社会労働委員会 第20号
- 発言数
- 26 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/03/24
会議録
○委員長(久保等君) これより社会労働委員会を開きます。 委員の異動を報告いたします。 三月二十日付をもって中山福藏君が辞任し、その補欠として田村文吉君が選任されました。三月二十四日付をもって阿具根登君が辞任し、その補欠として坂本君が選任されました。 —————————————
○委員長(久保等君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 国民年金法案(閣法第一二三号)の審査上の参考に資するため、参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じます。その日時、人選その他の手続等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。よって委員長は理事と協議の上、進めることといたします。 —————————————
○委員長(久保等君) 国民年金法案(閣法第一二三号)を議題といたします。御質疑を願います。
○坂本昭君 このたびの国民年金法案を作成するに当りまして、厚生省の良心ある俊秀の方々が知能をしぼって非常な御研究をされたことについて、深い敬意を表するものでございます。しかしながら、敬意は敬意であって、法案そのものについて、はなはだ多くの批判すべきものを認めざるを得ないのでございます。 きょうは、きわめて総括的というよりも、年金法案についての序論的な、そして私たちから見ると決定的に大事な点をお尋ねしたいと思います。 最初に、第一条にもあげておられますが、国民の共同連帯によって国民生活の安定を守っていこう、非常にりっぱな目標を掲げておられますが、この共同連帯という意味を具体的にはどういう形でお考えになっておられるか、大臣のお考えを承わりたい。
○国務大臣(坂田道太君) 社会保障制度というか、ことに今回御審議を願っておりまする年金制度そのものが、大きい意味におきましては、やはり社会連帯という考え方から成り立っていると私たちは考えているわけでありまして、今回提出いたしました年金というものは、その基本といたしましては、拠出年金を基本といたしまして、経過的にまたは補完的には、現在すでに老齢あるいは障害あるいは母子家庭にあられる方々に対しましても保険料を納めることができないこれらの方々に対しましてはまるまる国がこれを見ていこう、こういう意味合いにおきまして無拠出年金制度、今度の法案といたしましては援護年金の制度を考えておるようなわけでございます。たとえば老齢者の方々について申し上げまするならば、自分たちの老後というものは、自分たちが将来老齢になったときの生活の一部を得られるために、自分たちが所得活動期である間に、仕事ができて、そして所得のある問にその一部を積み立てて、そし老後の生活の一部をささえていこう、そういうわけでございまするが、その出しました保険料の二分の一というものはこれを国で見ていこう、まあこういう仕組みになっておることは御承知の通りでございまして、この問、この委員会におきまして木下委員の御質問にもお答えを申したわけでございますが、自分たちというこの中におきます自分というものは、単にたとえば一個の物理学上の個でなくて、一つのいろいろの悩みを持った、人間的苦悩を持った個である。人である。たとえて言うならば、その自分というものは非常に貧乏で、どうしても生活がしにくい状態にある個人でもある。しかし、ある自分は非常に豊かな金を持った方であって、そうしてその方はいわば自分の今の生活にもそう支障は来たさない。あるいは将来の見通しも十分ある。しかしながら、隣りの貧しい一人の人たちのことをやはり頭に置いて、つまり社会連帯の気持から拠出をすることによって、その積み上げられた総額によってそれらのかわいそうな貧しい方々に対しても相当の給付というものを与えていこう、こういういわば社会連帯の考え方から成り立っておる。障害についても同様なことが言えると思いますし、あるいはまた、母子家庭の方々におきましても言えると思うのであります。結局は障害を受けたり、あるいはまた、母子家庭であったり、あるいは老齢というような、人間のいわば自分の意思以外の事柄によって所得能力を失った人たちに対して、所得ある人たち、あるいは健康な人たち、そういった人たちが積み上げた幾はくかの金及びそれらに対して国全体がやはりその二分の一程度を見ていく、こういうような意味から社会連帯という考え方でもってこの年金制度が作られておる。こういうふうに実は考えておるようなわけでございます。
○坂本昭君 ただいま大臣の御説明にも出ましたが、無拠出の年金をやる、あるいは保険金の二分の一を国が負担をするこういうことによって共同連帯の財政的な裏、つけというものが私は行われていくと考える者でございますが、要は所得の再配分ということにあるかと思うのであります。特にこの年金制度というものは、これは所得保障の制度でございまして、そういう点で所得の再配分ということが明確に行われないような、そういう年金法であるとするならばそれは羊頭をかかげて狗肉を売るのたぐいであると言わざるを得ないと思うのであります。そういう点でこれからいろいろとそういう面の基本的な問題についてお伺いいたしていきたいと思います。 で、この法案の中で、いろいろと問題になる点がございますが、きょうは時間の関係もございますので、特にこの運用と調整の問題、この調整の問題は、この法案では第四条のところにちょっと出ております。それから運用のこと、費用のことについては八十五条から百条のところに出ておりますが、現実的な問題としては、結局運用と調整の問題が一番大きい問題になるのじゃないか、特に国民はみなこのたびの年金に対して非常な期待を持っている。非常な期待を持っていることは、これはもう大臣よく御承知だと思いますし、私どもいなかへ帰りまして、いろいろな演説会などやる場合に、最近はおじいさん、おばあさんあたりが演説会に出ておって、一体年金はどうなるのですかという率直なことを聞かれるのであります。ただ国民の期待にほんとうに沿ったところの内容があるかどうか、私は率直に申しまして、どうもこの言葉は、いわゆる国民年金という言葉であるけれども、内容的に見ると、非常に失礼でございますけれども、ごまかしがあるのじゃないかということを痛切に感ずるのであります。特に今回の三十一回国会には、この国民年金法案を初めとして、公務員の共済法案、それから厚生年金法案の改正、それから船員保険法の改正、それから中小企業の退職金共済法案、こういった法案が、つまりそれぞれ年金に関係のある法案がたくさん出ているのであります。幸か不幸か国民年金におおわれてしまって、何か問題は、今審議している国民年金だけが当面の問題のように見えますけれども、実は私たち今度の三十一国会というのはどういうふうに意義づけるかというと、いわば年金国会であるというふうにも見られるのであります。そういう点で、私は日本に今まである各種の年金、そういったものがどういうふうに具現されているか、そうしてこれらの尊い経験と実績の上に乗って、今度の国民年金法案というものが作られていく、そのために、私の見るところ、日本の官僚の良心ともいうべき厚生省の、しかも最もすぐれた能力のある人たちが誠心こめて作られたところのこの法案が、過去の実績の上に立ってどういう役割を果しているか、私はそういう点で直接この法案には関係ないようですけれども、厚生年金保険の問題、それから郵便年金の問題、こういうものについて、しさいに一度検討してみたいのです。そうしてこれらの中にある欠点と美点、それらのものがこの法案にどういうふうに出てきているか、特に郵便年金は、たしか大正五年、一番古い恩給などは別として、年金という名前は非常に古い歴史を持っております。なるほど郵便という特殊な名称はついておりますけれども、郵便年金の過去それから現在に至る経過を見ますと、この中にいろいろと年金問題の重点がひそめられておると私は見るのであります。で、これを一度検討してみると、いろいろなおもしろい要素をつかむことができて、そして今度の法案との比較にも非常になるのじゃないか、そういう意味で簡易保険局長さんおいでですね。当委員会の人たちに理解できるように、郵便年金というものの過去から現在にわたってどういう状態できたか。特に問題は、あのインフレの物価変動の時期に際して年金というものがどういう役割を果してきたか、そういう点について御説明いただきたいと思います。
○政府委員(大塚茂君) それでは、郵便年金を始めましてからの大体の状態を御参考までに申し上げます。郵便年金ができましたのは、ただいま坂本先生からお話がありましたが、実は大正十五年、簡易保険ができましたのが大正五年でありまして、郵便年金ができましたのは大正十五年からでございます。制度の内容といたしましては、これは今度の国民年金等と違いまして、あくまで任意的な契約によるということになっておるわけでございますが、従って、郵便局を通じまして募集をいたし、勧奨いたしまして、それに応ぜられた方々と契約を結ぶという建前になっておるわけでございます。その年金の種類といたしましては、老後の生活安定を目的といたしますものと、もう一つ子供の学資資金あるいは結婚資金といったような、あるいは専業を始める場合の資金といったものを対象といたしますものと二つの種類に大体分けることができるわけでありますが、その中で養老年金の性質をもちますものは、保証期間つきの即時終身年金というものがございます。これは掛金を払い込みますと、その翌日から年金の支払いを開始するというものでございまして、もしその人が途中で死亡したという場合は、その後、契約によりまして十年あるいは二十年というような期間、いわゆる保証期間という間は遺族に対して年金を支給するという内容のものでございます。もう一つ養老的なものとしましては、保証期間つきの据置終身年金というのがございます。これは掛金を払い込みましてから十年なり、二十年という一定の据置期間をおきまして、一定の年令になったときから初めて年金の支払いを開始するというものでございまして、これも先ほど言いました本人が死亡した場合のあと年金を支払う保証期間というものがやはりきめられております。それから学資年金というような性質のものとしては、定期年金というのがございまして、これは五年または十年の期間を区切りまして、その間だけ年金を支払うというものでございます。その支払いの開始時期は、十二才とか、十五才とかあるいは十八才、二十才、二十五才というようなふうにきめられておるわけでございます。それで現在この三種類のまあ年金を売り出すといいますか、やっておるわけでございますが、ほとんど現在契約の九〇%あまりがこの定期年金で、ございまして、年金の本来的の意味の養老的年金である終身年金というものがわずかに一割足らずしかないという状況でございます。その原因はどこにあるかということになりますと、先ほどちょっとお話が出ておりましたように、いろいろ貨幣価値の変動、ことに戦争によりまして非常な貨幣価値の御承知のような下落がございまして、その間、恩給等につきましては不十分ながらも多少物価にスライドした修正がなされたわけでございますが、郵便年金におきましては、これが特別会計でやっております関係上、また、これを物価にスライドさせるというようなことになりますと、非常に膨大な金額が要る。現在、戦前に入りました年金契約が現在まだ百六万件くらいございます。この契約に対しまして、恩給の最低の倍率というもので年金額を増額したらどれくらいになるかというような計算を出してみますと、これは最低一千億はどうしても要る。物価の三百倍とか、四百倍とかいう率でいたしますと、四千億から五千億くらいの金がどうしても要る、これはとうてい年金の特別会計ではまかない得ないところでありますし、また、一般会計からの補給というようなことを私どもも考え、また、望んだのでございますが、これはまた、郵便貯金だけでなしに、ほかの同じ私どものところでやっており簡易保険においてもまた同様な問題がある。貯金についても、長期の貯金についても同様な問題があるというような振り合い等もありまして、政府として困難であるということで、今日に至っておるわけでございます。そういった苦い経験が非常に影響しておりまして、戦後においては、先ほど申し上げました、養老年金的なものが非常に少くて、ほとんど五年、十年の定期預金というものが大部分であるというふうな状態で今日まできておるという状況でございます。戦前におきましてはそういう経験もありますので、年金の伸び方も戦前に比べますと、戦後は必ずしも芳しくないという状況で今日に至っておるような次第であります。 なお、いろいろ足りません点は、御質問が、ございましたら、逐次御説明申し上げます。
○坂本昭君 今簡易保険局長から御説明があって非常によくわかったように、この郵便年金の過去の経過の中に、今後の国民年金の一番大事な点が秘められているという感じが私はするのであります。で、参考までに、この郵便年金の第一条と第二条に目的が書いてありますが、この中には、国が営利を目的としないで経営をする、そして安い掛金で年金保険をやる。この思想において、現にわれわれが今論じておるところのこの国民年金法案とそう違わないものをすでに大正十五年からやってきた。ただいま局長の説明のあった通り、昭和の初めから昭和十六年までに約百万件近くきておりますが、昭和二十一年を境にして昭和二十一年が一番トップで百九十八万件、それからあとはずっと下ってきておる。昭和三十一年には、百三十八万件とずっと下ってきておるしかも、今局長の説明のあったように、郵便年金とはいうけれども、実際に使われているのは定期年金、つまり短期の結婚のためとか、教育のためとかそういうためのほんとうの年金ではない。で、実際、この郵便年金の積立金を見ますというと、それはずっと増加しておって、今三十億くらいになっておるようですけれども、この増加しておるということは、ほんとうの終身年金、つまり国民年金に当る分ではなくて、その短期の、結婚のためだとか、教育のためにかけるところの定期年金だけがふえている。しかも終戦を境としてがっくりと、郵便年金も本来の年金の使命を果していないということですね。これは私は非常に大事なことだと思うのです。要は、景気変動によってこれに対する、今、局長の説明のありました通り、景気変動を、これを乗り越えていこうとすると、最低一千億要る。場合によると四、五千億も要る。これではとうていできない。それで結局、そういうことをやらなかったし、また、この郵便年金の法律の中には、そういう景気変動に対してどうするという定めもないのですよ。 これは局長さんに伺いますけれども、この中には全然ないのですか。それとも三十八条に「年金約款改正の効力」というのがありますが、「年金約款の改正は、既に存する年金契約に対してその効力を及ぼさない。」あと云々というのがありますが、若干何か手当をすることはこの郵便年金の中に考えられておったのでございますか。
○政府委員(大塚茂君) その物価変動に対する調整というようなことは、実は年金法の中に考えられてございませんで、年金法の第何条かに、年金の支払いについては国が保証するという規定がございます。ただこれは、契約された年金を支払うことについての保証でございまして、物価変動までを保証するという意味ではございません。 それからただいま引用されました第三十八条は、これは年金契約が長くなりますので、その間に死亡率あるいは予定利率等の変更一が、ございました場合に、その変更をいたしました場合の効力が既契約に及ばないという規定でございまして、これも物価変動等の場合を予定した規定は実はないわけでございます。
○坂本昭君 そうしますと、自六万件昔の契約高で言いますと一億以上になりましょうか。これらの人たちは、いわば、泣き寝入りという格好でおるのじゃないかと思うのです。で、私も今までにそういう郵便年金に入っておった人で、お年寄りの人で、当時へそくりを一生懸命出して、そして老後の楽しみにやっておったのに、戦争が済んでしまったら、全く値打のない年金になってしまった。何とかしてくれという陳情をずいぶんもらいました。最近もそういうやはり郵便年金の増額をやってくれ、国は実に無責任だ、国に対して今後信頼できない、そういう、非常に血を吐くような思いの陳情があるのですけれども、これは国としても当然の私は責任であると思うのです。郵便年金につきまして郵政当局としては、どういう方針をとっておられるのでございますか。
○政府委員(大塚茂君) こういった物価の変動というのは、長い期間についてみますと、ある程度はこれは避けられない問題じゃないかと思いますが、その程度というものは、平常時におきましてはそう大きくない。従って、それを補う意味で予定利率、利息というやつで大体において補うというのが一般的な考え方じゃないかと思うのでありますが、この前の戦争とそれに続く敗戦というようなことは、これはもうめったにあることでもないし、また、今後は絶対にあっては困ることでございますので、こういうことはもうあり得ないことだというふうに私どもは考えておるわけであります。しかし、何といっても、現実にあった問題に対して、戦前に加入された方々には非常にお気の毒でございますので、何とかできることならということで、今日まで努力はいたして参っておるわけでございますが、先ほど言いましたように、何しろ金額が非常に膨大であり、ほかとのつり合い等もございまして、いかんともなしがたいという状況でございます。
○坂本昭君 今、厚生大臣お聞きになった通り、国の責任でやったこの郵便年金が物価の変動でいかんともしがたい。それに対して国民は非常な憤りと恨みを持っているのですよ。ですから、私は今回この年金をやるに当って、多分私に手紙をくれた人あたりは、また郵便年金の二の舞じゃないかと、また、ひどい目にあわされるのじゃないかということを、私は国民の人たちがかなりに言ってくるのではないか。一応今、年金々々で非常に年金ブームのような感じですけれども、しさいに事情を知っている人にとっては、これはやはり一番基本的な致命的な問題であろうと思うのです。先ほど保険局長は、まあ戦争に負けるというようなことは二度とあっては困ると言われましたけれども、たとえば厚生年金保険の歴史を見ましても、あれは昭和十七年にできたのです。あとでこの問題についてまた検討してみいと思いますが、昭和十七年にできて、それから数年たたずして敗戦、インフレということが起って、あの厚生年金保険というものはめちゃくちゃになってしまったのです。ですから、私は国が責任をもってやろうとするならば、この物価変動に対しては最も明確に厳格に、あらゆる責任を負うという態度を明確にしなければならない、これが一番基本的な必須条件である、私はそう考える意味におきまして、この第四条に皆さんが示されているこの規定では、どうもなははだ手ぬるいと思うのですね。厚生大臣は、この物価変動に対する国の責任、もちろん国は戦争を起させない、インフレを起させない、そういうお考えをお持ちでしょう。しかし、皆さん方のお出しになった参考資料の、日本とアメリカとイギリスの戦前の卸売物価指数の推移を見ますと、日本も非常に物価の変動がひどいのです。このひどい物価の変動に対して国がこれを乗り越えて責任を持つという態勢をとらないと、年金というものの意味が半減もゼロ減もしてしまう。この前もある人が十年ぶりにヨーロッパに行った。スイスに行って、ドイツに行って、そしてホテルに泊った。そうしたら昔のマルクと同じくらいでホテルに泊まれたというのです。日本ではそういうことはできないのです。この資料に出されたこの卸売物価の推移を見ましても、日本は非常に何といいますか、高低がひどい。米国やイギリスの場合は比較的にこれが少い、私はこういう日本の経済の実情もかんがみまして、当局としては、この物価変動に対する明確な態度を私は出していただかなきゃならぬと思う。これは厚生大臣の今までの衆議院における答弁は私も読みました。読みましたけれども、あの程度の答弁では私満足できません。まあいんぎん無礼というものでございまして、もっと明確にこれは責任を負わなければ、私はこの法案が一応通った後に反対運動をやりますよ。インチキだ、入るなと、年金払うなと、年金不納同盟をやって、ブジャードでもありませんが、こんなばかなものに入ったらあとでひどい目にあうぞ、そういうことを私として言わざるを得ない。国が責任を負うという態度が明確にあるならば、一応七十才以上千円、あるいは将来四十年の後に三千五百円でも、その三千五百円が将来今度一万円になる場合に、これは一つお互いに物価の変動に応じて上げていこうという点がわかっておればこれはまだともかく、四十年たっても三千五百円ということでは、私も国会議員の一人として、これを国民に、これで一つやろうじゃないか、不満足たけれどもやろうじゃないかということが言えないわけですよ。どうかこの点について、まず厚生大臣の明確な決意と、これは政治の責任の問題だと思います。どうぞ御所見を明らかにしていただきたい。
○国務大臣(坂田道太君) 私といたしましては、やはり衆議院におきまして述べました通りのことをお答えするよりほかにはないと思うのですけれども、ただいま郵便年金のお話がございましたけれども、今局長からお話がありましたように、あれはあくまでも国が運営をしておるけれども、国が直接責任を持つというわけのものではない、任意のものだというわけであります。ところが、今回私たちが提出をいたしておりますのは、いわば強制である、従ってまた、国の責任であるということは非常に明確になっておるので、そこに重さを比較するわけにはいかぬかもしれませんが、やはりここははっきりいたしておるのじゃなかろうか、つまり国民年金との大きな相違ではなかろうか、従って、その考え方からして、当然将来戦争あるいは極端なインフレというものを起してはなりませんし、それについての国としての責任というものもこれはわれわれは考えていかなければならない、しかし、いかなる事情によってか、著しい経済の変動があった場合に、これに対応するところの何らの定めがなかったならば、私はやはりおっしゃる通りだと思いますし、おそらく国民の方々におきまして、われわれが幾らこういう国民年金はあなた方の老後のためにいい法案であるから御協力願いますと言ってみたところで、これはなかなかうまくいくものではないというふうに思います。で、そういうふうに考えて参りました場合に、それではあの第四条というものがそれに対応できるかできないかということで、おそらくまあ八木先生あたりは、これでは対応できない、もう少し明確にしろ、あるいはもう少し明確に物価変動あるいは生活水準の向上というものがあった場合においては、すぐそれがスライドされるという形をとった方がよろしいという御議論があったわけであります。しかし、われわれといたしましては、この第四条をもってして十分それに対応できる、これはいろいろ議論があるところではございましょうけれども、私どもの方から言えば、社会党さんの方の法案と比べまして、決してそう対応できるできないという点については、そう変りはないのじゃないか、考えようによっては、むしろ私たちの方が大きい大きいと申しますと、ちょっとこれは言葉が何でございますけれども、包含し得る幅があるというふうに実は考えておるようなわけでございまして、法文として響くなら、やはりこういう書き方の方が一番対応できるではなかろうかというふうにまで考えておるわけでございます。もちろんこれにはいろいろ議論のあるところでございまするので、お教えをいただきたいわけでございますが、ただいまのところは、私たちとして、十分物価変動あるいは生活水準等の著しい変動があった場合に対して対応できると、こういうふうなつもりでこの四条というものの規定をいたしたようなわけでございますし、厚生大臣はこれに対してはっきりした責任と、それからまた、将来のそれらの事態が起った場合に対しての気持を聞くとおっしゃられれば、私といたしましては、これで対応できると申し上げるよりほかには実は方法がないと考えておるわけでございます。
○坂本昭君 この年金がほんとうに始まるのは四十年の後なんですね、四十年の後のときには幾ら若い厚生大臣といえども、そのころまで御存命かどうか、大へん失礼なことを申し上げますが、わからないのであって、だれが読んでも明確に責任をとるというその言葉をもって法律を言い表わしておかないと、あとでいろいろ疑義が起ると思います。私は、きょうはこの逐条審議に入っておるのじゃありませんので、あらためてまたこの四条について検討しようと思いますが、ただこの四条には一項と二項と二つありますが、これは読んだところではやはり二項が主体になっておるものだと思います。二項が主体になってできて、それに一項をつけ加えたものじゃないか、従って、私の読んだ範囲内では、いつも主体になっているのは保険料なんですよ。取り上げる方の保険料を基準にして、そうして少くとも五年ごとに基準に従って再計算、それから調整をせよ、で、われわれが求めているものは、出すところの保険料だけではなく、給付の、年金の額なのです年金の額ということに基準を置いてやはり調整をするという思想がなければ、これは主客転倒だと思うのです。きょうはその点については、また、この逐条審議のときに一つ議論をやるといたします。 次に、この郵便年金と並んで重要な厚生年金保険の過去の歴史について少し検討してみたいと思うのです。ちょうど「厚生年金保険法の解説」という厚生省の厚生年金保険課で編まれた本があります。これはたしか前の条文を書いた前の年金保険・課長が作られた解説なんです。非常にいいことが響いてあります。実は私はこれで非常に教えられたのです。たとえば厚生年金保険制度の創設とその経過のことをいろいろ説明しておりますけれども、最初は労働者年金保険と申しておりましたが、どういうために作られたかということについてこういう言葉を使って響いてあります。直接には当時の、つまり最初できたのは昭和十六年三月十一日に公布されて、十七年の六月一日から実施されたわけですね。ですからちょうど大東亜戦争の始まる前から、大東亜戦争の間を通じて厚生年金保険法というものは発展してきたわけです。「直接には当時の戦時体制下において、生産力を極度に拡充し、労働力の増強確保を図る必要があり、そのための措置の一環として要望された」また「一方時局下における国民購買力の封鎖の見地からこの制度による強制貯蓄的機能が期待されておったことも見逃し得ない」これはなかなか大事なことなんですね。「その成立の経緯から、戦時政策的な色彩が強く現われていたということができる。」というふうに解説しているのです。私が今、年金法案の最初の審議に当って序論的なことから申し上げたいということは、かつて、今約一千万をこえるところの労働者のための厚生年金保険法というものが強制的な貯蓄的機能が期待されておったことも見のがし得ない、再び強制的な貯蓄的な機能のもとに、この新しい国民年金法が全国民に対して強制されるということになれば大へんなことなんです。ことにあのときは大東亜戦争の直前に公布された、そうして今坂田厚生大臣は岸内閣の一人として、この国民年金法案がまた喜び戦争目的のために強制的な貯蓄的な目的をもってやられるとすれば、これはもう私たち命を賭してでも反対しなければいかぬことだと思うのです。もちろん今そういうふうなことは、児戯に類することは申しませんが、ただ多分に強制貯蓄的な内容があるということです。しかも先ほどから郵便年金の場合に論じられた通り、四十年も五十年もたって、あとになってまた貨幣価値がなくなってから支払われたのでは意味がない、そういう点のものもどうしても検討していかなければならないと思うのでございます。その後の厚生年金保険法のいろいろな経緯を見ますというと、非常におもしろいのであります。昭和二十二年の四月に改正されたころには、厚生年金保険事業の運営に関して重要な事項を審議するために、被保険者、事業主、公益代表の三者構成による厚生年金保険委員会を設置する、こういう改正も述べられておるのであります。私はこういう点も、今度の年金を作る場合に非常に大事な示唆を与えるのではないかと思います。 さらにこまかくは申し上げていけませんが、大事な点だけ申し上げていきますと、昭和二十九年ごろ、昭和二十九年の社会保障制度審議会の審議の過程で取り上げられた問題点として、「年金額がきわめて低く、生活保護法による保護基準にも及ばない。」これが昭和二十九年の新しい厚生年金保険法制定当時にもうすでにそう言われている。二十九年ですよ。そして御承知の通り、定額は二万四千円というのは、あのときから今に至るまで同じなんです。その間に経済の成長の伸びはずいぶんある。物価の指数もずいぶん上っている。しかし、基準は低いままできている。当時すでに「生活保護法による保護基準にも及ばない。」これは厚生年金保険法の過去の事実であります。さらに大事な点は、「積立金の運用については、民主的管理運用の途を開き、その収益が還元し得るように措置すべきである。」新しい年金法の制定のときに、すでにこの積立金の運用について非常に示唆に富んだ勧告が行われている。そうして特に最後に、「過去のインフレーションによる不足分については、国庫負担の途を講ずべきである。」こういう明確なことが、この過去の例の中でわれわれはこれを検討することが実はできるのでございます。そこでこうした経緯で発展してきたところの厚生年金保険、今日約一千万人以上の人が対象になっている。いわばモデルであります。今回の政府の国民年金法の対象になる人は二千六百四十六万人、従来の厚生年金保険法の倍以上の人たちが対象になる。しかも内容において強制的なこの措置をとられている。そうなりますと、どうしてもこの厚生年金保険法の行われている実態をよく分析して、この中からこの現法案との比較対照をする必要がどうしても生まれてくる。そう思うのでございます。で、まず、従来のこの厚生省が国民皆保険、医療制度についての皆保険をやる場合にもいつも問題になるのは保険経済であります。いつもその保険経済、国民の生活の水準を高める、国民の医療を完全に守ってやるということよりも、もう財政経済、そういう観点が非常に強かった。で、今度の年金の案を見ますというと、昭和三十四年度、これは全部まあ無拠出の対象ばかりでございますが、昭和三十六年度からは、保険収入が六百五十一億になり、給付が百十六億になって、それから積立金が三千六百六億になる。これをずっと計算して参りますと、昭和五十五年になると、保険料の収入は八百四十五億であります。給付が九百九十五億であります。それから積立金が二兆五千九百四十七億になる。さらに昭和百十五年、昭和百十五年というと、二〇四〇年ぐらいになりますが、もうずいぶん先の、長い先のことでして、地球が全うしておられるか、どうだとかちょっとわけのわからない時代ですけれども、こういう百十五年という将来を見て、保険料の収入が八百二十二億で、給付が三千九百三十五億で、積立金が四兆六千九百八十三億、なるほどこれは保険の数理としては正しいと思う。そうして、この正しい保険の数理の上に立って皆さん方は保険料をきめた、それから保険の給付の内容をきめておられる。しかし、この前の厚生年金保険を作ったときはわずか三年にして日本は敗戦の悲運をみましてひどいインフレーションがきた。一体百年も先のことを考えて、なるほど数字は正しいでしょう。確かに数字は正しい。しかし、その間のインフレーションも考えなければ、あるいは日本が世界連邦になるかもしれない。あるいは日本がどうなるかわからない。そういうことを抜きにして、そうして、ただ保険経済の数理の上に立ってこうした計算をやっていくということは何か大きな誤まりがあるのではないか。 たとえば、イギリスの場合は基金というものを作っておったけれども、あれは現在基金は全部なくなってしまって、赤字になってしまっているというのは、アメリカの援助をもらったマーシャル・プランあたりでかなりの金をもらっておりましたけれども、そういうものを社会保障の方へ全部つぎ込んでしまう。それほどまでもイギリスの社会保障というものは、国民生活を高めるために努力をしてきた。日本の場合はこれだけの、昭和百十五年までまことにりっぱに計算せられて四兆何千億というものを積み立てられる。しかし、その間、給付を受ける人たちの金額はたった三千五百円しかにすぎない。これは保険の数理の問題ではなくて、私はもう政治の問題だと思う。このことについて厚生大臣の御意見を承わりたいと思います。
○国務大臣(坂田道太君) これはなかなか、非常にむずかしい問題だと思うのでございますが、しかし、これは社会保障制度、ことに所得保障が各国に行われるようになりましたのはやはり第二次大戦以後かと考えられるわけでございまして、まあ日本におきましても仰せの通り、船員保険法であるとか、あるいは厚生年金保険法であるとか、そういったものがすでに戦前からあった。そうして、それがずっと続いて参りまして、いよいよ医療保障ということで各種の保険ができてきて、われわれの方といたしましては国民皆保険を一つの大きな柱に立ててきた。さらに進んで所得保障の一つの大きい柱といたしまして、今回国民年金法というものができた。こういうことを考えますると、これは外国においても一度にそれらの保障制度というものが確立するのでなくって、やはりそういう考え方のもとに次第に充実されてくるわけで、ことに日本のように、戦前と戦後と著しい社会的あるいは政治的、経済的変動のありました日本におきまして、これらの社会保障を打ち立てていく過程におきまして、初めから理想的なものということを期待できないことは、これは私やはり無理からぬことではなかろうかと思うのでございます。しかしながら、今仰せの通り、われわれが提出いたしておりまする国民年金について御審議をわずらわし、そうしてまた、それらに対しての欠陥等を御指摘をいただくことによってこの国民年金制度というものを充実したもの、少くとも国民に喜ばれるものにしていくという積み重ね、努力というものは今後必要であるし、また、この国民年金制度そのものが、ひいては従来ありましたところの厚生年金あるいはまた、船員保険あるいはまた、その他の法律というものが逆に充実をされていくということでなければならない。また、そう努めなければならない、かように考えるわけでございます。で、今仰せの通りに、将来の五十年後、あるいは百年後のことを考えた場合において一体どうなるかというと、それに対する厚生大臣の考えを述べよと仰せられましても、実は私としましては、これを一生懸命に充実をしていく、皆様の御意見をほんとうに取り入れましてやっていくことに努力をするということ以外にお答えはできないわけでございますが、ただ私といたしましては、それだからといって、それじゃ何にたよるかというならば、これはやはり日本の財政経済、あるいはまた、この当面いたしておりまする年金についての数理計算というものにたよる以外には方法はないわけでございます。こういうような建前でするならば、こういうような数理計算でこういうふうになりますということを立てることこそ、私は坂本さんのお答えに私として答えられる限度ではなかろうかというふうに考えるわけであります。しかしながら、また同時に、このわれわれの立てましたところの国民年金の財政計画、将来の見通しというものにつきましては、非常に幅があるわけでございまして、第四条等のやり方次第では、これは十分に社会党さんが今日提案をされておられますところのいろいろの問題、たとえて申しまするならば、援護年金については七十才を六十五才であるとか、あるいは所得制限はきびし過ぎるからこれを緩和すべきである、あるいはまた、三千五百円の給付内容というものは低きに過ぎるからこれを高めていくべきであるとか、そういったもろもろのことというものは、今後、日本の経済が発展をしていくならば満たし得る少くとも仕組みになっておるということは、坂本委員も御承知だろうと思うのでございますが、ただ、今われわれが年金法を提出いたしましたこの際といたしましては、やはり現在置かれておりまするところの日本の経済成長、あるいはまた、財政というものを離れて組みようはない。また、その組み方につきましても、初めからそういうことを予想して幅広く、そうしてすべての国民に喜ばれるように組むか、それとも手固く、将来、日本の経済の発展する過程においてそれを充実していくように組むかという議論になるわけでございまして、われわれといたしましては、後者のいわば非常に地味な、現実に即した一つの立て方をしてきたと、こういうふうに私たちは考えておるわけでございます。坂本委員の御質問は、私たちも十分これを参考にいたしまして、今後ともどもにこの研究をいたしまして充実をいたし、国民の方々にほんとうに喜んでいただき、また、信頼されるような一つの年金というものを作っていきたい。固定したものでなくて、これは発展的なものである。給付の内容も、場合によっては、これが三千五百円にも五千円にもなり得る法案である、あるいはまた、今度の場合においては外部障害等に限定をされておるけれども、将来においては、これは内部障害等においても考えてくい余地を残しておる、そういう発展的なものである、こういうふうに御了承をいただきたいと、まあ私といたしましては考えておるようなわけであります。
○坂本昭君 今述べられた点、非常に大事な点でして、なかなか了承するわけにいかないのです。なるほど保険経済の平衡を保つということ、これはわれわれ社会党といえども同じ考えです。しかし、大臣の御見解の基本的に間違っておる点は、なるほど保険経済の平衡を保つ上から、積立金をくずしたりするということは、これはわれわれも反対です。やはり積立金を作っていく必要があります。しかし、さっき私が厚生年金保険法について申し上げた通り、強制貯蓄になったのでは、これは大へんなことであります。そうして現に、昭和十七年にできたところの厚生年金保険法というものは、戦争目的のために強制貯蓄の役目をはなはだなしてきたということです。つまりもっとはっきり申し上げますならば、今私のあげた金額、昭和百十五年に四兆六千九百八十三億というのは、これは厚生年金保険の現在行われておるものの金額なんです。で、これのたとえば今から十年後の昭和四十五年ごろを見ましても、これで一兆四千億になります。そうすると、この積立金ですね、この一兆四千億の積立金のできるころ、昭和四十五年ごろですね、このごろの保険給付というものは四百六十二億です。そうしてこの四百六十二億というのは、この保険収入よりも少いのです。保険収入が千六百九億です。入る方は千六百九億も入ってきて、そうして保険給付の方はその四分の一ぐらいしか給付していってない。そうしてあとは積み立てられている。その積立金は何に使われているか、これは強制ですから、納めなかったら差し押えがいくのですよ。国税、地方税に次いで差し押えて競売に付せられるのです。それほどきつい要求をもって取り上げられる、強制的に取り上げられるところのその積立金が、過去の実績においても何に使われておったか、私はこれが非常に問題であると思う。で、この点を明確にしないで国民年金法を作っても、これはいたずらなる簒奪であって、強制的に貯金させる、そうしてその貯金は適当なところに使われるということでは、非常に目的を逸すると思うのです。で、今の積立金のことにつきましては、ちょうど大蔵省の方も来ておられますから、伺っていきたいのでありますが、厚生年金保険については昭和十七年の十月の八日に大蔵大臣と厚生大臣との間に協定ができております。これなんか非常におかしいと思うのですね、こういう大事な問題に対して、大蔵大臣と厚生大臣が取りきめをやって協定をやっているというのは。なぜもっと法律をもってこれを明示しなかったか。労働者年金保険特別会計の余裕金及び積立金の取扱いに関する大蔵大臣と厚生大臣との協定、こういうものができている。その後、占領軍が来ましてから、いろいろと変って参りまして、厚生保険特別会計法の十三条によって「積立金ハ資金運用部ニ預託シ之ヲ運用スルコトヲ得」というふうに規定され、それから資金運用部資金法の第二条によって「積立金は、すべて資金運用部に預託しなければならない。」、それから「余裕金は、資金運用部への預託の方法による外、運用してはならない。」というふうな規定が作られてきているのでございます。で、大蔵省の方にお伺いしたいのは、各種の年金、この国民年金を含めてですね、厚生年金がある。それからまた、今度は国家公務員の共済法も改正になる。そうした場合に、一体いわゆる特別会計というものは、余裕金、積立金は資金運用部資金の積立金の運用に関する法律で、全部大蔵省の預託金として資金運用部に入れてしまうおつもりであるかどうか。財務当局の御意見を一つ明らかにしていただきたい。
○説明員(澄田智君) ただいまの御質問の点でございますが、現行の制度といたしましては、ただいまお読みになりましたように、原則といたしましては、各特別会計の積立金及び余裕金はこれを資金運用部に預託することになっておりまして、資金運用部はその預託を受けまして、財政投融資という形で各般の運用を行なっているわけでございます。今おあげになりましたうちで国家公務員共済組合につきましては一部を預託するという制度になると存じます。
○坂本昭君 ところが、この預託金の運用についていろいろと問題があると思います。先ほど申し上げました郵便年金、簡易生命保険、これについては、昭和二十七年六月二十五日の法律第二百十号で、簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律というのができて、これは郵政大臣が「積立金は、郵政大臣が管理し、及び運用する。」ということになっております。ところが、厚生年金保険は、これは厚生省が主管をして、厚生省が責任をもってやってきておるにかかわらず、これは厚生大臣が管理し、運用しておらぬわけです。こういう違いはどうして起ってきたのですか。また、そのことについて、一体厚生大臣並びに賢明なる小山審議官はどう考えておられますか。
○説明員(澄田智君) ただいまの簡易保険と厚生年金保険の違いでありますが、これはいろいろその性質等においても違いはございまして、簡易生命保険は申すまでもございませんが、これは全く任意の保険という形をとっております。従いまして、一方厚生年金保険の方は、各般の国の関与のもとにでき上っておりまして、その性格においても相違もございます。簡易保険につきましては、かつて資金運用部に預託をされておったような例もございますが、ただいまおあげになりましたように、二十八年の制度の改正によりまして、その折に積立金の運用に関する法律ができまして、これは郵政大臣の責任において運用されております。ただ、その計画につきましては、やはりこれも財政投融資計画の一環ということになっておりまして、その資金も合せまして一元的な運用をはかるために年度の計画を立てまして、それに基いて資金運用部資金運用審議会、これは資金運用部の資金と、それから簡保、保険年金の資金と一緒にいたしまして、同じ審議会にかけて、そこの議を経て運用される、こういう形になっております。
○国務大臣(坂田道太君) 私の考えといたしましては、やはり将来におきましては、これらの厚生年金なり、あるいは今度提出しております国民年金というものの少くともことに国民年金においては、零細な保険料を納められた方々に直接間接に還元されていくというふうに運用をされ、しかもその運用の仕方というものは、やはり厚生省が、たとえば直接と言えばまた問題もございましょうから、審議会を設けまして、財政経済のわかる方もその中に入れ、あるいはまた、保険料を納めておられる方々の意思を代表する方をこれらの委員の中に入れることによって運用をして参ることが、私は筋であるというふうに思うわけでございます。また、私は少くとも保険料を納められた額の程度の一部は、少くとも直接これらの納めた方々の福祉の施設と申しますか、あるいは養老、老人ホームであるとか、あるいはまた病院であるとか、その他の形においてこれが返っていくものでなければならない。また、そういうふうにしたいというふうに私は考えておるわけでございます。もちろん今の厚生年金等については、それらの制約があることも私は承知はいたしておりますが、将来においては、そういうような方法にいくべきものである。やはり先ほど私がお答えを申し上げました通りに、何を申しましても、この社会保障制度が現実に各国に取り入れられ、そしてこれが発達をしてきたのは、第二次大戦以後のことであるというわけでございまして、何もこれは固定的なものではなくて、発展をはらんでおる問題でございまして、その国、その国民というものの成長と申しますか、考え方というものが、社会保障についてすら、いろいろ考え方がずっと発展的になっておる今日の段階においては、それらのものの運用というものが仰せの通りの方向に向かっていくということは当然のことであるし、また、そうしなければならないことであるというように、私といたしましては考えておるような次第でございます。
○坂本昭君 ただいまの大臣の御見解は私は非常に期待をしております。ただし、これはなまやさしいことではないと思うのです。大蔵省の担当の方も来ておられて、これはえらい物騒なことになったと思われるかもしれませんが、しかし、これは非常に大事なことです。もし私はこれが果されないようなら、皆さんの計画の国民年金については徹底的に反対して反対運動を展開します。ただ、この前の簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律のできたときはこれはやはり政治力ですね。今の大蔵大臣の佐藤さんが郵政大臣のときに、反主流派の御大の池田さんと渡り合って結局「郵政大臣が管理し、及び運用する。」というところへ持っていったのです。政治力です。そのときは個人的な政治力でしょう。しかし、私はこれからの問題は坂田さんの個人的な政治力じゃなくて、もう勤労者国民全体の要求ですよ。もちろん大蔵省には資金運用部資金で財政投融資される。今年のように五千百九十八億、その中には住宅金融公庫もあれば、いろいろ中小企業の金融等のための投資もあるとは言えるでしょうが、肝心の厚生次官は資金運用部資金運用審議会の委員ですけれども、厚生大臣が責任を持ってこうするああするということはできない。私はこれは国民の希望にのっとり、また、厚生年金保険については労働者の希望にのっとって、どうしても国民の、また、労働者の運営にまかしていただきたい。そしてまた、一九三三年の六月八日にジュネーヴで開かれたILOの第十七回総会ではこういう決議があるのです。「工業的又は商業的企業に使用せらるる者、自由職業に使用せらるる者並びに家内労働者及家庭使用人の為の強制老齢保険に関する条約」(第三十五号)、これは労働者厚生年金保険や今度の国民年金保険のことですね。つまりこれに関するILOの条約第三十五号では、その同条約第十条にこういうことが書いてあります。「保険制度は、公の機関に依りて設立せられ且営利の目的を以て経営せられざる機関に依り、又は国の保険基金に依り、管理せらるべし。」この点は日本の現在もまあ間違ってはいないと思います。それからそのうちの一部ずつを見ていきますと、「保険機関の基金及国の保険基金は、公の基金より分離して管理せらるべし。」と書いてある。私の見るところでは、イギリスの場合、あるいは社会主義のソビエトの場合などは全部プールしておってほかへ使っていませんね。それから第十条の四には「被保険者の代表者は、国内の法令又は規則に依り定めらるる条件に従ひ、保険機関の管理に参加すべく、又右の法令又は規則は、使用者及公の機関の代表者の参加に関し定むることを得。」つまり被保険者の代表は責任を持って公然とその管理に参加することができる、それから使用者及び公けの機関の代表者が参加する場合には何か規則を作って参加させる、つまりとられる方の労働者に一番の権限を与えている。私は、こういう点をこのILOの勧告というものは日本においてもやはり重んぜらるべきであって、ことに今日、厚生年金保険でも膨大なところの積立金、さらに国民年金をやったときには目を回すような積立金が作られる。それが強制貯蓄という名で、特に先ほど一元的運用という言葉を使いましたけれども、あれはくせ者なんですよ。戦争的な一元的運用は、あれは戦争目的ですよ。今の民主主義とか、平和主義とか、日本における一元的運用というものは国民生活の水準を高めるため、働く者の仕合せのため、これが一元的な運用であって、大蔵省なんかに私は断じてゆだねるべきものじゃないと思う。その点時間が参りましたので、厚生大臣に強く要望して、厚生大臣の決意をうけながして私は一応質問を終ります。
○国務大臣(坂田道太君) よく承わって善処いたしたいつもりであります。
○委員長(久保等君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(久保等君) 速記を越して。 本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時四十二分散会