法務委員会 第9号
- 発言数
- 133 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1958/10/29
会議録
○小島委員長 これより会議を開きます。 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。 発言の通告がありますので、順次これを許可いたします。 神近市子君。
○神近委員 私は昭和二十八年の十一月五日の夜明けに徳島の八百屋町で起りました、俗にラジオ商殺しという名で呼ばれております事件につきまして、人権擁護局の鈴木局長それから法務省の方々に少し御質問いたしたいのでございます。 この事件は、三枝亀三郎というラジオ電気器具商の商人が同日の朝暗いうちに突然殺された、そしてこれが一時は迷宮入りだと考えられていたのが、十カ月後になって、この人の内縁の妻——十年以上同棲しておりまして、子供も一人ある、この内縁の妻の茂子という人が、翌年の八月になりまして検挙されて、そして突然と夫殺しということになって、第一審が徳島の地裁で、第二審は高松の高裁で、十三年の刑を言い渡されたのでございます。そして現在は——そのときは最高裁に上告してありましたが、四年間の監禁のため非常にショックを受けて、今年の五月でございますか、自分で突然この上告を取り下げまして、ただいま和歌山の刑務所に服役中の問題でございます。本人はむろん無罪だということを初めからおしまいまで言い続けておりましたし、それからこの人には前の奥さんの子供、まま子が四人ございます。この実子はもちろん一人でございますけれども、実子は非常に幼少であった。でも四人の先妻の子供がそろって、お母さんは絶対にそういうことができないと言うこと、それから殺された亀三郎のきょうだいその他の親戚が、絶対にこの人ではないということを申し立てただけでなく、地元の人たちがあり得ないこととして、非常に不思議がっている問題であったのでございます。でも、本人が下獄しましたから、それで一応問題は解決したかのように思われたらしいのですけれども、そのときのきめ手となった証人の二人の店員が、最近に至りまして、この陳述は間違いであった、実は地検で非常に変な扱いを受けた、自分たちがまだ十七才と十八才という年少者だったものですから、何も知らないでしゃべったことだというので、この証言をくつがえした。それから、それだけでなく、そのとき不思議なことには、もうほとんどの証人が同じことを言うのです。あれは間違いだった、自分たちは検挙に非常ないろいろの誘導尋問をされて、あるときはおどし、あるときはすかし、あるときは法律を持ち出される、たとえば電気に関する法律の違反をしたとか、あるいは交通違反をしたとか、いろんなことでおどかされて、そして何もわからないので、早く出してもらいたいばかりにあれは言い立てたことだというようなことで全部がくつがえしてきたのです。それで、これはずいぶん変な事件だということをみんなが感知して、そうして地元の徳島大学の小田という教授が筆頭で、地元では再審を願い出る署名運動が起って、数千人の人が署名している、こういう事件なのであります。それで、いろいろこの問題がこういうように発展してきて、疑わしいことがたくさん出てきたものですから、法務省の人権擁護局でお取り下げ下さって、最近御調査になっているはずでございます。私は逐次このことについて伺って、また法務省に対しましてもいろいろ御質問したいと思います。鈴木局長が御出席下さっていると思いますけれども、報告は全部お受けになっていることと思いますので、もしお尋ねすることのこまかい内容でおわかりでないことがございましたら、現地に御出張になられました斎藤調査課長あるいは藤原第二調査係長、どちらでもけっこうでございますから、一つ私のお尋ねすることについてお答えをお願いいたします。 第一番に、問題が起りました八百屋町の電気器具屋、これはその当時隣に三階建のビルを建築していたはずでございますから、現地はもうほとんど姿がなかったのじゃないかと思うのですけれども、それはいかがでしょうか。
○鈴木(才)政府委員 法務省から調査に参りましたときには、すでに今おっしゃいました当時の現場というのは、なかったようであります。
○神近委員 おいでになったのは、今年の八月でございましたね。
○鈴木(才)政府委員 八月の十二日でございます。
○神近委員 現地においでになって、何人くらいの人、それからどういう人たちにお会いになってお帰りになりましたか。
○鈴木(才)政府委員 本年の八月十二日に徳島地方法務局において左の方に面会し、お話を聞いております。 まず三枝亀三郎、この方は殺されたという被害者でありますが、三枝亀三郎の実の姉の久保キクノという方、その次には、今加害者となっております冨士茂子の実の子であります三枝佳子、その次に事件発生当時三枝ラジオ店に住み込んでおりまして、本件の訴訟における重要な証人となっております阿部守良、その次には同じく三枝ラジオ店の店員でございました石川幸男、その次には事件当時徳島市警察署の刑事課長をいたしておりました松島治男、その次には事件の真犯人と称しまして警察に訴えて参りました松山光徳という人、それから阿部という店員に短刀を渡したとかいわれております篠原澄子と申す婦人から事情を調査しております。その次には酒井勝夫という方、これは事件の目撃者と称するのであります。その次は西野清、これも一人の重要な証人でございますが、店員でございます。この西野清につきまして、その学校時代の先生であったという喜田、それから徳島大学の教授でありまして富士茂子の冤罪を主張しておられるといわれます小田信夫という方、その次には本件の捜査を担当いたしました巡査であります福山文夫という方であります。次には鳴戸警察署勤務であります河野隆康、この人より自分が真犯人であると申しました松山光徳の件について聞いております。そのほか徳島市警察署の近藤部長の立ち会いで、殺人事件が発生をいたしました現場の実況見聞をいたしました。続いて徳島の検事正藤掛検事その他を訪れまして、事情の聴取と記録の閲覧をいたしております。そのほかに、さかのぼりますが、八月十一日には和歌山刑務所に参りまして、富士茂子から本件の上告の取り下げの事情、その他検察官に対しまして供述をいたしましたその当時の事情を調査いたしております。さらに八月十二日には、本件につきまして冤罪を強く主張いたしました、私の局にも参りまして、本件を人権問題として調査してくれという上申をいたしました富士茂子の義理のおいになります渡辺倍夫、この方からその事情を聞いております。 大体右のような調査の報告であります。
○神近委員 大体関係者全部にお会いいただいているようで、私どもが遠くからいろいろ想像したり調査したりする内容は、大体おわかりになっているように感じます。この中で富士茂子が真犯人に決定します一番重要な証人となったのは阿部守良、西野清で、この二人が一番重要な証言をしたように考えますけれども、最近お会いになりましたときに、阿部守良はどういうような態度で、どういうことを陳述いたしましたでしょうか。
○鈴木(才)政府委員 委員長にちょっとお願いがあるのでございますが、実はこの事件を直接私が担当いたしておりませんので、今直接この調査に参りました斎藤調査課長に来てもらうとお尋ねの件が非常によくわかると思うので、もうしばらく今の御質問を御猶予願いまして、呼んで参りたいと思いますが、いかでございましょうか。
○神近委員 私、お願いするときには、この斎藤という方と、もう一人の係長もお願いしてあったのですけれども、それは通じていなかったでしょうか。
○鈴木(才)政府委員 藤原係長は今ここに参っております。
○神近委員 それでは斎藤さんをお呼びいただくうちに、藤原さんから伺っておくということはどうでしょう。大体お立ち会いになって、お二人で行動なすったのでしょうから。
○鈴木(才)政府委員 神近先生、失礼でございますが、先ほどの御質問をもう一度繰り返していただけませんでしょうか。ちょうど藤原君がおりますので、お答えできると思います。
○神近委員 お二人は御一緒に御行動なさったのでしょうか、別々でございますか、それをちょっと伺っておきたいと思います。
○藤原説明員 お答えします。一緒に行動いたしました。ただ検察庁の方へは私は参りませんでした。
○神近委員 今局長にお尋ねいたしましたのは、この富士茂子が真犯人という判決を下される一番重要なきめ手になったと伝えられている阿部守良という元店員、これはその当時は十六才だと思います。その人にお会いになったと今御報告がありました。それで阿部守良が最近に至りまして、大きな告白状を上申して、前言を翻しておるということが伝わっておりますけれども、お会いになったときに、そこらに触れたような陳述があったかどうか、ちょっとそれを伺わせていただきたい。
○藤原説明員 斎藤調査課長に阿部守良は、今神近先生がおっしゃったようなことを申しておりました。
○神近委員 内容をもう少し——私はわかっていても、この問題がその内容に触れないと進展しないのでございます。あなたの御存じの範囲あるいはお聞きになった範囲を伺わせていただきます。
○藤原説明員 阿部守良は長い間冨士茂子の裁判のことで証言をしたことに非常に悩んでおりまして、去年の十月に真実を述べるという告白書、手記ですね、それを書いております。そういうことについても真実であるということを述べておりました。それから裁判所での証言は、ほんとうのことではなく、実際は自分は富士茂子から頼まれて、あいくちを篠原澄子から借りてきたことはない、それから冨士茂子と三枝亀三郎が格闘をしておった、それを目撃したということはうそで、目撃してないということを述べておりました。
○神近委員 そうすると、その事件が起った朝、飛び起きて行ってみたところが、三枝亀三郎と妻の茂子が格闘をしていたという、この申し立てはうそであったということになったわけですね。
○藤原説明員 阿部守良がそういうふうに言っているのでありまして、その点、うそかほんとうかということは、まだ私どもの方の調査でははっきりしないと思います。
○神近委員 もちろん調査の上のことだけで、あなた方が御発言できる限度というものはこちらにもわかっております。この阿部守良の兄で阿部幸市というのが、事件後やはり阿部守良の言った線で証言しております。事件直後、弟からこういうことを聞いたというので、妻の犯罪だということ——これはお会いになっていないのですね。だけれども、このことについてこの兄の方もあれはうそだった、弟がかわいそうで、出したかったのでそういうことを言ったのだということを言っておりますけれども、その阿部守良の件に関して、兄も同一行動に出ているということ、前言を翻しているということはお聞き及びにはならなかったでしょうか。
○藤原説明員 阿部守良の兄の阿部幸市は、ちょうど用がございまして呼び出してございましたが、参っておりません。そのことについては渡辺倍夫からの上申書、それから渡辺倍夫の話から聞いております。
○神近委員 この阿部守良が高松高裁で判決になるちょっと前に非常に膨大な上申書を書いて、偶然でなく、書かされたのでなく、自分が書きためておいたものを渡辺倍夫さんかどなたかに提出したはずでございます。それはいつごろ人権擁護局に届けられて、その内容は一体どういうものだったか、これはごく簡単でけっこうでございます。この問題に関しまして、結局問題は、これが裁判の重要な証言になったということですから、富士茂子が殺したらしいということ、それから、そのことが一番肝心の証言ですから、そう何万語に及ぶものをここで承わらなくてもいいのですけれども、その内容の最も肝要なところをお語いただきたいと思います。
○藤原説明員 渡辺倍夫から人権擁護局に対する上申書は三十三年七月三十八日に参っております。その上申書の書面に添付した書類の中に、阿部守良が書いたという手記の写しがついてございます。その手記の内容は、長い問うそのことを言って苦んでいたけれども、今度自分の住んでいる村で村芝居がある。その村芝居はみんながコンクールで一等になることをねらって一生懸命やっているから、自分も思わずそういう悩みを全部捨てたいと思って、ほんとうのことを書いた。書いて気持がすっぱりして、どうしてもっと早くほんとうのことを書かなかったのかというような内容であります。それと富士茂子に対して非常に申しわけない、そういうおわびの意味も含んだ内容の手記を書いております。
○神近委員 大体伝わっている通りの内容でございますから、そのことはけっこうであります。そのときは、この阿部守良と同じ部屋に当時寝ていて事件の直後に呼び立てられて、現場に行っていろいろな役を果したという西野清が行方不明か何かでいなかったはずでございますけれども、いかがでございますか。
○藤原説明員 私どもが調査に参りましたときには、西野は所在が不明でわかりませんで、大阪法務局の人権擁護部の職員に、彼が大阪の方にいるという情報が入っておりましたので、その所在を探していただくということを依頼して帰って参りました。
○神近委員 この西野が奈良かどこかにおったらしくて、最近帰りまして阿部守良が真実を告白したということを聞いて、それから何とも良心にとがめられて落ちつきを失ってしまって、何としても苦しくてしょうがないというので、この方も前の証言を翻して、実はあれは地検で検事に強制されて言わされたことで、決して真実ではない。四十三日入れられていたので、まだ十七才かそこらの少年ですから、世間のこともわからず、どういうわけでこういうように責め立てられるかもわからず、それで自分が早く出たいばかりにその証言をしたということを言い立てているのです。そして、今これも新聞にこの手記が出ているようでありますけれど、このことは御報告お受けになっていますか。
○藤原説明員 西野清の供述については、徳島地方法務局の人権擁護課で調査をして、その報告は人権擁護局の方へ参っております。
○小島委員長 速記をとめて。 〔速記中止〕
○小島委員長 速記を始めて下さい。
○神近委員 どうも委員長に批評されるとこちらがわからなくなりますけれども、西野は当時いなかった。それで西野の恩師であった喜田という人にお会いになりましたね。その喜田という人の西野の状態に対する御批評、たとえばその当時の言動や何か御存じのようで、これは新聞紙やいろいろなものに出ていますけれども、その喜田さんの御批評はどういうことだったでしょうか。
○藤原説明員 お答えします。西野は喜田先生が中学校のときに教えたときには、成績は中ぐらいで、割にしっかりした少年であったということを申しております。それから西野が釈放されて帰ってきたときに、喜田先生は西野に会っているのですが、そのときに西野が富士茂子のことについて述べているということを聞いたかどうかということを聞いたんですが、そのときに喜田先生は、西野は自分の言っていることがでたらめであるということは、西野は全然言っていなかったということを言っております。
○神近委員 一番大事な二人の状態についてはわかりましたけれど、四人の子供たちはお会いになったはずでございます。その人たちの母親に対する批評といいますか、感想といいますか、そういうものは、ひっくるめてどういう状態でありましたか。
○藤原説明員 富士茂子の実子である三枝佳子には会いましたが、ほかの子供たちには都合で会いませんでした。その子供たちが、富子茂子のことについて、母親がそういう殺人を犯したのではないということを言っているということは、上申書の中にも載っておりますし、渡辺倍大からも出ております。
○神近委員 じゃ、その三枝佳子はどういうことを言っていたのか、ちょっと聞かしていただきたい。
○藤原説明員 お母さんが自分の父親を殺したのではない。そういうことについて、私は犯罪の行われた朝、犯人を目撃しているので、そういうことを検察庁でも証言したけれども、その点については検察庁の方ではっきりしたことを言ってくれなかったということは言っております。ただそれだけでございます。
○神近委員 検察庁ではっきりしたことを言ってくれなかったというのは、何かわけのわからぬようですけれど、取り上げてくれなかったということとは違うのですか、それは。
○藤原説明員 大体そういう意味のことを言っていたと思います。
○神近委員 そのほかに、酒井勝夫というのにお会いになっておりますね。この酒井勝夫が、お会いになってどういうことを言っていたか。それからこの人間から受ける印象として、真実を言っているかあるいはでたらめを言っているというふうな感じを受けたか、大へんむずかしい心理的なことですけれど、大がい人間でしたら、会ってみたらわかるはずだと思うのです。これはごく軽いお気持で信頼することのできる人間かあるいはでたらめな人間か、どっちの印象であったか、ちょっと伺っておきたい。
○藤原説明員 斎藤課長も私も、酒井勝夫には会っておりません。それは徳島の人権擁護課長に調査を依頼しておりますから、人権擁護課長から、調査の終ったあと、大体どういうことを言ったかということは報告は受けておりますが、本人から直接供述をとっておりませんから、その点ははっきりしたことを申し上げられません。
○神近委員 じゃ、その報告の内容、たとえばその当時の目撃者が二人あります。逃げ出すのを見たものが二人あります。一人は中央市場の会計課の辻一夫という人とそれからかまぼこ行商人の酒井勝夫、この二人の目撃者に関する報告が来ているということですが、どういう報告が来ておりますか。その内容をちょっと伺いたいと思います。
○藤原説明員 酒井勝夫については、私どもが徳島に滞在中、人権擁護課長から報告を受けております。その報告によりますと、自分が朝魚河岸へ行く途中で、三枝ラジオ店のところから怪しげな男が飛び出してきた、そういうことを目撃したのでその点を検察庁でも主張したけれども、その点は検察庁の方では時間が違うのではないかということで、なかなか取り上げてもらえなかったということを言っておりました。それから辻の件については、私どもが東京へ帰ってから、徳島から報告が参っておりますが、徳島の調査でも本人から事情を聞いておりませんので、ただその本人の妻から事情を聞いた調査書は来ております。その報告によると、別に証言を検察庁で取り上げてもらえなかったというようなことは言っていないという報告になっております。
○神近委員 伝わるところによると、この二人のそこを偶然通りかかった目撃者、それから娘の、その当時は十才でしたけれど、寝ているところを引き起されて逃げさせられた佳子、その三人のなにが不思議に符合しているのです。それから富士茂子がここから逃げたというところと、外にいた二人が見たという出口と、符合をするように、同じところから出ているということで、この問題が扱われる状態が非常におかしいというふうに私どもは感じているのです。警察官にお会いになったそのとき、捜査係長にお会いになったということですが、その人たちは一体何もしないでいたんでしょうか。そのときあげた者は、どういう人たちをあげて洗ってみたんでしょうか。それをお聞きになりましたでしょうか。
○藤原説明員 当時警察の捜査主任をやっておりました松島治男という方にお会いいたしましたが、その当時の警察の捜査をどういうふうにやったかということをこまかく聞いておりません。ただ警察は、三枝ラジオ店の殺人事件については、犯人外部説をとって、外部から入った犯人が殺害したのではないかということについて犯罪の捜査を進めた。その結果、容疑者を一応検察庁へ送ったけれども、検察庁の方で詳しく調べた結果、証拠が不十分であるということで、その両名は釈放されたということは聞いております。
○神近委員 これは結局警察であげることができなかった。あるいはあげてみたけれど、証拠不十分であったということで、地検がこの捜査をお始めになったというように伝わっているのですけれど、地検には、たとえば徳島のようなところには、調査員というものは——私どもは、調査の最初の段階では、警察が御協力しているというふうに承知しているのですけれど、特別の専属の調査員というものはどのくらい人手があるものでしょうか。これは刑事局長から伺いたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 特別の捜査員というお話でございましたが、検察官、検察事務官は、必要があればみずから捜査することもできるということになっておりまして、本件につきましては、事件を受けましてから警察の調べの結果をしさいに検討した結果、外部説をとった警察の捜査が違うという判断に立ち至りましたので、そこで特別捜査班というものを作りまして、そうして手のあいております検察事務官を全部それに投入して、専心この事件の捜査に当った、こういうふうに私ども聞いております。特別捜査員として、専属の何がしかの職員を常時かかえておるというわけではございません。
○神近委員 じゃ、結局警察のやったことに非常に不満を持って、特別に自分たちの手でやったということになるわけでしょうか。そこのところがいつも警察と地検とは、私どもがほかの場合を考えましても、警察の言い分だけを取り上げて、ほかの傍証をお固めにならないことがよくあるのです。私がいつか中村法務大臣の時代にお伺いしたことや何かも、そういうことになっておるのです。この場合は全く対立した、警察は外部犯人説、それから地検は内部犯人説、それが対立してしまっている。そういうふうな場合は、話し合いというものは一体できないものでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 意見が対立したために、不満を抱いて、独自の捜査をしたのではないかという御疑念でございますが、不満を抱いたというようなことはございませんで、警察と検事との関係は、刑事訴訟法にも明らかに規定されております通り、協力関係ということになっておりまして、検察官がが捜査をいたしましたのも、警察の協力を得てやっておるわけであります。警察が一応外部説をとりまして捜査をいたしましたために、それがまた検察側が内部説に変ってきた一つの根拠になっているわけであります。全然その意見が相反して、検事側の捜査に警察側が非協力であったというのではないわけであります。警察側がやった結果、証拠が白くなってしまって、犯人が確定できないというところから、もう一回警察の当初から歩んできた捜査の過程を検察側で振り返ってみて、警察の協力を得て検事が主になってやったというだけでございまして、その間に、警察と検事の間に意見の食い違いがあり、ひいては反目状態が起ったというような筋合いのものではないのでございます。この事件に限らず、警察と検事との間で意見が食い違う、あるいは警察の認定した事実がくつがえって、検事の認定した事実で裁判に持っていかれるということも、この件に限らずしばしば見受けられるところでございます。そういう場合に、相反目し、不満を抱くというようなことじゃなくて、これはもうすべて証拠に基いてやることでありまして、個々の捜査官が主観的にどういうふうに感じましょうとも、証拠のないものはこれは主張するわけにはいかないのでございます。この事件も決して警察と検事との間に意思の疎通を欠いたというのではなくて、今申しましたような証拠の関係から白くなったことについては、警察も了承しておるわけであります。しかして、検事らが疑点だとする点について、警察側もこれに協力して本件が固まってきた。こういう筋合いでございます。
○神近委員 今証拠ということが出てきましたけれど、私どもはこの証言は全部くつがえっているという事実、今おっしゃった阿部守良あるいは西野清、殺された三枝さんの実姉の久保キクノ、これが全部富士茂子は白だと言って——そういうところに今証拠というお話が出まして、この証拠がどの程度、たとえば出口についていた血の問題、あるいはあそこに置いてあったあいくちの問題、それから電線を切ったか切らなかったかという問題、それから茂子が使った刺身ぼうちょうが実際に出たかどうかという問題ですが、その重要な証拠物件というものは何でございますか。その点やはり刑事局長は御調査になったか、あるいは報告を受けておいでになりますか。
○竹内(壽)政府委員 本件の記録を私見ておりませんが、この事件につきましては、現地の徳島地方検察庁から詳細な報告がきております。問題の個所がどういうところであるか、そしてなぜ検事が富士茂子を真犯人と認めたかという点の事情は、私承知いたしておりません。
○坂本委員 関連して。人権擁護局の方にお聞きしたいのですが、調査をされておるから、内容を聞きたいわけなのです。阿部守良に対しての調査、阿部守良は少年でありましたが、当時現場の短刀を発見したという申告で、そのまま逮捕されて、二十八日間留置された。その長い間の留置に、検察庁で指示されたかどうかわからぬが、証言をした。それは間違いであったと現在言っておるわけですが、どういう点が間違いであると言っておるか、以上三点について、もう少し詳しくお聞きしたいのですが……。
○鈴木(才)政府委員 その点につきましては、先ほど藤原説明員が申したと思うのでございますが、阿部守良の証言の重点と申しますか、富士茂子の有罪について重要な内容となる証言は、当時現場にございましたあいくちを茂子に頼まれて篠原澄子から借りてきて、茂子に渡したという件でございます。その次は、いわゆる賊が入ったというふうに冨士茂子に言われて、問題の部屋をのぞいたときに、殺されました三枝と茂子とが格闘しておったのを目撃した、こういうふうに証言いたしたのです。この二点が重要な点だろうと思うのですが、この点が全部うそである、こういうふうなことを述べておるのであります。
○坂本委員 十六才であって、二十八日間留置されて、接見は禁止されたような関係で、心にもないことを自白したんだ、そういうことを言っておることはありませんかどうか。
○鈴木(才)政府委員 大体今仰せのことを言っております。
○坂本委員 それから次に西野清、これは先ほどのお話では、報告書が来ておる、そういうことですが、その報告書の内容でけっこうです。これもやはり二十八日間くらい接見禁止で留置されていて、そして検事から何か書いたようなものを持ってこられたから、それによって陳述したのであって、あれはうそであった、そういうことを言っておるかどうかという点と、何か西野については屋根の上の電線を切った、その点についてのことが最初の証言の際に言っておるのと、今は全然あれはうそであった、そういうことを言っておると思いますが、その点についてもう少し詳しくお聞きしたいのです。
○鈴木(才)政府委員 西野清の重要な内容の証言は三点あると思うのであります。それは、一つは、富士茂子から頼まれまして、犯行後電話電線を切断して、いかにも外部から入ったように見せかけた、こういう点。それから茂子から頼まれまして、その犯行当時の朝でございますが、六時から七時の間に冨士茂子が犯行に使用したという刺身ぼうちょうを両国橋の上から川に捨てたという点。それからその次は茂子と主人である三枝とが格闘しているのを見た、こういう三点の証言をいたしております。この点がいずれも事実と違うということを述べておるようであります。詳しいことは、調査に参りました調査課長が今来ておりますから、よかったら、その方から説明をいたさせます。
○坂本委員 調査された方からでけっこうですから、一つ御説明を願います。
○斎藤説明員 御質問の点でございますが、西野に関しましては、人権擁護局から現地に私が調査に参りましたが、たまたまその当時は西野が所在しないので、西野に対する調査ができなかったのであります。その関係から徳島の地方法務局に指示いたしまして、もし西野の所在がわかったら調べておくように、こう言っておきましたところ、その後大阪の法務局から連絡がありまして、ようやく西野が徳島の法務局に出頭するようなことになりまして、徳島の法務局で数回にわたって事情を聴取して、先ほど局長がお答えしたような事情が判明したのであります。なお西野がどういう事情で法務局に対する供述がいろいろ変っておるかという事情につきましては、目下徳島の地方法務局で調査中でございます。まだその点の報告は参っておりません。
○坂本委員 そうしますと、この西野がいずれも事実と違うことを申した。その申したのはどういう理由があったか。その理由は、二十八日間も留置されて、そうしてこれはいなかの学校を出てきて間もないことであって、事情も何もわからない。そういう青年が一カ月も留置されたから、検事の言うようなふうにいわゆる迎合的と申しますか、そういうような証言をしたのだから、それは間違いである。その間違ったいずれも事実と違う証言をしたというのは、そういうふうな関係があったからやったのだという点と、なおまた裁判所に証人に出て証言するときは、検事が検察庁で、お前今ここでしゃべったことは裁判所へ出てもどこへ行っても、この通り言わなければならぬぞというふうに言われたから、そういうふうに間違ったことを言った。しかしながら、今考えると実際はそうじゃない。主人である奥さんが殺したのじゃないのを、自分の間違った証言によって十三年も懲役へやられておると、実際良心の苛責にたえない。そういうような関係で、重要なきめ手となった先ほどの局長のお話の三点については、全く心もとないことを言ったのである、こういうようなことを言ったことが報告にはありませんか。
○斎藤説明員 その点はまだ報告がございません。西野はこの証言と相当期間をおいて一審、二審で証言しておりますし、その後法務局、検察庁からも呼び出しを受けて調査して、いろいろ証言は変っておりますので、どういう事情から証言なりあるいは法務局の人権課長に対する供述が変っておるか、その点まだ十分な調査ができておりませんので、報告はございませんが、なお現在調査いたしておると思っております。
○坂本委員 今お話のように、検察庁、裁判所、それから現在と変っておる大体の要点は、人権擁護局ではわかっていませんか。検察庁ではこう言っている、裁判所ではこう言って変っている、そういう点がわかりましたならば、わかっている点だけでいいですから、御説明願いたいと思うのです。
○斎藤説明員 その点、非常に供述がたびたび変っておりますので、後ほど整備してお答えいたしたいと思います。
○坂本委員 それではそれは整備して書面で出してもらうことにいたします。 次にお伺いしたいのは、本人である冨士茂子には、先ほどのお話によると、刑務所で直接お会いになったということですが、その際に、この富士茂子はどういうことを申していたか、要点だけでけっこうですから、その点をお聞きしたいと思います。
○斎藤説明員 お答えいたします。富士茂子さんが、自分がそういうことをしたのじゃない、こういうことを繰り返し申しております。それからまた、この事件については、皆さんにあまり騒いでもらいたくない、こういうことも申しておりました。
○坂本委員 その際に、この藤掛検事ですか、あるいは村上検事、この二人が調べられたのだが、検事に鉛筆で手をつつかれたから手の甲に傷がある、そういうようなことは聞かれなかったかどうか。また手にそういう傷があるかどうかということは、会われたとき、調査の際に見られなかったかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
○斎藤説明員 私が富士茂子さんから聞きましたときには、そのようなことは申しておりませんでした。
○坂本委員 実子の佳子ですか、これにお会いになっているのですが、この実子の佳子が、今申し上げましたように、自分が家族面会で面会に行ったとき、手の甲に傷があるから、あんた、それはどうしたかと聞いたら、これは検事から鉛筆でつつかれてこういう傷を負っている、こういうようなことを聞いたということを、実子の佳子、あるいは実姉の久保キクノ——これは殺された亀三郎の実姉ですが、こういう家族を調査された際に、そういうようなことを聞かれたかどうか。
○斎藤説明員 聞いておりません。
○坂本委員 それからちょっともとに戻りますが、西野は直接やっておられませんが、阿部も西野も、逮捕されたときの逮捕状の内容を調査されたかどうか。それからいずれも二十八日間という長い間留置されて接見禁止であったかどうか、この点について調査されたかどうか、お聞きしておきます。
○斎藤説明員 私、現地に参りましたときには日がございませんので、その点までは詳しく調査しておりません。ただ現地の徳島地方法務局にその点を依頼して調査して報告さしておるわけでございます。ただいまお尋ねの阿部守良に対する逮捕状は、銃砲刀剣類等所持取締令違反の被疑事実で発付になっております。
○坂本委員 渡辺の人権擁護局に対する上申書の中に添付してある阿部の手記の写しの中に、そういうような点について詳しく書いてありますかどうか、その点お聞きしたいと思います。
○斎藤説明員 御質問はどういうことでございましょうか、阿部の手記は申告人渡辺から提出がございまして、その写しにつきまして阿部から事情を聞きましたところ、その写しは自分が作ったのだというような供述をいたしております。
○坂本委員 そうすると、阿部にお会いになったときに、その手記が間違いない、そういうことを言ったかどうかという点と、その中に、一カ月も留置されて接見禁止になっていた、それから何で留置されたか実際知らなかった、逮捕状の内容——今言われたんですが、そういうようなことは全然知らずに自分は留置されていた、そういうようなことを言っていないかどうか、こういう点をお伺いしたい。
○斎藤説明員 阿部に対して、私どもでも詳しく調査いたしておりませんので、その点聞いておりませんが、ただ、先ほど申しましたように、この手記は自分が作った、その通り間違いない、こういうようなことを申しておりました。
○坂本委員 刑事局長にお伺いしたいのですが、この件については御調査になっていると思いますが、二人の少年を逮捕した点、逮捕の内容、それから一カ月間接見禁止になっていたかどうか、その点が一つ。 もう一つお伺いしたいのは、こういうふうに重要証人が偽証を告白をしておるわけですね。こういうような場合において、刑務所におる富士茂子の取扱いについてはどういうふうに考えられておるか、またどういう処置をとられるか、その点お聞きしたい。
○竹内(壽)政府委員 私記録を見ておりませんので正確にはお答えできませんが、阿部につきましては、当時、銃砲等所持禁止令ですか、刀剣の運搬、携帯をしたという点についての容疑で逮捕されたようでございますし、もう一人の西野につきましては、電話線を切ったり、電灯線を切ったりしたという容疑に基きまして、たしか逮捕、勾留されたと思います。そしてその勾留期間が二十八日であって、その間接見禁止になっておったかどうかという点は、私確かめておりませんが、あり得ることだと思っております。 なお、この阿部、西野両君が現在証言内容を変更しておるわけであります。私の聞いておりますところでは、この十月十七日の高松地裁における民事訴訟の公判で、阿部が明らかに違った証言をしておるようでございます。この点につきましては、現地におきまして調査をすることと思います。いずれにしても検察当局としては、この阿部、西野両君が本件の冨士茂子の一審の公判、それから二審の高松における高裁の公判にそれぞれ証言をしておるようでございますが、その証言においては、検察官に述べておるところと同趣旨の供述、つまり先ほど問題点になりました阿部については、主たる点二点につきまして同趣旨の供述をしております。西野につきましては、三点につきましてそれぞれ検事に述べておるのと同趣旨の供述をしておるわけであります。これは検事の強制ではなくて、公判廷における裁判官の尋問に対する供述でございまして、こういうふうな経過をたどっておりますのと、それから富士茂子被告本人が上告までいたしたのでございますが、自分の発意で上告を取り下げた、その結果刑が確定しておるという状況でございます。従って、現地において犯人が別にあるのじゃないかというようなうわさがありますことは私承知いたしておりますが、——もちろん刑事裁判の本旨は、九十九人の有罪者を出すよりも一人の無実の者を罰してはならぬということでございまして、そういうような無実な者が罰せられるということになってはなりませんが、捜査の経過を見ましても、さらにまた地裁、高裁における非常に精密な審理過程を経て今日に至っておるのでございまして、今にわかに疑いを抱いてどうこうというような考え方はいたしておらないのでございます。従って、富士茂子の和歌山刑務所における処遇等について、取り急いでこれを釈放するとかそういったことは考えておりません。しかしながら、もし検事あるいは刑事裁判における証言が真実であるとすれば、民事訴訟における証言は虚偽ということになりますし、もし民事裁判における証言が真実でありますならば、刑事裁判における証言は虚偽だということになるわけでございますので、その点につきましては関心を持って検察当局としても何らかの調査をしていきたい、かように考えている次第でございます。
○坂本委員 松田弘という人が真犯人を知っておるということを人権擁護局に申し出ているじゃないか、こういうことも聞いておりますし、さらに真犯人はだれであるかということは報道機関なんかにはわかっておるということも聞いておるわけです。さらに二人の重要な——当時少年であった阿部と西野、これが偽証ではなかったかという点が、真実は別としまして、ここまで問題になっている以上は、検察当局としては、地元の地検と高検は直接裁判をやった関係もありますから、ほんとうの調査はできないと思うのです。ですから、最高検から出張して、そうして最高検の検事が、やはり公益の代表として、また人権擁護の立場からしても、偽証であるかどうかということを取り調べて処置をしなければならぬ。そうでないと、裁判をこわすには、やはり偽証の判決が確定しなければ再審の開始もできないというような現在の刑事訴訟法の建前もあるわけです。そういう点から見まして、検察庁の面目にかかわらず、この二人の少年が偽証しておったならば、その点を積極的に最高検から検事を派遣されてこれを捜査して、もし偽証であったならば、やはり相当の処置をとらなければならぬと思うのです。そういう処置をとられる意思があるかどうか、並びにその真犯人を知っておるといって申し出ている者もあるし、また報道機関その他には大体わかっておる、こういうことも聞きますから、さらに真犯人を捜査をして、その処置をする御意思があるかどうか、この二つの点を、刑事局長にお聞きしたい。
○竹内(壽)政府委員 真犯人につきましては、一応富士茂子が真犯人であるというふうに、ただいまの段階においては信じておる状況でございます。しかしながら、先ほど申しましたように、これも人がやることでございますので、いかなる間違いがないとも保しがたいわけであります。その点につきまして、面目にとらわれるというようなことは全然ないわけでございます。真犯人がありと称せられる状況下にありますので、それらについて引き続き捜査をしてみるか、あるいはまた偽証の点につきまして再審の材料になるような偽証の捜査をするかどうかという点につきましては、十分検討いたしてみたいと思います。その上で最高検がやるのが相当であるか、現地にやらせるのが相当であるか、あるいはこの段階においては、もう少し様子を見てというのが妥当であるか、その点などにつきましても、十分検討いたしました上で処置をいたしたいと考えております。
○神近委員 坂本委員の質問が進展しましてほぼ結論らしいものが出たわけですが、人権擁護局の御答弁は、やはりお立場上非常に控え目で、何か二階から目薬をさしているような御報告しか聞けないのです。それから刑事局長の方は、地方のできごとでございますから、この事件の中の非常にこまかいことは御存じないようだし、私どもはきょうはこうやって婦人と子供たちの重大な人権の問題と思って、法務大臣の御出席も願って、この問題を考えておいていただきたいと思って、きょうの御質問を申し上げたんですけれど、何か非常に歯がゆいようなやりとりに終始したと思うのです。 ちょっとあと返りいたしますけれど、私はこういうことを伺いたいのです。事件には、あいくちと刺身ぼうちょうと二つが出ております。そうして、富士茂子が刺身ぼうちょうで寝ているところを殺害した、こういうようなことが一応考えられています。この出どころとかあいくちの状態とかいうことは、あまり私どもの耳には入っておりません。徳島大学で解剖したときには、ちゃんと記録ができております。たとえば、長さは九センチで先の非常に鋭利なものだ。それから傷は大体そういうようなものによってやられた。ところがその刺身ぼうちょうと一体どんな関係があるかということが、私が読んですぐ持った疑いなんです。刺身ぼうちょうというものは、だんな様方はあまりお使いになったことがないでしょう。今あまり使いませんけれども、私どものまだ若いときには、自分の家で刺身を作ることがありましたので、刺身ぼうちょうというものは使って持っていたことがあるのですけれど、非常に薄い刃でありまして、先はそんなにとがっておりません。先は角になってとがっていない。刃は十分につけてない。そういうもので女の力で人を殺害することができるかどうか、そこはずいぶん認識の足りない点じゃないかというふうに私は考えたわけなんです。そこにあったあいくちには血はついておりません。かわいた血だけがついていた。徳島大学の問題は、先のとがった鋭利なものだ。刺身ぼうちょうには鋭利というような特徴はない。この二つの食い違いというようなものはどういうように——これは、刑事局長は現場のこの問題はきょうおそらく初めて耳にお入れになったのでしょうと思いますから、この証拠物件としての問題でなく、常識的にお考えになって、二つの武器というもののからみ合いですね、これはどういうふうにお感じになりますか。刺身ぼうちょうで九カ所も女の力で男をやることができるかどうかということ、それはどういうふうにお考えになりますか。それを伺わせていただきたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 刺身ぼうちょうとあいくちでございますが、このあいくちも、報告によりますと、刀の先を折って作った何か自製のあいくちのような凶器であるというふうに聞いております。そうしますと、鑑定の結果、先がとがっておるということでございますが、薄刃の凶器というふうに私ども理解されるわけでございまして、刺身ぼうちょうで人を殺し得ないか、不可能な武器であるかどうかという点につきましては、刺身ぼうちょうでも人を殺傷し得る、またあの傷が刺身ぼうちょうを使ってやったとしてできない傷であるかどうかという点が科学的に鑑定の対象になったと思うのでございますが、これは可能であるというふうに一応考えられる。刺身ぼうちょうでも可能でございますし、あいくちでも可能でございます。ところが、あいくちの方には、仰せのように薄い血がついておりましたが、これは血液型を判定するに至らない程度の薄い血でございまして、あいくちは使っていないということは関係者の供述からわかりましたので、刺身ぼうちょうが使用された凶器であるというふうに理解したわけなんです。刺身ぼうちょうでそれでは殺せないか、またあの生じた傷は刺身ぼうちょうからは作れない傷であるかどうかという点につきましては、科学的に判定して、刺身ぼうちょうでもそのような傷ができるというふうに、これは鑑定の結果理解されておるというふうに承知をしております。
○神近委員 刺身ぼうちょうをごらんになったことがあるかどうか知りませんが、幅はこのくらいなもので、先は角になって、いわば長方形のものです。そうして何かやろうとすれば、これは必ず折れる性質のものです。ともかくだれが判定したのか、これは驚くべき判定だと思うのですけれど、その点はもう一回よく御調査の結果を承わらなくちゃならないと思いますから、その点は一つお預けといたしまして、そのときに犯人が逃げていくのを見たという人間が二人、辻一夫と酒井勝夫と二人ある。そのほかに川口算夫という者と中越明という者が、自転車をどろぼうしようと思って、その辺をうろついていた。そうすると、その現場にはこの目撃者が二人、それから自転車どろぼうでもしようかと思ってそこらをあさっていた男が二人、これがいるわけなんです。で、この人たちにどの程度——川口は一度検挙されていたということがあるのですけれども、この川口というのと、あとで真犯人でございますといって自首して出たのですが、山本達夫というのは同一の人間——川口という人は行方不明になっていたか何かの人なんです。これは同一人であったかなかったかということは、御調査の結果はまだわかっていないのですね。それは御存じないでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 その点は私の方も記録を見ておりませんのでわかりませんが、報告によりますと、川口と中越、これが強盗殺人の容疑者として警察から送られてきているわけです。問題が内部説、外部説に分れてしまったのは、この川口も中越もその辺を自転車どろぼうをしようと思ってうろうろしておったということと、この時間関係が大体午前五時前後ということで、たまたま犯行の現場近くに二人がいたということで、それとまたそれらが逃げていくのを見たという、先ほどお示しの辻でございますか、そういう人がいるというようなことから、事件がこんがらかったというふうに見られるわけでございますが、この山本という者と川口が同一であるかどうかということは、記録を見ますれば、その辺の捜査がどういう事情になっておったかということはわかるはずでございますが、なお私どもの方で調べましてお答え申し上げてもよろしいと思います。
○神近委員 あまり長くしませんから、どうぞきげんよくやって下さい。(笑声)非常に変なことを伺うようですけれども、藤掛検事という方は徳島地裁で裁判をなさった、この告発をなさった主任ですか。主任であるかどうかということと、それから年令はどの程度の方かということをちょっと伺いたい。
○竹内(壽)政府委員 藤掛検事が主任であるというふうに私聞いておるのでありますが、お目にかかっておりませんので、まだ若い少壮検事というふうに申し上げていいかどうかわかりませんが、若い検事だと思っております。
○神近委員 それじゃ、斎藤さんがお会いになっていらしたから、斎藤さんがご存じだと思います。
○斎藤説明員 今、竹内刑事局長がお答えしたように、少壮検事のように見受けられました。
○神近委員 少壮の検事とおっしゃると、二十代も少壮だろうし、三十代も少壮だろうし、四十代も少壮という場合がございます。一体どの程度の年令、二十代ですか、三十代ですか。そのローとハイとがあって、そのハイの方ですかということを伺わせていただきます。
○竹内(壽)政府委員 私申し上げたのは不明確でございますが、もし御必要でございますれば、人事課につきまして、何才の方で、いつ検事になられた方かということは調べればすぐわかることでございますが、もし御必要でございましたら、お調べいたしましてお答えいたします。
○神近委員 何も私は戸籍調べをするわけじゃないのですから、その人の年令が何才で、いつ出身であるということは必要ないのです。ただ皆さんもお聞きになったと思うのですけれども、司法官の試験の問題でいろいろの先生方がきのう御意見をここで開陳なさったそのときに、小林という弁護士でしたか、あるいはもう一人の永田とおっしゃる先生ですか、大へん私はいろいろ有益なことを伺った。そのうちの小林さんであったかがおっしゃった、この裁判というものの非常なむずかしさ、やっと人生をここまで渡ってきて、どうやらやれるかなという感じを自分は今持っているのだ、あの大家がそうおっしゃったのです。ですから、年令の若い人たちが裁判をするということ、あるいはこの問題を扱うということは非常に困難である、むずかしいということをおっしゃったので藤掛さんが一体どの年代の人だろうかということを考えた。それでこの論拠としてというのは、藤掛さんは、この問題で阿部が出てきて前言を翻す、あるいは西野が証言を翻す、こういったときに新聞に発表されている意見というものは、自分のこの判決を守ろうという闘志に燃えているというようなことを言っていらっしゃる。私は裁判の判決文を読んでおりません。判決の一番きめ手となっているのはこの阿部と西野、現場にいた店員、しかも十六才と十七才という年少者、それをたとえばあるいはドスを篠原澄子から受け取ってきたということで刀剣不法所持でやっておる、こういうことがある。それから野田という巡査が、暗いから中が見えないから電線をつなげと言って、上ってつないだというのが本音らしいのですけれども、そうすると電話何とか法にひっかけて二十八日の勾留にする、そういうような調べ方が一体ほんとうの正しい調べ方であろうかどうかということが考えられる。それから私が若い人か年寄りかということをお聞きしたのは、女の心理というものについて、この人は非常に皮相な考え方から発足しているのです。隣の葛西という電気屋とこの三枝という電気屋は競争相手であって、三枝という電気屋がこの冨士茂子の内助よろしきを得て繁盛して、ビルを建てるまでにいく、自分の方は商売ががったりと落ちるというようなことから、いろいろデマ的なことを言い立てたということもちょっと聞いております。そこを根拠にして調査を始めて、藤掛さんがおれのやったことがほんとうだということをいつまでも固執されるということは、——私どもはきのう、裁判官は正義と公平と慎重と、何か七つぐらいの資格をおっしゃったのを伺った。なるほどそうあってほしいと考えるのに、この藤掛さんがごく若い少壮——どの程度の少壮かは知りませんが、少壮であれば多少の行き過ぎあるいは過ちは犯さないとも限らない。そのうちに正義があり、公平であろうという司法官としての大事な要素をほんとうに持っておる人ならば、しまったと思えば、あと返りしてやり直すということも考えられる。ところが御本人自身が、自分の成績とか保身とかいうことにからんでくると、これは非常に厄介になるというのが、きょう私があなたに伺いたい問題の一番の焦点だったのです。ですから、年令のことを伺ったのですけれども、今坂本委員の質問に対しまして、適当な御考慮をいただけるということ、それからこれはもっと調査を必要とするというお考えがうかがえたので、きょうは時間もそろそろでございますので、私はこの問題を打ち切りたいと思うのですけれども、今度は私も材料をもっとたくさん持って参りますが、何としても取調べのやり方というものに非常に不当な、今一、二申し上げたようなことがある。私は外部犯人、内部犯人というようなものをそこできめてしまったということが一番手落ちじゃなかったかと思うのです。この松山何とかというのは、大阪で自首して、私が真犯人だといって出てます。そして現地に照会したら、あれはもう解決して、冨士茂子はもう服役しているのだから必要ないといって、今度は大阪でおっ放してしまった。それで今度は徳島に帰っていったのかどうか、徳島で検挙して調べようとすると、あの問題はもう解決したのだから必要ないといって、二度釈放されているのです。調べが十分あってから釈放されたのならよろしゅうございます。だけれども、問題は解決したのだから要らないという釈放の仕方、私どもはこういうことは今の法治国家としてやり方が非常に不親切だと思うのです。裁判というものは、立法、行政というものと比べてみても、一番清潔で公正でなければならないのは司法だと考えております。そして、司法がくずれたならば、もう国民のよりどころはないというくらい信頼と期待とを持っているのに、こんな露骨な人権じゅうりん的な、この次もっと人権じゅうりんの実例をお出ししますけれども、こういうようなことでは女が——ごく能力のある、そして実際に子供たちにもほんとうに理想的なよい親であり、妻としてもあやまちのなかった人、それが十三年も獄窓に泣かなければならない。その前には四年監禁されております。こういう不幸をなぜなめなければならないかということに、私は局長の御配慮を願いたい。きょう法務大臣がお出にならなかったのはまことに残念ですけれども、この法務行政の部分についてはおそらくまた他の委員からもお尋ねすることがあろうと思いますが、これは地方の問題ですけれども、こういうことがあってはならないという一つの実例として、調査とこの後の対策をお考え置き願いたい、そういう希望をもちまして、私の質問は終ることにいたします。
○坂本委員 先ほど刑事局長に要望しましたが、法務省の人権局が活動して調査されておるという点は非常にけっこうですけれども、こういう問題こそ検察庁その他をおそれることなく、独自の立場に立って調査しなければならぬと思うわけです。 そこで、今までお聞きしましたことの集約と申しますか、そういう点でお伺いしたいと思いますが、わざわざ調査にも行かれ、さらに重要な証人の手記の写しをつけて渡辺という人がその調査の申し入れもしておりますし、検事その他にも会っておられるわけですが、今までの調査で検察側が、当時三枝ラジオ屋に住み込み店員であった少年、一番問題の西野清、阿部守良という二人が犯行を目撃した、事件前茂子から凶器の入手を手伝わされた、それから第三番目の、犯行直後凶器の処分を頼まれ、また外部から犯人が侵入したと見せかけるために電話線と電灯線を切るように命ぜられたからそれを切った、こういうような供述はうそであって、そしてこういうような供述をやったのは検事が三十日間も勾留して、その間検事に真実を述べても一切受けつけず、検事の方から勝手な筋書きを押つけて、これを認めると釈放してやる、こういうようなことで、少年だから釈放されて早く帰りたいためにうその証言をした。さらに傍証としては、阿部幸市、石川幸男、この二人の証人も、証言は検事の強制によるものであるということを言っておる。こういう点について、わざわざ出張して調査をした以上は、さらに検事に会っておる以上は、何らかの結論を持たなければならぬと思うのです。だから、人権擁護局としてのこの段階における結論をお聞きし、さらに今後これを調査して、そしてもしも真犯人が別にあるなら、十三年の重刑を受けたところの富士茂子が全く無罪であったということを明らかにすることが、人権擁護局の重大なる使命だと思うのです。だから、その使命を全うするために、どういうような方法を今後考えておるか、この二つの点をお伺いいたしたいと思います。
○鈴木(才)政府委員 きょうの私のお答えが非常に消極的な印象を与えておるようでありますが、実はこの事件は、先ほど刑事局長から申し上げましたように、一審二審と慎重に相当な回数を開いた審理を経ておりまして、しかもそれが有罪となっております。従いまして、私の方としましては、できる限り慎重な調査をする方針をとったのであります。従って、ただいまは相当膨大な資料をもう一度検討いたしまして、さらにその裏づけを必要とするならば再調査をいたしたい、そういうふうに考えております。私まだ全部の内容をのみ込んでおりませんので、きょうの私自身の答弁がくつを隔ててかゆきをかくというような非常になまぬるいものになったことは遺憾でありまして、この点はおわび申し上げたいと思います。ただ、本件につきまして、阿部という方が私のところへ直接面会に来られまして、こういう冤罪事件がある、これは人権問題として人権擁護局においても一つ取り上げて調査をしてもらいたい、こういうような御要請でございました。そこで私は大体の内容を承わったのであります。そのときに真犯人が別にあるかどうかそれを捜索する、あるいはまたこういう人が真犯人であると考えるということでは、その疑いをかけられた人の人権問題にも関しますので、ただ富士茂子さんが自己の犯した罪ではないのに有罪になっておるかどうか、果してその証拠があるかどうか、またその裁判の過程において、また証言をとる過程におきまして、調査官において行き過ぎあるいは無理があったかなかったか、一つの人権問題として、その点に重点を置いて調査を依頼したのであります。従いまして、特に阿部守良、西野清に対する検察官の取り調べ方、特に先ほど申されましたように二十七日間もこの少年を身柄を拘束して取調べをした、その状況下におきまして何らかの無理があったかどうか、あるいは無理があったのではないか、こういう点につきましてさらに一そうの調査を遂げてみたいと思うのであります。そうして本件につきまして、富士茂子さんが冤罪であるならば、できる限り私の方としてとり得るあらゆる措置をとっていきたい、こう考えております。
○小島委員長 志賀義雄君。
○志賀(義)委員 竹内刑事局長に、この前あなたがお約束なすった調査について伺いたいと思います。松川事件についての諏訪メモは、内容も今新聞に発表されております。ところで、そのほかに花井検事総長が新聞記者に対して、弁護人が面会しましたときに、諏訪メモその他のものを返したあなたは諏訪メモだけを本人に返した、こう言われたのです。その食い違いがあるので、検事総長にあなたからただして、諏訪メモ以外に検事総長が返したと言われたものは何であるか、それをはっきりしていただきたいと申しましたら、あなたはそれを調べることを約束されましたがどうなりましたか、まずそれからお伺いしたい。
○竹内(壽)政府委員 この前調査を御約束いたしました点を一括してお答え申し上げたいと思います。 まず第一は、本年の二月大塚弁護人よりメモの還付申請に対して安平検事が拒絶をした事実の有無についてでございました。その点、私この前は存じておらなかったのでございますけれども、そのような事実があったようでございます。その理由でございますが、安平検事は、ただいまは検事を退職されておりますが、当時はまだ松川事件について最高検で記録を検討中でありましたので、弁護人に返還するということは、刑事訴訟法の規定から申しまして筋違いであるというような趣旨から拒絶をしたものであるというふうに了解をいたしております。 それから、検事総長の言によりますと、当時メモのほかに還付したものがある。そして、その中に志賀委員から敷衍して御質問が幾つかあったと思いますが、東芝の松川工場の食事宿泊に関する記録が含まれているのじゃないかという点でございますが、その食事宿泊の記録につきましては、二審当時、昭和二十八年五月十八日付で裁判所から職権によって、福島地検と東芝電気——今の東芝でございますが、それに照会が発せられたのでございます。当時地検におきましては領置の事実がないので、五月二十日付でその旨を回答いたしております。それからまた当時の北芝電気と申しますか、その会社からも、そのようなものは現存しないという回答を発しておるというふうに承知いたしておるのでございます。 それから第三に、検事側の未提出の証拠品や調書が二百通もまだある、その所在と公開の意思があるかないかというような点についての御質疑があった。この点についてお答え申し上げますと、証拠品につきましては、法廷に提出いたすべきものは全部提出をいたしておる、還付すべきものは全部還付をしておるのでございます。現在検事の手元には一つも残っていない。なお、調書につきましては、これは現在まだ公判係属中でありますから、これを公開するというのには時期的に適当でないという考え方をいたしております。 それだけが先生からの御質疑の点だったと思います。
○小島委員長 志賀君に申し上げます。大臣が出席しましたから……。
○志賀(義)委員 今の刑事局長への質問を終ってから、大臣に申し上げます。 最高裁の口頭弁論は十一月五日で、あと幾ばくもありません。そのときに、二百通の書類その他調書について弁護人にこれを示すことも、公開しない理由の中に含まれるのでしょうか。弁護人は準備することはできません。その点はどうなんでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 これは公開ということで私の方で照会をいたしましたので、その公開の中に弁護人に示すことも含むかどうかという点は確認いたしておりませんが、おそらく口頭弁論が開かれますので、その口頭弁論の機会において、訴訟関係人としてその問題は御論議にもなることだと思いますし、解決が見出されるのじゃないかというふうに考えております。
○志賀(義)委員 それはおかしいです。口頭弁論が始まってから発表しない調書を出したのでは、これは手おくれですよ。これは明らかに弁護人の弁護権に対する制限になります。もし検察庁でそういうことをやっておられるならば、直ちにあなたが裁判所に全部関係記録を送付されたならば、それを拒否するというようなことはおかしいことじゃありませんか。今日までこの裁判は、最高裁で今度口頭弁護が開かれるまでに二審までは済んでおります。二審が行われるときにさえ調書を発表しておらないのです。こういうことは一体検察庁としてできることですか。どうしてそれを弁護人に示さなかったのですか。その点を答弁して下さい。
○竹内(壽)政府委員 これは純法律的に申しますと、調書というようなものは、検察官がその中から必要なものを選んで出すという建前になっておりますことは、御承知の通りでございます。それがなお必要であるということならば、これは訴訟手続でございますので、弁護人側から提出命令を裁判所に求めることもできるわけでございます。すべて訴訟手続によって処理さるべき問題だというふうに考えておる次第でございます。
○志賀(義)委員 この事件は、御承知の通り第二審の判決は、当日の午前十一時十五分の松川発の列車に乗って共同謀議に参加したのだ、こういう判決になっております。しかしながら、会社側の記録、諏訪メモによっても、当日午前中の最後の発言が佐藤一被告になっておるのです。午前中の団体交渉は午前十時過ぎから開かれまして、ちょうど昼の汽笛が鳴ったときに食事というので打ち切られた。これほど重大なものなのです。従って、事件としてあれほど多くの被告を死刑、無期その他長期の刑に処するには、関係書類全部をはっきりさせない限り、事態は明らかにならないのです。二審でもああいう無理なことをやっていくことがある以上、訴訟手続に従って請求した場合にも、検事局の方が出さない、そうすると検事局は無理やりこれをでっち上げることに懸命になっているということが言えるのであります。従って、今後検察庁がこういうことの妨害をしないように、一つ刑事局長の方からも、法務大臣の方からもやっていただきたいのでありますが、私が先日申しましたことは、二百通の調書以外に、列車転覆現場のレール、機関車の本輪、こういう重要な証拠物もどこに行ったか、なくなっているのです。非常に重いものでありますから、そう簡単にこれを抹殺するわけにはいかないのであります。このことも二百通の未発表の調書と一緒に先日お伺いしました。このレール、本輪などはどこに行っているのですか。このことも先日お伺いしましたが、お調べになりましたか。
○竹内(壽)政府委員 証拠品として領置いたしましたもので法廷に提出すべきものは出したし、する必要がないと認めましたものは全部お返ししておるというのが、最高検からの回答でございました。ただいまのような、車輪がどこにあるとか、レールがどこにあるかというような点につきましては、私の方ではわからないのであります。
○志賀(義)委員 そこが検察当局による証拠隠滅になるわけです。と申しますのは、これは列車転覆ということが、検察庁の論告並びに二審までの判決で言われていたようなことでできるかどうかというところに大きな争点があります。それについては、レール、車輪等があれば専門家に鑑定をしてもらえばよくわかるわけでありますが、弁護団が国鉄公社当局に、当夜の状況調べのため調査協力を依頼したのです。ところが、一応向うが承諾したものが、検察庁の圧力によって断ってきたという事実があります。どうしてこういうことをなさったのですか。
○竹内(壽)政府委員 ただいまお尋ねのような事実は、私は承知いたしておりません。
○志賀(義)委員 承知していないと言われるならば、これからもう一度承知するために、あなたは国鉄当局並びに検察庁に対して問い合せをなさいますか。あなたが御存じなければ、私がこういう事実があるということを申しますから、調べられますか、調べられませんか。
○竹内(壽)政府委員 御説明をいただきますならば、承わりまして、その結果私の方で照会すべき筋合いのものでございますれば照会をし、その筋合いでないものでございましたならば、照会するわけには参らないと思います。
○志賀(義)委員 法務大臣に伺いますが、そういうことが弁護団の方から言われております。ただいま刑事局長の御答弁では、どうも御自分の方の主観で、これは必要がないと見れば尋ねないというようなことになっておりますが、法務大臣として、これは多くの人が死刑または長期の刑になる重大な事件でございますが、特にこういう点については、法務大臣から刑事局長の方にぜひとも照会して調べてみろということをおっしゃっていただきたいのでございますが、法務大臣いかがでございますか。
○愛知国務大臣 おくれて参りまして、どうも恐縮でございます。あるいは前後の関係から、お問いの点に対して、正確にお答えができないかもしれませんが、そこはまたお問いをいただきたいと思います。 まず第一に、私は前会からのいろいろな志賀委員のお尋ねに対しまして誠意を尽して処置したつもりなのでありますが、その結果といたしまして、今御指摘の証拠品等については、法廷に提出すべきものは全部出しておる、それから還付すべきものは全部還付して、現在検事の手元には一つも残っていない、こういう検察庁側の話でございました。この点は刑事局長からも申し上げたかと思いますが、刑事局長の申しました通りであります。 それから、ただいま御指摘の点でございますが、法務委員会における委員の御質疑でございますから、御質疑がどういう点にあったかということについては、検察庁の方にも当然わかることとは思いますけれども、通知をいたしたいと思います。
○志賀(義)委員 次に警察官職務執行法に重大な関係のある問題でありますが、九月十五日の勤務評定反対の学生の示威運動のときに、警視庁と法務省の前で新聞記者に対する警察官の暴行が行われました。これが送検されてからもう二十四日になっておりますが、これは検察庁において起訴ときまりましたか、どうですか。
○竹内(壽)政府委員 まだ何の報告も受けておりませんが、捜査中であるというふうに了承しております。
○志賀(義)委員 このことは前に法務委員会で私も申しましたが、一般の傷害罪ではなく、刑法第百九十三条の公務員の職権乱用、第百九十五条の特別公務員の暴行凌虐並びに第百九十六条の特別公務員の職権乱用による死傷の場合の加重の規定、こういうことに関連をしておるのでありますが、この問題は、警察官職務執行法の現行法のもとでも、いかに警官の暴行が行われているかということの非常に大きい標本にもなる事件であります。当日行われた学生の示威行進については、タクシー会社や運転手までも調べて、自動車を何分とめられたかというようなことまでも調べており、直ちにこれを東京都公安条例違反で捜索し、二十五日には逮捕まで強行しておるのであります。ところが、この東京都公安条例というものは、東京地裁で、蒲田事件については、都公安条例は憲法違反である、こういうようにいわれているようなもので、学生に対してはどんどんやっておるのであります。今お聞きしますと、まだ捜査中ということでございますが、事件自体はすこぶる明白なものであります。何かそんなに念を入れて捜査しなければならないようなことがあるのでございましょうか、それをちょっと伺いたい。どうも私どもの見るところでは、警察官に対しては検察庁は非常に調べがのろい、かばっておる、こういうふうに見るのであります。何か特別に念を入れて捜査しなければならないことがあるのでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 特別に念を入れて調べなければならぬ事項があるかという点でございますが、これは私もどういうところが特別に念を入れて調べなければならぬかということは存じませんが、とにかくまだ結論に至っておらないことは事実でございます。そうしてまた解釈問題につきまして、御指摘のように百九十五条を適用すべきであるかどうかという点につきましても、若干これは議論の存するところのようでありますが、それらの法律解釈につきましても、何らかの結論を出そうという考えを持っておるように聞いております。
○志賀(義)委員 あなた方が慎重にかまえられている間も、次々に警官の暴行事件、あるいは警官の職権乱用事件が起っておるのです。宇都宮では新聞記者に対して暴行を加えると社会的問題になるというので、今度は警察の方が悪智恵を働かして、学生の中に入ってカメラをとって、自分は新聞記者だ、こういっております。こういう事件も起っております。それから、別府の道徳教育講習会の際には、示威行進の中に宮崎市の教員組合の者だといって警察官が私服でまぎれ込んでおった、こういうこともある。そのほか仙台、和歌山では警官の暴行が行われております。あなた方が慎重にやられると言われれば、どうせうやむやにするものだから、何をやってもかまわないということで、次々にこういう事件が起ってくるわけです。 そこで、人権擁護局長に伺いたいのでありますが、こういう問題につて、「人権擁護局乗り出す」たしか九月十七一日の新聞で、鈴木局長の談話で、「今度の記者暴行事件が事実だとすれば、重大な人権侵害事件だと思う。擁護局としてはもちろん徹底的に調査するつもりだ。最近警官隊の暴行事件が多くなっており、その中には被害者が被害状況などを言わなかったり証拠不十分なためうやむやになってしまった場合もあるが、今度の場合は証拠がはっきりしているようで、調査もしっかりできると思う。」こういうように言われましたね。検察庁はごらんの通り相かわらず慎重にかまえて、いまだに起訴もしていない状態です、これほど明白な事件を。人権擁護局長として、こういうように証拠があるから調査は徹底的にできると言われたのですが、どういうように調査なさいましたか。
○鈴木(才)政府委員 その新聞の記事は、私の全部の言葉であるかどうか少しく疑問なのであります。私の方の人権擁護局としては、こういう方針をとっております。人権じゅうりんの場合、刑事事件が伴うような場合には、たとえば暴行傷害というような場合には、そういうような刑事事件につきまして、人権じゅうりん問題にからみまして刑事事件が発生し、それが検察当局において取調べの対象となりました場合には、私の方といたしましては、調査能力その他の点から、その推移を一応見るという方針をとっておるのであります。もちろん人権じゅうりん事件として別個の立場をとるべきであります。けれども、証拠の収集その他から申しまして、検察当局あるいは警察の方の証拠収集とにらみ合せながら調査を進めていくという方針を今とっております。この新聞記者事件につきましても、東京法務局において大体の関係者を呼んで内容がほぼわかったように思うのでありますが、まだその結論が私の方に到達はいたしておりません。おそらくそれは送検をされ、そして検察庁の方において調査をしておる、それとにらみ合せておるのではないか、こういうふうに思うのであります。
○志賀(義)委員 推移を見ておると言われますけれども、人権擁護局というものは独自の権限がございますね。どんどんお進めになれるのに、どうもお隣の刑事局長や、検察庁に遠慮されておるのではないか、もっとどんどんおやりになったらいいじゃないですか。やる必要がある。あとのことは私の方から申し上げましょう。あのときに暴行を加えた上原新三郎という中隊長ですか、この中隊長以下現に送検されている者は今どういうことになっておりますか。刑事局長の方でお調べになりましたか。警察の方がおられるとよくわかるのですが、今わかっておられますか。
○竹内(壽)政府委員 上原氏が現在どういう地位に着いて仕事をしておるかということは、私の方ではわかりません。
○志賀(義)委員 では私の方からお教えしましょう。第一機動部隊の他の部隊の中隊長をやっております。他の暴行警官は、そのまま残っております。送検されて今起訴するかという慎重な調べをあなた方がやっている当の暴行警官たちは、何ら警視庁においてしばらく遠慮するとか何とかいうことではないのです。そのまま第一機動部隊はどんどん出ております。相かわらず出かけているのです。法務大臣に伺いますが、こういうことで、警官の暴行に対して今後それの起らないという保障がどうしてできましょうか。少くともあなたの管轄下の検察庁にこういうことが来たからには、法務大臣は、検察庁を通じて、警察に対し、もう少し遠慮しろぐらいのことは言われてもいいんじゃございませんか。これではもう天下ごめんになります。だから、警察官職務執行法を改めたところで人権の侵害は起らないと言っても、現にこういうことが証拠としてあるのです。大へん困ります。その点についてはどうお考えでございましょうか。
○愛知国務大臣 警視庁の当該の人がどこでどういう仕事をしておるか、遺憾ながら私つまびらかにいたしておりません。従って、ただいまのお話を前提として意見を申し上げることはいかがかと思うのでありますが、そういうことが事実であるかどうかということをまず私としても調べてみたいと思います。 なお、先ほど来の御意見や御質疑に関連して申し上げたいと思いますが、今日のような社会情勢でございますと、まことに遺憾ながら、検察官も警察官ももっと画期的に増員をして、そうしてその素質を高揚して、もっと敏速に十分の調べができるようにしなければならないと私は思うのであります。人手の不足というようなことも十分あるということを一つ御了承願い、また御協力をいただきたいと思うのであります。
○志賀(義)委員 それではすっかり私の申したことに対する答弁になりません。今あなたは予算委員会で大へんなことを言われております。西村直己委員が、国際共産主義の脅威がある、二十億ないし十億の対日工作資金が流れておるがほんとうかということに対して、法務大臣はいろいろ金が流れておることは聞いておる、その中で公安調査庁で調査した確度の高いものは総額十億、正確にいえば九億四千四百万円、ソ連から来たものが二億一千万円、中国から来たものが二億六千万円、朝鮮民主主義人民共和国から来たものが四億二千万円、その他が四千五百万円、こういうことを言われております。さて共産党には一億六千万円来ておる。在日朝鮮教育会には四億二千万円、国民救援会には四千六百万円、原水爆反対協議会には一億五百万円、その他二億円。原水爆反対世界大会、こういうことは今世界の人は日本国民の非常に崇高な運動だと見ておる。非常に共鳴者が多いのです。そういうものを国際共産主義の脅威で原水爆反対協議会に一億五百万円、こういうようなことも言われております。それから朝鮮人の帰りたいというものを、なかなか交渉がうまくいかなくてこっちへ残っておる、教育をやらなければならない。その資金までも西村委員の答弁に対してこういうことを言われております。そこへまたあなたは今私の直接の質問には答えられない。警官の増員。警官を増員したらそれにつれて暴行がふえることは、これはもう絶対に確実であります。あなたは素養を高めると言われるけれども、警察大学の弘津校長が出した警察官の間で「警察官の魂の書」と言われておる本をごらんになったことがありますか。「民主主義というものは陛下の大御心を体することである」、こう言っております。戦前のことでありませんよ。戦後十数年を重ねた今日です。この陛下の大御心というものは、ジャン・ジャック・ルソーのヴォランテ・ゼネラール、一般意思と同じものであると言っております。こんなことで素養を警察大学で高められたら、あなた方は戦前の警察には復帰しないといっても、復帰することははっきりわかるではありませんか。でありますから、ここでは今私が尋ねたところに直接御答弁を願いたいと思います。
○愛知国務大臣 私が申し上げましたのは、私としてこの際私の考えたことを申し上げたのでありまして、志賀委員の御質問は何某なる警察官がこういう配置についておるはずである、そういうことについては、そういう男がそういう配置についておることはいかがかと思うので、せめて意見でも言ったらどうか、こういうお尋ねであったと思いますが、そのお尋ねの前提になっておる事実を私は承知いたしませんので、その点については警察庁等で聞いてみましょうということを申し上げたわけであります。
○志賀(義)委員 どうもその点は工合が悪いので答弁されないものと私は判断いたしますが、現に共産党員がやった菅生の交番の爆破事件いうものも、ふたをあけてみたらその警察がやっておった。しかもその犯人を警視庁と警察庁でかばっておったということは、天下の隠れもない事実です。しかもそれに関係した指揮官、たとえば警察庁警備参事官の浜中英二君は、当時国警大分県の本部長として、菅生事件の直接指揮に当った者であります。そうして、新聞記者、カメラマンに対する暴行事件についても、警察としては少々行き過ぎもやむを得ないなどと言っております。また山口義雄、この人は現在近畿管区警察局長でありますが、当時警察庁警備部長としておった人で、ここでも私は応待したこともありますが、犯人戸高公徳を五年間隠した責任者であります。また和歌山、奈良、京都などの勤務評定で、近畿管区警察局長として警察官の暴行事件に責任があり、新聞社に対しては警備本部長が謝罪をしなければならなかったような事件に関係のあった人です。それから戸高の直接上官である小林末喜部長は、現在東北管区警察局警備部長になっております。そして、三十二年には国鉄労組の広島地方本部小郡支部の闘争に武装警官を動員し、陣頭指揮をやっておる。さらに新潟県警察警備部長としては、昨年の国鉄闘争の新潟闘争に警察スパイまでも入れて弾圧しております。そして現職にあっては、仙台では勤務評定反対闘争に一千人もの警官を動員して、社会党の県連書記長まで暴行させております。また、そのほか菅生事件に関係のある人がみな栄転している。それがさっきの新聞記者に暴行を働いた人が現職のままに置かれているというようなことなんです。明らかに人権じゅうりんをやった人たちが平気で現職のままに置かれているどころか、こういうふうに栄転をしていく。こういうことでどうして警察官が、今後警察官職務執行法が改悪された場合に、法務大臣の言われるような保障になるのか。一体人権擁護局長はこういうことに対して、行き過ぎがある場合には警告を発せられた例もありますね、警告を発せられたならば、少しは謹慎するのであります。ほったらかしておくと、暴行警官というものは、こういうふうにウナギ登りに出世をするのです。こういうことに対しては、あなたの方から、こういう事件について、たとえば警視庁の暴行事件並びに——またあなたは推移とにらみ合せてとおっしゃった。あなたは独立の権限があるのですから、その点についてすみやかに警告を発せられ、並びにこういうふうな暴行警官あるいは、暴行どころか交番までも爆破するような警官たちに対して警告を発せられるのは当然だと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
○鈴木(才)政府委員 私も、弁護士から昨年この法務省内部に入りまして、別にこの地位にきゅうきゅうとして遠慮しておるわけでもないのであります。ただ御理解願いたいのは、人権擁護局の調査の方法でありますが、これは強制力も何も持ちませんで、任意的なものであります。従いまして、この勧告をいたします場合に、事実を確定いたしますのに、その資料の収集に非常に困難をいたします。従いまして、非常に事実認定に慎重になりまして、その時期がおくれるのは、非常に私も遺憾に思っております。それから今お示しのように、人権じゅうりんをやった警察官が公務員として処分を受けないで昇給をし、また栄転をしておる、こういう事実をどう思うかということは、私自身も、もしもほんとうに人権じゅうりんをやって、職務行為を逸脱した人権じゅうりんをやっておる場合に、それは当然に部内粛正をやるべきが当然だろう、その意見においては全く同感であります。けれでも、私の方で、この非常に陣容の乏しい局におきまして、正直に申しますと非常に看板が大き過ぎるというか、一つ一つ全国に起きますそういう問題をはっきりと事実をつかまえて警告を発するということは、非常に今の陣容では困難でありまして、その点は遺憾に思っております。ただ、今御指示のように、そういう状況につきまして、警察官として職務行為を逸脱した行為をやった者が栄転をしている、こういう事実に対して、一般的な警告を発しろというようなことでございますが、私の局に果してそういうふうな一般警告を発する権限があるかないか、この点は今研究中でございますが、私としてはそういう権限があるというふうな確信がつかめないのであります。できるならば、そういう権限も与えられますならば、人権擁護率は上るかと思うのでございます。現在ではそういう一般的な警告を発し得るやいなや、少し疑問に思っております。
○志賀(義)委員 看板が大き過ぎると言いますが、どうも近ごろ人権擁護局は看板倒れになっておりますね。検察庁や警察に押されて、言うことも言えないというよな状態になっておるように思います。法務委員会は法務行政、人権擁護のことは特に扱うところでありますが、ここで問題になった場合には、そういうことはあなたの方で積極的にやろう、こういうふうにおっしゃって下さって——法律上これは保障されていることでありますから、何も隣にすわっておるえらい人たちに遠慮されることはないと思います。 それで、人権擁護局長に特に希望いたしたいのでございますが、最近調査している人権じゅうりん事件について、人権擁護局の立場から調査しているもの、それから処理したもの並びにその結論、どういう処置をとったかその結論、これを資料で出していただきたいと思う。そうしませんと、看板倒れになっては大へんなことでありますから、看板倒れにならないようにするためにも、法務行政を審査する上にも、参考のために出していただきたいと思います。委員長、そのようにお取り計らいを願います。
○鈴木(才)政府委員 時期的にはどういうことになりますか。資料をお出しするのはさっそくやりますが、いつから——現在でございますか。
○志賀(義)委員 最近のものでございます。ちょっと例を申し上げますと、八海事件が最高裁で差し戻しになっております。菅生事件は検察庁でも照れ隠しに別の罪名で起訴しなければならなかったという事件がある。二俣事件、今から八年前に起った事件ですが、これが原審差し戻し、これは警官の暴行がありました。熊谷の二重犯人事件というのがあります。いわゆる節子さん殺しの問題であります。それから本庄事件では殺人容疑で逮捕され、公判で求刑のある直前に新しい容疑者が現われております。これもやはり警察の暴行、拷問があります。それから静岡県の幸浦事件、死刑の判決を第二審で受けておったのが、最高裁で原審差し戻しとなっておる事件であります。千葉の本洲製紙事件とか、もう一つ千葉県の事件について、三十二年二月二十四日に人権擁護局から警告を発せられている例もあります。その他の事件についてときどきそういうことが新聞に出るたびに、私どもはよく存じておりませんから、今例を申し上げたので、範囲もおのずからおわかりでございましょう。ことに現在調査中のもの、それから最近処理して結論の出たもの、そういうことについての御報告を願いたいわけであります。 最後に法務大臣に伺いたいのでありますが、今のように人権擁護局が看板が大きくなり過ぎてと言われておるのですが、この看板は幾ら大きくてもかまわないが、裏づけがなければだめなんです。そうしないと行き過ぎが起って困ります。そういう点について、今後人権擁護局を盛り立てていく上においてどういうお考えでございますか、その点を一つ伺いたいと思います。
○愛知国務大臣 この人権擁護の問題については、私も非常に頭を痛めているわけでございまして、ただいま局長から率直に申しました点は、私自身も省内におきましても訴えられておるところであり、また自分としても、今申しましたように頭を痛めておるわけであります。さしあたり私は、この人権擁護の問題についてはいろいろ検討いたしまして、現在御承知のように、人権擁護委員法によりましてこの仕事が行われているわけでございますが、一つはまだ練れないことを申して恐縮なんでありますけれども、人権擁護委員法の所要の部分に立法上の改正を若干加えたらいいのではなかろうかということで、実は研究問題として今考えております。ただ、これもいたずらに法律だけがよくなっても、ただいま御指摘のように看板倒れになってはまさに申しわけのないことでありますから、まず機構の拡充と現在の状況のもとにおいてより活発に働けるのにはどうしたらいいだろうか、その点については、まず、人権擁護委員は法律上の定員が二万名となっておるのですが、現状は六千名しかおりません。それからその経費等についても、実は実費支弁方法ということで、一年にわずか千三百円しか一人の人権擁護委員に経費がかかっていないわけであります。こういう点をまず私は改善いたしたいと思っております。人権擁護局自体の拡充も必要でございますが、やはり第一線の人権擁護委員の方々の数もできれば多くし、また各地方の名望家等が非常に熱心に人権擁護の問題に当っておられますが、あまりに報いられるところが少い。市町村その他の協力も最近はなかなかいいようでありますが、さらに国家としても考えなければならぬ点が多いと思いますので、それらの点については、実は来年度の予算についても、あるいは定員の問題等につきましても、すでに法務省としてやるべきことについては、現に関係各省とも協議をいたしておるわけでございまして、これはわれわれとしても大いに力を入れて参りたいと思っております。
○志賀(義)委員 最後に、人権擁護の諸君についていかに内容が貧弱であるかということは、法務大臣のただいまの御答弁ではっきりしました。先ほど予算委員会で法務大臣が言われた公安調査庁というものは、どんどん予算が増しております。そしてこういう突拍子もないことを確度の高いものとしてあなたが紹介されるようなところには予算がたくさん行く。こういう予算を削って、人心を惑乱するようなことばかり発表する公安調査庁、こういうものはやめて、今度は人権擁護の方を大いに予算の面で出すようにしていただきたいと思いますが、一体確度の高いものというのは、あなたはどれくらいの信頼を置いてこの公安調査庁の数字を信用されておるのですか。これは非常に重大な問題でありますが、単に公安調査庁がこういうことを言っておるといって紹介されたものですか、それ自体も非常に問題であります。
○愛知国務大臣 ただいま御指摘の点は、予算委員会の速記録でごらんいただきたいと思いますが、西村委員の質問に対しまして、情報としては非常に巨額のものが流れているというような情報もあるが、事柄の性質上、こういうことについて調査をするということは至難のわざである、しかし公安調査庁が比較的確度が高いと見ておるものについてはこうこうでありますということを答弁をいたしたわけでございます。
○志賀(義)委員 これについては、共産党としても重大問題であります。日本の民主主義団体としても、これは非常に重大な問題であります。おそらく警察官職務執行法を無理押しをするために、こういう煙幕を張られたのだろうと思いますけれども、いずれ議事録その他を調べまして、あらためて当法務委員会でも問題にしたいと思います。こんないいかげんなことを出すことは、実際けしからんですよ。
○神近委員 きょうは朝から法務大臣の御出席を願って、私どもが問題にしております、今、人権じゅうりんの疑いが非常に顕著であるという裁判の問題につきまして、地方的事件でございますから、法務大臣はおそらく御存じないと思いましたので、この内容を聞いていただいて、その上でいろいろ御所見を承わりたいと思っていたのでございます。でも、予算委員会の関係で御出席がなかったので、一部分は竹内刑事局長にお尋ねをいしておきましたけれども、問題は、二十八年の十一月に徳島で起りましたラジオ商殺し事件と俗に言われている事件でございました。この問題は、妻が加害者として、もうすでに和歌山に十三年の判決を受けて服役中でございます。ところが今日にきますと、ほとんど判決の根底とされた証言が全部一人残らずひっくり返った、こういうことになって、本人はもちろんのこと、一般にも家族の人たちにも納得ができない、何とか再審査を願えないかということになりつつある問題でございます。今いろいろ志賀委員から人権擁護局に御非難が加わりましたけれども、ともかくこの問題を調査してやろうという特別の措置によって、調査員を二人お出しになった。私はそれはとてもありがたいことだったと思うのです。それでまず調査員の御報告からここでやっていただいて、内容をよく聞いていただきたいものだと思ったのですけれども、それがまあできなかったので、いずれこの問題は人権じゅうりんの事項をあげまして、法務大臣には御質問するつもりでございます。 便乗するのではございませんが、さっき私の人権擁護局に対する御非難をちょっと申し上げて、あんまり皆さんが気がねし過ぎるのじゃないかということを申し上げたわけです。今、人権擁護局の強化ということについては御返事がございましたから、私はこの問題をまた持ち出すことはいたしません。しかし、この法務省の関係の中で、人間でございますから、裁判にもあるいは取締りにも行き過ぎが必ず起る、そこを是正する役割が人権擁護局だと私ども考えておりますし、そして、法務省の中では良心のような存在だと考えるのです。機構は非常に少数でおやりになっているということも承知しております。ですから、機構はぜひ改革をして、拡大されなければならないという点では、志賀委員の意見と私は同じでございます。まずそれまでの間、待遇でも、法務大臣の手心とかあるいは局長に対する御勧奨とか、そういうようなもので強化ができるのではないかというように考えます。その点では、今までも冷飯を食わせてあったのか、あるいはその職能を大事に認めて、人権擁護局からの申し入れを重視しておいでになったのか、その点はどういうふうだったのか、ここに局長が見えておりますから、ちょっと伺わしていただきたい。
○愛知国務大臣 大体先ほどお答えいたしました通りなんでございますが、実は私も先ほどの局長が申しましたと同じような感じで、人権擁護局という看板あるいは人権擁護委員の現在の働きぶりやそれに対する政府としての報い方については非常に薄かったということを私は就任と同時に気がつきました。同時に人権擁護問題というものは、現在の日本の社会のいろいろ、これはイデオロギーなり、ものの考え方が違う方々が多いわけでありますが、そのいずれの方面の方々からも非常に要望されておる非常に大きな問題、その方々の御意見は、場合によれば人権擁護に対して期待することが逆になる場合も相当あることは、御了承願えると思いますけれども、要するに、現在のような社会においての一つの大きな期待の的になっておるということから見れば、あまりにも看板倒れであるという点が多いと思いましたので、拡充方法を思い立って立案もし、かつ関係省にも協議を始めておるわけであります。そこに至るまでの間の段階において、何か実際上できることはないかというお尋ねでございましたが、これは局長とも十分相談を常々いたしておるわけでございまして、でき得る限り御期待に沿うように、また法務省全体のやり方といたしましても、人権擁護局に対してできるだけ、今の乏しい条件のもとであるけれども、働きやすくなるようにということの関心を深めるように、私といたしましても努力を続けておるようなわけでございます。
○神近委員 それにしては、今日の人権擁護局の方々のお返事のやり方というものは、非常に怯懦にも見えたり、あまり気がねが多過ぎたと私は考えます。きょうはそこで報告の結論を出していないとおっしゃいましたから、今度はぜひはっきりした結論なり御決心なりを、今法務大臣がおっしゃったように、十分その職能も理解しておいでになり、また心づかいもしておるというお話ですから、もう少し大胆に、勇気を持ってこの報告をやっていただきたい。 それから、法務大臣には、きょう出ましたラジオ商殺しという事件が、いわば岸総理が言われるところの善良なる市民の層の問題でございまして、これは代議士も介入していないし、何も介入していない。もうほんとうに十六才か十七才の子供たち相手の取調べ、あるいはほかのおとなの人たちでも、非常に知識とか知能の高い人たちの問題ではないのです。ほんとうにざらにどこにもある国民の代表のような人たちの問題で、これが私どもにはどうしても納得のいかないやり方、そしてひょっとしたら、この判決は大きな間違いではないかということが、ちょっとした記事を見ましてもわかるような問題でございますから、地方的な問題ですけれども、これは多くの人たちの代表的なケースだと考えますし、婦人や子供が関係しているという意味から、私どもはこれを取り上げてみたのでございますから、この次の人権に関する法務委員会までに内容をよくごらんになって、一つ御研究いただいておきたいと考えます。それが私のきょうの希望でございます。
○小島委員長 次会は明三十日、午前十時より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。 午後一時二十五分散会