外務委員会 閉会後第1号
- 発言数
- 43 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/05/07
会議録
○委員長(杉原荒太君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について報告いたします。本日曾祢益君が委員を辞任され、その補欠として野溝勝君が選任されました。 —————————————
○委員長(杉原荒太君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行うことといたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○野溝勝君 本日は、政府委員はどなたが御出席ですか。
○委員長(杉原荒太君) 外務政務次官、アジア局長、条約局長が出席しております。
○野溝勝君 条約局長にお伺いいたしますが、本日の新聞を見るとヴェトナムの賠償が妥結するらしいのですが、いよいよ十三日に調印式が行われるということでありますが、それは事実でございますか。
○説明員(板垣修君) アジア局長からお答えいたします。事実でございます。
○野溝勝君 私は妥結になることはけっこうなことだと思うのですが、特にヴェトナム全体の情勢から見ると、北ヴェトナムは南ヴェトナムと日本政府との間における妥結交渉に対しては不満を示しおるわけであります。この間の空気並びにいきさつについてどうお考えになり、どういう展望を持っておりますか、御所見を承わりたいと思います。
○説明員(板垣修君) ヴェトナム政府との賠償交渉に関連いたしまして、北ヴェトナムの政府が好感を持っておらないという事実は、私ども承知いたしておりました。貿易問題なんかにつきましてもいろいろ問題が現にあるということも承知いたしております。しかしながら、政府といたしましては、いわゆる南ヴェトナム政府との賠償交渉は七年以来の懸案でございますし、政府といたしまして諸般の政治情勢その他を勘案して交渉を進めておったわけでありまするが、漸次相互の主張が歩み寄りました現在におきましては、南ヴェトナム政府が正式の外交関係にある日本政府に対して、平和条約に基く正当の権利を行使して賠償交渉をやって参りました現在におきまして、これはやはり妥結に持っていかざるを得ないという実情に立ち至った次第でございまして、一方、この賠償交渉の妥結によりまして北ヴェトナム政府との貿易その他につきまして、若干の阻隔関係が生ずるかもしれないという心配を私ども持っております。貿易などにつきましてそういう事態が起らないことを、われわれといたしましては念願をいたしておる次第でございます。
○野溝勝君 今の局長の答弁ですが、問題の起ることに対し非常に心配をしておる、あるいは善処すると言われ、このことを予想されておるようでございますが、私は、予想されておるとすれば、いかなる意見が出てくるかというようなことについては、あらかじめ当局におきましても検討されておることと思うのでございます、それらの点については、一つこの際、参考に所見を承わっておきたいと思います。
○説明員(板垣修君) 北ヴェトナム側はどういう態度に出るか、特に貿易問題についてどういう態度に出るかということにつきましては、実はわれわれといたしましては予測できない次第でございます。ただ、そういう可能性は絶対にないとは言えないんじゃないかということを申し上げておる次第でございます。しかしながら、一方、北ヴェトナムとの貿易の問題のために、ただいま申しましたように、日本と正式の外交関係にある南ヴェトナム政府が正当な権利に基いて要求しておる賠償交渉をやめるというわけにはいかないわけでございまして、その意味におきまして、政府としてはちょっとむずかしい立場にあることはあるわけでございます。ただいま申しましたように、北ヴェトナムとの貿易を顧慮して賠償交渉を中止するわけにはいきませんし、現在妥当なる線で妥結に至りました以上、これを締結せざるを得ないという情勢にあるわけでございます。
○野溝勝君 そこでお伺いをしておきたいのは、せんだってアメリカに参りました通産大臣の高碕君が羽田空港において発表するところによる、と中共との貿易の拡大の了解がある程度できた、さらにアジア方面に対する貿易の大体の了承もできたという話をされておるのでございますが、中共とヴェトナムとは違うといいましても、北ヴェトナムは中共の友好同盟関係になっておる。そうすると、中共貿易の拡大というのも私は関連して考えなきゃならぬし、またアジア全体との貿易を拡大するというこの中にも、北ヴェトナムの意見は考えなきゃならぬと思う。こういうふうな総合的な見解の上に立って、もちろんそこで政府は南ヴェトナムとの妥結交渉をするということに対しては、是なりと信じてやられ当局としてはこの際慎重に考えたと言われるが、私は、むしろ一九五四年のジュネーブ協定から見て、その結果を心配するものである。当局としてはこの際、慎重に考えて、善処されたいと思うのです。今アジア局長の話だけでは了承に苦しむのです。外務大臣なり外務省の当局なりは、高碕通産大臣の帰国談を分析し、アメリカ側のいろいろ動き、情勢などにつき、打ち合せができておるのでございますか。この点一つ聞いておきたいと思います。
○説明員(竹内俊吉君) 高碕通産大臣の帰国の談話について、私、旅行中で、よく新聞記事を読んでおりませんが、外務省と通産省でそのことにつきましての打ち合せをまだいたしたという報告は受けておりません。
○野溝勝君 私は外務省に対し、あえて軽率だときめつけたくないのですが、経済外交を強調している岸内閣の外交が、こんな独神的なやり方には反対です。ヴェトナム賠償問題について、北ヴェトナムですでに貿易上の問題についても将来考える用意があるというような不満の声明をされておるさ中の際でございますから、こういう動きに対しては、外務大臣に、政務次官、局長、首脳陣が話をされ、自主外交の意思統一をしておかなければならない。至急高碕君に会われ、十三日の妥結交渉の際の用意に備えておく必要があると思います。それを一つ私はあらためてここでさような意見を申しておきますから、それに対して善処されたい。
○説明員(竹内俊吉君) ただいまの御趣旨は了承いたしました。外務大臣とも相談の上、しかるべく善処いたしたいと思います。
○野溝勝君 そこで、ヴェトナム賠償妥結の具体的の問題について少しお伺いしたいのでございますが、これは新聞でございますから、詳細のことはよくわかりませんが、純賠償の点について三千九百万ドル、これはダニム発電所建設費三千七百万ドル、工業センター建設費二百万ドル、第一期工事現場通貨分。経済協力九百十万ドル、尿素工場建設費。合計五千五百六十万ドルということが出ておるのでございます。抽象的でよくわからぬのですが、一つ当局において本委員会にこの純賠償に対する具体的説明を願いたいと存じます。
○説明員(板垣修君) 詳細につきましては、十三日の調印後に発表されることになりますので、ただいまそう詳細には申し上げられませんが、大体のところを申し上げますると、新聞の報道は少し不正確でありまして、金額は合っておりますが、不正確な点は、要するに賠償なり借款なりというものが、プロジェクトと具体的に結びついておるわけではありません。しかし、交渉の過程におきまして、一応の先方の事情に応じまして目安はついておりますが、その意味で申しますと、純賠償は三千九百万ドル、これは金額は間違いありません。そのうちで数字的な区分けはまだはっきりしておりませんが、先方の希望によりまして、ダニムの発電所と、それから機械工業センターを作るということは、大体の交渉の過程からはっきりしておりますが、果してそうなるかどうかは、なお妥結後両方側で協議してきめることになると思います。 それから借款が二つございまして、七百五十万ドルは、主として水力発電所建設用の借款であります。それから九百十万ドルは、その新聞に書いてあるほどはっきりと尿素工場ときまっておるわけではありませんが、交渉の過程におきまして、向うは非常に肥料工場の建設を要望いたしましたので、今後賠償が進みましたあとで、そのときのヴェトナムの経済情勢に応じまして、尿素工場のような高級なものを作ることが適するかどうかを判断いたしまして、そういうようなものを作っていこう、こういう意味におきまして一般的な経済借款といたしまして九百十万ドルを供与する、こういうことになっております。
○野溝勝君 そうすると、発電所建設費三千七百万ドルのほかに、借款の分七百五十万ドルも加算されるのでございますか、その関連した説明をちょっとお聞きしたいのですが……。
○説明員(板垣修君) 交渉の過程におきまして、先般御承知のように、初めは一億ドルとか、一億五千万ドルとか大きな賠償を要求したわけでございます。私どもはそう大きな金額は払えない。だんだん詰めて参りましたところ、先方は水力発電所は一つ作ってほしい。かりにダニムの発電所のようなものを作るといたしますと、やはり五千万ドル以上かかるわけでございます。しかし、日本側といたしましては、純賠償としては四千万ドル以上は払えないということで、賠償は三千九百万ドル、従って、その不足分をそれでは償還をしてもらう借款で補足しようということで七百五十万ドルの借款と、こういうことになったわけでございます。
○野溝勝君 今、局長の話によりますると、経済協力の尿素工場建設というのは、これはまだ具体的のものではないのであって、まあ話の過程に上ったというのでこれにあげたと、こういうのですが、ほかに何か問題になったのがありますか、また考えられておるものがありますか。
○説明員(板垣修君) 先方といたしましては、いろいろ過程におきまして船がほしいとか、その他工場の要望がございました。しかし、だんだん金額との関連がございますので、金額そのものが小さくなりました結果、結局向うが非常に強く要望し、残ったものがダニム発電所と尿素工場でありまして、そのほかに機械工業センターと、それ以外には具体的なものとしては交渉の過程で落ちてしまいまして、大体この三つが向うの要望の強いものということになっております。
○野溝勝君 工業センターは何を考えておるのですか。
○説明員(板垣修君) この辺はまだ具体的に検討はいたしておりませんが、光力にありまする旧海軍工廠の建物などを利用いたしまして、結局機械の修理、そういうようなものを作る、メインテナンス工場を作るという予定にしております。
○野溝勝君 ヴェトナム賠償妥結、私は単にこのヴェトナム賠償妥結だけでなくて、たとえばビルマにおきましても、あるいはインドネシアにいたしましても、賠償の問題が暗礁にありと聞くが、妥結に当り、客観的判断を誤まらぬよう要望するわけであります。この点は、先般オーストラリア、インド、ニュージーランド、東南アジア、各地方を回って参りまして、痛切にそれを感じたのです。特に私の小冊子ウェリントンという中にも、私の所見の内容をこの本に織り込んで官房長にお渡し申してあります。各局長にも一応━━日記随筆のものでございますが━━ごらんを願いたいと思うのです。特にその中でも、綜合的観点に立って賠償の妥結、解決をすることが東南アジアの貿易拡大、貿易発展にもなるということを主張してあります。しかし、南ヴェトナムの賠償の問題につきましては、先ほど申し上げました通り、北ヴェトナムがこの妥結に反対の意思表示をされておりますので、今後さような点については、先ほどアジア局長のお話がありましたので、私はこれ以上申し上げませんが、十分慎重な態度をとって妥結に当られんことを、藤山外務大臣に特にあなた方から警告しておいてもらいたいと思う。この問題についてはこれで打ち切ります。 もう一つ、私が聞いておきたいのは、朝鮮人の北鮮帰還問題につきましては、日赤が中心で当られておりますけれども、今日いまだ妥結の方向に至っておらないのでございますが、外務省側はいかなる展望を持たれておりますか、外務省当局の御所見をお伺いいたしたい。
○説明員(板垣修君) 北鮮帰国の問題につきましては、御承知のように、ゼネバにおきまして過去これまで十一回か正式会談をやっておりますが、両者とも現在のところやはり基本点について意見の一致を見ておりません。御承知のように北鮮側としましては当初意思の確認ということは絶対反対である。国際委員会の介入は絶対反対である。それから実施について日本にあります北鮮系の団体である総連の名簿を使うべきである。その他こまかい点はありますが、大きな点はその三点を主張していたわけでございます。その後、意思の確認の点については数次時間をかけて説明しました結果、北鮮側が、心配しておるように一人々々審査、選別しないということがはっきりいたしましたので、その点は了解したのでございます。その他の二点につきましては、北鮮側は終始この点につきまして譲っておりません。すなわちこの問題は北鮮と日本だけの問題であるからして、国際赤十字というような第三者を引っぱってくる必要はないという点、それから名簿についてはもうすでに総連に対して十一万七千名という意思表示があったのだから、この名簿を使えばいいじゃないか、こういう主張を終始繰り返して、今日まで譲っていないのであります。しかしながらこの二点につきましては、実は日本政府がこの北鮮自由帰国の問題に踏み切りました基本的な条件でございまして、北鮮側は南鮮を無視している。南鮮は北鮮を無視しておるわけでありまするが、日本と北鮮だけの問題だと言っておりますが、これを実施する日本の立場から言えば、南鮮があるわけでありまして、これは本質的には人道問題でありますが、非常にむずかしい国際政治問題がからんでおる。従って、その意味においてこれは両当事者のみでは解決できない政治的性質を持っておるわけであります。そのためにこそ公平な第三者である中立機関の国際委員会に入ってもらう。その入る入り力の程度の問題はありますが、入ってもらうことが絶対の条件でございます。それから総連の名簿を使へ。これは非常に無理な要望でございます。総連の名簿十一万七千というのは、これはわれわれは疑うわけではございませんが、一般的な確認的な意思表示、個人々々の意思表示はされていないわけでありまして、どうしてもいざ帰すということになりますと、やはり個人にほんとうに最後の自由なる意思表示をしてもらい、それを日赤で受けつけることが絶対に必要でございまして、これも日本は譲れない。従って、この点について北鮮側の了解を得るべく会議を重ねておりますが、まだ北鮮はその点につきまして了承をいたしておりません。従って、今後、現状におきましてはやはり見通しはむずかしいのですけれども、相当対立したまま、まだ議論を重ねなくちゃならぬのじゃないかというふうに考えております。いつ妥結するかどうか、まだ見通しが困難な状況であります。
○野溝勝君 ただいまの説明でございますが、日本側としては国際委員会の参加ということを強く要望しておるのですが、これについては国際委員会の英国関係はむしろ李承晩の南鮮側主張といいますか、意見に同調したような態度でおられるということでございますが、この間の動きはまだ具体的にわれわれはわからぬのでございますが、これはどういうふうに一体御当局は見ておられますか。
○説明員(板垣修君) この北鮮自由帰還問題に関する世界の各国の政府の意向及び世論の動向というものは、大体において日本の立場を支持しております。ことに今お話がありました英国政府、政府そのものは日本側の方針というものを絶対に是認しております。ただ一つマンチェスター・ガーディアンがややこれに反対するような論評を、一回だけ出してございますが、しかしその他の世論は、日本側の立場、世論は正しいということを言っております。従って私どもの観察では、一、二反対論はございますが、日本側の立場は、政府におきましても世論におきましても絶対に支持されております。ただアメリカあたりは、御所知のように日本の立場が悪いということでなくて、これを強行することによって、南鮮と日本との間に起り得る事態に対して心配をしておるという事実はございますけれども、日本側の考え方に対してはアメリカ側は了承しておると私は信じております。
○野溝勝君 私はこの程度できょうは終ります。
○委員長(杉原荒太君) ほかに御質疑のおありの方はございませんか。
○森元治郎君 アジア局長に北鮮帰還の問題だが、何か帰すとは言いながら変なところに理屈をくっつけちゃつて帰したがらないような感じを受けるのですがね。その理由はほんとうにAという朝鮮人が帰りたいのかどうかよく会って聞いてみたい。よく聞いてみたら実は強制されてお前帰れと言われて帰るのだが、実は日本にいたいのだということを、無理に引っぱり出して聞きたいような感じがするのだが、そういう点はありませんか。
○説明員(板垣修君) そういう点は絶対にございません。日本政府といたしましては、無理に帰すということもございませんし、帰したくないという態度もとっておらない。ほんとうに本人が帰りたいという者を帰すという態度でいるわけであります。御承知のように日本におります朝鮮人は二つに分れておりますので、その間にいろいろ背後の動きもありますので、届け出た者が果してほんとうに帰りたい者かどうかわからないという者もあるいはあり得るだろうと思います。従って、そういう意味において、ほんとうの自由意思というものを証明できるような組織でこれを受けつけていく。そして万一のために、あとで意思を変更した者を公平に審査するところの機関だけは作って置こうというだけの意味でありまして、今御質問のように、特に作為的にこの問題を取り扱っているということはございません。
○森元治郎君 休戦協定が朝鮮であったときに、同じようなケースで意思の確認をやったと思うのですが、あのときの事情はどんなふうであったのですか。
○説明員(板垣修君) 休戦協定の場合は、ちょうど日本が今やろうとしているものの逆の場合でありまして、自由圏に帰りたいという者に対して、その自由意思を確認して、自由意思でやはり共産圏からのがれて自由圏に帰りたいという者についてそれを帰してやるという協定ができたわけであります。その点はうまくいったわけであります。ちょうど日本がやろうとしていることのケースの逆であります。そういう立場で、あくまでも個人の自由意思という立場でこの問題はきめたらどうかというのが、われわれの立場でございます。
○森元治郎君 同じことをもう一ぺん聞きますが、自由意思では北鮮に帰りたいのだけれども、何か質問を二段、三段にしていって、実は帰りたくないのだと言わせたいという感じがするのですが、どうですか。
○説明員(板垣修君) そういう点は絶対にございません。一人心々をお前はほんとうに帰りたいのか、何か金をもらって強制的とか、そういう意味の動機なり、本人の思想なり、そういうものの審査はしないわけであります。ただ、外国人が帰る場合には一定の帰国条件にかなっていなければいけない。たとえば訴追中の者、そういう者は困ります。そういう事実はあるかないか、届け出た者が本人であるかどうか、そういうようないわゆる帰国条件の形式審査はやるわけでありますが、それ以上立ち入って共産主義者であるとか、その他の動機を尋ねることはしないわけであります。しかしながら、あくまでもやはり個人の自由意思を尊重しなければいけませんから、やはり乗船まぎわにあるいは帰りたくないという者も出てくるかもしれません。その場合に、これを日赤だけで処理いたしますと、北鮮側にもまた文句を言われるという点もありますので、この際、公平なる国際赤十字社の第三者に頼んで、そこで判断してもらう機構を作る。大体受身の機構だけを作るわけであります。積極的に帰りたくないというふうに仕向ける意思は毛頭ございません。
○森元治郎君 政府としてはそういう答弁しかできないだろうと思うが、どうも割り切れない。そこで、国際赤十字の介入の限度というか、折り合いのつく見通しがあるのですか。日本側の介入させたい限度、北鮮もそれならばやむを得ないだろうというのはどの辺なのですか。
○説明員(板垣修君) 日本側としましては、先ほど申し上げましたような最小限度の条件は出しております。一つは国際委員会、ある程度機構なり、運営なりについて指導してもらいたいということが絶対必要である。それからもう一つは、日赤の系統でもって審査を受けつけて手続を完了するということが、これが最小限度の条件でございますから、しかもこれは当然の要求でございますから、この点につきまして北鮮側が納得してもらえれば、この問題は片つくというように考えております。
○森元治郎君 北鮮側の納得の見通しはどうですか。
○説明員(板垣修君) この点は、実は私どもも非常に判断に苦しんでおるわけでありますが、もし北鮮側がこの自由帰国の問題について何らか政治的意図を引っかけておるとしまするならば、やはり交渉上非常にむずかしいのではないかというような気がいたします。しかし、それが単なる誤解とか、あるいは面子とか、そういうようなものならば、結局北鮮側が、相当時間はかかると思いますけれども、折れてくるのではないかという見通しもございますが、急に妥結にくるという徴候も今のところはないわけでございます。日本側としては、なお根気強く向う側に説付を続けておるという状況でございます。
○森元治郎君 十一万七千名というのは、政府側ではどういうふうにこの数字を見ているのか、それを少しやまをかけているのではないかと思うのか、何かそんなふうに、政府側が十一万七千名をすなおに認めたがらないように外からは見えるのだが、どういうふうにこの人数の問題は見ているのか、伺いたい。
○説明員(板垣修君) この十一万七千名の数字を特にわれわれが疑っておるという点はございませんが、これは、先ほど申しましたように、何らの条件なしに、しかも時間的な要素も考慮に入れずに帰りたいという者のリストだろうと思います。従って、いよいよ帰るということになりますれば、第一船にはだれが乗るかという問題になりますが、これは現実的な具体的な意思表示が必要でありますから、必ず十二万七下名になるかどうかわかりません。その十一が七千名のうちには、実は子供の教育の問題があるだろうし、あと北鮮側の状況がわかつてから帰りたいというような者もあるだろうし、そういうわけで、この十一万七千名という総括的な数字は、参考になるだろうとは思います。しかし、現実に自由帰国の手続をする場合には、やはりその場合々々に現実的に届け出、具体的な意思表示に基いて帰国手続をしなければならないというのが、われわれの主張でございます。
○森元治郎君 大へんどうも人道的で、窮屈で……。帰りたいという者は帰したらいいと思うのだが、何か帰すというときになると、目方をはかったり、背の高さをはかったり、うるさいことばかり言っておるのは、僕らわからないのだが、もっとすなおに、帰りたかったら十八万でも三十万でも帰したらいいじゃないか。何もそんなに厳重に、よその人を立ち会わしたり、一人々々呼んで審査をしていったら、自由意思で帰るのかどうかというのは、これは裁判をやったって片づかないむずかしい問題だろうと思うのだが、もう少し軽くやれない問題ですか。そんなに理屈をこねて、私どもわからないのですが……。
○説明員(板垣修君) この問題は、本来は人道的性質のものでありますからして、すっきりとやれるべき性質のものでございます。しかし、遺憾ながら、朝鮮が二つに分れておりまして、そういうような現実の事態に基いて、この北鮮に帰りたい者は帰すという単なる人道的な措置に対しまして、国をあげて反対しておる南鮮があるわけでありますから、この点につきまして、それをあまり無視して実行いたしますれば、別の意味でこれから派生する大きな政治問題が起るかもしれませんし、それから国際的な世論に対しましても、日本側としては、やはりできるだけ穏便な、円滑な方法でこれを実行するような措置をとる必要があるということで、事柄自体は人道的性質のものでございますが、これから派生してくる政治問題があるわけでありますから、この政治問題に対して十分な注意を払いながらやる必要があるわけであります。従って、政府が国際委員会の介入を求めたのもこの意味からでありまして、本来は人道的問題でありながら、政治問題を考慮しながらやらなければならぬというところに、非常にむずかしい問題があるわけであります。
○委員長(杉原荒太君) ほかに御質疑のおありの方はございませんか。━━それでは本日はこれにて散会いたします。 午前十一時十五分散会