文教委員会 第4号
- 発言数
- 49 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/11/18
会議録
○大平委員長 これより会議を開きます。 学校教育、社会教育及び教育制度等に関し調査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。横路節雄君。
○横路委員 内藤局長にお尋ねしますが、去る十三日の本委員会におきまして、内藤局長名をもって北海道教育委員会に電報を打って、八月三十日から九月一日まで行なわれた北海道地区の教育課程研究協議会の受講者名簿は提出してはならない。これは命令なのか、あるいはそうあってもらいたいという希望なのか、こういうふうにお尋ねしたところ、あなたの方では最後には命令だ、こういうふうに答弁された。そこで、文部省は都道府県教育委員会に対してそういう命令権を発動することができるかどうかということなんです。もしもできるとすれば、法律のどこの規定に基づいてそれをおやりになったのか、その点を第一番目にお尋ねしたい。
○内藤(譽)政府委員 この北海道ブロックの講習会は文部省主催の講習会でございまして、北海道は会場地の関係から主催の列に加わっているのでありまして、この計画の一切の責任は文部省側にあるわけです。従って文部省側としては一事務を北海道の教育長に委嘱しておるのであります。ですから、文部省がこれについて責任を持って処置するのは私は当然のことだと思います。一般の事務の場合の命令の関係とは違うと思っております。
○横路委員 これは文部省主催というけれども、文部省並びに北海道教育委員会の共催です。共催ですから、この前の委員会で私からも話をしたように、北海道議会においては予算の支出について議決をしている。そうでなければ北海道教育委員会は共催できない。しかも費用についてはこの前私からお話をしたように、北海道関係が約八十万、あなたの方の文部省の関係が約十五万、一切の責任を持ってやっているというが、支出その他からいって全く違う。従って、共催であるから、当然北海道議会において名簿を出してもらいたいという要請があれば、その要請に基づいて——それは議会が多数でもって出してはならないときめれば別ですよ。しかし教育長が、文部省の指示があったから、命令があったから出せないのだということならば——文部省が純然たる主催であって、向うが後援で、一切の責任をもってあなたの方でやっているなら別だ。しかし共催なんだから共同の立場だ。予算の支出の方ははるかに北海道議会の方が多い。その北海道議会において、委員会なり本会議なりにおいて出してはならぬということをきめるならば別だけれども、文部省自体が出してはならないという命令は私は絶対にあり得ないと思う。この点はどうですか。
○内藤(譽)政府委員 この講習会はたまたま北海道及び東北ブロックの全部が参加する予定のところ、予算の関係で延びた、こういうわけで北海道一道と文部省の共同主催という形になったわけですけれども、ブロック講習における会場地の府県はどこの府県でも共催に入っておる。しかしながらこの場合の責任はいかなるブロックの場合においても文部省が持っているわけなのです。会場地が共催の列に加わっている。そこで費用の点をお述べになりましたが、このほかに資料代を文部省で直接支出しておるのであります。なお旅費等につきましても、義務教育の先生の場合には負担金で旅費を見ておりますから、別に十五万だけではございません。そこで主催者側が文部省と会場地と二つあった場合に、同等の権利を持つという横路さんのお尋ねのようでございますけれども、この講習会につきましては先ほど申しましたように各ブロックとも文部省の責任において処理いたしております。従って北海道の場合におきましても、主催者である文部省側の意図に反して道の教育委員会は処置できないだろうと思うのです。少くとも協議が整わなければならぬと思うのであります。文部省側の方針としてはあくまでも出していただきたくない、こういう強い希望を持っていることを申し上げたわけでございます。
○横路委員 今内藤局長のあとの答弁ならばさきのと違うのです。一番最初に私に答弁したのは、あなたは主催だから文部省に命令権があるという、今は共催だから両者の方の協議があって、そうして文部省側としては出してもらいたくない、こういうことで北海道教育委員会と協議が整って、北海道教育委員会は出さないことになったのだというならば話はわかる。私があなたに聞いているのは、文部省にどこの法律の条項で命令権があるのかということで、あなたの方はあると言った。だんだん今の答弁の最後は、あなたは何と言ったかというと、共催で両者の協議が整ったから出さないということなのです。それならば話は別ですよ。どちらがほんとうなんです。
○内藤(譽)政府委員 文部省主催の行事について文部省が処置するのは当然のことであります。だから、この限度において、北海道について文部省側の意向を伝えて処置をお願いするのはあたりまえだと思います。そこで、今お話しのように、一歩譲って共同主催だからとおっしゃるから、共同主催にしても、文部省側の意向に反して北海道の道の教育委員会が処置されることはあり得ないと私は思うのです。だから、この前あなたから、これは命令かどうかというお話が出て、希望なのか命令なのかどっちだとおっしゃったから、文部省側としては出したくないのだ、それを命令とおとりになるならおとりになってけっこうだ、こう言ったのです。
○横路委員 今の内藤局長の答弁はおかしいですよ。出してもらいたくない、それを私が命令と受け取るならば勝手に受け取ったらいいだろう、そういうものの言い方というのはないですよ。これは大問題になりますよ。やがて年末には定例の北海道議会が開かれる。そのときに、予算の支出をしている、予算は前の道会へかけている。そこで、もしも、あなたがここで答弁したように、これは文部省主催なんだ、一切の責任は文部省にあるんだ、だから、文部省が命令権を持って、これは出してはならぬというのは一切文部省の考えでやっておるんだ、北海道教育委員会の触れるべき筋合いではない、こういうことが文部省側の正しい意見だということになれば、この前北海道におけるブロックの教育研究協議会に出した費用は不当支出ということになりますよ。文部省が一切の責任を持って、文部省が指示命令権一切を持ってやっているんだ、都道府県教育委員会の容喙すべきところではない、これが文部省の建前だということになりますれば、地方議会ではこれは不当支出ということになる。この点、出してもらいたくないという解釈について、お前が勝手に命令だと言うなら命令だと考えておいてもいい、こういう答弁は私はあり得ないと思う。文部大臣、どうですか。
○松田国務大臣 今の御質問なり答弁なりを伺っておりますると、難点はやはり言葉のあやであると私は思います。なるほど、横路さんのおっしゃるように、北海道でも金を支出しておる。しかし、この講習会は、実質的にはやはり文部省と地方の教育委員会との共同主催の形である。それで、命令であるかどうかの点でありまするけれども、過日来の内藤局長からの答弁は、最初は出してもらいたくないのだという気持で、それが命令か命令でないのかというお話でありましたから、文部省主催という形になっておりますし、実質は共催でありましても文部省の講習会ということになっておりますので、命令だということになったのだと思います。その間においては、やかましい法律上の解釈はどういうふうにとられるかは知りませんけれども、これは実質的な共催である。しかし文部省主催という建前でやっておるということでありますので、気持といたしましては出してもらいたくないのだが、命令という形になったという程度でありまして、従ってその言葉も厳然と命令の形で出ておるわけではないと私は思います。
○横路委員 実は私この間の委員会でもこのことをお伺いしたし、きょうもまた劈頭にお聞きをしておるのですが、このごろ都道府県教育委員会の自主性というものがともすればなくなってきている。その都道府県教育委員会の自主性がなくなってきているというのは、文部官僚の中で都道府県教育委員会に対して法律的な命令権を持っているのだ、こういう間違った法律に対しての解釈、運用をしている傾向が強くて、今日、あとで私は申し上げますが、一体都道府県教育委員会や市町村教育委員会の自主性というものはどうなっているのだ、こういう点で私はお尋ねしているのです。しかし今文部大臣が、これは、実質的には共催だ、しかし文部省が主催をしたのだ、だから出してもらいたくない、しかし主催だから、それが命令だということであるならば、それはやむを得ない、そういうように答弁されましたから、私は、この点については次のことについてお尋ねしたいと思う。 内藤局長にお尋ねしますが、私が言ったように、都道府県教育委員会は、ほとんど自主性がなくなりつつある。文部省が都道府県教育委員会に対して指示命令権を持っているのだ、そういう解釈に立って運用されている傾向が強い。あなたは、都道府県教育委員会に対して命令権があるのかないのか、その点一つお聞きをしておきたい。
○内藤(譽)政府委員 法律に基づいて命令権のあるものもありますし、また、一般的には指導助言をいたしておるのでございまして、一般的事項について文部省が命令をしておるようなことはございません。
○横路委員 そこで、先ほどの電報の件ですが、あれは命令でなしに勧告でしょう、それとも指導ですか、法律的な用語から言えばどうなんです。
○内藤(譽)政府委員 文部省が、文部省の仕事をするのに、文部省の意思を表明するのは命令という形になるか、これは形式の問題でございますけれども、文部省の意思表示をすることは当然であると思います。
○横路委員 そうすると、北海道に対する電報は、あくまでも命令ですね。その点、どう解釈してもいいというのでなしに、もう一ぺんはっきりと答弁して下さい。
○内藤(譽)政府委員 これは、文部省の主催者としての立場の考え方を表明したものでございまして、命令というふうにおとりになるなら、それで私はいいと思います。
○横路委員 委員会のこれだけは記録にも載ることですし、命令ととるなら命令ととってもいいという、そういうあいまいなものでなしに、命令なら命令ですと、こう言えばいい。論議するところないように答弁してもらいたい。命令なら命令と受け取ってもいい、それはお前の勝手だ、そういうやり方は文部委員会だけです。内藤さん、あなたは今までずいぶんここで長くやっておられるが、ほかの委員会では、どっちに解釈されてもいい、そんな答弁、ないです。命令なら命令とはっきり言って下さい。
○内藤(譽)政府委員 そういう意味では、文部省が文部省の事業に対する文部省の意思を表示したことでございますので、命令というふうに私は思います。
○横路委員 そこで、次にお尋ねしたい点があるわけですが、それは、教育基本法の第十条の、教育行政に、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。教育行政は、自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」こういうようになっておることは、あなたはもう百も承知のことです。ところが、北海道において、八月三十日から、今私が指摘した、北海道ブロックの小学校の教育課程に対する研究協議会が開かれた。そこで、受講者の中から、上野初等課長に、政党が教育の分野にまで手を広げる心配はないか、こういった質問をしたのに対して、上野初等課長は、「政党によって色彩をつけられることは好ましくないが、現実問題としてある程度そういうことはあると思う」、こういう答弁をしておる。これは非常に重大な問題なんです。そこで、これは毎日新聞の八月三十一日の夕刊ですが、毎日新聞の編集でも、これを記事として載せるときに、担当の記者を呼んで、これはまことに重大だ、教育基本法の第十条に、教育行政は不当な支配に服してはならぬ、こういうようになっているのに、こういう答弁をしたということは非常に重大だ、誤りがないかというので再三取材した記者に対してそれを呼んでただしたところ、間違いがない、こういうことになって載せたのです。これはまことに重大だ。文部大臣どうですか。「政党によって色彩をつけられることは好ましくないが、現実問題としてある程度そういうことはあると思う」ということは、今日の文部省が考えておるたとえば教科課程にしろ教育行政にしろ、実際には今日の政権をとっているのは自民党だ、だから現実問題としては自民党のそういう政策が教育の問題に立ち入ることはあると思う、こういうように肯定していることは、今日の文部省における教育行政というものが明らかに不当な支配に屈していることになると思う(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)毎日新聞に載っている。重大問題だ。(「それは社会党だ」と呼ぶ者あり)社会党が何で教育行政に責任がありますか。自民党ですよ。私は文部大臣の見解をお聞きしたいと思う。
○松田国務大臣 地方の教育委員会は文部省の命令によって動くものじゃなく、あくまでも自主性に基づいて教育行政をやっていくのである、その通りであると思います。従って文部省としては、先ほど来のお話にもありましたが、直接に文部省の方からイニシアをとって命令することはないと思う。ただ場合によっては、地方の委員会からかくかくの事柄についてどうすればいいかというような指示を求めてきたような場合には、かくかくせよということは指導助言の立場からやる。かくかくせよということをもって、向こうから求められた場合にそうすることもやはり命令のような形になると言われれば、これは助言に応じてこの指示を仰いできたことに対して指示することは、私は命令ではない、かように考えております。 また後段の話につきましては、私も文部行政をあずかっておる者として、私は自民党のロボットではありません。しかし現に自民党の党員である。そうして自民党の文部行政に対してわが意を得たる件があるならば、これを採用することもあり得る、かように考えます。
○横路委員 私は文部大臣が今お話しのように都道府県教育委員会並びに市町村教育委員会の自主性を尊重される、そういう建前で都道府県教育委員会からいろいろ文部省に指導等について仰いできたときに、それに対してどうする、これは私はそれで当然だと思う。また文部大臣が教育委員会の自主性について独断でそういうように話をされることは、今の都道府県教育委員会が自主性がなくなりつつある今日からいって、非常に大事だと思う。後段の点は文部大臣、これは文部省の課長ですよ。文部省の課長が、教育基本法の第十条に、教育行政というのは不当な支配に屈してはならないのだ、政治権力や政党の支配に左右されてはならぬ、それをみずから「政党によって色彩をつけられることは好ましくないが、現実問題としてある程度そういうことはあると思う」というのは、今日行なわれている教育行政の中にその点をあると思うということを認めた答弁だと私は思う。こういうことは私は不当だと思う、こう言っておるのです。(「不当なことはない、そういうことがあることを心配しているのだ」と呼ぶ者あり)どうして不当なことはないのだ、委員長、注意せよ。文部大臣、不当だ。私が言っているのは、地方に出向く、あるいは文部省におるこういう担当の課長がそれを是認するということは、今日行なわれている教育行政というものが実際に権力を持っている自民党によって左右されるのだ、そういうことをみずから考えているということに、私はあやまちがあると思うのです。そういうことは絶対にないのだ、こういう考え方でいかなければ、私は教育基本法第十条による教育行政は、不当な支配に屈するということになると思う。その点私は重ねて文部大臣にお尋ねをしたい。特に私がお聞きをしているのは、確かに今日文部大臣は自民党の党員であり、今日の岸内閣を構成している方であることは間違いないけれども、しかし教育基本法に定められた、教育行政が政党によって支配されたり、政治権力に左右されてはならないという建前を、教育行政をあずかる者はあくまでも貫き通していかなければならない。その点で私は文部大臣にお尋ねをしている。またこういうことを言う者については、やはり国家公務員法のそれぞれの規定に従って、懲戒なり訓告なり戒告なり、いろいろあるけれども、こういう点については文部大臣としては、文部行政の直接の最高責任者としてどうお考えになっているか、それをお尋ねをしているのです。
○松田国務大臣 教育行政はあくまでも不当な政治権力に左右されてはならぬということについては、まことにその通りに考えております。また一課長がそういう事実があるということを言うたとするならば、それは一課長としては慎むべき言辞であると思います。
○横路委員 内藤局長にお尋ねしますが、実は愛媛県において、愛媛大学の井上という教育学部長が、教組とそれから校長会の共催による教育の講演会で、講師として呼ばれて講演をした。私はその講演の要旨を今ここに持っているわけです。私もこれをずっと読んでみましたが、この中にはこういうことを言っております。「最後に、日本の教育を混乱から救う道を考えようそれは政治勢力が教育界から手を引くことによってなしとげられる。即ち教委の公選制にかえるのが先決である。民主主義は地方分権化を根幹とし、現在のように教委が時の政府の一挙手一投足に影響されては、教委の自主性も独創性もなくなってしまうのは当然である。宇和島市教委もその例外ではあり得ない。」こういうことを言っているわけです。これが非常に宇和島市の教育委員会を刺激したと見えて、七日に松山で開かれた県教委主催の教育長、教育委員長研修会でいろいろ集まったときに、その宇和島市の教育委員長が、愛媛大学の教育学部長の井上教授は、——活発な論議をかわした結果、愛媛大学の教育学部長としてはふさわしくない、同教授が教育学部長である限り、同学部の卒業生を教員に採用する際、地方教育委員会としては重大な決意をせざるを得ない、こういうことを言っておる。重大な決意ということは採用しないということだ。私はこれくらい不当なことはないと思う。愛媛大学の教育学部長の井上教授が学者として呼ばれて、今私が後段に言った通りの——これは大かたの学者が考えていることでしょう。教育委員会法の改正に伴って議論したことで、全国の大学の学長は、この点については教育委員会の自主性がなくなるといってあげて反対した案件だから、こういう意見を学者として言うことは、私はそれぞれの立場で言われることは当然だと思う。それをもとにして、その地方教育委員会が、井上教授が愛媛大学の教育学部長としてある限り、同学部の卒業生を教員に採用することは絶対やらぬ、こういう反動的なといいますか、学問の自由を侵害するような、こういう点についてはどうなんですか。内藤局長、あなたの責任のある答弁をお伺いしたいと思います。
○内藤(譽)政府委員 井上教授がどういうような演説をされたのか、私どもも詳細につまびらかにしていないのですが、できるだけ詳報を一つとるようにいたしております。もちろん今おあげになった点その他学問の自由の点から、いろいろと批判される見解をお述べになることは、これは自由であります。ただ私どもは、その場合に愛媛県の教育委員会の実際の政策に対して妨害をするようなことを教唆、扇動するようなことは慎んでいただきたいと思うのです。ですからその当時の内容なりお話の態度というようなものも、十分 私は見る必要があろうかと思うのです。その場合に教育委員会が、これも新聞ですから私どもよくわかりませんけれども、今お述べになったような決議をしたのかどうか、この点についても今調査をいたしております。井上教授がほんとうに愛媛県の教育を阻害するようなお話をされ、またそういうことで学生を指導されておったら、その学生を教員にとることは好ましくないというようなお気持があったのではなかろうか。具体的にどういう決議をされたのか、その点も私どももう少し調べてみないと、ちょっとここで意見を述べるわけには参らぬと思うのでございます。
○横路委員 今あなたの御答弁の中に、宇和島の教育並びに愛媛県の教育について、それを阻害するような教唆、扇動があったらばまた別だというようなことを言っておる。ここで言っておるように、学者が今日の教育行政全般を考えて、教育委員は公選制にすべきだ、公選された教育委員会こそ自主性があって独立性があるのだ、今日の教育委員会というものは改正以後自主性が喪失されているという点、こういう点について何が教唆、扇動なんですか。教組と学校長の同じ会合で校長会は非常に心配して、勤務評定反対の意見を述べられては困るというような注文があったことも事実です。しかしこういうような教育行政全体については、学者として意見のあるところなんです。あるところを述べて、何が教唆、扇動なんですか。しかも私が聞いているのは、決議がされたかどうかは詳細に愛媛県教育委員会に問い合わせなければわからぬだろうけれども、これは全国的に大きな問題になっておる。しかも愛媛大学教育学部の卒業生は採用しないという意見が強い。その七日のときの会合はそういう意見だった。採用しないとかするとかを言うこと自体が私は不当だと思うのです。この点についてあなたの見解ははっきりしないから述べられないというならばやむを得ないが、どうなんですか。
○内藤(譽)政府委員 お述べになったように教育委員会が公選であった方がいいという御意見はあろうし、また公選の弊害によって、かえって教育の中立性を阻害される、たとえば組合関係の人があまりに多数に出て、かえって教育の中立性を害するという意見も一方にあるわけです。そこでいろいろな意見をお述べになることは、私は御自由だと思うのです。ですから、この点について井上教授をとやかく言っているわけではないのです。ですから全体にわたって所論を拝見しないと私意見を申し上げかねると申し上げたのは、その点で全体にどういうふうにお述べになったのか、そういう全体の中から判断すべきではなかろうか、こういう意見でございまして、決して教育委員会云々だけを申し上げたわけではございません。
○横路委員 今内藤局長の話の中には、私が読んだ後段の教育委員会のことは問題ないが、なお調べれば問題は出るかもしれない、こう言っておる。そういう学者が学問的な良心において、それぞれの研究会に講師として呼ばれて言っていることに対して、その内容を一々調査検討して、これは不当だとかなんとか言うこと自体が、私は文部省が今日思想に対する国家統制をやろうという考え方が、あなたの答弁の中に出ておると思う。なるほど井上教授の言葉の中にはこういうこともありますよ。「道徳教育については、教育基本法第二条に於て、教育はあらゆる議会、あらゆる場所に於て実現されなければならない旨明記されている。その意味では、世間が道徳的である事がまず要請される。道徳の根本は「自他の敬愛と協力」が強調されねばならないのに、現在は互に助け合うという考え方はなく、かいしょのない者が貧乏し倒される。渡る世間は鬼ばかりという修羅の巷であり、敵視排撃というのが実相である。そういう社会の改革なしに真の道徳教育は実施され得ぬと考える。」これはなるほど今日の文部省が考えている、今やりつつある道徳教育の時間の特設その他の問題と関連すれば、この道徳教育の基本的な考え方は、教育はあらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。これは戦争前の教育だって道徳教育、修身教育はそういう意見があった。なるほど今日の文部省の考え方は違っていますよ。なぜ違っているかというと、「そういう社会の改革なしに真の道徳教育は実施され得ぬと考える。」考えると言っている。それを聞いて批判するかどうかは、それは講師として呼んだ一般の参会者の自由な意思なんで、井上教授の考えは間違っていると思っているかもしれない。賛成だという諸君もあるだろう。それをあなたの方で、この講演の要旨について調べて、いわゆる今日の文部省が考えている教育行政について明らかにこの人は反対の意見なんだ、だから全体的に考えて、こういう者は大学の教授としてふさわしくない、こういうことに関して調査をした上であなたの方の態度をおきめになろうという考え方自体に、私は問題があると思う。どうです、内藤局長そうじゃありませんか。大学の教授としては学問の自由その他があるということについて明確にしていただきたい。
○内藤(譽)政府委員 私は学問の自由をとやかく言っているわけではないのです。もちろん井上教授がそれぞれの機関誌に御意見を発表されることもあろうし、いろいろ講演会でお述べになることもあろうと思います。ただ私どもとしては、愛媛県なら愛媛県の教育行政についてプラスになるようにしていただきたいと思います。
○横路委員 そのプラスというのは、愛媛県の教育行政だけではなく、国の教育行政の問題です。
○内藤(譽)政府委員 そこで私の申し上げているのは、学部長として適当かどうかということを申し上げているのではないのであって、このことが愛媛県の教育を推進する上に非常に役に立つかどうかという点を愛媛県としては問題にしたのではなかろうか、こういう意味なんです。ですから愛媛県の教育行政を推進するのに非常に妨害になるし、支障になるということならば、愛媛県としては困る。そこでそういう先生に習った生徒が、そういう思想を持っておられては非常に困るという意思表示ではなかったかと思うのでございます。
○横路委員 内藤局長の考え方は、愛媛県の教育委員会の考えている教育方針と、井上教授が考えている考え方が全く合致してもらわなければ困る。それならば学問の自由なんてないですよ。 そこで松田文部大臣にお尋ねしたいのです。実際私は松田文部大臣に非常に期待しているのですよ。これは一つ大臣よくお考えいただきたいのですよ。今日の日本全体の教育行政について、教育基本法の第十条でうたいながら、そういうことを答弁する課長が出てくる。学問の自由がそこなわれたからこそああいう戦争に突入してああいうみじめな状態になった。そういう意味で私は文部省の官僚の諸君が、再び戦前のような教育行政を考えているということについては、非常に遺憾であると思うのです。この点は松田文部大臣が学問の自由についてこれを守られていくという点について、私たちは非常な期待をしているわけです。そこで、文部大臣はすでに他のいろいろな記者からこの愛媛の教育大学の問題についてはお尋ねをされて談話も発表されているようですが、ぜひ一つ国会を通じて、最高責任者である文部大臣が学問の自由について、学者のそういうような研究の自由についてどういうように保障されておるのか、その点についてお考えを承りたいと思います。
○松田国務大臣 学者は学問の追求について自分の意見を自由に発表し、その学問の研究の範囲に終始している場合には、むろんこれを圧迫するような考えは少しも持っておりません。
○横路委員 今の文部大臣のお言葉で、文部大臣の信念をお聞きしたわけですが、実は今月の十三日の大阪朝日の十四版に、朝日の記者から文部大臣は聞かれて、こう言っておられるわけです。松田文部大臣はこの問題について十一日、学者が純粋な学問の立場から述べたのなら、それを排斥するのは地教委の行き過ぎだと前置きして、次のような見解を明らかにした。詳しい話を聞いていないので、一般論としてしか言えないが、学者の中には日教組講師団のように片寄った考え方をする者もいて困っているとはいうものの、学者の良心に従って研究したことについて他からとやかく言うのは筋が通らない。地教委の教育長、教育委員の中には、教育課程の改定や、道徳教育の内容を完全に知り尽くしている者はあまり多くないと聞いているが、それにもかかわらず教育行政の立場から学問の分野にまで立ち入るのはどんなものであろうか。従ってその人、井上学部長が自分の研究を発表したところ、内容が地教委の人の気に食わないからといって排斥するのは学問の自由を脅かすものだと思う。大学の自治にも限界はあるが、地方教育行政にはワクがあり、両方が相手の立場を侵さずお互いに協力し合ってこそよい教育ができるものと信じている。これが十三日の大阪朝日——私もあちこちの新聞を調べたのです。文部大臣はきっとどこかの新聞にお考えを述べていらっしゃるだろうと思ったら、ここにだけ出ておったわけです。これは大阪の記者が取材したのですが、東京は文部省の方にまさか遠慮したわけでもないと思うが、大阪に出ておったのを、私はきょうぜひ文部大臣にお尋ねしたいと思ってその通り写してきたのです。文部大臣、今私が読み上げました十三日の大阪朝日、これは十一日に朝日新聞の記者に語りました愛媛の教育大学の学部長である井上教授に対しての考え、この問題についての宇和島の地方教育委員会、愛媛の教育委員会についての一応の文部大臣のお考え方である、こういうようにこの談話は受け取っておいていいと私は思うのですが、それで差しつかえございませんか。
○松田国務大臣 十三日とは今月の十三日ですか。
○横路委員 そうです。
○松田国務大臣 私はずいぶん健忘症で、その愛媛の問題についてそう言った記憶はないのですが、しかし大体そういうようなことはどこかで言うておるかもしれません。だからあながち私はそれに反対の考えはないということだけは申し上げておきます。
○横路委員 文部大臣が、さる十一日に朝日の記者に語られた考え方に変わりはない、こう言うのですから、私は文部大臣の考えについては了承できます。 そこでこの問題は内藤局長の方でさらにお調べになるそうだが、この問題についてはあらためて本委員会において、再度文部省の方で調査をした資料に基づいて質問を続行さしてもらいたいと思うが、きょうは、松田文部大臣から、この愛媛の教育大学の問題について私が読み上げました文部大臣の談話に誤まりはない、こういうのですから、きょうのところは私は質問を終わります。
○臼井委員 関連して。ただいま横路委員の御質問で、私も学問の自由というものはぜひ確保しなくちゃならぬと考えております。従って学者の方があらゆる問題について検討して、こういう学説もあるしこういう学説もあるということを発表することは、私は自由だと思いますけれども、学者個人の考えを、かりにマルクス主義なるものをとらえて、自分はこれが絶対的なものであるというふうに支持して、そうしてぜひこの主義であるべきであるというようなことまで深入りして、自分の個人の考えを、たとい研究した結果とはいいながら他に押しつけるような教授をかりに学生に対してするならば、これは学問の自由、研究からはずれて——近ごろは学問の自由と教育の自由というものをあまりに取り違え過ぎて、教育は自分の考え通りに何をしてもいいのだというような考えが学者の諸君に強いのじゃないか。そこで政治的なそういう発言なり——発言にしても一つの行為でありますから、政治的行動と学問の研究との限界というものがどこに引かれるかということは、なかなかむずかしい問題ではあるけれども、いやしくも学問の自由というものを主張する立場にある以上は、その限界をやはり謙虚に学者の諸君も考えて、たしか国家公務員法かに規定されておる、あるいは人事院規則でしたか、いわゆる政治的行為の規制の中には、政府の政策とか、あるいはその中には法律、規則、条例等に反対的な行動をとることは政治的行為であるということが規定されております。従いまして、私は、講演なり何なりをするときに、その範囲まで入るような行為というものは、学者といえども相当考慮をしてしかるべきものである、かように考えるのであります。研究なり学問というものは自由でよろしい。どういうものを研究しようとよろしいのですが、それを他に押しつけるようなものは、私は法令に規定されておる政治的行為であるというふうに思う。ことに、とかく国立大学の教授というような肩書きがありますると、そういう肩書きのもとに招聘されておる教授である。従いまして、一個人の教授という立場で述べるのでなく、やはり国立学校であれば教授としての国家公務員という立場において述べておるのでありますから、従って政府の方針というものに反対的な行為をするとか、あるいは、こういう学説がある、こういう学説がある、どちらをとるかは聞く者の自由にまかせるというならいいけれども、自分の国立学校の教授という権威をかさに着て、これを他に強要するようなことがあるならば、これは私は当然政治的行為である、こう解釈しておるのでありますが、これについての当局の御意見を伺います。
○内藤(譽)政府委員 今おあげになりました政治的行為の中には、国の機関または公の機関において決定した政策の実施を妨害する、この見解が妨害をするような意図を持っておったかどうかという点にも私は問題があろうと思います。ですから単に政府の政策を批判したことがどうのこうのということではございません。今お尋ねのような政策の実施を妨害するというようなことは、これは国立大学の先生といえども慎んでもらいたいと思うのです。 ————◇—————
○大平委員長 この際、本島百合子君、小牧次生君及び長谷川保君よりそれぞれ発言を求められております。順次これを許します。本島百合子君。
○本島委員 私は過日の伊勢湾台風の被害調査の第四班として派遣されましたので、鳥取県、兵庫県の文教関係の状況報告をいたしたいと思います。 台風第十五号による災害の実情調査のために、大平委員長外五名、文教、建設、運輸、社会労働、農林の各委員は、議長の承認を得まして、去る十月十日から十三日までの四日間にわたって、鳥取県の東部及び中部地方、特に鳥取市、気高町、鹿野町、青谷町、東郷町、倉吉市、関金町、三朝町等、並びに兵庫県の北部地方、特に但島地域、丹波地域の八鹿町、豊岡市、城崎市、出石町、和田山町、柏原町、篠山町等を視察し、当該地区当局及び関係団体からの陳情をつぶさに聴取しました。鳥取県下の視察に際して、足鹿覺議員が同行され、現地を案内されるとともに熱心に実情を調査されましたことをあわせて御報告いたします。 鳥取県下の文教関係災害状況について申し上げますと、鳥取県は第十五号台風の中心からそれましたが、県下のほとんど全地域が台風圏に入ったため、瞬間最大風速三十五メートル、最大降雨量八百二十八ミリを記録し、平地でも二百ミリをこえるものがあったといわれています。このためその影響はことのほか激しく、昭和九年の室戸台風以来のものであって、十月十日現在で判明した被害は、土木関係被害二十九億円、農作物被害を含む農林水産関係被害は三十億円をこえ、県全体の総被害額は六十余億円に上り、床上浸水二千七百戸、罹災者四万、災害救助法適用市町村は九市町村に達するものでした。 文教関係の被害は、地域別にみますと、県の東部及び中部地区に特に多いようです。東部地方におきましては、千代川水系、鳥取市、国府町等を中心に広範囲の町村、蒲生川水系、岩美町、福部村、勝部川、河内川水系、青谷町、鹿野町、気高町等であり、中部地方においては、天神川水系、倉吉市、三朝町、関金町等、加勢蛇川水系、東伯町でありました。その他の地域でも相当の被害があったといわれ、また局部的に被害の激甚地が随所に見られました。このために臨時に休業した学校は七十七校に達していますが、特に被害が甚大で、通学困難な気高郡鹿野町小鷲河小学校河内分校、東伯郡三朝町三億小学校成分校、関金町山守小学校野添分校等に関しましては、道路、橋梁等の一応の復旧まで臨時寄宿舎(鹿野中学校)臨時分校等を開設するなどの応急処置によって、学校運営の確保と学力低下の防止に努めていました。 また教科書の流失、浸水による被害者に対する教科書の供給についても、発注手続を完了して、その万全を期しており、さらにまた県立高等学校罹災生徒のうち、特に被害が大きいと思われる生徒百三十名に対しましては授業料の免除を十月分から実施するなど、その救済に努力していましたが、あわせて日本育英会奨学生の特別採用を緊急に行なうべきものと考えられました。 教育施設の被害については、鳥取市立稲葉山小学校が一・五メートルに及ぶ床上浸水のために、屋内体操場の床全部が膨張し、校舎の床、腰板がすべて破損し、また黒板が全部使用不能になったのを初めとして、校舎の浸水、建物の破損、校庭土砂の流入及び流失、設備及び備品の流失、使用不能等々にわたる県下の総被害額は二千万円をこえている様子でした。 総括しますと、小学校百十三校、中学校四十五校、その関係が千六百七十万余円、高等学校二十二校、その関係が三百十万余円、私立学校、各種学校三校、その関係が六十万余円に達し、一日も放置できない現状でありました。 次に兵庫県下の文教関係災害状況について御報告いたします。 第十五号台風は、全国各地に大災害をもたらしましたが、兵庫県においても同様であって、三百ミリをこえる豪雨は、県の北部地方、但馬、一市十八町、丹波、八町四村の両地域に甚大なる被害を与えています。但馬地域では、円山川を初めとして、岸田川、矢田川、八木川等の諸河川が、丹波地域では篠山川、佐治川、竹田川の諸河川及びこれらの支流が相次いではんらんし、家屋、工場等の倒壊、流失、埋没、浸水、堤防の決壊、道路及び橋梁の損壊、林地の崩壊、田畑及び農作物の冠水、流失等による被害総額は、十月八日現在で実に百十億円余に達しているといわれました。床上浸水一万百八十六世帯、罹災者十四万、災害救助法適用市町村は一市十六町村に及んでいます。特にこの但馬、丹波の両地域は山間僻地であり、その経済水準は、県内の他地域に比べてきわめて低い後進地域であるだけに、今回の豪雨によって、歴代所有の全耕地を一朝にして失い、粒々辛苦の収穫がわずかに五、六把の稲にすぎない惨状を目前にして、全く言語に絶するものがあったのであります。 文教関係の被害は鳥取県と同様にまことに甚大であり、校舎の浸水、建物の破損、校庭土砂の流入及び流失、設備及び備品の流失、使用不可能等にわたる県下の総被害額は五千六百万円余に達しております。 学校関係で申しますと県立大学が五校で大体八十八万一千円、その他の県立学校等が四十六校で千四百八万円、市町村立高等学校が九校で百四十五万三千円、中学校が八十五校で千五百十三万二千円、小学校で百九十校二千二百四十三万七千円、幼稚園が九校で八十三万五千円、学校社会教育施設が三カ所で十二万七千円、教科書被害が千二十六人、約九十八万三千円に該当するといわれております。 〔委員長退席、稻葉委員長代理着席〕 学校の教科書物資の被害が三校分で一万五千円、合計五千五百九十四万三千円、以上のように、文教関係被害は五千五百万円をこえておりまして、その被害状況は日を追うて増大しつつあり、まことに憂慮にたえないものがあったのであります。 災害の復旧について鳥取県においては、年度内に三割実施の目途のもとに、すでに二割相当分五億円余を予算化し、島根県から技術吏員五名の応援を得、さらに自衛隊百五十名余の派遣を得て、応急対策を施行中でありましたが、年間標準税収入六億七千万円というまことに貧弱な県財政であるだけに、これが復旧は容易ならないものがあると考えられました。また兵庫県においてもいち早く救助対策を立て、鳥取県と同様に災害救助法を適用するとともに、被災者に対する応急処置の指導の徹底をはかるなど復旧に全力をあげて努力していますが、両県とも県独自の財政力をもってしてはとうていこれが恒久的復旧のための総合的施策の樹立、実施は困難であると考えられます。 両県当局及び被災地関係諸団体から文教関係の災害復旧にかかる国の援助について主として次のような要望がありました。 一、教育関係施設及び設備の災害復旧に対しては、昭和二十八年の風水害の例に準じ、特別立法によって高率の国庫補助及び起債を認められたい。 二、被災公立学校に対する災害復旧事業費は、冬期を控えているので早急に決定交付されるよう措置されたい。 三、小災害の復旧、応急修理等も補助対象とされたい。 四、罹災児童、生徒に対し、教科書等の無償交付の措置を緊急に講ぜられたい。 以上でございますが、過日視察直後にこの委員会で、私ども災害地に参りまして特に要望された点を御質問いたしましたが、現地におきましては文部省発表通りには参っておらないのです。ですから、冬期を控えて特に鳥取県、兵庫県ともに山岳地帯で、山間僻地といわれるところが多く被害を受けておるような現状でございますので、積雪にでもなりますとこういう措置は十分にできないと考えられておる地域でございます。従いまして一日も早く万全を期して学校の復旧並びに生徒に対する救助の手を差し伸べていただきたいということをあわせて申し述べて、私の報告を終わりたいと存じます。(拍手)
○稻葉委員長代理 小牧次生君。
○小牧委員 先般当委員会より伊勢湾台風の被害調査のため、三重、奈良、和歌山の三県に派遣されました委員を代表いたしまして視察報告を申し上げます。 派遣されました委員は私と簡牛凡夫委員の両名でございまして他の運輸、社会労働、農林水産、建設委員会より派遣された諸君とともに十月八日東京を出発、三県の災害地を前後五日間にわたって視察し、十二日夜帰京いたしました。時間の関係上、簡単におもなる視察個所を行程に従って申し上げ、次に三県における文教関係の災害の実情を述べ、あわせて所感の一端を申し述べて、今回の視察報告といたしたいと存じます。 去る十月九日早朝、被害の跡なまなましい市内を車中より見ながら名古屋駅に下車いたしまして、駅前宿舎にて小憩の後、運輸省関係及び国鉄、近鉄関係者より鉄道の災害及び復旧状況の説明を聴取、また愛知県副知事より名古屋市付近の災害状況等について説明を聴取、いまなお黒い水につかっている港区の市中を抜けて名古屋港に至り、海上保安庁巡視船もがみに乗船、四日市港に向かいました。船中においては運輸省関係者より国鉄、私鉄、港湾、海上保安、航空関係の災害報告の説明を聴取いたし、十一時過ぎ、四日市港に到着、直ちに自動車にて四日市市災害対策本部に至り、同市長より説明を聴取、終わって桑名郡長島町に至り、長良川河口における自衛隊のべリー橋作業現場より長島町の悲惨なる被災状況を視察、それより桑名市に戻り、県災害対策本部前進基地にて桑名市長より実情を聴取いたしました。 それより視察班一行は分かれまして各担当委員会関係の視察に向かい、私どもは桑名市、川越村、鈴鹿市を経て津市に至るまで桑名高等学校、立教小学校、川越中学校、暁女子学園、県立大学塩浜附属病院、河原田小学校、鈴鹿電通学園、白子中学校の校舎、諸設備の被害状況を視察、学童並びに職員の罹災状況、就学状態等について説明を聴取いたしました。夕刻津市に至り、三重県庁、県非常災害対策本部において、記者会見の後副知事より、県下被害状況及び諸対策並びに各種要望事項についての説明を、また、暁学園関係者より私立学校の災害復旧に対する助成措置に関する要望を聴取いたしました。 翌十日は近鉄を利用、奈良県へ向かいましたが、車中においては近鉄関係者より近鉄の被害状況について説明を聴取するとともに名張駅に途中下車いたし、名張川のはんらんにより泥海化した名張市内を視察、十時過ぎ、近鉄榛原駅に下車、奈良県の視察日程に入りました。まず、救援物資の積まれた榛原町役場において、奈良県副知事等より県下災害の状況並びに要望事項の説明を聴取、それより夕刻に至るまで、ジープに分乗いたしまして県下被害個所を夜半に至るまで視察いたしました。宇陀郡においては、榛原町字内牧地区の地すべり、及び室生村の一部、曽爾村、山粕地区、掛地区、御杖村の桃の俣地区、蒐田原町、古市場地区の名張川上流のはんらんによる被害状況を、また吉野郡四郷村、三尾地区、麦谷地区の吉野川上流のはんらんによる被害状況を視察いたしました。 なお、同日簡牛委員は一行と離れて津より宇治山田市に至り、特に伊勢神宮の被災の実情をつぶさに視察し、次いで県立宇治山田商業高等学校、県立伊勢工業高等学校、県立伊勢高等学校、並びに市立四郷小学校の被害状況を視察し、一行よりおくれて奈良県に入ってこられました。吉野山の宿舎においては地元吉野町関係者より吉野川はんらんによる町内の被害状況について説明を聴取いたしました。 翌十一日は視察班一行が二班に分かれまして、一班は宿舎を早朝出発、吉野郡川上村の東川地区、大滝地区、寺尾地区より迫の村役場まで入りまして、吉野川上流のはんらんによる各種被害の実情を視察、地元民より強い要望を受けた後、吉野町に戻り、町立柴橋中学校の被害状況を視察、五条市に至りました。また他の一班は、吉野町より吉野川流域のはんらんによる被害状態を吉野郡下市町、立石地区、才谷地区等で視察しつつ五条市に至り、五条市においては市長、関係者より説明を聴取するとともに市内の水害状況、河川堤防の決壊状態を視察、これにて奈良県の日程を終了して和歌山県に入り、橋本市に至りました。正午過ぎ同市役所に至り、市長及び伊都郡関係町村長より説明を聴取、終わって橋本市内橋本中学校の被災状況及び市内紀ノ川護岸の決壊個所を視察し、紀ノ川流域に沿って和歌山へ向かいましたが、途中高野口町、かつらぎ町の随所において紀ノ川流域のはんらんによる被災状況を視察、また那賀町役場においては那賀郡関係者よりそれぞれ被害状況並びに要望を聴取、那賀町より紀ノ川流域の被災個所を順次視察し、夕刻和歌山に到着いたしました。同市宿舎においては和歌山県知事より県下災害の概況の説明及び要望を聴取、次いで県各部長より民生、衛生、商工、農林水産、文教関係についての被害状況について詳細な説明があり、また各種の要望が述べられました。 かくして翌十二日朝和歌山より大阪に出て、同日夕刻無事帰京いたした次第でありまして、私どもといたしましては限られた日程内において出来る限り現地の実情をつぶさに視察するとともに、罹災者の方々を衷心より御慰問申し上げて参った次第であります。 次に三重、奈良、和歌山王県における文教関係の被害状況を申し上げ、あわせて所感の一端を述べさせていただきます。 三重県下における教育関係の災害は去る二十八年の十三号台風をはるかに凌駕するものでありまして、児童生徒の死亡二百五十二人、行方不明二十七名、重軽傷者三千六百三十三名、家屋の流失、埋没、全壊三千二百九十八名、その他半壊、浸水等罹災児童生徒総数は五万八千四十七名に、教職員家屋の流失、全壊、百十五、その他半壊浸水等の罹災者教職員は五百五十九名であり、また施設関係の被害は県下一円の各校にわたり、ことに校舎備品の被害甚大とみなされるもの小中あわせて七十三校、高等学校七校、ろう学校、公民館等その被害総額は実に約九億円に達し、このほか文化財の損傷は二十五カ所に及んでおります。三重県当局においてはこの事態に対しまして、各学校の授業再開についてはその実情に応じ二部、三部授業による授業計画を樹立させ、必要最小限度の応急工事を施行し、または仮校舎等の使用により早急に授業を再開するよう指導いたしており、特に災害の大なる木曽岬村、長島町、伊曽島村の六校については鈴鹿市、津市、伊勢市へ集団避難を実施し、学校単位に編成し、教育再開の態勢をとりつつある実情であり、その結果今日においては平常通り授業を実施の学校は六百五十二校に達しましたが、他面休業中のものは小学校十一、中学校四、高等学校二、計十七校、分散授業の小学校五校、二部授業の小学校三校もある実情であります。 また罹災児童の流失教科書用品の補給については、必要教科書の種類、冊数を早急に調査し、中央教科書供給所よりの補給により授業態勢の早急確立に努力しており、流失、汚損した給食用ミルク及び小麦粉の補償並びに被害甚大な地域の児童生徒に対するミルクの無償配給等についてもその実情を調査し、実現に努力するとともに学校給食実施可能の被災学校に対して特に衛生管理に留意するよう指導いたしております。また罹災教職員については公立学校共済組合より災害見舞金の給付を行ない、児童生徒の災害による犠牲者に対しては学校安全会よりそれぞれ弔慰金を贈ることにいたしており、高等学校の罹災生徒に対しては、災害による授業料の減免及び徴収猶予条例を適用し、就学を容易ならしめるよう調査中であります。 以上の如く県当局はその応急対策に全力を傾注いたしておりますが、県並びに市町村財政は二十八年災の跡始末すら完了していない実情であり、かかる大災害の復旧を緊急に実施するために、二十八年災の特例法を上まわる内容の特別立法を強く要望いたしております。すなわち 一、補助率を十分の九に引き上げる。 二、改良復旧を災害復旧として認める。すなわち全壊校舎の復旧は鉄筋とする。 三、取り片づけ費、応急仮校舎の建築費等の応急対策費を災害復旧の補助対象とする。四、建物、土地、工作物、設備のおのおのの災害査定採択基準を県立五万円、市町村立三万円にし、現行の一カ所県立十五万円、市町村立十万円のワクは合計額のワクとすること。 次に、奈良、和歌山両県の学校関係の被害は、奈良県において、県立学校二十一カ所、市町村立学校百十五カ所で、被害総額約七千八百万円、和歌山県において、県立学校二十七校、市町村立学校七十五校、学校施設関係で六千五百万円、社会教育施設関係六百万円、その他教科書、給食関係で合計約七千百六十万円でありまして、被害金額の絶対額においては、三重県に比してはるかに少額でありますが、実質的な関係当局の財政負担は両県とも三重県に劣らぬものがあろうと勘案されます。従いまして要望事項として奈良県においては災害復旧事業に対して二十八年災の特例に準じて国庫負担率の引き上げ、及び災害査定採択基準を一カ所県十万円、市町村五万円に緩和するよう特別立法の措置を、また和歌山県においては、打ち続く災害のため逼迫している地方財政に見合うよう災害国庫負担率の引き上げ及び現行災害査定採択基準以下の小被害のものについても、負担対象となるよう措置されたい旨を、強く私どもに陳情いたしております。 三県のこれら被害の実情を、つぶさに視察いたしました私どもといたしましては、一刻も早くこれら災害の復旧を実施し、さらに今後かかる災害を繰り返さないために、思い切って強力なる対策をとることが緊要であると認めて参りました。その後政府当局においてもこれ等の被害地方の実情に沿い、以上のごとき地方の要望を入れて適切な措置が講ぜられつつあることを認むるのでありますが、実に甚大なるこのたびの惨害の救済と、かような災害を再び繰り返すことのないよう遺憾なき措置を講ぜられますことを要望いたしまして、視察報告を終ります。
○稻葉委員長代理 次に長谷川保君。
○長谷川(保)委員 七号台風被害並びに水害状況等調査のため、第五班として派遣されました山梨、長野両県下の状況について御報告いたします。 私どもは文教、社会労働、建設、農林水産、商工の各委員が参加し、連合調査班を組織して、去る十月十一日から三日間にわたり、被害地をつぶさに視察いたしましたが、山梨、長野の両県は去る八月十四日の七号台風で文字通り未曽有の大災害を受け、全県あげて復旧の途上、再び十五号によって追い打ちをかけられ、その被害も巨額に上り、復興については深刻なるものがありました。すなわち山梨県では七号台風の被害額三百十余億円に加えて十五号台風は百億円の被害を与え、雨量三百五十ミリ、風速三十七メートルの強風と豪雨七時間の強襲は一カ月の間に築き上げた一切の応急復旧工事を一瞬にして水泡に帰したのであります。 また長野県では、七号台風に続き、降ひょうの被害、さらに十五号台風と矢つぎばやのきびしい被災を受け、同県の被害総額は三百五十億円余の巨額に達しております。 私どもは日程の許す限り多く被災地を歩き実情を調査いたしましたが、第一日は山梨県下を視察いたしました。 同県の被害のうち特に目立つものは、果樹の被害がはなはだしく、リンゴの成木が根こそぎ倒され、特産のブドウ園も見る影もなく打ちのめされている惨状は、目をおおうものがありました。陳情の町村長の中には涙を浮かべて窮状を訴え、また被災農地の政府買い上げを強く要望する村民もあり、政府の適切、迅速な措置を要望する声が強く感じられました。また韮崎市では、釜無川の決壊で流域二百町歩の耕地が全滅したばかりでなく、押し出された土砂と大石の荒野と変わり、農民はどこから手をつけてよいのかぼう然自失の状態におかれていました。今回の災害は異常な風速と豪雨によることは論を待ちませんが、各河川の決壊による被害は、治山治水の根本対策について再検討を加えるべきことを強く示しています。 第二日は長野県に参り、伊那、飯田、泰阜、塩尻地方の被災地を視察いたしましたが、同県も七号台風の洗礼を受け、直後いまだ十分な復旧を見ないうちに十五号の災害に遭遇したわけですが、この台風では山間僻地の貧しい農家が多く被害を受け、強風にあおられて家屋の被害が全県各地に出ております。全壊二千五百金戸、半壊一万二千余戸に達しております。 この日私どもは全行程三百キロ近く砂塵をあびて走り廻りましたが、視察予定に入っていなかった千代村では被災農民代表が私どもの車をさえぎって、被災個所に案内して、その窮状を訴えるなど、被災者は筆舌に尽せない苦労を重ねていることが察せられました。 第三日は、豊科をふり出しに穂高、松川、大町と視察しましたが、松川村では乳川の堤防八カ所六百メートル、中房川三カ所二百メートル、高瀬川五カ所四百メートル、芦間川に至っては全面的に河床が上がり、下流三百メートルは押し出された土砂のため、農地と同位の高さになるという危険な状態に置かれていました。ことに気の毒なのは、終戦後入植した外地引き揚げの開拓地で、昔から山ろく偏状台地で不毛の土地として顧みられなかったところに十余年粒々辛苦してようやく収穫を見るに至り、本年は非常な豊作であったのに両台風によって壊滅的な被害を受け、耕地も押し出された土砂による荒野となり、残されたものは投入した借財だけという惨たんなる実情でありました。 以上両県の災害の概況を申し上げましたが、次に文教関係の被害について申し上げますと、山梨県では小学校の被害二百十二、中学百十一、高校二十一、特殊学校二、公民館二十五、善光寺等重要文化財となっておりますが、これらは全壊あるいは大破して危険な状態に置かれていました。被害総額は二億三千七百万円近くに上り、現在二千名の生徒が分散授業を受けている状態であります。 また長野県では、小学校の被害四百七十五校、中学校百九十九校、高等学校四十五校、幼稚園三園、図書館、公民館十一、教員住宅三十一戸、教員保養所一、県営運動場一、となっており、これらは、山梨県同様全壊あるいは大破し危険な状態に置かれており被害額は二億余円となっております。なお文教関係の要望事項は次の通りであります。 一、公立学校施設の災害復旧費について国庫負担率の引き上げと早期交付をはかられたい。 起債のワクを十分にしてほしい。復旧事業だから財務局が文句を言わないようにしてほしい。 一、改良復旧を認め、校舎は地元の要求があれば必ず鉄筋コンクリート建にしてほしい。河畔の危険地区にある学校の敷地は安全な地区に移転することとし、新敷地の購入費を補助してほしい。 一、公民館等の災害復旧費の国庫補助を願いたい。 一、重要文化財の被害がはなはだしい、復旧修理をすみやかにし、予算を十分につけてほしい。 一、災害甚大のため長期にわたり給食代金支払い不能の保護者が多数出てくる見込みにつき、要保護、準要保護児童、生徒の学校給食経費について国庫補助率の引き上げ大幅増額をはかられたい。 一、家庭が壊滅的打撃を受け、このままでは学業を中止しなければならない学生が多いから、被災学生に対する特別奨学、一般貸与奨学資金のワクを大幅に拡大し、さらに国公立のみみならず私立学校等の授業料免除をなし得る措置を講ぜられたい。またこれらの措置は少なくとも向こう二、三年間継続されたい。 等々でありました。 以上御報告申し上げます。
○稻葉委員長代理 以上で災害調査の報告を終ります。 ————◇—————
○稻葉委員長代理 櫻井奎夫君。
○櫻井委員 文部省に要求いたしたいわけでございます。 ただいま三十五年度予算の各省の要求がなされておると思うのでありますが、文部省はどのような要求をして、どのような折衝段階にあるかということを調査するため、一つ資料を次の委員会に提出をいたされるように準備をお願いしたい。以上であります。
○齋藤(正)政府委員 そのようにいたします。
○稻葉委員長代理 それでは本日はこの程度とし、次会は来たる十一月二十五日午前十時から開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時二十六分散会