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31回国会衆議院1959/06/18

法務委員会 第24号

発言数
83
登壇者
10
会派数
2
開催日
1959/06/18

会議録

小島徹三自由民主党

○小島委員長 これより会議を開きます。  本日は法務行政、検察行政及び外国人の出入国に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  鍛冶良作君。

鍛冶良作自由民主党

○鍛冶委員 去る六月十二日の各新聞は、一斉にいわゆるスチュワーデス殺人事件の重要参考人として警察において取調べ中であったベルギー人の神父ベルメルシュ氏が突然帰国されたことを報道いたしました。いかにもこの新聞の記事を読んでおりますと、この大事な参考人がいなくなったがために、本事件の捜査が迷宮に入ったような感じを起させたのであります。もしそうであるとすれば大へん重要なことだと思いますので、この際一般国民の疑惑を解く意味において、まず一つ警察側から、本件の真相並びにベルメルシュ神父と本件との関係について、差しつかえない限りの報告を承わりたいと思います。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 ただいま鍛冶委員から御指摘のありました事件は、各新聞の報道におきましても相当大きく報道されまして、国民の方々もいろいろ御心配かと思いますので、この機会に、警視庁が中心として捜査しておりました本被疑事件、正確に申しますと、武川知子さんという方が死体となって発見されたのですが、武川知子さんを被害者とする殺害事件の捜査の警視庁のやり方について御報告いたしたいと思います。  武川知子さんという方が三月の十日に死体となって発見されましたので、当然のことでございますが、被害者を司法解剖に付しまして、解剖につきましては、これは大学の教授にお願いいたしまして厳重な精密な解剖をしていただいたわけでありますが、その結果、絞頸による窒息死と認められますので、殺人の容疑をもちまして、だれがこの被害者を殺したかということを中心にして犯罪捜査を行なったのであります。われわれこういった事件の犯罪捜査をするに当りましては、まず被害者の状況を明らかにする、できれば被害者のその殺害されるに至るまでの行動をつまびらかにするということが一つ、それから現場にありますところの物的証拠を収集いたしまして被疑者を割り出す、こういうことを二つの大きな軸として捜査を続けるのでございまして、この方式に基きまして本件も捜査を続行いたしたのであります。武川さんという被害者は、本籍を兵庫県に持っておる方でございますが、兵庫県からかねて東京においでになって、東京でBOACのスチュワーデスとして勤務しておった、こういう方でありますので、下宿先その他につきましても十分調べる、そういう関係で、被害者の交友者、つまり被害者と親しかった人等から事情を十分聞いたのであります。その一人に、ただいまおあげになりましたベルギーに国籍を有する神父の方で、ベルメルシュと呼ばれる方が被害者と非常に親しい間柄であるということを発見いたしたのであります。それでベルメルシュさんが武川さんを殺したと疑われるに至る資料はいまだ発見されていないのでございますけれども、被害者の方と非常に親しい間柄であって、交通もあった、のみならず、その両者、被害者とベルメルシュ神父がよく会合しておられるという場合も少くなかった、ことに被害者の方と非常に親しい間柄でありますから、行動をともにされる場合も少くなかった、こういう事情がございますので、殺人被疑者だということは言えませんが、殺害したということを疑うに至る資料はまだ発見しておりませんが、被害者と親しいので、その被害者の状況を明らかにすることによって、すなわち被害者との行動関係をベルメルシュ神父さんからも十分お聞きすることによって、当該被疑事件の真相をつかみたい、こういう目的でベルメルシュ神父の御協力を求めたのであります。最初は、警察に行くのはちょっと困るというお話もあったのでございますが、だんだん事情を話しまして、ことに弁護人になる方々の御協力を得まして、日本の捜査に協力しよう、こういうことになりまして、五月十一日から合計五日間にわたりまして直接ベルメルシュ神父さんに警察の捜査に御協力願ったのであります。ところが、当然のこととは思いますけれども、協力するけれども、新聞その他に自分の顔が一ぱい出るとか、そういうことになると、大へん立場上困るというお話でございますので、警察の方でも大へんもっともと考えまして、警視庁の部屋へ来るということはどうしても目立ちやすいものですから、警視庁の管理する施設ではございますけれども、警視庁のあの庁舎と違う場所で、比較的第三者にわかりにくい場所で、被害者の状況をつまびらかにするために、ベルメルシュ神父から事情をつぶさに五日間にわたってお聞きいたしたのであります。それで、ベルメルシュ神父と被害者の関係等も、本人からも事情をお聞きいたしたのでありますが、一応お聞きいたした事柄も一つの参考資料でございますつけれども、それとあわせて、裏づけと申しますか、物的資料は比較的少いのでございますけれども、他の見聞者との関係、その供述、言い分の相違その他をたんねんに調べておったのであります。なお、先ほども申しましたように、死体がありましたものですから、死体の胃袋の中から被害者が殺害される以前に食べたものが推定できますので、食べものの関係の捜査を並行してやって参っておりまして、食べものの捜査と被害者の行動の捜査を合せて被疑者の割り出しに努めておったのであります。そういう捜査の進行状況でございまして、まだ被疑者がだれであるかということを割り出すことはできない状態にあるのが現状であるのであります。現在もそうなのですけれども、そういう状況におきまして、御指摘がありました六月十一日の日に、その重要参考人と申しますか、本件事件に御協力を願っておった、被害者と交友関係の深い立場の方であるベルメルシュ神父が羽田発の航空便で故国に向って帰られたということになりましたので、非常に被害者と親しい、事情の詳しい方々に、状況を五日間にわたって十分聞きましたけれども、今後もまたいろいろ胃の食べものの検査その他によって得た資料等について聞く場合に、遠方なものですから、何かその捜査が困難する、こういうことはあろうかと思いますけれども、いろいろ世間でもいわれておりますが、被疑者であるということを疑うに至る資料は発見していないのでございまして、被害者と非常に親しい関係にあられたということで、本件捜査につきましてはぜひ御協力を願う、こういう立場にあられた方でございますので、この方が突然国に帰られたということを抑制する方法はありません。御案内のごとく、本件事件の被疑者であるということが疎明できます場合は、刑事訴訟法に基く逮捕とか、そういった強制措置も、もちろん外国人であると日本人であるとに区別なくできることは当然でありますけれども、警視庁の本件捜査につきましては、ベルメルシュ神父が被疑者であるということを疑うに至る資料が得られませんので、この、国に帰られるという行動を抑止する措置はできない、これが状況でございます。  現在の捜査といたしましては、そういう非常に被害者の事情に詳しい方々から事情は十分聞きましたけれども、今後もまた聞く必要もある場合があろうと思いますので、そういった場合に、国際協力の問題で、ベルギーの警察その他に依頼いたしまして協力を求めることもあろうかと思いますけれども、そういった関係で、じかじか聞くということについては、時間も要するし、また、また聞きということも、ある意味においては捜査としては困難も増す、こういうことは言えようかと思います。  大要以上のようなことであります。

鍛冶良作自由民主党

○鍛冶委員 ただいま事情を承わりますと、なお取調べの上に重要なる参考人として調べることが必要のようにわれわれには感じられます。その際、被疑者としての被疑事実がない限りはやむを得ぬと言われるが、いやしくも捜査の上で協力をしてもらおうというならば、何らかの方法がなければならぬものだと思うのですが、ないものですか。たとえば、本人もそう言っておるとすれば、外国人であるがゆえにいつ帰るかしれぬ、そういうことになると、事実がはっきりするまで協力してもらいたいということで、本人に対してその承諾を得ることはもちろんでありまするが、その本国の外交官に対して連絡するとか、もしくは、日本でも、出られるならば日本の入国管理局の許可を得るはずでありますから、それらに対しても何らかの手を打っておく方法があるのではないかと思いますが、そういうものはないものですか。第一聞きたいのは、もらあんなものは要らないのだというのか、やはり必要であったのか、必要であったとすればそういう方法があると思うが、それはないものか、あったとすれば、なぜそれをやらなかったか、その点をお聞きしたい。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 ただいま申し上げましたように、被害者の事情に詳しい方でございますから、五日間にわたって事情は聞きましたから、五日間の聞いた分量は、ずいぶん調書等であるわけでありますが、今後また他の方面の捜査の進行に基いて聞く必要がある場合が想像されますので、鍛冶先生もおっしゃいますように、できれば、日本の捜査関係が調べやすいところにおってもらうことを希望するわけでございますけれども、その希望するのはいいが、そういうことについて何か事実上の問題また法律上の問題として手段を考えたかどうか、またはどういうことであったかという御質問でございますが、私どもといたしましては、できるだけ、そういう捜査関係等であまり強制がましく、また事実問題にいたしましても、あまり著しく迷惑になるというようなことにならぬようなことも考えなければなりませんので、弁護人の方によくお話ししまして、できるだけ捜査に協力するということを――弁護人の方が日本国籍の方ですから、日本の事情にも詳しいし、また本人の弁護に当られますので、ベルメルシュ神父の事情にも詳しい方でありますから、そういう方々に協力を求めて捜査に協力していただいておったのでありますが、本人自身から、一つの方法としては、こういう被害者と関係が深いから、国へ帰ることなく、本件事件の被疑者が割れるまで日本におろうという承諾書をとるのも一つの方法かと思うのですけれども、これは承諾には違いございませんが、あまり人権上につい、承諾して日本におれということを言うのはいかがかと思いますので、そこまで本人を突き詰めて、日本におってくれ、それを判を押して承諾してくれと言うほどに協力を求めていなかったのであります。  それからあとの強制処分の方法については、重要な証人につきましては刑事訴訟法によって強制的な措置もとれますが、証人ということについて、またほかの捜査との関係もございますが、強制処分でこれを処置する、こういうことについても、まだそのほかの捜査の進行とも関連してまたいかがかと考えられる状況である。それで私どもといたしましては、そういう重要参考人でございますので、重要参考人の動向といいますか、いろいろな日常の挙措その他について、いろいろな事情を知りたいということをわれわれが考えるのは当然のことでございますので、それにつきましては狭い警察のからと警察の足と目だけでやるということでは目的を達成できませんので、日本の行政機関としての出入国管理機関があるとか、あるいはその他の機関がございますので、警察といたしましては、出入国管理機関の御協力を得て、本人が帰られる場合、その他について御連絡をいただいて、あるいは御連絡をいただいてもしようがない場合もございますけれども、そういう意味において他の行政機関の御協力を得まして、口頭でございますが、そういう連絡をしておった状況でございます。その連絡に応じて出入国管理機関に、神父が十一日の夕刻お立ちになるときに、もちろんわかることでございますので、直前に会われたときに出入国管理機関から捜査当局が連絡を受けましたが、連を受けたときにそれを抑止する方法は、本人をなだめて置いておくとか、あるいは強制処分で逮捕する、あるいは拘引して引致する、こういうことが法律上可能なんでございますけれども、それをとるにしては被疑者としては資料がない。これから証人として本人に迷惑をかけないでとめておくということについては踏み切りがつかない状態でございましたので、他の行政機関である出入国管理機関に出国のまぎわに連絡を受けたことは事実でございますけれども、それを強制処分をもって抑止するということにつきましては工夫もいたしましたけれども、証人としてまでというふうにはちょっと無理な点もございますので、今後他の捜査も関係して大へん困難ではございますけれども、進めること、ないしは国際の共助として本人から事情をさらに聞くという場合におきましては、外国の捜査機関との協力を得て事実上いろいろな事情を相互に協力するということは各国の警察ともやっておりますので、その際羽田においてすぐあわてて緊急逮捕するという被疑資料もございませんので、処置をいたさなかった、これが現状でございます。

鍛冶良作自由民主党

○鍛冶委員 あなたの方で、帰るというなら帰ってもいいというなら別ですが、われわれはそういうことを言わない。おってもらわぬと困るというなら何かの方法があるだろう、こら考えるのです。そこで、今聞いてみますと、入国管理局からあなた方の方に通知があったというのですが、入国管理局でこの事件の関係者であるということを知られなかったら、一々あなた方の方に報告があるわけじゃないと思いますが、何かそういうことで連絡があったのですか。この点をまず聞いておきたい。     〔委員長退席、村瀬委員長代理着席〕

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 初めにちょっと新聞社の方に誤解があったようでございますので、そのときの現況を一応御報告しまして、それから第二段に出入国管理令の建前上こういう人の出国をどういう場合に阻止できるかできないかという法律的な問題にお答えいたしたいと思います。  第一点は、ベルメルシュ神父は、昭和三十四年六月十一日午後七時十五分ごろ、出国手続のために入国管理局羽田出張所に他の神父二、三人とともに現われたのであります。同時刻、出入国事務を担当いたしておりました入国審査官小林茂は型の通り本人の提出いたしました出国記録、旅券及び外国人登録証を点検いたしましたところ、かねて警視庁蒲田署からすでに手配がありましたところのスチュワーデス殺しの重要参考人である神父であるということがわかりましたので、直ちに蒲田警察署の羽田支所に電話で連絡をし、至急に回答を求めたわけでございます。しかし直ちに回答が得られなくて、他方飛行機の出発時刻も迫って参りまして、エア・フランス航空会社の係官方からもう乗客を搭乗させてもよいかよいかという督促があったので、小林審査官はもうしばらく待ってくれということを一応申しまして、事の重要性を考え、みずから右羽田の支所におもむきまして、同所勤務の武者巡査部長に面会いたしまして、同部長から直ちに本署の方へ連絡いたしました結果、先ほど刑事部長の言われましたように、今のところ阻止する手が打てないというお返事をいただいたわけでございます。そうして帰って参りましたら、それと行き違いに、支所勤務の藤井巡査が入れ違いに入管の方にやってこられまして、右と同じ趣旨を伝達されたのでございます。そこで同人は若干の時間を入管のデスクで空費したのみで規定の通り出国の証印を受けて午後七時半発のエア・フランス機に搭乗して、正規に出国したものでございます。  入国管理事務所において、こういう人々に対する手配といたしましては、通常警察の方からいつも手配が参っておりまして、それは記録にして残してございますので、事前にそういう人物の出国を察知することはできるようになっております。  しからば法律上こういう方の出国をとめることができるかどうかという問題でございますが、出入国管理令第二十五条は外国人が出入国港においてその旅券に出国の証印を受けなければ出国してはならないということを規定しておりますが、これは本人が有効な旅券を持って適法に出国の手続をいたしましたときには必ず証印をしなければならないので、その外人の身元調査をしたり、犯罪捜査に類似したことをその場でやって、その出国を阻止することはできない建前になっております。従って、外国人が事実上こういう場合に出られないのは、すでに逮捕状かまたは拘引状が発せられて、身柄が現実に拘束されておる場合だけでありまして、たとえば保釈中の者でありましても、正規の旅券を所持し、出国の手続をして参りますれば、その保釈の処分が取り消されていない限りは、これに出国の処分を与えなければならないという法律の規定になっております。それでは立法論としておかしいではないかという点が当然起ってくるわけでございますが、この点はむろん研究を要するものでございまして、司法手続によらないで、行政権によって身体の自由を拘束するという重大な結果を及ぼすようなことをなし得るかどうかという問題でございますので、これは非常に重要な研究を要する問題と、かように考えております。

鍛冶良作自由民主党

○鍛冶委員 どうもふに落ちないものがたくさんありますが、これは日本人ならばわれわれはそれほどに感じないのです。日本人でも被疑者として逮捕状も勾留状も出ないうちに身を隠せば困りますが、それよりも外国人が本国に帰るということになると、ほとんど手が及ばぬといってもいいくらいのものである。そうしてみると、日本人でも相当注意しなければならぬが、いわんや外国人でもあるということになると、よほどその点に注意をしてかからぬととんだ行き違いが起ると思うのです。今聞いておりますと、相当被疑事実はあっても、まだ逮捕状を出すほどの確証がない。そこで今調べておるというときに、それをとめておくわけにいかぬというならば、これはすぐ帰ります。帰ったらもうそれっきりあなた方の手は及ばぬことになるが、そういうことではどうも捜査のために困る。何らかそこに私は方法がなければならぬと思うのです。第一、入国管理局へ注意を促しておいたところまではよろしいが、これはベルギーならベルギーの大使館に、こういう重大な参考人であるから協力してもらいたい、従って、調べの済むまでは本国に帰さぬようにしてもらいたい、――旅券を発行するのはベルギー大使館だろうと思います。――そういうことは言われないのか。そういうことを言っておれば、入国管理局としても、御協力を願いたいと思いますから、私の方でもこれを出さぬことにするが御了解を願いたい、これくらいのことはあってしかるべきものじゃないかと思うのですが、いかぬですか。いかぬとすれば、例になって今後ともこんなことをやられたら手に負えないと思いまするが、どういう方法がありまするか、その点を承わりたい。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 結局、本件事件にベルメルシュ神父が非常に濃厚な被疑者である、逮捕するまでには至らぬかもしれぬが、それに比較的近い状態であるということが疎明できるような事情がありますと、私どもも公使館その他へ、外務省を経由してけっこうですが、通じて、協力を求めるということも一つの方法だと思うのですけれども、本件の捜査の状況から見ますと、被害者の方と大へん親しい状況にあったということは疎明できるわけです。ところが、被害者を殺したと疑うに足る資料が把握できないというので、ぜひ日本に置いてくれということを外交機関を通じて言うについては、本人の非常な迷惑ということも考えて、そこまで言うことはいろいろな事情を――外交機関を通じて公けに言うことになりますと、相当疎明できる自信がないと言えませんが、その点についての資料が得られない。しかし、被害者と親しい関係だから事情を聞きたいというのは当然で、それで五日間にわたって相当詳しく聞いた。さらに法律問題はさておいて、外交の、相互の理解で一つ協力して日本に置いてくれ、こう言うについては、本人の迷惑その他も考えて、外交機関を通じて言うことについては資料が足りない。ではどこまでやったかというと、今私及び入国管理局長から申しましたように、本人の動向を知りたいという意味で、警察におきましても羽田の出入国管理機関の方に御協力を求めて、帰りそうな状況があったら知らしてくれという方法を購じてあった。それに基いて御努力も得、御努力を得て、そのときすぐにそこで逮捕するとか、本人を説得するとかいうことについては、どうもあなたは殺人被疑者として疑いが濃厚だから、疑いを晴らすについて日本におって下さいということは、神父さんの人権も考えて、相当の容疑がないと言えない。その容疑が浮ばない。こういう状況で、今入国管理局長がお話しになりましたように、直前において彼が国に帰るという状況を知るという機会に恵まれましたけれども、できなかった。それから大使館を通じて、ぜひ日本に置いてくれということを頼むという資料もきちっと浮ばないものですから、できるだけ本人からも協力を求め、いろいろ事情を聞いておったというのが実情でありまして、捜査の進行上、被疑者の被疑の程度ということに関連する問題でありますので、非常に深い場合は若干御迷惑を感じられても御協力を求めるということも一つの方法かと思いますけれども、そこまで疑うに足る資料が得られなかった、こういう実情であります。

鍛冶良作自由民主党

○鍛冶委員 どうも被疑者としての逮捕状を出すだけの資料がないとしようがないという頭のようですが、私はもっと考え方があると思います。これは例ですが、犯人はほかにおる、ほかにおるが、どうあってもこの人を証人として調べなければならぬという事件は多々あると思います。そういう場合に、検事なり警察なりが直接調べることほどいいことはないのですけれども、調べようと思っても、いやだといって外国へ行ってしまえば方法がなくなる、そのために捜査ができない場合というのがあり得ると思います。そういう場合はやむを得ないのですか。そういう場合でも何らかの方法があるべきものであるし、講じておかなければ今後捜査の上において大へんな支障を来たす。こういう例が重なりますると非常に悪いことになりはせぬかと思うから、こう申すのですが、そういう場合は絶対とめるわけにいきませんか。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 鍛冶先生よくおわかりですが、そういう場合には、御案内の通り、強制措置として証人に対しましても拘引とかなんとかありますので、強制措置の方法はあろうかと思います。本件の場合、それに当る場合であったかどうかということですが、事件というものがさらに解明されて、ベルメルシュ神父というものが欠くことのできない証人的地位にあるということが疎明できない状態にあった、これが事実でございますので、いろいろ事情に詳しい人だから協力してもらいたいという希望はあるのでありますけれども、欠くことができないと強制処分をしてまで本人をとめておくほどの資料がまだ見つからなかったというのが実情であります。

鍛冶良作自由民主党

○鍛冶委員 幾ら繰り返してもしょうがございませんが、あなた方の方でそこまでのなにがなかったと言われればやむを得ませんけれども、私の憂えるところは、今後こういうことになったら大へんだから、何らかこういうときに手段があるはずだ、もし現在のところないというならば、今後なすべきことを考えなければならぬと思うのですが、それらの点に関する警察庁なり法務省なりの御意見を伺って打ち切りましょう。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 こういう殺人犯罪などの事件のときに警察が大いに苦心するのはいいけれども、その苦心の結果、もっといろいろ強制的な措置、証人を含めての強制的な措置を、現行法をもっと広く解してどしどしやるということも一つの方法であろうと思いますが、現行法でも証人に対する強制措置もありますし、被疑者に対する強制措置もありますけれども、それは法律の趣旨に基いて相当厳格にやるのが犯罪捜査の常道と考えて現行法を運用しておるわけであります。こういう国際犯罪といいますか、国がまたがって犯罪が行われるということが多くなるという時世になりますと、国際犯罪捜査機関の相互協力を活発にするということが大切だと思います。その点につきましては、日本もだんだん国際的な関係が深くなりまして、われわれ警察の仲間におきましても、全世界の国際刑事警察機構というのがございまして、私も会議に出たことがありますけれども、そういうことで、法律上の義務ではないけれども、相互に捜査の利益のために協力しようということもありますので、それを活用していくということが一つあろうかと思います。しかし、何ぼ協力してもらっても、遠方のことですから、隔靴掻痒の感があるということも事実でありますので、自分でやるということも、法律を変えるということも研究の一項目かと思います。が、いろいろ人権上の問題ないしは、国際上、証人にしても被疑者にしても強制処分を広く解して、国に帰れないというくらいまで束縛するについては、相当その点慎重でなければならぬ、そういう配慮から今回こういうことになったのであります。今後捜査の難航する事件が多くなる状況にかんがみまして、法務省ともよく相談して研究は進めたいと思いますが、現行法の趣旨ということも理解できますし、捜査をぜひやらなければならぬということも国民の、また当委員会の御趣旨でもございますので、その調和点をどこに求めるかというむずかしい問題に逢着するのでありますが、むずかしいからといってほっておくというわけではなしに、現行法の解明でいいか、さらにもっと検討の余地があるかという点については、刑事訴訟法を初めとする法制上の問題ともからみまして、法務省当局ともよく相談いたしまして今後研究いたしたいと思います。今のところ、こう改正してもらったら――人権のことを無視すれば別でありますが、それを重要に考えないことにはいきませんし、われわれもさらに研究した上でないと意見が言いにくいという現状でありますが、今後さらに御趣旨に基きまして研究を進めたいと思います。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内説明員 こういう場合に対処すべき方策がなければならぬ、その点につきましては鍛冶委員と全く同感でございます。またやらなければなりませんが、建前としてはあるべきだと思うのでございまして、本件の場合にも、だんだん御議論も出ましたように、あるいは外交機関を通じて、あるいは教団を通じまして協力方を要請する、それでもなお出ていくということになりますれば、そこでおのずから責任関係というものがはっきりしてくるわけでありますから、そういう要請をすべきであったかどうかという点につきましては、先ほど中川刑事局長から話されましたように、事案の実態がどの程度のものであったかという、これにかかってくると思うのでございます。手段があったかなかったかという問題ですけれども、そういう具体的な事情のもとにおいてどういう手段をとったらいいかという判断の結果が、出国を受理しなければならぬという結果になっておるように私は考えておるのでございます。もちろん外国人の出国という問題につきましては、先ほど御紹介がありましたように、出入国管理令の二十五条が唯一の規制規定でございますが、この規定が果して現状に適するものであるかどうかということはいろいろな角度から検討を要する問題で、むずかしい問題を含んでおりますけれども、なおこういう立法論と相待ちまして、私どもも慎重に研究いたしたいと思います。

村瀬宣親自由民主党

○村瀬委員長代理 坂本泰良君。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 私はこの問題の今の討論は枝葉の点であると思う。それで私はもっと根本的にお聞きしたいのですが、まずこのスチュワーデスの武川知子の殺人事件ですね。これについてわれわれは新聞を通じ、長年の弁護士生活その他で感ずることは、やはりこれは重要な容疑者だと私たちは思っていたわけなのです。それが何か夕方手続をして、すぐそのまま警察に連絡しただけで出国を許した、こういうような状態であって、それをただ言いわけするにすぎない、今の答弁は私はそう思う。また出入国管理の保釈の問題についてもあとでこれは聞きますが、この問題は重要な殺人事件の重大犯人の容疑者を夕方手続して、そしてすぐ出してしまって、それをあとで法的にどうだこうだと理論づけておる。人権の問題なんて、何です。あなたたちは、容疑のあるかどうかわからない労働運動とか、その他の問題については人権を無視して、日本人を人権じゆうりんして検挙してやっているじゃありませんか。しかも、この殺人事件の重要なる容疑者を出してしまって、そうして理論的につける。何というざまです。大体ジラード事件にしても、あるいはロングプリーの事件にしても、ああいうのは日本の官憲が引き渡しを受けて、そうして捜査をしなければならぬ。それをアメリカの軍隊の中で捜査をして、殺人事件になるのを向うで傷害致死でやむを得ないというような捜査をした、それをそのままうのみにして、そして起訴をしてああいうような状態になっている。敗戦国の日本で、何というだらしがないのです。やはりこれもその一つの現われだと思う。  そこでまず第一にお聞きしたいのは、本件の殺人事件についてこの神父は重要なる容疑者と思うのですが、捜査本部をわざわざ設けて捜査をしたわけですが、この捜査はどうなったかという、その点をお伺いしたい。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 今お話申しましたように、武川知子さんの殺害された殺人被疑事件があることは警察が認定いたしまして、そこで本部を設けまして、警視庁を中心にして各方面の協力を得て捜査はとにかくやっているわけでございますが、問題のベルメルシュ神父が殺害をしたと疑うに足る資料が現在のところ得られない。従って、たびたび申しましたように、本件被疑者であることを、殺害したことを疑うに足ることが疎明できることになりますれば、これは日本人であろうと外国人であろうと問わず逮捕状によって逮捕する、こういうことはもちろん可能でございます。その資料がまだ得られない段階である。こういうことによって今申しましたように殺人事件があったことは認めておりますけれども、ベルメルシュ神父が殺人の被疑者である、こういう資料が得られない。従って、ただいま申しましたようなことに相なる、こういうことでございますので、前提がベルメルシュ神父が本事件の被疑者であるということを疑う資料が得られない状態である、こういうことを申し上げたいと思うのであります。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 この神父の問題は一応その答弁を聞きますが、この殺人事件の捜査本部をわざわざ設けて、そして大がかりな捜査をした、それは大体どうなったのです。この神父以外に重要な容疑者が出ておりますか、どうですか。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 鋭意捜査に努めて、続行しておるのですけれども、まだ被疑者が発覚しない、被疑者が、平たい言葉でいえば割れない、こういう段階でございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 大体この事件について、被疑者は、いわゆる重要参考人が何名くらいいて、どういう関係で――捜査の内密の点はできぬでしょうが、それに関しない範囲において重要参考人を含めて何名の容疑者があって、そうしてそれを捜査して、なおこれはそのうちの重要な参考人の一人だと私は思うわけですが、その点はどうなっているんですか。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 本件につきましては、捜査本部を設けまして被疑事実の解明に努めておるのですが、被疑者といって疑うに足る資料がまだ浮ばない、こういう状況でありまして、そうすると警察は何をしているんだという結論になる。それでは警察はどういうことをやっているかと申しますと、その被害者に関係の深かった人たちの状況をずっとつまびらかにしておるということと、それから当然のことですけれども、死体を中心にして、また解剖の結果をもとにして、被害者の胃の中に入っておったもの、マツタケとかそういったものがあるわけですが、そういったものの状況について被害者の殺害される直前の状況を明らかにすべく努力しているのですけれども、被疑者が割れない、こういう現況でございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 それでは、参考人として、この神父を含めて何名くらい調べられましたか。その点を聞かしていただきたい。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 ただいま現在におきましては、神父さんは五日間にわたりまして毎日来てもらってよく事情を聞いたということは先ほども申したのですが、その他の方につきましては、その他の方はといっても、被疑者ということが発覚いたしませんので、捜査に協力してもらうという意味でいろいろな事情を聞いた人は相当数あるわけですけれども、警視庁の部屋などに来て親しく、事情を詳しく長時間にわたって聞く、こういう人はまだそうたくさんない、むしろ被害者の状況について比較的詳しい方々の御協力を得て、その人たちに事情を聞いておるけれども、被疑者として疑うという意味において聞いておる人はない、こういう状況でございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 いや被疑者にこだわっているようだが、参考人として調べたのは何人くらいあるか、人数を聞いているんです。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 参考人となると、相当各方面にわたりまして、たとえばお勤め先のお友だちとかそういった方々に、被疑者ということをほとんど考えなしに一応聞いている人は相当多数ありますけれども、そういういわゆる聞き込みの対象となる人間は相当多数あるわけですが、被疑事実に密着して詳しく聞くという人間はあまりない、こういう現況でございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 あまりじゃいかぬです。何人くらいあるかということを聞いているんです。神父と同じようにですね。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 被疑事実と密着して事情を聞いた人はございません。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 そうしますと、この被害者に密着をして重要な参考人として聞いたのはこの神父だけだ、こういうことになるわけですね。そこでお伺いしたいのですが、先ほどの御答弁によりますと、非常に親しい間柄であり、会合も数回しておる、行動をともにしたこともある、こういうようなことであるし、さらに食べものの捜査、これはこの神父と一緒に、どこで食べたかどうかという点についての捜査であろうと思うのですが、そこでお聞きしたいのは、この神父は武川知子さんと肉体関係があったかどうか。それから五日間についてお調べになりましたから、その殺害の日と、この神父の重要参考人としてお調べになりましたアリバイの点はどうなっているか、はっきりしているか、その点をお聞きしたい。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 御案内のことと思いますけれども、結局被疑事実を証明するについてアリバイなどは非常に重要なポイントでございますので、そのアリバイなどにつきましては、精密な捜査をいたしておるのであります。ところが、そういった点について、関係者の言い分等に若干そごする点が確かにあるのです。それで問題の神父さんが、疑うに足る資料がないと申しましたのは、結局殺害することについての疑うに足る資料がまだ発覚できない。交友関係とかなんとかいうのはあるのですけれども、肉体関係については、あまりプライバシーの問題になりますので、本人の名誉その他もあり、被疑事実そのものずばりと直接関係もございませんので、お答えを差し控えたいと思うのであります。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 そうすると、いろいろ調べられて、アリバイその他に違う点もあるけれども、やはり疑わしい、一致した点もある、こういうことになるわけですか。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 殺害した時刻というのは、解剖の結果一応推定がつくわけですが、その状況について、いろいろ関係者の状況をつまびらかにしているのが捜査の実態でございます。重要参考人の神父さんと武川知子さんとが親しい間柄にあったということは、大体言い得ると思うのでありますが、殺害したという行為に結びつくという点が解明できない、これが現状でございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 そうすると、アリバイは立たないけれども、神父が直接殺害行為をやった、窒息だから首を締めるとか――解剖の状態を私まだはっきり見ておりませんが、その殺害の状態がわからぬからいかぬ、こういうふうに受け取れるのですが、その点いかがですか。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 殺害したと認められる時刻について、関係者の行動という点が、殺害現場と別のところにおられたというような状況が成立する事項もあるのですが、一日というのは二十四時間ございますので、その当日他の場所におられたということも認められるわけで、二十四時間ともずっとその場所におったということはどうかという点を解明しなければならぬ点が今後の問題であろう、こう考えておるのであります。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 それで、私はもしこれが日本人であったならば、そこまできたら相当の容疑者として逮捕して調べるだろうと思うのです。われわれの二十数年の経験からしましても、そうだろうと私は思うのです。それを調べていないという点が一点と、それから今お聞きしますと、この神父以外には、親しかったり、会合したり、その殺害の日にいろいろ交渉を持ったというのは、この人だけであってほかにない。こういうことになれば、これはやはり容疑が出ないとしても、外国へ行くとなれば、起訴前の証人として、証拠としてとっておくべきである。こういうふうに私は考えるのですが、その点の手続をやられなかったというのはどういう関係にあるのか、お聞きしたい。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 この問題は殺害の問題が事件の中心でございますが、殺害ということについて、神父さんの状況が、いわゆる神父さんの行動が、証拠として唯一不可欠なものであるという状況が、いまだ認められなかったものですから、証人としての強制処分をいたさなかった、こういうことでございます。交友関係があったということと殺害とは別問題で、交友関係があったということは事実でございますけれども、交友関係があったということで唯一の重要な証人だ、こういうふうにまで判定し得ない、こういう状況でございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 いや、私の聞いているのは交友関係だけじゃないのですよ。あなたの先ほど来の答弁によりますと、文通があり、会合も数回しており、行動もともにした。さらに食べものの捜査をされたというのは、武川知子さんの解剖によって、その食事がやはり日本人の食事でなくて洋食と相当関係があった、こういうふうにも考えられるし、さらにアリバイの点については、二十四時間もあるからはっきりわからぬけれども、やはり相当の容疑がある、こう思いますから、別に犯人があったとしても、これは相当重要な参考人として、私は証人として取り調べて、そして宣誓をさせてその調書をとっておくべきである、そういうふうに考えますが、その点いかがですか。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 もう少し捜査が進行して、そういうふうな場合が出てこないとは保証できませんけれども、警視庁が捜査したる段階におきましてはそこまでの必要が認められない状況であった。食べものとおっしゃるのですが、食べものの捜査は確かにやっております。食べものの捜査は重要でございまして、胃の中にあるものによって、被害者がどういうところで食事をとったかということを発見することによって、被疑者がだれであったかということについて非常に解明しやすいものですから、それの努力をすることは当然警視庁がやっておるのですが、食べものの捜査が、直ちに問題の神父に関連があるという資料は、今までのところ全然見受けられないのでございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 その点まで私は聞かぬでもいいのですが、他に犯人があった場合でも、この人は重要な参考人であるから、いわゆる良心に従ってうそを言わないという宣誓の上で調書をとっておくべきであった、いわゆる証人喚問をすべきであった、こういうふうに思いますが、その点いかがですか。それをお聞きしている。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 われわれの捜査の段階では、その状況までに至らなかったと認められたのでございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 そこで結論をお聞きしたいのですが、そうするとこのスチュワーデスの殺人容疑は、もうこの人が海外に出ていなくなったのだから、捜査するとあなたたちは言うだろうけれども、大体捜査して犯人を発見する見込みを持っているのですかどうですか、その点をお聞きしたい。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 見込みとなるとなかなか困難な状況であると、こう申し上げざるを得ないのでありますが、警察といたしましては、いろいろな犯罪事件が多数あるのでありまして、百発百中百パーセントの検挙率を上げたいと努力しますけれども、残念ながら証拠その他によって固まらなくて、未解決の事件というものは現在ほかの事件に承あり得るわけでございますが、そういうことになると、これも類似点を相当持っている事件だ、こう思っておるのでありますが、警察としては努力を重ねて参りたい、こう思うのであります。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 これは新聞なんかも、この神父が帰ってしまったから、捜査本部ももう解散したというように伝えているし、また警視庁のだれの談話でしたか、結論としてはもうだめだ、犯人はわからないというようなことを言っているのを私は新聞で見たような気がするのですが、先ほどから聞きますと、ほかにもう一人でも重要な参考人がいたなら別ですが、これが一番重要な参考人です。警視庁の全能力を上げて、捜査本部を設けてそして捜査されたのが、それを海外に旅行するからというので、証人喚問もせずにやったという点については、あなたたちは今考えてどうです。やるべきではなかったと思うのですか、もう行ってしまったから当りまえだ、こういうふうに考えるのですか、その点はどうです。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 私たち警視庁の捜査について、刻々いろいろと連絡を受けまして、事情を詳しく知っておるのですが、あのときに強制処分でやるべきではなかったと今も思っております。それで本件に限りませんが、事件というのは、いろいろと関係者その他の供述も得、また他の資料も得て犯罪を解明するのですが、その犯罪の常道に基いて、その性格に従って犯罪捜査をやるべきである。理想としては百。パーセントの検挙を祈念すべきであるけれども、いろいろ証拠上の理由その他によって未解決の事件が若干あるということはやむを得ないことであろうという見地もありますので、われわれとしては、なまけるわけでは決してありませんけれども、いろいろ苦心の結果、未解決の場合もあり得る、これもその場合に属するかどうか、見通しの問題はわかりませんが、捜査本部というものはいろいろ組織として設けてずっとやっていくという場合に置くのでありまして、捜査本部をやめたから事件はたな上げにしてしまうということはありませんので、他の事例の場合も、大規模に捜査員を活動さすという場合におきまして、確かに捜査本部を設けるのでありますが、捜査本部を一応やめましても、この事件はずっと継続して、いろいろの角度から、他の犯罪と関連して行う場合もございますので、そういう意味での捜査は続行する、こういう立場をとっているのでございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 入国管理局にお聞きしたいのですが、本件のような場合に、これは今――鍛冶君は帰ってしまったですが、持っているその新聞でも、ほとんど全面を費したように大きく、新聞でこれは数回出ているわけなんです。こういう外国人が出国の許可を受けるその場合にはさっきの御答弁によると、蒲田署ですか、それからの手配があるから手配をしたというのですが、これは言いのがれの、形式上の手配のようにもとれるし、この点ではこれは警察で何と弁解しても、あまり重要な参考人を軽視しておるか、あるいは外国人だからもうこの程度にしてほったらかそうか、これには有力な弁護人もついておるからやつだかと、いろいろ疑いを深めるわけです。二十五条の解釈で必ず承認しなければならない、その場では拒否できない、――保釈中のことはまたあとで別に聞きますが、この旅券の証印の場合に、われわれはいろいろの大会なんかやる場合に、なかなか入国の許可もしない、こっちから労働組合員が行くときも許可しないペみたいなことでも理屈をつけてなかなか許可せずに、われわれは数回外務省に行き、あなたのところに行って嘆願をする、そうして十二人のうち半分も認めたから半分はいいじゃないかというようなことで、非常に厳格に取り扱われることを私たちは承知をしておるわけです。今の御答弁を聞きますと、その日の夕方来て、そして一応あっそこの出先の部長派出所ですか、そこに連絡をとってそしてやったというのですが、私は新聞にあれだけ大きく出ておる外国人が外へ出るときは、――ほかの、労働組合が世界会議に出るときの審査、あるいはこの前は何でしたか、港湾の大会を日本でやる場合に、アメリカの書記長か何かが、名前は忘れましたが、イギリスでストライキを指導した、そして今アメリカに来ているから、それの入国はできないということで、とうとう入国の許可もしなかったわけです。そういうように非常に厳格な取扱いをしておられる。私たちはそれはもう厳格な取扱いをされて、できないのはそれはやむを得ないし、また事情によってはぜひやってもらいたいという懇願に行くわけですが、それにしてもわざと許可をおくらして、とうとうその大会に間に合わぬようにしてしまう。まことにこれはけしからぬ、こういうふうにわれわれは考えておるのです。そういう点から考えまして、私は新聞を見て非常に意外に感じたのは、この殺人事件の参考人として五日間も調べられておる者が、またいろいろそれに反駁もあるようですが、このような人間を旅券があるから承認しなければならぬとか、その場では拒否することはできないとか、そういう形式上のことでなくて、日本人が殺されておるその重要な参考人だから、このような場合はやはり一日、二日くらいもっと慎重にして、警視庁とも連絡をとって処すべきが至当である。私は今までいろいろな関係で請願その他に行っておる関係があるから、特にこの殺人の重要参考人を即時のがしたという点については非常な不審を感ずるわけなのです。一片のただ二十五条の法的解釈だけで、もう行ってしまったからという言いのがれでなく、やはり行政官は行政官として日本の治安を担当するものでなければならぬ。     〔村瀬委員長代理退席、委員長着席〕 日本人が殺された、その重要な参考人を、ただ今までの普通のしきたりとして許可をする、これはやはり行政官としてもっと考えなければならぬと思うのです。あなたは局長の地位にあり行政官として法務大臣を補佐している、そのような重要な関係があるから、その責任の上に立って、この問題についてもう一ぺん御答弁願いたいと思います。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 出国の適法な旅券を所持し、適法に出国の手続をした場合には承認を与えなければならないと申し上げましたが、これは出入国管理令の二十五条の解釈上われわれはそういうふうに適用しなければならないと確信しておる次第であります。行政官の判断としてどの程度まで恣意が許されるか、これが各部課の組織が何名というような組織を持ちますような場合に、法律に準拠した正当な手続を踏むことこそ一番重要でありまして、下の兵隊に至るまでが皆各自が行政官としての責任を持って判断を与えるようなことになりますればかえって危険である。むしろ出入国管理令そのものを改正しまして、出国の場合に疑義があるというような通報を受けた場合には、これをとどめることができるというような規定がありますれば別でありますが、現在の情勢においてはできない建前になっておるとわれわれは解釈いたしております。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 こういうような重要な参考人の出る場合は、下から局長のあなたのところに電話をかけて照会すべきであると思う。もちろん法の乱用をしてはいかぬ。私がさっき言ったような労働組合の出国についてはうんと干渉してやっているのですよ。今聞くように重要な参考人はこの神父一人じゃありませんか。これが出国するときに、許可、不許可の問題は二、三日くらいは留保してもっと慎重にやるべきだ。それが行政官としての、日本の治安の担当の一人として、また国民の公僕としてやるべきことだ。これをお聞きしておるわけです。自分たちのやり方が悪いからすぐ法の解釈、法そのものを改正しなければならぬという――法は運用にあるのですよ。法はよく運用しなければならぬのです。あなたたちは労働組合の出国などについては悪用しておるではありませんか。そういう立場において、これは許可すべきなら許可すべき点もあるでしょう。しかしながら、その夕方来て、飛行機が待っておるからすぐ乗らなければならぬなんて、そういう催促こそが外国人の重要な参考人を外国に送り出す一つの手段じゃないかというような疑惑を持って、こういうのは慎重に取り扱うべきである。そのことを私は聞いておるわけです。そのことについても、あなたは遺憾がない、そうおっしゃるのですか、その点をお伺いしたい。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 われわれ入管行政を担当いたします者といたしましては、そこまで掘り下げて判断をいたすことは遺憾ながらできない次第であります。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 それではあなたその答弁をよく忘れぬようにしておいて下さい。このごろいろいろあなたのところに頼みにいくことがあるから、今の言葉で、日本人が、労働組合なんかが労働運動のために外国に行っていろいろやるような場合も、これをやるべきですよ。だから、今の答弁を忘れぬようにして、一つ今後処置してもらいたいと思うのです。ただ私の所見としては、こういうような重要参考人を出す場合は、単に警察におざなりに連絡するだけでなくて、やはり局長に、局長がおられなかったら次長がおるはずですし、次長がおらなかったらやはり検事の現職から行っておられる審査課長とか、課長さんがたくさんおられますから、やはり法務省と連絡をとって、そして私は善処すべきだったと思うのです。それもあなた方は必要ない、許可したのは正当だ、――それは法律上は正当でしょう。しかし、行政官として一つの行政処分ですから、行政処分の運用についてはまことに遺憾な点があった、私はこういうふうに考えますが、その点重ねてお聞きしておきます。いかがでしよう。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 先ほど労働組合の渡航の問題がございましたが、これは出国の承認を与える前の段階でございまして、旅券法十三条の規定によって、日本人も出国の際は出国の承認を得て出国しますわけで、もしそれに違反すれば罰則の規定がありますが、有効な旅券を持っている限り、日本人の方が港に見えられました場合はわれわれはこれに承認を与えなければならない。いつでも与えます。ただ有効な旅券を得ておられるかどうかということが問題でございまして、では旅券をどうしたら得られるかということは、旅券法十三条に、著しく日本の公安または治安を害するおそれがある者という規定がございまして、その行政の判断によりまして、旅券が下付されておらない方がもし出られようとしますれば、承認を与えることはできないのでありますが、有効な旅券を持っておられる限りは、われわれとしては承認を与えなければならないということになっております。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 私の聞くのは、与えるということは異論がない、即時にすべきであるかどうか、その点は行政処置の点において遺憾がなかったかということです。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 われわれといたしましては警察当局でさえも非常に判断に迷っておられるような非常にデリケートな問題でございますので、やはり正式な要式行為であるところの旅券と、正式な手続を踏んでこられます限りは、これに即時に承認を与えなければならないと思っております。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 十三条を引っぱり出されたけれども、その点についてはまたあらためてもっと聞きたいことがありますから聞きますが、即時に承認を与えなければならないという点について、われわれは非常に疑問を持つわけなんです。  そこで、もう一つお聞きしたいのは、保釈中の者でもやらなければならぬ、こういうことがあるわけですが、保釈中の者が身元引受人を立て、裁判官の了解も得て、そして外国に旅行した、これは私新聞で見まして、まことにいいことをしたと思っているのですが、それはほんとうの唯一の例なんですね。その点で、保釈中という場合も、やはり旅券を持っておってあれすれば即時に許可すべきであるかどうか、その点重ねてお伺いしたい。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内説明員 入管局長からお答えしても同じ問題かと思いますので、私からお答えいたします。  入管令の二十五条に、「入国審査官から旅券に出国の証印を受け」とあります。出国の証印という行政行為ですが、これは一体どういう行為であるかということにつきましては、大体通説として私どもが考えておりますのは、これは一種の確認行為であるというふうに理解されておるわけであります。そこで、確認であるということになりますと何を確認するのかということになりますが、出国しようとする外国人が有効な旅券を持っておる、そしてそれが人違いがないというような確認の対象になるのだと思うのです。そういうことを確認される限りは、直ちに――と申しましても、確認をするまでの間の時間をとることは当然でございますが、そういうことが確認されてしまいます以上は、これはもうちゅうちょなく、遅滞なく私は証印を押すべきものだと思うのでございます。これが入管令の二十五条の規定するところでございます。この考え方をもっていきますと、当該外国人がそこへ出国の証印を求めに来ておるかどうかということが確認されない状態、つまり本人が来てない、代理の者が来ておるとか、あるいは本人は今入獄中である、あるいは身柄拘束中であるとかいうことならば、この前提条件が欠けてきますので、当然これは証印を受けられないわけです。そういう者がそのために国際法として出国が拒否されるという結果になることは当然でございますが、今問題の保釈という状況、なるほど保釈というのはペヘンディングな、国内法上から申しますれば、証印を待っておる状況とか、あるいはいろんな状態があると思いますが、要するに国内法上その人に何らかの公法上の義務が待っておるという状態の人が、こういうような有効な旅券を持って出国するといって成規の手続を経てやってきた場合に、今の確認行為からいきますと、保釈しておる人であろうが何であろうが、この二十五条からいけば、確認される限りにおいてはちゅうちょなく証印を押さなければならぬ、こういうふうに解釈されると私は思うのでございます。しからばそういう保釈中のような国内法上の利害に大きな関係を持つ外国人がどんどん出ていっていいのかという問題は、二十五条の問題ではなくて、また別途の問題というふうに私は考えている次第でございます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 それで、私旅券のことをよく知らないのですが、局長にお伺いしたいのですけれども、この神父さんは日本に長くいて、外国へ出るのには旅券をもらわなければならぬと思うのです。これは新しく旅券を外務省でもらったと思うのですが、その点はどうなっておりますか、その点をお聞きしたい。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 ベルギーの旅券は所持しております。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 そうすると、ベルギーの旅券というのはベルギーの大使館か何かから出して、日本の外務省は全然関与しないものですか、どうですか。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 はい。本国で旅券をもらってこちらへ渡航しておるわけですから、日本の外務省は全然関係ございません。ただ外務省が関係したとすれば、ベルギーからこちらへ渡航しますときに、無査証協定の国でなければ査証を受けて渡航してきておるわけでございます。ですけれども、その査証は日本を出るときには何ら関係ございません。入るときだけの関係でございます。

高橋禎一自由民主党

○高橋(禎)委員 ちょっと関連して。――この問題は新聞の記事、それから先ほど来の両委員の質疑応答等を承わっておりますと、何か関係の神父が帰国したということは、この事件の上からいけば長蛇を逸したという感じを抱かせるのであります。もとより犯罪捜査はむずかしいことですし、またいろいろ偶然の事情も出て参りますので、一がいに断定はできないのですが、しかし、関係が外国人であり、しかもそれが国外に出たということによってもう事件が解決がつかない、そしてそれがこのまま終るというようなことではこれは被害者の遺族の方々の感情、それから日本国民全体の国民感情、それにまた将来の外国人犯罪の取締りについての悪影響、そういったことをいろいろ考えますと、この段階でさじを投げてどうにもならないなんというようなことにしては大へんだと思うのでありますから、今後警察官並びに検察庁方面と十分連絡をとって、これが解決をするように最善の努力を払っていただきたいということを、まず希望いたしておきます。  そこでお尋ねをいたしたいのは、先ほど来質疑応答を聞いておりますと、この点はどうかなという疑問が起るのです。というのは、外国人であるためにあまりにも大事をとり過ぎるといいますか、捜査のやり方が不十分、不徹底であったのじゃないか、こういう感じを持つわけです。そこで、そういう場合には、どうしても警察官は検事とよく連絡をとって、そうして衆知を集めていくべきでありて、その一方が独走しておるというようなことになりますと、今日のような事態になると、国民は非常な疑惑を持つ。捜査が下手であったのじゃないかなという疑いを持つわけです。本件においては、当初から警察当局は検察庁と十分な打ち合せ、協議、連絡等をなさって出発されたものであるかどうか、その点をお伺いいたしたい。やはり渉外的な事件ですから、これはほんとうに関係者は衆知を集めなければならないのです。特に捜査をやっておる段階において、外国に出ていきはしないか、出国するようなことがないかということもよく念頭に置いてやらなければならぬ。本件の場合は、それは一体どう考えられておったか、非常に疑問なんですね。ただ外国人なるがゆえに非常に手心を加え、不徹底なやり方をしていく、それだけに終ったのじゃないかという疑問なんです。少くとも捜査の対象となる、本件でいえばその神父の取調べを始めると、これが帰国するようなことはなかろうかということも、やはり考えてかからなければならぬ。ところが、そういうことになりますと、出入国関係の人とか、その他外務省の方とか、いろいろの対外的な問題解決に関係を持っておる人たちと相談もし、協力を求めて、そうして手段を決定してやらなければならぬと思う。ただ漫然とやっておると、こういうふうに帰国してしまうと、どうにも手のつけようがない、こういうことになる。本件はそういうことじゃなかったかと、私としましては疑われるのです。国民全体としても、やっぱりそういう疑問があるのじゃないかと思うのです。だから、第一には、検察当局と当初から協議されたかどうかということ、第二には、これは外国人であって、出国するようなことがあったら捜査はもう不成功に終ってしまうのだから、万全の措置を講じてかからなければならぬ、いつ出国するかもしれぬということを念頭に置いて捜査をされておったものかどうかということ――ただあなたの御答弁といいますか、お考えだけでなくして、実際こういうふうな協議をし、そうしてこういうふうな方法でもって、出国するようなことがあっては大へんだからというので、いろいろ措置を講じておったのだということを、一つ実証していただきたいと思うのです。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 これは殺人事件に違いございませんが、非常にむずかしい殺人事件でございます。と申しますのは、殺人事件で死体は確かにあるのですけれども、この被害者を含めての関係者が、いろいろ日本の国内事情と違いまして、カトリック関係の教団の事情等も、捜査当局としては考えなければならぬ。その他、殺人事件で、大へんにむずかしい事件でございますので、警視庁の関係機構が非常に苦心することはもちろんでございますけれども、所轄の東京地方検察庁とも十分連絡いたしまして、苦心に苦心を重ねまして捜査を進行したというのが事実でございます。このベルメルシュ神父が被疑者であると疑われるに足る資料は得られませんでしたけれども、参考人として、いろいろ被害者の事情に詳しい方であったりいたしましたので、その人をどういうふうに処置するかについて十分考えまして、検察庁とも十分相談いたしまして、人を殺したと疑うに足る資料は得られませんでしたけれども、いろいろ事情を聞こうじゃないかというので、場所なども選んで、事情を聞いたのであります。日本人の場合でありますと、東京の人が鹿児島に逃げるとか北海道に逃げるというような場合も想定して、いろいろなことをやるのは当然でありますが、同様な意味におきまして、この場合におきましては、外国へ帰るということも念頭に置いて、出入国管理機関等とも連絡いたしまして、そういう気配があったら教えてもらいたいということを連絡いたしたのであります。その連絡は出入国管理機関におきましても全うしていただきまして、われわれ捜査当局としては、そういう交通の自由がありますから、なるべく被疑者という場合においては、疑うに足る十分の資料を得ぬでも、犯罪の強制処分のような方法に持っていくことができる場合には持っていきたいという努力をいたしたのであります。いろいろな捜査の段階では、そこまで疑うに足る資料が得られなかったというような現状でありまして、苦心を重ねて検察庁等とも十分相談をし、出入国管理機関の御協力も得たのでありますけれども、不幸にして、出国前において被疑者ということを疑うに足る資料を発覚するに至らなかった、こういうことであります。

高橋禎一自由民主党

○高橋(禎)委員 今の第二の問題について、今のお答えでは、私は十分了解できないわけです。特にこれは坂本委員からも質問があったところでありますが、坂本委員も、証人として取調べをするというようなことをなぜしなかったのかという点を非常に強く述べておられましたが、やはり私も同感なんです。と申しますのは、出入国管理の規定からいたしますと、先ほど入国管理局長が申されたように、いよいよ出国しようと思えば、もうあっという間に出国することの可能な状態なんです。そうしてこの被害者の武川知子さんと非常に密接な関係がある。被疑者としてほかにだれ一人も取り調べておらないし、そういう関係の密着した者一人も調べていない。そのような状態において、最も関係の深い、そうしてその事件について最も認識の深いこの人が、帰国しようと思えばどうにもとめることのできないような状態にあるということを十分承知しておられるのであるならば、有力なる供述というものは、やはり裁判所をわずらわして、正式に宣誓をさせて証人として取調べをしておくということが妥当であり、適当であり、そうして、そうしなければならぬと私は思うのです。それをされなかったというところに、いつ出国するかもしれないというようなことを考えないで、ただ外国人だというので大事をとりつつ捜査をしておったのではないですか、それが今日の結果を招いたのではないか、そういう非常な疑問を持つわけです。これについてどういうふうなお考えで進まれたのか、どうも私、先ほどの坂本委員のこの点についての質疑応答を伺っておりまして、了解できない。どうでしょう。ここは率直に述べていただかないと、将来いろいろ本件の捜査にも、また国民全体のこれに対する見方というものも変ってくるわけです。やはり率直に反省をしていくことがいいのではないかと思うのですが、この点はどうですか。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 今お話のように、事件というのは、いろいろやりました結果において、過去のことにつきまして反省をして、本件事件はもちろんですけれども、将来の事件について十分に謙虚な気持で検討するという点については、全く同様に考えております。本件の場合には、非常に被疑者としては無理だったということは了解できたとしても、証人としての強制上の措置ということは、刑事訴訟法上道があるのだから、そのように処置すべきではなかったか、こういう御意見のように伺ったのでありますが、私どもといたしましても、そういった点につきましても考慮いたしたのでありますけれども、証人としての供述を求めたわけではありませんけれども、一応五日間にわたって供述をしておる。それに追っかけて証人としての手続をとるということにつきましては、まだ他の捜査とも関連し、たとえば胃の中の分泌物の解明等を待って事を解決すべき問題等もありますので、そこまで踏み切るというような事態の認識ということについて事実認識を持たなかったものですから、そういうことになったのでありますが、今後の問題といたしましては、この事例も一つの参考でございますが、いろいろな過去の事柄等も含めて十分検討して、今後の捜査並びに類似の捜査につきまして、少くとも現行法のもとにおいても、できるだけの最善を尽すという、そういう努力については、われわれ謙虚に各方面の御意見も聞いて、努力して参りたいと考えております。

高橋禎一自由民主党

○高橋(禎)委員 今の点は私は非常に大切だと思うのですよ。というのはやはりこの神父を取調べをするということ自体が、非常に大事をとって、その着手の時期等もずいぶん考えられたものだと思うのです。     〔委員長退席、井伊委員長代理着席〕 それで、いよいよその調べに着手されてから、五日間も調べておられるわけですね。こういうときには、やはり出国をするであろうということも念頭に置けば、その措置についていろいろ考慮されなければならぬ。そのときにどういう方法があるかというと、これは出入国管理の規定の上から言いますと、先ほど来関係局長から説明がありましたように、手はないわけなんですね。そうすると、いよいよこれは被疑者として取り扱うべきであるかどうかという、非常なきわどい段階に差しかかったときに、私は、やはり証人の尋問というような正式な手段によって、まあ簡単に言えば、時間をかせぐということは、この事件においては非常に大切なことじゃないかと思うのですよ、問題を裁判所の取調べに託してですね。そうすれば、外国人であるから、こういう状態であれば、あるいは拘引するというようなこともできるかもしれぬし、まあそういういろいろの点を考えますと、私は、この証人としての尋問方法をとられなかったということはこの事件において大きな過失じゃないかと思うのです。そこはどうなんですか。法律の関係もありますでしょうし、刑事局長からでもどなたからでもいいですが、一つお答えを願いたいと思います。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内説明員 私は本件の捜査の内容につきまして、十分な知識を持っておりませんわけでございますが、先ほど中川刑事局長から捜査の模様につきまして御報告もありますし、また断片的ながら地検から聞いておりますこと、特に週刊朝日等に詳細に出ておるわけなんですが、こういうものを読みまして、私の感じから今の御疑問の点について想像いたしてみますると、今高橋委員の仰せになりました証人尋問の手段をとるべきかどうかということにつきましてはこれはもうとってもいいし、とらぬでもいいし、それはいろいろ御議論もあろうかと思いますが、ただ捜査官憲がなぜとらなかったであろうかということにつきましての意見を申しますと、御承知のように、証人尋問というのは証拠保全の方法なのでありまして、これは申すまでもないことでございます。従って私は、このベルメルシュ氏が犯人だということになればもちろん問題ありませんが、第三の人物が犯人であるということになって、それの証拠としてベルメルシュ氏の供述がどのようなものであるかというふうに、事件が確定しておりまして、犯人が確定しておりまして、そうしてそれの証拠として警察の調書だけでは裁判所の証拠能力が認められていないというような状態におきましては、それは当然証人尋問ということで、それを法律上の能力がある証拠として証拠化するということを考えなければならぬと思いますが、本件はまだだれが犯人であるかということがわからない、それを見きわめる段階においての捜査なんで、もちろんこれは正式に捜査に着手して、捜査段階でございますから、その一人々々が証人であるわけでございますけれども、そういう意味の証拠化をする、証拠能力を保全するという意味においては、私は必ずしも裁判所による証人尋問ということを必要としていない段階ではなかろうかというふうに思うわけでございます。これは純捜査上の犯人割り出しという面からの議論でございますが、また別途大きな観点から、そういう場合には裁判所のスクリーンにかけておくということが適切な処置だということは、御議論はもちろん成り立ち得ると思いますけれども、今の段階においては、証拠保全ということよりも、それによって生ずる犯人はだれであるかということを目ざしての捜査段階でございますので、今証拠保全という意味では必ずしも考える必要がなかったんではなかろうか。そういう意味で、中川局長の意見に賛意を表する音意味で……。

高橋禎一自由民主党

○高橋(禎)委員 関連質問で長くなって恐縮ですが、今刑事局長の弁護論があったのですが、私はこう思うのです。というのはこの事件というものは、外国へ出られたらもうほとんど解決がつかなくなるような危険のある事件なんです。ところが、先ほど来お話があったように、出入国関係の規則からいえば、これを押えておく方法がなかったわけですよ。そういうときに、刑事訴訟法においてはとにかく重大な事件について知っておる人は、これは被疑者たることが明瞭ならば被疑者として取り扱えばいいが、そうでない段階においては、やはり証人尋問という合法的な手段もあるわけで、被疑者それがしの殺人事件についてこの神父はよく知っておるから、それを将来証拠にとっておくということは、これはまた理屈に合うわけなんです。法律的にもまた事件解決の事情等から見ましても、どこにも無理がないのですから、やはり率直にいえば、さっき申し上げたように時をかせぐのです。もう一時間日本に置いたら、そうして調べたら、事件解決の端緒が得られたかもしれないというきわどいところなんですよ。着手に十分考え、五日間も調べたというこの捜査官の熱意からすれば、非常なきわどいところまできておるのです。そういうときには、えて国内の関係者でも、逃亡する、姿を消す場合もありまするし、こういうふうな外国の人であれば、簡単に帰国できるものだったら帰国するという危険もあるのですから、まあ裁判所の手をわずらわすという合法的な形をとって、そうしてどこから見てもこれは無理がないのですから、それをやられた方が、むしろ今の日本の法制、それからベルギーとの共助関係というような点から考えて、事件解決のもう最善の、むしろ取り残された唯一の方法じゃないかと思うのですが、それをやらないで、漫然と帰したところに、私は大いに反省してもらわなければならない面があるのじゃないかと思うのです。だから、弁護論は弁護論として拝聴しておきますけれども、国民が納得せぬということですし、まだ専門家でも私たちと同じような考えを持たれる人が相当あると思うのです。が、まあこれはもう取り返しのつかない問題です。しかしそれだけの手段をとられなかったということを、今度の捜査の努力によって取り戻していただかなければならぬ。  そこで、いよいよ捜査を進めることによってこの神父が被疑者であるという心証を得られたというふうな段階において、何かこれからとるべき措置があるかどうか、それを承わりたいのです。すなわち、ベルギーとの関係において共助的な何かの方法があって、解決の道があるかどうか。それは制度としてでなくとも、便宜上その他どういう方法があるか。もうあの神父は被疑者である、殺人犯人であるということが日本国内の捜査によってはっきりしても、全然手のつけようがないのかどうか、そこのところを………。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内説明員 法律的には手段がないのではなかろうかというふうに私は考えます。御承知のように、日米間におきましては、日米犯罪人引渡条約がございまして、それによって引き渡しを要求するということはできますが、ベルギーとの間にはそのようなものがないわけで、法律的に公権をもって日本に引き寄せるという手段はないと思いますが、先ほど中川局長からもお話がありましたように、事実上といいますか、きわめて友好国間の協力関係によってそういう方法があるかといえば、これば任意行為でございますので、そういう道があるいは残されているのかもしれませんが、条約上あるいは法律上これを引き取るという手段はないのではないかというふうに考えております。

高橋禎一自由民主党

○高橋(禎)委員 簡単にもう二つの項目についてお答えを願いたいと思うのですが、神父帰国について、今まで調べられて、何か正当な理由、急いで帰らなければならない他の理由があったものであるかどうか、そこの点を一点伺いたい。  それから、入国管理局長には、これはまあ坂本委員からもいろいろ質問のあった点ですが、たとえば捜査当局が今逮捕状を出そうとして準備しておるのだが、飛行機をもう一便おくらせれば逮捕できるのだがというような急迫な事態があって、しかもその連絡があっても、あなたの方では規則だから承認を与えて帰さなければならないというような手続をおとりになるのかどうか、そこは多少の融通がきくのかきかないのか、法律運用の問題として局長はどういうようにお考えになるか。

中川董治警視監(刑事局長)

○中川説明員 お話の点でありますが、ベルメルシュ神父が十一日の夕方帰国したということについて、本人に何かそういった事情があったかということにつきましては私どもといたしましても関心事でございますので、ある程度調べたのであります。その結果は一応こういうことなのですが、本人は相当神経衰弱的な状況になっておるということ、お医者に見てもらったらそういう状況であったので、国へ帰ってゆっくり静養する、そうした方がからだのためにいい、こういう事情があったということが疎明されておるのであります。もう一つは、神父側から言えば、警視庁に五日間も調べられて、知っていることはみんな言ってしまった、これ以上知っていることもないので、そう捜査に非協力だとも思わないしと、こういうような二つの点で、主として前段の点だと思うのですが、結局本人は非常に神経が高ぶると申しますか、国へ帰ってゆっくりお母さんのもとで、親族のもとで静養するということが本人のからだ上非常に必要な段階である、こういうことで国へ帰った、こういうことが本人の身辺から言われております。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 非常にむずかしい御質問でございまして、また実際にそういう問題が起きますかどうかと思いますが、われわれ法律上の建前からいいますならば、有効なるものとして持ってこられた以上は、出国の承認を与えなければならないと思います。ただ、今もう逮捕状が出るのだからというような連絡がございまして、それが相当の権威ある筋からの非常に確実性のあるものでありますならば、――その場合に考えなければならぬのは、本人の不自由と基本的人権の保護という点からわれわれは考えなくてはなりません。その兼ね合いの問題でございますので、それが何時間ならいいという判断は非常にむずかしいので、われわれとしましては、それほど嫌疑が濃厚なものならば、それまでにやはり逮捕状なり何なりを出していただいて――出入国管理令の法令の建前というものは、こういうふうに基本的人権を保護するような法制にでき上っておるのだから、それを念頭に置いて、そこまで段階が追い詰められないうちに片づけていただきたい、こう思うわけです。

高橋禎一自由民主党

○高橋(禎)委員 そこで中川刑事局長、今お答えになった点は、相手はこう言っておる、こういうわけですが、捜査されたあなた方の方では、相手の言うのはほんとうだと思われたか、どうも怪しいと思われたか、そこのところなのですが、そうでないと理由がはっきりわからぬわけです。  それから今度は、きょうは警察、それから法務省の刑事局関係と、それから入管関係の責任者のお三人がいらっしゃるわけですが、今までこの委員会で明らかになったところでは、外国人が犯罪を犯して日本国を脱出する場合に、どうにもやりようがないというような状態、手のつけようがないという関係なのです。これはもちろんわれわれとしましても研究して、解決の道を講じなければならない問題ですが、また関係当局においてもよく研究なさっていただきたいと思うのです。ということは、日本でせっかく裁判権なんか持っておりましても、その犯人が外国人である場合、しかも相当外国人が多くて、外国人の犯罪率も相当高いわけですが、そういうふうな事態において、裁判権はこっちが持っているけれども、やって外へ出られるとどうにも手がつけようがないというのでは、有名無実と言うと極端な言い方かもしれませんけれども、日本国の治安維持の上からいいまして、国民保護の点から見まして、はなはだ遺憾だと思います。これを解決していけるような道を真剣に見出していただきたいということを要望いたしておきます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 江口警備局長は見えておりますね。――最初にお伺いしたいのですが、きょうは警察庁長官はどういう関係で当委員会に御出席にならないか、その理由を承わっておきたい。

江口俊男警視監(警備局長)

○江口説明員 私は直接聞いてはおりませんが、本日は十時から公安委員会があっておりますので、あるいはその関係かと思いますが、あるいはまたその以外の理由があるかわかりませんけれども、私としては特別のことは聞いておりません。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 われわれは国会における公務が最高の公務だ、こういうふうに了承しまして、国民の代表として法務委員会に委員として出席しているわけです。やはり法務委員会に出席を要望している以上は、すべての公務をできるだけやり繰って、絶対的に出てきて、この委員会の質疑に答えられるのが政府委員としての義務じゃないか、そういうふうに私は考えますから、今後は、委員長は今いませんけれども、法務委員会への政府委員の出席については、厳として守ってもらいたいということを要望して質問に入ります。  これは昨六月十七日のできごとでありますが、福岡県大牟田市三井三池炭鉱労働組合においては、三川支部の職場分会長の懲戒解雇を会社側がしましたから、これに対しまして団体交渉を六回持ち、すなわち生産が低下したのは分会長の責任でなくて、いわゆる組織全部で、この職場の総員でやった結果生産が低下したのであって、分会長を懲戒解雇するのは不当であるから、その解雇の通知を返送して、撤回すべきであるという要求を三池炭鉱労働組合でいたしまして、団体交渉を六回持ち、会社側がこれに応じないから、五月八日に第一次の二十四時間ストを決行して、さらに六月十七日の昨日第二次の二十四時間ストに入ったわけであります。そこで会社との交渉で、会社側から解雇理由について説明をするというので、午前十時から三川坑の繰り込み場で説明会が持たれたわけです。会社側は宮地という副長そのほか五名、いずれも会社側の責任者であって、組合側は灰原書記長以下千数百名のストに入った方々との説明会が持たれた。その際に宮地副長が、三十分くらいして、ちょっと用便か何かに立ちまして帰ったところが、ズボンのポケットの中に短波無線の送信機を忍ばせておるということが発見されまして、それから問題になっていろいろ調査したところ、約百メートル離れた港クラブの二階において、受信機を備えてテープをとっておるということが発見された。その席上には会社の人事係長、電気係長その他技術者がおり、さらに大牟田警察の私服警官一名がおったわけであります。その一名に対して、どうしてここの場所におるかということを聞きますと、上司の命令でここにいてこのテープを聞いていたのだ、これは本署とも連絡をとってやったのであって、上司の命令である、こう言っておるのでありまして、組合側は本社並びに大牟田警察署に対しても抗議をいたしておる。こういう組合のことに警察官が介入する、これは大阪の問題あるいは和歌山の問題、いろいろありますが、こういう全国的な組合運動に対する警察官の介入、弾圧の一つの現われだと私たちは了解するわけであります。今炭労の大会が持たれておりまして、昨日、このようなことに対しては断固解決しなければならぬという大会の決議もあったわけでありますが、今申し上げました点について、まず調査の御説明をお願いしたいと思います。

江口俊男警視監(警備局長)

○江口説明員 お答えいたします。ただいま坂本議員からお話のございました点につきましては、その荒筋といいますか、大綱についてはその通りであったという連絡を受けております。しかしながら、何分にも昨日の事件で、詳しい点については私がここで申し上げることが絶対に確実であるということの自信は持ちませんので、その点御了承お願いいたします。  御質問の点は、この警察官が上司の命令を受けて行ったかどうかということだろうと思いますが、この点は警備課長の命令で参っております。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 そこでお聞きしますが、こういうような労使間の話し合い、交渉の場においても、やはり使用者側と連絡をとって、科学的機械である小さいポケットに入るような短波の無線送信機を備えつけて、近い場所でわからぬようにそれを受信する、こういうようなことは、警察が、現在の労働組合に対する、そういう段階における方法としてとられておることであるかどうか、その点もお聞きしたいと思います。  さらに、もしとられていないとするならば、大牟田警察署の警備課長ですか係長ですか、これはどうして巡査に対してその受信を命じたのか、その点を伺いたいと思います。

江口俊男警視監(警備局長)

○江口説明員 第一点につきましては、そういう方法はとられておりません。  それから第二点は、大牟田の警備課長はそういうものを受信してこいという命令をやったわけではございません。そういう短波のマイクを使ったということは、警察はもちろん無関係でありまして、会社で、千人のところに五、六人でございますか、行くので、その状況を知りたいという意味でつけられたものであって、警察がそういう機械を使って状況を聴取したというのではございません。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 そうしますと、本件は会社の宮地副長が送信機をポケットに入れて、百メートルほど離れた港クラブで受信をしてテープにとる、そのことを、――これは会社のものを使ったといえばそうですが、それを警備課長が巡査に命令してそれを聞くというか、これはいわゆる一つの調査だと思うのですが、そういうことをやるのはどういうようなことでそういうことをやったのですか。もちろん、こうやるについては会社側と緊密な連絡をとっていなければならぬと思うわけですが、そういうふうになりますと、警察は国民の警察でありながら、使用者側の代弁者、使用者側の使用人で、労働組合に反対の立場に立つ。これではいかぬと思うのです。やはり警察は国民の警察ですから、公平にしなければならぬ。日本が資本主義をとっているからといって、何も資本主義を前提として――労働運動は当然起きてくる。しかし、その労働運動の解決は公平にしなければならぬ。それを警察が、会社側が使っておるからそれを一つ利用するということでいくという、そのこと自体に違法がありはせぬかと私は思うのですが、その点いかがですか。

江口俊男警視監(警備局長)

○江口説明員 まず大前提といたしまして、労使双方のそういう交渉に介入していいかどうかということにつきましては、これはもう断じて介入すべきでない、中立を保つべきものであるということは、これは大前提でございます。しかしながら、それじゃどうしてそういう場合に状況の視察を命じたかということになりまするが、これは会社と組合との間のそういう争いの中に入るというのではなしに、そういう争いを原因といたしまして事案が起る可能性があるといいまするか、起るプロバビリティがあると考えました際におきましては、有事の備えとしてどういう状況であるかということをわきから見るということは、やはり最小限度の必要であろうかと思うのです。だから、労働問題に介入するという意味じゃなしに、労働問題を契機として起りまする暴力事案等に備える心がまえというものがなければならぬ。だからそういう視察をするというのは、組合活動の九九%といいますか、ほとんど全部については必要ないわけでありまするけれども、三池の場合を聞きますと、過去におきましても、四月の二十日でございましたか、数人のけが人を出しているような状況もあり、また五月の八日の交渉では相当長時間にわたるつるし上げ等があったことがあとでわかっておりますので、今度も、二十四時間ストに入るということと、それから大勢の目の前に数人を引き出して、そこで交渉されるというような情報を得ましたので、どういう状態だろうかということで出向いたそうでございます。それで、港クラブと申しまするのは、これは坂本議員も御承知かと思いまするが、炭坑のすぐ上の方にある現場から五十メートルだと私は聞きましたが、そこから見るというと、その中で行われている交渉――その交渉の内容はもちろんわかりませんけれども、様子というものは一目でわかるという位置にあるそうでございます。それで、そこから見ていたらよかろうということで行ったところが、たまたまそこで今のお話のような機械を使って聴取をいたしておった。それで警察官も、それじゃここで状況を見ている方がわかりがいいというつもりで見ておったところにこういう問題を起したということでありまして、初めからそういう機械を使って様子を探ろうということを会社と警察がぐるになって計画したものじゃないというふうに聞いておりまするし、ことに会社自体も、聞くところによりますと、きのう初めてそういうしかけを使ってみた。その機械は、何かおとといの晩かに何とかという商会から届けられたものであって、使ってみた結果の効率いかんによって代金を払うという程度のことで、まだ会社のものにもなってないと申しまするか、そういうあやふやな状態であって、きのう初めて使ったということでありまするから、大牟田警察署としましては、会社にそういうものをつけたらどうかということを示唆したこともなければ、また相談を受けて一緒になってそういう状況の聴取をやったということでもないのであります。ただ、ただいま御指摘になりましたように、そういう状況を見るについて、会社側の人と会社側の部屋で一緒になったような形で見ておったということについては、誤解を受けてもやむを得ないことで、適当であったかどうかということについては、反省しなければいかぬかと思います。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 何だか今の江口警備局長の答弁を聞きますと、三井本社の代弁者みたいなことで、まことに遺憾です。今初めてやっておるとかどうとかというようなことは、われわれは問題にしていない。そういうことは言いのがれです。というのは今までは、管生事件では秘密警察そのものが福岡の高等裁判所の判決で暴露されておるでしょう。さらに和歌山県での勤評闘争中には、和歌山西署の送達簿というのが拾われて、警察のスパイ活動がどうして行われておるかということがはっきりしておる。大阪府の平野署の作業報告書、この委員会でも問題にした一連の秘密文書がある。それがさらに今度は、すでに平和的に話し合い、説明会をしておるのを――警察官が来るから暴力が起るんですよ。だからこの会社の受信機を持っているところに、課長が命令をして巡査が行くなんてとんでもないことでしょう。誤解だけじゃ済まないですよ。労働者の弾圧になることがあなた方わからぬですか。しかも一方的に会社側の受信しているところに行ったのは、これは頼まれたと疑いをかけられてもやむを得ないでしょう。だから、単に見やすいところに行ったら、会社がそうやっておったから、そこに行ったと言ったのはまことに遺憾どころじゃないと思うのです。私は、一連の労働組合の弾圧に対する警察のやり方が、ここに暴露されておるのだと思う。こういうようなことはほかにまだ出てくるかもわからない。時間がありませんから、結論を聞きますが、こういうような場合に、警察官は、そういう受信機を会社側が使っていても、絶対そこにおるべきじゃない。独自の機械をもってやるにしても、われわれは、今まで相当抗議もし、使うべきでない、労働運動の弾圧になるということを主張してきたのです。これが会社と一緒になってやるということになったら、もう日本の警察は資本家の犬であって、労働者を弾圧するものだと言われてもやむを得ないと思う。われわれはまことに遺憾にたえないのです。現われたのは一つの事実ですが、みんな秘密的に行われておるでしょう。だから一事が万事で、こういうことが行われる。それが暴露されたからここに問題にされる。今までは秘密にやっている。だから会社側が受信をしていても、そこに行ってやるべきでない、こういうことは絶対排除すべきである、こういうふうに考えるが、その点についての所見はいかがですか。

江口俊男警視監(警備局長)

○江口説明員 私が先ほど、会社側もきのう初めて使ったものであるそうです、こう申し上げましたのは、福岡からの報告でそういうふうに了解しているわけでありますが、私の申し上げたかったのは、先ほど御指摘になったように、警備課長が、あそこで会社側が受信をしているからお前一緒にそれを聞いてこい、こういう命令をしたのではないので、それは警察としては知っていない。ただ様子を見に行ったらそういうことがあったということを申し上げたのであります。かねがねからそういうことがあるとすれば、それは前もってあそこに行けばあれが聞けるということで行くわけでございますが、きのうの場合は、たまたまそういう初めてのことであり、そういう問題に出っくわしたということを申し上げたわけであります。それで、最後の、それでは今からそういうことがあったら、会社側のそういう施設を利用して警察が状況を取るべきであると思っているのかどうかという御質問に対しましては、私はやはりそういうことをすべきではない、こう考えます。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 今御答弁を聞いたのですが、最初に、そこでストをやるとか労使間の交渉を持つ、こういうような場合にやはり暴力が起るかもわからぬというようなことは、これは私は警察法上、刑法上客観性がないと思うのです。少くとも警察権を発動する以上は、警察法上から考えても、やはり客観的情勢を判断した上のものでなければならぬ。ただ説明会をやる、労働者が多く集まって会社側と交渉している、それだから警察はすぐそれをやるべきだということになると、大衆というものは、警察の鉄帽を見ただけで誘発されるのです。だから、その点は非常に警察としては慎重にやってもらわなければならぬと思うわけなんです。竹内刑事局長にもお聞きしますが、さっきも申し上げましたように、管生事件でも秘密警察をやっているということは、これは証人調べで私なんか立ち会ったのですが、はっきりしているし、和歌山西署の送達簿、あれもごらんになったと思う。それから大阪の平野署の作業報告、あれなんかを見ても、常日ごろから労働者の運動に対してはやっておる。それから、時間がないからきょうは省略しますが、北陸鉄道労働組合においては、組合本部の印刷員を秘密警察のスパイに仕立てている。これは日を改めて究明したいと思っておりますが、こういうことをやっている。さらに今度は、その二十四時間ストに入って、その会社の責任者五名も出て、そして説明をする、分会長一名の解雇だから何とかこれを撤回さして正常のところに戻したいというのが三池炭鉱労働組合の趣旨なんです。それを短波無線の送信機をポケットに入れている。それはどこか用便かなにかに行ってひもが下っていたからわかった。調べたら、港クラブの百メートルくらい近くで私服の警察官がやっていた。これでは労働運動に対して最初から警察が何とかして欠点をつかまえてそれを弾圧してやろう、そうしたら労働組合の大衆運動の正しい主張というものは警察権によって剥奪されることになる。だから、このようなことは、われわれここ数年間にこういう問題が起きてまことに遺憾に感じているのですが、この際もっと正しい労働運動についての認識を、警察、検察当局は深めて善処すべきであると私は思うのですが、その点について、大臣はきょうできるかどうかわからぬけれども、事務当局の刑事局長としての意見を私は承わっておきたいと思います。

竹内壽平検事(刑事局長)

○竹内説明員 ただいま御提起になりました問題は非常に微妙な問題でもありますし、重大な問題でもございますので、いずれ大臣から御答弁をしていただくことになると思いますが、私ども事務当局の者といたしましては、これは一つの警察権、特にその中の警備権あるいは検事も含めましての捜査権、そういうものの限界の問題といたしまして理解しておるわけでございますが、これは一般的、抽象的に申すことはなかなかむずかしいのでありまして、ケース・バイ・ケースで限界の問題を司法的に取扱っていくというのが私どもの立場でございます。菅生事件につきまして示しました検事の考え方というのも御理解をいただけると思うのでございますが、ただ警備につきましても、警察当局からいつも御説明がありますように、捜査と同じでございますが、われわれの仕事が労使の間に介入していずれかに肩を持った取扱いをするということになりますことは、取締りの目的を果さないのでありまして、これは純粋に、色で申せば全く白でございます、それから考え方におきましても全く中立でなければならぬ、これが根本理念でございます。その間に一方を弾圧するというような意図のございませんことは、御了承願わなければならぬと思うのでございます。  なお、行き過ぎであったか、それでいいかといったような法律問題につきましては、そのつど、ケース・バイ・ケースで、事実を見きわめました上で判断をしていくのが私どもの態度であります。

坂本泰良日本社会党

○坂本委員 そこで江口警備局長に、これは抗議なり要望ですが、これは重大な問題ですから、次の委員会でもまた質問したいと思いますので、やはりあなた方の方でも真相を調査しておいていただいて、今後はこういうような会社側の一方的な態度、ことに警察が入らないように、十分の注意をしてもらいたいということを要望いたしておきます。

井伊誠一日本社会党

○井伊委員長代理 それでは、本日はこれをもって散会いたします。     午後零時四十三分散会

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