予算委員会 第5号
- 発言数
- 155 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1958/11/01
会議録
○楢橋委員長 これより会議を開きます。 昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。 質疑を続行いたします。森三樹君。
○森(三)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、外交、防衛、警職法その他に関しまして質問したいと思っております。 せんだって来当委員会におきましては、同僚の諸君によって現在問題となっておるところの安保条約の改定、あるいはまた防衛問題等について、いろいろと質問したのでありますが、当時外務大臣は健康を害されて御出席がなかったのでありますが、今日幸いに御出席されましたので、この際直接アメリカと外交の交渉に当っておられるところの外務大臣に質疑のできることは、私は非常に意義の深いことであると存じます。 この問題につきましては岸総理からいろいろとお答えがありました。しかし、われわれとしては非常に納得できないところの問題があると思うのです。しかもこの問題をなぜそう急がなければならないかというような本質的な問題もあるわけであります。この安保条約の改定という問題は、かつての重光外務大臣以来の問題でありますが、その当時はアメリカは、言うならばそっぽを向いておったような状態でありました。その後昨年岸総理が渡米されまして、アイク、ダレスに面会し、その後あなたが外務大臣として渡米されまして、大統領やあるいはダレス長官と面会して軌道に乗ってきたわけでありますが、ことし外務大臣が渡米されましてから、一そうその空気が濃厚になった。このことはもちろん日本の要請もあったでございましょうけれども、アメリカ側が現在ではこの安保条約の改定に非常に乗り気であって、急いでおるというような情勢も判断できるわけであります。これは言うならば国際情勢の変化、すなわち金門、馬祖に対するところの、台湾海峡におけるああしたところの中共と台湾との問題が大きくこれをささえている、このようにも私は思うのでありますが、あなたは先般来この安保条約の改定を非常に急がれまして、しかも安保条約の改定は、通常国会にその批准を求める意向だということを、しばしばあなたは公表しておったのでありますが、そう急がなければならない理由と、これをどうしても通常国会にその批准を求めるというような御意向を今までも持っておるかどうか。私はこういうような重大な日本の将来の安危にかかわるような問題につきましては、慎重にも慎重を重ねてやっていただきたいと考えるのでありますが、あなたの御意向を承わりたいのです。
○藤山国務大臣 先般来予算委員会で外交関係の質問がありましたとき、私病気のために四日間休みました。やむを得なかったのでありますが、御了承をいただきましてありがとうございました。 ただいまの森委員の御質問に対してお答えを申し上げたいと存じますが、安保条約の改定の問題は、国民的な要望から申しましても、すでに数年前重光外務大臣がアメリカ側に要望をいたしております。昨年岸総理がワシントンへ行かれまして、アイゼンハワー大統領と話をされましたときにも、この問題を正式に持ち出しておられるわけでありまして、その結果が日米安保委員会になりまして、日米安保委員会は、御承知のようにいろいろな問題を論議するわけでありますけれども、中で両国民の願望に沿うて、将来安保条約の問題を考えていこうというような取り上げ方において、安保委員会等においても論議されてきておるわけでありまして、従いまして当然私が今回ワシントンへ参りましてその問題をアメリカ側に話しますことは、従来からのいきさつから申しましても当然なことだと思っております。私としては、七年前にできましたこの条約が、現在の日本の国情から申しまして、適当でないということを強く申したわけであります。アメリカ側もその点を了承しまして、そうして外交ルートを通じてこの問題の話し合いをしていこうというのが、先般の結論であったわけであります。私は、必ずしもこれを何でもかんでも急いでやろうという気持はございませんけれども、事はお話のように非常に重要な問題であります。しかしながら私も過去一年衆参両院の外務委員会等に出まして、社会党からもこの安保条約等に対していろいろ御意見も承わっております。そうしたこともありますので、われわれとしては、委員会の論議等を通じて相当問題になっておる点等も了承しておりますので、できるだけ早くこれらの問題を解決していくことが、当然私どもの責任ではなかろうかと考えておるわけであります。 ただ通常国会に出すか出さぬかという問題でありますけれども、これらの外交交渉をやりますときに一応の目標を立てて参りますことは当然だと思うのであります。従って条約ができます以上は、両国ともそれぞれ議会にかけるわけでありますから、来年通常国会初頭くらいまでにこれらのものをまとめていきたいというのが、一応の目標でやっておるわけであります。
○森(三)委員 藤外務山大臣は、ただいますでに安保条約が締結されてから七年もたつし、国際情勢も国内情勢も変ってきたのであるから、これを決定することは当然であり、またアメリカ側もこれを了承したというようなお話でありますが、これは何も七年たったから改定しなければならぬというものじゃないのです。そもそもいわゆる屈辱的なサンフランシスコ条約の締結に当って、それに随伴して一つの安保条約という落し子が生まれたわけなんです。われわれは当初からこれに反対しておったのであって、あなたのように、その当初は当然のものであったが、国際情勢が変化したからこれも変ったというようなお考えを持っているから、今度の安保条約の改定に当っても、非常に国民の納得できないような政府の考え方が現われるのだと思うのです。これは最初から屈辱的なものであって、われわれは納得し得ないものだったのです。受けるべきものでないものを受けておった。だから一日も早く改定しなければならぬ問題だったのでしょうが、今日になってみると、やはりサンフランシスコ条約の締結ということが、無条件の降伏を前提としたものではあったけれども、しかしこれは日本の大きな将来を、国際的にも国力的にも非常にストップされたものだ。サンフランシスコ条約というものを締結しないで、西ドイツのやった方式でもって早急にやって、ああしたところの屈辱的な平和条約を締結しない方がよかったのです。われわれは基本的に間違っておったと思う。従ってこの安保条約というものは、平和条約に随伴したものであって、間違っておるという前提に立っておるわけです。ところがあなたは、今日では考えとしては改定しなければならぬというように言われるのですが、その考え方は幾ら議論してもあなたとは平行線で一致することはできないと思います。しかしそれにしても、これを今日あなたは非常に急がれておるといわなければならぬ。せんだって以来岸総理がNBCのブラウン記者等に語ったところの、憲法第九条は廃棄すべきである、あるいは中共は侵略国であるというようなことを盛んにおくめんもなく放送しておるわけです。これは結局日本の国民の気持というものをそういう方向に向けていって、安保条約を早急にアメリカの言うがままに締結しようという一つのゼスチュアでないか、こう私は思っておるのでありますが、この問題につきましても、われわれ同僚委員から岸総理に対しては、痛烈にこの取り消しの要求あるいはこの善処方を要求しておりますが、これに対しても岸総理は何らの善処の方法をとらないのであります。私どもはまことに遺憾にたえないわけでありますが、あなたは当時国会を休んでおられて、その岸総理の答弁もお聞きにならなかったけれども、おそらく新聞等において一応はおわかりであろうと思いますが、そのような情勢下において、日本の国内体制あるいはまた国際的な考え方というものを、安保条約を締結しなければならぬように仕向けていっているということが、私は非常に遺憾にたえないのであります。私は本日岸総理がここにお見えにならないから遺憾にたえないのですが、岸総理がおられたならば、岸内閣が成立して以来、外交上にプラスになったものがあったか私は問いたいのです。かの鳩山内閣においては、やはり民主主義的なイデオロギーのもとに、共産主義陣営のソ連と日ソ共同宣言さえも締結したのです。しかも国連加盟もいたしました。ところが岸内閣になってから、反共的な性格が非常に強く現われてきておる。こういう時代において反共精神をあおることによって、この安保条約を早急に締結して、アメリカの思うがままの条約に入っていこうとする危険を、私は十分に包蔵しておると思うのでありますが、これに対して御所見はいかがですか。
○藤山国務大臣 今回の安保条約の改定に当りまして私どもの堅持しております立場は、御承知のように、昨年総理がアイゼンハワー大統領と会見されまして、日米新時代が来たということを言われておるわけであります。その日米新時代が来たというのは、お互いに両方の立場を認め合って、対等の立場でもって今後の日米間の問題を話し合っていこう、われわれ安保条約の改定に当りましても、今申し上げたような立場を尊重しながら、従って私は必ずしもアメリカの言うがままに全部やっているということは考えておらぬのでありまして、そういう意味において日本の主張すべきは主張し、そうしておのずから妥結の道を開いていく、こういうふうに考えております。
○森(三)委員 なるほど表面上はそうおっしゃいましょうが、しかしあなたや岸総理は、しばしばワシントンを訪問しておるのですが、向うに行けば向うの事情に巻き込まれてしまうのです。かの太平洋戦争の行われる以前におきましても、日本のドイツにいる大公使は、やはりリッペントロップ外相のあの外交政策に巻き込まれてしまっておる。しかしながら、アメリカやイギリスにおる大使館の人々は、必ずしも太平洋戦争に対しては賛成していなかった。あなたは現在アメリカ一辺倒です。ほかの国の大公使やその他国際情勢に対しての判断は、あなたの手元にはあまり集まってもこないし、あなたはそれを検討されていない。アメリカ人の言うことだけ聞いていればなるほどと思わされる。そこに大きな幻惑が生じてくることをおそれる。しかして現在問題になっております安保条約の締結に当っては、われわれは以前から沖縄、小笠原に関するところの施政権の返還を政府に強く要求しておったわけであります。岸総理の答弁によりますと、今度の安保条約の締結によって、もしも沖縄、小笠原がこの範囲に入るならば、その自衛権の行使ということによってアメリカの施政権がそれだけへこむんだというような、まことに苦しい答弁をしておる。ひっこむとか出るとかいうようなことでなく、日本は何ゆえにこの施政権の返環を強力に要請しないのか、私はこの問題を解決してから安保条約の問題に入ってもらいたいと思うのです。御承知のように平和条約の第三条によりますと、領土問題については一時アメリカの領有にしてあるけれども、将来信託統治を国連に要求するまでの間という、暫定的の期間であるということが明定されてあります。すでに平和条約締結されて以来八年、アメリカは沖繩を永久化そうとする心持があることは否定できないと思う。そういうところを範囲に含めるとか含めないというようなことは、国民にとってはまことに重大であり、日本の防衛からいたしましても重大である。この際もしも小笠原、沖繩を安保条約改定の範囲に入れるならば、堂々とこの際施政権の返還、すなわち日本の主権の返還を主張すべきじゃないかと思うのですが、これについて外相の御意見を伺いたい。
○藤山国務大臣 沖繩の施政権の返還については、われわれも引続きアメリカ側に対して交渉をいたし、またその意思を持って話をいたしておることは当然のことでありまして、われわれ決してそれを放擲はいたしておりません。ただ現在の安保条約を改定して一歩でもよくしていこうという場合に、それらの問題とすぐに関連させなくとも問題の解決方法はあり得るのではないかと考えておるわけでありまして、そういう意味におきまして、一方では施政権の返還を要望しながら、他の方では安保条約の改定を進めていくということもできると私は考えております。
○森(三)委員 あなたはそういうことをおっしゃいますけれども、安保条約の締結ができたから、施政権の返還とかなんとか言ってもおそいのです。事は過ぎています。われわれは、平和条約の第三条に規定してあるところのいわゆる沖繩、小笠原、それらの島々は合衆国を唯一の施政権者として認めておる。そうしてその後、信託統治を国連に対して合衆国が提案するまでは、これは暫定期間だとわれわれ考えておるのです。ところが合衆国は、いつまでたっても国連にこの沖繩、小笠原というものの信託統治の提案をしておりません。言うなれば、これは私は永久化そうという考えであるかと思うのです。そうだとするならば、この平和条約の第三条に領土条項がありますが、これに対して変更する気持がアメリカにないとするならば、この際われわれはやはり沖繩あるいは小笠原というものを日本に返還すべしという要求をしなければ、私は日本に自主性とかあるいは対等性というものはないと思うのです。岸総理は常に、今度の条約の改定に当っても、自主性であるとか対等性であるとかいうようなことをしきりに言われております。なるほど言葉は美しい、りっぱかもしれぬ、しかし対等性が強調されればされるほど、日本の主権の行使という問題が大きくクローズ・アップされまして、それだけ大きないろいろな義務の負担も出てくるのです。私はその安保条約によって、沖繩、小笠原に対するところの施政権が一部引っ込むというような、そういうような詭弁を弄することなく、正々堂々とこの際アメリカに対してこれらの主権の返還を要求し、それが解決してからこの安保条約の改定に入ることが最も自主性であり、最も対等性であると考えますが、これに対して外相のきぜんたる御答弁を願いたいと思うのです。
○藤山国務大臣 沖繩の施政権の返還問題につきましては、われわれも決してアメリカに対してそれを主張することにやぶさかでないわけであります。従ってわれわれとしても、今後これらのことを主張し、この問題の解決に進んでいくことは当然だと思います。同時に現行の安保条約のいろいろな点を一歩でもよくして参ろうということ、これまた当然のことだと思うのでありまして、これらのものを並行してやりましても差しつかえないと思います。
○森(三)委員 外相の御答弁、必ずしもつまびらかでないのですが、そうすると安保条約の締結と施政権の返還を同時に進めるというような、あなたはさっき御説明がありましたが、やはり外相としては、もし安保条約を締結した場合には、岸総理と同じように、施政権の一部が日本に返還になるとか、あるいはアメリカの施政権の一部が引っ込むとかいう考え方をとるのですか、それとは別の考え方ですか。
○藤山国務大臣 この条約の適用の範囲をどうするかということは今後の問題でありまして、各方面の議論を十分伺った上で、われわれとしてはむろん条約の適用範囲ということをきめて参るわけであります。条約の適用範囲をきめ、またそれの自主的な運営をきめて参りました上に立って、どういうふうにそれを法律的に解釈するかということは、今後の問題として出て参るかと思っております。
○森(三)委員 どうもそこがはっきりしないのですが、そうすると安保条約を締結した場合には、施政権は——もし、沖繩、小笠原を含むとするならば、日本の自衛隊はそこに駐屯するわけになるでしょう、その駐屯する範囲内において、それだけ施政権が返還になるというわけですか、駐屯になるかどうか、そこをはっきりして下さい。
○藤山国務大臣 この問題はむろん今後の問題でありまして、今適用範囲をきめ、あるいはそれに対する共同防衛の措置を考える上において問題が起ってくると思いますが、沖繩に駐屯するというようなことを現状において考えておるわけではないのでありまして、もしそういうような問題がありますれば、それはそのときの法律的解釈をするということであります。
○森(三)委員 私はまずその安保条約改定の前に、これらの沖繩、小笠原の島々の施政権を返還せよということを強調すると同時に、われわれはこの安保条約の全面的な廃棄を、社会党の立場において要求しておるわけです。しかし全面廃棄もできない、それから施政権の返還も一体できないというのかどうか、そうして施政権の返還をしないで安保条約の改定に入るとするならば、先般来問題になっておるところのいわゆる西太平洋区域というものは、この中に包含されるのかどうか、この問題につきましても、もし安保条約を締結されるとするならば、その範囲として西太平洋というものを包含するのかどうか、外相の御見解はどうなんですか。
○藤山国務大臣 この安保条約の適用範囲をどうするかという、適用範囲というものについては、お話のようにいろいろな考え方がある、総理もそれについて数種の考え方を述べておられるのであります。そのどれをとるかということは、今後の交渉の上において政府が決定していく問題でありまして、現在はきめておらぬわけであります。今後の交渉によりましてわれわれとしては政府の態度をきめていく、こういうことで今申し上げかねるのであります。
○森(三)委員 これは総理がきのうの外務委員会で、西太平洋は含まないと言っております。あなたは総理以上に外相として相手国といろいろ交渉の責任に立っておる面から、当然あなたはそれに対して見解を表明しなければならぬ段階です。この予算委員会を通じて、国民にこの重大なる問題について、西太平洋を含むか含まぬかというあなたの識見は当然あるべきです。総理はきのう西太平洋を含まないということを、外務委員会で正式に発表されておる。あなたとしてもっとはっきりした、明快な答えがあってしかるべきだと私は思います。
○藤山国務大臣 私の承知しております範囲内では、条約の適用範囲というものが非常にいろいろな区切り方ができる、しかし総理としては、できるだけその適用範囲というものを小さくしたいということを言われたように聞いております。むろん私どもも、安保条約を作ります上において、適用範囲をできるだけ広げていこうということは考えておりません。その点ははっきりいたしております。ただしかしながら現実の交渉を担当しておる私として、現在どことどこだけに区切るとか、どことどこはどうするかということは、申し上げかねるということを申し上げたわけであります。
○森(三)委員 そこで私は先ほども、まず小笠原、沖繩の施政権を返還してから安保条約の改定という問題に入るべきだということを言ったのですが、あなたの答弁では、領土の返還、施政権の返還と安保条約は並行していくというような、非常にあいまいな答弁をされております。もしもこの安保条約を、われわれの立場から立って全面廃棄とかあるいは一応これをストップするということにおいても、日本は国際連合に現在加盟しておるわけであります。従って国際連合の立場において日本の防衛ということは可能なんです。また現在の岸内閣の外交政策は、国連中心の外交ということをしきりに言っておられます。それだとするならば、安保条約というものがかりに廃棄になったところで、国連中心主義の外交を展開しておる以上は、国連によって日本の安全というものは保障をされるのではないのですか、これはいかがですか。
○藤山国務大臣 森委員と若干考えが違うと思うのでありますが、私といたしましては、日本の安全を守る、侵略からこれを防ぐという意味において、やはり現在のような国際情勢下におきまして、しかも自国だけの防衛というものに非常に財政的な大きな負担のかかる現状におきまして、やはり集団的なある程度の安全保障というものは、現在の世界各地、共産圏諸国もやっております。自由主義諸国の中でもやっておるわけであります。少くもそういう立場に立って、日本の安全というものを集団的に考えることも方法だと思っております。またそれが現在の日本として妥当ではないかと思っております。従って日米安保条約そのものを廃棄するという考えは持っておりません。しかしこれは現在制定当時と事情も違っております。また日本国民の願望に沿って、これらのこともできるだけ改善していくという努力はすべきであると思ってやっておるわけであります。
○森(三)委員 国連の安全保障だけでは足らないから、集団安全保障を求めるのだという御意見ですが、私は、日本が今日ほんとうに平和と独立を維持するならば、こんな安保条約というようなものは廃棄して、そして国連中心主義によるところの安全保障というものを求めることが一番正しいと思うのです。それについては、先般来いろいろ意見もあるが、日本が永世中立を宣言して、スイスと同じような永世的な中立と平和を維持する、こういうことが私は一番望ましいことだと思うのです。これについてどういうようにお考えになりますか。そういう方向ということは、あなた方は全然考えていないのかどうか。
○藤山国務大臣 世界から戦争がなくなって平和になる、また永世中立というようなことで国が保てる、安全が保てるならば、非常にけっこうなことだと思います。しかしながら、私どもの見解からいたしますならば、現在の国際情勢下においては、必ずしもそういうことで国の安全は保てない、侵略から守れないというふうに考えております。
○森(三)委員 そういうお考えだとすれば、私は、日本は知らず知らずのうちにだんだんと戦争に突入していくと思うのです。日本がアメリカとの提携によって日本の防衛を強化するということは、結局岸外交の一つの目標であるところのアジアの一員としての平和の確立というこの問題から大きくそれてしまう。私がここで一つ重大なことを申し上げたいのは、いわゆる日ソ共同宣言ができて以来、日ソ間の平和条約の締結は、あの日ソ共同宣言の第九条によって当然行われなければならない。ソ連からはしばしばそうした要請があっても日本がそれに乗ろうとしない。私はことしの二月二十七日のこの予算委員会において、あなたに対して、国後、択捉の領土問題について、返還した場合にこれを安保条約の適用範囲に入れないという交渉を、アメリカ側の了解を得るようなことをしたことがあるか、あるいはロンドンの松本・マリク会談において、そういうような交渉をしたことがあるかという質問をした。ところがその場合、あなたは、ロンドンの松本・マリク会談においては、たとい国後、択捉が返還になっても、この安保条約の中には入れないように話し合いを進めておるという御答弁がありました。これはちゃんと速記録もあります。ところがその当時、そのことがアメリカに伝わって、何でもあなたは相当、非公式か何か知らないけれども、アメリカ側からつむじを曲げられて、非常に当惑されたという話も聞いたのですが、とにもかくにも、アメリカ側とのそうした共同防衛というものを強化していくならば、もうソ連の方との交渉はストップになる。現在でも岸総理は、中共は侵略国だといって盛んに放送している。憲法第九条はもう廃棄しなければならぬといって、日本がアメリカと、米台、米韓、米比というような、NEATOのような条約さえも行わんとする状況に入っていって、どうしてソ連との間に平和条約の締結ができますか。ソ連はますます——この間のモスクワ放送にもありましたが、日本がそういうような条約を締結する以上は、国後、択捉の返還なんということは、とうてい考えられないと言っているではありませんか。安保条約の締結は、日ソ間の平和条約をストップさせ、見限ったのだ、私はこういう観点に立たざるを得ないと思うのですが、この問題に対してあなたはお考えになったことがあるのか。もうそれはどうでもいいんだ、この際、国後、択捉どころではない、極東の平和と日本の防衛をするためには、そうしたものの返還なんということよりも、日本の防衛が大切だ、その方に踏み切ったのですか。いかがですか。
○藤山国務大臣 現行の安保条約を日本の国民の願望において改定していくわけでありまして、全然そうした条約のないところに新しく条約を作りますならば、あるいはソ連その他が不思議に思うかもしれませんけれども、日本国民の願望に沿って、現在ありますものを、むしろ総理の言われる自主的な立場で改定していくのでありますから、私は、ソ連との関係においても、向う側がそのことだけにおいて変な意識を持つということはないと思います。
○森(三)委員 それはほんとうに表面的な言いわけですよ。せんだって北海道では、ソ連の領土に近寄ったところの東北海道地区を中心とした、二万五千名参加のいまだかつてないところの大演習をした。そのことに対してさえ、ソ連は非常に日本に対して疑惑の目をもって、やはりモスクワ放送は、何のためにこうしたところで大演習をやるのだ、こう言って、刺激しておるのですよ。岸総理は、中共は侵略国だ、共産主義に対してはわれわれは日本を防衛しなければならぬと盛んに言って、そのために今度安保条約の改定ということが、急速にクローズ・アップされてきておるのです。あなたは従来ある安保条約を日本国民の要望に沿って云々と言っております。日本国民はそんなことは要望しておりませんよ。(「要望しているよ」と呼ぶ者あり)それは一部の者だ。そういうような観点に立って、とにかくこの条約を改定するということは、岸総理の言葉をかりて言えば、自主性であるとか対等性であるとか平等性であるとかいうことを盛んに言っておるが、強化されるのじゃないですか、弱化するのではないでしょう。だんだんほぐしていってなくしようという方向に行く、そういう改定なら国民は望むかもしれないけれども、それを強化していって大きな義務を負担するという、そういう条約を強化して極東の防衛、共産主義陣営に対するところの大きな防衛を行うということになる。それにソ連側で黙っておるはずはないじゃないですか。これは藤山さん、何といっても日ソ平和条約というものは捨てなければならぬ段階にきていますよ。それを両手に——アメリカ陣営と共同防衛を強化して、そうしてソ軍側から国後、択捉の返還をしてもらう、こんなことはできるはずはない。いわゆる現内閣の外交方針の一つであるアジアの一員としての平和を望むというその方向は、すでに消え去っていくのだ、こういうふうに解釈していいのですか。
○藤山国務大臣 どうもお立場とは並行的になるかと思うのでありますけれども、われわれから申しますならば、今申し上げたような観点から、問題の処理に当っておりますので、特にソ連を刺激したということはないと思っております。持にまたできるだけ世界から戦争をなくし、アジアの平和を確保していくというような問題については、われわれとしても常時努力して参ることは当然なことでありまして、そういう意味において努力を今後とも怠ることはいたさないつもりであります。安保条約の改定ということは、現状において、私は、現行安保条約から一歩でも二歩でもいいものを作っていくことが一番必要じゃないか、こう考えております。
○森(三)委員 現行安保条約を改定して、いい方向に持っていくと言うが、いい方向にならないのですよ、それならば、こうしたお互いに戦争の責任を負うような安保条約に入る前に、沖縄、小笠原の施政権を返還することを日本は堂々と要求してもらいたい。平和条約第三条によって、もはや、アメリカの占領というものはいわゆる暫定的な期間である、国際情勢の変化によって日本は堂々とこれの返還を要求してもらいたいと私は思う。それと同時に、ソ連に対しても国後、択捉の返還を要求してもらいたいと思う。一方には永久に領土主権というものを与えて、一方には領土を返還せいと言ったって、それは成り立たないのじゃないですか、いかがですか。
○藤山国務大臣 沖縄の施政権返還については、われわれも絶えずアメリカ側に対してこの問題を申し入れておることもちろんでありまして、施設権返還を捨てたわけではございません。同時に今お話のように、国後、択捉の問題についても、ソ連に対するわれわれの要求は変えておらぬのでありまして、そういう意味において、今お話のような御心配はないということを申し上げます。
○森(三)委員 それはお話のような御心配はないと言ったって、あなた方政府のやり方を見れば、相反したところのやり方をやっておるのです。ことしの春の国会ではずいぶん日ソ問題がやかましかった。その当時岸総理は何と言ったか。国際情勢の好転をわれわれは期待して、国際情勢の好転によって日ソ間の平和条約を締結する、そうして国後、択捉を含めたところの領土問題を解決し、安全操業の問題を解決したいといっておるのです。ところがその後われわれは外務省当局の方針や政府の方針を見ても、日ソ平和条約の締結なんということは、もうさっぱり打ち忘れてしまったような状態にある。それじゃそれに対して何らか交渉したことがありますか。
○藤山国務大臣 ソ連と平和条約を締結するという問題について、われわれは決して怠っておるわけじゃありません。ただわれわれが要望しております国後、捉択というものをはっきりソ連が日本のものと認めてくれるならば、いつでも平和条約の締結には進んでいけると思うのでありまして、その間、ただいまお話のありましたように、ソ連の態度がいろいろな意味において国際情勢その他から変化してくることをわれわれは待っておるというこでありまして、むろんこれらの問題についてソ連側に対として日本が国後、択捉をどうしても要求しているのだということは、絶えずソ連側にも申し出ているわけであります。
○森(三)委員 あなたはそういうことをおっしゃいますが、国際情勢の好転云々といったって、それは自然にくるものではない。変化してくるというのだったら、日本がみずからその国際情勢を作っていかなければならぬですよ。しかるにかかわらず、その国際情勢を対ソ連、中共に対してはますます悪くしている。そういう情勢下においてとうていわれわれはもう平和条約の締結なんということは、日本の思うようなものはでき上らないと思うもうそれを踏き切って、それを捨て切って、この安保条約に突入するということを私は一応政府が考えているのじゃないかと思うのです。この問題はまたあとで適当な機会において私は質問したいと思いますが、いずれにしても、この安保条約の改定は、日本の現在の当面の外交問題であり、また実質上は、これは日本の国防問題、防衛問題です。だから私は左藤防衛庁長官の出席も要求しておりますが、きょうは観兵式でおくれるそうですが、防衛庁長官が来たら私は聞くつもりですが、けさの新聞を見ましても、防衛庁から外務省に対して、この沖縄、小笠原を含むことは、とうてい現在の日本の防衛計画からしては、不可能であるということを外務省に対して申し入れをしておるということが今朝の新聞にも書かれているのですが、そういう事実はあるのですか。
○藤山国務大臣 防衛庁から外務省に対してそういう申し入れがあったということはございません。むろんこれは内閣の責任におきまして将来安保条約の締結をいたしますときに、それらの問題をあわせて考えることになろうと思います。
○森(三)委員 これは外務大臣は知っておられてそういうことを言っておるのか、知らずに言っておるのか知りませんが、けさの新聞にはっきり出ているのです。私は防衛庁長官にせんだってからこの問題を、これは日本の国防問題であるから、防衛庁としては基本的にどういう構想を持っておるのかということを尋ねようと思っておったのです。おそらく防衛庁では、西太平洋を入れるなんということは私は考えていなかっただろうと思った。ところが果せるかな、けさの新聞に出ているのです。これは防衛庁として、私は当然こうあるべきだと思うのです。ところがあなたは、そういうことは聞いておらぬというのですが、これはどうも納得できませんですね。あなたはけさ新聞をお読みになったかどうか知らぬが、読売新聞に、「日米安保条約改定の焦点ともいうべき、沖縄、小笠原を日本の防衛区域とするかいなかは、対米関係というよりは、むしろ国内の政治問題として重大化してきた」これは当然なんですよ。「岸首相や外務省筋が、沖縄、小笠原を防衛区域に入れるべきである、という見解に対して、直接軍事を担当する防衛庁の大勢は、これを日本の防衛範囲に含むことは危険である、という意見に固まりつつある。安保条約は言うまでもなく軍事条約であるが、その直接責任者である防衛庁がこれに批判的なことはきわめて注目すべきことで、政府部内の意見統一には相当の曲折が予想される」というのです。そうして左藤防衛庁長官の談話として、きのう「沖縄、小笠原を防衛範囲に入れることは軍事的に見た場合問題が残る。防衛庁としてはこの問題について統一的な見解をまとめたことはないが、統合幕僚会議(議長林敬三陸将)などはこれに批判的な意見を持っている、と語っているが、非公式見解として防衛庁の考え方はすでに外務省に伝達済みだといわれている。」というのですよ。これは大へんなことなんですよ。これは私は左藤さんが来たらよく聞いてみようと思いますが、まさか左藤防衛庁長官だってこれだけ重大な問題にでたらめを、言うはずはないと思いますけれども、それをあなたは知らぬととぼけておるのかどうか知りませんが、これはいわゆる外交問題だといったって、当然あなたの方は防衛庁と打ち合せなければ、日本の防衛力をにらみ合せたところの防衛計画でなければできるはずがないのですから、幾らあなたがアメリカと対等にやるとか平等にやるとかいったってできるはずはない、担当は防衛庁長官なんですから。また実際はあなたが打ち合せをしていかなければならない。かりにあなたがワシントンに行ってダレスやアイゼンハワーと話をするにしても、あるいは日本内地においてマッカーサー大使などとあなたが会うとしても、防衛庁と相談しないで対等とか、自主性とかいうことが言えますか。左藤防衛庁長官がここで言っているのですからね。それははっきりおっしゃっていいのではないですか。
○藤山国務大臣 防衛庁が外務省に何か申し入れをしたというような、そういう形において何も申し入れはいたしておらぬことは事実であります。むろん私が安保条約をやります上において防衛問題も重要でありますし、従って防衛庁長官等と懇談することも必要であり、また最終的にはそれらの意見というものは、先ほど申し上げましたように内閣の責任において統一されて出てくることになると思うのでありまして、それまでの間、防衛庁が外務省に申し入れをするというような形において何らかの意思表示があったことはございません。
○森(三)委員 その点はあとで左藤防衛庁長官が来るからお尋ねしましょう。しかしながら日本の憲法第九条の規定からすれば、海外派兵はできないのだということは、岸総理もしばしばこれを認めておる。また一般の見解もそうです。先ほど私は、安保条約がもし小笠原、沖繩を含めた場合に、その土地に日本の自衛隊が駐屯するのかという質問をしまして、あなたは、それはそのときの問題だと言われましたが、かりに駐屯するにしてもしないにしても、一朝事あった場合には、そこに日本の海上あるいは陸とか空の自衛隊が出勤するわけになりますが、そのこと自体私は憲法違反になると考えるのですが、いかがですか。
○藤山国務大臣 条約地域と、それから実際の防衛上の行動というものと必ずしも一致しない場合もございますし、ことに日本は御承知のように憲法上海外派兵をいたすことを禁じられているわけでありまして、当然できないわけでありますから、その立場からいいますれば、今申し上げたように、条約地代とあるいは防衛地域というものが必ずしも一体だとは言えない場合もあろうと思います。これらの問題をどういうふうに処置していくかということは、今後の政府の決定によって外交交渉をどうしていくかという問題だと思います。
○森(三)委員 これは岸総理も西太平洋区域は条約の範囲内には入れないということを言っておられますが、しかしその西太平洋区域というものの中に小笠原、沖繩が入っているわけなんです。これはいかがなんですか。そうだとするならば、その西太平洋区域のうちでも、小笠原、沖繩を入れる場合があり得るというように考えていいのですか。
○藤山国務大臣 区域を広くとるか、狭くとるかということは、総理が言われましたように、できるだけわれわれは狭くしたいという考えにおいて変りはございません。西太平洋地域というものを入れた場合に、その中に小笠原、沖繩が入るのか、あるいは小笠原、沖繩を別個の形で扱うのか、そうした問題については今後の交渉にも待つわけでありまして、それらの問題についてどういうふうにやっていくかということは、世論を聞きながらわれわれがやっていくことだと考えております。
○森(三)委員 ぜひ狭くしたいという御意見は、それは広くするよりかいいことはわかるわけでありますが、かりに狭くするといいましても、アメリカのヴアンデンバーグ決議案のように、お互いが一方の国を防衛すれば、その相手国も一方の国を防衛しなければならぬという、その責任ですね。これはやはりどうしても安保条約を締結するということになれば、相互性、対等性ということからして、日本が沖繩、小笠原を防衛する範囲の中に入れなければならぬような形ができるのじゃないですか。これは除外できないのじゃないですか、その点はいかがなんですか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げたように、原則的に申し上げまして、条約の発動する地域、つまり、侵略があったかないかという問題、その地域と、それから実際に防衛活動をする地域というものは、これはある程度分けて考えてしかるべきじゃないかと思っております。
○森(三)委員 そういう場合はあり得るかもしらぬ。しかし、私はアメリカ上院のヴアンデンバーグ決議案によって、相互防衛条約を締結する場合には、アメリカが日本の領土を防衛するならば、日本もまたアメリカの領土の一部、あるいは施政権を持っているところを防衛しなければならぬというこの決議案というものは、安保条約の基本的構想に入るのじゃないか、そうだとすれば、沖繩、小笠原を——われわれはそんなものは当然日本の憲法に抵触するのであって、防衛の範囲に入らないと思うのだけれども、岸総理あたりは、まだはっきりした観念ができておりません。岸総理は、いわゆる観念論と現実論と分けておるのかもしらぬが、われわれとしては、そうした問題について、政府がもっとはっきりした回答をこの委員会を通じて国民に発表すべきものだと私は思うのですよ。それらの点については、藤山さん、まだはっきりしたお考えを持っていないんですか。
○藤山国務大臣 それらの問題につきましては、今後交渉の問題でもありますし、また政府が今後はっきりした態度を漸次きめていくことになって参ろうと思います。
○森(三)委員 そこで、私はさらにこの安保条約締結に当って最もおそるべき問題は、御承知の通り、アメリカと台湾、アメリカと韓国、あるいはアメリカとフィリピンというようなそういう相互援助条約があることは、もうあなたも御承知の通り、日本がこの防衛条約締結に当って、当然それらの国々はアメリカとの間に、沖繩を防衛圏内に入れてあるわけです。そうすると、日本も当然、この沖繩、小笠原を含めた場合には、そこでもって、将来締結することがあろうというようなNEATOの条約というような問題も出てくると思うのです。日本が防衛条約を締結して、沖繩、小笠原を含めれば、当然そのような間接的に台湾とかフィリピンとか、あるいは韓国とかいうような国々と共同防衛の形が生まれるんです。それらの問題については、どういうふうにお考えなんですか。結局それは対共産圏とのおそるべき戦争の危険に巻き込まれるということになるわけです。これに対して、あなたはお考えになっておらぬですか。
○藤山国務大臣 総理も言われておりますように、われわれとしてはSEATOに入らぬ、またその立場をとるということは、はっきりいたしておりますし、日本がいたずらに戦争に巻き込まれるというような考え方でもって、われわれはこの交渉をやっておらぬつもりでありまして、できるだけ日本の担当の侵略区域に対する固めをやっていくというのがわれわれの心持であります。
○森(三)委員 そうしますともちろんその条約は別々であるけれども、しかしながら実際問題としては、それらの諸外国と共同防衛の形において戦争が行われるということは予想されるわけなのですが、あなたはもちろん別々だと言うならば、それに基いて将来それらの国々と共同の防衛条約すなわちNEATOのごときものは絶対に結ばないということをここで断言できますか。
○藤山国務大臣 この点は、もう総理がはっきり言っておられますように、私としてもそういう条約の中に入ろうということを考えておりません。
○森(三)委員 そういう考えを持っておらぬことはまことにけっこうですが、また国際情勢の変化とかアメリカの圧力によって、われわれはそういうことにだんだんと深入りすることをおそれるわけです。今日日本の進んでおる姿を見ますと、政府は自主性とかあるいは平和というようなことを盛んに言っておられるけれども日本の現状というものは一歩々々戦争の危険に突入しておる。その姿が、外交的にはこの防衛条約であり、国内的には警職法その他の国民に対するところの弾圧法規、戦前のいわゆる治安維持法とか治安警察法とか、行政執行法とかいうようなことになってきておる。とにかく国民の権利を圧迫しなければならぬような法規を作ることは、必ずそこには大きな政府の統制、政府の一方的な権力を国民に押しつけるということが前提になってきておる。この安保条約の改定こそは日本の将来の運命を決するものだ。藤山さんは外務大臣になって、まだまだ日は浅いのです。浅いところへ、こうした大きな問題に直面されて、一面からいうならばほんとうにお気の毒ではあるが、一面からいうならば、全く、何となく私はたよりない気持がする。あなたがこうした問題について取っ組む以上は、ほんとうに日本の防衛という問題を十分にお考えになって、——さっき言われたことでいいことは、できるだけ範囲を縮小したいというようなことを言っておられることがいいわけでありますが、そうしますと、現在の段階においては、沖縄、小笠原を含めるというようなことは考えておらないのですか。それとも除くというのですか。それとも今後世論に聞いてどうこうするというのですか。その辺はいかがなんですか。
○藤山国務大臣 私は交渉の当事者であります。今除くとか除かないとかいうことを、この席で申し上げるわけには参らぬと思います。
○森(三)委員 そこで私は一つ警告を発しておきたいと思いますが、沖縄の島民の中には、この安保条約の中に入れてもらって、日本の自衛隊でも来てもらえばアメリカが帰っていくというような安易な考え方を持っておる者なきにしもあらず、そういうようなものを世論というものの中に考えられては困ると思うわけです。そういう人はだだ多年のアメリカの圧制下において、日本の自衛隊でも来れば多少は気がほっとするかもわかぬが、それは空腹のときの胃袋の満足であって本質的な満足ではない、決してアメリカというものは、沖縄というものは東洋における軍事基地として永久に返す見込みはないと思うのです。それだからわれわれは声を大にしてこの際施政権の返還を要求しておる。たとえばそれが今後二十年後、三十年後であってもいいのですよ。今すぐ返せといったって返しっこないのですから。この条約を締結するに当って、今後二十年あるいは三十年後においてはこの施政権は日本に復帰するのだというくらいの取りきめはあなたはできないのですか。それくらいやらなかったら国民に申しわけつかないと思いませんか。私は当然それくらいのことがあってしかるべきだと思うのです。それでは日本は共同防衛という重い責任を負わされるばかりであって、日本に利するものは何にもつないじゃないですか。しかも戦争に突入する。岸外交の三原則というものは全くなくなってしまいますよ。国連中心主義の外交とかアジアの平和の一員とか言ったところでほんとうに国民は信頼しない、これに対してどういう御所見ですか。
○藤山国務大臣 沖縄の施政権の問題については、絶えずわれわれはこれを要求しているわけでありまして、二十年先、三十年先にどうしたいというようなことを今言うのは適当でない、絶えず言うべきであると私は思っております。
○森(三)委員 どうしてもそれはあなたとしては今言えないというのですか。しからば現行憲法第九条下において、日本が沖縄に対して、いわゆる共同防衛の範囲に入れることは可能なんですか。どうですか。その見解を一つお聞きしましょう。
○藤山国務大臣 日本が海外に出兵、日本の領土以外に自衛権を発動できないということは当然なことだと思います。憲法でもそう解釈されておるわけであります。むろん潜在主権は持っておりますけれども、しかし現在のところ、施政権を向うに渡しておるわけであります。従ってそういうような制約のもとに憲法を解釈すべきだと、こう考えております。
○森(三)委員 そういう制約のもとに憲法を解釈したいというのですか。憲法の解釈上沖縄、小笠原を入れることは可能だというのですか。可能でないというのですか。
○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、条約において適用される範囲と実質的な防御力の行使とは違うわけでありますので、そのように規定されることもできるわけです。それらの問題はそういう意味において御了解をいただけると私は思います。
○森(三)委員 そういう解釈、たとえば防衛範囲に入れるか入れないかということは地域の問題とまた別だ、こういうお考えを持っておるということで、今後そのような疑問については適当な機会に質問することにいたしましょう。 そこで、この安保条約をどうしても改定するとするならば、これに伴って安保条約の第三条の規定に、アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその付近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定でこれを決定するとあります。これは早急の間にやったからやむを得なかったのかもしれないけれども、今度は私はみっちりと安保条約の中で現在行政協定に規定されてある条項もできる限りきめなければいかぬと思う。そういう行政協定に委任することによって、いろんな日本国内における不祥事件が起る。あなたも御承知の通り、先般の九月の七日、ピーター・E・ロングプリー三等航空兵は武蔵野音楽大生の宮村祥之君を射殺してしまった。ひとりむすこがとうとう射殺されてしまった。これはやはり日米行政協定の不備からくる一つの悲劇だと思う。だからもうこういう理由なき犠牲の発生は絶対に繰り返さないようにしてもらいたい。その他相馬ヶ原の農婦射殺事件、その他幾多あげれば枚挙にいとまないほどの不祥事件が起きています。せんじ詰めれば、アメリカ軍隊の日本人に対するこうした暴行だとか、あるいはアメリカの空軍が日本の民家にいろいろな形において莫大な損害をかけたというような問題は、やはり行政協定の不備から起きるのだと思います。従いまして、この安保条約の改定に当っても、岸総理の言ういわゆる対等とか自主性とか平等とかというならば、あなたはそれだけの気持を、持ってはっきりとこの安保条約の中にできるだけのものは規定しなければいけないと思う。そこで私はお伺いするのですが、日本で使う基地その他については、もちろんあなたとしても少くしたいというお考えだろう。現在アメリカ軍の撤退等によってだんだん少くなっています。もちろんこれは少くするのは当り前です。平和条約の条項の中には、平和条約が締結された後、九十日たったならば全部引き揚げると規定されております。現在駐留しているのは、ただし書きによって駐留しているのです。原則的にはもう全部撤兵しなければならぬのです。従いまして、この安保条約を改定するとするならば、行政協定の改定も当然随伴する問題ですが、行政協定に委任しておくと、これまた国民の権利義務に大きな影響を与える問題がたくさんある。この問題につきましては、あなたもいろいろお考えがあるだろうと思いますが、基本的な考え方としては、やはり日本の国民の生命、財産、権利を守るという根本方針に立たざるを得ないと思います。従来の行政協定の規定を見ますと、ほとんどアメリカの御都合のいいように規定されている。これは屈辱外交の現われだから仕方がない。これらにつきましては、あなたはどういうお考えですか。
○藤山国務大臣 安保条約を改定しますときに、お話のようにわれわれとしても、行政協定に譲られた問題等につきましても、規定さるべきものはできるだけ規定していきたいということは当然考えておるところでございます。同時に行政協定そのものの中にはほんとうに行政事務としてまかされる問題もあるわけでありまして、それらの問題については、必ずしも全部が行政協定でなくてはいけないのだということは考えられないわけでありまして、そういう点については、本条約ができますれば、行政協定そのものについてもやはり検討をして参るということで考えております。
○森(三)委員 だんだん時間が切迫しましたが、そこで日米の共同防衛条約ができた場合に、もちろんアメリカの言う通りに日本の自衛隊が動くわけにいかないし、またアメリカが作戦行動する場合におきましても、日本の基地からやたらに韓国や台湾に行かれても、大へんなことになるのですが、これについてしばしばいわれているところの作戦用兵についても、事前協議とか相談してそれをきめる。日本の安全に支障のないような事前協議のもとに作戦行動する、こういう条項は必ず入れていただきたい。また入れるべきが当然だと私は思うのです。そうした問題につきましては、確固たる御信念があるのですか。
○藤山国務大臣 日米が同じような立場に立って話し合いをする以上、協議をすべき事項が非常に多くなって参りますし、あるいは当然協議をしなければならぬ事項は協議をするように、広範にわれわれとして考えて参りたいと思っております。
○森(三)委員 それから外務大臣も御承知の通り、米韓あるいは米台等の条約、これは一年前の破棄の予告期間というものを認めてあるのですが、今度の安保条約の改定に当っては、現在の安保条約では、お互いの個別的もしくは集団的な安全保障の措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国政府が認めたときは、いつでも効力を失うということが、現在の安保条約の四条に書いてあるのですが、この条約の効力を喪失せしめるところの規定というものは私は重大なものだと思います。これは期間を書いて定めることもできましょうし、いろいろありますが、日本が対等の立場に立つとするならば、私はやはり米台、米韓の条約のように、一年間の予告期間をおいて破棄する通告をすることが可能である、こういう立場に立つべきだと思うのですが、これについてはどういうようにお考えになっておりますか。それくらいのことはお考えになっているのでしょう。
○藤山国務大臣 条約に期限をつけますことは当然だと思っております。われわれはその立場から主張して参りたいと、こう思っております。
○森(三)委員 それでは私は、防衛庁の長官がもうお見えになりましょうから、防衛庁の長官がお見えになりましたら、防衛問題とからんで藤山外務大臣に……(発言する者あり)それでは、ちょっとお待ち下さい。委員長、私は法務大臣にお尋ねします。 せんだって法務省の前で……。 〔発言する者あり〕
○楢橋委員長 静粛に願います。
○森(三)委員 学生のデモに暴行を加えた警官、この警官の処分についてどういうふうにされたかおわかりですか。
○愛知国務大臣 ただいまお尋ねの件は、いわゆる新聞記者に対する暴行の警察官の処置の問題でありますが、本件は十月三日に警視庁から検察庁に対して送致を受けまして、ただいま東京地方検察庁において捜査中であります。これは御承知のように、集団的に行われた犯罪でありますために、関係者が非常に多数にわたっております。なおまた目撃者等の取調べも相当広範囲に行わなければならない関係もありまするので、かなり時日を要したわけでありますが、近く結論が出る見込みであります。
○森(三)委員 東京の法務省前の暴力警官十二名、これは私は実におそるべきところの人権侵害が行われたと思うのです。これも言うならば、警職法の改正が出るということが、非常に大きな驕慢といいますか、そういうような気分を警官に与えたのが一つの動機じゃないかと私は思うのです。従って、もしこの警職法が通るならば、警官の権力が増長され、さなきだに、いきり立ってくるのじゃなかろうか。警官十二名が暴行を加えて、そうしてその事件が自分たちの警察で取調べを受け、大幅な処分をされ、しかも現在検察庁に書類送検となって取調べを受けている。現在、法務大臣のお話では起訴されるかどうかわからないというような段階なんですが、やはりこれは国民の非常に疑惑を持っている事件ですから、こういう問題は、自分たちの警察の行なった事件だからといって、なおざりにしてはいけない。この間警察庁から処分を発表したことによって、いささかなりとも国民はこの問題の処置について納得する気持もできましたけれども、しかしまだ刑罰の問題については、何ら解決されておらないのでありまして、非常にこの問題はあとを引いているのですから、きぜんたる態度をもって臨んでいただきたいと思う。 それから、八月の十六日の和歌山におけるところの勤評反対のデモの場合において、多数の暴行警官の問題が起っている。この問題については、何らまだ具体的な処分等は行われておらないが、私は警察庁当局もまた検察庁も無責任きわまると思うのですが、これに対して愛知法相はどういうお考えを持っているか。またどういうように現在取調べが進行しているのか。
○愛知国務大臣 先ほどお尋ねの警視庁の警察官の問題につきましては、ただいまも御指摘の通り、非常に重大な案件と思いますので、先ほど申し上げましたように、非常に徹底して慎重な捜査をやっておりまして、その関係から多少時日が延び延びになっておるような感がいたしますが、近くこれも結論を出す見込みでございます。先ほど、起訴もしないのじゃないか、あるいは警察官であるがために特殊の配慮をしておるのではないかというような趣旨のお話がございましたが、これはあくまで厳正公平に措置をいたしたいと考えております。 それから和歌山の問題は、御案内のように直接の当事者、被害を受けたと称せられる方々から、直接検察庁に対して告発をされました。検察庁はこれを受理いたしまして、やはり慎重に捜査中でございます。これまた近く結論が出る見込みであります。
○森(三)委員 こういう問題は、警職法が出るということで、警察官が非常に思い上いてきていると私は思うのですよ。もしもこの警職法が通ったならば、これはもろ手のやいばを警察官に与えるようなおそろしい段階になると私は思う。最近の警察や検察庁の思い上りというものはおそるべきものだ。その一例として私は申し上げたい。せんだって北海道新聞の苫小牧の王子製紙における争議のニュース写真が、札幌の駅前の五番館というデパートに展覧された。それを札幌地方検察庁では、突如として押収令状によってこれを証拠品として押収してしまった。これは日本が法治国として始まって以来の重大事件だと私は思うのです。いかに戦時中でも、あの人権じゅうりんをした東条内閣でさえも、新聞がニュース写真としてとったものを、押収するというようなことはなかったのです。民主憲法が生まれた今日において、検察庁が、報道の自由を許してあるところのニュース写真を押収して、それを証拠品として使うというようなことは、これは断固として許されることじゃないのですよ。日本の検察庁というものは、まだそんなに堕落していなかったと私は思うのでありますが、最近出てきたところのこの問題に対しては、これは断固として取り締ってもらわなければならぬと思う。私はせんだってこの問題について取調べを要求してあったのですが、今日愛知法相は、相当詳細なデータが入っていると思いますから、一応お答え願いたいと思います。
○愛知国務大臣 苫小牧の争議に関連して、新聞の写真の押収問題についてのただいまのお尋ねに対してお答えをいたしますが、実はこれは、ただいまお述べになったことと、多少事情が異なるように私は思うのであります。札幌の地方検察庁は、九月十五日に王子製紙苫小牧工場において発生した傷害事件を捜査中であったことは、御承知の通りと思いますが、たまたまその傷害事件に関連した状況を、北海道新聞社の写真班員が撮影しておったことは、周知の事実であります。しかもその写真は、本件の慎重な捜査の上に非常に重要な資料になる、こういうふうに認めましたので、検察庁としましては、北海道新聞社に対しまして、捜査上の必要から何とかこれを任意に提出をしていただいて、捜査に御協力を願いたいということで、再三懇談的に交渉をしたのでありますが、同社がこれに応ずることをしてもらえなかったのであります。ところが、一方十月二十三日になりまして、その写真の半切大のものが五枚、札幌市の五番館百貨店内の店頭に陳列写真として展示されておったのであります。これは一般の公衆の観覧に供せられた上、しかも同事務所に保管されてあるということでありましたので、検察庁といたしましては、以上の事情からやむを得ず裁判官の令状を得まして、成規の手続を経て同日これを押収したものであります。事情がそのような次第でありますから、検察庁としてはむしろ犯罪捜査上当然やるべき借着としてやりましたことであり、またそこに至るまでの経過におきましても、慎重なやり方をやり、かつ成規の裁判官の令状を得るというような手続をとったものでありますから、ただいまお話のような、東条内閣でもやらなかったのじゃないかというようなこととは、これは全然性質の異なる問題であることを明らかにいたしたいと思います。
○森(三)委員 愛知法相、あなたはそう言われるけれども、あなたの言っている事情とは違うですよ。私もいろいろ聞きましたけれども、裁判所の出した令状さえあればどこのものでも勝手、そういう切り捨てごめん的な検察行政というものはまずいというのですよ。もちろん令状がなければそんなものは押収できるはずはありません。そんなことはわかり切っている。わかり切っているけれども、いやしくも報道機関が一般国民に提供するためにとった写真を、しかもデパートの展覧にしてあるものを強制的に取り上げるという。これではニュース報道班というものはニュースをとることはできないし、また、いつ何時自分のとった写真がそういうところに持っていって押収されるかわからぬというなれば、一方ニュースを提供する側の善良な国民も、いつ自分の写真がいろいろな犯罪の証拠にされるかわからぬというような不安、恐怖というものが生まれるじゃないですか。私はその本質問題を聞いている。それはおそらく警察に都合が悪いのかもしれませんし、いろいろありましょうけれども、私は本質的な問題として聞いている。令状がなければ、そんなことはできないごとくらいわかっています。どうですか、その問題は。
○愛知国務大臣 私はただいま申し上げましたことで、多くの識者あるいは国民が十分御納得いただけるものと確信いたすのであります。なぜかならば、犯罪捜査については、あらゆる手段を講じて証拠を収集するということは、私は当然過ぎるくらい当然のことだと思うのであります。しかもこの写真というものが新聞に報道されて掲載をされ、かつそのあとで同じ写真の原板が百貨店において公衆に展示されておったわけでございますから、その写真を証拠の一つといたしまして有権的にするために手続をとったわけでございますから、これは決して報道の自由云々というようなこととは関連がございません。しかもなお、その前におきまして、先ほど申しましたように、再三にわたりまして検察庁としては事理を尽してこの写真をちょうだいしたいという手段を講じておりましたが、不幸にしてこれを提示されることがなかったのであります。その後におきまして百貨店の店頭に展示されて、そうしてしかもその展示が終って保管されておったものに対しまして、裁判官の令状を得てこれを押収したのでありますから、さように大きな問題となり得ることではないのみならず、先ほど申し上げましたように、検察庁としては当然国民の信頼を得るためにも、公正な捜査をするためには、私は何らこれに対しては御懸念のあるようなことはない、かように確信いたします。
○森(三)委員 私は法相の答弁を聞いてもうあきれ返ったです。それなら法相、一般国民でも黙否権というものは何のためにあるのですか、憲法に規定してあるじゃないですか。われわれが証拠にそういうものを協力して出せといった場合に出さなければならぬ義務があるのですか。あなたはとんでもないことを言う。新聞社が自主的にそういうものを提供したくないことも憲法に認められている権利じゃないですか。とんでもない考え違いです。そういうような考えをもって警察官職務執行法をやられたんじゃたまったもんじゃないですよ。(「全然違うよ」と呼ぶ者あり)共通した観念だよ。憲法無視の精神だ。(発言する者あり)それは令状を持っていなかったら……。 〔発言する者多し〕
○楢橋委員長 静粛に願います。
○森(三)委員 令状を持っていなかったら押収できるはずはない。それはわかり切っているけれども、提出を要求して出さないのは悪いというきめつけ方はないでしよう 〔発言する者多し〕
○楢橋委員長 静粛に願います。
○森(三)委員 どうですか、愛知さん。北海道新聞社にその提出を要求しても、協力しないとか、出さないとかいうことを言い切れるのですか。出さないというのも権利じゃないですか。これはどうですか。
○愛知国務大臣 でありますから、再三にわたってお願いして、協力を得られませんでしたから、それはそれで一応済んだわけでありますが、なおそれが公衆に展示をされて皆さんの目にもとまっておることでありますから、それを憲法をもとにして規定された訴訟法その他の手続によりまして、完全に手続としても遺漏なきを期してやりましたことでありますから、そう御心配になることはないということを申し上げたのであります。
○森(三)委員 そう御心配になることはないなんて、とんでもないことですよ。心配するな、心配するな、あなたに言われなくてもわかり切っている話です。もちろん裁判官が出した令状がなければそれが押収できないことはわかり切っています。しかし新聞社に再三提出を要求したけれども、出さなかった。それがさもさも悪いがごときあなたは考えを持っている。お互いに憲法に保障されたところの黙秘権なり、あるいはまたそれに対するところの提出をしなくてもいいところの国民の権利というものがあるわけでしょう。それをしないことが間違っているような言辞を弄すること自体が、大きなあなたは錯覚ですよ。そういう精神を持って警察官職務執行法を施行されてやられたんじゃ、国民はたまったものじゃない。私は根本的に、愛知法相の基本的観念を改めてもらいたいと思う当然それは一般の国民の判断なりに供するために、新聞社はそのニュースをとって張ったわけでしょう、掲示したわけでしょう。その国民に供するためにとった写真を、一方的に証拠物として押収するということは、それは私はいけないと思う。それは憲法に違反したところの捜査方法である。私は単なる手続の問題を言っているのじゃない。どうですか。
○愛知国務大臣 私はまず第一に、捜査は公正に、できるだけの手段を尽さなければ、検察に対する国民の信頼をつなぐゆえんでないと思います。 それから今回とりました処置はあなたもお認めの通りであります、適法な処置であります。 それからもう一つは、北海道新聞社が提供しなかったことがさも悪いように言うと言われますけれども、私はいい、悪いを言ったのではなくて、事実を申し上げた。いい、悪いというようなことは言っておりません。再三にわたってお願いをしたけれども、遺憾ながらこちらの申し出は承認されなかった。しかる後にその写真があらためて今度は五番館というところに展示をされ、展示が終ったその上で、事務所にありましたものについて、裁判官の令状を持って押収をしたのでありますから、何も私はとやかく言われることはないのみならず、私は当然過ぎるぐらい当然のことをやったと思います。
○森(三)委員 あなたとここで議論しても何ですから……。
○楢橋委員長 森君、防衛庁長官が見えましたから……。
○森(三)委員 基本的に、報道機関のそうした写真なんかを押収するというようなやり方を検察庁がしなくても、幾らでも他に証拠を取る方法はあるのですよ。私はまことに憲法を無視したまずいやり方だ、人権侵害のやり方だということを申し上げている。これはあらためて私はあなたに対して追及しましょう。 そこで、防衛庁長官が見えましたから、ついでにお尋ねしますが、これはこの間の大演習で起きた問題です。この間今澄委員があなたに対して質問した、いわゆる北部方面隊新聞に町村代議士が自衛隊を激励する文面を載せられておりましたね。そのことについて、あなたは後に十分詳細に点検して報告すると言われましたね。一つ御報告をお願いいたします。
○左藤国務大臣 この間お示しの小さい新聞でございますが、これは共済組合で発行しておる新聞でございまして、自衛隊の趣旨に反しません限りは、いろいろ内外の方々から御寄稿もいただいておる次第でございます。
○森(三)委員 そういう事実があったことはあなたは認められたわけですが、自衛隊の新聞に、来年の知事選挙に出る人、そういう特定の人に限って出すということは一体いいのですか、どうなんですか。
○左藤国務大臣 ただいま申し上げましたように、自衛隊の趣旨に反しません限りは、いろいろな方の御寄稿をお願いしておる次第でございます。
○森(三)委員 そういうことならば、報道の公平を期する上において、対立候補もあることでありますから、両方並べて出すのが当然じゃないですか。
○左藤国務大臣 先ほど申しますように、内輪の新聞でございますので、自衛隊を全然お認めにならぬとか、あるいは自衛隊の隊員の士気に非常にマイナスになるとかいうものでなければ、私どもそういう御寄稿をいただきますればお載せをすると思います。
○森(三)委員 自衛隊はあくまで国防が中心であって、そういうようなことについてはほかの商業新聞と違うのですよ。そういう特定な、来年の知事選挙に出ようというような人を特に取り上げて新聞に載せるということは、これは非常に均衡を失すると思うのです。これは今後非常に考えなければならぬ問題だと思います。 そこで私はまたお尋ねしますが、せんだっての王子の苫小牧の争議に際して、自衛隊が警察官に対して宿命を提供した。それからまた自衛隊のトラックを使った事実があるのです。私は現地に行きまして、この事実は警察でもって詳細わかった。そこで問題になるのは、警職法の第四条に、いわゆる公安委員からの要求があれば、他の公けの機関に避難その他を頼むことができるという規定があるのです。きのうもおとといもこの公けの機関に自衛隊が入るかどうかということがだいぶん議論された。そこに青木さんもおられることだが、まだこの問題は解決がついていないのです。ところが、まだこの問題が解決をしておらない、まだ警官職務法の改正案が通っておらないのに、すでにこの間の王子の苫小牧の争議に際しては、北海道の警察官五千五百名の大半が出勤しているわけです。それで泊まる宿舎もない、トラックも足らない、足らないものづくしです。苫小牧と千歳は自動車で約三十分もあれば通じるわけですから、そこへ泊ったり、自衛隊のトラックを使ったりした事実がある。これは警察でも承認しておるのです。これは私は大へんなことだと思うのです。しかも話によると、自衛隊の者も警察官の中にまぎれ込んでお手伝いをしておるということさえも聞いておるのです。こういうことがあったら大へんなことだと思うのです。そういうことはまずいですよ。これらの事実についてあなたから答弁願いたいと思う。
○左藤国務大臣 自衛隊が防衛出動あるいは治安出動等いたしますことにつきましては、自衛隊法の厳重な制約に基いております。ただいま苫小牧のお話がございましたが、その点につきましてはなお私どもの方で調べまして申し上げます。しかし自衛隊員が警察官の中へ入って行動したということは、私はおそらくないと信じております。
○森(三)委員 それではこの問題についてはまた後日あらためてお尋ねすることにいたしまして、時間がありませんから安保条約の問題尾に移ります。 この安保条約につきましては、これは外交問題というけれども、本質的にいうならば日本の国防問題でありまして、本来防衛庁長官がこの防衛計画というものを十分立てなければならぬ問題だと思っているのです。だから私はせんだってから左藤防衛庁長官に、この安保条約に関するところの諸問題をお尋ねしてみたいと思っておった。おそらく左藤防衛庁長官としては、今度の安保条約に関しては、沖縄や小笠原を含めるということはしたくないだろう、日本の防衛計画はできるだけ小さくしたいだろう、こう思っておったのですが、けさの読売新聞を見ますと、はからずも私の考えておったようなことがあなたの談話として発表になっておった。すなわち、あなたはこれをお読みになったと思いますが、「左藤防衛庁長官は三十一日、沖縄、小笠原を防衛範囲に入れることは軍事的に見た場合問題が残る。防衛庁としてはこの問題について統一的な見解をまとめたことはないが、統合幕僚会議(議長林敬三陸将)などはこれに批判的な意見を持っている、と語っているが、非公式見解として防衛庁の考え方はすでに外務省に伝達済みだといわれている。」こう言っておるのですが、この問題について外務省当局に対しましてあなたの御意見を発表されたことがあるのですか。
○左藤国務大臣 けさの新聞の記事は、私の申しました趣旨とだいぶ違うようでございまして、批判的であるとか消極的であるとか、そういうような意味を私どもは申しておりませんので、これはわが国の防衛に関することであるから非常に慎重に考慮したい、こういうことであります。交渉は外務省でなさいますが、その交渉の経過に応じまして私どもの意見を申し上げられますように、幕僚会議その他内部で十分勉強をいたしておるわけでございまして、私どものきまった意思を外務省へ申し入れたとかいうような事実はございません。
○森(三)委員 それではこの新聞記事をあなたは一応否定される立場に立つわけですな。そうしますと、防衛条約に関して、防衛の範囲は西太平洋は含まないということは、岸総理ははっきりとこの委員会において、また昨日の外務委員会において見解を表明されているのです。しかしながら、この西太平洋の中には小笠原、沖縄というものは、実際上の地域としては入っておる。しこうして、また憲法第九条の解釈からいっても、海外派兵という立場において、当然沖縄あるいは小笠原にはこの防衛条約は適用してはならないし、海外派兵はできないという見解をわれわれは持っているのですが、これに対してあなたはどういう御所見なんですか。
○左藤国務大臣 総理大臣と全く同じ意見でございます。
○森(三)委員 総理大臣と全く同じというが、あまり歩調を合わされても困ると思う。総理大臣自身もまだはっきりした結論は持っておりません。総理大臣は、小笠原、沖縄を含めるかどうかについては、国民の世論を開いてきめたいと言っているのです。自分は入れるとも入れないとも言ってないのですよ。あなたはそんないいかげんなことを言っちゃいかぬですよ。この新聞は、あなたは一応否定されるのですね。
○左藤国務大臣 総理大臣が世論を聞いて判断をなさる、私どももそういう意味において総理大臣と御同感でございまして、これがどういうふうな外交交渉になりまするか、まだきまりませんうちに、私どもがこれに対して批判的であるとか消極的であるという意思表示をいたしたことはございません。私どもとしては慎重に、私どもの防衛の責任において、各種の場合に対応できるように内部で勉強をいたしておる、検討をいたしておるという意味であります。
○森(三)委員 じゃ勉強研究している最中であって、この新聞にに書いてあるようなことは、外務省に対して何ら申し入れもしてないというように、あなたは説明されているのですね。全然外務省と交渉しないのですか。これは現在マッカーサー大使と日本の外務省とがやっている間に、あなた方の意見を外務省が聞いているはずですよ。そんなばかな話はありません。外務省があなたの意見を聞かないで、そうして交渉ができるはずはないじゃありませんか。外務省は防衛庁の意見によって日本の防衛力というものを基礎にして、岸総理が言うところの対等性とか平等性とか自主性とかいう、言葉を言っているのじゃないですか。ですからあなたの方で外務省と何らの連絡がないとか話し合いがないということは、肯定できないです。必ず話し合いをしている。こういう新聞に出たから、あなたは新聞を否定しようとかかっているのであって、私はこの新聞の方がほんとうだと思っている。どうですか。
○左藤国務大臣 外務大臣と私連絡をいたしておりまするし、外務省の事務当局と私どもの事務当局と連絡をして勉強いたしております。私が申し上げましたのは、これに対して批判的であるとか、あるいは消極的であるというような申し入れを外務省にしたことはございません。
○森(三)委員 それでは結局は防衛範囲を広げた方がいいのですか、あるいは縮小をした方がいいのですか。沖縄、小笠原を含めた方がいいのですか、含めない方がいいのですか。そういうふうに私は端的にお間きしましょう。
○左藤国務大臣 外交交渉の途中でございますので、これに対して私どもがここで申し上げることは差し控えたいと思います。
○森(三)委員 それじゃもう左藤さんは逃げの一手ですね。一国の防衛庁長官としてはそれくらいの見解は述べなければならない。研究中だ何だといって逃げを張ったってしょうがないでしょう。少くともそのアウトラインぐらいはあなたは言わなければならぬでしょうそれは小笠原を含めるか含めないかぐらいをあなたはどうしても言えなければ、いわゆるその範囲について、広い方がいいのか、狭い方がいいのか、私はそれだけでもお尋ねしたい。それぐらいの見解は言えるでしょう。
○左藤国務大臣 外交交渉の段階でございますので、これに関して私どもの意見を申し述べることは差し控えたいと思います。
○森(三)委員 何を聞いてもあなたはますます門戸を閉鎖しておっしゃらないのだがら、これは仕方がないから他日に譲りましょう。他日に護りますが、私は現在の防衛力の立場においては、当然沖縄、小笠原の防衛ということは考えられない。そうすることによって台湾やあるいは韓国の戦争、それから小笠原、沖縄の、いわゆる米国と、それらの諸国との条約のある国の戦争にわれわれは拳き込まれる。だからきぜんとして防衛庁長官は日本の将来の安全のため、できるだけ防衛の範囲を縮小し、そうしてまたこの沖縄、小笠原というものは含めるべきじゃない、私は重大な警告をここに発しておきさたいと思うのです。 しこうして私は警察官職務執行法の問題について若干お尋ねしたいと思います。時間もありませんが、とにかく現在の警察官職務執行法というものは、過去の明治憲法にのっとったところの治安警察法、治安維持法、それから行政執行法とか、警察犯処罰令とが、幾多の、単に行政官の判断一つでもって国民の権利を圧迫することができた、それに通ずる全く人権侵害であるところの法律なんです。きのうも地方行政委員会におきましては盛んに論議をされておりまするが、私はここで青木長官に対して、この法案ができなければ、どこに現在の治安を維持する上において不利益があるのか、この点についてお尋ねしたいと思う
○青木国務大臣 警察官職務執行法の改正のねらいはどこにあるのか、また現行法ではどうしていかぬのか、こういう御質問でありますが、御承知のように、日本の警察官の基本法である警察法の中に、警察官の責務として、個人の生命、財産を守ると同時に、個人の集まりである社会の生活の静穏を守るための公共の安全上と秩序を守る責務が掲げられております。またこれはひとり日本のみにとどまらず、各国の警察も同様になっておるのでありまして、私どもは制度的に見ましても、また警察法の建前からいたしましても、やはり警察官は本来の責務である個人の生命、財産を守ると同時に、集団の社会の静穏な生活、正常な運行を守るようなあり方について、国民から負託された警察官の責務を果すことができるようにしなければならない、かように考えるのであります。 またもう一つは、警察官は、当然に警察の責務として犯罪の予防をしなければなりませんので、いろいろな犯罪の事態が起ろうとすることが明らかである、それによって個人の生命、財産あるいは公共の安全と秩序に害があるということが認められ、しかも急を要する場合は、これをできるだけ事前に予防し、制止する、こういうことをいたす必要がある。 もう一つは、最近青少年の犯罪傾向が増大して参っておりますので、これに対処いたしまして、決してこれを逮捕、勾留、検束とかいう意味でなしに、一時そういう青少年を保護するという立場に立って、警察官の責務を果すことができるようにいたしたい、こういうだけの考え方に立っておるのでございます。
○楢橋委員長 ちょっと森委員に申し上げますが、申し合せの時間が来ておりますから、結論を急いで下さい。
○森(三)委員 もうやめます。そこで私はまた時を改めてお尋ねをいたしますが、つまりこういう法案が出ることは、非常に危険であると同時に、この法案が通った後においては、私は警官の職権乱用という問題はもうひんぴんとして起きることは必然だと思う。これが一番おそろしい。今でも、先ほどもあなたがお聞きになった通り、デモ隊を抑圧せんとするところの警察官、この警察官が報道班の新聞記者に暴行したというので、十二名の者が今東京の検察庁に取調べを受けている。しかも新聞であなたたちも御存じの通り、処分されております。和歌山県の事件についてもその通りです。警察官はこの職務執行法が出ただけでずいぶん勢い立っている。これが通ったらどんなことをやるかわからない。職権乱用をやらないと言っておりますけれども、乱用をやらない法律はございません。どんな法律でも乱用が起きておるからこそ、国民の権利は常に侵害されている。私はこの問題についてまだ後に質問いたしますが、いわゆる憲法の保障である生命、身体、財産、あるいは集会、言論の自由などというものは、どんどんともう片っ端から破壊されていることは明らかだ。憲法の三十三条、三十四条の拘禁、拘置に対するところの保障などというものは、これはもう破壊されている。あるいはまた憲法二十一条の集会、結社の自由もこれによって侵害される。それからまた憲法二十八条の労働者の団結権も罷業権もこれによって圧迫されるということは必然であります。それがまた政府は目的だ。われわれは、こういう反動的な立法を作ることにおいて日本の民主主義をますます破壊するのが現在の岸政府のやり方であると思います。これに対して私は十分な反省を求めながら、また私の質問をあとにいたしまして、一応私の質問をここでもって終了いたします。(拍手)
○楢橋委員長 小林進君。
○小林(進)委員 きわめて限られた時間の質問でございまするので、簡潔にして要を得た御答弁を賜わりたいと思います。 私は、わが党を代表いたしまして、主として雇用問題、不当労働行為の問題、ILOその他関係事項について御質問をいたしたいと存じます。 まず第一番目に、経企長官に、雇用の状態についてお伺いをいたしたいのでございまするが、経済企画庁が中心になられまして、関係各省が参加をせられて新長期経済計画なるものを昭和三十二年の十二月十七日に発表をされました。この計画によりますると、昭和三十三年度から三十七年度に至る五年間に、基準状態から、年平均六・五%の経済の成長率の維持を達成し、これによって、三十七年度において、三十一年度に比べて四百九十八万人の雇用者の増加を見込まれておるのでありまするが、これが初年度をすでに半ばを経過いたしました今日、計画通りに一体進んでいるかどうか、まずこれをお伺いいたしたいと思うのであります。
○三木国務大臣 小林君のお話のように、長期計画における雇用の計画は、五カ年後に四百九十八万、これを毎年に割ってみますると八十三万、機械的に五カ年間の計画を割れば八十三万、三十二年度は百十五万という実績であります。多少のなにはありますが百十五万、そうして三十三年度が六十五万大体両年を合せてみると、九十万程度の雇用になるわけでありますが、大体この計画は、多少の計画通りといかない面があるにしても、五カ年計画が予定いたしておる新規雇用は解決をしておる。ただしかし問題は、日本のような、非常に雇用の状態が、何と申しますか、潜在失業者もおりますし、あるいはまた近代的な雇用の形態とも言えないのでありますから、この数ばかりで満足するのではなくて、雇用の近代化のために経済の成長をはかって、一そうの努力を必要とするものであるということだけは、つけ加えておきます。
○小林(進)委員 次に労働大臣にお伺いをいたしたいのでございまするが、新長期経済計画なるものの第十三の「雇用の増大と就業構造の近代化」の課題でございまするが、その中には第一次産業の雇用人員を減少しまして、第二次産業の雇用量の増加を見込んで、完全失業については計画策定時の平均六十万人の水準をこれ以上増加させない、これを目途としてその計画を進めているのである、こういうことになっておるのでございまするが、政府は当初予算において予定をせられました完全失業者六十五万人までいってはいない、まず五十八万程度であるということを言明しておられるのでございますが、その、完全失業の統計の見方についてわれわれはいろいろ疑問があるのでありますが、そういう細部の問題は別にいたしましても、その内容は一体どうなっておるのか、第一次産業、第二次産業、第三次産業の雇用量がそのままの計画通りに進んでおるか。第一次を減らし第二次を増加していくという目的とは全く別の内容を現在示しておるではありませんか。政府は九月九日経済見通しについて御発表になりましたが、それによりますと、雇用量は若干ふえているという政府の発表でございまするけれども、その内容は第一次産業はもはや計画と反して横ばいである、決して減っておりません。第二次産業はふえる予定のものがむしろ減少しておる。そして減らすべき予定の第三次産業の雇用量が増加をしておるということが明らかになっているのでございます。すなわち流通部門、商業部門が非常に増加をいたしておりまして、政府が最も増加を希望いたしておりまする鉱工業部門が反対に雇用量を減少しているということは、政府の長期経済政策がすでに初年度において破綻を来たしておることを意味しておるものである。その見通しが全く間違っておるじゃないか、こういうことをわれわれは考えざるを得ないのでありますが、企画庁長官、労働大臣、ともに一つ御答弁をお願いいたしたいと思います。 〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕
○三木国務大臣 労働の雇用問題、雇用の統計あるいは失業統計、これを見てみますると、大体三十二年度、三十三年度というものは、雇用あるいは失業の計画については、両年を平均してみれば大した誤差は私はないと思う。ただしかし、雇用の問題については、むしろ日本ではそういう数よりも雇用の条件であり、雇用の状態であるということは申し上げた通りであります。それから経済計画については今年度も修正を加えたことは事実でございます。われわれは自由経済を中心にして経済をやっていこうとしているので、一つの権力をもって統制をやって、政府の計画通りに権力を背景にして統制経済をやろうというわけではない。政府もむろん財政などを通じて経済に関与する面も相当広いけれども、今日の経済活動は民間の経済活動というものがそれに比べて非常に広い分野があるわけでありますから、これを統制経済によってやろうというものでない以上は、やはりある程度の年次計画に対する修正は許さるべきである。むしろ修正も何もなしに共産主義諸国のようなあういう権力統制というものはとらないのだ。年次計画を多少修正しても、自由経済というものを原則としながら、社会的要請に従って、これに対してある程度の必要な規制をいたすような経済の方式がいいのだというのでありますから、今言ったような年次計画に対して修正を加えることはやむを得ないのだ。それにもかかわらず、やはり長期の経済計画を立てて、なるべく計画と経済の実態とが近いような努力はしていかなければならぬが、ときに誤差があり修正もやむを得ない、こう考えておる次第でございます。
○倉石国務大臣 雇用、失業につきましてお尋ねがございまして、大体ただいま企画庁長官の申し上げました通りにわれわれも考えております。そこで最近の状況を見ますと、御承知のように第一次産業、第二次産業においても大体横ばいの状態でありまして、今まで比較的第一次産業等において失業者が出て参りましたものは、統計によりますと常用雇用の方面においては比較的少い。臨時のものが多く失職をいたしておる。こういう傾向は、たびたびお話が出ますように、経済調整の政策がとられまして、正直にこういう数字の上に六カ月ないし八カ月の期間をおいて出てきておるわけであります。しかし幸いにして昨今では今の御指摘のように、当初予算編成のときには六十五万を見ておりましたものが五十八万程度にとどまっておりますし、今申し上げましたように、第一次、第二次、第三次産業においても、やはり出てくる失業者というものは足踏みをしておりますし、横ばいの状態である、こういうのが現実の姿であります。
○小林(進)委員 私は経済政策も自由主義の立場からときには修正するのが当りまえだという企画庁長官の御答弁は、見通しの誤まりを、自分の失敗を補う巧みな詭弁であるというふうにしかとれないのでございますが、それにいたしましても、その修正が今申し上げるように、第二次産業の雇用量、これは鉱工業産業でございまするから、雇用量の健全性を意味していると思う。国の経済の平常な発展を意味しているから非常に好ましい姿である。それが計画では減って、第三次の雇用量がふえたということは、これは単なる修正問題で片づけられることではないと思う、かように考えるのでございまして、事実国民の総生産量が今年は下っている。下っているから生産低下に伴うところの雇用量の減少、これは私は当然でありますが、それが第二次産業に押し出していって、これがふえているということは、何を一体意味するかといえば、これは雇用の質の低下であります。質の低下を物語っている何よりの証拠であると言わなければならない。ここに私は政府の雇用政策といいますか、経済政策の大きな危険が一つ胚胎をしている、こういう感じを受けるのでございまして、すなわち鉱工業産業から押し出され、首を切られた労働者は政府が保障してくれないじゃありませんか。従って零細なサービス業あるいは第三次産業、こういうところに活路を見出してくる、小商人に生まれ変ってくる。これが第三次産業が増加をしてきた最も大きな原因の一つであると私は思っておる。いま一つの理由は、これは大企業です。独占の系列からややはみ出された斜陽的な大工業、これはみな第二次産業から締め出されて、——締め出されるというよりは、政府の経済政策の誤まりによって、今度はサービス部門というようなものを作り上げて、第三次産業に進出をしてきている。これが経済をさらに不安定にし、雇用の内容を悪化あるいは弱体化させている、かように考えておるのでございまして、これは実に黙過しあたわざる危際性があると思いますので、いま一度私は経企長官の御答弁をお願いしたいと思います。
○三木国務大臣 小林君の御指摘のように、第三次産業部門の雇用が増加していることは御指摘の通りであります。また雇用構造として、第二次よりも第三次がふえるということが好ましいものだと私は思ってはいない。やはり第二次産業の雇用がふえていくことが、雇用構造としては好ましいものだとは思います。まあこれは日本ばかりではなしに、第三次産業、サービス部門の雇用がふえていくという世界的な傾向にはありますが、雇用構造としては、御指摘のように、今後第二次産業の面における雇用をふやすという経済政策が行われなければならぬという意見には同感でございます。
○小林(進)委員 これは先般わが党の委員が本会議場でも質問をいたしたことでございますが、戦後流通部門を担当いたしまする人口は著しく変化を起して参りまして、昭和二十三年には全産業の従事者が三千三百三十二万九千人、そのうち小業者というものは二百三十六万五千人しかなかった。比率はわずか七%にすぎなかったものが、昭和三十一年度に至っては、全産業の従事者が四千三百八十七万人に対して、小業者が七百万人の多きに増加いたしまして、全産業従事者のすでに二割を占めている。しかも昭和二十三年に比較いたしまして、三倍の激増を示しているにもかかわらず、これがさらに今年度においてはぐんぐん増加の傾向を示している。これは私は非常に憂慮すべき状態であると考えておるのでございますが、一体政府はいかにお考えになっておるか。最も弱体な、不健全な部門に雇用労働者が進出してくる。そういうように、いわゆる雇用労働者が弱体第三次産業に流れていくということは、だんだん雇用の質を低下していくばかりであり、安値で労働力を買うという結果が現われてくるのでございまして、世の中の進化に反逆いたしまして、労働力がだんだん安値に売られていくという形や、こういう産業や、こういう流通部門が発展していくことを政府はそのまま放任せられている。自由経済の名のもとに放任をせられていることは、私は非常に危険ではないかと思う。雇用政策の立場から、こういう時代の移り変り、大きな変動に対して一体どうお考えになっているか、これでよろしいとお考えになっているのかどうか、もう一回お伺いいたしたいと思うのであります。
○三木国務大臣 一国の文化が向上していけば、やはりサービス部門、そういうふうな業務は世界的にふえていく傾向を持っております。そういう点で、その方面の雇用がある程度増加していくような傾向はありますが、しかし、日本の場合としては、先ほど申したように、第二次の産業部門における雇用がふえていくことが望ましいので、政府はやはり経済の成長率に対して非常な関心を持っている。その意味からいって、雇用の増大もあるけれども、雇用構造の近代化ということも頭に入れて、経済の成長を考えて長期経済計画を策定したわけでございますから、今後、たとえば来年度の予算等を通じてある程度の成長率を確保していく。むろん国際収支とかいろいろな制約がありまして、その制約を越えてはならぬわけでありますが、その範囲内において、できる限り成長を高めて、第二次の産業部門における雇用が拡大していくような経済政策をとらなければならぬ。そうでなければ労働条件も次第に悪化する傾向になるので、そういう点で今後政府の財政投融資、経済政策を通じて、雇用の近代化のために努力していきたいと考えております。
○小林(進)委員 私は、経企庁長官は、自民党という保守党の中においてもやや近代的な感覚をお持ちになっていると考えておったのでございますが、雇用政策に関する限りは一つも新味がない、こういうことを申し上げなければならないのでございます。やはり産業を大きく発展せしめて、その産業の発展に従属して雇用政策を考えるというようなことは、もはや十九世紀的なものの考え方であり、明治、大正におけるわが国の労働政策でありまして、労働政策は、それ自体産業から切り離して独立して考えるというのが、近代国家のものの考え方である。けれども、それはあとでゆっくり申し上げることにいたします。政府の雇用政策がうまくいかないから、景気、不景気の変動によって首を切られた労働者や雇用者が生活のかてを求めて小商人になり下って、第三次流通部門の小商人や小企業者が雨後のタケノコのようにふえていくのでありますけれども、それに対して、今の御答弁では何にも政策をお持ちになっておらないことが明確になったので、その点遺憾にたえませんが、時間の制約がございますので、経企長官に対する質問はこれで終ることにいたします。 次に、大企業の雇用状況を労働大臣に御質問いたしたいのでございます。 今年度におきましても大企業の中からどんどんと人員整理が行われております。ここにあります資料を読み上げるだけでも、まず一月から三月までの間に、帝国人絹は一時帰休二百名、倉敷レイヨンが一時帰休六百五十名、希望退職が四百名、東邦レーヨンが一時帰休七百名、希望退職が一千八百名、旭化成が一時帰休一千七百名、三菱レイヨンが一時帰休百六十名、玉島レイヨンが百名、東洋レーヨンが希望退職百四十名、興国人絹が一時帰休五百名、希望退職八百三十名、北越製紙が一時帰休二百六十名、希望退職四百三十名、しかし、言葉は希望退職でありますけれども、ここら辺はみな切実なる労働争議の結果、首を切られておるのでございます。松尾鉱業が一時帰休二百八十名、四月から六月に至りまして帝国人絹が希望退職一千七百五十名、三菱電機が一時帰休二百三十名、七月に至って倉敷紡績が希望退職が一千二百名、日産化学が希望退職五百八十名、八月にいって小西六写真が希望退職五百名、東芝が希望退職同じく百四十名、九月に至って鐘紡であります。この第一流産業の鐘紡でさえも、一時帰休が八百名、希望退職はありませんけれども、一律一割の賃金の格下げ、あるいは日本水素が一時の帰休が三百七十名、一割五分の賃下げ、石原産業が一割の退職、このように九月に至るまで、陸続としてこういうような大企業の人員の整理が行われておりまして、そのほかに加おるに駐留軍関係で、追浜とか赤羽あたりからは、まさに今年度に一万人の失業者がちまたにほうり出されようとしておるのでございます。こういう大きな労働問題いわゆる離職の問題、雇用の問題、失業の問題等に対して、政府は一体どういう手をお打ちになっておるのでございますか。今年になっても、毎月平均いたしまして大体二万人の労働者が職を離れております。昨年の三倍だ。政府の発行によります経済月報によりましても、ここで整理人員が一月には四万一千七百人、二月には一万九千八百人、三月には二万五千八百人、四月は二万六千二百人、五月には二万八千五百人、六月は二万四千二百人、七月は二万九百人、八月は一万四千人というがごときです。こうして平均二万名以上の労働者が全部職を離れておる。これに対して一体政府は、財政支出をして雇用対策を具体的にやるというお考えをなぜお持ちにならないのか。補正予算のどこをながめてもそういう費用は計上されていないのであります。わが党は当面失業対策費の吸収人員を一日平均三十五万人、あるいは就労日数月平均二十五六日、これを十一月から三月まで支給するというふうに補正予算に計上しておりまして、あたたかい政策を持っておるのでございまするけれども、政府の方には何らこれが対策をお持ちにならない。その所見を一つ労働大臣からお伺いをいたしたいと思うのでございます。
○倉石国務大臣 御指摘のように幾多の産業の中で企業整理等が行われております。このことはしばしば私が申し上げておりますように、たとえばわれわれの内閣が策定いたしました新長期経済計画が、その通り成功して参るとかりに仮定いたしましても、やはり雇用、失業の問題というものは、わが国においては大きな頭痛の種でございます。このことは否定し得るものはないと思います。御承知のように戦争の当時から例の生めよふやせよといったような人口政策の結果、たくさんの人が妊娠をされました。それから終戦になって若い人たちが外地から帰ってきた。この当時の人たちが今やいわゆる出産年令人口というものになって、労働市場に出てくるころであります。従って一般人口の増殖率に比較いたしまして、生産力人口、これのふえ方ははるかに大きい。今たとえば厚生省が人口統計等を出しておりますのを、このままの傾向でいくといたしましたならば、あと八年か九年後においては、雇用、失業の問題、たとえば経済が現在の状況で伸びていくということを仮定いたしましたならば、私は七、八年後においては雇用、失業の問題は、大きな変動を来たすであろうと考えておるのでありますが、しかし今は御指摘のようにきわめて難物であります。そのことはだれも否定することはできない、そこで政府も長期経済計画を策定いたしますにつきましては、何よりもます雇用の拡大ということを前提にして、経済政策を策定いたしておるわけでありますが、それにいたしましても、例の国際貿易のバランスをどうして是正するかという前提に立って行いました経済調整の施策の結果は、御承知のように先ほどもちょっと触れましたように、一部においては、特に繊維産業等においての操短が続行され、そしてまた企業整備等も行われ、ただいまお話の中にありました多くの民間産業の中には、政府が経済調整の施策を行わないでも、経営それ自体の内部においてもうすでにいろいろな支障を来たして、人員整理あるいはその他の合理化をしなければ維持ができないでいくと思われた産業もたくさんあります。しかしながらたとえばお話にありましたような大産業である鐘紡等において、ああいう状態が出てきた。これは鐘紡の当局者等について私もいろいろ話を承わりましたが、なるべく人員整理というふうなことはやるまいということで操短が行われておるにもかかわらず、大産業においては今日までいわば余剰労働力というふうなものをかかえ込んできておった。そういうものがやはり今日の段階でいろいろな形で現れてきておるわけであります。しかし総合的に見まして、御承知のようにわれわれはそういう経済調整政策をとるということを前提にして、失業者が出るであろうということで、先ほどお話のように六十五万人すなわち十万人くらいは失業者が出てくるということは予算においても、あるいは失対事業等のワクの拡大というふうなことも、まず予期をいたして施策をいたしておることは御承知の通りでありますが、そこで現われて参ります一つ一つの事象について、たとえば先般私が名古屋に参りましたときに繊維産業で、新卒業生をわが会社に採用するという予約をしておりながら、もう四カ月も五カ月もそのままである。こういうものはどうするかというような質問がありましたときに、半年以上これが延びるようなことになれば、政府としてはだまっておるわけにいかないから、それぞれ注意を喚起しなければなるまいというような談話をいたしましたところが、急いで私のところにかけつけて来られたのはそういう繊維産業に従事しておる労働組合の幹部であります。あとで間もなくまた経営者が来られました。そういう点から申しますと、利害が相一致しておりまして、そういうようなことをやられると、やはり新規卒業者を採用したくなって、古い人たちに希望退職を要望されるというようなことになると、はなはだ労働事情が混乱して困るのだという御希望がありまして、私どもとしても慎重な態度をとるようにいたしたような次第であります。 そこで、そこに出てくる産業について、私どもはそれぞれ失業者も比較的多く出るような部面におきましては、しばしば政府も申し上げておるように、その当該地域における職業安定所の窓口を拡げ、そしてそれをどういうふうにして他に転職させてあげるかについて、全力を上げておるような次第であります。従って今御指摘のような希望退職等は、全部争議の結果であるというお話がありましたが、それは小林さんの一つの形容詞でありまして、全部争議の結果ではないのでありまして、やはり争議のあったものも、たとえば小西六というような新聞にうたわれておるものもありますが、その多くのものは、やはり堅実なる労働組合の代表者と経営者とが、現在の状況においてトラブルをいかにして少くしつつ企業が成り立っていくようにするかということで、みなそれぞれ話し合って協力をいたしている最中でありますが、政府といたしましてもこれを黙過いたしておることはできませんので、今申し上げましたように、配置転換等について全力を上げておる最中であります。私どもはその結果とは申しておりませんけれども、御承知のように六十五万を見ましたものが、今は先ほどもお話のように五十八万程度にとどまっておって、なおかつ今日は横ばいの状態で、これ以上ふえていくという見込みではない、こういう状態を率直に申し上げる次第であります。
○小林(進)委員 時間の制限がございますので、大臣一つ簡単にして要を得た御答弁を願いたいと思います。あまり長くやられますと私の質問時間がなくなりますので、一つよろしくお願いいたします。 とにかく私は今の御答弁には納得いかないのであって、政府が雇用政策をサボタージュしておるのではないか、こういう感じを持つのでありますが、わが国の独占資本を中心として、この際岸政府が全般的に不況対策を講ずることを欲しない。これは私が言うまでもなく天下周知の事実であります。むしろこの不況を利用いたしまして過剰労働を整理したり、中小企業の過剰なる設備を廃棄をしたり、あるいは高率の操短によってコスト高に悩む独占資本の負担の軽減をはかるとともに、独占の地位を強化しようとする、こういう形が独禁法の改正等にも現われておるごとく、非常に露骨になってきておる。こういうことから、その事実はあらゆる方面に明らかにせられているのでありますが、政府はこの独占資本の至上命令に服して、そうしてこういう冷淡な、なすがごとくなさざるがごとくの雇用政策を続けて、ほんとうの生きた政策というものをどうも放棄しておるのではないか、こういうふうな考え方を私どもは持っておるわけでございます。特に倉石労働大臣はそういう資本家の方からは非常に信用を博しておいでになるという。むしろ労働三法の改正なんかも、独占資本主義の要求に応じての三法の改悪で、われわれから言えば改悪論者、一方から言えば改正論者、非常に好ましい主張をお持ちになっておるというふうに解されているのでございますから、石田労政よりいま一歩やや反動的とわれわれは言うのでありますが、その倉石労働大臣を迎えて、一拳にそういう産業の整備でありますとか、独占化というものをこの際はかろうとするのではないかというふうな考えを持つのでありますが、簡単に一つ御答弁をお願いいたしたいと思います。
○倉石国務大臣 私どもが労働政策の重点といたしておることは、かねがね申しておりますように、日の当らない比較的恵まれない環境に立っておる労働者諸君が、どうやったら大産業の従業員に近づいた生活ができるかというようなことについて苦慮いたしておる、これがわれわれの基本的な労働政策の理念であります。
○小林(進)委員 政府は三十三年度の当初予算において、失業保険の支給人員月三十七万三千人を予定されていたのでございますが、現在は実際の保険人員はもはや五十万人に近づいているようになっておる、こういわれておるのでございまして、この予算を超過する十二、三万の大群が失業保険の予備費を食っているということになるのであります。これは私は今後も増加はするけれども減少する見込みはまずないと判断をするのでございますが、一体現在の予備費はどれくらい残されているのか、来年度の失業保険特別会計に一体支障はないのか、こういうことをお伺いいたしたいのでございます。なおかつ失業保険の受給者が、その保険が切れたあとは一体どうなるのか。この不況の中で再び就職を六カ月、三カ月、その間において職業にありつくという目安はほとんど見込がないのでございまして、駐留軍の労働者に対しまして政府が特別な施策を設けても、離職者のうちようやく二割弱の者しか再就職できない、こういう現状でございまするので、それを一体どう処置せられるのか。 〔西村(直)委員長代理退席、重政委員長代理着席〕 わが党におきましては、それぞれ失業保険の給付期間を三カ月延長する。そうしてその経費については国庫負担を二分の一にするというふうな的確な補正予算を組んでおりまするが、政府の施策を一つお伺いいたしたいと思うのでございます。
○倉石国務大臣 失業保険のことにつきましては、先ほどお話申し上げましたように、臨時的な人たちがよけい失業という形になって参りますので、御指摘のように、たとえば三十二年の八月は四十九万であったのが、ただいまは六十四万、十五万初回受給者がふえております。そういうふうに増強して参っておりますが、七月からは若干減っておる、こういう状況であります。そこでこの初回受給者がこのままずっとたまっていって、失業者になっていくというわけではないのでありまして、順次他に転職をして参る。そこで失業者の、失業保険を受給いたして参ります者について今お話のありましたもの、つまり超過いたしているもの、これらは失業保険財政の中に余裕金がございますので、それで現在は十分にまかなっていられる、こういうことであります。それから受給期間の延長につきましては、この前法律も改正になりまして、長期に勤務いたした者は六カ月以上、三カ月もふやしているわけでありますから、これ以上受給期間を延長するという必要をただいま認めておらない、こういうふうに考えている次第でございます。
○小林(進)委員 どうも予定の時間が経過をいたしておりまするので、私は質問を省きまして——委員長、総理大臣はお見えになりませんか。
○重政委員長代理 総理はほかの委員会に出ておられると思いますが……。
○小林(進)委員 ちょっとこちらへお見えになるように一つ御配慮願いたいと思います。 それでは労働大臣にはちょっとそこで休憩をしていただきまして、農林大臣がお見えになっておりまするから、農林大臣に最近の農村における潜在失業者について若干御質問をいたしたいと思うのであります。 一体二、三男対策をどういう工合にお考えになっているか。現在農村には余剰人口が大体一千万人いるといわれている。そのうち絶対の余剰人口はまず五百万人、これはもう季節のいかんを問わず、これだけ余分な者がいるというふうに算出をせられているのでございます。そのほかに季節労働、余剰にして余剰にあらざるというような季節労働者が五百万から七百万もいるという状態でございますが、この農村の過剰人口あるいは二、三男対策といったものが、この都市の労働者の低賃金というものをさらに脅かしているのでございまして、雇用問題の解決のためには、どうしてもこの農村の過剰人口の問題を解決していく以外にはないのでございますけれども、しかし、きのうあたりからもしばしばここで質問が繰り返されておりますように、現在の日本の農村が、それぞれ特別の小経営を営みながら、一戸当り平均八反強の土地にしがみついて、そして個人企業の形で近代のオートメーション化の時代に置き去られるような、そういう前近代的な農業の経営であります。生産の低い、従って都会における低賃金のそれにも及ばないような奴隷的な所得にしがみついて労働をしている限り、私は人口問題、この雇用の問題、労働の問題が一体解決できるかどうか。農林大臣はこの災害では、災害復旧だ、米価の問題だ、肥料の問題だ、税金の問題だ、方々から農村対策でいじめられておりますが、一体その税金といい、米価といい、あるいは農産物の価格といい、あるいは災害の復旧費といい、そういう諸般の要求を全部かなえてみれば、一体これで農村問題が解決するのか、人口問題が解決するとお考えになっておられるのかどうか。しかし私どもは、日本を離れて新しい近代国家をながめてみますと、そういう農村の過剰入口をちゃんと別な方法で解決している世界的な例は幾つでもあります。ただ私はその例を申し上げる前に、今のあなたの農業政策、この個人企業の、個人小経営をそのままにしておいて、そして農村のこの前近代的な、しかも零細なる企業形態が一体解決できるとお考えになるのかどうか、明快な御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
○三浦国務大臣 農村におきまする最大の課題としての人口問題等にお触れになりましたが、私もこれは率直に日本の置かれました客観的事情から見ますと、農村における人口問題は最も困難な問題だと考えております。ことに二、三男等に対します施策につきましてお尋ねがございましたが、農業政策としましては日本の国土が狭小である、従って農業の対象であるところの耕作地が得られないという宿命的な地位に置かれてございますけれども、やはり開墾、干拓等によりまして耕地の拡大をはかるということが重要な問題だと考えております。さらにまた移住問題等においても、これはやはり看過できない重要なことでございまして、幸い南米方面におきましては非常に日本の移住を歓迎している向きもだんだん出て参っております。これらにつきましては、困難な事情がありますけれども、これに対しまして適応の施策を拡大して参りたい考えであります。さらにまた小林さんの御指摘でございますと、一般にやっているという先進国の事例にもお触れになりましたが、われわれも十分その方面の検討を重ねまして採長補短と申しますか、そういうようなことにつきましても今後十分に考えて参りたい。ただし非常な困難な事情でありますことは申すまでもございません。
○小林(進)委員 私は農林大臣のおっしゃる開墾、干拓あるいは移民、移住の問題、そういうことでこの日本の前近代的な農業、その零細企業形態を改めずして、私はこの問題が解決するとは考えておりません。考えておりませんが、そういうような論争を繰り返しておりましては、時間を浪費するだけでございまするから、私は質問をやめにいたしますけれども、どうか願わくは、今の日本の資本主義形態の中では資本もない、生産性もない、利潤も少い農民が太刀打ちして生きていけるわけがない、そういう事実を正直に農民に訴えて、昔のようにかせぐに追いつく貧乏なくといったようなごまかしの教育にあやつられて、一生懸命にくわでも振り上げていれば、あるいは百姓をしていても資本家になる、金持になるのではないかというようなばかな夢を見ている、そういうごまかしの農業政策をやめにしていただいて、お前たちはもうこのままの形態、このままのやり方じゃ資本主義の世の中では食っていけないんだという事実を教えていただいて、全く新たなる観点に立って一つ農業政策、人口問題、雇用問題の解決に取り組んでいただきたい。それは基本的にどうすればいいのかと、もし大臣が私の所見を承わりたいとするならば、また一つ所を改めましてゆっくり御教授を申し上げたいと存じております。 次に私はおいでになりまする労働大臣にお聞きいたしまするが、ILOの問題について、これも実は総理大臣がおいでになりますると総理大臣に先に御質問を申し上げたかったのでございますが、これは前の石田労働大臣は第二十八国会におきまして、参議院でありますが、ILO条約の百五号の強制労働の件については国内法も整備いたしまして必ず批准をいたしますということを言明しておられる。これは速記が残っております。しかし今日に至ってもなおそれがそのままに放任をせられておるということは、これは内閣みずからが天下に公約したことを裏切ることになるじゃありませんか。一体どのように処置せられる御所存であるか、これが一点でございます。 それから同じく八十七号の問題でございます。これは総理大臣がお見えになったら一つ総理大臣の責任を追及することにいたしますが、労働問題懇談会、これは労働大臣の非公式の諮問機関でございまするが、その懇談会においてILOの批准問題についての小委員会をお作りになりまして、そこではすでに結論が出ているはずであります。総理大臣は、同じく二十八国会のことしの二月一日でございますか、社会党代表の質問に対して、ILOの八十七号の件については目下検討中であるけれども、すみやかに善処する、こういう答弁を与えられている速記録があります。続いて四月二十三日、これは社会労働委員会において同じく社会党の委員の質問に対して、あなたは二カ月前にすみやかに善処すると言っているが、二カ月経過した今日においてなお善処をしないではないか、一体どうしたんですかという質問に対しまして、八十七号の批准については政府はなるべく批准する方向に向って検討を加えてきている。国内法との関係もあり、いろいろの点でなお検討を要する点もあるので、目下労働懇談会に諮問をいたしておるが、労働大臣からの報告によると、小委員会を設けて審議を進行しており、それから推察いたしますと、明確な期限を切るわけには参りませんが、私としては早く結論を見るに至るだろうと考えております。こういうことを言われて、そしてその懇談会の結論は大体八月には出るから、その結論を見てすみやかに批准をしたいという言明を与えられておるのでございますけれども、もはや十一月に入った今日、その後の処置が何ら講ぜられていないことは、これまた一国の総理大臣、それをいわゆる補佐——補佐という言葉は通じないかもしれませんけれども、閣僚の重大なる担当官として、総理の言葉を直ちに実現する道義的政治的責任をお持ちになっておる労働大臣が、じんぜん日を過してこられたことは、私は重大な間違いじゃないかと思うのでありますが、これに対しまして一つ労働大臣の明確な御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
○倉石国務大臣 基本的にILO条約をできるだけ批准したいというのは、政府の変らざる方針でありまして、世界八十カ国の参加いたしておる参加国の中でも、日本という国はILO条約をよけい批准いたしておる方の国であることは御承知の通りであります。そこで当初御指摘の百五号は、強制労働廃止に関する条約であります。これは一昨年私がILO会議に行っておりますときに、イギリス側から提案をされまして、その後長い間マックネア委員会というもので慎重審議をされ、これは御承知のように、共産圏諸国等に行われておる政治的信条を異にする人々に強制労働をしておることはよくない、こういう考え方から出発しておる条約で、趣旨はまことにけっこうであります。しかし御承知のように、一つ一つの条約を批准いたしますについては、慎重の上にも慎重を期して、やはり国内法と調整をしていかなければなりません。そこで政府におきましては、石田前労働大臣が申し上げましたように、国内法に対してどういう影響があるかというようなことについて検討をいたしまして、その結果なるべく早くこれは批准をいたしたいという方針には変りはございません。 次のILO条約八十七号につきましては、お話のように労働問題懇談会に諮問をいたしまして、そこで目下検討しておる最中でありまして、今結論が出たというお話がありましたが、結論がまだ出ておるわけではありませんで、小委員会において国内法とどういうところが抵触しておるかというふうなことを研究いたしまして、これからその懇談会はどういうふうな形をおとりになりますか、さらに総会の決議として何らかの意思表示もあるかもしれません。そういうことについてこちらからとやかく指図すべきことではないので、労働問題懇談会の御意思が出てくれば、それを尊重して政府の態度を決定する。 ただここに、小林さんも御承知のように、ILO八十七号条約は公労法四条三項が問題でございます。そこで公労法四条三項に関係のある、いわゆる公労協関係の全逓という労働組合が、ああいうような態度をとっておられるという事実が、ここに新たに出て参りましたことについては、政府は、すなわち行政を担当いたしておるわれわれからいたしますと、ああいう違法なる行為がILO八十七号条約をかりに批准することによって合法化しようというふうな考えがあるといたしましたならば、もってのほかであります。私どもはそういう意味で、このILO八十七号条約に対する批准については慎重に検討をいたしておる。こういうことであります。 〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
○小林(進)委員 小委員会が結論が出ていなとはおっしゃいましても、これは認めなければならない方向に走っていることは明白なのでございまして、しかもそれが労働大臣の非公式なる諮問機関でございまするから、白紙の状態にまかせなければならないなどということは逃げ口上としか受け取られないのでございまして、要は労働大臣あるいは政府の考え一つでこれは決定する段階の問題なのである。それでなぜやらないかということは、今あなたがおっしゃった通りなのです。全逓の労組が三役を改選をしたことに対して、現行法の守れないような全逓が批准の障害になっておる。これをあなたは格好の口実にしておやりにならないという腹をおきめになっている。しかし一体ILOの八十七号というのは何か、結社の自由と団結権擁護に関する条約である。この条約は、主として労働者及び使用者は事前の認可を受けないでみずから選択する団体を設立し、加入することができるとともに、労使団体は規定を作り、自由にその代表者を選び、管理、活動をきめることができる。行政機関は、これらの権利を制限したり、その合法的な行使を妨げないし、また労使団体を解散したり活動を停止させたりしない。労使団体は、右の権利を行使するに際して、その国の法律を尊重しなければならない。大臣は、このその国の法律を尊重しなければならないという条項でおやりになっておると思うのであります。なるほどこの面におきましては、あるいは全逓労組は、あなたのおっしゃる日本の公労法第四条第三項を軽視しておるかもしれません。しかしILO条約はその次にこういうことをきめておる。その国の法律は、この条約に規定する保障を害するようなものであってはならない、このように規定しておるのであります。国内法といえどもこのILO憲章にそむくようなものであってはならない、労働者の自由権、団結権に害をなすような規定は設けてはならない、かように規定をしているのでございまして、しかもおっしゃるように、この八十七号はすでに三十一カ国によって批准をしているのであります。かくのごとくして、今や世界の労働者たちは、自由に団体を設立し、自由にその代表者を選ぶ権利を与えられているのであります。しかも労働者に自由に代表者を選ぶ権利を与えることが、すなわち世界の平和を確保する手段なのである。これがいわゆるその目的であります。労働者の自由権、団結権、代表権を制限することは、平和を撹乱する、戦争に通ずる考え方である。世界の平和を確立するためにはそういう団結権を与えなければならないということが、国際労働機関憲章の前文に宣言をされているのでございまするけれども、労働大臣は、このILOの条約に相反して、国内法をたてにしてその批准をやらない、労働組合を弾圧をしておる、これが問題であります。今世界が手を握って、世界の共通の労働政策を持って、そうしてこの方面から恒久的な世界の平和と人間の尊重、労働の栄光、価値といったものを確立しようと、幾多の戦争という経験を踏みながら、今人類は崇高な目的に向って進んでおる。これは新しい世界的な道徳でありまするし、もし世界国家という構想が許されるならば、これは世界国家の憲章たるべき機関であります。世界の法秩序であると私は思っている。今ではまだ国内法のような、強い権力によって拘束する力はございませんけれども、国内法に優先する最も崇高な人類のモラルですよ。道徳によって守られる自然法なんです。これはもはや人為的ないわゆる一国の利害得失によって制約を加えることのできないような、国内法に優先する人類のモラルによって作り上げられておる。それをあなたはそういう公労法第四条などというものでこれを制限されているのでありまして、むしろ世界的な観点からながめたならば、この世界の法秩序に違反している人は一体だれかということなんです。全逓労組を含めた労働者階級がこの世界の法秩序に違反をしているのか、それとも自民党内閣、今の政府がこの世界の法秩序に違反しているのか、私はそれを承わりたいのであります。むしろ今日世界の信頼を失っているものは、これは全逓労組じゃない、あなたなんです。労働政策の面において世界に反逆しているのはあなたなんです。世界の規範に反抗しているものはあなたなんです。これを一つよく考えてもらわなければならぬ。世界という観点の中では、最も悪質な反動的労働政策を行なっているものは岸内閣であり、倉石労働大臣である、こういうことになるのであります。 明治維新に、世界のブルジョア民主主義の明けの鐘がわが日本にも響いて参りまして、黒船を契機として、日本の明治維新が開かれて、そしてブルジョア民主主義というものが初めてわが日本に形成された。そのときには近藤勇というのがおりまして、虎徹を腰にはさんで京三十六峰やみの夜中に大剣を振り回して、そして徳川幕府の温存をはかろうとした。私はどうもあなたの頭の土にちょんまげをのせたら、それがすなわち近藤勇じゃないか、こういう映像を持たざるを得ないのでございまして、どうか倉石労働大臣はそういう世界的な見地に立って、そしてそんなえこじな形で、公労法の第四条などといういわゆる虎徹の名刀を腰にたばさんだような格好で、世界の進運に反逆するような反動労働政策、時代に逆行するようなそういう労働政策は、一つやめていただきたい。日本にはもう近藤勇は二人要りません。願わわくは一つ、これはあなたがいかにがんばっても労働政策というものは時代の動きとともに進んでいくのでありますから、この際つまらない感情や、そういう意地はやめにいたしまして、すなおな気持でこのILOの批准をすみやかに実現をしていただきたい、かように考えておる。これは答弁をいただきますと時間がなくなって参りますから、私はたっての切なるお願いということにいたしておきます。 次に、私は文部大臣がお見えになっておりますので、不当労働行為という問題についてお願いいたしたいと思うのでございます。私は岸内閣が外交、経済、あらゆる政策に決して成功しているとは思っておりませんけれども、その中でも一番致命的な欠陥は、この予算委員会においてもしばしば追及せられておりまするごとく、権力をもって人民大衆を統治する思想です。権力支配の思想が露骨に現われているということが私は最大の欠点であると思うのでございます。これは総理大臣がお見えになっておりませんので、総理大臣の御意見が承われないのは、はなはだ残念でございますけれども、日本の憲法の第二十八条には労働者の基本の権利というものが明らかに保障せられておりまして、この基本の権利だけは法律をもってしても制限、侵害することができない、こういうような形ができ上っている。従いましてこの労働者の基本権を制限しております国家公務員法、あるいは公労法、地方公務員法というもののこの基本的な権利に対する制限の部分は、最も内輪に解釈いたしまして、これは断じて拡張解釈は許されない。そして対労働者に関する限りは権力支配を排除いたしまして、労使対等の立場に立って、そして問題を処理していく、これが労働基準法、労働組合法の精神であります。この精神だけはあくまでも憲法に沿って大きく前面に出していただかなければならないのでございます。しかるに岸内閣に至っては、この労使対等あるいは労働者を保護育成する、そういう憲法の精神を全くなくいたしまして、もっぱら労働組合の弾圧が激しく行われてきているのでございまして、その最も端的な例がすなわち日教組に対する弾圧という形になっても現われてきているということを申し上げなければならないのであります。 教組に対するものの一つの例といたしまして、刑事処分を受けた者、福岡県だけでも任意出頭を命ぜられた者が一千百二十七名、逮捕された者が五十二名、賃金カットせられた者が二万名、東京におきましても逮捕せられた者が二十九名、和歌山県においては任意出頭枚挙にいとまあらず、逮捕せられた者が十三名、京都におきましても逮捕せられた者が十六名、こういうような惨たんたる刑事的な圧力が加えられておるのでございます。私はここにおいて文部大臣と再び勤評問題の内容について論争しようというのではないのでありますけれども、民主主義、民主教育の中立、権力支配を排除するために、教育を守る立場から学校の教師たちがわずか一時間か二時間授業に食い込む、その授業をやりくりしたということだけで、こういう大がかりな弾圧が加えられている。この弾圧を加えられたことによって、一人の教師が任意出頭という形て一体幾らの時間を浪費するのか、このむだな時間を累計いたしましたら、一時間二時間の授業をやりくりしたなどというような損失ごときものでは私はないと思うのであります。この人たちが不当なる逮捕、あるいは任意出頭等のために幾時間一体身柄を拘束されたか、どれだけ一体その正当なる授業を行う時間を制限されたか、私はその正確なる計数をまず文部大臣からお伺いいたしたいと思います。
○灘尾国務大臣 せっかくのお尋ねでございますが、遺憾ながらさような資料を持さ合せておりませんので、御了承願いたいと思います。
○小林(進)委員 近代国家における教育行政担当者の基本的な考え方は一体何か、それはまず教師を信頼する、こういうことから私は始めなければならないと思っている。教育のことを一番知っているのは教師なんです。こういう基本的な考え方から出発していかなければならない。毎日教室にあって子供の顔色を見、健康を見、性格を見、知能を判断しながら、しかも一人々々の個性を見詰めて、終生を教育にささぐているのは教師です。この日本の教育を担当し、ほんとうに日本の教育を形づくっているのは、文部大臣、あなたじゃないのだ。あなたなんというものは、任命せられて一年か二年でどこかにふっ飛んでしまう、あとは野となれ山となれです。しかし教師というものはそうではない。真剣に教育の責任を遂行しているのが教師であります。しかもその教師を四六時中監視しているのは父兄です。そして父兄からの信頼を失った教師はもはや教師として見放され、教壇に立つことができないのであります。それだけに教育に対する教師の立場というものは真剣であります。それに対して近代国家における文部行政というものはどうか。文部大臣以下教育の担当機関というものは、この教師たちのとうとい経験に対して、その意見をすなおに受け入れて、その教師の経験に基く施策あるいは希望、欲求、教育に対するいろいろの意見というものを謙虚に受け入れて、それを用いてより適当なる教育の環境と教育の施設を作り上げるという、こういう相協力の関係に立つのが、教育行政を担当する文部大臣以下の責任なんです。教育行政官と教師というものは親密協力の関係であって、支配、服従の関係じゃない。しかるにあなたは文部大臣に就任すると、昔の内務官僚、警察官僚の本質をむき出しにして、そういう教師との協力関係、対等関係を全く放棄して、まさに教育というものを治安の対象、取締りの対象に考えている。教育というものに対する信頼の気持は一つもない。いかにしてこれを監督し、いかにしてこれを取り締るかという冷酷無残なる教育行政をおやりになっておるのでありまして、私は実に残念にたえない。 一体終戦後において、この自民党、保守党内閣を中心として文部大臣というものは十数名制でき上っておりますが、その文部大臣の中で一番弾圧の成功した者が二人いると言われている。その二人とはだれか。一人はなくならなた大達茂雄文部大臣、いま一人は灘尾何がしという文部大臣、これはいずれも内務官僚であり、警察官僚の秀才であります。しかしそれ以外には、学者から生まれた大野さん、あるいは政党の五十年、四十年、三十年の経験を経た松村さんあるいは松永東さん、これらは文部大臣として弾圧をする文部行政には成功しなかった。なぜ成功しなかったか、涙があるからです。警察官僚、内務官僚のあなたは、教育をいわゆる弾圧の対象、治安の対象と考えている。それが今もなおわが日本の教育をかくのごとく悲惨な状態に陥れている。私は今警職法の問題を問題にするのではありませんが、あなたはかっての内務官僚、警察官僚であります。あなたの右手には牢獄にぶち込まれた、いわゆる怨嗟に満ちた善良なる市民の黒い血がついているかもしれない。冷酷なあなたの目の陰には、あの残酷な治安警察法、治安維持法の執行に基いて警察にぶち込まれた連中の恨みがまだついているかもしれない。そういう贖罪をすることをあなたは考えないで、また文部大臣に成り上ったこの好機をとらえて、今なお日本の教育をそういう反動的な、冷酷なあなたのその血祭りにあげようという不当な教育行政を続けられて、そしてこの教師たちを父兄や児童の手から何千名となく逮捕されているようなことは、断じてわれわれは忍び得るところではございません。私は昭和二十九年には大達文部大臣に不信任案を上提いたしました。そういう冷酷なことをおやりになることは、末路は決してりっぱなものではない、私はこう忠告を与えました。それは速記録がありますからごらん下さい。私の予言が当っているかどうかわかりませんけれども、晩年さびしく死んでいかれた。どうかあなたも一つ晩年のことも考えて、そういうような弾圧をおやりになることは一つおやめになっていただきたいと思うのであります。 私はそういうことに対するあなたの御所見を実は承わりたいのでございますが、あなたの御答弁を聞いておりますと時間がなくなりますので、あらためて一つお願いをいたすことにいたしまして、私は次にこういうような政府の不当労働行為が繰り返されておることが、ひいては官僚陣営に影響をいたしまして、先ほども警察官僚の不当なる労働行為についてはずいぶん森委員から質問がございましたが、それにいたしましてもあらゆる不当労働行為の問題が公務員によって行われておるのでありまして、その具体的な例といたしましては新潟の鉄道局の監理局長が、いわゆる労働組合に対して不当なる弾圧を繰り返しております。あるいは、いま一つは専売公社であります。専売公社の総裁室長の高橋という、これは実にとるに足らない公吏ではありますけれども、やはり政府のこういう反動あるいは弾圧政策に便乗いたしまして、そうして国民に対する重大なる侮辱を与えておる。これは問題は、あとで官房長官がお見えになりましたらお尋ねすることにいたしまして、専売公社の問題についてちょっと申し上げますと、現在タバコ耕作者に対する専売公社の役人のやり方というものは、実に不当代官より以上の悪例を残しておるのでありますが、その中で、それに対するわが党の批判に対しまして、今申し上げました高橋総裁室長は、十月四日新聞発表を行いまして、朝日新附に発表いたしましまた談話でありますが、「耕作組合法の審議経過を見ると、もともと自民党の地盤となっていたタバコ耕作者を、社会党が抱き込もうとして働きかけたものだが、結局成功せずに今日に至ったわけだ。今地方でもめているのは社会党が腹いせに農民組合などをあおって騒がせているからだ。」かような新聞談話を発表し、天下の公党を完全に誹謗をいたしております。一体国家の官公吏がこういう天下の公党を新聞によって誹謗しているがごときはけしからぬと思うのでありますが、大蔵大臣は一体これをいかに処分し、いかなる御所見をお持ちになっておりますか、お伺いいたしたいと思います。
○佐藤国務大臣 お答えいたします。ただいまの問題は過日大蔵委員会におきましても問題になり、政務次官から事情をよく説明し、また当人からも事情を釈明いたしまして了承をお願いしたような次第でございます。
○小林(進)委員 いま一つの官公吏の国会並びに国会議員に対する軽視、侮辱の問題については、御答弁を要求しております関係大臣がお見えになりません。一つ早急においでを願いたいと思うのでございます。
○楢橋委員長 官房長官を呼びに行っております。
○小林(進)委員 それでは官房長官がおいでになりますまでに大蔵大臣に一つ軽く御質問をいたしたいと思います。(笑声) それはほかでもございませんが、公共土木費関係の四百億円の金がすでに政府の不況対策——これは政府がきらってお出しにならないけれども、その第四・四半期分を個々の修正という形でもはや繰り上げ使用をせられておる。そういたしますと三十四年度の新規予算が実施せられるまでの間に、予算の空白が生ずるのじゃないか。私は雇用問題を中心にお尋ねをしているのでございますが、端境期と申しますか、そういうときにおいて一体どうそれを埋めていかれるのか、この問題に対してお尋ねをいたしたいと思うのでございます。
○佐藤国務大臣 公共事業費の繰り上げ使用につきましては、過日当予算委員会でも実情を詳細に御報告いたしました。ただいままでのところ工事の実施状況その他等を勘案いたしておりますが、私はこの第四・四半期における工事の進捗状況はただいまから予測はまだできない状況でございます。大体今日の経過で見ますと、例年よりも繰り越し工事は非常に減るだろうということを実は考えております。しかしただいま御指摘になりましたように、四月以降一、二カ月空白が生ずるであろうというような事態が起るとは実は考えておりません。今日まで繰り上げ使用を認めましたのは例年に比べまして約一、五%増でございます。これが当面しておる雇用の面に役立っておることは申すまでもないところでございます。同時にまた工事の進捗状況を十分勘案いたしまして、時期的にも来年度予算ができ上ります前に、またそれを使うに当りまして空白を生ずるようなことのないこように工事の実施状況を十分見ておる次第でございます。
○小林(進)委員 法務大臣も官房長官もまだお見えにならない。私は時間の制限がありますので、努めて今日理的に質問を繰り返して参りましたけれども、御答弁を願う大臣がおいでにならなければ、残念ながらこの質問を打ち切るわけにはいきません。一つ委員長、這般の事情をよく御考慮いただきまして、寛大にして情ある御処置をお願いいたす次第でございます。法務大臣と官房長官は……。
○楢橋委員長 官房千長官は今呼びに行っております。
○小林(進)委員 総理大臣は御多忙のようでございますから、これは私の方で御遠慮きせていただくにとにいたします。
○楢橋委員長 どうですか、持ち時間もあるから……。
○小林(進)委員 わずかですから、急いでおいで下されば、一つ簡潔に質問をいたしまして終りたいと思います。 それではその間大蔵大臣に御質問をいたしまするが、先般両ドイツの経済相でありまするエアハルト氏が日本に来られまして、日本の雇用問題、低賃金政策について、お客様としては、ややどうも言葉に衣を着せな過ぎる率直な談話があったと思うのでございますが、そういう御意見の発表がございました。それによりますと、これは十月二十七日を午前八時半の記者会見の内容でございまするが、「一国の経済発展で大切なことは、まず国の購買力をふやすことである。これによって生産力が高まり、さらに貿易拡大に向くことになる。この購買方を高めるということは、つまり賃金を上げるということである。私は日本の賃金水準を高くすることは産業構造的にも政策的にも自然であると思う。」こういうような談話を発表せられまして、あわせて、同じような敗戦の事情にあったドイツが、労働政策、雇用政策、賃金政策に成功したことが、今日ドイツ経済の発展、成功したゆえんであるということの含みを入れて談話を発表せられておりまするが、この高賃金政策がひいては産業を近代化し、貿易を助長する、そうして国内の購買力を上げて国民の生活を豊かにするというこの考え方は、わが社会党の経済政策と全く同じでございまするが、これに対しまして一体大臣はどういうお考えをお持ちになっておりますか、お伺いいたしたいのであります。
○佐藤国務大臣 お答えいたします。エアハルトさんは申すまでもなく経済の大権威者であられます。今日までエアハルトさんのお話というものが断片的に新聞に掲載されまして、ただいま御指摘になりました日本の賃金は安いんじゃないか、あるいはまた円為替は適正でないんじゃないかというような断片的な記事が載ったのでございます。私はエアハルトさんにお目にもかかりましたし、いろいろのお話も伺いました。しかし、あの伝えておる記事は真意を伝えておるものじゃないのじゃないかというような疑問を、持ったのでございます。ところが今朝日本経済新聞の記事を見ますと、エアハルトさんが日本出発に際しまして、特に日本経済に対して寄稿されたこの詳細な一文を読んでみまして、エアハルト氏の大体の考え方をつかめたような感じがいたすのでございます。この記者自身は、全部が全部私賛成する考え方ではございません。ただ非常な遠隔な地にあるドイツの副首相兼経済大臣が、日本経済について深い認識と知識を持っておられる、またドイツ経済再建のために払われたその観点からいろいろお話をしておられること等について、まことに頭の下る思いがし、当面している諸問題について、その問題を提起し、また今後のこの問題の解明のための一つの方向を示唆されておるように思うのであります。 ただいま賃金の点に触れられまして、かねての社会党の主張同様、高賃金だというように、非常に社会党の経済政策とエアハルトさんの経済政策とが一致しておるかのようなお話に聞ける御説を実は拝聴いたしたのでございますが、エアハルトさんが経済のあり方として堅持しておられるものは二つの柱がある。その二つの柱の一つは一体何か、どこまでも健全でなければならないということ、しかも自国の経済の健全性を一つの柱とし、同時に自由主義、資本主義による経済の伸長こそが真に繁栄をもたらすものだという、二つの大きな柱を持っておられるのでございます。幸いにして社会党の諸君がこのエアハルトさんの持たれる経済理論、この二柱をそのまま承認されまして、その二柱の上に立って高賃金を主張なさるんだといたしますならば、これはまことに率いと言わなければならない。 かような基本的な議論は第二にいたしまして、わが国の賃金水準そのものの問題は、私が申し上つげるまでもなく、賃金そのものは生産性と関係のあること、これは見のがすことのできないものでございます。しかもわが国の経済のあり方から見まして、低賃金であるがゆえに品物が格段に安い、こういうような批判も一部には出ておりますが、わが国の商品というか、品物そのものもいろいろ価格はまちまちであります。国際的に見まして特に安いと考えられるものは、繊維だとか、あるいは最近出ております写真機であるとか、あるいは特殊なものについては非常に安いものがある。しかし同時に鉄面のごときは、国際価格に比べまして非常に高いものがある。これは必ずしも賃金そのものからきておるわけではないだろう思います。同時にまた賃金そのものにおきましても、国内賃金のあり方を見ると、非常に高生産の事業、これにおきましては賃金は相当高い。しかしながら生産性の劣っておる産業部門においては賃金が安い、こういう状況にございますから、ただ単に簡単に低賃金という言葉だけでは実は表現ができないように思うのであります。同時にまた最近の賃金傾向をずっと見ますと、逐年賃金は高くなりつつある。そのテンポが非常にのろい、非常におそい、こういうようなおしかりもあろうかと思いますが、賃金そのものも上昇の方向にあることは、社会党の皆さんも必ずお認めになるに違いない。ただそれが、エアハルトさんが言うような経済的の理論によって賃金が上昇する、こういうように私どもは考えるが、あるいは一部においては、これは戦い取った結果賃金が高くなった、こういうような御意見があろうかとも思います。 同時にまた非常に議論になりました円為替の問題でございますが、私どもはこの円為替は今日適当な価格である、かように考えております。これにつきまして、エアハルトさんの言われるようなことは私どもただいま考えておりません。エアハルトさんにいろいろ真意を伺ってみまして、いろいろ問題を起したことはこういう経緯がある、どうも日本の品物は非常に安いじゃないか、一体どういうわけだ、低賃金じゃないか、もし低賃金でないならば、円の為替というか、円が安いんじゃないか、こういうような筋だけの話をされたように伺うのであります。しかし本日の日本経済に出ておりますあの一文は、非常に簡単なものではございますが、エアハルト氏の経済に対する一つの考え方、同一時にまた日本経済を分析したその問題の所在点をやはりついておる感じがいたすのでございます。私は所説そのものに全面的に賛成だ、こういう考え方ではございませんが、今後のわが国の経済のあり方について非常に示唆に富んだ問題、また当面しておる重要な点をあれでついておるというような感がいたすのでございます。大へん簡単でございますが……。
○小林(進)委員 それではお許しをいただきまして、ほんの一問だけ法務大臣に質問いたしまして、私の質問を終りたいと思います。一問でございますから、若干長くなりますけれども、お伺いしたいと思います。 それは、最近不当労働行為問題につきまして、政府が、総理大臣を初めとして労働大臣その他が常に口にせられる言葉は、法秩序を守る、法秩序を守らない者に対してはやむを得ず国家権力を発動するのである、こういうことをしばしば言われておるのでございまして、特に労働大臣のごときは、国権の最高機関たる国会で国民大多数の意思として成立した法律を軽んじ、これを無視する者がありますることはきわめて遺憾である、これは国家権力をもって弾圧するのが当然である、こういう所見を述べられておるのでございます。従いまして、この法秩序を守るということ、一体法律の本質、大理の本質というものを私は一つ法務大臣から承わりたい、こう思うのでございます。いつも法規を犯す者は断じてこれを取り締らなければならないということをおっしゃるのでございますが、その法秩序を守る、違法を権力をもって取り締るのだということは、民主主義の全部ではない。あなた方はとかく法秩序を守る、権力をもって取り締る、これが民主政治の全部であるかのごとき御説明をされているが、私は全部でないということをあなたに申し上げたい。法秩序を守るということは、これは独裁国家でもできますよ。専制国家の方がどれだけ法律を守ることにおいて厳格であるかわかりません。きちんとした法律が守られることは、民主主義よりは独裁国家、専制国家の方がまさっておる。戦時中における東条内閣の方が一番法秩序を維持したというこの事実をあなたは御否定にならないと思う。しかし何でも法律があるからこれをしゃにむに押しつける、しゃにむに権力をもってこの法律を強制するということ、このこと自体がむしろ独裁政治である。これが独裁国家の典型であるということを私はあなたにお尋ねしたいのでございます。戦時中において東条さんは一億一心である、国民の多数または全部の意思によって、希望であるからという、全体の名において法律をお作りになりました。しかしそれはほんとに人民に押しつけられて、それが守られなければならない法律として、それを守らない者は御承知のようにどしどし監獄にぶち込まれていった。これはわが国の独裁国家、いわゆる専制国家の典型であったのでありますが、今は岸内閣がこの形で、大多数できめた法律だから、それを押しつけて、これを守らせて、守らない者はどんどん弾圧していくのだという、今おやりになっておる格好は、東条さんがおやりになっておった格好、独裁国家、専制国家がおやりになっておるやり方と私は同じじゃないかと思うのだが、一体それが違うかどうか。もしその間に一つの違いがあるとすれば、その多数というものが、一応国民の審判であります選挙という形をとって、多数ができ上っておる。その多数によって一つの権力の行使が行われておるのでございますから、その意味においてはヒトラーやムソリーニの独裁とは違っているかもしれません。しかも東条さんのときにも国会がありました。国民から選ばれた国会議員というものがありました。そしてその国会議員の全部の名において法律の強制、法律の製造が行われておったのでございます。従いまして、この形と、今の政府のおやりになっております法秩序を守るために権力を発動するという形と、どこに一体違いがあるか。私はそのやり方において少しも違いはないと見ておる。あとから私は法務大臣に御質問をしたいのでありますから申し上げるのでありますけれども、私をして言わせれば、私は民主政治の支柱は法秩序を守るということではないと思っておる。民衆の意向が常に政治の上に反映をいたしまして、法律というものが社会の実態と民衆の意向によって、常に流動していく、変貌していく、あるいは静止していく、活動していく。民衆の意思、主たるものは民衆の意思です。国民の躍動する意思です。その意思に従って法律というものがそれに付随して……。
○楢橋委員長 小林君、簡潔に願います。
○小林(進)委員 質問であります。私はそれが民主政治の正しいあり方であり、本質であると思っておるのでありまして、繰り返して申しますけれども、法律が法律として守られる価値のあるものは、それが常に人民の最大多数の意思と利益を反映しておるからにほかならぬのであって、主権者たる大多数の人民の、民衆の意思から遊離した法律は、法律として形は整っておっても、実質的な法律ではないと私は思っておる。一たん制定されたものは永久不変にそれを守らなければならぬという考え方は間違いであると私は思います。その法律制定が一応ヒトラーや東条が作ったように、合法の形をなしておりましても、社会の実態や民衆の要求、意思から全く離脱したものであれば、形は法律であっても、実質上においては、私はもはや法律としての価値を失ったものであるというふうに考えておるのでございます。そういう一たんきまった法律は固定して、それは神聖なものであり、人民の意思を無視してもその法律に従わなければならない、従わなければ権力をもって圧迫するというようなことは、それこそ私は民主政治に名をかりた大きな暴力の強制だと思う。それこそ支配権力者が支配の秩序を守らんとする、合法に名をかりた暴力だと思う。 そういうことに対しまして、世界のほかの国家はいわゆる人民に救済というものを与えております。いわゆる抵抗権というものを与えております。その抵抗権を与えている例は、一七七六年のアメリカの独立宣言、それからフランスの人権宣言、こういう中にいわゆる抵抗権というものが与えられているのでございまして、アメリカの独立宣言についての抵抗権を申し上げますると、政府の権力は人民に由来するものであり、政府がもし以上の目的に反するならば、人民はこれに対する改廃権、すなわち革命権を有するものである、これはアメリカの独立宣言の中に書いてある。政府の権力が人民の意思に由来しないものであるときには、人民はそれに対して改廃の権利、いわゆる革命の権利というものを持っておるのだ。またフランスの人権宣言、一七八九年でございまするけれども、この法律の中にもこういうことが明確に規定をせられておるのでございます。これは時間がありませんから言うのはやめますけれども、それをずっと引いて参りまして、一体戦後の西ドイツ憲法はどうですか。ヘッセン憲法百四十七条、ブレーメン憲法十九条、ベルリン憲法二十三条の三項等においても、このフアシズムによる一切の自由の剥奪というきびしい体験から出発をいたしましたドイツはその経験に基いて、法律の名において人民を圧迫する権力の乱用、権力の行使に対しては、抵抗権を一つ認めようじゃないかという観念が復活をいたしております。東独の憲法にはもちろんあります。そういうことから堪案いたしまする場合に、政府は民主政治を守る名において、いたずらに法律法規を固定化したものと考え、人民の意思を無視し、大衆の意思を無視して法秩序を守るという形の上に権力の乱用をしてくることに対して、人民には自然法に基く固有の抵抗権が認められておる。法律の規定にあるなしにかかわらず、当然自然発生的に私は認めらるべきものではないか、むしろ現在警職法等の問題について、国民の一部、自民党の政府と経営者陣とそして官僚に対して、それ以外の全国民が反撃を食らわしている。その人民大衆の意向を代表してやっております。これを権力として認めないで、むしろ法律秩序を守る、民主政治を守る名において弾圧する政府の則にこそ私は大きな間違いがあるのではないかと思います。フアッショの芽ばえがあるのではないか、かように考えまするが、一つ明確なる御回答をお願いいたしたいと思います。
○愛知国務大臣 大へん該博な御識見を伺いまして、いろいろと参考になる点が多々あるように存ぜられますが、非常に広範にわたってのお尋ねでございますのでお答えの仕方がなかなかむずかしいのでありますけれども、私は、戦後における日本の民主主義というのは、同時にこれは政治の方法論としては議会主義であるということであると信ずるのでございまして、公正な正当な選挙によって民意が政治に反映される、また選挙は申すまでもありませんが、数年ごとに通常の場合においても行われるわけでございますから、国民の意図というものが那辺にあるかということは、この選挙を通じて数年ごとに的確に政治の面に反映するものと思うのでございます。そうやって、議会主義として国会の中で慎重に審議せられた法律というものは、やはり民主主義の日本においては、みんなでこれを守り合おうという気持がまず第一に非常に必要ではないかと思います。いわゆる院外の勢力によって、たとえば労働組合あるいは労働運動というような名においてならば、いかなる方法によっても何でもできるというような考え方は、私は当今において非常に危険な考え方ではないかと思うのでありまして、労働運動にいたしましても、法が相当の程度労働運動というものを保護しておると私は思うのであります。その保護され、保障された範囲内におきまして、十分に活動される余地があるのでありますので、これを十分に活用していただきたい。ともすれば、私の今言いました国会で制定された法律であろうが何であろうが、これが力によって去就というのか決着がつけ得るものだという考え方は、私は間違いだと思います。特に法律の秩序を守らなければならない立場にあるわれわれといたしましては、この点を一番根本の考え方にいたしておるのであります。法律というものが見方によって、これは悪法であると一方的に主観的に断定されて、そうして法律は無視していいということであるならば、これは無政府であり、またただいま御指摘がございましたが、革命というようなことに対しては、私個人の考えでありますが、私はからだを張ってでも法秩序の中において革命が起らないように法秩序を守って参りたい、それが民主主義、議会主義を擁護する私の考え方でございます。 それからその次に、戦前との比較をいろいろとお話しになりましたが、戦前とは全く法制の立て方も憲法も違うのでございまして、このことは今さら詳しく申し上げるまでもございません。戦前と同じような弾圧である、あるいはフアッショであるというようなお話もございましたが、これはいろいろの法律制度その他をごらんいただければ、そういうことは要するに抽象的なものであって、具体的にわれわれとして論ずるだけの値打のないものではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。 また最後に、人権の擁護ということにつきましては、御承知の通り、こういった人権擁護の制度なりやり方なりというものは、新憲法下で初めて日本では形が出てきておるものであって、率直に申しまして、まだ不十分な点が多々ございますから、人権の擁護あるいは救済というような措置については、今後ともいろいろ政府としても充実するような方策を考え、これが予算なりあるいは法案なりの形でいずれ御審議を願う段階になると思いますが、これらの点につきましてはどうぞ御協力をお願いいたしたいと思います。
○小林(進)委員 官房長官も総理大臣もお見えになりません。私がせっかく質問を用意しているのに、ここにお見えにならないということは非常に残念しごくでございますが、すでに与えられた時間も超過しておりますので、私はここで一つ遺憾の意を表して、私の質問を終りたいと思います。いずれ社会労働委員会、運営委員会なり他の委員会において労働大臣に対する質問を行いたいと思います。
○楢橋委員長 これにて質疑は終了いたしました。 午後三時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。 ————◇————— 午後四時一分開議
○楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 井手以誠君外十七名より昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特1号)の編成替を求めるの動議が提出されております。 この際趣旨説明を求めます。井手以誠君。 ————————————— —————————————
○井手委員 私は日本社会党を代表いたしまして、政府提出の昭和三十三年度予算補正第1号に反対の意向を明らかにし、ただいまより御説明申し上げる趣旨に基いて、政府はすみやかに補正二案を組みかえて再提出されんことを要求するものであります。 今回提案されました政府案は、幾多のあやまちを犯しておりますが、何といっても許せないことは、不況対策の経費を全く計上せず、国民の期待を裏切っておることであります。岸内閣が石橋内閣の積極施策をうのみにして以来、今日までの経済政策はまさに失敗の連続であります。神武以来といわれた不景気は決して好転はいたしておりません。内閣の諸君もこの政府発行の書類をごらん願いたいと思います。この発表によりましても、毎月の企業整備は六百件内外、首切りは二万人をこえておるのであります。これが不況でなくて何でありましょう。この不況対策こそ総選挙以来の懸案であり、そのために早くより臨時国会の召集を要求されてきたはずであります。 与党の諸君も御承知のように、在庫調整が進めばやがて景気は上向きになるであろうというのがこれまでの政府の一貫した見通しでありました。しかるに経済企画庁で発表いたしましたこの「経済月報」十月号によりますと、「在庫調整ははかばかしく進まない状況だ。そして綿紡を除いたほとんどの業種が製品在庫の増加を見た」と書いてあるのであります。さらにそのために「企業の動きの第一は、採算のとれない工場の閉鎖とそれに伴う人員の整理あるいは配置転換であり、第二は人件費の節約で、賃金の一律引き下げや定期昇給の停止等が計画されるに至り、その中には著名な大企業も名を連ねている」と企業実態の悪化表面化を指摘しているのであります。しかも十月の三十一日すなわちきのう発表されましたこの「月例経済報告」によりますと、「経済の基調はおおむね横ばいであり、常用雇用は最近再び減少に転じ、五月以降の減勢に変りはない」と述べ、今後については「現在の横ばい基調を変えるかどうかについては、今し、ばらく今後の動向を見守る必要があろう」と警告しているのであります。従って佐藤大蔵大臣が本国会本委員会においていかに不況を調整だ調整だと言葉の魔術を使っても現実はきびしい不況であり、楽観の材料はどこにも見出すことができないのであります。今日不況のしわ寄せを受けた労働者、農漁民、中小企業者の困窮を救うため、この予算補正に不況対策を盛ることが、私は絶対に必要であると信ずるのであります。 今回の予算補正に当り、いま一つの大きな任務は、悲惨をきわめた伊豆半島を中心とする災害の緊急対策であります。政府が提出いたしました風水害の資料によれば、被害総額七百二十二億円に達し、本年度の復旧費は、予備費の使用済額及び使用見込額を加えてわずかに八十六億円にすぎません。大蔵大臣の説明する百三十億円の数字はどうしても出てこないのであります。災害対策本部長の山口国務大臣は、十月二十三日旅行先において三万円以上の災害にも、いわゆる小災害にも補助をすると記者団に発表しておるにもかかわらず、公約をほごにして見るべき特別の措置をとっていないのであります。私どもは被害激甚な災害地を一日も早く復興し、民生を安定するため、すみやかに二十八年災害に準ずる特別対策を要求するものであります。 次に私どもの承服できない点は、歳入の補正であります。政府は各種の雑収入をかき集めて約九十一億円の財源を捻出しておりますが、本年度の租税収入は、政府みずから認めておりますように、不況の影響を受けて、楽観を許さない情勢のもとにおいては、税外収入を先食いするような不健全な措置は、健全財政を目途とする財政法の精神に反するものであります。特に貴金属特別会計より十二億七千八百万円を受け入れることは、たとい銀の地金が国の所有にしろ、貴金属の根本的処理方法がいまだ国会の議決を見ていない今日、断じて見のがすわけには参らないのであります。 予算補正の財源には、異常災害の復旧を使途目的としている経済基盤強化資金をこのときこそ使用するべきであります。不急不要の経費を削減して不況対策に充つべきものと私は考えるのであります。 また政府は、財政投融資計画の原資不足について百八億円の外債を発行しようとしておりますが、これは自民党の内部にも多くの反対意見があるのであります。手持ち外貨に余裕を生じ、国内の民間資金も活用できるようになった今日、何を好んで金利高に向いつつある外国の金を国の予算の中に持ち込む必要がございましょう。 このような政府の無為無策に対して、ここに日本社会党は当面の不況対策と災害の緊急対策について予算補正の編成替を求むる動議を提出した次第であります。 わが党の動議の内容については、お手元に配付いたしておりまする要項について御参照を願いたいのでありますが、以上の趣旨に基いて、第一、台風による災害の復旧は地方財政の負担能力を越える深刻な実情にありますので、二十八年災害に対する特別立法措置と特別行政措置に準じて、事業費全般にわたって国の負担率及び補助率を引き上げ、また文教施設被害、厚生労働関係の被害についても同様の措置を講ずる必要があり、同時に本年度の干害、霜雪害、長雨害、風水害等による農産物の被害に対しても、また特別の措置がとらるべきものであります。これら災害に関する経費は、二百三十七億六千万円であります。 第二、不況対策については緊急に必要つなものとして、まず失業対策では失対事業の吸収人員を十万名増加し、失業保険の給付を暫定的に三カ月間延長、生活保護対象人員を三十万人増加し、駐留軍労務者の離職対策を充実して、新たに事務関係就労者の増加をはかるなど、十一億六千四百万円を計上すべきであります。 次に不況による農林漁民の所得減退を防止するため、水質汚濁防止の総合施策、酪農の振興、単位農協の農産物出荷の共同計算に対する利子補給などに十四億円、一方中小企業の経営近代化を促進するため相当の助成を行わねばなりません。 さらに勤労国民の生活を守るため、最小限度の緊急措置をとる必要があります。すなわち夜勤手当と五千円以下の期末手当に対する所得税を免除し、国民健康保険制度を改正して、国庫補助を現行の二割五分より三割に引き上げ、かつ助産手当その他の保険給付を行い、公務員の年末手当は〇・二カ月分増額して二カ月分を支給すること、これらに要する経費は八十四億五千万円であります。 またこのような不況対策経費の支出に伴う地方負担分については、地方財政の全般的な窮乏にかんがみ、本年度限りの特別交付金として六十四億六千万円を計上すべきであります。 以上、一般会計予算の歳出補正規模は、大よそ五百二十二億円に達するのであります。これらの財源としては第一に、たな上げ財源二百二十一億円のうち、二百十一億円をこれの定める使途目的に従って、異常災害復旧にまっ先に投ずべきであります。第二の財源として、わが党は、毎年度多額な繰越金を生じている防衛庁費のうち、非生産的な施設費、物件費等を削減し、これを大幅に補正財源として繰り入れることを要求するものであります。 次に特別会計予算補正関係の編成替でありますが、私どもは先にも申し述べましたように、円資金を調達するために外債発行の必要を認めていないのであります。先日質問された自民党の塚田委員も私どもと同様の意見があったと存じておるのであります。現在民間金融は政府も説明しておりますように緩和に向っておりますので、政府はこの際日銀公定歩合の再引き下げを促進して、その上で政府所有の金融債を民間金融機関に売却すべきであります。かくして財政資金を調達することはインフレを避け、かつ無計画な民間融資を抑制する一石二鳥の効果を上げ、もって財政資金の財源不足を補うものであります。 このような資金調達によって得た原資をもって災害関係、地方債起債、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金、日本不動産銀行、電源開発株式会社にそれぞれ必要な資金を配分し、かつ糸価安定のためにとりあえず日本輸出生糸保管会社の買い入れ限度の大幅増額のための融資に配分すべきであります。私どもはこれらに必要な原資額を約四百九十三億円と見ておるのであります。 以上わが日本社会党の主張する編成替の動議は、わが国財政経済の実情に照らし、適切な支出と合理的な財源調達に万全を期しておるものと信じておるのであります。 申し上げるまでもなく、政治の要諦は民生の安定にあると私は信じております。いたずらに権力をふるうようなやり方は、人心を治める政治に自信を失ったものと私は考えるのであります。どうぞ自民党の諸君も、災害地出身の議員の皆さんも災害地の熱望にこたえ、国民の期待に沿わんとするわが日本社会党の予算補正の組みかえ動議に仲よく御賛同あらんことをお願いいたしまして、動議提出の趣旨弁明といたす次第であります。(拍手)
○楢橋委員長 これにて編成替を求める動議の趣旨説明は終りました。これより編成替を求めるの動議及び政府原案を一括討論に移します。植木庚子郎君。
○植木委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)並びに同特別会計補正予算(特第1号)に対しまして賛成の意を表し、社会党提出の編成替を求める動議に対しまして反対の意を表せんとするものであります。以下その理由を簡単に説明いたします。 本補正予算案は御承知の通り、一般会計におきましては災害復旧対策関係の経費約九十一億円、これを追加補正せんとすることを内容としておるものであります。特別会計におきましてはその財源の一部を貴金属特別会計から一般会計へ繰り入れるために必要な予算の追加補正を行いますとともに、別途電源開発等のために必要な資金に充てるために外貨債三千万ドル、百八億円を発行しようとするのに伴いまして、産業投資特別会計及び国債整理基金特別会計の両会計におきまして、それぞれ所要の補正を行おうとするものを内容とするものであります。 まず一般会計の予算補正についてでありますが、政府は本年度になってから発生いたしました災害につきましては、各種の災害ごとにそれぞれそのつど必必要な措置を講じて参ったのでありますが、特に先般の二十二号台風の発生するに及びまして、その損害が非常に甚大なのにかんがみまして、これらの復旧促進をはかりますために、別途災害に関する特別立法の措置を準備いたしますとともに、必要な予算の追加補正を行おうとしておるものであります。 補正予算の総額約九十一億円の内訓は、風水害関係六十億、旱魃関係が二十億、凍霜害関係一億四千万、災害対策予備費十億円となっておりまして、おおむねその内容は妥当と認めるものであります。 今回の災害は七百二十二億と、その被害総額はいわれておるのでありますが、これはその規模におきましては、昭和二十八年災害のときに比べまして、おおむね四分の一程度と推定されておるのであります。従ってこれを同日に論ずることは必ずしも正確ではございませんが、それにもかかわらず、今回は二十八年災害の当時恒久化されましたところのいろいろな措置に加えまして、しかもその二十八年災害における特別立法の実績によりまして、その得失をよく調べまして、真に必要であって、しかも実効を上げ得るような特別立法措置と、それに各般の行政措置を今日までに加えて善処して参っております。すなわち今日までに支出済みとなりました予算の予備費の支出済み額は約二十四億でございまして、近く支出しようとする金額十六億円と合せまして四十億円に達するわけであります。これに今回追加補正に計上いたしてある分の六十億円を合せますと、百億円になる勘定でありまして、補助事業につきましては三割、五割、二割という割合をもって三年間で完成し、直轄事業については五割、五割という割合をもって二カ年間に復旧を完成する計画になっておるのでありまして、これをもって決して過小な評価ということはできないと思うのであります。 特別立法のおもなるものは、被災農家に対する米の売り渡しに関する特別措置を初めといたしまして、災害地域における公共団体の起債の特別措置や、公共土木施設、農林水産業施設及び農地に関する小災害復旧のための起債の特別措置、公立義務教育の施設の災害復旧に関する特別措置、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部改正等を含んでおるのであります。 しかしながら、なお深く考えてみますと、災害激甚地におきましての地方公共団体や、あるいはその地域における罹災者の中には、財政負担、経済負担にたえかねるような非常に困窮の事態に陥る向きも少くないのでございますから、なお今後政府がいろいろな施策をなさる場合において、ただいままでに用意せられました今回の法的、予算的措置のほか、でき得る限り、なお一そうの工夫をこらして、民生の安定のために特段なる措置を講ぜられますように要請いたしてやまないものであります。 次に財源問題について一言いたしたいのであります。 一般会計予算のこの補正の財源の調達方法は、先ほど社会党の組みかえ案の際に御批判がありましたが、日本銀行からの納付金とか、特別会計からの受入金あるいは国有財産の売払収入などでありまして、おおむね現在までに確定的にその金額が収納済みとなったもの、あるいははっきり収納されることがきまってしまったものの中で、予算に比べて増加になった分を計上しておるのであります。この方法につきまして、あるいは社会党のただいまの御批判は、歳入の自然増収を先食いするものであって、きわめて不健全な措置であると批評せられるのでありますが、私はそうは思いません。この種の財源調達の方法は、法令上から見ましても、慣例上から見ましても、何ら不都合がないのであります。 社会党の主張せられますように、むしろ防衛庁費のうちで本年度中に使用予定の物件費や施設費というものを、数百億円の多額にわたってこれを利用しようとされるような、こうした方法こそ、なるほど立場は異なるかもしれませんが、年度も、はや半ばを過ぎております今日におきまして、これはきわめて実行上困難な問題であり、また防衛計画上重大な支障を生ずるものとわれわれは考えざるを得ないのであります。 また社会党の主張せられます補正予算の財源として、いわゆる経済基盤の強化資金、すなわちいわゆるたな上げ資金の取りくずしというこの問題のごときは、なるほどこの当該法律の中には、異常な災害の場合にはこれを使用し得ることになってはおりますけれども、一つの目的にはなっておりますけれども、災害対策のような消極的な支出の財源に充てますよりも、むしろわが党が明年度において、予算編成の際にその場合を、期して今企図しておりますところの、それこそその法律の名前の通り、わが国の経済基盤を強化する資金といたしまして、そしてそれにふさわしい積極的な施策に充当するこそ、最も適切だと考えるものでございます。 次に特別会計のうちで、産業投資特別会計及び国債整理基金特別会計における予算の補正は、これはかねてからわが党の推進にかかっておりますところの、電源開発等基幹産業の拡充資金に充てますために、産業投資特別会計において米貨三千万ドル、百八億円の外貨債を発行しようとする計画に基くものでありますが、この外債の発行につきましては、なるほど世上いろいろ賛否の議論があります。しかしながらわれわれ、わが党の者といたしましては、政府とともに最大多数の一致をもって考えておりますことは、今後わが国の経済の発展のためには、海外に依存度が非常に高いところのわが国経済の特質にかんがみますと、単に国内蓄積資本に限りませんで、国内資金を補完する作用と、外貨を裏づけに持っておるところのこの外債の発行ということは、これはその時宜に応じて活用することこそ肝要であると考えるものであります。 さきにわが国が世界銀行や輸出入銀行等から外資の受け入れを行なって参りましたのも、かような観点からでありまして、元来世界銀行は相当の条件で民間資本が得られない場合に限ってローンを認める、こういう建前になっておるのでありますから、わが国といたしましては、世界銀行や輸出入銀行などだけに限らないで、幸いにしてわが国の経済が国際的には非常に評価をされておる、このわが国の現在の状況におきまして、むしろ大局的に外資の自主的調達の道を開き得る権限を政府に与えておくことが適切であると考えるものでございます。 なるほど最近米国の景気は上昇傾向にありますし、また連邦準備銀行の公定歩合も引き上げられ、一般金融も先高の傾向にあるようでありますが、昨年夏に比べまして、まだそれほどでもございませんし、わが政府が長期資金の金利の動向や、あるいは例年の第四・四半期におけるアメリカの季節的金融緩和、その状況をよく調べまして、極力よい条件で発行するように努めるという政府の説明を信頼いたしまして、これに賛意を表するものでございます。 次に現下わが国の経済界の実情に対するわが党の施策についてちょっと触れてみたいのでありますが、われわれは昨年来の経済界の推移こそは、過度の経済成長の結果に基きますところの景気の停滞現象と見るべきものと思っておるのでありまして、これに対処すべき方策としましては、すでに政府も発表しております通り、すでにいろいろと実施に移しておるのであります。すなわち三十三年度、本年度の第三・四半期におきまして、公共事業費の支払い計画につきましては、その総額に対する比率を前の年よりも一割五分、金額にいたしまして四百三十一億円を繰り上げ実施をいたしておるのであります。あるいはまたあたかも第三・四半期におきましては豊作の米の政府への売り渡し代金、これに対する支出も重なっておるのでありまして、相当巨額の財政資金の散布超過となる見込みであり、以上のこれらの措置によりまして、消費は、おおむね九%の増加になるものと推定せられるのであります。なおまた輸出振興あるいは物を伴う海外投資につきましては、積極的な努力を払っておるのであります。すなわちわれわれといたしましては、過少消費を最終消費需要の増大によって解消するというようなやり方でなく、財政投融資あるいは公共支出によりまして、経済の立ちおくれの部門ないしは産業経済の基盤強化に資しようという考え方でございます。また輸出振興、物を伴う海外投資を行うことによりまして、これを克服していこうというところの施策が、われわれの実行しておる経済政策でありまして、今われわれといたしましては、直ちに経済基盤の強化資金を取りくずすというような必要は、これを感じておらないのであります。これらの措置によりまして、現在の停滞しておる生産は、下期には七%の増加が一応見込まれるのでありまして、現在なべ底をはっておるという経済情勢は、漸次軌道に乗るという見解に立っておるのであります。 ただ現在の産業間の発展のアンバランス、不況産業に対する対策、あるいは不急不用投資の抑制、こういう問題につきましては、金融、財政政策についてはいろいろなる角度から万全の用意をすべきことが肝要なことは言うまでもありません。また中小企業に関しましては、特に留意しなければならぬところでありますが、今回の予算面には現われておりませんけれども、年末金融の資金やあるいは災害復旧の所要資金の需要に応ずるために、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫に対しまして各二十億円、日本不動産銀行に対しまして十億円、計七十億円の政府資金を追加いたしますと同時に、必要に応じまして三十億円の繰り上げ使用を認めることといたしてありますので、合計百億円の資金を手当いたしてあるわけであります。これによりますと、前年度の第三・四半期に比べますと、優に二百二十億円からの増加融資が可能なことに相なってくるわけであります。 最後に、社会党から提出されました本予算補正に対する編成替を求めるの動議につきまして一言触れてみたいと思います。 社会党におかれましては、本会議並びにただいまの討論あるいは予算委員会を通じまして、この際不況対策を講ずべきではないかという御議論でございますがわが党といたしましては先ほど申し上げました通り、いろいろな施策をすでに実行に移しており、またこの予算をもって災害等それぞれ所要の措置を講じておるのであります。すなわち財政と金融との調和を常に念頭に置きまして、金融の面におきましては再度にわたって日本銀行の公定歩合の引き下げを断行いたしまして、その正常化をはかりました。財政の面におきましは前述の通り、公共事業の繰り上げ等を行いましたが、これらによりまして雇用の増進に資する等、各般の情勢に応じた措置をすでに実行しておりますので、われわれといたしましては現在の段階におきましては、特に不況対策というような施策を、この際経済界に対しまして一時的な刺激を与える対策を講ずる必要はないという見地に立っておるのであります。 なおそのほか社会党の編成替を求める案におきましては、財源の問題につきましては書面の上でございますが、はなはだ金額のわからぬところがたくさんあります。またその他におきましても、災害関係の特別措置の問題につきまして国の負担率でありますとか、補助率その他におきまして非常に不明瞭であり、負担率や補助率が書いてあるところとないところがある。あるいは金額についても計上があったりなかったりというわけで、非常に心もとない動議になっておると思うのであります。 最後に、私は重ねて政府原案に賛成し、社会党の動議に対しまして反対の意を表明するものであります。(拍手)
○楢橋委員長 楯兼次郎君。
○楯委員 私は日本社会党を代表いたしまして、政府提案による昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)に反対し、わが党提出による昭和三十三年度補正予算組みかえ動議に賛成の態度を表明いたさんとするものであります。 以下三点にわたり、私はこの趣旨を説明いたしたいと思います。 社会党はすでに半年前から経済不況、失業対策あるいは酪農危機、養蚕危機等に対しまして、国民生活を守る立場から、たな上げ資金である経済基盤強化費を取りくずして、補正予算を組むべきであると主張を続けて参りました。半年後の現在、不況はますます深刻化し、たとえば繰業短縮は三十業種にわたり、三割から四割に及んでおるような現状であります。従って、神武景気で大もうけをいたしました独占企業でさえも、最近はこのままではやっていけないと言い始め、新しい企業整理あるいは首切りを計画いたしておることは、皆さん御承知の通であります。今日王子製紙の悲惨な争議が行われておりますが、このことが原因となっておることは申すまでもありません。政府はきわめて楽観的でかつ無策であったが、今後の見通しはどうか。最近の読売新聞一つとってみましても、次のごとき記事が目につくのであります。むずかしい月になった。企業の実勢悪が一段と深刻化する徴候がかなり目立ってきた、一流会社の企業採算の悪化も予想外に激しい。在庫調整もまだ効果現われず、苦悶続く企業と全く悲観的であります。失業は次第に下請地帯から始まりまして、毎月二万人もの首切りがふえようといたしております。従って、来年の新規卒業者には春らしい就職の希望も今日持てないのであります。こうした状態を放置しておくから、ひいては青少年の不良化あるいは暴力犯罪発生の原因となるのは、理の当然であります。景気は停滞しているとか、あるいは刺激策は必要がないといって、現実をほおかむりした議論でしらを切っておられるのは、私は岸総理ただ一人であろうと思うのであります。そうして警職法を改正をいたしまして、取締りを強化する。こういう順序を転倒した政治というものは私はないと思います。今日の社会悪の根源を直すことが、警職法改悪より、まず岸内閣のなすべき第一の任務でなければならない、かように私は思うわけであります。(拍手) 自民党は、半年前、不況対策のために、たなあげ資金の取りくずしを行い、補正予算を組むと公約をいたしております。社会党は、半年来、この公約の実現を迫って参りました。しかるに政府は、与党内にすら上ったこの声を押えつけまして、反対に、この不況を奇貨とし、この不況を徹底させて、いわゆる合理化アク抜き政策を強行いたしまして、弱小企業の切り捨て、大資本本位の残酷なる不況対策抑圧論に終始して参ったことは、われわれのきわめて遺憾とするところであります。政府は、ついにこれらに対する補正予算を組まずに押し通そうとしておる。今回の補正予算等にも、まだ不況対策は全く見られないのであります。二十二号台風によるところの被害が続出をいたしまして、しかも大災にあらず人災であるという非難が高くなるにつれまして、ようやく政府は今回の三十三年度予算補正を組んだのでありますが、しかもそれは災害対策のみに限ってであります。 しかもわが党が遺憾といたしますものは、その災害対策もきわめて不十分であるということであります。すなわち政府は、今回の災害が、昭和二十八年度災害の被害に匹敵するほどの大打撃を受けたにもかかわらず、きわめて控え目な査定に終始しておるばかりでなく、昭和二十八年度の災害のときには認めましたところの地方財政補助を、今日においては認めない方針をとろうといたしておることであります。この点は、わが党ばかりでなく、先日の自民党の西村委員の質疑によっても、自民党の中でもわれわれ社会党の主張に共鳴をされる方がたくさんあるというふうに私は考えるわけであります。これでは地方経済は、先ほど申し上げましたように、不況と災害の板ばさみにあいまして、その再建はますます困難とならざるを得ないことが予想されます。しかもこうした緊急の費用に対してすら、政府は——先ほどの賛成者の方は、災害にはたな上げ資金は使えない、こんなばかなことを言っておりますが、このたな上げ資金に全然手をつけようとしない。たな上げのまま、わずかに予備費のうちから十七号台風対策費の一部を支出したにすぎません。私どもは、このたな上げ資金というものは、こういう災害を受けた人たち、まず救助をしなければならない人たちになぜ使わないのか、一体政府はだれのためにこのたな上げ資金を使おうとしておられるのか、疑わざるを得ないのであります。政府の態度はまことに冷酷無比であります。従って、わが党が怒りを込めて本補正予算等に反対する第一の理由は、ここにあるわけであります。 第二の反対理由といたしましては、外債の問題であります。わが党はかねてから国際収支の見通しにつきまして、一年前の異常な輸入増加が正常に削減をされましたときには、国際収支は当然黒字となる。従って政府は国際収支を理由にいたしまして、不況政策の継続を行うことは許されない、こういって主張をいたして参りました。これはただ単に社会党ばかりの主張ではない政府の中にも、あるいは大蔵省内におきましても、こういう意見が大きく上っておったということを、私どもは承知をいたしておるのでありますが、結果は、わが党が主張をいたしました通り、不況の今日、国際収支だけは二億数千万ドルの黒字を出そうといたしております。外貨は黒字でございます。従って、いわゆる国際収支の黒字一カ月分にすぎないところの三千万ドルの外債発行のために、高い金利を払う必要はないはずであります。現に、聞くところによりますと、IMFからの借入金一億二千万ドルをば、政府は返済をしようとしておられるように聞いておるわけであります。政府がこういう態度をとるということは何か。不況のために、来年度予算編成に当って、一般会計の税の自然増収においても、あるいは財政投融資の原資についても、当初の見込より非常に少くなってきた。従って、公約は実現するとおっしゃいますけれども、選挙当時の勢いのいい公約の実現ということは、とても困難ではなかろうか、困難である、こういうふうに私どもは考えております。しかも不況対策に手をつけないというのも、こういうところに原因がある、私はこういうふうに考えておるわけでありますが、その来年度予算編成の一つの便法といたしまして、今日外債発行を考えたのではなかろうか、こういうふうにわれわれ社会党はとっておるわけでございます。 しかし、一面、民間資金の状況を見ますと、民間資金は、不況と需要減少のために金融面は緩和の状態であるということは、各委員が異口同音に、先日来の委員会でおっしゃっておるところでございます。ただこういう状態の中で苦しんでおるのは、この金融緩和あるいは公定歩合の引き下げの恩恵に浴し得ないところの中小零細企業でありまして、大企業は、これから年末にかけまして、財政の支払い超過は大幅なものとなって参りますので、金融は好転をするであろうと思います。この現在余裕のある民間資金の活用について、なぜ政府は考えないのか。何ら抜本的な対策を講ずることなくして、外債によって余分の資金を入れる必要は、私は全く認めることはできません。市中金融機関に——先ほど井手委員も言われましたように、金融債あるいは地方債を引き受けさせること一つできず、これら民間資金を財政投融資計画に吸い取ること一つできない政府の政治力の不足こそ、問題とせざるを得ないのであります。まして資金計画委員会を設けること一つできないのは、岸内閣が完全な金融資本のかいらい、代弁者であることを物語って余りがあると、私は思うのであります。その結果、高い金利を払って不必要な外債を発行し、当面のごまかしをせざるを得ないのである。この矛盾はなはだしき不必要な外債に反対をいたしますのが、第二の理由でございます。 第三にわれわれが申し上げたいことは、一体今回の国会は何のための国会であるかということであります。私は、この点は、政府はよく反省をしていただきたいと思います。警職法の国会ではなかったはずであります。今国会に国民の期待するものは何であったか。いわゆる不況対策、十分なる災害対策、あるいは日中関係の打開、あるいは緊迫を続けておりますところの台湾海峡に対する岸内閣の態度、将来日本の運命を左右するであろう安保条約改定に対する岸内閣の決意を全国民は聞かんといたしておるのでございます。また国会劈頭に行われました総理の施政演説にも、「今国会においては、とりあえず、当面の諸案件を解決するため所要の法律案等の成立を期し、もって、公約の実現を進めていきたいと思います。」このように、岸総理大臣は演説をされておるのでございます。 しかるに、不況対策については野放しで、何ら対策がない。日中関係においては、先日来問題となりました、いわゆるブラウン記者に対する岸総理の取り返しのつかない発言によって、ほとんど今日においては絶望状態でございます。民生安定のめどが全くないままに、突如として警職法改悪案を提出してきたのである。全くこれは順逆転倒と言わざるを得ないのであります。国民に反抗と怨嗟の原因をみずからの失政によって作っておきながら、自分は反省することなく、権力によってのみこれを弾圧するがごときは、官僚特有の独善政治と言わなくてはなりません。 わが党は、政治の要諦は権力によるものではなく、実に政策のよろしきにあるという基本観点に立ちまして、わが党みずからの補正予算の提出をいたしました。その趣旨につきましては先ほど提案者でありますところの井手委員から十分御説明を申し上げた通りであります。この補正予算等組みかえ案は、今日当面する諸問題を処し、国民の要望にこたえるためにはぜひ必要と思われますので、何とぞ皆さんの御賛成をお願いいたしまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)
○楢橋委員長 これにて討論は終局いたしました。 これより採決に入ります。 まず井手以誠君外十七名提出の昭和三十二年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)の編成替を求めるの動議を採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○楢橋委員長 起立少数。よって井手以誠君外十七名提出の昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)の編成替を求めるの動議は否決されました。 次に、昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)を一括して採決いたします。両案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○楢橋委員長 起立多数。よって昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)は、いずれも原案通り可決されました。(拍手) 委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○楢橋委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十三分散会