P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ ☆
第31回国会衆議院1959/02/17

社会労働委員会 第7号

発言数
15 件
登壇者
3 名
会派数
2
開催日
1959/02/17

会議録

園田直自由民主党

○園田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出の最低賃金法案を議題とし、審査を進めます。質疑を継続いたします。小林進君。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 私は昨年の十月二十八日に、同じくこの最低賃金法に関しまして質問を許されたのでございまするが、そのときに私はこういうお願いをいたしておったのでございます。それは、社会労働委員会の会議録の第一類第七号、昭和三十三年十月二十八日の十五ページでございまするが、「私の最賃法に対する質問を一つ始めたいと思うのでございます。私は一般論、各論それから各章について、全部お伺いいたしたいと思いまするが、何しろ時間が制約せられて、本論から入っていきますと各論の方に時間がなくなると困りますから、一応各論の方において特に重要と思われる分だけを最初にお願いいたしておきます。」かようにお断わりをいたしまして当時質問をさせていただいたのでございます。従いまして私が本日行いまする質問は、当十月二十八日の各論に対する私の本論、あるいは総論を実はきょうから質問をさせていただきたい、かように考えておるのでございます。  なお、実は委員長にお願いをいたしておきたいと思いますのは、さような意味でございまして、私は最賃法に関する限りは、いたずらに質問の時間を長引かして時間をかせぐとか、あるいは会議の進捗の妨害をするとか、そういう考え方は一つもございません。やはり何と申し上げましても、この最賃法は国際性を帯びた重要なる法案でございまして、わが日本がどのような内容の最低賃金法を作るかということは、国内のみならず世界各国から非常に注視をもって見られる横にも縦にも歴史的な法案でございまするので、やはりわれわれが国会においてその審議を十分尽して、対世界的にも、あるいは過去にさかのぼっても恥かしくないような記録を残しておかなければならない。かような意味において質問をいたすのでございまするから、その点を一つ御了承いただきたいと思うのでございます。  なお私は、(「前置きが長い」と呼ぶ者あり)私の質問が、今もおっしゃるように前置きが長いなどという、もうそろそろ質問の妨害をせられるようなヤジも飛んでおりまするので、そういう誤解を解く意味におきましても、私はいろいろ御質問申し上げたいことを十問に集約して参りましたので、どうか私の質問のこの十問が完全に終了いたしまするまで、委員長におかれましても途中で質問を打ち切るとか、そういうようなことをなさらないように、どうか一つ私の質問を十分尊重していただきたいと思うのでございます。ただ私もこの十問に問題を集約しまするからには、一応前からのこの委員会の速記録、あるいは本会議の速記録、最低賃金に関するものは二十八国会からの速記録を一通り見て参りました。なるべく重複を避けて、なおかつ今までの速記録の中に出てこないような問題だけを私は取り上げて十問に集約をいたして参りましたので、もし委員長が私の質問をお聞きになりまして、それがまずいと思いましたら、どうか一つ十分御荘意いただきたいと思います。どうかその意味においても、質問の打ち切り等は一つなさらないように、くれぐれもお願いをいたしておきたいと思うのでございます。  私は、今まで行われておりまするこの最低賃金法に対する質問の速記録を拝見いたしまして、まず第一番に、ふに落ちない点は、政府がどういう意図を持ってこの最低賃金法を国会に提出になったのか。政府が今日最低賃金法を必要とせられておりまするその思想的根拠がどこにあるのかということがどうも納得がいかないのでございまして、その点を一つ大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでございます。最低賃金法の提案理由の大臣の御説明の中には「最低賃金制の確立は、ただに低賃金労働者の労働条件を改善し、」云々というような理由が述べられておりまするけれども、どうもそれだけでは政府のこの案を提出になられました思想的根拠が明確でございませんので、その点を一つわれわれの納得のいくようにお聞かせを願いたい、かように考えております。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 終戦以来わが国における労働法制は、労働組合法、労働関係調整法、労働基準法など急速に整備されたのでありますが、これらの法制により近代的労使関係が確立され、また産業の合理化を促進し、わが国の経済復興に寄与するところ少くなかったことは、否定し得ない事実であります。  労働基準法は、労働条件の最低基準について詳細な規定を設けているのでありますが、同法に定める最低賃金に関する規定は、今日まで具体的に発動されなかったのであります。これが理由について考えてみますと、まず、終戦後の経済の混乱が最低賃金制の実施基盤をつちかえなかったことが指摘されるのでありますが、さらに基本的には、中小企業、零細企業の多数存在するわが国経済の複雑な構成のもとにあっては、労働基準法に規定する最低賃金制のみによっては、その円滑な実施を期し得ないものが存したからにほかならないからであります。昭和二十五年、労働基準法に基いて設置された中央賃金審議会は、絹、人絹織物製造業等四業種に対する最低賃金の実施について、昭和二十九年に政府に答申を行なったのでありますが、これが実現を見るに至らなかったゆえんも、当時の経済情勢とともに、わが国経済における中小企業の特異性に存したと言えるのであります。しかしながら、賃金は労働条件のうち最も基本的なものであり、特に賃金の低廉な労働者について今日最低賃金制を実施することは、きわめて有意義であると考えるのであります。最低賃金制の確立は、ただに低賃金労働者の労働条件を改善し、大企業と中小企業との賃金格差の拡大を防止することに役立つのみでなく、さらに労働力の質的向上をはかり、中小企業の公正競争を確保し、輸出産業の国際信用を維持向上させて、国民経済の健全な発展のために寄与するところが大きいのであります。  翻って世界各国に眼を転じますと、十九世紀末以来、今日までに四十数カ国が最低賃金制を実施し、また国際労働機関においてもすでに三十年前に最低賃金に関する条約が採択され、これが批准国も三十七カ国に達していることは御承知の通りであります。経済の復興と労働法制の整備に伴い、わが国の国際的地位は次第に高まり、昭和二十六年には国際労働機関へ復帰し、さらに昭和三十一年には、念願の国際連合への加盟も実現されたのでありますが、またそれゆえに世界各国は、わが国経済、特に労働事情に関心を有するに至っているのであります。なかんずく、諸外国において、特に大きな関心を持って注目しているのはわが国の賃金事情であります。過去においてわが国輸出産業が、ソーシャル・ダンピングの非難をこうむったのは、わが国労働者の賃金が低位にあると喧伝されたからであります。かかる国際的条件を考えましても、この際最低賃金制を実施することは、きわめて意義があると考えるのであります。しかしながら、諸外国における最低賃金制の実施状況を見ても知り得るごとく、その方式、態様は決して一様のものでなく、それぞれの国の実情に即した方式が採用されているのであります。従いまして、わが国の最低賃金制も、あくまでわが国の実情に即し、産業、企業の特殊性を十分考慮したものでなければならないことは言うまでもないところであります。  政府といたしましては、最低賃金制の大きな意義にかんがみ、最低賃金制のあり方についてかねてから検討して参ったのでありますが、一昨年七月、中央賃金審議会に、わが国の最低賃金制はいかにあるべきかについて諮問したのであります。同審議会は、その後真剣な審議を重ねられ、一昨年十二月に至り答申を提出されたのでありますが、その内容については、一部の労働者側委員が賛成できない旨の意見を述べたほかは、他の労、使、公益全委員が賛成されたのでありまして、さらに答申の提出については、全員が一致されたのであります。同答申はその基本的考え方として、産業別、規模別等に経済力や賃金に著しい格差があるわが国経済の実情に即しては、業種、職種、地域別にそれぞれの実態に応じて最低賃金制を実施し、これを漸次拡大していくことが適当な方策であると述べているのであります。今日においても、最低賃金制の実施は中小企業の実情にかんがみ、時期尚早であるとの論も一部にはあるのでありますが、現実に即した方法によってこれを実施するならば、中小企業に摩擦と混乱を生ずるようなことはなく、その実効を期し得られるものであり、むしろ中小企業経営の近代化、合理化等、わが国経済の健全な発展に寄与するものと考えるのであります。  以上の見地から、政府といたしましては、中央賃金審議会の答申を全面的に尊重して最低賃金法案を作成し、第二十八回国会及び第三十回国会に提出したのであります。両国会とも、衆議院においては政府原案通り可決されたのでありますが、参議院において審議未了となりましたので、ここに重ねて同内容の法案を提出いたした次第であります。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 今大臣から御懇篤な御答弁をいただきまして恐縮いたしておるのでございまするが、ただ私は今も御説明のありました通り、最低賃金法というものは労働者の保護を建前といたしまして、その生活を守り、向上せしめるためのもののように考えておるのでございまするけれども、政府のこの御説明の中には、どうも這般の事情が明確になっていないのでございまして、私どもずっと今までの経緯を考えてみますと、政府が最低賃金法をこの国会に提出せられましたその根本的の理由は、労働者を保護するということの建前よりは、むしろ経営者の立場に立って、経営者を自衛するというふうな思想の上に立って、この法案をお出しになったのではないか、こういうふうな疑点を実は非常に深くいたすのでございます。いささか過去を顧みますると、そもそもこの最賃法という法律が国会で問題になるようになりましたのは昭和二十四年でございまして、昭和二十四年ドッジ・プランの強行により、超均衡予算の編成、物価の安定、一応のインフレの収束、そしてデフレ的傾向になって参りました。その当時、いよいよ最低賃金を実施し得る客観的条件が次第に成熟してきた。そのときの現実の問題としてこれが国会に取り上げられるに至ったのでございまして、二十四年の八月当時の労働大臣は鈴木労相でございましたが、鈴木労働大臣は、そのとき初めて最低賃金制についてある程度考慮を払うべき段階にきた、こういうふうな見解を当時の労働委員会で明確にせられた。これは国会で、この最低賃金法がともかく問題にせられた当初であると思うのでございまするが、そのときに次いで、同年の十月二十六日でございまするが、この補給金廃止に伴うて当時のGHQのエーミス労働課長が、さらにこの鈴木労相の言葉を具体的に敷衍いたしまして、かようなことを言っておられる。日本の物価もほぼ安定し、フロア・プライス制も廃止された。英米はこれによって日本のソーシャル・ダンピングを警戒している。このような情勢にある以上、最低賃金制の方法につき考慮すべき段階にある。こういうようなことを当時のGHQの高官が言明をしておられるのでございまするが、この言明がありまして間もなく、政府は、ただいまも大臣がお話しになりました通り、二十五年の十一月についに労働基準法第二十九条一項の規定によって、労働省内に中央賃金審議会というものを御設置になったのでございます。これによって明らかになるように、やはりどうも日本のソーシャル・ダンピング、日本の経営者が低賃金で安いものを作って世界市場を荒すということを外国がおそれている、そういう対外的な考慮に基いてエーミス課長がおっしゃる、それにこたえて日本の政府が、ここで初めて中央賃金審議会というものを作り上げた。でありますから、そのスタートから私どもをして言わしむるならば、対外的考慮に基いて最低賃金法というものが仕組まれたのである。ともかく出発はそういうところからでき上っているということを考えなければならないのでございまして、言うまでもなく、戦前ソーシャル・ダンピングの非難をまいた日本の植民地的低賛金が、戦後ごうも改善されていぬのみか、かえって総体的に低下していることは多くの人々が指摘し得るところでございます。ここから、戦後再び諸外国において日本のソーシャル・ダンピングに対する懸念が増大してきたこともまた当然でございまして、諸外国のこの懸念は、これはあとでまたいろいろ御質問いたしたいと思いますが、昨年の秋おいでになりましたドイツの経済相エアハルトの忠言を初めといたしまして、いろいろの機会にこれが繰り返され、表明せられておるのでございまして、経営者の側からいたしまして、多かれ少かれ低賃金が海外貿易の大きな障害となっていることは事実でございまして、従って日本が国際的孤児たることを甘んじない限り、最低賃金制を実施いたしまして、その極端な植民地的低賃金を是正しなければならぬことは、これは一つの必然でございました。そこに、日本の資本主義の再編成に伴って、一方には日米独占資本の重圧による執拗な低賃金政策を続けながら、多少とも最低賃金制を具体的に考慮しなければならない政府並びに資本家側の思惑が出てきたのではなかろうか、私はこの点を明確に一つ御答弁を願いたいと思うのでございます。従いまして、この日本の最低賃金法は、労働者の側じゃないんだ、これは経営者の側に立ってその必要性が生まれたのでございますから、それはあくまでも受動的なものである。いわゆる資本家の自衛手段のためにでき上った最低賃金法政府案である。でありますから、それはそれ自身独占資本の立場を失わぬ限度でこの最低賃金法を取り上げたにすぎないのである、かように私どもは考えておるわけでございます。でありますからILOに復帰いたしましたり、講和条約が成立したり、ガットの加入等を日本がいたしまして、一応国際的な地位を獲得してみますと、政府の態度がとみに冷却をいたしました。この最低賃金法に対する態度が二十七、八、九年あたりからとみに冷却いたしまして、中央賃金審議会を設置しておきながら、その三年半にわたる調査審議の結果、先ほどお話の絹だとか人絹だとか、織物だとか製造業等四業種に関する最低賃金を実施すべきである等のはなはだ無気力な答申、意見をこの中央審議会が出したときも、政府はそれをまた放置して顧みられなかった。そのまま投げやりにしておいでになったのでございますが、一体この最低賃金審議会を二十五年に設けて、三年半もかかって答申した。その答申をそのままなぜ放任しておられたかという理由が、今の大臣の御説明では明確になっておりません。従ってわれわれから言わせますれば、どうも外国の非難のほこ先さえ今避け得られれば、ガットにも入ったし、外国の非難もやや小波になったから、それでもう急いで最低賃金法などというものを作る必要はないということで、私は政府がサボタージュをおやりになったのではなかろうか、かように考えざるを得ないのでございまして、今申し上げますように、中央賃金審議会の設置から、その後この審議会から三年半の努力による答申をもずっとそのままにほうりなげておかれて、そうして二十八国会に来て、またあらためて石田労働大臣のとき、思い出したように最低賃金法をお作りになった這般のこの事情が、今のお話では一つも明確になっていない。だからこれをお作りになったのはもっぱら対外的関係で、外国からソーシャル・ダンピングの非難を受けたから、あわてて中央審議会を作る、ほとぼりがさめたらおっぽり出しておいて、また三十一年、二年あたりから日本の低賃金が外国から問題になって、ILO等からも非難をされてくる、何とかまた資本家の、いわゆる独占資本の外国貿易を一つ側面から援助して、自衛の手段を講ずるためにはごまかしの最賃法でも作らなければならないということで、あわててまたこんな法案をお作りになったのじゃないか、かようにわれわれはこの歴史的経緯を見て参りますと、そうしかとれないのでありまして、這般のこの事情を今少し大臣明確に、納得のいくように御説明を得たいと思うのでございます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 四百字諦めの原稿用紙七十八枚も最低賃金についてお書きになったという小林先生でありますから、非常に私どもも傾聴いたすわけでありますが、その前にちょっと誤解があるようでありますから……。中央賃金審議会で絹人絹織物、座繰り玉糸、手すき和紙、家具建物等四業種についての最低賃金、あれは幾ら幾らにきめろという答申を出したわけじゃないことは御存じの通り。なかんずく零細なこういう企業について、最低賃金がやれるように準備をするように努力せよということがあの答申でありますから、それをほっておいたわけではないことは御存じの通り。それをやるよりもむしろ全面的にやはりほかのものも一緒に、その四業種だけでなくて、やはり全部に、それぞれの事情に応じて最低賃金が施行されるような方法をとっていくという、これは大きな進歩であります。  それから日本の労働賃金のお話がありました。もうすでにあなたからも、ときどきうんちくを傾けられた御高説を拝聴いたしておりますが、日本の労働賃金というのは、たびたび私が委員会で申しておるように、為替換算率だけで賃金のべースを比較するということはおおよそ意味がないことだとわれわれは思っております。アメリカに対してドイツはやっぱり安い。国民所得、生活水準、そういうものと比べてみれば、やはりたとえばアメリカの九に対して日本は一だといっている。国民所得はどうかというと、ちょうど日本の一に対してアメリカは九・六九くらいでしょう。ドイツは二・四、やはりちょうど賃金べースの比較というものが、そういうものと合うように偶然できでおります。そのことはあなたもよく御存じの通り。  今ソーシャル・ダンピングというお話がありました。ILOから日本のソーシャル・ダンピングということで非難をされたというお話がありましたけれども、私はILO総会でそういう非難を日本にいたされたということについて、まだ情報を承わっておりませんから、ついでがありましたらお教えを願いたいのであります。ソーシャル・ダンピングについて、一九三四年のILOの年報には、バトラーという当時の事務局長がこういうことを言っています。過去二年間の日本の海外市場侵略の成功は、過度に低廉なる賃金と劣悪なる労働条件に起因するソーシャル・ダンピングの一形態であると一般に主張されつつある、こういう工合に書いております。そこで当時のILOは、そのためこれに関する真相調査の目的で、同局の次長モーレットという男を日本に派遣させまして、そしてこのモーレット次長の報告の結果はどういうことになっておるかと申しますと、日本にはいわゆるソーシャル・ダンピングは存在せず、大部分の輸出向け製品を生産する新しい大企業においては、労働時間、休日、賃金、保険、安全等々を含めて労働条件は最高標準にある、こういう意味のことを報告書に——ソーシャル・ダンピングに関する一九三四年のILO事務次長のモーレットの報告にはそういうふうに書いております。一九五五年にやはり日本とアメリカとの貿易のいろいろ問題がございまして、それにアメリカの議会でランドール報告というものがされました。対外経済政策委員会、これでございますが、その中にはおもしろいことをいっております。つまりこういうことをいっておる。不公正競争の最も明確な場合は、つまりソーシャル・ダンピングの最も明確な場合、特定の商品生産に従事する労働者に対して、その商品の輸出国において一般に是認されている賃金水準よりもはるかに低い賃金が支払われている場合である、これがすなわちソーシャル・ダンピングというものであるということを、アメリカの議会で日本の低賃金が問題になりましたときに、ランドールの報告にはそういうことを書いております。今エアハルトの話がありましたけれども、御承知のようにドイツと日本という国は戦後非常に貿易の競争をやっております。私が一昨年ILO総会の帰りにイギリスの労働大臣に会いましたとき、彼は、将来英国の経済競争の相手はあなたの国とドイツだと思っているということを率直に言っておりました。そのようにドイツと日本は世界各国のマーケットにおいて競争しております。そこで、エアハルト経済相が日本に賓客として招かれて来て、一応日本の賃金のことを申しました。何べんか記者会見もいたしておりますが、最後に、東京を去るころに彼が日本経済に、寄稿いたしたか単独会見の記事か、お読みになったでありましょうが、あれを読んでみても、それまでに彼が言っておったことを否定する言葉を述べております。たしか十一月の七日か十七日か、七の字のつく日の新聞で、きょうは資料を持っておりませんが、ドイツと日本が海外マーケットにおいて商売の競争をしておる。そういうことで、ただ単に、海外で競争をする場合の日本商品の賃金が、特に外国に輸出するために、ドイツに比べて低廉にして不当な競争をするというならば、ランドール報告がいっておるように不公正競争ということになる。しかしわが国が、特にこれは輸出目的であるから賃金レベルを下げてやらなきゃならぬというふうなものがもしありとすれば、それは私はソーシャル・ダンピングという非難は免れないと思いますけれども、今皆様方が指摘しておられるソーシャル・ダンピングだと言われるのは、こういうランドール報告や当時のモーレットILO事務次長の言っておるソーシャル・ダンピングという経済上の解釈に照らして、何を一体日本の賃金はソーシャル・ダンピングであると言われるのか。私はそういうことについて、ただ為替換算率だけで日本の賃金の平均べースがアメリカに対して安いとか何に対して安いとかということは、これはおよそ経済的な意味を持たない言葉である、こういうふうに思っておるわけであります。  しかしながら日本全体の労働賃金というもの、これはやはり私がしばしば申しておるようにできるだけ高い方がいい、できるだけ高ければそれだけふところに入った購買力というものは消費に向って景気を刺激するのでありますから、それはけっこうなことであります。必ずしも今の日本の労働賃金べース——しかもそれは五百人以上使っおる大産業の工場の労働賃金は別として、それ以下をひっくるめた平均を考えてみますならば、私は決して高いといっているのではないのでありまして、従って、そうだから賃金格差のある比較的零細企業の従業員に対しては、日本の経済の実情に応じた方法でまず最低賃金というものをああいう方法でやっていくことが一番いいことだと私は思います。小林さんも御指摘になりましたように、私は最低賃金を実施するという目的にはいろいろあると思います。なるほど先ほどお話にありました日本の低賃金ということを口実にして、日本のガット加入に英国は妨害をいたしました。しかしながら賃金という問題はただ口実であって、その他にいろいろ大きな理由のあったことは日本の国会でも論議をされたことで、すでによくおわかりの通りであります。そこで外国との競争をいたして参る場合において、日本が外国にけちをつけられるようなことをしない方が利益であることは、これは当然なことであります。しかしながら、私どもはまず第一に、御説明の中にも申し上げておりますように、経済上の意味と社会政策的意味を持っている、すなわち苦汗労働というものをできるだけ排除し、それからまた零細企業の中でのいたずらな過当競争をせぬようにしてやって、そうしてその零細企業、中小企業が維持できるように努めていくためには、同一のスタートに立ってもらうことがいいではないか、同一のスタートを、その大きなファクターである賃金について一定のべースをきめていくということは、過当競争を防止する大きな理由になるのでありますから、そういうことで、両方の意味で最低賃金というものをやっていく。  独占資本というお話がありましたが、独占資本という意味が私には実はよくわかりません。日本のどういう資本形態を独占資本と言われるか、私にはよく理解ができないのでありますけれども、そういうことを想像するところの、あなたのおっしゃっておる独占資本というものをそんたくしてみると、五百人以上雇っておられる大産業では、いわゆる最低賃金というふうなものはほとんど無関係のところなのである。われわれとしては零細企業の労働者に対して最低賃金というものは一番影響がある、こういうふうに考えておるわけであります。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 ただいま、なかなか博学な御答弁をいただきましてありがとうございましたが、ただ一つ、私はILOから日本のソーシャル・ダンピングが非難されたというふうに私の質問が大臣にとられましたら、これは私の言葉の足りぬところでございまして、ただ私は、ILOに加盟をいたしました今日、非難されること等をばおそれて、こういうごまかしの法案を作られることを企図されたのではないか、こういうふうに申し上げたのでございまして、現実に非難をされたというふうに申し上げたのではございません。この点は一つ誤解を解いていただきたいと思うのでございます。  大臣の今の御答弁の中には、私がお伺いいたしたいいろいろの問題が含まれておりますが、やはり順序を追いまして、第一問でございますが、その第一問の締めくくりといたしまして、やはりソーシャル・ダンピングではない、経営者の対外的な自衛手段ではなくして、それ以外のもろもろの趣旨のもとに、あるいは経済上、社会上もろもろの理由のために、この最低賃金法というものを立案したのである、かように解釈をしてよろしいかどうか。そのもろもろとおっしゃる理由の中には、なるほど私の言う独占資本だけの利益を考えたものではないが、しかしもろもろの理由の中には労働者の生活を守るとか、労働者自体を保護するなどというような、その趣旨も、もろもろの理由の中のほんの一部分にしかすぎない、かように解釈をいたしまして一体よろしゅうございますかどうか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 これは、私どものやっております政策こそ労働者の利益になるものである、こういう確信のもとにやっているのでありますから、最低賃金法というものの実施をすることは、労働者諸君に大いに得るところがあるのだ、こういうことを考えております。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 どうも第一問が長くなって申しわけございませんけれども、やはり最低賃金法を将来私どもが実施をしていきます根本的な問題でございますから、くどくお尋ねすることをお許し願いたいのでございますが、私はこの最低賃金法の根本の目的は、やはり低賃金に対する労働者を保護するということで、目的は一つである。学者によりましては、この最低賃金法については多目的と申しまするか、目的を幾つも並列にあげておられる方もあるようでございまするが、私どもはやはりこの最低賃金法を今作るに際しましては、どうしてもこの点は思想的、学問的に統一していかなければならぬと思うのでございまするが、最低賃金法の立法の趣旨というものは、断じて目的はたくさんあるのではない、目的は一つだ、その一つは、いわゆる労働者を保護する、こういうふうに割り切っておくべきものではないか、かように考えておるのでございます。目的の多様性はやはり副次的なものだ。今おっしゃいました産業とか、あるいは過当競争を防止するとか、いろいろ理由が述べられておりますけれども、それらの理由は決して並列的なものではなくて、それは副次的なものだ。主たる目的は、やはり低賃金の克服、それによる労働者生活の改善の要請が根本的な目的でなければならない、かように考えておるのでございまして、政府の趣旨の説明やら、あるいはお話を承わっておりましても、どうもこの点が明確になっておらない。労働者を保護するということがどうも出てこない。長いお話を聞いておりましても、部分的にちょっぴりとしか出てきませんので、この点はどうしても私は大臣のお口を通じて一つ明確にしておきたいと思うのでございまして、労働者生活の改善の要請に立脚しない最低賃金制などというものは、おそらくこれはナンセンスだと思う。私は現実的にそういう法案というものはあり得ないと思うのでございます。まあ私のいろいろ博学——ではございません、(笑声)浅学をもってして勉学をしたところでも、一九三八年でございますか、アメリカ連邦法でありまする労働基準法によりますと、今大臣がおっしゃいましたように、何か不正競争、過当競争を防止するというふうなことが主要目的であるかのごとく規定せられておるのでございますが、しかしそれもよく解釈をしてみますと、単なる不正競争の防止ではなくして、一部の使用者が有利な競争上の地位を獲得するため、不当に賃金その他の労働条件を切り下げるのを防止するのである、こういう点が明確になっておって、やはり労働者の保護ということが主たる目的になっておるのでございます。不当な賃金を克服することがどうしてもこの最低賃金法の主たる目的でなければならない、私はこの点を政府の法案の中に明確に打ち出していただかなければならないと考えておるのでございますが、大臣、一体いかがにお考えになりますか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 私が説明が下手でございますから、うまく意味が通じないで恐縮いたすのでありますが、政府のねらっておりますところは、やはり特に労働者だけということを考えておるわけではありませんが、この提案理由の説明にもありますように、労働者諸君、ことに零細企業の労働者諸君に最低賃金というものを実施することの効用については、数多くのことをわれわれは期待いたしておるのであります。ただもうそんなことはわかり切ったことであるから、長たらしくいろいろ書かないだけ。ただ特に私ども考えておりますのは、やはり生産を上げるというのは、もちろん今の自由経済のもとにおいては、経営に当る者が資本を持ってきて、それに勤労を提出して働いていただく。私は労使関係というのは二つ意味があると思うのであります。一つは、一つの企業、事業を盛り立てていく、その半分の力を出していただいておる労働者諸君、それから同じ目的で労働者の人たちの御協力を得て働く企業目的を持っておる企業者、これはその企業を成功させていこうとする同一目的に邁進をしていく。今度はその分配にあずかるときには立場が少し変って、やや対立したような工合に、おれの方へこれだけの分を回したらよかろうという対立的立場、分配のときに労使という立場が出てくる。しかし究極において目的は同じであります。われわれ政府が施策をいたしますときには、やはりその究極においてみんなの目的が一致しているんだ、その一致した目的が成功し得るように、すべての施策をそれに歩調を合して進んでいく、こういうねらいでありますから、最低賃金法を考えます趣旨もやはり零細企業に働かれる労働者諸君の苦汗労働を防止する、同時にまたそういうふうなことをしてあげることによって労働意欲が盛んになって労働能率が増強してくる、従って企業も活発になり楽になる、こういうことでありますから、特に一方に片寄ってどういう目的ということではなくて、両方ともいいように、しかも日本の産業が国際競争に立ち向ってもいかれるように、そういうふうな総合目的がこの最低賃金法にも含まれておる、こういうふうな工合に考えていただいてけっこうだと思います。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 大臣の御答弁もそこまで行きますと、どうもそこに基本的な私どもと考えの違うところがございまして、資本主義下におきまして、資本家、経営者というものと労働者というものがあって、そこに一つの搾取の形態があります限りは、やはり生産するときに資本家も労働者も同一の目的に向って一緒に行けるという、そういう御意見には私どもは無条件には御賛成をするわけには参りません。けれどもそれはややこの最賃法の規定から離れておるのでございまして、やはり大臣の御説明からいきますと、最低賃金法は総合的なもろもろの目的を持って生まれたということになるのでありますけれども、そういうもろもろの総合的な目的を全部この最賃法に入れられることによって、私どもが一番熱望いたしております労働者の保護ということ、最低賃金というものを克服いたしまして、働けば最低の生活が維持できるという私どもの一番ねらいとする——私どもじゃございません、最低賃金法いわゆる労働者保護法であります、その法律のねらいとするところがみんなぼけてしまう。そういうぼけた法律をお作り下さったのは、これはどうもわれわれはあまりありがたみがない。むしろごまかし法案になってしまって、ともするとその陰にまた労働者は泣くような形に追いまくられるのではないか、こういう懸念がありますので、もろもろの目的は目的といたしましても、最低賃金法に関する限りは、一つ大臣のおっしゃる総合的目的とか多様目的とかいうふうなものはやめにしていただいて、これによって労働者を保護するんだという、それだけに一つ限定をしていただけないか、かように考えるのでございます。終戦後から新憲法によってわれわれはいろいろの労働者保護の法規を作っていただきましたけれども、この最低賃金法こそは、考えようによっては私はこれは一番重要な法案ではないか、かように考えておるのでございます。労働組合法、労働関係調整法、労働基準法等々のいろいろな法律ができまして、労働者の健康及び生命を保持するために、使用者に安全衛生の施設を命じられたり、女子、年少者の夜業を禁じたり、さらに余暇の有効利用をも考慮して労働時間を制限するようにする、あるいはまたそれと同様の目的を持って、国は労働者の利益のために、賃金に最低の一線を画する必要が出てきた、かようなわけになるのでございましょうけれども、低賃金、食えない賃金が、直ちに労働者及びその家族の窮乏あるいは飢餓、そして社会不安を意味しておりまする以上は、賃金に適正な一線を画して、それ以下への低落を阻止するというこの立法がなければ、この保護がなければ、これは労働者の健康の問題や、そんな時間の問題は、何にもありがたみがないのでございます。しかるがゆえに、今でも、八時間労働なんて青いますけれども、低賃金あるがゆえに、労働者は、残業や夜業をとられると食っていけないからといって、夜業よこせ、残業よこせと言って、みずから八時間労働を否定してまでも、十二時間、十四時間を要求しておるという悲惨な状況が今日至るところにあるわけです。それがそのまま労働基準法やらその他の労働立法、保護法を事実上有名無実にしておるゆえんは、この最低賃金法という、生活を保障してくれる法律ができ上っていないからでございまするから、私はその意味においても、このたびの最低賃金法を今お作りになるときには、そういう総合目的などというようなりっぱなことはおっしゃらずに、そのものずばり、これは労働者を保護するのだ、労働者の生活を守るのだというふうに、これは一つ改めてもらうわけにいかないか、かように考えておるのであります。先ほどからくどく申し上げておるように、政府がこういう法律をお出しになった根本の思想には外国の思惑を考えたり、経営者の思惑を考えたり、資本家の思惑を考えたりして下さいまして、さっぱり食えない労働者の立場というものを重点的にお考えになって下さらぬので、これが私どもが了承、納得できない根本であります。  一つ具体的に申し上げますると、この目的として第一条ができ上っております。「この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上」その次がいけないのです。「及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」のでありまするが、私はこの際端的に申し上げて、この「及び」から以下を、一つこの目的から削除していただきまして——これはまた後ほどおいおいに御質問申し上げていきます。この「事業若しくは職業の種類又は地域に応じ」というこのこと自体も、政府が大きな間違いをおやりになっておりまするが、その点はあとで一つ御質問申し上げることといたします。この第一条の目的からは、質的向上をはかるを目的とするくらいにしていただいて、「及び事業の公正」云々を全部削除する、思い切ってすっぱりと切る、こういうことを一つ御了承願えないかどうか。そうなりますれば、私の第一問の質問は省略してもよろしいと思いまするが、さもないと、この第一の質問、思想統一の問題にだんだん時間を食っていかなければなりませんので、一つ明確なる大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 ただいまのように削除することを考えておりません。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 いま一度大臣に申し上げますが、この最低賃金法の目的でございますが、この法律をお作りになる目的が第一条に書いてありまするけれども、この第一条の目的が非常にぼやけている。多様目的と申し上げまするか、いろいろ目的があって、それを御質問申し上げましたら、経営者の立場を考えたり資本家の立場を考えたり、外国の買弁資本のことを考えたり、さようなことをこの法案の目的の中にお入れになっておって、肝心の労働者を保護する、労働者の生活を守るという、その真の目的が少しも——少しもとは言いませんけれども、ややぼけております。その労働者を守るという目的を明確にするために、この余分な字句を省略していただくわけにはいかないか。「及び」から下の方をすぱりと取って、労働条件の改善をはかり、もって労働者の生活の安定をはかるのだ、かようなわけに一つしていただけないかということを申し上げておるのであります。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、小林さんの御意思のように変える意思は持っておりません。政府は賃金審議会の答申を尊重いたして立案いたしたことは先ほど申し上げましたが、ILOは御承知のように——小林さんもILOについては御熱心のようでありますが、最低賃金に関する条約のあとで勧告がついております。これには「関係ある労働者の賃金を有効に保護し且不正競争の可能性に対し関係ある使用者を保護する目的を以て、決定せられたる最低率よりも低き率に於て賃金の支払はるることなきを確保する為執るべき措置の中には」云々、こういう工合でありまして、やっぱりよその国でもこういうふうに最低賃金制のときには、関係あるそれぞれの事業の方もちゃんと賃金を支払い得るように、これのめんどうを見てやるということも併行して考えるべきものだという勧告をILOでいたしておるようなわけであります。それだからこそ中央賃金審議会は政府案に盛り込まれているような勧告を出していただけたんだ、こういうふうに解釈をいたし、われわれは中央賃金審議会の答申の趣旨を尊重して立案をいたしたわけであります。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 私のはILOの最低賃金に関する二十六号につきましては、またこの次の第八回で御質問を申し上げる用意をいたしておりますので、その点には触れませんが、何といってもあらゆる労働者の保護法も、この低賃金を解決するという、この最低賃金法の立法の趣旨が明確に労働者の側から規定されていかない限り、私どもはこういう法律を作っても、それこそ結局むだではないか、かように考えるのでございまして、せっかく石田大臣から倉石労働大臣まで、かくまで御苦労願ってこの最低賃金法というものをお作り下さった熱情があるのでございますから、そのお熱意があるのならば、せめてこの第一条の目的の点も明確にして、今まででき上った労働基準法、労働組合法等々、これは全部世界でもまことに誇り得べきわが国の労働保護法でございますので、こういう保護法の最後の仕上げをする、いわゆる開眼でございます。目を入れるというこの最後の方法が最低賃金法でございますので、こういう関係法規と相並列して、ともに世界に誇り得るような明確なりっぱな最低賃金法を一つ作っていただきたい、こういう願望を兼ねて私は今大臣に御質問申し上げているのでございまして、そのためには一つ第一条だけはいま少し明確にその目的を明らかにしていただけないかと思うのでございますが、私の第一問の質問がまだ終らないうちに、今委員長から、本日は七時二十分くらいで打ち切って下さい、こういう紙が参りましたので、もし私の最初に申し上げましたように十問の質問を全部やらしていただけますという御理解がありますならば、私は委員長の御指示通りこれで質問を打ち切りたいと思います。

園田直自由民主党

○園田委員長 次会は明十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後七時二十一分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗