地方行政委員会法務委員会社会労働委員会連合審査会 第1号
- 発言数
- 479 件
- 登壇者
- 19 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1958/10/31
会議録
○鈴木委員長 これより警察官職務執行法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会、法務委員会、社会労働委員会連合審査会を開会いたします。 先例によりまして、本案を所管しております地方行政委員会の委員長たる私が、本連合審査会の委員長の職務を行います。 本案について、まず提案理由の説明を求めます。国務大臣青木正君。
○青木国務大臣 ただいま議題となりました警察官職務執行法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。 この法律案は、警察官職務執行法についてその一部を改正しようとするも、のであります。 現行の警察官職務執行法は、昭和二十三年に施行され、以来約十年になりますが、この間の警察官の職務執行の実情にかんがみますと、この法律には、その規定に幾多の不備が見受けられますので、この際、警察官が、個人の生命、身体、財産の保護に任じ、公共の安全と秩序の維持をはかるため必要な手段についてその不備を補い、社会情勢の著しい変化に対応し得るようにしようとするものでありまして、これにより警察に課せられた治安の責を全うするようにいたしたいと存じているのであります。すなわち、民主的警察制度のもとにおいて、社会情勢の変化に即応した警察官の職務の執行の円滑をはかり、善良な国民を守るとともに、自由にして平穏な社会生活を確保するため、この法律を改正する必要があると認めまして、この法律案を提出いたした次第であります。 次に本案のおもな内容について御説明いたします。 第一は、警察官が挙動不審の者に対して職務質問をした際に、その不審者が凶器等を所持しているときは、一時保管するためこれを提出させ、所持している疑いがあるときは、所持品を提示させて調べることができることとしたのであります。 第二は、警察官が保護を行う場合について、保護を受ける者の要件の規定を整備し、また、虞犯少年、触法少年等で、人の生命、身体等に危害を加えるおそれのある者を保護することができることとし、これに伴う必要な手続を規定いたしました。なお、保護を受ける者の氏名、住居を明らかにするため、または兇器等の所持の有無を明らかにするため必要があるときは、警察官がその者の所持品を調べることができることとし、保護を受ける者が兇器等を所持しているときは、一時保管するためこれを取り上げることができることとし、もって保護の目的を達することができるようにいたしました。 第三は、警察官が避難等の措置をとることができる危険な事態の例示の規定を整備し、また、人の生命、身体等の保護を行う警察の責務にかんがみまして、危険な事態が発生してからでなく、その発生のおそれがある場合に、避難等の措置をとることができることを明らかにいたしました。 第四は、警察官の行う犯罪の予防及び制止の規定を改め、犯罪が行われることが明らかであると認めたときは、その予防のため、警告を発し、また犯罪が行われようとしており、そのまま放置すれば、人の生命、身体に危害及び、または財産に重大な損害を与える場合のほか、犯罪が行われようとしており、そのまま放置すれば、公共の安全と秩序が著しく乱されるおそれのあることが明らかであって急を要する場合にも、その行為を制止することができることといたしました。 第五は、警察官の行う立ち入りの規定を改め、人の生命、身体等に危害が切迫した場合のほか、さらに公共の安全秩序に対する危害が切迫した場合においても、その危害防止等のためやむを得ないと認めるときは、合理的に必要な限度で他人の土地、建物等に立ち入り、または通行することができることとしました。 第六は、警察官は、質問に際し提出させた物件、保護に際し取り上げた物件または犯罪行為の制止の措置として取り上げた物件について一時保管の措置をとることができることとし、これに伴う手続の規定を設けることといたしました。 以上が改正法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
○鈴木委員長 これにて本案の提案理由の説明は終りました。 質疑の通告があります。順次これを許します。 猪俣浩三君。
○猪俣委員 まず青木公安委員長にお尋ねをいたします。公安委員会の性格についてでありますが、これは決議機関でございますか、執行機関でございますか。
○青木国務大臣 複数制の行政機関であります。
○猪俣委員 そうすると、執行機関だという意味でございますね。
○青木国務大臣 その通りであります。
○猪俣委員 この国家公安委員会の定例会議会議録なるものが配付せられておりますが、この会議録の記載は何人がやって、それはその会議のあったその日にこの会議録なるものは作るのであるかどうか。この会議録を保管する責任は何人か、それを承わりたい。
○青木国務大臣 国家公安委員会の事務はすべて警察庁がこれを担当いたしておるのであります。従いまして、警察庁がこれをいたしております。
○猪俣委員 そうすると、この会議録は、その会議のあったその日に作成するものであるかどうか。
○青木国務大臣 その通りであります。
○猪俣委員 昭和三十三年九月二十五日の会議録を見ますると、会議の概要といたして、「警察官職務執行法の一部を改正する法律案について、警務局長が説明し、決裁を得た。」こういう文句になっております。一体「決裁を得た。」ということは、どういう意味なんですか。
○青木国務大臣 公安委員会の決裁であります。
○猪俣委員 公安委員会は決議機関ではない。行政委員会として職務の執行に当る公安委会員が、何人を決裁するんですか。公安委員会自身が警察官職務執行法の一部を改正する法律案を決定して、これを閣議に申請したはずなんです。公安委員会というものは、何かだれかが作った草案を決裁する機関なんですか。おかしいと思うんだ、決裁という言葉が。
○青木国務大臣 公安委員会が警察官職務執行法の提案につきまして——申し上げるまでもなく、法律の提案権は内閣にあるのであります。そこで、国家公安委員会といたしまして、この改正案を総理大臣に閣議に請議してくれという決裁をいただいたのでございます。国家公安委員長は国家公安委員会の決定した意思に基いて意向を代表するわけでありますから、総理府の外局でありますので、国家公安委員長自体が閣議に請議することはでき得ませんので、これを閣議に請義してくれということを総理大臣に申し出るという決裁をいたしたのであります。
○猪俣委員 そうすると、「警察官職務執行法の一部を改正する法律案について、警務局長が説明し、決裁を得た。」これはあなたの説明によると、総理大臣の決裁を得た、こういう意味なのですか。
○青木国務大臣 総理大臣に閣議に請議していただくことを決裁を得たのであります。そういう申し出を公安委員長が総理大臣あてすることについて、決裁を得たのであります。
○猪俣委員 どうも説明がよくわからない。「警務局長が説明し、決裁を得た。」それは青木公安委員長が総理大臣に閣議に請議をしてくれということの申請をすることの決裁を得た、こういう意味なんですか。
○青木国務大臣 警察法の第五条によりまして、警察に関する諸制度の企画及び調査をする、これは国家公安委員会が警察庁をしていろいろやらせるわけでありますが、この法律改正案につきまして、国家公安委員会としては、こういう内容の改正案を国会に提出していただきたい、つまりそのことを閣議に請議していただきたい、国家公安委員会を代表して私が内閣総理大臣にそのことを申し出ることについて決裁を得た、こういうことなんであります。 なお、国家公安委員会の議事録と申しますか、これは警察庁の当局からお聞き取り願えばけっこうだと思いますが、題目と申しますか、ごく簡略に書いてありますので、説明と決裁と一緒になっていますので、いろいろ誤解があったことと思うのでありますが、そういう意味であります。
○猪俣委員 そんな無責任なことはないと思うんだ。国家の警察権行使に関する重大な責任を国家公安委員会は持っておって、その国家公安委員会自身がこの警察法の一部改正法律案の提案を決定したんだ。すべて国家公安委員会というものを警察庁なり政府は隠れみののようにして、国家公安委員会の職権としてこれを説明しておる。今、天下を二分してごうごうたる、この大法律について——幼稚園の生徒だってこんな文章は書きませんよ。幾ら簡略だってほどがある。「警務局長が説明し、決裁を得た。」一体こういう文句であなたの言うようなことが出てきますか。もう一ぺん全文を読んでみます。「警察官職務執行法の一部を改正する法律案について、警務局長が説明し、決裁を得た。」これだけの文句では、自民党の諸君といえどもおかしいでしょう。これであなたの説明するようなことが出てきますか。それじゃ官庁の文書というものは暗号電報みたいなものだ。そういう曲解をした説明をするから物事がややこしい。警務局長が説明し、決裁したということから、自分が委員長として閣議をまとめて、これを政府から提案してもらいたいということに対して、総理大臣にその旨を申請するがよろしいかということで、それはよろしかろうという意味で決裁を得た、それが一体出てきますか。おかしな解釈と思う。もう一ぺんよく落ちついて答弁して下さい。
○青木国務大臣 国家公安委員会といたしましては、警察庁にこの案の立案を命じておりましたが、その案ができ上りましたので、その報告を聴取して審議し、そうしてそれが適当であると認め、この案を法律案として提出するように閣議に請議してもらいたい、こういうことをきめたのであります。申し上げるまでもなく、法律案の提出権は内閣にありますので、公安委員会としてはこれを閣議に請議していただきたい、こういう申し出をいたしたのであります。なお、決裁書は、またそれとは別にしたためてあるのであります。
○猪俣委員 それは法律に書いてある。法律の提出権は内閣にあり、国家公安委員長がこういう法律を政府原案として出してもらいたいという決裁の承認を得ることはわかりますが、この文章でそれが出てくるかということを聞いておるのです。そうすると、あなたの決裁を得た内容は、この警察官職務執行法の一部改正法律案を今国会に提案するよう内閣に申請する、それについて公安委員会が決裁した、こういうことになるのですか。
○青木国務大臣 なお、念のために申し上げておきますが、国家公安委員会の会議録と申しましても、従来の慣例で、別に速記などをとるようなことでなしに、メモ式に記録を書いてあるのであります。そういうことでありますので、ごく簡略に書いてある、こういうことであります。なお、正規の決裁をとりました文書は、警察官職務執行法の一部を改正する必要があるので、別紙案のように申請いたしますから、閣議請議方お取り計らい下さるようお願いいたします、こういう書類に決裁を願ったのであります。私から総理大臣あての申し出であります。
○猪俣委員 もちろんこの国会に提案してくれということの申請でありましようね。
○青木国務大臣 もちろん警察庁、国家公安委員会の考え方としてはこの国会にということでありますが、しかし、この国会に出すか通常国会に出すかは政府の権限に属するわけでありますので、公安委員会としては、この国会にという気持ではありますが、文書として具体的にこの国会にということを書いたわけではないのであります。
○猪俣委員 私がこれをしつこく質問いたしますのは、実は昭和三十三年九月二十五日の国家公安委員会定例会議会議録というものが改ざんされた疑いがあるからです。ですから、あなたが今説明に詰まるような妙な文句がここに出てきた。これはどこから出たかは申し上げられませんが、九月二十五日の原案は、警察官職務執行法一部改正案及び地方警察官の異動案について警務局長が説明し協議した、とこうなっておる。これならすなおにわかる。協議した。しかるに警務局長が説明し決裁を得たなんというようなことが問わず語りに出ちゃった。これは今あなたが言うように総理大臣の決裁を得たなんというのではない。警察庁で作った原案について説明して、警察庁が公安委員会の決裁を得たという意味で書いただろうと思う。それでなければ、あなたの説明みたいなのなら、暗号電報みたいで、日本人にはわかりません。われわれが知っております警務局長が説明し協議したというのが、ほんとうだろうと私は思う。しかし、この二十五日に提案するということを決意して、ここに決定したということを主張しているがために、それに合わせるべくこれを改ざんしたのではないか。そうしなければ筋が通らぬ、意味が通らないのです。そういう大切な文書を自分たちの説明のしよいように改ざんする、改ざんしたと思われることは、そのときにきまっておらない。きまっておったとすれば、十月一日、地方行政委員会の理事会においてなぜ政府委員がこの国会に出すつもりはないという答弁をしたか。その政府委員もこの九月二十五日にはちゃんと臨席しているのではありませんか。相談の上、この国会に出そうということで、内閣総理大臣にその意味を申請することに対して決裁を得たというならば、それが事実であるならば、今青木公安委員長が説明することが事実であるならば、十月一日における地方行政委員会の理事会に対する政府委員の答弁は、全く国会を愚弄したものではありませんか。どうなるのですか。
○青木国務大臣 改ざん等のことは私絶対にないと考えております。それから十月一日に官房長がそのことについて言わなかったというお話でありますが、先ほども申し上げましたごとく、提出権は内閣にあるのでありまして、国家公安委員会としては、こういう案を出すように閣議に請議してくれということを申し出たのであります。その段階にあるのでありまして、果して提出するかどうか、これは内閣が決定することでありますので、内閣の方針がきまります前に攻警察庁の事務当局が提出するというようなことを申し上げることのできないことは言うまでもないのでありまして、その点は私決して矛盾はないと考えております。
○猪俣委員 まことに奇怪な答弁である。一体何という人ですか。それは官房長だったと聞いておる。政府委員ではないですか。そうすると、政府委員としての答弁じゃなくて、どういう意味で国会へ来てそういう重大な答弁をしたのです。政府委員ならばわれわれは政府の代表として聞いているわけです。政府の代表として聞いているのに、提案は政府がするのであるからそれは説明できないという政府委員の答弁ということは、一体どういうことになるのか、わけがわからぬ。どういうふうになるのですか。
○青木国務大臣 官房長は政府委員であります。ただしかし、私申し上げますのは、その時期におきましては、政府自体がこの国会に提出するかどうかということをきめていなかった状態でありますので、官房長はそのことを言ったにすぎないのであります。
○猪俣委員 非常に不親切な答弁だと思う。政府委員であるところの官房長であるならば、あなたが言うように、すでに九月二十五日にこれを申請することを決裁までしてあるというならば、なぜそういう実情を説明しないのか。風俗営業取締法の一部改正法律案以外は出す用意はないような説明をしているし、なおまた議院運営委員会においての提案予定の法律案にもない。そうすると、これはいつ国会へ提案することを決定されたか。
○青木国務大臣 七日の閣議で相談いたしまして、形式的には八日の持ち回り閣議で正式に決定いたしたのであります。
○猪俣委員 この国家公安委員会は毎月開くことになっているのですか。あるいは一月置きですか。定例会議というのはどういう運用になって、そうして会議の運用についての何か規則があるのかないのか。
○青木国務大臣 定例といたしまして、毎週木曜日に開いております。それから、会議の運営についての規則を内部的に設けております。
○猪俣委員 そうすると、配付されましたこの日の以外にも開いているのですか、開いておらぬのですか。九月の十八日と九月の二十五日のが配付されておるが……。
○青木国務大臣 その日以外も毎週木曜日に開いております。あるいは九月中か十月中か、警察庁の方の試験の関係等がありまして、木曜日以外に日を変えたこともありますが、しかし、いずれにしても、毎週一回ずっと開いております。
○猪俣委員 それは間違いないですか。私どもの調べたところによると、昭和三十二年十月十日から昭和三十三年九月の末日までの間に六回しか開いていない。しかも、その時間は午前十時半ごろから午後一時ごろまで、その間昼飯を食べておる、巷間われわれはさようなことを聞いておったのです。国家公安委員会というのは、何か警察庁の役人の説明を聞いて、昼飯をちょうだいしては帰っているんだということを開いておったが、調査しますとその通りだ。昭和三十二年十一月二十八日には午前十時二十分から午後一時まで、昭和三十三年一月三十日には午前十時十五分から十二時まで、このときはお昼を食べたのかどうかわからぬ。(笑声)ところが三十三年九月二十五日には午前十時から十二時半だ。この警察官職務執行法一部改正法律案を、あなたの言葉でいえば裁定した。その日は何と午前十時から十二時半まで、かような運営の状態である。またあなたは毎週開いておるなんておっしゃるけれども、じゃ開いても会議録を作るのと作らぬのとがあるのですか。
○青木国務大臣 お手元に事務当局がお配りいたしましたのは、先般の地方行政委員会でこの法案を審議したのはいつかということでありましたから、審議した日の議事録の写しをお配りいたしたのであります。警職法改正に関しまして全般的に審議したのがその六回であります。それ以外の毎週やっておる定例の公安委員会の議事録につきましては、別段要求がなかったのでおそらく配付しなかったと思うのであります。なお、こんなことはよけいなことでありますが、私は国家公安委員会の委員長に六月になったのでありますが、今日まで国家公安委員会で一回も昼食を食べておりません。これは従来はそういう慣例があったかもしれませんが、少くとも私は国家公安委員会で昼食を食べたことは一回もないのであります。これはつまらぬことですが、念のために申し上げておきます。
○猪俣委員 そんなことは、昼飯を食べてもけっこうなんです。公安委員に食事を出すな、そんなことを私は言うのじゃない。ただ諸君が、岸内閣の責任をいかにも国家公安委員会にかぶせたような答弁をなさるから、実情を明らかにしたい、その意味で質問しているのです。そうすれば、毎週開いておるとするならば、その会議録も作っておらぬとするならば、おそらくそれは何の話もない、お茶を飲んで別れたに違いないのです。多少何か事があったときには、ちゃんと会議録も書いてある。それが一年間に六回しかやっておらぬ。なおあなたが公安委員長になってから二回なんだ。しかもそういう公安委員会が重大な警職法の一部を改正する法律案の作成者であり提案請求者である、それだから民主的な警職法であるかのごときことを至るところで揚言している。それだから私は質問している。どこで一体審議したのか。これだけの大法律——私どもこの提案をされてから毎晩々々法律を読んで研究しているけれども、まだわからぬところがたくさんある。それを平均年令七十以上の連中が集まって、しかも法律家じゃないのがたくさんいる。そうして一時間か一時間半昼飯を食いながら茶飲み話をしてこれを決定した、あまりにそれは詭弁もはなはだしい。ちょうどこのあなたの説明のように、決裁したというのは、総理大臣に決裁を申請することの決裁を得たというような説明のようなもので、われわれ了解できない。一体こういう会合の仕方——会議録を作らぬところにおいても大いにこれを審議したということでありますが、毎週月曜日に集まって、そうしてこの法案を一体どんなに審議したのか、その審議の模様を一つ説明してもらいたい。
○青木国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、警察官職務執行法全般につきまして審議いたしたのがその六回でありまして、毎週やっておりまする国家公安委員会の会議録はもちろんとってあるのであります。ただお手元に差し上げましたのは、職務執行法に関する会議をやった日の写しであります。なお、その六回は全般的にこの問題を検討いたしたのでありますが、その間の委員会におきましても、事務当局から断片的には逐次報告もあり、またそれについて意見を交換したこともあるのであります。
○猪俣委員 なお、お尋ねしますが、昭和三十三年の九月十八日、これは午前十一時二十分から午後一時五十分くらいまでの間開かれたということ、及び昭和三十三年九月二十五日は午前十時から十二時半までであるということ、これはお認めになるかどうか。
○青木国務大臣 その通りであります。
○猪俣委員 そうすると、この二回に警職法一部改正法律案の審議をしたというのであるが、この二回のわずかな時間に警職法一部改正法律案というような重大法案をすべて審議されて、その責任を負われる委員会、この委員というものは全くスーパーマンだろうとわれわれは思う。どんな論議をやられたか、もっと詳細に説明してもらいたい。
○青木国務大臣 私がなってからの会合は二回でありますが、その前にすでに公安委員会で相当検討いたしておるのでありまして、その前の段階におきましてどの程度検討があったか、そのことは私はもちろん承知いたしておりません。私になりましてからの二回——最初の会におきましては、警察庁の当局から前回の案を中心としての説明がありまして、そして各条項についての説明を聴取し、それについて各委員から意見の開陳がありましてこれを了承した、その方針で法制局その他各方面と折衝するということを第一回できめたのであります。そうして第二回におきまして、その折衝した最終的な報告を受け、これを出すということについて決裁をした、こういうことであります。
○猪俣委員 国家公安委員会というものは、時の政府の人権じゅうりん的な傾向に対してこれをセーブする、いわゆる民主警察を樹立する意味においてでき上ったはずである。しかしその後、警察法の改正によって、総理大臣の指揮監督を受ける国務大臣が公安委員長などになることによって根本的に破壊せられたのであるけれども、それでもこの国家公安委員会そのものが責任あるような審議をしたのであるかどうか。これは国民が大いに疑いを持つところでありますから、あなたが言うように、ほんとうに慎重審議をしたというのであるならば、その審議の模様をとにかく詳細に報告してもらいたい。いつから、何回、どのくらいの時間、どういう審議をしたか、もう少し明らかにしてもらいたい。そうしないと、国民の疑いは解けません。私は、その意味におきましてあなた方が出しているのはたった二回だ、そしておそらくこの警職法の一部改正法律案はこの二回にちょっと話が出ただけであろうと思う。それだから、この二回を出してあると思うんだが、今あなたは長い間研究したようなことをおっしゃるんだが、その証拠を出してもらいたい。私はそれを要請いたします。 それから、この国家公安委員会の決議ですか、処置ですか、それが成立いたしますには、どういう人数が出て、どういう方法でそれが国家公安委員会の意思決定になるのか。
○青木国務大臣 国家公安委員会は、警察法の定めるところによりまして、三人以上の出席がありませんと会議が成立いたさないのであります。そうして、もちろん過半数をもって議決という形になっております。しかし私が委員長になってから、そういうような数で切り抜けるということは、私の経験ではないのでありまして、常に全会一致で決定をいたしております。
○猪俣委員 国家公安委員会の服務の規定は、警察法第十条によって一般公務員とみなされる。そうすると、その会議の内容についてこれを他に漏らすことは、国家公務員法第百条の違反になるのかならぬのか。
○青木国務大臣 秘密に属することを漏らしたら、これは違反だと思います。
○猪俣委員 そうすると、国家公安委員会の内部においてどういう論議があったとしても、その公安委員の一人一人はその真相を外部に漏らすことができないということに相なるのか。
○青木国務大臣 秘密に属さないことは、漏らしても差しつかえないと思います。
○猪俣委員 そんなことは、どろぼうじゃない者はどろぼうじゃないというような答弁です。だから私は具体的事例をあげている。国家公安委員会の会議の模様を外部へ漏らすことは、国家公務員法第百条の秘密を漏らしたことになるのかならぬのか、それを聞いている。
○青木国務大臣 秘密に属する以外のことを漏らしても、一向違反になりません。
○猪俣委員 じゃ、具体的に聞きましょう。国家公安委員会において、自分はこの法案に反対であったとか賛成であったとかいうようなことを言うことは、第百条違反になるのかならぬのか。
○青木国務大臣 それは一向差しつかえないと存じます。
○猪俣委員 そうすれば、国家公安委員会において秘密と認められるところは——なぜ私はこれを聞くかというと、民主警察のあり方として国家公安委員会なるものができておる。これは普通の行政官庁と違う。内閣との問に相当独立的権能を持たせてできてある。しかるに、国家公務員法の第百条が適用になっておるのであるから、そこで私はこの質問をしておる。しからば国家公安委員会における秘密とはいかなる部分であるか、これを明らかにしてほしい。
○青木国務大臣 通常の場合、私は秘密事項はないと存じます。ただ国家公安委員会がこれは秘密なりとして決定すれば別でありますが、通常の場合は秘密はないと思います。
○猪俣委員 そうすると、国家公安委員会が秘密なりと決定したものが秘密だ、こういう定義ですか。そうすると、国家公安委員会の秘密なる事項は客観性を持たないことになる。国家公安委員会が勝手にきめればそれが秘密になる。そうすると、国家公務員法第百条違反としても、客観性のない秘密というものがここに存在する。僕はそう思わない。それじゃ罪刑法定主義と違うじゃないか。それとどういう関連がありますか。罪刑法定主義に反するものだ。秘密というものは客観性がなければならぬ。
○柏村政府委員 今大臣のお答えになりました国家公安委員会において秘密ときめた事項は秘密であると仰せになりましたのは、国家公安委員会が独自に審議をされておる問題について、お互いにこれは秘密を守ろうというようなものもあると思いますが、そのほかに警察庁におきまして、たとえば捜査の過程において秘密を要する問題とか、そういうことにつきましても、重要な問題について公安委員会に御報告申し上げる問題があるわけでございます。そういうものについては、警察庁の秘密事項について、秘密にこれをお聞きになった公安委員が他に漏らすということになれば、これは国家公務員法違反になるということであろうと思います。
○猪俣委員 これは先ほど申しましたように、普通の行政機関じゃないはずなんだ。いわゆる行政権の主体である内閣と相当独立性を持たしておる委員会だ。またそうでなければ、時の政党なり内閣なりに奉仕する委員会になってしまって意味をなさぬ。そこで、この国家公務員法の第百条の秘密の解釈についても、そういう一般の役人と同じような解釈ではいけないと思う。そうすると、政府の都合の悪いことを全部箝口令をしいてしまう。警察庁では警察庁で公安委員会に箝口令をしくことになる。これを聞きたい。警察庁でこれは秘密だといえば、それを漏らした委員を第百条で罰せられるということになるのかどうか。
○青木国務大臣 ただいま警察庁長官から説明した通りでありますが、国家公安委員会として独自に、これは秘密であるというようなことで、そういう扱いをした事例は今までないのであります。
○猪俣委員 そうすると、事務当局の説明をはっきりしないのだが、今までは秘密と国家公安委員会自身が決定したことはない。ところが、警察庁の方から、これは秘密にしろということを公安委員会に持ち込んだことがありますか。
○柏村政府委員 国家公務員法の第百条に規定されておりますのは、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」ということで、先ほど私が申し上げましたのは、客観的に役所の仕事として秘密にされているところを御報告申し上げる場合が当然あるわけでございます。そういうものについて秘密を守っていただくということを申し上げた次第でありまして、警察庁の者が、これは黙っていて下さいと言って、それが秘密事項になるという筋のものではないと思います。
○猪俣委員 結局、国家公安委員なるものは、政府の監督下にあるところの各級の機関、少くともその公務員としての服務規律においては、ほとんど同じだというふうに見て差しつかえないわけだね。
○中川(董)政府委員 御指摘の警察法十条で、国家公務員法の百条の一項、二項すなわち秘密を漏らしてはならない事項は、国家公安委員にも適用があるのでありますが、私ども一般職の公務員が秘密を漏らした場合においては、国家公務員法百九条によって刑罰の対象になるわけでございますが、国家公安委員におかれましても、職務の性質にかんがみ、すなわち内閣からの独立性にかんがみまして、秘密を漏らしたことに対する罰則の適用はないのでございます。
○猪俣委員 そうするとおかしいんだ。百条を適用するということはおかしいが、これはあとにしましょう。 なお、この点につきまして青木委員長の御説明を願いたいのだが、先般本会議におきまして、わが党の門司君の質問に対しまして、青木さんはこういう答弁をなさっておる。「本法におきましては、行政措置としての少年の保護の問題、あるいは危険物、危険な凶器等を一時預かるための保管の問題、こういうことを規定いたしておるのでありまして、憲法第十三条に定められた個人の人権の尊重、自由、これは言うまでもなく、公共の福祉の範囲において認めらるべきものであり、この法律の考え方は、そういう考え方に立って行政措置として行うものでありまして、憲法三十三条の司法手続としての逮捕の問題とは全然別個の考え方に立っておるのであります。」こういう説明をされておるのでありますが、少年の保護の問題とかあるいは危険物、危険な凶器を一時預かる保管の問題、こういうことを行政措置としてやるのであるから、三十三条の司法手続としての逮捕の問題と違う。そうすると、その辺の説明がよくわからぬのですが、虞犯少年、触法少年をとにかく保護と名目があっても逮捕する、事実上警察へ連れていく。これを司法手続とせずして行政手続とするところに問題がある。こういう、ある個人を留置——言葉はどうあっても留置するのです。 〔発言する者多し〕
○鈴木委員長 静粛に願います。
○猪俣委員 行為のうちに行政措置としてのものと、司法手続としてのものと分けるということは、どういうことになるか、その説明がよくわからぬ。触法少年というなら法律に触れる少年でしょう。こういう少年を保護すると称するが、実質上はやはり逮捕であります。言葉が違うだけで、それが憲法三十三条の違反にならぬということはどこから出てくるか。行政措置と司法措置と、どうして触法少年や虞犯少年のときに使い分けができるのか、これを御説明願いたい。
○青木国務大臣 もちろん行政措置としても、第三十三一条あるいは第三十五条の司法手続としてやり得るその精神を尊重しなければならぬことは当然であります。なお法制上の問題でありますので、政府委員より説明いたさせます。
○中川(董)政府委員 ただいま猪俣先生御指摘の問題は、現行法でも同様の問題があるのでありますが、現行法三条の一号で、「精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞のある者」に対しましては、警察は保護をいたさねばならないことは、現行法でも規定いたしておるのであります。現行法が憲法違反かどうかという問題と理論的には同じなんでありますが、この保護は泥酔者、精神錯乱者に対しまして、行政上の、もっと言いかえれば、公共の福祉の目的のために保護という処分をするのでございますので、刑罰権の発動としての問題でない、こういう理解のために、これは合憲だと学説その他においてもされておるであります。ひとり現行法の職務執行法三条一号に限らず、精神衛生法、児童福祉法その他にも同様の規定がありまして、いずれも憲法三十五条に違反しない。これが定説になっておるように考えておるのであります。その説に従いましてこの立案をしたのでございますが、今回は保護の範囲が若干広くなりますので、そういうことも考慮し、憲法三十三条の精神を十分にこの行政措置においても生かす必要ありと考えまして、三条の二の規定におきましては、保護するとともに、直ちに司法官憲の許可状をもらう、こういう手続を規定いたしておりますので、行政上の処分でありますので、憲法三十三条の適用はないのでございますけれども、その精神を十分生かす、こういう趣旨によりまして、三条の二の第四項に規定いたしましたがごとく、保護を始めたときは直ちに裁判官の許可状を得る、こういう手続を改正法律案に規定いたしまして、憲法三十三条の精神はこの行政手続の場合におきましても生かそう、こういう趣旨が改正案に規定されておる次第でございます。
○猪俣委員 そんな説明をあなたから聞いておるのじゃないのだ。現行法の説明と改正法の説明をごっちゃにして、同じようなことを言うところに問題がある。現行法の規定をあなたは読んで見たかな。これは泥酔者や迷い子や病人、そういうものは行政措置として、だれだって常識上考えられる。それだけならわれわれは文句は言わない。そうじゃないんだ。今度は三条の二というものが出ているじゃないですか。しかもこれについては、年令の問題について警察当局と法務当局と長い間折衝するような大問題じゃないか。それが新たに付け加わったから、憲法問題が出てきている。現行法にあるということ、そういう頭だから困るのだ。この三条の二というものは、現行法と違うんですよ。だから、保護というのが、今度は保護等に変っているんだ。この三条の二は単純なる行政措置と言えないのだ。それだから、ここに問題がある。行政措置だから、憲法三十三条に関係がない。そうすれば、大ていみんな行政措置と認めれば、全部憲法を逸脱することになるじゃないか。だから、同じ人間を引っぱっていて、これは司法手続だ、これは行政手続だと、どこに区別の基準を置くのか、それを質問している。あなたの答弁は答弁にならぬ。
○中川(董)政府委員 行政措置であるか、すなわち公共の福祉のためにする行政上の保護行為であるか、刑事手続といたしまして、刑罰権の発動のために真実を発見する措置であるかということにつきましては、明確に、概念ははっきりすると思うのでありますが、この三条の二も、心身未成熟な少年に対しまして、しかも少年法または児童福祉法の規定によって、現行法律体系上保護または処分ができることが可能なものに対しましての規定でございますから、保護という観念は成り立つと思うのであります。しかしながら、保護でございますけれども、犯罪を犯すおそれがあるという少年等も入っておりますので、その実体に重きを置きまして、司法官憲の令状主義という憲法三十三条の精神に即応しまして、改正法三条の二におきましては、四項の規定により、司法官憲の許可状という制度を決定いたしましたので、その点憲法三十三条との関係は、この改正法律案で調和をはかっておるのでございます。そして、三条の二が観念として保護であるということは、未成熟な少年であるということでもありますし、とりわけ児童福祉法とか少年法の対象になってそれぞれ保護されるべき性質のものでございますので、保護の観念としては明確であろう、こう考えますので、この法律の見出しも、保護等ではないのでありまして、保護でございます。
○猪俣委員 あなたの説明は憲法の大原則というものを理解しておらない。基本的人権を根本的に尊重するということは、憲法の精神なんだ。例外として司法手続というものが三十三条に規定されておる。われわれの人身の自由ということは、基本的人権のうちでは最も貴重なる人権なんだ。憲法の保障する手続によらざれば人の自由を束縛できないというのは大原則なんだ。ただいわゆる迷い子とか泥酔者とか精神錯乱者とかいう、何人が見ても行政上の保護を必要とする者以外においてこれをむやみに拡張するということは、基本的人権を侵害するおそれが出てくる。だから、日本の現行の憲法は、明治憲法のような原則に立っておらない。徹底的なる基本的人権を擁護する主義のうちに立っておる。その原則から見て、その例外規定をむやみにふやすということは、それ自身が憲法の精神に違反する。それですから、十六才にするか、二十才にするか、十八才にするかという年令の問題まで非常にやかましい問題になって、多少人権擁護を考えておる人たちとはそこに議論が出てくるわけです。だから私は、この憲法の基本的人権を尊重するという根本概念、その例外は司法手続なんだ、それ以外に一体行政上の保護として人身の自由を束縛することをどの程度認めるか。そこで、これは行政事務、行政上の保護だという明らかなもの以外についてそれを拡張することは、憲法の精神に違反するじゃないかという論拠でやっておる。初めからこれは保護であるから、憲法三十三条には違背しないのだという答弁は答弁にならない。なぜ三条の二のような、少年を憲法の要求する手続によらずしてこれをむやみに保護するのであるか。もし保護という名前さえつければみんな人身の自由が束縛できるとするならば、無限に保護する者がふえてくる。それじゃ困るから、その基準をどこに置くかという説明を私は聞いておる。どこまでが行政措置の保護になり、どれ以上がいわゆるそうじゃないことになるのか、人身の自由を束縛するということは憲法上の絶対な禁止文句だが、その例外には例外の基準がなければならない。だから、どういう基準をもってこの二つを区別したのであるか、それを私は聞いているのだが、それがわかりませんかね。
○中川(董)政府委員 日本国憲法が人身の自由を大いに保障するという根本精神であるというに点つきましては、猪俣先生のお考えと全く同感をするのであります。しかもまた、保護という名前をつければ何でもかんでも保護ができるのだ、こういう観念でないという点も、猪俣先生と全く同じ考えでございます。そうして、実体的に保護されるべき者がほんとうに保護に値するものであれば、保護の観念に入る。実体的に保護されるべき者が保護の観念に当てはまらないものは保護の観念からはずれる、こういうことになろうかと思うのであります。 〔「はっきりしろ」と呼び、その他発言する者あり〕
○鈴木委員長 静粛に願います。
○中川(董)政府委員 従いまして、区別の基準は、たとえば泥酔者とか、迷い子であるとかいう者につきましては、それは本人の意に反しても保護する。こういうことが保護する実体であるという点は、猪俣先生も御同感願ったと思うのでありますが、それは明瞭である、こう理解するのであります。問題は三条の二のここに掲げてある少年、言いかえれば、他人の生命、身体または財産に危害を加えるおそれのある少年であって、しかも少年法第三条第一項第二号の少年、同項第三号の少年、並びに児童福祉法第二十五条の少年が保護の観念に当てはまるかどうかということが問題の要点であろうと思うのであります。 まず現行実体法におきましても、少年法という法律体系におきまして、三条一項二号少年、三号少年につきましては、少年法は保護処分という観念をとっておりますので、これが保護ということについては、まず現行実定法上明らかでございます。しかも児童福祉法第二十五条に規定する少年も、監護させることが不適当な少年でございますので、これも児童福祉法が観念いたしておりまするごとく、愛護または保護されるべき少年であろうということが現行実定法上明らかにされておるのであります。しかも実体的に精神未成熟であって、その犯罪に陥ることを防ぐということが公けの福祉に合致する、こういうふうに考えられる者は保護ということに相なろうと思います。しからば何才が精神未成熟であるかという点につきましては、相当研究の余地があろうと思います。たとえば、十才であれば未成熟であることが明確でございます。十二才であれば未成熟であることも明確でございます。十四才であれば未成熟であるということも刑法総則の考えからいって考えられようかと思います。だんだん考えますと、幾才が未成熟であるかということの考え方は、民法の丁年でありますところの二十才が未成熟という考え方もとり得ようかと思うのであります。各般の現行法制上の体系を考え、また子供の発育の状況の科学的データを基礎にいたしますし、しかも現行法制上児童福祉法が十八才という年令をとっておりますし、労働基準法においても労働につきましての制限をきめておりますのが、十八才という年令層が多いのでございますので、十八才という年令層につきましては未成熟である、こういうふうに観念されますので、一つ十八才という年令でボーダー・ラインを引こう、こう規定をいたしましたのが改正法律案の原案でございます。しかして、そういうふうに保護という観念を、保護に値するというものに明確にいたしたのでございます。さらに憲法三十三条の精神というものは、十分生かされなければいけないと思いますので、保護に値する人間に限定いたしましたほかに、この三条第四項によりまして司法官憲の許可状制度を用いることによって、憲法三十三条との調整をはかる、これが原案の考え方でございます。
○猪俣委員 私の質問していることにちっとも答えなさらぬので、これ以上あなたにやってもわからぬ。とにかく行政措置を拡大するということは、警察国家のあり方なんです。あれも行政措置である、これも行政措置でできるということは、これはいわゆる警察国家だ。民主国家、憲法国家は、行政措置というものをなるべく狭める。警察権の介入というものは狭める。現行法に規定されておるところをなお拡大して、そうしてそれを行政権の保護と称して立案したところに非常に問題があるのであって、だから私はそういうこれまでは行政処置としてできる、これまでは司法手続がなければならぬという区別の基準があるかどうかを質問しているのである。現行法の説明になりますれば、私は条文解釈にとっては相当の質問がまだあるのですが、そうじゃない、今のは私はこの立法の抽象概念を伺っておるのである。それは、警察察権の拡大というものに対してわれわれは反対の意見を持っているからお尋ねしているのでありまして、しかしそれに対する大臣が、これは行政措置であって、司法手続は別だというようなことをおっしゃっておるから、そこで言うのです。この三条についてはいろいろ問題があって、われわれは少年に対する立法としてはこんなものでやるべきものではないと考えている。しかしこれはまた逐条審議のときに意見を申し上げますが、なおまたこの簡易裁判所の判事の許可をとるということに非常に問題があるのであります。東京だけでも簡易裁判所は二十カ所あって、その裁判官というものは大体検察官か何か定年まで勤めて、しゅうと隠居になっておるところの裁判官なんです。進歩的思想なんというものは、とても理解できない裁判官が大部分です。そういう人たちに警察の方から許可をとりにいくのですから、実際としてはサル芝居みたいなものです。それは私はそこまでは突っ込みません。すなわちこの五日間の間に弁護士の接見ができないだろうと思うのです。そういうこともこまかくまだ問題もたくさんある。なぜならば、犯罪じゃないと称し、これは逮捕じゃないのだというから、刑事訴訟法が適用にならない。そうすると弁護士の接見の権利がなくなってくるのです。ですから、行政権を拡大していくならば、憲法の人権擁護の規定というものはもぬけのからになってしまう。そういうことにつきましては、なお逐条審議に譲りますから、今は言いません。とにかくどういうものを行政処分にするか、人心の自由を束縛する点についてどういう範囲が行改処分に適当であるか、どういうところからは司法手続にしなければならないかという区別の基準を私は聞いているのですが、それは答弁がないからこれでやめます。 次に移りますが、もう一つお尋ねします。第五条、第六条については総理に質問したいと思いますが、警察関係の人が来ておりますからついでに質問しておきます。一体この警職法の改正法律案は、警察権の強化として人権じゅうりんに及ぶおそれがあることは、相当世論が沸き起っていることは皆さん御存じの通りであります。それに対しまして、盛んに人権じゅうりんなんかはないのだという説明をなされているのであるが、どうもその保障がわからない。そこでこの法律の乱用を制限する、乱用にわたらぬことを保障する何か具体的な案がありますか、それを一つ明らかにしていただきたい。
○青木国務大臣 乱用のおそれがあるのでこれを乱用せぬようにしなければいかぬというお話は、まことにごもっともと思うのであります。そこで、この法律の内容におきましては、乱用に陥らないようにいろいろな規制あるいは条件を加えているのであります。しかし、なおかつ警察官の判断によって法の運用を誤まり乱用に陥るおそれがあることも、これは考えなければならない問題だと思うのであります。そこで、乱用防止につきましては、私は一般的の考え方としては、最近の警察制度の実際の運営の仕方を見まして、昔の警察と違いまして、国家公安委員会の管理のもとに置かれている。府県におきましては、府県の公安委員会の管理のもとに置かれている。こういうことで一般的に警察官の乱用に陥らないように、手綱を締めているわけであります。しかし、それは一般的の問題でありまして、それだけをもって乱用の防止のできないことは言うまでもないのであります。そこで、現実の問題といたしましては、警察官がこの法律を適用する場合に、私どもは、いやしくも乱用に陥ることのないように、国会の審議の間に現われた御意見等も参酌し、正しい指示書と申しますか、説明書を個々の警察官に渡して、間違いなきを期することはしなければならないのであります。また警察官の教養の面におきましても、特にその点を重視しなければならないことも言うまでもないことであります。なおかつ、それでも乱用した場合、このときの処置といたしましては、御承知のように行政上あるいは刑法上のそれぞれの処分をすることも当然であります。また乱用の結果、一般に損害を与えた場合は、民事上の賠償の問題もありますし、あるいはまた国家賠償法の適用の問題も出てくると思うのであります。また一方、人権擁護局の活動を促しまして、警察官の乱用防止という問題もしなければならないと思うのであります。なおまた、今年の三月、警察法の改正に当りまして、御承知のように監察制度を特にこの規定の中に入れたのでありまして、監察を強化いたしまして、そういうことのないように最善の配慮を尽したい、かように存じておる次第であります。
○猪俣委員 戦前におきましても、こういう治安関係の法律を通す際には、みんな政府委員はあなたが今言うたような答弁をやっておる。これは治安維持法のときも、私は速記録をみんな持っておるが、絶対じゅうりんなんかやらぬ、やるやつは徹底的に取り締ると言っている。それだから、具体的にやってもらわぬと信用できない。警察官が相当人権をじゅうりんしたと思っても、なかなかこれが明らかにできない。具体的のことをあなたにお目にかける。それは、宮城前のメーデーの騒擾事件、これに関連しまして警視庁の巡査の小幡という男は、こういう証言を検察官にやっておる。「ある党員宅でメーデー中央会場の警戒の警察官から拳銃を奪うという謀議があった。」ということを供述しておるので、そこで弁護人は、「ある党員宅の会合というのはいつ行われたか。ある党員とはだれか。その細胞は何という細胞か。」こういうようなことを反対にその証人に質問しましても、一切答えない。職務上の秘密であるから答えられないと拒んだ。そこで弁護人は、真実の発見のために、これを明らかにしてもらわぬと弁護が進められないために、この証言に対する許可をするように警視総監に対して要求したのであります。ところが警視総監の回答は、「御照会にかかる小幡証人の職務上の秘密に関するものであることを申し立てた各項についてこれを明らかにすることは、現在多くの一般都民から受けている協力について重大な支障がありますとともに、将来このような善意の協力を期待することが困難となることは明らかであります。このことは今後の警察運営上重大な支障を来たし、首都治安維持、ひいては国内治安に影響すること甚大であると認められますので、刑事訴訟法第百四十四条のいわゆる国の重大な利益を害するものと認め、小幡証人が証言することを承諾しません。」こういうことを申しておる。だから、事実無根のことを検事に申し立てて、反対尋問でそれは事実無根のことだ、それは言いがかりだ、そういうことを質問しても、一切答弁しない。ですから、いかに彼らが人権をじゅうりんしても、それをわれわれが告訴いたしまして裁判になっても、その証言を全部拒否してしまう。そうすると、裁判上、司法手続で彼らの非行を明らかにすることができない。そして、上司もこれは職務上の秘密だからといって許可しない。こういうことを現在やっておる。われわれが非行を働いた警察官に対して裁判上明らかにするために、どんどん真実を述べるように警察官を証人としようといたしましても、こういうことで一切ノー・コメントです。そして、警察官の言うことを検事や何かみんな信じておる。裁判所で真実を明らかにしようと思っても、一切真実を口どめしてしまっておる。こういう制度になっておる。だから諸君が人権じゅうりんを阻止するなんと言ったって、口先だけでただ言うだけで、実際何にもならない。裁判さえ救済することができない。これをどうするか。
○青木国務大臣 お話のように、これは単に口だけで人権じゅうりんはさせぬようにいたしますと何度言っても、それだけでは済むものじゃないのでありまして、猪俣君の申すごとく、単に口先だけで言って済ますべき問題でないことは、私もよくわかるのであります。しかし、個々の巡査に一々ついているわけにいかぬこともこれまた言うまでもないのでありまして、やはりできるだけ可能な限度において、法制上もまた実際の運営上も、万が一にもそういうことのないように最善の配慮もし努力をする、こうする以外にないと私は思うのであります。お話のような点も今後の参考にいたしまして、十分そういうことのないように、一そうの努力を尽したいと思います。
○鈴木委員長 この際暫時休憩いたします。本会議散会後に再開することにいたします。 午後零時五十六分休憩 ————◇————— 午後三時二分開議
○鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を継続いたします。猪俣浩三君。
○猪俣委員 岸総理に対しまして、憲法第十二条の「公共の福祉」の概念につきまして御意見を承わりたいと思うのであります。 われわれは基本的人権を尊重することそれ自身が公共の福祉のためである。こういう観念を持っているのであって、公共の福祉という概念と基本的人権尊重という概念は対立するものではないと思う。もちろん公共の福祉という意味につきましては、学者間にいろいろの異議がございますが、この警察法あるいは警職法制定に際しまして、この観念を用いる際には、慎重なる注意が必要と思います。初めから基本的人権尊重とこの公共の福祉を対立するような概念からこれを理解なさいますと、大へんな間違いがあると私は思いますが、総理はどういうふうにこれをお考えになっておるか、承わりたいと存じます。
○岸国務大臣 基本的人権が尊重されなければならぬ。これは民主主義の基礎でもあり、現行憲法の最も大事なことであることは言うを待ちません。しかし基本的人権というものを個々に考えますと、要するにわれわれが社会生活をし、多数の者が社会を形成していくときにおいては、いわゆる基本的人権というものは、社会を構成しておるすべての人が平等に保護されていかなければならぬことは言うを待たないのであります。そういう意味において、個々の基本的人権なりあるいは自由というものが、やはり全体の社会を構成しておるすべての人々の基本的人権やあるいは自由というものを侵してはならないという意味において、私はこの十二条の公共の福祉という観念が出てきておるのであると思います。対立しておるとかあるいはどうとかいう意味じゃなしに、今申しましたように多数の人々が生活しておるこの社会全体を構成しておるすべての人が平等に基本的人権が尊重されるということにかんがみて、やはりそこに調整といいますか、調和が行われなければならぬことは当然であります。その観念を、私は公共の福祉という言葉で表わしておる、かように解釈いたしております。
○猪俣委員 それは対立概念じゃないのだ、調和の問題なんだという御説明であるといたしますと、しからば、基本的人権とその公共の福祉の調和点というものを、どこに求めることが合理的であるか。これはアメリカなどの裁判例その他におきまして、世界的に一つの共通な原則ができているはずである。そこであなたは、この公共の福祉、それから基本的人権の尊重が元来対立するものじゃないけれども、他の人権との調和ということで考えまするならば、調和の点というものがなければならぬ。その調和点というものを認識せずして、ただいたずらに法律を作るということになりますと、そこに大いなる民主政治の破綻を来たすのでありますが、どういうところにその調和点を、どういう法概念に求められておるのであるか、承わりたいと存じます。
○岸国務大臣 私は、先ほどもお答え申し上げましたように、社会を構成している構成員の基本的人権が、できるだけ平等に保護されておるということに主眼を置くべきであろうと思います。すなわち、いろいろな社会層を見て、あるいは一部の人の特別な地位であるとか、あるいは特別な行動というようなものによって、他の者が非常に基本的人権を脅かされるというような事態がある場合に、これを一方の基本的人権の主張なり、これを無制限にすることでなしに、ある程度調整して、そうして全体の社会を構成している人人が、できるだけ平等に基本的人権が擁護されるというふうに持っていくことがこの調整の目標であると思うのであります。
○猪俣委員 それは法概念の説明にならぬのであると思うのです。調整のために調整が必要であるという説明に終っております。その調整の基準をどこに置くのであるか。今ここにある種の基本的人権を抑圧するような立法をなさる際に、どこに基準を置いて法律の規定を調整するのであるか、私はそれを聞いているんです。調整の必要なことは当然のことでありましょうが、立法に際しまして、法概念としていかなる理念のもとに調整するのであるか。つまり憲法に認められたる基本的人権は、永久の権利として、むやみに立法作業によってこれを抑圧してはならぬというのが近来の民主国家のあり方でございます。あなたが今おっしゃったように、やむを得ざる場合において調整をはかる。それは当然のことでありますが、しからばその調整をはかる法概念は、どういう法概念を持ってきて今ここに法律を作ろうとする際にその調整をはかるのであるか。その基本概念をお伺いしている。
○岸国務大臣 ある人々の基本的人権が、ある具体的の事実によって侵害されるということが明白であり、またそういうふうな情勢にある場合に、その基本的人権の侵されるおそれのある人人を保護して、そうしてこれが基本的人権を侵害しようとするような具体的事実をなくすということが、私は問題であるのであって、従ってその目標は、先ほど申したように、多数の構成しておる人々の人権というものをできるだけ平等の立場において保護していかなければならぬ。それをいろいろな具体的の事実でもって、一部の人がその基本的人権を犯される危険があり、あるいは犯されておるというような場合において、その事実をなくするようにし、また事前に防ぐようにしていくということは、公共の福祉という観念で調整する具体的の必要性なり、あるいは事実問題がある。そういう場合において適当に調整をすることは当然であろう、かように思っております。
○猪俣委員 御説明の中にはっきりしない点もありますが、ほぼ輪郭はわかりましたが、これを法律用語でいいますならば、基本的人権は、ある事象の具体的にして現実的なる危険が差し迫っておる場合のみ、基本的人権は法律によってこれを抑止できる。言論の自由あるいは行動の自由が、現実的にして明白なる差し迫った危険にさらされる場合においては、これを抑止できるというのが原則だ。あなたのおっしゃる意味もそういう意味だと存じます。それを調整の基本理念にするという意味だと存ずるのでありますが、そういたしますると、なおあなたに伺いたいことは、今度お出しになりました警職法改正法律案の第五条、これはあなたよく御研究なさっておるのかどうか、ちょっとわからぬのでございまするけれども、この警職法改正案の第五条は、今あなたが基本的人権を抑制する一つの基準という方面から見るならば、この法律は間違っておる。具体的にして危険なる、明白なる現実という意思から、現行法では生命、身体、財産に危害が及ぶ場合、これは相当具体的であります。ですから現行法は、あなたの今言った公共の福祉と基本的人権の調和点に基いて、その考慮の上に立ちまして第五条ができておるものとわれわれは理解しておるのであります。しかるに今日、この第五条につきまして、生命にも、身体にも、財産にも、何らの影響ないところのものに対し、「公共の安全と秩序」という一つの法概念を持ってきまして、この際にも基本的人権は抑止できるというのが五条の趣旨であります。あなたは、この五条の趣旨をよく理解されておるのであるかどうかわかりませんが、そこに重大なる問題があってここに警職法なるものが民主警察の執行的な基準にあらずして、昔の治安警察あるいは行政執行法のような性格に転化するところの警察官の職務執行法になったのであるという論拠がそこから出てくるのであります。具体的にして危険なる、この原則というものがここには放棄されておる。一体生命にも、身体にも、財産にも影響のない、しかして公共の安全を害するという事例は、いかなる場合であるか一つ御説明願いたい。あなたはどう理解されるか。生命、身体、財産に影響があるならば、現行法で十分取り締れるわけであります。それと並立的に公共の安全という理念を持ってくるとしますならば、生命に、身体に、財産に影響のない、ここに公共の安全という一つの法域が出てくる。それはいかなる場合でありますか、御説明願いたい。
○岸国務大臣 この観念は、いろいろの規定で五条の何もしぼってありますが、これは憲法にいう公共の福祉という概念に当ると思うのでありますが、今おあげになりました点は、われわれが多数の者が集まって社会生活をしておる場合において、お互いが平穏な社会生活を営むということは、これは民主国家におけるところの一つの理想の体系でありまして、それが脅かされ、それが危険にさらされておるというのが、この概念であると思うのであります。
○猪俣委員 だからわれわれの身体にも、財産にも、生命にも何も関係がないのですよ。そういう関係のない公共の安全とか秩序とかいう概念は、一体実例としてどういうことが起るか。われわれの生命、身体、財産に影響があるならば、あなたが言うように、ある行動のために一般人がはなはだ不安におののくのはけしからぬのです。だからそれは意味がある。生命、身体、財産の危険ということは、具体的にして相当明白であります。それを一警察官が認定するには、認識の対象として相当具体的であります。しかるに、それと関係のない公共の安全と秩序ということになると、これは全く抽象的概念でありまして、具体的にして明白なる事実じゃない。だからどういうことが含まれるのか。この公共の安全と秩序ということは、裁判の問題になりましても、裁判官が最も頭を悩ますところの価値標準を含んでおる認識であります。これは裁判官が決定する、裁判官の裁判の対象になるべき事案であります。具体的な事実じゃない。ある一つの政治標準、ある一つの社会標準から価値判断を含んでおるものである。これは裁判です。公共の安全と秩序を害するということは一つの裁判であり、判決であらねばならない。それを一警察官が認定するということは、警察官が一つの判決を下すことになる。それは概念が違うのですよ。生命、身体、財産に影響を及ぼすということの認識と、公共の安全を害したか害さないかというような認識とは、認識の対象が違うので、片方は、具体的にわれわれの六官に訴えるところの一つの感覚的な存在である。片方は、私どもの頭の中に作り上げられまするところの各般の事象を総合いたしまする高度の価値判断であります。これは裁判機能でなければ果し得ない価値判断である。その裁判機能でなければ果し得ない価値判断を警察官にやらせるということは、昔の違警罪即決例を復活するんじゃないかと思う。昔は違警罪即決例というものがあって、裁判なしに警察署長が裁判をすることがあった。それは今廃止されたのでありまするが、それを復活したような現実になってきます。そこであなた自身が即答できないように、公共の安全と秩序を害し、しかもわれわれの生命にも身体にも、財産にも影響もないということは、一体どういう場合であるか、具体的な場合をあげてもらいたいと思う。これは僕らはあまり考えられないんだ。それは一般の不安をかもすようなことは、必ずやわれわれの生命なり、身体、財産に影響のあるところであります。これは現行法でやれるんじゃありませんか。そういうことに影響なくして、しかも公共の安全を害するというのは、一体どういう場合であるか、その場合を私は聞きたい。そのあげた事例によりましては、果してそういうことが一警察官の認定に適するかどうかということも考えなきゃならぬ。くれぐれも申し上げまするが、公共の安全とか秩序というのは、裁判の対象になるべき事象であります。高度の価値判断を含むものであります。具体的の事実の認識と違う。さようなことを混同いたしまして、生命、身体、財産などと並立いたしまして、公共の安全というようなものを持ってきたところに、この法律全体の性格が、はなはだわれわれ危険を感ずるというのもそこにある。どういう場合でありましょうか、例を言っていただきたい。あなたの認識した例、これは警察官じゃない。あなた自身が総理大臣として、どういう例をごらんになって、個人の生命にも、身体にも、財産にも影響がないが、公共の安全は乱される。こういうふうに認識なさるのか御説明願いたい。
○岸国務大臣 われわれは平穏な社会生活をし、その正常な運行の上から申しまして、たとえば交通も自由であり、いろいろな集りをする集会も自由であり、言論も自由である。しかしながら、それがある力によってわれわれの交通が妨げられるとか、あるいは自由な集会をしようとしているものが妨げられるというような事態があるとするならば、これは直接に個人の生命、身体、財産ということでは、ございませんけれども、社会の静穏な生活、また先ほど申しました各個人の、社会を構成しておる人々の基本的人権を平等に保護するという意味からいうと、そういうものが妨害されるというような事態には、やはりこれを取り除くことが必要である、こう思います。
○猪俣委員 あなたがおっしゃった、道路のじゃまになるというようなことは、道路交通取締法という法律がちゃんとあるのです。公安条例という条例もあれば、そんな取締りに欠くるはずはないんですよ。何ぼでもたくさんある。決して御心配は要らぬ。今の刑法の規定、特別法の規定、わんさとあって、手も足も出ないようになっておる。何もその上に、なおこんな抽象的な違警罪即決例みたいな個条を持ち出す必要がありますか。どこに現行法で取り締れないところがあるのですか、私ども不思議でならぬ。何か山の上で騒音を発する、やかましい。それならば公安条例でちゃんとできるじゃありませんか。騒音防止法もある。あるいはある一軒のうちをどんどん、どんどん夜中にたたき起す。そんなものは軽犯罪法でやれるじゃありませんか。軽犯罪法、道路交通取締法、郵便法、鉄道営業法——三越の争議などは道路交通取締法を適用して、ピケを張った女の子をみんなひっくくっちゃった。現行法でああやり過ぎるくらい、労働組合を弾圧しておるのです。それでなお諸君の方で足りないということになると、これは非常に困っちゃう。また戦争前のように、労働組合なんというのを徹底的に根こそぎに押えつけようとする伏線があるのではないかと、われわれは疑わざるを得ない。現行法が不備であれば、あるいはあなた方の説明を了承したかもしれぬ。もう網の目を張ったように完全にできておる。その上に、どうして生命にも、身体にも、財産にも影響のないこういうような公共の秩序なんという、昔の行政執行法あるいは治安警察法と同じ言葉を使っております。その言葉をまたここへ現わした。こつ然としてこの警職法にこれが現われてきた。われわれはりつ然とせざるを得ない。またこの道はいつか来た道みたいになるんじゃないか。あなたはそういうことに対するわれわれの疑惑の念をことごとく一掃する責任がおありであろうと思う。あなたの過去において、そういう経歴がある以上は、そのあなたが何でもかんでもこれを、ほかの法律はどうであってもこの法案だけは徹底的に通過させよう。この法案が通るか通らぬかは、わが国民の百年の運命に影響するんだと激励演説をなさっておる。そうすると、あなたは非常な意気込みでこの法案を提出されたと思うのでありますが、どこに一体そんな心配があるのでありますか。私ども幾ら考えてもわからない、それを御説明願いたい。
○岸国務大臣 猪俣委員も御承知の通り、現在あります交通の取締りの規則というものは、要するに、ある違反の事実をした者に対して、罰則をかけるという規定でございます。私どもが今日の社会の各般の情勢を見ますと、そういうことを未然に防ぐことが、この正常なる社会の運行なり、あるいは静穏な社会生活を守る上から必要であるという事態、事象があちこちに見受けられますので、そういうものに対して、いわゆる交通取締法の犯罪が行われたときにそれに罰則をかけて云々というのではなしに、それを未然に防ぐような処置を講ずることが、私は社会生活の静穏を確保する上において必要である、こう思うのであります。
○猪俣委員 そこで私は非常に危険を感ずるんですよ。現行法で十分やれる。道路交通取締法だって、あなたは警察官の取締りをごらんになったことがありませんか。二百人か三百人の全学連がデモ行進をするとすれば、八百人、一千人の鉄かぶとの警察官隊が出動するじゃありませんか。一体これは何のためですか。 〔「乱暴するからじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
○鈴木委員長 静粛に願います。
○猪俣委員 乱暴するなら現行法でやればいいじゃないか。今の警察官職務執行法で十分やれる。何がそれでやれないか。交通取締法で、今の警察官はみんな警告をし、制止し、そして道路の乱れないようにやっているじゃないか。何も道路交通取締法は、単に違反した者をひっくくるだけじゃない、ちゃんと警告も、制止も整然とやらしておる。メーデーのときがそうじゃありませんか。両側にちゃんとおまわりさんが並んで、そうしてちゃんと指導をやっておるじゃありませんか。それですから、そういうことは全然問題にならない。今あなたがちょっとおっしゃったように、何か起きょうとするようなことに備えなければならぬ。そういうことになると、この基本的人権を尊重するということと公共の福祉との調和点ではない。具体的にして現実的な危険の差し迫ったときにのみ、公共の福祉との調和点として抑制されるというのが基本的人権である。そうしてそれが公共の福祉との調和点として、世界の今法概念になっておる。あなたはそういう説明をなさっておる。それはそれでよろしい。そうすると、この五条というものは全くそれと違ったことが規定されてきておるから、これは問題になるのであります。私どもも、人の生命、身体、財産に害を及ぼすような危険が差し迫ったことを放任せよというのではありません。これは現行法で十二分にできる。皆さんはまたそれをやっている。和歌山の勤評事件を見てごらんなさい。読売新聞の一面に写真が出ておる。血に狂った警察官、頭をみんなたたき割っているじゃありませんか。それでまだ足らぬというのがわれわれにはわからない。それは今の警職法でやっておるんですよ。 〔「それができないからああいうことが起るんだよ」と呼び、その他発言する者多し〕
○鈴木委員長 静粛に願います。
○猪俣委員 それだから、そういう法律があるにかかわらず、なぜそれ以上のことが必要であるかということが私どもの疑問なんであります。今のあなたの答弁ではわからない。(「和歌山事件のようなことがあるから必要なんだ」と呼ぶ者あり)君に聞いているのではない。君は黙っていなさい。
○岸国務大臣 今までの警職法では、現実にそういう犯罪の行われた場合において、これに対する処置を講ずるという規定はございますが、そういうことの一歩前に、われわれがそれを制止し抑止し、そういう妨害の起らないようにすることが、私は社会全体の人々の人権を平等に守る意味からいって必要であると、かように思います。
○猪俣委員 それではあなたは、戦争前の治安の取締りの法規と同じ精神でこれをお作りになったことを了解されますか。今度の日本国憲法は、徹底的に基本的人権の尊重を建前にしておる。これが新憲法の一大柱であります。明治憲法とそこが明白に違う。そこで、その理念といたしましては、基本的人権尊重が非常に徹底いたしておりまするアメリカの法概念としても、具体的危険の原則、明白にして差し迫った危険の原則というものが、この調和の原則としてあるわけであります。その点から考えると、ばく然として何か起るであろうから、今からひっくくってしまう、そういう概念はいけないと思う。 それからその五条は、「警告及び制止」となっておる。(その通りだよ」と呼ぶ者あり)それだから、こういう低能な人のように、その通りだという議論が出るのです。そこであなた一体どう考えるか、警告というのはどういうことをするのか、制止というのはどういうことをするのか、そしてこの警告、制止に従わぬ場合には、いかなる法律が控えておるか、あなた御存じですか。警告、制止、これに従わぬ場合には、いかなる法律が控え、いかなる刑法犯として処罰されることになるのであるか。あなたはそれをお考えになっておりましょうか……。 〔発言する者多し〕
○鈴木委員長 御静粛に願います。
○猪俣委員 これは五条は、単に「警告及び制止」となっておる。警告、制止ということは簡単のように聞こえます。だから自民党の諸君は、何だ、そんなものと、こう言うかもしれませんが、これは重大ですよ。この警告、制止というものは、どこまでもやれる、こう考えていられるか。そして警告、制止に従わぬ場合において、どういうことが発生するとあなたは思っておられるか、それをお聞きいたします。
○岸国務大臣 警告、制止というのは言葉通りであると思うのです。私は特別なことがあるとは思いません。制止はとどめることであり、警告は読んで字のごとく警告であると思うのです。そうしてこれに従わない場合に、暴行、脅迫が伴う場合においては公務執行妨害になることは御承知の通りであります。
○猪俣委員 そこで警告というものはその文字の通り、制止はその通りだと単純にお考えになっているから間違いがあるのです。あなたの側近が、警察官僚が、あなたにほんとうのことを言っていないんだ。昔の天皇の警察時分に郷愁を感じている連中が、あなたの目をおおっているのじゃないかと思われる。あなたは法律学者じゃないから無理もないと思うのでありますが、この警告ということは、言葉や文書だけでなしに、実力をもって警棒をもって制止することができる。これは京都高等裁判所の判決が示しております。なお、制止というのは警棒を使用して実力でもって排除することができる。これも福岡高等裁判所の判決に出ております。制止と警告ということは、警察官の実力行動をも含んでおるとするならば、必ずやそこに公務執行妨害罪というものは必然的に起ってくる。またそれを予定して、警職法の警察官の職務の中に入れるのだと私は思う。公共の安全を害するからこの大会をやめろ、そうして警棒を振り回す。何だ、僕らは平穏にやっているのに、何を言うんだ、そんなことを言ったらすぐ公務執行妨害罪です。そうしてこの大会をめちゃくちゃにしてしまう。こういうことになるであります。なおまた、警察官の連中があなたに正しいことを言っておらぬかもしれないから、私が説明してやりますが、これはあるデモ行進なり大会なりが静穏にやっておったとしても、どこかごろつきの団体がなぐり込みをかけたということになると、あ、公共の安全を害するということで、静粛にやっておる大会をつぶすことができるのですよ。そうすると自民党ところつき団体が連絡すると、いつでも大会がめちゃくちゃになってしまう。そういう危険が含まれているということをあなたは御存じの上でこれを立案されておるのかどうか。どういうふうにお考えになりますか。
○岸国務大臣 この法案の趣旨は、そういう静穏なる集会を他のものが、今言ったようになぐり込みをかけているということを防ぐことがこの法案の目的でありまして、私は、そういうことが行われることが、われわれが憲法で保障されておるところの基本的人権が侵される事例の一つであると思う。それを防ぐことがこの目的であります。
○猪俣委員 それですから、あなたは正直におっしゃいました。それで実に危険なんであります。だからある大会を妨害しようとすれば、幾らでも妨害の方法が出てくるのだ。今まで、終戦前にも盛んにそれをやられたのです。警察とつうつうになる者がいて、それがもっぱら公共の安全を乱すような形を作る、それを口実にして弾圧する、これはお手のものなんです。それをまたこれでやるのです。それを防ぐには、この生命、身体、財産というような明白な概念を持ってこないと乱用されるということがそこから出てくる。あなたが正直におっしゃたように、そういうことがひんぴんと起ってしまって、平穏なデモ行進、平穏な抗議大会、そういうものがことごとくじゅうりんせられることになる。 そこでなお私はあなたの信念を聞きたいのですが、三権分立はモンテスキュー以来の国家統治権行動の一般形式でありますが、それは政党政治におきましても、多少変ってきましてもこの精神はあるわけであります。しかし議会政治、政党政治の本質をよく考えてみますと、多数党の政治というものは行政権と国会とを一手に握るものであります。ですから多数党政治というものはおそるべき力がある。なおまた最高裁判所の人事につきましても内閣は介入権がありますがゆえにそこまで手が及ぶ。その内閣といいましても、多数党の内閣、ゆえに自民党という多数党が行政権を握り、国会を握り、いかなる悪法もこれを多数でもって押し切るならば通過することができる。いかなる悪法も行政権をもってするならばこれを徹底的に実行できる。憲法九条がありましても、これはほとんどもぬけのからになって陸海空の三軍ができてしまって核兵器を入れる、入れないの騒ぎになってしまった。これはこの憲法制定当時の事情と全く違っておる。かようにいたしまして、この多数党をもって行政権を掌握し、多数党をもって国会に多数を擁するならば、憲法破壊の法律を作り、憲法破壊の行政措置を積み重ねていきまして、憲法というものはいつとはなしにすっかり腐り切ってしまう。ワイマール憲法はかくして滅びたのであります。ワイマール憲法がちょうど憲法制定以来十三年目にあえなき最後を遂げました。ヒトラーが授権法という法律を作ったことによって、この法律は廃止しなくても廃止同様のもぬけのからになってしまった。今岸内閣が、この基本的人権というわが国憲法の大きな一つの柱——いま一つの柱は絶対平和主義だ、この絶対平和主義の柱はすっかり腐ってしまっておる。今また基本的人権の柱をいろいろな法律を作ることによってむしばんでおる、私はそう思う。そこでこの行政権と立法権を掌握いたします多数党が、その権力を行使するに当りましては、国民の世論なり、少数党の意見なりに耳を傾けなければ、多数党横暴政治というものを現出し、これが独裁政治と変らぬ弊害をここに引き起してくるのであります。その意味におきまして、私どもは、今国論を沸騰せしめておるような、こういう乱暴な法律をはなはだ唐突に出したことに対しまして、実に遺憾きわまりないと存ずるのでありますが、多数党が行政権と立法権を壟断しておって、そうしてこれが数で押し切るならば、いかなる法律もいかなる行政措置も思うままにできることになるのでありますが、これに対していかなる抑制を加えることがわが国の民主政治を発達させるゆえんであろうか。 私どもはその意味におきまして憲法第十二条のこの権利が認められておると思うのであります。すなわち「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」ですから、この日本国憲法の趣旨に反するような行政権の行使、これに反するような立法権の行使に対しましては、国民はこれに抵抗しなければならない。この抵抗の方法は二十一条に書いてある集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由であります、この十二条と二十一条は表裏一体をなしまして、多数党の横暴からほんとうに民主政治を守るための国民の抵抗権を認めたものだと私は思うのであります。それをこれに対しまして一切の弾圧を食わそうというのが、この警職法の改正案であると私は考える。ですから、警察権というものは極力これを押えなければならない。民主国家であればあるほど治安警察というものは弱体化するのが当然であります。民主警察におきましては、強盗やどろぼうは大いに強力に捕えてもらわなければなりませんが、治安警察というものは主権尊重の国家においては弱いのが当然であります。それを強くしようということ自身が、国民の抵抗権を何とかして押えつけようという魂胆があるとわれわれは考えざるを得ないのであります。そうしてとうとうとして憲法破壊の行政と立法が行われるということになりましたならば、ワイマール憲法の運命をわれわれは味わなければならぬことに相なるのであります。これに対します国民のこの憲法擁護の抵抗が今日の世論であります。これに対してあなたの所見を承わりたいのであります。(拍手)
○岸国務大臣 私は、この民主政治の形態としての三権分立の問題や、あるいは政党政治の現実の運営、あるいは国会の運営というようなものに関しまして、今いろいろと猪俣委員のお説を拝聴したのでありますが、私どもは、この民主主義の基礎は、やはり国民が主権を持っておって、それを選挙によって表明をする。また国民が批判し、国民が最後の審判を下すという点において、民主政治の最後のとどめが刺されるようになっておると思います。もしも今お話しのように、多数党が多数を頼んで理不尽な行動をすることに対しては、主権者たる国民の審判によってとどめを刺されることは当然であります。また国会政治の運営におきましても、民主政治、国会政治というものは、論議された最後は、やはり多数決できまるという原則を是認しての上の論議であることも当然であります。しかしながら、その論議を通じて、多数党といえども、少数党の意見なり、建設的な意見、あるいはいろんな批判に対して、謙虚な気持でもってこれを聞いて、いれていくということは、もちろん必要であります。そういう意味において、国会において十分な審議が尽され、そうしておのおのの信ずるところ、考えが自由に、活発に論議されまして、これに対して国民の正しい中正な批判が行われていくところに民主主義のあり方があると思うのです。ただ、形から申しまして、今お話しの通り、民主政治の何は政党政治であり、政党政治ということからいけば、選挙によって多数を得たものが国会においてもそういう力で議決に当るし、また同時に、行政権である首班の指名において、その政党が政局を担当するということになることは事実であります。それを無視するわけにはいかぬと思います。しかし、今申しましたような考えで審議に当り、審議を慎重にし、またこれに謙虚な気持でわれわれが論議をかわしていくというところに、私は、民主政治の真のあり方があるものだ、かように考えております。 しこうしてこの警察官職務執行法につきましては、いろいろな論議が従来もされておりますが、私どもは、これは憲法違反でもなければ、あるいは今日の警察制度の根本等をお考えになりますと、またすでに行われておるところの警察制度の運行等を、ごらん下さいますと、戦前のものに返るとか、あるいは戦前のものを復活するんだというようなことは、ほんとうに杞憂であって、戦後のこの警察制度なり、あるいは警察の実際の運営から見まして、そういうことではない。しこうして最近の社会に現われているいろいろな事象から見ると、平穏な社会生活が多数の人々の集団的の行動によって非常に脅かされておる、こういう事態を守って、そういう事態をなくするようにしていく。そうして社会を構成しておるすべての人が、弱い人も年とった人も、すべて平等にその基本的人権が確保されるようにすることが望ましい。こういう見地でこの警職法の改正に当っておるわけでありまして、決して御心配のような憲法違反であるとか、あるいは戦前の警察に返るというようなことは毛頭考えておらないのみならず、事実、そういうことはあり得ないということを十分に御了承願いたいと思います。
○猪俣委員 お説の通り、主権在民の国家におきましては、最後の審判は国民でありましょう。現在警職法の一部改正法律案は、まるで国論が二つに分れているというか、世論がごうごうとして反対しているというか、新聞の団体でも、あるいは学者の団体でも、みな反対を表明していることがあなたの耳に入らぬ道理はないと思う。さような重大問題になった以上は、しかして法律の内容というものは、国民の権利、すなわち基本的人権に甚大なる影響のある、これは刑事訴訟法や刑法よりもなおわれわれ直接皮膚に感ずるところの法律でありますがゆえに、これをどうしても改正しようといたしますならば、あなたのお説のように、最後の審判が国民であるならば、今日解散をいたしまして、この法案の是非をお問いになるこそ民主政治家のとるべき態度であると思う。国民多数の輿望をになって自民党が多数を占められたならば、われわれはまた考え直さなければならぬのでありますが、この前の選挙では、かような法案を出すことは選挙の公約にちっとも出ていなかったでしょう。そうすれば、あなたが憲法改正をブラウン記者に語られたというような事象、日米安保条約の改定の問題、及びそういうことを背景にして現われました治安関係の法律の強化、こういうことはただならぬ雲行きであります。なぜわれわれがさようなことを申すかと申しますと、終戦前におきまして、治安立法の強化と戦時体制の強化は並行しておった。私はずうっと一覧表を書いて持ってきております。一々読み上げぬでもわかる。治安立法をだんだん強化されるとともにいろいろの事変が起ってきて、最後に太平洋戦争に突入した。そういうほんとうに苦い一つの経験を持っておりますがゆえに、その徴候の現われといたしまして、私どもはこれに対して神経質ならざるを得ない。沖繩の防衛をするなんということを言い出して、アメリカの北洋作戦の扇のかなめである沖繩に対しまして共同防衛をするようなことになりましたならば、それこそまた世界大戦の準備を日本はやらなければならぬことが起るだろう。そういう一環としてこういうものが出されたんではないかということに対しまして、国民が種々の疑いを持っている。ですから、それについてここで議論をしても始まらぬから、議会政治は最後は国民の審判というならば、ここで国会を解散して、警職法是か非かを国民にお問いになってはいかがでございましょうか。
○岸国務大臣 同じような御質問を私は社会党の方から受けたのであります。私が現在のところ解散ということを考えておらないというのは、この問題に関する従来の審議の状況を見ますと、ほんとうに内容に入って十分な審議を尽さぬ、国民が審判するに必要なような審議が従来まだ行われておらぬと思います。私は、この段階においてなお十分な御審議を願い、そういう必要があるならばこれを決するにやぶさかではございませんけれども、現在の段階においては、そういう状態ではないということをお答え申し上げましたが、今なおそう思います。
○猪俣委員 あなたも御存じのように、日本の終戦前における暗黒史を色どりましたところの治安維持法、これによって日本の運命は今日のごとき数百万の青年の命を落すような戦争にした。これが法的中心になったと思う。治安維持法、これによってすべての言論、集会を圧迫してきた。このわが国の暗黒政治の一大人権じゅうりん、人権じゅうりんの暗黒史を作りましたところのこの治安警察法、これが大正十四年二月二十三日特別委員会にかかりましたときに、時の小川司法大臣は何と言ったか。彼は今皆さんが言うことと同じようなことを言っている。歴史は繰り返すと申しますが、私は実に驚いたのであります。やはりこの法律はみんな国民がまだよく知らぬために反対しているのであるが、労働組合や新聞記者が反対しているのであるが、だんだんこの内容がよくわかってきたならば、必ずこれに賛成するに違いない。共産主義者であろうが、無政府主義者であろうが、言論は自由で、どんな学者が意見を発表しようが、そんなことは決して罰するものじゃない。だから社会、国家のためにこの法律に賛成してもらいたい、こういうことを申している。政府当局が法案を出すとき、法案を通過させるときに説明する言葉なんというのは、あほだら経みたいなもので、こんなものは何の意味もなしません。その後、学者の意見の発表どころか、共産主義に関する文献を持っておる者さえ全部引っくくられたじゃありませんか。われわれはさような苦い経験を持っておる。だから諸君が今口先で、これは一々説明すれば国民は納得するなんと言ったって、そうはいかぬのです。同じようなことをおっしゃったってだめである。だからなおこの先あなたに保障を要求しますが、関連質問が待っておりますから、この辺で……。
○志賀(義)委員 ただいま猪俣委員から憲法に関連しての総理に対する質問がありました。それに関連しまして、その問題だけに限って伺いたいと思いますが、ブラウン記者に対しては申すまでもなく、新聞発表もそうですが、衆議院の本会議や委員会においても、岸総理は憲法改正論者であるということを明言しておられますが、この改正論という考え方は、総理になられてから——今の内閣には非常に憲法違反の行為が多いのですけれども、それを弁護するために改正論者になられたのか、つまり首相になられてからそうなったのか、その前から一貫して憲法を改正すべしという意見をお持ちになっておったのでございますか、その点をまず伺いたいと思います。
○岸国務大臣 私が憲法改正論者であるということは、総理になりましてからそういうのじゃございませんで、その前から私が改正論者であることは、あまりにも社会で周知の事柄でありまして、急に総理になってそういう説をとったわけではございません。
○志賀(義)委員 それは実は念を押しておく必要がありますのは、ここに昭和二十九年十一月五日付で自由党憲法調査会案日本国憲法改正案要綱、これはあなたが会長としておまとめになったものでありますね。そうすると、つまり前から持っておることは周知のことであるといわれたからには、ここにあなたが会長として責任を持って主張されておること——これは若干の文句の相違がある。以前は社会の秩序と公共の福祉というのが、今度は公共の安全と秩序というように変っておる。若干の字句の違いは別として、信念としては一貫したものをお持ちなのでございますね。
○岸国務大臣 具体的に改正の内容につきましては、その後におきましても、私はいろいろな検討をいたしております。しかしながら、私が憲法改正論者であるということは終始一貫しております。
○志賀(義)委員 そうすると、自由民主党の総裁として、また総理として、こういうふうに天下に公表された改正案の内容については、当然今でも責任を持っておられるものと思いますが、この中にはこういうことが書いてあります。現行日本国憲法の基本的人権に関する規定はすこぶるあいまいであるため、法律上、政治上幾多の問題が生じている。これはどういうことかといいますと、基本的人権保障の規定中、公共の福祉の制約を認めているのは、第十三条、第二十二条などであって、その他の権利及び自由については制約の規定がない。これは憲法第九十七条に照らしても明らかなことでありますが、さらにここには、しかし憲法の規定が区々になっていることは、解釈上の疑義を生じ、政治上裁判上の紛糾の原因となるから規定を統一する必要がある。そして特に第十一条と第十二条、先ほど猪俣委員から言われました基本的人権の規定については、どうも制限がないというので、あなたとしてはこれに対して制限を加えるということを主張しておられるのであります。今度の警察官職務執行法改正案もそうであります。憲法では基本的人権に制限を加えてはならない。ただ十二条で若干の制限がありますけれども、そのほかでは加えていない。ことに第九十七条では「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」さらに第九十九条には、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」というのに、今、公共の安全と秩序ということで、制限してはならない基本的人権に制限を加えられようとしておるのであります。それは一体憲法上許されることかどうか、その点をはっきり伺いたいのであります。
○岸国務大臣 この憲法の基本的人権に関する法文を見ますると、今お読みになりましたように、特に条文の中に公共の福祉というものを入れておる条文とそうでない条文とがあります。しこうして全部にこの憲法十三条がかかるものであるという説と、そうでない説とがございます。そうして判例はすべてのものにかかるという説をとっておるように私は記憶いたしております。こういう大事な基本的人権に関する問題を、そういうふうに学説が分れたり、論議がされるというようなことのないように明確にすることは、私は憲法を改正していく場合においては考えるべき問題であると思います。そういう観念に立って、今の私がまとめたところの何は御了解いただきたいと思います。
○志賀(義)委員 私は学者の説のことについて伺っているわけではございません。憲法の明白な条文について伺っているのであります。今度の警職法の改正案は、今私が読み上げました日本国憲法改正案要綱、これはあなたの構想が大体出ておる。これが憲法としてきまった場合には合憲になりましょうが、少くとも今の日本国憲法では、これは違憲であります。どうも今度の警察官職務執行法改正案が出ましてから、私ども議員が非常に困ったことは、今の日本の法大系を納めておるこの現行の六法全書と、戦前の六法全書と、あなたのお書きになったこれ、これを私は今後岸憲法と呼びますが、この岸憲法に基いたいろいろな今の憲法を侵害する法律、この三つがありまして、それを調べるのに非常に困るのであります。きょう司法試験法の一部を改正する法律案が衆議院は通過しました。これが法律になりました場合、今度は司法試験を受ける人は、岸憲法によってよいものやら、現行憲法によってよいものやら、戦前の憲法によるものやら、非常に困ったことになるのであります。どうもあなたの今日までいろいろ発表されたところを見ますと、あなた方の改正は、これをもう既定の憲法、岸憲法として、そこから発言なすっておるようで、これを日本国憲法と混同しておられるように思うのでございます。一国の首相がそういうふうにされると非常に困るのであります。なぜ私がこういうことを申しますかというと、この改正案の中には……
○鈴木委員長 関連は簡潔に願います。
○志賀(義)委員 簡単にやります。天皇に宣戦布告権を与え、国の安全と防衛では、戦争下の国防協力を国民の義務として、これは徴兵制に道を開くものであります。国民の権利義務は、公共の安全と秩序で自由に制限することができるようにしたいということがはっきり書いてあります。さらに国防の義務、順法の義務、国家に対する忠誠の義務を規定しておるのであります。そうして地方自治を破壊して内務省を復活する。それから司法権の独立ということも、政府に従属をさせる、こういうことになってあるのであります。というのは、国会を国権の最高機関でなくすということもいわれておる。これは内閣の権限を強める、こういうことになるのであります。こういうようになってきますと、岸さんは議会政治を尊重すると言われますけれども、やはりこれに対して重大な制限を加えることが、今度の警官職務執行法でも起ってきます。これは現行憲法に対して明白に違反することになるのでありますが、ここではっきり岸首相に申し上げたいことは、岸首相は、ブラウン記者が九条を廃棄すべきときが来たと放送したのに対して、自分はそうは言わない。第九条を含めて憲法を改正するということを言ったのだと言われますけれども、あなたが会長としてやられたものを見ますと、ただに九条だけでなく、全般にわたって根本的な改悪をやられようとしているのでありまして、これが現にあなたの会長時代にできたこれに基いて、これを憲法として続々行われているとしか見ることはできません。その点について御意見を承わりたい。あとは一問だけにします。
○岸国務大臣 ただいま志賀委員は、憲法がたくさんあるようなお話でありましたが、そんなことは絶対ないと思います。現行憲法一つであることは言うをまたないと思います。皮肉にお話しになったと思うのでありますが、もちろんこの憲法改正につきましては、世上にもいろんな意見があります。改正すべきにあらすという議論もあります。また改正すべしという議論もあります。これらを憲法調査会において十分に検討するということが法律において定められ、検討が行われておるということも御承知の通りであります。しこうして、すべての法律を現行憲法によって、またその憲法の範囲内においてすべての法律が規定され何することは当然であります。それ以外のものによって、あるいはそれ以外の考えでやるということは毛頭考えておりません。しこうして、基本的人権について、先ほど申し上げましたが、はっきりと公共の福祉ということをその各条に入れているものと入れないものとのあることに対しましては、学説上にも議論があり、また判例は、はっきりと十三条というものが全部にかかっているということを明瞭に、数回判例をいたしておると私は記憶いたしております。しこうして、従来の立法例もそういう観念で、私になってからでございません。すべて国会において承認を得てそういう立法ができております。今度の警職法につきましても、そういう意味におきまして、私は現行憲法に反しない範囲における規定である、こう信じておるわけでございます。
○志賀(義)委員 ただいま立法例が岸さんが総理になられる前からある、こういうふうに言われました。またこの警察官職務執行法改正案も、その一つになろうとしておるのでありますが、従来の立法例があるにもせよ、それが憲法に明らかに違反する場合——制限のない規定がある。基本的人権にまで影響を及ぼすものであれば、これは明らかに違憲でありまして、岸さんが総理としてそれを改められるこそ当然のことでありまして、従来に憲法の規定に反するような立法例もあるから、ここでもう一つつけ加えて重荷にこづけ、あるいはそれをさらに進めてもよいということでは、これは国民として非常に困るのでありまして、その非常に困ることをただいまも猪俣委員から申し上げておるのであります。どう考えても、現行憲法からすれば——あなたは十三条の規定なんかをちょっと言われましたけれども、そういう制限の規定がないものがたくさんあるのであります。それが今度の警察官職務執行法で制限を加えられるのであります。これは明らかに憲法に違反することでありますから、日本国憲法に従って、今からでもおそくはありません。こういう違憲の警職法を撤回し、——また問題は、これが次に安全保障条約にくる、また閣議決定したといわれておる防諜法、こういうようなものまでもやはりこれに関連して私ども心配しておるのであります。こういう一連の、明らかに憲法に違反するようなことはこの際やめていただきたい。それでありますから、まあ、あんまり素性のよくない若干の個人や団体、国会に来てビラをまくような人たちは岸さんのやられることに賛成しておっても、ほかの団体はみな反対しております。キリスト教協会の婦人までが反対しております。どんどんそれがふえております。このことをお考えになるならば、国民の信を問うて解散をされること、先ほど猪俣委員も言われたこと、これが必要であります。こういうことを取り上げて、あらためて国民に信を問う、これが必要でありますが、その点について伺いたいと思います。
○岸国務大臣 先ほど来申し上げておるように、現行憲法の解釈として最高の権威を持っておる最高裁の判決も、私が今申し上げているような解釈でございます。またそれに基いていろんな立法例も行われておることでございますから、私は、やはりそれに従っていくのが当然であると思います。また解散の問題に関しましては、先ほど猪俣委員にお答えをした通りでございます。
○猪俣委員 最後に、一点だけ総理大臣に要請いたしまして私の質問を終りたいと存じますが、これは本会議のときにも申し上げたのであります。アメリカで、一九五〇年、朝鮮事変が起っている際に——これは九月でありますから、すでに朝鮮事変のあとである。共産主義団体取締りのためにマッカラン法なるものが国会で審議通過したのでありますが、時の行政権の首長でありまするトルーマンは、これに対して拒否の教書を送りました。反対をいたしました。その長い切々たる人権擁護の言葉にわれわれはうたれるのでありますが、彼はその結末において、この法案で使用されている言葉は非常にばく然としているので、その結果は、共産主義者では絶対にない、忠誠な市民の合法的な活動を処罰する結果になる可能性が多いのである。こういうことで結局は、かような治安に関する取締り法というものは、一般人権の侵害になるということで、この警察権の最高責任者は国会を通過した法案に反対しているのであります。私は、なおトルーマンがアメリカの弁護士連合会に送りましたる人権擁護の論文を読みましても、実にアメリカの伝記である自由を尊重し、言論を尊重するという気魄が満ち満ちております。私は、警察権の首長が、最高の権力者が、人権というものに対してかような謙虚なるところの自省をするという観念を持っているならばいいと存ずるのでございまするけれども、どうもあなたが自民党の諸君に要請している態度を見ると、まるで東郷連合艦隊司令長官が、皇国の興廃この一戦にありというような激励をなさっておるところを見ると、ますます私どもは心配にたえないのでございまするが、今、御存じのようにこの国家多難の際に、まるで国論が沸騰しておるようなときであります。外交問題についても、重大な問題が山積しておるときでありますので、私は総理大臣が、このアメリカの政治家の人権擁護に対する態度も考えられまして、公共の安寧なんというあいまいな言葉を含んでおりまするこの警察権の拡張に対しまして、もっとよくお考えになって、これを撤回なさることが、ほんとうにわが国のためにいいことじゃないかと考えるのでございますが、そういう意思はあなたは毛頭ないのであるかどうか。最後にこれをお尋ねして、私の質問を終りたいと存じます。(拍手)
○岸国務大臣 私は、今回提案をいたしましたこの警職法の改正は、年余にわたって公安委員会において審議をされ、検討され、最近における社会事象等を公安委員会においてもいろいろと検討をした結果、こういう規定が必要であるという結論に到達したものであり、政府もまたその結論を是と信じて提案をいたしたわけでありまして、十分御審議をいただき、建設的な御議論に対しましては、あくまでも謙虚な気持でこれを傾聴いたしますが、これを撤回するというような意思は持っておりません。どうか十分御審議の上、これが成立するように御協力を切にお願いいたします。(拍手)
○鈴木委員長 大貫大八君。
○大貫委員 先ほどから伺っておりますと、この改正によって戦前に返るというようなことは杞憂である、こうおっしゃっておるのであります。しかし、私は過去三十年、私の皮膚で感じましたことは、警察というものは一たび権力を付与しまするならば、おそるべき乱用をやるという生きた経験をしております。そこでこの法律案というものが憲法に違反するものであるということでございますが、憲法の保障する基本的人権をほとんどじゅうりんし尽すのがこの改正法案であって、この意味においては私は戦後最大の悪法だと思います。そこで私は憲法違反の立法として一般的にこのような違反があるという事実についてまず岸総理から伺いたいのでありますが、まず根本の問題として総理にお伺いいたしたいことは、憲法の保障する基本的人権というのは、原則として法律をもってしても今の憲法では制限ができないというのが建前のように私は考えております。それが正当な憲法の解釈だと思っております。この点についてまず首相の見解をお伺いいたします。
○岸国務大臣 言うまでもなく、基本的人権を、法律は何でもできるという意味において、無制限に法律でもってこれを制限することのできないことは当然であります。ただ先ほど来いろいろと論議が行われておるように、この基本的人権というものについて、公共の福祉という調整の観念がすべてに働いておる。その範囲内における立法は差しつかえない、こう思っております。
○大貫委員 ところが今の憲法の二十一条について例をとってみますると「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」とあります。これを明治憲法と比べてみますると、明治憲法の二十九条には「日本臣民ハ法律ノ範囲内二於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス」となっております。日本国憲法には国民の権利について、法律の範囲内において、というような制限がございません。ところが明治憲法においては「法律ノ範囲内二於テ」とか、あるいは「法律二依ルニ非スシテ」とか、あるいは「法律二定メタル場合ヲ除ク外」というようないろいろな制限がございます。もちろんこの明治憲法といえども国民の権利を粗末にしていいということじゃなかったはずなんです。つまり国民の権利が大事だから、これを制限するのは法律でなければならぬということが明治憲法の命ずるところなんです。ところが、いつの間にか逆にこれを悪用いたしまして、法律をもってすれば何でも制限できるというような解釈をとってきたのが戦争末期の姿であったと思う。あなたも当時大臣としてその列に列しておったはずでありますが、まさに戦争末期の日本の政治というのは、憲法の保障する国民の権利というものは、もう法律ですれば何でも制限ができるというようなことになって、実は国民の権利というものがあってなきがものになってしまった。そこで今度の憲法では、このような過去の苦い経験を再びしないということで、特に基本的人権については「法律二依ルニ非スシテ」というような制限を加えず、特に公共の福祉という文字だけを使っておる。このことは原則として、法律をもってしては基本的人権を奪うことができない。私は、こういう原則を過去の苦い経験に徴して、この憲法というものが基本的人権については、くどいほどのいろいろな規定を設けたのはここにあると思うのですが、この点についての見解はどうですか。
○岸国務大臣 確かに御説のように、明治憲法と現行法との間に基本的人権の取扱いについての差異があることは言うを待ちません。御承知の通りであります。ただ今回の改正は、憲法二十一条には何ら関係ないのでありますが、二十一条についても最高裁の判決は、やはり公共の福祉という制限内ということを認めておりますから、やはり憲法十三条の関係における公共の福祉ということは、基本的人権のすべてにかかるものだと私どもは解釈をいたしております。
○大貫委員 ところが憲法をよくごらんになれば、二十二条と二十九条だけには、公共の福祉という制限が使ってあります。それ以外には、たとえば具体的な基本的人権について、思想の自由であるとか、良心の自由、あるいは信教の自由、集会、結社、表現の自由というようなものについては、あるいは学問の自由については、全く公共の福祉という制限を付しておりません。これから見ましても、公共の福祉という制限を受けるのは、二十二条と二十九条だけではないか。これは憲法学者の中にもそういう有力な意見がございます。私はこの憲法の精神からすれば、やはり明治憲法においていわゆる国民の権利が不当にじゅりんされた。この苦い経験を再び踏まない、こういう精神からこの憲法ができておると思うのでありますが、この点に対する見解はどうです。
○岸国務大臣 その点については、先ほど来お答えを申し上げておるように、最高裁の判決は、すべてのものに公共の福祉というのがかかっておるという解釈をとっておりまして、学者のうちにも、今お話のような説をとる者も少数はあるように承知しておりますが、多数の説は、やはり基本的人権というものに、あれに書いてあるといないとを問わず、公共の福祉というものがかかるのだというように解釈することは、今言っておるように、最高裁の判決を初め、私はそういう解釈をとるべきものであると思います。 ただそれではなぜ二十二条と二十九条にそういう字句を入れ、その他に入れなかったかという点に関しましては、あるいはこの規定の内容から見て、公共の福祉と関係が比較的深くて公共の福祉によって制限するようなことが比較的多い場合には特に入れておるのではないかと思います。しかし、基本的人権全部について、今の公共の福祉という制限を受けるということは、今申したように最高裁の判決もそうなっております。学者の通説もそこにあると思います。私どもそういう解釈をとっております。
○大貫委員 そうしますと、総理のおっしゃるように、公共の福祉というのが全部の条文にかかると、かりに総理の意見の通りといたして、それならば一体公共の福祉というものは何であるか。これは先ほども猪俣委員から再再質疑があった点でありますけれども、これはあくまで抽象的概念でありまするから、これは学者といえども定説がないのであります。そこで、この公共の福祉というような問題については、先ほど総理は、たとえば国民全体のできるだけ多くの人の基本的人権を平等に守るんだ、こういうふうな御意見があったのであります。しかし今日のようないわゆる階級の対立しておる社会なんであります。公共の福祉といったって、それが一律に国民全部の利害が同じではないのであります。たとえばこの法案の提出に当ってもしばしば例に出されたようでありますけれども、王子製紙の苫小牧の争議の例をとってもよくわかるのであります。これは経営者の側から見れば、非常に行き過ぎだというのであります。だから要するに労働組合がデモをやる、デモをやればそれは行き過ぎだ、その行き過ぎが公共の福祉に反するんだという考え方を——経営者側の資本家的な感覚から見ればそうなるのであります。ところが、逆に労働者の方から見れば、経営者の方が不当に労働慣行を無視して労働協約を結ばない。 〔鈴木地方行政委員長退席、園田社会労働委員長着席〕 あるいはまた労働者の中から誘惑をして第二組合を作って、不当労働行為にひとしいようなことをやってのける。こういう労働慣行を破るところの経営者の強引なやり方は、労働者的感覚から見れば、このこと自体が公共の福祉に反すると言わなければならぬと思う。公共の福祉というものは、たとえば道路交通のように、国民全部が利害を同じゅうするようなものもありましょう。ところが、今のような事労働問題なり、政府の施策を批判して勤評問題について戦うというような場合に、政府の言うことを聞いたのが公共の福祉で、反対した者が公共の福祉に反するんだというふうな考えが出てくると、これは大へんなことであります。一体公共の福祉というのは何をいうのですか。
○岸国務大臣 今おあげになりました苫小牧の問題につきまして、われわれが行き過ぎだと言っているのは、決して労働争議そのものだとか、ストライキそのものが行き過ぎだと言っているのではございません。御承知のように、裁判所の決定を実行させないというようなことは、私どもは行き過ぎであると思うのであります。そうして先ほど来いろいろ公共の福祉ということについて議論がかわされておりますが抽象的な概念ではありますが、私どもがこの警職法の改正でねらっておるのは、基本的人権というものは、法秩序その他のものから見て一部の人々じゃなしに、できるだけ広く、国民何人といえども基本的人権の侵されないような社会、おのおのがおのおのの自由を享受して平穏な生活ができるような社会を作り出すということがわれわれの目標でなければならぬと思う。警察の目的も、そういうものを妨げもしくは乱すものを事前になくし、法律で定めておるところの違反事件が出てくるならば、その事態を取り締っていく、こういうことが行われなければならぬ。これによってできるだけ多数の、われわれの観念から言えば、国民が平等に基本的人権が守られるようにすることが必要である、かように考えておるわけであります。最近の事例等に見ますると、私は、政府が定めたことに反対するのがすべて公共の福祉に反するとは必ずしも言えないと思います。そうじゃなしに、その事態から、平穏な生活をしている国民多数の人が、自分たちの人権が侵されたり侵される危険を感じたり、不安な状態に置かれることをなくすることが必要なのであって、それが公共の福祉を守るというゆえんであると考えておるわけでございます。
○大貫委員 何人といえどもという言葉は非常に美しいのでありますけれども、現実の社会において、すでに相対立する階級が実在することは今日の否定できない事実なんです。経営者の利害と労働者の利害は常に同じかというと、そうじゃないのであります。相対立するのです。そこで公共の福祉という美名をかりて、一部の経営者だけの利益を守るということが、あたかも公共の福祉であるかのごとく、これを乱用されるのであります。過去の例がみなそうなんです。私は苫小牧に現実に行って見て参りました。苫小牧の現状は、決して岸総理がお考えになっているようなものじゃないのであります。経営者の行き過ぎなんです。暴力団を雇ってどんどん正常な組合運動まで妨害をして、会社がいろんな組合員を誘惑して、組合員の弱いしりでも握っておると、お前は第二組合に入らなければ首を切るぞというような式で、いろんな卑劣な手段で第二組合を結成させ、そこに対立ができた。そこに警察官がいわゆる治安の維持と称して、会社のいうような治安の維持をやった。こういうふうに乱用される。道路を歩くように、みな左側なら左側を通行するというのは、利害が万人共通でありましょう。共通でない利害もあるのであります。そういう共通でない利害を、公共の福祉などという美名に隠れてこれを警察官に付与するということは、大へんな行き過ぎができ、乱用されるおそれができることを私は憂うるのであります。それがいわゆる基本的人権の侵害になるのじゃないか、こういうのであります。
○岸国務大臣 資本家、経営者と労働者との間の関係におきましては、憲法における労働団結権であるとか、あるいはまた労働組合法その他の労働に関する立法におきまして正当化されておる労働運動というものは法文に明らかにされております。その範囲内においては、一切これは正当なる行動であります。あるいは戦前におきましては、そういう法制上の根拠もなく不明確であった点も多々あったと思います。しかし戦後においては、きわめて明確な秩序というものが設けられ、その限界が明らかにされておりまして、その範囲内におけるところのものについて、われわれが干渉するとかそういうことをすべきものでないことは言うをまたないのであります。それはわれわれが法秩序を前提としてものを考える立場からいいましても当然であります。ただ、今これらのことについて常に懸念されることは、何か非常な乱用が行われやしないか、そういう法律の制度、建前はそれでいいけれども、乱用が行われやせぬかという点に対する懸念が各方面で論ぜられておるように思うのです。そして乱用の弊としてあげられるのは、いつも明治憲法時代の戦前の状態を引いて、こういうことで行われやしないかという一つの乱用の事態が言われるのでありますが、これは警察制度というものが、今日と戦前とは根本的に違っております。御承知の通り、公安委員会という合議体において警察というものが管理されておる。そうして都道府県には、それぞれ都道府県の警察があり、また公安委員会がありまして、決して戦前のように、内閣やあるいは内務大臣の管理のもとにこれが統一されておって、命令一下動くというような立場にないことを十分にお考え願いたい。また治安維持法やあるいは行政執行法の例が引かれますが、そのことは、その当時の事情から申しまして、国体の変革であるとか、あるいは私有財産の否認を目的として云々というような、はっきりした治安維持の目的が定められた立法があった。そういう実体法は、今日におきましては憲法のもとにおいて許されないものであり、またそういうものは一切ないのであります。従って私は、こういう規定がされれば、明治時代の警察国家やあるいは警察状態に返るという懸念なり議論は、現在の戦後の警察の状態、それから実際のあり方等をごらん下されば、そういうことはまさに杞憂じゃないかというふうに申し上げたわけであります。
○大貫委員 国家公安委員会があるから、今の警察は昔の警察のような乱用されるおそれがない、こういうお話なんですが、国家公安委員というものは、申すまでもなく政府が任命しております。選挙によって選ばれたものじゃないのであります。これは政府の言う通りにどうにでもなるといわなければならぬ。しかも現実の運営を見ますと、非常に無力であることは、何人もほんとうに率直にものを言えば否定することはできないと思う。こういう公安委員会がありますというのは一つの形式であります。やはり実体は、今日警察官というものが非常に大きな力が出てきておるということは、戦前以上だと思う。そこでたとえば行政執行法とか治安警察法に逆戻りする心配がないとおっしゃるのでありますけれども、むしろこの改正案が通りますと、私は、総理がどのようにない、ないと言ったって、実際にこれは出てくることは火を見るよりも明らかだと思うのです。たとえば行政執行法の話が出ましたから申し上げますけれども、戦前の行政執行法だって、条文だけ見れば非常にりっぱなのであります。つまり極東をした場合においては、その検束者は翌日の日没後には釈放しなければならぬとちゃんと書いてあるのであります。ところがこんなりっぱな規定がありましたけれども、当時の警察は、たとえばこいつはぶち込んでおけということになると、翌日の日没になると警察の門まで出して、それからまた再検束をする。そうでなければ、よその警察と連絡をとっておいて、よその警察の刑事が門まで来て釈放したのを連れていく。いわゆるたらい回しの検束あるいは検束の蒸し返し、こんなことで実は二十日でも三十日でも、当時人間を法律によるにあらずして拘束をした時代があるのであります。今の警察は大丈夫だとおっしゃるのですけれども、たとえば保護規定だって同じようなことができるのであります。これは自殺のおそれがあるから保護するというて保護を加えた。保護は二十四時間だとなっておる。ところが、これは行政執行法と同じことで、二十四時間以内に——もっとそれ以上保護したければ裁判官の許可状が要るのだ、こういうふうに法文はりっぱなんです。ところが、これを悪用しようとすれば、行政執行法と同じことができるのではないか。たとえば門まで出しておいて、そしてもう一日置くのだということだって、やろうと思えばできるのであります。そういうふうに乱用しようとすれば幾らでも乱用ができるのでありまして、そこで私は、この公共の福祉というような抽象的な概念で実は基本的人権を制限してはならぬということなのです。つまり憲法ではそれでよろしい。しかしながら、現実に国民の基本的人権を制限する場合には、具体的に一体公共の福祉とは何であるかという、これを列挙して明確にしなければ憲法違反だ、こう私は言うのでございます。その点についてどんなお考えですか。
○岸国務大臣 改正法案の保護の規定が乱用されて、かつての検束と同じようなたらい回しが行われはしないかという御懸念でありますが、これは今度の改正案をごらん下されば、非常に条件がしぼってありますし、そういうことはあり得ないのであります。また戦前にはなかった人身保護法等の制度もございまして、そういう乱用の事態が行われることは絶対にないと私は確信をいたしております。公共の福祉ということについて、明確に具体的な場合を制限列挙しろというお話でありますが、私は、それは事実上不可能なことではないかと思います。ただこの条文をごらん下さいますと、いろいろな方面からしぼってきておりますので、決して御懸念のような事態は出てこないと私ども確信をいたしております。
○大貫委員 あと二間だけで終りますが、本改正案の五条と六条に「公共の安全と秩序」という文字を使っておりますが、一体これは憲法にいうところの公共の福祉と同意義であるかどうか、この点をお尋ねします。
○岸国務大臣 法律用語の問題でございますから、一つ法制局長官から明確にお答えを申し上げます。
○林政府委員 公共の福祉の意義につきましては、この前地方行政委員会でお答えしたこともございますが、私どもといたしましては、これは一つの法律上の概念でございますが、平穏な社会公衆の共同生活が撹乱される、あるいはその正常な運行が阻害されるということを意味するものと考えておりまして、公共の福祉という観念よりは、むしろ限定された観念だと私は思っております。
○大貫委員 それではあとがつかえておるようですから一点だけお尋ねいたしますが、「公共の安全と秩序」というような言葉を五条、六条において使っております。ところが、現実に何が公共の安全と秩序に違反するかどうかという判断は、これは現場の警察官がすることになります。現場の警察官の判断によって公共の安全と秩序に反するかどうかということがきめられるのであります。ここに警察権の乱用の問題があるのです。一々現実の問題を見て、これが公共の安全と秩序に反するかどうかを国会に聞きにくるわけではありません。岸総理に尋ねに来るわけではありません。その現場の警察官の判断においてこれを決定するということになりますと、今基本的人権というのは法律をもってしても原則としては制限ができないはずなんです。その法律をもってしても制限を禁じられておるはずの基本的人権を、一現場の警察官の判断によってじゅうりんし、制限する結果が生ずるということになります。これは明らかに憲法十三条の、いわゆる立法上、国政上、基本的人権は最大限の尊重を必要とするというこの条項に私は根本的にこの法律は違反すると思うのでありますが、この点についての御見解はいかがでしょうか。
○岸国務大臣 この用語につきましては、いろいろ立法上の先例等もございまして、ただいま法制局長官がお答えを申し上げたようなことでございます。警察官の職務執行について、とにかく一つの権限を持ってある事態に処していく警察官の判断が誤まり、職権の乱用が行われはしないかという御懸念に対しましては、基本的人権の重大なことから申しまして、十分にその乱用を戒めていかなければならぬことは言うをまちません。しかして最近における集団的ないろいろな行動によって社会の静穏な共同生活が脅かされるというような事態につきまして、これが制止なりあるいはこれを抑止するということにつきましては、決して出先の一警察官が判断するということでなしに、警察の本部の相当なところで指令を出す、指揮するというようなことは当然であり、実際はそういうふうに行われると思います。またこの新警職法が出ました場合において、その取扱い等につきましては、十分にあらゆる場合を、実際われわれが従来出会っておるような事態というものを検討して、警察官の教養が行われ、また基本的な指示も行われることでありまして、もしも万一職権を乱用し、その判断を誤まった行動が行われるならば、職権乱用の刑事処分やあるいは行政処分によって厳にそういうことを取り締っていくということは当然であります。また一方、いろいろな人権保護の制度を活用していって、その乱用のないように十分な注意をすべきことは当然だろうと思います。
○大貫委員 ほかに岸総理に対する質問がたくさんあるそうですから、保留します。
○園田委員長 多賀谷真稔君。
○多賀谷委員 総理は、わが党の委員の質問の、かつての警察官その他の権利乱用について、それは明治憲法下ではないか、新憲法下にはそういうことはないのだ、立法の趣旨を曲げて運用をするということはない、こうおっしゃっておる。そう総理がおっしゃいますと、まず聞きたいのは、すでに保守党内閣において、最初の立法趣旨と違ったことが行われておる。その尤なるものは第九条の解釈であります。吉田総理は、自衛のための軍隊でも第九条違反だと、はっきり速記録に残っておる。それをその後曲解をして、第九条違反でない、こう答弁されておる。もっとも吉田さんは軍隊でないと言い抜けられたから、あるいは解釈上そういうことになっておるかもしれませんけれども、今の岸さんは軍隊だとはっきりおっしゃっておる。そうすると、まだ十数年を出ずして、日本のこの憲法がすでに間違って解釈されておるじゃありませんか。これをまず御答弁願いたい。
○岸国務大臣 憲法だけじゃなしに、法律の解釈というものはいろんな議論が出ることは、法律学というものが存在し、議論があるようなことであります。私どもは、憲法の解釈を間違ってしておるとは考えておりません。
○多賀谷委員 立法当時と全然違った解釈をなされておる。だからそれは単に明治憲法下でなくて、新憲法下においてもすでに憲法の解釈自体に問題がある、こういっておるわけです。もう少し明確に御答弁願いたい。
○岸国務大臣 われわれは、憲法の解釈につきましては、最高の解釈は最高裁で決定されることになっております。またそうでないものも、もちろんわれわれ行政に当る責任を持っております以上は、あらゆる点から検討いたしまして、正しい憲法の解釈という信念に立って解釈をいたしております。
○多賀谷委員 立法当時と変った解釈をされておる。それが非常に乱用されておる。私は単に憲法だけの問題ではないと思う。幾多の法律を指摘することができる。まず直接この問題と関係があります問題を取り上げてみたい。それは鉄道公安職員の職務に関する法律というのがある。この法律を出すときは、戦後荷抜きとか、あるいは行き先の札を変えるとか、こういう鉄道に特殊な犯罪が多かった。そこで当時のGHQも、警察権を拡大することは反対だといってがんばっておりましたが、運輸省は、何とかしてこの特殊な犯罪に対して、鉄道公安職員に司法職員たるの権限を付与してもらいたい。こういうことで議会に日参をして、鉄道公安職員の職務に関する法律というのが議員立法としてできたわけです。このときは、これは絶対に労働争議には介入させません、こういうことで法律が作られておった。でありますから社会党も当時賛成をした。ただ共産党だけは、今から考えれば賢明でありましたが、いやそういうことを言っておっても、法律ができたならば、それだけの権限を持ったものは必ず労働争議に介入するにきまっている、こういって共産党の諸君だけが反対したのです。ところが、二十五年に法律ができまして、もう二十九年には鉄道公安職員が逆ピケを張って、そして労働紛争に介入してきている。一体こういう事案をどういうようにお考えになりますか。
○岸国務大臣 法律の解釈の問題につきましては、法制局長官からお答えいたします。 〔「解釈じゃない」「総理大臣、答えろ」と呼びその他発言する者あり〕
○林政府委員 これは鉄道公安職員の職務に関する法律の第一条で、公安職員の職務の範囲がきめてございます。「日本国有鉄道の列車、停車場その他輸送に直接必要な鉄道施設内における犯罪並びに日本国有鉄道の運輸業務に対する犯罪」、これについての捜査権でございまして、この犯罪捜査につきましては、この範囲の犯罪に限られております。またその範囲の犯罪であればもちろん取り締るのであります。 〔「違う違う」「犯罪じゃない」と呼ぶ者あり〕
○多賀谷委員 あなたは立法に参画されていないからわからない。これには先輩の猪俣さんが直接参与されている。また本日見えている小木調査員が当時みずから起案している。その小木さんが当時の状態を、その後速記録によってわれわれ拝見すると、いや、労働争議とは全然別問題です、これは関与してはならないのですと、はっきりおっしゃっている。それなのに運輸省は鉄道公安職員を労働紛争の中に入れて、そしてみずからの守衛として使っている。これは重大問題である。われわれは今警職法を審議するに際して、こういうものをはっきりしてもらわなければ、いかに乱用しないとおっしゃっても、新憲法下において堂々乱用されているので、これについて、この事実を総理はどういうようにお考えですか。 〔園田社会労働委員長退席、鈴木地方行政委員長着席〕
○岸国務大臣 私はあくまでも、鉄道公安職員の職責は、ただいま法制局長官が言ったように、明定してある範囲に限らるべきものだと思います。従って、ただいまお話しのような事実につきましては、私は承知いたしておりません。私は当然法が明定している範囲内で職務を執行しなければならぬものだと思います。
○多賀谷委員 実は立法の過程で、労働争議には介入してはならぬということの条文があったわけです。しかし、これは当然ではないかというのでお互いに削った。まさか政府がそんな悪いことを考えないだろうというのでお互いに削って、その後どうか。四年たった後において、その鉄道公安職員の法律が乱用されている。そして司法職員としての権限を持って争議に入ってきている。しかもこの鉄道公安職員というのは、平素は鉄道管理局長のもとにある。でありますから紛争になりますと、会社における守衛的な役割をする。だから守衛的な役割をして労働組合と対峙する。いよいよ形勢不利であるとなれば、司法職員たるの権限を発動して手錠をはめる。まさに現実に岡っ引きと暴力団、両方二またかけたようなことをやっている。そして鉄道公安職員の職務の執行を妨害したということで、逆に労働者の方が公務執行妨害で訴えられる。一体こんなばかなことがありますか。こういう事実があるから、こういう事実をはっきりしてもらわなければ、いかに総理が警職法についてはそういう乱用はない。それは明治憲法下の話だ。こう言われても、私たちはどうも納得するわけにいかない。(「その通り」)
○岸国務大臣 今申しましたように、私大へん何ですが、事実を明確に承知いたしておりませんので、事実問題としては申し上げかねますが、鉄道公安職員の職務権限は、法律一条に明定されていることでありますから、その範囲を逸脱しているものはこれは職権乱用であって、そういうことをさせないようにしなければならぬと思います。ただ私は、ここに鉄道の人がおりませんので、その事実、実際の取扱いがどうなっているかにつきましては明確に存じません。
○多賀谷委員 今連合審査をやっておりますから、この席へあとから運輸大臣にでも来ていただいて、この事実を明白にしてもらいたい。そこでこれは単に鉄道公安職員の職務の執行だけではなくて、まだほかにもある。それは郵便法の七十九条に郵政職員が争議行為をやった場合の取締りの規定がある。これは実は争議行為をやった場合の取締りの規定ではないのです。普通の平常業務をサボつた場合の取締りの規定である。ところが、この郵便法ができますときには、これは争議行為とは関係ありません。争議行為をやりましても、七十九条は関係ありません、こう答えておる。ところがその後になって、郵便法七十九条違反であるといって、これを処罰をしておる。そうして今起訴しておるじゃありませんか。こういう事実が行われておる。これに対しては総理はどういうふうにお考えになりますか。
○岸国務大臣 この関係は、たしか郵便法が制定された当時と、その後において争議行為——制定当時は争議行為というものが認められておったのでありますが、後に争議行為というものを認めないという立法が別にできたわけでありまして、その関係でこの解釈がそういうふうになったもので、これは当然のことであって、立法の最初の趣旨を決して没却するものではない、私はかように思っておるわけであります。
○多賀谷委員 そこで争議をやれば、公労法の十七条違反としてあるわけです。公労法によって争議権を禁止されたものが争議をやれば、当然公労法の十七条違反として懲戒、免職、この規定を受けるわわです。そのほかに郵便法の七十九条の規定を受ける。私は、こういう法律は各国に見ることができないと思うのです。これはすなわち、争議権が本来許されておったけれども、国の政策によって、総理の言われる公共の福祉のために、争議権が禁止された。しかし、禁止されたけれども、それに違反をした場合は、最大は民事上の責任で、解雇という責任をとらなければならぬ。ところが、そのものが犯罪になるということは考えられない。いやしくも憲法二十七条で労働権を保護されたる人間が、その労務を提供しないというだけで——ほかに派生した事件があれば別ですが、そのことだけで犯罪になる、こういうことは理解できないわけですが、総理はどのようにお考えですか。
○岸国務大臣 法律的な解釈としては、言うまでもなく、この立法当時におきまして争議が認められておったのであるけれども、従ってその当時におきましては、争議から生ずるところのことに対しては、違法性がなくなるという扱いになることは当然であったわけでありますが、その後、立法によってそういう争議行為が禁止されるという場合において、一つの行為がある場合において、一面においてある法律に抵触し、他の面において他の法律に抵触するというような事例は、たくさんあるのでありまして、私は法律の改正から当然来ったところの結果であると思います。
○多賀谷委員 私は、二十世紀後半の労働法には、そういうことは見ることができないと思うのです。民事上の責任を負えばたくさんです。それ以上刑事上の責任を負う——いやしくも一つの行為が、もとは犯罪ではなかたっけれども今度は犯罪になる、こういうことはあり得ないと思うのです。これは一体どういうようにお考えですか。もし犯罪とするならば、今の問題になっております警職法の五条の犯罪に入るかどうか。これをお聞かせ願いたい。
○岸国務大臣 多賀谷君の御質問でありますが、御承知の通り、ある場合において立法において犯罪としなかったものが、社会情勢その他の変更によって立法で犯罪とするということは、これはたくさん例のあることでありまして、今のお話の点につきましては、今申しましたような経緯から、立法当時の事情が変っておるということで御了承願いたいと思います。
○林政府委員 警察官職務執行法の第五条にいう犯罪になるかとおっしゃるわけでございますが、これは現行法とあるいは改正法と、いずれを問わず、犯罪は、まさにあるものが犯罪であればここに犯罪であります。あとの方の条件、これがかぶってくるかどうかによって、五条が働くかどうかという問題が残るわけであります。
○多賀谷委員 公務員が争議をした場合には、この五条の犯罪になるか。
○林政府委員 御承知の通りに、国家公務員の争議行為は禁止されておりますが、犯罪としては全部がなっておるわけじゃございません。つまり企て、あおり、そそのかしたという者については、犯罪行為になっております。ああいうものは犯罪であります。その以外のものは犯罪とはされておりません。
○多賀谷委員 そうしますと、私は重大なことをお聞きしたわけです。今までそういった犯罪は——なるほど郵便法あるいは鉄道営業法の犯罪も、身体あるいは、生命、財産には、若干関係ありますけれども、ウエートは公共の福祉である。なぜかというと、あなたの方は、公共の福祉ということで公労法の争議権を奪ったのですから……。そういたしますと、第五条あるいは第六条にいう公共の福祉に影響がある、公共の安全と秩序が乱されるおそれがある。こういうことになりますと、労働運動に重大な影響がある。しかも、それが立ち入りができるということになる。これは単に王子製紙のピケ、あるいは道徳講習会の阻止、こういった問題ではなくして、公務員の争議行為あるいはそれに関連する教唆扇動というものが犯罪ということになると、オルグに行ったり、あるいはそういう集会をやる。一つ今度は職場大会をやろうではないかということを言うならば、第五条が発動される危険がある。私は日本の労働法にきわめて大きな影響を与えると思いますが、どのようにお考えですか。
○林政府委員 いわゆる犯罪行為でなければ、もちろん問題ないわけであります。労働関係の行為は、一般に犯罪行為とされておらないわけであります。その範囲においては、もちろんここにいう犯罪ではございません。しかし特殊な公共の福祉の要請上、たとえば国家公務員法では、一定の争議行為を禁止しております。その中の特定の人のやるものを犯罪といたしております。また郵便法とか公衆電気通信法では、郵便業務、公衆通信業務という公共性のある業務の一定の範囲での行為は、犯罪といたしております。そういうものに触れる場合は、第五条にいう犯罪に結びつく犯罪になります。これに基いて警告、制止を行うかどうか、ここに書いてある条件がかぶってこなければできないわけであります。いわゆる立ち入り、通行の行為もそうであります。
○多賀谷委員 そうしますと、公務員が職場大会をやったり、あるいは政府のいう違法行為ということになれば——一斉に有給休暇をとる場合も違法行為とおっしゃっておるのだから、そういう場合においては、じゃやろうじゃないかということになると、それは六条の立ち入りあるいは五条による制止、こういうことが発動されるおそれがありますね。そういうような状態になるでしょう。
○林政府委員 今おっしゃったようなことだけで直ちにそうなるとは考えられません。制止の方は、ここにありますように、「人の生命若しくは身体に危険が及び、財産に重大な損害を受け、又は公共の安全と秩序が著しく乱される虞のあることが明らか」だということの条件があるわけでございます。単に話をしたということだけで、そういうことになるわけじゃございません。また六条の立ち入りにつきましても、「その危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、已むを得ないと認める」そういう場合に、「合理的に必要と判断される限度」、こういう条件がしぼってございますから、単に話をした、平穏で何らそこに公共の安全と秩序を乱すことがないものについて、すぐにな警察官職務執行法が働くものとは考えられません。
○多賀谷委員 しかし、今までは「公共の安全と秩序」というものはありません。でありますから、たとい鉄道営業法あるいは郵便法の違反が若干あっても、財産に若干支障があると考えても、これは重大ではありませんから問題にならなかったんですけれども、今度は「公共の安全と秩序」、こういうことになりますと、あなたの方は、公共の安全と秩序の上に立って公労法で争議行為を禁止されておる。そうすると、このままでいきますと、今までは、そういうことに対しては制止も予防もあるいは立ち入りもできなかった。ところが、今度はできるという状態になるではありませんか。これはどうですか。
○林政府委員 職員組合の行為、ことに争議行為を禁止するということが、公共面からの要請から来ていることは御趣旨の通りでございます。しかしここの五条、六条でいっております公共の安全と秩序という観念は、先ほどもちょっとお答えいたしましたが、もっと実は現実的な問題でございまして、現実にその平穏な社会生活が乱されるか乱されないか、そういう現実性がなければもちろんこの問題は起って参りません。それからもしそれがさらに著しく乱されるおそれがあるということが明らかである、そういうこと、それからさらに急を要するという要件があるわけでございますから、立法によって争議行為が禁止されたから、あらゆる争議行為に関する相談がすべてここの制止の対象になるということはあり得ないと思います。
○多賀谷委員 私はすべてとは言っていないです。一つでもあったら大へんですよ。ですからあり得ることがあるでしょうかと聞いておるのです。
○林政府委員 先ほどおっしゃいましたような、単に平穏に話上合いをしているというだけなら、おそらくこの五条に当ることはないわけでございます。
○多賀谷委員 話し合いが平穏じゃないのですよ。決議をしたことがきわめて重大なことなんです。話し合いじゃないのです。話し合って行なった実行というものがきわめて重大な影響を及ぼすのです。ですからこういう事態になると、当然五条とかあるいは六条が発動される、こういう状態になるでしょう。
○林政府委員 警察官職務執行法全体が、いわゆる行政法学で申します行政上の即時強制の規定を具体化したものでございます。急迫した危険な状態を排除するということに中心点があるわけであります。従いましてその見地から、単に決議されたということだけでこの五条が働く余地はない。現実にこれが具体化される一歩手前ということで、しかもここにそれが公共の安全と秩序を著しく乱すおそれがある場合、それから急を要する場合、そういう要件でございますから、これはよほど現実的になって参りませんと、この要件は働かないわけであります。
○多賀谷委員 そうすると、現実的にそういうおそれがあれば当然法律の発動がされるわけですね。
○林政府委員 争議行為すべてがもちろん犯罪となっておるわけではありません。公務員の争議行為でも、もちろんあるものだけでございます。そういうものがここの要件に当るか当らないか、よほど当る場合においては、この制止ということは当然問題になるわけでございます。ここにいう、公共の安全と秩序が著しく乱されることが明らかである、しかもそれが急を要する、そういう状態になって参りました場合には、この制止という行為はもちろん働くということでございます。それはそれのみならず、現在においては、それが行われた場合にはもちろん犯罪になっておりますから、今までにもいろいろ捜索が行われておりますが、その一歩手前においては制止ができるわけでございます。
○多賀谷委員 わかりました。そういたしますと、今まではできなかった公務員の争議あるいはまた公労法の職員の争議というものに、第五条及び第六条の発動がなされることがわかったのです。 そこで私は総理にお尋ねいたしたいのですが、これは私はきわめて重大な問題であると思うのです。公共の安全と秩序が乱されるということで、本来持っておる基本的人権が法律によって侵害をされる。そうしてその一部の類型といいますか、そういうことまで事前に阻止されるということになりますと、日本の労働運動に与える影響は非常に大きいと思うのです。そこで私は、なるほど労働運動につきましても若干の行き過ぎがあるということも承知しております。しかし一々そういうものを芽をつんでおりましては、日本の民主主義は伸びないのです。やはり労働運動に行き過ぎのあるときは世論でたたく以外にない。それを今一つ一つ法律によって芽をつむならば、これは角をためて牛を殺すの愚です。私はそのことを総理に最後にお尋ねいたしたい。
○岸国務大臣 もちろんすべての法制、ことに今度の新しい憲法のもとにおいて、正当なる労働運動が一切この違法行為にならないことは、法律が明定しておるところであります。実際の現実の例を見ましても、ことごとくそれが正当であるかどうかということについては議論のあるような、あるいは行き過ぎであるという問題に関しましても、従来比較的に労働運動に関する限りにおいて寛大に取り扱われてきておることも、私は事態をそういうふうに認識をしております。それを私は必ずしもことごとくいかぬということを考えておるわけではございません。ただ、労働運動の名においてすることは一切すべてが違法性がなくなるという性格のものではない。これは多賀谷君よく御承知の通りだと思います。それにはおのずから限界がある。そうして社会秩序というものが守られていくことが、正当なる労働運動を健全に発達させる面からいっても望ましいことでありますから、ここに掲げてあるところの条件は、それが著しく不法であるとか、あるいはそれが明らかな場合であるとか、それが急迫しておるという幾多の制限を設けておりますから、今多賀谷君の御心配になるような、労働運動を、日本の民主主義発達のこの過程において芽をつむというような性格を持つものではないと私は信じております。
○多賀谷委員 私は、第一点においては、公労法の職員組合あるいは職員が争議権を奪われておるけれども、その争議行為というものは民事上の責任だけでたくさんである。それをそのまま犯罪にするということはあやまちである、第一にこう考えております。第二は、総理は——それは法律を作ることは簡単でありますし、法律を作ればあるいはそれはおさまるかもしれません。しかし、それだけでは私は政治というものはいかないと思うのです。やはりそういった若干の行き過ぎがありましても、日本が今までとってきました社会運動あるいは労働運動の歴史を振り返ってみれば、一々そのたびに法律で弾圧しておったのでは、日本の民主的労働組合というもの、あるいは民主的労働運動というものは推進できないと思います。このことを私は総理に十分に考えていただきたい。このことをお願いいたしまして質問を終ります。
○鈴木委員長 滝井義高君。
○滝井委員 独裁主義者が、自己の意思を貫くためには、必ず権力の背景というものを持つことは、東西の歴史がこれを示しております。最近の岸内閣の姿を見ると、そういう状態が客観的に出ておるということを、日本の国民の九割九分までがそういう見方をしておるようでございます。岸総理が深夜静かにおのれの耳を傾けてみればそういう民の声が耳朶を打つのじゃないかという感じが私はするのでございます。今回、岸内閣が八日の日にこの警職法を出すことによって、一体この法律にだれが賛成をしておるでしょうか。一握りの与党の議員諸君と、そして日経連と経団連というこの二つの団体以外に、一体だれがこの法案に賛成しておる者がありましょうか。与党の領袖の中においてさえもが、この法律というものは大へんなものだ、何とか考えなきゃいかぬという論が現実にちらほらと新聞の中に出ておるということは、これは明らかにすでに岸さんの身辺にもそういう日本の政治を思う良識ある声が起りつつある状態なんでございます。あなたは、今わが党の議員が血涙下る勧告をしたにかかわらず、これを撤回しようとしておりません。そこで私はあえてなお質問をしなければならぬと思います。 一体岸総理は、あの上野の科学博物館において行われた道徳教育の講習において、受講者が乗ったあのバスの前に、若い学生の諸君が身を挺して飛び込もうといたしました。その飛び込もうとした学生を、全学連であり、共産党であるといって、そしてその学生を非難するだけで、一体日本のこの姿というものがよくなるでしょうか。こういう学生が、身を挺してあの、ハスの前に飛び込まなければならなかったその原因は、一体どこにあるとあなたはお考えになりますか。
○岸国務大臣 私は、最近の社会事象を見まして、非常に憂慮にたえないことは、私どもは、真の民主主義を確立するために、あらゆる人々の静穏な社会生活を守っていかなければならない。そこに、民主主義からいえば、当然われわれが一つの民主的にきめられたところの法秩序というものを守ていくということによって、われわれの多数の共同生活というものが静穏になってくるのだ、こういう前提に立っております。それを実力により、あるいは暴力によって妨げようとする傾向がいろいろと出てきていることに関しましては、私は、静穏な社会共同生活を守り、民主主義を貫いていく上からいって、まことに憂慮にたえないと思います。これらの考え方が、もちろん一つの考えとして共産主義の理論を信ずる人もありましょう、あるいはこれに反対する人もありましょう、これは思想の自由である。しかし、それが行動に現われて、社会生活の静穏を乱すという事態がくるときにおいては、われわれは民主主義を守り、また社会の平穏なる共同生活を守るという意味において、ある程度これに対して防衛をしなければならぬという事態を考えざるを得ないのであります。そういう意味において、ああいう事態に対しては、はなはだ遺憾と考えておるわけであります。
○滝井委員 ああいう事態が遺憾であるということたけでは——そういう事態を、一体いかにして日本の政治を左右するあなたが防止しようとするのか、これは遺憾ではだめなんです。具体的にこれを示してもらわなければなりません。どうも具体的に示し得ないようでありますが、さて今回出ております警察官職務執行法——現行法は、昭和二十三年の七月十二日に成立をした法律第百三十六号でございますが、この原案が衆議院に提出をせられたときにおきましては、その原案には、今と同じようなものがあったのでございます。そしてそこで非常に大きな修正を受けたのでございますが、あなたはこの法案を出すに当って、あの現行法が提出をせられたときに、一体どういうような修正を、この国会の意思によって、九千万国民の意思によって受けたかを御存じになっておると思いますが、どういう点が修正を受けましたか。
○岸国務大臣 詳しいことは係からお答えをしますが、私の承知しておる範囲内におきましては、第二条の規定が修正になったように記憶いたしております。なお、正確な詳しいことは専門の方からお答えいたします。
○滝井委員 その通りです。第二条が修正になったのです。その当時の政府原案はいかなるものであったか、これは法制局長官でよろしい。
○林政府委員 現行法の第二条は職務質問の規定でございますが、その第二項の質問をするために、付近の警察署、派出所等に同行を求める規定に関するところでございます。現行法では「その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。」という規定になっておりますが、その二つの場合のほかに「善良の風俗を破壊しその他公の秩序をみだす虞があると認められる」ときは、そこで質問しないで警察署に同行を求めることができるという規定を除いたところが一番中心のところだと思います。それから第二条第三項に「前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律又はこの法律第三条の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。」という原案でございましたのを、「又はこの法律第三条」という保護の規定に関するところを削った。それからあと三条、七条等について若干の修正がございましたが、中心は今申しますように二条の二項、三項でございます。
○滝井委員 岸総理、今お聞きの通りでございます。第三条の職務質問に関して「交通の妨害となり、善良の風俗を破壊しその他公の秩序をみだす虞があると認められる場合」は同行を求めることができたのです。一体この規定を当時の国会の良識は何によって削ったのか、いかなる理由でこれを削ったと思う。これを一つ答弁願いたい。
○岸国務大臣 私、当時の審議過程を承知いたしておりませんから、想像で申し上げてはなはだ恐縮でありますが、これは警察官の権限をあまり広げ過ぎることは乱用になる、基本的人権を侵すおそれがあるという意味じゃないかと思います。
○滝井委員 その通りです。私は、岸総理のその答弁を聞いて、岸首相の良心の中にはまだ見込があることを見出しました。(笑声)当時日本の国会の良識は、これでは戦前の極度に乱用された行政執行法第一条の予防検束の復活を来たすおそれがあるということで衆議院では削除をされたのでございます。その削除された今から十年前の亡霊が、再びあなたの手によってこの国会に現われてきているのです。一体行政執行法第一条のあの忌まわしい予防検束が復活するおそれがあるというので国会の良識が削ったものを、なぜ今「公共の安全と秩序」という別な言葉をもって復活されなければならなかったのかということです。これを一つあなたは今の良心をもって明白に答えていただきたい。
○岸国務大臣 今申し上げたように、削った場合において、あるいは従来行われておった予防検束というようなことを乱用された場合において、そういう事態が起きはしないかということのおもんばかりだろうと思いますが、しかし今度の警職法の改正におきましては、そういう予防検束等のおそれのあるような規定はございませんから、その点は私は御安心を願いたいと思います。
○滝井委員 その点につきましては、いずれ一般質問のときにわれわれの見解を述べます。時間の関係でまだあと二人おりますので次に移りますが、今回の改正の中における、特に私たちが注目をしなければならぬ点は、四条の二項における「公安委員会は、必要と認めるときは、他の公の機関」、これに「適当な措置をとることを求めることができる。」ということになっておる。岸総理は、この「他の公の機関」の中に現在の自衛隊が入るとお考えになっておるのかどうか。
○岸国務大臣 ちょっと法律の解釈でございますから、専門家からお答えいたさせます。
○滝井委員 ちょっと待って下さい。自衛隊法においては、自衛隊のつかさを握っておるのはあなたなんですよ。自衛隊の出動というものは、内閣総理大臣によって左右されるものなんです。その内閣総理大臣が、出動を求められたときに、出ていくかどうかの判断ができないのじゃ大へんですよ。あなたは国防会議の議長ですよ。そういうだらしのないことで、こんな大事な法案を出せますか。この法案の中で一番大事なところじゃないですか。
○岸国務大臣 もちろん自衛隊の行動につきましては、自衛隊法が明らかに定めておるところでありまして、その条件に従って行動すべきことは当然でございます。それがほかの法律によって動かされるということはないと思います。
○滝井委員 そうしますと、「他の公の機関」には自衛隊は入らない、こう解釈して差しつかえありませんか。
○岸国務大臣 法律の解釈でございますから、専門家からお答えを申し上げます。
○林政府委員 これは「公の機関」という言葉でございます。「公の機関」というのは、文字通り国、公共団体あるいはこれに準ずる機関を含んだ観念と思います。しかし、かりにそういう機関がここから要請されましても、当該権限を持っていないところに要請されても、その機関は何もしようはないわけでございます。従いまして、ここでいっておりますのは、当然何らかのここに当るような権限を持ち、あるいは行動をなし得るものに対する要請を目途として書いたものと私たちも考えます。自衛隊の場合には、御承知のように治安出動については要件がございます。しかし、災害派遣に対しては、直接防衛庁長官等に要請する場合のものもございます。これが災害派遣の要件に当るかどうかという問題がございますけれども、自衛隊の出動はもちろん自衛隊法の規定によって行われるものであり、この第四条第二項の規定があるかないかによって左右されるものでは全然ございません。
○滝井委員 他の公けの機関に適当な措置を求めることができるわけなんですから、その適当な措置を、他の公けの機関の中に自衛隊というものが入って求められることになるかどうか、こういうことを聞いているのです。だから入るか入らないか、それを言って下さればいいのです。
○林政府委員 先ほど申し上げました通りに、適当な措置を求めるのは、求められてそれについて適当な措置をなし得る権限を持っている、あるいはそのなし得る行動を持っているものでなければ、この規定の意味をなしません。従いまして、そういう権限を持たず、あるいはそういう手続が違うものは、ここでは結果として入ってこないわけでございます。そういう意味におきまして、防衛出動あるいは治安出動の問題については、自衛隊法の要件と、ここに書いてあることは違いますので、当然、自衛隊法に書いてある要件以外にここで要件を付加したことはございません。
○滝井委員 そうしますと、この「公の機関」の中に自衛隊は入っていないと解して差しつかえありませんか。そこらをはっきり言って下さい。
○林政府委員 言葉の問題として、「公の機関」というのは、それだけの言葉をとれば国、公共団体の機関あるいはそれに準ずるものすべてを含んでおります。従いまして、それが入ると言っても、入らないと言っても、実は先ほどから言いましたように、自衛隊の出動の要件は自衛隊法できまっておるわけでございまして、これに何ら付加したものではない。従って、この規定があったから、なかったからということで、自衛隊の権限が一つも増減するものではございません。
○滝井委員 私は、自衛隊の権限を聞いてはおりません。この条文における「公の機関」の中に自衛隊が入りますか、入りませんかと聞いておるのです。それだけ聞いておるのです。
○林政府委員 この「公の機関」というのは、もちろん国あるいは公共団体の機関という意味のことだと思います。国、公共団体の機関とは何かということは、お考えになれば当然わかることだと思います。
○滝井委員 それでは岸総理にお答え願いたいと思います。今の答弁から岸総理はいかに判断するか。この「公の機関」の中には自衛隊が入るか入らないか。一つ岸総理の責任ある答弁をいただきたいと思います。
○岸国務大臣 この規定の適用の上からいえば、私は入ることないと思います。
○滝井委員 岸総理は、自衛隊は入らないという言明をいたしました。そうしますと、自衛隊法の八十九条を一つ見て下さい。「警察官職務執行法の規定は、第七十八条第一項又は第八十一条第二項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務の執行について準用する。この場合において、同法第四条第二項中「公安委員会」とあるのは、「長官の指定する者」と読み替えるものとする。」こうなっておるのですよ。
○林政府委員 これは今おっしゃったこととは全然問題が違うわけでございまして、自衛隊が治安出動あるいは災害出動を——災害派遣は入ってないのでありますが、治安出動の場合において、自衛官が行い得る職権は警察官職務執行法を準用するということでありまして、この四条二項によって自衛隊が出動するとか出動しないとかいう問題とは全然別の問題でございます。要するに自衛隊法の規定によって出動した場合の自衛官の職務権限について警察官職務執行法が準用されるということでございます。
○滝井委員 そうすると、要請による治安出動、この八十一条を見ると、知事が要請したならば——公安委員会と協議をして内閣総理大臣に対して部隊等の出動を要請することができることになっておる。そうしますと、これは出ることになりますか。
○林政府委員 そういう事態があれば、当然内閣総理大臣に都道府県知事から要請があり、事態やむを得ないと認める場合出られるということは自衛隊法に書いてございます。その規定によって自衛隊は治安出動するわけでございますので、それは自衛隊法の解釈として当然なことだと思います。
○滝井委員 そうしますと、この「公の機関」の中には自衛隊は入らない、こう総理は言明された。自衛隊が行ったときには警察官職務執行法に準じていろいろなことをやるのですよ。そうすると、その行った国の機関というのは何になるのですか。この法文のどこに当ることになるのですか。
○林政府委員 どうも御質問の趣旨が私にはっきりしないのでございますが、自衛隊が治安出動した場合の職務権限は先ほど御引用になりました自衛隊法の八十九条でございますが、これは警察官職務執行法を準用しておるわけでございます。その中にある質問とか、保護とか、あるいは警告、制止、こういう規定によって自衛官は行動するということをきめたものでございます。それは四条二項によって出たものというものではないわけでございます。あくまで自衛隊法の七十八条、八十一条にございます治安出動の規定によって自衛隊は出るわけでございます。それはこの警察官執務執行法によって何もふやしても減らしてもおりません。
○滝井委員 そうしますと、天災が起ります。天災が起って、総理大臣の命令による出動もしない、それから知事の要請による出動もない、そして自衛隊自身の災害派遣もない。こういうときに、公安委員会が自衛隊に出動を求めたときはどうします。
○林政府委員 現行の自衛隊法には公安委員会が直接自衛隊に出動を求める規定はございません。その場合は、公安委員会が自己の判断で自衛隊の出動を求める必要があるとすれば、都道府県知事を通じてやることになっております。
○滝井委員 あなた方は、公けの秩序、善良の風俗が危機に直面をしておるときには、警察官が出てくるにもかかわらず、内閣総理大臣のもとにおける公安委員が危急存亡の緊急事態であるということを認めて要請しても、その場合には知らぬ顔の半兵衛をきめ込んで出ていかないということはおかしいじゃないですか。それは当然論理としてそうならざるを得ない。知事と協議した場合には出ていくが、しかし、公安委員自身が緊急事態——たとえばずっと南の方のいなかであって、知事もうっかりしておった。しかし、公安委員が先に知って、知事にも要請せずに直接求めたという場合に、出ていかないというならば、あなた方のいう公けの秩序を守ることができない。いわゆる人体が危機に直面し、財産が非常に障害を受けようというこの事態について、国は知らぬ顔をするということになるのですよ。
○林政府委員 御承知のように自衛隊法では、自衛隊が治安出動し得る場合を特定しております。七十八条は命令による治安出動でございます。八十一条は要請による治安出動でございます。七十八条の場合は、「総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合」、こういう場合にのみ命令による治安出動をするわけでございます。こういう事態があれば、総理大臣はもちろん治安出動を命ずるわけでございます。この場合の治安出動については、防衛庁長官は国家公安委員会と緊密な連絡を保たなければならないということがございますし、八十五条にも、「内閣総理大臣は、」「長官と国家公安委員会との相互の間に緊密な連絡を保たせるものとする。」という規定がございますので、当然こういう状態においては、防衛庁長官と国家公安委員会とは相互に連絡をすることが予想されております。 それから八十一条は、これはそういう大きな治安上の問題ではございませんで、もう少し小さいものと思いますが、八十一条では、「都道府県知事は、治安上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には、」「公安委員会と協議の上、内閣総理大臣に対し、部隊等の出動を要請することができる。」、これはまさにこの手続の規定によってやるわけでございます。警察力をもってしてもどうしても治安の維持ができないという場合における治安出動の要件は、この七十八条と八十一条しかないわけであります。今度の警察官職務執行法で、その要件をつけ加えたものでも減らしたものでも何でもないわけでございます。
○滝井委員 私は、つけ加えたとか、減らしたとかいうのじゃないのです。今のあなたのような解釈でいけば、これは常識で考えればもう「公の機関」の中に入っておることになる。ただ直接か間接かというだけのことなんです。知事と協議するかしないかという点だけなんですよ。だからこれが入らなければ、この法律ができたときに困りますよ。初めに岸総理が、これは入っておりませんと言ったので、どうもあなた方は、私が何かこう大きなわなでもかけてひっかけるんじゃないかと危惧されておられるようだが、そうじゃないのです。それでは、これは「公の機関」の中に入っていないということだそうでございますから、さよう了承をいたして、この四条の中の「事変」とは一体何かということです。この「事変」というものは一体何なんですか。
○林政府委員 この「天災、事変、」という言葉は、実はほかの法律にもたくさん使ってあるわけでございますが、「天災」は文字通り、いわゆる自然現象による災害でございます。「事変」は人為的なものによる災害を含んでおる、かように考えます。
○滝井委員 普通は天災地変と言うんです。地変です。たとえば自衛隊法の八十三条をごらんになると、「都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、」と、こうなっておる。ところが特にここに「事変」と書いてある。そこであなたの言われるように人為的なものというのは、たとえば「工作物の損壊、」あるいは「危険物の爆発、」という場合にしても、この爆発にも、自然的な爆発もあれば人為的な爆発もある。「事変」にもたとえばシナ事変という事変がある。だからここでいう「事変」とは一体どういうものなのかということなんです。それで「公の機関」というものには、ここに「事変」と書いておるので、「事変」ということになると、いわゆる命令による治安出動の場合でも、間接侵略その他緊急の事態というような場合があります。それから要請によるものでも、治安維持上重大なる事態というような場合があるわけです。こういうものはわれわれはやはり一つの事変だろうと思うのです。ある簡単な言葉で要約すれば事変だろうと思う。ところがあなたは人為的な災害を「事変」だと言われる。なるほど戦乱なんかは人為的な災害です。しかし、日本において、警察官が出ていく場合あるいは「他の公の機関」、つまり公安委員会が出動を要請する「事変」とは一体何なのかということです。これはもう少しはっきりしておいてもらわぬと、労働組合がワッショワッショやるのも、あれは人為的災害の事変だなんて言われた日にはかなわぬのです。「事変」とは一体何です。
○林政府委員 これは現行法にもある規定でございまして、今度加わったものではないわけでございますが、先ほど申しましたように、「天災」はいわゆる自然力による災害、「地変」という言葉も、おそらくこれも大体自然力による災害を意味する文字だと思います。「事変」は、それより広い人為的な治安状態の障害、こういうものを含んでいるもの、かように考えるわけであります。
○滝井委員 林さんは、きわめて抽象的な説明が得意で、抽象的なことで説明します。現在日本の一切のものは、そういう抽象的な言葉で具体的なことを片づけようといたしております。たとえば、国家ということでわたわれの基本的人権を制限しようとしたり、あるいは公共の福祉とか、公けの秩序、公共の安全というような言葉、あるいは平地に波乱を起すというその平地、こういうような言葉でわれわれの基本的人権を侵害するような状態がだんだん出ておるのです。こういう抽象的なことではなくて、もっとやはり具体的に法律というものは規定してもらわぬといかぬと思うのです。今言ったように、公けの機関といえば、われわれは国のいろいろなものもみな公けの機関だろうと思っておった。公けの機関は、この前の政府の説明によれば、国鉄とか、日赤とか、都道府県、市町村、こういうものが公けの機関だ、そうすると自衛隊は当然われわれは公けの機関と思っておった。ところが、きょうは公けの機関ではないとおっしゃった。そういうように何か自分たちが困ると、抽象的な言葉で片づけようとする。こういう性癖というものが岸内閣の病根なんです。今に、公けの秩序を守ることによって自分がだんだん権力を身につけようとするならば、公けの秩序によってみずからの首を締められることを私は忠告をして、私の質問を終ります。
○門司委員 関連して。一条だけ話しておきますが、岸さんは、さきにこの法律は自衛隊と関係がないとおっしゃいましたけれども、この前私申し上げましたように、八十九条は明らかに自衛隊が警察官職務執行法の中に含まれるのであります。御承知のように八十一条をごらんになれば、「都道府県知事は、治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には、」公安委員会と相談して、「内閣総理大臣に対し、部隊等の出動を要請することができる。」、こう書いてあるのです。これは公安委員会に相談してできるのです。ところが今度の法律の四条は、御承知のように公安委員会は相談をして、——県知事とは書いておりませんが、手続を経て「他の公の機関」にという、こういう文字を使っておるのです。従って手続をすれば、これは当然他の公けの機関が出てくるはずなのです。だから治安出動のことについては、この警察官職務執行法の四条の二項と、三つ並べると私はおわかりになると思う。それでも出ないというならちょっとおかしいと思う。治安出動の中に、知事の要請とちゃんと出ているのです。しかも公安委員会と相談しなければならない。公安委員会は知事の所管のもとにあるのですよ。従って、公安委員会が相談するところは知事なのです。公安委員会と知事が相談するか、知事が公安委員会に相談するかという条文上の差があるだけなんです。これはこの自衛隊法では、知事が公安委員会に相談して、そうして治安出動をお願いする、こういうことになっておる。今度の警職法の方では、事変が大きく起りそうな場合には、公安委員会が相談をしてということになっておるが、だれに公安委員会は相談しますか。公安委員会は単独には動けないのであります。 公安委員会がやはり知事に相談をして公けの機関にお願いするということになれば、当然法律が動いてきて、自衛隊が関連を持つものであるということは、三つの法律を並べればはっきりするのです。それでも関係がないということは、私は言えないと思う。
○岸国務大臣 私の申し上げたことは、この自衛隊が出動する場合は、自衛隊法にきめられておる手続並びに要件を必要とするのであって、今度の警職法の改正において、それを変更したり、それにつけ加えるところのものはないという意味において、この「公の機関」ということについては、事実上文理解釈として、自治体というものは公けの機関じゃないのか、あれは何だと言われれば、これは公けの機関、国及び公共団体の機関でありますから、それは公けの機関ですが、ここにおいて今お話しになっておるような、公安委員会が直接に自衛隊の出動や協力を求めるということは、われわれは考えていない。そういう意味においてここには入ってこないということを申し上げておるわけであります。その権限、条件というものは、すべて自衛隊法で定められておるところに従うべきである、こういうわけであります。
○門司委員 どうも総理の答弁は詭弁ですがね。なるほど警職法には、知事と相談をして治安出動を要請しようなんて書いちゃないのですよ。だから関係がない、こうおっしゃるのだけれども、この警職法の中にも、公安委員会はほかと相談をして出すことができる。知事という字がここには書いてないだけなんです。これは知事に相談すれば、いつでも知事は必要があると認めれば、総理大臣のところに要請するのにきまっているのであります。従って全然関係がないわけではございませんで、今総理の言われる、自衛隊法に定めた規定によって出動することがあると言われるならば、この警職法の改正は、それを動かし得るものであるということが、私ははっきり言えると思うのです。こういう手続がとられる。こういう手続がとられれば、いやがおうでも自衛隊法によって出動しなければならぬということになります。それが従前の法律は、事件が起って、そして事後処理について相談するということになっておりましたから、われわれは大して考えていなかったが、今度は危ないと見るときには事前に要請することができるとなっているところに、非常に大きな問題が伏在しておるのであります。もう少しよく実態を見て答弁をして下さいよ。
○岸国務大臣 私は、しばしば申し上げているように、また先ほど法制局長官もお答えを申しておるように、自衛隊の出動の要件及び手続は、自衛隊法に明定しておるところであって、それ以外にあり得ないということであります。従って、(門司委員「なし得るのですよ」と呼ぶ)いや、そういう意味において、公安委員会だけで自衛隊の出動を求めるというようなことは……。それでお話のように、今の自衛隊法におきましても、公安委員会との関係については、いろいろの規定で連絡をするようになっております。そういう意味において事実上いろいろな連絡をすることは言うをまちませんけれども、しかしその出動の権限については、要件はすべて自衛隊法によるものである。こういうことを御了解願いたいと思います。
○鈴木委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 私は、基本問題は時間がないから省略しまして、二、三お尋ねいたしたいのですが、そのお尋ねするのはやはり四条、五条に関する問題です。私もお尋ねしたいと思っていたのが、今たまたま問題になったわけですが、この自衛隊の出動の問題について、四条の「公の機関」というのを入れて、この自衛隊の出動を裏づけしたものではないか。従ってこれを拡大解釈して、ストライキの場合において、あるいは苫小牧の争議とかその他苛烈なストライキの場合において、自衛隊を出動するようにこれを改正するのじゃないか、こういうふうに考えておったわけなんです。今門司さんからも申されたように、自衛隊の出動は自衛隊法できまっておりますが、公安委員会が都道府県知事に要請をして、そして都道府県知事を通じて治安出動を要請した場合は出動してくるのである。従って、ストライキのような関係でも、これを乱用して事変というふうにくっつけて持ってきたならば、ここに自衛隊の出動の乱用まで及ぶのじゃないか、こういうおそれを私は持っていたわけなんですが、その点についてさらに御所見を承わっておきたいと思います。
○岸国務大臣 先ほど来私がお答え申し上げておるように、自衛隊の出動する場合及びその要件、手続というものは、自衛隊法に明定をされておりまして、その手続により、その要件をかなえることが必要でございます。それ以外に、本法の改正によって何らつけ加えておるところのものはないと御了承願います。
○坂本委員 それではお伺いいたしますが、北海道の苫小牧の王子製紙の争議に対して、自衛隊の隊員は出動しませんでしたが、自衛隊のトラック、テント等が出動し、北海道全道から集まった警察官の宿泊所に自衛隊の兵舎が使用された事実があるわけであります。苫小牧市民は、警察官の暴行弾圧を憎んで、市内の公設の施設である公民館を警察官の宿舎に貸すことを拒否したわけであります。従って数千名の警察官は、その宿がなくて自衛隊の兵舎に宿泊した。こういうような状態がすでにあるわけであります。そこで今度の四条の二項の「公の機関」というのに、これは自衛隊の出動も含ませるというような伏線を持ってやったのじゃないかと思う。そうすれば、現行法の四条二項は、公安委員会には事後報告でいいのですが、改正案では事前においてできる、こういうことになっているわけなんです。ですから自衛隊のこの出動を非常に憂えるものでありまするが、苫小牧の状態を見ましても、もっと苛烈なストライキが今後起るかもわからぬ。現在のような独占資本の状態が続くならば、労使双方の対立は遺憾ながら激化の一途をたどると思います。そういうような場合において、この警職法の四条の二項、これを乱用して自衛隊の出動を、いわゆる治安の動員を全然やらないという確信があり、やらないという当委員会におけるお約束ができるかどうか、その所見を承わりたい。
○岸国務大臣 しばしばお答えを申し上げました通り、自衛隊を動かすとか、自衛隊の出動の場合は、自衛隊法によってのみやります。この改正が、これに対して何らの変更を加えるものではないと御了承願いたいと思います。
○坂本委員 自衛隊法によってやるとおっしゃるけれども、先ほどから議論があったような解釈に基いてこれを乱用する危険を私は心配するわけなんです。だからそういうことは、今の総理大臣の答弁では、ないとおっしゃった。それじゃ、今後これを乱用を絶対やらない。こういうことを確信を持ってここに御発言できるかどうか、お伺いします。
○岸国務大臣 治安出動や災害出動等、自衛隊法に定めておる要件及び手続による以外は、絶対に自衛隊を出動せしめることはございません。
○坂本委員 あとは押し問答になりますから……。 次に、最近の警察官の集団暴力について首相の所信をただしたいと思いますが、警察官による集団的暴行事件は、本年夏の漁民を襲った本州製紙事件を初め、二十七、八年ごろから表面化してきておりまして、新聞に載らないものを含めれば数え切れないほどあると思うのであります。そのおもなものを捨ってみましても、昭和二十九年の春、妙義山の基地反対闘争における警官の暴力事件があったわけです。第二は、二十九年一月、国鉄本庁前の陳情に対する暴行事件、第三は、二十九年十月東京証券取引所争議におけるピケに対する暴力事件、第四は、砂川基地反対闘争における三十年九月、十一月、三十一年十月、三十二年七月の四回に及ぶ暴行事件、第五は、昭和三十年十月の死者一名を出した大高根基地反対闘争の農民にふるった警官の暴行事件、第六は、昭和三十二年国鉄広島に起きたデモ隊に対する暴行事件、第七は、やはり同年同月の国鉄門司でデモ隊に襲いかかった警官の暴行事件、第八は、昭和三十二年十月と三十三年五月、百里基地反対闘争で、農民及び支援の労働者に襲いかかり、多数の負傷者を出した暴行事件、第九は、昭和三十三年一月東京第一製本印刷の争議において出荷拒否のピケに対する暴行事件、第十は、本年二月福井鉄道の争議における警察官の組合員暴行事件、第十一は、本年三月春闘の中で、東京中央郵便局内における暴行事件、第十二は、本年六月十日本州製紙汚水問題で漁民に多数の負傷者を出した事件、第十三は、本年八月十六日の和歌山の民主教育を守る大会の際起きた社会党員、学生、労働者に対する暴行事件、第十四は、九月十五日勤評反対全国統一行動の際起された東京警視庁前、水戸における新聞記者暴行事件、第十五は、本年四月六日船橋市中山競馬場で争議中のピケに対し暴力をふるって、組合側四十三名、警官側十五名の負傷者を生じております。第十六は、本年六月九日和歌山勤評反対闘争に警官が出動し、ピケに対して実力を行使して、ピケ隊九十七人、警官側十一人の負傷事件、第十七は、本年六月二十九日山梨県で起った水争いに警官隊が出動し、農民十数人を負傷さした事件、第十八は、本年九月十六日法務省前における学生デモを取材中の新聞記者数名に対し、警視庁第一機動部隊員が暴行傷害を加えた事件、おもなものをあげてもこれだけあるわけであります。首相は本法案を出すに当って、このような警官の暴力を調査して本法案を提出するに至ったかどうか、その点についての所見を承わりたい。
○岸国務大臣 今おあげになりましたような事件は、その当時におきましても、それぞれ社会的にいろいろな関心を高めた問題でございまして、すべてのものにつきまして十分にその実情を調査し、その行き過ぎた事態に対しましては、行政処分その他によりまして、これを厳重に処分をいたし、将来そういうことのないように善処して参りたいと思います。
○坂本委員 この事件のいろいろの問題については、あとで青木公安委員長にただしたいと思いますが、もう一つ首相にお伺いしておきたいのは、こういうような暴行事件が起きておりまするについて、今回のこの警職法を成立さして、そうして実施されたならば、かような暴力はなさしめないところの確信がおありかどうか、承わりたい。
○岸国務大臣 私、こういう事態が起ってくることは、非常に遺憾な状態であることは言うまでもないのでありますが、それはむしろ職務権限の執行、職務執行について、従来の規定のように、ある程度の制止であるとか警告を発するというような、事前の措置がとられなかったために事態を悪化した事例も少くないと思います。従いまして、われわれはむしろそういうことをなくするためにも、ある一定の要件を備えて、決して基本的人権を侵害しないという厳重な条件のもとに、できれば事前にそれを制止しこれをとどめるならば、そういう事態が起らないことを実は期待をいたしております。しかしてその警察官の職務執行に当りまして、職務の乱用のないように、行き過ぎのないようにということにつきましては、従来もいろいろの努力をいたしておりますが、さらに十分にわれわれとして注意をいたして参りたいと思います。
○坂本委員 ところが、ただいまの首相の答弁と違って、このような事件の起ったときの警官のやり方を見ますと、警察官が実力を行使するときは、ほとんどが感情的になり、前後の見さかいがなく、相手が女でも容赦なく飛びかかってくる。相手が無抵抗にもかかわらず、そんなことはおかまいなしで、カシのあの警棒でなぐりつける。また手でなぐる、足でける、後方に向けた隊列の中に、いわゆるトンネルと申しまして、両方からやってトンネルのようにして、そのトンネルの中に引きずり込んで、足をかけて倒し、足で踏んだりけったりする。これは、私なんかがみずから砂川の際は見ておるわけであります。このトンネルの中が外部から見えにくいために、特にひどいことをやって、一般労働者、農民に対して負傷を与えるわけであります。かような事実を首相は知っておられるかどうか。そういうような事実を知って、この警職法を通過さして、単なる警察官の良心とかあるいは教育とか、そういうような抽象的なことでこのような警察官の暴力をなくすることができるかどうか、その点についてさらに御所見を承わりたい。
○岸国務大臣 警察官の職務執行に当りまして、行き過ぎやあるいは乱用の問題につきましては、十分その実情を調べて、これに対しては、行政処分その他の処分を行なって、そういう乱用や行き過ぎのないことに極力努めております。最近のいろいろな集団的な実力行使が、社会の多数の人の平穏な生活を妨害するというような事態が起りました場合に、これを制止し、これを阻止しようとする警官が非常に感情的であるというお話がございました。あるいは警察官ももちろん人間でありますから、いろいろな事態に対して感情的になることはあると思います。全然ないとは私存じません。また同時に、集団的なこの実力行使の側においても、その感情を刺激し、ずいぶん極端なことも行われておる事態も見のがすことができないのでありまして、すべてが警察官の行き過ぎや、あるいはこれにすべて責任を帰すべきような状態でもないことは、いろいろな場合におけるところの実情を調査した場合におきまして、はっきりなっておることであると考えます。私たちは、そういう事態を未前にないようにする、感情的にならない前にそういうことを抑制し、制止し、そうして静穏な社会生活を、共同生活を守っていくというようにしたいというのが、今回の警職法の改正のわれわれのねらっておるところでありまして、十分その点については御理解をいただきたいと思います。
○鈴木委員長 坂本君、簡潔に願います。
○坂本委員 労働運動についても、多少の行き過ぎがありましょう。しかし、多少の行き過ぎがあっても、警察官は権力を持っておるわけです。そうして、以上申し上げたような暴行をやるのが現実であるし、さらにこの警職法ができたならば、まだその犯罪が起るか起らないかわからない前に、予防だとかいってこれを排除するということになれば、憲法二十八条に保障された正当な労働運動を、警察官の手によって排除して、資本家の勝利に帰する。こういう結果になると思います。だからわれわれは、特に警察の暴力問題と、この警職法の問題について重大なる関心を持って、そういうことがないためには、これを撤回しなければならぬ、こういうような考えを持っているわけであります。 そこで、もう一つこれらの暴行事件の原因を見ますると、たまたま新聞記者に対して暴力を働いて表面化したが、一般の人の場合は、被害はさらに多いのであるが、ひどいときは、警察官がひどいことをしながら、かえって被害者を悪者にしてしまう、こういうのが現状であるわけです。かつて終戦直後に連合軍司令部から、警察官はみだりに労働運動などのデモに手を出すべきではない、こういう勧告が出たことは御存じと思います。その趣旨は、警察官がこの種の運動に介入することは日本の民主主義の成長を妨げる結果になることだからというのでありました。しかし、現在は労働争議中、特に戦う組織に対して集中的な攻撃をやる。会社、当局側と組合との交渉が好転しつつあるときに、いきなり警察権力を介入して、憲法によって保障された労働組合のストライキ権を無視して、行政権力、特に内務官僚が思うままに弾圧のイニシアチブをとる、勝手なことを行うというフアッショ的な特徴を現在持ってきておるわけであります。労働運動の考え方が、現在の岸内閣の政府によってさらに反動化して、この上にこの警職法の改正がここにありましたならば、正しい労働運動はほとんどできなくなる。具体的な問題については、あとで労働大臣にも質問したいと思いますが、こういうようなことを考える場合に、岸総理大臣は、今までのこのような行き方を改めて、ほんとうにこの警職法を通過さしても、そういうような問題が起らないような確信がおありかどうか、その点をお伺いしたい。
○岸国務大臣 私は、今まで警察官が職務執行の上において全然行き過ぎがなかったとか、乱用がなかったということを申しているわけじゃございません。そういう事態については、十分事情を調べて、それに対してはある場合には刑事処分あるいは行政処分によってこれが将来を戒め、そういうことのないようにするとともに、また、この職務執行に当るところの基準なり、あるいは判断を正当に妥当にするためのいろいろな教育施設や教養を高めるというような点についても努力をして参っております。しこうして、戦後における警察制度の根本的な変革等における警察官の素質につきましても、あるいは戦争直後におきましては、いろいろ素質の低下等もいわれておりましたが、その後漸次その素質も向上して参っておりまして、今心配をされるようなこの乱用の事態、旧憲法の時代に返るとか、あるいはその当時の警察官の姿を頭に置いての御心配は、決して今の警察官はそういう事態にはない。しかし、いかなる場合においても、乱用が絶無でない以上は、その乱用を十分に戒め、取締り、行き過ぎのないように努力することは当然でありまして、あらゆる面において、その点について私は努力するつもりでございます。
○鈴木委員長 お約束の時間が経過いたしておりますから、簡潔に願います。
○坂本委員 現下の状況は、日中国交回復、台湾海峡の問題、日米安全保障条約の改定、日ソ平和条約の締結、核兵器禁止、今回の警職法改正の反対、こういう問題で政府の政策に反対する国民大衆の全国にわたる反対はほうはいとして起っておるのであります。従って、このような状態を続けて参りましたならば、反政府の大衆行動はますます激化していくと思うわけであります。このような情勢に対しまして、警察官の全国にわたる集団暴行等——今、自衛隊の動員はないといわれましたが、岸内閣がいつまで続くかわからない。もし法ができましたならば、やはりできました法は、法の解釈としてその適用が行われていくわけであります。従ってわれわれは、現在のこの改正案の四条のような規定でいきましたならば、必ずや岸内閣の次にできた反動内閣は、自衛隊の動員までしてかり立てて、正しい大衆運動の抑圧に乗り出すということは、火を見るより明らかではないかと思うのであります。もしもそういうことになりましたならば反動政府と資本家と政府機関は、国民大衆と対立いたしまして、ここに国内的三十八度線を作るのじゃないか、ういうおそれがあるわけでありまして、このような見通しと考え方と現状の上に立ちましたならば、私は、この警職法は撤回されて、もっと国民大衆と——もちろん資本主義のもとにおいては、資本家階級と労働者、働く大衆の間には階級的な対立は除去することはできないのであります。しかしながら、これを政治の面に運用し、経済的の確立をすることはできると思うのです。だから、この際このような警職法は撤回されて、新たなる国家の建設に政府の施策を持っていかれる考え方がないかどうか、所見を承わりたいと思います。
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、自衛隊の治安出動の場合は、これは明らかに自衛隊法にその要件と手続をきめておりまして、この立法が何らそれに関係を持つものでないということは明言いたしております。また、自衛隊法をごらん下されば、きわめてその点は明瞭であると思います。今お話がありましたが、私どもは、先ほど来いろいろ御疑問に対してお答え申し上げておるように、この今回の改正は、私どもはむしろ国民の基本的人権を平等に擁護して、静穏なる共同生活を保つ上から見まして、こういう改正が必要であると、こういう考えのもとに立って提案をいたしたのであります。その内容につきましても、先ほど来いろいろお話があります公安委員会において年余にわたって検討いたして参ったのでありまして、またいろいろこれが乱用なりあるいは行き過ぎのないようにという御意見に対しましては、十分これを傾聴して、この運用に当るべきであると考えておりますが、この案を撤回するということは私ども考えておりません。この点は坂本委員と意見を異にしておりますが、ぜひ一つ御審議の上、成立するように御協力を願いたいと思います。
○鈴木委員長 この際暫時休憩いたします。 午後七時より再開するごとに致します。 午後六時十分休憩 ————◇————— 午後七時十六分開議
○鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を継続いたします。多賀谷真稔君。
○多賀谷委員 現行法の保護の対象は、生命、身体、財産でありますが、そのほかに公共の安全と秩序というのが、この新しい改正案には盛られておると思うのであります。そこで公共の安全と秩序を乱すところの犯罪というものの判定が、現地の警察官ではきわめて困難ではないか、こういうように考えるわけですが、青木国務大臣はどのようにお考えですか。
○青木国務大臣 抽象的な公共の安全と秩序という言葉は、警察官が判定にいろいろ迷うであろうというお話、ごもっともであります。そこでこの法案におきましては、公共の安全と秩序というのにさらにしぼりをかけまして、犯罪が行われることが明らかであるとか、あるいは急を要するとか、あるいはまた、このままほうっておいたならばそういうおそれがあるというようなしぼりをかけておるのであります。そういうことで客観的にも、静穏の社会が乱されるおそれがあるということが明らかになるようにしておるわけであります。急を要するとか、あるいは犯罪が行われようとしておるとか、こういうことでしぼりをかける、こういたしておるのであります。
○多賀谷委員 急を要するとか、明らかであるというそれは、明白にして緊急なということですが、それ以前の問題として、その行為が公共の安全と秩序を乱す行為であるかどうか、これが十分判定できるでしょうか。
○青木国務大臣 犯罪が行われようとして、その結果として静穏な社会が乱されるということになっておりますので、私は、大体の考え方としてはわかると思うのであります。そこでなお申し上げておきたいと思いますことは、現実にそういうことに当りまして、それが単に観念上公共の安全と秩序ということで判定しにくいということもあると思いますので、私どもは、この法律が制定された場合は、具体的な例等もこまかく指示いたしまして、そうしてそういうことにつきまして、公共の安全と秩序という解釈が、いたずらに警察官だけの判定で行き過ぎを起すことのないように十分の注意をいたさなければならぬ、かように考えております。
○多賀谷委員 私は、法務省自体も、すなわち検察当局自体でも、往々にして公共の安全と秩序の解釈について非常に混乱をしておる。また混乱をしなくても、今まで起訴した事件が全部無罪になっておるというような事案もあります。法務省として公共の安全と秩序を乱した、こういう考え方をしておるのに、それが起訴しても起訴しても、全部無罪だ。こういうような事件すらある。ましてや現場の警察官が判断できるかどうか、これは非常に疑問に考えますが、国務大臣、どういうようにお考えですか。
○青木国務大臣 公共の安全と秩序という解釈につきまして、法律上はいろいろ従来の慣用語とはなっておりますが、むずかしい表現もあると思うのであります。私どもは、一般的な考え方として、社会生活の静穏な状態と正常な運行を保つ、こういう考え方に立って判断すべきものと存じております。
○多賀谷委員 そういたしますと、青木さんにお尋ねしますが、スト規制法が出る以前の停電スト、電源ストというのは、公共の安全と秩序を阻害するとお考えになっておりますか、どうですか。
○青木国務大臣 私は、ああいうことは国民の静穏な生活、静穏な状態あるいは正常な運行を害するもの、かように考えますので、公共の安全と秩序に反する、かように考えます。そこでああいう法律の制定がされた、かように考えているわけであります。
○多賀谷委員 法律以前の状態において、あのスト規制法が出る以前の状態において、果して犯罪と考えられたかどうか、こういうことを聞いておるのです。スト規制法が出ましたら、もうそれはしてはいけないということははっきりしているのですから、これは問題はない。スト規制法が出る以前に、一体あの電源スト、停電ストというものは、公共の安全と秩序を阻害すると考えられるだろうか。一体警察官はどういうような判断をされるだろうか、こういうことであります。
○青木国務大臣 ああいうことは公共の安全と秩序を阻害するものと考えます。
○多賀谷委員 法務大臣はどういうようにお考えですか。
○愛知国務大臣 ただいまの青木国務大臣のお答えと同様に考えます。
○多賀谷委員 ところが、今まで停電スト、それから電源ストを起訴して、一回でも有罪になった判例がありますか。それ自体が有罪になった判例がありますか。私がここに持って来ておる判例だけでも数十件あるけれども、全部無罪になっておるじゃありませんか。東京高裁で無罪になっておる。地裁でも全部無罪になっておる。一体それが有罪であるならば、何もスト規制法を作る必要はない。それは無罪である。それでも一体依然とし犯罪と考えられたかどうか。現時点ではありませんよ。当時の状態においてです。
○愛知国務大臣 当時の状況において、当時の検察庁が起訴いたしましたのは、公共の安全と秩序が乱されるからという理由で起訴したわけではございません。従って無罪の判決があった場合にでも、それが公共の安全と秩序が乱されるをもって、その点を訴因にして起訴したわけではないということを申し上げたいとのであります。
○多賀谷委員 そうすると、それはなぜ起訴したのですか。
○竹内(壽)政府委員 公共の安全と秩序が犯罪になるかならぬかという点は、それを犯罪視する構成要件にきめられてない場合にはこれを犯罪視するわけにはいかないのであります。今の公共の安全と秩序というものは、一つのストの限界を定める、スト権の範囲を定める、あるいはスト権の範囲内の行動であるかどうかということを定める一つの基準であるわけであります。今お尋ねの関係につきましては、無罪が出たのではないかということは、それが公共の安全、秩序を害する程度に至っていなかったか、あるいは至っていたかという点についての裁判所の判断をしているわけではないのであります。
○多賀谷委員 何ですか。
○竹内(壽)政府委員 今お答えした通りです。
○多賀谷委員 一般の大衆に迷惑を及ぼしたということで、その後スト規制法のときにはそういう理由で立法化されたわけですよ。一般の大衆に迷惑を及ぼすから、公共の福祉に反するからということで、立法理由にそういうことを述べられて立法された。でありますから当時は、その前は起訴する理由は、公共の安全と秩序を害するということで起訴されたのでしょう。
○竹内(壽)政府委員 背景といたしましては、公共の安全と秩序を害する程度のストであったということは、それはもちろん背景になっておるわけでございますが、当該犯罪が公共の安全と秩序を害する罪によって処罰されたわけではないのです。これは申し上げるまでもなく、電気事業法その他の違反で処罰された。その点についての判断があるいは無罪になった例があるわけです。しかし無罪になったからといって、これは公共の安全と秩序を害するという点において、害しないのだという判決の結果が出た、かようには考えておらないわけです。
○多賀谷委員 それはあなたの方は詭弁でありまして、それは争議権があるからということです。要は争議権があるということです。争議権があるからそれは無罪になったのです。争議権があるのに、争議権に基いてやった行為をあなたの方は有罪である、こういうことで起訴したのです。一件や二件ではないのですよ。二十数件あったでしょう。そうして一つとして有罪と決定したのはないのです。みな無罪。それでどうにもならないから政府は法律を作られた、そういう経緯ですね。それほどこの犯罪というものを——財産とか、あるいは身体とか、さらに生命、こういうものが侵害せられるということは容易に判断できる。ところが公共の安全と秩序という問題はきわめて判断がむずかしいのです。それをあなたの方は、ある行為を行なった、電源ストをやった、停電ストをやった。これは公衆に迷惑をかけたので何かいい法律はないかと探したのが公共事業令です。逆ですよ、ものの考え方が。ですから公共事業会によって訴えられた。しかし、基本的なものは一般大衆に迷惑をかけたということでしょう、起訴した根本的理由は。形式の条文はそうではありません。形式の条文は公共事業会です。しかし、なぜ公共事業会を適用したかというと、争議権でも、かように一般大衆に迷惑を及ぼすのは公共事業会の適用を受けさすのだ。刑法の免責規定はないのだ。それに間違いはないでしょう。
○竹内(壽)政府委員 ただいまの点は御意見の通りです。
○多賀谷委員 そこで、それほど公共の安全と秩序というものは非常にむずかしいのです。法務省でもみな間違ったのです。法務大臣以下全部間違った。そうして二十数件全部起訴したけれども、全部無罪になった。東京地裁でも無罪になった。東京高裁でも無罪になった。仕方ないものですからスト規制法を出したのです。そういう事情です。(「おかしいよ」と呼ぶ者あり)おかしいことはない。そこで私は五条のことを聞くのですが、五条の犯罪というものは、身体、生命、財産以外にはどういう犯罪がありますか。今まであった現行法以外にここに犯罪として追加さるべきものがあるはずです。それはどういう犯罪でしょうか、これをお聞かせ願いたい。
○中川(董)政府委員 五条の犯罪は、現行法の犯罪も改正法の犯罪も同様であります。ただ問題は、犯罪になろうとしておる場合におきまして、現行法では生命、財産に関係するおそれがないと制止いたさないのですが、改正案によりますと、犯罪が行われようとしております場合におきまして、公共の安全と秩序を著しく乱すおそれがある場合においてはそれを規制する、こういうふうに書いております。たとえば渦巻行進が行われている。これは道路交通取締法に違反する犯罪であります。こういった場合におきましては、生命、財産に関する危害とは言えませんので制止できません。改正法では制止できます。それから、たとえば国民の共同生活の根源であるところの役所に、集団的に一ぱい入っていらっしゃいまして、退去しないということになりますと、一般の役所を利用する方々が、その役所の機能に基いての利益を受けられない。こういう状態は、生命、身体、財産には該当いたしませんけれども、改正法におきましては、公共の安全と秩序を著しく乱されますので、そういう場合におきましては不退去という犯罪で制止する、こういう場合があるのでございます。
○多賀谷委員 そういたしますと、犯罪というのは、別に身体、生命、それからの財産ということで、犯罪の類型が現行法と改正法では変るわけではないけれども、その犯罪が行われる、または行われようとする場合に発生する状態が違っておる、こう理解してよろしいですか。
○中川(董)政府委員 お説の通りであります。
○多賀谷委員 そういたしますと、この犯罪の中でも身体、生命、財産に全然関係のない犯罪がありますね。それは一体どういう犯罪でしょうか。公共の安全と秩序には関係があるけれども、身体、生命財産には関係がない、こういう犯罪になるでしょうか。
○中川(董)政府委員 ただいま申し上ぐましたけれども、犯罪によりまして、犯罪を行おうとする結果、犯罪をほっておけば生命、身体、財産に影響するような場合もございます。ところが、ただいま設例いたしましたような道路交通取締法に規定する犯罪で、渦巻行進をやっておりまして、そこを交通する一般善良な人たちが交通できない。こういう場合におきましては、生命、身体、財産には影響がございませんが、公共の安全秩序に影響がある。こういう場合もございます。役所のすわり込みなどの場合も同様かと考えるのであります。
○多賀谷委員 ですから、一例をあげられましたが、私は、いやしくも法律を制定するときですから、どういうものがあるか、一応頭の中で考えられるものはみな列挙してもらいたい。
○中川(董)政府委員 この犯罪という概念は、現行法の犯罪という概念と、改正法の犯罪という概念とは一つも変更はございません。公共の安全秩序を著しく乱すという概念は、先ほど国務大臣から答弁がございましたように、お互いが共同生活を安穏にするという国民の権利があろうと思いますが、お互いが安穏な共同生活をするについて、その共同生活を著しく掻乱する、正常な運行を阻害する、こういうふうに具体的に認められる場合でございます。
○多賀谷委員 いや、そのことはわかるのです。それじゃ身体、生命、財産に関係のない犯罪を言って下さい。これに当るだろうと考えられる犯罪を言って下さい。一例じゃだめですよ。立法者が考えたどういう犯罪があるか、これを言ってもらいたいというのです。逆にですよ。
○中川(董)政府委員 繰り返し申し上げますが、いろいろ各種の犯罪がございまして、各種の犯罪の中で、たとえば同じ犯罪でも、他人の生命、身体、財産には関係しない態様で行われる場合がございますし、関係して行われる態様の場合もございますので、犯罪だけで一言に限定することは無理かと思います。
○多賀谷委員 無理といいましても、やはりわれわれは一応こういうある犯罪を行う場合に、それは公共の安全と秩序を著しく害するかもしれぬ、こういうことが考えられる犯罪があるでしょう。法律違反があるでしょう。それを一応あげてもらいたいというのです。
○中川(董)政府委員 これはいろいろあろうかと思いますが、騒擾の罪、こういう場合も考えられます。住居侵入の罪、往来妨害の罪、公然わいせつなども考えられる場合が態様においてあろうかと思います。それから非常に高い音声で近隣が迷惑したりする場合もあろうかと思います。重要な財産に至らない器物、器具類、こういう場合もあろうかと思います。
○多賀谷委員 まだあるでしょう。もう少し言って下さい。——重要な法律があるでしょう。——(「答弁々々」と呼ぶ者あり)そんなことで法律を出すなんておかしい。
○中川(董)政府委員 犯罪を考えるとわかると思います。犯罪の態様の中で、繰り返し申しますけれども、公共の安全と秩序を著しく乱すということの態様に至った場合において、改正法律案によって制止を行う。こういうことだけでございますので、犯罪という観念は現行法と全く同じでございます。
○多賀谷委員 犯罪の態様は同じであっても、今度は制止をし、警告する要件が変ってくるでしょう。そういう要件がふえたわけでしょう。だから逆にいって、今までは全然それには影響がなかった、警告も制止もできなかったような犯罪が新たに加わったという場合があるわけですね。そういうことを、私は、厳密じゃなくてもいいのですが、一応考えられるだけ言って下さいと言っているのです。
○中川(董)政府委員 私が考えるだけは申し上げたつもりであります。
○多賀谷委員 あなたは、私が法制局長官に質問したのを聞いていますか。現に法制局長官は、そういう場合があり得ると言ったでしょう。
○中川(董)政府委員 法制局長官との問答は伺っておりません。
○多賀谷委員 では、私が聞きましょう。日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の関係で、秘密を漏洩する演説をぶって非常に騒然となるような、安寧秩序を害するような演説をした場合にどうでありますか。
○中川(董)政府委員 ただいま御設例のような演説をするという行為だけでは、公共の安全、秩序が著しく乱されるという概念は出てこないと思います。
○多賀谷委員 そうすると、秘密保護法に違反してそういう演説をしてアジつた、こういう場合でもかかりませんね。全然制止はできませんね。
○中川(董)政府委員 言論行為だけによって公共の安全と秩序が著しく乱されることはあり得ないと考えております。
○多賀谷委員 どうしてあり得ないのですか。言論行為だけでどうしてあり得ないのですか。
○中川(董)政府委員 お互い国民の言論によって、公共の安全と秩序が著しく乱されるということは考えられないのであります。
○多賀谷委員 かつて治安警察法のときに、安寧秩序を妨害するおそれあると認めるとき、こういって臨監をし、それに対して制止をしておる。これと文句は同じでしょう。
○中川(董)政府委員 本日は連合審査でございますが、それは地方行政委員会で国務大臣からも御答弁があったのでありますが、明治憲法の時代における安寧秩序といいますのは、当時は旧憲法の時代でございますので、国体という観念もありましたし、そういう種類の安寧秩序という観念があったろうと思うのであります。日本国憲法は、御案内のように国民主権でございまして、国民の共同生活を中心に考えておりますので、言葉がずさんでございますが、上からの安寧という観念は、日本国憲法における現行法制では考えられない。お互いの共同生活を著しく乱す、こういったことによらないと、改正法律案の公共の安全と秩序が著しく乱されるということにならないと考えます。
○多賀谷委員 けっこうでした。そうしたら秘密保護法等による演説をしたということで制止をされることはない。こう考えてよろしいですね。
○中川(董)政府委員 刑事特別法に秘密に関係があるのがあるんですが、秘密保護法という法律は私は存じないのです。
○多賀谷委員 省略しましたが、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法です。
○中川(董)政府委員 ああいった言論によっては、公共の安寧と秩序が著しく乱されるということは、言論行為によっては考えられないのであります。
○多賀谷委員 考えられないんじゃなくて、適用しない。こう考えてよろしいですか。
○中川(董)政府委員 御設例の場合は、公共の安寧と秩序が署しく乱されるという概念に該当いたさないのでございます。
○多賀谷委員 そうしますと、もし防諜法というのができたと仮定いたしましても、同じですね。
○中川(董)政府委員 防諜法という法律は、私存じませんのでわかりませんが、防諜法という法律がかりに言論だけを制限する法律でありとせば、私は以上申したと同様に考えております。
○多賀谷委員 そういたしますと、公務員法違反の行為すなわち争議行為、こういうものがあった場合、またあるおそれのあるとき、この場合はどうなんですか。
○中川(董)政府委員 公務員法違反の罪も、いろいろあるわけでございますが、たとえば公務員の政治活動の制限という……。
○多賀谷委員 争議です。
○中川(董)政府委員 争議も態様によりますが、何法でございますか、その点をお伺いいたしたい。
○多賀谷委員 まず国家公務員法でいきますと、九十八条。地方公務員法でいきますと三十七条、この違反です。
○中川(董)政府委員 地方公務員法に規定する犯罪、すなわち三十六条の第三項に規定する犯罪でございますが、あおりそそのかすということが罪になっている場合でございますが、あおりそそのかすという段階だけでは、公共の安全と秩序が著しく乱される、こういうことには該当しないと考えるのであります。
○多賀谷委員 あおりそそのかして争議行為に入らんとしたという場合はどうですか。全部同盟罷業の状態に入らんとしたという場合です。
○中川(董)政府委員 ちょっとお伺いいたしますが、地方公務員法で怠業行為等が行われることは禁止されておりますが、その点は犯罪にはなっておりませんので、念のために申し上げておきます。あおりそそのかすことにつきましては犯罪でございますが、地方公務員が怠業するということについては、犯罪になっていないということを御了解願います。
○多賀谷委員 あおりそそのかすが犯罪ですから、あおりそそのかすという状態では、あおりそそのかされて、いわば被教唆者が同盟罷業並びに怠業の状態に入らんとした犯罪は、あおりそそのかすのですね。ところが、同盟罷業並びに怠業という状態が起らんとしておる、この場合はどうですか。
○中川(董)政府委員 該当しないと考えます。
○多賀谷委員 どういう理由で該当しないのですか。
○中川(董)政府委員 あおりそそのかすという段階だけでは、公共の安全、秩序が著しく乱されるということには該当いたしませんから……。
○多賀谷委員 犯罪の方は、これはあおりそそのかすという犯罪の方ですね。あなたは犯罪の類型じゃないとおっしゃるから、私もそのつもりで言っておる。犯罪の方はあおりそそのかすという犯罪の方、起きた状態というのは同盟罷業あるいは怠業という状態である。この場合はどうですかと言っておるのです。犯罪の類型ではないということを盛んにおっしゃるから、私の方はその通り受けておったところが、今度は逆に怠業や同盛罷業は犯罪にならないから、こうおっしゃるのは逆じゃないですか。先ほどのお話と矛盾しておるでしょう。
○中川(董)政府委員 改正法律案の五条の文字について申し上げますが、犯罪が行われようとしておる。それをそのまま放置すれば、公共の安全と秩序が著しく害されるという概念でございますので、犯罪の行われる態様の結果、公共の安全と秩序が著しく乱される。こういう概念でございますので、ただいま申し上げたごときは該当しないと考えるのであります。
○多賀谷委員 犯罪をあおりそそのかすという状態がまだ起きていないから、次の怠業、同盟罷業というのはまだ起きない。こういう理由で第五条の適用はない、こうおっしゃるわけですね。
○中川(董)政府委員 犯罪が行われようとしておる場合でございます。例をとってみたいと思いますが、たとえば地方公務員法で、あおりそそのかすという行為のほかに、怠業という行為が犯罪になっておる場合におきましては、積極的に解するのでありまますけれども、怠業する行為は犯罪でありませんので、犯罪が行われようとしておるという概念に当てはまらないと考えるのであります。
○多賀谷委員 制止をするあるいは警告をする行為は、犯罪行為である、こう考えていいですね。
○中川(董)政府委員 両方について申し上げます。犯罪が行われようとしておる場合と、犯罪が行われることを防止するための制止でございます。警告について申しますと、犯罪が行われることが明らかな場合において、その犯罪が行われないようにする警告でございます。
○多賀谷委員 一応公務員法並びに地方公務員法違反の争議には全然関係がない、こう解釈してよろしいですね。
○中川(董)政府委員 その通りでございますが、その地方公務員法違反に関連してはお説の通りでございますが、そういった行為の怠業の場合に、他の犯罪が起ってくる。たとえば道路交通取締法違反、こういった犯罪が起ってきた場合におきましては、道路交通取締法につきましては、私、設例いたしましたごとく、道路交通取締法に規定する犯罪が行われようとしておる。そのまま放置すれば人の生命、身体はもちろんですけれども、公共の安全が著しく乱されるおそれがある、こういう場合には制止ができるのでございます。
○多賀谷委員 しからば公労法違反の争議、その争議が鉄道営業法あるいは郵便法に違反する。こういうことで、遺憾ながら現在起訴をした事件がある。こういう場合にはどうなりますか。
○中川(董)政府委員 郵便法違反に該当する行為が行われようとしており、その行為をほっておけば、公共の安全と秩序が著しく乱されるおそれがある場合におきましては、制止は可能でございます。
○多賀谷委員 そういたしますと、公務員法には直接はないけれども、公労法関係では、鉄道営業法とかあるいは郵便法によって、取扱いをせずとか、遅延さすとか、そういうような行為があるから、その場合には第五条が適用になる、こういうわけですね。
○中川(董)政府委員 繰り返しお答えいたしますが、犯罪が行われようとしており、その行為をほっておけば、公共の安全と秩序が著しく乱されるおそれがあることが明らかであって、急を要する場合におきましては、制止は可能でございます。
○多賀谷委員 それはきわめて重大なことでありますが、法務大臣にお尋ねいたしたいと思います。それは今まで、少くとも最近までは、あるいは公労法違反の事案がありましても、民事上の責任だけでした。要するに公労法十八条によりまして、そういう行為をやった者、あるいは行為を指導した者がこれは解雇される。こういう公労法上の責任であったのに、最近はいわゆる事業法の適用を受ける。その違反の適用を受けるということはどうもわれわれは納得できない。少くとも二十世紀後半の労働法の体系にはないわけです。これは何かほかの付随的な事件が起きれば別ですがね。そのこと、すなわち労務の不提供それ自体が犯罪に問われる。しかもこれは公務員ではありませんよ。これは公労法の職員ですから、当然公務員とは別個の扱いを受けておる。それがすなわち労務の不提供であることが民事上の責任のみならず、刑事上の責任として犯罪になるという、この理論をお聞かせ願いたい。
○愛知国務大臣 今お尋ねのことは、具体的に申しますと、たとえば全逓の争議に関連する問題が一例かと思いますが、これは郵便法の規定は今御指摘の通りでございますが、郵政職員は公務員でございます。その関係からいたしまして、普通の労働法規の範囲外になるわけでございますから、郵便法の七十条でございましたか、今正確な条文は忘れましたが、そのこと自体が犯罪になる違法行為である。従ってこの点は一般の労働運動の関係以外のものであって、郵便法の方からの必要から出ておるものであるが、同時に該当する職員が国家公務員であるというところにもこの法の特色があるわけでございます。
○多賀谷委員 おっしゃったことは間違いはございませんが、しかし公務員であるといいましても、労働関係では公務員として扱っていないわけですね。
○愛知国務大臣 いいえ、そういうわけでありませんで、労働関係調整法その他によりまして、その規定された以前の、つまり公務員であるということによって、そのほかの保護される規定が排除される関係になるわけであります。
○多賀谷委員 法務大臣はよく御存じないようですから言っておきますが、公務員は公務員ですが、労働関係では国鉄職員や専売職員やその他の五現業と同じように、公労法の適用を受けるわけですね。公企体等職員の労働関係法という適用を受けるわけです。ですから、今まで申しました国家公務員法の適用を受けないのです。公労法の適用を受けるのです。その点大臣、誤解じゃありませんか。
○愛知国務大臣 ただいま私が申しましたのは、先ほど来お答えしておりますように、全逓の場合を例にとって申し上げたのであります。
○多賀谷委員 全逓です。
○竹内(壽)政府委員 大臣のお答えに敷衍をしてお答えを申し上げます。公労法の適用を受けます全逓が争議行為をしたという場合ですね。つまり労務の提供をしなかったという場合に、直ちに郵便法七十九条が現われてくるのが理解できないという御質問だったように思います。この労務の提供をしなかったということから当然に七十九条が現われてくるのではなくて、それは仰せのように、その労務を提供しなかったということにつきましては、罰則はないわけです。しかしながら、労務を提供しなかったことが郵便法七十九条の定めておりますように、ことさら郵便を遅配させる、こういう事実関係、これは刑罰を課せられることになっているわけであります。その構成要件を満たすような労務の不提供というような関係がございますと、そのときにあらためて七十九条の違反、こういうことに相なるわけであります。
○多賀谷委員 それは詭弁というものです。労務不提供のうらはらは七十九条違反です。そういう考え方をすると私は問題があると思う。とにかく公労法を作って、そうして十八条の罰則規定を置いたときには、この全逓の職員は一般の国家公務員法から除いて公労法の職員に入れたわけですね。まずそれは事実でしょう。
○竹内(壽)政府委員 その通りでございます。
○多賀谷委員 ですから、この労働関係においては、国家公務員法の適用を受けないで、いわゆる国鉄や専売あるいは全電通と同じような適用を受けるわけでしょう。
○竹内(壽)政府委員 御意見の通りでございます。
○多賀谷委員 でありますから、当然十八条の適用を受けるものが即七十九条、これはいかにされましても、実体は同じですね。争議をすれば郵便はとまるのですからね。これは実体は同じなんです。しかも一つの行為をやって、そうしてこの行為がいわゆる国家公務員とは別個に扱っている。別個に扱っているというのは、これはやはり労働関係に対する団結権、団体交渉権その他をやはり擁護しているのですから、それは当然十八条の適用だけでいいじゃないか、九十七条の適用をする必要はないじゃないか、こういう考え方を持っているわけです。
○竹内(壽)政府委員 公労法の適用を受けますことは御意見の通りでございますが、その結果としまして、労務の不提供が即郵便法七十九条のうらはらの関係だというお言葉につきましては、私どもはさように考えてはおらないのであります。即ではなくて、労務不提供があらためて郵便法七十九条の構成要件を充足いたします場合に七十九条違反になる。これは法律論といたしましては、まことに通常の解釈でございまして、ことさら私が詭弁を弄しているつもりはございません。
○多賀谷委員 私は、その考え方が、少くとも労働法という概念の中に職員を入れて、そうして公企体等労働関係法という中に公務員からはずして入れた、その趣旨に反することではないかと言っておるのです。その趣旨にというのは、民事上の懲戒という最大の責任追及手段がある。ですから、たまたまどこかに処罰する規定はないだろうかといって探したのがこれですよ。このことは単に郵便だけでなくて鉄道営業法もその通りです。鉄道営業法も、運輸大臣が見えておられますからついでに聞きたいですが、鉄道営業法二十五条の適用を今までしたことはなかった。このたび初めて新潟の三条の踏切警手に対して、午前八時三十分から十時三十分まで職場大会に来てくれ、こういうことを言って、約一時間職場大会に行かしたということを理由に、二十五条適用の犯罪として起訴しておる。こういうことは私は最もけしからぬと思いますが、どういうふうにお考えですか。
○永野国務大臣 ただいま御指摘の踏切番の職場放棄の問題は、まさに旅客または公衆に被害を及ぼすおそれある行為だと思います。
○多賀谷委員 戦後今までずっときて、初めてこういう法律の適用をするというのは、どういうわけですか。
○永野国務大臣 従来その取扱い方が、これを起訴しなかったということが、その行為自体を正当化することではないと思います。だんだんと踏切番なんかの事故が多くなりまして、非常に危険が増したと思って、かつて起訴しなかったいわば軽微な犯罪でも、それを起訴する変化が起ることはあり得ると思います。
○多賀谷委員 別に変化は起っていないですよ。そういう踏切番の事故がだんだんふえているというような事態にはないのです。ただ、いかにしてこれを罪にしようかと、どこかの条文を探しておる。これが現在の政府の姿です。立法趣旨とは全然違うことが行われている。たとえば人事院規則にチェック・オフをしてはならないという規定がある。要するに、法律で定める、あるいは政令で定める以外には賃金の向上はできない、だからチェック・オフをしてはならぬというのです。ところが、あれは労働基準法の全額支払いの原則を、人事院規則で同じような規則を作らなければならぬから入れたんです。とにかく立法をして、そして立法当時と全然違うことを、どこかに、犯罪にならぬだろうかというので探したのが私は郵便法七十九条の問題であり、あるいは鉄道営業法二十五条の問題だと思う。私は、やはり二十世紀後半の民主主義の日本において、解雇するということが最大なんですから、しかも国家公務員と違うて公労法のワク内にある職員に対しては、やはりそういう処置をとらるべきだと考えられますが、もう一度法務大臣並びに運輸大臣からお聞かせを願いたい。
○愛知国務大臣 全逓の郵便法の問題につきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、これは明らかに、ことさらに郵便を遅延させる、その他の事故をやりますことは、その立法当時においても十分御審議の上に、この行為については罰条が課せられております。しかし、それは正当なる法の守る労働行為である場合は別でございますけれども、ことさらにこの罰条に触れるような行為をすることは明らかに違法行為であって、これは法務省といたしましては、当然問題にし、かつ状況によりまして起訴するということは当然のことだと私は考えております。
○永野国務大臣 繰り返して御説明することになるのでありますが、踏切番がその職場を放擲して、長い間明けましたならば、それが非常に公共の危険な原困になるということは、特にそれを処罰するために条文を探して見つけなくても、そういう事実は危険な事実であるということは、そういうふうに認定することは常識だと思います。
○多賀谷委員 そんなことはないでしょう。あなたの方は、鉄道営業法を改正するとか、刑罰規定を作るとか、いろいろ新聞に取りざたされているじゃないですか。あるいはまた、法務大臣はそうおっしゃいますけれども、郵便法を作るときは、これは争議行為は関係ありません。もっとも争議行為が許されておったという事情にもあるでしょう。こういうふうにして、その法律ができたときと違ってすでに運用されているところに問題がある。とにかく昭和二十七年ごろから、日本の労働行政というものは反動的な方向をたどってきた。そうして警告行政といわれる。通牒が出るたびに犯罪の類型がふえている。私はここで示します。昭和二十九年に、不法な実力行使の防止についてという、これはピケッティングの問題ですが、労働次官通牒が出た。その後昭和三十年には、官公労の闘争に対して、国家公務員等の年末労働運動に対してとるべき処置についてというのが出ました。そうして休暇闘争、順法闘争、超勤拒否、時間内職場大会、これら権利行使の性格を持つものは、組合の実力行使はすべて争議行為として違法である、こういうようにした。さらにまた、不法な実力的手段による場合たると、説得的説明、平和的説明たるとを問わず、ピケを張って闘争に参加することを説得することあるいは強制する行為は一切違法だという。そこで国鉄当局の扱い方が変ってきた。最初二十七年から二十九年ごろまでは、なるほどはやりました。しかしピケそのものは違法だとは言わないで、ピケをやって、そのピケによって起った個々の派生的行為については違法である、こう言った。ところが今度は、ピケそのものが全部威力を持つというわけで、ピケそのものも全部違法である。非常に変っているんです。通牒の出るたびに変っている。さらに今まで全然違法であるとは言わなかった施設管理権を強調している。懸垂幕を張ることも違法だと言う。こういうように、今までの労働慣行と労働関係の特殊性の一切を排除して、だんだん法律の解釈が変ってきた。これは裁判所が変ったんではない。政府の解釈が変ったんだ。さらに三十二年には団結権、団体交渉その他の団体行動権に関する労働行政指針というのが出された。いわゆる悪名高い労働次官通牒ですが、これがまた非常に今までにない犯罪類型を示した。さらに昭和三十二年度の、公企体の職員の労働組合の争議についてというものは、これは従来になかった管理権の侵害行為として、法で規定するところの団体交渉以外の団体交渉は違法である、こう言った。あるいはまた点検闘争を違法であるとあげてきた。こういうようにながめてみますると、政府が通牒を出すたびに犯罪の類型がふえている。今まで犯罪としていわれなかったものを政府が出す。政府は検察庁であるから、検察庁はその通り起訴する。裁判所は動いていないのに、政府の考え方一つで現実は日本の労働運動は左右されている。こう言っても過言でないんです。 そこで私は非常に心配なのは、この五条の規定、今おっしゃいましたように、犯罪というものの範囲がだんだん変ってくる。変ってくるに従って今まで予想しなかったものが出てくるわけです。そういたしますと、今まで現行法においては、公企体の職員のいわば争議行為というものは、予防や制止の範疇外にあったのでありますが、範疇内に入るということになりますと、これは日本の労働階級に与える影響は大へん大きいと思う。一体青木国務相はどういうふうにお考えですか、これをお聞かせ願いたい。
○青木国務大臣 私どもは、この法律は労働運動、そういうものあるいはまたその他の集団的ないろいろな表現の自由、こういうものを抑制するような形になってはならぬということを深く考えておるのであります。しかし、そういう労働運動等が正常な姿で行われることにつきましては、これはもちろん問題でないのでありますが、その労働運動の結果が犯罪を伴うというような次第になりますことは、労働運動を正しく伸ばすためにも、できるだけそういうことのないような姿に伸ばすべきじゃないか。そういう考えに立って、犯罪が伴うような場合は、そういうことにならぬように事前にこれに警告する。こういうようなあり方で進むべきじゃないかと思うのでありまして、労働運動を阻害するというよりは、むしろ正しい形で伸ばすようにすること、そうするためにも、むしろ犯罪を伴うような場合は、事前にそういうことのないように警告することが、私は望ましいことだと思うのであります。なおまた、これが実施されると、いろいろな拡張解釈でいろいろな事能仙が行われるのじゃないかというようなお話があったのでありますが、申し上げるまでもなく、どういうものが犯罪であるかというようなことは、法律できまるのでありまして、これには犯罪を犯そうとするということでありますので、法律できめられた以外のところまで拡張解釈されるということは、私はあり得ないと思うのであります。
○多賀谷委員 今申しましたように、今まで犯罪として扱ってなかったものが、政府の解釈で犯罪になるわけです。裁判所に行けば犯罪にならぬかもしれませんよ。裁判所は無罪の判決をするかもしれません。政府の考え方が、犯罪でなかったものが、だんだん犯罪になるような、今までちょっと言いましても、二十九年から今日までの間に、非常な変革を見ておるでしょう。今まで、政府としては犯罪であるというようなことは言わなかった。ただ公労法違反だ、公労法違反で解雇されますぞと言った。ところが、今度は犯罪になると言い出した。それも最初は何か犯罪にしたいけれども法律がないと探しておった。ところが今度は、この条文を適用したら大丈夫だと言い出した。こういうように犯罪そのものが、条文を一つも変えないのにどんどん動いていく。ここに私は問題がある、かように思うのです。そこでこの法律はきわめて重大だ。条文をいじったなら別ですけれども、条文を変えないで解釈を変えて、しかも裁判所が変えたのじゃない、政府だけが変えて取り扱っておる。ですから警察官は政府の意向をくんでやられるでしょうから、政府でやる検察庁が犯罪であるといったら、そういうように動かされるでしょうから、私は非常に危険だと思うのです。争議をやって、しかも本来ならば憲法に保障されておる三権を持っておるけれども、国の政策上やむを得ず一応争議権を停止しているものが、争議をやって解雇になり、さらに犯罪になるということは、よその国にはありませんよ。そういうことは私は根本的に考えてもらいたい。これは法律を改正する必要はないのですよ。政府の頭を切りかえてもらえばいい。そこでもう一度そういうことがないかお尋ねしたい。
○青木国務大臣 何が犯罪かは、これは法律の明文によるのでありまして、その明文以外にわたってはならないことは言うまでもないのであります。
○愛知国務大臣 ただいま青木大臣の言われた通りでございますが、誤解をお持ちのようでございますから申し上げるのでありますが、通牒によって、違法行為になるかどうかというような限界を明確にするということは、私は必要な措置だと思うのであります。しかし行政的な一片の通牒をもって犯罪を増加したり、犯罪の範囲を増加したりというようなことはできないことです。これは要するに違法行為の限界を明確化することと、それから法律によって規定されておる犯罪というものとは、おのずから分けて考えていただかなければならないと思います。
○多賀谷委員 事、労働運動に関しては、あなたの方が起訴されても無罪になるということをやられた前歴があるわけです。全部起訴して全部無罪になった。これはめずらしいですよ。地裁から高裁にいって全部無罪になった。派生的な事件は別ですよ。争議権を持っておるところの電気産業労働者がストライキをした場合に、全部有罪であるといって、全部起訴にして全部無罪になっておる。有罪と判決をしたところはないですよ。こういう前科を犯しておる法務省が、どんどん勝手に解釈をしてたまるものじゃありませんよ。しかも法務省でもそうだ。ましてや末端の警察官は、今度の解釈をするのが大へんですよ。しかも身体とか、生命とか、財産なら、からだの感覚でわかる。裁判所でも困るようなこういう字句を使って、そうして一警察官にやらそうということは、私はもってのほかだと思う。しかも公共の安全と秩序というこの包括的権限を移譲したこと自体、この包括的規定を入れて、それを警察官の判断にまかせるということ自体が憲法違反じゃありませんか。
○青木国務大臣 申し上げるまでもなく、基本的人権の尊重、これが現行憲法の中心の観念であります。基本的人権の尊重は基本的観念でありますが、同時に、その個人の集団である社会の多数の生活、その人たちの人権あるいは自由、これを守ることもまた当然であります。憲法第十二条あるいは第十三条の考え方はそこにあるのでありまして、個人の人権並びに自由の擁護、同時に多数の人権と自由の擁護、この調和をはかることをしなければならぬと私ども考えるのであります。そこで警察法の建前といたしまして、警察の責務として、警察官は、個人の生命、財産を守ることと、また犯罪を予防してそういう公共の安全を守ることと、二つの使命をになわせられておるのでありますので、私どもは、憲法十二条あるいは十三条の精神によりまして、警察官として、個人の生命、財産を守るとともに、集団の静穏な生活、正常な運行、これを守ることに協力する責任があると思うのであります。そういう意味におきましてこの規定は設けられておるのでありまして、その適用が拡張解釈され、弊害が起るというような御非難でありますが、警察官としてやらなければならぬ仕事、このことは私どもやるようにしなければならぬと思うのでありまして、乱用の結果弊害が起るという問題は、その面において乱用のないようにする必要があることはもちろんであります。乱用に陥るおそれがあるからといって、警察官の果すべき責任を果さぬようにしていいというようなものではないと私は考えるのであります。
○多賀谷委員 私が質問しておりますのは、生命とか、身体とか、財産ということはわかるだろうけれども、公共の安全と秩序というような非常に幅の広い規定を入れるということ自体に問題がありはしないだろうか。公共の安全と秩序ということで制限したいと言われるならば、何か列挙して、そうして末端の一警察官にもわかるように条文を入れるべきじゃないだろうか。こんな包括的な規定を設けたら、法務省でも間違えるような、裁判所でもいろいろ違うようなことが、末端の警察官にできるかと言っておるのです。そのこと自体が基本的人権を侵害するものだ、こういう包括的規定は基本的人権を侵害するものだ。こう言っておるわけです。
○青木国務大臣 この法律の制定の過程におきまして、私、事務当局からいろいろ聞いてみたのでありますが、御指摘のように、こういう言葉でなしに、もっと具体的にこまかく列挙してはどうかという問題も取り上げられたことを聞いております。しかし、それをいろいろ検討して参りますと法律の上でそういうことをこまかく規定するということも、なかなか実際問題として非常に困難でありますので、私どもは、この法律が実施された場合に、具体的にこまかく指示いたしまして誤りのないよう期したい。ただおよそ常識的に考えまして、客観的に見て犯罪が行われようとしており、その結果公共の安全と秩序が乱される。つまり、多数の人たちの静穏な生活、正常な運行が妨げられる。こういう事態が客観的にも警察官に認定できる。こういう事態に対してこの条項は適用されるのであります。たとえば渦巻行進等が行われまして、明らかにその結果多数の人の交通が妨害されるというような事態が明らかになりました場合に、この条項が適用される。こう考えられるのであります。
○多賀谷委員 道路をふさいだとか、そういうありふれたことはわかるでしょうね。しかし、公共の安全と秩序というような包括的概念をここに持ってくること自体に非常に問題がある。単に法律の技術的条文がむずかしいなんていうことじゃないんですよ。いやしくも基本的人権を制限することを、法律の条文が書き得ないからこのままに持ってきました、検討しましたがどうにもなりません、こういう問題じゃないでしょう。基本的人権というものは、こういう簡単な問題じゃありませんよ。しかもすでに日本の国は今まであやまちを犯してきているのですよ。こういう実態の中で、われわれはこんな公共の安全と秩序というような包括的概念を警察官にまかすわけにはいきません。もう一回考慮願いたい。どういうように書いたらいいんですか。あなたの方で考えられる最大限のものを出してごらんなさい。
○青木国務大臣 根本的に申し上げまして、昔の警察官のようなあり方、つまり上からくる秩序という考えでないのでありますので、多数の国民に対する、国民全体に対する奉仕者としての警察官、その立場から判断すれば、おのずから静穏な生活あるいは正常な運行、これはわかると思うのであります。
○多賀谷委員 大臣だって私が説明する例がわからぬでしょう。私がこういう場合はどうなりますかといっても簡単にわからない。私だってわかりませんよ。一警察官がわかりますか。この国会の最高の立法府でいろいろ議論しておってもわからぬ。私は、こういうことは許されないと思うのです。それは民主的な警察であるから昔のようでない。昔のようでないというのはこれは法律の条文ばかりですよ。警察法とかその他に、そういう権限乱用はしてはならぬといろいろ書いてありますね。ずいぶんあちこちにある。基本的人権は絶対に守らなければいかぬとか、いろいろ書いてある。それは法律の条文だけですよ。現実はあれだけ現在警察官が権限乱用をやっておる。こういうような状態においてそういうことが言えますか。私は一例を申し上げたい。それは犬養法務大臣のときでしたが、犬養さんが国会の答弁において、ピケは威力業務妨害罪であると言っただけで、次の日に、末端に行ってみると今までにないほど警察官の士気を鼓舞してどんどん労働者を弾圧している。国会で昨日答弁したら、現地の方では、ものすごく士気を鼓舞して張り切ってやられておる、こういう状態です。大体治安立法というのは、災害と同じように忘れたころにやってくるのです。国会でわんわん騒いでも、通過したら破防法だって大したことはないじゃないかと自民党は盛んに言っている。警職法だって大したことはないじゃないか、こう言うけれども、この法案は違う。この法案が出たということだけで、一線の警察官の士気をものすごく鼓舞してますよ。どうですか。
○青木国務大臣 多数の人たちの静穏な生活を守り、正常な運行をはかるということで、私はそう御心配のようなことはないと思うのであります。なお、私どもは具体的には先ほど申し上げましたごとく、できるだけそういうおよそ考えられる事例につきまして具体的に指示いたしまして、法の適用を誤まらぬようにいたしたいと思います。なお、国会における御審議の間に現われた御意見等も十分参酌いたしまして、処置を誤まらぬようにいたしたい、かように着ております。
○多賀谷委員 具体的に書かれる予定を、現在国会で審議しておるのですから出していただきたい。そうしなければわれわれはこれ以上審議ができません。いつお出しになりますか。
○青木国務大臣 それは先ほど申し上げましたごとく、私どもが、ただ警察庁当局が事務的に考えるよりは、そうでなしに、国会の御審議等に現われた御意見を全部総合いたしまして、そしてそういうようなこまかい指示をいたしたいと思います。
○中井(徳)委員 関連ですから簡単に申しますが、実は数日前の新聞紙上に、そういうことについて細則をきめるというふうな政府のだれかの御発言があった。そこできのうの地方行政委員会において、そういう細則について出す意思があるかと言うたら、長官は出す意思はない、こう言うのです。それからまた人権擁護局を少し拡充してやらなければならぬというような話が出たと思えば、質問をすると、まだそこまで考えていない。こういうようなことで、これは一週間ばかりの審議でありますが、ことごとく答弁と実際の動きその他と違う。自由民主党の総裁が出される声明などを聞くと、最近の世情にかんがみて北海道の苫小牧がどうだ、何がどうだと新聞に大きく声明書を発表している。そこでここへ出てきて説明すると、そういう問題ではないと言う。われわれこの問題について一、二週間話を聞いておりますけれども、まるで混乱しまして問答が食い違い、答弁が食い違う。今、私は答弁食い違い集を作っておりますが、二、三十ある。こんなことではしようがない。今でも、具体的な例を作ろうと思った。思ったなら、作ろうと思うまでに何かあったでしょう。それをどうして言わないのですか。こういうふうにしたいと思ったが、ここにかけているからやっぱりいかぬで、公共の安全と秩序に改めましたと言う。この間の新聞で長官は、この法案は極秘裡に研究をしたといって新聞に堂々と発表している。ところが今朝の問答では、これは秘密事項はありませんから、国家公安委員会の審議の内容は幾らでも言います。こう言うている。何だかわけがわかりません。その途中で、公共の安全と秩序という言葉にすりかえるまでにいろいろ考えたというなら、どういうことを考えたか、ここへ出してもらいたい。それが何もないのですか、とすると、うそじゃありませんか。出して下さい。
○青木国務大臣 審議の過程のことを申し上げたのでありまして、そういうことも考えてみたと云うことを申し上げたのであります。それから柏村長官が、私が申し上げましたようなこまかい指示のあれを考えていないというようなことは申していないのでありまして、きのう申し上げましたのは、やはり同じように、国会の審議に現われた御意見等を取り入れて、この法律が通ったあとでそうものを作って指導する、こう申したのであります。
○中井(徳)委員 今の細則の問題なんかでも、新聞には大きくそういう世論の疑いを解くために細則のようなものを作りたい、こういって発表しております。ちっともそれを取り消しておりません。そしてきのうの答弁では、そういうものは今出す考えはありません、こう言う。それでは前に新聞に発表したのはうそだ。なぜ取り消さないのですか。ことごとくそういう食い違いがあるのです。今のお話でも、審議の途中でそういうことも研究しました、それなら研究した素材を出して下さい。大臣が言われるごとく、この審議を参考にして出すというなら、この審議の内容がなければならぬでしょう。内容はちっともないじゃありませんか。今の答弁は、考えましたけれども内容はない、それではしょうがないです。その内容を出しなさい、どうですか。そういうことについて、せめて答弁でも皆さんでもう少し統一してもらいたい。言うことがばらばらではありませんか。みんなばらばらです。委員長、私どもはもう少し政府当局でこの点は今休憩してもらって相談して、そしてあらためて返事をしてもらいたい。別にきょうはこのままで散会なんという気持はありません。休憩して、よく思想統一をして下さい。新聞では発表するが、きのうの席では言わない。また具体的に考えたけれどもいかぬので、公共の安全と秩序という言葉にした。何を考えたのか。こういうことを考えてみました、しかしそれならばこういう問題は含まれません、ここは工合が悪いからこういう文句にしました。そういうことでないことには答弁にはならぬでしょう。これは委員長、善処して下さい。この間からこういう事件が実はたびたびあります。
○柏村政府委員 きのうも申し上げましたように、新聞紙上には施行細則を出すような記事が出たことは事実でございますが、私の方から、そういうことを出すという発表をいたしたことはございません。従いましてきのう申し上げましたように、私どもは、この審議の過程において、たとえば公共の安全と秩序を乱すというのはどういうことかというのは、例をお示しして御了解を得つつあるわけであります。そういうことを申し上げて、論議の過程においてわれわれが申し上げたことのみならず諸先生の御意見なども深く取り入れまして、いずれこの法律案が成立した暁におきましては、施行に遺漏のないように十分の資料を出そう、こういうことをきのう申し上げた次第であります。
○中井(徳)委員 今答弁が二つありました。初めの方は新聞に発表したことはない、しかし天下の広報機関に堂々と出ております。あなたの方が発表したのでないのならば、どうして取り消しを要求されないのですか。あれを見た人はああこれはやはり細則は出るんだな、法律じゃなくて命令みたいなものが出るんだな、規則が出るんだ。こういうふうに私もあの新聞を読みましてすぐ思いました。そうしてなお危険だと思ったのです。危険だ、こまかいことはみんな規則に譲って、規則でやられちゃたまりませんからね。それがもう出ないというならば、その新聞に、われわれはそういうものを考えておりませんということを、やはりはっきりと言ってもらわぬことには、読んだ人は読みっぱなしで、ああ出るんだな、こう思っておりますよ。 それから第二の公共の安全と秩序については、具体的な問題についていろいろ論議を願っておるというが、ちっとも政府は答弁がないじゃありませんか。それをさっきから言うておるのです。どういう事態のときはどうだという答弁がない。あなたの方で、先ほど大臣の言明です。大臣の言明で、これ以外の文句を使って何か事項を羅列してやりたいと思ったが、なかなかむずかしいのでこれにしましたというならば、どういう事態を羅列しようと思ったのかと多賀谷君が聞いておる。それについての答弁がない。そうなれば一向論議は進みません。これは警察官が国民に向って、直接現場で行う行為に関する執行法でございましょう。ですからそれが問題なんです。そういうことでありますから、公共の安全と秩序以外に、どういう文句を考えておったのか、どういう事例を考えておったのか。それでは不十分だと思ったのでこういたしましたと、こういう答弁がないことには、答弁にならぬじゃありませんか。私はそれを申し上げておる。
○柏村政府委員 先ほどから申し上げておりますように……。
○中井(徳)委員 ちょっとついでですから……。私はきょうここで返事をしろとは言っておりませんよ。これまであなた方は、審議の途中でそういうことを議論されたのですから、そういう資料を帰ってお調べになって持っていらしてもよろしい。よろしいが、それをここでごまかしてしまおうというから、私は怒るのです。それは大臣はああ言うたけれども、実はそこまであまり研究したことはなかったので、大臣が言葉のあやで言いましたのならば、その通りでけっこうです。そういうことはいかぬですから、そういうふうにもっとはっきりしながらこの法案の審議を前進をしないことには、何にもならぬじゃありませんか。きょう岸総理大臣は、十分慎重に審議してもらいたいと思うんだが、あまりしてくれておらぬということを言いました。われわれは非常に憤慨しております。私たちはこの一週間、ほんとうに真剣に——自由民主党の諸君が国会の正常化、それは十時から五時までだという。今はもう八時、九時でしょう、われわれは努力しておるんです。それなのにのらりくらり、相かわらずのそういう返事ではがまんできません。はっきりして下さい。これは委員長、善処して下さい。そのほかまだ幾らでもある。法務大臣だって、さっきの全逓の関係の解釈も間違っておった。うしろの人の方が正しいのに、私が間違いでありましたとちっとも言わない。そういうことではいかぬのだ。何もわれわれは責任を追及しようだなんていうのではない、事実をはっきりして下さい。私の思い違いでしたというのでしたら、ははっと笑って済むことです。それをやらないから、いつまでたってももたもたする。
○柏村政府委員 先ほど、新聞に発表しないと申したのでございます。その通りでございますが、私のところに二、三新聞記者から聞いてこられたのであります。こういうものを出すそうだが、どうかということを聞いてこられましたので、現在そういう考えは持っていない。特に施行細則というようなものは、法律ができてから出る筋のものであって、そういうことを法律の施行前に考えるということはない。しかし、われわれがこの国会の論議の過程において、われわれの考えていることも申し上げ、また各委員の方からの御意見も承わって、それを十分整理してしっかりした資料を作って配付するようにしたいとは思っておるということを新聞記者諸君にも申し、昨日ここでも申し上げた次第であります。
○中井(徳)委員 そういうことなら、実はなお危険なんです。この法律案が通るまでにそういうものを作って、これでどうだろうかというならまだ議論ができます。われわれの議論を皆さんがお聞きになって、それで皆さんの判断で細則をお作りになる、これが危険なんだ。私は、警察関係のこの今回の法案の出し方から食らいついておりますが、率直にいってどういうことかというと、この前の警察法の場合、三つの理由を言いました。どうしても政府の意思が国家公安委員会の中に入らねばならぬというのが第一の理由であります。第二の理由は、警察の能率化ということであります。第三の理由は、経費の節減ということであります。これはかたく約束しました。そしてその経費の節減には、警察官を三万名減員するということを明言した。三年間で経費の節減の金額は七十億と言いました。私どもはよく覚えております。それが今七十億節約になっていますか、逆にふえておる。警察官の減員はちっともできておらぬ。政府が堂々と理由として説明した三つのうちの、この第三はだめ。そしてきのうからきょうにかけての、総理大臣なり公安委員長たる国務大臣の説明は、公安委員会というものは国民の代表、民衆の代表であって、政府の意思は入らぬとか、全会一致であるとか、一体何を言っておるのですか。警察法の改正の第一の目的と反対の答弁をぬけぬけとやっておる。そういうことでは困りますから、私は事実に基いて、今回は一件々々こまかく、これは一年でも二年でもやってもらう、こういう気持で私は委員会に臨んでおる。もう前科があるんですから、そういう意味で申し上げておるのです。従って細則なんかも信用できないのです。そういうふうに三つかたく約束しながら、状況の変化によって、自動車が急にふえました、交通の関係です、そんなことはわかり切っている。自動車がふえるのは世界の大勢である。そんなことはわかり切っているのだ。そしてちっとも減員しない。そういうことでありますから、私はどうも信用できないのです。ですから細則を作るといっても、われわれは、その問答が済んで、法案がめちゃめちゃに押し切られたらまた別にちゃんと作ります。状況の変化だ何だといって作りますから、なおこわいのです。ですから柏村君のような考えで、新聞記者にお話しなさるのは、なおこわい。出されるのならば、この法案が通るまでにお出し願わぬことには、審議の途中で出してもらわぬことには意味がない。これは執行法なんです。そういう意味できょう言ったこととあした言ったことがだんだん変ってくるというふうなことでは、まことに困る。きょうは連合審査で、地方行政委員の連中は、きょうは傍聴しよう、法務委員の皆さん、社会労働の皆さんの御質問がありまして、傍聴しようと思って私は今まで拝聴いたしておりましたが、どうも今のお話でたまりかねてちょっと申し上げるわけであります。従いまして、この点はきわめて審議の根幹をなす政府の態度としてけしからぬ。こういうことを私は申し上げたい。
○坂本委員 関連して。こういう法案を出される以上は、第五条の関係にしましても、ほかの関係もたくさんありますが、「犯罪が行われることが明らかであると認めたとき」、これは巡査が認めるのです。それから「犯罪が行われようとして」おるとき、この前提としていかなる犯罪を予定しておるかということ、起案するとき、その予定がなかったら、そんな起案はできないはずです。それから公共の安全と秩序が著しく乱されるおそれがあるときということ、こういう類型を作るならば、これはやはり一巡査が執行の際に認めて、人間を警告したり制止したりする。そういう重要な権限を持つものである法律だから、この場合は、公共の安全と秩序が著しく乱されるというのはどういう場合かということを、やはり現在の世相によってそれを前提としなければ、こういう法律はできないのです。もしそれがないとしたら、これはこういう法律を作って、いいかげんに口でごまかして、そうしてでき上ったならば、一巡査の権力によって基本的国民の人権を侵害することになる。そういうものを作るといわれてもやむを得ないのじゃないかと思うのです。そういう意味においても、今要望があったように、この審議の前提になるものをくまなく上げなければならぬと思うのです。できなかったならば、その代表的なものをあげてやらなければ、われわれはこの審議はできないのです。このわずか五条の審議をするにしてもこの法律による権力というものは偉大なるものです。基本的人権を侵害するものです、しかも一巡査の行為によって侵害される。ですから、どうしてもそれを明らかにしていただかなければ、われわれは審議の対象にもならないし、審議を進めることもできない。
○阪上委員 関連。私は、今問題になっている点は一昨日質問した点なんです。その場合において警察庁長官並びに大臣その他から、この乱用防止の方法について私が質問したときに、あなたがお答えになった内容なんです。そのとき私は特に申し上げた。警察法に基いて下級の警察官というものは現場で処理していくのでありますけれども、その判断が、乱用した場合に、たとい行政措置であろうとしても、国民はこれを非常に危惧しているのだということを申し上げた。ところが警察法に基いて警察官は、極端にいうならば機械的に動いているのです。これはあなた方自身の、上司の命令によって動くのですよ。世間では、現場の警察官が勝手な判断をするというおそれを持っておりますけれども、その根源はあなた方の指令にあるのです。その指令をするあなた方が、公共の安全と秩序について具体的に持っていないということで一体どうするのですか。どうしてこれを指令するのですか。そういうようなことでは非常に大きな問題ですよ。もっと真剣に考えて下さい。
○柏村政府委員 公共の安全と秩序が乱されるということにつきましては、われわれとしては、非常にはっきりした概念だと考えているわけであります。先ほどから申し上げますように、たとえば渦巻行進によって人民の交通がはなはだしく阻害されるとか、あるいは官庁への集団の不退去罪が構成されるというような場合とか、暴力団が対立して非常な不安な状態になるとか、あるいは集会に対してそれに反対する連中がこれを妨害する行為に出ようとするとか、いろいろそういう例は考えられるわけでございます。そういうことを考えて、結局社会生活の平常な運営が著しく阻害されるというような観念に相なるわけでございまして、それを公共の安全と秩序を著しく乱されるという言葉にしぼって参ったわけであります。 それから警察官の判断によって非常にこれが間違って動かされるおそれがあるというお言葉でございますけれでも、警察官が、先ほど申しましたように渦巻行進とか、そういうようなものについては、はっきりと公共の安全、秩序に反するという判断ができる。警察官が判断のむずかしいような問題を、公共の安全と秩序を乱すということで行動することはないというふうに考えるわけであります。
○阪上委員 今の答弁によりますと、渦巻行進そのものが公共の秩序と安全を著しく乱すものだ、あなたはこう解釈している。幼稚園の子供が遊戯をやっておっても渦巻行進だ。そうじゃない。やはり個人の生命と身体と財産を侵害する、そこなうところの行為が原則である。渦巻行進によってそういうことが予想されることがやはり原則だと思う。それ以外に、公共の安全と秩序というようなものの具体的なものをあげてみなさい。そんなものはありはしないでしょう。
○柏村政府委員 今、ただ単に渦巻行進と申しましたので、幼稚園の生徒の渦巻行進と一緒にされたのかもしれませんが、そういう意味ではなく、最近世上においてしばしば見受けられます交通の混乱を来たすような渦巻行進について申し上げたわけでございます。そういう例をあげていきますと数限りなくあるわけでございますけれども、これを公共の安全と秩序という言葉で表現することは、きわめてはっきりした概念であろうと私は考えております。
○中井(徳)委員 先ほどの問題がちょっとも前進していないのですが、今長官は思いつきを二つ、三つ言われました。渦巻行進と言われたら、直ちに渦巻行進についてその次に立って形容詞を使わなければならないような、それから何か暴力団の対立といいますか、暴力団というものは、いつも対立しております。今でも対立しておる。新宿の暴力団、いざいつどうするかというようなことになりますと、これまた非常な問題になってくる。こういうことになりますから、あなた方は頭の中で概念的にわかっておりましても、現実の問題としては、これは非常に幅がある。こういうことであります。渦巻行進一つにしましても、あなたのところはちょっと文書で、道路上の渦巻行進をしておった場合には、これはいかぬというふうな指令を出すでしょう。そうしたら、たまたまその道路は非常に広い道路で、朝八時にやっておったら、だれも通りゃせぬ。メーデーでこれから出発するときに、グランドのところで一つ行進をわっしょ、わっしょやりながらいこう、それもいけない、こういうふうに現場はやはりなってくるのです。そういうことを一、二、例をあげられたら、そのことだけでも反対解釈は幾らでもできるし、これもまたずさんだ。こういうことになってくると思う。ですから、そういう統一解釈をされるのならば、もっとはっきりどういうことでどういう場合ということを一つ示して下さい、これからの審議の経過なり途中で。それも現在ちっともないのです。そういうことを冒頭に私は申し上げた次第でございます。ですからどうぞ委員長、この点はあなたの善処を求めます。
○鈴木委員長 ただいま御質問の点はきわめて重要な点でございますから、審議の過程において、最も近い機会に政府から明らかにされるよう答弁を求めます。
○多賀谷委員 今の点は、結局裁判所でも非常にまちまちなんですね。あるいはまた公安委員会が公共の安全と秩序ということを判断しておりますが、これまたいろいろある。ですから、この点はやはり明確にしていただかなければ、われわれ先へ進めませんが、連合審査ですから、少し御遠慮申し上げて、一応先に進みたいと思います。 次に、第六条ですが、六条は、改正案によりますと、犯罪というものが関係ない。現行法によりますと、「警察官は、前二条に規定する危険な事態が発生し、」と、「前二条」ということを書いておりますから、当然犯罪に関係しての問題です。改正案には、直ちに「人の生命、身体若しくは財産」云々と書いて、前二条を受けていないようでありますが、犯罪をどうしてのけられたか、その理由を明らかにしていただきたい。
○中川(董)政府委員 ただいまお尋ねの点は、六条一項の規定に関することでございますが、六条一項の改正法律案によりましては、「危害が切迫した場合において、その危害を防止し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、已むを得ないと認めるとき」こういうふうに条件がかぶっておるのであります。これは現行法律秩序で申しますと、緊急行為、こういう概念に当てはまろうと思うのであります。ちょうどこれに対応するよく似た言葉は、刑法の総則の緊急避難の場合に、やむを得ない、こういう言葉があります。それに対応する場合でございます。従いまして、「前二条に規定する危険な事態が発生し、」ということがなくとも、やむを得ないということでございますので、第五条について言いますならば、第五条に規定する制止をするについて他に手段がない。手段がないというやむを得ない、こういう場合でございますので、この法律に規定する制止を行うについてやむを得ない、こういうことでございます。漫然と立ち入るという場合は、やむを得ないという場合に該当いたしませんので、この法律に該当する場合の強制手段を用いるについて他に手段がない——ちょうど例を申しますと、刑法総則の緊急避難に該当する場合の規定でございます。「前二条」という規定を省きましたのは、たとえば自殺者の保護というときに強制手段を講ずる場合におきまして、家、土地に立ち入るという場合があるわけです。現行法でも「前二条」でしぼっておりましたけれども、そういう場合もおおむね刑法の緊急避難において免責される場合だと思うのであります。そういう場合をわかりやすくするためにこういうふうにいたしたわけでございます。繰り返して申しますが、六条一項の規定は緊急行為に関する規定でございまして、「已むを得ない」という文字がございますので、その点御安心願いたいと思います。
○多賀谷委員 私は心配をして聞いておるのではないんです。「已むを得ない」というのは、現行法にもある、改正案にもある。ですからその点は伺っていない。「公共の安全と秩序に対する危害」というのは、新しくかぶってきたのですから、これはけっこうです。ところが「前二条」という規定がなくて、そして直ちに改正案で前の条文を受けないで書いてある。前の条文を受けないということは、第五条の関係で見ますと、犯罪関係がなくても改正案ではできる、こういうようになるわけで、その点は、今自殺者の例が言われましたけれども、もう少しどこが違うか、これを明確に御答弁願いたい。
○中川(董)政府委員 実体的に申します。実体的に申せば、現行法は、「前二条」でありますので、第五条の制止の場合と、第四条のこういう危険な事態が起る場合と、この二つでございます。それから今度「前二条」がとれましたので、第三条の二の場合におきましての保護をやる場合もやむを得ない場合でございます。旧法すなわち現行法におきましては、第三条のごとき場合は、おおむね刑法総則の緊急避難で解決される場合であろうと思うのでありますが、そういう不つり合いがございますので、強制手段としては同様でございますので、三条ないし五条に定める強制手段を行う場合において、他に手段がない、こういうのがやむを得ない場合でございます。
○多賀谷委員 意味はわかりましたけれども、私はこれまた今までよりもかなり幅広くいわば「立入等」の権限が行使されるということになると思うのです。必要もないのに権限の拡大をされる。一体青木国務相はどういうようにお考えですか。
○青木国務大臣 第六条の「前二条」をとることは、先ほど中川政府委員の申し述べておるように、別にこれによって従来の解釈が広がった、こういう意味ではないのでありまして、全く条文の整理だけの観点からこれを削除した。こう私は考えております。
○多賀谷委員 第六条で、現行法と改正案が同じだなんということは解釈できませんよ。大臣は同じだとおっしゃったが、政府委員は同じだとは言わなかった。けれども、私は、少くとも四条、五条の関係を受ける条文は、犯罪と関係なくしてできるなんということはもってのほかだと思う。しかも今度は「公共の安全と秩序に対する危害」というきわめて広範な範囲が入っておる。しかもそれは犯罪と関係がない。こういうのですから、何でもできるということになりはしませんか。やむを得ないなんて主観の問題ですよ、どうですか。
○青木国務大臣 中川政府委員の申し述べておるごとく、全く技術的な問題でございまして、そういう点において何ら従来の解釈以上に広げた、こういう意味ではないのであります。
○多賀谷委員 私は、身体、生命、財産の場合なら、これは大体犯罪になるから言いません。ところが、公共の安全と秩序という大きな問題が入ってきておる。それを今までの犯罪の構成要件と関係なく六条を置いたというのはきわめて重大な改正であると考えざるを得ない。 〔鈴木地方行政委員長退席、小島法務委員長着席〕
○青木国務大臣 刑法総則の関係を置いただけのことでありまして、同じだと私は考えております。
○多賀谷委員 刑法総則の関係と言われますが、先ほどから申し上げますように、きわめて大きな概念を入れたわけでしょう。少くとも身体、生命、財産全部と匹敵するくらいの大きな概念を入れたわけでしょう。身体、生命、財産だけなら、犯罪と切り離しても、私は事実上あまり問題は少いかと思う。しかし、公共の安全と秩序に対する危害というものは、犯罪要件と全然関係ない。犯罪を行わなくてもできる。そういう場合に、立ち入りその他の権限を行使するということは重大な問題ですよ。せっかく五条に入れたのなら、五条を引き継がれたらいいでしょう。三条の二項の関係がうまくいかなかったら、これは別項にされたらいいでしょう。基本的人権をこう便宜的にやつちゃいけませんよ。
○中川(董)政府委員 犯罪と関係ない、ないとおっしゃいますけれども、こういうふうに考えておるのです。「已むを得ない」といいますのは、この法律によるところの強制手段を用うるについて他に手段がない、こういう意味でございますので、五条の強制手段を行うにつきましては、犯罪がかぶります。四条の強制手段を行うにつきましては、現行法でも同様でございますが、現行法によって「引き留め、」云々のこういった強制手段を用うる場合に限ります。それから三条とか三条の二につきましては、三条に定める強制手段を用うる場合に「己むを得ない」、こういうわけでございますので、漫然と立ち入るということは「己むを得ない」という概念から許されないのであります。
○多賀谷委員 漫然なんて許されないのは当然ですよ。初めから漫然なんということを考えて立法するのはとんでもない。「已むを得ない」と書いてある。私だって字は読めるんですよ。しかし「公共の安全と秩序に対する危害」というものは、犯罪と関係なく出ておるじゃないかと、こう言うんですよ。きわめて重大な問題が犯罪と関係なく取締りができる。先ほどお話があったように、犯罪でなくても自由自在に、これを判定する者ができることになる、これは重大問題じゃないかと、こう言っておるのだ。
○中川(董)政府委員 繰り返し申しますが、五条の強制手段を用うる場合におきましては、犯罪と関係がなければできません。
○多賀谷委員 五条はそうだが、六条を聞いておるのだ。
○中川(董)政府委員 だから、この法律によるところの強制手段を用うる場合に限りますので、五条の手段を講ずる場合には、犯罪に関係なくてはできません。四条につきましては、四条の要件が満たされる場合に限ります。三条についても同様でございます。
○多賀谷委員 私は先ほどから六条を聞いておるのです。
○中川(董)政府委員 六条に規定する「已むを得ない」と申しますのは、この法律に規定する強制手段を行うについて「已むを得ない」のでございますので、この法律に規定する強制手段は、五条とか四条とか、そういったことでありますので、その規定を申し述べただけでございます。
○多賀谷委員 あなたは私の言うことがわかっておってそういう答弁をする、けしからぬじゃないか。私が言っているのは、現行法でもそうでしょう、現行法も「已むを得ない」とある。そうして現行法も、「生命、身体又は財産に対し危害が切迫した場合」という、こういうような要件があるのにもかかわらず、さらに前二条を受けておる。ましてや五条を受けておりますから、犯罪があるような場合に、身体、生命、財産に影響があり、「已むを得ない」場合にするのだとなっておる。今度の改正案では、犯罪がなくても生命、身体、財産に影響がある——これはまあいいでしょう、これは大体わかる。ところが「公共の安全と秩序に対する危害が切迫した場合」というのは、犯罪と関係なく入れておるじゃないかと、こう言うんですよ。前の方の関係じゃないんですよ。
○中川(董)政府委員 多賀谷委員の御指摘の、ごとく、「前二条に規定する危険な事態」という言葉は削っております。これは削っておりますが、現行法にもありますが、「已むを得ない」という言葉は、この法律に規定する強制手段を用いて行う場合において「已むを得ない」、こう読むのは理の当然でございますので、「前二条に規定する危険な事態が発生し、」という規定を入れる必要がないので削ったのでございます。そういうことを明確にいたしたいと思います。
○多賀谷委員 私は当然だという意味がわからない。これは削るのが当然だという意味がどうしてもわからない。わからないというのは、現行法の五条からいきますと、「犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体」云々とありますが、要するにこれは犯罪が行われようとしたという要件があるんです。それを引き継いで現行法の六条があるわけでしょう。今度はその五条の改正案に、「犯罪」というものがやっぱり出てきて、「犯罪が行われることが明らかである」あるいは「又、犯罪が行われようとしており、そのまま放置すれば、」とこうある。しかるにこの八条は、その犯罪と関係なく、生命、身体、財産、これはいいだろうと言うのですよ。ところが「公共の安全と秩序」というものが、五条の関係を全然受け継がないで、犯罪と関係なく、ただ自分で、これは犯罪にはならぬ、犯罪によって行われる事態じゃないけれども、ある行為によって、犯罪じゃない正当な行為によって行われる「公共の安全と秩序に対する危害が切迫した場合」に、こういうことができるか、こう言っておるのです。
○中川(董)政府委員 この改正法律案によりましても、犯罪と無関係に、公共の安全と秩序が著しく乱されて、制止もできないのに、入るということはできません。
○多賀谷委員 犯罪と関係なくできないというのですか。犯罪と関係なくはできない、こういうのですか。もう一回言って下さい。
○柏村政府委員 ただいま中川局長が御説明申し上げましのは、六条に「人の生命、身体若しくは財産又は公共の安全と秩序に対する危害が切迫した場合において、その危害を防止し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、已むを得ないと認めるときは、」というこの「已むを得ないと認めるときは、」というのは、各条によって、たとえば五条なら五条によって、その制止をすることが必要である、そうして入ることが「已むを得ない」という場合なんだから、当然に「前二条に」というようなことで、「犯罪」というものをここに書かなくても、五条の犯罪ということがかかっておるのだから、だから当然に「已むを得ない」場合というのは、五条の公共の安全と秩序を乱す犯罪がある場合に初めて制止ができるのだから、その制止をするために入るということになるわけです。そうすれば、その制止することは公共の安全と秩序の関係におきましては、犯罪がなければ制止できないわけですから、当然そういう「前二条」とか「前四条」とか——正確には「前四条」と書けば同じことかもしれませんが、そう書かなくても、警察官が職権をもって行動することができるのは、この職務執行法に書いてある各条によるしかないわけです。そうすると、第五条で「公共の安全と秩序」ということをいっておる場合には、その前に犯罪が行われようとしていて急を要する場合でないと制止できません。そういう制止をしなければならぬような場合にやむを得ず入るということでありますから、これは当然に五条と同じになるということが中川君の申し上げた意味でございます。
○多賀谷委員 柏村さんの説明はわかるのですが、条文上はそうは読めぬかもしれませんよ。説明はわかりますが、条文上はそう読めぬかもしれませんよ。「公共の安全と秩序に対する危害」が切迫したという場合は、犯罪と必ず関係があるということは言えるかもしれません。犯罪の類型がないかもしれません。ましてわからぬのでしょう。さっきから公共の安全と秩序を著しく乱す場合はどういう場合があるかといっても、なかなかわからぬでしょう。ただ警察官が、これは大へんだといっても犯罪じゃないのです、そのことは。原因は犯罪じゃない。そういうことはあるかもしれませんよ。
○柏村政府委員 しかし、ここで申しておりますのは、四条によって避難等の措置をさせる場合、それから五条によって犯罪の予防のための制止、こういうことをやる場合に、そういうことが警察官の方の職権行為でやるわけですから、職権行為でないような問題は、この規定とは全然関係ないわけです。職権行為でやるようなもので、しかもそれがやむを得ない場合に立ち入るというのでありますから、制止をするのにやむを得ない、避難の措置をするのにやむを得ない、こういうふうになるわけでありますので、それで御予解願えると思うのです。
○多賀谷委員 それでは、民間労組がゼネストをやったら……。
○柏村政府委員 ゼネストということだけは……。
○多賀谷委員 民間労組が一斉にストライキをやった……。
○柏村政府委員 民間の労働組合が正当にストライキをやっている問題は入りません。
○多賀谷委員 じゃ、政治ストをやったらどうですか。
○柏村政府委員 それが犯罪になり、しかも、急を要する五条に該当するような場合には入ります。
○多賀谷委員 じゃ、民間労組が政治ストをやったらどういう犯罪になりますか。
○柏村政府委員 争議に関連いたしまして、道路交通取締法違反というような、争議に直接した問題でなくて、争議行為に付随して起ってくる犯罪行為というものはあり得ると考えられます。
○多賀谷委員 ですから、民間の政治ストというものは違法じゃないわけですね。犯罪じゃありませんね。
○柏村政府委員 政治ストそのものが違法だ、犯罪だということにはならないと思います。
○多賀谷委員 そうしますと、この警職法反対のストライキというものは違法じゃありませんね。
○柏村政府委員 ストライキ自体は犯罪でございません。
○多賀谷委員 よくわかりました。そうしますと、そういう場合は入らない。あくまでも第六条の公共の安全と秩序に対する危害というのが犯罪ということと関係がある、こう解釈してよろしゅうございますね。
○柏村政府委員 五条に関する限りさように考えます。
○多賀谷委員 五条に関するというと……。六条の解釈としてでしょう。
○柏村政府委員 そうです。
○多賀谷委員 そうしますと、その次の二項をお聞きしたいのですが、二項は現行法では、客の来集するという営利的な集会をいわばさしている。今度はそういうことは全然書いてなくて、「公開の施設又は場所」、こういうことを書かれているのですが、どう違うのですか。
○中川(董)政府委員 ほとんど違わないのですが、正確に申します。「公開の施設又は場所」といいますのは、不特定多数人に公開された施設または場所でございます。
○多賀谷委員 それはなぜ改正されたのですか。
○中川(董)政府委員 改正された主観的動機は、三条の泥酔者の場合におきまして、「泥酔のため」「公開の施設若しくは場所において公衆に対し」という言葉を用いておりますので、同じ法律で同様な意味を持つものにつきましては同様な言葉を用いるのが適当でありますので、「多数」という言葉よりも「公開の施設又は場所」の方がより正確である。ことに第三条一項一号と文字が符合いたしますので、この文字にいたした次第でございます。
○多賀谷委員 そうすると、現行法はどうですか。現行法の解釈は営利とは関係ないのですか。
○中川(董)政府委員 営利とは関係ございません。
○多賀谷委員 では次に私は三条の二をお聞きしたいと思います。三条の二をわれわれずっと読みますと、こういうことが浮んでくるのです。若い労働者といいますか、少年である労働者あるいは全学連、この少年に該当する学生や労働者がピケをやっておる、あるいはまたスクラムを組んでジグザグ行進をやっておる。それがよその窓ガラスあるいはショウ・ウインドーに危害を加えるようなおそれがある、こういう場合にはこれは適用ありますか。
○柏村政府委員 この三条の二の規定は、いわゆる触法少年、虞犯少年等に対する保護でありまして、他人の生命、身体に危害を加えるというようなおそれがあるという現実に対し、しかもそうしたいわゆる不良少年と認められる者について応急の保護の規定で、ございまして、労働運動とかあるいは学生運動、大衆運動について何ら関係のない規定でございます。
○多賀谷委員 そうすると、あまり政府は全学連をお好みでないのですが、異常な挙動、こういうようになりはしませんか。
○柏村政府委員 これは「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して他人の生命、身体又は財産に危害を加える虞のあることが明らかであり、且つ、急を要すると信ずるに足りる相当な理由のある少年を発見したときは、」というこの前段だけでも非常にしぼってあるのでございますが、次にただし書きで「その少年が少年法第三条第一項第二号若しくは第三号に掲げる少年又は児童福祉法第二十五条に規定する児童に該当すると認められる場合に限る。」としてあるわけでございますから、先ほどお話しのようなものはこの条項には関係ございません。
○多賀谷委員 そうすると、全学連の若い層あるいはまた未成年の労働者、あるいは労働組合でいえば青年行動隊というものがピケをやっておりますね、あるいはスクラムを組んで、こういう条文の適用を受けるということは絶対ない、こう考えてよろしいですか。
○柏村政府委員 御意見の通りに考えております。
○多賀谷委員 一応私はそう信じたい。しかし、どうも私は根本的に信じることのできない幾多の問題を持っておるのですが、続いて質問をいたしていきたいと思います。 次に、この家族等に対する通知、通告というのは、どういうことを通知されるわけですか。
○中川(董)政府委員 家族に対する通知は、保護いたしました少年につきまして、保護した旨を至急通知をするわけでございます。
○多賀谷委員 次に私は条文を離れて、根本的な問題についてお聞きいたしたいと思います。これは青木国務相にお聞きしたいのですが、この条文をずっとながめてみますと、警察上の比例原則というものがありますね。どうもこの比例原則というものに違反をしているような感じを受けるのですが、どういうふうおに考えですか。
○青木国務大臣 私どもは違反しておるとは考えておりません。
○多賀谷委員 どうして違反していないのですか。
○中川(董)政府委員 まず現行法から申し上げたいと思うのですが、現行法で、児童福祉法という法律、少年法という法律によりまして、少年法に規定する要保護少年、触法少年、虞犯少年、それから児童福祉法によるところの要保護少年は、公共の福祉のためにこれを保護、愛護しよう。こういう趣旨でできておるものだと理解いたすのでございますが、それに該当する子供たちに対しまして、現場活動を持っておる警察が、それを発見いたしまして、その措置に移す行為でございますので、むしろ児童福祉法、少年法に規定する保護が、現場活動を持っております警察官が発見しやすい立場にありますので、公共の福祉のために、早くそれをバトン・タッチしていく。こういう規定でございますので、公共の福祉のために、これは警察比例の原則に違反しないと考えておる次第でございます。
○多賀谷委員 私は今の三条二項を聞いたわけでなかった。改正案全般について聞いたわけですが、運輸大臣にずっと来ていただいておりますので、運輸大臣に先に質問をいたしたいと思う。どうもおそくなって済みませんでした。 実は鉄道公安職員の職務に関する法律というのがございます。この法律と今度の警職法の改正、あるいは警職法自体でもけっこうですが、これとは関連ございますか。
○永野国務大臣 関係はないと存じます。
○多賀谷委員 そういたしますと、犯罪の捜査でありますから、全然警職法の適用は受けないわけですね。鉄道公安職員が、司法職員としての職務を執行する場合には受けないわけですね。
○永野国務大臣 さようでございます。
○多賀谷委員 そこで、私は今申しました鉄道公安職員の職務に関する法律をお聞きしたいんです。これは昭和二十五年の八月十日に公布されたわけでありますが、これは議員立法でありまして、当時鉄道には特殊な犯罪、たとえば荷抜きであるとか、行先を差し変えるとか、こういう特殊な犯罪が非常に多くございまして、そうして鉄道公安職員に司法職員としての権限を付与してもらいたいということで、国会にいわば陳情されたわけです。そして当時のGHQあるいは警察当局はあまり好まなかった。なぜ好まないかといえば、GHQの方は、警察の権限を拡大することは困るという考え方、さらに警察は、繩張り的といいますか、自分の権限が少くなると困るというので、四面楚歌であったわけです。それを当時の法務委員の方々が小委員会を設けて立法された。そのときに、本日も見えておりますが、猪俣先生が中心になってやられたわけですが、これは労働運動に影響がないか、将来鉄道公安職員が労働運動に関与するようなことがないか、こういう点が一番社会党としては心配であったわけです。ところができたときには、政府当局は、それは絶対にありません、そういうことは絶対にございません、こう言われたわけですね。ところが、共産党だけは、いや、そんなことを言っておってもだめだ、法律ができてそれだけの権限を与えるならば、必ずこれが労働争議に出てくる、君たち今だまされておるのだ。こう言って、共産党だけは反対したわけです。社会党は、いや、そういうことはない、あれだけ言っておるのだから間違いないといって賛成して通過させた。いな、自分たちが作った。ところが、その後昭和二十九年ごろから、鉄道職員が実際にこの労働紛争の中に出てきておる。一体これはどういうようにお考えですか。
○永野国務大臣 私の承知しております限りでは、鉄道公安官が労働運動を目的として行動したことはないと思います。
○多賀谷委員 実はこれは二つの役割をしておるのです。と申しますのは、いわば会社でいいますと、守衛、衛視さん、そういう会社の守衛的な役割をしておるのが一つです。というのは、鉄道管理局長が命令をして、いわゆる鉄道の施設の保護として出動しておる。このときは司法職員としての資格じゃないのです。そうして労働組合に対して逆ピケを張って対抗しておる。形勢が悪くなると司法職員としての職務を代行する。そうして手錠をかける。わんさわんさ押しておるときは、まだ初めのうちは、これは鉄道管理局長として守衛的な役割で出てくる。そうしていよいよ形勢が不利になると、手錠をかけて、司法職員になる、同じ人間ですから。私は、こんなことは許されないと思うのです。第一出てくること自体が初めから間違いなんです。ましてや司法職員としての職務を執行することは、立法当時とは全然違う。一体どういうようにお考えですか。 〔小島法務委員長退席、鈴木地方行政委員長着席〕
○永野国務大臣 鉄道公安官が出て行きまするのは、鉄道公安官本来の目的、すなわち鉄道の安全運営を守るいろいろな場合があり得ると思いますけれども、そのために出たのであろうと思います。ところが、今どういうお言葉でしたか、形勢が悪くなると……。
○多賀谷委員 最初は管理局長として、一般職員として出てくる。後に形勢不利になると、いわゆる司法職員としての役割を果す。
○永野国務大臣 その形勢不利というのがどういう意味でありますか、ちょっとわかりかねるのでありますけれども、鉄道の安全運転に支障を起すような状態になったときに、おそらく司法官の職権を行使したものだと解釈いたします。
○多賀谷委員 正当な争議といいますか、もう全然問題のないような紛争にはそれは出てきません。それはだれも心配してないのです。問題のないような、経営者にもそれほど苦痛を与えないようなときには、それは出てきませんよ。これが労働争議に出てくるんじゃないかという心配をするのは、問題のあるときです。ですから、そういうものには絶対に出さないと、こう言っておるのです。そうして立法を作らして、全く国会をぺてんにかけている。それは正当な争議じゃないのだと言われますけれども、その紛争自体は犯罪になっていないのです。ところが、鉄道公安官が出てきて、鉄道公安官ともみ合ったために公務執行妨害になっている。そして起訴されている事件が幾多ある。鉄道公安官さえ出てくれなければ何も問題は起っていない。鉄道公安官が出たから、鉄道公安官の職務を執行する妨害をしたというので、公務執行妨害で訴えられておる。これは警察をお呼びになるのならともかくとして、あれだけ約束して、そうしてこういう法案を作らして、議員はいやだいやだと言っているのに、無理に、運輸省から出されるのは困るといって、わざわざ頼んで議員立法として出された。そうしてそれを悪用するなどということは言語道断だと思う。どういうふうにお考えですか。
○永野国務大臣 私は、今お説の通り、鉄道公安官が出たがゆえにそこに犯罪が起きるのだ、鉄道公安官が出る前は犯罪行為はないんだというお言葉でありましたけれども、実は具体的のケースについて考えませんとわかりませんが、おそらくいわゆる鉄道の平安な運営ができないような状態が起きたと判断して公安官が出たのでありまして、ただ漫然鉄道公安官が出動するようなことはなかったろうと私は判断しております。
○多賀谷委員 いや、紛争の場合は、若干運行に支障のある場合ですよ。それが正当であるか違法であるかということは別ですよ。だから約束というのは、正当な何も問題ない場合に約束しやしませんよ。鉄道公安官が出たら困るというような、そんな意味のないことを約束しませんよ。これは問題のある争議のときに出てくることが予想されるから、絶対に出してくれては困る、いやそれは絶対に出しませんから、こういうことで法律を作ったのですね。法律を作ってみたら、いい武器を持っているものだからそれを乱用する。しかも初めのうちは乱用しません。同じ事件が起っても、人が忘れたころさあっとお出しになってくる。そういう考え方が間違っておりはせぬか、こういうのです。
○永野国務大臣 お説のように、正当なる、法律において認められたる労働行為が行われておりますときに、公安官が出動して、その公安官の出動の仕事を妨げたから、そこで公務執行妨害という新しい犯罪が成り立つようになったというようなお説のように承わるのでありますが、事実そういうことであれば、おそらくお説の通りだろうと思います。しかし、私が少くとも今日まで聞いておりますところでは、鉄道公安官が出るときに、すでに鉄道公安官が出るだけの犯罪と申しますか、あるいは平穏なる運輸行政が行われないような状態になると判断されたときに出るのでありまして、全然何にも鉄道公安官が出る必要のないときに出たものとは考えないのであります。
○多賀谷委員 私はそう言っていないのですよ。それは現行法で法律が生きておれば使いたいでしょう。ましてや、これは正当な争議でないと考えられれば、それは鉄道公安官を出したいでしょう。しかし約束が違うじゃないかと私は言っているのです。それは法律を出すときの立法精神が違うじゃないか。正当な争議で、だれも介入できぬものを、出てくるということは考えられませんよ。そんな意味のない、無価値な約束はしませんよ。これは将来紛争が起るというのは、争議が必ずしも正常でないというので紛争が起るのです。だから一般警察官が来るならいい。それがいい悪いは別として、これは呼んでくるのはいい。ところが、鉄道公安官が来るなんて、しかも来る来方が、初めから司法職員としてやってくるのじゃない。初めは一般職員として、いわば守衛的な役割をしてやってくるのです。そうしていよいよ紛争が起きてくると、今度は司法権を発動する。こんなのはもってのほかですね。これは一定のわらじをはいたおかっぴきみたいなものだ。ですから、今青木国務相が言われておるけれども、私はなかなか信用できないのですよ。こういうことがあるから、新憲法下でもこういうことが平気で行われているのですよ。ですから、私は十分考慮してもらいたいと思うのです。
○永野国務大臣 ただいまの御質問の要点は、出てくるということがいいとか悪いとかいうよりは、約束に違う。こういうことがポイントのように思うのであります。まことに相済みませんけれども、その当時どういう約束をされたかということを私よく存じません。どんな場合でも、それは絶対に出さないんだという約束をされたということが私にはわからないのであります。従いまして、今ここでその違約を私にお責めになりましても、実はまことに困るのであります。
○多賀谷委員 私は警職法の一つの例として、法律が非常に乱用される例として申し上げたのです。立法当時と変って運営されるということを非常に悲しんで言っているわけです。そこで今の鉄道公安職員の職務に関する法律はそういう経緯なんです。これを作った人は現在おられる法務委員会の小木専門員です。この方が法務と労働の連合審査をやりましたときに、場所的制限がある、犯罪はこういうものの制限がある、だから初めからそういうものを予定していないのだ。こういうことをおっしゃっていますから、大臣はよく事情を聞かれて、そうして今後善処してもらいたいと思うのですね。こういう不愉快なことはないです。きょう猪俣さんがもう姿が見えぬからこれで終っているのですが、先生がおられると、またいきり立って今夜十二時ごろまでかかりますよ。一つ十分善処していただきたいと思います。
○永野国務大臣 御質問の趣意はよくわかりました。先ほど申しましたように、遺憾ながら私はこの場で明快に御答弁する資料を持ちませんから、当時の事情をよく調査いたしまして、改めた機会に御答弁申し上げたいと思います。
○坂本委員 ちょっと関連して運輸大臣にお願いしておきますが、よく調査していただいて、私実例を持っておりますが、時間もないし、私の質問の機会にやりたいと思いますから、それまでによく調査しておいてもらいたいと思います。
○多賀谷委員 鉄道公安職員の職務に関する法律の立法の趣旨と、その後の運用が違っているので非常に遺憾に思うのですが、私は、こういうことが警職法の改正案にありはしないかということを非常に憂えるわけです。そこでこの警察官というものが、あなた方は乱用しないということを盛んに言われますけれども、私は幾多の事例を知ることができる。ここに坂本委員がおられますから、大分県の菅生事件というのはよく御存じです。要するに、戸高公徳という巡査部長が、ダイナマイトを渡して、そしてどういうわけか駐在所が爆破されたという事件。こういう事件は非常に不可解な気持を与える。これはナチスの政治と同じですよ。その後、警察がかくまって東京に来た。幸いに新聞社の協力がありましたから見つかったようなものの、その戸高公徳という男は、ある書店に勤めておったけれども、その書店も警察の関係の本を発行している書店ですよ。とにかくこういう不愉快な事件はないと思う。あるいはまた、私は、最近破防法が通過するときの状態を調べてみましたが、何と大学事件の多いことか。破防法が通過してしまうと一つも大学事件というのは起きていない。昭和二十七年の七月の四日に破防法は成立しましたが、その前の二月二十日に東大事件が起っておる。三月十八日には北大事件が起りました。四月十四日には京都大学事件、四月二十日には第二東大事件、四月の二十三日には教育大学事件、さらに五月の七日には愛知大学事件、五月八日に早稲田大学事件、こういうように事件が起っておる。この事件の大半は、わざわざ警察官が入らぬでもいいのに、大学の構内に入って事件を起しておる。そうして破防法が通過すると、そういう事件はどこにも起っていない。私は、こういうきわめて奇妙な事件に接してりつ然たるものを感ずるのです。一体これはどういうわけだろうか。わざわざ警察官がそこに行かぬでもいい。愛知大学なんかのごときは夜中に塀を越して行っておる。なぜそういうことをするのだろうか。学生が集まるのは当然です。そうして愛知大学事件、あるいは早稲田大学事件と、毎日のように報道されて、いかにも破壊活動防止法を通過させなければ、世情は非常に不安で騒然たるものがあるという感じを与える。一体青木国務相は、こういうことに対してどういうようにお考えなんですか。あなたは警察はしろうとですから、しろうとなりに、私はしろうとの方がほんとうに公正な意見を伺えると思うのですが……。
○青木国務大臣 私は破壊活動防止法を出す前にそういう事件がたくさんあって、その後なくなったということが、何かそれと、警察の方で作為的と申しますか、関連があったとというふうに考えること自体がどうかと思うのであります。警察が何か一つの意図を持ってそういうふうな行動をやるというようなことは、昔の警察ならば、あるいはあり得たかもしれませんが、現在の警察におきまして、さようなことは許さるべきことでもありませんし、またあってはならぬ。かように私も考えておるのであります。
○多賀谷委員 しかし私は、歴史は繰り返すといいますけれども、どうも最近はそういう傾向があると思う。山口警備部長はきょう見えていますか。——この警備部長が衆議院において、おとり捜査の問題をお話しになっておる。麻薬はおとり捜査をやっておる、こういうことを当時中村法務大臣は言われておりましたけれども、この菅生事件に対して山口警備部長は、当時破防法案が難航し、各地の治安が不穏であったので、あの場合やむを得ない処置だと思う。これはどうです当時破防法案が難航し——私は全くりつ然たるものを感じますね。一体法務大臣はどういうようにお考えですか。
○愛知国務大臣 おとり捜査の問題でございますが、これはただいまも御指摘のありましたように、アヘンの取締法等においては、法律にも明定されておることであります。またおとり捜査という言葉も、これは非常に常識的な言葉であって範囲が私は非常に広いと思うのであります。非常に広い範囲の意味において、どんな場合でもおとり捜査というようなことが絶対にあり得ないということは、私は率直に申しまして言えないと思うのであります。しかし、もともとおとり捜査というようなものは原則的にやるべきものではない、こういうふうに考えております。
○多賀谷委員 私は、原則的にやるべきものでない、そのくらいはわかりますよ。もう少しはっきりした答弁を伺いたい。今や民主憲法ですからね。それは昔のように共産党の中央執行委員の会議が全部ばれる。どうしたんだろうといったところが、警察の巡査が、平の党員からだんだん上って中央執行委員までなっておる、こういう例もある。あるいは巡査さんが入学試験を堂々と受けて、正門をくぐって大学に行って、そして学部の教授の講義を写して、一々警視庁に報告しておったというような例もある。しかし最近の情勢は、だんだんそれと変らない世の中がきておるのじゃないかと私は思うのですよ。いやしくも駐在所爆破事件というのが起っておるのですよ。そしてそれは破防法が難航しておったからというようなことを、その後警備部長が答弁するなんということは、一体何たることですか。
○愛知国務大臣 今のお尋ねの中にいろいろの問題があると思うのでありますが、たとえば破防法の関係におきましては、御承知のように、破防法が制定されましてから、破防法に規定されたところによりまして、たとえば団体の解散を命ずるというような措置が行われたことはほとんどない。そこでその破防法の目的というものは、ある意味において非常によく貫徹されていると私は思うのであります。実際に破防法ができたからといって、この適用によりまして団体の解散その他が続々行われるようなことは、世の中の平穏のために私はよいことではないと思うのであります。こういう意味におきまして、予防的な効果というものをよく上げていると思います。それからその次に、破防法が制定される前に事件が多くあって、というお話でございましたが、このことは偶然そういうことになったのでありまして、私は、世相が終戦後の非常な混乱の状態の当時に、いろいろの行動が社会的に行われたことの一つの証左であろうと思うのであります。幸いその後において、破防法の適用対象になったような事犯が非常に少いということは、私としてはむしろ喜んでおるのであります。
○多賀谷委員 だいぶおそくなりましたから簡潔に進めていきたいと思いますが、先ほどの公安全般に対する警察上の比例の原則がどうも考えられていないのじゃないか、こういう感じを私は持っておる。わずかのことを大きな権限で押えようとする。比例の原則が行われていないと思う。この点をもう一度大臣からお答え願いたい。警察上比例の原則というものはきわめて重要な原則です。警察権行使において、あるいは警察の権限を使う場合に非常に重要な最も大きい原則ですから、大臣からお答え願いたい。
○青木国務大臣 警察比例の原則の重要なことはお話の通りであります。そこでこの法律を作るに当りまして、先ほども第三条関係でも御説明申し上げました通り、そういうような原則に従いまして、他の法案等との関連におきまして十分に注意をいたしまして立法した次第であります。
○多賀谷委員 私は、十分考慮されていないと思うのです。今まで同僚が質問しており、また世論がこれに対して反対しておるのは、一にこれです。公共の福祉と人権の侵害とが比例していない。警察というものは、警察があるということそれ自体が人権の侵害です。ですから、こういう点も十分御考慮願いたいと思うのです。 次いで私は今度の警職法というのは、性格が質的に変っておるのじゃないか、質的変化をしておるのじゃないかと思う。これについてどういうようにお考えですか。
○青木国務大臣 しばしば私申し上げました通り、昔のままと申しますか、旧憲法時代の警察と現在の警察とは、本質的に変らなければならぬと、かように考えております。
○多賀谷委員 それは個人的人権の方から国家公安の保護という方面に移っておる。少くとも私は、今後の改正によって警職法は性格を一変したと思う。これは今まで日本が歩んできた過去と同じ道を、今歩もうとしておる。私はきわめて重大な問題だと思う。かつて、朕は国家である、こういった。今は警察は国家であるというふうな法案ですよ。何でもできるでしょう。法務大臣笑われておりますが、何でもできるんですよ。末端の警察官の悉意によって何でもできるんですよ。私はきわめて重大な問題だと思います。しかも警察自体の機構が変ってるでしょう。昭和二十九年に警察法が改正になってからずっと変ってるんです。すなわち国家公安委員会規則第十五号の警備実施要則の二条を見ますと、「警備実施は、多衆犯罪、災害、雑踏その他の事案が発生した場合又は発生するおそれがある場合において、主として部隊活動により、」部隊活動です。機動隊あるいは予備隊。「部隊活動により、個人の生命、身体及び財産の保護並びに公共の安全と秩序の維持に当ることを目的とする。」部隊活動としておる。われわれこの間映画を見たんですが、デモ部隊に応酬する訓練をやってる。その訓練は、いわば仮想敵国の方は上着をぬいで、警察官の待遇を上げろ、われわれに千円のベース・アップをせいというプラカードを持って、わっさわっさやる。一方は、警棒を持った警官が来ておって、そうして警棒をもってこづく練習をしているのです。これまさに労働運動そのものを犯罪に考えるようなものの考え方がだんだん浸透するのじゃないかと思う。それが非常におそろしい。一体どういうようにお考えですか。
○青木国務大臣 労働運動を犯罪視するというような考え方、私どもはそういうようなことはとうてい考えられないことであります。単に口先だけで言うばかりでなく、私は今日すでに新しい憲法のもと、労働運動というものが憲法で保障され、そうしてそれに基いて労働運動が展開され、今日に至っておりますので、もう国民の一般の常識として、労働運動が罪悪であるというような考え方は毛頭持っていないと思うのであります。また警察官も国民の一部でありますのでやはり同じような常識に立ちまして、労働運動が罪悪だとか、どうとかいうような考え方を持っておる警察官は、今日一人もいないと思うのであります。私は、その点は警察官——警察官というと、昔の警察官の印象が残っておりますので、まだそういう古い頭の警察官もおるのじゃないかという御懸念もあるかと思うのでありますが、しかし現在は、私はそういうことはあり得ないし、またあってはならない、こう思うのであります。
○多賀谷委員 青木さんが警察官にならなれると、私はりっぱな民主的な警察官になられると思います。しかし、実際はそうではないのです。京都の千曲事件というのがある。これは普通の小さな工場ですが、千曲製作所という従業員七十名くらいの小さな工場です。この工場で争議が起った。そういたしましたところが、太秦警察署長が一個小隊の武装警察官を連れてきて、そうしてもちろんピケを破って後にずらっと待機さして、そうして団体交渉をせよ、こう言って強制をして、しかも出荷はどんどん手伝ってやっておるピケを破って出荷を手伝い、そして出荷品のその数まで数えてやっておる。一体こういうことがありますか。これは御存じですか。
○青木国務大臣 その具体の事実を私は承知しておりませんので、どういう事情でそうなりましたか、ここにちょっとお答え申し上げかねるわけであります。
○多賀谷委員 法務大臣御存じですか。
○愛知国務大臣 私も存じません。
○多賀谷委員 これは簡単な事件のようでありますけれども、七十名というわずかの従業員の小工場の組合に一個の小隊を持っていっている。これだけでも実施における警察比例の原則に反している。しかもこれがために組合はくずれて、そこで組合の方は訴えたわけです。そうしたところが、京都の地検は握りつぶした。そこで京都では、京都検察審査会で不起訴処分は不当とするという決議書が出されておるのですよ。これは法務省関係ですね、一体どういうようにお考えですか。これは検察庁も悪いし、警察も悪いし………。
○愛知国務大臣 申しわけありませんが、私、報告があったかもしれませんが、今記憶がありませんから、政府委員からお答えをいたします。
○青木国務大臣 いつごろの事件ですか。
○多賀谷委員 二十九年の三月の事件ですよ。これはきわめて大きな問題になっておると思うのです。要するに不起訴処分をしたのを、検察審査会で不起訴処分は不当だという決議をしたのですからね。これを法務大臣が知らぬということはいかぬですよ。人権問題ですよ。わずか七十名のところに一個小隊を持ってこられてはたまったものじゃありません。そうして強制をして威圧のもとに団交をやらして、ヒケ破りをやって、員数まで数えて出荷をさしているというのですから、言語道断のことだと思う。こういうような事件を知らないで、自分のところの警察官は決して乱用をしませんとあなたは言い切れますか。私は幾多の事例を持っておりますよ、どうです。
○青木国務大臣 今のお話のことは、当時まだ自治体警察時代であったので、そこで報告を受けていなかったのだそうであります。しかし、そのことはそれといたしまして、一般的にこういう乱用の事態があるじゃないかというお話でありますが、私も、警察官が一人も乱用してはいない、かようなことは申しておるのじゃないのでありまして、われわれも、一人といえども乱用することがあってはなりませんので、今後一そう乱用することのないように、あらゆる手段を講じて防止することに努めなければならぬと思うのであります。ただこれが、口先だけでそう言ったところでだめじゃないか、こういうおしかりを受けるのじゃないかと思うのでありますが、確かにその通りで、ただ口だけで乱用しませんと言ったって、それだけで済むものではありません。あらゆる角度から、またできるだけの手段をもって、一人といえども乱用することのないように常に力を尽して直していかなければならぬと思うのであります。この点は品だけで申したところで、なかなか御納得できぬことと思うのでありますが、しかし、われわれはそういう心がけで警察の運営に当っていきたい、かように思っております。
○多賀谷委員 私は、大臣がいかに言われても、現在の警察はまだまだ民主化されてないと思う。なるほど率直にいって警察官が気の毒な場合もあります。しかし現在気の毒だからといって、だんだん権限を強くすれば、日本の社会運動や労働運動あるいは基本的人権というものは制限されると思う。そこが政治ですよ。法律を作ってどんどん縛るのなら、これは一番簡単なんです。今岸さんが一番簡単な方法をやろうとしている。しかし、これは大きな歴史の流れにさおさして、大きな過誤を犯しつつあると思うのです。あなた方は乱用をする警察官は取り締ると言われますけれども、現実は取り締らぬですよ。早稲田大学事件のとき警棒を振ってなぐったじゃないですか。警察官警棒、警じょう使用及び取扱規程というのがある。それには「警棒又は警じょうをふり上げ又は頭部を打つことのないよう注意すること。」とありますが、それをみなよく振り上げているでしょう。写真がある。そうして島田総長もそのとき、これはけしからぬと言った。当時の警視総監の田中さんも、確かに行き過ぎたと認めた。しかし処分をしたかというと、そうじゃない。処分をすれば士気が阻喪します、こう言っておる。警察官の士気が阻喪するから処分できないと言っている。これが現状ですよ。やれやれ、どんどんと言っているものですから、処分をするわけにいかぬ。国会で頭を下げればいいくらいに考えている。こういうことでは私はどうにもならないと思うのです。ましてや点数制度というのがある。点数制度の内容を見てごらんなさい。これが民主的な警察と言えるですか。私が調べてきたのを読んでみますと、とにかくどろぼうを職務質問でとらえた場合には五十点から七十五点、民衆の世話をする公衆処遇適切はわずかに三点から二十点です。青少年の保護などといっても、青少年の補導適切などは一点から五点ですよ。それから殺人などの凶悪犯は八十点から百二十点、こういうような点数制度でしょう。全くの出世主義、官僚主義であり、特殊な社会構成をしている。こういうところで一体民主的な警察ができますか。もう少し考えてもらいたい。そうしてこの法案は、第一法案自体が大へんな法案であると同時に、この法律を扱う警察官がまだ民主的に訓練されていない。ここに私は非常に問題があると思う。一つ大臣は十分考慮して、そうしてできれば撤回してもらいたい。これを申しまして終りたいと思います。(拍手)
○青木国務大臣 ただいまのお話につきまして、私も幾多の点において全く共鳴する点があるのであります。ただ撤回するという問題につきましては、そういうわけには参りません。私の考えでは、警察官が、国民の皆さんから負託された警察官としての仕事をやはり忠実に実行できるようにはしていただきたい。しかし一方におきまして、このために乱用の結果御迷惑をかけるといけませんので、乱用防止のことにつきましては、あくまでもやらなければなりませんが、同時に警察官としてやるべき仕事はやれるような姿にしていただきたい、こういうことをお願いいたしたいのであります。
○鈴木委員長 これにて本連合審査会は終了することにいたします。 午後十時一分散会