外務委員会 第12号
- 発言数
- 324 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/12/07
会議録
○委員長(草葉隆圓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件、日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件、以上、衆議院送付の両件を一括して議題といたします。 前回に引き続き、質疑を続行いたします。
○木村禧八郎君 私は、ただいま議題になっておりますベトナム賠償協定及び借款に関して、二つの問題を御質問したいと思うのであります。 その第一は、政府の賠償に対する基本的な態度あるいは基本的な方針、そういうものとベトナム賠償協定並びに借款との関係についてであります。第二は、昭和三十二年三月二十七日当時の衆外務大臣とフランス政府との間に調印されましたいわゆる特別円決済に関する議定書に関して、非常に数多くの疑点が残されているわけです。その点について、これは徹底的に御質疑いたしたいのであります。本日はもっぱら第一の問題に集中して質疑いたしたいと思いますが、時間がありましたら、第二の特別円決済に関する問題に触れたいと思うのですが、時間に余裕がなければ、特別円決済に関する質疑は、他の機会に留保さしていただきたいと思います。 そこで、まず第一の政府の賠償に関する基本的な態度、あるいは基本政策といってもよろしいかと思うのですが、それと今度のベトナム賠償協定との関連の問題でありますが、最初に、藤山外務大臣にお伺いいたしますが、政府は、賠償問題に対してこれまでどういう基本的立場で取り組んできたか。そして特に今度のベトナム賠償あるいは借款について、どういう基本的な立場でこれを承認されたか。その点についてお伺いいたしたいわけです。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 賠償問題を取り扱います今日までの態度、ひいてそれがベトナム賠償に対して適用されたかという御質問だと思うのであります。御承知のように、平和条約を締結するにあたりまして、日本は、サンフランシスコ条約の十四条によって賠償の義務を課せられたわけであります。でありますから、この義務を遂行いたしますことは、当然日本が国際社会に復帰いたします前提として、これを完全に履行していかなければならぬ、こういうのがむろん前提にあることは当然なことだと思います。ただ、賠償を取り扱います場合においても、むろんそれぞれの国に与えました物的、精神的な損害及び苦痛に対して、われわれが遺憾の意を表明するという気持を精神的には持って参らなければならぬことは当然でございまして、その気持は、国民各層皆さんの御意見であり、御意思であろうと思います。ただ、これが履行にあたりましては、実施にあたりましては、われわれとして考えなければなりませんことは、一面では、賠償を支払います国々が東南アジアの国々でありまして、政治的な独立をいたしましたけれども、経済的な独立をまだ完璧に行なってない。そういうことのためには、できるだけそれぞれ賠償を受けられる国において経済建設その他生活安定等に役に立つような方法で、この賠償を通じてそういう方法でいくべきであるということが、これは一つの考え方であろうと思います。また、おそらく今回の場合におきまして、われわれが当然賠償をやって参りますときに考えなければならぬ考え方も、そういう線が他面ではございます。同時に、一方では、われわれもそれらの国に対して、できるだけ苦痛と損害に対して償って参らなければなりませんけれども、しかし一方では、日本におきます財政金融の事情から申しまして、十分それを履行することのできる金額というものを考えて参らなければならぬと思うのであります。そういうことを考えて参りますと、われわれとしましては、それぞれの国の要望がありましても、日本の財政金融の事情を考え、将来の支払い能力も考えて、そうしてできるだけ最小限でありながら、向こうが満足し得るように落ちつけて参らなければならぬと思います。賠償を締結いたしまして、第一次世界大戦のあとの賠償処理のように、非常に膨大な金額を安易に引き受けまして、そうしてそれが途中で支払えないというようなことに相なってはならぬのでありますから、支払い能力というものを考えて、そうしてできるだけ最小限であり、そうして引き受けた義務だけは、途中でもって不履行にならないようにしていかなければならぬ。これは当然なことだと思う。それ自身が信義の上に立つことだと思います。でありますから、そういう意味において、できるだけ最小限の金額でもって落ちつけていきたいというのが、これはわれわれの当面考えて参らなければならぬことだと思います。 そういう意味においてわれわれは、賠償に対する基本的な態度をきめて折衝をいたして参るわけでありまして、この点につきましては、最初のビルマ賠償以来当然のことと思います。また同時に、この役務賠償という問題が純粋に労務の提供というだけには……先般いろいろ御議論もありましたけれども、解釈をもう少し拡大していくことがあれだということは当初からの考え方であり、これは、与野党同じような考え方であったと思います。でありますから、そういう点については、そういうような解釈を採用しながら、われわれも交渉に当っていくというのが基本的な交渉の態度だと、こう考えております。
○木村禧八郎君 大体基本的な考え方はわかりましたし、その多くの部分については、私は正しい考え方だと思うのです。しかし、部分的には、これは、この資本財とかあるいは消費財とか、役務賠償との関係、そういう点について議論はありますけれども、大筋はふさわしいのではないかと思います。 大体この賠償は、平和条約十四条に基づいて行なうわけですが、相手国の損害、苦痛に対して償うということが一つ。これは外務大臣の申す通りです。もう一つは、賠償を支払う方の国、つまり、日本の立場から見て、これは非常に大きな国民負担になります。それが両方に経済効果を生むような形、そういうような形、その賠償は、相手国に与えた損害に対してわずかであり、物質的な償いとしては非常にわずかかもしれませんけれども、払う方の日本国民にとっては非常に負担が大きい。御承知のように、ビルマに対しては七百二十億、フィリピンに対して千九百八十億、インドネシアに対しては八百三億、ベトナムに対しては百四十四億四千万円、もしベトナムが、これが実施されるとするならば、合計三千六百三十七億、これは非常に大きな国民負担になりますし、今後戦争責任のない国民、また将来のわれわれの子孫に対しても大きな負担を与えるわけです。ですから、この賠償につきましては、十分に賠償効果が発揮できるようにこの金は使わなければ、これは、国民に対しても相済まぬわけだと思うのです。 そこで、基本方針をお伺いしたのですが、基本方針としてのお考え方は、相手国の損害及び苦痛に対して償いになるようにということを一つ念頭に置くと同時に、日本の国内の、日本の立場では、財政とか貿易とか、支払い能力その他十分に考慮しつつ経済的な効果が上がるような形において実施しなければならぬという基本方針だと思うのですが、そういうふうにとってよろしゅうございますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) お話の通りとわれわれ思っておるのでありまして、特に日本の支払い能力の範囲内で、できるだけの経済効果を上げる。また、向こうに対して苦痛なり損害を償いますけれども、その結果が経済的効果を最大限に上げるようなふうに考えていかなければいかぬということは、われわれも賠償交渉の当初よりの考え方だと思います。従いまして、具体的な折衝にあたりましても、先方側が、こういう経済的な生産財なり何なりをもらうことにより、供与されることによって、自分たちの方の今後の経済的な確立なり、あるいは生活の向上なりを期し得られるというような、具体的な物資についても、専門委員会というようなものを作りまして、並行して検討をいたすというようなことをいたして、どの賠償協定を作ります場合にもやって参ります。従って、たとえば、水力発電所が適当じゃないかというような、そういうようないろいろな順位は、向こうの側でも出しております。こちら側も、その希望を聞きますときには、むろん第一には、特に外貨の負担の大きくかかるものというのは、規定にもございますから、こういうものは、日本が特別に外貨というものが要るからなかなか出せないのだということは言いますけれども、しかし、やはり向こう側が言って参りました、経済的効果の上がるものを主としてなるべく賠償に持っていきたいという考え方はいたしておるわけであります。むろんしかし、賠償協定そのものを調印するときに、最終的に具体的に決定するわけではございません。実施計画に入りまして、さらに向こうとしては、年度計画なり全体の実施計画として新たに出しては参りますけれども、しかし、心持としては、われわれとしても、そういう経済効果が上がって、そうして将来に向かって幸福になり得るものというような考え方でおるわけであります。
○木村禧八郎君 この具体的な内容については、これからあとでお伺いいたすことにしておきますが、ただいま外務大臣が言われました賠償に対する政府の基本的な態度、方針というものはわかりました。しかし、実際にそういう方向において賠償が具体的に解決されているかどうかということが問題だと思うんですね。これは、これから実際にお伺いしていきたいと思うんです。もしそうなっていないとしたならば、国民に対して三千六百四十七億もの大きな負担を与える、相手国に対しては不十分であるかもしれませんが、日本国民にとっては大きな財政負担、そうして防衛費とともに、これはいわゆる非生産的支出である。インフレの一つの要因になる。一時的にはなるのです。従って、この賠償費は、一カ年に見積もりますと、今後十年間大体二百五十億ないし二百七十億ぐらい払うわけですから、一カ年の失業対策費よりは少しは少ないですけれども、大体失業対策費に相当するものでありますから、これが賠償の本旨に反してこういう金が使われていくということになれば、これは政府の重大な責任ではないかと思います。そこで、この賠償に支払われる大きな金額が、はたして先ほど藤山外務大臣が言われたような、政府の賠償に対する基本的な方針なり政策に沿うてこれまでの賠償が行われてきたか。あるいはまた、今度のベトナム賠償がそういう線に沿うているかどうか、お伺いしておきたいと思うんです。 そこで、外務大臣からは基本的なお考えを伺いましたが、次に、今後やはり大きな財政負担になるのでありますから、この点について大蔵大臣に賠償に関する基本的な考え、特に最近の賠償の性格が、よその国、相手国の経済開発に対する財政協力みたいな経済協力、そういう形になってきておりますが、大蔵大臣としては、予算の編成等と関連して、これは非常に重大な一つのアイテムだと思いますが、大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 賠償問題、これはもう基本的には外交問題、こういう意味で、賠償交渉について外務大臣が直接当たられ、また、その外務大臣の外交交渉を、閣僚としても私ども助けて参ります。大蔵大臣といたしましては、特に先ほど来御指摘になりますように、これは国民の負担であり、同時に、わが国経済とどういう関係を持つか、もう少し具体的に申しますならば、支払いといいますか、賠償実施にあたりまして非常な負担になる、耐え得ないようなものであるかどうか、こういうようないろいろ財政的な見地に立ちましてこの問題を検討する、参画する、これはもう当然でございます。その点では、せっかくわが国側において、そういうものの支払いが適正に行なわれるか、あるいは負担として非常な過重にならないか、そういうことを考えますが、先ほど来木村委員も御指摘になりますように、これが十分効果を上げるような方法になるかどうか、その点で、相手方の要望も聞きますが、当方からの希望なり意見も十分、実施にあたっては、それを主張して参る。で、先ほど来言われますように、純賠償あるいは経済協力、こういうような二通りに分けておりますことも、当方の支払いの面から見まして、できるだけ相手国にも協力し、相手国にも喜ばれ、しかも、わが方の負担としてはややこれを軽減する方法があるかどうか、そういう点をいろいろ工夫して、この賠償という国際的なわが国の責務を果たしていく、こういう立場で私どももこれに参画をしておるわけでございます。従いまして、その当初におきましても、支払い期間なんというものは、一国だけでなく総体のものについても十分検討を加えていきたい。さらにまた、それが支払われる実施の段階におきましても、当然大蔵省としてもその協議会のメンバーになる、あるいは幹事会において幹事会の原案を作る、そういうことに参画をして、ひとりわが国の利益だけの主張ということばかりにとらわれるつもりはございませんが、相手国の利益とわが国の利益がどういうふうにすれば一致するか、その点も今後見出していく、こういう意味で努力して参りたい、かように私も理解しておりますし、今後もまたその方針を貫きたい、こら思います。
○木村禧八郎君 ただいま大蔵大臣の基本的なお考え方、それは正しいと思うのです。しかし、実際にそういう考え方において賠償が処理されてきたか、あるいはベトナム賠償の問題が取り組まれておるかということは別問題です。方針としては、みんな非常に筋の通った合理的な御見解を開陳されております。私もその点は同感であります。しかしたとえば、経済協力でまかなえるものであったならば、経済協力でまかなったならば賠償負担にはならない。そういう場合、かりにあるとしたならば、コマーシャル・べースによる経済協力に乗せる努力、こうすることが財政負担を軽めることになり、相手方の方の経済開発にも協力することになるのですが、これはまたあとで具体的にベトナム賠償に関連してお伺いしたいと思うのですが、そういう努力がなされているとは思えないのです。今までの衆議院段階における審議等を伺ってみますと、経済協力でもまかなえたと言われておるのですね。それであるのに賠償という形になったということも聞いておる。そういう場合、財政を担当する大蔵大臣としては、財政の面からその点はもっと突っ込んで経済協力か賠償か、もっと検討さるべきでなかったのじゃないかと思うのですが、その点はまたあとで具体的にお伺いします。 次に、通産大臣に基本的な態度について伺いたいのですが、もう通産大臣はよく御存じのように、実際それがいいか悪いかは一応また議論のあるところでありますが、これまでの、賠償は、実質的には賠償と経済協力と通常貿易、三つの点を考え合せてこれがうまく調和がとれていくような形で行なわれるのが一番望ましいといわれておりますし、また、実際そうなってきておると思うのです。そこで、賠償支払いは貿易政策と非常に重要な関係があると思うのです、特に通常貿易との関係でね。それでこれまでの実績、ビルマ、フィリピン、インドネシア等の実績等と勘案して、それから今度のベトナムの賠償について、そういう点について通産大臣としての基本的な立場、お考え方を聞いておきたい。
○国務大臣(池田勇人君) 基本的な考え方は、外務大臣と大蔵大臣と全く同じでございます。しかし、実際問題になって参りますると、お話しのように、通常貿易、賠償、経済協力、なかなかそこが厄介な問題であるのであります。もともと講和条約第十四条から申しますると、沈船引揚とか役務賠償というものが主である、これにはインドネシア、ビルマが、これだけでは不十分だということを言っておりましたが、そういうことでスタートいたしましても、なかなかこれは賠償であり、これは経済協力である、それじゃ通常貿易に非常に影響がある、こう一本筋で行こうとしても、なかなか利害関係相反する場合がありますので、そしてことに、賠償協定を結びましてから後の相手国というものは、非常に外貨が不足で、通常貿易がなかなか困難だという事態にもなって参っておりますので、根本的の考え方は、外務大臣の言われる通り、具体的の実施につきましては、やはり双方話し合っていくよりほかにはないと思います。やはり賠償の義務は負担して、これが通常貿易をどういうふうに阻害するかということを検討しながら、なるべく阻害しないような方法でやっていく。私は、この相手国の経済事情、こちらの状況等を、やはり、向こうにも喜ばれるような話し合いをするようにして参る、あなたのお話しのような結果が幾分あるかもわかりませんが、趣旨としてはそういう考えでおります。
○木村禧八郎君 幾分、賠償、通常貿易との間の不円滑なものがあるというお話しですが、それはまたあとで具体的に数字に基づいて伺ってみたいと思います。それは幾分どころではない、これまでビルマなりフィリピンなり、インドネシアの賠償については、もうビルマなどは五年になるのですね、非常に長い間の賠償の実施期間があるわけですから、その実績をこれまで十分再検討される必要がある。再検討して、その上に立ってベトナムの賠償も考えるべきだと思うのですが、ちっとも実績が再検討されていないのです。これはあとで伺いますが、そして同じ誤りを、同じ誤りというより、さらに悪い誤りを今度のベトナム賠償においてはあの第二条第二項に基づく二十七億を認めておるということは、非常に問題だと思うのです。十分に過去の実績を検討して、そして賠償、経済協力、通常貿易との均衡を考えて賠償に取り組んでいると言われておりますが、実はそうなっていないと思うのです。まあ考え方だけはわかりました。考え方はわかりましたが、じゃ、実際はどうなっているかということを、これから承っていきたいと思います。 まず、その前に藤山外務大臣にちょっと伺いたいのですが、平和条約十四条によれば日本側の支払う、主として役務賠償が重点であったのですが、これは相手国の経済開発に対する経済協力みたいな形に実際に重点が移ってきておるのですが、それはいつごろからそういうふうに変わり、そしてこれはどういう根拠に基づいてそういうふうになってきたのか、この点を伺っておきたいのです。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 役務賠償ということをむろん主体として書いてございますけれども、サンフランシスコ条約に特別な外貨を必要としない、日本の外貨の負担にならぬというような条項もございますので、それこれ合わせて考えますと、単純ないわゆる役務とだけ解すべきではない、従って役務の集積である資本財というものがそれによって代表されているのだというように解釈いたすことは、十分可能でもありますし、また、そう解釈すべきだと思うのでありまして、その点については、条約上の解釈につきましても、われわれはそういう解釈をとっております。また、具体的にそういうような方針がいつから一体あったのか、経済協力的な部面をふやしたらどうか、これは私ども過去のあれを調べてみまして、やはりビルマ賠償のときから国会等においてもそういう御意見であったのではないかと思うのでありまして、昭和二十八年の六月十七日に吉田総理に対しまして鈴木委員長が質問をしておられますが、その質疑応答を見ますと、やはりわれわれとしては単純な役務賠償でなくて、やはり現物賠償の形において考えるべきじゃないかという御意見が、鈴木委員長からも述べられているのでありまして、吉田総理は、当時、そういうような考え方で私どももやることが必要だと思っておりますという答弁をしておられるのでありますけれども、やはり当時からそういうふうによって東南アジアの友好的な将来の発展を期するようにした方がいいんだという御意見が一般的であったのではないかと、私ども了承いたしているわけでございます。
○木村禧八郎君 まあ、役務賠償については実績を検討して参りますと、この十四条の規定と全く逆になっているのですよ。非常に役務賠償の比率が著しく小さくて、そうして資本財に対する比率が非常に大きいわけです。また逆になっているのです、実際は。そうして日本の場合は、やはり役務賠償というものを、これから見ると、どうも軽視されているような傾向にあるんではないか、これはやはり日本としても、もっとこの点については、日本の雇用問題もありますし、国際収支の問題もありますから、私はこういう形でいいかどうか、あとでまた具体的にビルマなりインドネシア及びフィリピンなりのケースについて伺ってみたいと思いますが、これは私はこのままでいいとは思いませんが、その点、どういうふうにお考えですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、むろん単純な役務だけで解決し得るならばそれは好ましいことであることは申すまでもございません。が、しかし、サンフランシスコ条約の解釈においても、特別な外貨の負担が日本にかからないようにということがありますことは、やはり役務の集積である生産物というものを暗黙のうちに対象にいたしておると解釈すべきではないかとも考えておりますし、また、実際問題として、東南アジアの各国が現物によるある程度の資本財等によりまして賠償を受けますことが、その国との経済関係あるいは経済開発に寄与していくという立場から見ましても、やはり当初よりその点については相当一般的にもそういう方法でいくべきじゃないかという御議論があり、また政府もそういう解釈できたと、こう考えているのでありまして、ビルマ賠償以来、その通りな傾向をもってこれを処理しているわけでございます。
○木村禧八郎君 役務賠償につきましては、また他の機会に質問をするとしまして、これは議論にわたることを避けますが、そこで次にお伺いいたしたいことは、これまで賠償に対する基本的な態度として、まずその第一は、相手国に与えた損害、苦痛、これを償うということが一つの立場である。もう一つの立場は、支払う側の方の、日本の経済負担等を考え、そしてなるベく経済効果が上がるようにという立場である。この二つの立場が、この賠償に対する基本的な立場であると思うのです、大きく分けまして。 そこで第一の、相手側に与えた損害、苦痛に対してこれの償いをするという点ですね、この点につきましては、これは日本の賠償負担は大きいけれども、相手側に与えた損害に対すれば、これはもう非常にわずかであると思うのです、実際問題として。それで十分日本の侵略主義者が与えた非常な被害に対して償いができるとは思いません。従いまして、それだからこそ、損害と苦痛の実情に即した支払いの仕方をしなければならぬと思うのですね。それにはどうしても戦争損害の実情、それがどのくらいの額に上ったか、そういうものについて相手側の主張もございましょうが、それに対して日本側も十分誠意をもって検討する。その検討に基づいて、被害を与えられた国民に対して償いになるような実情に即した賠償の支払いの仕方をしなければならぬと思いますが、この点外務大臣はどうお考えですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 今、木村委員のお説のように、戦争中に与えた損害に対して、いずれにおいても払います金額というものは最小にとどめるべきであり、またとどめていくのでありますから、従ってその効果ができるだけ上がるようにということは、われわれもむろん考えて参らなければならぬところでございます。ただ、今日まで賠償請求国の状況を考えてみましても、与えました損害というものが、物的の損害が非常に多い、あるいは経済的な損害が非常に多い、あるいは苦痛が非常に多い。必ずしもそれぞれの国が同じ事情にはないように思います。ごく大ざっぱに見ましても、たとえばビルマとフィリピンとでは物的損害が非常に多い、あるいは人的損害が非常に多い。しかし、インドネシアとベトナムに対しては、その意味においてはむしろ経済的なり、あるいは苦痛という面の方が多いというというふうに、ごく大ざっぱに分けてみましてもそういうような相違はあろうと思います。従ってわれわれそういうような苦痛なり損害の算定ということはむろん考慮して参らなければなりませんが、ただ賠償交渉におきまして、日本があなたの国にこれこれの損害を与えたのだということを数字的に確定いたしますことは、日本自身がそれだけの損害を与えたと認めるならば、それは当然払うべきじゃないかというのが向こうの反論になってくるわけであります。従ってわれわれとしては賠償交渉にあたりまして、むろん今のような支払能力その他も勘案して参らなければなりませんから、日本が与えた損害が幾らだということをはっきり算定し、それを明示して参ることはできないのでございまして、その点は十分われわれも考慮はいたしておりますけれども、具体的に発表するようなものをもって向こう側と折衝いたすということはないのでございます。
○木村禧八郎君 それでは被害を与えた相手側のその被害の実情に即して賠償を支払うということにならないと思います。被害に対して償う金額が少ないからこそ、それは一そうその被害を与えられた住民に償いになるような形において支払わなければならないということは、外務大臣は認められたわけですよ。従ってそういう精神に沿うように支払うためには、やはり戦争被害というものを、誠意をもって資料を検討し、なおこちら側から調べて損害が大きいと、賠償額が要求されるから、そういうことをあまりすべきでないようなことを言われますが、これは私は賠償に対する態度としては誠実さがないと思うのです。戦争責任に対する反省がないと思うのです。実際の実害がどれだけ大きな額に上ろうと、与えた損害に対しては、客観的に一応調べて、その上に立って日本の支払い能力というものと勘案して、それだけは支払えない、こういう折衝になるのが、私は正しい立場じゃないかと思うのです。それを何かなるべく賠償の額を少なくするために、何か取引みたいに、こっちで戦争被害をなるべく調査しないようにして、向こう側に主張させて、こっちがなるべく値切るというような、そういう立場は、私は賠償の本旨に反すると思う。一番最初外務大臣が言われた賠償の基本方針とそこは食い違っていると思うんですよ。これまでビルマ、インドネシア、フィリピンについて、もうすでに賠償実施時期に入ってきていると思うのですが、この三国に対する賠償額をきめる際に、どういうふうにこの戦争の被害について相手国に与えた苦痛の償いになるような形においてそれを調査されたか、もうすでにビルマ、フィリピン、インドネシアは実施時期に入っているのですから、もう過去のことに属しますが、今度のベトナムの賠償をきめられるに当たり、それは非常に参考になりますものですから、その三つのケースについて、どういう方法で戦争損害というものを査定し、そして賠償額を決定されましたか。で、おのおのについて、いろいろ被害も違うと言われましたから、ビルマはビルマ、インドネシアはインドネシア、フイリピンはフィリピン、おのおのについて承りたいと思います。具体的に承りたい、これは重要な問題と思いますから。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私はただいま申し上げたのが、賠償交渉に当たりますビルマ賠償以来の政府の私は態度であったと、こう考えているわけでありまして、むろん原則で与えた損害に対して十分な支払いをいたしますことは必要であるという考え方は、それはどの歴代の内閣も持っておられましたし、日本の政府も持っておられたと思うのですが、やはり今お話のありましたように、基本的態度として、日本の財政負担能力もございます。従って、それらと、今の苦痛なり、あるいは相手国の要求なりとをどう調和させていくかという点になりますと、やはりビルマ賠償以来政府の持っておりました態度というものは、今申し上げたような態度で、終始一貫してきていると思うのであります。従って、ビルマ賠償以来特にそれぞれの国から出ました損害について、ある程度のそれを検討し、調査し、そうしてそれに対する日本側の大よその考えはきめて参っておりますけれども、具体的に数字としてそういう資料を集めて、それに対抗したということはないように思っております。なお、申し落しましたが、ビルマ賠償以来、やはり関係国との賠償支払い力とのいろいろな若干のバランス、まあこれは正確なバランスというものはとれないわけでありますが、若干やはりそれぞれの国とのバランスということも考えてきておるということは申すまでもないことでございます。
○木村禧八郎君 この戦争被害に対する査定、調査なり査定ですが、それに対しては、ビルマ賠償以来一貫してそういう態度をとられた、今度のベトナム賠償の場合もそういう立場であると言われておりますが、一貫しておらないと思うのです。事実がそれを証明しているのですが……。そこで、私は具体的にお尋ねしたい。一貫しておられると言いますが、一貫しておらないのです。そこで、ビルマの場合はどういう損害の査定の仕方をされたか、フィリピンの場合はどうされたか、インドネシアの場合はどうされたか、それをだから伺いたいのです。一貫しておられると言いますが、どうも一貫しておらない。特に今度のベトナム賠償の場合における損害の査定の仕方につきましては、非常に割り切れないものがたくさんあるわけですね。一体何でこの百四十億という賠償を何を基礎にしてきめたのか、根拠が全然わからないのですね。そこで、一応外務省の方から資料をお出しになっております。この資料に基づいて御質問していった方が具体性を持つと思います。それで外務省から出された……。 それでは、議事進行の都合もあるようでございますから、ただいまの戦争被害に関する質問はあとに回さしていただきます、外務大臣……。 で、大蔵大臣と通産大臣にお伺いいたしたいのでありますが……。
○吉田法晴君 関連。損害に対して賠償をするのか、あるいは経済的な要求に対して賠償をするのかという木村さんと外務大臣との質疑がございましたが、これは役務賠償を原則とするということは、これは十四条の解釈としてだれも異議はないと思います。特にイタリア賠償の原則を日本の賠償の場合にも、引継いだというわけじゃありませんが、同じような原則に立ったと言われているところから、間違いがないところだと思います。ところが、その役務賠償に、役務を中心とするということだけでなしに、生産物云々ということが初めから入ったと言われますけれども、少なくとも最初のころには、これはイタリアの賠償原則と同じだと、こういうことが言われましたが、その役務賠償の原則がくずれたと言われる、まあ時期等をさっき木村さんも尋ねられたのですけれども、イタリアの賠償原則と比べてみ、それからイタリアが各国に払いました賠償の額と比べてみて、日本の賠償の、少なくとも現在の原則はくずれているのではないか、役務賠償の原則がくずれているのではないか、あるいは額にいたしましても、イタリアが払うということになった賠償の金額とはなはだしく違っているのではないか、こういうことを第一点お尋ねをいたしたいと思います。 それからちょうど大蔵大臣、それから通産大臣おそろいですから、これは順次木村さんから御質問になるところかもしらぬと思うのでありますが、吉田内閣の当時、平和条約を調印し、賠償に最初取っ組まれようとしておった当時、その賠償の原則についてどういう工合に考えておられたか。役務賠償を原則として望むということであったろうと思う。その点が一つ。 それからフィリピン、ビルマ、インドネシア等について、最初からこれは岡崎外務大臣の口を通じて言われておることでありますけれども、大体予定とした腹づもり等があったようであります。その当時の賠償の総額あるいは各国別の賠償の金額等は、その後出ておるものがあります。文書になっておるものがございますが、その当時には、ベトナムについては賠償の総額の中で幾らしなければならないかということはほとんど考えられていなかったんじゃなかろうか。少なくとも岡崎外務大臣の口からは金額が出ておりません。で、休戦協定の際にも、ベトナムに割り当てらるべき賠償についてきわめて少ないということが外務省から言われたりしておることは、その辺を反艇をしておると思うのですが、その当時の賠償の原則と、それからベトナム賠償について、過去に関連してどのように考えておられたのか。せっかく当時の大臣お二人もそろっておられることでありますから、お伺いをいたしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 賠償に関してどこの国幾ら、どこの国幾らということは、政府として考えていなかったと思います。お話の通り、役務賠償を原則とするのでございまするが、やはり十四条のあれから申しまして、先ほど外務大臣から答えられたように、ある程度広義に解釈すべきであるという考え方がありまして、私は相当広義にだんだん移ってきたと考えております。
○吉田法晴君 その点質問が残りますけれども、次の機会にします。
○木村禧八郎君 何か議事進行の都合があるようですから、どうも質問が連続しないような形になりましたが、今まで、戦争被害を受けても、特にベトナムの問題について調査が非常に不明確だし、それに基づいて賠償はきめなければならぬ。それが一つの賠償をきめる重要な点である。ところが、それがなされてない。これはあとで具体的に質問するとして、次に、今通産大臣もお答えになりましたように、だんだん賠償の性格が完全な経済行為の形に移ってきているのですね。コマーシャル・べースに基づいて、賠償、経済協・力、それから通常貿易、この三つのコンビで行なわれてきたと思うのでありますが、そこで、先ほど通産大臣は、通常貿易をあまり阻害してないんじゃないかと、多少あるかもしらぬと言われましたが、ビルマ、フィリピン、インドネシアの実績について、これまで一体検討されてきたのか。もうすでにビルマは五年になりますね。もうかなり長期にわたって賠償を実施しておるのですから、その賠償の実績と通常貿易との関係はどういうふうになっているかですね。
○国務大臣(池田勇人君) 大体の方針は、先ほど外務大臣がお答えになった通りに、通常貿易を阻害しないようにというので、そうしてまた、将来の相手国の経済開発を念願といたしましてビルマもやってきておるのであります。ビルマに対しましては、電源開発だとか、あるいは鉄道、車両、その他工場設備、従来やっていないようなところをこの賠償でやっておるのであります。で、すでにお聞き及びと思いまするが、御承知の通りビルマは非常に外貨に困っております。従って抱き合わせでやる、たとえば亜鉛鉄板一万トンはLCを向こうが出す。で、一万トンで足らぬから五千トンを賠償にしてくれぬかと、一万九千トン買うからと、こういう場合はございます。こういうのが、先ほど申し上げたように、亜鉛鉄板というものは原則としては賠償ですべきものじゃないけれども、今まで出ていないし買う金がないというときには、向こうが一万トンの現金払いで、五千トンを賠償にする――抱き合わせでいく場合も起こってきているので、先ほど来お答えした通り、ビルマに対しましては、魚カン詰もございますし、また、最近人絹も三億円ほど出している。これは、買う金がないので、そしてインドネシアとの関係もございまして、抱き合わせ的に、一部いわゆる原則をはずれた場合もありまするが、おおむね外務大臣のお話の原則は貫いていっておると私は考えております。
○木村禧八郎君 ところが、実際このフィリピンなりインドネシア、ビルマの日本との貿易を検討して参りますと、ずっと減少しているのですね、実績が。
○国務大臣(池田勇人君) 減少しているとおっしゃいますけれども、フィリピンにつきましては通常貿易はふえております。
○木村禧八郎君 しかし、フィリピンにおきましては、ほかの日本の最近における貿易の非常な好調、ふえ方と比較して、それはそうふえてはおりません。ふえてはおります。しかし、インドネシア、ビルマにつきましては、はっきりと非常に減少しております。で、原則として、やはり消費財は通常貿易でやるべきであるという原則は貫かなけりゃいかぬと思うのです。そうでなければ、賠償によって賠償の経済効果を大きくするということになって、かえって日本の賠償によって日本の通常貿易が阻害される。そういうことは原則として避けるべきだということは、もう通産大臣言われたでしょう。しかし、実際は通常貿易を阻害しているのですよ。だから、逆効果なんです。賠償は、ある面において逆効果なんです。それで、一面において、住民の実際の損害、苦痛に対しての償いとして賠償が払われなければ、住民の不満が起こる。そうなると、賠償がかえって逆効果なんです。そういう面と、今度は賠償の実際的効果の面からいきましても、通常貿易の方に食い込んできている。この点は、過去の賠償の実績をもっと検討される必要があると思う。それから経済協力の点につきましても、賠償が非常に先行しちゃっているのですよ、賠償のみが。それで、経済協力が非常におくれているでしょう。この点、通産大臣もよく御存じのはずですよ。そういう点、賠償と経済協力と通常貿易の調節をとるということが原則でなきゃならぬのに、そういう方針なら、実際はそうなっていないのですよ。そういう点どうですか。そうなっていると実際お認めですか。
○国務大臣(池田勇人君) お話の、ビルマとフィリピンとインドネシア――まあインドネシアは昨年が初めてでございます。ビルマを考えて、向こうが買う外貨がないというときに、今の、亜鉛鉄板一万五千トンほしいのだ、しかし、これは消費物資だから送れない、賠償じゃできないといって亜鉛鉄板の輸出を断わるか、あるいは、一万五千トンのうち一万トンは自分のお金を出します、で、五千トン――半分だけその賠償でやってくれというとき、これは原則に反するからいかぬというわけには私はいくまいと思います。そこはやはり向こうの経済事情を見て、とにかく、おととしから去年の初め、世界の不況はやはり第一次製品の値下がりで、東南アジア等の経済力が非常に落ちたということが問題なんです。原因なんです。そこで、経済力が割に落ちぬフィリピンは通常貿易もどんどんふえておる。ビルマ、インドネシアというのは御承知の通り一番困った国である。ここへそういう抱き合わせで買うと同時に、ある程度の含みをやるということは、これはやむを得ぬのじゃないか。 それから、経済協力の問題につきまして、フィリピンは御承知の通り、マリキナ・ダムあるいはマイクロウエーブで相当、五千万ドルくらい出しております。しかし、ビルマは御承知の通り、ああいう政情でございまして、日本の外資が、資本が、外資法その他で非常に話がむずかしくて成立しないような状況でございますので、いろいろあせっております。紡績とか、あるいはいろんな点で、向こうの経済開発になるようにこっちは努力いたしておりますけれども、向こうがああいう政情でございまして、まとまっておりません。しかし、フィリピンあるいはインドネシアの方はどんどん経済協力が行なわれつつあるのであります。だから、全体を見て、一つお考えいただかなきゃならない。それで、相手国の経済事情を十分見られてから、そしてお考え願いたいと思います。
○木村禧八郎君 私は全体を見て、今御質問しているんであって、今の部分的なそういうレア・ケースにつきましては、これはいけないと、そういうような窮屈な考えを持っているのじゃないのですけれども、今後、やはり日本の為替と貿易の自由化をやっていく場合、やはり輸出貿易が非常に重要な問題だと思うのです。その点について、過去のこれまでのビルマなり、フィリピンなり、インドネシアとの賠償の経済的効果について、この際、十分再検討してみる必要があると思うんです。してないと思うのですよ。これはそう言っては失礼ですが、私は、これは通産大臣はまたお怒りになるかもしれませんけれども、どうも十分検討した上での御答弁でないように思われる。 そこで、今度は具体的な問題について伺いますが、今度のベトナムの場合ですね、この第二条の2の規定によりまして、資本財以外の賠償を二十七億認めることになっていますね。これはおそらく消費財だと思うんです。こういうやり方はいいとお考えですか。
○国務大臣(池田勇人君) あの規定によりまして、何が行くかということは、具体的にまだきまっていないと思います。
○木村禧八郎君 きまっていないと言って、それじゃ資本財以外の物というのは、あの第二条の2の規定というものはどういう物を指すのか。きまっていないというのでは、これはずいぶんルーズな条約でありませんか。何のためにこういう規定を設けたんですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知の通り、木村委員も御指摘になりました通り、消費財というような種類のものに対する要求が、過去のビルマの実績以来、だんだんふえて参ってきております。従ってわれわれとしては、最大限七百五十万ドル以上はそういうものを充てないんだ、要求があっても。できるだけ、しかし、それを内輪でもってしていきたいんだと、こういうことに考えて参るべきが一番適当なんじゃないか。でありますから、むしろ七百五十万ドルというのは、かりに消費財を出すとすれば、最高の限度をきめておく、それが消費財の要求に対する一つのチェックになるんだというような考え方が一つ。同町に、発電所あるいは機械工業センターその他を作ります場合には、純粋のいわゆる資本財的な問題でない、トラックでありますとか、あるいはセメントでありますとか、そういうような種類の物も、建設に当たっては必要とすると思います。そういう物をある程度出していくことが、むろん対象でございますが、しかし、ビルマその他の例によって、今通産大臣のお話もありましたように、若干の物はあるいは出して参らなければならぬかもしれません。しかし、それをそう何か本格的に要求されて、そうして、しかも、それが無制限に要求されてくるということに対しては、ある程度チェックして参らなければなりません。そういう気持でこの七百五十万ドルというものを限定いたしたのでございます。
○委員長(草葉隆圓君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(草葉隆圓君) 速記を始めて。
○木村禧八郎君 今の第二条の2のああいう規定はよろしいとお考えですか。
○国務大臣(池田勇人君) 私は、やむを得ぬ、あり得ると思います。それの方が全体としていいと考えます。
○木村禧八郎君 やむを得ぬとおっしゃることは、内容を御存じで言われるわけでしょうね。
○国務大臣(池田勇人君) まだ内容はきまっていない、どういう品目かということはきまっておりません。
○木村禧八郎君 内容がわからないで、やむを得ぬというのはどういうわけですか。
○国務大臣(池田勇人君) その程度の物は、あれだけの開発をする場合には必要であるということは十分想像でキ、まずから。
○木村禧八郎君 これは時間がございませんから、私の方から調べたところを申しますが、これはベトナムの建設に当たって消費財が必要である。そこで、これを向こうに消費財を輸出することによって、やみで売って現地の資金を調達する。調達するためにこういう条約が結ばれておるわけですねの消費財を向こうに送れば相当やみで売れる。そうすると資金ができる。そういうものに通産大臣として一体賛成してよろしいのですか。これは日本の貿易上、非常に信用を害すると思うんです。やみのお手伝いをすることになる。そういうことでいいとお考えですか。
○国務大臣(池田勇人君) やみかどうか、品物がきまっていないのでございますから、お答えはしばらく猶予さしていただきます。
○木村禧八郎君 品物がきまっていないと言っても、大体先ほど外務大臣の御答弁では、消費財ですね、消費財の銘柄とか品目、種類、それは今わからなくとも、消費財であるとすれば、これは明らかに向こうの現地資金の調達の手段でありまして、そうして実際には、やみで売る。もう少し通産大臣としてお調べになってみて、それで、もし賛成されるとするならば、日本の通産行政として、やみのお手伝いをすることになってくる。これは私は、重要な問題ですから、時間がありませんから、またこれはあとで。
○委員長(草葉隆圓君) これにて休憩し、午後二時より再開いたします。 午後零時十九分休憩 ―――――・――――― 午後二時十八分開会
○委員長(草葉隆圓君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。 ベトナム賠償協定関係両件の質疑を続行いたします。
○木村禧八郎君 午前中、日本のこの賠償に関する政府の基本的な方針ないし態度というものをお伺いしたわけですが、外務大臣の御答弁によって、この賠償の基本的な態度としては、もちろん平和条約十四条に基づくことであるが、相手側に与えた損害、苦痛ですね、そういうものに対して、その実情に合うように償うという、そういう精神ですね、心がまえ、そういうものが第一に基本的態度として大切である。第二は、損害を支払う方の日本の側としては、相手側に払う損害の額は、相手側の損害、苦痛に対して十分償えないけれども、日本国民の負担としては大きいから、その賠償が十分経済的効果を生むような形において賠償を支払うべきである。そういう立場における二つの立場が基本的な方針であるというふうに承ったわけです。そこで、その立場は私は非常に大切であり、しかも正しいと私はそう思います。ところが、実際に、それでは賠償がそういう方針、政策に基づいて行なわれてきておるかというと、私たちの調査した範囲におきましてはそういう立場が貫かれておらない。かえって賠償がその目的とする二つの面において逆効果をもたらしているのではないか、こう思うわけです。 そこで、具体的に、まず第一の賠償に対する基本的な立場としての相手側に与えた損害、苦痛に対して、その実情に合うような償いの仕方をしなければならぬという点でございますが、これについては、相手に与えた損害及び苦痛というものの損害額の調査というものが基本になるべきことと思うわけです。そこで、今回のベトナム賠償にあたりまして、政府はこの賠償額を決定するにあたりまして、あるいは賠償、借款昨決定するにあたりましてその基礎となる損害額についての資料を提出されたわけです。ところが、この損害額につきましては、すでに衆議院段階あるいは参議院の予算委員会段階におきましても各委員からいろいろ質疑が行なわれましたが、どうしても納得できないわけです。そこで、これはきわめて重要な点でございますので、政府の出された資料に基づいて疑問の点を質疑をして参りたいと思います。 午前中、藤山外務大臣は、賠償に対する基本的態度としては、ビルマ賠償以来一貫して変わらない。また、ベトナム賠償の場合においても同じ態度で臨んでいる、取り組んでいるということを申されましたが、その戦争の損害、苦痛に対する調査におきまして、外務省から出された資料を見ますると、フィリピンの場合、インドネシアの場合、ビルマの場合、この場合一応先方側から公式に出された損害額というものが基礎になっておるわけです。ところが、ベトナムの場合は向こうから出された公式の資料というものが見当らないわけです。この点は、ビルマあるいはフィリピン、インドネシアの賠償の場合と、この損害、苦痛に関する査定におきまして違っていると思うのです。一貫しておらないと思うわけですね。そこで、ベトナムの外務省から出された「ベトナムの主張する戦争損害及び苦痛」というこの資料がございますが、この資料は何に基づいてこれは作られておるか。まずこの点をお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) アジア局長から御答弁いたさせます。
○政府委員(伊關佑二郎君) ベトナムの場合も、先方が提出いたしました損害に関する調書から引用したものでございます。その点はほかの場合と性質の変わりはないと思っております。
○木村禧八郎君 どういう資料を提出されたのですか。いつ正式の資料として出したのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 一九五六年九月十八日に向こうが提出して参りましたエード・メモアール、この中の数字を抜粋しまして差し上げてあるわけでございます。
○木村禧八郎君 それじゃそれを基礎にして、日本側として賠償の基本となるべき損害及び苦痛を推定されたわけですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 数字はこれを基礎にいたしまして、私の方で作業いたしましたものは、その最後の一年間の生産等を現在の時価に直してみると、石炭についてはどうなるのかとか、あるいはすずについてはどうなるのかと、そういうふうなものです。数字は先方から出しました数字の通りでございます。
○木村禧八郎君 それで、この出された資料は、これは相手側に与えた損害及び苦痛に関するいわゆる戦争損害の資料として資格のあるものとお考えですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 戦争損害の資料として向こうが提出しましたものに対しまして、われわれの方で多少の計算をつけ加えたものとしてお出しいたしておりますし、戦争損害の資料になると考えております。
○木村禧八郎君 戦害損害の資料になるという御答弁なんですが、それならば、このお出しになった資料の中に、その前文において一番最初の方でこう書かれているわけですね。わが国の「占領及びこの期間中における作戦、ゲリラ戦、わが軍によるぼう大な物質の調達、交通輸送機関の徴発、主として米軍の爆撃による港湾埠頭施設の破壊、鉄道路線の寸断等が相錯綜した原因となって、ヴィエトナムは、損害及び苦痛、すなわち、工場、住宅、橋梁、道路、港湾等の破壊を始めとする多くの物的損害、戦闘行為による死傷者、餓死者等をこうむった。」こういうふうに書かれているわけですね。ところが、その次にそれをもとにして、この損害を計算される場合、人的の面、物的な面に分けまして損害の算定が出ておるわけです。それから通貨貿易等についても出ておる。この戦争損害を見る場合、工場とか住宅、橋梁、道路、港湾等と、こういう破壊はかなり大きな損害と思われますが、実際に、そうして、ビルマの場合はかなり具体的にそういう財産及び諸施設の損害、それから建物にしても、個人用及び商業用の建物の損害、鉄道資本の損害、こういうものが戦争損害として出されているわけですね。ところが、外務省の出されたベトナムの損害の調査では、前文においては、工場、住宅、橋梁、道路、港湾等の破壊を初めとする多くの物的損害があったと言われながら、こちらの方の計算になりますと、今度は何も書いてないのですよ。ですから工場、住宅、橋梁、道路、港湾等の損害は幾らあるかこの資料には何にもないけれども、これを示されなければ損害を奔走したということにならないのです。その点どうですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) そういう工場とか住宅、港湾あるいは橋梁その他の損害額は正確な数字がつかめないので、そういういろんな戦争の直接損害の結果として起きたそういうふうな貿易とか生産の減退というものを、資料として出すのだということを向こうが断わっておるのでありまして、わが方といたしましても、そういう直接的な物的損害には資料がないのではっきりした数字がつかめないということでございます。
○木村禧八郎君 資料がないのでつかめないのか。実際に現地に行かれてそういう調査の努力をされたのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 現地調査はいたしておりませんが、大使館が五三年でございますかできましたし、そのころから現地の実情は見ております。これは南に限られておりますかしれませんが。そのほかにまた、このベトナムにつきましては、終戦後もずっと内乱の状態が続いておりますので、実際問題としてそういう調査は困難であったと、こう思います。
○木村禧八郎君 戦争損害を査定する場合、貿易とか生産の減退とか、そういうものでこの損害査定できますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 破壊がありましたために生産が減るとか、やはり生産が減ったために貿易が減少するというのでありますから、直接ではありませんが、結果としてそういうものから私は損害はやはりわかってくる、われわれは何も直接の物的、物そのもがこわれたとかいうものだけを損害の対象というふうには考えておりません。
○木村禧八郎君 私はそういう質問をしているわけではないのです。その戦争の物的損害及びその苦痛でしょう。ですから直接あるいは間接の損害、これに対して賠償するということになっているのですから、そんなことはもうわかり切っていることでしょう。物的損害だけではないということは、直接的ではない、間接の損害も入ることはわかっておる。これはそういうことは言われなくても明白なんです。しかしですね、常識として貿易とか生産という、そういうものの指数で戦争損害というものは実際わかると、もしそうお考えになったら、これは少し常識を疑いたくなるのですがね、そういうふうで算定できますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 具体的に戦争損害をいろいろ物的損害、何の損害というふうに分けまして各項目別に算定をするというのであれば、これは資料がなければ物的損害を出すというふうなものは出ぬかもしれませんが、全体を含めて戦争の損害というものを見ておるわけでありまして、間接損害の面だけを向こうが資料を出しておりますので、その資料を差し上げて、直接損害は資料がないというわけでございますから、その面はわからないままで間接損害というふうな面から損害を見ておるわけであります。よその国の場合も物的損害あるいはそのほかの損害を出しております。フィリピンまたはビルマの場合は割にはっきりしておりますが、インドネシアになりますとその点ははっきりいたしません。やはりベトナムと同じような間接損害というようなものが中心になるわけであります。
○木村禧八郎君 そのベトナム側の出された資料によって、そして戦争損害を日本政府側において査定された、こう思うのですがね。そこで今までの御答弁を聞きますと、このわれわれに出された資料の前文においては、これは日本の政府側の損害に対する見解が書かれているんですよ。それにはもう工場、住宅、橋梁、道路、港湾というふうにちゃんと日本側の戦争損害に対する説明としては、そういうものが書かれておって、そして後になってそのベトナム側の出された資料によって算定したその人的及び物的の損害の中には、項目としても、工場とか住宅、橋梁、道路、港湾というのは全然出てないんですよ。項目としても。で、そういうものを貿易の指数とか、通貨の発行高だとかそういうものによって、工場、住宅、橋梁、道路、港湾というものの損害というものは推定できますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) その工場とかその他橋梁とかそういうものにつきましては、はっきりした数字がございませんので、ないということをお断わりしておるわけでありまして、結果として現われた間接損害の面から、全体の損害を判断するという立場をとっておるわけであります。
○木村禧八郎君 それではそういう政府が多大の損害のあったと認められておる工場、住宅、橋梁、道路、港湾等のこういう破壊に対する損害は、これは考慮の外になっておるんですか。損害の査定の外になっておるんですか。そういうものは考慮しなかったんですか。わからないから。
○政府委員(伊關佑二郎君) 考慮の外というのではありませんので、考慮しようにもはっきりした具体的な数字がつかめない。それでそういう結果から、結果をつかまえた。こういうことです。
○木村禧八郎君 具体的な何がつかみ得ない。だから戦争損害をきめる場合には、算定のしようがないんでしょう。そういうことになっているんですな、今のお話では。だからこういうものに対するどれくらいの損害かということは、算定のしようがない。そういうことによってこの損害査定が行なわれておる。そういうものを基礎にして賠償が行なわれておるということになるんじゃないですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) たとえば、フィリピンの場合は八十億ドルという数字を出しておりますが、先方では八十億ドルの内訳といたしまして、十億ドルが、直接この建物とか、工場とか、橋梁とかそういうふうな物的の直接の損害が十億ドルだ。あとの七十億ドルは軍票ないし人命に対する損害、無形財産に対する損害、こういうふうに言っているわけであります。フィリピンの場合の八十億ドルのうち、直接の物的損害というものは八分の一向こうがあげておるというふうな事例もございますので、やはり全般的に見て損害というものを考えたわけであります。
○木村禧八郎君 非常に具体性を欠いておることがわかって参りましたが、さらに伺いたいんですが、この先方の出されてきた損害額というのはベトナム全体の損害額ですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) ベトナム全体の損害額でございます。
○木村禧八郎君 それは政府は南と北に分けてどういうふうにこれを判定されましたですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) ええ、餓死者という点を考えますと、これは北に限られております。 それからそこに出しております生産減の数字がございます、品目をあげまして。これも町工場等一部を除きましては北でございます。ただ貿易等の面からの数字が出ておりますが、この貿易等の方から見て参りますと、たとえば貿易総額の中で米とゴムでもって三分の二を占めております。そういうふうに米とかゴムというふうなものを見ますと、これは農産物、こういうものは南に限られておるというふうに、まあ大体のそこでもって算定ができると、こう思っております。
○木村禧八郎君 そうすると、大ざっぱに被害の割合ですね、政府の出された資料に基づいて質問しているのですが、先方の出された約八十億ですか、それを基礎にして算定されたそうですが、北と南との金額にして大体割合はどのくらいに考えられますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) まあ餓死者の点を除きまして、物の点で見て参りますと、私は南方の方がやや多いというふうな、常識的な判断になるのじゃないか、こう思っております。
○木村禧八郎君 南方の方が多いということは餓死者を除いてですか。それはそういう基礎資料はございますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) ここに出ております向こうがよこしました資料の範囲内から見ますと、そういうふうに考えられる。これにまあ米軍の爆撃というふうなものもございますが、これはまあ大体この全般にわたって行なわれております。しかし、まあサイゴンの町というものが一番大きかったというふうな点から見れば、同じ爆撃を受ければサイゴンの方が損害が大きいというふうなことも考えられます。
○木村禧八郎君 その損害は日本軍による損害ですか。アメリカ軍による損害も入っているんですか。南の場合ですよ。
○政府委員(伊關佑二郎君) 南も北も米軍の爆撃というものは、アメリカが爆撃した損害であります。
○木村禧八郎君 南の場合は、アメリカも入っているわけですね。
○政府委員(伊關佑二郎君) 北も南もやはり米軍の爆撃というものが、生産の減退とかその他の経済的な損害の原因の一つとして入っております。
○木村禧八郎君 そういうものの損害が、米軍の爆撃の損害が、ここの向こうの要求した八十億ドルという損害総額及びそれを基礎にしたこの外務省の――日本側の損害査定額に含まれておりますか、
○政府委員(伊關佑二郎君) 米軍が与えました損害をどの程度見るかということは別問題でございますが、日本軍がおるから米軍が爆撃する、戦争があるからそういうことになるという意味においては、因果関係はあると考えております。どの程度見るかという点は問題でございましょうが、それは含まれております。
○木村禧八郎君 含まれておる……。米軍による爆撃の被害というものは、日本の賠償の対象になっているということになるわけですね。これは非常に問題だと思います。一応その点は確認しておきます。
○佐多忠隆君 それはいいですね。はっきりそのところはさせておいて下さい。
○政府委員(高橋通敏君) その点は米軍の爆撃がありましたときに、どこどこが損害を受けたと、具体的損害を受けました場合に、その損害に対する補償というような、直接な結びつきという意味において考えていないわけでございます。しかしながら、そのような行為も、それからその他いろいろな行為がありまして、それが総合的にその生産や、貿易やその他のものに影響を与えましたから、そういう意味において一つの要素として考えるべきではなかろうか、このように考えている次第であります。
○佐多忠隆君 関連。そうしますと、その点はお配りを願ったベトナムの主残する戦争損害及び苦痛の中に、「主として米軍の爆撃による港湾埠頭施設の破壊、鉄道の路線の寸断等が相錯綜した原因となって、」いるという主張をしているんですが、この主張、今の問題に関する限りは、この主張をそのまま日本側としてはお認めになって、その上で損害をお考えになっている、こういうふうに了解をしていいということですね、金額その他は別ですよ、考え方としては。
○政府委員(高橋通敏君) ただいま申し上げましたように、直接の損害が起こりました、その損害をどうするかという意味合いにおいての賠償損害額というふうな考え方をいたしておりません。ただそのような諸種の多くの原因の一つということが、そういう行為もあった、そういう意味合いにおいて、これを評価していると、こういう意味でございます。
○木村禧八郎君 それは要するに、この損害総額の中に、賠償の対象になる損害総額の中に米軍の爆撃による、そういう損害も入っているということなんですね。個々のどこの鉄道、どこの港湾のどういうふうなということではないけれども、総合的にそれは入っていると、そういう考え方のわけでしょうね。
○政府委員(高橋通敏君) ただいま申し上げましたように、総合的と申しますか、大きな広い意味ででございますね、日本軍の存在、それに対する米国の爆撃、その戦闘行為、そういうふうな意味合いにおいて、その要素の一つとして、やはり考えるべきであろう、こういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 それは米軍の爆撃による損害も、この賠償の対象としての損害の中に入っている、そういうことになるわけですね。それでいいわけですね。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 米軍の爆撃の損害そのものが、直接賠償の対象に入っているわけではございません。戦争自体が、戦時状態にあったということから起こってくるいろいろな苦痛なり、困難を与える一つの原因として、そういうものがあったということでありまして、損害を対象にして、この中に考えられているわけではございません。
○吉田法晴君 ちょっと、この出ております資料の中に、「米軍の爆撃による港湾埠頭施設の破壊、」あるいは「鉄道路線の寸断等」があったということは認められているのですが、これは政府の出した資料にございませんけれども、当時の新聞その他から拝見をしましても、あるいは橋梁がやられたりあるいは工場がやられたり、港湾がやられたりしていることは間違いないのですが、それがこの中に入っているのですか、それともその部分は、直接の工場を爆撃したりあるいは橋梁を爆撃したり、道路を爆撃したり、そういうものは入っておらぬ、しかし、そういう戦争状態による一般的な結果は入っているという御答弁のようですが、米軍による直接の被害が、日本が責任を負うべき賠償の中に入らないとすれば、戦争一般の状態からする影響の中にも、これは当然アメリカの責任による部分というものが、ふるい分けられなければならぬと思うのですが、その点は間接のまた間接になっていきますけれども、戦争一般の被害ということで、その中にも入っている、こういう御答弁のようですが、そういうことでしょうか。
○政府委員(高橋通敏君) ただいまの点でございますが、個々の爆撃やあるいはその爆撃によります橋梁その他施設の損害そのものが、すぐさま戦争損害の総額に影響を与える額として考えるというふうな考え方ではございません。すなわち、すべてその損害を評価する大きなワクのうちの一つとしてのそういう行為、それに対する米軍の行動その他が評価されるという、こういう考え方でございます。
○吉田法晴君 大きなワクの、日本が占領をしておった、あるいは戦斗をしておった、そういう状態に対して、米軍初め連合軍の攻撃があった、大きなワクの中といえば、それは戦争はみな大きなワクの中に入りましょう。で、その大きなワクの中に、橋梁や鉄道、港湾等の爆撃の被害も入っているのか、それからあるいは生産や貿易の影響にも、そういう戦争状態というものがあったとして、戦争状態なりあるいは占領といった大きなワクの中でと言われれば、その中にも生産あるいは貿易の減退というものも入るでしょう。そうすると、十四条によって「戦争中に生じさせた損害及び苦痛」というのは、日本が戦争中に生じさした損害及び苦痛だと思うのですが、その中に米軍の爆撃あるいまその他によるもの、直接間接の損害というものはこれは当然除かるべきが妥当だと思うのですが、政府の説明では、米軍による、あるいは連合国による直接の損害も、あるいは間接の損害もこの中に入っておる、こういう御答弁でしょう。
○政府委員(高橋通敏君) ただいま申し上げましたように、面接の米軍による損害、その直接の損害というそれがそのまますぐさま損害額として考えるというふうな損害額の考え方と申しますか、評価の考え方というのが、そのような直接的なものとして考えていないわけでございます。しかし、やはり二つのいろいろな要素、原因となりあるいは結果となった相錯綜した一つの要素としては、これは考えなければならないと、こういうふうな考え方であります。
○吉田法晴君 関連であるからやめますが、ここにあげられてある損害の中に、「損害及び苦痛、すなわち、工場、住宅、橋梁道路、港湾等の破壊を始めとする多くの物的損害、戦斗行為による死傷者、餓死者等をこうむった。」と、こう書いてあるこの中に、米軍の爆撃によるものが入っておるのかどうか。あるいは間接損害として一番しまいの計算に出てくるものもございますが、その中に入っておるのか。先ほどの答弁は、直接の損害は入っておらぬけれども、間接の損害は入っておる、こういう答弁です。しかし、ここにあげておる橋梁、道路、港湾等の破壊の中には、これは入っておるじゃありませんか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 何と申しますか、われわれとしましては、米軍の爆撃というものも日本軍が応戦しておって爆撃を受けた、応戦せずに爆撃を受けたと、いろいろこまかくなりますと問題もございましょうが、高射砲陣地があって爆撃を受けた、あるいはなかったというふうないろいろなこともございましょうが、全然そういうものを見ないというわけでもございませんが、あまりにも明瞭に米軍の爆撃だけだと見られるようなものは、これは除くべきじゃないかというのがわれわれの考えでありますが、しかし、戦争全体の結果としていろいろな損害がある。その中からは全然米軍を見ないというわけではございませんが、やはり戦争があったからいろいろな損害が出てくる、そういう意味におきましては、米軍の行動というものが戦争全体の中に寄与した面もこれは見ておるということになるのでありまして、ほかの国の例で見ましても、ビルマの場合、これは英軍とか英印軍になります。フィリピンの場合には米軍になります。それからインドネシアの場合にはオランダ軍になりますが、やはりあげております。物的被害、損害、あるいは、有形、無形の損害、そういうものの中には、米軍とかオランダ軍とか英印軍とかいうものの区別はいたしておらぬわけであります。
○吉田法晴君 この平和条約の建前からすると、私は米軍による爆撃の被害等は日本の責任を負うべき範囲外だと思うのですが、これはまあ今のアジア局長の答弁によると、そこで応戦があった、あるいは高射砲による抵抗等があったか、なかったかというような具体的なあれもわからぬし、直接損害についても、米軍、連合軍による直接の損害あるいは間接の損害は、ベトナム側から主張する損害の中には入っておる、少なくともこの数字の中に入っておる、こうこれは断定、了解していいですね。そういう数字だろうと思う。
○政府委員(伊關佑二郎君) ある程度入っておるということでございます。
○木村禧八郎君 政府の説明によれば、「主として米軍の爆撃による海湾埠頭施設の破壊、道路路線の寸断等」、そういうことが書かれておるわけです。そうしてそういう損害、苦痛、そういうものをベトナム側は評価して、損害額として出してきておると、こういうふうに言っておるのですから、まあ今までの御答弁で、米軍の破壊による損害が賠償の対象になっておるということは、これは議論がありますから、われわれはそういうふうに確認して、あと進みます。 そこで次にお尋ねしたいのは、この日本側の損害査定は、一九五六年九月十六日ベトナム側が出してきた資料に基づいて算定したと、こう言われておるわけですが、それは向こう側が出してきた資料というのは、われわれに配布されたこの資料の中で、人的、物的な面、それから通貨、貿易の面について計数が出されておりますが、これが向こう側、出してきました資料でございますか。資料の全体でございますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 二回に分けて差し上げておりますが、二回分を一緒にいたしますと、向こうが出しました全部になります。最初はごく結論的なものを差し上げて、その次に詳しい年次別資料を差し上げました。両方合わせまして、向こうが出したものであります。
○委員長(草葉隆圓君) ちょっと速記とめて。 〔速記中止〕
○委員長(草葉隆圓君) それじゃ速記始めて。
○木村禧八郎君 そうしますと、ベトナム側から出した損害額ですね、それは総額は幾らなんですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 二十億ドルでございます。
○木村禧八郎君 二十億ドルですね。それで先ほど伺いますと、南と北に分けまして、人的損害号、の他を除くと、南の方が少し多いというようなお話でしたが、それはどういうふうな区分になるのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 貿易額で見ますと、輸出の対象額のうちの三分の二というものを南の生産が占めておる。そういう点から見ましてその影響が南の方に多いのじゃないか。もちろん貿易額の中には北の石炭、ホンゲイ炭というようなものも入っておりますが、それらの金額はごく割に小さいものでありまして、米とゴムというものが貿易総額の三分の二を占めるというふうな事実から見まして、その方がやや多いのじゃないかというふうな感じがするということであります。
○木村禧八郎君 それでは全体としてどうですか、人的損害等を入れて二十億の割合では。
○政府委員(伊關佑二郎君) 全体として二十億のうちの十億ドルを人的損害だと向こうは言っております。あとの十億ドルはその他の損害になります。それを入れますれば、向こうの言う通りに勘定しますれば、それは北の方が多いということになります。
○木村禧八郎君 そうすると、賠償の基本的な方針としては、現実に損害、苦痛を与えられたその損害、苦痛に対して実情に合うように賠償するのが、これが賠償の精神でしょう。そう外務大臣は前に申されたですね。その点もう一度確認しておきたい、
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん午前中に申し上げましたように、賠償のことでありますから、戦時中に起こりましたいろいろな損害や苦痛というものを、先ほど申し上げましたように、一つの対象として考えることは、これ当然のことだと思っております。
○木村禧八郎君 その賠償の目的を果たさなかったならば、国民は先ほどから申し上げますように、たくさんの負担を負っているのですからね。賠償を支払ったことによってむしろ逆効果を生んだならば、何のための賠償かわからないでしょう。そこで私が一番最初賠償というものに対する政府の基本的な態度方針というものを伺ったわけですよ。それは何回も確認したわけです。一つは損害を与えたその損害苦痛に対してその実情に合うように償いを下るということでしょう、ところが、今全体の損害を伺うと北の方が多いというのでしょう。それじゃこれは実際賠償を払った場合、実情に合うように補償されるか、そのために北の方にもうすでにいろいろな問題が起こっているでしょう。そうすると、賠償を払うことが逆効果になる、そういう点どういうふうに。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 先ほど人的損害は北の方が多かったのだというようにアジア局長が御説明申し上げたわけです。むろんそれは百万という数字がはたして正確なものか、ビルマの最初の十億という数字の中には、百万に対して千ドルずつですかというような計算で出てきて、それを百万とそのまま見るか見ないかということはこれは一つの問題だと思います。従って、それをはたして二、三十万と見るのかあるいはもっと少なく見るのか、そういう問題もございます。従って、今申し上げたような点だけから、そういう点からお考えいただければおわかりいただけるのじゃないかと、こう思っております。
○木村禧八郎君 これはまたあとで、最後に締めくくりのときに一つ御質問いたしたいと思いますが、賠償の目的に沿わないような賠償の仕方をするということは、これは重大な責任でありますし、国民がたくさんの賠償負担を負うのに対して、これは非常な間違いであると、こう思うわけです。 まだこの資料について疑問点がたくさんありますから、その疑問の点の質問に移りますが、このベトナム側が出された資料、政府は検討されたわけでしょうが、まず第一に人的な損害として、ここでは一九四五年餓死によって百万人以上の餓死者を生じた。一人当たり千ドルを要求して十億ドルとなる。一体この千ドルという算定法、どういうふうにお考えになったか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 千ドルという額がどうであるかということは、なかなかこれは問題があろうと思いますが、われわれは、先方との間にその百万の数字がそれが多い、少ないとか、百万というものに対しては、われわれはそんな大きな数字と思っておらぬということを言っておりますが、具体的に千ドルがどうこうというふうな議論はいたしておりません。
○木村禧八郎君 これは政府が検討されたでしょう。この資料を検討されて、それに基づいて賠償額というものをきめていったわけですから、向こうの出された資料について、その餓死者が何人ということについては、いろいろ参議院の予算委員会でもだいぶ問題があったわけです。一人干ドルというそういう要求ですよ。それについてそれはどういうふうに考えられたということを伺っているわけです。そういう計算の仕方でいいのかどうかですね。
○政府委員(伊關佑二郎君) 向こうが出しております資料も、限られた資料に基づいてこれだけのものを出せと言っておるわけでありまして、向こうが出しておらぬもの、われわれのわからないものもございましょうし、われわれとしましては、それほど千ドルを五百ドルに査定するとか、あるいはもっと低くするとかいうふうな、そういうこまかい計算はいたしておりません。全体において大体どれくらいのものだというごく常識的な判断をいたしておるというわけでございます。
○木村禧八郎君 大体人的な面につきましては、この正確な資料というものはない。そうして先方側が出された一人千ドルというのにつきましても、具体的にそれがいいとか悪いとかいうことも十分判断することも困難である、こういう結論なわけです。要するに、はっきりした根拠がないと、十分なその批判にたえるような、そういうはっきりした客観的な根拠に基づいてこういう損害額が出されているのではないと、こういうふうに考えられているでしょう、それでよろしいのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) ほかの国の場合も全部同様でございますが、賠償というものは、大体事こまかにどの損害が幾らというふうな算定をいたして、そうして金額を出しているというふうなものではございません。大体どこの国の場合も資料というものは不十分でございますが、まあ手に入る資料、その他いろいろな話を聞きまして、常識的に見まして、やはりある程度の相当なる損害があったということを判断しているわけです。
○木村禧八郎君 その常識、われわれ常識から判断しているのですよ。常識から見て判断する場合にも、やはりでき得る限りの資料を集めて、それは算定すべきだと思うのです。ところが、われわれに出されているこの資料を見ますると、この資料に基づいて戦争損害を出すというような根拠のある資料とは認められないのです。今の人的損害の場合についても、非常にあやふやなものだ。それで結局戦争損害というものは、具体的な損害について一々調ベて集積してそれを算定するものでないといわれていますが、そんなことは常識というか、あたりまえですよ。そんなことは一々具体的にできっこないじゃありませんか。しかし、国民の多くの血税を払う場合の賠償をきめる場合においては、ある程度国民感情というものがあるのですから、やはりある程度のよりどころがあって、そうしてやむを得なかったのだと、なるほどこういう根拠に基づいて一応払ったのだということに納得できなければ、大会社の金もうけの手段としてこの賠償額が決定されたり、アメリカの軍事協力のためにこの賠償が決定されたり、あるいは一部の政商とか、それと結託する政治家をもうけさせるためにこういう賠償がおおよその見当で、金もうけの方のそこから逆算して計算するようなことになったならば、国民としてこれは承知できないわけですよ。そういう点で聞いているわけです。そこで、人的損害の面につきましては、どうもはっきりしない。
○佐多忠隆君 ちょっと。その人的損害ということについて、常識的にいろいろ勘案してみてというお話ですが、一体その常識的というのが、まず飢饉による餓死者を戦争の損害と、直接にしろ間接にしろ、戦争の損害なんといって賠償の対象に取り上げていいかどうかということが、まず第一に問題だと思うんです。そのことはもう少し後に言いますが、その前に、かりに餓死者を取り上げるとしても、あなた方のお話によると、向こうからは一九四五年の飢謹で百万の死亡者があったと言っておると、こう言われる。ところが、これは先に衆議院でも問題になりましたが、つい二、三週間前ですか、シンガポールでベトナムの外務大臣は、今でも、いや、あれは二百万だったんだということを言っておる。それに対して、あなた方は、いろいろ聞いてみたが二十万か三十万ぐらいらしいと言う。全く二百万と言ったり。百万と言ったり、二十万か三十万と言ったり、ここらはもう常識を逸した数の相違です。こういうことで、常識的にいってそうだなんて、そこらを大体つかんだなんということが、およそ非常識な考え方だし、取り上げ方だとしか考えられないんです。ことに、それじゃ、餓死者がそう出たとかなんとか言っておりますが、辻さんによると、ほとんど餓死者はなかったと言われる。まあせいぜい五万とか三万とか、その程度だったろうと言われますが、一年間の餓死者がどれだけあったのか、そこらはもっと精査しなければならないし、常識的に考えれば、今に至るまでそういう差があるなんということは考えられない。従って、この数字自体が、二十万であろうと、三十万であろうと、非常識なものだ。戦争損害として対象に考える場合に、非常識なものであるということが言えるんじゃないかという感じがするんです。 それじゃ、もっと常識的に対比をお尋ねしますが、八年間南北ベトナムは内戦状態にあったんです。従って、これは、非常に大きな物資調達の不足その他もあったと思うのです。この間に、一体戦争の犠牲者なりがどれくらい出たというふうにあなた方はお考えになっておりますか。ここらの数字から見当をつけると、二十万、三十万でも非常識きわまるものだということが、おのずからはっきりすると思うんですが、そごらはどれだけと踏んでおられるのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 内戦によるベトナム人の死傷者の数字というものは、今つまびらかにしておりません。
○佐多忠隆君 つまびらかにしておりませんと言ったって、それらも勘案して、初めて常識的な数字は、もし出すとすれば出るんですよ。それを今つまびらかにしておりませんと言うのじゃ、答弁にならないじゃないですか。これは簡単なことなんです。あなた方が出しておられるベトナム便覧その他にも、よく書いてある。大体、最新のやつによると、死亡、行方不明が九万。八年間の内戦の結果ですよ、死亡、行方不明は九万だ。八年間の内戦の結果がこれだけであるのに、たった一年足らずの間に、餓死者が百万だとか、いや、それをうんと小切っていって、二十万だろう、三十万だろう。その開き自体が非常識なんだが、まして今言ったような数字から見れば、これは非常識きわまるものです。それをそのまま取りませんでしたとおっしゃるけれども、それを賠償の対象にする損害であるかのごとく、一応原則として、数字はどう取るにしろ、損害額はどう取るにしろ、原則として、これは一つの損害の項目だなんというふうにおとりになっていること自体が、非常識じゃないかと思うのです。 というのは、さらに申し上げますが、たとえば、それじゃ、こういう戦争のための餓死者その他を、間接に出た餓死者その他を、今まで賠償に見なければならない戦争の損害として考えたことがありますか。その他のビルマ、フィリピン、インドネシア等の戦争災害も出ております。これらも私は一つ一つ、これは、私の持ち番のときに、もっとさらにお聞きしようと思っておりますから、そのときに残しますけれども、ここでただ関連として申し上げておきますが、これらでも非常に膨大な額に上っておる。しかし、たとえばビルマは、その場合に、割合にこれはまじめに私は出しておると思います。従って、こういう餓死とかなんとかを戦争災害なんといって出しておることはない。これは、あなた方の出された戦争損害積算の表でもはっきりしておる。フィリピンでもそんなものは出しておらない。インドネシアでも出していないと思うのです。そういうものを、今までどこの国も問題にしなかったようなものを、戦争災害の一番重要なアイテムだとして出しておられる。それを幾らに評価するかは別問題として、そうして出しておられて、そういう損害がございますから賠償をやるんだなんて、そういうふうな態度が一体許されるのかどうか。なぜ、今まではそういうものを考えなかったのに、ここにおいて、ベトナムにおいてだけそういうものを取り入れるに至ったのか、あるいは、それを一番主要なアイテムとして考えられるようになつたのか、その辺のいきさつをもう少し御説明願いたい。
○政府委員(伊關佑二郎君) 餓死者が出ました点につきましては、もちろん、その年は冷水害があった、できが悪かったということは事実でありますが、もしこの戦争がなくて、南北の交通が自由であれば、南には米はうんとあるわけでありますから、その米が北に行って、餓死者は出ないわけでございます。もちろん、平年でも、へんぴな所で、多少の、ごくわずかな者は出たかもしれませんが、大量の者は出ないわけであります。やはり戦争というものがあって、そうして南北の交通が途絶しておるということから、餓死者が出てきたわけでございますから、やはり損害に入ると思っております。それから、ほかの国につきましても、これはおのおの人的の損害をあげております。ただ、こういうふうなはっきりした大きな数字の餓死者が出たというふうなケースがないとみえまして、それは餓死者という点では出ておりませんけれども、ビルマにいたしましても、泰緬鉄道のために、三十万ともいい、十五万ともいい、これらの者が死傷しておる。これは、やはり餓死した者も含まれておると思います。それから、インドネシアにしましても、この数字もはっきりいたしませんが、やはり十万以上の者が死傷し、フィリピンといたしましては、先ほど御説明いたしましたが、八十億のうち十億は物的損害、あとの七十億は軍票並びに人命の損害、こういうようなことを言っております。いずれにいたしましても、みなこの人命の損害というものは、あげておるわけです。
○佐多忠隆君 いや、いずれの国においてもあげておると言われるが、ビルマの戦争災害の評価の中にあがっていないと思うのです。どこにあがっているか、もう少し正確にしていただきたい。死んだのはいます。それから戦争によって面接死傷した者もいる。あるいはビルマで動員された者もいる。これは、しかし、戦争によって動員をされて直接に戦死した等々と準ずべき人をここで十七万あげておる。それだけだと私は思う。それから、フィリピンの場合には、これも「人命の喪失」という項目がありますが、これもおそらく私の想像じゃ――これはもっとあとで詳しく、私の番のときにお尋ねをしたいと思っておりますが、これもおそらく、戦争による直接の人命の喪失、損失だろうと思うわけです。それから、インドネシアの場合には、私のいただいておる資料にも、これも「戦費及び死傷による損失等」といって、これも私は、戦争の直接の死傷だ、こういうふうに思います。従って、戦争の間接の、しかも戦争だけでなくて、さっきおっしゃったように、むしろ天災を主とした餓死、そういうものがただここに百万と出る。そういうものを、何というか、アイテムとしては、少なくとも重要なものとして簡単に受け入れておられるというところに問題があるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、ビルマ、フィリピン、その他の場合には、そこのところはもっと正確に御答弁願います。戦争による直接の死傷者……。
○政府委員(伊關佑二郎君) ビルマの場合は、三十五億ドルという当初の要求の中には、そういうものを含めておりませんが、それは当初非常に急いで作ったから、それで入っておらない。いろいろその他のものを考えれば百億近くになるということを、あとになって言っております。
○木村禧八郎君 今、人的損害についてはまだ十分に納得いきませんが、まだお尋ねしなければならない点がたくさんございますが、次に進みたいと思います。
○吉田法晴君 ちょっと、関連して。今、伊関局長は、いわれておる百万とか二百万の人的損害の原因が冷水害、というようなことを言われましたけれども、実際そうじゃないのではないですか。私どもの聞いたところでは、戦争末期になって、フィリピンを占領したというか、回復した連合軍、特にアメリカ軍、それが終戦末期になって仏印に入ってくるというので、山にこもるために大徴発をやった、あるいは仏軍は仏軍でその食糧の徴発をやって、それが飢饉の主要な原因と聞いておるのですが。数字についても、百万人が、百万人じゃなくて二百万人に近いという話を聞くのですが、その原因と、もう一つは、日本の政府が二十万、三十万という数字を言われたので、そこでこの戦争損害を与えておって、人間の点でさえ、餓死をしたあるいは戦争で殺した云々の、人間の損害の点ですらごまかそうとしておる、あるいは削ろうとしておる。こういうことで、ベトナム側からの強い非難にあって、この人的な損害の問題についての計算が、賠償交渉のときに基礎にはしない、そこで、とにかく経済的な貿易なり、あるいは生産なりの数字でもって説明をしようという態度になられたのじゃないか、経緯からいうと。その原因とこの経緯、それについて事実を述べて下さい。
○政府委員(伊關佑二郎君) 御質問の意味がよくわかりませんでしたが、餓死の原因につきまして、この冷水害、それから交通の途絶、それに日本軍の徴発、あるいはフランス軍もあったかもしれません。こういう物資の徴発があった。このことはその通りでございまして、先ほどの御説明が足りなかったと思います。 それから、百万ないし二百万の点が、御質問がよくわかりませんでしたが、われわれは、それを含めるとか含めぬとかいうふうなことを今まで別に、向こうがどう言うからどう言うというふうなことはございませんので、先方は初めから百万ないし二百万というふうなことを言っておりまして、わが方によこしましたエード・メモアールの中には百万という数字を引用しております。せんだっても、向こうの外務大臣がシンガポールで二百万というようなことを言いまして、久保田大使から、二百万だと、ほんとうに二百万と言ったのかと聞いたときに、自分は二百万だと思っておったというようなことを言っておりましたが、百万ないし二百万というふうなことが常識的に言われておったのだと私は思っております。それをわが方で別にどうこうという、原因に入れるとか入れないとか、よく御質問がわからなかったのでありますが、別に何もそういうことはございません。ただ、百万といっても、百万人よりもっと少ないだろうというふうに常識的に判断をしているというだけでございます。
○佐多忠隆君 それで、その二百万、向こうの外務大臣が二百万と言ったことについての真相を調査して御報告下さることになっておりましたが、あれはどういうふうになったんでしょうか。
○政府委員(伊關佑二郎君) あれには二つ問題がございまして、二百万と言った――まあわが方の、向こうがよこしましたものは百万となっていたが、二百かと言っていたという点と、それから、被害が四五年から四六年というふうな新聞報道でございました。その点は、先方は、それは間違いであった、これは確かに四四年から四五年であった、これは自分の記憶違い、二百万という点につきましては、自分は初めから二百万であり、日本側にも二百万と言ったと、自分はそういうふうに思っていたというわけでございます。それに対しまして、わが方から、あなたの方は正式には百万になっているのだということを注意してございます。
○佐多忠隆君 そうすると、外務大臣ですら百万と言っていて、二百万と今でも思い違いをしているような、少なくとも非常識きわまるものだということは明瞭ですね。
○政府委員(伊關佑二郎君) 非常識といいますか、当時からも百万、二百万というふうなことがいわれておったのでありますから、そのどっちかを、だいぶ前のことですから、記憶違いかもわかりません。数字そのものが、このこと自体が非常識であるかどうかということと、記憶違いの問題とは、また別問題だと思います。
○吉田法晴君 百万、二百万の大きな違いもありますが、日本のいう二十万、三十万という数字もそれは撤回されるのですか。そうして記憶がないというのですか。二十万、三十万という数字、それから二十万、三十万か、あるいは百万か二百万か、そういう数字もとにかく損害の中に計算、あるいは賠償の中に計算されているというのですか、いないというのですか。その辺もはっきりしない。
○政府委員(伊關佑二郎君) われわれは、先方の言う数字をそのまま取るものではもちろんございませんが、これがやはり損害の中の一部をなすということは、そう思っております。それから、二十万、三十万を撤回するわけではございません。いろいろな数字があるが、いろいろな人に聞いてみて、わが方の判断し得る限りでは二十万、三十万というのが妥当じゃないかという判断をしているということを申し上げた次第であります。
○吉田法晴君 賠償額の中に入っているのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 最初に申し上げましたように、これはやはり賠償の対象になっており、それを幾らにするかということは全然別問題でございます。やはり戦争の結果であるということは確かでございますから、賠償の対象には入ります。
○吉田法晴君 経緯の点はどうですか。私が、具体的に二十万、三十万という数字を日本政府であげたら、向こう側で人間の点についても、人的の損害の点についても日本は値切るのか、こういう意思表示があって、日本ではそれを、取り消したというか、あるいは向こうは百万、二百万と言っている、こういう答弁に変ってきましたけれども。
○政府委員(伊關佑二郎君) われわれの答弁は決して変っておりませんので、先方は百万とか二百万と言っている、しかし、われわれは二、三十万と判断している、これは終始一貫その通りに申し上げております。
○木村禧八郎君 ただいまの政府の御答弁によっても、賠償額を決定する基礎になる損害の算定、そのうちで特に人的損害についても御答弁ありましたが、戦争損害というものは常識的に判断するよりしようがないと言われましたが、二十万から三十万、百万から二百万、非常な大きな差があるわけです、見方によって。これが常識的といえるかどうかは、健全なる常識を持っている方々に判断していただくよりいたし方がないと思います。これは、この点まだ問題が残っておりますけれども、次に物的な損害の面について御質問をいたしたいのです。 それで、ベトナム側の出してきている資料によりますと、生産、貿易、通貨の三つに分けて損害額を出してきております。しかし、内訳がわからないのであります。生産の項目について、鉱業生産の中で石炭、亜鉛、すず、鉄鉱、こういうものの損害の数量は、トン数は出ております。しかし、これを幾らに見積もっておるか、これが全然出ていない。わからない。それから、製造業につきましても、マッチ、セメント等につきましては数量は出ております。生産減少額の数量は出ております。しかし、これを幾らに見積もっておるかということがわからない。わかったら、これをお知らせ願いたい。 それと、先ほどもお話が出ましたが、鉱業生産についての被害は北が大きいというお話でありましたが、損害の地域的な分布につきましても御答弁を願いたいと思います。
○政府委員(伊關佑二郎君) この金額はいつをとるかということで変わってくるわけでありますが、こちらの賠償は今から払うのでありますので、私の方は現在の時価というもので、一応計算いた一しまして、最後の一年分の価格は、最初に衆議院に差し出しました表に出ております。 それから、この分布状況でございますが、工場等はハノイ、ハイフォン等であります。ホンゲイ炭田その他は北の地区に数地区にまたがってあるわけであります。
○木村禧八郎君 そこで、三九年を基準として、一九四〇年ないし一九四五年の損害額というものが出されております。これは平和進駐の時期以後の損害額ですね。四〇年から四五年。それから、その次の表に、三九年を基準として、四四年九月から四五年八月までの損害額が出ております。この算定幕準について、一九三九年というのをどうして基準にしたのですかね。
○政府委員(伊關佑二郎君) 四〇年から日本軍の進駐が行なわれまして、ノーマルな時代ではなくなっておりますから、その前の三九年というものを向こうはとっておるわけであります。われわれも向こうのとっておるそのままあげたわけでございます。
○木村禧八郎君 それは向こうがとっておるからこちらもとったと言いますけれども、多少経済的な常識のある者として、三九年がどういう年であったかということを調査されましたか。三九年、昭和十四年という年がどういう年であったか。それはノーマルな年として認められますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 私もあまり経済のことはよく存じませんが、まあ、戦争の前の年をとっておるということでありまして、ゴムとか、米等の数字を見ますと、その年をとるが、その前年をとるか、あるいは四〇年をとりましても、それほどの大差はないようなふうに、米とかゴムの統計では私は見ましたが、全般的な経済情勢がどうであるか、そいつは私はよく存じません。
○木村禧八郎君 重大な、重要な賠償の基礎になる損害を査定する場合、その基準年度をどういう年であるかということもよく知らないで、そしてそれをノーマルな年として基準にするというようなことは、それこそ常識にはずれていると思います。どなたか説明していただきたい、わかる人。どなたか、政府委員で説明を。それはどういう年であるか。向こう側から言ってきたから、そのままノーマルだと思う。そんな不見識なことはないですよ。
○政府委員(伊關佑二郎君) 先ほども申し上げましたように、経済全般については私はよく存じませんけれども、大体、このずっと数字を見ておりまして、たとえば米とかゴムというものが大きなアイテムでありますので、それを見てみますと、たとえばゴムの生産は三八年が六万トン、三九年が六万五千トン、四〇年が七万二千トンというふうに逐次上がっており、その後の三年間は……。
○木村禧八郎君 ちょっと待って下さい。もう一度……。
○政府委員(伊關佑二郎君) 三八年が六万トン、三九年が六万五千トン、四 ○年が七万二千トン、その後の一年は平均しまして七万二千トン、大体そういうふうな数字が出ております。それから、米について見ますと、三七、八年の米穀年度が六百二十万トン、三八―三九は、これは非常に多く七百九十万トン、三九―四〇年は六百十万トン、四〇―四一年は五西十万トンぐらいになりますか、そういうふうな数字が出ておりました。これは年によりまして非常に違うようでございます。この二つの大きなアイテムにつきましては、特に三九年というものに、これという特異の現象は見られないと思っております。
○木村禧八郎君 それはゴムでしょう。もう一つは米でしょう。農産物でしょう。私が聞いているのは、これは石炭ですよ。石炭、亜鉛、すず、鉄鉱、マッチ、セメントですよ。鉱工業生産ですよ。
○政府委員(伊關佑二郎君) その方につきましては、今数字の持ち合わせがございません。
○木村禧八郎君 この数字を見て下さい。これはノーマルの年であるそれを基準にとるか、アブノーマルの年であるそれを基準にとるかによって、非常に違いますからね。
○政府委員(伊關佑二郎君) 石炭については資料がございますが、一九三八年が二百三十万トン、一九三九年が二百六十万トン、こうなっております。それから、石炭のエキスポートの方の数字を見ますと、三八年が千二百万ピアストル、三九年が千五百万ピアストル、四〇年が千六百万ピアストル、こういうふうな数字が出ております。(「生産の方ですよ、貿易はあとからやる」と呼ぶ者あり)
○政府委員(伊關佑二郎君) 石炭の生産は先ほど申し上げました。
○木村禧八郎君 生産につきましては、時間を空費してもいけませんから……。あと、ここに掲げてあります石炭、亜鉛、すず、鉄鉱、マッチ、セメントですね、これにつきまして、三九年以前よりさかのぼってずっと生産の状況を示してもらいたいと思いま。それがノーマルな状態であるかどうか、そうして三九年という年がどういう年であったか、ヨーロッパにおいてもどういうことが起こっておったか、それとの関連で鉱工業生産というものはどういうふうにふえておったのか、そういうことを考えて数字を出してもらいたい。ノーマルな年とはいえないと思うのです。そういうものを基準にして、これはあとで数字が出てこないと、はっきり数字的にその間違いを指摘することはできませんが、このような、非常に大きな……。それじゃ、あとで数字をお示し願います。それをもとにして……。
○小林孝平君 今、木村委員から御指摘がありましたけれども、私は、御指摘の通り常識なんですね。こういう統計を作るときは、その基準年度ですね、その基準というものはどういうものをとったかというのは、もう、しっかりした説明がなければ資料にならないのですね。こんなことは常識なんですね。今ごろになって、どうもその、どういう基準だかわからぬという、そんな資料では、今までの答弁でも大体その程度なんじゃないですか。もうこれは統計あるいは資料を作る常識じゃないですか。基準年度というものはどういう基礎に立って作るというのは、ともかく資料を作るもう基準ですよ。それがわからないようじゃ、問題にならぬじゃないですか。こういうことだから、全体がみんな説明ができないんじゃないかと思うんです。ちょっと外務省の考え方を聞きたいのです。こういう調子で何でも作っておるのかどうか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) この資料は、先ほど来申し上げておりますように、ベトナム側がこういう基準年度をとって数字を作ってきたと、こういうことを申し上げておるわけでありまして、日本が特に作ったわけではございません。ただ、最後の一年間にしぼりましたのは、日本が一年間、四四年八月二十五日からということで御説明申し上げておることでございます。
○小林孝平君 ちょっと聞きますが、一体今論じられておりますこれは、ベトナム側が出した資料なのか、外務省が作った資料なのか。どうも今私が聞いておりますと、日本側で作った資料だというお話ですから、お聞きしたら、今度はベトナム側から全部出したものだと。一体どうなんですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 最後の一年分の計算、金額に面した計算は、日本側が作ったものでありますが、数字は全部ベトナム側が出してきたものであります。
○吉田法晴君 今、外務大臣が三九年を基準として云々、という点は、ベトナム側が出したという数字ですか。そういうことですか。違うじゃないですか。これはインドネシア年鑑を基準にして、インドネシア年鑑から出した数字によってこれは試算をやったものだ。こういう工合に従来答弁しておったようですけれども、そうじゃなくて、ベトナム側で数字は全部出した、こういうことですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) この計算に関します数字は、ベトナム側が出した数字でございまして、われわれの力は最後の四四年の八月から四五年の八月までの一年間の数字を出しまして、これも単に四年分か五年分を五で割るということをいたしませんで、四四年の三分の一と四五年の三分の二をとりまして、そこに一年分の数字を出しまして、それの現在の時価によってそれがどのくらいになるかという作業だけは外務省がいたしたものでございますが、その他の数字は全部向こう側が出した数字でございます。
○木村禧八郎君 そこで、なお疑問に思われますのは、最初のベトナム側が出してきたのは、一九四〇―四五年、平和進駐以後。ところが、その次の、これは日本側の、その次の数字が日本側の算定でしたね。三九年を基準として、一九四四年九月から翌年八月までの損失額を出したのでしょう、日本側が一カ年の……。それで、ベトナム側は四 ○年から四五年でしょう。日本側においては四四年九月から四五年八月なんですね。だから、日本側は、この四四年九月以前は戦争状態ではない、こういうあれなんでしょう。そうですね。そういう考え方で作られているのでしょう。
○政府委員(伊關佑二郎君) 日本側は、戦争状態は四四年の八月二十五日以降、こう考えております。
○木村禧八郎君 そうしたら、その前は平和状態。その平和状態のときを基「準にして算定すべきであって、ベトナム側と同じように三九年を基礎にしてやるのはおかしいじゃないですか、日本側が算定する場合……。
○政府委員(伊關佑二郎君) これはおっしゃるような議論も、考え方ももちろんあると思いますけれども、やはりノーマルな時代と比べてみるというのも、また一つの行き方である。これはいろいろと考えようにより、計算のしようによると思いますが、どちらも一つの考え方だと思っております。
○木村禧八郎君 それは意見の相違というものじゃない。三九年に一つ問題があるのですけれども、何か非常にずさんであるということがこれでもわかるわけです。そして、もし三九年がノーマルであるということがくずれたら、どうなるのですか。全体の戦争被害の算定というものが根底からくずれてしまう。そういうようないいかげんなやり方で、国民のたくさんの血税から払われる賠償の基礎になる損害の査定というものを、こういうやり方をやっていいかどうか。もっと、何というのですかね、確信を持った資料に基づいてこのサインをしなければならぬと思う。一体こういう資料をいつお作りになったのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) ノーマルでないというお話でございますが、先ほどから御説明いたしておりますように、米やゴムにつきましては、大体その前後をとりましても、三九年に特異の数字というものは出ておりません。石炭につきましても、三八、三九というものはそれほど違っておりません。それから、ここにあげておりますこの村品目かの中で、石炭というものがほとんど一番大きなアイテムであります。この計算によりましても、約五千万ドルのうち、三千五百万ドルというものは石炭というものが占めておるわけであります。この表でごらんになる限りにおきまして、石炭が前の年と比べてそれほどアブノーマルでなければ、この表自体もそれほどおかしなものということにはならぬと思います。 それから、この四四年の九月から四五年八月にかけて一年分の数字を作りましたのは、これはごく最近でございます。
○佐多忠隆君 そんなに違いはないとおっしゃいますけれども、かりに一九三九年を基準とする考え方を正しいとすれば、これは戦争直前の一年間をとって、それとの比較において戦争状態が、どう生じていったかということをお考えになっている。従って、その考え方を貫けば、日本の場合には戦争始期が向こうと違うのだ。そこのとこつが明らかに考えが違っておりますね。向こうとは違っておる。それならば、一九四四年九月以前は日本の考え方によれば戦争はなかったのですから、従って戦前との比較という問題は、一九四四年九月直前の一年間を基準にしなければならない、あなた方のその考え方を貫いていけばね。そうすると大して違わないとおっしゃるけれども、今のこのあれによると、基準年次が石炭でいうと、石灰が重要だとおっしゃるから石炭をとってみますが、石炭でいいますと、一九三九年を基準にとりますと、二百六十万トンに比較してどれだけ減ったかということになるのですよ。ところが日本側の戦争始期を基準にしてその直前の年において、たとえば一九四四年だったら五十万トンしかないのですよ。かりにそれよりもう一つ前の一九四三年をとってみても百万トンしかないのですよ。二分の一、あるいは三分の一以上が基準になるのですね。そこから見れば三千五百万ドルというような数字は三分の一ぐらいになっちゃうのですよ。そういう考え方で一体この戦争損害は幾らだったろうという腹づもりをずさんにお作りになったのかどうか。従って、それはさらにごく最近お作りになったというからもう一ぺん前に戻ると、戦争始期の問題というようなものをそんなに厳格にお考えになったのはよほどあとのことである。これはもう一ぺん私の持ち番のときに審議したいと思っております。非常にあとであって、あとからただいろいろなつじつまを合わせるがためにそういうことをおやりになったにすぎない。そういう馬脚がここにはっきり現われているのではないか。そういう矛盾をどうしてあえてやっておられるのかという問題なんです。それは一つの考え方とか考え方でありましょうとかいう問題でなくて、あまりにも明瞭な考え方の間違いじゃないのか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 私が御説明において大した違いはないと申し上げましたのは、三九年をとっても、三八年をとっても、四〇年をとってもその米とかゴムとか石炭の数字に関する限りあまり違いがないと、こう申し上げたのでありまして、三九年を基準にするか、四三年を基準にするかによってあまり大した違いはないということを申し上げたのではありません。どちらを基準にするか。ベトナム側は三九年を基準にしてこの資料を出してきているのでありまして、四三年を基準にしろという考え方もあり得るということを私は申し上げたわけであります。
○佐多忠隆君 あり得るのではなくて、せっかく戦争の始期をずっと下げて四四年九月、これが日本の見解だというふうにお下げになったものならば、基準も同じように変えなければならぬのです。基準に関する限りはベトナム側の考え方の通り、戦争はすでに四〇年から始まっているというふうな考え方を基礎にするから、向こうは三九年を基礎にとった。それをそのまま認めておられる。矛盾もはなはだしいじゃないか。これは単に考え方が違うからですというような意見の相違ではないのです。非常にはっきりしている。そういうことをずさんに考えながら、おそらく生産の戦争損害はこのくらいだったろうという腹づもりをお作りになってこういうものをお考えになっているのかどうか。そういうずさんないいかげんな、あとから説明するためにただ数字を合わすにすぎないような問題なのかどうなのかという、そうとしかわれわれは考えられません。
○政府委員(伊關佑二郎君) 別にあとからつじつまを合わしたわけでも何でもございませんので、われわれは向こう側が出してきているものをそのまま提出しているわけでありまして、どういうふうになるか御議論を願う次第であります。
○佐多忠隆君 それならば、それについて資料要求をしておきますが、今のような基準を適正な基準に日本側がとった場合に、日本側から見た損失額は幾らになるか、もう一ぺん計算をその項目に関する限りはし直していただきたい。そうして出していただきたい。
○木村禧八郎君 今の佐多さんの言われる資料とあわせて、石炭、亜鉛、すず、鉄鉱、マッチ、セメントにつきまして、三九年以前にさかのぼりましての統計ですね、これを資料として出していただきたいと思います。それで、三九年基準をノーマルの状態として認めたという論旨に誤りがあると私は思いますので、それを出していただいてから、またこの点については質問いたしたいと思います。 それから、この算定の価格につきましてですが、石炭につきましては、「一九五九年度四―五号、六―七号炭平均ハイフォンFOB価格」となっております。一九五九年度、本年度の価格になっておるのですね。それから、亜鉛、すずにつきましては、一九五九年十一月四日現在のロンドンの金属定期現物相場。それから鉄鉱につきましては、フィリピン・ララップ鉄鉱石、これはいつでありますか、FOB価格を近似値として採用した。それからセメントにつきましては、一九五九年十一月経済企画庁の第一週の週間卸売物価を基礎にした。この算定価格ですね。これは現時点を算定価格にしておるのですけれども、これで戦争損害額を算定する場合に適当なんですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) これは、こういう数字の入らぬ、金額の入らぬ資料を最初に出しましたら、最後の一年というものがわからぬじゃないかというお話が衆議院でございまして、そこで、一年分を計算して出したのでありまして、そのときに、どの値段をとるかという出題があるわけでありますが、そのときに、ここに書いてありますように、現在のものをとってこれは参考としてごらんになる意味において現在の値段でもって出してあるわけでございます。
○木村禧八郎君 これは、この値段によって算定したというのじゃないのであって、こういう銘柄を算定の基準にしたというにすぎないわけですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 非常に急いでこういう作業をいたしました。資料の要求があって急いで資料の作業をいたしましたので、現在の最も近そうなものをとったというあれでございます。
○木村禧八郎君 現在のもので近そうというのはどういう意味ですか、その意味は。
○政府委員(伊關佑二郎君) ホンゲイ炭などにつきましては、すぐ時価がわかるわけでありますけれども、その他のものにつきまして、現地の現在の亜鉛その他がわからないので、ほかの相場をとった、こういうわけでございます。
○木村禧八郎君 それでは正確は期し得られないわけですわね。現時点の価格で戦争損害を、この一年間の四四年九月から四五年八月までの損失額をそれで算定してよろしいのですかな。
○政府委員(伊關佑二郎君) 当時の価格をとりまして、それに物価指数をかけるという方法もございましょうけれども、今の価格をとってあります。これは何もこの通りにわれわれが算定するというのではございません。この資料を差し上げましたけれども、わからないじゃないか、現在どれくらいになるのだということでございましたから、現在の値段で差し上げた、こういうことでございます。要するに参考資料というわけでございます。
○木村禧八郎君 それでは、これはベトナムの出した、提出した生産及び貿易に関する損害の資料を基礎にして損害額を試算した、そうするとこの資料は、ほんの参考に試算したのであって、損害の査定の場合に十分な資料として、算定の基礎として、十分にこれは信頼し得る資料でないということになるわけですね。ほんの軽い参考の意味で出した、こういうことなんですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 信頼し得るかしないかという問題ではありませんで、数字は向こうの数字であり、時価は現在の時価であるという点がはっきりしておりますから、それに基づいて御判断を願えば見当がつくというわけでございます。
○木村禧八郎君 そういうやり方もあるわけでありますが、しかしそれがこの重大な賠償の基礎になる損害の査定の基準になるとはいえないわけです、これは意見の相違になります。
○小林孝平君 ちょっとお伺いしますけれども、このベトナム側の提出せる資料というのは、いつ提出したのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 五六年の九月十八日でございます。
○小林孝平君 五六年というと、昭和何年ですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 三十一年の九月十八日でございます。
○木村禧八郎君 次にお伺いいたしたいのですが、通貨も損害の一つのアイテムとして出てきておるのですが、この通貸による損害というのをどういうふうにお考えになっておるのですか。この通貨というのはどういう通貨なのでございますか、この点伺いたいです。
○政府委員(伊關佑二郎君) 通貨発行高の数字が出ておるわけでございます。要するにこういうふうに発行高がふえて物価が上がって行った、インフレになれば要するに消費階級というものは生活困難になるということを推察し得るわけでございます。
○木村禧八郎君 この間に増発された通貨というものは、どういう通貨なのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) ピアストルでございますが、それはおわかりでございましょう。
○木村禧八郎君 ピアストルですけれども、このピアストルは仏印と正金銀行との間の預け合い勘定によって発行されたピアストルでしょう。そういうことを聞いているのです、どういう通貨であるということは。そういうものなんでしょう。
○政府委員(伊關佑二郎君) 通貨は従来からの通貨でありまして、特別円勘定によりまして、わが方はこの中から必要な物資を借り上げて使ったということでございます。
○木村禧八郎君 通貨がこういうふうに増発されておりますけれども、その通貨の増発によってインフレーションを起こしたその損害というものは、賠償の対象になっているのでしょう。ですから増発になっていますが、増発の原因となったその。ピアストルというものはどういうものかということです。
○政府委員(高橋通敏君) これは、おもに当時の仏印当局と交渉しまして、御承知の通り。ピアストルを借り上げまして、それによって現地の物資をまかなったわけでございます。その対貨としての特別円を仏印の勘定に入れたわけであります。御承知の通りであります。
○木村禧八郎君 その特別円は、この間決済したわけですか。
○政府委員(高橋通敏君) その通りであります。
○木村禧八郎君 確かにそうですが。
○政府委員(高橋通敏君) 仏印正金銀行にありましたフランスの勘定を、とにかく向こうと交渉しまして、一応債権債務関係は決済したわけでございます。解決したわけでございます。
○木村禧八郎君 そうしますと、ベトナム側で出してきている通貨の増発の原因となっている特別円につきまして、それを決済したわけですね。そうですね。
○政府委員(高橋通敏君) でございますから、御指摘の面、御承知の通りでございます。従いましてその点については解決いたしております。従いましてその点から見るところの損害ということは考えられない、計算に入らないわけでございます。
○木村禧八郎君 ちょっと最初の御答弁とあとの御答弁が少し違ってきているのですが、この賠償損害の中に、向こうでは通貨の項目を出してきているわけですね。そうすると、今伺ったところによると、インドシナ銀行のピアストルの発行額が非常にふえている、そのふえている原因は、正金と仏印との預け合い勘定によってピアストルを発行した日本軍が使ったのですね。その分についての損害である、そういうことが言われたわけですよ。そうしてそれは決済されたと言われたのですね。
○政府委員(高橋通敏君) その分について損害と申しますか、その分に関する債権債務関係でございますが、これは解決をいたした、こういうわけでございます。
○木村禧八郎君 これはあとで質問するわけですが、そうしますと、特別円の決済は、この増発の原因となった、ピアストルの増発の原因となった特別円勘定、この決済も含まれているわけですね、今のお話では。
○政府委員(高橋通敏君) 債権債務の帳尻と申しますか、それをそのまま決済したとか、解決したという意味ではございません。少なくともその帳尻に表われているところの数字がございますが、そのような債務はこれで解決をいたした、こういうわけでございます。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のように資料として差し上げておりますこれは、先ほど来申し上げておりますように、ベトナム側が、自分の方では人についても、あるいは経済的についても、あるいはインフレーションと申しますか、今の貨幣の問題についても、こういうものがあるんだということを言ってきておるわけです。それを資料として差し上げたんでありまして、賠償交渉の過程で、そのことごとくが全部理由があるんだとわれわれが認めたわけではございませんので、この資料はそういう性質の資料だということを一つ御了承願いたいと思います。
○木村禧八郎君 おかしいですね。そうすると、これを認めたわけではないと……。認めないんですか。一応向こうの提出された資料を認めたんでしょう。それはそれ自身としてお認めになったんじゃないですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん、向こう側の提出した資料としてそれ自身を認めているんで、向うが提出した資料を認めないというわけではないんですよ。だけど、日本側の態度として、向こう側の言ったことを全部その通りだと、こういうふうに思っていたわけじゃないということを今申し上げているわけです。
○木村禧八郎君 ですから、これを、向こう側の提出されたこの資料を一応認め、それは向こう側の主張として一応認め――それを日本が全部認めるかどうかしりませんけれども――これを基礎にして損害の額を査定し、それに基づいて賠償額をきめていく、こういうことになっているんですから、この通貨の問題も損害の中に含まれているわけでしょう。総合的といいましたが、総合的の中には。向こうからちゃんと出してきているんですから、通貨の問題も含まれているわけでしょう。含まれていないんですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) つまり、特別円の決済の問題は決済の問題として、別個な問題として解決いたしておるわけであります。でありますから、そのもの自体がこの中に入っているわけではございません。ただ、戦時中の経済上のいろいろな変動ということをはかります上において、そういう変動からくる苦痛なり何なりがあったかどうかという問題として考えるべきだと、こういうふうに思っております。
○木村禧八郎君 私はそういう点を御質問しているんじゃない。特別円の問題はまた非常に疑義がたくさんありますから、あらためてお伺いいたします。ただ、この賠償に関して、ここに出てきた通貨の増発の原因となった正金と仏印銀行との預け合い勘定によるごのピアストルの発行ですね、それが含まれている。そういうものがやはり賠償の対象になっているかどうかということを聞いているんですよ。その決済が済んだかどうかは、これはあとでまた伺います。
○政府委員(伊關佑二郎君) 先方も、この覚書をよこしまして二十億ドルという数字をあげているわけです。ところが、二十億ドルのうちの十億ドルは、先ほど御説明しましたように、餓死者について百万、千ドルで十億と、こう言っているわけです。そういたしますと、残りは十億になるわけです。で、十億という数字を出しておりまして、いろんな数字を出しているわけです。たとえば、向うの言いますこの貿易の激減、それだけでもって向こうは九億七千八百万ドルという数字をあげているわけです。これだけでも十億になるわけでございます。そうすると、向こうはほかのインフレの損害を入れておらぬかということにもなるわけでありまして、向こうとしましても、それほど厳格な意味でやってきているんじゃありませんで、こういうふうにいろんな数字を出しまして、これでもって一つ損害がどれだけあったかということを見てくれということでありまして、もしこれをもっと厳格にいいますと、貿易だけでも十億近い。もちろん全席と貿易も、生産の減退が全部貿易の面に現われるものでもなし、しかし、どこまでが貿易に現われるかということも問題でございましょうし、また、インフレにしましても、これをどう見るかという点はいろいろあります。向こうもそういうことは言っておらないので、ただ、貿易だけでも十億近くある、それを、経済的な損害をまず十億と、大ざっぱにきておるものでございます。
○木村禧八郎君 そうすると、インフレによる損害というものは、向こうは問題にしていないような今のお話ですけれども、この間、新聞に向こうの外務大臣の談話として、日本は戦争の餓死者の数を非常に少なく見ておるが、そうじゃない。もっと多い。さらに、五百ピアスドルを非常に乱発した、非常に損害を受けたということを向こうで躰品っております。ですから今の御答弁ですと、インフレの被害というものは軽く見ておると言いますけれども、ここにすでにちゃんと通貨のアイテムで、これは八倍にふえておるのです、通貨は。その多くの部分は正金と仏印との間の預け合い勘定による特別円からくるところの増発でしょう。それの被害というものは非常に大きいわけです、実際問題として。それが入っていない、軽く見ておるかということは私はおかしいと思うのです。
○政府委員(伊關佑二郎君) 私は人っておるとか入っていないとかいうことを申し上げておるのではありませんで、向こうは、これを計算いたしましたならば、もっと十億以上にならなければならないわけでありますが、ただ、ほかの方は数字が出てこないものですから、この貿易から九億七千八百万ドルという数字が出ておりますので、それをすぐ十億と引いたと、こう思うのであります。そうしますと、インフレによってどれだけの損害があったかということにつきましては、はっきりした数字は出ませんから、要するに、インフレがこれだけあったのだということをはっきりわかってくれればいいというのであって、問題にしないというものではありませんが、そういうふうに向こうは、資料の中での一端を差し上げるから、これだけでも相半の損害があるのがわかるじゃないかという意味で出しておる。それほど一々の査定をするとかいうふうな問題じゃない。要するに、こういう限られた資料ではあるが、これで損害がどれぐらいあるか十分おわかりになるのじゃないかというふうな意味で出してきてあるわけであります。ですから、インフレを全然見ないとか見るとかいうふうなものではないのであります。
○佐多忠隆君 ちょっと、それじゃ議事を整理して考えて見ましょう。 向こう側は、大ざつばにいって二十億ドルという戦争災害をまず大きな総額としては出しておるのが一つ。二十億ですね。そのうちに、百万人が死んで、この一人当り千ドルを見ると十億という数字を一つ出しておる。十億。それから今のお話によると、この炎で見ると、輸出あるいは、外国貿易というところに、外国貿易の減、輸出の減、あるいは関税収入の減ですか、とにかく外国貿易に関連するものが九億七千八百万ドル、こういう数字が一つこの表に出ておる。この九億七千八百万ドルという数字は、向こうが計算して算出した数字である、こう見ていいのですか。そうすると、十億と九億七千八百万ドルというのが今あなた方に出された表からはっきり出ておる数字。これは向こう側から全都出しておる数字である。それからもう一つ私がよくわからないのは、生産に関連する減がいろいろおはじきになって一億六千六百万ドルという数字が一つ出ていますよね、これは向こうから出したのではなくて、日本から、日本が試算してみて、生産減をドルに直すと、向こうり言い分によると、この程度になるという数字だと、こういうふうに了解していいのですか。それから通貨の問題は、今お話のように、ただ八〇〇%等のインフレの損害があるというだけで、これは数学的にも何にも、向こうも出していなければ、こっちも出していない、こういうふうに考えていいですか。今のこれを全部いろいろ議論した結果、整理してみると、そういうことでいいですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) そういうことになります。向こうはその損害を数字では出しておらないという結果になろうと思います。
○佐多忠隆君 従って二十億の内訳としては、十億ドル、それから九億七千八百万ドル、これだけ二つ出して、これだけ二つでもすでに二十億近くのものがあるのだ、従って、大ざつぱに言えば二十億だ、こういうふうな考え方なり、出し方である。今まで出した数字から判定すると。そういうふうに了解していいですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) その通りだと思います。
○木村禧八郎君 向こう側の考えはそういうふうに了解した、政府側としましては。日本側としては、インフレによる被害というものについての考慮は払わなかったのですか。このインフレによる被害は、鉄砲を撃ち合う、そういう直接の戦争被害に劣らない非常な大きな被害を与えているわけでしょう、実際問題としてですよ。たとえば預金の値打が減少するでしょう。あるいは労働賃金、収入、そういう損害というものは、戦争損害としては非常に大きいわけですよ。そういうものを向こう側はこれはどういうわけでこれに軽く見ているのかわかりません。それは特別円を清算してもらうと考えておって軽く見ておったのじゃないかと私は思うのです。それはフランス本国の方へ行ってしまって、その点は問題があると思います。しかし日本側としてインフレによる戦争損害というものを軽く見ているというのはおかしいと思うのですね。
○政府委員(伊關佑二郎君) 私の方は軽く見ているというふうに申し上げてはおらぬのでありまして、ただ、こういうインフレがありまして、それが損害の具体的な金額に直したらそれじゃ幾らになるかというふうな議論をいたしましても、これはちょっと、よほどの計算でもいたしませんと、なかなかわからぬだろうと思うのです。確かにインフレがあれば一般の民衆が苦しむということだけは十分認めますが、そこで、それをそれじゃ幾らに見積るのかということになりますと、私は不可能だろうと、こう考えておる次第でございます。
○木村禧八郎君 それは見積りがわからないから戦争損害の中に考慮しないというのですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 考慮しないというのではございません、その具体的な数字をあげろとおっしゃると出ない、こう申しておるわけです。
○木村禧八郎君 それは出ないことはないですよ、出ないことはありませんよ。それは、おおよそこれまで石炭とかセメント、こういうものについていろいろこまかく出しているでしょう。インフレによる損害というのは、たとえば預金の現価がどのくらいだとか、あるいはこれも出るでしょうが、物価騰貴によってどのくらいの実質の賃金が減ったとか、そうして全部の損害がわからなくても、およその損害がわかり、そしてインフレによって生じた損害を補償する方法というのも具体的にあるわけですよ。その根本の原因になったのは、預け合い勘定による。ピアスドルの発行でしょう。いわゆる不換紙幣の発行ですよ。それを現地民に払わないでフランスに払っちゃっているでしょう。そこに問題があるのですよ。フランスに払っている。直接インフレによって被害を受けたそういう人たちに、賠償の対象としてそれが考慮されていないということとはおかしいと思うのですよ。しかもまた、非常に軽くしか扱われていないということを言っておられたのですがね、それはおかしいじゃないですか。
○政府委員(高橋通敏君) ただいまの点につきましては、インフレーションだとかそういう問題、これはいろいろな原因がありましてそのような状況になったかと考えられますが、フランスとの関係は、これはフランス政府と日本政府との間の債権債務関係の処理でございますので、そういう意味合いにおきましてこのインフレーションとかそこの通貨の面におきます損害というのは、われわれは考えていない、こういうわけでございます。インフレーションがありますのは、占領地どこの場合でも相当そういうことが行なわれております。しかし、それが戦争の直接損害であるというふうに直接にはわれわれは考えないというふうに考えております。
○木村禧八郎君 ビルマの場合には、無価値になった軍票というものが計上されているでしょう。無価値になった軍票十一億八千八十三万ドル。ビルマの場合はね。どうしてベトナムの場合はそういうものが計上されないのですか、また、考慮されないのですか。
○政府委員(高橋通敏君) その点はベトナムの場合と違いまして、ビルマの場合は軍票その他を使用したということがございますが、御承知の通り仏印の場合におきましては、この仏印の通貨でございます。ピアストルを使用してずっと引き続ききておるわけでございます。
○木村禧八郎君 その。ピアストルはどういう性質のピアストルですか、軍票とどう違いますか。
○政府委員(高橋通敏君) これはその後も引き続き仏印の通貨として使用された法定通貨でございますから、そのような通貨としてずっと引き続き使用されてきたということであります。
○木村禧八郎君 軍票とどう逢いますか。
○政府委員(高橋通敏君) 軍票はあとで無価値になったのです。全然価値がなくなった。ピアストルの場合はそのような措置はなかったということです。
○木村禧八郎君 ピアストルはそういう措置がなかった――ほんとうですか。
○政府委員(高橋通敏君) これは戦後一般的に、占領地の経済のために、いろんなインフレーション防止措置はやっております。しかし、この軍票なんかの場合の取り扱いとは、これは明らかに違っているんだというふうに考えております。
○木村禧八郎君 無価値にならなかったと言いますが、五百ピアストルは無効が宣言されたのですよ、無効が宣言された五百ピアストルは無価値ではありませんか。
○政府委員(高橋通敏君) その点は、引き続き終戦直後の問題といたしまして、フランスが、その自己の仏印地域に対する経済的なインフレーション防止措置、その他経済的措置の一環として、そういうのが行なわれた、このように解しております。
○木村禧八郎君 それはフランス政府がそういうことをするかしないかは問わないとして、とにかく五百ピアストルが無効宣言されて無価値になったのです、軍票と同じように。軍票と、預け合い勘定による、特別門勘定によるピアストルとの違いは、ただ現地通貨を軍票に代用したにすぎないのですよ。実質は軍費調達の手段でしょう、軍票よりたちが悪いのです。軍票だったら、御承知のように裏づけ物資を送らないと、軍票の価値が下がって、暴落して、対外的に日本の経済力は弱ったと、そういうふうに見られるから、見られないように現地通貨を発行さしたんです、預け合い勘定によって。そして戦費をまかなったのでしょう、収奪の手段としてはむしろ軍票よりきつい性格を持っているのですよ。現地民がそういう通貨を使って、それが無価値になっておる、それに対して、それが損害の賠償の対象にならないのですか。軍票は損害の対象になって、そういうピアストルは損害の対象にならない、それはおかしいじゃないですか。
○政府委員(高橋通敏君) 当時の仏印に対しましては、御承知の通り先ほどの預け合い勘定と申しますか、ピアストルはフランス政府から借り上げまして、それによって現地の経済をまかなったわけでございますが……。
○木村禧八郎君 フランス政府からではないでしょう、正金からでしょう。
○政府委員(高橋通敏君) 両国政府の合意に基づいて、その間の帳簿のつけ合いをやったのは両国の銀行相互間でございますが、結局フランスの国庫からそういうピアストルを借り上げまして、それによって現地の経済、物資調達をまかなって、そして現在に引き続いてきておるわけでございます。戦後いろいろな措置をしたとういことは、これはフランスが自己の仏印の地域に対する一つの経済措置として、それに対する、ピアストルに対する、増発した通貨に対する諸種の手続、経済的な手続をとったわけであります、このように考えます。
○木村禧八郎君 この点につきましては非常に御答弁も不明確ですし、フランス国庫から政府が借りちゃいけない、そんな話はないのです。正金と仏印銀行との間の預け合い勘定によって正金銀行が政府に貸し上げたのですよ。正金銀行が日本の政府に貸し上げた。そして日本の政府が、日本銀行のあそこの支店に正金から振り込まれたピアストルを使っておるのです。軍費としてどんどん使ったのです。そういう点についても何か非常に不明確ですから、この点についてはあとでまた御質問しますから、十分にお調べになっておいていただきたいと思う。御調査されまして、不明確でなく、特別円勘定というものについても、私も多少調べておりますから、十分お調べになって御答弁願いたいと思います。
○委員長(草葉隆圓君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(草葉隆圓君) 速記を始めて。 ―――――――――――――
○委員長(草葉隆圓君) それでは次に、国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行ないたいと存じます。
○大和与一君 私は、ただいまから緊急質問をいたしたいと思います。内容は北鮮帰還の問題でありますが、まず外務大臣に政府の代表としての責任ある御答弁をいただく、これを前提としてお尋ねしたいと思います。前回の委員会でも、私は、外務大臣が非常に北鮮帰還については大へんな御苦労をされてまとめたことについては敬意を表しておったのですが、どうも最近の国内情勢あるいはいろいろな情報によりますと、あるいは十日の第一の列車が品川を出るとき、あるいは十四日に船が新潟を出るとき、このときに不測の事態が起きるのではないか、そういう具体的な報道が現われてきている。これでは外務大臣の親心というか、まさに九仭の功を一簣に欠くというか、そういう心配がありますので、本日お尋ねをいたしたいと思うわけであります。 第一に、韓国の政府が、北鮮帰還について積極的に妨害するのだ、こういうことを、大使すらもあるときは新聞発表をしておりますけれども、その点はどのようにお考えでございますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 政府として北鮮帰還の原則を立てまして以来、できるだけこれが円満に帰国をさせることが一番重要な仕事だと思ってわれわれも取り扱っておるわけであります。現在までの経緯から申しますと、日韓会談を七月末に再開するときに、柳大使が私のところに参りまして、北鮮帰国の問題については触れない、従って日韓問題については別個の立場で再開してもらいたいということであったのであります。がしかし、その後のいろいろの新聞紙上その他で見ておりますと、韓国が必ずしもこれにおだやかでないような空気もあるやに思います。従って、われわれといたしましても十分それについては、韓国側に対して、北鮮帰国というものが全く人道上の理由、自由意思による居住地の選択という立場をとっておりますことを説明もいたし、そうしてわれわれとしては、韓国側が何かそれに対して妨害をしたり、あるいは無用の混乱を起こさないように注意いたしておるわけであります。今日までわれわれが外務省としてやっておりますのはそういうことでございます。同時に、この問題を取り上げました経緯から申しましても、帰還そのものの実務というものは、厚生省が主管官庁として取り扱うわけでございます。またそれに伴います、何と申しますか、円満に帰れるように、妨害のないように取り締まるということについては、警察庁なり、あるいは自治庁方面で考えていただかなければならぬわけでございます。連絡会等を持ちます場合には、外務省として趣旨達成のために、そういう点についても万遺漏ないように、関係各庁において処置をしていただくようにお願いはいたしておるわけでございます。
○大和与一君 そういうお話をされた場合に、韓国側がそれを了承して、絶対に妨害をしない、こういう意思はきちんと確認をしておられますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 妨害をするとは言っておりません。特に妨害をしないとか、するとかいうことは言っておりません。ただ、われわれの言っておりますことを聞いておるということでございます。
○大和与一君 それは大臣として、そういう話し合いの中で、しないというふうに御自分では割り切ってお考えになっておられますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私といたしましては、今回の北鮮帰還の理由が、韓国側を何か挑発する意味ではないのでありまして、全く居住地選択の自由であります。日本におります在留外国人が自由に帰還をするということは、これは国際的な通念でもあり、それが集団的であるために、特に特別な取り扱いを、若干輸送関係その他でしていかなければならぬ問題でありますから、そういう点からいって、韓国側も良識がありますならば、当然そういう妨害をしないことだろう。また韓国側自身も、最近は韓国人の集団帰還ということを要求いたしておりますので、そういう点から見ましても、何かそういう妨害をすることは、韓国側の国際的な立場も悪くいたしましょうし、国際社会の通念に反する暴力的な行為をすると考えますこと自体がおかしいことじゃないか、こう思っております。
○大和与一君 大臣の人間的な言い方はわかりますけれども、今、日韓会談は打ち切られておるのじゃないのですね。つながっておるのです。そうすると、きょうにでも、そういう問題があったら、すぐに韓国と話ができる、こういう状態にあろうかと思うのであります。そうすると、一体韓国政府の言っていることは、これをはったりと、おどしとお考えになるのか、あるいは話し合いの中で、そういうことはしてもらいたくない、このくらいはきっと言っておるでしょうけれども、そんなことは言ったことがないのか。それじゃこっちがきちんと要望した場合に、それに対して向こうがOKを与えていないのか、この三点について、もっと具体的にきちんとお答えをいただかないと、自分としてはこう思うと言っても、ちっともそうなっていないのだから、もっとはっきり日本政府として、それじゃ責任を持ちます、完全に持てる、一切間違いない、こういうはっきりした言明でもよろしゅうございますけれども……。
○国務大臣(藤山愛一郎君) アジア局長から……。
○政府委員(伊關佑二郎君) 最初に七月三十日でございましたか、向こうが無条件再開を申し入れてきたのでございますが、この無条件再開という意味は、北鮮帰還を了承するという意味ではないのでありまして、要するに、それまでは日本が北鮮帰国という問題を完全にとりやめるというのでなければ会談はやらぬ、こう言ったわけでありますが、その条件を落としまして――北鮮帰還という問題は当時進んでおったのであります、にもかかわらず、会談を再開するというのが、無条件再開という意味であったのであります。ですから、その後といえども、韓国としては依然として反対を続けておる。われわれとしては時がたてばこうした反対も自然におさまっていくものだろう。私は柳大使としょっちゆう会っておりますが、彼も、国内でこれは非常に大きな国民運動になっておるので、なかなか一挙にはおさまらないというふうなことを申しております。逐次その後鎮静してきかけておったのでありますが、その後また赤十字のいわゆるガイド・ブックというふうな問題をめぐりまして、また相当向こうの世論が激化したという事実があるわけでございまして、今でもかなり国内では強い世論があるようであります。ただ、韓国内でそういう世論がありますのに対しまして、それをどうこうしろということまでは、われわれには申せませんが、少なくとも今会談をやっておるのでありますから、この会談の支障になるような、これを刺激するような言動は慎んでもらいたいということは、私は常に申しております。それからいろいろなうわさも聞きます。民団はすわり込みをやったこともございますし、その他民団と北鮮系統のぶつかり合い等もございます。そういう場合には、そういうことをされては困るということを、私どももしょっちゅう申しております。柳大使にいたしましても、決して代表部が指導しておるわけでも何んでもない。民団等の運動等にしましても、ある意味では彼らからいえば愛国心適宜内面指導しておるというふうなことは申しております。代表部がいささかでもこの問題に関係しておる、直接に関係して何か反対をやらすというふうなことがあっては、これは明らかに日本に対する内政干渉でございますし、われわれとしてはこうしたものは見逃すわけにはいかないわけでありまして、常時注意しておりますけれども、自分たちも注意しておるけれども、手の及ばない面もある、このものが、何といいますか、自分たちの知らぬ範囲で行なわれるということも多少はあるかもしれないというふうなことを申しておるのが現状でございます。
○大和与一君 その韓国代表部の中で、韓国政府が日本政府に対してはっきりと妨害はしないと、こういうことを、了承をあなた方に与えていないとすれば、やっぱり愛国心か何かしらぬけれども、代表部の人がそういう方向に動く、行動せられることがあってもおかしくないでしょう。
○政府委員(伊關佑二郎君) 少なくとも代表部が直接にこのいろいろな反対運動に関与するというふうなことはしないと思いますし、そんなことは絶対にすべきものではないということは、厳重に申しております。また、向こうもそういうことはしないということを申しております。今度の新潟のこの事件に関係しまして車というのがつかまって、これが代表部員と何か知り合いであるというふうなことが言われておりますが、まだ今のところ、はっきりした点はわかっておりません。
○大和与一君 その車という人が代表部嘱託であるということになっておりますが、御存じありませんか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 本日の朝、私は柳大使に会ったのでありますが、柳大使もそういうふうな情報が流れておるので、自分としては非常に心配しておる。何かもし警察の方ではっきりしたことがわかっておるならすぐ知らせてもらいたい。自分の方は適当な措置をするのだということを言っておりましたから、車というのは嘱託であるというふうなことは何も言っておりません。私も存じません。
○大和与一君 その人が持っておったダイナマイトは、毎日新聞の写真を見てもわかるように、日本製品ではない。これはどこの国のものかしらないけれども、そういう外国の、日本製品でないものを持っておる、こういうことは御存じですか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 私はそこまで聞いておりませんが、本日一応警察の方にこの方の係が確かめましたところ、何といいますか、このつかまった車という男は何も言わないので、事件の詳しい点はわからないということでございます。
○大和与一君 外国の人が日本へ来るときには、全部名簿その他がはっきりしているわけですね。入国管理局でわかるわけです。それ以外に入ってくる人たちというのはどういう人ですか。
○説明員(近藤忠雄君) 外国人が正規に入りますにつきましては、御承知のように国交のある国につきましては、前もって査証の申請があるのが原則でございます。それに基づきまして査証を提出しなければならない。やることを決定いたしまして査証が与えられますというと、わが方に入ってくるわけであります。そのような関係で外交関係のある国においては、そういうふうな査証関係で一応よくわかっております。 それから査証の免除のある場合がございますが、査証の免除のある国につきましては、その査証免除の正規の旅券を持って入って参りますというと、各出入国港の指定港におきまして査定をいたしまして、それで何びとが入ったかということにつきましてはわかるわけであります。 それから国交のない国から入る場合につきましては、たとえば韓国から入るというような場合につきましては、一応前もって入国についての仮入国の申請というものがある。それに基づきまして一応わが方の方に手続をいたしてもらいますので、その手続に基づきましてだれが入るかということにつきましては一応わが方には全部わかるわけであります。ただ、先ほどお話がございましたように、密入国をしてくる、正規に入ってこない人間につきましては、正規の面につきましてはあとでわかりますけれども、逮捕されるとかなんとかいう状況でありますとわかるのでありますけれども、そういう逮捕がないというような状況になりますというと、その者について残念ながらわからない面があるかもしれないと思います。
○大和与一君 たとえばアメリカの軍用機あたりを利用してどんどん入ってくる、かりに行ったり来たりするという場合があるかもしれませんけれども、そういう人はあれですか、アメリカの飛行場を出たら、ちゃんと日本政府は全部氏名その他つかむようになっておりますか。
○説明員(近藤忠雄君) たとえば、ただいまアメリカの飛行機で入ってくるというような場合につきましても、一応正規にその、たとえばエア・ポートというところから出るというようなことになりますと、前もってこちらに連絡がございます。
○大和与一君 最近アメリカの飛行機を利用して、たとえば韓国から何十人、何百人か知らぬがそういう人は来たという連絡は一件もありませんか。
○説明員(近藤忠雄君) その点につきましてはまだ詳しく、今突然でございましたので私正確には調査をいたしておりませんので、正確にお答えするわけには参りませんけれども、一応そうたくさん多くの人間が入ったということについては、現在のところまだ聞いておりません。
○大和与一君 その入ってくる人の略歴といいますかね、そういうことも合わせておわかりになるのですか。
○説明員(近藤忠雄君) 一応通報がありますので大体わかっておるはずでございます。
○大和与一君 そうすると、最近ですね、北鮮帰還問題をめぐってこれだけ世論が沸騰するというか国民が心配している。そういうときに、今ちっとも注意をしていないで、それで知らぬといっておって、それで円滑な北鮮輸送ができるとお考えですか。あるいは直ちに調べて、そうしてその一人々々について心配のないように、そういうふうにやはりやらなくちゃいかぬと思うが、その点はいかがですか。
○説明員(近藤忠雄君) 一応入ります者につきましては、その港の外に出るについてはわが方の了承を得ないというと入れられない建前になっております。さようでございますので、一応その入る前には連絡がございますので、そちらの方としてもそれをよくチェックいたしますことになっておりますので、御心配のような方向におそらくなることはないんじゃないかと思っております。
○大和与一君 外務大臣がお急ぎのようですから、もう一点念を押しますけれども、韓国政府はあなたに対して北鮮帰還の妨害をするとはいわぬけれども、しないとはいわぬのですね。こちらからいろいろ要望をして、まあ間違いのないようにしたい、こういうことをおっしゃっておると思いますけれども、それに対して韓国政府が責任を持って承知しました、こういうことはいっているのかいないのか、はっきりしていただきたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん今日までの状況から申しまして私の立場では、韓国側がこれを妨害してもらっては困るわけであります。そのこと自体は内政干渉になります。その意見をおりがありますれば申し述べ、私自身は柳大使にほとんど最近会っておりません、しかし、アジア局長を通じていろいろな機会にそういうことを申しておるわけでありまして、私が直接柳大使に最近会っておりませんから聞いてはおりませんけれども、今アジア局長の答弁申し上げましたように、柳大使はいっておると存じております。
○大和与一君 そうすると、やはりはっきりしませんから、不測の事態が起こることはありますね。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私は、まあこの問題が不測の事態が起こることなしに円滑に遂行されることが最も好ましいことでありますし、従ってむろん韓国政府自身がどうと考えませんでも、日本にいる民団の連中その他が策謀いたしますこと自体、あるいはたまたま個人がやりましても、そういうことがやはり大きな影響がありますから、送還に関する関係の当局が集まる際には外務省としても十分注意してもらいたいということだけはいっておるわけでございます。
○大和与一君 もう少し具体的にいいますと、車進という人がつかまった。これは代表部の嘱託であるようです。そうすると、その人にいろいろと指示をする人が代表部の中にいると私は漏れ聞いておるわけです、正確なことはあまりわかりませんけれども。その代表部の中にたとえば金永煥という方などがおられて、そうして車進という人と連絡があるんじゃないか、こういう話もあるのですが、今の私が、不測の事態が起こるだろうというようなことは、明らかにもう爆弾を持ってきておる、あるいはまた手榴弾を持ってきているんじゃないか、あるいは日赤センターをこわす、あるいは品川駅を出るときに列車を爆破する、線路をこわす、あるいはまた在日朝鮮人の幹部をどうかする、こういうふうな具体的な動きがおそらく、あとから警察庁にも聞きますけれども、ややつかんでおられると思うのです。ですから、今まで三時はのんきな気持で、そんなことはするまいと外務大臣の人間性からいって、そんなことありっこない、こういうふうにきれいにおっしゃるけれども、そういういいかげんなことでなくて、容易ならぬ事態であるのだ、この認識を政府はきちんと持って、そうして積極的に、一体政府として、こういう私の具体的なことが事実であるとすれば、どのように今からでも御処置をされるか、それを、具体的な内容をお聞かせ願いたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私としては、先ほど来申し上げておりますように、無事故で無事に帰還を達成さしていくことが望ましいのでありまして、何か事故が起こりますことにそれが民団側あるいは韓国側の妨害が起こりますことは、これはもう非常な大きな、国内問題としても大きい問題でございますし、国際的にも大きな問題だと存じます。従って、そういう事態になりますればわれわれとしては、相当韓国側にも注意を促すことは必要だと思うのであります。まあ、お話のような点を新聞紙上でも見ましたものでありますから、私としても心配をいたしており写す。従って、これらの事実についてはっきり、いろいろ御指摘のようなことが警察庁その他から出て参りますれば、むろん私としては韓国代大部に厳重な注意を促すという処置は当然とらなければならぬ、こう思っております。
○大和与一君 もしも代表部に今言っ多用な具体的な事実、あるいはまた疑わしい人がおった場合に、当然これは国外に去ってもらう、こういうことはあたりまえのことでしょう。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 事実がははっきりいたしませんから、仮定の上に立っていろいろ申すこともいかがかと思いますけれども、しかし、かりにそういうような事実がありましたときには、それは当然われわれとしても、韓国代表部に対して抗議もし、あるいはその事実によりましてはそれらの人々に対して、好ましい人でないということで退去してもらうということも考えられるわけでございます。要は、それらの事実の上に立って、むろんわれわれとして厳重な処置を考えて参らなければならぬと思っております。
○大和与一君 先ほども申しましたように、一般的な出入の手続で来る場合は大体わかると思うのですけれども、アメリカの飛行機で、もしもそのパスポートなんかを利用して来ると、しかもそれが特にこの際帰還問題をめぐってそういうことがあり得るのですから、韓国政府はもう天下にそれを声明しているのですから、それに従って来ることはあり得るので、それを、災いを未然に防ぐというか、そういう意味でアリメカの飛行機などを使ってこっちへ来る人については十分調べなければならぬし、もしも日本の治安問題に関して、かりそめにも、それのじゃまをする、こういうことがあっては絶対にならぬのだけれども、それに対しては一体アメリカ政府に対してどういう折衝を具体的におやりになりますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん、こうした好ましくない事態が起こるような原因がアメリカの飛行機等の輸送から経過して来ますとすれば、アメリカに対しても注意を促さざるを得ないと思います。
○大和与一君 この前、厚生大臣は、十日の品川の出発でも、あるいはその他でも責任を持つと言われたのですけれども、外務大臣、こういう新しい――新聞にも出ておりましたし、またこういうふうな情勢をお聞きになって、一体この輸送あるいはその出発に際してどういうふうな具体的な手をどこにお打ちになるか、あるいは逆にいうと、絶対もう警備その他責任を持ちます、こういう万全の確信をお持ちになっているか、おそらく持っていないと思いますから、いないとすればどうするのか、政府としてどうするのか、これを 一つ具体的におっしゃっていただきたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん、この帰還が円満に参らなくて何か紛争が起こり、あるいは妨害によって事故が起こりますれば、これはゆゆしき大事だと思うのでありまして、事前にそういうことに対して十分な処置をとっていただかなければならぬと思います。従って、輸送全体について主管省であります厚生省でもその点はお考え願いますと同時に、治安の問題につきましては警察庁長官なり、あるいは警視庁なり、当該各警察本部に言って、十分それらに対して適宜処置――警備と申しますか、処置をとってもらうように私からは強く要請をいたすつもりであります。
○大和与一君 治安当局にお尋ねしますが、車進という人は知っておられますね。
○説明員(中村正己君) 車進という人でございますね、承知しております。
○大和与一君 その人が日本の新聞記者の証明書か何かを持っておったそうですが、それは事実ですか。
○説明員(中村正己君) ただいまのところ、警視庁からそういう報告は受けておりません。
○大和与一君 それが韓国代表部の嘱託をしている、こういう点はわかっておられますね。
○説明員(中村正己君) ただいまのところ、報告を受けておりませんし、従来からの情報からもそういう事実は聞いておりません。
○大和与一君 それじゃ、代表部に金永煥という方がおられるのは知っておられますか。
○説明員(中村正己君) 承知しております。
○大和与一君 知っておると。その人の動きについてはどうですか、最近何か情報がありませんか。
○説明員(中村正己君) 特に変わったと申し上げるような行動というふうなものはありません。
○大和与一君 えらいだいぶ返事が長くなって戸惑っておられましたが、それは逆にいうと、こういう人がおることは知っておる、しかも車進という人と関係のあることもあるいはぼつぼつおわかりになりつつある、こんなふうに考えられますが、あるいは金永煥という人の名前は別として、個人の名前は別として、その車進という人が実際に動いておる行動が、実際はややおわかりになっておると思いますが、つながりが必ずあるわけだと思いますが、明らかに北鮮の帰還の妨害ですから、そうすると、そういうことについては一体どうなんですか。
○説明員(中村正己君) 車の捜査の現状は、われわれも時節柄でございまするので、極力背後関係の追及に全力を尽くしておるのでありまするが、現在のところ、警視庁からの報告では、強い態度で黙秘権を行使しておるというのが現状でありまして、その背後関係につきましては、現在のところでは全くわからない、極力追及をいたしておる、またほかの方法からの追及をいたしておるというのが現状でございます。
○大和与一君 代表部の近くに小林という薬屋があって、そこの二階をアジトに北鮮の妨害に使っておった、こういう話も聞いておるのですが、その事実は御存じありませんか。
○説明員(中村正己君) ただいまのお話は全く初めて聞くことでありまして、その点につきましては報告を受けておりません。
○大和与一君 新潟の市内に引揚事務所が、朝鮮人関係のがあります。その真向かいに今度は韓国の方の事務所をわざわざ借りておる。こういうことをしておれば、これは何か間違いが起こりそうな気がするのですけれども、そういうことは知っておられて黙っておるのですか。
○説明員(中村正己君) ただいまの関係は、私ども民団側が新潟市内で事務所を物色中であるというところまで聞いておりまして、その後具体的にどこにきまったかというところまでは残念ながら存じていないのが実情でございます。
○大和与一君 まあそういう事実は、これからも十分にお調べになって、そうすれば間違いのないようにもちろん努力をされるのですね、
○説明員(中村正己君) だんだん状況も必ずしもよろしいというわけでございませんので、極力努力いたしたいと思います。
○大和与一君 国内の右翼団体ですね、これとその妨害団体といいますか、個人といいますか、との関係は全くないというふうに断言ができるのか、あるいは若干つながりもあるのではないかと思われますが、まずその辺の御調査はいかがですか。
○説明員(中村正己君) 先月の十六日の豊島公会堂の事案につきましては、お話の通りいろいろ関係があったのでありまするし、またその関係の捜査を現在やっておるわけでございまするが、新潟の問題につきましては、今すぐにわかに断定をするということは非常に困難な事柄であろうと思います。
○大和与一君 この前の委員会で私がお答えをいただいたのですが、それ以後においてもだんだんと帰還の時日が切迫をしておりまするが、そのときと比べて、明らかに北鮮妨害の動きがある、こういうことははっきりと言うことができるんじゃないですか。
○説明員(中村正己君) 先日のときと比べまして、具体的な問題として特に変わったというところはあまりございません。民団側にいたしましても二十二日にも会議がございまして、大体の方針のきまっておるところでございまするから、筋としてはできれば合法的な説得阻止をやりたい。しかしながら、やむを得ない場合もあるかもわからぬという程度でございまして、いろいろ御承知のお話を伺いましたが、いろいろうわさとか未確認情報はかなり多く流れておるのが事実でありまするけれども、裏づけがある、もしくは具体的な問題として特に変ったというふうには考えていないのであります。
○大和与一君 最近の韓国からの入国者の履歴を含めた名簿はお調べになっておりますか。
○説明員(中村正己君) 私の方としては法務省の入管から御連絡をいただくということになっておりますので、御連絡のありましたものにつきましては調査を進めておるという次第でございます。
○大和与一君 そうすると、案外心配をしていなくて、積極的に妨害をする行動がないから、だからその名簿についてもあまりあなたの方からも問いただそうとしない。あるいは一週間か十日前の私の質問にお答えになったときからきょうまで大して変わらぬから、これまた大したことはあるまいという、こういう非常に安心感の強いお答えでありますが、間違いありませんか。
○説明員(中村正己君) 先日のお答えにおきましても、決して安心しておるというふうには申し上げなかったつもりでございます。やはり片方は絶対反対、片方は非常に大きな勝利といいまするか、成功として考えておる、その賛成派と反対派の間は非常に激しく離れておるということと、感情的ないろいろ従来までの行きがかりといいまするか、しこりといいまするか、そういうものが現実にございまするので、かなり危険はある。従って、できるだけ無事に帰っていただくように、そういう趣旨からできるだけのことはいたしたい、最善を尽くしたいというふうにお答えいたして参っおるというふうに考えておりまするので、その点は依然として本日においても同じように考えておる次第でございます。
○大和与一君 それから韓国の軍人が日本に来る場合は、公用の場合は別ですけれども、軍用機で自由にこっちへ来て、しかもそれは来た人の名前なんかも日本政府は聞かなくてもよろしいわけですか、これは外務省ですね。
○説明員(近藤忠雄君) 韓国の軍人でありましても、一応入国前に仮入国の申請が外務省を通じてございませんければ、入国さすということはいたしておりません。
○大和与一君 そうすると外務省の方も今までは、軍用機の便乗といいますか、軍用機に乗って日本に来た人、韓国の軍人あるいはその他の人も含めてですが、特に軍人なんかが来た場合にも、それに対しては別に注意も何もしないで黙っておるのですか。ただ私の心配するのは、何と言っても韓国政府が明らかに北鮮を妨害するということを公然とこれを天下に声明しておる状態だから、やはり国民の不安は非常に強いわけです。ですからそういうことに対して配慮が一体、外務省にしても、あるいは治安当局にしてもなされておるのか。それは全然してないとは言わぬだろうが、その点特に注意をしなければ、間違いが起こってはあとの祭りだ、こういうことを国民の立場から心配をしてお尋ねをしておるわけなのですが、そういう点の配慮はきょうからでもどの程度におやりになるか、具体的におっしゃって下さい。
○説明員(近藤忠雄君) 外務省においてもお考えになっておることは同じでございましょうが、私の方の所管事項の方にも関連いたしますので、仮入国いたしますついての外国人の入国関係になりますので、一応入国せしめるかどうかについては、関係各機関とも連絡をいたしまして、そしてあらゆる状況を審査いたしまして、持ち寄った情報を交換いたしまして、それが入国せしめることが妥当であるという結論をつけなければ入国さしておりません。御指摘のような問題につきましても、十分その点については検討はいたすつもりでございます。
○大和与一君 十日の品川の出発ですね、これに対して今言ったような不穏な情報もあるのですが、どうもさっきから聞いておるとさつぱり新しい話はない。軍進という人がつかまっただけだ。そんな程度しか話がなくて、えらくこっちを安心させるのだけれども、私はやはりまだ心配なのです。一体治安当局として、この前もお聞きしましたけれども、十日の警備態勢を、手榴弾が飛んだり、爆弾がきてもちゃんと防げる、こういう確信をお持ちになっているかどうか、もう一ぺん念のため重ねてお尋ねしておきます。
○説明員(中村正己君) 十日の品川発の特別列車につきましての警備の問題でございますが、先般もお答えいたしました通りに、何とか無事に帰っていただく趣旨のもとに、最善を尽くして安全を確保いたしたいという気持で、また、それがわれわれの責務であるという自覚を持ちまして、警視庁として現実的に最善の計画を立て、これをまた実行に移していきたいという覚悟でいる次第でございます。
○大和与一君 最後に、外務省に聞きますけれども、韓国の軍隊に対するアメリカの指揮権といいますか、そういう関係は一体どうなっているのですか。韓国の軍人が勝手にどこにでも行けるのでなくて、アメリカの何か協定というか、取りきめか、その了解のもとに動いているのじゃないかと感ずるのですが、その点はどうなっておりますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) 私の方の所管でございませんので、はっきりは存じませんけれども、韓国の軍隊は国連軍の地位を持っております。そういたしますと、京城におりますか、あるいはどこにおりますか、米軍の司令官が国連軍の総司令官という地位を持っておりますから、その面からは韓国の行動を統制できるじゃないか、こう考えております。
○大和与一君 従って韓国の部隊として、たとえば北鮮の船が出た場合に、部隊として妨害をする、こういうことはないと、はっきりおっしゃられますか。
○政府委員(伊關佑二郎君) だいぶ前でございますが、六月か七月でございましたか、韓国が実力をもってしても阻止するというようなことを言っているという新聞報道等もございまして、その点について研究いたしたのでありますが、正式な軍事行動、そういうふうな部隊として行動をとる場合は、これは国連軍司令官が押え得るというふうに私はそのとき聞いたわけであります。ただ一つの飛行機とか一つの艦艇というものが、命令に基づかずに、単独で行動をするというふうな場合に、これを取り締まるということは、実際問題として不可能じゃないか。それから、たまを第一渡さなければいいじゃないかというような問題もあるのでありますが、しかしある程度、飛行機でございますればガソリンを常時持っている。たまにしましてもある程度のものは持っている。大規模の戦闘をす ○となれば、これは当然別問題です。多少のものは常心持っておりますかり、これは命令に違反して出ていこうということになれば、出ていけるだろりというふうな当時の情勢判断でございました。
○大和与一君 最後に。まあここでは今アジア局長が一番えらいのですかり、総理大臣になった気でお答え下さい。北鮮の帰還者の家族を含めて、国民の多くの人はほんとうに心配しているのです。ですから、それに対して一つ全責任を持って間違いなくやる、こういう一つ御決意を最後にお尋ねして、質問を終わります。
○政府委員(伊關佑二郎君) 私はほかの各関係省と同列にしかおりませんけれども、これは関係各省とも非常に真剣に心配いたしております。最善をつくすつもりでおります。
○吉田法晴君 関連ですから簡単にいたしたいと思いますけれども、これは、前に大和君その他加藤さんも御質問でありましたけれども、一週間前と、あまり情勢が変っていないというのですけれども、車進が捕えられたり、それから今、質疑の中で明らかになりましたように、韓国からアメリカの飛行機等でやってきた何人かが、韓国代表部の情報治安担当者と連絡をしながら、十日に出発する品川の汽車での輸送、それから十四日ですか、新潟出発の前に、これを阻止するために、日八体的に動いておる、その手中には、一部は、これは治安局にあげられたけれども、なおあげられない爆弾、あるいは手榴弾等があるのではないか、こういうことが言われておるわけであります。そういう具体的な事実について、否定も肯定もなさらなかったが、実際に動きがあることは、車進の検挙なり何なりで、おわかりになっていると思うのです。 これに対して具体的に治安当局として、どうなさろうとするか、事故の防止、あるいは鉄道の爆破だとか、あるいは汽車の爆破だとか、そういうものを阻止するために、具体的に、一体どういう措置が講ぜられているかというのが質問の第一点であったと思うのです。はっきりしませんでしたから、重ねて御答弁を願いたい。 それからもう一つ、これは、外務省に関連しますが、韓国から、アメリカの飛行機でやってきたりしました者について、仮入国の手続がされた者については、これは出入国管理局から警察当局に連絡されておるということだけれども、しかし入ってきておる者全部について、必ずしも日本の政府で把握してない面があるのではないか。これは一応、私ども実際の動きと、それから先ほど答弁を聞いておると、多少食い違いがやはりあるように思うのです。その点について、監理局として、あるいは警察として、万全を期せられるかどうか、それが第二点。それから、そういう具体的な動きについて、韓国代表部も連絡があるということで、これは韓国代表部に、正式の申し出をなされなければならないと思うのです。韓国代表部そのもの、それから、それと連絡のあります諜報活動員、あるいは破壞工作員と言いますか、帰還を阻止しようとする具体的な動きについて、阻止をする申し入れをしなければならないと思うのです。あるいはその属しております組織、あるいは民団等についても、これは、あるいは外交当局でないかもしれません、警察当局かよく知りませんけれども、これは、十分の申し入れと警告と、それからその防止の措置がなされなければならないと思うのです それから伊關局長の答弁では、連合国軍としての行動については、爆薬その他についても、これは統制がきくけれども、あるいは阻止することができるけれども、しかし、命令外の飛行機あるいは弾薬その他について、これは使用を阻止する方法がない、こういうことでは、どういう事態が起こってくるかわかりません。それらのものも、やはり正式に阻止するために申し入れがなされなければならんと思うのであります。外務大臣も答えられましたけれども、これらの点について、治安当局と、それから出入国管理局長、それから伊關局長から、はっきり御答弁をいただきたい。
○説明員(中村正己君) 第一点につきまして、お答えいたしますが、車以外におきましても、現在、いろいろうわさとか、未確認情報が流れまして、列車の輸送もしくは新潟センターあるいは帰還の船を対象としまして、いろいろな不穏な計画があるのではないかという情報はございます。しかしこれは、車の件を含めまして、かなり前から、こういう情報は流れておったのでありまして、またそれに基づいて、尾行を行ない徹底した内偵を実行いたしているのが、現在の状況でございます。 この問題につきましては、先ほどから、全力を尽くせという御趣旨の御注意なりお話もございまして、ありがたいと思うのでありますが、民団等、団体的な組織的な運動でございますと、事前において、これをキャッチするということは比較的たやすいのでありますけれども、個人的な、もしくは単独犯というふうなことになりますと、相当困難な問題があるのであります。そういう点から、警察としましても、全力を尽くして努力をいたしたいという気持で、またそれがわれわれの責任である、責務である、仕事であるという覚悟のもとに、最善を尽くして参りたい。 従って、十日の品川駅の問題におきましても、そういう考え方で、できるだけの努力を尽くして参りたいという考えでいるのでございます。
○説明員(近藤忠雄君) 先ほどの私の方に関連いたします御質問の第二点の、仮入国の関係の点でございますが、韓国から入ります仮入国の問題におきましても、先ほど御答弁申し上げましたように、申請をして、こちらに参りますにつきまして、十分審議をする機会がありますので、十分、従来もやっておったつもりでございますが、今後の事態を十分考慮いたしまして、検討をしていきたいと思っております。 それから、仮入国の申請をしてきておらない人間が、いわゆる俗な言葉で申しますれば、密入国をしてくる者があるという点、これは、いずれにいたしましても、不法の入国になりますので、正規の港から出入国いたします際につきましては、各港に、私どもの警備官なり審査官が配置されておりますので、その際に、十分に検討するように、警戒をするように、指示いたしておりますが、一般的には、海上の問題あるいは陸上の問題につきましては、犯罪に相なります関係上、治安当局の御協力をお願いいたさなければならない建前になっております。 それから港の、アメリカ軍の関係で入ってくる問題につきましては、アメリカの軍の中におります韓国人につきましては、先ほど申しましたように、アメリカの軍の中にいる要員でございましても、いわゆるべースから出る場合につきましては、わが方に連絡をする必要があることになっておりますので、それにつきまして、十分に検討をする機会がありますので、十分検討するようにいたしたいと思っております。今後もその点を、さらに考えていくつもりであります。 それから韓国の軍人が入るにつきましては、たとえアメリカの軍用機を利用いたしましても、これは仮入国の、冒頭に申し上げましたと同じような手続きをとらなければ入れないことになっておりますので、これは、先ほど申し上げましたことで御了承をお願いいたしたいと思います。
○政府委員(伊關佑二郎君) 私の方の関係では、韓国代表部との関係と、それから韓国の軍人の行動というふうな点であったと存じますが、代表部には、常時連絡をいたしておりまして、代表部自身が、こうした問題を組織し、指導するというふうなことは、もってのほかであります。そんなことは絶対にない。直接代表部が関係するというふうなことは、これは大問題であります。そういうことは、絶対にないと申しておりますが、代表部といたしまして、日韓関係を考えて、民団その他代表部の統制の及ぶ範囲において、こうしたことがないように、穏便に事が行なわれていくように、十分注意してもらいたいということを常々申しております。けさも会いまして、こういう話もいたした次第でございます。韓国軍隊の行動ということで、軍隊でありますが、軍の一部の者が独自で命令を無視して行動するというような点につきましては、これが一番心配されたのでありますが、最近はそれほど言われておりませんが、一時はこの点が一番心配されたのであります。この点につきましては、一番アメリカも大へんな心配をいたしておりまして、もしそういうふうなことが起これば、相手はソ連船でありますし、そうして北鮮が使っているソ連船というものに対して、何らかの攻撃でも行われるというふうなことになりますと、それがどんな大事件に発展するかもわからないというような問題でありますので、非常にアメリカ側としても神経を使っており、韓国側に対しても厳重に注意をし、またアメリカの現地部隊におきましても、その点は細心の注意を払っていることと思いますし、わが方もそういうようなことは絶対にないようにということは十分申しておりますが、これは一番現地におりますアメリカの軍隊が、これが非常に心配してこの点を留意してくれております。まずこんなことはなかろうと考えておりますけれども、今後ともますますより以上注意いたしたい、こう考えております。
○大和与一君 今の局長のお話はわかるのですけれども、やはり韓国があなたに対して、あるいは外務大臣に対して妨害をしないということをはっきり言っているならば、私はおっしゃる通りお聞きするのですよ。それをもう一ぺんはっきり言っているのかいないのか。言っていないとすれば、韓国代表部の人が、あるいはそういうことがあるかもしれぬということは予測されるわけですよ。だから、はっきり向うの政府なり公使なりが、お前の言うことはよくわかったと言っているのか、一点。 それからもう一つは、国民の要望なんだから、このことによって韓国の抑留船員を返すということは別ですから、これに対してやはり政府はもう全責任をもって、全精力を打ち打んで一日も早く妥結実現できるようにこれは一つあわせてお願いしておきたいと思う。その一の点を三たび聞きましょう。
○政府委員(伊關佑二郎君) もちろんここにおります柳大使等と話をいたしまして、そういうことを政府としてはするというふうなことは考えられぬと言っておりますけれども、ただここにおります韓国系の者につきましても、全部が全部その代表部で統制できるわけでもございません。目の及ばないところがあるわけであります。また国内の一般世論としまして相当強い世論があるので、それがいろいろなことを言っている点につきましてはこれはある程度やむを得ない、だんだんおさまるであろうからというようなことを申しておりますが、韓国政府としまして何かするというふうなことについては、それは向うは妨害しないというふうな約束を明瞭にいたしたのではございません。ただ無条件再開というのは反対をしないというだけのことでございますけれども、その後ともこれは日韓関係から考えて、政府が動くというふうなことはあり得べからざることであるということをたびたび申しております。それは向こうもそういうことはないということは申しておりますが、ただ政府の統制の及ばぬところがあり得るということは向こうも心配しておりまして、日本側で何か情報があれば知らしてもらいたいというようなことも申しておるような実情でございます。
○吉田法晴君 皆さんの理解と、それから私どもがここで取り上げた事実の理解というものの間には、相当の開きがあるのではないかということを心配をする。治安当局でも調べられておるところで、これは計画があるだろうと思うのですけれども、そういう関係で具体的におっしゃられないのかもしれませんけれども、あるいは爆弾を持ったりあるいは手榴弾を持ったり云々ということを聞くと、動いている人間についても治安当局が把握しておられるよりももっと多いのではないか、それは具体的に人間の名前はあげませんけれども、私どもは考える。従って一そうの治安当局の取り締まり態勢をお願いしたい。とともに伊關さんはかねがね言っておりますけれども、というお話ですけれども、そこにも若干の大きい開きがあると思う。これは私は委員会の名においてお願いをしておきたいと思うのですけれども、重ねて一つ車の逮捕、それをめぐります具体的な動きからいって、軍のことも含んで正式に一つ代表部に申し入れていただきたい、こういうことを要望しまして質問を終わります。
○委員長(草葉隆圓君) 本日はこの程度とし、明日午前十時より開会し、ベトナム賠償協定両件の質疑を続行いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時三十五分散会