外務委員会 第3号
- 発言数
- 31 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1960/03/10
会議録
○委員長(草葉隆圓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について報告いたします。一昨日剱木亨弘君及び梶原茂嘉君がそれぞれ委員を辞任され、その補欠として鹿島守之助君及び木内四郎君がそれぞれ委員に選任されました。 —————————————
○委員長(草葉隆圓君) 関税及び貿易に関する一般協定へのスイス連邦の暫定的加入に関する宣言の締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。前回に引き続き質疑を続行いたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○森元治郎君 ちょっと、これ形式だが、この協定の本文の一番末尾の方にある各署名国がたくさん書いてありますね。
○政府委員(牛場信彦君) はい。
○森元治郎君 締約国がオーストリア、ビルマ、カナダ……たくさん、この中に(批准を条件として)というのは、そういう条件つきがあるのですか、これはどういう手続なのか。国内手続……。
○政府委員(牛場信彦君) この署名のやり方といたしましては、各国が国内手続を了して署名をいたすのが本則でございまして、それ以外に、しかし便法といたしまして国内手続完了、つまり批准を条件としまして署名している国がオーストリアとイタリア、それからスイスということになっておりまして、これを含めまして三月一日に署名をいたしました国は二十一カ国になっております。
○森元治郎君 これは日本の憲法でいう事前あるいは事後の国会承認というどっちに入るのですか。
○政府委員(牛場信彦君) 現在御承認をお願いしておりますのはこの事前の承認でございます。
○森元治郎君 条約局長が見えてないようだけれども、やはり安保のような場合でもこういう形式でやればやり得るものなのか。日米両締約予定国、結ぼうとする国が話し合いがつけばこういう形で今の安保を国会に承認を求める手続をとってもとり得るのですか。
○政府委員(藤崎万里君) 多数国間条約の場合と二国間条約の場合には、おのずから取り扱いが違うわけでございまして、批准条項乃至承認条項付の条約の場合に、署名もしないうちに立法府の承認を求めるという手続を取る例は、日本のみならず諸外国にも全くな場いことであると存じます。本件の場合に署名が行われておりませんが、この多数国間条約の場合には、これが正式の条文であるということが、ガットの会議で確定しておるわけでございまして、二国間条約において案文を確定する署名に相当する行為が、ガット自体によってとられているわけでございます。
○羽生三七君 この案件に直接の関連はないのですが、貿易の関係でちょっとお尋ねしたいのですけれども、最近、貿易為替の自由化問題から、これが日本経済に及ぼす影響が論議されている問題の中に、新しい問題として、日本の円レートが国際的に占める地位といいますか、円レートの価値の判断が貿易に及ぼす影響というものが非常にウエートが大きいということをいろいろな角度から論証されてきておるのですが、今の日本の為替レートというものは、国際的な位置付けから見て、どういうところにあるのか。割高とか、割安とか、それは、基準の取り方は非常にむずかしいもので、われわれのようなしろうとにはわからないのですが、もしどなたか、わかっておる方かあったらどういうところにあるのか、教えていただけませんか。おわかりなければよろしいのですが……。
○政府委員(牛場信彦君) これは大蔵省あるいは通産省の当局からお答え申し上げた方が適当な問題だと存じます。一ドル三百六十円という平貨は、御承知のように国際通貨基金上の平貨として設定されているわけでございます。この高いか、低いかということにはりますと、これは日本の輸出と関連して考えるわけでございますが、御承知の通り、日本は非常に特殊な貿易構造になっておりまして、いわゆる軽工業製品、ことに繊維製品などにつきましては、国際的に見ましても非常に安く製造できる。そこで、そういう品物については、日本の今のレートでは低すぎるんじゃないかというような意見が、これは御承知の通り、西ドイツのエアハルト大臣が日本に来たときにそういうことを申しておったことがございます。ところが、一方におきまして、重工業品の輸出ということになりますと、これはまた国際競争力が非常に弱いのでありまして、そういうものについてむしろレートが高すぎるじゃないかという意見もあるわけでございまして、しかし現状、いろいろ総合してみますと、まず妥当なところでないのかというのが今の感じではないかと存じます。
○佐藤尚武君 どうも、私もよくこのガットの問題は研究が足りないので、わかっていないのですが、ですから、つまらない質問をすることになるかと思いますけれども、第一、今度スイスと日本国との間で、スイス連邦のガットに対しての暫定的加入に関する宣言というのが承認されたわけで、この文書を見るというと、宣言の締結というふうなことになっている、どうも、今までの慣習とは違った言葉が使われているような気がするのです。宣言を締結するということがあるのでしょうか。そうして、それはどういうことを意味するのか。まずもって御説明をいただきたい。
○政府委員(藤崎万里君) 言葉自体の使い方としては、御意見の通り、非常に日本語としておかしい印象を与えているわけでございますが、これもやはり宣言という名の国際約束、条約でございまして、国会の御承認を求めます場合には宣言という名前にこだわらないで、むしろ憲法の用語に従いまして、締結について御承認を求めるというふうに、今までもずっと取り扱っている次第でございます。
○佐藤尚武君 英文の方にはどうなっておりますか。やはり締結に相当する言葉が使われていますか。ちょっと見たところ、英文が、私、見当たらないので……。
○政府委員(藤崎万里君) 署名による受諾ということでございます。
○佐藤尚武君 署名による受諾。そうすると、文字の上からいうと、日本語と合っていないわけですね。
○政府委員(藤崎万里君) さようでございます。ただ、署名によって受諾いたしますと、日本とスイスの間に国際約束としての権利義務関係を生じますので、そういう実体をとらえましてこのような、条約の場合と同じような表現にいたしているわけでございます。
○佐藤尚武君 よくわかりました。それから、この宣言によると、両国間でお互いに譲許した品目が掲げられているわけなんですが、日本の方の品目はあるようだけれども、附属書として日本の譲許表というのがあるが、スイスの譲許表というのはどういうことになるのですか。スイスの譲許表は省略ですか。これは、日本の貿易の問題からいうと、スイスから譲許された品目というものは、日本にとってどういう影響のあるものかどうかということを簡単に一つ、しろうとわかりのするように御説明願います。
○政府委員(藤崎万里君) これまで、こういう取り扱いをさせていただいているわけでございますが、実は、譲許表の全部については日本語訳を省略させていただいているわけでございます。お手元に差し上げてあります英文の方にはあるわけでございます。なぜそういうことをいたしましたかというと、非常に大部のものでございまして、このような宣言の国会提出については、説明書において内容を説明するにとどめさせていただいているわけでございます。これは、ほかの国の譲許表は、宣言受諾によるわが国の権利に直接には関係がなく、わが国としては、ガット一般協定第二条の規定に基づいて間接的に利益にあずかるという意味において関係を持つに過ぎないわけでございます。従って実質的に今回のわが国の受諾の対象ともならないという関係があるわけでございます。
○佐藤尚武君 日本からの譲許というのはここに掲げてあるたしか五項目ということになっているわけですか。五項目として、スイスからの譲許もやはり五つの項目に限られるということになっているのでしょうか。あるいはそうでなくて、スイスの方はずらっとたくさんの項目について譲許したということになっているのでしょうか。
○政府委員(牛場信彦君) スイスから得ました譲許につきましては、この関税及び貿易に関する一般協定へのスイス連邦の暫定的加入に関する宣言の説明書というのを差し上げてございますが、この一番最後のところにございまして、品目にいたしますと五つになっております。「さけ、ます缶詰」「まぐろ、さんま缶詰」「みかん缶詰」「毛製手袋」「絹製ショール類」ということになっておりまして、この譲許の交換の場合は、ガットの原則によりますと、品目の数ではなくて、大体貿易額のつり合いを見て譲許をし合うということになっております。今回の場合は、わが国がスイスに譲許いたしました品物のわが国のスイスからの輸入額、これは一九五七年でありますが百九十二万六千ドルになっております。わが国がスイスから得ました品物のわが国のスイスに対する輸出額は二百十六万八千ドルで、大体つり合ってることになっております。もちろんわが国はこれ以外に列国が、スイスとの関税交渉等の結果といたしましてスイスに譲許いたしました利益に均霑するわけでございまして、これは非常に大部の参考として差し上げました書類の中にあるわけでございますが、これによりますと、大体一九五七年におきまして、わが国の輸出額九百六十万ドルに当たる品物につきまして、関税の譲許に均霑しておるということになっております。これがガットに入っております効用ということになっております。
○佐藤尚武君 スイスと共同市場の関係についてお尋ねしたいと思うのですが、スイスは欧州の共同市場には入っていないということになるのですかね。
○政府委員(牛場信彦君) 欧州には御承知の通り欧州共同市場、それから欧州自由貿易連合、二つのブロックがありまして、スイスはそのあとの方の欧州自由貿易連合に入っているわけであります。本来地理的にいいますと欧州共場市場に非常に近いわけでありますし、貿易額も共同市場との間の方が多いのでございますけれども、共同市場は非常に政治的性格が強いということで、中立政策をとっていますスイスといたしましてはこれに入ることができない。しかし、そうかといって孤立しているということは非常に不利であるというので、結局自由貿易連合に入っているのが現状でございます。
○佐藤尚武君 そこでその二つの連合、片一方はイギリスを中心としての今お話の欧州自由貿易連合、それからもう一つは今まであった欧州共同市場、この二つの関係は一体どうなっていますか、どうも私どもによくわからないのです。つまり欧州共同市場というものができて、イギリスを初めそのほかの国々がこれから除外されている。そうしてその共同市場の中ではお互いに関税を逓減しあって、ゆくゆくは全く関税なしでもってやっていこうというような傾向に進んでいるのがこの欧州共同市場だと思うのですが、そうするというと、ほかのヨーロッパの国々としては、それから除外されて非常な差別待遇を受けなくちゃならぬ、欧州市場においての差別待遇を受けなくちゃならぬという羽目に陥るわけです。そこで欧州共同市場に属していないイギリス初め今のたとえばスイス、オーストリアなどが別の貿易連合をこしらえてお互いに対抗するような形になっているように見受けるのですが、その辺は一体どうなっているか。それからまた、今のお話では、スイスのごときは欧州共同市場に属していないからして孤立をおそれてイギリスを中心とした別の貿易連合に加盟した、こういう話であります。そうすると日本は一体どうなるのですか。日本はこの二つの団体のいずれにも属してない、そうするというとあちらからも、こちらからも差別待遇を受けるというおそれが私は十分にあると思うのです。そこでこれはずっと前の外務委員会でありましたが、外務大臣が列席しておられたときに、私からその点で質問申し上げたことがあります。ちょうど外務大臣がヨーロッパを旅行して帰られた直後で、共同市場に関する説明があったときでありました。外務大臣のお話では各国の、つまり欧州共同市場に属するおもな国々の外務大臣等に会われて、そうして共同市場に関して日本が差別待遇などされないようにしてもらわなければならぬというような意見を述べられ、これに対して二、三の外務大臣はほとんど異口同音にそういう考えは一切ないというような、いわば保障を与えたというような報告でありましたが、しかし私はそう簡単にはいかないはずだと、共同市場に属している国々の間ではお互いに、先ほども申しました通りに無関税という組織にまで進んでいこうという、そういう機構であるとするならば、共同市場に属してない国々は差別待遇を受けるのが当然であり、その心配はないなどということは、これはおざなりのお世辞でなければならない。だとするというと、日本としてもこれはよほど考えなければならぬ問題であると思うので、外務大臣としてもこの点には深甚なる御注意をお払いになる必要があるだろうと思うというような、釈迦に説法であったかもわかりませんけれども、そういうことを申し上げたのでありますが、今のスイスに関しての局長の御説明は、つまりスイスが共同市場に入っていない、孤立のおそれがあるからして別の貿易連合に入ったと言われた、スイスの態度としてむろん私はそうであったろうと思うし、また、もちろんそういうふうにすることがスイスの利益であろうと思うのでありまするが、そうすると日本の立場はどうなるかということをすぐ考えさせられる。日本はいずれの連合にも共同体にも入っていなくて、依然孤立を続けている。そうすると、ヨーロッパの市場ないしはこの貿易連合の国々の市場からは、日本ははじき出されて、現在はじき出されている、こういうことだろうと思うのです。そうすると、日本の将来、日本の外国貿易の将来にとって、これは非常に大きな問題でなければならぬと思う。先般東京で開かれたガットの総会においても、日本の代表はこの点についてかなり努力された模様でありますが、どうも日本として安心のいくような結果にまでは到達していないように思われるのであります。その辺どういうことになっておりますか、一つわれわれにわかりやすいようなふうに御説明を願いたいと思います。
○政府委員(牛場信彦君) 初めに、制度的に簡単に申し上げますと、欧州の共同市場といいますのは、これはガットの規定上、関税同盟ということであります。それから自由貿易連合というのが自由貿易地域ということでございまして、これはいずれもガットの第二十四条という規定によりましてこれは認められているわけでございます。従いまして、そういうものができまして、域内の関税が撤廃されるということになりますと、域外に対してある程度の差別が生ずるということは、これはガットの方ではやむを得ないこととなっておるわけでございます。ただ、その差別の程度が、こういう共同体ができます前よりひどくなってはならないという規定があるわけでございまして、また常にこういう共同体の成立形成の過程におきましては、ガットに報告をして、ガットにコントロールを受けるということになっているわけでありまして、その限りにおきましては、ある程度の差別待遇が終局的に生ずるということはやむを得ないところであると思います。 それから共同市場と、自由貿易連合との成立の経緯から申しますと、御承知の通り、まず共同体ができまして、共同市場ができまして、それからあとで、イギリスが主となりまして、その共同市場を含めてヨーロッパ全体をカバーする自由貿易地域というものを作ろうという交渉を始めたわけであります。これは昨年一年間続きました結果、失敗に終わった。これはどうして失敗に終わったかといいますと、イギリスの考えは、共同市場と組んで、自由貿易地域を作るごとによって、共同市場の利益にも均霑したい、それと同時に、自分が今まで持っていたところの英連邦の特恵関税というものもキープしておきたいという考え方であったわけでありまして、これは共同市場側から申しますと、まあ非常に虫のいい考えである。ことにフランスが強くこれに反対をいたしまして、ドイツ、オランダ等は、イギリスの考えにだいぶ同調的であったのでありますが、結局フランスの強い反対に押されまして、これがこわれたということであります。その後になって欧州自由貿易連合というものができたわけでありますが、これはそういう経緯から申しましても、非常に将来の共同市場との間にバーゲンをする立場を強めるために、共同市場へ入らなかった七つの国が集まって作ったという傾向が強いのでありまして、共同市場が成立いたしましたような自然的な条件というものは、あまりこの貿易連合については存在してないように認められます。そこでいわゆる六と七で分かれておりますこの間の関係はどうなっていくかということにつきましては、昨年の後半からアメリカが非常にこれに興味を示しまして、一種の仲裁役みたいなものを買って出ている。この結果としまして、今年の一月にパリーで十三カ国が集まって会議がありました。そしてその結果としまして、この六対七の問題をまず第一に取り上げて、これが調整をはかるために二十カ国の委員会というものができまして、これが今月の末に第一回の会合をパリーで開くということになっております。ところが、具体的にそれでは六と七の調整をどういう方法でやっていくつもりか、どんな案があるかと申しますと、これは今のところ非常に前途見通し困難なようであります。イギリスは、依然として、去年主張いたしましたヨーロッパ全体を含む自由貿易地域ということを主張しているようでありまして、スエーデン、ノールウエーはこれを強くサポートしておりますところが、これ呈して一番反対しておりますのは、共同市場の中ではフランス、それから外部におきましてアメリカでありまして、アメリカは、共同市場というものは、これは政治的にも非常に意味のあるものであるし、独仏の主として独仏の関係強化によってヨーロッパ全体の経済が強くなるということは非常に歓迎しているところで、これはサポートいたしておりますけれども、ヨーロッパ全体を含んだような自由貿易地域というものは、これはヨーロッパ外に対してさらに新たな差別待遇を意味するものであって、これはもう絶対に反対であるということを申しておりまして、ここで偶然フランスの立場とアメリカの立場とは非常に近いわけでありまして、従いまして、アメリカの今の主張は、共同市場はいいけれども、それ以外の問題はすべてこのガットの規定の中でもって解決しなければいけないのだということで、ガットを強化してこれに対していこうということを申しておるわけであります。これはまあ先ほどから御質問になりました日本の立場とある程度通ずるものがあるわけであります。日本といたしましても、これはヨーロッパで起こっておることでありますので、すぐどちらかの団体に入るとかいうことは、これはちょっと今のところ実際的な考えではないと思いまするけれども、これらの団体は、今後とも域外の国に対して差別待遇をしないようにしていく、もちろん最小限度の差別待遇は、これはガットの規定上、先ほど申し上げましたように認められておりますけれども、それをできるだけ少なくいたしまして、そうして結局こういうものができた結果としてヨーロッパの経済がよくなる。これは実際に共同市場の中の経済の発展というものは、過去一年におきまして非常に目ざましいあがあるわけであります。そういう結果として、結局世界貿易の伸展に寄与するわけであるというところへ持っていきたいわけであります。これは共同体自身、共同市場の連中もそれが目的であって、域外に対する差別待遇を強化するのが目的じゃないのだということを繰り返して申しておることは、先ほど佐藤、委員からお示しになった通りでございます。そういう状況を作るように今後努力していかなければならぬ。そういう意味で、アメリカともよく連絡いたしまして、ガットのワク内におきまして、ガットの規定の精神に沿ったようなやり方でこれが育っていくようにしていかなければならぬと考えておる次第であります。 ただ、日本にとりましては、一つまた特殊な事情がございます。これはいわゆる三十五条問題でございまして、全部のガットの締約国のうちで、十四カ国が日本に対して三十五条を援用している。しかもそのうちおもなものはヨーロッパの国でありますが、イギリスを初めとして、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、オーストリアという国が三十五条を援用しておる。今度はスイスにつきましても、非常な努力をしてやっとこれは防ぎとめたわけでありますが、やはりだまっておればスイスも三十五条援用国の方に回る可能性もあったわけであります。こういう状況をまず除去してかからなければ、ガットのワク内で将来この問題に対処していくという場合におきましても、三十五条というものがあります限りにおきましては、日本は不利になるおそれがある。そこで、われわれとしましても、この問題の解決のために今後の経済外交の推進を大いにはかって参りたいと思っておる次第でございます。
○佐藤尚武君 今詳細の御説明で、だいぶわかって参ったのでありますが、日本の立場からいえば、ヨーロッパ市場はそういうふうにして一つのまとまった機構ができて、その機構内では自由貿易、イギリスを中心としたもう一つの連合では、ヨーロッパ全体の自由貿易を主張している。何だか日本はヨーロッパの市場に関する限り、今の御説明ではありませんけれども、はじき出されているということは、そういう懸念は、これは免れ得ないところだと思うのであります。もしヨーロッパやアメリカがそういうふうな方向に進んでおるとしたならば、日本は日本でまた東洋の地域においてそういったような、それに類したような組織を作るというようなことを、これは外務省として考えておられるんでしょうか、おられないんでしょうか。それはもちろん東南アジア、極東方面における各国の経済状態というものが非常にまちまちで、とうていヨーロッパ各国の、大体同一水準にある各国の間で、共同体なら共同体ができるというような事態とは非常に違っておるものであるには相違はありません。それがすなわち東南アジア、極東をひっくるめての共同体を作るということの上に非常な支障となっておるということも、これはわれわれも想像がつくんですけれども、そういう点に関して、一体これは望みのないものとして初めからうっちゃってしまうべきものであるかどうか。それだけのお互いの違った経済条件を、何とかしてお互いに融通緩和して、そうして共同体を作るというようなことが絶対にできないものであるかどうか。もし絶対にできないものとするならば、日本は日本一国の立場からいえば、むしろヨーロッパ各国に近い水準を持っておる日本であって、その点では極東ないし東南アジア諸国と比べて、全く違った立場にある日本でありますがゆえに、そうしてその日本は、ヨーロッパの共同体もしくはイギリスの主張した自由貿易連合の中に入れないとするならば、アメリカと何か経済上のもっと緊密な提携をするような方向に持っていく。そうしてヨーロッパにおけるこれらの組織なり機構なり、あるいは経済の上の躍進なりに対して、日本もひけをとらないだけの組織を持つというようなことが考えられないものでしょうか。 つまり東南アジア、極東をひっくるめてのそういったような欧州並みの機構ができないものとすればできれはなお非常にけっこうだと思いますが、できないものとすれば、この際、経済上アメリカとの提携をもっと緊密にして、そうしてヨーロッパにひけをとらないだけの何か組織なり機構なりを作るというようなことが考えられないものかどうか。非常にばく然とした質問であるかもしれませんけれども、経済局長はどういうふうにお考えになっておりますか、お伺いしてみたいと思うんです。
○政府委員(牛場信彦君) ヨーロッパでこういう体制ができて参りましたときに、日本としても極東において何か考えるべきじゃないか。これは確かに一つの御意見でございまして、われわれとしましても十分これは将来の問題として考えていかなければならないところであろうと思っております。ただ現状におきましては、先ほど佐藤委員お示しになりました通り、非常にまあ日本とほかの国とは経済体制も違っておりますし、それからまた、アジアの国の相互間の貿易、つまり域内貿易といっておりますが、これが非常にパーセンテージが低いのでありまして、まあたとえばタイとビルマとの間でどれほど貿易が行なわれているかというと、ほとんどゼロに近い、そういうような状況でありますので、今すぐ極東あるいは東南アジアの国をまとめて一つの共同体を作るということは、ちょっと実際的ではないかと存ずるのであります。まあ日本自体の問題といたしましても、たとえば米の輸入を自由にしなければならぬというような状態になるわけでありまして、そうしますと、これは大へんなことになる。おそらく日本としても非常に困る問題が起こるんじゃないか。また先方の国に対して、日本の繊維製品なんかの輸入を自由にしたいということを要求するということは、これは現状におきましては、ほとんど向こう側のアクセプトは望みがないんじゃないか。ヨーロッパの歴史を見ましても、この共同市場ができますまでには、一九四八年以来、マーシャル援助の金をもとにしましてOEECというものができて、そうして欧州決済同盟というものができまして、長い歴史かかってまあここまできているわけであります。日本としましても、もし今極東でそういうことを始めようとしますと、これは日本が当初非常に大きな犠牲を払う。あるいはその犠牲を払う分だけはほかからカバーしてもらわなければならぬという状況がどうしても出てくるわけであります。まあ私ども日本の貿易の性質から申しまして、日本の貿易というものは、世界中至るところでやるんだというところに非常な特徴があるんじゃないかと思っております。ある一つのブロックに依存して、それでたとえば日本の貿易の七、八割までカバーできるという状況は、どうもこれは出てこない。これは日本の国の特殊な産業構造にもよりますけれども、たとえばドイツがあれほど貿易が発展しておりますけれども、その大体七割はヨーロッパの国とやっておる。そういうような状況は、日本の場合にはなかなか出てこないんじゃないかというふうに考えております。 それからアメリカとの関係は、これは現状におきましては、すでにきわめて緊密にいっておるわけであります。もちろん先方におきまする輸入制限でありますとか、あるいは日本におきまするやはり輸入制限の態勢に対する先方からの要請でありますとか、いろいろ問題はございますけれども、現在とにかく日本の輸出の三分の一以上がアメリカにいっておる。昨年一年間で、日本の対米輸出というものは四割以上も伸びたという状況でございまして、もちろんこういう関係は、今後ますます密接にしていかなければならぬと存じますが、アメリカの国柄から申しましても、何か日本と組んで共同体を作るというようなことは、これはとても私は実現の見込みはないんじゃないかと思っております。ヨーロッパの方からも、アメリカに対して、いわゆる大西洋経済共同体というようなものを作りたいという希望をずいぶん表明されたようでありますが、アメリカは常にそれは強く拒否して参りました。やはり日本の関係あるいは中南米関係などから、そういう地方的なブロックに絶対に参加できないということを申しておるような状況でございまして、これはなかなかむずかしいのではないか。それからオーストラリア、ニュージーランドというような、比較的高度の産業構造を持っております国との間、これも私は今後関係をますます密接にしていかなければならぬと考えております。この両国とも、まだ日本に対してガットの三十五条を援用いたしております。これにつきましては、ことしの五月ごろから交渉を始めまして、何とか一つ解決していきたいというふうに考えておる次第であります。まあ繰り返すようでありますが、今そういうようなブロックを作る、ほかにブロックができたから日本としてもブロックを作らなければならぬという考え方は、私ども実は持っておらないのでありまして、ただ将来の問題といたしまして、東南アジアの経済状況がよくなって参り、あるいは非常に大きな問題としまして、政治的な関係がもっと安定して参るということになりますれば、またこれはおのずからいろいろ道が出てくるだろう。そういう場合には、もちろんわれわれとしましては、日本だけの利益だけではないのでありましょうが、東南アジアというものがもっと安定した基礎を得るということは望ましいことでありますから、そういう方向でもって検討もし、努力もして参りたいと思っております。
○佐藤尚武君 政府当局の苦心のあるところも、今の御説明でよくわかるのでありますが、何と申しましても、経済的にいって日本は全然孤立した形でもって世界貿易に乗り出さなければならぬというような羽目に陥っているということは今の御説明を伺っても明らかなようであります。これは日本にとりましては非常に心細いことでありまして、そうかといって、ほかの国と提携していくという望みもないようでありますし、何としてでも日本は単独で全世界にわたっての市場を開拓していかなければならぬということ、それは容易なことじゃないと思います。極東ないしは東南アジア諸国を糾合して、昔用いられた言葉ではありまするけれども、共存共栄の経済ブロックを作るということが今のところ望みがないという事態のようでありますが、ところが、これまでは東南アジアは極東地域において経済上日本に対抗して立つというような国はなかったのでありまするけれども、最近の中共の躍進ぶりを見まするときに、そういったような昔の夢を追っているようではこれは大へんな間違いが起きてくると思うのです。何といいましても、天然資源に大きな中共、それにソビエト連邦、この両国が政治的にがっちり手を組んで、特殊な立場に立って、そしてこの両国の工業の発展というのはこの数年来目ざましいものがあるように思われます。中共は今まで経済的には日本あたりでほとんど注目されていなかった。単に日本では中共貿易といって中共の貿易市場のことばかし考えていたと思われるのでありまするけれども、そういったような簡単な問題ではなくて、日本が今度は経済的に中共から圧迫されるという時代がおそかれ早かれ私はくるのではないかと思う。もう四、五年もたったならば中共貿易は片貿易になってしまって、そして日本は経済的に圧迫される、そういう時代がこないとは限らぬと思う。そうなってくると、目と鼻の先にえらい競争者ができてきて、そして中共の市場などということはとうてい日本にあてにならないのみならず、かえって圧迫される。そうするというと、日本はヨーロッパの市場からも締め出される。全世界を相手にして、特定の地域でなく全世界、各国に対して日本は貿易をしていくよりほかないという今の御説明でありまして、それすら非常な大きな圧迫を中共なりソビエトの方面から受けやしないかということを私は非常におそれるのです。でありますからして、この東南アジアの問題、極東の問題、経済的観点からしましてのそれらの地域に対する見通しの考え方というものは、よほどこれは真剣に日本としては考えていかなければならぬ問題であろうかと思うのであります。そういう点に関しまする私の懸念を申し添えまして、この点に対しまする私の質問は終わりたいと思います。
○政府委員(牛場信彦君) ただいまお示しの通り、私どもも戦前と状態が全然変わったことは、もうよく意識しているつもりでございまして、昔のように日本が東南アジアの市場をたとえば支配するとか、そういうようなことはとうていできないことであることは申し上げるまでもないことであります。また中共との関係につきましても、これはもちろん経済問題関係だけではなくして、いろんな観点から考えていかなければならぬことは、もうお説の通りであると存じております。しかし私どもは、偶然日本が世界で一番大きな共産圏の国、二つの隣国であって、相当ないろいろな影響を受けながら自由経済体制を維持して、しかも世界にまれなといいまするか、世界で一番高い発展を遂げてきたということは、これは非常に私は自信を持っていいのではないかと考えております。決して向こうだけが伸びておってこちらが非常に困っておるということではないのでありまして、昨年の日本の経済の発展なんかを見ましても、いろいろ問題はあるでありましょうけれども、現在の日本の大勢というものは非常な成果を来たしておる。これは世界に誇っていい のではないかと考えておるのであります。 それからまた、将来の市場の問題としまして、もっとヨーロッパに出なければならぬ、これはお説の通りであります。現在ヨーロッパの共同市場だけをとりましても、人口の点におきましても、貿易量の点におきましてもアメリカと匹敵する市場であります。これに対して日本はまだ総輸出量の五、六%しか出しておらない。アメリカに対しては総輸出量の三割以上が出ておるというわけでありまして、今後日本がさしあたり貿易を伸ばしていこうとすれば、どうしてもヨーロッパの市場を開拓していかなければならぬ。これにつきましては先ほどから申しましたように、いろいろ障害はありますが、具体的にはとにかく日本のいわゆる安値輸出というものに対して非常な恐怖心が向こうにあるわけでありまして、これをなくすことが第一であります。これにはいろいろ手段も考えておるわけでございます。 それからまた、ガットのワク内におきましても、特に日本のような問題に対しては、何か特別な解決法を考えていくべきだという機運も盛り上がってきておるわけでありまして、われわれの努力によりましては今後一、二年の間に何か成果を上げられるのではないかというふうに考えておる次第であります。
○委員長(草葉隆圓君) それでは、本日はこの程度といたしまして、次回は来たる十五日、火曜日、午前十時から開会をいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時十九分散会