内閣委員会 第28号
- 発言数
- 74 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/04/07
会議録
○内海委員長 これより会議を開きます。 農地被買収者問題調査会設置法案を議題とし、質疑を許します。茜ケ久保重光君。
○茜ケ久保委員 農地被買収者問題調査会でありますが、政府の提案を聞いておりますと、今非常に問題になっております旧地主諸君の団体としまして農地解放による被買収農地の国家補償を要求しておる。これはいろいろな問題を含んでおりますが、もちろん中には旧地主の諸君に対して同情すべきものもないとは言えません。けれども旧地主諸君が主張するように、国がこれを莫大な費用を投じて補償しなくちゃならぬという理由も絶対容認できない点があるのです。この法案を見てみますと、政府の提案理由によると、何か非常に苦しい理由をつけておられるようでありますが、やはり何と申しましても、これは旧地主連盟の諸君の強い要求に政府が負けて、何らかの面子を立てなくちゃならぬといったようなにおいがないとは言えないのです。それで逐次御質問申し上げますが、この法案の提案理由にありますように、決して補償するのではない。補償するのではないが、社会的ないろいろな問題等もあるようであるから、そういったものを調査研究するのだということでございますが、総務長官は良心的な方でありますので、おそらくかなり人間的な苦しみをお持ちになっているのではないかと思うのですが、一つこの点に対して政府当局のもっと詳しい御説明を冒頭にお伺いしたいと思います。あるいは自民党の委員の諸君に対してお答えがあったかも存じませんが、社会党としては今日初めての質問でありますので、なるべく詳しくこの法案提出までのいきさつを御説明願いたい、こう思います。
○松野政府委員 被買収者問題調査会の提案理由は、先般提案理由の内容で御説明申し上げました通りでございます。なおこの問題は、あえてわが党のいわゆる地主団体に関する問題ということにあらずして、これは多年懸案になっておる問題でございまして、ことに農地改革を基本的に改正しようとか、そういう意味の審議会ではございません。被買収者のその後の農村における社会的問題が今日でも多数潜在しておりますので、その問題を中心に審議するのが目標でありまして、農地法の是非を議論したり、あるいはかっての農地改革そのものを議論するという意味の調査会にあらずして、その後における社会的問題が農村に潜在しておりますので、この問題を調査審議するのがこの法案提案の理由でありまして、旧地主団体のためにというわけではございません。農村そのものの中にこういう問題が多数ございますので、それを一つ明らかにして、今後不安なきようにしたいという意味の調査でございますので、さよう御承知をお願いいたしておるのであります。
○茜ケ久保委員 総務長官の御答弁のような趣旨なら、これは何も今さら被買収農地問題の調査会などというものをお作りにならぬでも調査できます。政府のいろいろな機関がございますから、これは私はできると思うのです。特に農地を買収された諸君のその後の社会的な状態の調査が、こういったものを作らなければできないはずはありません。それができぬような政府なら、政府の責任は遂行できませんよ。今さら被買収農地から起った問題について、わざわざこういう総理大臣の諮問機関としての調査機関を作る必要はどこにありますか。少くとも内閣調査室もあるし、いろいろな機関があるはずです。潜在と申しますが、これを二年間もかかって徹底的に調査しなければならぬような問題はないはずです。ただ一部の旧地主諸君で貧困にあえいでいる者もあることは事実です。そういった問題は今さらこんな機関を お作りにならぬでもちゃんとわかっておるはずです。こういう実態の中で、ここにわざわざこういう名目をつけて、社会的な副次的な問題の研究をするとおっしゃること自体の中に、私は非常におかしいものがあると思う。それならもっとはっきり、さっき指摘したように旧地主諸君の要望があるから、どういう実態かそのことを調査して、補償するかしないかきめるとおっしゃるならまだ話はわかる。補償はしないのだ、あるいは農地法の改革はしないのだ、こうおっしゃっておりながら、ただ単に農地を失った旧地主の諸君がどんな社会的条件にあるかということを調査して何かするということは、私は今さらおかしいと思うのです。これはそんなことをおっしゃっても一般は認めません。そう言っても総務長官としても政府を代表してここで答弁される以上はそれ以上のことはおっしゃられないかもしらぬけれども、これは一般は認めません。そうなれば敗戦によって日本の社会はあらゆる意味で変革しておる。これは農地だけではありませんよ。もっと深刻な問題がある。農地は一応自分の持っていた財産がなくなっている。しかし全国的に戦災その他によって非常な失ったものもあるし、また非常な悲惨な目にあっている者もある。そういった者は全然放擲しておいて、ただ単に旧地主の農地を失った者だけについてそういう特殊な機関を作ってやることは私はいかにも論理的にも実際的にもおかしいのじゃないかと思うが、こういう点に対してはどういうふうなお考えですか。
○松野政府委員 終戦以来今日まで、もちろん農地の問題に関する旧被買収者の問題というのはずいぶん出ておりました。もちろん遺家族の問題、あるいは戦災の問題、あるいは引揚者の問題、順次大きな問題もございまして、そのつどその問題についての研究、調査、結論を得ておりますが、被買収者の問題はそのまま放置された期間も相当長く、しかもその構造人員も多く、しかも農村という特殊な条件のもとに放置されておるために、その問題もおのずから相当政治的にも社会的にも問題が多いものでありますから、この際やはり調査会を設置することは妥当な時期だと考えて私の方は提案をいたしたわけで、いろいろな問題もございましょう。ただ厚生省のいわゆる貧苦のことだけを調査いたしますならば、御承知のごとく政府の厚生省の所管事項の中にございますから、それで調査は十分でございましょうが、この調査会はそういう貧乏だどうだという問題を調査するにあらずして、被買収者のその後十数年の間における社会的問題を調査するのが目標でございますので、ただ各省にあります調査だけでは、まだこの問題の解決に資するわけには参りません。従って総理府に設置して、社会的総合的問題を調査するのがこの趣旨でございます。
○茜ケ久保委員 それは幾らでも御説明はできましょう。できましょうけれども、私はやはりこの根を洗ってみれば、被買収者農地の補償ということがからまざるを得ないと思う。またそうでなければ、もし調査をなさってみても、これは意味がないと思うのです。あるいは農地改革の結果がこういう欠陥があるから、この農地法をこういうふうに変えるということでもあればまた意味はございます。旧地主の社会的の実態というものを調査して、こういう欠陥があるから農地法はこういうふうに変えるということであればまた意味がある。さらにまたこれはあまりにもひど過ぎる。いわゆる買収した当時のことは別としても、一応自分が持っておった農地を法律なり国の施策によって手放したために、旧地主諸君が社会的に見てもあまりにも悲惨な状態にある。これはいかぬ。買収当時の値段とかあるいは処置とかは別として、やはりこれは社会的な意味において救済しなければならぬということで、何らかの補償をされるということならまだ意味があります。農地法を改革することがいい悪いは別として、また補償することがいい悪いは別にして、そういうことなら調査会を設置されて、今までにできなかった面の御調査をなさることも私は意味があると思う。しかしこれを見ますと、補償はしないのだ、農地法は変えないのだ、こうおっしゃっておる。何を調査して何をなさろうとするか。調査する目標もわかりませんし、調査した結論を出して何をするかもわかっていない。ただ単に目的のない調査はあり得ないと思う。何かそこに目的があるから調査なさる。その調査は全然ここには出ていない。どんな調査会でも、内閣総理大臣が諮問する機関として設置される場合には、ちゃんとした目標があり、目的があるはずだ。その目的に向って調査をする。補償もしないのだ、農地法も変えないのだ、ただ社会的な問題に対してもっと検討するのだ。検討した結果どうなさる。目的のない調査は私はおかしいと思う。その点はどうですか。
○松野政府委員 農地改革によって相当大きな変動がございましたから、日本の農村における社会的問題として今日大きな問題が残っておりますので、それを調査するのでありまして、目的は被買収者の今日農村における社会的な問題の調査でございます。その結論はどうなるかということは、調査会の結論を待たなければ、私が今日こういう方向だという前もってレールを敷くわけには参りません。今日だれが考えましても、被買収者に関する社会問題が農村にあることは事実でありますから、その問題が調査の対象になるわけでございます。
○茜ケ久保委員 松野総務長官ともあろう人が、そういう答弁でよろしいのですか。聡明なる松野総務長官の答弁とも伺えません。今の答弁はなっておりませんよ。ただ単に社会的な問題になっておるからこれを調査するという、そんな答弁がございますか。それは私はおかしいと思う。その調査をした結果、たとえば社会問題になっておるものを調査する、その結果被買収者が非常な貧困状態にあって、これではあまり気の毒だから、何らかの処置をしようじゃないかということが出てくる。また農地法が非常に矛盾があるから、これを変えるということが出てくるかもしれない。私は結論は二つあると思う。一つは被買収農家が非常に貧困にあえいでおる、これは農地を強制買収した結果であるということ、一つは農地法に欠陥があるということが出てくる。ところがこの調査会法案を見ますと、はっきり補償はしないのだ、農地法とは別だとおっしゃっておられる。今あなたがおっしゃったように社会問題になっておるとするなら、その調査の結論は何かということになる。その二つをのければ私はないと思う。それなら厚生省なり農林省等で統計も出ておるし、いろいろな点でわかっておる。もう十数年もなるのに、農地を買収された旧地主諸君がどうなっておるかがわからぬようなことだったら、これは政府の責任ですよ。十数年ほったらかしておいて、知らぬ顔しておったというなら、これは政府の責任だ。今ごろからこんな調査会を作って調査をしなければわからぬようなことでは、政府は怠慢きわまりない、こういうことを私は感じる。国民も感じておる。従って今聡明な松野長官の答弁でありますけれども、私はやはりあなたの今の答弁ではその点については納得できない。もっと端的な答弁をなさる必要があります。
○松野政府委員 調査会の法案ですから、結論はどうかということを私はここで即断するわけには参りません。ただ私がただいまの御質問にお答えできることは、農地法そのものに触れることなく、しかも過去の補償をやり直すような、そういう場面の補償はしない。この前提のもとに何らかの対策というものがまた別に考えられるという結論が出ますならば、それは当然その結論に従うつもりであって、全然結論がないではないかという御質問には、私はまだ御賛成いたしかねます。ただいまの二つの問題、すなわち農地法を新たにいじくるにあらざること、第二番目には、最高裁の決定もございますので、過去の補償が不正だとか、あるいは修正だとかいう意味にあらざる問題、その二つの問題は明確にしておきますが、そのほかに何らか社会的問題に対する対策あるいは救済的措置という結論が出て参りますならば、それはおのずからその調査会の結論を尊重するという意味でありまして、その二つを抜きにすれば全然結論がないではないかという御議論に、私はこの提案者としては賛成いたしかねます。その前提が二つありまして、なおかつ結論というのが出てくる問題が私たちはあると思う。その意味において衆知を集めて調査会を作ることが妥当だという意味でありまして、それで農林省所管にあらず、厚生省所管にあらず、大蔵省所管にあらず、総理府に持ってきたというのは、そういう幅の広い意味における調査をいたしたいという趣旨でありますので、どうかこの意味をよく善意で御了解願いたいと思います。
○茜ケ久保委員 それではお尋ねしますが、この調査会の結果がどうあろうとも、農地法の改正と、いわゆる被買収地主に対しての補償は絶対にしないという政府の決意であるかどうか、この点を一つお聞きしておきたい。
○松野政府委員 過去における農地改革に対する補償を再び修正するとか、あるいは過去にさかのぼるというような意味の補償、断じてこの調査会に諮問をいたすつもりはございません。今日すでに十数年を経た農地改革によりまして、今日の農地法ができ、その現存の農地法に対して、この調査会というものに対して諮問をいたす気持はございません。せっかく生産性が上りつつある日本の農地というものをたびたび変動させることは、政府としてはとらざる点であります。ただそれ以外に、改革によって、大きな変動によりまして、今日農村における社会問題というものが現存することは、私は被買収者のみならず、農村の中における大きな社会問題だと存じます。その二つの前提のもとにこの調査会というものの結論を期待するのでありまして、従ってその意味はよくおわかりのことでございましょうから、一つ善意に御解釈を願いたいと思います。
○茜ケ久保委員 関連して農林大臣にお尋ねいたしますが、あなたは農林大臣として、今総務長官が盛んに力説されるような、いわゆる敗戦後の農地改革によって、被買収農家を中心にいろいろな問題が起っておるということをおっしゃっておるのですが、農村にそういういわゆる旧地主を中心に社会的な問題があるということであれば、あなたは当然農村の最高指導者として、かつての地主が農地を買収された結果として、現在農村にどういう社会問題が起っておるか、これは御承知になっておるはずです。今総務長官が答弁されたような、いわゆる社会問題がどのような形でどういうふうに起っておるか、あなたの見解を承わりたい。
○三浦国務大臣 この問題はただ単に表面に出ました問題をそう軽々に扱うわけにいかぬと思います。私はそういう面をもちまして、農政の面にくる面はいろいろの施策はあろうと思いますが、その他の問題、すなわち総務長官がるる申し上げたような現象等があるのですから、それを正確に把握して、先ほど言うた二原則と申しますか、それらには触れなくても、他に何らかの考え方なりあるいは方策がありゃなしや、こういうことでございますので、私はこの問題はその線に沿うて扱うことが至当だと考えております。
○茜ケ久保委員 答弁が違いますよ。私が質問しているのはそんなことじゃありません。現在総務長官が指摘されているのは、旧地主を中心に農村に大へんな社会問題が起っているということです。その社会問題とはどんなものだとあなたは把握しているか。あなたは農林大臣として当然日本の農村の実態は握っているはずなんです。その握っている中で、旧地主の諸君を中心に農村にどういう社会問題が起っているか、その起っている実態をおっしゃいというのですよ。そんなあなたに総務長官と同じ答弁を聞いているのじゃない。あなたに農林大臣としての責任において、どんな社会問題が起っているか、その社会問題の実態を聞きたいというのです。
○三浦国務大臣 これは断片的な事象をもってして判断すべきものではないと思います。従いまして農林省としましては、個々の現象的な問題はありますけれども、これを総合的にあらゆる面からどういうふうにすべきかということのお尋ねがありますけれども、その問題につきましては、調査会をもってなお周到なる調査を待たなければ、われわれは適切な資料は持たぬというのが現状だろうと思います。
○茜ケ久保委員 あなたは何を聞いているの、質問を。私は対策を聞いているのじゃありません。どんな現象が起っているかという現象を聞いているのですよ。総務長官がさっきから重大な社会問題があるとおっしゃるから、それを聞いているのです。総務長官の指摘する、旧地主を中心に農村には重大な社会問題が起っている、その社会問題はどういう現象が起っているかということを聞いておる。それを農林大臣のあなたは知らなくてはならぬ。その実態を聞いているのですよ。施策はあなたに聞いてはいない。
○三浦国務大臣 実態といいましても、これは一般的な観測であるならば、従来の地主の地位から転落して貧困に直面しておるというようなことは言えると思う。しかしここにいかような状況になり、いかような環境にあるかということは、これはやはりただ単に抽象的なお答えでは尽せないと私は思います。
○茜ケ久保委員 一体貧困になっただけなら、社会問題はありませんよ。たとえば今おっしゃったように、旧地主が貧困になっているとしても、貧困になっているだけなら問題はない。その人だけの問題だ。社会問題だというのは、その貧困になった旧地主と、土地の解放を受けたかっての小作人とのいろいろな問題とか、あるいは村政上、村の経営上、農村の経営上、それを中心にいろいろな問題が波及して、社会的な問題となっているところに社会問題ということがある。ただ単に旧地主の農家が貧困化して貧乏になっているだけでは、社会的な問題とは言えない。それがいろいろな問題に波及して、農村経営上非常に重大な問題があるとか、あるいは部落経営上何か問題があるというところに社会問題ということがある。(「ほんとうに困っているのだ」と呼ぶ者あり)今こちらから声がありますが、困っているということはわかっている。困っている現実を調べてみてどうなりますか。補償をしなければ困っている旧地主は救われはしない。そうなりますと、今自民党の席から声があったように、泣いているのだ、困っているのだ、それならその実態をちゃんと調べて、これを泣かないようにしようじゃないか、それなら補償なんだ。どんな形にしろ、今貧乏して困っているのを調べて、泣いているから何とかしょうというなら、これは補償以外にありませんよ。補償しなければ意味ない。そんなことはわかっている。従いましてちゃんと自民党の腹の中にあるのだ。地主連盟にすがられて、それならそれではっきりおっしゃればいいのだ。もっとはっきりされてもかまわない。社会党が反対しようと、だれが反対しようと、あなた方が旧地主に対してそうした責任をお負いになるならば、私ははっきりこの法律を出したらいいと思う。自民党さんの腹にはあるのだ。三百人の大政党ですよ。堂々とお出しになればよろしい。だれが見てもわかるものをこういうふうにひねくってお出しにならぬでも、ちゃんと旧地主の諸君がこういうふうに困っているから、これに対しては地主諸君が言うような補償はできぬにしても、何とかしなくちゃならぬということを表に出したらいいので、それをなさらぬところに私どもがどうしても納得ができぬものがある。今の農林大臣のお答えを聞いておっても、私は総務長官が社会問題と指摘されるその問題に対して何ら把握をされておらぬところに、やはりこういった現象が起ると思うのです。どうです農林大臣、あなたは日本の現在の農村問題で、一番重大な問題は何とお考えになりますか。私はこういうことをなさる前に、もっと現在の日本の農村においてはほかに重大な問題があると思う。そういう問題をほうっておいて、ただ単に旧地主の貧困化している者に対してだけこんな調査会をお作りになるのは私は片手落ちだと思う。総務長官には私は先ほどからいろいろなことを申し上げたが、あなたは農林大臣だ。農林大臣ならば農村にはもっとほかに重大な問題がたくさんある。たとえば指摘すれば、この前問題になったあの繭糸価安定法によるところの三十三年度の蚕繭の処理についても、政府は三十三年の繭価は最低千二百円を保障するといっておきながら、ついに保障されなかった、こういう問題もある。これもそのままなんだ。これは八十万農家が泣いている事実なんだ。ところがこれに対してはあなたは終始ほおかぶりして、ついにああいう結果になった。酪農の問題、山林の問題を取り上げてもそうなんだ。いろいろな問題がある。そういう旧地主でなかったいわゆる一般農民の切実な要求に対してはほおかぶりされているあなたが、旧地主に対してはこのように温情あふるる調査会を作ろうとされるところに、私は矛盾があると思う。一つ農林大臣の所見を伺いたい。
○三浦国務大臣 農業政策上なさなければならぬ当面の重要問題でありますことはよく承知しております。従いましてわれわれは終戦後に展開しておりました農業政策の上におきましても、なお基本的な考え方をいたしたいために、さきに御審議をいただきました基本問題の調査会等の提案もいたしたわけであります。昨年来の当面の問題でありました蚕糸対策につきましてもいろいろ御非難がありますけれども、私たちはこれを切りかえて新しい態勢においてこの問題の一つの安定点を見出したいと考えております。同時にまた酪農等についても非常に御非難がありましたが、すでに昨年来の対策によって安定の態勢に動いていることは御承知の通りであります。そういうことでございますからこれはおのずから別個の問題です。同時に私は一言申し上げたいのでございますが、この農地改革は明治初年に行われました藩籍奉還にも比すべき問題だ。あの際におきましてもいろいろ処置されたことは御承知の通りです。これは私から一々あげるまでもない。しかしながらあの場合におきましてもいわば秩碌公債の増額等の請願が、帝国議会当時終始あったことも御承知の通りであります。これは当時の政府としてもとらなかった。しかしその他の諸施策等は、その当時の事態にふさわしいものも若干私はやったと思うのであります。従いまして先ほど来総務長官が仰せになりました二つの基本線はくずすわけにいかぬけれども、その間に求められるならば何らかの対策を得たいということは、今さら申し上げるまでもないのでございますから、この調査会の意義というものも決してむだではない。これによって事態を明らかにし、またそれからくる対策等もおのずから流れ出ると思うものでございますから、これに期待する、こういうことでございます。
○茜ケ久保委員 総務長官にお尋ねいたします。あなたは先ほど来の答弁で、農地法の改正をする意思もないし、かつての買収に対して補正するとか修正するという意思もない、従いまして補償する意思もないということであります。その点に対してちょっと裏からお聞きしますが、あなたはあの農地改革というものは、日本の経済あるいは農村の経営の実態から成功したものとお考えになるか。さらにもう一点は、その際に政府が一応法によって買収したのでありますが、買収の当時の価格としては不当なものでなかったというふうにお考えになりますか。この二点について……。
○松野政府委員 当然御承知のごとく、あの当時の価格としては妥当であったと考えます。なお今日あの改革後における農業生産性の場面は非常に生産性が上った、一部では確かに成功したのでございます。ただその急激な変化のために、ある程度社会問題がそのまま潜在的に残った事実だけは見のがすわけには参らない、こう考えております。
○茜ケ久保委員 ただいまのあなたの答弁で明確になりましたが、国会もきょうあすで自然休会に入ります。そういう非常に早々の際に、こういう内容を持った法案を政府で無理にお通しになろうとすることは——私も今了解できる答弁にもかかわらず、そうであるならば、今まで十数年間やってきたものに対して、この国会の末期に当って早々の間に通そうとされる感じがする。たとえば終始からっぽの自民党席が、けさ来てみますともう定員一ぱいお入りになっている。いつもはおいでにならぬ議員さんがお入りになっている。今までかってこんなことはないですよ。このからっぽの委員席が社会党が来る前に超満員の状態で、いかにもこの法案は何がなんでも上げるのだといった気勢をお示しになっておる。長い国会の審議の過程からおかしいですよ。政府と自民党さんがこの法案を何がなんでもこの国会中にしゃにむに通そうとされる。私はもしもそれほど重要な法案ならば、もっと真剣な検討が必要であると思う。しかもここにきてこういう状態で通そうとされるところに、やはり世間もこの法案の裏にひそむ何かがあるのではないかということを当然考えますよ。先ほど言ったように、私は総務長官を信頼しています。反対党の松野さんを信頼しておる。信頼しておる松野さんであるから、あなたの答弁を一応今まで伺っておる。しかしにもかかわらず、さきにも言ったように、ここでこの際しゃにむに通されようとするところに、やはりあなたの答弁の裏を考えなくちゃならぬものが出てくるのですよ。そのことはやはり私はいけないと思う。そこで最後に私は申し上げますが、きょうこういう状態でこの法案を無理にお通しにならないで、あるいは継続審議にでもして、次の国会あたりでもっと世間にも問い、いろいろな意味でこれを検討なさって、もっと慎重に御決定なされることの方が聡明であると思うのであります。従ってこれを無理にこの国会で通そうとなさる態度をお変えになって、もっと慎重に継続審議なさる御意思がないかどうか、この点を一つ伺いたいと思います。
○松野政府委員 この法案はきょう突然実は出したわけでもございませんし、当然余裕を持ちまして十分慎重審議をお願いするように、だいぶ前に十分な時間を実はとりまして提案をいたしたわけであります。なお御承知のごとく、ことしこれをやることが妥当だと考えております理由の中には、先ほど農林大臣も御答弁のごとく、日本の農業政策として基本問題の調査会もいよいよこの国会に提案をいたしまして、これは幸い衆議院を通過させていただいております。そのように今日大きな問題が農村に残っておりますものは、この際解決できるならばほとんど解決することが、より以上農村のためにいい時期ではなかろうかと私は考えております。これはあえて保守であるとか革新であるとか言わずに、農村を思うならばこの社会問題を早く解決することがいいと私は思います。
○茜ケ久保委員 私は質問をやめようと思ったが、最後に総務長官が保守党、革新党と言われた。私どもはこれが農村全体の問題ならば、喜んでこれに賛成申し上げる。ところが問題は、あなたが今はしなくも革新、保守とおっしゃったけれども、一部のかって長い間日本の農村を搾取し、日本の農村に君臨して参りました地主です。この地主の存在というものをあなた方歴史的に御検討なさったことがあるかどうか知らぬけれども、日本のかっての地主というものは、歴史的にいろいろなものを持っておる。そうして日本の農村が貧困化しいろいろな意味であえいできた原因の中には、やはりいい悪いは別にして旧地主の諸君の責任が相当あると思う。もちろん農地買収によって今貧困化しておる、そういった諸君の実態も知っておるし、そういう人々に対しては、やはり日本の農業政策の犠牲者として御同情を申し上げておるし、何らかの形でこれに対する施策も考えておる。しかし何と申しましても、今言ったように日本の農村全体を考えたときに、これは一部の問題であるし、何もそう急いでやる問題ではないと思っている。そこで言っているのです。しかし総務長官が最後に一言革新、保守とおっしゃって、何か社会党が農村問題に冷淡であるか、あるいは農業問題に対して不協力であるかのようなことをおっしゃったから申し上げておる。日本の農村の経営の発展こそは、日本の経済のほんとうの底力であり、それによって日本の社会は発展する。従って私は日本の農村の経営に対しては非常な関心と重大な責任を感じておる。従いましてこのこととは別に、いわゆる農村全体、農民全体という意味ではなしに、かつて一部の、私どもの立場から言うなれば、農民を貧困化し、多数農民に非常な圧迫を加えた旧地主の問題であるから、これだけ申し上げておるということを御了解願わなければ困るので、一言これだけをつけ加えて私の質問を終ります。
○内海委員長 石山權作君。
○石山委員 これはあなたの方の大先輩である綱島氏からも聞かれて総理大臣が答弁されたけれども、あなたは答弁されなかった。綱島先輩がどういうことを言っておるかというと、社会的問題とはどういうことでありますかと言っておる。第二に、もし調査審議した結果、社会的に打ち捨てがたき事情が明らかとなった折は、一定の補償金か善後措置を講ずる気があるかどうか、こういうふうに聞いております。特にこの前段の場合は、岸総理の答弁は、これは両岸だからやむを得ないのですが、やるようなやらないような、結局何をしゃべっているかわからないような答弁です。この社会的という言葉は、何だかぼさっとしていて、どこにでも逃げていくようなことで、これは答弁する方からすればむずかしいようで逃げやすい表現だろうと思いますか、社会的問題というのは、地主さんの場合一体何を意味するのか。たとえばというふうにして例を引いて下さい。地主さんに対する社会的問題とは一体どういうことを意味しておるか。
○松野政府委員 断片的にこれだあれだということをここで申し上げるのは多少早計かと存じますが、せっかくの御質問でございますから、私が二、三考えましたことを一つの御参考にお答え申し上げますれば、いわゆる農地改革によりまして急激に大きな変動がごごいました。そのためにある一面においては非常に農業生産も上り、日本の農村の前進も相当にありました。ただその取り残された一部として今日農村に大きな問題として残っているのが、被買収者に対する対策というものが何ら今日までできていなかった、これが社会的問題という事実でございます。
○石山委員 旧地主さんに対して特別は措置が講じられていなかった、しかしこれは本会議において厚生大臣が、これはいわゆる旧地主であるからとか新しい農民であるから、貧農であるから富農であるからという差別をつけて私の方では見ておりません、こういう答弁をしておる。そうすると旧地主さんに対して特別な調査をなされなければならないということになると、だいぶ根拠が薄弱です。そうすると貧困という問題とは別にして、旧地主さんが占めていた社会的地位というふうな、そういう身分的な旧制度的な地位を皆さんの方で御想像なさって、そういう御説明をなさっておられるわけですか。
○松野政府委員 社会的地位とかいうような問題を今日新憲法下において考えることは私たちはしておりません。社会的問題というのは、もちろん貧困という問題も入りましょう、あるいは生業の問題も入りましょう、将来の生活様式の問題も入りましょう、そういうすべての問題を含めて私たちは社会的問題というのであって、貧困だけを限定するとか生業だけを対策を立てるとか、そういう個々の問題にあらずして、急激な変化のために、ある方は生活の方針に対する不安を覚える立場の方もありましょうし、貧困の問題もありましょうし、そういうすべての問題が社会的問題だと私たちは考えております。
○石山委員 私はそういう答弁を聞いておると、特にこの法案を出さなければならないという理由はだんだん乏しくなっていくような気がする。それだったら、いわゆる貧困にあえいでいる農民の問題調査会とかいうふうなものを出すならば、これはもっと話が早いと思います。そこに特別に一般の各層に、たとえば農民階層というものが非常に優位な立場を占めておるのだ、特に旧地主さんの立場がそれに引き比べて特別な事情があるのだ、こういうことが現実的に理解されておれば、私はこの法案の題目というものは非常に意味があると思う。そうではなく、ただ調査をすると一切がっさいわかるならば、それはおかしな話なのです。地主さんの場合だけはよくおわかりになるが、今度は富農から貧農へ落ちて、だんだん田畑を放してしまって行方不明になっていく、その種の農民のことは何ら対象にしないでいいという御見解になるわけですか。
○松野政府委員 農業政策そのものの中におきます開拓農民の問題、あるいは零細漁民の問題、あらゆる問題は農林省におきまして当然農業政策の中において研究、対策を立てるべきものであり、今日これをやっておるわけであります。急激な社会変動によります旧地主の問題は、今日まで農業政策その中において研究するには妥当でございませんので、この社会問題の対策に対する調査会を総理府に設置することが一番妥当だと考えて、農林省にあらずして総理府に設置した理由はその意味でありますから、どうか一つその辺は混淆なさらぬように明確に御了解を願いたいと存じます。
○石山委員 では、この該当者はどのくらいおりましょうか。
○松野政府委員 いずれ調査会においていろいろな区分けはございましょうが、百七十六万戸くらいのものがいわゆる第一における総合対策の中に入る問題でございましょうが、これは総合数字でございますから、対策はどの程度立てるかということはその中で区分けをされましょう。今日の統計上におきましては一応百七十数万戸というのが、その対象の第一次に入る数字だと考えます。
○石山委員 一般的な農業問題は農林省でおやりになる、しかし社会的問題に関することだから総理府でおやりになるのだ、こうおっしゃるので、区分はかなりはっきりしていると私は思うのです。そうしますと、これは私たちが見ますと、急激な変化によって起きた問題だ、急激な変化というと、やはり何といっても戦争に連なる問題だと思うのです。急激な変化というようなことになりますと、一番手っとり早い場合は戦争に連なる場合だと思うのですが、そうした場合も、やはり学徒の問題だとか、あるいは爆撃を受けた人の問題だとか、これだって私は社会的な問題が腹蔵しているものではないかと思うのですが、その点はいかがでございますか。
○松野政府委員 あらゆる問題につきまして、それぞれその省及びその委員会において相当な対策を立てておるところもすでに十分ございます。同時にこの問題も立ててちょうどいい時期ではなかろうかと考えて、調査会法案を提出いたしたのでございます。
○石山委員 その法文もその時期もまことに適切だというような御意見で、自画自賛をなさっておりますが、私たちは今まであなたの御提案なさっておる法案をたくさん通したのですが、それは設置法にして十七ですか、それから審議会、調査会が十六、こういう法案をあなたの腕のいいところで通したという形になるでしょう。しかし私はこの法案が出たとき言いました。しかしあなたは一番最後にみそをつける法案をお出しになったなと、冗談めいて申し上げたのですが、こういうふうな目的が非常にあいまいで、しかもそれを強調してくると、特定の一部の人たちに何か思惑がありそうな表現に終る法案ですね、これは。やはり国民一般、全体から見ていこうとするものから見れば、少しく片寄っているように見えるわけですが、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)これはノーノーと言っても、ノーノーという人はそういうふうに見える。私のようにそう見える者も相当いるのでないかと思うのです。 そこで、この行方不明ということを私はさっきから申し上げておるが、これは岸さんをお呼びしてお聞きすればなおさらいいわけですが、そういうわけにいかない。総理大臣はあなたの言うことよりももっと責任がある方だと私は思いますが、こういうふうに言っておるのです。「本調査会は、その実情を明らかにして、これに対し何らかの措置を要するかいなかを十分一つ慎重に検討しようとするものであります。」一体やってやるのか、やってやらないのかわからない。これからやってやるのとやらないのと区別をつけるために調査する。そこに一千万円もかけなければならないなどということは、国民の税金を少し軽く見はしませんか。われわれは税金を納めているのですよ。ふところの小づかいをもって納めるのではない。生活費の大切な一部をさいて納税しておるのですよ。総理大臣はお金持ちだから、そういうことを言えるかもしれませんけれども、こういう答弁の内容ですから、行方不明になるような、やるのかやらないのか、やってもいいしやらなくてもいいけれども、ともかく十分に慎重に調査してもらう、そういう言い方なんで、それに一千万円もかけるのはちょっともったいない。そこは上手な政治的答弁かもしれませんけれども、政治的答弁の中に金がかかるのですから、私たちも文句を言いたいのです。これは慎重に十分に討論するだけで終るなら、私は何も言いたくないが、調査するだけで一千万円も金がかかる。そうして効果も何も上らない調査なら、もったいないじゃありませんか。一体何をそこから打ち出すのか。補償するのかしないのかわからぬというなら、何かわからぬけれども、十分に慎重に調査をして、一体何をここで打ち出すのか。何かがあるなんて、一体何があるのか。松野さんが言っておるが、何らかの処置を講ずる。何らかの処置とは一体何ですか。それではとうふをつかむのか、コンニャクをつかむのか、まるでわからぬ。何らかの処置とは一体何を意味しておるか。全く何らかの処置ということですか。
○松野政府委員 この調査会が発足いたしまして、いずれいろいろな議論が出て参りましょう。いろいろな結論が出て参りましょうから、その結論を対象にして——私は一応調査会の結論の前でございますから、何らかの処置が出てくるであろう、こういう意味で実は申し上げたわけで、とうふをつかむとか、雲をつかむ話ではございません。 同時に、相当突っ込んだお話でございますが、御質問の方もおわかりのように、この調査会の内容に入った点が非常に御質問に多いのです。それはいずれ調査会そのもので議論をしていただきませんと、この調査会の設置が今日の提案でありますので、内容の議論ならばいろいろございましょうが、これは私が答えるわけに参りませんし、調査会そのものに運営を自主的におまかせしなければならない問題が多いものですから、いろいろ議論もございましょう。ことに先日は同じこの委員会の質疑の中で、一千万円では少な過ぎる、こんなものでできるかという速記録をごらんの上、十分そういう質疑も出ておりますので、これは見方によって委員の中にもいろいろ議論があるのではなかろうか。一応一千万円で私は十分だという答弁をいたしましたが、多い少いは各委員の方の一人々々の御判断にもよりましょうから、この辺で一つごかんべん願って、ぜひ慎重審議の上、本日ぐらいで御審議を終っていただければ幸いだと思います。
○石山委員 これは長官のお言葉ですが、在来の調査会、審議会がどういうように運営されたかということを考えれば、あなたの、審議会に全部おまかせする、調査会に全部おまかせするという態度は見上げたものですけれども、実際われわれから見れば噴飯ものです。政府が自分に都合のいいことだけを第三者に代弁させているにすぎないじゃありませんか。弁解の材料として、審議会、調査会を設けておる。意図するところは最初からきまっておるじゃありませんか。税制調査会しかり、金融調査会しかり、あらゆる審議会なんかでも、上ってきたのをあなたの方でその通りオーケーと言ったことがありますか。国民年金制度の問題だってそうです。税制だって、上ってきた通りおやりにならないじゃありませんか。そういうことを考えてみますと、これから調査会で出ることを見ましてなどという言葉は、特に私さっき申し上げたように本委員会は二十数件の設置法で苦労したのですから、やはり私は、在来の委員会はどういう成績でどのくらいのことをやって、政府はどういうふうにこれを取り上げているか一応調べたのです。そして見ましたら残念でございますが、なかなかあなたの御答弁のような格好で委員会は自主性を持っておりません。それからその権威も認められておりません。私は言葉は悪いから、あなたに対してそれは第三者的な弁解だなどと言っているわけですが、実際から言うと中身に入るのはやはりあなたのおっしゃるように、ある意味ではいささか審議会、調査会の権威を私たちは傷つけているのかもしれません。しかし在来のことを言えば、政府はいつもこうやるのだ。いやいやそうじゃない、すなおになりなさい。先ほどもそういう声があったけれども、なかなかすなおになれないように数々のものを見せつけられているものですから、今回だけすなおになれと言っても、さてそんなに今回だけすなおになれるものではありませんよ。あなたはどうも何ぼ聞いてものらりくらりと上手に答弁する。実に答弁はうまいけれども、腹が立つ場合もあるわけだ。こんなものうまくごまかせ、おかしくてしようがないという気持があって答弁を繰り返す場合もあるわけだ。この問題は私は私なりにある点は了解できる。私は旧地主の罪悪なんか言っているのじゃない。旧地主の罪悪なんか言っているならば、岸さんなんか総理大臣にしておけないということになる。私はそういうふうに過去のことは過去のこととしてやむを得ないと思う。ただ現実を見た場合に、地主さんだけを特に取り上げなければならないような現象を——私たちはまことに見解が狭いのでございましょう。あなた方はあると言う。けれどもあるということをあなたは残念ながら説明できないのですね。農林大臣は今助太刀してうまく説明してくれるかしれませんけれども、私はそういうふうに見えないのだ。見えないものを見えるように賛成しろ、こういうふうなことになる。もう少しちょっと説明していただきましょうか。
○松野政府委員 石山委員がいろいろおっしゃいますが、腹に一物は何にもございません。従ってこれ以上私が何をおっしゃっても、これ以上腹にございませんから、答弁は全部実は今まで申し上げた通りでございます。同時にこの問題は社会的問題が今日あることは事実でありますから、その是非は別であります。やはり大きな改革のあとには相当大きな副次的な問題が残ることは事実でありますが、今日まで放置したというのはやはりある意味におきましては農地改革によって自作農の創設というのがございまして、それと相関連してこの問題を提案いたしますならば、逆に自作農に不安を起すようなことがあってはならない、その意味である時間をかけて今日まで待ったわけでありまして、すでに農地法というものが相当程度発展いたしております今日、逆行するという心配もございません。それで今度は両面から考えて社会的問題を解決するにはこの時期がよかろうというわけで、何にも腹にございませんから、御安心いただいてお願いいたします。
○石山委員 農林大臣の方にお伺いいたします。私は昭和三十二年でございましたか、農林省でお出しになった農林白書を、かなり分厚なものですが、一応読ましていただきました。読んでそのとき日本の農業の現状というふうなことは何ぼかわかったわけです。その中の地主さんの問題をこういうふうに法案に出して調査をなさっているわけですから、こういうふうなことは一体どういうふうに見て調査をなさっていられるかということですね。いわゆる農業は他産業に比べて生産性が非常におくれておる。これは綱島氏にも指摘されております。人口は三九%でありながら、生産所得は一六%というふうに指摘をされておる。そういう格好で、非常に低位だということですね。その低位の中においていわゆる富農と貧農の分離が行われてきたと言っております。この貧農は今のような農林行政では救われないだろうということが、学者の学説みたいなものになっているわけです。これに対してはどういう調査をなさっておるか。何らかの案は出ないのですか。一つそれを話していただきたい。 〔「基本法があるじゃないか」と呼ぶ者あり]
○三浦国務大臣 農政の根幹をなすものとしての問題でございますが、現在の農業が成立し得る条件というのは、申すまでもなく土地と労力と資本です。そのうち日本では宿命的に困難な問題は、対象となる土地が少いということであることは御承知の通りであります。従いましてあるいは干拓といいあるいは土地改良という、その方面に重点を置いて進めておる。しかも土地のない人々をここに収容するというのを第一義にしていることは石山さん御承知の通りです。同時にまた秋田の地域等におきましても、あの広大な八郎潟の大干拓をいたしておりますことも、一貫した政策であることは御承知の通りです。従いましてその面におきましては農林省は、常時農村に滞留しておりますところの余剰労力、これをどうするかということを考えつつ、今の開墾、干拓、土地改良等において、土地利用を進めること等を念慮に置いて施策をしておるわけでございまして、これは当省といたしましてもいたしております。ただ先ほど来御論議がありました通り、私はこの農地改革の歴史的意義は、やはり明治初年において、版籍奉還によって士族が全然職業を失い、その経済的地位をなくしたと同じような、一つの類型であろうかと思うのであります。その当時にいたしましても、明治初年の非常に財政力のないときでございましても、ある程度の手を差し伸べておった。しかしながら十全を期し得ないので、後に御承知の通り毎年のように秩録公債を交付せよということが帝国議会に陳情請願となり、これは実は衆議院ではいつでも採択となっておった。けれども政府はこれを採用しかねておったようなことも御承知の通りです。同時にあの際におきましても士族の授産指導をしまして、土地を開放して開拓地に入れたようなことも、同時にまた厳然たる事実がありますことは御承知の通りです。こういうようなことで、同時にまた第一にできましたのは、各藩におきましてあるいは地方庁におきまして、育英資金等を出しまして学校にやる、こういったことも一つの社会的現象として出てきた、こういうようなことがあるのでございますが、往年の土地改革があの程度に安定しておるのでございますが、私はすぐにこれを再び改組して、あるいは補償するとかあるいはこれを手直しするとかいうようなことをせぬでも、同時にまた農地法の改正というようなことに触れませんでも、おのずからいろいろな調査研究の結果、いろいろのことも考えられる、こう考えるものでございますから、われわれの領域におきましても十全を期してやりますが、その他の面におきましても、農村問題といえども農業政策のワク内では解決し得ないのでございますから、そこで先ほど来総務長官がお答えになっておりますようなことを調査研究することが必要であり、従いましてこの調査会の設置をお願いしておるということであろうと考えるのであります。
○石山委員 農林大臣は、与党の諸君もそうだというが、基本法に大へん御執心のようですが、基本法だけですべてを解決するのだ、これは言いのがれだと思う。特に与党の諸君は春の選挙があるものだから、十年間政治をとってみたが、農民はあまり上昇線をたどっていないのは事実なんだ。不平不満が農村に行けば山ほどある。それをちょっくら補助金で口をふさいでいるというところでしょう。しかし選挙ともなれば、その不平がかなり強く出てくるわけです。それを押える便法として、基本法を作って一生懸命二年も三年もおえらい方がかかっていいものを作るのだから、決して君たちを見ないでいるのじゃないのだ、こういう弁解でこの春の選挙を過ごそうとする。しかし私はそれでは農林行政というものは進まないのではないか。与党は与党でいろいろなことを考えてもいいけれども、やはり私は農業をほんとうに愛して、それを職務だけでなく一生懸命進めていく。省としては、基本法そのものにだけゆだねてみてもやれないということはわかっていることです。だからそんな弁解じみた基本法だけで省が受け流しをするのは、それは代議士諸君にまかせておいて——省がそういう態度ではこの問題は進んでいかぬだろう。この貧困さは救われぬだろうと思うのです。そういうような意味で一つだけ私はあなたに御要望申し上げておきます。
○三浦国務大臣 今要望ということでございますけれども、一言誤解があってはいけませんから……。われわれは基本調査会におきまして御答申を得た場合には、あるいは立法の措置をも講ずることもあり得ると思います。しかしこのねらいどころは、現在の政府の投資そのほかの財政投資等によってもなかなか進みませんので、むしろその方面に対する期待がわれわれは多い。しかも同時に、これらの問題を突破しますには、農業政策のワク内だけでは解決できぬものでございますから、今度基本調査会の提唱をいたすゆえんでございまして、今御指摘になった選挙目当てだとか、あるいは一時を糊塗するようなことは断じてございません。
○石山委員 私の方ではだめを押しているのではないのです。そういうことを代議士諸君も言うだろうけれども、省はそんな言いわけで終始するようなことで基本法をもてあそんではいかぬということですから——私は何も皆さんに対してとやかく言うわけではございません。 それから次に、松野総務長官に一つだけ聞いておきます。これもだめ押しのような形になりますが、私の方の高田委員から本会議で質問されたとき、あなたは少しつっけんどんにこういうことを言っているのです。これは税金の問題でございます。そうしたらあなたは「私に対する御質問は、税金を取るか取らぬかという話でございますが、この法案は、税法でもございませんし、税金のことは一条も書いてございません。」こう言っているのだ。私の方はこれでもよくても悪くても国民の代表者という矜恃を持っているのです。国民は新しい高い税金をかけられては困ると思っているわけです。そうした場合にやはり補償がされるのではないか。しかも多額の補償費が出るのではないかという懸念がわれわれの中にあっても決して不思議ではない。なぜかと申しますと、一ころこういうことがあったじゃございませんか。一反歩十万円の補償、そのためには一反歩三百円の掛金を運動資金として出した時代があったわけです。ですから当然、われわれとしては何らかの処置を講ずるということは、補償をしてあげるのじゃないか。しかもその補償費は、もう地主さんたちの言う要望の半額にしても、莫大なお金だ。これはとても通常財源では払えないのじゃないか、こう思うのは当りまえでございます。ですからそこに一般の国民に対して頭ならしの税金ということももちろん考えられるわけです。あるいは綱島委員の言われるように千四百倍から二千倍に売るから、一定価格の線を引いて、それ以上の価格に対しては課税をして、そして補償の一部とするということは考えられるわけです。ですからあなたのおっしゃっているように、この設置法には税金のことを書いてないから、税金の話をするのはけしからぬというふうなそういう言い分は、あなたは調査会の自主性を尊重なさると言うて、私の言い分なんかを相当はね返してしまっていますが、それはあなたの言い分からいえば、われわれ代議士の任務というものを束縛することになるじゃありませんか。ですからもしかりにあなたがおっしゃるのは、かりに補償をなさっても、あなたの気持としては新しい課税の財源によって補償などはなさらないという気持で、こういう御答弁をなさっているわけですか。その点をお聞きしておきたいのです。
○松野政府委員 高田委員の御質問は非常に高邁で、しかも非常に広範囲の質問でございまして、その中に特にこの問題を対象として税金の問題をどう考えるか、この問題に対応してという趣旨でございましたので、この問題に対して直ちに税金という考えは、この調査会設置法の提案にはございません。こういう意味の答弁をいたしたわけで、言葉が足らなかったことは、本日でも気にしておりますけれども、そういう意味でございまして、ことにたくさんの閣僚に御質問がございましたので、私がある程度端折ったことは今日でも気にしております。そういう意味の質問に対しての御答弁でございましたから、どうかその点はこの機会に御了承願っておきたいと思います。
○石山委員 後段は……。
○松野政府委員 後段は、課税の問題をどうするか、あるいは補償の問題をどうするか、あるいは救済の問題をどうするか、あるいは将来の生業対策をどうするかということは、おのずからこの調査会の結論で出てくるので、直ちに税金という結論は、私は出てこないのではなかろうか、こう考えております。
○内海委員長 高田富之君。
○高田委員 簡単に御質問いたします。ただいまも石山さんから御質問がありましたが、これは現在農民が非常に不安に陥っておることがたくさんありますが、その中でも、ただいま質問のありました農地の転用に対して相当高額の税金がかかるのではないか。特に創設農地の転用に対しては相当高額の税金がかけられるのではないかという不安が非常に今日高まっております。それはそのはずでありまして、自由民主党の農地問題調査会において昨年の末、正式に御決定になりましたこれが案になっておるわけであります。今回政府が、こういう調査会案を出されたということも、与党の中のこの問題の専門の委員会の御意向に従って調査会ができたものと推定せざるを得ません。従いまして与党の方で一応そういうことが特別委員会で決定されておるという事実、また政府が今度調査会を作ったという事実、これらのことが、今やせっかく解放を受けて、農業に精進しておる自作農の大多数の人たちに、非常に大きな不満と不安を与えておることはいなむべからざる事実であります。これに対しまして与党がどういうことをきめようとも、この委員会なるものは、とんでもない間違った考えを答申したのであって、政府はそれとは全く反対の見解を持っておるから、農民は心配しないでくれ、断じて農地転用税などというものを取る考えはない。そんなものを財源にして補償しようなんという、そういうことはもともと補償する意思が政府にないのだから、当然そんな税金を取って補償するなんということは毛頭考えておらない。与党に対しては警告を発して、そうして与党のそのような委員会の答申に、断固として政府は同意せざる旨を与党に通告したから、ぜひ農民は安心してくれ、与党も、幸いにして信頼する政府の言葉でありますので、その言葉をよく翫味をして、与党も前回の答申は誤まっていたということを、正式に党議で決定して、天下にこれを表明する、こういうことでなければならぬと思うのでありますが、農林大臣の御所見をはっきり伺いたいと思うのであります。
○三浦国務大臣 農地転用税の創設につきましては、当省といたしましては全然考えはございません。
○高田委員 非常にいい御答弁がございました。これはどうしても自民党の党議できめられたということが不安の根源ですから、党の総裁である岸さんを通じまして、与党のそのような誤まった向きを是正することは、政党政治の当然の責任である。その点は一つ御要望申し上げておきます。綱島先生もっとにそのことを主張されておりますので、ぜひ一つ見解が誤まりであったということを天下に表明するように御要望申し上げておきます。 それからこの調査会を作るというのでありますが、先ほどもコンニャク問答もありましたように、何を調査するのかということが疑惑に包まれておるわけであります。これは当然なんでありまして、大体旧地主の状態がどうであるかということは、農業センサスによって多額の国費を使い、相当の人間を動員して、最高の権威ある国家的調査がすでに完了しております。これにつきましては、農林省は特にこの問題が起りましたので、さっそく昨年その部分を収録いたしまして、旧地主の状態はかくかくであるということをきわめて明快に発表をいたしております。ちょうど自由民主党の特別委員会が答申案のとんでもないものを発表される直前に、りっぱな結果が発表されております。今から何も事あらためてそんなものを特別に調査しよう、旧地主さんがどんな生活をしているかというようなことを調査する必要は全然ないのです。もしそういうことを調査するのだったら、まだ書きようがあるのです。旧地主中の特に生活困窮者の実態を調査するためにという理由がつけば、政府の今までやった調査は不十分だから、もう一ぺん念には念を入れて調べようとしているのだということがわかる。ところがそうは書いてない。被買収者問題、こう来るから、そうなりますと被買収者について社会的な、一般的な大きな問題、こういうことになってくる。そうすると一体何が問題なんだろうか。一部の困っている旧地主の生活困窮者の実態を調査するというなら、それは済んでおるわけですが、それはそれで対象ははっきりしている。しかし被買収者問題を調査する、何が被買収者問題だ。(「社会問題だ」と呼ぶ者あり)その社会問題は一体だれが起しているのですか。とにかく被買収について今問題があるとすれば、被買収者の諸君が農地法の改悪を叫び、反当十万円の補償を叫び、そうして社会不安を起し、暴力的土地取り上げ事件を起し、しかも自由民主党がこれに便乗して党内に本部を置く、これが重大なる社会問題です。これ以外に被買収者の社会問題はありません。だから被買収者の社会的問題を平静に戻すということが、政府並びに自由民主党の責任なんです。(「討論じゃないか」と呼ぶ者あり)討論じゃありません。重大な問題ですから、それ以外に私は今日社会問題というのはないと思うのです。今や自作農制度もちょうど曲りかどに来て、大いに農地法の精神を生かしていくと同時に、さらに一段と高いところで農業生産の拡大をはかる段階にあるときに、事もあろうに昔の夢を追う運動、そうして何も合理性のないこの運動に鼓舞、激励を与える態度を政府が起すことになるのは、何としても遺憾でございます。これをあえてここに至りまして大ぜいの力で通過させるということは、政府としても今後窮地に立つわけで、私は政府の立場に同情いたします。非常にお困りだろうと思うのです。与党がこんなことで騒ぐのは非常に良識ある三浦農林大臣はお困りだろうと思う。だからこの際は勇気と誠実を持って、断固としてこういうことはおやりにならないという態度をとるべきさであろうと思うのに、どこまで押され押されて心にもなく流されていくのか。私はこの自信のない政府の態度というものに、遺憾の意を表せざるを得ないのです。これは重大なことですから、もう一ぺん大臣にお伺いするのですが、今まで盛んになって参りまして、遂に与党の屋台骨の中に一緒に住むに至りました地主団体、このことは非常に遺憾なことなので、どうかこういうことに対して、もう少しきぜんとした態度でこれに対処するお考えはないか。甘やかすのではなくて、きぜんたる態度で臨む。これは農林省内の空気としても非常にお困りだろうと思う。ですから農林大臣ははっきりした態度をとられまして、その種の運動はやめてもらいたいということで、補償は絶対にしないのだ、特に困っておる者について、農村における生活困窮者として、当然これは厚生省、農林省においても考慮しなければならぬ、これは当りまえのことです。旧地主ばかりじゃありません。どうかそういう態度をとっていただきたいということを考えておるのですが、農林大臣はどうお考えになりますか。
○三浦国務大臣 過去にとりましたところの農地改革に対する態度並びに補償の改訂、もしくはこれをし直すということのありませんことは、従来しばしば申し上げた通り、きぜんたる態度をとっております。
○内海委員長 他に御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、これにて本案についての質疑は終了いたしました。 本案に対し高橋禎一君外十八名より、自由民主党提案にかかる修正案が提出されております。この際この修正案を議題とし、提出者よりその趣旨の説明を求めます。高橋禎一君。 —————————————
○高橋(禎)委員 まず修正案を朗読いたします。 農地被買収者問題調査会設置法案の一部を次のように修正する。 附則第一項中「昭和三十四年四月一日上を「公布の日」に改める。 本法は四月一日から施行することになっておりますが、すでにその日も過ぎましたので、これを公布の日から施行することに改めることが適当と認め、修正案を提出した次第であります。何とぞ御賛同をお願いいたします。
○内海委員長 本修正案について御質疑はございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○内海委員長 御異議がなければ、本修正案についての質疑は終了いたしました。 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。茜ケ久保重光君。
○茜ケ久保委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております農地被買収者問題調査会設置法案に対して、反対の意見を述べます。御清聴をお願いいたします。 私どもは大東亜戦争という非常に無謀な戦争を経験いたしまして、国民的な悲惨な敗戦に追い込まれました。その国民的な敗戦の結果として私どもが得たものは、非常な困苦と悲惨な国民生活、しかもあらゆるものが失望のどん底に陥った状態にあったことは御承知の通りであります。そういった中で、わずかに私どもが得た一つのものは、いわゆる民主主義とこの農地解放であったのであります。そしてまた婦人参政権、こういった敗戦の結果得た、いわゆる日本の社会革命の一つの基盤をなすところの農地解放というものは、日本の歴史始まって以来の重大な問題だと思うのであります。もちろんその陰には今政府当局でも指摘になっておるように、かつて地主として多数の小作人を擁し、農村の実権を一手に掌握して、貴族王侯のような状態であった一部の地主諸君が、農地解放によって悲惨な状態に陥っておることもこれは無視できません。しかしそういった旧地主諸君が、今はある期間悲惨な状態にあろうとも、かつてこの人たちが長い歴史的な日本の農村に君臨し、多くの小作人を牛馬以下に取り扱つかった歴史的な事実を見るときに、私どもは決してここで一掬の涙を安んじて流すべきでないのであります。しかもこういったことが日本の長い封建制と、そして反民主主義的な社会構成に対して、大きな発展を来たしたといたしますならば、私は日本の将来に対して、大きな貢献をしたといって、あの人たちは一部喜んでもらえる点もあろうかと思うのであります。そういった意味において、農地解放ということが日本の民主主義とまた新しい世界への発展の基盤であったことは、これは今政府御当局の御答弁を通じてもはっきりするのであります。そういった意味において私どもは、農地解放に対しては非常な意義と、そしてまた重大な関心を持ってきたのであります。そういった中で一部旧地主の皆さん方が、いわゆる敗戦という悲運の中で、農地を取り上げられ、一時は自分自身を失なったような状態にあったのでありますけれども、また日本の政治、経済の状態というものが、保守政権の永続下、だんだん復古的な気分が多分に出て参りまして、ややもすると民主主義的に対して反民主的な、また旧時代への逆行的な形も出て参りました。こういった空気に便乗した旧地主の諸君は、得たり賢しとここに大同団結をして、いわゆる被買収農地に対する国家補償の運動が全国的に展開されたことは、御承知の通りである。はしなくもその本部が自民党本部にあるということも、御承知の通りである。しかしこういったことは、当時幾ら地主諸君が大同団結して、はち巻を締め、あるいはたすきをかけてやったといえども、日本の民主主義的な政治経済状態というものは、一応これを無視する形が強かったので、彼らの運動も、一時は非常な勢いで出て参りましたけれども、またその一般的な情勢に押されて下火になったような形が出て参りました。そのときにおきまして、はしなくも自民党と自民党の政府がこの力と結びついたことによって、また非常な勢いで再燃したということであります。そういったことが、その問題をここにこうした法案として出さざるを得ない原因だと思う。これはいなめない。そこで私どもはたびたび指摘して参りましたように、政府の答弁は、旧地主の諸君に対する補償はしない、農地法は改革しないと、表面的にはそういう答弁でありますけれども、岸総理の答弁を聞いても松野総務長官の御答弁を聞いても、言葉の上ではそうおっしゃっていますけれども、問題の核心である調査会が、果してどのような実態を調査し、調査した結果において、その結論に対する態度をどのようにおきめになるのだということに対しては、これまた岸総理も総務長官も、何かわけのわかったようなわからぬような御答弁でありました そこに問題があると私は思う。いかにこの短かい法案において国民をごまかそうとされましても、やはりごまかし得ないものがある。これは反対政党である日本社会党を中心とした革新的な、しかも民主主義的な勢力が反発するのであります。そういった意味において、私どもはこの法案に対して反対の態度をとって参り、またそういった趣旨で質問も集中して参りましたが、やはり自民党の中にも良識家があります。自民党の議員の中にもこの法案に対して疑問を持った方がありますだけに、質問の過程において、われわれと軌を一にする質問の出たことも当然でありましょう。そうした質問の出たということによって、私はこの法案に対する反対的な機運があることは当然であると思うのであります。そういうことでございますので、私どもが不安を払拭できない——ずっと質疑応答を重ねて参りましても、いかに政府が言葉巧みに御答弁なさっても、どうしても残念ながら不安の実態が払拭できないのは、やはり平清盛じゃないけれども、表に衣を着ようとも中によろいが光っておればいかにりっぱな衣で表を隠しなさろうとも、中に地主の圧迫によって、補償をしろというこの現実の力には抗し得ないのが実態である。その証拠には、今の総務長官の答弁を聞いておりますと、被買収農家百七十五万戸、約二百万戸、選挙有権者数が約一千万であります。この一千万票が自民党のねらいであることは当然であります。参議院選挙を前にして、この一千万票がほしいということをはっきりおっしゃった方がいい。一千万票がちらちらしているものだから、その一千万票を取りたいためにこういった法案ができたことは、皆さんの顔にもはっきりと記されております。 〔発言する者多し〕
○内海委員長 静粛に願います。
○茜ケ久保委員 このことを考えますと、この法案というものは、かつての一部の富裕農民のために、かつて長い間被圧迫下に、被搾取下に泣いた、今は一部の土地を所有する農民諸君に大きな犠牲を転嫁する可能性のあるということも、やはり農民の諸君は知っておる。従って現在私どもが農村を回りますと、異口同音に聞かれることはあの法案が通過したならば、旧地主にはまた政府が多分に——これは農林大臣のおっしゃるように、このために特別な税金をお取りにならぬでも、何らかの形で旧地主に補償的なことをなさることは、これは当然国民の税金を使うことになる。この補償費として税金をお取りにならぬでも、これに何らかの形において金をお出しになる。たとえば調査の一千万円も税金である。一千万円税金を使って調査した結果、何らかの形が出て、それによって地主に補償される金というもの、これは自民党の金ではございません。自民党内閣の金でもなければ、岸総理のぜにでもない。みんな国民の税金でございます。ここに国民は非常な不満を持っておる。 〔発言する者多し〕
○内海委員長 静粛に願います。
○茜ケ久保委員 こういう全農民に不満を抱かせるような法案、しかもそれが一部、かつて農民を搾取し、農村の上に君臨して参りました旧地主に対する補償とあっては、全農民が怒り心頭に発することは当然でございます。 〔発言する者多し〕
○内海委員長 静粛に願います。
○茜ケ久保委員 私も農民諸君とともに、政治を行う一国会議員としてふんまんやる方ないのであります。義憤を感じます。こういう意味において、私どもはこの法案に対して——短かい法案であり、いかにも何かもっともらしい文章でごまかしてございますけれども、何と申しましてもこの法案は、旧地主階級に対する補償が最重点的な問題であるということは、否定できぬと思うのであります。従いまして私はこの法案に対しましてはどういう論点から考えましても、これほどの賛成もできない。もちろん絶対に反対をして、この法案をこの国会が葬り去ることこそが、日本の民主主義を守り、日本の農民生活を確保していく一つの大きな責任であろうと思うのであります。自民党の中にも良識のある、しかもこういった問題に対して多分に御異論のある方のあることを、私どももよく知っておる。きょうは、ずっと顔を見ると、非常にりっぱな方がおいでである。総理大臣級の方がみんなここにおいでである。この総理大臣級の自民党の議員諸君が、このようなばかげた、参議院選挙目当ての法案を通すことは、かえって参議院選挙にマイナスである。これを皆さんがおつぶしになったら、自民党の票はもっとふえるかもしれない。このことを私は警告する。かような意味において、まことに遺憾でありますけれども、私は、この一部のかっての地主に対する補償を内容としたことを否定できない本法案に対しましては、絶対に反対するものであります。以上申し上げまして、日本社会党を代表して反対の討論といたします。
○内海委員長 平井義一君。
○平井委員 私は自由民主党を代表いたしまして、本案に賛成の討論をいたします。 農地改革は、御承知の通り終戦直後の占領下において行われたものでありまして、わが国において従来の社会的、経済的基盤を大幅に変革した点においては、おそらく空前のものといわなければなりません。この農地改革は、もちろん法律に基いて実施されたものでありますから、私はあえてこれを不当であると言うことは遠慮いたしたいと思いますが、その実情は強制的な買収であったと言っても過言ではないと思うのであります。これらの買収された土地あるいは旧地主をめぐって、その後いろいろな社会問題が発生し、また派生していることは世間周知の事実であります。旧地主であった者が今日では生活保護を受け、また非常に貧困に窮しておる者が多いと聞いておるのでありますが、これらの問題を放置しておきますならば、やがては農村の平和、安定をも脅かすおそれがあると考えるのであります。政府はここに思いをいたしまして、今般本法案を提出されたものであると思うのでありますが、本法案の提出につきましては、国民の一部に誤解を生じているように聞くのでありますが、はなはだ遺憾とするところであります。本案は旧地主に対して直ちに何か補償するというのではないのでありまして、旧地主に関する社会問題を調査、審議することを当面の目的としたものであります。われわれといたしましては、とうてい満足はいたしておりません。不満足な法案ではありますが、今後問題を解決するためにはこの程度の調査、審議は最小限必要でありまして、この意味においては、時宜を得た処置であると考える次第であります。ここに賛意を表して賛成の討論を終ります。(拍手)
○内海委員長 これにて討論は終局いたしました。 これより採決いたします。まず修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○内海委員長 起立多数。よって本修正案は可決いたしました。 次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○内海委員長 起立多数。よって修正部分を除く原案は可決いたしました。 これにて農地被買収者問題調査会設置法案は修正議決いたしました。 なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○内海委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。 —————————————
○内海委員長 次に恩給及び法制一般に関する件について調査を進めます。 質疑を許します。平井義一君。
○平井委員 先般松野長官に、大東亜戦争を除く日清、日露その他の戦争において、金鵄勲章を受けられた老齢の方々に対しまして、政府は適切な処置を講じていただきたいというお尋ねをいたしたのでありますが、政府におきましては調査研究中ということでありましたが、もう今国会も終末に近づいておりますが、どういう処置をなさるか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
○松野政府委員 先般来、恩給問題に関しましては相当広範囲に議会を通じて再検討しろという御趣旨の決議がございます。その項目の中に金鵄勲章年金の問題が入っておりますので、政府としましては金鵄勲章年金及びその他と関連がございますので、その関連の上において今日まで審議をしておりますが、まだ結論は出ておりません。
○平井委員 結論がまだ出ておらぬというけれども、全国の一万数千人の老齢者は、一日も早く政府が何かの救済策を講じてくれることを待っておる。もちろん金鵄勲章ということは憲法第十四条で禁止されておりますから、金鵄勲章の復活ということでなくて、この人方に慰労金あるいはまた救済金をやるということで、私は至急決定をしていただきたい。賞勲部長おいでになりますか。一つ賞勲部長のところで、いかなる返事方を出してくれということを先ほどお願いしておる。何とか御返事申し上げましょうということでございましたが、もし賞勲部長がおられなかったならば、長官と一つ相談をして、至急この老齢者に対する対策を私は講じていただきたい。今国会の終末までに、ぜひとも御返答いただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終ります。
○内海委員長 平井さん、四月の二十四日午前十時から委員会を開くことになっておりますから、それまでに一つ御報告いだだきます。 次会は来たる四月二十四日午前十時より開会することといたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後零時四十六分散会