社会労働委員会 第23号
- 発言数
- 38 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/03/30
会議録
○委員長(久保等君) これより社会労働委員会を開きます。 委員の異動を報告いたします。三月二十七日付をもって山下義信君が辞任され、その補欠として坂本昭君が選任せられました。 三月二十八日付をもって高瀬荘太郎君が辞任され、その補欠として田村文吉君が選任されました。 三月三十日付をもって横山フク君及び谷口弥三郎君が辞任され、その補欠として後藤義隆君及び中野文門君が選任せられました。 —————————————
○委員長(久保等君) この際、身体障害者雇用法案を議題といたしたいと思いますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 それでは身体障害者雇用法案を議題といたします。提案理由の説明を求めます。
○坂本昭君 ただいま議題となりました身体障害者雇用法案につきまして提案者を代表してその提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。 憲法第二十七条におきまして、すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負うと定められており、身体障害者といえども、その能力に応じて勤労することの権利と義務を負い、かつ同時に、憲法第二十五条に定められた、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するものであることは言うまでもないことであります。 しかるに今日、労働力人口は四千四百万人を算し、常用被用者は約二千万人をこえんとし、一般健康者の常用雇用率は四〇%を上回っているに反し、身体障害者の雇用率はこの半ばにさえはるかに及はないのが実情であります。 現在、わが国には、いわゆる身体障害者約百万人(視覚障害二三%、聴覚または平衡機能障害一三%、音声または言語機能障害四%、肢体不自由六〇%)、さらに近来、欧米において身体障害者の範囲に取り入れられている精神薄弱者約六十万人及び内臓機能障害特に肺結核回復者等約十万人以上を加えると、そのうち労働力人口となる数は、百万人をややこえるものと推定されるのであります。 現在わが国の全産業について、いわゆる身体障害者の就業状況は、雇用率〇・七%であり、百人ないし四百九十九人の事業所の雇用率は〇・五%で最も悪く、十四人以下の事業所の雇用率は一・六%で最もよいのであります。また、官公庁における雇用率は、平均〇・八%であって、国及び公共企業体等の場合が〇・五%で最も悪く、市町村の場合が一・四%で最もよいのであります。 飜って欧米各国における身体障害者の雇用立法を見ますと、イギリスの一九四四年身体障害者雇用法、西ドイツの一九五三年身体重障害者雇用法、オーストリアの一九四六年身体障害者雇用法等を初め、アメリカ、ブラジル、オランダ、イタリア等二十カ国において、低きは一ないし二%から、高きは一〇ないし三〇%に及ぶ割当雇用を厳格に実施しているのであります。 わが国も身体障害者の雇用の実情にかんがみ、現在の雇用率を引き上げ、少くとも三十万人以上の雇用を確保する必要がありと考えて、国及び地方公共団体と三公社等の公法人については合計十五万人以上、その他の百人以上の職員を雇用する事業所についても合計十五万人以上の雇用を定め、もって身体障害者に対し憲法に定められた生活を保障するのが本法を提案せんとする理由であります。 次に、本法案の骨子について御説明申し上げます。 一、この法律は、憲法第二十七条に掲げる理念に暴き、労働の意思を有する身体障害のために就職の機会を確保し、その自主独立と生活の安定をはかることを目的とするものであります。 二、身体障害者とは、別表に掲げる心身の障害がある十五才以上の者で、都道府県知事の登録を受けた者をいうのでありまして、従来身体障害者福祉法別表に掲げられておりましたもののほかに、労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の胸腹部臓器の機能障害と、精神または神経系統の機能障害ある者を加えております。 三、身体障害者の雇用に関する事項を調査審議するために、中央身体障害者雇用審議会及び地方身体障害者雇用審議会を設置します。 四、法律の定めるところにより指定された職種については、雇用主は身体障害者を一定の割合以上でその職種に雇用しなければならないことにいたしました。 五、職員の定員または定数が百人以上である雇用主は、国及び地方公共団体につきましては、政令で定める円の機関及び地方公共団体の機関ごとに、職員の定員または定数から指定職種に属する定員または定数を差し引いた数の百分の五以上の割合により、日本国有鉄道、日本電信電話公社及び日本専売公社並びに日本銀行その他政令で定める公法人は、同じく百分の五以上の割合により、その他の職員の定員または定数が百人以上である雇用主は、職員の定員または定数から指定職種に属する定員または定数を差し引いた数の百分の三以上の割合により身体障害者を職員として雇用しなければならないものといたしております。 六、雇用義務員数の算定に当っては、身体重障害者は一人を二人に換算するものとし、また、身体重障害者の妻が雇用されるときには、妻を半人として換算することにいたしてあります。 七、労働大臣または都道府県知事は、身体障害者雇用審議会の意見を聞き、特別な事情またはやむを得ない事情があると認めるときは、期間を定めて雇用義務を軽減し、または免除することができることといたしてあります。 八、労働大臣または都道府県知事は、身体障害者雇用審議会の議により、雇用主に対し身体障害者を指名雇用させることができることといたしてあります。 九、雇用主は、職員たる身体障害者を解雇するには、あらかじめ労働大臣または都道府県知事の承認を受けなければならないことといたしました。 十、雇用主は、その雇用した身体障害者に対しては、当該都道府県の地域において同一職種に従事する身体障害者以外の労働者に通常支払われる賃金の額の百分の八十に相当する額以上の賃金を支払わなければならないこととし、ただし、労働大臣または都道府県知事の許可を受けたときは、その許可された額を支払うことをもって足り、その場合には、許可を受けた額に厚生年金保険法等によって支給される障害年金の月額を加えた額を右の八〇%の額から差し引いた額を国が補助することとしてあります。 十一、国は雇用主に対し、身体障害者のための作業設備の設置改善及び作業用補装具の支給に要する経費の全部または一部、また、身体障害者に認定職業訓練を受けさせるに要する経費の全部または一部を補助することができるものといたしております。 十二、身体障害者を雇用した雇用主に対しましては、所得税及び法人税について減税措置を講ずることにいたしました。 なお、この法律は、昭和三十四年六月一日から施行することとし、ただし、雇用義務に関する規定は、昭和三十五年四月一日から施行することにいたしてあります。 以上、本法案の提案の理由並びに内容の概略を申し述べました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同下さいますようお願いいたします。
○委員長(久保等君) 本案に対する質疑は、次回以降に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
○委員長(久保等君) この際、労働情勢に関する調査の一環として、国際労働条約批准等に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 国際労働条約批准等に関する件を議題といたします。御質疑を願います。
○光村甚助君 この前の委員会で、ILOの方から再勧告に似た文書がきているじゃないかということを質問しましたが、労政局長は、外務省に今きているけど、内容は見ていないのだと、こういうお話だったですから、その内容をごらんになって検討されましたか、一つお聞かせ願いたいと思います。
○政府委員(亀井光君) 結社の自由委員会が理事会に対しまして報告しましたその結論につきましては、公文として参っております。
○光村甚助君 その内容を検討されたかどうかを聞いているのです。
○政府委員(亀井光君) その内容につきまして検討をいたしましたのでございますが、一町結論的に申し上げますると、日本政府の報告に基きまして、本委員会としましては、日本政府が報告の中に言っておりまするような法律の改正その他の諸困難の克服についてできるだけ早くこれを処置をし、批准の手続をすみやかにとっていただきたいという趣旨のものでございます。で、われわれもその趣旨に従いまして、従来とも諸般の準備を今いたしておるのでございまして、この理事会からの日本政府に対しまする要請等に応じましてわれわれも従来からやっておるところでございまして、事新しくこれにつきまして政府の意思を表明する、あるいは政府の態度を変更するというふうなことは要らないというふうに考えております。
○光村甚助君 私はその内容の受け取り方が違うと思うのですよ、あなた方と。わざわざ先の勧告と同じものだったら、新しくそのあとで勧告がくるはずはないのです。あなたの方の受け取った文書はどうか知りませんが、私の方の入手した文書によりますと、ちょっと読み上げますけれども、「日本政府が八十七号条約を批准する前にある条件が満たされなければならないといっているが、現存する諸問題を八十七号条約の精神により早急に解決すること、及び約束した批准手続処理を速かに行い、条約の全面的な適用をなすであろうことを確信する」としているのであり、このことは、政府が閣議において批准する態度を決定したという報告により、それを早急に実現すべきであるといっていることにほかならないのですよ、これは。さらに議事録等によれば、日本政府は五月二日までの国会の会期があり、それをはずすと今年末まで批准されないことを考慮に入れて今国会において批准を完了することを特に希望しておる、こういうようなことがいわれておるのです。だとすれば、あなたのおっしゃることは、今までと違ったことはないとおっしゃるのですけれども、あなたの方から出された文書、また、総評とか全逓から出した文書によって再びこの自由結社の委員会が会議を開いて、こういう勧告をしておる。そうすれば、前の段階と今度の段階とは相当私は開きがあるのに、別に検討して善処する必要もないという答弁は、私には納得できないのですが、この点、労働大臣にお伺いしたいと思います。
○政府委員(亀井光君) 今御質疑のございました中で、今国会が五月二日までであるから云々というふうな記事の内容につきましては実は承知をいたしていないのでありまして、ここに原文これは飜訳の相違で若干、先生の御指摘の点と違いますが、趣旨は同じようなことでございまして、もう一度これを、われわれが公文書として翻訳いたしましたものを朗読いたしますと、「日本政府は、内閣が本条約批准の手続を開始するに先立って、一定の条件が充たされなければならないと述べている。このような事情に鑑み、本委員会は、法律を改正し、本条約を批准するという内閣の決定に関する日本政府の言明に留意すること、日本政府が、遅滞なく本条約批准の手続を開始してこれを完全に実施するという見地から、批准することを決定した本条約の精神にそって残余の諸困難を速かに克服するであろうという確信を表明すること、及び本件の審議を次回の会期まで延期し、これに関する今後の進展について引き続き情報を送付するよう日本政府に要請することを決定した。」これに基きまして先般御説明いたしましたように、公文書が参りました。その公文書の中では、四月九日までにその後、政府のとったいろいろな手続について報告してもらいたい、こういう趣旨の連絡でございます。
○光村甚助君 今労政府長は、全然考慮する余地はないとおっしゃるけれども、もう一ぺん、今、大臣にも答弁を求めたのですけれども、私の言っていることは、日本政府が労懇のつまり答申を受けて、向うへ、ILOの事務局へ通知した、そうして私の方は、私の方というのはちょっと語弊があるが、総評、あるいは全逓からこれに対してまた提訴しているわけです。それに対してわざわざ会議を開いたというのは、次の国会までということだったけれども、今、日本では現在国会を開いている、開いているならば諸条件を克服して一日も早く批准しなさいということを再び言ってきている。だから、私は去年の勧告の段階と、今度の再勧告といいますか、私の方は勧告ととりますが、あなたの方ととり方が違うのですが、向うでわざわざ一日でも会議を開いて、再びこういう文書を日本政府によこしたということは、相当政府が考え直さなければならぬ事態に、考え直すべき段階にきているのだと思います。今の労政局長の答弁では納得できない。大臣どうお考えですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 結社の自由委員会はただいまILOの会議において開かれるべき時期でありまして、これからずっといろいろな委員会が開かれて、総会が六月から始まる。そこで私どもは、やはり八十七号条約については、政府は批准するという態度をきめたのでありますからして、それ以上のことについては、やはり批准する場合に、国内法の整理、その他政府が必要と認める措置を講ずるということは国内問題であります。従って、他から干渉を受ける必要を認めないのでありまして、従って、私は当初方針を決定いたしました趣旨に従ってなるべくすみやかに批准の手続をとりたい、外部にいろいろな御意見のありますことは、それ相当にやはり私ども参考にいたしますが、政府としての方針は決定した通りになるべく早く批准の手続をとりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○光村甚助君 大臣の言葉じりをとらえるわけじゃありませんが、ILOから勧告がきたものを他国からの干渉だとおとりになるのですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、ILO事務局というのは、外国に対していろいろな干渉がましいことを言うことはできません。条約として、条約に伴った勧告という形はたくさんございます。私は、ILO機構の中にあるいろいろな委員会が決定をされて、意志表示をされるということは、先ほど申し上げました通り、その委員会の御意見というものはそれなりに参加国でありますから、尊敬をいたすべきものですが、日本政府がやるべき行為は、やはり批准ということについていろいろ希望がある、批准はするという態度を決定したのでありますから、それ以上の内政のことについて外国の干渉を受ける必要はありません、こういうことを言っているのであります。
○片岡文重君 関連して。申し上げるまでもなく、この条約によって影響を受ける日本の労働者の数というものは非常に大きい。従って、これらの何十万という労働者諸君が、直接批准されるとされないとによって影響を受けるのであるから、政府としても、真に労働者の労働条件に少しでもよい影響を、よく改善していこうというお考えになるならば、その批准は一日も早く行われるべきであると考えます。で、ILO等においてもそういう考えのもとに、従来日本の政府がとってきた批准するがごとく、せざるがごとく、はっきりいえば、すると思わせてできるだけ引き延していこう、こういう老獪なやり方に対して、そのまま見のがすことはもはやがまんがならぬと、たまたま今日の事態に追い詰められた政府が批准をしなければならないという意思をやや明確にするに至ったために、それならば五月二日までの国会の期間中に、今からでも、真実批准をしようという意思さえあるならば、幾らでもできるではないか、即刻おやりなさい、やってほしいというのが今回の再勧告だと思うのです。従って、今、大臣がおっしゃるように、やるという意思を表示をした以上、あとの手続等についてとやかくいわれるのは内政干渉だという考え方は、少しひねくれているのじゃないかと、言葉は悪いかもしれませんが、それが言葉が悪いというならば、行き過ぎといいましょうか、とにかくあくまでもそうしなさいというのじゃなくて、これこれの手続をとりなさいというよりも、とにかく最小限度のそう勧告の期待する措置はとれる状態に今なっておるのだから、とってはいかがですかと、こういうことですから、いささかも内政干渉ではないし、それは内政干渉だとおとりになることが、すなわち今までのこの批准するがごとく、せざるがごとく、こいねがわくはしないで、このまままたこの国会も通していく、また、次の通常国会にも、この国会ではまだ研究の結果がまとまっておりませんということになって、あんまり政府のおっしゃることを先に申し上げてしまったのでは恐縮するのですけれども、そういうことになってまたまた見のがされる、それではいけないから、今現に国会が開かれておることだから手続をおとりになってはどうですかということは、私はいささかも内政干渉ではない、当然これは労働者の基本的な権利を守るILO機構の当然の措置であると思うのですが、それでもやはり労働大臣は内政干渉であるとお考えになりますか。どうぞすわったままで御答弁下さい。
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府の方針はしばしば申し上げておりますように、ILO八十七号条約というのは、労働政策の基本的立場に立って批准すべきものであると、こういうふうに決定をいたしておるのでありますから、その批准をいたすのに必要なる国内的措置というものは、外国の干渉を受ける必要がありません。日本政府は政府の責任においてやるのでありますから、そこでその今おっしゃいましたように、私どもは諸般の準備をするということは、その諸般の準備をするということについて故意におくらかしておるようなふうにおとりになる御意見もあるようでありますけれども、そういうことはしばしば私が申し上げておりますように、日本はやはり公共性を持った企業の正常なる運営ということは、政府が国民に負わされたる義務でありますから、そういうことの前提に立って、そして正常なる労使慣行が行われていくためにはどうすべきであるかということについて行政府の責任のある処置をとらなければならない、そういうことについて鋭意努力し、早くそれがまとまったならば批准手続をとりたいと言っておるのでありますから、もちろんILOにおいてもその事情はよくおわかりの通りであります。従って、私どもは決してその故意におくらしておるとか、労働運動に対して今お説のような特に偏向した気持などは持っておるのではないのでありまして、いろいろな角度から検討をして、なるべくすみやかに批准の手続をとりたいと、こういうことを言っておるわけでありますから御了承いただきたいと思います。
○片岡文重君 どうもその御説明が私どもには納得いかないのですが、正常な労使関係、あるいは正常な労働運動ということをよくおっしゃるようですが、公共企業体等の労働者諸君の運動か、いわゆる政府のおっしゃる正常であるかいなかということは、あくまでも現行法規を基盤として、その現行法規を政府の立場になるべく有利になるように御解釈をなさって、その上に立って正常であるかいなかということを論ぜられておる。ところが、この現行法が制定せられましたときにも、労働者諸君並びにILOの中にも大きく意見がございましたように、こういう労働者の基本的権利を拘束する法律を持つということはよろしくないということであったわけです。これは労働大臣も十分御承知になっておられることであります。従って、今日までしばしはILOから、この法律の改正、言いかえればILO条約の即時批准ということが、しはしば勧告をされておるわけであります。で、この総会に御出席になられた、労働者側の代表に対してはもちろんのこと、政府並びに中立側の委員に対してもそういう意思表示は何回かなされておるはずです。この世界的な水準にまで、日本の労働法規を引き上げるということは、今日の政府に課せられた当然の責務でなければならぬわけです。従って、すでに制定せられた当時に、重大なる誤まりを犯しておる現行法規をたてにとって、いつまでもその法規の改廃をしぶり、しかもその法規の改廃を勧告せられるに及んでは、それを内政干渉であるかのごとくに解釈し、そう発表せられるということは、あまりにも私は未練がましいことではないか、すでに今日に至ればもうわれわれがむしろあぜんとするがごとくに、特に倉石さんの御性格から言って、もう快刀乱麻を断つがごとくにずばり一つ思い切った措置をとってよろしい、条約批准は今国会でやりましょうというはっきりした男らしい言明を、私はこの際切に望んでやまないのです。自後の手続については、希望されるならば御検討になってもけっこうでありましょうし、すでにこの勧告もなされ、また、労懇の結論の出ることも、突如として出たのではなくて、また、まさに青天のへきれきということでもなくて、当然常識ある人たちがたやすく推測できる状態にあったのです。そういう推測のできるような常識的な結論が出たのですから、その結論に従うことは、むしろ良識ある政治家のとるべき態度ではないかと思うのです。なお、正常なる労使の慣行等について、労働大臣としては現行法規を改正する意思もなく、従って、また、今国会においてどうしてもILOの再勧告に従う意思はないのかどうか、御所見と結論とをちょっと伺いたいのです。
○国務大臣(倉石忠雄君) しばしば繰り返された質疑応答でございますが、第一に政府は、ILO八十七号条約は批准する、こういう前提であります。そこでなるべくすみやかに、あとう限りすみやかに、それに要する諸般の準備をいたして、それができ次第に批准の手続をとりたい、こういうことが前提になっておるわけであります。そこで、私どもといたしましては、やはり政府は批准の手続をとる、その場合に国会の承認を必要とすることであります。国会の承認を必要とするというふうな場合には、やはり国会の多数の御意思が、せっかく政府が提案をいたしましても、たな上げのされないように大体の御了解を得なければなりません。政府が方針を決定いたしましてすみやかに諸般の準備を進めるという態度をきめましたのは、しばしば申し上げておりますように、四条三項、地公労法五条三項を削除することによって、政府はどういうふうに影響を持ってくるかということについて、行政府の責任において十分な検討をしなければならない、その検討を今鋭意進めておる最中でありますから、私は今片岡さんの仰せられましたように故意に遷延をいたしておるのではないのでありまして、急いでおります。その急いでおる過程に現在あるのだ、こういうふうに御了解を願いたいと思います。
○藤田藤太郎君 今労働大臣のお話を聞いておりますと、批准はする、そして諸般の準備を急いでおる、こういうお話であります。しかし、この前のこの委員会でどういうことを言われたかというと、急いでおるということで、それじゃこの国会中にやるのかどうかということになると、できる限り努力をすると、こういうお話でございました。ところが、どうでございましょうか、次の小柳君の質疑の中で、今の結社の自由と団結権の擁護のこの大精神を認めると言いながら、全逓の問題云々ということによって批准の可否をきめるというところまで発言があったと私は記憶する。労使の問題について介入しない、正常な云々というお話が出て参りますけれども、結社の自由と団結権の擁護というものを守っていこうという大精神と、今のような格好の御発言とは私は非常に大きく食い違うのではないかと思う。八十七号の内容を検討いたしますれば、つぶさにその問題が出てくるわけでございます。私は八十七号全体の問題を再びここで議論しようとは思いませんけれども、この条約を批准するという形の中で、将来どういう工合にして動いていくかという問題はここで議論しないでも明らかなことだと思う、この原則を認める以上は。そういうことの他の面を見ますと、労懇が、批准し、四条三項、五条三項を削除するという大筋の結論を出して、このようにこの八十七号条約というものが処置されるということを労懇も期待し、国民も私は期待している重大な問題だと思う。手続をしなければ云々ということをおっしゃいますけれども、非常にこの歴史は長い、積極的な議論になってからもう一年以上もたっておる。それにおいてここでこの八十七号を批准しない、諸般の手続をすみやかに努力しておるというだけではわれわれは納得できないのです。先ほどからのお話を聞いておると、ILOの事務局が、われわれの日本の国に干渉とか云々ということが出て参りますけれども、これは結社の自由委員会というILOの機関の決定であり、これがILOの理事会で採択されて、このものが日本に送られてきている。明確に批准をするということと、今政府がとっておられる態度というものとは私は国際的には非常に理解のできない問題として動いていく、こういう工合に私は考えます。だから、そういう意味においても、この八十七号は、政府は、大胆に今までの積み重ねによって批准をし、その関係する法規を処理する、こういう態度をとられることが私は一番いいんじゃないか、私たちはそうでなければなかなかこれは納得はいかぬ、私たちはそう考えます。労働大臣の話を聞いて、おると、どうも私は理屈に合わぬのです。どうしてもその大臣の発言をわれわれが理解しようと思っても、なかなか理解ができぬのです。労働大臣はそういう形でこれをずるずると引っぱっていって、結局、何らかの手当というのは、何か知りませんけれども、この間の発言によると、全逓の問題云々ということに集約されそうだ。こういうことは理屈に合いませんよ。だから結局、そういうものの云々ということでこれをずるずると、批准する方針をきめていることだけで、これをずるずると延ばしていくつもりなんですか。それを一つお答え願いたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) そのことは、政府の態度は、この前の委員会でも明確に申し上げましたように、八十七条約を批准するために国内法その他整備すべきものは鋭意今整備している最中であります。従って、この公労法に関係のある労働組合が今とかくの問題を越しておりますが、やはり法律は現行法を守るということがILO条約を尊重する建前と一致するのであるから、やはり国内法は守るような態度をとってもらわなければ困る、こういうことを申しているわけであります。
○藤田藤太郎君 国内法を守るということで、きょうはおっしゃいませんでしたけれども、八十七号の八条の一項を何回もここで言われた。二項にはそういう国内法を、この精神を承認する限り作ってはいかぬという明確な、八十七の八条の二項に明確に書いてある。これは並行していると思う。だから、そういうほんとうの目から取り除いていくということが八十七号を批准するという大精神に沿うものである、私はそう思う。そういうことの言を、大臣の言をだんだん進めていけば、この間の小柳君との間の質疑が結着点だということになって、いつまでたってもこの条約は批准ができない、こういうことになるのじゃないですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 八条二項のお話でありますが、日本政府は八十七号条約をまだ批准してはおりません。従って、その条約による義務というものは日本政府にはないわけであります。そこで、しかしながら、日本の労働政策、ILOに協力するという建前からは、結社の自由というものに制約を加えるべきではないという考えに立つからして、われわれはなるべく早くこの批准をすべきである、こう考えているのであります。しかしながら、政府もそういうふうに考え、また、労懇の答申にもあるように、特にその公共性にかんがみて正常な運営を期するようにせよと、こういうことであるからして、やはりそれに従事している労働組合もやはり現存する法律は守るという民主的態度をとらなければいけない、こういうことをわれわれは要望しているのであります。従って、私どもといたしましては、故意に今のような態度を全逓がとっておられる限りは、ILO八十七号条約は批准の手続をすることがきわめて困難である。このことは、前の委員会において小柳さんにお答えいたしました通りであります。
○藤田藤太郎君 そうなると、どういうことになるのですかね。たとえばこの八十七号を批准をする、日本国がこの八十七号を批准いたしますと、その八十七号の全条文、精神を政府としても守らなければならないし、国としても守らなければならぬという信義上の問題が出てくると思うのです。そうすると、八十七号を批准したあとに何が起きてくるかというと、これは、労働組合は何にも固定した者が役員になるわけでありませんから、おのずから民主的に自分の立場から自分の信頼する人を、自分の利益になる人といいましょうか、そういう人を選んでくるわけでございますけれども、これが結社の自由で、団結権の擁護だと私は思う。そういう場合にどういう処置をおとりになるか。この前のお話ですと、そういう制限やその他は考えていませんというお話でありました。そうすると、今の全逓の問題そのものは、この八十七号を批准するという大精神からきたら、いろいろ今後今のような全逓と同じような型のものができても、日本国はそれにとやかく言うことはないじゃないですか。また、やろうとしておられないのじゃないですか。そうすると、少しおかしいじゃないですか、そういうものを含んでおる八十七号を批准するとおっしゃるのですから。おかしいことありませんか、それで。
○国務大臣(倉石忠雄君) 八十七号条約というのは、やはり自由にして民主的な労働運動というものを育成していくという精神なんでありますから、そういうふうな立場に立って八十七号条約を批准して、結社の自由を尊重するという労働政策を国はとろう、そういうのであるからして、そこに関係を持っておる従業員が特に違法な行為をやるというふうなことはこのILO条約の精神にも反することであるから、やはり現行法は守るという態度をとってもらわなければ、ILO八十七号条約の批准手続を国会に出してもたな上げされてしまうようなことでは政府も困りますからして、やはり国会においても承認を得られるような態度をとってもらいたい、こういう現実的なことをお話し申し上げているのであります。
○藤田藤太郎君 問題は、八十七号の結社の自由と団結権の擁護という条約は、この結社の自由と団結権の擁護をおのおのの国がやっていこうという大精神ですね。これを政府も批准をしようとおっしゃるわけでしょう。批准をしようとおっしゃるこの条約の内容を見てみますと、今、条約を批准してないから云々ということでなしに、この書いてある、この条約に盛られてある全文を承認していこうということになれば、そういう法律によってたとえば触れるところがあったとしても、この大精神を批准しようということと、今の瞬間の問題だけとらえて云々と言われることとは、私は少し違うのじゃないか、そういうことでは理解ができないのじゃないか、私の言っているのはそこなんです。今、そういう形の、世界じゅうの多くの国が、結社の自由と団結権の擁護というものを、ほんとうにおのおのの三十五ケ国がもう批准いたしております。批准してない国でもこの自由を認める国がほとんどでございます。これは昔の問題と私は思っているんです、国際感情の中でいけばそういう制限を行うなんということは。そういう現存する法律を早く変えるということが、むしろ国内法を変えるということが先行すべきであって、特に今度は条約を批准するということまで政府は先ほどから何べんも答弁されているのなら、国内法を変え、批准するというこの大精神によって次の新しい出発をし、国際間の仲間入りをしよう、こういうところにいかれなければ、私は今の全逓云々という問題だけでいつまでも——まあいつまでもになるかどうか知りませんけれども、この問題が解決しない限り批准をしないのだというような、そういうことは理屈に合わぬ。そういう工合に考えられませんか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 現行法が現存しておって、それに日本の国民は従わなければならぬということでありますから、ILO八十七号条約を批准するということは、違法性を合法化するということではないのでありますからして、私どもはしばしば申し上げておりますように、八十七号条約を批准するという大方針を決定した以上は、そこに関係しておる従業員もやはり現行沖を守るという正々堂々たる態度に返ってもらいたい、それを期待しているのであります。しかし、どこまでも故意に違法な行為を続けていかれるということが公労法に関係のある従業員に行われておる限りは、批准の手続をとることはきわめて困難である、この態度を政府としては変えるわけにいかないのであります。
○藤田藤太郎君 八十七号を批准するとさっきから大臣が言われるのなら、なぜその抵触する法律を、国内法としてなぜお変えにならないのか。今起つてきた問題ではない。これは一年も前から二十八国会以来の問題です。なぜお変えにならないのか、そこがわからないと言っているのです。
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府は御承知のように、行政府でありまして、国民に対する責任を負っているわけであります。従って、政府の考えに同調されるとされないとはそれぞれの方によって御意見が違うかもしれませんが、政府は八十七号条約を批准するという場合にはやはり昭和二十八年の内閣の閣議で決定しておるように、それに抵触すると思われる国内法は改正する、こういう建前で公労法及び地公労法の改正ということを検討し始めたのです。その結果どういう影響を持ってくるかということについて諸般の準備をするということは、政府が国民に対する行政府としての当然の義務であります。従って、ただ安直に八十七号条約については、公労法四条三項だけ直せばいいのだというふうな態度は政府としてはとれないのでありますから、何べんもお答えいたしておりますように、これについて諸般の研究と準備を今進めておる、そういうわけです。
○藤田藤太郎君 その準備々々とおっしゃいますけれども、いつをめどにして、今国会が開かれているのですから、法律は国会でないと変えられないわけですから、この国会中におやりになるつもりですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 大体、私どもの計算によれば、次の通常国会までにはできるだけ早く間に合せたいと思って努力しておるわけです。
○藤田藤太郎君 そうすると、この前の二十八国会以来、労働問題懇談会の結論が出たら従いますと、政府は何回も答弁をしておられる。今の倉石労働大臣もそれを確認しておられる。労働問題の懇談会の結論が出ました、その結論に従って批准すると大臣はそこまでは答弁をされるけれども、この条約は批准するとそこまでは答弁されるけれども、諸般の処置というものは、条約准批もそうでございます。また、それに抵触する岡内法の改正の問題もそうでございます。私たちは労働問題懇談会の結論が出たらその国会において批准をすると、こういう工合に約束されたものとしてこの問題を見守ってきたのですけれども、だんだんと事態が発展して、とどのつまりは全逓云々という問題になってくる、これじゃ私たちは困るということを言っておるわけであります。こういうことでは一貫して二十八国会以来この問題を審議してきた私たちとしては非常に理解できない。これ以上私の質疑をやっても、理解のできるような答弁がないわけですから私はやめますけれども、しかし、私はもっと歴史的にこの問題がここまで出てきた経緯からして、ILOの理事会、ILOの機構がこの問題を世界じゅうの加盟国に、より有意義に生かしてもらいたいという熱意、それから国内における労働問題懇談会その他を通じて一般世論、この面から見ても非常に残念な状態である、私はそう考えます。政府はこの国会において何としてもこれを踏み切ってものを処理するように努力をしてもらいたい。これだけを発言してやめます。
○委員長(久保等君) ちょっと速記をやめて。 〔速記中止〕
○委員長(久保等君) 速記を起して。しばらく労働大臣が予算委員会に出席をいたしますので、休憩をいたします。 午後三時十七分休憩 —————・————— 午後六時二十分開会
○委員長(久保等君) 再開いたします。 本日はこれにて散会をいたします。 午後六時二十一分散会