上の手続という言葉が入っておるのが通例でございます。しかし、わが国の場合におきましては、憲法上の明文の規定に、この第五条に基づく措置をとりますような問題についての規定がないわけでございます。従いまして、わが国においては第九条という規定がございまして、おのずから自衛権の範囲においてしか第五条に規定されるような措置はとれない、こういう制約もあるわけでございます。そこで、「憲法上規定及び手続」という二つの文言を入れたわけでございます。 なお、わが国の場合におきまして、しからばわが国が行動をとる場合に、自衛隊が出る場合に、自衛隊法の手続はどうなるかという問題でございますが、これはもう条約は当然に自衛隊が国内法の手続によってとる措置を排除したものではないのであります。文字通り。この意味におきまして、自衛隊法の規定は憲法上の手続とは言えませんけれども、自衛隊法の規定を排除するものではない、かように考えております。
○秋山長造君 この自衛の範囲内ということが憲法上の規定ということに該当する、こういうお話ですがね、自衛の範囲ということをもう少し具体的に説明していただきたいのです。自衛隊が武力攻撃に対処して行動を起こすという場合に、どういう形でどの限度までいけるのか。
○政府委員(林修三君) この安保条約第五条に基づきまして、日本の自衛隊が行動をする場合も、これら自衛隊法の規定に従うべきことは、ただいま申し上げた通りであります。自衛隊法の規定は、わが国が自衛隊の行動につきましていろいろの規定をしておりますが、その中心と申しますか、自衛隊の中心的な任務は、第七十六条関係だと思います。つまり、外部からの武力攻撃があった場合に、これに対して行動するということだと思います。これは憲法の範囲内においてという意味は、憲法では独立国である以上自衛権はあると、自衛権があるという意味においては、外部からの不当な侵略を受けた場合に、それを排除するに必要な限度の行動ができる。つまりわが国に対して加えられた侵害、侵略——武力侵略に対して、それを排除する必要な限度。こういうことが、憲法の私は限定だと思います。そのときどきにおいていかなる措置をとるかということについては、一々具体的には、これはなかなか申し上げられないことだと思います。要するに、わが国の領土、領海、領空に対して加えられた侵害を排除するということでございます。それ以上、それを積極的に打ち返して、他国まで出るということはこれはできない。わが国の領土、領海、領空に加えられた侵害の状態をなくす、こういうことになると思います。
○秋山長造君 じゃ、その出て行き得る範囲はどうですか。他国の領土へ入るということはいかぬということは、これは今答弁があったのですが、それ以外にもっとあるわけなんですか、範囲が。
○政府委員(林修三君) これはおのずからそのときの侵害のやり方によって、私もいろいろ具体的には違ってくると思いますが、自衛隊の行動が領土、領海、領空に限られるべきものではないと思います。公海、公空にもこれは及び得るかと思います。しかし、それは自衛権の本質上、向こうから加えられた侵害をはね返す、つまり排除するに必要な限度、こういうことにおいてそこに相対的にきまってくると、こう考えます。
○羽生三七君 関連して。それは重大です。領海の範囲を越して、よそまで出ていくということになれば、これは当然海外派兵と問題になって、私は重大な問題だと思います。今の法制局長官の答弁は。私はそういう簡単な答弁では納得できません。
○政府委員(林修三君) この点は、自衛隊法制定のときから、常に同じ説明がされているはずだと思います。領土、領海、領空に行動が限られるとは言っておりません。つまり、加えられた侵害に対して、それを日本の領土、領海、領空に対する侵害を排除する必要な限度においての行動だ、それ以上の行動はできない、かようなことを申し上げたわけでございます。その自衛隊の行動範囲が必ず領土、領海、領空に限られるかというと、これはそうでないわけです。これは現に平時においても、自衛隊ではございませんが、海上保安庁等は領海外等においていろいろな警察行動はやっているわけでございます。そういう意味において、いろいろな警察行動、自衛行動が領海に限られることはないということは、これは当然なことであります。
○辻政信君 関連。簡単に言います。岸総理に聞いていただきたいのですが、昭和十九年の六月十五日は、北九州の八幡が米空軍にやられた日であります。これはどこから日本をやったかというと、重慶、成都から飛び立ったB29が八幡の製鉄所をやった。あの時代においても、八幡を守るためには重慶、成都を押えなければ守り得なかった。こうなって参りますというと、今、法制局長官の言ったのは、法律屋の解釈であって、実際上の解釈じゃない。自衛のためにはその行動というものは制限できない。兵器の進歩によってさらに伸びる。それを領空であるとか、その近所であるとか、相対によってきまるということは三百代言だ。事実を間違っておる。岸総理、昭和十九年を思い出されて、どこまで行くかということをお答え願いたい。
○国務大臣(岸信介君) 日本のこの自衛隊が持っておる任務は、日本の領土、領空、領海に対する不当な侵略に対して、これを防衛するに必要な行動をとるということでありまして、海外派兵のできないことは、従来からも解釈上きまっておると思います。ただ、領海といい、あるいは領空という観念から、この領土以外に他国の領土に行くという——今、辻委員もお話しになりましたけれども、これは日本の軍隊の時代と、今の憲法と自衛隊の行動という範囲の違いだと思いますが、非常に制約されていると思います。それでは非常に制約されておって、こんなことじゃ軍事上非常な不安があるじゃないかという御議論もあると思います。しかし、それは日本の憲法が従来の軍隊と違って、何しろ認めておらないから、そういう制約を受けるということは、私はやむを得ない当然のことであると思います。しかし、領空と領海というものが、今いろいろのなにで、おのずから領海、領空についてはいろいろ議論があることは御承知の通りであります。しかし、この性格から申しまして、海外には一歩も出られないかというようなことは、従来からもそうは解釈しておらないのでありまして、公海においてこれを排除するような行動もできるという意味で、さっき法制局長官がお答えをしたわけでありまして、私はその程度に限界すべきものある、かように思います。
○辻政信君 納得できない。
○委員長(小林英三君) それじゃ簡単に願います。
○辻政信君 憲法の精神が自衛を認めておると、たびたび岸総理はおっしゃる。自衛を認めておるということは、その行動を認めずして自衛は認め得ない。敵からやられたということになったら、公海とか領空とかいう問題じゃない。日本を守る行動は、憲法に自衛を認めている以上、その自衛行動をしばるということは、自衛を否定することになる、それはどういうことになるか。
○国務大臣(岸信介君) そういう制限を受けているから、実は私ども安保条約によって、そういう制約を受けておらない米軍の駐留まで認めて、基地を貸与して、そうして安全を守ろう、こういうふうに考えております。 —————————————
○委員長(小林英三君) この際、委員の変更について御報告いたします。加藤正人君が辞任せられ、その補欠として森八三一君が選任せられました。 —————————————
○委員長(小林英三君) 秋山君の質疑は三時二十分から続行いたします。 暫時休憩いたします。 午後二時十八分休憩 —————・————— 午後三時四十一分開会
○委員長(小林英三君) これより委員会を再開いたします。 質疑を続行いたします。秋山長造君。
○秋山長造君 第五条の、武力攻撃を受けた場合に、共通の危険に対処するように行動するという、この行動ですね、対処する行動の法的な根拠は何か、御解明願いたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 第五条の武力攻撃に対してとられる法的な措置というのは、おそらくそれに対抗するための武力で自衛をするということであろうと思います。
○秋山長造君 それは違いますよ。そんなことを聞いているのではない。
○国務大臣(藤山愛一郎君) ちょっと質問の要旨が。
○秋山長造君 あれだけ大きい声を張り上げて言ったのに、張り切って言ったのに、ちっともだめじゃないですか。ちょっと時間外。行動ですね、行動の法的な根拠は何かと聞いている。武力攻撃を受けた場合に、日本軍とアメリカ軍とが対処するように行動するというのでしょう。その法的根拠は何か。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 日本の持っております自衛権の発動、こういうことであります。
○秋山長造君 その自衛権にも従来の政府の説明によると二通りあるはずなんですが、どちらですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 個別的な自衛権の発動でございます。
○秋山長造君 アメリカ軍はどうですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) アメリカ軍は集団的自衛権も個別的自衛権も両方持っております。日本といたしましては、国際法上は集団的自衛権の権利を持っておりますけれども、日本はこれは憲法上の点もございますし、また、個別的自衛権の発動によりまして十分達せられるのでありますから、個別的自衛権の発動によってこれを行なうわけでございます。
○秋山長造君 前段の、日本は国際法上団的自衛権を持っておるが、憲法上集団的自衛権はないという御答弁ですか、その点はっきりして下さい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 集団的自衛権を引用しなくても、日本の個別的自衛権でもってこれに対処することができるわけであります。個別的自衛権の発動で済むわけであります。従いまして、日本としては、個別的自衛権しか発動いたしません。
○秋山長造君 じゃ日本の憲法は集団的自衛権を認めておるわけですか。
○委員長(小林英三君) 林法制局長官。
○秋山長造君 ちょっと待って下さい。総理大臣か、外務大臣から御答弁願います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 法制局長官から御答弁いたさせます。
○政府委員(林修三君) 集団的自衛権という言葉についても、いろいろ内容について、これを含む範囲においてなお必ずしも説が一致しておらないように思います。御承知の通りに、国連憲章では、集団的自衛権を固有の権利として各独立国に認めておるわけです。あるいは平和条約におきましても、日ソ共同宣言におきましても、あるいは今度の安保条約におきましても、日本がいわゆる集団的自衛権を持つことをはっきり書いてあるわけです。そういう意味において国際法上にわが国が集団的、個別的の自衛権を持つことは明らかだと思います。ただ、日本憲法に照らしてみました場合に、いわゆる集団的自衛権という名のもとに理解されることはいろいろあるわけでございますが、その中で一番問題になりますのは、つまり他の外国、自分の国と歴史的あるいは民族的あるいは地理的に密接な関係のある他の外国が武力攻撃を受けた場合に、それを守るために、たとえば外国へまで行ってそれを防衛する、こういうことがいわゆる集団的自衛権の内容として特に強く理解されておる。この点は日本の憲法では、そういうふうに外国まで出て行って外国を守るということは、日本の憲法ではやはり認められていないのじゃないか、かように考えるわけでございます。そういう意味の集団的自衛権、これは日本の憲法上はないのではないか、さように考えるわけでございます。
○秋山長造君 それ以外にどういう集団的自衛権があるのですか。
○政府委員(林修三君) これはいろいろの内容として考えられるわけでございますが、たとえば現在の安保条約におきまして、米国に対して施設区域を提供いたしております。あるいは米国と他の国、米国が他の国の侵略を受けた場合に、これに対してあるいは経済的な援助を与えるというようなこと、こういうことを集団的自衛権というような言葉で理解すれば、こういうものを私は日本の憲法は否定しておるものとは考えません。
○秋山長造君 そんなものは詭弁ですよ。それはこの国連憲章五十一条にいっている集団自衛権ということは、これは武力行動を伴うものです。そんな単なる経済的な援助とか何とかいうことは違うと思う。で、日本の憲法が集団的自衛権を認めてないということを、今日まで総理大臣以下言ってこられたのじゃないですか。総理大臣どうですか、その点はっきりして下さい。
○国務大臣(岸信介君) 今法制局長官もお答え申し上げましたように、いわゆる集団的自衛権というものの本体として考えられておる締約国や、特別に密接な関係にある国が武力攻撃をされた場合に、その国まで出かけて行ってその団を防衛するという意味における私は集団的自衛権は、日本の憲法上は、日本は持っていない、かように考えております。
○秋山長造君 じゃあ集団的自衛権というものは今総理大臣がおっしゃるように理解しておられる、そうしてそういう集団的自衛権というものは日本の憲法は許していないということなら、集団的自衛権というものは日本の憲法は許されないのだ、こういうふうにはっきり言われたらどうですか。何かあいまいな、含みを残すようなことを答弁されちゃ困る。
○国務大臣(岸信介君) 御承知のように、集団的自衛権という内容については、これはいろいろ学説なり、その内容について議論が必ずしも一致しておるとは思えないのであります。ただ、最も典型的な、しこうして最も重要視せられるものが、先ほど私が申し上げるような意味であることについては、ほとんど学説上も、いろいろな人の意見も一致しているようであります。そういう意味のものは持っておらないということを申したのであります。
○秋山長造君 ですから端的にですね、日本の憲法上は集団的自衛権は認めないのだと、こう了解していいんですか。
○国務大臣(岸信介君) 今お答え申し上げましたように、集団的自衛権ということにつきましては、私が今最も典型的であり、最も問題になるところをはっきりと申し上げましたが、そういうものだけだという説にはなっておらないようであります。しかし、(「日本自身の集団的自衛権だ」と呼ぶ者あり)だから、日本自身でも集団的自衛権というものはこういうものだと、私が言っただけのものだと、こう言い切ることは、これは一般的の国連で解釈されておる集団的自衛権というものの内容の全部を言い尽くしているものではないと私は考える。それだから申しておるわけでありますが、しかしながら、問題の、一番問題になり、また、本体的に考えられるものにつきましては、意見が一致しているところのものについては、私は今申したように、日本の憲法の、自衛権の、この憲法の規定から見るというと、いわゆるよそへ行ってその国を防衛する、いかにその国が締約国であろうとも、密接な関係があろうとも、そういうことは日本の国の憲法ではできない、こういうふうに考えます。
○佐多忠隆君 関連。今お話の通りに、集団的自衛権は最も典型的には他国を防衛をする、従って、よく言われているように、これは他衛権である。最も本質的なものは他衛という概念であり、しかも今総理も言われるように、最も典型的なものは他国を外に出て行って守るという行為でなければならない。それならば、そういう本質的な意味での集団的自衛権は、日本の憲法は禁じておるし、持っていないのでありますから、持っていないということを明瞭に、今持っていないということは言われましたが、持っていないということを明瞭にここで言明をされるのならば、条約の前文においてその権利があるかのごとくうたわれたことは、憲法違反であると、こういうふうに言わざるを得ないと思う。そうでなくて、ただ派生的なものがあるからどうのこうのというようなことは問題にならない、その点どういうふうにお考えですか。
○国務大臣(岸信介君) 私は、先ほど来お答え申し上げておるように、国連憲章にいっておる、いわゆる独立国が個別的また集団的自衛権を有するという国際的な関係において、日本が自由独立国としてこれを国際法上持っておるということは、これは私は考えていいのだろうと思います。しがしながら、それを現実に行なう上におきまして、日本の憲法を見まするというと、日本の憲法におきましては、これを外国に出て他国を、締約国であろうとも、その他国を防衛するということは憲法が禁止しておるところでございますから、私はその意味において、この集団的自衛権、集団的な自衛権の最も典型的なものはこれは持たない。しかし、集団自衛権というものが、そういうものだけに限るのだ、その他のものは集団的自衛権に入らないというふうには、私が知っております限り、学説が一致しておるとも思わないのであります。従って、私が申し上げておるのは、先ほど来繰り返して申し上げておる通りでありまして、今佐多委員もおあげになりましたような、他衛権というようなものであるならば、これは日本の憲法では、これを持っておって行使できぬという説もあるようでありますが、私は持っておらないと言っていいと思います。しかし、集団的自衛権がそれに尽きるかというと、学説上けそれに尽きるとは、私は一致して議論がそうなっておるとは考えないのであります。そこにあいまいな点が残っておるわけであります。
○政府委員(林修三君) 今総理の言われたことで尽きるわけでございますが、御承知の通りに、国際法的に独立国が個別的または集団的自衛権を持っておりますことは、これは国連憲章でも認めております。あるいは平和条約の第五条でもそのことを明らかにいたしております。また、日本がそれを持つことも平和条約の第五条に書いてございます。あるいは、日ソ共同宣言においてもそれを引用して、前文にそれを明示しております。あるいは現在の安保条約においてもしかりでございまして、国際法的に日本が持っておりますことと、それが日本の憲法においてその行使が許されない、行使が許されない結果、持たないのと同じことでございますが、そういうこととは別問題でございまして、これは別にそういう国際法的に認められたことを引用することが国内の憲法に違反するというようなことは起こらないというふうに私は思います。集団的自衛権という言葉は、多少蛇足のことでございますが、いわゆる本質的の面は先ほど私が申し上げ、あるいは総理が今御答弁になった点が中心的な問題でございますが、しかし、世間では、あるいは学説的には、たとえば日本がやられた場合に、日本とアメリカと一緒に守るということも、これも集団的自衛権で、集団的自衛権の発動であるという言葉で説明される方もあるわけでございまして、私どもは、これは個別的自衛権で説明できることだといっておりますけれども、そういうふうにいう説もあるわけでございまして、そういう意味において、集団的自衛権という言葉をいろいろに理解されているわけであります。そういう意味で、日本の憲法で認められない範囲は先ほど私が申し上げ、あるいは総理が申し上げた点だと、かように考えます。
○佐多忠隆君 先ほどから繰り返して言われるように、集団的自衛権の典型的なもの、本質的なものは日本は持っていない、日本憲法はこれを禁じている、これはもう総理もそれから法制局長官も明瞭に肯定をされる点だと思う。それで、今平和条約をあげられましたが、平和条約では、国連憲章が各独立国に対して集団的自衛権を認めているということを再確認をしているだけであって、これは一般国際法的な規定としてそういうことになっているということを繰り返しているにすぎない、しかるに、その後あなた方はそれをすりかえて、日本もまた従って持っているのだというふうに拡張をしておられるけれども、先ほど言うように、それは一般国際法的な規定であって、従って、日本がそれを持つことを禁ずるものではないという程度のことにすぎない、一般国際法的な規定を繰り返してあげているにすぎない。ただ、日本は先ほど言っているように、憲法はこれを禁止をいたしているのでありますから、日本が当事国としての条約においては、日本を当事国とする条約においては、そういう規定の仕方は憲法上できないはずである。そのできないことをあなた方は最近において、たとえば日ソ共同宣言において、さらにはそれを今度、すでに一ぺん犯したのだからといって、おくめんもなくそれを堂々と引きずり込んで憲法違反を明瞭にしておられる、これが問題である。
○国務大臣(岸信介君) 私は、日本が独立国として国際法上個別的並びに集団的自衛権を持っているということはきわめて明瞭な事柄でありますから、別にこれが憲法違反になるという問題だとは考えておりません。
○秋山長造君 国際法上どうこうということを私は聞いているのじゃないのです。日本の憲法が集団的自衛権を認めるのか認めないのかということを聞いているのですから、それに対して端的に答えて下さい。時間が経過して困る。
○国務大臣(岸信介君) その点につきましては、さっきから私はきわめて明瞭にお答えをしているつもりであります。すなわち、集団的自衛権というものの最も典型的に考えられておる点については、日本の憲法は持っておらない。しかし、集団的な自衛権というものをそれに限るということに全部意見が一致しているわけではない。しかし、その本質的な、典型的なものは日本の憲法においてにこれは持たない、こういうことを申しております。
○秋山長造君 そんな、評論家のようなことを言ってもらっちゃ迷惑ですよ。これは学説がいろいろあるとか、世間ではいろいろ言っておるとか、そんなことは何事についても言えることなんです。ただしかし、この条約について、これに責任を持ってやろうという政府自身にはおのずから、そのいろいろな学説、世間でいろいろな話があっても、その中でおのずから確たる一つの方針、一つの見解、一つの解釈というものがなけりゃならぬはずなんです。それでなければ、内容の不確定なものを、ただばく然と名前だけ、集団的自衛権があるとかないとか、確認するとかなんとか、こんな公文書に持ち込まれては困る。政府自身はどう解釈しておられるのですか、いろいろな見解の中でどれが正しいと思っておられるのですか、それを確定して下さい。そうしなきゃ発展せんです、議論が。
○政府委員(林修三君) この点は先ほどからも申し上げております通り、平和条約でも——先ほど佐多委員の仰せでございますが、平和条約の五条の項は明らかに、日本国が主権国として個別的または集団的自衛権を持っておることを、平和条約にも書いてございます。で、先ほど来申し上げました、いわゆる国際法的に集団的自衛権というものが独立国として、日本を含めてすべての国が持っているということは、これは明らかなことでございまして、それをこの条文で引用したことは何ら間違いがないと思います。この日本の憲法の解釈といたしましては、先ほど来私が申し上げ、あるいは総理が御答弁になったことで尽きていると、かように考えております。
○秋山長造君 憲法が集団的自衛権を認めているのか認めていないのか、ずばり答弁して下さい。はっきりして下さいよ。(鈴木強君「委員長、議事進行さして下さいよ」と述ぶ)
○委員長(小林英三君) 政府の方では答弁したわけだと言っております。
○鈴木強君 議事進行。さっきから秋山委員が、集団的自衛権というものが日本の憲法上認めておるのかどうなのかということを聞いているんですよ。ところが、わけのわかるようなわからないような話をしておって、さっぱりわれわれにもわからんのです。だから、ずばり、質問者の問いに対して答えるように、はっきりその点だけ——認めているのか認めていないのかということをはっきり言ってもらえばそれでいいんですから、委員長は責任を持って……。
○政府委員(林修三君) これは先ほどから何回もお答えしているところでございますが、要するに、いわゆる国際法的に、あるいは国連憲章の五十一条で、集団的自衛権として、いわゆる一国の武力行使が正当化される場合が、いわゆる個別的自衛権または集団的自衛権の行使という場合は認められておるわけでございます。あの五十一条の場合によって、いわゆる一国の武力行使が正当視される——国連憲章上正当視される一つのタイプとして、集団的自衛権の行使というものがあるわけでございます。これは先ほどお話が出ましたように、一国が、自国と歴史的あるいは地理的あるいは民族的に密接な関係のある他国が武力行使された場合に、それを武力をもって援助することもまた国際法的には認められる、国連憲章上違法な戦争ではない、かような意味において使われておるわけでございます。そういう意味において集団的自衛権——集団的自衛権という言葉はそれのみで必ずしも理解されておりません。それ以外にも、たとえば一国に一国の軍隊が駐留して、それを協同して守るということも集団的自衛権という言葉で理解されておる面もございます。そういう点をあわせまして、先ほど申し上げました五十一条で、いわゆる違法性阻却という理由で書いてあります部面、こういう部面にまで、日本において自衛隊が、たとえば日本が他国に行って武力を行使するという意味の集団的自衛権の行使は、これはできないのじゃないか、こういうように言っておるわけでございます。
○秋山長造君 もう要らんつけたしを言わないで、一言で答えて下さい。あなた方は、憲法九条の拡張解釈をするときには、自衛権というものはきわめて明々白々として、これに疑問の余地のないようなことをいつも言っておって、集団的自衛権ということをこそこそと持ち込んで、これについての解釈を聞けば、何だかんだといろいろなことを言って、結局は何を言ったかわからぬ。何のことですか。集団的自衛権——少なくとも集団的自衛権をこの条約の中に持ち込む以上は、いわば世間にどんな意見があろうと、政府自身としては、総理大臣自身としては、集団的自衛権というものはこういうものだ、憲法との関係はこういうものだということを割り切っていなければならぬはずだ。それを割り切ってないじゃないですか。名前だけは持ち込んでおるけれども、内容については中心的な解釈はどうだとか、しかし、他にもいろいろあるとか、いろいろなことを言って、何か将来またこれをだんだんと広げていく足場に使われるのじゃないかという私は非常な懸念を持たざるを得ない、今のようなことをおっしゃるなら。ここでもう一ぺんはっきりして下さい。集団的自衛権というものを政府はどう解釈しておるか、確定的に。集団的自衛権というものと、日本の憲法との関係はどうだということをずばり答えて下さい。ほかのことは要らぬです。総理大臣から答えて下さい。
○国務大臣(岸信介君) 先ほどからお答え申し上げておるように集団的自衛権というものの最も典型的なものにつきましては……(「秋山長造君「あなた自身がこういう解釈でいくのだという確定的な解釈を言って下さい」と述ぶ)だから、それ以外に私は集団的自衛権というものがあるという考え方をいたしております。それが何だと言われるというと、これはいろいろ何がありますけれども、(「何がじゃわからん」と呼ぶ者あり)しかし、一番問題になるところの、この、他国に行って他国を防衛するという意味のことは、日本の憲法上はそういう意味の集団的自衛権というものは持たないということは先ほど来申し上げた通りであります。
○秋山長造君 総理大臣ね、とにかく何が何がと言って、何が何して何とやらということになってしまって、何のことやらさっぱりわからん。だから、「何」という言葉を使わないで、もう 一度答弁して下さい。わからんですよ。
○羽生三七君 関連。私の方の解釈で聞きたいのですが、集団的自衛権の場合に、基地提供とか、あるいは経済的な協力とか、そういうことも含んでおると言っておると思うのですが、それをわれわれが認めるか認めぬかは別として、そういうもののほかに、ある本質的な軍事的相互援助——日本が他国に出て行って相互防衛の義務を負う、そういう意味の相互援助的なものは、これは絶対この条約では認めておらない、そう解釈してよろしいですか。これはこっちの解釈を聞きます。
○国務大臣(岸信介君) その通りだと思います。
○秋山長造君 いろいろな学説を並べるだけでは国会の政府答弁にならんですよ。(鈴木強君「何が何がと言って、普通のときはわかるときもあるけれども、こういうときの何はわからんです。そこを少し補足説明して下さい。こういう大事なときは、何がじゃわからんから」と述ぶ)私はきわめて簡単明瞭に質問しているのですが、それに対して簡単明瞭に答弁して下さい。指摘してみて下さい。何が何して何だかんだということはわからんです、回りくどいことは。
○政府委員(林修三君) 集団的自衛権という言葉の内容としては、先ほど来申し上げましたように、まあいろいろのものが含まれておると思います。たとえば先ほど申し上げましたような、たとえば自国を守るために基地を貸与する、あるいは他国が、密接な関係のある他国がやられた場合にこれに対して経済的な援助を与える。そういうような、その他の、経済的その他の協力を与てる、そういうものもございましょうし、あるいはさらにこれは学説によりましては、自国を他の国と協同して守るということも集団的自衛権だという説もあるわけでございます。しかし、まあそういうものはさておきまして、こういうものは実は日本の憲法上どれも私は認められていることだと思うわけであります。しかし、それ以外にいわゆる他国が、自国と密接な、たとえば歴史的あるいは民族的あるいは地理的に密接な関係のある他国が武力攻撃を受けた場合に、それを自国が武力攻撃を受けたと同様に考えて、その他国に出かけて他国を守る、そういう意味のものがまあ五十一条で集団的自衛権の行使として国連憲章違反でない、かように考えられておるわけでございます。こういう意味が集団的自衛権としては実はあるいは典型的な表現かもかわりませんが、こういうのは日本の憲法のいわゆる自衛権が認められているという範囲には実は入らないのじゃないか、こういう考え方が実は私どもの考え方であります。
○秋山長造君 わからんです、私は。そんな要らぬことをよけい言わんでも、私が何べんも言うように、そんな要らぬことを教えてくれんでもいいんです。要らぬことをいろいろ言うからますますわからなくなってしまう簡単に言って下さい、もう少し。で、あなた方は今まではとにかく集団的とも個別的とも、そういうまくら言葉をなるべく使わないようにして、自衛権、自衛権ということで第九条の解釈をしてこられたわけです。そしてあたかも個別的自衛権即自衛権であるかのごとく国民を思い込ませて、それで言いくるめてきた。ところが、いつの間にか集団的自衛権という概念をそっとあの手この手で引っぱり込んで、そしていつの問にか憲法第九条の自衛権というのは個別的自衛権だけでなしに、集団的自衛権をも含んでおるかのごとき方向へ誘導してきているのですよ、あなた方は。だから、今でこそそんな他国へ出かけていって云々というのはだめだとか言っておるけれども、また今後どういう解釈に発展せぬとこれは保証できぬのです、あなた方の今までのやり口から見て。ですから、こういう概念というものは時の政府、あるいは情勢の変化によって伸びたり縮めたりすべきものじゃないと思う。だから、日本国憲法が集団的自衛権というものを認めているのかどうか。集団的自衛権とは政府はどう解釈しておるのかということを明瞭に確定しておいてほしいということを、私はだから繰り返し言っておるのですよ。もうほかのことは何も要りません。(「もうちょっと要領よく整理したらどうですか」と呼ぶ者あり)何かごまかそうとしている。
○政府委員(林修三君) 決してごまかそうという趣旨で申しているのではございませんので、今の点は政府として一貫して前から言っておるところでございます。普通の自衛権という観念は個別的自衛権、これは歴史的には個別的自衛権という言葉から発達してきているわけでありまして、集団的自衛権という言葉が条約上にも用いられるようになりましたのは、国連憲章以来であります。従いまして、これは新しい観念と言えば新しい観念でございます。しかし、ただいま申しましたようにわれわれといたしましては、日本の憲法との関係におきましては集団的自衛権と言われますものの中で、他国を防衛する、自国と密接な関係にある他国を自国が攻撃を受けたと同様な関係に立って他国を武力をもって守る、そういう意味のもの、そういう内容のものは集団的自衛権という名があっても、これは日本の憲法上は認められない、かように考えております。(佐多忠隆君「それが集団的自衛権の典型的な本質的なものなんだよ。それを憲法は持っていないのだ。この本質的な典型的なものを持っていないことを認めながら憲法に違反しないというのはおかしいじゃないか」と述ぶ)
○辻政信君 関連。憲法で自衛権を認めているというのが岸総理及び政府の解釈でありますから、自衛権を認めている以上は個別的自衛権では守れないからアメリカと協同して守ろうという、集団自衛とか個別自衛というのは自衛の手段にすぎない。その自衛の本旨を認めているならば手段も当然認めらるべきである。それを否認するならアメリカと協同して守るなんという条約を作る必要はないのじゃないか。もう少し勇気と信念を持って憲法解釈をやらなければこの安保条約は成り立たないと思います。口先の議論では。岸総理いかがですか。(「あまり勇気を持つと困る」と呼ぶ者あり、笑声)
○政府委員(林修三君) ……。
○辻政信君 あなたじゃない、総理から。大事な点だから。
○国務大臣(岸信介君) 日本の自衛、いわゆる他から侵略された場合にこれを排除する、憲法において持っている自衛権ということ、及びその自衛の裏づけに必要な実力を持つという憲法九条の関係は、これは日本の個別的自衛権について言うていると思います。しかし、集団的自衛権という内容が最も典型的なものは、他国に行ってこれを守るということでございますけれども、それに尽きるものではないとわれわれは考えておるのであります。そういう意味において一切の集団的自衛権を持たない、こう憲法上持たないということは私は言い過ぎだと、かように考えております。しかしながら、その問題になる他国に行って日本が防衛するということは、これは持てない。しかし、他国に基地を貸して、そして自国のそれと協同して自国を守るというようなことは、当然従来集団的自衛権として解釈されている点でございまして、そういうものはもちろん日本として持っている、こう思っております。
○永岡光治君 関連質問。それでは端的にこれは一つお答えをいただきたいと思うのですが、あなた方が日本の憲法で禁じられているという集団的自衛権の内容、これは今大体岸総理の答弁でわかったが、それじゃ禁じられていないと考えている集団自衛権の内容ですね、原因的に今あげられるとすれば、つまり考えられ得る事例は、例示的にどういうものですか、端的に示してもらいたい。
○国務大臣(岸信介君) 他国に基地を貸して、そして日本が他国から武力攻撃を受けた場合に協同して日本を守るというようなことは、その内容の一つであると思います。
○秋山長造君 そういたしますと、今度の条約の第六条で基地を貸しておるというのは、つまり今総理大臣のおっしゃるような集団的自衛権に基づいて貸していると、こういうふうに解釈していいのですか。
○国務大臣(岸信介君) 法律的な問題ですから、法制局長官からお答えいたさせます。
○政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げております通りに、集団的自衛権という言葉についてはいろいろ幅のある解釈があるわけでありまして、いわゆる、たとえば、日本が、アメリカが攻撃された場合に、それを援助する意味においてあるいは基地を提供する、あるいは経済的援助をする、こういうようなことは、いわゆる武力を行使して米国を守る、米国の本土を守るというようなことを除きまして、それ以外の面において、たとえばアメリカが他国の武力侵略を受けた場合に、これに対して一定の基地等を提供する、あるいは経済的援助をするというようなことは、これを集団的自衛権という言葉で理解すれば、これは集団的自衛権の問題じゃないかと思うわけでございます。それから、いわゆる、日本を守るために日本が日本の独力で守れない、そういう場合に、アメリカ軍の駐在を求めて、日本が共同で守る。これはわれわれは実は個別的自衛権というもので説明できることと思っております。個別的自衛権の範囲と思います。こういうことも集団的自衛権の発動なりというふうに言う方もあるわけでございます。これは両方の面で説明がされておるわけでございます。私どもは個別的自衛権の範囲で説明できる。日本は日本を守ることで、それはアメリカと協同して守る、あるいは日本が単独で守る、これはいずれにしても日本の個別的自衛権の発動と実は考えておるわけでございますが、こういうことをさして集団的自衛権だという人もあるわけでございまして、こういう点において集団的自衛権という言葉の使い方はいろいろそこに、人によって使い方の違いがあるということを申し上げておるわけでございます。
○秋山長造君 ちょっと、さっきの私の質問は第六条について質問しているのですがね。六条がどちらかということを答えて下さい。
○政府委員(林修三君) 自衛権の問題は、一つ問題になりますのは、それが具体的に発動しまして、まあ端的な場合は武力行使という点でございますが、それが国連憲章に違反するかしないかという問題が起こった場合に一番問題になるのでありまして、そのほかの面においては、現在、国際法的に自衛権というものを武力行使以外の方法でやる場合については何も規定した国際的な根拠はないわけでございます。従いまして、一般的な通念でこれは理解されるわけでございます。日本が日本の安全を守るために基地を提供して……、このこと自体、日本の、私は、持っておる自衛権の範囲において日本を守るためにやっておる、こう考えていいんじゃないかと思います。
○秋山長造君 では、第六条のこの基地提供ということは、個別的自衛権と解釈してもよし、また、集団的自衛権と解釈してもいいということなんですか。
○政府委員(林修三君) その基地提供自体、自衛権行使という問題と実は関連がないわけでございます。しかし、日本が独立国として日本みずからを守るという権能を持っている。そういう権能の発露として日本が日本をひとりで守れない場合に、アメリカに依存して、アメリカ軍の駐留を求めて、施設などを提供して一緒に守るということは、これが具体的に自衛行動として発動する場合には、個別的自衛権の行使である。アメリカは、これは集団的自衛権の行使におそらくなりましょうが、日本の場合には個別的自衛権の行使だと、かように考えております。
○秋山長造君 総理のおっしゃることも、法制局長官の言うこともよくわからぬ。で、時間が迫りましたから、そういうことでうやむやのうちに過ごされてしまうのも困るのです。 総理大臣にお尋ねしますが、先ほどの総理大臣の御答弁では、日本の憲法の第九条の認めておる自衛権というものは個別的自衛権であって、集団的自衛権というものは含んでいないのだ、こういうことをおっしゃったんですが、そうすると、日本はいつから集団的自衛権というものを取り入れることになったんですか。その点もう一度はっきりおっしゃっていただきたい。それによって憲法の九条の内容というものが変わってきたのかどうか。
○国務大臣(岸信介君) 憲法九条の解釈として、内容は私ども変えておりません。従って日本の自衛隊がいかなる意味におきましても日本の領域外に出てこれを防衛する、武力行使をする、あるいは実力行使をするということは、これは一貫して認めておらないのであります。
○秋山長造君 日本の領域より出られないのですか。休憩前の法制局長官の答弁では、公海でも公空でも、どこまでも行ける。他国の領土にさえ入らぬ範囲においてはどこまでも行けるような答弁があったのですね。どっちかはっきりして下さい、大事なことだから。
○国務大臣(岸信介君) ちょっと私の今の言葉自体が不明確でございました。私の申しましたのは、他国の領土へ行ってやるということはできないという意味でございまして、午前中の解釈の通りに御解釈になって適当だと思います。
○秋山長造君 大体、個別的自衛権の発動ということですら、他国の領土、領海を除く以外ならどこまででも行けるという解釈にまであなた方の解釈は広がってきたんですよ。だからそういう解釈をなさっておるから金門、馬祖なんかもこれは頑強にこれを含めるというこの解釈を変えられぬのもわかります。さっきまで個別的自衛権で行けるとあなた方は言っておられるのです。その上にさらに集団的自衛権ということを何かややこしいことを言いながら導入してきているんですから、これはそんなことを言えば、海外派兵できるとかできぬとか、共同防衛がどうとかこうとか、そんなことを言ってみても言葉の遊戯じゃないですか。結局憲法の制限も何にもなしで、何でもやれるということになるのでしょう、事実上。あまり解釈を広げるととんでもないことになりますよ。
○国務大臣(岸信介君) 私、そうじゃないと思います。他国の領土、領海へ行ってやるということはできないということを申しておるのであります。もちろん公海、公空ならばどこまでも行けるということを私ども申しておるわけじゃございませんが、領土、領空、領海というものを守るというのが本体でございまして、それを守るに必要な限度においてこれを領海に限るということは事実上、海というものの性質から私どもは言えないと思います。またそういう意味から領空に限るということは言えない、こう思うのであります。しかし、それはどこまで行ってもいいのだということじゃなしに、とにかく領土、領空、領海を防衛するに必要な限度においてその外にも、今の公海、公空である限りにおいては出られる。しかしながら、他国の領土、領海に入ることはできない、こういうふうに解釈しております。
○秋山長造君 政府の憲法解釈は、もうこれは無限大に拡大していきます、この調子でいくと。この新しい条約に限って御質問をいたしますが、この条約の中で、日米双方の行動について取りきめられておるのですが、少なくとも日本側の一切の行動はこれは全部個別的自衛権による行動に限られておるわけですか。
○国務大臣(岸信介君) その通りであります。
○秋山長造君 そうすると、何の必要があってこの前文にわざわざ、そういう解釈も確定していないし、学者もまちまちだし、特に責任者である政府自身ですら、はっきり定義の下せないような不明確な問題の多い集団的自衛権というものを、この前書きの中に堂々と持ち込んだのは何の必要があって、何の意味があって持ち込んだのですか。
○政府委員(高橋通敏君) 御説明申し上げます。前文に「憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有している」これは国際関係におきまして、日本も国連の加盟国でもございますし、国際関係上において個別的または集団的自衛の権利を享有しているということを明らかにするためでございます。また、なかんずくアメリカがこの条約に基づくところの行動は、集団的自衛権でなければ、これは集団的自衛権を援用することでなければ適法にならないということもございます。従いまして、ここにこのことをはっきり書いたわけでございます。
○秋山長造君 アメリカ向けには集団的自衛権、日本の国民に対しては個別的自衛権と、こういうことで二枚鑑札を使っておられるのじゃないですか。たとえば第三条、バンデンバーグの決議を盛り込んだ第三条にしても、第五条の武力攻撃に対するこの共同防衛にしても、こういう口ものを、あなた方がおっしゃるように、個別的な自衛権だといって、個別的な自衛権に限ってこじつけた説明をされておるのは、おそらく日本の岸内閣だけですよ。これはアメリカ向けには通用せんと思う。だからこそ前文に集団的自衛権というようなことを書き込んで、そうしてアメリカ向けには、アメリカの解釈では、だから日本政府も同じように集団的自衛権の発動として第三条や第五条を了解しておるというふうに思い込ませておるでしょう。日本の国民だけ個別的自衛権で閉じ込めようと思っても無理ですよ。こんな無限大に憲法の解釈を広げるような道を開いて、これは良心的でないと思う、やることが。どうですか。総理大臣から答えて下さい。国民が納得せんですよ。
○国務大臣(岸信介君) これを挿入したことにつきましては、条約局長が説明をした通りであります。集団的自衛権と個別的自衛権については、先ほど以来、私は政府の所信を明らかにいたしております。この条約において日本が武力行動をするという場合におきまして、個別的自衛権の範囲に限定されておることも明瞭に申し上げた通りでございます。
○秋山長造君 第五条についても、日本側の行動は、もうあくまで個別的自衛権だということで固執しておられますけれでも、しかし、この条文のこの取りきめ自体が、これは日米双方とも集団的自衛権ということでやるという、これは書き方がしてあるじゃありませんか。すなおに読んでごらんなさい。これは集団的自衛権のもとでの取りきめですよ、第五条の条文の書き方というものは。それからまた日本の領土に対する武力攻撃の場合と、それからアメリカ軍の基地に対する、あるいにアメリカ軍自体に対する攻撃の場合とは、それは確かに少なくとも観念的に私は区別できるんじゃないかと思うんです。たとえば第三国の飛行機が米軍基地だけを目標にして、あるいは米軍施設あるいは米軍自体だけを目標にして爆撃してすぐ引き上げたというような場合と、たとえば東京なり大阪なりの日本の領土を目標にして爆撃に来た場合とは、確かに私は観念的には区別し得るんじゃないかと思うんですよ。だから、一切の武力攻撃をすべて日本に限って、個別的自衛権ということに限って説明しようというのは私は無理があると思うんです、論理的にも無理があると思うんです。あなた方はほんとうは集団的自衛権で説明すべきことは重々わかっておりながら、それをおくびにも出すと、すぐまたいろいろな反撃を食らうということをおそれて、そうして無理なこじつけをやって、個別的自衛権に限るような説明ばかりして、こじつけておられるんじゃないですか。相当無理ですよ、あなた方の解釈、説明は。
○国務大臣(岸信介君) 第五条の規定をごらん下さいますというと、他のこれに似た相互防衛の条約とは全然違っておりまして、日本の施政下にある領土だけこれを限っております。このことから見ましても、私どもが個別的自衛権で説明をいたしておるということは、何かこじつけというようにおっしゃいますが、そうは考えておらないのであります。
○秋山長造君 これは政府の方は、さっきから言いますように、こういう集団的自衛権というようなものを持ち込んで、そうしてだんだんとこれを広げていって、まだ今は相当遠慮しておられますがね、あなた方、今後時の経過とともに、だんだんとこの解釈を広げていって、そうしてちょうどあの憲法第九条の解釈を広げてこられたと同じようなやり方で集団的自衛権ということを広げていこう、こういう伏線だとしか受け取れない。そう受け取る方がすなおなんで、あなた方のような言い方というものは非常なまやかしです、インチキです、ごまかしです。これは必ず報いがきますよ、そういうインチキなことばかり言って国民をだましておると、ほんとうに。で、もう私の持ち時間が終わりましたから、また別な機会にこの点は追及したいと思います。 最後に、これは郵政大臣並びに外務大臣にお尋ねしたい。委員長、もうちょっと……。
○委員長(小林英三君) 時間終了しましたから、簡単にお願いします。
○秋山長造君 まず、郵政大臣にお尋ねしますが、先般来郵便料金が近く引き上げになるんではないかという説が相当流れておる。そうしてこの郵便料金を引き上げるかどうかについても郵政大臣とそれから政務次官とのいろいろな機会における発言には相当食い違いがあるように思うんですがね。で、せんだって佐藤郵政政務次官は、名古屋だったと思いますが、郵便料金は断じて引き上げない、こういう発言をされておる。ところが、逓信委員会等における大臣の御発言を聞いておりますと、やはり近く引き上げるんじゃないかというような印象を受ける。いずれにしてもいろいろな公共料金がだんだん上がっているんですが、郵便料金の問題をどうなさるんですか、この際はっきり態度を明らかにしていただきたい。
○国務大臣(植竹春彦君) お答えいたします。政務次官と私との間に食い違いは全然ございません。新聞記事だけを見ますと、あたかも食い違いのあるように載っておりましたけれども、政務次官が旅行から帰りまして事情を聞きましたところが、全然食い違いはございません。それで郵便料金につきましてはこの国会に提出しようと思いましても、これは物理的に日取りがございません、できません。それじゃ、日取りがあれば出すかどうかということにつきましては、すべての郵便料金につきまして検討すべきである、さように考えております。また、郵便料金のうちにはでこぼこのものもございますので、このでこぼこのものにつきまして、はたしてどういうことがアンバランスでない、バランスのとれた料金制度であるか、制度的にも調査、検討の必要がある、そういう意味をもちまして調査、検討をいたしておるのは事実でございます。
○秋山長造君 この国会中は、これは事実上だめだということは私もわかっている。私は国会中のことを聞いているのじゃない。少なくとも新年度中——来年の春まで、ことし一ぱいという見通しで聞いておるのです。いろいろな方面に響く問題です。だからはっきりした言明を願いたい。
○国務大臣(植竹春彦君) ただいま申し上げましたように、検討中でございますので、検討の結果によることでありまして、今のアンバランスの問題、またいろいろな料金とのつり合いの問題、国民経済への影響の問題等を検討中でございますので、その検討の結果を待ちませんと、上げるとも上げないと言うこともできないという段階であります。
○秋山長造君 企画庁長官あるいは通産大臣もお答え願いたいと思うのですが、今お聞きのように、郵便料金も上げるとははっきりおっしゃらぬけれども、いずれ問題になってきそうなような予感がします。けさの新聞を見ると、東海汽船ですか、の旅客運賃の値上げということが近く行なわれる、また地下鉄もそうです、それからガス、それから電気その他ふろ銭から散髪料金に至るまでどんどんどんどんいろいろな公共的なものが値上げになっておるのですが、こういう事態というのは、これは企画庁長官はどう考えておられるのですか。一体あなた方の内閣になってこういう公共料金で少しでも安くなったものがありますか、あったら一つ示していただきたい。どうされるのですか。
○国務大臣(菅野和太郎君) 物価の安定上、できるだけ公共事業の料金は引き上げないという方針でおりますが、たとえば企業の合理性というようなことでやむを得ざるものはこれは今日までも上げておりますが、今後におきましてもできるだけ上げないという方針でいきたいと思っております。
○秋山長造君 できるだけ上げないと言っても、具体的に申請が出たらみんな許しているじゃありませんか。地下鉄の問題だって、この間運輸大臣が許可するというのに待ったをかけて、大いにやるんだろうと思っていたら、ただ十日ばかりおくらしただけで認めてしまったじゃありませんか。十日やそこら早ようてもおそうても大した問題じゃない。十日延ばすくらいならとめなさい。(「物価三倍、所得倍増」と呼ぶ者あり)これで予算が通るか通らぬかわかりませんよ、わからぬけれども、通ってごらんなさいよ、物価は軒並みに上がってしまって大へんなインフレになりますよ。これは経済企画庁なんか吹き飛んでしまう。 最後にもう一点だけ。せんだって外務大臣から日米合同委員会の合意書の資料をいただきました。あれとも関連するのですが、アメリカ駐留軍があの合意書に基づいてNHKの放送施設を利用して、そうして共産圏向けの謀略放送をやってきたという事実があるのです。それは何を根処にしてそういうことが行なわれてきたのか、それからまた実際の利用状況はどうなっているのか、それからまたそれを利用しているアメリカ側の機関はどういう機関がやっているのかということが第一点。時間がないから一まとめに聞きますが、それから第二点は、そういうことがもし事実だとすれば、これははっきりした放送法違反じゃないか。御承知のように放送法第一条では、放送の不偏不党、真実と自律の保障ということがはっきりうたってあるわけです。第三条では「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」という規定がある。こういうものにはっきり違反しているのじゃないか。それが今度の新条約並びに新協定への切りかえによってどういう扱いになるのか、政府はこれを引き継いで認めるおつもりかどうかということです。その三点について外務大臣と郵政大臣からお答えいただきたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) NHKの放送につきましては、御承知の通り昭和二十五年以来、米軍が調達命令でNHを利用しておったのでありまして、その期間に相当長期でございまして、その後現行行政協定の発効にあたりまして合同委員会において協議いたしまして、午後十一時以降でなければいかぬということで制限いたしまして、引き続きNHKによる放送を行なっておるのであります。それは現行行政協定の第三条第二項の末尾におきまして「一時的の措置として、合衆国軍隊は、」云々、この条項によっているわけであります。その内容その他につきましては、事務当局より御説明いたきせます。今回の新協定におきましては、この一時的な措置ということを除くことにいたしました。従いまして、今後これを扱って参りますにつきましては新しい観点に立って扱って参る、こういうふうにしております。
○政府委員(森治樹君) ただいま大臣から御説明がございましたように、ただいまのは第三条第二項の末段にございます占領時代からの経過措置として、一時的な措置としてアメリカ軍があの協定が効力を発生するときに留保しておりました電力その他の電子装置を使用する権利を有するという規定に基づいて使用いたしているわけでございます。その範囲はこれもただいま大臣から御説明がありましたように、最初使っておりました状態からぐっと制限をされておりまして、合意書ですでに御存じと思いますが、午後十一時以後だけに使うということになっております。また米軍の部隊につきましては、私どもの方にわかっておりますところでは、キャンプ・ドレークにある一つの軍の部隊がこれを担当いたしているというとこだけはわかっております。
○国務大臣(植竹春彦君) 第一の御質問の、そういうような放送が今まであったかないかということでありますが、謀略放送というお言葉でありましたが、軍事的、心理的の放送は二月十八日まではありましたのですが、もっともその内容なるものは軍事的あるいは心理的放送とは思われません。きわめて普通の放送であるように聞き及んでおりますけれども、これは二月十九日以降は、その名称すらはなはだどうかと思われるので、一つこれはやめるべきであるということを交渉いたしました結果、アメリカの軍当局の方も快よく承諾いたしまして、それ以後はこの放送の名称すらインフォメーション・サービス——広報業務ということに改められました。それまではサイコロジカル・ウォア・フェヤーということでありましたが、そういったような心理的、軍事的の内容からしてそうでない。従って名称もそういうふうに改めまして、名実ともに、今日では普通の平和的な放送になっております。 第二の御質問の、放送法違反ではないかという点につきましては、ただいま外務大臣並びにアメリカ局長の述べられました通りに、行政協定の第三条二項末段によりまして、これは行政協定は発効になり、国内法的に今まで効力がございましたので、現在のところ、現行法の存続いたします限り合法的と存じます。新行政協定におきましては、ただいま外務大臣の述べられました通りに、新しく対処いたしますのでございますから、絶対に違法的な措置はしない方針で交渉するのは言うを待たないことでございます。
○秋山長造君 やめさせる方針ですか。利用を断わる方針ですか、政府は。
○国務大臣(植竹春彦君) これは、アメリカがさらに希望を続けますか、また、どういうことを希望いたしますか——たとえばNHKに継続させることを希望するか、その場合に、国内法に照らしまして合法的でない場合には、むろんNHKは放送できない。そうすれば、他の何らかの合法的な方法を検討することになろうと存じますが、いかなる場合にも違法措置は政府として当然いたすことはできないのみならず、むろんいたしません。そういう方針でやっております。
○秋山長造君 もう一点だけ……。
○委員長(小林英三君) 秋山君、時間も経過いたしましたから、この辺で御遠慮願いたいのですが。もう一問許しますから。
○秋山長造君 そういたしますと、郵政大臣、こう理解してよろしいか。今まではとにかく、二十七年この行政協定が発効した当時、当時の占領中からの継続で、一時的な措置としてやむを得ず認めておったけれども、この機会に根本的に再検討すると、そして今後は放送法というものを絶対に優先して扱いをやっていくと、こういうように了解していいですか。
○国務大臣(植竹春彦君) ちょっとニュアンスがございます。と申しますのは、従来現行の放送は、これは一番初めはメモランダムでもって、日本が占領された当時に向こうから指示を受けましてやっておったものでございますが、独立とともに安保条約並びに現行の行政協定が成立いたしましたととにも、第三条二項末段の一時的云々の条款によりまして、これが国内法的効力を持っておりますので、合法的に放送がされておった。しかるに今度は、新条約におきまして、一時的云々の三条二項の末段がなくなりましたので、それで関係法令の範囲内においてこの問題を解決していく。また、アメリカの希望がどこにありますか、交渉の対象にむろんなるわけでございますが、そういうふうにして合理的な措置をとっていく、こういうことであります。
○委員長(小林英三君) 以上をもちまして、質疑通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。 —————————————
○委員長(小林英三君) これより討論に入ります。鈴木強君。
○鈴木強君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和三十五年度予算三案に対し、絶対反対の態度を明らかにして討論を行なわんとするものであります。 まず、私は、予算編成に際し醜態を天下に暴露した政府と自民党の態度について、厳重な警告を与え、国民の名において大いなる反省を求めたいと思います。 本来、予算の編成権が内閣にあることは、憲法上一点の疑いもないのであけます。もちろん政党内閣である以上、内閣の予算編成に与党がある程度関与し、その基本方針を盛り込むことは許さるべきでありましょう。しかし、それは、あくまでも内閣の編成権を侵してはならず、むしろ、政府各省の意見調整にあたり、政党は協力ないし助言する程度にとどめるべきであります。しかるに、本予算編成と、大蔵省原案提示後の復活要求の過程において、自民党は圧力団体と派閥のつき上げに抗し切れず、執拗に予算増額を政府に迫り、大蔵原案を取りくずすために死闘を展開したが、この間、大蔵大臣と各省大臣との折衝が軽視されて、大蔵大臣と与党幹部との折衝に重点が置かれるという無統制ぶりを発揮して、国民を憤激せしめたのであります。最終段階に至って、大蔵大臣と各省大臣の折衝に、与党の政調会長、副会長が監視役で立ち会ったという事実は、岸内閣と自民党の無軌道ぶりと変態性をまざまざと示したものであり、いかなる逃げ口上をもって弁解しても、予算編成権が逆転しており、憲法の規定に照らして、とうてい容認しがたい悪らつなる違法行為と言わなければなりません。 しかも、このような保守党政治の乱脈に際して、岸首相のとった態度は非難をされなければなりません。すなわち、首相は党の総裁でもあり、かかる事態を収拾する最高責任者でありながら、確固たる信念と態度を持って混乱に対処したとは言えません。財政法第二十七条によれば、「内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の十二月中に、国会に提出するのを常例とする。」と明定されておりますが、本年度予算案がまた前年同様、政府与党の泥試合によって予算編成が長引き、一月二十九日、一ヵ月もおくれて国会に提出されたことは、政府の怠慢であり、財政法違反と言わなければなりません。岸総理はいかなる責任をお感じでありましょうか。私はここに、九千万国民とともに、おごそかに岸首相と自民党の責任を追及し、再びかくのごとき醜態を起こさざるよう警告と反省を求めておく次第であります。 次に、私は、本予算編成の基本方針の中に隠されている国民欺瞞のおそるべき思想のあることについて言及したいと思います。 政府は本予算の基本方針として、国民生活の安定を第一義に考えたと言い、日本の現状に即した健全予算であると盛んに宣伝をしておるのでありますが、本予算案の内容をしさいに検討してみまするときに、これは国民を欺瞞した悪らつなインチキ宣伝であることがはっきりとわかるのであります。 今や、世界の情勢は、東西両巨頭の会談を契機として、緊張緩和、雪解け、軍縮、平和共存の方向に強く進みつつあることは、周知の事実であります。今から十五年前、無謀なる軍閥政治によって不幸なる敗戦を喫したわが国の進むべき道は、平和憲法にのっとり、一切の軍備を放棄して、文化国家、平和国家建設にあると信ずるのであります。従って、わが国の外交路線は、東にも西にも偏せざる中道、中立外交でなければなりません。しかるに、岸内閣とその与党自民党は、中立外交はまさに容共政策であり、平和を乱すものであるかのごとくきめつけ、特に昭和三十二年岸総理の渡米以来、日米新時代来たるの合言葉のもとに、極端な向米一辺倒の外交方針をとっているのであります。このため、隣邦中国を初め、共産圏陣営との間には、一部を除き、戦後今日までの長きにわたり、正常完全なる国交回復を見ることができないことは、日本民族の不幸、これに過ぐるものはないと言わなければなりません。しかも、前にも述べましたような現今の平和共存、平和外交、雪解けの方向に邁進しつつある国際情勢と世論に逆行して、日米軍事同盟たる安保改定を強引に調印し、今国会にその批准を求め、与党の多数を頼んで一挙に可決せんとしているのであります。新安保条約によって憲法に違反する自衛隊戦力の増強を義務づけられ、さなきだに苦しい国民生活はますます加重され、極東の平和と安全という美名のもとに国際紛争に巻き込まれ、戦争の片棒をかつがされることになることは必至であります。私は、自衛権の名のもとに戦力を増強し、すでにわが国は皇軍時代の戦力を上回る強大な武力を保持しておりながら、これを戦力でないと言って国民をごまかし、世界各国と比べて軍事費は少ないと宣伝をして国民をまどわし、国力と国情に見合って自衛力を増大すると国民に偽って、憲法に明らかに違反する再軍備政策を強行しつつあることは、われわれの断じて容認することのできないものであります。わが党は、現在の岸内閣の自衛隊は、平和憲法にまっこうから違反するものであることを、再びここに明確にし、かかる自衛隊は、即時解散するよう、強く要求する次第であります。 三十五年度予算の基本的性格は、以上申し述べましたように、現実の国際情勢を無視して、新安保条約調印、日米軍事ブロック化の裏づけとなる防衛費の充実と、これに伴う国内体制を固めるための治安対策費の増額と、組織化対策費の新設等、軍国主義化へ大きなステップを切った予算と言わなければなりません。しかるに政府は、この重大問題にはできる限り触れず、逆に、昨年伊勢湾台風等発生し、当然見るべき災害復旧予算の増額や、すでに計画実施中の治山治水事業費等をことさらにアピールして、民生安定予算とか、治山治水予算とか、から宣伝をしていることはナンセンスと言わなければなりません。 次に、具体的に反対理由をあげて討論を進めたいと思います。 反対理由の第一は、三千億に上る租税の自然増収がありながら、減税が見送られ、逆に増税されているということであります。本予算の編成にあたり、国民の重大関心事は、政府がいかに減税を実施するかにあったと思うのでありますが、増税に悩む国民にとっては、まさに当然のことでありましょう。しかるに、政府は租税の自然増収を二千百五十三億円と見込み、政府発表の国民所得の増加と、経済成長率七%から見ても、非常に内輪に見積っており、実際には三千億円を上回る自然増収が可能であることは間違いのないところでありますが、この点については、高木公述人も強く指摘しておったところであります。以上の通り、昭和三十五年度においては、少なくとも一千億円の減税は、四月一日より実施できるにもかかわらず、国民をごまかして、切実なる減税要求を見送ってしまったことは、自民党の公約違反ででもあり、何といっても許せないことであります。本予算の歳入のほとんどを占める税収入を見るに、国税が一兆五千四十八億一百万円、地方税が六千三百七十九億一千八百万円で、総額は二兆一千四百二十七億一千九百万円の巨額に達しております。ちなみに、国民一人当たりの税負担額が幾らになるかといえば、国税で一万六千十八円、地方税で六千七百九十二円、合計二万二千八百十円となっております。これを昨年に比べて見ますると、大体三千三百円の負担増となり、減税どころか、逆に増税となっております。国民所得に対する税負担率は、昨年度の一九・九%から二〇・六%と増加しており、戦前の昭和九年ないし十一年の負担率平均一四・六%から見ても、相当の負担増となっているのであって、重税に苦しむ国民の姿がはっきりと浮き彫りされておるのであります。しかも、われわれを驚かせるのは租税特別措置法によって大企業、大金持に対しては、年間一千二百億円の減免税を行なっていることであります。わが党は、かくのごとき国民を泣かせ苦しめる重税政策に対しては、絶対反対し、一千億円の減税を四月一日より実施するよう、強く要求するものであります。 反対理由の第二は、憲法違反の自衛隊費を増額計上したことであります。安保改定に伴って日米の軍事協力体制が強化され、わが国が自衛戦力の増強を迫られることは火を見るよりも明らかであります。このため政府は、安保改定を裏づける第一次防衛力整備計画の完成と、第二次防衛計画の採用、すなわち、全国民に多大の疑惑を与えている新戦闘機ロッキードの生産、自衛隊のミサイル装備代等による防衛費の増額を本予算に計上しておりますが、新安保条約批准と時を同じくして審議される三十五年度予算で軍事費が独走している印象を与えることは、その安保体制を固める作戦上、はなはだしく不利であるということから、軍事費の急増が目立たないように工夫をこらし、国民をごまかそうとしております。政府は防衛費は横ばいと宣伝しておりますが、安保改定に伴い防衛分担金が廃止されるので、昭和三十四年度の防衛庁費と、防衛分担金、施設提供費などを合算した防衛関係費と、三十五年度の防衛庁費と施設提供費などの合計額は、なるほど十四億円の増額となっておりますが、防衛分担金相当額の百十一億円は、そっくりそのままふくれているので、合計百二十五億円の実質増となり、災害対策、国土保全対策が遅々として進まない中に、再軍備は例年並みのベースで予算が増額され、第一次防衛計画のみがほとんど完了することになっていることは、見のがすことのできない重大問題と言わなければなりません。しかもその上に、さらに巧妙なからくりがなされているのであります。すなわち、来年度から生産されるいわくつきの新戦闘機ロッキードF104—J二百機分の国庫債務負担行為六百九十八億円が別ワクとしてきめられており、これにすでにきまっている国庫債務負担行為二百三億円と、継続費に計上されている艦船建造費五十七億円を加えると、合計ほぼ一千億円に達する軍事費の増額が、形を変えて盛り込まれているのであり、国民をあぜんとさせており、全くあきれてものが言えないのであります。国土の防衛は、憲法違反の自衛隊の増強によるにあらず、わが党は、ここに重ねて自衛隊を解体再編し、国土建設隊に切りかえ、年々再々国土を襲う暴風雨の災害から国民を守るよう、政策の転換を強く要求するものであります。 反対理由の第三は、民主主義を踏み破る治安対策の強化についてであります。岸内閣は、安保体制強化のため、さきに警職法の改悪を企図したのでありますが、国民の総抵抗にあって、その意図は挫折され、今日に至っております。しかしながら、岸内閣の警職法改悪の非民主的弾圧方針は、すきあらばと、そのチャンスをねらっているものと見なければなりません。特に新安保批准後の国内体制強化のためには、労働運動を初め、一切の民主的運動に対し、かなり強腰で立ち向かって参り、言論、集会、結社の自由に対しての弾圧は、ますます激しさを加えて参りております。本予算案を見ると、かかる立場に立って治安対策費が、再軍備費の増加と相待って、予算全体の率をはるかに上回った急増を示しております。岸首相は、ポケット・マネーと世間から批判された自由裁量のきく財源を十億円持っていたというのでありますが、そのうちから三億円を治安対策費に回し、これをめぐって警察庁、公安調査庁、内閣調査室の三者がぶんどり合戦を演じたとも言われております。かくして内閣調査室の情報収集調査費、広報世論調査費は、いずれも大幅に増額されて、前年度の三億三千万円から五億一千万円となり、警察庁の旧特高に類する集団不法行為取り締まり予算も、一億円増額され、十九億四千百万円となり、さらに反民主主義活動対策、破壊活動調査、国際共産主義活動対策と銘打ちた公安調査庁予算も、一億円増の六億三千万円となっております。また、警察官の三千人増員や、警察の機動力発揮と称してヘリコプターや七百十一台の車両の装備も、実施されることになっております。この治安対策費は、民主主義の弾圧費であり、全く無用のものでありますので、全額削除を要求いたします。 反対理由の第四は、特定政党の組織化を裏づけるがごとき予算がたっぷり組まれているという判断がなされることであります。某党組織の総点検と再整備を強調した、三十五年組織活動方針によれば、「党の系統組織を通じて、政策を国民に知らせ、地域社会に起きている経済的要求、政治的不満等を的確に党組織に吸収するための機構的運営が肝要である」と述べています。 この方針に当てはまるがごとく、農政の面を見見ると、団体補助の中に、農業会議へつけた部落団体長研修費七百四十万円、農業共済組合につけた共済連絡員費三千三百万円などが新規に計上されており、中小企業関係を見ると、商工会に法人としての資格を与え、四億円の国庫補助を行なって、二千四百五十一人の経営指導員と四百九十人の専門指導員を常駐させようとしており、文教の面を見ると、研究費、集会費に集中する婦人学級対策費は、六百六十万円から一躍八千三百万円に増額され、社会教育関係団体補助費にしても、前年度比五倍の五千五百万円となっており、社会教育審議会が適当と折紙をつけたことにかこつけて、青年婦人団体等に対しては、これによって印刷、資料収集の便宜が一段とはかられることとなったのであります。こうした社会教育助成費の総額は、文部省関係だけでも前年度比二倍の四億一千万円に達しております。大蔵省原案では、婦人学級費は前年度並み、社会教育助成費も前年度並みという方針であったものが、文教政策の基本ともいうべきすし詰め教室の解消、教職員の待遇改善等、緊急を要するものはそっちのけにしておいて、政治折衝で婦人学級費が十二倍、社会教育助成費が二倍にふくれ上がったのは、奇々怪々と言わなければなりません。今直ちにこの問題を特定政党の組織化に結びつけることは、少しく酷かとも考えるのでありますが、一歩運営を誤ると重大問題に発展するものでありますから、かくのごときものの予算増額には反対であります。 反対理由の第五は、生活保護費が少なく、また、石炭離職者対策が不十分である点であります。本予算のうち、生活保護費の中の生活扶助料は、標準世帯では月額九千六百二十一円で、前年度に比べ二百七十五円の増加となってはおりますが、これでは、生かさぬよう、殺さぬようといった金額で、最低生活の保障はとうてい不可能であります。保護家庭は、ことしもまた暗い、そして希望の持てない生活を続けなければならないのであります。一方、不況にあえぐ石炭産業の労務者とその家族に対する対策は、最も緊急を要するもので、社会保障の面からも深刻な問題を投げかけています。しかし、今度の予算では、炭鉱離職者対策費として二十五億円、対象人員七千五百人が計上されています。その反面、これまでの石炭企業整備事業団を合理化の集団に切りかえ、石炭企業合理化補助金二十億円を政府出資とすることがきまっております。 わが党は、さきの臨時国会において、早急にエネルギー資源総合対策を樹立することの必要性を痛感し、再三再四、政府に対し石炭対策を追及したのでありますが、池田通産大臣は、今通常国会までには本格的な対策を決定したい旨の答弁をしておったのであります。しかるに政府は、この根本的な石炭対策に対しては、ことさら目をつぶり、離職者対策一辺倒に出てきていることは、石炭不況を切り抜ける策は人員整理と首切りにあるときめてかかっている政府の反動的な態度をはっきりと示しているものだと思うのでありまして、われわれのきわめて不満とするところであります。三井鉱山がロック・アウトの高姿勢に出たことも、政府の筋書きにのっとっているものと断ぜざるを得ません。かくのごとき政府の政策の欠除が、今日大きな社会問題にまで発展した三池炭鉱争議の原因となっているのでありまして、遺憾しごとくと言わなければなりません。私はこの際、政府が石炭産業の根本的あり方について、一刻も早くその結論を出し、石炭産業の労働者が安心して生活できるよう適切な措置をすみやかに講ぜられ、事態の円満解決をはかられるよう強く強く要求するものであります。 反対理由の第六は、公共企業体職員と公務員給与のベース・アップ予算が組まれておらないことであります。国家公務員に対しては、昭和二十九年以来ベース・アップが行なわれておらないのでありまして、まことに遺憾にたえません。民間賃金との格差はますます大きくなり、生活はかなり苦しくなっているのが実態であります。昭和二十三年、国家公務員法の改悪によって、公企体の労働者と、国家公務員労働者は、団交権とスト権を奪い取られたのであります。当時政府は、人事院を新設し、独立機関として公務員給与のあり方を決定することにしたのでありますが、今日まで人事院勧告が完全に実施されたことは、たった一度もなかったのであります。かくのごとき実情から、人事院の存立価値が問題となり、人事院廃止の世論が出てきていることは御承知の通りであります。公企体職員や公務員は、目下三千五百円ないし七千円の賃金引き上げを要求しておりますので、これが実現のため予算化しなければならないのに、これをサボっていることは納得できません。わが党は直ちに給与改訂のための予算組みかえを政府が行なうよう強力に要求する次第であります。 最後の反対理由は、地方財政についてであります。政府は三十五年度の地方公共団体の自然増収を八百十億円と推定して、三十四年度の国税減税に基づく地方住民税の減収分百二十二億円に対し、特別交付金によってわずか三十億円を補てんしたのみであります。三十四年度の自然増収は、三百四億円と見積もられていたのに対し、それがいかに好況とはいえ、一挙に二七%もふえると見るのは過大でありましょう。それに三十五年度は、災害復旧等のため公共事業関係費が二千七百六十七億円と前年度に比し五百五十七億円も激増しているために、これに伴う地方負担が増加して、地方財政は相当の困難が予想されることは、間違いのないところであります。私は、地方自治の発展は、もちろんそれぞれの自治体のより積極的な努力が必要であることは言うまでもありませんが、本予算のごとく思いやりのない不十分な措置に対しては、絶対反対であります。 なお、財政投融資五千九百四十一億のうち、中小企業に対する融資は、わずかに六百五十三億で、総体の一〇・六%にすぎず、大資本偏重の投融資計画は、五九四一——ゴクヨイどころか、五九四一番——コクシイチバンと言わなければならず、われわれの賛成できるものではありません。 その他予算三案を通じて、急速に進展しつつある貿易の自由化に対する対策は、何ら見るべきものはなく、また、文教、農山漁村、中小商工業、社会保障等々の政策面においても、幾多の問題点がありますが、時間の関係上論及することができませんので省略をいたします。 ただ一つ、日本電信電話公社関係予算案のうち、電話架設のための加入者負担金を現行最高九万三千四百円を一挙に最高十六万円に引き上げようとすることについては、公共性の見地よりして認めるわけには参りません。政府の電気通信事業に対する建設資金調達の措置が不十分であるため、かかる結果と招来していることは明らかでありますので、電話需要の激増しております現状にかんがみ、もっと積極的な政府の資金援助を要望してやみません。 以上申し述べましたように、本予算三案に対し、私はここに重ねて断固反対の意を表明し、政府は直ちに本予算案を撤回し、われわれの要求をいれて出直していただきたいことを要求して、反対討論を終わります。(拍手) —————————————
○委員長(小林英三君) この際、委員の変更について御報告いたししておきます。相馬助治君及び館哲二君が辞任せられ、その補欠として田上松衞君及び野本品吉君が選任せられました。 —————————————
○委員長(小林英三君) 次の討論通告者は小柳君であります。小柳牧衞君。
○小柳牧衞君 私は、自由民主党を代表いたしまして、今回、政府より提案されておりますところの昭和三十五年度一般会計予算外二案に対しまして賛成の意を表明せんとするものであります。 わが国が戦後十数年にして、すでに戦前を上回る国民生活の向上を示すとともに、社会保障の整備並びに教育等の飛躍的拡充を遂げておりますことは、この前提として、わが国経済の驚異的振興発展があったからであります。すなわち、戦後におけるわが国経済の成長率を見まするに、昭和二十三年より三十三年度に至る十カ年間の経済の成長率は、毎年平均八・二%の成長を遂げております。以上の成長率に見られるごとく、発展の過程をたどってきたわが国経済の最近における大勢について申し上げたわけでありますが、特に三十四年度においては、各般にわたって予想以上の目ざましい発展、上昇を遂げており、経済の成長率は実質一三%に達しているとともに、鉱工業生産は年間二四%、輸出は二〇%に及ぶ記録的な伸びを示しておりまして、これに伴い雇用の増大並びに国民生活の向上がはかられておるのであります。さらに、三十五年度の経済の見通しについてでありますが、三十五年度においては三十四年度より一そう着実に上昇を続けるものと予測されるのであります。経済の成長率は、実質で六・六%、鉱工業の伸張率は一二%を予想されております。設備投資については三十四年度の一兆七千九百億円から三十五年度は約二兆円を見込むとともに、在庫投資は三十五年度は三十四年度とほぼ横ばいの六千億円程度と推測されております。また国際収支について見ますると、まず輸出においては、三十四年度は予想以上に伸び、米国向けを中心に、通関ベースで前年度比約二五%の大幅増加となりますが、三十五年度においては三十四年度より三億七千万ドル増の三十七億ドルを見込んでおりまして、全般的な世界の貿易の拡大傾向に歩調を合わせて、米国向け以外についても拡大の方向をたどるものと予想されるのであります。一方、輸入については、三十五年度は三十四年度より四億二千万ドル増の三十六億一千万ドルを見込んでおります。実質の貿易収支については、三十四年度は二億五千万ドルの実質黒字を示す見通しであり、三十五年度は一億五千万ドルの見込みでありますが、輸出、輸入それぞれの伸びは大体見合う程度のものと思われるのでありまして、国際収支の黒字基調を維持できると見られております。このように、わが国経済が安定的な発展を遂げておりますことは、わが自由民主党並びにわが党政府の時宜を得た適切なる総合政策の推進によるものであり、また国民各位のたゆまざる勤労のたまものでありまして、まことに喜ばしきことであります。 他面、世界経済について見ましても、本年は一段と発展することが期待されて、おりまして、貿易・為替の自由化の動きも急速に進展しております。これら自由化についての世界経済の潮流に対処するため、わが国においても戦後の過渡期に見られるごとき複雑な貿易及び為替の統制を続けることは許されないのでありまして、貿易に依存するところの大きいわが国経済を発展させるため、これら世界の大勢におくれをとることなく、積極的に促進しなければならないのであります。このような世界経済の新段階に対処するわが国の貿易及び為替の自由化政策について、政府は、その当面する問題として国際収支及び外貨準備、国内産業の適応態勢、貿易拡大の問題及び為替面の問題等について十分なる留意をいたして、もってわが国経済の長期的発展をはかられるよう望む次第であります。 三十五年度の予算編成基本方針については、昨年夏以来、わが党においてあらゆる角度より慎重なる検討の結果、財政が景気の過熱をもたらすことのないように慎重な配慮を払うという健全財政堅持の方針を決定し、これが政府予算の骨子となっておるのであります。このような健全財政堅持に基づく予算のワク内において、抜本的な国土保全対策、災害の急速な復旧、国民所得倍増の基礎条件の整備、その他責任ある公党として、当面の緊要な政策の実現をはかっておるのであります。国民所得の倍増は、わが党がさきに発表しました公約であります。そのねらいは、国民生活の向上、雇用の拡大改善と各種の所得格差の是正でありまして、特に農林漁業とその他の産業間、大企業と中小企業間、大都市と小都市との所得上、生活上の格差を縮めることを意図するものであります。三十五年度予算においては、国民所得の倍増の基礎的な諸条件を整えることに主眼を置いて所要の経費資金を確保いたしておるのであります。三十五年度予算における一般会計の規模は一兆五千六百九十六億円でありまして、前年度当初予算に比べまして千五百四億の増となっております。三十五年度の財政投融資計画の基本方針としましては、産業基盤の強化、生活環境の整備、所得格差の是正等の重要施策のための資金を確保する一方、財政投融資の原資については、極力財政面から景気に刺激を与えないよう、財政資金は通常原資の範囲内でできるだけ増額をはかるとともに、民間資金の活用は適正な規模にとどめることにいたしておるのであります。このような計画のもとに三十五年度の財政投融資の総規模は五千九百四十一億円でありまして、前年度の当初計画五千百九十八億円に対しては一四%に当たる七百四十三億円の増、前年度の災害及び年末金融対策等による改定後の計画五千六百二十六億円に対しては五・六%に当たる三百十五億円の増となっております。このように一般会計の財政投融資計画、いずれも前年度に比べて大幅の膨張となっておりますが、これはそれだけわが国経済の拡大発展を象徴いたすものであります。また、わが党の重要政策を完全に盛り込んだ積極的健全財政と言ってよいのであります。さきに述べましたごとく、わが国の経済は好調を続けておりまして、三十五年度の税の増収も当初千五、六百億円程度だといわれていたものが、二千百五十億円以上とはるかに予想を上回るものが見込まれるに至っております。過ぐる三十四年度予算審議の際、社会党の諸君より三十五年度は財政難で予算編成が危機に陥ると同情ある御忠言をちょうだいしたのでありますが、その予言がはずれましたことは、わが党並びに政府の当を得た施策によるものであると言わざるを得ません。 以下、私はわが党の重要政策がいかに本予算に具現されているか明示したいと存じます。まず、本予算における最重点は国土保全対策の推進であります。昨年における伊勢湾台風の人的、物的被害の甚大にかんがみ「わが党は抜本的な国土保全対策の緊要を痛感しまして、三十四年度中に予備費の使用あるいは補正等により所要の措置を講じて参ったのでありますが、三十五年度予算においても、優先的に公共土木施設等の災害復旧に五百八十一億円を計上するとともに、三十五年度を初年度とする治山治水長期計画を策定して、治山特別会計及び治山勘定を新設いたしているのであります。これらの特別会計に対する繰り入れを含めまして、一般会計の治山治水対策費は、前年度より百三十億円増の六百三億を計上して、わが国の国作りを強力に推進することといたしておるのであります。 さらに、三十五年度予算の大きな特色として社会保障の充実と生活環境の改善を見逃がすことはできません。福祉国家の建設のため、医療の国民皆保険の達成、国民年金制度の平年化あるいは生活環境の改善施策の推進等によりまして、社会保障関係費が大幅に増額されております。社会保障関係費は総額千八百十七億円でありまして、これを前年度予算に比べますと、三百三十八億円の増となり、いまだかつてない大幅の増加となっております。これを一般会計に占めている比重から申しますならば、三十四年度の一一%から一二%に上昇いたしておるのであります。このうち昨年わが党が創設いたしました社会福祉の画期的施策としての国民年金費は、前年度より百七十九億円増の二百八十九億円が計上されておりまして、二百六十万人の人々に給付の恩恵を施すことといたしておるのであります。また、年来の懸案でありました国民皆保険の三十五年中に達成するための社会保険費は、前年度より五十億円増の三百六十億を計上いたしているほか、医療施設の整備改善に資するために医療金融公庫の設置を認めているのであります。 次に、農林漁業についてでありますが、来年度の農林予算の特徴といたしましては、農業の生産基盤の強化拡充、生産性の向上、経営の合理化、流通の改善等の諸施策を積極的に推進する要素が大幅に盛り込まれておる点であります。農林水産関係としましては、土地改良、干拓等の農業基盤整備費を三百八十九億円計上いたしているほか、漁港整備、造林、林道等の経費を十一億円増額いたしておるのであります。 中小企業については、農林漁業とともにわが国の経済、社会に占める重要性について論議するまでもなく、本予算においてもその安定と振興のために施策の飛躍的強化をはかっております。中小企業対策といたしましては、財政投融資の面で、国民金融公庫、中小企業金融公庫の貸付ワクを三十四年度の当初計画より二百億円増の千七百五十五億円といたしておるほか、商工中金、中小企業信用保険公庫に対する資金措置を講ずることとしまして、中小企業金融の円滑化をはかっているのであります。また、一般会計におきましては中小企業設備近代化資金の増額をいたしておるほか、新たに商工会等を中心とする小規模事業対策を積極的に実施いたしております。 次に、文教の刷新向上についてでありますが、文教振興予算の大幅増額も三十五年度予算の大きな特色であります。すなわち義務教育費国庫負担金、国立学校運営費、文教施設費の総額は前年度より二百四億円増額して千八百二億円に達しておるのでありまして、いわゆるすし詰め学級の解消、文教施設の整備等、教育内容の刷新充実を期すわが党の公約が誠実に実現されております。科学技術の振興については、三十五年度は前年度に比して二十七億円増の二百五十二億円を計上いたしております。これによりまして学校研究費の大幅な増額を行なうなど、基礎的研究部門の整備充実を促進し、科学技術の一そうの振興を期しているのであります。 次に、貿易の振興及び経済協力の推進についてでありますが、輸出の振興がわが国経済の安定成長のための必須の条件であることは申すまでもないところでありまして、予算の上から見まするというと、貿易振興費は三十三億円、経済協力費は十二億円計上されており、貿易自由化の大勢の中において、わが国産業の国際的競争力の強化をはかっております。また、経済協力については輸出入銀行の東南アジア開発協力基金五十億円を振りかえて特殊法人の海外経済協力基金を発足させまして、後進国の経済開発に協力するとともに、その繁栄の中にわが国貿易の拡大を期しております。 地方財政計画につきましては、三十五年度の規模は一兆五千三百七十六億円でありまして、これは前年度に比べて二千八十二億円の増となっております。三十五年度における地方公共団体の財政は、ここ一両年来の経済の好況により約千百八十九億円に上る自主財源の自然増が見込まれておりまして、国及び地方を通ずる財政健全化の努力の成果と相待って著しく好転する見込みであります。今回、政府はさらに地方財政計画を策定いたしまして、時代の要求に応じて地方財政の改善に資することにいたしておるのであります。 以上申し上げましたほか、産業基盤の強化策として、道路、港湾、鉄道、電信電話、用水確保、工業立地整備等の経済環境の改善整備をめぐり、福祉国家建設のために諸般の施策を全ういたしております三十五年度予算に、私は満腔の賛意を表するものであります。 以上をもって政府提出にかかる予算三案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手) —————————————
○委員長(小林英三君) 松浦清一君。
○松浦清一君 私は、民主社会党を代表して、政府提出の昭和三十五年度予算三案に対し、反対の討論を行ないます。 この際、わが民主社会党の財政、経済政策、外交政策等に関する基本方針を明らかにしながら、政府の予算案に対する反対の討論を行ないます。 まず最初に問題となりまするのは、昨年春以来、岸総理初め、自民党の諸君は、十年後における国民所得の倍増計画を立て、また党内に基本問題調査会を設置され、保守主義の政治哲学要綱なるものを策定して、福祉国家への道を強調しておられますが、これらの基本方針が十分にこの予算案の中に盛られていないという点であります。さらにまた、政府は昨年十月、経済企画庁をして三十五年度の経済計画を発表せしめ、私どもは、これが今次予算の骨格をなすものと考えていたところ、予算編成の最後の段階に至り、大蔵省の原案が、諸種の圧力や自民党の派閥勢力にかき回され、本年一月になってからようやくでき上がった予算数字に見合うように、その見通しや計画を変更するなど、この予算案には一貫して凛とした方針というものがないのであります。わが党が本予算案に反対する具体的な第一の理由は、一般会計予算において二千百五十三億円という租税の自然増収を見つもりながら、少しの減税も行なわない点であります。所得に対する国民一人当たりの税の負担率は、三十四年度において一九・九%、三十五年度にはこれが二〇・六%にふえているのであります。また、戦前、昭和九年から十一年に至る間の平均は一二・九%でありますから、三十五年度における国民の税の負担率は、当時に比べて実に二倍に近い重税となっているのであります。しかもまた、現在の税制は非常に不均衡であって、中小企業者はもちろん、労働者や農漁民等の低額所得者は、この不均衡重税のために非常に苦しんでいるのであります。本予算案の審議を通じて、大蔵大臣は、来年度は減税できる見通しと、たびたび申しておられましたが、われわれは来年度からではなく、本年度、すなわち三十五年度においても減税はできると判断するのであります。最近の経済の好況は、企業格差をいよいよ拡大して、その上、大企業は、租税特別措置法等による特別の措置が講ぜられておるのであります。こういう不均衡税制を改革し、これを財源として、低所得者に対する減税を断行すべきだと思うのであります。 第二に、社会保障費がはなはだお粗末であります。今日、世界の国々が社会保障制度を確立強化して、福祉国家建設に最大の努力を払いつつあることは、周知の通りであります。岸内閣もまた、言葉の上では社会保障制度の確立を重要政策とされております。しかしながら、年金制度にしても、国民皆保険制度にしても、その内容はなお未完成であります。政府は、ほとんど無修正で予算に組み入れられた防衛費の大幅増額の言いわけとして、社会保障費の増額をあげております。確かに予算額の上では、前年比三百三十七億円増の一千八百七十六億円となっておりますが、その大半は、老齢年金の通年実施に要する費用百七十八億円、国民皆保険に要するもの六十一億円となり、該当者の実質所得の増加はほとんど見られないのであります。一例をあげてみますと、生活保護費の算定基準の中に、二十五円が新しく加えられ、これは福祉事務所に生活保護者を受け取りに行くための電車賃とのことであります。新聞代値上げの六十円、副食費のカロリー引き上げ分百三十三円等々を合わせて、生活費の中の生活扶助料、標準世帯では九千三百四十六円から九千六百二十一円に引き上げられました。しかし、一家の中に一人でも働き手があれば、その収入はそれだけ引かれるのでありますから、九千六百二十一円の生活費が天井となるのであります。これでは憲法に定められた最低生活の保障すら困難であることは言うまでもないのであります。また、国民年金を見ましても、七十才以上の老人が、ほとんど無収入の場合に、ようやく月千円支給される程度で、これでは老後の生活に安心を与え得ないことも論を待たないところであります。私ども民主社会党は、ゆりかごから墓場までの一貫性のある社会保障制度の確立を望むものであります。百歩譲って、政府原案の歳入財源をそのまま肯定するとしても、第一段階として、国民健康保険の医療給付額を七割程度に増額し、老人の福祉年金としては六十五才以上千五百円を支給し、母子福祉年金は別居世帯に支給することができると、私どもは判断をするのであります。さらに私どもは、積極的な措置として、母子センター、老人ホームを全国都道府県に新設し、失業対策費、炭鉱離職者対策費などの増額を主張しているのであります。本予算案では、この辺のところが全くおざなりであります。さらに公務員給与改善についても、昨年の七月に人事院が勧告した公務員給与を、なぜ既往にさかのぼって支給しないかという点であります。私どもは、人事院の勧告を尊重してこれを実施してこそ、公務員を国民の公僕として奉仕きせるために、罷業権を取り上げ、そのかわりとして、公平に給与体系等を判断させるために設置された人事院の存在価値があるのであります。しかるに、財源のないことを理由として、これを少しも顧みないことは、まことにもって心外であります。 第三に、治山治水関係予算についても、その一貫性がきわめてあいまいであります。治水の特別会計を設定することも、いろいろ異論のあるところであり、思いつきの制度の乱用とさえいわれております。これは昨年の七号台風、伊勢湾台風の襲来に事寄せて、災害復旧を本予算案の一枚看板にクローズ・アップさせ減税や社会保障と巧妙にすりかえたいなか芝居の早がわり沖言に似たものであります。そもそも国土保全の根幹をなす治山治水対策については、早くより長期にして計画性のある恒久対策を講ずべきであって、これは防衛計画よりもむしろ優先すべき性質のものであります。政府の国土保全に対する無計画性は、二十八年の西日本の異常災害発生当時に建設省が作った治山治水十カ年計画が数年にわたってたなざらしにされていた例を見てもきわめて明らかであります。本予算に織り込まれた政府の治山治水の事業計画も、三十六年度以降において計画通りに実施されるかどうかについて、私どもは信用ができないのであります。台風が来て被害が出てから予備費の支出や予算の補正をやるのでは国土の保全にはならぬのであります。台風や高潮、地盤の林下に追っかけられているという愚策をとるべきでないと思うのであります。いわんや、その災害復旧に国民の目を集中きせ、国民生活の安定策とすりかえるがごとき愚策はまことに笑止千万であります。 第四に、本予算案には貿易・為替の自由化に伴う農漁民、中小企業者等に対する対策が欠除いたしております。貿易・為替の自由化は、国際的な経済体制の必然的な趨勢であります。原則としては、これに私どもは反対はいたしません。しかしながら、自由化の影響は、程度の差こそあれ、国内経済に及ぼす振度がきわめて大きいのであります。自由化に伴い一番弱い立場にあるのは農漁民、中小企業者であります。このことによって、農村は安い農産物が海外から輸入され、生産価格に大きな脅威を受け、国内独占資本からの締めつけに直面するのであります。それは今国会に提出されている輸出入取引法の一部改正案がすでにこのことを証明しているのであります。政府は本予算案の編成に際し、貿易・為替の自由化に伴い一番弱い立場にある農漁民、中小企業者に対して強力なる保護を与える具体的な財政措置を講ずべきでありました。しかるに、このことに対する配慮がきわめて薄弱であります。今からでもおそくはないと思います。貿易・為替の自由化に関連して生ずる犠牡と被害に対し、十分の保護政策をとるべきであります。 第五に、本予算案の基本的性格が日米新安保条約による軍事同盟を強化する方向をますます強くしているということであります。この予算案の中で防衛、治安対策費が民生の安定、社会保障関係費等を強く圧迫していることもきわめて明瞭であります。いやしくも一国の政治は世界的視野の上に立って考えるべきが当然であります。最近のアイゼンハワー・フルシチョフ両巨頭会談に始まる雪解けのきざしは民生を圧迫してまで防衛費をふやし、軍備を強化する必要性は薄らぎ、このことは世界の大勢に逆行していると思うのであります。しかるに、来年度から計画されている新戦闘機ロッキードの国庫債務負担行為六百九十八億円が別ワクとしてきめられ、すでにきまっている国庫債務負担行為二百三億円に、今また継続費に計上されている艦船建造費五十七億円を加えると、合計約千億円の国庫債務負担行為となり、この千億円は今後五年間にわたって予算の中に食い込み、三十六年度以降の防衛費は自動的に二百億円ずつ増加していくことになるのであります。さらにその上、与党の一部には、防衛庁を国防省に昇格して、防衛特別会計の設定を強く推進している向きもあるやに聞くのであります。また治安対策費の増加も防衛費の増額と相待って、安保体制の強化と表裏一体をなし、これこそ日米新戦略体制の発展を意味しているのであります。かくのごとき自衛に名をかる軍事体制の無制限強化という方向は、わが国の将来にまことに憂慮すべき事態が予想されるので、私どもは断じて賛成ができないのであります。ゆえに安保条約の改定は取りやめ、自衛隊は漸減の方針をとり、本予算の国防費については、一切の新規増額及び国庫債務負担行為の計上を取りやめるべきだと思うのであります。そうして陸海空自衛隊は、五ヵ年間で人員と装備の漸減をはかり、国内治安体制の確保上、必要最小限度の施設と人員を残し、災害等の急に対処し、あわせて国土の保全にもこれを役立たせるべきであります。こうしてこれらの財源を民生の安定、社会保障制度の拡充強化に充て、平和にして福祉に満ちた国家を建設すべきだと思うのであります。本予算案はこれらの条件を満たすにはきわめて不十分であります。 以上の理由をもって閣僚諸君の猛省を促し、本予算案に反対するものであります。 —————————————
○委員長(小林英三君) 森八三一君。
○森八三一君 私は、ただいま議題となっております昭和三十五年度一般会計予算案外二件に対しまして、政府提出の原案に賛意を表するものであります。 私がここに賛意を表しまするゆえんのものは、本案が健全財政を堅持して財政面から景気に刺激を与えることを避け、通貨価値の維持と国際収支の安定をはかることを基本として、わが国経済の拡大発展と正常なる成長を目途として編成されたという政府の説明を率直に受け取っているからであります。すなわち、われわれ九千万国民が常に夢に描いている理想は、平和な国家を再建し、福祉国家を創造することであり、全国民の不断の努力もこの一点に集中しております。これがためには、わが国経済の正常なる拡大発展がその基幹をなす最大の要諦であると確信するからであります。しかしながら、予算の内容にわたって具体的に、詳細に検討いたしますると、これが運用を誤るようなことになりますならば、きわめて憂慮すべき事態を招来する危険かないとは申されない幾多の問題や改善を要する事項を包蔵していると思うのであります。私はそれらの重要な数点を指摘をして政府の注意を喚起するとともに善処を求める次第であります。 まず第一に、過熱防止の対策であります。一般会計歳出総額は一兆五千六百九十六億円でありまして、前年度当初予算に比し、千五百億円、財政投融資におきましても七百四十億円の増加となっておりますほか、国債費、賠償費の減額約三百六十億円も実質的には増額と見るべぎでありましょう。さらに千億に達する債務負担行為など、予算の規模は著しく膨張を示しておりまして、インフレ的要因を多分に包蔵しているものと申さなければなりません。ところが、この膨張予算も前年度と対比いたしますと、国民所得に対しては〇・九%の縮減であり、財政投融資を含めた場合でも、約一%の低下を示しており、予算規模は前年度を下回るものであって、断じて過熱を招来するような懸念はないのだと申されておりますが、ただ単に数字上の比較をもって安易な気持であっては大へんな結果が生ずることに思いをいたさなければならぬと存じます。この膨大な予算が時期的に集中して放出されるような場合には、インフレを見ることは必然でありましょう。そこに年度の全体を通じて平均的な運用が企画されなければならぬと存じます。今日までの経験に徴しますれば、予算が通過確定してから実行上の規定や政令が制定せられまして、動き出すのは下半期ということであります。この点に関し、政府の格別の留意と敏速な措置を望むものであります。 第二に、国民負担の問題であります。伊勢湾台風を初め、累次の災害を復旧することは、寸刻の遷延が許されない緊要事であり、基本的な国土保全の事業や社会保障拡充等のため二千百億に上る自然増収は歳出に充足し、減税は後年度に見送らざるを得なかったというのであります。国民の組税負担は逐年軽減されて参りましたが、今なお戦前に対比いたしますれば、八%前後の高率でありまして、国民は常にこれが軽減を待望しておるのであります。抜本的な税制の改正は、すでに発足しておる税制調査会の答申を得て実施するといたしましても、当面、自然増収による減税が取り上げられなかったことは残念に存ずるのであります。大蔵大臣も今年の特異事情に基づくものでありまして、やむを得なかったと釈明しつつ、昭和三十六年度においてその実行を約束せられておるのであります。どんなことがありましても、明年度には国民の待望を裏切ってはならぬと存じます。ところが、明年度の財政を案じまするに、治山治水事業、国民年金、恩給、健康保険、債務負担行為の予算化、公務員給与等々、命令的に増額を要求せられます経費を考えますると、実に容易ならない状況を見るのでありますが、少なくとも最低生活を確保するための基礎控除の引き上げ、事業所得における家族専従者控除、特殊法人免税等は実現さるべきであると存じます。これがためには、予算編成時におけるぶんどり的傾向の排除はもちろん、冗費的な経費の整理等、強力な政治力を必要と思うのでありまして、政府は確固たる態度をもって臨まなければなりません。他方、最近一ヵ年くらいにおきまする政府の価格対策を見まするに、もちろん、その部面だけを考えまする場合には、それぞれ理由のあったこととは存じまするが、私鉄料金、ラジオ聴取料、ガス、電気料金等がおおむね二〇%前後の引き上げとなっております。本年になりましてからも、通運料金約二十七億円の引き上げが認可せられ、近く地下鉄料金が引き上げとなり、さらにまた、国鉄運賃の改訂が企てられていると承っておるのであります。かような公共的性格を持つ料金等の引き上げが物価に及ぼす影響は憂慮にたえないものがあります。現に日銀卸売り物価指数も、ここ一ヵ年間の間に約五%の上昇を示しており、国民負担、特に低所得階層の経済には深刻なものがあります。端的に申しますれば、増税ともいえましょう。政府におきましては、窮余の策やむを得ざるの挙に出たものとは存じまするが、私はきわめて近視眼的な、その場限りの安易な措置であったと申し上げたいのでありまして、遺憾の意を表します。近く具体的に進行していくでありましよう貿易自由化対策として、国際競争に対抗し得る経済力を涵養して参らなければならない重要課題解決のためにも、きわめて悪い条件を提供していると思うのであります。今後における価格対策について、いま一段の工夫を希望いたします。 第三に、貿易・為替自由化の問題であります。世界の大勢となって参りました貿易の自由化に即応して、立ちおくれをとらないように措置すべきは当然のことでありまして、基本的な態度として、貿易・為替の自由化を打ち出されたことにつきましては、原則的に賛意を表するものでありまするが、戦後十数年にわたって、温室育ちで参りましたわが国の産業経済は、いまだ国際競争に耐え抜くだけの素質を具有しておらないのであります。これが円滑な遂行のためには、日本経済の体質改善が優先されなければなりません。特に農林漁業を初め、中小企業等弱体産業にその感を潔くするものでありまして、遺憾ながら三十五年度予算を通じまして、これが対策を十分に発見し得ないことを残念に思うのであります。ことに、輸出入取引法の改正の方向が、国内取引にまでカルテルを容認したり、あるいは、いたずらにアウトサイダーの規制を行なうように構想されていると承るのでありますが、かくのごときは、独占禁止法違反の疑いを生ずるはもちろん、農業等に及ぼす影響はきわめて大きいものがあるといわなければなりません。ただ単に原則にこだわることなく、実態に即応して不測の混乱を生じないように、国内取引にカルテルを容認しないようにするとともに、アウトサイダー規制は、公取の承認を得ることはもちろん、主管大臣の承認を要する等の法的措置をなすべきことを強く要望してやみません。 最後に、私どもがしばしば指摘して参りました外交に対する国論の統一であります。対ソ、対中共、対韓国等、身近かに迫っている外交について国民の多くはきわめて不安と不平を訴えております。素朴な国民感情はまさに爆発の様相を呈しておると申し上げても過言ではないと思うのであります。ややともいたしますると、二つの日本が存在するがごとき錯覚をすら感ずる状況に対し、憂国の情禁じ得ないところであります。かくのごときは、政府の努力にも欠くる点がないとは申されません。さらに一そうの情熱と赤誠を傾け、国論の帰一に対し、最善を尽くされますることを衷心から期待し、私の賛成討論を終わります。(拍手) —————————————
○委員長(小林英三君) 岩間正男君。
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっている昭和三十五年度予算に対して、反対するものであります。 本予算は、新安保条約締結に即応した、きわめて反動的で、反民族的独占資本擁護の性格を、従来にまして強めるとともに、多くの矛盾に満ちたものであります。 本予算の内容について、そのおもな特徴点を指摘すれば、第一に、本予算は核実験禁止、東西首脳会談をてことする全面軍縮と平和共存への国際情勢の着実な改善と発展に逆行し、日本をアメリカの戦争政策に従属させ、米日台韓軍事同盟、自衛隊の、ミサイル化、核武装化、海外派兵を目ざして軍備の拡大強化をはかっていることであります。 軍事費の増大と経済の軍事化、自衛隊の拡大強化、統幕の検限強化と核武装を国民生活の犠牲の上に推し進めております。新安保条約第三条にうたわれたバンデンバーグ決議の拘束は、政府がいかなる強弁、詭弁を弄しても、日本の軍事力の増強を義務づけたのもであります。新安保条約調印の際用意していったという第二次長期防衛計画によっても、昭和四十年には防衛庁費だけでも二千九百億円を予定している。これは現在の倍額に相当する金額であります。十年間の国民所得倍増計画の期間もたたないうちに、その半分の五ヵ年で防衛庁費は現在の二倍に達するのであります。防衛分担金百十一億円をそっくり防衛庁費に繰り入れ、国庫債務負担行為二百三億円、艦船などの建造継続費二百二億円、ロッキードF104J生産費としての国庫債務負担行為七百億円が計上され、次年度以後に大きな負担をかけるように組み上げられております。しかも、防衛庁費は細目を明らかにせず、国民の前に何ら何に使うかを知らすまいとし、財政法上疑義のある使用方法を用いる政府の秘密主義的態度は許せないものであります。自衛隊の装備も、アメリカの戦略の一環として、ロケット、ミサイル、核武装化の方向を目ざしております。岸総理も核武装即憲法違反ではないと言明しておりますように、この方向に沿っていわゆる防衛力漸増方式がとられております。防衛庁内の機構、人事も、日米共同作戦の遂行を容易にするために、換言すれば、アメリカの極東前線基地の先兵を勤めるために、米軍の命令ですぐ行動できる機構へと改組しようとしております。戦後一貫してとられている文官優位は、今や武官優位にとってかわられようとしつつある。防衛庁長官の知らぬうちに、ジェット機の飛び立つことは現実の事態となってきておるのであります。 これらの事実と相応じて、科学技術の振興政策は、原子力と、新たにロケット開発に注がれております。これこそ本末転倒と言わなければなりません。基本的な科学技術に重点がなく、科学の平和的利用よりも軍事的利用にその重点を置こうとしているのであります。米国とのロケット開発研究の協定の意味するところは、政府の弁明にもかかわらず、米空軍当事者が月に軍事基地を作り、軍事用人工衛星を計画していることを明らかにしたことは、中曽根・糸川構想が米国の軍事目的に従わされる結果になることは明瞭であります。 池田・ロバートソン会談、MSA締結以後、ますます露骨になってきた産業の軍事化は、兵器の国産化へ向けて急速に進められてきております。ロッキード生産による新三菱重工、川崎航空など、航空機生産を軌道に乗せ、艦艇、潜水艦の生産、さらに、ミサイル生産、原子力産業開発など、産業軍事化のために一般会計財政投融資をあわせて莫大な金額を長期にわたって注ぎ込もうとしております。 これに関連して、軍人恩給一千四十億円、遺家族援護費八十七億円が計上され、さらに自民党内部では、三十六年度以後に軍人恩給を一そう増加させようとさえしております。 第二に、本予算は、独占資本の救済処置、特に石炭、造船対策費などを公然と組み込み、道路、港湾、用水、電源開発などの建設投資、財政投融資による輸出助成、国鉄、電電公社など、国家独占企業にふんだんに資金をつけて、ガス、電気料金通運料、国鉄、地下鉄運賃など独占物価の値上げを認め、独占資本の蓄積をはかっております。石炭対策費として七十二億円計上し、三十四年度より実に四十六億円の増になっている。炭鉱近代化補助二十億円、炭鉱合理化事業団二十億円、非能率炭鉱整理補助四億円等々、炭鉱の体質改善、企業の合理化、近代化を労働者の犠牲の上に築き上げようとしております。しかも、総合エネルギー対策は再三再四にわたって変更を余儀なくされていまだに確立せず、その内容は産業の平和的発展を保証するものではありません。独占資本への当面の救済が造船利子補給十億円とともに組み込まれたことは、またまた汚職の温床となるでありましょう。植村甲午郎経団連副会長は、返上してしまうには少し惜しいが礼を言うのもしゃくにさわると、ぬけぬけと言っているではありませんか。財政投融資、政府機関事業等、たとえば輸出入銀行の北スマトラ油田開発、アラビア石油融資などに見られる独占資本への冒険的資金供給は膨大なものとなっています。 独占資本と政府のいわゆる企業合理化、産業の体質改善の意図とその宣伝に関連して、ここに特に強調しなければならないことは、三井三池のロックアウト、労働組合破壊の策動と戦っている労働者に対する岸政府と独占資本の卑劣なやり口についてであります。石炭企業の合理化と労働組合破壊のためには、公然と暴力団を使い、警察権力、海上保安庁を動員しての暴力団応援は、組合員を殺し、町全体を恐怖のどん底に落とし込む事態を招いたのであります。このような不法きわまる労働政策を伴った企業体質改善の政策を、わが日本共産党は断じて許すことはできないのであります。 第三に、本予算は、政府の一枚看板であるいわゆる福祉国家建設のための社会保障費は一千八百十六億円で、昨年と比べて三百三十七億円増となっているが、その内容は、国民年金の増百七十八億円、国民皆保険の名による増六十一億円、生活保護費の増四十九億円、医療金融公庫への出資金十億円の合計二百九十八億円であり、そのほとんどが既定経費と当然増に食われているのであります。これでは全くの見せかけの増額にすぎません。そればかりか、国民年金の掛金、国民健康保険の強制加入による高率保険料の徴収、生活保護費の物価値上りに及ばないわずか三%の引き上げ、保育所のおやつ代一日三円など、その実質はむしろ収奪の強化と貧乏生活の据え置きの強化であります。 さらに、政府は、労働者階級に対しては、一方で低賃金と首切り、合理化、他方では分裂、懐柔と弾圧をもって臨む政策を、本予算の前提としてその実現をはかろうとしているのであります。失業対策費は四百十七億円で、二十三億円の増額ではあるが、その対象人員は二十五万から二十四万人に減少し、日雇い賃金増額も日雇い労働者の要求をはるかに下回るわずか一日二十八円で、人員増は全く押えられております。差し迫った必要に迫られている炭鉱離職者対策も、全くその場限りのごまかしにすぎません。中小企業労働者に対しては、独占資本と政府の指導のもとにおける労使協調を推し進めるための中小企業退職金共済制度の普及促進と、労働争議、労務管理にもっぱら力を集中しているのが、本予算の労働対策費の中心であります。 第四に、本予算は、二千百数十億円の自然増を見込んだにもかかわらず、政府の最大公約の一つであった減税は一銭も行なわれないだけでなく、租税特別措置による二千億円以上にも上る独占資本への実質的減税は、むしろこれを引き上げようとたくらんでおります。一方、国民大衆の税負担は、政府統計によってすら、今年度に比べて〇・七%ふえています。その上、地方自治体や地方住民に対するしわ寄せも強化されております。こうして国民の税及び税外負担は減少するどころか、逆にふえており、三十六年度以降においても減税の見込みはきわめて乞しいことを、政府はみずからも認めざるを得ない状態であります。 第五に、政府は、一方で、安保改定阻止と破棄の戦いの激化と、平和、民主、中立と生活改善に向かっての人民の戦いの発展に対して、警察、公安調査庁、内閣調査室などの弾圧謀略機関を強化する予算を増額しております。他方、農民、中小企業、零細業者や、青年、婦人層を政府の直接の指導と援助によって自民党の組織的基盤として再編成するために、婦人学級、青年対策費、商工会、農民部落長研修費、農業委員会費などの新設増額を行なっております。 第六に、岸内閣は、道路、港湾、防衛の五ヵ年計画を初め、このたびの治山治水十カ年計画、あるいはいわゆる所得倍増十カ年計画、総合エネルギー対策、国土総合開発等々、次から次へと五ヵ年または十ヵ年の長期計画と銘打ってその予算化をはかってきております。しかし、これらの独占資本本位の長期計画は、その実施の過程でしばしば変更され、相互に矛盾を生じ、破綻し、その総合調整はついに実現されないままになっております。国民所得倍増計画、国土総合開発計画がついにその実現を見ないことによっても、このことは明らかであります。本予算に盛られた治山治水十ヵ年計画に至っては、工事内容を土建業者にごまかされ、リベートのために使用され、自民党と土建屋のみを潤すいわゆる土建屋予算と言うべきものでありましょう。 第七に、本予算は、アメリカの押しつけによる貿易・為替の自由化を、もっぱらアメリカ独占資本と日本の独占資本の利益のために推し進めることを前提とし、日本の貿易、産業、経済の自主的、平和的発展と、国民生活の改善拡大の見地からの対策は、全然講じられていないことを暴露しております。 第八に、東南アジア経済協力、後進国開発、貿易振興を重点政策にうたっている政府は、海外経済協力基金五十億円を宣伝し、アメリカの資金援助を当てにして、極東のチャンピオンになろうとしております。東南アジア進出が賠償を橋頭塗にし、ガリオア、イロアの不当な返済を当てにし、利用して、これと海外協力基金で東南アジア進出ができるものと考えている。ポツダム宣言に述べられている賠償の原則を踏みにじり、アメリカの言いなりになった単独講和サンフランシスコ条約とアメリカの政策でゆがめられた賠償を道具にし、対外経済膨脹、軍国主義、帝国主義復活の道を歩もうとしております。政府は、東南アジア開発に特に構想はないと言いながらも、すでに新聞紙上にも伝えられた吉田構想なるものに岸総理も推進方を要請しております。語るに落ちる大東亜共栄圏盟主の夢を追う政府の政策は、平等互恵、平和五原則、中立政策を堅持するアジア、アラブ、アフリカ諸国のきびしい批判の前に立たされ失敗することは、火を見るよりも明らかであります。 最後に指摘しなければならないことは、本予算が、軍事費の大幅増を初め、人口増、既定経費の平年度化などによる当然増的経費の増加と過去の蓄積資金の食いつぶしによって、その規模が大きく膨脹しただけでなく、全く硬直したものとなり、三十六年度以降の財政に大きくしわ寄せし、これを拘束していることであります。こうして、政府は、一方で外債の発行と公募債の増額をはかり、他方で減税はおろか、増税と赤字公債によってその矛盾からの活路を見出さざるを得ず、また見出そうとしております。これは、政府が財政金融面で独占資本のために、一方で対米依存と従属を進め、他方で国民への収奪を強める政策をますます強化する方向を明らかに示していることにほかなりません。 今日、世界の大勢は、軍縮と平和共存の方向に向かって大きく転換し始め、好戦的で反動的な勢力の必死の策動にもかかわらず、軍縮問題、核兵器の実験禁止問題、東西交流と首脳会談の開催等々、具体的な措置がとられ、着々とその基礎が作り上げられております。このような国際緊張緩和と軍備の縮小、両体制の平和的共存の機運をいっそう促進することをわが国民は強く要求している。わが国がその内外政策を根本的に転換して、そのために積極的な役割を果たすことを期待し、要求しているのであります。 当面の予算に対しても、安保改定阻止、完全軍縮、軍事費の削減と社会保障費の拡大、全国一律八千円の最低賃金制の確立、大幅な賃上げと時間短縮、減税、生活保護基準の二倍引き上げ、東西交流、特に日中国交回復と貿易の再開、真に平等互恵の立場に立つ後進国開発援助と経済協力等々の要求を掲げ、それを予算化し、その要求を実現することを望んでおります。これらの人々は、ロッキード一機で生活保護世帯三万四千世帯の一ヵ月分、日雇い延べ九十五万人分の賃金、あるいは三十八万人の一カ月無料保育が可能であることを正しくも指摘しているのであります。 今こそ、まさにわが国の内外政策を根本的に転換すべき時であります。日米安保条約を破棄し、平和五原則に基づく中立政策を国是として確立することが、当面緊急の、そして世界の大勢に即応し、国民の要求を実現していく唯一の道であり、それを裏づける予算こそが真に国民に利益をもたらす予算であります。しかるに、侵略的な日米軍事同盟を強化し、日米共同防衛と軍備の飛躍的な増強を足場にして、帝国主義的な海外膨張をはかり、かつ、わが国民の犠牲の上に独占資本の利益を擁護し、その支配を確立しようとする政府の諸政策と本予算は、わが国民の諸要求とまっこうから対立するものであり、国際緊張緩和と完全軍縮、平和共存に向かって進む世界の流れに逆行するものであります。 わが党は、かかる昭和三十五年度政府予算に対しまして絶対に反対するとともに、世界の大勢に沿って安保改定を阻止し、その破棄、平和と独立と中立、国民の要求を実現していくために戦うことを、あらためてここに宣言するものであります。
○委員長(小林英三君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。 これより採決を行ないます。昭和三十五年度一般会計予算、昭和三十五年度特別会計予算、昭和三十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を願います。 〔賛成者起立〕
○委員長(小林英三君) 起立多数と認めます。よって三案は可決すべきものと決定いたしました。(拍手) なお、本院規則第七十二条によりまして議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後六時二十八分散会