社会労働委員会 第1号
- 発言数
- 67 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1958/12/16
会議録
○園田委員長 これより会議を開きます。 この際、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。一、厚生関係及び労働関係の基本施策に関する事項、二、社会保障制度、医療、公衆衛生、婦人児童福祉及び人口問題に関する事項、三、労使関係、労働基準及び雇用、失業対策に関する事項、以上各事項についてその実情を調査し、対策を樹立するため小委員会の設置、関係各方面よりの説明聴取及び資料の要求などの方法により、本会期中調査を進めたいと存じます。つきましては衆議院規則第九十四条により、議長に承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○園田委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。 —————————————
○園田委員長 次に去る十日、本委員会に付託されました内閣提出の国民健康保険法案及び国民健康保険法施行法案の両法案を一括議題とし、審査に入ります。 まずその趣旨の説明を求めます。橋本厚生大臣。 —————————————
○橋本国務大臣 ただいま議題となりました国民健康保険法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。 福祉国家の理想を実現して参りますために、政府はつとに社会保障の向上及び増進に努力して参つたところでありますが、各種の施策のうち、最も緊急を要するものが疾病に対する医療保障の整備にありますことは、広く一般の認めるところであります。このため政府は、昭和三十二年度から最重要施策の一つとして、昭和三十五年度を目途とする国民皆保険の達成を掲げ、国民健康保険の普及を中心に諸般の基礎的条件の整備を進めて参っのであります。 この法律案は、さきに社会保障制度審議会が行なった医療保障制度に関する勧告にこたえて、現行の国民健康保険法を再検討し、財政上の裏づけとともに国民皆保険の基礎法として、現行法を全面的に改正しようとするものでありまして、社会保障制度審議会におきましても慎重審議の結果、原則的に賛成を得、さらに答申の線に沿って所要の整備を加え、御承知のごとく第二十八回国会に続き、第三十回国会において御審議をわずらわしたのでありますが、ともに、不幸審議未了と相なったのであります。 本改正案は、前国会における修正点を全面的に加えるとともに、御審議の経過を十分に尊重し、本国会において再び提案し、御審議をわずらわしたいと考える次第であります。 この法律案の要旨とするところは第一に、国民皆保険態勢の確立のため、国の責任を明確化したことであります。現行法では、療養給付費の二割と事務費の全額に対しまして補助金を交付しているのでありますが、療養給付費補助金は総額で療養給付費の二割とし、そのうち二〇%を財政調整に充てて交付しておりましたため、療養給付費の最低一割二分程度から最高二割五分程度までその交付割合が市町村によって相違し、概して申し上げますと、地方財政の良好な市部には不利となっておったわけであります。これからの普及の重点は、大都市を含む市部にありますので、普及の障害を除去するとともに、国民健康保険に対する国の責任の明確化をはかるため、従来の補助金を負担に改め、療養給付の二割はどの保険者に対しても負担することとし、事務費につきましても負担金とするのほか、新たに、療養給付費の五分に相当する調整交付金制度を設けて、国民健康保険財政を調整し、負担の衡平及び内容の充実をはかることとしたのであります。 第二に給付内容の充実であります。従来の国民健康保険は、健康保険と比較いたしますと、給付範囲の面でも著しく劣っていたのでありますが、これを健康保険と同一とし、また、給付割合も、大多数の保険者が五割にすぎなかったのでありますが、財政の充実とともに、これについても漸進的に向上を期することができるようにした次第であります。 第三に国民健康保険における療養担当者制度につきまして、最近の医療の実情に応ずるとともに、この事業に協力を希望しているすべての私的医療機関が参加し得ることとするとともに、各般の規定におきまして公私医療機関を差別せず、全く同一の法律的取扱、といたしております。国民健康保険の被保険者は、都道府県知事の登録を受けた国民健康保険医または国民健康保険薬剤師から療養を受けるものとし、国民健康保険の療養の給付の取扱いをなさんとするものは、その旨を都道府県知事に申し出で、これが受理されることを要するものとし、申し出の受理の拒否、取り消し等につきましても、地方社会保険医療協議会の議を経ることとし、さらに弁明の機会を与え、診療報酬につきましても、保険者と療養担当者が協議して定めるため、割引等が見られたのでありますが、健康保険と同一とし、また健康保険法の規定による保険医療機関、保険医等の取り消しによって国民健康保険の療養取扱い機関、国民健康保険医等の地位を失わないようにする等、その地位の安定をはかったことであります。 第四に、昭和三十五年度までの及びその後の例外的な経過規定を設けまして、市町村が国民健康保険を実施する建前としたことであります。 政府は、この法案の成立によりまして、いまだ医療保険の対象となっておらない約二千万人に近い国民に一日も早く医療保障を及ぼしたいと念願いたしておるものであります。 以上がこの法律案を提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。 次にただいま議題となりました国民健康保険法施行法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。 本法案は、国民健康保険法案の施行のため必要な経過措置を定めるとともに、関係法律の整理を行おうとするものであります。 次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。 第一に、国民健康保険産業の開始の勧告及び助言の制度を設けたことであります。国民健康保険の未加入者を一日もすみやかに解消せしめる趣旨から、昭和三十六年三月三十一日以前においても、厚生大臣及び都道府県知事が未実施市町村に対して事業の開始につき勧告または助言を行うことができることといたしたのであります。 第二に、国民健康保険法案におきましては、国民健康保険を行う主体を市町村及び従前の同一の事業または業務ごとに設けられる特別国民健康保険組合に限定いたしましたので、全市町村が事業を実施するに至る昭和三十六年三日三十一日までの間は、現に事業を行なっている普通国民健康保険組合及び農業協同組合等の社団法人についても、引き続き国民健康保険を行うことができることとし、これらに対する国康負担等については市町村とみなすことといたしたのであります。 第三に、国民健康保険法案におきましては、療養の給付の範囲を健康保険と同一といたしましたが、これによる急激な影響を避けるため、当分の間、政令で定める範囲のものは、給付を行わないことができる道を開いたことであります。 第四に、以上のほか経過措置といたしまして、現行法に基く療養担当者等が新法の国民健康保険医、国民健康保険薬剤師または療養取扱い機関となることに伴う必要な規定、現行法と国民健康保険法案との被保険者の範囲の相違による必要な調整規定等を設けることといたしたのであります。 第五に、国民健康保険税の賦課方法を整備する等、国民健康保険法案の施行に伴う必要な関係法律の整理を行うことといたしたのであります。 以上が、この法律案を提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
○園田委員長 質疑に入ります。滝井義高君。
○滝井委員 国民健康保険法の財政上の問題は第三十回の臨時国会で一応政府の見解をお尋ねいたしましたので、あれから国民健康保険そのものの情勢は変っていませんのでその点は省略をいたしまして、私は新しく出て参りました国民健康保険法の法文上のいろいろの問題点について政府の見解をお聞かせ願いたいと思います。 その法文上の見解に入る前に、法文を構成をする医療機関やあるいはその機関の中に働く従業員等のいろいろの問題を先にきょうはお尋ねをしたいと思うのです。 そこでまず第一に、健康保険法が新しく改正をせられて以来、機関という概念が出て参りました。保険医療機関、それから療養取扱い機関、こういう機関の概念が出てきたわけですが、保険医療機関とか療養取扱い機関というものはいかなるものなのか、これを一つ御説明願いたいと思います。大臣は一体どういう工合に機関をお考えになっておるか、大臣の見解をまずお尋ねしたい。
○橋本国務大臣 お答えを申し上げます。先年健康保険法の改正がありましてから機関という考え方が出て参りましたが、保険医療機関と申しまするのは、保険医がそこにおりまして、そうしてそれに医療に必要な物的設備を備えて、それで保険法に規定せられました内容の医療を行う施設総体を保険医療機関というものと考えております。
○滝井委員 そうしますと、機関というのは土地や建物、設備、それからそこに働く総合的な人的要素プラス経済的な立法である健康保険法あるいは国民健康保険法というその法律が具体的にそこで実施をせられる場所、こういうのが機関だ、こういうことなんですか。
○橋本国務大臣 大体さように心得ております。
○滝井委員 そうしますと、そういう機関の中において機関の開設者、機関の管理者、そしてそこで働く保険医あるいは国民健康保険医、こういうものの任務と申しますか職務分担と申しますか、これは一体どういうことになるのか。開設者には開設者の任務と使命があると思います。管理者には管理者の任務と使命があると思うのですが、その関係は一体どういうことになっておるのか。
○橋本国務大臣 ただいまの任務の分担の関係は、医療法に定められておる通りに考えております。
○滝井委員 それを一つ明確に、開設者、管理者、それからそこにおける保険医とか保険薬剤師あるいは今度の新しい国民健康保険法における国民健康保険医ですか、こういうものについて一つお示し願いたい。
○橋本国務大臣 こまかい法律的な解説でございますから、政府委員から答弁をいたさせます。
○小澤説明員 開設者並びに管理者につきましては、医療法に規定がございます。医療法の規定によりますと、まず管理者の任務について申し上げてみますと、病院または診療所の管理者は医師でなければならない、このことは同時に開設者が医師をもって管理者に充てることが義務づけられておるわけでございます。 それから第十三条に診療所の管理者の義務といたしまして「診療上やむを得ない事情がある場合を除いては、同一の患者を四十八時間をこえて収容しないようにつとめなければならない。」という道徳規定が義務づけられております。 それから第十五条には、診療所の管理者はそこに勤務するところの医師、歯科医師、薬剤師、その他の従事者の監督をいたしまして、適正に診療業務を行うようにしなければならない、とあり、十六条には、病院につきましては、管理者は当直医師を置かなければならない、さような義務づけもございます。 なお省令に委任しておるいろいろの事項といたしましては、エキス線診療に関する事項、その他こまごましたたくさんの管理事項がございまして、開設者はさような医療法の立場におきまして適正にこれらの業務を運営する管理者を選び、その運営をまかしていくという建前をとることになっております。
○滝井委員 そうしますと開設者と管理者の医療法上の関係というものは管理者が正当な管理者としての注意を怠った場合には、管理者の責任でもあるが、同時にまたそれは開設者の責任にもそのままかぶさっていくわけですね。
○小澤説明員 管理者の病院管理に関しまして適正でない場合におきましては、管理者は責任をもって適正に運営するように努めなければなりませんと同時に、もしも適正に運営しない、あるいは医事に関する不正の行為等が管理者にあった場合において、都道府県知事は開設者に対しまして、管理者を交代させることを指示することができる建前になっております。
○滝井委員 保険局長にお尋ねいたします。今医務局長からお話の通り、都道府県知事は開設者に向って、医事に関してそごがあった場合には管理者をかえさせる、こういうことになっておる。健康保険法ではそのままこれは機関の指定になりあるいは今度の国民健康保険法では取扱い機関の指定になっておるわけなんですが、そうすると医務局の見解と保険局の見解とは違ってくることになる。医務局の見解では機関の指定をしません、管理者を指定するわけです。この関係は、保険局と医務局との医事に関する取扱いが違うということはおかしいのですが、これは一体どういうことですか。
○太宰政府委員 先ほど医務局長が御答弁いたしましたのは医療法の観念でお答えしたと思います。国民健康保険ないし健康保険関係は、若干医療法と違いまして、一つの保険というシステムを運営していく際のいろいろな規制でございますので、その辺は必ずしも同一に考えなければならぬ点はないと考えております。
○滝井委員 日本の現在の医療というもの、少くとも国民健康保険の実施せられておる地区については、九割九分までは医事、医療というものは保険医療なんです。社会医療なんです。そうしますと、医務局の医療に対する見解と保険局の医療に対する見解で、片一方は機関を指定をし、一方は管理者を指定をする、こういう食い違いというものは、私はおかしいと思うのです。大臣、これは一体どっちが正しいのですか。日本における医療というものは、皆保険の実施で、少くとも三十五年の終りには九割九分までは社会医療になっちゃうのです。そうすると、医務局の見解と保険局の見解とが一致しないと大へんなことになるのです。
○橋本国務大臣 医療法に定めてありますところは、保険の運営ということでなしに、医療法に定められた医療をやる上における監督の規定でございます。それはやはり保険という一つの医療の運営の方式を定めて、そのワクの中での監督の方法を考えておるわけでありますが、私はおのずから医療法の規定と保険法の規定と異なる面の出て参りますのはやむを得ないと思っております。
○滝井委員 それは異なる面が出てくることはやむを得ませんが、医療法というものは、少くとも、いわば医療に関する憲法なんです。医師法、医療法というものは一番基本法なんです。その上にそびえ立つのが経済的な、社会的な立法である国民健康保険法なり健康保険法であると思うのです。そうすると、医療法では一切の医事に関する責任というものは筒理者にあるんだということで、管理者をかえろという命令ができるのに、その前に経済立法がなぜその機関を指定してしまわなければならぬかということなんです。憲法よりか重いものを課する形になるのです。管理者をかえればいいものを、その管理者もひっくるめて機関も指定してしまうのです。だからこの点は今の大臣の答弁では、私、どうも納得いきません。そこで、大臣に具体的にお尋ねしますが、診療録というものはだれが保管するのですか。
○橋本国務大臣 政府委員に答弁いたさせます。
○小澤説明員 診療録の保管義務は管理者にございます。
○滝井委員 管理者は医師でございますから、医師が保管することになるわけです。そうしますと、健康保険法では、保険医療機関が保管することになる。こういうように、医者が保管しなければならぬが、健康保険法では開設者が保管しなければならぬ。機関が保管しなければならぬ。機関は、さいぜん大臣の答弁がありました通り、医者も含まれておりますけれども、医者そのものではない。管理者そのものではない。これは一体どっちがほんとうですか。その診療録の保管の義務をあやまったときには、健康保険法では機関が取り消される。新しい国民健康保険法では、療養取扱い機関が取り消される。そうすると、保管の義務は医者にあるのです。機関ではない。ところが、健康保険法では機関になっている。医師法では医者になっている。こういうように、すでに自体が分裂をしてしまっておるので、一体われわれはどっちに忠になればよいかというのです。片方に忠ならんとすれば孝ならず、孝ならんとすれば忠ならず、全く進退きわまった状態でしょう。一体これは法律上どういう工合に処理される所存なんですか。今言った管理者の問題と同じ形が出てきているのです。診療録、これは医療における生命です。これに対する大臣の見解を伺いたい。——それは明確な御答弁のできないのがおそらくほんとうです。いわば医療の憲法である医師法なり医療法というものをおっぽりにして、独自の立場でどんどん進んだのが今度の国民健康保険法の改正である。だから、これを改正する場合には、医療法なり医師法というものを頭に入れて、その概念の上にこの社会立法をしなければならなかったのに、社会立法だけが独走してしまった。ここにこういう大きな間違いが起ってきた。これは端的に申し上げますならば、行政の面で各省割拠の弊があると同じように、厚生省の中で各局対立というか、全く人のことはわれ関せず、わがことのみやればよいという関係がはしなくも出てきていることを意味するのです。これは明確に割り切った答弁のできないことがほんとうなんです。あなた方、両方お書きになったのだからやむを得ない。だからこれは改めなければいけません。そこで大臣にお尋ねしたい。医業とは一体どうお考えになりますか。
○橋本国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。
○小澤説明員 医業とは、医の行為を業として行う者を言うと解釈しております。
○滝井委員 そうすると、医の行為を業として行う者が医業であるならば、医業は医者が行うのであるか、それとも機関が行うのであるか、いずれですか。
○小澤説明員 医業そのものを行うものは医師でございます。
○滝井委員 ここにも問題があります。医療法の十条を見て下さい。病院、診療所が医業をやることになっている。機関が医業をやることになっている。医師法では、医師でなければ医業をやることができないとなっている。そうすると、医師法の医業と医療法の十条の医業は一体どう違うかということです。これがまたはっきりしない。今言ったように、医の行為を業として行う者、これは医師でなければならぬ、こういうことをおっしゃったのです。ところが、今度は病院、診療所が行う医業というものが出てきたわけです。だからここに医師法をおいて、全く新しい概念が出てきたわけです。私は、これは新しい概念だと思う。医師法の医業と医療法の医業と同じじゃないと解釈せざるを得ない。その点はどうですか。
○小澤説明員 医業を行う者はあくまでも医師でございますが、医療法の第十条に言うところの病院または診療所は、医師が行う医療の場所をさしておるのでございます。
○滝井委員 病院、診療所の行う医業というものは場所ではないでしょう。もしあなたが、それは場所だとするならば、それは私の勝だ。場所なら私の勝です。なぜならば、今度は健康保険法では機関が療養の担当をやるのです。機関が療養の担当をやるという場合に、場所ならば療養の担当はできない。何々において行うはずなんです。ところが機関が行うことになっておる。だからその解釈というものは医療法の考え方ではない。医師法の考え方ならそれでいいかもしれません。しかし、この医療法の考え方はそうではない。あなた方が頭をひねるように、医師法における医業と、今度は医療法における医業とは分裂してきている。違ってきている。いわゆる医療を行うその場所であったはずの概念が、いつの間にか医業を行う主体になろうとしておる。こういう分裂が医師法の中に出てきておるのです。これは幾ら医師法の概念でもって医療法を律しようとしても律することのできない状態が出てきておる。そこでこれは今のように厚生省内部の解釈が分裂してきておる。 さらに医事というものは一体どういうものなのか、医業と医事とは一体どう違うかということです。
○小澤説明員 非常にむずかしいお尋ねでございますが、医事は医業よりかもう少し広く考えております。あまねく、もっと広範な意味における医に関する事務、かような考え方をしております。
○滝井委員 そうしますと、私は医業の方が広いんだと思っておったのですけれども、医事の方が広いのですか。実は医事に関し不正のある場合ということは非常に大事なことなんです。至るところで出てきておる。こういう医業と医事とに——医事の方が広いんだとなると、これは非常に問題のあるところだ、こういう疑問をもう少し研究してみて下さい。 それから健康保険に出てくる療養の給付というものは、大臣、これはだれがやるのですか。
○橋本国務大臣 健康保険法に出て参ります療養の給付は、保険医療機関が行うわけであります。そういう建前になっております。
○滝井委員 それは間違いです。保険者が行う。
○橋本国務大臣 保険者だそうでございます。
○滝井委員 そういうように、大臣さえもが間違えるようにこの概念というのはむずかしいのです。療養の給付というものを行う者は保険者なんです。そうすると一体療養の給付を行うことと、療養の給付を担当することとはどう違うかということです。保険者が療養の給付を行います。療養の給付を担当するのは保険医療機関です。ところが今度の国民健康保険法は療養の給付でなくて、療養を担当するのは保険医になっておる。こういうように実に概念が微妙です。療養の給付を行う者は保険者です。療養の給付を担当する者は保険医療機関です。療養を担当する者は国民健康保険医です。一体これはどういう工合に違うかということです。こういうように実に眼光紙背に徹するような姿で、これはだんだん分析していくとわからぬようになってしまう。なぜこれがわからないようになるかというと、結局医療法なり医師法の概念とこれとが違うからなんです。従って療養の給付を担当することは医業なのか、医事なのかという問題になってくるわけです。こういうことになって参りますと、機関と医者との関係、前にありました機関と医者、開設者と管理者、こういうような関係が明確でないのです。その職務権限というものが明確になっていないところに非常な混淆が出てくる。そこでこういう私の気づいた点だけを今試みにやってみたのだけれども、厚生省内部の意思統一ができていない。そういう中でこういう法案が出てきているわけです。そこでこの解釈をめぐって、なるほどわかったようであるけれども、議論をだんだん突っ込んでいくと、非常に解釈がまちまちです。 そこでお尋ねしますが、患者が国民健康保険証を持ってきます。この持ってきた保険証の呈示を受けて、この保険証をきちっと見て、そして誤りなきを期して診療をやる責任は一体だれが持つのですか。機関ですか、それとも医師ですか、どちらですか。
○太宰政府委員 これは全般的に医療機関でございます。
○滝井委員 そうしますと、保険証に何月何日から何月何日まで治療を受けたということを書きまして、そして治癒とか死亡とかという転帰を書きますが、この記載の義務はだれにあるのですか。機関ですか。
○太宰政府委員 これは責任は機関が負います。
○滝井委員 責任は機関にあるのだが、書くのは医者が書くことになるのじゃないかと思うのです。そういうように頭をひねらなければなかなかわからぬような工合に、保険関係はなっておる。だから保険医療機関及び保険療養担当規則というのを健康保険で出しておるわけです。これがいわゆる準則です。これは機関も守らなければならぬが、同時に国民健康保険医も守らなければならぬことになっておるわけです。この準則を見てみると、保険医療機関がやらなければならぬことがたくさんあるわけです。そうすると、これは医務局長さんにお尋ねするわけですが、こういうような医療機関の担当する規則ですか、医務局の見解としては保険医療機関の療養担当というのが、ここにたくさん——保険医療機関の担当する療養の給付、担当の範囲がそこにきめてあるわけです。それから今度は療養の給付の担当の方針、受給資格の確認、被保険者証の返還、一部負担金等の受領、証明書等の交付、それから助力、診療録の記載及び整備、帳簿等の保存、それから通知、収容、こういうようになっておるわけです。療養給付の担当方針というものは、私は管理者がやるのじゃないかと思うのです。ところが機関の方になってきておるわけです。問題は保険医療機関及び保険療養担当規則というものがまるきり全部医療機関がやることになってしまっているわけです。そして医療法における管理者というものが保険立法にはちっとも出てきていない。あなたの見解によれば、当然それは管理者がやらなければならぬというようなもの、しかもその管理者が間違っておったら、医療法では知事がこれの更迭を命ずればいいようなものが、健康保険法なり今度の新しい国民健康保険法では、管理者というものがどこかに消えてしまっているのです。そしてぽっと先に出てきているものは開設者なんです。機関なんです。こういう形になっておる。そこで混乱が起ってきた。だから今言ったように、診療録というものを保険医療機関が保管をすることになる。医師法で見ると、医者が保管をすることになる。こういう問題がある。療養担当の方針などというものは開設者がきめようとしても、開設者はしろうとの場合があるからわからない。管理者なんですよ。ところが管理者などという言葉はどこにも出てこない。今度のこれにも出てこないのです。こういうように、どうも読めば読むほど、議論すればするほどわからなくなってくる。こういう状態では、今後の日本の医療というものは混迷をして、法制局が大へんなんです。一たびこの法律の修正を作ろうとし、あるいはこれを何とか一本の方向にまとめようとすると、健康保険法から医療法から医師法から今度の新しい法案から、全部をいじらなければ、意思の疎通が一貫しないという矛盾が現われてきておるということです。きょうは私はこれ以上やりませんが、新しく国民健康保険法を修正するについて、与党と野党とが意思の統一をはかるためには、こういう基本的な問題の意思の統一をはからなければ、この修正というものはなかなかやれないのです。ところが今言ったように、厚生省内部においてもこういう問題についての意思の統一ができていないのです。それでは行政の指導というものはなかなか一貫していかない。しかも社会医療というものが八割、九割と、日本の医療の非常に大きな比重を占める段階に立ったときには、ますますその医療の憲法である医師法であるとか医療法というものの概念統一をやって、その上に社会立法というものをどうするかということをやってもらわなければならぬと私は思うのです。まさにきょうの質疑を通じて、その時期がきたことを厚生省自身も証明してくれたし、われわれもそれを痛感しております。大臣、こういう点についてどうお考えになるのか。これは橋本さんのときにやってもらわなければならぬ段階だと思いますが、大臣の見解をお尋ねして、あとの逐条的な質問は次会に譲ることにいたします。
○橋本国務大臣 実は国民健康保険法の立法から今日までの間に、非常に皆さん方にもごやっかいを相かけ、当局においても骨を折ったところでございます。御指摘のございました通り、特に先年の健康保険法の大改正以来、なかなかむずかしいいろいろな観念が入って参りました。実は、現在の医師法、医療法があり、現在の健康保険法があるところに、今日新国民健康保険法を立法するに当って、概念の調整に非常に骨を折ったところでございます。今日の段階におきましては、法制局等とも相談をいたしまして、現在提案をいたしております法律案が、その間において法律的な説明の筋の一番通しやすいものと考えて、そういう面においても立法したつもりでございます。ただ御指摘のございましたように、非常にいろいろな問題があると思います。健康保険法等をめぐりまして、ただいま御指摘のございました点は十分心得まして、なるべく早い機会に、総体的に練り直して参りたいとは考えております。 —————————————
○園田委員長 医療に関する件について調査を進めます。 この際柏崎国立療養所における従業員の問題について発言を求められておりますので、これを許します。小林進君。
○小林(進)委員 緊急質問の時間をお与え下さいましたことを、委員長に深く感謝を申し上げます。当面国立療養所関係の最高の責任者であります厚生大臣、医務局長並びに、これは警官の不当なる権利乱用の問題等もございますので、警察庁長官の御出席もお願いいたしたいと思うのでありますが、長官はお見えになっておりましょうか。
○園田委員長 警察庁長官は、緊急でありますからまだ出席しておりません。連絡はとってありまして、なるべく出席するように言ってあります。
○小林(進)委員 長官の御出席ができなければ、その下級の最高責任者でよろしゅうございますが……。
○園田委員長 だれか担任を呼びます。質問を続行して下さい。
○小林(進)委員 大臣もお忙しいようでございますから、私の質問はむしろ警察庁当局に聞いていただきたい問題でございます。これは新潟県においては非常に大きな問題として取り扱われ、最近開かれている県議会においても、非常に重要な事件として取り上げられた問題でございまして、どうしても厚生省当局のこれに対する所見を明確に承わっておく必要がございますので、あえて御質問申し上げるのでございます。 [委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕 その事件というのは、やや古くなっておるのでございますが、今年の六月の十日であります。六月の十日に柏崎国立療養所の中の第八病棟でございますが、その中で金が五千二百円入っております患者の財布が紛失したという事件について、成年に達せざる一准看護婦が、これをとったのであるという嫌疑をかけられて、そのために、その看護婦がついに睡眠薬を飲んで自殺をはかったという問題でございます。それが父親の了承するところとならず、その後もしばしば警察当局に対して、黒白を明らかにしてくれ、自分の娘は決してどろぼうをするような教育をしていないけれども、ほんとうにとったものならばとったというふうにお調べを願って、黒白を明らかにしてくれということを、再三警察にお願いしたけれども、その後の警察の態度があいまいであって、ついにしびれを切らして、十一月半ばごろでございますか、人権擁護委員会にそれを訴えてきた。それでこの問題が表面化してきたということでございます。 内容をかいつまんで申し上げますと、やはりその第八病棟の第二病床にいる大西さんという患者の、ベットの中に置きました財布がなくなったというのでございます。たまたまその柏崎の国立療養所に刑事が二名おられたのであります。十日の日の十一時に紛失したということで、患者が騒ぎ出しますと、午後の三時からその中の、今申し上げました未成年者の看護婦でありますが、本人の名誉にも関することでございますので、名前は省略いたしまして、Yという頭文字で呼びたいと思うのでございます。Yというその看護婦が嫌疑を受けまして、直ちに療養所の中の一個室、私はわざわざ療養所まで行きまして、その取調べを受けた個室も見て参りました。廊下でもあり、人通りの激しいその個室の中に、二人の刑事に呼び出されまして、そしてそこで、われわれから見ますならば、まことに人権を侵害して余すところのないような過酷な取調べを受けたのでございます。その取調べを受けました経過については、私が説明するよりも、ここに本人みずからのしたためた文章がございますので、短かい時間でありますから、私がここで読み上げて、一つ御判断をいただきたいと思うのであります。 これは一日、二日と二日間にわたって取調べを受けているのでありますが、まず第一日目であります。「呼び出されて、部屋にノックして中に入った。人相が悪い人が二人もいたので、あまりよい気持がしなかった。」これがまず取調べの第一の印象でございます。その中間はまあ省略するといたしまして、「私が「絶対にとりません」と言ったら、「お前がとらないでだれがとるというのだ、だれがとったか言ってみれ」と言ったが、私は、私でないことは事実だが、さてだれがとったといわれても見当がつかない。そうしたら、柴野さん」——これは一人の刑事の名前は出ております。私は個人の刑事を排撃しようというのではございませんので、できれば名前を秘してと思いましたけれども、これはもはや全世人に言い伝えられておる言葉でございますから申し上げますが、その柴野さんという刑事が、「「人が親切にしてやればそれもわからないで、お前は良心があるのか、良心があればそんなことは言えないはずだ」とおこった。私は生まれて、肉親ですら言われたこともないようなことを言われ、声も出ないほどであった。私がそれでもとらないというものですから、隣の刑事に柴野刑事が、「こんなに強情張るんだったら、手錠をかけて本署に連れていかねばだめですね」と言われ、私は足がふるえ、刑事の顔を見るのもやっとのくらいだった。「二十前の小娘のくせに恥知らずの女だ」とか、耳をおおいたくなるほどの言葉でどなられた。私が、「あんまりだわ」と言ったら、「何があんまりだ、こっちはしろうとじゃないんだぞ、人のことをなめていやがって」と大きな声を出す。私が黙っていると、「Y、Y」と大声でどなられるし、隣は医局だし、恥かしいのと、極度の恐怖心と、激しい憤怒で卒倒しそうなのをやっとこらえていた。「お前は良心のない女だろう」と言われたときなど、私は刑事の前で舌を切って自殺でもしてやろうかと思った。柴野さんでないほかの刑事が、「お前が早くとったといえば、婦長にもだれにもわからないようにそのままここに勤務できるようにしてやる」と、まるで自分の子供に言うようにやさしい態度で言った。柴野刑事がまた「お前は本署の刑事の前で取り調べられることがどんなことか知っているのか」と言った。私はここで考えた。幾らとらないと言っても、私の言うことなどちっとも信用してくれないし、ただ一方的に私がとったとったと責められるし、もし手錠などかけられて警察などに連れていかれたら、一生も台なしになるし、もちろん結婚の望みもなくなると考えた。あんな言葉は二度と聞くのもいやだった。私は、いっそとったといえば、だれにもわからないようにしてやるという言葉を信用して、とったといえばこの重苦しい雰囲気からのがれられるし、自分は救われると思った。私はそのときは、それがどんなにおそろしいことかもわからず、不覚にも「はいとりました」と答えた。」こういうのでございまするが、「今になって考えると、取り返しのつかない事実であり、甘い考えだった。私が泣いていると、「そんな芝居はするな」と言った。でもあのときは、あの脅迫的な雰囲気の中に自分を置くことが死よりもつらかった。私がとったと言ったら、気持の悪いほどものやわらかな態度に変った。このとき「財布の中に幾ら入っていた」と言われたので、久住さんが話された通り、五千二百円と答えた。「五千札一枚か千円札五枚か」と聞かれたが、わからないので、適当に「千円札五枚と言った。その他のものは聞かれたが、「わからない」と答えた。財布をどこへやった」と言われたので、私は、ほんとうはうそなので困ってしまった。「捨てたのか」と言ったので、「はい」と答えた。「どこに捨てたか」と言われたが、私は全然言葉に詰まってしまった。そこで「洋服屋に払った」と言ったが、それもだめだった。適当な考えも浮ばなかったので、「八病棟の裏に捨てた」と言つたが、探してこいと言われ、私はまた困った。私が黙っていると、「それもうそなのだろう」と言われた。「お前はそんなにお金が要るのか、要るんだったら私が貸してやる」と失礼なことを言われて、私はむっとして、「私は要りません」と答えた。「捨てたというのはうそなんだろう、お前がからだにつけているんだろう、見せてみれ」と言われた、白衣のボタンを全部はずしてみた。すわれと言われて、すわった。私はどうしてもその部屋から出たかったので、「八病棟にあるから取り行ってくる」と言ったが、「おれが行く」と言ったが、それもうそだとわかった。最初から身に覚えのないことを無理に言わされたので、うそを言うより仕方がなかった。とったと言えば許してもらえ、早くここから出られると思い、「とった」と言ってのがれるべく努力したが、すべてがむだで、大きいわなにかかっていたのだと気づいたのがおそかった。私はほんとうに困ってしまい、「とらない」と言うと、「またそんなうそを言う、お前は頭が狂っているんじゃないか」と言われた。「お前はどうして考えるのか」と言ったが、私が「それだけは聞かないでくれ」と言ったら、「その理由を言え」と言われた。私は「患者さんや看護婦に知れるといやだ」と言ったら、「知れないようにしてやる」と言った。私が黙っていると、「もうとっくに退庁の時間は過ぎているのだから早く言え、お前につき合っているのだ」と言われた。ここで私は、「朝食のときに食堂の下の便所に捨てた」と言った。」このとき本署から電話がかかってきて、十日の取調べは午後の六時半に中止した。第一日目の取調べはこういうことで経過したわけでありまするが、そこで済んだあと、その柴野という刑事が、「係長さんとか部長さんとかいう人に手をついてあやまれというので、そのようにして自分はあやまった。」午後六時ごろだというのでありますが、あやまった。そこで、「私は帰って、入浴に行ったが、あまりしゃくにさわるので、とめどなく涙が流れた。宿舎に帰ってからも私は泣いていた。そこで友人の太田さんが部屋に来て、私にいろいろ聞くが、私は「死んじまうわ」とか自分でわからないようなことを言っているうちに、八時半ごろだと思うが、婦長さんが来られて、「財布が隣の岡田さんのベッドから出てきた」と知らせてくれた。そのとき私はあまりの嬉しさで、太田さんに抱きついて泣いた。あんなに嬉しいことは生まれて始めてだった。財布が出てこなかったら死を覚悟していたんだが、財布が出れば、財布の指紋をとれば、私でないことがはっきり立証されると思ったら、救われる気持で一ぱいだった。そこに友人の林さんが迎えに来てくれたので、その晩は散歩に出た。」こういうのでございまするが、さて第二日目であります。第二日目になりますと、六月十一日に普通に勤務しておりますと、「久住さんが、警察の人が来ているから私に行くように言われたので、私は行くのはいやだと断わった。きょうはそんなひどいことは言わないと思うから、行きなさいと言って、応接間の前までついてきた。ノックして中に入ったら、柴野刑事が、「お前はまたおれにうそを言った、お前はもう信用できない」とどなった。私は、私でないことがわかって呼んだのかと思って行ったのに、いきなりそんなことを言われてびっくりしてしまった。私が、とらないと言ったら、そんなことを言っても、お前の目を見ればちゃんとわかるのだと言った。柴野さんが、「なぜきのうはとったと言ったのか」と言ったので、「あまりひどいことを言われたのっで」と言ったら、「どんなひでいことを言った」というので、「手錠をはめて本署に連れていくということを言うんですもの」と言ったら、「だれがそんなことを言った」というので、柴野さんの方を指さしたら、「おれは絶対にそんなことを言わない、言うはずがない、第一、手錠など持ってこない」と言った。私はあきれた。きのう絶対に言ったのに、きょうはもう言わないと言った。私はものすごくしゃくにさわった。「私はきのうは死のうと思った」と言ったら、「お前みたいのもんは死んでしまった方がいいんだ」と言った。もう一人の人が「ここでは気が散るから、本署に行こう」と言った。私は、警察に行くのはきらいだから「いやです。警察だけは行くのはいやだ」と泣きながら言った。そのときこそ、私は警察に行くのがやだったので、手をついてお願いをした。しかしだめだった。そのとき「お前は、今だけじゃない。この前もお前だろう」と言ったので、」何か前にもどろぼうがあったそうでございますが、それを言っているのであります。「「この前もお前だろう」と言ったので、「違う」と言ったら、「絶対そんなことはない」と言った。私は、しゃくにさわって「私がみんな取りました」と言った。このときはすでに死を覚悟していた。「総婦長さんを呼んでくるから、あやまりなさい」と言われ、総婦長を呼びに行き、婦長が入ってきた。「あやまりなさい」と数回言われた。あやまりたくなかったが、あやまった。警察の人が「本署に連れていこうと思います」と言ったら、婦長さんは「そうですね」と言った。私が「いやだ」と言ったら、婦長さんは「私の部屋があいてますから、どうでしょうか」と言ったら、「やはり警察の方がよい」と言った。そこで、婦長さんに、私のあとからついていって着かえさせるように命じた。私は八病棟に行き、予防衣をかけ、このとき、ラボナ(睡眠薬)のびんを白衣のポケットに入れてきた。細菌室の前まで来たら、太田さんがあとから来て、「どうしたの」と聞いたので、「警察に行くの」と言ったら、また「どうして」と聞いたから、私は「太田さん、私、また取ったと言ってしまったの」太田さんは「どうしてそんなこと言ったの」と言って、心電室に入った。そこで二人で泣いた。太田さんが出ていった。私はもうこれ以上自分自身にうそを言わなければならないことがつらかった。また警警に行くのがすごくおそろしかったし、警察の人に死をもって抗議してやろうと思った。ことに柴野刑事に対しては言い知れぬ憎しみと怒りがあった。ラボナ十錠飲んだところに総婦長が入ってきて、「どうしてこんなところにいるの」と言われたので、私は「婦長さん、私取らないんです。だから警察など行くのいやです」と言ったら、「それじゃ私の顔が立たないじゃないの。あなたは、取った、取らぬ、それだけでもおかしいじゃないの。私はうそつきは大きらい。うそつきは昔からどろぼうの始まりと言いますもんね」と言われ、私は自分の親から見放されたような感じがした。そこでまた残りを飲んだ。そこで下の便所に入り、あきびんを捨てた。宿舎に来た婦長さんは、私のあとからついてきた。私は情なくなった。死に対し、恥かしくないように、下着から全部新しいものに着かえ、本館前まで来たとき、教務室の前で、松井さんたちに「Yさん、がんばりなさい」と言われたが、顔は見えず、声のみだった。私は泣きながら「はい」と答えたら、婦長さんが「そんなみっともないまねはやめて早く行きましょう」と言ったので、ガレージまで歩いて自動車に乗った。自動車が動き出したのはわかるが、その場の記憶は全くない。」それでラボナを飲んで意識不明に陥って、そのまま警察へ連れていかれたのであります。警察の玄関へ行って、本人が、ぐったりして意識不明になっておりまするので、あわてて病院へ連れていって療養に努めた。それで十数日でありまするか、期間を要して、ようやく助かったという現状になっておるのでございまするが、こういうようなことが国立療養所の中に行われておる。 しかも、私はしろうとでよくわかりませんけれども、午前六時半ころにベッド払いをやるという、そのベッド払いをやったその部屋からその金が出たのではなくて、それは第二号室というのだそうでありますけれども、その後にその患者が第十二号室にその日移転をしていかれた。その移転をしていった、新しく隣になった人のところから、その日の午後の八時ごろ、その五千二百円入りの財布が出てきたというのでございまして、そのときには、もはやその嫌疑をかけられたYという看護婦は取調べを受けておりまするし、もちろんなくしたという患者が移った新しい病棟へなんか一歩も足を踏み入れたわけじゃない。六時ごろ取調べが済んで、あとはふろへ入って自分の部屋へ帰っていったときの話であります。そういう関係なのにもかかわらず、なお翌日呼び出しておいてそういう嫌疑をかけているのでございます。時間もありませんので、私は長い質問を繰り返すのはやめますけれども、その後父親が、六月十三日、十四日、二十三日、二十六日、七月一日から十月の二十日、十月の二十八日と、警察の方へみずから行っております。どうか一つうちの娘がほんとうに白なら白、黒なら黒とはっきり言ってもらいたい、嫌疑があるような、ないような、嫁入り前の娘をこのままにしておかれるのは困るからというのでありまするけれども、言を左右にいたしまして、なおやはり嫌疑があるけれども警察の情でそれを起訴をしないような、そういう投げやりな形に置かれておる、親としては耐えられないということで、とうとう、十一月の初めでございまするか、人権擁護委員会に提訴をいたしまして、不当なる警察のやり方に対して正式に抗議を申し込んでおるのでございます。厚生大臣並びに医務局長のこれに対する御所見を承わりたいと思うわけでございます。
○橋本国務大臣 国立療養所の中でそういうような事件が起りましたのは、まことに遺憾に存じます。渦中の方に対してはまことに御同情にたえないのであります。もうまさしくそういうときには黒白をはっきりさせなければ、その人の生涯は立たないでありましょう。私も、今後療養所内部等におきましてこういう事件が起らないようにできるだけ気をつけて参りますと同時に、その問題につきましては、これははっきりした法律的な手続によって黒白が明確になるのを心からお祈りをいたしております。
○小澤説明員 ただいまお話の事件は、私どもにも詳細報告が参っております。年のいかない若い准看護婦が嫌疑を受けまして、非常な大きなショックを感じたのでございまして、病院当局といたしましては警察官の捜査に対して終始立ち会っておりませんので実際わかりませんでしたが、しかしながら睡眠剤を飲むということ自体が相当大きな精神的影響を若い娘に与えたことは間違いないと存じます。私どもといたしましては、それだけにあたたかい気持を持ってその准看護婦を抱いてやるように、精神的の慰安を十分与えるように、指示してございます。今後もこのような事件が国立療養所、病院等の内部に起らないように、また万一さような不幸な事件が起った場合には、若い娘であるだけに、親心を持って、あたたかい気持でいたわってやるようにという考え方を持って指導していきたい、かように考えている次第でございます。
○小林(進)委員 私はこの問題について厚生当局にお伺いいたしておりまするのは、こういう国土療養所の中へ、刑事、警察官憲が入っておりますること自体が非常におかしいのでございまして、何で一体入ったのかということもわれわれは聞いたのでございますが、何かこの病院にはその前にも数回こういう事件があって、そのたびに刑事が入っておったのであるということまで私は聞いておりましたけれども、ただこういうことに対して、国立療養所等にこういう警察官が私服で自由に出入りできるというようなことが、厚生当局との話し合いで基本的にできておるのか。あるいはまたこのたびの問題で特に、どうもどろぼうがあるから、管理者としてそういうどろぼうを根絶したりあるいはなくするような予防行為ができないから、警察が入ってきて調べてくれといって、国立療養所側みずから警察に招請してそういう尋問をされるような段取りをされたのかどうか。この二点を明確に承わりたいと思います。
○小澤説明員 国立療養所があらかじめ警察当局と打ち合せまして、いつでも警察官が立ち入って捜査する段取りにしておるかどうかというお尋ねでございますけれども、さような、あらかじめ打ち合せ、約束していることはございません。ただ柏崎療養所の問題につきましては、御指摘のごとくに数回盗難事件がありまして、その都度病院当局といたしましても、原因の探求をやったのでございますけれども、皆目実態がつかめない。なお患者等から相当非難があったということ等のために、やむを得ずその事実を警察に通報いたしまして、もし警察においてこの問題がはっきりできるならば、と思って通報したということの事実はあるようでございます。ただ取調べがさほど過酷であるというようなことは療養所側としても希望もしなかったし、予期もしていなかったのであります。
○小林(進)委員 そういう警察官がみだりに療養所の中に自由に入って取調べ、その他をできるような態勢にあるということは好ましい行動ではございません。この点は私は将来とも十分御注意を願いたいと思います。 なお、次の点についてお伺いいたしたいと思いますことは、しからばこういう権力の乱用によっていたいけな少女が苦しめられる。これは個人の問題ではございません。看護婦全般の問題であり、療養所全般の問題であります。こういうような事実に対して厚生当局が警察庁当局あるいは関係官庁に何か一つ苦情を申し入れたか。ありがたいことであるという意思表示をされたのか、困るという意思表示をされたのか、そのまま放任せられておるのかということが一つ。 いま一つの問題は、これは小さな問題のようでありますけれども、あんまり経済的にも恵まれない看護婦等が官憲にいじめられて、せっぱ詰まって睡眠薬を飲んで自殺をはかった。その治療の経費は個人負担以外にないものかどうか。こういうことに対してもあなた方は、ほんとうにあたたかい情の気持があるならば、そういう跡始末の問題についてもやはりあたたかい考慮があってしかるべきだと思いますが、どういう事後処置をされたかどうか、承わっておきたいと思います。
○小澤説明員 この問題については厚生省といたしましてまだ公式には警察庁当局に申し入れしておりません。ただ現地といたしまして、病院当局から、何分相手はかよわい女性であるから、特にその点をお考え願いたいというふうに警察には連絡したという報告は受けております。なおこの問題につきまして十分検討いたしまして、必要ある措置を講じていきたいと思います。 それから本人の療養に要する経費でございますが、これは国家公務員共済組合法の被保険者でもございますし、本人みずからが治療に対して経費を払うという建前になっておりません。従いまして、この点まだ公式には報告を受けておりませんけれども、本人は治療については一銭も払ってないはずだと存じております。
○小林(進)委員 大臣もお急ぎのようでありますから、厚生省当局に対する質問はこれで打ち切っておきます。大臣には自由行動に移っていただきたいと思います。 こういうことが一つございましたら、政党政派の問題ではございませんし、組合対管理者等の問題ではないのでありまして、われわれの憲法に定められた基本人権の問題であります。重大な問題でありますし、特にこういうような事案が起りますと、療養所全般の空気が濁ってきて、単なる看護婦だけの問題ではありません。職員だけの問題ではありません。患者自体にも実に不愉快な影響が及んでいきまして、及ぼす被害は実に甚大であります。どうかこういうことを二度と繰り返さないように十分御考慮を、あるいは御措置を願いたいと思います。特に要望いたしまして私は大臣に対する質問は終ります。 警察庁当局がお見えになりましたので質問をいたします。きょうは柏村警察庁長官は、何か午前中はお出かけだというので刑事局長においでを願ったわけでございますが、巷間伝うるところによれば、警職法が廃案になったことについては、警察御当局は非常に御不満がありまして、さらにその再提出の原案をお作りになっているかのように承わっているのでありますが、それに対しましてわれわれは反対をいたしました。反対をいたしましたその理由として、権力の乱用があるじゃないかということで反対をしたのでありますけれども、そういう具体的な問題が今厚生省内部の国立療養所の中で起っているのであります。私は先ほどからるるその内容を大臣に説明いたしました。大臣は本人に対しても非常にお気の毒だと言われているのでございますけれども、あなたは今おそく来られましたので、またここで再び同じことを繰り返す時間もござません。これは私が美辞麗句を用いて言ったのではないのでありまして、今速記に載せてもらったその記事は、本人みずからがしゃべっているその言葉を、本人になりかわって私がそのままお伝えをしたのであります。十九才のようやく文章も書き得るようなおとめが切々として警察当局の不当なる弾圧の事実を訴えた、その話を私は今ここで申し上げているのでありますが、これに対して警察庁当局はどのようにお考えになっておりますか。そんなことは取調べ官権として当りまえだというふうにお考えになっているか、明確な御返答をお願いいたしたいと思います。
○中川(董)政府委員 本年の六月、新潟県の柏崎市に所在いたします国立療養所の内部で患者の金円の窃盗被疑事件がありまして、被害者の届出に基きまして、所轄警察におきましては見聞者、関係者、被害者等から事情を聞いたようでございます。私今おくれて参ったのですが、そのときにおそらくは看護婦さんの事情を聞きまして、状況に基きましていろいろ捜査を続行しておったようであります。その捜査を続行しておる最中に看護婦さんの方が自殺をはかられまして、そのことにつきましては直ちに病院で治療の処置を講じたようでありますが、その窃盗被疑事件の捜査の段階におきましていろいろ問題があるのでなかろうか、こういう点につきまして私ども警察側におきましても事情を調べております。われわれ警察官が犯罪捜査をいたすにつきましては、証拠に基きまして厳正に適正に捜査を遂げて真実を発見する、これがわれわれの使命だと考えるのでありますが、とりわけ強制の処分をする場合におきましては厳密な疎明資料に基きましてそれぞれ所要の手続を経てやるわけでありますが、本件につきましては、まだ強制処分にするような段階に立ち至っておりませんので、関係者から事情を聞いておる、こういう状況に起った事例であります。強制処分をやります場合において、非常に不確実なことに基きまして強制処分をすることがあってはならないということは厳重に指導監督をいたしておるのでございますが、本件は強制処分には至っていないのでございますけれども、その捜査の過程において適正であったかどうかという点につきましては、地元新潟県警察本部を始めといたしまして調査を始めております。本件事案はまだ捜査の途中でありますが、犯罪捜査と申しますものは、最初の段階におきましては被害者から事情を聞く、被害者にからまって、そういった方に関連する方々から事情を聞いて、それに基いて物的及び人的証拠を収集する、こういう段階であります。本件事案は、まだその途中において、こういう事件が起りましたので、直ちにこれをまたさらにせっかちに進めることによって、関係者に心理的影響を及ぼすこともどうかと考えまして、新潟県の警察では慎重に処置しておるようでありますが、この窃盗被害者があったということは、被害届等から見て大体承知できるのでありますが、何者がこれを窃盗したかという点については、捜査を続行してみなければわかりませんので、この捜査がだんだん進展することによってまた事案が判明してくる、こういう点もあろうかと思いますので、それをもっと急げばいいじゃないかというお話もあろうかと思いますけれども、こういったことを見聞された方方、その場におられた看護婦さんたちは比較的年令が少い方々で、非常に感受性が強い方々でありますので、そういった精神的な動向等も十分慎重に考えまして、真実の発見に努めている最中でありますので、この窃盗被疑事件の捜査がだんだん進展するに伴いまして事案が判明する点もあろうかと思います。われわれ警察といたしましては犯罪の捜査につきましては、厳正にやらなければならぬことは当然でありますが、関係者に及ぼす影響等も十分考えまして捜査を続行して参りたい、こう考えておる次第でございます。 〔田中(正)委員長代理退席、八田 委員長代理着席〕
○小林(進)委員 私はこの問題に対しては何もあなたに犯人をあげろとか、あげるのがおそ過ぎるとかいうことをお聞きしているのではないのであって、一体被疑者をつかまえて、それを捜査をするに際して、憲法で定められた手続が一つも行われてないのではないか、しかもその内容は権力を皆に皆負って、いたいけな小娘をどうかつ、脅迫しているじゃないか、最後に自殺にまで至らしめているではないか、そういうことに対して一体警察当局は責任をお感じにならないか。そういう強制処分は当りまえとしているのかと私は言っているのであります。今あなたのお話を聞いておりまして、私は実におもしろいことを——おもしろいといっては失礼でありますけれども、いいことを教えてもらった。不確実な犯罪であるから、その被疑者がまだ確定までに至らないから、憲法で定められた、あるいは刑事訴訟法で定められたそういう強制処分の手続はやれないんだ、確定するまではそのような手続も何もしないで、一警察官の判断で自由に調べ室に入れたり、警察へ連れて行ったりして、こね回して、突っつき回して、そしてそれが確定的なものにまで高まっていったときに初めていわゆる人権を守るという、あるいは個人の自由を守るという形ででき上った捜査の手続をとるんだというような御答弁のようでありますが、これは私は実におそろしいものの考え方じゃないかと思うのであります。この点を一つ明確にもう一回お答えを願いたいと思います。
○中川(董)政府委員 ちょっと私言葉が足りなかったと思うのでありますが、強制処分をするにつきましては、それぞれ厳密な法律に規定された処分の手続があります。強制処分をとるに至りますまでの間において、いろいろ事情を疎明することがありますが、犯罪捜査は何といっても社会的事象でございますので、関係者の協力ということが重要な点であろうかと思います。われわれ民主警察として、警察を運営いたしておるのでありますが、関係者の協力によって、ほんとうにだんだん事態がはっきりしていって、はっきりしたことによって、疑うべき人間がはっきりした場合におきまして、身柄を隔離する必要があります場合においては逮捕するというような強制処分が行われる道があるわけであります。またそれ以外の強制処分の道があるわけであります。本件につきましては捜査がその段階まで至っていない。関係者から事情を聞く、御指摘になりました看護婦さんたちからも事情を聞きまして、そうしていろいろ事情に基きまして捜査を進行しようというやさきに、その関係者の看護婦さんが自殺未遂というような事故等もありましたので、さらにそういう精神的動揺も来たさないようなことも考慮しながら事案の真相を発見いたしたい、こういう趣旨でございますので、強制処分をする前には、やたらに何でもかんでもやるという趣旨ではないのでありまして、強制処分をやる前のは私ども任意捜査と申しますが、任意捜査はこれまた刑事訴訟法に規定してあるのでございます。関係者の任意の同意に基いて事情を聞く、こういう段階にあったのであります。
○小林(進)委員 それでは一つお尋ねいたしまするが、一体このYという看護婦に対しては、まだ事案が不確実だから、任意捜査の規定に基いて本人の同意を得てこういうふうな捜査をされたとこうおっしゃるのでございますか。
○中川(董)政府委員 私新潟県からの報告に基いて答弁しておるのでありますが、まだ任意捜査の段階でございまして、この看護婦さんの方々、その他被害者の方々の同意に基きまして、また療養所に警察官が伺いまして事情を聞いておった、事情を聞いたことに基いてそういった状況をだんだんとはっきりさすように努めておった、こういう段階であったと私承知いたしておるのであります。
○小林(進)委員 先ほどから私は本人の言葉をそのままここでお伝えいたしましたけれども、本人はその捜査に同意いたしておりません。しかもその中にはこんなに強情を張るのだったら手錠をかけて本署に連れていかねばだめじゃないか、二十前の小娘のくせに恥知らずの女だ、こういうような言葉がしばしば繰り返されておるのでありまするが、これが本人の同意を得た任意捜査の参考人としての事情を聞く程度の捜査なのでございますか。警察当局は、こういうことを任意捜査とおっしゃるのかどうか。それならば一体強制捜査をされるときの捜査の方法はどんなことをやるのか、一つ彼我対照してもう少し明確にお教えを願いたいと思うのであります。
○中川(董)政府委員 私ども小林委員の本委員会の発言、看護婦さんの方々のいろいろの御発言の様子を伺いませんので、後ほど速記録によりまして承知いたしまして、いろいろそういった関係を動員して小林先生の御発言の内容を有力な材料といたしまして、そういった状況をはっきり調査してみたいと思っております。
○小林(進)委員 それでは私はこの問題について——本人にはいわゆる黙否権等の問題も、参考人であるからということで少しも認められてはおらない、あるいはまたお前の不利なことは述べないでよろしいという例の制約も参考人程度であるからということで、そういうことも本人に通達をせられていない。なお翌日には任意出頭だとおっしゃる、逮捕状も何も持たないできておるのでありまするけれども、任意出頭とは言いながら強制的に本人を連れていっているのだが、こういうようなことがいわゆる単なる不確実なる犯罪の捜査という段階において、これがみんな自由自在に行われるということになるならば、憲法で定められた自由なんというものは一つもなくなってしまう。それだから何でもやれることになりますので、重大問題だと思いまするが、今おっしゃるように私の質問に対して速記録その他を調べて明確な御返答をいただくということになりまするならば、私は本日はこの問題はこれで保留にいたしまして、後日また一つ明確なる御返答を警察庁長官からお伺いいたしたいと思います。
○八田委員長代理 この際午後二時まで休憩いたします。 午後零時四十九分休憩 ————◇————— 午後三時七分開議
○園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 この際、橋本厚生大臣より発言を求められておりますのでこれを許します。橋本厚生大臣。
○橋本国務大臣 先般来新聞に報道をされましたいわゆる保険汚職の事件に関しましては、まことに申しわけのない次第でございますが、最近一わたり調べがつきまして、それに対する当面の措置をいたしましたので、これに関する経緯及び所見を御報告申し上げたいと思います。 こうした事件を厚生部内から出しましたことは、はなはだ申しわけないことでございます。東京都の保険業の前保険課長林公夫と申します者の私行上の問題につきまして、警視庁が内偵をいたしておりました結果、汚職の疑いがあるということでありまして、本年の十月十四日に都内健康保険組合六組合の役員とともに逮捕、取調べを始めたのであります。その確実な内容については、警察当局等よりまだ正式には聞いておりませんが、しかしただいままで情報として伝わっておりますおもな容疑は、次の通りであります。 第一に林公夫の関係でありますが、一つは健康保険組合の許認可及び厚生年金の還元融資に当りまして、相当の謝礼をこれらの組合に要求して収受した疑いがございます。次に、在職中に土建会社の役員に就任をいたしまして、都内の保険関係施設の工事に便宜を与えて収賄をした疑いであります。 以上が林公夫の関係でありますが、次に東京都内の健康保険組合関係につきましては、まず全国薬業健康保険組合、これは常務理事の森下稔と申すものがおります。それから東京織物商健康保険組合、これは常務理事の植本秀雄と申すものがおりますが、その他四組合のいずれも常務理事が組合の設立、運営について便宜を供与してもらうため林公夫に贈賄した疑いであります。で、右の組合のうち一、二の組合におきましては、常務理事らが診療報酬支払基金の請求書を偽造して、請求金額を水増しして組合から支出をして、その水増し金を横領してこれを贈賄したり、あるいはみずから消費した疑いがあるのであります。これが東京都内の健康保険組合関係でありますが、以上の事件の取調べの進行につれまして、右の健康保険組合の幹部が厚生省保険局の職員に対しても、組合監査に手心を加えてもらうため、あるいは厚生年金還元融資にからんで贈賄を行なっているのではないかとの疑いが生じまして、十一月十二日に保険局健康保険課の課長補佐宮沢真雄四十九才、同局医療課課長補佐是成信一、四十三才、これは元厚生年金保険課の課長補佐でありますが、これの逮捕を見たのであります。林公夫につきましては十一月五日に健康保険組合から四十万円収賄の容疑で起訴されました。さらに十二月の八日に至りまして健康保険組合関係業者等から十五件、金額六百九十五万円の収賄でさらに追起訴をされました。全国薬業健康保険組合本部常務理事森下稔外五組合六名及び芙蓉建設工業社長常田六郎の計八名は、いずれも林公夫に対しまする贈賄容疑で同月同日追起訴されました。厚生省側の前記の課長補佐二名は、取調べの結果容疑事実が軽微でありまするため、十二月三日処分保留のため釈放、同四日不起訴となりました。右に関連いたしまして健康保険組合の監督指導の責任の地位にある保険局の健康保険課長小沢辰男も参考人として事情を聴取されたのであります。 以上が現在までにおきまするこの事件の内容の概略でございます。社会保険の整備、充実が世間の注視を浴びておりまする最中、この大事な時期にはなはだ遺憾なことでございまして、二名の課長補佐につきましては十二月四日直ちに退職せしめ、また直接の監督の責任にある小沢健康保険課長は同月九日依願退職といたしました。高田保険局長は同日薬務局長に配置がえをいたしました。この問題に関しましては、今後再びこうしたことの起らないように、十分仕事の運営の面についても制度の面についても考えて参らなければならないと思いまして、その後もいろいろに検討をいたしておるところでございます。いろいろの原因があるにせよ、保険職員の人事管理に大きな欠点がありましたことは見のがせない事実でございます。林公夫が昭和二十七年の十一月に東京都の保険課長に就任以来、昭和三十三年六月十六日に退職するまで、約六年間同一の職に置きましたことは、このたびの事件の最大の原因と思うのでありまして、その間に健康保険組合との不当な関係が深まりまして、またきわめて技術的な要素を含む保険の最先端の行政が、一般世人の関心を引くことが薄いという事情のもとに、種々予想以上の不祥事を重ねる結果となったと思うのでございます。また監査監督機構の欠陥も、今度の事件を契機として十分検討をして、徹底した指導監査が実施できますように配意いたさなければならないと考えております。本省職員が収賄の容疑を受けましたようなこと、そうして都道府県におります先端の機関の幹部がこういう不祥事を惹起いたしましたことは、公務員の綱紀粛正の見地からいいまして、ほんとうに申しわけないと考えておるところでございます。 当面の問題といたしましては、いろんなことを考えなければなりませんけれども、第一には、やはり人事のよどみを生じないことが大切だと考えておりますので、ただいま予算編成期で、直ちに非常に大きく動かすのに困難があるのでありますが、しかるべき時期を見まして中央、地方を通じて、保険人事の上によどみを来たさないように動かして参りたいと思っております。それと同時に、従来は保険の人事は保険の関係者の中だけでということが多かったのでありますが、もっと幅広く人材を出し入れするようにいたさなければならぬと考えております。 なお、保険局のやっておりました仕事もだんだんに膨大になって参りまして、初めのころは、保険局の仕事もそう大して大きくなかったころにしきたりになりましたような専決事項のようなものにつきましても、今日これだけ大きくなると保険局だけじゃいけないので、十分省内において相談をして参らなければならないようなものが、保険局限りでやられておるような傾向もなきにしもあらずでありまして、そうした仕事の運営の点もいろいろに考えて参らなければなりません。 ただ、さらに制度的な問題につきましては、今すぐ右から左にどうこうということはなかなか参りませんけれども、やはり保険のような非常に技術的な要素を持ったものの間において、監査を受ける者とする者との間には、人事によどみさえなければ、なれ合いというものはそう簡単にできないと思いますけれども、それでもこういったようなことがあったのを考えまして、なれ合いを防ぐような仕組みも考えて参らなければなりませんし、当面の人事とからみ合いまして、将来の運営の組織につきましては十分心して、再び間違いのないように検討いたして参りたいと思っております。 なお当面発覚をいたしましたのは健康保険の問題でありまして、私は、今日厚生省内におきまして、これが一わたり片づきました残りに、万々間違いのないことを信じておりますけれども、とにかく大きな仕事の分野でございまして、ほかの面でも、単に健康保険の問題のみならず、間違いのないように十分念査して参りたいと思っております。
○園田委員長 次会は明十七日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。 午後三時十九分散会