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30回国会衆議院1958/10/21

社会労働委員会 第9号

発言数
114
登壇者
10
会派数
2
開催日
1958/10/21

会議録

園田直自由民主党

○園田委員長 これより会議を開きます。内閣提出の最低黄金法案並びに勝間田清一君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案の三案を一括議題として審査を進めます。  前会に引き続き質疑を行います。大原亨君。

大原亨日本社会党

○大原委員 前回の委員会におきまして自民党の委員の方から非常に貴重な御質問があったと思うのでありますが、その中で中小企業の近代化やあるいは安定の問題、それからそれに関連して労使の関係の正常化、安定の問題、こういう問題についていろいろと御意見が出ておりました。特に私が感銘をいたしましたのは、今の日本の労働組合のあり方が企業別の組合をもとにしております結果、企業の規模が小さくなるほど、組合ができたことによって労使の間が混乱をいたしましたり問題が派生をするというふうな点から考えてみましても、今の日本の実情におきましては、たとえば中小企業におきまして組合ができましたら、非常に封建的な労使の感覚を持っておる中小企業の経営者は、あたかも財産を取られたような気持で労働組合に対処いたしていきまして、あの手この手で切りくずしをやる、そういうことで労使の間において、中小企業では非常に問題が多くて、経営者の方も必要以上に労働組合を敬遠をしていく、こういうことで労使の関係の正常化を妨げておると思うのです。先般与党の委員が言われましたように、やはり何といっても企業別組合を、企業のワクを越えて業種別、産業別、職能別という形態やその他の国際的な労働運動の経験を取り入れたそういう新しい分野で、特に中小企業の問題と最低賃金制は深い関係がありますので、そういう点で政府自体が方針を立てていって、そうして労使関係の正常化をはかるべきではないか、こういう御見解について、私は全然同感でございますけれども、これに対しまして労働大臣の御見解をお伺いいたしたいと存じます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 御承知のように、ヨーロッパなどに労働組合が発生いたしました経過を見ますと、御指摘のように、産業別の労働組合あるいは職能別、そういうもので自然に発達して参りました。日本は労働組合の発生、結成の輪郭は御承知のように企業別ででき上ってきております。従って日本の国民の中における労働組合というものの感じは、欧米のような職能別、産業別でなく、その企業組合という感覚をみなまだ持っているわけであります。そこで、たとえば海員組合のようなああいう形態をなしているものはきわめて珍しく、私どもは労使関係の安定という立場から見ますと、それは産業別組合であるから、あるいは企業別組合であるからといって、労使の安定にはそう影響はないと思います。やはりその国の伝統と歴史の上に立って組合というものは自然に発達を遂げることがいいことであると存じますので、今政府が労働政策として特に職能別組合というものをわれわれが育成していかなければならないというようには考えておりませんで、現在の日本の歴史の上に立って健全なる組合の発達を期待するようにいたしたい、こういうふうに考えております。

大原亨日本社会党

○大原委員 私は、最低賃金制は中小企業の経営者の皆さんもあるいは労働者の方々も非常に注目をいたしておるわけでありますし、また最低賃金制の問題はいろいろと後に御質問申し上げようと思うのですが、どう実施されていくかということは社会保障制度や完全雇用とも非常に深い関係にあるし、さらに国民的な生活水準をどういう点に置くかという問題と、理論的にも実際的にも関係があると思うのであります。中小企業の経営あるいは工場内の実態を見ますと、私は先般二、三カ所勉強のために見たのですが、年の若い少年の労働者を日給百二十円くらいで雇っていまして、そうして工場内の一角に寮を設けて、大体食費と部屋代として一緒に百円くらい出しまして、いろいろ引かれまして、月に手取りが五百円か六百円くらい、じめじめしたところで、将来の希望もないし、あるいは結婚もできない、こういうふうなことで働いている労働者がたくさんおります。それで経営者はどうかといいましたら、先ほど申し上げたように、もしそういう場合に、従業員にいろいろな要求や不満があって職場がじめじめいたしておりますので、たとえば組合でも作ろうといたしますと、あたかも自分の財産を横領されるかのごとき感覚を持ってこれに対処いたしまして、組合の組織化をいろいろな点で妨げております。そういう会社に限りまして会社の経理は大福帳式でありまして、経営分析をきちんとやっていない。そして金なんかどんどん入ってきたときには、従業員の話を聞いてみますと、次から次へと別宅を設けたりあるいは料亭を経営したりということで、経済の情勢が悪くなるとすぐ従業員にしわ寄せが来る。労働組合法や憲法や基準法の精神からいえば非常にかけ離れたような、そういう前近代的な労使関係の中に中小企業のたくさんの実態があると思うのであります。そういうことが私は中小企業の近代化を妨げておると思うのでございます。従ってこの最低賃金制は憲法や労働組合法、基準法等の規定に従いました賃金決定の原則に従って私はなさるべきであると思うのですが、中小企業の近代化のためには中小企業の労働者の組織化の問題が非常に大切である、そういう点について私は痛感をいたすわけでございますけれども、大臣のこれに対する御見解をお伺いいたしたいと思います。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 最低賃金制というのは御承知のように、日本でもいわゆる大産業の方ではあまり直接に関係のないものが多い。いわゆる中小企業、なかんずく零細企業の方の従業員に一番の関係を持っておるわけであります。しかしその最低賃金が制定されたことによって、やはり下請の製品等にはコストについて若干の影響はあるかもしれませんが、いずれにいたしましても今御指摘のように、日本の中小企業者の中にはまだ前近代的なものの考え方を持っておる者もあるかもしれません。そういう方々には私どもといたしましても、あるいは商工会議所の会合あるいは経営者協会などに参りまして、そこの従業員が幸福にして安定した生活を持つにあらざれば、その従業員を使っているところの企業が発達しないんであるということについて一生懸命で啓蒙しておるわけであります。先般国会で御決定を願いました労働協会などもそういう意味で、労働問題というものについて、労働者はもちろんのこと、一般国民にそう重要性またその意味を十分理解していただくにあらざれば、日本の産業の発展は不可能であるから、そういう意味で労働協会というものも設置することになったのでありますが、私は労働組合自身が中小企業に従事いたしておる労働組合員であろうとも、また大きな産業の労働者であろうとも、やはり労働組合運動というものはそこに所属いたしておる労働者の生活を安定し、向上するということが最終の目的であり、同時にまたそれらの労働者が日本産業の発展のため、小さくはその従事しておる企業の発展のために協力するという立場をおとりになる以上は、産業平和というものが同時に期待をされる。従って組織されるとされざるにかかわらず、もちろん小さな五人とか三十人とかいう事業所の経営者は、やはり労働問題について十分なる理解と認識を持って、できるだけあたたかい手を差し延べて、その企業に対して従業員に協力してもらうという、そういう考え方を推進して参りさえすれば、両々相待って、一方においては産業の発展を期待し、一方においては徐々に労働者の生活改善ができていく、そういうふうになりたいものであるといういうことで、私どもの中小企業従業員に対する労働政策の重点はそういう意味でやりますが、さらに政府としては、中小企業従業員が将来明るい気持を持って働いてもらうように、できるだけのことをしていきたい。週休制を奨励いたしたり、あるいは退職共済制度を実施しようとしたりする考え方がそういうことで表現されてきておるわけであります。

大原亨日本社会党

○大原委員 戦争前でありましたらともかくでありますが、現在の中小企業を取り巻いている情勢というものは、たとえば労働者の立場に立って考えてみますと、企業内においてはたくさんの要求や不満や、いろんな問題がうっせきしている、あるいは他の職域や大きな企業等におきましては、組合運動が活発になされておる、そういう状況のもとにおきまして、労働者が組織化されないということは、いろんな意味で労働者の経営者に対する無言の抵抗を呼び起しまして、大きな経営上の観点から見てみましたら、経営者が、経営の困難を打開するために努力する正しい方向へ目を向けないで、とにかく中小企業の労働者の方ヘだんだんしわ寄せしていけば問題が解決できる、そういう観点から問題を解決いたそうといたしますから、やはり労使関係の正常化ができていない。組織をされるということは、労働者が自分々々で要求や意見を持って、そしてそれを経営者と話し合いをしていく間において、そういう問題が解消いたしまして自主的に協力するんだ、そう私どもは思うのですが、私は中小企業のそういう労働政策の基本というのは、労働者が自分で目ざめて立ち上るというふうなことは、もちろんこれは各方面からそれぞれ努力するところなんですが、しかし労組法や基準法や憲法の趣旨に従って行政をとっておる労政当局といたしましても、さらに格段の努力をいたしてもらいたい。今の大臣のお話もそういう御趣旨の答弁だと思うのですが、これは政府委員の方からでもけっこうなのですけれども、そういう中小企業の労働者の組織化の問題について、最近どういうふうに御努力になったか、あるいは規模別の組織状況の実態はどうか、こういう点について大体のところを一つお話をいただきたいと思うのであります。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 労働組合の組織率につきましては、全般の平均では約三九%でございます。規模別に申しますと、三十人以下の小さなところでその十分の一程度の三・九%になっております。五百人以上程度の大きなところでは八五、六%、大体そういうふうな組織率になっております。

亀井光労働事務官(労政局長)

○亀井政府委員 中小企業の労働組合の組織の問題について、労政局としてどういう態度をとっておるかということでありますが、基本的な考え方は、先ほど大臣から御答弁いただきました通りでございます。各従業員の自主的な判断に基きまして、労働組合というものが自主的に作られていくということをわれわれは望んでおるのでありまして、そのための当盤を作るためのいろいろな労働教育その他について努力をいたしておる次第でございます。

大原亨日本社会党

○大原委員 ただいまの中小企業の労使の関係を正常化する、あるいは組織を促進してゆく、こういうことはやはり民主主義の根底である国民の基本的な人権、権利と生活を守っていく上において不可欠の条件だと思いますし、当然これは党派以前の問題として私は努力をされなければならぬと思うのですが、最低賃金制の問題も各方面から異常な関心を持たれて、国際的な一つのいわば関心を持たれて進めておられるわけで、中小企業の労使関係の安定というのは、日本の労働政策全体の集約点でもあると私は思うわけです。組織の問題といたしましては、私もう少し具体的に申し上げますと、こういう実態に基いて考えてみますと、産業別あるいは職能別に、企業のワクを越えていくという組織をとっていきながら、たとえば中小企業でそういう分数ができないところは一般労組といいますか、合同労組といいますか、そういう関係を確立していって、目ざめた人は一人でも二人でも十人でも二十人でも組合に加盟していく。そして経世者の方も労使の関係を、自分の雇い人というだけの立場だけで見ないで、人間として尊重していく、こういう感覚に踏み切っていくようにする。そういうことが今の中小企業における近代化の根底である労使の人間関係というものを正常にしていくという面において、私は非常に根底的な問題であると思います。さらにそういうことを通じてこの実際にある問題を解決することによって、そして労働運動全体を正しい姿にする。生活自由やいろんな要求、そういう問題を解決しないで、周辺だけを整理して、労使の秩序であるとかいろんなことでやるというのは、これは私は本末を転倒いたしておると思うのですが、組織に対するそういう方針を共体的に出すべきではないか。私の考えておるのは、そういう点は与党、野党の差はないと思うのですが、そういう点についてもう一回私は労働大臣に御質問すると一緒に、労政の根本はやはりそういう自主的に問題が解決できるような態勢に重点を置いて、そしてこういう労働行政をやるべきじゃないか。最近の傾向はいろいろまた後に指摘をいたしたいと思いますが、本末を転倒しておるきらいはないかどうか、そういう二点について大臣の見解重ねてお伺いいたします。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 ただいまの御意見は非常に私はけっこうな御意見だと存じます。中小企業では私つい先日も日本橋の問屋街に参りまして、問屋の経営者の方々、またそこの従業員の方々でできている奉仕会というものに行って両者の考え方を承わりまして、全く渾然一体となって、今大原さんの御指摘のように、経営する者とそれに参画して従業する者ということのほかに、やはり人間関係であたたかいつながりを持っている。私はやはり経営者と従業員というものが毎日顔を合せ、そして同じようにそこに協力をしている中小企業においては、今大原さんの御指摘になりましたような人間関係を持っていくところに非常に経営の妙味があると存じます。いわゆるヒューマン・リレーションというのは必ずしも大企業にのみ必要なことではなくして、中小企業の今実際やっておるのがヒューマン・リレーションの一番いいところだと私は思っております。従って今御指摘のように、単に使う者、使われる者という立場でなくして、あたたかい気持を持っていろいろな施策をしてあげる。たとえば名古屋にも始まっておりますし、今大阪でもそういう意見で始めようといたしておりますし、また東京でもすでに会館のようなものができておる。そしてやはり家をあとにして出てきた若い青少年が、仕事の終ったあとでは十分にその余暇を善用するような施設をだんだんと作りつつある。私は労使の関係というものは大産業であってもやはりこういうような気持でいってもらいたいと思っておるのでありますが、なかんずくわれわれがそういうことを推進していかなければならないと感じております比較的恵まれざる環境に立つ中小企業においては、そういう方向に努力していただくように御協力また勧奨をいたしておるようなわけであります。今の点については大原さんの御意見と全く同感でありまして、そういう方向で進めて参りたいと思っております。  組織のことにつきましては、組織というものは上から押しつけられ、またボスから押しつけられてやるべきものではないのでありまして、先般の委員会でも私が例に引きましたように、日本からドイツに行っておる労務者が労働組合に入りたいということを申し述べたときに、そんなことは急ぐ必要はない、事実自分がその組織に参画することが利益である、どうしてもその方がいいと考えた場合には入りなさいと言われたということの報告がございましたけれども、やはり組織というものはそういう意味で自主的におやりになることがいいと思います。自主的にそういうことで組織されるということならば、それは非常にけっこうなことだ、私どもはどこまでも従業員の自主的な立場に立ちて、そういう方向を進めていってもらうということにいたしたいと思っております。

大原亨日本社会党

○大原委員 ただいま労働大臣の方から、題二の点につきましては非常に共鳴したようなお話がありました。私も確かに共通点があるというふうに考えます。しかしただいわゆるヒューマン・リレーションといわれておるような問題については、いろいろ問題があるわけです。しかしこれは日本語でいえば人間関係でありますから、中小企業においては、近代的な人間関係以上の人間関係がいろいろな経営やあるいは中小企業の正しい経営に対する判断の仕方というものに非常に障害になっておる。私はそういう点を啓蒙するということは労政においても非常に大切な点だ、こういう点を申し上げたのであります。  それから中小企業の労使の正しいあり方の問題、組織の問題と最低賃金制の問題は、与党の委員からも言われたように、全般の労働運動のあり方と非常に関係をいたしておると思うのです。そういう点で、政府が全般の労働政策に対して正しい方針を出し、あるいは関係者がこの問題を正しく解決していかないと、封建的な労使関係を残しておる中小企業においては、やはり何といってもいろんな問題が出てくるだろう、こういうふうに思うわけであります。そこで私、これは後に申し上げようと思ったのですが、ここで労使関係について集約して申し上げますと、労働運動は、その歴史が示しておるように、昔は刑罰や犯罪の対象でありました。非合法でありました。しかし国際的にもいろいろな経験を積み、民主主義が発達し、資本主義が成熟してくるとともに、これが日本においても憲法で保障され、労働三法で基本的な権利が認められる、こういうふうになってきまして、そこにおのずから一つの歴史的な経験によって、あるべき姿というものが出てきておると思うのであります。しかし、最近のいろいろな労政について私どもが考えてみますと、労働大臣は、産業別、職能別あるいは合同労組などの、企業のワクを越えるような組織については自主的な問題だ、従ってそういう面において、自主的にそれぞれの欠陥を埋めていく努力がなされることは当然だろう、こう御答弁なさっておりますけれども、ILO条約の批准の問題があると思います。これはみんな非常に注視いたしておりますけれども、私、ILO条約の批准の問題は、また後ほど論議いたしたいと思いますので、今は労使関係の正しいあり方の問題に関連してのみ申し上げます。  本会議その他においても、労働大臣がいろいろ御答弁になっておるのでありますけれども、前の石田労政よりも倉石労政の方が後退をしているのじゃないか、こういう印象を与えておることが一つあると思います。それから企業のワクを越えて、憲法その他で認められておる団結権を認めるということは、国際的にILOの団結権の問題に関連して参りますけれども、自主的に役員を選出するということは、当然団結権の中に入ると思うのであります。従って民主的な機関において、民主的なルールに従って出た役員が、職員であるなしによって、歴史的にあるいは国際的に経験いたしました労働運動のあり方について、その問題だけで問題が派生をしていく、そういうことは決して労働運動の正しい前進の上に寄与しないのじゃないかと思います。そういう点、ILO条約の批准の問題に対しまして政府が現在とっておられるお考え、あるいは労働大臣の御所信をこの席を通じて一つ明らかにしていただきたいと思います。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 政府が第一次内閣から第二次内閣にかわりまして、労働担当閣僚もかわりました。そのために、ただいまのお話では、何か後退したのではないかというお話であります。後退というのはどういう意味かわかりませんけれども、非常に政策が変ったということは全然ございません。同じ考え方で、同じ党の考え方をわれわれは順奉いたしております。ただ御指摘のILO条約というのは多分八十七号条約のことかと存じますが、八十七号条約のことにつきましては、私は本会議でも申し上げましたように、ただいまの状況では、政府から国会に批准の承認を求めるということにはいろいろ困難が伴っております。このことはもう私が申し上げたことで御了解いただけると思いますが、基本的には、もちろんILO条約というものは、日本もILO機構に対して協力するという建前でありますから、できるだけ多く批准をしたい。たとえば最低賃金法案も通過していただければ、最低賃金に関するILO条約の批准の手続をすみやかにいたしたい、そういうふうに、国内法と抵触いたしますようなものは国会に御審議を願って、できるだけ国際条約は批准していく方向に持っていきたい、こう思っておるわけでありますが、八十七号条約については、先般本会議で申し上げましたのが政府の現在とっておる方針であります。

大原亨日本社会党

○大原委員 もう一度ILO条約についての御見解をここで、重複いたすかとも存じますが、簡明にお話し願いたいと思います。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 前内閣の労働大臣も申し上げておりましたように、政府は、労働省の諮問機関であります労働問題懇談会に、ILO条約八十七号について検討を依頼いたしております。その懇談会の御意見がどういうふうに出てくるか、またどういう形で表現されるか、それをももちろんわれわれは尊重いたしたいと思っておりますが、ただいまの状況では、たとえばILO八十七号条約が国内法に抵触する問題があるとすれば、やはり公労法第四条三項、その企業体の従業員でなければ組合の役員になれないということが若干問題になってくると思います。そこで公労法の適用を受けておる日本の組合の中で、国鉄労働組合は御承知のように、先般いわゆる藤林あっせんというものを受諾されて、そのあっせん案に従っていわゆる正常化の方に進まれてきた。そういう状況下であるにもかかわらず、同じ立場に立つべき全逓の組合ではわざわざ、現在の法律のもとにおいては違法な行為である、つまり解雇された三役を再選された。しかもその全逓の考え方がILO条約の批准を促進させるためにそういうような態度をとられるということであるならば、私どもといたしましては、法治国家における労働運動としてはまことに残念なことであります。従って現在の全逓のあり方が、ILOの批准によって合法化するのだというふうなことでやっておられるということは、いわゆる健全なる労働運動という立場から申せば遺憾千万なことでありますから、現在のような立場をとっておられる以上は、政府として国会の皆様方にILO八十七号条約の批准についての承認を求めるということを申し上げる段階ではない、このように考えておるわけであります。

大原亨日本社会党

○大原委員 労働関係の法律というものは、私専門家である倉石労働大臣の前でどうかと思うのですが、やはり歴史的にも国際的にも正しい労使のあり方、そういうものについてはおのずから行くところへ行った。その過程において、たとえば八時間労働なり労働条件の問題、組合の団結権の問題等におきましてもいろいろな問題が起きた。従って、ILOの八十七号を批准して公労法の四条三項を改正していくという、労働問題懇談会の小委員会も変えていけというのじゃないが、批准すれば変えるべきだ。そういうことに従って処理をしていけば、当然労使の間において認められるべき権利が認められて、そうしてそのことによって紛争が起きるという事態を防止いたしまして、労使の間における問題を中心として労働問題が進んでいく、こういうふうに私は考えておりますし、労働大臣、政府のお考えは、その点が労働運動の歴史から言いましても何から言いましても、少し逆になっておるのじゃないか。やはり労使の間の問題は、問題を解決するということが中心であって、そういう権利については、いろいろな世界各国の労働運動の歴史が示しているように、このことを批准することによって正しい労使の関係になって、そして問題の本質が国民の中において解決をされていく、こういうことになるのじゃないか。政府のお考えは逆じゃないか、労働運動の歴史、原則からいえば。こういう点について一つもう一回御所信をお願いしたいと思う。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 公労法第四条三項は、終戦直後に、いわゆる二・一ストに端を発してマッカーサー声明が出まして、公企体というものが作られた当時に、私どもが国会で公労法の審議を始めましたときには、原案にはああいうものはなかった。ところが当時は国鉄の経営者側からも、それから組合側からも、ああいうようなものを置いてもらいたいという要望があったのであります。当時は国鉄労働組合も、四条三項の考え方のようなものを取り入れてもらいたいということを言ってきた。これは当時のこの公労法成立の歴史であります。しかしながら、私どもは今その歴史にいろいろこだわる必要はありませんが、とにかく同じ公労協と言われる立場である国鉄が、ああいうふうな態度をおとりになって正常化に男方をしておられるときに、わざわざ事をかまえて全逓が今日のような立場をとっておられる。私どもは、いわゆる法治国家において、国民から委任を受けた国会によって選ばれた行政府である政府といたしましては、現在存在しておる法を無理に無視するような労働組合の行動を是認するわけには断じていきません。そういうことをもしわれわれがしたとすれば、国民に対する負託にそむくことでありますから、法はどこまでも守らなければならない、このことは前大臣も申し上げておった通りであります。そこで、私どもが脱在考えておりますのは、やはり全逓労組が現在のような立場を固守している以上は、ILOの八十七号条約の批准について考えるべき段階ではない、こういうふうに政府は決定いたしておるわけであります。

大原亨日本社会党

○大原委員 やはり労働者の権利が正当に認められるというふうなことは、日本の中小企業を含んで、全体の労使の慣行を正しく確立する上において非常に必要な問題であると思うので、これは重ねて御質問をいたすのでありますけれども、労働運動の経験あるいは歴史の中において、先ほど申し上げたように非合法や犯罪の対象になった時代があった。しかし逐次労働者の権利は落ちつくべきところに落ちついておる。そういう点から言えば、この法律自体が――憲法論をここに出すわけじゃありませんけれども、法律の四条三項自体が労働運動の原則から考えて問題になるのじゃないか。私はそういう見解です。その点私は、政府のお考えになっておる労働行政というものが、正しい労働慣行を確立する上において逆になっているのじゃないか。たとえば全逓の解雇された役員をおろしておいて、労働大臣の言われたように批准しようというので批准しておく。今度はまた次の機関において、これは正当なことをやっておいて、解雇された者が選挙される、そういうことになってもやはり同じことなんであります。これは道理から言えば、私は憲法論を持ち出すわけじゃございませんけれども、団結権の趣旨から言いましたならば、これはILOが国際的に指摘している通りに、正しい権利を認めることは、正しい国際競争や国際信義を確立する上において必要でありますので、そういう点において、この点は本末を正して、あるべき姿に法律を直していくのがいいのじゃないか、これが労働行政のあり方じゃないか、私はこういうふうに考えるのですが、労働大臣の方において再考をいただくわけにはいきませんか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 お説のように国際関係の条約は、できるだけ多く批准をするということはけっこうなことでありますし、御承知のようにILOに加盟いたしておる各国の中でも、日本は多く批准をいたしておる国の部類に属するわけであります。できるだけ多くの批准をいたしたい、これは当然であります。今のお話のように、なるほど労働者の基本的権利というものはできるだけ尊重しなければなりません。しかし日本の憲法に掲げてあります基本的権利、人権というものは、その前に憲法十二条、十三条等に制限を受けて、何人といえどもやはり公共の福祉というものは優先しなければならない。それによって基本的人権が制限を受けるということは、近代文明国家の法制がみな認めておるところでありまして、私どもはそういう見地に立って公共企業体等労働関係法というものを見ましたときに、四条三項につきましては多くの議論もありますし、またわれわれとして研究しなければならぬ点も多々あると思いますが、現在存在いたしておる法律を無視するということを、条約を批准することによって合法化しようというふうな考え方というものは、正しいものではないと私どもは考えております。従って、やはり政治活動でも労働運動でも、一般国民大衆の理解と同情を失うようなことであっては成功しないのでありますから、せっかく健全に発達して参りました日本の労働組合の一つである全逓が、国鉄のように正常化に向って進んでいくということになって、初めて国民の信頼を受けられるわけであります。私ども政府が単独で批准をするわけではありませんで、国会の承認を要するのでありますから、現在のような全逓の行動を前にして、ILO条約八十七号を皆様方に批准の承認を求めるという勇気は政府にありませんし、またさようなことはなすべきでない、こういうふうに決意をいたしておる次第であります。

大原亨日本社会党

○大原委員 これにつきましてまた後に機会を得まして御質問したいと思うのですが、もう一点だけ質問しておきます。  今まで石田労政以来、労働問題懇談会を設けてこの問題を諮問されております。小委員会の結論は御承知のように出ております。総会で審議されている段階なんですが、労働問題懇談会において結論が出たら批准をするのだ。これは当時石田労政のときも、今言われておるように公労法第四条第三項の問題に関連いたしましたような問題は、たくさんあったわけです。機関車労組、いろいろあったわけです。そういう労働問題懇談会の意見が出ましたならば、政府は批准する、倉石労働大臣は前と変らない、こう言われますが、そういう点については変っていないかどうか、そういう点についてお答えいただきたい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 労働問題懇談会のどういうふうな意見が出ますか、これは十分尊重して、政府でも考えていきたいと思っております。

大原亨日本社会党

○大原委員 慎重にお考えになる、こういうことなんですが、小委員会の結論は、ILOの条約を批准すれば、四条三項を改正するのが道理だ、こういうことであるし、あるいは小委員会が専門的な討議をされておるので、総会においても、おそらくそういう問題はそういう労働運動の道理の上に立って審議を進めていくと思いますけれども、しかしこの総会が開かれるとか、開かれないとか、あるいは運営が非常に渋滞しているんじゃないか、そういう印象を、倉石労政との関係において私どもは聞き及んでおるのですが、その点にもし誤解があれば、この席上で一つ労働大臣の正しい見解を示して、正していただきたいと思います。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 御承知のように、労働問題懇談会のメンバーは、労働問題に対する各方面の権威者であります。この方々は、なるほど私の諮問機関ではありますけれども、私の意を受けてその意見を左右するような人物は一人もおりませんし、私もまたさような取扱いを労働問題懇談会にいたしておりません。どこまでもこういう方々の御意見というものは十分尊重して、そうして政府としての態度を決定していきたい、こういうように思っております。

大原亨日本社会党

○大原委員 この際、やはり正しい労使の慣行を立てる上において、もう一点、従来から問題となっておりました公共企業体の仲裁裁定の問題について、簡単に大臣の所信をお伺いしたい。前石田労働大出は、仲裁裁定は、行政府としては、これは法律の建前から責任を持ってやるんだ。従って仲裁案に従って予算を提示され、問題が解決されたならば、これは自民党、与党といえどもこれには反対ないわけです。それについて非常にややっこしい――若干きめのこまかい倉石労働大臣の表現があると思うのですが、その点について一つ率直に御意見を聞きたい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 私どもは、終戦間もなく公共企業体というものができまして、公労法というものが制定されました当時から、この公労法というものは、どうもいろいろな疑点のある法律であると考えております。そこで今政府は、公共企業体というもののあり方がこれでいいかどうかという、経営という面からもいろいろな面からも、審議会を設けて御意見を聴しまして、それによってどういうふうに公企体を取り扱うかということにつきましては、政府が変えるという方針になれば、やはり法律事項でありますから、皆様方に御審議を願う、そういうときには、多くの改正を要すべき点が、いろいろな面からあると思っております。従って公企体が変れば公労法というものも当然変ってくる。しかしそこで、御承知のように公労法の沿革から申しまして、政府事業でありました現業を分割して公企体というものを作りました。従ってここでは争議権は停止され、やめさせられる。その代償に調停、仲裁という段階を経て――仲裁裁定は御承知のように法律によって当事者双方を拘束するということになっております。しかしその仲裁裁定が出て、労使双方がかりにいろいろな協約を締結いたしましても、それが予算上資金上支出不可能な調停であるときには、政府はこれの拘束を受けない、こういうことが法律の建前になっております。従って石田労働大臣が言明いたしておりましたことと、私が申しておりますことは、終局において、政治的にはちっとも変っていないのでありまして、十分尊重をする、また実施できるようにしなければならぬという考え方には相違はないのであります。ことに三年前に私が労働大臣をいたしておりました当時、国会の御審議を願って公労法の改正をいたしました。三十五条のところで、仲裁裁定が出たならば、政府はできるだけ努力をして仲裁裁定が実施されるようにしなければならないという努力義務を特に加えたのであります。これは私が前に労働大臣でありましたときであります。従って私どもの気持は御了解願えることと思いますが、御承知のように、政府が努力し得る限界というものは、法によって定められた移流用をできるだけ許可してやるということ以外には不可能な場合があります。たとえば、補正予算等を組まざればその仲裁裁定を実施するということが不可能である、そういうときには、政府が必ず実施するということを言い切るのには、専門家である皆様方に対してはどうかということを私は心配いたしました。なぜならば、政府がかりにこれを実施いたしたいと存じましても、やはり補正予算というものは、提出をいたしまして国会で承認がなければなりませんし、同時にまた仲裁裁定というものが出ましたときには、他の条件は国会の羅議の対象にはなりませんが、予算上資金上の問題は、国会で御審議願って、国会で議決があるわけであります。その議決が、どういうふうな議決が行われるかということによって、そのときの政府当局であるわれわれが考えておることと違う御議決がありましたならば、それに従わなければならない。従って厳密に申せば、完全にわれわれが実施するのだと言い切ることは、つまり国会と政府と全く一体の結論が出るということを前提に置かなければ、そういうふうに言い切ることには危険が伴いますので、私は慎重にその経過を説明いたしておるのでありまして、趣旨におきましては前石田労働大臣の考え方とちっとも変っていない、こういうことであります。

大原亨日本社会党

○大原委員 端的に御質問いたしますが、仲裁裁定等で仲裁案が出ました際には、政府は予算案原案の中へそういうものを出していって、守っていくのだという法の建前を通す、国会は国会で別の角度で審議する、私はこういうことが正しいことであり、労働大臣としてはそういう問題に対して、行政府として法の趣旨に従って、御見解を大衆的に――あまりいろいろな複雑な判断を要するような、そういう表現でなしに、ずばりとそういう表現をされることが必要だと思うのですが、そういう点についてもう一回一つ御答弁願います。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 私が申し上げていることは、きわめて明快に申し上げておるつもりでありまして、国会の分野と行政府の取り扱い得る分野というものにはおのずから限界があります。理屈を言うようでありますが、それが私は三権分立の民主主義議会の精神だと思っております。政府のやり得ることとやり得べからざることとはおのずから限界があるわけでありまして、それからまた公労法制定の当時にも、実は仲裁裁定が出たならば、政府は必ず予算を組んで出さなければならないということを入れようではないかという議論もありましたが、その当時の司令部の担当官とわれわれが相談をいたしましたけれども、司令部側の人もこういうことをその当時主張いたしました。政府の予算編成義務を仲裁裁定というもので強制するということは、予算編成権という大きな問題に対して侵害をすることであるから、そういう点については慎重にしなければなるまい。当初、終戦後公労法を審議いたしました当国会においても、私どもの間にそういう議論はしばしばかわされたのであります。従って現在の法律に従って私どもは仲裁裁定が下った場合には、十日以内に国会に議決を求めることの手続をとらなければなりません。従ってその議決を求めて、国会において予算上資金上の問題に御議決があれば、政府はそれに従って処置をとる、こういうことであります。やはりそういう点は、現在の公労法というものはきわめて明確になっておりますから、やはり政府としては、法の命令しておる通りの措置をとる。従来も仲裁裁定が下った場合には十日以内に議決を求める、そういうことの手続をいたしておる、従来やっておりました手続というものは、法によって明確にうたわれておる通りのことをやっておる、こういうことであります。

大原亨日本社会党

○大原委員 人事院の制度にいたしましても、だんだんとやはり労働者やいろいろな間においては、疑惑の目といいますか、信頼度において、憲法の趣旨に従って労働者の立場を守る、あるいは権利を制限した場合には、第三者機関を設けて公平に利益を守っていくという、そういう制度がだんだん薄れていくのではないか、私はこれは締めくくりで簡単に申し上げるのですが、たとえば先般も、新潟の問題でいろいろありましたが、国鉄の、公社の関係は労働省とはあまり関係はない、こういうふうに建前としては言われるのですが、しかし非常にあらゆる面と関連いたしまして、強力に問題が処理されて、運動自体の中へ干渉している。従ってかえって闘争自体が混乱をしてくる。私も前に公共企業体の調停委員をやっておりました。中央、地方で、御承知のように公共企業体の調停委員があるのですが、新潟の問題でも、公共企業体の調停委員会の運営等の問題があるのです。やはり当局の非常に一方的な態度、あるいはこれを中央において職権で扱うというような場合も残されておるのですが、手段が尽されておるとは申せません。私がやっていて、最近はどんどん事件が多くなっているのに、予算などは公共企業体調停委員会にはほとんどない。件数は非常に多いのに、出張費も会議費も旅費もない。これは調停委員会の制度自体が有名無実になっているのです。ほんとうに労使の正しいあり方というものは、どういう方向に向って努力しているのかということについて、私どもは非常に労使、公益委員を含んで思うわけです。たとえば最低賃金法の問題に関連いたしましても、最低賃金審議会を中央、地方に設ける。この性格が、労働基準法やその他の法律を実質上後退さしたような内容になっておる。こういう問題等についても、いろいろ問題があるわけですけれども、私は公共企業体の調停委員をやっておった経験から、動けないような調停委員会や、そういうものがあるんですね。そういう点について、事実がわかれば、まさか労働大臣もこれについてとやこう言われぬと思うのですが、そういう実態で私、公共企業体の問題だけに限って一つ端的に申し上げますが、将来の御方針ですね。そういう問題で事務局に来ていただくわけにはいかぬけれども、予算上の問題、やはり労働省の管轄だと思うのですが、そういう問題について御見解を承わりたい。

亀井光労働事務官(労政局長)

○亀井政府委員 公共企業体労働委員会の事務局の予算につきましては、公共企業体労働委員会事務局自体の問題で、予算上は労政局とも独立しているのでございますが、私どもの手元にございまする資料を見ますると、若干ではございまするが、毎年の予算といたしましては増加をいたしているのでございます。ただこの予算だけで十分ではないというただいまの御意見でございますけれども、この趣旨につきましては、私どもの方から当局にその旨を十分お伝えいたしまして、来年度予算獲得につきまして十分努力をいたすように申し伝えたいと思います。

大原亨日本社会党

○大原委員 正しい労使の慣行を確立する場合の問題につきまして、最後にこういう点について大臣の御見解を伺いたいと思うのですが、院内におきましても、国民の間におきましても、今回の弊職法の問題につきまして非常にセンセーションを起していることは御承知の通りでございます。この問題の取扱い方、出し方、内容等についてはここで詳細に申し上げませんけれども、私はやはり今まで申し上げた趣旨から言うならば、問題そのものを解決しないで、かえって問題を取り巻いている現象や事象というものに対していろいろな権力が介入いたしましたり、そういうことのために私は日本の正しい労使の間が非常に憂うべき状態にあるのではないか、こういうふうに思うのでございます。何といっても国民生活の水準を引き上げて、安定させて、そうしてみんなが家族をかかえてやっているのですから、希望を持って、安心して、不安のないように生活していきたい。私こういうときに、いろいろな労働運動の歴史や国際的な経験をたびたび申し上げますけれども、これは賢明なベテランの大臣よく御承知の踊りなんですが、労働運動を非合法のワクの中に閉じ込め、あるいは刑罰の対象にするような、そういう前近代的だ姿に返るのではないか、こういう点について私は非常に憂うるのであります。そういう点について労働大臣から御所信を伺いたいと存じます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 警職法の改正案につきまして政府が提出いたします前に、私どもの立場から労働組合運動についてどういうふうな影響があるかというようなことについて、もちろん政府部内において慎重に論議をいたしましたが、私このたびの改正案は決して正当なる労働運動については何の関係もない。御承知のように一条二項の行為については、これは刑事上の免責があることは法律が明らかにいたしております。従って今度の警職法の改正案については、正当なる労働運動について何のおそれるところもない、こういうふうに理解いたしております。また法律改正によってそういうことがあってはならない次第でありまして、どこまでも正当なる労働運動というものは法の保護を受くべきものである、このように理解いたしております。

大原亨日本社会党

○大原委員 慎重に御論議になった上で提案されたというお話でございますが、この問題については別の角度からまた審議することにして、きょうは最低賃金制の問題でございますので、できるだけこれに近づけて一つ話を進めていきたいと思います。  ただいまの労働大臣のお話は、これは非常に抽象的でありまして、私どもが容易に納得できる問題ではございません。これは私どもの今日までの経験というものが、この問題についての法文上のそういう問題点と一緒にこの問題を非常に重大に考えておる、こういうことを申し上げておきます。  さて次に、私は賃金の格差の問題について、労働大臣も最低賃金制の御提案の中で「大企業と中小企業との賃金格差の拡大を防止する」こういうような趣旨説明がありました。御承知のように賃金格差の問題は、最低賃金制の問題と非常に密接した問題であって、本質的な問題であります。この問題が正しく実態が把握されて究明されない限りは、私は最低賃金制がどのような法案の内容をもって行われるべきか、あるいは日本の国民経済を正常な姿に置くためにはどうすべきか、こういう問題についてはとうてい解決できないと思うのであります。御承知のように格差の中にはいろいろな内容がございます。政府が指摘されておる地域的な格差、あるいは業種、組織別の賃金格差、これらを基礎といたしまして政府の業者間協定が出されておるわけですから、そういう実態について私はこれから逐次質問を申し上げたいと思うのです。もちろんこのほかにも性別の格差の問題や、私どもが非常に重視いたしております規模別の格差の問題、そういう問題がたくさんあるわけです。これを実態に基いて科学的に分析をしていかないと、口の先では国民の生活水準を上げるのだ、完全雇用をやるのだとかいろいろなことを申しましても、なかなか問題は解決されません。やはり私はこの問題を徹底的に分析をいたしまして、そしてこの問題を解決することが、労働問題を解決する基本的な問題につながっておる。これを真剣に国会において取っ組んで、その中から日本の実情、あるいは国際的な経験、こういうものを取り入れて、ほんとうに日本の現実に即した、しかも科学的な最低賃金制というものをやっていく、こういうことになればこれはおのずから帰するところがあると思うのであります。  従って私は第一番に、政府の趣旨のお話に、地域的にいろいろ違いもあるし、あるいは業種、職能、職種別に格差もある、こういうお話があったわけなんですけれども、地域的な賃金格差はどうなっているのか、政府はこの問題について実態をどういうふうに把握されておるのか、これは地域々々ごとの業者間協定による最低賃金――私どもこの点については問題があると思うのですが、そういう問題について今までいわれてきた点からいいましても、一つの根拠になっていると思うのですが、地域的な賃金格差は一体どういうふうになっておるのか、労働省の方の立案者といたしましてはどういうふうに把握をされておるのか、具体的な数字をあげて御説明をいただきたいと思います。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 賃金の地域格差につきましては、一応たとえば毎月勤労統計によりまして各府県別の平均賃金が出ておりますので、それによりまして各府県別の賃金の地域格差というものは出るわけなんでございます。規模別賃金格差、あるいは性別賃金格差その他につきましても同じような問題があるのでありますが、特に賃金の地域格差につきましては全般平均の単なる地域的な偏差というものだけでは、地域格差ということについてはあまり意味がない。従って、たとえば職種別にこれをとる、あるいは性別にこれをとっていくというような各種の形、具体的な賃金におきまして地域的にどうであるかということを見ることによって、ほんとうの意味の地域格差が出るわけなんでありますが、ただしそうして試算してみました場合におきましては、各賃金によりまして非常に差が大きいのでありまして、従って一律に各府県別の賃金格差ということは申し上げることは困難で、個々具体的な賃金のケースについて地域格差を算定していくよりほかあるまいかと思っております。

大原亨日本社会党

○大原委員 私はただいまの御答弁には全然満足いたしません。地域的に賃金格差があるということが一つの前提で、業者間協定がこの立論の根拠になっております。私は地域的な賃金格差についてももちろん若干の知識を持っておりますので、規模別に、あるいは職能別に具体的にどうからみ合っているかというようなことは承知しております。従って賃金格差の問題について徹底的に究明したい、こういうことについてはあらかじめ申し出ておったはずでありますから、これを審議しないと――政府の最低貨金制の問題は、私はこの実態をどう把握するかということが重大な問題だと思います。その点について、私は今の答弁では満足しないから、資料に基いて具体的な数字をあげてお答えを願いたい。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 今申し上げました通りに、毎月勤労統計の全産業の平均賃金につきましては、全国平均を一〇〇といたしまして、各府県別の平均賃金のパーセンテージが出るわけであります。その具体的なパーセンテージの数字はただいま持っておりませんが、後ほどお届け申し上げたいと思います。ただ私から先ほど申し上げたような意味合いにおきまして御理解をいただきたいと思うわけでございます。

大原亨日本社会党

○大原委員 今の御答弁は、大臣の趣旨説明の中にあるけれども、「業種、職種または地域別に、その実態に即して」というようにあるのです。地域別のそういう実態というものは私ども知らなければならぬし、業者間協定の、今までの次官通達によってやられました問題については、さらに別の項目を設けて究明したいと思うのですが、しかしやはり根拠になっておるものは地域別の賃金実態なんです。これがやはりつかまれていないで、こういう最低賃金制の問題が論議されておるというようなことは、私は政府の提案の条文やその他内容にまだ入りませんが、その前提の趣旨説明の条件からいいまして全然納得できないのです。そういう点は御資料があるのでしょうから、あるだけの資料を出して下さい。あるだけの資料でいいのです。そんな無理なことを言っておるのじゃないのです。あるだけの資料を出して下さい。それでなければわれわれは審議できません。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 ただいま申し上げましたように、毎月勤労統計の結果によりまして全労働者の平均賃金あるいは男女別その他出得る限りの地域別の格差は後ほど資料にいたしましてお届けいたしたいと思います。

大原亨日本社会党

○大原委員 私、今の説明で納得できないのですが、その資料は一体何に出ておってどこにあるのか、私はずいぶん探してみた。これは基本的なこの問題については問題だと思うので、非常に忙しくて不勉強でありますけれども、私はずいぶん探しておるのです。この点については政府の主張の一つの根拠になっておるのですから、その実態を把握しないで私が御質問申し上げたら、これは反対せんがため反対しておるのだというふうに、与党の皆さんも宣伝されますので、これは正しい審議の上からいって、私は探してみたのですが、わからない。具体的にそういう問題と、そうしてあなたはどういう点についてお答えになるか、こういう点についてお話し願いたい。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 毎月勤労統計調査には、全国調査と地方調査と両方ございまして、地方調査はさらに各府県別に行なっておりまして、その賃金実額は毎月、毎月勤労統計調査報告として発表いたしております。ただし全国平均の賃金の実数と各府県別の実数、これだけを発表いたしております。これを全国を一〇〇といたしまして、各府県八〇とか七〇、こういうふうな数字には換算いたしておりません。その理由は先ほど私から申し上げましたようなことでございまして、実数で発表いたしております。

大原亨日本社会党

○大原委員 私は無理なことを言っておるのではないので、発表されてない資料でもよろしいのですが、地域別の賃金の実態、格差というものを、やはり最低賃金制の場合には考えていかなければならぬ、こういうのが非常に大きな立論の根拠になっておると思うのです。私はぜひこのことを究明いたしまして、この格差の問題について本質的な論議をいたしたいと思っておったのです。  私は委員長にお願いしたいのですが、一応私も順序を立てて用意をいたしておりますし、この問題については、私は可能な限りの資料なり実態がわかるような形のものを出してもらわないと、次々の格差の問題を審議いたしていきます際に関連をいたして参りますので、私の質問が進まないのです。(「日本の賃金格差が複雑なんだ、簡単には出ないよ」と呼ぶ者あり)簡単には出ないということは私も知っております。しかし……。(「わからないよ」と呼び、その他発言する者あり)いやわかりますよ、大体のことはわかる。委員長、その点について私は……。     〔発言する者多し〕

園田直自由民主党

○園田委員長 御静粛に願います。

大原亨日本社会党

○大原委員 その点について数字上の問題はともかくとして……。(発言する者あり)ちゃんと提案理由の説明に書いてあるじゃないか。これは最低賃金制の問題について、一つの立論の根拠になっておるから、だからその点について私が……。(発言する者あり)私は委員長にお願いしておる。そこで私はこの問題について可能な限りの資料と言っておるのですから、大体実態が把握できるような資料、これは他の格差と関係しておるのですよ。そういう資料について、私はぜひ出すように委員長の方から取り計らってもらいたい。この問題はそれを前提といたしまして私は話を進めていこうと思ったのですが、これは委員長の方で、議事進行として一応その点が出るまで休憩してもらうように諮ってもらいたい。

園田直自由民主党

○園田委員長 質疑続行中でございますが、本会議の関係上、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十五分開議

園田直自由民主党

○園田委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  労働基準に関する件について調査を進めます。  本件に関し、神戸の川崎重工における労働衛生の問題について発言を求められておりますので、これを許します。五島虎雄君。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 労働基準法の安全衛生の問題について関連がございますので、この際簡単に質問をしておきたいと思います。  去る十月十九日の夕刊に報道されておりますが、問題は、工員を試験台に薬品検査という見出しで、全員十八人が傷を負うた事件が、神戸の川崎重工の工場内で発生したわけであります。それでこの問題について内容を読んでみますと――実際に当って調査をしておりませんからよくわかりませんけれども、新聞の報道によりますと、川崎重工で防衛庁発注の国産第一号潜水艦「おやしお」の建造に当って、船内の装飾のために膠着材に使用するところの、接着材にまぜる硬化剤というものの使用の過程において――その硬化剤がハードナーというアメリカの薬品である。それをまず接着するに当って、何か会社側が、身体検査をするということで、装飾部の工員を十八人呼んで、そうして一週間ばかり包帯をとつちゃいけないぞというようなことで、そのハードナーという硬化剤を腕につけた。ところが一時間ばかりした後に全員がやけどをしてしまったというような事件なのであります。それは先月の二十四日に行われておるわけです。そこで、こういうようなことをやることはけしからぬのじゃないかということことで、あそこは大体一万名ばかりの従業員がおるわけですけれども、労働組合がこれを取り上げて問題にした。そこで神戸の基準監督署もこれを取り上げて、目下調査中であるという報道になっておるわけです。それでいろいろ各方面について調べましたところが、川崎重工ばかりでなくて、ほかの工場も、こういう薬品とか油とか、あるいはその他の薬品剤を使用するに当っては、人体検査をやっているんだというように、この新聞は報道しておるわけです。そうすると、これは危ないか、危なくないかということがわからないから検査するのであって、そこでこういうようなことは、安全衛生の面で許されておることかどうかということについてお聞きしたいと思います。

堀秀夫労働基準監督官(労働基準局長)

○堀政府委員 ただいま御質問の川崎重工業の事件につきましては、さっそく兵庫の労働基準局におきまして実情を調査いたしました。目下さらに突っ込んだ調査を実施中でございますが、ただいままでに判明しております実情は次の通りでございます。すなわち川崎重工業におきまして、造船のための硬化剤として購入いたしました硬化剤のハードナーという薬品を使用するに当りまして、これが労働者に及ぼす影響を測定するために、九月二十四日に皮膚にこれを張りつけてテストをするということを行なったわけでございます。その際会社側の話によりますと、川崎重工業がこのハードナーを購入いたしました際に、この商品についております説明書に、この品は一般の人間については害を及ぼすものではない。ただ特異体質の者につきましては、手や腕等にかぶれを生ずるおそれがある。このような場合には予防策が必要であって、予防策としてはゴム手袋の使用とか、あるいは皮膚についた場合には、中性石けんその他で洗浄を行うということが必要である。このように一般的には有害ではない、ごく特異な者についてアレルギー性の反応を起すおそれがある。このようになっておりましたので、これを使用するに当って、その過敏体質の者に対する影響がどのようなものであるかということをテストした、こういうことでございます。ところが一時間ばかりいたしまして、お話のように、全員がかゆみ、痛みを伝えましたので、直ちに中止して治療にかかったわけでございます。その治療に要した日数は、十八人のうち四名は十日―十三日以内に全快しております。それから八名は十四日、五名は十五日、一番長くかかりましたのは十七日かかりましたが、これは一名でございますが、いずれも全快をいたしたわけでございます。そこでただいまの場合におきましては、この薬品についてのテストは今後一切行わない。さらにこれを使います場合には十分な保護具をつけて、直接皮膚につけないようにするという措置を実施しておるわけでございます。  ところでこのようなテストの一般の利用方法はどらであるかという御質問でございますが、有害でないということが一般にわかっております物質で、ただ特異の過敏性の者のみが反応を起すというようなものについて、十分慎重な注意を払った上でこのようなテストを行うということは必要な場合もあるだろうと思われます。しかしその場合、その方法につきましてはあくまでも慎重に行われるべきものでありまして、内容が全然わからない物質やあるいは一般人に、一般的に有害であるということがわかっておるもののテストを行うというようなことは、労働基準法を待つまでもなく、これはもとより当然に避けなければならないことであろうと考えられるわけであります。ただいまの事件につきましては、説明書に今のような注意があったということを会社側は言っております、それを理由にしておりますが、その検査方法につきましては、慎重を欠いた面があるやにわれわれは考えておりますので、この点につきましては、会社側に厳重に注意をうながすと同時に、さらに調査を進めまして、このような薬品を使う他の会社につきましても、十分な注意のもとに使用をいたしますように善処をいたしたいと考えておる次第でございます。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 そうすると、これはどういう職務のもとに監督されるのですか。やはり労働基準法の第五章の安全及び衛生の規定の中の薬品とか原料とかいうような中に、このハードナーも入るのでしょうね。

堀秀夫労働基準監督官(労働基準局長)

○堀政府委員 この問題につきましては、労働安全衛生規則の中には、ハードナーが入るというように規定はただいまのところございません。そこで先ほど私が申し上げましたように、このような薬品につきまして、それが必ず一般人に有害であるというようなものを使ってテストするというようなことがありますれば、これはもう労働基準法を待つまでもなく、あるいは業務上過失傷害というような問題も起り得るものではないかと考えております。このハードナーの場合には、一般人には有害でない、特異の過敏性体質の者について過敏性の反応を起すおそれがあるということを使った会社側では申し立てておりますが、その点の実情につきまして今、さらに突き詰めました調査を実施いたしている次第であります。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 そうすると、ハードナーは今のところ原料、材料の中には入っていないということで、これはアレルギー症状の者に使ったとき人体に付着すれば、かぶれたりするというような注意書きであるけれども、この十八人はすべてやられたが、アレルギー症状の者ばかりではなかったと思うわけです。それが十日間もあるいは二週間もかかっている。それからもう一つ、私が重要に感ずるのは、ただ身体検査を行うからこっちに集まれ、そうしてアレルギー症状か症状でないかわからないけれども、その工場の管理者がそれを検査してしまったというようなことは、今堀さんが言われるように非常に軽率であったというより以上に、大きく言えば人間のからだを何か粗末にして、自分の工場の工員だから、やけどをしたって、アレルギー症状の者にやったっていいではないかというような労働者軽視の考え方があるように印象づけられるわけです。そこでこれは堀さんも言われましたように、ほかの工場でもこれが行われているとすれば、十分に措置をしたい。――どういう措置かわかりませんけれども、使用してはならないとか、あるいは使用上こういう注意をしなければならぬというような注意をお与えになるのだと思いますけれども、そういうような考え方でやられるならば、工員はたまったものではない。組合が言うように、モルモット代用ということは、労働者を動物並みに扱うような思想の一端がこんなところに現われてくるのではないかと思います。こういうことについては地方の労働基準監督署も厳重に調査されて、そうして適当な措置が講じられるだろうと思いますけれども、なお基準局においてもこういうことは一般の問題ですから、川崎重工のような日本有数の一流会社の労働者管理の問題でこういう軽率な考え方をしてもらっては困ると思うのです。会社には会社の言い分があるでしょうけれども、衛生課長談ということで、「いままで油でも塗料でも新しく使う材料は必ず人体テストをし、「とある。動物に試験すれば、ほんとうにわかるかわからないか、私はしろうとですからわかりませんけれども、必ず人体検査をしておったという事実、まず安全を確かめてから使う例となっている。人間に試験をして、これは安全だと思ってから船に塗る。そうすると船の材料より人間のからだの方が安っぽいというように思われるわけです。これは監督署が監督不行き届きであるというようなことを私は何も言うつもりはないのですけれども、こういうことが全国の労働者にこういうような考え方で行われるということは、今後至要は問題であろうと思いますから、この点十分全国的に措置をされるようにお願いしておきます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 五島委員から質問があったハードナーですが、実際はハードナーの何たるものかがわからないのであります。一体ハードナーというのは船の塗装剤なんですね。塗装剤ならば多分私は化学構造も明らかにされておると思う。それが販売される場合には、必ず一定の試験を通って販売されておるはずだ。だから人体の皮膚に影響を与えるかどうかという問題は、大がいある程度検討されておると考えるわけです。問題は健康管理あるいは労働衛生の面から見るならば、健康管理に当っておる医師が、自分の職員の皮膚についた場合どのような反応が起るかということは前もって大がいやっておるわけです。それは大がいヒューマン・ヴォランティアという格好でやられておる。そういった格好でやられたかどうか、その点を伺いたい。私はそう大して大きく取り上げてやるべき問題ではないと考えるのですが、その点どうですか。

堀秀夫労働基準監督官(労働基準局長)

○堀政府委員 このような薬品を使用いたします際にあらかじめテストを行うということは、その薬品が一般的の人間には有害でないというものでありますならば、これは今までも相当行われておる慣行でございます。今回のハードナーというのは、ただいま御質問がありましたが、やはり塗料関係の薬品でございまして、硬化剤でございます。それでこのハードナーの使用に当りましては、これは長瀬産業というところから購入したわけでございますが、説明書には、これは一般人には有害でない、ただ過敏性の者にはかぶれその他の反応を起すおそれがある、その他使用についてのこまかな注意書きがあったわけでございます。ところでそのようなものでありますならば、これを試験した場合におきましては、その全員がかぶれを起すということはあり忍ないことだろうと思うのでありますが、調査しておりますと、この材料をテストをいたしました場合に、原液のまま塗布したというような疑いも出て参ったのでございます。そういう点で、会社がテストを行なった意図はきわめて善意に基いたものであったのでありますが、テストの方法につきまして慎重を欠く点があったのではないか、このように思います。そこで労働省といたしましてはこのようなテストを行うこと自体、これは過敏性の体質の従業員をいかにして保護するかというテストでありますので、これは慎重な注意のもとに行われればけっこうであると思っているのでありますが、それがただいまのような慎重な配慮を欠きましてテストが行われるということになれば、きわめて問題である。そこで今回の事件につきましては、ただいま突っ込んだ調査をいたしておりますが、とりあえず会社、それから関連の会社につきましてはただいまのような情報を伝えまして、十分に注意をもってやるようにということを示達しております。会社の方でも現在のところ、このようなテストは直ちに中止して十分研究を行う、こういうことでありますが、この内容が判明いたしましたならば、労働省から全国的に通達を流すというような何らかの適当な措置を講ずるつもりでございます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 化学構造を……。

堀秀夫労働基準監督官(労働基準局長)

○堀政府委員 化学構造につきましては、合成樹脂関係の材料であるという報告は来ておりますが、それ以外は目下調査中でございまして、調査の結果を待ちました上で申し上げます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 そういった塗装剤について、合成樹脂剤がアレルギーを起すということは、われわれ常識として考えられると思います。ただ問題は、塗装剤の許可を労働省ではどういうようにしてやっておられるのですか。これは人間が使う、人間が飲む薬なんかは、全部薬事法では薬事審議会を通して、そうして相当詳しい実験の積み重ねを経てこれを許しておるわけです。ところが塗装剤というものは、皮膚疾患と関連の大きな問題ですから、労働衛生からいうならば、やはり塗装剤のそういった障害を防ぐような審議会というようなものを持たれたらどうか、そういう点をお答え願いたい。

堀秀夫労働基準監督官(労働基準局長)

○堀政府委員 労働省関係では、このような塗装剤の検査は現在のところいたしておりません。基準法には非常に危険な白鉛その他の物質で人体に直接影響を及ぼすというようなものは、これは許可なくして製造販売してはならないということがございます。しかしこれに基く労働基準法の省令は現在まだ出ておりません。ただ今回のような事件もございましたので、今後厚生省と連絡をとりまして何らかの手を考えたい、このように考える次第であります。

八田貞義自由民主党

○八田委員 その点を強く希望いたしておきます。どうか一つ災いを未然に防ぐ、そういった委員会なり審議会というものを作られて、厚生省と同じような対策を持って当っていかれるようにお願いしておきたいと思います。     ―――――――――――――

園田直自由民主党

○園田委員長 次に、労使関係及び雇用、失業対策に関する件について調査を進めます。  本件に関し、駐留軍労務者の労働問題について発言を求められております。これを許します。五島虎雄君。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 総務長官も来ていただきたいと思っておったのですが、総務長官が外出されるというようなことで、おられませんから、労働大臣、労働省関係とそれから調達庁関係の方に若干の質問を行なってみたいと思うのであります。  昨年から駐留軍の撤退に関連いたしまして、駐留軍労務者の失業問題が社会問題とまでなり、そうして二十八通常国会においては、駐留軍労務者の離職に関するところの臨時措置法が制定されたのでありますが、しかしその後、法の精神通りに失業者に対するところのもろもろの施策というものがいまだなお不十分であります。そういうような不十分なさなかにもかかわらず、いよいよ昨年の六月からただいままで、そうしてこれからもどんどん駐留軍労務者の整理が行われるというような状態であるわけですが、すでに今まで何万人の整理が行われて、そうして来年のことを聞こうとは思いませんけれども、今年度中に、来年の三月までどのくらいの労務者が整理される状況であるかということについて、まず一点として質問をいたしておきます。

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 お答え申し上げます。労務者の人員整理の数でございますが、昨年の四月から本年の三月まで、すなわち会計印度の昭和三十二年度中におきまして、三万四千百五十八名でございます。今年度に入りましてから四月、五月、六月、七月、八月と五カ月間に一万二千四百九十四名。従いまして昨年の四月から今年の八月まで合計いたしますると四万六千六百五十二名。今年度中の解雇の見通しでございまするが、これははっきり申し上げかねる事情もございまするが、大体今年の四月から来年の三月まで、三万人前後の整理者が出る見込みと承知しております。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 そうすると、三万人も来年の三月までに大体整理者が出るという見通しであれば、駐留軍関係の労務者はあと残り少くなるということです。そこでこういうような解雇者に対しては、さいぜん申しましたように、二十八通常国会で臨時措置法の成立を見たのですが、これでは、この法律の精神は、完全にもろもろの対策を行う――たとえば一時給付金の問題にしましても、あるいは退職金の問題にしましても、それから最も重要であろうところの、これら労働者の将来の生活安定のために職業のあっせんをする、あるいは職業訓練をどんどんやって、そうして将来の生活の安定のために努力しなければならないというのが法の精神であったわけですけれども、そうすると、この四万七千名がすでに首切りになり、今年度中に三万人の整理者が出るといえば、従来までこの法の精神に基いて救済された労働者は一体どのくらいあるのですか。これは職安局長でもどちらでもけっこうです。

百田正弘労働事務官(職業安定局長)

○百田政府委員 駐留軍離職者の失業対策につきましては、今御指摘のありました臨時措置法に基きまして、本年初めから駐留軍離職者対策協議会というものが中央にできまして、これを中心として総合的な対策を実施いたしておるところでございます。それでその対策といたしましては、御承知と思いますが、第一には職業の紹介あるいは職業の訓練という、直接職業の紹介、あっせん面と合せまして、独立して事業を行なっていこうというものに対する事業の育成、あるいは国有財産等の払い下げ、さらに融資、並びにこれによっても不可能なものにつきましては、公共事業あるいは失業対策事業を実施するというようなことで従来やって参り、本年度予算におきましても所要な予算を計上したわけでございます。特に軍の撤退のために基地があくところにつきましては、ここに企業の誘致をはかって、できるだけそこに誘致された企業に駐留軍労務者を吸収するという方針で、現在総理府を中心として行われておる。労働省関係におきましても、特に職業紹介並びに職業訓練あるいは失対事業等の面につきましては、今日まであらゆる努力をいたして参っておりますが、職業訓練につきましては、すでに本年度予算におきましても、約一万人の職業訓練が可能な予算措置を講じたわけでございます。さらに最近発生いたしておりますところの追浜における基地閉鎖、これで約一万人近くの者が解雇されるという事態が新たに発生いたしましたので、これに対処いたしますために、さらに職業紹介機能の強化並びにこれらの人に対する所要の職業訓練を実施いたしますために、先般、一般、特別合せまして約千二百万円の予備費を支出いたしまして、これによりまして職業訓練並びに職業紹介についての所要の処置を講じておるわけであります。なお公共事業、失対事業等につきまして、本年当初におきまして、いわゆる失業者の多発地域対策といたしまして、駐留軍の基地におきます離職者の多いところにつきまして、一般公共事業あるいは特別失対事業に就労対策事業を集中的に実施するということで、現在最善の努力を尽しておるわけであります。このほかに、それぞれ金融あるいは自動車運転の免許といったような各省の処置もとられております。これらを総合的に実施していくということで、十分ではございませんが、できるだけの措置を講じておる次第でございます。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 そうすると、いろいろ総理府を中心として、なおまた労働省としても、これらの救済の問題については非常に努力しておられるということはわかるわけですけれども、職業紹介等々で新しい職についている人がこの法律の中で一体どのくらいあるかというように調べてみたら、大体一側か二割――二割程度にとどまっているんじゃないかといわれておるわけです。そうすると、あと八割程度は依然として職業がない人がある。それで完全失業者の中にこれらの人が入っていくわけなんですが、労働調査等々を見てみると、完全失業者も非常に多くなっていく、これからもどんどん多くなっていく、そうすると、特別に法律が制定されて、そして法の精神が生かされて――駐留軍の問題は国際的な問題として取り扱われ、そうして重要な問題として臨時立法もされたわけなんですけれども、これでもって救われないというような駐留軍の労働者は非常に悲惨であろうと思うわけであります。失業者はすべて悲惨なものではありまするけれども、これは駐留軍問題に限って私は申し上げておるわけですが、この駐留軍労働者は、もう年令も相当にいっている。特別の技術のある人、自動車の運転免状等を持っておる人たちは、それぞれ幾らかいいだろうとは思いますけれども、一般にはそう就職がやさしくできるような問題でもないと思う。そうすると、仏はあったけれども魂か入っていないんだという法律になってしまうおそれがあるわけなんです。従ってこの法律ができたけれども、なおこの法律の運用そのものは不十分であると言わなければなりません。ところが、こういうような状態の中に現在はどうか、そうして将来はどらだろうかというようなことをいろいろ調べてみますと、その中に非常に米軍の撤退が行われる。それから撤退以外に今度は移動がある。その理由に籍口して不合理な労働者の首切りあるいは賃下げが行われておる。こういいうような状態があるやに聞いておるわけです。なかんずく、職場があって仕事もあるにもかかわらず駐留軍労働者の首切りが行われておる。そうしてその駐留軍の労働者がしていた仕事を、今度は一般の業者に請け負わせようとしておる。そういうような一般の事業者に請け負わせようとする計画がどんどん計画されておる。もうすでに十数件に及んで作業が民間業者に切りかえられている。その民間業者に切りかえる過秘において首切りが行われる、また賃下げが行われる、こういう状況があります。これはどういうような経過において業者に仕事を切りかえるか。そうしてその中から駐留軍労働者の首切りが行われるということは、非常に大きな労働問題だと思うわけです。この点について調達庁の方ではどう考えられておりますか。

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 駐留軍の労務者が米軍の撤退によりまして相当多数解雇になっておる、これは昨年の岸・アイク声明以来顕著な事実として出ておるわけでございますが、米軍の撤退あるいはそれに基く軍隊の配備の変更というようなことで解雇者が出るということは、一面やむを得ない面があるのでございますが、こういう大量な人員整理があるさなかにおきまして、ただいま御指摘のありました不合理な首切りといいますか、首切りには合理的な首切りというものはないのでございますが、軍の撤退あるいは配備の変更ということでなしに、仕事がそのままありながらこれを民間業者に切りかえていくという傾向が、今年に入りましてから一月以降現われて参ったのでございます。この問題につきまして担当官庁としての調達庁、あるいは内閣で各省の会議を持っておりまするが、この関係各省の会議におきましても、こういったいわゆるPD切りかえという名前で呼んでおります民間業者へ仕事を移すことによって、首切りを出すということに対するアメリカ側に対しての反省を求めるという線で、日本政府といたしまして米軍に強く折衝をいたして参った次第でございます。調達庁はもちろんのこと、内閣の総務長官あるいは外務省、それぞれのルートを通じまして強硬に対軍折衝をいたして参ったのでございます。その結果、今年の三月半ばごろでございますが、日本政府の意向をしんしゃくいたしまして、PDに切りかえる場合には十分な事前調整を日米間においてやろうという意味の米軍の返答がございました。その線で今日まできておるわけでございます。今年の初め以来PD切りかえに出されました件数を申し上げますと、ただいま申しました三月の半ばごろに米軍から事前調整をやろう、今後の問題については日米間で十分な話し合いをしょう、こういうことを向うから言って参りますまでに、米軍ですでに決定して、これは米軍としてやらざるを得ない、こういうことを言って参りました件数が八件ございます。この八件のうち実施に移されましたのが六件、それから他の二件はこれを中止いたしました。その後新しく日米間で事前調整をやるという線に沿って、米軍から日本の政府側にお申し越しのありました件数が六件ございます。この六件のうち、ただいままでに実施に移されましたのが一件でございます。あとの五件につきましては、いろいろの経緯を経まして、この際新しい見地から再検討を加えたいということ下、ただいま中止の状況にございます。これがずっと将来まで中止になったままでおるかどうかということにつきましては、ただいまのところ私どもといたしましても楽観は許しておりません。米軍がPDに切りかえる理由としてあげておりますのは、予算の削減とかあるいは日本の労務者を指揮監督をする米軍側の人員が極度に減少した、こういうような理由でございますので、この理由が必ずしもただいまのところなくなったということは言い得ない状況でございますので、ただいまこの残りの五件について、米軍が再検討を加えておるという状態ではございますが、これがどういうことになるかということについて、ここではっきり私から申し上げることのできないのをはなはだ遺憾といたします。ただ日本政府といたしましては、先ほども申しましたように、軍隊の引揚げでありますとか基地の閉鎖でありますとかということと違って、仕事がありながらその職場を、従来の日本人の労務者を首切って日本の新しい業者に肩がわりをする、こういうことはやめてもらいたい、万やむを得ない場合でも最小限度にとどめてもらいたい、あるいは日本政府と十分な事前調整をしてもらいたい、こういう態度で今後も折衝を続けて参りたい、かように考えておる次第でございます。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 その点については十分話し合う、十分話し合うと言われるが、今言われたことについては、軍側がPD切りかえということを強力に押してきたら、これでは御無理ごもっともという態度にならざるを得ないというようなニュアンスを私感じたわけです。ただ今はそういうことをやってもらっては困るというあなたたちの強い要望で、中止の状況になっているのじゃないか。そうするといろいろの条件の中で、やはり業者に切りかえざるを得ないからというようなことで、米側が強く出てきた場合は、これを阻止する方法はない。ただあなたたちは要望されるだけにとどまるんじゃないか。それでは基本的な問題の解決にはならないんじゃないか。そのうちに賃下げ、だんだん給料は下る、あるいは整理されるというような問題、それでこの問題については調達庁としてもあるいは外務省としても、こういうようなことにはまさか賛成はされないだろうと思う。こういうようなことは断固として防御してやらなければいかぬというように私は要望もし、そう思っているわけなんですけれども、これについてはさいぜん申されましたような言葉の中に、やむを得なくなってしまうかもしれぬというような弱い態度があるならば、やはり一方的にこういう要件が必要だからというてくると、駐留軍労務者はその弱い能度の中だんだん押し詰められてしまうというように解釈せざるを得ないのです。こういうような問題においては強く拒否をし、そういうことはいけないのですというような、強い態度を示される意思はないかどうかということについて聞いておきたい。

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 米軍側がこれを強行してきた場合にどうするかという御質問でございますが、私どもといたしまして、PDに米軍が切りかえようとする場合に、これを日本政府と十分事前の調整をしてもらいたい。しかもPD切りかえというのは、一般の民間会社等において、今までの職場に働いておった労務者を解雇して、そうしてそれをほかの会社に切りかえる、こういうようなことは行われない、また労働慣行としても、かかる米軍の企図しておるようなことは一般には行われないということで、事前調整の場合日本政府と十分な協議をして、しかも最終的には日本政府の同意を得るところまで十分な協議をしてもらいたい、こういう申し入れを米軍側にいたしておったのであります。今申しましたようなアイデアで両者間の事前調整をやってくれという強い私どもの要求に対しまして、米軍側としてはやはり今までのような形態で、調達庁雇用の労務者をそのまま使っていくことが、予算上あるいは監督者の減少という理由、あるいは仕事の内容の変化といったようなことで、どうしても続けていくことができない。日本政府の事情もわかるけれども、アメリカ側の事情も考慮してもらいたい、こういうことで最終的に日米間の同意を得るところまでの事前調整という結論までには話し合いがつかなかったわけでございます。そういうふうにいたしまして、米軍側としてはどうしてもやむを得ないということで、先ほども御説明を申しました新しく出して参りました六件のうち一件については強行してきたという事情にあるわけでございます。非常な強い態度で、日本の労働慣行なり一般の社会の実情なりということで米軍側に折衝をいたしておりますけれども、最終的に米軍側がどうしても自分の方の事情でやむを得ずやらざるを得ないということで、それに伴う人員整理の通告を日本側にして参りました場合には、現在の契約の建前上これを拒否して、その人員整理の手続をとらないということはできないと考えるのでございます。従って、私どもとしては向うから言ってきた手続をとって、結果としては人員整理が起るということになるのでございます。現在の契約上これを拒否する権限は、日本政府にはないというのが私どもの解釈でございます。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 そうすると今の説明では、やはり権限がアメリカ側にあるので、強硬に押してきたらこっちでは防備する処置がないというようなことになって、アメリカの意のままになってしまうということが結論のようですが、その権限行使というのは行政協定の十二条一項の権限ですか。その権限行使がある行政協定などというのは、もう占領時代の協定であって、今は日本は独立している。法文はある、しかしアメリカも、こういうような日米間の関係というようなことの中から、日本の労働事情を無視して、勝手にこういうように切りかえをして、直接駐留軍労働者の生活を脅やかすというようなことは、アメリカ側が間違っておると思うのです。間違っておると思うから、間違っておることには日本政府は強力に肝を据えてこれに対し折衝をしてそうしてあなた方たちがこのPD切りかえなどの措置はいけないと思われるのだったら、より強く交渉する必要があろうと思います。今国会を通じて岸首相は、安保条約改定の構想の中に日米対等ということを主張されておるわけです。私たちは、安保条約改定の問題については社会党としてはその他の意見を持っておる。しかし岸さんが日米対等と言われるならば、こういうような日本の労働事情を無視するアメリカのやり方などについては、特に対等の関係を主張しつつ、日本の労働事情に沿うようにアメリカはやらなければならぬということを、自信を持って今後交渉する必要があろうと思います。で、小里さんにこのことを言うてもなんですが、外務省あるいは日本の政府はそういう肝を据えて、そうして折衝しなければ、こういう問題は解決しないのじゃなかろうか、こう思うわけです。ところが過ぐる十月六日の日に、ちょうどその日は、全駐留軍労働者もあるいは日本駐留軍労働者も、これらの生活確保のためにすべてストライキ中でした。その六日の日にアメリカからマケルロイ国防長官が日本にやってきて、そうして外務大臣や防衛庁長官等も一緒にマケルロイ氏に会われて、いろいろの問題で懇談されていると思うのです。その問題は、もちろんこの安保条約問題を中心としていろいろの懇談が行われたと思うのです。ところが、その前に当って労働組合の方は防衛庁長官にも外務大臣にも会って、マケルロイ国防長官に会ったならばどうぞ駐留軍労務者のPD切りかえの問題や、その他一般の問題を解決するように一つ話をしてみてくれないかという要望をした。外務大臣もあるいは丸山長官もそれを受けられておると思うのです。ところがその後話されたのか話されなかったのか。そういうようなPD切りかえのごとき小さい問題を、安保条約の改定という大きな問題を話すとき、できないと思われたのかどうかわかりませんけれども、話しましょうと約束されたからには、話されたのかどうかということについてその事実を知りたい。またどういうような話し合いが行われたか、わかっておれば一つ説明をしてもらいたい。     〔委員長退席、八田委員長代理着席〕

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 先般アメリカの国防長官のマケルロイ氏が来日されました際に、外務省あるいは防衛庁の大臣の方で話をされたかどうかという御質問でございますが、調達庁といたしまして、所管の大臣にこのPD切りかえの問題のよって来たるゆえんのものは、軍隊の撤退、引き揚げということに伴う事業を完全に遂行するために相当な費用が要る。単に軍隊が撤退していくだけでいいというものではない。そのためにはいろいろな予算的にもその他の面におきましても、相当な配慮がなされるべきである。しかるにこの軍隊が撤退をすることに関連をして、相当な予算が削減され、あるいは米軍側の人が減少をするということで、引き揚げに伴う事業が十分円滑に行われていないうらみがある。従ってアメリカの本国において、いろいろ軍隊の引き揚げに伴う各般の事情に対する十分なる配慮が必要であるという意味で、私の方の調達庁の長官から大臣に、アメリカの本国を動かすという大きな線で大臣からマケルロイ国防長官にも、労務問題として話をしていただきたいということを申し上げておったのでございます。その結果大臣がどういう線で、どういう発言をされたかということについては、私十分承知をいたしておりません。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 それではまた長官やその他の関係の方からこの問題は聞きましょう。それでこの問題は一応打ち切ります。  そこで次に、行政協定上でもいろいろはっきりしておるし、かつ労働法上からも労働者の権利として認められておりながら、これが駐留軍労務者に適用されていないという問題があります。その点について、これから若干聞いておきたいと思うわけです。  まず第一に、駐留軍労務者の組合活動について、政府は何らかの制限を加えようとしておるのですか、あるいは加えておるのかどうか、あるいはまた加えていないのか、この点について原則的に答えていただきたいと思うわけです。この点は亀井さん何かありませんか。

亀井光労働事務官(労政局長)

○亀井政府委員 駐留軍労働者に対します国内労働法の適用の問題につきましては、労働省としましては行政協定の趣旨が、日本の国内労働法の適用があるというふうな解釈で従来考えてきておりますが、その点につきまして米側としましては、基地内のいろいろな諸条件からいたしまして、若干問題のあることは承知をいたしております。いろいろ具体的な問題につきましては、調達庁の方でそれぞれ具体的な問題の処理としまして米側と折衝しまして、そのつど解決をいたしておるというふうに承知いたしております。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 そうすると駐留軍労務者の組合活動については、軍側との関係において少々問題があるけれども、基本的には労組法上の組合活動は何も制限していないというようになるわけです。ところが米軍からこれを制限しておる、あるいは制限を加えようとすることについていろいろの事例がある。しかしながら日本の労働者は、日本の国内法に従って活動ができるのが建前だろうと思う。それでなければ間違いだろうと思う。ところが国内法の適法の範囲内において組合活動をしておるにかかわらず、アメリカの司令官から、たとえば昨年の十一月ですか、それからことしの六月、ブラッドレー書簡、それからバッカード書簡なるものが、二回にわたってその基地内の労務者に対して組合活動についての通達が行われておる。その二つの通達によれば、休憩時間中にも組合員である労働者は話しちゃいかぬとかいうような書簡の内容になっておる。こういうようなことが一体ありますか。休憩時間中に労働組合が組合の情報について組合員に対して報告をしている。ところがブラットレー書簡やバッカード書簡に甚いてでしょう、MPが出てきて、その報告を中止させようとしたりするということです。これは明らかに日本の労働組合活動の、特に休憩時間中は自由であるべきはずなのに、MPがこれを制限したり、介入したりあるいは話をしてはならぬという書簡が出るということは、明らかにアメリカ側の労働組合活動の制限というように解釈されますけれども、この点についてはどういうように考えられますか。

亀井光労働事務官(労政局長)

○亀井政府委員 昨年十一月のブラッドレーの書簡その他承知はいたしております。その内容の詳しいことにつきましては調達庁の方から御説明があろうと思いますが、昨年の十月に、調達庁と駐留軍組合との間における基地内の組合活動に関しまする協約の期限が切れまして、新しい協約を締結する段階に来ているわけでございますが、その協約を締結するにつきましては、米側と十分な話し合いがつきました上で、組合とその協約について話し合うという段階になるわけでござい決するが、その際に、先ほど申し上げましたようなブラッドレー書簡が出たのでございます。私の方としましては、日本の各企業において行われている労働慣行というものが、やはりそのままこの基地内におきましても行われるようにという強い要望を調達庁を通じまして米側に申し入れておるわけでございまして、従来もそういう慣行で参ってきておりまするものを、一挙にその慣行を変えるということは、今後の労使慣行の上におきまして必ずしも望ましいものではないと考えておりますので、調達庁を通じましてその線の折衝を今いたしていただいている次第でございます。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 そうすると、労働協約の期間が切れて、こういうような書簡が出た。そうすると、労使慣行というような従来の慣行を急に破っちゃいかぬということを強力に要望しているというようなことだったら、それじゃその前には休憩時間中でも話し合ってはいけないとか、あるいは組合活動の状況の報告とかなんとかを組合員にしておる、そういうようなのがMPが出てきて介入したりするようなことはあったのかなかったのか、多分そんなことは僕はないと思うのです。あればあることを日本側が容認して、そして労働組合に対してそういうことが強制されておるならば、明らかに国内法の違反になってくる、こういうように考えられるわけですが、今後はそういうことのないように確信をもってそれを――今ではないでしょう。現在はないかもしれません。しかし将来はあるかもしれぬ。そういうようなことはこの際日本の政府としてもはっきり米側に断固として申し入れをし、そういう労働者の休憩時間については自由であるべきことを確立しておかなければいけないと思いますけれども、これについての確信をお伺いしたい。     〔八田委員長代理退席、委員長着席〕

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 休憩時間あるいは勤務時間内の基地内における労働組合活動の問題につきましては、去年の十月で一応失効いたしました。労働協約には大体二つの原則的な事項をきめておるわけでございます。それは基地内における休憩時間及び作業終了後の組合活動をすることを管理者側は労働組合に承認するという原則、しかしこの労働協約ではそういうことを規定しておりまするが、一方において組合活動のそういった自由の原則は確認するけれども、行政協定の第三条で規定しておりまする米軍の基地内における施設の使用、管理、運営に関する相当広範な権力、権能というものも一方において認めて、これを排除するものではない、こういう二本立の大きな柱があるわけでございます。そうして一方基地内において休憩時間あるいは作業時間の終了後における組合活動をする場合には、具体的にその基地における労務士官の了解を侍ることに努める、こういう規定があるのでございます。十月で失効いたしておりますので、新しい労働協約を結ぶべく日米が、あるいは労働組合側と話し合いをしておるのでございますが、これがまだ結論を見るに至っていない。その間に十一月に空軍においてブラッドレー書簡なるものが出まして、そうして基地内の組合活動を制限するような規定が空軍の配下に示達された、こういうことでございます。その十一月に出されましたいわゆるブラッドレー書簡に基いて、また現地の立川の基地でいわゆるバッカード書簡というものが出ておるのでございます。今年の八月の末、それから九月の半ばごろに組合が基地内で休憩時間中に会合を開いた。これをMPが――あそこは空軍でありまするからAPでございまするが、憲兵が来て尋問をしたり、あるいは詰所に連れて行ったというような事件がございます。調達庁といたしましてはこのブラッドレー書簡が出まして以来、新しい労働協約が結ばれる段階にあるのであるから、それまでの間今まで行われておったような労働違勅を禁圧するような規定を含んだ指令を一時たな上げしてもらいたい、これを撤回してもらいたいということを米軍の契約担当官あるいは第五空軍に折衝をいたして参ったのであります。空軍なり契約担当官の意向としては、ブラッドレー書簡あるいはバツカード書簡というものが何も従来基地内で行われておったようなことを禁圧する、より強く規制をするという意味で出したものではないという意味のことを言って、しかもブラッドレー書簡なりバッカード書簡は従来からとられておった米軍の政策と何ら異なるものではない、こういうことでわが方の申し入れに対して拒否し続けておるのでございます。これを契約担当官なりあるいは第五空軍の問題以上に上げまして、在日司令部段階においても調達庁で折衝を続けてきておるのでございますが、最近に至りまして軍と私どもの話し合いで、それでは調達庁が考えておることをはっきり文書にして提出をしてもらいたい、それに基いてお互いに一つ話し合いをしようという段階まできておりまして、私どもとしては今まで行われておりましたような程度の基地内の組合活動、休憩時間中の自由な行動というようなものは確保していきたい。ただいま御質問の中にもございましたように、強い態度で米軍の――かりに米軍が今まで以上に制約を加えるという態度であれば、これを撤回させるように努力をして参りたい、かように考えております。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 非常に強い態度で折衝をしておられるというその経過はわかります。しかし強い態度で折衝しておるがゆえに、これを撤回できるというような見通しはわからないわけです。これもやっぱりアメリカの一方的な判断によってやられるのじゃなかろうかというように解釈される節々もあります。しかも労政局長が言われましたように、原則的には何ら組合活動に制限を受けるものじゃない、ただ米軍との力関係において制約がある。しかも今説明されたところのいろいろな、原則的には組合活動は自由であるけれども、行政協定の三条によってこれが制約される、こういうようなことで、休憩時間中の組合活動等々は強いあれで撤回を要望しておられるわけですが、しかしこの休憩というのは、労働基準法にも、自由に与えなければならないとあり、また労組法第七条においても不当労働行為が規定されておる。自由な組合活動を侵してはならない、とある。それからまた行政協定の十二条五項を見ましても、「労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」ときめておる。こういうようにはっきり明記しておりながら、その他の立法で休憩時間を制限したりなどすることは、明らかに労働組合に対するところの制限行為である、こういうように思いますから、強い態度で折衝していると言われますけれども、なお一そうこういうようなブラッドレー書簡とかバッカード書簡とかいうようなものは撤回するように、今後交渉してもらわなくちゃならぬと思うのです。この点について、これは労務部長に言うてもどうもいけないとは思いますけれども、長官もおられませんから、お帰りになったら長官に、こういう強い要望があったということをお伝え願いたいと思います。  それから次に最高裁判所の判決が履行されていない問題がございます。御承知の通りです。いやしくも国の最高の司法機関の決定を平気で無視するアメリカ側の態度は、一体どういうところからくるのだろうか、いつも私は不思議に思っておる。そして日本はまだ依然としてアメリカの属領なんじゃないか、まだ独立していないんじゃないか、こういうように占領当時のことを思わせます。この米軍の態度は、私に言わせればほんとうに傍若無人であると思う。日本の労務者がたとえば歌声グループに出て歌を歌っておった。そうしたら、それは危険だ、危険な人物なるがゆえに保安上危険であるというようなことで、多数の者を首切った。一カ所ならばいざ知らず、それが二カ所にも及んでいる。十数名、二十数名の者が首切られておる。こういうような問題について、地方裁も高裁も、あるいは最高裁においても、裁判上は組合側が勝っている。ところが復職の判決があったにもかかわらず、アメリカは復職させない。そうすると、日本の最高の権威である最高裁判所の判決をもアメリカは実施しない、こういうようなことになるわけです。この点についてはどういうように考えられますか。

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 最高裁の判決が確定いたしまして、現職復帰が決定をした。日本政府としては、その判決に従いまして労務者を現職に復帰さしてもらいたいということを米軍側に要求して参っておるわけでございます。再三再四米軍側に現職復帰させるべしということで折衝を続けておるわけでございまするが、ただいまもお話の中にございましたように、これが保安上危険な人物であるということで、アメリカが日本政府に解雇を要求してきたということで、これを現職復帰させることについて米軍側が了承しないというのが実情でございます。日本政府の立場としては、現職復帰させてもらいたいという主張を貫くために、これを日米間で紛争を解決する合同委員会に提訴いたしまして、ここで解決をいたそうという手はずになっております。一方、現職復帰がそういう工合で米軍の拒否にあって実施できないという際にも、日本政府と労務者との間には判決によりまして雇用関係が継続をすることになりまするので、現職復帰が実現するまでの間、調達庁から賃金相当額は本人に支払うということで、お金の支払いは、最高裁の決定がありました者につきましても支払いを完了したと承知しております。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 金は払う、最高裁の判決であるから、復職までの賃金は支給される、これは当りまえなことである。しかし仕事をせずして賃金だけを受けるということは、労働者の最も苦しみとするところであろうと思う。労働者側の要望は、これは復職をして日常の仕事につくことが一番喜びである。しかも危険人物なるがゆえに首切られた、根も葉もない、それは裁判の判決によって歴然たるものがある。そうするとこれが裁判所で、裁判で復職すべきである、せしむべきであるという判決があったにもかかわらず、アメリカ側が依然として危険人物であるという判定のもとに復職せしめないということはおかしいと思う。やはり最高裁の判決を曲げても、アメリカの権威に日本を従わせようとすることにほかならないと思う。しかも労働者はやはり仕事をすることが一番の喜びである。それが一番最終の目的である。しからば日本政府は断固としてこれを復職せしめる責任があろうと思う。今後十分話し合ってというようなことについては――この賃金は日本の金で、日本が支払っておるんでしょう。もちろんアメリカの金で支払われるべきであると思う。しかしその話し合いの中には、日本側は、政府が幾ら払っておるからこの賃金をアメリカ側からくれ、少々ばかりのことだから、そんなのは大した問題じゃなかろうとは思いますけれども、そういうような話ばかりして、賃金をやっておけば日米関係の問題として大して問題がないのだというような気持で交渉してもらっちゃいけないと思う。従って一日も早くすみやかに復職せしめるような強力な話し合いをしてもらいたいと思います。この点についてはどうでしょう。

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 もちろん賃金相当額だけを支払えばそれで事済んだという考えは持っておりません。調達庁として、判決に従って米軍が現職復帰をさせてくれるということが、私どもとして完全に判決を履行したということになりますので、その線で従来も折衝して参ったのでございまするし、今後におきましてもその線でやるのでありまするが、今までのところは契約上米軍側はこれをがえんじないし、法律論からもこれをがえんじない、こういう態度をとっております。従ってそういう法律論的な観点からの議論を日米間の合同委員会で折衝していこう、こういうことになっておるわけでございます。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 労働大臣がおられますから何ですが、大臣はいつも権威ある国内法に従ってこれを実施してもらわなければ困るということを、当委員会でも本会議でもあるいは予算委員会でも言われておる言葉を、私たちは耳にタコのできるほど聞いておるわけです。さいぜん大原君の質問の中にも、ILO条約の八十七号の批准問題についても、全逓が違法を犯しておるのだから、こういう状況のもとにおいてはILOの批准はやれないというようなことを言われました。この問題についてはまた他日質問をいたしますけれども、日本の地裁でも高裁でも最高裁でも、この労働者は復職せしむべきである、保安上の危険な理由をもって首切ったことは不当であるというように日本の最高の権威が判決をしておる。それにもかかわらずアメリカは依然としてこれを復職せしめようとしない。従ってその間は日本の金で賃金が支払われておるという、こういう点、法の順法精神をアメリカにも従わせなければならぬ、守らせなければならぬ、こういうように私たちは思う。従って、それは皆さんがうんと努力されなければならないと思いますけれども、この問題については、大臣はどうお思いになりますか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 保安解雇の問題については、前々からいろいろ問題がありまして、日本の法律を尊重するという建前で駐留軍がおるのでありますから、そういうことについては従来、しばしば政府側も折衝いたしておった次第でありますが、この間も総務長官も申しておりましたように、そういう問題については、PD切りかえと同様に、日本側の要求を機会あるごとに強く主張して実現できるようにいたしたい。今駐留軍労務者は、主として総理府総務長官がやっておりますが、われわれも協力をして、ただいま申し上げたように、実現いたすようにさらに努力を続けて参りたい、こういうふうに思っております。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 それは今大臣が言われたように、今までも努力したが、なお、さらに努力を続けていきたいと言われた言葉に対して、私たちは率直にそれを信用し、そうして今後できるだけこの問題がすみやかに解決するようにしていただきたいと思います。  次に、あとしばらく質問を続けたいと思います。職安局長が冒頭に説明されましたように、神奈川の横須賀では、年内に一万人首になる。そこで、去る七日の閣議で予算の措置を講じた。それがやはり千二百二十二万円のあの予備費の支出になるわけですね。そうすると、この千二百万円という予備費支出はどういうところに使われるか。職業訓練やあるいは職安機構の拡充強化だけに千二百万円使われるのかどうか。それからもうすでに横須賀では、年内に一万人首切るという前に、武山というところでは一千名、それからまた海軍基地でも一千名の整理が行われている。そうしてまた、さらに新たに一万人の解雇が出るということは、もうはっきりしておるわけです。これを家族を含めたならば、全国平均四・五人とすれば、大体四万五千名になる。優に四、万万の人たちが生活の苦しい立場に追い込まれるということであります。それで、今言われましたように、職業訓練とか、あるいは職安機構の拡充とか、これはすみやかにやらなければならない重要な問題ではあろうと思いまするけれども、一千二百万円程度でこれらの生活を保障したり、あるいは職業につかせることができるかどうか、この予算について局長の自信を聞いておきたいと思います。

百田正弘労働事務官(職業安定局長)

○百田政府委員 追浜の基地対策につきましては、年内に約一万人が失業するというようなことで、先ほど申し上げましたように、総理府の離職者対策協議会におきまして総合的に対策を講ずる、こういうことになっております。その一番基本的なことは、あの基地が要らなくなるのですから返還をしてもらって、そこにできるだけすみやかに企業を誘致して、それにできるだけ離職者を吸収する、これを協議会における最重点方針として進めておられるわけでございます。それに対しまして、すでに対策協議会の専門家の人方が九月二十九日にも現地視察を行なっておられるわけであります。さらにまた、それと並行いたしまして、将来のために、そこに相当人を収容できる公共事業等も場合によって実施しなければいかぬというようないろいろな問題があるわけであります。しかしながら、とりあえずの措置といたしましては、多数の人が短かい時期に離職されるのでありますから、第一に、安定所の窓口は一ぱいになってしまいます。さらにまた、富士モーターの方はある程度技術者がおられまして、すでに離職された方で転職された方もありますけれども、日飛の方は比較的技能者が少いといったような関係で、職業訓練を非常に強く要望されておる。さしあたりは失業保険によりまして今おられる人は七カ月程度は支給できるわけであります。その間におきまして、技能のない人にはできるだけ職業訓練を実施いたしたい。同時に、さしあたりできるだけ多くの人を安定所の手によって就職させたい。これが当面の施策でございます。この千二百万円の予算と申しますのは、そうした基本的な対策の上に立ちまして、さしあたりの措置といたしまして、労働省関係の予算として職業紹介機構の整備強化、職業訓練の強化拡充、この二つになっておる。そのために、現在あります安定所の窓口ではとうてい不十分でございますので、別棟を作るといったような予算、それから、このため特別な求人開拓を実施するといったような安定所関係の事業とともに、さらに臨時の職員を増員するといったようなものがございます。さらに職業訓練関係におきましては、今度臨時の訓練所を新たに設置する。すでに年度初めにおきまして、ある程度の予想におきまして一万人訓練可能な予算を取ってございます。さらにつけ加えまして、この地区に対しまして、今度の予算措置で八百七十人程度の訓練を行う。これは新しい予算措置でございますが、既設の訓練所もございます。それによって総合的に行いますればさしあたり千三百人程度行える。これが千二百二十万円の内容でございます。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 今の説明はわかります。基地をすみやかに返還し、そうして工場等々の誘致によって今後十分努力をするのだというような点は了解します。了解しますから、この問題につきましては、総理府あるいは調達庁、労働省が力を結集してそれの実視に向って邁進していただきたいと思います。  それから次に、予算問題でもう一つお尋ねしておきたいのは、臨時措置法の十条の三項で、調達庁長官は、基地内で職業訓練をやることができるときめられておるわけです。長官がおりませんからちょっと質問にならぬわけですが、本年度当初予算では、その予算が一千八百万円だった。そうしてそれを検討しますと、それがもうすでに大部分上半期において使われてしまっているそうですね。一千六百万円ばかりもう職業訓練に金が使われているということで、あとはわずか二百万円程度である。そうすると、いろいろの対策のうち、職業訓練というのは重要な事項の一つである。ところが、もうすでに命がないということで、それを続けてやるならば、やはりどうしても予備費か、あるいは補正をしなければならぬのではないかと考えられる。補正をせずして訓練が行われるかどうかというような疑問が出てくるわけです。それで、駐留軍労務者対策を完全に遂行するために、これらの金が少いならば一体どうするのだ、あるいはこれでやれるのだというように思われているか、あるいは少いならばどうするのだという対策をお聞きしておきたいと思います。

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 お話のございましたように、基地内訓練の経費は当初千八百八十四万一千円でございましたのが、この上半期におきまして、先ほども御説明申し上げましたように、相当多量の人員整理者が出た、それに応じまして、基地内訓練を実施したという関係上、ほとんどこれを府県に配付済みでございます。従って、残りがわずかになっておりますが、ただいま各府県から、今後における計画あるいは所要額等の資料を取り寄せて検討中でございまして、その検討が終りますれば、何らかの予算の増額措置を大蔵当局とも取り進めたいと、かように考えております。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 では、あと一点で終ります。  次に、都道府県の協議会がありますね、中央協議会が総理府にあるわけですけれども、駐留軍関係離職者等臨時措置法の九条では、都道府県協議会を作ることになっておるわけです。ところが、これに対する国の費用が、総理府が出てきておりませんから、調達庁でおわかりになりますか――。それじゃ職安局長にお尋ねします。都道府県協議会がありますが、これに対する国の費用は非常に少いと思うのです。費用は二百二十七万円だったですかね。そうすると、一県当り大体十万円程度にしかならないわけです。ところが、調達庁の方では委託費として、各県に一千五百万円ばかり出されていると思います。それで、これを加えて、やっとその都道府県協議会の方では運営し、いろいろの法に基くところの施策を行おうと努力しておられるわけなんです。ところが、駐留軍の撤退とか移転によって駐留軍労務者が残り少くなったり、あるいはいなくなったりすると、もうその調達庁からの金は出てこない、回ってこないということです。打ち切られた県がどれだけあるかというと、私が言うまでもなく、皆さんの方がよく御承知ですが、宮城、新潟、岐阜、静岡、愛知、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、鳥収、その中で、もうすでに打ち切られているのが宮城、岐阜、京都、奈良、滋賀ですか、それから大阪、これらのところには、調達庁の方からは一銭も金が回っていかない。そうして、もうまさに今年度中に打ち切られようとするのが、さいぜん言いました残余の府県ですところがやはり駐留軍労務者の問題については、離職者に対しては、法によって運営しなければならないというようなことですが、一県わずか十万円当り、十万円程度では、なかなかこの運営ができないというように思われます。そうすると、予算上で、金銭で運営ができないということになれば、幾ら気持の上に駐留軍労務者の失業の問題をどうしようとか、あれもああしようとかいうように思っても、都道府県では何にもできないということになる。しかも都道府県の地方財政は非常に逼迫しておりますから、そういうところには金がなければ、なかなか努力の中心がそこに向いていかないというような問題も出てくるのじゃなかろうかと思います。この点についてはどういうように、こういうような金で十分やっていけるのだというように思われますか。総理府長官に確信のほどを伺いたいと思っておりましたけれども、この点については、職業安定局長にお尋ねします。

百田正弘労働事務官(職業安定局長)

○百田政府委員 府県の駐留軍に対する協議会の費用につきまして、昨年の十月に予備費をとって以来、本年度も続けております。その内容といたしますところは、いろいろな駐留軍対策のための事業費ということではございませんで、これは関係官公庁並びに駐留軍労務者代表の方々をもって組織するところの会議体、従いまして、予算の内容といたしましては、会議の出席手当、旅費といったようなことになりますので、今言ったような予算になるわけであります。ただわれわれといたしまして、予算の運用上、できるだけそうした問題の多いところによけい配付できるように、今度は運用上も苦労いたしたのであります。一方調達庁といたしまして、労務厚生費と申しますか、そういう見地から、従来各府県に委託費がいっております。事実問題として、府県の財政になりますと、一方は委託費、一方は補助金でございますけれども、その府県が、それをもって総合的にやっておった面もございますが、来年度以降については、われわれは、おそらく調達庁の方も相当減ってくるというふうに考えられますが、何かそこに新しい事業費的なものと申しますか、それを入れ得るように、現在総理府を中心として協議中でございます。

五島虎雄日本社会党

○五島委員 それでは総理府長官もお見えになりません。それから調達庁長官も用があってお見えにならなかった。いろいろもっと質問したかったわけでありますけれども、これを割愛いたしまして、私の質問はこれで終ります。

八田貞義自由民主党

○八田委員 関連して。ただいま五島委員から駐留軍の労務者の問題についていろいろ質問がありましたが、ただ私は関連でございますからごく簡単にしますが、駐留軍労務者が国内法規によって守られていないということは、あたかも沖縄の住民と全く同じような関係にあるわけであります。しかもこれが一番問題になっておるのでありますが、直接雇用主はわが政府でありながら、すべての管理というものは米軍によって支配されておる。しかも昭和二十六年に結ばれた労働基本契約というものが、一方的に米軍の支配下に置かれるという格好が大きな問題になっております。ところでこういった沖縄の住民みたような駐留軍労務者の状態を直していくためには、日本政府と軍との対等の権利と拒否権を認めたいわゆる共同管理の原則を貫かなければならぬ。これは昭和二十八年の秋に駐留軍労務者のストによりまして新しい労務基本契約というのができたわけであります。これは共同管理の原則を盛った新しい労務基本契約というものができた。しかも調印しておる。ところがこれはアメリカ軍の言いなりになって、今もってたな上げされておる。この点についてその後どういうような努力をされておるか。やはり共同管理の原則というものを貫くために、せっかく調印したものをそのままたな上げされておることは非常な問題であると思う。この点について答弁していただきたい。

小里玲総理府事務官(調達庁労務部長)

○小里政府委員 お答えいたします。労務基本契約は昨年まで、日本が独立いたします以前から契約がずっと続いておりまして、これを改正すべしという意見が労働者からはもちろん、世論としても高かったのでございます。昨年の十月になりまして日本の政府と米軍との間に労務基本契約の新しいのが調印をされまして、この労務基本契約はお話にもございました日米共同管理という原則が盛られております。それは、人事措置につきまして、単に従来のごとく、米軍の一方的な意向でこれが実施に付されるということでなしに、日本政府において、これに異議を唱える場合には、原則的には合同委員会までかけて、合同委員会の決定に従って、初めて実施に移される、こういう基本的な線が新基本労務契約の中の大きな原則でございます。これは、昨年の十月から実施に移されておりまして、ただいまその新基本労務契約に基いて、諸般の事項が処理されておるわけでございます。

八田貞義自由民主党

○八田委員 アメリカ軍との対等の権利と、拒否権を認めた共同管理の原則というものは貫かれていないと思います。というのは、今日まで見ておりますと、制裁解雇というのは大体わかります。ところが、二十一項目もある制裁規程、これは直されていないのです。制裁処分というのは、実際にあなた方わかっていないと私は思う。昨年からやってみられましても、これは非常に多いのです。二十一項目の制裁規程というものは、われわれが考えてみると、こんなことが実際やられていいかというような義憤を非常に感ずる。ですから、こういった問題について、私は関連質問ですから、きょうはやめますが、少くとも私が調達したところでも、いろいろ問題がある。こういう問題については、あらためてやりたいと思うのでございますが、どうかこれらの問題について、与党側から強い質問があったということをぜひ調達庁長官、総務長官等にお伝え願いたい。     ―――――――――――――

園田直自由民主党

○園田委員長 次に内閣提出、最低賃金法案、並びに勝間田清一君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案の三案について質疑を継続いたします。大原亨君。

大原亨日本社会党

○大原委員 午前中に賃金格差の問題について御質問に入ったところ、その第一点の地域的な賃金格差の実態について、政府提案の最低賃金法案によりますと、大臣の御説明の中にもまた法文の中にも、そういう地域的な賃金の実態が異なるという根拠によって、政府提案のような最賃法案が出ておるわけでありますので、その点について、その実態はどうかという点について御質問いたしまして、資料の提示を求めたのですが、これについて一つ関係者の方から御説明を願いたいと思います。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 毎月勤労統計調査の地方調査によりまして、全産業の平均賃金を各府県別に比較いたしますと、全国平均を一〇〇としまして、東京は一一四になります。北の方から参りまして、宮城県で申しますと八九、長野県で申しますと七三、静岡で八六、滋賀で七六、大阪で一一一、広島で九四、香川で八一、宮崎で八七、一番低い数値を示しておりますのは徳島の六八という数字になっております。

大原亨日本社会党

○大原委員 私この数字の、こういう差が出ております理由についていろいろと究明していきたいと思うのですが、ちょうど私の手元に今の表をもらっておりませんから、概括的にお尋ねするのですが、そういう地域的な賃金格差はどのような理由によって出ておるか、こういう点について一つ御説明願いたいと思います。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 賃金の地域間の格差を生じまする理由については、先ほど申しました数値は全産業の平均賃金でありますので、従って各県における産業構造の差異あるいは企業の規模の差異、さらに労働者の構成の差異、これらがすべて平均されて出ておるものでありますから、各県で非常に違うわけであります。こういう点が一点あると思います。さらにそれにいたしましても、各県別の賃金の差異というものはかなりあるわけであります。それらは物価水準の差、あるいはそこからくる生計費の差ないしは消費構造の地方別の差異、こういうものから出て参ると思うのであります。ただ先ほど申しました数字のことに大きな差異をなしますのは、産業構造の差とか労働者の構成の差異、こういうふうなものであります。たとえば東京と神奈川を比較いたしまして、単純に平均賃金で比較いたしますと、東京を一〇〇といたしますと、神奈川が一〇六という数字が出て参ります。これを、神奈川と東京というものを、産業構造を同じくいたしまして、労務者と職員の区別ないし男女性別の構成を一緒にいたしましたラスパイレス方式によって算出すると、神奈川の方が九五%程度に下ってくる。すなわち平均で申しますと、神奈川の方は重化学工業等の産業が多く、あるいは大規模企業が多い、こういう点から平均では大きくなるが、そういうふうに産業構成を同一にして見ますと逆に下ってくる、こういうふうな数字の差異が出て参ります。

大原亨日本社会党

○大原委員 これは全産業の平均なので、この数字というものがいわゆる地域別の差ということになりますと、今のお話のように、数字といたしましてはほとんど値打のないものであります。ちょっと突っ込んで分析してお尋ねするんですが、業種別、規模別を考えまして、そうして地域的にどういうふうな差が出ておるか、こういう点々少し具体的に話していただきたいと思います。私どもが最低賃金制の問題で論議をいたしておりますのは、これは何といいましても産業の各府県やその他集中度や産業構造が、言われたように違っておる。そういうのを全産業を平均いたしまして、そうして地域ごとの賃金の差をここで指数で出しましても、これだけじゃ実態がつかめない。私はやはり同じような食料品の工業とか、あるいは機械工業とか、あるいは造船工業とか、そういう業種別に、規模の大小によりましてどのような賃金の水準に開きがあるか、こういう点をつかんでいきませんと、この問題についての実態がつかめないのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますので、午前中の御質問もそういう趣旨でございましたので、その点に触れて一つできるだけのお話をいただきたいと思います。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 たとえば規模別について、企共規模一千人以上のところ、十人―二十九人のところ、この二つについて、たとえば北海道を申し上げますと、千人以上のところにつきましては六三という数字が出ておるのでありますが、十人―二十九人、この小規模におきましては、逆に一〇一という数字が出ておるのであります。さらに大阪をとりますと、千人以上のところで一〇七、十人―二十九人のところで一一五、広島でとりますと、千人以上のところで七一、十人―二十九人のところで八三という数字が出ております。  産業別につきましては、先ほど申しましたように、産業構成を一律にいたしまして比較いたしたのでありますが、ちょっとずれるのでありますが、たとえば職種別に比校いたしてみますと、かなり一般的にあります事務職員、男、これをとって、東京、広島、長野という大体産業構成の段階的に代表的なところを選んでみますと、事務職員の男で、東京を一〇〇と置きますと、広島が七九、長野が六六、それから事務職員の女で見ますと、東京を一〇〇といたしまして、広島が八七、長野が五八となります。それからたとえば印刷植字工をとりますと、東京を一〇〇といたしまして広島七〇、長野八六という数字が出ます。

大原亨日本社会党

○大原委員 今の規模別、職種別の賃金の開きについて私お伺いしたい点は、最近、昭和二十九年以降飛び飛びに数字を拾っていただいていいと思うんですが、どういう傾向になりつつあるか、そういう地域別の差が開いておるか縮小しておるか、開いてるとすればどういう点で開いてるか、どういう傾向にあるか、こういう点を御説明いただきたいと思います。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 地域間の賃金格差につきましては、各年次別の差異というものは非常にばらばらであります。またその差は比較的少いようであります。一方物価の方の年次別の数字を見ますと、これはかなり変っております。たとえば戦後におきましては各県別の物価の最高と最低との差が三割以上もありましたのが、現在では物価の地域差というものは非常に下ってきておる、格差が縮小している、こういう状況でありますが、賃金そのものの地域格差につきましては、比較的差は大きくなく、かつ各県によって年次別の動きは非常にばらばらである、大体そういうふうに理解いたしております。

大原亨日本社会党

○大原委員 今のお話で、地域別の賃金格差の資料は、政府は非常に強調されておるのですが、私いろいろ調べた範囲では、確かに実態把握はむずかしいと思うのです。なぜかというと、私どもが最低賃金制で対象として考えております労働者の階層は、つまりボーダー・ラインの人が多いわけであります。つまり働いても食えない、また将来を見通して、とにかく今は非常に低くても、将来だんだんと高くなっていくというふうな希望や見通しがない、こういう低賃金の固定化、しかも最近はだんだんとそういうボーダー・ライン層が、いわゆる潜在失業者が深刻になりつつある、こういう一般的な傾向の中におきまして、地域的な賃金の格差が規模別やあるいは業種別、職樋別にどういう形態になっているか、こういう点につきましては、私はやはりもう少ししさいに検討をいたしてみたいと思いますので、きょうはまあ不備な資料の中からいろいろとかいつまんでお話をいただきましたが、この点については一つリプリントしていただきまして、これをまた整理して資料として出していただきたいと思います。そういたしましたら、私また日を変えまして次の機会にこれを分析いたしまして、もう少し正しい点で論争し、解義を重ねていきたいと思っております。  その次に、格差で、この政府の御説明にも取り上げてありまするが、業種別、職種別の賃金格差について、現状におけるこういう実態はどうか、業種別、職種別における賞金の格差の失態はどういうふうになっておるか、こういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 まず業種別、すなわち産業別の賃金格差について申し上げますと、もちろん産業分数が非常に多岐にわたるわけでありますが、おも立ったものについて申し上げますと、産業総数を一〇〇と置きますと、鉱業が一〇九・九、製造業が八九・四、卸売、小売業、商業が九二・一、金融保険業が一三二・八、運輸通信その他公益事業が一一八・六、大体大きな分類によりますと、そういうふうな産業別の賃金格差に相なっております。  職種別の賃金格差につきましては、かねて私どもめ方で職種別賃金格差の統計をとったのでありますが、その職種は三百数十職種にわたるものでありまして、非常に複雑なのでありますけれども、その中でごく大まかに申し上げますと、たとえば、これは男子の場合でありますが、事務職員を一〇〇と置きますと、ガラス製版工、これは痛い方なんでありますが一六六・七、それから板ガラス検査工が一五三、それから低い方では縫製工が五五・八、洋菓子製造工が四九・九、こういうふうな職種別の賃金格差になっております。  それから女子で申し上げますと、女子の事務職員を一〇〇と置きますと、一番高いのが国際電話の交換手、これが一七一、それから下の方へ参りますと、やはり洋菓子製造工あたりが五九・八、こういうふうな数字に相なっております。

大原亨日本社会党

○大原委員 今の業種別、職種別賃金格差の中で、神武景気以来最近の経済情勢で、日本の経済の展望については、やはり不景気かあるいは停滞ぎみなので、あまり大したことはないのだ、こういういろいろ意見がございますが、特に上ったり下ったりいたしまして変動の激しい産業、このいわゆる格差の推移状況を、この二、三年、昭和三十年以降でけっこうですが、それをお話いただきたいと思います。やはり政府がどういうふうにこの業種別、職種別の格差の実態を把握しておられるか。私も私並みに把握しておるのですが、そういう点を私はやはり聞いておきませんと、あとのいろいろな質疑の際に何でありますのでお聞きいたします。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 産業間の賃金格差は、言いかえれば産業別の各年の賃金上昇率と同じになるわけであります。それで各年における産業別の賃金上昇率、これは非常に差があるわけであります。各年につきますと、一年間の上昇率は非常に差があるわけでありまして、たとえば三十二年あたりにつきましては鉱業が非常に大きな上りを示しております。しかしそれはその前の年、あるいは前々年につきましては非常に上昇率が低かった、こういうふうな関係でありまして、従いまして産業間の賃金格差というものは各年によりましてかなりの差異が出てくるわけであります。それはすなわち産業別の、それぞれの毎年における賃金上昇の状況によって、そういうふうな各年における差が非常に大きく出てくるわけであります。

大原亨日本社会党

○大原委員 今まで地域別の賃金格差、それから業種別、職種別の賃金格差で、実態と推移の状況をそれぞれお聞きをいたしたわけであります。もちろんこれは、一番はっきりしている格差の問題は、規模別の格差の問題でありますが、それはやはり総合的に政府の現在における御見解をこの席上を通じて正確に把握いたしまして、そしてそれを総合的に検討する意味において、規模別の賃金格差の実態は大体どういうふうになっておって、どういうふうな傾向になりつつあるか、こういう点について一つ御説明願いたい。

大島靖労働事務官(大臣官房労働統計調査部長)

○大島説明員 規模別の賃金格差につきましては、五百人以上を一〇〇と置きまして、百人から四百九十九人まで、これが七三、それから三十人から九十九人までが六二、五人から二十九人までが五一、一人から四人まで、これが三七、こういうふうな賃金格差になっております。  さらに年次別に申し上げますと、昭和二十六年におきましてはこの格差が、たとえば百人から四百九十九人までのところでは七九・五、昭和三十二年におきましては七〇・八、三十人から九十九人までのところでは、二十六年が六一・七、これが三十二年におきましては五六・〇、こういうふうな格差の推移になっております。以上は製造業の平均について申し上げたわけであります。ただし小規模ないし零細の方になりますと、現物給与の関係が非常に出てくるのであります。これは現金給与の関係のみの数字でありますから、その点はお含みいただきます。

大原亨日本社会党

○大原委員 数字上の問題をちょっと離れますが、このように賃金の格差が非常にあって、しかもこれが固定化して、ある面においては賃金の格差が拡大をしておると思うのです。私どもは最低賃金制の問題を考える際に、やはりこの格差が拡大をするのを防止する、こういうふうな労働大臣の提案説明や御答弁もあったわけでありますし、私どもも最低賃金制の一つの大きな目標は、実にそこにあると思うのでございますが、この賃金格差が生じておる原因を明らかにいたしていくことによりまして、では最低賃金制は一体どういう役割で、現在の段階ではどういう内容のものが適当であり、かっこの賃金の格差の生じておる原因を排除するために、いわば中小企業の近代化、あるいは健全な経営の推進のためにどういうふうにしたらいいかという総合的な施策の中で、この問題は解決をされなければならないと思うわけでございますが、一つこの点は労働大臣の方から、賃金の格差が固定化したり、あるいはある部面においては非常に増大をいたしておる原因はどのようなところにあるか、最低賃金制はこの内容についていろいろ問題はありますが、社会党案によりますと、これは画期的なものでありますが、政府の案をお出しになった際に、格差の原因がどこにあるのか、そういう点について御見解があると思うのでありますが、その点について一つお考えをお話しいただきたいのであります。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 申し上げるまでもなく、賃金は利潤の分配でありますからして、利潤の上らないところではなかなか困難であります。そこで今質疑応答が重ねられましたが、大産業の方と中小企業の方との格差がどういうところで生じておるか。先ほど政府委員の御説明申し上げました中にも現われておりますように、やはり同じ廃業でも地域によってはだいぶ違っておる。そういうようなところから見ましても、やはり規模別に見て一つの非常に大きな差異がある。多くの産業で相当な利潤を上げておるところがやはりそれ相当な賃金の上昇を見ておることは御承知の通りでありますが、現在日本において中小企業なかんずく比較的零細な企業の方での賃金の実態というものは、先ほどのお話の中にありましたような、よほどの不心得な者が経営側にあって、そうしていたずらに労働賃金をたたいて特別なことをやっておるものは別といたしまして、大体零細企業の方では、事業を営んでおる方とそれに従事しておる者とは全く渾然一体となって働いてやっていかなければ現実に維持ができないし、またそういうふうなものが多いのです。そこで今の賃金の面から見まして、大産業と中小企業なかんずく零細企業の方では、やはりその企業の企業構造の大きさ、それからまた大企業によって経営されておるものは、やはりそれだけの経済的信用力、経営の実力等を持ってやっておるものでありますから、従ってそこに支払い得る質金というものも比較的よい賃金を払えるようになっておる。現在の日本の中小企業の実態を見てみますと、やはり私どもが考えておりますような最低賃金をきめるだけですら、なお支払い能力について非常に苦慮しておるような企業体のあることは御存じの通りであります。従ってそういう格差というものがある。それをできるだけ縮めていくことにしたい。これはひとり大産業の恵まれた労働者側に対して賃金の面で接近していくことに心がけるばかりではなく、その他の面において、たとえば社会保障的な、失業保険、社会保険その他退職金制度というふうなものを一方に並行して実施すると同時に、今度は賃金の面においてもだんだんと接近していくようにしていきたい、こういう考え方で向っておるわけであります。

大原亨日本社会党

○大原委員 ただいまの大臣の御答弁の中に、大きな企業の労働者の賃金が高過ぎるから中小企業の労働者の賃金との差が開くのだ、少し遠慮してもらいたい、端的な表現でありますが、そういう御答弁があったように思うのですが、私の誤解でしょうか、もう一回御答弁いただきたい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 大原さんの言われたようなことを申し上げたのではないのでありまして、大産業はその経営自体、社会的信用力とかそういうもので相当な利潤を上げ、なおかつ出資者すなわち株主に対しての配当を継続しながらも、やはり相当なレベルの賃金を支払い得る、それだけの経済的実力を持っているものが大きな企業というわけであります。ところが中小企業、なかんずく零細企業においては、第一にそういうふうな社会的経済上の信用力、それからまたその企業の運営についての企業者の実力、そういうものから見て、やはりいろんな面においてどうしても力が弱い。従って政府はそういうものに対して特段の努力をし、援助をして、そういうものが継続して経営のできるように進めなければならぬ理屈がそこに出てくるわけでありますが、そういう経営のところに従事いたしておる者は、従って賃金が比較的低い。これは日本ばかりの現象ではありませんが、やはり経営力の弱いところの従業員に支払われる賃金というものは、そういう意味で比較的低い。この低いのをどういうふうにしたらできるだけ上昇させることができるかということにわれわれの苦心が存在する。こういうわけであります。

大原亨日本社会党

○大原委員 今の大臣の御答弁をさらに私突っ込んでお尋ねいたすのですが、この点は経済企画庁の長官に、最近の国民所得の上から見まして、国民所得の階層別あるいは規模別のそういう推移の状況、どのような実態と傾向にあるかという点をお尋ねをすることがいいと思うのです。しかし私どもが大体において判断をしておる方向は、大臣もしばしば言っておられるように、最近の神武景気から金融引き締めを契機といたしまして、中小企業の方へだっとしわが寄って、中小企業の倒産者その他が多くて、雇用労働を吸収しておる部面でも第三次産業、いわゆる商売の方が多い。今のそういう賃金の格差の原因になっておるのは、そういう所得が――今利潤という一部の表現を言われましたが、それがやはり集中をし過ぎておるのではないか。中小企業の方は経営が非常に困難になっておる、そういう面で倒産もしておる。そういう結果が、格差を固定化したり、増大したり、失業者にしたり、生産面においてそういう現象を来たしてきておるのではないか。こういう原因を正しく究明をしないで、そして格差を是正するのに困難だからちょっぴりこうやるんだ、こういう格好では問題の解決にならぬと思うのであります。従って所得の階層あるいは規模――大臣は利潤と言われましたけれども、そういうものが金融引き締めその他の政策の中でやはり中小企業の方へ回ってきていない結果、こういう賃金の格差の増大の方向に行きつつあるのではないか、大きな原因がそこにあるのではないかというふうに思うのですが、大臣の御所信をお伺いしたい。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 今のお話は非常に大事な問題だと思います。私どももある意味において大原さんと同じようなものの見方をいたしておりますが、ただ先ほどお話がございました、政府が国際収支の悪化したものを防止するというような建前からとりました経済調整、これは御承知のように金融面にその政策が現われ、金融の引き締めをいたしました。このことはあながち中小企業だけではありませんで、もちろん投下資本の設備資金の貸し出しを厳格にいたしまして、その結果やはり一般的に見て中小企業の方の金融にもしわ寄せがきておることは事実であります。そのことの政策の問題については、あるいは後刻経済企画庁長官からもお話があるかもしれませんが、中小企業は御承知のように大「部分が下請関係に立っておる。従って大きな親産業の方に引き締めが出てくればその影響を受けるということは、日本の産業構造では当然だと思います。それは賃金格差を生ずる一つの原因であることはもちろんうなずかれることでありますが、しかしそのことだけが原因ではない、私はそのように思っております。  そこでその中小企業の賃金と大産業との賃金格差をいかにしてなるべく接近させることができるかというふうなことが、労働政策等をやる者にはきわめて大切なことだと思っております。そういう一つのねらいも、もちろん最低賃金制の中にはあるわけでありますが、最低賃金制を実施するということによってだけでは、その賃金格差を縮めていくことはなかなかむずかしいと私は思います。かえって悪くなる心配はないと思いますが。そこで今の最低賃金を実施すると同時に、しばしば政府が申し上げておりますように、やはりその中小企業が最低賃金というものを実施しても、なおかつその経営を維持できるだけにその力を強めてやらなければならぬ。でありますから、われわれしばしば申し上げておるように、中小企業の保護育成ということを一方にやりながら、その支払い能力を十分維持するように努めつつ、最低賃金を実施するようにしたい。そういう政策がやはり賃金格差をだんだん縮めていく効果をもたらすのではないか、こういうふうに考えております。

大原亨日本社会党

○大原委員 労働大臣は閣議その他、政党政治でありますから、党内におきましても、やはり完全雇用、それからしかも固定賃金、再生産のできる賃金、そういう観点から強力に発言をして施策の上に反映をしていただかないと、今のお話を聞きますと、中小企業の方を強めつつ、こう言われるのですが、実は中小企業の力は弱くなりつつあって、その中で最低賃金制が、しかも問題のある最低賃金制、それが実施されようとしているところに、私は論争があると思うのです。抽象的には、大臣の言われるように、中小企業は日本の雇用問題や産業構造の中では非常に大きな地位を占めている、この中小企業の方を強めつつ最低賃金制を強く、よくしていくんだ、そういうことは言葉としては成り立つのですが、しかし賃金の格差はだんだん増大している、固定化している。そうして金融引き締めその他の政策以来、やはり非常に急速に中小企業が落ちていることは、ここで本質的にまた決定的に論議する時間がございませんが、そういうことは逆になりつつあるというところに私は問題があると思うのです。そういう点について、最近は労働大臣の発言力が政治の上において強化されましたが、午前中から申し上げておるように、違った意味で強化されるのではなしに、そういう政治の、あるいは生活の実態の面から、一つ雇用面から強化していただくということが大切だと思うのですが、中小企業は力が弱くなりつつあるんじゃないですか。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 まことにありがたいお言葉でありますが、中小企業を弱めるようなことがありましたならば、日本の経済は立っていかないことは御承知の通りであります。私が中小企業を強くしながらと申し上げておりますのは、ただいまの政府も、全体の経済政策の中で第一に掲げておりますのは、いかにして雇用を拡大していくか、同時にこの雇用の問題で一番大きな役割を果すのは、小さな形ではあるが、それが合体して、やはり一番大きな部面を占めておる中小企業、この中小企業を保護育成するにあらざれば、日本の経済というものは成り立っていかない。そういうことで、現在御承知のように十分とは申されませんけれども、一方においてはその組織化に御協力を得て、努力、成功いたしまして、さらにこの組織化の上に、一番窮屈であります金融面においても、あるいは中小企業金融公庫、信用保証協会といったようなもの、そういったような制度を徐々に拡大強化すると同時に、そこに出します政府資金の額においても逐年増強いたしておる、こういうことでありまして、私どもの考え方は、いやしくも今御心配下さいましたような、中小企業を弱めるようなことがあってはならぬ、そういうことで力を入れて、一方においてこれをしっかりさせて、同時に一方においては最低賃金というものを実施する力を持たせるようにする、こういうふうに並行してやっていきたいというのがわれわれの考え方でございます。

大原亨日本社会党

○大原委員 今非常に大切なところへきておると思うのです。希望を大臣は言われたわけですが、私の指摘いたしましたのは、現実がどうなっているか、なりつつあるか、こういう点を中心として先ほどからずっと質問を続けてきたわけでありますが、委員長、振り返ってみますと、定員が足らないようであります。これは、経済企画庁長官のお話もぜひ伺っておきたい事項でありますので、議事進行について御配慮いただきたいと思います。理事の間で相談していただきたいと思います。

園田直自由民主党

○園田委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕

園田直自由民主党

○園田委員長 速記を始めて。  次会は明二十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十三分散会

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