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31回国会衆議院1959/02/05

予算委員会 第5号

発言数
202
登壇者
16
会派数
2
開催日
1959/02/05

会議録

楢橋渡自由民主党

○楢橋委員長 これより会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算、昭和三十四年度特別会計予算、昭和三十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。井手以誠君。

井手以誠日本社会党

○井手委員 私は本日財政問題、雇用対策、低所得者対策、最後に海運政策について、政府の所見をただしたいのであります。  まず最初に財政問題から入りたいと思います。三十四年度の積極財政、一般会計で九百八十億、財政投融資で千二百三億、計二千百八十三億円の膨張、散布超過は二千四百億円、この膨大なる財政支出が、せっかく回復しようとする経済界に強い刺激を与えまして過熱を生じ、三たび不況を招くのではないかというおそれを同僚議員から指摘したのであります。この点は景気循環のはなはだしい最近の経済界の問題について、経済財政の基本問題でありますから、私は二、三点総理と大蔵大臣にお伺いしたいのであります。  景気、不景気の循環、この問題に処する財政経済政策について、私は次のように考えておるのであります。好景気のときには財政を引き締めて経済活動を調整する、不景気のときには経済に刺激を与えて回復をはかるとともに、国民大衆の犠牲を少くしようとすること、そういういわば統制を行うことが、私は経済財政政策の一番大事な点であると信じておるのであります。また政治の要諦であるとも考えるのであります。この点についてあらためて総理の所信をお伺いしたいのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 経済の最も望ましい状態は、言うまでもなく、安定した基礎の上に着実な、堅実な成長をはかっていくということであると思います。ところがいわゆる景気、不景気の問題は、単に国内経済だけではなくして、国際的な範囲においてそういうものが現われてきておる。これに対処して、今言った健全な、われわれの望むところの安定した基礎における成長を常に考えていくということをどういうふうに具体化するかということが、経済政策、財政政策において、われわれが現実に政局を担当する上からいって頭を用いなければならぬ問題である、かように思います。そこで、今井手君の御指摘のあったように、不景気の場合においては、その不景気を回復するための刺激になるような政策をとり、景気の場合においては、景気が行き過ぎないように引き締めの政策をとるというお考えでありますが、大体の傾向としてはそういう考え方は私は賛成であります。ただしかしながら、個々具体的の場合において、たとえば経済活動が沈滞しておるという場合に、直ちに景気を刺激するような政策をとったがいいかどうか。なおその場合において掘り下げて考えなければならぬ問題がありましょうし、あるいはいわゆる景気の上昇の場合においても、直ちに引き締め政策をとった方がいいかどうかというような事柄は、具体的の経済事情を十分に検討し、把握して、政策としては行なっていかなければならぬ。しかし心持としては、大きく言って、井手君のお話のようなことは、大体方向はそういうふうに考えるべきものである、こう思います。

井手以誠日本社会党

○井手委員 方向としては私の意見に同感のようでありますけれども、この具体的な三十四年度の予算案を見ますと、三十四年度の後半期には相当上向きになる。それに膨大な財政の支出がある。そういうことを考えますと、私はそこに一般が非常に心配しておりますように、再び過熱を生じて不景気がくるのではないか。おっしゃることと、今日提案されております予算の内容、それとが違うと私は思う。大蔵大臣どう思います。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 今日までたびたび当委員会を通じ、あるいは本会議等を通じて申し上げておりますことは、今回の予算は、私はいわゆる積極的予算だ、かようには考えておりません。今日の予算は、なるほど増額は見ましたが、これこそは膨張する経済にふさわしい、対応しておる予算である、かように確信をいたしておりますので、ただいま言われましたような、いわゆる積極的な予算である、こういうようには私どもは考えておりません。  また一部で過熱論があることは、新聞その他ですでに御承知の通りでございますが、この過熱論が民間にあるということ自身は、過去の苦い経験に対して自戒している証拠だと思います。みずからが十分注意をしてかかろう、そして放漫な状況になるととんでもないことになるぞ、こういう意味の過熱論だと私は思いますので、この意味では、過熱論が今出ておることは大へんけっこうだ、むしろ財界自身が非常に警戒しておる証左だ、こういうことが言えるように思います。もちろん私どもは今回の財政投融資なり、あるいは一般会計なりが、民間に対しましても必ず心理的な連鎖反応を来たしまして、ともすると膨張しやすいのではないか、ともすると非常に上昇率が拡大しやすいのではないか、その危険のあることも、同時に考えておりますので、時々刻々の経済情勢に対応して、適切な措置をとっていく考え方であります。先ほど総理がお答えいたしました事柄につきまして、大体の傾向としてという言葉で表現をされましたが、私どもは、もともと経済は自由にまかしておきたいという考え方でございますので、いわゆる統制経済の思想ではございません。しかし経済の動向をよく見きわめまして、心配の度合いが非常にひどい、経済自身が非常に苦しむ、こういう場合でありますれば、財政的には支柱の役をしたいと思います。また同時に、経済が成長するのが、非常に飛躍的な膨張を来たす、そうして経済の基礎を弱体化する、こういうような危険があります場合には、財政の面から、また政府自身の行政的指導の面から、これに十分のブレーキをかけて警戒を与える、これだけはいたすつもりでございますが、いわゆる統制的な考え方で経済を見ていくというつもりではないのでございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 そこに立場の相違があると思う。自由放任の経済で、神武景気が神武以来の不景気になったことはお互い苦い体験をしておるところであります。この景気不景気に一番犠牲を負ったのは国民大衆であります。この犠牲をなくすることが、私は政府の任務だと考える。そこに財政経済の基本方針があると考えておりますがゆえに質問を申し上げておるわけであります。資本主義の本山であるアメリカにおいてすら、資金については相当の統制をされておる。これは御承知のことと思う。そこで私は、ここで経済企画庁から出されました経済白書、世耕さんも一つ十分お聞き願いたいと思うが、こういうことを書いてある。「いまや、第二次大戦後一三年にして、世界のいわゆる新しい資本主義は試煉の年を迎えようとしている。」「ブームとその後の反動調整という景気循環の法則は世界資本主義の全域にわたってきびしくその論理を貫ぬき、景気沈滞局面がかなりと長びく可能性をはらんでいる。日本経済もまたその例外でない。」「いまや日本経済は戦後はじめて典型的な循環対策に取組む必要に迫られている。他面国際収支は黒字を示しているものの、その前途は必ずしも楽観を許さない。」「もし過大膨張の原因の究明とその是正を等閑にして、景気刺激に焦るならば、浮揚力は再び統御を困難にするまでに昂まるおそれなしとしない。われわれは調整期を利して、産業および金融組織の姿勢を正し、もって過大膨張への禍根を絶ち、景気調整の武器庫を充実して、経済の激変をさける態勢を整えておかなければならない。」こういうふうに警告を発しておる。私はあとで大蔵大臣に十分武器弾薬庫財政についてはお伺いをいたしますが、三十四年度の積極財政に全都金を出しておる、からっぽになっておる、その実態に対して、この不景気に備えてどういう用意を世耕経済企画庁長官はお持ちでございますか。

世耕弘一自由民主党経済企画庁長官

○世耕国務大臣 お答えいたします。井出さんは過熱ということを特に御心配になっておられるようであります。われわれも世間で唱えられておる過熱ということは、必ずしも無関心でございません。果して過熱の状況になるか、あるいは気分的に沈みいかんとする日本の経済に一つの気合いをかける必要があるかどうか、この調整のいかんが非常に今日微妙な経済界に影響を及ぼすもの、かように考えまして、就任早々ではございましたが、経済的に神経を特に働かせる関西地方の財界、企業界の人たちにお会いいたしました。そして短時間ではありましたけれども、各界の代表者と御懇談を願って、果して過熱状態があるものと見るかどうかということに対して隔意ない意見を交換いたしましたのですが、(「簡単に」と呼ぶ者あり)実際家の御意見から承わりますと、さようなことは当分心配ありませんという御注意を受けたのであります。しかしながら経済を担当するわれわれといたしましては、できるだけその面については慎重に扱う予定であります。簡単にというお話がありましたから、順を追うてお話を申し上げますが、もう一つ私がつけ加えたいことは、過熱というお言葉がございましたが、もし過熱の状況にいくきらいがございましたら、むしろこの際その余った熱を体質改善の方に回す、そして日本の経済の基礎を強固にさせるというのが政府の方針として、慎重に取り扱っておるような次第であります。もちろんその他のこまかい点に関しましては、景気の変動ということは相当神経的にも動くものでありますから、言動等に関しましても慎重を期しておるということを御了解を願いたいと思います。  なおその他の具体的な問題に関しましては、追って御質問をいただいてから、順次御説明申し上げたいと用意いたしております。

井手以誠日本社会党

○井手委員 大蔵大臣は積極財政と言うのを非常にきらっておられる。ことさらに言葉を避けておられるようであります。これは数字ははっきり積極財政なんだ。積極財政と言えばこういう問題が起るから避けておられる。成長の財政である。この点は非常に重要でありますけれども、お互い立場の相違でもあります。私は今までのような自由放任のやり方ではいかぬと思います。また二年前、私はこの席でずいぶん警告をいたしておきましたけれども、ああいう結果になった。そういう事実があっておればこそみんなが心配をしておる。世耕さんはしておらぬという話だけれども、新聞に報道されるように心配しておるのは、政府の態度なんです。この点は見解の相違になりますから……。私どもはことしの秋以降の問題を心配して申し上げておりますので特に警告をしておきます。一般会計と財政投融資を通じてその財源に非常に無理をなさっておる。選挙目当てかあるいは圧力団体に屈せられたか、新聞の報道もいろいろございますけれども、ずいぶん無理をなさっておる。その点は大蔵大臣もよく胸の中にあると思う。  そこで大臣にお伺いをいたしますが、来年度の一般会計の歳入は、現行法によりますと一千八十六億円の増収を見込んである。これは経済成長率に一定の率をかけられたものですか、その点をお伺いいたします。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 改正前と申しますか、現行の税法上で一応立てております金額は千八十六億円でございます。しかし、ことしは御承知のように御審議をいただいております減税案が出ておりますから、内容的にはもっと減額される、こういう状況でございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 私は別に政治的な意味で申し上げておるわけじゃございません。一千八十六億円はどういうふうにして増収になるのか、経済の成長率に一定の率をかけられたのかどうか、その点をお伺いしているわけです。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 毎年大蔵当局におきまして税収の見通しといいますか、見込みを立てるのでございます。ことしも従前同様の考え方でただいま御指摘になりましたように経済の成長等をも考えて一応の率を作るわけでございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 経済の成長率をどういうふうに計算されたのですか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 経済の成長率は企画庁で考えております成長率、それを基準にして作ったものでございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 経済の成長率、それをどういうふうに計算をされたのか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 この昭和三十四年度租税及び印紙収入予算の説明書の各税の見積り方法、一般会計、その七ぺージというところに現行法の算定方法が詳しく出ております。これで御了承いただきたいと思います。

井手以誠日本社会党

○井手委員 これは活字を私は聞いておるわけではございませんよ。私はそれはよく読んでおります。それでは重ねてお尋ねいたしますが、三十四年度の所得税、これは三十三年度の所得税に比べて現行法を基礎とすれば実に一一割五分の増加になっておる。五百八十億円を見込んである。これはどこから数字が出たのですか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 それは先ほど御説明いたしましたように、経済の伸びから出ております。

井手以誠日本社会党

○井手委員 これは私は個人の財布の中ならば何とも申しませんが、国の財政ですから、私はこの点について十分納得のいくまでお尋ねしたいと思う。経済の成長率に一定の率をかけて増収の見込みがある、二割五分ですよ。それは一定の成長率ならば昨年の、昭和三十三年度の自然増収見込み、これは所得税については五分増しです。昨年の経済成長率は四・九%、ことしは鉱工業の伸びは六・一%、全体的には五・五%、昨年の所得税は五分の増収を見込んである。ほとんど変らない経済の成長率に対して、ことしは二割五分の増収を見込んでおる、これはどうです。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 数字の問題でございますから、私からお答えをさしていただきます。ただいま大臣からお話がありましたように、先般御説明申し上げました租税及び印紙収入予算の説明というのがございます。これはお手元にお配りしてございますが、その七ページに源泉所得がついております。私が申し上げておりますのは、各税ごとにおのおの人数でありますとか、あるいは給与の場合におきましては給与水準の上昇を見込んでおります。そういうようなものを乗じまして、それに税率を乗じまして積算をいたしましたものが、御指摘のような数字に相なっておりますので、全体を通じましてある伸び率を平均してかけたものではございません。これは各税目につきまして、ただいまお話がございましたような経済の上昇を見込みまして、それに伴います、たとえば今七ページをごらんいただきますと、源泉所得におきまする人員の関係、これは三十三年度に対して一%の増であり、一人当りの給与は一一・七の増である、こういうような各個の積算をもちまして今申し上げたような積算に至っておるわけであります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 私はその数字はよく承知をしております。事務当局で計算したものを聞こうとは私は考えておりません。経済の成長率に乗じた増収の見込、それが三十三年度の予算を編成するときには五分増し、ことしは二割五分増し、どうしてそんなに違うのですか。それを私は聞いておるわけです。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、経済の伸び、これでただいま申し上げたように率が変っておるわけでございます。あの七ページの表をごらんになりますと、たとえば給与所得だと、個人給与の増が一応一一・幾らという数字が出ておると思いますが、これについては五・六の増、こういうようなことで、それぞれ人員と給与所得の増加を見ておるわけであります。また一般の所得税等につきましては先ほど来申しますように、経済の伸びを基礎にして、そうしてやっておるわけであります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 経済の伸び、この点は非常に重要ですから、私は徹底的に究明したいと思う。経済の成長率から申しますならば、昭和三十二年度の予算を編成するときは、いわゆる神武景気の頂点にあった。経済の成長率は一二・五%であった。そのときに増収は幾ら見込んだかといえば、二割四分です。来年度は経済の成長率は五・五%、半分以下のときに同じ二割五分を見込むというのは、これは過大見積りというよりもむしろ私は間違っておると思う。これは数字の間違いだと思う。はっきり納得するまで御説明を願いたい。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 これは絶対に数字の間違いではございません。ございませんが、特に必要でありますれば、計算を出しました事務当局から説明させますが、どこまでも税収の見積りを立てます際には、経済の成長をいかに見るか、これが税収の基礎になるのです。従いまして、十分確信を持って精査した結果の数字でございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 大事な基礎であるから私はお尋ねしておるのですよ。昭和三十二年度のあの神武景気の頂点のときには、先般通産大臣が答弁なさったように、設備の稼働率は八四%、来年度は七二%、精一ぱい七二%だとおっしゃっておられる。そのときに、昭和三十二年度のあの神武景気の頂点にあったときと、五・五%の伸びを予想される昭和三十四年度に同じ二割五分の増収が見込まれるかということですよ。私はこれはことさらに水ぶくれさせたと思う。なぜならば、この予算編成の当時までは、事務当局では増収の見込みは八百億程度である。それが何かの都合で一千八十六億にふえておる。この二百七、八十億の差というものが、私はここに持ってこられたと思う。これは大事な点ですから聞きますよ。もう少し具体的にお話を願いたい。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 これはもう長い間の経験から、今回の見通しはこれは大丈夫であります。過去の経験が必ず正しい、あるいはもう少しよけいに見積ってもいい状況だったかもわかりません。そういう点は果して皆さんの方で十分ごらんになっておるかどうか。これは毎年私どもが作っております税の収入見込みと実績とは、場合によりますと多い場合が相当出てきております。また見積額に大体沿っておるものもございます。そういうものを過去の経験から割り出しまして、二割五分が適当だ、こういう結論で出しておるのでございます。決して水増しでも何でもございません。

井手以誠日本社会党

○井手委員 経済は動きますので、見積り通りにはいかぬと思う。しかし税収の見込みというものは相当精査した上でなくては組めないはずだ、少くとも経済成長率にかけた一定の率というものはわかっておるはずです。昨年は五分増しだった、ことしは二割五分増しだ、そういうでたらめなことはされないはずだ、二割五分はどうして出てくるのですか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 どうも事務当局から説明させた方がいいかと思いますが、ここにあります数字から見て、この三十二年度と三十三年度との経済の伸び、あるいは三十三年度と三十四年度との対比等をごらんになると、今回の三十四年度の経済の伸びは、三十二年度に対する三十三年度より以上に高いものである、こういうことはもうすでに御承知の通りでございます。そういうところからただいま申し上げたような数字が出てくるのでございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 毎年々々考え方を変えるのですか。三十二年度はこうだった、三十三年度はこうだった、三十四年度はこうだという自然増収の見込み、経済の成長率に対して一定の率をかけますならば増収の割合というものは同じはずである。三十三年度の成長の伸びと三十四年度とはそんなに開きはないはずです。開きはないのに、昭和三十二年度のあの神武景気のときと同じ増収を見込んである。この増収の見込みの開きが二百八十億円違うのですよ。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 一応数字で申しますと、三十二年度の実績は八兆三千四百九億円というのが国民所得であります。三十三年度の実績見込みは、今日私ども考えておりますのは、八兆四千百二十億、それから三十四年度の見通しは八兆九千二百八十億、従いましてただいま申し上げますように、三十三年度は三十二年度に対して幾らになっておるかを考えますと、これはわずかに〇・九、ところが三十四年度の伸びになりますと六・一伸びるのであります。六・一経済が伸びるということになりますと、それからはじき出します税金額というものが私申し上げるように千八十六億ということになります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 それではもう一つ見方を変えてお聞きしましょう。あなたの方の七ページにあると言われるものからお聞きをしましょう。それによると、三十三年度の勤労所得税の基礎になっておる賃金水準の増加は四・九%、雇用の増加は一%、三十四年度は賃金水準の増は五・六%、雇用増は同じ一%ですよ。三十三年度予算を編成されたときと今とほとんど変らない。成長率は若干の違いはあるけれども、常識で考えてごらんなさい、経済の成長率がわずか五・五%程度成長する場合に、所得税が二割五分も増収が見込まれることは考えられますか。私は今まで事務当局その他から聞いた範囲では、経済の成長率に大体五割増しした程度のものが増収の見込みだと承わっておる。それが常識だと思う。それなら五・五%の成長であればせいぜい八分か九分の自然増収の見込みでなくてはならぬ。それが二割五分に上っておる。常識で考えてごらんなさい。ただ何とか言いのがれの答弁ではいけませんよ。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 これは数字の計算の問題でございますから、決して常識論だとかあるいはどうこうのものではございません。今計算を出しました事務当局をして詳細に説明させます。

石原周夫大蔵事務官(主計局長)

○石原政府委員 七ページにございますところの人員と一人当りの給与の増加のお尋ねでございますから、その点の御返答を申し上げます。これはカッコ内にございますように、三十三年度分に対して一%の増、給与につきましては三十三年度分に対しまして五・六%の増加でございます。これは三十三年度の予算に比べますと、おのおの一%、五・六%の増でございますが、三十二年度の納税者あるいは支払い給与金額に対しまして、そこにお示しのように三・五%と一一・七%になるのでございます。これはいずれも現在までの課税の実績から見まして推計をいたしたものでございまして、各個の積み重ねをいたしました結果がこの数字になっておるわけでございます。  なお御参考に国民所得の伸びと税収の伸びというものは、お話のように一定の関係があるわけでございますが、毎年心々機械的な関係がございませんわけで、ちょっと簡単に数字だけ申し上げます。これは昭和三十年が二十九年に対しまして一〇・八%の国民所得の伸びであります。それに対しまして税収の前年比の増加は六・四%であります。同様に三十一年は国民所得が一四%伸びましたが、税収は二二%と大きく伸びております。また三十二年度は九%の国民所得の伸びに対しまして一八%というふうに高い税収の伸びであります。従いまして国民所得の伸びに対しまして常に七割増しというような考え方では計算はできないのでございますから、各個の税目につきまして最近におきまする課税の実績あるいは来年度におきまする経済の伸び、あるいは給与水準の伸びというものを想定いたしてやるわけでございますが、両者の関係が常に一定であるというわけではございませんので、その点は一つ御了承願いたいと思います。

井手以誠日本社会党

○井手委員 税収の見込みを立てるときには過去の実績によってすることは私はよく承知しております。それは三十二年度の予算を作るときも三十三年もことしも同様だと思うのです。そうであるならば大臣が最初に説明されたように、経済成長率に対して過去の実績に基いた一定の率がかけられていくはずである。ことしだけ正しくて今まで間違いであったということは言えないはずです。一定の率をかけていくというものであるならば、三十二年度の予算の場合には二割四分の増収を見込んである、昨年度は五分の増収を見込んである、ことしは二割五分を見込んである。そんなに毎年心々変るはずはございませんよ。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 ただいま主計局長が説明いたしましたように、税の計算にはいろいろな状況を勘案しなければならないものですから、非常に大まかに一定の率をかけるという簡単なものではない、今説明しましたように過去の経済の成長率といつも対応しておるものでもないことは過去の実績で御説明した通りであります。私はこの際にこの税収入の見通しは事務当局をして自由に実はやらしたので、私自身が何ら指図をしておらない、従いまして、いかにもお話を伺いますと、何らかの意図を持って非常に大きな見通しを作ったんじゃないかというように聞けるお尋ねのようでございますが、そういうものでは絶対にない。従いまして、これはこの数字を出しております事務当局をして詳細に説明させるということでございます。なお、今主税局長が参りましたから主税局長に実際に扱っておるその実情を説明させます。これはなかなかこまかな各税種目について個々のものを積み重ねて税収入を立てておるのでございますから、そのやり方等も一応御了解いただきますと、全体についての御理解をいただけるかと思います。

井手以誠日本社会党

○井手委員 私は事務当局の説明は求めません。なぜならばこの書類を私はよく承知しております。これは事務当局が持っておる数字である。われわれは基本をただせばいいわけです。経済の成長率に一定の率をかけるというようなことは、大臣の答弁ができるはずだと思う。それを聞いておるわけであります。元来三十四年度は八百億の増収しか見込まれなかった。それを各方面の圧力団体に屈したかどうか知りませんけれども、一千八十六億に水増しをした。私はそこに原因があると思う。なるほど事務当局は一応の説明はつくかもしれない。しかし私は良心に訴えるならばじくじたるものがあると思う。私は国の財政歳入をそのときの情勢に応じて勘案するなどということに納得ができません。二割四分増したり、五分増したり、また二割五分増したり、そういうことができますか。私はこの点さえはっきりすればいいのです。何も数字は必要ではございません。納税人員が幾らであるとかあるいは勤労控除がどうであるとか保険控除がどうであるとか、そんなことは聞かなくてもよろしい。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 計算をいたしました事務当局をして計算の方法を説明させます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 せっかくだから聞きましょうけれども、私は内容の説明を、納税人員がどうであるとか、そんなでたらめな歳入の見積りは許しませんよ。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 計数の見積りのことでございますから私お答え申し上げます。御疑問は三十四年度の伸びが特に所得税あたりにおいて大きいという点を御疑問になさっておるようでございますが、これは三十三年度自体におきまして実は所得税の予算額二千四百四十八億とありますのが、かなりの実績増が見込まれる状況であります。実績の増が確実に幾らになるかということは、まだ若干時間を残しておりますので、一応の見込みといたしましては所得税において二百億前後の増が見込まれる状況でございます。従いまして三十三年度の予算は二千四百四十八億ということに相なっておりますが、実績では二千六百五十億前後になるということをまずお考えいただきます。そういたしますとそれの上に三十四年度出る額は約三百七十億か八十億ということになって参ります。比率にいたしましても大体二千六百億に対して三百七十億でありますから一四%くらいの増ということになります。これはただいまごらんになった三十三年度当初予算に対して二五というような数字が一段実績で一〇くらい埋まりまして、その上に一四、五%伸びるということであります。所得税において一四、五%の伸びということは、御案内の通り所得がふえますと累進税率の関係から、そのふえたものより相当大きい幅の伸びがあるということでありまして、怪しむに足らない、一四、五%の伸びというものは、そうおかしな何はないということになります。  しからば三十三年度どうして伸びたかということでありますが、これは当初の見込みに比べまして雇用、賃金の実績を見ますと、案外に賃金の停滞性と申しますか、景気の伸びなかった中にあっては、こういうものは割合に堅実にある程度の伸びを示すということが堅実一つと、それから配当の面におきまして景気は不振でありましたが、やはり資本が相当ふえてきております。そういたしますと、配当率は落ちましても配当額がふえる、配当額がふえますと、源泉徴収の配当の分の税額がふえる。同時にそれを税務署は資料に基いて総合課税をいたします。その分の課税が相当伸びる。この辺が顕著な事情でございますが、三十三年度は申し上げた通り二百億くらい伸びるということになっております。そういうことでありまして、この合計千八十六億という見込みは、その他各税につきましても一々できる限りこまかく、かつ、大局を失しないように経済の各種の指標の伸び、あるいはいろいろな物資の消費計画量というようなものを極力確実に見込んで計上いたしましたものでございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 原さん、主税局長がそんな説明をしておかしくはないですか。あなたが特に強調された実績増というものがあればこそ、来年度は五・五%の経済成長が見込まれるわけですよ。しかも三十三年度の賃金増は四・九%それがあなたのおっしゃるように見込みよりも割に上った。上ったのであれば五・何%になっておるでありましょう。ところが三十四年度の賃金増は、五・六%見込んである。ほとんど変らぬじゃありませんか。勤労所得においてほとんど変りはない。しかも雇用増が同じ一%、三十三年度も四年度もほとんど変らない賃金増と雇用増に対して、三十三年度は五分増し、三十四年度は二割五分増しということはどこから出てきますか。あなたは、一〇%は伸びているであろう、あと十何%は勘案だと言うけれども、その十何%の勘案が問題だ。私は大臣にお尋ねいたします。私は今数字をあげてお聞きしているのですよ、経済の成長率から見た数字をあげた質問ですよ。三十三年度と四年度の賃金の伸び、雇用の伸びというものはほとんど変らない、今説明を聞いても。そうであるならば、三十三年度は五分増し、三十四年度は二割五分増しなんて出てくるはずがないじゃありませんか。しかも一方では法人税は伸びておりません。法人税においては、ここに見ますると、三十三年度の予算は三千三百十一億円、三十四年度の見込みは三千三百九十三億円ですよ。ほとんど変らぬじゃありませんか。勤労所得だけどうして伸びますか。賃金がわずか〇・一か二くらい上って二割五分もどこに伸びますか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 先ほど来政府委員から説明をいたさせました実際の扱い方、これは長い経験によって実は割り出しております。今の給与所得につきましての見積りが違うか違わないか、こういうことは一つ事務当局の経験にまかしていただきたいと思います。過去の税収入の見込み等におきまして非常な相違が実はないのでございます。  次に、ただいま申されます法人税等につきましては、これこそ事業の影響が非常に影響いたしていることがわかるのでありまして、ことに課税の収入の時期と今後の伸びというものと相違のあることは御承知の通りであります。勤労所得に関する限り、これは月々の収入から税が引かれるのでございますが、法人税の場合だと、その景気沈滞のときのものが今課税されるということになりますので、これがあまり伸びていかないこともおわかりだろうと思います。この税の収入を私自身が、大臣が一々指揮しないといっておしかりを受けておりますが、ただいま申し上げますように、税は各税につきまして非常に詳細に基準を立て、見込みを立て、実績その他から割り出してこれを積み重ねていく以外には方法はないのであります。これを一律に、経済の伸びが幾らだから簡単にそれに幾らの率をかければいい、こういうものじゃありません。ただいま申し上げますように、課税所得の発生の時期の相違もございますし、またいろいろものによりましては税制の特別措置をしておるものもございます。いろいろなものがございますので、それを一律には言えないのでございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 私が追及いたしておりますのは、先刻も申しましたように、来年度の増収見込みが八百億だ、それがいつの間にやら一千八十六億に伸びておる。いろいろ公約もありましょう。各方面の要請もあったでしょう。どういうわけか知りませんが、それがいつの間にやら一千八十六億に伸びておる、そういう水増しの心配があるから私は聞いておるし、その結果赤字財政になると困るから私はしつこく申し上げておるのですよ。赤字になるとどうなりますか。あなたの家が赤字になったって私は何も干渉いたしませんが、いやしくも国民から税金をとって、これを執行する場合に赤字になるようなことは許されません。これは十分ここで検討しなくてはなりません。検討する場合にはやはりそこに納得のいく説明をされなくてはならぬ。総理大臣も今までの質疑応答でお聞きであると思うのですが、経済の成長率も、賃金の増加も、雇用量の増加もほとんど変らぬのに、同じ三十三年度、四年度の経済成長に対して、片っ方は五分増し、片っ方は二割五分増し、こういうことで果して国民が納得いたしますか。総理大臣は一体これに対してどういうお考えを持っていらっしゃいますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私は、こういう問題はきわめて大事な問題でありますがゆえに、十分その計算の基礎をこの委員会において明らかにすべきことは当然であると思いますが、先ほどからの質疑応答を聞いて私の感じますことは、こういう税の伸びというようなことを、ただ経済の成長率やあるいは国民所得に対して一定の率をかけたもので出すというやり方は、従来大蔵省においてもやっておらないことであって、各税種目についてその実情を十分に調査して、これに対して結果を出して、それを計算するというのが当然であろうと私は思います。従いまして先ほどからの御議論のように、来年度の成長率あるいは過去におけるところの成長率、実際の実績を見ましても、税の伸びというものが一定の比率でもって動いておるものでないということから考えましても、各税種目について具体的にその実情を把握して、来年の伸びを見込んでそれの総計を立てるのが来年の税収入の見込み、こうなるものだと思います。

井手以誠日本社会党

○井手委員 実績によって経済の見通しを立てて税を見込む、そこに私は経済計画があり、五・五%の伸びが見込まれると思うのです。そうじゃないならば、経済計画というものは要らないのです。経済の成長率などというものは必要ではないのですよ。一方では、先刻申し上げましたように、法人税はほとんど伸ていない。同じ金額である。勤労所得税だけはうんと伸びる、そんなことはおかしな話です。御承知の通り、賃金というものは、経済がじっと伸びて参りますと、そのあとで上るのです。雇用もあとで伸びていくのです。これは法人と同じですよ。法人はこうだというわけじゃございませんよ。これほど大事な歳入ですから、これはもう厳格な上にも厳格に計算しなくてはならない。歳入において二百八十億前後の水増しが見込まれる、こういうような歳入は許せません。そうであるならば、これははっきり、私どもが納得するように、それではどういうふうに大蔵大臣は考えられたか、ことしの税の伸びをもう少し私は聞かなくてはならぬと思う。実績に将来の見通し、これが合わさって経済の成長率じゃございませんか。それは違う、別の要素があるというなら、経済の成長率、経済計画などというのは要らないものですよ。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 もちろん三十四年の税収入でございますから、千八十六億、これを一応は想定はいたしておりますが、この数字にいつまでもこだわるものではございません。これは最初から御了承いただけるかと思います。しかしそれはでたらめではございませんで——三十五年の問題を今議論しておられるのだと思います。三十四年の問題ではないのでしょう。

井手以誠日本社会党

○井手委員 三十四年度……。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 先ほど来三十五年度と言われていたが、そうではないのですか。三十四年度の問題につきましては、私ども十分この数字についての責任を持ちます。これははっきりいたしておるわけでございます。それは先ほど来申し上げますように勤労所得税とそれから法人税との何は、課税所得の発生の時期が違いますので、これは伸びがあまり見られない。これは沈滞の時期でございますので、やむを得ないと思います。しかしながら、法人所得は経済が成長して参りますれば必ず伸びて参るのでございます。これは税の計算のうちで最もわかりいい問題でございます。勤労所得税こそは、これは月々の給与所得から割り出されてくるのでありますし、これについてはもう月々の上昇率等も想定が比較的容易にできておるのでございます。今日まで勤労所得そのものは、なるほど景気がよくなればうんとふえると言われますが、やはり企業の経営の問題から見まして、給与所得は戦前等のような、かつてのように経済の好景気でときに上り、ときに下る、こういうようなものではなくなっている。これは戦後の給与所得の一つのはっきりした現われ方だと思います。だから税の見通し、見込みにいたしましても、そういう意味でそれぞれ詳細に財源といいますか、税種といいますか、その一つ一つと取り組んで、そうして割り出しておるのでございます。この点では私ども十分責任を持って、かような税収入があるものだということをはっきり申し上げ得るのでございます。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 一言二点だけ……。一つは、所得税が伸びておるのに法人税は伸びないという点でございますが、その理由を申し上げます。所得税は、申告所得は若干違いますが、給与所得は御案内の通り、景気が悪くなりましても賃金が下るということはございません。やはり伸びは少くなるが伸びては参る。そういたしますと、着実にふえて参る。ただいま大臣の申しました通りでございます。法人の所得とそれから事業をやっておられます個人申告所得とは、景気がよくなりますときは若干値上りが伴います。そういたしますと、仕入れたときに比べて、通常の利益のほか値上り利益というものが入って参ります。また売り上げもふえます。同じ人を使っておっても、売り上げがふえますから、利益率がその面ではふえて参る。つまり利益の割合がふえて参るのです。取引が一割ふえるという以上に利益の割合がふえますから、所得の伸び方は相当大幅になる。逆にスランプになって参りますと、値下りがくる。仕入れたときよりも安い値で売らなければならぬという現象が出て参ります。売り上げも減って参る。そうしますと、経済量が一割減ると仮定いたしますと、さらにその上にそういう利益率の減が入りますので、大きく減って参ります。これが所得税と法人税との一見非常に食い違うように見える基礎でございます。所得税の方は、先ほど申した通り三十三年度でまず二百億程度踊り場が上りまして、その上に三百七、八十ふえるということでありますから、実績に対しては一割四分程度、法人税は三千三百十一億という三十三年度の予算に対しまして、私どもただいまの見込みではやはり百七、八十から二百億がらみ減るのじゃないかと思っております。これは今申した三十三年度がこういう景気の状態でありますので、これが出てきたわけであります。その減りましたマイナスの立っているところからふえますので、その減ったところから勘定しますと、二百五、六十は三十三年度より三十四年度は伸びる。これは諸般の経済指標、先ほど来おっしゃっておりますような指標を考え、法人税につきましては三十四年度に入ってくる法人税は、まず四月に入ってくる法人税というのは二月決算のものが入ってくるわけです。そういうようにいたしまして精密に二月決算の分はどうなるだろうというようなこと、生産、物価、それからただいま申しました景気の波動によって所得が割増しがあるか割引があるかというようなところを見ましてやっております。お手元にございます租税及び印紙収入予算の説明におきましても、法人税のところにおいては特にその項目を、十六ページのまん中よりちょっと上に生産、物価、同上の相乗積、それに所得率の向上等による調整というのを入れてございます。これを一〇二%、二%伸びる。つまり三十四年度は三十三年度よりも経済が若干明るくなる。ただいま申しましたような、そういう明るくなる場合の所得に対する影響が二%伸びる。二%というのは割合に大きいわけであります。三千何百億の二%、それだけで六、七十にはなる。これはもっと景気が本格的に伸びるというようなときになりますと、過去の、実例においてはこれが七%、八%あるいは一〇%をこえるというようなこともあったわけです。一〇%をこえますと、三千何百億の一〇%ですから三、四百億の増収も起きることがある。つまり勤労所得税と間接諸税というものは割合に経済の動きの指標に沿って伸びて参る。ところが法人税と申告所得税は、経済が上向きにある場合とスランプぎみにある場合とで非常に大きく違って参るということがありますので、この見積りに出ておりますような法人税の一見伸びない事情と、所得税の伸びる事情と、そういうことをごらん願います。特に全般につきましても三十三年度の実績を一応見て、その上に三十四年度の見込みを立てるわけですから、今まで八百億とかいうふうに申し上げておりますのは、三十三年度の実績に対してというつもりで申し上げているわけです。三十三年度の実績で三十三年度の予算より踊り場が一段上る。上ったものの上に八百とか千とか乗っかるわけでありますから、その点を御修正になってお考え願いたい。かつ経済見通しにつきましても当初五%が危ないといわれておりましたのが、ただいま六・一%の国民所得の伸びを見つるというようなことになってきております。それらをそれぞれの税について相当詳密に計算いたしましたもので、私どもとして十分客観的な正しいものという考えで見込んでおる次第でございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 世耕さんお尋ねいたしますが、今までの大蔵当局の説明によりますと、所得の方と経済計画とは違うようなお話ですが、あなたもそうお考えですか。三十三年度の実績と経済の見通しを立てて経済計画は立っているものだと私は思う。ところが今までの答弁によりますと、そのほかにいろいろな要因があるようです。この経済計画には三十三年度の実績というものは含まれていないのですか、どうですか。

世耕弘一自由民主党経済企画庁長官

○世耕国務大臣 お答えいたします。三十三年度に持った計画に基いてそれを判断して三十四年度の計画を立てたのです。ただ、あなたがおっしゃるようにこういうことは私は考えられるのですが、全体論といたしまして三十四年度の見通しというものは、かなり経済界は明るいのです。そういう関係から、三十三年度の標準を検討いたしまして、三十四年度の計画を持ちました。同時に三十四年度の計画は、経済上昇という見通しをつける基礎があったから、三十四年度の見通しはかなり明るいという見通しを立てたわけであります。それでパーセンテージが、お手元に差し上げた書類にもそう出ておるわけであります。  そこで、もうちょっと説明いたします。その三十四年度の見通しは、私たちの単なる明るい見通しばかりでなく、先ほど井出さんおっしゃったように過熱までしやしないか、こういうような世間のうわさまで飛ぶくらいに、上昇率はかなり強いと見ておる。しかし、私は就任以来まだ浅いので十分な検討はいたしておりませんけれども、こういう問題、景気変動は非常に慎重を要することだから、パーセンテージを出す場合でもなるべく内輪に出せ、こういうふうに指令を出しておるわけであります。そういう意味で、私の今日の考えにおきましては、三十四年度は明るい見通し、それでお手元に差し上げたパーセンテージはかなり内輪にやっておるのだということを御了承が願いたいと思うのであります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、経済の見通しに載っておりますこの数字によりますと、法人所得の伸びは一二%です。法人所得は一二%伸びるのに、税収はむしろ下っておるのですよ。ところが勤労所得においては五・四%の伸びが見込まれておる、先刻あなたのおっしゃった説明とこれは違うじゃありませんか。法人税は一二%も伸びる。ところが税収はむしろ下っておる。勤労所得税は二割五分も増してある。ところが三十三年度の勤労所得の伸びは五・四%、三十四年度は六・四%、あまり変らない。勤労所得においては二割五分の増収が見込まれて、法人税は一二%も伸んでおるのに下っておる。これはどうしたのですか、大蔵大臣。これは経済企画庁のこの精密な計画に基いた大蔵省のものであると思う。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、課税所得の生じておる時期が違っておるということを申しております。申しますならば、勤労所得はその月々でちゃんと税がかかっていく。しかし法人の場合だと決算期決算期になりますので、三十四年の決算期になりますものは、ちょうど不景気というか沈滞の時期でございます。そういうことで違うのであります。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 非常に大事なところを御質問なので、ぜひ聞いていただきたいと思います。法人税の見積りとそれから経済見通しの法人所得の見積りとの関係を申し上げたいと思います。  簡単に申しますならば、それは同様な見積りである。しかしながら、とらえる時期が、経済見通しの時期と税収見通しの時期とでずれがあるということでございます。経済見通しの方は三十四年度における法人所得はこれだけである、こう言っておられるわけであります。しからば三十四年度の法人税の収入はどういう時期の収入が入ってくるかと申しますと、先ほどちょっと申し上げかけましたように、三十四年四月から入るわけでありますが、四月に入ります法人税は二月決算期の法人税がまず入って参ります。四月にその半分を納めますと、残りの半分は、三カ月猶予になりますから七月に入ってくる。正確に半分じゃありませんが、七月に入ってくる。その事情がありますので、実は四月に入りますものには——去年の十一月決算期のものが二カ月たって、ことしの一月が申告納期である。しかし、一月には半分まで納めれば、残りの半分はあと三カ月猶予いたしますという法律になっております。その一月から三カ月猶予されましたものが四月に入って参ります。ですから、三十四年度の法人税収入は、三十三年の十一月の分から半分入ってくる。十二月の分も半分入ってくる。それから一月の分も半分入ってくる。二月の分は、ただいま申し上げましたように、最初の半分は四月に入るので、二月期は全部三十四年度に入るということになります。そういたしますと、その辺を大まかに平均してみても、大体三十四年度に入ってくる法人税の元になります決算期というのは、三十三年の十二月期からことしの十一月期ぐらい、正確ではありませんが、若干そういうような感じの期のものが、その辺の期のものが入ってくるわけであります。そういたしますと、先ほど来話が出ているように、三十四年度において景気はだんだん明るくなるというのが、大事な来年三月期というようなものあたりに一番その影響がフルに出て参るわけです。来年三月期に出て参ります所得が、実際にはその前、半年あるいは一年の事業年度の間に行われる経済活動によって出る所得でありまして、やっとその辺になって、明るいといいますか、伸び足の経済の影響がフルに出るのは、来年三月期ぐらいにならないと、なかなかフルには出ない。それは今申しましたような事情で、もう三十四年度には入るすべなし、三十五年度になるわけです。相当大きくずれます。ずれますので、この経済見通しでは一一二%余りになっておりますが、法人税収の方では、表面上は三千三百十一億に対する八十二億、これは三%になりません。しかし、実質では、先ほど申しましたように三千三百十一億が百七、八十億減る。かりに二百億減るとしますと、三千百ちょっとということになり、それに対して二百六、七十億ふえるということになりますので、八%余りふえるということになっております。この差は、ただいま申しました時期のずれでありまして、これは簡単にそう申しておるのでなくて、私どもは来年の法人税収を見積ります場合に、四月に入るのは二月期の半分と十一月期の半分であるから、それはそれぞれの時期について、どういう経済指標を当てはめればよろしいかということを計算いたしております。大へん重要な点の御質問であり、今後法人税収と経済指標その他の動き、特に経済企画庁の計数と対照いたします場合に非常に大事な点で、税収見込みでも一番ずれの出る点でありますので、補足説明をさしていただいたわけであります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 法人所得と税収の関係が若干ずれることは私も承知しておる。しかし一年全部ずれるわけじゃございません。少くとも半分か六割はその年に徴収ができるはずです。そうであるならば、一二%伸びがあるのに税収はむしろ下る見込みだ、一方の勤労所得税はうんとふえる、それじゃやはり説明になりません。  そこで、私は進めなくてはなりませんので、大蔵大臣にお伺いをいたしますが、幾ら聞いたってこれはわかりませんよ。あなたの説明じゃわかりません。税収の見込みというものは、大事な国家財政ですから、あれを勘案した、これを勘案したということでは許されません。そのためにこそ経済計画があるじゃございませんか。先ほども説明があったように、今年の実績をかんがみ、来年の見通しを立てて、精密な数字をはじき出してこそ経済計画ができ上っておる。その経済計画が五・五%になっておる。賃金の伸びも、勤労所得の伸びも、雇用の伸びも、三十三年度、三十四年度はほとんど変らない。それは若干の違いはあるでしょう。それなのに税の伸びが三十三年度は五分である、三十四年度は二割五分。これは私ばかりじゃございませんよ。国民が聞いたって、だれ一人これで承知するものはないと思う。もう少し国民が聞いてもなるほどと思う答弁をして下さい。それでなくては私は下るわけには参りません。勘案では工合が悪い。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 先ほど来事務当局から実際の取扱い方を詳しく説明いたしたので、実際の扱い方はどうだということは御理解がいただけたと思います。私どもは御指摘の通り税収入、これは国民負担の問題でありますし、非常に重大な問題でございます。従いまして、ただ単に勘だとか、あるいは一定の率をかけるとか、こういうわけのものではもちろんない。これは長い経験に基きまして、税収のあり方といいますか、実際の徴税の実情等から割り出して参ります。各税種についての税の見込み額をそれぞれ立てて参りまして、そうしてそれを計算した。これがただいまのものでございます。この点は、私特に何らか政治的な膨張でもさしたんじゃないかというように聞けるようなお尋ねでございますが、さような点は一切ございません。これはもう、いわゆる事務の練達の連中に実は作らしておるものでございます。これは私は十分信頼をいたしております。

井手以誠日本社会党

○井手委員 私はそれでは承知はいたしませんが、ほかにもっと重大な問題がありますので、あとでさらにお伺いをいたします。  私はこの三十四年度の予算に三つの大きな致命的な欠陥があると思う。その第一は、ただいま申しました二百八十億前後の歳入の欠陥、第二には三十五年度の財源がからっぽになっておる。それからもう一つの大きな問題は雇用の問題。経済企画庁の策定によりますると、雇用の伸びは、三十三年度には六十七万人、三十四年度には七十四万人の増加が見込まれておりますけれども、ことしは、三十三年度は今までの実績によりますと、十万人しか常用労務者は伸びていない、臨時、日雇いの方は下っておる。この点もあとで十分労働省と経済企画庁にはお尋ねをいたしますが、今から三十五年度の財源についてお伺いをいたしたいのであります。  これは予算の編成は、後年度を考えなくては編成できないわけであります。三十四年度は、先刻来申しますように、水増しされた傾向がある。一方歳出は全部投げ出してしまっておる。たな上げの資産も投げ出してしまっておる。そうなりますと、三十五年度の財源は何がある。この点は去る本会議において、与党の中村委員からも心配の質問があった。そのときに大蔵大臣は、ただ十分配慮をして、こういう答弁で終っておるわけです。そこで私は具体的にその見通しをお伺いしたいのであります。最近、大蔵大臣非常に勉強されておりますので、事務当局にお聞きになることもなかろうと思いますから、大臣から御答弁を願いたいと思う。  前年度剰余金というのは、大半は毎年の租税の増収によるものだと私は思っております。三十三年度はすでに補正の財源に九十億使っておる。しかもきのう問題になりました三十四年度の補正の財源二百五十億は、金の地金の再評価の差益によってまかなおうとされておる。からっぽだから私はそうされておると思う。おそらく三十三年度の剰余金は百億から二百億程度ではないかと思う。本年度は八百四億、その点はいかがでございますか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 三十五年度のことでございますので、ただいまから数字は十分はわかりません。しかしことし八百億の剰余金が、三十五年度において剰余金として計上されるものは相当大幅に減少するであろうということだけは考えられますが、ただいま言われますように、これは百億になるか二百億になるか三百億になるか、あるいは四百億になるか、そこらのところはただいまのところわかりません。

井手以誠日本社会党

○井手委員 事務当局にお尋ねいたしますが、三十三年度の自然増収の見込みは幾らですか。もう二月に入りましたから、大体わかっておるはずだと思います。結論だけ簡単に。

原純夫大蔵事務官(主税局長)

○原政府委員 非常に押し迫っておりますので、もう大体わかるはずのところでありますが、何分一兆という大きな数字の中でありますから、たとえば何十億という単位まで正確を期することはできないので、ごく大ざっぱに申しますが、まず百億ぐらいはあるのではないかと思います。見方によっては百四、五十億という見方もできます。その辺の何十億台のところはごかんべんを願いたいと思います。

井手以誠日本社会党

○井手委員 先刻聞いたときには実績をずいぶん強調されたけれども、今はぼかされた。しかし大体わかりました。三十三年度の増収見込みは百億から百四、五十億の程度だ。そうなりますと、ことしの八百四億に比べれば少くとも六百五、六十億の減になる。これは数字で明らかです。それから三十四年度にはたな上げ資金の二百二十一億というものがあるけれども、これが減る。減税の平年度化によって二百億減収になる。これを考えて参りますと、三十五年度の財源は三十四年度の財源に比べて一千億から一千百億の減になると私は思います。数字に若干の違いはあるけれども、大体こうなるであろうと思いますが、佐藤大蔵大臣はどう思いますか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 三十五年度の収入見込みはなかなかむずかしいといいますか、相当苦しいものであろうということはわかりますが、ただいま最初にお尋ねになりました剰余金の問題にいたしましても、一般会計で使い得る剰余金は、御指摘になりましたように、六百数十億減だ、こういうものではない。これは御了承いただきたい。なるほどその通り減って参ります。減って参りますが、公債の関係で必ずその半分は公債の方へ回って参ります。だから剰余金が少ければ、その半額が公債ということでございますので、必ずしも六百億全体が足らない、こういうわけでないということは御了承いただきたい。

井手以誠日本社会党

○井手委員 国債の償還は来年はうんとふえて参りますよ。はっきりした数字は言われないでしょうが、少くとも千億以上の歳入欠陥になることは事務当局の説明によっても明らかになりました。一方歳出の方はどうなるか。従来の実績によりますと、いわゆる義務的経費の増は大体七百億、これは御承認になると思う。これが六百五十億になるか八百億になるかはそのときによりましょう、人口増加その他ありましょうが、大体七百億前後。それに加えて来年は法律に基いて軍人恩給が七十五億ふえる、国民年金が平年度化して大体二百億ふえるでありましょう。それから国民健康保険の四カ年計画でありますか、そういった政策的な継続的な経費の増加。防衛費は現勢維持といたしましても、約束に基いてふえてくる経費というものは、義務的経費が七百億円、それに今いった継続的な経費の増が三百億から四百億に上るでしょう。そうなりますと、三十四年度よりも歳出は三十五年度におきましては千億以上ふえてくる。大体経済の伸びによって自然増をまかなうというのが従来のやり方。そうなりますと、一方において歳入に一千億以上の欠陥が出てくる。歳出においては三百億以上の増が出てくる。そうなりますと、ここに一千三百億円から五百億円程度の、新しい政策的な経費は加えなくても、一千数百億円の金が足らないようになってくる。これはだれが考えてもこうなるのだ。もちろん予算を編成するときには、後年度の見通しを立てなくては組めないはずです。歳入に一千億以上の欠陥があり、減ってくる。歳出は経済成長と当然増を相殺いたしました残った三百あるいは五百億のこの増に対して、大蔵大臣はどうしてこれをまかなおうとなさるのですか。まずその前に総理大臣もお聞きのことと思うのですが、三十四年度に一ぱい一ぱい金を出してしまって、そのために、今申し上げましたように一千数百億の歳入欠陥がある、これをどうまかなおうとお考えになっておりますか。特に総理大臣のお考えを願いたい、これは非常に大事な点です。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 後年度の財政計画の見通しを立てて、毎年の予算の編成に当らなければならぬということは言うを待ちません。今井手委員のお話のような数字的な根拠につきましては、それぞれ担当の大臣からお答えをすることにいたしますが、その点については十分に今度の予算を編成する場合におきましても、留意して立てたつもりでございます。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 お答えいたします。歳入欠陥についての数字は、井出さんの御議論そのまま私は了承はできませんが、三十五年度といたしまして、剰余金が非常に減って参るとか、あるいはたな上げ資金が今度はなくなるとか、こういう点で非常に歳入の面で苦しいだろう。同時にまた支出の面も平年化されるものがあり、その負担が相当大きくはないかということでございますが、私どもの見るところでは、ことしといいますか、三十三年度経済沈滞のときにおきましても、千億以上の自然増収を見積ることができた。今後の三十五年のことでございますから、どういうような金額になるかわかりませんが、やはり過去毎年見てきたような自然増収というものは一応考え得ることじゃないか。非常な激変があれば別であります。また同時に先ほども事務当局から説明いたしておりますように、好景気に参りますと、やはり税外収入は相当伸びるものでございます。こういうような自然増収の伸び並びに税外収入というものを基礎に勘案し、ことしの剰余金の減であるとか、あるいはただいま御指摘になりました、たな上げ資金の減だとか、一方支出の面における平年化される支出だとか、こういうようなものを勘案いたしまして、私どもは三十五年の収支は一応考え得るという考え方に実は立っておるのでございます。ただいま数字の問題が——予算のことでございますから、数字を申し上げるのが本筋だと思います。本筋には違いないと思いますが、何分にも三十五年のことでございます。それについての数字を今日申し上げますことは、いろいろの誤解を受けることになるだろうと思います。ただ大体の感じからは先ほど来申し上げますように、税の自然増収そのものについては、大よそ過去の実績等から皆様のうちにも御了承のいくものがあるだろう、かように考えます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 大蔵大臣の答弁の中に、非常に重大な問題があったのですが、税の増収というのは、見込まれるものは当初予算に組むべきであって、途中でいろいろ考えるべきものじゃないと思う。自然増収というものは最初から考えるべきものじゃない。経済の成長はことしは五・五%、長期経済計画によりますと六・五%、果してそこに達するかどうか非常に疑問なんです。税の増収というものは経済計画によって大体見当がつくものです。それは義務的経費の当然増に充てることは先刻来申し上げた通りです。  私は今まで数字をあげて歳入の欠陥、歳入の減と支出の増を申し上げました。私はこの際もう少し財政投融資の数字についても明らかにした上で、あらためて来年度、三十五年度どうされるかという根本問題をお尋ねしたいと思うのです。財政投融資の方においても同様でありまして、経済基盤強化資金五十億、産投の蓄積資金百三十三億、それに運用部蓄積資金が百六十五億、本年度の繰り越し百八十五億、あらいざらい全部使ってしまっておられる。その上に八百八十八億という民間資金、人の財布の中まで当てにされておる。そうしてあらいざらい全部投げ出して、いわゆるあなたのお好みにならぬ積極財政を組まれております。財政投融資も、これらを考えますと三十五年度は五百三十三億減るわけです。一般会計においては一千数百億の欠陥が生じ、財政投融資においても五百数十億円減ってくる。もう政府の財布の中はからっぽになっておる。私はこの点について総理大臣にもお聞きしたいと思うのです。私は数字をあげたから、一々何億とかあるいは十億程度の違いはありましょうけれども、これは政府の説明にもあったものですから大体のところは間違いはないと思う。総理大臣にお聞きしますが、三十四年度は幸い今まであった蓄積資金を全部投げ出すことができた。しかしそのために三十五年度の財源というものは全くないのです。一文もないとは申しませんけれども、新政策に盛られるようなものは全然出てこない。そういたしますと、どういうふうに三十四年度、五年度をお考えになっておりますか。あなたはもう長期政権担当を断念なさっておられますか。この秋はもうおやめになるつもりですか。こんな財政の見通しでどうですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、本年度の予算を編成する場合において、後年度の財政の状況等に対しましても大体の見通しを立ててやるべきことは、これは当然であります。本年度において御指摘のようにいろいろな財源を使っております。それは現在の日本が直面しておるこの経済状態から、将来の安定した経済の発展を作るために必要な経費としてわれわわれは計上しておるわけであります。根本はやはり経済が安定した基礎のもとに成長するということによって、その成長が各般におけるところの財政収入その他の金融上の協力とともに、協力して、そうして経済の発展と財政の基礎を作っていく根拠になるわけであります。この意味において、われわれは本年度においていろいろな財源につきましても、これをある程度使って、そうして経済の基盤を強化する、これによって将来の財政の基礎を作っていくということが最も大事であるという点に思いをいたして、われわれは本年度の予算を編成しているわけであります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 経済の基盤強化があればこそ経済は伸びていくのです。それがうまくいって六・五%、その六・五%というものは、人口の増加、あるいは教育費の増加その他の、いわゆる義務的経費に充てられるものです。三十五年度の財源はからっぽじゃございませんか。大蔵大臣ももうおわかりだろうと思うのですが、このからっぽの財源で三十五年度はどうしてまかなおうとなさるのか、あるいは売上税の創設をお考えになっておるのか、公債を発行なさるのか、あるいは借款を行おうとなさるのか、何か新しい構想によらなくては、普通の今までのやり方ではできませんよ。だれが考えても、どういう偉い大蔵大臣ができてもできませんよ。どういうお考えを持っておられますか。今も総理大臣は三十五年度、後年度の見通しを立てなくては翌年度の予算は編成できないとおっしゃった、この点どうでございますか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 三十五年度の一般会計については先ほど申し上げましたが、どうも数字を今日申し上げないので非常に納得がいかないということでございました。今度は財政投融資計画は一体どうなるのかということでございます。私は、今総理からも申しましたように、経済の成長というものには相当の期待をかけ得るものだと実は考えておるのでございます。今日の財政投融資の実情等から見まして、民間の協力が八百八十八億であります。これは三十三年度に比べれば飛躍的の増でございます。同時にまた手持ち資金の流用ということが、今回は不況の後を受けまして、政府出資なりあるいはその他の面に多分にたよった面もございます。しかし経済自身が景気を取り戻して参りますならば、こういう点もよほど変って参ると思います。私ども、基本的な考え方で、非常に数字的にまで割り出す状況のもとではございませんが、一応考えましたことは、一般会計の面においても、また財政投融資の面におきましても、いわゆる新たなる工夫をしなくとも、在来の構想でやはり三十五年度の需要をまかない得るのじゃないかというような考え方をいたしております。しかして、ただいま御指摘になりますような何か新しい構想はないか——ただいまのところ別に公債を発行する考え方もございませんし、新しい物品税を創設するとか、あるいは取引税を創設するとかいうような構想もただいまはまだ持っておりません。

井手以誠日本社会党

○井手委員 大蔵大臣は、数字は申し上げられないということでありますけれども、私が今まで三十五年度の見通しについて申し上げた数字は、政府の説明に出ておる数字ですよ。減税の平年度化あるいはたな上げ資産の問題、その他全部政府の資料によるものです。はっきりした数字じゃございませんか。はっきりした数字を積み上げれば、歳入に一千億以上の欠陥が生ずる、歳出はまた数百億円の増になってくる、はっきりしておるじゃございませんか。防衛費は現勢維持といたしましても、歳出は数百億円ふえる、義務的経費は経済の成長によってまかなう、こう考えて参りますと——私は抽象的なことで聞いておるわけじゃございません。政府の説明の数字があまりに心配であるから申し上げておるわけであります。数字によって御答弁を願いたい。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 千数百億の財源不足という見方につきましては、実は私どもは所見を異にいたしております。この点は剰余金の点で先ほどちょっと触れたわけでございますが、剰余金が八百億あれば、その半分は公債償還金に当然出てくる。そうすると四百億というものが一般財源になるわけでございますが、今回二百億なら二百億といたしますれば、これは当然そのうちの半分、百億は公債に回っていくということでございますので、その八百と二百を比べて六百という数字じゃなくて、四百と百を比べての三百という数字になるのでございます。こういう点が、きわめてはっきりしている数字の相違だと思いますが、あとの問題といたしましては、二百二十億なり、あるいは支出の平年度化というような点が、必ずしも言っておられる数字そのものではないだろうと思います。しかし私は三十五年の予算の編成が非常に豊富な歳入財源を持って、そして支出の方も非常に楽だ、かように申しておるわけではございません。この点は誤解のないように願いたいと思います。これはなかなか苦しいものではあると思います。思いますが、三十五年度の予算の編成についても一応の見通しを立てて、今回の予算を組んだものであるということを申し上げたいのであります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 大臣は私がいかにも財政の内容を知らないようなお話ですが、それじゃ国債費というものは、来年の見通しは幾らあるのですか。国債費は今年よりもふえて参りますよ。これはあなたの方から出された資料ではっきりしておるのです。それじゃどうなりますか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 国債費の償還は、御指摘の通りに剰余金の半分をもってやるということがきまっておるわけでございます。だからただいま申し上げるのはその説明でございます。大へん詳しくお調べになっていらっしゃるので、私が大へん失礼なことを申し上げたとすれば、その点を御了承いただきたいと思とますが、そういう意味ではございません。

井手以誠日本社会党

○井手委員 剰余金については先刻の主税局長の答弁で私は足りると思う。大体見当はついておるのです。百億から百数十億。そこで先刻言った減税の平年度化あるいはたな上げ資産の問題、そういった数字は変りはないはずですよ、私が申し上げようとあなたが答弁なさろうと。そういうことを考えてみると一千億円以上の歳入減ではないか。くどいようですけれどもこれは申し上げなければわからないんですが、一千億円以上の減だ。そこにはあなたのおっしゃることと私とで、剰余金と国債の関係で幾らか見方によって違いはあるでしょう。けれども一千億程度のものは減になっておる。歳出はふえてくる。今までの税収、税のあり方、税制、これじゃまかない切れないじゃありませんか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 千億という数字について、ただいま事務当局から資料を出してきたところを申し上げてみたいと思いますが、剰余金は大体二百億円程度の減になるだろう。と申しますのは、剰余金のうちから地方交付いたします金額を引いて、その残りを御承知のように国債償還に充てるという措置をとりますから、金額が多ければそういう財源も多いわけでございます。そういうことで差引——ただいま私は大まかに三百と申しましたが、実際には二百億程度じゃないかということでございます。それからたな上げ資金の一般財源の減が大体百七十億ということを見積っております。またこの減税につきましての問題でございますが、今回同時に御審議をいただいております特別措置の廃止、いわゆる半年度化というような問題もございますので、この点でもある程度の収入減といいますか、大体五十億程度は消えるというような見方をいたしております。それから歳出の面では年金が二百億、恩給は六十億、合計いたしまして……(「社会保険」と呼ぶ者あり)年金といいますのが社会保険です。(「国民年金」と呼ぶ者あり)その国民年金が今まで百十億、これが今度は三百億になりますので二百億。それから恩給が、軍人恩給が実は最後の年だと思います。これが六十億、その程度のものが今はっきり考えられる。しかし、その他におきましても、いろいろ御意見もあろうかと思いますが、今どうしても第一順位の緊急的な増加分あるいは減税分というものを考えますと、ただいま申すようなものが指摘されるのじゃないか、かように考えます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 ずいぶん内輪に申されましたが、私はここで最後まで一々検討しようとは考えておりませんが、ともかくも歳入の減は膨大な金額になる。歳出はふえている、財布はからっぽである、こういうことを考えますと、これはなかなか大へんです、三十五年度の予算編成というものは。一部では公債の発行があなたの与野党内でも唱えられておると思う。インベントリーの取りくずしということも考えられておる。どうも私どもの受けた印象では、三十五年度の予算は編成はなされぬではなかろうかという気がいたすのであります。しかも一方においては、財政投融資は、先刻申し上げましたように、五百億以上の減です。この点は来年の予算について言っていることではありませんけれども、もうあなたの方の予算に対する熱意がなくなったという点で、私はこの点は打ち切りたいと思う。  そこで、財政投融資でいま一つお伺いしておきたいのは、最近財政投融資を非常に重く見られておる。端的に申しますならば、義務的経費は一般会計でまかない、政策的なものは財政投融資による。しかも政策的なものが、財政投融資は多く大企業に利用されておるのでありますが、その大企業にたくさん利用される財政投融資に政策的な経費がどんどんいっておる。公共事業的性格を帯びておるものもどんどん財政投融資で行われておる。こういうあり方が総理大臣いいでしょうか。しかも、財政投融資は五千億をこえておるし、開発銀行や輸出入銀行の回収金による運用の金額を加えますと、八千億円に上上っておるのであります。一方は一兆四千億円の予算、その中からは地方にずいぶん流れていくでありましょう。府県や市町村に回されるでありましょう。その一般会計に一兆四千億円、一方においては八千億円、この八千億円というのは民間総資本形成の二兆円に対しては四割にも当る。こういう莫大な財政投融資、これは、なるほど法律にはないかもしれませんけれども、もっと国民の前にその運用が明らかにされるような仕組みが必要であると私は痛感いたしております。これは行政権である、どこの会社に十億出す、二十億出すということは勝手だというお考えがあるかもしれませんけれども、私はその考えはあまりほめたものではないと思う。その点についての総理大臣の所見を承わりたいのであります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 財政投融資に出した資金がどういうふうに使われるかということに対して、十分に政府の監督なりあるいは政府の一つの計画に基いて、これが公正に最も能率的に使われなければならぬことは言うを待たないのであります。十分にそういう点については留意していくつもりであります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 三十五年度の財源に非常に困っておられることは、これは事実です。この際私は一つ提案をしておきます。それは何かと申しますと、今度の国会にも提案されております租税特別措置法、これを私は思い切ってこの機会に廃止すべきだと思う。これは総理大臣にお聞きをいたしますが、租税特別措置法、この租税というもの、御承知の通り租税負担の公平、これはもう鉄則であります。租税負担の公正平、これに減免税の特別措置をやろうという場合は、これは戦時中であるとか、あるいは戦後の荒廃したときの、あの経済復興の時代、一定の期間だけにやるべきものだと私は考えるのであります。ところがどうでございます。もう戦後十三年になっております。その間には神武景気を経て参りました。そして今日また経済は政府の説明によると上昇しようとしておる。戦後ではないということはすでに三年前におっしゃっておる。私はこの租税特別措置法というものは廃止すべきだと思いますが、いかがでございます。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 租税特別措置法というものが臨時的なものであり、一つの例外的な措置であることは、井手委員のお話の通りであると思います。しかし、これが設けられておる各内容につきましては、それぞれ産業経済の見地から、あるいはいろいろな種類のものがございまして、それぞれの理由がつけられておる、またその理由があるものについてやっておるわけであります。しかし、傾向として、漸次こういうものが整理されていくことは、私は望ましいと思います。

井手以誠日本社会党

○井手委員 今日になりますと、租税特別措置法、この減免税が三十三年度は八百億円をこえておると思う。種目は三十になっておると思いますが、租税負担の公平という鉄則があるにもかかわらず、十何年も続いてきており、長期化しておる。業者にとっては既得権のようになっておる。大蔵省事務当局がやめようとすれば、各方面、財界、産業界あるいは一部の政党人から圧力が加わってきておる。こういうふうな負担公平の原則を乱すようなものは、私は思い切ってやむべきだと思う。今総理大臣がおっしゃるように、その必要があるならば、私はむしろ補助金であるとか、あるいは金利の安い財政投融資によって措置すべきが正しいと思う。減免税によって助長するということは私は間違いだと思うが、どうですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 そういうものに対して、たとえば生産性を向上するための合理化であるとか、あるいは近代的設備をするとか、あるいは新しい技術による新しい産業の助成であるとかいうようなものに対して、ある程度の国家的な助成なり保護を加えて、そうしてこれが振興をはかるということは、国家的に意義あることだと思います。しかして、それをどういう方法でやるかという問題につきましては、各種の産業の性質や、その事業のわれわれが奨励しようとしておる内容等によって、詳細に検討すべきものでありまして、一がいにことごとく特別措置法をやめて、これにかわるところの助成の方法をやるかどうかというようなことについては、検討しなければなりません点があると思います。ただ、税制の上におけるこういう取扱いは、あくまでも今井手委員の言われるように、なるべくそれを早く整理していくことが望ましいということだけは私も同感でありますから、そういう意味において整理するということは考えていかなければならぬ、こう思っております。

井手以誠日本社会党

○井手委員 御存じでもありましょうけれども、この租税特別措置法による恩典は、会社により、あるいは個人によって三重、四重、五車、六重の恩典を受けておる。同じ会社が、あるいは渇水準備金であるとか、あるいは貸し倒れ準備金であるとか、幾多の特例によって五重、六重の減税免税の恩典を受けておる。たとえば、これはよく話に出て参りますけれども、九州のある炭鉱主は、三カ年間に五億九千万円の所得税を納めなくてはならなかったのに、わずかに一億九千万円で済ましておる。これはお聞きでございましょう。ナイロンで有名な東洋レーヨン、これは五カ年間に六十億の減免税の恩典を受けておる。また東京電力株式会社などは、法人税において十二億円納めなくてはならぬのに、三億円で済んでおる。しかも今その会社の利益の状態はどうですか。そういう高額所得者は、毎年長者番付のベスト・テンに上っておるではありませんか。そんな高額の所得者にこういう八百億円にも上る租税特別措置法を残しておく必要がどこにございますか。あなたがおっしゃたように、新技術の導入とか、新産業の育成であるとか、あるいは経済基盤強化とか、そういう真に必要なものに対しては、財政投融資その他の方法をもってやるべきだと思う。必要なものはやらなくてはならぬとおっしゃいますけれども、戦後十三年にもなっておる。神武景気であれほどもうけた企業、これに残す必要はないと思う。思い切ってやめてはどうですか、重ねて私はお伺いいたします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 税制全体に関する税制調査会も設けるつもりでおりましたので、十分そういう問題につきましても根本的な検討を加えたいと思っております。

井手以誠日本社会党

○井手委員 せっかく委員長から御指名があったようでございますが、私が先刻来申し上げますように、租税負担の公平という鉄則、この点についてはやはり国民の納得を得るような態度を示してもらいたいと思うのりです。それでは一体いつまでこれを存置される見込みですか。いつ廃止される見込みですか。どういう経済の状態になったときに廃止されるのですか。今申し上げましたように、これほど企業ではもうかっておる、高額所得者がある。それにこれほどの減免税をやるという必要はどこにもないのですよ。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 この特別措置の問題につきましては、原則的な考え方といたしましては、先ほど総理から説明いたした通りでございます。私どもも機会あるごとに今日までも整理いたしておりました。しかしながら今御指摘になりますように、これをちょっと見ましても、三十一項目というか、三十一くらいございますが、全部を一時にやめる、こういうわけにもなかなかいかないと思います。また御指摘になりまして、利益を受けるのは大法人だというような言い方ばかりしておられますが、必ずしもそうでもない。今議論になりました貸し倒れ準備金なども、これはひとり大企業ばかりではない。中小企業も同様の恩典を受けておるものでございますし、あるいは輸出所得の控除等につきましても、これはやはり大企業ばかりではない。わが国の中小企業が輸出産業の面で大きな役割を果しておることを考えますと、これまた中小企業も恩典を受けておるのでございます。これはそれぞれそういう制度のものを設けた理由があるのでありまして、そのときの情勢が変化すれば、これまた変っていかなければならない。今お話しになりました東洋レーヨンのような場合にいたしましても、新技術を導入しておる、新しいものりをやっておる、その一定期間については時にめんどうは見ておりますが、これを恒久化する筋のものではない、こういうことがございますので、一がいにどうこうするということはなかなか申し上げかねます。今回の国会に際しましても、私ども二、三のものにつきましてその整理、合理化の案を出して御審議をいただいておるのでございます。そのうちの一、二を申し上げますと、輸出関係におきましてもそういうものがございます。輸出損失準備金、これは今回はやめることになるのではないかと思っております。またこういうものは期限が到来するというか、時限的な立法であります場合におきましては、その期限が到来した際にその処置をきめていきたい。利子所得の非課税及び税率の軽減の問題なども、そういう意味で今回はちょうど期限が到来をいたしますので、税の本則にはいきなりには返しませんけれども、中間的な措置としてこれも課税をするように、今日法律案を整備してお願いをいたしております。あるいはまたその他二、三の問題があるように思いますが、いずれそれらの問題は御審議をいただくとしても、基本的な考え方は、やはりこういうものにつきましては経済情勢の変化に応じて整理して、そうして国民の税負担の均衡を得せしめる、こういうところに特に重点を置いた措置をするように行政指導をしております。これはもう御指摘の通りでございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 新技術の導入であるとか新産業の育成、そういったものは財政投融資などによって私は十分にできると思うのです。なるほどそういうものも一時は必要があった。必要があったけれども、しかしその企業がうんともうかっておるならば、国民の零細な税金、血のにじむような税金、それでそれほどの優遇をする必要がどこにありますか。私はすみやかにこれを廃止されんことを強く要望しておきます。  次に、だいぶ時間も迫って参りましたので、雇用問題に移りたいと思いますが、この雇用対策は総理大臣の施政方針演説にも強調されております。またこの予算の説明書にも掲げられております。予算編成の項目にも、目的として国民生活の安定と雇用の安定を強調されておる。ところが私はいろいろ検討して参りますと、雇用については今日重大な危機に陥っていると思う。私はお尋ねする前にお聞きしたいのは、企画庁でもけっこうですし、労働省でもけっこうですが、本年度の雇用の増加と来年度の見通しをこの際承わっておきたい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 今年度の計画では雇用量の増を六十万と見ております。来年度は七十四万増、こういうことを見込んでおります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 今労働大臣から来年度は七十四万の伸びと説明なさった。三十三年度は六十七万ですが、間違いございませんか。これは非常に重要な点ですが間違いないですか、ふえておりますか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 本年度は六十七万であります。失礼いたしました。三十四年度は七十四万増、こういう計画であります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 私はここに表を持って参っておりますが、倉石さん、これは労働省の発表でございます。私はこれに基いて今からお尋ねいたします。これによりますと、三十三年度の雇用は伸びておりません。今各官庁にありますこの雇用関係の調査で一番確度の高いもの、それはあなたの方の労働省の毎月の勤労統計です。これによりますと、昨年の四月から十一月までにふえた常用雇用者は三十人以上でわずかに五万七千人です。三十人未満の事業所では五万八千人、合せて十一万五千人しかふえておりません。十二月から三月までを加えますと、大体十四万程度ではないかと私は考える。あなたがおっしゃる六十七万はどこにふえておりますか。しかも雇用者の中に含まれておる日雇いは、昭和二十九年よりもずっと落ちておるではありませんか。昭和三十年に比べますとわずかに六六%と、これにちゃんと書いてある。この常用雇用者とさらに日雇いを総計いたしますと、三十三年度における雇用の伸びというものはほとんど見込まれません。これはあなたの方の統計ですから……。六十七万とおっしゃったことは私は信用できませんが、どうですか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 おっしゃるように、労働力調査の雇用者が増加していない、それは御承知のように、労働省がやっております毎勤のただいま御指摘の三十二年四月から十一月まで、それから三十三年の同期、これはその通りであります。そこで井出さんもよく御存じのように、労働力調査と私の方でやっております毎勤の統計調査とは調査対象が異なっておるのでございまして、両者をただ単純に比較いたしますことは数字的に妥当ではないと私どもは存じます。それは今あなたもおっしゃいましたように、毎勤の統計というものは、いろいろ限られた業種がございまして、その業種に従事いたしておる者の統計をとったものが毎勤の統計で、そこに表われておるものでございまして、労働力調査はそこに出て参りません五人未満も入っております。それからそういう毎勤統計に入れてないものもすべて大体生産年令人口等から考えまして、従来通りの方法で内閣で統計をとっております。従って三十三年の四月——十一月平均の毎勤の数字を合算したものは、労働力調査から出てくる雇用量の増というものとは数字が合わないことになるわけであります。さように御了承願いたいと思います。

井手以誠日本社会党

○井手委員 お話のように総理府の調査とあなたの方の毎勤調査とは数字が合わない。しかし労働大臣、自分の方の調査はあまり信用ならぬ、総理府の方が正しいのだとは言えたはずはございません。しかもこの毎勤調査は、三十人以上の場合は各工場について大体詳細に調査されておる。ところが一方総理府の統計によりますと、千三百五十世帯のうちのたった一世帯しか調査していない。千三百五十分の一の調査をもって全体を推定されておるわけでありますから、その意味においてはあなたの方の毎勤調査がずっと確度が高い。その確度の高いあなたの方の調査によれば、雇用者はほとんどふえておりません。どこに六十七万人が出て参りますか。七十四万人という来年度の見通しがございますか。これは狂いますと、経済計画は根本から破綻しなければなりません。また同時に税収においても重大な影響がある。財政上に大きな影響がある。もう少しはっきりしてもらいたい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 御承知のようにただいま井出さんがおとりになりました三十三年の四月——十一月の平均の毎勤は、鉱業、建設業、製造業、卸売小売業、金融保険業、運輸通信業、電気ガス水道、そういうものをとりましたので、そういう基本的な産業の従業員に対する、事業に対する勤労統計をとっておるのでありまして、従って全体の労働力人口のうちで就業人員がどうなるかという統計とは数字が違って参る、こういうことを私は申し上げておるのでありまして、私の方の毎勤のただいま読み上げましたような業種のうちの就業状況というものは、私どもはただいま研究しておるデータによりますと間違っておるとは思いません。従ってまた総理府の統計は、今御指摘のように決して完全な統計資料の出方とは申されません。一定の限られた家庭をピック・アップしてその状況を調査いたして、それを拡大して計算いたししておるのでありますから、数字がぴったり合うか合わないかということは、実情に即してもっと理想的なものを作るということが理想でございます。だんだんそういうふうには振り向けてはおりますけれども……。毎勤の統計と総理府の労働力人口から割り出して来年度の経済見通しを加味して実質五・五という工業力の伸びに計算いたしまして、労働力人口から就業人口は大体七十四万人程度は増加が見込まれるもの、こういうふうに検討いたしておるわけでございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 それでは端的にお尋ねいたしますが、三十三年度の六十七万人、これの具体的な基礎をおっしゃって下さい。確かに六十七万人ふえてる、三十四年度は七十四が人ふえるというその基礎をおっしゃって下さい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 長期経済計画はもちろんのことでございますが、来年の経済計画、それの運営方法というものにつきましては、経済企画庁が発表いたしておるものにわれわれは準拠いたしておるわけでありますが、今年は御承知のように昭和三十三年度予算編成に当りまして、ああいう経済状態のもとにおいて大体完全失業者というものが六十万人見込める、それが御承知のように私の方の統計、それから安定所の窓口等を通じて調査いたしましたものは平均五十四万人ないし五十七万人というところでとどまっておりましたことは御承知の通りであります。ただし失業保険の受給者が八月以来ずっとふえておる。これは御承知のようにいわゆる経済調整というふうな手段がとられまして、それが現実に六カ月ないし八、九カ月のずれを持って、失業という面に正直に現われて参りました。ところが現在の経済状況は御承知の通り、そうしてこれに基いて明年度の計画は、今申し上げましたように産業の伸びを実質五・五%と見ることによって、大体昨年度の完全失業者程度のもので済むではないかという基礎は、従来昨年度三十三年度予算の編成のときに経済企画庁がとりましたと同じ方法で私どもは計算をいたして完全失業者は六十六万人と見る、しかしながら本年三月は新規学卒で就業希望者は大体十五万人くらいふえる見込みであります。進学も昨年よりはやや景気がよくなったと見えて上級学校への進学者もふえましたが、なお就業希望者がそれだけふえておる。そこで三十四年度予算におきましては、一般経済政策は先ほど申し上げた通りでありますが、そのほかに先ほど来お話がありますような財政投融資それから公共事業費、そういうものの拡大されたことによりまして、私どもは建設、大蔵その他事務当局でも調査検討いたしました結果、大体二十万前後の雇用量の増は見込まれる、こういうふうに考えておる次第であります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 あなたは大体このくらいふえたであろう、ふえるであろうという見通しをおっしゃった。ところがあなたの方の職業安定所の窓口を通じて一番信用できる数字によりますと、毎月の就職者よりも離職者の方がふえておるのです。これは統計にはっきり出ておる。しかも最近一年間の離職者は百十一万人、これは常用雇用者です。かりに新卒百万人あるいは九十万人の就職がありましても、一年あるいは二年以内には三割以上の離職があると言われておる。これは統計に現われております。そういうものを含めて最近一カ年に百十一万人の常用雇用者が離職しておる。しかも日雇いにおいては百七十万人、だから一応学卒の場合には数字が合うといたしましても、離職者がどんどんふえていっておることは、結果において雇用者がふえていないということになる。この離職者と就職者の関係はどうお思になりますか。これはただ簡単にまあなんとか言えば答弁が勤まるだろうということではいけません、雇用というのは重要ですから……。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 しばしば私が別の席で申し上げておりますように、どの政府が経済政策をうまくおやりになって、それが成功しても、やはり厚生白書で申しておりますように、現在の日本の人口構造というものは、昭和十九年ないし二十一年ごろの妊娠率、それに伴う人口増加で、昭和四十年ごろにはいわゆる労働力人口、生産年令人口というものがピークに達する、こういわれておる通りでありまして、ただいまその過程にあるのでありますから、もちろん雇用、失業の問題は、お説のようにわれわれも深く戒心をして努力しなければならぬことは当然でございまして、頭の痛い問題であることは間違いありません。ただそこで今のお話でございますが、御承知のようにいわゆる経済調整過程において出てきました失職者というものは、統計にも出ておりますように割合に臨時日雇いに多いのでございまして、一般常用雇用の方ではやや一時下りました。けれども、昨年の十一月末から十二月ころにかけては、そういうことで労働市場にはき出される失業者というものは横ばいになって参りましたことも御承知の通りであります。決して楽観はいたしておりませんが、私は、今の経済政策でやって参りまして、これ以上そういう点が悪化して参るとは考えておらないわけであります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 悪化して参ることはないとおっしゃいますけれども、あなたの方の雇用審議会では、改善の見込みはないと答申されているんですよ。私はここで数字をあげてあなたと論議はいたしません、時間がありませんからいたしませんが、いずれにしても三十三年度に雇用はふえておりません。来年度になりますと、これは通産大臣の関係でありますけれども、老朽炭鉱をまた百万トン買い上げになるそうであります。なお残っておる九十五万トンと、さらに百万トン買い上げますと一万二千人の失業者ができる、あるいは繊維工業において、あるいは駐留軍の労務者において三十四年度も失業というものは一つも改善されない、むしろ悪化すると私は思う。今日は労働組合の抵抗なり、あるいはいろいろな都合から、首切りが割合に少く行われております。その関係から、経済が若干伸んで参りましても、新たに雇用ということは起って参りません。操短がまた復活する程度のものであります。  そこで、時間がありませんから、私はこの際総理大臣に最後に雇用問題でお伺いをいたしたいと思います。ただいま労働大臣の説明にもありましたように、生産年令人口の増加、これは昭和三十七年度には百九十万人ふえて参るのであります。厚生白書にも、あるいは生活白書にも書いてありますように、昭和四十年のころには重大な雇用上の危機が来ると訴えておるのであります。なるほど学校を卒業した者は九割程度は就職はできるでありましょうけれども、その就職は、大企業よりも中小企業、零細企業に、あるいは製造業よりもサービス業の方に、条件はだんだん悪い方に落ちていっている。その上に離職者が相次いで起っている。この統計にもありますように、雇用増加を上回っているのです。数字では六十七万人ことしはふえる。来年は七十四万人ふえるといっておりますが、実際はふえておりません。ふえておりませんとは答弁できませんでしょうから、私はこれ以上追及いたしませんけれども、実際はふえておりません。来年もふえる見込みはございません。昭和二十七年に企画庁が——当時官庁の名前は違っておったかもしれませんが、今の企画庁が調査したところによりますと、不完全就業者は六百八十一万人、いわゆる潜在失業といわれるのが六百八十一万人に上っておる。今日いろいろな調査を見ましても、大体四百万人以上の者が毎日職を求めておるのであります。これは職業安定所の窓口を通じて、あるいは縁故を通じて、各方面の調査によりますと、四百万人をこえておる。しかも毎年、雇用量はふえてないのに、雇用の需要はふえてないのに、百万人前後の卒業生が社会に出てくる。雇用問題は重大な問題だ。この雇用の安定、完全雇用こそ政治の最後の目的だと私は思う。ところが、遺憾ながら総理府の調査は、千三百五十世帯に対して一世帯を調査して、あとは推定をされておる。労働省の調査と総理府の調査と格段の開きがある。私は、雇用問題はむずかしい問題である、しかし、これほどの重要な問題について目をおおうてはならぬと思う。  私は今日は低所得者対策も聞こうと思いましたが、時間がありませんので、これは後日に譲りますけれども、最近低所得者層が非常にふえてきておる。その低所得者層の生活の実態と雇用の実態というものを大きな調査機関を設けてこの際精密な調査を行う必要があると考えておるのであります。その調査に基いて政策を立てていく。今は不完全な調査——答弁の都合のいいような調査をあるいは昨日来作られておるかもしれませんが、この重大な雇用問題については、私は所得調査もあわせて大きな調査機関を設ける必要があると思いますが、いかがでございますか。雇用政策について根本の総理の所見を承わっておきたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 雇用の問題の重要性については、井手委員の御所見の通りに私も考えます。われわれが長期の経済計画を立てておる目標も、この増加していく労働人口をいかにして吸収し、究極のいわゆる完全雇用の目的を達するのには、どういうふうに日本の経済を成長し、拡大していくべきかということを根本に置いて検討され、立てられておることも御承知の通りであります。本年度の予算を編成するに当りましても、いろいろな予算の内容等についても御議論もあろうと思いますが、私の頭においてはこの雇用問題ということを非常に重要に考えまして、先ほど来あるいは本年度の予算はあまりに過大でないか、過熱論も起っておるようでありますが、そういう御議論もありましたけれども、日本の労働人口の増加を考えてみると、これに対して就職の機会を与えていくということは、最も大きな政策として考えなければならぬ問題であると思いますので、こういう程度の公共事業や、あるいは財政投融資の拡大が必要であると考えたわけであります。  さらにもう一つ考えなければならぬことは、今おあげになりましたように、日本における雇用問題においては、形式的には雇用されておるというものの、雇用の条件といいますか実際の雇用状態を見ますると、それが十分に望ましい状態でないというようなことも頭に置いて考えなければならぬ。すなわち、雇用条件をよくしていくこともあわせて考えなければならない実情にあると思います。従って、こういう問題に関して、井手委員は、さらに根本的な検討をするために大調査会でも作って、一雇用対策についての基本政策を樹立する必要があるという御議論でありますが、もちろんこの問題はそういう重要性を持っておりますので、関係各省におきましても、特にその点については実情を把握し、これに対して万遺憾なきを期するように、従来も努力しておるのであります。しかし、これがなお改善を要する点もございますので、今直ちに調査会を設けるという具体的のことについては、私は意見を申し上げることは差し控えますけれども、御趣旨につきましては私は全然同感でありますから、十分にこの問題の重要性と将来に対する対策については政府として検討を加え、また適当な施策を立てていくように努力する覚悟でおります。

井手以誠日本社会党

○井手委員 御答弁には不満がありますけれども、時間がありませんから、最後に一点、海運のことについてお伺いをいたしたいのであります。  大蔵大臣にお伺いをいたしますが、十五次造船について開銀の利子を一分五厘引き下げになるという相談があったそうであります。あれは問題の多い開銀融資でございますし、しかも従来のいきさつがありますので、おそらくそういうことはなさるまいと私は信じておりますけれども、六分五厘を五分に引き下げる問題、そして十八億の利益を海運界に与えるという問題、それは私は業界なり運輸大臣の要求には応ぜられないと考えておりますがいかがでございますか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 結論だけ申し上げますが、さような処置をとっておりません。

井手以誠日本社会党

○井手委員 今後そういう意思はございませんか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○佐藤国務大臣 私自身はそういうことを考えておりません。

井手以誠日本社会党

○井手委員 運輸大臣にお伺いをいたします。よく世間では政治造船だといわれております計画造船、私はこの計画造船は根本から立て直す必要があると考えておるのであります。結論を申しますと、この計画造船は一応ストップして、海運界をほんとうに健全に立て直す必要があると私は考えております。今償却不足というものは五百三十七億、借金は二千億をこえておると私は聞いております。時間がありませんから質疑応答をなるべくしないようにいたしますが、ほとんど政府の財政投融資に依存した計画造船、作れば海運界の不況から係船が起っておる。最近の統計によりますと、総理大臣もお聞きおき願いたいと思いますが、三十一隻、十九万トンの係船があるし、今後明るい見通しはないと私は承わっておりますし、新聞でも報道されておる。海運界はもう身動きならぬようになっておる。全世界では一千万トンに近い係船があると私は聞いております。海運界、海運会社が身動きできないこの状態、一つ計画造船をここでストップして根本的に立て直す——もちろん私も造船の必見なこと、新船建造の必要なことは、外貨獲得の上から認めておりますが、今の状態では、借金して船を作ってはつながなくちゃならぬ。それがまたいろいろな問題に発展をしてくる。この際一時中止なさる気持はありませんか。  同時にまたお伺いしたいのは、運輸大臣が非常に熱心だと聞いております利子補給、この利子補給については、前の中村運輸大臣は、あれは絶対やりません、首にかけてもやりませんと私にかって言明をされておるのであります。ここに私は速記録を持っておりますが、あれは休火山ではないか、また利子補給をやる考えはないかと聞きましたら、いや絶対にやりません、死火山でございます、利子補給法という悪法は死んでおる、絶対に生きることはございませんと言明なさった。岸内閣の国務大臣の言明であります。永野運輸大臣の答弁を求めます。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野国務大臣 日本の海運界は、戦争によりまして八百八十万トンという船を失いまして、終戦直後には全く壊滅状態であったのでありますけれども、その後非常に順調な回復をいたしまして、今日では四百五十万総トンにまで達したのであります。しかし、日本の経済全体の伸びが、船の伸びよりはピッチが早いために、日本の船舶の運搬量では足りませんので、外国の船の輸送力にたよりました結果、三十二年度には二億六千万ドルの支払い超過になっておるのであります。戦争前貿易の赤字を運賃収入で補った時代と比べてみますると、非常な差が起っておるのでございます。そこで、少くも日本の産業に必要とする物資の運搬は、日本の船舶で運びたいということを大きな目標といたしておるのであります。それによりますと、将来の経済の伸びを考えますと、昭和三十七年までにあと二百万トンくらいの船腹が要るのであります。つまり運賃の残をとんとんにまでするためには、その程度の船腹が必要なのであります。なおその上に、日本人の得意といたしまする航海によって輸出入貿易残に貢献して参りました第三国間の輸送も、これから日本人としては考えていかなければならぬのでありますけれども、これが他の海運国に比べてみますると、非常に微々たるものでありまして、昨年度はわずかに七千二百万ドルの収入をあげたにすぎないのでございます。従いまして、この日本の産業のために必要とする物資を日本船で運ぶということを目標といたしますると、どうしても年に四、五十万トンの船を作っていかなければならないのであります。これは目先の景気、不景気にかかわらず、どうしてもやっていかなければならぬと考えておるのであります。従いまして、昭和二十三年度の十四次造船におきましては財政投融資を百九十億出していただきまして、二十五万トン作ったのでありますが、その目的に沿いまして、三十四年度、いわゆる十五次造船において、百八十億の財政投融資の資金を出していただいて、まず十九万五千トンくらいの船は最小限度作っていきたいと思います。その船腹増強の方策を持続していきたいと考えております。しかし、日本の海運業の自立をはかりますためには、いたずらに船腹の増強をはかったばかりではいけないのでありまして、海運業自体の実質の基盤強化をはからなければなりません。そのためには、昨年来業者に訴えまして、あるいは人件費の節約とか、あるいは営業の不当な過当競争をやらないようにするとか、いろいろな方策を立てて、業者に求めましたし、業者もそれに応じて相当の実績を示した案を現在実行しておるのであります。なお、そのほかに、業者の内部のそういう自粛自戒のほかに、業者同士の間の競争、必要以上の低運賃で物を運ぶというような過激な競争をなくいたしますために、地域別あるいは商品別の一種のカルテルをやりまして、不必要な損失をこうむらなくてもいいような方策によりまして、御指摘のような海運業者の基盤の確立を今せっかく検討中でございます。

井手以誠日本社会党

○井手委員 聞いておりますと、どうも業界の代表のようなお考えのようですが、政府の特別の融資があり、その政府の財政資金によってどんどん船を作っていく、作った船は荷がなくて港につないでおる。にっちもさっちもいかないような今日、海運界の自粛は各方面が強く要求されておるところである。スエズ動乱のときにはうんともうかり成金になる、ちょっと困ってくると政府に頼み、利子補給を要求する、私はそういう海運界の実情であってはならぬと思う。ほんとうに必要ならむしろ国が海運事業をやるべきだろう。海運界を甘やかしてはなりません。最近でもフィリピンの問題がいろいろ出て、新聞をにぎわしておるようでありますが、この海運界を根本的に立ち直らせるためには、一応計画造船はストップして、そしてほんとうに業界に真剣に立ち直る努力を私はさすべきだと考えております。私はもうこれ以上申し上げません。この点についは、海運には百五十億円を上回るような焦げつきのなにがあるということも開いております。しかし私は時間がありませんからもう聞きませんけれども、どうも永野さん、あなたのおやりになっておることは、業者の方ばかり向いておられるようです。見てごらんなさい、志免炭鉱の払い下げ、私鉄やバスの運賃値上げ、この運賃値上げによってせっかくの減税が台なしになってしまいます。造船の利子補給はお答えにならなかったが、大蔵大臣はさすがに良心があって、造船の利子補給をおやりにならぬそうであります。私は安心しました。あなたのやっておられること、なさっておられることは全部業者向けである。国民向きではない。業者にあなたの顔は向っておる。私は、この点について特に永野運輸大臣の反省を促しまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)

楢橋渡自由民主党

○楢橋委員長 午後二時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議

楢橋渡自由民主党

○楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島上善五郎君。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 私は、日本社会党を代表して、提案されております本年度予算案に関連して若干の質問をいたそうとするものであります。  質問に入ります前に、一つ御要望申し上げておきたいのですが、それは、今までの御答弁の中には、とかく言葉巧みにその場をのがれさえすればよいというような答弁があったのです。私はたまたまそういうことを考えておりましたが、きのうのある大新聞にも同じようなことを言っております。言葉の裏づけ、実行の裏づけのある答弁でなければ意味がないというような批判があります。総理大臣に対して、受け取りようによっては失礼かと思われるこのようなことをあえて申しますのは今言ったようにその場を言いのがれさえすればいいということではなしに、あとになって責任の負える、真実のこもった実行性のある御答弁をお願いしたいからであります。  そこで御質問に入りますが、一昨日防衛庁長官が、昨日岸総理大臣が、それぞれアメリカから来日中のドレーパー対外軍事援助計画調査委員会委員長と会談をしております。私はその話の内容をお伺いしたいのでありますが、その前に一つ聞いておかなければなりませんことは、日本は、一方においてはこのように今後相当長期にわたる軍事援助をしきりに懇請しておるかと思うと、一方では今まで援助を受けた飛行機を使わずにおいて返すというような事態が起っております。これは一体どういうわけであるか。援助をと要請するときには一定の計画があってしているに違いないと思う。その計画を途中で変更したのか、それとも何の計画もなしに、でたらめに借りた結果そういうことになったのか、私はどうも了解に苦しむのです。なぜに一体援助を受けた飛行機を使わずにおいて、それも相当長期にわたって使わずにおいて返すというような事態になったのか、これをまず伺いたい。

伊能繁次郎自由民主党防衛庁長官

○伊能国務大臣 お答え申し上げます。ただいまお尋ねの件につきましては、御承知のようにF86Fのジェット戦闘機につきましては、昭和三十年から日本とアメリカにおいて日本で生産をするという協定をいろいろ取り結んでおりましたが、その間に第一次、第二次、第三次と生産協定をいたしまして、日本で作ることに決定しておりました。しかしながら、御承知のように現在の日本の国力では、アメリカの生産に関する援助を得ましても、将来の日本の防衛上から、日本周辺の防衛について十分な機の生産をすることがとうていできません。従いまして、これと並行して、生産協定を締結した後においても、その足らざるうちをある程度米国から直接軍事援助によりまして当該のF86Fをいただいておったわけであります。先般新聞に出ました四十五機は、昭和三十二年の四、五、六と三カ月にわたりまして、最後に日本が軍事援助によってもらったものでありましたが、たまたまその間において、御承知のようにジェットの乗員養成というものにつきましては非常に技術的な問題がありまして、当方の計画等に、何と申しますか、アメリカからもらいましたもの、また生産との間に、乗員養成の点がおくれた関係上、四十五機ほどが使われずにおりました。ところがたまたまアメリカにおきましては、昨年の初めから、使わないものであれば、さしあたり要らなければ返してもらった方がよかろう、またアメリカにおいても、御承知のように今般ドレーパー・ミッションが参りましたように、アメリカ国会におきましても、アメリカの各関係各国に対する軍事援助並びに経済援助の問題につきましては、いろいろ論議が戦わされておりましたので、そういう関係上、さしあたり乗員養成その他の関係上、またジェット飛行機につきましては飛行場等の整備も必要でございますので、それらの点から返してもらいたいという話もございまして、当方においても、昨年当初からその問題についていろいろと折衝いたしておりました。そしてさらに四十五機の問題について、将来お返ししたあとにおいて、さらに性能のいい飛行機等についても十分援助をしてもらいたいという話のもとに、具体化いたしましたのは、昨年の秋にアメリカから使節が参りまして、その人との話し合いによって、昨年末政府においてこれを返還することを決定いたして、目下アメリカ側に着々返しておる、さような状況でございます。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 ただいまの御答弁を伺いますると、乗員の養成、飛行場の整備等の関係で、借りるには借りたが使えない状態であった。こういうふうに私受け取ったわけですが、借りる際には、あらかじめその年度の計画というものがあって——その年度どころではない、かなり長期にわたる計画というものがあって、その計画に基いて借りたのではないかと思う。借りて飛行機がきてから乗員を養成する、そんなどろぼうをつかまえてなわをなうようなことで一体何ができますか。最近の飛行機の乗員を養成するには相当長期の訓練が必要である。相当多額の経費をかけなければならぬということを聞いておりまするが、飛行機は借りた、乗員がいなかった、飛行場がなかった。こういうようなことでは、あまりにもずさんなでたらめな計画であると言わざるを得ない。これは何といっても国民にそういう感じを与えるという程度のものではなくて、計画のずさんでたらめであったということを率直に防衛庁は認めなければならぬと思う。それをいろいろと言葉を遠回しに言い回してごまかそうとしないで、その点をはっきりと一つお認めになるかどうか。少くともそういうことが計画の上にあったのか、それとも計画外に思いつきで借りた結果、援助を受けた結果、こういうことになったのか。そういう点をもっと明白にしませんと、国民は納得しないと思うのです。

伊能繁次郎自由民主党防衛庁長官

○伊能国務大臣 ただいま御指摘の点でありますが、借りたものではありませんで、日米間における相互防衛援助協定に基きましてもらった四十五機でありますが、条約の内容につきましても、たまたまもらった場合でも、過去においても同様な事例が他の場合にもないとは申しませんのですが、お互いに、当面必要がなかったとか、あるいは米国側の方に必要を生じたような場合には、双方から通告をして返すというような要求もできるという条約等の協定になっておりますので、今御指摘のように、当面乗員養成上、当初の計画からややおくれの出ましたことは事実でございますが、御承知のようにジェット機の乗員養成というものは非常に長い期間かかりますし、また乗員獲成したものでありましても、その適性の関係から、これから除外しなければならぬというような、普通のレシプロの飛行機とは違いまして、本人の適性の問題等、いろいろ乗員養成の計画の上からもございますので、若干養成の点でおくれたということについては、私どもも率直に認めざるを得ませんが、さような事情で、他の新しい機種を将来とも供与について考慮するということで返還をすることにいたした次第でございます。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 もらったものであるにしましても、一定の計画があって必要だからこそもらったんだと思います。将来要るかもしれぬというような、そういうことでもらったはずではないと思います。昭和三十二年度にもらうのだったならば、昭和三十二年度の防衛計画というものがあって、その計画の上に立って必要だからこそもらったんだと思う。昭和三十二年度の計画の上に立って、必要であってもらったのか、そういう点と無関係に、もらっておけば将来いつかは何かの役に立つだろうというようなことでもらったのか、その点はっきりしてもらいたい。

伊能繁次郎自由民主党防衛庁長官

○伊能国務大臣 もちろん計画上必要がありまして供与を受けたものでございますが、ただいま申し上げたような人員養成等、ジェットの専門的なパイロットを養成する都合が若干おくれたという事情から返すことになったのであります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 そういたしますと、計画上必要があってもらったものであるならば、計画を途中で変更した、こういうことになるのではありませんか。計画上必要があってもらったものが、使えなくなった、返すというような事態になったということは、当初立てた計画を途中から変更した、こういうことになるのではありませんか。

伊能繁次郎自由民主党防衛庁長官

○伊能国務大臣 御承知のように、現在千機近い飛行機をもって国内の防衛に当っておりますので、計画の変更という程度には至りません少数の機種でありますから、人員養成上若干の手おくれが出ておりまするので、将来のさらに新しい機種についても供与を約束されるという条件で返還をいたした次第でございます。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 かりに千機の中の四十五機といえども、この飛行機を実際に動かすには相当の人員が必要であり、その人員を養成するには長期の時間と金がかかるのです。これだけのものを使用しないということになれば、私は計画の変更だと思うのです。そうでないとするならば、ずいぶんずさんな、いいかげんな計画といわざるを得ないと思うのです。私はこれから伺いますけれども、今後軍事援助を引き続き要請しておるようでありますが、こういうようなずさんなことでは話がうまく行く道理はないし、私は要りもしないようなものはもらわぬ方がいいと思う。たといただでくれるといっても、もらえばしまっておかなければなりませんし、それだけでも相当手数や経費がかかると思う。そこらへおっぽり出しておくわけにはいきません。こういうような今度のずさんな計画を考えますと、今後の軍事援助の話がなかなかうまくいかぬではないかという問題が起ってくると思います。私は、これは何と弁解しても、あまりにもずさんな計画であった、でたらめ計画であったということを言わざるを得ないと思います。  そこで私は、先般防衛庁長官が三日に、岸総理大臣が四日に、ドレーパー調査団長に相当長時間にわたって会って、長期にわたる軍事援助を要請しておるようでありますが、その要請した会談の内容を、この際総理大臣から明白にしていただきたいと思うのです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 私とドレーパーとの話の内容は、新聞等に報道されておりますように、アメリカにおける軍事援助に対する政府並びに国会等の意向を受けて、日本初め軍事援助をしておる各国の状況視察にドレーパー氏及びその一打が来たわけでありまして、そういうことに関するアメリカ側の意向の大要というものを私に説明されました。私は、過去においてアメリカのいろいろな軍事援助によって日本が防衛力を漸増してきた、その間におけるアメリカの貢献に対して謝意を表するとともに、日本としては、すでにきまっておる国防計画によって国費及び国力に応じてこれを漸増する方針のもとに着々やっておるわけであるけれども、何分にも日本の経済力や産業の実情からいうと、アメリカにおける軍事援助、従来日本に与えておったところの軍事援助というものを急激に削減もしくは変更されることは、非常に日本としては困る立場にあるという事情を説明して、十分に日本側の状況を正当に理解してもらって、将来ともアメリカ側において適当な援助を続けてもらいたい、こういうことを要請したのが会談の内容でございます。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 防衛庁長官は、新聞の報ずるところによりますと、かなり具体的に日本の軍事援助の要請をしておるようであります。その内容をこの際はっきりお伺いいたしたいのです。

伊能繁次郎自由民主党防衛庁長官

○伊能国務大臣 お答え申し上げます。すでに御承知かと存じますが、ただいま総理のお話のように、ドレーパー・ミッションは、東洋並びにヨーロッパにおけるアメリカと軍事援助もしくは経済援助の関係にある諸国の軍事援助の実情並びに経済援助の実情を調査されて、その結果を大統領に報告をするという使命を持った委員会でございますので、特にわが国の防衛の実情、ことにアメリカの軍事援助もしくはそされに関係した各種の援助によりまして、今日の日本の防衛力を築き上げて参った経緯、並びに将来われわれとしてどういう方向に日本の防衛をアメリカと共同して進めていきたいかという一般的なお話を申し上げ、また格関係当局から、それぞれ陸、海、空に関する防衛の現状を報告をし、将来に対する希望を申し述べたわけでございます。そうして私としては、今回のドレーパー・ミッションが——御承知のように、アメリカ国合本において、軍事援助並びに経済援助が非常に米国国民の負担になっておるので、逐次漸減をしなければならぬというような声もあるやに伺っておりますので、日本の防衛の現在の特殊な事情と同時に、わが国の国力が、独力ではとうていなお防衛する力を持たないということで、ここ当分の間は従来通り軍事援助並びにこれに関連した各級の援助を御継続が願いたいことを、ぜひ大統領に報告の際に御進達をいただきたい。かたがた先年アイゼンハワー大統領、岸総理大臣の共同声明によりまして、当面一応陸兵力につきましては、アメリカが撤退をして、日本がこれにかわって陸上防衛をいたしておる実情は御承知かと存じますが、さらに海、空等の問題については、なおとうてい日本の力を持ってしては独力では守り得ないので、先般の陸の撤退に際していろいろとお互いの連絡上にもそごがあり、かたがた当方としていろいろ苦労もした点もあるので、今後のそういった日米間の兵の交換撤退等についても、十分事前に連絡をして円滑を期したいという点と、それから軍事援助自体についても、ここ当分は民間において防衛産業等の問題があり、もちろんわれわれ日本の防衛産業についても、健全な育成等については、それぞれ主管省において考えておられると思まいすが、私としては、軍事援助は当分現状を継続していただきたいという趣旨のお願いをいたした次第でございます。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 新聞紙の報ずるところによりますと、もっと具体的な点に触れて援助を要請しているように書いてございます。たとえば艦船通信機、弾薬などについても、自給自足の線に沿うて進んでいるが、航空機、誘導兵器、特車などの生産は数年間は不可能なので、これらの資材や部品の補給を続けてもらいたい。こういうふうに要請したと伝えられております。そういうような具体的な話をされたかどうか。またドレーパーは、そのような要請に対しては、諮問機関であるために諾否の返事をするわけにいかないと答えている旨も伝えられております。その間の事情をお伺いしたい。

伊能繁次郎自由民主党防衛庁長官

○伊能国務大臣 私といたしましては、さような具体的な問題までは申し述べませんでしたが、各幕僚からそういったことの話は申し上げました。と同時に、私としては、自衛隊の増強については、将来質的な方面に極力増強の中心を注ぎたいという点と、御承知のように一昨年決定いたしました国防の基本方針にのっとって、日米共同防衛体制を基本として増強して参りたいということと、さらに将来の作戦様相と日本の自衛隊とを考慮した際に、三自衛隊については次の点について重点を置きたいから御協力が願いたい。その第一点は防空作戦体制の整備、このためには特に航空機の充実とレーダー・システムをできるだけ早期に完成をいたしたい。と申しますことは、御承知のように、レーダー・システムについては逐次アメリカから日本に引き継いでおります事情等もございます。またさらに海幕関係につきましては、対潜作戦兵力の充実に重点を置きたい、このためには必要な艦船と航空機の整備についてぜひ御協力をいただきたいという点と。陸上部隊につきましては、部隊装備の近代化、ことに科学化、機械化、機動化等について今後できる限りの御協力をいただきたい、こういう趣旨のことを申し上げました。これに対して、御指摘がありましたが、ドレーパー氏自身としては、自分は諮問機関の委員長として、この問題について今直ちに諾否の回答はできないが、防衛庁の人々の言うことはよくわかったから、その趣旨を委員会において報告の際に十分に織り込んで大統領に報告をしよう、こういうお話がございました。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 ただいまお話の要請は、そのままアメリカが受け入れるか受け入れないかはもちろんわからぬわけですが、その要請は、本年度の防衛庁の計画、防衛庁の予算とどういう関係がございますか。

伊能繁次郎自由民主党防衛庁長官

○伊能国務大臣 本年度並びに来年度につきましてはすでに予算の本年度については御協賛をいただいており、来年度は目下御審議を願っておりますが、その方向に沿って、私どもは二年ほど前から軍事顧問団を通じまして当方の希望を申し入れております。それらの点については米国側においてつとに研究をして、われわれに対する協力を惜しまないわけでありますが、当面ドレーパー・ミッションにつきましては、年度的な問題でなく、一般論として、日本の防衛力の現状から、将来については、ただいま私が陸海空三幕についての具体的な希望、並びに一般的なものとしては、当初に申し上げました二点の、日本の防衛力の質的改善ということと、国防の基本方針に基いて日米共同防衛体制でいくという問題についてお願いをしましたので、年度の問題についてではないということを御了承いただきたいと思います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 一方では、今日対等の立場に立ってアメリカとの間に安保条約の改定をする、こう言っておりまするが、他方では、今お話のように、相当長期にわたる軍事援助を要請するというようなことは、私は一つの矛盾ではないかと思う。また政府は、前々からそうですが、国力に相応する自衛力の漸増ということを言っておる。国力に相応する自衛力の漸増、こういうことは言葉をかえて言えば、日本の国の力でできる範囲の、それに相当する自衛力の漸増、こういうことだと思うのです。外国の援助、それもしかも相当長期にわたって相当多量の援助を受ける。それにすがって自衛力を漸増するということは、国力相応ではなくて、国力をこえた自衛力の漸増、こういうことになりはしないか、その点はいかがでしょうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 もちろん国防の基本方針は、国力、国情に応じて自衛力を増進するということが基本になっております。しこうして日本の国力から見まするというと、日本の安全を保障するに足るだけ、自力でもって、国力で漸増しただけでは間に合わないという事情もありますので、日米共同防衛のいわゆる安保体制のもとに日本の安全保障というものを完全ならしめる、こういう方針が当然とられてきておるわけであります。アメリカの援助の関係は、この日米で共同して日本の安全保障をするという日本の防衛体制の根本からきておるわけでありまして、決して根本に、国力に応じて漸増するという方針と、この日米共同防衛の立場から日本の防衛力を強化して日本の安全を保障するという考えとの間に矛盾はないのであります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 私は矛盾すると思いまするが、一体今後どのくらいにわたってアメリカから軍事援助を受けようとお考えですか。このドレーパーとの会談によりますれば、ある新聞では相当長期、こういう言葉を使っておりまするが、他の新聞では五年間ぐらいとも書いております。大体政府のお考えでは、今後何年間ぐらいアメリカの軍事援助をお受けになるおつもりですか。

伊能繁次郎自由民主党防衛庁長官

○伊能国務大臣 お答え申し上げます。私どもとしては、相当長期と申しましたことは、期限について現在何年というようなことは考えてはおりませんが、現在の日本の国力から考えまして、ただいま総理のお話のように、単独で日本の防衛力を維持するということは非常に困難な事情があり、もしそういうことをする場合においては、非常に国民の負担になるであろうと考えまするので、将来ほんとうに相当長期の援助は得なければならぬ、かように考えております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 日米安全保障条約を改定するということは、あるいは現在の日米安全保障条約もそうですが、日本が単独では防衛できないからアメリカの力を借りているのだということです。今私が伺っているのは、日本の自衛隊のり強化に関してです。日本の自衛隊は、もともと国力相応の増強をするのだ、こういう建前を少くとも言葉の上では言ってきているはずなんです。その日本の国力相応の自衛隊増強だけでは日本の防衛ができないから、さらにアメリカの力を借りる、アメリカの軍隊に駐屯してもらう。こういう形になっているわけですから、日本の自衛隊をもし国力相応の漸増をしようとするならば、文字通りに国力相応にやったらよろしいのであって、アメリカからそんなに長期にわたって莫大な軍事援助を受けるということ自体が、私はおかしいと思う。それから、そういうような援助を受けるということは、必然的に日本がアメリカに従属するという形にならざるを得ないと思うのです。援助を受ける武器の性質いかんによっては、当然秘密保護法の制定というような問題もそこから出てくると思うのです。その他内政干渉というような事態が生れてきはしないか。これでは、一方でいかに対等の立場に立って条約を改定すると言いましても、実質的には対等にならないと思うのです。そう考えるのですが、総理大臣はどういうようにお考えですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 お話のように、日本の国情、国力に合うように漸増していく。それだけでもって日本の安全が保障できるかというと、安全が保障できない。そこでアメリカとの間に共同防衛の体制を作っていっておるわけであります。そのアメリカが、アメリカの力を日本の国力に応じた自衛力の増進の上に加える方法としては、アメリカの軍隊が日本に駐屯し、アメリカのプロパーの軍隊でもって日本に協力するという方法もありましょう。また日本自身の国力でもって自衛力を漸増していっておる。それ自身に協力して、そうして日本の自衛力というものを強化し、アメリカのプロパーの軍隊によるところの協力の分をそれだけ減ずることによって日本の安全を保障できるというやり方も、これは考えられるわけであります。私どもは、できるだけ日本の国情及び国力から見て、いわゆる防衛力増強のために日本が非常に多くの防衛費というものを支出するということは、日本の国情も許しませんし、国力も許さない。しかも足りないところをアメリカの協力によって補強していくわけでありますが、その場合において、一部はアメリカの方で可能な限りにおいては日本自身の自衛力に取り入れるという方法によって自衛力を強化し、また一面においては、それでも足らないところのものはアメリカ軍隊の力によって日本の安全を保障する、こういう考え方になるのは当然であると思います。そういう意味において、いろいろな最少の軍事兵器の進歩に伴いまして、量よりも質というような点に重きを置く限りにおきましては、新しい兵器の研究や開発についてもわれわれとしては当然考えなければならぬ。そういう意味において、秘密保護に関するいろいろな点の問題が起ってくることも私は当然であると思う。現にMSAの関係において供与を受けるものについての秘密保護の規定があることは御承知の通りであります。こういう点は、決して私どもこれによってアメリカに従属するとか、アメリカの支配を受けるとかというような考え方でなしに、やはり日本独自における防衛力の漸増の根本方針に従って、しかも量よりも質という頭から、またアメリカの協力を得る方法としては、いろいろな方法において日本に最も適する方法を選んでいく、こういう考え方で進んでいきたいと考えております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 安保条約の改定問題について少し伺いたいのですが、総理大臣は、安保条約の改定は国民の要望に従ってとか、あるいは国民の世論をよく聞いてということを言われております。私は、国民の要望は、今日日本に無数にあります米軍の基地を返還してもらいたいということが一つであり、さらには駐留米軍のすみやかな撤退を望んでいる声がある。さらにまたどんな場合言がありましょうとも、日本が原水爆戦争に巻き込まれるようなことに対しては国民は絶対に反対しておる。さらに中ソとの関係を今日以上に悪化することのないように望んでいる。中ソとの関係の改善を望んでおりまするが、消極的に申しましても、今日以上に悪化することのないように望んでいる。こういうような国民の望みを今度の条約改定によって満たすことができるかどうか。私はそうではないということを心配しておりますが、今申しましたような基地返還、駐留米軍の撤退、原水爆戦争の渦中に巻き込まれるおそれのないようにという国民の希望、中ソとの関係の改善、こういうようなことを今度の安保条約の改定を通じて国民の要望にこたえるにとができるかどうか、ということを総理大臣にお尋ねします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 国民の一番望んでおることであり、国民が絶対にこのことだけはと政府に強く要望していることは、私は今おあげになりましたことの前に、日本が絶対に安全であり、われわれの生活が他から不当に侵略されない安全感を持つということが国民の最大の要望であり、これを実現するということがわれわれの政府の任務であると私は考えておるのであります。しこうしてその上から考えまして、日米安保条約の現状を見ますると、いろいろな点において、制定当時の日本の国情から見るとやむを得なかった点ではありますけれども、いろいろな点において不平等であり、日本としては望ましくない状態にある。このことを改善するということは、当然今度の改定で考えなければならぬと思います。そこで今おあげになりました各項目につきましては、私はことごとくこれを今度の安保条約において実現するということは、これは不可能であろうと思います。たとえば基地の問題につきましても、全然基地を与えないとか、あるいは駐留軍を撤退せしめるというようなことは、日本の持っておる自衛力の現状、また日本が置かれておるところの国際情勢というものに対して、先ほど申しました国民の最大の関心であり最大の要望である日本が絶対に安全である、われわれは安全に平和に生活できるというこの安全感を持つ上から見ますと、そういうことは決して私は望ましい状態ではまだないと思います。  しかし、原水爆戦にわれわれが巻き込まれないようにしなければいかぬという国民の要望につきましては、私ども、この安保条約だけじゃなしに、国際的にもこのことについて努力すると同時に、安保条約におきましても、日本がこの核兵器の持ち込みについて、われわれの意思に反してこれが持ち込まれることのないような基礎を作りたい、こう考えております。  またソ連と中共との関係でありますが、われわれは、決してこれを悪化しようという考え方もございませんし、また今度の安保条約の改定ということは、決して一部で言われているように、日米の何か軍事的な性格を持った条約を強化する、従来よりも強化するというような方向には考えておらないのであります。しかしながら、この両国から日本に対してのいろいろな働きかけや工作というものは、私どもに、安保条約を廃棄して中立に向けというふうな呼びかけをしておることからもうかがい知れるのでありますけれども、そういう意味において、われわれの方からはそういう意図は持っておりませんけれども、これらの方面からいろいろと日本に働きかけてくることも予想しなければならぬと思います。しかし、これは相手のあることでありますが、われわれはあくまでも正しい、また、われわれとしての独立国として当然やらなければならない問題であるということを中外に十分に説明して、そういうことの余地のないようにしたい、こう思っております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 国民が日本の安全を望んでおる、これはもちろんそうです。しかし、この安全がいかにしてもたらされるかということについては、不幸にして私は岸さんとは考えを異にしておりまするが、米ソ対立しておるこの世界情勢の中にあって、対立しておる片方の側について——ついてという言葉が適当でなければほかの言葉でもよろしいのですが、その対立しておるアメリカ側と軍事同盟を結んで、少くとも軍事的な性格の条約を結んで、片方とにらみ合いの態勢を強化する、あるいは対立を刺激挑発するというような行き方というものは、私は決して日本の安全を守るゆえんではないと思う。これは先般も同僚勝間田議員から強く指摘されたところでありますが、米ソの対立を緩和し解消する、そういう方向に向って努力することこそが平和の道であり、国民の欲する道であり、日本の安全の道だと思う。これについては見解が違うとおっしゃれば仕方がありませんけれども、私は、国民は、少くとも国民の多数は、日本の安全のために、ソ連や中共と現在以上に関係を悪くして、にらみ合いの状態を刺激し、挑発するような、そういう道を行くことを望んでいないと思う。そういう意味において、私は、今回の安保条約の改定は決して国民の望みをかなえるものではない、かように考えるわけですが、ただいま総理大臣の御答弁の中に、原子戦争の危険にさらされることのないように核兵器を持ち込まない基礎を確立したい。かような意味の御答弁がございましたが、それでは今度の安保条約の中に、核兵器の持ち込みを禁止するという条項をはっきりと挿入する、うたうという御意思がおありですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 現在の安保条約におきましては、駐留する米軍の装備や配備というものに対して、これは何ら事前の協議なく行われている状況であります。従って、私がしばしば国会等において、核兵器の持ち込みを認めない方針であるということを宣明いたしておりますが、それに対しても、それは条約上何ら根拠ないじゃないか、条約には日本の意思なんか聞く必要なしに、勝手に持ち込めるようになっているのだから、総理がそういうことを宣言することは、意味をなさないじゃないかというような非難もございます。私どもは、広く日米の関係におきまして、現在のもとにおいても、安保条約の運営を国民の感情に合わすように安保委員会を両国政府で設けておりまして、重要なことはここで話し合うことにして実際は運営して参っておりますが、そういうことも、実は現在の条約には何ら根拠のないことであります。こういう点について、私どもは、将来結ばれる条約については、そういう日本の意思に反して、事前に何らの協議をすることなくして一方的に持ち込むことのできないようには、ぜひとも条約もしくは条約の改正に関連して明らかにしたい、こういう考えであります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 そういたしますると、核兵器の持ち込み禁止ということを明確にしないで、配備と出動については事前協議をするという点をはっきりしよう、こういうお考えですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 具体的には、なお交渉の段階にありますから、どういうふうに交渉の結果——いろいろ両方の意見のまとまるところにまとめていかなければならぬと思いますが、現在の安保条約におけるところの一番の欠点はそういうふうな非難がある、いわゆる重要なことについて、日本に対して事前に協議をすることなくやられる、そうすると、日本は、日本の知らない間に、日本の意思に反して戦争に巻き込まれるというような危険もあるじゃないか、あるいは核装備されるようなおそれがあるじゃないかというような点に関して、十分に一つ国民が安心できるような形に条約を改めたいというのが、私どもの真意でございます。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 国民が安心するようにということがほんとうであるならば、私は核兵器の持ち込みを禁止するということを条約上はっきりすることが必要であろうと思います。それからまた伺いたいのですが、配備と出動について事前協議をするということを明確にしたい、事前協議をするということを明確にするが、その場合、協議がととのわなかった場合には、日本に拒否権がある、こういうことが明確にできますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 いろいろな条約におけるところの条文の作成の技術士その他のことは別といたしまして、私が事前協議をすると言うことは、日本の意思に反してそういうことはやらないという意味における協議をするという意味であります。その表現につきましては十分研究する余地があると思いますが、私どもの望んでおることは、ただ一片の協議ということをすれば、日本の意思がどこにあろうとも勝手にできるということでは、事前協議の意味をなさないわけでありますから、日本の意思に反してそういうことが行われないようにしたい、こういうのが私どもの考えであります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 事前協議の場合、大して問題なく協議が成立する場合もありましょうし、協議が成立しない場合もあると思うのです。事前協議ということをはっきりするからには、日本の意思に反してすることはない、こういうような御解釈のようですけれども、やはりそこではっきりと日本が拒否権を持つということでなければ、その事前協議ははなはだ力の弱いものになるのじゃないか、そういうふうに考えられるのですが、拒否権を明確にするという強い御意思がおありかどうか、もう一ぺん伺いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り、日本の意思に反してこういうことの行われないように、適当な方法を考えたいというのが、私どもの考えであります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 しつこいようですが、適当な方法といえば日本の拒否権を明確にすることだと思う。拒否権を明確にしないで適当な方法というものがほかにおありですか。私どもにはとうてい考えられない。一番端的に、日本の意思を無視してやらないということをはっきりする方法は、協議が成立しない場合に、日本に拒否権があるということを明確にすることだと思う。それ以外に明確にする方法がおありでしたらお伺いしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 こういう問題については、すでに国際的な条約のいろいろな慣例もございますし、そういうことを十分参照して善処したい、こう思っております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 はなはだたよりない御答弁で満足できませんが、次に沖縄の施政権の問題についてお伺いいたしたい。政府は、安保条約の改定に際して沖縄を防衛区域に含めるか含めないかという問題についてお考えのようですが、施政権の問題はそれとは別個の問題である、こういうふうに岸さんは御答弁されております。私もそうだと思いますが、そこで日本がアメリカに対して施政権の返還を、安保条約の問題とは切り離して要求される、その施政権の返還を要求される条約上の根拠がおありかどうか。条約上の根拠がなければほかにどういう根拠理由があって要求されるのか、それを伺いたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 沖縄は日本の領土であり、潜在主権を持っておりますので、その上に立って施政権の返還の要求ができると思います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 沖縄が日本の領土であることはもちろんです。日本の領土だから、施政権を返してくれという要求をするのが当然だとの御答弁ですが、平和条約の第三条によりますれば、今日沖縄の施政権を有しております根拠、つまり日本がアメリカに沖縄の施政権をゆだねている根拠がはっきりしております。すなわち「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ、且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含む」云々、こうなっております。つまり信託統治制度のもとに置くことを前提として、いわば条件付の暫定的な施政権である、こういうふうに解釈できるかどうか。私はそういうふうに解釈しておりますが、政府はどのような解釈でありますか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 条件付の暫定的なものであります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 そういたしますと日本はアメリカに対して、この三条にはっきりありますように、合衆国が沖縄を信託統治制度のもとにおくという意思があるかどうか。そういうことを国際連合に提案する考えがあるかどうか、こういうことについて交渉されたことがありますか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 今日までアメリカは、条約上上信託統治に持っていく考えのもとにやってきておりますが、しかしながらこれが長くなりまして、そういう問題が解決できませんければ、われわれとしても新しい観点からその問題を取り上げる必要があろうかと思います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 私は、国連憲章のいわゆる情話統治制度の条章によりますれば、アメリカは今日日本の領土でありまする沖縄を信託統治にするということは不可能ではないか、できないのではないか、従ってアメリカはそういう気持も持っていない、こういうふうに思われるのですが、政府はどのようにお考えですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 国連憲章七十八条の規定によって、できると思とます。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 国連憲章の七十八条によってアメリカが沖縄を信託統治制度のもとに置くことができる、こういう御解釈のようですが、私はそうではないと思います。その解釈が違うのではないかと思とます。これははっきりしておりますが、「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。」こうなっております。日本は国連加盟国です。沖縄は日本の加盟国の地域です。私はこの条文をすなおに解釈するならば、沖縄を信統託治制度にすることはできない。もちろんその他の第七十七条のabcに照らしましてもできない、こういうふうに解釈をいたしておりますが、いかがですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 沖縄の地位は国連憲章の七十七条のb項に該当すると思うのであります。七十八条によって私どもはできるのではないかと解釈をいたしておりますが、詳しいことは条約局長から……。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 私は第七十七条のb項によってもできないと思います。第七十七条のb項は「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」となっております。日本は第二次大戦の結果として沖縄が日本から分離されたのではないのです。分離されたとするならば、日本は施政権の返還を要求する何らの根拠がない。分離されてはいないのです。日本の領土です。沖縄の人々は日本の国民なんです。どうしてこのb項から「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」という解釈をすることができますか。

高橋通敏外務事務官(条約局長)

○高橋(通)政府委員 法律問題でございますから、私から法律の点について御説明さしていただきたいと思います。ただいまの御指摘の点は、従来も外務委員会その他でたびたび御議論があった点でございます。そこでいろいろ御審議の末、また公聴人、その他学者の意見を御徴しになった結果としまして、ただいまのどの条項で信託統治になるかという場合は大体七十七条のb項すなわち敵国から分離された地域、この条項を沖縄は適用されるのではないか、こういうふうな結論に達したというふうに考えておりますし、私もこの解釈が正しいのではないかと考えております。その敵国から分離されたと申しますのは、分離というのはディタッチと申しますか、物理的に分離するということだけをここで申している次第でありまして、主権云々の問題はここで申していないのではないか、こういうふうに考えております。  それから第七十八条の加盟国となった地域には適用しない、この点は、中近東のイラクとかレバノンが当時昔の委任統治であったわけでございます。そこでそういう委任統治地域が主権国となりまして国際連合に加盟した、従いまして国際連合に加盟した場合は、委任統治地域であってももはや当時委任統治地域でなくなるということが、予定されておった次第でございます。そこでこのような国が国際連合の加盟国となった場合は、もちろん委任統治国ではなくなるのだ、こういうような意味合いで七十八条ができ上ったのであるというふうに考えております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 一部にそういう説があることを私も知っておりますし、それは国際的にも国内的にも定説ではないと思うのです。もっとこの条文をすなおに解釈することが必要ではないか、特に七十八条の解釈に至りましては、その前提として「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、」云々とこうなっておるのであって、沖縄がこの条項によって信託統治ができるという解釈は、どうしても出てこないと思う。少くとも日本側からこの条項をすなおに解釈するならば、日本としてはそういう結論が出ないはずだ、アメリカが自分の占領を合理化するために、そういうふうにこじつけて解釈をしておるというならば、話はわかりますけれども、岸内閣はもちろん日本の政府なんです。日本の立場に立ってこれは解釈すべきだと思う。どこからも、この七十八条の条文の解釈からは、沖縄を信託統治にすることができるという結論は出てこないと思う。外務大臣からこの点についてはっきりとお伺いしたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私どもといたしましては、局長の解釈を支持しております。     〔発言する者あり〕

楢橋渡自由民主党

○楢橋委員長 静粛に願います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 総理大臣に一つ伺いますが、七十八条によって沖縄を信託統治にすることができる、そういう御解釈をお持ちですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 平和条約と国連憲章の関係は、しばしばいろいろなところで論議をされて、議論がある点でございます。今島上委員の御質問にあるような御意見を主張せられる方面も、私聞いております。しかしこれが解釈をどういうふうにすべきかということについては、いろいろ専門家の間にも研究し、各委員会においても研究されまして、先ほど高橋局長が言いましたような解釈に一応落ちついてるというのが現状でありますので、私はその説に賛成をいたしたわけであります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 それは私は、政府だけの勝手な解釈だと思うのです。この問題はもちろん解釈が違うのですから、ここでは結論がつかないかもしれませんけれども、今後相当研究をしなければならぬであろうと思うのです。もし平和条約、安保条約等において国連憲章と抵触する部分がありましたならば、それを廃棄し無効にするという解釈をお持ちですか。これは総理大臣に伺いたいのです。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 国連憲章が優先いたしますけれども、それだからといって、直ちに廃棄するかどうかは、当事国の相談によってやります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 それでは国連憲章優先ということにならぬじゃないですか。私は国連憲章優先ということは、そんなことは、めったにないことでしょうけれども、万一にも国連憲章と抵触するあるいは背反するという部分が、他の条約にありましたならば、これは無効とする、あるいは廃棄するというのが当然だと思うのです。それが国連憲章優先だと思う。岸内閣は、何かというと国連中心国連中心といって、国連憲章優先主義をそういうふうにぼかすということは、私はおかしいと思う。この際、はっきりと国連憲章優先主義を貫くということを明言していただきたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 国連憲章が優先するということを申し上げましたけれども、それに反したからといって直ちに廃棄になるわけではありませんで、そこで話し合いによって廃棄するかどうかという申し出をするというような条件になってくると思います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 私は、ただいまの御答弁には納得しませんけれども、次の問題に移ります。  例の北鮮帰国問題でございますが、岸内閣としては、珍しくこの問題については筋の通った解決に踏み切ったように思われます。そこで、私が伺いたいのは、韓国から会談の再開をしないぞというような声明もあるようでありますが、この韓国の言い分は、私はあまりにも理不尽な横やりだと思う。そこで、この前の本委員会でも総理並びに外務大臣から言明がありまして、安心はしておりまするが、しかし、いつまでもこの問題を間をおきますると、そういうような障害が他からも出てこなくとも限りません。たしか明日閣議を開くということを聞いておりまするので、明日の閣議ではっきりと結論をお出しになって、国際赤十字に調査を依頼する、こういうように取り運ばれるかどうかということを伺いたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 この問題につきましては、ただいま事務的な打ち合せをいたしておりますので、明日の閣議と申し上げられますかどうかは知りませんけれども、ごく近いときに決定をして発表したい、こう思っております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 明日の閣議で取り上げることは事実ですね。どういう結論になるかということはまあ別としまして、明日の閣議でこの問題を取り上げるということは、事実ですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 すでに先般、火曜日の閣議で報告いたしまして、現在事務的な手続をいたしております。ただ明日の閣議で最終的にそういうものをまとめ上げるかどうかということは、現在まだ申し上げかねますけれども、近く決定をいたすことになろうと思います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 今までの方針を変更するということは万あるまいと思いますが、(「わからぬぞ」と呼ぶ者あり)わからぬぞと言うならば、もう一ぺん念を押して聞いておきますが、今までの方針を変更するようなことはないでしょうね。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 現在、今までの方針で進んでおります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 ぜひこのことだけは方針を変りえないで踏み切って、かつ、すみやかに結論を出して、国際赤十字に調査を依頼するようにしていただきたいと思うのです。これは国内の世論であると思うのです。  それから今度は国内問題で、特に岸総理大臣に伺いたいのですが、最近岸さんに対する批判の中で、金権政治であるという批判や非難が非常に多いのです。私は、今まで御質問したような抽象的なことを伺うのではありません。具体的に伺いますが、松村さんが短かい言葉で言っております。たれに責任があると言わないが、近来の政治は、選挙も、平常の政治の運営も金がかかり過ぎている、こう表現しております。これは私は事実だと思うのです。今まで鈴木委員長の質問や中崎君の質問に、私は金権政治をやっておりません、とこういうふうに木で鼻をくくったような御答弁をされておりますが、岸さんが金権政治をやっているとかやっていないとかいう問題よりも、最近の日本の政治家、ここにもありますように、選挙でもふだんの政治の運営でも非常に金がかかってきておるということは、これは否定することのできない事実なんです。私はだんだんと事実をあげることもできますが、これはもう否定することのできない事実なんです。私は金権政治をやっておりません、と言ってすましておられるような問題ではないのです。こういうようなことは大して資料というほどのものではないと思うのです。そのほんの一部、氷山の一角だと思いますが、たとえば、あなたが総裁をやり総理大臣をやってからの自由民主党の党への献金、党の使っている金を見ましただけでも、あなたが総裁をやり総理大臣をやる前に比べて倍以上になっております。ちゃんと数字を持っております。こういうように、政治資金規正法により自治庁に公然と届けただけでも倍ないしそれ以上になっている。最近の選挙の事前運動のごときは、私、あとで選挙法に関連して事例を示しますけれども、大へんなものです。物量選挙という言葉が出てきておる。民主主義と言うかわりに金主主義という言葉が最近言われている。そういうようなひどいおそるべき状態になっております。(発言する者あり)私が言うと自民党がヤジリますから、自民党の議員に言わせましょう。自民党、あなたの党の議員がちゃんと国会の委員会で発言している。記録に載っていることですから、私が言わないで自民党の人に言わせましょう。「私は四回選挙をやりましたが、吉田、鳩山内閣の手で行われた過去三回の選挙に比べて、今度やられた選挙ほど金に汚された選挙はないとしみじみ感じたのであります。」これは自民党の議員です。そうして、続いてこう言っている。「山口では、「岸首相のおヒザ元だが保守陣営の事前運動は活発、二区では講演会の人集めに「明治天皇と日露大戦争」の映画を持ち回っており、一区では地盤固めの〃おみやげ戦術〃にパーカーの万年筆から皮バンド「これでかけ回ってウンと運動して下さい……」というわけでもあるまいがスクーターを贈った話も伝わっている。婦人層への工作も激しく外国人形の贈物から、はては牛肉を配った、」「しかも、入場料は無料で、ところによってはその司会者が、」何々君を——これは委員長に注意されて、名前は「某君」と言っております。「某君を全国最高点で当選させて下さいとあいさつした。」「また、村のすみずみまで某候補の外遊記録映画」——これでお気づきだと思いますが、外遊記録映画のポスターを張りめぐらして、明治天皇の映画——少くとも観衆十万をこえるだろう、劇場で百円で見るものをただで見せたのですから、少くとも一千万事前運動にばらまかれたことになる。これは自民党さんが言っている。「さらに山口市の山水園で陛下のお泊りになったお部屋で、陛下のお使いになった茶道具で、県下の有力婦人を招いてお茶の供応をしておる。」これは自民党さんが言っておる。あなたの方の議員です。私の集めた事例はまだたくさんありますけれども、その事例ばかり申し上げる必要はないと思いますが、とにかく最近の政治が選挙運動、事前運動を含めて、大へん金のかかる政治になっておることは、もう否定することのできない事実なんです。一体これをこのまま放任してよろしいかどうか。私はこのまま放任しましたならば、日本の民主主義の土台が腐ってしまうと思うのです。今だいぶ腐りかかっておりますが、どうにもならぬような、使いものにならぬように腐ってしまうと思うのです。そこで今のうちにこういうような金のかかる政治、金のかかる選挙、これを改める方法を講じなければならぬと思うのです。野放しにしておいたならば大へんなことになると思う。これに対して総理大臣はどのようにお考えになっておるか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 健全な民主政治を完成するためにできるだけ金のかからない政治にするということは、これは望ましいことであることは言うを待たないのであります。特に選挙について、民主政治は、何といっても選挙が中心に行われるわけでありますから、この民主政治の運営の中心である選挙というものを公明選挙にし、これが金のかからないような選挙をやるように持っていかなければならぬことは、島上委員の御指摘を待つまでもなく必要なことであると私は考えております。選挙制度その他のものの検討、それから公明選挙運動の徹底等につきまして、十分に一つその点についての効果ある方法を考えていかなければならぬと思っております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 今、総理大臣が答弁されたようなことは、ちょうど二年前のこの予算委員会でも同じようなことを言っております。読んでみましょう。政官界の綱紀粛正ということはどの内閣も考えており、また当然やらなければならぬ問題ですが、私は特に政治家なりあるいは権力を持っている者、政権を持っている者の反省とその態度が非常に全体に及ぼす影響が大きいので、われわれはみずから自粛する態度を示しております。なかなかいいことを言っております。問題はこういうきれいな言葉だけではなくて、これを具体的にどう政治の上に、行政の上に、法律の上に反映するか。どう具体化するかということが問題だと思うのです。私は、こういうりっぱなことを言っておりますが、具体的な面においてはこれと逆なことをやっておるのではないかと言わざるを得ないのです。一つ資料を御披露しますが、たくさんあります。これはあなたが総裁をしておる自民党がやっていることですが、ずいぶんと金のかかる事前運動と思われることをやっております。これは鳩山さんと総裁岸さんの名前の入った、貴下を自民党東京支部連合会選挙対策委員に委嘱いたしますという委嘱状です。何とこれは社会党の党員にまできておるのです。町会の役員に全部これをやっている。われわれの常識によりますれば、選挙対策委員というものは本部、執行部の中に選挙に練達たんのうの人を選んで十人か十五人で作る。連合会の場合でも、支部の場合でも、これが常識です。一体、自民党さんは、選挙対策委員会は何万人作りますか。党員でない者を、反対党の社会党の党員まで選挙対策委員に委嘱しますか。そうして、もちろんこの中にはこういうものが全部入っております。この中には知事の候補者の後援会の入会申込書、それからヘルスセンターの広告並びにヘルスセンターの招待状がちゃんと二枚入っております。こういうものをどんどん町会役員に全部配っておる。こんなことは今までかってなかったことです。法律上からいえば、今の法律はそういう点抜け穴だらけですから、私は違法であるとはっきりここでは断定しませんけれども、法律上はすれすれです。紙一重というすれすれのところ、こういうことをやっている。  まだあります。これもやっぱりあなたの方のある地方議員に立つ人ですが、お正月の五日に成田山の初参りと称して、善男善女にこういう名前の入った手ぬぐいを首にかけさせて、バス百台ですよ。ただの一地方議員がバス百台に善男善女を乗せて、そうしてこういう半えりをおみやげにあげて、一台々々バスに三升ないし五升のお酒を寄付して、そうしてこういう自分の写真入りの印刷物まで配って、バスに一台々々顔を出してあいさつをして、そこに御丁寧にも知事候補者も連れてきてあいさつをさせて、そういうことをやっておる。これが今や——百台は少し多いのですけれども、こういうことをやるのが普通になっておるのです。これは大へんなことですよ。こういうようなことをどうして防止するか。防止するための具体的な手を今即刻にでも考えなければ、これから検討しますなどという、これはどろぼうをつかまえてなわをなうじゃなくて、どろぼうが逃げてからなわをなうようなものです。これから検討しますなんといったのでは……。そういうことでは間に合いませんから、今のこのとうとうたる政界を腐敗せしむる濁流、この濁流が流れておる事実に対して私は打つべき手があるはずだと思うのです。先ほど総理大臣が答えたことがほんとうならば、その場限り何とか言いのがれようということならば別ですけれども、ほんとうに誠意をもってああいうことを考えておるならば、打つべき手があるはずだと思う。岸さんがお考えつかなければ私が教えてあげましょう。その打つべき手を何かお考えになっておるかどうか。抽象的な言葉だけではどうにもならぬ事態であるということです。それを認識してもらって、具体的な手を打つことを一つお考え願いたい。それをお伺いいたしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 先ほど申し上げました趣旨のごとく、公明選挙を徹底し、そういう金のかかる方法によるところのことを防止するようにしなければならぬと思います。しかしてその具体的なことにつきましては、選挙に関する主務の大臣がいろいろ委員会等に諮問いたしまして苦心しておるところでありますから、主務大臣よりお答えをすることにいたします。

青木正自由民主党国家公安委員会委員長・自治庁長官

○青木国務大臣 目に余る事前運動、これに対する対策をどうするかというお話であります。根本的には私いろいろ申し上げたいこともあるのでありますが、お話のように今からそんなことを言っても間に合わぬじゃないか、まことにごもっともであります。そこで根本対策は根本対策として、さらに一そう検討していかなければならぬと思うのでありますが、当面の問題といたしましては、昨年の暮れに最高検、それから法務省、警察庁、自治庁、この四省庁をもって選挙公明化期成協議会というものを結成いたしまして、自来数回会合いたしております。今月の二日に会合いたしまして、この協議会が中心となりまして、そうして目に余る事前運動もしくは事前運動とまぎらわしい行為等につきまして、発見次第これに警告を与える、あるいは法律によってそれぞれ処分するということで、現在取り締っておるのでございます。もちろんただこれだけで満足すべきものではないのでありまして、一方におきましては、やり何と申しましても、そういうことが行われましても、大多数の有権者の方がそれにいろいろ誤られることのないようにしなければなりませんので、一面におきましては、各都道府県の選挙管理委員長を中心といたしまして、公明選挙運動をもっと強力に展開しなければならぬ、かような考え方のもとに、今月の二十一日に全国都道府県選挙管理委員長会議を招集いたしまして、そうして公明選挙の推進に一段と力を尽す、一方におきましては取締りを強化する、こういうことで当面の問題を処理いたしておるような次第であります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 まあ言いわけにはなるかもしれませんけれども、実際の効果などというものは、そういう程度のことではとうてい期待できないと思う。現にそういうことをおやりになっているさなかの選挙で——これも私はあまり言うと、隣でそう具体的なことを言うなよと言うものですから、これは私が言わないことにして、雑誌に言わせましょう。週刊読売です。「金脈を抱いて立候補した役人、森と汚職と事前運動と」こういう見出しで、林野庁の役人がやったことをいろいろ書いております。私はこれはここでは一々申しません。あとでよくお読み願いたいと思う。青木大臣が今答弁されたようなことでやっておりますと、そういうことを言っておるさなかに、これなどもそうですよ。社会党が負けたから腹いせに言っているとか、そんなものじゃない。国会で年賀状を出しません、何とかは配りませんという申し合せをいたしましても、全有権者に年賀状を出している。全有権者に手ぬぐいを配っている。一本の電柱に二十八枚のポスターを張ったという。これは自民党の候補者ですよ。鬼怒川の鉄橋へ行ってごらんなさい。今ははがしたかもしれませんけれども、鉄橋の鉄が見えないのです。みんなポスターです。ポスターの橋かと思われるようなものです。そういうことが、青木さんが答弁しておるさなかにどんどん行われておるのです。そうして警察の取締りたるや、形式的な、実につまらぬところは警告を発したりちょっと来いとやりますが、労務者がポスターを張っていると引っぱって、広告条例違反だとか軽犯罪法違反だとか、そんな程度のことはやりますけれども、悪質な買収、供応と見られるような行為に対しては、見て見ないふりです。これなども、宇都宮市外の大谷というところに新しくヘルス・センターができましたが、毎日毎日バス五台ないし十台連ねて百円の会費で五万人招待したという話です。こういうような事態に対しては、私は現在の法律の不備の点もあると思う。それから取締りがはなはだ緩慢である。少くとも悪質な事前運動に対しては、はなはだ緩慢である。それから政党がもっと自粛をするということ、口先ではなしに、本部も連合会も支部も自粛をする。必要があるならば、社会党と自民党の両党で申し合せをして自粛をするというようなことも必要でしょう。取締りをもっと厳格にやるということも必要でしょう。これなど法律の不備をねらった、巧妙な、すれすれの手です。こういう法律の不備を改正するということも必要でしょう。さらにまた、少し迂遠のようですけれども、国民の啓蒙運動と申しますか、政治的な自覚を促す運動も必要でしょう。こういうようなことを具体的にやらなければ、どんなに言葉でりっぱなことを言いましても何の役にも立ちません。  そこで私は質問をしぼってお伺いいたしまするが、このような事前運動に対して先般、法務大臣が訓示をする、あるいは検事総長が訓示をするというようなことをやっておりましたが、実際にこのような悪質な事前運動に対しては、どういう取締りをおやりになる考えであるか、その取締りの具体的な方針を一つお伺いいたしたい。

愛知揆一自由民主党法務大臣

○愛知国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、選挙の事前運動につきましては、実は相当問題とすべき点が多いように思われますので、今年に入りましてから、一月十六日と記憶いたしますが、まず検事総長から一般的に国民全体に対しまして、選挙の自粛ということについて談話を発表いたしました。それから越えて二十三日の日に、全国の高検並びに地検の刑事部長を招集いたしまして、刑事部長会同を開いたわけでございます。これは実は戦後初めての試みでございまして、私どもといたしましては、特に選挙の公明化また違反に対する取締りを厳重にしたいという気持から、特に今年こういうことをいたしたわけでございます。そこには私ももちこんでございますが、検察の首脳部から、民主政治の基本であるところの選挙について特に公明に行われるように、また事前運動につきましては、先ほどこれもお話がございましたが、法にすれすれのようなところもずいぶんたくさんあるわけでございますが、それらに対しまする法令の解釈に関しましても、全国的に相談をいたしまして思想を統一いたしまして、そうして事前運動でありましても、悪質なもの、あるいは証拠隠滅のおそれのあるようなものについては検挙をいたしまして絶滅を期して参ろう、かような態度で臨んでおるわけでございます。ただいま私のところに参っております報告によりますと、すでに検察庁で受理をいたしております案件も相当ございます。また警察庁と緊密に連携をいたしておりまして、内偵中のものの数は相当の件数に及んでおりますが、これらは捜査中のものでもございますので、一応さような状況にあるということを申し上げておくにとどめておくわけでございます。なお検察庁側の意見といたしましても、これはただ単に取締りの問題だけではございませんで、根本はやはり選挙する者もされる者も、選挙をほんとうに公明にやっていきたいということが何よりの基本であるということでございまして、先ほど青木大臣から申し上げましたように、特に関係の向きと連絡を緊密にいたしまして、東京はもちろんでございますが、各地区ごとに横の連携を強くいたしまして、警告を発することはもとよりでございますが、国民に対しても御協力を仰ぐということに一そう努力を払って参りたいと考えておるわけであります。

柏村信雄警察庁長官

○柏村政府委員 事前運動の予防につきましては、自治庁、地方選挙管理委員会等と緊密に連絡をとりまして、その予防に努めておるわけでありますが、特に御承知のように、証拠をはっきりと固めるということが必要でありますので、証拠収集に努力して、できるだけ早期に検挙するという方針を立てておるわけであります。警察庁といたしましては、昨年の十月以来、各都道府県の警察本部長会議あるいは管区警察局長会議等におきまして種々打ち合せをいたし、こうした方針のもとに厳正に取締りを実施する建前をとっておるわけでありますが、先ほど来お話もございましたように、法律としては非常に微に入り細をうがって規定されているようでありますが、しかしながらそれで完全にどういう犯罪も証拠が容易に固まるというものではなくて、特にまた運動についての巧妙なやり方というものが目立って見えておるように思われるのであります。従いまして証拠収集ということに非常な苦心をいたしておりますが、方針としてはただいま申し上げたような行き方で進んでおる次第でございます。ただいままで選挙運動に関連いたしまして検挙いたしました件数が昨日までに五十件、検挙者が八十九名、そのほかに四百数十件の警告をいたしておるような次第でございますが、なお現在におきましても、ただいま法務大臣からお話がありましたらように、鋭意捜査を続けておるような次第でございまして、証拠の固まり次第検挙していく。特にただいまお話がありましたような悪質犯に重点を置いて、努力を続けて参りたいというふうに考えておる次第であります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 ぜひ一つ悪質違反を重点に厳重にやってほしいと思います。  そこで私はその法律の解釈を伺いますが、さっき申しました委嘱状、これは法律上違反ではありません。しかし政党としてあまりにもひどいやり方だと思う。一万人にも二万人にも、社会党員にまで選挙対策委員に委嘱しますなんて——総理大臣御存じですか、あなたの署名が入っていますが……。こういうことはすみやかにやめるべきです。これと一緒に、さっき言ったように、某君の後援会入会申込書、ヘルス・センターの招待券二枚、その他経歴書が入っておりますが、こういうものは一体選挙法に触れませんか。私は選挙法違反だ、こう解釈しておりますが、選挙法上どういうことになりますか、お伺いしたい。

青木正自由民主党国家公安委員会委員長・自治庁長官

○青木国務大臣 ただいま承わったところでございますと、私は政党の政治活動に属するのではないかと思うのでありますが、しかし個々の現実の態様と申しますか、内容を詳しくよく調べませんと、選挙法の違反になってくるかどうか。単に選挙対策委員に委嘱するということだけでは、政党の政治活動に属するのではないか、かように私は考えるのでありますが、現実の態様を見ないと詳しいことはわかりかねるのであります。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 それでは青木大臣、私の質問をもう一ぺんよく聞いて下さい。私はこう言っているのですよ。この委嘱状は、きわめて巧妙な、悪らつなやり方であるが、これ自体は選挙法に違反しない、私はそう解釈している。しかしこの中に入っておる何々後援会の名による招待券というものは、これは違反ですよ。これは去年の四月の総選挙の直前に法の改正をいたしまして、この点だけは社会党の言い分を取り上げて改正をした。百九十九条の四を見て下さい。公職の候補者もしくは公職の候補者にならんとする者の名前を冠した団体の寄付をすることは禁止されておる。明らかにこれに抵触するのです。

青木正自由民主党国家公安委員会委員長・自治庁長官

○青木国務大臣 お話のように先般の国会で、後援会の名のもとにやる寄付、これを規制することになったわけであります。しかしその後援会がどなたの後援会になっておりますか、明らかに立候補する人になっておるのかどうかという点、あるいはまたその寄付の目的がどういう点にあったか、そういう点等を、やはり内容また目的等を十分に調べませんければ、直ちにそれをもって選挙違反というように断定することはどうかと私は考えるのであります。従いまして、なおその計画等を十分検討いたしまして、解釈を下さなければならぬ、かように考えております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 そういうようなあいまいな態度ですから、こういうことがどんどん行われるのです。法文を読み上げましょうか。「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者の氏名が表示され又はその氏名が類推されるような名称が表示されている団体は、当該選挙に関し、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄付してはならない。」こうなっておるのです。このヘルス・センターの招待券を入れておるのは寄付です。それから百円の会費でもって五百円とか千円のごちそうをすることは寄付です。これはそういう解釈に統一されている。はっきりしていますよ。ただしいて言うならば、「当該選挙に関し」云々ということがありますが、ある特定の選挙の候補者になることはもうきまっているのですから。そうして一方には選挙対策の委嘱状というものが入っているのです。そういうものを総合的に考えるならば、これは選挙に関していることはもう明白です。その選挙はもう二月しないうちに来月の二十五日に告示されます。これは「選挙に関し」という解釈を当然すべきものです。そのような解釈をして峻厳に取り締らなかったならば、こういうことはまだどうだかわかりませんなんて言っているなまぬるいことでは、とうてい現在の目に余るような事前運動の取締りなんかはできませんよ、法律の改正をした趣旨はそこにあるのですから。そういうようなあいまいな解釈をとっているから、さっきあなたが言ったような、何か公明選挙運動のための改正をしておりますとかなんとか、そういうようなことではだめですよ。今そういうなまぬるい事態ではないのです。私は法律の解釈を明確にすると同時に、取締りを厳重にしてもらいたい。法律の解釈を明確にしなければ取り締りようがないわけですから。これは全部やっているのですよ。町会の役員全部に郵送しているのですよ。それは一体寄付じゃないのですか。私はあくまでもこれはこの百九十九条の四に抵触する、違反するものである、こういう解釈をとっておりますが、青木国務大臣の御見解をもう一ぺん承わりたい。

青木正自由民主党国家公安委員会委員長・自治庁長官

○青木国務大臣 その委嘱状あるいはまた招待状等が当該選挙に関連するものでありますれば、事前運動に該当すると思うのであります。しかしそれがどういう内容のものであるか、そういう点につきましてさらに十分調査あるいは取調べをいたさせまして、それが事前運動にかかわる場合は、もちろん厳重に法の命ずるところによって処置をしなければならぬ、私もさように考えております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 時間もありませんし、ほかの問題もありますから、先へ進みますけれども、私はあとで資料を提供して、さらに委員会等でも具体的に御質問しますけれども、こういうような問題はもっと迅速にびしびしとやりませんと、どんどん政界を腐廃せしめる作用が進んでいるのですから、それを特に強調しておきます。  そこで一つ問題をさらに進めますが、私はこの前の例の国連恩赦というものが一つ災いをしていると思う。こういうような運動を促進するのに悪い影響を与えていると思う。現にこういうような運動をしている者の中には、いずれ皇太子の御成婚恩赦がある、そのときはまたこの大赦によって放免される、こういうようなことを言っている人がある。ひそかにそれを期待している人もあるようです。私はこの際はっきりしてもらいたいと思いますが、来たるべき皇太子さんの御結婚のときの恩赦には、選挙法の特に悪質違反は除外すべきだと思う。それをこの際明確にできるかどうか、私はぜひ明確にしていただきたいと思います。

愛知揆一自由民主党法務大臣

○愛知国務大臣 皇太子様の御成婚につきまして、まず恩赦をやるべきかどうかという点につきましては、こういう国民をあげてのおめでたいときでもございますから、私はこれを行うことが適当かと考えておるわけでございます。ただ、ただいまのところまだ法務当局といたしましてもその規模をどうしたらいいか、あるいはその範囲をどの程度にしたらいいかということについては、いまだ成案を得ておりませんので、追って検討いたしました上で明らかにいたしたいと考えるわけでございますが、私の現在の考えといたしましては、いわば刑事政策的な観点から妥当と思われる点においてこれを行うべきであるかと考えておるわけでありますが、ただいま申しましたように、いずれ方針をきめました上で明らかにいたしたいと存じております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 選挙違反の問題については、たしか法務大臣はかって選挙違反は除外するという新聞談話か何か発表したことがあると私は記憶しておりますが、それがまた一方仄聞するところによりますと、ある方面から圧力がかかって、だんだん法務大臣の態度があいまいになってきた、こういうことも伝えられております。この際あなたの御見解でもよろしいのですが……(「総理大臣がいい」と呼ぶ者あり)一つ総理大臣のお考えでけっこうですから、悪質違反を皇太子恩赦から除外するというお考えがあるかどうか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 皇太子殿下の御成婚の場合の恩赦の範囲をいかにするかということにつきましては、過去における御成婚の場合、また立太子式の場合の先例等も十分に今検討いたしておるわけであります。従って今はっきり範囲をどうするということを具体的に申し上げる段階にもなっておりませんが、しかし広い意味における大赦というようなことは従来も行われておりませんので、そういうことにはならぬと思います。特に選挙違反というものを取り上げてこれをどうするかというようなことにつきましては、十分こういう先例等も頭に置いて検討をいたして参りたいと思います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 私は、今私がさっき申しましたようなそういう状態の中にあります際ですから、はっきりすることが公明選挙のためになると思うのです。実は二年ほど前田中大臣が答弁しております。選挙の公明という見地からするならば、私は今後行われる恩赦からは悪質選挙違反は除外いたしたい、こう考えている、それからもう一つ、恩赦の運営は審議会を作って慎重に扱いたい、審議会を作って各方面の意見を聞いて、党利党略といわれるようなことのないように、行き過ぎがないように、足らざるところのないように審議会を作ってやりたい、こういう御答弁をしております。これはあなたの内閣の閣僚です。この二年前にしている答弁に対して私は当然、大臣は違っておりますけれども、総理大臣は同じですから、少くとも実行する責任を持たなければならぬのではないかと思う。審議会を作ってやるということと悪質選挙違反は除外いたしたいというこの二年前の答弁に対して、今日総理大臣はどのようにお考えですか。

愛知揆一自由民主党法務大臣

○愛知国務大臣 補足して御説明申し上げますが、ただいま総理大臣も言われましたように、過去における立太子礼あるいは皇太子御成婚という前例を中心に考えたいと現在思っておるわけであります。  それから申し上げるまでもないことでございますが、俗に恩赦と一口にいわれますが、その中にはいろいろの段階があるわけでありまして、大体ただいま私どもの頭にありますのは、前例によるところの特赦とか恩赦とかいうことが頭にあるのでございまして、大赦ということは大体考えておりません。従ってそれで大体私どもの気持はおわかりいただけるかと思うのであります。  それからその次に、恩赦というような場合に、たとえば確定判決を消滅させたり、あるいは変更さしたりする場合でありますが、そういったような場合に、特に選挙違反関係だけを除外するがいいか、あるいはしない方がいいということになりますと、私はこれだけを特別扱いにする必要はないのではないだろうか、こういうふうに考えておるので、大体そういうような気持で、追って成案を得まして先ほど申しましたように明らかにいたしたいと思っております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 どうもだんだん答弁があいまいになってきて、何を言っているのかさっぱりわからない。大赦をしないという御答弁からすると、選挙違反などは除外するというふうにもとれるわけですけれども、そのあとの御答弁は何を言っているのかさっぱりわからぬ。私がここで申し上げたいのは、この前の恩赦が非常に不評判だった。特に選挙違反を全部赦免したことによって非常に不評判だった。そこで今度は、一つには審議会のようなものを作って公正な扱いをするということ、それから悪質選挙違反は少くとも除外するというようなこと、このくらいの方針をここで明確にしておく必要があるのではないか。どうしても明確にできぬというのならばこれは仕方がありませんけれども、明確にしておく必要があると思う。それが一つには今言ったような悪質な承前運動を防止するという手段にもなろうと思うのであります。重ねて伺います。

愛知揆一自由民主党法務大臣

○愛知国務大臣 まず今お答えを忘れたのでありますが、審議会の問題であります。これは先ほど申しましたようにすでに確定判決があって、たとえばある犯罪によって服役中であるというような人に対して恩赦を広げる、あるいはこれを施行するというような場合におきましても、現に法律で制定されておりまする更生保護審査会というものが両院の議決による人選によりまして公正な構成になっておりますはずでございますから、私の意見としてはこの審査会を活用するということが妥当ではないかと思います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 時間が迫って参りましたから、次の問題をお伺いします。現在の衆議院議員のいわゆる別表の問題であります。これは法律にありまするように、「五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」こういう、義務規定ではございませんけれども、そういうふうになっておりまするが、現行法は終戦後の疎開、復員というような、普通でない状態のときに作られた人口に基礎を置いた表です。そして、これは今日、その後更正しなかったために、もう非常に極端なアンバランスが生じておるのです。最近政治の専門家でない一地理学者が雑誌に書いており、本を出しております。これは何も今に始まったことではなくて、私どもはもうずっと前から問題にしておるのですが、時間がありませんから数字をこまごまとは申されませんけれども、簡単に申しますならば、今日都市では人口四十二万に一人の議員を出しているところがあるかと思いますると、十五万足らずで議員を一人出している農村がある。言葉をかえて申しますれば、都市の有権者は三分の一の権利しか持っていない、こういう結果になっております。憲法によって国民は平等に公務員を選ぶ権利を与えられているはずです。ところが、住んでいる場所によってこういうふうに三分の一であるということは、決して平等な権利ではない。ですから、こういうことから起る結果は、去年の五月の選挙の際には、都市の候補者は八万票で落選しておる、農村のあるところでは三万票台で当選しておる、こういう矛盾が起っております。この学者の説によると、今の別表は疎開別表というべきものだ、こういう言葉を使っています。民主政治ではなくて地主政治だ、土地がおもになっている地主政治だ、こういう言葉で表現しておりまするが、私どもはこれは十分に検討を要すると思う。試みに最高点で落選した者二十名と最低で当選した者二十名を比較してみますならば、最高点で落選した者は、一番上は八万票台から二十番目が五万四千票で落ちております。ところが最低で当選した者は三万二千票で当選して、二十人目が四万一千票で当選しております。当選した最低得票者の二十番目と、落選した最高得票者の二十番目とがなお一万票以上の開きがある、こういうような矛盾があります。申し上げるまでもございませんが、民主政治は数の政治です。国民を代表する政治です。こういうような矛盾がそのまま放任されておりましては、決して正確な民意を代表する議会であるということは言いがたいと思う。ここで私はこういうような矛盾、狂いをすみやかに直すべきである、それが法律の精神でもありまするし、そういうふうに考えるのですが、総理大臣にお考えを加わりたいのです。この問題はこの前も総理大臣が答弁しておりますが、こういうことを出すとすぐどこかでは小選挙区制ということを考えたがる。これは小選挙区制の選挙区制度の問題とは別の問題です。制度問題以前の問題です。言うならば、選挙以前の問題とも言っていいくらいです。そういう問題とは切り離してこのアンバランスを是正する、更正するというようなことを真剣にお考えになる気持があるかどうか、お伺いいたしたい、

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○岸国務大臣 現在の別表が、制定当時と人口の所在が非常に変っているということから、非常なアン・バランスができておる。今、島上委員の御指摘になったようなアン・バランスが出ておる。これは私は望ましい状態ではないと思います。そうして、これをどう改正するかということについては、もちろんその問題を是正することと選挙区制の問題とは必然的関係がないことは、これも当然であります。ただ、これを今の中選挙区制のもとにいかに調整し直すかということもいろいろと研究されてきておりますけれども、非常に困難がある。従って、むしろ選挙区制と本質的には関係ない問題でありますけれども、関連して、小選挙区制においてこれを是正したらどうだという議論が現実の問題として起ってきているわけであります。いずれにいたしましても、この不公正な状態を長くこのまま続けるということは適当でありませんから、私としては選挙区制の問題ともあわせ考えて、これを是正するように早く持っていきたい、こう思っております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 これも前の答弁を引き合いに出して恐縮ですけれども、一昨年のやはり予算委員会の分科会で、田中国務大臣はこういうふうにはっきり答弁しておるのです。一昨年の調査によりまして結論が出ております、これに基いてすみやかに誠意を持ってやろうと思えば直ちにできる情勢にありますから、改正案を国会に提出したいというのが私の結論です、二年前にこう言っておる。今また検討しますなどという御答弁ですが、一体岸内閣がどれだけ続くか知りませんけれども、検討しますなどという御答弁では、岸内閣の手によってはとうていこれは解決できない、こう見なければならぬと思う。内閣の諮問機関に選挙制度調査会というものがあるのです。ところが、この選挙制度調査会も党利党略的には大いに使うけれども、今はもう開店休業です。こういう問題こそ選挙制度調査会に諮問して、公正な案をすみやかに作成させるというふうにすべきではないかと思う。いかがでしょう。

青木正自由民主党国家公安委員会委員長・自治庁長官

○青木国務大臣 ただいま総理からお答え申し上げた通りでありますが、御指摘のように、現在の人口を基準として、現在の区割に基いて再配分をいたすということを仮定いたしますと、七都道府県において増加を来たし、二十五府県において減少を来たす、こういう事態になってくるのであります。また同時に、一つの区において定員が六、七名になるところも出て参りますような事態もありますので、私どもといたしましては、御指摘のように、区割問題と区制問題と直接の関係はないのでありますが、やはりそういう問題も含めて検討しなけばれならぬと思います。  それから選挙制度調査会のお話であります。私どもも選挙制度調査会の御意見等も十分承わらなければならぬと考えておるのでありますが、御承知のように、選挙制度調査会は、参議院の区制問題を検討いたしておる段階でありますので、参議院選挙が目前に迫った今日、衆議院の区制問題をここで取り上げて検討することはいかがかということで、現在のところ、審議を中止しておるような状態であります。しかし、参議院の選挙が済みましたならば、できるだけ早い機会に選挙制度調査会の開会を願いまして、そうしていろいろな選挙法上の問題、その他今言ったような問題等につきましても、審議をお願いいたしたい、かように考えておる次第でございます。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 選挙区制問題とからませてやるから、なかなか結論が出ないのです。これは問題は本質的に違うのですから、別個に切り離してやるべきだと私は思う。  次に、これは最後ですが、ILOの条約批准問題について、労働大臣並びに総理大臣に伺いたい。ILOの条約を批准すべきであるということは、国際的にも国内的にも、今日世論になっておると思う。しいて言うならば、おそきに失すると思う。私はかってILOに日本が復帰するときの総会に出席しまして、その間の事情も多少は知っております。日本の復帰に対しては、かなり強い反対がございました。日本の政府代表は、しきりに日本の憲法、労働法を出しまして、日本の政府は、労働者に対してこのように基本的人権を認めておるということで、いわばやっと了承してもらったというようないきさつがございます。私は、復帰後すみやかにこの八十七号は批准すべきものである、このように考えておりましたが、政府はじんぜん時を延ばして今日に至っておるわけです。そこで、今までの御答弁によりますと、労働問題懇談会の結論を待って処理したい、こういう御答弁でございましたが、私の聞き及んでいるところによりますれば、労働問題懇談会の結論は、今月の総会で出されるものと信じております。このように今月の総会で結論が出されましたならば、政府はすみやかに公労法及び地方公労法の改正並びに条約の批准をおとりになる考えがあるかどうか、今国会においてそのような手続をされる考えがあるかどうかということをお伺いいたしたい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 お話のように、労働問題懇談会の総会は今月中にあると思います。その答申を待って政府は善処をしていきたい、こういうふうに考えております。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 答申を待ってされるということでございます。それでよろしいと思いますが、もう少しはっきりしていただきたいのは、その答申はILO条約八十七号を批准すべきだという結論になることはもうはっきりしております。はっきりしているといってもよいくらいです。それに関連して関係法規の整理その他についての報告が付随されると思いますけれども、根本でありまする条約批准については、批准の結論が出ますことはもう明らかです。ですから、私は重ねてお伺いするのは、その批准に伴って、それに関連して必要な法改正の提案を今国会にされるかどうか、労働大臣は、聞くところによりますれば、ことしの六月のILO総会にみずから出席される、こういう熱意を持っておられるそうです。労働大臣が出席されるときには、ILOの条約を批准して、関係労働法の改正をして出席されましたならば大へんりっぱですけれども、もしこの問題をまだあいまいの状態にしておきましたならば、相当総会で非難されるということを覚悟しなければならぬと思います。そういう点からも、ぜひ私は今国会においてこの問題を処理してほしい、批准とそれに必要な法改正をやってほしい、こう考えるわけですが、今国会においておやりになる考えがあるかどうか、はっきりお伺いしたい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 私は今あなたのお話を承わってびっくりいたしたのでありますが、どんな答申が出るかということについて、私どもは何にも聞いておりません。あなたはどういう根拠でそういうお話がありますか。今月の二十日か十九日ごろに総会があるということで、女の子が生まれるのか、男の子が生まれるのか、われわれにはまだわからないのです。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 私は、今労働大臣の御答弁を伺ってほんとうにびっくりした。条約を批准すべしという結論が出ることは、これはもう断定してもいいくらいです。批准すべからずという結論が出るなどということは、とうてい考えられないことです。条約批准は、今日国内的にも国際的にも一致しておる世論です。一部の人々は反対しております。今なお反対しておりますが、条約批准というこの結論が出ますことは、はっきりしています。ただこれに伴って起る法律の整備改正等についての報告の意見がついてくると思いますけれども、大前提である条約八十七号批准ということは、これはそう労働大臣がびっくりするようなことではないと思う。私はぜひ今度の国会で条約を批准するという手続と、これに伴って当然起って参りまする法改正をやるべきだと考える。では男の子か女の子かわからぬというのならば、批准すべからずという結論を労働大臣は期待しておるのですか、予期しておるのですか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 私が今申し上げておりますのは、権威ある労働問題懇談会で検討を続けていていただいて、前大臣以来やっておることであります。それが間近かに総会で答申が出る、こういうことだそうでありますから、その答申を拝見した上で、どういうものが出るかによって、政府としては考えをきめたい、こういうことを申し上げておるのでありまして、今まで申し上げておったことと少しも変りません。従って答申が出てからその答申を検討して、どういうふうに処置すべきかということを考えたいと思っております。もともと政府は、ILO機構に協力を惜しまないものでありまして、先ほどのお話のように、あなたはILOの復帰のときにおいでになりました。一昨年私が参りましたときも、二つ新しい批准書を寄託いたしまして、できるだけ政府としてILOの条約を批准して協力したいという原則は、全く変らないのであります。ただ御承知のように、今八十カ国ほど参加いたしております諸国の中で、日本はたしか二十四批准をいたしておりまして、一番上から五番目であります。あとずっと下の方にたくさん並んでおる。従ってわれわれの国がILOに非常に協力的であるということは、もう御存じだと思います。原則としては、これはできるだけ多く批准をしたい、こういうことでありますが、いろいろ国内法に抵触したりなどするものでありますから、そういうことで慎重にしておる。これは一部で要求があるから政府が批准を考えるとかなんとかいうものではないと思いますので、やはり政府は、それぞれの立場に立って、そうして労働政策上こういうものは批准すべきものであるということになれば、批准をできるだけ早くしたい、それの参考資料といたしますために、労懇に御意見を承わっておる、こういうことでありますから、御了承願いたいと思います。

島上善五郎日本社会党

○島上委員 それでは最後に念のため、もう一つ伺っておきますが、ILOの条約を尊重するという態度をおとりになる、従いまして労働問題懇談会で条約を批准すべしという答申が出た場合には、それを尊重する、批准する、こう受け取ってよろしいわけですね。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 前々から同じことを申し上げておりますが、答申が出ましたならば、それを尊重して政府の態度を決定いたします。

楢橋渡自由民主党

○楢橋委員長 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十九分散会

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