社会労働委員会 第20号
- 発言数
- 389 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1960/03/30
会議録
○委員長(加藤武徳君) それでは、ただいまから委員会を開きます。 まず、委員の異動を報告いたします。三月三十日付をもって秋山長造君が辞任し、その補欠として栗山良夫君が選任されました。報告いたします。 —————————————
○委員長(加藤武徳君) この際、労働情勢に関する調査の一環として、大牟田市等に発生した炭鉱労働争議に関連した死傷事件に関する件を議題としたいと思いますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。 それでは、大牟田市等に発生した炭鉱労働争議に関連した死傷事件に関する件を議題といたします。 政府からは、労働省松野労働大臣、渋谷労働基準局長、村上労災補償部長、亀井労政局長たちが出席いたしております。なお、警察庁からは、警備局曾我参事官が間もなく参ります。運輸省からは、海上保安庁警備救難部竹中参事官がやがて出席をいたします。 それでは、質疑のおありの方は御発言を願います。
○小柳勇君 私は、一昨日以来三池に発生いたしております三池炭鉱労働組合と第二組合との激突事件並びに昨夕発生いたしました外部団体による三池労働組合員に対する刺殺事件などについて、労働大臣及び関係当局に質問いたしたいと存じます。 初めに、労働大臣に質問いたします。昨晩まことに不祥な事件が発生いたしまして、四山鉱にピケを張っておった三池炭鉱労働組合のピケ隊の中に、外部団体、今新聞の報ずるところによりますと、土建その他外部的なボスといわれておりまするが、そういう外部団体が百数十名押しかけまして、短刀やピストルなど凶器を持ってピケ隊に突入して、ここに乱闘が発生し、刺殺事件が、一名死亡し、警官一名重傷、他十数名が重傷を負ったという報道がなされておりまするが、労働大臣は、この詳細なる事情を御存じであるかどうか、お聞きいたしたいと思います。
○国務大臣(松野頼三君) 昨夜の事件につきまして、さっそく警察庁の石原大臣に九時半ごろ照会をいたしました。石原大臣の方もまだ現地に連絡中で、詳細なことはまだ明確ではございませんでしたが、一応昨夜のうちに判明いたしましたものだけを昨夜のうちに報告を受けました。しかし、必ずしも全部が全部、警察大臣の石原大臣も詳細にはまだ報告を聴取中でございましてしかし、事柄が、事実そのような事柄があったことは間違いないことでございますので、さっそく労働大臣としては、この争議中これが平時の場合にはいわゆる警察だけの問題でありましょうが、この大きな労働争議中ということを考えまして、労働大臣として非常にこれは遺憾なことだと思い、とにかく昨夜のうちに労使双方ともどもに、みずからの暴力を取り締まると同時に、第三者の暴力もともどもに排除してもらいたいということを労使双方に申し入れをいたしました。 なお、このことは、治安当局にも厳重に昨夜のうちに、この問題のもしいろいろな関係があったなら、徹底的に調査していただきたいということを昨夜のうちに申し出をしたわけであります。同時に、けさ、なお、あらためてその後の詳細を報告を求めましたけれども、まだ石原大臣までは詳細な報告はけさまではきておりません。目下捜査当局で、現地において捜査中という報告で、その後の詳細なものはまだ判明いたしておりません。
○小柳勇君 大臣は閣僚の一人として、昨日から情報を入手されたようでありまするが、昨晩からきょうまで、ただいままでの労働大臣として、労働争議中の労働組合員に対する外部団体の暴力団のこのような暴力行為に対して、どのような処置をとられたか、また、とろうとされるか、御意見なり、とられた処置をお聞きしておきたいと存じます。
○国務大臣(松野頼三君) 昨夜のうちに総理に連絡をいたしまして、警察大臣から私が聞きました範囲内において総理に御報告をし、昨日の閣議で実は暴力排除の議論が出まして、総理も非常に関心をもっておられましたが、そり方向に沿って、昨夜のうちに行動をいたしますという了解を得たわけであります。その問題は、昨日発表いたしました談話と、両当事者に対する申し入れであります。両当事者には会社側に対する要請、組合側に対する要請、新組合に対する要請、三つを要請をいたしまして、おのおのみずから組合の暴力を自粛してもらいたい。また、取り締まるように徹底的に御協力、また同時に、第三者に対する暴力もともどもに排除してくれ、それ以外は、治安当局の権限もある程度最大限に発揮するように所管大臣に要請をいたしたわけであります。
○小柳勇君 ただいま大臣は、三者に対して労働大臣として要請をされたと言われましたが、新聞ではその概要だけを承知いたしておりまするが、三者に対する要請の内容について報告願いたいと存じます。
○政府委員(亀井光君) 昨日大臣の命を受けまして、労働大臣の談話を発表いたしまして、これによって労使の今後における暴力排除の心がまえにつきまして、強い要請をいたしました。その内容を朗読いたしますると、「本日夕刻、三井鉱山四山鉱において不祥事件が起き、死傷者が出た由である。その詳細は目下調査中であるが、かかる不祥事件の発生したことは誠に遺憾である。労働争議に伴って暴力行為が行なわれることは、その理由の如何を問わず、法律の堅く禁止するところである。関係労使は、冷静に事態の重要性を認識し、みずから暴力を行使しないことはもちろん、第三者による暴力行為に対してもこれが排除に努めることを希望する。」これとともに、具体的に現地の第一組合の状態が現地から報告がございまして、非常に緊迫した空気であるということ自体をわれわれとしまして承知いたしたのでございますので、本日において引き続き不祥事件が発生するということを防止するために、会社に対しましてはこういう趣旨の要請をいたしました。「本日の不祥事件の発生によって、現地の情勢は緊迫しているとのことであるが、明日の就勢については、特に慎重な配慮をせられたい。」ということで、本日就労を会社が計画をいたすといたしましても、それについては十分慎重な態度をとっていただきたい、できれば本日の就労は遠慮願いたいということを、率直に私から会社当局に申し入れたのでございます。会社当局といたしましても、これを了といたしまして、善処する旨の確約を得ておるわけでございます。 また一方、組合に対しましては、同様趣旨でございまするが、「本日の不祥事件の発生によって、現地の情勢は緊迫しているとのことであるが、明日のピケ等については、特に慎重な配慮をせられたい。」これは現在ピケを張っておりまする第一組合の行き過ぎたピケ、すなわち法律で定められておりまする平和的な説得以上のピケについて十分慎重に配慮せられたいという趣旨の要請をいたしました。これにつきましても組合側の了承を得ました。 また、現地の新組合に対しましても、同じような趣旨でございまするが、「本日の不祥事件の発生によって、現地の情勢は緊迫しているとのことであるが、明日の入坑については、特に慎重な配慮をせられたい。」ということで、新組合に対しても同様の趣旨の要請をいたしました。これまた、現地におきまして、組合も了承いたしたという報告を受けております。
○小柳勇君 ただいま中労委で、藤林会長があっせんに入られた段階に、このような不祥事件が起こりました。中労委に対しては、何か労働省としてこの不祥事に関連して、要請なりあるいは相談なりされたような事実はございませんか。
○国務大臣(松野頼三君) 中労委は中労委として、独自な関係と、独自な行動をなるべく制約しないように、中労委の独自性を私は尊重いたしておきたいという意味で、何らこの問題については申し入れもいたしておりません。
○小柳勇君 警備体制についてはあとで担当官に、質問したいと思いますが、ただいまの情勢、われわれが報告を受けましたところによりますると、なお、暴力団など不測の事態が発生する危険がなしといたしません。このような緊迫した悲惨な労働運動を見ながら、労働大臣として今後この問題をどのように処理しようと、あるいは努力しようと考えられておられるか、決意を聞いておきたいと存じます。
○国務大臣(松野頼三君) 昨日から私も非常に心配しておりましたが、とにかく平和的な、合法的な範囲に早く戻すことであります。争議そのものに関与するということよりも、争議の基本的な問題に戻すこと、派生的問題において本質を間違うようなことは労働問題としては厳に慎しむべきことだと存じます。これは端的に言えば、暴力事犯というものを伴ったときには、それは労働争議を逸脱した行為の方に焦点が向いてしまう、基本のお互いの権利というものが忘れられる、こういう状況は労働問題の解決には役立ちません。私はかえって解決をおくらせることだと思いまして、早期にこの暴力行為というものをとにかく正常な争議に戻すこと、合法的なものに戻すことに全力を注いでおるわけでございます。その行為として、私は昨日以来、閣議及びあらゆる方面において、この問題について努力いたしておるのであります。もちろん私の所管以外のことは、その所管大臣に常に連絡をいたしております。
○小柳勇君 ただいま発言がありましたように、これは単に労働大臣だけの責任ではないと私も考えます。これは岸内閣全体の責任であろうと考えますが、大臣のお考えはいかがですか。
○国務大臣(松野頼三君) もちろん総合的に国家の治安、あるいは一地方における不安をなからしむるということは、政府の責任でございます。従って、政府全体として、その問題については対処すべきものだ。昨日も岸総理みずから、この問題については、発言が強くございまして、何らか厳重にこの問題を各大臣が十分意を尽くせという話が、昨日も実は出たくらいでございます。その意を受けて、私の所管としては、労働問題にその端を発しているならば、労働大臣として、その本質に足るように、極力私は尽力する、これが平和解決のいしずえだと思います。この問題がある間は、なかなか、平和的な解決というものよりも逆な方に向いては大へんなことだという意味で、私は、争議の解決はすなわち治安というふうなあやしげな方向に向かないように、正常な方向に向かえば、平和的な解決の道は私は必ずあると思う。それが逆にこういうことが起こるということは非常に残念なことだ、また、労働大臣としては、まことにこういうことが一番私は困ったことだと考えております。
○小柳勇君 それにもかかわらず、昨晩私が報告を受けたところによると、争議の相当の責任を負う総評の幹部が、総理大臣に面会に行って、そうしてその実情を報告して、岸内閣として早急にこの問題を処理するように要請に参りましたところが、岸総理大臣は、これをすげなく断わられて、面会されなかったという報告を受けましたが、その実情について御存じでございますか。
○国務大臣(松野頼三君) 現地におりませんので、内容は私は存じません。ただ、昨日総評の幹部の方から連絡がございまして実はこういうふうなことで総理に面会ができなかった。労働大臣に対してどう思うか。——実はその前に、私の方は昨日この方向をとるようにきめておりましたので、これこれこういう方向で、ただいまから対処するつもりでございますと返事しましたところが、それはけっこうだ、それには自分たちも協力するから、至急その方向をやってくれという話が、昨日の十時半かと記憶しますが、十一時ごろ電話連絡がございました。従って、岸総理大臣には、お会いになれませんでしたけれども、私とは電話で十分話をし、そのときは、すでに私の方はこの方向にもう行動を起こしておりましたから、その方向にこういう対処をいたしますという報告をした。ところが、御当人の方も幹部の方も、それはけっこうだ、それには協力するという御返事があったのは、十一時ごろかと私は記憶いたします。御面会の内容について、私は存じておりません。
○小柳勇君 労働大臣並びに労働省が真剣に心配しておられることを、今の答弁から若干察知できますが、岸総理大臣が内閣の責任者でありながら、また、もう各報道陣ともに、三池闘争というものをトップに扱っているほど、これは日本全体の問題であろうと思います。その日本全体の労働行政だけでなくて、全体的な岸内閣の施策の一端を現わすこの争議に対して、岸総理大臣が重要な責任者に会わなかった、しかも殺人があって、先日は流血の惨があり、ゆうべは殺人があって、その実情を訴えて、岸内閣全体の善処を要望しに行った総評の幹部に対して、おられたにかかわらず会えない、会われないというのは、ただいまの労働大臣の配慮と非常に隔たりがあるし、冷たい仕打だと思いますが、岸総理大臣がゆうべからけさになって、大臣に何かお話になったことがあるのかないのか、お聞きしておきたいと思います。
○国務大臣(松野頼三君) 昨夜十一時ごろかと思います。大体前後いたしまして、私は電話連絡をいたしました。こういう方向で私はやりますという報告をしまして、総理も、そのときはもうすでにおやすみをしたという話でありましたが、緊急のことだから、電話でけっこうだ、私は電話で話しました。その際に、実はこういう幹部の方からの申し出もありますという話は、電話先で御連絡をいたしました。けさまた総理にお会いしまして、昨夜の措置は適宜で、自分はよかったと思うという話を、けさ私は総理にお会いしまして、その話がございました。昨夜の話は、総評の幹部の話は、総理はけさは私には何らお話がございませんでした。しかし、昨日の状況は、外国の首相とお会いになるという予定を私は存じておりましたが、相当その問題で忙殺されておられたことは事実であります。しかし、私は所管大臣として十分その意を総理に伝え、総理も同じ意見であったことは、昨日、昨夜、けさの意向で同一でございます。総評幹部のことは、私は直接に現地におりませんでしたから、電話先のことでございましたから、詳細を私は存じておりません。
○小柳勇君 官房長官でありませんから、突っ込んで聞いても、はっきりした答弁は得られないと思いまするが、閣議でも早急に開くというような空気はございませんか。
○国務大臣(松野頼三君) 昨夜、同時に官房長官にも、総理に話しましたあとで、こういう措置とこういう方向で総理と連絡済みだという連絡を、これは十一時四十五分くらいでございます。十一時まで官房長官がテレビに出ておりましておりませんでしたから、それ以後、十一時四十分ごろ、総理よりあとに連絡をいたしました。これは事後の連絡であります。今日早急に、実は私も、事態と問題については、緊急に会合を開いていただこうかと思いましたけれども、私自身のこの方向は、これが一番最善だと思いましたので、私は、そういうことをするよりも、早くこの方向の処置をとることが緊急だと考えまして、電話連絡の方が私は早いと、こう思ったわけであります。従って、昨夜の処置は、私は政府全体として、非常に適切とは申しませんけれども、事態に対処するには、こういうものは早い方がいい。ことに、昨夜のけさということになりますと、時間的に非常に無理なことになります。けさに間に合わなければ、再びこういうような事態が起きたときには、とても会議を開いても間に合いません。そういう緊急措置でありましたので、これは電話で連絡をいたしました。
○小柳勇君 聞くところによりますと、九州全体から暴力団が入り込んで、相当対立しつつあるようであります。従って、あと警察庁の担当官にも質問いたしたいと思いますけれども、これは単に労働行政だけでなく、治安問題にも発展しつつありまするので、早急に総理大臣などに御相談あって、岸内閣の全体の政治の問題として早急に処理されることを要請いたしておきたいと存じますが、労働大臣に二、三重要なる問題で質問しておきたいと存じます。 一つは、指名解雇がなされまして、これは根本的な問題でありますが、この事件の発生でありますが、千四百九十一名解雇されまして、その中で、市会議員など政治局員が九名、執行委員が十八名、役員が百九十三名、旧役員が六十二名、それから、青年行動隊といわれる組合の準役員が百二名、婦人部の役員が十二名、その他が千九十五名。それで、政党関係だけでも、社会党、共産党が若干ございますが、百五十一名。このように、指名解雇された内容が非常に政治的であるし、憲法で保障された思想及び良心の自由、あるいは集会、結社、表現の自由などが抹殺された指名解雇の実態であります。そういう実態を大臣は知らないとは、この段階でありますから、言われないと思いまするが、このような労働運動なり政治活動に対する弾圧の指名解雇に対して、労働省並びに労働大臣は一体どのようなお考えを持っておられるかお聞きしておきたいと存じます。
○国務大臣(松野頼三君) 今回、ただいま紛争になっております炭労からの申請は、千二百名という申請が出ております。いわゆる指名解雇に関する紛争として千二百名。従って、その後の方は、その別な立場で、別な方向で私は処理されたのじゃなかろうか、まあその人数は別といたしまして。ただ、この指名解雇の理由が、政党によってその理由がつけられるというならば、これは憲法上ゆゆしき問題だと存じます。この指名解雇の理由は、業務阻害というふうな方向であろうと私は内容を拝聴いたしております。個々の方について、私は千二百名全部の方の理由は知りませんが、総合的には業務阻害ということであって、政党ということについての理由は私はないと承知しております。もしそれがありまするならば、おそらくすべての裁判において、その解雇というものは当然無効で、保護が私は与えられると存じております。従って、その内容はそういう意味であって、政党とか宗教によってこの問題を左右したというならば、これは非常に大きな問題がある。同時に、そういうものは無効となり、当然保護の規定が裁可判決であるだろうと、こう考えますので、内容は私は業務の問題だと承知しております。
○小柳勇君 業務の問題をどこからお聞きになったかわかりませんが、私が今読み上げました通りです。この千四百九十一名の中には、希望退職した人もありますから、今問題になっているのは千二百名としてよろしゅうございます。私が申し上げましたように、その中にこれだけ、役員なり、あるいは準役員なり、政治局員という議員なり、あるいは社会党なり若干の共産党員という政党員がはっきりしております。この数字を私は読み上げました。これを聞いて、大臣はどうお考えになりますか。
○国務大臣(松野頼三君) かりにいかなる政党の方がお入りになっておりましても、かりに自民党の方がお入りになっておったとしても、私は同じだと思うのです。今回の労働法は、労働者の雇用関係というものが主体でありまして、政治、政党の問題をはらむことはあり得ないと思います。また、あるならば、おそらく当然保護が与えられるものと私は存じます。
○小柳勇君 この指名解雇が三池闘争の根幹になっておるわけです。従って、この問題は、当然法律でも論議されまするが、ただいまの大臣のような、私がこれだけはっきり言っても、業務を阻害するのだというような会社側の一方的な見解だけを取り上げておられるような労働大臣の答弁には、不満でありますが、水かけ論になりますから、次の問題に入って参りますが、今回第二組合が発生いたしました。そうして、その第二組合に対して、直ちに翌日から団体交渉に入っております。そうして、三池労働組合の労働協約がございまするが、第一条にこういうことが書いてございます。交渉団体の確認といたしまして、会社は組合(職員組合を除く)が唯一の団体交渉の相手であることを認めると、こういうような労働協約がございます。このような労働協約があるにかかわらず、この労働組合から脱落していった、しかもそれはもう労働組合では、中央委員会で懲戒にして、組合を排除しなければならぬというような訴えがなされておる。十一条には、ユニオン・ショップが協約されております。組合の除名者その他の取扱いとして、組合を除名されまたは脱退した鉱員は原則として会社はこれを解雇すると書いてある。このように労働協約がはっきりしておって、何もないときには、この労働協約をたてにとって労働組合を生産に従事させる。ところが、自分に不利になりますと、生産阻害者と言って、政治活動を若干やる者とか、あるいは平素組合役員として第一線で文句を言うような人、団体交渉をするような人を指名解雇しておって、そうして今度は、こういうようなはっきり団体交渉の確認がしてあるにかかわらず、翌日は、脱退していった者、あるいは組合から排除された者とすぐ団体交渉をしようとしておる。これは、労働省が労働法というものを確認するならば、労働大臣は第二組合が生産を再開するのはやむを得ぬというようなことにはならぬと思うが、労働大臣いかがですか、労働大臣の意見を開きたいのです。
○国務大臣(松野頼三君) その当時の、労働協約を結んだときの労働組合の基盤と、今日の労働組合の基盤というものが、大いに変わっております。従って、労働協約を結んだ当時の基盤と今日の基盤とおのずから変わっておるのです。従って、その労働協約を結んだ基盤の範囲内においては、その労働協約というものは有効でございましょう。しかし、基盤が変わった他の労働組合の発生を禁止するものではございません。それは組合員みずからがおきめになることであって、それを禁止することは、労働及びすべての自由を束縛することは、これはできません。その協約の締結及びその傘下にある人に関しては、今日ももちろん有効であります。しかし、他の今日の第二組合というものが、組合員自身がその基盤から新たなものをお作りになったので、みずから結成されたということなら、組合結成ということは、これは禁止するわけには参りません。同時に、できた組合と労働協約を結ぶことも、禁止することはできません。従って、労働協約は、今日の基盤の変わったときには、それは及ばないのであります。基盤の範囲においては、その労働協約は有効であると私は考えております。その基礎が変わったというところに、この労働協約の全部が新しいものまで束縛するという労働協約の権限は、これはございません。
○小柳勇君 労働大臣は、会社側の労働部長の解釈するような労働法の解釈では困ると思うのです。これは労働協約ですよ。労政局長どうです。
○政府委員(亀井光君) 労働協約の解釈、あるいは法律の問題でございますので、大臣の御答弁を補足いたしまして、私から御説明いたします。今御指摘のございましたように、三井鉱山株式会社と、全国三井炭鉱労働組合連合会等との労働協約の第一条におきまして、「会社は、組合(職員組合を除く)が唯一の交渉団体の相手方であることを認める。」こういう規定がございます。この協約の第一条の解釈といたしましては、団体交渉というものが、信義誠実の原則の上に立って、お互いの信頼感のもとに行なわれるという前提のもとにおきまして、この組合を団体交渉の相手方として認めるという趣旨のものだけでございまして、これ直ちに、たとえば、新しい組合ができた場合に、その組合との団体交渉の進捗につきまして妨げになるとか、あるいはそれを排除するというふうな趣旨の規定でないことは了解事項でこういう規定がございます。本条は、労働組合法第七条第二号の精神を排除するものではない、このことは、すなわち他の労働組合から正当な団体交渉の申し入れがあった場合におきまして、会社側はこれを拒否するということは、労働組合法第七条第二号の精神に違反する。すなわち、正当な理由なくして、団体交渉の拒否をいたしますると、不当労働行為になるのだという趣旨のことを了解事項の中に入れております。そういう趣旨から申しまして、今申し上げますように、第一条は、他の組合との団体交渉というものは排除するものではない、新しい事態のもとにおきまする他の組合との団体交渉を排除するものではないというふうに解釈されます。 それから、第二の御質問の、いわゆるユニオン・ショップ条項でございますが、言うまでもなく、第十一条に「組合を除名され、または脱退した鉱員は、原則として会社はこれを解雇する。ただし、会社が解雇について考慮を必要と認めたときは、すみやかに組合と協議する。」従いまして、第十一条の規定に基づきまして、一、二の組合員が組合から除名され、あるいは脱退することによって除かれて参りまする場合には、この規定が適用されるのでございまするが、今度の三井鉱山の場合のように、大多数の労働者が旧組合から脱退をいたしまして、新しい労働組合を作ったという、すなわち、労働組合の統一基盤というものが、そこに変わってきているわけでございます。そのことにつきまして、この協約が直ちにこの十一条の規定が適用されるかということにつきましては、従来地方裁判所の、最高裁まで行った例はございませんが、地裁の判例が、判決例がたくさん出ているわけであります。その中におきましても、判決例といたしましての大部分の見解は、そういう場合は、旧労働組合の統一基盤が変わったから、従って、新しいそういう労働組合に対しまして、旧労働協約は適用されることはないのだ、されなくてもよろしいのだという判決をみないたしているわけでございます。従いまして今冒頭に御質問のございました趣旨につきましては、現在の三井鉱山の労働協約の面から見ましても、私は協約違反というようなことは、法律的にないというふうに解釈いたしております。
○小柳勇君 ただいまの協約違反か違反でないか、あるかないかは裁判で争っておりまするので、結論が出ると思いますか、ただいまの労働省の見解は、まことに会社側の解釈と同様でありまして、そういうものでPRをやった。それから、それまでに、中央委員会が開かれて混乱いたした前の話でありまするが、会社は相当の金を使って、そういうふうなよりもっと悪質な理論家を使って、労働教育をして、第二組合を育成してきた。会社としてはせっぱ詰まってやることであるから、この問題については一応別の機会にすることといたしまして、今回のこの流血事件、二十八日の六時三十七分にピケ隊とこの第二組合員が激突いたしました流血事件を実際見てみますると、正々堂々と、ま正面からこん棒を持って、暴力団がうしろから石や鉄材を投げて、この第二組合員がこん棒を持って、ま正面から、正門からぶつかってきて。ピケを破ろうとしている。説得するのがピケの合法性だと言われるけれども、初めから、うしろから暴力団が石を投げ、鉄材を投げ、そうして第二組合員はこん棒を持ってきて、そのピケ隊になぐりかかってくる。そういうもので、第二組合を使って生産を再開しようとする、そのような、しかもそれは前もって会社側と第二組合の代表が話し合って時刻もやり方も話し合ってそうやっている。そういうようなものについては、今の法理論、そういうものの範囲外ではないかと思う。それがこの二十八日のあの流血の惨事です。テレビを見ましてもまことに凄惨な、見るに見れないようなあの凄惨な、衝突の実況というものはそういうものです。あのような流血の惨事についてはそのような法理論は適用しないと思うが、あの激突に対して労働大臣はどのように考えておられますか。
○国務大臣(松野頼三君) 現実にああいう衝突があったことは、まことにこれは残念なことで、労働運動としては逸脱し過ぎたことであります。ただ、その原因は、現状におきましては、これは私よりも関係当局の原因認証というものが必要かと存じます。ただ、ピケというものの限界をこえるということが私は非常に問題じゃなかろうか、同時に、それを逆の力でまたこれに対抗しよう、ここにも問題があるのではなかろうか、これは双方ともに、今回の事件の内容は別といたしまして、一般的労働争議において常に私は問題になるところである。強力なピケは何をやってもいいんだという考え方もこれは非常に誤りであります。それを突き破るには何をやってもいいんだ、これもある程度好ましいことではございません。それが衝突の第一線になるのを残念に思う。ピケというものをよく理解していただかなければ、私たちは今後の労働組合というものは非常に大きな危機に瀕するのではなかろうかと思う。各種の調停委員会等もございますけれども、調停期間前に、そういう不祥事件が先に起こるものですからしてそういう意味で労働争議がゆがめられた方向にいくことを非常に残念に思っておりますが、今度のことにつきましては、現場認証で明らかになることだと思います。私としては、まだ詳細な報告を受けておりません。
○小柳勇君 先ほど労政局長の答弁の中に、生産再開についての中止をしていただきたいというような会社側に要請をいたしたところが、そういう意味のことを申したところが、了承されたというようなことでありまするが、これを強引に生産再開しようとすると、なおこの間のような事件が起こると思いまするが、いま少しその空気といいますか、見通しといいますか、そういうものについて労政局長の意見を聞き、かつ、労働大臣には藤林会長が今あっせんに骨折っていただいておりまするが、労働大臣としての見通しなり、今後の決意なりをいま一度聞かしておいていただきたいと思います。
○政府委員(亀井光君) 先ほど御説明申し上げましたように、会社当局に対しまして私が要請をいたしましたのは、昨日のきょうのことでございますので、きょうの就労につきまして十分慎重を期してもらいたいということを申し入れ、同じく組合側に対しましては、きょうのピケ等につきましては十分慎重を期してもらいたいということの申し入れをいたしたわけでございます。従って、今後どういう形においてこの問題が発展をしていくかということにつきましては、私としましてはっきりした見通しは持っておりませんが、第二組合が合法的な組合であり、労働協約を締結し、さらにまた、生産再開について協定が結ばれております以上、その線に従って第二組合が就労いたしますことは、これは法律上当然許された第二組合の権利であろうかと考えます。従って問題は、第一組合のピケがはたして合法のピケの範囲内で行なわれておるか、ピケの限界をこえていないかというところにも問題があるわけでございまして、そういう点は良識ある労使でございまして、十分過去の労働運動においても経験を持っておられる労働組合の方々でございますし、また、労使関係において十分たんのうなスタッフを持っておる会社側でございまするから、おそらくそこら辺の良識によりまして今後の事態というものが私は円満に遂行されていく、あるいは運営されていくというふうに大きな期待をかけておるわけでございます。
○国務大臣(松野頼三君) 一昨日は中労委のあっせんを会社側が拒否されました。しかし、これは永久の拒否という意味じゃございません。一昨日の段階においてこれは拒否でございます。さらに中労委会長も今後ますます努力されることと存じますので、私は、平和的な立場、正常な姿に立ち返ったときには、藤林会長の努力というものが、必ず方向は明らかに私はなってくると信じております。また、政府としてもその方向を私たちは期待しておるわけでございます。
○小柳勇君 次に、警備態勢について担当官の答弁を求めたいと思いますが……。
○委員長(加藤武徳君) ただいま運輸省からは海上保安庁樋野警備救難部長が出席をいたしております。警察庁からは警備局の本田警備第一課長が出席をいたしました。
○小柳勇君 今度の四山鉱における、組合員が一名死亡いたしましたし、警官十数名が重傷を負ったという事件がございました。新聞の報道ですから十分わかりませんが、熊本の県警の警備部長は、われわれの不注意であった、こういうふうなことを率直に認めて、今後の態勢強化を約束されておられるようでありまするが、昨日のこの不祥事件が発生するまでの警備の心がまえなり、整備態勢なり、それから不祥事件が起こった原因なり、それから今後の決意なり、そういうものを警察庁からお聞きしておきたいと存じます。
○説明員(本田武雄君) 昨日、四山鉱で起こりました山代組等を中心とする暴力団の争議介入と、それに伴って起こりました負傷者につきまして概略御説明申し上げます。 この争議に山代組等が介入に乗り出したというような情報が昨日の十時ごろからぼつぼつ警察に入って参ったのでございます。これは福岡の警察の方に入って参ったのであります。すなわち、所轄の大牟田署に昨日の午前十時ごろから、山代組の一派が団体を組んで、市内をハイヤー等で多数人を集めておるというような情報を入手いたしておりましたので、警察といたしましてもこれに対して警戒をいたしておりました。 午後一時三十分ごろになりまして、山代組の一行が笹林公園に来ているというような情報が入りましたので、直ちに大牟田署の警備課長以下五名が同公園に急行いたしました。一行はさらに旧労の本部に向かったということでございましたので、これを追って警備課長らも旧労本部におもむいたわけでございます。警備課長らが旧労本部に到着いたしましたときは、山代組の代表約十四、五名の者が旧労の幹部に対しまして、新労に対して暴力をふるったり、村八分にするとは何事かといったような抗議をしておったようでございますが、間もなく引き揚げて参りましたので、警備課長らは旧労の本部前におきまして、山代組の幹部らに対しまして厳重な警告を行ないましたところ、山代組の幹部らもこの警告を受け入れて、穏健な行動をとる旨を約したのでございます。 ところで、その後、四時五十五分ごろに、山代組の百名が、トラック一台、ハイヤー十四台に分乗いたしまして、四山鉱の南門に向かったわけでございまするが、これに対しまして福岡県の警察の方で、これを一個小隊約三十名の部隊でもって追尾していったわけでございます。ところで、この山代組の一行は、その前に四山鉱の南門付近を通過したのでございまするが、その際に、そこに警察の方で検問所を設けておりまして検問班員七名がおったわけでございますけれども、そこで警告をしたわけでございまするけれども、その線を突破いたしまして正門に向かったわけでございます。そうして午後五時十五分ごろに四山鉱の正門前に到着をいたしまして、そのうち数名が車からおりまして、同所に張られておりましたところの旧労のピケ隊約三百五十名と口論をしておったわけでございまするが、間もなく全員が降車をいたしまして、所持しておりましたこん棒とか、その正門の付近にありました棒ぎれのようなものを持ちまして、そこへかけつけた四名の警察官——これは正門前に四名の警察官が配置してあったわけでございますが、その四名の警察官の警告を無視いたしまして、午後五時十七分ごろから双方がなぐり合いに入ったわけでございます。さらに山代組四、五名の者が正門前の小高い山の中腹にかけのぼりまして、そこにありましたこぶし大の石などを旧労組員に向けて投げつけるというような事態が発生いたしました。そこで、先ほどから追尾いたしておりました——福岡県からずっとつけて参りました一個小隊の部隊がそこへ到着して、これが制止に当たったわけでございます。その追尾しておった一個小隊が、なぜすぐかけつけなかったかと申しますと、ちょうど県境いに当たっておりますので、この現場はこれは熊本県警の管轄でございますので、追尾して参りました福岡県警の一個小隊と熊本県の警察官とが南門の付近で打ち合わせをしておったそのすきにもう乱闘が始まっておったわけでございます。そこで、この一個小隊が少しおくれましたがかけつけまして、双方の間に入って制止をした。さらに急報によりまして午後五時二十八分ごろに熊本の方から二個中隊、これは荒尾署に待機しておった部隊でございますが、二個中隊約二百三十名が参りまして、そのほか私服部隊など合わせまして合計三百十八名で協力いたしまして事態を鎮圧いたしまして、そうして山代組の連中五十一名を荒尾警察署に連行いたしたわけでございます。この際の乱闘に際しまして、旧労組員十三名が負傷いたして、そのうちの一名、久保さんが病院に入られましてからなくなられましたことはまことに遺憾なことでございまして、お気の権にたえない点でございまするが、警察官は五名の負傷者、それから山代組が一名負傷をいたしております。 そこで、荒尾警察署では、この五十一名を現場から連れて参りまして、直ちに取り調べを始めたわけでございまするが、いずれも現場にいた事実だけは認めましたけれども、暴力行為につきましては否認をいたしました。また一方、被害を受けました労組側の協力ということが捜査上必要でございますけれども、最初はその協力が十分に得られませんでしたために犯行を確認することができませず、やむを得ず一応取り調べを終えましたのちに、午後九時ごろ全員を帰したわけでございますが、その後、組合側から協力が得ら出るようになりまして、きょう、つまり三十日に被害者及び目撃者を出頭させる旨の確約を得ましたので、現在までの採証結果とあわせて本日から本格的な捜査に移る予定でございます。 なお凶器といたしましては、日本刀、ピストル等を持っておったというような情報がございましたので、鋭意捜査に努めたわけでございますが、短刀に肉切り包丁、ジャック・ナイフおのおの一個、計三が現場のみぞ等に遺留されておりましたのを没収いたしましたが、その他につきましては確認をいたしておりません。今後の方針でございますが、このような事態にかんがみまして、今までよりも福岡県側も熊本県側も増強いたしまして、現在福岡県側では二千七十七名、従来よりも六百五十名増強したわけでございまして、二千七十七名、この部隊を大牟田市内に。熊本県側では一個大隊四百五十五名を増強いたしまして、全部で九百九十八名、両県合わせまして三千七十五名の警察部隊で警戒に当っております。目下のところ、紛争は発生いたしておりません。 なお、一方、この暴力団の事件につきましては、今後徹底的な捜査を進めて真相の究明に乗り出す所存でございます。以上でございます。
○小柳勇君 山代組というのはどういう組織か。それから殺人が出ておるし、重傷者が出ておるが、全部逮捕者は一人もないのか、お答え願いたいと思います。
○説明員(本田武雄君) 山代組につきましては、地元福岡県、特に大牟田市では十分に実態をつかんでおったと思いますけれども、まだ私の手元まで、その実態に関する資料は入っておりません。ただ、本庁の捜査課にあるわけでございますが、その名簿によりますというと、大体二十八名というふうな人員が載っておるようでございます。 なお、先ほども申しましたように、この捜査につきましては、一応五十一名を連行いたしまして、午後九時ごろ釈放いたしましたけれども、今後被害者等の被害状況の供述その他の採証活動の進展とともに本格的捜査に乗り出しまして、逐次逮捕していくつもりでございます。まだ現在のところは逮捕はやっておりません。
○小柳勇君 現地の警備態勢については、それぞれ現地の方で要請をいたしておるようでございますが、報告によりますと、なお不穏の情勢があるし、暴力団などもずいぶん集結しつつあるようでありますので、警察庁としても十分にそういう不祥事が、再び起こらないように警備態勢を固めてもらうように、それかといって労働運動の中に不当に介入いたしませんように、一つ御配慮願いたいと要請いたしまして、警察庁に対する質問を終わります。 それから運輸省に最後に質問をいたしますが、これは昨日調査団として参っておって帰りました田中衆議院議員から報告を受けたのでありますが、海上保安庁の巡視船が第二組合の就労に協力しておった、こういう事実があったということで、報告を受けたのでありますが、昨日の衆議院における質問では、大臣の答弁と海上保安庁の答弁が食い違っておるようでありますので、真相は何か、まず真相から一つ御報告願いたいと存じます。
○説明員(樋野忠樹君) 海上保安庁といたしましては、本争議に不介入の立場から指導してきておるのでございますが、一、二の新聞紙上に掲載してありますのは、巡視艇が新組合の人工島上陸に助力、応援したように見えておりますのは、事実と相違しておりますので、御報告申し上げます。 二十七日の二十時三十分ごろでございますが、有明海の長洲を出港いたしまして第二人工島に向かいました第二組合員を漁船に乗っけて出かけたが、一時間ほどたってもまだ着かない、海上で遭難したのだと思われるので捜索してほしいという依頼がございましたので、灯台の見回り船のありあけ丸と巡視艇が出まして捜索したのでございます。ありあけは、三池の人工島の横にございます桟橋に着きまして、そうして井上保安官が人工鳥の事務所の方へ参りまして、漁船のうちの何ばいかが着いていないか調査に行っている間でございましたが、ちょうどそのときに漁船に乗っておったのが先に上陸いたしまして、そうしてありあけを導いて上陸したというのが事実でございます。 以上であります。
○小柳勇君 有明海の長洲から第二組合の諸君が出て、そうして人工鳥に到着するはずだということで、そう距離もないのに何ばい出たかわからぬで捜査するということが不思議であるし、それからもう一つは、人工島に着きましてちゃんとライトで照らして船から上がるのを助け、かつ第一組合の諸君は、あそこにずっと俳回してピケを張っておったようでありまするが、それに対して威嚇的な探照灯の照射をやった、そういう報告を受けております。その事実の報告を受けたいと思います。
○説明員(樋野忠樹君) お答え申し上げます。漁船は約十三隻くらいで、四百名くらいの人が乗って出たので、捜索してくれということでございます。 それから探照灯のことでございますが、御承知のように、三池の防波堤はずっと狭うございまして、百メートルくらいしかございません。あれを夜の夜中に近い時刻でございますので、出港する場合、私どもの通例といたしましては、危険な水域を航行するときには、衝突したり乗り上げたりする危険がございますから、探照灯を照らしながら、それもときどきでありますが、出港したわけでありますが、第一回目は人工島の約六百五十メートルくらいのところで約三秒間くらい照らしたくらいであります。それから第二回目が、百メートルくらいのところへ近づきまして、そのときに人工島の横におるような船影を認めたのでございます。それから港の真横をちょっと過ぎたころに一回照射しておりますが、いずれも自船の航行の保安のためと、それから横づげしておる船がもしや漁船の中の何かではないだろうかというふうなつもりで照射したわけでございまして、たまたま偶然に一致したわけでございまして、決して上陸を支援するために足もとを照らしておったというふうなことではございませんので、御了承願いたいと思います。
○小柳勇君 さっきの報告の中で、第二組合の諸君が十三隻出ておるので、というように明らかに通告があったという報告でありますが、それは事実ですか。
○説明員(樋野忠樹君) 会社の方から二十二時二十分ころでございますが、長洲からそういう者が出たがどうしても着かない、それで遭難しておるものと思うというので出たわけでございます。
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(加藤武徳君) 速記を始めて。
○小柳勇君 あと藤田委員が関連して労働行政について一、二質問したいと言いますので、私はまだ質問が、具体的に突っ込んで質問しとうございますが、あとの委員等の関連で、一問だけ質問と要請をいたします。 普通、警察官などは、労働争議にはなかなか介入したがらないのであります。海上保安庁に対して会社側が、第二組合が就労するために十三隻長洲を出たけれども、人工島の方にはどうも一隻足らぬようだから見てくれと言われてすぐ出る、出す、あるいはその上で今度は人工島に上陸するのに、ちゃんと上陸するまで見届けるというような、海上保安庁の労働運動や、あるいは労働行政に対する認識のなさ、そういうものを私は次には質問してみたかったのであります。具体的に、もう少し現地の方の調査団が帰りましてから、重ねていつか質問すると思いますけれども、今のところ、今後こういうことがあるいは発生するのではないかと思います。御存じのように、四山鉱というのは非常に海岸線が長いので、いろいろあそこでトラブルを発生すると思いますが、そういうときに海上保安庁としては労働運動に対して、たとえば第一組合から言われたから第一組合の援助をするとか、第二組合から言われたから第二組合の援助をするとか、そういうようなことでは困ると思う。やはり労働運動については中正、公正でやることが海上保安庁の任務ではないかと思うのです。そういうことをあと質問の中で言いたいのでありますが、それを要請いたしまして、もし私のこの要請に対してなお海上保安庁の方で補足答弁がありますならば聞いておきたいと存じます。
○説明員(樋野忠樹君) 海上保安庁といたしましては、争議の介入は従来とも厳重に不介入の方針でやってきたわけでありまして、しかしながら、海上における不法行為、その他のいろいろ公共の秩序を乱すような者がありました場合の、この不法行為に対しましては、会社側であろうと、組合側であろうと、また、その組合が第一であろうと第二であろうと同様でございまして取り締まる。あるいは争議の、争議行為に対しましては不介入の方針でありますが、そういう不法行為に対しましては取り締まる方針であります。また、暗夜にいろいろの船がおりまして、危険な場合は、私ども海難救助の建前といたしまして、なるべく早く、一刻も早く救助したいということが、従来からの私どものとってきたところのこの方針でございまして、すぐ立ち上がるのが原則でございまして、当日も暗夜でございましたし、しかも小船がよけい出ておりましたので、海難救助の必要もあろうかと思った次第でありますが、私どもといたしましては、昭和三十年にこういうふうないろいろの争議に関しまして、将来とも厳重に争議行為そのものには不介入とすべきであるという通牒も全国の海上保安庁等に出しておって、そういう方針でやって参ったのでありまして、ただいま御指摘がございましたように、私どもそういう方針で将来ともやっていきたいと思っております。
○小柳勇君 補足してちょっと聞いておきますが、あそこに巡視船が、長崎から荒尾の海岸辺を動ける巡視船は何隻あるのかという点御答弁願いまして、それからもう一点これは要請でありますけれども、私が今言っておりまするのは、とにかく千二百名首切られているわけです。そうして第二組合が別に動いておりまして、第二組合員が五千人できますと、首切られた人は、ほんとうに必死になって自分の生活を守ろうとしている。そういうせっぱ詰まったところで、表の正門の方からは丸太ん棒を持ってピケ破りをやり、裏の方では船から来て巡視船が一緒につきながらそういうことをやっているので、労働者は自分の生活権を脅かされるというので、必死になってそういうものを排除する。第二組合の就労阻止の戦い、必死の願いでそういうことをやっているわけです。従って、そういうものをもう少し海上保安庁としても、今昭和三十年の例を言われましたが、その立場を堅持されまして、みんなやはり生活を守っていかなければなりませんから、首切られた人たちの立場を考えますと、まことに私どもとしても悲壮に思いますし、そういうようなものに一方的に国の巡視船を入れて、片一方の立場に立ってもらっては困る、こういうことを言いたかったわけなんでありますから、重ねて要請をしておきまして、今の巡視船の隻数だけ教えておいてもらいたいと思います。
○説明員(樋野忠樹君) 長崎、佐世保、三井、三池、口之津、三角、こういうところを全部入れますと二十数隻になりますが、当日は大体今の有明湾一帯におりますものは、三池と三角とそれから付近から応援に来ました牛深、長崎を入れまして九はいでございますが、そのうちの四はいは十トン以下の小さいものでございまして、一トン半の船も二はいあるような状態でございます。それから巡視船もみな同じ場所に集結しておったわけでありますが、港の中と外と。それから長洲と大牟田と、こういうふうに分かれているような実情でございます。
○小柳勇君 前もって何日か前に、海上保安庁に連絡があって、三角辺から集結しておったのですか。
○説明員(樋野忠樹君) 二十六日の夕方から、午後からでございました。
○小柳勇君 二十六日の午後から。どこから巡視船配置を、そこに回航するように命令がきたのですか。
○説明員(樋野忠樹君) お答え申し上げます。牛深からと三角から三池の方にやって参ったのであります。
○小柳勇君 その寄港地から、牛深から来たことはわかりますが、この牛深から回港して荒尾の方の海岸を守れということは、どこから命令が来たのですか。
○説明員(樋野忠樹君) 三池の保安部長から三角の保安部長に来たわけです。で、三角から七管の方になにしまして、長崎の方のうぐいすの回ったやつは、三角の方からの司令でございます。
○小柳勇君 三角の保安部長に対しては海上保安庁から直接命令が出ておるのですか。
○説明員(樋野忠樹君) 七管の本部の方からでございます。
○小柳勇君 そうすると、海上保安庁の七管の方では、前もってそういうことを計画した、指令したようでありますが、その七管にはどこから命令があったのですか。
○説明員(樋野忠樹君) 私どもの方かりのやつはいつも、大体、業務の内容を申し上げますと、現地でいろいろ判断をまかせられておりますので、三池の所長の方から三角の保安部長の方に要請がございまして、それから三角から七管の方に参ったわけでございます。
○小柳勇君 現地の方から七管の方に相談がありましたので、七管の方でこれを承認した、こういうことでございますか。
○説明員(樋野忠樹君) 長崎から応援にやる船に対しましての承認をしたわけでございます。
○小柳勇君 七管の方で長崎の方に指令を出して、これから荒尾の方に一つ回港せよと、こういうような命令で巡視船は動いておる、こういうことでございます。
○説明員(樋野忠樹君) うぐいすは、さようでございます。
○小柳勇君 それで、そこに問題があると、私は申し上げておるわけでございます。海上保安庁の船、巡視船というものは、労働運動によってあるいは起こるかもしれない、そういうために、海上保安庁の巡視船はあるのではないと了解しておる。前もって、二十六日といったら、二日前でしょう。二日前に長崎の方に、海上保安庁——七管の方から命令を出して回港して、そうして労働争議の際第二組合の就労を助ける。そういうようなことについては、私どもは納得できません。もう少し実情を、それを七管が受けたならば、その実情をもう少し聞いてからでなければ命令は出せないと思うが、その辺を。
○説明員(樋野忠樹君) 二十五日に荒尾の方の警察の方からの情報でございまして、漁船でそういうふうなことが生まれはしないか、それで私どもの方といたしましては、夜になりますと、やはりそういう衝突事故等も起こりますので、そういうような衝突事故の予防と同時に、海上における不測の紛争を防止するために船艇を回しておるわけでございます。
○小柳勇君 生産するかしないか、さっき労働大臣、労政局長とも質問に対する応答で、生産を——第二組合を作ってこれと団体交渉して、そうして会社が命令して、生産を再開するだろうと、こういうこと自体、労働法上疑義がある。裁判で係争中で、しかも前もって二十八日ごろには生産を再開するだろう。そうしたら、大かた海上から行くだろう、そのために巡視船を回しておこう、こういうことは、これは三池の方の会社の方に海上保安庁が加勢して、そうしてその就労援助をしたとしかとれないのではないか。そういうことを海上保安庁がやるとすれば、われわれは変わった目で海上保安庁を見なければならないが、その点は。
○説明員(樋野忠樹君) 決して争議に関与することは毛頭考えておりません。
○小柳勇君 この問題は、私は海上保安庁のもっと責任者に来てもらって追及したいと思いますので、きょうは、私の質問はこれで保留いたしておきます。
○委員長(加藤武徳君) 時間が相当経過したようでございますが、御質問のある方は簡単にお願いいたします。
○藤田藤太郎君 私は、労働大臣にこの際、質問しておきたいと思うのです。今度の三池の争議の起きた問題については、政府全体として対処すると、しかし、問題が労働争議であるのだから、労働問題としての正常な形に返したいという気持なんだということをおっしゃっておりながら、片方でたとえば唯一の調整機関である労働委員会に対して何も言ってないんだということになりますと、どうなるのですかね。私は政府が労働争議に介入せよとは言いません。介入せよとは言いませんけれども、労働争議を調整するものとして法律できめて労働委員会がある。これはまあ二府県以上にまたがるから、中労委の管轄になると思うのだけれども、中労委の会長以下が調整のために動いておられることは、それは事実です。新聞の情報を聞いても事実ですけれども、一つの問題としては、この争議が発端として二十八日の問題、昨日の問題が起きている。その根源をなしているのは労働争議、労使間の問題である。それで、労使間が自主的に問題を解決するということが一番好ましいのであります。けれども、しかし、なかなか解決しないという世間の例、今日までの歴史から言って、労働委員会、調整機関がこれに努力をして争議の解決をはかる、こういうのが私は今の法体系の面から言って常識じゃなかろうかと思う。それで、政府は、中労委に期待をしていると言うのだけれども、中労委に期待をしていると言いながら、政府一身が私はこれに介入せよとは言わぬけれども、中労委自身にお願いするとか、または調整のために努力してもらうとかというような処置を全然おとりにならないというのは、少し私はよく理解ができないのですが、どうですか。
○国務大臣(松野頼三君) 昨年の十一月、中労委は職権あっせんでこの争議に対する調整を行ないました。その結果、労使ともに自主解決ということで、この調整機関の出動を拒否された。その経過から見ますると、やはり労働問題というものは自主解決ということができるのがこれが原則でありますから、それが不調に終わったときにいわゆる仲裁機関というものの発動と権能が出てくるわけであります。今回は、炭労からあっせん申請がされた。これを受けて中労委が動かれるというこの姿をわれわれは周囲から助成することが今日の私たちのとり得る最高の道であって、これに政府が関与するならば、せっかくの調停という機運がこわれるという私は心配をするわけであります。ただ、調停機関以外の派生的な問題については、いわゆる暴力行為、第三者の取り締まり、これは政府全体としてやるべきだ、この二つの問題をはっきりしておかなければならないと思います。ただ、すべてを混淆すると、おのずから労働問題の本筋を間違うのじゃなかろうか、かえって調停が困難になりはせぬか、この二つの見解を私は今でも持っているわけであります。
○藤田藤太郎君 いや、私の言っているのは、政府がこの争議に介入せよとは言っていない。現在炭労からあっせんの申請が行なわれておるけれども、相手は応じないという状態。去年の十一月自主解決ということで踏み切ってされたけれども、二十八日、きのうという殺人の事件が起きるほど争議が深刻化している。だから、あなた方が労使に介入しろとは言いませんが、調整機関という機関があるのだから、私の言っているのは、その調整機関がフリーに動いてそうして問題解決というところに持っていかなければならないと私は思うのです。あなたの方の主観によって中央労働委員会を動かせとは私は言いません。言いませんけれども、中労委に期待している政府が、これに全体として対処すると言いながら、中労委についてはよそから見ていて何の努力もお願いもしないし、この争議解決のための努力をして下さいということすらも言わないということでいいのですかということを言っているのです、僕は。
○国務大臣(松野頼三君) 中労委に政府からこのあっせんをしろとかするなとか言うのは、まだ私はそういう問題はその道にあらずと考えております。その判断のもとに、私ども今日、なるべく周囲から、不祥な事件が起こらないことを私たちは見ることが一番正しい見方だ。ただ、昨日のような問題は、これは別個な問題であります。従って、中労委は労働大臣から要請があったから動くとか、なかったから動くということは抜きにして、労使間と同様に中立機関もなるべく公平な権力と立場をとらせなければ、中労委の判断を私たちが誤らせるような印象を与えてはこれはいけない。しかも、中労委も今日非常に努力をされておるのであります。中労委が全然何もしないというのじゃない。非常によくやっておられるのですから、それ以上に政府がこれに発言することは中労委に対する干渉的になりはせぬか、それをまた憂えるわけでございます。
○藤田藤太郎君 私は、筋道の問題は、あなた方労働省がこの争議に干渉せよとは言っていない。ただ、期待をすると言いながら、一言も発言をしないですね。そうして努力に対してねぎらいもしないですね。知らぬ顔だということ、これが一つです。それから事実問題として、今日労働組合側からあっせん調停が行なわれておって経営者がけっているという現状が続いているわけです。続いているということは、あなたがいかに平和、合理ということをおっしゃっても、根本の争議問題というものは解決するきざしがないわけだ。これだけ長い争議の状態が続いているのに、私は私の立場から言えば、なぜ——労使が団体交渉をもって最大の努力を連日続けるべき問題だと私は思う。それを一方が拒否してそうしてこのような状態をいつまでも続けていっていいかどうかというところに私は、中労委自身が自主的に動いて、また、そういう機関でありますと、私たちもそういうふうに理解しております。しかし、中労委自身がいかに踏み切ろうとして努力されても、相手方が拒否すればできないという状態、これをいつまで続けるのか。この見通しをどう持っているのか。
○国務大臣(松野頼三君) この見通しは、それは労使間の御判断もありましょうし、まあ藤田委員も御承知のごとく、いろいろな場面があるわけであります。中労委のあっせんを抜きにして労使間が妥結する例もあれば、申請をされても一方が拒否しながらも自主的に解決すればあとでこの紛争は自然になくなるということもあるわけであります。従って、労使間の問題はしゃくし にこうだという定義をきめずに、やはり労使のおのおのの争議の内容にいろいろな問題があると私は考えます。従って、第三者機関という公平な機関がこれに当たることが一番よかろうと私は考えておるわけで、なるべく中労委の努力というものを期待するというのが今日私は最善の道だと考えます。かりにそれではこれに応じろとか応ずるなとかいうことは、いろいろな場面に弊害が出てくる。ある場合には会社が応じて組合が応じないというときに、組合に応じろと言うことも、これもいかがと考えるわけであります。従って、私の方は、今日は、おそらくは中労委のあっせんあるいは努力が実を結ぶということを期待しながら、その方向について、われわれはその立場においてその努力をすることが一番いいことだと。まあ見通しということは、これは予測しかねます。しかし、これが全然だめなんだという見通しもないのであります。まだ私はその段階はもうしばらくの間はこれは時間がかかる。同時に、その前に暴力的な問題で労働問題が逆な方に行くことは、これはあらゆる意味において制止しなければならぬ。こういうワクをはめて私たちが援助すれば、おのずから労働問題というのは、藤田委員長い御経験のごとく、やはり一つの刺激的な時期を避けて冷静になれば、労使ともにまたおのずから道が開けるのが多い例であります。今回が特別な場合とは思っておりますけれども、しかし、まだその範疇を破るということは危険なことだと私は考えております。
○藤田藤太郎君 きょうの御答弁を聞くと、きょうの処置は済む、まあ一応平和状態はきょう一日だけで、あすからの保証はできないという状態と認識されたと先ほど労政局長は言っておる。それで片一方では、合理的、平和的に問題を処理して、そうして労働問題の解決という問題では中労委を期待すると、こう言う。そうすると、きょうの限界において、危険状態はまず善処すると言うが、あすからの状態はわからぬ。経営者はこれに対してあっせんの申請に対して拒否をしているということになれば、あすから同じようなこういう問題の起きる心配があるわけです。そういうことになってくると、今労働大臣が言われたような格好で、単なる期待だけでいいのかということが疑問になってくるわけです。だから私はその点を言っている。ただ、これ以上私は時間をとるから言いませんけれども、しかし、これだけ大きい、たくさんのけが人が出たり死人が出るような状態が、この争議というものが続いている限り——こういう状態がきのう、おとといと出ている。きょう、あすの保証はだれがするか、だれもする者はないと思う。そういう状態においてもあまりにも私は無関心過ぎはせぬかということを感じるから一言言ったのです。労働行政の立場から、私はあまりにも無関心過ぎはせぬかということを申し述べておきたい。
○委員長(加藤武徳君) 三池炭鉱事件に関する質疑はこの程度にいたしまして、だいぶ時間が経過いたしましたから、引き続き法案の審議に入ることに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(加藤武徳君) 速記を始めて。 暫時休憩いたします。 午後一時三十二分休憩 —————・————— 午後二時二十三分開会
○委員長(加藤武徳君) それでは午前に引き続き会議を開きます。 じん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案、以上二案を一括して議題といたします。 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案は、衆議院において修正されておりますので、この際、衆議院の修正案発議者から修正点についての説明を聴取いたします。 発議者、齋藤衆議院議員の説明をお願いいたします。
○衆議院議員(齋藤邦吉君) 衆議院におきまして修正いたしました部分の趣旨を御説明申し上げたいと存じます。 修正点の第一は、第二種傷病給付の給付金を政府原案の一年につき平均賃金の百八十八日分となっておりますのを二百日分に改めることといたしたのであります。これは労災保険における入院療養は完全看護でありますけれども、入院療養に伴いまして諸雑費の必要であることを考慮いたしまして、平均賃金の二百日分に増額いたしたのでございます。 修正点の第二は、遺族給付及び葬祭給付を長期傷病者補償の開始後六年以後に死亡した場合においても行なうことと改め、給付額の端数を切り上げたものでございます。遺族給付及び葬祭給付の支給を長期傷病者補償の開始後六年以内とする政府原案は打切補償との見合いからこのように限定したものであると認められますが、六年以後に死亡した場合に遺族に対し全く給付が行なわれないということは気の毒であり、また葬祭費用及び当座の生活費も必要であると考えまして、長期傷病者補償の開始後六年以後に死亡した場合にも遺族給付金として平均賃金の百四十日分を、葬祭料として平均賃金の六十日分を支給することといたしたのでございます。 修正点の第三は、経過措置により長期傷病者補償を受けることになる者の給付金の減額分を平均賃金の七十九日分から四十日分に改めることとしたものであります。経過措置により長期傷病者補償を受ける者の給付金の減額分を平均賃金の七十九日分にすることがすでに行なわれた打切補償相当額を減額する措置としては合理的であるとも考えられますが、これらの者のうちにはすでに打切補償を消費した者もあり、療養生活の継続に困難を生ずることも考えられますので、このような事情を考慮いたしまして減額分を四十日分に減ずることにいたしたのでございます。 修正点の第四は、長期給付の額の改訂について、改訂後の改訂を行ない得るように改めたものであります。政府原案におきましては、長期給付の額の改訂は社会保障制度全般の調整の機会において再検討することとし、それまでの間の暫定措置として一回限りの改訂を行なうこととされているのでありますが、社会保障制度全般の調整を行なうのには、なお相当の時日を要することもあらんかと考慮され、その間に賃金の上昇が生ずることも十分考えられますので、改訂後の改訂をも行ない得ることといたした次第でございます。 以上が修正案の部分、全部についての趣旨でございます。
○委員長(加藤武徳君) それではただいまの修正点を含めて二法案に対する質疑を行ないます。質疑のおありの方は御発言を願います。
○坂本昭君 最初に大臣に伺いたいのでありますが、労働者災害補償保険法はその最初の目的のところに示してありますように、「業務上の事由による労働者の負傷、廃疾又は死亡に対して迅速且つ公正な保護をするため、災害補償を行い、併せて、」云々と書いてあります。業務上の事由による災害補償を行なうということでありますが、これは災害の補償を行なうのでなくて、災害によって起こった負傷あるいは疾病、それに伴って賃金の獲得能力が下がるので、それに対して補償を行なう。そういう意味に当然理解せられるのでありますが、その場合、一体災害というのはどういうことを言うのか。この労働者災害補償保険法の中には、災害とは何ぞやという定義が実は全然触れられていない、そしてこのことが今回のじん肺法を通じましても、この法律の欠陥であると言わざるを得ないのであります。まず、一体災害とは何ぞやということを、これは法律の一番眼目でありますから御説明いただきたい。
○国務大臣(松野頼三君) この法律の災害というのは、業務上の負傷、疾病というものが、この災害という言葉に当てはまるわけでございます。
○坂本昭君 あとでその問題は少し掘り下げてお尋ねいたします。 それでは次に、補償というのは一体どういうことを言うのですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 補償とはただいま大臣からお答えがありましたように、業務上かかりました負傷または疾病によってこうむった損害を補償する、これを償うということが補償でございます。
○坂本昭君 どうも法律の文章そのままを読んだだけで少しも核心に触れていない。業務上の疾病というのはどういうふうにして起こってきますか。それから起こってきた結果、どんなふうに償うのですか。たとえば山から石が落ちてきて、手が切れて飛んでしまった、そうした場合に、これはどういう場合にこれを業務上の疾病、災害と呼ぶか。それからまたそれをどうやって補うか。もう一ぺん手がはえるようにするのか、どうするか。これは法律の基本的な面であります。この点明らかにしておかないというと、実はあとで非常な波乱が起こってきます。私は何も言葉の詮議をしているのではなくて、一番大事な点であるから、もう少しこの点明確にしていただきたい。
○国務大臣(松野頼三君) もちろん補償という言葉は、その足らざるところと申しますか、その被害を受けたことにおける収入減あるいは精神的な減というものを補うということであろうと思います。従ってその補うのは百パーセント補うものか、また可能なものと不可能なものとある、ここにまた問題があると存じます。従って、金額で補う場合における百パーセントというものが、あるいは休業補償という方は六〇%という限度も出ております、従ってやはりそこに、償う、補うという意味であって、補う限度と方法は、おのずからそれは今日、常識的にと申しますか、一つの基準の問題じゃなかろうか。やはり補うということは、それに対する精神的なものもございましょうが、遺族の場合は、これはとてももと通り原形復旧とかいうことは不可能になるという場合は、これは精神的に補う、これは家族が業務上において仕事に従事しているんじゃございません、従って働き手である主人の問題をこれは精神的に補う。ある意味においてはこれがそういうことになりましょうし、いずれにしましても、それはその被害の状況に応じて補うということに対して、この保険法の場合は、これは金銭的補償をここに明確にしておるというわけでございます。
○坂本昭君 今の問題の災害という言葉でありますが、ただいま局長は、業務上の疾病、負傷、これを即、すなわち災害というふうに理解しておられるのですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 労働者が業務上こうむる災害についての規定は、労働基準法の第七十五条の療養補償の規定でその一番基本的な規定が定められておるわけでございますが、その第七十五条には「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、」と、こういうふうに規定をしておるわけでございます。そこで私どもの解釈といたしましては、労働者がある業務についておって、その業務の遂行中に、その業務に基因して負傷をした、あるいは病気にかかったという場合が、その業務上の災害に該当するものと私どもは考えておるわけでございます。そうして、そういった業務上負傷し、あるいは疾病にかかったために、肉体的にあるいは経済的にあるいは精神的にいろいろな面での損失をこうむる、その損失を補うのがいわゆる補償の問題ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
○坂本昭君 そうしますと、たとえば工場で機械を運転しておった、ところがその機械にはさまれて両手を切断をした、その機械に手をはさまれたということは、労働者の非常な過労のために疲労をしておってはさまれた場合もあるだろうし、あるいは何か春に浮かれたチョウチョウが飛んできて、それにうっかり目をそらしている間に手をはさまれた場合もあるでしょう。そうした場合に、これを補償しなければならないという理由はどうして起こってきますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 基準法の、そういった業務上労働者が負傷しあるいは疾病にかかったという場合の使用者がこれを補償しなければならないという基準法の建前になっているわけでございますが、通例、その使用者の損害補償といいますか、災害を補償する責任というものは、一体どういう根拠からそういう責任を使用者が持たなければならないのかという点につきましては、通例、使用者の無過失賠償責任というものを基礎にして、使用者が災害補償をする責任があるのだ、こういうふうに解しているのでございます。
○坂本昭君 ただいま局長の説明された無過失賠償責任、これは一体だれが無過失なんですか。
○政府委員(澁谷直藏君) これは使用者の責任による場合でなくても、使用者が責任がなくても、業務上、当該事業所で働いている労働者が、負傷する、あるいか疾病にかかったという場合に、使用者の責任でない場合でも、使用者はその災害補償をする責任があるという意味でございますので、その無過失という場合は、使用者に過失があるなしにかかわらず、これは当然その災害補償をしなければならない、こういうふうな建前をとっているわけでございます。
○坂本昭君 今の点は、これは労災法の基本的な一番大事な精神だと思います。そうして、この労災法の立法の精神がここまで至るのには、一世紀以上かかってきていると思う。労働省の方は、これについていつも無過失賠償責任ということを言われるけれども、はたしてほんとうにこれを理解しているかどうかという点が、私は非常に問題だと思います。大体からいえば、損害賠償というのは、過失あれば責任あり、あやまちがあってはじめてそれに対して責任が生まれて、そうしてその損害の賠償を請求することができる。それが当然なんです。ところが、あやまちがなくても、それを損害賠償をしていく、こういうことになってきたところに、この労災法の扱い方の基本があると私は思う。そういう点であらためて申し上げますが、過失なければ責任なし、そういったわれわれ普通、民法上における常識でありますが、それがなぜこの労働者の災害については、過失があってもなくても、とにかくそれを補償する、見てやる、そういうふうになってきたというふうにお考えになられますか。非常にこれは大事なことだと思いますから、これは労働省の見解をしっかり承っておきたいのです。局長あるいは専門家の説明があったあとで、大臣からもこの点をしっかりしておかないと、あとでこの労災法というものは全然議論できないということになりますから。
○説明員(村上茂利君) この災害補償制度が無過失補償責任という法理念を基礎にしまして制度が打立てられているということは、これは通説でございます。御承知の通りでございます。ところが、さらに突っ込みまして、今、先生が御指摘のように、その無過失責任の責任を発生せしめる根拠は何かという、無過失賠償責任論の根拠の問題になりますと、これは学説も相当区々に分かれているわけでございます。しかしながら、労働者災害補償につきましての無過失賠償責任についての多数説と申しますか、通説的な地位を占めるのは、私どもは、職業危険説であり、かつ負担の公平という見地から具体的な補償責任の分担という点から見ますると、公平の原理に立脚しましたところの具体的な負担ということがはかられねばならない、その根幹は職業危険説である、こういうふうに考えているわけでございます。
○坂本昭君 職業危険説あるいは業務危険説、いろいろありますが、本来から言えば、われわれの常識で言うならば、あやまちないのに責任をとって賠償してやる必要は全然ないのです。で、なぜこれが特に労働者の災害について出てきたかというと、これは御承知のように、最初はそういう形で実は論争されてきたということなんですよ。外国の労働者が、たとえば機械に手をはさまれた、そうしたら、それまでの使用主はどうかというと、お前がぼんやりしているから手をはさまれたのだ、お前が悪いのだ、勝手に行ってしまえというふうに扱われておった。むしろ第三者のお客さんが工場の見学に来て、あるいはみぞに落っこちて手を折ったとか、ぼんやりしておって機械に手をはさまれたときには、雇主というよりは、企業主は、その第三者のお客さんには損害賠償をすることはあった。ところが肝心の労働者は、お前はおれのところの使用人だ、お前はおれのところの奴隷だというところで、お前が悪かったのだ、お前の不注意でなった負傷であり病気だから見てやらないということが長い世界の労働史上における事実であった。それがそういうことでは困るというので、結局労働者が一人々々裁判所に訴え、損害賠償を請求したわけです。そうして、長い間論争があり、そうしてその結果、どうもこの問題は、今言ったような、職場が危険な状態である、あるいはまた危険ということよりも、職場にあるいろいろな機械とかその他、そこで仕事をするいろいろな物件はほとんど全部使用主のこれは所有に属するものが、従ってその中でいろいろな事故が起こった場合には、その使用主が全部その責任を持っていくべきである、そうしていけば裁判のいろいろなトラブルも起こらないだろう、また円滑に労働者の災害を守ることもできるし、といって、これは一人の雇主がそれぞれ自分のところの労働者だけを見ておったのでは財政的にも大へんなので、つまり集団的に今度労災の一つの法律というものができてきた、私はそういうふうに考えております。 今私の申し上げたこと、おそらく御異議はなかろうと思うのですが、労働大臣、この点、無過失ということについては、使用主の過失、労働者の過失、そうした裁判的に論争したら果てしがないそういったものを越えて賠償していこう、損害を見ていこうというふうなのがこの労災法の基本概念だということ、これはお認めいただけますか。
○国務大臣(松野頼三君) 業務監督者のもとにおいて、服務規定に応じて服務しているという条件のもとにおきましては、過失、無過失というものがかりにありましても、やはりその業務監督、業務命令という、責任者というものがおのずからある、従ってそこに無過失賠償責任という一般的な民法上の権限を越えたものが出ておるというのは、おそらくこの労災法だけではなかろうか、他にはこれは非常に例の少ないことではなかろうかというふうに考えております。従って基準法におきましても、特に無過失賠償責任の一項を掲げ、そうしてその限界というものを明らかにしているというのが今回の無過失賠償責任の私は範囲であろうと思っております。
○坂本昭君 限界を明らかにしているというのは何の限界ですか、もう一回説明して下さい。
○国務大臣(松野頼三君) 無過失賠償責任というものを規定している——これはまだ御質問のないところでありますが、そこを規定しているというのがただいまのに対するお答えでございます。
○坂本昭君 で、そういうところから今の労災の災害補償の考えが出てきたのであって、従って補償はこれは賠償ではないということですね。賠償ではないのだ、損害賠償ではないのだ。日本がフィリピンあたりを荒らし回ったので、あとで損害賠償する、そういうことではなしに、賠償ではないということを私ははっきりこの際しておいていただきたい。労働者の方から要求するこの補償請求権というのは、つまり損害賠償の請求権ではなくて、何を請求しているかというと、結局この業務傷病によって低下させられた能力、賃金獲得能力、あるいは生活不能、こういった能力の低下、これを補う。補うことによって生活が十分に充足される。そこに私はこの労災の補償の一番基本的な考えが出てくる。私はそういうふうに実は信じております。で、その点においては大臣とさほど見解の差はないと思っております。 つまり、補償請求というのは、一種の生活扶養請求といいますか、生活のニードを満たす一つの請求権である、そういうふうに私はこの際話を進める上において確認をしておきたいのですが、よろしゅうございますか。
○国務大臣(松野頼三君) そういう趣旨が労災の原則であろうと私は考えております。
○坂本昭君 従って、この労災法の究極の目的は、こうした不幸な災害を起こさないようにする、つまり災害予防と申しますか防止、こういう点がこの法律の最終の目的であるということもおのずから私は明らかになってくるであろうと考えます。 このことについては、すでにこの労災法が提案された昭和二十二年三月十九日に国会に提案せられて——当時は貴族院だったのですね——当時の貴族院本会議を三月三十日に通過して四月七日に公布されておりますが、そのときは、これは厚生大臣が提案の理由を述べていますが、その中で、今言った点をかなり明確に指摘していると思うのであります。全部は申しあげませんが、その中で留意した事項として「災害補償は使用者の恩恵であるという観念を離れて労働者の当然の権利であるという観点に立つ——」労働者の当然の権利であるということ。それからもう一つは、「災害防止に関する使用者の注意力を薄めることのないよう使用者に保険料の全部を負担させ、かつ、保険料率の決定に際して各事業の災害率を考慮すること」、こういうふうに労働者の災害補償というものは慈恵的に与えられるものでなくて、本質的に労働者の権利であるということ、そしてその責任は使用者にあるということ、これがもう一番最初から私は明確になってこの法律が提案されてきたと信じておる。もちろんその後、厚生省でやるか労働省でやるかということでかなり議論があったようですが、労働基準法と同様に労働省で扱うということに落ちついたと伺っております。 で、私はこの法律の提案された当時のこの趣旨は今日においても変わりはないと思う。で、あらためて今の二点、労働者の権利であるということ、それから使用者の責任であるということですね、その点を一つ御答弁いただきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) その通りでございまして、その点につきましては何ら変更はございません。
○坂本昭君 そこで、しかし、この点はどうもその後の様子を見ていると、だんだんぐらぐらとしてきているように思うのですね。さらに話を進めていきますが、先ほどからのその業務上の疾病、この辺をもう少し私は明確にしておかないというと、たとえば通勤の途上でけがをした、こうしたものは一体業務上の負傷になるか、あるいはベンゾール工場でベンゾール中毒になってきた場合に、これは業務上の疾病となるか、あるいは参議院の守衛の人が突然にすべって階段から落ちて足を折った、こうしたものは業務しの負傷と規定してよろしいか。そうした場合に、今の労働者の災害という明確な定義をするための条件ですね、それはあなたの方でどういうふうにお考えになっておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 業務上であるか業務外であるかという認定の問題は、労働基準法及び労災補償保険法の施行の際に非常に問題の多い点でございます。従って、これは個別的にケース・バイ・ケースで判断しなければならない問題でございますが、その個別のケースを判断する基準といたしましては、それがその災害を受けた負傷なり疾病というものが、まず第一点としましては、業務を遂行中であるということが第一の条件でございます。それから第二の条件としましては、そのこうむった負傷なり疾病というものがその業務に基因しているかどうか、この二点が業務上であるか実務外であるかを判断する場合の最も基本的な条件になるわけでございまして、繰り返して申し上げますると、第一は業務遂行中であるということ、それから第二は業務上に基因して負傷し、あるいは疾病にかかったという、この二つが基本的な条件になるわけでございまして、この二つの基準をもとにしまして、ある起こりました特定のケースが業務上であるか、業務外であるかということは、これはもう個別々々に判断して決定しなければならないのでございます。
○坂本昭君 ですから、私も全例をあげて、それでは通勤の途上、これは業務遂行中と考えるかどうか、あるいはお昼休みにけがをしたことは、こういう場合は一体これは労働者の災害として見ることができるか。
○説明員(村上茂利君) 御質問の点は、ある事故が、あるいは疾病が生じました際に、それが業務上のものであるかどうかという点についての御質疑であると思いますが、現在の基準法なりあるいは労災保険法の条文から見まして、たとえば外国の立法例のように、通勤途上の事故は業務上の災害として扱うというような明文がございますればこれは格別でございますが、わが国の法制上はそういう取り扱いをいたしておりません。従いまして業務上なりやいなやの判断は、ただいま基準局長が申し上げましたように、業務遂行中であり、かつ業務に基因するということの二つの要件に照らして判断しておるわけでございます。その場合、通勤途上の事故につきましては、一般的にいまだ使用者の指揮監督下に入っておらない状態でございまして、業務遂行中という概念を当てはめるには一般的に否定的に解されております。ただ同じ通勤でも、かなりの遠隔地であって、会社専用のバスを使用しておるという場合に、そのバスに欠陥がございまして事故が起きた、そうして労働者がけがをしたという場合には、いわゆる施設欠陥によりますところの災害といたしまして業務上という扱いをいたしております。またお昼休みの休憩時間中の事故が業務上なりやいなやという場合は、一がいに判断することは困難でありますが、たとえば任意に、休憩時間中といえども任意に業務と全く関係のないような状態で、しかも事業所の施設外で事故を起こしたというような場合には、業務外であるというふうに判断される場合が往々ございます。しかし、同じ休憩中といっても拘束状態が著しい場合は、これは業務上と判断される場合もございます。従いまして、その業務遂行中という、要件を当てはめ適用するにおきましても、その指揮、監督の、つまり使用者の支配下にある状態の程度によりましておのずから結論が異なって参るわけでございます。 なお、先ほどベンゾール中毒についてのお話がございましたが、ベンゾール中毒のようなものにつきましては、長期間におけるいわゆる慢性的な疾病としてああいう結果が生ずるのでございますが、その疾病が相当長期間経過することによって生じたものでございましても、業務遂行中であり、かつ業務に基因するという要件が満たされておりますならば、それは業務上の疾病として補償の対象としておる次第でございます。
○坂本昭君 これはかなり専門的なことになりますから、これ以上あまりこまかいことは申し上げませんが、きょうは人事院の国家公務員の災害補償関係の方が来ておられますね。
○委員長(加藤武徳君) 人事院からは矢倉職員局長、小西厚生課長が出席しております。
○坂本昭君 私は少し伺いたいのですが、国家公務員について災害ということですね、どういうふうに規定しておられるか承りたい。実はこれらの法制の中で国家公務員に関する規定が私は一番よくできておると思うのです。それだけにやはり人事院の研究が十分できておるのではないかと思いますので、率直な人事院の御見解を、何ならばまず専門の担当の方から申し上げていただいて、あとで人事院の総合的な見解を承りたい。災害についてですね、どういうふうに国家公務員については規定をしておられるか。
○説明員(小西宏君) 国家公務員の災害補償法の対象といたしております災害は、アクシデントの場合も、それから慢性的に長期間にわたって起こってくる職業病の場合も同時にその対象といたしております。
○坂本昭君 それでは普通の場合には、アクシデントとしての災害というものを取り上げられて、それと別個に、つまり突然起こるものではなくて、たび重なって繰り返されるところの、まあいわば小さいアクシデントかもしれませんが、それらの累積によって起こるものは職業病という考えのもとに規定をしておられる、そういうことですか。
○説明員(小西宏君) ただいまの御見解の通りでございます。
○坂本昭君 先ほど労働省の方では長期にわたる拘束時間の中で、業務遂行中とか、業務に基因してとか、そういうことを言っておられましたが、私は今の人事院の見解のように、労働省がその業務を遂行している間あるいは業務に基因して災害を受ける、この災害を受けるということは、私はアクシデントだと思います。だから、たとえば参議院の衛視が階段からすべり落ちて足の骨を折る、これは全くアクシデントであります。こうしたことは、だから酒でも飲んでおって千鳥足で行っておって落ちたというならば、これは論外でありますけれども、そうでないものは、これは明確に災得として取り上げることができると思う。ただ、私がなぜこういうようなアクシデントとしての災害を申し上げるかというと、長い労働者の災害問題の歴史の中では、このアクシデントが先に取り上げられてきておる。そして、たとえば工場の中でつまずいてころんだり、けがしたり、機械に手をはさまれて、アクシデントのために手を失う、こうした場合に、最初は使用主は、お前が悪いんだ、お前がぼんやりしておったことが悪いんだといって、損害賠償してくれない。それで法廷に訴えて、最高裁判所までいって論争をやった。そうした結果、こういうことで論争をやっておったんでは、労働者も守られないし、使用主の方も、とても法廷闘争の煩にたえない。そこで、こうしたアクシデントについて、労働者の災害補償法というものがだんだんとでき上がってきた。ところが、その中でアクシデントというものは比較的つかみやすいが、今の慢性的——慢性という言葉は悪いのですが、非常に長い間、言いかえれば、先ほどあなたは長い拘束時間と言っておられましたが、参議院の衛視ならば八時間ですが、八時間の勤務時間がある、そうした一つの拘束時間の中で、測定のできない程度の、きわめて微細な障害がずっと長い間加えられて重なってきて、蓄積されてきて、そうしていわゆる災害を成立させる。こういうものが初めは気がつかなかったが、しかし、近世になってだんだんわかるようになってきたのが職業病だというふうに私は考えるのです。で、そういう点で、人事院の方の見解は、災害をアクシデントと職業病と二つ明確に対立させて御説明いただいたのでありますが、あらためて人事院の局長さんにお伺いしておきたいのですが、国家公務員については、こうした明確な考えのもとに、災害についても職業病についても、同じように見てやらなければならない、補償してやらなければならないという考えは、もうすでに確立されているのでございますか。
○政府委員(矢倉一郎君) ただいまの御質問は、お説の通りでございまして、大体災害につきましては、アクシデントの場合と、それから職業病として漸進的に進んでくる分についても、一応これは災害として認定せざるを得ないということで、方針は確立いたしております。今、慢性的にというお言葉がありましたが、アクシデントは、ある一時期を画して起こりますが、やはり職業病は漸進的に一つの浸透性を持ってくるような病源があると、かように考えております。
○坂本昭君 そうしますと、労働省の方では、今のアクシデントとしての災害と、職業病というものを、この労働者の災害補償の面においてどういうふうに御理解になっておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 労働省の場合におきましても、その点は人事院の考え方と全く同一でございまして、アクシデントによる災害の場合も、それから漸進的に慢性的に起こってくる疾病、いわゆる職業病に対しましても同じように補償をするという建前をとっておるわけでございます。現に労働基準法の施行規則第三十五条で、この基準法第七十五条第二項の規定による業務上の疾病を指定しておるわけでございますが、そのうちの第四号を見ますると、「ラジウム放射線、紫外線、エックス線及びその他の有害放射線に因る疾病、第七号には「粉塵を飛散する場所における業務に因る塵肺症及びこれに伴う肺結核」、八号には「地下作業に因る眼球震盪症」、それから十号、二十五号、二十七号は「ベンゼン又はその同族体並びにそのニトロ及びアミノ誘導体に因る中毒並びにその続発症」、第三十二号にも職業病が掲げてございまして、こういう工合に漸進的に起こってくる業務上に基因する職業病につきましても、同じように補償するという建前はとっておるわけでございます。
○坂本昭君 あとでまた労働省に伺いますが、国家公務員について人事院の方では、今の職業病の規定はどこに明確にされておりますか。またその法的根拠といいますか、どこに書いてあるか。ちょっと説明して下さい。
○説明員(小西宏君) 国家公務員災害補償法に関します人事院規則第十六号というのがございますが、それの十条に職業病の規定をいたしております。この規則には別表がついておりまして、その別表第一に、五十六にわたりますところの職業病を列挙いたしております。
○坂本昭君 労働省の方の労働基準法の今の施行規則には、「職業病」という言葉はどこにもありません。そして、この施行規則の中には、「業務上の疾病は、次に掲げるものとする。」これは普通の災害と同じことじゃないですか。今明確に災害と職業病と、こういうふうに分けて今話を進めている。そこで私の伺いたいのは、職業病とは何であるか。それは労働省の本法律の中のどこに規定をしてあるか、実はそういって伺っているわけです。これはもう非常に大事なことでありますから、今の労働基準法施行規則の第三十五条にたくさん項目をあげてありますが、今局長のあげられたのは、職業病としてあげられたかどうか、はなはだ不分明であります。もしこれを職業病としてあげられたとするならば大間違いであります。だいぶ抜けております。ですから、これについては、まず労働省としては、職業病とは何かということで、明確に列挙していただきたい。そしてその法的根拠はどこにあるか。そしてこれは労働行政の中で、どういうふうにして今後明らかにしていくかということを明確にしていただきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 職業病については、先般も坂本委員からの御質問があったのでございますが、その後私どもの方でもいろいろ研究をしてみたのでございますが、医学辞典も拝見しましたのでございますが、医学上も、職業病というものはこういう病気だということは、いまだはっきり確定した学説はないように私どもは聞いております。それから日本の現行法制上で、法律上職業病とはこういうものだというふうな規定をしておる例もいまだ見当たらないわけでございます。そこで、私どもの解釈としましては、労働衛生上、職業病とは一体どういうものであるかということにつきましては、先ほどから議論にも出ておりますように、一般に、一定の作業に継続的に従事することによって起こる特異な病気であって、しかもそれが多くの場合に漸進的に現われてくる慢性的な病気、これがいわゆる職業病というふうに私どもは解釈しておるわけでございます。そこで、その基準法の規定の仕方としましては、先ほども御説明いたしましたように、規則の第三十五条におきまして、そのアクシデントによる疾病と、それからただいま私が申し上げましたような意味における職業病的な疾病も、あわせて一緒に規定しているというのが基準法の立て方でございます。
○坂本昭君 だから、あわせて記載しているものだからこんがらかってしまってわからないから、この際明確にしてもらいたい。ところが、あなたの方で医学辞典を見たけれどもわからなかった。労働省の人が医学辞典なんか見たって何の必要がありますか。ばかなことを言ってもらっては困る。あなたは医学者じゃない。あなた方は労働行政をやっている。だから医学辞典から職業病の定義を引き出すんじゃなくて、それは医学の方で、ある程度わかっております。現にあなた方の方の労働衛生研究所は、一体何をやっていますか。局長に聞きたい。あそこの仕事の任務は一体何ですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 労働衛生研究所の中には、確かに職業病部という一つの部を設けまして、職業病の研究に専心しておるわけでございますが、ただ、私が今申し上げましたのは、職業病というものを完全に包括できるような定義というものがあるかどうかということを、私どもは医学辞典等も参考にして検討してみたということを申し上げただけでございまして、ただ、日本の法制上は、いまだ法律上の用語として、職業病というものを規定した例はないわけであります。そういう事実を申し上げただけでございます。ただ、解釈上といたしましては、先ほども申し上げたような概念で、私ども職業病というものを考えておるわけでございます。
○坂本昭君 それでは人事院の御見解を承りたいのですが、労働省の言われるほど、そんなに職業病というものはわからない、あいまいなものですか、御説明いただきたい。
○説明員(小西宏君) 職業病の考え方は、ただいま労働省から御説明のございましたような見解に、現在一般常識としてなっておると思うのです。まあ職業病というものには大別いたしまして、作業の方法によって起こるもの、作業条件に原因して起こるものと大別されるわけでありますが、たとえばタイピスト、あるいは速記者等にしばしは起こります書痙のようなものは、作業方法によって起こる職業病でございます。その他物理的な障害、化学的な障害等によって起こりますものは、作業条件による職業病というように分類されているように思います。で、結局、要するに、一定の職業についておるものが不可抗力的に罹病する可能性りある病気、これを職業病というように言っておると解しておるわけでございます。その観点に従いまして、現在人事院といたしましては、五十六の疾病を列挙しておるわけでございます。しかし、厳密な、意味で申しますというと、その五十六の職業的疾患ですべての職業病をおおっておるというようには考えておりません。これは医学の進歩に伴いまして、対象はさらにふえる可能性がございますし、また補償というこの法律的な措置の対象とする関係で、やはり範囲を限定せざるを得ないという事情もあるわけでございます。そういうような点からいたしまして、現在私どもは、先ほど申し上げましたような措置をとっておるわけでございます。
○坂本昭君 これは労働省きわめて不勉強ですよ。国家公務員災害補償法の、これは先ほど小西課長の言ったのは、国家公務員災害補償法に関連して、人事院規則の十六—〇の第十条の別表第一として五十六あげられていますね、これは国家公務員については歴然たる法律なんでしょう。
○説明員(小西宏君) 規則でございます。法律では規定をいたしておりませんが、人事院規則で規定をいたしておるわけでございます。
○坂本昭君 しかし、職業病というものの規定も、これは規則の中であって、国家公務員災害補償法の中では職業病として特にあげてはいないのですか。
○説明員(小西宏君) その通りでございます。
○坂本昭君 しかし、もちろんこれは、きわめて専門的なことですから、今の場合、災害というものをどうせ分析して当てはめていかなければならないから、その中であなたの方では、この五十六の疾病をあげて、これについても公務というような点で、かなりこまかい規定もせられてお扱いになっておられると思う。こうした扱い方を人事院がしているということを、労働省の方は、これは看過しておられたのですか、それともこれは正しいと思われなかったのですか。
○政府委員(澁谷直藏君) ただいま御指摘になっております人事院規則の職員の災害補償に関する規則の第十条には、職業病というカッコ書きで、十条で規定をしているだけでございますが、その十条の中身の規定は、読み上げてみますと、「別表第一の公務欄に掲げる公務に起因する疾病でその公務に対応する同表の疾病欄に掲げるものは、公務上の疾病とするし」という書き方でございまして、つまり公務上の疾病というのはこういうものだというふうな中身の規定になっておりまして、その点におきましては、労働基準法の規定の仕方と全く同じ規定の仕方をとっているわけでございます。
○坂本昭君 しかし、労働基準法の場合には、職業病という項目もあげておられない。それからさらに、今局長は幾つかあげられましたが、今あなたのあげられた疾病と、それとこの人事院規則に掲げられているものとはかなりに食い違いがある。あなたの方で、もっと明確に、職業病というものも考えているとするならば、明確に一つ列挙していただきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) これは先般坂本委員の御要求によりまして、お手元に職業病一覧表という資料を出しているはずでございますが、これが労働省でただいまいわゆる職業病として考えている一覧表でございます。すなわち、上の方には基準法の施行規則第三十五条の業務上の疾病を、三十五条の各号を掲げまして、その疾病によって起こるいわゆる職業病というものの病名をその下の欄に掲げてございます。大体こういったものが現在の医学の段階におきましては、職業病というふうに私どもは解釈しているわけでございます。
○坂本昭君 このいただいた資料の中で、たとえば九番目が抜けている。それから二十六番目が抜けている。この二つの扱いはどういうことになっておりますか。まずその点を伺います。
○説明員(加藤光徳君) 九番の取り扱いにつきましては、その発生の仕方が非常に急激なもので、慢性の蓄積によるものと考えられませんので、慢性に起こって参ります疾病としての職業病という見地からいいますと抜けるのじゃないかというふうに考えております。 それから二十六につきましては、この点あとから追加をしなければならぬと思っておりましたので、追加いたし、一部に職業病として入るべきものもある、あるいは入っておりますか、一部は追加しなければならぬというふうな考え方であります。
○坂本昭君 人事院の方に伺いますが、労働省で除いたのは、異常気圧下における業務による潜函病その他の疾病を除いている、あなたの方ではどこかに入っておりますか、五十に入っておりますね。これはどうしてこういう区別が出てくるんでしょうか。それぞれの方の御意見を聞かして下さい。重大なことです。こういう大事な病気について、一方は職業病として認めない、一方は職業病として認める、労働省の人がこういう病気になるときは職業病に認めなくて、災害補償の対象にしなくてもいいですか。
○説明員(村上茂利君) お手元に配りました一覧表は、常識的な意味における、職業病に該当するものはどの程度のものであるかということを常識的に分類して掲げただけでございまして、格別に法律的な意味はないわけでございます。それから、人事院の点は、これは人事院からお答えがあると思いますが、実態的には労働基準法の業務上の疾病の考え方と変わっていない。今衛生課長が申し上げました潜水病とか潜函病といったようなものが、職業病かいなかという議論ではなくして、突然の災害性の疾病であるか、あるいは漸進的に起こって参りますところの病気であるかという観点から、一応印刷しました一覧表には除いておったというだけのことでございます。補償の取り扱いとしては全く同様でございます。
○坂本昭君 この職業病の取り扱いについては、すでにILOの条約でも採択せられて、たしか十八号と四十二号、十八号が一九二五年ですね。「労働者職業病補償ニ関スル条約、」この批准登録の中に日本も入っております。それから四十二号は「労働者職業病補償ニ関スル条約」一九三四年改正、これも批准登録に日本が入っております。そしてこの一九三四年の改正のときには何が改正されたかというと、「職業病ト認ムルコトヲ約ス」としてあげた疾病及び有毒料品の種目がずっと変わってきている。当時日本もこれに批准をしているのですが、この批准した結果、労働行政の中でどういうことが立法の面で具体化されておりますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 基準法の施行規則第三十五条におきまして先ほど来申し上げておりますように、いわゆるこのアクシデントによる疾病と、いわゆる職業病もあわせて定めておるわけでございますが、この三十五条の中で、たとえばILOのただいまの条約で職業病として指定されておりますものは、この三十五条の中に入って包括されております。四号、七号、十四号、十五号、十九号、二十号、二十七号、二十九号、三十一号、三十六号という工合にILOの条約で指定しております職業病にすべて包括的に三十五条の疾病の範囲の中に定めていますので、あれを批准することによって国内法を改正するというようなことはなかったわけでございます。
○坂本昭君 いや、国内法を改正するのじゃなくして、やはりこのILOの条約の批准を通して日本の国内法がむしろ生まれてきたのですよ。そうじゃないですか。一九三四年というと昭和九年ですかね。むしろこの批准を通して日本の国内法の、特に労働者災害補償法などがだんだんと私は整備されてきたゆえんのものだと私は思う。今あなたの言われた批准された中での、たとえば潜函病ですね、これはあなたの方ではお抜きになったのですが、批准の中にはたしか入っているはずです。そうでしょう。いや、入ってないか……。 それでは、その点はまたあとで御検討していただきまして、そこで労働基準法に一つ戻っていきたいのでありますが、今のようにあげてこられた職業病あるいは災害、これは、だから労働基準法の面においては全く同じ性格のもので、同じように補償の対象となるべきものであるという点は確認してもよろしゅうございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) その通りでございます。
○坂本昭君 そうしますと、基準法七十五条には療養補償として「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」こういう災害補償の原則が書いてあります。このことは職業病についても全く同じに通ずることでございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) その通りでございます。
○坂本昭君 そうしますと、この場合、使用者の責任は労働者の業務上の負傷と疾病に対して、「費用を負担しなければならない。」ということは、労働者が負傷し、疾病をしている間当然通じなければならないことだと私は認めますが、いかがでございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) その点は第七十五条におきましては、その通り、「必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」というのが第七十五条の規定でございますが、ただその期限は一体いつまでかという問題になりますると、使用者も無過失賠償責任というものの範囲を一体どこで切るかという問題になるわけでございますが、これは労働基準法の第八十一条に、いわゆる打切り補償に関する規定があるわけでございます。すなわち「第七十五条の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」こういう規定になっております。従いまして労働者が業務上の負傷または疾病にかかって三年間療養した、ただし、まだなおらない、そういう場合においては、使用者は平均賃金の千二百日分の打切補償を行なえば、その後はその補償の責任を持たなくてもよいというのが第八十一条の規定でございます。
○坂本昭君 今の問題、またあとで質問をしたいと思うのですが、本来の労働基準法の趣旨とするところは、災害による負傷に対しては使用者があくまでも責めを負わなければならないというのが建前でございますね。その点は明確でしょう。
○政府委員(澁谷直藏君) その点は、その通りでございます。
○坂本昭君 そうしますと、続いて七十六条の使用者の休業補償について、「平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。」このことも合わせて、原則的には当然休業している間補償しなければならないというのが建前でございますね。
○政府委員(澁谷直藏君) その通りでございます。
○坂本昭君 なお、これに関連してちょっと伺いますが、ILOについては休業補償はたしか三分の二だったと思いますが、この点については日本は批准はしていないのですか。その関係はどうなっていますか。
○説明員(村上茂利君) 今御質問の条約でございますが、社会保障の最低基準に関する条約、これはまだ批准はいたしておりません。なお、休業補償のとらえ方でございますが、わが国の立法例はそのように休業補償と療養補償というふうにとらえておりますが、国際労働条約なりあるいは外国の立法例を見ますと、労働能力の喪失度合いに応じまして、労働能力損失補てんをするという意味で補償額をきめておるわけでございますが、一応の基準とされておるのは五〇%というのが基準でございます。
○坂本昭君 そうしますと、次の七十九条の場合の遺族補償については、「業務上死亡した場合において」という規定がありますが、これは業務上の負傷または疾病の結果死亡した場合はどういうふうな扱いをしておりますか。
○政府委員(澁谷直藏君) その場合は、当然この七十九条において業務上死亡したということに該当するわけでございます。
○坂本昭君 そうすれば今度八十条の葬祭料についても、これも業務上死亡した場合に六十日分、これも業務上の負傷によって死亡した場合の六十日分という原則は打ち立てられるわけでございますね。
○政府委員(澁谷直藏君) その通りでございます。
○坂本昭君 これらの点は今確認しておかないというと、今度の法律改正と直接不可分の関係にあると私は信じております。そこで、先ほど来労働省の方で指摘せられた基準法の八十一条の問題であります。この八十一条の打切補償の問題、これが私は非常に重大な意味を持っていると思うのですが、一体この八十一条の打切補償というものはこれは何でありますか。つまり保険給付の一種であるかどうかということを少し伺っておきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 基準法の第八十一条による打切補償は保険ではございません。この基準法の七十五条以下によりまして、使用者の補償責任が療養補償、休業補償その他障害補償、遺族補償といったようないろいろな補償の責任が使用者に課せられておるわけでございますが、それとの関連におきまして、ところが療養開始後三年を経過してもなおらない、そういう場合にこの千二百日分の打切補償を支給することによって、それ以後においては、ただいま申し上げましたような障害補償であるとか休業補償あるいは療養補償というものの責任は免れる、こういうことを定めたのが第八十一条の規定でございます。
○坂本昭君 だから、このほかの保険給付を支給する必要がなくなるのだから、つまりそれにかわるものであるから、いわば保険給付の変形と見られる性格の補償ではないかというふうに私は聞いておるわけです。
○政府委員(澁谷直藏君) 労災補償保険法はもちろんこれは保険の給付によってやるわけでございますが、労働基準法上の場合は保険給付によるとよらざるとを問わないわけでございます。ただ、ただいま申し上げましたように、いろいろな補償責任がこの打切補償を支払うことによって、それ以降のそういった補償責任を免れる、こういう規定でございまして、保険とは直接関係はございません。
○坂本昭君 それでは伺いますが、こういう打切補償という制度は外国の労災法の中にございますか。あれば後学のために教えていただきたい。
○説明員(村上茂利君) 外国の立法例など私どもの知る限りで申し上げますと、こういう例はほとんど例がないように私ども承知いたしております。
○坂本昭君 日本独特の制度であるということをはっきりと御説明いただきました。私の見るところでは打切補償という言葉のあるのはイギリスの立法の中にありますが、意味は全然違います。災害補償をしていった場合に、どの国も年金制度に変わっている。その場合、年金額が非常に少ない場合、一一毎月やっていたのでは大へんなので、一ぺんにまとめてぽんとやる。そしてあと毎月々々やる煩瑣な事務を省略している。そういう場合に打切補償というのがイギリスにあるようですが、どうも日本で打切補償をやったということは、これは重大な意味があると思うのです。労働大臣、先ほど各局長から説明されましたが、打切補償をやったら、あとはもう一切労務災害の犠牲者である労働者は野となれ、山となれということなのです。それでよろしいのですか。
○国務大臣(松野頼三君) 基準法の制定された当時の、私は日本の国内事情によってこれが制定されたと存じております。従って今回の改正というものがここに生まれてくる要素は、御趣旨のようなところから、今回世界の水準に向かう私は態勢が出てきたと思う。従って過去のことは別といたしまして、やはりそういう事情からおそらく打切補償という制度が、私はとられたのではないかと、こう考えております。
○坂本昭君 賢明なる松野労働大臣のことですから、世界の水準に合ったようにこの打切補償の制度が変わっていくような立法であることを、当然御期待になっていると思います。 ここでちょっと前の話に戻りますが、この補償を打ち切ると、他の一切の補償は行なわなくてもいいというのでありますが、この場合行なわなくてもいい補償というのは、これは何でございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 第八十一条の一番末尾に、「千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」ということでございますから、労働基準法上に規定されております補償は行なわなくてもいい。具体的に申し上げますと、七十五条の療養補償、七十六条の休業補償、七十七条の障害補償、七十九条の遺族補償、それから葬祭料というものが、これに該当するわけでございます。
○坂本昭君 それは、そういうふうにはっきり明言できるのでしょうか。この八十一条を読むと、「第七十五条の規定によって補償を受ける労働者が、」ということになっておって、この七十五条はもちろん療養補償であります、だから療養補償はこれはやめても、しかし、ほかの補償はすべきではありませんか。私はそういう議論も当然生まれてくると思います。
○政府委員(澁谷直藏君) この八十一条の「第七十五条の規定によって補償を受ける労働者」というものは、この打切補償の対象となる労働者を限定した言葉でございます。その打切補償の対象となる労働者はどのような労働者であるかということを、この八十一条の前段で規定しているわけでございます。そういう労働者は七十五条の規定によって補償を受ける労働者だ、従いましてそれは業務上負傷し、または疾病にかかった労働者、こういうふうに当然解釈上なってくるわけでございます。しかしながら、この打切補償を支払った後においては、どういう補償を行なわなくてもよいかという意見については、八十一条の後段で「この法律の規定による補償」ということになりますので、先ほど私が申し上げた通りの解釈になるわけであります。
○坂本昭君 これについては、私はまだ問題点があると思うのですね。日本のいろいろな学者の中の意見も、そういうふうに全部は一致していないように私は受け取っております。で、この点は若干まだ問題があると思う。特にあとで打切補償の問題について申し上げたいと思っておりますが、なぜこういう日本独特の妙な使用者責任を回避する法律ができたかという点について、私は非常に奇怪に思うのであります。松野大臣は、社会の進展の一段階においてまあ経済的な理由などもあってやむを得ないという解釈をとっておられますが、大体この労働者の災害補償という一つの法律の発達自体が、こういう打切補償などをやってはならないということから出発しているのが法自体の出発点なんです。ただ日本の場合は、明治の初年からいろいろのものがありますが、この今日の労災法の出発点になっているのは、明治四十四年の工場法、工場法の十五条にこの因を発していると思うのであります。この中で工場法施行令の第十四条に、「扶助ヲ受ケ又ハ健康保険法ニ依リ療養ノ給付若ハ療養費ノ支給ヲ受クル職工療養開始後三年ヲ経過スルモ負傷又ハ疾病治癒セサルトキハ工業主ハ賃金五百四十日分ノ打切扶助料ヲ支給シ以後本章ノ規定二依ル扶助ヲ為ササルコトヲ得」、この場合に初めて打切扶助料という言葉が出てきている。明治の終わりに打切扶助料というこの日本独特のものが出てきて、えんえんとして昭和二十二年にまで至り、さらに今回ようやく打切補償の言葉が撤回されようとしている。なるほど法律の上では削除と今度はなってきております、労災法の中で。しかし、精神は相変わらず生きている、相変わらず提案議員の齋藤さんあたりの考えの中には生きている、明治四十四年の立法精神がやはりずっと生きているので、非常に私は不可解だと思う。ただこの場合あたりよく読んでみると、当時は打切扶助料と書いてあるのでありますが、この打切扶助料の中で、病気で家へ帰る場合、帰郷旅費ですね、帰郷旅費はこれは出してもよろしいということが書いてあるのであります。むしろ明治のときの法律の方がまだいいんですね、病気になって打切扶助料で、あとは見てやらないが、それでいよいよ、何といいますかお父さんお母さんのところへ帰るときは、その旅費は見てやろう、今度のあなたの説明を聞いたら、もうてんで何もかにも見てやらぬということで、私はまことに冷淡なことであるといわざるを得ない。 なお、さらに私は申し上げたいのですが、三年を経過してなおかつその負傷または疾病がなおらない場合において、この三年というのはどういう根拠がありますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 三年と定めた根拠はどうかといいますると、これは別に三年でなければならないという根拠はないわけでございます。ただ、ただいま先生が御指摘になりました工場法以来三年というその数字を使っておりましたので、それをおそらく踏襲したのではないかと考えられます。ただ、その労働基準法上なぜ打切補償という制度が設けられたのかという点が問題になるわけでございますが、この点につきましては先生も御承知のように、終戦後労働基準法が制定されました際に、それ以前の日本の労働基準法的な立法から比べますると、全般的に非常に大きな前進の措置が講ぜられたわけでございます。従ってこの立法の際には、当時の使用者側、特に中小企業の使用主側からは、このような高水準の労働基準法が施行されるならば中小企業はおそらくつぶれてしまうだろうというような観点に立っての非常に猛烈な反対が行なわれたわけでございます。従ってこの精神としましては、先ほどから議論にもございまするように、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった、そういう場合は、使用主がその責任において全部とにかく負傷なり疾病がなおるまで見てやるというのが、おそらくこれは基本的な考え方であろうと思います。ただ問題は、これも基準法上の使用者の責任というものは言うまでもなく個人々々の使用主の責任でございます。従って、その零細な企業も含んだ日本の使用主が二十年、三十年といったような長期の療養が必要だというような場合に、そこまでの療養を行ない得る負担力があるかどうかというような観点から、おそらくこの八十一条の打切補償の制度が設けられたのではないかというふうに考えております。
○坂本昭君 確かにその労働基準法自体からいうと、一人々々の使用主の責任となって経済的に大きな問題が出てくるでしょう。しかし、もう今日労災法が約千三百万の人を対象として膨大なものになっている今日、来年から国民皆年金、国民皆保険といわれている今日、私は当然もう明治時代の考えというものは一掃すべきときにきていると思うのです。そしてまた労働者の災害補償というものが集団的に補償されているということも、これはもう天下周知の事実なんであって、私はそういう終戦直後の混乱期に定められたということに拘泥することはむしろ怠慢であろうかと思うのです。当然今あなたの言われた通り、無過失賠償責任に限度があってよろしいというようなことはおかしいのですね。私はなぜこの三年というのが出てきたかどうしてもわかりません。桃栗三年というから、三年くらいでいいのだろうと考えたのかもしれないのですが、確かに当時のいろいろな病気は三年ぐらいしたら死んでしまったのですね、結核などは……。だから、それで生き残った者は千二百日分やったら満足して帰るだろうというぐらいな考えでやったのかもしれない。しかし、悪く言えば、これは使用者の示談金ですよ、示談金もはなはだたちの悪い減額示談金ですよ。うんと値段を下げた示談金と私は悪口を言ってもいいと思うのです。そこで次にまた伺いますが、打切補償の千二百日の根拠ですね、千二百やったらすべての責任が免除される、この千二百日の根拠はどこにあるか、一つ承りたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 千二百日分の根拠につきましても、この三年という場合と同じように、こういう理屈の積み上げから千二百日でなければならないということはおそらくなかったのではないかというふうに考えられます。もちろんこういう金の性質上、これはもう多ければ多いほどいいわけでございますが、大体まあ見当をつけますると、従来工場法その他でやっておりました打切補償の約倍額が大体千二百日ということになるわけでございますが、その辺はこれとこれでなければならぬといったような理論的な根拠はないものと考えられます。
○坂本昭君 そんなあいまいな根拠に立って千二百日分の打切補償をやったら、それであらゆる労働災害に対する使用主の責任が回避されるなどということは、とんでもないことじゃありませんか。いわんや、先般来衆議院とも議論しました解雇制限につきましても、われわれは、三年でも四年でも五年でも、一年でもいいからこの解雇を制限してもらいたい、これは涙の出るような血のにじむ労働者の声であるということを訴えてきている。あなたの方では千二百日分ということの根拠もよくわからない。何もかも根拠がわからないようだったら、もっとすっきりと原則に立って、基本的な労働者の災害補償の原則に立って、法律を初めから立て直して下さい。むしろ私はそれがお互いのいろいろなあやまちを正すためにもいいし、またこの旺盛な経済成長率の中にある日本の労働界を発展さすためにもいいと思う。大臣、いかがですか。
○国務大臣(松野頼三君) そういう段階も来ると私は考えております。一つは、社会保障制度全般の調整、一つは、いわゆる労働三法の問題、この二つはやはり終戦直後からずいぶん成長して参りました。従って、基本的にこれは再検討すべき時期は私は来ると、こう考えまして、一応労働法の基本的問題については一つの調査会をただいま作っております。あわせて躍進法につきましても、この補償問題ばかりじゃございません、いわゆる勤務時間の問題というものが、産業合理化が進んで短い時間に能率が上がる、生産性向上というものがどんどん進んで参れば、当然これも議論にはなってくると私は考えております。ただし、今回のこの補償の問題とあわせてやるにはまだ私は時間的問題がある。ことに、これは三十五年三月三十一日という期限付の立法に合わせる問題であります、今回は。従って、労働の基本的三法及び社会保障制度総合調整というものは、ある程度時間がかかる。しかし、方向は、私はいずれそういう時期は来るものと考えております。
○坂本昭君 いや、その一番大事な時期にあるから、一番大事な時期にあればこそ、今までのようなこういう労災法の扱いではいかぬ。松野大臣のごとき英明なる大臣でなければとうてい解決ができないと思うからこそ私たちはこれを推進してきているのであります。だから、なるほど近い将来は変わるでしょう。変わらなくちゃならぬですよ。こんなでたらめな法律はありませんよ。打切補償というものが今まで続いてきたことは、これは日本の恥辱ですよ。こんなような考えはもう世界のどこにだってない。やっと今度は文字の上で労災法からは消えていくけれども、労働基準法には残る。労働基準法も根本的にお変えになるお考えはありませんか。
○国務大臣(松野頼三君) 労働基準法というよりも、労災保険法の推進、先ほどお話のごとく約千三百万という、労災保険法の前進ということが今日労政の進むべき道で、それに漏れた基準法というものを、漏れた方をやるよりも、その前進的な方向に、労災保険法の力に吸収していく。なお、事業所適用におきましても、労災保険法の方に進めていくということが私は今日とるなら一番前進的道じゃなかろうか。もちろん、基準法全般についても再検討すべき時期は参ります。しかし、やはり労災保険法というこの保護のある方にすべての事業者を向けることが私は一番今日の場合は適当じゃなかろうかというので、この労災保険法の推進にあわせて今回の労災保険法の実は改正、前進を加えたわけであります。社会保障制度審議会の中の御議論も、お聞きのように、どちらかといえば、このような年金的なものは、世界各国から見れば、ある場合には普通かもしれません、しかし、日本の厚生医療におきましてはこれは最前進の法律なんです。ことに、年金制に踏み切ったことは、これは私は最前進であると思います。社会保障制度審議会の委員の方が来られて、すべてがこの労災保険に合わせるならばわれわれはもっと協力するが、まだいろいろそこまでは進んでないものもあるからという、逆の議論さえ出たわけであります。私はその意味で、もちろんこれは満足とは思いません。しかし、打切補償という制度から考えて、年金に移行するということにはある程度不十分かもしれませんが、今日の日本の情勢と立場においては、一歩踏み切ることは私非常に大きな力だと思います。従って、その意味では、先ほどおっしゃるように、じゃ諸外国の例とか年金そのものを御議論ならば、いろいろ不備もございましょう。しかし、打切補償からの前進と考えていただけば、これは私は確かに前進だと思うんです。その意味で、今回の法律というものは、まあ私の力及ばんこともございますが、基本を一つ立てようという熱意から今回こういうものを持ち出したわけであります。 なお、先ほどの千二百日分、いろいろ議論ございますが、大体三年の打切補償ですから、それから休業補償を計算しますと、六年分ぐらいに当たるわけであります。六割に合わせますと、大体六年分ぐらいという一つの基準、三年で打切補償、それをいわゆる休業補償の六割に合わせますとこれが大体六年に近い年限になるという基準が今日まで踏襲されてきておりますので、その基本の議論はまた別なときにして、一応基本の上に立って今回の労災保険法というものを改正すると、こういう形が今日できる最適なものじゃなかろうかと、こういう非常に謙虚な気持で提案をしているわけであります。
○坂本昭君 謙虚に自画自賛しておられますが、それほど労災法はすばらしい法律じゃありません。またあとで申し上げますが、今の千二百日分というような数は、非常に大事なものであります。今回も修正されて百四十日になったりいろいろなりましたが、もらう側の身となれば、ほんとうにうれしい涙の出るようなものだと思うんです。だから、いいかげんな根拠のもとにこういう数をきめられたとするならば、これは私は非常な怠慢だと思うんですね。今大臣は、千二百日分について三年というふうなあれをあげておられましたが、実は工場法のできた当時ですね、その当時のあれからいきますと、平均賃金の三分の二、これを六年の定期金として支給する建前で計算をしております。だから、当時は三分の二なんです、休業補償が。今日のこの六割よりももうちょっと率がいいんです。これは明治の四十四年の方が昭和の二十二年よりも進んでいるんですよ。だから、こういう進んでおったものをなるべく拾っていったらいいのに、適当に削っていってなるべく安上がりのものにしている。で、今の平均賃金の三分の二を六年定期金として支給する建前で例の千三百四十日というのが出てきているわけですね。これはまあ災害補償金の最高額ですね、千三百四十日というのは。これの九〇%が、つまり、その当時の打切扶助、今の打切補償。千三百四十掛ける〇・九すると千二百六になります。これからつまり打切補償の千二百日が出てきたわけですね。これもほんとうに私は根拠はないと思うんですね。だから、こんなものにとらわれてどうこうというのは私は労働者としてははなはだ迷惑しごくなので、大体こういう考えを一切払拭してしまわないと、ほんとうの労務災害の補償ができないと、そう私は考えるわけなんです。 そこで、さらに問題は、この打切補償を行のうかいなかということが一体だれの権限にゆだねられているかということです。これは、使用者の自由な選択にゆだねられてきております、今まで。これは工場法の当時にもそういう点が明確であります。いつも打切扶助料あるいは打切補償を出すのは使用主であり、それを決定する自由な選択は使用者の方にある。そのことについて一つ伺いますが、労災法の施行規則の十九条にはもっと基体的に、この打切補償をだれがきめるかというと、所管の労働基準監督署の署長が必要と認めるときは支給されるというふうに書いてあります。労働基準監督署の署長がこれは必要だと思ったら、そのときには打切補償が支給される、これはまことにおかしい問題だと思うのです。ちょっと反論したいのですけれども、署長が認めないときには、一体これ、療養は継続するのですか。
○政府委員(澁谷直藏君) その通りでございまして、打切補償を支払わない場合は、従来の療養と休業の補償が継続されるわけでございます。
○坂本昭君 そうしますと、そういう例が今までにどれくらいあるか、そしてまた必要と認める、認めない、その根拠はどこできめるか、御説明いただきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 今までの件数につきましては、ただいま資料を持ち合わせておりませんから、後ほど提出したいと思いますが、これは要するに、療養開始後三年たったと、ところがあと二、三カ月療養を継続すれば完全になおるというような場合がはっきりした場合は、これは使用者の立場としては、打切補償を支払わないで、そのまま従前の療養、休業補償を継続した方がいい、こういうことになるかと思います。それで監督署長が、労災保険法の場合は使用主にかわりまして監督署長が判断するわけでございますが、これは監督署長が、療養をしている場合は、当然その専門の医師の診断を受けているわけでございますから、その医師の意見を基礎にいたしまして、そのどちらがいいかということをきめるわけでございます。
○坂本昭君 それでは、その今の実例ですね、どの程度あるかということは、私はこれは重大な問題だと思いますので、お出しをいただきたい。全然ないのですか、皆さん首をかしげておられるのだが……。
○説明員(村上茂利君) 打切補償を支払った件数は、もちろん月報なり年報なりでとっておりますが、三年たって打切補償を行なわずに、療養補償、休業補償を行なったというものにつきましては、資料をとっておりませんので、ちょっとわかりかねる次第でございます。
○坂本昭君 それでは、国家公務員関係にちょっとその具体的な例を伺いたいのですが、国家公務員の場合も同じ問題がたくさん出てくると思いますが、そういう実例はいかがですか。
○説明員(小西宏君) ただいまの御質問は打切補償についての実績ということでございますが、国家公務員災害補償法におきましても、労災保険法と同じような打切補償の規定を現在設けているわけでございます。実際はその災害を受けた者の内容が、若干民間の場合と違うというような事情もございますし、従来の運用におきましては、必ずしも三年で打ち切りをしておらないのでございます。で、従来までに打ち切りをいたしましたのは、十五件だと記憶いたします。そのほかのものは三年をこえてなお療養補償、休業補償を続けている者がいるわけでございます。
○坂本昭君 そうしますと、国家公務員の場合は打ち切ったりなかなかしないで、国がどこまでも公務災害について責任を負っていく。ところが、一般の千三百万の労働者の方は、適当に三年で、何らの根拠もなく千二百日分で打ち切られてしまう。非常なこれは、国民としてこれを聞いたら腹を立てるような事実が出てきたと私は思います。さらに、この打切補償の問題について、使用者責任が打切補償によって免除になるということはまことにけしからぬ話だという、この原則は私は明らかになったと思う。ただ、この天災事変のあるときに、解雇制限のところで、打切補償に関連しての解雇制限のところで、打切補償をした場合と、天災事変で事業の継続が不可能になった場合とを同じように扱っておるのですが、天災事変と打切補償と同じように扱うという私はその筋がわからない。これはどうしてこういうようなおてんと様の話と、使用主が打切補償をやったということと、同じように天びんにかける根拠がどこにございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 第十九条の解雇制限の場合に、八十一条の規定によって打切補償を支払う場合はこの限りでないということになっておるわけでございますが、これは千二百日分の打切補償を支払うことによって、ある一定の年限の間は当該の労働者の療養なり生活が一応安定を見る、そういう意味で打切補償を支払った場合は、解雇制限のあれはこの限りでないということになるわけでございますが、その「又は」以下の「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった」、これは事業の継続が不可能となるわけでございますから、事業そのものがもう成り立たなくなったという場合であるわけでございます。事業そのものが成り立たない場合でございますから、当然その雇っている労働者の賃金も支払うことができないというような事情にあるわけでございまして、そういったような事情にある企業に対してこの解雇制限の規定を適用しておくというのは、実態から見ましてもやや無理があるのではないか、こういう考え方から、その「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」も、これは打切補償と並んで解雇制限の規定は適用しない、こういうふうに定めておるわけでございます。
○坂本昭君 私はその天災の場合はともかくとして使用主の方が金はちゃんとあって、ことにこのごろみたいだと金は幾らでもあるのですよ。あるにかかわらず、その打切補償によってすべての責任を免除されるということがけしからぬ。だから、おてんと様と一緒にここに並べたりするのは、はなはだ理屈が合わないということを申し上げておるのであります。 そこで、さらに次に進みますが、大臣は、今度の労災法の改正で一番前進していると、進歩していると言っておられますが、労働者として船に乗っている人も陸にいる人も私は同じだと思います。船員法と、船員保険法と今の労災法と比べてみると、非常に違うのです。船員保険法というのは、昭和十四年にできています。非常に古いもので、かつ非常に総合的なものなんですがね。この中では、船員の災害補償が、船員法の中で明確に第十章に災害補償としてきめてあります。これには「船員が職務上負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、その負傷又は疾病がなおるまで、」、「なおるまで、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。」、船へ乗っている労働者はちゃんとこういうふうに保障をされている。なおるまで、なおるまで見なくちゃいかぬと……。それから傷病手当金、まあ休業給付の問題になってきますが、これも最初の四カ月間は傷病手当金は百パーセント出ます。それから次は六〇%、六割でずっと続いている。そうして、なおったときには予後手当といって、また一月六割がつく。で、船員保険法の三十一条にも療養の給付及び傷病手当金のところに「職務上ノ事由ニ因ル疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ関シテハ此ノ限ニ在ラズ」、つまり三年で打ち切るというようなことはしないというふうに規定されてあります。労働大臣は、労災はすばらしいんだと言っていますけれども、そうじゃないんですよ。労災よりももっと船員法並びに船員保険法——船に乗っている人の方が陸の人よりもずっといいのです。これにはもちろんいろいろな理由があるでしょう。が、大臣があまりいばられるから指摘しておきますが、船員保険法は、これは厚生省が作ったんです。労働省が作るとこんな悪いものしかできないのです。だから、あまり労働省がおいばりになるととんでもないことで、もしほんとうにおやりになろうとするなら、厚生省の、同じ船に乗っている労働者よりも——船員労働者よりもいいものを作らなければ、これは幾ら自画自賛されても私はほめるわけには参りません。この問題について一つ御見解を漏らして下さい。
○国務大臣(松野頼三君) 船員は、御承知のように勤務状況が特殊であります。一番特殊なのは、いわゆる家族と非常に長期間遠隔に離れておる。もう一つは、勤務時間がほとんど何十時間いわゆる同じ海上の勤務をするという勤務状況が、非常に長い間家族から離れるということと、常時数カ月間というものが一つの勤務におる。これは特殊なことで、すべての問題これは別になっております。なお、法制上において非常に変わっておるじゃないか、そういう伝統から変わっておりますが、もちろん労働省の法律がいいものもあれば、厚生省の法律がいいものもある。一番代表的なものが、ただいま船員をおあげになりましたが、しかし、船員と今回の保険法と比べても、全部今回のが悪いと私は考えておりません。御承知のように、対象の中には、厚生年金は、今回のいわゆる労働者には厚生年金の対象がある、船員にはその対象が違っておるというふうなことも、相緩和いたしますと、船員保険と厚生年金保険は今回の労働者には適用がある、しかし、船員の場合にはないというふうなほかのを考えていただくと、いろいろ長短があるんじゃなかろうか。なお、今回船員保険とかりに比べましても、障害年金の場合には逆に今回の方が進んでおる場合も出てきておるのですから、従って私はそう長短というものは一々あげてみればいろいろ議論はございましょうが、そんなに誇りに足らないということはございません。やはりある程度は誇り得るものも、本来前進していると私は考えております。
○坂本昭君 これで一番大事な点は、打切補償の点ですよ。その打切補償の点で、これは基本的にもうすでに船員労働者の場合には二十年も前に先行している。だから、これは労働省の所管の人たちが怠慢であったと思うのです。もっと早くこれは解決をすべきであったと思うのです。船員保険法にこうなっているということで船員保険を引き下げてもらっては困りますよ。こういうことになるというと、ともすればだんだん引き下げつつある方向にあるが、そういうことじゃないですよ。船員保険の方へみんながくっついていくように進んでもらいたい。 さらに伺いますが、今回の改正の十二条の三のところで、三年を経過してなおらない場合に、「長期傷病者補償を行なうことができる。」ということになって、十九条の三で、「労働者が長期傷病者補償を受けることとなった場合は、労働基準法第十九条第一項の規定の適用については、当該使用者は、同法第八十一条の規定により打切補償を支払ったものとみなす。こう書いてありますね。大体この千二百日分の打切補償という問題がずいぶんあいまいでいろいろ問題点が多いということは申し上げた。今度は現実問題としては千二百日分は渡さないのですよ、渡さないで打切補償を支払ったものとみなすというのは、一体これはどういうことですか。
○国務大臣(松野頼三君) これは基準法の建前をそのままとったわけであります。基準法の建前をとっておけば、打切補償で終わることになります。従って労災はそのあとを受けて打切補償にかえて今回の長期年金を支給する。打切補償によっていわゆる無過失賠償責任の免責が出てきたわけであります。そのあとを受けて今回の労災がその責任を負って長期年金に切りかえる、こういう趣旨でございます。
○坂本昭君 その長期年金に伸ばしたことについては私は悪いとは決して言っていないのですよ。ただここで、「打切補償を支払ったものとみなす。」という点の一番大事な点は、解雇制限についての原則、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間」は「解雇してはならない。」という、こういう原則がある。その原則を、打切補償を支払ったとみなすことによって解雇してもよろしいという結果になるのですよ。大体この「みなす。」ということについて法律の専門家に若干伺ってみましたが、長期傷病者補償と打切補償とが同格的な内容を示す場合にみなすことができると思う。たとえば失踪三年をして帰ってこないと、そういう場合には死亡とみなすのだそうですね。それから未成年の人でも結婚をすると成年者とみなす。これは、内容的には失踪しても生きているかもしれない、生きているかもしれないが、そういう、みなすということによって、非常に違ったものを同格に扱っている。この第十九条の三に出てくるのは、長期傷病者補償、それから打切補償、同じような補償なんですよ。そしてはたして中を現実問題としてえぐっていったらどうでしょうか。長期傷病者補償を受けることになって、三年たって一月後のこの事態をとらえてみましょう。そのときには打切補償は何ももらっていない。前は千二百日分もらったですね。そしてそのときには、もしみなされなかったならば解雇の制限があるから、炭鉱ならば炭鉱の住宅に住んで生活ができる。しかし、今度はこの打切補償を支払ったものとみなすことになるというと、解雇されてしまう。で、私たちが解雇制限を何とかして延ばしてくれと言って一生懸命皆さんにも議論をした点はそういう点にあるのです。ことに私は最初から申し上げましたが、補償ということですね、補償ということは、その人の損害賠償じゃない、その人の生活を守るということだ。実際日本の現実の労働者の生活はどういうことかと言えば、今の給料というものはただ飯を食うだけで精一ぱいであります。そして実際に、炭鉱のあの大牟田あたりでも労働者の住んでいる住宅地区、ああいうところの住宅に住んでいる人の場合は、会社側から相当な厚生福祉のいわば恩典を受けているのです。どの程度受けているかという、これは金属鉱山の実例でありますが、福利厚生の費用を全体的に見ると、多いところでは一人一月一万六千円、少ないところでも二千円。例の問題になっている三井の三池ですね、三井の三池が、たとえば社宅費が千五百円、衛生費が三百二十円、法定福利費が千七百七十円、その他の福利厚生施設費が千四百円、その他の福利制度の費用が三千七十円等で、合計して八千四百十円、だから、かりに一万五千円でも二万円でも賃金もらっているとしても、この八千四百十円というものによってこの炭鉱労働者は生活ができているのですよ。これが日本の生活の実態であります。だから、労務災害によって、たとえじん肺だろうとけい肺だろうとも、職業病はこれはみんな労務災害だということが先ほど明らかになりました。そうすれば、こういう人たちの生活をほんとうに守ってやるために、解雇してしまって、これだけの、月に、三池の場合、八千四百十円というものの生活の維持を失った場合どうなるかということです。だから、私たちは何とかしてこういう労務災害によって倒れた人たちだから、こういう人たちを本来ならば一生私は社宅に置いていただきたい。置いておいても私はしかるべきだと思う。それだけの使用者責任があるはずだと思う。ところが、あなたの方はまことに冷淡な言葉によって打切補償を支払ったものとみなす、ということによって、この解雇制限もできない。で、私は、だから二つの意味で、一つはこういう解雇制限によって、労働災害で倒れた労働者をさらに追い詰めてしまって、この死のふちへ陥れようとしているではないかということと、さらにこの法律の文句そのものとして打切補償を支払ったものとみなすことによってこういうようなことができるかどうか。これは提案者一つ呼んで下さい。提案者にこの法律の説明を聞かしていただきたいと思う。今のこの法律的な説明をして下さい。
○国務大臣(松野頼三君) ただいまのお話はもちろん非常にごもっともなお話であります。ただ、それじゃ今回は改悪になるか、今回はその問題について改悪にはなりません。といって、大きな改善にもその問題には触れておりません。それは基準法そのものの基本的な問題であります。従ってその基本的な問題を、労災保険法でその基本を変えるという今回の考えは、これは無理な話、基本的にはお話のように、三年の打切補償あるいは解雇制限そのものについての議論はそれは別個の問題で、これは十分であると思う。今回の問題をそれに広げるということは、これは別の問題。それではかりに今回の法律がなかったといたしますれば、やはりもっと不安な状況にあるわけです。従って今回あくまでいわゆる期限付の立法に、不安を今後永遠になくそうという趣旨の法律であって、すべての法律、基準法的に言うならば、これはいろいろ議論がございます。しかし、それは別な機会にしていただかなければ、今回は期限付のいわゆるけい肺法というものにあわせて比較をしていただくならば、今回の法律の方がより安定を与えるという趣旨の法律で、私はもちろん坂本委員のおっしゃるように、三年というものはこれはいろいろ議論もございましょう。また基準法そのものにもいろいろ議論の出てくるところだと私は承知しております。しかし、この法律はそこまでさかのぼるわけには参りません。あくまでじん肺、けい肺法を受けて今後の長期的な安定、根本的なじん肺法というものがこの労災法の改正に含まれておるわけです。従ってその基本の議論は、今回これによって変えるとかあるいは労災法によってその解雇制限の基本に触れるということは、これはなかなかむずかしいんじゃないか。従って今回は、その趣旨をそのまま踏襲した条文を書いたわけであります。なお、いろいろな福利厚生施設というものもございますので、今回の長期傷病者補償一種、二種として考えましたのも、その考えで入れて、今回日額及び年額というものをきめたわけでございます。
○坂本昭君 私は先ほどるるとして労働者の生活の実態から解雇されるというと、非常に不利な状況になるということを申し上げてですね、特にこういう炭鉱労働者のけい肺の患者さん、こういう人たちに対してですね、もっと何かこれを守るほんとうの補償の道はないか。この法律の言葉そのものも、私はきわめて問題点が多いと思うのだが、さらにこれを越して今のような点について、積極的な施策はないかといってまあ伺っておるわけです。これについては、われわれとしてもかねてからいろいろと検討をして、皆さん方の反省を求めてきたわけですが、全然これについて何ら処置はできないということなんですか。あるいはもっと行政的な指導の面、その他の面でですね、将来はこういう打切補償というものはおかしいのだ、打切補償を支払ったとみなすというようなこともおかしいのだ、従ってですね、当然諸外国にあるような労働者の災害を補償するという建前で進んでいく、そのために、とりあえずはまあ法律の文章はこうだが、行政的にはこうするとかなんとか、もう少し内容のある御返事をいただかなければですね、どうもわれわれとしてはこのまま引き下がるわけにはちょっといきません。
○国務大臣(松野頼三君) 今回の基準法の規定も三年で解雇しろと、奨励的な意味を持つわけではございません。いわゆる免責でありますから。従って行政的におきましても、各労働協約等においてこの期日問題において、いろいろ協約を結ばれておる組合もございますし、行政指導としてもこれは不可能な問題ではございません。解雇しろというなら、これは行政指導の範囲を越えますけれども、これはいわゆる免責でありますから、その後においてその雇用条件を続けることに、何らこの法律あるいは今回の改正は、それを禁止するものではもちろんございませんので、行政指導的に考えて、なるべく大体長期療養によって、先の療養期日というものがある程度はこれは見通しというものが出てくる場面もございますので、やはり行政指導におきましても、三年たてば解雇することを奨励するような行政指導にあらずして、私はやはりある程度回復とか、あるいは療養の状況を見て行政指導も可能であると、私はこう考えております。
○坂本昭君 今のこの十九条の三についての皆さんの逐条説明の中には、より確実かつ一そう高度の補償になったから、使用者の補償責任を完全に免ずることとしたというふうな説明書きが書いてあります。使用者の労働者の災害に対する補償の責任は、より高度の補償を行なったから、それで免ぜられるという私は筋合いのものではないと思う。使用者の補償責任が明確になってきたからこそ、高度の補償をとらざるを得なくなってきたのです。これはもう先ほど来労働大臣も、世の進展とともに法律も変わってくると言っておられる。つまり使用者の責任がこの際明確になればなるほど、私は補償の内容も高められなければならないと思う。補償がよくなったから責任が免ぜられるというのは、私は大きな矛盾だと思う。今の点でこの三つの点、先ほどから何度も繰り返して申し上げておるのだけれども、使用者の責任という点ですね、その点は一体どう大臣は考えられるのか。その点が明確になったならば、こんな冷酷な取り扱いをするはずはないと思う。
○国務大臣(松野頼三君) 業務上災害につきましては、使用者責任というものがございます。従って使用者の責任というものも最大限にその責任を負うことは、これは当然なことであります。ただ、基準法できめまする場合には、最低基準でありますから、中小企業から大企業を合わせていわゆる最低基準の基準法でありますから、これがすべてこの通り実施しなければならないという意味じゃありません。これより上に実施するという最低基準だと、これが基準法でありますから、基準法の運営はより前進的に行政指導もできましょうし、より前進的に私たちが引き上げるという努力は、これは労働省が当然やるべきだと思います。ただ、今回の長期の問題、これはすでにもう相当研究もされ、すでに四年間けい肺法におきまして今日の療養をいたしておる方でありますから、従っておのずからある程度の症状、ある程度の方向というものはもう経験上出てきておりますが、それに合わせてその方々に対する長期療養という安定した道を開いて参りたいというので、一般的な基準法と今回の改正というものと、おのずから必ずしも一致しておるわけじゃございません。しかし、思想としては、労働省としては労働者の保護、療養の安定ということを考えなければならないと考えております。
○坂本昭君 日本の労働行政がずいぶん進んでおるような自画自賛もされたり、またこれからいよいよいろいろとおやりになるという御意見も承りましたが、私は日本の国の経済の実力などからいって特に御承知の通り、今いろいろと新しい防衛計画やいろいろな計画ができております。そうしたものの実力からいって、私は日本はもっとやり得ると思う。きのうの本会議の反対討論で、失業保険の問題も論ぜられましたけれども、私は日本の実力はもっとでき得ると信じている。それをしないのは、むしろあなた方の責任だと思う。怠慢だと思う。で、たとえば一九一五年のカナダの労災補償法、これはカナダのオンタリオ州という小さい州の労災補償法です。しかし、これでも私は非常に筋が立っていると思う。労働者が業務災害をこうむった場合に、先ほど私も申し上げましたけれども、昔は訴訟が非常に多かった。従ってそういった訴訟を廃止して、事業主に不当な重荷を課すことがないように、またすみやかに公平に労働者に保護を与えるということが、初めから法律の目的にちゃんと記載されている。そうして法廷で損害賠償、あるいは補償申請の決定をするかわりに、この労災の補償法の中で、個人的ではなしに、集団的に解決をしている。日本の労働基準法は個人的な解決のことしかできない。実際は労災法で集団的にできている。従ってこういう点で実際に合わせて日本の労働基準法も変える必要が私はあると思う。それからまた補償を行なう場合の具体的な内容としても、業務遂行中に発生した災害のための身体障害だけではなくて、別に掲げられた職業病がはっきりと書かれて、二本立てになっております。二本立てになって、こちらの基準法に示されたような、雑多になって並列されているのじゃなくて、これはアクシデント、これは職業病、そういったことがもう四十年以上も前から小さいカナダの一州において行なわれている。従って私は、この点日本では事業主の過失だか労働者の過失だか、そういう議論にまでまだ至っていないかもしれない、ほんとうはもっと議論したらいいと思うのです、私は、労働大臣が今後この法律の発展についてあまり熱心でなければ、全国的にあちらこちらでこの労務災害についての訴訟を展開していきたいと思うのです。全部どこでも裁判をやるのですよ、どんどんどんどん。日本の労災法にはそのことを書いてないのです。だから裁判できますよ。だから私は、何ならこれもいろいろな事件を裁判に出して、たとえばけい肺の患者さんですね、おれはだめだ、こんな補償じゃだめだ、最高裁までみんな持っていきますよ。田中最高裁判所長官びっくりするかもしれないけれども、そこまでやらなければ怠慢です。日本の政府は労働者のことを考えてくれない。そういう点においては、このカナダの小さいところあたりも、はっきり初めからそういう災いをしないために、われわれはもう集団的に全面的に補償をしていくのだという態度を実は明らかにしている。たとえば日本の場合は、明治の終わりにすでに三分の二の休業補償をしてやっておったのが、労働基準法では六割になっている。このカナダあたりでは七割五分です。そうしてしかも、こういう場合も非常に興味のあることは、平均賃金の年額四千ドルをこえる場合には、そのこえる部分は考慮しない。四千ドルどまりなんですよ。四千ドルあれば十分生活ができるという点で、その以上の部分は考慮しない。ところが、非常に低賃金の、週平均賃金が十五ドル以下というような場合には、それ以下じゃなくてもう十五ドルを支給をする。いつも皆さんのように、六割だとか、平均賃金の六割、しかもその平均賃金は炭鉱労働者の場合非常に条件が悪い。この点もあとで申し上げたいと思うのですが、そういうふうな算術平均でやるのでなくて、いつも労働者が生活ができるような条件ということを考えることは不当にぜいたくでなくて、とにかく生活のできるという点で、賃金が十五ドル以上の場合は七五%でいくが、十五ドル以下のような場合はそれ以上下げてやらない。そうしていつも生活を守るというふうな建前をとっておる。いつもその生活の保障ということが考えられている。さらに一番思うのは、この補償が一体いつまで補償されるかということです。大体——大体というよりも、まずほとんどの国が終生の、つまり死ぬまでの補償を受けている。このカナダの州の場合は、終生の補償費を受けることができる。しかも、そういうような場合にかなりこまかいところまで親切な配慮が行なわれて、補償費を終生やる場合には、もちろんこれは年金となって毎月渡しておる。日本の厚生省みたいに、まとめておいて三カ月に一ぺんに渡す。そうして渡す人が死んでしまったらくれないのです。今度の福祉年金だってそうです。去年の九、十、十一、十二と四カ月分くれるわけです。ところが、三月の一日に死んでおったら、ちっともくれない。こういう冷淡な政府は日本だけです。このカナダの場合は、毎月々々くれるわけです。毎月々々くれるのですよ。年金も毎月々々くれている。こういうふうな生活保障が非常によくできておる。一体こういうことを大臣はどう思われますか。
○国務大臣(松野頼三君) 御趣旨のようなことは私もそうあるべきだと考えます。従って、今回のこの労災保険は、御趣旨のようなことにずっと終身年金を毎月払いということに踏み切ったわけであります。今回、他の所管のことは私は批判をいたしませんが、そういう御趣旨は私も同感でございますので、今回のこの労災は、終身の年金毎月払いということに、これは踏み切ったのであります。御趣旨のようにこれは進んでおるのですから、今回は私はこれは確かに前進であるという一つの中にあげていただいてもよかろうかと思います。
○坂本昭君 どうもそれは一歩半歩の前進かもしれないけれども、今のこのロケット時代の急速な前進をやっておるときに、そんなことでは間に合いませんよ。主要な国々のいろいろなけい肺その他職業病の保護規定を見ましても、日本のように打切補償をやっていないということは、先ほども労働省がはっきり明言をされましたが、その通りどこもありません。そして全部療養給付は、全治まで無期限に支給される。これが大原則ですよ。なおるまで無期限に支給される。そのパーセンテージは八〇%の国あり、あるいは七五%、あるいは三分の二の休業給付もあります。しかし、いつも生活のできるということが原則になっております。日本のけい肺の患者さんの場合、どうですか。あるいは今度の場合にも管理区分三になると勧告がきます。勧告がきて、職場転換をしなければならない。そうして転換をすると三十日分の転換補償をくれますが、給料はずっと落ちていく。そして場合によれば、それがずいぶん進んできたから、二、三年あるいは四、五年たって管理区分が四になって入院しなければならない。その間に給料は、坑内夫として三万五千円ぐらいあったのが、三万円になり、一万五千円になり、ずっと落ちていく。その落ちていったところで入院すると、それから前さかのぼって三カ月ですか、その平均でやる。私はこういうところにも、実に血も涙もないと思う。むしろそういう場合に、平均賃金のとり方は、けい肺のような場合には、今の職場転換の勧告をする、その前にとったらいいと思います。これはかなり明確に指示できると思います。そうすればまだ食っていけますよ。いよいよ食っていけなくなったところでこういう扱いをされたのでは、私は労働者は全くかなわないと思う。すでにこれは労働基準法の平均賃金のとり方の中にも、十二条ですか、十二条のとり方の中にも、第三項に「使用者の責に帰すべき事由によって休業した期間」は省くというようなことが出ていますね。これは私は生かしたらいいと思います。「使用者の責に帰すべき事由によって休業した期間」ですよ。けい肺にかかっていくということは、そうしてだんだん職場を転換していって給料が下がっていく、そういうようなときには、そういうところを省いてしまって坑内夫としてのときの給与を基準としてやればまだ私は助かると思う。そうすると今度のように二百四十日とか百八十八日とか言ってけんかをせぬでも済んだのだと思う。一つ労働者の生活を守るという点で今の平均賃金のとり方も、これは一例ですが、こういうとり方というものは考えられませんか。
○政府委員(澁谷直藏君) このけい肺患者のような場合は確かに御指摘のような場合が起こることが考えられるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、基準法第十二条の第八項の運用によりまして、普通の原則通りの平均賃金の算定をした場合に、当該労働者にとって非常な損害になるというようなケースが起こりました場合には、第八項の運用によって、ただいま先生も御指摘になったようなそういった点を十分加味して平均賃金の算定をやって参りたい、こういうふうに考えております。
○坂本昭君 しかし、実際に今までそういうやり方をしたことはないでしょう。今からでも私はおそくはないと思うのですが、この十二条の三項をもっとうまく生かすことによって、要は、目的はその療養する場合、休業補償の内容が生活に十分足る利便の内容であるということ、そのことを私たちは望んでおる。何かいい方法はないかというのです。今のようなあれならば職場を転換してだんだん給与は悪くなるといったところで管理区分四のために入院したって、平均賃金というもののとり方が悪い。だから、何か私はあちらこちら読んでいい方法はないか、いい方法はないかと思って探して、これはどうかと思って聞いているのですよ。
○政府委員(澁谷直藏君) けい肺の患者等につきましては、そういった場合が当然考えられるわけでございまして、従来も二十四年の三月十一日付の通牒によりまして、けい肺の場合の平均賃金算定には、けい肺症の発生のおそれがある最後の事業場を離職したときの賃金を用いるということで、けい肺の発生のおそれのない事業場にかわったというと、賃金がダウンする場合が多いわけでございます。そういうものは使わないで、最後にけい肺の発生のおそれのある事業場を離れた、そのときの平均賃金を使うのだということで二十四年に通牒を出したわけでございますが、その後、ところが、実際問題としましては、この適用でいきますると、逆にけい肺発生のおそれのある事業場から別の事業場にかわって、その方が賃金が上がった、こういうような実際の実例も出て参りまして、そういう場合は、この方法によると当該の労働者が、損をするわけでございます。従って、これは一律に大体基本的な考え方としては、この二十四年の通牒の考え方が適切ではないかと思われますが、実際にこれを画一的に当てはめますと、具体的にその損する事例も出てくる、そういうような場合もございますので、そういったことを私どもも考えて、とにかく結論として、当該労働者が不当に損しないというような方法で一つ運用して参りたい、その点は私どもも運用にあたって十分これは留意して参りたいと考えております。
○坂本昭君 そこで、今の賃金の問題は出ていますけれども、あなたの方で長期療養補償をする場合の資料として平均賃金、けい肺の場合、脊損の場合幾らと計算しておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) これは平均的に申し上げますると、じん肺患者の場合は、平均賃金が七百十八円、それから脊損患者の場合が五百四十八円、その他も五百四十八円、こういうふうに一応計算をしております。しかし、これは現在の基礎実績によっている推計価でございますので、当然これは賃金でございますので、変動がございますから、ただいまの現在といたしましては、大体の平均がただいま申し上げたような数字になっておるわけでございます。
○坂本昭君 それからあなたがたの計算された平均余命年数はどの程度ですか。
○政府委員(澁谷直藏君) じん肺につきましては十・五年、それから脊損につきましては十三・一年、その他につきましても一応これは十三・一年というふうに考えております。
○坂本昭君 今のけい肺と脊損の平均賃金は、予算審議のときの賃金と同じ額ですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 同じでございます。
○坂本昭君 六百七十円という額を出しておられるのは、これはどれに当たるのですか。
○政府委員(澁谷直藏君) これは、じん肺、脊損その他を全部含めた全体の平均賃金は六百五十七円という数字が出ているわけでございます。ただいま申し上げましたのは、じん肺、脊損その他について個別の賃金の平均を申し上げると、じん肺が七百十八円、脊損が五百四十八円ということになりますが、これらを合わせた総平均としましては六百五十七円、こういうことでございます。
○坂本昭君 実際にこの程度の平均賃金になっておりますか、もっと低いんじゃないですか。それは皆さんのはどういう資料でお作りになっておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) これは現在特別保護法なり臨時措置法を施行しておるわけでございまして、これらの実績に基づいて算出いたしました数字でございます。
○坂本昭君 この前のけい肺審議会のときに出された余命年数と少し違いはしませんですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 同じでございます。
○坂本昭君 十・五ですね。
○政府委員(澁谷直藏君) これも平均賃金の場合と同じように、じん肺については十・五年、脊損については十三・一年、その他についても十三・一年といたしまして、それの総平均は十一・四年ということでございます。
○坂本昭君 けい肺の方などはどうも平均賃金は非常に低過ぎてとうてい今のようなことでは生活ができないのではないかと私は心配をする。で、特に今度の改正案のように二百四十日と百八十八日と、最初の原案であります、これなど私は理論的にわからない。先ほど斎藤議員は提案理由の中で第二種傷病給付一年につき百八十八日を二百日に改めた、これは理由として、完全看護をやっているけれども、入院しておっても雑費がかかるから、とってもこれではいけないというので上げたというのですね。しかし、私はそういう理論よりも、自宅におろうが、入院しておろうが、療養に必要なものは使用主がこれを負担する、これは原則として明確ではないか、だから入院したときは入院費用を払う、外来で通ったときにはその通院した費用を払ってもらう、それからあとの手当については、同じように六割あるいは三分の二なりの休業補償としてその線をずっと貫いていく、私はその方が筋道も正しくて、こういう雑費がかかるからといって十二日引き上げたりするのは、はなはだつじつまが合わないと思う。もっと筋道の立った行き方を休業給付から、さらに長期補償について一貫して私はでき得るのではないか、この点いかがですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 御指摘のような方法も一つの方法であるわけでございますが、この政府原案でとっております考え方は、入院を必要とする患者の状態と、それから自宅に帰りましてときどき病院に通って療養をするという患者との間に非常な大きな経費的に見ても開きがある、これを数字的に申しあげてみますると、通院療養の場合は、年額平均でございますが、療養費といたしまして三万二千円、大体月額にいたしまして二千五百円とちょっとの程度で療養費が大体まかなわれておる、これに対しまして入院した場合は、年間二十四万四千円、平均でございますが、これも二十四万四千円という療養費がかかっておる、こういう工合に非常にその病状の状態も、従って、これに要する療養費の額におきましても、非常に開きがある、こういう実態の上に立ちまして、入院と通院療養というふうに二つに分けたわけでございます。従いまして、通院療養の場合は、ただいま申し上げましたように、療養費の占める額が非常に少のうございますので、これを生活費と合わせまして二百四十日という考え方をとったわけでございます。これに対しまして入院の療養をする場合は、二十四万四千円というような多額の療養費が必要とされますので、これは当然この直接労災保険から支払う、そのかわり生活費といたしまして百八十八日分の年金を支給する、こういう考え方に立っておるわけでございます。
○坂本昭君 そうしますと、今の二百四十日については、百八十八日があなたの方の原案の生活費で、あとの五十二日が療養費である、そういうお考えなんですね。
○政府委員(澁谷直藏君) 生活費と、それから療養費とを合わせて二百四十日という区分をとったわけでございますが、この二百四十日という根拠は一体どこから持ってきたかということでございますが、これは現在労働能力を一〇〇%以上喪失しまして、常時介護を要する者に一時金として支払われる障害給付の六年分割した場合の年額が二百四十日になっております。それを採用したわけでございます。なお、入院した場合の百八十八日は、ただいま申し上げた労働能力を一〇〇%喪失したけれども、他人の介護は必要でない、自分の日常の用事は自分で足せるというような障害を残した者に支払われる六年分割した場合の年額百八十八日をとったわけがございます。
○坂本昭君 今の二百四十日の計算の根拠は、先ほどの打切補償の千二百日と同じようにむずかしく言っておったら、私は理論的な根拠というものは出てこないのじゃないかと思うのです。それよりも一番大事なことは、入院であろうと、あるいは通院であろうと、それは病状の差こそあれ、同じように労務災害の結果としてここに倒れておる労働者であります。だからその人たちが必要な療養費は、労働基準法にもちゃんと書いてある通りに、入院であろうと、外来であろうと、同じように補償する、そうしてあとは生活費、生活費は別途にパーセントで一定の比率をもって当てはめていく。私はもうそれが一番筋道がはっきりしているし、そうしてそのために年金制度をとっておるというのが大体外国の大かたの行き方だと思うのです。実際はイギリスやフランス、西ドイツでこの労災法の出発の道は違っています。違っているけれども、結局、最後に、半世紀あるいは一世紀近くかかって到達したところはほぼ同じようなところに来ておる。そういう点で今回の皆さんが長期療養補償という形で年金化していこうとされた努力については、私はこれを了とします。しかし、あくまで使用者の責任であるということ、これをぼかしてしまったのでは、これはそもそもの労災法の出発点を取り違えることになる。今度国の負担金も少しついてきております。しかし、これはあなた方はどういう考えでこの負担金をつけてきておられるのか、その辺の明確な一つ理念を御説明いただきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 先ほどからいろいろと議論が出ますように、労働基準法上の建前は、業務上労働者が負傷し、または疾病にかかった場合は使用者の責任において必要な療養を行なうということが基準法の基本的な理念でございます。従いまして、業務上の災害補償については、あくまでも使用者の責任においてこれを補償する、こういう建前をとっておるわけでございまして、それを使用者の団体責任において補償を実行していくというために労災保険法が作られておるわけでございまして、今回の改正案におきましても、この基本的な考え方は何ら変わっておりません。あくまでも労働者が業務上に起因して負傷し、または疾病にかかった、そのために損害をこうむった、その損害を使用者の責任において補償していくのだという考え方はそのまま踏襲しておるわけでございます。ただ基準法上の建前といたしましては、先ほども申しあげましたように、療養開始後三年を経過してもまだなおらない、その場合は千二百日分の平均賃金を支払うことによってその以後の補償については免責される、こういう建前を基準法はとっておるわけでございます。ところが、今回の改正案におきましては、労災補償保険法の中におきまして、長期年金という制度を新たに打ち立てたわけでございます。従いまして、その限度におきまして、従来の打切補償に相当する部分をこえる部分につきましては、従来の基準法上の使用者の責任よりもさらに重くなったわけでございます。従って、長期年金を採用することになりますと、当然それに要する費用も、それから従来のけい肺なり、あるいは脊損患者だけではなしに、これと同様な状態にある人につきましても同じように長期の年金を補償する考え方をとっておりますので、その対象の範囲、それから支給の期間についても相当大幅な拡大が実施されたわけでございます。従って、それを基準法上の使用者の責任をこえて、それを全部使用者の負担において実施するということは、若干そこに無理がございますので、そこは政府の責任において、政府もある程度の負担をする、政府の責任において政策として政府も負担する、こういう考え方をとっておるのが今回の改正案の考え方でございます。
○坂本昭君 それでは伺いますが、今度のこの改正によって、従来までのけい肺の患者さんたちや脊損の患者さんたちは、もちろん数はかなり明確ですが、それ以外のまだほかの種類の患者さんもあると思う。そういう人たちがこの法改正によって、予算にどの程度変化が起こるという見通しですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 現在の三十四年度におきまするけい肺特別保護法及び臨時措置法による給付の人員は二千三百五十八人、これに要す給付額は六億四千七百万円、そのうち三億九千八百万円を国庫が負担しているわけでございますが、昭和三十五年度におきまする給付の人員は、じん肺が二千二百七十七人、脊損が八百二十一人、その他が三十一人、重度障害者が百八名、合計いたしまして三千二百三十七人、こういう人員になります。これに対する給付額といたしましては、三十五年度におきましては六億八千二百万円、そのうち国庫負担分が四億八百万円となっているわけでございます。三十五年度はつまり初年度に当たるわけでございますが、年金でございますので、逐次この給付人員なり、給付額が逓増して参りまして、いわゆる大体コンスタントの状態になると考えられる経営年度における給付人員の総数は一万四十人、これに要する給付額の総額が二十二億九千百万円、これに対しまして国庫負担分は九億二千五百万円、経営年度において大体その程度の額になるのではないかというふうに見込んでおります。
○坂本昭君 国の負担が増すということは、社会保障を推進する上においては、それは全般的には国の負担が増すことはよろしいのですが、それは医療保険やあるいは所得補償の年金の場合については言えることであります。しかし、労務災害補償はあくまでも使用主の責任であるということ、この点をはぐらかしては、私は立法の趣旨が消えてしまう。むしろ職業病などの重大な問題があって、国もこれに対して責任と関心を持つべきでありますが、持つ場所が私は違わなければならないと思う。労働大臣に伺いますが、あなたの方では、職業病についてほかの機関に比べて研究がきわめて不十分だと思います。しかし、労働衛生研究所でかなりな御研究をしていることについては、私も一応敬意を表したい。ところが、この労働衛生研究所の研究費が労災の基金から出されている、こういうことはなはだおかしいと思う。労災の基金は、使用主の責任であるから、あくまで労働者の災害補償のために払うべきである。びた一文もそんなものを研究の費用に出す必要はないと思う。ところが、実際には金額が出ているのです。実際には特別会計として三十四年度三千九正五万八千円、それから三十五年度五千五十七万七千円、これが特別会計から労働衛生研究所に対して与えられている。一般会計とは別の予算であります。そうして、この中を見ると、一番大きいのは拡充整備費、これに三十五年度二千八百六十四万七千円かけている。そのほか特別研究費、施設整備費それぞれ約五百万円ずつかけている。これなどは私ははなはだけしからぬと思いますね。こんなことにこそ、これは国の一般会計から金を出してやったらいいので、そのかわり使用者の責任を明らかにするために、労働者の災害補償費は全部この労災の会計から支払っていく、私はそれが筋道であると思うのですが、大臣いかがでございます。
○国務大臣(松野頼三君) 理論的におっしゃれば、そういう理論も正しい理論だと存じます。しかし、今日までの法律及び運営をごらんいただければわかるように、労働者災害補償保険法というのは、御承知のごとく、福祉施設ということが第一条に出ております。また第二十三条に福祉施設の内容がずっと書いてございます。従って、それは法律の理論としては坂本委員のおっしゃることは正しい理論だと思います。しかし、この法律はその理論の上にいわゆる福祉施設というものを加えておるというところに、こういうふうな運営をしてきたことであろうと、私は考えます。なお政府の補助がなぜ入ったかと言われることにつきましては、先ほど局長が答弁いたしましたごとく、やはり今度は産業全般の連帯責任の上に立つことと同時に、今日までのけい肺及び臨時措置法、特別措置法を受けて立つこと、今日までの特別措置法、臨時措置法には二分の一、臨時措置法には五分の四の国の実は負担金というものを入れて、今日の療養を続けておるわけです。従って、その比率は別としまして、国のやはり人道的見地というのがけい肺法の立案当時の趣旨でございまして、いろいろ理論はあるだろうが、さしあたり、何といっても現状を見るならば、人道的見地からこの臨時立法をすべきだという趣旨であの二つの臨時の立法ができておるわけであります。従って、それもやはり今回の場合受けなければならない、その趣旨はやはりそういうふうなものを勘案して私たちの方は、おっしゃるように理論的に割り切るならば、全部責任でいけ、これも理論であります。また、そんなものに国は金を出すな、これも理論であります。しかし、やはり今日の実情を考えてみますと、法律の立法以来、期限付の立法ができたあとは今日これを労災が引き受ける。そうして安定した療養を受けるということのためには、国の負担金というものをもちろん入れて安定することの方が私は、いいんじゃなかろうか。また労災保険そのものに今回新しいものを入れるのでありますから、やはり労災保険が今日までなかった新しい問題に踏み切るというのですから、その財政的安定をはかっていかなきゃならないということから、国の保険というものが、国の負担金というものが幾らか入っております。これは御承知のごとく、審議会では理論的にはずいぶん議論が出ました。しかし、結論において、やはり療養者の身を考えるならば、今回はさしあたり、こういうことは理論よりも現実を見てやる方がよかろうというのが大多数の公益委員方の中間的な意見でもございました。理論的には今後社会保険審議会等でいろいろ議論が出ると思いますが、しかし、それかといって理論に倒れて、今日の場合、療養する方のことも考えなければならないということで、今回は国の負担を一部入れ、そうして労災の趣旨を生かし、そうして今回のような法律を提案したようなわけでございま
○坂本昭君 どうも松野さんの人道主義と私の人道主義とはだいぶ違うようです。私はきょうは最初からかなりうろんな理屈を少し述べ過ぎたかもしれぬと思ったのですが、実はあなたが言われるような、きわめて現実主義と言っておられるが、現実主義じゃないんですよ。むしろそれよりもこうした企業主に押されてしまって、そうして労働行政の筋を曲げてしまい、世界各国の推進の趨勢からも曲げられてしまって、そうしてここに国庫負担というものを出してきている。私は労災法の今までの世界すべての成り立ちからいって、今のような日本の行き方ではどうもならぬから、そこで、社会保障の推進の中で何とか立て直していきたい、その立て直していくために長期の年金制度に変えろということは、これは悪いことではない。しかし、一番確認されなければならないことは使用主の責任ということ、そうしてあくまでも一生見てもらえる、生活が守られるということ、その中ではアクシデントによる災害も、職業病といったような特殊の形のものも同じように扱っていかなければならない、こういう点が明らかにならないと、この労災法というものはまたまたひん曲げられてしまってうまく発展していかない、そういう点で私はるる、一生懸命述べてきたのだが、肝心のところについてどうも基本的に意見が合いません。私はこの点でどうもこれは何度言ったってなかなか聞いていただけないとなると、全くどう議論したってむだなみたいな気がいたしますが、なお、もっと私は申し上げたいことは、今のようなこうした災害についても、職業病についても一番大事なことは、労働者を守ることと、それからこういう不幸なことを作らせないということなんですよ。予防ということです。ですから私はあとでじん肺法の問題、こちらの方の問題はあとで検討いたしますが、予防ということについては、それぞれの職場における具体的な予防は使用主の責任です。しかし、その予防には医学的な、あるいは物理的な研究の道がある。そのことは国が引き受けてやるべきだ。そうしてそのために労働衛生研究所というものがあるんです。だからそういうためにはもっと予算を組んでもらいたい。われわれもそれには幾らでも応援をして、こんな少ない予算ではだめだ。この間われわれ行って、あそこでじん肺の予防のマスクの製造の実験をやっているのを見ましたが、もっと予算を出してやらなければ、じん肺なり、けい肺の問題は解決できしない。あなたの方では国庫負担でどんどん入れていって、使用主の責任はそれほどないのにかかわらず、国の負担で病人を見てあげよう、その気持はいいけれども、病人を見てあげるよりも病人を作らないことが大事なんです。ですから、国のやるべきことはむしろその方をやってもらいたい、私はそういうことを申し上げておる。 さらにこの労働者の生活を守るために特にこの際指摘しておきたいのは、年金の併給の問題であります。年金の併給については、イギリスでは年金の併給が現実に行なわれております。にもかかわらず、どうして今度はこの併給をさせない手段をとったか。特に私が申し上げたいのは、大体年金というものは一つで十分足らなければならないのが年金の性質なんですよ。たとえば今度の福祉年金についても、老齢福祉年金と公務扶助料とはこれは併給できないということで、日本の国民の七十を過ぎた戦争の遺家族のおじいさん、おばあさんあたりは非常に残念がっておるのでありますが、もし公務扶助料が十分その生活を満たすことのできるものならば私は併給は要らないと思う。しかし、公務扶助料といえ、年額四万五千円あるいは五万円、そうすると月に三千円、四千円ということでは生活ができない。だから公務扶助料と福祉年金——福祉年金は月千円ですが、との併給によって、それによって生きていかなければならない。私はそういう点で、日本の今日の年金は併給していかなければ生活ができないという点で、その理論的なことよりも、これこそ実質的に私は併給してしかるべきだと思います。それを今度のように差っ引いたりされることは、まことに血も涙もない松野大臣だと言わざるを得ない。これについての大臣のお考えを一つ聞かしてください。
○国務大臣(松野頼三君) 今回の場合はこれは暫定措置でございまして、総合調整の場合にはもちろんそういうものを考えるということを前提において、暫定措置という趣旨で第十五条に書いたわけでございます。なお理論的に私と坂本委員と非常に離れているように言われますが、私は理論的には坂本委員とそう離れておりません。ただ現実、この法案の提案については、やはり現実非常に進歩的な坂本委員の、その進歩に追いつけないと私は考えておりますけれども、そこに私は、今回の法案の提案の理由の説明でありますから、私は思想的にかけ離れているとは思いません。非常に進歩的で、私もそういう考え方でございますが、この法案の現実はまだそこまで進んでおらないところに非常に理論が離れておるように言われますが、しかし、現実の方ではもう一歩下がって、現行法から考えて私は進歩だというのです。坂本委員は一つには、世界的水準と申しますか、非常に進歩的理論からいくと後退ではないか、そこに差はありますけれども、私もわからぬわけじゃないのです。しかし、現実のこの基準法、現実のけい肺法というものの、今の現行法を考えてみると、今回のものは不満足ではあるかもしれぬが、一歩進んだものを私は置きたいという熱意で、私はこの法案を提案しておりますので、私はもう少しいい答弁をしたいのですけれども、いい答弁は……、これで満足だとは私も考えておりません。しかし、一歩前進していくには、やはり段階を考えていかなければならない。段階を経ていかなければならない。従って、私も理想と熱意に燃えておりますけれども、まだ私の力ではそんなに理想通りにいかないけれども、一歩理想に近づいていると私は思うのです。いわゆる年金制度としては、何べんも言いますように、年金の内容についてはいろいろの議論はございます。しかし、いつまでたっても、やはり暫定措置では長い療養者にとっては不親切なものだということで、愛情から今回の年金制度は提案したので、いろいろ欠点はございますけれども、私は出しました。その意味で併給というものもございましょうけれども、いずれこれは暫定的なものでございますから、調整の場合は将来考えるという趣旨で、今日の発足の場合は、厚生年金を受ける方と受けない方と、——全部の方が厚生年金を受けられるという段階ではまだございません。従って、受けられる方と受けられない方という、その均衡を考えて、受けられる方はこういたします、受けられない方はこういたします、という二つの種類が出てきたわけであります。もちろん、基本的には総合調整という段階ではこれはやらざるを得ないのではないか。同時に、これはすべての保険制度に適用されるのではないか。先ほど船員保険の例が出ましたけれども、船員保険は御承知のように総合保険で、短期給付から長期給付、遺族年金からすべて入っているのです。こういうものも日本の中にあるわけです。また個々におきましては健康保険等という制度もあるわけです。非常に日本の社会保障制度の法律は種々雑多であり、しかも、種類が多いところにやはり今日のようにいろいろな議論が出る。これは私も、将来において当然社会保障制度を総合的なものとして合わせなければならない。その非難の一つは、今回のこの法律の中にもございます、差っ引くのは何だという御議論がそうだと思います。しかし、それはやはりどうしても基本的に考えませんと、ただこの労災だけで総合調整するわけには参りません。一応今日の現行制度というものの中において、労災を今回改正するというと、こういうところが出てくるのだ、そういう意味で、今回は現行法の、現状の中においては差し引くということを入れたわけでございます。
○坂本昭君 どうも労働大臣もお若いに似ず、あれこれとうまいこと口がだんだん上手になってこられて、やはり労働行政をしっかりやるためには、もう少し明確なお考えのもとに立っていただかないというと、なるほどそれは一歩前進かもしれません。しれませんが、一番大事な点を繰り返して申し上げても、使用者責任については使用者に対して果たさせる、三井の炭鉱の社長も、北海道の炭鉱の社長も全部呼びつけて、これをお前たちの責任でやれ、それだけのことを言うほどの御熱意はちっともない。大牟田の事件だって、先ほどから藤田委員からだいぶ言われておりましたが、私は、政府は大きな権力を持っている。そのためには幾らでも使っていいのですよ。変なところには権力は使われるけれども、使わなくちゃいかぬところにちっともお使いになならない。また、あしたも身体障害者雇用法のことで、大臣とこれはまただいぶ論ぜねばいかぬと思うのですね。あんな権力によって、ほんとうに守ることのできる人をあなた方は守ろうとしない。そうしておいて、今度のこの場合でも国庫負担をどんどんふやしていっている。私は今度のこの労災法の一番の目標は予防にあると思う。皆さんの方では、じん肺法というものを一応出してこられたことについては、これは悪いとは言いません。しかし、先ほど来、労災の対象になるものは、いわゆるアクシデント——災害の人たちと職業病だということを申し上げた。そうしてなぜ職業病を繰り返して言うかというと、これは漸進的に進むと同時に、致命的であり、非常に悲惨だということですね。だからこれに対して特に重点を置いて予防的な措置をとっていかなくちゃいかぬ、予防と治療とさらに、更正のためにアフター・ケアの手段を講じなくちゃいかぬ。しかしその中で、今、局長は淡々として平年度になると一万四十人で合計三十二、三億の予算と言っておられたけれども、私はこんな平年度になって一万人もふえるような計画をお立てになることについて、実ははなはだ不満であります。こういう人たちを作らないようにするためには、たとえばこのじん肺法と同じようなこの職業病に関する予防的な措置、管理的な措置、こういったものを一体どの程度作っておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 職業病の対策といたしましては、そういった職業病の患者が発生しないように予防措置の徹底を期するということは、これはもう何人も異論のないところでございます。そういった趣旨に沿いまして、今日特にじん肺の重要性にかんがみまして、じん肺法案を提案いたした次第でございます。 なお職業病全般についての予防対策の問題でございますが、労働省といたしましては、これらの職業病はそれぞれその病気特有の特殊性を持っているわけでございますので、これらの予防措置につきましては、一般的な規則ではなかなか十分これに対処することが困難でございます。従いまして、当該職業病の個々の特性に応じた予防の規則を整備することが肝要ではないかというふうに考えて、この数年来、その方向に沿って逐次関係の規則を整備いたしておるわけでございます。現に中央労働基準審議会にはそのベンゼン等による有機溶剤による中毒を防止するための規則の制定、それから高気圧作業による障害を防止するための規則を制定すべく、現在それぞれの専門部会にお願いいたしまして、これが検討を急いでおるような次第でございまして、私どもはこういった一つ一つの病気につきましての予防規則を積み上げて、やがては全般的な一つのりっぱな体系を作っていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
○坂本昭君 先ほど職業病としての数の中にかなりなものをあげておられるのですが、その中でじん肺とベンゾール、その他若干の有機薬物ですか、それくらいのことでは、これは労働省は職務怠慢のそしりを免れない。もう少し内枠について品目をあげ、どの程度の作業ができているか御説明いただきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 最近非常に問題になっております、電離放射線障害の防止のための規則は昨年制定しまして、昨年の七月からすでに実施しておるわけでございます。その他、すでに従来の安全衛生規則の中で一般的に規定されておりましたものを分離いたしまして、独立の単行の規則として出したのもそのほかに三種類ほどあるわけでございます。そのほかに、ただいま申し上げました有機溶剤による中毒を防止するための規則、さらには高気圧作業による障害の防止のための規則を制定すべく現在検討を急いでいる状況でございまして、この作業が一段落いたしましたならば、さらに引き続いてそのほかの職業病に対する予防の規則を制定するように、とにかく私どもとしましては全力をあげてそういった方向に努力をして参りたいと考えております。
○坂本昭君 あなた方から出していただいた、有害業務区分別の有所見者数、ほとんどこれは職業病に直接関連をしてくると思いますが、その中に現われた有所見者総数が二十万をこえている。で、今あなたの御説明では、昭和三十五年度この法案の対象になる数が三千名をちょっとこえる程度です。で、この三千名、たった三千名に対しても、あれいったりこれいったり、なかなかわれわれのわずかながらの希望さえも政府は充たしてくれようとはしない、そうして一方には二十万人の有所見者がおりながら、あなたの方では予防的な法案の作成、いろいろな検討は三つか四つしかしていない、これは一体労働省は何をしているのですか。労働大臣は先ほどからいろいろ御意見を賜わりましたけれども、しなければならぬ仕事はずいぶんたくさんありますよ。これはだれが責任をもってどういうふうに推進しておられるか。さらに、労働衛生研究所もこの間行ってみまして、若干この中の部門を担当している。しかし、今のようなあなた方の答弁では、何の、職業病はおろか、もう労働問題自体が解決できないと思う。もう少しあなた方のこれに対する具体的な計画をどうしているかということを説明していただきたい。だれがやっておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) この労働衛生の行政につきましては、労働基準局の中に労働衛生課という課がございまして、ここでもっぱらこの労働衛生の行政の運用に当たっておるわけでございます。これはもう先生も御承知のように、全般の労働衛生についての労働基準法の規則につきましては、労働安全衛生規則という規則の中に総括的に規定をされておるわけでございます。しかしその後、この法なり規則の運用にあたって参りまして、この実情を見ておりますると、科学技術の進歩にも伴いまして、従来の包括的な安全衛生規則では十分でない、こういったような事態が漸次出てくるわけでございます。従いまして、私どもはそういったものを個別的にとらえまして、従来の包括的一般的な安全衛生規則では足らない点を取り上げまして、これを漸次個別の規則を制定して、その辺の安全衛生の面におきまして手落ちのないように規則の充実をはかって参りたい、そういうことでただいま申し上げましたような規則を逐次制定し、公布しておるような次第でございます。今後もその方向で努力して参りたいということを申し上げておるわけでございます。
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(加藤武徳君) 速記を始めて下さい。 暫時休憩いたします。 午後五時三十五分休憩 —————・————— 午後七時十七分開会
○委員長(加藤武徳君) それでは再開いたします。 休憩前に引き続いてじん肺法案外一件の質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○坂本昭君 先ほどお尋ねしたことで少し時間が追っておりましたので、十分御説明をいただけなかった点が二つほどございますので、その点をもう一ぺんお尋ねいたします。 一つは、入院と外来の場合の二百四十日と百八十八日という原案でありますが、その中で自宅の人の場合には生活費が百八十八日にあとの五十二日分が医療費である、大体そういうふうな御説明であったと思いましたが、いかがでございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 生活費が百八十八日で、その残りが医療費だというふうには割り切っておらないのでございまして、先般も申し上げましたように、この二百四十日と百八十八日というのは現行の障害補償の際に第一級に支給される一千三百四十日分を六年間に分割した場合の一年間の給付が二百四十日であり、第三級の障害補償として支給される一千五十日を六年間に分割した一年分が百八十八日であるわけでございまして、その二百四十日、百八十八日を採用いたしたわけでございます。
○坂本昭君 どうもこの数がのみ込めない、だからせっかく齋藤委員が百八十八を二百にしても、こっちの方では少しもうれしくもなければありがたくもなくて、大体一千三百四十日を一千五十日ということもさっき私もちょっと触れましたが、この根拠からして少しも明瞭な理論的な根拠がない。これもたどりたどっていくと、明治四十四年の工場法にさかのぼって、それ以外に何にも資料がないわけです。従ってそういうことからこの近代的な労災法の休業補償についてこういう数が出てくるということについて、私ははなはだ不当だと思うのです。さらに、この中で自宅で休んでいる人の場合は二百四十日というものの中に医療費と生活費といったものが、込みになっているということ、こういうものでは生活にはとうていたえられないと思うのです。そういう点、皆さんの方では確信を持ってこれで十分できるということで、こういう数をお出しになっておられるのですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 公益委員の答申の案におきましては、この通院療養の場合は、平均賃金の支給額は二百十五日という案が、実は公益委員の案として出ておったわけでございます。なお、入院療養の場合の平均賃金は百十二日という公益委員案が出たのでございますが、これは労働省におきまして、法案を立案する際に、その生活費という、生活を保障するという観点から検討いたしました結果、現行のこの法案のように、それぞれ二百十五日を二百四十日、百十二日を百八十八日というふうに引き上げた修正を行ない、政府原案といたした次第でございます。この二百四十日は、言うまでもなく、大体がこの平均賃金の三分の二に当たっておるわけでございまして、百八十八日の場合におきましても平均賃金の五二%に当たるわけでございますが、そのほかに先生も御承知のように、厚生年金法の一部併給をいたしますので、その分が大体四十日に相当いたします。これを合わせて計算いたしますると、それぞれ七割から六割をこえる程度になりますので、一応これは内容について、多いほど望ましいのはもちろんでございますけれども、現在の段階としては、まずこの程度でいいのではないかという考えに立っておるわけでございます。
○坂本昭君 先ほど来私も申し上げましたが、平均賃金のとり方、それから特に炭鉱などに住んでいる人たちの生活の実態、そういうことから、私はこういう数ではきわめて不十分なので、近い将来、大臣も総合調整というふうな問題を言っておられましたが、それらも含めて、近い将来に直ちにこれは手直しをしていく必要があるのではないかと思いますが、労働省としてはこの数、この内容を将来どういうふうに訂正をされる、改善をされるおつもりでございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 何分、今回労災保険といたしましては、初めての長期年金という制度に踏み切ったわけでございまして、そういった意味では非常に画期的な試みをここで踏み切ることになったわけでございます。従いまして、これが施行になりましてその施行の実績等も十分一つ検討いたしましてもちろんこの法案が施行されまして、その施行の結果、実際にはなはだしい不備な点等が現実と照らし合わせて出て参りました場合には、その点はできるだけ一つ今後の問題としまして十分改善をして参りたいというふうに考えるわけでございます。
○坂本昭君 今の保障の内容についての問題ですが、先ほどILOの条約の中での勧告について三分の二というのはあれは百二号条約で、これはまだ確かに批准の域に至っておりません。しかし、すでに批准をした十八号並びに四十二号の条約の中では、両方ともに「右ノ補償ノ率ハ産業災害ニ囚リ生ズル傷害ニ関スル国内法制ノ定ムル率ヲトルコトヲ得ズ」、これは一九二五年の場合も一九三四年の場合も同じように、この記載がされております。で、先ほど国内の立法的な措置についても伺いましたか、この点については批准をした日本の国内事情から、今のこういう率でこのILOの批准に違反はしておりませんか。
○政府委員(澁谷直藏君) ただいまの第四十二号の第一条の第二項におきまして「右ノ補償ノ率ハ産業災害ニ因リ生ズル傷害ニ関スル国内法制ノ定ムル率ヲ下ルコトヲ得ズ」ということになっておりまして、具体的な率につきましては、当該国の国内法制にゆだねられているわけでございますが、今回の改正案はわが国の国内法制の率を下っておらないわけでございまして、その点はこの条約に違反はしないわけでございます。
○坂本昭君 今のこの二項の内容ですがね、「国内法制ノ定ムル率」これは何を意味しておりますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 産業災害補償に関する原則は、言うまでもなく、労働基準法によって定められているわけでございます。そういたしまして、労災補償保険法は労働基準法の内容をそのまま保険の形式によって代行するという方式を採用しておりますので、当然労働基準法が定めている率を下ることはあり得ないわけでございますので、そういった意味でこの条約には違背をしていない、こういうことを申し上げたのでございます。
○坂本昭君 それから遺族給付の問題についてですが、これも今度修正案には出されてきましたが、先ほど労働基準法の中で七十九条の業務上死亡した場合の千日分の遺族補償の点についてお尋ねをしましたが、この業務上死亡した場合もまた業務上負傷し、あるいは疾病にかかり、それから死亡した場合も原則的には同じであるということをお答えになっておられました。従って、業務上の疾病あるいは負傷の結果、場合によると、一年後、二年後、三年後、こういう非常に長い経過の場合もある。三年で打ち切りになった後、六年をめどとして六年以後ではもう遺族補償を渡さないというふうな態度を示しておるので、それについて議院による修正が行なわれましたが、私はそれにしても百四十日、根本的な考えとして私たちはいつなくなっても同じことだと思うのです。あなた方が六年というようなワクを設定してこられたので、そしてその六年というワクの根拠はどこにあるかというと、明治四十四年にある。どうしても納得ができない。この辺に労働基準法にもはっきりと千日分ということが規定してあるならば、何年後に死んだって同じことだと思う。むしろ時がたてばたつほど患者さんとしては長い間苦しむわけですよ、その家族もその苦しみをともにするわけでして、非常にうるさい目をしている、うるさい目をすればするほど生活もまたいろいろな点で逼迫をしてくるので、それを時がたてばだんだん値切っていくというようなのは、どうも私の人道主義をもってしては理解ができない、そちらの人道主義はどうもわれわれと違うようなんですが、あなた方は議院による修正によって不満があるだろうと思うのですが、いかがですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 先般来大臣からも申し上げておりますように、今回の労災保険法の改正につきましては、労働基準法の建前は変えないという大きな前提に立っておるわけでございます。労働基準法におきましては、第七十九条におきまして、業務上死亡した場合は平均賃金の千日分の遺族補償を行なうことになっておるわけでございます。それは三年までの原則でございまして、三年たった以降においてはどうするかという問題が次に起きてくるわけでございますが、それはそういった補償につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、この八十一条の打切補償によって全部の補償をそれに包括して免責される。従って、この打切補償を支給した場合にはその中には当然第七十九条の遺族補償も、あるいは八十条の葬祭料も全部含むと、こういう解釈で現在労働基準法が運用されておるわけでございます。そこで、今回の労災保険法の改正によりまして、従来の打切補償の制度にかえまして長期年金の制度をここで創立するわけでございますが、その際に、先ほども第十九条の三の点で坂本委員からも御指摘があったのでございますが、この打切補償の制度にかえて長期傷病者給付が行なわれる、それは従来の打切補償に見合うという考え方に立っておるわけでございます。そういたしますと、従来の打切補償を労災保険法の上におきまして分割支給をする場合には、六年内に分割補償を支給すると、こういう建前をとっておったわけでございまして、従って、その六年内に分割支給される打切補償費の中には、当然この問題となっております遺族補償も入っておるわけでございます。そこで、今回、この従来の打切補償制度との関連において、その調整を行ないながら、長期傷病者給付制度を打ち立てることになりましたので、従来、観念上、とにかく打切補償の中に含まれておった遺族補償というものを考えた場合に、やはり従来は、六年以内はとにかく遺族補償も含まれておったという建前でございますので、その考え方を踏襲いたしまして、六年以内に限っては長期年金のほかに葬祭料と遺族補償を支給する、こういう建前をとったわけでございます。
○坂本昭君 今のその点は、何べんも議論して、これは水かけ論で、とにかく、三年で打切補償をやるという、世界にもまれな一つのことがある。それはあなたの方はお役所だからこれは守らなければいかぬかもしれないが、こんな非常識な世界じゅうにない法律をいつまでも置いておくということは、わが国の恥ですから、すみやかにこれは直してもらいたい。 さらに、三年で打ち切るということと、打ち切った場合が、大体六年を目安にして金銭的に計算してやる、とにかくこの二つとも私は実に驚くべきごまかしだと思う。労災害の使用者責任という点において何度繰り返しても申します。この点がお説の通りだと言われたら、僕も質問するのをやめてもいいのですが、なかなかその点で納得のいく答弁が得られないので、これは繰り返して同じことを言うことになりますので、はなはだ残念ですけれども、とにかくこの打切補償というものが珍無類のものだということ、こんなものをもってやっている限り、日本の労働行政は絶対に伸びっこない。一つこれは、これこそ打ち切っていだきたい。 あと、まだ次の問題に移って、じん肺の内容について少しお尋ねしていきたいと思います。このじん肺法が、各種の職業病の中で、予防の面、健康管理の面、そういう面でこれがおそらくモデル的なものになっていくだろうと思いますので、私はそういう将来の指導的な大事な法律案として十分これは検討していきたいと思います。ところで一番大事なことは、先ほど来、職業病については使用者責任で補償することが一番大事だが、それよりも大事なことは予防に関することです。ところが、この予防について、この法案の中でだれが予防の推進をやっていくか、あるいは予算的措置はどうであるか、あるいはその予防の指導をやる場合の指導基準はどうか、そういう点を見ていくと、どうも具体的なものがない。これで見ますと、じん肺審議会で予防の推進をしていくようですが、じん肺審議会の構成の実情からいって、予防行政を推進でき得ますか。少なくともじん肺の予防になってくると、労働省とまた通産省と両方の関係になってくるだろうと思う。そうした場合に、じん肺審議会、これは弱体だと初めからきめつけるわけにもいきませんが、政府原案のこの審議会で十分な予防の行政的な推進あるいは指導をとり得る確信がおありですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 粉じんの予防の徹底がきわめて大事なわけでございますが、これは実際の場面といたしましては、労働者にとりましては自分の生命に関する問題でもありますし、従って、これを使用する使用者としては、当然そういったようなおそるべき疾病から労働者を予防する義務があるわけでございます。従って、これは使用者及び労働者がともどもに一緒になってじん肺の予防について努力をしてゆくということが、やはり事柄の性質上これが中心になると考えております。ただ、この行政の面においてはどうかという御質問でございますが、これは行政の面になれば当然政府の責任になるわけでございます。今回のじん肺法案におきましても、そういった意味合いから、特に第四章に政府の援助に関する一章を新たに設けまして、このじん肺法案の施行についての政府のいろいろな努力義務を規定いたした次第でございます。すなわち第三十二条におきましては、「政府は、使用者に対して、粉じんの測定、粉じんの発散の抑制、じん肺健康診断その他じん肺に関する予防及び健康管理に関し、必要な技術的援助を行なうように努めなければならない。」と規定いたしまして、その次の第二項におきましては、「政府は、じん肺の予防に関する技術的研究及び前項の技術的援助を行なうため必要な施設の整備を図らなければならない。」というふうに、技術的な研究、それからその援助を行なうため必要な施設の整備についても政府の義務として課しておるわけでございます。さらに具体的なこういった行政の推進、指導に当たるために、第三十三条におきまして各都道府県の労働基準局及び鉱山保安監督部に粉じん対策指導委員という、これは新しい制度でございますが、こういった委員を設けまして、技術的な援助を行なわせることにいたしたのでございます。このようないろいろな問題があるわけでございますから、政府は一つそういった問題を総合的に取り上げまして、この粉じんの測定なり、あるいは発散の抑制、健康診断というような全般的な問題について、そのための専門の審議機関としてはじん肺の審議会も設けられることになっておりますので、このじん肺審議会の活用等を通じて、政府としては行政面におきまして遺憾なきを期して参りたいと考えておる次第でございます。
○坂本昭君 この中でも特に予防の問題、あるいは粉じんの測定、あるいは発散の抑制についての技術的な問題、非常に研究的な問題が多いだろうと思う。そういう点の研究の責任機関はどこになるのか。また、その予算はどういうふうになるか。少なくとも三十五年度についてどの程度あげられているか、御説明いただきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 第五条におきまして、「使用者及び労働者の義務」といたしまして、「粉じんの発散の抑制、保護兵の使用その他について適切な措置を講ずるように努めなければならない。」しかしながら、各企業における使用者なり労働者がそのような適切な措置を請じていくためには、当然その技術的な問題について、政府がみずから解明いたしまして、そういったものの一般的基準なり、あるいはその保護具等につきましても適正な保護具というものを指定するなり、そういったような、政府がやはり全面的に責任をもってそういった面の指導に当たらなければならないと考えておるわけでございます。そこで、先生も御承知のように、労働省といたしましては、恕限度の設定の問題であるとか、あるいはその粉じんの定期測定の問題であるとか、あるいは粉じんの定期測定するための適当な機械、器具の統一、あるいはそれの普及というような問題につきましては、今回の新たに設けられまするじん肺審議会の中にそれぞれの専門の部会を設けまして研究をお願いする予定にいたしております。 なお、このじん肺審議会のそういった研究、審議と並行いたしまして、実際には労働衛生研究所という機関がございますから、この専門の機関におきましてもそういった専門的、技術的な研究を推進いたしまして、両者あわせてこの予防の徹底を期して参りたいというふうに考えているわけでございます。 なお、その予算の面でございますが、今回のじん肺法案の施行の経費といたしましては、一般会計、特別会計を含めまして、二千万余の予算が計上されているわけでございます。
○坂本昭君 今の一般予算、特別会計の予算、これはどういうふうになっているのですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 一般会計におきましては、けい肺審議会の経費といたしましては三十九万九千円、じん肺法の普及費といたしまして十八万七千円、それから粉じん対策指導官の設置、これは現在地方に配置されております定員の級別を新たに設けまして、これは定員内の操作でございますので、予算には関係ないわけでございます。それから労災の特別会計におきまして、けい肺の症状決定費としまして二百四十九万円、けい肺患者の勤労保護費といたしまして三百十八万九千円、これはけい肺患者の就労保護費でございます。宿舎を作りまして、ここに就労者を収容するという経費でございますが、このための経費としまして三百十八万九千円、それからけい肺健康診断結果資料の整備費といたしまして六十五万二千円、そのほかにこの労災特別会計の業務取扱費の中に一千四十七万九千円の事務費が計上されておるわけでございますが、その内訳は、粉じん対策指導委員、これは非常勤でございますが、これの設置費としまして三百四十五万六千円、じん肺管理区分決定費としまして七百二万三千円、それから同じく労災特別会計の保健施設費としまして、じん肺の予防対策費、これは粉じん測定器具の整備でございますが、全体で四百十三万九千円、こういう内訳になっております。
○坂本昭君 どうも非常に予算の内容がお粗末で、こういうことではせっかくでき上がった職業病対策としてのこの大事なじん肺法がどこまで確実に実施されるか、はなはだ心もとない。まあ再来年度についてはわれわれもこの職業病を皆様方がはっきりと確定せられて、そしてこれを労働省の災害の補償の大事な問題として推進していかれる限りにおいて、われわれももっともっと応援をいたしたいと思います。そこで何もかも粉じんの抑制目標や恕限度についても、現在何も法定されていませんですね。ですから、それらのものは労働衛生研究所を通して、あるいはこの審議会を通して作られていくだろうと思うんですが、そうした場合の恕限度の決定や粉じん抑制の目標、さらに指導委員の指導の基準、こういったものはいつごろお作りになりますか。
○政府委員(澁谷直藏君) この点につきましては、かねてから労働省としましても研究はいたしておるわけでございますが、何分恕限度の問題にいたしましても、作業の内容なり、作業の工程、それからその作業勘の構造等によりまして非常にその内容が異なっておるわけでございます。従いまして、そういった現実にいろいろの内容の異なった事業所について適正な恕限度というものを定めていくということになりますると、これはやはり事柄の性質上あくまでも科学的なものを基礎として定めなければならない問題でもございますので、これは相当一統等につきましても慎重を期さなければならない。そういったような事情もございまして、いつまでとここではっきりと申しあげることができないのははなはだ遺憾でございますけれども、私どもは今回新たにじん肺法案という新しい単行法が施行になって、じん肺の予防、健康管理の徹底を期そう、こういう意気込みで新しい法案がこれは実施されるわけでございますので、私どものとにかく総力をあげましてできるだけ早期に適正な恕限度の設定なり、さらに進んでじん肺の定期測定というようなところまでできるだけ早い機会に全国的な実施を見るように努力して参りたいと考えております。
○坂本昭君 従来も石炭鉱山の保安問題の中で、やはりこういう粉じんの問題あたりが扱われてきておる。しかし、そういう点の扱いについて十分な基準や、あるいは研究の結果というものが得られないためにきわめて不十分な結果に相なっているわけであります。従って、今回皆さん方がおやりになるについてはいろいろな困難もおありだろうと思いますが、特に一番予防の出発点として大事な粉じん発散の状態を管理する義務制度、もう少しこれはやかましく義務制度を作るべきではなかったかと思う。今度は作っていませんが、なぜお作りにならなかったか。また、作らないとすれば、行政指導の面においてどういうふうになされるおつもりか。その点を伺っておきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) このじん肺の予防の徹底を期するためには、当然じん肺の発生を抑制することがまず第一番の基本になるわけでございます。 その次の措置といたしましては、発生した粉じんをできるだけすみやかに除去する。こういった措置がそれに次いで必要なわけでございます。しかしながら、どうしてもこれは作業の性質上、徹底的に粉じんの発生を絶対的に抑制するというようなことは、実際問題としては非常に困難なわけでございますから、そういった場合は、ある程度の粉じんが発生しても、これを実際そこで働く労働片が吸い込まない、吸引しないといったような保護具、非常に正確といいますか、精巧な保護具というものを発見いたしまして、これを装着させるというふうな措置が必要になってくるわけでございます。従いまして、私どもは、でき得るならばそういった問題についても、法律上はっきりと書いて規制できるならばそれが望ましいわけでございますけれども、これは先生も御承知のように、粉じんの発生を抑制する、あるいは発生した粉じんを一カ所に集めて、これをすみやかに除去するというようなことは、この作業の工程なり内容なりに非常に大きな影響を持つわけでございます。従って、この基準法の適用事業所というものは、御承知のように、大企業から小さな企業まで全部画一的にこれが適用をしておるわけでございますから、そういったような企業の現状からしまして、そういった非常に大きな経済的な影響を与えるようなものを一挙に法律によって画一的に強制するというようなことは、実際問題として適当ではないのではないか。従いまして、私どもといたしましては、そういったような問題について、できるだけ現実にマッチするような基準を作りまして、そうして行政指導を通じてそういった方向に前進するように指導をして参りたいと考えておるわけでございます。
○高野一夫君 今のお話で、粉じんの発生する工場で、粉じんの発生を抑制するが、粉じんを吸わないような状態に、工場のいろいろな機能、設備、構造等を改正する方法、これは実際問題として大企業においてもむずかしいし、中小企業においてはなおさらむずかしいことだと思う。それよりも、川崎の労働衛生研究所で国費をかけて研究した結果、粉じんを防護する、粉じんを吸入しなくてもいいような優秀なるマスクができたことを御承知ですか。すでに特許もとられて試作中、そうすると、ほとんど不可能に近いような抑制法を工場に講じさせるよりも、それを吸入しなくてもいいような優秀なるマスクができたのならば、しかも国費をもって研究したマスク、それに対してどういうふうに利用普及させるかということについて何らか労働省として、行政措置でも何でもいいが、すでに成案はできているはずだと思うが、それについて何か対策を講じておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 精巧な防じんマスクが発見されてこれの使用が普及されれば、このじん肺の予防に一番適切な効果があるわけでございます。私は先般、労働衛生研究所の山口所長から、労働衛生研究所において相当まあ自身の持てる防じんマスクが大体、研究の結果でき上がりつつあるという報告を受けております。従いまして、私どもは、この法律の施行を契機にいたしまして、そういった適切な、精巧な防じんマスクができ上がるわけでございますから、これを一つ全国にあります労働基準局の機関を通じて、すみやかにこれが普及するように努力をして参りたいと考えております。
○高野一夫君 山口所長から研究の結果、成案の結果お聞きになることはけっこうだが、現在あそこの研究所で粉じんの実際発生する状況等についての実験をやっているし、マスクの実験もやっているが、その行政事務に当たられるあなた方がその研究所に行かれて、その研究、実験の実態をごらんになりましたか、これ一つ伺いたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 私は今年の一月に基準局長を拝命いたしまして、その後この大きな二つの法案を担当いたしたような事情もございまして、未だ労働衛生研究所を詳細に見学する機会を持っておりません。
○高野一夫君 私どもは、こういうような政府提案のじん肺法案がかかると思ったから、参議院の社労委員会では、わざわざ川崎まで出かけて行って、忙しい中に労働衛生研究所をつぶさにみんな調べて回った、与野党一緒に。そしてわれわれは、この審議に臨んでいる。与党であるからわれわれは時間を節約するために質問を控えているけれども、坂本委員の質問に対するあなたの考え方を聞いていると、実に迂遠な答弁がある。工場の対策を粉じんの発生しないような対策を講じさせたい、こんなことができるわけがないじゃないですか。現在十年や五年の間において、粉じんが出るような工場の実際を見て、大工場においても中小企業においてもなおそれはできない。それならばせめて出る粉じんを吸入しなくてもいいような、国費を使って研究されて、パテントをとった防じんマスク、それをそういうような実験くらいは、幾ら実験の専門家でなくても、こういうような法案を立案して、そしてこの法案が国会を通過したならば、この法案に従って仕事をしなければならぬ行政の責任者が、現場を見てどの程度粉じんを吸入しなくても済むものかどうか、あなたは実際にごらんになるべきだと思う。そしてこの委員会に政府委員として臨むべきである。これくらいの準備がなければおかしいですよ。それはおそくてもいいから速急にごらんになって、そうしてそういうマスクが少なくとも現段階においては防じんのマスクとしては最上のものだとわれわれが学問的に思う。それならばこの法律の精神に従って、そのマスクの使用者が、労働者側にどういうふうにしてこれを普及せしめるかという対策くらいはすでにパテントを取る前から対策ができていなければならぬ。労働省にまた率直に申し上げるが、労働省は事務的だけでなく、その事務に必要なるそういう実情を国費をかけて労働省の研究所、そういうところも、ただ実験に当たった人たち、学者の方が労働省に出て来て、その報告を聞くというそんなのんびりした仕方でなくして、みずからが出かけて現場を見て、そうしてその実際を観察する、そうしていろいろなこういう法律の審議にも当たるわれわれの説明にもするというような腹組み、努力が必要である。今まではやむを得ないから今後はそうするかしないか、そうすべきであるというならそれを一つ……。
○政府委員(澁谷直藏君) 私も担当の責任局長といたしまして、労働衛生研究所をまだ実地に見ておらないという点はまことに遺憾でございまして、私はできるだけすみやかな機会に、これは衛生研究所に参りまして、そういった研究の実態等も一つ勉強して参りたいと考えております。なお、この衛研で考案されました防じんマスクにつきましては、なるべく近い機会にJISの検定を受けるように、そういった措置をとりたいと考えます。
○藤田藤太郎君 私もさっきから坂本君の質問があるから遠慮しておったのだが、基準局長に私はこういうことを聞きたいのです。 炭鉱でガスが爆発したら石炭の山がつぶれるという所でも、制限の何倍もガスがあるのに作業をさすというのが今日の現状ですよ。そういうこと御存じですか。そういうことを御存じであれば、私はやっぱり監督官を鉱山保安法との関係でやるというけれども、粉じんなら山はつぶれるわけじゃないのだから、そういう面から言ってもよほどきつい罰則を、私も見てみたのですが非常にラフな、法律に書いておいたら何でも予防できますよというような感じが貫かれておるように思うので非常に私は残念だと思っておるのです。だから、私はもう少し実の入った答弁をしなければいかぬじゃないか、今の高野委員のような発言が出てくるのもやはりそういうところに原因していると思うがどうですか、それは。要するに、私の言っているのは、先日の夕張炭鉱が爆発したのは、法律できめられた指定のガスの二倍、三倍という格好でガスが爆発した。爆発したら山はほとんどつぶれるのですから、石炭山が。そういうところでも作業をして作業能率さえ上がれば、万が一助かればというようなことで事業が行なわれておるわけです、今までのガス爆発の例から言いますと。全部とは言いませんけれども、それに粉じんというようなことでしたら今度政府がほとんど補償するのですけれども、そういう状態であれば山がつぶれるような影響はないのだから、たとえば鉱山における処置というようなものはよほど腹をきめてやらなければこれは予防措置はできない、こう思っておる。非常にあなたはラフな答弁をされて、法律ができたら何でもできるような感じを持っておられるから、それはどうかと思いますから、どう具体的にやっていくかということをもう一度はっきり言ってほしいと思います。
○政府委員(澁谷直藏君) 法律ができましたならば、その法律の施行によってすべて簡単にでき上がるというふうに私は考えておりません。やはりいろいろなこれを実施するにつきましてもその事柄が重要であればあるほど、それを実際に受け入れて消化していく力が、事業所なりあるいは労働者の受け入れ態勢がはたしてそこまでいっているかどうかというような点も十分これは検討しなければならないわけでございます。そこで私どもとしましては、先ほどから申し上げておりますように、このじん肺審議会あるいは労働衛生研究所等を通じまして適正な恕限度の設定あるいはこれの計器測定というような方向にできるだけすみやかに実行できるように一つ努力して参りたいというふうに考えておるわけでございます。
○坂本昭君 藤田委員が言っているのは、たとえば夕張の炭鉱の爆発の問題のときにも私たちは現地に行ったのですよ。あなたたちよりもわれわれの方がもっと知っているかもしれない。労働衛生研究所も見ているし、夕張の炭鉱も見ているし、夕張炭鉱の爆発のときには、あの爆発のメタンガスの測定の結果も、二、三日のところですけれども、全部めくって見ましたよ。見ましたら、五%、六%ということが書いてある。書いてあって、これは労働省の監督官が見なければならないことであるけれども、同時に、労働基準監督官もこれはやはり点検をしておらなければならないわけなんです。そういう点が今でさえも不十分だ。それが今度のじん肺法では、労働基準監督官もこの法律を施行するために粉じん作業を行なう場所に立ち入っていろいろと検査をするということになっておる。そうしてまた、同じように、先ほどあなたの説明にも、粉じん対策指導委員というものもある。この粉じん対策指導委員は十八名ですか、きわめてわずかなものですからね。このきわめてわずかなものと、それから現在ある労働基準監督官、これは炭鉱の爆発のことについてもぼやぼやしておるとは言いませんけれども、どこまで徹底してやっておるか。そういうような行政の実態の中で今度こういう法律を作ったところで一体何ができるか。たった十八名の者で何ができるか、しかも今の恕限度もない、いろいろな基準もできていない、そういうことではだめじゃないのか、だから、もう少しあなたの方では行政に練達をしてもっと、しっかりしてもらわないというと、こんなものができても、ただ絵にかいたもちになってしまいはしないか。われわれがきょうの午後からいろいろな議論をしながら、どうも一応返事にはなる、なるけれども、通ってしまえばこれでいいのだというような気持で御返事になっているんじゃないか、だものだから、良心的な高野委員などのごときは、少しおこられて、ハッパをかけておられるのじゃないかと思うのです。だから、もう少しそういう点について、これは何も法律一つの審議だけがわれわれ能じゃないのです。やはりこれを通して、行政の末端まであなた方が熱心にやっておられるかどうか、そういう気持を聞きながら質問をしておるわけです。いま一つ、この労働基準監督官と粉じん対策指導委員との関連ですね、こういうのをどういうふうに調整していくか、お答えいただきたい。
○政府委員(澁谷直藏君) 粉じん対策指導委員は非常勤の委員でございまして、この第三十三条にも書いてございますように、使用者が行なうじん肺の予防に関する措置について、必要な技術的な援助を行なうことを任務とするわけでございます。従いまして、これらの指導委員は衛生工学に関して学識経験のある者のうちから労働大臣または通産大臣が任命する、こういうふうになっておりまして、従いまして、この粉じん対策指導委員は一般の監督官では持ち得ない衛生工学等について専門的な学識経験を持っておる者から任命いたしまして、主としてそういった専門的な、技術的な援助を行なわせる、こういうふうに考えております。これに対しまして一般の監督官は、そういった専門的な知識を持っておるわけではございませんので、これはあくまでも労働基準法なり安全衛生規則、さらにはじん肺法の一般的な施行、その監督指導という面で監督官がその任に当たるわけでございますが、もちろんこの粉じん対策指導委員と監督官とは、いわば何と申しますか、車の両輪のような形で、両者がお互いに密接な連係をもって、実際の行政の指導に当たるように運用をして参りたいと考えております。
○坂本昭君 前の特別法の場合には、粉じん作業の定義が別表に掲げられておりますが、今度は、作業の定義については、省令にゆだねられることになっておりますが、その省令の内容はまだできておりませんか。また、そういうふうな扱いをされた理由はどういうわけですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 粉じん作業の定義につきましては、第二条におきまして労働者がじん肺にかかるおそれがあると認められる作業が粉じん作業である、こういうふうに定義をしておりまして、その「粉じん作業の範囲は、労働省令で定める。」こういうことになっておるわけでございます。従来は、御指摘のように、別表の第一と第二でこのけい肺の粉じん作業を定めておったわけでございますが、今回は、従来のけい肺に加えまして、その対象がじん肺という工合に拡大されたわけでございます。従いまして、今回のじん肺法案による粉じん作業の範囲というものは、当然、従来の特別保護法の別表よりはその範囲が拡大されるわけでございまして、私どもは現在その作業を急いでおります。大体、一応の結論ができておりまして、私は今ここに持っておりますが、さらにもう少し最終的な検討を加えて、近く省令ではっきりときめたい。こういうふうに考えております。
○坂本昭君 次に、じん肺の健康管理のことに関係して少しお尋ねしたいのですが、今度の、このたとえばエックス線写真の像の分析とか管理区分の内容とか、きわめて高度に医学的にかつ科学的にちょっとこの点だけはよくでき過ぎているという感じがせざるを得ないのです。が、この点はこれでまあけっこうですが、管理の面において合併症としての肺炎の問題、これはどういうふうな取り扱いをしていかれるおつもりですか。
○説明員(加藤光徳君) 肺炎につきましては、けい肺と直接関係があるということはまだ明らかになっておりませんので、その点については、まだこの際研究の余地があるので、直ちに業務上の疾病としては扱わない、こういうことになっております。ただ、医学部会では、死の原因になるときに、肺炎が死の原因になっているというような事例もあるから、それはケース・バイ・ケースとして考えていく余地があるのじゃないかというような医学部会の答申でございます。
○坂本昭君 私はその医学部会の答申はきわめて大事であって、特に肺炎の場合に一番困るのは、普通臨症的にも呼吸困難が起こってくると肺活量が非常に減少してくる。そもそも肺活量の減少しているじん肺の場合ですから、これは扱い方については合併症として結核のみではなくて、この肺炎のことについても私は十分慎重に同じように公平に扱っていただきたいということを特に希望しておきます。 それからなお、粉じん職場に働いている人たちの肺結核の業務上の扱いですね。これは国際的には相当その肺結核の因果性については業務的であるという見解が強くなってきていると思うのです。しかし、皆さんの方ではどういう御見解でございますか。
○説明員(加藤光徳君) 粉じん作業におきまする結核について少なくともけい肺と診断されるものの結核につきましては、それはもちろん業務上の疾病として考えることができますので、ただ、そういうふうなレントゲンの上におきまするじん肺の像を呈しないものにつきましては、現在のところ、直ちにその因果関係というものを明らかにすることはてきませんので、その点は業務外と一応考えられるのではないかと思っております。
○坂本昭君 さらに専門的になってきますけれども、それらの点について若干皆さんの方では調べておられますか。たとえば管理区分の二とか三とかというところにきてない、まあせめて管理一程度ですね。一程度のものの中で、特にそういう粉じん職場に結核の発生度が高いと、そういうふうなような結果というものはとっておられますか。
○説明員(加藤光徳君) 全体通じての問題でございますが、粉じん作業におきまする結核の合併率というものについて、例型のないもの、全然ないというものについても資料がございませんが、一型についても一般の公衆衛生におきまする結核の感染率とは非常に似ております。ただ、二型、三型のような高度のもの、中等度、高度のものにつきましては合併率が高くなっております。これは公衆衛生一般のものに比べまして有意の差があるという程度でございまして、その点については相当の因果関係は認めるべきであろうという考え方でございます。
○坂本昭君 そうすると、管理一の区分程度には、有意義な差というものは認められない。だから、その範囲内においては業務上とする、まあ因果性についてですね、積極的に指示をするわけにはいかぬと、そういうことなんですね。
○説明員(加藤光徳君) 管理一の中に全然けい肺と診断されない例が入っております、管理一の中には。ところが、管理一の中には同時に一型、二型が入っておりますから、一型プラス結核というものは業務上の疾病と見ておりますので、先生のお考えになっておるのは大体とっているのじゃないかと思いますが……。
○坂本昭君 それから、今のこの管理の一、二、三のところに出てくる問題に、「心肺機能の障害」という点が非常に出てきます。で、この「心肺機能の障害」の基準ですね。せっかくここにレントゲンの像などについてこまかい点を書いておられるのだけれども、それと密接な関係があって、この管理区分の決定に決定的な影響のある心肺機能の障害、これの説明がどこにもないようですが、これは管理区分をきめる場合に非情に大事な点であるし、せめてどこかに書いてもらいたいのですが、これはどこに基準をお示しになるつもりですか。
○説明員(加藤光徳君) 心肺機能につきましては、規則の方で心肺機能の検査の方式を定めまして、通牒によりまして数値を定める。その検査の内容につきましては、現在心肺機能研究班におきまして研究をいたしまして、今やっと間に合うというところまで研究いたしておりますので、その方面で明らかに数値を出すことにいたしております。
○坂本昭君 前には、重い物を持って、それで持ち上げてあとの脈搏だとか呼吸とかいうものを検査の対象にしておられましたが、ああいうような検査方式からさらに少し進んだ方式をお選びになるのですか、どうなんですか。
○説明員(加藤光徳君) 今御指摘になりましたような重要物挙上法というようなものを用いておりましたが、今度のは、最大換気量を測定します検査と、それから運動指数をとっていくべきであろうというので、運動指数を用いました。それからレスピロメーターにおきまする換気機能の形と、換気指数をはかっていくというような方法で決定をいたしますれば、現在の心肺機能検査の内応といたしましては、最高とまで申しませんが、相当線密なものを調べることができますし、同時に、それによって、従来重量物挙上法等では出なかったりするものもこれで救うことができるのではないか。また、レスピロメーター、オキシメーターというようなもので検査いたしましたものを参考にして作り上げていくという考え方で、大体その方面の仕事のものを網羅したものでいくという考え方でいたしたいと思います。
○坂本昭君 心肺の健康診断の実施回数について、これは前の、今野博士でしたか、専門家の……権威者が健康診断の実施回数について、前の特別措置法の場合にもやはり問題点があったと思うのですが、今度の場合にも、これは症状管理の立場がおもになって実施回数が定められておって、職場の環境条件という要素が比較的考慮されていないように思いますが、その点はいかがですか。
○説明員(加藤光徳君) 職場の環境の問題につきましては、当然御指摘になりますような問題があると思いますが、これを定めることが非常に困難でありまするし、かつまた、それを、やるという場合も、先ほどの測定の問題もございますし、あるいは粉じんの性質の問題がございますので、一律にやることはできませんので、建前といたしましては、ここに示しましたような、三年、一年、一年というようなやり方で、まず規定する以外に方法はないだろうというので、こういうような検査の回数を設けたわけでございます。
○坂本昭君 この管理区分四に該当した者の療養についてですけれども、これは要休業を意味しているかどうかということでございます。非休業で療養するということも私はあり得ると思う。これについてはどういうふうな御見解を持っておられますか。
○説明員(加藤光徳君) これにつきましては、一応全体としての、総体としての考え方は、休業をしておる者の要療養というものが主体になると思いますが、医学部会の答申の中にも、休業をしない者に対する療養も認むべきであるというような考え方になっておりますので、両方とも取り扱うべきであるということでございます。
○坂本昭君 そうするとあれですね、非休業で療養もあるということなんですね。
○説明員(加藤光徳君) 非療養でそういうものがあり得る型が非常に少ない例においてだけで、あとはそういう程度のものは大体休養をいたして療養をするというのが原則だろうということでございます。
○坂本昭君 管理区分のこの一の中に、先ほどあなたのお話もあった通り、第一型、第二型のじん肺にかかっている程度のものがありますね。この程度のものについても、少なくとも年一回の健康診断、じん肺健康診断が必要ではないかと思いますが、こういうものの規定がされていませんが、これはなぜ実施しないのですか。
○説明員(加藤光徳君) 管理一に入っております一型、二型のものでほかの症状のないものというものについての三年に一回というものを規定をいたしたものでございますが、それは主として従来の検査の結果からいたしますると、一型になりまするものについても大体十五年が平均でございます。従いまして、非常にまれな例ではありまするが、五年くらいで一型になるものもございます。従って、三年に一回という程度でそれをやって参りまして、けい肺の進行をそれで見ることができるということでございますので、一型、二型につきましてほかの症状のないものというものについては、これて間に合う。これは最低の線でございますが、これによって症状の悪化というものを追って参りますに不十分ではないという考え方で、三年に一回という線をとったわけでございます。
○坂本昭君 今度は粉じん職場を離職したじん肺にかかっている者ですね、そういう人、もちろん作業転換で企業内で変わった人については、これは健康診断が定則的に認められていますけれども、粉じん職場を離職した場合の健康診断を定期的にする必要が私はあると思うのですが、これはこの規定がないのですが、これはどういうふうにしていたしますか。
○説明員(加藤光徳君) 粉じん職場を離れますと、その場合には、大体多くの場合におきましては、けい肺の型の進行というものはまずとまると考えられる、第一型の度合いにおきましてとまると思います。ただ、そのほかに問題になりますのは、結核との合併でございます。結核との合併のときの問題に至りましては、基準法に基づく健康診断がやられますので、そのときに、前にけい肺をもっていた者につきまして、基準法によります結核の健康診断がありました場合に、直ちに結核が存在すると認められた場合におきましては、直ちにじん肺健康診断に回して、申請の道を開いてあります。
○坂本昭君 この管理区分が変更になった場合ですね。管理区分で四であった者が三になり、再び四に該当するような症状を示した、そういうような場合はこの補償措置はどういうふうになってきますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 補償の面から申しますると、管理一から管理三の範囲内のものは、実際の医療上の医療措置を必要としないというふうにされているわけでございます。従いまして管理一から三のものについては、補償の面からは、いわゆる補償の問題は起きてこない。そこで、管理四になって療養を受けておった者が管理三あるいは管理四になったという場合補償の措置は打ち切られるわけでございます。しかし、その後また管理四になった、療養を必要とするようになったということになればまた補償が開始される、こういうことになるわけでございます。
○坂本昭君 今後はまたこういう例も多くなってくると思うんですが、じん肺結核にかかって療養しておった者が、これは主として化学療法だと思いますが、場合によれば外科療法、こういうものの結果、復職可能になった場合、そういう場合の取り扱いの基準ですね、これはどういうふうに考慮されておりますか。
○説明員(加藤光徳君) 医学的な面からいたしますと、この管理区分の一、二、三、四の中に該当するかしないかの判断でございます。それで、今まで四でありましたものが、たとえば結核が完全に非活動性になったということになりますると、管理一なり三に持って参りますから、そういう点はこの区分の中に一応入ってくることになります。
○坂本昭君 さっきの解雇制限の問題なんかこれにちょっと関連してくると思うのですが、昔はじん肺で療養したら再び職場に帰るというようなことは私は考えられなかったと思う。ところが、今後は、医学の進歩に伴ってそういう場合があり得ると思う。そういう人はよその職場には私はとうてい受け入れてもらえる可能性はないと思います。で、そうした人の受け入れの問題について、これはやはりたくさんのこの職業病、労務災害で悩んでおる人たちの希望の問題として御考慮いただきたい、それらの点についてはいかがですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 従来の実績によりますと、けい肺にかかって、その三年以内に病気がなおったというような者は、大体大部分の者が元の職場に復帰いたしております。ただ問題は、この療養開始後三年を経過して、労働基準法上の解雇制限の適用がはずされまして解雇されたと、それで雇用関係が一たん切れた後に病気がなおって、そこで元の職場に復帰できるかどうかという御質問だと思います。これはもちろんそういった労働者が病気が治癒した後に元の職場に帰れるということは最も望ましいわけでございますけれども、とにかく一たん雇用関係が切れておりますために、それをまた法律によって元の職場に復帰させるということを規定することは、ただいまの段階としてはなかなか困難があるわけでございます。しかしながら、これはあくまでも法律だけの問題ではございませんので、それは労働協約等によりまして、そういった場合は元の職場に復帰させるというようなことを、労働協約で規定するということも望ましいわけでございまするし、また、私どもの行政指導の面におきましても、とにかく病気がなおって、労働能力が回復したと思われるような労働者については、できるだけ元の職場におきましても、あたたかい気持で受け入れてもらうように、行政指導の面におきましても私どもはそういった努力をして参りたいというふうに考えているわけでございます。
○坂本昭君 これはけい肺の患者さんだけの問題でなくて将来あらゆる種類の職業病の場合に起こってくると思う。ことに私たちは打切補償というような、こういう非人情な行き方については、徹底的に反対の気持を持っているのですが、今の段階では皆さん方の方では、解雇制限の延長もなかなか認めないし、非常に困った段階にある。それでそういった職業病にかかった人たちは、まずほかのところでは受け入れてくれないですよ。だから、当然労務災害の原理から言えば、使用者責任として、場合によれば死ぬまで見て上げる、なおったときには、なおったところで、またあと労働能力があれば、その職場で見て上げる、そういう行き方を、今日この法律で定めることができないとしても、一つ行政指導の面においては、積極的にやっていただきたい。特に三年間ということでは、今までそのまま職場へ戻っていった人が多いということは、まことにけっこうなことなんですが、実は不幸な人は、三年以後のところに出てくるのです。で、その点は特に積極的な行政指導をお願いいたしておきたい。 それからなお、作業転換の問題ですが、作業転換の勧告をする場合、もちろんそれに応ずるかどうかということは、その当人の問題になってきますけれども、しかし、やはり職場を新しくする、いろいろな点からこれはその労働者の所属する組合とも協議をしていかなければならない性質のものだと思います。で、この点はどういうふうに考えておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) その点は御指摘の通り、この第二十一条の規定によります作業転換の勧告をされた場合に、当該労働者にとりましては非常に大きな影響のある問題でございますので、この作業の転換措置をやる場合は、必ず当該労働者の意見を中心に、十分使用者と話し合いをしてこの態度をきめていく。その場合は実際問題として過去の例を見ましても、当該労働基準監督署の署長なりあるいは監督官がその現地に行きまして、使用者と労働者それから当該の労働者の関係しておる労働組合等も入りまして、関係者が一堂に会して十分その点を話し合った上で措置して参っておりまするし、今後もまたそのようにして参りたい。
○坂本昭君 特に作業転換に伴う補償の問題であります。転換手当は三十日分に相当する手当が支払われなければならないことになっておりますが、従来までの実績では、著しく生活条件が切り下げられてきておる。で、私の聞いたところでは、従来は最低四四・五%の賃金引き下げ、平均して三〇%程度は賃金が引き下がっているという、特にこのことは一九五〇年の国際じん肺専門家会議でも重視されて、生活条件を引き下げないように特に考慮すべきであるという点が指摘されております。従って私は、この三十日という金額そのものがきわめて足りないと思うし、さらに労務災害のこの使用主責任の点からいっても、これに対してもっと積極的なこの労働者保護の施策がとられるべきではないかと思う。この点いかがですか。
○国務大臣(松野頼三君) 先ほど基準局長がお答えしましたような手はずの中に、当然基準局の勧告と、それから当該労働者、会社との話し合いのときに、やはり賃金状況というものもその議論の中に入れて作業転換というものを円満にいたしませんと、賃金が非常に下がった条件を強制するということは、その作業転換を困難ならしめることになる。従って、やはりこういう病気という状況でございますから、労使ともに、また基準局も入りまして、この問題は、転換しやすいように勧告するというのが法の趣旨、その中にはやはり賃金とか職場というものもその具体的な相談の中に入れるべきだろう、私たちはこう考えております。
○坂本昭君 じん肺診査医というのが三十九条にあがっておりますが、一体このじん肺診査医というものは何人ぐらいおると計算しておられますか。実際に仕事ができると……。この法律を動かすだけのじん肺診査医がおるといいふうにお考えになっておられますか。
○説明員(加藤光徳君) 前にけい肺法ができしましたときに、日本におきましては、それを読めるのはわずか二十人程度でございまして、従って、その五年間の間に、だんだんとその方面の協力をいただきましたり、あるいは講習会を開きましたり、打合会を開きまして、現在七十八程度の方々に御協力を願って、各府県に配置されております。従って、この人たちと、あるいは労災病院の方でも勉強して参っておりますので、そういう方々によってじん肺診査医の各府県の配置をいたしたいと思っております。
○坂本昭君 その労災病院のお医者さんが実はだいぶ閉口しているんですよ、大臣。労災病院のお医者さんたちは、低賃金で、建物だけは労災病院というのはいいんですけれども、この間も実は私たち見に行きまして、隣の労働衛生研究所の——大臣は労働衛生研究所、それから労災病院に行かれたことありますか。
○国務大臣(松野頼三君) 私は大分前に行ったことがございます。最近は行ったことございません。
○坂本昭君 それじゃ大臣は行ったことがあるというので了解いたしましょう。実は労災病院におられる医師自身万、このじん肺検査医としての何というか、指令を受けてやらなくちゃならぬだろうと思う。ところが、実際は数も少ないでしょう、なかなか大へんで悲鳴をあげておるんですよ。ですから、あなたは、今最初に二十人くらいが七十人くらいになってきたと言っておられますけれども、中で働いている専門家の人が悲鳴をあげているということを、よく御承知の上でおられないと、なかなか行政がはかどりません。それからこれからいろいろと病を研究もされなければならないと思いますが、この鬼怒川に有名な病院がありますね、あの病院が中央研究所としての格好をとられていることは非常にいいんですが、こういう大事な病院、研究機関に、なぜ独立採算制をとっていかれるか。これは労働福祉事業団の仕事になりますが、これは同時に、労働省のいわば監督下にありますので、なぜこういう大事な研究病院機関に独立採算制をとらしておるか、これらは、これこそ国が研究について私は負担をすべきではないかと思う。これは専門の方並びに大臣からも説明をいただきたい。
○国務大臣(松野頼三君) 必ずしも独立採算と言いましても、一応の独立採算であって、これはすべての国立病院でも、大体同じように一応独立採算の形式をとっております。しかし、赤字が出たから知らないぞ、そういうことではありません。一応どの病院でも、いわゆる管理を合理化すると申しますか、むだ使いをさせないという意味で一応の独立採算をやっております。赤字が出たから知らぬぞ、これはそういう意味じゃございません。これは大体すべての日本の、日本というとおかしいですが、すべての病院が一応そういう形をとって、経理上一つの基準を出すという意味で赤字が出たからいけない、そういう意味じゃありません。これはいわゆる病院というものの形式の問題であろうと私は考えております。
○坂本昭君 それは病院のことについては、私の方がもっと専門家なんですがね。しかし、日本の国の病院がどこもそうだから、だからこの大事な職業病の研究病院である鬼怒川の病院についても、それでよろしいというそんな理屈はないのです。むしろ私は、国立病院についても独立採算制は、はなはだけしからぬと思っているのです。その独立採算制になってから、国立病院の任務というのは失われてきました。もう一般の病院と競争しているのです。競争なんかしておったのでは、国立病院の使命は果たされない。少なくともこの労災病院、特に鬼怒川のこういう病院については、研究機関としての任務を果たさせるために、独立採算制をやめてもらいたいのです。これは独立採算制にすると、どうしても事務長さんは一生懸命もうけなければいかぬし、お医者さんの方もそれに応じてかせがなければいかぬということになって、ほんとうの研究がおろそかになる。これは私の方が専門家ですから、大臣の今のような言葉ではいけませんので、これは特にこの際じん肺法が成立するとともに、成立するかどうかわからぬけれども、これに伴って御研究をしていただきたい。なお、これから大事な問題は、いわゆるリーアビリテーションですが、職業訓練、これが療養の範囲の中に入ってくるかということ、実は今までの保護法、措置法では給付の内容に入っておったのですね。範囲に入っておったのでよかったのですが、今度のこの法案ではリーアビリテーションが療養の範囲に入るかどうか、はっきりしてない。入るかどうかということと、それからその基準ですね。どの程度のものまでがリーアビリテーションとして入るか、その御説明をいただきたい。
○説明員(村上茂利君) リーアビリテーションにつきましては、最近だんだん医学的な面から研究が進んでおるようでございますが、そのリーアビリテーションとしての施設の規模、あるいはそこで働きますところの指導員の養成等いろいろ技術的な問題がございます。わが国でもあまり発達していない部分だというふうに伺っておりますが、そこで、労働省といたしましては、特に労災患者につきましては、リーアビリテーションが非常に重要でございますので、小倉にございます九州労災病院と、それからただいまお話がございました鬼怒川のけい肺病院に試験的にリーアビリテーションの施設を設置すべく、三十四年度の予算で所要経費を計上したような次第でございますが、それらの施設の運用を今後適切にして参りたいと思っておりますが、ただ御指摘のそのリーアビリテーションの施設を利用する場合に、それを療養の一環と見るべきか、あるいは特に労災保険におきましては、保険施設の利用という面がございますが、保険施設の利用という角度から見るべきかという点につきましては、いろいろ考え方がございます。この点につきましては、実際そのリーアビリテーションの施設を運営いたしますところの労働福祉事業団と目下研究をいたしております。しかしながら、基本的な考えは、大体従来通りの考え方で処置して参りたいと、かように考えております。なお、御承知と思いますが、広い意味のリーアビリテーション施設の中には、物理療法的なものもございます。職能回復的なものもございます。その物理療法的なものにつきましては、従来におきましても、これは療養の一部として扱っておったわけでございますが、そういった点につきましては、従来と同様に扱うことになろうかと存じます。
○坂本昭君 今の鬼怒川の病院などで、これからいろいろと御検討してもらわなければいけない点ですが、長期療養者が障害補償に移る場合の診断でございますが、脊損の場合などは比較的できると思いますが、じん肺の場合にどういう標準で障害補償に移行する診断をつけられるか、そういう基準は何かお考えになっておられるかということと、それからもう一つは、けい肺初めじん肺の方が職場復帰する問題ですが、先ほどちょっと申し上げましたから、この点は省略いたします。最初の点ですね、障害補償の診断の点、それについて御説明いただきたい。
○説明員(村上茂利君) 御質問の冒頭のお言葉は、長期傷病者補償に移行する場合……。
○坂本昭君 いやいや、障害補償ですね。つまり、症状が固定して、それでもう療養じゃなくて、障害の補償の方をもらう場合、そのときの診断の基準ですね。じん肺の場合です。
○説明員(村上茂利君) これは先生御承知の通りと存じますが、障害補償は、当該負傷、疾病がなおったときの障害の程度に応じまして障害補償を行なうわけでございます。ところが、けい肺におきましては、そのなおったという症状固定の状態を把握することが医学的になかなか困難でございますので、そのなおったという状態を医学的にどう把握するかという問題についての困難性がございます。ただ、しかし、肺葉切除その他手術を行ないまして、肋骨とかその他いわゆる器質的障害を残すというような場合におきましては、その障害の存する程度によりまして障害補償を行なうと、かような取り扱いをいたす次第でございます。
○坂本昭君 その今の肋骨の切除の本数で程度を判定するというような行き方は、はなはだまずいのです。ことに、皆さんの方の管理の区分の中では、心肺機能の障害の点から管理度を分けておられるわけですね。だから、当然肋骨は何本切ったからどうだというようなそういう判定の仕方じゃなしに、もっと新しい基準をお作りになる必要があるんじゃないかと思う。そういったかなりこまかいことについて申し上げましたが、これは職業病としてのこういう人たちの新しい取り扱い方として十分な御検討を願いたい。そしてさらにこれが基準になってほかの職業病に及んでいくわけです。そうして特にまたもとへ戻っていく人々とか、固定してあと障害補償をやらなくちゃいかぬ人とか、それぞれ大事な国民の一人なんですから、正確な基準をお作り願いたい、そういう点でお尋ねしているわけです。
○説明員(村上茂利君) ただいまの御指摘の点でございますが、十分検討を要すべき問題であろうかと存じます。先生御承知のように、現在の障害等級表の作り方などもこれは外国の例と比較しますと、若干違う点があるわけでございます。しかしながら、労災保険におきますところの障害補償の等級表というのは、ほかの保険におきまするところの障害等級表と大体見合ったような形になっておりますので、こういった問題を労災の場において直ちに取り上げるかどうかという点につきましてはきわめて影響するところが多大でございます。私どもといたしましては、障害等級表の適正なる運営を期するために専門のお医者さんたちにお集まりいただきまして、その認定基準につきましては従来とも検討を続け、数カ年にわたる研究の結果を認定基準としてまとめまして昨年実施したわけでございます。障害等級表自体の改正という問題になりますと非常に複雑困難な問題がございますので、なお、今後におきまして研究はいたしますけれども、非常に困難な問題があるという点を私どもとしては十分感じつつ将来も研究を続けたいと思っております。
○坂本昭君 今、実は年金制に今度変わったことについても他の社会保険との均衡があまり十分はかられていない点があると思うのですね。厚生年金、船員保険等の均衡の点でも、たとえば船員保険法の障害年金が六級まで年金になっている。ところが、今度の改正案では三級までしか年金が考えられていない。こういった点があるのですね。ですからこういう点は十分一つ御検討いただきたいと思います。
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(加藤武徳君) それでは速記を始めて下さい。 質疑のおありの方は引き続き質疑をお願いいたします。
○坂本昭君 先ほどの健康管理の区分のところで、エックス線写真の像が二型それから四型、こうしたもので軽度または中等度の心肺機能またはその他の症状の障害が認められるもの、これは管理二並びに三のところに入ってくると思います。こういうものは明らかにこれはけい肺になる障害を認めたものだと思うのですが、これに対する補償措置が当然必要だと思いますが、どのようにお考えになっておられますか。
○説明員(村上茂利君) 御質問の御趣旨は、健康管理の区分の第二、第三につきましても補償を要するかという御質問と存じますが、補償という問題になりますと、御承知のように、労働基準法上、労災保険法上も療養を必要とするという段階において療養費の支給、休業補償の支給、こういう段階に移行して参っているのでございます。従いまして療養を要せざる段階におきましては補償措置は行なわれないということでございます。
○坂本昭君 つまりこれは今の程度のものだとレントゲン写真と、それから機能障害の軽度のものであるが、けい肺が出てきている。高度になった場合は、これはもちろん当然のことですけれども、けい肺の症状が出てきている、けい肺の障害を認めている。こういう程度のものに対して補償措置が実際今あなたの言われた通り現行法では扱いにくい。しかし、たとえば騒音による難聴障害、たしか六十デシベルですか、あのような場合は医療は必要としない。医療は必要としないけれども、実は障害補償を支給されている。だから、今の程度のけい肺の障害のあるような場合にも同じように補償を支給してもよろしいのではないだろうか、そういうわけなのです。もう一度一つお答えいただきたい。
○説明員(村上茂利君) その点につきましては、現在の労働基準法の施行規則において取り扱っておりますいわゆる職業性難聴というものの考え方と、それから基準法の本文におきまして、七十七条におきまして障害補償を支払う場合、「疾病にかかり、なおったとき身体に障害が存する場合」とこう書いてあります。その「疾病にかかり、なおった」という状態との牽連関係はどういうふうに考えるかということが一つの問題であろうかと思います。ところが、御承知のように、職業性難聴につきましては、適当な治療法がなく、治療をしていないのが現状でございます。しかしながら、騒音職場を離れますと、その難聴の度合いは、一応進行がストップいたしまして、一応症状が固定したような状態になるわけでございます。そういう時点をとらえまして、障害補償費を支給をいたしているわけでございます。ところで御指摘のように、そういう療養をしていないにもかかわらず、障害補償費を支給するというものがあるならば、けい肺についても同様なことが言えないか、こういう御指摘であろうかと存じますが、けい肺の方は第四症状になりますと療養を必要とする。しかも療養の手段があるわけであります。職業性難聴につきましては、適当な療養手段がないというので放置されているような状態でございます。にもかかわらず職業性難聴につきまして障害補償の制度を設けているということは何かという点を総合的に勘案いたしますと、現在療養の手段はございませんけれども、症状が固定して、進行がストップした状態が把握できますそういう時点において、障害補償を行なう、こういう趣旨ではなかろうかと、私どもは解釈しております次第でございます。
○坂本昭君 今の点は職業病に関するいろんな補償のシステムの中で、今後これは相当検討していただかなければならない問題だと思うのです。今の場合は、難聴という、医療を必要としない難聴の場合ですが、そのほか各種の職業病のことを思えばさらに検討をして、職業病としての補償体系をとっていただきたいということをお願いしておきます。 それから海外の引揚者だとか、すでに労働基準法の適用のみで現在何らかの保護措置を受けていない人たち、いわゆる百人もおられるという問題ですね、これについてはどういうようなお考えを持っておられますか。
○政府委員(澁谷直藏君) この問題は、四年前に特別保護法が制定されました際に、そういったすでに労働基準法の打切補償をもらって、雇用関係が切れた者もあわせて特別保護法の適用の対象にすべきではないかという議論が出まして、いろいろ検討をされた問題でございます。結論といたしましては、そういった過去のものにさかのぼって新しい法律を適用することについてはいろいろな困難がございまして、結局、そういった方々は特別保護法の適用を受けないことに定められたわけでございます。従いまして、特別保護法を受けて作られました現在の臨時措置法におきましても、そういった方々は適用外に置かれておるわけでございます。今回の改正法案は、特別保護法、さらに臨時措置法の適用を受けておる方々を今後長期にわたって安定した療養を受け得るような態勢を作るために、考えられた改正案でございますので、確かにその点に問題のあることは私ども十分わかるわけでございますけれども、今回の措置といたしましては、従前通り、今度の新改正法案の適用からは漏れることにしたわけでございます。しかしながら、そういった方々の療養の問題、さらに生活の問題というような、当該の労働者にとりましては非常に必要な問題が残っているわけでございますので、これは厚生省とも十分連絡をとりまして、適切な措置を一つ考えて参りたいと考えております。
○坂本昭君 わずか百人の方ですし、非常に不幸な方々でございますから、これについては行政的な措置の面で心配のないように、ぜひともお取り扱いをお願いしておきたいと思います。 それから次に、発病日の決定について、けい肺というような長い経過をとる場合に、発病日の決定がなかなかむずかしい問題を起こしてきます。この点について、何か新しく合理的に修正をする御意思を持っておられますか。
○説明員(村上茂利君) 発病日の認定につきましては、従来、局長通牒をもちましてその基準をそれぞれの場合について定めているところでございます。現在のところ、発病日のとらえ方につきましては、従来の方針を踏襲していく考えであります。なお、医学的な発病日の問題以外に、平均賃金のとらえ方がその発病日においてとらえられておりますので、先ほど来御質問がございましたように、人情に沿わぬじゃないか、こういう問題がまた関連して出てくるわけでございます。その点につきましては、先刻、労働基準局長からお答え申し上げましたように、できるだけ実情に合いますように、その点十分留意していきたいと考えております。
○坂本昭君 長期補償の場合、経済情勢の変動にスライドさせて補償費の改訂をするということの場合、この基礎のとり方について、これは労働基準法の七十六条の二項の規定に基礎を置いておったのですが、今度の皆さんの御説明では、この七十六条二項に基づいておやりにならないのでございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 今回の改正法案におけるスライドの考え方は、職業病といったような特殊性もございますので、全産業の平均賃金、毎勤統計の調査によりまする全産業の労働者の賃金の平均の二〇%が上がった場合、あるいは下がった場合にスライドをする、こういう新しい考え方を採用しているわけでございます。
○坂本昭君 それは、新しい考えはいいのですが、新しい考えによって実際はスライド率を抑制する結果になりはしませんか。私は当然それは七十六条の二項の、この基準でやる場合と、今のような毎勤統計でやる場合とでは、結局スライド率を抑制する結果になって、労働者の側としてはきわめて不利な結果になるだろうと思う。わざわざそんなことをしないでも、大体平均賃金の非常に低い人たちであります。やはり七十六条の二項に基づいておやりになったらいかがでしょうか。
○政府委員(澁谷直藏君) 今回の改正法案によりまする場合は、これは年金でございますので、労働基準法の場合とおのずからその性質を異にしているわけでございます。従って、全産業の平均賃金をとったわけでございましてそのために労働者が不利になるというようなことはないように私どもは考えております。
○坂本昭君 最後に、今度の修正されましたが、遺族給付と、それから厚生年金保険法の追放年金との関係は、これは今度はどうなりますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 今回の修正案によりまする遺族給付はあくまで年金ではございませんで、一時金としての遺族給付であるわけでございます。従って、そういう意味におきまして厚生年金法による遺族年金とはその性質を異にしておりますので、これは二重給付という問題が生じませんので、厚生年金の遺族年金も当然支給を受けるわけでございます。
○小柳勇君 坂本委員の質問に関連して二、三質問しておきたいと思いますが、第一は、業務と業務外の判定ですが、これは普通共済組合などでも非常に困って、組合の強いところは労働協約で判然といたしております。たとえば自宅を出勤して、門を出てから自宅に帰るまで、アクシデントの実務災害についてでありますが、そういうようなことでこのじん肺、今度の改正になります労災補償などについて業務外と業務との判定についてそのような基準を明らかにしておられるのかどうか、御答弁願いたいと思います。
○政府委員(澁谷直藏君) 業務上と業務外の判定の問題は先ほどもお答えいたしましたように、個別々々のケースによって非常に異なるわけでございまして、一般的な基準といたしましては先ほども申し上げましたように、業務の遂行中であるということ、それからその災害か業務に起因しているというこの二つの要件でしぼる以外にはほかに方法がないわけでございます。問題はこの二つの要件を具体的なケースに当てはめてみた場合に、その二つの要件を満たしているかどうかという個別の判断にかかってくるわけでございます。労働基準法、労働者災害補償保険法の施行にあたりましてこの問題は常時出てきておるわけでございまして、従って、従来のこの法の施行の過程におきまして、そういった個別々々の業務上の認定したケースが積み重ねられておりまして、非常に広範にわたる過去の経験による判断の基準というものが積み重ねられているわけでございます。従って、私どもは、そういった過去の経験をしんしゃくしながら、今後起こってくるそういった問題についても、ただいま申し上げましたような二つの要件を基礎にして判定していくように考えております。
○小柳勇君 職業病の問題についても検討されるそうでありますので、後日問題になるかと考えますが、坂本委員は医者でありますから、職業病としての判定もいろいろ頭の中で明確でありましょうが、私どもは医学的に非常に知識がないので、職業病の判定についても、この労働省のものを見ましただけではなかなか判定がしにくい、よくわからない面もあります。たとえば、具体的に言いますと、ボイラーの中における製鑵技工などは非常に騒音それから高温、そういうもので、ここでは騒音に対する聴覚の故障だけが具体的になっておりますが、国鉄などでは、精神異常、いわゆる気違いになったような例もございます。これはまあ神経的に少し弱かったかもわかりませんが……。それからもう一つは、駅長でしたけれども、高血圧も平素あったそうでありますが、若干、執務中に暴漢が入ったために、心悸高進いたしまして、死んだ。これもやっと公務——業務上の病死になりまして、遺族補償というものがありました。そういうことで、これはたとえば高血圧にしても、その職業によりましていろいろありましょうし、高温とか、騒音とか、いろいろありまして、そういうものを考えて、職業病についても将来の残された遺族などの点についても考慮される意思があるのかどうか。私は医学的に十分の意思表示ができませんが、そういり点についての見解をお聞かせしておいてもらいたいと思います。
○政府委員(澁谷直藏君) ただいまも申し上げましたように、先生が御指摘になりました例を拝聴いたしましても、高血圧であった人がたまたま業務の中途で倒れた。その方が業務上と認定すべきかどうかという問題になりますると、その当人の普通の健康状態、それからその人が働いておった作業場の作業環境の問題というような点も十分これは検討した上で業務上であるとかあるいは業務外であるというような判定が出されてくるわけでございまして、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、そういったような非常に個別的な状況を加味した上で判断をしなければその結論が出にくい問題でございますので、一般的な基準としては、先ほどから申し上げているような点を申し上げるしかできないわけでございます。しかしながら、これはあくまでも業務上で倒れたという場合、当然これは基準法上なり労働保険法の補償の対象となるわけでございますから、私どもはそういった個別々々のケースを判断する場合に、そういったいろいろな特殊な事情というものを十分加味しました上で、その上で判断をして参りたいというふうに考えるわけでございます。
○小柳勇君 私は、この私傷病あるいは自分の事故によって発生した脊損について質問をいたしたいのですが、これは厚生省の方に担当者を交渉中でありますから若干あとでいたしまして、じん肺とそれから労災改正を一緒にしながら交互的に質問いたしますから、答弁しにくいと思いますけれども、御了承願いたいと思います。 第一は、スライド・アップが二〇%と、それからスライド・ダウンが八〇%になっております。百分の二十と百分の八十になりますね。これで非常に間隔が遠いから、私どもの、賃金問題についてもこれは非常に問題にしておるところでありますが、百分の二十というスライド・アップというものについては相当問題ではないか。そういうふうな気がするわけです。この点についてもいろいろ統計による判断であろうと思いまするが、百分の二十のスライド・アップの出された根拠、この根拠について御説明願いたいと思います。
○政府委員(澁谷直藏君) 現に労働基準法の中でこの賃金のスライド制が採用されておるわけでありますが、その場合の基準も、今回の改正法案と同様に平均賃金の二〇%の上げ下げによってスライドさせるという制度をとっておるわけでございます。今回の改正法案におきましては、その労働基準法の考え方をそのまま踏襲したわけでございますが、この二〇%刻みの上げ下げのスライドをさらに一〇%程度の小さな刻みでスライドさせるべきではないかという議論も確かにございます。これは考え方によるわけでございますが、私どもは、この年金というような長期にわたる制度でもございますので、制度の安定性というような点を考えましても、やはり二〇%程度の上下によってスライドさせることが適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。
○小柳勇君 先日の失業保険の同店のときなども、私はそのような意見を述べましたが、こういうような保険の場合のいわゆる保険経済によって給付を変えるという考え方について、私は反対する意見を述べましたが、今答弁を聞きますというと、二〇%のスライド・アップについても、やはりこの給付の経済を基礎にして考えておられるように今受け取りました。たとえば一万円、補償を受ける人が一万円に対する二〇%——二千円、その差というものは非常に大きな差ではないかと思うわけです。一万円で生活している人は千円というのは大きな差であります。私どもがいろいろ陳情を受けているところによると五%というような要請が非常に多い。二〇%のスライド・アップといいますとおそらく五年くらい、三年と言いたいけれども、五年くらい異動ないのではないかという気がするわけですが、あなた方の見込みですね、どのくらい見込みしておられるか。これは近い将来に私は改正してもらわなければならぬと思うので、あえてそういうことをお聞きしておきたいと思います。
○政府委員(澁谷直藏君) ここ数カ年の賃金の上昇率を見て参りますると、二〇%最近はずっと上昇をたどっておるわけでございますが、大体四年から五年の間におきまして二〇%程度の賃金上昇が見られておるわけでございます。
○小柳勇君 その問題についてはスライド・アップの問題なので簡単でございませんでしょうから、意見だけ聞いておきまして次の問題に入ります。 次は、けい肺の特別法から今度じん肺並びに労災法に移って参りますと、はみ出すものが出て参ります。たとえば私ども国鉄など調査して参りますと、国鉄では二名だけ国鉄共済会に帰ってくる、それは得をするそうであります。今まで労災補償を受け取ったものよりも帰ってきて共済組合で入ってやられると得をすると言っております。これは逆にけい肺特別法からはみ出されてこれうんと損する人はございませんか。
○政府委員(澁谷直藏君) 従来、特別保護法なり臨時措置法の適用を受けておった労働者は、今回の改正法案によって全部そのまま引き継がれることになるわけでございます。従いまして、その際にはみ出るということはないわけでございます。
○小柳勇君 国鉄の担当者は今度けい肺法によって、これは外地引き揚げの人ですけれども、けい肺で療養しておって今度これがじん肺法になって労災補償を受けなくなって国鉄の共済組合に帰る、それが二名あるということを言っておりましたが、それはどういうことでしょう。
○政府委員(澁谷直藏君) 御質問の点がちょっとわかりかねる点があるわけでございますが、外地から帰られて労働者災害補償保険法の加入労働者になっておっておそらくそれは従来その特別保護法なり臨時措置法の適用を受けておった方だと思いますから、当然これは労災補償保険法の適用を受けておった方だと思います。
○説明員(村上茂利君) 先生の御質問でございますが、それは国鉄当局の担当者が何かの誤解をされておると思います。と申しますのは、今度の長期傷病者補償というのは労災保険において処理するわけでございます。ところが、国鉄の場合は労災保険に入っておらないで共済組合制度によってやっておるわけでございます。そこで、労災保険に入っておらないから、従って、労災保険法上の、長期傷病者補償は受けられないだろうというふうに御判断なすったのではないかと思うのでございますが、その点につきましては、従来特別保護法及び臨時措置法で給付を行なってきた人々につきましては、ただいま局長から答弁がありましたように、保険関係を一応度外視いたしましてそのものをそっくり労災保険法で給付を受けるようにする、こういう制度になっておりますので、今度の制度からはずれるということはないわけでございます。
○小柳勇君 けい肺特別法からじん肺に移りまして損する人がなければけっこうであります。私もこの辺はまだ勉強が足りませんので、一、二具体例だけ聞いたものですから、少し私の言い方が悪かったと思います。向こうの方で聞き取り方が悪かったと思います。で、次の問題に入ります。 次は、作業場の転換措置、病気が診断されて作業転換をいたしますね、それがどういうような……。もう少し具体的に言いますと、普通は組合などがありますと、組合で労働協約をしまして交渉をいたしまして守っておるわけですね。ところが、これでは野放しにこれは転換しなさいと医者から診断されますと、今度は職場長なり、あるいは工場長なりが勝手に転換を命じて本人は別な方がいいと思っても、何か命令するような印象を受けるのですが、そこには何ら含みはないわけでしょうか。
○政府委員(澁谷直藏君) この点は、ただいま御指摘になったようなことがないようにその点を十分考慮いたしまして、法律による画一的な強制を避けたわけでございます。第二十一条の第二項には「使用者は、前項の勧告を受けたときは、」「努めなければならない。」その努力義務の中で、あくまでも当該労働者の意見を中心に話し合いの上に立ってこの作業の転換措置を円滑に進めるように講ずるべきである、こういう考え方に立って、第二十一条を規定しているわけでございますので、そういう点は実際の運用にあたりましても十分そういうことのないように留意をして参る所存でございます。
○小柳勇君 転換する場合の措置、たとえば労働基準法の三十六条では、ちゃんと組合があれば組合あるいは本人の意思を聞いて協定を作れとまで親切に書いてあるわけです。これは休日出勤、休日勤務ですけれども、そういうような特別の規定が法律に明示されなくても立法のとき何らかもう少し具体的に転換する場合の保護の配慮があってしかるべきではないか、病気を判断されて精神的に参っているだろうし、肉体的にもいろいろ文句を言えない情勢にありますから、もう少しあたたかい配慮をやる必要があるのじゃないかと考えてそういう質問をするわけですけれども、特別に規則でも作るのか、それからまた、議事録などによるのか、いま一度答弁願っておきたいと思います。
○政府委員(澁谷直藏君) 第二十一条の規定の趣旨は、あくまでも当該労働者が引き続き粉じん作業場において働いておった場合に病状が進行する、そういうおそれがありますために、そういった症状の進行から労働者の健康を守りますために、その作業の転換措置をはかるわけでございます。しかしながら、そういった場合に、その当該の労働者というものは、精神的にも非常に打撃を感じておりますし、まあ非常に感じやすい状態にあるわけでございますから、そういった場合の労働者に対して使用者なり、あるいはこの監督署の方におきましても、十分あたたかい思いやりをもって対処する必要があることは全く同感でございます。従いまして、この法律が施行になりました際には、当然これは労働省から施行通牒が出るわけでございますが、そういう点につきましては、施行通牒の中に十分労働者の考え方なり、意見というものを尊重して措置するように通牒ではっきり指導するつもりでございます。
○小柳勇君 次は遺族補償の問題ですけれども、私は遺族補償というのは打切補償で残った金を遺族に恩恵的に与えるというものでなく、つえ柱とした主人がなくなり、あるいは子供がなくなるという人に、家族に対する補償ですから、等差、差別をつけないで、打切補償的なものでなくて、当然補償的な補償にすべきであろう、こういうように考えるのですが、今回は残念ながら段が、クラスがついてしまいました。その点について、将来この点についていつかの機会に改正してもらいたいと思うけれども、局長の考えはどうですか。
○政府委員(澁谷直藏君) 確かに御指摘のように、今回の政府案におきましては、長期傷病者補償の中で、六年以内については毎年その遺族給付の額が逓減しておるわけでございます。これは見方によりましては非常に冷たい感じを与えるかと思われますが、私どもの考え方としましては、先ほども坂本委員の御質問に答えましたように、従来の打切補償六年分割の際に、その打切補償の中に遺族補償の分も含まれておったわけでございます。そこで、これは当該の労働者が、説明が非常に理に落ちてまことに恐縮でございますけれども、二年生き延びておったとしますと、その二年間に打切補償費の相当部分は生活費その他で相当減っていくわけでございます。これが三年目になりますると、残る分はさらに少なくなる、これは当然そうなるわけでございます。そういった考え方の上に立ちまして、そのあとになるほど残る分が少ないのであるから、従来の打切補償の場合は現実にそういうことになっておったわけでございますので、それを、その考え方をとりまして、毎年逓減するという原案を作成したわけでございます。しかしながら、この遺族給付の問題につきましては、確かに問題があるわけでございまして、外国の立法例などを見ましても、ほとんどの国がやはり遺族の場合も年金制を採用しているわけでございます。また一方におきまして、現に厚生年金法には遺族の年金の問題がはっきり制度として打ち立てられているわけでございます。従いまして、この点につきましても、将来社会保障制度全般の総合調整という中で、当然これは根本的な検討を要する問題でございますので、私どもはそういった際に十分に一つ検討をいたして、改善をして参りたいというふうに考えておるわけでございます。
○小柳勇君 それからその次の問題は、療養をしておる人たちに対して身体障害者的な手帳といいますか、証明といいますか、そういうものによって旅行するときなど、まあ旅行もなかなかできないだろうと思いまするが、特別な配慮をされるような仕組みにやるような、現在やってあるのか、あるいはやってないとすれば将来やる必要があると思うが、その点はどうでしょう。
○政府委員(澁谷直藏君) 現在の労災保険法におきましてはそういった制度を考えていないわけでございます。実際にもやっておらないわけでございますが、これは一つ今後検討してみたいと思います。
○小柳勇君 検討してみたいとおっしゃいますと、私は身体障害者手帳みたようにして、身体障害者手帳を持っておりますと汽車旅行などは半額になります、それからつき添いも半額になりまして二人が一人分で旅行できるようになるわけです。そういうものを具体的に考えるということでございますか。
○政府委員(澁谷直藏君) 身体障害者の場合は、ただいま先生も御指摘になりました厚生省関係の身体障害者福祉法の適用も同時に受けるわけでございますから、その方の福利といいますか、今お話に出ましたような利便の供与を受けているわけでございますが、問題はそういった身体障害者福祉法の適用外の療養を受けておる人、そういった人々に対してそのような、それに準ずるような措置、利便を考えていく考えがあるかどうか、こういう御質問だと思いますが、この点は一つ将来の問題として検討してみたいということでございます。
○小柳勇君 それからあと私傷病の問題を聞きたいのですが、ちょっと……。
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(加藤武徳君) 速記を始めて下さい。
○小柳勇君 次に、業務外の災害による脊損患者について質問いたしたいと存じます。 業務上の、労働者に対しては今回じん肺並びに労災保険、労災補償の改正によりまして保護せられて参りまするが、私傷病によって同じように脊髄損傷して療養しておられる方は、厚生年金あるいは生活保護をもって生活し、療養しておられる。そういうことでしかもこの生活保護の受給条件というものは非常にきびしいために療養も十分できない。家族に少し収入がありますというと生活保護を打ち切られるということで、この法律ができますと若干でも補償される人と、同じような病気をしておりながら私傷病である、あるいは自分が事故でやったためにそういう非常にみじめな生活をしておられる方があります。そういう方たちに対してこの法律ができると同時に、それと同等の保護を加えるべきであると考えるが、この点について政府の見解を聞いておきたいと思います。
○政府委員(澁谷直藏君) どうも所管の問題でございませんので、責任をもった答弁ができないのでまことに恐縮でございますが、御承知のように、厚生年金保険法におきましては、業務上の場合と業務外の場合と両方をあわせて規定しておるわけでございます。そこで、この第三節の四十七条には、業務外でありましても障害年金及び障害手当金という制度が設けられておりまして、その方面での手当を受けておるわけでございます。ただ、今回の労災補償保険法の改正によりまするこの長期年金と、それから厚生年金法との場合におきましては、これは当然法律が違いまするし、一方は業務上であり、一方は業務外というような事由の相違もございますので、その補償の内容は違っておるわけでございますが、どうもこれ以上私も所管でございませんので、答弁を一つ差し控えさせていんだきます。
○小柳勇君 労働大臣もいらっしゃるので、閣僚の一人として聞いておっていただきたいと存じます。これはたくさんの陳情を受けておりますけれども、代表的な陳情の要望事項がありますから、私はこれをここで申し上げて、厚生大臣に連絡されながら、こういう法律ができましたのを契機として、近い将来にこれと同じように苦しんでおられる方たちを早急に援護をする態勢をとってもらいたいと思いますが、五つありますので、これを申し上げておきたいと思いますが、「業務外に依る脊髄損傷患者は生活保護法とは切離し、飽迄親族とは連帯のない本人を中心とした特殊な単独保護法を設けて下され度し。」、「医療費は全額負担とされ度し。」、「現行の生活保護法による月額六百七十円の扶助基準はあまりにも低いので現在の物価水準による生活には困窮してゐるので御考慮下され度し。」それから四、「厚生年金(障害年金)を有する者が医療扶助を受ける場合これを収入と見做さず生活費に充当されるよう厚生年金の給付内容を改善されるやう御考慮下され度し。」、五、「将来国民年金の給付に当っては医療扶助と関係なく併給されるやう切に要望いたします。」こういうことが、一つのモデルでございますけれども、このようにたくさんの私傷病による脊損患者の人たちが要望しておられるということをこの際申し上げて、政府としての善処を要望しておきたいと存じます。 雑駁になりましたが、以上で質問を終わります。
○藤田藤太郎君 昨年の三月だと記憶するのですが、間違っておったら訂正してもらいたいと思いますが、労災の業務上の疾病は、今まで一般の疾病より優位な保護基準であったと私は記憶しておるけれども、何か通牒を出して一般の基準に引き下げたということを聞いておるのですが、そういうことはありませんか。
○説明員(村上茂利君) 御質問のような点は、私ども存じておりません。
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記をやめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(加藤武徳君) 速記を始めて下さい。それでは、本二法案に対する質疑は、この程度で終局して討論に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。よって、二法案は質疑を終局して、討論に入ることに決定いたしました。 —————————————
○委員長(加藤武徳君) この際、委員の異動を報告いたします。三月三十日付をもって紅露みつ君、谷口弥三郎君が辞任し、その補欠として後藤義隆君、櫻井志郎君が選任されました。 ちょっと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(加藤武徳君) 速記をつけて。 それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等おありの方は討論中にお述べを願います。
○坂本昭君 ただいま議題に上っておりますじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に関しまして、日本社会党を代表して反対討論を述べようとするものでございます。基本的な点につきまして意見を明らかにしておきたいと存じます。 第一は、そもそも臨時措置法の第十三条におきまして、政府の義務としてけい肺等外傷性の脊髄障害にかかった労働者の保護措置について根本的な検討を加えるということになっておるにもかかわらず、今回の提案は本質的な検討が十分に尽くされていないということでございます。むしろ本質的な検討が不十分であるために、われわれとしては、はなはだ意に満たない点が多々あるのでございます。 次に、政府案では、労災法の一部改正によって補償措置を一元化しようと考えておられますが、職業病の概念と災害による疾病の概念の区別がいまだ不明確であります。すでに諸外国では法制上の明確な整備ができております。けい肺等の特別保護法制定の発端、経過から見まして、特に日本の産業発展の現状から見まして、職業病に関する保護制度が法律的に全く不十分である、基礎が薄弱であるということははなはだ遺憾でございます。労災法が労働基準法の損害補償を代行する措置でありますから、当然労働基準法そのものの改正も必要とする部分が生まれてくると思われますが、特にこの点について打切補償、あるいは解雇制限等重要な点が未解決に終わっていることははなはだ遺憾でございます。特に労災法は、労働共準法上における使用者責任を明確にして無過失賠償責任の遂行を容易にならしめ、もって労働者の補償の権利を認めた法律であるのにかかわらず、今回の改正によってそれらの点は少しも明確になっておらないのであります。三年で打ち切られることなく、労務災害が長期傷病者補償を行なうということは確かに一歩は進んでおりましょう。しかし、その補償の内容は、諸外国におけるごとく使用者責任において永遠に補償されていく、そういう体制はとられておりません。特に政府原案において遺族給付の扱い方などまことに冷酷なというそしりを免れないものがございました。また、傷病給付におきましても一種と二種に分けて、きわめて、不完全な生活保障しか認めないといういき方も、そもそも使用者責任において労働者の災害補償を行なうべきである趣旨に全く反しているのでございます。特に、政府案の労災保険経済の面から見ますと、依然として国家負担の考えが無配慮のままに導入されておる点は、今後十分なる監視を要する点であると考えます。 なお、じん肺法案につきましては、特に粉じん防止の積極的推進をはかり、職業病の予防のために十分なる機構並びに予算が整備されているとは思われません。今後の職業病対策としてきわめて重要なる法案であることは認めますが、われわれとしては、いまだこのごとき対策をもってしては、今後多数の職業病に当たっていくにつきまして、はなはだ不十分である点を遺憾に考える次第であります。 以上、おもなる点を指摘いたしまして、私の反対討論といたします。
○吉武恵市君 私は、自由民主党を代表いたしまして、本法律案に賛成の意見を申し述べます。 まず、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきましては、第一に、現行の労働基準法または労災保険法では、業務上の傷病者に対する補償は三年間を限度として、あとは一時金の打切補償が行なわれるにとどまっておるのであります。特に、従来、治癒の非常に困難であると認められておりましたけい肺及び外傷性脊髄障害の場合でも、特別保護法及び臨時措置法でその保護が約四年間期限を限って保護されてきておるのであります。しかるに本法律案は、けい肺等特別保護制度を根本的に検討いたしました結果、けい肺の予防及び健康管理は、その補償と切り離しまして、別個の法律に規定してその保護を充実することとし、他方、けい肺及び外傷性脊髄障害に対する補償に関する従来の特別保護は労災保険制度の中に吸収してこれらの疾病により三年間療養を行なっても、なおなおらない者に対して、従来の一時金である打切補償費の支給にかえて、長期給付により終身なおるまで必要な給付を行なおうとするものであります。従来、打切補償費が支給された上に、さらに一定期間を限って特別保護がなされ、自後は全く保護措置が講ぜられていないという不合理を是正した点は、まさに画期的立法であると存じます。 第二に、現行の制度では、労働基準法または労災保険法による三年の療養をこえて特別保護措置が講ぜられておりますのはけい肺及び外傷性脊髄障害に限られ、これらの傷病と同様に治癒の困難な頭部外傷、潜水病、放射線障害、重度のベンゾール中毒等は、労働基準法または労災保険法の補償以上に何らの保護も受けていなかったのであります。今回の改正によって、かかる不均衡を是正して、およそ三年の療養をもってなおらない傷病はすべて終身に及んで長期給付を行なうこととしておるのでありまして、きわめて適切なる改正と存じます。 第三は、現行の労働基準法または労災保険法では、業務上の障害をこうむった者については一時金たる障害補償費が支給されることになっておるのでありますが、本法律案では、重度の身体障害を残す者については、長期傷病の場合と同様に終身に及んで年金たる補償を行なおうとしておるものであります。 この法律案は以上の諸点において画期的な改善を加えたものでございまするので、賛意を表する次第でございます。 次に、じん肺法案につきましては、従来けい肺及び外傷性脊髄障害に関する特別保護法において、健康管理に関する規定を設けていたのでありまするが、今回の改正によって療養給付あるいは休業給付等の長期給付等は、長期給付として労働者災害補償保険法の一部の改正によって吸収いたしましたので、これを独立立法されたものでございまするが、従来より、第一に適用範囲がけい肺からじん肺に拡大しておること、次に従来の健康管理のほかに予防措置を講じておること、第三にじん肺の予防の徹底をはかるために指導委員を設けて技術的援助、指導を行なおうとしておること、四にじん肺審議会を設けてじん肺の予防につき審議検討をはかろうとしておるのであります。 以上幾多の点において改然を加えられておりまするので、本法律案に対しましても賛成するのでございます。
○片岡文重君 私は民主社会党を代表いたしまして、この二つの法案に対して反対の意思を表明いたします。 反対の理由につきましては、先ほど同僚坂本君から述べられておりまするところとおおむね同じでありますが、なお一、二申し上げますと、このじん肺法案並びにこれに関連する労災法の一部改正案はきわめて不用意であり、かつ、姑息的に行なわれた感が強い。職業病に倒れた不幸な労働者並びにその家族に対する思いやりがはなはだ見られないと思われるのであります。このことは、この法案立案の根本ともなるべき粉じん吸引防止をいかにしてはかるべきか、こういうような問題についても、先ほど高野委員から指摘されたところでも明らかな通りに、その立案の責任者たるべきものがたまたませっかく優秀な研究を行なっておる、労働衛生研究所をすら見ておらない無関心である。この一事をもってしても私は明らかに言えると思います。姑息的であり、はなはだ申しわけ的であるといういま一つの証左は、補償給付を労災法の一部改正で行なわんとしておる点であります。言うまでもなく、労災法は、本来偶発的な事故、疾病を予定して、これに対する無過失損害賠償責任を明らかにしたものであってこの中に職業病等を含めるということは異質なものを同一に扱わんとするものであってこのようなやり方は職業病に対する特殊の保護を根本から否定するものであり、けい肺特別保護法、けい肺臨時措置法が労災法の存在とは別に制定されたという積極的な理由が全く考慮されていないということを雄弁に物語っていると思われるのであります。加えて、このようなやり方は法体系上からもはなはだしい混乱を来たす結果にもなろうと考えるのです。さらにわが党といたしましては、一切の職業病及び類似病を対象とした予防健康管理、補償給付等を含む単独の職業病法を制定することを強く政府に期待しておるのでありますが、政府にもしその意思がないというのであるならば、われわれ議員立法によってでも成立させたいと念願をいたしておる次第であります。それまでの暫定措置といたしましては、明日限り失効するけい肺臨時措置法をとりあえず一年間延長する措置をとっておくべきであると主張するのであります。 以上のほか詳細については、明日の本会議における討論においてなお申し上げることにいたしまして、本法案に反対することをここに明らかにしておきたいと思います。 以上です。
○委員長(加藤武徳君) 他に御意見ございませんか。——御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。 それではこれより採決に入ります。まず、じん肺法案を問題に供します。原案は内閣提出、衆議院送付案でございます。じん肺法案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加藤武徳君) 多数でございます。よって本案は、多数をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。 次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を問題に供します。原案は内閣提出、衆議院送付案でございます。労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加藤武徳君) 多数でございます。よって本案は、多数をもって、原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
○吉武恵市君 私は、ただいま可決されました二つの法案につきまして、各派共同の提案で附帯決議を付するの動議を提出をいたします。 まず、案文を朗読いたします。 労働者災害補償保険法の一部を 改正する法律案に対する附帯決 議案 政府は次の事項について努力すべ きである。 一、今後職業病について、その範囲 を明確にし、綜合的立法を検討す ること。 二、長期療養者ならびに遺族の生活 維持のため今後補償率及び補償条 件に適切なる改善を図ること。 三、長期傷病補償を受ける者につい ては住宅その他の福利施設の確保 等につき関係機関において配慮せ られたいこと。 四、けい肺患者、外傷性せき髄障害 者のうち過去に打切り補償のみに 依って災害補償を打切られ(労災 保険法の適用をうけない者を含 む)今回の長期傷病者補償を受け ることのできない者については療 養生活を継続しうるよう政府関係 機関において適切なる措置を講ず るよう配慮すること。 以上でございます 次に、 じん肺法案に対する附帯決議 案 政府は、じん肺法の実施に当って は、特に予防対策に主点をおき、労 働衛生全般について適切なる指導を 行うべきである。 以上でございます。
○委員長(加藤武徳君) ただいま吉武君提出の動議を議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。それでは吉武君提出の附帯決議案を議題といたします。提案理由の説明をお願いいたします。
○吉武恵市君 まず、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案でございます。 朗読いたしましたように、第一は、本委員会で特に質疑を重ねられました職業病につきまして、その範囲をはっきりすることと同時に、職業病に関する総合的の立法を検討してほしいということでございます。職業病の健康管理、予防処置等につきましては、今回、政府は、従来のけい肺に加えて、いわゆる広くじん肺を取り上げられておりますが、職業病はまだまだたくさんあるのであります。で、このほかの職業病につきましても、その健康管理、あるいは予防処置等、幾多の考慮すべき点がございまするので、これらの総合的立法を検討してほしいということであります。 次に、今回の長期療養者並びに遺族に対しての補償がございますが、この補償率は現在のままで放置されることなく、今後機会あるごとにその補償率なりあるいは補償条件に適切なる改善をはかってほしいということであります。 次に、長期傷病補償を受ける者につきまして、いわゆる長期給付を受くるのではありまするが、そのほかの住宅とか、その他の福利施設等の確保につきまして政府機関において特別の配慮をしてほしいのであります。 次に、けい肺患者あるいは外傷性脊髄障害者のうちでずっと過去において打切補償をもらってそのままになっておる方々がございます。また、労災保険法の適用を受けてない方がございます。で、これらの方々につきましては、今回の長期傷病者補償を受けることのできない方につきましては、まことに気の毒であると存じます。従いまして、これらの方々の療養生活が継続し得るように、政府関係機関において適切なる処置を講じていただきたいということであります。 次に、じん肺法についての附帯決議でございますが、これも先ほど来本委員会においてやかましく取り上げられましたように、職業病はその治癒が困難でございまして、悪くすれば一生なおらないのであります。従いまして、これらの方々に対し、単なる長期給付をするということでなしに、あらかじめそういう職業病にかからないように予防処置を講じるということがきわめて適切、大事であると思うのであります。現在衛生研究所、労働衛生研究所等におきまして粉じん防止上等の用具も相当研究をされているのでございまするので、今後も政府の予算において一そうの研究を続けられると同時に、これらの用具を用いて予防に努力を払っていただきたいということでございます。 以上簡単でございますが、御説明を申し上げます。
○委員長(加藤武徳君) ただいまの附帯決議案に質疑がございますか。——別に質疑もないようでありますから、これより採決をいたします。 吉武君提出の附帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加藤武徳君) 全会一致でございます。よって吉武君提出の附帯決議案を本委員会の決議として、各法案に付することに決定いたしました。 労働大臣から発言を求められております。この際、発言を許します。
○国務大臣(松野頼三君) 政府といたしましては、ただいま議決されました附帯決議の趣旨を尊重し、善処する所存でございます。
○委員長(加藤武徳君) なお、議長に提出する報告港の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後十時八分散会