社会労働委員会 第6号
- 発言数
- 18 件
- 登壇者
- 3 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1958/10/15
会議録
○園田委員長 これより会議を開きます。 内閣提出の国民健康保険法案及び国民健康保険法施行法案の両案を一括議題とし、審査を進めます。 質疑に入ります。藤本捨助君。 〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕
○藤本委員 福祉国家を建設いたしますことは近代文化国家に課されましたる重大な使命であります。これがためには、国民に対しまして所得保障と医療保障を中核とする社会保障の強化確立をいたさなくてはなりません。所得保障に対しましては、はでに生活保護やあるいは各種の公的年金制度等々がありますし、またわが党の最も重大な政策であり、公約でありまする国民年金制度の発足も近くいたすことに相なっておるのでありますが、これらに関しましてはしばらくおきまして、国民に対する医療保障につきまして、私はおよそ次の三つの重大なる理念があると思うのであります。 その一つは医療の普及でありまして、全国民が病気ともなりますれば、貧富の別なく適切な医療を受け得るということであり、その二、医学、医術の進歩に伴いまして医療内容の向上をはかるということであり、その三は、医療費の全体を最も効率的に使用せねばならぬということであろうと思うのであります。これらの理念を実現いたしまして、国民の待望する医療保障を強化確立いたしますためには、政府の施策の面におきましても、また医療の担当者の側におきましても、さらに医療の対象でありまする国民の側におきましても、いろいろと重大な問題のあることは申し上げるまでもございません。私はこれらの問題の解決にいささかこたえますために、今回御提案になりました国民健康保険法案につきまして、その細目的あるいは逐条的な問題につきましては後の機会に譲ることといたしまして、その大筋について二、三お尋ねいたしたいと思うのであります。ただしこの際御了解をお願いいたしたいと思いますことは、私のお尋ねする問題点については極力私の説明や意見を省略いたしまして、裸のままでお尋ねをいたしたいと思いますので、要を尽さぬところが多々あるだろと思いますが、何とぞ御賢察いただきまして、御答弁に当りましてはできるだけ懇切また明快にお願いいたしたいと存じます。 まず内閣総理大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、お見えになりませんから後の機会に保留いたし、厚生大臣にお尋ねいたします。 第一、国民健康保険事業の基本的性格についてであります。現行法によりますと、国民健康保険事業は市町村への委任事業であり、従いましてその事業の内容等の規制につきましてはこれを市町村の条例にゆだね、国はこれに対して保護を与えるというような仕組みに相なっておるのであります。そこで今回改正されんとしておりますところの新法によりますならば、これは全面的に改正されておりまして、画期的なものでありますから、それに値するような基本的な性格が変っておるのかどうか、さらにこの新しい改正におかれまして、国は一体どういうような責任を持つというのであるか、まずお尋ねいたしたいのであります。
○橋本国務大臣 現行法におきましては、ただいりま御質問のございました通り、国保事務を市町村の固有事務と考えまして、その事業実施につきましても任意実施の建前といたしておるのでありまして、内容等についても条例にゆだねて、国が補助を行なっているという状態でございます。これに対しまして新法におきましては、国民健康保険を市町村に対する団体委任事務といたしまして、その実施を義務制として、事業内容も法律上統一をいたしたのであります。従いまして国保事業の性格は、新法によりまして旧法とは基本的な変化を見ておるのであります。これが法を全面的に改正いたすことにした一番大きなゆえんでございます。新法におきましては国保の実施を市町村の義務とし、事業内容も法律上統一したのであります。これらに対しまする国の責任といたしましては、事務費の全額及び療養給付費の二割に対する補助金を負担金と改めましたほか、国民健康保険財政を調整いたしますために、療養給付金の五分に当ります調整交付金を交付する制度を創設いたしました。また従来市町村が定めておりました医療機関を都道府県の指定制に改めて、国の責任においてこれを解決することにいたしました。さらに無医村の解消をはかる等、医療保障制度の基礎的な諸条件を整備することといたしておるのであります。
○藤本委員 ただいま厚生大臣から、この新法の基本的性格について御答弁ございましたが、その重要な一つといたしまして、この国保事業を市町村の義務制にしたいということは、きわめて画期的なことでありますが、ただそれだけでは国保事業は進展いたしません。この国保事業の実施が進むようにするためには、諸般の条件を整備する必要がありますので、ただいまお述べになりました諸点につきまして、順を追うて質疑を進めたいと思います。まず第一に、わが自民党といたしまして非常に重大な政策であり、公約といたしまして、三十五年度末を期して国民皆保険を完成するということに相なり、四年計画をもって、三十二年度からその第一年度が発足いたしております。その後の情勢を伺いますと、国保事業の進捗は必ずしも活発でない、芳ばしくないといったようなことがあるのであります。果してそうだといたしますと、三十五年度の末までにはこの国保の被保険者総数が四千九百万人になり、職域保険の被保険者数の四千二百万とともに、待望の国民皆保険が実現することに相なるかどうかについて、いささか疑いなきを得ないのであります。この際国保の進捗状態をお示し願いたいのであります。
○橋本国務大臣 いろいろな問題がございまして、非常な苦心はいたして参らなければなりませんけれども、かまえてこの二十五年度末までに国民皆保険は達成をしなければならないし、できると考えておるのでございます。ただそれにはどうしても、現在までの国民健康保険事業に対しまして、内容の充実をはかりますための今回の法律の改正を行いまして、あとはやはりわれわれ相当の当局が、熱心に実施の支障になっておりますようなものを一緒に考えて解決をするという努力が必要であると思います。かまえて新法と、その上に立っての各般の御協力、またわれわれの努力で皆保険が達成できると考えておるのであります。 それから今日の普及状況はどうかということについて御報告を申し上げたいと思います。昭和三十三年三月末日現在におきまする国民健康保険の保険者数は二千九百四十一であります。うち市町村の区域を単位とするものの数は二千八百五十三でありますので、全国市町村三千七百四十六に対しまして約七六・二%の普及率を示しておるのであります。被保険者の数は、昭和三十三年三月末日現在で約三千三百五十六万人に達しまして、国民健康保険の対象人口四千九百二十万人に対しまして約六八・二%を占めるに至っております。また都道府県別に見ますと、岩手、山形、石川、滋賀及び島根の五県及び秋田——秋田は十一月一日からなりますが、これがすでに一〇〇%の普及率を達成いたしました。なお宮城、埼玉、新潟、富山、長野、岐阜の六県におきましては九〇%以上の普及率を見ているので、都市におきまする普及状況は急速に伸展をしておりまして、昭和三十三年三月末日現在におきまする全国都市数五百二十八のうち、国保を行なっておるものは四百十六でありまして、普及率は七八・八%に達しております。なお昭和三十二年度において国保を開始して、または事業実施区域を拡大した主要都市は、仙台、水戸足利、福井、長野、西宮、尼崎、奈良、広島、呉、高知、門司、佐世保、佐賀、鹿児島などの主要都市がこれをやっておるのであります。昭和三十三年四月一日におきましては、百八十四市町村が国保を開始いたしました。また事業実施区域を拡大いたしました。これによって百五十万人が新たに国保の被保険者と相なったのであります。東京都を初め大都市におきましても、国保の新法の成立を待って事業開始するよう、各般の準備を進めておるところでございます。ただいまの普及状況もまだまだ十分ではございませんけれども、相当のところまで進んでおりますし、新法の制定をめぐりまして、非常に各地とも熱を上げておりますので、これに対しまする諸般の障害の除去といったようなことにつきまして、政府当局も真剣に一緒に相談に乗って努力するということをやりますならば、新法成立後さらに急速に国民健康保険の開始町村がふえて参ると思っております。
○藤本委員 ただいまのお示しによりまして、現在におきましては大体保険者数は予定の七割、被保険者の数は大体六割八分のようでありますが、この数字自体が、三十五年度末までには、よほど御勉強願わなくてはゴール・インせぬのではないかというような感がいたします。さらにまた大都市におきましては人口の移動がはなはだしい、あるいは低所得者の階層の者が多い、その他いろいろな事情がありまして、他の市町村等に比しましては非常に保険事業の進捗のテンポがおそいということでありますので、特にこの方面に御留意を願い、御努力を払っていただきたいと思うのであります。なお三十五年度までに予定のような普及状況にならないというような場合にはどうするか、あるいは市町村にかわって国が代執行でもするというようなお考えでもあるのでありますか。この際念のためにお尋ねしておきます。
○橋本国務大臣 国民皆保険はほんとうに国民の念願でございますし、社会保険を一つもしいてないところにおきましては、この恩典に浴するということは国民の要望であると思いますので、新法が成立をいたしまして、そうしてこれの内容の運用に当りまして、厚生当局はもとより自治庁、大蔵省の協力も求めまして、やるべき負担金等はきちんとその時期にこれを交付する、あるいはその他いろいろな医師会等との話し合いについては厚生省も骨を折って障害の除去に努めるといったようなことをいたしますならば、つまり新法の制定とそれのきわめて円滑な運用、それからそれに加えて皆様方の御協力も得ましてわれわれが熱心にやって参りますならば、これは特殊な離島などで、一部分どうしても工合が悪いというようなところは多少残るかもしれませんけれども、大きな市町村として、これだけの国策のもっとにおいて、三十五年度末までにできないということはないと考えております。この点はこの法律の趣旨に従いまして必ず、特殊の例外を除いて、実現ができると確信いたしておりますので、ただいまお話のありましたようなことは考えておりません。
○藤本委員 次に医療機関についてお尋ねいたしたいと思います。現行法によりますと、医療機関、医療担当者の指定は、保険者である市町村長がやっておるのであります。そのために当該市町村内の少数の医者に頼むというような考え方でありまして、そのためにあるいは直営の医療機関に限ってみたり、あるいは一部の医療機関に限ってみたりするようなことがありまして、広く公私の医療機関の協力態勢というものは確立いたしておりません。今度この医療機関の指定を市町村長から都道府県知事に持っていかれたのでありますが、これについてどういうねらいがあるのか、お示しを願いたいと思います。
○橋本国務大臣 医療関係者との関係というものは、もともと病気は医者がなおすという関係からいきまして、国民健康保険を実施するに当って一番大事な問題であることは申すまでもないところであります。ただいままでの国民健康保険は、市町村の当局が医療担当者と契約をするという建前でやって参りましたし、それからまた医療の内容につきましても、診療報酬につきましても割引の制度等がございましたので、当該市町村内の少数の医師だけ頼むといったようなことがあったのでありますが、ほんとうに国民皆保険をやるということになりますればそれではいけないと考えまして、新法におきましては診療報酬の内容につきましても健保と同様にこれを一定いたしますことと、それからもう一つは、いやしくも医療担当者の方で喜んで国保の診療を担当するという希望のある限りは、必ずそれを指定をして医療担当者になってもらうという建前にいたしておるわけでございます。まあ指定と言うと、いかにも言葉がぎくしゃくしておるようなんでありますが、しかし趣旨はただいま申し上げましたように、直営診療所だけにやらすとか、特に割引を考える少数の医師だけを考えるといったようなことでなしに、国民皆保険という建前からいけば、希望のある限りの医師は必ず医療担当者になってもらう。しかもその診療報酬の内容等、きめた通りにやってもらうという建前で、新法を編んであるわけなのでございます
○藤本委員 指定につきましてどういう基準をもってなされるのか。また指定の拒絶、あるいはまた指定の取り消し等につきましては慎重な配慮が要ると思うのでありますが、大臣はどういうような構想をもってなされるおつもりでありますか、お伺いいたします。
○橋本国務大臣 お話のございますように、指定医療機関の地位というものは、法律上保障されていなければならぬことは申すまでもないところでございます。 田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで新法におきましては、指定医療機関の指定の取り消し等につきましては、取り消し得べき理由を制限的に列挙いたしまして、取り消しの手続といたしまして地方社会保険医療協議会に諮問をすることとし、さらに指定保険医療機関の開設者に対して弁明の機会を与えるということにいたしまして、これは十分に法律上の地位を尊重いたしておるのであります。
○藤本委員 今回の改正によりまして、医療担当者の指定が市町村長から都道府県知事にかわったということは、医療の広域化とでもいいましょうか、医療の機関を単なる当該市町村だけに限らず広く求め得るというようなことに相なりまして、医療内容の向上といったようなことに対しまして非常に寄与するものと思うのでありますが、しかしこれがために市町村の保険財政には影響するところがないかどうか。さなきだに赤字に困っておる保険者があるのでありますが、一方においてはけっこうなことでありますけれども、他方において市町村財政に影響を与えやせぬかと懸念いたしますので、お尋ねをいたしたいのであります。
○橋本国務大臣 実はその点がございますので、いきなり全部一ぺんにということについては多少の影響があるというので、経過措置は考えておりますけれども、しかし経過的な措置で、ただいまありまする契約について若干の期間これを認めていくというような問題を抜きにいたしまして、この本格的な国民皆保険化におきましては、やはり当該市町村が国民健康保険をやりまする場合に、そこのお医者さんに割引を認めるならばお前の方をやらしてやるけれども、しかしそうでなければやらさぬということになっては、どうも穏やかでないと思いますので、診療内容、診療報酬の内容を一定すると同時に、それから希望のある限りのお医者さんは医療担当者に指定をするということにいたしたのでありまして、経過措置はある程度考えておりますが、先々の問題といたしまして、これはやはり大きな目で見た医療内容の向上といったような点とにらみ合せて、ある程度の市町村財政の影響といったような問題は了承してもらいたいというように考えております。
○藤本委員 次に無医村、無医地区の解消についてでありますが、この問題につきましては当委員会におきましても耳にタコができるくらいに論議されております。しかし御当局の御努力にもかかわらず、今なお解消を見ずして、残存する無医村が五十一、無医地区が七百二十四というような多数に上っておるのであります。こういうような無医地区、無医村の解消なくして、そうして医療機関の協力なくしては国民皆保険の実施はナンセンスであります。従ってすみやかにこれを解消する措置が必要なのでありますが、今までの予算措置等を見ましても、まことに貧弱なものでありますから、これでは前途容易でないということを感じておるのであります。今回この法の改正により新しい段階に入りますので、特に大臣の御努力をお願いしたいのであります。御所見を承わりたいと思います。
○橋本国務大臣 これは予算等の関係もありますが、仰せの通り国民皆保険をやりながら、医療機関がなければしようございませんので、今日とっております御承知のような方針、つまり無医村、無医地区に対しましては、ただいたずらに便々と医師の開設を待っておってはとてもやれませんので、やはり大体基幹病院、診療所の出張所といったような形で、それに対して国家的な助力をしてその開設を進めるという方向を昭和三十五年度末までには十分に推進をいたすつもりで、予算等についてもその点を強力に主張して参りたいと考えております。
○藤本委員 次に医療給付と国保の保険財政につきましてお尋ねいたしたいと思います。申すまでもなく医療給付は国保の主体であり、また眼目でありまして、最も重要なものでございまするが、国保の医療給付は他の被用者保険、職域保険のそれに比較いたしまして非常に劣っておるのであります。これが被保険者から見るならば魅力のないところであり、あるいはまたそのために国保の実施がなかなか進まないというような一つの理由にも相なっておるのであります。そういうわけでありますから、早く医療給付の割合を引き上げろというような声は非常にやかましいものがあります。すなわち社会保障制度審議会の勧告により、あるいはまた市町村、都道府県その他一切の関係の決議によりまして、医療給付の割合を七割に引き上げよという一般の常識にも相なっておるのであります。今度の改正の内容等を拝見いたしますと五割にすぎない。まことに遺憾なところでございますが、今後何とかいたしまして、特に大臣の御努力によりまして医療給付の内容を七割に引き上げていただきたいものであります。お見込みはどうか、御努力はどうか、お示し願いたいのであります。
○橋本国務大臣 国民健康保険というものの将来をずっと考えてみますと、これはいずれの日かに健康保険その他と並べまして、できれば社会保険の統合をはかり、あるいはとにかくその間のつり合いを考えて参るということは必要であると思いますので、そういう将来の目標に近づけるためにも医療内容の向上、つまり国保としては健保とつり合いをとっていくといったような面の問題がぜひ必要だと考えるのであります。私は一部負担の問題については、ただ財政のやりくりだけでないいろいろな問題があると思いますので、私は将来の理想として考えてみましても、全額給付ということはよほど考えてみなくてはならぬと思いますけれども、しかし今日の五割で足れりとは考えておりません。やはり健保との均衡をとり、将来何らか一本の形に統合していくというためにも、私は七割給付ということは目標にして進むべきものだと思います。しかし今日の問題としては、何さま先ほど藤本委員からも御指摘のございましたように、三十五年度末までの拡充ということだけでもなかなかなまやさしい努力ではできませんし、財政負担等もやはり相当ございますので、今日の問題としては当面新法によります給付内容の改善、御承知のように従来の建前から申しますれば、医療費の二割だけははっきり負担いたします、調整交付金を出すというようなことで、内容の向上が相当できるわけでありますが、この新法を基礎にいたしまして、とりあえずはやはり全然社会保険の恩恵に浴しておらないところに対する国民健康保険の拡充ということに第一段の努力をいたしまして、それがうまく成功いたし、なお円滑に動くようになりましてから、次の段階としてはやはり給付内容の向上という点に意を用いていくべきものだと考えております。
○園田委員長 定足数を欠きますので、暫時休憩をいたします。 午前十一時十六分休憩 ————◇————— 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕