内閣委員会 第26号
- 発言数
- 75 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1960/05/13
会議録
○委員長(中野文門君) これより内閣委員会を開会いたします。 最初に、理事の辞任許可についてお諮りいたします。 山本伊三郎君から、都合により理事を辞任したい旨の申し出がありましたが、これを許可することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中野文門君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じます。互選の方法は成規の手続を省略して、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中野文門君) 御異議ないと認めます。それでは理事に横川正市君を指名いたします。
○委員長(中野文門君) 次に、農地被買収者問題調査会設置法案を議題といたします。 昨日に続いて質疑を行ないます。政府側出席の方々は、岸内閣総理大臣、福田総理府総務長官、佐藤総理府総務副長官、大野農林政務次官等の方々であります。御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
○伊藤顕道君 私はこの農地被買収者問題調査会設置法案に対して、三、三岸総理にお伺いしたいと思います。 御承知のように、この法案は、国会には今回で三回目であります。第一回は三十一国会で、これは廃案となりました。第二回は三十三国会で、この年については、政府は撤回するのやむなきに至っておるわけです。で、このことは、こういう結果になったということは、国会がこのような反動的な法案に対してはその必要を認めない、こういうことを明確にしたということであります。しかるところ、こういう経過、こういう過程があったにもかかわらず、政府はいささかも反省の色がなくして、今回三たびこれを国会に出してきたということについては、私どもとしては、きわめて遺憾の意を表しますとともに、岸総理の政治的良心が那辺にあるのか、そういう点を疑わざるを得ないわけであります。そこでお伺いいたしますが、こういう事情のもとで三たび国会に出してきたというその根拠はいかなるところにあるのか、まずもってこの点を明確にしていただきたい。
○国務大臣(岸信介君) この法案につきまして、過去二回政府は提案をいたしまして、御審議を完了することができなかったことは、政府としては遺憾に考えているところでありまして、政府が、この提案理由にも説明しておりますような理由で、日本として、やはりこういう調査会を設けて実情を調査する必要があると、政府としては依然として考えておるわけであります。
○伊藤顕道君 この法案は、昨年のたしか六月九日の閣議で決定されておると思うのですが、しかしながら、これは全会一致とか、そういうなごやか空気の中に決定したのではないということを承知しておるわけであります。たとえば、そのときの農林大臣である三浦さん、あるいはまた大蔵大臣などの強力な強い反対があった。特に三浦農林大臣については、もしこの調査会が設置されれば、表面は農地改革の成果を認めておきながら、反面このような法案が通れば、旧地主に対する補償が将来行なわれるであろうという、そういう性格を持った調査会が将来発展した場合の、そういう場合の問題等を十分考えて、こういう観点から強く反対の意を表しておる、そういうふうに承っておるわけなんです。これは私が言うまでもなく、農地関係の主管大臣は農林大臣でありますから、この主管大臣である農林大臣の意見は、相当尊重しなければならないと思うわけです。しかるに、結果的において、このような強力な主管大臣の反対があったもかかわらず、これを無視して、強引にこれを決定してしまったというここについては、何かそこに、根拠、ねらいがなければならないと思うのです。この点納得しがたいので明確にしていただきたい。
○国務大臣(岸信介君) この法案は、御審議願いますれば明瞭になると思いますが、私ども農地改革の効果をさかのぼって左右しようなんということを毛頭考えておるわけではございません。正当な法律によって正当に行なわれたものであります。判決もございますし、国家が再びこれに対して、旧地主に対して補償をするというようなことは考えておらぬということを、従来も私明確にお答えをいたしております。 ただ、この農地改革という大変動から生じて、長い間、また多数の人々が急激なる変化を受けまして、日本の農村における旧地主の生活や生業に急変を及ぼしておることから生じておるいろいろな不安ということを考えますというと、その実情を十分把握して、何らかの措置をとる必要があるとするならば、措置を考えていくということは、政治問題として、私は政府として考えるべき問題である、かような見解に立っておるわけでございます。従いまして、この法案が何か農地改革の実質を変更するというようなことを意図こしているものであるというふうなことは、全く誤解でございまして、そういう意味から、十分御審議願って、その成立を政府としては希望しておる次第でございます。
○伊藤顕道君 提案理由の説明を通じて知るところによると、この調査会がどうもえたいの知れない調査会のように思われてならない、調査会設置の目的について、結局、農村の社会的実態、特にこの法案は、いわゆる旧地主の面に対する社会的な実態、そういうものを明らかにするのだ、そういうことを言っておりますけれども、これは衆議院の方の議事録を一通り拝見いたしますと、その答弁に立たれる方によって各個ばらばらであって、何ら統一がない、みな答弁者によって違う御答弁をしている、そこでこの際、一つ責任者である、担当大臣である岸総理から、この面に対するいわゆる統一的な見解とでもいうべき、政府としての一貫した御説明をいただきたいと思うのです。
○国務大臣(岸信介君) 私は、衆議院の段階において十分審議され、また、疑問とされ、疑義とされておることに対しましてそれぞれ関係の当局から責任者が出ましてお答えをしておることによって明らかであると思います。今も申し上げましたように、この農地改革というものは、日本においては非常な大きなこれは一大変革であったことは言うを待ちません。しこうしてそれがその農村における農業面におきましては、近時農業の生産力というものが非常に増大したことにも富与していることでもあり、また農民全体の上から申しまして、この変革が非常な好ましい結論をもたらしておることも私ども認めまして、しこうして、これが正当な立法によって、正当に行なわれたものであるということにつきましては、言うを待たないのでございます。そういうことを、われわれは過去にさかのぼって、この効果なり変革を何か変更しようというような意図は持っておりません。ただ、こうした大きな変革が行なわれたことから申しまして、長い間、農村において、ある場合にないては相当重要な地位にあった旧地主というものが急激にその生活の上に、また生業の上に変革を来たしてこれが農村におけるこれらの人々の一つの不安をかもし出しておるということも、これは私は否認できない事実であると思います。これらの実情につきましては、ある程度の調査はありますけれども、もちろん、それに対して正確な、できるだけ正確な実情を把握して、これらの、不安を除くようにしていくことが必要である。従って、その実情を十分正確に把握して、そうしてこれに対して適当な措置を講ずる必要があるかどうか。あるとするならば、どういう措置が適当かというようなことを、これは十分に調査することが必要である。かように考えて、この調査会を置くことにいたしておるわけであります。
○伊藤顕道君 政府は、この被買収者に対する社会的な諸問題を調査すると、そういうことを言っておられるわけですが、この被買収者だけを特に摘出して、それだけの社会的諸問題を調査しても全く意味がないと思う。どうしても調査するのだというならば、農村全体の社会的諸問題を調査して初めて意味があろうと思う。この点はどのようにお考えでありますか。
○国務大臣(岸信介君) もちろん、被買収者を中心として、先ほど来申し上げておるような大きな変革が行なわれたわけでございます。それらにおける、それらを中心としての社会的なこの問題ということを調査することに主体を置くべきことは、私は当然であるように思うのであります。農村一般であるとか、あるいは日本全体の社会一般の問題ということにつきましては、また別に政府としてはもちろん考えていかなければならぬ問題でありますが、先ほど来申しておるような変革が行なわれ、それによって、従来地主であった者がその農地を買い上げられて、そうしてそれから生じておるところの社会的な不安といいますか、これらの地主の人々の生業あるいは生活上の不安というものを中心としての社会問題を研究しよう、こういうことでございます。
○伊藤顕道君 次に、解放農地のいわゆる買収価格はいかに正当なものであったかと、こういうことについては、私が申し上げるまでもなく、昭和二十八年の最高裁の判決は最も端的にこれを明確に示しておると思うのです。これは総理もよく御存じだと思うのですが、この対価決定の基準も、当時の物価水準に基づいてきわめて正確なまた妥当な方法でこれを決定しておるわけです。従って、このことについては、政府としても、従来これを確認し続けてきたと思うのです。この点はもう念を押すまでもないと思うのですが、そうだとすると、ここでむだのようですが、非常に大事なことなので確認しておきたいのですが、結局今後いろいろまあ形は変わっても、補償金とか、あるいは交付金とかあるいは見舞金とか、まあいろいろ名称は別として、そのいかなる名称をつけるとも、その名称のいかんにかかわらず、将来この補償的なことは絶対にしないということを、当然ここで確約できると思うし、従来も確約してきたはずなんです、政府の一貫した態度をここで示していただくならば。そこで、このことがさらにここで大事なことだから、この参議院内閣委員会としては、私ども初めてお伺いするので、まずこの点をしっかりとお伺いしておきたいと思う、その意味で。
○国務大臣(岸信介君) もちろん、この買収価格は判決にもございますように、私どもはその価格が不当なりということを考えておるわけではございません。そうして、従って、その価格が不当であり、非常に廉価に買い上げられたから、地主が不当の損害をこうむったから、これをさらに補償する、償う意味において何らかの国家が金銭を支出してこれを償っていくというような考え方は持たないということを、従来も明確に申し上げております。先ほど来申し上げておるように、私どもはこのなにに対して、そういう意味において補償を、追加するとかあるいは何らかの名義を変えて実質的に補償をしていくというような考えを持たないということは、従来しばしば申し上げた通りであります。また、この調査会においてとるべき措置というものを、あらかじめ予定してこういうことをするのだということを政府は実は考えておりません。措置が必要であるかどうか、また措置をするとするならばどういう措置が適当であるかというようなことについて、この調査会で審議決定をして調査してもらう、こういう意味でございます。
○伊藤顕道君 時間の関係がございますので、最後に一点お伺いしますが、新聞の論調について、総理はまあその事のいかんにかかわらず、いろいろな問題がまあ新聞の論調に出ておるのですけれども、ここでお伺いしておきたいのは、一部の特定な新聞が一、二その主張を発表すると、そういうことについてはこれは問題ないと思うのですが、日本全国の、中央地方を問わず、こういう全国をあげて新聞の論調が同じ方向を主張したような場合には、総理はこれに対して耳を傾け、十分これを尊重されるか、そういうことをまずお伺いしたい。
○国務大臣(岸信介君) 抽象的に、私はもちろんいつも申しておるように、世論を、民主政治というものは世論に耳を傾けて、謙虚な気持でこれに耳を傾けなけりゃいかぬ、民主政治というものはそういう性格のものであるということを申しております。ただ抽象的に、今お話しになりましたように、新聞がどういう方向を示しておるからどうだというようなことに関しまして、具体的な問題でなしに抽象的に申し上げるという、新聞とか雑誌とかということでなく、単なる言論機関とかということではなしに、やっぱり世論ということで申し上げることが適当であろう、こう思っております。
○伊藤顕道君 そこで、抽象的なことで、もちろんその問題々々によって判断なさるので、もちろんはっきり具体的に言えないと思うのです。そこで、これはもう十分総理としてもごらんになったと思いますが、その具体的な一つの例として、これは三十四年三月十六日の北海道新聞の社説の一端です。ごく一端です。時間がありませんから、その一、二の点だけを読み上げまするが、「本調査会の設置が自民党の選挙対策であることは多くを諮るまでもあるまい。選挙の粟と金になることなら手当たり次第というのが岸内閣のやり方である。一千万円の調査会で農村に隠然たる勢力を持つ地主団体の支持を得ることができるのだから、きわめて安上がりな選挙対策といえよう。だがこの一千万円の選挙対策は、やがて莫大な国家負担を将来に残すおそれが多分にあるのだから、うかつに見のがしておくわけにはいかない。」というようにありますが、本年二月十一日の毎日新聞のいわゆる社説のごく一端を申し上げますと、「政府は旧地主に農地の再補償を行う考えはないかのようにみえる。しかしほんとうに政府に再補償を行う考えがないのなら、どうしてこの問題を繰返し国会にもち出すのか。」と、こういうような意味で強く批判しておるわけです。そこで最初申し上げたように、特定の一、二の新聞がこういう論調を掲げておるなら、これは問題ないでしょう、場合によって。しかしながら、中央地方を問わず、全国的にこのような論調は、あげて新聞が論評しておるわけです。こういう点には十分岸総理としても耳を傾け、反省すべきは反省し、そうしてこれを尊重しなけりゃいかぬと思うのです。こういう具体的な問題に対して、これはもちろん私は百パーセント——これは新聞の論調ですから、百パーセント、私がどうのこうの言うことでなくして、この主張には私ども全然同感なんだ、考え方については。だから申し上げるのであって、一つこういう具体的な問題について、総理はどういうふうにお考え、また、どういうふうに反省しておるかということを承って、時間の関係ございますので、最後の質問といたします。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど来申し上げた通りに、政府はこの法案については考えておるわけであります。それが十分に理解をされていない方面も私はあると思います。あるいはまた、今新聞の記事としておあげになりましたような考え方でこれを見ておる人も私はあると思います。これらのことは、もちろんよくこの法案の趣旨を説明し、理解してもらうことによって、これを正当に理解してもらうほかないと、かように考えております。私どもはこれをそういう狭い意味から考えておるわけではございませんで、やはりこれは何人も私はごらんになるだろうと思う。とにかく旧地主がそういう激変をしたということ自体が、これは私はそれが不当なことをしたということではありません。いかに正当なことであっても、そういう社会生活上の急変、激変を来たした場合において、そこに生活上あるいは生業上その他の関係において不安ができておる。それがことに農村において、全国の農村において相当数に及んでおるという場合においては、政府が全然それを無視するということは、私は政治の考え方ではない。ただしかし、それが不当な要求であったり、あるいはわれわれから見て過当な要求であり、また適当でない要求はそのままこれらの人々が要望するからといって、それにもちろん盲従していくことは適当でございません。それから起こっておる不安があるならば、これに対して十分実情を調査して、適当な措置を講ずることがいいということであれば、適当な措置を見出していくということに努めることは、私は政府としては考えなければならぬ、かように考えております。
○山本伊三郎君 それでは本法案の審議に入る前に一つ、せっかく岸総理に出席願ったのでございますので、この法案の基本的な問題について、もちろん衆議院あるいは参議院においても相当前からの問題がございますから、総理の考え方は伺っておりますけれども、一応直接私からこの問題について、総理の基本的な問題の考え方についてお伺いしたいと思います。 で、本法案は、御存じのように、農業関係者またまその他国民に対する権利義務を規定するような内容を含んだ実体的の法律ではない。しかしそれにもかかわらず、一調査会を設けるということだけで非常に世間が物議をかもしておる、これは一体どういうところに起因しておるか、総理は責任者として、どうこれを受け取っておるかというその見解をまず聞いておきたい。
○国務大臣(岸信介君) まあ世間の受け取り方について、先ほど伊藤委員にお答え申し上げましたように、この法案自体の実質並びに真の目的、趣旨というものを正しく理解するかどうかという問題が一つあると思います。そこに十分の理解がないというと、いろいろな推測やいろいろな想像が入って参りまして、疑念がわいてくるということになると思います。根本は、私はこの法案の真の目的なり、真の趣旨というものを正しく理解してもらうように、まだ徹底しておらないということから生じておると、かように考えます。
○山本伊三郎君 政治の基本としては、法律を作る場合には、国民は一応その法律について理解をするということが前提だと思う。で、この調査会なり、あるいは各種の審議会においても、本国会、今度の三十四国会においても、当委員会では相当調査会あるいは審議会についてはわれわれ社会党も賛成して通しております。しかるに、この問題については、先ほど伊藤委員からも言われたように、すでに二つの国会において廃案になっておる。審議未了になっておる。こういうことから、今総理はまだその理解が徹低しておらないのだと、こういう御答弁であったと思うのですか、徹低しないということでなくして、疑惑を持っておる、疑念を持っておるというところに大きい問題があると思うのです。このまず名称を見ましても、農地被買収者団体調査会、なぜこれを旧地主の調査会というふうに、国民が一見してわかるような、趣旨説明を十分見ないとわからない農地被買収者団体、なかなか舌のもつれるような名前をつけておりますが、一体この農地被買収者団体というのは(「問題だよ」と呼ぶ者あり)問題——この調査会という団体の性格というのはどういうものであるか、われわれとしてはそれから一つ疑問を持っておるのでございますが、その点一つ総理からこういう団体の性格を一つ御説明願いたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) この法案自体は、農地被買収者問題調査会というので、被買収者団体を調査するという意味ではございません。しかし、農地を買収された人々が一つの団体を作って、そうしていろいろとこの自分たちの要求とか主張とかというものを述べておることは、これは御承知の通りでございます。そういうことはありますけれども、その団体の実質を調べるとかどうとかということではございませんで、要するに農地を先ほど申しておる農地改革によって、元地主であった人から一定の価格で、これはまあ本来の自由な売買であるならば売るか売らないかということは、その人の自由でありますけれども、農地改革という法律によって一定の価格で必ず地主はそれを売らなければならぬということのもとに、この土地改革が、農地改革が行なわれたことは御承知の通りであります。そういうことから生じておる先ほどから申し上げたような一種の社会問題について、これを調査するというのが、この法案の趣旨でございます。
○山本伊三郎君 大体岸総理の先ほどからの答弁を聞いておりますと、この調査会には、調査をする目的というものについては、この調査の結果によって現われてくる。従って何々を調査するんだ、そういうことでなくて、まあ、実情を調査した上で、いわゆるそれを取り上げてこれを施策に表わしていこう、こういう趣旨だったと思うのです。ところが、われわれが短い経験でこの調査会なり審議会を設置する質疑をした場合でも、あらゆる調査会、審議会でも、こういう問題を一応調査するんだ、こういうことを調査するんだという問題が提起されております。ところが、この場合にはいわゆるこの農地被買収者の問題を調査するきわめて具体性のない調査会なんです。そこに一つの疑惑があると思うのです。先ほどから総理は、この旧地主の農地改革によるところの土地を失った者について、所有権をまた移転するとか、そういうものではない。また、政府はこれに対して補償する考えもない、こういうことを言明されておる。ただ一点、それらの人が今日非常に社会問題になっておる、従ってその社会問題を取り上げて調査をするのだ、こういう趣旨だと思いますが、それに間違いないかどうか。
○国務大臣(岸信介君) そういう趣旨でございます。
○山本伊三郎君 それで、実は昨日あなたの与党の各氏からるるこれについて賛成の立場から質問をなされました。福田総務長官がそれに対して答弁されております。この福田総務長官の答弁は、きわめてやはり政府の立場からいわゆる問題のない答弁をされております。ところが、この与党の方々の質問を聞いておる中から、その実体が非常に明らかになってきておることを私知ったのです。従って、岸総理がそういう補償とか、あるいは所有権を再びどうこうするということでは全然ないということを言明されておりまするが、きのうの質問の中には、あの最高裁の判決にかかわらず大きい代償で、もしあの買収された価格についても問題があるならば善処してもらいたいという意味の要望を含めた質疑があったことを私記憶しております。そういうことを考えると、やはり一つの疑惑が起こってくるのです。従ってこの際社会問題に限って調査されるならば、社会問題として取り上げてくるものは、われわれの一応の通念からわかってきますが、しからばどういう程度のものが予想されるか、この点だけでも一つ明らかにしてもらいたい。
○国務大臣(岸信介君) これは要望は私いろいろあると思います。現に、私どもの聞いている全国の農業者のこの被買収者の団体における要望も必ずしも一様じゃございませんで、また地方的に、従来そういう団体に属しておる人々が要望しておった事柄も、私は必ずしも同一ではないと思います。従って、要望自身を私は直ちに取り上げて、その要望に沿うということを申しているわけではございません。そういうふうにいろいろな要望もございますし、とにかくその要望いかんにかかわらず、先ほど来申し上げているように、農地改革という私は一つの大きな社会的変革がこういう立法によって戦後行なわれた。これによって急激に日本の農村の態様が変わってきたというごの事態から生ずる旧地主の、あるいはある方面においては生活上に困っている問題もあります。あるいは生業上にいろいろな支障を来たしている問題もあるし、その他のこの被買収者を中心としての社会問題が日本の農村に起こっておるというこの事実は、私は黙視できないと思います。先ほど来申し上げた通り。しかし、それに対して対策としてそれならばこの農地改革というものを変更して、さらにこれらのものにもとの所有権を返すような、あるいは農地を買収したものを取り戻すというような、あるいは地主の中にはそういう要望を持っておる人もあろうと思います。ありましょうけれども、そういうことを政府は考えるべきものじゃない。また、この買収価格につきましては、売った方から言うというと、これはまあいつでもわれわれの普通の常識から言って、売るのはなるべく高く買ってもらいたい、買う方から言うと、なるべく安く買いたいという普通の売買取引のなにから言いまして、地主の方から言えば、どうしても価格がこれは十分でなかったというような見解もありましょうが、しかし、それについてはすでに最高裁の判決もあるのでありますから、その価格を不当であるとか、あるいは十分でなかったからこれを追加してどうするというべき性格のものでは私はないと思います。そういうことを考えているわけじゃない。しかしながら、現実に起こった、先ほどから言っているようなこの変革に基づいて起こっているこのもとの地主を中心としての社会問題の実態を把握して、政治上これに対して不安定、不安の状況をなくしていくということは私は必要じゃないか。それについてのことを各方面の有識者を集めて一つ審議して調査してもらう、こういうのが目的でございます。
○山本伊三郎君 今、総理の御答弁で、若干まあ一つの具体的な問題が出てきたのですが、大体この旧地主の方々の問題については、われわれ社会党といえどもそう冷淡に考えておらない。実際問題で非常に困っておる方もおられます。しかし、総体にして困っておる一つの問題点というのは、今まで旧地主としていわゆる小作者からある程度のものを取って、またわれわれの言葉で言うといわゆる搾取をして、あぐらをかいて生活をしておった、それだけでなくして、やはりその村における一つのいわゆる名家としていわゆる尊敬された立場におられた方々が多いのです。その方々が、一介の労働者とか、あるいは非常に暮らしの悪い人であれば、現在のような生活に転落してもそれほど精神的な打撃を受けないけれども、今までの生活がそういう生活であり、また精神的な誇りもそういう誇りであったのが、一朝にしてあの農地改革によって転落してしまうたということから私の知る範囲でも自殺をした人もある。これは事実です。しかしその人のスタンダードとしての、生活の基本として考えた場合には、われわれから見るならば死ぬに足らない程度であったと思う。しかし、あまりにも大きい変革のために、そういう悲劇を生んでおる人も私はよく知っております。従って、われわれがそういう非常に生活に困って、一つのいわゆる農地改革という国の施策によってそういう生活に困っておる方々に対してわれわれが救うということは、社会問題として救うということは、これはわれわれも総理と同感です。ところが今言われた、あるいは生活あるいは生業に困っておるということになれば、この問題のあるような調査会を作らないでも、政府として施策をする方法は私はあると思う。何もこの一千万円というものは、総予算から見てそう大きいとは思っておりません。予算のことは言いませんけれども、そう、問題をかもしてまで、この調査会を作って調査をするものの対象にならぬと私は考えておるのですが、それがまた一般の方でもそういうことが言われておるのですが、そういうことについて、別に調査会を作らぬでも、政府の今言われる考えならば、施策に表わす方法があると思うのですから、それに対して不要であるということに対しての御答弁をいただきたい。
○国務大臣(岸信介君) もちろん、社会的の、全国にわたりましていろいろな生活上の問題であるとか、国民の福祉の問題であるとか、一般にわれわれは社会保障制度で考えていくということは、これは当然であると思います。ただ問題が、これは農地改革という一つの国の施策によって引き起こされたものであります。そうして農村における今の、元旧地主の立場にあった人々が急激なるそういう国の施策によって生活上の変革を受けていろいろな問題を生じておると、こういう事態であるというと、これを一般的な、ただ社会問題としてわれわれが社会保障制度の対象として考えるということは、私は適当でないのじゃないか。もちろん、しかし調査した結果、そういう状態であって、われわれが想像しておるような事態ではない。一般の社会保障制度の拡充なりあるいは社会保障制度の分野において考えてよろしいという問題であるかもしれません。それらのことは調査の結果を待って言うべきであって、今こういう方法でやるべきだということを私はこの問題についてあらかじめきめてかかるべき問題ではないので、それよりももう少し大きな問題であると私は考えておるのでございます。そういう考えで調査会を置く、こういう考えでございます。
○山本伊三郎君 執拗でございまするが、実は私も社会党に属しておりますけれども、この旧地主の人々から相当陳情を受けるのです。陳情を受けた場合の、来る人のもうほとんどが、今総理の言われたような、こういう社会問題の、いわゆる生活に困っておる、生業に困るからこれに対して何とかしてもらいたいという考えでおらないのです。やはりあの農地改革によって土地を取られてしまった。そういうことに対するきわめて大きい不満を持っておられます。しかも、それに対して政府は非常に冷淡である、こういうことがほとんどです、私のところに来る人については。もちろん、反対の方々も陳情に見えますけれども。そうしてくると、今総理の言われる政府の意思とこれを望んでおる対象のいわゆる農地買収者の方々の考え方とは私は一致しておらないと思う。そういうことから、もし調査会において、調査会はあなたが指導するのではなくて自主的にやる調査会でございまするから、もし調査会においてそういう人々の意向というものが強く入って、政府が今考えておらない、いわゆる国で補償するとかあるいはまた所有権の問題について何らかの結論が出たとした場合に、やはりこの調査会の結論というものは尊重するということは、政府はいかなる調査会、審議会でも言われておるのですが、調査会のそういう結論が出た場合に、やはり調査会の結論に従うというのならば、総理の言われたことと全く反対の、しかもわれわれの方で討論するということは無用になってしまうと思うのですが、調査会の結論について、どういう結論が出ても、今の政府の考え方というものは通すかどうか、この点はっきりしてもらいたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) もちろん、こうした法律によって調査審議をするという場合において、審議会のもとにおいて慎重審議された結論というものを、政府が尊重すべきことは当然であります。私はただこういうことを気休めにやって、政府は別に考えるのだということはこれは申せない。調査会を作る以上は、それは尊重しなければならないということは言うをまちません。ただ、政府として従来の方針としてきまっておることは、農地改革ということ自体をわれわれは変更する意思はない。また変更すべきものではない。従って、所有権をこれを返還させるとか何とかということは、考えるべきものにあらず、これはわれわれは現在の立法及び農地改革の歴史から申しまして、これは動かすべきものではない。そうして最高裁の判決というものを、われわれがこれは今の日本の政治のもとにおいてこれは尊重しなければならない。それが認めておることを、われわれが不当であるからそれをどうするというようなことは、これは政府としてだけじゃなしに、私は政府機関においても、こういう調査会においても、尊重していかなければならぬと思います。そういうことは私は二つの問題としてきまっておる問題であるけれども、あとの措置を、どういう措置をとるべきかということに関して、もし措置をとる必要があるとするならば、そういう結論については尊重すべきものである、かように考えております。
○山本伊三郎君 最後にもう一点。実は問題点がもう結局そこに集約されてくると思うのです。私はあの衆議院でもあるいは各種の委員会においても、総理なりあるいは関係閣僚なり、政府委員から説明されることそのままであれば、私はこの調査会に対して、社会党は党をあげて反対するものではないと私は思うのです。しかし、反対するのは、やはりその調査会において出す結論というものは、今の要望しておる人々、団体の意向というものは、政府の考えておることとは違うのだ、こういうところに問題点を含んでおると、私は前段にこういう実体的な法律でないにもかかわらず、これほど問題になってくるのは、そこに焦点のあるということを、私は特に岸総理にただしておきたいのです。調査会の結論が出た場合に、私は基本的な国の方針というものはわかります。今さらあの農地改革をこれを変更するということは、おそらく日本の民主主議に逆行するものであって、おそらく、もし、かりにそういうことを強行される政治家があるとするならば、あの南朝鮮の二の舞いを踏むような大きな反対のあることは当然でありますから、そういうことは万々ないと思いますけれども、それ以外についても、やはり国会における政府の皆さん方の答弁に対する違った調査会の結論が出る公算の多いということをわれわれは心配しております。従って、もう一度その点について政府の見解を述べてもらって、私の岸総理に対する質問をこれで終わりたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 先ほどからお答え申し上げております通り、もちろん調査会ができますならば、調査会の審議の結果は、政府が尊重することは当然であります。しかしながら、国の基本方針あるいは最高裁の判決というようなものに違反するような結論については、これは私は調査会が出しもしないし、また出すべきものでもないし、もし、かりに、仮定の問題でありますが、仮定としてそういうことが出たとするならば、これは私は政府は尊重すべきではなかろう、こう考えております。
○辻政信君 私はこの法案の根本精神と、政府の決意に対して二、三お伺いいたします。最近における中国革命の最大の課題が土地改革であります。そのために数百万の血を流して、ようやくその実現ができておるのであります。日本における土地改革というのは、敗戦という大きな犠牲の上にマッカーサーという独裁者によって強引になされた政策であります。ほとんど何らの準備も調査もない、そうして強行されたものでありまして、冷静にこれを見ますというと、その成果においては確かに大きな点もございましたが、同時にまた、反面において幾多の矛盾と不合理があるということは、これは否定できないのであります。この矛盾と不合理を是正するというのが、この法案を出された趣旨と考えますが、いかがでありますか。
○国務大臣(岸信介君) 今お話しの不合理と矛盾というこの内容でございますが、先ほど来私がお答え申し上げているように、この農地改革そのものの基本を動かすということは、これは私はすべきものじゃないと、こう考えております。また、価格そのものが不当であった、これはそういう要望もあります。また、今お話しのように、非常に急速やられたことでありまして、あるいは地方的にみていろいろ議論の生ずるようなものが私は皆無だとは考えませんが、一応とにかく最高裁においても正当なものだと認められている以上、それを変更するような考え方は、私はしておらない。しかし、今辻委員の御指摘のあったように、これは非常に大きな改革でありまして、歴史的に見ても、諸外国の例を見ましても、こういうものがああいう短時日の間に、とにかく一応形だけはスムースにでき上がったということは、これはほとんど歴史的にも例のないことじゃないか。しかし、その半面において、それがそういう急激なことが日本農村の上にもたらしたところのいろいろな影響というものは私は相当大きいと思う。それに対する不満があるでしょう。その不満から生ずる不安というものがあることは、これはこの事実は私は否定できぬと思う。それに対してその実情をよく調査して、そうしてこれに対処すべき適当な方策を考えるということは、この際私は必要であると思います。一つそれをこの調査会でやってもらう、こういうつもりであります。
○辻政信君 では、この調査会で、農地改革の根本方向は変更しない、しかし、変更しない範囲において小さな是正、補償、こういうものはやるお考えですか。
○国務大臣(岸信介君) これは具体的にどういう問題であるかわかりませんけれども、かりに、この根本には触れない、しかしこういう点をさらに是正するならその不安が除かれるというような問題がありとするならば、そういうことももちろん研究の対象にしなければならぬ。ただ、補償の点につきましては、先ほど言ったような意味において私は補償することはしないということを、政府としては申し上げておりますから、その方針は政府としては貫きたいと思っております。
○辻政信君 おかしい、あなたのおっしゃることは。この提案理由を読んでみると、農地改革は正当な法律に基づいて正当に行なわれたことであって、これを是正する意味における補償は考えられないと述べているが、私は、占領軍によって強行されたこの大改革の裏に、国家が責任をもってその犠牲になった人を救うという義務があると思う。大方向はくずさぬにしても、それは補償じゃありませんか。補償は絶対にしないと言い切りながら、そうして一体何を調査しようというんですか。
○国務大臣(岸信介君) これは、先ほど来申し上げているようにこの農地改革に基づいて土地を買収された人々を中心として、それらの人々の生活上あるいは生計上その他変革から生ずるところの不安の状態をこれをよく実情をまず把握する。そうして、これに対してその不安を除くのにどういう措置がいいか、あるいは措置をする必要ないかどうかという問題を調査しなければならぬというのがこの目的であります。先ほど来お答えを申し上げているように、今辻委員もお話しのように、一つの国が施策を行なって、国の一つの方針、そのときに占領下であり、マッカーサー元帥の指令であったということは、もちろんのことでありますが、国がある一つの政策を実行するために、それから生じたところの不安なり、あるいは変動から生じているところのいろいろな犠牲というものがありとするならば、これに対して国が当然何らかの措置を講ずるということは、私はこれは必要である。それは今言う価格が不正当であったから、価額が足りなかったからこれをさらに追加して賠償するとか、補償するとかいうような意味の補償ということは、私は考えておらないということを申し上げたのです。
○辻政信君 私は、それにいかに大きな矛盾があったかという一つの例を、これは申し上げるまでもない、御存じだと思いますが、その一つの例を申します。広大な農地を占有して、自分が耕さずに、坐りながらぜいたくしておった不在地主、これもあります。しかしながら、それはきわめて少数でありまして、大部分は祖先伝来の汗の結晶である二、三町歩の農地を家族労働で耕して、農村における中堅的な自作農家、これが多いのであります。その働き手が戦争のために兵隊に取られていった。従って家庭労働力がないから、やむを得ず、留守を守るために小作をさせておいた。そしてむすこが七年も八年も戦場で苦労して、骨と皮になって引き揚げてみるというと、その留守中に小作に出しておった土地がそっくり取られておる。精神的な打撃を受けて、祖先の墓の前で自殺をしたのがおるのです。知っております。一家心中した例もあるのであります。これほどの大きな犠牲を払わしておる。しかも、これは個人の過失じゃない。国家の至上命令で出された尊い犠牲であります。これほど大きい犠牲を、当時の国務大臣であったあなたは、だれよりもこれは痛感なさっておるはずである。調査会を待たず、こういう重大な矛盾をあなたの責任において解決するということがなされなければならぬと思うが、その点についてはどうですか。
○国務大臣(岸信介君) そういう実例も私はあると思います。また、いろいろな私どもの知っている身辺の二、三の例におきましても、いろいろなこの上地改革から生じたところの悲劇的な犠牲というものも知っております。これらの生活の実態を政治家として、私個人の個人的な責任として今辻委員は御質問になりましたが、(辻委員「個人じゃない。総理大臣として聞いているのだ」と述ぶ)政府の首脳者として考えなきゃならぬことは、そういう国の政策によって生じた、国家の変革によって生じたいろいろな事態を正確に把握して、これに対して、国として適当な措置を講じていく必要があるという考えのもとに、この調査会を設けるというわけであります。
○辻政信君 じゃもう一つ、土地の買い上げ値段は当時において正当であった。裁判の判決も出ておりますから、これは文句は言いませんが、当時反当たりの最低の買上げ価格が三百八円、最高が九百九十四円、本来ならば、その農地は農業以外に転売を許さないという建前で行なわれた政策であります。しかるに、最近の状況はどうかというと、年間において、この土地も含んで一万二千町歩という土地が農業以外に転用されておる。その転用価格を見ると、一反歩平均七十万円、最高価格は三百万円にもなっておる。三百円で取られた一反歩が、十年間に一万倍の三百万円で農業以外に転売されておる。この一万倍の、これは不労所得でしょう。これがびた一文も旧地主に潤わしておらない。これほど大きな一体不合理が、近代社会にあるとお考えになりますか。
○国務大臣(岸信介君) これは社会的な非常に大きな変革の際、経済界においても大きな変革がありまして、いろいろな物価の非常に大きな動きというものがあるのでございます。これに対しては、国はあるいは税制その他によりまして、そういう高い値段で売ったと幸に、その譲渡価格に対して税金を取るとか、あるいは土地の評価において適当な税をかけるという措置を講ずべきものである。あるいは農地でなくても、土地の問題については、ずいぶん都会においても、あの敗戦後破壊されておった土地が非常に、そういう時代でありますから、その当時の時価で安く買ったものが今日のような経済が復興してくると、それが非常な値上がりをしておるというような事実もございます。ただ問題は、この農地改革は、自作農創設の趣旨に沿って、耕作者というものの立場を擁護をする意味で出ておる農地改革でございます。従ってそれが農地以外のものに転用されて転売されるとか、あるいはこのほかの方にも用いられるというような場合に対して、従来日本の法制その他において十分な、そういうことに対しての規制なり、あるいは計画なりというものが遂行されているかというと、それが今日まで、そういう法制その他のものが十分整っておらないという私はうらみがあると思います。しかし、今申しますような意味において、その上がった金を旧地主に直ちに、その一部なりあるいはなんぼかを与えるべきものであるというふうなことは、法律論的な立場からいうと、私はちょっとむずかしいのじゃないかと思います。そうじゃなしに、むしろそういうことが行なわれているという実情が、いろいろなまた私は旧地主といいますか、農地を買収された人を中心として、いろいろな不安やあるいはいろいろな問題をかもし出している一つの原因になっていることは認めなければならぬ、そういう実情を十分調べて、そういうことに対する不満なり、あるいは不満から生ずる社会的不安というものを除くように、適当な措置を講じていきたい、こう思っております。
○辻政信君 この法案の内容を見ますというと、二年間の期限で、二十人の委員と十人の専門調査員、そうしてわずかに一千万円の予算でやろうとしている、その規模を承りますというと、調査の内容は、第一年度に一万五千戸、第二年度にも一万五千戸、二年かかって三万戸の抽出調査をやろうとする。農林省の調査では、この被害者というか、対象になる者は百七十六万戸あるといいます。そうして一方地主同盟では、全国で二百五十三万八千戸あると言っておりますが、そのまん中をとりまして、かりに二百万戸が対象になるといたしましても、そのうち農林省の方で、農業委員会等を通じて調査済みのものが七十万戸ある、現に実態が把握されているのです、七十万戸の。それを政府は、この調査会を作って、二年間にわずかこ三万戸の抽出実態調査をやろうとする、あなたがほんとうに不合理をなくそうとするならば、今まで持っている七十万戸の調査資料で出る。今さら何をあらためて二年間に三万戸やってその結論を得ようとするのか、信念と勇気があるなら、今まで集めた資料の中から適当な方策が出なければならぬ、そこに私はこの法案のインチキ性があると思います。いかがでありますか。
○国務大臣(岸信介君) もちろん、この調査会の調査だけでもって、この調査会自身もこういう抽出調査をいたしますと同時に、従来あるところの調査資料というようなものも、もちろんこの調査会の調査資料として検討さるべきものだと思います。私はただ、しかしながらこういう調査会ができます以上は、調査会みずからもある程度の実態調査をするという責任を持っている。この結論を出す以上は、もちろん、他の調査資料というものも、これを十分検討すべきことは当然であると思います。
○辻政信君 これはもうわかり切ったことなんです。一番はっきりしたことは、ここにおられる下條委員、一人でも四万戸ぐらい調べている、あなたの党員です。農林省は七十万戸調べている、あなたの行政機関であります。それだけの資料でも、政府がほんとうにやろうという誠意があるならば、結論が出るのです。二年間かかって、牛のよだれのようにだらだらごまかしていかんでも、今までの資料でも、ほんとうにやる意思があるなら出る。だからこの法案は私はインチキだと言うのです。二年間たたなくちゃ結論は出ない。二年間に心中する者がいる、二年待てない、ほんとうに因った地主は。しかも何ら悪いことをしておらない、不在地主でない人で、兵隊にとられたがために、首をつる一歩手前まで追い詰められた者があるのです。二年たたなければ、それらに対する救済はできないのですか、あるいはこの調査会と別個におやりになりますか。
○国務大臣(岸信介君) これはもちろん、先ほどもお話がありましたように、一般的な社会保障の問題として、生活に追い詰められている人に対して生活についての援助をすべきいろいろな社会保障制度もございます。しかし問題は、そういう一つ一つの具体的例を幾つかあげて、それは確かにそういう緊切なものもありましょうが、私どもはこの農地が、先ほど来申し上げているように、農地改革によって全国的に急激にこういう変革が行なわれて、全国的に起こっておるところの一つの社会問題としてこれを十分一つ調査をし、実態も把握して、これに対して適当な政府として行なうべき方策を立てるということが、私はどうしても政府としては考えていかなければならぬ問題であるという意味において、こういう調査会ができて調査し、同時に適当な措置が必要であるとすれば、どういう措置が必要であるということについて審議してもらう、こういうつもりでございます。具体的問題で、もしそこまで追いつめられているものがあるのに対して、それはもちろん、政府として一般的の問題として処置しなければならぬことは言うを待ちません。しかし、被買収者問題として全体として解決するという問題ではなかろうと思います。その問題はやはりこういう慎重な方法によって決定すべきものである、こう思います。
○辻政信君 私もむろんこの政策の成果を認めておりますから、いまさら小作人に分けた土地を取り上げて地主に返せと言いません。また、地主を救うために関係のない国民の税金でやれということも言わない。言わないが、法理論はともかくとして、政治的に見ると一反歩三百円で出した土地が十年間に三百万円に売られておる。転売されておる。至るところにありますよ。そうすると国民の腹を痛めずにどっちも救おうとすれば、この十年間に一万倍になった不当といいますか過当の利益を半分ずつにして、旧地主にも半分与えるということにすれば、これは率直な考え方ですがね、率直な政治論として私は言える。それならば単独立法だけでいけるはずです。解放された農地を他の目的で転売をした価格、その半分はもとの所有者に返せということは、ほんとうにやる勇気があれば単独立法でもできる。そうして小作人も少しも腹を痛めない、ただもうけが半分だけもとの地主に返されたという道義的な政策が出てくる、そういうことは調査せんでも常識で考えられるじゃないですか。それに合うように法律を作るのが、法律の仕事なんじゃありませんか。法理論を私は議論しているのじゃないのですよ。この重大な変革は、法理論じゃ決定できない。政治的な道義的な立場に立って解決すべき責任があると思う。いかがでありますか。
○国務大臣(岸信介君) この問題自身に対する政府の考え方としては、私は辻委員のお考えの通りに考えております。私はこれは旧地主が何か悪いことをしたとか、あるいは過失があってそういう犠牲を何しているわけじゃございませんから、こういう国家の政策として、こういったようなことに関係して起こっておるところの事態でございますから、それに対して政府がそれを見殺しにし、知らん顔をするという性質のものではない、こう思っております。ただ、今おあげになりました買収された土地がさらに転売されて非常な利益が上がっている。これをあるいは半分なりあるいは適当な方法で地主と小作人との周に分けたらよろしいじゃないかというふうな御議論も、そういう考え方も私どもも、そういう考え方のあることを承知しております。しかしまた、それに関連してですよ、いろいろな他の場合においてもそういう過当な利益を上げているところのものがあるが、それとの権衡をどうするかという議論もございます。従って私はそういうかりに政策をとることが適当であるというようなことに関しましても、この広い見地からいろいろなこの視野から調査審議された結論が、そういう結論に出てくるということであれば、大いにそれを尊重していかなければならん。ただ、今の立場において直ちにやるということは、法律的の疑義もございますし、法律的だけじゃなしに、政治論としても今私は直ちにその結論を採用するというだけの自信を持たない、こう思います。
○辻政信君 私は相当古くから内閣委員で、いろいろの法案を審議してきましたが、今度の法案ほどふに落ちない法案はない。法案に反対するんじゃありません。信念と勇気をお持ちになっておらない。はなはだ失礼な言い分ですが、総理大臣は地主団体が陳情に行くと、よし考えてやろうと言われる。社会党が文句を言うと補償はしないと言う。その両方組み合わせて、体裁よく出した法案がこの法案じゃないのか、こう思う。一体二年先になればどうなるかわからぬように、まるでえさをぶら下げて、二年間とにかく、社会党から文句を言われたら補償しないんだと逃げておる。どこへ持っていくんです、これは一体。また自民党の諸君も、私ははなはだ真剣さが足りないと思う。それはなぜかというと、地主の数よりも小作人の数は多い。そうして地主というのは社会党に絶対に入れない。だからほっておいても保守党へくるんですから、地主を怒らさぬようにえさを見せて、二年後には何とかやるんだと言いながら、小作人からも怒られぬように、お前らの土地は取らぬぞと、社会党に対しては補償しないぞと言っておる。これぐらい無責任な、これぐらいわけのわからぬ法律は、私は七年間の内閣委員会で今度が初めてです。しかも、二年間という期限をつけておるが、この結論が出る二年間、岸さんは内閣をやっていくつもりですか、二年間、いかがでしょう。
○国務大臣(岸信介君) これは法律に二年間と置いただけで、その間必ずその法案を提案したところの内閣が続くか続かないかということは、私は関係ないと思います。これは内閣がかわりましても、その政府を拘束するものであり、もしもこれが次の内閣において不必要だと思ったら、それの廃止の法律を出せばいいわけでございますから、ある以上は、これは政権の何とは関係ないと思います。 それから今お話しでございますが、私は先ほど来申し上げておるように、この旧地主の問題というものは、いろいろの議論があります。あるいは従来社会党の皆さんからは、むしろ一般社会保障で考うべきものであって、そういう問題は、生活上困るものがあるなら、これを特別に扱うということは適当でないというような御議論も私は聞いております。しかしながら、私はやはり先ほどから申し上げているように、国家が一つの農地改革という政策を断行して、それから生じておるところの一つの事態であって、これをただ一般の生活保障の対象として考えることは私は適当でないと、こういう考え方を持っております。さらにこの旧地主のうちにはいろいろな主張がございます。先ほど来申しておるように、あるいは土地を返せというような主張がある一部においては行なわれたこともございます。今はそういう主張はないように私は思っておりますが、そういう主張もある。あるいは買収価格が不適当であったから補償をさらにしろという要望もあります。しかしながら、そういう意味において、それは地主団体の何の要望でありますけれども、私は農地改革そのものを変更すべきものじゃない、これは動かすべきものじゃない、それから補償という、いわゆる価格が不当であったからその価格を追加する意味において補償するということはしない。しかし、これから起こっておるところの社会的の不安という問題に関して、国が責任を持ってそれに対して道義的に処置すると同時に、適当な方策をこれに立てて処置するということが、この問題についての私は解決方法だと、それについてはいろいろな議論があり、一つだけ、ここだけを見るというとこういう方法があるからということですけれども、国として政策を行なう場合においては、それが他のいろいろな方面に及ぼすところの影響、権衡というようなものも頭に置いて適当な結論を出すことが必要であるという意味において、こういう調査会を設けたい、こう思うのであります。
○辻政信君 最後にくどいようでありますが、今度の敗戦で一番困ったのは、肉親を戦場でなくした遺族であります。これは幸いに岸内閣の手で文官並みに是正をしていただきました。これは私はあらためて感謝をします。同時に、その次にやられたのは、祖先伝来の土地を二足三文で巻き上げられたこの人たちです。大きな政策の犠牲になって、これを救うというと新聞からたたかれる、いろいろの点はございましょうが、戦争の跡始末、マッカーサーの独裁政治の地ならしという意味で、どうか岸総理は遺族を救われたと同じ気持でもって、あまり世論を気にしないで、良心と信念を持ってこの大政策の犠牲にあえいでおる人を救うように努力をしていただきたいということを、最後に希望いたしまして質問を終わります。
○横川正市君 私は昨日の与党側の質問を実は聞いておりませんので、関連からいきますと、ダブる点もあるかと思いますが、最初に根本問題で、私は今の辻さんの意見とは大よそその見解を異にいたしておるわけなんです。ことに、この農地改革がもたらした終戦後の日本における効果の絶対性というものは、これはもう総理も、おそらく口を開いて否定する者のないくらい、全面的に私は認められていると思う。そういう点から、総理に明確にしていただきたいと思うのでありますが、最高裁の判決の中で、今いろいろな問題はたくさんありますけれども、その判決の中心になっておりますのは、これは単にGHQがどうとか、あるいは終戦後のどさくさにどうなったとかこういったことよりか、根本的な問題としては、土地の持っております公共性といいますか、そういうものを高く評価をして、その上に立って日本の農村制度というものをきわめて短期間に抜本的に解決をした。そのことはこれは旧地主にとってはいささか過酷なと思われるような節もあるかもわからないけれども、これはやはりその人たちに忍んでもらって、そうしてこの農地法というものの示した大喜な成果というものはこれは国全体で守っていかなければいけない、そのことは現行の憲法には違反しない、こういうふうに最高裁は判決を下しておるわけなんであります。この観点について、私はしばしば総理の答弁を聞いておりますが、この点を認めておられながら、どうもその認められているということを口では言うんだけれども、実際にそれならば、これを認めてどう対処するのかということになりますと、いささか不明確になるのはでないか。というのは、今終戦後のどさくさの問題として、ああいうような問題が起こった、旧地主の皆さんから陳情がきた、その陳情にも一々ごもっともな点があると認められて、それに対して対処をしようというのは、これはこの中にありますように、今まで私の聞いたのでは、今の辻さんの問題としてあげられたような事例とか、あるいはその後の生活態状が困窮をいたしまして、子弟の教育の問題であるとか、あるいはその日常の生活に困って、相当一般社会から指弾を受けるような、そういう立場に立たされたとか、そういうようないろいろな問題を個々に摘出をして、そうしてそのような問題があるから、これらが社会問題として放っておけないんだ、こういうふうに言われるわけです。前段のこの点をやむを得ざるものとして認め、それは憲法に違反しないとこれを確認された上で、なおこういうような個々の問題が起こったというならば、私はこれはこの調査を待たずに、現在の実際に運催している政治の中で解決していける問題なのではないか。すなわち、個々に起こっておるのは、今兵隊さんに取られて帰ってみたら、不在地主だからだめになっておった。こういうような問題産、生活困窮の上に犯罪を起こす寸前までいっておる、これは見捨てておけない問題じゃないか、あるいはそのいろいろな農地改革の結果として、土地を失って生活に響いて、そのことが日常の生活が非常に不安になってきて、その上でやはりどうにも現在の政治の上で救ってもらわなければ困るという戸が出てきたというならば、私はこれは今すぐ解決をしてやらなければならない、こういうふうに思うわけであります。その状態を救うがために、最高裁で決定をされましたこの公共の福祉に反しないんだ、このくらいはがまんしてもらわなければいけないんだという根本的な決定というものを認めておるならば、私はこの調査会設置法というのは、竜頭蛇尾で必要でないんだというふうに判断をしたいのでありますが、その点一つ総理から明確に御答弁いただきたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 私は国が必要であると認めてある政策を行なう、ある行政処分なり、あるいは法律制度なり何なりによって、正当な方法によってある政策を断行する、これはおのずからその政策がいいか悪いかという批判はありましょうけれども、そういう必要がありとしてこれを行なって、そういう場合に国民が一面において、それはもちろん国の政策でありますから、これに従うことは、これは当然であって、正式に、民主主義でありますから、民主的に憲法、法律で設けられた法律制度として、それが実行される場合においては、これをそのものをひっくり返すということは、これは許せないことだと思う。しかしながら、そのことから生ずる犠牲、それはその人の過失であるとか、その人の悪意であるとかいうようなことから生ずるところの、あるいは損害なり、罪悪というものは、これは私は国としては、政治としては考える必要はないだろうと思います。ただしかしながら、それは社会問題として、そういうことから生じて、かりに犯罪が起こるということであれば、それは防止しなければならぬことは言うを待ちませんけれども、それに対して何か救いとい言葉が適当であるかどうか知りませんけれども、何らかの手を伸べるということは必要ないことでありますが、しかし、その人の悪意でもなければ、あるいはその人の過失でもない。その政策の実行された結果として、ある犠牲を生じ、その犠牲が相当大きなものであり、その個人にとって非常な一つの不安であると同時に、それがさらに社会的にも不安を生ずるというような場合においては、国家がそれに対して何らかの措置を講じていくということは、そうしてその不安を除いていくということはしなければならぬ。こっちの政策を変えるということじゃありません。政策はある必要があってそれはやるのだけれども、それから生ずるところの影響、その影響をこうむる人の悪意だとか、あるいは過失だとかいうことじゃなしに、非常な大きな変革を受けて不安を生じているという場合に、それに対してその受けた実情を調べて、それに対して適当なる措置を講ずるというのは、国の政策として当然考えなければならぬと思っております。
○横川正市君 私は今の総理の考え方そのものには、根本的には反対をする立場にはないと思っております。ただ、それならば一例を申し上げますと、戦時中に私の財産として国と契約をいたしました、たとえば年金のようなもの、あるいは保険のようなもの、これは少なくともそのことによって当時すでに財産を、土地もあり家屋もあり、そういったものもすべてこれは年金にかえて国と契約いたしました。その人が六十才なり六十五才になりますと、少なくともその当時の貨幣価値で旧以上の生活が維持できるということを、実際にはこれを国が保証したわけです。そうしてその国の保証した年金とか保険とかいうものが、今それがどうなっているかと申しますと、郵便局へもらいにいくのに電車賃のあれにもならない。まったくそのまま放任した方が得だというような状態になっております。これらの問題は、直接の私は被害者として、どうだろうというふうに政治の面で解決できないかといって見ても、今のところは、これに対して何らの方策も立てられておりません。それからまた、戦時中に国の戦争目的を遂行するために、徴用になった船舶にいたしましても、あるいはそれに類似する施設にいたしましても、これらもほとんどこれは戦時補償打ち切りで、何らの政府によって救済措置もとられていない。そのほか数えあげれば、あの太平洋戦争という一つの一大変革を契機にして、今も日本のあらゆる階層に、このことによって起こった弊害というものは、非常にたくさん私は現存していると思うのであります。ただそれが戦後十五年たって、何となくその損得の観念も薄らぎ、それから実際上はそのことによってこのどうこうということよりか、もっと大局的に日本の民主的な建設の問題に精魂を打ち込んでいる。こういうようなことに対して、一般社会もこれを総体的に受け入れて、そして現状のある一つの平和な線というものが生まれてきておると思うのです。そのとき、たまたま旧地主の方々の団体が形成されて、そして政府に対して要求したその内容というのはどういうことかといいますと、大体一から八までありまして、その一から八までの第一に、農地解放地に対する不当な補償価格の泉正に関する事項、このことを第一の旗がしらにして、国にその補償を要求する。しかも、国に補償を要求する前段として、旧小作人と地主との激しい争いが香川県や石川県に持ち上がっている。そういうことが、最高裁の農地法合憲という判決を得てから、これは国に補償を要求するようになった。この団体の力が非常に強いから、今この調査会法案を作って、そして何らかの処置をしようとする。ところが、こういう団体を構成しないで、この日本の建設に邁進しておる者については、言わない者はいわば損をした、そのままにしつげなしである。こういうことでは、私は実際上政治のあり方として不公平だと思う。そういう観点から、前段の、公共の福祉を認めた判決を明確に認められるならば、その線に従って、やはりこの農地解放問題についての政府の態度というものも一貫して出されるべきであり、ただそのことによって、あるいはその他の事情によって、るる出て参りております一般的な社会問題、これらについては、私は、総体的な問題として、国の財政上の余力のある限り、これを解決するための努力というものが進められる、このことでなければならぬと思うのでありますが、この点は、非常に政治の面からいっても不公平のそしりを免れない、かように私は思うのでありますけれども、所信をお伺いしたいと思う。
○国務大臣(岸信介君) もちろん、ああした戦争並びに敗戦という、かつてない事態でございまして、国民全体がこれに関連していろいろな迷惑を受けたことは、これは各方面であろうと思います。しかし問題は、ただ地主団体が強い要望をしたからこれに屈してどうだ、あるいは黙っておれば知らぬ顔をするのだということじゃなしに、やはり原則は、この戦争及び戦争に関連して起こった事態というものは、国民として、とにかくある程度犠牲を国民全体が一つ受忍してもらわなければ、ことごとく取り上げてやるということは、実際上はできない。しかし大きな問題、それがやはり国全体から見て大きな問題であるという場合におきましては、やはりそれに対して政治的な手を伸べていくということは、私は政治の上から考えて、もちろんそれには、もし財政的な支出を要するとすれば、国の財政全体のことも考えなければなりますまい。それからまた、他のものとの権衡ということも考えなければなりますまい。いろいろな事態を考えなければならぬ。ただその問題だけを取り上げ、その問題だけに限局して考えるということはもちろんできないことだと思います。しかし、今お話しのように、この地主の問題というものは、とにかく日本としては、日本の今までの農村の基礎をなしておった土地、地主という、このことに対して土地改革が行なわれた、これはよその歴史を見ましても、農業政策のある段階において、土地問題、農地問題というものが取り上げられて、これが変革を受けるということは、日本の歴史の上においてもありましたし、また各国にもあるわけでありますが、そういう非常な歴史的な変革を行なうという場合に、その政策によって受けるところの立場にある人々については、これに対して政府が全然その問題を放置しておくというべき性質でなしに、やはりそれは、もちろん国が敗戦の後社会的不安があり、財政的にも、あるいは諸般の政策の上においても、まだ十分な措置のできないような状態のときは別でありますが、それがある程度国力もできてき、安定してくるという場合においては、やはりそういうことについては何らかの措置をする必要があるのじゃないか。また、そういうことについては、政府がいろいろな陳情団体の意見を聞いて、そのままこれを処理するというような簡単な問題じゃございませんから、調査会を設けて、各方面の有識者の意見も聞いて妥当な結論を出すということが、こういう問題を処理する上においては必要である、かように考えております。
○横川正市君 私は、今の総理の答弁でどうしても納得のできないのは、衆議院の速記録、それから今までの各方面の速記録を見まして、政府の答弁の趣旨というものは、各委員会を通じて表明されたものは、大体一応調べてみたわけであります。ところが、調べてみた結果として、まず、農地法の合憲だという裁判所のこの判決は、これを支持をする、それからいかなる補償も行なわない、そのやには、衆議院の場合には、増価税とか、それから不急な土地に対する政府の買い上げ措置であるとか、あらゆる観点からこの問題に対してはいろいろ質問をいたしております。その点からも、いわゆる国の税の措置といいますか、そういった点からも補償をしないという。それからもう一つは、現在の農地団体が政府に要求をいたしております各項目についてこれをあげてみたが、それも実は政府としては取り上げない。ことに、前の井出農林大臣は、これは非常に不当だから、政府としては行政措置でこの団体を解散せしめるとまではっきりと言っているわけです。そういうようなあらゆる政府側で言っている内容というものをずっと摘出して参りますと、一体この調査会というのは何をしようとするのか、その点が全然不明確なんであります。不明確なのは不明確なんであって、これからいろいろな人の意見を聞いて、それを明確にするのだ、こういうふうになりますと、私は、まず前段として、山本委員の質問にあったように、自由民主党の中に構成されておりますこの農地団体を支持する人たち二百幾名署名をいたしております。これはもうおそらく総理にも実際上の審議の経過というものが耳に入っていると思う。この人たちが結束をして、今かりに収益価格の問題を一つとらえてみて、そうしてそれを妥当な線に修正をして、その後の物価指数というものを掛けたものを、これを国が負担するという方針を打ち出したとする。そうすると、岸総理はそれに従わざるを得ないという結果を生まないかどうか、私たちは非常に危惧に感ずるわけであります。それは、今までの各速記録の中には、しないしないと言いながら、実際にはそういう動きが自民党の中にあるわけであります。それからもう一つは、増価税のようなもので、今辻さんの言った、不当な価格については半分ずつ旧地主に返還したらいいじゃないか、こういう方針も打ち出されておる。それらが今あなたの与党の中で決定されれば、それをあなたは実際上実施する、こういう結果にならないかどうか、私たちとして、この調査会というのはそういう危険性が多分に含まれているのだと看取をするのは、そういう動きがあるからなんであります。これに対して総理は、いやその動きはあるけれども、それはすべて不当だから、政府の考え方でこれは処置していくんだと、明確にするのかどうか。それならば私はこの調査会というものは要らなくなる、こういうふうに結論的には思っておるわけですが、御所信を承りたい。
○国務大臣(岸信介君) 先ほどから申し上げたように、旧地主の団体においてもいろいろな要望をされております。また、その要望もある程度の変化もされて、今日まで最初と変化しておるものもございます。私どもは先ほど来言ったような心がまえでこの問題を考えてみますると、問題はただ地主団体の陳情によってこれを取捨選択して適当に政府がきめるという問題でもなければ、また一党だけでこれをきめるという、もちろん、政党でございますから調査もいたしましょうし、政党としての立場においていろんな意見も持つことはあると思いますが、私はやはり公正なる調査会を設けて、そこにおいて各方面の意見を一つ公正な判断によって一つの結論を出しておられるならば、その調査の結果というものを、先ほども申し上げたように尊重していく、ただ、この場合においても、農地改革そのものの根本を変更するようなことは、私どもとしては認めないし、また、この立憲治下にあるわれわれとして、三権の分立しておって、法の最高のこの解釈をする最高裁の判決というものは、これを侵すような、これを認めないような結論というものは、これはわれわれとしてはとらない。しかしあくまでもこういう問題に関して、先ほど辻委員にお答えをしたような心組みで私どもは対処すべきものであって、政府としてはこの問題を適当な方法によってこの社会的な不安を取り除くというような措置を見出していきたい。それはいろんな議論があるけれども、それを一つ公正な立場から調査し、研究してもらいたいというのが、この調査会の意義でございます。
○横川正市君 私はこの問題は、行政組織法上からいって、政府の複雑怪奇になりつつある今の実態というものを是正をしろと、その意味ではこの調査会というのは不要じゃないかというような簡単な意味での調査会の取り扱いはできないというところに、実はこれは前回二度にわたって国会で問題になった理由があると思うのです。そこで今私は、これは社会党の立場から、調査会が必要だ、必要でないということよりか、調査をする目的について一体何なのかということを総理にお伺いしているのは、それはこの法律の持っておりますいろいろな問題というものを、こうではないか、ああではないかと聞く前に、政府が今まで委員会で答弁しているもののいずれをとってみましても、調査会をもって調査をするというようなものは、ほとんど政府としては必要がないんだというふうに言われているように思うのであります。補償も必要はない、それから収益価格の是正も、これも妥当なものである、それから最高裁の判決も、これも妥当なものである、農地のこの問題をひっさげて戦っておるこの団体は、行政上の問題として解散せしめたい、こうなってくると、一体この調査会というのは行政上複雑にするとか何とかということよりか、もっと根本的な問題で必要がないという結論に、私どもは立つわけなのであります。その点をもう少し必要があるんだということを私どもに納得のいくような説明があれば、私はその必要性に基づいて審議をするということはできると思う。ところが、いずれの政府答弁を見てみましても、必要がない、必要があるのは自民党の中のこの団体と、それから農地解放同盟という旧地主の団体と、この二つだけがこれを必要と認める、しかし政府のいずれの答弁を見、いずれの資料を見ても、必要がないというところに通ずる結果というものを、私どもはこれを確認しなければならない回答になっておる。その点を一つもう少し明確にしていただきたい。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど来申し上げておるように、国としてはこの農地の問題についてああした方法によって農地改革を断行した。私はこれは全体から見て正当な正しい措置であると思います。ただこのことは、これは現実にそういうことが行なわれた結果、私はその人の悪意やあるいは過失ではなくして非常な犠牲を負うておる、そういう政策が実行された結果。このことは現実にそういう事実があると思うのです。また、そういうことを世界の歴史から見ましても、ある場合においては非常に革命的な多数の血を流して行なわれたというような例もありますし、いろいろな事態があります。そういう大問題がこういうふうに急速に行なわれて、そうして非常な変革が起こって旧地主を中心として、旧地主の身分の上から申しますと、あるいは生計の問題も、あるいは生活の問題も、あるいは教育の問題も、いろいろな問題が起こっておると思います。これらが一つの不満を持ち、従ってそれが一つの社会的不安になっておるという事実は、これを私どもは目をつぶるわけにいかないのであります。これに対してどういう措置をとるべきかということについては、これは一方においては、われわれが正しい憲法のもとにおいて当然正当な法律において行なったことであるから、そのものを変更するというような議論もあるけれども、それはわれわれはやらない。しかしながら、この旧地主を中心としての今言っている社会的の不安というものを取り除くために何らかの措置を講ずる必要があるのじゃないか、しかし、それは価格が不当であったから価格をさらに追加して賠償するのだというような私どもは考え方ではないけれども、とにかくその不安を取り除くに必要な方策というものも、かなり政府として考究することは当然のことじゃないか。ただ、それがあまりに地主の立場であるとか、あるいは特殊のつながりの立場からだけこの問題は見るべきものじゃなしに、広くこの調査もするだろうし、また、その意見も聞いて妥当な措置を見出していくというということが適当であろう、こういふうな意味において調査会を設けるわけであります。
○横川正市君 これはいろいろな問題があると思うのでありますが、これは後の問題で逐次審議をしていかなければならぬと思うのでありますが、先ほど私の方で言いましたように、国の契約した年魚とか、保険とか、あるいは船舶の補償であるとか、あるいは建物、機械、貴金属その他の財産の棄損とか、あるいは在外資産の問題とか、それから戦災によるところの財産の直接の被害とか、いろいろな形のものが昭和二十年八月十五日のあの一大変革を契機としてあるわけですよ。これは私は農地改革は少なくともあの当時日本における農村制度というものの矛盾というものが非常に深刻なものがあって、しかも、その前には小作であるための悲劇というものは、この人間としての取扱いを受けなかったような過酷な奴隷労働の中で、まあ社会生活をしなければならなかったというようないろいろな土地をめぐってのいきさつというものはあるわけですよ。そういうようなものがあってこそ、初めて終戦後農地解放という問題に結びついて、そのことが今大きく成果があったと判断ができることになっているわけです。ところが、そうではなしに、純然たる国と契約をしたり何かして、当然そういう過去のいろいろな弊害や何かは全然なくして、あの時期に損失したものを、一体政府としてはこれをどう区別をして判断されておるのか。私は、それはまさに農地問題よりか、いわば今年金がもらえると思っておったところが、もらえなくて六十過ぎ七十になって、そうしてバタ屋部落で月にたしか十何円もらえるその証書をふところに入れて寝ているおじいさんがいるというのに、それに対して何らの方策を講じておらない現状にありながら、片や地主に対しては何らかの処置を講じてやらなければならない、それが政治なんだとお考えになっておるその考え方について、私どもとしては納得できないわけですが、どう区別されておるのか、一つ明確にしていただきたいと思うのです。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど申し上げましたように、戦争及び敗戦から生じたいろいろな社会的、経済的変革に基づいて犠牲を、国民全体が非常な迷惑を受けているということは、私も同じ考えであります。これはある程度国民全体として是認してもらうよりほかは私はないと思います。しかしながら問題は、いろいろなその場合におけるところの事態、また実際それが社会的に及ぼしているところの影響等を考えて、政府としては順次考えていかなければならぬ。これは国の国力から申しましても、あるいは国情から申しましても、そういうものを一切全部国の責任において解決するということは、これは私はなかなか実際においてできないことだと思います。今おあげになりました年金の問題だとかは、どういうふうな措置になっておりますか、私、ちょっと明確に承知いたしておりませんけれども、もちろん、それから生じているところの非常な生活上の、さっきもお話がありました、こういう問題がきまらなくって、旧地主の間において生活上ほんとうに困窮して生活できないというような者があるのに対して、政府はその結論を得るまでは知らん顔しているということではなしに、そういう問題については、そういう問題の金銭的な問題を解決しなければならぬ。今おあげになりましたように、もしも年金の問題に関して、実際生活ができなくてなにしているという人があるならば、それをやはり政府としては適当な保護の方法を講じなければならないということはこれは当然である。ただ、その前提となっている年金制度の問題をどう扱っていくかという、戦後処理としてどうするかという問題に関しましては、私、あるいはある方針のもとに処理されてきているだろうと思いますが、まだ具体的に内容を承知しませんから申し上げることを差し控えますが、しかし先ほど来申し上げているように、地主問題というものは、農地改革という国家が正当に行なった政策でありますが、この政策から一つの犠牲が生じている。その犠牲を生じた犠牲者は、別に過失や故意によるものではもちろんない。悪意によるものでもない。しかし、それが一つの日本の社会全体から見て相当の数であり、相当の犠牲として不安が生じているという場合においては、これに対して実態を調査して、それに対する適当な方法を講ずる。しかしながら、それはこの政策そのものを変更することではなくて、それは十分理解してもらい、そのもとにおいてこれらの不安の除かれる適当な措置を考えていくということは、私は政治として考えていかなければならぬのじゃないか、かように思っております。
○横川正市君 どうもその点がはっきりしないのですが、政治として考えていくということは、これはどういう形でも補償をしないという政府の考え方とどういうふうに関連を持たせて私どもは理解をすればいいのですか。それは現在の解放農地によって地主から転落をされた方々のその立場というものは、政府としては一般的なこの変革に伴うそういうようなものに類似する人たちと同じように私は見ていないと思います。特別視していると思うのです。その特別視しているということは、潜在的に旧地主というものの持っておった土地に対して何らかの権利といいますか、財産権と言えば法律用語になりますが、精神的な何かがあって、その精神的な何かに対して、まことに気の毒だから政府は何かしなければいけないんだ、その何かしなければいけないのはこれは補償ではないんだ、そうすると何をしようとするわけですか、私どもにはそのことが実際にはわからないわけです。調査するということはこれはあると思う。しかし、調査というものは、具体的に結果はこうである、ああであるということがあって要求される立場というものが、現在非常に困っているのだから救ってくれという。救ってくれというのには物心、心で慰めるか、物によって補ってやるか、この二つしかない。それで補償ということになれば、物ということになるわけです。補償をしないという政府の態度というものと、それから調査をした結果、この人たちの要求に対して何かしてやらなければいかぬ。これは一体どういう関連性を持たれたと私どもは理解をすればいいのか、これが不明確な点なんです。
○国務大臣(岸信介君) 「ほしょう」と申しましたのは、言葉から言うと二つあると私は思う。いわゆる補い償うという意味の補償と、保ち支えるといいますか、社会保障の保障と。社会保障の保障と損害補償の補償というのは違う。私どもの言っているなには、いわゆる損害を補償するという意味において、いわゆる価額が不当であったからこれを償っていくのだ、これの構いをするという意味には、私どもは考えておらないということを言っている。あるいは社会保障制度か、あるいは特別の補償制度か何かで、そういう不安を除くなにをするために政府が財政的支出を一切しないということを私言っているわけではございません。しかし、前に一反当たり幾ら幾らで買ったのが、今に換算してみるとどれだけ足りないからこれを補償するのだ、償うのだというような考え方は、私ども持っておらないということを申し上げたのであります。
○横川正市君 まあ償うという意味がないということなら、それならば私はこれは非常に明確になっていると思うのです。もちろん解放者同盟の主たる任務というものと、それから与党の中にできております農地問題調査会、この関連性というのは、私は非常に密接なものがあるように思うのです。たとえば、先ほど読みましたように、解放農地に対する不当な補償価額の是正に対する事項というのがあります。それから、解放農地に関する実態調査、こういうようなものがあって、調査会の方には「農地を転用し、売買をした際には、売り主から土地増価税を取り立て、これを別経理として一部を農地造成事業に充て、一部を旧地主に還元する。」、これはあなたの精神か、あるいは特別委員会である調査会の結論として出ているのです。この二つは非常に関連性があるわけです。要求する立場、これを解決する立場と関係を持っているのは明確なんです。ところが政府の答弁は、最高裁の判決の面からいってもこれを支持する。それから、基本法は変えない。それから、償いはしない。それから、特別な観点で増価税その他の問題についても、こんなことは考えておらないと言う。そうなってくると、私どもとしては一体調査会の持っておる目的というのは何なのか。言いかえれば、社会党が強く主張いたしておりますように。 それからもう一つは、これは総理も明確に答弁をいたしております。総理の答弁を見ますと、「旧地主の社会問題としては、生活困窮者で子弟の教育に支障を来たしている者その他については、社会保障的見地から適当な方法を講ずる」。これはあなたも御答弁になっているのです。それから前の坂田厚生大臣は、「生活困窮者に限って特別救済措置はとらず、全農民を対象とした徹底した社会保障をとるべきである」という、いわゆる償いでなしに社会保障としての救済対策がこれが正しいと言っているのです。それならば社会党としてはこれに対して賛成をしたい、こう言っているわけなんですが、これはそうではないのだととれそうな点があって、しかも、それが調査会の任務だ、目的だということになりますと、いささかこれは政府の見解と違うのじゃないか、ここを私としては御質問申し上げておるわけなんです。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど来から申しておるように、私どもは政府の方針とし、また、調査会でもこの農地改革そのものを変更する、すなわち土地をまた返すというようなことによってこれに対処すべしというような結論は、これは出すべきものにあらず、また、政府としては、かりにそういうものが出ても、われわれはそれは採用しません。しかしながら、この問題に関してはいろいろな方法、いろいろな意見が今日まで出ておることは、横川委員も御承知の通りであります。私はその中において良識ある人が適当であると考えない問題も要求もあると思います。そういうことを良識のある一般の人の見地から調査し、審議してもらって、結論を出してもらうならば、政府としてはその結論を尊重していきたい、こういうことを申しているのでありまして、ただ、その場合において、あくまでも政府としては考えなければならぬことは、農地法あるいは最高裁の判決というものをくつがえすというような意図は持っておらないと、こういうことだけを明らかにしてそれ以外は十分広い見地から検討してもらってその結論を尊重していきたいと、こういうことであります。
○横川正市君 私はこの際、先ほど山本委員も指摘をいたしておったのでありますが、前の井出農林大臣は明確に旧地主の団体の行動そのものについてこれはきわめて困った存在だと、しかし、これは行政上の指導で解散せしめたいと思いますということを答弁いたしております。しかしこれは解散されておらない。私は、井出農林大臣の責任はその後歴代の農林大臣は継承して努力をされているべきものだと思うのでありますが、そういう点については、そのときの大臣だけが言って、次の大臣はまた方針が変わればそれでいいんだ、何らその点については政治責任が追及されなくてもいいんだと、こういうふうに総理としてお考えになっておるのか。 もう一つは、岸総理自身としても国会の答弁を見ますと、私どもがあなたの方針にもろ手をあげて賛成のできるはっきりした答弁をされておるわけであります。ところが、その答弁を私どもが信じておりますと、今度は違った形で調査会立法ができてくる、違った形で何らかの補償のようなものがにおわされてくる、こうなってくると、実際上答弁と具体的な行動というのは違ってくる、こういうことでは一体いかにも責任がないじゃないか、いかにもウルトラじゃないかということになるわけでありまして、その点もう少し明確にしていただきたい。もちろん、内容については私どもは逐次審議をいたしますが、この点を最後に御質問してきょうは終わりたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 各大臣がいろいろ国会で御答弁申し上げたようなことについては、これは政府として責任を負うというのが原則でございます。ただ、井出君がどういうふうにお答えしているか、今おあげになりましたことだけを想像してみまするというと、私は民主主義のもとにおいて主義、主張を同じくするような人が団体を作り、そうして自分たちの要望を実現しようとして団結しておるということは、これは憲法の上においても、団結権の自由から言って(「あたりまえですよ」と呼ぶ者あり)これを解散させるとか何とかいうことは適当ではないように思うのです。何かそれが非常に不当なことを目的とし、何しておるということなら、不法なことをやるというなら別ですが、それはある程度憲法で団結は自由だから、その団体を解散させなければならぬとは考えない。また、今農地地主の団体をそういう不法な団体とは私考えておりません。従って何か言い方が少し行き過ぎたのじゃないかと思います。そのときのなにから。しかしいずれにしましても、私自身は先ほどから申し上げておる通り、この調査会において、農地法及び最高裁の判決というものを変更するというようなことは、これはわれわれは一切認めない、しかしながら、それ以外の問題について広くあらゆる点から実情を明らかにし、これに対して何らかの措置をとる必要があるかどうか、ありとすればどういう措置が適当であるか、それらについても国家が財政的に負担してやるということもあると思います。しかし、その意味が、今言ったような補償価格が適当でなかったから、その補償価格を追加するのだという意味をもって、私はやることはしないということは一貫して申し上げます。
○横川正市君 今の問題は井出農林大臣が言っているわけです。地主団体は解散するよう行政指導する、こう言っているわけです。だから少なくとも旧地主の方々の要求というものは、農林大臣としては農林省の責任で行政上の手段、方法をもって解決をしていくのだ、ただそうなれば地主団体はそれをおそらく納得することでしょう、こういう形でそういうような行政指導を通じて解散させると言ったので、それは任意に出されたものを政府の圧力で解散させる、こう言つたのじゃない。同時にこれは調査会の立法というものは要らないのだ、行政指導をすればこの問題は解決するのだと、井出農林大臣が明確に国会で答弁しているのです。この点について私は責任問題を追及するわけじゃございませんが、総理としてはどういうお考えですか。
○国務大臣(岸信介君) おそらく井出君はああいうまじめな人でありますから、言明をした通り、行政指導で解散してもらう、それで解決するように努力したと思います。しかし、それで解決されておらないというのが現実でございまして、やはりわれわれとしてはこういう調査会が必要である、こう思います。
○一松定吉君 私少しこの問題につきまして政府にただしたいのでありますが、私の意見と社会党の意見とは全く反対であります。辻君と同じ考え方であります。社会党の諸君の言うことを聞いておってみると、この旧地主の中で非常に生活に困っているような人があるということについて、その因っている原因を追及して、その実情に応じて個人々々に救済の道を開こうということは、政治家の当然なすべきことであります。ことに国会議員というものは常にそういうものを考えなければならぬ。ただ今辻君の言われたように、小作人が社会党に投票をするから小作人の味方をする、地主の方は社会党に投票せぬから地主には反対だというようなことを今辻君が言われたが、そういうことを社会党の人がするかせぬか知らぬ。知らぬけれども、こういう問題について政府が調査会を持たれるのは至当なやり方だと思います。一体、この法律の制定されたのは、これは昭和二十一年の十月二十一日、当時私は逓信大臣をやっておりました。そうして御承知の通りに、この日本は昭和二十年八月十五日に全面敗北をして、マッカーサーが日本に駐留してきて、日本の政治を勝手にやったときなんであります。そのときであって、これが施行されたのは昭和二十一年の十二月二十九日であります。ちょうどそのときは、第一次吉田内閣で、何でもマッカーサーの言うことを聞かなければならない。もしもお前らがおれの言うことを聞かなければ、天皇を巣鴨に連れて行くぞというようなときなんです。ですからして吉田内閣もこのマッカーサーの命令には従わなければならなかった。そういうようなときにこの自作農創設特別措置法というものが作られて、これが翌年の十二月二十九日に施行された。翌年の十二月二十九日といいますと、ちょうど片山内閣のときです。これはやはりマッカーサーの言う通りにやらなければならなかったときなんです。 一体こういうような、自分の土地を非常にたくさん持っているからこれを取り上げる、お前は土地を持っておりながら他国におって土地の所在地におらぬからこれを取り上げる、お前は土地におるけれども耕作していないからこれを取り上げるということが、その点民主主義であるかどうかということについては、これは疑問があると思います。そういうような点においての法律が実施をせられたのでありまして、われわれはどうにもならなかったときであります。それが実施せられて、そうして今日ではその土地を持っておって取り上げられた人々が……(「総理に質問しなさい」と呼ぶ者あり)いや、君らに聞いてもらいたいのだ。(「われわれが聞いてもだめだ」と呼ぶ者あり)君らに聞いてもらわなければならない、と同時に政府にも聞いてもらい、聴衆にも聞いてもらう、これが国会議員の任務だ、ただ政府に聞いてもらうだけでなくて……。そういうときでありますから、自分たちが先祖から譲り受けた先祖の財産によってやっているものもありましょうし、自分が子供のときから汗水たらして苦労して土地を匿うて持っておったものもありましょう、あるいは親から譲り受けてその土地を管理しておったものもありましょう。ありましょうが、それを政府が法律によって取るということについて、この法律が合法的であるかないかは別として、法律で実施せられている以上は、国民はその法律に従わなければならぬことは当然だ、法治国として。そうしてそれがいわゆるこの法律によってできてこれが実施せられて、今皆さんが例をあげたようなふうに、ずいぶんだくさんの持っておった所有者が迷惑して、泣き泣き取り上げられたというものもありましょう。しかしながら、それはこの措置法の第六条によって、相当の価格を買収鑑定をし、本人に異議があるかないかということもきめ、そうしてきまらなければ、農地の委員会においてこれをきめて、そうしてその土地の当時の値打の何十倍というものをもって買い上げるというようなことをやって、この措置法に規定してありますから、この当時のこの規則によって買い上げられた場合においては、自分らは反対であっても、泣き泣き応じなければならなかった実情であることは、これは議論ないでしょう。そういうようなものが、今、辻君の言われたように、その後の状況がどうなったかというと、そのわずかの三百円くらいで買い取られたものが、一万倍もする今日になっておる。そうして買い取った人間は、それまで自分は小作人として難儀苦労しておった人間が、にわかに金持になって財産家になって、しかもそれを勝手放題に売ることができないのに売って、そして自分らは商売をたて、盛んにやっているときに、自分らが地主さん地主さんと言って尊敬しておった人は、立ちん坊みたいなふうな生活をしなければならぬ実情になった今日、政府当路者がこれを黙視することができないから、何らかの方法によってその内容を調査して、その調査の結果これをどういうような方法によって救済するとか救済せんとか、あるいはどうするとかというようなことをきめるのが、この調査会の目的なんです。この点については、私は政府のやったことについては、最も機宜に適していると思うが、ただ政府のやり方について、今、辻君も言われましたように、これは昭和二十二年からのことで、もう十何年もたっていることだから、その間にこれらの農民の声は聞いているはずですから、その間に何らかの処置をとらなければならなかったのじゃないか、あまりにも放任主義がひどくはなかったのじゃないかという御趣旨もごもっともであって、こういう点については、全国の農民が非常に猛運動をしたことも、社会党の諸君の言うた通り。現にここにいる下條君のごときは、この全国の農民の会長で、そういうような問題をやり、私も会長になってくれんかと言われたけれども、私は断ったというようなこともあって、政府に陳情するというような意味合いで、全国の買収せられた農民が協力一致してやったのです。そういうものがいわゆる各内閣に陳情せられたのでありましょうが、今総理の言われたように、いろいろな意見が出て、全く安かったから戻せというのもあれば、賠償せいというのもあれば、それじゃいかんから何らかの国家からわれわれの難儀を救ってくれという陳情もある。今日では農民諸君のそれらの地位にいる人は、その財産を返せという者もありませんし、また相当な価額をもって、その差額を戻せという者もないが、ただわれわれがこんなに難儀苦労しているのだから、国家は何らかの方法によって、私どもの一つ難儀を見てもらっていただきたいということが、この農地を買収せられた人の全部の意見にまとまっていると思います。そういうときに、この調査会を設けて、調査をして、そうしてそれらの人々に、臨機応変に、その人々の状況によってこれを保護し、これを救済しようということの調査を、この調査会に求めるということは機宜に適したやり方だ。ただ、辻君の言います二カ年も調査して、それから後にやるということについては、目前に非常に難儀苦労している者が多いときに、少しくゆうちょう過ぎはしないかということがあります。私もそう思います。そういう点については、何らかの方法によってやることもいいが、社会党の諸君も言うように、わざわざこんなものをこしらえないで、これが救済する必要があれば、特別法で予算を出して救済できるんじゃないかということもあるが、それは世間のいろいろな批判、攻撃があるから、そういうことを調査して、その人々によって具体的に甲はどうしよう、乙はどうしよう、丙はどうしよう、丁はどうしようということを調査して、その人々に応じたような救済の方法をとろうということは、何も政府のやり方が悪いどころじゃない、最も機宜に適したやり方だと、私はこう思いますから、どうか一つ私の希望するこういうような点について、早く調査をして、そうして早くその各人々々に適応するような方法によって、これらの生活に困っておるような人を助けてやるというようなことに向かって、われわれも協力いたしますから、政府も一つ二カ年も調査にかからないでもいい、もうわかり切っているはずです。なるべく早く調査して、目的を達するようにして、これらの国民が非常に困っているということを救済してやることが政治なんですから、こういうような政治を国民を代表しておるわれわれが政府に要求し、われわれが協力し、この実現に努力するということは、国会議員の当然の任務なんですから、これに反対する理由はありません。だから、このような目的に早く努力するようにお願いいたします。
○国務大臣(岸信介君) 趣旨については、先ほど来者委員の御質問にお答えした通りでございまして、今、一松委員からも御要望がありましたように、調査会法は二年ということでありますが、事態はなるべく早く結論を出して、適当な措置を見出すようにすることが適当であると、かように考えております。
○一松定吉君 総理の御意見、まことにありがとうございました。どうぞなるべく早く実現するようにお願いいたします。
○山本伊三郎君 ただいま一松委員から、われわれの質問を聞いておられたかどうかしりませんが、何か誤解のあるような、討論にひとしい質問をされました、われわれは決して農地解放によって現在生活、あるいは生業も失わぬとしている困っている人を捨てておけという意味では絶対ありません。そういうことについては、われわれは必要であるということは認めておる。ただ、調査会の性格が、岸総理がたびたび衆議院なりあるいは本院で答弁されておりますけれども、なおそこに疑義があるのでただしておるのであって、その最後の結論は出ておらないので、若干一松委員の今の前提になる言葉について、私は不満であるから、一言発言しておきます。
○一松定吉君 今の山本君の御意見ですね。私は、山本君はこの法案に絶対に反対ではないという御趣旨の、最後の方にあなたが御発言あったことを私は承知しております。しかし、その前提として、こういうものを設けなくても、ほかに方法があるじゃないかという御意見であったことも間違いないでしょう。私はあなたの言うことを大てい聞いておったから、私どもはこういうようないろいろ世間に問題のあるやつについては、慎重審議する意味において調査会を設けて、そうして十分その調査をして、個人々々の実情を調査研究して、個人々々に適応するような方法をとることがよろしい、こういうことを私は言ったわけなんですから、あなたは誤解せぬように一つ……。
○委員長(中野文門君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。 本日はこれをもって散会いたします。 午後四時二十八分散会