本会議 第17号
- 発言数
- 16 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/12/21
会議録
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。 ─────・─────
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
○亀田得治君 私は、最高裁判所の違憲審査権並びに憲法第九条第二項の戦力等に関し、緊急質問の動議を提出いたします。
○田中茂穂君 私はただいまの亀田君の動議に賛成いたします。
○議長(松野鶴平君) 亀田君の動議に御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。亀田得治君。 〔亀田得治君登壇、拍手〕
○亀田得治君 私は日本社会党を代表して、最高裁判所の違憲審査権並びに憲法第九条第二項の戦力等について、若干質問いたします。 政府は、去る十二月十六日最高裁の砂川判決が出たので、鬼の首でも取ったように喜んでいるようでありますが、しかし判決は、原則として安保条約のごとき問題についてはタッチしたくないという態度をとり、その反射的効果として、それが違憲にはならないというにすぎぬのであり、いわんや、国策として見た場合の安保条約の当否については、何ら判断していないのであります。かえって反対に、判決が自衛戦力の合憲性を断定し得なかったこと、さらに、安保条約の問題について、終局的には国民の批判を尊重すべき旨明らかにしたことは、政府の今日までの態度に対する大きな警告とも受け取れるのであります。(拍手) 以下、私はこの判決を日本の今後の政治との関係において慎重に検討し、質問をいたしたいと存じます。 まず第一点は、最高裁の違憲審査権についてであります。この点に関し、私は、今回の判決について三点重要な事項を指摘しなければなりません。第一に、条約と憲法との関係については学界においても議論の分かれているところでありますが、最高裁がこの問題に具体的事件でぶつかったのは今回が初めてであります。しかるに、この判決は安保条約を判断の対象としたが、条約一般に対する最高裁の違憲審査権をどう考えるかについては明確にいたしておりません。せっかくの機会を逸したものとして遺憾にたえません。この点は大法廷でも大いに論争されたが、裁判官自身の意見が分かれ過ぎた結果、結論が出されなかったようであります。第二に、この判決によれば、安保条約を違憲審査の対象からはずした最大の理由は、それが「国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するもの」という点にあるようであります。しかし、このような考え方を認めるならば、条約でもって憲法を事実上変えていくことを、司法権の立場からチェックすることが不可能になります。しかも、それはひとり条約に限らず、法律制定の場合にも、それが重要法案であれば、最高裁の違憲審査から事実上はずされる道を開くことになります。もちろん、法律については、憲法第八十一条によって最高裁の違憲審査権が明記されておりますから、形式的には最高裁の審査に服することになるが、実際の判断においては、「高度の政治性」を理由として、政府の行為を認めることになるのであります。従って、政府が法律によって事実上憲法を変えていくことを阻止するとが不可能になります。 第三点として、この判決は、「高度の政治性ある政府の行為」であっても、それが「一見きわめて明白に違憲無効であるものについては最高裁において審査できる」旨の条件をつけております。しかし、実際問題としては、違憲の疑いある条約や法律でありましても、時の政府は、形式的にはできるだけ違憲と判断されないような体裁を作りますから、このような条件をつけても何らの効果がないのであります。以上指摘した三点の結論として、この判決は、最高裁みずからが憲法上の権限を放棄し、政府の行動に追従したものであって三権分立の精神を乱す最高裁の自殺行為であると言わなければなりません。(拍手) そこで私は、岸総理に二つの点についてお尋ねをいたします。 第一点は、以上に述べたように、この判決に現われたような、条約や法律で事実上憲法を変える危険性に対して、岸総理はいかように考えておるか、明白にしていただきたい。この判決のような立場をとれば、政府の仕事はやりやすいかもしれません。しかし、そのようなことでは、政府の違憲行為を押え、国の安全と国民の人権を守る点において必ず欠陥が生まれてくると思うが、総理の見解を明らかにしてもらいたい。 第二点は、判決によれば、「安保条約のごときものの違憲審査については、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねらるべきものである」と結んでいる点であります。この点はきわめて重要であります。すなわち、判決は安保条約の問題は重大な政治問題だから、最高裁はタッチしないで、一応政府の判断にゆだねるが、しかし、それは一応であって、主権者たる国民の意思が最も重要であることをうたっておるのであります。政府は自分に都合のよいことばかり強調して、都合の悪いことは見て見ぬふりをする傾向がありますが、政府が最高裁判決を尊重するというのであるならば、都合の悪い部分についても大いに注意する義務があります。もしそうだとするならば、安保条約の改定については、ぜひともそれのみを対象にして総選挙を行ない、国民の気持を聞かなければなりません。なぜならば、改定されようとする条約は、形式はともあれ、その内容は、バンデンバーグ決議の趣旨を織り込み、相互防衛軍事同盟の性格を一そう強く帯びるものでありまして、現行安保条約以上に違憲の疑いが多いからであります。従って、この判決を重んずるというのであるならば、当然に解散をして民意を確かめるべきであると思うが、判決理由との関連において総理の見解をお聞きしたいのであります。 次に、憲法第九条二項の問題について二点お尋ねいたします。 第一点は、判決が九条二項と取っ組みながら、ことさらに「自衛のための戦力の保持を禁じたものであるか否かは別として」、ということによって、自衛戦力が合憲であるかどうかの判断を回避した点であります。なるほど、本件刑事事件の処理としては、在日米軍が九条二項に違反するかどうかを判断すればそれで済むかもしれません。しかし、自衛戦力の違憲問題は大法廷で大いに論争されたところであり、国民の間にも、自衛隊の違憲問題にからみ論議されており、従って、最高裁の使命からするなら場は、当然何らかの判断を下すべきであったにもかかわらず、あえてそのことを回避したことは、この点においても、最高裁はみずからの職責を尽くしていないと言わなければなりませんが、総理の見解を承りたい。 第二点は、なぜ、しからば最高裁が自衛戦力の点について答えなかったかという点であります。元来、憲法第九条が設けられた当時、それが自衛戦力をも否定する意味のものであったことは、記録に徴してもきわめて明白であります。それが政治的に少しずつゆがめられてきたことも明白であります。従って、法律に忠実な裁判官であれば、今日の自衛隊が合憲であると言い切るにはよほどの勇気を必要とするでしょう。従って、もし判決が自衛戦力の違憲問題について判断するとしたら、十五人の裁判官の意見は、条約の違憲審査権の問題以上に紛糾したと思われるのであります。このような意思の不統一が、結局この問題についての判断を回避させた理由だと思うが、岸総理のこの点に関する理解をお聞きしたいのであります。 最後に、私は一言、国民感情に触れたいと存じます。砂川判決は、安保条約改定問題とからみ、国民の注目を集めるとともに、世論はまさに二つに割れております。しかるに、最高裁判決にあたっては、十五人の裁判官の中で、一人も原審判決を支持しなかったということは、いかにも最高裁と国民とが遊離している感を与えるのであります。(拍手)しかも、このことは法律専門家の間についても言い得るのであります。たとえば、青年法律家協会が司法修習生について、一審の伊達判決を支持するかどうかという問いを発したところ、七割という圧倒的多数が伊達判決を支持しているのであります。このように、最高裁が国民大衆とはなはだしく背馳することは、まことに不自然であります。最高裁においても、真に国民の気持が生かされるような状態が早く到来することを希望し、再質問を留保して、私の質問を一応終わります。(拍手) 〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。 十二月十六日に行なわれた最高裁の砂川事件に対する判決におきまして、日米安保条約は高度の政治性を有するものであって、従って、これは裁判所の違憲審査権の範囲外にある、こういう判決でございまして、これは言うまでもなく、安保条約の持っておる高度の政治性と、司法裁判所の純粋な司法的な性格とに基づいておるものでありまして、最高裁判所が最高の権威をもって下したこの判断に対しましては、私は、政府としてこれを尊重すべきものであることは、言うまでもなく当然であると思います。しこうして、それが直ちに法律あるいは条約を━━違憲の法律や条約を作って、そうして憲法の実質的な変更をするようになるじゃないかという点でございますが、私どもは、こういう判断があったからと言って、当然一般のこの法律あるいは条約について判決をしておるのではありませんで、今申したように、安保条約の、ごとき高度の政治性を持っておるものについて言っておるのであり、また、それにつきましても、一見明白に違憲無効な場合まで違憲の判断ができないということを言っておるわけでもないことは、今、亀田君の御質問中にも明らかにされた通りであります。従って、こういう判決が出たからと言って、政府はもちろん、また国会といえども、この違憲の条約を承認したり、あるいは違憲の法律を制定するようなことによって、憲法の実質的改正を行なうというような事態が生ずるというようなことは、私はとうてい考え得られないところであると思います。(拍手) また、この判決が、安保条約のごとき高度の政治性を有する問題については、終局的には、主権を有する国民の政治的判断、批判にゆだねらるべきものであるという理由にかんがみて、政府は、この安保条約の改定をするにあたって、まず解散して民意に問うべきじゃないかというような御質問であります。この点に関しましては、すでにしばしば私は解散をしないという意思を明白にいたしております。しこうして、この裁判の判決の内容を見ましても、これは終局的に国民の意思に待つというのは、言うまでもなく、すべての民主政治におけるところの主権が国民に属しておる性質上当然である。従って、司法審査権の対象になるのにこの安保条約が適当でないということを、裏から返して言っているに過ぎないのであります。すなわち判決が、直ちにこれによって総選挙をやれというような政治的判断をしているものであると解釈することは、私は適当でないと思います。従って、従来通り、この問題について解散をする意思は持っておらないのであります。 次に、憲法九条二項の問題、いわゆる自衛のための戦力の保持についての判決の問題でございますが、判決には、自衛のための戦力の保持を禁止したかいなかは別としてと書いてあります。言うまでもなく、今回の判決が、自衛隊の合憲性についてのことが取り上げられてこれが争点になっておるものでないことは、亀田君よく御承知の通りであります。従って、それに対する判断をこの本件においてはしておらないというのが私は理由であろうと思う。争点になっておらない点であります。従って、これをもって直ちに、この自衛力云々について、裁判官の間に意見がまとまらなかったとか、あるいは分かれておるとかということを想像することは適当でない、かように考えます。(拍手) 〔亀田得治君発言の許可を求む〕
○議長(松野鶴平君) 亀田君。 〔亀田得治君登壇、拍手〕
○亀田得治君 やはり想像した通り、政府は、自分に都合のいいところだけは判決に賛成、都合の悪いところは勝手に解釈をしてそらす、こういう態度でありますので、私は関連いたしまして、一、二点追加してお聞きをいたします。 条約に対する違憲審査権の問題につきましては、私が指摘したような心配を最高裁の十五人の判事の中でも相当数の方がしておるのです。その一部だけを明らかにしてみましょう。これは小谷裁判官の意見でありますが、「もしそれ、条約には違憲審査権が及ばないとするときは、憲法九十六条の定める国民の直接の承認を必要とする憲法改正の手続によらずして、条約により憲法改正と同一目的を達成し得ることとなり、理論上その及ぶところは、あるいは三権分立の組織を冒し、あるいは基本的人権の保障条項を変更することもできることとなるのである。わが憲法は果たしてこのような結論を容認するものであろうか。」と。同じ趣旨のことがほかに三カ所ございます。私は、これは非常に問題になったところだと思う。特に、なぜ問題になるかといいますと、岸総理が、あなたは憲法を変えるという考え方を持っておるから、よけいこれが問題になる。われわれのように憲法を守る立場であれば、またそうではない。憲法を変えていくという立場をとっておるあなたの場合に、こういう判決が出ますると、その二つが結びつきまして、安易に憲法改正というものが事実上進行するということが行なわれることを国民が心配するのであります。(拍手)私は、そういう意味で、やはり条約に対する最高裁の違憲審査権、これをはっきり認めなかったことは、やはり政府に対して一つの気のゆるみといいますか、そういうものを与える。安心感を与える。そうして事実上憲法改正ということに事実行為を作っていく、こういうことにならぬか。ならぬというあなたの自信があるかどうか。あなたの心がまえによってもこれは非常に違う問題だと思いますが、その点、もう少しはっきりしていただきたい。裁判官自身が心配しておるのですから、この点は。 それから第二点は、憲法九条二項の点でありますが、なるほど裁判の技術としては、これは判断はしなくてもいいかもしれません。しかし、この事件の基本的な問題としてこれは論争されてきた問題であります。国民も関心を持っておる。これを判断しないということはおかしい。しかも、私をして率直に言わしめるならば、現在の最高裁の十五人の顔ぶれからするならば、自衛戦力合憲という結論が出せるものなら出したい立場の人が多いのであります。そういう立場の中でありながら、なおかつ、これに対して結論が出せないということは、私は、反面からいうならば、裁判官の良心をもってすると、自衛隊を合憲とは言えない、こういうことを認めておると私は考える。(拍手)率直にあなたの意見をもう少しお聞きかせ願いたい。 ちょうど時間が参りましたので、解散の問題についてさらにお聞きしたいと思いましたが、これはまた別の機会に譲りまして、和の質問はこれで終わります。(拍手) 〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
○国務大臣(岸信介君) 裁判所の、法律、条約についての意見審査権の問題でございますが、法律については規定がございますが、条約についての問題につきましても、今回の判決は、安保条約のごとき高度の政治性あるものについての問題でございまして、一般のものについて審査権がないということは決して言っておるわけではないのであります。 それから、この憲法改正についての私の考え方云々をお話になりました。私は従来、この憲法につきましては、いろいろな点において日本の国情にあわない点があり、また、日本の国民の大多数の希望からいっても、自主的な憲法を持ちたいという見地においてこれを検討すべきものだという考えのもとに、現在調査会が置かれている検討をいたしておることは御承知の通りであります。しかして、私が従来憲法改正論を主張しておるという点につきましては、私は個人としてそういう考えを持っておることは世間に周知の通りであります。しかしながら、それはあくまでも憲法の条章によってこれを改正しようというのでありまして、憲法の改正手続を無視して私はこれを改正しようということは絶対に考えておるものではございません。従って、今回の判決において云々ということがありますけれども、決してそういう御懸念はございません。(発言する者多し) 次に、自衛戦力の問題についての再質問でございますが、私は、この全体の判決そのものがはっきりと自衛戦力についてこれを否定しておらないし、これを肯定もしておらないことは認めます。しかしながら、全体の調子から申しますと、これを否定するところの根拠になるような点は一つもないと思います。それは、この点について触れることは、先ほど申し上げた通り、私は、係争事件の性質上これを取り上げなかった問題である、かように考えております。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 日程第一より第二十五までの請願を一括して議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。内閣委員長中野文門君。 〔中野文門君登壇、拍手〕
○中野文門君 ただいま議題となりました請願二百九十一件につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。 右の請願を内容別に分類いたしますと、恩給関係の請願百四十四件、公務員の給与関係の請願五十七件、共済関係の請願三件、定員関係の請願八十六件、その他の請願一件であります。 以下内容別にその概要を御説明申し上げますと、 まず第一に、恩給関係の請願は、軍人恩給の加算制復元等に関するものがそのおもなるものでありまして、昭和二十八年軍人恩給の復活の際、加算制は全部廃止されることになったが、既裁定者と未裁定者との間に在職年加算について処遇上大きな不均衡があるから、この不均衡を是正するため恩給法の改正をはかられたいという願意のものであります、その他は、内地発病の結核患者に対する増加恩給の支給に関するもの、及び追放解除後に再就職した教職員の恩給是正措置等に関するものであります。 第二に、公務員の給与関係の請願は、海外引揚等による再就職公務員の退職手当算定基礎についての是正に関するもの、公務員給与の一律三千円以上引き上げに関するもの、暫定手当の地域差撤廃に関するもの、及び同一市町村内における暫定手当の不均衡是正等に関するものであります。 第三に、共済関係の請願は、旧令による共済組合等からの年金制度に関するもの、及び公共企業体職員等共済組合法の適用者で旧陸海軍の共済組合員であった者のうち、在職二十年以上の者と未満の者との間の年金通算上の不均衡是正等に関するものであります、 第四に、定員関係の請願は、農林省、北海道開発局、郵政省、総理府恩給局、建設省及び運輸省港湾建設局等の各行政機関に勤務する定員外職員は一部定員化されたが、残余の職員は、その職務内容は定員内職員と何ら異なるところがないのにかかわらず、定員外職員として不当な待遇を受けている現状であるから、すみやかにこれら職員の定員化をはかられたいというものであります。 最後に、その他の請願は、福岡市東部塵芥焼却場移設費補償に関するものであります。 内閣委員会は、今国会の十二月十一日までに付託されました請願を慎重に審査いたしました結果、二百九十一件の請願は、いずれもその願意妥当なものと認めまして、議院の会議に付し、内閣に送付するを要するものと決定いたしました。 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願は、委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よってこれらの請願は全会一致をもって採択し、内閣に送付することに決しました。 暫時休憩いたします。 午後零時三十一分休憩 〔休憩後開議に至らなかった〕 —————・————— ○本日の会議に付した案件 一、最高裁判所の違憲審査権並びに憲法第九条第ニ項の戦力等に関する緊急質問 一、日程第一乃至第二十五の請願