P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
30回国会衆議院1958/10/14

社会労働委員会 第5号

発言数
25
登壇者
5
会派数
1
開催日
1958/10/14

会議録

園田直自由民主党

○園田委員長 これより会議を開きます。  社会党の委員の方に出席をお願いをいたしましたが、審議に応じないということでございます。従いまして国会法第四十九条、委員会の定足数過半数  は、本委員会は二十名でございます。定足数以上の出席がございまするから、審議を進めます。  内閣提出の国民健康保険法案及び国民健康保険法施行法案の両案を一括議題とし、審査を進めます。まず趣旨の説明を聴取いたします。橋本厚生大臣。     —————————————

橋本龍伍自由民主党厚生大臣

○橋本国務大臣 ただいま議題となりました国民健康保険法案の提案の理由を御説明申し上げます。  福祉国家の理想を実現して参りますために、政府はつとに社会保障の向上及び増進に努力して参ったところでありますが、各種の施策のうち、最も緊急を要しまするものが、疾病に対する医療保障の整備にありますこと、広く一般の認めるところであります。このため、政府は昭和三十二年度から最重要施策の一つとして、昭和三十五年度を目途とする国民皆保険の達成を掲げ、国民健康保険の普及を中心に諸般の基礎的条件の整備を進めて参ったのであります。  この法律案は、さきに社会保障制度審議会が行なった医療保障制度に関する勧告にこたえまして、現行の国民健康保険法を再検討し、財政上の裏づけとともに国民皆保険の基礎法として、現行法を全面的に改正しようとするものでありまして、社会保障制度審議会におきましても、慎重審議の結果、原則的に賛成を得、さらに答申の線に沿って所要の整備を加え、ここに提案をいたした次第であります。  この法律案の要旨は、第一に、国民皆保険態勢の確立のため、国の責任を明確化したことであります。現行法では療養給付費の二割と事務費の全額に対しまして補助金を交付しているのでありますが、療養給付費補助金は総額で療養給付費の二割とし、そのうち二〇%を財政調整に充てて交付しておりましたため、療養給付費の最低一割二分程度から二割五分程度までその交付割合が市町村によって相違し、概して申し上げますと、地方財政の良好な市部には不利となっておったわけであります。これからの普及の重点は、大都市を含む市部にありますので、普及の障害を除去するとともに、国民健康保険に対する国の責任の明確化をはかるため、従来の補助金を負担金に改め、療養給付費の二割は、どの保険者に対しても負担することとし、事務費につきましても負担金とするのほか、新たに、療養給付費の五分に相当する調整交付金制度を設けて、国民健康保険財政を調整し、負担の公平及び内容の充実をはかることとしたのであります。  第二に給付内容の充実であります。従来の国民健康保険は健康保険と比較いたしますと、給付範囲の面でも著しく劣っていたのでありますが、これを健康保険と同一とし、また、給付割合も、大多数の保険者が五割に過ぎなかったのでありますが、財政の充実とともに、これについても漸進的に向上を期することができるようにした次第であります。  第三に国民健康保険における療養担当者制度につきまして、最近の医療の実情に応ずるとともに、この事業に協力を希望しているすべての私的医療機関が参加し得ることとともに、各般の規定におきまして、公私医療機関を差別せず、全く同一の法律的取扱いとし、指定の拒否、取り消し等につきましても、地方社会保険医療協議会の議を経ることとし、さらに弁明の機会を与え、診療報酬につきましても、従来は保険者と療養担当者が協議して定めるため、割引等がみられたのでありますが、健康保険と同一とする等その地位の安定をはかったことであります。  第四に、昭和三十五年度までに市町村が国民健康保険を実施する建前としたことであります。政府は、この法案の成立によりまして、いまだ医療保険の対象となっておらない約二千万人に近い国民に一日も早く医療保障を及ぼしたいと念願いたしておるものであります。  以上が、この法律案を提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  次に国民健康保険法案と並びまして、ただいま議題となりました国民健康保険法施行法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  本法案は国民健康保険法案の施行のため必要な経過措置を定めるとともに、関係法律の整理を行おうとするものであります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、国民健康保険事業の開始の勧告及び助言の制度を設けたことであります。国民健康保険の未加入者を一日もすみやかに解消せしめる趣旨から、昭和三十六年三月三十一日以前においても、厚生大臣及び都道府県知事が未実施市町村に対して事業の開始につき勧告または助言を行うことができることといたしたのであります。  第二に、国民健康保険法案におきまして、国民健康保険を行う主体を市町村及び従前の同一の事業または業務ごとに設けられる特別国民健康保険組合に限定いたしましたので、全市町村が事業を実施するに至る昭和三十六年三月三十一日までの間は、現に事業を行なっている普通国民健康保険組合及び農業協同組合等の社団法人についても、引き続き国民健康保険を行うことができることとし、これらに対する国庫負担等については市町村とみなすことといたしたのであります。  第三に、国民健康保険法案におきまして、療養の給付の範囲を健康保険と同一といたしましたが、これによる急激な影響を避けるため、当分の間、政令で定める範囲のものは、給付を行わないことができる道を開いたことであります。  第四に、以上のほか経過措置といたしまして、現行法に基く療養担当者が、国民健康保険法案の指定医療機関となることに伴う必要な規定、現行法と国民健康保険法案との被保険者の範囲の相出遅による必要な調整規定等を設けることといたしたのであります。  第五に、国民健康保険税の賦課方法を整備する等、国民健康保険法案の施行に伴う必要な関係法律の整理を行うことといたしたのであります。  以上が、この法律案を提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。

園田直自由民主党

○園田委員長 両法案に対する質疑は後刻に譲ります。     —————————————

園田直自由民主党

○園田委員長 内閣提出の最低賃、金法案を議題として審査を進めます。  まず趣旨の説明を聴取いたします。倉石労働大臣。     —————————————

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 ただいま議題となりました最低賃金法案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  終戦以来わが国における労働法制は労働組合法、労働関係調整法、労働基準法など急速に整備されたのでありますが、これらの法制により近代的労使関係が確立され、また産業の合理化を促進し、わが国の経済復興に寄与するところ少くなかったことは、否定し得ない事実であります。  労働基準法は、労働条件の最低基準について詳細な規定を設けているのでありますが、同法に定める最低賃金に関する規定は、今日まで具体的に発動されなかったのであります。これが理由について考えてみますと、まず終戦後の経済の混乱が最低賃金制の実施基盤をつちかえなかったことが指摘されるのでありますが、さらに基本的に、中小企業、零細企業の多数存在するわが国経済の複雑な構成のもとにあっては、労働基準法に規定する最低賃金制のみによっては、その円滑な実施を期し得ないものが存したからにほかならないからであります。  昭和二十五年、労働基準法に基いて設置された中央賃金審議会は、絹人絹織物製造業等四業種に対する最低賃金の実施について、昭和二十九年に政府に答申を行なったのでありますが、これが実現を見るに至らなかったゆえんも、当時の経済情勢とともに、わが国経済における中小企業の特異性に存したといえるのであります。しかしながら、賃金は労働条件のうち最も基本的なものであり、特に、賃金の低廉な労働者について今日最低賃金制を実施することは、きわめて有意義であると考えるのであります。最低賃金制の確立は、ただに低賃金労働者の労働条件を改善し、大企業と中小企業との賃金格差の拡大を防止することに役立つのみでなく、さらに労働力の質的向上をはかり、中小企業の公正競争を確保し、輸出産業の国際信用を維持向上させて、国民経済の健全な発展のために寄与するところが大きいのであります。  翻って世界各国に眼を転じますと、十九世紀末以来、今日までに四十数カ国が最低賃金制を実施し、また国際労働機関においてもすでに三十年前に最低賃金に関する条約が採択され、これが批准国も三十七カ国に達していることは御承知の通りであります。経済の復興と労働法制の整備に伴い、わが国の国際的地位は次第に高まり、昭和二十六年には国際労働機関へ復帰し、さらに、昭和三十一年には、念願の国際連合への加盟も実現されたのでありますが、また、それゆえに世界各国は、わが国経済、特に労働事情に関心を有するに至っているのであります。なかんずく諸外国において、特に大きな関心を持って注目しているのは、わが国の賃金事情であります。過去においてわが国輸出産業が、ソーシャル・ダンピングの非難をこうむったのは、わが国労働者の賃金が低位にあると喧伝されたからであります。かかる国際的条件を考えましても、この際最低賃金制を実施することはきわめて意義があると考えるのであります。しかしながら、諸外国における最低賃金制の実施状況を見ても知り得るごとく、その方式、態様は決して一様のものでなく、それぞれの国の実情に即した方式が採用されているのであります。従いまして、わが国の最低賃金制もあくまでわが国の実情に即し、産業、企業の特殊性を十分考慮したものでなければならないことは言うまでもないところであります。  政府といたしましては、最低賃金制の大きな意義にかんがみ、最低賃金制のあり方についてかねてから検討して参ったのでありますが、昨年七月、中央賃金審議会に、わが国の最低賃金制はいかにあるべきかについて諮問したのであります。同審議会は、その後、真剣な審議を重ねられ、十二月に至り答申を提出されたのでありますが、その内容については 一部の労働者側委員が賛成できない旨の意見を述べたほかは、他の労、使、公益全委員が賛成されたのでありまして、さらに答申の提出については、全員が一致されたのであります。同答申は、その基本的考え方として「産業別、規模別等に経済力や賃金に著しい格差があるわが国経済の実情に即しては、業種、職種、地域別にそれぞれの実態に応じて最低賃金制を実施し、これを漸次拡大して行くことが適当な方策である」と述べているのであります。今日においても、最低賃金制の実施は中小企業の実情にかんがみ、時期尚早であるとの論も一部にはあるのでありますが、現実に即した方法によってこれを実施するならば、中小企業に摩擦と混乱を生ずるようなことはなく、その実効を期し得られるものであり、むしろ中小企業経営の近代化、合理化等わが国経済の健全な発展に寄与するものと考えるのであります。  以上の見地から、政府といたしましては、中央賃金審議会の答申を全面的に尊重して最低賃金法案を作成し、第二十八回国会に提出したのであります。同国会では、衆議院においては政府原案通り可決されたのでありますが、参議院におきましては、衆議院の解散によって審議未了となりましたので、ここに、前回提案いたしたものと同内容の法案を提出いたした次第であります。次にその主要点について御説明いたします。  その第一は、最低賃金の決定は、業種、職種または地域別にその実態に即して行うということであります。最低賃金制の基本的なあり方について、全産業一律方式をとるべきであるとの意見があります。しかしながらわが国においては、産業別、規模別等によって経済力が相当異なり、また賃金にも著しい格差が存在しているのでありまして、かかる現状において全産業全国一律の最低賃金制を実施することはある産業、ある規模にとっては高きに失し、他の産業、規模にとっては低きに失し、これがため一般経済に混乱と摩擦を生じ、本制度の実効を期し得ないおそれがあると考えるのであります。ここに対象となる中小企業の実態を最も適切に考慮して最低賃金を決定し得るごとく、業種、職種、地域別に最低賃金を決定し、漸次これを拡大していくこととした理由が存するのであります。  第二は、最低賃金の決定について、当事者の意思をでき得る限り尊重し、もって本制度の円滑なる実施をはかるため、次の四つの最低賃金決定方式を採用していることであります。  すなわちその第一は、業者間協定に基き、当事者の申請により最低賃金を決定する方式であり、第二は、業者間協定による最低賃金を、一定の地域における同種労使全部に適用される最低賃金として決定する方式であり、第三は、最低賃金に関する労働協約がある場合に、その最低賃金を一定の地域における同種労使全部に適用されるものとして決定する方式であります。  これら三つの方式のいずれの場合も、政府は、中央、地方に設けられる労使公益各同数の委員よりなる最低賃金審議会の意見を聞いて最低賃金を決定することといたしております。第四は、以上一ないし三の方式によることが困難または不適当である場合に、行政官庁が最低賃金審議会の調査審議を求めて、その意見を尊重して最低賃金を決定する方式であります。  以上のごとく四つの決定方式を採用し、それぞれの業種、職種、地域の実情に即して最低賃金制を実施することとし、もって本制度の円滑にして有効な実施を期した次第であります。  第三は、決定された最低賃金の有効な実施を確保するため必要な限度において、関連家内労働について最低工賃を定めることができることとしたことであります。わが国の中小企業は零細規模のものが多く、その経営は下請的、家内労働的な性格を有するものが多いのであります。しかも、わが国においてはこれら中小企業と併存する関連家内労働者が多数存在し、これら家内労働者の労働条件には劣悪なものが少くないのであります。しかして一般の雇用労働者に最低賃金が適用され、これと関連する家内労働を行う家内労働者の工賃が何ら規制されない場合には、家内労働との関係において最低賃金の有効な実施を確保し得ない事態を生ずるおそれがあるのであります。  もとより、家内労働については改善すべき幾多の問題がありますので、政府は家内労働に関する総合的立法のため調査準備を行うとともに、さしあたり本法案中に必要な限度において最低工賃に関する規定を設け、最低賃金制の有効な実施を確保すると同時に、家内労働者の労働条件の改善に資することとした次第であります。  以上が本法案の主要点でありますが、本法の適用範囲は、原則として労働基準法及び船員法の適用あるもの全部とし、これが施行に関する主務大臣は労働基準法適用関係については労働大臣とし、船員法適用関係については運輸大臣としております。その他最低賃金審議会の設置運営に関する事項、業者間協定締結等に対する援助、勧告、及び違反の防止等に関する所要の規定を設けるほか、関係法令に関する整備を行い、もって最低賃金制の円滑なる実施を期しているのであります。  最低賃金制を法制化することは、わが国労働法制上まさに画期的なことであり、かつその意義もきわめて大きいと信ずるのであります。しかしながら、何分にも最低賃金制はわが国においては初めての制度であります。いかにわが国の実情に即した最低賃金制でありましても、これを円滑有効に実施するためには中小企業の経営基盤の育成をはかることが必要であることは申すまでもないところでありまして、政府といたしましては、最低賃金制の実施状況等を勘案しつつ、中小企業対策等について今後とも十分配慮を行なって参りたい所存であります。  また、いかに大きな意義を有する最低賃金制が実施されたとしましても、法制定の趣旨が十分認識されず、本制度が誤まって運用される場合には労使関係の安定が阻害されるのみならず、社会経済の混乱を招くことにもなるのであります。政府といたしましては、本制度に対する労使の深い理解と絶大なる協力を期待するとともに、広く国民一般の支援を求め、これが円滑なる運営をはかりたいと存じている次第であります  以上が最低賃金法案の提案理由及び概要でございます。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。

園田直自由民主党

○園田委員長 定足数がございましたから開会をいたしましたが、国会法第四十九条には「委員会は、その委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」とございます。定足数を欠きますので暫時休憩いたします。     午前十時五十三分休憩      ————◇—————     午前十時五十五分開議

園田直自由民主党

○園田委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  小川半次君。

小川半次自由民主党

○小川(半)委員 議事進行について発言いたします。ただいま厚生大臣並びに労働大臣から提案理由の説明がありましたごとく、目下本委員会に付託されておりまする国民健康保険法案並びに最低賃金法案は、いずれもきわめて重要なる法案でございます。でありまするがために、わが自由民主党の委員は全員こぞってこの重要なる法案を審議すべく委員会に出席したのでございます。しかるに社会党の委員は一人も出席されておらないのでございます。まことに社会党の委員のその怠慢ぶりについて、われわれはあきれるのほかございません。しかも先ほど来、委員長からは再三再四にわたって社会党の方へ、委員会に出席するように御催促されたようでございまするが、それにもかかわらず、なおかつ委員会に出席せないということは、この重要なる法案を審議する意思をみずから放棄しているものと断ぜざるを得ないのでありまして、国会議員として国会審議に任ずるというこの重大なる責任をみずから放棄しているものであります。社会党の委員がこのようにして国会審議を放棄するような態度に出ることは、ひいては国会の権威を傷つけるものであって、われわれ委員としては全く残念にたえないことであります。この社会党委員の怠慢ぶり、無責任ぶり、これらについて委員長からさらに一段と社会党の委員に警告を与えていただきまするように、議事進行について一言発言する次第でございます。(拍手)

園田直自由民主党

○園田委員長 委員長からお答えを申し上げます。ただいま小川半次君から再三という言葉がございましたが、委員長が社会党に申し出たのは一回でございます。拡声機で放送し、それから事務当局を経て社会党の理事の方に委員会を開くということを申し出をいたしました。懇請をいたしましたが、社会党の方からの返事は、地方行政委員会にかかっておる警職法の問題をめぐって、一切の審議に応じないという建前から、委員会の審議に応じないというお申し出でございます。委員長としては、円満に本委員会を運営したいという一念でございますから、従って社会党の方が出てこられませんから、定足数がおそろいになったので開きましたけれども、委員会の運営については、社会党も自由民主党も、両党とも御出席の上で決定した理事会の線に従って、なるべく両党の話が円満に審議に応じられる日を待ちながら、懇請はなお続けるつもりでございますので、以上お答えを申し上げておきます。     —————————————

園田直自由民主党

○園田委員長 この際御報告を申し上げます。  国民健康保険法の一部を改正する法律案、滝井義高君外十三名提出、この法律案は前国会で趣旨説明をいたしてあるから説明の必要はないとの申し出がございましたから、提案理由の説明はいたしません。  そこで、ただいま政府から出されておりまする両法案に関連して、勝間田清一君外十六名提出、最低賃金法案、勝間田清一君外十六名提出、家内労働法案、この提案理由の説明は、理事会ではやるようになっておりますが、社会党の御出席がございませんから後日に譲ります。     —————————————

園田直自由民主党

○園田委員長 引き続いて内閣提出の最低賃金法案の質疑に入ります、齋藤邦吉君

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員 私は政府提案の最低賃金法案について二、三の質疑を申し上げたいと存ずるものでございます。最低賃金法の問題につきましては、法制的に見ましても、日本の経済の発展の上から見ましても、きわめて重要な法案でありまして、労働法制上から申しますれば、実に画期的な法律であると考えるものでございます。特に最低賃金法につきましては、すでに現在の労働基準法に一部その規定が存しているのでありますけれども、先ほどの大臣の提案理由の説明にもありましたように、法律制度はありましても、今日までそれが発育していく土壌が生育しなかった。そういうふうなことで、法律はありましても最低賃金制度は実際行われていない。そうした中にあって、今回この基準法の一部の条項を削って、新しい独立の最低賃金法案を提出された、こういうことになったわけでございますが、その際の大臣の提案理由の説明によりますと、そうした現行の基準法だけでは十分でない、何と申しましても、日本の実情に即した法律としてこれを制定し、これを実施していくことが必要であるのだ、こういうふうな趣旨が述べられたのでございます。私が申し上げるまでもなく、わが国の産業は農業と工業というふうな非常に大きな二重構造の産業構造であり、しかも工業あるいは商業等を見ますと、中小企業というものが実に莫大な数に上っておる。しかもまたこの中小企業における労働者の賃金等を見ますと、千人以上の工場労働者の賃金に比較いたしまして、中小企業の賃金はその半分にも達しない、こういうふうな状況。もちろん中小企業の生産性と申しますか、経済力というものは非常に劣っておる。しかも中小企業に従事いたしております労働者の数は、昨年の事業所センサスを見ますと、千数百万のうち千人以上の工場労働者が三百万くらい、千人未満の工場で働いておる工場労働者が一千万もおる。こういうふうに実に膨大な数がこの中小企業に包蔵されておる。しかもそうした中小企業の労働者につきまして何とかしていこう、最低賃金法を設けてその生活、労働条件の改善をはかっていく、こういうことは非常にむずかしい問題であるのでありまして、りっぱな法律ばかりいくら作りましても、現在の基準法の最低賃金の条項が行われなかった。結局法律がよくても、この法律を育てていく土壌が発育しない、こういうことだから今日まで行われなかったのでありますが、そういうふうな中小企業をめぐる幾多のむずかしい問題をかかえながら、この中小企業の労働者の労働条件を高め、わが国の経済力を拡大していくということになるのでありまして、法律を立案せられるに当りましては、何と申しましてもわが国の経済の事情なり、特に最低賃金法の一番の適用を受けます中小企業の実態を十分頭に入れて法律を制定いたしませんと、今日の基準法の最低賃金の条項のように、法律があっても実際は行われないということになると思うのでございます。そういう意味において今回の法案立案に当りましては、わが国の経済の事情、特に中小企業の事情について十分に御検討なされ、そしてまたその事情に適するようにお考えなされて立案され、この法律が通りましたならば、間違いなく実際に最低賃金制度というものが行われ得る、こういうふうに大臣はお考えになられてお出しになったと思うのでございます。この最低賃金法案を立案せられますに当りまして、わが国経済の事情に即するようにという点について十分お考えになられたと思いますけれども、その点についての大臣の御所見を承わらしていただきたいと存じます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 ただいま最低賃金法案の目的等について齋藤さんからお話がございました。私ども全く同感でございまして、およそ賃金はそれを生み出すべき源泉があって初めて賃金が生まれるわけでありますから、その源泉の土壌を培養しないで、ただ法律で一律に決定するというふうなことはその国の経済に混乱を生ずるばかりであります。もちろん最低賃金の目的とするところはいろいろございましょう。あるいは社会政策的な意味で苦汗労働を防止するというふうな考え方、あるいはまたそれによって過当競争を防止するというふうな経済政策的なものの考え方、いろいろ最低賃金法案の内容の目ざすところはございますけれども、わが国において今申されましたような画期的な制度である最低賃金制を実施するということにつきましては、政府におきましてもその源泉である企業の実態に即してどうであるかということについて、あらゆる角度から長い時間をかけて検討をいたした次第であります。  御承知のように日本の産業規模は、あるものは非常に大きなものを持っている。あるものはまた、たとえば英、米、西独等に類を見ないような零細な弱小企業があります。先年労働省でお願いをいたしております賃金審議会でも、四業種に限ってとりあえず最低賃金が実施できるような方法について検討をしたらよかろうというお話がありました。あの中に数えられておりますような、たとえば手すき和紙の仕事であるとか、絹、人絹織物といったようなものを取り上げてみますと、まことに零細であります。こういうような企業の状態に対して最低賃金というものを考えますときに、単に一部で伝えられておりますような、法的に年令を区切って、一律に何千円というふうなことをいたしますことは、非常に経済に混乱を生じて、しかもその支払い能力を持たない弱小企業がどういうところに追い込まれるかということを考えてみましたときに、私どもといたしましてはやはり賃金審議会の答申等をも考慮いたしまして、まず今回政府が提案をいたしましたような業者間協定というふうなものから実態に即してやっていく、これですらなお商工会議所の中に参加しておられる中小企業の中のしかも弱小企業の方々にとっては相当なショックであったようであります。しかしながら政府がそれらの方々とも十分に研究懇談をいたし、また政府はそういういわゆる中小企業中の零細企業というものの社会的意義、存在価値というものが非常に大きいのでありますから、これもやはり育成していくということが、一方においてとられなければならない施策であります。従って最低賃金制を実施する半面においてはそれと並行してそういう零細企業が立ち行くように、他の方面においてはあらゆる施策を講じて参る、それと並行して今般提案いたしましたような最低賃金制を実施していくことが、今日の日本における経済事情にちょうど適合したやり方ではないか、このように考えまして、本案を提出した次第であります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員 ただいま大臣より、最低賃金法の制定の趣旨についてお話を承わったのでありますが、中小企業並びに零細企業の実態に即して各方面の配慮を加えながら立案されたということを承わりまして、まことにありがたい仕合せだと思うのでございます。今日までとかく労働法制は、法制だけが走っていきまして、実態がついてこないという非難が一部にあるやに聞いておるのでありまして、そういうことのないように、この法律が成立いたしました際には、そうした中小企業の事情に即してりっぱに運営されるようにお願いをいたしたいと考えておるものでございます。  そこで次に私はお尋ねをいたしておきたいと思うわけでございますが、それはこの最低賃金法というものの具体的な目的についてであります。全般的な趣意につきましては先ほど承わったわけでございますが、目的につきましては、世間では一つこういう考え方があるようでございます。すなわち最低賃金というのは、そうした低廉なる賃金の労働者に対して、あくまでも労働条件の改善をはかるのだというふうなこと、すなわち労働条件の改善、すなわち苦汗労働の排除といったような社会政策的な目的のみが本案の目的である、こういったような考え方が一部にあるようでございます。しかしながらこの法案を審議するに当りまして、一つの参考になって参ります国際条約の考え方というものはどうなっているだろうかということを見て参りますと、この一九二八年の最低賃金決定制度の創設に関する条約——条約の内窓につきましてはまた別途御質問申し上げたいことがございますが、この条約の付属の勧告をあわせて見ますと、その勧告の中には、もちろんそういうふうな苦汗労働の排除といったような目的があることはもとよりでありますが、そのほかにこういう言葉で書かれております。「関係ある労働者の賃金を有効に保護し且不正競争の可能性に対し関係ある使用者を保護する目的」こういう目的も最低賃金法でねらっておる気持のものであるということが、条約の付属の勧告にある。すなわち不正競争の可能性に関し、関係ある商社を保護する、すなわち過当競争をなくして、そして公正競争を確保するのだ、こういうことも最低賃金制の決定に際しての一つの要素として考えるべきであるという勧告がなされておるわけでございます。そこで政府提案の法律案を見ますと、そうした低廉な労働者に対し、労働条件の改善をはかり、労働者の生活の安定あるいは労働力の質的向上ということもありますが、「事業の公正な競争の確保に資する」こういうふうに書かれておるわけでございます。従ってこの際大臣の口から、最低賃金法というものの目的は一つどういう点にあるのか、もちろん苦汗労働の排除、これもその通りでありますが、これのみではないということをこの目的はねらっておると思うのであります。そうした点について、社会政策的な苦汗労働の排除のほかに、事業の公正競争、そういったふうな経済的な目的も持っているのだということに私は読めるのでございますし、また条約の趣旨もそうなっておるのでございまして、この際大臣の口から、この最低賃金法の直接的な目的というものにつきまして、明確に御答弁をお願い申し上げたいと思う次第でございます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 法の本質に触れました大事なお話でございますが、先ほど私申し上げました中に、苦汗労働の防止という社会政策的な意味及び公正競争を維持していくという立場の経済政策的な意味と申し上げましたが、ただいま御指摘のようにILO条約の中にもございます。労働者の賃金を有効に保護し、そしてまた不正競争の可能性に対して、関係ある使用者を保護する自的を持っている、こういうことを言っております。これは二つの意味があると思うのでありまして、第一は国内における過当競争、第二は国際的過当競争、こういうふうに考えられると存じます。それで従来、ともすれば、いわゆる中小企業の中におきましても、コストを安くするためにそのしわ寄せを労働者に持ってきた、そういうようなことで非常な労働賃金をたたいて、そのために自己の生産コストを引き下げることによっての競争に優位をかち得よう、こういうようなことも行われました。同時にまた国際的に見ましても、しばしば従来ILO等において、わが国の賃金政策について、あるいは一般経済政策について、ソーシャル・ダンピングを行う、けしからぬことであるといったようなことも、実情はいろいろありましょうけれども、とにもかくにもILOの舞台においてそういうような非難をされた時代もあります。そういうようなことを考えまして、戦後わが国では世界に劣らない労働基準法を持っておると同時に、これと歩調を合せるように最低賃金を実施することによって、一方において苦汗労働防止をすると同時に、国際的な過当競争を防止するという意味、同時にまたいわゆるソーシャル・ダンピングというふうなことは、決して日本の貿易にとって有利なことではないのでありまして、たとえばガット加入等についても、英国が非常に日本のガット加入について非難をいたしました。その大きな理由、口実等もやはり日本の低賃金というところにあった。それからまたアメリカのサウスカロライナ州等で、日本の繊維製品の輸入についてとかくの法的措置などをいたしました。その口実の一つにも日本の低賃金ということを取り上げております。私どもは戦後の日本の経済の海外的発展を考えてみましたときに、やはりそういう意味の正々堂々たる国際貿易競争に立ち向うためにも、日本の賃金にしわ零せをしたるコスト・ダウンによる不当な競争というふうなことをせずしてやっていくことが望ましい。そういう意味でも、やはりわが国の賃金体系を整備する立場に立ちまして考えたときに、最低賃金制というものはぜひ必要なことであると考えておる次第であります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員 先ほど来、大臣の御答弁によりまして、この法案が各方面について非常に慎重な考慮をめぐらされ、あくまでも経済の実情に即し、しかもわが国の経済の国内的な発展のみならず、国際的な発展を十分に考えられまして立案せられました趣旨は十分わかったのでありますが、この際私は一つお尋ねを申し上げたいと思いますことは、こうした最低賃金はあくまでもその国の経済の事情に即して実際的に行われなければならない、こういう考え方からいろいろなきめ方、最低賃金の決定の方式をこの法律案が定めておるわけでございますが、これに対して一部には、最低賃金というのはやはり業種別あるいは地域別等できめないで、全国一律、全産業できめるべきではないかという意見があるわけでございます。すなわちそうした意見の代表として、社会党が出しております十八才、一律八千円、おそらく社会党も、全国一律十八才で八千円という法案を出されたのでありますけれども、なかなかそれが日本の現状に即して行われ得るであろうかといった疑問をお持ちになっておるようでありまして、暫定的な措置として二年間は六千円にしておこう、すなわち二年間は暫定的に六千円であるけれども、二年後は全産業一律に八千円、こういう暫定賃金制をきめるべきであるという案が出ているわけでございます。おそらく国民の中にもそういう考えを持って、全国一律の最低賃金をきめるべきであるという意見もあろうかと思うのであります。こういう考え方に対しまして、先ほど大臣の提案理由の説明を承わりますと、そうしたことをやれば非常に経済的に混乱を来たすんだ、こういうふうな御意見が述べられておると思うのでございます。そしてまたこの一律主義でなければ何か国際条約に反するような考え方をなす者もあるのであります。すなわち一律主義でなければ——何か近ごろの人は、政府のやり方に皮対するときにはすぐ国際条約、すなわちILO条約というものを持ち出すのでありますけれども、ILO条約というものをちょっと調べてきたわけでありますが、一九二八年の最低賃金決宗制度の創設に関する条約というものを見てみますと、この条約は締盟国が最低賃金を決定し得るための制度を創設、維持するということだけを内容とした条約です。私が申し上げるまでもなく大臣は十分御承知の通り、すなわち最低賃金決定の制度を設けろということを言うているにすぎないのでありまして、その条約の第三条には、さら「本条約を批准する各締盟国は、最低賃金決定制度の性質及形態並に其の運用方法を決定するの自由を有す。」すなわち最低賃金決定制度というものの性質やあるいは形態やその運用方法というものは、それぞれの締盟国が自由に決定することができるのだということがすでに条約に書かれておる。ところが世間では、何か一律でなければ国際条約、特にこのILO条約に反しているかのごとき説をなす者があるのであります。  そうしたことからいたしまして、この最低賃金法案の審議の最初に当りまして大臣に対してお尋ね申し上げたいことは、この全国一律の最低賃金制度というものは、わが国の経済において具体的にどういうふうな、たとえば十八才からいきなり八千円とすることになれば、その支払い能力というものが問題になる。一体それだけの支払い能力の金というものはどこから持ってくるのか、これは考えてみましてもなかなか並み大ていのものではないのであります。そこでこの一律八千円という考え方が直ちに行われるならば、日本においてどういうふうな混乱が起ってくることが予想されるであろうかということを、具体的にはっきりとお示しいただきますると同時に、この条約との関係において、一律でなければ国際条約の趣旨に反するといったふうな説がありますが、そういうものがあるのかないのか、この辺、条約の関係の点と、それから経済的にどういう混乱を来たすことが予想されるかということについて、この際はっきりと御答弁をお願いいたしたいと考えておるものでございます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 ただいまお話の、一律たとえば十八才八千円というふうなことが実施されるということになりましたならば、御承知のように日本の経済界は非常な混乱を生ずる、これはもう予測し得るところであります。今御指摘のように、最低賃金に関するILO条約第三条を引用なさいましたが、私どもはやはりその国の事情に応じて、そして使用者の支払い能力を考慮しつつ、その国の実情に応じた方式をとるということは少しもILO条約の趣旨に反しないものであるという確信をもって法案の編成をいたしたわけであります。ことに先ほど来申し上げておりますような日本の中小企業、ことに零細企業の方の実力から申しましたならば、たとえば社会党案実施の影響というふうなことについて、例の就業構造基本調査、そこで試算いたしたものを取り上げてみますと、社会党のいわゆる八千円ということになりますと、その最低賃金以下の労働者、満十八才八千円以下の労働者は大体四百二十五万人と推定されております。適用労働者の約三〇%で、それに要する金額というものは大体千二百八十四億と推算されております。かりに六千円といたした場合にはどうであるかといえば、それの適用労働者の一七%、二百三十七万人と推定され、それに要する金額は約五百四億円ということになっております。こういうものをどうしたらいいか、これはやはり何らかの方法で政府にめんどうを見ろというふうなお話もあったようでありますが、そういうようなことが現在可能であるかどうか、またそういうことをすべきであるかどうかということについては、私どもは賛成をいたしません。そこでまず第一に、政府が提案いたしておりますような最低賃金法案というものはしばしば例に引かれます国際労働条約、これの趣旨において少しも違反しておらないばかりでなくして、かえってその中にうたっておるように、それぞれ各国の事情に応じてその形式は自由である、そこでわが国といたしまして、ただいま提出いたして御審議を願っておりますような程度のものからまずやっていくことが経済界に混乱を生じないで、スムーズにいかれる方法である、こういうふうに考えておるわけでございます。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員 ただいま大臣の御答弁によりまして、かりに一律六千円といたしましても、五百四億という巨大な支払い能力が中小企業につかない限り実施することができないのだ。なるほどこれは実に大きな経済的混乱だと私は思います。すなわち現在の中小企業においても、すでに千人未満の工場労働者というものは、千人以上の労働者をかかえておる工場の賃金に比べるとその半分以下だというふうなこと、すなわちそれは結局生産性が劣っておるということであります。そういうふうな状態にもってきて、かりに六千円といたしましても、今にわかに中小企業に五百四億の支払い能力をつけるような生産性が上ればけっこうでありますけれども、これはなかなか実際問題として困難であるということになってみますれば、経済的に見ましても、この一律主義というものはわが国の中小企業の実態において相当無理であるということがよくわかった次第でございます。  そこでもう一つお尋ねを申し上げたいのでありますが、この政府提案の最低賃金の決定方式の問題について、政府案によりますと、業者間協定の地域的拡張の問題、労働協約の地域的拡張の問題、それから最後に行政庁の諮問によって行われるところの最低賃金、こういうそれぞれの具体的な実情に即した決定方式がきめられておるようでありますけれども、この決定方式のうちで一つお尋ね申し上げたいことは業者間協定の問題でございます。この業者間協定につきましては、一部にはこういう意見を持っておる者があると聞いておるのであります。すなわち業者間協定イコール最低賃金だ、こういうふうな考え方からいたしまして、またたびたび持ち出して恐縮でございますが、最低賃金条約に違反するのではなかろうかという疑念を抱いておる者があります。すなわち最低賃金決定制度の創設に関する一九二八年の条約を見ますと、最低賃金の制度を実施するに当りましては労使の各代表者の意見を聞いてこれと協議する、すなわち労使関係の団体と協議するという言葉がありますために、業者間協定イコール最低賃金だ、従って業者間協定の際には労働者の意見が入っていないじゃないか、だからこういうものはILO条約に反するのだ、こういうふうな誤解があるようでございます。この法律案を見ましても、業者間協定がイコール最低賃金であるとは一つも書いておりません。すなわちいろいろな賃金審議会の議を経て、政府が告示するということになっておりますので、私は問題ないと思いますけれども、この際そういう誤解もありますので、すなわち業者間協定イコール最低賃金イコール最低賃金の条約違反だ、こういう誤解がありますから、この際政府から明確にそれが誤解であるならば誤解ということを、はっきり労働大臣から国民に対してお示しをいただければ仕合せだと思う次第でございます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 ただいまのお話のような誤解が、この法案について相当行き渡っておるようでありますが、これはりっぱな誤解でありまして、御存じのように本案のいわゆる業者間協定というのは、実情に即してこういうふうなことをやらせて、そしてまず零細企業者にも安心して商売をやってもらうというために、業者間協定というものを、まず第一に経済の実情に応じた形でやってもらう。しかしそれが即法文化するというのではないのでありまして、本案によれば、御承知のように、そういうものがあって、そうしてそれが賃金審議会というものを通して、初めて法律になるわけでありますからして、これは業者間協定即最低賃金ということになるのではないことはきわめて明確であります。  そこでILO条約でございますが、最低賃金に関するILO条約におきましては、先ほど御指摘の第一条で、最低賃金制の実施の対象を「団体協約其の他の方法に依る賃金の有効なる規律の為の施設存せず且賃金が例外的に低廉なる若干の職業又は職業の部分」といたしております点、その他から判断いたしまして、産業別あるいは職業別の最低賃金制を予想しておるものと私どもは解釈しておるのでありまして、全産業一律の最低賃金を予想して、こういう第一条ができておるものではない、こういうふうに考えております。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員 先ほど来の大臣の御答弁によって、全国一律主義でなければ条約違反になるんじゃなかろうか、あるいは業者協定というものを最低賃金決定の一つの方式としたことは条約違反ではなかろうかというふうな誤解に対して、大臣からそういうものじゃないということの明確な御答弁をいただいたことは、まことに感謝にたえないところであります。  そこで次に私は、この最低賃金法案と最低賃金制度決定の条約の批准との関係の問題についてお尋ねをいたしたいと思うものでございます。先ほど来、私がいろいろ御質問申し上げましたように、事あるごとに、政府の案に反対するときには条約というものを持ち出して、先ほど来のように誤解して、勝手に解釈して、条約違反だ、条約違反と言えば何でもかんでも政府案に反対するにはいい口実であるかのごとくされておるような風潮で、まことに残念なことでございますが、そこでこういう際になって参りますと、やはりわが国の労働法制も国際的な水準に達したという意味において、全般的にやはり条約批准——もちろんできないものもありますけれども、そうした方向に持っていくということが非常に望ましいと思うのでございますが、そうした観点から、この最低賃金法と条約違反との関係を多少研究いたしてみますというと、私が申し上げるまでもなく、大臣は詳しく御承知でありますが、一九二八年の最低賃金の条約、それからその後にできております農業に関する最低賃金の条約、こういうような条約があるわけです。この条約というものは、きわめて簡単な条文でできておるわけでありまして、内容というものはそう大した内容のものではない。すなわち最低賃金制決定の創設に関する条約、しかもその最低賃金制度というものの中でも、こういうふうに、すなわち団体協定によって最低賃金をきめるようなものは別として、例外的に低廉なる若干の職業または職業の部分についての労働者のために、最低賃金率を決定するような制度を作れ、制度を創設し維持するのだということが最低の内容で、すなわち全産業についてここでにわかに最低賃金制度を作るといったふうなものではない。ごく小部分の、こういう例外的に低廉なる若干の職業または職業の部分において使用せられる労働者のための最低賃金制度の決定、こういうことであります。全産業でない、しかも非常に狭い範囲についてそういう最低賃金制度を作りなさい、これを維持しなさい、こういうことが条約の内容、しかもそういうふうな低廉なる職業または職業の部分の労働者についてのきめ方というものは先ほど申しました条約の第三条にはその制度の形態とか運用方法等は各締盟国で御自由におやりなさい、ただしそういうものをきめるときには、関係ある労使の代表者と協議すべきである、こういうふうにこの最低賃金決定制度の条約というものは非常に程度の低いと申しますか、ごく小部分であって、その最小の線というものは、そういう制度を設け、それからその制度の運用等は各国の自由だ、その制度を作るときには労使の団体と協議するのだ、こういう条約になっておるわけでございます。そういうふうな条約と、この法案なり現行の労働基準法の条章を見まして、現行の労働基準法においても、この最低賃金決定制度の創設の条約は批准できる。少くとも現行の基準法でも、この条約の第一条にあるような特定の職業について、必要なるときに最低賃金をきめるやり方をきめております。従って現行法でももちろん私はこの創設に関する条約というものの批准は可能だと思いますが、さらに一そう——現行の基準法では、法律がありましても、これを育てていく土壌が今日まで成育しなかったのは別といたしまして、今回の法律案は、わが国の経済の実情、特に中小企業の実情に即して、非常に弾力的にわが国の事情にふさわしいような決定方式をそれぞれきめた法律でありますから、この法律案が通りましたならば、もとよりこの条約を上回った高度の法律だと私は思う。そういうようなことからいたしまして、この法律が成立いたしましたならば、私はこの最低賃金決定制度の創設に関する条約というもの、政府においてできるだけすみやかに批准の手続をお進めいただくことが適当ではなかろうかと考えるものでありますけれども、この政府の法律案と最低賃金決定制度の創設に関する条約の批准との関係についての大臣の御所見を、この際はっきりとお聞かせいただきたいと存ずるものであります。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 御承知のように最低賃金に関するILO条約はすでに三十七カ国が批准をいたしております。政府もILO条約についてはできる限り多く批准をいたしたいと思っておるわけでありますから、この、ただいま御審議を願っております最低賃金法案が成立いたしました暁におきましては、なるべくすみやかにこれに関する条約の批准の手続をいたしたいと考えております。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員 ただいま大臣から、この法案が成立いたしましたならば条約批准の手続をとりたい、こういうはっきりした御答弁をいただいたのでありますが、この法案が成立いたしましたならば、一日も早くそういうふうになることをお願い申し上げたいと思う次第でございます。  そこで時間もありませんから、最後に一つだけ大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思うのでありますが、この政府提案の最低賃金法案の適用の大半というものは、中小企業、しかも零細な規模の、おそらく数百万あるいは一千万人にもなんなんとする零細なる労働者が対象になるわけでございます。業者間協定にいたしましても、業者間協定の地域拡張あるいは労働協約の地域拡張、あるいは行政機関による最低賃金というふうな決定にいたしましても、なかなか今すぐに高い最低賃金額に達していくということは、これは非常にむずかしい問題だと思います。しかしながら、たびたび申し上げておりまするように、大企業の労働者の賃金というものと、中小企業の賃金というものは非常に開きがある。まことにお気の毒なことであります。何とかこの賃金を上げるようにしていかなければならぬ。それにはもとよりこの最低賃金法だけでは、これはできないと思います。すなわち、もともと賃金の安いのは生産性の問題、あるいは経済力の相違ということが、結局低賃金になっておる、こういう姿であります。そこで、何としてもこの中小企業における労働者の賃金を高め、その生活を安定さしていく、これがためには、どうしても中小企業に支払い能力をつけさしていくような政府全般の政策が、これとあわせて必要であると考えるものであります。すなわち中小企業の組織の問題、これは先般の団体法によりましてそれの実現を見て、組織の強化に向いております。これもけっこうなことでありますが、さらにまた、この中小企業の金融の問題あるいは中小企業の税制の問題、こういうふうな問題について、政府がやはりその労働者の生産性の向上をはかるとともに、支払い能力を増加させるような全般的な経済政策というものも私は必要だと考えるものであります。さらにまた、この中小企業の労働者につきましても、たとえば五人未満の工場労働者につきましては、失業保険がありましても任意加入で強制加入もない。あるいは健康保険についても問題はありましょう。あるいはまた中小企業の退職金の問題につきまして、先般来大臣は中小企業の福祉対策のために、そういう退職金制度も十分検討したいと言われておりますけれども、ほんとうに幾多中小企業の労働者の生活向上のためにも、なすべき施策があると思うのでございます。そうした施策と、業者に対して支払い能力をつけさせるような施策、やはり各省の経済政策が一本になって、この日本経済の大きな中心である中小企業の方に向いていくということが必要であろうと考えているものでございますので、政府、労働大臣におかれましては——この最低賃金法案はおそらく成立いたしますが、これの施行と相並んで、やはりそうしたあたたかい経済施策、あるいは中小企業労働者に対するあたたかい施策を実施していただきたいと思うのでございますが、そうした全般的な中小企業の支払い能力をつけさせるための施策や、あるいは中小企業の労働者の将来の福祉のための施策等についての、大臣の御所見あるいは御抱負のほどを、最後に承わらさせていただきたいと存ずる次第でございます。

倉石忠雄自由民主党労働大臣

○倉石国務大臣 御承知のように日本の産業構造は、いわゆる中小企業の方が大部分でございまして、わが国の経済政策は中小企業を忘れては成り立たないわけであります。その中小企業を維持いたしていくためには、御承知のように、政府は従来もあらゆる努力を払って参りましたが、私どもは、最低賃金というふうなものを実施して——一方において大産業の従業員は、大体諸外国にも劣らないような福祉関係の施設も持っておりますし、非常に恵まれた立場に立っておりますけれども、いわゆる中小企業、弱小産業の方の従業員というものは、日の当らないところに属するものであります。こういう人々に、どうしたならばできるだけあたたかい手を差し伸べていくことができるか、しかもこの中小企業の従業員が、活発な勤労意欲を持って生産性を向上していただくということが、日本産業を維持していく重大なキー・ポイントでありますから、これについては、先般来政府でも申しておりますように、たとえば中小企業の従業員の福祉対策、退職、共済制度というふうなものも、近く決定いたして御察議を願いたいと思っておりますし、その他、いわゆる中小企業の従業員のためには、社会保険関係もできるだけ充実いたして参るようにしたい。ただいまは来年の学校卒業生の就職予約の時期でございますが、やはり中小企業者が労働省当局に訴える言葉を聞いておりましても、多くの中小企業によい人を吸収するためには、今政府の考えておりますようないろいろな福祉対策、そういうものをぜひ一つ強化していってもらいたいということを要望しております。そういうふうにしなければ、よい青年たちが集まってきてくれない。同時にまたわれわれ、将来をになって立つべき青年が、そういうよい環境のもとに安心して、将来に明るい楽しみを持って働いてもらう、同時にまたその力によって日本の中小企業が発展強化していくということは、ぜひ必要なことでございます。従って、一方において福祉対策を推進して参ると同時に、御承知のように、政府は逐年中小企業に対する金融関係等においては増強いたして参っております。そういうふうにして、一方において中小企業対策をますます強化いたしていくと同時に、それに働いてくれ、それを維持していく従業員たちに、できるだけ社会福祉の面を拡大強化していって、将来の楽しみを持って仕事に従事していただくような方向に仕向けていく、こういう二本立で中小企業を維持し、同時に中小企業従業員に楽しみを持って働いていただくような施策を逐次増強いたして参る、こういう基本的な考え方が政府の考え方でございます。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員 逐条的にいろいろお尋ね申し上げたいこともございますが、将来また必要がありますれば、逐条的な御質問を申し上げることがあろうかと思いますけれども、総括的な質問といたしまして、以上をもって終らしていただきます。

園田直自由民主党

○園田委員長 先ほど委員長から、滝井義高君外十三名提出、国民健康保険法の一部を改正する法律案の提案理由説明の省略の件を御報告申し上げましたが、この件は、正式に申し上げますと、手続は衆議院規則第四十四条によって、法律案が付託されました場合には、提案理由の説明をやるようになっております。従って、議決によってその省略を決定していただかなければなりません。しかし提案者が不在のことでございますから、この表決は後刻に譲ることにいたします。右御了承を願います。  午前中はこの程度にとどめ、休憩をいたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕

国会会議録検索システムで原文を見る ↗