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34回国会衆議院1960/02/01

本会議 第3号

発言数
25
登壇者
8
会派数
2
開催日
1960/02/01

会議録

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) これより会議を開きます。     ――――――――――――― 議長辞職の件

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) 議長加藤鐐五郎君から議長の辞職願が提出されております。これにつきお諮りいたします。まず、その辞職願を朗読いたさせます。     〔参事朗読〕    辞職願今般一身上の都合により辞職いたしたいので御許可願います  昭和三十五年二月一日     衆議院議長 加藤鐐五郎   衆議院副議長中村高一殿

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) 採決いたします。本件を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ――――◇―――――  議長の選挙

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) つきましては、これより議長の選挙を行ないます。  選挙の手続につきましては衆議院規則によることといたします。なお、念のため申し上げますと、投票は単記無名投票であります。諸君のお手元に配付してありますところの投票用紙に被選人の氏名を記載せられ、木札の名刺を添えて御持参あらんことを望みます。  これより点呼を命じます。     [参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。  これより名刺及び投票の計算を命じます。     〔参事名刺及び投票を計算〕

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) 投票総数三百五。名刺の数もこれと符合いたしております。本投票の過半数は百五十三であります。  これより投票の点検を命じます。点検の方法は、便宜上、同一投票は十票ずつ合算して読み上げることといたします。     〔参事投票を点検〕

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) 投票中、白票が三票あります。これは当然無効であります。  投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕       三百一点 清瀬 一郎君     〔拍手〕         一点 戸叶 里子君       外に白票 三

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) 右の結果、衆議院規則第八条により、清瀬一郎君が議長に当選せられました。     〔拍手〕     ―――――――――――――  議長選挙投票者の氏名    安倍晋太郎君  相川 勝六君    愛知 揆一君  青木  正君    赤城 宗徳君  赤澤 正道君    秋田 大助君  天野 公義君    天野 光晴君  綾部健太郎君    荒舩清十郎君  新井 京太君    井出一太郎君  飯塚 定輔君    池田 清志君  池田 勇人君    池田正之輔君  石坂  繁君    石田 博英君  一萬田尚登君    今松 治郎君  岩本 信行君    宇田 國榮君  植木庚子郎君    臼井 莊一君  内田 常雄君    内海 安吉君  江崎 真澄君    遠藤 三郎君  小川 半次君    小澤佐重喜君  大石 武一君   大久保留次郎君  大倉 三郎君    大島 秀一君  大坪 保雄君    大野 市郎君  大野 伴睦君    大平 正芳君  大森 玉木君    岡崎 英城君  岡部 得三君    岡本  茂君  奧村又十郎君    加藤 精三君  加藤 高藏君    鹿野 彦吉君  賀屋 興宣君    鍛冶 良作君  亀山 孝一君    鴨田 宗一君  川崎末五郎君    川島正次郎君  菅家 喜六君    菅野和太郎君  木倉和一郎君    木村 武雄君  木村 守江君    岸  信介君  北村徳太郎君    吉川 久衛君  清瀬 一郎君    久野 忠治君  倉石 忠雄君    倉成  正君  藏内 修治君    小泉 純也君  小金 義照君    小坂善太郎君  小島 徹三君    小林かなえ君  小林 絹治君    小山 長規君  河野 一郎君    河野 孝子君  河本 敏夫君    佐々木盛雄君  佐藤 榮作君    齋藤 邦吉君  櫻内 義雄君    笹山茂太郎君  椎熊 三郎君    椎名悦三郎君  重政 誠之君    篠田 弘作君  島村 一郎君    周東 英雄君  鈴木 正吾君    砂原  格君  瀬戸山三男君    園田  直君  田口長治郎君    田中伊三次君  田中 角榮君    田中 龍夫君  田中 正巳君    田邉 國男君  高石幸三郎君    高瀬  傳君  高田 富與君    高橋 禎一君  竹内 俊吉君    竹下  登君  竹山祐太郎君    谷川 和穗君  千葉 三郎君    中馬 辰猪君  津島 文治君    綱島 正興君  寺島隆太郎君    渡海元三郎君  徳安 實藏君    床次 徳二君  内藤  隆君    中井 一夫君  中垣 國男君    中曽根康弘君  中村 幸八君    中村三之丞君  中山 マサ君    永田 亮一君  永山 忠則君    灘尾 弘吉君  夏堀源三郎君    楢橋  渡君  南條 徳男君    二階堂 進君  丹羽喬四郎君    丹羽 兵助君  西村 英一君    西村 直己君  根本龍太郎君    野田 武夫君  馬場 元治君   橋本登美三郎君  橋本 正之君    橋本 龍伍君  長谷川四郎君    長谷川 峻君  服部 安司君    濱野 清吾君  早川  崇君    平井 義一君  平塚常次郎君    平野 三郎君  廣瀬 正雄君    福家 俊一君  福井 順一君    福井 盛太君  福田 赳夫君    福田 篤泰君  福田  一君    福永 一臣君  福永 健司君    藤枝 泉介君  藤本 捨助君    藤山愛一郎君  船田  中君    古川 丈吉君  保科善四郎君    保利  茂君  坊  秀男君    星島 二郎君  細田 義安君    堀内 一雄君  堀川 恭平君    本名  武君  前尾繁三郎君    前田 正男君  益谷 秀次君    増田甲子七君  松澤 雄藏君    松田竹千代君  松野 頼三君    松村 謙三君  松本 俊一君    三池  信君  三浦 一雄君    三木 武夫君  三田村武夫君    三和 精一君  水田三喜男君    南  好雄君  村上  勇君    村瀬 宣親君  毛利 松平君    森   清君  森下 國雄君    八木 一郎君  保岡 武久君    山口 好一君  山口六郎次君    山崎  巖君  山下 春江君    山田 彌一君  山手 滿男君    山村新治郎君  山本 勝市君    吉田 重延君  渡邊 本治君    渡邊 良夫君  亘  四郎君    阿部 五郎君  赤路 友藏君   茜ケ久保重光君  淺沼稻次郎君    飛鳥田一雄君  淡谷 悠藏君    井岡 大治君  石川 次夫君    石野 久男君  石橋 政嗣君    石村 英雄君  板川 正吾君    小沢 貞孝君  大原  亨君    太田 一夫君  岡本 隆一君    角屋堅次郎君  河上丈太郎君    河野  正君  木原津與志君    菊地養之輔君  北山 愛郎君    久保田鶴松君  黒田 寿男君    小林  進君  五島 虎雄君    河野  密君  佐々木更三君    佐藤觀次郎君  佐野 憲治君    坂本 泰良君  櫻井 奎夫君    島上善五郎君  下平 正一君    鈴木茂三郎君  田中 武夫君    田中 稔男君  多賀谷真稔君    高田 富之君  滝井 義高君    楯 兼次郎君  辻原 弘市君    戸叶 里子君  堂森 芳夫君    中井徳次郎君  中澤 茂一君    中嶋 英夫君  中原 健次君    中村 高一君  成田 知巳君    西村 力弥君  野口 忠夫君    日野 吉夫君  平岡忠次郎君    帆足  計君  堀  昌雄君    松浦 定義君  松平 忠久君    松本 七郎君  三鍋 義三君    三宅 正一君  森島 守人君    八木 一男君  八木  昇君    矢尾喜三郎君  柳田 秀一君    山田 長司君  山中 吾郎君    山中日露史君  山本 幸一君    横路 節雄君  吉川 兼光君    和田 博雄君  伊藤卯四郎君    池田 禎治君  今澄  勇君    今村  等君  受田 新吉君    内海  清君  大貫 大八君    大矢 省三君  加藤 鐐造君    春日 一幸君  神田 大作君    菊川 君子君  小平  忠君    小牧 次生君  小松信太郎君    佐々木良作君  竹谷源太郎君    塚本 三郎君  堤 ツルヨ君    中村 時雄君  西尾 末廣君    西村 榮一君  廣瀬 勝邦君    北條 秀一君  松尾トシ子君    武藤 武雄君  門司  亮君    本島百合子君  山下 榮二君    志賀 義雄君      ――――◇―――――

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) これより議長を御紹介いたしたいと思います。     〔副議長中村高一君議長清瀬一郎君を演壇に導く〕

中村高一日本社会党副議長

○副議長(中村高一君) ただいま本院議長に御当選になりました清瀬一郎君を御紹介いたします。     〔拍手]

清瀬一郎自由民主党議長

○議長(清瀬一郎君) 本日、私は、諸君の御推挙により、衆議院議長の職につくことに相なりました。まことに光栄の至りでございます。感激にたえません。つきましては、諸君の御協力を得て、常に公平無私、国会の円満なる運営をはかる覚悟でございます。新しい年を迎え、複雑なる国際情勢のもとにおいて、わが国の繁栄を期し、世界平和の確立に寄与するため、国民の国会に対する期待はますます大きなものがあると存じます。(拍手)従って、議長の職責もまた、その重きを加えるに至りました。最善の努力を傾けて、議会政治の健全なる発達と国会運営の正常化に努め、もって国民の信頼にこたえたいと念願いたしております。(拍手)  ここに、就任に際して、切に皆様の御支援と御鞭撻をお願い申し上げて、ごあいさつといたします。(拍手)     〔議長清瀬一郎君議長席に着く〕

清瀬一郎自由民主党議長

○議長(清瀬一郎君) この際、小林かなえ君から発言を求められております。これを許します。小林かなえ君。     〔小林かなえ君登壇〕

小林錡自由民主党

○小林かなえ君 先例によりまして、僭越ながら、議員一同を代表いたしまして、ただいま御当選になりました議長に対し祝辞を、また、前議長に対して謝辞を申し述べたいと存じます。  御承知のごとく、ただいま清瀬一郎君が議長の職につかれました。ここに、衷心より祝意を表します。  申すまでもなく、清瀬君は、議会政治に対し多年の経験を有せられ、その高邁なる人格識見と、練達たんのうな御手腕とは、われわれの常に尊敬してやまないところでありまして、本院を代表する議長の重職に最もふさわしい方であると信ずるのであります。(拍手)  国家多事の際、わが国会の動向は内外のひとしく注目するところでございます。われわれは、清瀬新議長が、今後、議院の明朗にして円満な運営にその手腕力量を遺憾なく発揮し、もって国会の権威を確立せられることを信じて疑わないものでございます。(拍手)  次に、このたび職を退かれました加藤前議長は、その御在職期間中はまことに多事多端でありましたが、終始、議会政治の擁護に全力を尽くされました。(拍手)その御努力と御労苦に対しては深く感謝の意を表する次第でございます。(拍手)  今後、何とぞ国家のため一そう御自愛、御健闘あらんことをお祈り申し上げます。(拍手)      ――――◇―――――  岸内閣総理大臣の施政方針に関する演説  藤山外務大臣の外交に関する演説  佐藤大蔵大臣の財政に関する演説  菅野国務大臣の経済に関する演説

清瀬一郎自由民主党議長

○議長(清瀬一郎君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説、菅野国務大臣から経済に関する演説のため発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣岸信介君。     〔国務大臣岸信介君登壇]

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 第三十四回国会の休会明けに臨み、当面する諸問題と、これに対処する施政方針を明らかにしたいと思います。  まず、外交施策の基本に関して、私の所信を率直に披瀝いたしたいと存じます。  私は、このほど、日米両国間の相互協力と安全保障に関する条約等に署名のため訪米いたし、あわせてカナダを訪問の上帰国いたしたのであります。その際、米国におきましてはアイゼンハワー大統領及びハーター国務長官と、カナダにおきましてはディーフェンベーカー首相と親しく会談いたし、現在の国際情勢を検討するとともに、今後の日米、日加友好関係の強化、世界平和への努力等に関して十分に意見の交換を行なったのであります。  その際、私は、これら両国の首脳、特にアイゼンハワー大統領が世界平和のためになみなみならぬ熱意と決心とを有せられることに深い感銘を受けたのでありまして、同大統領が、来たるべき巨頭会談に際して、国際的緊張緩和のためにあらゆる努力を払うべき旨披瀝せられましたことは、まことに力強く感じたところであります。  近く東西巨頭会談を迎えようとする世界の趨勢は、自由主義社会と共産主義社会とが共存し得るための最小限度の共通の場を見出そうとする方向に向かっているのであります。しかも、この機運は、東西の集団安全保障を背景とする軍事的均衡のもとにかもし出されているのであります。従って、現在の段階におきましては、平和と共存への努力が実を結ぶことを強く希望しつつも、なお自由諸国がみずからのかたい決意と団結と力とを保つ必要を認めざるを得ないのであります。(拍手)  今や、世界は人類の将来を決する上にきわめて重要な段階に入りつつあります。この時期にあって何よりも大事なことは、国際社会を形づくるすべての者が、口に平和を唱えるのみでなく、みずから平和への道を実践することであります。(拍手)すなわち、すべての国家、国民がひとしく国連憲章の精神に徹底し、人間の尊厳と自由とを尊重しつつ、国際紛争はすべてこれを平和的に解決するという原則を実践することによって、初めて本来の意味における世界の雪解けも期待し得るということであります。  今回の訪米の際、アイゼンハワー大統領と私は、日米両国の現在の関係が、このような認識の上に、主権平等と相互協力の原則に基づいて結ばれたものであり、両国は、単に政治面におけるのみならず、経済面におきましても、ひとしくその利益を共通にするものであるということを、あらためで確認したのであります。(拍手)ここに、日米両国の友好関係は、今日まで多少とも残存しておりましたその戦後的色彩を一掃し、全く新たな段階に入ったのであります。  今回署名いたしました両国間の相互協力及び安全保障条約は、世界のすべての国々が平和と自由とのために国連憲章の原則を厳格に実践し、自国の安全を国連の平和と安全を維持する機能にゆだねることができるようになるまでの間、理想と進路とを同じくする日米両国が、厳に国連憲章のワク内において真に対等の協力者として団結を強固にし、それぞれの国家及び国民の平和と安全とを擁護すべきことを約束したものであります。(拍手)本条約は、国連憲章によって否認された侵略行為が発生しない限り、決して発動されることのない平和と自由のための条約なのであります。(拍手)従って、両国が極東の平和と安全の確保に力を合わせますことは、そのまま、また世界平和の維持につながるものでありまして、両国のこのような努力が世界の緊張緩和の方向に逆行するものであるかのような見解は、本条約の本旨とする平和的目的を全く見誤ったものと申すべきであります。(拍手)  私は、わが国外交の基調を、自由主義世界との緊密な提携に置いているのでありますが、もとより、これは決して共産主義の世界を敵視いたすものではありません。わが国は、自由主義世界の一員として、共産主義世界との共存の道を見出すための熱意と努力を欠くものではありません。ただ、平和と共存の道は、相互の立場の尊重と内政不干渉の原則が誠実に実践されることによってのみ可能であると確信いたします。(拍手)わが国といたしましても、東西会談をもたらした世界情勢の推移を見守りつつ、平和外交の本旨に従い、あとう限り善隣外交を推進いたしますことは、私がつとに強く念願しているところであります。  さらに、今回の訪米に際しまして、米国政府との間に意見の一致を見ました点は、日米両国がアジアの発展のために今後とも一そう密接に協力すべきこと、及び、アジア問題の国際的討議にわが国が積極的に参加することが望ましいということであります。特に、低開発地域の経済的発展を促進することが世界平和に資するゆえんであるという認識の上に、わが国民が今後ともアジアの経済的発展のために果たすべき使命の重要性については、日米共同声明にも述べられているところであります。御承知のように、わが国は、本年初頭より国連経済社会理事会の理事国としてその活動を開始いたしたのでありますが、特に、国連を通じて低開発諸国の経済開発に協力いたしますことは、単にこれら諸国の繁栄と福祉に資するゆえんであるのみならず、同時にまた世界の平和とわが国自身の繁栄にも資するところ大なるものがあると信ずるのであります。  政府は、本年が真の意味の雪解けを世界にもたらし始める年であることを衷心念願いたしつつ、米国を初めとする自由民主主義諸国と相携え、平和を愛好する国際社会の一員として、いよいよ平和と自由のために積極的にその力をささげるべく、その決意を新たにするものであります。(拍手)  顧みまするに、終戦後ここに十数年、この間、わが国の経済はたゆまざる国民の努力と英知とによって飛躍的な発展を遂げて参りました。すなわち、最近十年間の経済成長率は戦前の実績を上回り、欧米先進諸国に比しおよそ二倍の速度を示しており、それとともに国民生活も向上し、最近では、国民一人当たりの消費水準は戦前に比し三割強の上昇を示しております。このようにすみやかな経済の成長率は世界の驚異とされており、まことに同慶にたえないところであります。われわれは、この際、過去の輝かしい経済回復の足取りを回顧し、自信と誇りを持って今後の国力発展の施策を進めるべき時期に際会していると思うのであります。  最近の国内経済を見ますと、生産活動の上昇は著しく、国際収支は依然として黒字基調を維持し、これとともに雇用情勢は改善され、国民生活も一段と充実して参っております。しかしながら、最近の企業の根強い投資意欲や旺盛な資金需要にもかんがみ、政府といたしましては、今後、経済が行き過ぎに陥ることなく、引き続き全体として堅実な姿をもって伸張するよう配慮いたす所存であります。  また、世界経済は、本年もおおむね順調に推移するものと考えられますが、商品、資本などの国際流通の活発化による相互利益を増進するための貿易・為替自由化の動きは急速に進展しつつあります。わが国も、自由主義諸国の一員として、世界の大勢におくれをとることなく、貿易・為替の自由化を推進し、わが国経済の一そうの発展をはかっていく方針であります。これが推進に伴い、わが国産業の一部には多少の摩擦を生ずることもあろうかと思いますが、政府におきましては、自由化に対する所要の準備に遺憾なきを期しつつ施策を進めていきたい考えであります。民間企業におかれても、国際競争力を強化するため、設備の近代化、自己資本の充実、経営の合理化など、体質の改善にあらゆる努力を傾注されるよう希望してやみません。  このような情勢のもとにおける今後の経済運営の基本的態度としては、経済の安定と均衡を堅持し、着実な経済成長を実現して参ることにありますが、なお、さらに長期的な観点から、今後おおむね十年間に国民所得を倍増し、もって雇用を改善し、国民経済と国民生活の均衡ある発展をはかるため、新しい経済計画の策定について現在準備を進めております。政府は、この計画の推進にあたりましては、各種産業間の跛行的発展の是正などに十分意を用い、経済全般が均衡のとれた発展を遂げるよう留意することはもちろんであります。  昭和三十五年度の予算と財政投融資計画は、右のような基本方針に基づき、財政の健全性を堅持し、財政面から経済に刺激を与えることを厳に避けたのであります。これとともに、この予算におきましては、当面の緊急課題である国土保全及び災害復旧対策に最重点を置き、その対策に遺憾なきを期したのでありますが、その他の重要経費につきましても、世界経済における貿易・為替自由化の大勢に即応しつつ、わが国経済を一そう安定した成長に導き、もって国民所得倍増の基礎的諸条件を整備するために、社会保障制度の充実、文教及び科学技術の振興、農業基盤の整備、中小企業対策、貿易の振興、東南アジアを中心とする海外経済協力の推進及び道路、港湾、工業用水等を主体とする産業基盤の強化などについて特に配慮を加える等、諸般の対策につき充実を期したのであります。(拍手)  明年度予算の詳細については、これを関係閣僚の演説に譲り、私は、施策のおもなるものについて述べたいと思います。  まず、治山治水等国土の保全については、民生の安定、産業基盤の強化等の見地から、政府は、つとに施策の重点としてその促進をはかって参りましたが、昨年の大水害の経験にもかんがみ、明年度予算においてはこれらの国土保全事業を政府の最重点施策として取り上げ、新たな構想のもとに総所要経費一兆円余に及ぶ治山治水十カ年計画を樹立し、計画的かつ総合的に治山治水及び高潮対策事業の強力な推進をはかることにいたしております。なお、これらの事業を実施するため、治水特別会計の設置等必要な諸体制についても、あわせて整備する所存であります。  社会保障の充実は、かねて私が最も重視してきたところであります。昨年発足した国民年金制度は、本年三月、老齢・障害・母子の三福祉年金が実施される運びとなり、明年四月からは拠出制の国民年金制度が発足することとなりますが、政府は、この制度の運営の円滑な実施のため、所要の準備に遺漏なきを期する所存であります。昭和三十五年度末を目標とする国民皆保険の達成は、関係各方面の深い理解と協力とによりきわめて順調に進展を見ておりますが、医療金融公庫の設立、環境衛生諸施策の拡充と相待って、国民保健の向上への大きな飛躍が期待されるのであります。また、住宅問題についても、明年度は特に低額所得者の住宅供給に力を注ぎたい所存であります。  文教の振興は、わが国が世界の進運に伍して将来の繁栄を確保するための根本であります。いわゆるすし詰め学級解消のため、文教諸施設を整備し、教職員定数を充実するとともに、道徳教育を振興し、基礎学力を高める等、教育内容の刷新充実に遺憾なきを期したいと存じます。(拍手)  世界各国の科学技術の進展は近年特に目ざましく、その影響するところは、政治・経済・外交等広く国政の各分野に及び、今や一国の経済成長と国民福祉の向上のかぎを握る重要因子であります。政府は、従来とも青少年に対する理科教育・産業教育の充実、大学・試験研究所の整備等に特別の留意を払っておりますが、特に明年度は、基礎科学の強化はもちろん、科学技術振興の長期的かつ総合的基本方策を樹立し、科学技術振興の確固たる体制を確立いたしたい決心であります。  農林漁業の振興については、その生産性の向上、農漁民の経済的安定等を目途として、将来にわたる基本政策を樹立する所存でありますが、当面、他産業との関係において均衡的発展をはかることに重点を置き、農業基盤の整備を強力に推進するとともに、農林水産物の価格の安定と流通の合理化には積極的措置を講ずることといたしております。なお、農漁村子弟対策を強化し、特に二、三男の就業機会の拡大をはかる考えであります。  中小企業については、政府は、つとにその振興策に力を注いで参ったのでありますが、明年度におきましては、さらに施策の飛躍的強化をはかるとともに、特に商工会の活用を中心として小規模事業者の事業活動の促進に意を用いる所存であります。  地方財政については、財政健全化のための諸施策の推進と経済状況の好転等と相待ち、ここ数年来著しく改善されて参りました。今後とも、国家財政と地方財政との調整を保ちつつ、地方財政の長期的健全化の確立を期したい所存であります。幸い、明年度においては、地方税等に相当の自然増収が生ずる見込みでありますが、他方、住民税の減税に伴う地方歳入の減収も考えられますので、当分の間、所要の財源措置を講ずることといたしました。  雇用問題については、政府は、経済の安定的成長をはかるとともに、特に公共事業と財政投融資との増大により積極的な雇用の拡大を期したい考えであります。また、最近特に著しい技術革新に即応する近代的技能労働力の養成と確保との必要に対処し、職業訓練制度の積極的推進に努めるとともに、農漁村、石炭産業等の労働力移動を円滑にし、もって就業構造の近代化をはかりたいと思います。  わが国の労働運動が、労働者諸君の良識によって逐年健全化の道をたどりつつあることは、まことに同慶にたえません。わが国が世界の先進諸国に伍して繁栄を得るためには、労働者諸君が社会的責任を自覚し、公共の福祉を無視することなく、秩序正しくその正当な権利を主張し、行使するという健全な労働慣行と労働秩序の確立がはかられなければならないのであります。(拍手)  遺憾ながら、今なお、労働運動あるいは大衆運動の一部には、法秩序を無視して、もっぱら政治闘争や権力闘争を推進することにより、その特殊な政治的意図の実現をはかろうとするものがあります。このようなことは、民主政治の基盤たる法治主義を否定するものでありまして、政府は、これに対し断固たる態度をもって臨む決意であります。(拍手)また、前途有為な学徒諸君の一部に見られる暴力的破壊行動に対しては、特に深い反省を促すものであります。(拍手)  思うに、わが国永遠の繁栄を期する政治の前提として忘れてならないのは、青少年と婦人の生活並びに文化の向上であります。政府は、社会教育の振興、スポーツの普及奨励、母子保健の充実はもちろん、青少年及び婦人、特に母性に対する諸施策を、社会・経済・文化のあらゆる分野において強力に推進する考えであります。わが国の将来をになう青少年諸君と婦人諸君が、明るい希望に燃えて心身の修練に励み、社会におけるめいめいの重要な役割を正しく自覚され、強い自信と誇りを持ってわが国の発展に貢献せられるよう念願してやみません。(拍手)  以上申し述べたところで明らかなように、明年度予算の特色は、健全財政の線に沿って、政府及び与党の重要な公約をことごとく取り入れ、その実現をはかった予算であるということであります。(拍手)私は、この予算の実施により、わが国の経済はいよいよ安定した成長発展を続け、国民所得倍増の基礎的諸条件は整備され、国民生活も向上し、雇用も拡大し、福祉国家の建設に巨歩を進めるものと確信いたす次第であります。(拍手)  最後に、私は、民主政治のあり方について一言したいと存じます。  民主政治が真の成果を上げるためには、各政党が、国会という共通の場において、良識と寛容の精神に立脚して、あくまでも言論によって審議を尽くし、最終的には多数決によって決するという議会主義が根底になければならないと信ずるのであります。(拍手)  しかるに、最近、国会における審議権を放棄して、話し合いの場から離脱することがしばしばであり、他面、院外においては、国会周辺における集団示威運動による言論府に対する不当の圧迫等が繰り返され、ために、国会運営の正常化が阻害されるのみならず、国会の神聖を傷つけ、議会政治の秩序を乱したことは、まことに遺憾のきわみと申さなければなりません。(拍手)  この際、われわれは、議会主義に対する認識を新たにし、国会の権威を高め、憲政の常道を確立することについて、渾身の努力を尽くしたいと心から願うものであります心(拍手)   ここに、所信の一端を述べ、国民諸君の一段の理解と協力を切望してやみません。(拍手)     ―――――――――――――

清瀬一郎自由民主党議長

○議長(清瀬一郎君) 外務大臣藤山愛一郎君。     〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) 第三十四回通常国会の開会に際し、外交方針に関する政府の所信を明らかにいたします。  最近における米ソ両国首脳の会談以来、東西間の緊張緩和のための努力の道が開かれましたことは、世界平和を念願とするわが国といたしましても、衷心歓迎するところであります。一歩を誤れば人類は滅亡のほかない今日、平和の保障なくしては、われわれは絶えざる不安におびえるほかないのでありまして、核兵器の唯一の被害者たるわが国外交の基調は、あくまでも絶対の平和を求めることにあるのであります。(拍手)しかし、現在なお欧州におけるベルリン問題を初め、アジア各地においても最近一連の憂慮すべき事態が発生しており、局地的な形においては、なお武力をさえも伴う紛争発生のおそれがあるというのが世界の現状であります。政府は、キャンプ・デービッドにおいて米ソ首脳間にあらためて確認されました「国際問題の平和的解決」という原則が今後あらゆる場合に誠実に履行されることを期待するものであります。  さらに、近く東西両陣営の首脳会談が行なわれますが、これは、自由主義世界と共産主義世界が平和のうちに共存し得る共通の場を話し合いによって見出そうとする努力にほかならないのであります。しこうして、このような話し合いの空気は、人類の存亡にもかかわる科学兵器の異常な発達を背景としてかもし出されたものでありまして、これがいわゆる現段階における「雪解け」の実情であります。この「雪解け」をなるべくすみやかに実現するためには、一枚岩といわれる共産主義諸国の強固な体制に備え、民主主義諸国が共通の政治的信条に基づきその結束を固めて共産側との話し合いに臨むことが肝要でありまして、かかる態度をもって忍耐強い交渉を行なうことにより初めて公正かつ合理的な解決策を見出し得るものと信ずるのであります。(拍手)  われわれは、世界の平和維持機構としての国際連合によって世界各国の安全が十分に保障される日の参りますことを希望するものであります。しかしながら、今日、国連の安全保障の機能にもなお限界がありますことは、何人もこれを認めざるを得ないのでありまして、理想はともかくとし、現在国の安全をあげて国連に託することは遺憾ながらできない実情にあります。従って、個々の国家が、国連憲章の目的と原則に従い、そのワク内においてこれに協力しつつ、同時に、これを補う措置として、政治的にも経済的にも共通の基盤に立つ国との間に集団安全保障の道を講じますことが、その平和と自由を守りますために最も現実的であり、また妥当な道であると確信するものであります。(拍手)今回政府が署名いたしました日米新安全保障条約も、ひとえにかかる趣旨によるもので、しかも、現在東西両陣営の諸国が締結している各種の安全保障条約に比較いたしますれば、新条約がもっぱら平和を目的とする最も控え目な防衛的性格のものであることは、きわめて明瞭であります。(拍手)  新条約の基本的性格は、あくまでも国連憲章を基礎とし、国連の安全保障機能を補うことを目的とするものでありまして、国連憲章が否認しております侵略行為が発生しました場合のほかは、いかなる意味におきましても本条約による防衛措置が発動されることはないのであります。換言いたしますれば、本条約は、日米両国が国連憲章の目的と原則に従ってのみ行動することを明らかにしたものでありまして、この意味で、もっぱら平和と自由を擁護するための条約にほかならないのであります。従って、極東の平和と安全のために米軍が防衛措置をとることを余儀なくされます場合にも、当然、侵略行為の発生が前提とされているものでありまして、そのための自衛措置は直ちに国連に通報され、国連の平和及び安全の回復維持の措置にゆだねらるべきことを明確にいたしておるのであります。すなわち、事前協議を待つまでもなく、国連憲章に違反した行動は、条約上の義務として、元来あり得ないのであります。  しかるに、共産主義陣営におきましては、純粋に防御的であり、かつ平和的であるこの安全保障体制を目して、戦争発生の脅威を増大するものであると非難を加えており、特にソ連政府は、一月二十七日付覚書をもって、本条約の調印に藉口して、わが北方領土の引き渡しに関する約束をほごにせんとするがごとき態度を示して参ったのであります。  およそ、自国の安全保障問題は、それぞれの国が置かれている環境に従って国民自身が決定すべきところであり、本来他国の干渉を許さない性質の問題であります。しかも、新条約が、侵略行為が発生しない限り発動され得ないものであることは、前に申し述べた通りであります。さらに、昭和三十一年十月十九日の日ソ共同宣言において厳粛に行なった歯舞、色丹の引き渡しの約束を一方的に変更するがごときことは、申すまでもなく、国際法上断じて許されないところであります。(拍手)国際約束が守られない限り、国際関係の緊張緩和はおろか、国際秩序の安定もあり得ません。政府としては、近く、この趣旨から、ソ連の反省を求めるため所要の措置をとる所存であります。(拍手)  現行条約も新条約と同様の基本的性格を有するものでありますが、講和成立当時の特殊な事態を背景として締結された関係上、必ずしも現在のわが国の地位と国民感情にそぐわぬ点があったのであります。よって、今回、これらの点をすべて改定した新条約を締結いたすことにより、現在の日米関係によりよく適合せしめるとともに、両国が真に対等の立場に立って緊密に協力し得る体制を整えた次第であります。  条約改定の経緯及び内容等の詳細につきましては、別途、同条約の御審議を願う際に、その趣旨を御説明いたす所存であります。  顧みまするに、今や、わが国は、敗戦とそれに続く占領の時代を経て十数年を経過いたしました。その間、当時の政府が、一部の国民の反対にもかかわらず、平和条約の早期締結を決意いたしましたゆえんのものは、すみやかに戦争状態を終結し、平和関係を樹立することによって、わが国の自由独立を回復し、その基礎の上にわが国の経済復興と繁栄の道を開くことが、わが国将来のために最も適切な措置であると、かたく信じたためであります。自来、わが国は、賠償問題の解決をはかりますとともに、共産主義諸国家をも含め、世界のほとんどすべての国とすでに国交を回復し、国際社会の有力なる一員としての地位を獲得いたしました。さらに、今回、日米全く対等の立場より新安保条約を締結することにより、従来存在した占領行政色を払拭し、ここに戦後処理の諸懸案をおおむね解決し得たのであります。政府は、この機会に、戦後の苦難の時代にあって、いわゆる単独講和の道を選んだ当時の政府の決断に敬意を表するとともに、今や世界平和への新たなる出発をなすべき時期であると考えるのであります。(拍手)すなわち、今後のわが国外交上の課題は、世界平和の樹立に寄与しつつ、わが国民の繁栄と福祉を増進するため、建設的、前進的外交施策を自主的立場より展開することにあるのであります。今こそ、私は、当面のわが外交施策の重点として、次の三点を強調いたしたいのであります。  第一は、平和のための外交の推進であります。すなわち、世界における緊張緩和の努力に対し、積極的に協力せんとするものであります。  政府といたしましては、現在の東西両陣営間の話し合いの空気をのがすことなく、忍耐強い交渉により、第二次世界大戦後の欧州及び極東における重要な政治的諸懸案が解決に至ることを強く期待し、その解決のため、わが国として可能な限りの協力を惜しまないものであります。また、軍縮問題につきましては、科学兵器の発達とこれら兵器の持つおそるべき破壊力にかんがみ、核兵器を含む軍備全般についての規制、縮小が、世界のすべての国家にとっていよいよ緊急かつ重要な課題となっております。政府といたしましては、このような全面的軍縮についての交渉が進展し、有効な管理を伴う国際的軍縮計画について一日も早く合意が達成され、人類全体の願望にこたえる時期の到来するよう衷心より希望し、そのため、近く開催予定の十カ国軍縮委員会に対し、国連の内外において可能なあらゆる支持と協力を与える所存であります。なお、一昨年十月以来米英ソ三国間で交渉中の核実験中止協定は、全面的軍縮交渉の進展の試金石ともなるものでありますから、この協定の成立は、わが国従来の主張にもかんがみ、最も重視するものであります。  第二は、善隣外交の推進であります。すなわち、わが国の外交方針として、世界のいずれの国ともよき隣人として平和の中に共存していこうとするものであります。  右は、平和外交の趣旨よりしても当然のことであり、また、世界の緊張緩和を促進するためにも必要かつ望ましいところでありますが、これを達成するためには、各国とも互いに内政不干渉の原則を厳守する必要があるのであります。特に、わが国は、アジアの一国として、近隣のアジア諸国との友好関係を深めるため努力せねばならないのでありますが、あまりに近接しております地域相互の間には、とかく、誤解や、いわれのない不信感が生じがちなものであります。それだけに、このような地域相互の関係を改善いたしますためには、双方に十分な理解と努力が必要であります。  政府は、この意味において、今日まで日韓交渉を忍耐強く続行して参ったのでありますが、今後とも、誠心誠意、両国関係の調整に努める方針であります。  中共が大陸に政権を樹立して以来、相当の年月を経過し、経済建設その他の実績を積み重ねつつあることを事実として認めるにやぶさかなものではありません。また、国際政治の面におきましても、中共の問題が、軍縮その他に関連して次第に表面に出つつあることも、否定しがたいところであります。他面、中共の動向について各国の間にある種の不安が存することも、これまた事実であります。中国大陸は、それがわが国に近接し、古来わが国と深い関係にあったことは認めねばならないのでありますが、現在、両者間の関係の調整は、遺憾ながら満足ではないのであります。この問題は、元来、世界政治の流れの中で解決されねばならぬ多くの要素を含んでいるのでありますが、わが国独自の立場から、中共側の誤解を解き、現状の打開をはかることも必要と考えるのであります。わが国といたしましては、このような両面より中共大陸との関係を将来にわたって考慮していく必要があると思うのでありますが、私は、中共側においても、いたずらにおのれの身を高くする非妥協的態度をとることなく、この際、わが国の善隣外交の立場を正しく理解し、日中貿易の促進と善隣関係の樹立に資するよう、進んで現在の障害除去に努めることを特に希望するものであります。(拍手)  第三は、繁栄のための外交の推進であります。すなわち、低開発諸国に対する経済協力の推進と世界貿易拡大の問題であります。  低開発諸国の多くは、独立後日なお浅く、強い民族意識に燃えております反面、経済的、社会的基盤はいまだ強固とは申しがたく、そのため政治的にも不安定な国が多いのでありますが、世界の真の平和と繁栄は、これら諸国の経済開発と生活水準の向上なくしては達成し得ないのであります。御承知の通り、わが国は、これら新興諸国に対し、従来とも、各種の経済ないし技術協力を行なって参ったのでありますが、最近、欧米の先進工業国がこれらの新興諸国の経済発展に一そうの協力を行ない、かつ、この協力に関し国際的調整をはからんとする機運が強まってきており、わが国としても、今後とも、国連を初め、いわゆる第二世銀等、種々の国際機関を活用し、また、適宜、先進工業国とも協調の上、わが国力の許します限り、東南アジア諸国を初めとする新興諸国の経済発展に貢献していく所存であります。現在、政府は、経済協力のための特別基金の活用を企画いたしておりますが、国会の御承認を得ました上は、その積極的運用をはかりたいと考えております。長い目で見ますれば、これこそ、わが国経済発展の基盤を確保するゆえんであり、また、世界平和の促進に積極的に寄与するものであると信ずるものであります。(拍手)  わが国の貿易は、近年著しく伸張し、戦後のわが国経済の復興と発展を著しく促進したのであります。しかしながら、わが国を取り巻く世界経済の潮流もまた最近きわめて急であり、特に欧州においては、域内貿易の自由化を掲げて、欧州経済共同体及び欧州自由貿易連合という二つの経済協力体制の成立を見たのであります。米国及びカナダもこれに無関心たり得ず、本年一月には、いわゆる大西洋経済会議が開催せられたのであります。わが国といたしましては、欧州の経済統合が域外諸国の差別をもたらすことのないよう、かねがね要望して参ったのでありますが、今後も、この点につき、米国、カナダその他の域外諸国と相携えて、大いにわが国の立場を強調して参りたいと存じております。他方、わが国といたしましても、欧州諸国にこれら自由化を望む以上は、戦後の過渡期に見られたごとき複雑な貿易及び為替の統制を続けることはもはや許されないのでありまして、今や貿易・為替の自由化は世界の大勢となっているのであります。そして、世界の諸国が相ともにこの貿易・為替の自由化を進めることにより初めて世界経済の長期的な安定と繁栄とが期待されるのでありまして、わが国の経済外交もこの線に沿って強力に推進して参りたいと存ずる次第であります。  以上、本通常国会の冒頭にあたりまして、当面の外交問題に対する政府の所信を披瀝いたし、国民各位の御理解と御支援とを仰ぐ次第であります。(拍手)     ―――――――――――――

清瀬一郎自由民主党議長

○議長(清瀬一郎君) 大蔵大臣佐藤榮作君。     〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) ここに、昭和三十五年度予算を提出するにあたりまして、わが国の当面する内外の経済情勢と、これに対処すべき政府の財政金融政策の基本方針を明らかにするとともに、予算の大綱を説明いたしまして、国民各位の御協力を得たいと思います。  私は、まず、昨年初来、わが国経済がまことに力強い発展の過程をたどっておりますことを、国民各位とともに心から喜びたいと存じます。(拍手)  昭和三十四年のわが国経済は、各般にわたり目ざましい上昇を遂げて参りました。すなわち、鉱工業生産は年間二四%、輸出は二〇%に及ぶ記録的な伸びを示し、これに伴い、雇用情勢も一段と好転を見せ、国民生活も一そう豊かさを加えて参ったのであります。しかも、国際収支は、この間、終始、黒字基調を持続し、昭和三十四年末の外貨準備高は十三億二千二百万ドルに達するに至りました。また、物価につきましても、最近に至り、比較的落ちついた動きを見せております。わが国経済が、安定を保持しつつ、このような発展を見ることのできましたことは、国民各位のたゆまざる勤労と蓄積の努力の結実であると考えられるのであります。  他面、世界経済の情勢を見ますと、アメリカ経済は、過般の鉄鋼争議の解決により、本年は一段と発展することが期待され、西欧経済も引き続き好況を持続するものと予想されます。また、低開発国援助に関する国際協力の機運も漸次活発化する等、総じて、世界経済は新たな拡大成長に向かうものと考えられるのであります。  このような内外の経済情勢を考えますれば、昭和三十五年のわが国経済の前途には明るいものがあると言えるのであります。この順調な経済の発展を長期にわたり着実に持続していくことが、わが国経済の課題であると存ずるのであります。  ただ、ここに特に注目する必要があると思いますのは、西欧諸国を中心とする貿易・為替の自由化が予想以上の速度で進捗していることであります。このことは、自由な通商を通じて資源の効率的な配分と利用をはかり、世界経済を繁栄に導こうとする世界各国の強い意欲を反映するものにほかなりません。かかる世界の流れの中にあって、貿易に依存するところの大きいわが国経済を新たに一段と発展させて参りますためには、積極的に自由化の推進をはかっていく必要があるのであります。  外に対し自由化を積極的に推進していくとともに、他面、内において着実な経済成長を期するためには、通貨価値の安定をはかり、経済の均衡を確保することが、従来にも増して必要となって参るのであります。今般のアメリカの予算教書に見られます黒字予算堅持の方針も、また、西欧諸国における公定歩合の引き上げ等、健全金融堅持の努力も、すべてこの考え方に基づくものにほかなりません。自由化に数歩立ちおくれたわが国といたしましては、いやしくも経済の均衡を失することのないよう留意することはもとより、経済各般の体質改善を進めることにより、国際競争力の強化に努めなければならないと考えるのであります。私は、かかる適切な経済運営の方針が堅持されますならば、わが国経済の今後の拡大発展には期して待つべきものがあると信ずる次第であります。(拍手)  昭和三十五年度予算は、以上申し述べました経済運営についての考え方の一環として、財政面から経済に刺戟を与え、その均衡を破ることを厳に避ける意味におきまして、財政の健全性を維持することを基本方針といたしたのであります。かかる健全財政堅持の方針に基づき、公債の発行等の財源によることなく、一般会計予算の規模は、租税その他の普通歳入によって支弁し得る範囲にとどめるとともに、財政投融資についても、通常の原資によるほか、民間資金の活用は適正な規模にとどめることといたしました。  政府は、先般、世界経済における貿易・為替自由化の大勢に即応しつつ、今後のわが国経済を長期にわたって成長発展に導き、国民生活の向上と雇用の拡大をはかるため、国民所得倍増計画の立案に着手いたしたのであります。健全財政の堅持も、現下の好況をできる限り長期に安定持続せしめることにより、所得倍増の基盤を固める趣旨にほかならないのでありますが、経費及び資金の配分を行なうにあたりましても、所得倍増の基本的考え方に沿い、わが国経済の長期的な発展のための基礎条件の整備と、ともすれば経済発展におくれがちな方面に対する諸施策の推進とにその重点を置いたのであります。  すなわち、この方針に即し、まず、昨年発生いたしました大災害の実情にも顧み、将来再びこのような災禍を招くことのないよう抜本的な国土保全対策を樹立し、これを推進するとともに、当面緊急に措置すべき災害の復旧に万全を期することに予算の最重点を置くことといたしました。これとともに、産業基盤の充実、科学技術の振興、社会保障の充実、貿易の振興、農業基盤の整備、中小企業対策等につきまして特段の配慮を加え、必要な重要施策の拡充に努めたのであります。また、現在不況に当面いたしております石炭鉱業及び海運業につきましては、わが国経済におけるこれら産業の重要性に顧み、その合理化の促進をはかるための助成措置を講ずる等、わが国経済の均衡ある発展のため、諸般の対策に遺憾なきを期することといたしました。  本予算におきましては、昭和三十四年度予算に比し、財源として使用し得る過去の剰余金等が八百五十八億円に上る減少を見ました上、災害復旧及び国土保全対策等の重要経費を確保し、かつ、財政の健全性を堅持するためには、減税の実施は後年度に譲らざるを得なかったのであります。租税負担の現況に顧みますとき、その軽減合理化の必要のあることは言うまでもありません。政府は、目下、税制調査会を通じ、税制全般について抜本的な検討をいたしておるのでありますが、その審議状況ともにらみ合わせ、今後、減税の実現に努めて参りたい所存であります。  このような方針のもとに編成いたしました昭和三十五年度の財政の規模は、一般会計予算においては、歳入歳出とも一兆五千六百九十六億円でありまして、昭和三十四年度当初予算に対し千五百四億円、すでに成立いたしました補正予算を加えた予算額に対して七百十五億円の増加となっており、財政投融資計画の規模は五千九百四十一億円でありまして、昭和三十四年度当初計画に対し七百四十三億円、改訂計画に対し三百十五億円の増加となっております。  以下、政府が特に重点を置きました諸施策について申し述べます。  まず、昭和三十五年度予算におきましては、昭和三十四年災害による被害の復旧の促進をはかることをもって最も喫緊の要務と考え、その復旧を所定の計画に従って促進するために必要な経費五百八十一億円を計上するとともに、その経験に顧みまして、国土保全のための諸施策を強力に推進することといたしました。このため、新たに治山治水にかかる長期計画を樹立し、今後十カ年の間に、治水事業については九千二百億円、治山事業については千三百億円、合計一兆五百億円に上る事業を遂行することといたしました。このうち、緊急に実施を要するものにつきまして、四千五百五十億円に及ぶ前期五カ年計画を作成することといたした次第であります。この計画を目標として、昭和三十五年度において所要の経費及び資金を優先的に確保いたしますとともに、また、今後この計画を強力かつ確実に進めて参りますために必要な体制を整えることといたしております。なお、一般会計に計上された治山治水関係費は六百二億円でありまして、前年度当初予算に比し二百億円の増加となっております。  次に、わが国経済の成長発展に伴いまして、その基盤の整備に努めるため、基礎的部門に対する公共投資を推進して参ることはきわめて重要であります。よって、道路及び港湾につきまして、それぞれ既定の計画に従い、その整備の促進をはかることといたしましたほか、国鉄の東海道新幹線工事の本格化、電信電話の画期的拡充等、輸送及び通信の分野におきまして整備充実をはかり、また、地方開発の促進につきましても配慮を加えることといたしております。さらに、住宅、環境衛生施設等、生活環境の改善につきましても、その推進をはかることといたしたのであります。  次に、わが国の社会保障制度は、ここ数年来著しい前進を続け、その面目を一新しつつあるのでありますが、昭和三十五年度におきましても、福祉年金の充実に加え、昭和三十六年度開始予定の拠出制年金の準備を行なうこととし、また、国民皆保険計画を予定通り昭和三十五年度内に達成することとするほか、生活保護等の施策についてもその充実をはかり、さらに、失業対策についても相当の改善を加える等、全体として社会保障関係施策を推進し、民生の安定を期することといたしております。この結果、社会保障関係費の計上額は千八百十七億円に達し、前年度に比し二百七十六億円の増加となっております。さらに、医療関係施策の一環として医療金融公庫を新設し、三十億円の資金をこれに充てることといたしております。  次に、文教の振興をはかり、健全な次の世代の育成に努めることは、常にわれわれの責務であります。また、技術革新の要請に即応して科学技術の振興をはかることは、当面の急務であります。この見地に立って教育環境の整備改善を計画的に実施することといたしたのでありますが、昭和三十五年度におきましても、引き続き、中学校生徒の増加等に対応し、教職員の増員と施設の整備を推進することといたしております。また、科学技術の振興につきましては、学校研究費の大幅な増額を行なうなど、基礎的研究部門の整備充実を促進いたしますほか、原子力研究分野、各省試験研究機関等に対しましては、それぞれの実態に応じ所要の措置を行なうことといたしております。  次に、農林漁業及び中小企業につきましては、わが国の社会及び経済に占める重要性にかんがみ、その安定と振興をはかり、体質改善に努めることがきわめて必要であると考えます。従って、昭和三十五年度におきましても、その対策に格段の配慮を加えることといたしたのであります。すなわち、農林漁業につきましては、土地改良、林道開発、造林、漁港整備等の事業を拡大し、その生産基盤の充実をはかるほか、農林水産物の流通改善の措置をさらに充実と、また、農家経営の多角化及び協同化についても必要な措置を講ずることといたしております。中小企業対策といたしましては、国民金融公庫及び中小企業金融公庫について、合わせて千七百五十五億円の貸付を予定するほか、中小企業信用保険公庫その他に対しても所要の政府資金を確保し、中小企業金融の一そうの円滑化をはかるとともに、中小企業の設備の近代化の推進、小規模事業対策の実施等、一段と配慮を加えることといたしております。  次に、輸出の振興がわが国経済の安定成長のための必須の要件であることは、あらためて申すまでもないところでありますが、昭和三十五年度におきましても、従来の施策をさらに充実することといたしております。また、主として東南アジアとの経済協力を促進するため、海外経済協力基金を設けますとともに、低開発国開発のために新設されますいわゆる第二世銀に加入し、海外経済交流の増進をはかることといたしております。  次に、石炭鉱業及び海運業は、いずれもわが国における重要産業でありまして、その安定強化をはかることは、国際収支、エネルギー及び雇用対策等の各面から見て、きわめて重要であると考えます。従って、これら産業の現状に顧みまして、必要な措置を講ずることといたしております。すなわち、石炭鉱業につきましては、その体質の改善と離職者対策に配意し、海運業に対しましては、その国際競争力を補うため、計画造船にかかる市中融資について、その支払い利子の一部を補給することといたしております。  最後に、地方財政について申し述べます。  昭和三十五年度の地方財政は、ここ数年来の国及び地方を通ずる健全化の努力と、現在の好況による地方財源の増加及び地方交付税の大幅な増加等のため、全体としては相当の改善を見ることとなります。また、昭和三十四年度に実施された国税の減税に伴い、昭和三十五年度において住民税が減税となる事情等を考慮するとともに、地方財政の健全化をさらに促進するため、臨時地方特別交付金三十億円を計上いたしております。このほか、地方団体の起債ワクの拡大をはかることといたしておりますので、これらの措置により、地方団体の行政水準の向上と住民福祉の増大が推進されることと存じますが、地方団体におきましても、さらに経費の重点的配分及びその効率的使用をはかり、財政の一そうの健全化に努められるよう希望いたします。  なお、この際、昭和三十五年度予算と同時に提出いたしました昭和三十四年度一般会計予算補正について一言申し述べます。  今回の補正は、災害復旧費、失業保険費等の主として義務的経費の追加であり、いずれも昭和三十四年度中に支出すべきものを計上いたしたものでありまして、その総額は百三十九億円であります。その財源といたしましては、法人税、酒税等の自然増収及び税外収入の増加等をもってこれに充てることといたしております。これにより、昭和三十四年度一般会計予算の歳入歳出の総額は、それぞれ一兆五千百二十億円となることとなります。  以上、予算の概要を説明いたしましたが、次に、為替及び金融政策について申し述べたいと思います。  貿易・為替の自由化は今や世界的潮流となっておりますが、政府は、これに対処して、今後一そう自由化を推進する所存であります。すなわち、貿易の自由化につきまして、年次目標を立ててその実現をはかるとともに、貿易外の自由化につきましても、計画的にその実施を進めて参りたいと考えております。しかして、自由化は、本来、温室的な経済環境を離れて、激しい国際競争に直面することを意味するものであり、これに伴い、国内の産業は相当な影響を受けることを覚悟しなければなりません。従って、企業においては、あくまで自主責任体制に徹して、過当な競争を自粛し、慎重な投資態度を持するとともに、長期的な観点に立って、体質の改善、資本構成の是正、経営の健全化等にたゆまざる努力を傾注せられたいのであります。  次に、金融政策の運営は、経済の急激な変動を調整してその安定的成長をはかることに目標があるのであります。さきに、準備預金制度の発動、公定歩合の引き上げが行なわれましたのも、景気の行き過ぎを事前に防止しようとする意図によるものであり、一応その効果をおさめつつあるものと考えます。今後におきましても、常に経済情勢の推移に留意し、日本銀行との緊密な連携のもとに弾力的な金融政策を実施し、財政金融を通じて適切な調整を期して参る所存であります。なお、貿易・為替の自由化の進展に従い、経済の均衡維持のため金融面に課せられる役割はますます重要となるのであります。今後の金融政策といたしましては、準備預金制度、公定歩合制度等を適時適切に活用することはもちろん、金利につきましても、その経済調整の機能を強化しつつ、長期的には国際水準に近づき得るよう努力し、一そう金融の正常化を推進して参りたいのであります。金融機関においても、今後貿易・為替の自由化に伴い予想される各般の問題に対処するため、さらに経営の健全化を進めるとともに、融資態度を一そう合理化し、わが国経済の安定ある発展に貢献せられたいのであります。  以上、当面の経済情勢とこれに対処すべき財政金融政策の基本的な考え方を述べ、予算の大綱について説明いたしました。ここに提出いたしました予算は、あくまでも経済の安定成長を確保するための予算であります。私は、この予算を中軸とする財政経済諸施策が健全な経済を確立し、希望に満ちた明るいわが国の将来を約束するものであることを確信いたします。  国民各位も、政府の意のあるところを了とせられ、一そうの御協力を賜わるよう切望する次第であります。(拍手)     ―――――――――――――

清瀬一郎自由民主党議長

○議長(清瀬一郎君) 国務大臣菅野和太郎君。     〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕

菅野和太郎自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(菅野和太郎君) ここに、昭和三十五年度を迎えるにあたり、最近における経済情勢と、これに対処すべき経済運営の基本方針を明らかにいたしまして、国民各位の御理解と御協力を得たいと存じます。  まず、昨年のわが国経済の動向を顧みますと、一昨年秋口からの景気回復のあとを受けて、経済は急速な拡大を遂げたのであります。すなわち、消費は堅調を続け、財政支出も増加したほか、輸出は、海外需要の増大と、わが国輸出産業の競争力の強化とにより、一貫して増加傾向を示し、設備投資も技術革新に基づく近代化投資などにより増加し、在庫投資も上期は比較的旺盛であったなど、これらが重なって需要を急増させ、経済の拡大を導いたのであります。この間、国際収支は黒字を継続し、物価は比較的平穏な推移を示し、他方、金融面からも早目に景気の行き過ぎを予防する措置がとられたこともあって、概観して、昨年の経済は順調な数量景気を展開して参ったのであります。  最近のわが国経済は、投資が著しく旺盛であり、工業化の速度もまことに目ざましく、欧米諸国に比べてもきわめて高い成長率を持続してきており、その経済力は、今や国際的にも高く評価されるに至ったのであります。しかし、わが国の経済は、このような高い成長率を持っている反面、幾多の欠陥を蔵しておることも、見のがすことができないのであります。このため、産業の近代化を推進し、科学技術を振興し、道路、港湾等の産業基盤を整備拡充し、国民生活と所得の格差を是正するなど、経済の体質を改善し、経済成長力の質的な充実をはかることが必要とされるのであります。  昭和三十五年度の予算は、財政の健全性を維持しつつ、さきに述べた経済の体質改善をはかることを主眼として編成されているのでありまして、これにより、わが国経済の長期的発展のための基礎を固めていく所存であります。かようにいたしまして、わが国経済は、米国を初めとする海外経済が好調を維持することも加わって、来年度も依然着実な上昇を遂げるものと考えるのであります。もっとも、当面、設備投資や資金需要の動きに見られるような一部の刺激的要因については、なお十分な配意が必要であります。このため、政府におきましては、財政、金融、産業など、諸般の政策の適切な運用に遺憾なきを期する所存でありまするが、経済界におかれても、自主的な協調態勢を固めつつ、経済の健全な発展に努力されるよう期待するものであります。  このような前提のもとに、昭和三十五年度の主要経済指標を想定いたしますと、個人消費支出は引き続き堅調に推移し、在庫投資はおおむね横ばいとしても、設備投資は一二%程度上昇し、財政支出も増大する見込みであります。また、貿易は、為替ベースで、輸出は三十七億ドル、輸入は三十六億一千万ドル程度と見込まれ、国際収支は、貿易外収支を考慮いたしますと、実質で約一億五千万ドルの黒字が期待されるのであります。次に、鉱工業生産水準は、昭和三十四年度に比べ一二%程度の上昇になるものと考えます。このように需要が増大する反面、供給力も漸増し、需給が逼迫するような事態は考えられないので、物価は、総体としては、おおむね横ばいに推移するものと予想されます。この結果、昭和三十五年度の国民総生産は、約十二兆七千四百八十億円となり、昭和三十四年度に比較して実質六・六%程度の上昇となるものと予想されます。  前に述べました経済の体質改善などの政策を推進しつつ、経済成長力を十分に発揮するためには、さらに長期的な観点から総合的な施策を講じなければならないのであります。  さきに、政府は、昭和三十二年末に長期経済計画を策定したのでありますが、その後の経済の推移を見ますと、一般的に計画の趨勢線を上回っているのであります。政府は、このようなわが国経済の現状に即応して、新しい経済計画を策定することとし、鋭意その作業を進めております。これによりまして、今後おおむね十年間に国民所得を倍増し、もって雇用を改善し、国民経済と国民生活の均衡ある発展をはかっていく所存であります。さらに、世界経済の中におけるわが国経済の地位を一そう向上せしめるため、海外経済協力の推進と相待って、強力な輸出拡大施策を講じなければならないことは言うまでもありません。その際、世界経済は急速に貿易・為替自由化の方向に進みつつあり、わが国もこの大勢に即応していかなければならないのであります。他方、最近のわが国経済力は、外貨準備高を初め、かなり充実強化されてきましたので、政府は、貿易為替自由化促進閣僚会議を設け、計画的に自由化を推進する方針を明らかにしたのであります。もとより、自由化につきましては、それぞれの産業について影響の範囲や程度も異なりますので、その目標、時期、所要の対策などについては十分検討し、できるだけ早急かつ円滑に自由化を実現していく所存であります。わが国経済が、最近、目ざましい成果を上げつつありますことは、まことに御同慶にたえないところであります。これは国民各位のすぐれた創意と努力に負うものでありますが、この成果の上に経済をより安定した成長発展に導くため、政府としましても、以上申し述べましたように、今後、当面の内外経済の動きに即応しつつ、さらに長期的観点から総合的な施策を推進して参る所存であります。つきましては、今後とも、国民の全幅の御協力をお願いしてやまない次第であります。(拍手)      ――――◇―――――

天野公義自由民主党

○天野公義君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、明二日定刻より本会議を開きこれを行なうこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。

清瀬一郎自由民主党議長

○議長(清瀬一郎君) 天野君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

清瀬一郎自由民主党議長

○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後十一時二十三分散会

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