大蔵委員会 第14号
- 発言数
- 79 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1960/04/14
会議録
○委員長(杉山昌作君) ただいまから委員会を開きます。 きのうに引き続き、貿易及び為替の自由化に関する諸問題並びに財政金融一般に関する件につきまして、大蔵大臣に対し御質疑を願います。
○平林剛君 私は、減税問題について少し政府の考えを聞いておきたいと思うのです。ことしの予算案のときに、われわれが最も政府に攻撃を加えたのは、相当の自然増収がありながら減税をしなかったという点でありました。きょうは、予算委員会で大蔵大臣に質問して、なお足りなかった点を主としてお尋ねしようと思っておりますが、問題は、ことし政府としては、自然増収を二千百五十億円見込んでおった。この自然増収の測定についてはいろいろの見方がありますけれども、政府として二千百五十億円という見込みを立てたのは、どういう根拠に基づくものであるかという点を、お伺いをいたしたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) だいぶ、収入査定の方法の問題でありますが、専門的のものもございますので、さらに不十分な点は事務当局から説明をさせたいと思いますが、すでにきのうまで申し上げておりますように、経済の成長率等を考え、各業種別の収益状態等を勘案し、そうして各業態別に積み上げ計算というか、これは査定数字もございますし、また実績数字等を参考にして、ただいまのような積み上げ計算をして、そうして総体を出しておるわけであります。いろいろ租税函数その他の使い方等もございますが、大蔵省自身過去の経験に基づきまして今日までやっております方法、それをことしも踏襲したということで、別に新しいものは考えておりません。まあその場合に一番大きな問題になって相違を来たしておりますものは、法人税のごとく、決算期と納税時期との相当のズレのあるものというのが一番見込み上問題を起こしやすいのでありまして、そういう点である程度の実績との数字の差異を招きますが、これはどうもやむを得ないのだ、かように考えます。一般給与等については比較的正確な数字がつかめる、かように考えております。
○平林剛君 きょうは与えられた時間がありますから、今お話しになった自然増収の測定の仕方について、従来からの積み重ねといいますか、方程式のようなものがある程度あるのじゃないか。われわれは、今後の歳入あるいは歳出について、野党の立場から議論をしようと思いましても、そういう点、資料その他がありませんから、なかなか議論しにくいのです。ですから、この機会に、これは政府が特に自然増収などを見込む場合の方程式のようなものがあったら示していただきたい。これは、きょうは言葉でなく、資料として出していただければ幸いだと思うのであります。 そこで、この間、参議院の予算委員会で高木公述人が、政府の二千百五十億円という自然増収の見込みは非常に少な過ぎるという意見を述べられました。この人の議論によりますと、昭和三十一年当時に比較をして、その当時のいろいろな計数からはじいていきますというと、どうしても三千億円をこえる自然増収があるはずだという御意見があったんであります。このときは、まあ新しい財政理論から見て、限界租税函数、あるいは所得の弾力性などから見て、これは間違いがないというお話があったんでありますけれども、政府としては、この限界についてその後何か御検討なさって、いやこれは違うのだとか、あるいは正しいとは言わぬでしょうけれども、何か御見解があろうかと思うのであります。その御見解を承りたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 高木先生の考え方、これはどうしてもやはり生きた数字を持っておられないというところで、非常に簡単な測定方法というか、まあ感じを裏づけておる程度の測定じゃないかと実は考えまして、私ども敬意は表しますが、そういうものではなくて、もっと実際的に数字をつかんでいただきたいということを実は申し上げたいと、かように思っておりますが、これは高木博士、その後のお話等におきましても、自分たちは実際の数字については、やや、門外漢とは申しませんが、十分の把握ができておらないということを言われておりますし、そういう意味で、大へん勝手なことを申しましたというようなお話もございました。私、かように理解しております。同時に、公述人の中に出ました下村君の方は、もっと慎重な数字のように私も聞いております。これはいろいろ学者の考え方等も、そういう意味で大いに私ども参考になると思いますが、その御意見をそのままなかなか受け入れかねる。小さい方の下村君にしても、これも過去の経験等から一応想像はしておられると思いますが、どうも三十一年当時と今回の景気とは相当性格的な相違があるというところがございますから、三十一年当時の歳入から今回の歳入を想定されることには、ややラフな考え方が入るのじゃないかというような気がいたしております。 なお、最初に申されました測定の仕方について何か方程式らしいものがあればそれを資料で説明してくれぬかと、こういうことでございますが、いろいろむずかしい問題でございますので、一応今回とりましたことを事務当局から説明さして、これを一つお聞き取りをいただきたいと思います。
○平林剛君 説明してもらうよりも、説明せんとすることを文字で書いていただきたいと思うのです。 今、高木公述人のことについて、実際の数字をおつかみになっていないから、それで参考にはなるけれども、あまり全面的な信頼を貫いていないというお話がありましたが、しかし、大蔵大臣の、政府与党である自由民主党でも、去年の九月あたりはやっぱり同様の計算をして相当自然増収を見込んでおるのですね。去年の九月ころ、政府与党——あるいは大蔵省と見解は違っておりましたけれども、政府与党では、三十一年の神武景気のとき、国民所得が七兆六千億円、国民の総生産が九兆二千億円、経済成長率一〇%という勘定のもとで、自然増収を二千億円見込んだのだから、今度は国民所得が九兆四千億円、国民の総生産が十一兆三千億円と、三十一年当時よりも経済の規模が二〇%も大きくなっている。経済成長率の伸びも相当大きく予想されているから、大まかに見ても、二千五百億円程度は期待できるのではないか、これが当時の予算編成前における政府与党における歳入見込みの見解であったわけですね。ところが、予算案提出のときには、これが二千百五十億円と縮まっておる。その後の景気の動向その他を見ておりましても、昨年の九月当時から見て縮小していく、あるいは下降していくという線が見られないのですね。だから、あながち高木公述人だけが三千億円こえるという見解を示すのではなく、政府与党でも二千五百億円は大まかに見ても見れる、こう言っておるのに、政府の二千百五十億円というのは、その意味ではどうも過小見積もりになっているのじゃないかという気がするのです。この辺はいかがですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) いろいろ見方はあるだろうと思います。御承知のように、前の年の収入から、さらに成長率、伸び率等を考えた場合に、問題は、もちろん基盤が国民所得なり成長率が高いところにございますから、総体の税収は非常にふえるということがもちろんありますし、前年度と比較しての問題として、やはり自然増収幾らということを申し上げても、その後の伸び率いかんということが影響してくる。こういうことで、そこらに相違が出てくると思います。いずれにいたしましても、見積もりでございますので、ことにまた非常に大きな数字の問題でございますから、私は、実際に見積もりがぴったり合うと、こういうことはまずできることじゃないだろうと、かように考えますが、大体の数字としては、政府もよく見積もったという気持で、私どもは大丈夫だろうかという方に実は重点を置いて今回の見積もりを立てたようなわけでございます。 いろいろ問題はございましょうが過去の成長率そのままが持続して参れば、三十五年度の自然増収は非常に大きいと、これは考えていいんだと思います。思いますが、すでに一月、二月のような問題もあるし、それかと思うと、三月のように輸出が急に伸びているので、総体の規模としては、私、ただいまのところは前途をもちろん悲観はしません。しませんが、経過そのものから見ると、やはり慎重な伸び率を考えるのが好ましく、昨年同様の伸び率がこのまま楽に持続されるということは、なかなか見通しとしては困難じゃないか、かように私どもは思います。
○平林剛君 私も、政府、特に大蔵省が過大な収入見込みを立てるということは、後に苛斂誅求の事態を招いて適当でない、そこで慎重な見込みを立てるということはむしろ当然だと思いますけれども、従来から政府の歳入見積もりを見ておりますというと、特に自然増収の面において相当大きな開きが出てきている。そこで、今年のように相当に自然増収が見込まれているときに減税をしないということになると、やはりその点どうしても関心を持たざるを得ない。何とかして、国民生活を向上させる意味で、多少でも減税をして国民の期待にこたえるというのが政府のとるべき道ではないか、こう思うのであります。 そこで、念のためにお尋ねしたいのでありますが、今日までの、政府の当初予算提出のときの自然増収の測定見積もりで、決算期におけるその税収との間においてどういうくらいの見込違いといいますか、開きがあるかということを知りたいのであります。たしか、去年政府が三十四年度の予算案を提出したときには千幾らかの自然増収の測定があったと思うのであります。ところが、それよりもかなり大幅にふえて、補正予算を二次と三次とやったときなども、その税の自然増収を当てにして予算の編成が行なわれたわけです。こういう経緯から見て、かなりの開きがあるのじゃないか。そういうふうな過去から見て、今度の二千百五十億円というのはおそらくもっとふえるのじゃないかと思いますので、過去の実績を一つ示していただきたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 過去の実績と言われますが、今記憶しておりますものから申し上げますと、三十三年の決算は、これは珍しく二十一億の歳入の赤でございます。今までこの見積もりに対して赤字が出たということは、過去においてはあまりなかったと思いますが、これは補正を入れますと初めて二十一億の赤でございます。 そこで、手元にあります数字で申し上げますと、二十四年は当初予算に対しては三十五億、補正を入れて二十二億、両方とも黒であります。それから二十五年、これは当初に対して百十七億九千三百万円、それが補正に対して百十三億、これはずっと黒です。二十六年は、これは大きな数字が出ておりますが、当初に対して千五百九十五億黒字、補正に対して四百三十二億。それから二十七年、これが七百二億当初、対補正二百三十一億。二十八年は当初六百九十四億、補正に対して二百六十億。二十九年は二百六十五億、これに対して補正が二百億。三十年は二百十一億、補正に対して五十一億。それから問題の三十一年、三十一年は千二百三十四億、補正に対して七百四億。三十二年は千三十億、補正で六百五億。それから三十三年が、先ほど申しましたように、当初に対して五十八億、補正に対して二十一億、こういう数字になっております。ところで、この三十四年でございますが、三十四年はただいまちょうどその決算の締め切りの状況でございます。でございますので、ただいまはっきりした数字を申し上げるわけに参りませんが、おそらく補正に対し三百三十億、それくらいなものにこの三十四年の決算は出るのじゃないかと、かように思います。
○木村禧八郎君 三十三年は赤ですね。
○国務大臣(佐藤榮作君) ええ、三十三年は赤でございます。三十三年だけが、今の当初に対しては黒ですが、補正に対して二十一億の赤でございます。それ以外は全部黒でございます。そういう状況でございます。
○平林剛君 まあ、去年はこれは特別の事情があったにしても、例年当初予算に比較をすると自然増収がかなり多い。ことしも二千百五十億円といいますけれども、昨年九月に政府与党が測定したのは二千五百億円、高木公述人の意見を入れれば三千億円。こういうことになると、政府の二千百五十億円の測定というものにどの程度信頼を置いていいかというのが、私どもの問題なんですね。同時に、今お話しになりましたが、昭和三十四年末の一般会計の剰余金の見込み額、これは一体どのくらいになるのですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) これはお答えいたしますが、今数字が、最終で少し変わってくるかもしれませんが、おおよその見当だとお考え願いたいと思います。歳入の面では、税収でただいまお答えいたしましたように二百三十億、その他三十億、計二百六十億になりますが、その二百六十億となります上に、歳出の不用が七十億程度ではないかと、かように考えます。そういたしますと、剰余金としては三百三十億というようなおおよその見当をただいまいたしておる状況でございます。
○平林剛君 ただいまの数字も、政府としてはどうなんですか、思いがけなく多かったとお考えになりませんか。それはですね、私は、大蔵大臣が衆議院の大蔵委員会で石村議員と質疑応答したときの会議録を、しさいに検討してみたのです。当時の大蔵大臣の答弁内容から推定して、大体二十億ないし三十億というような答弁をしておるのですね。しかるに、ただいまのお話では三百三十億。あなたとしても、思いがけなく多かったというふうにお感じになりませんか。
○国務大臣(佐藤榮作君) まあ、よほど多いとまでは考えませんが、よくこれだけ、という気持はしておるのです。
○平林剛君 そうでしょう。
○国務大臣(佐藤榮作君) そこで、問題は、まず見積もりが甘いとか辛いとかいうことになるわけですが、大蔵省自身は基礎数字自身をいじっているわけではございません。問題は、生産指数とか価指数、あるいは雇用賃金だとか、これらの経済指標自身がいわゆる経済見通し等で権威のあるものとして、政府が発表したそれを基礎にして実は見積もりをやっているのですが、こういう経済変動の時期には、ただいま申し上げるような経済指標自身が相当変わってきておるわけでございますね。その結果、ただいままあ計算すると数字が相違しておる。だから、まあ政府が予算を出します場合の基礎数字になりますものの把握が、なかなか十分できておらない、かように御了承いただいて、大蔵省自身が見積もりをする場合に経済指標を特にいじってどうこうしておるということでないことだけは、誤解のないように願いたいと思います。
○平林剛君 それにしても、三十四年末の一般会計の剰余金の見込み、おそらく予算案提出当時に見込まれたと思うのでありますけれども、その当時大体二、三十億円に見ておったのが、現在になるというと三百億円をこえる。十倍も違ってきておるということには、やはり大蔵省としてはいろいろな諸般の情勢を考えてですね、なるべくこういうものを過小に見ていこう。それは慎重であることはいいけれども、慎重に輪をかけて、何か悪くいえば作為が見られるのではないかという感じがする。非常に私はこの剰余金について、どのくらいになるかということを興味を持って見ておったんですが、この例からしても、ことしの二千百五十億円の測定は少し、普通でいっても少な過ぎるのではないかと思うのです。そこで、私は、さような情勢であるならば、なぜ政府はことしの予算の中においても減税を実施せなかったかということを、あらためて政府に追及をしたいという気持なんです。いかがですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) まあ、いろいろこういう経済変動の際でございますから、正確な数字の見通しはむつかしいと思います。御承知のように、一部では非常に後期過熱論も出ておる状況でございますし、経済の動向について私ども楽観はいつもしておらないのでありまして、また、しばしば平林さんなどからもそういう意味の御質問を、政府は楽観的ではないか、こういうことをずいぶん言われておるように私は記憶しておりますが、そういう意味で私どもできるだけ慎重に扱わなければならないと思います。そういう事柄だと思うが、幸いにして、ただいま指摘されるように自然増収が非常に多いということなら、これは施策よろしきを得た、御協力を得たということにもなるだろう、それも実は努めなければならぬ、かように実は考えております。 ことに、三十五年で減税をなぜしなかったかというお話でございますが、これはまあ毎回、私どもも政治の目標から見まして、減税すべきであると、かようには考えておりますが、その点では御指摘の御意見に全面的に賛成であります。 しかし、昨年の夏時分のこの経済の動向について、あるいは自然増収の見方等についても、私ども当初は千五百億あるいは千七百億というような話をしておったと思います。その後、さらにそれが二千億になり、二千百五十億になる。大へんな実は自然増収でございます。一部では二千五百億とか三千億とかいうような景気のいい話も出ておりますが、わが国経済の実態が、それが二年も続いて、非常な成長率を遂げるということは、事実これは並み大ていのことではない。幸いにして経済環境なりその他の情勢がいいようでございますから、三十五年度も当然支出増をまかなう、あるいは新規事業等計画いたしましても、それは一応まかなえるということになりましたが、しかし、災害復旧なり、あるいは国土保全等も考えて参りますと、この際に減税計画まで立てることはいかにも乱暴だという感が強く実はいたしたのであります。そういう意味で、三十五年度は減税計画だけは一応たな上げせざるを得なかった。もう一つ、理論的に申しますと、税制調査会等の審議の状況等から見ましても、小出しに減税いたしますよりも、ある程度結論が出た上で減税を行なう方が筋ではないか。二つの理由です。 むしろ、消極的なブレーキになりましたのは税制調査会の審議の状況。積極的な考え方は、この経済の動向から見まして、長期にわたって非常に多額の自然増収を計画し得るかどうか、ここに一つの問題があった。しかも、三十五年度の歳出増は、国土保全、災害復旧等、相当多額のものが出てくる。こういうところに私ども非常に予算編成上の悩みがあったわけであります。しかも、一面、インフレ・マネーはこういう経済情勢だから絶対に使わない、絶対にこれを抑止しよう、こういう強い要望を持ったために、減税だけは見送らざるを得なかったという事情にあるのでございます。
○平林剛君 私は、大蔵大臣の言うように、景気過熱を警戒する方ではない。むしろ景気が、現在は経済の成長率がいいときであるから、よけい所得較差の増大とか、それから分配という点を十分考えていくべきではないか。そうでないと、政府の政策は一方に片寄っていく。そういう方の立場をとっているのですから、あまり弁解にはならない。 そこで、もう一つは、政府が減税をしなかった理由を、しばしば、いや、これは国土保全だとか、それから災害のためだとかいって、天然自然現象にのがれておりますけれども、去年の八月、大蔵省では、大体自然増収を一千億円と見ておった。これは当時の大蔵省の新聞記者に発表した記録でわかる。九月に入ってから一千五百億円と発表しておる、後に変わってきましたけれども。ところが、その八月、九月というのは、まだ災害も何もなかった。千五百億円も自然増収が見込まれるという時でさえ、減税の声は、大蔵省は別にして、政府内部にはあまり強くなかった。だから、あとに伊勢湾台風その他に籍口して、これがあったから減税をしなかった、できなかったという言いわけは、一つやめてもらいたい。これは過去の実績が示しておる。むしろ、政府は当時としては、その後段に大蔵大臣が述べられたように、小出しの減税よりも他にやるべしという、他の積極政策をやるべしという意見が強くて、減税が第二次的に考えられておった。その結果、今日のように国民の税負担率が高まるということになったのですから、大へん罪深い。その言いわけを自然現象に求めるというのは、私は非常に政府としてはずるいと思うのです。 まあこれは別にして、当時その台風がなかりせば減税をしようという考えは、大蔵省にあったと思うのです。死んだ子の年を数えるわけではありませんけれども、当時大蔵大臣として考えられておった減税構想をこの際聞かしておいていただきたい。これは将来、私は、貿易自由化の問題に関連して、各層から起きてくる新しい減税構想に対して、政府はどれを重点的に考えるべきかという意味で、死んだ子の年を数えるというよりもっと意義があるものだと思う。この機会に、当時お考えになった減税構想を明らかにしておいていただきたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 政府として減税をこの際特に取り上げたいと、かように考えておりましたのは、申すまでもなく、いろいろ委員会等で審議になりましたもののうちでも、耐用年数の短縮という、この問題が一番強く頭にあったわけであります。しかし、これもなかなか準備はむずかしいことでございますので、相当準備期間を要するというわけでありまして、夏時分に減税やるといえば、耐用年数の整理の問題、これをまず第一にやろうということであった、かように私は記憶いたしております。 しかし、いずれにいたしましても、経済が発展して参ります場合には、いろいろ支出の面においても拡大傾向にあること、強い要望の出ること、これは当然であります。そういうことをも一応政府自身は念頭に置かなければならない。そこで、減税と積極的な事業の推進といずれに重点を置かれるかと申しますと、ただいまの国会の審議等の経過から申せば、やはり積極的支出ということに強い要望がかかってくる、こういう実は見通しを政府といたしてはしておったわけでありまして、この歳入の状況の変遷によってその辺は適当に按配していくべきだ、実はかように考えているわけであります。
○木村禧八郎君 ちょっと関連しまして、減税問題について。ただいま大蔵大臣の御答弁ですと、歳入の面について減税するほどの歳入は十分なかった、それから伊勢湾台風、前年度の剰余金が十分でなかった等々、これまで何回も一応説明されているわけです。しかし、租税特別措置になぜ手を触れなかったか。これは前に原安三郎氏が、税制調査会ですか、税別懇談会ですか、大蔵省の諮問機関として答申したことがあるのです。その答申では、約三百億ばかり租税特別措置を整理すべし。その理由は、シャウプ税制改革によりまして、昭和二十五年以後租税特別措置によりまして、資本蓄積を促進するために租税特別措置を取り上げて、毎年非常に減免税をやってきたわけです。しかし、その後、大体昭和三十年ごろ、いわゆる戦後は終わったという時期が来たわけです。少なくとも昭和三十年ごろまでは、戦後の資本の非常な打撃によりまして、資本蓄積を税制面から特に急速に刺激する必要もあったかと思うのです。しかし、三十年以後におきましては、ものすごい資本蓄積です。それを、なお依然としてこの租税特別措置をこれまでのような状態で置いていいかどうか。当然、私は早く——もう原さんが答申したのは二、三年前です。池田大蔵大臣の当時です。それをほおかぶりしてしまいまして、ほおかぶりでずっと来ているわけです。当時も学者あるいは財界あたりでも、この租税特別措置は、戦後は終わったんだから、一応ここで整理すべきだ、こういう情勢になっておったのを、そのまま何ら手をつけないで今日まで来ておって、それでまた、今後、これからまた自由化に備えて一そう特別措置を拡大するような傾向にある。耐用年数の短縮だとか、あるいは増資配当免税とか、これからいろいろ租税特別措置を拡大するような措置がとられるのじゃないかと思うのです。これはやはり、三十五年度の大蔵省からもらった資料ですと、租税特別措置による減免税は一千二百二十七億。私はもっと多いと思うのです。この岩戸景気で法人がうんともうかっているときに、租税特別措置をそのままにしておくのでしょう。税制面から、ものすごい蓄積です。これに手を染めれば、三十五年度でも減税できるわけですよ。半分整理すると六百億。半分は極端としても、三分の一ぐらい整理したって減税できるんですよ。そうすると、これは恒久財源として減税できるのです。租税特別措置の整理によれば、恒久財源としてできる。歳入だけにたよってやると、景気変動によって非常に不安定な面があるかもしれませんが、租税特別措置を整理すれば、これは恒久財源として減税できるのですよ。これは私はどうしてもやらなければならない時期に来ていると思うのですが、その点。
○国務大臣(佐藤榮作君) 木村さんの御指摘の通り、租税特別措置というものをいつまでも長く現状のままにしておく考えはございません。もちろん、十分実情を勘案して対策を立てなければならないことではございますが、特別措置でございますから、やはり整理すべきだ。ことしもわずかではございますが、整理いたしたわけでございます。これはやはり、税制調査会の一つの大きな問題になっておるわけであります。ところが、いろいろ租税特別措置をとりましたものについて見ましても、期日が到来いたしましたものが、なかなか厳守されない。いろいろ国会の御審議等を経ますと、まだ実情はその措置を存続すべきだというような御意見もなかなか強く出てくるわけであります。あるいはまた、資本投下あるいは設備等についての、その特別措置についてのものには、これも今申し上げたように、実情にやはり合うか合わないか十分検討する必要があるということで、税制調査会でも整理の方向で検討しておるという段階でございます。 これは、私は、やはりいつまでもこういうものを特別扱いすべきではないだろう、漸次それは整理すべきだ、それはもう御指摘の通りに考えております。
○平林剛君 先ほど、私、自然増収の測定について、なお相当幅があるんじゃないか。時間がたつにつれて、これは明らかになってくるわけでありますが、かりに年度内に相当の自然増収が見込まれる、たとえば昨年九月に政府与党が測定したような、一千五百億円をこえる、四、五百億の自然増収が当初よりある。あるいは高木公述人の見解のように、一千億円をこえるというようなことがあった場合には、大蔵大臣としては、ことしできなかった、今年度の予算でできなかったのであるから、これは国民に対してもまことに遺憾だということをしばしば述べられておるのでありますから、こういう思いがけないといいますか、その税の増収があった場合には、これは第一に減税に振り向けるべきものだというわけで今後政策をお進めになるかどうか、約束を実行に近づけるような努力をなさってくれるかどうかという点を、この機会に承っておきたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 三十六年度の予算編成にあたりましては、数回申し上げておりますように、ぜひ減税を取り上げたい、こういうことをお答えいたしております。平林さんのお話は、三十六年度の予算まで待たないで中間においてもやる考えがあるかというお話だろうと思いますが、まあこの点については、いろいろ国会等の手続もございますから、十分考えなければならないことと思います。私は、減税が積極的に実施できるような経済状態であることを心から実は望んでおります。そういう意味では、今までの施策を十分慎重に遂行していく、そうして経済の安定な向上を持続するということで、最善の努力をしたいと思います。そうして、幸いにして財源に余裕を見出すことができれば、これはやはり第一は国民に返す、これは考えるべきものだろうと思います。しかし、三十五年度の途中においてどういうことをするということは、ただいまお答えする段階ではないと思います。ただ、三十六年度の予算編成においては減税問題をぜひ取り上げたい、こういう強い考え方を持っていることを御了承願いたいと思います。
○平林剛君 減税といっても、私は予算委員会で指摘したように、問題は中身です。たとえば、私どもが主張しておるように、所得税の基礎控除を九万円から十万円にする、あるいは配偶者控除を創設して十万円にすることや、あるいは各不具者、勤労学生、老年者の税額控除を五千円を七千円、退職所得控除限度額百万を百五十万、あるいは農業、中小企業の白色申告など家族専従者控除十万円を創設する、こういうことをやっても、四百億円で済むわけですね。それから中小企業の設備の耐用年数の短縮、これは五十億円で済む。中身によって違うわけです。だから、私は、かなりの自然増収の増が期待できるようになったならば、ことしできなかったことをすぐさま実行に移す、最優先的にこれを取り上げてもらいたい。大蔵大臣は、年来の主張であるから、そのためにも努力してもらいたいということをこの際に希望しておきたいと思う。 同時に、先般税制調査会で中間報告がありました。それで、この税制調査会も私どもと同じように、今年度の予算で減税をしなかったことをまことに遺憾に思っておる委員が非常に多い。そこで、中間報告をやれということになりまして、今後の国民所得に対する税負担の割合は二〇%以下にとどめることが適当で、国民所得の増加に伴って税収はその割合以上に伸びる分は減税に充てるのがよいというような意味の答申をしたわけであります。私は、そこで、政府の方においては、今年度できなければ来年度最優先的にやる場合、この中間報告はどういう程度に尊重されるのか、政府としては、この中間報告に対してどういう今後の考えで実行に移すような心組みをしておるか、これを聞きたい。具体的にいうと、かりに、大蔵大臣も二〇%程度が妥当だということをしばしば政府の見解としても述べられておる。しからば、昭和三十六年度に減税を行なうとしたならば、ただいまのこの二〇%以下が適当というのに合わせれば、来年どのくらいの規模の減税をしなければならぬことになるかな、こういう計算もしてなきゃうそですね。尊重すると言うならば、その計算をしてあるとすれば、どのくらいの規模になっておるか、一つこの機会に参考のためにそれを——発表したからもう消しちゃいかぬという意味じゃありません、政府の心組みを確めるためにこの機会に発表していただきたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま、大体非常にむずかしい御注文のように私は思います。と申しますのは、大体二〇%を目標に税負担のあり方を考えるとした場合に、まあ、歳入がどうなるか、これはおよそ見当がつくことでございましょう。ただ問題は、最近の情勢で一番大きく支出の面において影響するだろうと考えられますのは公務員の給与、これが一体どうなるのかということであります。この給与の出方いかんが今後の支出に、予算を作ります場合に、これは非常に強く影響するのじゃないかと思っております。ただいまちょうど五現業についても話し合いがございます。人事院の勧告がその後引き続いて出ておる。一般の物価等から見まして、相当の——物価等の動きはあまりないと思いますが、指数はともかくとして、民間給与との比較という面から見ると、相当にこれを引き上げざるを得ないのじゃないかと思いますが、この勧告がどういうように出てくるかで、まずその支出の面で大きな金額を縛られる、かように考えますので、減税を第一にというわけにはなかなかいかないのじゃないか、こういうように実は思っております。もう少し計画の全貌を明確にしないと、どういうふうになって参りますか、ただいま金額は幾らになるというようなことはなかなか申し上げかねる、かように思います。ただ、二〇%にすれば幾らの収入であり、ことし同様二〇・三なら幾らだとか、その金額だけは出ると思いますけれども、これではあまり意味がないことじゃないか、かように思います。
○平林剛君 従来、税制調査会の答申あるいは報告に対して、政府は割合と尊重している方なんです。私は、二〇%以下が適当という中間報告があれば、政府がこれに対して忠実に考えていくということを信頼をしたいと思うのです。しかし、私がただいまお尋ねしたように、二〇%以下、まあかりに二〇%が適当であるとすれば、試みに来年度は、それはいろいろな要求があるでしょう。今あげたような公務員その他の給与改訂以外にも、予期せざるものもあり得るでしょうけれども、機械的に考えて、二〇%に押えれば来年どのぐらいの減税の規模を実施しなければならぬか。これは主税局長、あなたは初試験だ。(笑声)これは機械的に考えたらどの程度の減税規模を実施しなければならぬか。これはほんとうの算術的でいいから、あなたを一つ試してみます。どのくらいになりますか。
○説明員(村山達雄君) どうも試験されるようで、はなはだ恐縮でございますが、これは国民総生産あるいは所得がどれくらい伸びるかという見通しと、その場合にどれくらいの税収が出るかという点が非常にキーポイントでございまして、これはもう非常な仮定の上に立った計算にならざるを得ないわけでございます。そこで、国民総生産を長期計画で言われておりますように七・二%ということでかりに仮定してみると、その場合の税収はどうなるかということでございますが、これは正確には、われわれはいろいろ考えておりますが、結局いろいろな大数観察と、それから特に各税につきまして積み上げ計算をやらないと、出てこない性質のものだと思っております。特に法人税等におきましては非常にむずかしい計算でありまして、大数観察では非常にむずかしいということでございまして、われわれは長期の見通しにつきましていわゆる弾力性係数というふうなものを使っておりますが、これがある年度においての歳入見積もりについてはいかに検討を要すべきものであるかということも、同時に考えておるわけでございます。そこで、過去のいわゆる弾力性係数というようなものをいろいろ算術計算してみますと、平均大体一・五ぐらいになっておるというわけでございまして、その一・五をかりに使えばどうなるかという算術的な計算はもちろんできるわけでございます。それによりますと、約二十%にいたしますと千億あまりの、何といいますか、もし全部減税に充てるとすれば出るという計算は出て参ります。 ただ、そこで一番こわいのは弾力性計算でございまして、実はこういう事実があったわけでございます。過去の三十二年でございますか、あれの弾力性を法人税で取ってみますと、本来理屈から申しますと、法人税は比例税率でございます、上の方は三八と三三でございますから。ですから、法人の課税所得の伸びと同じであってしかるべきものであるわけであります。ところが、実際計算された弾力性で見てみますと、課税所得は、国民所得計算は違いますが、国民所得計算の法人所得では一〇五%しか伸びていないにかかわらず、税収で一四〇伸びておる、こういう答えが実績上出ておるわけであります。ですから、そこの違いというのは、考えてみますと、法人税は、御承知のように、その納期が事業年度が終了いたしましてから二ヵ月延びるわけであります。しかも、そのうちの半分はその期限に納さめる、あとの半分は残りのあとの三ヵ月で半分しておさめる、こういうわけでございまして、そこで約六ヵ月のズレが国民所得計算にあるわけでございます。早い話が、たとえば三十五年度の決算でいいますと、一番大きなのは二月、九月の決算でございます。ところが、三十五年度の三月決算というのは、実は三十六年度に税収の方では回るわけでございます。そういう大きな開きがあるために、ただいま実績で検討いたしましても、本来比例であるべきものがそのように伸びてくる、こういう関係でありますので、われわれは弾力性というものは、長期に見通す場合にほかによるべきものがないわけでございますので、やむを得ずそういうものを数字として使っておりますけれども、過去の実績を見ましても非常に当てにならないものであるということが、一つ言えるわけであります。 それから、もう一つ言いますと、これは私は国民所得なら国民総生産の伸び方に関連する問題であろうと思っておりますが、たとえば過去の平均値におきまして、何割伸びたときは、国民総生産ないし国民所得が何割伸びたときはどれくらい伸びるということは出ておりましても、その伸び率が違ったときに過去の単純な平均値を使っていいかどうか、こういう問題があるわけでありまして、われわれ、いろいろ経済界あるいは学界等で最近弾力性の問題が出ておりますので、研究しておりますが、これを直ちに当てはめて論議を進めるには、まだまだ未検討の研究すべき分野が多いというふうに考えております。 せっかく勉強して参りますが、ただいま申しましたような仮定を置きまして単に算術計算をいたしてみますと、千億という程度の数字が算術的に出ると、これだけを申し上げておきます。
○木村禧八郎君 関連して。その過去のそういう実績等を調べて、それで今後を予測することは非常にむずかしいでしょう。しかし、そういう推定の仕方とまた別に、政策的に、政府の所得倍増計画というものがあるでしょう。そうしてまた、だんだんいろいろな具体的な政策も計画の要素が非常に多くなってきている。たとえば、第二次防衛計画というものも出てくるし、それから治山治水にしてもそういう計画が出てきて、道路についても計画が出てきているでしょう。そうしますと、その経済の自然の動きを追っかけていって、そうして所得を予想するのでなくて、財政計画というものを一つ作って、一応長期財政計画を作って、それに合わせるように政策を、総生産が七・二%になるように、ならなかったらどういう経済政策をとるか、そこに問題があると思うのですよ。だから、財政計画というものを今後いわゆる長期的に立てる意思があるのかどうかなんですよ。所得倍増計画について予算委員会でもいろいろ質問したのですけれども、とにかく大蔵省が財政計画を立てる意思がなければ、その所得倍増計画とか何とかいっても、これは絵にかいたもちですよ。ですから、一番重要なことは、減税にしても、いわゆる一つの長期財政計画の一環として減税の問題を考えなければならないわけですよ。そういう意味で、大蔵省がどうしたってここで長期財政計画を立てて、そうして示す必要があると思うのですよ、もう行き当たりばったりでなくて。自由化が出てきたら今度どうするかとか、今度不景気になったら、景気変動が来たらどうするとか、そういうようなその日暮しでなく、一定の一つの財政計画を立て、それに基づいて減税計画というものを立てる。そうなれば、大体来年度はどのくらいの減税をする計画になるということがわかってくるのですがね。そういうようなあれがないのですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 木村さんの御指摘の通りなんです。今の所得倍増計画、これにはどうしても長期財政計画を立てないと倍増計画はほんとうに紙の上に書いたものになってしまうと、こういうことであります。ところが、これの理屈はわかりますが、御承知のように、経済の成長と財政計画はうらはらをなしておると申しますのはそういう意味なんですが、どちらが先なのか、やはり経済が先で財政計画があとなのか、財政計画が先で経済計画、成長計画があとなのか、こういう問題なんですが、これは一緒に考えざるを得ないというふうに思います。財政計画のうちに、やはり積極性のものと減税のものと、両方があるわけであります。倍増計画を推進していく意味の積極的施策、これは歳入と支出とやはりバランスをとるという考え方を持続する限り、経済計画のあり方を前提にして、そうして歳入計画が立ち、それから次に翌年度にその財政計画がどういうふうに影響してくると、こう考えざるを得ないのじゃないかと実は思っております。まだ、所得倍増計画も国会が済んでから本格的な協議をしようということでございますので来年度の支出計画ももちろん立ちませんし、また減税計画もまだなかなか立たない。いろいろ未決定の支出の要素が非常に多いのであります。そういうものをとり得た場合に一体どうなるか。先ほど算術的な数字と申しておりますが、これも支出が思うように、私どもが一応想定する程度にとどめることができ、税制調査会の答申の通り、国民負担率は二〇%にまずする、これを第一に考える。その範囲で積極的な支出予算を考えるということになれば、歳入の面から減税に向かうものもすぐ出て参ると思いますが、今支出の面の要望にいろいろ強いものが幾つもございますので、まだ三十五年度に入ったばかりでございますから、もう少し慎重に答弁さしていただきたい、かように考えております。
○平林剛君 私は、税制調査会で二〇%以下が適当という中間報告をしたことに、大体機械的に計算すればどうなるかということで、政府のお答えを聞いたのでありまして、われわれは国民の税負担率は二〇%が適当だとか何とかいう意味じゃありません。自由民主党でさえも、国民の税負担率というのは一八%というのが長期経済計画の目標なんです。戦前から比較するともっと税負担率は低くなっていいと考えますから、これは別問題でありますけれども、最後にお尋ねしたい点は、私は、かりに機械的にしても国民の税負担率を二〇%程度に押える、ことしできなかった減税を来年実行するということに政府が進んでいかれる、同時に、一方では貿易自由化という一つのあらしがわが国の経済を襲って参りますから、ここに減税の中身をめぐっての衝突というのは起こり得るのではないか、こう思うのであります。たとえば、現に経団連その他の経済団体の方からは、自由化に対応して、企業の保護という意味で重要物産免税をそのまま続けてくれとか、あるいは重要機械類免税を当分期限が来ても延ばしてくれ、というような要望が見られるわけです。私は、こういう考え方は自由化というものに対する観念とはずいぶん反対なことだと思います。また、やむを得ない場合がありましても、どうも力の強い人たちが、税制上において今まで批判のあった点を、自由化ということに便乗して政府に迫るということが考えられる。せっかく今後国民生活を高める意味の減税を国民が希望しておっても、そこに重点が移されるというふうなことになっては、まことに遺憾だと思うのであります。大蔵大臣としては、その点を、どうか国民生活を高めるという意味の減税になるべく重点を置いて、今後の減税政策を考えてもらいたいということを希望するのでありますが、御見解はいかがですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 貿易為替の自由化と関連して、いろいろ問題があろうと思います。今も賃金、給与の引き上げの傾向にございますが、同時に、今の税率そのままならばどうも上がってもなかなか負担が重いというものもございましょう。なお、先ほどお話しになっているように、重要物産についての免税措置があり、それは国民税負担率の二〇%のうちを食うのだから、こういうものがうんと多くて、これは二〇・三%か二〇%になっても国民大衆は利益を受けないという批判もあろうかと思います。 もう一つの問題は、今かけております関税率審議会、そこでどんな結論が出ますか、日本の関税率は大体低い、こういうような意味で、あるいは自由化に備えて高い関税率でいけば、国民負担率そのものはもっと二〇・三%以上の負担率ということにもなろうかと思います。実際の負担のこの内容をよく見て検討しないと、一律に大衆課税の二〇・三が非常に重いとか、あるいは一八%になったから今度は軽いとかというわけには、なかなか一がいに言えないと思います。 この貿易・為替の自由化という方向からいろいろ検討を進めて参りますが、やはり何と申しても、貿易の自由化は、最終的には国民生活が向上される、それに便する、経済発達にも役立つ意味の自由化でございますから、その本来の目的達成のために十分制度が効果を発揮するように考えて参りたいものだと思います。 そこで、この税の問題についても、最終的には通貨の価値をやはり安定していくために最善の努力を払わなければならないし、低物価が維持されるように努力して参らなければならない、かように思うのであります。この税制そのものにしても、非常に物価に影響があったり、あるいは逆な意味から見てそれが通貨価値に非常に変動があるようなときはどうしても避けていく、やはり通貨価値を安定していくということが、税率が高いとか安いとかいうよりも一番基本をなす問題だと、かように考えますので、この扱い方については十分慎重に処理して参りたいという考え方でございます。いずれにいたしましても、税の問題は独善的な結論は出しかねる問題でございますし、十分税制調査会等で御審議いただきまして、そうしてその結論を尊重して実施に移していくということでありたいものだと、かように考えております。
○平林剛君 私、他にも質問ありますけれども、税の問題だけで終わることにいたします。 もう一つだけお尋ねいたします。それは、今お話しした自由化に便乗してそして従来もうこれは廃止をすべきだという声の強い重要物産免税などを復活してくれというようなことに対しては、いかに自由化の対策が必要だからといって、政府は全般的な考察を加えないでこれを許すというようなことがないように、私、強く希望しておきたいと思うのであります。 最後に、この間法務省で検事の会同がありました。そこで、井野法務大臣が訓示をたれました。その訓示の中に、最近の財政経済事犯の大勢を見ると、資本蓄積に名をかりた巨額の脱税事犯が跡を断たず、また巧みな方法によって貿易及び外国為替管理の規制をのがれる悪質事犯が多いと、いろいろ最近の傾向を述べておりますが、この中で私が大蔵委員として特に重要視しているのは、資本蓄積に名をかりた巨額の脱税事犯が跡を断たないということを法務大臣が述べた、これは大蔵委員会としても実情がどうであるかということを十分知っておく必要があると思いますので、最後にこの実情について、これは大蔵大臣でなくてもいいです、国税庁の方から来られたら国税庁からでもよろしいですが、大蔵大臣もどういうふうにこれを承知しておるかという点を承って、私の質問を終わりたいと思う。
○国務大臣(佐藤榮作君) 法務大臣の説示ですか、訓示ですか、これはだいぶ問題になりまして、私も衆議院の大蔵委員会でその点についての質問を受けました。結局、まあ私が直接伺っておりませんので、おそらく、経済担当の検事諸公を集めた際に、経済事犯としてはいろいろなものが考えられるだろう、そういう意味の説示をされたんだろうということを実は申し上げて非常にその摘発について強い意欲だとか、あるいは経済の実情——脱税事犯についてです、特にいまわしいものがあるという意味で言ったわけでなくて、表現がまあ不適当なものもあるんじゃないだろうかという程度の話をしたのでありますが、結局、衆議院では法務大臣から直接経過等を聞かれて、まあ一応その話だけは了承されたようでありますが、私に対しましても法務大臣から、まあ自分の説示がだいぶ大蔵委員会で問題になっているようだが、別に他意があって申してわけじゃないんで、関係の検事諸公に注意を喚起した程度だ。ただ自分の発言が少し強過ぎるというか、まあ特別な意図でもあるかのような印象を与えておる点がもしあれば、その点は、そういう意味で申したんでないから、どうか了承してくれ、ということを実は言われております。で、大体、法務大臣としてまあ検事に注意を喚起された点だろうと思います。ただ、今の御指摘のように、その具体的な表現としてはあるいは当を得ていないものがあるんじゃないだろうか、かように私どもも思います。 最近の脱税事犯の実情は、年間のものから見まして、少し数字は、まあ減っているとかふえているとかと言っておりますが、私は、まあ大体減っている方向じゃないか、かように思います。また、非常に悪質なものが最近特に強く出ていると、かようには私は考えておりません。おりませんが、その、まあ脱税という件数そのものは減ったが、その脱税の中をいろいろ分けてみると、資本蓄積ということに急な余り、脱税になったというような件数は、その数のうちではふえた方の数字になっておるというのが実情だということを、法務大臣、説明しておりましたですが、この実情は係の方から説明させます。
○説明員(村山達雄君) いずれ詳しい方は国税庁のあれに移しますが、私の承知しておりますところを申し上げますと、大体年間、告発になる件数が三、四十件ぐらいだろうと思いますが、その趨勢を見て参りますと、年々まあ四、五件ぐらい上がってきておる。それから、一人当たりの脱漏所得が大体千万円ちょっとこえるところでございますが、これも年間だんだん少しづつ上がってきておる。まあそういう、数字の上ではさようなことになっていると思うわけでございます。ただ、一ころありましたように、耳目をそびやかすような大きな脱税事件といいますか、そういうものはわれわれの——まあ私自身耳にしているところでは、最近はそれほどではありませんが、しかし、そのやり方等は、だんだん税務官庁の方の調査の仕方もこまかになっていくのに対応いたしまして、だんだん芸がこまかくなると申しますか、そういうことになっておるから、ですから、この調査に当たる者はよほど細心の注意を払ってやらないと、なかなか見つからなくなってきておる。まあかような状況にあるというふうにわれわれは了解しているわけでございます。先般法務大臣がお答えになったのも、そのような趣旨だというふうに、私もその委員会におったのでございますが、聞いておるわけでございますが。
○委員長(杉山昌作君) ちょっと速記とめて。 [速記中止〕
○委員長(杉山昌作君) じゃ、速記つけて下さい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 昨日、来月になると米国の金融関係の人たちが日本に来るというお話をしました。そのときに、一体どういうことだということでございましたが、資料をもってお答えしますということを実は申し上げたのであります。で、これは、米国証券投資視察団というような大体名前でございますが、日本の証券協会の会長である野村証券の奥村君が、昨年アメリカに参りました際に、世銀のブラック総裁と話し合って、そうして一応証券関係が主体になりまして、ただいま申し上げるように、こちらに出かけてこようかというのであります。 大体の日にちは、五月八日、着きまして、そうして帰るのは十八日出発ということでありますから、約十日間滞在するわけであります。その間に、一部遊覧もいたしますし、関係業者との懇談会を持つということであります。鉄鋼関係、あるいは電力関係との懇談会を、大体十日に予定をしております。さらに、日立、あるいは東芝、東京電力——これは千葉、あるいは富士製鉄の広畑、八幡、あるいは関西電力の木津川、三菱造船長崎等を見学し、あとはサイト・シー等ということであります。 来ると一応予定されておりますメンバー、一応ございますが、これはまだ変わりそうでございまして、正確なものではございませんが、大体夫妻連れが多いのですが、総数は約五十名くらいになるのではないかと考えます。向こうの一流の会社、銀行、証券関係というようなものは一応網羅しております。しかし、なお有力なもので落ちているものもあるようでありますし、昨日なども私の方へたずねて来ましたベイチという人、これなどは落ちているといって盛んに憤慨しているようでしたから、まだメンバーはもう少し追加するのじゃないかと、かように考えます。
○平林剛君 目的はどうなんですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 目的は、今国内の証券業者といろいろ相談、懇談の機会を持つということ、同時に、国内の、日本経済の実情を十分視察して帰って、将来自分たちの方で積極的に資金的な協力ができるように取り運んでいきたいということのようでありますが、しかし、具体的に今どうこうするというわけではありません。
○永末英一君 為替・貿易の自由化について、簡単に数点お伺いしておきたいのであります。大体五月末日までに第一回の計画を発表するということでありますけれども、五月末日に発表せられるものについては、経済企画庁でいろいろなことを考えておられるようでありますが、しかし、為替・貿易の自由化というのは、ただ単にそれぞれの品目の貿易・為替上の措置だけではなく、やはり日本経済全体にわたるある計画を作ってそれの中に入れなければ、完全な自由化計画の推進にならないとわれわれは考えております。もちろん、この為替自由化に対して利点があるとするならば、日本の現在の資本主義が合理化されていない部面が非常にたくさんある。しかも、その合理化されていない部面の多くのものは、国の財政の力によって、あるいはまた、国の財政政策、あるいは税制政策によって、その不合理性を担保されておるというところにあるのではないか。従って、これが今伝えられているような姿で計画が出されるということになると、やはり忘れられている中小企業者、あるいはおくれている産業部門、さらにはまた雇用労働者というところに、大きな圧力がかかってくるのではないかと思うわけです。そこで、今作業が進められていると思いますが、五月末日に一体どの程度のことを発表される予定か、最初に承っておきたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 大体自由化、FAをAA方式に切りかえる品目の追加が主たるものであります。これは、コーヒー豆その他約三百前後のものではないかと思います。同時に、相当の数量につきましてグローバル化を計画しておるということであります。 それから、対ドル地域に対して、あと残っておりますものの扱い方をいかにしていくか。十品目について、すでに実施に移したものもございます。残りの部分をどうするか。その中にはラード、皮、大豆、銑鉄等が残っているわけです。ラードは、精製ラードと粗製ラードと二通りあるというふうに考えております。
○永末英一君 今、大臣の言われていることは、今まで伝えられていることを御反復になっただけである。われわれが心配しておりますのは、そういうような措置だけでもって一体自由化の第一歩を踏み出すということに非常に疑点がある。その疑点についていろいろな意見があるわけであります。 最初に、それだけの措置をとられようとするならば、その措置の中に、日本産業に大きな影響を持たないものもあります。それを第一歩として進んでいくということになれば、当然いろいろな影響はある。そういうものをも含んで、特に中小企業に関する問題、雇用労働に関する問題等については、なおその機会には発表できないという進み方ですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 昨日、木村委員から相当突っ込んだお尋ねがあって、私も相当時間をとって御説明を申し上げたのです。ちょうど永末さんいらっしゃらないようでしたが、そこで、問題は、自由化の影響が非常に広範であり、しかも非常に複雑だ、それだけのことは十分念頭に置いているわけであります。たとえば、今申し上げました、非常に簡単な数字のことを申しますが、おそらく、このコーヒー豆以下三百品種だといって簡単に申しますけれども、この三百の品種はすでに発表したそうでございますが、これなども、その扱っている業界から見たら非常な問題だと思うのです。今まではFAで参っておりますから、値段の形成も、また輸入のルートも、それぞれちゃんときまっていた。今これがAA化されますと、今度は非常にルートもきまらず、値段も自然構成ということに変わって参りますから、そういう意味では、品種自身がコーヒー豆じゃないかということだが、それを扱っている業界に及ぼす影響は非常に大きいのでありまして、先ほど来対ドル地域のもので大豆が問題であることは皆さんよく御承知であります。しかし、皮の問題になれば、原皮の問題になれば、これまた楽ではございません。今スクラップの問題にしても、これも非常に影響するところが大きいのであります。一応こういう品目を決定いたします前には、それぞれの業界について、まずこれは自由化しても差しつかえないということでスタートしたつもりでございます。しかし、今まで対ドル地域に対する差別待遇の問題で、ラワン材の扱い方をFAからAAにした、その結果は、ラワン材の原産地であるマニラにおいて非常な高騰を来たしたということがあります。これは一体どういうわけでそういうことになったかというと、やはり金融機関が商社の裏についておりますから、今のうちにうんと買いだめと申しますか、買付をする。そうすると、やはり需給の関係でラワンの産地では値段が高くなる。そういうものを、高いものを日本に持ってくれば、ラワンを使うものが、二次製品の面で今度は非常に高い原材料を使ったということになるわけです。だから、そういう影響度をよほどよく考えて、業界自身も過当競争をしないようにしないと、自由だというその立場から買いあさった、あるいは思惑輸入をやるというようなことになると、意外な影響を来たすのではないかと、実際心配しております。 そこで、今法律的な問題としては、ようやく政府が措置をとりましたやつが、輸出入取引法の改正の問題がございます。この輸出入取引法の改正は、今申し上げたような弱小の者について力を与えるとか、あるいはもう一つは過当競争あるいは不当競争を避けるというようなものが内容をなすものだろう、かように思いますが、そういうことでだんだん業界も整備していくということでなければならぬ、かように私ども考えております。
○永末英一君 最初出発されて、影響を測定されて、いろいろ御方針を考えられる、こういうお話ですが、私ども考えておりますところによりますと、先ほど平林君も言っておりましたが、特に、大きな企業の方面においては、直接に政府の方に向けて減税の面なりあるいは融資の面なり要求が来る。ところが、そこまでいかない業者がたくさんあるわけであります。たとえば輸出入取引法自体にしましても、簡単に、大臣が言われるように、弱い業者の力をあの法律で強くし、あるいはささえることかできるかどうか。問題はたくさんあろうと思うのです。従って、一つの問題は、租税特別措置法に関する問題でも、だんだん是正をしていくということですが、これは特に貿易自由化に関しても企業合理化するという面で考えられなくちゃならないし、当然また財政投融資に対する考え方も、その効果測定をしていかれるならば、どの点をやはり政府の財政力で是正しなくちゃならぬかということは当然考えられ、くるのではないか。そういうような御用意があるかどうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) もちろん、各般にわたりまして十分検討して参るつもりであります。なかなかむずかしい問題がございますし、一がいに大資本が非常に利益をする、小資本は非常に困る、強食弱肉だ、そういう結論だけでは実はないように思いますが、一面、競争の面に立つ場合には強い者勝ちになる危険がある。そういうことは十分注意しなければなりませんが、しかし、経済協力の面も経済の活動から当然あるわけですから、そういう点は大きく取り上げていくことは十分考えて参るつもりであります。しかも、これは抽象的にはなかなか言えないので、それぞれの業界にそれぞれの特殊性がございますから、その特殊性に十分こたえるようにしてやらないと、自由化の効果は十分上がってこないということだ、かように考えます。
○永末英一君 自由化といいましても、今差しあたって考えられているのはいわゆる資本主義圏だけでありますけれども、いろいろの業界に話を聞いてみますと、自由化を進めることについては、やはり中国に対する政府の貿易対策というものを考えてくれるのかどうかということを非常に関心を持っております。また、今年モスクワで日本の見本市があるということに関連して、貿易上の政策が問題になってくると思う。従って、貿易自由化を進めるについては、これらのいわゆる共産圏に対する貿易について何か政府は考えを持っておられるかどうかをお伺いしたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 日中間の貿易については、わが国の政府の方針といいますかを、機会あるごとに進めるようにいたしておりまして、中共との貿易を私どもはぜひとも進めて参りたいという気持でおりますが、しかし、ただいまは、今日のような状況になっておりますから、これを進めていく方法が実は絶えております。これはまことに遺憾に思っております。しかし、一部は香港経由でもある程度貿易が行なわれておるのではないか。これは厳格に申すといろいろ議論があるようですが、これは、香港経由のものについては相当政府自身も大目に見ているという形になっております。たとえば香港産大豆、そういう大豆というものはおそらく考えられぬことだが、香港産大豆の形で入っておる大豆も一部あるやに伺うのであります。そういうことは実際問題として解決されるでしょう。 それから、北鮮と日本との貿易の関係でありますが、これも正常なルートというものはございません。今、南鮮といいますか、韓国、李承晩政府との間の問題がようやく貿易再開という形になってきておりますが、いわゆる北鮮との間のものは正式なルートはございません。ございませんが、最近の帰還問題その他をめぐって、実際にはある程度行なわれておるということのように思います。 非常に形が整っておりますのは日ソ間の通商でございますが、これは日ソ間の通商協定、在来は非常に短期なものであったのが、今回は三カ年の通商協定かでき上がった。ただいま御指摘になりますように、モスクワでは今年日本の商品の見本市ができるというような状況でございますから、今後はさらに拡大されるだろうと思います。まだ具体的に進んではおりませんが、ソ連側の強い要望がありまして、場合によっては、必要ならば今後はソ連に対して延べ払いの貿易も、ソ連側の方では一つそういう道も開いてくれぬかというような話も、今回の通商協定の際に出ておるような状況でありますので、私は日ソ間の貿易は順次平常化の方向に向かいつつある、かように実は考えます。ただいまの状態では、まだ完全な自由圏諸国間相互のようには参っておりませんが、順次それに、制限は緩和されつつある、正常化の方向にあると、かように思います。 わが方といたしましては、別に制限を加えるつもりはございませんが、政治的ないろいろな問題がありまして、困難な状態にあることは先刻御承知の通りだろうと思います。
○永末英一君 中国貿易については、政治的な問題が第一に出てくるわけですが、たとえばココム等について、一つこれから日本がはずれるという御交渉をする意思がおありでしょうか、アメリカに対して。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまのところは、ココムの問題の前に中共との通商をどうして再開するかという問題にかかっておる、かように考えております。
○永末英一君 われわれは、貿易を自由化するといいましても、われわれが自由化をしてみたところで、われわれはたとえば生産財を輸出する場合には、おのおの競合する市場がある。そこで、欧州においてはすでにOEECを作って、そういうもので、いわばその範囲内におきまして各国の経済を、いわばその限りにおいては共同で守り合っておるようですが、そういうところへわれわれも出かけていって、彼らの持っているのとわれわれの市場が共通している、それについての何らかの話し合いをするというお考えはございますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 貿易の平等互恵という基本的原則はございます。ございますが、それぞれの国にはそれぞれの国内産業を育成強化する、こういう立場のものがございますから、その政策との衝突、これはもう各国間にございます。御承知のように、今回日本でも関税品目表を整備するとか、あるいは関税率をもう一度全面的に見直していく、こういうことになれば、当然自由化ということはまた別に、関税率の問題で各国といろいろ関係を持たなければならない、交渉していかなければならないということに相なるわけでございます。また、日本商品に対してアメリカ自身も、あるいはトランジスターが少し入り過ぎる、こういう意味で、あるいは数量の制限をするとか、フラット・ウエア、洋食器が非常にたくさん入ってくるということであれば、これに数量の制限をする。あるいはまた、最近は綿糸についても、在来の関税ではなしにもう少し高いものにするということは、アメリカ自身も日本品に対して考えておるようでありますが、日本も、その自由化と申しますところのアメリカから入ってくるものを、現在の関税率のままで受け入れるという簡単なものでも実はないようでございます。そういう場合には、各国加盟国には加盟国同士の当然とるべき手続がございますから、そういう手続を踏んで、しかる上にこれを実施に移していくということに相なるわけでございます。
○永末英一君 貿易の自由化に関連して、資本取引の自由化がどういう形で日本に来るかということが、いろいろ問題になっておるわけですが、非居住円だけははずしても、先ほどお話しのように、証券取引業者が日本へ来るということは、才取引にくるのではなくて、何らかの投資の機会をねらってくるということは当然だと思いますが、資本取引を今より大幅にゆるめた場合、その場合には、何らかやはりわが国でも法的規制をしなければならないことは当然だと思いますが、そういう御用意はあるかどうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) お説の通りであります。ただいま為替の自由化についていろいろ計画しておるものがございますが、この考え方は、第一は経常取引の面における為替の自由化をはかっていくということが第一であります。資本の投資につきましては、その後の問題であり、資本の導入の自由な範囲を、わが国産業について特別な影響のない範囲にとどめるということであれば、影響のあるものについては、従来同様の、やはり審議会を経由してしかる後に結論を出すということで処理していくつもりであります。完全な為替の自由化ということは、現状におきましては、何年先にそういうことに取りつき得るか、それをまだ申し上げ得る段階ではもちろんございません。もちろん、ただいまお話しのように、慎重に扱っていかなければならない、かように私ども考えております。
○永末英一君 この二、三ヵ月来、為替レートを変えるんじゃないかということをあちこちの人が心配しておられる。先ほど通貨価値の安定ということがこの貿易の自由化を進めるにあたっての一番基本的な考え方であると言われておったわけですが、通貨価値の安定ということの中には、為替レートの維持ということも問題があろうと思う、かかっておると思います。為替レートについての考え方を一つお聞きしたいわけであります。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま為替レートを変える考えはございません。
○永末英一君 先ほどのような順序で貿易・為替の自由化を進めるにつきましては、いろいろな問題が出てくる。そういう機会に、政府はやはりいわば為替・貿易の自由化の悪い面を受けるであろうと思われるような労働者の団体、あるいは中小企業者の団体等の意見を、率直に政府である審議会を設けて聞いて、その施策を進めていく御用意があるかどうか、お聞きしたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま、この為替・貿易の自由化については、政府には政府部内で企画庁を中心にして関係閣僚の会合を持っております。ここで進めて参りますし、与党の中には与党の中で、やはり重大な意義を持つ自由化でございますので、特別委員会を党内に設けて十分審議いたしております。また、さらにこれが進んで参りまして、そうして金融の面になって参りますと、大蔵省としては、よく日本銀行、中央銀行との間に緊密な連携をとりまして、金融上に支障のないようにいたして参るつもりであります。また、関税率の変更なり関税品目等については、すでに法律で定める関税率審議会というものがございますので、その審議会をも最近開催いたしまして、諮問をして、そうしてその答申を得てこれを進めていくという考えでございます。
○永末英一君 今年の一月に自由化へのスタートだけは切った。今度五月に一応それに対する第一回発表をせられるという場合には、われわれがいろいろな機会に申し上げているような問題に対しては、一応やはりお答えになり、どういう考えを政府が持っておるかということをやはりそれぞれ答えていただかないと、ただこれだけやるのだということでは、全体考えられている問題のうちの一部だけの御発表になっている。これではいろいろ不安あるいは疑惑を持たれて、そのためにここに混乱が起きてくることが考えられる。そこで、ぜひ政府がある見解を発表される場合には、国民が疑点としているところについて最大限の考慮を払って、一々お答えを願うという角度で御発表を願いたいと思います。これは希望しておきます。
○委員長(杉山昌作君) 休憩をして、午後あらためて開きたいと思っておりましたが、きょうは、御承知の通り、櫻井議員のお葬式がありまして、委員の諸君にも皆さんそっちへ行かれるようでありますから、大へん時間もおそくなりますが、これから一時まで、お葬式に間に合う程度までこのまま続けて、そうして散会にしたいと思いますから、ごしんぼう願います。
○須藤五郎君 きのうの委員会で、佐藤大蔵大臣は、木村委員の質問に対しまして、世界経済から孤立しないために、まず自由化に踏み切ったというふうに答えていらっしゃるわけですが、なぜ現在の段階になって急に自由化を急がなければならない理由があるのかということですね。
○国務大臣(佐藤榮作君) 昨日も申し上げましたのですが、一昨年の国会におきまして、皆さん方からも、いろいろ、欧州コンモン・マーケットの出発、さらに通貨の交換性回復、こういうような世界経済における大変革がある、日本経済はこれに対処するだけの用意ができたかどうかという、非常に積極的なお尋ねも実は伺ったのであります。政府も、自由化の方向に用意して参らなければなりませんということを申して、そのためには、まずわが国の経済の基礎を強固にすることだというお答えをいたしたと思います。一体そんなことで間に合うのかという、実はおしかりも受けました。大体、昨年の状況から見まして機が熟したということが第一点でございます。 同時に、しばしば言われておりますように、そうじゃなくて、アメリカ側からずいぶん強く勧められたのじゃないかというようなお話でございますが、これは昨年だけの問題ではなくて、IMFの基本的な構想が、平等、自由といいますか、その原則に立っての国際経済機構として、機会あるごとに、自由化を進めて参ったのでありまして、比較的経済の基礎の強固になった欧州がIMFのその考え方に共鳴をした。昨年になって参りますと、日本自身はもう為替といいますか、いわゆる国際決済上の立場から為替等理を主張するというようなことはできないような状況に、外貨の保有高も出てきた。そういう理由がその強い積極的な理由であります。だから、大体の下地ができ、その上に外貨準備も、まず為替の面からこれを拘束するという理由が立ちにくくなった。そういう状況でありますので、本来のIMFの原則に立ち返って自由化ということを決定したということになっているわけであります。
○須藤五郎君 そういうふうに非常に準備が整ったというふうには、私たち受け取れぬわけです。逆に、政府は何ら準備なしに、アメリカから押しつけられて、どうしてもやらなくちゃならぬようになって、今あわてふためいているのじゃないか。日銀の総裁でも、十三億ドルくらいの外貨手持ちでは少ない、三十億ドルぐらいなければあぶないのじゃないかというようなことを言っているような状態で、政府のみならず、民間でも、この自由化はあまり急に持ち出されたので、実はあわてふためいているというのが私は現状じゃないかと思うのです。きのうもおっしゃいましたが、すでに西欧では一九五八年ごろから準備をされている。通貨交換性の回復、共同市場の発足など、自由化への積極的な措置がとられている。これは大臣も認められる点だろうと思います。貿易政策を検討するとおっしゃるならば、今さらあわてふためくまでもなく、ずっと以前から政策を立てる余裕があったはずだと思うのです。ところが、それを一つもしていなかったと言わなければならぬと思いますが、どうですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 準備が整ったというのは、これはあるいは誤解を受けているかもわかりません。私が申し上げておりますのは、たとえば外貨準備が一応ある程度できたということ、また、将来もこれを持続していく可能性ができたということ、あるいはまた国内の産業もいわゆる国際競争に耐え得るような基盤ができた、こういうふうに私ども政府は見ているわけであります。そういう意味で、この自由化の方向へ踏み切っても差しつかえない段階になった、こういうことでございます。しかし、先ほど来の質疑応答でもおわかりになるように、また、昨日の大村委員にお答えしたところでも御了承がいただけると思いますが、各業界それぞれにはそれぞれの特質がございますから、それに対する対策をやはり考えていかなければならない。そういうものはまだ十分でき上がっているという段階ではございません。その点が先ほど来言われているところであります。だから、いわゆる自由化に踏み切っても差しつかえないような経済基盤なり環境が醸成された、これを私ども一応準備ができた、こういうふうに申し上げているのであります。誤解のないようにお願いします。
○須藤五郎君 あなたは、昨日も、世界経済から孤立しないため、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるが、私たちは、真の原因はそこにあるのじゃないだろう、こういうふうに考えるわけです。これは従来岸内閣初めこれまでの内閣がとってきた政策は、対米従属的であると同時に、封鎖経済、よその社会主義諸国に対しては封鎖的な政策を立てて、あなたはきのうみずから認められたように、アメリカにたよって温室の中の生活をやっていた、だから、今度は温室から出てもかぜを引かないように気をつけながら自由化に踏み切ったのだと、こういうふうにおっしゃったと思うのですが、このここへずっと導いてきた原因は、政府の対米従属と独占擁護の政策の必然の結果こういう状態が私は起こってきたのではないだろうかというふうに考えます。政府は、貿易の自由化以外に今後の日本経済の進路はないようなことを言っていらっしゃるのでありますが、現在の事態に対処できる実力を国内に作る条件がたくさんあったと思うのですね。それを岸政府はみずから断ち切ってきておる。すなわち、これは東西貿易を中断したということになるわけです。一九五八年第四次日中貿易協定、それから引き続いて鉄鋼の長期協定などがなされて、非常に明るい見通しがあったときに、岸政府は中国を敵視して、これを中断してしまった。こういう政策の結果が、現在、自由化をアメリカから迫られて、そうしてあわてふためいておる真の原因ではないかと、こういうふうに私たちは考えますが、どうでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 大いに異論があります。先ほど来申し上げましたように、共産圏のうちで中共、いわゆる北京政府との関係は御指摘の通りでありますが、いわゆる共産圏といわれる中の一番実力者だと私は考えますソ連ですが、この日ソ間にはりっぱな通商協定ができた。しかも、これは今後三年間やる。ソ連側からは、物によっては延べ払いでも出してくれるかというふうなことを今言っているわけです。これは、いわゆる封鎖経済だと、共産圏に対しては全部封鎖だと、この辺は当たらない。だから、この点は、須藤さんも封鎖経済だとお考えになることは間違いだ。一つ御了承願いたいと思います。 また、対米依存だとおっしゃいますが、わが国の貿易のアメリカへの依存度、これは全体の貿易のやはり三割程度です。だが、これは非常に大きい。一国に対して三割ですから、非常に大きいということですがいわゆるわが国貿易の半分が対米ではない、こういう実情にあります。しかも、対米の貿易関係では、もう、輸入と輸出の関係では、わが国から輸出する方がふえておると。こういう意味でわが国の経済としては、これはプラスの面になっておる。戦前なら、また、つい数年前までは、七対三くらいだったと思います。それが、事情が変わっておる。いわゆる温室経済と申しますのは、わが国がとっておる為替政策自身が為替管理をやっておる、そのために国内産業としては温室的な恩恵を受けておるということです。対米依存の経済だから温室経済だろうということじゃないのです。この点も、誤解のないように願いたいと思います。 私は、やはり自由主義諸国が今とっております考え方は、いわゆる貿易・為替の自由化、あるいはIMF、世銀、これは一貫した原則でありまして、そうしてやはり良質にして低廉なる原材料だろうが、製品だろうかは、どこからでも受け入れるようにしてやって、そうしてその国の経済の発展、国民生活の向上に寄与するようにすると、これが国際貿易のあり方だと、非常に理想的なことを言っておる。その考え方ではございますが、しかし、わが国が、外国から入るものがうんと多くて、出るものが少ないので、国際決済上困って、インフレが高進するようになれば、わが国の経済は、これは破綻ですから、そういう意味で、ひとり日本だけではなく、各国とも自国の通貨安定のために、関税政策その他保護政策をもって国内産業の維持育成をしておる、そういう状況でございます。今後の日本が自由化を進めるという国際的動向の線に乗る、いわゆる共産圏に対する封鎖経済なんというばかなことを考えておるわけではございませんが、そういう方向ではあるが、しかし、国内産業の弱体なものに対する保護、育成、助長はやはり、各国ともとっておるように、わが国としても、当然とっておるという方向でございます。
○須藤五郎君 封鎖経済をとらないとおっしゃいますけれども、実際にやっているじゃないですか。チンコム、ココム、これは一つの封鎖経済ですよ。アメリカに依存しているために、そういう不合理なことを押しつけられている。そのために日中貿易でも発展しないし、非常な阻害が絶えずある。これは一つの封鎖経済だと思います。 私は先年、中国に行きまして、貿易次長の雷任民さんと貿易協定で話し合ったあと、私が部屋から出かけたら、雷任民さんが、僕を、ちょっと、ちょっとと呼んだわけです。それで、行ったら、実は内輪話しをしてみたい、こういうことです。その雷さんの話では、日本はあまりばか正直だという。アメリカに気がねばかりして、日本は非常に消極的な態度しかとっていないが、そのアメリカ自体が、香港とジュネーブにおいて中国の政府と接触をしている。そういうふうに話はだんだんといろいろ具体化している。これが、もし、ぱっと幕が切って落とされると、アメリカと中国との間は貿易がだいぶ発展する可能性も出てきているのだ。そのときに、取り残されるのは日本だけじゃないか。なぜ、日本はアメリカにそんなに気がねしなければならぬか、こう言うのですね。そうして、もしも中国と日本とが自由に貿易ができるならば、そうしたら、中国は、同じ品物で値段が同じならば、西欧諸国から中国は物を買おうと思わない、優先的に日本から物を買おうと思う。だから、日本の態度一つで日中貿易というものは大きな発展をする可能性があるのだ。それを、何で日本はアメリカに気がねして、このような消極的な態度をとらなければならないのか。そうして、アメリカは実は、裏でこっそり中国と話し合いを進めておるじゃないか、まあ、こういうことを私はそのとき聞かされたわけです。 佐藤さん、今、香港を通して貿易されている金額は何百万ドルくらいのものじゃないですか。ごく少量なものでしょう。真珠貝とひすいと交換してみたり、実に微々たるものです。そのようなばかなことをやっておって、そうして日本の経済が立ちいくものかどうかということですね。しかも、今度の自由化で、アメリカに対する日本の貿易の帳じりが黒字になるとは、私は考えられない。おそらく、最近はアメリカ対日本の貿易は黒字になっておりますが、もし自由化が進んでいくならば、今度、むしろ逆な状態が来るのじゃないですか。そういうことも考えられる。 もう一つ、私伺いたいのは、日ソ貿易について長期のクレジットですか、延べ払い、あれを通産省が非常に積極的にやろうとしておるということを聞いたのですが、それに対して大蔵省は非常に消極的だということを聞いているが、そういう点について伺いたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 日ソ貿易について、大蔵省と通産省の間で意見の食い違いはございません。これは、向こうから出て参りますクレジットさえきまれば、これは進むと思います。それから、延べ払いに大蔵省自身が特に反対しているというようなことは、毛頭ございません。これはもう、はっきり申し上げていいことだと思います。私は、この延べ払いで、あるいは繊維関係のものが出るとか、あるいは船が買われるとかというようなことになれば、非常にけっこうなことだと思います。御承知のように、日ソ間の貿易は、最初バーターから始まって、その次に現金決済になり、今回は延べ払いにまで発展するという、これは順調に進んでいるものだと思います。ただ、中共、いわゆる北京政府との間には非常に不幸な状態になっている、この点は私はまことに残念だと思います。
○須藤五郎君 それはあなたたちが作ったんじゃないですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) それで、これは今私どもが作ったと言われるが、私どもはそう考えないで、とめられたのは中共政府じゃないかというように私は思う。この点はいろいろの問題があるだろうと思いますが、これは不幸にして国旗事件ができたとか、あるいはその他どうこうという問題はございましょう。問題はございましょうが、私は、あそこまでせっかく交流ができ上がっていた——別に中共の承認という事態でなしに、現実に政府の承認という事態が起こらないでも貿易は行なわれていた。そうしてその状態で続いていく方法があったと現実には思いますけれども、これは全部があれでこわれたということは、まことに遺憾な問題だと思う。これはいずれに責任があるということを申し上げる筋合いのものじゃない。そうして今須藤さんが御指摘になるように、北京政府もみずから望んでおられ、またわれわれも、しばしば申し上げるように、貿易はぜひ日中というか、中国大陸との貿易をしたい、この気持だけは率直に受け入れていただいていいのじゃないか、かように私は思っております。いまだにそう思っております。どういうわけでこういうような不幸な事態になっているか、私は非常に遺憾に思う。 それが、さらに政治問題に発展しているところに、いろいろの問題があるだろうと思いますが、過去においては、政治問題に触れないで、そういう貿易が現実に行なわれていた。それがどうして今日は政治問題に触れなければ貿易ができないのか、これは私は非常に遺憾な問題じゃないかとすら実は思っております。まあ中共問題は、そういう意味で私どもは、妥結する方法があれば、貿易を再開する方法があれば、これは積極的に努めてしかるべきだ、かように考えております。
○須藤五郎君 それは、岸さん初め、今の内閣閣僚の常に言うことだと思うのですがね。しかし、それは私は非常に手抜かりがあると思うのですよ。中国が今主張しているのは、平和五原則の問題以上に何も言っていないと思うのです。平和五原則を日本が承認するならば大いにやりましょうと言っているわけです。別に、今国交回復をしなくても、これまで貿易ができていたということは事実ですよ。しかし、これは岸政府の努力にあったのじゃなしに、民間諸団体の努力、私たちもまじえて、国会議員もまじえてですが、やられたことで、そのわれわれが積み重ねた石を、さいの川原の石のように、ぱっと鬼が出ていってこわしてしまった。岸内閣という鬼めがこわしてしまったわけですよ。しょっちゅうそういうことをやっているわけです。 で、中国の言っている平和五原則は、あなたも御存じでしょうが、日本として受け入れられないものは一つもないんですね、平和五原則は。そうでしょう。ないはずです。そうして中国の方に言わせますと、平和五原則の中に中国が訴えている内政不干渉ということ——内政干渉をやっているのは日本じゃないかということを言っておりますよ。こう言うのですよ。だって、中国六億の人民がわれわれの代表だといって選んでいる毛沢東政権を、日本は拒否しているじゃないか。そうして中国の放蕩息子として大陸から追い出された蒋介石を、中国の代表だと言っているじゃないか。六億の人民から見放された蒋介石が中国の代表で、なぜ中国六億の人民に支持されている毛沢東を認めないのか。これすなわち内政干渉じゃないか。日本国民がだれを総理大臣に選ぼうと、これは何も中国国民は拒否しているのじゃないのだ。一体どちらが内政干渉だ、日本じゃないか、こう言っておりますよ。私もその通りだと思うのですね。平和五原則の精神を日本政府が拒否していることになるんですよ。これでは話は成り立たないのです。 特に最近、いつも経済と政治は別だというようなことを言っておりますけれども、それは私は中国には絶対に受け入れられないと思います。そういう態度を岸内閣が捨てない限り、日中貿易は絶対できませんよ。これは明らかなことです。太鼓判を押しておきます。だから、あなたが幾ら心で貿易を望む貿易を望むとおっしゃっても、それはとうていできない。だから、その貿易をほんとうに望み、やる意思があるならば、五原則をまず認めて、こちらの態度を改めてかからない限り絶対できない、こういうように思います。 で、中国を敵に回すような——安保条約の話がまた出て参るわけでございますがね。(笑声)このように中国と貿易したい、貿易したいと言っておりながら、片方で中国を敵に回すような安保条約を結ぶというようなことをやっておっては、これはいつまでたってもらちがあかないと思うのですよ。安保条約が中国を敵視しないものだとあなたおっしゃいますけれども、今度の審議の中で中国を敵視するという問題がたくさん出ていると思うのですよ。調達庁の中の問題にも、この間じゅうからいろいろ問題が出ているでしょう。中国に対するスパイ、ソビエトに対するスパイ、いわゆる旧軍人を職員にして情報をいろいろ探らすような、そういう職制さえも作られていますよ。こういうことが中ソを敵視している証拠だと思う。こういうことを片方でやっておって、そうして貿易だけやりましょう、やりましょうといっても、それはとてもだめだ。だから、平和五原則の精神を日本政府がはっきりとつかんで、その上に立って日本の政策を立てていかない限り、私は貿易もできないと思う。東西貿易はそれじゃそのままにほうっておいて、今のような、いわゆる私が言う鎖国的な政策を立てていって、日本の経済がうまくいくとお考えになるのですかどうですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) だいぶ私の担当じゃない方向に話が進んでいますから、(「責任はありますよ」と呼ぶ者あり)私は、平和五原則の批評をすると、また内政干渉と言われますから、差し控えたいと思いますが、これは外交上の問題とは別に、私先ほど来申し上げましたように、過去においてはとにかく両国人民間における貿易はできていた。政府もそれについては別に、岸内閣が誕生しても、それに拘束をちっとも加えてはおらない。これだけははっきりしている。むしろ、最後に決裂を見ました際には、さらに貿易あっせん所の設置まで岸内閣自身としては承認したのです。そこまで来たというように私どもは考えていて、さらに前進したものだと思っている。しかし、不幸にしていわゆる国旗問題等が起こり、いわゆる岸内閣は中共を敵視している、こういうことで、もう話が全部こわれた。私は非常に残念に思う。今のさいの川原の積み石じゃないが、一体鬼はどこにいるかというのでありますが、実は私どもも、なるほど今政府の閣僚の一人じゃありますが、これもやっぱり国会議員なんで、いわゆる議員団としては、いわゆる皆さん方がお出かけになる際には十分私どもも協力もし、支援もしたつもりなんです。しかしながら、今は岸内閣自身がけしからぬと言われた。あるいは安保条約の問題にしても、安保条約の防衛的な、考え方の問題であるといいますか、積極性を持たないのだと幾ら申しましても、これについては十分誤解は解けてはおらない。最近の平京放送なぞは、安保条約を破棄するならば日本を仮想敵国としての中ソ友好同盟条約を破棄する、こういうことを言われた。一体どちらが先にできている条約なのかということなぞを考えてみると、これは安保条約がない際においても中ソ友好同盟条約というものはあった。それは現実にある。また、今回の安保条約自身は、ただ改正の問題なんである。これは占領後安保条約自身はずっとあった、今までも。その安保条約があっても、それをやめれば中ソ友好同盟条約を破棄するというような話は、一度もなかった。こういうところにもやはり問題はあるのじゃないですか。私は両国民がほんとうに謙虚な気持で考えるなら考えていい、こう思います。これはしかし大蔵大臣としての言ではない、かように御了承いただきたい。これは本来の私の仕事じゃございません。私は一国民としてそういうような感じを持つ。 だから、もしそういうような気持でやられること自身は、いろいろ国内で内政干渉であるとかないとかいうような議論が出ますが、私は、日本国民自身が非常に気持よく聞く言葉じゃないだろう、どうしても……。それよりも、私は、現実に、その政府の承認問題なしでも貿易は民間同士でやっておった。どうしてもその貿易が再開できないのか。それで、もう絶対にそれはだめなんだ、こう言われるところに私は無理がある。やはりお互いに積み重ねていって、そうして大陸と日本との間の友好を進めていこうというあの過去の努力が水泡に帰さないように、せっかく積み上げたものが、よしそれがごろごろするような小さい石ころにしろ、ある程度積み重ねたそれは、やはり守っていくような方向に双方が努力することが必要ではないか。私は非常に、遺憾に思っておる。 ただ、大蔵委員会としては、あまり議論することは、問題が違うのでありますから、私はここで発言することは記録には残しますが、はっきり申し上げておきますが、大蔵大臣として政府を代表して申し上げておるわけじゃない。日本国民の一人としての感じを率直に述べたまででありますので、それを申し上げておきます。
○須藤五郎君 それはわかっております。それは岸内閣の閣僚である以上、あなたの責任ある答弁と私は受け取りますよ。そんな個人の意見ではない。あのね、佐藤さん、中ソ不可侵条約のできたのは、私は、日本が当面の目標じゃないと思うのですよ。日本を敵視した条約ではないと思うのです。あれは日本のうしろについておるアメリカを目標にした条約だと思う。そうですよ。
○国務大臣(佐藤榮作君) 書いてあることは違う。はっきり書いてある。
○須藤五郎君 しかし、真相は……。 それから、今度の安保条約。あの前の安保条約は、日本が独立していない弱体なときにアメリカから押しつけられた条約であるという点で、割引はありますよ。ところが、今度の新安保条約は、日本が積極的にアメリカと交渉して結んだ条約です。だから、前の安保条約と今度の安保条約とは、中国やソビエトは、受け取る方は全く違いますよ。今度は日本がはっきりと仮面を脱いで、中国、ソビエトを敵視した立場に立った条約である、こういうふうに向こうは受け取っておるわけですよ。だから、あれほど激しい意見、反発が、ソビエトや中国から来る。そこの点はよく知っていただかぬと、誤りのもとになると思うのですよ。 そこで、最後に、私は、質問であり意見であるかもわかりませんが、新しい安保条約の結果、ますますアメリカにしがみつかなくてはならなくなるだろうと思うのです。中国やソビエトからああいう態度に出られれば、まあソビエトは別ですが、中国から。日中貿易は発展しない、どうしてもますますアメリカにしがみついていかなければならぬ。それと同時に、中国問題を解決しなかったら、私はアジアにおいての日本の立場というものは非常に不利になるだろうと思うのです。これは円滑にいかないだろうと思うのです。だから、日本政府が幾ら東南アジア貿易を言っても、なかなかそう簡単には私はいかないと、こういうふうに考えております。そこで、その東南アジア、例をとりますと、東南アジア問題についてはまあ賠償でうまいことやろうというので、ビルマ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、みな賠償をやりましたね。この間、二百億のベトナムに対するむだな賠償までやったわけですが、ところが、賠償でごきげんをとって何とかつじつまを合わそうとしても、それもうまいこといかない。日本の態度がはっきりしていないし、中国を敵視するような政策をとっておるから、このアジア諸国の国民感情を日本がつかむことができないし、またフィリピンなんかでは賠償と汚職が結びついてフィリピンの議会で問題になったり、インドネシアでは造船汚職、そういうものが起こっておるし、インドネシアで合弁会社を作ろうと思ってもそれも拒否されなくちゃならぬというような、こういうふしだらなことになっておる。その原因はどこにあるかといったら、やっぱり私は日本政府の反中国的な政策が一番大きい原因だと思うのですよ。やはり今私は、平和五原則というもの、これは単に民族独立、解放戦線の宣言文句じゃないと思うのです。平和五原則の精神は、今や新しい意味の国際法だと思っておるのです。この国際法を守らないような日本が、どうしてアジア諸国から信頼を得ることができるか。私は得られないと思うんです。 そこで、政府はそういう不合理な状態の中で自由化をやろう、こうするから、結局そのしわ寄せが日本の労働者や農民、中小企業にしわ寄せが来るわけです。だから、ここで岸内閣は翻然と悟って、平和五原則をはっきりと尊重する立場に立って、中国を敵に回すようなそういう態度を改めて、東西貿易を発展させることによって私は国内の経済を発展させなければならない、こういうふうに考えているものですが、大蔵大臣はその点についてどういうように考えるか、もう一ぺんお答えいいただきたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) これは、国民の一人じゃなしに、大蔵大臣としてお答えいたします。先ほど来申し上げておりますように、大陸との間の貿易、これは私ども心から進めることを願っております。しかも、貿易については、やはり自由平等であることを実は建前に考えております。そうしていきたいものだと思っております。日ソ間の通商協定も、そういう意味ででき上がっているということを御了承願いたい。ことに、私が自由平等の原則ということを申し上げますのは、東南アジア諸地域に対しても、非常な一時的なダンピングの通商行動というものについては、国際的にはいろいろ批判がある。だから、中共自身もそういう点についてはやはり考えられないといかぬ。過去において、あるいは万年筆とか、あるいは繊維関係において、非常に低廉なものを出されましたが、これは永続はいたしておりませんが、そういう事態は今後はやはり十分考えていただいて、やはり国際的視野に立って行動されることを強く私は要望したい。この点がうまくいくことが望ましいのではないか。 ただいま申される平和五原則、まことにりっぱな五原則であります。一切外国に干渉せず、そうして平等の立場でやられる。まあそういう考え方だから、一切の侵略行為はやらない、こういうことが非常に望ましいことであります。わが国の方は、いわゆる平和五原則という建前こそいたしておりませんが、侵略はもちろんしていないし、内政にももちろん干渉はしていない。ただ、自衛の措置だけはみずから進んでやる。(須藤五郎君「自衛を兼ねた侵略だ」と述ぶ)これは日本の立場上当然だ。たとえば、今までの問題でも、領土の問題について、領土紛争などは敗戦日本においては一切起きておらない。これこそは日本が不侵略国家であるということをはっきり示している。しかしながら、遺憾ながら、五原則を提唱される中国大陸自身において、領土問題についての係争がインドとの間に起きている。こういう現状は、中国自身もやはりいろいろ批判されるということではないか。りっぱな五原則であるが、そういうものがはたしてやられているか。あるいは民族の考え方は尊重すると言われるが、チベットに対するいろいろのダライ・ラマ一行の逃避行その他等が、いわゆる五原則から見て、(「それ言われると長くなる」と呼ぶ者あり)一般問題がこれはいろいろ私はあるだろうと思います。だから、今言われる平和五原則云々のお話をされますが、私は、日本が平和五原則というようなことは実は申しておりませんが、おそらく平和五原則に反しているというような事実は一つもない。みずから私は申し上げ得る。どこからも非難を受けるような問題はこれまで起きておらない、これだけははっきり申し上げ得るのでありまして、私は、それぞれの国がいろいろな問題を起こしておられるのと比べてみまして、私どもこそその平和五原則、不干渉であり、不侵略であり、またそれぞれの国の考え方を尊重する、こういうことは非常に徹底している、かように私は自信を持ってお答えをいたします。
○須藤五郎君 時間がないが、佐藤さんがああいう意見を述べると、僕は一言言わなければならない。チベットの問題などは、佐藤さん、全くあなたたちの考え違いというか、知識があまりなさ過ぎると思う。チベットにおいてラマ教が、ラマが絶対権力を握り、そしてチベットの国民の生活を圧迫して、非常に苦しめておった。中国は人民解放国だから、チベットの人民を解放しなければならない。チベットの人民を解放して、チベットの国民を幸福にするためには、一ラマ僧を黙ってほうっておくわけにいかぬ。だから、ラマ僧に対して説得し、いろいろやったところが、ラマ僧はそれを不満にして、これまで持っておる既得権——要するにそういう搾取をやり、そうして宗教の名をかりて人民を弾圧する、それではいかぬというので抗争になった。ところが、ラマ僧は財宝をうんとこさと持ち出して逃げてしまった。ある意味においては、あれを見ても、いかにラマ僧が非人民的だかということがわかる。いかに非民族的であるかということがわかる。ほんとうに人民を愛し、民族を愛するというならば、ああいう行動をとるべきでない。自分を反省して、ああいう行動をとるべきでない。それがこっそりと逃げ出してしまう。あなたはラマ僧を非常に擁護されるが、それは中国の政府として許すことのできない問題だ。あれは何も民族を弾圧する——今チベットじゃ非常に感謝して国民は幸福な生活に入っている。これを見ましてもはっきりわかる。 インドとの抗争の問題も、今話し合いを、今周総理とネールと話し合いをもって会談しておる。平和のうちにやっておる。平和五原則の線が貫かれている。何で日本政府だけが、安保条約を結んで中国を敵視し、そうして蒋介石を承認したり、毛沢東を不承認。向こうは一刻も早く国交を回復しよう、そうして日中不可侵条約を結ぼうと言っておる。そこまで来ているのに、それを拒否しているのが岸内閣じゃないですか。そういう状態で、全く道理がない。どうしても、そこを考え直さなきゃならぬと、こういうことで、きょうは時間もありませんから、これで終わりますが……。
○委員長(杉山昌作君) 本日は、この程度で散会いたします。 午後一時二分散会