農林水産委員会 第8号
- 発言数
- 163 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/12/02
会議録
○吉川委員長 これより会議を開きます。 農林水産業の振興に関する件につきまして調査を進めます。 水俣湾における漁業問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。 川村継義君。
○川村委員 熊本の水俣市で発生しましたおそるべき病気の問題に関しては、当委員会初め各省のいろいろ御配慮をわずらわしておるわけでありますが、これらの問題に対する原因の早期究明、あるいは現在苦境のどん底に落ちておる各水産業者及び病気をしておる者等のまことに悲しむべき悲惨な状況を救済するということは、これは当然考えねばならないところの重大な問題であると考えられるのでありまして、私はしばらく時間をいただきまして数点について当局の見解等をお聞きしておきたいと思います。 いろいろ申し上げたいことはありますけれども、現状については各関係省ともよく御存じのことでありますので、それらは一応省くことにいたしまして、まず第一に、何としても、この病気を究明するについては、その原因がどういうことによってきておるかということを究明することが最も必要なことでありますし、この原因究明の問題、あるいは、先ほど申し上げましたように、水産業者あるいは水産業等の立場からどういうような対策を打ち立てていったらよろしいか、そういう問題についてお聞きをしておきたいと思います。 第一に、厚生省の局長がお見えになっておるようでありますのでお聞きしたいと思いますが、先月の十二日に食品調査会の水俣食中毒部会の方からの報告に基づいて調査会の答申が出され、水俣食中毒部会は解散をいたしました、このいきさつ及びその理由をまずお聞きいたしたいと思います。この前の連合審査のときに八田委員からのいろいろな御質疑によって大体了解いたしましたけれども、まだ少々私不明なところがございますので、まずその点を初めにお聞かせおき願いたいと思います。
○聖成説明員 ただいま川村先生から御質問のように、かねて、厚生省といたしましては、本病の原因が水俣並びにその周辺に生息いたしておりまする魚介類を多量に摂食することによって起こる病気であるということが明らかでございましたが、その原因物質は一体何であるかということにつきまして、食品衛生調査会の中に昨年来水俣病特別部会を設けまして、熊本大学前学長の鰐渕博士を中心にいたしましていろいろ御研究を願って参ったわけであります。 〔委員長退席、田口委員長代理着席〕仰せの通り、先月の十二日に、その前に十月の六日にも一度やったのでございますが、重ねて十一月十二日に、鰐渕部会長の御上京を願いまして、食品衛生調査会の阿部委員長以下常任委員の方々にお集まり願いまして、そこで現地部会における研究成果の御報告を願ったわけであります。常任委員会におきまして、権威者の方々によっていろいろ詳細に検討が行なわれまして、水俣特別部会における原因物質はある種の有機水銀の化合物であるという結論が満場一致で承認になったわけであります。これによりまして、従来魚介類中に含まれておる何ものが原因であるか不明でありましたものが明らかになったのでありまして、今後の研究課題は、当然、しからばどのような経路を経て通常には魚介類が体内に持っていない以上の多量の有機水銀化合物が魚介類の体内に入ってきたかということに今後の原因究明は進めていかれなければならない。しかしながら、この問題は非常にむずかしい問題である、単に医学や薬学を中心といたします食品衛生調査会だけではとうていそれはできないということから、その常任委員会において、食品衛生調査会としては魚介類中の有機水銀化合物が原因であるということを断定したことによって一応の食品衛生調査会としての任務は終了したということが委員長によりましてきめられたのでございます。しかし、これで今後厚生省がこれから先の原因究明に協力しないということではないわけでありまして、今後の問題は、いろいろ多角的に、行政的には水産庁あるいはまた通産省あるいは経済企画庁等の総合的な御協力を願わなければ、厚生省なりあるいは医学だけの立場からはこの究明はむずかしいということで、食品衛生調査会の水俣病特別部会は解散いたしました。今後は各省一体になりまして最後の原因追及に当たる、こういうような考え方でございます。
○川村委員 常任委員会が、水俣病について、主として中枢神経系統の障害による中毒性疾患である、その主因をなすものはある種の有機水銀化合物であるというようなことで、その理由として八項目あげられて答申をされたことは、よくお聞きいたしております。私は、いわば厚生省の調査会が医学的立場でこのことを御発表になったことについてとやかく申し上げるわけでありません。また、今局長から今後の考え方についてもお話しいただきましたが、それを決してとやかく言うわけでございませんで、そうあってもらわねばならないと思っております。ただ、この皆さん方の答申で中毒部会が解散をされたということについて、なるたけ早く原因を一つ究明してもらいたいと熱願をいたしておりますわれわれ及び地元民の立場から申しますと、中毒部会を解散なさらなくても、もっともっとしっかり一つ研究してもらった方がよかったのじゃないかというような気持はぬぐい去られないわけなんです。そこで、今も局長のお話にもありましたように、実は十月六日に中間報告がなされておる。ところが、そのときには、いわゆる発表の段階でないということで、結論が出ていなかったと聞いております。越えて十一月に入りまして十二日、約一カ月ばかりになるわけでありますが、その段階において、しかもその間においては国会の調査団の方々によって現地に各種の角度からの調査が行なわれて、そのあとで答申がなされて発表という段階に立ち至った。その点について、私はもうちょっとそのいきさつをお聞きしたいのです。ということは、ちょうど十月二十二日だったと思いますが、本委員会においていろいろとそれらの問題について究明いたしましたときに、おたくの説明員の方が私の質問に対してこう答えておられます。「この十月六日の報告は、いろいろ席上検討がなされたのでありますが、疑義がございますので、その疑義を現在国立の衛生試験所で追及しておりますので、まだ公表の段階ではございません。」、そこで、私が、一体その疑義というのはどういう点かとお聞きしてみますと、これについて説明員の方が、「水銀が原因であるということを解明いたしますためには、もしもかりに工場排水中の水銀が原因であるとするならば、次の点が明らかにされなければならないわけでございます。その第一点は工場排水中に、第二点は港湾泥土中に、第三点は魚介類の体内中に、第四点は患者ないしは病気にかかりましたネコから直接にその水銀なるものが証明されなければならないわけであります。工場排水についての調査は、いまだ例数が十分ではございません。また、水銀と申しましても、出所は必ずしも工場排水とは限らない。つまり、水銀鉱脈のあるところでございますとか、あるいは農薬の関係、そういう関係でもって、本銀の出所はほかにも出所が考えられるわけでございます。」、こういう趣旨で説明をして下さったのであります。そこで、十月二十二日にこのような答弁をいただいて、その後に引き続いて十一月初めに調査団の現地調査があり、そして十一月十二日に今局長が言われたような結論が発表された、こういうことでございますからして、その間わずかに十日ばかり。その間に、いわゆる発表できるという段階に立ち至った、結論が出るに立ち至った。その十日ばかりの間にどのような研究がなされたのか。あるいは、国立衛生試験所等の結論がそこまで進展してきて発表段階に至ったのか、あるいは、食品衛生調査会の方々の数回の会合によってその十日間ばかりの間に十分検討された後の結果であるのか、調査会は一体その十日間に何回お開きになったのか、その辺のところをもうちょっと明らかにしていただきたいと思うのです。
○聖成説明員 十月六日に食品衛生調査会の常任委員会を開きまして鰐渕部会長に御報告を願ったことは、先ほど申し上げた通り事実でございまして、その際に調査会の常任委員の方々が最も理解し得なかった最大の問題は、病人の臨床的な所見にあったわけであります。そこで、そのときすでに、来月もう一度常任委員会を開く、そのときには水俣病患者を多数みられた臨床の方を帯同してこられるというようなことについて、十月六日の常任委員会の際に来月の十日前後に重ねて常任委員会を開こうということがきまっておったのであります。その間に、衆議院の方から先生方が現地調査にお出かけになるとか、いろいろな事態の発展があったわけでありますけれども、これは全く偶然でございまして、十月六日のときに、来月十日前後ということがすでにきまっておったわけであります。従いまして、十二日の常任委員会の際には、徳臣という熊本大学の内科の助教授を鰐渕部会長が帯同されまして、この徳臣助教授から詳細に水俣病の臨床的な所見についての説明があったわけでございます。特に、その理由の第一にあげられております、運動失調あるいは中枢視野狭窄、知覚障害、この三障害が有機水銀化合物の中毒の場合に最も定型的に現われるということが内外の成書に記載されておるわけでありますが、実に水俣病の患者の場合には九〇%程度の発現率をもちましてこの主症状が現われてくるといった点が、十月の常任委員会では明確な御説明がなかったわけであります。十月十二日の際にはかような点が明らかになりまして、多数の患者を扱った臨床の方がお見えになりましたことによって、脳の中枢神経をかようにひどく侵す物質は重金属化合物以外には考えられない、これも医学的な常識でございますが、その重金属化合物の中の一体何ものであるかということにつきまして、たとえば、かつて言われましたマンガンの場合にはこういう症状が現われる、あるいは有機水銀の場合にはこういう症状が現われるということが詳細に鑑別されまして、なるほどこれは臨床的には明瞭であるということで、これが決定的になりました。前回の十月六日の場合には、そういう点が明確でなかったために、常任委員会の意見の一致を見ることができなかったのであります。 さようないきさつでございまして、決して内外の情勢の変化に伴って無理に発表を急いだというような事実は全くございません。常任委員会に出席されました委員の方々は全員が賛成されまして、全員が異議なく、ただ、有機水銀化合物の何ものであるかというようなことはまだわからないけれども、ある種の有機水銀化合物であることには間違いないという断定が下されたわけであります。
○川村委員 十月二十二日の当委員会であなたの方の説明員の方々がいろいろお話し下さった答弁によると、問題の解明はまだ何もない。ただし、今のお話によると、十月六日のときには最後の結論に到達する段階でなかったが、十一月の十二日、特に熊本大学の臨床関係のお医者さん方が来られて、そこでいろいろ研究をしてその結論に到達した、こういうことであります。われわれがその発表を聞いて第一に考えましたことは、これは大へん悪い言い方ですけれども、先ほど申し上げましたように、皆さん方が中心になって一日も早く原因を確かめてもらいたい、こういう熱意を持っておる気持からいたしますと、厚生省が、どうもこの原因というものはなかなかわかりそうにない、これを見つけるには大へんひまどるに違いない、このままほうっておけば、厚生省はいつまでぼやぼやしておるかというようなほかからのいろいろ攻撃を受ける、大へんだ、もうこういうようなことはごめんだ、とにかくある種の有機水銀であるということが病理的にはわかったんだから、これで一つ発表をして重荷をおろそうじゃないか、こういうことでやられたんじゃなかろうかと疑ったわけです。だから、原因をなるだけ早く一つ見つけてもらいたいと念願しておるわれわれからすると、大へんなことであったと私は感じたわけです。皆さん方の発表そのものをとやかく言うわけではありません。しかし、そういう点から考えると、厚生省はもう少しそのことをお考え下さる余地はなかったか。特に、これから経済企画庁が中心になってやって下さるというのですから、経済企画庁にも私は今の気持をお伝えしたい。そして、今後の研究についてそういう気持で取り組んでもらいたい、そんな気持でお尋ねをしておるわけであります。 ちょうど前の橋本さんが大臣をしておられたときだったと思いますが、そのときは局長は山口さんだったと思う。このときに実はこの問題でいろいろわれわれ御相談いたしたときに、この問題は厚生省だけではやれない、厚生省は病人が中心になるからやれません、こういうお話でありました。ところが、だんだん御相談を申し上げておりますと、そのときには、わかりました、とにかく厚生省が中心になって各関係の方々と御相談をして、水産関係あるいは海洋関係、工場関係、皆さん方協力してこの原因は究明いたしますということで実はお約束していただいて、中毒部会も作ってもらうし、また大へん御苦心願って予備費からの研究費等も出してもらった。あのときの厚生省がとっていただいたところの考え方と、今皆さん方がこの時期にこの結論を発表されたということとは、何かちょっとちぐはぐな受け取り方をせざるを得ないのです。しかも、今度の発表によって、はたして成果があったかというと、どうもよくわからない。皆さん方の方の病気に対する一つの結論というものは出ましたけれども、皆さん方の発表というものは、漁業者にあるいは病人に非常に大きな波紋を今日描いた、これは御承知でございましょう。そういうことを思うと、少し考えていただくべきことじゃなかったろうかと思わざるを得ないのであります。 そこで、局長もお聞きになったと思うのですが、この前の連合審査会のときに八田委員からもちょっと触れられましたが、現地の報告によりますと、今中心になって研究に当たって下さっておる熊本大学の鰐渕元学長、この方がこういうことを言っておられる。鰐渕さんが非常に不満であるという見出しでこういうことを報じております。つまり、ことしの一月に水俣病中毒部会が発足したときに、われわれは海中の泥土の検査・分析や海流の調査なども研究範囲に入るものと思っていたが、さきの食品衛生調査会常任委員会で、厚生省の仕事は病気の原因と治療に限定されることになり、原因を有機水銀と結論づけて部会は解散された、つまり漁介類や漁業権の問題は水産庁で、新日窒水俣工場と無機水銀の関係は通産省の仕事だというわけで、部会としてはまだやるべき仕事が残っていたのに、このような各省のなわ張り争いで部会が解散させられるのは遺憾に思う、それから無機水銀が魚介類の体内で有機化するプロセスは水産庁が究明に乗り出すそうだが、われわれも研究を続けている、すでに化学的実証の段階にあり、水産庁よりも早く結論が出るかもしれない、こういうような意見を述べて、とにかく、「研究はばむなわ張り争い、鰐渕氏不満を漏らす」というようなことで現地は報じておる。そうなりますと、やはり、この問題は、先ほど私るる申し上げましたように、あくまでもこの大学の研究陣を厚生省がバック・アップしてもらって、いや、うんと指導してもらって、そうしてこういう段階に至っておる研究陣に大いに研究の体制を整えさせて、早期に原因を究明して下さるということが賢明じゃなかったか、こう思わざるを得ないのですね。それがこの皆さん方の発表に至りましたその段階を聞いて一つ感じたことであるし、この後経済企画庁が中心になって早期究明して下さるというならば、やはりそういうような熱意を持っておやり願わねばならぬ、こういうことを考えているわけです。 先ほど申し上げますように、この原因発表ということについて、漁業者及び病人に非常に大きな波紋を与えておりまして、現地のこの調停というのが実にむずかしい問題が出ておる。これは皆さん方の発表が直接原因になったとは申しません。しかし、それ見たことか、工場の廃棄であった、こういうように一般はもう受け取ってしまったんですね。従って、この後これに対して水産庁あるいは工場を指導しておられるところの通産省の皆さん方の対策というのも早急に手を打ってもらわなければ、実に大問題になる、こういうふうに考えておるわけです。実は、私は、今この大学の元学長が言っているように、非常に原因究明に近い段階に来ているというんですから、実は厚生省が中心になってやってもらいたいと思っておりましたが、もう今それを皆さん方に要求してもだめで、あとは企画庁が大体中心になってやって下さるそうですから、この際経済企画庁の方にお尋ねいたしますが、この原因究明あるいはその他の問題について、この前お話しいただきましたことより以上にもう少し具体的にこの際一つお聞かせおき願いたいと思います。
○大堀政府委員 ただいま御指摘の問題につきまして、前回当委員会において御説明申し上げました通り、実は従来厚生省を中心に調査が進められて参りましたが、本件の調査については、総合的見地から、さらに各省協力して、また有機的連係をとって調査を進めなければならぬということで、厚生省、水産庁、通産省、各省もそういう切なる要望をしておりましたので、先週、企画庁といたしました、今後各省の連絡協議会において各省緊密な連絡協調を保って調査をやっていこうということに決定をいたしたわけでございます。先般も申し上げましたように、企画庁がやるということになりますと、企画庁にげたを預けてこれでいくんだというふうな気分になりますと、実は私ども非常に本来の趣旨と違うと考えますので、今後やはり各省がそれぞれの分担に応じて今まで以上に調査をやっていただくという話し合いのもとに、調整連絡の仕事を私どもが仰せつかる、こういう了解でやって参りたいと考えております。 担当といたしましては、主として人体関係のことは厚生省、魚介類、それから微生物関係、水産関係、そういったものは農林省、水質、泥の関係、この調査の関係は企画庁が当たる、工場排水のデータ等につきましては通産省と、こまかくきめておりますが、大体の線を申し上げますと、そういうことで分担をして、そうして緊密な連絡をとって調査を進める、こういうふうにやって参りたいと考えております。
○松田(鐵)委員 ちょっと関連質問。 私どもが調査に行ってから、各省と協議を開いた。現地においては、今川村委員からお話があったように、熊本大学というものはこれまで一生懸命やっておるし、工場もこれに対して協力しようじゃないかということだった。各省々々の分担はあるけれども、熊本大学というものがああした熱心にやっており、医学上においても、また科学上においても、どういう点から言ってもあれを中心としてやっていこうということであったのじゃなかろうかと私は思うのですがね。それを踏み違えて、東京でばかり何もかにもやるということは、僕はいけないと思っているのですが、あのときの話し合いはどういうことだったのですかね。僕は、とにもかくにもあれだけ熱心に乏しい予算の中で努力しておる熊本大学というものが真剣に打ち込んでいるのだから、それを中心として、各省が自分の関係のものはたくさんあるけれども、それを企画庁が今のような心配があるからそこに入って、そうして各省との連絡協議会なり調査会なり開いて、そうしてやっていかなければならないのだという建前で進もうということであったと思っておったのですが、それはどうなっているのですか。今の話だとゆがめられているような感じがするのですが、この点はどうなんですか。
○聖成説明員 先ほど川村先生からお話があり、ただいままた松田先生からお話がございましたが、まずもって、先ほどの川村先生のお話でございますが、私どもも、先ほど先生がお話しになりました新聞の報道を承知いたして実はびっくりいたしたのであります。と申しまするのは、十二日に食品衛生常任委員会が開かれ、鰐渕先生御上京の際に、委員長と鰐渕先生と私と三人でいろいろ御相談申し上げたのであります。その際に、鰐淵先生からも、きょうの結論が認められたら食品衛生調査会のこの特別部会は解散した方がいい、こういう御意見がございました。そして、鰐淵先生の御賛成を得て委員長がきめられたことなんであります。ただ、その際、今後の研究は、——従来から水産魚介類による中毒というものは非常に多いのでございますけれども、そのほとんど全部が迷宮入りなんです。有名な事件といたしましては、昭和十七年に浜名湖でアサリの中毒がありまして、百名近い方がなくなるというような大事件がございました。これは場所が非常に局部的な場所でございますが、その後戦後に至りましてようやく原因物質が明らかになりまして、これも水産関係も医学関係も総力をあげて研究に当たったものなのであります。それで、原因物質は明らかになっておりますけれども、現在に至りましても、どうしてあの場所のアサリがこういう毒物を体内に保有するに至ったかということはいまだにわからない。あるいは四、五年前に日本海のイカでだいぶ中毒事件が起こりました。これもやはり、一体イカの何が悪かったのかということがわからない。いまだに、そういった工合に、従来から水産魚介類による中毒というものは非常に多いのでございますけれども、最終的な原因究明はできないわけでございます。今回の場合も、ここで或る種の有機水銀化合物ということを食品衛生調査会で結論を出しましたけれども、これから先の原因究明というものはなかなかむずかしい問題であるということは、もう鰐渕先生も、皆が認めているわけでございます。従って、食品衛生調査会だけでは責任が持てないということは調査会の先生方の御意見であります。しかし、鰐淵先生はこう言っておられます。今後水産関係、通産関係の総合的な研究が必要である、その際には熊本大学としては公衆衛生学の教授と医化学の教授を参加させるつもりだ、この二人が、——その原因物質は何ものであるか、ある種の有機水銀化合物というものは一体何であるかということについては医化学の内田教授が責任を持って追及しておる、それから、海底の泥土その他そういったような問題については公衆衛生の喜田村教授が研究を続けておる、従って、この両先生を新しくできた研究班にぜひとも加えてほしいという御要望がありまして、私どもはそういう考え方でおるわけでございます。従いまして、ただいま松田先生のおっしゃいました、熊本大学の研究もせっかく熱意を持ってやっていただいているのにこれで打ち切るという考えは毛頭ございません。先ほど来るる申し上げますように、魚介類の最終的な原因究明というものは非常にむずかしいからかような措置をとったので、それで、経済企画庁に音頭をとっていただいて、各省協力態勢を緊密にいたしまして、そうして最後の研究にかかる。 先ほど川村先生から、なぜこういう発表をしたかといういろいろ御意見がございましたが、要するに、魚介類が原因であったということは何人も疑っていない。魚介類は一体何ものであるかということについて、これは結論が出たならば一日も早く発表すべきものだと私どもは信念を持っております。発表の前には大臣の御意見を伺いまして、ここでこれは発表した方がいい、こういう大臣の御裁断を仰ぎましてやっておる次第でございます。 さよう御了承願います。 〔田口委員長代理退席、委員長着席〕
○川村委員 お話はよくわかります。しかし、そうお話しになれば、もう一つお聞きしなければならぬと思うのですが、これはわれわれしろうとから見た場合の考え方ですから、あるいは皆さん方のお気持とはぴったりしないかもしれぬけれども、かりに魚介類を摂取する、その中にあるとにかく金属性のものが病気を起こす、こういうことでありますから、その限りにおいて病理的な立場から御発表なさった、このことについてわれわれはとやかく言うわけではございません。ただ、今松田先生からお話がありましたように、現地の研究陣が今まで一生懸命取り組んできておる。今あなたのお話を聞くと、それを決して捨てるのじゃない、これはわかります。そうしていただかなければならぬ。今度企画庁に音頭をとってもらってやるのだ、万全を期するのだ、その気持もわかります。ところが、せっかく皆さん方が中心になってやってこられたのだから、今度水産学の立場、海洋学の立場ということから研究が必要になれば、やはり皆さん方の研究陣をもっと固めておいて、強力に水産庁関係、通産省関係のまたスタッフを加えて研究を強化して早期に発見するという考え方も成り立つのじゃないか、こう私は申し上げたいのです。大へん変な例をあげるようですけれども、たとえば、われわれが寄生虫を持っておる、腸内にサナダ虫が入っておるという場合、このサナダ虫は牛の体内にあるところの幼虫をなま肉と一緒に食ったからこうなったのだ、こういうことをわれわれは聞いたことがありますが、そのときに、牛の体内にある幼虫がどうして一体牛の体内に入ってくるかわからぬから、これは畜産学の方でやってくれ、こういうようなことはまさか私はあり得ないのじゃないかと思うのです。もちろん物質そのものは違いますけれども、考え方としてはそういう考え方も成り立つのじゃないか。サナダ虫がからだを衰えさせておる原因だった、しかしそれは牛の体内にあるところの幼虫が入ってくるのだ、だから牛の体内にある幼虫は一体どういう経路で入ってくるか、それをわれわれの方で研究する必要はないから、畜産学の方でやってくれ、こういう考え方に、例は悪いのですけれども、そういうことにもなるのじゃないか。今度の場合も、せっかくあそこまで研究陣が突き詰めていったのだから、あと水産庁関係、通産省関係の技術陣をこれに投入して、御苦労だけれども皆さんがやって下さるならば、もっと早かったのじゃないか、こういうことも思っておるわけです。 これは大蔵省にちょっとお尋ねいたしますが、これは私が非常に邪気を持って言うようですけれども、厚生省を責めるわけではありません。やはり、この病気が非常におそろしものである、大問題であるということはお考えになっておると思う。これについて、いろいろ研究費であるとか、皆さん方にこれまで要求された。ところが、なかなか出してもらえない。昨年度非常に強力なる話し合いの上でようやく研究委託費という形で百万出してもらった。あの百万出してもらうのにも、おそらく、厚生省関係の人は、当時の責任者であった局長や大臣も相当苦労して下さったと思う。そういう点を考えると、やはり、大蔵省の方々は、認識がないとは言いませんけれども、金の出し方というものについて非常に強固なものがある。あるいは、邪気を持って言うと、もうこういうものを大蔵省にいろいろやるのはやっかいきわまる、大蔵省が出してくれぬのじゃないか、そういう重荷を感じてああいうような形になっていったのではなかろうかと思わざるを得ないのですよ。おそらく大蔵省はそういうことはないと思うのですが、この大問題である病気のよって来たるところと現状における悲惨な状況をよく認識していただいて、これについて各関係省のその対策に十分一つ資金的に協力して下さるところのお考えはあるでしょうね。その点ちょっと聞かしてくれませんか。
○奥村政府委員 大蔵省の方として、ただいまの非常に困った重大な問題の調査について予算的に十分協力しろ、こういうお話でありまして、御趣旨ごもっともでありますが、今年度予算には百万ほどつけてあります。そのほか、病気の治療その他についても別につけてあります。これをあまり始末をし過ぎると厚生省も調査が十分できぬじゃないか、こういうことですが、そういうことのないように十分注意いたしたいと思います。御承知の通り、予備費がございますから、年度当初にきまった予算でどうしても足りない——調査のことですから、いろいろその経過においてなお一段と調査を拡充する必要があっても予算が足りないということであれば、予備費も支出できますので、失礼ですが、厚生省の方もあまりいじけずにどんどん大蔵省に折衝していただきたいと思います。
○赤路委員 関連して……。 今そういうことを言っている段階じゃないのですよ。足らぬから大蔵省の方にすでに折衝しているはずですよ。九百万円各省関係のやつが出ておるのです。この九百万円は一体のむつもりかのまないのか、それを聞かしてもらいたい。
○奥村政府委員 ただいま政府委員の答弁をお聞きの通り、食品衛生調査会の方は一応の結論を出しまして発展的に解散して、今度は経済企画庁を中心にして、水産庁、通産省、経済企画庁、あらゆる面から総合的に判断して対策を立てようということでありますから、その体制を固めることによってまた新たに予算の要求がある、こういうわけでありますので、ただいまのところは厚生省から具体的な話は出ておりません。
○赤路委員 大堀さんにお尋ねいたしますが、あなたこの前の委員会で九百万と言ったが、大蔵省に全然折衝してないのですか。
○大堀政府委員 予算は各省それぞれの分担に応じて各省から個別に大蔵省の担当のところへ要請いたすことになっておりますが、企画庁といたしましても、これをまとめまして、全体として各省でこういう仕事をやっていく計画であるということで、まとめて大蔵省の主計局の方へ御説明申し上げております。目下検討をいたしておるわけであります。
○奥村政府委員 ちょっと補足して申し上げます。来年度予算につきましては、今の大堀局長の御答弁のように、各省別々にこの問題についての予算の要求は参っております。予備費の要求はまだ参っておらぬ、こういう意味です。
○赤路委員 今の政務次官の答弁、それで各省はいいのですか。これはきょう初めてやっているんじゃないのですよ。この委員会になる前に、われわれ調査団としては、こういうことがあってはならぬというので、前後二回にわたって調査団と各省との打ち合わせ会をやっている。そうして今日に至っておる。いまだにこの予備費の問題においてすらも大蔵省と折衝していないのですか。なぜやっていないんだ、君たちは。少しは現地の実態を考えなさい。もし大蔵政務次官の答弁が場当たりの答弁だとすると、まことにけしからぬ。この点明確にしてもらいたい。折衝しておったのか、していないのか、どうなんだ。
○大堀政府委員 企画庁といたしましては、全体の各省のものをまとめたものを主計局の方へお話いたしてございます。事務的に提出して御説明をいたしております。けさ私伺いましたところが、各省の中では、まだ会計あたりで相談をいたして最終的に大蔵省に出てないところもあるようでございます。しかし、現在すでに交渉に入っておる段階でございます。
○赤路委員 次官はいいから主計官にお尋ねしますが、それでは、今の本年度の——来年度予算じゃないのですよ。本年度のものですね。どことどことから折衝を受けたか、それをお知らせ願いたい。
○岩尾説明員 私、厚生省の担当でございまして、厚生省についてはまだお話は具体的に承っておりません。ほかのものについてはほかの主計官の方に来ておるかどうか……。
○赤路委員 きょう出席しているのは厚生省の主計官だけですね。ほかのはわからないのですね。次官は従ってわかりませんね。
○奥村政府委員 わかりません。
○吉川委員長 赤路君、昨日私が、各省にまたがるので主計局長に出てもらいたいということを申しましたら、主計局長主催の会合があるので出られないから、厚生省担当の主計官で大体全般がわかりますから、政務次官に厚生省担当の主計官をつけて出します、こういう回答であった。ただいま主計官から伺いますと、全般のことをわかっておいでにならないようでございますが、これは私の要請に対して大蔵省非常に誠意がない。はなはだ遺憾でございます。奥村政務次官、特にお帰りになりましたら主計局長にその旨を伝えて十分御注意願いたいと思います。
○川村委員 今次官のお話で、来年度の予算に関してはそれぞれ各省から出ておる。ところが、緊急を要する今年度の費用については、予備費からでも出さねばならぬ。これは出したいという御意向は十分であります。そうすると、各省はそれを見て早急に一つ大蔵省に対してその手はずを立ててもらいたい。これが一つであります。 それから、これはくどくなるようでございますが、大蔵省の方もお聞き願いたいと思いますが、実は現地へ調査に行きましたときに、原因を研究しております大学の方々に、あなた方の方にどれくらい一体今費用があったらば目的を達することができるか、こう聞きましたら、その関係の人がわれわれに一つの見積りの資料をくれた。その資料は六百九十万であります。これはまたえらい少ないが、これで一体研究完成できるか、こう言いましたら、さすがは大学の先生たちでありまして、中を見てみると、実につつましい計上の仕方なんです。これはこの前の委員会でも八田委員の質問及び赤路委員の質問等でお聞きの通りに、現地において研究用のネコを飼うのについて、なかなか手に入らぬから、どうしてもよそから買わなければならぬ。買うためにやはりネコの買い上げ代として一匹二百円要る。それに、どうしても必要なネコを養っていくのにもやはり二千円ぐらいは見込まなければならぬ。そうすると大体四百万ばかりかかるわけですね、研究用のネコのことだけでも。それに魚のことを考えると、相当な費用になるわけです。ところが、大学の先生方が考えておられるのはどういうものがあるのかというと、ネコを飼育する研究用の箱を二つ作りたい、それに二万円だ、あるいは、実験用の動物のネコやらあるいは魚を飼っていくところのそういう実験用の費用として二十一万ほしい、その動物を養っていく飼料代として十二万ほしい、こういうような非常につつましやかな計算をして考えておられる。ところが、実際は今申し上げましたように、ネコを必要な頭数をそろえて実験しようとするには相当の金がかかる。大学の考えておられる六百九十万円というような内容は今申し上げた通りなのであります。こういうような費用が必要でありますし、これはつつましい計算から言ってもこういうことになる。そうなると、やはり、本年度考えられておるという、本年度ぜひ出してもらいたいという企画庁が話しになったところの九百万なんというのは、これは最低の最低の費用でなければならない。そうすると、これはもう当然大蔵省としても十分考えて、いやおうなしに一つ出してもらって、原因究明のための各省への援助を一つしてもらわなければならぬ、私はこのように思うわけです。 この私が申し上げておることは、熊本県の水俣市の一地方に起こった問題でありますけれども、実はやはりわれわれはこれを全国的な問題としてとらえておきたいと思うのです。今水俣にこういう事件が起こったけれども、今日の化学工業の発達等を考えると、もしもその原因があの新日窒工場の排水ということに最後の断が下ったとするならば、今日の化学工業の発達にかんがみて、全国的にこういう事態が起こらぬとも限らぬ。そうなると、そういう視野において早急にこの原因を究明するということがまた最も肝要じゃなかろうか、こう思うのです。こういう問題で漁業水産資源というものは大打撃を受けておる、こういうことは申し上げるまでもない。しかも、今日御承知の通りに自民党の議員提案で臨海工業の問題が出ておる。ああいうものが出て参りますと、こういう病気等に限らず、やはりこれは漁業の振興、水産業という立場から次ぎ次ぎに問題が起こって来るのでありますから、そういうものを合わせてやはり水俣病の原因究明について全力をあげていただきたい、一地方に起こった問題として皆様方がとらえてもらわぬで、やはり全国的の視野においてこの問題をとらえていただいて、そうして原因を早急に究明してもらう、こういうような考え方でやってもらいたいと実は思っておるわけです。 そこで、あといろいろ御質問の方もおりますから次に進みますが、さきに調査団の皆さん方がいろいろと御研究いただいて、「熊本県水俣市周辺におけるいわゆる水俣病に関する資料」というのを出されまして、その中にいろいろどうするかという対策に関する一つの構想が示してあります。これは、この農林水産委員会にも、社会労働委員会にも、それぞれ調査団の方々が報告をしておられる事項でもあるわけであります。その中で、いろいろございますが、まず第一に通産省の諸君にお尋ねいたしますが、とにかく、あの問題を惹起しておる原因は工場排水であろうということは万人が実は見ておる。そうなると、あそこの排水処理その他について何とか万全の措置を講じなければならぬと思うのでありますが、新日窒水俣工場における排水設備の現状、及び通産省として今後どのような指導をされようとしておるのか、これらについて、この調査会が一応発表しておられるところの対策等に基づいて皆さん方の考えを一つお聞かせおき願いたいと思います。
○高田説明員 お答え申し上げます。 通産省といたしましては、現在の水銀につきましては、現地を御調査いただきましたときに見ていただきましたように、とりあえず、水銀に対して鉄粉を入れましてアマルガムのようなものを作って回収する装置を十二月の下旬までには完成させるようにしております。それから、完全な沈澱池につきましては、あれからも会社に対して厳重に早くやるようにということを申しまして、そうして、皆様方の方へも、大体年内には通産省として完成さしたい、こういうふうに申し上げましたが、数日前会社の方から、工事の方も予定以上進んでおるから十二月の二十五日には完成するというふうに回答が出ております。
○川村委員 調査のときに、松田委員から工場に対して、お前たちがこういう状態だからこのような状態に陥ってしまったんだ、原因究明等についても協力が足らぬといって、工場側に対して非常に強く申されました。今日、この原因究明等について、工場の協力態勢ということについて必配ないのかどうか。先ほど私が申し上げました現地の報道によると、鰐淵元学長が、工場の排水等をもらって十分分析、検討するだけのまだあれがない、こう言っておられる。これは非常に問題だと思うのです。これは通産省としてどのように指導しておられるか、その点をあわせてお聞かせ願いたい。
○高田説明員 その点につきましては、今までやはり不十分な点があったことは、私ども現地へ行って認めました。それで、帰りまして、局長名で、今後は大学側の調査に対して全面的に協力するようにというふうな通牒を出しております。それから、ちょうどあれから工場長も上京されましたものですから、局長の方からも、もっと積極的にサンプルを自分の方から提出するようにやれというふうにやっております。 それから、私どもも、現在出ておる排水はどういうふうになっておるかということを、あのあと残りまして、排水をとりまして、今工業試験所に回してその分析をやらしております。
○川村委員 次に水産庁関係にお聞きしますが、御承知の通り、今困っておる漁業者に対する対策、これは当委員会にも調査団から報告されておりますが、漁業者に対してどのような対策をお考えになっておるか、この際いま一度はっきりと聞かせておいてもらいたいと思います。
○高橋説明員 この問題に対します水産庁の対策としては、まず、先ほどから問題になっております研究の問題に対しましては、私どもの持っております研究機関を動員いたしまして協力して参るということに努めたいと思っております。 ただいま御質問の点でございますが、これは、原因の究明に相当の時日を要するだろうという見通しもありますし、従いまして、現在非常に困っております漁民は、この原因のいかんにかかわらず、私どもとしては対策を強力にとって参りたい、このように考えておる次第でございます。まず本年度でございますが、これは沿岸振興に関する若干の予算もございますので、本年度直ちに漁民に対して適当な対策を急速にとりたい、このように考えております。なお、これだけでは不十分でございますので、来年度につきましては、所要の経費を熊本県と十分連絡の上で財務当局に御相談いたしたい、このように考えておる次第でございます。
○川村委員 ただいま、沿岸振興についての予算も少しあるから、本年度について至急にある対策を立てたい、こういうことでありますが、具体的にお話いただけませんか。
○高橋説明員 まず、とりあえずの応急対策でございますが、大体この漁業対策といたしましての考え方には三つほど考えられるのじゃないかと思っております。第一の考え方は、とにかく問題になっております漁場から離れて遠いところで漁業をするという考え方が一つございます。もう一点は、食用でない、だから食べなくても済むような漁業がないかということで、一つの考え方としては、真珠養殖業がございますので、私どもとしては、ただいま時期的に申しまして直ちに手を打つことは不可能でございますけれども、来年度ぜひ真珠養殖業に転換をさせていきたい、このように考えております。第三点は、これは必ずしも漁業対策ではございませんが、やはり、問題になっております若干の漁場につきましては干拓する可能性がないかどうかということも考えて参りまして、半農半漁の漁民のために干拓するということができますれば非常に好都合でございますので、この調査というふうに、三点ぐらいが考えられております。 それで、ただいまの御質問にお答えいたしますと、本年度直ちにとらなければならない対策といたしましては、若干の船に——約二十隻ほどを想定しておりますが、これにつきましては国がその経費の半分を持ち、県が残りの半分を持つという格好で、具体的には対馬方面のイカつりに出していきたい、このような措置を考えておる次第で、この予算の内容につきましても現在大蔵省と折衝しておりますが、大体これは本年度予算の実行の問題でございますので、間違いなく実行できるというふうに考えております。額が最終的にまだ確定しておりませんが、ただいま事務的な了解としては、国で持つ分が百九十五万円程度の金でさしあたりすぐ実行するということを考えておるわけであります。
○川村委員 いろいろ今の点について問題はあると思いますが、何よりも、あの困っておる者を今すぐ救い上げてもらうということが非常に大事と思いますから、足らないところはまた来年ということもありましょうが、強力にやってもらいたいと思います。 お話の中に干拓という問題がありましたが、これは、この前小川課長さんに、あちらの方に干拓地がないかどうかということで行ってもらったと思うのです。特に調査団の松田委員の方からは、あの袋湾は締め切って干拓すべきだという強い意見が出されて、みな賛成されておるわけであります。その結果をお聞きになっておりませんか。どなたか御存じありませんか。
○高橋説明員 これは農地局の担当でございますが、調査をしに行っていただいておりますが、今技術的に検討しておる段階で、まだ結論は水産庁としては聞いておりません。
○川村委員 これは技術的にいろいろ問題はあろうと思いますけれども、早急に実現するように、一つあなたの方からも関係の人に十分話をしていただきたい。 それから、厚生省の方にお聞きしますけれども、いわゆる原因究明については先ほどるる申し上げましたが、そのほかに、今困っているのは病人なんです。調査団の皆さん方が当委員会や社会労働委員会で報告されたことは御存じだと思いますが、それらの点を勘案されて、病人、あるいは病人を出しておる家族、あるいは漁業ができない、魚をとっても売れないというようなまことに気の毒な零細な漁民、そういう者の援護ということについて、何か今早急に具体案を持っておられるかどうか。これは持っていただかなければならぬ当然の問題だと思うのですが、この点一つ具体的にお聞かせ願いたい。
○聖成説明員 患者の問題につきましては、昨年現地の水俣市立病院に特別病棟を建てまして、ここに収容いたしておるわけでありますが、患者の続発にかんがみまして、まずベットが足りなくなりはしないかという心配があるわけであります。この点につきまして熊本県の衛生部長と連絡をとっておりますが、幸いにこの病院は特別病棟のほかにだいぶ空床があるので、それを利用してやるから施設については特に増築する必要はないというふうに聞いております。収容の経費につきましては、生活保護の該当者は生活保護の適用をする、生活保護に該当しない者は昨年来特別措置がとらわれたわけでありますが、この関係の経費につきましては若干不足いたしますので、今次の予備金要求の中に含めて大蔵省に折衝いたそう、かように考えております。 それから、ただいま先生お話しの生活援護の問題につきましては、これは厚生省の社会局の所管になっておりますが、私から社会局長にも連絡をとり、また、主管であります保護課長にもいろいろ話をいたしまして、社会局の方でいろいろ対策を練っております。従来も、生活保護の適用はもちろんのこと、世帯更生資金の貸し付けであるとかいったような、現行の制度を大いに活用してもらっておるわけであります。今後とも、御指摘のような窮状にかんがみまして、一そう積極的にやってもらうように話ができております。現地へ調査に行かれました先生方のお集まりの際には、いつも保護課長も出席いたしまして御意見は承っておりますので、事情は十分に社会局の方も承知いたしております。
○川村委員 これは私がここでくどくど申し上げるまでもなく、何といっても、大きな被害者は——ごく最近また死んでおりますが、もう三十名に上ってしまったのです。あの悲惨な病気、とにかく治癒の見込みのない病人、それから病人をかかえた家族、あるいは、病人を出しておらなくても、あの零細な掘立小屋のようなところに住んでおる漁業者、その家族ということでありますから、これはやはり当然皆さん方が——私は時間がありませんからここでどうせいああせいというようなことは申し上げませんが、あらゆる現行法なら現行法のあれを生かして、その対策の万全を期してもらいたいと思います。 最後に企画庁にちょっと聞いておきますが、水質保全法の適用をやるという御意思はございませんか。この問題はこの前の委員会のときにもいろいろお聞きしたのですが、現状ではやれないというようなお答えでありました。ところが、あの事態について、原因を究明したり、あるいは工場の排水の問題等いろいろからんでくるときには、何かそういうものを設定しなければ最後の手が打てないじゃないかという考え方をしているわけです。水質保全法の適用を受けると、あるいは工場の排水の規制というような問題も出てきましょうし、原因の究明についても、あなたの方が中心の世話役ということになって強力な手を打ってもらわなければならぬことになると、そういう必要があるのじゃなかろうかと思うのですが、その点についての見解を一つ聞かせていただきたい。
○大堀政府委員 水質保全法の建前から申しますと、排出水の水質を取り締まるということが最終の目標でございますので、そのもととなる水質基準を設定する、こういう建前になっているわけであります。法律の解釈から言いますと現在排出水との関係が多少不明確でございますが、事柄の性質上、私どもといたしましては、本年度からも着手いたしますが、来年度の水質調査の指定水域と申しますか、調査水域の中に優先的に取り入れまして、水質の調査をやっていきたいと考えております。基準設定等につきましては、その調査の結果によって取り扱いを考えた い、かように考えております。
○川村委員 今のお話では、ずいぶん前進しておりまして、私も安心するわけでありますが、水質といっても排水だけではございません。あの海域はああいうような毒物で非常に汚染されておりますから、ぜひ一つ御研究願って、そういうような水質保全法等の適用のもとに一つ遺漏のないように進めてもらいたい、こう考えます。 最後に大蔵省に対する要望でありますが、先ほど私が申し上げましたように、これはただ単なる熊本県下の一都市に起こったところの問題ではない。それだけと考えてもらっては困る。先ほど衛生局長も申しておりましたように、浜名湖のアサリ貝の問題等もあるわけでありまして、これをそのままにしておきましてあのようにうやむやになってしまったら大へんなことになりますし、今日の日本の高い学問のレベルから考えましても、また日本の学問の権威から言っても、こういうのはやはり早急に研究しなければならぬと思うのです。そこで、いろいろの究明のための費用であるとか、あるいは困っている国民の対策のための費用であるとか、こういうものは、それは大蔵省もいろいろ問題が多いでしょうけれども、できるだけ各省の要求にこたえていただいて、この問題が一日も早く解決を見るように努力願いたいことを、特に次官がおられますから、御配慮いただきたいということを御要望申し上げておきたいと思います。
○奥村政府委員 ただいまの御意見並びに御要望、よく承知いたしました。大蔵省としても善処いたしたいと思います。ただ、これは一般的な話でありますが、原因の究明などについては、国としても十分やらなければならぬが、この事態に対する今後の善処につきましては、これは私個人の感じでありますが、たとえば漁民の対策とかあるいは工場との関係とかいうふうなことにつきましては、何としても地元熊本県知事の御努力も大いにお願いしまして、——ということは、やはり現地に即応した、実情に合うた対策というものは、やはり現地の知事あたりによく判断をしていただいて中央と御相談を願う、こういうふうに願いたいと存ずる次第であります。
○吉川委員長 福永一臣君に申し上げますが、内田通産政務次官が間もなく退席されますので、その含みで……。福永君。
○福永(一)委員 私はしごく簡単に聞いておきたいと思います。 厚生省が、今の御答弁で、水俣部会を解散してもあとはやはり医学、薬学の点で人間のからだのことについては責任を持ってやるという御答弁でございますから、私も心配はしませんが、熊本大学、これは従来一生懸命やりましたし、これからもやろうというのですが、もっと範囲を広げて、大きく言うなら日本の医学を総動員してでもやるというつもりがあるのか、あるいは、そういうことは金がかかるからやれないというのか、熊本大学で十分だというのか、どうです。
○聖成説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、医学、薬学の範疇の問題といたしましては、魚介類が原因である、従って、魚介類の中のいかなる物質が原因であるかということが問題でありまして、これにつきまして、ある種の有機水銀化合物という断定ができたわけでございますが、ここから先は、そのある種の有機水銀化合物とは何物であるかということが私は医学、薬学の限界であると思っておる。生きている魚介類の体内にどうしてかようになったかという点につきましては、これは必ずしも医学、薬学の範囲でないというふうに、私も、それから学者の方々も言っておるわけです。従いまして、むしろ今後の研究体制としましては、先ほど私がお答えいたしましたように、医学関係、薬学関係はもちろん加わっていただきますけれども、先ほど企画庁の調整局長からもお話がありましたように、たとえば、水産関係の方で、魚介類がどんなえさを食べておるかというような問題でありますとか、あるいは魚介類が海の深いところに住んでおるものがどうであって、浅いところに住んでおるものがどうであるといったような研究ももちろんお願いしなければなりませんし、あるいはまた、通産省関係で、工場廃液についてのいろいろな調査ということもやっていかなければならない。そうしたことを総合的に調査研究を進めて参りまして、そうして、どうして魚介類が有機水銀化合物を体内に保有するに至ったかということが今後の研究の眼目であろうというふうに私は考えておるわけでございます。従いまして、これ以上幅を広げまして医学関係の方に全国的に多数加わっていただくといったようなことは現在考えておりません。
○福永(一)委員 そうしますと、経済企画庁が幹事役になって、各省がそれぞれの分担において持ち寄りでその機能を発揮して総合的に原因を究明するということですが、私が心配するのは、どうしてもやはり、俗に船頭多くして舟山に上ると言いますが、あるいはまた、各省がそれぞればらばらで責任のがれをするようなこと、私もその点を非常に憂えておるのですが、大堀局長どうですか。もちろんあなたのところで手綱を握ってしっかりやってもらうだけの覚悟もあれば責任もあると思うのですが、大丈夫ですか。念を押します。
○大堀政府委員 ただいま御心配の通りのことを私も実は最初から——委員会を作りますと、責任のがれというと語弊がありますが、とかくそういうふうになる傾きもございますので、企画庁自身は別に調査能力を持っておるわけでもございませんで、専門々々において責任を持ってやっていただく、その点は私は各省に特に要望いたしまして、従来以上に突っ込んでそれぞれの研究をやっていただく、さらに有機的な連係をとっていこう、こういうことで、御指摘の点まことに同感でございますので、最善を尽して参りたいと思っております。
○福永(一)委員 こまかいことですが水産庁にちょっと伺いたいのですが、ただいま御説明の、漁業転換でさしあたり二十ぱいばかり対島にイカつりにやる、それには沿岸漁業振興費を転用するというか、本年度分を使うというのですが、あれは百六十万円ですか。私は四、五百万円あるような話を聞いていましたが、どうですか。これをやるのに一体一ぱい幾らかかるのですか。それから、補助率が今までは二分の一だそうですが、それを特に補助率を引き上げて一ぱいについて八〇%ぐらいにできないものか、それは大蔵省との折衝はどうなっておるか、ちょっと経過を聞かして下さい。
○高橋説明員 それでは詳細に申し上げます。 まず、この事業の計画でございますが、これはあくまでも水俣病の発生地域の漁業の行き詰まりを打開するために応急的な措置として、関係地域のうちで最も影響の大きいような地区の漁業経営者の漁場及び漁法の転換をはかって集団的に出漁を遠いところにさせたい、こういうことでございます。補助の対象でございますが、これは、水俣市、津奈木村、湯浦町、芦北町、御所浦村、各漁業協同組合の地区のうちの三トン未満の動力船階層の漁業者のうち、専業、第一種兼業のものをおもな目的といたしまして、このような転換を希望する漁業者が漁業生産組合を結成いたしまして、主として三トン・十馬力程度の漁船を用船として雇いまして対馬に集団的に出漁してイカつり漁業に従事するという計画に対して国が助成をしよう、こういうような考え方でございます。従いまして、事業の期間は一応本年度でございますので、来年の一月から三月末日までという目標を立てております。来年度につきましては、このほかの事業も加えて引き続きこのような事業を拡大して参りたいという気持を持っておりますが、これはまだ大蔵省と最終的な結論は得ておりませんが、私どもとしてはそういう気持で来年度も引き続きやりたい、こういうことでございます。 なお、算出の基礎でございますが、一応想定いたしましたのは、三トン・十馬力程度の用船二十隻分、そういたしまして、この経費の内わけといたしましては、用船費が、この期間三カ月間でこの程度の船の用船料は四万五千円程度かかりますので、この二分の一を国が持ち、残りの二分の一を県が持つという格好でいきたい、こういうことで県御当局にも連絡の末、現在県会の方にこの予算案を提出して、通していただく見通しであるというふうに聞いております。それから、残りの若干の経費、たとえば集魚灯、それから漁具仕込み費、それから漁業前進基地までの油代、それから発電機等についても、大体二分の一の補助でめんどうを見るということにいたしたいと思います。そういたしますと、一隻について、先ほどの四万五千円と申し上げたほかに、以上の経費を加えますと、一隻当たり十四万円になろうと思いまするので、これらに対して二分の一を見るということで、ずっと計算いたしますと、要するに一隻当たり九万七千五百円程度になりますので、それの二十隻分と考えますと、百九十五万何がしという金が出てくるわけでございます。 以上がこの計画の内容でございます。
○松田(鐵)委員 関連して……。 今聞くと、三トン・十馬力でもって対島でイカづりをやるというんですが、それは危険性はありませんか。あの朝鮮の海峡に行ってイカづりをやるのに、三トンの船で何をやるのですか。出漁できるのですか。これからの西風の強いときにそんな無謀なことをやる。水俣病で死んで、あそこに行って船でまた遭難して、そんなことできるわけはないじゃありませんか。ただ机の上においてそこへ疎開でもするというのですか。食糧も何もかもやって、あそこに行って暮らせというならいざ知らず、できるわけないですよ。そういうばかげた案を作るということは考えられないことではありませんか。高橋さん、少し頭がぼうっとしていやしませんか。水俣病にかかってはおりませんか。せめて十トンの二十馬力・三十馬力の船でもってやるというのであればまだわかるが、三トンの船で一体対馬に行ってイカづりができますかどうか。お考えになったらどうですか。そんなばかな話ありませんよ。水産専門の立場から御注意申し上げます。
○高橋説明員 実は、この漁業の転換につきましては、過日の委員会におきましても諸先生から非常に注意を受けた点であります。まず第一の御注意を受けた点は、一体、水俣のあの零細な沿岸漁民が、転換と一口には言うが、できるか、こういう御指摘が一点でございました。それで、いろいろとその後県御当局と相談したわけでございますが、確かに御指摘のように漁業転換は口で言うほどなまやさしいものでないということは十分承知しております。その際にも御注意を受けたのですが、一挙に船を大きくしても、それはほんとうの転換にはならないであろうという御注意も受けております。それほどこの地元の漁業者は零細な非常に困った漁民であることは事実でございます。従いまして、私どもとしては、そういう一切の安全その他を考えますと、船が大きいほど確かにその点は御指摘のようにいいのでありますけれども、しかし、今にわかに船を大きくするということになりますと、本来の目的である転換が正当に行なわれるかどうかについてはやはり問題が起ころうかと思います。その点で非常に私どもも心配いたしまして、県御当局が中に入っておりまして、地元の漁業者とも十分連絡をとりましたところが、とりあえず三トン・十馬力程度の船がちょうど適正であろうから、それでやってみたい、こういう地元側の要望もございまして、私どももその線に踏み切ったわけでございます。しかしながら、これで十分であり、大き過ぎもせず小さ過ぎもせず十分いい船舶であるかどうかにつきましては、御指摘のように非常に問題があろうかと存じます。その点は、ただいまの御注意によりまして非常に反省をいたしまして十分地元側と連絡をとりつつ万全を期して参りたいというふうに考えております。
○松田(鐵)委員 転換ではないでしょう。疎開漁業なんでしょう。一時的の問題ではないのですか、どうですか。完全に転換させようというのですか。そうではなく、たとえば一年なり二年なり、あの海の中が汚染されなくなるまでの間疎開漁業という名称でやるというのではないのですか。あそこへ転換してしまって、もうそれが本業になるというのではないでしょう。ですから、あなたの方は船を作るのでなくチャーターでいこうというのでしょう。チャーターでいくものであったら、何でもっと十トンや十五トンのものを借りませんか。船長と機関士だけあれば、あとは船の運航はできるのじゃありませんか。そんなもので対馬の沖に行ったら、三月や五月ならいいけれども、一月から三月までの間は西風でしょう。はっきり気象に現われておるではありませんか。そこに三トンの船で行ってどうなりますか。ほんとうにまた水俣病と同じようになってしまう。あえてそんな危険な仕事をやらせるというのは誤りですよ。まだあそこで十五トンや二十トンの古い船は幾らでもあるはずですよ。だから、そういうものに切りかえた方がいい。 〔「金がかかるだろう」と呼ぶ者あり〕 予算はまだあるですよ。百九十万円よりないと言ったって、六百万円あるじゃありませんか。それを回してやればいいじゃありませんか。そんなことをしていたら、高橋次長、あなた人殺しということになりますよ。よく御注意してやった方がいい。
○高橋説明員 ただいまの対策の根本的な考え方につきましては、松田委員の御指摘の通りでございます。 それから、なお、大きさにつきましては、一応これで地元側も了承しておるというふうに私も確信は持っておりますけれども、確かに御指摘の点もございますので、もう一度再検討した上で実行させていただきたいと思います。
○福永(一)委員 きょうは奥村政務次官に特に聞いてもらいたい。もう今まで各省にはたびたび来てもらいました。これはもう耳にたこのできるほど皆聞いておるのですが、大蔵省だけはきょう初めてなんです。みんなでいろいろ相談したところが、先だつものはやはり金です。そこで、水俣病というとあなた方ちょっと耳新しいだろうけれども、二、三日前のNHKが「日本の素顔」でやっておるくらいで、これは大騒ぎなんです。しかも、水俣病というのは、今は病人は百人足らずですが、まだどんどん出ております。また、隠して伏せてあるのがあります。ネコは魚を食うので死んでしまった。だから、今一匹の実験用のネコの相場が高くなった。ネコが逆立ちしたり、マンボを踊ったり何かして、漁師町へ行けば大へんなものです。そこで、今は漁師の問題ばかりでなく社会不安でもあるのです。魚もとっておれないのですから。それで、生業を失ってこじきになっていますよ。それから、それを食べる方の熊本の県民は栄養不良になっているのです。小さいエビの子から何から全然食べませんから、おかずに困っているのです。ですから、鯨とか、北海道・東北産のサンマとか、方々から安全な魚を取り寄せて食べておりますが、これでは金がかかります。今までは、漁師がかついできたものを買えば値切れるし、いろいろルートがありましたから、食べられた。今は食べられない。ですから、乳幼児も非常に栄養が悪くなっておりますから、これは一種の社会不安です。水俣病の病人対策ばかりでなく、これは何万という人間の問題なんです。この間われわれは調査団として行って、一時間ばかり自動車でフルスピードで海岸を通りましたが、一隻の漁船も見えないのです。ですから、これは大蔵省に少し考えてもらって、この際財布のひもをゆるめてもらいたい。各省それぞれ要求しますから、政務次官、一つあなたも乗り出して、事務当局がやりやすいように政策を立ててもらいたいということを切にお願いいたします。 これで私の質問を終わります。
○奥村政府委員 お答え申し上げます。 ただいままでの当委員会の御質疑によりましても、この水俣病の原因が魚介類の中にある有機水銀化合物の作用であるということが大体はっきりしております。ただ、その有毒物質が一体どこから出てきたか、水俣にある工場からの排水から出たものか、あるいは泥土から出たものか、あるいは貝類の中にあるものかということについては、まだ結論が出ていない、こういうわけであります。しかし、はっきりしていることは、魚介数の中にある有毒物、これによって病気にかかる、従って、あの付近の方々はあの付近でとれる魚介類は食べられないということははっきりしております。そこで、本格的な調査をやって徹底した結論の出るまでに、さしずめはっきりした方針をきめなければならぬのは、その魚介類を漁獲して生業を営む漁民の対策ということが焦眉の急務であると、つくつく痛感する次第でございます。なおその他にもいろいろあろうと思います。しかし、これは、経済企画庁において連絡協議会でもって刻々結論を出すことによってまた対策をどしどし進めていかなければならぬ。大蔵省におきましても、御趣旨をよく了承いたしまして、できるだけ善処いたしたいと存じます。 まことにくどいような話でありますが、先ほど川村委員にも申し上げましたように、特にこの水産の漁民対策につきまして、今松田委員からの御指摘のように、対馬へ零細漁民を一時的に疎開漁業として転換させるにしても、三トンの船でそういうところへおっぱなしてやれるかという御疑問が起こるのは、私、まことにごもっともと思いますが、それについては、これは水産庁に全部責任を持っていただくのは気の毒なので、熊本県庁の水産課において熊本県における漁業、また対馬における漁業の実態を一番御存じでありますし、また、どんな計画を立てても、関係漁民の方がその気になってやっていかれなければどうにもなりませんので、その点を、熊本県庁あるいは水俣その他の関係市町村において十分漁民の方々の御要望、御意見も承って実態に即する計画をお立ていただきますならば、大蔵省においてもこれに対する助成の道は思い切ってやらせていただきたい、かように存じておる次第であります。
○松田(鐵)委員 関連。 私はこの間調査に行きましたが、二十七億の資本金を持っておる工場のあり方、これが一番の問題だと思うのであります。責任は工場に一番あると思う。それに対して通産省は何たることをやっているか。水俣の工場一つではない。全国にこういう種類の幾多の工場がある。私ども自民党といたしましては、工場の良識によって汚水の処理をしなければならないというので、社会党のあの法律案を阻止してあれだけに作ったのだ。こういう問題があったら、社会党の法律案通りにやればよかった。やったならば一体どういう事態が起きるか、日本の産業というものはどのようになるかということで今日のようなあの法律になったのです。それにもかかわらず、それを監督しておる通産省は何たるだらしのないやり方か。私は外国の例を述べ、日本の例を述べ、しかも強い言葉で言ったのではない、じゅんじゅんとして聞いたところが、何一つ答弁できなかったじゃありませんか。そういう二十七億の資本金を持っておる大工場から、水銀が出ておるということは断定できないという。われわれは水俣湾でさおをさしてみたが、堆積物が三メートル以上もある。それを今まで放置して監督しなかったのは通産省ではないか。厚生省の責任じゃない、通産省の責任です。しかも一番大きな責任は工場にある。こんなことでもって日本の産業が伸びていくと思っておりますか。四千人の漁民というけれども、四千人じゃございません。今魚のとれないのは、鹿児島へ行ったところが鹿児島も同様だ。天草島がその通り。戦々きょうきょうとしておる。これは単に水俣湾における漁民だけの問題ではありません。そういう大きな観点から事態ができ上がっている。そうしたものを作り上げたのは、原因は不明といえども、あのだらしのないやり方をやっている工場が、——まだ結論が出ないであろうけれども、あれがなかったらああいうような事態がない。私どもはあの工場を必要があったならば閉鎖することができる。しかし、そういうことをしては日本の産業というものから言って大きな問題ができると思うから、黙ってそのことを教えない。それを今まで放置しておるじゃないですか。今日になったならば、漁民の目から見ればあの汚水の処理はあれでもいかぬというけれども、私は完璧だと思う。なぜああいうものを先にやらせていないか。その責任は監督しておる通産省にあると思う。ただ通産省の役人だけ国会にこうして出てこられて、あなた方ははいはいと言っておればそれでいいかもしれぬけれども、そんなものではないと思う。全国にこれからどのような問題が起きるか。これは、工業団体等も招致して、そうしてこういう被災が起きないように、社会党の諸君から指摘されないようにあなた方がやらなければ、すべてこれが私ども自民党の責任になるのだ。あなた方は通産省としての、また自民党としてもほんとうの対策を立てなければならぬ段階に来たんだ。それには、私は、今度のことがいい機会だと思う。日本全国の工場が良識をもってあの法律を善意に解釈して、そうして、その他の産業に対して迷惑をかけないように、そういう方法をやらせる機会をいつ作るか、これが一番大事な問題だ。その意思はありますかどうですか。まずその点が第一点だ。通産省としてはどういう考え方を持っておるか、これを私はまず聞きたい。責任ある答弁ができないなら、あとから大臣と相談してきなさい。その答弁をきょうは保留してもいいです。それをやらなかったならば、日本の産業はみんなたたきこわれるから。まずこれが一点。きょうはまず答弁はできないだろう。
○吉川委員長 松田委員に申し上げますが、きわめて肝要な問題でありますので、ただいま通産省から見えているのは説明員のみでございますから、あとで文書かなんかで回答を求めることにいたします。
○松田(鐵)委員 次に、原因の問題については先ほどいろいろと他の委員から御質問がありましたから省きまして、これは大蔵政務次官にお願いしておきたいのですが、私ども調査に行った者の一致した結論として、まず、あの水俣湾にある残滓ですね、これを除去しなければならぬということです。これは八メーターの深さのところに僕がさおをさしたところが三メーター以上あるんだ。まっ黒い、砂鉄と同じような、そうしてそれが泥じゃないんだ。ほとんど水俣の工場から長い間出てきたものなんだ。そうして薬品くさいにおいなんだ。あそこへ魚など住めといったって住めるものじゃありませんよ。三メーター以上ある。何といっても、調査に行った者全部の結論として、前にも丹羽君から報告がありましたけれども、あの残滓を除去してしまわなければならぬということです。そうして漁民に精神的な安心感を与えて一やらなければならないということです。これが先決です。その方針を立てること。幸いにして、運輸省では港を作るようになっております。今年度の予算要求は六千万円を要求しております。六千万円ありますと、埠頭の外郭は全部それをサンド・ポンプでくみ上げることができます。それは局部の、一番汚水の出てくるところに近いところだけはくみ上げることができます。これはそういうものを考えずにやったものです。それには六千万円の予算要求をやっておりますから、それに対して、港湾予算の中に六千万円を削ることのないようにあの予算をつけてやることです。そうしますと局部的の残滓がきれいになります。ところが、運輸省へ行きまして、あの中の土砂を大体はかってみた。そうしましたところが、とてもそんなものではないですね。その土砂、まっ黒いやつですね、これを除去するのは簡単で、サンド・ポンプで吸い上げればいいのです。ところが、吸い上げて泥を持っていくところがない。今埋め立てをするところへ、埠頭をするところへ持っていけば幾分かいい。そこで、私どもの全部の意見といたしましては、それで袋湾という湾を埋め立てるということです。その湾には漁民がおる。かわいい十二、三の相撲の好きな男の子がいて、それが水俣病にかかって、目が見えなくなっておる。よだれをたらして、手はふるえている。そういう子のいるところですよ。そこのところを約八十町歩埋め立てる、これは全部の意見ですが、港の口は百二十メーターあります。深いところで十メーター。そこにはカキがあります。そのカキをとって一日三十グラムずつ一週間ネコに食わせれば、ネコは一カ月目には必ず発病して、階段から落ちてきたり、さかさになったりする。そういうことで、技術的にどうなるか知りませんけれども、そういうものを封鎖して、それに土砂を吸い込んでやっていく。上の山の土だって、熱帯性の土だから簡単にサンド・ポンプでくずれてきます。水は豊富です。わき水もあります。それを農林省で埋め立てができるか、つまり水田ができるか、それを罹病者の中の者にせめて一町歩でも八反歩でもやれば、漁業をやらずとも将来食っていけるじゃないか、こういう方法を考えようじゃないかということが、私どもみんなの一致した意見だったんです。そうして、漁民はそこにおりますから、漁業をやっていきたい者は、その山のかげに道路さえつけてやれば——干拓するだけの土は少し高いところから持ってきて埋め立てをすれば、隣の湾がありますから、そこに一千万か二千万の防波堤を作ってやれば、りっぱに漁民はそこで生活ができる。しかし、いかにこれをやっても二年はかかりましょう。あれを全部回収するとしても、二年かからなかったら汚染した水はきれいにならぬと思います。そういうような対策をしてやらなかったならば、漁民はあすこで生きていけません。いかに真珠の養殖をやろうといったって、そんなものはできっこないですよ。あのよごれている水に真珠をやっても、真珠は巻きつくものではない。第一みな枯れてしまうんだから、死んじゃうんです。そういうような実態をよく考えていただかなければならぬ。 さて、それが農林省でどういう計画を出してくるかわかりませんけれども、それに対する予算づけが、これは外交になりましょう。農林省直接じゃないと思う。私どもの計算からいきますと、内地における干拓は反三十五万かかりましょう。あそこなら二十五万か二十万でできると思います。そういういい袋湾ですから、そういうような方法をとって、それこそ漁民を転換して農民にするようにでもやらなかったら、これはとても話にも何にもなりません。こういう点は、今農林省が計画を立ててきたけれども、これは水産に造詣の深い奥村政務次官はよくこの点を考えて善処してもらわなければいかぬと思うのです。私どもと水産委員会で一緒でありました奥村政務次官は、ほんとうに水産という問題に対しては常日ごろから造詣が深いのだから、こういう点をよくやっていただかなければならぬと思う。今の緊急な対策というものは、生活保護であろうと何で七ろうと、何もかもやってもらわなければならぬが、ほんとうのことを言うと、今あそこには一そうの船も浮かんでいない。どの浦々へ行っても、ほとんど船は上へ上がっちゃっているのです。そうして、三陸から行っている生きの悪いサンマだけ食っている。これではまずくてどうにもならぬけれども、魚だから、これはあそこではとれたことはないのだから、それだけを食っている。ネコも、魚を食わせられないからネズミのようにやせている。そういう実態なんですよ。 もう一つ、私は鹿児島へ行きました。鹿児島では、水産部長から水産課の者は全部来ました。そうして、実は鹿児島でもネコが死んだ、四人出ているのだが、これを発表したならばあそこの魚が一つも売れなくなるからひた隠しに隠しているんだと言う。潮流を見たり海図も見た。そうしたところが、海図では八代の方へ潮流が流れている。しかし、鹿児島の方にもやはり回りの潮流が回って行っている。だから、そっちの方へもそういう汚染されたものが行っている。それで、今度熊本県では、百万の予算を追加して、水産試験場の船をもって、自分の県のところへ線を引いて、それから入らないようにしている。港の沖では、漁業をやっていないから魚がどんどんふえている。打瀬綱で夜来て密漁をやる。そうして、それを持っていったやつはかかってしまう。そういうような実態です。私ども行ったときにニベとカナガシラを、迎えにきた船が拾ってきた。その魚というものは、ちょうど、——下手な家庭でコイを金魚ばちで飼っているでしょう。頭だけはあたりまえであって、あとはそげてしまうでしょう。海の中にいるニベがその通りそげている。ぴくぴくと生きのいいものはない。拾ってきたんだから、動けなくなって浮かんでしまう。そのにおいをかいたら、なまぐさいのなまぐさいの、これはとても鼻持ちならぬ。いうように魚がこれに中毒したものは全部入ってしまう。貧乏な者がよけいかかっているという理由は、頭や内臓が一番うまいことはわかっているでしょう、だから、そういうものを好んで食った者がみんなやられちゃった。肉だけならばそうでもないけれども、あらや内臓を食った漁師がみんなやられちゃった。これがもし東京湾であったらどうなりますか。どうですか、通産省の方々。これがもし東京湾で五人の者が死んだらどうなりますか。どんな騒動が起きますか。あの片いなかの熊本なり鹿児島なんかでもって遠く離れているところだから六年間もぴんと来ないのだ。いかに通産省が怠慢であったか、いかに工場が道徳に欠けておったか。工場から流れた汚水が直接の原因であるかどうかまだ私は断言はできませんけれども、三メートルもくさいものがあの中に沈んでいる。袋湾の中にも沈んでおる。私が袋湾の一メートル以上のところをさおをさしたら、あの赤土と混合している。僕はそれを取ってきて紙に包んで持ってきた。今でも、においをかいでごらんなさい、かげるものじゃない。それが魚の内臓に入って無機水銀になるか有機水銀になるか私どもわかりません。常識だけは科学者よりも三ぞう倍も五そう倍も私どもは発達しているつもりです。しいて言うならば私は断定もしたいけれども、国会でそういうことを言うわけにもいきますまい。大きな波紋が起きるから今遠慮していなければならぬ。常識だけはお互い国会議員はあの人々の三ぞう倍も五そう倍も発達している。われわれには欲得がないのだ。ほんとうに国民の代表として論議していかなければならないのだから、この責任はだれのかれのということではありませんよ。二十七億もの資本を持っている工場が汚水の処理をしていないというばかな話はありません。それを監督しているのが通産省です。何のていたらくです。あなた方立ち会って僕に一々外国の説明をするから、ああそうですが、外国の汚水の処理はどうなっておりますか、御調査なされましたかと言ったら、調査はしていないと言う。日本の国と同じような工場があると言うから、それじゃそれの汚水の処理または海との関係は調査されましたかと言うと、調査していないと言う。私の町には鴻ノ舞金山という青化製糖の産金の工場があります。もとはサケが一匹もいなくなった。今ではサケもマスも上るようになったのですよ。工場が当初において金をかけて施設をすれば、絶対に人に迷惑をかけないようになるものです。それで、今の施設は一体幾らかかりましたか。僕に指摘されて、この機械は六千万円かかるだろうと言ったら、その通りです、こう言う。今の濾過施設は、あれから水を持っていくから、みんな漁民は危険だと言うが何も危険はない。海水の塩分が入ると機械がとまるから、ここにコンクリーでこういう工合に囲っているじゃないか、あれは、君らの方に流れることよりも、自分の機械が惜しいからああいう工合に囲ったのだから、あとは心配ないよと僕は言ったんだ。なぜ今までやらなかったか。それから、鹿児島へも行ってきたが、製紙工場がある。その製紙工場も流しっぱなしだ。そして、今また製紙工場を建てようとしているところもある。それも何も計画していない。そんなことで通産省はどうなりますか。何とかいう市に製紙工場はありますよ。それでアユが一匹も上れぬじゃないですか。上の方はアユを放流して、上の方は大丈夫だが、落ちアユが一つもない。そうして海からアユが上れぬのだ。そういうのがあなた方監督しておる鹿児島県の製紙工場ですよ。あなた知っているのか知らぬのか、頭ばかり振っているが、これで漁民や農民が一体どうなるのだ。どこの工場だってあんなやり方をやっていったら、漁民も農民もひとたまりもないのです。工場だけは所得倍増にも何もなりましょう。農民や漁民は所得倍増どころじゃない。今日の状態はみんな半減しているじゃないか。だから、社会党に僕ら一言も言えることがないような、国会で赤路君をいばらして、こういうざまをさせるようになっているのは、あなた方がゆるふんだからこういうことになっておる。こういう点を一つ十分あとから書面で答て下さい。 もう時間もないし、もっといいことを言うと今度赤路君が言うことがなくなるから、この辺で……。あとは私どもは私どもとしてまた対策を立てます。それから、これからの大事な問題であるあの漁民をどうするかという問題は、私ども党として考えていこうと思っております。また社会党とも連携してやっていきたいと思っております。その点で一つよろしくお願いしたいと思います。
○奥村政府委員 ただいまの松田委員の御意見につきましては、当委員会を代表して先般熊本、鹿児島の現地を御視察なさいました皆様方の代表としての貴重な御意見と存じまして拝聴した次第であります。つきましては、先ほどもお話がありましたように、経済企画庁におきまして、水産庁、農林省、通産省、厚生省の担当官を結集いたしまして協議会を作って、十分連絡を密にして原因を究明し、なおまた、その上に総合一貫した対策も立てる、こういうことになっておるのでありますので、そのような運びを企画庁でつけていただきまして、ここには企画庁の政務次官もおられますが、その上で一つ具体的妥当な案を立てていただきますならば、大蔵省といたしましても、ただいまの御意見に十分沿うように善処いたしたいと思います。
○吉川委員長 赤路君。
○赤路委員 私、ちょっと中座しておりましたので、これから質問をする内容について、すでに他の議員の方から質問があって御答弁なさっておりますれば、それは省略していただいてけっこうだと思います。 最初にまず大蔵省の方へ。奥村次官の方から非常によい御発言を得たわけですが、重ねてこの際一つ明確にしておきたいことは、今企画庁が窓口と申しますかまとめ役になってやっておりますのは、これは水俣病の原因究明のための調査研究の費用等々を一切まとめる、こういうことでありまして、問題に対応するための施策費というものは各省別々にやるのでありますから、これは企画庁だけのものじゃない。各省別々に施策費があるのですから、その点を一つ明確に御了解おきを願いたいと思います。 厚生省の方にお尋ねいたしますが、再三言われたことでありますが、現在の生活保護法をもってしては救われないという状態の人たちが相当数ある。これに対しては特別に何か立法措置を考えなければならないじゃないか、こういうようなことがわれわれの中でも議論されておるのですが、何か特別にお考えになっておるかどうか、この点を一点お聞きします。
○聖成説明員 先ほどもお答え申しましたように、この問題は社会局の所管で、私の所管でございません。社会局の方には、その非常に困っておる、生業を奪われた漁民に対する対策を十分にやってほしいということを強く私どもから連絡はとっております。今の先生の御質問の点はまだ聞いておりません。
○赤路委員 次に、患者対策でありますが、御承知の通り、入院患者と同時に、なお家庭療養患者もあるわけですが、実は患者の代表と会っていろいろ話をしたものが私の手元に参りました。国会の方で、あるいはまた各省の方で本問題について熱心にやられておることに対しましては、患者は非常に感謝をいたしております。ただ、何か国会あるいは官庁のこの問題に対する動きというものは患者というものを置き去りにして進行をしておるように感じられる、患者対策というものをどういうふうにほんとうに考えてくれておるのかということ。ここでこういうことも言っておる。私たちは、今の治療費については、三分の一、三分の一、三分の一というのは、数からみたってわずかなものだから、全額国庫負担にすればいいじゃないか、こういうことを言っておるわけなんでありますが、このことに関しましても、この治療費が全額国庫負担になっても、患者には直接関係がない、こういうことをはっきり言っております。そうして、各方面の人たちからうまいことを言われても、今までだまされ通してきたので信用がおけない。——患者の一つのひがみもあろうかと思いますが、患者としての立場からするとほんとうの気持だと思う。それだけに、患者対策、患者に対する措置、あるいはまたその患者を持つ家族の援護法、こういうものを考えていただかなければならぬと思いますが、何か具体的な対策をお考えになっておりますか。
○聖成説明員 患者の問題につきましては、実は、私、環境衛生部長に就任いたしまして、昨年八月参議院の調査団の先生方のお供といたしまして現地に参りまして、そのとき私どもが痛感いたしたことは、やはり、治療が一段落いたしましても、先生御案内のように、非常に強い後遺症が残りまして廃人になってしまう、そういう方が家庭内におられて非常に手もかかる、家は生業を奪われ、その上家庭内にそういう廃人のような方をかかえている、これはどっかに施設を作ってめんどうを見てあげなくちゃいかぬということを、私は昨年の八月現地に参りまして痛感いたしました。帰って参りましてからいろいろ計画を立てまして、そうして作りましたのが、例の水俣病院にございます特別病棟です。その当時の状態では、治療が一段落つきましてほぼ常人と同じような活動ができるような程度に軽快した方が十人、もうほとんどだめだというような廃人になってしまった方が三十二名というような状況でございました。その三十二名全部入り得る施設を作った。それも、御本人の身になってみれば全然別のところに収容施設を作るよりも病院の構内に作った方が気分的にもよろしいと考えまして、水俣病院の中にそういう特別病棟を足したわけであります。そうして、そこに三十二名の方を全員収容する。その際所要の経費につきましては、生活保護法では実は入院費という形ではちょっと見にくいわけであります。御承知のように、生活保護法での患者の入院費というものは、どうしても病院に入って治療を受けなければならぬという場合の問題でございます。それを、特に社会局と話し合いまして、この場合は特別の措置として生活保護法の運用で該当の十六名の者は見てもらう、該当しない残りの十六名の分につきましては、特別経費を計上いたしまして、これが今先生のおっしゃいました国、県、市三分の一ずつ、そういう予算を予備金から出していただくことにしております。それで患者の治療に当たったわけであります。私も患者の代表の方に何べんもお会いしましたけれども、当時の要望は、一カ月三千円の栄養費を出してほしいということであったのです。しかし、私は、先ほど申しましたように現地を見まして、一カ月三千円の栄養費を出してもそれで病気がよくなるわけでもなし、また実際上なかなかそういうことに国費の支出はむずかしいだろう、それよりも、むしろ一挙にしかるべき施設に収容して、非常に俗な悪い言葉でございますけれども、終生めんどうを見てあげるということをやるべきではないか、そういうふうに考えまして、そういう処置をとったわけであります。最近患者が続発いたしておりまするけれども、先ほどからお答え申し上げましたように、幸いに水俣病院にまだ空床がございますので、それを利用すれば現在程度の続発であれば収容ができる、そういう報告を現地から聞いておりますので、私どもは、やはり、ああいう非常に手数のかかる方が家庭内におる、そうでなくても困っておる家庭がさらに廃人になった方をかかえておるというよりも、病院に収容してめんどうを見てあげるということの方が一石二鳥になるのじゃないかという考え方でおりますので、今後とも全員収容ということを目標に考えていきたい。患者続発のために経費が不足しておりますので、その不足分につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、予備金で出していただきたいということで大蔵省と折衝をいたすつもりでおります。
○赤路委員 厚生省の方はもう一点だけですが、これは答弁は求めません。希望です。やはり、現場の実情を見まして考えられることは、完全看護を必要とする。特にこの病気は特異な症状を呈しておるだけに、その点考えられなければならぬと思うのです。栄養等は十分に摂取せしめるような処置を一つおとり願いたい。このことを要望しておきます。 それから、次は通産省へお尋ねいたします。 まず第一点は、この前の委員会で八田委員が質問されたのですが、その質問の中にちょっと聞きのがしてはならぬ点があったように思うのです。もちろん結論は出ていなかったと思いますが、それは、酢酸ビニールを作るときに何か触媒に有機水銀を使う、それがそのまま放出されておるということはないのか、こういうような質問があって、この点が明快になっていないので、一応官庁の方でも調査してあとで報告してもらいたいというようなことであったと思うのです。私たちが現地を調査いたしましたときにいろいろ聞きましたが、残念ながら化学的な素養もございませんのでわかりませんでしたが、一応私たちは、熊本大学でも、工場側でも、無機水銀だ、その無機水銀が魚の体内に入って有機水銀に変化する、その変化の原因がわからないのだ、こういうふうに説明を受けてきておる。工場側の説明では、そのときには、塩化ビニールの製造等もあるという説明を受けておるのですが、この八田氏の質問に関連して、もしもこの酢酸ビニールの製造過程において有機水銀が使用され、しかもそれがそのままで何ら処置されないで流出しておるということになると、これは重大な問題だ。この点その後何とか御調査になりましたかどうか、ちょっとお答えを願うとけつこうだと思います。
○高田説明員 その問題につきましてこの前八田先生から御質問があったというふうに聞いておりますが、私どもで調べてみますと、有機水銀を使って酢酸ビニールを作るという方法はあるようでございます。しかしながら、あの工場について現在調べている段階では、無機水銀を使っており、有機水銀は全然使っていないというふうに聞いております。まだこれも今十分調査しております。
○赤路委員 これはそれでよろしゅうございます。それで、希望だけですが、これは今度の問題の重大なポイントです。だから、これは一つ正確に、単なる報告でなしに、あなたの方から御出張になってでもこの線はお調べ願わなければならぬ、こう思いますから、これは要望をいたしておきます。 それから、先ほど松田委員からこの工場汚水のことについてだいぶ強い御意見があったようでございます。私はこの点はまたあらためて通産省なりあるいは企画庁なりにお尋ねいたしたいと思いますが、通産省に一言言いたいことは、今度の工場排水規制法ですか、あれに基づいて中小企業関係の汚濁水浄化補助金として五千万円を計上しておったものを、これを全然使わないで他の面に使用したということを聞いておりますが、その事実はあるか。
○藤岡説明員 お答えいたします。 今御意見の通り、これは伊勢湾台風の特別災害のための立法がなされまして、その立法で中小企業の補助金を特別に災害を受けたものについてやれる法律ができたわけであります。法律はできましたが、実際上その金として使い得る予算の財源がございませんので、たまたま、その五千万円の補助金につきましては、各都道府県に調査をいたしまして、現状といたしましてはどこも希望者がないという報告が参っておりまして、現状では本年度中に使用の見込みが立たないという状態でございますので、それを流用するということを通産省から大蔵省に要求してございます。まだ決定はいたしておりませんが、多分そのように大蔵省の方の御了解になるものと思います。
○赤路委員 今お聞きの通りなんです。いかに汚水の浄化ということに対して熱意が欠けておるかということは、これでわかった。これ以上は言いません。ただ、大蔵政務次官に言っておきたい。こういう事態になったのは何かと言いますと、最初予算を組んだときは、中小企業に対する助成金として——大工場は、これは、今一番大きいのは、たとえば防府の協和醗酵、六億の総事業量で、これは開発銀行が四億出しておる。そうして浄化装置をやっておる。浄化装置というものは生産には全然プラスにはならない。マイナスになってもプラスにならない。それだけにどこもこれはやりたがらない。ほんとうなんです。しかしながら、やらなければ国民に及ぼす影響が非常に大きい。それが今日あの法律を作ったそもそものねらいなんです。特に中小企業が困るわけなんです。中小企業で浄化装置をまともにやったら、手をあげてしまいますよ。だからこそ補助金というものをつけたわけなんです。その補助金をつけるときに、私の聞くのでは、大蔵省が、個人ではだめだ、共同施設でなければいけない、こういうようなことで、ついに通産省ものまざるを得なかった。共同施設ということになると、やる方では事実上の問題としてはなお厄介なんです。だから、何ぼ希望をつのっても希望が来ませんでしたと、今のようなことになる。大蔵省は、ただ単に金を出すときに締めればいいという考え方だけではなくして、実態をよく見きわめてやってもらいたいと思う。せっかくのものが無になってしまっておる。私は、これを伊勢湾台風の被害者に回したことは悪いとは言いませんよ。しかし、少なくとも法律に基づいて予算を組んでやったものが、一銭も使われないで他に流用されたということであっては、——課長はああいう答弁をしていますよ。私がもっとけつをまくれば、そのままじゃおいておかぬですよ。こんなべらぼうなことはない。この点はよく御考慮おきを願いたいと思います。またあらためてこの問題は水質関係の二法案と関連さして追及したいと思います。 それから、次に経済企画庁の方にお尋ねいたしますが、経済企画庁の方では、この水質保全の法律に基づいて、今の水俣湾海域ですね、当初は六地区でしたか決定しておりましたが、それにはなかったが、今度これをはっきり決定いたしましたか。
○大堀政府委員 原案には最初は入っておりませんでした。ただ、問題の重要性にかんがみまして、最近計画を訂正して、来年度の計画に優先的に取り上げることになっております。
○赤路委員 これは審議会の議を経なければぬならぬことになっていますね。この問題では審議会を招集されておやりにならなかったということなんですね。それで来年度に回すというんですね。これは予算の関係ですか。
○大堀政府委員 本年度の計画につきましては、すでに年度当初予算の上でそういう計画が組まれております。それには入っておりませんので、予算の計画通りに審議会の議を経て実施をいたしておるわけであります。私どもは、企画庁だけでやっておるわけではございませんで、各省から問題の河川の提出を願って、ウエートによって各省の意見を十分尊重してきめておるわけでありますが、水産庁の方も当初の案に入っておらなかったので取り上げなかったわけでございます。今年度追加するといたしますと、やはり審議会の議を待たなければなりませんから、来年度には優先的に取り上げたい。今年度も予備金その他の手続でできるだけ繰り上げてやるようにいたしたいと考えております。
○赤路委員 今の大堀さんの説明でまずこの場は了解いたしておきましょう。当初から言っておりますように、これは非常に広範にわたるものであり、特に指定水域の指定にあたっては調査区域をより広範にとるということが一つの前提であった。ところが、予算措置を見てみますと、あなたのおっしゃるように、六地区やってしまうだけですらやれないものです。私は率直に言います。あんな予算でまともな調査はできません。審議会だって開けません。審議会の予算は何ぼありますか。だから、もう少し本気になってやるという心がまえをとっていただきたい。特に今回の場合なおそうだと思いますから……。これは答弁を求めません。要望だけいたしておきます。 水産庁の方にお尋ねいたします。これからおやりになる海洋調査の結果、もちろん一年かかりますかあるいはそれが半年で済むかわかりませんが、危険海域が明確になった場合、危険区域の設定をおやりになりますか。やる必要があると思うが、それはどうお考えになりますか。
○高橋説明員 この原因究明につきましては、先ほど申しましたように、水産庁として総力をあげて協力して参りたい、こういうことでございますが、その調査がいつできるかということと、それから、できた場合の措置をどうするか、こういう御質問でございます。ただいまのところ、この原因について簡単に結論が出るとは実は考えておりません。しかしながら、とにかく、なるべく早く原因を究明することに全力をあげたいと思います。そして、相当広範囲にそういう魚族と申しますかそういったものがおった場合にはどうなるか、こういう御質問でございますが、これは問題が非常に重要でございますので、一つ慎重に考えさしていただきたい、こう思います。
○赤路委員 その調査の方はそういたしまして、具体的な当面の漁業転換の問題ですが、先ほど松田委員の方から御意見があったようですが、私は少し意見を異にしております。向こうの漁業の主体をなすものはタコと磯刺網です。それから、調べてみますと、まき網は二統しかない。それから、舟びき漁業があるようですが、これは小型の打瀬だと思うのですが、主としてカタクチイワシをとっている。私どもの手元へ寄せて参りました現地漁民の考え方というものは、年のいった人はこの際更生資金を何とかしてもらって他に転換したいという考え方のようです。しかしながら、壮年者、若い人たちは、陸へは上がれないのだ、どうしてもわれわれは漁業で身を立てていかなければならぬということで、他種漁業への転換を非常に強く希望している。 その中で、沿岸の磯刺網なりタコ漁業なりをやっている諸君は一本づりに転換したいということを言っております。遠洋へ出すということは今後恒久的なものとして考えていかなければならぬので、いつまでもあの沿岸に蝟集しておるということでなくして、それにはそれだけの技術を修得さすという措置をとらなければならぬから、そういうことをも前提にして技術修得の方法をこの際考えてやる。もちろんこれは水産庁が直接どうということではなかろうが、そういう方向で指導して、それに対して助成その他の措置がとれればそれをとって、急速にその方向へ向けていく。当面は、まず今すぐ出て操業ができるという形をとるということがやられなければならぬと思う。 それから、もう一つの希望は、研究してもらいたいことですが、舟びき網漁業の諸君から、やはりカタクチイワシをカツオのえさとしてのみとらしてくれないかという話が一点ある。これは研究しなければなかなかむずかしい問題ですから、一つ研究課題にしていただきたい。これが一つ。 もう一つは、今ここでいろいろ議論ばかりやっておって、向こうの方が一日々々追い込まれていく——それが議論倒れになるとは私は言いませんが、長くかかるようでは現地としては困るというわけです。それなればその間ここで魚をとらしてくれ、その魚は、市なり県なりそれぞれの監督官が厳重に監督をして、それを全部買い上げて肥料に回す、それで何とか日銭をかせがしてもらえないか、こういう要望がある。このことも一つ水産庁の方ではよく厚生省その他関係官庁と御相談の上で、そういうことが一体可能なのかどうか検討してもらいたい。これは、下手まごつくと、とってよそへ流れてしまうと問題が拡大してくる。しかし、そうしたことを言わなければならないほど現在の実情というものが追い込められておるのだ、このことを私は皆さんに知っていただきたい。 特に、今まで各省の方々には強いことも言い、ハッパもかけ、悪口も言って今日までやって参りました。ただ、問題は、各省の諸君がいろいろやられたことをどう具体化していくか、どうこれを実践化していくかということは、あげて予算がつくかつかないかというところにある。私は各省の出したものを決してまともなものだとは思っておりません。先ほど川村君が言ったように、ネコの資料にしましても、隠しも何もない私のところへ来た資料なんです。だから、実際は、ことし研究費に九百万円でどれだけのことができるかと私は思うんです。しかし、やらないよりも、今総合的に国の方がこういう研究に手をつけてもらうことが、現在あるノイローゼを解消する一つの大きな方向なんです。これは、私は、行政官庁としてもまた政治の面からもやらなければならぬと思う。急ぐがゆえに、私は金額のことについてはとやかく申し上げません。直ちにこれに手をつけてもらうこと、これが何といっても社会不安を解消する一番大きな問題である。今ここで、いや百万だ、いや五十万だ、どうだごうだと、かけ引きをしているというと語弊があるかもしれませんが、大蔵省と各省の間でごやごや言うておるときではない。拙速を尊ぶときだ、こう私は考える。ぜひ、政務次官の方でも、そういうことを御勧考願って、直ちに手をつけられるような形に一つ御協力を願いたい。これだけを希望申し上げて、私の質問は終わっておきます。
○吉川委員長 午前の会議はこの程度とし、午後二時より再開して蚕糸関係二案の質疑に入ることとして、これにて休憩いたします。 午後一時十五分休憩 ————◇————— 午後二時五十二分開議
○吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び第三十一国会栗原俊夫君外十六名提出にかかる繭糸価格安定法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、これより質疑に入ります。 質疑の通告がありますので順次これを許します。 高石幸三郎君。
○高石委員 ただいま議題となりました繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について若干質問を行ないたいと思うのでありますが、あとに専門家の諸君が多数ありますので、ごく概略についてお伺いしたいと思うのであります。 政府は、一昨年から昨年にかけて繭糸価格が異常の低落を来たし、蚕糸業界は非常な混乱に陥った事態に対処いたしまして、その安定をはかるために昭和三十三年度の生糸年度当初からいろいろな施策を講じて参りましたが、特に、同年七月一日に制定公布されましたこの臨時措置法を中心といたしまして、あるいは生糸の買い上げ、乾繭の共同保管であるとかいうような一連の必要な予算措置も講じられる、さらにまた、繭糸業界が異常な自主性を示したということについて、その推移に伴いまして安定帯価格を引き下げるというようないろいろな施策を講じられました結果、一面ではもちろん蚕糸業界の養蚕家を初めとして各方面の忍耐なり協力なりがありましたが、幸いに、今年の生糸年度に入りましてからは、内外の景気の好転したことであるとか、あるいはアメリカを中心としたいわゆるオーガンジー・ブームといわれるような絹に対する流行の変遷があったとか、内地消費が非常に伸びたとかいうことで、一応蚕糸業界一般について回復を取り戻したことはまことに御同慶にたえないのであります。ただ、問題は、ものことというものは、出るものは出尽くし非常に最悪の事態に陥ってそして対策はでき上がった、これから回復に向かう、こういう時期こそ、当面の問題をよく考え、かつ、施策を立てる上におきましても特に恒久的な方途を樹立することが非常に大事なときだと思います。一昨年から昨年にかけての対策は、思うに三浦前農林大臣によって行なわれたのでありますが、現福田農林大臣は御就任以来こういう絶好な時期に大臣として蚕糸行政を取り扱うことになったのでありますが、いまだ公式にその蚕糸行政に対する当面の問題、恒久的の施策について承ったことがございませんので、一つお話を承りたいと思うのであります。
○福田国務大臣 絹並びに繭につきましての産業は、わが国の重要な産業の一つであるというふうに考えておるわけです。特に、輸出に占める地位は昔から比べまして非常に衰えておるということは、事実でありまするが、それにいたしましても、これは輸出産業としての立場において重要視しなければならぬ、さように考えておるわけです。さらばこそ、価格安定法も取り入れ、また価格安定法がなかなか動きにくいという際には、臨時措置法というような制度も取り入れましてその安定に努力をしてきておる、こういう状況でございます。 昨今大へん需給状態がよくなりまして、値段も強気になっておりますが、その原因につきましては、ただいまお話しのように、一つは一昨年とりました対策の効果という点があると思います。こういうことから大体におきまして需給均衡の方向が出てきておる。それから、もう一つは、時あたかも、世界景気の回復、並びにこれと並行しての国の景気の上昇傾向、これが非常に顕著な傾向で出てきておるわけであります。さようなことが折り重なりまして今日の強含みの需給状態並びに価格の状態というものが出ておる、かように考えておる次第でございます。 私は、とにかく繭並びに生糸は一貫いたしまして運命協同体にある、かように考えておるわけでございます。繭の状態の改善ということは、生糸の市場の開拓というか需要の安定した形が維持され、しかもその安定というものは上昇価格において安定されるということが一番好ましい形であると、かように考えておるのでございますが、今まさにそのときに来ておる。そこで、私どもの考えといたしましては、ことしの生糸の需給の状態を見ますると、五万俵の臨時措置法による政府の手持ち生糸を売り払いましたが、それでもまだ不足をいたしておる状態でございます。そういう状態におきましては生糸の値段が上がる傾向をとるというふうに考えるわけでありまして、実際もまたさような動きを示しております。そこで、一番大事なことは何かというと、安定した需要が継続され、しかもその価格安定が上昇価格において安定されるということが一番好ましい形である、さようなことを考えますると、今繭糸価格安定法によりまして保有いたしておりますところの残りの四万五千俵の生糸を逐次売り出すという施策をとることが必要である。何となれば、今需給の状態が不足状態であるというこの現在の状況におきまして、政府の手持ち生糸が、今幸いにしてありますが、ないというような状態、また、ありますがこれを売りどめをするというような状態を考えますと、生糸の価格は上がります。そうすると、せっかく安定した価格で売れ行きがよくなり、すなわち需要が開拓されておるのが——需要が開拓されておるということは、一つは化学繊維や合成繊維等の競合において生糸が漸次勝ちつつある。あるいは勝つという言葉が強過ぎれば、まあ失地を回復するというような状態にあるかと思うのです。また、国外におきましては外国の生糸との競争において勝ち進んでおるというような状態であろうと思うのです。これが、政府の手持ちがないとか、あるいは手持ちがありましても売らないとかいうようなことになりますと、価格は急騰いたします。そうしますれば、そういう市場競争におきまして非常に生糸が不利な立場になります。結局また生糸の需要に減退を来たすのではあるまいか、こういうふうに考えておる次第でございます。 さようなことで、私は、当面の対策といたしましては、政府手持ちの生糸、それは繭糸価格安定法に基づいて保有しておりますが、この際これを放出するという体制を整えて、そうしてこの価格の安定に対処すべきものである、かように考えておる次第でございます。
○高石委員 ただいまの大臣の御所見は、当面の安定法改正案を提出された事情の解明のように承りまして、恒久根本的な考えについては承ることができなかったのですが、この辺はいかがですか。
○福田国務大臣 一つは、価格の問題が恒久対策としては取り上げられなければならぬと思います。この価格が安定し、しかも、他の繊維、それから外国の生糸、こういうものとの競争においてたえ得るような状態に置かれること、これが大事な一点であろうというふうに考えるわけです。そういうふうな考え方に基づいて今回の法案の御提案なんかしておるわけですが、この問題。それから、もう一つは、積極的な市場開拓の問題であろうというふうに考えるわけでございます。ことに海外に対する市場の開拓、これにつきましては従来とも努力をいたしておりますが、宣伝機関をニューヨークに持っておりますが、さらにヨーロッパ方面にも拡大する必要があるように思うわけでございます。この市場の開拓をいたす。さようにして、価格の安定対策と需要の増進、この両々相待って、そして、先ほど申し上げましたような、私の考えである安定と上昇と、この二つの目的を達しなければならぬ、かように考えております。
○高石委員 大臣の御所見を承りましたが、失礼でありますけれども、お察しするに、所管大臣としての平素考えているところをお述べになった程度にすぎないと私は思う。ということは、私も国会の審議に参加して初めてでございますけれども、この臨時措置法が審議されました第二十九国会におきましては、本会議でも委員会でも、その提案の理由の説明においても、また同僚議員の質問に答えても、何とおっしゃっておるか。この臨時措置法と並行して蚕糸業の安定に必要な恒久対策を策定することについてはすみやかにこれを取り進める考えだが、特に蚕糸業振興審議会等の適当の機関あるいは学識経験の深い方々を中心として十分検討いたしますということを再三言明されております。ところが、今日までの事情を見ると、あるいは私の方で不勉強かも存じませんけれども、ごうもそういったことをやっておるという経過もなければ、発表されたこともない。特に、今回のように臨時措置法の改正案を策定しなければならないというような蚕糸業界の異常な激変にあって、政策的にも私は重大な転機に当面しておるものと見るべきだと思うのであります。こういう事態になったにもかかわらず、特に、本年六月に新しく制定せられたはずの蚕糸業振興審議会は、いまだ顔合わせの第一回の会合すら開いてない。一体、こういうことは、二十九国会における大臣あるいは当路者の言明に対して、ほんとうに政府に恒久対策を立てる意思があるかどうか、これを疑うのであります。
○福田国務大臣 蚕糸業振興審議会が六月に制定されまして、まだ初会合がないことは、お話の通りであります。私も、政府におきまして成案をすみやかに得て、そしてこの審議会の御審議をわずらわしたい、こういうふうに存じておるわけであります。ところが、御承知のような繭糸価格きわめて異常な状態でございまして、なかなか安定した状態というものの見通しをつかみにくい。従って、その対策につきましてもこれを立てにくいという事情があるわけであります。それにもかかわらず何か対策を立てて対処すべきではないかというふうなお話と承りますが、そういうお話でありますと、審議会を制定以来今日まで一回も開かないということにつきましては、これはどうも怠慢という見方があるいはあるかもしれませんが、きわめて異常な状態でございまして、それで、将来にわたっての大きな政策というものを立てにくい状態であります。もう少し事態の推移を見ましてこれはいたすべきものではあるまいか、かように考えておる次第であります。
○高石委員 価格が暴落して混乱しても異常の状態だし、ようやく安定に向かおうとしておるときでも異常の状態だということになりますと、われわれは、いつをもって平常状態とするか、判断に苦しむのであります。実は、先ほど速記録を朗読した通り、昨年の六月に、臨時措置法と並行して学識経験者なり審議会に諮って相談すると言っておる。一年半たっておる。現実に政府当局は異常の状態と並行してやると言っておる。それに対して今のようなお話では、大臣はともかくとして、特に行政担当者に対してはその誠意を疑う。もちろん、国会における大臣の答弁なり政府委員の答弁なりが目前を糊塗すればいいということになるかもしれませんが、特に先ほど大臣が述べた恒久対策のごときは、わが吉川委員がこの委員会で数度指摘しながら当局者の意見を聞いている、その答弁から一歩も前進していない、こう考えるのであります。今までのことは別といたしまして、今の大臣の御答弁のように異常な状態だからこそ、政府が責任を負って蚕糸業界全般に対する寄りどころのあるような一つの恒久対策を立てるために、今後はたして審議会なりあるいは学識経験者なりを招集するなりしてほんとうにこれと並行して対策を立てる意思があるのかどうか、これを聞きたいのであります。
○福田国務大臣 もちろんそういう方向に持っていきたいと思うのです。なるべくすみやかに振興審議会、これはきまったことでございますから、この各位に御審議をわずらわすための準備を私ども進めたい、かように考えております。
○高石委員 わが福田大臣はいいかげんなことは言わぬと思いますから、決して異常だから見当がつかないなんということをおっしゃらず、異常なればこそわれわれはいろいろな原因を検討して対策を立てるに持ってこいの機会だと思う。こういうときこそ衆知を集めて蚕糸業全般をほんとうに考えなければならぬと思います。ぜひ今の言明が実視されることを期待いたします。 そこで、とりあえずの問題ですが、政策の方向と申しますか、根本対策を立てるについての方向と申しますか、最近蚕糸局が蚕糸業安定のための検討資料というものを発表いたしまして、現状を分析したり問題点を指摘したりということは大へん参考になったのでありますが、そういうことも含めまして、一体、政府当局として、蚕糸業の重要であることは認められておるが、しからば、この蚕糸業を今後現状をこのまま維持していくのか、それとも、この検討資料にありました通り、どうも蚕糸業の性格は不安定である、不安定なるがゆえに、これを安定せしめるために、いわゆる縮小均衡のような方向でこれから政策を立てていくのか、それとも、従来の蚕糸業の日本における経済的あるいは社会的万般の重要性を認識されて、いま一段、蚕糸業の発展をはばむようなものに対しまして除去する方策を考えるとともに、拡大振興の方法をとるのか、詰めて言えば、現状維持か、縮小均衡か、それとも拡大振興の線にいくのか、これを一つ承りたいのであります。
○福田国務大臣 これはもとより拡大振興の第三のお話の線でございます。それにはまず何よりも需要の開拓をしなければならぬわけです。その需要で最も大事なのは海外市場である、私はかように考えておるわけであります。そういうようなことから海外への宣伝等につきましても努力をしておるわけでございますが、特に市場としてきわめて重大に考えますのはアメリカの市場でございます。それで、アメリカにおける日本生糸の需要につきましては、申し上げるまでもなく戦争で非常に大きな断層を来たしておるわけでございます。私どもも考えまして、これが回復できるものであるかどうか、今日は決して回復されておるとは申せないような状況じゃないかというふうに考えておりますが、生活嗜好に対するアメリカのいろいろな好みなりというものもずいぶん変わりつつあるような状況もあるようでございます。生糸につきましてもだんだんと再認識をされつつあるような状況もあるわけでございます。さような方向に大きく努力をする。また、国内におきましても、まず、繭につきましては、その生産費をなるべく安く済ませるような経営の合理化ということにも努力をしなければならぬし、また、製糸業におきましても、同様に、近代設備をもってコストを下げていくという努力をしなければならぬ。一つは需要の開拓、また価格の安定、さらに生産の合理化というような、各種の要素と相待ちまして、何とかして昔のような重要な産業として育成するというのが私どもの念願でございます。しかし、一挙にそこまでいくわけにいきませんから、これは徐々にそういう方向に向かって一歩々々政策を進めていくほかはないと思います。
○高石委員 ただいまの拡大振興に持っていくという御意見について、それから幾つかの問題も出ると思いますが、このことはしばらく触れずにおきまして、同じく方向の一つとして、これは再三論議され、特に昨年においては、繭の最低価格を維持して養蚕家をぜひ擁護したいということで、農業振興政策の上からいたしましてそういうような方向を強く打ち出されたのでありますが、今後蚕糸業の政策を樹立する上において、もちろん、蚕糸業が、流通部門は別といたしまして、種なり繭なり生糸なり、これがうまく総合的にいけばいいのですが、遺憾ながら今日までの長い歴史的行きがかり上うまくいかない、こういう点について、一体、この養蚕業というものに対して繭を生産する方のいわゆる農家、農業の方面を主としていくのか、それとも、最近いろいろの見地から言われている通り、今大臣もしきりにおっしゃる生糸の消費者あるいは需要者、こういう方面の言うことも十分考えていくということでありますが、一体そういった需給均衡という方面に重点を置くのか。養蚕農家というものに重きを置きながら並行して、おそらくそうおっしゃると思うのですが、そういうあいまいなことでなく、これはすべての問題の基本的な問題となるものだと思うのでありますが、一体、生産者本位、いわゆる養蚕業者、生産者本位でいくか、それとも、製糸業者、消費者、需要者を本位にしていくのか、どういう方向でいくのでありますか。これを伺っておきたい。
○福田国務大臣 もとより、終局の目標は、日本の生産者、これの生活を向上し安定せしめるというところに置かなければならぬと思います。しかし、御承知のように、世界の需要が戦前のような状況じゃありませんので、これを逐次回復していかなければならぬというふうな過渡的段階に今あるわけでございます。さような段階におきましては、やはり需要の開拓というところにも大きな努力目標を置かなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。終局の念願、目標といたしましては、日本のこれに従事する人々の生活の安定、向上、これにあるわけでございます。
○高石委員 その点についてもいろいろ意見があろうかと思いますが、それは後ほど伺うことにいたしまして、さらに進んでいきたいと思います。 蚕糸業界に対するところの価格対策を見ますのに、先ほど御説明にあった通り、いわゆる価格の安定ということを大きな柱としているということは疑いない。現行の繭糸価格安定法にせよ、また、これを裏づけるところの糸価安定特別会計法にせよ、制度としては蚕糸業をささえてきた基本的なものであるということはわかるのですが、しかし、この安定法を中心としたこの制度も、一昨年来の蚕糸業界の混乱によってこの制度自体に対する種々な批判が出ていることも事実であります。現に臨時措置法それ自身がそういった批判の中から生まれたのじゃないかと思われるのでありますが、この審議の過程において、時の農林大臣はこう言っておるのです。「事情もだんだん変わって参りまして、旧来の制度そのものを持続すべきかどうかは検討を要すべき問題である。」、また、時の蚕糸局長はこう言っております。「現行のままの形において将来続けていくかどうかということについては十分検討を要する次第で、政府部内においてもよりより相談中である。」、さらに、大蔵大臣に至りましては、「今までのあり方は糸だけの問題で、糸だけの価格安定の措置をとったのではどうも関係業者の利益を確保することはできない。そこで、糸価安定法とはやや変った方法で価格維持に乗り出したというのが今回の政府の態度である。」、こういうことすら断言しておるのであります。こういう昨年来の政府の考え方なり措置なりから考えまして、この価格安定の現制度に対して、政府は、こういう言明と対照して、同じような気持でいるのか、これではだめだというふうに考えているのか、改善する必要があると考えているのか、この点をはっきりさせていただきたい。
○福田国務大臣 ただいま高石委員の読み上げられました問答は、生糸の市場がきわめて不況のときに、その背景におきましていろいろ交換されておる言葉かと存じます。今日非常に様子が変わってきておるわけです。さようなことでございまするが、繭糸価格安定の制度の根本におきましてどうのこうのということは、私は今意見としては持っておりません。しかしながら、先ほども御指摘のありましたような、今後生糸、繭を通じましてどういうふうに積極的な恒久方策を立てるかという問題がありますので、これとも関連いたしまして十分討議されなければならぬ、かように考えておるわけであります。
○高石委員 当時の蚕糸業界の背景がそうさせたのだから、今になればその言明は必ずしも当たっていないというふうにもとれますが、しかし、それだからわれわれは心配しておるのであって、現象々々を追うてその場その場の政策だけが考えられておって、基本的な根本的な恒久対策を立てなければいかぬという要望に対して、それも業界だけじゃなく、政界、経済界一般の熾烈な要望に対して、ただ情勢の変化だけで、政府の施策が、しかも根本的な価格安定制度に対するところの考え方が違うということに至っては、われわれもちょっとその点は納得いたしかねるのでありますが、しかし、それはそれといたしまして、それならば、今大臣の言明の通り、あの異常な状態において繭糸価格安定に関するところの臨時措置法が生まれたのだ、そうして、その措置法が生まれたということは、当時だいぶ議論になったのでありますが、繭糸価格安定法であるにかかわらず、なぜあえてこの運用によらないで特別立法をしたかということについてもかなりの論議がかわされた。そのときに、政府は、直面している糸価の低迷の状況は、言うまでもなく供給の絶対過剰、大へん異例な状態のもとにおいて引き起こされたのだから、現行制度のような輸出価格の安定をねらっておるきわめて弾力性のないものではこれに対処するには不適当である、だから需要の動向を弾力的に運用できるような制度が必要だから特別立法したのだ、これは佐藤大蔵大臣の言明であります。そしてそのまま直ちに三十四年度に延長された法律でありますけれども、この臨時措置法というものは、当時、内外の経済情勢と、両年度にわたる繭糸の増産等によって生糸の供給が著しく増加し、価格が下がったという事情にあるので、安定法できめたところの最低価格、生糸十九万円、繭十万円をどうしても維持しようとする必要から臨時立法したものであって、その内容としては、余っている生糸を市場から買い上げるとか、あるいはまた養蚕農家に安定した繭価を保障しようと努力したことは間違いない。つまり、同じように当時の蚕糸局長の言葉をかりて言うならば、「今回の措置は農家の繭収入の確保をはかることと生糸の生産制限の励行が行なわれますことを大きな目的としており、この二つの条件が満たされるように努力をしたのであります。」、こう言っております。しかるに、こうまでして十九万円を支持しようと内外に声明して、政府は必死の施策をしたにかかわらず、ついに経済界の実勢というものには負けてしまった。抗し切れない。ことに、夏秋蚕繭の出回りにつれまして、要求したいわゆる二割の生産制限も十分達しない。しかも生糸価格は低落の一途をたどり、ついに繭糸最低価格維持策を放棄してしまって、いわゆる実勢価格水準の見通しをつけた上で、安定法の従来の最高・最低、二十三万・十九万というものを、十八万と十四万に改定する措置をとらないわけにいかなくなってしまったのだ。こういうふうに考えてみますと、いわゆる養蚕の方から積み上げて価格の安定をはかろうとしたのが、臨時措置法、続いてその後とられた政府の一貫した方策であって、いわばこの臨時措置法の立法の精神——精神論は今言うなというようなことも言われるようでありますが、いわば、この臨時措置法というものは、最低価格、生糸十九万円、繭十万円を維持したいということが本来のねらいであって、そのねらいでありながら、その中途において、最低は十四万だ、最高は十八万だというふうになってしまった、こいう実情であります。ですから、どうしても、臨時措置法というものは、生糸の十九万、あるいは繭の十万円の支持を期待した法律であると言うことができる。ところが、本年五月以降、ことに最近の蚕糸業界をめぐる情勢は、政府もごらんになった通り、非常に好転してきた、改善してきた、こう言われる。それで、臨時措置法の発動によって買い入れたところの生糸は、やはり臨時措置法そのままの姿において最高価格十八万で売れておる、こういう現状である。 そこで、承りたいのでありますが、臨時措置法を発動してから、政府はどのくらいのものを買い上げて、その繭の値段はどうなっておるのか。同じように、春、夏、秋の繭、この関係はどうなっておるか。数量及び値段の問題はどうなっておるのか。そうして売り渡しはどうなっておるのか。一応臨時措置法を施行した大体の経過について承りたい。
○大澤(融)政府委員 臨時措置法を施行いたしましてから、昨年の春繭を繭の形で買いましたものが百三十万貫、その後十九万円で糸を買いましたものが四万九千俵程度でございます。そして、これはわずか残っておりますが、ほとんど全部をことしの四月以降で糸は売り尽くしております。さらに、百三十万貫の繭は、ことしの二月の末に、繭を渡して糸を持ってきてもらう、その差額の加工差金と申しますか、加工費に相当するものですが、それの入札をして渡しまして、政府の手に交換生糸として戻ってくる数量としましては約一万二千俵、それが今日までのところ戻ってきておりますのが約五千俵でございます。
○高石委員 先ほど申した通り、臨時措置法というものは特殊立法で、ほんとうのねらいは繭をきめた値段で支持したいということだと思う。その後いわゆる実勢価格につれて値段を引き下げておりますけれども、これはやむを得ずしてそうなったのでありまして、それが現在十九万円台にとにかく生糸の実勢価格は戻ってきている。この十九万円が自然的であるか人為的であるかということについては、いろいろな意見もあるが、とにかく、一応あれだけの措置をして、そして現在戻ってきているということになれば、一応臨時措置法を制定した使命は終わったのではないか。それなら、これは本来の法律である繭糸価格安定法によってこの際措置するのが当然ではないか。これを一つ伺いたい。
○大澤(融)政府委員 昨年の六月に臨時措置法ができまして、昨年産の糸及び繭の安定をはかるということでございましたが、その後ああいうような諸種の事情がございまして、さらにこれを一年延長して三十四年産の繭と糸との安定をはかるということにこの前の国会で改正を願って、本年度は臨時措置法で一年間繭糸の安定をはかっていく、こういうことにいたしておるわけでございまして、そういう意味で、この法律でことし一年は処置をして参る、こういうふうに考えております。
○高石委員 そうすると、私どもちょっとわからないことが出てくるのです。臨時措置法がどういう実績過程をたどったにせよ、現在は制定前の状態に復帰したのだから、普通の考え方から言えば、立法措置の原因が消滅し新たなる事態に当面した場合には、新たな事態として考えるのが普通だと思う。ですから、一応この臨時措置法の適用は中止してやるのがほんとうではないか。ということは、これも私の意見ではない。政府の意見そのままを全部私は引用しているのです。現に三浦前農林大臣は昨年十月二十四日の本委員会において、今春以来の事情にかんがみまして安定法の適用はこれを中止し、その弾力ある措置をしたいというので臨時措置法の制定によってやるのである、こう言っているのですよ。この事態に応じて安定法の適用は中止するのだと言っている。それでもいろいろな同僚委員の追及に対しましては、事情変遷による対策だという一点張りで逃げている。そうしますと、今お話しの通り、臨時措置法は去年もことしも現実にやることになっているからそれでいいではないか、安定法というものは適用を中止しているのだ、臨時措置法によってやるのだ、こう言うけれども、それなら一つ伺いたいが、政府は、十一月十六日に、生糸市況を押えるために、安定法によって保管している生糸を同法十二条の買いかえ条項を適用して横浜に大胆と思えるくらいに公募して四千五百俵を売り出している。国会において責任ある大臣が安定法の適用を中止すると言明したのにかかわらず、さらにまた、安定法による保管生糸は最高が二十三万円でなければ売れないから臨時措置法の改正法律案を出して、その審議に入る前にこういう本法を適用するというのは、一体どういうことであるか。しかも、承れば——寡聞にして間違うかもしれませんが、この安定法の十二条によって売る場合にも、安定法を運用する上において重要な機関であるところの繭糸価格安定審議会にも諮っていない。今の局長の答弁は、本年度は臨時措置法でやるのだと言う。それならなぜこういうことができるのか、はっきり御説明願いたい。
○大澤(融)政府委員 昨年の三浦大臣の表現でございますが、これは、価格の安定をするために、買い入れるというようなことにつきましては、安定法を中止して臨時措置法でやるのだという意味だったと思います。そこで、安定法のすべての条文が臨時措置法によって眠っているわけではございませんので、先般やりました買いかえのお話がございましたが、十二条だったと思いますが、政府が持っております生糸の買いかえをやり得るという制度がございますが、これはこの条文でその趣旨に沿ってやり得ることになっているわけであります。
○高石委員 その問題はいろいろ論議があるが、あとで同僚諸君がたくさんやるだろうからあとにとっておきますが、そこで、それならば、十二条による買いかえ、売り渡しですが、この法文を見ますと、貯蔵、加工、整理の必要のある場合、それから新規の用途あるいは販路の開拓のための売り渡しというほかに、生糸の種類及び繊度を同じくする他の生糸に買いかえるというように、売り渡しには三つありますが、今度の場合はどれに当たるのですか。
○大澤(融)政府委員 この条文そのままに当たるわけでございます。買いかえと申しますのは、売り渡しをすることと、買い入れをする、こういう行為が組み合わさった買いかえ、こういうことになるわけでございます。先般いたしましたのは、買いかえをするための売り渡しをしたわけであります。従いまして、今後買いかえのための買い入れをする。買い入れるときには何を買い入れるかというと、ここに書いてありますように、先般売り渡しました生糸の種類及び繊度を同じくするほかの生糸を買い入れる、こういうことになるわけであります。
○高石委員 そうすると、これは同時期と言っておりますが、一体政府は同時期をいつごろに予定しているのか。
○大澤(融)政府委員 同時期と申しますのは、同時と同時期は違うと思います。そこにゆとりのある幅があると思います。生糸の需給事情なり、あるいは買いかえ措置をする数量なりというものに従って、買いかえの同時期ということは判断して参りたいと思っております。
○高石委員 その時期については、またこれもいろいろ問題がありましょう。これも同僚諸君の追及にまかせておきます。 そこで、一体大臣は、もし不幸にして同時期に買いかえができない、あるいは同じ価格で買えない、同じ種類が買えないという事態が起こったら、どうするのですか。
○福田国務大臣 この買いかえ措置は、ただいま蚕糸局長からお話し申し上げましたように、法第十二条によりまして行なっておるものです。しかしながら、法第十二条によるとはいうけれども、一方において若干価格維持政策的な要素もあろうかというふうに思うわけです。さような色彩が強いということであってはならないわけなんです。これを無制限に適用するということになりますると、やや行き過ぎの観がある。これは高田議員からも御指摘を受けたわけなんですが、この措置は、さようなことも考慮いたしましてただいま取りやめをいたしておるのです。しかし、私どもといたしましては、需給の状況等を見ていつの日にか適正な価格で買いかえる、かように確信を持っている次第でございます。
○高石委員 確信々々は去年来もう聞きあきているし、間違ってもしようがないことになっているから、できれば大臣の言うことが通るようにお願いしたいのです。先ほどの大臣並びに局長の御答弁から察しまして、法律の適用は政府が随意に解釈するらしい。前の大臣は安定法の適用を中止すると言った。われわれは、常識から言えば、適用を中止するといえば、臨時措置法ができれば全面的にこれによるだろうと思っていた。そういう条件に合わない場合は安定法によるんだということも、われわれは理解しておりません。納得しておりません。 同時に、御答弁がなかったのですが、なぜこれだけの情勢の変化による、しかも安定法によるところの十二条の買いかえをする場合に審議会にはからなかったか。同時に、こういった重大な法案の審議の過程においてあえて政府の責任においてこれをやったか。この点について一つ責任ある答弁を願っておきたい。 〔委員長退席、永田委員長代理着席〕
○大澤(融)政府委員 実は、生糸は、御存じの通りその年度に作られたものがその年度に取引されていくというのが通常の状態でございます。そこで、三十年ごろから生糸を買っておるわけでございますが、三十年に買いましたものは、できることならば三十一年にはもう買いかえをして新しい生糸として持っておきたい、こういうことが物品管理上からしかるべきと思うのであります。ところが、三十年からずっと毎年生糸を最低価格で買わなければならないという年が昨年まで続いたわけです。そこで、政府は早く買いかえをしたいという気持を持っておったわけでございますが、そういう時期がなかったのです。そこで、今のように生糸の需給関係が強くて、これを市場に放出をいたしましても値段を下げたり何かするというような悪影響はこういうときにこそない、こういうときにこそ買いかえのための売り渡しをするのに最も適当なときだというふうに判断してやったわけであります。
○高石委員 それで審議会に諮らなかったわけですか。
○大澤(融)政府委員 この条文でやります整理売却のためとかあるいは買いかえのための売り渡しあるいは買い入れというようなことを、安定審議会に必ずしも諮るべき事項だというふうには私どもは考えておりません。従来から整理売却等につきましては行政上の立場でやっております。
○高石委員 そうすると、なお疑問になってきたのですが、今度の買いかえは純然たる品種を更改するということもあるかもしれませんが、しかし、実際は市況を押えるという目的じゃないのですか。そうだとすると、こういうときにはあまり無理な説明をせぬで率直に言った方がいいと思うのですがね。
○大澤(融)政府委員 買いかえでございますので、純粋に物品管理の立場から、市況に悪影響のないようにということでやっております。
○高石委員 大臣にお伺いいたしますが、なぜここで中止したのですか。
○大澤(融)政府委員 そのやります過程で、売った糸が、これは誇大に宣伝をされておるようでありますが、ほんの一部につきまして、プレミアムがついて売れるというようなことでありまして、むしろ、糸価の上げ材料と申しますか、燃えぐさといいますか、そういうような逆効果を来たしましたので、そういうことを見て中止をいたしたのであります。
○高石委員 与党の立場ですから、ある程度政府の立場もわからぬわけじゃないけれども、しかし、これはあくまで納得できない。いわゆる詭弁であります。政策というものは正直にやらなければいけない。安定法が施行されて日本の蚕糸業界というものは海外の信用を博しておるのだ。現に提案理由の説明に書いてある。そうでしょう。この安定法によって政府が最高・最低を保障しているので、安心して取引が行なわれているのだ。この安心して取引が行なわれるということは、法律と、法律を裏づけするところの行政がなければならぬ。それが正直に行なわれるからそういうことに行っている。しかし、その場その場の事象に応じ、その場その場の事情によって適当に法が任意に解釈されるというに至っては、これは糸価安定に対する根本的な制度の信憑性というものが私は問題になると思う。やはり、だれが聞いてももっともだという施策でなければ、ほんとうの信頼は得られないと思うのです。かような意味において、ことに、今お話し一の通り、普通の買いかえだから審議会に諮らなくてもいいと言うけれども、しかし、普通の買いかえだとだれが見ますか。そんなことを思うのは、局長、あなた一人だ。そういうことになれば結局これは審議会を無視したのだ。あるいは、国会でこの問題を審議の過程においてこういう乱暴なことをするのだから、まことにタイムリーが悪い。国会無視であるという議論あるいは意見、批判が出るのは当然だと思う。これについて、局長でなく大臣の一つ明確な見解を承っておきたい。
○福田国務大臣 先ほども申し上げましたように、法第十二条による措置をやったのだけれども、これが生糸の価格政策に関連があるという実体的な問題があるわけなんです。この色彩が強過ぎるということでありますと、法第十二条によってさような買いかえをやるというに適当でない、かように考えましたので、直ちにこれを取りやめる、かようにいたした次第であります。
○高石委員 それはその程度にいたしまして、そこで、臨時措置法の運営の問題であります。 これは、あの立法の審議の道程において、とにかく繭糸価格の異例の暴落を防止しよう、そして蚕糸業の安定をはかろうということに主眼を置いてあった。従いまして、この法案審議の過程におきまして、何人もこんなに早く市況が回復するとかあるいは十九万円を上回るような価格が出てこようとは思っていなかったはずなのです。従いまして、私もいろいろ調べてみたのでありますが、同法第四条あるいは第六条、いわゆる売り渡しに関するところの条項というものは、質疑も論議もほとんど行なわれてないのですね。こういうことは全く予想しない条項であった。政府はそのくらい考えておられるのでしょうけれども、一体、政府自体、こういうことを予想してこの条項を入れたのか、それとも、立法の過程において、買ったものを売らなければならぬという立法の形態を整える上においてやったのか、ほんとうにこれをどういうふうに適用するかということも考えられてやったのか、これを承りたい。
○大澤(融)政府委員 もちろん、三十三年にこの法律が立案され、御審議されたときは、第一条の目的が三十三年の繭と生糸の安定をはかるということでございましたから、当時は低い価格が問題になっておったわけです。そこで、当時の皆さんの予想としては、低い価格の安定のためにということでこの法律ができたと思いますけれども、しかし、買ったものを売る、あるいはまたどういう売り方をするというような問題も一方にあるので、第六条のような規定があったのだ、私、こういうふうに思っております。
○高石委員 そこで、これは法律がそうなのだから、状況が変化した現在の段階においては売り方についていろいろ心配しなければならない。法律があるのだからやむを得ないのでありますが、しかし、政治常識として、とにかく、臨時措置法は、最低価格をいかにして維持するか、——維持できないから最低価格を変更したので、それほどまでやった法律の、審議の過程と、またその運用の際におきまして、この逆の現象、価格が高騰してきて抑制する場合というものはほとんど考えられてなかったはずであるが、こういう立法の精神と過程と、そして、背景をなすところの実勢が変化したということについては、変化それ自体に対しまして、売り渡しをするということをきめるについては、あらためてそれぞれの機関に諮り、明確な見通しなり、その条件なりをはっきりさせなければいけない。そういう意味において審議会なり会議体というものが持たれておるのだと思うのです。 そこで、きょう十八回の繭糸価格安定審議会の速記録が配付されたのですが、内容を見るひまがありませんから何とも言えないのでありますが、市場に不安感を与えないために売り渡しのルールをきめるということですが、本年三月繭糸価格安定審議会の議を経た売り渡しのルールというのは一体どういうことであるか、これを説明してもらいたい。
○大澤(融)政府委員 臨時措置法によって買いました糸が、先ほど申し上げましたように四万九千俵余りあります。それから交換生糸として入ってくるものもあるわけです。第六条によりますならば、これをいついかなるときにでも政府は勝手に売り出していいわけです。しかし、そのようなことをこの大量の生糸についてするということは、市況を混乱させるわけです。そこで、生糸の取引その他に関係されている方々は、政府の手持ちの糸がいついかなるときにどういうルールで市場に放出されるかということが明らかになっておれば安心をしておられるわけです。そこで、そういう必要もあって、このルールを安定審議会に相談をいたしましてきめた、こういうことでございます。
○高石委員 そのいわゆる売り渡しのルールというのはどういうのですか。最後だけ拝見したのでありますが、「売り渡し方法については、政府は本審議会において述べられた意見を十分考慮して、慎重に善処せられたい。」、こういうふうにやってある。慎重に善処せられた結果の売り渡し方法、売り渡し時期は、どういうふうにいわゆるルールをきめたのですか。もう少し明確にしてもらいたい。
○大澤(融)政府委員 速記録の十二ページでございますが、ここに政府の案として出しましたルールが載っております。ちょっと読み上げますと、「臨時措置法による生糸の売渡方法について。繭糸価格の安定に関する臨時措置法の規定により、政府または日本輸出生糸保管株式会社が保有する生糸については、下記によって売り渡すものとする。1、政府または会社は申込に応じて、標準価格で、法によって保有する生糸を売り渡す。2、前項の標準価格は、標準生糸については一キログラム当り三千円とし、標準生糸以外の生糸については、標準生糸の標準価格に買入の申込があった日に適用されている繭糸価格安定法施行令第七条の規定により公示された格差金を加減して得た額とする。3、この措置は、昭和三十四年四月一日から昭和三十五年五月三十一日まで適用する。」、こういうことでございます。この原案を出しまして、この速記録をごらんになっていただきますと、いろいろ御議論があったわけですが、さらに、懇談会と申しますか秘密会と申しますか、そういうようなことで、数時間にわたって、十九万円がいいか十八万円がいいかというような御議論がいろいろあったわけですが、その結果、大体皆さん十八万円ぐらいというようなお気持になったところで、一番しまいの五十ページに書いてありますようなことで意見をきめて政府に言った、こういういきさつでございます。
○高石委員 大体その経過はわかりましたが、それなら、そのときの背景をなす蚕糸業界、特に生糸価格はどんな状態であったのかということが一つと、それから、にもかかわらず、安定法により保管しております生糸は最高二十三万である、これは残しておく、こういう一連の関係はどうなんですか。
○大澤(融)政府委員 そのときの事態といたしましては、臨時措置法のが四万九千俵、あるいは交換糸の一万何千俵というものが十八万円で売られるならば、本生糸年度の間は十四万円・十八万円で安定化するであろうという見通しであったと思います。そこで、安定法の方の糸は、審議の過程でもこういうことを審議させるのはナンセンスじゃないかというような御意見もいろいろあったわけですが、ノミナルなものとして二十三万円そのまま据え置いて安定法による最高価格ということにしておいたわけでございます。実質的には十八万円が最高価格であるということで、この速記録をごらんになっていただけば随所に出てくると思いますか、そういう考え方でございます。
○高石委員 それでは、現在は、一応十八万円・十四万円のほかに二十三万出という最高価格が厳としてある、こういうことですね。
○大澤(融)政府委員 その通りでございます。
○高石委員 そうすると、これは多少政治的になり、行政の範囲を逸脱するかもしれませんけれども、一体、それでは、政府はほんとうにこの臨時措置法で買い上げたものを十八万円で出せば必ず生糸市場は安定するとかあるいは下がるという見通しを持って最初からおかかりになったのかどうか、これを承りたい。
○大澤(融)政府委員 当時としてはその通りでございます。皆様もそういうお気持であったと思います。
○高石委員 十八万円になった、申し込みがあった、それだから売った、これが簡単な経過だと思うのです。これでは、とても、何と申しますか、政治というものがないですね。行政というものがないですね。ただ申し込みがあった、そして売った、なくなった、こういう過程にすぎない。 そこで、それならもう一ぺん承るのでありますが、これだけの大騒ぎをして、そして蚕糸業界のみならず政府も国会も全部が対策に苦慮して今日までやってきたのだが、臨時措置法によって買ったものを売って、売り尽くしても、なおかつ市況が十八万円をオーバーするという情勢に対して、一体政府は、行政上この辺で考えなければならぬのだという——ちょうど、昨年十九万で買うだけ買ったけれども、どうしてもしょうがなくなっちゃって、仕方がないから実勢の水準の安定するのを待って再び審議会にかけて値段を直したという事実があるのだから、手持ちの十八万円を売り尽くした、しかもなお高いというときには、この場合にちょうど昨年と同じような実勢を見きわめるという政治的なり行政的なる配慮があってしかるべきだと考えるのですが、一体大臣はどうですか。
○福田国務大臣 それはもちろんさような事態を見きわめて参るという努力をしなければならぬし、また現に最善を尽くしてそれをやっているのです。ただ、御承知のように、今、法案は審議されておる過程であるし、また経済界も異常な上昇過程をたどっておる、さようなわけで実態が実はつかみにくい状態があるわけですね。さような状態下において今こういう論議が進められておるわけなんであります。私どもこれは最善を尽くして努力はしているのです。
○高石委員 それがどうもわれわれと違う政治感覚、行政運用であって、十八万で持っていたものは売り尽くしちゃったのでしょう。売り尽くしてなおそういう、実勢なんでしょう。もしこれが、仮定の問題で恐縮だが、安定法でもって五万俵なかったと仮定します。五万俵がなかったとしたら、この事態に対してどう考えますか。
○福田国務大臣 これは、本年の生糸の需給状況を見ますると、約六万俵くらいですか政府生糸を放出しましたが、なお供給が不足の状態である、かように考えているのです。従いまして、生糸の値段というものは相当高値を呼ぶのではあるまいかというふうに考えるわけなんです。そうすると、どういう影響になるかというと、おそらく、合成繊維、化学繊維、そういうところと競合する部面におきましては生糸需要が非常に減退してくるという傾向が出てくる。それからまた、海外市場等におきましても日本の生糸に対する買い控えという事情が出てくるのじゃないか。さようなことで、その次に来たる段階の需給状態というようなものは、これはきわめて不利な状態になるのではないか、こういうふうに考えるわけなんです。そこで、私どもといたしましては、さような段階は来ておりますが、ここはしっかり将来の事情を見きわめた上で価格政策は処置すべきものである、かような考えを持っております。
○高石委員 大臣の御意見は同感です。同感だからこそ心配するのです。それは、最低価格を支持するということについては、たとえば法律を作るにおきましても、一応予算を編成しなければならぬ、国会の審議にかけなければならぬ、こういう段階があると同時に、そういう日本の養蚕農家を擁護する、こういう万人が納得する事情がある。さらに、そのほかに、最低価格を支持することによって業界の安定をはかるとか、価格を維持する、こういうことがある。しかし、現物を売る場合は遺憾ながらそういった論議ができない。それで、先ほど承れば、現在の値段はいろいろな経費を入れると二十万からについているでしょう。約二万円、全部で約十億の金を——金ではありませんよ、品物だから。最低価格で買う場合は、とにかく、安くなっても、十九万で買ったって物がある。評価しておればそれで一応済む。しかし、売る場合は現実になくなっちゃうんですね。そうでしょう。国家がこれだけの犠牲を払って、これだけの苦心をして確保ところの品物を処分するにおいて、これは国会の審議の必要はない、法律で売ることができるから売るのだという、こういう簡単な考え方でやるということが、行政当局とて不謹慎であり、不用意である。ことに、大臣が今おっしゃった通り、ほんとうに将来の蚕糸業を考え、生糸の重大な安定をはかるというなら、政府だけの考えでなく、大事なこの審議会なりあるのだから、いよいよ持っているものを売り尽くしちゃったが、なお市況はこうであるがということについてなぜ再検討し、再審議するだけのお考えなり処置なりできなかったかということを重ねてお伺いするのであります。
○大澤(融)政府委員 臨時措置法を昨年国会で御審議をお願いいたすときも、安定審議会あるいは振興審議会に御相談はしなかったように私記憶しております。そこで、今のお話でございますが、臨時措置法の糸を売り尽くしてこういう状態なら、そこで価格の変更なり何なりをすべきではないか、こういう御意見だと思うのでありますが、私どもは、安定法の糸がさらに数万俵ありまして、売るべきものがなおあるのにかかわらず、ここで価格を改定するということはしてはならないことだ、また、臨時措置法の糸を売れるものがなくなったからこそ、あとの糸も同じような価格で売れるようにという法律改正の御審議を今ここでお願いしているわけでございます。
○高石委員 私の言うのは、とにかく、そういう情勢が非常に変化した。昨年は、異常の情勢だから十九万円の支持価格政策を放棄して、そうして、成り行きを見て実勢に即して標準を見きわめてその上で政府としては考えたい、そのために従来のような弾力のない法律ではだめなんだからその運用をするのだということを言ったのです。私は、対象が変わっても法律それ自身の精神は変わらないと思うのだ。それだから、こういう事態にあたっては、必要があるとかないとかいうことは、法律の技術的な点は別として、いわゆるこういった生きた政治、生きた行政を担当する者としては一応考えるのが普通じゃないか、こういうのが私の見解であります。 しかし、これはいつまで話してもしようがありませんから、その次に移りますが、一体、そうなるとすれば、五万俵持っておるにかかわらず売らないということはかえって不信を起こすから十八万円で売るのだということであります。しかし、わずか一年前には、保管、買い入れ合わせて十万俵の生糸をたな上げにしても最低価格をささえ切れなかった。それで、結局情勢を見きわめて最低価格を改定している。それが価格転換の動機となって需要も増進したということは、だれが見てもそうだと思うのだ。ですから、今日の場合すでに十八万円で五万俵売り尽くしてしまって、あと五万俵を十八万円で出そう出そうと言っているにもかかわらず、なお実勢というものは非常に上回っておる。でありますから、こうなれば、昨年の場合を異例の情勢と判定したならば、一応今回の場合も同じく異例の場合と判断すべきが政治常識でないか、こう思うのです。ところが、昨年の場合も、おれの方は確信がある確信があると言ってとうとうああなってしまったと同じように、どうも十八万円で出せば必ず安定するのだという自分の考えを正確なものとして過信する、そうしてその主張を貫くということは私は非常に危険だと思うのです。生糸の十九万円、繭の千四百円の支持に政府も国会もあれだけ努力したのに、実勢に背かれて国の内外の非難の中心になったということは、ある程度こういう問題については政策の限界がある、あるいはまた判断にある程度の限界があるということはわれわれは認めなければならぬ。現に、三浦大臣がどう言っているか。前のことを言っては恐縮でございますが、情勢が違うのだ違うのだということを言わずにもらいたい。それはあなた方があくまでもあのときの約束をやっていないからだ。恒久対策を立てないからだ。発表していないからこそわれわれは言うのでありますが、三浦大臣は、現在の安定法の中心は、売れない糸をかかえ込んで無限に買わなければならぬという情勢であるから、かようなことはいかに何でも政府の財政支出をもってこれをささえるわけにいかない、だから、これは、一つの実勢価格を見まして、それに即応して経済的に流通し得る体制に導いていかなければならないと言っている。大蔵大臣は、過去において十九万円を底値にしていろいろ準備を進めてきたが、なかなかそれが維持できない、とにかく、経済の問題は、一つのねらいを持って、そうして価格の安定をし、各方面に及ぼす影響を最小限度にとどめる、影響をとどめるばかりではいけない、産業の基盤を強固にする、こういう考えでとにかく取り組んでいるのが現在の政府の立場である、こういうふうに言っておるのであります。従いまして、私どもは、こういう言葉で言った以上、今日五万俵出し、あと五万俵出そうとしても実勢価格を押えることができない、これを異常の状態と考えて、今、両大臣が前国会において言明したように、やはり実勢を十分考えて後に処置するということの方が、責任ある、また親切な行政ではないか、こう思うのでありますが、もう一点この点について大臣から所見を承りたい。
○福田国務大臣 昨年の春までの約一カ年半の事態がきわめて異常であるということは、高石委員お説の通りであります。今日の事態もまた、まことに重要というか、相対照的な意味におきまして異常な状態であるというふうに考えておるわけであります。昨年までのああいう事態を繰り返さないというのが私どもの念願なんです。何とかして蚕繭糸各界とも安定した形に置かれなければならぬというのが私どもの願いです。さようなことから慎重にかまえておる次第でございまして、価格の見方というようなことにつきましてもそのような立場からやっておるわけです。 先ほども申し上げましたように、需給は今生糸年度といたしましてはやや供給不足である、私どもかように考えておる。さような事態におきまして何らの供給源がないということでありますれば、ここで価格が高騰し、次に来たる段階はまた暴落をするという、ちょうど昨年の春までの事態のようなことが起こってくることをおそれる。さような意味から今慎重な対策をとっておる、かように御了承願いたいのであります。
○高石委員 結局、野放しにしておいては高くなってしまう、そして、反動が来て去年のようなことになると困るから、この辺で押えたいんだ、この気持はよくわかる。しからば、どうして二十三万円の最高価格のままで保管しておるところの生糸を、臨時措置法を改正してまで何でもかんでも十八万円で売らなければならぬか、この根拠を一つ明確にしてもらわなければならぬ。これを一つはっきりさしてもらいたい。
○大澤(融)政府委員 先ほど来大臣からお話がございましたように、今生糸年度の需給の見通し、これは、数字的には、あと安定法によって買い入れましたものが何がしか補われるということによって、均衡がとれるという見通しが立つわけでございます。そこで、先ほどもお話がございましたように、春の審議会でおきめ願った実質的なことしの最高価格の十八万円、最低価格十四万円、この十四万円・十八万円という安定帯は、政府がさらに持っております糸をこの法律の改正によって今までと同じように売り出せるということになりますれば、十四万・十八万の安定ということが可能であるという見通しのもとに考えておるわけであります。
○高石委員 十八万で確信があるかないかということは、これは議論すればあくまで平行線になると思いますから、この点はまたあとの諸君の追及に保留いたしておきます。 先ほど局長も大臣もおっしゃっておるのだが、安定価格というものは最高価格であるかどうか、この点について政治常識上私は疑問があると思う。十八万円というものは最高価格ですよ。安定帯価格とは、これは大蔵大臣の言葉を借りては悪いけれども、こういうことを昨年十二月十八日の本委員会において言っています。過去の安定帯でもわかるように、最低と最高をきめてきている、そうして実情においてはその中間のところで大体安定をしておったというのが常識である、こうですね。いわゆる安定帯価格というのは、大体現在の価格体制から見ると、最高が十八万円で最低が十四万円、中間の十六万円がちょうどその計画したときの昨年末ごろの実勢と合っているんです。そのときにはこの安定帯価格ということもある程度認められる。十八万と十四万の最高・最低もわかるんだ。しかし、実態としてなぜ最高と最低の間に四万円の幅を持たせたか。この四万円ということが要するに安定帯価格の重要なポイントじゃないですか。ですから、最低が最高に迫ったときは、すでにその実態が安定帯価格を脅かしているわけです。実態が異常なんです。十九万円に来たということが、すでに安定帯価格を割っているんです。と同じように、現在最高を安定価格と見る見方については、もう少し法律的にも行政的にも明快な説明をしてもらわなければ、私、納得できない。現に、大蔵大臣は続いて言っていますよ。いつの間にか需給のバランスがこわれちゃって最低のところになり、その最低を割るようになった、そこでてこ入れが始まったんだ、こう言っている。安定法の適用をあえて中止して、そうして臨時措置法をこしらえたほんとうのねらいがそこにあるとするならば、現在の実勢が最高十八万円を突破しては、一体、この十八万円は、だれが売っても、安定帯価格のうちの安定価であるということは言えないと思うんです。現実にあなた方がよく知っている通り、私はしろうとでよくわかりませんけれども、三十三生糸年度の生産費は、二十万一千円になっていると聞いています。十八万円というのは生産費を現に二万円も切っておる。これを内容的に見ると、最低保障価格の十四万円は、支持率六九・四%である。繭においては六三・六七%である。きわめて低い支持率にきまっている。これは昨年のような異常な状況においてはだれもやむを得ないと納得するでありましょうけれども、これが非常に繭価を圧迫しているとも言えるんであって、昨年と事情が一変した今日においてなおかつ同じ基準をそのまま使っていくということは、一体昨年度の安定価格をきめた事情と今日の実態とは非常に違っていると思うのです。さような意味において、私は、最高価格すなわち安定価格であるということに対して、もう少し明快な説明を求めたい。
○大澤(融)政府委員 価格安定の目的といたしましては、繭、生糸の価格の異常な変動を防止しようということがねらいになっておると思うのであります。そこで、従来から、下値になれば買いささえ、上値になれば手持ちがあれば売り出す、こういう制度でやってきておるわけで、従来は十九万円と二十三万円で四万円の幅があったわけなんです。この四万円の幅をこえるものが、まあ異常な価格の変動であるということだと思います。十四万円・十八万円ときめましたのも、その四万円の幅をそのまま踏襲して、それをこえるものは異常な変動であるという見解のもとに、十八万円になれば売り渡し、十四万円になれば買い入れるということでやってきたわけであります。そこで、十八万円になっておりますので、異常な変動ということで、政府の持っているものを売り出していく、さらに、先ほど申し上げたように、それだけでは済まぬので、あとのものも売れるようにして異常な変動を押えて参る、こういうことでございます。
○高石委員 そこでも根拠が違うものがあるのです。十八万円と異常になっているのだから異常だ。異常だから異常の考え方をしなければならない。それを、なお異常にたてついて、どうして十八万円をあんたの方では——これは政府のものではなく国民のものである。国民のものだからいいというような簡単な考えではないと思いますけれども、とにかく、持っておるからそれを十八万円で売らなければならないと言う。現に異常なことは認めているのでしょう。昨年の異常の事態に対しては買わないのですよ。十九万円で買わないでしょう。異常事態であると思ったから十九万円を放棄して実勢に即したのでしょう。今度は十八万円で売って売って売りまくって、あと売ろうとする。この高い異常に対しては、昨年と同じような行政的、政治的良識をもって当然別な考え方に立つべきではないか。しかも物のあるうちにですよ。下がるときには、幾らでも出しますから買えますよ。上がるときには、大騒ぎをしても、なくなったらどうしますか。あるうちに異常対策を立てることが必要だ。あんた方は異常だから売ってしまう。売ったあとはどうするのですか。ただ確信がある確信があると言う。その確信ある自分の判断にあまりたより過ぎる。それが不見識だというのは、私ども昨年の実績から判断しているのです。この異常に対して、どうして十八万円で売るのが異常の措置なのか。異常の状態だから別な考えをするのが当然ではないか。
○福田国務大臣 異常な事態なものですから、今異常な手段をお願いいたしておるわけなんです。私がさような心配をするのは、今ここで政府が生糸の手持ちがちっともないというようなことでありますれば、何をか言わんやということでしょう。しかし、ここに生糸を持っている。この持っている生糸を何ら使わないということであれば、ここで価格が相当上がってくると思うのですよ。そこで、その次に来たる段階は、また逆な状態が出てくるのではないか、それをおそれているわけです。今経済も非常に変動しているが、法律は今審議中であるという事態で、価格の真相をつかみにくい事態である、それをじっと見ている、かような状態でございます。
○高石委員 その点がわれわれとピントが合わないのであります。異常だからじっと見ているということは、売るということではないと思う。じっと見ているということはじっと見ていることなんだ。無理に十八万円で売る、二万円も安く売るということではないと思う。私どもが言うのは、こういう非常事態だから、売るのはけっこうなんだが、売るに至っては、もう少し政府当局としては——たとえば、こういう異常な事態については、昨、価格は変えないと言ったけれども、十八万円を割ったあなた方新しい値段を作ったじゃないか。異常な事態に対処して大澤局長は何と言っているか。こういうことを言っている。「私どもが昨年の暮れに価格安定審議会に諮りまして最低価格を引き下げましたのは、十九万円あるいは千四百円というような、いわば需給事情とマッチしないような価格になる、これをきめました当時とは需給事情が全く変ってきたということが基礎になっておるわけでございます。」、また、こう言っております。「このとき考えましたのは、需給事情と生産費を基準にしたあの政令とがマッチした考え方で、この場合にとりました需給均衡価格と申しますか、どのくらいの価格水準で今後いくであろうかという見通しを立てましたのは、十六万円くらいの水準で今後いくであろう、こういう見通しを立てたわけであります。」、そうでしょう。あんた方はこの価格を立てるときは十六万円で安定するだろうという見通しを立てたというのです。そうでしょう。こういうことをあなた自身がこの席上で言っている。そうして、この異常の措置に対してはあなたは審議会に諮ったと言っている。私どもは、五万俵持っていてもいい、あわてることはないと思う。ただ、持っている間に、昨年働かした良識をまた働かして、大臣なり局長なりの事務的な判断でなく、法律的にりっぱな審議機関に慎重に諮って、そうして、この実勢をどうしましょうか、売らなければいけませんか、あるいはこの際実勢は異常なものと認められるからあらためてこの最低・最高のいわゆる安定価格について審議する必要があるかないか、それを諮ってから、その結論によって、法律改正をするなり、あるいは今回のような提案をするならいいと思う。なぜその措置ができなかったか、こういうことを私はお伺いしたいのであります。
○大澤(融)政府委員 昨年の事情でありますが、私ども、検討資料の二分冊でもごらんになっていただけたかとも思うのでありますが、あのような十九万円なり千四百円の水準で政府が買うということにいたしておりましたが、長期趨勢的に見ればああいうものは無理であるというような事情があった結果の改定でございます。しかし、改定に至りますまでには、特別会計の買い入れ資金がなくなりますればさらにそれを追加するという措置を第一段にとり、さらにこの臨時措置法を作って、百五十億ですか二百億ですかの資金もさらに追加して、十九万円・千四百円の維持の努力をして、その結果それだけの手を尽くして長期的な趨勢には抗し切れないということで価格改定をいたしたのであります。 本年度の場合、先ほど来大臣からもお話がありましたように、需給関係を見ればそのような事態になっているとは考えられません。そこで、安定制度本来の範囲を越えるものはここでいう意味の異常な価格だ、こういうことで、政府の手持ち糸がまだあるのですから、それを売れるようにして売って安定をはかって参りたい、こういうことで御審議をお願いしておるわけでございます。 〔永田委員長代理退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕
○高石委員 それは先ほどから再三繰り返していますね。つまり、政府のものがあるから十八万円で売るのだ。しかし、状態は異常なんですね。それは認めているのですね。十八万円以上行っているのですから、この異状の状態にはいま少し慎重にやるべきだというのが私の見解ですが、これはしばらくおくことにいたします。 それから、重ねてお伺いするのですが、安定法によって保管している生糸五万俵足らずを十八万円で売り出せば、実勢価格はついてくる、安定させ得るという確信を持っているとたびたびおっしゃっていましたね。その根拠をいま少し明確にしていただきたいと思います。
○大澤(融)政府委員 先ほど来から申し上げております需給見通しと申しますか、需給関係というようなことから判断をいたしまして、そのようになるという確信を持っております。
○高石委員 具体的な需給の見通しはどうなんですか、それをはっきり言って下さい。
○大澤(融)政府委員 需給の見通しといたしましては、まず生産でございますが、繭の生産は統計調査部調査で昨年の実績の四・五%減ということでございます。それから、現在までの製糸の繭の受け入れ高、あるいは去年までの農林統計から推定される産繭高と実際にとれた繭高というものから推定いたしまして、三十二万俵から三十三万俵程度の生糸の生産があるというふうに押えております。一方、需要の方でございますが、これは、一月九月あるいは一月十月までの、農林省にマンスリー・レポートとして報告されておりますので、これを基礎にして考え、あるいはまた別に通産省の絹織物業者の受け入れ高というような数字を基礎にして考えまして、大体三十八万俵前後というふうに見ております。そこで、生産の方はそういうことでございますが、さらに、安定材料と申しますか、政府が臨時措置法あるいはまた安定法で買い入れて持っております数量で十万俵近いものが別にあるわけであります。そういうことで、政府の手持ちを出して参りますならば、需給関係はそのような関係になる、こういうことでございます。
○高石委員 需給の見通しについて、あとでもう少し親切な資料を出して下さい。 この需給の見通しについてもいろいろ意見があると思いますが、今の局長の見通しについては必ずしも納得いたしかねる点もありますが、これは別といたしまして、特に、説明によく言うのでありますが、実需の実態ですね。政府は、各種の思惑から見込み買いが行なわれている、この方面から市場の不安を濃くしているということをしきりに言っているのです。一体、その思惑と見られるものは、今お話しになった需要のうちでどのくらい見込んであるのか、こういう点が一つです。どだい今は自由経済ですね。それで、市況が安くなる、あるいは供給が余るという場合はいざ知らず、現在では価格の下がる心配はない。しかも需要はかなりふえてくる。先ほど大臣がおっしゃった通り、海外の事情も好転し、また内地の需要もふえてくるというような状態におきまして、少なくとも商売人——生糸に携わるような敏感な商売人が、三十七、八万俵も需要があるのだから、言葉が過ぎるかもしれませんが、かりに一割前後のものを買い込んでも、これをすぐに思惑だと判断することはどうかと思うのです。むしろ、政府が五万俵持っているのだったらいい。これが民間の倉庫に入ったときには逆に思惑の材料ができる。こういう意味において、思惑の限界、政府の言う思惑とはどういうことか、これを一つ説明してもらいたい。
○大澤(融)政府委員 政府委員取引にはいろいろ思惑が働いて、それで価格が形成されるということだと私思うのでありますが、取り除けるような思惑で、たとえば政府が安定法の糸を持っておりますのにそれを一体十八万円で売り出すのだろうかあるいは売り出さぬのだろうかというようなことも一つの思惑になると思うのです。そして、十八万円で将来も売り出さぬというなら今十八万円で売り出されている糸を買っておこうじゃないか、そういうところに思惑が働くのだろうと思います。思惑がどのくらいあるかということはなかなかむずかしいことだと思うのですが、もし、たとえばここに供給が十あって需要が八あるというようなときに、十全部売れてしまうというような場合は、世人は、仮需要であり、あるいは思惑だというようにとるのではないか、こう思います。
○高石委員 くれぐれも、私は自分の意見を言っているのではない。あなたの方で、政府の保有量が減少するに従って各種の思惑から見込み買付を行なうと言うから、その見込み買付と認めるのはどのくらいを認めるか、不安を濃くするというなら、どのくらい買付があるから不安を起こすのか、現象ではなく、あなた方が言っている理由を聞きたいのです。
○大澤(融)政府委員 一例として申し上げますが、八月二十五日だったと記憶します。例の、農林大臣が、生糸の先物価格が非常につり上がるから、政府が手持ちしている糸も場合によれば法律改正をして同じ値段で放出をしますという声明をされたことがあります。その当時は、臨時措置法の糸がなくなるのじゃないか、そうすればあとの糸は十八万円では出ないのだということで皆さん買い急ぎをやった。買い急ぎがあるということが、さらに先物価格をつり上げていくという悪循環を起ごしている。その場合に一日千俵あるいは三千俵というものが売れてしまいましたが、大臣が談話をされますと、その日七千俵の申し込みがあったものが、結局幕を締めてみますと四百俵何がしになるというようなことで、その場合消えてしまったものは思惑だったのだろう、こういうふうに考えます。
○高石委員 大臣の声明で下がった。様子を見ようということはやはり市場人の常識ですね。どういう政策が出てくるかわらぬから、これは常識的な傾向ですよ。しからば、先月十六日、たった四千俵の要求があったのに対して四倍の申し込みがあった、これはどうなんですか。どういう説明をするのですか。
○大澤(融)政府委員 それは非常に誇大に言われている点があると私は思うのですが、五千俵の中には市場で求められる品物があったと思うのです。そういう品物には買いが殺到したという事実はございました。それから、ほかに、一人も申し込みがないというような動きもあったのです。そういうことで、特別に市場で要求されるようなものについてたくさんの申し込みがあって、プレミアムがついて売れるというような事実もありましたので、そういう弊害があってはいかぬということで、先ほど大臣が申されたように、買いかえという措置は中止をいたしたわけであります。
○高石委員 今の説明でありますけれども、後ほどでけっこうですから、それはどういう人たちがどういう品種をどういう数量で申し込んだか、それをどういう抽せんで渡したかという資料をお渡し願いたい。あとの審議の都合がありましょうから、お願いいたします。 そこで、今度は実需の見通しです。先ほど来、大臣も局長も、これは本格的な需要でない、場合によっては供給が多過ぎて値が下がるようなことがあるかもしれない、こういうようなことでありますが、しかし、今回の実際の需要の永続性、これについての見方ですが、これは私もよく知りませんが、識者がおおむね言っておることを要約してみると、こうです。まず、アメリカにおけるオーガンジー・ブームによって、婦人服とかあるいはカーテンとかが非常に需要が伸びておる、ですから、アメリカも、ある程度昨年来のてこ入れで相当景気が続くのじゃないかということが一つと、それから、内地の消費は、これも生糸に対する認識がまた見直されて相当伸びていくのじゃなかろうか、こういうことが一つと、それから、中共の生糸がどういうわけか輸出がとまっておる、こういうような事情、さらにまた、世界経済、特にアメリカの経済は当面かなり続くのじゃなかろうか、こういう問題、さらにまた、日本の経済も、これは政府それ自身も言っておる通り、とにかく毎年成長率が七・二だの言っておるときですから、日本の経済も数量景気は続行するであろう、こういうように、実需の永続ということにはかなりの裏づけなり根拠がある、こういうことを言っておる。その反面、供給はどうかということになると、工場は一部休業をしておるし、また、繭の加工入札には例の一円入札が現われるとか、あるいは自動繰糸機が入って大へん工場の合理化が進んでおるとか、こういうことで繭の非常な争奪戦が行なわれておる。 そこで、最初お尋ねした通り、大臣は拡大振興の方向で今後の蚕糸行政をやっていきたいと言うのだが、それなら繭の生産状況は一体今後どうする気なのか、こういう問題も起こりますが、とにかく繭の方にも非常な争奪戦が行なわれておる。現に、埼玉県でも、昨年の協定では一万掛千七百円にもきまった、こういうのです。こういうふうに供給の面でもかなり考えなければならぬ要因を持っておるのです。一体、こうした事実に対して政府はどういうふうにお考えになっておるのか、これを承りたい。
○大澤(融)政府委員 今後の見通の問題でございますが、これはいろいろ見方もあり、私はかなりむずかしい問題だと思いますが、それよりは、ことしの需要の状態を過去に比べてみますと、昨年はあのような事態でありましたために、たとえば一月から十月までの生糸の輸出高を比べてみますと、二倍くらいになっております。あるいはまた絹織物なり絹製品の輸出は三割増にもなっております。また、国内での消費も四割五分もふえておるということでございます。しかしながら、不景気ではあったけれどもやや正常な年に近い一昨年と比べてみると、生糸の輸出は二割三分の増、絹織物の消費は三割七分の増、締めて二割九分、それから国内は八%増、こういうことで、特に絹織物の増が目立っておりますが、全体としましては一割七、八分の増だと思いますが、この程度の需要の増減と申しますのは、過去においても、前年に対比してそのくらいの動きがあるということは幾らでも見られたことでありまして、この需要のベースが今までとは変わって来年もこのまま続いていくというふうに見るのははなはだ危険じゃないかというふうに私ども考えております。それから、ヨーロッパあたりの様子を聞くのでありますが、大体六カ月くらいはこのいい状態が続いても、先はどうだろうかというような話が多いのであります。また、最近聞きますところでは、今一時的な値上がり状態をしておるわけですが、こういうような高値が二月も続くと、アメリカの機織り業者はほかの繊維に転向しようというような気持さえ持っているということでございます。ですから、今のような低位安定ということを続けて参りませんと、なかなか需要が今までのように伸びていかない、あるいは今のような需要がそのまま今までのベースと違って新しいベースで来年に持ち越していくのだというふうに見るのはまだ早いのじゃないか、こういうふうに思っております。
○高石委員 最後に大臣に御答弁願いたいのでありますけれども、価格高騰の一つの大きな原因として例の供給不足ですね。これは、今政府の持っているものを出してしまったあと、一体どういうふうに供給を補うかということは一つの大きな問題だと思うのですが、政府は昨年以来ことしも桑園の整理を継続しているようですね。こういう問題は一体どういうふうにお考えですか、念のために承りたい。
○福田国務大臣 供給につきましては、まず需給の見通しですが、ただいま蚕糸局長からお答えのように、政府糸をすでに六万俵も売っておりますから、あとは実需としましてはそう大したことはなかろうというふうに思っているわけです。ですから、思惑で買われたというようなものは、三十五年度の在庫としてこれが残存するというふうな考え方をいたしておるわけです。 それから、繭の増産の問題をどうするかということでございますが、これはすみやかに御指摘のような審議会にもお諮りいたしまして今後の恒久対策を立てていきたい、かように考えております。
○高石委員 また一ぺん話を戻しますが、かりに生糸を十八万円で押える措置をとっても、一方絹織物の価格は野放しですね。そうすると、昨年よりも原糸代が一万円も下であるのにかかわらず、製品価格の高いのは四割、平均して二割近く上がっている。これはよく知りませんが、専門家はそう言っているのです。糸だけを押えても、織物の方に対して野放しにしておいて、ほんとうに安心した需要が喚起できるかどうか、この点は非常に心配なんだ。そのことはすなわち国内外の生糸需要者の繭糸価格安定に関する政府の信頼ということにつながるのです。一体この織物の方はどうする気なんですか。 〔「所管が違うというのか」と呼ぶ者あり〕
○大澤(融)政府委員 おっしゃる通り所管外でございますけれども、大体、生糸の価格と絹織物の価格とは、たとえばオーガンジーのような非常に流行的に伸びてきたものについては、生糸の価格よりは大いに上がっているというような傾向が見られますが、これも最近は下がりかけております。大体線を引いてみますと、大きく見れば生糸の値段と並行しているということが言えようと思うのです。最近になって多少開いてきた面もございます。しかし、指数的に考えますと、たとえば二十七年を一〇〇にとって、ちりめんというようなものを考えますと、今年に入りまして、一月が指数で八四・七というものが、八月に八九・九、九月に多少上がって九三・二というようなことです。大体生糸の値段と並行しているわけです。生糸につきましては、今のような安定制度がある。絹織物についてはそういうようなものがないというようなことで、生糸が押えられたから絹織物が押えられるということには必ずしもならないと思います。下値の場合も同じだと思います。
○高石委員 それはまたあとにしまして、それでは、これは仮定の見通しになりますけれども、一体、政府の生糸を、お説の通り全部売ってしまって、なお糸価が高騰を示すような場合は、政府はいかなる施策をもって生糸価格を安定させて、そして内外生糸需要者から繭糸価格安定に対する政府の最も心配している信用を保持しようとしているのか、これが一つ。また、万が一抑制方法がなくなって相場が青天井の状態となり、それがために過去に見るような価格の暴騰から需要の減退を来たし、また価格の暴落するような事態が起こったときは、そのしわ寄せを再び繭価に転嫁されて、そうして養蚕農家が困り、最後には政府の意図する繭糸価格の安定に逆行するようなことがありはせぬか。この点について大臣の所見を承りたい。
○福田国務大臣 今四万五千俵持っておりますが、この四万五千俵で大体今来年の需給はとれるのではあるまいか、こういう見方をいたしております。再来年以降を一体どうするか、これにつきましては、先ほどからも申し上げております通り、今後の繭糸産業対策をどうするかという根本問題として考えていかなければならぬ。しかし、今来年につきましては、需給の均衡を失するようなことはあるまい、大体そこで需給均衡点がある、かように考えております。
○高石委員 いずれにしましても、これは将来どうなるか。売り尽くしたら暴騰する、あるいはこれで押えられるということの見通しですね。ですから、二十三万でなければ売れないという、いわゆる弾力性のない安定したそのままの形で置いて、今お持ちになっておる生糸に対して処置することはどうかと思うのだが、ある程度安定法によらない、いわゆる時価をもって売れるという道を開いて、あとは昨年の暮れのように静かに実勢を見きわめて、ある程度の標準が出たときにどかっと値段をきめて売るなり、あるいはまた他の方法で立つなりというような考えのもとに、政府は何でもかんでも保管糸を十八万円で売るという考え方を中止する御意向はあるかないか、これを承りたい。
○福田国務大臣 ただいま、私どもは、十八万円という現行の最高価格が需給均衡点にあるのではあるまいか、こういう考えを持っております。もっとも、それは政府で若干放出するということが前提でございますが、しかし、皆さんからいろいろと御意見があります。さようなことも私ども十分これは検討しなければならぬというふうに考えておるわけです。安定臨時措置法による生糸は、これは法的には時価によって売れ、こういうふうに書いてあるわけです。私どもはその時価が今日十八万円が適当であろう、これはいろいろな値段があるわけですが、私どもはそういうふうに考えまして十八万円で売るというふうに考えておるわけです。しかし、これは経済でありますからいろいろ推移もありましょうが、ずっと見ておるわけであります。
○高石委員 それでは、さらに念を押しておきますが、大臣は普通の事務官僚上がりでもなし、さんざん苦労されたわれわれのホープなんだが、今のような点から考えて、十八万円は最高ですよ。安定帯価格じゃないのです。実勢は上に行っているのだから、ほんとうを言えば二十万と十六万くらいで、十八万円を安定帯とすれば上もどうしてもきめなければならぬ。これが実勢なんです。ですから、自由に売れるという態勢をとることはやむを得ないとしても、実施する上において、少なくとも安定法の期待する品物を売るについては、もう一ぺん、政府のこちこちな意地になったような態度をやめて——だれも言っておる通り、少しあせっておる。大臣が一ぺん八月に声明したから何でもやらなくちゃならぬというあせりがある。政治は弾力がなければいけないのだから、その意味において、重ねて、今後安定法で持っております糸を売る場合は、必ず審議会に諮ってあらためて相談する、十八万円でなくちゃならぬというのじゃなくて、あらためて相談するという言明はできませんか、いかがですか。
○福田国務大臣 もちろん、十八万円で売るという方針を変更するというような際におきましては、安定審議会にお諮りいたします。
○高石委員 最近、価格安定に関する現行安定制度の最低価格をめぐりまして、需給均衡価格の算定基準と生産者基準の両論が対立しておる。これに対するところの政府の考え方は一体どうなんです。生産主義なのか需給均衡なのか、この考えも一つ知らしていただきたい。これだけで私の質問を終わります。
○福田国務大臣 私は、農林大臣といたしまして、養蚕家がその生産費を償うくらいな価格で繭が売られるということを念願しております。しかしながら、その価格が経済の実態と非常にかけ離れた価格であるということになりますと、そういう考え方には到達できないような結果になります。ですから、私は、大きな常識から考えましてこの価格はきめていくべきものである、すなわち、生産者の生産費を償うということを念願しながら、それに到達するような道、政策をとっていく、そのとっていくに適当なる価格である、かように考えておる次第であります。
○丹羽(兵)委員長代理 次会は明三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後五時五分散会