社会労働委員会 第26号
- 発言数
- 95 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1959/04/08
会議録
○委員長(久保等君) これより委員会を開きます。 委員の異動を御報告いたします。 四月八日付をもって横山フク君が辞任し、補欠として後藤義隆君が選任されました。 —————————————
○委員長(久保等君) 公共企業体等労働関係法等の一部を改正する法律案(参第三号)を議題といたします。 御質疑を願います。 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。 なお、修正意見等おありの方は、討論中にお述べを願います。
○光村甚助君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法等の一部を改正する法律案に賛成するものであります。 終戦以来十四年の歳月が過ぎ、かつての軍閥専制政治より解放され、日本における民主主義もようやく軌道に乗りつつありますが、この民主主義の発展に多大に貢献したのは民主的労働組合の力によるものであります。終戦と同時にマッカーサーは、労働運動を解放することが日本の国主化の先決だと考えた。さらに終戦後の歴代内閣は、万全ではなかったが、日本の民主主義発展のために労働組合運動を正しく理解し、その発展については曲りなりにも努力した点は、われわれもこれを認めるものであります。しかるに、現在の岸内閣は労働運動を全く理解せず、労働組合自体をもまっこうから否定するがごとき態度であるとともに、歴代内閣中においては最も反動的な内閣と言わざるを得ません。 その現われは、憲法第二十八条に保障された正しい労働運動に対して、警察権力を介入させ、あたかも労働運動それ自体が罪悪であるかのごとく宣伝しているのであります。特に公共企業体の労働運動に対しては郵便法、鉄道常業法、公衆電気通信法、日教組に対しては地方公務員法等を適用し、刑事事件としてでっち上げているのが実態であり、正当な労働運動に対し刑事事件として取り扱うのは、十九世紀以前の強制労働にも匹敵するものであります。労働運動に対する保護法として労働組合法、労働基準法、公労法等が制定されているか、政府の最近の労働政策は明らかに立法の精神を踏みにじっていると断ぜざるを得ない。 労働運動発展の歴史が示すごとく、恵まれぬ者や、搾取に若しんだ労働者が、生きんかために必然的に団結し、行動し、一部特権階級のみの利益追求に対抗するのは当然である。この歴史的背景を全く無視し、権力のみをもってささやかな労働者の生活を守る運動を弾圧し、この結果が現在日本の各地で見られるごとく、日本の労働運動、特に公共企業体においては陰険な様相を帯びて発展しつつある。 労働組合運動は、その歴史が示すごとく、一部の政治権力をもっていかに弾圧しても、労働者みずからがおのれの生活を破壊されるときは、必然的に団結し、生活を守るために戦う状態や、環境にあることを忘れてはならない。労働運動を否定する前に、労働者の生活を保障することが正しい労働運動を行う一番の近道である。正常な労使慣行は、一方的な権利剥奪をやめ、労働者としての権利をすべて保障する形の中から止まれるものであります。従って、現在日本の津々浦々に起りつつある陰険な労働争議は、政府の弾圧の労働行政に基因するところであり、その責任はあげて政府にあると言わざるを得ないのであります 私が不審に思うことは、憲法に違反し、軍備を促進し、核兵器を持とうとしている者が堂々と濶歩し、憲法に保障された労働者の権利を行使した者が、職を失い、獄窓につながれる、この矛盾した現状を政府はどう見るか。このような相矛盾したことが法治国家として許されるべきことではなく、このようにおのれの持てる権力を悪用することは、明らかに民主政治存否定する一部権力者の専制政治を言わざるを得ないものである。 このような非民主的な反動政策が、日本の岸政府の行政である。現在、日本は国際的には東洋の工業生産国、先進国として相当重要な位置にあり、口を開くことに、日本の生産水準は世界の五指の中にあると豪語しているが、その裏には、日本の労働者が産業復興に多大の貢献をしたことを忘れ、労働者に対しては低賃金を押しつける中から、搾取を強化し、一部独占資本のみが利益を得ているということであります。この低賃金政策を完遂するために、労働運動の発達、強化を極度におそれており、この低質金政策が国際会議においても、日本商品のボイコット等の動議となって現われたり、日本の労働政策はマラヤ、ギリシャ並みと批判されている原因でもある。 日本のこのような反動的労働行政は、国際労働機構の会議の席上においてもしばしは問題になっているところでもある。 すなわち一九五一年、日本がILOに再加盟する際、日本における集会、結社、言論の自由、並びに労働者の団結権の保障の有無が大きく取り上げられ、再び戦前のごとき反動行政はやらないという約束のもとに、加入を認められたことを忘れてはなりません。その当時、日本の政府代表は、日本においては過去はいろいろと問題はあったが、現在においては憲法第二十一条により、集会、結社及び言論、出版の自由が認められ、また憲法二十八条においては労働者の団結権、団体交渉権の権利は保障されており、今後においてもこれらの規定に違反することのないことを明らかにしているが、この態度表明にもかかわらず、現在まで政府のとってきた労働政策は、これに反した事項か枚挙にいとまがない、すなわち昭和二十三年に公労法の制定、国家公務員法の改正をして、団結権並びに団体交渉権を抑圧し、さらに昭和二十七年の公労法改正の際にも、これらの権利保障は問題にされないままで済まされたいきさつがありまして、最近に至っては機関車労組、国鉄労組、全逓労組等解雇役員が組合の役員であるという理由から公労法四条三項をたてに、これらの組合には団体交渉権すらも認めない反動的な態度で臨んでいる。このことはILO加盟の宣言に反するものであり、ILOの精神にも違反するものであります。公労法四条三項並びに地公労法五条三項は、かつて石田労働大臣がILO八十七号条約批准に対する諮問機関として設置された労働問題懇談会で明確にしたごとく、ILO八十七号条約、結社の自由、団結権擁護規定に違反することは明確である。このような国際条約にも憲法にも違反する法律に基き、労働組合弾圧の武器とすることは居直り強盗のたぐいと何ら変らない。公労法並びに地公労法制定当時を思い返せば、戦後日なお浅く、十分な労働慣行の確立を見なかった当時のGHQの命令により、立案実施されたものである。この直接の契機となったのは、戦後日本の労働運動の主翼的役割をになった官公庁労働組合の急激かつ強力な発展に対応するため、マッカーサー司令官のいわゆる政令二百一号の書簡に基くものであり、当時すでに制定施行されていた日本国憲法のもとでは、公務員並びに公共企業体の職員といえども労働者であるという見解よりして、政令二百一号なるものは労働者の基本的権利を大幅に制限するものとして数多くの疑点と問題があったのでありますが、占領政策の強行という事実に基いてやむなく実施されたもであり、昭和二十七年四月二十八日対日、平和条約の発効に伴い、これらの法律は当然憲法の規定に照らし、違反することは明確であるので改正されるべき筋合いのものであった。さらにまた、戦後十四年を経過した日本の労働運動も年とともに成長発展し、日本の産業復興に努力した良識ある労働組合となっているのであります。制定当時の事情とは全く異なる現在においては、何らその必要のない以上、憲法二十八条、二十一条に照らし、さらにはILOの精神に基いてもすみやかに削除することが正しいと確信するものである。この法解釈は、昭和三十四年二月、日本の労働法学者の大多数がこれを認め、共同声明として発表しておる点でもあります。公労法、地公労法の改正は、学者間においては常識とされているところでもあります。倉石労働大臣は予算委員会及び当委員会においても公労法四条三項、地公労法五条三項の制定当時においては、労働組合みずからが共産勢力より組織を守るために希望をしていたといっているが、それは過日の委員会で私が指摘したごとく、労働組合内における共産党の追放と公務員の労働運動弾圧のため占領軍の命令によるものであったのであります。かりに政府の言のごとくに、その当時の事情により制定したとしても、現在の労働組合は民主的に運営されて何ら共産党に牛耳られているとは思えない。 そのことが国際的に相いれないものである。さらには労働組合側もこれを希望するとするならば、すみやかに削除して労働者の団結の権利を保障することは、政府の責任であり、かつ、良識ある態度でなければなりません。御承知のごとく、公労法四条三項、地公労法五条三項は、労働組合の自由にしてかつ民主的な団結に対する不当なる法律介入であり、日本の労働組合を企業別のワクに閉じ込め、その正常な発展を阻害するものである。ILO八十七号条約もこれらの不当なる介入を除外し、結社の自由の原則こそ労働条件を改善し、平和を確立する手段であると宣言しているところでもあります。加盟国のいずれの国においてもこの原則を守らなければならないとしているが、政府の態度は、結社の自由を認めないのみか、ついには結社の自由をも破壊する方向を打ち出している。ILO八十七号条約は一九四八年の総会において採択され、以来十年以上経過をしているにもかかわらず、日本は当時ILOに復帰していなかったという理由により、現在いまだに批准していないが、世界の国々のうち三十数ケ国がこの条約を批准し、労働者の基本的権利である団結並びに結社の自由を認めているところであります。 さきにも若干述べたごとく、公共企業体の組合が憲法で保障された労働運動を行なったことを理由に、その代表者を解雇し、あまつさえ解雇された役員を擁する労働組合は公労法上の法益を受けない組合であるとして団体交渉を拒否し、そのことが不当労働行為ではないという反動理論に基き、全逓、機労、国鉄労組と、相次いで団体交渉権を否認する不当なる態度で臨んでいるのみか、組合員がみずから民主的に選んだ役員の選定にまで介入している事実はこのことを裏づけるのに十分である。ILO八十七月条約第三条第一項には、「労働者団体及び使用者団体はその規約及び規則を作成し、完全な自由の下にその代表者を選び、その管理及び活動を定め、」さらに二項には「公の機関は、この権利を制限し又はこの権利の合法的な行使を妨げるようないかなる干渉をも差し控えなければならない。」と、また第十一条においては、「この条約の適用を受ける国際労働機関の加盟国は、労働者及び使用者が団結権を自由に行使することができることを確保するために、すべての必要にして且つ適当な措置を執ることを約束する。」として労働者の団結の自由、結社の自由を明確に保障しているところであるが、政府は現在八十七号条約を批准していないことを理由に、現在とっている団体交渉拒否の態度は正しいとしている。ILO憲章にも明らかなごとく、たとえその条約が批准されていないとしても、加盟国はそれらの条約を尊重する努力をすることになっているにもかかわらず、政府の態度はこのことをも無視している。また、このような不当なる団結権の侵害に対し、これを改善し、政府の反省を求めるため全逓並びに機関車労組がILOに提訴を行なったが、このことを重大視したILO結社の自由委員会は会期を一日延長して検討した結果、公共企業体もしくは国労企業の経営者から解雇された労働組合委員または執行委員は、単にその雇用を失うのみでなく、同町にその労働組合の経営に参加する権利を失うという事実は、完全なる自由のもとにその代表者を選出できるという労働者の権利、つまり結社の自由の最も本質的な側面の一つである権利に対する介入であるとして、日本政府に対して注意を喚起するという、国際上まれに見る勧告を受けたのである。にもかかわらず政府は、労働問題懇談会において目下検討中であるという口実で逃げ、批准を延期し、さらにこの労働問題懇談会に対し、不当にも暗に政治権力を介入させ、批准を延ばす工作を続けていたのであります。 二月十八日、懇談会は答申として、一、ILO第八十七号条約は、批准すべきものである。二、右条約を批准するためには、公労法第四条第三項、地公労法第五条第三を廃止しなければならない。」と明確なる結論を出すに至ったことは御承知の通りであります。このことは国際的には言うに及ばず、国内的においても政府の労働行政の誤まりを認めたことにほかならない。 これらの答申があったにもかかわらず、批准の手続をとらず、さらに批准を延伸するために、答申の本旨ではない関係諸法規の整備が必要であり、全逓の違法状態を解消しない限り批准しないという態度を明らかにしながら、国際的にはこのことを裏返し、日本政府としては閣議決定により批准すると発表し、対外的な悪評を糊塗せんとしているのであります。政府が国際的に発表した批准に対する態度が真実とするならば、すみやかに批准に対する手続を完了すべきであり、この法律改正も政府みずからの手で提案すべきものであります。 政府の批准引き延ばし工作が現在非常に国際的な問題となり、去る三月十三日にジュネーヴで開かれた第四十一回ILO結社の自由委員会で、特に日本のこの問題のみを取り上げ、世界でその例を見ない第二次勧告なるものが出されている。その内容は、「日本政府が八十七号条約を批准する前に、ある条件が満たされなければならないといっているか、現存する諸問題を八十七号条約の精神により早急に解決すること及び約束した批准手続処理をすみやかに行い、条約の全面的な適用をなすであろうことを確信する」としているのであり、このことは、政府が閣議において批准する態度を決定したという報告により、それを早急に実現すべきであるといっていることにほかならない。さらに議事録等によれば、日本政府は五月二日まで国会の会期があり、それをはずすと本年末まで批准されないことを考慮に入れ、本国会で批准を完うすることを特に希望している。さらにここにいわれておる現存する諸問題を八十七号条約の精神により早急に解決することとは、明らかに公労法第四条、二項をたてにした全逓に対する団体交渉拒否は不当であるとし、結社の自由を保障するには政府はまず公労法四条三項の削除を行えと解すべきである。にもかかわらず、ILOの精神を無視し、第二次勧告ともいうべき強い要請を受けておきながら、全逓が違法状態を改めない限り批准しないという態度は国際労働機構の中では通用しないのみならず、その反動性は笑止の的となることを銘記すべきであります。公労法四条三項がILO条約に違反するから改めよといっており、国内的にも四条、二項はILOの精神に違反すると結論を出している。この国際的に追い詰められた日本の労働行政を、倉石労働大臣は内政干渉だというに至っては、労働問題の権威者と称する倉石労働大臣の労働行政に対してもわれわれは疑問を持つものである。このような、すでに消滅したにひとしい法律をもってその違法性呼ばわりをすることは、社会の良識か認めないでありましょうし、従って公労法四条三項、地公労法五条三項はすみやかに削除し、全逓の問題としていわれている国内的諸問題をILOの精神に基き、早急に、かつ完全に、労働者の団結権に対する保障を行うべきである。さらに正常な労働慣行を確立するために、今日まで政府がとってきた労働組合弾圧の労働行政を改め、労働者の権利を完全に保障する中から明るい労働慣行を作るべきである、この意味において公労法、地公労法、国家公務員法等の全面的改正が必要であるが、とりあえず現在国際的に大きな非難を受けている公労法四条三項、地公労法五条三項を削除し、国際的信用を回復し、日本産業の正当なる発展に尽すべきである。以上をもって賛成討論を終ります。
○委員長(久保等君) 他に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより公共企業体等労働関係法等の一部を改正する法律案(参第三号)について採決いたします。本案を原案の通り可決することに賛成の力は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(久保等君) 少数でございます。よって本案は、原案を否決すべきものと決定いたしました。 なお、議長に提出する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 —————————————
○委員長(久保等君) 次に、中小企業退職金共済法案(閣法第一一六号)を議題といたします。 提案理由の説明を願います。
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま議題となりました中小企業退職金共済法案につきまして、その提案理由及び内容の大綱を御説明申し上げます。 中小企業の従業員は、大企業と比べて、恵まれない条件に置かれておりますことは御承知の通りであります。これを改善するためには、もとより、中小企業の経営基盤の強化をはかることが必要であるので、政府といたしましては、各般の施策の推進に努めて参ったのでありますが、これらの施策と相待って直接労働政策におきましても、これが改善のための対策を行う必要かあることは言うまでもありません。本国会に提案いたしました最低賃金法案は、その重要なる施策の一でありますか、ここ二三年来全国各地で商店街等を中心にいわゆる共同退職金積立制度が急速に普及して参りました。申すまでもなく、大企業におきましては、すでに内容の充実した退職金制度が普及しているのに対しまして、中小、零細企業等におきましては、制度そのものすらないものがはなはた多い実情にあります。この共同退職金積立制度は、個々の企業では、実施することの困難な退職金制度を多数の企業が力を合わせることによりまして可能ならしめようとする努力の現われであります。政府といたしましては、かかる趨勢にかんがみ、より安全確実な退職金共済制度を確立することが従業員の福祉の向上と雇用の安定に役立ち、ひいては山小企業の振興に資するものであると考え、この法案を提案いたした次第であります。 次に法案の内容について概略御説明申し上げます。この法案は、中小企業の従業員の福祉の増進と中小企業の振興に資するため、中小企業退職金共済制度を創設することとし、これに関し必要な一項を定めるとともに、その運営に当る中小企業退職金共済専業団について、組織、財務その他所要の事項を定めたものであります。すなわち、第一に、従業員のために事業団と退職金共済契約を締結することのできる事業主の範囲を、常時雇用する従業員の数が商業またはサービス業を主たる事業とする事業主については三十人以下、その他の事業主については百人以下のものといたしております。なお、退職金共済契約の締結につきましては、任意といたしております。 第二に、掛金につきましては、事業主食掛といたし、その月額は、従業員一人につき、二百円以上千円以下とし、その間を百円刻みとして、事務の簡素化をはかることといたしております。 第三に、退職金につきましては、給付を確実ならしめるため、直接従業員に対して支給することとし、その額につきましては、掛金の納付月数に応じて定めるごとといたしております。 なお、掛金月額の二百円に対応する部分につきましては、給付につき掛金納付月数が七年以上十年未満の場合は五%、十年以上の場合は十%の国庫補助を行うことといたしております。 第四に、この制度の実施主体につきましては、退職金が長期給付であることにかんがみ、制度の永続性、積立金の管理の安全性並びに労働者に対する確実な給付を保障するため、中小企業退職金共済事業団を設置することとし、その組織、財務等について必要な規定を設けることといたしております。なお、事業団は、積立金の運用によって、保健、保養のための施設その他の福祉施設の経営を行うことができることといたしております。 第五に、事業団の余裕金の運用につきましては、その安全かつ効率的な運用を害しない範囲内で、できるだけ中小企業に還元融資されるよう配慮いたすこととしております。 その他、既存の共同退職金積立事業を、希望により、引き継ぐために必要な規定を設けることといたしております。 なお、別途掛金についての全額免税措置、退職金等を退職所得とみなす等、必要な税法上の減免措置が講ぜられることとなっております。 最後に、法案の内容につきましては、特に本件に関する学識経験者十五人を臨時中小企業労働福祉対策委員に委嘱し、その懇談会において慎重に御審議を願い、その御意見を十分尊重して作成いたしましたことをつけ加えて、申し上げておきます。 何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。 なお、この法案の内容につきましては、衆議院において、自由民主党及び日本社会党画党一致の修正がありましたことを御報告申し上げます。
○委員長(久保等君) 次に、衆議院における修正点について御説明を願います。衆議院議員八田貞義君。
○衆議院議員(八田貞義君) ただいま議題となりました中小企業退職金共済法案に対する委員会修正につきまして、その趣旨と内容の大綱を御説明申し上げます。 政府提出の中小企業退職金共済法案は、中小企業に退職金共済制度を確立し、もって従業員の福祉の増進と中小企業の振興に寄与せんとする趣旨のものであります。この修正は、法案の趣旨とするところを一そう具体化し、内容を充実させようとするものであります。 すなわち、第一に、中小企業の雇用の実情にかんがみまして、退職金に対する国庫補助について、政府原案においては、掛金納付月数七年以上五彩となっているのを五年以上五%に改めるとともに、退職金の額について、政府原案においては、掛金元金及び元利合計に達する時期が掛金納付月数四年及び五年六カ月となっているのを、それぞれ、三年カ月及び四年六カ月にするよう別表第一に所要の修正を加え、さらに、掛金納付月数の通算の条件を緩和せんとするものであります。 第二に、本制度に関しまして、従業員に対し不当な差別的取扱いかあってはその趣旨に反しますので、退職金共済契約の締結に関しまして、任意包括加入を建前とするより改めるとともに、契約を締結する場合において、従業員の意見を聞き、かつ、その意に反してはならないことを規定することであります。 〔委員長退席、理事木下友敬君着席〕 第三に、この法案の改正及び施行に関する重要事項について労働大臣の諮問に応じさせるために、労働省に中小企業退職金共済審議会を置くこととし、本制度の運用を一そう実情に即せしめんとするものであります。 第四に、共済契約者、被共済者等が退職金共済契約上の権利義務に関する事項について異議があるときは、労働保険審査会に審査を請求することができることとし、給付等についての適正を期さんとするものであります。 そのほか、事業団の余裕金について、従業員の福祉を増進させるための資金にも融通させることを明記すること、商工中金等が他の法律の規定にかかわらず法案第四十六条の規定による業務の委託を受ける道を開くことのほか、所要の技術的修正を加えんとするものであります、 何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
○理事(木下友敬君) 次に、労働省当局から細部説明を願います。
○政府委員(澁谷直藏君) 本法案は七章及び付則から成っておるのでございますが、以下その主要なる点について御説明を申し上げます。 第一条の目的は、先ほどの提案理由に書いてある通りでございます。 第二条は定義でございます。 第一条は、契約の要件について規定したものでございます。第三条第二項は、同一の従業員について二以上の退職金共済契約を締結することを禁止したものでございます。第三条第三項は、事業団は公的な機関であるから、すべての中小企業者に対して平等に退職金共済契約を締結することを義務づけたものでございます。ただし、申込者である中小企業者が従前の退職金共済契約において苦しく長期間にわたって掛金を納付することを怠って退職金共済契約を解除され、その後六カ月を経過しない場合、新たな申し込みの被共済者となる従業員が従前の退職金共済契約の退職金等の不正受給をして退職金共済契約を解除され、その後一年を経過しない場合等は、例外として締結を拒絶することができる旨規定したものでございます。 第四条は、退職金共済契約を被共済者ごとに一個の契約とし、掛金月額は、二百円以上千円以下とし、その間を百円刻みとしたものでございます。 第八条は、契約の解除について規定したものでございますが、その第一項は、事業団は公的な機関であるから、第二項以外の事由により事業団が任意に退職金共済契約を解除することを禁止し、また、中小企業者は従業員のために退職金共済契約を締結しているのであるから、第三項以外の事由によりみだりに当該契約を解除することを禁止したものでございます。第二項は、共済契約者である中小企業者が当該契約の本旨にもとり長期間にわたって掛金を納付することを怠った場合、大企業となった場合、または当該契約の被共済者である従業員が退職金等を一不正受給した場合は、事業団が当該契約を解除する旨を規定したものであります。第三項は、共済契約者である中小企業者が、当該契約の被共済者である労働者の同意を得た場合、または掛金の納付を継続することが天災事変または一般的不況等の事由により著しく困難であると労働大臣が認めた場合に限り、共済契約者である中小企業者が当該契約を解除できる旨を規定したものでございます。第四項は、退職金共済契約の解除の効力が当該契約の締結時まで遡及するのでなく、解除時以後の将来に向ってのみ生ずる旨を規定したものでございます。 第十条は、退職金の支給要件、退職金の額等について出定めたものでございますが、その第一項は、被共済者が退職したときに、事業団がその被共済者に退職金を支給する旨を定めたものであるが、その退職が死亡によるものであるときは、退職金は第十一条に規定上するその被共済者の遺族に支給される。ただし、掛金納付月数が十二カ月未満の短期退職者には、退職金の性格上その支払いは行わないこととしておるのでございます。第二項は、第一項の退職金の計算方法を規定したものでございまして、その額は次の二つの方法によって計算した額の合算額でございます。すなわち第一号は、退職金のうち、最低掛金月額である二百円に対応する部分の金額について定めたもので、別表第一の中欄の金額には、掛金納付月数八十四月以上について国庫補助金が含まれております。国庫補助金は八十四月以上百二十月未満については五%、百二十月以上は一〇%でございます。ただし、掛金納付月数中に事業主が中小企業者でない期間にかけられた月数があるときはカッコ内の計算方法によって計算した額といたしてございます。これは国庫補助金を被共済者が中小企業者に雇用されていた期間に限って支給することといたしたのでございます。第二号は、退職金のうち掛金月額の二百円をこえる額、百円に対応する部分の金額を定めたものでございます。第三項は、被共済者がその責めに帰すべき事由によって退職した場合に共済契約者からの申し出があったときは、事業団が退職金を減額して支給することができる旨を規定したものでございます。これは退職金の性格上規定したものでありますが、共済契約者がこの制度を悪用することのないよう、被共済者の責めに帰すべき退職事由を労働省令で定めまして、労働大臣の認定にかからしめ、かつ、減ずる額の基準も労働省令によって定めることといたしております。 次に第十三条は、解約手当金でございますが、本条は解約手当金の支給要件及びその額について規定したものでございます。その第一項は、退職金共済契約が解除されたときに解約手当金が支給されること、及びその受給権者は、被共済者であることを規定したものでございます。第二項は、被共済者が偽わりその他不正の行為によって退職金等の支給を受け、または受けようとして退職金共済契約が解除されたときは、労働省令で定める特別の事情があった場合のほかは解約手当金は支給しない旨を規定しております。第三項は、第十条の退職金と同様に掛金納付月数が十二月未満の被共済者には解約手当金を支給しない旨を規定したものでございます。第四項は、解約手当金の計算方法を示したものであり、その額は掛金の各百円部分について別表第一上欄の月数のうち、掛金納付月数にひとしい月数に対応する同表下欄の金額を求め、それらを合計した金額でございます。この金額は、第十条の退職金の額から国庫補助金を差し引いた額にひとしいものでございます。第五項は、被共済者が偽わりその他不正の行為によって退職金の支給を受け、または受けようとして退職金共済契約が解除された場合であって、第二項ただし書き規定による労働省令で定める特別の事情に該当して解約手当金が支給されるときに、事業団が労働省令で定めるところによって、この解約手当金を減額できる旨を規定したものでございます。 次に第十四条は、掛金納付月数の通算に関する規定でございますが、被共済者が退職した後六月以内に退職金を請求しないで、再び被共済者となり、その者が前後の掛金納付月数を通算してほしいと申し出たときは、次の二つのいずれにも該当した場合に限って労働省令で定めるところによって前後の掛金納付月数を通算できるというようにいたしたのでございます。すなわち、その第一は、再び被共済者となった場合の事業主が、前に共済契約者であったときの事業主と同じか、または労働省令で定める類似の事業を行う事業主であること。その第二は、その退職が被共済者の責めに帰すべき事由でもなく、またその者の都合により退職でもないことを労働大臣が認定することでございます。 それから十五条以下は特に説明を要しませんので、第十九条に参りまして、これは前納の場合の減額に関する規定でございますが、本条は、共済契約者が掛金を当該月の前月までに納付するときは、事業団はその納付する額を労働省令で定める割引率によって減額することができる旨規定したものでございます。 二十条、二十一条、二十二条、二十三条、二十四条については特に説明を要しないと思います。 次に第二十五条が、不利益取扱いの禁止に関する規定でございますが、これは中小企業者は、退職金共済契約の締結、掛金月額の変更、解除等について、その雇用する従業員を不当に差別してはならない旨を定めたものでございます。 次に第四章が、中小企業退職金共済事業団に関する規定でございますが、これは大体ほかの公団あるいは事業団とほとんど同じ例文でございますので説明を省略させていただきます。ただ、第五十三条、余裕金の運用に関する規定が第五十三条でございますが、本条は事業団の積立金は、中小企業者の拠出によるものであることにかんがみまして、業務上の余裕金の運用の方法について、第五項において安全かつ効率的な運用を害しない範囲内で、できるだけ中小企業者に融通されるよう配慮すべき旨の原則を規定し、第一項及び第三項においてその具体的な運用方法を規定したものでございます。なお、上記の原則に基いて第四項において、業務上の余裕金の運用計画について労働大臣及び通商産業大臣の認可制をとり、また、元本保証のない特定金銭信託等による運用については、労働大臣の承認制をとったものでございます。 第五章が、国の補助に関する規定でございますが、その第六十一条におきまして国庫補助に関する規定を設けております。その第一号は、退職金の支給に要する経費のうち、掛金月額の二百円までに対応する部分について、掛金納付月数――事業主が中小企業者であった期間にかかわるものに限っておりますが――その月数が八十四月以上百二十月未満の場合は五%、百二十月以上は一〇%に相当する額を補助することを定めたものでございます。第二号は、事業団の事務に要する費用を補助する旨を規定したものでございます。 第六章、雑則でございますが、その第六十二条は、掛金及び退職金等の額の検討に関する規定でございます。本制度の計算は、長期的見通しの上に立っておりますので、経済、雇用等の情勢に著しい変動がある場合等に対処して、厚生年金保険法におけると同様に、少くとも五年ごとに掛金及び退職金等の額を再検討すべき旨を規定したものでございます。 第六十四条は、船員に関する特例でございまして、本法に規定する労働大臣の権限で、船員法の適用を受ける船員である被共済者に関するものは、運輸大臣が行うことが適当でございますので、所要の読みかえ規定を定めたものでございます。 第七章、罰則は、本法の円滑な施行を確保するために所要の罰則を定めたものでございます。 それから、付則の第八条が従前の積立事業についての取扱いに関する規定でございます。第一項は、従業員のために既存の共同退職金積立事業に参加しておりました中小企業者がその従業員を被共済者として退職金共済契約を締結し、同項に規定する要件を満たして、所要の金額を事業団に納付したときは、それに対応して、別表第二の下欄に定められた月数を掛金納付月数に通算する旨を定めたものでございます。 次に第九条、第十条、十一条、十二条は、中小企業退職金共済事業団等に対する登録税、印紙税、所得税、法人税の一部免除を行う必要があるので、所要の法律の一部改正を行う旨を定めたものでございます。 第十三条、十四条は、中小企業庁設置法及び働省設置法の一部改正でございまして、本法の施行によりましてそれぞれの設置法の改正を行う必要があるために所要の改正の規定を設けた次第でございます。 最後に第十五条が、地方税法の一部改正でございますが、本条は、中小企業退職金共済事業団に対する地方税の一部免除を行う必要がありますので、そのための地方税法の一部改正を行う旨を定めたものでございます。
○理事(木下友敬君) 暫時休憩します。 午後零時十九分休憩 ――――◇――――― 午後三時十四分開会
○委員長(久保等君) これより社会労働委員会を再開いたします。 中小企業退職金共済法案に対する質疑は、次回以降に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 ―――――――――――――
○委員長(久保等君) 国民年金法案(閣法第一二三号)を議題といたします。 御質疑を願います。
○藤田藤太郎君 私は岸総理に、今度の法案に関連して、社会保障施策の基本的な問題をお尋ねしておきたいと思います。 第一に、厚生大臣、大蔵大臣とも質疑をしたのでありますけれども、今度の年金法案は非常にたくさんの問題を含んでいると思います。なぜかと申し上げますと、一般的に外国で行われている社会保障、特に年金の問題につきましては、老後の生活をやはり具体的に保障するというような形でその制度ができてきておると思います。今度の法案を見ますと、無拠出の年金が今年から行われ、拠出制度の年金が三十六年度から行われるということになっておるわけでございますけれども、元来社会保障制度というのは、大筋をいって、年金制度と医療制度が私は柱になると思います。この柱である医療制度を、また年金制度というものをどうしてよりよいものに作っていくかということにおいて、日本の社会保障制度が具体的に進んでいく基本になろうと私たちは考えているわけでございます。そうしますと、今度の年金法案を見て参りますと、援護年金、あわせて拠出制の国民年金でございますけれども、四十年先において三千五百円、こういう支給年金がきめられようといたしております。政府の方針から見ますと、経済政策または国民の所得保障、いかにして幸福な国民生活を作り上げるかという政治一般の施策というものは当然のことでありますけれども、その中で、政府はことしは六・二%の経済成長率を見ておられる。一方国内の状態を見ると、非常にたくさんの失業者一をかかえ、潜在失業者をかかえている。それから国民生活調査——厚生白書を見ますと、一千万以上の、ボーダー・ライン層がおる。そういう状態に積極的な手が加えられないで、一兆をこえる、たとえば預金部資金の運用資金の使い方を見ましても、大企業であるとか、まあ独占企業といいましょうか、主として大きい母体の企業に集中して投資が行われて、国民の非常に苦しんでいる方々の生活、それから環境を変えるというような、ほんとうに今日の日本の憲法からいっても、慈善や恩恵でなしにそういう方々の生活を守る、またその方々からすれば、近代国家における人たるに値する権利としての生活というものを仕組んでいこうというのが、日本の今日の国体の仕組みだと思うのであります。そういうものが、私たちが考えますと置いてけぼりにされて、そうして今度の年金が出てきたわけでありますけれども、経済の成長率の問題は六・二%ある、将来四十年先の日本の経済成長というものはどこに置かれるか、これはなかなかむずかしい問題であろうと思います。しかし、今日三千五百円で生活ができるかどうかというものが問題になる。そういうのに四十年かけて三千五百円という年金制度を計画されている。この第四条を見ますと、生活水準その他の事情において調整という字句がございます。しかし何といっても、たとえば貨幣の価値が変ったとか、経済が、物価が変動をしたとか、そういうものか明確にされて、そうしてほんとうにこの養老年金、国民年金で老後の生活を守っていく、母子または障害年金でほんとうに将来を計画的に守っていこうという、そういうものがこの法案にはにじんでいない。だから私たちが、岸総理は社会保障をやるんだ、完全雇用をやるんだ、いろいろのことを今の内閣はおっしゃいますけれども、今の現状と同じく、ちょっと私たちが考えるときに、財源の余ったもので、その年金であるとか、そういう形のものを少し体裁を整えておくということしか私たちとしてはなかなか理解ができないのであります。でありますから、根本的に今の年金制度を含む日本の社会保障制度というものを、どういう工合に推進していこうとされるのか。経済計画や、その他日本の経済の発展の度合いに応じてどういう工合に計画されていくか。それからまた現在の位置づけとして、このくらいの程度のもので、本来の年金制度という、他の国がやっておりまする老後の生活を守るとか、母子、身体障害者を守るということが実際にできるのかどうかということについては、私たち非常に不安を持つのでありますから、その点も含めて御所見を承わりたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 近代的国家において、この社会保障制度を充実するということは、これは当然最も重要な政策としてやらなければならぬことでございます。しかし、日本の憲法においても、国民が健康にして文化的な生活の保障をされておるわけでありますから、政府としてもとにかく病気であるとか、あるいは老齢に達したとか、あるいは身体の障害のあるとか、あるいは夫を失った母子家族であるとか、というものに対して当然考えていかなきゃならぬことでございます。そこで、社会保障制度としてやるべきことはいろいろのなにがありましょうが、しかし、少くとも今、藤田委員のおあげになりましたように、医療保障の点と、そうして所得保障の意味におけるところの国民年金制度というものは、近代国家における社会保障制度の二大支柱であるということは、その通りと私ども考えております。従ってこれを立てて、そしてその内容を充実していくことが、社会保障制度の完備を期する上からいって当然考えなきゃならぬことであります。ところが、日本においては、従来健康保険の、この健康保障の点におきましても、医療保障の点におきましても、制度が十分でないから、国民皆保険の制度を立てて、これが三十五年度までに完成して、全国民がこの医療保障を受けるような態勢を作り上げよう。ところが、さらに医療保障の内容を見ますというと、一体国民健康保険の程度でいいか、さらにその内容を充実しなきゃならぬかということについては、いろいろ御議論がありますし、私どももこれは改善し、充実していかなきゃならない問題だと思います。しかし、とにかく皆保険にして、国民一人として医療保障から恩恵にあずからぬというものがあってはならぬということで、それをまず第一にやる、さらにその内容の充実を今後において期して参らなきゃならぬ、まずそのために努力しなければならないのは断然であります。国民年金の問題につきましては、言うまでもなく老齢であるとか、身体障害、母子家族というようなものに対する所得保障でございますから、この内容の点につきましては、いろいろ十分にその当時の一般の国民生活水準や物価の問題、その他とにらみ合せて、その生活を、所得を保障して生活ができるようにしなきゃならぬことは言うを待ちません。そこで問題は、同時に国家もこれに対して、こういう社会保障制度に対しては、国の責任においてこれをやるという性格でありますから、国庫が相当な負担をすべきことは当然であろうと思います。これは国庫が負担をするということは、一面においては国民から税金によって取るという問題でありますから、やはり国民の税負担というものとにらみ合せていかなきゃならない。結局経済が繁栄し、発展することが、こういう年金や社会保障制度を充実するところの前提条件としては、どうしてもそうなきゃならない。そこで、現在いろいろ問題になっており、また与野党とも非常な関心を持ち、国民全体が非常に期待しておる国民年金制度を発足するというに当りまして、どういう内容を持ってやるかという点については、私はそれは理想的に言うというと、できるだけこの国民の所得保障という額も相当な額であって、国民が十分な生活のできるようなことを考えるのは当然であろうと思います。しかし同時に、その国の経済規模やあるいは財政の規模というようなものとも、にらみ合せての問題が出てくると思うのです。この両方をどういうふうに調整するかということが現実の問題であり、私どもは、今日出発するに際しまして、今提案さしているような無拠出制度を過渡的な、また補完的ななにで考え、本来のなには無拠出制度でいきたいというので、この案を提案いたして、御審議願っているわけであります。私どもこの給付内容でもって、それじゃ十分だと思うかというお話になりますというと、とにかく今の状態からいうと、一応のこれで私どもは最低のことは可能であると、しかしながら、将来やはりこれを充実し、その向上を考えていくということについては、いろいろと運営の面におき、また将来、今法律にもありますように、国民の生活水準なりあるいは物価の問題あるいは通貨の価値の問題等ともにらみ合せて、これに対する調整ということは考えていかなければなりませんが、それは将来の問題として、われわれが改善をしていくと、また国民も十分これに対して理解をいただいて、協力して、国民自身も政府と一体になって、この制度の完成に向って努力するという一つ御協力を願うことによって、将来の内容充実をはかっていくということが、今後の状態からいうと私は望ましいと、こう考えているわけでございます。
○藤田藤太郎君 今、岸総理の答弁にごさいました通り、帰するところは、日本の経済力との関係で、こういう格好になって、やむを得ないのだと、こういうことをおっしゃったと思うのです。しかし、私たちか考えますときに、今度の中の無拠出の七十才以上千円、これは無拠出の形で支給をされるわけですけれども、これはこの千円でいいかどうかということは、非常に議論のあるところでございます。国の経済力との関係において、どの程度ま下出した方がいいか、それからまたどういう工合にして拡大増額していくのかというところは、私は相当議論のあろところである。私たちは、この千円という問題については非常に少い、こういう工合に考えている。私のお尋ねしたいのは、その問題もそれでございますけれども、四十年かけて今の計画で三千五百円、今三千五百円でそれじゃ十分な生活ができるかどうかというと、大へんな問題だと私は思うのです。それに四十年もかけて、そうしてその三千五百円というような格好を計画して、この案をお立てになるという心のうちから、所得保障による老後の保障という年金によって生活をささえていこう、その柱にしていこうという今のお話とは、非常に大きく食い違っているのじゃないか。ここの四条の「生活水準その他の諸事情」ということだけでは、これは明確に、どういう工合にして、今の日本の経済の成長率と発展率との関係において、どういう工合に発展をしていくかということが一つも明確にならない。だから、今の四十年先の三千五百円というようなことを今計画されることは、この年金制度によって老後の方々の生活を守っていく、こういうことに、本気でここにお考えがあるのかどうかということを、非常に私たちは理解ができにくいわけでございます。たとえば外国の例をとって恐縮ですけれども、大体少いところで老人に対して八千円か一万円という格好で、どうなとその年金で老後を、子供やその他の厄介にならずに、その方々の生活を守っていく、こういう仕組みが競って今日行われているわけでございます。その面から見ますと、四十年後の三千五百円で、これで老後の生活を保障していくとか、母子、身体障害者の生活を保障していくという考え方とは、非常に食い違いがあるのじゃないか。だから私の、先ほどから言っていますように、岸総理は社会保障の二大支柱である医療制度と年金制度を充実して、経済の発展の度合いにおいて云々というお話がありましたけれども、現実ここへ出された法案の考え方は、私のみならず一般の人から見て、これでは老後の生活がほんとうに真剣に年金制度で守っていくということになるのかどうかという、非常に疑問を持っているところでございます。これは具体的の問題、そこらあたりの点について手渡しを、それを日本の経済の成長との関係でどういう工合に手直ししていくか、今出発はこうだけれども、どう手直ししていくか、三十四年度から拠出制の年金が始まるわけでございます。どういう工合に手直ししていくかという問題が、私は非常な重要な問題の一つとして出てくると思います。 もう一つの問題は、他の公的年金との関係でございます。他の一般の七つか九つほどあると思いますが、この一般年金、公的年金との関係を見てみましても、今度の年金と現在行われている問題との対比をしていきますと、非常に懸隔が、相違があると思います。本来年金というのは、一般の国民年金とそれから今行われているような雇用者を中心とした年金と、こういう二つの流れの中で、国の思想というものは、やっぱり老後の生活を保障していく、こういう形に、本来計画性をもって国がどれだけめんどうを見ていくか、保険税とか保険料という格好でどれだけこの被保険者が負担し、そうして老後の生活を守れる制度をどういう工合にして作っていくかということになろうと思います。そういう今の公的年金との関係、それから全体の年金制度の将来への計画、展望という問題について、私は少し足らない面があるのじゃないか。だから、その点も一つお聞かせを願っておきたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 拠出制の国民年金のなににつきましては、これに入る人の掛金と、そうして積立金の運用から生ずる利子と、並びに国庫の財政負担と合してこの年金が支払われるわけでございます。そこで考えなくちゃならぬことは、日本の財政の規模なり財政の全体から見たところのバランスというものも一つ考えなければならぬ。それから同時に、年金に入るために、かける人の掛金の負担額の関越も国民一般の負担として考えていただかなければならない。そこで、なるほど四十年後、五十年後とか、遠い先を考えてみますると、いろいろの変化もございましょうし、われわれの予想し得ないような事態も、いろいろその間には起ってくることをあらかじめ覚悟しておかなければならぬと思います。従って、そういう事態に処するように、そういう場合における調整ないし本来経済そのものが進展し、いろいろと経済活動というものが、事情が変ってきますから、五年ごとに定期的にこれの検討をするというふうなことによりまして、将来の問題の調整ということは考えていきたい、こう思っております。 それから、他のいろいろの年金につきましては、公的年金につきましては、実はそれぞれの沿革的の理由があり、またそれぞれの発達の事情もございまして、きわめて不統一であり、なおその間における調整や、特に期間の通算等の問題については、従来も全然相互間にありませんし、今度の年金との関係もあるわけであります。こういう問題については、三十六年の四月にこの掛金が始まります。国民年金の拠出制度のなにがいよいよ出発するまでに必ず調整についての具体案を定めて、そうして国会に法律を提案して、その間の調整をはかる、こういう建前になっております。そういうふうに進んでいきたい、こう思います。
○藤田藤太郎君 そこで、今お話を承わりましたが、その調整の問題は第四条で、一項と二項とで規制をいたしておるわけでございます。で、この生活水準その他の諸事情によってということ、変動が生じた場合にはということだけでは、歴史的に見ましても、たとえばあとでまた坂本君が御査問すると思いますけれども、貨幣価値の変動とかそんなような事態があってはいいと思いませんけれども、そういう場合にどうするとか、物価が変動したときにはどういう工合にスライディングしていくとか、そういうようなものかこの四条だけでは明確にならないのじゃないか。そこのところをきのうもお尋ねしたのですけれども、そういうことをやるのだというお話はありましたけれども、一つ総理からどういう工合にこの四条というものを実行していくかということを、一言承わっておきたい。
○国務大臣(岸信介君) 私ども通貨価値の安定ということは、実はこの問題だけじゃなしに、すべての経済政策の根底でありますから、極力その通貨価値の安定ということは考えていかなければならぬ。インフレーションというようなことは起してはならぬと思いますか、しかし過去の何から見ましても、いろいな変動からそういうことが起らないとも限らない。万一そういうことがあった場合においては、すぐそれに対して適当な調整の方法を構ずる。一般物価水準の変動については、少くとも五年ごとに定期的に調査してこれが調整をする。それ以外の今のインフレーションとか何とかという突発的な変則的なことが出れば、そのつどこれが是正について具体的に調整をする、こういう方針でございます。
○藤田藤太郎君 そこで、もう一つお聞きしたいのでありますけれども、今度の援護年金といいますか、無拠出の年金と生活保護法の適用者との関係でございます。この生活保護法というのは、御存じの通り二千足らず、地方に行きますとうんともっと低くなりますけれども、これをもらっている人に今度千円を出して、こういうものを、その千品という額を、まさかそんなことはないと思いますけれども、差っぴくというような問題になった場合、どこに法律の意義があるか、こういうことを私たちは考えるわけでございます。この法律の中にそういうことが明確になっていないのであります。その点についてお答えを願いたい。
○国務大臣(岸信介君) その点につきましては、いろいろ御議論もございますので、閣議におきまして、これは差し引くというようなことはしない、加算するということをきめました。ただ、その額を幾らにするかということにつきましては、まだ明確に閣議決定になっておりませんが、千円の程度においてこれを加算するという方針で、関係省の間の意見をまとめるように努力をいたしております。
○藤田藤太郎君 そうすると何ですか、閣議決定によって、名前は併給ということはおっしゃいませんでしたけれども、加算という形で千円は具体的には併給の形をとる、こういう工合に理解していいのですか。
○国務大臣(岸信介君) さように考えております。
○藤田藤太郎君 それじゃ、それは明確になりました。する問題は、さっきの一番最初のお話に戻るわけでございますけれども、この生活保護法というものの基準が高いほどいいのでございますけれども、しかし、今の額では、生活保護法の額には、非常に困難な生活をしておる。私たちも国会において生活保護法の増額をして、何とかしてそういう苦しい生活をしている方々の生活を守っていく処置を講ずべきたと主張して参りました。参りましたけれども、なかなか具体的には進行していないわけであります。だから、この際岸総理は、この生活保護法適用者には、これに加算という格好で実質的には支給するということでございますから、生活保護法自身をこれに見合うように改正をする、支給金額を改正をする、こういう気持はどうでございましょう。
○国務大臣(岸信介君) この生活保護法と援護年金との関係につきましては、先ほど私がお答えをした通りでございます。そこで今の生活保保護費の増額の問題についての御質問は、今政府として直ちにこれを増額するというふうなことにつきましては、なおいろいろな点を検討してみないというと、結論は私申し上げかねると思います。今のところ、これを引き上げますということは、ここで明瞭に申し上げることはできません。なるべくこれらの人々の生活を、困っている状態引き上げるような方向に政府が努力すべきことはこれは当然であると思いますか、今日直ちにそれではき上げますということをお約束はまだ差し控えたいと思います。なお、十分に検討を して、結論を出したいと思います。
○藤田藤太郎君 そうすると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。今の年金と生活保護法との児合いにおいて、具体的には年令に加算という格好で支給をすると明言されましたのでございますから、具体的には七十才以上の方々にはそういう具体的な支給というものが生まれるのでございますから、これに見合うように今後政府としては努力を、生活保護身もそういう工合に持っていくように努力をする、こういう工合に理解をしてよろしゅうございますか。
○国務大臣(岸信介君) 私の申し上げるのは、今の生活保護費そのものの額を全体を引き上げるという問題に関しては、これはなるべくそういう恵まれない人の生活をできるだけよくしていくという方向に政府か秘めることは当然であると思います。しかし、今日の状況において直ちにこれをどの程度に引き上げる、一般的にですね、というようなことは、なおいろいろな点を十分に検討してきめたい。ただ、国民年金と生活保護費との関係については先ほど申し上げたように加算すると、こういうことでございます。
○藤田藤太郎君 だから私が言っているのは、今直ちにということを迫って旧いるわけではございませんけれども、こういう具体的な事実が出てきましたから、これに見合うように今後努力するというふうに理解してよろしいですか、ということを言っているのです。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど私がお答え申し上げました通りに、ご理解を願したいと思います。まず、そういうふうに生活保護費にこれを年金の条件を考えていく、それがそれだけ加わる、加算される。そこで一般の生活保護費もその額まで引き上げるか、上げるように努めるかと言われると、そうは私は今ここでは考えられないと思います。生活保護費とこの年令の関係については差し引くとか、いろいろ多い方をやるとか、いろいろな考え方があるが、それに対してはそういうことをせずに加算する。しかしながら、他の一般のなにについては、一般の生活保護費の充実なり向上をはかる意味において政府としては今後努力をするけれども、それを直ちに今のと権衡をとるように上げるというようなことはまだ申しかねると思います。
○坂本昭君 総理に数点お伺いいたしたいのでございますが、最初に社会保障と経済政策の問題について一言明確にしていただきたいことがあります。それは、先般最低賃金法の成立の際に、ニュー・ディールの問題を私はお伺いしたので、あります。ところか私は、アメリカの例ではニュー・ディールの一番最初に最低賃金政策の問題が出て、それからあとに社会保障が続いているのだ、そしてこういう考えはその後、当委員会における公聴会におきましても早稲山の平田教授は、去年も日本に来ましたフランスのラロックという社会保障の学者がおります、この人参は最初に賃金政策というものは先行する、いわば社会保障の前提条件だ、先決要件だ、ところがそれについての総理のお考えははなはだ私は不明確である。特に私は、何もニュー・ディールの問題を論じているのではなくて、ニュー・ディールのあのときの状態というものはたしかに設備過剰の過剰生産恐慌の一番典型的なものである。そして日本の現在を分析するというと日本の現在の不況、これについてもいろいろな御意見がございましょう。しかし、不況があったから、昨年から財政の引き締めをやっておられる。そしてその影響は、アメリカの不況の影響を受けて日本も同じような引き締めをやってきている。そのアメリカの一昨年の不景気というもの、これについてアメリカでも日本でも学者はいろいろ検討しておりますけれども、やはり一九三〇年のころのあのパニックと相通ずるものがある、共通のものがある。もちろん、細部にわたっては、ウォール街の大暴落だとか、あるいは貿易上の変化だとか、そういうようなものはあの当時のものはない。しかし、アメリカの中においてさえも一九三〇年のパニックと、一昨年以来の不景気というものとを共通の地盤で見ている。そういう立場というものがたくさんある。そして、そのアメリカの影響を受けて日本も過剰生産の状態にあることも間違いない。私は何もそのことを分析するのではなくして、その当時にやったルーズヴェルトの政策の中にいつも社会保障というものが先行している。その中でも賃金政策は一番最初に、いわば火ふたを切って行われている。そのことについての関心を現政府の首脳部の方々に理解してもらうために何度も、これは去年の予算委員会から私言っているのです。私の意見が最近は、池田賃金二倍論ですか、そういうところにやや現われてきて、われわれの所説の一部が若干奪われた格好になっておりますが、もちろんそれにしてもいろいろと理解の差はあります。ただ、私が特に申し上げたいことは、そうしたニュー・ディールをとったときのルーズヴェルトの考えというもの、これには学ぶべきものがたくさんある。そして特にあのニュー・ディールの政策によってアメリカの資本主義というものの構造が基本的に変化してきている。そのアメリカの資本主義の構造の変化というものは、社会保障の上に立ってやってきている。特に所得の分配の均等化ということと、それともう一つは、政府部門の拡大、こういう二つの要素で行われてきている。ところが、そういう点について現政府の皆さん方が明確な認識を持っておられないために、ただ社会保障というものを表面的にだけしか見ておられない。従って形式的な、たとえば国民年金法案というものしか作って出してこられない。そしていつもその口実は、金が足りないとか何とか言っておられるのだけれども、ルーズヴェルトのやったことは決してそうじゃなくて、もっと基本的な点に掘り下げて、社会保障について非常な信念を持って、これがアメリカの経済を変革し、アメリカの資本主義の構造を変えるものだ、そういうことでやって、その結果は生産が非常に大きく広がってきている。私はそういう点で、何度も去年以来繰り返して申し上げてきているので、その点についてニュー・ディールはニュー・ディール、日本は日本、実はそういうふうな御理解を持たれるとすると、同じ自由主義の立場に立たれる岸総理としても、社会保障を推進する上において大きな誤まりを犯すのではないか。私は、これはむしろ皆さん方の政策が順調にいくことを願って御意見を申し上げている。まずこのことについて、相変らずニュー・ディールは向うの政策だというようなことでおられるのかどうか。その点を伺っておきたい。
○国務大臣(岸信介君) 私の理解しているところによれは、もちろんニュー・ディールの場合にルーズヴェルトのとりました政策のうちにおきましては、いろいろと示唆に富んでいるものがあることは事実であります。また同時に、あの当時の経済の恐慌状況と日本の昨年や一昨年以来のなにとのものについては本質的に違うか違わないかは大いに議論がありましょうけれども、少くとも程度の上においては大きな差かあることは事実であります。そして、日本経済がアメリカ経済と違って、非常に海外に依存する度合いが多い。これは原料や資源を持たないためにどうしても輸入しなければならない、従って輸出貿易というものに日本の経済がよっている部分が非必中に多い。いわゆる内需というものに非常に依存しておるアメリカと、そうじゃなしに輸出貿易に非常に依存している度合いの大きい日本経済との間にはおのずからやはり差異があるということもこれは御了承いただけることだと思う。そこで問題は、もちろん社会保障制度を拡充していくということは、これは憲法の規定から申しましても、あるいは文化国家、福祉国家を念願している近代国家からいっても、どうしてもやらなければならないことであります。それが同時に賃金が引き上げられる、あるいは社会保障が充実してきて国内需要というものか起り、それによって産業をさらに発展せしめるという作用のあることは、これはもちろん頭に置かなければなりません。従って私は、全面的にニュー・ディールでアメリカがとった政策がそのまま日本の現在にすべて当てはまるとも思いませんけれども、しかし、そういう社会保障の点を充実していくということが、単にこれは抽象的の文化国家とかあるいは福祉国家を作るためのなにだというような単純な名目的なものではなくして、同時に産業政策として経済の発展上にそれがやはり回り囲って効果となるのだという点は十分に認めなければならぬと思う。従って、ただ不況対策として社会保障制度をやるとか賃金を値上げをするとかいうことではなしに、これは当然日本としては考えていかなければならぬ問題でありますか、さっき言ったような点を頭に置いて、実はこの前も非常に簡単に答弁いたしましたから、何だかニュー・ディールは向うのことで、こっちはこっちだというふうになにしたかと思いますか、事実はそういうふうな違いの点もやはり頭に置いて考えなければならないという点を申し上げたつもりであります。
○坂本昭君 この問題は私は、政府部内においても十分検討していただきたいと思うのであります。実は私がタべたまたま厚生省の去年の厚生白書をあけてみたら、厚生白書にもやはりニュー・ディールが取り上げてあるのです。私は、実は去年の春の予算委員会からこの問題を取り上げてきておったところが、厚生白書の中にやはりニュー・ディールと社会保障のことを取り上げてあるのを見まして、やはり政府部内の中にもそういう見解のあることを認めたのです。ただどうも、この間は真夜中のことでしたし、だいぶお疲れのところでしたから、ニュー・ディールと日本の事情とは違うという一言で済ませましたがこれは特に大蔵省内でもこういう考えの方はおられますし、私はそういう立場のもとに厚生行政なり、社会保障を進めていただく必要がどうしてもある。特にこれからあとで問題になってきますけれども、積立方式による年金が作られていきますと、こういう点の深刻な問題かたくさん出てきます。でありますから特にこの点は一応きょうは議論はこれで打ち切って、注意を私としては喚起しておいて、次の問題に移りたいと思います 次は、総理も御承知の通り日本には古くから各種の年金制度があります。たとえば明治の初年からは軍人恩給制度ができた。それから文官の恩給制度ができた。それから、その途中でおもしろいのは郵政省でやっております郵便年金制度であります。これは大正十五年からできておる。それからさらに、一番われわれとして厚生省の労を多とするものは、最初は労働者厚生年金保険といわれておりましたところの厚生年金保険であります。こうしたものの中で、特に私はきょう今までの経緯の中で郵便年金と厚生年金保険、これはいろいろな面で示唆に富んでいると思います。これらのことについて詳しい説明はいたしませんが、多分郵便年金は総理も御承知にならないと思いますから簡単に申し上げますと、これは大正十五年に成立して昭和の初めから、契約の状況は最初には約七万件であります。それか昭和十六年には九十二万件、そうして終戦を迎えましたか、終戦を迎えた二十一年には百九十八万件、その後はずっと減少してきております。三十一年には百三十八万件になっておる。ところが、年金の額はふえておる。年金の件数が減って、額がふえるのはどういうことかと調べますと、内容的に短期の定期年金というものがふえております。定期年金というのは、たとえば総理のお孫さんが十くらいでおられるとしますか、その方が大学に行くと、大学に行っている間その年金から学資がもらえる、あるいは結婚した場合に結婚支度金が取れる。そういう短期の定期年金、これはほとんど九四用程度であります。そうしていわゆるわれわれの考えているところの本来の郵便年金、いわゆる国民年金の面で言うところの、長い間かかる終身年金というものはたった六%、これはどういうわけでそうなってきたか、まず郵政大臣の立場から、この郵便年金というものは、なぜそういうふうに変ってきているか、これは庶民の郵便年金に対する一つの考えが端的に現われている。まず、郵政大臣から、なぜそういうふうになってきたか。御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(寺尾豊君) 私よりもっと坂本委員の方が、今、御質疑を聞いていると、いろいろの年金の歴史的なことについてはお詳しくいらっしゃるのですが、今のいわゆる子女年金、学資等に充てる定期年金というものは九四%くらいそれから養老年金、いわゆる終身年金と称するものはたった六%で、御指摘の通りであります。これの原因ということについて、どういうことによってこういったものが少くなったかということには、やはり戦争によってこの契約に、いわゆる貨幣価値の激変、こういうことによって受けた打撃というものが非常に大きく影響しているのではないか。たとえばここにお示しのように、大体こちらの万で調べてみますと、二十一年までには契約数というものは、小品の方は百、一万二千件、そして年額三億一千五百万円というものが年金であった。その平均というものは二百八円ということになっております。そうすると一年に二百八円でありますから、月十六、七円、こういった形ではこれは、実に年金としては、当時作った精神から理解するというと、非常に貨幣価値の激変というようなことによって、どうもこれはもう期待できないということが、私は何としても最大の原因ではないかと思う。一方定期年金の方は、五年なり十年なりの後に子女の入学のときの資金に使うとか、あるいはせがれの学資に使うということでありますから、この方は相当利用され、関心も深い、そういったわけでありました。郵便年金の養老年金、終身年金というものは、やはり当時の貨幣価値と今日とがあまりに激変したというわけで、これをスライド方式とか、物価指数とかというようなことによって、これを増額するという方法というものは、郵政省としては全然それをなし得ない、いわゆる独立採算とでも言いましょうか、そういうことでその資金の運用にいたしましても、たとえば地方債だとか、国債だとか、あるいはまた地方公共団体の貸付というように非常に運用というものが、これは年金法にも示してありますよりに、利益を得る事業ではないということによって、非常に固くやっているわけでありますから、これをスライド方式とか、あるいは物価指数等によって当時の二百八円というものを増額して支給するというような方法というものは全然ない、また一般会計の方からこれを持ってきてふやすというほど国家財政というものにはゆとりがない。あれやこれやで、郵便年金、特に終身年金に対する関心が薄くなって加入者がだんだんと魅力がなくなって減ってきた。かように考えております。
○坂本昭君 総理も今の郵政大臣の御説明をよくお聞きになったと思います。郵政大臣は無意識的に説明されましたけれども、この説明の中には日本の国民年金の将来の運命が全部描かれています。この郵便年金法には、今説明がありましたが、第二条に、国が行う年金保険は、営利を目的としない事業とある。国が行う以上は国がやはり責任を私はとるべきだと思う。ところが、郵便年金法の中には物価のスライドのことについては一言も書いてない。従って、食うや食わずでたくわえた金を郵便年金に払い込んだ、ところが終戦後は全然意味がない、従ってもう郵便年金というものはだめだ、あんなものには入らない。そのかわり十年そこそこの短期のものならよろしい、つまり国民の解釈というものは非常に明確なんです。で、私はここで伺いたいのは、私のところへずいぶん手紙が来ています。おそらく総理の返事によっては総理のところにもたくさん陳情か来ると思うのです。寺尾郵政大臣のところにもたくさん陳情が来るでしょう。とにかく何とかしてくれ、食うや食わずでたくわえた郵便年金が全部だめになっている。この問題はまず総理に対して、今郵政大臣は郵政省はどうも金もなく、会計も特別会計でやれないから何ともできない。実際これを払い込んだ人に物価にスライドしてやるならば、この前の郵政省の説明では少くとも一千億ですから四、五千億ぐらいは要るだろう、こう言っているのです。総理はこの郵便年金について一応これは国が行う、これはだいぶ前のことですけれども、こういう問題について、まず郵政大臣から、それを一体どういうふうに措置するお考えであるか、もうこんなものはほっぼらかしだと、毛頭何も考えないおつもりであるか、まず所管の郵政大臣に伺い、それからさらに、全日本の国民に対してこれから施行されようとする総理大臣に郵便年金の、こういうささいといえばささいですけれども、やはり国が行なってきた仕事です。これについて総理はどう考えておられるか、あとどうこの処置をされるおつもりであるか、まず郵政大臣から伺いたいと思います。
○国務大臣(寺尾豊君) これは御指摘のように、実情というものは私は非常に気の毒だと、これは全く御指摘の通り私も感じます。ただ、これがいわゆる任意契約というような形でなっており、それからまた、この郵便年金というものはやはり性格からいって、恩給といったようなものとは若干内容が違うのじゃないか、従って他の郵便貯金にしろ、一般貯蓄にしてもこういう激変の場合の処置としては、郵便貯金などは切り下げまで行なった。これは、この間御協力を得て、この切り下げに対しては支払いをするという法律案の成立を願ったわけでありますか、今日の今の状態においては非常に不人情な感じかもしれませんけれども、いかんともいたし方がない、非常に遺憾でありますが、そういうふうに考えております。
○国務大臣(岸信介君) 実はああいうふうな大きな戦争のために貨幣価値が変動したという場合において、いろいろな点について問題が実はあると思いますし、激変の問題であるとか、あるいは郵政省が扱っておる簡易生命保険の問題は、いわゆる定額の債権債務というものをどういうふうな法律的ななにをするかという一般的な問題として考慮しなければならないと思いますか、従来からの法律解釈のなにからいえば、定額債権というものはそういうふうになり変ってもそういう定額でもっていくというように扱ってきているのが一般の今までの例だと思います。それから国民年金の場合におきましては、そういうことか非常に違うと思いますが、公的年金でもああいうふうな任意契約でなくして、強制的な性格を持って国が責任を持つべきことが一そう明確であり、またインフレーションの場合における処置についても法律に規定を設けておりまして、その場合において国家がどういうところから財源を持ち出すかはそのときのなにで考えなければならぬでしょうけれども、十分措置をとることになっているし、それからそういう激変がなくても五年ごとのなににおいていろいろな検討をしての再検討をするというようなことになっておりますから、今までの郵便年金の場合とは国民年金の場合は非常に私は本質的に違っておる、また扱いの上においても違っておる。ただ、郵便年金の問題につきましては、それは非常にお気の毒な状況もありますけれども、これは他の一般的な定額債権の契約ができ上るところの債権とこれだけを特別に扱うということはこれは困難じゃないかと、こう思います。
○坂本昭君 そうすると、国が行なった年金であるけれども、これは任意の契約だから将来とも郵便年金については何ら手当をする意思はない。しかし、今度行われる国民年金については、これはそういうものと性格が違うから、特に第四条に書かれてある範囲内において責任を持つ、そういうふうに理解いたしましたが、それにしては第四条の一項、二項の規定について、これは衆参両院においてずいぶん審議されてきました。結局、最後は水かけ論になりますが、これだけの規定では非常に不安を持ちます。実際私は、郵便年金などをやってきた人たちは、国かやってくれるんだから何とかしてくれるだろうという安易な気持を持っておった人です。しかし、今度の国民年金は全国民が非常に期待を持っておるけれども、すでに今までの公聴会におきましても、この程度の規定ではまた不安心だという声が非常に強いのです。私はやっぱり政治を行う上においては、国民に不安心を与えたならば、国民が信頼感をもってこの仕事を支持してくれないと思います。そうすると今度の問題は、これで全部保険料の積立方式であります。厚生省自体は、三割は払う能力がないだろう、払う能力のある人の中で、また七割のうち八割ぐらいは払い得るだろう、結局ほんとうの保険料を払い得る人の数というものは六割ぐらいになっている。しかも、その六割の人に対しては、これは法文の中を見ますというと、払えない場合は国税の徴収にならって強制的にこれを徴収することもできるのです。それほどきつい法律でありますが、ほんとうに信頼感があるならば喜んでみんなどんどん出すでしょう。しかし、これはあほらしいぞ、こんなことをやっておっても十年ぐらい、十年ぐらいは信頼はおける、しかし十年たっても年金はもらえません。四十年後、しかも二十才の成年とすれば、四十年たってまた五年待たなければならない。四十五のときから月に三千五百円……。これはあほらしい、ばからしいということになったら、国民が支持してくれないと思います。特に私はですからこの第四条については、総理が政治的な全責任を持って国民に明確なことを言わなければ、私たちも実はこれだけでは非常に不安心であります。これはほんとうにやってくれるだろうか……。イギリスのような場合は、二年置きに調整をやって、そうして具体的にそれを直していっています。ところが、日本の政府というものは信頼が置けないのであります。私は後ほどに厚生年金保険の実例を申し上げますが、日本の政府ほど国民が信頼の置けない政府はないのです、今までやってきたところを見るというと。ですから、よほどこれは明確な言葉で、責任のある言葉をもって、もし法律で、今法律の改正ができないと言われるならば、当然これは法律改正をした方がいいと思いますけれども、できないとすれば、総理大臣が責任を持って明確なことを言っていただかなければ、われわれも今度の国民年金、これはいいものだから、額は少いけれども、われわれは反対したけれども、まあ一つやろうじゃないかと、なかなかそう言えないのです。その国の責任において、特にこの景気変動の場合の調整についての総理の、先ほどの御答弁がありましたが、明確な御返事を特にいただいておきたいと思うのです。
○国務大臣(岸信介君) 国民年金法の四条に、調整に関する規定がはっきりと出ております。先ほど来、議論がありましたが、申し上げるまでもなく、郵便年金や一般の郵便貯金、あるいは簡易保険等はみんな同じような扱いをされるわけでありますが、しかし今度の国民年金のなににつきましては、この四条において調整することが考えられております。さらに大きなインフレーションが起ってきたような場合には、あらかじめこれを予想して法律に書くことはできませんけれども、現に戦後におきまして恩給であるとか、あるいは共済年金であるとか、厚生年金というようなものはみんなある程度ベースアップして、これに合うように調整がやられております。国家としてもこの国民年金制度を創設する以上は、もしそういう事態の場合におきましては、もちろんそういう非常の手段をとらなければならないことは私は当然だと思います。しかし、そういうことを法律に規定するということは、われわれとしては、インフレーションというようなものは起さないという建前で政府はやってきておるわけでありますから、これを予想して法律に書くことは適当ではありませんけれども、もちろんそういう場合において、政府は現在の公的年金について現に措置をしてきておりますから、ただそれぞれの実例に応じて適当な調整が加えられることは当然である。それから一般的には、百五年ごとに検討して生活水準に合うように調整していく、こういう規定であります。
○坂本昭君 厚生年金保険の例をあげてみても調整してきておらないのです。一番新しい改正は昭和二十九年に行われました。五年ごとに行われることになっております。今度も一応総理の意図を若干は体しておるかもしれませんが、一部の改正が今度実は出されてきておる。まだ当委員会においては審議されておりませんが、厚生年金保険のたとえば定額部分、昭和二十九年に二万四千円というのがきまっております。五年たったらその間にずいぶん物価も上ってきておりますが、定額部分の二万四千円に対するスライド・アップというのは、今度の法案の中にも出されておらない、つまり総理は、恩給などについてはそれは確かに戦争前に比べたら上げられておりますけれども、この三十九年の厚生年金保険のあの定額部分の二万四千円については、五年たったことしになってもそれを上げるという案は厚生省の中にも作られていないのです。だから私たちは非常に心配で、もっと明確に規定をしてもらわないととても信頼できない。今の問題は一つ厚生大臣に御説明いただきます。
○国務大臣(坂田道太君) 今度提案をいたしておりますものにつきましては、お説の通りに定額部分の引き上げはやっておりません。やってはおりませんけれどもこれは決して、やらないということではなくして今度は、やらなかったということでございます。実はまだこれにはいろいろ御議論もあるところでございまして、審議会の御意見にも二つあったわけでございまして、この定額部分を上げるべきか、また標準報酬の方を上げるべきかという御議論にこれは分れるところでございますが、そういうような場合には定額部分は上げるというわけでありますから、次の機会におきましては、私たちは考慮したいというふうに考えておるわけであります。そのように御了承を願いたいと思います。
○坂本昭君 次の機会というと、今度また先年の後になりますが、そうすると十年の間を置かなければ、一番基本になるところの定額部分の修正もされないということになります。私は厚生年金保険というのは非常にりっぱな制度だと思います。私としてはこの制度については非常な敬意を表しておるものです。しかし、これの今までのあり方を見ても、どうも非常に心配である。特に今度できた国民年金の制度は、現在あるところのいろいろな日本の制度と見比べてみますと、たとえば拠出期間は今度は御承知の通り四十年であります。ところが従来日本にあるものま、厚生年金保険は普通二十年、四十才以後の場合は十五軒というのかあります。それから船員保険は十五年、国家公務員共済組合は二十年、公共企業体職員等の共済組合は二十年、恩給は十七年、市町村職員共済組合は二十年、私立学校も二十年、大体十五年から二十年です。ところが今度の国民年金は四十年です。非常に長い。それから支給開始年令も厚生年金は普通の場合は六十才、特別の場合は五十五才、それから国家公務員共済組合は五十才、公共企業体職員これは五十五才、市町村、私立学校では五十才、みな非常に開始年令が早い、そうすると、今まであるものについても、このうちでも模範的な厚生年金保険などについても、今のような、五年たっても定額部分の改訂もやってくれない、それに比べると、今度の国民年金法案というものはずっと、レベルが悪い。非常に悪いものだから、おそらくこういうふうに、第四条に書いてくれているけれども、なお見てくれないのじゃないか。大体厚生大臣も御承知と思いますが、戦争のときに国民酒場、国民学校とか、国民の字がついた。国民の字のついたものにあまりいいものはないですよ。程度が低いとか、まずいものを飲ませるとか。今度の国民年金法案というものも何かそんなようなものじゃないかという心配がある。特に農村の人たちはこう言うのです。農村から次男、三男が出かせぎに出てくる、そうして工場に勤めて厚生年金に入る、しかしまた村へ帰る、出たり入ったりする、通算の問題が入ってくる、しかし、通算なんかどうでもいい、通算よりももっとつり合いを考えてくれ、内容をよくしてくれ、こういう要求があるのです。これは私は、農民の人の非常に素朴な、そうして率直な今度の法案に対する批判だと思う。これは、厚生大臣とはずいぶん議論しましたから、総理に、一番総理がこの対象としておられる農村の人たちか、通算のことよりもつり合いをやってくれ、今度のように四十年もかかるのでは百姓はとても待ち切れない、ほかの公的年金だったら十五年から二十年、それから五十才、五十五才でもらえるのに、これだと六十五才、しかも農村の六十五才といったら、非常な重労働で働いているからうんと年をとっている、もっとつり合いを考えてくれという素朴な要求があります。総理はどういうふうにお考えになりますか。
○国務大臣(岸信介君) 各種の年金につきましては、いろいろ年限その他について、給付内容が違っていることは坂本さんの御指摘になっているようなことであります。しかし、と同時に、この国民年金というのと、使用者なんかに勤務している広義の意味におけるサラリーマンの立場と、全然そういう立場にない一般国民のなににおいてある程度の差異が出てくるということも、これも私はよく理解してもらうならば、非常な無理があるというわけじゃないと私は思います。 それからなお、いろいろな年令、官吏の場合におきましても、あるいはその他厚生年金の場合におきましても、だんたん期間が長く十七年、官吏と公務員の場合は十七年から始まりますがさらに年限がふえれば積立はふえていって額がふえる、このなににつきましても、国民年金の場合におきまして二十五から始まりまして四十年というなににはずっと段階がございまして、支給額も変更なり差異が出てきます。こういうような点がありまして、今のお話のように農民等の素朴な考えをもって、他の厚生年金とこの法との差異が相当ある、通算よりもその内容を何とか同じにしてくれという素朴な意見があることも、これは私も全然無視というか、そういうことはないわけでありますが、本来の性格の違うということに対しても理解をしてもらわないと、簡単にあるいは、あれとこれの給与内容がこうなっているから、国民年金も厚生年金並みに扱うという結論にはなり得ないのです。まずわれわれとしては先ほど申しておるような、各年金の間の期間の通算、またその他の調整の問題を考えまた国民年金そのものについても内容を漸次充実していくという方向でやっていかないと、今直ちに厚生年金と比較してそれがどうだというわけには私は参らない、また立場も違う、また法律関係においても違う立場にある、こう思っております。
○坂本昭君 しかし、総理もにわかにはできないとおっしゃられますけれども、あまりに皆さんが御自慢になるほどの内容でないということだけは、これははっきりつかみ取っていただきたい。皆さん方公約の国民年金をやった。しかし、だんだんと国民の方は賢明になりますから、やはり内容をどんとんと改善していただかなければなりません。たとえば今の通算制の問題についても、これはこの法律の中にはすみやかに通算制を実施するということも書いてあります。衆議院では昭和三十六年までに早く措置をとれという附帯決議をつけましたが、これについて厚生大臣並びに総理の、この通算制の措置をいつまでにとるか、お返事をいただきたい。
○国務大臣(坂田道太君) 三十五年度中にはこの措置をとりたいというふうに考えております。三十六年度から拠出年金は始まりますから、それまでにはぜひこれをやりたい。これをやらなかったならば、おそらく国民年金も意味がなくなってくるというふうに私たちは考えておる次第であります。
○国務大臣(岸信介君) 厚生大臣の答弁と同じでございます。
○坂本昭君 厚生省の方も非常に熱心だという理由は、非常に脱退する者が多い。労働者の厚生年金保険の場合にも、男子と女子と比べると、男子の場合は十年たつというと、十万人がもう七万七千人くらいに減っている。二十年たつと六万七千人くらいに減っている。女子の場合だと、十五年たったらもう一万六千人しか残っていない。非常に出入りが多いですから、これも少くとも三十五年度の終りくらいまでにやられるという明確なお返事をいただきましたから、この点は了といたします。 次に、積立金の問題をお伺いするんですが、その前に、国民年金の特別会計についてはどういう方針をとっておられるか、厚生大臣と大蔵大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(坂田道太君) 特別会計につきましては、三十六年度からこれをやるという目途でやっていきたいと思っております。
○国務大臣(佐藤榮作君) 昨日もお答えいたしましたように、三十六年度にはやりたいというふうに考えておる次第であります。
○坂本昭君 積立金の額については、もう総理も御承知だと思いますから申し上げませんが、この積立金のことについては衆参両院で相当議論があったのであります。どうも厚生省の議論を聞いておりますと、厚生省自体少しあせっているような感じがするのです。何とかして厚生省は自分のところで金をとりたい、大蔵省の方はやるまい、なるべく財政投融資の方に回していきたい。私の方で見ると、大蔵省はこの積立金の上に従来もあぐらをかいている、これからもまたあぐらをかいていく、そういう傾向がある。それに対して厚生省は、何とかこれをとりたい、しかし、これは政府の行政機関の中で奪い合いすべきものではなくて、これは国民の金であります。でありますから、国民のために使うことを考えなければならない。ところが、従来の厚生年金保険の場合、厚生年金保険も先ほど申しました昭和二十九年に第十九国会で改正が行われました。そのときに附帯決議が衆参両院でついているのです。たくさんついている中で、積立金については衆議院においては、効率的、民主的措置を講じ、特に拠出者の意向を反映し得るよう工夫することという附帯決議があります。参議院の方では、民主的、効率的に管理運用するよう特別の措置を講ずること。民主的、効率的という言葉、特に拠出者の意向を反映する、そういうことができておりますところが、この附帯決議、一つも実行されておりません。このときの総理大臣は吉田茂総理大臣、大蔵大臣は愛知大蔵大臣、厚生大臣は、そこに今おられた草葉隆圓厚生大臣。それで一体、この附帯決議の積立金についての責任はだれがとるか。大蔵大臣にはこれは伺いましたから、きょうは総理に伺いたいのです。特にこのたび衆議院の方でも附帯決議がついております。衆議院の方でも、積立金の運用については、しかじかと書いて、被保険者にその利益が還元されるよう特段の配慮を加えること。この附帯決議を一体総理はどのように読まれたか、これをどのように実行される御所存か、承わりたい。
○国務大臣(岸信介君) この積立金につきましては、先ほども申し上げたように、やはりそれの利子というものが将来の年金支給額にも影響を持つわけであります。従って確実に有利に運用されていくというところで申しますというと、効率的ということがとにかく考えられなければならぬことは言うを待ちません。同時に、これは国民の多数の人が相半努力して積み立てていく金でありますから、これがまた——今の、この前の決議においては民主的と申しますか、ある意味においてはそれらの人々の福祉の方向に還元されるような形において運用されていくこともこれは考えていかなければならぬ。そこでこれは、この積立金をどういうふうに管理していくかということについては、具体的な問題につきましてはなお政府部内において検討を要する点が残っておると思います。が、いずれにしても今言ったような意味でやらなければなりませんし、資金運用部において、他の厚生年金等の積立金がそこに一括して管理されております。今言ったような方針でやられておるわけでありますが、その場合において、資金運用部の審議会があることは御承知の通りであります。ここに、関係の官吏以外に一般の学識経験者をそこに増員をして、一般の立場から、今言ったような趣旨においてこの資金が運用されるように考慮がされております。そういう意味におきまして、私どもとしてはこの衆議院の附帯決議の一この資金の管理運用の面においてはその趣旨をなるべく取り入れて、その方向に管理運営されるようにいたしたい、かように考えております。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま総理からお答えいたしましたことで十分だと思いますか、ただ二十九年の際の附帯決議が何ら行われていないというきびしい御批判をいただいた。で、二十九年の附帯決議に対して政府といたしましては、趣旨を尊重する意味で所要の改正を行なって参っておるのでございまして、その点を一、二御披露いたしますれば、三十年に資金運用部資金法、この法律を改正いたしまして、預託の場合の最高利率を年六分にする、そうしてこれは預託期間を——七年でございますが、これを新設いたしまして、厚生年金預託金に対する利率を従来の五分五厘から六分に引き上げた、これが一つでございます。さらにまた、資金運用部資金運用審議会の民主的な運用という意味におきまして、厚生関係の仕事に特に理解があると考えられる委員、この委員の増員を二名いたしまして、勤労者あるいは中小企業、農林漁業、これらに従事する人に理解ある者を選任いたしまして、そうして運用の面において民主的な運用をはかる。さらに関連融資の面でありますか、関連融資の面は、全額としてなお不十分だと言われるかもわかりませんが、とにかく二十九年三十五億、三十年は四十五億、三十一年五十五億、三十二年七十億、三十三年は七十五億、三十四年は八十五億、年々わずかずつではございますが増額いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたしておるわけでございまして、この附帯決議については、もちろん私ども政府といたしましても、衆参両院の御意見を十分尊重いたしまして、最善の努力をこの上とも尽す決意でございます。
○坂本昭君 今、大蔵大臣と総理との言われたことは少し違っておる点もあるのです。それは、なるほど附帯決議の趣旨に沿っていると言いますけれども、八十五億、七十五億というのは、これは利息にも及はないのですよ。利息よりもまだ少いのですから、これでは趣旨に沿ったとは言えないですよ。それからもう一つは、総理は一括してと言われましたが、この特別会計は一括して大蔵省の資金運用部の中で管理されているのではないのです。その中には、簡易生命保険及び郵便年金の積立金は、これは特にこの運用に関する法律というものかできて、郵政大臣がこれを管理しているのです。つまり、総理の先ほどの説明とちょっと違うのですね。これは総理の説明を聞く前に、郵政大臣にお伺いいたしますか、一体これはどういうことで、郵政省はこういううまいことをおやりになったのか。それから、その結果いろいろいい点があると思うのですが、どういう工合のいい点があるか、御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(寺尾豊君) 御指摘のように、簡保並びに郵便年金のいわゆる資金というのは、ずっと一は大正五年に創設せられ、一は御承知のように大正十五年、その当時はいわゆる加入者の利益並びに社会政策的にこれを使うということで、このときには逓信大臣が管理運用権を持っておったわけであります。昭和十八年に、いわゆる戦時中の臨時措置といたしまして、資金の一元化、こういうことから契約者に対する貸付とそれからいわゆる団体——公共団体への貸付というもの以外は預金部に預託せよ、それが解けるかと思ったら昭和二十一年の一月に、占領当時に司令部からさらにそれを続けるように、こういうような指令があって、ようやくたしか二十八年に、今御指摘のように、簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律が改正されまして、その第二条に「積立金は、郵政大臣が管理し、及び運用する。」ということになって、御指摘のように、現在はこの両資金というものは私の監督下にある。こういうことで、従いましてこの運用が現在どういうふうに行われておるかということについては若干心細い点があるわけであります。この資金、財政投融資について大蔵大臣と相談をして、簡保並びに郵便年金の出しまするそういう分担的なものについては、確かに相談を受けております。しかし、地方公共団体等に対しまする分担につきましては、この覚書というのがありまして、実は自治庁と大蔵大臣が、やっていく、こういうことで、私の方はこの覚書からは除かれておる、これには入っていない。こういうことが非常に遺憾な点もありますけれども、しかし臨時の貸付なり短期の貸付というようなものは、すべて私の責任においてやっておる、こういうようなことでございます。この運用管理の責任が郵政大臣に移されたということについては、私としては非常に益するところもございますが、まだ不十分な点もある、こういうような次第でございます。
○坂本昭君 郵政大臣、ずいぶん心細い郵政大臣ですよ。国民から簡易保険と郵便年金で取り上げておいて、そしてその金を郵政大臣の責任と資格において管理するというのに、心細いなんと言われたんじゃ、これからもう簡易保険や郵便年金も入るな入るな、あんな郵政大臣がおったんじゃ何されることかわからぬということになりますよ。これはどうもはなはだ心細い話を聞いたので、やはり今言われた簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の第二条には、はっきり積立金を「郵政大臣が管理し、及び運用する。」私はこれは非常に大事なことだと思うのですよ。何となれは、郵便年金も簡易保険もあなたの下僚が日夜を分かたず苦労惨たんして加入させて、そうして集まってきた金です、だからその金がどういう意味を持っているかということは、大臣が一番知っておらなくちゃいかぬ。そうすれば、そのことをよく理解してこれをお使いになる責任かあるのです。何だかよけいな金か集まって、使うのに心細いじゃ、はなはだこれはたよりないので、われわれ不信任せざるを得ませんですよ。昭和三十四年の二月で四千九百七十六億という金が簡易生命保険及び郵便年金の資金として集められております。ただ、これを見ますというと、地方公共団体の貸付が四四・一%、非常に多いのであります。こういうことは、大蔵省の資金運用部資金の貸付の中にこういうものはありません。これは非常にいいことです。各地方の人たちか苦心惨たんして集めたものを四四%も地方公共団体の貸付にいくということ、それから政府関係機関の貸付は一七%だけでありますそれから、もう一つ日立つのは契約者貸付が六・九%もある。こういうことも非常に私はありがたいことでありいいことであり、こういうことが、つまり被保険者の利益を考え、また民主的な効率的な運営のもとになると思うのです。このことについては、私もどなたがこういういいことをおやりになったかと思って調べてみると、これは現在の佐藤大蔵大臣がおやりになったことで、これは非常にいいことをおやりになったと思うのです。ところが、郵政大臣がそれを何だか遠慮しておられるのは、これははなはだけしからぬ。今度は坂田厚生大臣が大蔵大臣に要求される番なんです。前は、郵政大臣の佐藤さんか池田大蔵大臣に要求してこの法律を作ったのです。坂田厚生大臣は、この国民年金の積立金の運用に関する法律をお作りになる御意図はありますか。
○国務大臣(坂田道太君) これはたびたび委員会等でも申し上げておりまするように、私どもの省といたしましては、そういうような方向でいきたいということでございますが、これはよく大蔵大臣とも相談をいたしまして最終的にはきめたいというふうに思っております。
○坂本昭君 大蔵大臣は、もうすでに簡易生命保険と郵便年金のときに、その出時の大蔵大臣に交渉せられて、こういう法律をお作りになったのですから、よもやこれには反対はなさらないと思いますが、佐藤大蔵大臣いかがでございますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 簡易生命保険の郵政省所管のものを特別会計にいたしましたのは、先ほど来のお話のような非常にはっきりした理由がございます。その一つは、かつて郵政省が逓信省時代に、自分で管理運用しておった。これが戦時中の必要によって大蔵省に一本化した。この理由は、資金運用が二つに分かれておることは国の経済上、また資金運用上まずい。そういうことで、戦時中にこれは一本にした。戦争が済んだ後、その事情はよほど変ってきただろうという理由が一つ、それからもう一つは、だから事情か変ったと申しますか、昔のような状態、戦争がなくなった昔の状態へ返していいじゃないか、こういう理由が一つと、それからもう一つは、ただいま御指摘になりましたように、郵政省の職員がみずからとにかく勧誘して、そうしてその勧誘している場合に、地方自治体等の協力を得て行われている。それにもかかわらず、運用の面においてそういう点が十分考慮されないことは、この保険を伸ばしていく上においても、これはあまり益しない。むしろ支障になる。そういうことをぜひとも本筋に返して、この簡易保険も大いに伸ばしていこうし、郵便貯金も奨励していこう、こういう意味で、これを郵政省の所轄というか、管理運用に返したわけなんであります。ただいま申し上げるように二つの理由がある。それで前段の面ですが、前段の面につきましては、ただいまの運用の面に当りましては、十分大蔵、郵政両省、政府部内連絡がとれておりますので、いわゆる経済発展なり資金の面において多大な支障はないというふうに運用されております。しかし本筋から申しますならば、幾つにもこれを分けることは国の資金運用の面から見まして必ずしもいい方法だとは私は思いません。郵政省の場合にやりましたのは、ただいま申し上げるような特殊の事情であります。そこで、今回の厚生省の年金の掛金の問題でございますが、これはいわゆる集金の場合におきましても、納税の措置までに準ずるような意味の国家的な施策としてやる場合でございますから、郵政省の場合とはおのずから違うと思います。ただ還元するという点について、この年金が特別な社会福祉という意味、福祉国家建設という意味、こういう意味でこの金を集めるのでございますから、そういう意味においての還元ということについてはよほど考慮していかなければならぬ、こういうように思います。従いまして、厚生省が管理運用を自分の方でやると言われることについては、私どもは反対でございますが、ただいま申し上げるような意味において加入者に還元する具体的な方法については、私どもも十分理解を持ってその処置に協力するという考え方で厚生省と十分相談をいたしたい、かように考えております。
○坂本昭君 ただいまの大蔵大臣の簡易生命保険及び郵便年金の積立金の問題についての御意見を伺えば、実はむしろますます厚生省で管理する義務があると思うのですね。国民年金の名において強制的に徴収されてきたものでありますから、いよいよ厚生省の責任ある取扱いをすべきである、こう思わざるを得ません。特にその使途の対象が社会福祉的なものに向けなければならないということも私は当然だと思います。これは当然、一つの法律をもって責任を持って運用すべきであると考えまするので、総理にこの積立金運用に関する法的な扱いに関しての御所見をこの際明確にしておいていただきたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) この資金が、先ほど申し上げましたように、一面において確実、有利に運用され、同時にこれが多数の国民からこれを徴収するわけでありますから、その福祉に還元するようにしていかなければならないという、この二つの目的を達成する上においてどういう方法をとったらいいか、先ほど来、郵便年金や簡保の運用や管理の問題、それから一般預金部資金の運用等に関しまして、実は御承知のように、資金運用部の資金審議会と同じ構成でもってこれらのなにがやはり審議されておるのであります。従いまして、将来この国民年金の資金をどういうふうに管理、運営することが適当であるかということにつきましては、なお、政府部内におきましても、必ずしも意見が一致しているという状況ではございません。従いましてこれを至急に検討して、最も適当な方法によりまして、国民がそれに安心をし、またこれの積立金がふえることによってその福祉が増進されるというふうにとにかく持っていかなければなりませんから、それについて最も適当ないい方法について政府としては検討して結論を出したいと、こう思います。今日のところにおいてどういう方法でやるということについては、なお政府部内において検討を要すると思います。しかし、いずれにしても国民がそれを信頼できる、またこの資金の性質から見て、最も適当な方法を決定いたしたいと思います。
○坂本昭君 そうすると、この積立金の運用に関しては十分慎重に検討を加えて、不明瞭な形ではなくて、少くとも法的に明瞭な形にする、そうしてそれは積立金の始まる昭和三十六年までにおやりになる、そのことだけは明白にそういうふうに理解しても差しつかえございませんか。
○国務大臣(岸信介君) そういうふうに御理解いただいてけっこうだと思います。
○坂本昭君 今、積立金の問題が出まして、あと積立方式のことなどいろいろ議論したいのでございますが、もう衆議院段階においても相当されましたので、私は省きます。 ただ一言総理には、今度のは完全な積立方式ですけれども、私はこれはくずれると思います。今までヨーロッパの各国の年金のやり方を見てみますと、イギリス、フランス、四ドイツ、いずれも積立方式をやめた、あるいはくずれたりして賦課方式を加味してきております。で、この法律ではあくまで積立方式をやっておりますが、おそらく十五年、二十年ぐらいのわれわれの生きている近いうちに変るだろうと思います。私はそのことで、そのことを中心として、皆さん方が一つ法律を作ったら、あまりそれにしがみつかないように、もちろん国民に対する責任の点は明確にしておくけれども、その他の点についてはやはり弾力的な、言いかえれば、役人まかせのやり方でなくて、やはり政治家がこれを処理していく。今度の法案全体を通して流れているものは一つの数学です。数理保険主義が流れている。この中には政治というものは私はにじみ出ていないと思います。たとえばイギリスのやり方などを見ますと、数学が下手です。赤字を出したり資金がなくなったりしている。ところが、イギリスには政治家が多い。この間も厚生大臣に申し上げたのですか、ヘヴァンのように、入れ歯とめがねが今まで全部国が見ておったのを、半額本人負担になったら、おれはこんな内閣にいるのはいやだと言って飛び出してしまった厚生大臣がいるのですが、非常に政治的に年金問題を扱っている。そういう点で、非常に今度の法案は、数学的に満点かもしれませんが、肝心な点が抜けている。この点だけは特に総理に一言御注意申し上げて、何かこれに対して御所見かあるならば聞かせていただいて、次の労働大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) この制度をわれわれは発足する上からにおきましては、実は御承知のように、社会保障制度審議会の答申も審議願ったわけであります。まず大事なことは、やはりこの新しい制度を出発するに際して、財政的なこの基礎というものか安固に確実たということが、この制度の信用の上からいっても必要なことであることは言うを待ちません。そういう点から申しますというと、数理的にいろいろもちろん検討を必要とすることも、これもやむを得なかったと思います。しかし、将来の問題につきましては、もちろん私どもは、今度出発しますこれが完全なものであり、完全無欠なものであるというような考え方は持っておりません。この新しい制度を出発するけれども、将来政府と国民の協力によって、これを国民の福祉のためにほんとうに役立つ保障としての十分な、この使命を果すようにやっていかなければならぬと思います。そういう意味におきまして、常にわれわれはあらゆる画からこれを思考すると同時に検討をし、反省をしていって、完全な方向に持っていくという努力を続けなければならぬと思います。そういう意味におきましては、決してこの案を出したから、これにこだわって、これが成立した以上は、もうあとはほんとうの事務的の専門家にまかしておくというべき性質のものではないのでございまして、政治的観点から常に批判と反省をしていって、これの制度の完成に努力をしたい、かように存じます。
○坂本昭君 それでは、最後に労働大臣に伺いたいのですが、この間も最低賃金問題でずいぶん議論しましたからもう蒸し返しませんが、私たちはやはり最低賃金が社会保障の一再の先決要件だと思っているのですが、ところで今度、この身体障害者が年金を受けます。身体障害者についても、これは……障害年金よりも、障害者の雇用が先の問題だと思う。それについてきのう政府委員から若干説明を承わりましたから、労働大臣からは、身体障害者の雇用についていかなる内容の法案を、いつ出して、そしてこの国民年金法案に歩調をお合せになるおつもりであるか、その一点だけをお伺いいたします。
○国務大臣(倉石忠雄君) 身体障害者の就職は、やはりなかなか困難な問題でございますが、職業安定行政のうちで、われわれとしては重点業務の一つとしてその推進をはかって参っておるわけであります。その結果、相当の成果をおさめてはおりますが、さらに強力に身体障害者の就職更生をはかるために、今後官公庁等の優先雇用、それからまた民間企業に対する強力な雇用勧奨の実施等を、積極的な施策として進めて参るとともに、これを法制化することについて、ただいま政府におきましても、慎重に検討中であります。
○坂本昭君 いつですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまこれをどのような法制化したらいいかということについて、検討を進めている最中であります。
○坂本昭君 それでは、私たち社会党から出した案も、十分検討して、よろしければ大いに利用して下さい。
○国務大臣(倉石忠雄君) 坂本さんの方から御提出になりましたものにつきましても、拝見をいたしまして、私どもといたしましては、現在の段階において、皆さん方の案について、にわかに全面的に賛成だというわけにはいきませんけれども、私どもの方でも、やはり十分に検討をいたして、非常に似通っているところもございます、そこでどういうふうにこれを推進していくかということについて、鋭意研究を続けている最中でございます。
○委員長(久保等君) 暫時休憩いたします。 午後四時五十二分休憩 —————・————— 午後五時三十五分開会
○委員長(久保等君) 委員会を再開いたします。 国民年金法案(閣法一二三号)を議題といたします。御質疑はございませんか。——別に御質疑もないようですから、質疑は終了したものと認めることに御異議ざいませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 この際、お諮りいたします。委員長の手元に勝俣稔君から、お手元に配付いたしましたような修正案が提出されております。これを議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。よって、勝俣君提出の修正案を議題といたします。 発議者から修正案の趣旨説明を願います。
○勝俣稔君 ただいま御審議をいただいておりまする国民年金法案に対する修正案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。 修正点は「援護年金」の名称を「福祉年金」と改め、これに伴い、「老齢援護年金」を「老齢福祉年金」、「障害援護年金」を「障害福祉年金」、「母子援護年金」を「母子福祉年金」と、それぞれ改めることであります。これは「援護年金」という名称が、受給者に対しまして好ましくない感じを与えるからでありまして、何とぞ慎重御審議の上、このように御修正をされるようにお願い申し上げます。 なお、この法案中に用いられておりまする「廃疾」という言葉も、同様の趣旨から、これを「身体障害者」と改めることか適当と思われるものでありまするが、「廃疾」という言葉は他の同種の法律の中で多く用いられており、今この法案においてだけ、これを「身体障害者」と改めますと、適用上支障を生ずるおそれもございまするので、他日各法律の相互の関係を検討し、すべての法律につき、統一的な措置を講ずることが適当と認めらるに至りましたので、今回はこれを見送ることにいたしました。この点、御了承いただきたいと存ずる次第であります。以上。
○委員長(久保等君) ただいまの修正案に対し質疑のおありの方は、順次御発言を願います。——他に御質疑はございませんか。御発言もなければ、修正案に対する質疑は尽きたものと認め、これより原案並びに修正案について討論に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。 御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
○坂本昭君 政府原案並びに修正案につきまして、日本社会党を代表して反対の討論をいたします。 全国民が要求し、待望していた国民年金の制度が今国会におきまして熱心に審議されたことはまことに歴史的な意義があり、お互いに同慶の至りにたえないところでございます。国民の多くは無から有が生まれてくるかのように年金制度の誕生を待っております。そして欠点があってもやむを得ない、とにかく生まれてほしいと率直に国会に訴えておるのであります。しかし、私はあえて申し上げたい。期待していた玉手箱を安心して開いたが最後、みじめな老後のみしか残らなかったということでは国民の期待を裏切るもはなはだしいものだと思うのであります。国民の期待とあこがれが強いたけに、私はあえて冷静に全国民に対し、今別の国民年金法はうっかり開くと浦島の玉手箱ですぞと心から警告しつつ反対の討論を述べんとするものであります。すなわち、政府案の年金法は、今日の日本の経済、労働、国民生活の現時点において強力な社会保障を実施すべくあまりにも熱意と精神と理念とに欠け、その内容においてあまりにも国民を愚弄ずるもはなはだしいものはないと言わざるを得ないのでございます。私の本法案に反対するおもなる点を列挙いたしますと、まず第一に、完全積立方式を採用して数理保険主義に徹し、形式主義かあまりにも弧く露呈せられて、そこに社会保障政策の政治のなまなましい血と脈を触れることができないことであります。しかも、十年間しし営々として積み立てて、四十五年目から辛うじて月わずか三千五百円の所得を保障されるのであって、月ロケット時代に西暦二千年をこえて、三千五百円の支給を受けることに夢と希望とを抱く日本の青年が果してあり得るであろうかと考えるのでございます。しかも、それまでに貨幣価値の変動があれば、多くの場合インフレ傾向となるでしょうが、三千五百円は一そう無価値となるでありましょう。すなわち、今日先進諸国では、イギリス、フランス、西ドイツ等を初め、積立方式を次第に廃止あるいはそのウエートを減ぜしめて賦課方式を加えることにより、所得保障のすみやかなる効果を上げる方向に向っておるのであって、今回の政府立法の精神は年金制度に対する近代政治の感覚と理解とを欠いておると言わざるを得ません。 いわんや、問題の第二点は、かくのごとく国民が所得保障のすみやかな効果を求めておるにかかわらず、制度自体は積立方式によって驚くべき巨額の積立金を擁して、この積立金自体の財政投融資的経済効果が国民個人々々の所得保障におおいかぶさってしまうのであります。従来の各種保険等の基金が財政投融資の原資として、もっぱら安全確実、公共の福祉のためという美名のもとに大資本大企業に奉仕してきた事実は、今回の審議によって十分明らかにされましたが、積立金の民主的、福祉的利用について明確なる方針の定められなかったことははなはだ遺憾下あるとともに、今後の監視を必要とするところでございます。 問題の第三点は、四十年という、おそるべく長い、世界一の拠出期間であります。これは世界的レコードでもあると同時に、従来の日本の老齢年金十五年ないし二十年に比較してもはるかに長い。日本人もまことに気長になったという点では注目すべきであります。なるほど、積立金を最も有効に強制貯蓄として利用するにはいいが、四十年という期間は国民の魅力とは決してならないのであります。 第四の点は、すでに述べたように、長期にわたって積み立てていく間に当然起る物価の変動、インフレに対していかに具体的に調整していくかについて、その基準とすべき生計費の問題、その変動の大きさ等が明確に法文化されていないということであります。従来の例にならうならば、国民はとうてい政府を信頼することはできないのであります。このように長くかかって、安くて、しかも当てにならないのが今回の「国民年金」でありますが「国民」という名に値しない一点は、国民の中の最も大切な「妻」あるいは「主婦」に対して、これを強制適用からはずして、任意加入にしてある一事をもってしても理解ができることであります。すでにイギリスにおいては一九四二年ベヴアリッジ報告の中に「主婦に対する特別な取扱い」をしており、国民保険の中の一つの独立した階級と認め、従来のごとく被扶養者扱いをしていないのであります。その報告の言葉によれば、「主婦の働きにより次代を背負う児童の保育が行われ、労働者が家庭外で働くことが可能となるのである。主婦なくしては国家は存立し得ない。」というのであります。また、イギリスにおける主婦に関する特別な、取扱いは寡婦給付についてもあり、主婦は寡婦になった場合、三週間は夫の死亡直後の身辺整理のゆえをもって若干高い給付額を受け石のであって、日本政府法案のごとく、母子援護年金は母一人一人の場合月千円で、長子一人の存在は全く無視せられておる事実によってもわかるごとく、いかにわが国政府が国民の不幸に対して冷淡無比であるかがここに実によく立証せられているのであります。数え上げれは切りがありません。単なる事務的問題にしても、第八十六条に、政府は市町村に対し事務の処理に必要な費用を交付すると定めてありますが、国民皆年金とともに、政府のうたい言葉、国民皆保険、すなわち国民健康保険の事務処理に必要な費用を従来一体どれだけ交付してきたでありましょうか。必要な費用の半分にも足りない費用しか交付せず、そのために政府の皆保険という美しい看板に隠れて地方自治体は保険財政の赤字に悩んでおる事実は天下周知の事実であります。にもかかわらず、公約の名のもとに皆年金の複雑な事務を地方自治体に押しつけようとしておるのであって、いかに従順な地方行政の責任者といえどもおそらくは承知はいたさぬことでありましょう。 われわれは審議に当って国民各層の要望も聞きました。そうして次第に、国民が年金について渇しておるにもかかわらず、幾多の根本的な欠陥をこの法案中に持つがゆえに、出発に当って強い修正意見が国民の中にあることを知って参りました。たとえば全国社会福祉協議会は、法案審議に感謝しつつも、今国会において修正されたい事項として数項の要望を提出してきたのであります。その内容の一部、特に本年十一月より施行せられる無拠出年金につきましても、たとえば援護年金受給権者の前年における所得十三万円以下とあるのを二十万円とされたい、そのために必要な予算増は約十二億円であります。また、夫及び妻がともに老齢援護年金を受けるとき、及び一方が老齢援護年金、他の一方が障害援護年金を受けることができるときは、老齢援護年金はすべて三千円減額されることになっておるか、これを撤廃されたい、そのための予算の増は約十七億円であります。以下は省略しますが、当委員会において八項目の要望、合計しても九十五億円程度の予算増を見るのみでございます。これらはまことに切切たる訴えであり、仙台、名古屋、東京、各地の公聴会においても同じことが陳情せられ、少くともこの程度の手直しは考慮すべきものと思うのであります。これに対し、政府与党はあたたかい思いやりの念をもって自発的に法案の修正をなすべきであります。 政府はすでに圧力団体に押されて、ガソリン税五千五百円の引き上げを四千四百円とし、これによって三十四年度道路整備費に三十八億六千万円の穴を作るに至りましたが、これに対してはほおかぶりの態度をもって終始せんとしておるのでございます。老人、母子家庭の人々、身体障害者はいずれも力の弱い存在ではありますが、これらの人の声こそ日本国民の真の声であり、天の声であり、天の声に耳をかさざるものの運命は日ならずして明らかでございます。私は最初に述べた数点の基本的問題点の理由により、政府原案並びに修正案の年金制度の貧弱さを強く指摘するとともに、近い将来積立方式による政府原案の行き詰まりと失敗を予言するがゆえに、あえて明白に反対の態度を国民の前に明らかにして私の反対討論を終るものでございます。
○田村文吉君 私は緑風会を代表いたしまして、本法案並びに修正案に賛成の意を表する次第であります。ただいま坂本委員から、本案に反対の討論がありまして、この法案自体が必ずしも満足すべきものでないことは、討論の趣旨にありました通りでございます。しかしながら、社会保障の制度というものは、大よそ跳躍的になすべきものではなくて、順序を経て進んでいくことが望ましいことであると私は考えております。その意味におきまして、とにもかくにも今度、国民年金に関する法案が提出されましたことは、まさしく社会保障における画期的な事実でありまして、これは非常に賞賛に値するものであると考えます。しかし、その内容に残念な点があるというようなことについては、私どもも考えておるのでありまするが、社会保障制度は、さような意味において進むべきものであるという考えからして、本案に賛成いたす次第であります。 ただ、拠出制の実施になりまするのは、三十六年度でございまするので、私は貨幣価値の変動を、今社会党の坂本委員から述べられましたが、そういう問題については、なお時日もありまするので、さらにさらに検討することも必要であろう、またそういう変動の生じた場合において、どうこれに対処するかについては、ある程度さらに突っ込んだ研究が必要になっているのではなかろうか、こう考えます。 次に積立金の運用につきましては、ひとりこの積立金だけではありませんが、資金運用部資金で運用されておりまする今日の方法が、必ずしも満足すべき状態ではないと考えるのでありまするので、もちろんこの法案に適当した用途に使われるということが一番願わしいことでありまするが、貨幣価値の変動等によって、ややもすれば非常にこの積立金自体に不安の念を抱かざるを得ないような場合も起りまするので、さようの点につきましては、十二分に注意することを内閣にも御注文を申し上げておきたいと存ずるのであります。 なお、本案について、衆議院の附帯決議が出ておりましたが、それらの意味を、やはり今後の運用については十分に取り入れて、政府が進められることを希望いたしまして、討論を終ります。
○委員長(久保等君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより国民年金法案について採決に入ります。 まず、勝俣稔君提出の修正案を問題に供します。勝俣稔君の修正案に賛成の方は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(久保等君) 多数でございます。よって、勝俣稔君提出の修正案は可決されました。 次に、ただいま可決されました部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(久保等君) 多数でございます。よって、修正部分を除いた原案は可決せられました。 以上の結果、本案は多数をもって修正すべきものと議決せられました。
○藤田藤太郎君 ただいま可決されました国民年金法案に対して、お手元に配付しましたような附帯決議を付することの動議を提出いたします。
○委員長(久保等君) ただいま藤田君提出の動議を議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 それでは、藤田君提出の附帯決議案を議題といたします。 提案理由の説明を願います。
○藤田藤太郎君 附帯決議案の提案理由の説明を申し上げます。お手元に差し上げております附帯決議案を読み上げて、提案説明といたしたいと思います。 国民年金法案に対する附帯決議案 政府は、国民年金法案発足後、その改葬拡充に努力すべきであって、特に左記事項について早急に適切なる措置が講ぜられるべきである。 一、国民年金制度、各種公的年金制度の相互間の通算調整の措置は、昭和三十六年度までに完了すること。その際途中脱退者が不利にならないよう配慮すること。 二、生活保護法の運用において、老齢加算制度の創設、母子加算及び身体障害者加算の増額等の措置を講じ、生活保護法の被保護者にも福祉年金の目的が達せられるよう措置すること。 三、積立金の運用については、被保険者の利益の為に運用する方途を訓じ、被保険者にその利益が還元されるよう配慮すること。 四、福祉、年金の支給に当っては各種の制限措置、老齢福祉年金の年令制限、各種所得制限を緩和すること。 五、障害年金及び障害福村年金は内科的疾患に基く障害者並に精神障害者にも適地すること。 六、母子並に障害福祉年金の支給範囲に付ては更に検討を加えこれを拡大することに努力すること。 であります。 以上、附帯決議案の提案を申し述べました。何とぞ御審議御可決あらんことをお願いをいたします。
○委員長(久保等君) 御質疑を願います。——別に御質疑もないようですから、これより採決いたします。 藤田君提出の附帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(久保等君) 全会一致と認めます。よって、藤田君提出の附帯決議案を本委員会の決議として、本案に付することに決定いたしました。 なお、議長に提出する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時五十八分散会