外務委員会 第17号
- 発言数
- 117 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1959/04/01
会議録
○櫻内委員長 これより会議を開きます。 国際情勢に関して調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。菊池義郎君。
○菊池委員 外務大臣にお伺いいたしますが、中共は以前には一応政治、経済を分離いたしまして、日本と貿易をやっておる。ところが最近それが一変して参りましたが、周恩来も、前には日台条約の存在は日中復交の妨げにならないとか、あるいはまた日本が考え直すならば百年河清を待つことも辞せぬというようなことを言っておりましたが、その後これが変りまして政経一体を主張するように至った、この原因は何にあるとお考えになりまするか。彼らは岸首相の中共敵視政策を非難しておりまするけれども、台湾、アメリカにおけるところの岸首相の言動が彼らの非難のもとになっております。けれどもこれは貿易協定が成立するずっと前のことであるのです。その後において貿易協定が成立した、そういう事実が厳然としてある。国旗事件のごときは彼らの口実にすぎないと私は考えておるのでございます。しかも中共は欧州の数カ国と戦争状態が継続しておりまする今日において、なお貿易を続けておる。それにかかわらず日本に対しましては政経一体を主張しておる、その原因は一体どこにあるとお考えになりまするか。御意見を承わりたいと思います。
○藤山国務大臣 今日まで政治と経済とを分けて中共が考えていた。先般社会党の議員団が行われまして、はっきりと政治と経済とは不可分の問題である。こういうふうにわれわれも実は了承しておったのでありますけれども、先般参議院の曾祢委員から必ずしも何も日本が日華条約を廃棄する、あるいは今直ちに承認するとかいうようなことが前提であるのだというふうに、あの共同コミュニケなりそういうものを解釈するのは、適当でないのだという御質問がありました。私どももよくその後の情勢を見ませんと、果してそういうゆとりを持ったものであるのかあるいはないのかということが、実ははっきりいたしかねるわけであります。でありますから先般参議院におきましても、もしそういうことであって、要するに政治と経済とを——日本は今すぐには承認できない、日華条約も今すぐ廃棄はできないのだという政治的話をするということなら一つの話し合いになると思うのであります。そういう意味であるのかどうかということ、まだわれわれとしてもはっきりいたしません。従って今日までどういう意図であるのかということもわからぬわけであります。そういう点においてわれわれも今後十分検討を続けなければならぬのではないか。また先般行かれた方々の率直な話も時々お伺いすることが適当であるのではないかというふうに考えております。
○菊池委員 曾祢君は中共に行きました議員団の中でただ一人の外交通であります。淺沼君のごときはしろうとでありますが、私は曾祢君の言うことは今相当信憑性があると思うのです。必ずしも日台条約を破棄するとか安保条約を破棄するとかいうような強い考えは持っていない。要するに日本の誠意を示してもらいたいというのが向うの考え方であるのではないか。先ほども申しましたように、欧州の数カ国とは現に貿易をやっておる今日でありますから、それはただ日本において声明するだけでなく、日本が積極的に呼びかけしてみたらどうか、向うから断わられたところで決して日本のマイナスになるとは思わないのでありますが、いかがでありましょうか。つまり具体的問題としては漁業協定であるとかあるいは郵便協定、あるいは貿易、文化の交流、いろいろあります。国交回復がなくてもこれらのことは日本の出ようによっては向うが誘い水に乗ってくるのではないかというように考えられるのでありますが、いかがでありましようか。
○藤山国務大臣 果して今すぐにそうしたことを日本側から言うのが適当であるかどうかということにつきましては、なお十分検討をしてみなければわからないと思います。しかし本年初頭、議会が始まって以来チャンスが来たならば、何かの形で政府においても民間協定の話にも協力するし、あるいは場合によっては大使級の会談もやってみてもいいのではないかということを申しておりましたのは、そういう意味と御承知を願いたいのです。
○菊池委員 戦争継続中の他の国と貿易をやっておりながら、日本に対しまして政経一体を主張しておるのは、四月の日本の選挙にからんで社会党の側面擁護をやっておるのだというような、ある一部のジャーナリストの説もあるのです。そういう点について外務省側はどういうお考えを持っておられますか。
○藤山国務大臣 中共の立場から日本を見ますと、いろいろな問題が考えられると思います。国際情勢の推移なりあるいは御承知のように大きな流れからいえば、中共も共産国でありますから一つの共産圏としての動き方というか大きな流れのうちには同一歩調をとる。それは強弱の差はあり、あるいはそれぞれの国に対する程度の差はありましても、やはり自由主義に対して、あるときは冷戦であり、あるときは雪解状態になるというような一つの大きな流れというものはあろうかと思います。また中共の国内的な事情もいろいろあろうと思うのでありまして、同時に日本の国内の事態についても注視しておることは当然だと思います。ただ、何か社会党の援護だけにそういうことをやるというふうに簡単には考えない方が適当ではないか、こういうふうに存じております。
○菊池委員 それから社会党の諸君が主張しておりますように、もし日本と中共との国交が回復いたしたと仮定いたしまして、その対日賠償は一体どうなるか。蒋介石が帳消しにいたしましたこの対日賠償をもし中共が請求するとなると、ほとんど天文学的数字になるのじゃないかということをおそれておる人があるのです。法理的に申しますならば、やはり中共から請求されれば日本は払わなければならぬじゃないかと私は考えておりますが、外務省の見解はどうでございましょう。
○藤山国務大臣 私どもとしては中国と日本の関係は、一応日華条約ができまして、当時中国の正統政府としてこの問題を解決しておりますので、その後特に戦争状態にあるということを考えておりません。むろん国交が回復しておらぬという事実ですが、要するにその後に起りました中国側におけるいろいろな変化というものをどういうふうに認めていくかということに問題があるのでありますが、全体として戦争状態にあるということは考えておりません。
○菊池委員 チベットの反乱に中共は軍隊を出して千人から虐殺しております。このチベットの反乱はわれわれ第二のパンガリア事件と考えておりますが、外務省はどういうようにお考えになりますか。
○藤山国務大臣 何しろ僻遠の地でありますし、日本の在外公館もございませんところでありますから、正確な情報をつかむということは非常にむずかしいのであります。従ってわれわれも他の国からきます電報なりあるいは新聞紙上を通じて知る以上には詳しいことを十分知っていませんので、とかくの批評をいたすことは避けたいと思いますが、しかし今度のチベット問題というのは、従来もいろいろございましたけれども、相当激しい点があるのではないかというふうに考えられますので、今後これらにつきましては十分情報を集めましてその判断をして参りたい、こういうふうに存じております。
○菊池委員 淺沼君は中共に行きまして、米国の資本主義は日本及び中共の共同の敵であるということを盛んに演説をぶって非常に受けがよかった、ところがあとでもってその演説を共同声明の中に盛り込もうということを中共からいわれて、これに曾祢君がおじけをふるって、それだけはどうか入れてもらいたくないというのでもって、もう百方手を尽して陳弁大いに努めて、この文句を入れなかったということなんであります。そういうふうに二重人格的な言動をあえてする、これを世界はどう思うか。外務省はどういうようにお考えになりますか。日本の政治家がこういうことを外国においてやる、はなはだ醜態であるとわれわれは考えておるのであります。
○藤山国務大臣 公人として、直接の責任を持ってない地位にありましょうけれども、少くも政治に携わっております公人としては、特定国を敵にするという発言は非常に不穏当だと思います。従ってそういう意味において、私どもはもしそれが事実でありますならば、はなはだ遺憾なことではなかったと存じます。
○菊池委員 そういったような特殊の国家に対して追随するような態度は、自由主義国家群から信望を失墜するばかりでなく、共産主義国家からも軽侮の念をもって見られると考えるのでありますが、外務省はこういう場合においては、どしどし日本の議員に対しましては警告を発すべきであろうと思う。何も外務省が沈黙を守る必要はなかろう。自民党ですら向うへ電報を打っておる。どういうわけでもって外務省が沈黙を守っておるのか、われわれは不可解でありますが、その点について御意見を承わりたい。
○藤山国務大臣 外務省として、一々の問題について特定の意見を申すのが適当であるかないかということは、そのときの問題として考えていかなければならぬと思います。 先般の場合福田幹事長が党を代表されまして注意の電報を打たれたようでありますが、それは福田幹事長と淺沼書記長との関係において打たれたと思いますが、そういう状況でありまして、外務省として特に何かする必要はなかったのではないか、こう思っております。
○菊池委員 それから今さらのような質問でございますけれども、中共及びソ連が安保条約に反対しているその真意は、一体どこにあるとお考えになりますか。これは外務省からこの見解を発表していただくことが一番いい。国民はさっぱりわからぬ人が八割だと思う。
○藤山国務大臣 安保条約について二つ問題があろうかと思います。一つは、おそらく中共側として解消論であると思います。それから一つは、現在の改定に対する改悪論としての反対だと思います。私ども現在安保条約の改定をやっておりまして、現行安保条約を改悪するとは一つも考えておりません。日本の自主性をその中に入れ込みまして、そうして占領下で作られましたこういう条約を、日本も入れた自主的な立場で改正することでありまして、むしろこの点について何か中共側が反対意見を述べますならば、あるいは改悪論をいいますれば、これはおそらく誤解からくることではないかと思います。静観してもらえば、決して改悪でないということを了解できるのではないかと思います。また一方全然廃棄論と申しますか、解消論と申しますか、このこと自体はわれわれと立場は違っておりますし、私どもは今日の国際情勢から見まして、第二次世界大戦後、まだ世界全体が安定しておりません。いろいろな意味において紛争が起っておりまして、残念ながら恒久平和を望みながらそれが実現できないで、やはり武力的な解決を求めているような事態も、各所にたくさん起っております。そういう事態に対処して参りますためには、やはりわれわれとしても少くも自衛の固めだけはして参らなければなりませんし、自衛の固めをするためには、現在の日本の国情から申しましてアメリカと共同動作をとりますことが適当であろうと思うのであります。この点については中共側の誤解というよりは、むしろ中共と日本との考え方が全然違っているということであろうかと思います。
○菊池委員 私の考えは、この日米安保条約がありますると、それがため日本の侵略が困難になるということを想定して、彼らはこの安保条約の廃棄を主張しておると思うのでありますが、外務省はこの私の意見に対しましてどうお考えになりますか。
○藤山国務大臣 ただいま私が申し上げましたように、日本の自衛のため日本自身がとるべき方法を自主的に考えて参らなければならぬのであります。その意味における結論として、われわれとしては日本とアメリカとが両者共同して他国からの侵略に対する脅威から日本の安全を守るということは、日本の今の現実に政治をになっております者としては、当然考えて参らなければならぬことだと思います。言われるごとく安保条約を解消して私どもとしては十分な日本の安全が保ち得るとは考えておりません。また日米中ソ四カ国の条約というような形においても、現在の信煩されておらぬ国際情勢においてはそういうことができようとも考えられませんし、またできても果してそれが確実に守られるかという裏書きもないわけですから、そういうことによって日本の安全を保障し得るとは思えないのであります。その点において全く中共側の意見と違った立場にあろうかと思います。
○菊池委員 淺沼君の一行は外国に行って日本の政府の悪口を言っておりまするし、さらにまた中共の日本中立政策に同調しながら、中共に対しましてはソ連と手を切ることも何も一つも言ってない。さらにまた沖縄、小笠原のことは言っておりまして、そうして米国の悪口を言っておりまするが、南千島のことは何一つ言わない。中共は日本の敵視政策なんて言っておりまするけれども、これは事実を歪曲して非難しておるにかかわらず、これが弁明にも努めない。中ソ同盟条約の日本敵視に対しましては沈黙を守る、こういったような不思議な外交交渉が世界の外交史上にどこかにあったためしがあるでありましょうか、どうでしょうか。外務省にお伺いしたいと思います。
○藤山国務大臣 今回行かれたのは特別な外交交渉をやりにいかれたとは考えておりませんし、友好親善使節として行かれたのだと思います。しかし友好親善使節として行かれましても、今お話しのような事実が事実といたしますれば、それは日本の立場を適当に言い表わし得たものではないと思っております。なお淺沼団長が行かれます前に、岡田君と二人で私のところに出発のあいさつにお見えになりました。そのときに少くも行かれた場合に社会党の見地のみならず、保守党の考え方というものもはっきり言っておいてもらいたいということを申したわけであります。しかしそれが言われておらないということならば、実に残念だと思います。
○菊池委員 社会党は日米中ソ四カ国の安保体制を作りたいと言っておりますが、そういうことが一体できるとお考えになりますか。また万が一できたところで、ソ連がその体制を忠実に順守し得るとお考えになりまするか、どうでありましょうか。ソ連は御承知のように条約破棄の常習犯であると世界から烙印を押されている国なのです。そういう国をも入れて、そうしてこの四カ国の安保体制が維持できるとお考えになりますか、どうでしょうか。
○藤山国務大臣 先ほど申しましたように、私は現在そういう四カ国の条約ができる状況にもないと思っております。かりにできました場合でも、私は常習犯とは思っておりませんけれども、少くも八月七日の状況を考えてみますと、そういう危険性がないとはいえぬということを考えざるを得ないのでありまして、そういう意味においてこれらの条約が完全に日本を守り得るかいなかということについては、私としてはそういうことは不可能であろうということを考えております。
○菊池委員 それから淺沼君の共同声明の世界的影響というものについて、どういうふうに見ておいでになるでしょうか。
○藤山国務大臣 おそらく先ほど申しましたように、政治家として公人の立場で行動される場合に、ああした言説というものは世界を相当驚かしているのではないか、こう考えております。
○菊池委員 結局日本外交の上においてプラスであったかマイナスであったか、われわれは百害あって一利なかったと思うのでありますが、その点どうですか。
○藤山国務大臣 日本の外交にとりましてマイナスかプラスかということでありますけれども、少くも行かれた一行の言説に対しては、社会党として行かれたとすれば社会党の立場はマイナスだったと思います。一方から言えば保守党の立場がマイナスになったとも思いませんし、むしろ保守党の堅実な考え方の方が世界に響いたのではないか、こう思っております。
○菊池委員 社会党は中央執行委員会の、二月十六日に決議したところの、いわゆる東西両陣営いずれにも属せず、すべての国と友好親善を樹立するといった決議がございますが、中国に行ってこれをくつがえして、米国を敵だと言っている。こういったような表裏非常に常なき態度は、日本人の恥を世界にさらすものである、かように考えるのでありますが、政府はどう思われますか。 さらにこれは過般の佐多報告におけるところの北京へ謝罪使節を派遣する云々という、こういう中共の要求をそのままのんで帰ったと解するほかないのでありますが、この二つの点、どうでありましようか。
○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、淺沼団長の言説というものは穏当ではないと思っております。またそういう謝罪使節を出すというようなことは、中共と日本との今日の関係において、われわれが特に中共側に悪意を持ち、何か悪事を働いたということはないのでありまして、特別の謝罪使節を出すという必要は毛頭考えておりません。
○菊池委員 われわれが不満に思っておりますことは、日本政府は中共から何を言われてもいつも沈黙を守っております。これが果して日本の外交上得策であるかどうかということは、はなはだ疑いなきを得ないのでありますが、議会の答弁だけでは先方には響かない、すべからく積極的に日本の主張を宣明すべきであると私は思うのであります。つまり具体的に日本はかつて中共を敵視したことはない、それから二つには、二つの中国を作る陰謀に加担したことはないこと、第三には安保条約の改正については他国の干渉を許さない、この三点だけはぜひ言ってもらいたいと思うのであります。これは少くとも声明として出すべきであろうと思うのでありますが、どういうお考えでございますか。
○藤山国務大臣 議会を通じまして総理大臣がその点に関しては、すでにはっきり明言しておられますので、その点は声明等を出します以上に相当強く出ておると思うのであります。しかしもしそういうような必要の機会が今後ありますれば、当然そういった声明も出すことになろうかと思います。
○菊池委員 なお社会党の諸君は、中共の提示した各種の条件をそのまま入れて、日本に帰国する早々、日本政府に対しまして政策の転換を迫っております。こういったようなことでは、まるで中共の指図で動いておりますところのメッセンジャー・ボーイのごときもので、はなはだ醜態のきわみであると思うのであります。こういう態度は、それこそほんとうに自由主義陣営ばかりでなく、共産主義諸国からも軽べつされるのであろうとわれわれ考えるのでありますが、外務省はどうお考えになりますか。
○藤山国務大臣 先般のいろいろな行動が、必ずしも穏当でなかったようにわれわれも考えております。われわれは当然各国の問題を取り扱います上において、公党の者としては相当慎重でなければならぬのでありまして、そういうことは当然各方面において認識されていなければならぬはずであります。そうでないということであれば、まことに遺憾だと思います。
○菊池委員 それから配慮物資というものがございましたが、配慮物資という意味は一体どういう意味でありますか。配慮というものは、御配慮を願いたいといったような、あの用語であるとわれわれは解するのでありますが、そういったようなきたない用語までもつけられて、支那料理の材料をもらわなければならぬという必要がどこにあるか。こういう点について外務省はどうお考えになりますか。
○藤山国務大臣 何か配慮物資というようなものをもらうと——われわれはむろん通常貿易ルートにおいての貿易を希望しておるのでありまして、配慮物資というようなものがかりに贈与のような形のものでありますれば、そういうものをこの際もらうという別に特定の時期でもなし、また理由もないと思っております。
○菊池委員 話は変りますが、米国の対日軍事援助につきまして、これを削減すべしというので、ドレーパー委員会が米国の政府に勧告したという新聞記事がありました。それがまたあとで、それは事実無根であるという記事も出ておりますが、これはどっちがほんとうでありますか、真相をお伺いしたいと思うのであります。
○藤山国務大臣 ドレーパー・ミッションの報告というものの中には、特に日本の援助を削減するということは、書いてもございませんし、論じてもございません。その点は、全く最初の報道が誤報であったのではないかと思います。
○菊池委員 さらにこの行政協定の改定は、安保条約と一緒にやるのであるかどうか。今何も戦争が差し迫っているときでもないのでありますからして、まず安保条約を改定して、その後においてゆっくりたんねんに改定すべきであると私は考えておるのでありますが、そういう点どうお考えになりますか。
○藤山国務大臣 安保条約を新しく調印いたしますときには、行政協定も同時に調印して参りたいと思っております。これは駐留軍の地位に関する問題を規定しておるわけでありますから、そうするべきだと思います。ただその際に、現行の行政協定をどれだけ改めていくかという点について問題があると思います。いろいろの御意見もそこにあるのだろうと思います。ただ私どもは行政協定を相当検討いたしてみまして、いわゆる全面改定というような、全条を改正しなければならぬほど悪いものになっておるとは考えておりません。従ってそういう点につきまして十分考慮した上でやって参りたい、こう思っております。
○菊池委員 大臣は大幅改定の必要がないと常に言っていらっしゃいますが、それはやはり米国が大幅改定の必要なしという意向なんでございますか、大臣だけのお考えでありますか。つまり二十四条、二十五条の協議事項やら、あるいは防衛分担金の問題ぐらいを改定すればいいというふうにお考えになりますか。
○藤山国務大臣 もちろん二十四条、二十五条の(b)項というもの、これは大きな問題でありまして、当然本条約の調印と同時に改定していきたいという希望を持っております。その他の点につきましても、十分検討を加えました上で、改定されるべきものがあれば改定する要求をいたしていくこと当然であります。ただ、よくいわれておりますように、何か全面改定という言葉が行われておるのでありますけれども、私の申し上げたのは、そういうようなものではないし、またその必要はない。たとえば司法裁判権の問題等につきましてもそうでありますし、あるいは労働の関係のものにつきましても、たとえば日本の労働法規を使うのだということでありまして、ほかの労働法規を使うということを書きょうがないのであります。現在起っておりますいろいろな問題は、行政協定の条文上の問題よりも、むしろその運営上の問題が多いのではないかと思います。そういうことでありまして、先般も参議院で森議員から御質問ありましたときに、どうも刑が軽過ぎるじゃないかというようなことでありましたが、刑が軽いか重いかということは、これは行政協定の規定上の問題でなくて、裁判権の問題であるのでありまして、規定を改正してもどうにもならぬ。規定の上では日本国の刑法を適用することになっておるのでありまして、そういう意味で、実際の運用の面においていろいろ問題があると思います。労働関係におきましても、たとえば日本法規を使うという原則を変える必要はないのであります。ただ、その扱い方が、たとえば保安要員の解雇等の問題について、いろいろ現実的の問題がある協定自体を必ずしも変えることが適当であろうとは、われわれ考えておらぬのであります。そういう点を考えて参りますと、全面改定ということが、必ずしも全部の条文を変えなければならぬとか、全部の条文が適当でないのだということには、私ども研究の結果はなっておりません。
○菊池委員 バンデンバーグの決議がアメリカに厳存する以上、相互防衛の条約を作り上げることは相当困難であると考えておりますし、日本としてもかなり先方の言い分を入れねばならないと思うのでありまして、対等の条約までこぎつけるという目的を達するには、交渉のポイントをどういう点に置くかということが問題であると思うのでありますが、こういう点についてどうお考えになりますか。
○藤山国務大臣 申すまでもなく今回の改定に当りましては、日本の憲法の範囲内ということが大前提でありまして、従ってそれを逸脱することはないようにして参りたい、こう思っております。バンデンバーグ決議は、御承知の通りアメリカがこの種の条件を結ぶときの大きな精神を規定したものでありまして、むろんアメリカとして、日本の憲法の範囲内ということも了承しておりますから、従って大きな精神、いわゆる自由主義の陣営において、お互いに協力しながら自由主義を守っていくという線が出て参りますれば、私はバンデンバーグ決議の趣旨を体していけるのではないかと思っております。そういう意味において、これらの書き方、扱い方等については慎重を要するわけでありますが、そういうふうに考えて進めたいと思っております。
○菊池委員 もう時間がありませんが、地方裁判所の伊達裁判長が砂川事件に対する判決を下しまして、これが問題となっておりますが、今まで七十数件の裁判の判決、それから最高裁の三件の判決、これらはみな安保条約や行政協定を国内的に有効であるということを前提として下されたものであります。ところがアメリカがこの問題についてほとんど何も言っていない。新聞にアメリカの世論がさっぱり現われていないのはわれわれ不思議に思うのですが、日本憲法は米軍占領下にできたものであり、その上現実に米軍が日本に駐留しておりますからには、米国の国内にも相当に世論が起らなければならぬと思うのでありますが、さっぱりその世論が新聞紙上に現われてないのは、一体どういうわけでありましょうか、お伺いしたいと思います。
○藤山国務大臣 もちろんただいま御指摘のありましたように、刑事特別法に関する裁判判例というものは今日までたくさんございますし、それが安保条約なり、あるいは行政協定なり、刑事特別法なりが違憲だという意味での判決ではないわけであります。おそらくアメリカ側といたしましても、初級裁判所と申しますか、下級裁判所と申しますか、そこの判決だけに一々右顧左眄するほど小さな考え方ではないのではないかと思っております。
○菊池委員 最後にもう一つ、話はもとに戻りますが、中共との文化、技術その他の交流におきまして、日本から向うに出すものはありましても、向うから日本に取り入れるものはほとんどないように思いますが、何かお考えつきのものがありましょうか。
○藤山国務大臣 日本から向うに持っていく文化あるいは技術上の問題というものは、御指摘のように相当あろうかと思います。中共側におきましても、やはり古い国でありますし、長い間の伝統もございます。従ってそれが全部破壊されているとは思いませんから、若干のものはあろうかと思います。
○菊池委員 これで終ります。
○櫻内委員長 穗積七郎君。
○穗積委員 しばらく地方選挙で委員会を三、四週間休んだものですから、この際二、三お尋ねしておきたいと思います。 最初に政治家としての藤山愛一郎氏に一つ率直に感想を伺いたいのですが、あなたは岸内閣の外務大臣を担当されていて、あなたの考え方についてはわれわれ賛成しがたい点が非常に多いわけですけれども、しかし岸首相と個人的に比べてみますと、バンドン精神を理解している、それから経済外交についてより深い理解を持っていることについて、あなた自身の持ち味が日本の政府を通じての外交政策の中ににじみ出てくることを、漸進的ながらわれわれは期待しておったのです。ところがわれわれ木を見て森を見ざるというあやまちを改めて、この際岸内閣を中心とする日本の政治を考えてみますと、昨日で予算はぎりぎり旧年度内に通りましたけれども、これ以上のことは何もできない。外交においても内政においても重要なる案件というものは、もう前進しがたい政治的停滞状態、空白状態になってきたと思う。日本の外交は、今あなたが盛んに言っていることの一つは、中国問題であり、一つは対米交渉ですが、これは外交のテクニシァンとしてごらんにならないで、その交渉の政治的背景、情勢というものを見ると、もう日中問題も対米問題も岸内閣のもとにおいては一歩も前進しがたい内外の情勢に追い込まれてきたのではないか、こういうふうに私は思うのです。そこであなたの善意が、保守政権なり、とにかく今後の日本の外交に生きるためには、この際思い切って予算が通った機会にあなたは外務大臣を退陣されて、考え直し、やり直す方が私はあなたのためにも、保守政権のためにも、日本のためにもまた一歩前進ではないかと思う。率直に一つあなたの政治家としての御感想を伺いたいのです。
○藤山国務大臣 私は総理の勧誘を受けまして、政界に入り、岸内閣の一員になったのでございます。従いまして岸内閣をできるだけりっぱに、できるだけ友人としても、あるいは党人としても最後まで努力をして参ることが私のやるべき任務だと思っておりますので、私としては最終まで努力をして参るつもりでおります。
○穗積委員 友情は確かに掬すべきものはありますけれども、エグゼキューティヴの責任者の立場に立ってでないと、そういう個人的な感情論では問題は解決いたしません。あなたはそれでは対中関係でも、対米関係でも、日本のためによりよき交渉が妥結するという見通し、確信をお持ちでございますか。
○藤山国務大臣 むろん現実の外交をやっておりまして、そう簡単にすべてのものが動いていくとは私ども思っておりません。またその見通しのもとにおいて問題を考えて参らなければならぬのでありますが、しかしやはりわれわれとしては、そうした情勢の中にありましても最後まで努力をするということが、やはり党人として立った上において当然やるべき責務ではないか、こう考えております。
○穗積委員 それではちょっと開き直るわけではありませんが、具体的にお尋ねしましょう。 まず順序として中国問題からお尋ねいたします。中国問題解決の最小限度にして、かつ必要なる条件というのは、昨年の陳毅外交部長の声明以来、今度の社会党使節団が参りまして、そのディスカッションを通じて明らかになりました点と何ら変っておりません。ただ方式として、積み上げ方式ではなくて、全面的なる交渉からやった方が両国のほんとうの友好のためにはいいのではないかという方式の変更はありましたが、日中間における経済文化交流の必要なる最小限度の条件については、例の三原則を中心にしたものであって、これは何ら変りはない。今度の共同コミュニケの中に盛られております、たとえば安保条約を廃棄するとか、あるいはまた日台条約を廃棄するとか、しかる後に、日中の平和条約の調印後でなければ経済と文化の交流はできないのだ、そういうかたくななこと、または形式的なことをいっているのではなくて、三原則を中心とする日本政府の政治的方向、政治的な気分といいますか、それを問題にしているだけなのです。それが中心なんです。それが解決するならば、今菊池委員からも質問がありましたが、例の国旗その他に対する三措置については、これは適宜適当なる方法ということで、そこは話し合いの余地が残されている。そういう状態であることを理解していただきたい。その上に立ってあなたは先般——このことは今度の共同コミュニケまたは会談の結果をごらんにならなくてもわかっていたことでございます。その理解の上に立ってあなたは大使級会談を提案され、河野一郎氏は党代表同士の会談を提案されてきました。昨日か一昨日の参議院の外務委員会においては、あなたは党代表の話し合いも検討の余地のあるような発言をなすっておるわけです。大使級会談か党代表の懇談かということは、これは一長一短あって多少ニュアンスも違うわけですけれども、あなたのお考えは大使級会談から党代表懇談というふうに切りかえてお進みになるおつもりなのか、その間の検討された御判断あるいはあなたのお気持、これをこの際明確にしておいていただきたい。真にあなたが日中問題を岸内閣のもとにおいてすらやろうというお考えであるなら、明らかにしていただく責任があろうと思うのです。
○藤山国務大臣 御意見とは若干違うかもしれませんけれども、私は岸総理が中共を敵視しているというようなこと、あるいは二つの中国の陰謀に加担しているというふうには考えておらぬのであります。従って、そこには何か誤解があるのじゃないかということを考えておるわけであります。しかしそれはそれとしまして、今回社会党の使節団が行かれまして、共同コミュニケなりあるいはその他のいろいろな会談等を通じて伺いましたところでは、最初の印象としてはわれわれ非常に強いものを感じたわけであります。しかし先般の参議院における曾祢議員の御質問のような趣旨でありますれば、やはり何らか、つまり政治的な問題を解決しないという意味においても政治的会談をするというような意味にとられるわけでありますが、そういう意味でありますればむろんある場合に話し合いができないことはない、こう思うのでありまして、その辺のニュアンスというものは相当十分に考えてみなければならぬと思います。そういうことでありますと、実は率直に申し上げて、先般社会党の行かれた方々の報告というものにつきましても、私は個々に伺いますと代表の方にも若干のニュアンスがあるように思います。ですからほんとうはそういう点をもう少し確かめてみないとわからぬという意味からいえば、政府がいきなり何かやりますよりも、党の親善団等が行きまして、そういう面で話し合いをしてみるということもむろん一つの方法ではないかと思うのであります。それらの問題につきましては、こっちをやらないでこっちをやるのだという意味でなしに、今後機会があり、またそういう情勢になりますれば、そのときの情勢に応じて何らかの手を考えることが必要なんじゃないか、こういうふうに現在思っておるわけであります。
○穗積委員 お気持はややわかりました。そこで、今まで政府、特に岸さんは、中共側の政治解決の条件がきびし過ぎてこっちの欲する貿易ができないのだ、こういうことをエクスキューズといいますか、われわれから言えばやらないことの口実に使ってきたわけです。向うの政治的ということは、即時国交回復を絶対条件とする、二つの中国を認めないで国交回復の交渉に入る、あるいは調印をする、そこまで、国交回復が実現する次元までいかなければ経済と文化の交流はないのだ、こういう意味じゃないのです、政治的という意味は。つまり貿易、文化の交流をする以上は、お互いが敵視したり疑ったりしておったのではできないから、友好的な精神、お互いに互恵平等、いわゆる五原則の立場、その発展としてのバンドン十原則の立場でやらなければならない、そのことは明らかに政治的なお互いの態度、考え方ではないか、それを話し合おう、それが前提なんだ、こういう意味なんです。従って三原則の要求というのは、先ほど私も申しましたように、先方の責任者の言は、国交回復のための終戦宣言または平和条約の調印ということを現実的に条件にしている、または安保条約の廃棄あるいは日台条約の廃棄、それが先行条件であるというようなことは言っておらないのであります。そんなことは一度も、どこでも去年以来言っておらないことは明確であります。今回の社会党との会談のみならず、一月における安井、岩井両君を中心にする会談においても、そのことは明確に言っておる。ただ藤山外相または高碕さんが中国と話し合いをしようと言っておるけれども、それは政治と経済と一緒にして、その政治的態度をまずお互いが話し合うことが必要なんだ、こういう言い方でありまして、むしろ裏返して解釈すれば会談を歓迎しておる。従って、問題はもう非常に明確であって、われわれは誤解だと思いませんが、それらのすべてについて、もしあなた方は中国側にも誤解があるとお考えになるなら、なぜ一体、遠回しにわれわれの使節団に委託したり、あるいはまたわけのわからぬ人を出して探ったりしないで、直接話し合って信ずるところを披瀝してみないのか、その必要の段階にきたと私は思います。そういう意味で、大使会談の前に一ぺん党と党との間における使節団を送って懇談してみるということは必要だと思います。ただし、その場合三原則を中心とするこういう政治的問題についても、ノーコメントであり、議題にはしないというのではなくて、十分納得のいくようにお互いの立場を話し合おう、こういうことであるならば、私はこの際話し合いの可能性があるし、また効用が大いにあると思います。われわれはあくまで野党であって、外交権を持っておりませんから、従っていわゆる民間外交の効用と限界というものは心得ております。ですから向うの言うように、またあなたもお考えの通り、政府間の話し合いをする前提として、政党政治の責任をもって与党の代表が向うの中国共産党の代表と親善使節を送って話し合う、それでいいじゃありませんか。ぜひおやりになる決意を固めて、この際態度を明らかにしていただきたいと思いますが、どうですか。
○藤山国務大臣 先般社会党が行かれまして、実は今穂積君の言われましたような感触を最初ではわれわれは受けなかったのであります。本日穂積君のそういう意味の解釈を伺いましたし、また先般参議院で曾祢君から、そういうことでそんなに厳格に、政府と経済とを一緒に話すのだ、あるいは安保条約破棄ということを前提にしてやってこいというのではないのだという解釈を実は伺ったわけなんです。われわれの感触からいいますと、あのときはもっと強いものだというふうに考えておったわけなんでありますが、そうでないということでありますならば、私が参議院で曾祢君に答弁したように、適当な機会に党の代表者が行って友好親善的な話をするということも、一つの方法だと私は考えております。それはなぜ日本が今安保条約を廃棄できないのかという率直な話、今なぜ日華条約を廃棄できないのか、そういうことを中共側も了承してもらえないかということは当然言って差しつかえないことだ、また言うべきことだと思います。そういうことが向う側にいれられるかいれられないかは別として、それは日本側としては言うべきことでありますし、また言わなければならぬことだと思います。それをどういう機会にどういう方法でやるかということは今後の研究問題だと思います。ただ率直に申し上げまして、あのときの感触としては、穂積君なり曾祢君なりの解釈よりも、私どもはもっと強い、実は政治経済一体論というふうに受け取ったのでありますし、またそういうようなニュアンスの若干ある説明も聞いたように思っておったのでありますが、そうでないとすれば、やはりわれわれも考えていくべきことだと思います。
○穗積委員 あなたはおととい参議院で、大体今のようなこまかい内容ではなかったようですが、検討の余地があるというような答弁をされた。その後日はたっております。従ってあなたの今のお考えというものは、岸総理も同意見であると理解して当然よろしゅうございますね。
○藤山国務大臣 むろん同意見だと思います。
○穗積委員 それから人によって解釈が違う、聞く耳によっては違うというようなばく然とした話ではないのです。ここにも資料がありますから、必要があればあなたにも、外務省のアジア局長にもよくお見せいたしますが、昨年の途絶以後、周総理、陳毅外交部長、それからことしの一月の日本代表との会見、また去年の国慶節における日本の親善使節団代表、数個団行っておりますが、それにおける周総理の談話、これはもう個人の主観による解釈ではないのであって、客観的にだれが見ても、北京まで聞きにいかなくたって明瞭にわかっていることなんです。それは一貫して変っておりません。その点は必要があれば、お求めがあれば、社会党はそういうことに資料を隠しもいたしませんし、それから手柄顔をするようなけちな根性もないわけですから、一つ幾らでも資料は提供いたしますから、ほんとうに中国問題を解決するという熱意があるなら、辞を低くして資料を求められるくらいの熱意はあってしかるべきなんです。これをごらんになれば明瞭です。国交、文化、経済の交流に必要なる最小限度の条件というものは、昨年以来、その前からもうしごく明瞭な一貫した方針であって、何ら言いがかりをつけたり、変った方針が打ち出されておるわけではございません。その点はよく勉強をしていただきたいことを要望いたしておきます。 次に対米交渉の問題についてちょっと触れておきたいと思うのですが、今度の東京地裁における伊達裁判長の判決というのは、これは第一審裁判所の判決でございますが、新憲法後画期的なる裁判判決だと思うのです。と申しますのは、先ほど与党の委員の諸君もおあげになりましたし、国会において政府の方々も答弁されておる中で、今までに数十の判決があり、最高裁の判決もあるけれども、それは安保条約以下の関連する国内法まで有効なもの、合憲的なものであるとの前提に立った判決である、こういうことを言っておられるわけですが、憲法第九条を中心にして裁判所が大上段に振りかぶって、その違憲性の解釈について判決を下しましたのは今度が初めてです。そういう意味で、私は第一審であり、または以前にそれと反対の判決がありましても、この判決の持つ内容というものは、非常な重要な意味を持っていると思う。われわれ社会党は従来から、終戦後の政府、保守政党のやることが違憲の行為が多い。これはどうしても、現在の憲法に賛成、反対は別として、現在の憲法が改正されずにある以上は、この憲法の範囲内においてこの憲法を順守して、そうして政府は行政行為を行わなければならない。その違憲の疑いに対しては最高裁判所なりどこなりに違憲訴訟を起して、その違憲であるか合憲であるかを明確にしたいと主張して争って参りました。ところがその違憲訴訟を起す手続法がたまたま盲点としてなかったというので、これを取り上げる機会がなかったのです。ところが今度初めて具体的な砂川事件という機会をつかんで、大上段に振りかぶって、憲法九条と安保条約、行政協定、それにつながるところの刑事特別法、これとの法律関係というものを明確に判定を下した。いわば違憲性であるか合憲性であるかを、日本の司法部が正しくすべてにわたって根本的な解釈を下したのは初めてです。それが一審であるからということによって軽んずるわけには参りません。また裁判の精神からいきますならば、事前に反対の判決が行われましても、後に行われた判決というものは、前の判決をくつがえす性質を持っていることはあなたも御承知の通りだと思う。そういう意味で、この判決に対して、やはり政府はもっと真剣に耳を傾けるべきものであると私どもは客観的に思うのです。これは、この判決がわれわれの従来の主張に合っておるから、有利であるからというので、荒立てて言うのではなくて、法を守るという精神から私はこれを言うのです。これを軽んずるようなことがあるならば、これは変えていい憲法だから、改正される前において破ってもかまわぬという精神をお出しになるならば、これはもう暴力行為である。われわれは多数の暴力といわざるを得ないと思うのです。外務大臣のお考えはどうでございますか。
○藤山国務大臣 今回の判決が従来の判決と違っておったということは、内容を見ればすぐわかることでありまして、われわれもその事実は承認いたしております。しかし、憲法の解釈その他につきましては世上いろいろ議論がございます。またそれについての判例も今日まであるわけでありまして、ただ一つそうした判決が出たからといって、それだけを尊重しなければならぬということには相ならないのではないか。やはり最終的に決定さるべき最高裁の判決というものを、われわれとしては重要視して参る必要がむろんあろうと思います。そうしたことが法の秩序を破るということには私はならぬと思っておるわけであります。むろんわれわれとして意見が違いますものについては、意見が違うということを申すのは当然なことだと思うのでありまして、そのこと自体が必ずしも法を破るというようなことではないのじゃないか、こう思っております。
○穗積委員 実はこの判決に対しまして、日本政府は、自分に不利だというのでこれをネグレクトしていけという政治上の配慮で、順法の精神ではない。法を尊重する精神ではなくて、政治的に不利だというので多数を頼んでこれを無視していけ、軽んじていけという態度で、戦術としてやっておられる。これは明瞭なるところでございましょう。ところが本国の日本政府はそういうようにやっておるにかかわらず、アメリカはやはりものの本質を見て、この判決の内容というものは重大な問題だという世論が高まりつつあるということは、外電の報ずるところでございます。従って、今あなたは第一審であり、これは最高裁において否決されるであろうという前提に立っておられるようなものの言い方をされますが、これが否決されるか肯定されるか、そんなことはわかったものではありません。第一審なるがゆえにその判決について権威がない、最高裁の判決だから権威があるということじゃない。控訴が行われなければ、第一審の判決は日本の司法権の最終の判決として権威を持つわけです。必ず政府が、行政府が控訴したからといって、最高裁で判決がくつがえされるという前提に立ってものを考えるわけにはいかないでしょう。従って法律上の判断からいきましても、政治的な判断からいたしましても、この判決は権威ある日本の司法部の中において疑義がある、問題が生じておる。しかも今までの判決と違って、憲法九条に対する解釈について基本的な判決が行われておるわけですから、従って先ほど言いましたように、第一審であるからといって権威のないものではない。従来の判決より憲法解釈についてはより重要なる意味を持った判決である、こういうふうに解釈されるのであります。従って、最終審において判決が決定するまでは交渉を延ばす必要がある。その意味において、高等裁判所または最高裁判所における判決を急ぐということもいいでしょうけれども、もしそれでは一方において交渉を進めておった、あるいはそれで妥結した、その後最高裁で第一審の東京裁の判決を支持する判決が行われたら一体どうなりますか。従って法律の常識、政治の常識からいきまして、こういうふうにものの本質に触れた疑義が生じました場合には、その最終決定が行われるまで、これに関連するところの事件は、こわすところまでいかなくとも、中止する必要がある。これは非合憲的なものであるということになるならば、その事実はなくなる。従来からいいましても、そういうのが法律上の常識であり政治上の常識であると思う。そういう意味で最終判決に対して政府が控訴を要求されるならば、その判決を急ぐことはわれわれはこれに対して何ら反対するものではない。そうしてその判決を待ってしかる後にされるのが常識だと思いますが、あなたの常識からいっていかがでございますか。
○藤山国務大臣 裁判がありまして控訴をするということ自体が、その解釈に不服であるから控訴をするわけです。従って現在の政府の解釈とこの裁判の判決とが違っておるということだから控訴をするわけです。われわれとしてはその確信の上に立たなければ控訴はできないわけなんでありまして、そういう意味において、われわれはそういう確信のもとにこれを処置していきたい、こういうことなんであります。
○穗積委員 おかしいですね。あなたはそういうごまかしを言われてはおかしいと思うのです。裁判における原告または被告、それの一方的な主観というものが、それは両方が自分の意見に対して正しいと思って裁判をやっておるわけなんです。その一方が正しいと信ずるがゆえに正しいのだ、だからそのことの行動はいいのだということにはなりません。民事の裁判においてみても、仮処分の処置というものはあるのです。それは一方の主観において正しいと思っても、それが正しいという客観性がないからなんです。政府の正しいと思っていることは、客観性がないということが行われておるわけです。それが理解できなくては三権分立の精神が根本的に否定されておるわけで、おかしいじゃありませんか。
○藤山国務大臣 われわれむろん三権分立の立場からいって最終的判決に従うことは当然であります。しかし過程におきまして、やはり控訴する以上は、それが見解が違うのだということでなければ控訴できない。同じ見解だというなら控訴する必要がないのですから、そういう意味で控訴をするわけなんであります。でありますからそれは当然われわれとしてはわれわれの解釈が正しいという立場で控訴をしなければ、控訴の意味がないだろうと私は思います。
○穗積委員 私は、それは日本の政治の根本を多数の暴力によって否定し、くつがえすものであると思うのです。非常に重大な点であって、この際はこれ以上議論しても水かけ論でありますから、公正なる判断は裁判の成り行きと、それから国民の判断にまかせておきましょう。私はあくまであなたの考えは日本の法秩序を否定するものである、順法精神とわれわれは認めるわけにはいかぬということを明確にいたしておきたいと思うのです。 次に、安全保障条約改定に伴って、日米間に予想される新しい軍事条約——相互援助条約になりますが、これはこの間の判決によって解釈された憲法の解釈というものが正論だと従来われわれは主張してきたが、政府は自衛のための実力、自衛のための戦闘行為は合憲性があるという説明をしてこられたのです。それすら私はもとへ戻るべきだと思いますけれども、その立場に立ったといたしましても、今度の安保条約改定に伴って新しく出てくる相互援助条約の内容というものは、私は明らかに違憲性を暴露している、憲法に違反するものである。第一その目的において、日本の軍隊というものが、実力部隊というものが自衛隊法の範囲を乗り越えて、そうしてアメリカの領土と安全を守るために共同戦闘行為に入らなければならぬという義務を軍隊の目的自身が負うわけです。そのこと自身でもすでに合憲性はない。非常なる拡大解釈になっていって、拡大解釈は法の本質をすでに曲げるものであるとすら私どもは考えますが、この点についてもあなたの憲法に対する所信を伺っておきたいと思うのです。
○藤山国務大臣 むろんわれわれ政府のとっております憲法解釈の範囲内で条約を結ぶことは、当然なことだと思うのであります。今アメリカの領土を日本が守るということを条約上書くつもりは何らないのであります。
○穗積委員 そういう内容になりますよ。
○藤山国務大臣 内容につきましては、私はそういうことではないと思います。
○穗積委員 アメリカと韓国、アメリカと台湾、アメリカとフィリピンと同様の、先例になるべき軍事条約またはバンデンバーグ決議の精神というものは、明らかにアメリカの安全と領土を守る、こういうことが義務づけられております。
○藤山国務大臣 アメリカと韓国、アメリカとフィリピン等の条約にどう規定してあるかということは、別の問題でございまして、それと同じような規定を置こうとは必ずしも思っておりませんし、条約適用地域ということも慎重に考えていくつもりなのでありますが、今のようなことは起らないのではないかと考えております。
○穗積委員 それでは相互防衛条約にはならぬじゃありませんか。一方的になりますか。
○藤山国務大臣 でありますから、この安保条約改正に当りましてわれわれの言っておるのは、現行の安保条約に対してできるだけ日米新時代に適応するような日本の自主性を認めた、そうして大局において対等の立場で話し合いのできる条約にしていこうというのがわれわれの主眼であります。
○穗積委員 それでは今のを言質にして、今後の交渉並びに出てくる案文を問題にいたしましょう。今のことは非常に重要ですけれども、留保しておきます。 次にお尋ねいたしたいのは、国際条約、協定または文書、口約束、これの効力についてでございます。この前も岸総理にちょっと私お尋ねいたしましたが、非常に不明確であったのですが、今度の安保条約改正の一つの理由としては、米軍が日本の基地に原子兵器を持ち込むことを条約上は拒否することができないのだ、自由なんだ、こういうことだからということで恐怖心を国民に起させて、それは大へんだから協議事項にしよう、そうしてこっちが反対ならとめられるようにしようという口実をもって賛成を求められておるわけです。ところが五五年の重光・アリソン会談で——われわれこの問題を追及いたしますと、明確に無断持ち込みはしない、しかも日本が持ち込みに反対する意思に変りはない、こういうことで国民を安心させてきた。ところが今になると、口約束なるものは文書よりは効力が弱いのだ、ということで国民に今度は違った解釈でおどかしておる。これは非常な矛盾がございますが、これに対する考え方はどうです。もしそれがしかりとするならば、関連してお答えを願いたいのは、沖縄における潜在主権の問題、平和条約の領土条項の沖縄条項におきましては、沖縄は信託統治になるということが明確に規定してあって、日本の潜在主権は書いてない。これまた正確な文書になって交換されたものではございません。そうであるならば、この沖縄の潜在主権の主張は、文書になっていないからだめだということになるわけなんです。それとの非常な矛盾を生じて参りますが、それに対する外務省の法解釈に対する態度をこの際明確にしておいていただきたい。
○藤山国務大臣 御承知のように現在の安保条約でもって一方的に持ち込めるようになっております。ということで、私就任以来の外務委員会においてもそういうことはけしからぬという議論が多かったと思います。現在アメリカが、総理も言われておりますように、日本の国民感情を無視して持ち込もうとは思っておりませんし、現に持ち込んでおらないのでありますが、しかし少くとも条約で協議条項とすることがよりいいということは間違いないのでありまして、そういう意味においてそれを書くということにいたすことが、悪いことではないというのであります。また外務委員会等の論議を通じましても、何かやはり条約に日本が拒否することのできるような規定を書くことが適当ではないかというような議論も、ずいぶんあったように私は思っております。従ってそういうことだと考えております。また沖縄、小笠原の問題についても、先般岸総理がワシントンに行かれましたときの共同コミュニケのときにも、潜在主権という問題が文章の上に出ております。そういう点から見まして、必ずしも口約束だけだというわけではないのであります。日本の一方的な考え方ではないと思います。
○穗積委員 共同コミュニケと条約との効力についてのお考えを伺いましょう。
○藤山国務大臣 詳しいことは条約局長から申し上げますけれども、国際信義の上からいいまして、共同コミュニケ等もやはり相当重要ではあります。しかしどちらが優先するかとかいうような問題につきましては、条約局長からお答えいたします。
○穗積委員 それじゃ関連して、ちょっと条約局長から外務省の統一解釈としてお伺いいたしますが、事前に明らかにしておきたいのは、条約と協定、交換公文、それから共同コミュニケ、これは政治的なものです、それから口約束についての国際間における法律的効力の軽重をどういうふうに考えておられるか、順を追うて明確にしておいていただきたい。
○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、条約、協定、交換公文というものは、御承知の通り先方との約束の正式の形でございますし、権利義務の関係では一番はっきりした文書であろうと考えております。従いまして、それではたとえば口頭の約束であるとか、コミュニケであるとかいうのが、それに比べて効力がないものかどうかということになりますと、これは問題ではないかと考えております。と申しますのは、やはり口頭の約束であっても、双方の政治的な指導者がその場合約束することでございますから、実体的な面で考えれば、やはり一つの重大な約束ではないか、こういうふうに考えられます。ただ御承知の通り口頭でありますから、そのとき、どういうことを言ったのか、それからその正確な内容がどうであったかということはあとに残りません。ですから、われわれは、あとに残る、しかもその際の口頭の約束が誤解がないという意味において、それを交換公文にするなり、条約にするなり、俗にいう一札をとるとか、一札を渡すとかいうやり方をしておるわけであります。従って、単なる口頭だから効力がないという意味のことで効力がないということは言えない。御承知の通り紳士協定とかいうふうなことも言われておりますし、その意味では実体的効力があるかと思います。
○櫻内委員長 穂積君、申し合せの時間が参っております。
○穗積委員 菊池君と同様の時間でお願いいたします。 この解釈については非常に重要な問題で、さっき言った法精神の問題でありますから、なおこまかく聞きたいと思うのですが、きょうは大臣に対する質問の時間が制限されておりますから、この解釈については次の機会に願いたい。 そこで、外務大臣にもう二点だけお尋ねしておきたいのですが、第一点は、今度の条約改正というか、新条約の中で、条約適用地域を日本地域というふうに、ばく然としたことにしようというお考えのようですが、そういたしますと、現在は四つの島になりますね。ところが将来、今の潜在主権があると認められておる沖縄における一部行政権が返還になったときはどうなりますか。たとえば戸籍、教育、厚生施設に対する行政権が返還になった、こういう場合を想定いたしますと、アメリカの行政権は残存している、日本の行政権もその一部が潜在じゃなくて顕在になってきた、こういう場合には、この協定によってこの地域は当然日本地域の中に入ってくると解釈するのかしないのか。入ると解釈いたしますと、アメリカと韓国、アメリカと台湾との条約の中で、沖縄地域は共同防衛地域に入っている。向うの行政権は残っておりますから、そして日本の行政権も一部顕在化されましたから、そうすると、日本、韓国、台湾、アメリカ、これらは沖縄をきっかけにして事実上NEATOといいますか、そういう集団的な軍事同盟条約の効力が自動的に顕在化されてくるわけですね。そうなりますと、今の日本地域というばく然とした地域にしておいて、そういう事態が起きて参りますと、条約は改正せずして重大なる内容の変更が生じてくる。これをどういうふうにお考えになっておられるか、伺っておきたいと思うのです。
○藤山国務大臣 われわれとして、むろん日本領域という書き方にいたしますか、その他の書き方にいたしますかは、まだ今後の検討の問題でありまして、今何とも申し上げかねます。が、しかし、施政権が返還されておりません以上、当然その地区は除外されるようなことにはなろうかと思います。施政権の一部の返還と申しますけれども、施政権というものはいろいろな相互関係もございますから、やはり立法、司法、行政というような形において総括的に考えらるべき問題だと思うのでありまして、一部何らかの形で委託を受けるというようなこともあり得るかとも思いますが、それらの法律的問題につきましては検討をいたして参りたいと思います。
○穗積委員 非常に不明確でわかりませんが、一部行政権が顕在化されたときに並行するわけですね。そうすると沖縄、小笠原地区は、アメリカの行政権の及ぶ地域でもあり、日本の行政権の及ぶ地区でもある。そうしますと、日米相互防衛同盟条約でこれは共同防衛地区に入ってしまう。それから今度は韓国との条約においても共同防衛地区に入る、台湾との条約においても共同防衛地区に入る、従って日本と韓国、台湾との共同防衛地区にも入ってしまう。従って条約の内容は日米相互防衛同盟条約でなくて、沖縄の一部顕在化された行政権を中心にして、そこで韓国、台湾との共同防衛地区に入るわけですね。そのときに韓国または台湾地区における地域的なトラブルが起きたときには、当然共同防衛の行動に入らなければならぬ義務を生ずる重大な内容の変更が生ずるわけです。それが条約改正という手続を経ずして、自動的にスライディングにそういう内容の変更が生ずる結果になる、ばく然と日本地区ということにしておきますと。重大なことですから、もっと明確に答弁をしていただきたい。
○藤山国務大臣 私はただいまはっきり申し上げたと思いますが、施政権の内容というものは立法、司法、行政だと思います。従って今お話のような戸籍事務だけが返還されるというような形において……。
○穗積委員 それは例です、一部です。
○藤山国務大臣 施政権が一部返還されたというふうに解釈するのかどうかということは、私はそうでないと思いますけれども、その点は研究してみますが、しかし私からいえば……。
○穗積委員 そういうあいまいでは困るのです。
○藤山国務大臣 あいまいではないと思っております。
○穗積委員 あいまいですよ。どっちかわからぬと言っているのです、入るのか入らぬのか……。
○藤山国務大臣 そういうお尋ねがありましたから、研究してみようと申し上げたのでありますが、われわれとしては戸籍事務が返ったから施政権が返ったとは思っておりません。
○穗積委員 それはあなたの個人的解釈ですか、政府の統一解釈ですか、アメリカとそういう話をいたしましたかどうですか、聞いておきます。
○藤山国務大臣 アメリカとはまだ交渉に入っておりませんから、そういう話はいたしておりません。むろん、そういう今の御意見もありますれば検討してみようというのでありますから、私の個人的意見であることは申すまでもありません。
○穗積委員 次に条約の構造について、もう一点だけお尋ねしておきたいのは、今度の条約の義務並びに権利の行使は、それぞれの国の憲法の範囲内においてということにしたい、こういうことなんです。実は今までの先例を見ますと、憲法の手続についてであって、日本の第九条を否定するような、それを初めから承認するものという前提には必ずしも立っていない。憲法と協定、条約が矛盾をしても、その問題についての国内的処理は日本政府の責任であって、アメリカの知ったことじゃない、こういう態度で臨んでくる危険を私は感じております。政府は憲法の範囲内でと言う。それではその範囲内でという第九条の解釈については、日米間で統一解釈をはっきりつけて、それを国の内外の人々に示して、その範囲内でという解釈に立って、それで日本の権利はここまで、義務はここまでというふうに明確にするという交渉ができるとは私は思っていない。おそらくは憲法違反をかまわずに憲法改正にてこ入れをするような内容を持った条約が要求されてくるだろうと思う。そこでその点についてはどう処理されるつもりであるのか。憲法の範囲内でと言っておられますが、憲法の解釈については日米間で統一解釈をはっきり発表して国民に納得を求め、国際的にも理解を求めた上で内容をそういうふうに明記されるつもりであるかどうか、これが質問の第一点。 それに関連して第二点として一緒にお尋ねしておくのは、そういうふうにいたしましても、今度の協定が成立いたしました後に、憲法の範囲内でとしておきますと、その後こういう情勢をてこ入れとして国内において憲法改正が行われましたときには、立ちどころに自衛戦争以上の戦争ができる、外地出兵もできるということに自動的に変ってくるわけですね。これまた憲法の改正ということが条約改正の手続を経ずして自動的に条約の内容に重大なる変更を生じてくるという、おそるべき結果をここでも含んでおるわけです。それについてはどういうふうに一体線をお引きになり、明確にして交渉におかかりになるつもりであるか、重大な点ですから、この地域の問題と憲法のワク内においてという解釈について、外務大臣のお考えを伺っておきたいと思うのです。
○藤山国務大臣 むろん憲法のワク内ということは現行憲法のワク内であることは申すまでもないのでありまして、その範囲内においてわれわれはやっていくつもりであります。憲法が改正されれば、そのときは国民全体の意思でもって改正することでありますから、国民の意思が変ってきますれば、その改正された憲法の範囲内になることは当然のことだと私は思うのです。
○穗積委員 第一問に対する御返事がございません。すなわち最も重要な点は、第九条を中心とする不戦憲法なんです。それに対する日米間の統一解釈というもの、しかもその解釈たるや日本国民も納得し、あの当時日本国憲法を中心とする民主平和の日本の将来の国の建て方を了承する前提に立って講和条約を結んだ諸国、またはまだ結んでない諸国に納得のいけるような、平和憲法の精神に対する第九条を中心とする日米間の統一解釈を明確にしておいておかかりになるつもりであるかどうか。憲法のワク内であるけれども、この憲法はここまでできるのだというふうに、どんどん内閣が変り日が進むに従って勝手な解釈をして、外地出兵までできるような、先制攻撃ができるような解釈をどんどんされたのではたまったものじゃありません。そんな憲法のワク内でなんていう規定は、置いたところがそれは空文化しますから、憲法のワク内という解釈については現存憲法の第九条を中心とする、平和憲法に対する日米間の統一解釈はここだという点を明確に発表して、しかる後にかかるべきだと思う。そういう手続をおとりになるつもりであるかどうか。これは重大な点ですからぜひやっていただきたいと思うが、そういう話を先にしていただきたい。
○藤山国務大臣 日本の憲法の改正につきましては、当然日本政府が責任を負って解釈をするのでありまして、その解釈を他国と規定するということは私は適当ではないと思います。
○穗積委員 これは重大な点です。そんな逃げ口上をされてはいけない。憲法自身の解釈についてはその国の内政問題であって、自主性を持って解釈すべきことです。ところが条約の上に憲法解釈という言葉をもって内容を律するような言葉が出てくるから、その憲法とは一体何を言っているのか、それによって生ずるところの権利義務の限界は、日本とアメリカと、国と国との関係、あなたの今言う憲法というのは、国内の国民の権利義務を決定するものだ、それを国際条約の上で憲法のワク内においてという字句を入れる以上は、その憲法という言葉の内容が形容詞であって、憲法の解釈をアメリカに頼むのじゃありませんよ。憲法のワク内においてというその字句、形容詞が日米間の権利義務の内容を律するものになるから、その解釈は何だということを明確にしなければ、日米間の権利義務は決定しないじゃありませんか。そんな逃げ口上をおっしゃっては困ります。
○藤山国務大臣 おそらくその解釈というようなものは、日本国がアメリカに対して一方的に宣言するものであって、アメリカとの間にそういう解釈を協定すべき問題では私はないと思います。
○穗積委員 それでは、日本の憲法のワク内においてという解釈についてはこうこうだと主張した、それをアメリカは了承したということを議事録なり交換公文なりでやるべきであって、そういう手続について私は言っておりませんよ、統一解釈は行われるという事実を言っているのです。その点を明確にしておいていただきたい。
○藤山国務大臣 政府としては憲法の解釈については議会を通じてはっきりさしてくるのが当然だと思うのでありまして、アメリカがその議会を通じた解釈を知るのが私は当然な措置だ、こう思っております。
○穗積委員 時間がないからこれでやめますが、それならもっと内容的にお書きになった方がいいですよ。憲法の内容はどうだということで、日本国憲法はこういうことになっているから、特殊な憲法であるから、従ってかくかくの範囲内においてという、憲法のワク内でというばく然とした書き方でなくて、そういうふうにお書きになるべきだと思う。そしてまた政府の統一解釈を発表されるなら、従来から日本の統一解釈というものは内閣が変り、日が変るに従ってどんどん変っているのですが、法律というものはそういうものではないのです。それが今度の裁判長の純法律論、その法律が、憲法が、日本のために賛成であるか反対であるかは別論として、憲法の法律的解釈は純粋にこうだというものは不動のものでなければならぬはずです。そこに頂門の一針が今度の判決によってなされたわけですから、そういう意味で私は統一解釈というものはそのときの文書に明確に残すべきである、そのことを強く要望して、政府の交渉の過程を見守りましょう。きょうははなはだ残念ですが途中で打ち切ります。
○櫻内委員長 佐々木盛雄君。
○佐々木(盛)委員 私はきょうは政府に対する質疑は行いません。議事進行に関連して、かつてわれわれの理事会において問題になったことでありまするが、他の同僚委員からも真相を明らかにしてくれということでありまするから、この際私はあえて委員長、それからまた社会党の委員の方もおられたら御見解も承わりたいと思うのであります。 実は先刻来問題になっておりまする社会党の淺沼団長以下の訪中使節団長の北京において行なった言動に関しまして、この言動はまことに日本の存立に関する重大な問題であり、単に社会党と中国共産党との間の友好関係を規律したものばかりではなくして(「共産党ではないよ」と呼ぶ者あり)中国の政府である共産党政府、(「連合政府だよ」と呼び、その他発言する者あり)共産党政府だよ。今日中国が共産党政府であることは何人も知っている、世界の通念であります。これは単に日中間の貿易の問題ばかりではなくして、中華民国と日本との平和条約を廃棄せよ、あるいは日米の安全保障条約を廃棄せよ、あるいはアメリカが帝国主義であるというような問題等は、きわめて重大な日本の存立に関する問題でありますから、従って社会党の方々がなされた言動について、われわれは外務委員会としてこれを看過するわけにはいかない。いわんや国会の開会中に国会をお休みになっていらっしゃって、なお向うにおいて事外交に関しておっしゃったことであるから、御出席を願ってとくと御意見を承わったり、またわれわれの参考にもいたしたい、かように考えまして、淺沼書記長の出席を要求いたしたわけであります。これにつきましては、衆議院規則第五十三条によりまして、委員会は審査または調査のために証人の出頭を求めることもできまするし、また四十六条によりますると、委員外の議員につきましても、委員長から出席の要求をすることができることになっております。また参考人としても、衆議院規則第八十五の条二によりまして、委員会が必要と認めたときは出席を要求することができることになっておるのです。私たちはこういう国会法の命ずるところに従いまして、ぜひとも淺沼さんに出席をしていただいて、とくとその内容についても御意見を承わりたい、かように考そおったわけでありま旧す。このことは理事会において私たちも主張いたしたわけでありまするが、社会党の理事の方から、出席をしてもよろしい、しかしそれについては総理大臣と外務大臣を同時に出席をせしめて、そして政府当局についても質問をいたしたいから、こういうふうな条件をお持ちになりました。しかしながら、私たちは、今回は淺沼書記長を、参考人もしくは証人あるいは委員外の方として出席を求めるのであって、政府に対する質疑は、すでに淺沼さんが、団長をしておられて帰ってこれられて、さっそくに予算委員会におきまして、社会党を代表しての長時間の御質問もなさったようなわけでありまするから、私たちは淺沼さんに社会党の御意見を承わりたい、かように考えておったわけです。このことを引きかえ条件のようにお出しになったのでありますが、私は、この点はまことに理不尽きわまって、筋の通らない御主張であろうと考えるのです。そこでどうしても御出席にならないということで、向うから出した条件というのは、訪中使節団の全員を出席せしめるということ、それからもう一つには、総理と外務大臣を同時に出席させて社会党から質疑を行う、この二つの条件をお出しになった。私たちは淺沼さん個人に出てもらったらいいのでありますが、もし必要ならば、淺沼さんの答弁の参考にもなるというなれば、訪中使節団の他の随員の方も出てもらっても、それはけっこうであります。また場合によっては、本日は定例の委員会の日でありますから、外務大臣の御出席を願ってお答えを願ってもけっこうであろうと考えます。しかし総理大臣にもこの問題について同席せしめて、社会党から質疑を行うということ、もしおやりになるならば、これは別の機会に別のケースとして扱われるのが私は筋であると思います。そういう観点に立ちまして淺沼さんの御出席を強く要求し淺沼さんもまた、予算委員会におきましては、大みえを切って、いつでも必要ならば、立会演説でもあるいは外務委員会の出席要求でも、自分は出かけていって、堂々と所信を述べるのだということをおっしゃっておりましたが、現実には出席をされない。こういう、われわれとしては非常に遺憾な通知があったわけであります。 そこで、私はこの前の理事会におきまして、委員長に申しておいたのでありまするが、もしどうしても本人の自由意思にまかして御出席がないとなれば、一つ法律の命ずるところに従いまして、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律というのがございます。この法律の第一条によりますると、この調査もしくは審査のために証人として出席を求められたときにおいては、何人もこれに応じなければならないという規定があるわけであります。私たちは、ぜひともこの規定を適用することによって、こういう日本の運命に重大な影響を及ぼす発言をなされた淺沼さんの心境を承わったりいたしたい、かように考えまして、私は強くこのことを要求しておきました。委員長は非常に有能であり、かつまた社会党とも非常に友好関係を常にお持ちでありまするが、ややもすると、あなたはよろめきの性格が少しあるのじゃないか。このことは私のみならず、少くとも同僚わが党委員の切なる要望でありまするから、この前私の提案いたしましたことに対しまして、委員長はどのようにお取り計らいになったか、また今後これをどうしようとなさっておるか、この点、重大な問題でありますから、議事進行の名前におきまして、私はこのことを強く主張し、また御意見を承わっておきたいと思います。 〔松本(七)委員「関連。経過があるから」と呼ぶ〕
○櫻内委員長 松本七郎君。
○松本(七)委員 今社会党のことにだんだん触れられましたので、私の方も事態を明らかにして、私どもの考え方をここに明らかにして、その上で、今証人としての喚問云々に委員長がどう処置されるか、私どももむしろ聞きたいと思う。 自民党から淺沼団長の出席要求がございましたので、私どもも検討の結果、これは非常に重要な問題について話し合いをしてきているし、外務委員会として関心のあるのは当然なことだ、従って淺沼団長のみならず、全員がここに出て、そして審議に応ずることは差しつかえない、大いにやろうということをきめたわけであります。ところが今佐々木さんも言われるように、総理大臣の出席のことでございますけれども、これは事が重大であるだけに、外務委員会としては、事がやはり岸内閣の基本政策に関係してくることであるので、もしも自民党の今日の党内事情が、外務委員会の委員諸君とわが党の淺沼団長初め団員の諸君との話し合いだけで、事態が明らかになるものならこれはけっこうなんですけれども、自民党の党内には、安保条約の改定一つとってもいろいろ考えがまちまちである。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そういう事態にある中に、これほど重要な問題を自民党だけが質問するわけにいかない。この問題に関連してわれわれも岸総理に同席願い、外務大臣も同席を願って、一つ交互に質問をやる方式をここに打ち出すことが、最も事態を明らかにするやり方じゃないか、そういう非常に公明な委員会の新しい運営を加味した考え方から、この二つのことを要求したわけなんです。そこで淺沼書記長としては、もうその条件がいれられればいつでも出席する準備で、わざわざ党の重要な執行委員会が本日開かれる予定を繰り延べて、そしてきのう国会対策委員会で決定した今のお話を理事会に持ち出した。きのうじゆうに御返事をいただく約束になっておったにかかわらず、一体この二つの条件によって委員会を開くのかあるいはやめるのか。自民党さんの方から要求してさておいて、われわれのこの返事に対して何らの返事のないことはおかしいではないか。やめられるのか、あるいは今佐々木さんの述べられた新しいやり方で、証人喚問ということでやられるのかどうか。もし証人喚問ということでやられるならば、われわれもこれと同じ権利を行使することができるのであるから、それで態度をきめなければならぬ、いずれか態度を明確にしてほしいということを、再三、昨日委員長に要求したわけであります。しかしそのはっきりした御返事がない。今日になっても淺沼書記長の方からは、出る準備はできているが一体どうするのだという問い合せがきたくらいなんです。従って私どもとしては、委員長としてはどういうふうな考えで、今日まで私どもにはっきり返事をされないのか、この機会にはっきり御返事を承わりたいと思います。
○佐々木(盛)委員 ただいまの松本君の社会党の言い分というのは、露骨な言葉で非常に失礼ですが、盗人たけだけしいというか、私は全く理不尽きわまる御答弁だと思うのであります。問題は、わが党内の問題ではなくして、当外務委員会と淺沼さんとの間の問題なんです。当委員会の名において、当委員会の与えられたところの権限において、議員淺沼稻次郎君を証人、参考人ないし委員外の人として発言を求めるということは、これは国会法に明示するところである。しかも常に国会尊重をおっしゃっているところの淺沼さんや社会党の諸君が、この前のときのお話によると、もし淺沼個人の意見ならば、自民党の政調会へ出かけていって説明することはけっこうである、こういう話でありましたが、これほど国会軽視もはなはだしい言辞はありません。自民党の政調会が呼ぶものでない。この外交問題は、主権在民の今日におきましてはこの当委員会が決定する。従ってわれわれが、淺沼さんの北京におけるああいう重大な発言に無関心であり得ようはずがない。従って、淺沼さんも社会党の立場から言えば、好機至れりとばかりここに出てこられて、堂々と所信を述べられることが天下公党のなすべきことだと私は思うのです。ところがそういう引きかえ条件を持ち出して、そうして総理が出るならば、外務大臣が出るならば、全員が出るならばという。わが当委員会におきましては、全員の出席を要求をしたことはございません。総理大臣や外務大臣の出席を要求したことはないのであります。私たちは当委員会の名前において淺沼稻次郎君個人の出席を求めておるのです。もしあなたの方におきまして、政府当局に対して重大な問題だから質疑を行いたいというならば、与えられた権限において、またわれわれとの相談において、別のケースとしてこの問題を善処されたらけっこうなことであって、引きかえ条件にすべきものではないのです。これは基本的に相異なった問題なのですから、その点は一つ間違いないようにはっきり御認識を願いたいと思うのです。委員長、この問題についてどういう御見解でありますか。
○松本(七)委員 引きかえ条件じゃないのです、全員が出るというのは。あなた方は淺沼個人に話を聞くというけれども、質問しようというのだから、われわれは答弁しなければならぬ。団はどういう編成をしていたかというと、政治、経済、文化あらゆる分担をきめて向うと話し合いをしているのです。従って、質問をされる以上は、こちらが答弁するためには、これは淺沼氏が代表で答弁はしますけれども、場合によっては、直接分担した人に答弁させなければならぬという場合もある。従って、審議をする以上は、そちらが質問をするからといって要求した以上、こちらが答弁をするに必要な人員を出すのは当りまえのことで、それを引きかえ条件だからけしからぬという言い分なら、大体この委員会で誠心誠意審議しようという気持のない証拠なんです。だからほんとうにやるつもりなら、総理大臣だって堂々とここに出てきて、われわれは総理大臣が出たらけしからぬといっているのじゃない。むしろお互いに出て、ここで十分な意見の交換をしようという態度に出ているのだから、総理大臣を出せばできることなんです。それを総理大臣を出さないということに、すでに自分から要求していながら回避している態度が逆に現われている。だから、委員長がはっきり岸総理の出席を要求するという態度をきめられて、すみやかに今からでも開けるのだから、そういう態度で委員会を開いてもらいたい。
○穗積委員 自民党の委員の諸君の提案も了とすべきものがあると思うのです。われわれの提案もまことにもっともな提案であるとわれわれは信じておる。従って、取扱いとしては、私はもうすでに質問を終りましたが、外務大臣に対するきょうの予定の質問がまだ一、二残っているようですから、それを早急に済ましたあとでも前でもいいけれども、理事会を開いて、そうして両方のもっともなる意見をかわしてきめたらいいと思う。こんなところで宣伝みたいな話をしていてもしようがない。理事会を開きましょう。理事会を開く時期については委員長に一任する。
○櫻内委員長 委員長としてちょっとお答え申し上げたいと思います。穗積委員の御要望でございますが、すでに理事会におきまして何回かこの問題について両党間の意見の交換があった次第でございます。委員長といたしましては、当委員会を円満に議事運営していきたい、こういうことで佐々木委員のおっしゃるように、国会法等の諸規則によりまして、参考人、証人として淺沼書記長の出席を委員会が要求することはできます。しかしながら、そのためには数をもって争うというようなことで、なかなか委員会の運営は困難であろうと思いましたので、ただいま松本、佐々木両委員が応酬せられましたような、そういういきさつのもとで理事会といたしましては両党の意見の一致を見なかった次第でございます。しこうして自民党よりは、これではいたし方がないから証人喚問をいたしたい、こういうことでございましたが、私といたしましては、一応そのことを留保していただきまして、本日の委員会の開催に至ったわけであります。と申しますのは、その前に今国会中の委員会の日程がすでにきまっておりまして、本日行いますと、次は四月の二十七日に開催するという申し合せを理事会で行なっております。きょう証人喚問の決議等をいたしまして、いろいろ混乱を起しましても、なかなかその実現の可能性につきましては時間的に困難性があると感じましたので、とりあえずきょうのところはお約束に基いて、国際情勢に対する一般質疑を行いまして、ただいま佐々木委員のお申し出や穗積委員の申し出や、また松本委員からのいろいろ御意見がございましたが、再び淺沼書記長の証人あるいは参考人としての出席の必要がございますれば、あらためて理事会で協議をいたしたい、こういうふうに委員長は思っております。これで御了解願いたいと思います。 帆足計君。
○帆足委員 在日朝鮮人の帰国問題につきましては、外務大臣は韓国政府の条理なき反対第一部の雑音を押し切りまして、純粋に人道と基本的人権の問題として、公正な立場からその解決に御尽力になっておられることに対して、私どもは敬意を表する次第でございます。この問題につきましては、国内の世論も世界の新聞論調も外務大臣の態度に対しては好感を寄せておるように伺っております。ただ今後の実施の過程におきまして、朝鮮人民民主主義共和国政府の議会との間に多少のそごがあります実情でありますが、この問題のよって来たりますところは一方におきましては、当初日赤の井上外事部長の言動が多少独走した点があったこと、それから政府の事務当局の一部において多少認識の不十分があり、たとえば公安調査庁の不明朗な動きがありましたことなどが反映いたしまして、また政府側の声明の表現が多少字句の上において、外国から見ましてあいまいな点がありました等で、それらの点が朝鮮側の不満としておるところのように察せられます。さて日本側といたしましては、国際赤十字の理解並びにモラル・サポートを必要とするという理由は、私どもも十分に了といたしておるところでございます。従いましてこの問題は人道上の問題で、同じ人道の広場に立っての問題でありますので、相互に相手の立場を理解し合いながら、道理に即して、相互に見解を是正し合って理解し合えば、私は解決つくことではあるまいかと存じております。特に日本の立場といたしましては、国際赤十字の理解と協力という問題が非常に重要であるということは申すまでもないことでありまして、野党たる私どもも理解しておるところでありまして、これは朝鮮当局にも十分に理解してもらいたいと思っております。たまたまわが社会党の訪中使節団の一部の方々が、ついででございますので朝鮮に参りました節に、意見を交換いたしまして、日本のこの立場は十分に説明いたしました。同時にまた朝鮮の立場としましては、これは正常な居留民の帰国の問題であるから、純粋に基本人権の問題として取り扱ってもらいたい、また話の手順としては、国際赤十字の理解と協力を必要とする事情については朝鮮側も異存はない。しかし日朝両赤十字の会談から始めて、そして必要に応じて国際赤十字並びに関係赤十字の協力を得るということにしてもらいたい、こういうことでありますならば、私はこれも筋道の通っておることとして理解せねばならぬのではないかと思います。同時に聰明なる国際赤十字の当局は、この問題をニューデリー決議に基くところの人道の問題として取り扱うということをすでに声明をいたしまして、日本政府の御努力に対してはモラル・サポートを表明いたしております。同時に会談の手順といたしましては、日朝両赤十字が腹蔵ない意見の交換をしてもらいたい。国際赤十字としては窓を開いて、その協議の共通の結論を待っておるというような広義の意味における国際赤十字の理解とあっせんというような立場をすでに示しておるのでございます。問題がここまで参りましたので、北朝鮮すなわち朝鮮人民民主主義共和国の赤十字におきましても、ジュネーブにそれでは代表を送って、今後の問題を相談しようということになり、また社会党の同僚議員の人たちが参りましたときにも、日本国民の友情と人道に対する理解に対しては感謝する。ただ一部に伝えられているように、在留一般の居留民、または申請者に対して審議し、選別し——まあ心の裁判のようなことでしょう。えり分けをするというようなことでは、基本的人権の問題として賛成できないということを強く申しております。この問題のいきさつは御承知のように、当初漫然と考えまして、在留朝鮮人を広い意味の抑留者のように考えまして、南へ行く者と北へ行く者と滞在する者と一応調査する必要があろう、選別する必要があろうというような常識論から、多少雑音が起りましたことも事実のようでございまして、また公安調査庁が多少余分なおせっかいなことをいたしましたことなども、私は強く海外に報ぜられたのではあるまいかと存じますが、その後、政府当局と話し合ってみますと、実際問題として考慮いたしますと、そういうことは抑留者とか、捕虜の場合にはいわゆるスクリーンという言葉でいわれておるようないろいろな問題が歴史的に見ましてもありましたけれども、しかし正常な在留民の帰国の問題につきましては、申請受理の公正な手続をする。その手続は何人が見ても公平であるというような方法をとりたいというお心持であって、申請者に対して選別、審議、えり分けなどをするというようなことは考えていないということが、私どもにも政府の気持がだんだんはっきりいたして参りました。しかしこの問題につきましては、問題が微妙でありますし、また内外の多少の誤解もございますし、また政府と懇談のうちに問題が人道問題としていよいよ明確になって参りましたので、この際外務大臣から簡潔にかつ明確に、この問題についての政府の御解釈を承わっておきたいと思います。きょうは、たまたま国際的にはエープリル・フールの日でございますから、あれは四月一日の言明であったからなどとおっしゃることのないように、簡潔、そして明確な——今まではアジア局長や日赤の総裁などからもお心持のほども承わりましたけれども、本日は政府の最高責任者である、担当責任者であられるところの藤山外務大臣から簡潔かつ明確にこの問題についての解釈を承わっておきたいと思います。
○藤山国務大臣 国際赤十字に委託しました北鮮帰還の希望者の問題につきまして、先般、北鮮側におきましても、ジュネーブに行くようになりましたので、今後この問題につきまして話し合いが進んで参ると思っております。いろいろ誤解もあるようでありますし、確認とか、あるいはスクリーン、選別とかいうような問題がいろいろ誤解されておりますので、この際はっきり申し上げておいた方が適当であろうかと思います。 日本側が考えております帰国意思の確認という意味は、在日朝鮮人の各個人が、そのほんとうの意思を自由に表明したと認められるような公正な方式を作りまして、帰還を希望する朝鮮人各個人が帰還の意思を表明する申請書を、このようにして作られた仕組みに対しまして提出することを考えているのでありまして、本人に別段の苦情があるような場合を除き、原則としてすべての帰国申請者を一々調査したり選別しようとするものではないことむろんでございます。 以上の点につきまして、日本と北鮮両赤十字の間、並びに赤十字国際委員会との間で協議し、確認を得られれば問題は進行するのではないか、こういうふうに考えております。
○帆足委員 念のためにお尋ねしておきますが、そういたしますと、帰国申請書、申請の手続並びに受理の手続の方式につきまして、日朝両赤十字並びに国際赤十字の理解と支持、確認を得ておく、すなわち、その方式について理解と支持を得ておくのであって、一人一人の心境についての立ち入った裁判と審査、選別というようなことはしない、こういう意味に承わりましたが、そういうことでけっこうでございますか。
○藤山国務大臣 もちろん多数の帰国者の個々の意思を審査するということは不可能なことでありまして、そういうことを事務的にも考えておらぬこともちろんであります。精神的にも考えておりませんが、事務的にも考えておりません。
○帆足委員 これで大臣への質問を済みまして、私はビームのことについて二、三点事務当局に質問いたします。 先日、新聞に伝えられてもおりましたが、音楽の著作権の印税の支払いにつきまして、ビームの支払い問題がまだ未解決になっております。この問題につきまして、印税率を見ましても、西洋音楽の著作権の印税率として、二%というものは、ちょうど至当なことでございますし、また制度として見ましても、日本の制度では関税とか国税などを除きましては、一定の料率をきめますのは、政府が認可料率をきめますと、これは広義の法律の運用の一部になっておりますから、民間の業界で任意にきめることはできませんで、為替管理の上から申しましても、また認可制度の上から申しましても、これは政府が決定すべきことでございます。この問題につきましてビームの了解が得られませんで、日本におけるレコード音楽に非常な障害が起るというようなことになっては困るのでありますから、至急関係各庁、特に外務省条約局、文部省、また大蔵省等におきまして協議いたしまして、敏速な、そうして道理にかなった措置をとっていただきたいと思います。この問題は、すでに久しい問題でありますのに、関係官庁それぞれ御多忙のためか、適切な措置がおくれておりますのを大へん遺憾に思っております。きょうは最後の外務委員会でありまして、次会は四月二十七日になりますが、次回の外務委員会までということでなしに、この一週間ぐらいの間にこの問題を解決していただきたいと思います。 なお文部省当局におきましては——著作権協議会から異議のあるような何か声明が出ておりまして、私はこの声明を読みましたところが、これは政府側におきまして措置すべきことの事態がおくれておるというようなことに対する批判としては多少もっともな点があると思いますけれども、日本におきまして為替管理の上からも、それから仲介業並びに著作権につきましての支払い認可制度の法制から申しましても、これは政府のきめました料率に従う以外に方法はないのでありますから、大局から見ますならばこれは自明の理でございます。従いまして法律上の自明の理を秩序整然と整理してよく説明いたしまして、アメリカにも、イギリスにも、その他西欧諸国にも同じような法律があり、同じことが行われておりますので、日本もまた占領直後の状況ではないのでございまして、法治国としてやはりきぜんとした態度で筋を貫いていただくような態度に出られるならば、問題はおのずから解決すると思います。同時にまた外務省当局におきましては、フランスの外務当局また文化当局等にも問題を率直に御説明下さいまして、雑音を省きまして、早く結論に到達していただきたいと思います。またそのためには、著作権協議会の代表委員の方々は中島健蔵さんとか青野季吉さんとか、相当もののわかった筋の立った方々でありますから、どうか文部省当局におきましては、多分あれは法人団体でありましょうし、監督官庁は文部省なのですから、首脳部の方と一ぺん懇談なさって、そして誤解を解き、聞くべき意見は聞きまして、対外問題でありますから、雑音が入りますと、外国の方は日本国内に何か弱点があるのじゃないか、意見の相違があるのじゃないかという疑心暗鬼で時間を空費し、そしてつまらぬ横道に問題がそれたりするおそれがありますから、そういうつまらないことのないように至急関係官庁の連絡をよくしていただきたいと思います。私が苦言を申したいことは、過去のことはあえて問いませんけれども、これは関係官庁の連絡不十分のために国民が非常な迷惑をこうむっておるという点もあるのでございますから、強くは申しませんけれども、一つ一週間以内くらいに衆知を集めて筋をただしていただきたい、これを要求いたします。
○大田説明員 お答え申し上げます。わが国には著作権の仲介業務に関する法律という法律がございますので、この法律の規定に従って、ただいま帆足委員のお話しになりましたビームの仲介業務を処理すべきであると考えておりますので、私どもは関係官庁と協議いたしまして至急に解決いたしたいと思います。私どもも最近外国の資料を取り寄せましていろいろ研究して参りますと、スイスやカナダなどに日本の仲介業務と同じ使用料の規定をいたしましたものも見つかりましたから、こういうような資料をもちまして相手側を十分説得し得るものと考えておりますので、御期待に沿うような処置をいたしたいと存じます。
○片上説明員 帆足委員から今お話ございました件は、問題の事柄からいたしまして、できるだけすみやかに政府部内の統一解釈を向う側に回答するということが、一番事態をすみやかにかつ円満に解決していく方法であったことはその通りでございます。諸般のいろいろな事情がございまして、その処置が今御指摘のようにおくれて参ったわけでございますが、いよいよここ数日中には最終的な文部省との話し合いもできるような見込みでございますので、できるだけすみやかに結論を出して先方に回答いたしたいと思っております。問題の点といたしましては、国際条約の関係とそれから仲介業法を中心といたします国内法解釈の問題、この二つがございますが、国際条約の関連の問題では、御承知の通り第一次回答をいたしました中で原則的には解決を見ておることとわれわれは了解しておるわけですが、あと主としてはこまかい具体的な問題についての国内法上の解釈についての補足説明、この問題にしぼられておるわけでございます。 最後に、フランス大使館その他へも外務省からは十分率直に事情を説明して向うの了解を求めろという御要請がございましたが、これはその通りでございます。私ども最終結論がここ早急に出ました上は、十分先方側に説明して了解を得るように最大限の努力をいたしたいと考えております。
○櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後零時四十六分散会