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30回国会参議院1958/11/04

予算委員会 第2号

発言数
234
登壇者
28
会派数
3
開催日
1958/11/04

会議録

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) これより委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について報告いたします。  十月四日、千葉信君が辞任し、その補欠として中田吉雄君、十月三十日、中田吉雄君が辞任し、その補欠として羽生三七君、十一月四日本多市郎君が辞任し、その補欠として小柳牧衞君、同日、田村文吉君が辞任し、その補欠として中山福藏君が選任せられました。   —————————————

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 次に、理事の補欠互選についてお諮りいたします。  現在、理事が三名欠員となっておりますので、この互選の方法は、成規の手続を省略して、私より小柳牧衞君、塩見俊二君、及び鈴木強君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 次に十月三十一日の委員長及び理事打合会における協議決定事項について御報告申し上げます。  一、昭和三十三年度予算補正(第1号及び特第1号)の質疑時間は四百二十分とし、各会派の割当は自民党百三十分、社会党二百分、緑風会五十分、無所属クラブ及び第十七控室はそれぞれ二十分とする。  二、質疑順位は、従来の通り、社会党、自民党、緑風会、無所属クラブ、第十七控室の順序とし、これを繰り返して行う。   —————————————

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 次に、昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)を一括して議題といたします。  まず、政府より提案理由の説明を求めます。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 政府は今回昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び特別会計予算補正(特第1号)を国会に提出いたしました。ここに予算委員会の御審議をお願いするに当りまして、その概要を御説明いたします。  本年における災害は先般の二十二号台風を迎えるに至りまして相当の被害規模に達する見込みになりました。政府といたしましては、すでに予備費の使用、地方交付税交付金の交付時期の繰り上げ等の行政措置を講じて参りましたが、今回災害の実情に顧みまして、特に被害の甚大な地域についての農地、公立義務教育学校の復旧事業の補助率その他の特例に関する法律案を用意するとともに、予算の補正を行いまして対策に万遺憾なきを期することとした次第であります。一般会計予算補正(第1号)は、歳入歳出ともそれぞれ約九十一億円の追加を行うこととしておりまして、補正後の三十三年度一般会計予算総額は、当初予算額と合せまして歳入歳出ともそれぞれ一兆三千二百十二億円となることとなります。  歳出の主なものは、公共土木及び農林水産業施設復旧、早害及び霜雪害対策に必要な経費等でありまして、すべて災害対策にかかわるものであります。  歳入の主なものは、日本銀行納付金、金融機関調整勘定利益返還金等でありまして、おおむね全額現在までに収納済みまたは確定済みの租税外収入の増加額を計上することといたしております。  特別会計予算補正(特第1号)は、貴金属、産業投資及び国債整理基金の三つの特別会計にかかわるものであります。  まず、貴金属特別会計にかかわるものは、今回一般会計予算補正におきまして、この会計の余裕金を歳入に受け入れることとしたことに伴う補正措置でございます。  次に、産業投資及び国債整理基金の両特別会計の予算補正について申し上げます。政府は、基幹産業拡充資金に充てるため外貨債を発行いたしたいと考え、別途必要な法的措置を講ずることといたしておりますが、これに即応して、米貨三千万ドルの外債を起し、これを産業投資支出に充てるため必要な補正措置を、関係の両特別会計について講ずることといたした次第であります。  なお、予算補正を必要とするものではありませんが、本会議でも申し上げました通り、このほど政府といたしましては、中小企業の年末金融資金及び災害復旧資金需要等を考慮いたしまして、百億円の資金を手当するため必要な措置をとることにいたしておりますので、この際申し添えておきます。  以上、ごく概略を御説明申し上げましたが、詳細にわたりましては、政府委員をして補足して説明させることといたします。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 次に、順次補足説明を求めます。

石原周夫大蔵省主計局長

○政府委員(石原周夫君) ただいまの大蔵大臣の御説明を補足いたしまして、今回提案になっておりまする一般会計の予算補正(第1号)及び特別会計の予算補正(特第1号)、この両案につきまして御説明を申し上げます。  お手元に「昭和三十三年度予算補正(第1号及び特第1号)の説明」という書類を差し上げておりますので、それをごらんになりながら、御説明を申し上げます。  一般会計の補正のことから申しまするが、お手元にお配りしておりまする一ページの下の欄に、歳入と歳出のおのおの九十億九千八百万円に上りまする金額が載っております。ごらんになりまするように、災害関係の分だけでございます。災害関係に必要な金が九十億、それに対しまして財源を、先ほど大臣も御説明申し上げましたように、税外収入におきまして、今日までに確定済み、あるいは収納済みのものを中心にいたしまして財源を見ておるわけであります。  この際、災害関係の総額について御説明申し上げておきますると、ここに補正予算で御提案申し上げておりまする九十億九千八百万円のほかに、すでに予備費をもちまして二十三億五千万円を支出をいたしております。そのほかに、近く直轄関係の予備費で六億二千万円を支出いたす予定であります。そのほかに、文部省、厚生省などの各省の災害の関係におきまして約十億円程度を留保いたしておりまするので、この三者と申しますか、四者を合計いたしますと、百三十億という数字に相なりまして、それが今用意いたしておりまする災害対策全体の金額になるわけでございます。そのうち、今回の補正予算で出しておりまする九十一億の内訳は、二ページから三ページにかけまして、六つの項に分けて御説明を申し上げるわけであります。  第一が、三十三年発生災害の復旧事業費五十二億二千六百万円、これは、御承知になりまするように、二十二号台風までにおきまして、七百二十二億円というのが公共土木、農地、農業施設関係の被害額であります。それに対しまして過去の査定率を見まして、それに今まで申し上げましたような二十三億円の支出、今後におきまする六億二千万円の直轄関係の支出というような、実支出額あるいは支出予定額を差し引きまして、ここにごらんを願っておりますように五十二億二千六百万円という数字に相なっておるわけであります。各省別は、二ページにございますように、建設省関係で三十七億一千万円、農林省が十三億三千八百万円、運輸省が一億七千八百万円という順序になるわけであります。  次が、災害関連事業費、いわゆる災害の復旧に関連をいたしまして局部改良をいたします金であります。これが二億六千六百万円、建設省、農林省、運輸省がこれに当ります。この金額が、予備金に入れております分と合せまして、大体本工事費、復旧工事費の七%程度になっております。  三番目は、緊急治山及び緊急砂防事業費でございます。これも災害復旧に当りまして、これと並行し、あるいは場合によりましては、事前に荒廃山地、渓流の仕事をしておかなければなりませんものですから、そのために五億三千万円、治山が二億三千万円、砂防が三億、合計五億三千万円の金を用意いたしております。このほかに、既定予算が七億一千九百万円で、この方とあわせて施行いたすことになるわけであります。  四番目が干害対策費でございます。これは、本年の早害の関係につきましての応急対策の事業費とそれから塩害の防止対策という二本建に分れております。大部分が早害応急対策事業費でございまして、これは、夏に早害がありましたときに、閣議の決定を経まして方針をきめております。主として水路の関係あるいは井戸の掘さくの関係、あるいは揚水機、ポンプ、そういうものの手当の関係でありまして、これは、各地から上って参りました査定額の集計が十七億八千百万円という数字になっております。利根川下流の塩害防止の件は一億四千五百万円で、農林省及び建設省の両省に分れて、塩水が利根川を上って参る、それを食いとめる施設をいたしたわけであります。それから最後にもう一点ございました。揚水機の購入費といたしまして、災害用に、一定規模をこえます揚水機は、この際国で買っておきまして、将来そういった早害が起りましたときに対処し得るように国が持っておるという対策であります。それが千百万円でございます。  五番目の霜雪害の対策費でございます。これは、本年の春に起きました晩霜に対しまして、当時すでに閣議決定いたしまして、方針をきめ、それに基きまして査定をいたしましたものであります。大体肥料と薬剤の費用が大部分であります。  第六が予備費でございまするが、これは、今まで御説明申し上げました一番の三十三年発生災害復旧事業費及び第二番目の災害関連事業費、このおのおのの約一割分を予備費としてリザーブいたしまして、なお、今後査定が現実に進みまするに伴いまして、省別所管別がはっきりきまるというものもございますので、そういうものに対しますリザーブをいたしまするのと、今後に起きます災害をも考慮して、合計十億という金を見ておるわけであります。  歳入予算でございまするが、歳入予算は九十億九千八百万円でございまするが、第一番が政府資産整理収入、これは、国有財産売払代金が、現在までの大体の見込みから、予算に対しましてオーバーになった分を見込んだわけであります。  雑収入が三つほどの柱に分けて載っておりまして、一つは、国府財産利用収入、これは、指定預金及び国庫余裕金の一時使用をさしております利子収入であります。指定預金は、十月末までの見込み分を計上いたしました。国庫余裕金につきましては、八月末で一応流用を打ち切っておりますので、このときに現実にきまった現実の収入額を計上いたしました。相手は国鉄でございます。納付金でございますが、これは、日本銀行納付金でございまして、三十三年度上期までに日本銀行が決算を締めまして、その結果、予算に超過いたしまして出ました約二十五億円でありまして、予算は百六十五億円になっておりますから、それに対しまして二十五億円超過いたしたわけであります。雑収入といたしまして、三本ほどのものが載っておりますが、その第一は、貴金属特別会計からの受入金であります。これは、本年九月に銀を百四十トンほど貴金属特別会計から造幣局に売っております。その金が当初予算に予定していなかったものでありますから、この金を一般会計に受け入れをいたしましたのが十二億七千八百万円であります。農業共済再保険特別会計におきまして、三十二年度の決算を先ごろ締めております。その結果、二十四年、二十五年の両年にわたりまして一般会計から繰り入れをいたしました、そのとき、将来農業勘定におきまして利益が出た場合返すという法律に基きまして、自動的に入って参りますものが十六億九千二百万円。最後に、金融機関の調整勘定の利益返還金でございまするが、これは、金融機関の再建整備法に基きまして、かつて政府が補償いたしました額で調整勘定で利益金を生じました額、これを引き取ります分が二十八億六千三百万円。合計いたしまして八十六億という金が、政府資産整理収入を除きました雑収入の系統において入ってくる。合計いたしまして九十億九千八百万円ということに相なるわけでございます。  特別会計は、三本の特別会計がございまして、貴金属特別会計、産業投資特別会計及び国債整理基金特別会計に分れております。貴金属特別会計は、一般会計で御説明を申し上げました、貴金属特別会計における銀の売却による利益を一般会計に繰り入れるものでございます。産業投資特別会計の分と国債整理基金特別会計の分は、いずれも外債の発行に伴います関係でございます。御承知のように、三千万ドルの外債を発行いたしまして、この収入金百八億円をもちまして電源開発株式会社に融資をいたします、その関係でございます。これだけの外債を発行するわけでありまするので、発行手数料ほか発行諸費が五億一千万円ほどでございまして、産業投資特別会計の歳入に従って、これを国債整理基金に受けまして、現実の手数料以下の支払いをいたすわけでございます。なお、法律の規定に基きまして、外債を発行いたしまする前に借入金をいたすことも予想されまするので、百八億円の借入金を一時いたしておきまして、それを、外債の発行による収入金をもって償還いたすという関係が、国債整理基金特別会計の方に百八億円ずつ立っております。  以上をもちまして、特別会計の御説明を終ります。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 次に、理財局長正示啓次郎君。

正示啓次郎大蔵省理財局長

○政府委員(正示啓次郎君) 補正予算に関連をいたしまして、財政投融資の関係で、二つの事柄を補足して御説明申し上げます。  まず第一点は、本年度の財政投融資計画と世銀借款等による外資導入計画との関係でございますが、さきに本年度予算の御審議に際しまして、本年度財政投融資計画との関連におきまして、電源開発等のため、総額四百十億円程度の世銀借款資金を本年度内に受け入れるべく予定していたことは、御承知の通りでございます。その後、世銀当局との折衝は、きわめて順調に進展したのでありますが、右のうち、電源開発会社のために予定いたしました百二十三億円の中には、田子倉、奥只見、御母衣等の工事資金が含まれていたのでございます。しかるに、これらのうち、田子倉及び奥只見の分は、これら地点における工事がすでに相当進捗していた等の理由で、借款対象工事として採用されがたくなりましたので、世銀借款全体としては、当方希望の程度まで実現する見通しではありますが、さしずめ本年度末までの電源開発会社への資金供給量に、若干のズレを生ずることとなった次第でありまして、この点がいわば、今回の外債発行の直接的な導因の一つとなったと申すことができるのであります。  もとより、世界銀行といたしましては、相当の条件で民間資金が得られない場合に、初めてローンを認めるのが建前となっております。従って政府としても、かねてから外貨債発行の可能性について、現地市場の状況等を調査研究して参ったのであります。たまたま過般、IMFの総会に出席せられた佐藤大蔵大臣が、世界銀行及び米国金融界の関係者との会談を通じて、この際、国内において、法制的及び予算的措置を講じ、外債発行の方途に出ることが適当であるとの判断に到達せられ、ここに別途、産業投資特別会計の貸付の財源に充てるための外貨債発行に関する法律案を提出して、御審議を仰ぎますとともに、ただいま議題の一部となっておりました産業投資及び国債整理基金両特別会計の補正予算を提出する運びとなった次第であります。すなわち、今後幸いにして、所期の通り外貨債を年度内に発行することによりまして、前述の電源開発会社のために必要とする資金も、適時適確に充足せられる次第でありまして、これを資金の質及び量に即して考察いたしますと、いわば世銀借款の一部が外貨債の形に変ったものともいうことができるのであります。ただしかしながら、右の外債発行と世銀借款との関係でありますが、この外債はあくまでも従来から予定して参りました世銀借款の上積みとなるものでありまして、外債を発行したからと申しましても、世銀借款の総額がそれだけ減少させられるものではないことを念のため申し添えておきたいと存じます。  次に第二として、中小企業の年末金融対策につきまして、一言つけ加えて御説明申し上げます。本年度の財政投融資計画の策定に当りましては、中小企業関係金融の疎通をはかるため、政府関係金融機関に対し、自己資金の充実と、あわせて相出額の政府資金の新規投入を計上し、前年度に比し貸出規模の拡大をはかりましたことは御承知の通りであります。さらに最近における民間金融機関の中小向け貸出は、質量ともにある程度の改善を示しているのでありますが、中小企業の年末資金及び災害復旧資金需要を考慮し、この際、国民金融公庫、中小企業金融公庫、及び商工組合中金央庫にそれぞれ二十億円、日本不動産銀行に十億円、計七十億円の政府資金を追加投入するほか、各機関の資金繰りを勘案し、必要に応じて繰り上げ使用を認めることにより、あわせて中小企業に対する年末金融対策として百億円の資金の手当をすることといたしたのであります。なお、国民及び中小公庫に対する予算上の措置は、さきに本年度本予算において国会の議決を経て新たに設けられました政府関係機関予算総則第三十五条のいわゆる弾力条項により処理するものでございます。  以上簡単でございますが、補足説明を終ります。

佐多忠隆日本社会党

○佐多忠隆君 議事進行。今理財局長の御説明を聞いたんですが、すでに早くから、今年度の財政投融資計画の実施状況に関する資料、世銀借款の資料、それからニューヨークにおける諸外国の外債発行に関する資料等を要求をしておるんですが、まだ手元に着いておりません。これはいつ届けられるのか。きょうなるべく早い機会に届けていただきたいと思います。どうなっておるんですか。

正示啓次郎大蔵省理財局長

○政府委員(正示啓次郎君) すでに調製を終りまして、本日中にお届けをいたします。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) これより質疑に入ります。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 三十三年度の補正予算の内容の審議に入るに先だって、当面する政治情勢及び安保関係等の問題について、岸総理大臣、その他関係大臣に若干の質問をいたしたいと思います。  最初に一般的政治問題でありますが、岸内閣の最近の政策は、勤務評定の実施、あるいは今回の警職法の改正、日米安保条約の改正等、きわめて重要な意味を持つ政策を推進しております。政府のこのような一連の動向は、戦後ようやく獲得された日本の民主主義を逆転をさせ、非民主的、復古的な方向に日本を転換させる意図のように思われます。この日本の民主主義は、敗戦を契機に急速な成長をしたものでありますから、そのあり方が、時には若干の批判を受けるような面もあるでありましょう。すべてが完全で何らの欠陥も存在しないとは私どもも言わないのであります。しかし、それにもかかわらず、民主主義の成果は断じて守られなければならないし、またわれわれはそういう意味では性急にではなく、長い目で日本の民主主義を見ていく必要があると思うのであります。また総理は先にブラウン記者との会見において問題を起しましたが、憲法第九条も含めて再検討を必要とするというその考え方、その立場は、そのまま現に今政府がとっているこの当面の諸政策とともに、この日本の戦争放棄の政策を転換せんとする意図のようにも思われます。岸総理の現にとり、またとらんとしつつある政策は、日本国民にとってきわめて重要な意味を持っておると思います。われわれはそう判断せざるを得ない。で、民主主義の問題と同様に、憲法の改正が軽々に行わるべきものでないことは言うまでもありません。しかも特に今日のような国際的な条件のもとにおいてはなおさらであります。むしろ、日本が第九条を含め現行憲法を固く維持することの方がむしろ賢明でありましょう。すなわち憲法を急速に改正しなければならぬという客観的な条件には私は乏しいと思う。日本経済の体質改善ということがよくいわれますが、岸総理はこの一連の動向を見る場合に、日本政治の体質を根本的に転換しようとしておるのではないか、こう思われる。戦後の実りである日本の民主主義はあくまで私たちは守らなければならないと思うのに、そうではなしに、むしろ岸総理は保守陣営の中に期待されるいろいろな要素を実現するために、そのむしろチャンピオンとして民主主義の取りくずしを考え、日本の政治体質の根本的な転換を企図しているのではないかと想像されるのでありますが、まずこの点について総理の御見解を承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私の政治の根本的な考え方に対する羽生委員の御質問でございますが、言うまでもなく民主政治を守り、民主政治を完成するということは、最も大きな私どもの任務であると思います。私は決してこの点において復古的な、あるいはそれをなしくずし的にこわしていくというようなことを毛頭考えておるものではございません。言うまでもなく、この民主政治というものの日本の現状を見まするというと、羽生委員もお認めになっておるように、私は決してこれが完全な形にいっておるとは思いません。もちろんこの民主政治が完成されるためには、長い間の国民的努力、政治に関係しているものだけではなくして、国民全体の努力を必要とするわけでありまして、決してそう急速にこれが完成するということを考えることは、各国の歴史を見ましても、そういうことは考えられないのであります。従ってその健全な育成のためには、あらゆる面において私どもが努力をいたさなきゃならぬと思いますが、私は最近のいろいろに現われておる事象から見て、この民主政治を守る根底は、やはりわれわれが一つのルールを守るということであり、民主主義の基本的の原則の一つであるところの個人の基本的人権を守り、確立する、個人の人格の尊厳を確立する、こういう問題に関しましても、われわれはやはり社会を構成している多数の人々の全体を考えていかなければならぬことは言うを待たぬと思う。一部の人々が極端に自分の基本的人権や、あるいは自由を主張することによって、たくさんの人々の基本的人権やあるいは自由が脅かされるというような事態があってはならない、これをわれわれができるだけ平等に確立し、守り上げていくということが民主政治、民主主義の基本でなければならぬ、そこには一つの社会的ルールというものを守るということが前提でなければならぬ、これが私は、われわれが民主政治の形態として国会政治を通じてわれわれはそのルールを立てて、そのルールを守っていくということが前提になると思う。私は法秩序を守るということをよく申しております。しかしながらそれは言うまでもなく、ただ形式的の法秩序ということではなくして、民主的に設けられたところの法秩序を前提として、これを尊重し、これを守るということが民主政治の基本でなければならぬと思っております。それらが最近において、いろいろな意味においてこわされ、あるいは守られないというようなことが社会に不安を与えている事態は、これは私はそれを守るようにしていくということは、決して民主政治に反するものではなくして、むしろ真の民主政治を作り上げるゆえんであると思います。決して私がいろいろな意味から反動的なあるいは旧憲法時代の体制に帰ろうというような何らかの意図を持っているというふうに想像されることは私の意図でもございませんし、私は絶対にそういうことは考えておるわけではございません。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 警職法改正の問題は、院の内外を問わず、戦後日本の政治史上にかつて見ないほどの重大な問題となっていることは御承知の通りであります。  まず第一に、かかる重要な法案を突如として提出したこの政府の意図についても問題はあるのでありますが、それは別として、それとともに私どもが特に指摘したいのは次の点であります。  それは、公共の秩序と安全という問題と個人の自由と権利という問題との相関性であります。すなわち、万人の目に疑いもなく、かつ明白に公共の秩序と安全が侵犯されて、これに対する予防措置の確立が国民生活上何事をおいても不可欠である、そういう客観的な実態が現に存在するかどうかということであります。しかしこの場合重要なことは、かりに若干懸念されるような事象が見受けられる場合であっても、その場合であっても、憲法に規定されている個人の自由と権利と引きかえにすることが要求されるような客観的な実態があるかどうかということであります。こういう立場で今日の客観的な諸条件を見る場合に、われわれは大局的に見て、先ほど申し上げたように、若干民主主義についていろいろな問題はあるでありましょうが、しかし大局的に見て、憲法に保障された基本的な自由とこの権利の制限や拘束を必要とするようなそういう客観的実態は存在しないと、われわれはこう判断している。総理は憲法上保障されている個人の自由や権利の制限をやらなければ日本国民の安全が守れないほどの客観的実態が存在するとお考えになるかどうか。私は、問題は若干あっても、これが成立しなければ日本がどうにもならないというような客観的実態はないと思う。むしろ政府が全力をあげて国民生活の安定や社会福祉に専念することの方がむしろ問題をより解決するに近づくであろう。公共の秩序と安全を守る私は最大のそれが道であろうと考えております。この点については、そういう、この法案が通らなければ日本の国民がどうにもならないというような客観的な実態が現に存在しておると御判断になるのでありますか、この点だけ……。またもう一度申し上げますが、その個人の自由と権利を引きかえにしなければならないほどの実態が存在するかどうか、こういう問題であります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 先ほど申し上げましたように、民主主義の基本である個人の基本的人権というものを尊重することは現行憲法に明示されておるところでございます。と同時に、憲法十二条、十三条等にありますように、この基本的人権というものは、やはり公共の福祉と一致するようにしなければならぬこと言うを待たないのであります。これは先ほど私が申し上げましたように、やはり多数の人々が共同生活を平穏に、平和にお互いが過ごしていくというためには守らなければならぬ一つの限界であると思います。私は最近に現われました勤評反対の運動や、あるいは道徳教育の講習会を阻止しようとするいろいろな集団的の行動や、あるいは苫小牧等における労働争議の実情を見まするというと、それが平穏なる国民の、一般の市民生活を脅かし、それの平穏なる状況に不安を与えておるということは、見逃すことができないと思うのであります。私はそういう事態をなくすることが、日本の民主政治を健全に育て上げていく上から必要である。今お話がありましたように、これが通らなければ日本がどうなるか、あるいは今の不安が全体としてどうだとかいうふうな御議論でございますけれども、私は静かに日本のこの最近の実情を見、そうして将来に向って民主政治というものを完成していき、そうして多数の市民生活の平和と静穏を守っていくためには、やはりこれらの行き過ぎた事態が各地に見られるのでありまして、そういうものを未然に防止するという処置が講ぜられることが望ましいことである、かように考えております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 おあげになった二、三の事例については、それはそれとしてまた議論のあるところでありましょうが、しかし、かりにそういうようなことがあったとしても、それと引きかえに、九千万国民の個人の自由と権利を引きかえにしなければならないほどの客観的な実態はないというのがわれわれの判断であります。そこで警職法のような重要な法案をめぐって、しかも圧倒的多数の人が反対であると判断をしてよいこの種の重要法案は、単に形式的に審議時間を少し余分にとればそれでよいという性質のものではないと思います。単に国会の議席だけで割り切っては私はいけないと思う。あらゆる問題が無差別に、単に国会の議席の数だけでものをいうというだけのことであるならば、そもそも勝負は最初からきまっております。極端なことを言うならば、われわれは議会で手当をもらってむだな論議をするだけだ、勝負は最初からきまっておる。しかし政府が多数の議席を持ちながらも、野党の言あるいは国民大衆の言に対して耳を傾けることか必要であるような問題については、ときには与党の多数の議席の多いということにこだわることなく、あるいは法案の処置について新しい角度から問題を検討するという立場がなかったならば、本来民主主義の多数政治というものは、一党の独裁を合理化する単なる手段に過ぎない。こういう極論すら私たちは言いたくなる。岸総理は強引に猪突猛進、その成立を期待しているようでありますが、そうしなければ、一たん提出をした以上、総理の政治的立場を云々されるということもお考えになっているかもしれない。あるいは面子をお考えになっているかもしれない。しかし私どもは、そういう総理の政治的立場よりも、日本の民主主義擁護という立場からいって、この法案の成立を断念されてはどうか。またそうすることの方が長い目で見て、岸総理の政治的生涯については知りませんけれども、人間的な生涯にとってはプラスになるし、むしろ好ましい歴史を築くことになりはしないかと考える。しかも目前に予想されるトラブルは、私はこれは非常な想像以上のものがあると思う。私たちは二、三日後に迫る目前のトラブルをひしひしと感じております。そういうことが予想される際に、しかもまたほうはいたる国民の今日の警職法反対の世論を見る際に、もちろん一部にはこの警職法の成立に賛成する方もあるでしょう。しかし有識者の圧倒的多数がこの成立を何とかして阻止しよう。政府に撤回してもらおう。そういうことを期待している今日、私は、岸総理が単なる一片の面子や政治的立場にこだわることなく、長い目で日本の民主主義を見、また人間的生涯の歴史の上からいっても、むしろこの法案の成立強行を断念されることの方が望ましいと考えますが、そういうお考えをお持ちになるかどうか、承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私どもがこの法案を提案し、その成立を期しているということは、決して私の面子であるとか、私の立場からの問題ではないことは言うをまちません。私は、先ほど来申しているような民主政治、民主主義を健全に育て上げるために社会的のルールが乱されていると私は感じており、それをルールを維持していくということが真の民主政治、民主主義を完成するゆえんであるという見地に立って本法案を提案をいたしております。私は決して野党や少数党の意見に対して、これは一切聞かない。無理やりにこれを成立を期するというふうな考えはございません。十分審議を尽して、その聞くべき建設的な議論に対しては私は十分に耳を傾けるという考えでございます。従ってそういう意味において、十分に国会を通じてわれわれが信じ、われわれが正しいと考え、われわれがこうしなければならないと考えていることを十分に論議を尽して、それに対する国民の批判というものが私は冷静に出てくることを期待しており、またそういう意味においてわれわれが審議を尽すことこそ国民の期待にこたえるゆえんである、こういう考えでおります。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 重ねて申しますが、トラブルがもうすでに目の前に迫っている。予想されている。しかも審議時間をとって十分審議をすればそれで事足りるという、もうそういう問題ではないのです。非常な困難な問題に直面している。こういう際には、しかも私が先ほど申し上げましたように、この法案が通らなければ今の日本がどうにもならないというようなことにはなりません。日本の国民はもっと健全な良識を持っている大局的に見て。だからそれをあえて強行しなければならないというところに、私は審議を通じとか、あるいは十分な了解を得てとかお話になりますけれども、やはり何といっても議席の多数にものをいわせる一党独裁のこれはやり方だ、こう言わざるを得ない。だからこれは何といいましても、重ねて私申し上げますが、この法案が通らなくても日本はどうにもなりはしません、若干のいざこざがあっても。むしろこれを強行することによって起こるこの事態の方が憂慮すべきものがある。だからもう一度良識をもって御検討願う余地はありませんか。重ねて承わります。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は先ほど来申しているように、現在の世相に現われているいろいろな事象というものが、民主主義の健全なる発達を阻害するものだ、これは未然にわれわれができるだけ防止しなければならん、こういう考えに立っております。従って、従来そういう点においてこれを抑止することについて欠けておったものを今回の改正において補うという考えでございまして、十分な御審議はお願いすることは当然でございますけれども、今羽生委員のお話のような、今これを思いとどまるとか、あるいはやめるとかいうふうな考え方は私は持っておりません。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 はなはだ残念なことであります。非常な私としては残念なことでありますが、しかしこれ以上申し上げてもしようがありませんから、次の問題に移ります。  次の問題は、さきに総理大臣は、ブラウン記者との会見において、憲法第九条今や廃棄のときと言ったとか言わぬとかいろいろ論議されておりますが、それは別として、言われたか言われないかは別として、あなたが第九条も含めての改正論者であることは一点の疑いもないわけであります。また総理がどういうお考えを持っておろうとももちろんそれは自由でありますが、そこでお尋ねしたいことは、憲法第九条の改正を必要とする客観的根拠であります。それから主観的に総理がこういうことがあるからというようなこともあるでしょうが、今日本が憲法第九条を含めて改正しなければならないと、あなたはそれを含めておるわけですが、そうしなければならない一体客観的な条件というものはどこにあるのか、これを承わりたい。どういう事情からどういうわけで第九条を特に検討の主目的にしなければならないのか、その客観的な事情について一つ総理の見解を承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は憲法改正論者だということは申し上げました。そうしてかつて自由党の憲法調査会の会長もいたしておったことはございます。それは憲法全体を私どもが再検討していろいろとこれに対する意見を持っておるわけでありまして、今羽生委員のお話のように、憲法九条を特にあげて、そして改正論を私は特にこれを特筆して述べて考えておるわけではございません。私の考えは言うまでもなく根本的に申しますというと、われわれがこの憲法制定の当時の事情と今日の事情というものにおいて一番大きな違いは、われわれが占領下から出て、真の独立を回復し、国民が自由な意思をもってわれわれの憲法を考える時期に来ておると、こういう意味において、そういう立場からこの憲法というものを再検討すべきだというのが私の根本の考えでございます。しこうして今お話のように、ただ憲法九条を取り上げて、これを改正しなければならない客観的事情があるから改正するというようなことを申しておるわけではございませんで、私自身がそれを従来から唱えておることは御承知の通りでございます。今日突如としてそういうことを申しておるわけではございませんので、私の従来からの主張を私は申しておったわけでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 この憲法というものが、私は永久にいつの世にも制定された憲法が永久に変えてならぬものだとは言いません。それはその国のそのときの情勢、時代の変化によって憲法改正することの必要がないとはだれも断言できない。そういう必要が起るときもありましょう。しかし制定後と事情が違うと言われましたが、今の日本で憲法を特に改正しなければならないというような私は客観的事情は乏しいと思う。特に第九条あることがむしろ日本の安全保障に非常な大きな役割を果しておるのだ。これは私があとから安保条約に触れてお尋ねする際に申し上げたいと思いますが、この保障が非常に強い保障なんです。だから今総理は特に第九条をあげてとは言わないとおっしゃいましたが、私どもの印象では、総理のこの憲法改正に関する一番強い希望というものはむしろ第九条に象徴されておるのではないかと思う。だからブラウン記者との対談でも、あるいは世間のだれでも、もし憲法改正というならば、それは参議院の全国区とか何とかいろいろあるでしょう、あるのですが、やはり根本的には第九条を問題にしておるということは疑いのない事実である。従って、もしかりに総理個人として、一体もし憲法九条を検討の中に含めるという場合にはどういう必要でお考えになるのか、これをもう一度詳しく説明していただきたいと思う。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私どもは憲法九条が独立国としての自衛権を否認しておるものだとは思っておりません。またこれが従って自衛の一つの力を持つということは当然憲法の九条も認めておることだと私どもは解釈をいたしております。しかるに世間ではそれは憲法違反である。今日の自衛隊というものは憲法違反であるという議論もございます。憲法の解釈でございますからいろいろな議論が出てくることも、これは法律のすべての問題がありますけれども、しかしながら今の国が自衛独立を守り他から侵略されない、また侵略が行われた場合にこれを排除するということは独立国の私は基本的な一つの権利であり、また態勢であると思う。それをわれわれが国民とし、国を組織しておる人々としてその自衛権に基いての一つの力を持つということは、祖国に対し、民族に対するわれわれのいわば大きな一つの勤めであるともいって差しつかえないと思う。そういう事柄た憲法違反であるかないかと、憲法に違反するものにあらず、憲法に違反するものなりというふうな議論を生ずるような余地のある規定は私は適当でないと、こういったことは明確にするように、将来規定されるときにおいてはすべきものであるというのが私の考えでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 憲法九条に規定されている自衛権の問題は、いずれの国でも固有の権利としての自衛権を持っていることは論を待たないと思います。しかし、そのつど今の憲法の拡大解釈を現にやっていることを合理化するためということと、今の日本のおかれている国際的地位の中で、こういう問題をどう取り扱うかということは全く別個の問題です。それを混同するところに非常な大きな問題が起る。しかしまあこの点は私は時間の関係がありますから、また機会を見て申し上げることにして、次の問題に移ります。  次の問題は、安保条約の問題であります。日米安全保障条約の改正については、すでに日米間の話し合いは相当進んでおるように思うのであります。しかもこれは私この前も外務委員会で申し上げましたように、一たん案ができてしまったあと、日米間の合意が成立して、現に条約として成立したあとにこれを国会で審議をすると申しましても、なかなかその既定事実を変えれるというようなことは困難であることは申し上げるまでもありません。従って現に今、日米間の話し合いの過程の中で問題のこの焦点を浮き彫りさして、そうして少くとも政府の外交折衝の許す最大の範囲内において、十分なる論議を尽さなければいけないと思います。そういう意味で、私はまず最初にこの日本の安全保障という一般的な問題からお尋ねして参りたいと思いますが、若干意見も含むことをお許しいただきたいと思います。政府の考え方は、一国の安全を保障する方法を武力に求めて、それが日本の場合においては憲法の制約やあるいは防衛力の関係で、日本単独の防衛はおぼつかないから、米国の共同防衛によって、これをカヴァーしよう。これが私は政府の考え方だろうと思う。抽象的にいって一国の防衛力が不十分な場合には、集団的防衛機構も一つの方法ではありましょう。しかしこれはいついかなる場合においても、無差別的に、無条件的に一般論議として論ぜられる問題ではないと思います。この場合われわれは幅広くその国のおかれたこの国際的諸条件、その環境、そういうものをしさいに検討をして、周到なる配慮のもとにこれを決定しなければいかないと思います。そういう意味で、日本のおかれた今日の国際的地位、客観的な諸条件のもとで、日米共同防衛体制が果して日本の安全に役立つかどうか、これを十分検討する必要がある。だから日米共同防衛体制がなければ、日本の安全は守れないのだということを前提条件にすれば、私の質問というものは非常に意味の少いものになる。私どもはむしろそうでなしに、日米共同防衛体制に入ることが日本の安全に役立つのかどうか、そのことが検討されなければいけないと思う。いわゆる戸締り論的俗論でこの問題をどれだけ論議したとしても問題の解決にはなりません。まず今日の国際情勢を見るときに、残念なことには世界が大きな意味で二つの陣営に分れておる。しかもその一方がアメリカであって、しかもそれが実は世界の緊張の一方の焦点にあるということでおります。政府はアメリカの防衛力に大きく依存をしようとしておるわけでありますが、アメリカの頭の中には日本だけがあるわけではありません。アメリカは世界の至るところに基地を持っておる。まだ多くの国々といろいろな条約を結んでおります。極東においても最も危険な要素を内在しておる韓国や台湾の蒋政権とも条約を結んでおる。だからこそ現行の安保条約においてもその第一条において、まず何よりも先に、全く何よりも先に極東の平和と安全のためとうたっている。日本の防衛というよりも先に極東の平和と安全が出てくる。そういう国際緊張の一方の焦点にあるアメリカと共同防衛条約を結ぶことは、日本の安全を保障するよりもむしろかえって安全をそこなう公算の方が多いということ、そういう意味で言うならば、われわれは日米共同防衛条約など結ばない方がかえって日本の安全に役立つと言える、こういう立場に立つのでありますが、まず、その基本的な問題について総理の御見解を承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 国際の情勢につきましては羽生委員もお認めになっているように、現在世界は東西の二つの勢力が相対立して、そうしてこの間に国際緊張がある。これを大きく緩和しなければいかぬ。それが世界に平和をもたらすゆえんであるという基本は言うまでもなく私どもそう思うのです。われわれがもちろん一国の安全を保障するということは、武力だけで保障は私はできないと思う。最も大きなものは外交である。平和外交の推進を——私どもが国連中心の平和外交を強く言っておりますのもそういうことであります。また国際の緊張を緩和するということが一番大きな、日本だけではなしにすべての国の安全保障の基礎になると思います。しかしながらそういう努力を一方においてすると同時に、各国が、今アメリカを中心としての自由陣営のいろいろな関係をお述べになりましたが、同時にソ連を中心としてのいろいろな条約関係や事実上の動きというものも、これはもう東西両陣営の対立からくる必然の何として行われております。そういう際において、やはり私はただ外交だけにたよっていればいいんだ、こういうことだけではないと思います。従ってやはりその国が独立を維持し、他から侵略をされないということを考えるためには、まずその国自体が独立国である以上は、自主的にそういう不当なことを防衛し、排除するという体制をとることは、私は当然考えなければならぬと思います。それが一国の力だけで足りない場合に、最もわれわれが平和において理想を同じくし、さらに国際の真の平和に対して意見を同じくすると考えている国と結んで共同の防衛をしなければならぬということは、私は国の安全をはかっていく上から言えば、やはりやらなければいかないことである、かように考えております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 それは一種のイデオロギー外交でありまして、われわれのとらざるところでありますが、そこでわれわれはいついかなる場合においても、永久に日本が安全であって、今総理の指摘された他国からの攻撃、これは絶対にない。そういう断定の上に立ってものを言っておるのではないのです。それはそういうことは絶無とは言えない。しかし予見し得る近い将来、少くともわれわれ見通し得る近い機会において何ら理由のない、たとえば日本が真珠湾攻撃を突如としてやったような、そういう攻撃が突如として起るであろうかどうかということになるならば……そういう私は客観的な条件は乏しいと思う。この自衛のための防衛力というのは、抽象的、一般的な事柄に属することでありますが、原理的、具体的には先にもちょっと述べましたような、幅広く国際的諸条件を検討して、そういう中であらゆる要素を含めてのこの防衛ということが考えられるべきでありましょう。その意味で言うならば、まずもって必要なことは、日本を取り巻くアジアの緊張をやわらげることであります。ところが、今日の政策は緊張緩和とは逆の方向に向っている。ここにまず問題があります。そこで残念なことにはまず政府がそういう緊張緩和とは逆の方向をとっているわけであります。たとえばアメリカが極東の平和と安全ということで、日本と何らかかわりのない他国と戦争状態になった場合、これは日本の基地からの米軍出動ともなるならば、これは好むと好まざるにかかわらず日本は戦争の渦中に巻き込まれる公算が多いわけであります。先にもちょっと触れましたが、私は日本に対する他国の攻撃は絶対にないとは言っておらないのであります。しかし近い将来に——われわれが予見し得る近い将来に限定してものを考えるならば、まずその公算は少かろう。他方米国が他国と戦争状態に入って、そのために日本の基地が使用された場合に起る危険の方が前者の場合よりもはるかに危険の度合いが多い。だからかれこれ比較した場合に、私どもは日米共同防衛体制に入ることの方が——理由なき突然の攻撃という危険よりも、より日米共同防衛体制に入ることの方の危険が多い。日本の安全を保障する度合いはかえって少い。そういう立場でものを考えざるを得ないのであります。そうであるとするならば、今総理もちょっと触れましたけれども、外交上のあらゆる手段と努力を通じて、日本を取り巻くアジアのこの緊張を緩和する、そういう努力こそがむしろ一番望ましい姿である。忌憚なく言えば、日本に対する差し迫ったこの攻撃的脅威はそれを実証する客観的な条件に乏しいということであります。危機が現実に存在しているのではなく、むしろ危機は製造されている。危機は製造された危機である。現実には存在しない。イデオロギー的にはそれぞれ異なる要素を持っているでありましょう。しかし差し迫った攻撃的脅威は現に存在しない。そういう客観的情勢に乏しい。その場合にも、なおかつ総理は日米共同防衛体制に入ることの方がより日本の安全を保障するに役立つとお考えになりますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は日本の国際的な大きなこの大勢について先ほど申し上げましたが、さらに日本を取り巻いているところのいろいろな国の諸情勢を分析してみますというと、私は決してこの今日の状況においてすぐ直接的侵略がどこからか行われるというふうなことを頭においているわけではないことは言うを待ちません。しかしながら日本の国を取り巻いている情勢、またいわゆる国際共産主義のいろいろな活動というものを考えますときにおいて、今後直接侵略、間接侵略というようなことは従来の考えのように簡単に考えるわけにはいかぬと思います。やはり国内における治安問題やその他の問題と関連して、常に民主主義の安全なる状態を国内に樹立し、そうしてさらに民主主義というものによる個人の自由が確保されるような平和な状態を作り上げるというためには、私は決して日本が今この防衛体制や、そういうものをおろそかにしていいという状況では絶対にないというのが私の考えの基礎でございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 間接侵略に関する問題はあとからお伺いいたしますが、そこで今私は前段的なこの前提条件的なことを申し上げたのでありますが、ここでまあ議論が分れてしまって、もう政府と同じ立場の上に立って論議をすることになると、これはまあなかなか妙なことになるのでありますが、しかしわれわれはその審議の権利を放棄するわけには参りませんから、若干立ち入ってお尋ねをしたいと思います。  今問題になっておるのは、この防衛地域の問題でありますが、この防衛地域の問題は私はきわめて重要だと思います。ところが先日来、岸総理は西太平洋はこの地域に含まないと衆議院で言明されておる、これは明白に言明されたようであります。それはそのまま信じてよろしいのですか、西太平洋は防衛地域には今度の協定の中では、条約の中では入れない、これは衆議院の御説明通り、そのまま受け取ってよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) もちろんまだアメリカとの交渉がそこまで具体化しておらない状況でありますが、私が申し述べたことは、この防衛地域というものをいろいろなふうに想像できる、またアメリカが他の国々と結んでおるものもございますから、そういうものから西太平洋全体をするというようなことも一つの考えとして出るところであるけれども、そういう考えはとらないということを申しておるわけでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 総理はとらないが、交渉の結果によってはへこむこともあるというのですか。あくまで最後まで貫き得る確信がおありになりますか、どうでありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) これは私はあくまでも交渉において私の考えを貫きたいと考えております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 そこでそれはそういうことを総理の言を信ずるとして、次に明確にしたい点は、相互防衛条約は集団的な自衛行動であって、その発動がこの日本の場合にあっては憲法違反になることは、これはもう言うまでもありません。この場合、沖縄、小笠原をその適用範囲に含めるかどうかということは論議の一つの対象のようでありますが、この潜在主権が日本にある限り、これは個別的自衛権に基くものであって合憲だ。個別的自衛権は合憲だという解釈を法制局あたりはとっておるようでありますが、現に施政権の及ばない地域であっても、そういう地域を含める場合でも合憲とお考えになるのか、この点をまず承わりたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) いろいろこの問題については憲法上の解釈の問題もございます。また国民のこれに対するいろいろな世論もございます。またそこの住民の人々の気持もございます。いろいろな点を考慮して、最後に沖縄と小笠原を含めるかいなかは決定すべきものであると考えております。憲法上の解釈としては、潜在主権のある地域にはやはりそこを防衛するということは、やはり現実にそれができるかできないかという問題は別として、理論としてはやはりその国の防衛権の範囲内に属しておるという解釈をすることが正しいだろうと考えております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 それは私の考えでは、この沖縄の領土権、施政権の返還は、防衛問題と切り離してこれは別個に考えなければいけない。これをからませると、国民大衆はよく事情がわかりませんから、それを含めてもらわなければ、領土が返ってこないのだ、潜在主権があるのだからそれは当然じゃないかという非常な通俗的な考え方に陥る、それを世論と言われると困るのです、われわれは。われわれはそれには全然別に領土権、施政権の返還は防衛問題と全然別個だ、そういう角度で検討すべきだと思いますが、政府はこの地域の問題について、観念上のそれと、この実質的な発動とを区別して、いわゆる使い分けを考えておると言われておりますが、具体的にはどういう形を考えておるのか、また一たん地域に含めた場合、実質的に問題が発生した場合に、そううまい使い分けができるのかどうかという問題であります。だから観念上の問題と実質的な発動との問題です。これをどういうふうに規定しようとするのか、事情の許す限り、政府の考え方というものを説明していただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 防衛、かりに義務があるとしてやる場合におきましても、それに対して直接に派兵するかしないか、あるいはその他の方法によってこれに協力をするというふうな、いろいろな具体的の私は態様があると思います。従いまして十分憲法との関係につきましても慎重に考慮してそういうことをきめていきたい、かように思っております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 今の問題と関連して、この相互防衛、共同防衛条約の性格であっても、日本は海外派兵しないのだから完全な双務協定ではないというふうに政府は言っておられると思う、しかし、そうであるとするならば、実質的に日本が双務的に負う義務の限界及び具体的な諸条件とは一体何であるのか、完全双務でないという場合の相互援助条約といいますか、共同防衛条約、それによって日本が負う具体的な双務的な義務、それは一体何であるか、それは何をさすのか、これを承わりたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) この交渉の前提となっておりますのは、言うまでもなく日本憲法の制約の範囲内ということを明確にいたしておりまして、その点については日米両国の間に完全に意見が一致しているのであります。従いまして、このできるだけ対等にし双務的にしていく立場を堅持するということを考えておりますが、具体的に負う内容として、それがアメリカ側が日本に対して負う義務と、われわれがアメリカ側に対して負う義務とが常に内容的にすべてが一致するということはこれは考えられないと思います。たとえばアメリカは、日本が侵されたという場合に派兵をする、日本がそれに応じたような海外の派兵ができないことは言うを待たないのでありますが、そういうことを考えているわけじゃございません。従ってアメリカの、日本を防衛する義務を負うということにおいて、それに対する日本側がいかなる義務を負うかという問題について一番考えられることは、基地を提出するという義務だろうと思います。いろいろな問題もございましょうが、そういうふうに必ず内容的に両者が一致し対等になるというものではない。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 そこで今の、もうちょっと前へ戻って恐縮ですが、沖縄と小笠原を地域に含むことが、憲法上の解釈は別として、政府としては好ましいと考えているのかどうなのか、その辺をもう少し明確にしていただきたい。われわれはそうすべきでないと考えておりますが、その辺をもう少し明確にしていただくことが一つと、もう一つは、基地の提供だけだというならば、現行の安保条約を新条約に切りかえようとするそもそものねらいは何であるのか、現行の条約を新条約に切りかえようというねらいは一体何であるのか、双務協定は完全双務とはならない、主として基地提供だということになるならば、何で新条約という形をとるのか、それと今の小笠原、沖縄はその適用の範囲に含むことは、憲法上の解釈でなく、政府としてはどうしようとする考えか、これを明白にしていただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) この安保条約の改定の問題については、言うまでもなく現在の安保条約というものがアメリカの一方的な形にできております。それは当時の実情からやむを得なかったと思いますが、たとえば日本を防衛する義務を条約上はっきり負っているということは条約の明文にはない、そういう点を明らかにしなければならないということは言うを待ちませんし、先ほどおあげになりましたいろいろ日本に駐留している兵力等の装備であるとか、配置であるとか、あるいは使用であるとかいうものに対しましても、事前に日本の意向を聞くというような建前になっておらないのであります。従ってある場合におきましては、いろいろそれから想像されて、日本が全然知らないうちに日本が危険にさらされるようなことになりはしないかというふうな懸念も出てくるのでありまして、そういう点においては、自主的な、対等の立場から、十分に事前の協議ができるようなことにすることも必要であろうと思います。  また、義務の内容につきましては、先ほど言ってるように、憲法の制約のもとでありますから、両方が必ず内容的に対等というわけにはいかないこともこれはやむを得ないと思いますが、私どもはそういう立場から、今度の新しい、この安保条約を改定して、新しい条約を結びたい、かように考えておるわけであります。  沖縄、小笠原を政府としてどう考えておるかという問題に関しましては、私はしばしばまだそこまでの交渉の段階になっておりませんし、国会を通じてのいろいろな御質問もございますし、論議もありますし、また世論としてもそういう問題に関して相当な関心をもって論議が行われておりまして、そういうことを十分に検討した上で慎重にきめたい、かように考えております。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 関連して。沖縄、小笠原を入れる方がいいか悪いかという政策論については、私も羽生委員と同様に、施政権返還と安保条約を関連せしめてはならない、施政権返還を一筋に実現すべきだ、こういう政策論をもっているのでありますが、その点についての、今お答えはないようです。もう一ぺん法律論に返るわけですが、非常に重大だと思うのは、総理も羽生君の御質問に対してお答えになってるように、またしばしは議会における答弁において言われたように、アメリカと他の太平洋関係の諸国との条約によれば、相互防衛条約にいたしますると、太平洋あるいは西太平洋、こういう相当広い地域におけるアメリカの領土その他の地域に対して、アメリカと結ぶ国の共同防衛の義務がはっきり条約に規定されているわけです。しかしそれは、日本の場合に、いかに相互防衛条約の形をとっても、そういうことをすれば、日本の防衛分担区域が憲法違反で、海外派兵はできないという制約からそれはしたくない。つまり西太平洋に日本の防衛区域を広げることには総理はこれは反対である。その趣旨は貫く、こういうふうに承わった。これは当然いかなる保守党の憲法解釈によってもそこまで言い切れないことは、現憲法のもとにおいては当然だと思う。そこで問題になるのが沖縄、小笠原ということになると思う。その沖縄、小笠原を、アメリカは西太平洋まではあきらめた場合に、沖縄、小笠原は、一面においてはアメリカの完全なる三権下にあるわけです。この点は、日本としては非常に不愉快であるけれども、アメリカと台湾との条約、アメリカと韓国との条約、アメリカとフィリピンとの条約においても、はっきりとこれはアメリカの領土並みに取扱ってるわけです。そこでこの沖縄を日本の共同防衛区域に入れれば日本としては施政権が観念的にあるから、日本の領土だから入れたんだという一つの言いわけがたつ。アメリカとしては、アメリカの、実質的なアメリカの領土に、しかも日本地域以外の海外の領土に日本の防衛区域を広げることができる、こういう結果になるわけです。だから、もしかりにこの条約において日本の防衛区域を小笠原、沖縄に及ぶと書いた場合には、これは日本の領土として相互防衛するということに解釈するのが、アメリカの現実の領土に日本の共同防衛の義務を延ばしたと解釈するのが、その点に何らのごまかしがあってはならない。妥協の所産で西太平洋までは日本の防衛の区域を延ばさない。しかし小笠原、沖縄は潜在主権があるから、ここまでは延ばしなさいといって、そこで妥協ができた場合、一体日本の防衛分担の責任は日本の自衛権、いわゆる羽生君の言われた個別的自衛権といいますか、本来の日本の領土だからそこにいくのか、アメリカの現実の領土区域に日本の防衛区域を延ばしたのかということによって、一体憲法の範囲内か範囲外かという非常に大事な問題になる。その点をはっきりやらないと、そこをあいまいに妥協の所産でいつの間にか小笠原、沖縄を共同防衛区域に入れるということは非常に大きな危険があるということをわれわれは考えるわけです。ですから、もし相互防衛条約を作って、しかも日本の防衛区域に小笠原、沖縄を入れた場合には、それは一体潜在主権の日本の領土だから入れたのか、アメリカの領土並みとして入れたのか、どっちに解釈するのかということは明らかにしておかなければならぬと思うのであります。その点の法律解釈をはっきりしていただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私はやはりその点は日本がそこに潜在主権を持っておるということを明らかに前提として考えるべきである、かように思っております。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 それでは僕の要求しておるお答えにならないのです。潜在主権を持っておるからというので入れたということではなくて、入れた結果は日本の領土並みにそこに日本が防衛力を出動した場合、日本の領土であるからこれは合法的であると見るのか、外国の現実の領有権のもとにある、行政、司法、立法の三権はアメリカにあるのですから、共同防衛区域に入れたから施政権だけその部分に入ってきた、そんなごまかしの論議は成り立たない。だから共同防衛区域に入れたけれども、事実上は外国領土なんだと、こう解釈するのか、その点明らかにしていただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は先ほどお答えしたように、われわれがそこに潜在主権を持っておるという立場からものを考えていきたい。入れた場合を——入れるとか入れないとかいうことを決定したわけではございませんけれども、入れた場合を前提として言うならば、われわれが潜在主権を持っておる地域、こういう点にわれわれは主眼を置いて考えるべきであると思います。なお憲法の解釈につきましては法制局長官から補足させます。

林修三法制局長官

○政府委員(林修三君) ただいま総理が仰せられました通り、この問題についての政策論は別として、法律論としてお答えいたしますれば、わが国といたしましてはいわゆる潜在主権を持っておる。潜在主権を持っておるということは領土権があるということだと私たちは思っております。実際の施政権は現在ございませんけれども領土権はある。領土権があるということは自衛権の抽象的な観念的な自衛権の範囲内である、かように考えます。従いまして日本としての立場は、ここを防衛するということが入ってくれば、それはまさに個別的自衛権の行使という考え方に立つべきものだと、かように考えます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 今の問題は曾祢委員の御質問に関連してですが、今の問題は非常に重大で、これは何らの行政上の、立法、司法、行政とすべての実体の現に存在しないところ、そういうところに実質上のこの防衛地域を拡大していくということは、私はどうしても納得ができない。これは当然防衛問題と切り離して、領土権の返還、施政権の返還等を要求すべきものだと思うが、これは前提条件としてやるべきだと思う。  それから次の問題は、この海外派兵等は何ら双務的な拘束を受けない。そうであるとすれば、一種のこれは基地貸与協定であります。基地貸与、それ以外には海外派兵等何にも特別な双務的な義務を負わないということになれば、これはまた一種の基地貸与協定のようなものだ。それをどうして相互防衛協定とお呼びになるのか。これは非常に問題があると思いますが、それと、もう一つ次の問題は、先日外務委員会でも曾祢委員をはじめ委員からお尋ねがありましたが、米軍の使用、配備のこの事前協議の問題であります。先日の総理のお答えでは、日本側がこの事前協議で異議ある場合には相手方を拘束し、制約するような配慮をするという答弁をされた。そうしてそれは貫くつもりだとお答えになった。それは間違いありませんか。日本が事前協議の場合、合意をしない場合には相手側のアメリカを拘束し、制約するような何らかの規定をする。それは可能でありますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私どもが事前協議をするようにしなければならぬということを言っておるのは、ただ形式的に通告したとか、あるいはどちらに持っていってそういうことを形式的に協議したというのではなくして、実質的の意味を持たなければ意味をなさないことであります、従って、われわれが協議を受けて、日本としてそれに反対であるということが明確な場合においては、それを押し切ってアメリカ側がすることのできないようにするのが私は当然である、かように思っております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 それはもう当然そうあるべきだと思います。しかし、実際には日本政府の今日までの対米協力態勢から考えると、協議をしても合意の公算の方が私は多いと思う。拒否するのかどうか。実際拒否しなければならない重大問題が起っても、むしろ合意をして、しかも実際には条約上事前協議ということがあるから協議をやったという一種の体裁は整えるが、しかし、実質にはこれに明示の許諾を与えるような形になってしまう。だから非常にそういう意味では日本の政府の一体基本的考え方はどこにあるかということで、合意の場合、合意しない場合の力の関係が非常に違ってくると思いますが、かりにこれは総理でなくても、法制局関係でもよろしいのですが、日本が拒否する場合ということが想定されますか。どういうときに拒否する。たとえば具体的なケースでこういう場合があるということを、ちょっと立ち入ったことでありますが、これを一つ承わりたい。つまり具体的に協議をする場合、これはどういう内容を含むのか、どういう場合が予想されるのか、拒否する場合には。それを一つ法律的に……。

林修三法制局長官

○政府委員(林修三君) これは結局法律問題というより実際問題になると思うのであります。これは協議をすべき事項の内容のきめ方いかん、あるいは協議の仕方のいかんにかかってくるわけです。結局、協議をする以上は、これは当然に、事前に一方がその協議に応じないということは当然予想される事態があるということを前提とすることだと思います。いかなる場合に協議に応ずるか、応じないかということは、これは結局法律問題ではありませんで、実際の政策問題だというふうに私たちは考えます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 しかし、これは私は非常に重大な問題だと思うのです。特に、この事前協議の場合に、一説によりますと、外務大臣またはその代理者がこれに当るといっておられます。しかし、もし日本に関係のない他国とアメリカが戦争状態に入って、何らかのいろいろの軍の移動あるいは配備その他重要な問題が協議される場合に、一体日本はどういうところでこれを協議しようというのか、これは説でありますから、私は必ずしも確定的に言えませんが、外務大臣または代理者が協議をするということが一部に伝えられておる。だからこの事前協議のことは非常に私は重大だと思う。この拘束、今総理は相手を拘束する場合があると言われましたが、それは明示したいと言っている、これは当然だろうと思います。しかしその場合には、一体外務大臣あるいは代理者どころではないです。総理大臣はおろか国会の承認すら必要とする事態がないとは保証できない。そういうことは起りませんか。全然そんなことは、単なる手続上の簡単な協議で大した意味はないのだという判断の上に立っている事前協議なんですか。単なる一種のビジネスみたいな形で問題をお考えになっているのですか。その辺を明確にしていただきたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) 安保条約の改定にあたりまして、いろいろな問題についてアメリカと対等の立場で協議をする、協議をすれば当然否定的なものもありますから、否定的な問題についてはただいま総理が答弁された通りだと思うのであります。じゃ、どういうふうにして協議をするかということでありますが、これはむろん条約をこれから作って参りますことでありますから、一々の場合は申し上げかねると思いますが、しかし当然重大な問題については、日本政府を代表して、そうして外務大臣がおそらく当ることになろうと思います。あるいは他の閣僚が当る場合があるかもしれませんが、主としてこういう問題については内閣を代表して、外務大臣個人ではなく、内閣を代表して外務大臣が当ることになろうと思います。当ります場合には、むろん問題によりまして世論に聞くこともあり、内閣の決定によってそういう方針をきめていくということになることはこれは当然だと思います。(「間に合わないだろう」と呼ぶ者あり)

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 今、間に合わないだろうというお話も裏の方でありましたが、実質的にそういうことが起ると思います。それはそれとして、非常な日本の安危にかかわるような重大な問題が協議の対象になったときには、政府だけがおやりになるのか、あるいは国会の承認を求めるような事態が起らないのか、それほどの重大なことは協議の中には入らないのだ、単なる手続上の事務的な問題だとお考えになっているのか、あるいはその協議の中に非常に重大なことが含まれることはないか、その辺はどういうふうにごらんになっていますか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん協議をいろいろな場合にすることになりますので、ある程度事務的なような問題の場合もあろうと思います。しかしながら、政治的な問題のような点につきましては、むろん内閣の決定によってやるわけでありまして、それらの問題については、政府が世論を聞く場合もありましょうし、いろいろ政治的問題として考えて参ると思っております。

岡田宗司日本社会党

○岡田宗司君 関連して。ただいま藤山外務大臣のお答えですと、重大な問題の場合ということを言われたのですが、私どももその事務的なようなことの協議の問題ではなくて、重大な問題の協議が問題だと思うのです。そこで、政府でもって想定される協議を要するような重大な場合というのは、どういうことなのか、その重大な場合についてあなたの方から、こういう場合が重大なんであるということの列挙を一つしていただきたいと思います。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん条約の交渉をこれからやることでありますから、一々どういう場合が重大であるかということは今申し上げかねると思います。しかしながら、政府として考えまして、戦争状態に入るというような大きな問題については、当然政府が問題を決定して、そうしてそれにだれが当るかといえば、おそらく外務大臣が当ることになろうかと思います。

佐多忠隆日本社会党

○佐多忠隆君 関連。どうもそこのところは、はっきりわからないのですが、総理は事前協議することは当然なことで、それはあくまでも貫くのだということを簡単に言っておられますが、総理にお尋ねをしますが、アメリカと強い同盟関係を結んでいるNATO諸国との間においてすら、そういう軍の配備、使用、移動等についての協議事項はないと私は考えますが、そういうところにすらないのに、日本とアメリカとの間においては可能だというふうにお考えになるかどうかということが第一点。  それから、従ってまた、アメリカ側ではしばしば軍当局その他も言っておりますが、緊急事態の際に事実上アメリカ軍の出動を不可能にするような、そういう事前協議には絶対に応じられないということは、向う——軍当局はしばしば主張をしておる、そういうことも御承知の上で今のようなことを言われるのであるかどうか、その点を明瞭にしていただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) この問題はもちろん、まだ具体的に交渉の段階にそういう点まで入っておりませんから、私どもの希望的な考え方を相当含んでいることは事実でございます。しかし、私どもは、日米の間におけるところの関係を考えて、そうして、相互にお互いを尊重し合って、そうして共同防衛の実をあげて安全をはかっていくという立場に立って考えるというと、できるだけこういう問題に関して率直に、協議ができる範囲内においては協議をして、日本側の意向というものを尊重してやっていくということが望ましいことである。また、そうなければならぬと思うゆえに今のようなことを申しております。しかし、まだ具体的に交渉に入っておりませんから、いよいよ具体的にどういう場合にはどうする、こういう場合にはこうするというふうな点に関しましては、なお向う側の意向も確かめてみなきゃならぬと思います。しかし、いずれにしても、そういう方向で交渉したいというのが私どもの考え方でございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 今の場合は、今の佐多君の関連質問に対するお答えでいくと、まだ相手側とよく協議しておらないからということですが、私の言うことはそうじゃないんです。日本側の態度です。これはアメリカ側と協議をする問題じゃない。非常に重大な問題が起った場合、その場合に日本側としては一体、単に責任者が協議をしたという体裁だけを整えればいいのか、問題の重要性によっては、場合によっては国会の承認を求めるようなことまで考えなければならない、そういうことはお考えにならぬか、どんなことでも政府の事務的な処理としてお片づけになるのか、その問題です。これはアメリカと協議する問題ではありません。日本の政府の心がまえです。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 原則としては、私は、条約の施行上の問題は時の行政府にまかされておることだと思います。しかし、言うまでもなく、自衛隊等の防衛出動というようなことになれば、これは国会の承認を得なければならない事項でございますから、それらのことはもちろん国会の承認を得るという考え方でおります。ただ、条約そのものの施行の範囲内は私は行政府に一応まかされておることだと、かように考えます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 新条約が結ばれる場合には、当然私は政府が日本の——各国の憲法の定めるところによるということで、日本の憲法上の制約を明記されると思うが、しかし私は、憲法第九条が実際には拡大解釈によって空文化されておる現実にかんがみて、むしろ、憲法の定めるところに、なんてことでなしに、明白に海外派兵の禁止とか、あるいは核兵器の持ち込み禁止を条約上明文化すべきではないか。憲法に規定があるからそれでいいと言いますが、憲法は拡大解釈やるんです。だから非常に危険だと思う。だから私は、海外派兵の禁止、核兵器持ち込み禁止、この二つは条約上明文化すべきだと考えますが、そのお考えはありませんか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 前提として、憲法の範囲内ということは、私ども強く主張しておるところであります。今、条約文に海外派兵をしないとか、あるいは核兵器の持ち込みを禁止するというようなことを条約に明定したらどうだという御意見でありますが、私どもの考えでは、憲法の制約ということは明確に条約にすべきであるけれども、そういう具体的なことまで条約に書くか書かないかにつきましては、私どもはこれは考えておりません。しかし、そういう問題についてのわれわれの方針というものは明確に十分すべきものであると、かように考えております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 まあ、時間の関係もありますから、だんだん次に移っていきますが、政府の最近の外交方針を見ておりますと、これはもうだれからも言われますように、全くこれはダレス外交に対する追随です。きょう、アメリカは中間選挙が行われますが、大体、だれが見ても民主党の圧倒的な勝利が予想されておる。もちろん私どもはアメリカのような国でありますから、一種の両党外交、超党派外交を建前とするアメリカにおいて地すべり的な外交政策上の変化があるとは考えておりません。しかし徐々に相当な変化が私は予想されると思う。しかもアメリカの中ですらダレス外交の批判はかなりきびしくなっておる、そういうときに、依然として今のような政府の態度をとっておっていいのかどうか。私はむしろ政府が幅広く世界のこの国際情勢を見、あるいはアメリカの国内の動きを見て、もちろんある程度の検討はされておると思いますが、何としても一種のイデオロギー外交のにおいがあまり強過ぎますから、客観的な分析よりもお好みの方が先行してしまう、そうでなしに今のこういうアメリカの動きを見て、しかも世界の世論を見て、私は政府が幅広く、国際情勢のもとでアジアの緊張をどうやったら緩和できるかというところに外交の主眼点を置くべきだと思う。だからそういう立場で、むしろ国際情勢に追随して、国際情勢待ちということでなしに、国際情勢をみずから、しかも日本を取り巻くアジアの緊張緩和という立場に立ってそれを進めていかなければならないと思うのです。ところが今やっておる政策は皆これに逆行しておる。むしろ二、三年の後になればきびしく批判を受けるようなことを——これは意見が違うでしょうが、政府はそんなことはないとお考えになるかもしれぬが、私どもから言うならばそういうことが予見されるんです。だから、そういう際に安保条約の改正なんかを特に非常な危険な形で、共同防衛ということで、国民大衆は日本の安全を守ってもらうのが何が悪いかという安易な戸締り論的立場でものを考えているかもしれませんが、そういう面にむしろ政府が焦点を合せるような形で問題の本質を隠蔽しながら、最近急速に安保条約の改正といいますか、むしろ改悪、しかも共同防衛体制、相互援助体制に入っていくことは、和は非常に危険だと思う。しかし、これは政府としては早急におやりになるんですか、そういうことは国際情勢の中に幅広く、もっといろいろな角度から慎重に検討して——それはアメリカと、藤山さんがこの間アメリカに行って、この問題に手をつけ始めたんですから、そう待ったというわけにもいかないでしょうが、そこはほんとうに踏み切って、日本の将来を十分考えながら、誤まりのないほんとうに安全を保障できるような形でのみ問題を考えるべきであろうと思うのです。早急な拙速対策は断じてとるべきではない。これは安保条約に関する一番最後の——まだほかにありますけれども、質問としてお伺いいたします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) お話の通り、われわれもこの問題を拙速に考えておるわけではございません。また国際情勢等につきましても、われわれはわれわれの見地からいろいろと分析をして判断をして、日本の安全の確保のためにどういう方法がいいかという見解の上に立ってのことでございます。しかし、議論のある点は十分に議論を尽すべきであり、慎重にこれを扱っていくことは当然のことであると考えております。

岡田宗司日本社会党

○岡田宗司君 総理にお伺いいたしますが、現在の日米安全保障条約において、日本はいかなる軍事的な義務を負うておるか。総理は過日どこかでのお答えでは、軍事基地の提供がそれであるというふうにいわれておると私は記憶しておるのですが、軍事基地の提供だけでございますか、それ以外のことがあるのか、まずその点についてお伺いしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 条約上の義務としては基地を貸与する、提供するという義務と、これを他の方へ貸与しないという不貸与の義務、条約上の義務としてはそうだろうと思います。

岡田宗司日本社会党

○岡田宗司君 そういたしますと、今度日米安全保障条約が改定されて参りますというと、先ほどからの御議論で、たとえば自衛隊の出動範囲ということが問題になっています。もしこれを沖縄まで、あるいは小笠原まで範囲に含めて、それが自衛隊の出動範囲となるというと、今日の自衛隊はまあ潜在主権のあるところまでは及んでおらぬのでありますが、そういうふうに範囲が広まって参りますというと、日本の軍事義務はそこまで拡大されることになる、つまり現在の日米安全保障条約より改定された安全保障条約は軍事義務の増大ということになると思うのですが、政府はそれを増大と考えておられるかどうか、その点をお伺いしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 法律上の問題としては、私は沖縄及び小笠原に対しては潜在主権は持っておるという意味において、先ほど来いろいろ論議をいたしております新しい義務がふえたという私は考え方には立っておりません。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 岡田さん、なるべく一つ簡単に……。

岡田宗司日本社会党

○岡田宗司君 それは非常におかしいと思うので、今は軍事的義務としては軍事基地を貸与するということと、他の国に軍事基地を貸さないというような、あるいは他の国の軍隊を日本に駐留させないというようなことだと思うのでありますが、それ以外に今いったようなことで、日本がアメリカと今度は相互防衛条約的なものを結んで、そしてアメリカの軍事基地のあるところ、日本がなるほど潜在主権はあるかもしれぬけれども、アメリカの軍事基地まで日本の自衛隊が行ってこれを防衛するということになると、これは軍事義務の増大じゃありませんか、だから私は今度の安全保障条約の改定は、必ず軍事義務の増大になると、こう考えるのでありますが、それでも軍事基地は増大しない、アメリカの軍事基地を共同で防衛するようになって、それでも軍事義務は増大しないとお考えになるのかどうか。——アメリカの軍事基地を防衛することになるじゃないですか、それで軍事基地が増大しないなんてどこから出てくる……。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私が先ほど来お答え申し上げておるように、われわれはこの潜在主権を持っておるところにおいては防衛する権利と義務を持っておるという法律解釈に立っておるわけでございます。従って新たなこれによって義務を私は追加するものではないと思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 今の問題は先日外務委員会で曾祢委員、岡田委員等からお尋ねした問題で、これは非常に広範な意味を含んでおりますので、この問題も私お尋ねしたい点がありますが、これは外務委員会の際にお尋ねさせていただきます。  最後に、これに関連して一点伺いたいことは、かりにこの条約ができた場合には、防衛分担金はどういうことになるのですか。取扱いです、防衛分担金の。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) これはまあそういう点までまだ……もちろん交渉の問題でございますが、私はやはりそういう問題は今度できる新しい条約の意義からいうというと、そういうものを負担することのないようにしたいと思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 外務省と大蔵省で若干意見が違うというようなことも聞いておりますが、これはもし相互防衛条約というようなことになって基地を貸してやって、しかもその危険まで日本がしょわなければならぬというようなことをやって、その上で分担金を払うなんて、これはよほどどうかしておると思う。そんなものはとんでもない話だと思うのですが、それはそれで、その通りにしてもらいたいと思います。  大体これで、この警職法並びに安保条約等に関する大体の主要な点だけお尋ねしたわけでございますが、最後に、時間の関係がありますので、経済の問題だけ、一点だけ総理あるいは大蔵大臣になりますか、お尋ねしたいことは、最近の日本経済の国際収支における黒字が相当増加してきたことは当然であります。しかしこの黒字は輸出の増加によってもたらされたるものではないので、これは輸入の減少でできたことも指摘するまでもないのであります。私はこの三月、この予算委員会で本年度の国際収支は黒字基調で、年間約四億ドル程度の黒字が見込まれるのではないかということを申し上げたのでありますが、今の想像ではあるいは五億ドルくらいになるかもしれない、完全なこれは黒字基調であります。しかもこの黒字は経済の縮小均衡の中での黒字であります。よく豊富の中の貧困ということがいわれますが、今の日本のこの国際収支における黒字はまさに経済の縮小均衡の中における黒字である。だからわれわれは一国経済の安定的な条件の場合、その条件としてある程度当然外貨保有あるいは国際均衡が相当大きなウエートを持った条件であるということは認めております。それを前提として私どもはものを言っておる。しかしそういう前提条件で考えた場合でも、日本経済が今日国際均衡第一主義でありはしないか、そういう疑問を感ぜざるを得ない。この政府の日本経済並びに国際経済についての楽観論は、これはまあ先日来私ども承わっておるわけでありますが、しかし実際には失業者は相当なものであります。また先月の不渡り手形は戦後第二回目の高記録を示している、あるいはまた製造工業の設備の実働力は現在六五%程度だといわれておる。しかも先年来の無計画的なこの設備投資あるいは思惑輸入が一服状態になったことは、これはもう言うまでもないことでありますが、しかしそれでも今日までに行われたこの設備投資がだんだん動き出す、そうなれば過剰生産の様相というものは一そう濃くなると私は思う。政府は生産調整の過程で、しかもかなりスムーズに進んでおる、こういうふうにいわれておりますが、しかし実際にはその生産調整は抵抗の弱い部分にしわ寄せられて、操短による失業あるいは賃金のストップ、あるいは賃金カット、そういう問題で非常に多くの人たちが困難をしておる。そういう局面において、しかもなお国際収支が黒字基調である今日に、依然として長い目で見た日本経済の成長という従来のお考えを一歩も出ないのかどうか、そういう立場で進まれるのかどうか。特に新しい年度の予算編成を間近に控えまして、私は予算のこの各省別の内容についてなんか伺うわけじゃありません。来年度予算編成と関連をして、日本経済をどのように見通されておるのか、依然として今のような形でいくとお考えになるのか、アメリカの景気動向もよくなるから、まあ自然日本もそうなるだろうというお話でありましたが、しかしまあ実質上このアメリカの経済についても確かに表面上好転のことは伝えられておりますけれども、私は実際的には非常に問題が多いと思う。しかも日本の現状は今申し上げましたように、この黒字は輸出の増加から出ておるわけではない、輸入の減退からきておる、むしろ縮小均衡である、こういう場合でも依然としてこの外貨第一主義、国際均衡第一主義で、明年度のこの予算編成と関連をする経済の一般的な政策をお考えになっておるのか。特にこの機会に、経済見通しと関連をして一つ方針を伺っておきたいと思います。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。今までたびたびお答えいたしたように、また政府の意見を発表いたしておりますように、今日の経済の段階は調整の段階だということを申して参りました。この点は、ただいまのお尋ねのうちにも指摘されたのでございまして、この調整が縮小均衡ではないかという御意見であったと思います。私はこの調整の過程という言葉のうちに、同時に経済の質の問題がある。いわゆる健全性、あるいは強度といいますか、その質が変りつつあるというこの点は、見のがしていただいては困るのであります。私は別に外貨第一主義というような考え方は持っておりません。輸出が非常に伸びた、また輸入が減った、むしろ今日の黒字は輸入の減だろうと、こういう御指摘でもございますが、一面、輸出は非常にふえておる。しかも数量的にこれが伸びておることも見のがすことができないのであります。通産省などの見方では、国際物価が一割程度安くなった、そういうことを考えてみると、総額としての減はあるが、同時に数量的には相当伸びておるということを指摘いたしております。私は今後輸入が、経済の将来の発展の動向から見ますと、今日のように、輸入と輸出が非常な開きがあるとは思いません。今日のような多額の黒字が毎年続いていくとは思わないのであります。もちろん輸入の数量もふえていくだろうと思います。問題は、消費の面における経済の活動もさることですが、資本財の面における経済の活動に特に重点を置くべきではないかと思うのであります。輸出の面におきましても、わが国の経済は消費財の輸出がなかなか伸びない。そういう面で、消費財を担当する経済部門でいろいろ困難な情勢が起きておる。これはひとり日本ばかりではない。どこの国でも同じような貿易の問題に当面しておりまするが、非常に経済の堅実なあり方といいますか、経済の強さというものを感じた場合には、必ずその国の経済で資本財の面においての生産も向上し、また資本財の輸出ということも非常に強く出て参るのでございます。私どもは今日の経済はまず調整の段階を一応終ったように思う。同時に、この調整の過程において、ひとり在庫調整をするとか、あるいは生産、滞貨をいかに処理したとかいうようなことでなしに、この調整の期間を通じて経済の質を向上さしておる。同時にそれを強めてきている、このことこそが将来の経済の発展の基盤、それが強化されたという、こういうことに実は感じておるのであります。幸いにいたしまして協力を得、黒字基調を続けて参りました。ただいま御指摘になりましたように、上期だけで二億五千万ドルほどと申しておりますが、下期の状況を見ましても、四億ドル前後になるのじゃないか、かように考えて参りますと、外貨保有は相当多額に上る。同時に、経済の調整もでき、質も改善される、かような状況になって参りますと、来年度の経済のあり方並びに予算等におきましても、いわゆる経済基盤強化の方向に対しましての、消費もある程度刺激を与えることになりましょうし、また生産の面におきましても、ただいま申したような資本の面においての強度も増していく、こういうことをいたしたい、実はかように考えている次第でございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 実はもっと来年度予算については、日本のとり来たった政府の一年間の経済政策を振り返って検討してみて、その上で今日の外貨事情のあるいは生産調整の進行の過程を見て、来年はこういう政策をとりたいのだという、もっと積極的な御発言を希望したのでありますが、これはあと予算委員の方で十分時間をとってやっていただくとしまして、そこで経済基盤強化基金はどう使われるのでありますか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 今回の補正予算では使わないことは、もうすでに御承知の通り、案を提案いたしております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 年度内には。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 年度内には使わない考え方であります。来年度予算編成の際に、この経済基盤強化資金なども十分その使い方を考えて参りたいと思います。ただ、まだ予算の各省からの数字をとりまとめている最中でございます。また、選挙後の予算編成でもありますので、公約事項等も多分に持っております。そういう意味で、なかなか来年度予算編成におきましては、私どもは取り上げる問題としても幾つもございますし、また、昨年来の経済状況から見まして、来年度の歳入の面にも、非常な、不安とは申しませんが、今まで予想されるような多額な自然増なりあるいは剰余金なりというものを計上することができない現状でございますので、もう少し時間をかけていただいて、まず歳入源を見た上で来年度予算を一つ組みたい、かように考えている次第でございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 実はこの経済基盤強化基金の問題については、この三月、この予算委員会で、私が当時の一萬田大蔵大臣に質問した際に、本年度中、できればまず第一番に道路に使いたい、こういうお話もあったのであります。そこで私はこの莫大な経済基盤強化基金というような金が、全然使われずに来年度に持ち越すわけですね。これは一種の隠し金といいますか、含み金といいますか、こういうことを平気でやって財政法違反になりませんか、財政法違反でないにしても、予算編成の技術上どうかと思います。何百億という金をちゃんと予算に計上して、たな上げしておいて、これはちょっと都合が悪いから来年度に繰り越します。そんな予算技術というものは私はないと思う。しかも前に一萬田大蔵大臣がこの予算委員会で私に明白に答えて、当面の経済の手直しとか経済刺激政策というようなことはやらないけれども、しかし、道路等については重点的に配慮をしたいと、ちゃんと速記録に載っております。答えております。まるで簡単にそれは来年度で一つ考えさしていただくというような、そういう予算編成方針といいますか、技術というものは私は非常に残念だと思いますが、それでよろしいのですか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) いわゆるたな上げ資金を作りました際に、ただいま御披露になりましたように、特に景気に対しても刺激的な使い方はしない、こういうことを実は申しておって、いわゆる二百二十一億五千万円がたな上げ資金になっているわけでございます。今日までのところ政府といたしましてはこれを使う考え方は持っておらないということを先ほど来申している次第であります。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 もう一つ最後に、先日アメリカ側からガリオア、イロアの返済について大蔵大臣にお話があったそうでありますが、実は私は非常に奇怪に感じたことは、こういう安保条約なんかが問題になっている際に、唐突としてガリオア、イロアの返済を求めてきたということは、なかなか私はちょっと政治的過ぎるということを考えるのでありますが、どういうお話をしたのか、また、政府としてはどういう考えを持って臨まれるのか、これは私数年前に、この問題はなくなられた緒方さんが副総理のときに、本会議でかなり詳細に数字をあげて御質問したことがあります。しかし率直にいって、こんなことをこっちからつつき出して、やぶをつついてへびを出すような必要もなかろうと思って社会党としては黙っておったのであります。しかし向うから公然とそういうお話があったのでありますから、この際そのガリオア、イロア返済についての政府の見解を承っておきたいと思います。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) この問題は数年前にアメリカ側から日本政府に対して申し入れがあったのでございます。しかし、その後当方といたしましても、いわゆる賠償協定を進めていたりいたしますので、いわゆる日本の支払い計画も十分立たないだろう、だからもう少しこのガリオア、イロアの処置についてはその時期を一応の計画が立つまで交渉を延ばして参っているのでございます。従いまして、最近におきましても、まだ具体的に交渉は持っておらないのでございます。しかしながら、アメリカ側は私ども会いますと、その問題は忘れていないだろうという意味でしょう、きわめて簡単な話としてガリオア、イロアの問題のあることを指摘いたしておるのでございます。私過日インドへ参りました際に、アンダーソン財務長官に会いました際にも、そういうような話がありましたので、この問題は賠償協定も全部済んでいない状況だし、まだ支払いの計画もなかなか立ちにくい。それが終了した後にその交渉すべきものは交渉したい、こういうことを申しただけであります。それにより以上具体的には一切進んでおりません。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 質問はこれで終りますが、最後に岸総理に、先ほど来申し上げますように、この警職法の問題は非常に重大なことも予想されておりますので、どうか政府も立場がおありになるでしょうが、よく考えていただいて、私は問題のほんとうに望ましい解決を心から期待をいたします。また安保条約等の改正についても、どうか日本の将来の安全ということを、ほんとうに、十分大局的な見地からしさいに検討されて、誤まりのない方策をとられることを衷心より希望しまして私の質問を終ります。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 午後は二時から再会することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二分休憩    —————・—————    午後二時二十六分開会

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続いて質疑を続行いたします。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 まず第一に、警職法の改正の問題につきまして、総理にお伺い申し上げたいと存じますが、現在御承知の通り、警職法の改正の問題については、全国的に非常にいろいろな論議があるようでありますが、これもいろいろな事情で突然出されましたので一応国民はびっくりした格好になっておると思います。しかし、今日の情勢におきましては、一部の政治的反対者以外の大部分の国民は、冷静になるに従って順次、また国会におけるいろいろな地方行政委員会等における審議の詳細が、新聞紙にも詳細に発表されるに従いまして、法案の内容というものがはっきりしてきた、そのために、非常に国民もこれに対してわかってきたというふうに存じております。政治というものは、すべからく知らしめる政治でなくちゃいけない。話せばこういう問題はわかることだと思っております。これだけの大きな反響を呼んでおる警職法の改正につきましては、われわれとしては、当然の改正であると思うのでありまして、問題は、要するにPRが徹底さえすれば、こういう問題というものははっきり国民も支持するものだという確信を持っておるわけであります。その点について、総理は陣頭に立って、一つこういう面を国民によく説明し、PRすべきであるというふうに存ずるのでありますが、この点についての総理の御所見を承わりたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私がこの警職法の問題に関しまして国会における質疑応答において常に申し上げておることは、私は、国会の審議を通じて国民にこの法案の趣旨、内容等を十分に徹底するようにしなければならないということを申しておるのであります。もちろん国会が民主政治のこの運営におきまして最も責任ある重要な場所でありますから、私はそういう表現をいたしておるのであります。今、小幡委員のお話のように、こういう問題に関してずいぶん誤解もありますし、あるいは特に曲解をいたして、そうして反対をしておる向きもありますし、私は、正当にこれが国民に理解され、そして国民の中正な批判というものに対しては、民主政治としてもちろん耳を傾けていかなければならぬと思いますが、そういう意味において、あらゆる機会を通じて国民に趣旨の徹底をはかることは必要であると考えております。それは内閣の首班としての私の責任でもありますし、また、党といたしましても、私はあらゆる機関を通じ、政府、与党ともに、その国民に対する理解を深める努力を、あらゆる面においてやっていかなければならぬと、かように考えております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 ただいま総理から、国会内においてのいろいろな質疑応答について総理も陣頭に立って十分にやっておられるということを、お話を聞いたのでありますが、私も今日のこの問題は、国会内において十二分に論議を尽して、その論議、審議を通じて国民の疑問にこたえるのが国会の責任だと思っております。これだけの大問題を、論議を尽さずに、会期がきたからということでうやむやに終らすべきではないのでありまして、この際、参議院のわれわれといたしましては、会期を大幅に延長していただいて、(「反対反対」と呼ぶ者あり)そうして参議院としても十二分に、まじめにこういう問題については国民に対し論議をする。そうして参議院の審議を通じて、さらに国民にはっきりこういう改正の必要のあることを知らしめることが必要であると存ずる次第であります。そういう意味において、総理はどれくらい会期の延長ということを考えておられますか。また、これに対して新聞紙上報ずるところによりますと、社会党は、鈴木委員長初め、実力をもってこれを阻止するということを宣言いたしておりまするけれども、このことは、議会政治家としては実に残念な遺憾千万なことだと思っております。国会という所は、あくまでも論議すべき所でございまして、実力闘争の場ではありません。そういう意味において、民主政治の擁護の上から、また国会の権威の上からも、総理としてまた総裁として、鈴木委員長と十二分に話し合う御意思というものがないかどうか、これらの点、お伺いしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) この問題に関して、私はしばしば、十分に一つ審議を尽していただきたいし、またわれわれはその審議を通じて国民にその趣旨の正しい理解と徹底を果すように努力するということを申しております。  会期の延長につきましては、これは言うまでもなく国会でおきめになる問題でありますが、私ども政府としては、この警職法の問題も当然でありますが、その他の問題の審議に関しましても、今回のこの警職法の提案と同時に、いろいろな事態が起りまして、審議が予定のごとく進んでいかない現状におきましては、相当な大幅な会期の延長を希望いたしております。そうして十分に一つ審議を尽してこの問題の正しい理解を徹底するようにいたしたいと、かように思っております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 次に労働大臣にお聞き申し上げますが、聞くところによりますと、明五日、総評初め各労組が全国にわたってこの警職法反対のための政治ストを行うというふうなことを言われておりますが、これは全くゆゆしいことだと思っております。憲法二十八条に基くところの労働者の団結権あるいは団体行動権というものは、こういう政治的ストを許してはおらないと私は存じておるのでありますが、その点について、労働大臣いかにお考えになりますか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○国務大臣(倉石忠雄君) 明日を期して、労働組合の多くの人たちが統一行動をとるという計画があることは、それぞれの組合の決定を見ますというと、そのようでございます。そこで、ただいまお話のございましたように、いわゆる政治ストというものは、労働組合法上認められておるものではないのでありまして、憲法にいう勤労者の団結権及び団体行動権、これはそれを受けて労働組合法が成り立っておるわけでありますが、労働組合法では、明らかに示しておりますように、労働者の賃金その他の労働条件を折衝するということが主たる目的であって、それによって団体協約が結ばれ、その団体協約に対して、どちらかに異議のあるときに争議行為というものが予定されております。労働法上保護を受けるものは、従って、そういうところの団体行動権。しかるに、相手方の企業家にとっては、いわゆる警職法の問題とかその他の法律事項というものは、団体交渉を受けても、何も受けて立つことができないのでありますから、そういうことは、労働組合法上正当に認められたるいわゆる団体行動ではないのでありますから、明らかにこれは法の保護を受けない、違法なる行動であると、政府はさように考えまして、先般も政府声明は一般に出しましたが、本日は、労働省が直接関係を持っております労働組合に対しまして、労働大臣としての警告を発したような次第であります。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 ただいま労働大臣のお話で、こういう政治ストというものは違法の行動であるということは、はっきりいたしておると私も存じておるのでありますが、違法であるならば、政府としては、先ほどお話のように、厳重に一つ警告を発しますとともに、これをあえて犯す者に対しましては、それぞれの法律に従って厳重に処分を断行して、今後こういう行動があいまいのうちに秩序を乱していくというようなことを、この際、抑制していかなければならないというふうに存ずるのでありますが、この点について、労働大臣はどうお考えですか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○国務大臣(倉石忠雄君) 労働大臣の立場といたしましては、健全なる労働組合運動が伸びて参りますことを期待いたしておるのでありまして、従って、労働組合運動というものも、やはり黙って働いておる国民大衆一般の同情を失うようなことがありましたならば、せっかく健全に発達して参りました日本の労働組合運動というものが阻害されるのでありますから、そういうことのないように、政府といたしましては労働組合を結成しておる諸君に対して警告を発したり、また、ときどき会見などをして御注意を促しておる、こういうことでございます。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 警職法の改正については、衆議院における地方行政委員会等において、いろいろ論議されておりますが、要するに、これに反対するグループの人たちの言うことは、憲法の保障する基本的人権の侵害であるというふうなことを言っております。私は、むしろこの改正は憲法の擁護であり、憲法明記の条文を尊重するための改正であるというふうに思っております。われわれは、学者のよく言いますように、研究、発表の自由権を持っておる。また講義を聞き、また講習を受ける自由権を持っておる。これを、各地で見る道徳教育講習会の事例等におきまするように、ピケを張ってわれわれのそういう憲法に保障するところの基本的人権というものを妨害いたしておるというのが、今日の総評の実態だと思っております。また、われわれには労働する権利がある。また、労働して賃金を得て生活をする権利がある。これはもうよく社会党諸君の言うことでありますけれども、しかし、苫小牧の状況を見ますと、こういう第二組合の人たちが、労働する権利を持ち、労働して賃金をもらい、生活する権利を持って労働しようとするのに、その基本的人権というものを、第一組合の人たちが、暴力をもってじゅうりんいたしておるのが今日の状況であります。われわれは、一体こういうようなことというものが、現在の憲法下において許されていいのかどうかということを、非常に疑問に思っておるのでありまするけれども、憲法保障のこういう基本的人権というものが、暴力によって今、抑止、じゅうりんされておる現状というものを、総理はどう見ておられるか、その点についてお伺いしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、この警職法の問題に関しまして、しばしば憲法の基本的人権ということと関連をしてお答え申し上げておりますが、今、最近のこの社会事象を見まするというと、今おあげになりましたような事態、すなわち集団的な一つの実力行使によりまして、善良なる人々の基本的人権が脅かされており、もしくは侵害されておるというような事態が、遺憾ながら、いろいろと社会の各方面に見られる。こういうことは、真にこの民主政治の基本であるところの基本的人権、それは国民にひとしくこれを擁護し、確保するということが、その精神であることは言うを待たないのであります。一部の人々の乱用によって、他の多数の人々の基本的人権が侵され、もしくは脅かされるような事態は、これはなくし、そういうような事態が起るおそれがある場合には、これを未然に抑止し、そうして平和な、平穏な社会生活を保つことこそ、憲法の精神に合致するものであって、この警職法の規定は、決して憲法の基本的人権に関する規定に違反するものでないのみならず、その精神をむしろ受けて、静穏な社会生活のできるように、基本的人権をできるだけ平等に保護する、確保するゆえんをわれわれは目的としているのであって、憲法違反のなにではないと、こう申しておるのは、今申したような趣旨であります。

坂本昭日本社会党

○坂本昭君 関連質問。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 簡単ですか。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 ちょっと待って下さい。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 本人が許さないというからだめです。

坂本昭日本社会党

○坂本昭君 私は指名を受けましたから。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 本人が許さないということでありますから、ちょっとお待ち下さい。

坂本昭日本社会党

○坂本昭君 私に指名を——許可したのではありませんか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 指名いたしません。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 憲法の問題については、今、総理からはっきり御答弁があったのでありますが、私は、憲法で基本的人権というものは、第十一条に基本的人権の享有を妨げてはいけないということをはっきり言っておる。それから十二条におきましても、この憲法が国民に保障する自由及び権利というものは、これを乱用してはならない、また「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。」ということをはっきり言っております。また第十三条におきましても、この「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、」という条件をつけて、「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」というふうに、憲法におきましては、はっきり、基本的人権というものがあっても、それは乱用してはならない、また「公共の福祉に反しない限り」ということを、はっきり明記しておる。また二十八条におきまして、勤労者の団結権あるいは団体交渉その他団体行動をする権利というものも、やはりこの十二条、十三条の中で、乱用してはいけないのだ、また「公共の福祉に反しない限り」という条件が、二十八条のこの勤労者の権利に対しても、これはついておるものだと私は思っております。そういう面から考えて参りますときに、今日の警職法の改正の問題も、この公共の福祉、また乱用してはいけない、基本的権利でも、それを乱用することによって、多数の人たちの、それこそ基本的権利をじゅうりんすることになるのだから、それを乱用してはいけないのだということのために、この警職法というものの改正というものもできておるというふうに思うのであります。私は、それ以上に、さらにこういう憲法における乱用してはいけない、あるいは「公共の福祉に反しない限り」ということが、基本的人権の制約として憲法に掲げられておりまする以上、単に警職法の改正のみじゃなく、あらゆる法規についても、こういう二つの制約というものは、常に考慮されておらなければならないというふうに存ずる次第であります。そういう面から、この憲法に明記してあるこういう乱用防止あるいは「公共の福祉に反しない限り」というものの確保ということを考えるときに、今日の社会情勢というものを見ますると、さっぱりこれが確保されておらない。今度警職法を改正するのですが、警職法の改正だけで、この憲法に言われておりまするこういうことが、一体確保されるのかどうか。むしろ警職法の改正は当然であって、それ以上に、なお、いろいろの法規の中に、こういう問題というものがしっかり明示されなければならないというふうに私は存ずるのでありますけれども、この点、総理並びに労働大臣はいかにお考えになりますか、一つ御答弁願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 午前中、羽生委員の御質問にお答えを申し上げたのでありますが、私は、民主政治の完成のためには、また民主主義の完成のためには、やはり一つの社会的なルールというものが当然考えられて、それをお互いに守るというところに、平和な共同生活が可能であり、民主主義が可能になってくると思うのであります。そこで要するに、憲法ではその関係を、公共の福祉という言葉で表現しておると思うのでありますが、結局、先ほど申しましたように、多数の人がおのおの自分の権利を主張し、自分の自由を主張する人は、やはり他人の権利を尊重し、他人の自由を尊重するというところに、このルールが確立すると思うのであります。もちろん、世の中のことは、法律だけですべてを解決するということは、これは間違っておる考えであることは言うを待ちません。言うまでもなく、民主主義のそういう意味においての完成は、やはり国民の全体の社会道義といいますか、そういうものが確立されてこなければならないことは言うを待ちませんが、しかし、どの法律において、どの権利につきましても、今お話しのように、それが乱用されるとかということは、これは法本来の目的じゃございませんし、今の憲法の精神というものは、あらゆる権利に伴って、われわれはそれが乱用されてはいけない、公共の福祉に沿うように、これが活用されなければならないということは、権利の本来の本質を私は意味しておるものであると思うのであります。そういう意味におきまして、ただ警職法の改正さえすれば、社会の平穏が、秩序が保たれる、民主主義がそれで完成するというような考えに決して私は立っておるわけじゃございません。しかし、最近の社会事象を見るというと、われわれが社会道義に訴えるとか、あるいは一般の人々がルールを守るということを強調するだけでは足りないのであります。現実にわれわれの目の前にそういうルールを乱したために、平穏な市民生活が乱されておるという事態が、あちらこちらにあるという以上は、そのことをやはり未然に一つの力をもってとめる、制止したり、あるいはそういう極端なことに至らないようにしていくことは、これは政治の当然義務であると思います。それが私は今回の警察官の職務執行において、従来そういう点において、本来警察というものの趣旨からいうと、当然そういうことは、警察の目的としてやらなければならないことであるけれども、警察官職務執行法の規定が不備であるために、そういう点において十分に職責を尽すことができなかった。そのために、社会にいろいろな不安や、あるいは善良なる市民の自由、基本的人権が侵されておる、乱用が行われるというような事態を見るに至ったわけであります。その点を改正しようというわけであります。

坂本昭日本社会党

○坂本昭君 関連質問。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 本人の承諾を得て……。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○国務大臣(倉石忠雄君) 労働組合運動の名においていろいろな行為をすることが、社会公共の安寧を乱すというようなことについてまで、労働組合法は保護を与えるものではないことは、御承知の通りでございまして、最高裁の判例等にも申しておりますように、企業家と、それに従事する労働者とが、先ほど申し上げましたように、賃金その他の経済条件改善のために話し合うことが団体交渉でありまして、それに基いての団体行動権が認められておる。従って、労働者が使用者と対等の立場に立ってその待遇の維持改善をはかり、その地位の向上に資するために認められたものであるもの、こういうふうにわれわれは解釈いたしておるのでありまして、最高裁もそのように申しております。しかるに、最近ときどき極左的傾向を持っている人々が、まじめな労働組合員等に、労働組合が行う行為であるならば、犯罪の違法性を阻却されるといったような宣伝をいたしておるものがあります。御承知のように労働組合法第一条二項では、正当なる労働組合運動というものは刑事上の免責があるのでありますけれども、その正当なる労働組合運動というものは、先ほど申しましたように、限界があるのであります。しかるに労働組合員であるからといって、大衆が集合をしてそうして行う行為が、ほかの人々に許されざる行為が、そのことによって、労働組合だけは特別なる恩典を受けて保護を受けるということはあり得ないことなのでありまして、そういう誤解を生じさせ、そうしてそういう違法な行為を積み重ねて、その上に立って一部の人の偏向した目的の方向に黙々として働いておる労働者大衆を引きずっていこうとするような傾向が見受けられることは、まことに遺憾でありまして、私どもは、健全な労働組合運動発達のために、こういうことについては、じっくりと腰を据えて労働者の教育をすると同時に、一般国民の方々にも労働組合運動の正当なる範囲というものを理解していただくということに努力をしていかなければならないと思っております。

坂本昭日本社会党

○坂本昭君 関連質問。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 小幡君いいですか。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 ええ。

坂本昭日本社会党

○坂本昭君 関連して。せっかく小幡委員が質問されている途中、鼻を折ってまことに相済まぬと思いますが、非常に重大なことをお尋ねしておられますので、私は二点総理にお伺いいたしたいのでございます。  ただいま小幡委員は、警職法の改正だけでは足りぬ。もっとしっかりやらなければいかぬといって、非常に叱咤激励されました。どうも委員が与党だとはいえ、質問の域を越したような感じがするのでありますが、それに対する総理のお答えはきわめて慎重であって、警職法の改正だけでいいとは思わない。世の中をよくするためにはもっとほかの手がいろいろ必要だ。この点はきわめて慎重なお答えであったと思います。ところで、先ほどこの警職法の改正について、十分審議を尽さなければならない。そのためには会期を延長したい。きわめて重大な御答弁がありました。しかしこれほど大事な法の改正で、審議を尽さなければならないものならば、今回の国会の劈頭における総理の演説の中にも当然出てこなければならないし、また議運の中においても当然出なければならないにもかかわらず、十月の八日に突如出してきた。こういうことで突然出しておいて、そうしてなおかつ審議を尽さなければならないという点は、一体どういうことであるか、そのことが第一点。  それから先ほど労働大臣は、明日の労働組合のスト行為について、これは純然たる政治ストであって、違法行為であるというふうな説明をしておりましたが、私はこれは労働者にとって重大な経済問題である。何となれば、これは今日御承知の通り不景気が続いて、また深刻化しているにもかかわらず、岸内閣は再軍備政策を強行しようとしておる。そのために、今度のような新しい警職法の改正案を考えた。むしろ、平穏な市民生活を破壊するものは、岸内閣の政策そのものであると、われわれは断ぜざるを得ないのであります。従って、これは当然労働者の経済生活に直結するもので、今のような労働大臣のような見解は当てはまらないと思う。  この二点について、総理のお答えをお願いします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 御質問の第一点につきましては、私はこういう警職法のごときいろいろ論議されておるところのもの、またそれが正当に理解されずして、ずいぶん誤まり伝えられ、もしくはわれわれが全然考えていないようなことに適用あるのじゃないかという心配等が、いろいろ論議されております。こういうことを、具体的に審議を通じて、国民に明らかにする。そうして国民の理解を求めることは、これは必要であると思います。今お話のように、これが提案におきまして、あるいは突如出たものであるとか、いろいろその手続等につきまして、私どもも万全であったということは申し上げません。あるいはその点においていろいろな批判もあることでございますが、しかしながら、要は、今やこれを提案され、国会において審議されている途中でありまして、いろいろないきさつもありますが、私は、どこにだれに責任があるということは申しませんけれども、国会としてこれが提案された後における審議の状況を見ますというと、いろいろな関係で、相当期間にわたって審議がされなかったような事態もございます。また、この国会にわれわれが提案をいたしております多数の法律案件その他のものにつきましても、やはりその審議がおくれているというのも現実でございます。こういう状態のもとにおいて、やはり国会の会期の延長を政府として希望しているということは当然であり、また警職法のごときにつきましては、十分なそういう意を尽し、審議を尽すという意味において、相当大幅の会期延長を希望しているというのが私の心境でございます。  第二の点につきましては、これは労働大臣からなお補足して回答をしていただいた方がいいと思いますが、私の了解しているところにおいては、いわゆる経済問題と申しましても、今お話のようなところまで、一体労働組合の正当なる労働活動であるかどうか。私は現実に労働者が労働をしておって、その賃金であるとか、その他の労働条件について経営者との間に意見を異にして、そうして争議が行われるということが労働争議の意味であって、坂本委員のおっしゃるような、広い意味においてそういうことがみんな経済に関係があるから、それは労働運動の当然の範囲内であるというふうには、私は解釈をいたしておりません。なお労働組合法の解釈につきましては、労働大臣をして補足させます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○国務大臣(倉石忠雄君) 労働組合が法律上の特別な保護を受ける限界というものは、労働組合法によってよくきまっておりますことは御承知の通りであります。そこで最高裁判所の判決例のことを先ほど申し上げましたが、たとえば判決の中に、「勤労者の労働条件を適正に維持しこれを改善することは、勤労者自身に対して一層健康で文化的な生活への途を開くばかりでなく、その勤労意欲を高め一国産業の興隆に寄与する所以である。然るに勤労者がその労働条件を適正に維持改善しようとしても、個別的にその使用者である企業者に対立していたのでは、一般に企業者の有する経済的実力に圧倒せられ対等の立場においてその利益を主張しこれを貫徹することは困難なのである。されば勤労者は公共の福祉に反しない限度において、多数団結して労働組合等を結成し、その団結の威力を利用し必要な団体行動をなすことによって適正な労働条件の維持改善を計らなければならない必要があるのである。憲法第二八条はこの趣旨において、企業者対勤労者すなわち使用者対被使用者というような関係に立つものの間において、経済上の弱者である勤労者のために団結権乃至団体行動権を保障したものに外ならない。」われわれは労働組合法制定当時、本国会においても、こういう点についてしばしば当時の政府当局とも論議をいたしたものでありますが、その経過に見ましても、労働組合法上において、労働者の団結が保障され、その団体行動権が法律によって保護される限界は、あくまでも今の最高裁の判決の示しておるように、労働組合法及び憲法二十八条が労働組合に保障しておる限界は、ただいま申しましたような範囲である。そこで、警職法反対であるとかあるいはその他の政治的問題をとらえて、一々使用者に対して、組合が要求いたしたとしても、使用者はこれに対して何らの措置をなし得ざる立場にあることは御承知の通りでありまして、そういうことまでも行うことの自由なり権限を、労働組合法によって、労働者に保護をしておるものではありません。さように御了解を願いたいと思います。

坂本昭日本社会党

○坂本昭君 総理に簡単にお伺いいたします。  国会の民主的運営の必要ということは、総理が就任以来つとに強調してこられたことであります。ただいまのお話を伺いますというと、もうすでに今国会は四十日という約束をしておった。ところが、こういうような重要な法律の改正をすることによって、相当な混乱が起るであろうということは当然予測されたはずであります。ところが、今の総理の返事によりますと、出したものは引っ込めないという態度であります。これは、はなはだ民主的な国会の運営を妨げるものであって、特に、午前、羽生委員から警職法改正の客観的な情勢がどういう点にあるかといって強く質問しましたが、それについて、われわれも納得のできるような明確なる御答弁をいただくことはできなかった。そして、だたひたすらに、出したものは引っ込めないという態度をもって今回の会期延長の考えをお持ちになっているように察知せざるを得ないのであります。このことは、はなはだ遺憾であります。私は、今、小幡委員は全国民がこの改正を支持しているというような御意見でありましたけれども、私はそのように感じない。また公聴会における意見あるいはまた一般の学者やあるいは宗教家の意見を通しても、非常に強い反対があるということは、まぎれもない事実であります。たしか今までに社会党も幾つかのあやまちを犯してきたかもしれない。多くの国民の非難を受けたこともあったでしょう。しかし、今度の警職法の改正ほど全国民があげて強く反対しているところのこういう問題はないのであります。にもかかわらず、なおかつ出したものは引っ込めないという態度は、総理としてはなはだ民主的国会の運営を誤まるものと言わざるを得ません。今朝来、羽生委員も言葉を強くしてその点を総理に迫りました。われわれも日本の国の平和と安寧を保つために、この点、特に総理の慎重な反省を促したいのであります。もう一言、この会期延長についての総理のお考えをお伺いいたします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 坂本委員の御意見を拝聴いたしましたが、私は、真に、こういう法案の必要であるゆえんは、いろいろと私ども御説明申し上げておる通りでありまして、現在の情勢から見て、やはりこの国会で十分な御審議を尽して、そして成立することを政府としては心から願っておるわけであります。今撤回せよ、あるいはそのまま廃案にせよというような御意見であったと思いますが、私自身は、きょうの新聞記者会見にも申しておりますが、決して無理押しするという考えじゃございませんが、十分に一つ審議を尽していただいて、そして、今、国民の多数の者が反対であるという坂本委員のお話でありますが、また小幡委員はそうでなしに、多数は支持しているというようなお話であります。私は、いろいろな機会におきまして、あるいは公聴会やあるいは立会演説会、あるいはその他の方法によって、ほんとうに国民がこれを正当に理解されるならば、反対論としてあげられておることは、私どもが全然考えていないような事柄を内容としているように伝えられて反対している方もずいぶんあると思う。たとえば、信仰の自由であるとかあるいは表現の自由というようなものについて、われわれは今度の警職法で何ら考えておりませんし、そういうことはあり得ないということが明白であるにかかわらず、そういうことを理由に反対されておる方々も相当あるように思います。従って、十分に一つ審議しを尽して、ぜひ具体的に内容等についての論議をかわして、そして国民に理解してもらうということが、この際、最も必要であると私は真剣にそう考えておるのでございます。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 大体警職法改正のいろいろな問題は、先ほど申し上げましたように、今、坂本委員は国民多数が反対だと言うのですが、私はそうは思わぬのであります。国民多数これは賛成なんです。要するに問題は、これはわれわれもよく郷里なんかへ帰ってほんとうに話し合って見るのですけれども、結局、ためにする者が反対なんで、ほんとうに国民がこれに対して不安を持つというのは、結局この警職法の改正そのものが反対じゃない、警職法の改正というものは、これはもう正しい、確かにこれはやらなければならぬ。ただここで、国民が一まつの不安を持っているのは、このことによって警察官が乱用しやしないか、警察官の乱用が起りはしないか、あるいは行き過ぎが起りはしないか、これを心配しているだけなんです。結局、結論はここなんです。そうなって参りますと、警職法の改正というものは、当然国民に支持されていることでありまして、問題は、その警職法改正による警察官の乱用なり行き過ぎなりというものに、国民が一まつの不安を持っているというところに尽きると私は思います。でありますので、こういう警察官の乱用なり行き過ぎという点について、何か一つ立法措置というか、何か一つ国民が安心するような一つの措置というものを考えられるかどうかということなんでありますが、この点について一つ……。ほんとう言いますと公安委員長に御質問する方がいいかと思いますけれども、いらっしゃいませんので、総理に一つ総括的に。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) お話のように、私ども従来聞いております反対論の一つとして、乱用が行われはしないか、行き過ぎがありはしないかということが懸念されております。私は、いかなる——さっきの、憲法で保障されている基本的人権ですら、乱用はいかぬと思います。乱用は戒められている、いわんや警察官やその他の官憲が乱用されるということは、あってはならぬことは言うを待たないのでありまして、それは現行法においてもそのことは言えることだと思います。すべてのことについて言えると思います。それでは、一体乱用されるということについての基本的の考えでありますが、乱用された場合のいろいろ例にあげられ、これに反対される人々は、必ず乱用の例として明治憲法時代の警察のもとに行われた、あるいは治安維持法であるとかあるいは行政執行法であるとか、あるいは刑法の不敬罪の規定であるとかいうふうなものが引用されて、その当時こういう事態があったということが再現されるのじゃないかというおそれであります。これは言うまでもなく、そういう実体法が全部なくなっておるのであります。また、警察制度そのものが、旧憲法時代と今日においての警察官というものの制度が、全然違っております。従って、ただ抽象的にこれをやれば旧憲法の時代に帰るおそれがあるというふうなことは、私は今日の警察制度なりあるいは実体法というものをよく御研究願うならば、そんなことはあり得ないと思います。しかしながら、さらにそういう問題につきましては、いろいろそれはたくさんの中で、全然私はこの乱用とか、あるいは違反がないとは申しません。それに対しましては、十分な行政処分や刑事処分のなにもありますし、あるいは人身保護に関する旧憲法時代になかったような制度も出ております。これらのものを運用することによりまして、なおまた審議を通して、懸念されるこういう事態に、一体これが適用されるかどうかという具体的の事例について、はっきりした方針を明らかにしていくというようなことによりまして、そういう点に対する国民の一まつの不安を除いていくようにしたいと思います。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 それでは、警職法問題はこの程度にとどめまして、日米安保条約の改定の問題について、外務大臣いらっしゃいませんから、総理に御質問申し上げたいと思います。  午前中の社会党の羽生さんのいろいろな御意見もありましたが、社会党は、要するに日本の軍備というものに反対なんだ、自衛隊というものは必要ないのだ、こういうような一つの根本方針を持っておられる。そして社会党の綱領なんか見ましても、結局中立政策というか、要するに米、ソ、中共及び日本というものの四カ国の条約によって、中立政策をとるべきだ。こういう考え方に立脚して、いろいろ議論をされておられますので、どうもわれわれの考えと少し違うのでありますが、まず第一に、こういう安保条約改定というもののその第一番の前提というものをしっかり把握しておく必要がある。要するに社会党の言うような中立政策なり、あるいは軍備が要らぬのだというような、そういう考え方で、この安保条約を批判したって何にもならぬというふうに思う。そういう意味において、私はまず岸総理に、一体日本の今日の国際情勢の中において、そういう中立政策というふうなものがあり得るかどうかということを、まずお聞きしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 国際情勢の中にあって、日本が、安全保障の意味において、どういう体制をとるべきかという問題は、これはきわめてわれわれとしては重要な問題であり、ある意味からいえば、いわば政治の最も基本的な問題であるということが言えます。どうしてもわれわれはこの民主的な日本の国民の生活というものを維持し、その自由を確保していく。他から、あるいは直接間接にそれが侵略されて、われわれの民主主義が脅かされ、あるいはわれわれの平和が乱されていくというような事態をなくしていく。これをなくするのには、何と言っても、午前中も羽生委員にお答え申し上げましたように、根本は、今の国際情勢のこの対立した緊張を緩和するということである。これは外交の基本に関する問題であり、従って、日本の安全を保障するということは、決して私はただ自衛隊を強化すればそれで安全だというような問題ではないと思います。しかしながら、同時に、それでは全然外交の手段にたよって、そうして何らの自衛力も持たずにやっていて、どうして安全であるかという問題になりますというと、私どもこれは社会党の方の多くの人と意見を異にするのでありますが、やはりわれわれが独立を守り、他から不法に侵略されない、直接間接の侵略をされないという事態を作っていかなければならない。事実、現在におきましても、私は世界の各地において、そういう直接間接的な侵略によって、その国の平和が乱され、その国の民主主義が脅かされているような国々も少くないと思います。従って、私どもはその間にあって、日本のそういう安全を確保していくためには、やはりわれわれがみずから自主的に自衛するということが根本であって、それには、われわれが国力と国情に応じた自衛力の増強をして、そうして他から直接間接の侵略を受けないようにして、日本の安全を保障していくということがどうしても必要なのだ。それが一国の力だけで足りない場合におきましては、やはり他のわれわれが理想を同じくするところの国と手を握って、そうして共同防衛の形をとるということは、現在の国際情勢の現実から申しますれば、私はこれはやむを得ない方法であり、また、それが最も日本の安全を保障する道として有効適切である、かように考えておるわけでございます。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 結局、今日の情勢——まあ将来の理想というものは別といたしまして、現実の国際情勢下においては、完全なる中立というものはあり得ない。そうして日本が結局こういう複雑なる国際情勢下において、自分の独立した国家の自衛ということを考える以上は、今日の日本の軍備の状況から見て、自国だけではできない。そこで、どこかの国と手をつないでやっていくというふうなことになるというふうに私も解釈するわけでありますけれども、今、自民党といたしましては、外交三原則というものを持っております。自由主義国家群と協調していくことが一つ、それからもう一つは、東亜の民族主義の尊重といいますか、東亜の諸国家の中の一員として、こういう人たちと協調していく、第三が国連中心主義、国連というものを一つ十分に活用して、そうして世界の平和を所期していくというふうなことが言われておりますけれども、この三原則というものが、軽重の差がなくて、平等の立場で三つ並んでいくということなのか。私といたしましては、この面について、どうしても今日の情勢から考えれば、東亜の問題も、国連の問題も、結局は、日本というものが自由主義国家群としっかり手を握っていくということが基調になって、そうして東亜の問題も処理されていき、また国連の発言というものも処理されていくということになっていかなければいけないのではないか。結局、日本の外交の主軸というものは、自由主義国家群との協調というものが主であらねばならぬというふうに考えます。そうしてそれによって、今度の日米安全保障条約というものも、そういう考えから、一つこの問題に取り組んでこられたのだというふうに存ずるのでありますけれども、その点について、総理の御見解を伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 外交上の三原則について、そこの間にはおのずから軽重といいますか、順位といいますか、があるのではないかというお話でありますけれども、私はそういうふうには実は考えていないのでありまして、やはりこの三原則は、できるだけ三原則としてこれを貫いていきたいというのが私どもの考えであります。あるいはそのために、たとえば自由主義の国のやることが間違っておる、あるいは適当でない、あるいはアジアの民族主義というものに対する一つの非常な脅威になっているというような事態があるならば、私どもは、やはりその事態をなくして、この三原則を貫こうということで、言うまでもなく、私は、われわれの政治の理想として、民主主義を考え、われわれの自由を確保し、そうして正義と自由に基くところの平和こそ真の平和であるという観念に立ってわれわれは平和を増進しようという考えを持っているわけでありますから、そういう意味において、この三原則が、具体的な場合について、ときに何か摩擦を生ずるような場合におきましては、十分これらを貫くところの一つの理念に基いて、調整していくということが、日本の務めであると私は思っております。いずれにいたしましても、先ほども私一言触れたのでありますが、日本が一国で、自国の力だけで自国の安全保障ができない場合、理想を同じくしている国との間の一つの提携を考えるということを私は申しておりますが、そういう意味において、日米安保条約と、日米共同防衛によって日本の安全を保障することが最も適当な方法である、かように存じております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 防衛長官にお伺いしたいのですが、安保条約の改定に当って、結局防衛という考え方からこういう問題が出てくると思うのですが、今日、憲法の問題や、あるいはいろいろな問題というものを一応差しおいて、近代戦争下において、日本の本土のみの防衛ということが一体考えられるのかどうか。要するに、日本の国土だけを、その上だけを守っておれば、日本の防衛というものは安全なんだというふうなこと、そういうことで一体日本の防衛というものが考えられ得るのかでうか。私といたしましては、防衛という問題は、防衛のほんとうの実際の人たちから聞きますれば、結局防衛の一番重要なことというのは、日本の国の上でもって戦争したりなんかするのは一番愚の骨頂なんだ、結局敵の近くに行って、極力敵の近くに行って防衛というものは考えられるのだというふうな議論もされておるようでありますけれども、私といたしましては、こういう面について、一体防衛庁としてはどういうふうに日本の防衛というものを考えておられるのか。どの線まで一体やったならば、日本の防衛というものは確保し得るのかという点について、率直なる御意見を承わりたい。

左藤義詮自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(左藤義詮君) お答えをいたします。  私どもは直接、間接の侵略に対しまして、わが本土を防衛したい。この国土に上着陸させませんように防衛をいたしたいと存じております。先ほど総理も申しましたように、一国だけで完全な防衛は今日の情勢ではなかなかむずかしいのでございますが、お示しのようなことにつきましては、私どもは米国と共同防衛でございまして、抑制力ということにつきましては、米軍の共同防衛に依存をしております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 結局今度の条約改定に基いて、共同防衛地域、要するに改定が双務防衛、相互防衛条約ということであります以上、結局双務の限界というものをどこに置くかということの問題が、憲法上とのいろいろな問題で、午前中も論議されたと思うのですけれども、さらにこの点についてお伺いしたいのですが、沖縄、小笠原の防衛につきましては、これは本土の防衛というものとやはり別個に考えられておるのか。それとも、これは午前中の話を私はこう了解したのですが、結局これは日本の領土なんだ。アメリカの管轄権の地域というのじゃなくて、日本の領土として沖縄、小笠原というものは考えるのだ。すなわち、だから海外派兵ではなくて、要するに、これは自衛の範囲なんだというふうに解釈いたしておるのですけれども、この点についての総理のお答えを願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私どもは午前中にもお答えをした。また、われわれの考えておりますことは、沖縄、小笠原については、われわれが潜在主権を持っておるがゆえに、われわれはやはりこれを防衛する権利と、防衛する義務を持っておるのだということを申したのでございます。ただ、具体的に日本の自衛隊がここへ出ていくかいかないかというような問題とは、これはおのずから別に考えていただかなければならないと思います。私どもは、この安保条約の改定に当りまして、これをまだ入れるか入れないかということが一つの問題でありますが、かりに入れるとした場合にも、われわれはやはり潜在主権がある地域における防衛というふうな観念を、そういうふうに考えを持って参るべきである。こういう意味でお答えを申し上げたわけであります。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 そうしますと、今、米華の防衛条約、あるいは米韓の防衛条約というものがありますが、その中でアメリカの管轄地域の共同防衛というふうなことをいっておりますけれども、このアメリカの管轄地域の中に小笠原及び沖縄というものが入ってないと思うのですけれども、これは入るようになるのですか。それともどうなんですか。その点はどうですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 条約の解釈につきましては、政府委員をして答弁させますが、私の承知いたしておるところでは入っているというふうに……。なお条約局長から。

田中弘人外務省アメリカ局外務参事官

○説明員(田中弘人君) 米韓、米華条約の条約地域には沖縄、小笠原は含まれておると解しております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 そこで要するに、今いろいろ心配されておりますのは、中共と国府との関係、あるいは南鮮と北鮮との関係、いろいろなそういう関係における武力紛争というふうなものがその関係だけで行われた場合に日本が今度の改定というものをすることによって、これに巻き込まれるおそれがないかどうかということがいろいろ心配されておると思うのですけれども、その点についてはっきりと総理並びに外務大臣、そういう面の心配というものは、こういう点でないのだというふうなことをお答えできますかどうか、その点一つ。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 米華あるいは米韓、米比等のそれぞれの条約におきまして、共同防衛地域の問題もそれぞれの条約できめております。私どもが今後きめようという日米安全保障条約の問題にどういう反映をするかということは、今も未定の問題でございますが、かりにそれがどういうふうにきまりましょうとも、これは条約の解釈としては、全然別個の条約でありますから、それが当然条約としての関連性を持つものではないことは言うを待たないのであります。ただ問題は、実際問題としてそういう懸念がないかというこの問題は、条約の解釈としては私は当然それは別の問題であるという解釈は間違いないと思います。ただ実際問題として、そういうことに巻き込まれるおそれが、危険が出てくるのじゃないかということが一つの私は懸念であろうと思います。それは全然私はそういう懸念はないということは申し上げかねると思います。従ってそういう意味においてこれを入れる事柄については、そういう懸念が出てくるという意味において反対論が一つの根拠があるということは、十分頭に置かなければならない問題である。しかしながら、同時にこの問題は、やはり日本国民としての国民的の希望なりあるいは住民の熱望なり、そういうことも十分考えなければなりませんし、先ほど来解釈をいたしております憲法上の本来のわれわれが持っておる潜在的主権に基くところの一つのわれわれの立場、地位というものも頭に置いて考えるべきものであって、それらのものを十分に考慮して最後の決定をするのが適当である、こういうふうに従来もお答えを申し上げております。またそういうふうにいろいろこの問題に関して賛否両論があることは御承知の通りであります。それらがもう少しこの問題に関して十分に尽される必要がある、こういうふうに思っております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 次に基地米軍、要するに日本を基地とするところの在日米軍の行動範囲の中におきまして、日本の共同防衛の限界というものはどこらに線が引かれるものか、その点について外務大臣から一つ。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいまお話のような問題は、これから条約締結に当りまして、どういう条約義務をわれわれが負うか負わないか。またどこに線を引くかという問題なんでありまして、総理も言われましたように、今賛否いろいろの議論がございます。それはもうおのおの十分聞いた上で内閣が決定して方針をきめていくということになると思います。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 現在交渉の最中でありますので、いろいろはっきりお答えのできない面も多いと思いますが、次に米軍の使用、配備の事前協議の問題でありますけれども、この問題につきましては、結局根本的ないろいろの問題については、いろいろ事前協議をする、しかし、ほんとうのいざという場合における一つの突発のときというふうな場合、こういうような突発的な事態に対する出動などについては、まあ事前協議ということは考えられないということが、これは常識的に一応われわれとして考えられるわけですが、そういう面につきまして、今度の改定について、外務大臣はいかなる配慮をもって交渉されておられまするか、その点一つお伺いしたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) 装備の配置あるいは出動というような問題につきましては、事前協議をして、十分話し合いをした上でそれを決定していくという方針のもとにやって参りたいと思っております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 今度の改定で、日本本土そのものの防衛というもののほかに、極東の安全のために基地の米軍を使うというふうな問題がありますが、そういうような場合におきましても、結局日本と協議をしてやるというふうに言われておりますが、そうなりますと、非常に広範囲の面において、日米政府というものが協議をするということになると思うのですけれども、協議をしました以上、やはりそこに共同責任というものが出てくるというふうに思うのでありますが、そういう面につきましては、協議をすることによって、日本が一体どれくらいの義務といいますか、責任といいますか、そういうものが出てくるのか、そこらのところはどういうふうに考えておられますか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) 協議をしたからすぐに何でも共同の責任があるとは思わないのでありまして、協議をして、そうして否定する場合が、拒む場合があるわけであります。その場合に、協議をしたこと自体が責任ではないと思うのでありまして、協議をして何か合意に達しますれば、それは責任を分担しなければなりませんが、拒否した場合には、責任を分担するわけはないと思っております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 防衛庁長官にお伺いしたいのですが、核装備の問題について、岸総理も日本の自衛隊は核装備をしないと、またアメリカ軍の配備についても、これをお断わりするというふうなことを今日まで言われてきておりますけれども、われわれとしては、今日の近代戦争の上において、防衛という限度においても、この核装備というものが、必要な面というものがあるのじゃないか、要するに核装備をしないと——今まで総理もしない、自衛隊もしない、米軍もさせないということは、結局その理由は一体何か、すなわち、憲法上日本としては、自衛権以上のことはできないのだ、侵略はできないのだ、だから憲法上の制約、すなわち自衛権としては核装備というものはあり得ないのだという意味なのか、それともその核装備というものが、あの原子爆弾の日本は唯一の被害国でありまして、国民感情の上からもこれは困る、あるいは報復——すぐ報復という問題がこれに伴って参りまするので、そういう意味において困るという考え方でこれを排除されておられるのか。また、これは自衛以上のものなんだということで、これを排除されておられるのか。私といたしましては、今日の自衛という問題について、だんだん近代兵器が盛んになってき、またそういうふうに相手の国もなって参りますれば、また、スイスの国あたりでも、あれだけの平和の国でありながら、やはり核装備もする。結局それは何かといえば、侵略でなくて、やはり自衛のためなんだということをはっきり言っておりますけれども、そういう意味において将来日本の近代戦争の上から、核装備というものが考えられる時期というものは、やはり当然来るのではないかというふうに思うのでありますけれども、その点についてどうお考えになりますか。(「自由党の代表質問だとすると重大問題だ」と呼ぶ者あり)

左藤義詮自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(左藤義詮君) 人類最初の原爆の惨禍を体験いたしました日本といたしましては、かねて総理が繰り返して申しておりまするように、核装備はいたさない、またこれが持ち込みはお断わりをするという方針を貫いておるのであります。それよりも私どもは、これも総理がいつも念願をしておりまするように、世界各国が、原水爆の実験のみでなく、これが製造、保有等一切の使用を禁止するような方向に向いていきたいということが、私どもの悲願でございまして、もしそれ原水爆が用いられることになりますれば、人類が破滅するときでございまして、私どもはさようなことには、絶対核武装はいたさないという方針を貫いていくつもりでございます。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 それでは次に、経企長官はおいでになりませんか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 呼びに参ります、すぐに。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 それではすぐ呼んでいただきまして、その前に、大蔵大臣に不景気対策の問題について一つお伺いいたしたいと思うのですが、まず大蔵大臣は、今日の日本の経済情勢を考えられまして、不景気というものの見方を、大体まあここで底をついておる、ある程度ほうっておいても、この不景気というものがだんだん上向きになる趨勢になっていくというふうに考えておられますか、それとも、今日の不景気の現状というものをどの程度に把握されておりますか、まずその点をお伺いいたしたいと思います。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 一口に申しまして、調整の過程に入っておるということを実は申しておりますが、私どもこの長い経済不振の状況は、もうすでに底をついてきている、こういう考え方をいたしております。たとえば物価の趨勢にいたしましても、あるいは賃金の状況等からいたしましても、大体横ばいの状況じゃないか、最近の経済は、わが国経済を取りまく国際情勢もだんだん変って参っておりますので、こういうことが好影響をもたらすのではないか、今非常に大事な時期ではないか、かように考えております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 まあ一応底をついて、横ばいあるいは上向きだということでありますけれども、今日の状況から見ますと、結局今の過剰生産の問題も、だんだん新しいいろいろな施設に非常に投資し過ぎたという議論もあったのですが、結局そういう新しい能力が稼動していくことによって、過剰生産というものもやはり結局そう押えていくことができない趨勢というものがある、またいろいろ貿易の面から見ましても、結局こういう不景気というものを貿易の面で、あるいは海外に対する働きかけの面において救っていけるかというと、これも一つの限度があるというふうに私は思うわけなので、そこで今いろいろこういう面について、国内の有効需要の喚起という問題が論議されております。で、まずこれには二つの制約があって、一つには結局国際収支の問題がありますけれども、この問題も、結局三億ドルの黒字というものが、今日非常にうまくそれだけのものができてきておるわけでありますので、その範囲内においてでも、一つこの際国内有効需要の喚起というものをやったらどうか、あるいはこれを今やることによって、今までのいろいろな民間企業というものが、相当辛抱してきて、つぶれるものはつぶれる。また、要するに正常化する過程において、非常に今日までずいぶんがまんすべきものはがまんしてきたのだから、今これをやることによって、今までのがまんが逆転しては困るというような議論もあるようでありますけれども、これらの点について、大蔵大臣いかにお考えになられますか。一つ国内有効需要の喚起についてどうお考えになられるかということをお聞きしたいと思います。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 景気を上昇さすと申しますか、不景気克服対策として健全な経済のあり方から見て、需給のバランスをとる、これが一つのポイントであることは御指摘の通りであります。この需給のバランスをとります場合に、内需を喚起する、あるいは外国に品物を出すとか、こういうような二つの方法がとられる。今日までのわが国の状況で内需を喚起する方法が可能なのか、輸出に重点を置いて国際収支のバランスをとることの方に力を入れるべきか、この二つの方法を実は考えて参ったのでありまして、まず第一番は、何と申しましても輸出を振興することだ、そうして国際収支の状況をより有利にすることだ、この意味であらゆる努力を続けて参ったのであります。同時にまた一面国内におきましても、内需を喚起し、非常な刺激を与えることは、私は経済のあり方としてあまり好ましいことだとは思いません。しかし、全然内需についても何らの処置をとらないということも、これは適当でないと考えましたので、公共事業の繰り上げ使用等をいたしまして、一面失業問題に対処するといいますか、労働問題と取り組みまして、同時にまたその面の内需の喚起にも努力して参ったのでございます。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 私もその点一つぜひお願いしたいところなんでありますが、結局今日輸出だけでこういう問題は処理できない。ある程度の国内有効需要というものの喚起というものはやらなくちゃいかぬ。しかし、それには企業全般を通じてそういうことをやれば、結局今までがまんしてきたことが無になるということで、そこでどうしても公共事業を中心として一つやるということになると思いますし、またそういう面で特にお考えを願いたい。その点御意見伺いたいのは、この間の神武景気のときから不況になったときの状況を見まするのに、結局日本の産業基盤というものがうまくいっておらなかった。産業基盤自身が、要するに基幹産業というものがうまくいかなくて、そしてほかの産業というものが行き過ぎた、そこにびっこな状態になって、今日のいろいろなこういう不況の原因というものをなしてきておるということだと私は思うのです。そういう面で、今度は不景気対策ということに銘を打たなくても、要するに世界景気というものがだんだん立ち直ってきておる。アメリカの景気なんかも相当立ち直ってきておりますが、これがまた欧州に響き、また東亜に響いてくると思いますけれども、そういう世界景気に即応する日本の経済態勢を不況のこの際一つ確立しておく。不況対策というよりも、むしろそういう一つの世界景気に即応する日本経済態勢をこの際確立しておくという意味において、基幹産業の思い切った造成というものをやる必要がありはせんか。そういう意味においては政府も公債発行、要するに賃金の面で隘路があるなら、むしろ公債発行ということまでやってまで、こういう面について思い切った一つ日本の経済の体質改善というものをやったらどうかというふうに思われるのですけれども、それについて大蔵大臣はどう思われますか。またそれに関連して明年度の財政計画というものをどう考えられますか。要するに自民党の公約というものもある。減税あるいは年金制度の確立、いろいろ公約がある。それと今言ったそういう面との財源問題を考えて、明年の財政計画というものを私は相当拡大均衡の形において一つやる、しかも、それは基幹産業というものを中心にして一つ考えていくという面で、一石二鳥の案というものが立て得られないものかどうかということを一つお伺いしたいと思います。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 最近のわが国経済につきましていろいろの見方があると思います。ただいま小幡委員の御指摘のように、一般産業といわゆる基幹産業との間にバランスがとれてないんじゃないか、こういうような見方もあるだろうと思います。また事実、一部さような批判が出ておる向きもあるのではないかと思います。と申しますのは、御承知のように経済は財政の面と同時にまた一般金融、この二つの面で支えられておるわけでございますが、財政の面においては一つの制約があり、また金融の面においては民間の自由な意思と申しますか、自由な面で行われておる、そういう意味で、時に財政、金融のバランスを失うというようなこともまた起りがちだと思うのであります。過去の経済において民間の総意を十分伸ばしているという面においては比較的膨脹し、これが発展したが、いわゆる財政投融資等国の資金面で制約を受ける方が伸びなかった、こういうような批評も当るのではないかと思います。しかし過去においても努力して参りまして、そういう大きな非難を受けないように、絶えず財政、金融の一体化、こういう意味で民間経済と基幹産業の計画とを並行して推進する考え方をとって参っております。ことに昨年なりあるいは本年なりの財政投融資の計画が非常に大きい、さらにまたこの財政投融資も政府資金だけではなくて、民間資金等もこれに協力させる形をとって、不均衡のないように、過去において一部でもさような批判があったような時代があったと考えまして、それに対する対策を立てて参っておるのでございます。最近の状況から見ますると、特に基幹産業についてはもっと力を入れるべきではないか、あるいは道路であるとか、あるいは電力であるとか、あるいは鉄道であるとか、あるいは製鉄、あるいは石炭、こういうような基幹産業に対してできるだけ力を入れて、そして産業基盤を強化していく、こういう考え方をとっておるのであります。その意味では先ほど申しますように、財政、金融の一体化、そこにその運用の面において十分力を伸ばすように考えておるのであります。  そこで、ただいま御意見としてお尋ねがありましたように、内国債を発行したらどうか、こういう御意見のように伺うのでございますが、私ども経済を向上発展さす場合におきましては、やはりどうしても力を入れてしなければならないことは通貨価値の安定ということであります。この通貨価値の安定という、この基幹線を十分に確保して、しかる上でただいま指摘されたような資金の確保を実ははかっていくべきではないか、かように実は考えておるのでございます。ただいまもそういう意味で、まあ最近は外債発行を計画し、特に基幹産業に対しての資金確保をより豊富にする、せっかく努力しておる最中でございます。こういうような状況で推移しておる三十三年でございますが、この三十三年におきまして、経済体質の改善もやや見通しを立てて参った今日でございます。そこで来年度予算編成には一体どういうところに特に力を入れるか、けさほどもそういうお尋ねがございましたので一言触れた次第でございます。今回の予算編成に当りまして、私どもがまず第一にしなければならないことは、来年度の歳入の見積りは一体どの程度になるか、これを確保することがまず第一の問題でございます。税の自然増収もやや渋い状況にございます。また剰余金も前年同様のものを見込むことはなかなか困難であります。さような状況であるにもかかわらず、一面選挙に際しまして公約いたしました中央地方を通じての減税であるとか、あるいは年金制度の確立であるとか、あるいは経済基盤の強化であるとか、こういうような大柱の約束事項もございます。これらのものをただいま申すように、歳入の面で十分伸びない際にも、この公約の事項はぜひともこれを実現すべく最善の努力をするつもりでおるのでございます。  まあかような考え方に立っていきますと、ただいまの歳入が十分でないというならば、場合によりましては既定経費につきましても削減を加えてまで実は公約を実現する、こういうことに意を用いたい、かように考えておるのであります。従いまして、いわゆるたな上げ資金その他の財源等をも投入いたしまして、そうしてこの公約施行を忠実に実現する。同時に経済の基盤をなすような事業計画に対しましては、政府並びに民間資金を動員するような態勢のもとに計画を遂行して参りたい。こういうことでただいま予算の編成を急いでおるような状況でございます。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 要するに経済態勢の確立という意味において、もう一つ伺いたいのは、不景気対策でなく、今言った金融の正常化というもののために公定歩合の引き下げ、再引き下げというものを要求する声もあります。財界もこれは意見が二つに分れておるように私も拝承いたしておるわけでありますが、要するに、日本の今日の企業の経営実態というものを見ますると、結局金利が高過ぎるというところにあるわけでありまして、それが不景気対策ではなくて、金融の正常化という意味において下げるということ。この下げるのも結局日銀だけが下げるのではなくて、一般の銀行というものもこれは必ず下げる。しかしそのためにかならず金融界、銀行界はすぐもう預金利子を同時に下げるというふうな議論をされるようでありますけれども、今日の金融、日本の銀行の状況というものを見ますと、私たちから見ますと、全く銀行王国でありまして、まあ預金利子を下げないで貸出金利というものを下げるというふうなことが可能なんじゃないかというふうに思っておるわけなんでありますけれども、この公定歩合の引き下げの見通し、また預金利子を下げないで貸出金利を下げるというふうなことが一体できないのか。そういう意味における財政と金融との一体論というものも一つ考えなくちゃならぬと思いますし、またそれと関連して日本銀行の制度の改正ということも論議されておるような現状であると思いますので、そういう面について一つ大蔵大臣のお気持を伺いたいと思います。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 金利の問題は、私大蔵大臣に就任いたしまして、二回にわたって公定歩合の引き下げをいたしました。その際にいつも申しておりますことは、日本の金利は大体において高い。日本の金利はやはり国際金利水準にさや寄せする、そのことのねらいのもとに行われるべきだ。これはそういうお話をしてずっと参っておるのでございます。しかしてこの金利そのものは、私が申すまでもなく日本銀行自身が担当するところのものでございます。わが国におきましては、なかなか金利のあり方について、また具体的の金利の実施の状況について議論がやかましいのでございますが、これはもともと金融機関にまかしてもいいことではないかと実は思うのであります。ただいま財政、金融の一体化ということも言われますが、これは計画的な問題だと思います。同時に金融自身の金利などの扱い方につきましては、金融の中立性というか、独立性ということが強く叫ばれておるのであります。この意味におきまして、過去においてはなるべく金利を動かさない、変更しない、こういうことが各国の例であったように思いますが、一度きめた金利はなるべく動かさないというような状況にあったと思いますが、最近の各国の金利の扱い方を見ますと、アメリカにおいても、またイギリスにおきましても、そのときどきの金融情勢に応じて金利を、ときに下げ、ときに上げたりいたしておるのでございます。アメリカなども、昨年三分五厘程度の金利がどんどん下って参りまして、一・七五ぐらいにまでなったのを、それをまた最近二回ばかりにわたって引き上げて二・五にしている。また英国のポンドなどの金利は、絶えずこれをいじっておるというような状況でございますが、そういう場合にいわゆる金融の中立性という立場から、これを金融機関にまかしておることが非常に大きいのでございます。わが国におきましても、在来から日本銀行の扱い方に重点をおいて、そうして政府といたしまして、もちろん意見を述べることもございますが、その主体は日本銀行という考えで参っておるのでございます。金利のあり方としては、基本的には先ほど申しますように、国際金利水準にさや寄せする、この一つの理想のもとに進んでは参りますが、そのときどきの金利を上げるとか下げるということは、なるべく金融機関の自由にまかす方がいいのではないか、その方が望ましい形ではないかと実は考えておるのであります。過日もエアハルト、ドイツの副首相が見えまして言われておりますのには、日本銀行はできるだけ早く政府から独立されるようにと、こういうような表現をされておったのでございますが、これは特に中央銀行の中立性ということを強く要望しておられる言葉のように思うのであります。ただいまお尋ねの中にありました、今言う中立性の確保と同時に、財政金融の一体化、この二つの目的を達するために、中央銀行の制度はどうあったらいいか、こういうことで銀行制度調査会等でいろいろ研究をいたしております。しかし、これはまことに重大な問題でありますので、短期間の間にその結論を出すということはこれは避けまして、十分慎重の上にも慎重を重ねて結論を出すべきじゃないかということで、ただいま検討を続けられておるような次第でございます。  御意見のうちに、貸出金利をもう少し下げても預金金利はこのまま据え置いてもいいのじゃないかというような御意見があったと思います。これは過去の公定歩合の引き下げの場合に、当然公定歩合を引き下げますと、市中銀行もこれに追随して参ります。銀行の今日のあり方等から見まして、私どもが銀行業務に対してもっと指導すべき点は残っていると思いますが、ただいまの預金と貸出金利、この間のバランスもやはりある程度考えなければならぬのじゃないか、こういうことを私は思っております。今日一般的な問題としての金利問題についての意見は私は申し上げますけれども、具体的な問題として公定歩合をさらに引き下げるべきじゃないかとか、あるいはその際に預金利子をいかに扱うべきかという具体的問題についての意見は、この機会には発表を差し控えたいと、かように考えております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 今の要するに金融の、預金の利子の問題も出たわけなんでありますけれども、来年度は減税をやるということで、こういう減税というふうなものが結局消費の方に回ったのでは何にもならない。すなわちこういうものが資本の蓄積に回るようにしていかなければならない。そういう面から貯蓄の奨励もやっておるわけなんですけれども、それとあわせて最近の状況から言いますと、銀行預金というもののほかに株に対する投資、あるいは投資信託に対する一般国民の投資というものは非常に大きくなってきている。それで金融機関とこういう証券界との関係で、いろいろ金利が下ろうとしているのに株が上る。株が上るのに対してある程度警告を発するとか、いろいろそういうことをやられておりますけれども、私としては、結局こういう国民の所得というものがだんだんふえていきますれば、それができるだけ資本蓄積に回っていくのが一番いい。すなわちそれが貯蓄されていく、あるいは貯蓄にいかなければそれが投資の方にどんどん回っていくのをむしろ奨励すべきだというふうに私は思う。それが消費の方に回らないように、そういうふうにあるいは貯蓄なりあるいは投資なり、そういう方面に指導していく意味において、むしろ大蔵省あたりは一つ正しく指導していただきたいと思う。ともすると、株やなんかが上り過ぎると、すぐそれに対して水をさすというようなことをやられておるようでありますけれども、貯蓄と、こういう投資信託なり、また投資というものをともどもに一つ正しく指導して、日本のすべてのそういう国民のお金というものが消費よりもむしろ資本蓄積に寄与するように指導していく、そういう方面について大蔵大臣一つ配慮していただきたいと思いますが、どうお考えですか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 減税その他の所得増を消費の面に使わないでこれを蓄積しろ。私、まことに同感でございます。そこで、この蓄積という面で、これが預金になることもけっこうだし、あるいは特殊の企業に対する自己資本、まあ会社の資本にかわるということ、これも望ましいことだと思います。御承知のように、ただいまの金融機関そのものがオーバー・ローンで相当苦しんでおると思いますので、これが預金の面で金融機関に寄ることは大へんいいことだと思いますが、同時に、私は、企業そのものに対して、企業そのものが自己資本を持つようにやはり指導していかなければならない。その意味において、いわゆる投機的な株投資ということも考えられましょうが、そういうことでなしに、着実な意味において、相当危険を負担しても事業経営に参加するという形においての投資が望ましいのではないか。ことに、最近日本の経済の基盤が非常に弱いということがしばしば指摘されますが、日本の事業経営の実態をつぶさに見ますと、いわゆる借入金によって事業経営をしている面が非常に大きい。はなはだしきは七〇%あるいは八〇%は借入金によるというような状況になっておる。さような状況であると、どうしてもその企業自体が弱体ということになるだろうと思うのでございます。そういう意味で、この事業自身も自己資本を蓄積していくように、これは大蔵省はもちろん金融機関と協力してさような指導もしたいものだと思いますし、個人の蓄積もあらゆる方法によりましてこれが増進をはかるべきだと、ただいま御指摘になりました点は私まことに同感でございます。  ただ、最近の株の値段が非常に高くなって、いわゆるダウ株価が上っておるということ、これは必ずしも正常な金融、経済状態ということにはなかなか言いにくい点もあるようでございますが、これは相当研究を要する問題のように私も見ておりますので、その意味でいろいろ株価の適正化について指導していく、こういう状況でございます。御了承願います。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 経審長官に一つお伺いしたいのですが、過般西独のエアハルト経済相がおいでになりまして、日本の経済に対する一つの忠告といいますか、されていった。すなわち、日本のいろいろな商品というものが、西欧の品よりも、四〇%ないし六〇%安い。こういうのは結局、賃金が低過ぎる。生産性向上とともに賃金というものも上っていかなくちゃならぬ。そしてその差がもっと狭められるのが経済全体としての正しい姿なんだ。また、それができなければ円為替レートを上げたらどうだ、というふうな議論。あるいは、東南アジアへの消費財ではだめなんで、東南アジアへの資本財の輸出に努めなくちゃいかぬ。日本はそういう方面に一つ、東南アジアへ資本財の輸出ということに全力を集中すべきだ、というようなことも言われたようでありますが、そういうような面について、三木経審長官は、こういう一つのエアハルト経済相の日本経済批判に対してどういうふうに思っておられるか、またそれに対していかに日本の経済を総合的に指導されていかれるか、そういう点、一つお伺いしたいと思いますが、特にまた、東南アジアの資本財の輸出という面も、西独が今一生懸命やっているので、西独との競争ということになるのですが、そういう面についての、東南アジアの資本財輸出について西独との話し合いもされたのかどうか、そういう面、一ついろいろお伺いいたしたいと思います。

三木武夫自由民主党経済企画庁長官・科学技術庁長官

○国務大臣(三木武夫君) 賃金の問題でございますが、やはり国民の生活水準を高めるということが政治の要諦であります。そういう意味において、高能率高賃金ということは賃金の方向だとは思うのです。しかしながら、やはりそれには高能率といいますか、生産性の問題がある。だから、賃金が、単に日本とアメリカと比較し、あるいはドイツと比較して、絶対量が低いとか高いとか言うべきものではないので、生産性との関連において一つの相対的なものであると思います。そういう点から見ますると、日本の経済水準あるいは国民の総所得、国民総生産、こういうことから割り出してみますると、現在アメリカの賃金に対して八分の一、イギリスの賃金の四分の一、ドイツの二分の一という低い水準ではありますけれども、それは日本の経済水準からいえば、それが非常に低い賃金とは言われません。しかし、この賃金でいいというわけではないのでありますから、日本の生性産を高めて、経済の水準を高めて、賃金の上昇をはかっていくということが好ましい。今すぐにドイツやアメリカ並みの賃金にせよというようなことを、エアハルトは言ったわけでもないでしょうし、そういうことは、それは現実の経済ができるものではないということであります。  また、為替相場も、日本の西欧に対する輸出は繊維製品が中心であって、繊維製品が割安であることは事実であります。これは単に労働賃金が安いということもありましょうけれども、一方において繊維産業に対する日本の合理化というものは相当に進展をしている。そういう面からも、繊維製品というものは国際価格に比べて非常に低い水準にある。だから、繊維製品が安いということから、日本の為替相場はこれは引き上げるべきだという論は、少し論理が飛躍し過ぎる。やはり全体としての経済の諸条件というものを勘案して為替相場はきめらるべきもので、日本の今日の為替相場が非常に安い、これは引き上げるべきだという見解を、政府は持っていないのであります。  また、東南アジアの問題については、やはり日本の貿易の将来を考えてみましても、先進諸国に対しては高級雑貨、いわゆる消費物資というものを中心に市場開拓をしていくし、あるいは未開発諸国というような、東南アジアもその中に入るわけでございますが、これにもやはり資本財を中心とした貿易市場の開拓というものに対して力を入れていく、この二面性を日本の貿易というものは持っておる。そういう意味において、東南アジアにおいてはまだやはり消費物資の方が相当に比重が大きい。昨年度の消費物資、繊維などをとってみましても、三億三千万ドル、そして機械類は一億八千万ドルということで、相当にやはり、そういう点から考えても、消費物資の比重が大きいのでありますが、しかし、こういうふうな消費物資は、東南アジア諸国においてみずからこういうものを生産したいという考え方が起ることは、これはもう歴史の発展の過程として当然のことでありますし、また、日本がそういう後進諸国の軽工業育成の願望にこたえることが、東南アジアとの経済協力を進めていく上において必要である。そういう意味からいっても、今後は東南アジアに対しては資本財を中心にして、そして東南アジアの立ちおくれておる生産水準を高めるということに、協力することが必要である。  ところが、小幡さんも御指摘のように、ドイツの製品などとは、やはりそういう資本財の面においては、まだ日本の方が太刀打ちのできないような面もあるのです。そういう点から、この繊維製品は国際競争力を優に持ち得るのでありますが、機械工業、あるいは金属工業、化学工業、こういう面に対しては一段と日本の合理化というものが進められなければなりませんし、また、エアハルトも言っておりましたが、単に東南アジア諸国というものは、日本とか、ドイツとか、あるいはアメリカとかというのではなくして、岸総理の構想にあるような、もう少し国際的な規模でこういう後進諸国の資本不足に対して対応していくということが、やはり東南アジアの共産化を防止したりするような意味においても大きな意味がある。もう少し国際的な規模で後進諸国の経済発展のためにわれわれは考える必要を痛感したということを言っておりましたから、そういう構想ができて、そうして日本はその場合においては資本財というものに重点を置いて東南アジアの貿易を考えていく。そういう意味において日本の貿易構造、産業構造というものについても検討を加えなければならぬ時期である、かように考えておる次第でございます。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 建設大臣にお伺いしますが、本日災害予算についての補正予算が出たわけなんですが、治山治水対策の問題、この問題は過般の災害で非常にまた世論の喚起を得たわけなんですけれども、顧みてみますると、二十八年に治山治水対策協議会というものができて、基本対策要綱というものもできた。しかし、それが今日まで、三十三年まで五年間に一体どれくらいそれでいっておるかというと、結局一一%というような程度。それから、三十一年に治水事業五ヵ年計画というものができて、そうしてそれに対してまたこの治水問題をやっていくということになったわけですが、これまた二年間で見ても、その二年間の計画の半分しかできていないというふうな情勢。そこへもってきて、また新五ヵ年計画というものを今研究中だというようなことで、事ごとにこの治山治水の問題はいろいろ計画は立てられますけれども、実行というものがなかなかうまくこれに伴わない。そうして計画の変更だけがこうやって行われるということになるわけですが、一つ、今度の新五ヵ年計画というものはどういう構想でいかれるのか、そう途中で変らないようにして、しかも計画を立てた以上、これは必ず実行を期するという意味の覚悟をもって建設大臣は当っていただきたいと思うが、その構想を伺いたいということが一つ。  もう一つは、こういう治山治水の問題は、地方府県の負担というものをどうしても伴うわけなんです。今日の地方団体の負担能力というものは、非常に大ではありません。そういう意味で、この地方の負担問題というものもこれにからまってくると思うのですけれども、その問題も一つ、この計画の中で善処するように考えられているのかどうか  それから、もう一つは、こういう災害の復旧は、三カ年でやるということでいつも約束されますけれども、それが五年、六年とたっている。こういう年度計画というものは必ず守っていくようにしませんと、結局、やり出して、そうしてそれが完成する時分には、また初年度にやった仕事がだめになっていくということで、結局、年がら年じゅうやっておらなければならぬようなことになってしまう。一挙にやってこういう災害対策というものは押えてしまわないと、結局、その予算の執行という面から見ても非常にむだになるというふうに思われるわけでありますので、そういう構想を一つ、お伺いいたしておきたいと存じます。

遠藤三郎自由民主党建設大臣・首都圏整備委員会委員長

○国務大臣(遠藤三郎君) ただいまの治水計画の問題についてお答えいたします。御指摘のように、昭和二十八年に大災害がございまして、その直後に内閣に審議会を設けまして、そうして治水計画の基本対策というものを定めたのでございます。この基本対策によりますと、大体一兆八千億円の投資をする必要がある、こういう結論が出て参りまして、それを十カ年を目途にして完成をする、こういうことで進んで参ったのであります。この基本対策に基いて、昭和三十一年を初年度とする五ヵ年計画を定めて参ったのでありますが、御指摘のように、この五ヵ年計画は、財政上の理由その他の事情から、なかなか思うように進まなかったのでございます。この五ヵ年計画が当初の計画通り進まなかったことは、はなはだ遺憾でございます。しかし、その後の情勢はいかがかと申しますと、御承知のように、ここ両三年来小さな河川、いわゆる小規模河川の災害が多くなりまして、その当時の計画には入っておらないような少規模の河川が非常に多くなったのであります。それと同時に、あるいは旱魃による潮どめ問題、旱魃対策の施設も非常に強く要望されるようになり、同時に、治水利水をあわせて多目的ダムの要望も非常に強くなって参りました。さらにまた、濁水、河川の汚濁防止の問題も非常にやかましい問題になって参りましたので、こういう新しい事態に即応するような諸問題をさらに考慮の上に加えて、そうして五ヵ年計画を変更するというのじゃなくして、修正をいたしまして、基本的な計画は変らないのでありますが、修正をいたしまして、今の情勢に合うようなものに変えて参りたい、その五ヵ年計画を策定をいたしまして、これを年次別に一つ実行していきたい、こういう意図のもとに計画を進めておる次第でございます。一兆八千億円の投資を一挙にすることができますならば、これは非常にけっこうでございますけれでも、財政上の理由その他の事情で、なかなかこれは一挙に完成をすることは困難でございます。従いまして、何といいましても、やはり財政の事情と見合せて実現可能の計画を立てなければなりませんので、五ヵ年計画をまず立てて、そうして年次を追うて逐次事業をする、こういう計画で進めておるわけでございます。  特に今回は、五ヵ年計画を定めるに当りましても、ぜひ一つ法律的の裏打ちをほしい。今まではそれがなかったのであります。その法律的な裏打ちは何をねらっておるかといいますと、これまた御指摘のように、計画そのものを政府の重要な政策として決定をする、そうしてその計画は必ず実現をしていくというような、そういうはっきりした決意を政府全体として持っていく、これが一つの点であります。同時に、これを実現をして参ります資金的なバツク等についても、閣議で決定をして、そしてこれまた政府の全体の計画として進めていく。そういうところに大きなねらいを置きまして、できますならば、五ヵ年計画の裏打ちになる治水事業促進法を制定いたしまして、そうして今各地で要望し、今小幡委員の御指摘にあるような治水事業の根本的な解決をはかって参りたい、そういう考えで今進めておる次第でございます。できましたならば、通常国会までにこの全体の計画を立案いたしまして、そうして国会の御審議をお願いしたいと思っております。  なお、この事業を進めて参ります場合に、地方負担が非常に多くなって参りまして、地方がやり切れないではないかというお尋ねでございますが、これは御承知のように、治水事業をやって参ります場合に、直轄事業につきましては、四分の三を政府が負担をいたします。そうして残りの四分の一につきましては、地方に対して交付公債でもって交付をして参ります。補助事業につきましては、三分の二の国費の負担をいたしまして、残りの三分の一を地方が負担をいたしますが、その三分の一に対しましてはそれぞれ起債を認め、その起債に対しては元利の償還をしていく、こういう建前で現行の法律でもやっておるわけでありまして、これを貫いて参りますことができれば、地方の負担も耐えがたい程度の負担にはならない、実行可能の程度まで地方の負担を軽くしていくことができる、こう思うわけでございます。それらの建前もはっきりして参りたい、こう思っております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 文部大臣に一つお伺いしたいと思いますが、勤評のいろいろな反対闘争、いろいろあって今日まで続いておると思いますが、こういう日教組、総評の闘争にもかかわらず、国民の中にも、また先生方の中にも、この勤評という問題の本質がだんだんわかってきて、要するに理解者が出てきておると思うし、これの反対闘争に先生が実際授業を放棄して、そして闘争に参加するというふうなことも、漸次反省されてきておると、これは非常にけっこうなことだと思うのですが、そういう傾向があると見受けられておりますけれども、文部省として、そういう全国の教職員たちが初めはかあっとして闘争に参加した、しかし、それがだんだん冷静になって、こういう面、非常に反省されてきておる。闘争参加の趨勢というものが非党に少くなってきておるというふうな件数について、どういうふうな統計を持っておられますか、どういうふうに感じておられますか、まず、それをお伺いしたいと思います。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えいたします。勤務評定をめぐる教職員組合の闘争が相当長きにわたっておるわけであります。今日なお依然として闘争の態勢が続けられておりますことは、まことに残念に存じております。この問題に対する闘争の状況でございますが、去る九月十五日の当時の状況と最近の十月二十八日に行われました闘争の状況とを比較して考えてみますというと、去る九月十五日には、御承知のように、最低正午授業打ち切りというのが日教組の統一行動の方針でございました。十月二十八日のは午後二時授業打ち切りというのが、その統一行動の方針であったわけでありますが、前回のときに比べますというと、この十月二十八日の闘争におきましては、前よりも条件が緩和されておるのでございますけれども、この日教組の指導方針通りに、ないしは、それ以上に闘争をいたしました件数がきわめて少数でございます。前回の関係府県が、われわれの見るところでは、大体十六府県くらいであったと思うのでございますが、二十八日の闘争におきましては、指令通りに、あるいはそれ以上に行なっておる府県というふうなものが大体七府県と、かように見てよろしいのではないかと思います。参加の人員数におきましても、前回に比べますというと、だいぶ減っておるようでございます。しかも、その七割程度は授業時間外に参加いたしておる、こういうふうに認められるのでございまして、様子は前回に比べますというと、よほど変ってきておる、かように申し上げてよろしいかと思うのであります。かような状態になりましたのも、いろいろ理由もございましょうけれども、何と申しましても、関係の教職員、現場の教職員諸君の反省というものが相当強くなってきておる。あるいはまた、現地の地区の住民の諸君の批判というものが相当強いので、こういうふうなことがかれこれ総合せられまして、かような結果になっておるのではないかと私ども見ておるわけでございます。  なお最近、各地におきまして学校長の組合脱退でありますとか、あるいは教職員の組合脱退の動きがいろいろあるようでございます。その顕著なものといたしましては、東京都におきまして、さきに事務職員が別の組合を結成する、あるいはまた最近、日教組から脱退いたしまして別個の教職員の団体を結成する、こういうふうな動きがございますことは御承知の通りでございます。地方におきましてもさような動きがだんだんと目についてきておるようなことは注目すべき現象かと思うのでございますが、これまた、今日の日教組の指導方針あるいはその指導の仕方に対して、現地職員の間に相当批判的な空気が生まれつつあるということを物語るものではないかと観察いたしておる次第でございます。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 ただいま大臣の御答弁で、まあだんだん先生としての本分を自覚されてこられた情勢が非常に濃くなってきておる。非常に父兄のわれわれとしてはうれしく感じる次第でありますけれども、要するに、その先生のあり方といたしまして、結局、日教組の、いわゆる組合幹部の強制的統制に屈しない、ほんとうの民主的な精神を尊重する先生方というものがきぜんとして出てこなくちゃいけないのだというふうにわれわれは感じております。ちょうど十一月の二日の朝日新聞でも、矢内原前東大総長がはっきり言われておりますが、要するに「教育行政の民主化を要求する者は自分自身の民主化を維持する努力を怠ってはならない。」、要するに、教職員がそういう統制じゃなくて、すなわち教育の国家統制に反対である者は、組合幹部の強権的統制にも反対であるべきはずであって、自分自身の自主的な意思の決定が組合活動の根底になってこなければならないというふうなことを言われ、そうして「個々の教師が、教育の技術面における研究だけでなく、教育精神を身につけることにつとめ、一人々々の生徒を愛し、親たちとよく話しあい、ペスタロッチが教育を愛し、教育を通して一人の子供のたましいを愛したように、教育の仕事に打ちこむことによって、日本の民主化は地道に、堅実な進歩を見ることができる。ストやデモや座り込みは、政治的闘争の一形態であるとしても、教育の道でない」のであるということをはっきり言われております。われわれはやはり今日の先生方が先生としての、教育者としての信念と勇気を持って、そうしてほんとうの教育精神を身に体して対処していただきたいということは、父兄、国民全体の念願だと思っております。で、そういう面から今日の先生というものを考えたときに、今の先生のこの養成の仕方といいますか、制度といいますか、そういう面について、昔は師範というふうな制度があって、先生としてのそういう教育精神というものをいろいろ勉強されてこられた。しかし、今日の制度といたしましては、ただ教養学部を出ればそれでもう先生の資格をとってやっていくというふうなことでありまして、私はそういう面において、先生がほんとうの教育精神を体して中正なる教育をやっていくというためには、教員養成の制度について、新しく考え直す必要がありはせぬかというふうなことも考えられるわけでありますし、また、そういう面、もし、できなければ行政指導においても教員の再教育といいますか、そういう面について一つ教育精神というもののほんとうにりっぱな先生を作り上げるということに、文部省としては力をいたしていただきたい。これが現在の国民の偽わらざるほんとうの心からの願いだと思うのです。そういう先生らしき先生というものを作る面におきまして、文部大臣はどう思っておられるか、一つ伺いたいと思います。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) 現在の義務教育関係の職員につきまして、いろいろな批判がありますことは、いなむわけにいかないのであります。もっと先生らしい先生であってほしい、こういうような希望は世間にかなり強いものがあると思うのでございます。それに関連いたしまして、教員の養成問題について検討する必要がありはしないか、こういうこともいわれておるわけでございます。文部省といたしましては、昨年中央教育審議会に教員養成制度の改善に関する意見を問うたのであります。それも今日の学校の教職員に対する資質の向上をはかるために、何かする必要はないかというふうな考えに基いての諮問でございました。これに対しまして、本年、中央教育審議会から答申をいただいておるのであります。今日の教員養成制度について、いろいろと検討を加えました結果、その答申が出ておるわけでございますが、その趣旨とするところは、きわめてけっこうな答申であると思うのでございますけれども、具体的にこれをどうするかというふうな問題になって参りますというと、いろいろ関係するところが多いのでありまして、財政問題もございましょう。人事の問題もございましょう。同時にまた、現在の教育制度に関する影響もあることであり、また現実に各大学等に相当な影響を与える問題でございますので、にわかにその結論を急ぐというわけには参らぬと思います。われわれといたしましても、今日の教職員の資質の向上ということは、きわめて大切な要務であると考えますので、その方向において、せっかく中教審から慎重に検討した結果の答申をいただいておるのでございますが、これにつきまして十分検討を加えまして、適当な成案を得たいと思っておるのでございますが、なかなか急速に結論を得るということは困難であろうかと思うのでございます。同時に、一面また、さような制度の改正は改正といたしまして、現在ある教職員の諸君が、日に日に向上してもらいたいということはだれしも考えることでございます。さような意味合いにおきましては、いわゆる現職教育を強化し充実していくということも考えなければならぬのであります。政府といたしましても、この現職教育の問題につきましても、熱意を持って今後努力して参りたいと考えております。

小幡治和自由民主党

○小幡治和君 最後に、全学連の問題なんですが、最近全学連の人たちの行動というものは、目に余るものがある。すなわち、もう武力革命を公然と宣言いたしまして、あらゆる闘争に参加して、政治活動をその本務といたしておるというふうな状況でありまして、われわれ非常に、学生としての本分から考えて、実に残念だと思っております。こういう面について、文部省は、一体全学連の学生がああいうような、まあ犯罪になるようなことを、また検挙されている人も相当あるんですが、ああいうようなことをやっても、それに対して、一体学校の監督なり処分なりというものを現実にやっておるのかどうか、要するに学校あたりでは、カンニングをやったとか、あるいはちょっと桃色遊戯をやったとかいえば、すぐ退学さしたりなんかしますけれども、一体こういう全学連の今日のああいう状況、またそれに犯罪、いわゆる法律違反をやって相当検挙されているような者、こういう者、しかも、共産党までが除名したという者を、なぜ学校が退校させられないのかというふうな点、そういう点、一つ文部大臣としても、しっかりした方針を持ってそれぞれの大学に指示し、またこれを監督し、処分することを考えていただきたいと思うんですが、その点について、文部大臣の御所見を伺いたいと思います。

灘尾弘吉自由民主党文部大臣

○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えいたします。全学連を中心といたします学生運動が、少数の指導者と、それに追従して参ります学生自治会幹部、こういうふうな者の指導によりまして、きわめて何と申しますか、独善的と申しますか、あるいはまた過激な運動を展開いたしておりまして、そのために、しばしば平和なるべき学園において、あるいはまた一般世間におきまして、公けの秩序が乱されておりますということは、私どもといたしまして、まことに遺憾であり、残念に存じておるところでございます。大学といたしましては、学生自治会に対する教育指導を徹底することによりまして、全学連の支配を排除するということに今日まで努力して参ったと思うのであります。同時にまた、学生の無反省な、あるいは無責任な行為に対しましては、はっきりした態度をとって、それぞれの処分を行うことによりまして本人の反省を求める、こういうことに努めて参っておるのであります。本年四月以降、勤務評定反対のために学生団体が行いました同盟休校その他の行為によって、大学当局から、停学とか戒告とかというような処分を受けました学生が七十名以上に及んでおるのでありまして、かような数字を見るということも、まことに残念なことでありますが、しかし、学生に対する大学当局の態度、またわれわれの心持といたしましても、懲罰をするのが能ではないのであります。できるだけその指導、善導に努めていかなければならぬ。大学としましても、教育をしなくちゃならぬという立場があるわけでありまして、その教育上の責任に遺憾のないようにしてもらわなければならぬと思うのでございます。文部省といたしましては、従いまして、大学の各教官においても、それぞれの立場において学生の指導に努めてもらいますと同時に、いわゆる学生補導の任を持っております諸君に対しましても、そう一そうの努力をしてもらうように随時連絡をいたしまして、実績の上るように努めておる次第でございます。今日の事態、まことに遺憾なことでございまして、われわれといたしましても、さらに一そう努力いたしまして、大学当局がますますこの方面のことについて努力を重ねて参りますように注意をいたしておるような次第でございます。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 総理大臣御都合があるようにも承わりますので、一括して総理にお尋ねすることを伺いたいと思います。  まず第一点は、国際収支は漸次改善せられまして、金融も緩慢化してきたのでありまするけれども、不況はかえって深刻の度を加えてきておると私どもは見ておるのであります。現に東京信用交換所の調べによりますると、十月の繊維業者の倒産教は四十二件でありまして、九月よりも五割以上増加をいたしておるのであります。また不渡手形も、東京初め名地の手形交換所が十月末に発表いたしたところによりますと、十月中の不渡手形は各地とも急増いたしておるのであります。特に東京におきましては、不渡手形総数六万八千八十九枚でありまして、戦後二番目の記録となっておるのであります。それにもかかわらず、不況対策は遅々として進んでおらぬのでありまして、現に中小炭鉱や絹、人絹業に対しまする救済融資もほとんど進んでおらぬような状態であります。手をこまねいて倒産を待っておるような状態にすら見受けられるのでありまして、この際、不況対策を、総理みずから陣頭にお立ちになって、積極的に推進せられる必要があると思うのでありますが、この点について、総理の御所見を伺いたいと思うのであります。  それから第二には、農林政策と商工政策とがあまりにも不均衡に従来からなっておるという点であります。たとえば予算について見ましても、農林の一般会計は八百三十億、ところが、通産関係になりますると百億、ことに中小企業関係になりまするというと、わずかに三十億というような状態であります。また、税金関係を見ましても、農業には事業税がないことは御承知の通りでありますが、商工業には事業税をかけられておる。しかもそれが都道府県税の過半額を占めておるというような実情であります。また、災害対策を見ましても、農業関係につきましては、農業共済保険あるいはその他至れり尽せりになっておると言っても過言でない状態だと考えるのでありますが、商工業に至りますると全然ないわけでありまして、少くとも商工業の災害救済につきまして、共済保険あるいは低利資金融通等の法律的制度を確立する必要があろうというふうに考えるのでありますが、これらの点につきまして、総合的見地から、農林、商工の政策のバランスをはかっていくという点につきまして御見解を承わりますと同時に、ただいま申しまするような諸点についての具体的な御見解を承わりたいと存ずるのであります。  もう一点は、一部の学者あるいは政治家の中には、日本の国字をローマ字にすべきだという向きが出て参りまして、そのために教育家や青少年の間には、すでに国字に対しまして疑惑と軽視の念が深まりつつあるのであります。これを放任しておきますると、いろいろな面におきましておもしろからぬ影響を与えてくると考えるのでありますが、これに対しまして、総理の御所見を伺いたいと存ずるのであります。  以上、三点を総理に伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  第一は、不況対策を総理みずから陣頭に立って強力に推進する必要があるんじゃないかということであります。しばしば国会の議場において、経済担当の国務大臣やあるいはまた、私自身もお答え申し上げておるのでありますが、現在の状況を、全体の経済の動きをどういうふうに見るかという点につきましては、これはいろいろの見方があることは当然でございますが、特に特別のいわゆる不況対策というふうな、一時的な刺激対策をとることはよくないということを申しておりますが、しかしながら、個々具体的に見て、この各種産業別の特殊事情等に基いて、あるいは繭糸の問題であるとか、あるいは一般蚕糸、織物業等の問題であるとか、あるいは石炭の問題であるとかいうふうな、個々の産業における特殊の事情やあるいは非常に困っておる状態に対しては、それぞれ対策を立てて、それを推進をいたして処置しておるのであります。ただ、それが現実になかなか最後の末端まで十分な効果を上げないじゃないかという御批判もあろう、また、そういううらみも私はないではないと思います。従いまして、それらの対策を立てましたものについては、それが徹底し、それが末端にまで浸透するように、今後といえども十分一つ努力をいたしたいと思っております。  第二の農林、商工に対する政策が従来バランスを失しておるんじゃないか、あるいは予算の面において、あるいは税制の上において、あるいは災害対策等について、この両者の間に非常にバランスを失してはいないかということに対する御質問であります。国全体から見て、われわれがただ形式的にバランスを失しないように努めるということだけでなしに、現実にやはり必要の度により、また、そのときにおける社会情勢やあるいは産業の事情等に基いてわれわれが施策を進めていくべきものであって、特に農民が中心の産業政策でなければならぬ、商工は二次的に考えるのだ、農をもととし、商工を第二次的に考えるというふうなわれわれは考えを持つべきものでないことは言うを待ちません。しかし、産業の事情から申しまして、対策としてもおのずから異ったことが出てくることは当然であろうと思います。たとえば予算の面につきましても、なるほど農林省の予算と通産省の予算を比べてみました場合に、非常な懸隔があることは御指摘の通りであります。しかし、日本の農村の事情やあるいは農業の実態から見るというと、これに対する施策が一つの補助政策的な形態を貫かざるを得ない事情にあります。商工の場合におきましては、あるいは金融の措置によって、直接国家が補助しなくても、これに対しての施設としては、むしろ金融の措置を講ずるということによって目的を達するというような点もあろうかと思います。また、おあげになりましたように、税制の面において、事業税は確かに商工業にはかけておるけれども、農業にはかけておらない、しかし、今日の税制の上から見て、固定資産税の負担の事情は、むしろやはり農民の方に事実上重くなっておるという実態もございます。しかしながら、事業税そのものの軽減の問題については、すでにわが党も公約いたしておりますように、今回の減税におきましてもこれは一つ十分に考えて参りたい。事業税の負担の軽減ということも、われわれは減税の場合には必ず考えるということを申しております。いずれにいたしましても、もちろんあるところに偏して、あるいろいろな政治的な力やその他から、ある部分は偏重し、ある部分は軽視するということは、産業政策としても、国の政策としても考えるべきことじゃない。私は、そういう意味において、重農政策をとるとかあるいは商工業に中心をおいた政策をとるとかいうことでなしに、十分必要な場面に必要な助成やその振興についての政策をとるようにいたしたいと思います。従来いろいろな面において、比較的にこの農業方面に関する施策が割合詳細に講ぜられておるが、商工業、ことに中心の問題は、私は小売商の問題が非常に大きいのじゃないか、中小企業といいますけれども、工業方面については相当な施策が従来行われ、相当な効果を上げておると思いますが、零細な小売商に関する点に関しましては、まだ非常に十分でない点が多いと思います。これらについては、今後われわれ大いにこれらの立場を擁護し、それの安定を考える意味における政策を樹立していかなければならないと考えます。今回出しております小売商についての法制等もその一端を示しておるものでありますが、なお、十分そういう点については留意いたしたいと存じます。  最後に、ローマ字の問題についての御質問であります。日本の国字と申しますか、われわれは漢字を用いて長い間きておるのでありますが、それもずいぶん複雑であり、難解であるという意味で、これをできるだけある程度簡素にしようというので、国語研究会といいますか、調査会でありましたか、当用漢字の数を定めております。しかし、なお、これに対してローマ字、これも相当長くローマ字論者というもののローマ字運動というものが行われております。また、これに対して、カナ文字を用いて漢字を用いないようにしようという論者もあるのであります。いろいろの点において、この国字というものは、国語とも関係をもっておるのでありまして、私はこういう問題はよほど慎重に、また、ある意味から言えば、専門的な知識も入れて研究をしなければ、軽々に決するということはむずかしい、すべきではないと思います。そういう意味におきまして、私は必ずしもローマ字は絶対いかぬという議論をするわけでもなければ、あるいはローマ字をこの際採用しようということを考えているものでももちろんありませんが、国字、国語の問題というものは、やはりその国の文化なり、その国のいろいろの社会の制度の問題にもつながっておる、思想にも関係のある問題でありますから慎重にやらなければならぬが、同時に、従来の非常に難解であり、また、それを教習し、同時に、使用することについてむずかしいようなものは、やはり簡素にしていくという、従来とってきている漢字の——当用漢字の制限というようなことからいくべきであって、今急にある国字を変えるというようなことは、私ども考えておらないのでございます。

松澤兼人日本社会党

○松澤兼人君 議事進行。総理は退席されるのですか。そういうことを委員長御了解ですか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 承知しております。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 豊田君の御質問の間ちょっと……。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 議事進行。総括質問で、総理の出席に関する件だから、総理をとめて下さい。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) すぐ帰ってきます。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 総理をとめなければ、僕の議事進行は意味をなさないのですから、それに関係する発言を求めておる。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 発言をして下さい。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 総理をとめなければ……。総括質問をやるときに、総理大臣がいない総括質問というのがありますか。質問があるなしは別ですよ。関係大臣の質問に対してどんな関連があるかわからないんですよ。一体総括質問というものは総理に質問するのが主です。各大臣に対する——一般各国務大臣に対する質疑は一般質問のときにやるべきもので、ただ、総理だけでは足らないところを国務大臣から補助をしていただくわけで、総括質問とは総理大臣に対して質問をすることなんです。だから、これから豊田君は関係大臣に質問するでしょうが、それにどんな重要なことが出てくるかわからない、その場合に関連質問をしようという場合にできぬじゃないですか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 今豊田君は、総理がいなくてもいいと言いますから、私は許しました。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 豊田君個人の問題じゃありません。理事諸君、私の発言がむちゃだと言うなら、集まって協議して下さい。(「便所ぐらい行ったっていいじゃないか」と呼ぶ者あり)トイレなら、その間質問をとめて下さい。トイレットは、これは生理的な現象だから、私はそんなやぼなことは申しません。総理大臣がお出になってから質問したらいいです。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 豊田君がいい……。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 豊田君個人のことじゃないですよ。予算質問というものをいかに運営すべきかということは、だれがいいとか悪いとかいうようなことはありません。

剱木亨弘自由民主党

○剱木亨弘君 今矢嶋君がえらいことを申されたのでありますが、質問者が質問されておって、質問が一応済んで、総理はお立ちになってよろしいとおっしゃったわけです。それで今トイレットに行った、トイレットに行った間休憩しておいて、帰るまで待っておるということは、予算委員会の前例にもかつてなかったことです。そういうことを今矢嶋君が言われるのはもってのほかで、豊田君が質問をされて、関連質問があるならば、総理がおいでのときに発言して質問していただけばいいので、豊田君の質問は質問として、進行してほしいと思うのであります。どうですか。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 これは矢嶋さんの議事進行ごもっともだと思いますが、総理がトイレットへ行かれたか、どこへ行かれたか存じませんが、少し長用便とみて、すみやかにお帰りになることで、議事を進行されたらどうですか。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 先ほど総理の答弁によりますると、多少不況対策は進捗しているというものもあるようでありますから、通産大臣に、多少進捗しているその不況対策の進捗状況、さらに今後の方針を承わりたいと思うのであります。

高碕達之助自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(高碕達之助君) 今回の不況は、生産設備が予定以上にふえたことと、それに対して、生産ができてもこれが消費が伴わないということのために起っているのが不況の原因だと存じまして、一方消費を増進せしめると同時に、在庫を調整し、同時に、生産はある程度制限するという現状で今進めつつあるわけでありまするが、現在におきましては、この消費の増進ということは、主として輸出を増進するということに帰着をいたしておりまして、輸出の方もいろいろな原因によって、最初想像しておったほど進まないわけでありますが、しかしながら、逐次在庫を調整する意味におきまして、外貨獲得ということよりも、それに重点を置いて参ります結果、あるいは延べ取引、円クレジットというようなものを実行に移しまして、逐次これらの話が進んで参りまして、この九月、十月に至りましては、前月よりも輸出の方が少しずつ数字がふえております。同時に、在庫も幾らか減っているわけなんであります。けれども、ここに特に不況を来たしているのは何だと申しますと、御承知の繊維だとかあるいは石炭工業、あるいは中小工業というものが、一番その悩みが多いわけであります。繊維につきましては、どうしてもこれは根本的に各種の繊維、つまり羊毛、綿花、同時に合成繊維、スフ等も一緒に、総合的に繊維の根本的の対策を講じていかなければならぬと存じますわけなんであります。ということは、従前合成繊維に少しく力を入れすぎた結果、あるいは綿糸布、スフだとか、それらに対する機織り機械等もこれを買いつぶすという方針で進みましたところが、合成繊維の方はやはり機織り機械を同様に増設するというようなことになっちゃ困るというようなことから、いろいろ考えまして、全体の総合的な検討を要するということのために、政府は繊維の総合対策ということを協議いたしまして、先般来、第一回の審議会を開きましてやっているわけなんでございます。そういたしまして、さしあたり生産を制限するということのために、綿花の割当につきましても相当手心を加え、同時に、機織り機械を本年度におきましては三万五千台買い上げるということのために、七億円という予算をもって、順次今これを進めつつあるわけであります。また、石炭鉱業の方におきましては、これは最初五千三百五十万トンという予定を作っておりましたところが、一般の不況と同時に、これを大量に使います火力発電の方が、水が豊富なために使わなかったということのために、だんだん貯炭量がふえて参りまして、一千万トンの貯炭量になる。ために中小の炭鉱業者の中ではこれを整理する人も起り、また大企業もこれに対する打撃が大きいわけでありますから、これが対策といたしましては、まず五月以来、大炭鉱業者の持っている石炭についての金融の道を講じる。そうして一方におきましては、中小炭鉱の行き悩んでいるものは買いつぶすという方針をとり、同時に貯炭のふえますものにつきましては、大きな消費者に頼んで、大きな消費者にこれを持ってもらうということを頼むと同時に、また下半期におきましては、石炭と競合いたします原油、外国の輸入油、これに対する輸入の制限をいたしまして、大体五十万キロリットルの輸入を制限いたしました結果、まず石炭として百万トンというものに対する原油の輸入を制限したわけでございます。しかしながら、このままで捨てておきますというと、この端境期にはやはり一千万トンという貯炭になるだろう。少くとも一千万トン、減っても相当の数量は貯炭がふえるだろうという、こういうふうなことのために、さらに最近におきましては、大消費者と協議をいたしまして、消費者に手持ちをしてもらうということにして、この端境期には、この来年の三月には七百五十万トンくらいの貯炭で押えていきたいという方針をとっているわけなんであります。  また輸出におきましても、また全体の整理につきましても、政府の思う通りには進んでおりませんですけれども、逐次この不況に打ちかつ方針で進んでおりまして、在庫は幾らか減り、生産も幾らか伸び、輸出も幾らか伸びている、こういう状態でございまして、この状態でいきますれば、来年には相当期待し得ることと存じております。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 救済融資の実績を見ますと、先ほども申し述べましたが、石炭などは、大炭鉱の方には六十億ばかりも出ておりますけれども、中小炭鉱には二十億用意しておるが、ほとんどそれが動いておらぬというような状態でありまして、これは一例でありますけれども、大体において絹、人絹、その他についてもこういう傾向が出ていると思うので、一面倒産者はどんどん出つつある。不渡り手形は急増してきている。政府の方では楽観せられておりますけれども、事実それ自身はむしろそれと逆の方向へ進んでいるにもかかわらず、今申しまする救済融資の方なども動かぬ、そこに非常に私どもは憂慮にたえぬものがあるのでありまして、この面については政府当局の方で、もう少し指導的立場に立たれて推進をせられていかないといかぬのではないかというふうに考えるのでありますが、この点につきましての御見解はどうでありますか。

高碕達之助自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、手放しで捨てておけば、どうしてもやはりしわ寄せは力の弱い中小炭鉱あるいは中小企業に参るわけでありまして、そういうことのないように、できるだけ政府は善導いたしておりますが、何としてもお説のごとく、中小企業者なり中小炭鉱に対する金融の道を早く講じなければならぬ、こう考えているわけなんでございます。まあ石炭の方は幸いに、貯炭がふえておりますが、中小炭鉱の貯炭というものは比較的少うございまして、約三十万トンくらいふえただけだと思っておりますが、大企業の貯炭はそれと比較して非常に大きな、二百何十万トンとふえている、こういうわけでございますので、多少その間は大企業にがまんしてもらって、中小企業者の方を助けるというふうな行政指導をいたしているわけでございます。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 消費財を賠償物資に繰り入れる、あるいは円借款の対象にするということが、不況対策といたしましても有意義なことと考えるのでありますが、インドネシアその他に対しまして、どの程度具体的に進捗しておるのでありますか、その見通し等を承わりたいと考えるのであります。

高碕達之助自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(高碕達之助君) 従前、賠償物資の対象といたしますれば、これは資本財をもってするということを原則といたしておったのでございますが、しかし、正常貿易を阻害しない範囲において消費財をある程度出す、こういうので、昨年来ビルマに対しましてはカン詰等の消費財を出したわけであります。今回やはり不況対策といたしましては、どうしてもたまっておるスフ、人絹とか、あるいは陶磁器というふうなもの、しかもそれはインドネシア等に特に輸出向きとして作られたもの等が手持ちになっておるわけでありますから、こういうものはどうしても賠償物資として繰り入れたい、こういうことに大体は方針をきめておりまして、いろいろ逐次話を進めておるわけでございますが、何しろ相手のあることでありまして、相手となってみるというと、やはり日本の現状等もよく考えて、いろいろ商取引というふうな考え方もあるわけでありますから、こちらからやかましくぜひ取ってくれというわけにもいかないと、相手の出方を待っているわけでありますけれども、幸いにインドネシア等におきましては、最近逐次、人絹等の問題につきましては話が進みつつあるようなわけでございますが、まだこれは具体的にはっきりきまったわけではございませんのです。しかし、方針といたしますれば、インドネシア、ビルマあるいはフィリピン等につきましても、あり余っているこちらの消費財を賠償物資にある程度持っていこう、こういうふうな方針は政府としてとっておるわけでございます。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 円借款の問題……。

高碕達之助自由民主党通商産業大臣

○国務大臣(高碕達之助君) 円借款の問題につきましては、これはただいま実行に移しておりますものはインドだけでございますが、インドの方は、大体先方は、円借款に対しましては資本財を持ってきてくれ、こういうようなことで、まだ消費財という話までは進んでおらないわけでありますが、これもまた円借款をやったときに、先ほど賠償の対象といたしまして消費財を持っていったというふうな考え方をある程度これに加味して持っていきたいと思っております。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 大蔵大臣に承わりたいのでありますが、外貨準備高は順調に増加しておるように思うのでありますが、十月末でどれくらいになっておるか、この点を承わりたいと思います。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 十月末で、まだ締め切りといいますか、精査できておりませんが、大体八億ドル程度になるのではないかと思います。三十一年の十二月、これがまあ最近多かった月でございますが、その時分が九億四千万ドル、それからずっと減って参りまして、ただいま申すように大体八億ドル、しかし、この中には支払いを予定しておりますもの、IMFに対して残りの六千二百五十万ドル並びに世銀に対しまして五千三百万ドル程度返済すべきものがございますから、そういうものをやはり差し引かないというと、残高としてはっきり出てこないわけであります。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 とにもかくにも、八億ドル台になって参ったのでありまして、予想したよりは国際収支は急速に好転しているというふうに思うのでありますが、こういう情勢でありますると、あまりに国内の経済水準を低く押えるということは、雇用力の面などから見ましてむしろ考えものではないかというふうに考えるのでありますが、こういう点から見まして、今後の経済成長率等につきましても相当深甚な考慮をめぐらす必要があるというふうに考えるのでありますが、この点について大蔵大臣はどういうふうにお考えでありますか。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまお答えいたしました五千三百万ドルはアメリカの輸出入銀行でございます。  ただいま御指摘になりましたように、経済情勢はよほど好転して参りました。次の段階として日本の経済を発展させ、そういう方向に持っていくべき時期が到来しつつあると思います。ただ、ドルを幾ら持てば積極的にやれるかという、その適正ドル保有高というものがなかなかきめにくいことでございますが、最近の情勢から、保有高は漸次増加する、かように考えますので、経済の発展の方向に勘考できる時期にきていると、かように考えます。

松澤兼人日本社会党

○松澤兼人君 議事進行。先ほども矢嶋君から強い要望があったわけですけれども、総理は生理的な要求にこたえて行かれたのか知りませんけれども、しかしもう時間はだいぶ経過しております。先ほど岸総理がお立ちになる格好を見ますというと、確かに呼びにこられてお立ちになった。これは他に非常な目的があるというふうに解釈するより仕方がない。しかも、うわさによりますと、会期延長が決定されたとか、されないとか、そのために総理が退席されるというようなことは、われわれ予算委員会を侮辱するものである、こう言っても差しつかえない。で、私どもは、今までずっと予算委員会の進行につきましては御協力を申し上げ、できるだけすみやかに、災害予算を含む今回の補正については、これを委員会で上げたいと思っているのであります。  そこで、私は、委員長にお願いいたしたいことは、もしもそういう事情で席をお立ちになったということであるならば、われわれは、今後この予算審議にも協力するわけにいかないのであります。これをはっきりと委員長において確かめられまして、先ほどよりもだいぶ時間が経過しております。いかなる理由で退席されて、いつになれば帰ってこられるのか、明らかにしていただきたいと思います。できるだけ、私どもは協力して参りましたけれども、これはまさに非常の事態であると、こう考える。委員長はどういうふうにお考えですか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) お答え申し上げます。私も社会党の皆様に非常に御協力いただいておることにつきましては感謝しております。ただいま総理は、豊田委員が質問をしておられる間に帰ってくるから、すぐ帰ってくるから立たしてくれと、こういうことでありましたから、委員長は許可いたしました。(「呼んできなさい」と呼ぶ者あり)ですから、今呼びにやっております。

松澤兼人日本社会党

○松澤兼人君 すみやかに総理の出席を求めます。委員長に善処していただきたいと思います。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 大蔵大臣に続いて承わります。  中小企業の年末金融と災害復旧資金のために、合せて百億を用意するということでありまして、さしあたりは七十億円ということでありますが、このうちの災害復旧資金がどの程度か、年末金融資金がどの程度か、その内訳を承わっておきたいと考えるのであります。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 災害関係十五億、残り、その七十億のうち十五億が災害関係でございます。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 そうしますと、いよいよ年末金融にはさしあたり五十五億しかないというわけでありまして、昨年の年末金融には、政府金融機関関係二百二十億出ておるのであります。それに比べると非常に少いわけであります。これは一般の金融が緩慢化したからというお答えがあろうかと思いますが、遺憾ながら、一般金融は緩慢化いたしましても、普通金融機関からは中小企業界に流れることはきわめて少いのでありまして、政府金融機関関係から入るものが大部分でありまするので、政府金融機関関係から特に流れてこないというと、一般金融はいかに緩慢化しても、中小企業金融は潤わぬ。年末は一般金融が非常に緩慢になっておるのにかかわらず、逼迫するというような奇現象が出るのであります。そういう点につきまして、すでに関係金融機関、ことに中小企業金融公庫あたりはもう火の車だ、これではとってもやっていけぬという悲鳴をあげておるようでありますが、これに対しまして大蔵大臣は、何か手をお打ちになる弾力的なお考えを持っておられるかどうか、これを伺っておきたい。

佐藤榮作自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど申しましたのは、御承知のように今回、特に年末金融並びに災害金融として計上いたしたのでございますが、三十三年度の中小企業向け金融は、三十二年度に比べまして元が大きいのでございます。その意味で三十二年と三十三年と比べてみますと、実際的には中小企業に対する金融が相当ふえておるように思います。今数字を申し上げてみたいと思いますが、第三四半期につきまして申しますと、三十三年度は国民公庫二百八十一億、三十二年度は二百五十九億、約八%の増、中小公庫の方は二百五億、三十二年度は百七十六億でありますから、これは一七%ふえております。商工中金は八百十二億、三十二年度は六百七十一億で、これは二割一分ふえておるわけでございます。そこで銀行まで含めていろいろ数字を御説明いたしますと、四月から八月までの中小企業向け貸出増は千三百四十五億ということになっております。そのうち銀行分は五百八十一億でございます。これは前年同期に比べますと、前年同期は、中小企業向け貸出は八百億でございます。銀行分などは二十億むしろ返っておる、こういう形でございますので、前年増加の金額を見ますと、銀行分といたしましては六百一億、また中小企業向け貸出増は五百四十五億というような数字になっております。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 議事進行について。総理大臣が本委員会を退席されたのは、ちょうど四時二十分でありました。ちょうど一時間経過いたしております。私は予算委員会の総括質問の段階で、質問者の意思のいかんにかかわらず、総理は着席しておるべきであるということを主張いたしました。けれども、委員長は委員会を運営されているわけですが、今や一時間を経過して、しかも、先ほど、わが松澤理事から発言がありましたように、国会の慣例を破った異常の事態が衆参を通じて惹起しているこの段階に、依然として総理が本委員会に出席しない。一体、委員長は、事務当局をして捜査させたと思うのですが、今、総理大臣はどこに行って、何をしているのか、報告してもらいたい。その了承ができなければ、本委員会はこのまま続けるわけにいかないと思う。どういう事態が日本国国会に起っているかということについて、委員長は承知しておるのですか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 委員長は国会の事態は承知しておりません。しかし、総理のあり方については、事務当局を通じて催促させております。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 総理はどこにおって、何をしておりますか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 今、調査させております。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 事務当局をして報告させてもらいたい。中間報告を求めておる。自民党の剱木理事はトイレットに行ったと言う、それで私は、それならばやむを得ぬと思ったのです。わが参議院会長羽生委員は、きわめてあなたに協力的な発言をして、委員会を運んでおる。それが委員長わからぬわけはないと思います。私は、わが党の会長の発言だから黙って下った。ところが、あなた、一時間も経過して総理は姿を現わさない。しかも、事務当局をして捜査させておるのだろうが、われわれ委員に対して、今、総理はどこにおって、何をしているという中間報告もないということは了承できませんよ。委員部は委員長に報告しなさい。委員長は、われわれに中間報告してもらいたい。総理大臣はどこにおるかわからぬもない。(「委員長、どこにいるのでしょうか、総理大臣は」と呼ぶ者あり)

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 今調べております。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 わかり次第に報告してもらいたい、強く要望しておく。

鈴木強日本社会党

○鈴木強君 私は今朝方から委員長の議事進行についてずっと拝見しておったのですが、たとえば委員の名前を呼ぶ場合でも、あるいは答弁者の名前を呼ぶ場合でもきわめてあいまいで、そこで坐っておられるのですけれども、ちょこちょこ口を動かすだけで全体の運営に対する委員長の発言は聞きとれないのですよ。先ほども、要するにもうすでに豊田委員に対しては剱木理事が耳打ちをして、そうして総理がいなくなるけれどもどうだという個人的な取引をしている。それで豊田委員は、最初に総理が用事があるそうだということを前提にして、一括質問されたのです。しかしわれわれはそういうことを知らない。しかし少くとも社会党の理事でさえ知らない、そういう委員長と理事と委員との間でそういうやみ取引というか、言葉は別としても運営について話し合いをしてやるからこういうことになるのですよ。総理が立とうとしたときに、委員長は理事と委員の話はわからなかったと思うのです。そこでちょこちょこ話をしたけれども、われわれだってわからなかった、立って行くときに理事が用便だということで立った、はっきり言ったじゃありませんか。それははっきり聞えたけれども、用便であるならこれはやむを得ないから、われわれ理事としても、会長の発言等もあったし、じっと委員長に協力してきた、ですからそういう不明確な議事運営をされては困るのですよ。今から四十分くらい前ですから、もうすでにどこへ行っておられるのか、便所へ行ったことはうそなんだということは、これは明らかにうそだということはわかった。そういう重要な審議の過程で委員を侮辱してうそを言って、そうして総理に退席さしてやるなんということはもってのほかです。われわれは絶対にそんなことでは承服できない、そんな議事進行する委員長だったら協力できません。それはそのときになってどうしましたかというので、中間報告して下さいという要求に対して、何ら委員長は誠意をもって答えようとしない。そんなにどこへ行ったかわからぬはずはないですよ。大体便所へ行くということで立ったはずですから、そんなごまかしてうそを言って、議事の進行を妨害するようなことをやるようなことは、委員長の責任ですよ。委員長はどういうお考えですか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 私は便所へ立ったとは申し上げません。それは剱木理事が言ったのです。私はそんなことは申しません。私は総理大臣が豊田委員の他の閣僚に対する質問中退席して、それが終るまでに帰ってくるから了承してもらいたい、という、理事から連絡があったから私は許しました。

鈴木強日本社会党

○鈴木強君 それはそういうことは詭弁ですよ。少くともその間における取引はこの委員会の中でやられたわけですから、委員長はそのことを聞いておったはずですよ。剱木理事が用便だということを言ったはずですよ。これはおかしいじゃないかということで質問をしている中で、野次か何かわかりませんけれども、とにかくここでみんなに聞えるようにそう言ったので、われわれはそれを聞いて委員長の言葉と一緒に判断をして総理に出ていただいたわけです。だからはっきり、そんなことですから、われわれはちゃんとそういうことを明確にしてやっていただかなければ困るし、それからまだ何ら中間報告ができないようなことでは困るということですよ。せめてわれわれ理事だけにでもなぜ言ってくれないか、そういう人を馬鹿にしたような議事進行をされたのでは困る。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 私はね、総理が突然立たれたので、理由を示されないので、どういう御用件でお立ちになるのか、本人並びに委員長に承わりたいと思って、総理をちょっとおとめいただきたいということをお願いしたわけですけれども、そのときに委員長は私の要請を受けられなかったわけです。そのまま総理は出ていかれたわけです。普通そういう渉外事務とか何とかいうような場合は、立法府もいろいろ便宜をはからなくちゃならぬが、何のために立たれたかわからない。われわれとしては、与党の理事として、トイレットだというふうに言った剱木さんに来てもらいたい、すぐ呼んでもらいたい。それから総理大臣は、まさか総括質問の段階に、理由も告げずに国会議事堂から外へ出ているということはないと思う。おそらく院内にいられることだろうと思う。事務当局が探しているのだから早く出席を願うとともに、総理が今すぐ来られなかったならば官房長官、官房長官を即刻本委員会に出席を要請して下さい。よろしゅうございますか。よろしゅうございますか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 要求しました。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 議事進行。委員も定足数を欠いているじゃありませんか。自民党の委員は殆んど出席していない。われわれ重大な災害関係の予算審議のときに忍びがたきを忍んで協力している。それを議事引き延ばしをやり、しかも衆議院においては会期延長をやったというじゃないですか。意味をなさぬですよ。各党としてもこれに対処して議員総会なり緊急に開かなければならない態勢にあって、われわれはつんぼさじきにおかれているんですよ。一体この予算委員会を何と心得ているんですか。委員長は責任をもって……少くとも予算委員会の運営は委員長だけの責任ではなくて、各党の理事の協力を得ているはずです。しかも自民党の理事の公けの席における発言をそれを取り上げて、真に受けて、私たちの方の会長は紳士だから、便所に行ったものだと思っていたのに、ほんとうのせっちん雲隠れをやられた。こういうきたないことはいまだかつてない。国会始まって以来、生理的現象にまで追及はできないから涙を呑んで……。せっちん詰めになっている総理大臣を早く出してもらいたい。こんなことで議事進行はできないですよ。与党の自民党はサボタージュしてこの予算審議に協力していない。委員長はどうする。与党の理事はどうしている。会期延長一個のためにかけ引きをやられているというのでは、今後の予算審議の進行ははかられませんよ。委員長、もっと責任ある発言をしたまえ。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 今要求しております。

伊能芳雄自由民主党

○伊能芳雄君 今総理を探している段階ですが、探しに行っておりますから、従来でもこういう例はしばしばあったことであります。質問者の了解を得て、その済むまでに出てくるという例は今まであったので、従来の慣例によったものだと思います。早く来るように催促することにしてお進め願いたいと思います。(「どこにいる」と呼ぶ者あり)呼んでいます。「官房長官どこへ行ったのだ。総理も官房長官もいないのか」と呼ぶ者あり)

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 今、官房長官すぐ見えます。(「総理大臣どこへ行ったの。委員長報告して下さい。委員長、中間報告して下さいよ。われわれつんぼさじきでわかりませんから、委員部の中間報告をお願いします。」と呼ぶ者あり)今、事務当局じゃなかなかわかりませんから、官房長官が来てお答えします。  速記をとめて。    午後五時三十二分速記中止    —————・—————    午後五時五十四分速記開始

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 速記を起して。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 私は先刻来、委員長に、総理大臣のあり方を、今何をなさっておるのか、本委員会に出席できないという理由を事務当局をして調査させて、その中間報告を、われわれ委員にしていただきたいということをお願いしたのですが、いかがになっているのでしょうかお教えいただきたい。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 委員長としても、非常に努力しておりますが、まだ向うから正式な返事がこないものですから、何らお答えができない次第であります。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 それでは、今のところ総理の行方は不明だということですか。院内か院外かもわかりませんか。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) わかりません。それで官房長官を呼んでおります。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 私は、参議院の予算委員の一名として申し上げるのでございますが、行政府から、予算案の審議をわれわれ立法府は求められているわけです。この予算委員会を委員長は司会されておられるわけでありますが、その総括質問で、総理は、ちょっと委員長の許可を得て、中座されて、院内におるのか、院外におるかもわからない。どこにおられるかわからないで、いつ本委員会に姿を出されるかわからない。そういうようなことで、立法府の予算委員会の委員長の職責が果されるでしょうかどうでしょうか。委員長は立法府の役員として行政府に対して、どういう所感を持っておられるか、予算委員の一人として委員長にお伺いしたい。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 御答弁いたします。  私も遺憾でありますから、極力、総理のあり方を探しているわけであります。(「官房長官はどうですか、いませんか」と呼ぶ者あり)

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 官房長官も、今要求しております。これもはっきりしないのです。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 私は念のため、ここで委員長に重ねて伺っておきたいと思うのですが、行政府が、そういう態度で立法府に臨まれるにおいては、今後、当委員会としては、政府から出される予算案の審議には、なかなかおいそれと協力しかねるという事態が起るのではないか、かように私は懸念いたすものでありますが、委員長としては、どういう御所見でございましょうか。こういう事態に対して、委員長として行政府に、何らかの強力なる意思表示がなさるべきものかと思いますが、どういう決意でいらっしゃいますでしょうか、御所信のほどを承わりたいと思います。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 私も、事情をよく調べて、委員長として、尽すべきところは尽したいと思っております。(「約束通り連れて来さえすれば、問題は解決じゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 議事進行について。  豊田委員が質問の持ち時間は、二十五分です、二十五分の答弁まで加えて、往復五十分程度です。その前に岸総理大臣が帰るということを、ここで確約していったから、多くの人は、おそらくは豊田氏といえども、ちょっとというので、五分ないし十分ということを想定したと思うのです。しかし、私らの方は怪しいと思って、議事進行によってそのことも問いただしたのでありますが、便所に行くということなので、それも許したのですけれども、いまだに来ていない。これは、豊田委員に剱木理事が耳打ちしてあったことなんですが、剱木理事は、総理大臣が、どういう用件で外に出たか、私わかっていると思うのです。すみやかに剱木理事を呼んで、そうして、ただしてもらいたいと思う。これはただ豊田さんと、それから総理大臣との間に、あるいは豊田さんと剱木さんとの間の個人的了解という程度のものを越えていると思うのですよ。もう二時間にもなっている。重大な参議院における予算委員会の審議というものが、総理大臣の雲隠れによって、審議がストップになったという前例は、帝国議会以来今日まで、初めてだと思うのです。こんな悪前例はないと思うのです。  これは、明らかに参議院に対するところの総理大臣の侮辱した態度で、委員長をなめた態度です。委員長は、一体予算委員会の運営に当って、今後、非常に難航するものと思われるが、すみやかに剱木理事を呼んで、何を私語し、どういう形において総理大臣をここから逃がしたかということを明らかにして、中間報告をしてもらいたいと思うのです。そうでないと、豊田君すらも、通謀した疑念を抱かれるだけに、緑風会に御迷惑がかかっちゃいけないし、加賀山君あたりは、だいぶ神経質になっておりますから、剱木理事を呼んで、一つ中間報告をしてもらいたい。

矢嶋三義日本社会党

○矢嶋三義君 先ほど、総理が退席される場合に、質問者が了承したということを、委員長も申され、与党の理事も言われました。先ほどからの空白時間がなければ、今、もう私の質問は始まっている時刻です。私は、ちゃんと総理の出席を要望してあるわけです。一体、私に何ともあいさつがないが、どういうわけか、私の審議権と質疑権は、どうしてくれるのですか、委員長。  豊田君の了承を得たというけれども、豊田委員の二十五分間の質問時間が、とっくに過ぎている。順調にいけば、無所属も済んで、私の質問時間に入っているわけです。国会に予算を審議してほしいといって、予算案を提出した責任者が、総括質問の段階に、黙って退席していって、しかも行き先がわからない、そういうことで、一体国会は運営できると思いますか。私の審議権並びに質疑権は、委員長はどうしてくれますか。御答弁願います。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 私も、はなはだ遺憾に存じております。ですから、全力を尽しております。

伊能芳雄自由民主党

○伊能芳雄君 先ほど来、いろいろ社会党の諸君からも御意見がありますが、豊田委員の質問は、総理がいなくても続行するというようなことで始めたのでありますから、この豊田委員の質問だけは、このまま続行されるよう、動議を提出いたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)

松澤兼人日本社会党

○松澤兼人君 議事進行。豊田君、質問者として豊田君には、まことにお気の毒なのであります。しかし、再々矢嶋君が言っておりますように、豊田君の持ち時間は、もう済んでいる。それから市川君がその次にやる。その次は矢嶋君がやる。こういうことは、本日は千田君が欠席している、そのあとはどうするかということで、私の方は、矢嶋君に、いろいろ勉強してもらって、きょうでも質問できるようにということで、通告しているはずであります。時間から言えば、とうに矢嶋君の順番になってきている。豊田君の質問が終ったら帰ってくる、それどころか、市川君の質問が終ってもまだ帰ってこない。そういう時間になっておる。矢嶋君の今、質問の時間になっているじゃありませんか。こういう事態を、そこから直していかなければ、今後の質疑というものは続行できないわけです。  言って見ますならば、結局は、何かほかの都合で、参議院における予算審議は、どうでもよろしい、ちょっと用事があるから出てくると言うたじゃないですか。これはもう、矢嶋君が言っておりますように、予算委員長としては、実に問題が重大だと思う。今の段階において、このまま休憩するとか、あるいはまた、豊田委員の質問を続行するとかというようなことが言われておりますけれども、少くとも国会におきまして重大なことは、院の構成であります。しからば予算委員会における最も重要な問題は、やはり総括質問の段階におきましては、総理外関係大臣が出席するということが、最も大事な要件であると思うのであります。この事態にかんがみまして、今、伊能君が動議を出されましたけれども、委員長としては、何よりも事態の収拾には、総理初め関係の大臣の出席を強く求めて、予算委員会における審議を順当ならしめることがその責任だと思うのでありまして、委員長は、どういうお考えを持っていらっしゃるか、そこをお聞きしたい。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 私も、はなはだ遺憾と存じておりますので、全力を尽しておりますが、いまだに、まだ総理も、官房長官も参りません。これは委員長としては非常に遺憾に存じております。ただ、豊田君は、総理がいなくとも、他の閣僚に質問して差しつかえないというお話でありますから、豊田君が質問を続けたいという御希望でありますれば、委員長としては、これを許します。

伊能芳雄自由民主党

○伊能芳雄君 動議を出しておる。動議をお取り上げ願います。

小笠原二三男日本社会党

○小笠原二三男君 ただいま委員長は、豊田君が総理不出席のままで質疑を続行するということであるならば、質疑をさせたい、こういうことで、一方的に伊能君の動議の内容について賛意を表しておられますが、その前段に委員長がおっしゃっておられることと、後段におっしゃっておられることとは、非常にこれは矛盾がある。豊田君個人の問題ではない。今や、かかって当委員会と総理大臣の問題になっておる。行政府との問題なんです。委員長は、国会役員として、その点十分腹に置いてお考え願いたい。まことに遺憾だということを再三申しておられる委員長としては、重大な総括質問の際に、総理への質問がないにしても、総理にかわって関係大臣が答弁をせられる国政万般については、総理は、聞いておらなくちゃいかぬ。そのためにこそ、総括質問なんです。委員会の権威のために、そういうような措置をとられることは不当である、妥当を欠く。  まず第一に、もしも、そういう進行をしたいということであるならば、岸総理が、いかにして便所へ行って以来、出席できなかったか、はっきり行政府の責任者から、その報告を聞き、そうして、今後において出席し得るかいなか、この点が、委員長の責任でわれわれに報告のない限りは、こういう動議について、われわれは判断することができないのです。判断に苦しむのです。今まで取り運んできたことを、途中で何のけじめも示さずにおっぽり流して、そうして質疑を続行するなどということは、委員長の権威をみずから失墜するのみか、われわれも参画している参議院の予算委員会の権威を失墜する問題である。何もないときに、伊能君のようなことがあって、動議として賛成するならば、われわれも、あるいは賛成するかもしれない。権威をお考え願いたい。  従って、こういう動議が出ておるという形式論をもってこのことを阻止しようとすることについて、豊田君自身において、参議院の予算委員会のために、自重自粛していただきたい。特に私は豊田君にも、この点を申し上げたい。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 先ほど私は総理がわずかな時間の退席と考えましたので、それがトイレットかどうか知りませんが、常識的に見て、生理的な要求があり、あるいはまた、そういう時間の中で済む所用と考えて、私は、あまりこだわることは適当でないと思って、委員長に御協力したわけです。しかし今小笠原君が指摘されたように、また前から、矢嶋君が言われましたように、もしこのまま議事が進行しておるならば、もうすでに矢嶋君の質問時間に入るわけなんです。当然そうだし、それを現在、ここにおられない、いつ来られるかわからない。しかも衆議院は、未だ国会史上まれに見る、ほとんど例のない、ルール違反のもとに、非常な事態となっておる。そうして、しかも参議院に、予算の審議を付託したこの総理自身が、未だにこの席におられぬ、そのままの姿で予算審議を続けるなんということは、私は今後の、当委員会のみならず、院の運営上、これは非常に重大な問題だと思うのです。  だから一片の動議でこんなことは片づける性質のものでなく、委員長の十分なる熟慮を願いたい。

伊能芳雄自由民主党

○伊能芳雄君 先ほどの、私の動議は撤回いたします。

井野碩哉自由民主党

○委員長(井野碩哉君) 食事のため、暫時休憩いたします。    午後六時二十二分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕

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