法務委員会 第14号
- 発言数
- 9 件
- 登壇者
- 3 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1960/03/25
会議録
○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。 刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。 この際参考人の出頭要求に関する件についてお諮りいたします。理事会の申し合わせによりまして、本件審査のため、参考人の出頭を求め、意見を聴取することとし、参考人の人選、出頭等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。 —————————————
○瀬戸山委員長 前会に引き続き質疑を継続いたします。 質疑の通告がありますから、これを許します。坂本泰良君。
○坂本委員 これは大臣にお聞きすることではないかと思いますが、以後の質疑の関係でお聞きしたいのは、この刑法の一部改正法律案の提案理由を見ますと、冒頭に、この不動産の不法侵奪は「終戦直後の社会的混乱期に行なわれたものも少なくありませんが、国民生活もおおむね安定し、社会秩序も平常に復した現在におきましても、なお同種の行為が跡を絶たない実情にあります。」こうあるわけですが、もちろん終戦直後の社会的の混乱期には行なわれた点は認めなければならぬ。それは当時アメリカの焼夷弾爆撃によって、住居、衣類その他生活のものを全部焼かれまして、国富の半分をこれで焼却したわけですが、そういうような関係で、当時焼け出された日本の国民は、おるに家なく、着るに衣類なく、食うに食がない、こういうような関係でありましたから、土地も持たない、家も持たなくて焼け出された。だからやむを得ず防空壕とかあるいはその他にほんの住居を作りまして、そしてあの大戦の悲惨な状態を耐え忍んだわけであります。そういうような関係がございまして、他人の土地、あるいは公園、あるいは川ぶち、そういうような公共の土地に対して、ほんの住まうだけの家を建てて、あの敗戦の悲惨な状態を続けたわけなのです。それが現在までまだ残っておりまして、これは社会施設として、地方庁、いわゆる都道府県、市町村におきまして、アパートその他を作ってそこに移転をさせる、こういうことが続けられておるわけなのであります。そういうようなことで、だんだん国民生活が安定して、社会秩序も平常に復した、こういう現在においては、これらの問題は少ないと思うのです。従って、不法に他人の不動産を侵奪したというような場合は、社会秩序が安定した今後においては、民事訴訟における訴訟の促進ということを考えますと、執行史の制度、裁判の促進ということで今後の問題は私は打開できると思う。そういたしますと、今までは社会的混乱の結果そういうのがあった。もちろんその中には悪質なのもおりましていろいろ問題は起きたのでありますが、それに対しては他の刑法を適用いたしまして、あるいは暴力行為等処罰に関する法律とかその他の法律を適用して大体おさまってきている。先般の政府の御答弁を聞きますると、現在までの分は不法領得の意思がないからこのままである、この刑法の適用をするのは今後の問題であるということになるわけです。そういたしますと、今後は、そういう悪質な者がありましたならば、民事問題が解決するのでありますから、ことさら今になってこの法律を作る必要はないのじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。この点についての御見解を承っておきたいと思います。
○竹内政府委員 今後この種の事件の予想される発生件数というものが終戦直後よりも少ないであろうということは、終戦直後の特殊な事情を考え合わせてみますると、もろちん私どもも終戦直後ほど事件は多く発生しないであろうという考え方をいたしております。しかし、この前もこの委員会でお答え申し上げましたように、最近新しい事例につきまして統計的に見ましても、必ずしも減少の経過をたどっておるというわけではないのでございまして、その点の事情を若干分析的に調べてみますと、終戦から過去十年間余りにわたりましてこういうものが放任されておったということによりまして、不法占拠のやり得だといったような、法秩序を軽視するような風潮が明らかにびまんしておるように思うのでございます。こういうことが、最近の土地の著しい値上がり、利用十地が少なくなってきておるという状況とからまりまして、依然としてその跡を断たないというふうに私ども認識しておるわけでございます。かようなことからして、ここ数年来各方面から、民事手続によって権利の回復を求めることは当然でございますが、それのみに依存しておりましては、権利の回復は非常に困難であって、その点からいたしまして権利の保全が十分でない、特に不法に侵奪するような類型の悪質なものにつきましては、刑罰をもって臨むのが相当であるという意見が強くなってきておるのでございます。かような一般社会の要望に沿うというのが、この立法の趣旨でございます。従いまして、今お尋ねの点につきまして、結論的に申しますと、終戦直後ほどに今後は事件は多くはなかろうとは思いますが、なお依然としてその跡を断たない状態であるということ、そしてその背景をなすものは法秩序に対する軽視的な風潮、その他最近に至って特に現われてきている土地の暴騰その他の事情等もからみ合いまして、民事手続による権利の回復のみでは権利の保護として十分でない、少なくとも悪質なものに対しては刑罰をもって臨むというのが適切であるというのが私どもの考え方でございます。
○坂本委員 終戦後においても、罹災都市借地借家臨時処理法ですか、これができまして、借家人が焼け出されて、焼けた家の敷地の跡に防空壕とかあるいはほんの住まえるだけの土地を持っておった。それはその臨時処理法によって十年間の賃借権を認める、こういう法律が出まして、焼夷弾爆撃で焼かれて家も土地も持たない場合にも、その借家人に直接十年間の借地権を認めたものですから、それで非常に助かって、借家人が直接土地の所有者との間に賃借権を結びまして、住居の安定ができたわけです。そういうようなことをせずに、国家の所有地とか公園その他に集団的に避難をして、そこに立てこもった者は、さっき申しましたように、地方団体において住まえるところを作って、そこに越しまして、公園の整地をするとか、あるいは戦前の繁華地の跡にそういうのがあったのを移転させて元通りにするとか、そういうのが今まで続けられてきたわけです。そして、われわれの経験によりますと、なおそれでも不法に他人の土地に一晩で家を建てたり何かするのは、これは断行仮処分と申しまして、裁判所が、その保証金は積ませますけれども、一ヵ月内に取りこわしてあけろこういうようにする方法ができるわけです。われわれも悪質な、そういう他人の土地に一晩で家を建てたり何かしたのは、その断行仮処分によって家をこわして排除した、こういうような経験も持っておるわけです。そういうような関係で、現在においては、これは構成要件の問題にも入るわけですが、今後不法侵奪のような場合は、土地を例にとりますと、土地の地主は直ちに断行仮処分の申請をして、その家をこわして排除する、こういうような方法もとれるわけです。それから不法にあき家に一晩で荷物を持ち込んでそこに住まう、それはやはり不法侵奪になると思うのですが、そういうのも今のような断行仮処分をとれば、すぐ排除することができる。それを今までやらない人があるものですから、やはり権利の上に眠れるような者もおるものだから、そういうふうになる。なお東京部内に例をとってみましても、かりに焼け跡を貸さない、それは土地の値上がりを見越しておるから土地を貸さない。ですから、りっぱなビルディング、りっぱな商店がある隣に草ぼうぼうたる土地がある。こんなところに草ぼうぼうとはえておるのだから、そこを一つあれしなければいかぬじゃないか、こういうような考えも起こるわけなんですね。これはやはり社会制度の関係もありましょうが、土地の所有者、住宅の所有者というものは狡猾な者がおって、人の迷惑も考えず、またその町の繁栄も考えずに、町が繁栄すると自分の土地は自然と値上がりがする、いながらにして値上がりがするというようなことで放任をしておる。そういうようなところにバラックを建てたという場合に、不法侵奪罪として犯罪にする。こういうようなことは犯罪にしなくても、やはりほんとうに自分の土地を愛し、自分の土地の権利を伸張する者は、民事の問題としてこれは解決するのです。ことに社会が安定した今後の問題においては、これをどんどんやればできるわけなんです。それを弁護士も頼まずにやるから、いろいろまた理屈もあって訴訟が遅延する、こういうことにもなっておるわけなんです。そこで私は、そういうふうにもしも侵害したような場合は、民事問題として仮処分でやれる、さらに土地明け渡しの訴訟で十分やれるようなものをわざわざ今になって刑法一部改正までいたしまして、そうして五年以下の懲役に処する、こうする必要がどこにあるかと思うわけです。またこの刑法が適用になりまして、実際上この五年以下の懲役の判決を受けて処罰されるのはごく少数になると思いますが、この法律ができますと、この法律をたてにとって、警察、検察庁は逮捕もできるし、それから留置もする、こういうことになりますと、今度なまける横着な地主はこの刑法を利用して、民事問題では金がかかる、長くかかるからというので、警察をうまく利用して逮捕する、そうして刑事事件を利用して自分の目的を達する。いわゆる刑法を悪用するのは、侵奪する危険の者よりも、そういう横着な土地の所有者、建物の所有者になる。それを保護するようなことになるではないかと思うわけであります。社会秩序が平常に復した現段階においては、これに対する方法は、現在の民事訴訟法でもやれるわけです。それを横着にやらぬだけです。だから、こういう法律を作ることは、これはいたずらに国民に対する犯罪を作る、こういうことになるのであります。かえってこの社会の安定と秩序を破壊する、こういうことになるのであって、社会の秩序維持のためには不要じゃないか、要らない、こういうような考えを持っておりますが、いかがですか。
○竹内政府委員 この不動産侵奪罪の規定をあえて設ける必要がないという意味の御質問でございますが、仰せのように、民事訴訟によって権利の回復を求めるという考え方は、この法律ができました後も、もとよりその権利を失うものではないのでございます。その民事訴訟が今後は適切に行なわれるのであって、行なわないのは権利の上に眠っているのだという御意見のようにも承ったのでございますが、中にはそういう権利の上に眠っている人もあるでございましょうが、民法上、民事訴訟法上のあらゆる権利を活用いたしまして事に当たっておるにかかわらず、幾多の不法侵奪が行なわれておるというのがこれまた現状であるわけでございます。先ほどお話しになりました罹災都市借地借家臨時処理法によりまして、終戦後借家人はいち早くその権利が保護されたのでございますが、さてこの保護された借地人あるいは借家人が罹災土地の上に家を建てようと思うときに、すでに第三者によってその土地が不法に侵奪されておるために、せっかく今の臨時処理法によって保護されたにもかかわらず、その権利を全うすることができないというのも、これまたその数において少なくないと私ども思うのでございます。さらにまた民事訴訟によって権利回復の手続をとりました場合に、その民事訴訟がどのような成果をおさめているかということにつきまして、若干の資料が大阪の商工会議所から報告をされております。その商工会議所の報告によりますと、大阪、名古屋、京都、神戸等でその実情を調査したものでございますが、 一年未満で解決されたのは、四都市を通じまして合計四十件、一年ないし一年で解決されましたのが三十七件、一年ないし二年で解決されましたのが同じく三十七件、三年ないし五年で解決されましたものが三十五件、五年以上を要しましたのが合計四十三件となっておりまして、五年以上上もかかって似るのが、統計の上から見ますと、数において今一番多いのでございます。そのほか断行仮処分のお話もあったわけでございますが、民事訴訟としましては、いろいろな手はあるわけでございますけれども、現実にはなかなか権利の回復が困難であるというのが実情のようでございます。 なお、大阪から私どもがいただいております大阪市の不法占拠の実情の調査資料の中にあるのでございますが、大阪の浪速区関谷町付近に不法占拠をされております土地がありまして、そこには約三十二戸のバラックが建っておって、二十二名が居住しておるそうでございます。これは終戦直後から不法占拠をされていたのでございますが、その一部に約七十坪ばかりの空地が残っておったので、この分につきましては不法占拠をされないように厳正に管理を行なっていたところが、三十三年四月十日に近所の不法占拠者がその厳重管理しておる七十坪にも不法建築をしようとしておる気配があるということを付近の人から電話連絡がありまして、係員が急行いたしまして調査しましたところ、すでにできております不法建策バラックを買い取りました某不動産会社が、家屋をそこに新築して転売する目的で、古い建物を除去して、新たに基礎工事などを完了して本建築にかかるような状況であった。そこで直ちに工事を中止して構作物を撤去するように現場の人にも言い渡して帰ったのでございますが、四月十一日に現地を測量し、四月十五日には有刺鉄線のさくの工事を実施して確保に努めたのでございます。しかるに五月三日、四日、五日の連休日をねらいまして、右の鉄線さくを破壊して、建築業者が基礎工事をして、木造平屋建の不法建築を作ってしまった。そこで、五月十三日に巡視をしてそういう状況であることを発見しましたので、付近の人たちにも事情を聞き、その不動産会社に照会をしたけれども要領を得ない。このままほうっておいては非常に悪い影響を及ぼすというふうに考えまして、告訴をしたのでございます。現行法のもとで警察が取り調べるのは、鉄線さくを破壊したという点で、器物損壊罪の成立があるかどうかということにしぼられるというような状況で、全く権利は保護されていないというような趣旨の報告がありまして、あわせてそのときの告訴状もつけ加えられて報告されておるのでございます。もしこういう規定を設けますと、警察が不当に民事の事件に介入してくるのじゃないかという御心配が今の御質問の中にもありましたが、そういう点ももちろんないとは言えないのでございまして、その執行に当たりましては適正を期さなければなりませんが、逆に、今ここにも申し上げましたように、刑事罰にも当たらないというようなことから、そういうものにはよく実態を検討してみれば刑事罰に触れる幾つかの問題があるような場合におきましても、ほとんど民事事件不介入の原則を掲げて警察が取り合ってくれないという、むしろそういう意味の苦情の方が多くあるようにこれまた報告されそおるのでございます。要は運用の適正を期するということになるわけでございますが、今坂本委員の仰せのように、民事の手続による権利の回復で十分だというふうには私どもどうしても考えられないのでございまして、やはりきわめてしぼった厳格な構成要件のもとにおいて不動産の侵奪罪というものは設けた方が、今後の事態に対処するのには適切であるというふうに考えております。
○坂本委員 今のような実例の場合は、不動産会社であれば、その営業を取り消すとかいう行政処分もできるはずです。そういうようなものが連休日を利用してやりましても、裁判所に申請すれば断行仮処分を出しますよ。それをせずにずるずるしているところにつけ込まれる、そういうようなことがあるわけなのです。今後は、裁判所も整備しているし、訴訟促進という世論がありますから、今のような事例の場合は、私も弁護士ですが、そんなのは民事的に解決する方法はあると思います。さらにその場合は、現在の刑法の解釈上でも不動産窃盗になるじゃないか、それに当てはまるような判例はありませんが、従来の判例を持ってくれば該当しはしないか、こういうふうにも考えられる。それを何も刑法に該当しないから警察が取り上げないというところに問題がある。さらに仮処分をやって取りこわしにいきまして、それに対して今度は反抗をいたしますと、それに対しては公務執行妨害とか、いろいろな現在の刑法の規定を適用しましてやる方法は幾らもある。だから、それはやらない報告なんですね。 それから、資料にまだ十分私も目を通しておりませんが、「各都市における不動産不法侵害の事情について」ということも、従来の実情をやっただけなんです。従来の実情については、もうこの刑法は適用にならない。やはり民事問題で解決しなければならぬ。従って、こういうような状態が起きた場合は、直ちに土地の所有者は民事的に権利の行使をすれば、これは直ちにできます。それくらいはやはり多少金がかかっても、土地を持っておる者は金も持っておるわけですから、どんどんやればいい。それをしないだけなんです。それを刑法まで作って犯罪にするという必要はないのです。それから現在もこれと同様な侵奪が多いというのですが、安定した現在においてはほとんどないのではないかと思う。従って、あなたが現在こういう侵奪が多いとおっしゃるなら、その根拠を示してもらいたい。これは資料をもって示していただければけっこうです。昭和三十五年になってから後でもけっこうです。こういうようなここに資料のあるような侵奪行為が多いかどうか、私はほとんどないのではないかと思うので、それは資料としてあとで出していただきたい、こういうふうに考えるわけです。 そこで不法領得の問題に入りたいと思いましたが、これは三十分ないし一時間かかりますので、時間が参りましたからやめまして、今申し上げましたこの法律を制定する必要があるかないかという点については、さらに質疑をいたしまして、次会に局長の御見解ももちろんですが、さらに法務大臣の御見解も承りたい、こういうふうに考えますから、本日はこの程度で質問を留保いたしたいと思います。
○瀬戸山委員長 次会は本月二十九日午前十時より開くこととし、本日はこの程度で散会いたします。 午後零時十二分散会