法務委員会 第2号
- 発言数
- 134 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1958/10/07
会議録
○小島委員長 これより会議を開きます。 この際、前国会閉会中、本委員会より、裁判所の司法行政並びに検察行政等に関する実態調査のため、東北地方に委員の派遣を行なったのでりますが、その調査報告を聴取することにいたします。大貫大八君。
○大貫委員 御指名によりまして、去る八月、東北、北海道班の調査いたしました結果を御報告いたします。 まず、この班の編成は、小島委員長、福井、鍛冶、井伊各理事、大貫委員、さらに櫻井調査員が加わって派遣されたのであります。なお、最高裁事務総局の海部総務課長と今井事務官も同行して調査に協力されました。 調査の場所は、八月十一日秋田、同十二日函館、同十三日札幌でありまして、三カ所とも、裁判所の会議室におきまして裁判所側から十八名、検察庁側から十一名、弁護士会側から十九名及び警察側から二名、合計五十名の出席を求め、懇談会形式によって、それぞれの報告並びに意見を聴取いたしました。 懇談会終了後、各地において、裁判所、法務省関係の庁舎のうち、老朽はなはだしく、すみやかに改築を要すると思われるものを詳細に視察いたしました。なお、秋田及び札幌におきましては、全司法労組の代表と会見し、裁判書浄書問題に関する資料の提出を受け、陳情を聴取いたしたのであります。 調査の目的は、当委員会の決定に基きまして、裁判所の司法行政及び検察行政といたしましたが、内容は主として、第一審の強化と法曹一元化の問題、裁判書浄書拒否の問題、また売春及び暴力立法の実施状況と青少年犯罪の動向についてであります。以下、項目別に一括して簡単に御報告いたしたいと存じます。 第一に、裁判書原本浄書事務の問題でありますが、御承知のように、秋田の裁判所では、本年四月、裁判書浄書拒否によって六名の書記官補を懲戒免職し、四名を停職処分に付しておりますので、事ここに至った経緯について所長の説明を求めました。それによりますと、秋田の裁判所においては、裁判書浄書事務の取扱い方針として、一、判決書はすべて裁判官みずから原稿を作り、これをタイプで浄書させるか、または裁判官自身で墨で原本を浄書している。二、その他の裁判書すなわち決定書、命令書については第一種から第四種までの段階をつけて取り扱っている。1、第一種は、内容の複雑なもので判決書と同様の方法によっている。2、第二種は、従来から先例や定まった書式のあるものでも、部分的には複雑で、書記官等が記録の引き写しなどによって容易にまとめがたい部分もあるものについては、裁判官がその部分の原稿を書き、または文案を口授して作成させ、できたものをさらに検討の上、署名押印する。主文その他の判断は裁判官がして、これを前もって書記官等に示すことはもちろんである。3、第三種は、内容がきわめて定型的かつ簡単なもので、書式が定まって印刷された用紙があり、そのきまり文句の間に、若干の記入をすれば足るもの、かつ記入事項は記録から引き写しすれば足るようなものについて行われる。4、第四種は、あらかじめ裁判官の指示を受けることなく書記官等が直ちに記録によって書面を作り、それを記録とともに裁判官に提出し、裁判官は判断を加えた上で署名押印する。右四種の方法で取り扱っており、いやしくも裁判官が事案の判断を書記官等にまかせ、原本作成の責任を放擲するというがごときことはないのであります。しかるに、全国司法部職員労働組合秋田支部は、昨年十月、待遇改善要求にからみ、右四種の裁判書、すなわち、逮捕状、勾留状、勾留更新決定、略式命令、保釈許可決定、保釈却下決定等の刑事に関する裁判書及び支払命令、仮差押、仮処分命令等、民事に関する裁判書の作成は裁判官の職務であり、従来書記官等が行なってきたのは奉仕労働であるから、これを返上するとして、右裁判書浄書を拒否する旨所長あて申し入れをなし、その通り実行する書記官等もありましたので、自来、裁判官は裁判書の作成に当り、当事者の住所、氏名、年令等はもとより、きまりきった事柄をも自分で記載し浄書せざるを得なくなったのであります。その後、最高裁より、本年三月七日と十一日の二回にわたり、浄書拒否の違法なる旨の見解を明らかにした通達があり、所長は裁判官会議の議によって、三月二十四日、組合に対し、浄書を命ずる裁判官の命令に反したときは、身分上の処分もやむを得ない旨を通告し、かつ浄書拒否運動が違法である旨を説いたのでありますが、中央の指令に従う一部の者は、依然として応じない状況でありました。かかる事態に至っては、浄書拒否運動を執拗に続ける書記官補等十名の職員に対し、裁判所職員臨時措置法により準用する国家公務員法第八十二条により免職または停職の処置に出でざるを得なかった次第であります。なお、裁判官においても、その後裁判書の作成に当っては、簡単な原稿を書くとか、口授によって文案を示すとかして、浄書をさせるようにしております。 以上が秋田地裁所長の報告の要旨でありました。 この問題に関しまして、秋田弁護士会の意見としては、書記官等の仕事の量は、必ずしも過重とは思われない。ただ質が昔と若干異なっていると思う。浄書拒否によって、裁判が甚しく遅延したということはなかったが、書類作成などで待たされたことはあったという説明であります。 次に、札幌においては、本年三月下旬、札幌地裁司法労組分会は、同様に浄書拒否を申し入れましたが、高裁、地裁、家裁とも問題は先鋭化せず、組合側も裁判官の依頼があれば浄書するという態度で、大した変化もない由であります。それというのも、北海道の特殊事情として、特別法違反、たとえば水産関係、林業関係事件が多いので、これらは裁判官が目を通さないと略式命令も出せない事情もあり、従来より書記官まかせにしていなかったからのようであります。 われわれ派遣委員は、浄書拒否問題に関して全司法労組諸君から秋田と札幌において会見を申し込まれておりましたので、問題の実態を把握する意味でこれを承諾し、陳情を聴取いたしたのであります。すなわち秋田では、県教育会館で被処分者十名と会見しました。労組秋田支部代表の言うところによりますと、賃上げ、労働時間の短縮、労働基本権の回復などを目的として戦ってきたが、奉仕労働返上のため裁判書浄書拒否を昨年十月二十四日所長に申し入れたところ、問答無用として扱われ、話し合いの場もなく、一方的な業務命令をもって本年四月ついに被処分者を出すに至ったのであります。本来、書記官らの事務は、訴状の受付事務、原簿記載、送達事務、公判立ち会い、調書作成、整理、保管等であり、裁判官のやるべき仕事は裁判官に、課長がやるべき仕事は課長にやらせるべきだと主張しておるもので、義務の範囲内において職階制を認めるが、決して裁判官の従属物ではない。一部には裁判官の口授があれば略式命令の原本を書いてもよいという意見もあるが、裁判書の原本は、裁判官がみずから書くべきものと考えておる。しかるに秋田では、従来より判決以外の裁判書の作成はほとんど書記官等にやらせており、さらに、書記官の仕事を手伝う事務官、雇が課の上席者の命令で、原本作成をやっている状況である。ことにはなはだしいのは、担保取消決定や、接見禁止命令、保釈取消、勾留期間更新決定を廷吏に書かせている事実がある。われわれ被処分者は、現在、公平委員会に提訴しておるのであるが、この委員三名ないし五名を全部部外者から選任して、公平なる判定がなされることを要望するものである、というのが大体労組側の陳情の要旨でありまして、本問題に関しましては、裁判所側の報告するところと、勝組側の申し述べるところでは、かなりな差異があることを感じたのであります。 また、札幌においては、全司法労組の北海道地区連合会及び札幌支部の代表十四名と会見し、陳情を聴取しました。地裁の民事、刑事と家裁の少年、家事事件担当の現職書記官等から、提出資料に基いて、作業実態につき詳細なる説明がありましたが、裁判書浄書の取扱いに関しては、裁判所側の説明と秋田のごときはなはだしい食い違いはありませんでした。結局、組合側としては、浄書拒否問題もさることながら、本来の要求である労働条件の好転を望み、待遇改善を求むることが究極の目的であるとしておりました。 第二に、第一審強化の問題でありますが、秋田地裁で、三十一年八月に、第一審強化方策秋田地方協議会を設置し、本年六月までに九回開催し、委員は裁判所側十一名、検察庁三名、弁護士会十二名、それぞれ裁判の適正と迅速を共通の目標として隔意のない討論協議を行い、結論に達したものについては、可能のものから逐次実行に移して相当の成績を上げておるとのことでございます。たとえば、本年三月、秋田簡裁では、従来道路交通取締法令違反事件につき略式命令によっていたものを、即決手続を実施することにより手数と経費を節約し、関係人からも好評を博しておるので、追って他の簡裁にも及ぼす由であります。秋田地方の実情としては、検察官、弁護士の数が少い。特に弁護士については、地方一般の経済力が低く、訴訟依頼者の資力が十分でないことなどで訴訟準備が思うにまかせず、これらのことが審理促進の最大の障害となっておる面があります。裁判官、検察官の増員が一審強化のかぎであるといわれますが、これらの増員については、法曹一元化の方策に従って、弁護士から充当すべきであるとの意見が多いのであります。それには裁判官の報酬問題、恩給年限問題、裁判書作成の問題等を解決する必要があります。すなわち、裁判官の給与を改善し、裁判官の仕事を、真に裁判官でなければなし得ない訴訟の指揮、事実の判断、法の解釈適用、刑の量定などに限定し、その他の機械的、事実的仕事は他の補助機関にゆだね、なお民事事件の判決書のごときは簡潔なものに改めることが大切であるとの意見もありました。秋田と函館市には高裁支部が設置されておりますが、高裁専任の判事が少く、地方、家庭裁判所判事が兼任しておるので、双方とも審理の促進を阻害しておる面があります。ことに函館高裁支部長は函館地方、家庭裁判所長が兼任し、判事の専任がないので、控訴審は一審の延長の観を呈し、低調化の傾向にある旨指摘され、支部強化の必要性について一考を要するものと存じます。 第三に、売春及び暴力事犯と青少年犯罪の現況について調査いたしましたが、各地の説明や実態統計は、現地提出の資料がそろっておりますからごらん願うことにして、時間の都合上、報告は省略させていただきたいと存じます。ただ、売春防止法の完全施行に伴って、青少年の性的犯罪動向いかんについては、特に留意して調査したのですが、秋田、札幌とも検察、警察側の説明によりますと、青少年の強姦罪、特に輪姦の事案が増加したという明らかな根拠は見出されないとのことでありました。次に注目したいことは、北海道において、最近、青少年不良団が増加し、青少年による暴力事犯が激増しておることであります。すなわち、本年度六月末で暴力犯罪合計七百二十三件のうち四百五十七件が青少年による犯罪であります。これらは、夏季を迎えた北海道の特殊現象と考えられます。なお、北海道は、従来、売春婦の給源地といわれておりましたが、売春防止法全面実施後、これらの婦女は本州各都市から一応帰郷したものの、郷里に落ち着くことができず、再び道内または本州の都市に舞い戻り、潜在しておるのが実情であります。道内には温泉郷が多いので、ここに潜在した婦女が相当あるようですが、その動向を内偵することは、はなはだ困難なようであります。札幌には、以前から防止法と同趣旨の売春禁止条例があって、全国でも、小樽とともにその厳格なことで有名であったそうです。札幌地検では、五条違反は刑をもって臨まず、起訴猶予にして、庁舎の一室に更生保護相談室を設けて、関係者の協力を求めているとのことです。補導処分に付したものは現在一名もありませんが、道内に補導院がないので、東京まで連れて行かねばならぬ不便があるわけです。 第四に、裁判所、法務省関係庁舎の営繕事情を視察いたしました。すなわち、秋田では、地裁、家裁、簡裁合同庁舎、高裁支部庁舎、地検庁舎、また函館では、高裁支部、地裁庁舎、家裁庁舎と目下新営中の法務総合庁舎を、札幌では、検事の官舎と、北海道公安調査局及び札幌入国管理事務所を視察したのであります。これらのうち、特に函館家裁の庁舎は、鉄筋コンクリート作りとはいえ、三十数年を経過し、老朽はなはだしい貸事務所の四階を借り上げておって、所在地も旧市街地の西部に偏在し、少年や婦人相手の庁舎としては、出入りに不便なばかりでなく、四階に上る階段も荒廃してすこぶる危険であるから、一日も早く新営する必要があると考えられます。また、札幌の検事諸君の官舎ですが、これまた明治年間の木造家屋が多く、寒冷地の宿舎としては余りにもひど過ぎると感ぜられたのであります。 最後に、現地の要望事項を御紹介いたしますが、いずれも相当の予算を伴うものばかりであります。東北、北海道とも、寒冷地の特殊性を強調せられ、恩給年限の加算、昇給期間の短縮、僻地手当の増額、官舎の整備等の要望が多かったのであります。札幌弁護士会からは、交通事件の激増に伴い、交通裁判所の新設の要望がありました。北海道開発予算は相当計上されているのに、司法行政関係費には一文も回らないとのうらみも聞かされました。特に、札幌の検事諸君の主婦たちから要望書が提出されました。それによりますと、勤務地手当の是正——札幌は東京より物価が三割高。——昇給期間の短縮、寒冷地手当の増額——赴任当初のストーブ購入代が高い。——薪炭手当の免税——一冬三トン半の石炭が買えない。——寒冷地向き住宅の整備と、薪炭置場の付設といった内容の要望でありました。 以上、簡単でありますが、調査の御報告でありまして、私見は全く加えない報告でございます。 —————————————
○小島委員長 次に、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。 淡谷悠藏君。——淡谷君に申し上げますが、調達庁長官はもう少ししたら来られるそうです。
○淡谷委員 これは警視庁の秦野捜査課長に伺いたいと思いますけれども、十月六日の午前十時五十分ごろ、埼玉県の所沢の金山町千八十四番地県道で、同市日吉町国際観光タクシー会社のタクシー内でピストルを発射し、運転手の斎藤義雄さんに背中から左の肺貫通の重傷を負わせた米兵の犯罪があったようでございますが、この詳細についてまず御報告願いたいと思います。
○秦野説明員 お答えいたします。ただいまの御質問の所沢の事件は、十月六日の午前十時五十五分ごろであります。場所は、お話の通り、所沢市の中でございまして、被疑者は米軍の所沢の兵站廠の駐在所属でアンソニー・W・ブラッカードという二十二才になる兵隊であります。被害者は、やはり所沢の国際観光の運転手の斎藤義雄という者であります。この兵隊は約二カ月前ごろに、隊内におきまして同僚の米ドル七十五ドルを盗みまして、そのかどによりまして向うで処罰を受けて、六カ月の執行猶予中の者であったのであります。そういう謹慎中の者であったのですが、何かやけになったような状況が見られた。それがこの日の朝の九時四十分ごろに隊内の自動車に無断で乗って脱走した。その点につきまして、警察側にも脱走の事実の連絡があり、警察側におきましても、米軍側におきましても、脱走兵を取り押えるべく捜査を始めておったところのものであったのであります。事件の詳細につきましては、目下この被疑者が鎮静剤を多量に飲んでおった関係で、本日現在意識が明瞭でありませんということで病院に収容しております。これは米軍側の病院に収容しておるのでありますが、そういう点で、今後被疑者の取調べによって、だんだん具体的な状況がわかってくると思うのでありますけれども、ただいままでの状況におきましては、自動車の中で拳銃を発射したときの状況は、客席側の方から運転手席の方に撃っておりまして、これが暴発であるかあるいは故意によったものであるかという点につきましては、必ずしも十分明らかではございません。なおこの被疑者には、女性が一人ついておったという関係もありまして、その女性につきましても、昨日来取調べをしております。いずれそれらの点につきまして調べがつきましたならば、詳細がはっきりすると思います。
○小島委員長 淡谷君に申し上げますが、丸山調達庁長官は、十二時にはぜひ帰りたいということですから、今お見えになっていますから、何でしたら長官の方の御質問を願います。
○淡谷委員 この事件は、この前、当委員会で問題になった大三沢町における米兵の運転手射殺事件と非常に似通った事件である。あの事件のその後の経過に対して、いろいろ大きな不安をわれわれ感じておりますが、たまたまこういう事件が続発した、そして、形を見ますと、やはり客席から運転手に向ってピストルが暴発された、こういうのであります。大三沢の事件も、客席から運転手席に向って暴発をしておる。アメリカのピストルというものは、大体客席から運転手席に暴発するようにできておるのでございますか。とんでもない話だ。これについては十分にお調べを願いたいと思うのです。新聞などには、この事件も大体罪名は重過失致傷罪として扱われるだろうと出ておるが、幾らピストルが暴発する構造になっておるのかもしれませんけれども、これを持っておる人間が執行猶予中で神経衰弱になっているとか、あるいは三角関係があったからといって、勝手にそういう状態になっていながら、罪もない運転手を殺す、あるいは傷つけるという事態がひんぴんとして起るようでは、これは私は検察庁の方にもあるいは警察の方にも、これらの事件が起らないように十分な処置をとってもらわなければ、安心して運転手さんは車を運転できないと思うのです。日本人としても、全く命に対して、ちょっとしたはずみで殺されるような形になっては、安心ができない。こんな観点から、この事件も、私が前会質問いたしました大三沢事件とともに、十分慎重にお取り扱いになっていただきたいと思います。 さらに、この前も急行「かもめ」の転覆事件がございました。この事件は、九十名の負傷者を出して当時世間の非常に大きな問題になりましたにもかかわらず、その責任者は一体どうなっておるのか。この間、公務中だからこれは起訴されないというようなことも聞いておりまするが、現在この責任者の処置をどういうふうにしておられるか、担当の方からお答えを願いたいと思います。
○秦野説明員 ただいまお話の広島の「かもめ」の事件は、今詳細ここに持って参りませんでしたが、警察としては捜査を完了いたしまして、検察庁に業務上過失罪で送致してあります。その後検察庁側におかれましては、たしかこれは公務中の車であったという向うからの公務証明を受け取っておられるというふうに報告を受けております。
○淡谷委員 警察庁としましては、この信号を無視して衝突した運転手——つまり米兵ですが、これをどういうふうにして検察庁の方に送られたか、はっきりお伺いしたい。
○秦野説明員 この被疑者は、米軍側と現地で連絡をとりまして、協力をして当時の状況を調べ、かつ被疑者を取調べいたしまして、その結果、過失犯である、しかも業務上の過失であるというふうに認定をして、そして、その罪で送ったというふうに報告を受けております。
○淡谷委員 これが公務中のものならば、捜査その他のことは米軍がやるべきものじゃないのですか。
○秦野説明員 公務中の事件でありましても、公務外の事件でありましても、捜査の過程におきましては、両方が協力をしてやるという建前になっておりまして、日本側でできることはできるだけ捜査をし、また米軍の協力を得て捜査をした方が都合のいいものは向うの協力を得てやる、いずれにいたしましても、双方の捜査官が相協力して事件の真相を明らかにするという建前で当っております。
○淡谷委員 公務中のトレーラーを運転する者は、警報を無視して衝突さしてもいいといったような規定がございますか。当時のいろいろな世論を聞きましても、実情を見ましても、これは警報を無視したのが一番困るといっている。警報を無視してもかまわぬというような取りきめが何か日米間にあるのですか。
○秦野説明員 警報を無視したという点について、それが原因で事故が起きたという結果になるわけでありまして、その点に刑事責任があるわけであります。むろん警報を無視していいというような建前も取りきめもあろうはずはないのであります。その点について刑事責任が問われるわけであります。
○淡谷委員 それでは、検察庁の方では、これをどういうふうに処置したのですか。
○竹内(壽)政府委員 ただいまの事件につきましては、米軍側は当初から公務執行中に起った犯罪であるという観点に立ちまして、終始裁判権を主張して参ったのでございます。ただいま警察側から御答弁もありましたように、日本側としましてもできるだけの捜査をいたしまして、事実関係を明らかにしました結果、公務執行の過程において起った事故であるという判断をせざるを得なくなった次第でございまして、裁判権はアメリカ側で行使するということに当事者間の話し合いがついて、事件を処理したはずでございます。
○淡谷委員 その結果がどういうふうになっているか、お聞きになっておりますか。
○竹内(壽)政府委員 その最終的な決定をしましたのは、はっきり覚えておりませんが、数日前のことであったと思いますので、まだ裁判の結果その他につきましては何ら報告を受けておりません。
○淡谷委員 数日前に発表されたならば、検察庁としてすみやかにキャッチすべきが当然だと思う。少し冷淡ですよ。これくらいの大事件を起した問題をどう処置されたか、正式に通知のあるまでは黙って見ているという態度では——もう新聞には出ているのです。不起訴になるといっている。それを検察庁自体が黙って腕をこまぬいて報告を待つという態度では、私は今後の日本の法の権威上はなはだ怠慢だと思う。公式の報告がなくとも、あなたのキャッチされた情報によると、この事件は米軍でどう処理されるのですか。
○竹内(壽)政府委員 的確にはまだ何ら情報を得ておりませんので、申し上げかねます。
○淡谷委員 これはあとでまたあらためてお聞きしたいと思いますが、これくらいの大事件を、公務中であるから、警報を無視して衝突し、日本人に多大の損害を与え、生命に危険を与えても、不起訴にするなんというような態度になっては、これは単なる刑事問題だけでなくて、大きな外交問題にも発展する可能性があると思う。日本人の命を非常に軽視する状態が、各種の事犯にはっきり現われてきている。しかも警察側では、明らかに警報を無視して、これは刑事事犯に触れるという見方をしている。あなた方の方はあっさり向うにまかして、結果さえもキャッチしていない。数日前に結果が判明したはずだ、こういう態度では、私はとうてい信頼できない。 大三沢の事件なども、そういう点において、警察の方の送検しました理由とあなたの方の起訴した理由とが食い違っている。前会あなたは資料がないといって答弁を避けておられましたから、きょうはその点を十分用意してこられたと思いますので、この大三沢の警察署が送検した理由をあなたの方でお調べになった点をおあかし願いたい。
○小島委員長 淡谷君に申し上げますが、丸山調達庁長官は十二時に帰りたいとおっしゃってますから、どうか、できることなら調達庁長官に対する質問をお願いいたします。 なお、警視総監も十二時に帰りたいそうですから、一つそのつもりでやって下さい。
○淡谷委員 それじゃ関連に譲ります。
○菊川委員 関連質問をさしていただきます。丸山調達庁長官にちょっとお尋ねいたしたいと思います。今淡谷委員からお話があったような事件がたびたびあるわけでございますが、こういった事件が起きた後の結末が、私どもとしては何か大へんあと味の悪いものを残されたままになっているわけでございます。事件が起きますと、必ず公務中だとか公務外ということで議論されるわけでございますけれども、問題はそれ以前にあるということは、私が申し上げるまでもないことでございます。法的な解釈ももちろん重大でございますけれども、こういう場合の遺族に対する補償でございますが、今までどのように扱われておりましたか。私不勉強でございますので、ちょっとその点わからないのでございますが、過失の場合、またはそうでない場合、そういった場合の補償の算定の基礎を伺わせていただきたいと思います。
○丸山政府委員 遺族の方の補償などの業務を調達庁の私のところで担当しておるわけでございますが、その補償の措置の基準と申しますか、これに関しましては、ただいま政府がとっております措置は、一日の収入の推定額に対しまして千倍のもの、並びに六十倍の祭祀料、こういうものを計算いたしまして、それになお遺族の御様子によりまして加算金をつける、これが今の補償措置のとっております要領でございます。
○菊川委員 それはいわゆるホフマン方式というのでございますか。
○丸山政府委員 この御遺族の方に対する補償金の算定の問題につきましては、いろいろ議論もありますし、またやり方に対する形式もいろいろあるわけでございます。今お話しのように、ホフマンという式もございますし、その他のやり方もあるわけでございます。政府がただいまとっておりますのは、先ほど申し上げたようなものをとっております。何ゆえにそのようなものでただいまやっておるかと申しますと、実は生命身体に関する問題というものは、本来なかなか金額等によって処置できない重要な問題でございますが、しかし御遺族に対する補償の措置はそれ以外に手がない。それのやり方につきまして、今まで法律その他に現われておった国家の賠償責任の基準、これらのことで関係事項と申しますのは労災法その他の関係に現われておるのがございます。それが先ほど申し上げましたような要領でできておりますので、それを標準に採用して、それらの関係のものもそれ式に従っておるわけでございます。ホフマン式も、われわれ常々検討を加えておりますけれども、これには、たとえば将来の収入並びに将来必要とされる支出の方面の計算もございまして、個々のケースによっても非常に違う面もございます。行政的に公正敏速に措置するためには、直ちに採用は適当でもないだろうというのが現在でございますので、先ほど申し上げたような基準で措置しておるわけでございます。
○菊川委員 これは、この間大三沢事件で問題になりましたので、お聞きしたいのでございますが、あのなくなられた運転手さんは三十一才で、月収二万九千円でございますが、この方でしたら、大体どの程度のものが補償されるのでございますか。
○丸山政府委員 二万九千円の月収でありますならば、それの一日の推定額を見まして、それにただいまのように千倍をかけ、またそれにプラスする六十倍のものと、そこに御遺族の未亡人の方に対する十万円の加算並びに子供さんに対する五万円の加算、これらのものを合計いたしますので、ただいまのケースで概略見当をつけますと、約百万円近くのものではないかと私ども思います。
○菊川委員 大体今計算してみますと百万円くらいの金額でございますけれども、何か事故があるたびに、わずかこの程度の補償で泣き寝入りさせられてしまう、こういった問題をもう少し考えていただきたいと思うのです。こういった無残な事件で肉親を失った遺族の気持、これはたとい何千億円補償されましてもいやされるものではないことは、これまた私が言うまでもないと思うのでございます。残された遺族というものは肉親を失った悲しみの上に、もう一つ生活の根拠を失った、この二重の苦しみがあるわけでございますから、そういった面も十分に御考慮いただきまして、それで遺族が十分にこれから生活していけるだけのものを、ぜひとも補償していただくように御要望申し上げたいと思います。そうしていただけますかどうかをちょっと伺いたいと思います。
○丸山政府委員 お話の通り、また私も先ほど申し上げた通り、生命、身体に関する問題につきまして金額をもってあれこれはかるということは、はなはだ不適当であり、それで済まない面が多々あるわけでございますが、しかしこれ以外に手がない。あとの生活のこともありますし、十分に出さなければならない、こういうことで金額算定をいたすわけでございますが、先ほども申し上げましたように、それならば基準とすべきものはどういうところに置いたらよかろうか、これらは単に米軍関係の傷害のみならず、いろいろな面にも現われておるわけでございます。それらのことにおいて、ただいまお話がありましたような、たとえばホフマン方式のやり方もある、あるいは国鉄その他のところで一つの基準をお持ちになっておるところもあり、あるいはまた民間のいろいろな工事現場その他でもいろいろな処置をとっておられる。その他日常いろいろな傷害に関して、遺族の方に対する慰謝、お見舞の処置等いろいろあるわけでございます。それらの点を全般的に検討いたしまして、どういうものをもって基準としたらよかろうか、それに対してただいまとっております措置が、先ほども申し上げましたように、労災法その他法律に現われておる一つの基準線、これらのところが一つの国の意思、方針として明確に現われておるところであるので、それを採用するのがよかろう、こういうことでやっておるわけでございます。もちろんいろいろなやり方、方式について、また各方面の御意向によりまして、常々補償の要領というものには検討を加えておりますが、ただいまのところは、今のようなことで処置しておりますので、三沢の事件あるいは先般来のジョンソン基地の事件、その他米軍に基因する事故については、以上の要領でやっていく、かように考えております。
○田中(幾)委員 今伺っておりますと、今のような事故のあった場合、慰謝料その他の損害賠償をするという場合に、どうもあなたの口うらは、行為を起した責任者と申しますか、その方でみずから目盛りをして、自分の方できめて出すような心がまえのように受け取れる。私はそうではないと思う。被害者は損害賠償を請求する権利があるのですから、その権利に基いて請求するのであって、気の毒であるからどうとかいうような、そういうことから与えるのではない。請求する方からいえば権利で要求しておるのでありますから、この額についての今の算定の基礎をおっしゃったのであろうと思う。そういう政府なりあるいはアメリカの国の一方的な決定によって、これはきまるのではない。請求する方で納得すれば、いわゆる示談で解決することになるのですが、それが解決しなければ、やはりこれは法的に請求をして裁判をする、つまり裁判所によって最後は決定されるのであろうと私は思うのです。ですから、今のようなことで、ただ労災法によるとか、そういうことによって裁量をして与えるのだという態度ではいけないと私は思うのです。ですから、話がうまくいけばいいですけれども、つかない場合には、最後はやはり請求する権利のある者から法的に請求して決定するのではないのですか。そこはどうですか。
○丸山政府委員 お話の通り、この問題の今申し上げたような基準措置というものは、政府側だけの申し条でありますので、もしそこでお話がつかないという場合には、裁判所において、また裁判所の出訴ということになれば、そこで決定される問題でございます。
○田中(幾)委員 やはりそういう態度でやっていただきたいと思います。請求する方は権利として請求するのであありますから、私どもの権利を保護する立場からいえば、たとえばあなたの方では今一日の労働力あるいは賃金、それらの千倍と申しまするけれども、二十五才なり三十才なりの青年が一家をささえておって、そうしてその経済力をその人の力によってささえておるというのでありますならば、これはやはりその生活の力、労働力を失ったのでありますから、これは勤めておるならば一定の定年に達するまでの労働力、経済力、賃金というようなものをほんとうは請求したいわけです。ことに不具者で終った場合には、自分は生きておる間その労働力を失うわけでありますから、これをやはり算定をして、請求する方からいえば請求したい。それから、なくなった者の遺族からいえば、これはやはり法律によって子なり親なりが慰謝料の請求ができるのであります。ですから、私はやはり請求する者の立場を考慮して決定するというただいまの長官のお考えの通りに、これは処理をしていただきたいと思うわけであります。 それからもう一点ちょっと伺っておきますが、アメリカの場合は、公務執行中に、こういう故意もしくは過失によって生命、身体、財産に損害を与えた、こういうような場合には、これは責任者は一体だれになるという立場でやっておるのですか。
○丸山政府委員 行政協定の十八条で、公務上の事故ということになりますと、この補償措置は日本政府、担当は調達庁でやります。また公務外の場合においては、同条の規定で直接にアメリカ軍がやる、このようになっております。
○田中(幾)委員 私どもは法律家の立場として、今のような請求をする場合に、個人におきましては支払い能力の限界というものがありますから、自分の請求権を十分主張したくてもある程度で思いとどまる、こういうことがありますけれども、国家であります以上は、支払い能力の点については十分あるのでありますから、やはりこういう場合には、損害を受けた方の、いわゆる請求権者の立場を十分に考慮して、遺憾のない処置をとっていただきたい、かように考えまするので、この点を特に要望しておきます。
○淡谷委員 その補償の場合、殺人と過失の場合に相違がありますか。
○丸山政府委員 その事故の原因が、たとえば路上の自動車の衝突その他で、しかも被害者の方にもその衝突事故を起すに相当の過失といいますか、責任があったような場合、それから今例にあげられました殺人事件、何ら被害者に何がないという場合には、もちろん差異がございます。
○淡谷委員 この間の「かもめ」の事件ですが、大分たくさんの負傷者が出ておるようですが、あの補償はどうしましたか。
○丸山政府委員 「かもめ」の事件に関しましては、関係者、現場調査もいたし、そのまま訴訟措置につきましてもお話をしてございます。ただいまのところ、国鉄の方において一切の取りまとめをされておりまして、そして調達庁の方へ出て参る。そこにおいて処置をされる。あれには国鉄自体の損害の問題と、それから乗客の方の損害、あるいは補償の問題、二つございますが、それが国鉄の方において調査、取りまとめ、その上に近く調達庁の方へ回ってくる、そのようなことになると思います。
○淡谷委員 総額は大体どのくらいになりますか。
○丸山政府委員 まだ正式の書面がこちらへ回って参りませんので、確定的なことは申し上げられませんが、国鉄の方面から聞きましたところでは、乗客の方の関係において約五十万円くらいでございます。それから国鉄自体の損害が約三千万円くらい、このようなことを国鉄の方から一応言っておるようであります。
○淡谷委員 公務中の事件ですから、この概算三千万、五十万というものは、やはり日本側から払うのですか。
○丸山政府委員 その通りでございます。
○淡谷委員 警視総監にお尋ねしたい。あなたの役所の前を通りますと、毎日のように交通事故による死亡、負傷者の数が出ておる。非常な熱意を持って交通事故の取締りに当っておられますが、現在あの警報を無視して、トレーラーをぶつけて列車を転覆さして、九十数名の負傷者を出して国損を三千万円以上与えておる。その警報を無視した米兵が、公務中であるからといって不起訴になるようなことを聞いておる。こういう片手落ちの処置に対して、あなたは一体どうお考えになるか。私は今度の大三沢の事件でも、被害者の奥さんが第一回の公判を聞きまして、殺人をやった米兵側の日本人の弁護士が、今軍においても多額の補償を与えるつもりだからと言って、暗にこの事件を簡単に済ませようと発言したのに対して、涙をこぼして憤慨している。命というものは金で買えない。それを公務中であるからといって、警報を無視して車をぶつけるような行為に対して、全然不問に付して、日本側がその責任を全部負わなければならない、こういうことに対して、警視総監としてどんな感じがなさいますか、率直にお答え願いたい。
○小倉説明員 今回の事件はもちろん私の管轄外のことでございまして、詳細のことは存じません。ただお話のように、公務中だからということだけによって不起訴になったというようなことでありますならば、私としましては非常に残念なことであると思います。
○淡谷委員 これがあなたの管轄外であることは私も知っておりますけれども、一つ起った事件は、二つ起り、三つ起り、四つ起っておるのです。ピストルの暴発で人を殺したという事件も、続々として起ってきているのです。この「かもめ」の事件なども、もし簡単に済ませるならば、公務中の車は踏み切りの警報を無視してぶつけても、跡始末は日本側でやるんだからというような簡単な考え方では、たまったものではない。私は、早晩あなたの管轄にも起る可能性のある事件として、あなたの内部における態勢を十分整えて、自今こういうことが起らないように厳重に警告を発しておきます。 竹内刑事局長から、大三沢の問題、最初にまず大三沢警察署が送検した理由というものを詳しくお知らせ願いたい。
○竹内(壽)政府委員 警察の検察庁に対する送致をしましたときの事実の概要でございますが、それによりますと、ジェミーは、本年の八月一日午後九時三十分ごろ、青森県大三沢町の米軍三沢空軍基地内の北門通り新道路の補助滑走路の注意信号機より南方約百二十メートルの道路上におきまして、自分が乗車してきた同基地内のステート・サイド・タクシーの運転手加賀昭に対しまして、かねてから持っていた四五口径コルト自動車用拳銃を、同人の背後から右ほお部に発砲して、その場で同人を、右ほお部から左耳下に至る貫通銃創により死亡するに至らしめたものであって、これは殺害の目的をもってしたものであるという趣旨のものでございます。
○淡谷委員 あなたは先回のこの委員会で、警察の殺人の理由による送検と、検察官がこれを重過失として送検した理由の食い違いを、こういうふうに説明しておられる。「しかしながら、捜査官としてみれば、何とかこういう事実で起訴したいと思いましても、証拠となるべきものの供述が得られないとか、あるいは、物的証拠がそれに伴わないとか、あるいは四囲の環境がその判断を入れるだけの十分な裏づけとならないといったような事態は、技術的に捜査官の経験に徴しまして判断をする」、こういう答弁をしておる。そこで大三沢署が殺人として送検をしました証拠となるべきものの供述は、一体あったのかどうか、これは理由に書いておりません。
○竹内(壽)政府委員 その点につきましては、前回も申し上げました通り、本件の外形的な事実を見ますると、常識的には殺人罪をもって問疑すべき案件のように見えるのでございまして、従いまして、検察官におきましても、その捜査に当りましては、終始殺人罪と認定できるかどうかという点に重点を置いて、慎重に検討したことがうかがわれるのでございます。ことに送致事実が殺人罪としてございますので、一そうその点は慎重に、かつ徹底的に捜査をしたというふうに見られるのでございますが、遺憾ながら先ほどおあげになりましたような、私も申しましたようないろいろな事情を総合してみますると、これを殺人罪をもって問疑いたしますには故意がなければならないわけで、その故意を認定する証拠が不十分であるという結論になりましたために、しからば過失はどうであるか、過失の点については重大な過失があるという資料に基きまして、検察官としましては、本件を殺人罪とは見ないで、重過失致死罪という法条を適用しよう、刑法二百十一条を適用いたしまして起訴をした、こういうことに相なっておるのであります。このような認定は……。
○淡谷委員 答弁が違います。僕は大三沢署の殺人として起訴をした証拠となるべき事実を聞いているんです。警察署の場合です。
○竹内(壽)政府委員 警察が殺人とし て認定した資料と申しますのは、私どもの方では、どういう資料に基いてそういうように認定したかは必ずしも明確ではないのでございます。警察も果してあくまで確信を持っていたかどうかという点についても、いささか疑問の点があるのでございまして、やはり常識的に、外形的な事実に重みを置いてそのような認定をしたのではないかと判断をいたしておるのでございます。
○淡谷委員 殺人として送検した警察と、重過失として起訴した検察庁の見解と、大きな相違があるのです。その相違というものはどこから出たかを明らかにしてもらいたい。そうして、警察の方で送検した場合に、殺人として送検しているんですから、あなたが今御説明になった以外に、証拠をあげているはずです。あなたはどういう資料でそれをお調べになったか知りませんが、そうした証拠の、警察と検察庁との食い違いを私はお聞きしたい。だから率直に、大三沢署がこれこれの証拠によって殺人と認めるといった理由を、もっと詳細にあなたにお聞きしたい。この前この資料を要求しましたら、公判続行中だから、これは書類として取り寄せられない、できるだけ近い点で説明するからというので私は了承したのです。まさかその説明がわずか一枚か二枚のもので終るような簡単な理由だとは思えないのですが、それはどうなっていますか。
○竹内(壽)政府委員 これはもちろん一枚や二枚の紙で尽し得るものではございません。検察庁がなぜ故意を認めることができなかったかということは、同時にまた警察がなぜ故意を認めたかということ、そのいずれもの解明になる資料でございますが、これらの認定はそれぞれの証拠によって説明するほかないわけでございます。先般申しました通り、現段階は、起訴をして公判の審理のまず冒頭の段階でございます。従いまして、ここでこまかい証拠をあげて、かように認定したということを申し上げますことは、今の刑事訴訟法の建前上、裁判官に予断を抱かしめるおそれもあるのでございまして、公判の進行とにらみ合せて逐次申し上げるほかはないわけでございます。その点は、私どもとしては、警察がそう認定したことについても、それはそれなりの理由があったと思いますが、なお、検察官は公訴維持官としての責任上、証拠につきまして綿密な審査をした上で、故意を認定する資料がないという判断に立ち至ったということだけを申し上げて、御了承を仰ぎたいと思います。
○淡谷委員 それは少しおかしい御答弁じゃないですか。公判が始まっておりますが、これは、警察の方の送検した理由も、あるいは検察庁が起訴をしました理由も、裁判長の手元にはもう提出されてある。すでにに一部は公判でも明らかにされておる。そうした裁判長が知っていることをここでもう一ぺんあなたに聞いたところで、何も裁判に影響しない。私はそれに対して意見を言おうというのじゃない。ただ少くとも国家の機関である二つのものが、こういう重大な問題に対して、一方は殺人であると主張し、一方は過失であると主張している。過失であると言った方が正しければ、警察はいいかげんな証拠で殺人罪を押しつけたということになる。殺人が正しいとすれば、検察庁は米兵に気をかねて、いいかげんに過失に押し込んでしまった。こういう重大な一つの岐路になる。この疑いを解くために、両者の証拠とするものを比較したいから、その資料を御説明願いたいということが、どうして一体裁判上の支障になりますか。
○竹内(壽)政府委員 今後、裁判の進行によりまして、証拠によってこれはもう明白に説明をされる筋合いでございます。これを一刻を争ってここで先に述べなければならぬということは、よくわかるのでございますけれども、これは、訴訟法の建前から申しまして、私どもは自由にこれをここで論評するということは避けた方が適当であるというふうに考えて、今申し上げておるのでございます。今仰せのように、重過失と認定したことが正しければ、警察の事実調べがずさんであり、警察の方が正しければ、検事の判断が米国に阿諛したものであるというようなことであるかどうか、これは公判の審理を通じまして公けに論議されることでございますので、いましばらくそれまでの時期をおかし願いたいというふうに考える次第であります。
○淡谷委員 私はここで論議しようというのじゃないのです。ただ、国会の審議の自由は、少くともこういう疑わしい事件に対して、明らかに認識しておく必要があるのです。特にまたすぐ出ているでしょう。その前にはめいてい事件というのがあった。酔っぱらいが勝手にピストルを撃って、罪もない者を殺した事件があるのです。こういうのが続々と出てきておりますのは、これはやはり日本の検察行政の上に大きな欠陥があるんじゃないかという立場に立って、まず十分にわれわれは解明しておきたい。別にこの証拠に対してここで論評を加えたり、裁判の結果を左右しようというのじゃないのです。一体こういう行き違いがどこから出てくるかということを認定するためには、裁判の確定するのを待つ以外に道がないとおっしゃるのですか。もうすでに出しておるものであれば、こういう書類があるということだけに、しかも内容にわたって、あなたが差しつかえない限り、詳細に列挙される分にはかまわないと思う。論評を加えたら悪いですけれども、私が列挙してくれと言うことに対して、あなたは論議するわけにはいかぬと言うのですか。私は論議しようというのじゃないのです。警察のあげた証拠はこれこれであった、検察庁があげた証拠はこうであったと、国民の前に二つの証拠を明らかにして、これはどちらが正しか、それを今でもなおこの場合に御説明ができないとおっしゃるのですか。
○竹内(壽)政府委員 御説明をすると申しましても、論議すると申しましても、何でございますが、問題は故意があったかないかということは、証拠をあげて御説明する以外に、この判断を明らかにするわけにいかないわけでございます。その証拠をあげてここで御説明することが、裁判の進行上いささか問題があろうというふうに考えるのでございます。なお、確定するまでは言えぬかということになりますと、私はそうは思いませんので、証拠説明を終るというような段階になって参りますならば、私どもが公判廷で明らかにされておる証拠をもってここで御説明することは、決して不当な処置ではないというふうに私考えておりますから、もう少し時間をおかしを願いたい。
○淡谷委員 どうも私はあなたの態度がふに落ちないのです。別に検察庁の態度をあなたに援護してもらおうとも思わないし、また警察の方を擁護してもらおうとも思わないのですが、すでに警察の送検の書類が裁判所へ行っているでしょう。また検事は起訴理由も明らかにされているのです。起訴の書類もあるでしょう。これは絶対に国会などにも公開してはならない書類なのか、あるいは今あなたのおっしゃる通り、ある時期においては公開してよろしい書類なのか、それをあなたにはっきり聞きたいまでです。
○竹内(壽)政府委員 これは、ある時期におきましては、明らかにして差しつかえない事項でございます。
○淡谷委員 ある時期とは一体どういう時期ですか。あなたの主観による時期ですか。
○竹内(壽)政府委員 私の主観による時期ではございませんで、ただいま公判が始まったところで、これは淡谷先生も御承知の通りでございます。この公判の段階におきまして、証拠調べがこれから始まるわけでございます。その証拠調べが始まる前に、私がここで証拠調べの内容を申し上げることは適当でないと言っておるのであります。事柄が今の認定の問題にかかりますので、証拠をあげて申し上げる以外に解明の方法がないわけであります。そこで、証拠をあげますことが適当でない、こういうことを申し上げておるのでございます。
○淡谷委員 それじゃ、それを解明できる時期というのは一体いつをさすのですか。証拠調べを終ったあとですか、公判が終ったあとですか。はっきりしてもらいたい。
○竹内(壽)政府委員 検事側の立証が終りました段階になりましたならば、その内容を私がここで御説明することはあえて支障はない、かように考えております。
○淡谷委員 その際に、この事件に関する警察側の送検の理由、それから検事の起訴理由、それから証拠調べ等を全部御提出願えますか。
○竹内(壽)政府委員 書類として提出することはもう少し研究させていただいた上でお答えしたいと思いますが、それを私の責任において御説明することは、私は支障ないと思っております。
○淡谷委員 法務大臣はまだ見えないのですか。——来られるまで私の質問を保留いたします。
○小島委員長 志賀義雄君。
○志賀(義)委員 松川事件のことに関して、この前竹内刑事局長が私に答弁を約束されております。その前に伺いたいことがあります。去る九月二十六日の当法務委員会において、竹内刑事局長は、私の質問に対してこういう答弁をされております。「事件そのものは重大な事件でございますけれども、訴訟の進行の過程において、弁護士と立会検事との間に、あるいは裁判所との間にやりとりしました点は、重大事件でありますればむろん報告があるわけでありますが、おそらくその検事は大した問題ではないと思って、われわれの耳に入れなかったと思うのでございます。しかし、さて志賀委員からこの委員会で」ここが問題になっているのですよ。「開き直って何じゃ、こういうようにおっしゃられれば、それは重大な問題じゃないかと思うわけです。そこで私どもとしては、あるものなら返したらどうだということでだんだん進めていって、いやありました、返しました、こういうことになったので」云々とあります。「開き直って何じゃ」とこの「開き直って」というのは、どういうことですか。どういう意味で言われたのでしょう。——今あなたの答弁を読み上げたでしょう。私がここで質問したことについて、大したものでないと思うから検事は出さなかったものと思うが、この法務委員会において志賀委員が開き直って何じゃ、こう言われれば、そんなに重大なものなら調べてみよう、それで、あった、あったものなら返したらよかろうというので返した、こういうことを言っているのですが、開き直ったというのは、もう少し日本語で敷衍しますと、どういう意味になりますか。まずそれをおっしゃっていただきたい。
○竹内(壽)政府委員 どうも措辞よろしきを得なかった点はおわびをいたしますが、あらためてという意味で私は申し上げたつもりであります。
○志賀(義)委員 あなたが率直にわびられれば、話を進めます。しかし、これからは言葉に注意して下さい。 この諏訪メモは、松川事件の裁判が始まってからこれまで弁護人の方からたびたび関係書類を全部公開してくれ——これは公判が始まったならば、刑事訴訟法第四十条によって弁護士としては訴訟に関係する書類及び証拠物は閲覧する権利があります。それに基いて言っておったのについて、書類及び証拠物二百種類ばかりを見せておりません。現に転覆した列車のところにあったレール及び車輪というような、あの重いものさえもどこかにいってしまっておるのです。この諏訪メモが発見されたのは、毎日新聞の福島支局の記者、倉島康君がその所在を、検察庁にあることを突きとめて新聞に発表したのが事の起りであります。二審が終ったあとですが、そこで松川事件の主任弁護人の一人である大塚弁護人から口頭で二回、ついに三回目に内容証明をもって要求いたしましたところ、最高検の安平検事が本年二月二十五日、この松川事件はまだ係属中で未確定につき、証拠物の還付または公開の御要望には応じかねる次第でありますという答弁があったのです。ところが去る二十九日あなたに伺うと、本人に還付した。最高検の安平検事が弁護人からの要求に対して還付または公開の御要望に応じかねると言っておったものを、どうしてまた検察庁が急に本人に還付することになったのですか。その理由をお調べになりましたか。
○竹内(壽)政府委員 先般御質疑の数点につきまして、この機会に一括してお答え申し上げます。いつだれがだれに返したかという点でございますが、これは九月四日ごろ、福島地検の係官が諏訪氏御本人に返還しました。
○志賀(義)委員 係官というのはだれですか。
○竹内(壽)政府委員 係官の氏名はわ かりませんが、検察庁の証拠品係だと思います。証拠品係の方が諏訪氏本人にお返しをいたしました。 それから、保管の責任者はだれかという御質問がこの前もありましたが、これは福島地方検察庁検事正が保管の責任者ということになっております。
○志賀(義)委員 検事正の名前は……。
○竹内(壽)政府委員 ただいまの検事正は稲葉厚という検事正であります。 第三点といたしまして、今まで返還しなかった理由は何かということでございます。これは一、二審を通じまして、場合により立証の必要がありましたので、領置をいたしておったのでありますが、最高検において上告事件として記録を検討いたしました結果、領置の必要がないというふうに判断されるに至りましたので、さっき申しました九月四日にこれを返すことにいたしたのであります。かように考えておるわけであります。
○志賀(義)委員 この問題は、先日も申し上げました通り、佐藤一被告が松川事件を起すために、共謀をやる会議に出席した、こういうことが裁判では死刑の理由になっておるのであります。当日あのメモが出ましたけれども、その中には、午前中諏訪課長がメモを書いており、それからあとは別の課長が書いております。そういうことについて新聞に出るところによると、検察庁の方では、この事件は午前中のことだけで、共同謀議は午後行われておるから、何ら証拠にならないということを言われておるのです。結局今まで弁護士からたびたび請求があったにもかかわらず、それの公開を拒否しておきながら、法務委員会で問題になったあと、開き直ってそういうふうに急に本人に返すというからには、私はここで法務大臣にお伺いしたいのであります。この証拠を本人に還付するに当っては、何らかの示唆を与えられたか、どういうことで返されたのか、諏訪課長は今この自分のメモをかかえて神経衰弱の状態になっておるのであります。弁護士が行きましても、どうも要領を得ない。何か検察庁の方から示唆があったのかどうか。これを証拠として提出することを妨害するとかあるいは出さないようにするとか、何かそういう示唆でもされたのかどうか、そういう点について、つまり検察側がこのメモを公開することに反対しているとか、諏訪氏に約束させた、そういうことはないでしょうね。その点一つ御答弁願います。
○愛知国務大臣 さような事実はないと信じております。
○志賀(義)委員 今まで弁護人及び被告の方から、この点に関しては繰り返し主張しておって、九年間も福島地検の倉庫に入れてあったのです。このことはこの書類を押収した鈴木久学検事が言っておる。たびたび請求したにもかかわらず、鈴木検事は——新聞を通じてみると、福島地検の倉庫に入れておいたが、今日までだれもこれの閲覧を要求するものはなかった、こういうまっかなうそをついておる。私どもはそこに非常に疑惑を感じる。報告にとって致命的な重要性のあるもの、死刑の判決をひっくり返すに足る証拠となるもの、これは世上でも喧伝されておったことです。それを九年間も隠しておき、だれも閲覧を要求するものがなかったという。安平検事は、還付または公開の要求には応じかねると言っておったものを、急にここにきてそういうふうに本人に返す、こういうことをやられる。私はここに非常に検察庁のトリックがあるということを感じておるものであります。このことについて最近松川事件の弁護人が花井検事総長にお会いしましたところ、この諏訪メモばかりでなく、他の書類をも返したということを言われております。東芝松川工場から紛失して、今ない文書がある。これもおそらく証拠としてとられたものでありましょう。これは今までここでも論議されておりませんからはっきり申し上げますが、この工場では食事宿泊に関する書類というものがありまして、工場で昼食または夕食をする場合には、ちゃんとその食事をとった工場従業員の氏名が書かれる。これがあれば、検察庁が今日まで主張し、また判決で言っておる佐藤一は共同謀議に参加しにいったということがない、アリバイを証明するものになる書類であります。これが押収されたままどこにいったかわかりませんが、この書類で竹内刑事局長は何かお聞きになったことがありますか。
○竹内(壽)政府委員 お話の点につきましては、何も聞いておりません。
○志賀(義)委員 花井検事総長は、メモばかりでなく、ほかの書類も返したと言われる。その書類にはどういうものがあるかということを、一つお調べ願って御報告をお願いする次第です。その中で今の食事宿泊に関する書類はどこへいったかということも、一つ調べていただきたい。念のために申しますが、これがある場合には、検察庁の倉庫にでもあったならば、本人に還付するとか何とかいうことをしないで、一つ事件関係者に今度は堂々と公開をしてもらいたいのです。そして、あったらあったで、すぐそのことを知らしてもらいたい。また法務委員会にも知らしていただきたいのであります。 こういう点で、この事件に関しては非常に不審なことだらけでありますが、検察庁法第四条によれば、検察庁は公益の代表者ということになっているでしょう。ところが被告人にとって命が助かるかどうかの重大な問題について、九年間も倉庫に入れておいて、請求があるにもかかわらずこれを公開せず、今になって検察庁が公益の代表者として責任を持ってこの書類を発表するかわりに、どうして諏訪氏に返したのか。この心情はわかりません。この書類はどういう観点からお返しになったのか。これは証拠として大して魅力がないのでお返しになったのか。つまり食事宿泊に関する書類を探すことと、それがあった場合にどこに所在があるのか、また検察庁にあった場合にその内容を公開することと、公益の代表者としての検察庁がなぜ今になって被告及び弁護人側が重要だという書類をどういう判断で返されたのか、この二点について説明していただきたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 花井検事総長がお答えをした中で、諏訪メモのほかにも若干の領置物をお返ししたということでございますが、その内容は、先ほど申しましたように、私は聞いておりませんので、事情をつまびらかにいたしません。なお、どういうふうに言われたものであるか、また言われたとすればどういうものであるかというような点、御期待に沿うようにできるかどうかは留保いたさざるを得ませんが、できるだけのことをして、お答えを申し上げたいと思います。 なお、諏訪メモをお返ししたことにつきましては、先ほど申しましたように、記録を検討した結果、今日領置を必要としないというふうに認めるに至ったので返したということでございますので、さよう御了承願いたいと思います。なお、この問題につきまして、品物を領置いたしましたときには、ちゃんと領置書を作りまして物品を明らかにしており、それは訴訟関係人にはわかっておるはずでございます。何も隠しておったというような筋合いではないと思います。 それから、安平公安部長の回答の点についてお触れになりましたが、実は私その点聞いておりませんでしたけれども、私どもで調査したところによりますと、本件につきましては、一部無罪になった被告武田久氏外三名の方から、国に対して損害賠償の請求の民事事件が起ったようでありまして、昨年の十一月一日に福島地検あてに諏訪メモの送付方を請求したことがあるようでございます。その当時同地検におきましては、松川事件が最高裁に係属しておりまして、その関係領置品として預かっておるのでありましたので、そのことを理由にしてお断わりをしたことがあるというようなことを私聞いておりますが、安平公安部長検事のことにつきましては、私は聞いておりません。
○小島委員長 まだ淡谷君の質問が中途でありますから……。
○志賀(義)委員 時間の点は考えておりますから……。 ただいま最後に言われたことは、福島地方裁判所民事部裁判官壇崎喜作という人から検事調書四百六十六号に関する回答文書として出ておるのですよ。そのときには、損害賠償事件に関連して領置した物は証拠品として当庁において領置したものであるが、目下裁判所に係留中であるから、相手の役人に送付しかねる、こういうことです。この損害賠償を申し出られたところの責任者に対して、壇崎喜作判事からこういう回答があったわけです。安平検事の言われることと同じでしょう。係争中のことであるから、還付または公開に応じかねると言っておきながら、今日になって急に還付した。そこの心境の変化というものが——もうそのときに大問題になっていることはわかるでしょう。それを、公開を拒否しておきながら今になって還付する、これは明らかにこれについていよいよ隠し切れなくなった、これは、本人の佐藤一被告のアリバイ並びに共同謀議というもののなかったこと、これを証明する文書であるとして追及されておった、ついにここにきて隠し切れなくなったので、アリバイの証明にもならないし、共同謀議の存在しなかったことを証明する文書にもならないというふうに態度を変えられた。これ以外に私どもは判断のしょうがないのです。だから、あなたは御了承願いますと言われたけれども、私どもは絶対に了承できません。これは私が開き直ったのではなくて、あなたの方で、もうここまで追い詰められればしようがないといって、開き直ってこられたような印象さえこちらは持つのだ。いいですか。ましてこの事件については、先ほど申しましたように、列車、車輪というような重大な証拠物件がいまだに出されていないのです。なお二百通に及ぶ調書さえ公開されていないのです。こういう証拠品はどこにあるか。レールとか車輪とかまたはこの二百通に及ぶ調書は一体公開される意思があるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 ただいま事件を扱っております最高検察庁と十分連絡をいたしまして、お答えのできることはお答えいたします。
○志賀(義)委員 それでは、それを今お答えすると言われましたが、至急それをやるようにしていただきたいと思います。 それからなお法務大臣にお伺いしますが、去る八月九日の法務委員会で、最高裁の石坂判事の手紙については意見を述べることは差し控えるが、当時は最適の人物と思って判事に任命するようにした、そして、なお今日でもそれを確信しておると言われたのが八月九日のことであります。しかるに六月二十八日付で、石坂修一判事は、この事件の裁判に、最高裁の大法廷に参加することをみずから回避されております。この事実、両方考え合せますと、やはりあなたの確信に少し狂いがあったのじゃございませんか。今どうお考えでしょうか。その後、石坂判事が回避するということが公表されました。いいですか、六月二十八日付になっているのです。この期日も実はおかしいのです。それより少しあとに弁護人の方から、石坂判事の忌避が出ている。もしこの回避があったら、あなたは、あのとき八月九日に堂々と、そのことも言われたろうと思うのです。どうも忌避が出たので、それが出てから回避したのでは体裁が悪いので、最高裁判所で六月二十八日にさかのぼって、みずから回避するという文書を出されたようにも推定されるのである。これはまあ推定は別として、あなたは確信を持って、現在でも最良の人事であったと言われた。本人は回避せざるを得なくなっていたのです。どうです。あなたのおめがねにちょっと狂いがあったのか、どうですか。その点を……。
○愛知国務大臣 私は現在におきましても、最高裁判所の判事として石坂氏は最適任の人であると確信をいたしております。
○志賀(義)委員 松川事件については最適ですか。どうです、それも含めて。
○愛知国務大臣 私は、最高裁判所の判事たる立場においては、裁判というものをでき得る限り公正な立場においてやらなければならない、石坂氏はこういう信念を持っておられる方である。これは私の想像でございますけれども、そういう立場からいって、この裁判には自分は回避した方がよろしいということを信念として行動せられたのであって、私は良識のある最高裁の判事の処置としては、むしろ賞揚すべきではないかとすら考えておるわけであります。
○志賀(義)委員 どうも、追い詰められてはそういうふうになるので困るのでありますが、いつもこちらがつついてから、事が起ってくるんですよ。 そこでもう一つ、この間柏村警察庁長官に聞きましたが、先日の新聞記者に対する暴行事件、これについて書類送検がありました。これは暴行による傷害罪として書類が送検されておりますが、事は公務員に関することであります。一体あの上原新三郎という中隊長はどこにいるか、これは警視庁の方は今おられませんが、私の知っているところでは、相変らず、部署は変ったが機動隊の中にいるのですよ。こういうことでは、警視庁としても責任をとらない態度でありますが、それは警察関係の人に伺うとして、問題は特別公務員の傷害罪です。これは刑法第百九十五条によって、特に加重すべきものであると思いますが、この点はどうですか。こっちの質問も聞いて下さいよ。相談ばかりして、私の質問はわからないですよ。淡谷君も待っているんだから、早くやりましょう。単純な傷害罪、暴行傷害罪として送検されておりますが、事は特別公務員の傷害罪ですから、暴行陵虐罪を適用すべきものだと思うが、検察庁としてのお考えはどうか、そのことを刑事局長からお伺いしたいと思います。第百九十五条にありますから……。
○竹内(壽)政府委員 検察庁におきまして、どういう法条をあの事案に問疑するかということはまだもちろんきまっておらないわけでございますし、つい一昨日でございましたか、事件の送致を受けてただいま捜査中でございます。いずれ事実が確定いたしました上において法律の問疑という問題になるわけだと思いますが、ただ理論としていろいろ御議論があるわけでございます。刑法百九十五条には、「刑事被告人其他ノ者ニ対シ」こうあるわけです。それで相手方が刑事被告人でないことはもちろんでございますが、(志賀(義)委員「その他とあるでしょう、ごまかしちゃいけませんよ」と呼ぶ)その他の者というのは、刑事被告人、被疑者その他参考人等の捜査、裁判で取調べの対象となるような者が典型的なその他の者だと思いますが、それだけに限るかどうかということは、これは法律解釈上議論のあるところでございます。何と申しましても本件は捜査しておるものでございますので、いずれ認定されました事実に対して、正しい法の適用をして参りたいというふうに考えております。
○志賀(義)委員 もう一問ありますが、淡谷君が待っておられますから、きょうは私から特別に立ち入っての質問はいたしませんが、八海事件の弁護人原田香留夫君の事務所を検察庁が強制捜査をして、だいぶ文書をとった。これは今まで日本の弁護士で、自分の担当した事件でこういうことをやられた人はないと思うのでありますが、この点については報告は参っておりますか。次会にでもこれは詳しく時間をかけてやりたいと思いますが、その点についてどういうふうな報告がありますか。
○竹内(壽)政府委員 突然のことでございまして、資料をここへ持ち合せておりませんが、家宅捜索をしたという報告は来ております。
○志賀(義)委員 では、この次にその点について、どういう何か、ここで一つ報告をしていただきたい。その報告とあわせて、私ども資料は整えておりますから、まことにゆゆしい事件でありますから。——それで、あの樋口豊という証人は目下失業中なんですよ。ああいうことを言ったけれども、自分が第一審で言ったこと、この前の法廷で言ったことは、あれは自分の心にもないことだという手紙を弁護人に書いて出した。それで偽証罪としてやっているんです。そうして偽証を認めたということが警察で今いわれているのです。そうなってきますと、これは偽証に偽証を重ねるという重大な案件にもなり得るわけでございまして、これは私ども法務委員会として人権じゅうりんの重大問題である。ことに弁護士の事務所を八時間にわたって、本人がいないのに捜査をして、押収しない文書までも全部写真にとっていったというような事件があります。この点について突然のことでと言われるが、そういうことは法務委員会で問題になることは予定のことですから、もうちょっと準備を、すべてこちらから言われない前もやられておく必要があります。この次にその問題をやります。
○淡谷委員 愛知法務大臣に、最近ひんぴんとして起ります基地内外の米兵の日本人射殺事件につきまして、若干お尋ねしたいと思うのです。御承知の通り、相馬ケ原ではジラードが、パパさん、ママさん、たくさんたくさんと言って、えさでもまくように薬莢を振りまいて、しかも薬莢を鉄砲へ詰めて、慰み半分に坂井なかさんを殺した事件が起った。それから今年の八月一日に青森県の大三沢の基地内で、夜、人のいないところに誘い出して、停車さした車の中でジェミーという米兵が運転手の加賀昭さんをみごとに射殺をした事件が起っております。その後例のロングプリー事件として音楽大学の宮村祥之君をこれも電車に発砲するといったようなたちの悪いいたずら半分の気持で射殺をしておる。前回の当委員会で、この青森県の大三沢の射殺事件につきまして、警察が殺人として送検したものを検察庁の方ではあっさり過失致死で送検して、公判が進んでおる段階でありますが、こういうふうに行き違いが起った原因がどこにあるのか、またこういうふうに軽くあしらうだけでこの種の事件が跡を断つかどうか、質問を継続しておるのでございますが、そのはっきりした御答弁がないうちに、さらに十月六日にブラッカードという米兵がやはり車の中で運転手の斎藤義雄君に重傷を負わした事件が頻発したのであります。こういう一連の事件を見ますと、この種の事件に対する日本の検察庁の態度が非常になまぬるく、何らこの事件の根絶を期するという情熱を持たない態度で次々に軽くあしらわれて起ってくるというふうに見るよりほかに仕方がない。しかも相馬ケ原のジラード事件の質疑応答を重ねている間に、さかのぼって、静岡県の東富士の演習場で坂井なかさんと同じような目にあっております婦人が明らかになりましたが、警察は一回も取調べをしていない。これからでも取調べをしろということを追及しましたら、本人はもうアメリカへ帰されて、行方がわからないという答弁を委員会で言っておるのであります。あるいはジラード事件にしましても、あれほど世間を騒がせ、非常に大きな関心を呼んだ事件が過失致死として執行猶予になっている。日本の娘をつれて本国へ帰ったが、その娘に大へん難儀をさせているという報道が伝わってきている。日本の基地の中、あるいは基地の外でどんな犯罪を犯そうとも軽く済むのだ、本国へ帰されたのだといったような気持がこれらの米兵の間にびまんしておることから、この種の事件を続々として出してくると思うのです。青森県の大三沢の事件のように、警察が明らかに殺人と認めたものでさえ、これを傷害致死で送るといったような検察庁の態度が、もうすでにブラッカード事件でもこれは重過失で済むだろうと言っているのです。その理由はほとんど暴発です。アメリカのピストルがそんなに暴発するものだったならば、神経衰弱になったりあるいはまた酒に酔っぱらったりした者に、こういう危ない武器を持たせること自体が間違っておる。しかもジェミーのごときは、このピストルを盗み出してやっているのであります。もう遠方へ向ってたまを撃つということは慰さみ半分で撃つことで、これで人の命をとることは最も悪い。けれども、狭い車の中で人を殺し、ないしは傷つけておる。それさえ殺意がなく過失であったという態度は、私は非常に遺憾千万だと思う。しいてそういうふうな事件の紛糾することをおそれて、ことさらに米軍側の味方をして事件を軽く済まそうといったような態度と強く疑われるのでありますが、そういうことに対する法務大臣のお考えはどうでございますか。
○愛知国務大臣 最近の米軍軍人の不法行為につきましては、まことに私も遺憾に存じ、また頭を悩ましておる問題でございます。これに対する措置でございますが、ただいまいろいろおしかりをいただいたわけでございますが、申すまでもございませんけれども、行政協定によりまして日本側に第一次裁判権がありまするものにつきましては、日本の法律によりまして処理するわけでございますから、ことさらに米軍であるから起訴の際等において軽く扱う、あるいは軽い罪名で起訴するということをしておるということは、各検察官におきましてやっていないと私は信じてもおりますし、また私どもの方針としてもそうやっておるわけでございます。ただいま御指摘の個々の事件につきましては、刑事局長から詳しく御説明を申し上げたいと思いますが、これは警察の方が殺人として認定して送検になりましたものでも、日本人の場合におきましてもいろいろと見方があるわけでございまして、必ずしも警察の見方をそのまま検察庁としては取り上げておるわけでもございませんことは申すまでもないことでございます。今後におきましても、ことさらに軽く扱うというようなことが特にないように、これは一つ大いに私どもといたしましても心いたして参りたいと存じております。 それから、米軍の駐留しておる人たちが、何と申しますか、いろいろ事件を起すというようなことにつきましては、結局これは日米間のほんとうの信頼関係の上に立って、個々の駐留の兵隊さんたちにも大いにそういうことを起さないようにやってもらうということにつきましては、今後ともあらゆる機会にあらゆる方法によりまして米側の協力を得たい。これは私のみならず、政府全体がさような考えで努力をいたしておるわけでございますが、さらに一そうこれらの点につきましては心して参りたいと考えております。
○淡谷委員 法務大臣はそういう答弁をされるのは当然でございましょうけれども、実はジェミー事件に関しましては、われわれは刑事局長の答弁に満足はいきませんので、公判進行中というので大分答弁を控えておるようでありますから、継続して質問したいと思いますが、米軍がほんとうに日本に協力するならば、一体特急「かもめ」の転覆事件はどういうことになるのでしょうか。国鉄に三千万円かの損害を与え、負傷者を九十数名も出した大事件である。それが公務中であるということで米軍の方へ引き渡されたそうです。伺いますと数日前にこの処置はきまったというのですが、法務大臣、何かその通知を受けておりますか。
○愛知国務大臣 これはただいまもお話がございましたように、公務中ということになりましたので、米軍側において、何といいますか、処理を進行しておるわけでございまして、私、ただいまその点についてはよく存じません。
○淡谷委員 あなたは米軍に協力を求めると言いますけれども、これくらい多大な損害を日本側に与え、人間の身体に対して危害を加えた事件で、きまっておるのに法務大臣たるあなたにさえ通知をしないというような不誠意きわまる米軍に対して、あなた協力を求めて効果があると思いますか。法務大臣としてのあなたのはっきりした答弁を聞きたい。
○愛知国務大臣 これは時間的関係もございますが、ただいま私が承知をしていないということを申し上げたわけでありまして、いろいろ連絡は密にやってくるはずでございます。
○淡谷委員 しかし数日前に事件はきまったというのです。さっきも警視総監に言っておきましたが、日本人の交通事故に対しては非常な神経を使って取り締っておる。それをいかに公務中であるからといって、警報を無視して事故を起すような米軍の態度、その跡始末に対して、すみやかに法務大臣にさえ通知をしないという米軍の態度は、絶対に私は承服できない。これは法律問題を離れて政治問題です。外交上の問題です。法務大臣は、あなたの権威にかけて、こういう不誠意きわまる米軍に対して抗議をするなり、あるいは何らかの申し出をするなり、そういう処置をとろうとお考えになっておりませんか。
○竹内(壽)政府委員 ちょっと事務的なことでございますので、私の方から申し上げたいと思いますが、これは行政協定によりまして、裁判権は御承知のように競合する場合として……。
○淡谷委員 それはわかっています。
○竹内(壽)政府委員 そこで、アメリカ側が第一次裁判権を行使したというだけでございまして、日本側がこれを不起訴にしたとか、あるいは罪にならないものという判断をしたとかという筋合いのものではないのでございます。従って、アメリカ側におきましては第一次裁判権を行使することにはなりましたが、その結果は、まだ数日しかたっておりませんので、どういうふうに裁判の結果が出たかということは、ここで御報告を申し上げるだけの報告を受けていないということを先ほど申し上げた次第でございまして、その処理が不適当であるとか何とかいうことではないように私は考えます。
○淡谷委員 もうすでに新聞などには不起訴だと書いてあるのです。だから、もし協力を求めて効果があるならば、少くともこういう目の前の大きな事件に対しては、もう少し米軍側にも誠意を要求するような、きぜんたる態度をもって法務大臣が臨まなければ、この種事件に対して国民は信頼できないのです。しかもめいてい事件として伝えられるごときもの、酔っぱらいの海軍兵が食堂内でピストルを乱射して日本人を殺しておいて、これは酔っぱらいのかどによって無罪になっておる。酔っぱらい天国だというあだ名がついた。あなた方が誠意を尽し、米軍側も誠意を尽しているとするならば、何らかの法上の欠陥があるのかどうか。その点に関する法務大臣のお考えはどうですか、はっきりお聞きしたい。しかも、こういう事件が跡を断たないでどんどん出るような形になっておりますると、何らかそこに日米間のこの種事件に対する法的な欠陥があるかのごとく思料されまするが、その点を真剣にお考えになったことがございますか。
○愛知国務大臣 この点は先ほど来申し上げておりますように、まず現在の行政協定と、それから現在の日本の法制のもとにおいて、いろいろ御批評はありましょうが、私どもとしては、きぜんとしてやっておるし、また将来ともやるつもりでございます。 それから、第二に御質問の点は、何かそういう点で法的な欠陥があるのではなかろうかという御意見でございますが、こういう点については、今的確にこれとこれをこう直した方がよかろうということを具体的に申し上げるだけの用意はございませんけれども、いろいろの点から慎重に今後とも考えて、検討して参りたいと思っております。
○淡谷委員 どうもこの一連の事件を見ますと、ある者は人間を殺すことを鳥でもとるように考えてあっさり殺してしまうし、あるいはトンボの頭でもちぎるように簡単に日本人を殺してしまう。殺した者は愛人を連れて本国に帰っていいかもしれませんが、殺された人の遺族やその遺族周辺の国民全体はどう考えるか。しかも事は刑事事件です。民事ならば被害者の方にも弁護人はつくでしょう。こういう問題について、日本人の弁護人がついて、殺人をした米軍の弁護は周到にされながら、こういうふうな非常に軽い処置に対して、そのふんまんをどこに持っていったらいいか。これはまさに憤りを勃発しているのです。あれほど大きなセンセーションを起した数々の事件が、火が消えたようにそろりとなくなってしまうという事態が、この種の事件を続々として出しておる最大の原因だと思う。しかも、表面化しない事件は、たとえば富士山麓事件のように、どれだけあるかわからない。今何か占領中のこの種の事件について補償措置をとるような準備があるように聞いておりまするが、一体占領中もしくは講和発効後における日本国内における米軍の犯罪が、はっきりした統計として現われておるかどうかお聞きしたい。
○竹内(壽)政府委員 独立後の行政協定締結以後におきます事件につきましては、私ども正確な犯罪統計を持っておりますが、それ以前につきましては、私どもの耳に直接触れる、ということは、こういうことがあったというようなことをたまたま聞いたという場合でございまして、統計としては、これをお示しするわけには参らないのであります。
○淡谷委員 これは一つ委員長の方から、そのはっきりした統計があるとい言うことでありますから、資料のお取り寄せを願いたいと思います。
○小島委員長 終戦後の分ですか。
○淡谷委員 終戦後の分です。 法務大臣に最後に私は確かめておきたい。あなたは米軍と協力して十分この種の事件の発生を防ぐというような御答弁でございますが、この通り続いて発生するようでは、今までのような処置ではとうていその目的の貫徹ができないと思う。この事態にかんがみて、何らか的確に処置するような具体的な方策をお持ちですか。これを法務大臣にお聞きいたしたい。これは法的にいったらさまざまな構想もありましょうけれども、現実にこういう問題が起ってきているのですから、これをとめなければ、社会の安寧は維持できません。その点に対する大臣としての抱負をお聞きしたい。
○愛知国務大臣 まず昭和二十八年の十月に日米協定の中の一部が改正されて以来、本年六月三十日までに、手元にただいまたまたま持っております資料によりましても、全国の検察庁が受理いたしました米駐留軍の軍人等の被疑者の総数は三万三千名をこえております。これらにつきましては先ほど来申しておりますように、現行の日米間の取りきめによって、わが方で第一次裁判権を有するものにつきましては、わが国の法令を日本人と同様に適用いたしまして処理をいたしておるわけでございます。先ほどちょっと例としておあげになりましたが、たとえば酔っぱらいの事件などは、常識的、社会的に見ますと、何か割り切れない感じが確かにいたします。しかし、これは日本の現行の刑法においては、泥酔しておりますような意思能力のない場合は、犯罪能力がないという規定になっておりますので、ことさらに米国の軍人の酔っぱらいを見のがしてやったというようなことではなくて、同様の事実が日本人にかりにありましたといたしましても、同じ扱いになったわけでございまして、こういう点については、ことさらに米軍をどうこうするというようなことは全然考えておらないことは、先ほど申し上げました通りであります。 それから、こういう状態がひんぴんとして起るのを放置していいかどうか、それに対する抱負はどうかというお話でございましたが、私は今の段階では、今まで申し上げましたように、とにかく現行の制度を、先ほどお話もございましたように、きぜんとしてやっていくということが何より必要なことであると思いますので、従来もそのつもりで検察官諸公も大いに努力をしてきたと思いますが、今後なお一そうそういう点につきまして、できるだけ遺憾のないように考えたい、さしあたり、ただいまのところの私の抱負としては、さように考えておるのであります。
○淡谷委員 めいてい事件などは、大臣自体が割り切れない感じを持つのはやむを得ないという気持を持っているようでありますが、国民全体の感情はこの種の事件の処置については不満を感じているのです。これは現行法律では何ともならないということであるならば、安全保障条約の改定も行われるかに聞いておりますし、また法律そのものは不変じゃないわけですから、実際国民感情に合わぬような刑法ならば、これを大胆に改正するような意図をお持ちになってもいいと思う。ただ現行の法律を守るだけで、この種の事件が根絶できると考えるか。刑法には一つも手をつけなくても十分根絶ができる、こういう確信をお持ちなんですか。
○愛知国務大臣 ただいまの御質疑には、二つの点があるわけでありまして、一つは、たとえば酔っぱらいの扱い方が、日本の現行の刑法では御承知のようになっておりますから、これはむしろ問題とするとすればその方でございますが、これは御案内のように、刑法並びに刑事訴訟法の改正につきましては、広範にわたりましてただいま法制審議会にお願いをし、また法務省といたしましても、各方面から真剣にその改正に取り組んで検討いたしておるわけであります。その限りにおいては、これは現行法によって米軍を処理していかねばならぬわけでございますから、その点についてはさように考えておるということを申し上げたのでございます。 それから安保条約の改定ということが御指摘のように具体的な問題となっております。これとの関連において、日米行政協定というようなものも、いろいろと検討される段階に入るかと思うのでございますが、先ほど申し上げましたように、ただいまのところ、御指摘のような点について、行政協定をどう直すかというような点については、申し上げるほどの段階にまだなっておりません。
○淡谷委員 これはまだロングプリー事件でも今度のブラッカード事件でも、このあとの処置によってさまざま大臣の所信をたださなければならぬことがあると思います。十九か二十の、しかも酒を飲んでだらしがなくなっているというような兵隊にピストルを盗ませるといったような基地内の綱紀の問題、あるいは三角関係を作ってすてばちになった者が、車を盗み出して犯罪を犯したり、これはどうも私は何らか根本的な処置をとらなければ跡を断たないと思うのです。しかも日本の現在の刑法では、そこまでも罰するきめはないというのです。そういう点で私はむしろあなたに、積極的に現行法を改正しようという熱がないならば、政治的に米軍と折衝して、かかる事態の発生を防ぐような一つ決意を持っていただきたいのですが、その決意はおありでございますか。もうこうなったら政治問題です。
○愛知国務大臣 その点につきましては、実は政府側としても、たとえば警察庁長官から先ほど御指摘もございましたが、米軍軍人の武器の取扱い、管理というようなことについては、一例を申し上げますと、本年の六月にも、申し入れと同時に具体的な協力を仰ぐようにいたしておるのであります。 それからこれは、お尋ねの点とちょっと離れるかとは思いますが、実は警察官の職務執行法の改正をただいま考えております。その中において、たとえば泥酔者が徘回しておるというようなときに、これに対して適宜に保護を与えるというようなことは、これは刑法の改正が今直ちにできませんけれども、それに至る一つの便宜措置として、警察官の職務執行法の方にもそういう点の改正ということを実は考えておるわけでございまして、でき得るだけのことを現状においてもどんどん改善して参りたい、こういうふうに考えております。
○淡谷委員 いずれにしましても、本年に入りましてから八月、九月、十月と毎月一件ずつ非常に大きな問題が起ってきております。これじゃとうていやっていけないという感じが強く国民の中にある。その点を十分にお考えになって、これらの事件に対する善後措置を、特に「かもめ」の転覆事件などに対しては、一つの国際問題として慎重にお扱い下さいますように強く要請して、私の質問を終ります。
○小島委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 時間がありませんから、二、三お尋ねしまして、あとは資料を要求しておきたいと思います。 最初に去る九月の二十九日に、いわゆる八海事件の主任弁護人である原田弁護人宅の家宅捜索をされました。これは証人の偽証捜査に関連するということで、原田弁護人の事務所並びに自宅から多数の書類を押収した事件があるわけでございます。これは弁護権に対する重大なる侵害である、かように考えるわけでありまして、この点について二、三お伺いしたいと思います。従いまして、法律の点については局長でけっこうでございますが、しかしながら、それにまた関連して、政治的の問題もありますから、法務大臣にもお尋ねいたしたい。問題の内容その他についてはおわかりにならないから次会に譲りまして、現在進行中の刑事事件につきまして、証人の偽証を理由に、事件の担当弁護人の自宅及び事務所等を家宅捜索することを認めた、こういうことに私はなるのじゃないかと思っております。今後かようなことが放任されるといたしますならば、憲法によって保障せられる刑事裁判上の弁護権制度の存立は、根本的に脅威される、こう考えるわけであります。この点については、あとで法務大臣からお伺いいたしますが、まずお伺いいたしたいのは、弁護人は、刑事訴訟規則百九十一条の三によりまして、証人との面接その他の方法を用いる証人尋問の準備権、これが認められておるのにかかわらず、この準備を直ちに偽証教唆なりとの偏見を持って、その裏づけを収集するための弁護士に対するこのような強制捜査をしておる、こういうふうに思うわけであります。刑事訴訟規則第百九十一条の三の関係において、いかに考えられるか、お尋ねいたしたい。
○竹内(壽)政府委員 お示しのように、刑事弁護人が、ただいまの規則によりまして、刑事弁護の準備として被告人に面接し、資料を収集するということは、これは弁護士としての職務権限でございまして、今回原田弁護人が八海事件に関連して、家宅捜索を受けましたことにつきまして、弁護士というお立場からしますと、いろいろと問題を残すように私も考えるのでございますが、これは弁護人にはやはり弁護人としてのおのずからなる法律の許した限界があるわけでございます。その限界を越えて何らかの行動があったといたしますならば、たとえばこれは真偽のほどははっきりと申し上げられませんが、かりに新聞報道等にありますように、偽証という問題の中に、何らかの関連を持っておるというような容疑がありまして、これを明らかにしなければならぬというようなことになりますならば、これに対して家宅捜索をするということもまた法律の許すところでございます。そこは扱いとしてはきわめて慎重を要するところでございますが、もちろん本件につきましても、出先検事長も十分にこの問題につきましては検討し、関与もして、慎重を期して進めたというふうに報告を受けておるのでございます。
○坂本委員 この件については、事実関係もありますから、今お答えになりました限界を越える——私たちの考え方としては、刑事事件につきましては、検察官が検察官としての証拠の収集、証拠の提出その他攻撃、防御の方法があり、またこれに同等の立場で弁護人はやはり証拠の収集その他刑事訴訟法上の権限を持っておるわけです。従って、一方的な検察官の考え方によって、限界があるというのですが、その限界はどこにあるかという点と、双方、原、被告として対立しておる中において、一方の検察官だけが国家的権力を持って、そうして押収、捜査する。こういうことになったならば、これは明らかに弁護権の侵害である。だから限界は私はないと思う。ですから、偽証になっておるかいなかの見解は、裁判が終らなければわからないのであります。他の証人の偽証の問題は別ですけれども、攻撃、防御が検察側と対等の立場にある弁護士の事務所その他を強制捜査をする、これに対しては、私は限界がなくて、絶対できない、こういうふうに考えるわけであります。その点は、次の問題と関連してお答え願いたいと思います。 次に、弁護人の被告人との秘密交通権、これはいわゆる刑事訴訟法第三十九条にあるわけであります。弁護士は業務上の秘密保持の権利、義務を持っておることは、弁護士法第二十三条、刑事訴訟法第百四十九条、刑法第百三十四条にありまして、文書類一切の広範な捜査、押収をされる、こういうことになりますと、弁護人の被告人とのこの秘密交通権である刑事訴訟法第三十九条を根底から破壊する、こういうことになるわけであります。この点については、いかなる所見を持っておられるか。この点についても、限界を越えるという点を主張されるかどうか。その点を、最初第一問で私が述べましたと同じような考え方に立って、弁護人は対等の立場に立って秘密交通権を持っており、これは秘密を保持しなければならぬ権利、義務を持っておる。この弁護人に対して、その進行中の事件に関連する文書類一切を押収、捜査言、こういうこと立ったならば、弁護権の破壊になる、こう考えるわけでありますが、その点はいかがでありますか。
○竹内(壽)政府委員 弁護人と被疑者ないし被告とが、秘密に交通する権限を持っておるということは、訴訟が弾劾訴訟の形であり、しかも原告と被告とが相対立して訴訟を進めていくという構造をとっております限り、これは当然なことでございまして、私どもそれを否定するものではございません。また弁護人が被疑者、被告人から聞いた事柄につきまして、秘密を保持しなければならぬというこの保障も、これまた当然なことでございます。しかし、それだからといって、たとえば偽証を教唆しても差しつかえないとかいうように、無制限なものではないわけでございます。そこには、弁護活動の正当なる限界というものは、私は坂本委員と多少見解が違いますが、それはもうはっきりと私どもは認めなければならぬと思うのでございます。本件につきましても、先ほど申しましたように、事実の内容につきましては申し上げられませんけれども、慎重にも慎重を期して事を進めておるということの報告を受けておる次第であります。
○坂本委員 弁護人が偽証を教唆しておるかどうかという容疑ならば、その弁護人自身に対する偽証容疑でなければならぬはずです。それを、他の証人の偽証の捜査において、弁護人のこの秘密交通権を破壊すべきものじゃないと私は思う。だから、そういうことになりますと、ただ限界だとか何だとか言われますけれども、やはり検察官側が、これは偽証教唆の限界がある、そういうような考え方に立ってどんどんやって、乱用しましたならば、弁護権というのは全く破壊される、こういうようなことになると思うわけであります。それを検察側の一方的見解でやるのが、そういう偏見と越権行為にもなってくるわけでありますから、これを許すとするならば、対等の立場に立っておる弁護権の破壊になる、こういうふうに考えるわけでありますが、その点はいかがでございますか。
○竹内(壽)政府委員 事案の内容につきましては、先ほども申し上げましたように、私ども内容をつまびらかにいたしておりませんが、かりに偽証教唆というようなことを考えた場合に、そういう犯罪を弁護人の名においてできるという筋合いのものではないはずでございますので、もし乱用にわたるというようなことがありますならば、これは弁護権の行使に重大な影響を持つわけでありまして、乱用があってはならないわけであります。だからといって、何でもかんでも自由にできるというような考え方は、私どもはいたさないのでございます。そこで、これは非常にデリケートな問題でございますから、検察権をこういう場合に——容疑をもって家宅捜索をするといったような場合におきまして、きわめて慎重を期さなけりゃならぬ筋合いでございます。そういう意味におきまして、先ほど申しましたように、この家宅捜索に当りましては、出先の最高首脳部が十分協議した上で実施をいたしたようでございます。乱用にわたることがあってはならないこと、当然でございます。
○坂本委員 まだいろいろそういう反対点を聞きたいのですが、法務大臣からお聞きしたい点がありますから、もう二点だけ、法律の点だけを急いでお聞きしまして、そうして法務大臣の所見をお聞きしたいと思います。 弁護士は、弁護士法第二十条並びに第二十一条によりまして、特に法律事務所として規定して、その職務執行の場所として保障されておるわけなんです。その事務所に対して家宅捜索をやる。そうして多数の書類を押収する。こういうことは、この弁護士法によって保障されておる事務所の秘密保護性を侵犯した、こういうふうに考えられるわけでありますが、この点はいかがでございますか。
○竹内(壽)政府委員 その事務所において秘密が守られなければならぬということはわかりますけれども、その事務所において犯罪の何らかの証拠があるということの容疑がありまして、それを遂行せざれば、さらに公平な裁判が受けられぬというような諸般の事情があります場合には、これを令状に基いて家宅捜索するということはあり得るのでございまして、私どもは、その点についての解釈上の疑義は持っておりません。
○坂本委員 それから次に、刑事訴訟法上の個人の基本的人権の保障は、御存じのように第一条に規定してあります。弁護人及び被告人の証拠調請求権、これは刑事訴訟法の第二百九十八条、被告人の黙秘権、供述拒否権は第三百十一条等によって明らかにせられておるわけであります。そこで弁護人は、被告人の利益のために証拠の選訳をし、特定の証拠を提出し、または提出しないことも許されており、これはさきに述べました秘密保護権によって保護せられたところであると思うのであります。そこで、この事件の進行中に当って、原田主任弁護人の事務所並びに自宅の捜索をやり、弁護人に対する強制処分によって、弁護人の保持する一切の証拠資料を一挙に奪取してしまう。これは全部で二十九点あるわけでありますが、こういうふうに二十九点も一挙に奪取してしまう。こういうことになりますと、事件に対する弁護人の一切の対策及び処理方法を相手方である検察官が手中におさめて、当事者対等を根底からくずされる。私が最初から申します当事者対等を根底からくずされる、こういうことになると思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
○竹内(壽)政府委員 一般的に申しますと、ただいま御指摘のようなことになる可能性があるわけでございまして、だからこそ弁護人の事務所等について、家宅捜索をかけるというような場合には、はっきりした別途の犯罪の容疑というものに基かなければならぬわけでございます。本件につきましても、内容は申し上げかねますけれども、ある容疑に基きまして家宅捜索をしたのでございまして、そういう今御指摘のような関係を十分考慮いたしましていたしたことでございます。この関係はいずれ明確にいたし、弁護士会側におきましても、十分御了承願うように現地においても措置する。現に措置しつつあるということを報告の中に申しておる次第であります。
○坂本委員 まだ十分尽しておりませんが、法務大臣に一言お聞きしておきたいのは、今最後に申し上げましたように、係属中の刑事事件に関連しまして、二十九点もこの関係書類を一挙に奪取してしまう。そういうことになりますと、弁護人は一切の対策、処理方法をやはり対等の立場に立っておる相手方たる検察官の手中におさめてしまうことになる。それで、ある特定の偽証というこの事件にひっかけて、そうしてその一切の証拠資料を一挙に奪取する、こういうことになりますと、これが結局は、弁護人の対策が立たないから検察官の思うままになるという結果になるのでありまして、こういうことになったならば、公正な裁判もできないと思うわけであります。従って、先ほど来申しましたように、この刑事訴訟規則の第百九十一条の三とか、刑事訴訟法第三十九条の弁護人と被告の秘密交通権、この場合には弁護人が被告と面会する場合は一切立会人を除外して、そうしてその打ち合せをし、対策を立てる、その秘密交通権、それから弁護士法第二十三条によって保障されておりまする弁護士の業務上の秘密保持の権利義務などということも要らない、こういうことにもなるわけであります。その他、弁護士法第二十条、第二十一条による弁護士の事務所の秘密保護権、こういうのが根底から破壊される、こういうことになるわけであります。ことに八海事件は、最高裁判所から広島高検に差し戻して再審理の状態にあるのでありまして、これはもちろん検察側は有罪を主張し、弁護人側は無罪を主張しておるわけであります。弁護人の方にも検察官側が書類を見せないとか、あるいはあとでも聞きたいと思いますが、諏訪メモのごときは不利と思ったか——そうだと思うのですが、これを本人に返すとか、こういう権力を持っておるわけです。弁護人もそういう権力を持ってやれるということになればよろしいのですが、弁護人の方は全然それがない。しかしながら、秘密保護権とか、事務所の独立権、こういう権限は保持されておりましてやっているのに、偽証の教唆、あるいは偽証に関連する文書だというので、一挙に取ってしまうということになれば、弁護人の方は手も足も出なくなるわけです。ですから、少くとも進行中の事件に対しましてはその事件の終了までは、弁護人がかりに偽証教唆の疑いがありと考えられましても、家宅捜索その他は断じてやるべきものでない。そういうことをやったならば、裁判の公正を害するものであると考えるわけであります。この点について、大臣の所見を承わりたいと思います。
○愛知国務大臣 そもそも八海事件というのは、私から申すまでもなく、非常に重大な事件であると考えます。従って、これがただいま広島高検においてあらためて捜査のやり直しをやって、警察当局といたしましても、慎重の上にも慎重を期してやっているわけでございますが、先ほど来刑事局長が御説明申し上げましたように、広島高検の検事長も、これは非常に周到な準備と研究のもとにやっていることでございまして、今回の事件については私も報告を受けまして——これは何と申しますか、広島の高検の態度は私としては承認をいたしているわけであります。 それから、根本問題についての当事者対等の権利というような、いろいろ御意見のほどは私も十分にその御主張の点もわかる気がいたすのでありますが、御承知の通り、私は法律の専門家ではないのでありますけれども、対等の立場でありますことはもちろんでありますが、弁護権の方も私は乱用されてはいけないものではなかろうかと思います。従って、偽証あるいはその教唆というようなことに関する書類は、家宅捜索で押収するというような場合にも、検察側においても十二分に慎重にやらなければなりませんが、かりにも偽証という容疑があります場合に、これらの点についての弁護権の乱用というところに問題を限定してこれはやるべきだと思いますが、同時にそれ以上に弁護権の方も十分に乱用を慎しんでいただくということが、この際大きな問題であると考えるわけでございます。それから、なお、法律の解釈の問題でございますが、私が先ほど申しましたように、報告を受けて了承いたしているということは、法律的に見ましても、今回の広島高検のやったことは合法である、法律に許された手続の範囲内でやっていることであると考えているわけでございます。 私の考え方は以上申し上げたような次第でございますが、なおこまかいいろいろの法律技術上の点等につきましては、さらに事務当局からも御説明をいたさせたいと思います。
○坂本委員 もちろん、大臣に対して広島高検が法律に違反するというようなことを報告するわけはないと思うのです。しかし、こういうような主任弁護人の家宅捜索をして、二十九点も押収するという具体的な事実の上に立ってわれわれが判断いたしますと、これは弁護権の侵害である。こういうふうにどんどん刑事事件をやられたら、神聖な弁護ができなくなる。また裁判の公正を誤まるということになるのでありまして、そういうことになったならば、憲法上の人権の保障も、刑事訴訟法上の被告人並びに弁護人に対する保護規定も何ら要らなくなって、裁判の結果は検察官の思う通りになる。そうしたら、裁判を否定する、こういうことにもなると思うのであります。われわれも二十数年の弁護士の経験ですが、こういう事件の係属中に、しかも主任弁護人の事務所並びに自宅を捜索されたということは今回が初めてでありまして、これはゆゆしき問題である。この弁護権が破壊されましたならば、これこそ基本的人権をいかに憲法で規定しておきましても、人権を無視するということになり、裁判の破壊になる、かように考えるのであります。大臣はやはり国民の大臣であられますから、客観的情勢の上に立って、今後の処置の問題については十分考えられて、押収した書類なんかは直ちに返還すべきである、こういうふうに考えるわけでございますから、その点の要望と、大臣のお考えをちょっとお聞きしたいのであります。
○愛知国務大臣 このやり方は、刑事局長も申しましたように、非常に微妙な点があると思います。しかし、私としては、あくまでこれは法律によって許され得る限界というものをはっきり守ってやらせなければならない、こういうふうに考えるわけでございまして、御意見や御心配の点は十分私も銘記いたして参りたいと思います。
○坂本委員 もう大臣はけっこうですから……。 資料の点を刑事局長に要望したいのです。その一つは、先ほど松川事件について志賀委員から質問されたときに、刑事局長の御答弁では、諏訪メモは領置書があり、はっきりしているのだ、それは返したのだ、こう言われております。それは検察官の内輪においてははっきりしておるのでしょうが、被告人並びに弁護団の側においては閲覧を請求しても許していないのです。それがたまたま新聞記者の関係でそういうメモがある、こうわかった。それを被告人並びに弁護人に閲覧させればこれは問題がないと思うのですが、閲覧をさせずに返したわけなんです。そこでこの諏訪メモの領置書と、それから領置物を返した場合は還付書があるはずなんです。それと多分受領書みたいなものがついておると思うのですが、その書類の提出を願いたいと思います。それからもう一つは、九月十六日の最高裁判所の前における新聞記者に対する暴行傷害、取材妨害事件について、警視庁から東京地方検察庁に送検しておるわけであります。そこで、その容疑者の氏名、被疑内容、これを知りたいわけであります。この点については、送致書があるわけでありますから、その送致書の御提出を願うと、御説明を聞かぬでも、被疑者の氏名、容疑内容がわかるわけでありますから、被疑者全部の送致書、この提出を願いたい。これは提出ができなければ写しでよろしゅうございます。その以上二つをお願いしたいと思います。
○小島委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後一時五十四分散会