P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
30回国会衆議院1958/10/29

外務委員会 第10号

発言数
90
登壇者
13
会派数
2
開催日
1958/10/29

会議録

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。ただいま本委員会において審議中の原子力三条約につき参考人を招致いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 御異議なければさよう決します。なお参考人の氏名、招致日時等につきましては委員長に一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 御異議なければさよう決します。     ―――――――――――――

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 国際情勢等に関し、調査を進めます。  まず先国会の閉会中、議長の承認を得て北海道、九州両地方に委員を派遣いたしましたので、その調査報告を派遣委員より聴取いたします。岩本信行君。

岩本信行自由民主党

○岩本委員 九州班の視察について報告いたします。  派遣されました委員は、大西正道君、戸叶里子君及び帆足計君と私の四人の委員であります。私どもは日韓問題及び日中漁業問題に関する実情調査のため、九月十七日より二十二日までの六日間にわたりまして、下関、長崎、五島列島中の奈良尾並びに大村収容所に参りまして、山口県及び長崎県の当局、下関市、長崎市及び奈良尾町の市及び町当局、関係団体及び業者、抑留帰還船員並びに留守家族代表の方方、また大村収容所の方々からいろいろと事情を聴取して参りました。  また渡辺第七管区海上保安本部長が終始われわれと行をともにされ、さらに長崎と五島列島の間の海上は巡視船「ちくご」に乗船する便宜を与えられ、公務上とはいえ巡視船側の多大の労苦を実際について知ることができました。  各地における要望等のおもなるものをあげますと、次のようであります。  一、韓国政府による李ラインの一方的設定は、あらゆる角度から見て不当かつ不合理であり、これを容認すべき何らの根拠がない。従って韓国との交渉に当っては、李ライン問題の早期解決をはかることはもちろんであるが、その不当性をあくまで主張するという強い態度で臨むべきである。  二、抑留者については一日も早く帰還できるよう努力されたい。  三、漁船の保護、指導の任に当っている巡視船を増強されたい。これは新規造船による増強のほか、盛漁期における集中配船及び船体の補強についても要望しております。  四、巡視船による保護、指導を徹底させるために、小型漁船にラジオ受信機を設置する費用について国庫補助を考慮されたい。  五、抑留から帰還した船員に対しては、現在医療費の面で国の援護があるが、療養中の生活費及び帰還後乗船するまでの期間についても経済的措置を講ずること。また就職のあっせんに努力するとともに、転業希望者に対しては更生資金の融資について考慮されたい。  六、留守家族に対する援護費を増額されたい。  七、差し入れ品は現在月二回程度であるが、この回数を多くする方法を講ずること。また飛行便で送る関係で送料が高くつくので、これを取りまとめて送れるようにすること。さらに途中で抜き取り等の事故のないような措置を講ぜられたい。  八、中共により拿捕、抑留された者に対しては、現在何らの援護もなされていないが、韓国による拿捕、抑留の場合に準じて援護措置を講ぜられたい。  今申し上げたような事柄であります。  また大村収容所に収容されている人たちは、人道的見地から帰国先選択の自由を確実に認められて、一日も早くその希望する韓国あるいは北鮮へ帰国したいと強く訴えておりました。  以上の要望は、いずれも一応妥当であると認められますから、関係当局において善処されるよう望みます。なお大村収容所の帰国問題は、従来の経緯からみて、簡単ではないと思われますが、国際的に認められておる人道的見地に立って善処されることを望む次第であります。  以上きわめて簡単に申し上げましたが、詳細については、別紙報告書を提出いたしまして、会議録に載せていただきたいと思いますので、それをごらん願いたいと存じます。  以上、御報告を申し上げます。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 宇都宮徳馬君。

宇都宮徳馬自由民主党

○宇都宮委員 北海道地方の視察調査について報告いたします。  派遣されました委員は田中稔男君及び私の二人であります。  去る九月七日より十三日まで七日間、北海道札幌、根室方面におもむき、主として領土問題並びにこれに密接な関連を有する漁業問題につき、つぶさに現地の実情を聴取してきました。  この視察調査旅行において、戦後処理の問題から生起する南樺太、千島列島、色丹島及び歯舞諸島の諸領土に関する問題及びこれら諸島周辺の近海接岸漁業の問題等に関して北海道民の要望事項がありました。  まず第一に、領土問題については日ソ両国間に平和条約案の領土条項に関して意見の一致を見ないまま、昭和三十一年日ソ両国間に共同宣言が締結せられましたが、歯舞諸島及び色丹島を含む領土問題の解決は、将来の平和条約締結の際にその決定をゆだねることとなり今日に至っております。このことは、漁業問題とも関連して、平和条約の締結を要望する声が漁業者の間に高まりつつあることが認められましたから御報告申し上げます。  次に、漁業問題に関していえば、戦後これら島々から二万に及ぶ現地漁業家族の北海道引き揚げと、約七万に及ぶ出かせぎ労働者の稼働地の喪失により、北海道の漁家人口は二五%の増大となり、近年に至り北方海域における出漁が多少たりとも緩和されたとはいえ、これら漁船及び漁業者が沿岸漁業に従事することとなったので、根室、釧路、網走の道東海域のカニ、帆立貝、コンブ、沿岸サケ・マス資源は減少し、世界三大漁場の一つであるこの水域における水産業は衰微の一途をたどりつつある現状といわれております。しかも北海道周辺のこれら諸島は現にソ連政府の占拠支配するところとなっているため、その領海をわが国は距岸三海里、ソ連は十二海里を主張する中にあって、わが方の漁船は気象及び海流等の諸条件等も加わって、勢いソ連領海あるいはその周辺、特に歯舞群島周辺において少からざるトラブルを引き起す結果となっております。  これらの諸問題に関する関係者の要望事項及び参考資料等については、別途会議録に掲載報告することとし、委員諸君の御参考に供したいと存じます。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 次に質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。

帆足計日本社会党

○帆足委員 人国監理局の長官ですか、局長ですか、御用があって先に御退席だそうですから、それを取り急いでちょっと御質問いたします。  先日、ただいま岩本委員の御報告のように、大村収容所の視察をいたして参りまして、二、三気がついた点がありますから、当局の意向を確かめ、そしてまた至らぬ点がありましたら、一つ合理的に改革のほどをお願いし、要望したいと思います。  収容所を見まして、私どもが想像いたしておりましたよりも清潔でありますし、また当局の御努力のほども拝承することができました。今日歴史の過渡期において、こういうキャンプは国際的悲劇の産物として、日本のみならず、アフリカとかバルカンとか、またその他にも所々ある例でございますから、国際法の精神と人道の精神を守り、大局から見るならば、歴史の矛盾の犠牲者である諸君に対して、公正な人道的取扱いをするという精神が貫かれていることが、日本の名誉のために必要であると痛感いたします。  そこでお尋ねいたしたいのですが、第一には密入国してきた朝鮮の諸君の中で――よく新聞などで見るのですが、夫を慕ってきたとか、母を慕ってきたとか、また兄を慕ってきたということをよく聞くのでございます。これらのことに対しては、慎重にしてかつ同情ある措置がとられておることと思いますけれども、その親戚の範囲とか、運用上の大体の基準はどうなっておるかということをお伺いいたします。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 密入国者の中で、親族を訪問するという人が非常に多いのでございます。これは日本と韓国との昔がらの関係で非常にやむを得ないことでございまして、出入国管理令には、第五十条に、こういう人たちのために、法務大臣の特別の詮議権としまして、法務大臣が一定の理由があると認めた場合には、その密入国者に対して特別の待遇を与えることになっておりますが、その基準としまして、大体、密入国は一方においてその基準を非常に弱めますと、密入国の度数が幾らでもふえる、なぜそういうふうになるかと申しますと、現実には密入国をあっせんするブローカーがおりまして、これが一人当りのお金をとって、韓国と日本との間に組織的に密入国を援助するような組織網を持っておりまして、もしそういう基準が非常に緩和されますと、密入国がどんどんふえるという状態になりますので、その点を考慮しながら、しかも個々のケースにつきまして、同情に値する者、たとえば戦前非常に長く日本におった者とか、あるいは生活の本拠が日本にある者、あるいは韓国に行っては暮せない者、そういうような点を検討してきめておるのでございまして、ここで一々詳細にこれとこれとこれがよろしいということはちょっと申し上げかねるのでございます。

帆足計日本社会党

○帆足委員 私がお尋ねしたのは、朝鮮は長い間日本の兄弟のようにして、姓名まで日本の名前にしておる。ところがわれわれ人情紙のごとく、敗戦によって捨ててしまった。朝鮮を考えてみると、朝鮮と合併とか、日満同盟とかいうけれども、実際はただ日本の防衛のための前線基地に使っておっただけで、まことに外交と戦略というものはドライなもので、私はこれをニヒリズムの極致、血も涙もないものである。従って私どもは血も涙もある世界政治であってほしいと思いますけれども、歴史の進化の今日の段階では、血も涙もないことを痛感いたします。同じように日本は今アメリカの前戦基地になっておりますから、またアメリカが日本をいざ捨てるときは同じような目に会わせるのじゃないかということは、想像力のある人はだれでも想像し得ることであります。従いまして私どもは今安保条約に対して非常に慎重な態度をとっておるわけです。とにかく兄弟のように取り扱って名前まで変えて、多くの朝鮮人と日本人が結婚しておるわけです。そこで私はほんとうの親、ほんとうの兄弟を慕ってくる者に対しては、これは認めることが至当であるまいか。もちろん財産その他のこともありますけれども、何かそういう基準でなされておるのであるまいか。従いまして法務大臣が認めるといってもやはり何か基準があろうと思いまして、たとえば三親等まではいいとか、四親等まではいいとか、大体そういう基準があるかどうかということを今お尋ねしているのです。一つその点は明確にしていただきたい。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 われわれは一つの基準を持って働いておりますので、この点につきましては、単に何親等の者だけを許すというだけではございません。親等については、その親族の親等の近い者ほど考慮を深くする。あるいはその点以外にマイナスの方の点としまして、前に犯罪の経歴があるとか密輸入に従事したことがあるとかいう反対の要素も加えまして、われわれ事務の処理の方法としては一つの標準を現在きめております。

帆足計日本社会党

○帆足委員 こういうことで時間をとりたくありませんから、書いたものを出していただいてもけっこうですが、たとえば日本人が向うへ行って朝鮮人の女性を恋人にしている。そして元山で落し子が生まれておった。その子が親を慕ってきた。また朝鮮の女性を日本人がめとった。ところがその日本におる朝鮮の母には向うで前に生んだ子がいて、おっかさんを慕ってきたとか、それに類似した新派悲劇のような記事をときどき社会面で見ます。そしてそれに対して嘆願書が行く。しかしその効なくアイゴーアイゴ―と言いながらまた韓国に送り返されたというような記事をときどき見るものですから、私はそういうことなら、何か親戚関係の幅の広いABCくらいの基準があって、さらにその基準から、犯罪とか、引き取る方の側に生活能力がないとか、そういうことを考慮して若干差し引く。またはより有力な親戚が朝鮮側におるとか、そういう親戚関係というようなことでまず一定の基準があって、そして例外のことをそれから差し引く、こういうことにでもなっておるのであるまいか。そういうことがすっきりしないために、新聞の社会面で涙を誘うというようなことではまずいと思ってお尋ねしているわけです。ですから要点だけお答えしていただいて、あとそれが非常に詳細なことでしたら文書でいただきたいと思います。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 大体今お説のような標準でやっておりますけれども、この点文書で差し上げるということは、影響の範囲が非常に大きい問題でございますので、帰りまして上司にも相談いたしましてお答えいたします。

帆足計日本社会党

○帆足委員 ここで御説明なさっても、それはちゃんと速記にとって文章になるのですから同じことだと思いますし、何もそういうことをあいまいにしておく必要はないのであって、基礎的原則を明らかにして、ただこういうことを考慮する、たとえばこっちにおる引き取り人の方が犯罪者であるとか、赤貧洗うがごとしというようなときはだめだということを明確にしておけば、別にその及ぼす影響は甚大ということでもない。むしろそういうことをあいまいにしておいたために、希望を持ってなけなしの財産を全部密貿易業者にはたいて、こっちへ来て悲劇が起るというのは、ほんとうにかわいそうだと思うのです。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 わかりましたから、基準をお知らせします。

帆足計日本社会党

○帆足委員 それではそのようにお取り計らい願いまして、その次にお尋ねしたいことは、政治的亡命で来ることが、これは南北鮮とも、また台湾等を含めてもあり得ると思うのです。政治的亡命について、これは国際上の慣例は存じておりますけれども、日本政府はこれに対して原則的にどういう態度をとり、また法規上の基礎があるとすれば、内外の法規上の基礎はどうなっておるか、どういうように取り扱っておられるか、これを伺っておく。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 政治的亡命という定義もはっきりいたしませんが、おそらくその意味は、本国で何らかの政治的犯罪を犯して、母国におったら処罰されるとか、あるいは迫害されるという理由で、本国から遠く逃げてこられた人であろうと思いますが、そういう者につきましては、その本人の主張だけでなく、できるだけ客観的な情報に基きまして、それが事実であるということが判断できる場合は、これに対してやはり特別の考慮を加えております。

帆足計日本社会党

○帆足委員 この問題につきましては先日文書で大体の御説明をいただきましたが、なお若干あいまいな点があります。私は日本が自由主義の自由な国であるとするならば、政治的亡命という概念に対してはやはり明確な解釈と基準をお持ちになって、そうしていやしくもそれがそうである限りは、人によってえこひいきする、日本の政策にただそれを使う、右の方でしたらフアシストでも大歓迎するけれども、リベラルな人はあまり歓迎しないというようなことのないように、やはりもう少し定義を明らかにしていただきたいと思います。それできょうば局長お急ぎのようですから、私はもっと専門的なその問題について質問をいたしますが、私は事を悪くしょうと考えているわけじゃないのです。今日の世界に処していく上において、日本の政府の品位を高め、こういう問題に対して態度を清潔にしておくというために善意をもってお尋ねをするわけですから、もう少し御研究のほどを願います。  その次にお尋ねしたいことは、南北鮮に帰国する意思の自由であります。私どもの受けた印象では、当初その意思の自由が必ずしも確立されておらなかったような印象を受けておりました。私どもがそういう印象を受けるくらいですから、収容所の内部で外部から隔離されてややもすればノイローゼぎみになる諸君においては、非常に不安を感じていたであろうということも了察されるのでございます。最近外務大臣その他関係当局が、この問題に対しては、国際法の精神にのっとってきわめて清潔にして法治国家として恥かしくない態度を示そうと努めておられることを拝承して、うれしく思っておりますが、しかしこれについて私は若干お尋ねし、また要望したいことがあります。ということは、今日収容所に入れられている諸君の環境をもってして、南北いずれをわがふるさととしてさて選ぼうかということになれば、収容所の外にいる六十万の朝鮮人の諸君でもいろいろ迷うでありましょう。ましてや収容所の中で隔離されている諸君は、いろいろな事情があって、たとえば北に行きたいと思いましても、北のことについての十分な資料を持ちませんために、一抹の不安を抱くでありましょう。また南に残りたいと思いましても、南は非常に今経済が困窮状況であるというふうに聞いております。まただからといって、建設の進んでいる北に行きたいと思いましても、南にはおっかさんがおる、病気の妹がおる、そう思うと、青雲の志を抱いて北には行こうと思っても、南に病気の妹もおるからやはり病気の妹のところに帰ろうということで、意思決定に思い悩むことがあろうと私は思うのです。それをその意思の表示が不十分な者に対して、始終気が変って、不純な人間であるというような目で見ることは私はよくないと思うのです。従いまして、第一には、帰国の意思表示ということは非常に微妙な問題でありますから、これに対して干渉しないという建前は非常にけっこうなんであります。それを貫いていただきたいのですが、その意思表示の時期をどういうふうにするか。第二には、意思表示が変ることがある。人間は考えがときによって変ることがある。従いまして、考えの変った者を非難するような態度は私はよろしくないと思うのです。意思決定は、帰国の直前何日かに、適当な機会と静かに考える機会を与えて、最終的にきめる機会を与えたらいい。しかし中間的に一応意思表示をしたという場合に、今日別むねに六十数名入っておる、これもいいことだと思う。そのほかに二十数名が意思が変って今度は北に行きたいとなったから目下調査中と言いますけれども、一体何を調査しておられるのか。調査というのは三日か四日――一週間ならけっこうですけれども、しかしそういう申し出をしてその調査中という意味はどういう意味であるか。また別むねの二階に収容しておるようでありましたが、それはそのグループが希望するならば、北鮮向けに帰る本部隊と同じところに置いてあげてもいいのに、なぜそうしておられるか。その後申し出た者については、これを別むねに入れることを入管当局は拒否しているようです。  この前問題を起した李柄南君というのは、全体の様子を見ますと多少神経衰弱のようにも私は見受けられる個所もありますが、あれも北に行きたいというのに、それに対する当局の態度があいまいである。そして一人隔離してしまっておる。これを北鮮向けグループの中に入れてしまえば事が解決するであろうところのものを、一人隔離しているから非常な不安を抱いているように私は見て参りました。現場に参りまして、これは多少ノイローゼになっているように思われるのです。また病気をよそおって仮釈放なんということは心がけの悪いことであるから、そういうことはよくないと思う。そこで、北鮮向けの世話人が、同じ北鮮に行こうという志を持っている李君に対して、じゃ私の方が善意にあっせんしましょう。そこで立ち会いのもとに李君に対して、君の北鮮に行きたいという意思は別に無理なことでなくて、当局も認めておるから、そういうことでハンガー・ストライキはやめなさい。また病気ならばお医者さんの手当をまじめに受けなさい。また別な理由で仮釈放を目ざして断食するようなことがあるとすれば、みんなのためによくない心がけですということを説得いたしましょうということで、係官の部課長さんの前で、それが一番いいでしょう、皆さんがそう言っているから、穏やかに李君に会って、説得して、おしりからブドウ糖の灌腸をしているなんて言いますから、これはそうして解決しなさいと言って帰ってきました。ところが現場から、私どもの岩本さん、戸叶さん、大西さん、私あてに手紙が来ました。私は忙しかったものですから、きのう来ておったのだそうですが、開いてみますと、第一は、この前のお約束によって、本人を善意に説得しようと思って、そうして合理的に当局にも御協力しようと思って面接を求めておるけれども、当局はどうしても会わしてくれません。面接する機会もありません。李君は孤立無援でノイローゼを抱いて自殺をはかった。幸いに命は助かりましたけれども、そういう状況だから何とかしてやってくれ、こういう手紙がきております。私は、せっかくわれわれ外務委員が行って、部課長の面前でこのことを約束してきたのに、なぜ実行なされない。収容所は監獄じゃないはずなんです。それを刑務所のように一体考えておられるのかどうか。せっかくの私どもの好意や理解がこれでは何の役にも立たないことになる。この問題について、情報をお持ちでしたらお答え願いたいし、お持ちでありませんでしたら、事を一そう複雑にするのでなしに、事を合理的に、親切に解決するというお考えを持って、李君の仕方や当局をとがめるということでなくて、問題を人道的に親切に解決するということで善処していただきたいと思います。  それから、帰国先の変更についての調査中と言いながら、もう数カ月たっておりますが、私は、意思がはっきりした者に対しては、二、三カ月たった者については同じむねに入れてあげていいと思う。それをなぜ別にしている。  それから女子の収容所は南、北鮮一緒にしております。女の子はやさしいからそれでやっていけるからけっこうです。しかし北鮮向きの諸君は北鮮向きの諸君で打ち合せをしたり、または映画を見たりするような機会があるそうです。そういうときに、一緒にしてやってくれと言っても、一緒に懇談させない。なぜそういう意地の悪いことをされるか。私は南鮮向きは進歩的で、北鮮向きは反動的、そんなばかなことはないと思う。北鮮に行くべき人は、事情があって北鮮に行くし、南鮮に行く人は事情があって行くのだし、人民にそう右とか左とかはないのです。従いまして、そういう機会を与えてもいいのではないか。  それから第三に、さらに新たに北へ帰ることを意思表示をした者に対しては、調査中と称して、南鮮向きの千人近くのグループに入れておる。それはそうされておると、当人は不安を感ずる。そうして南鮮向きのいろんな行事があるようなときも、二人か三人孤立無援でおると白眼視される。南北の対立はまことに感情的に先鋭化しております。私はそういうことは人道的によくないから、今直ちにその人を北鮮向きに移さないでも、そういう人は第三の場所にでも移して、一カ月でも休んで本でも読んで、そうして沈思黙考して、どっちかということにきまったら、北鮮に行きたい人は北鮮に行くし、南鮮に行きたい人は南鮮のグループに入れる、こういうたんたんたる態度を、スエーデンのような態度、スイッツルのような態度、赤十字のような態度をお取りになることがいいのではないかと思いますが、私はどうも現場を見て、その点は納得をいたしておりません。もちろん現場を受け持っている皆さんには、私どもの知らないまたこまかな御苦労があろうとは察しますけれども、原則はそういうふうにしていただきたい。  それからその次にお尋ねしたいことは、十月二十一日の夜の九時四十分から十時まで、北鮮の帰国問題の放送がNHKでありましたが、これを聴取禁止している。これはなぜそういうことをされるか。一体そういうラジオを禁止してみたところで、新聞にも出ておることです。それを北鮮向きの諸君にも聞かせない。こういうことは私はおかしいことだと思います。しかもそれは再三懇請したけれども許可しなかった、こういうことでございます。もちろん、この日本の刑務所とか看守とかという人は、長い間の軍国主義にならされておりますから、赤十字精神で公正にやるというような教養は小学校のときから授かっておりませんから……。私は巣鴨の刑務所に戦争中入れられました。入ってみて驚いたのです。私は刑事訴訟法の勉強をしていなかったから……。戦争反対という、私は反対じゃなかったのです。まじめに協力したのに、反対という誤解を受けてぶち込まれました。はだかにされて、シラミだらけの着物を着せられて独房に入れられました。そうして、ここに何で入れられておるのだろうと思いまして、看守の人に、ここはどこだと聞きました。そうしたら、君、そこはどこかとは何だ、ここは地獄の一丁目だ。そしてまず長ぐつでけられたのが最初のごあいさつです。そうして弘法大師の書いた大慈大悲という額が上にあります。日本の監獄というもの、しかもまだ未決の場所においてそういう状況です。私の経験したところによると、中に入っておったすりやどろぼうたちは、まことに素朴な人たちである。これを取り締る人たちの方が、はるかに悪党が多い事実を見て驚きました。もうあれから十三年たちましてよほどよくなっておると思います。一度見学に行きたいと思っておりますけれども、そういう暗黒街。私はここに入ったがゆえに、初めてダンテの神曲を理解することができて、実は感謝しております。ダンテが地獄編を書いたあのイタリアの中世というものが、どういうものであったかということが初めてわかりました。そういうような伝統がありますから、局長さんがどのように人道的に指導されましても、監獄の看守根性というものは、私は収容所に根深くあるだろうということは察知できるのです。一がいにそれを頭から非難攻撃するのも気の毒だと思うくらいですけれども、これは犯罪者の懲罰の場所ではなくして、国際的な悲劇の人物を預かっている場所でありますから、あまりそういう手荒なことはなさらぬ方がいいのではないか。今の数点について、一つ局長の行政方針を明確にしていただきたい。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 大体三点の御質問であったと思いますので、その点に関して御答弁いたしたいと思います。  まず初めに、北鮮帰国希望の者が六十八名おり、その他調査中の者が二十名おる。この間書面で差し上げましたが、調査中二十名と申しますのは、自分で北鮮帰国希望を申してきておる者でありまして、その郷里がどこにあるかというようなことで調査中といっておると思いますが、自分の希望としては北鮮を希望しておることは明らかでございます。われわれとしましては、その帰国の希望を変更しましょうが、前からそういう希望を持ちましょうが、それを抑圧する意思は毛頭ございません。ただそういう希望を表明したからおれを一まとめに北の方のむねに入れてくれということにつきましては、実は初めにわれわれとしましては、現在朝鮮が不幸にも二つに分れておりますけれども、帰国の場合おれは北だ、おれは南だと日本の国の中で争っていただきたくはないわけでございまして、できるならば朝鮮の国民はみな一つになって、日本で渾然融和してもらうのが理想ではないかと思っておったわけです。ほんとうならばあの収容所の中でもお互いに混収して、婦人のむねにおきますように、南鮮も北鮮もその政治意識をあまりはっきりさせないで、混収していただくのが、収容所の態様としては理想じゃないかと思っておりましたところが、二、三年前に非常に両者の間にあつれきが起きまして、収容所の行政管理上非常に困ったことができましたものですから、当時の収容所長の意見も入れまして、その六十八名の者だけを第一棟に入れたわけでございます。しかしその後入ってこられまして、本人の中には迫害されておるというようなことを申し出る者もございますけれども、実際上そういうような混乱を起すような事態まで発展しておりませんので、できるならば混収ということの方が理想であるので、その方をやりたい。しかしこれは必ずしもそういうことを固執しておるわけではございません。その方が収容所の行政管理上適当であるならば、こちらの方に入れることを考えてもいいじゃないか、これは収容所長の判断等にまかして様子を見ておるような次第でございます。それが一点でございます。  第二点は、李柄南氏につきまして、北鮮関係の人たちがこれを説得してやるというお話を現地でしていらしたそうでございますが、この点は私まだ現地からそういう報告を受けておりませんので、いずれよく現地の方を調査いたしまして、もしそういうお約束をしながらしなかったとするならば、どういうわけでそういうことになったのか、一度調ぺさせていただきたいと思います。  それから第三点で、NHKの報道を聞くのを禁止したというのも、きょう伺ったようなわけでございますが、おそらく収容所の所長としましては、これを聞くことによって、また南北間の対立が起きたり何かするようなことがあっては困るというようなことで、聞かせない方が無難じゃないかということでやったのじゃないかと思いますが、この点ももう少し調査させていただきまして御答弁申し上げます。

帆足計日本社会党

○帆足委員 局長はお急ぎのようですから、もう一、二先に局長にお尋ねしますが、今の部屋を分けるか分けないかということは、ただ平穏に、幸福に連中が暮らすための技術としてお考えになっているというのですが、実際に行ってみると、別むねになっている連中がそれを私どもに強く要求しました。李柄南君はそのために自殺している。こういう状況ですから、一カ月なら一カ月で冷却期間を置いて、そうして一緒にしてやったらいい。この問題については御調査の上、またあなたの方の意見を聞かして下さい。そしてまたわれわれも実情をさらに検討しながらこれは要望を申し上げます。  それから第二に、かりにしばらく別にしておくにしろ、何か行事があるときに一緒に懇談さしてくれ、たとえば婦人のむねは一緒になっているわけでしょう。それから今の、あとで申し出た二十名は上下にまた別におる。そういう人たちも、ときどき何か行事があるときは一緒に懇談さしてくれ、これは当りまえのことだと思うのです。今の混乱した南北の対立の中において、北に行こうとする人も不安を持ち、南に行こうとする人も不安を持っておるでしょう。それで情報を交換し合ったり、慰め合ったり、最近の手紙などを見せ合ったり、歌を歌ったりするようなこともあるでしょうから、そういう行事を平静にやるときには便宜をはかるのが当然ではないかと思いますが、それが一つ。  それから三カ年になった仮釈放、今日韓会談中ですからこの問題について私は強くは言いません。しかしきまったことはやはり実行していただかねばならない。というのは、そうこうしているうちにまた満三カ年になる人がおるでしょうし、また従来といえども老人、病人に対してはやはり仮釈放の便宜を与えておったわけですから、三カ年になった人たちに対してはそういうことをするのが当然であるまいかと思いますが、これはいかがでしょうか。

勝野康助法務事務官(入国管理局長)

○勝野説明員 三年という一つの線を出しましたので、やはりできるだけそれに沿ってやっていきたいと存じております。

帆足計日本社会党

○帆足委員 けっこうです。またこの次お尋ねいたしますから……。それではあと二、三簡単に質問いたします。  日韓会談に関連して、ただいまの問題と連関してアジア局長にお尋ねしたいのですが、南朝鮮からこんなにたくさん逃げてくるんですね。これはどういう理由でしょうか。李承晩氏は、これはアメリカが多年育てたいとし子であって、歴史学者はアメリカの落し子だと言っている。ちょっと甘やかし過ぎて成績が悪いということも一般に言われているようですけれども、それにしても一体自由主義国の花形といわれている国からこんなに逃げてくるのはどういう理由でしょうか。それとも歴史学者は、あれは自由主義国でなくてフアッショだ、こう言っている人もおります。しかしこれは学者の言うことであって、アジア局長がそういう政治的判断を軽率に口にすべきではないでしょう。しかしとにかく、かくも大ぜい逃げてくる。これは一体どういう理由で逃げてくるのでしょうか。

板垣修外務事務官(アジア局長)

○板垣政府委員 韓国からの密入国者についての調査はおそらく入管当局にあると思いますが、私承知しておりませんので正確には申し上げられませんが、私の感じとしましては、特に韓国の現政府の圧制に耐えかねて逃げてきたいというようなこでなくて、現実に確かに経済的に困難な実情が韓国にあるようでございますし、働きたくても職がない。その一方、非常に魅力的と思われる日本が存在しておる。あるいは相当部分の者がかって日本におったということもございましょう。やはり生活の困難とか、何かはけ口を求めるために入ってくるのが多いのではないかというふうな印象を受けております。

帆足計日本社会党

○帆足委員 日本人の五倍の生活水準を持っておるというアメリカが、わが子のごとく、いとしわが子と言ってかわいがっている国で、貧乏に耐えかねて日本に逃げてくるというような政治をアメリカがやっているというのは、アメリカは一体朝鮮をどう考えているのでしょうか。朝鮮で道楽でもしようと思っているんでしょうか。アジア局長はどういうふうにお考えですか。感想の一端を述べていただきたい。

板垣修外務事務官(アジア局長)

○板垣政府委員 この原因は、もちろんアメリカが韓国を支配しているわけではございません。しかしアメリカといたしましてはできるだけの経済援助はやっていると思います。しかしながら朝鮮事変の結果、まだ創痍が十分に回復しないというような関係で、現韓国政府がいかに努力いたしましても、まだ十分に経済上の立ち直りができないという実情はあろうと思います。そういう過渡的な現象ではないかと私は考えております。

帆足計日本社会党

○帆足委員 私は実は朝鮮に十数年いたことがありますが、別に北朝鮮の政治を謳歌するわけではありませんけれども、現地を見てみますとまことにりっぱになっているのに驚きました。その政体の是非ば利はここで論じません。本日のような議題については、超党派的に、事実は事実として客観的に論議したいと思いますから、政治的価値判断は差し控えますが、とにかく北朝鮮は一応生活も整い、建設も進んでおります。しかるに、あれほどの財力を擁しておるアメリカが、南朝鮮は赤貧洗うがごとしどころでなく、あそこの釜山から帰ってくる漁民を見て私驚きました。まず一割五分くらいが病人だと思っていました。帰国して八ケ月になってなおかつ就職しているものはわずかに一割二、三分。八割までが通院しているか入院しているのです。八カ月たってまだ栄養失調が治っていないない。これは朝鮮の収容所というものが、かつて日本の軍国主義の残した遺産を大事にして、遺産通りにやって、しかもこれを朝鮮的生活水準に引き下げた。まことに李承晩君は日本の東條内閣の落し子といっていいくらい東條さんから学び過ぎた。まことに残念だと思うのです。アメリカが指導しおりなら赤貧洗うがごとしで、そして日本に逃げてきて塗炭の苦しみをしている。圧制ではないまでも、経済的な塗炭の苦しみをしている。アメリカの政治がいいか悪いかは別問題です。しかしながらアメリカの生活水準に対しては、だれしもうらやむところです。そのアメリカがわが子のごとくかわいがって、一たん緩急あれば火にも水にもという国が、塗炭の苦しみをしておるのをアメリカはほっておく。しかも多額の経済援助をしておるというのならそれが現われるはずであるけれども、一向に現われていない。こういうような米韓同盟の政策と、日本と安保条約を今結ぼうとするアメリカとの関係においては、非常にこれは他山の石として警戒せねばならぬと思う。アメリカの政治にも、私はアジア諸国に対する見方に偏見があると思う。朝鮮人はアワを食ってればいいというようなお考えでおやりになっておるのであるか。そうだとすれば彼らの網膜にわれら日本人はどういうふうに映じているか。私はダレスの網膜に映じておる岸さんの姿は、張作霖か呉佩孚でないことを念じております。彼らの青い目玉に映じるわれわれの姿。たくあんとみそ汁を食べている可憐な姿が、彼らにどんなふうな映像として映じておるかということを考えると、私はときどき反省してため息をつかざるを得ない。アジア局長は、日韓交渉の困難な交渉に当られておるのですから、これ以上局長をいじめたくありません。ありませんが、やはり言わないと腹がふくれますから健康上悪い。私は社会党員の中では、私などは最も――同僚は全部心が優しいのですが、さらに一そう私は優しい方でありまして、保守であっても合理的な平和な政治をする保守であるならば、私はやはり一応尊敬したいのです。それから革新勢力であっても、合理的でヒューマニズムをわきまえておる革新勢力ならば、私はそれを尊敬したい。そういう観点から見て、どうも李承晩君のやり方については、私は懐疑的にならざるを得ない。一体それを監督しているお守役のアメリカはどうしているか。アジア局長は、時にはアメリカの当局に対して、そういうことに対して注意を促したことがあるかどうか。一つ感想の一端なりと伺いたい。

板垣修外務事務官(アジア局長)

○板垣政府委員 アメリカと韓国との関係につきまして、日本政府といたしまして云々する立場には今ございません。私どもとしても韓国の実情がどうなっているかは、実はほんとうのところの情報を持ち合せないのであります。しばしば北鮮に比べて韓国が悪いということを聞きますが、韓国と北鮮と両方見て、ほんとうの情報を伝えてくれる人もまだ私どもお目にかかっておりませんし、この点は実はわれわれも判断に迷っておるわけであります。しかしアメリカとしては誠意をもって韓国の経済建設に今まで努力をしてきておるわけであります。いろいろな事情、戦禍の問題もありましょう。韓国人の建設能力、アメリカの経済援助が十分にできないという面もあろうかと思いますが、これはもう少し長い目で見てやる必要があるのではないかと考えております。

帆足計日本社会党

○帆足委員 もう終戦以来十三年立ちまして、人生七十という点から見れば、相当長い目で見たと思うのです。しかもアメリカは誠実にやったという。その功成り名遂げた結果がかくのごときものであるとするならば、アメリカの対アジア政策というものの底はまず見えた。天はみずから助くる者を助くであって、アメリカの道徳的水準は気違いじみたジャズに現われているように、また映画の一部に現われているように、あまり高くないということを判断せざるを得ないことを、まことに遺憾に思う次第であります。他の同僚議員の御質問もありますし、参考人もやがて見えますから、要点だけ触れて進みます。  日韓会談につきましては会談が一度中断しまして、柳公使が京城に帰ったように伺っておりますが、新聞でごく片鱗しか承わっておりませんので、現在のところどうなっているか、再開の見通しはどういうふうになっているか、日本国民のすべてが知りたがっておることですから、きわめて常識的に要点だけをお聞かせ願いたい。

板垣修外務事務官(アジア局長)

○板垣政府委員 ただいま柳公使及び漁業代表の張氏が本国に帰っておりますのは、通常の本国との打ち合せのため帰っておるわけでありまして、何ら会談の進行に影響ありません。中断というのは誤報でございます。全面会談は御承知のように十月一日から始まりまして、漁業委員会を中心といたしましてずっと審議を続けております。その他の委員会もその後継続はいたしております。そろそろ手続上の問題は終りまして、各委員会とも実質問題に入っておるわけであります。漁業問題につきましては、御想像の通り非常に基本的な問題点がございまして、この点につきまして今両者の意見は対立しておるわけでありますが、この点を今後どう打開するかは非常に大きな問題であり、日韓全面会談そのものの成否にも関係する次第でございますが、ただいま張代表も、今までにおける日本側の主張というものを、本国に一応帰って報告しておると思います。その後新しい韓国の考え方を持ってくるか、その点は私どもわかりませんが、要するに柳及び張両氏の帰国は、単なる本国との打ち合せのためでありまして、会談が中断したとか、そういうものとは全然関係がない次第でございます。

帆足計日本社会党

○帆足委員 私はこの会談の進行状況を見ておりまして、漁業小委員会において李ライン問題について、話の途中で柳公使が勝手な声明を出して、そしてわが国民及びわが政府に誠意がないかのごとき声明を一方的に出したことはまことに遺憾だと思います。柳公使は一体何の資格で東京におられるか、互恵平等というのがアジアの原則であるとするならば、われわれの公使が京城におる、彼らの公使が東京におるというならば話はわかるけれども、まだそういう段階になっていない。ただ過去の経緯から、われわれ柳公使が東京におる便宜をはかっておるだけである。しかるに近くは三海里、遠くは二百海里のかなたの領海までを、なおかつ李ラインであると言う。こういうでたらめの線を引いて、そしてこれを固執しておるというのであれば、与党野党たるを問わず、日本国民のかんにん袋の緒は切れると思う。こういうことが長く続くならば、柳公使に断固として私は引き揚げてもらいたい。また国と国との関係は、今後は互恵平等でありますから、日本人がかの地に行けない以上、かの地からも日本に来てもらいたくない。そうではなくして、過渡期ではあるけれども仲よくしていこうというのであるならば、柳公使が一方的にこっちにおることをわれわれ認めるかわりに、たとえば日本の外務委員などが超党派的に、時には韓国も訪れる、そしていろいろな施設も見る。また韓国の国民にも親しく接して、与党は与党、野党は野党なりに、長く別れておる友に対してあいさつもする。そしてまた韓国の政権がフアッショであるか、また自由な政権であるかなどもわれわれが見る機会を持つというふうになるべきだと思う。現に朝鮮人民共和国に対しては保守の代議士も、革新の代議士も幾人か行って意思の疎通をはかっている。また帰国問題につきましても、フアッショと一部の保守党の諸君が言うところの朝鮮人民共和国はフアッショでなくして、貿易の往来も文化の交流もしよう、しかも日本におる在日朝鮮人のうち、生活が困窮し、志を得て仕事をしたい者は北鮮に戻ってこいと言っておるし、また韓国に戻る同胞がいてもそれを妨げようとはしていない。しかも南朝鮮における未亡人や遺児、また奨学資金の欠乏で苦しんでおる者に対して、巨額の資金を北から南に提供してそれを救う申し出をしている。もちろんその中には宣伝もあろうと保守政党の方も当然批評されるでありましょうが、宣伝であろうがあるまいが、現実にそういうことをしている。しかもそれは道理にはずれたことでない、しかりとするならば、それに打ち勝つためにもっと宣伝しようと思うならば、私は南朝鮮がもっといい政治をして、貧しいながらも清潔な政り治が行われておる、国際的には道理をわきまえた主張をしておる、また日本の漁夫が一時不幸に抑留されたときは、よき人道的もてなしを受けておる、こういうことでなければよき隣邦とはいえないと思う。アメリカが監督しておりながらこういうことまでやる。私はアメリカの大使館にも、これはアメリカ国務省にも責任があると思うのです。アジアにめかけの子みたいなものを生み散らして、それを教育もしないでほったらかしておく。最近はクルクルパーと言われておる。こういうことで一体アメリカはどうして――われわれはアメリカと決して事をかまえたくはないのです。アメリカ国務省の一部にある開拓者的精神やその論理的精神に対してはわれわれは敬意を表しておる。先日もアメリカ国務省が十年前に発表した対華白書を私は朗読したくらいです。しかるにアジアでこういうことをやられたのでは、アメリカに接近しようと思っても接近するよすがすらなくなってしまう、そして自由を守るといいながら、フアッショ国家を便宜上育成するというなら、われわれはフアシストの下にもう一ぺんならねばならぬ。フアシストともう一ぺん手をつながなければならなくなる理由はどこにあるでしょうか。われわれは社会主義国とだけ仲よくしょうとは思いません。自由主義、保守主義であっても、合理的であって、人道を重んじ平和を重んずる国ならば、社会主義国と同様にわれわれは敬意を表して手をつないでいこうという気持を持っておる。しかるに、今日、こういうような南朝鮮の問題をほっておくならば、アメリカに対する全アジアの信頼というものは消えてしまうと思うのです。これは岸総理に申し上げるべきことであって、むしろアジア局長に対しては今日慰労でも申さなければ相済まぬ、まことに恐縮でございます。それではせっかく海上保安庁長官もお見えでありますから、あと一、二伺いたい。先日私は現場を見て参りました。あの現場では、とにかくことしは三十六計逃げるにしかずということでありまして、なるべくさわらぬ方がいいと思います。ですから李承晩ラインば水虫のようなものであるから、トリコマイシン療法ぐらいがよかろうという判断をしておきました。しかし来年もこういう状況が続くならばサルチル酸ぐらい塗らねばならないと思いますけれども、しかしことし応急の措置として巡視船をふやしてむだな摩擦を防ぐこと、それから多少の防護措置、人命救助の措置なども考えまして、むだな摩擦をなくすこと、またレーダ、無線なども巡視船、漁船にふさわしく整備して、誤解によるところのむだな摩擦を防ぐこと、これらを先日来外務委員会で話し合いました。そして防護施設等のためには千七百万円ぐらいの経費が要るということも伺いましたし、また巡視船はそれぞれ必要な措置を、摩擦を防ぐためのレーダーとか無線とか、方向を誤らないための措置を講ずること、漁船に若干の補助金を出すこと等につきまして、どういう措置をなされたか。本年度とりあえず巡視船の数をふやし、来年度は巡視船の絶対数をふやすために、私は少し予算をとっていただかなければならぬと思う。そういう措置や今の保護の措置、通信の措置等について、保安庁長官の御意見を承わって、大体野党与党を問わず意見も一致して、長官が今とられている冷静にして聡明な態度を私どもは多としております。それに対して大蔵省その他が御協力なさっておるかどうか、わずかな経費を節約したばかりに事が非常に複雑になるということは望ましくないと思います。大蔵省当局も大局に目を注いで、保安庁長官に協力していただきたいと思います。円滑に進行しているかどうか、御答弁願いたい。

島居辰次郎海上保安庁長官

○島居政府委員 今お話のありましたことにつきましては一々ごもっともでございまして、また先ほど九州の方へ御視察においでになりましたその報告の、われわれの方に関係いたします点においても、また全くごもっともでございまして、むしろ私の方から大いに努力したい、こちらの方からお願いしたいと思うことばかりなのでございます。そこで第一の点につきまして、目下日韓会談の進行中でもございますし、またこの十一月からはいよいよ盛漁期に向うようになって参りますので、私の方としてはできるだけそこで事が起らないように、従来三隻程度の巡視船を回しておったのでありますが、もちろん他管区からも応援をいたしまして、これを四隻以上にして、できるだけ漁船の保護に当りたい、こういうふうに考えておるのであります。それから通信のことにつきましては、私の方の巡視船は大体通信施設、それからレーダーというものは完備しておるように考えておりますが、漁船の方につきましてはとかく通信設備の不備なものがあるのでございます。これは私の方の直接関係するところでもございませんので、その関係の方面へ私の方からも連絡をいたしたいと思いますが、どうかそのようにお願いしたいと思います。それから保護施設でございますが、これは先般来お話もございまして、私の方でもいろいろと研究をしたのでございます。これは陸上でなく船の上に作るのでございまして、技術的な問題についてはなかなか困難なることがあるのでございます。船の安定性の問題もありますし、また強度の問題もあるのでございまして、もちろん徹底的にやれば船を改造するよりほかないのでありますが、これは大へんなことになります。いろいろ研究の結果、応急的な措置として、もちろんこれでは十分ではございませんが、応急的な措置といたしまして、一隻当り百三十万円くらいかかるような鋼鉄板をある程度張ろう、それが十三隻で約千七百万円ぐらいになる。これがやっと応急的な成案ができましたので近く財政当局の方へ交渉したい、かように考えたわけであります。それから、もちろん巡視船そのものも非常に全国的に足りませんので、現在九十三隻しかございませんが、これがわが海岸線一万海里のいろいろ救難なりあるいは密輸入なり、密入国、いろいろな方面に当らなければならないので、非常に少いのであります。来年度は何とか別途の方途を講じまして、これをうんとふやしていかなければ、とてもわれわれの勤めば果せない、かように考えておるのでございまして、この点につきましてはどうぞ一つ一そうの御援助をお願いいたしたいと思います。

帆足計日本社会党

○帆足委員 今の長官の御答弁は私満足であって、わが日本社会党もそういうものの充実は沿岸警備の充実であって、別に再軍備と関係のあることじやありません。水虫にトリコマイシンを塗る、こういう聡明な方法でありますから、われわれは賛成いたします。ここで急ぎますから、今の千七百万円の予算だけ急ぎますから、大蔵省から見えておると思いますから、この前から言うて聞かせてありますから、きょうは結論だけ伺いたいのですが、大蔵省はいかがですか。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 大蔵省は見えておりません。

帆足計日本社会党

○帆足委員 当局に言うておいたのですが、後ほど呼んでいただいて答えていただきましょう。  それから新造船の方は次の予算ですから、御協力してわれわれも同僚委員と相談して進めます。  それから漁船に対する無線装置の補助、また実情を調べましてそれを促進する方法、低利資金を出すとかそれにつきましては水産庁はお見えになっておりますか。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 中村海洋課長が来ております。

帆足計日本社会党

○帆足委員 時間をとらないためにそれをやりますというふうになるべくお願いいたします。

中村正路農林技官(水産庁生産部海洋第二課長)

○中村説明員 ただいま日韓会談が再開されておりますので、これが妥結すればそういう必要はなくなるのじゃないかというふうに考えるわけであります。万一の場合等を考えまして事務的にはそういう予算を一応作りまして、そうして折衝はいたしております。これは小型漁船に対して漁船用の無線装置をする。

帆足計日本社会党

○帆足委員 それは補助金ですか。

中村正路農林技官(水産庁生産部海洋第二課長)

○中村説明員 補助金でございます。

帆足計日本社会党

○帆足委員 折衝してそれが実るにはなかなか時間がかかるので、これはどうしても大蔵省をここへ呼び出してきめてしまわぬと、――私がこれを申し上げるのは自衛隊などに金を使っても何もならぬ。ほんとうに戦争をやったら、沖縄どころか、九州は蒸発してしまうのです。すでに一ぺん蒸発して、長崎、広島が蒸発して、そして無条件降伏が一番いい安全保障と考えて、われわれは無条件降伏の専門家となっておるのです。無条件降伏するときにどういう手順でいくかというエキスパートです。ですからそういうことに金を使うよりも、そういう沿岸の、今のようなまだ小さい水虫のときにトリコマイシンなりサルチルサンなりを塗って水虫が広がらぬようにする、これが戦争防止の一番いい方法だ、ほんとうの戦争ということを考えれば、これは勝っても負けても、焼け野原の資本主義か焼け野原の社会主義が残るだけですから無意味です。ですから一切の自衛隊に対する論議とかグラマンとかロッキードというのは、あれはちよんまげの大小を論ずるだけで趣味の会だと思います。趣味の会としては経費がかかり過ぎる。霧の沿岸の警備に金を回す方が賢い方法だと思います。それ以上問題が拡大しようとするなら、これは外交の方法でいかなければならぬし、そこは世界がよくできておって、アジア諸国の世論がわれわれに有利であるし、また李承晩があばれれば、うしろに金日成の目が光っていて、神の摂理はバランスがとれている。そのバランスを一そう上手にとるのが外務委員会の仕事です。従いまして一つ農林省局もそれから大蔵省当局も今の島居さんの要望に対しては、直ちに金を出すという心がけでいていただきたい。また島居さんもこれを自衛隊の費用からもらいたいというさもしいことをお考えにならずに、保安庁は保安庁としてきちっと要求してとるべきだと思います。従いましてこれについての協力をお願いいたします。  それからアジア局長にお願いしたいのですが、再び柳君が東京に戻ってきて会談が開かれた。ちょうど漁期は十一月がまつ盛りになりまして、こちらも人質にしようとして拿捕されることは、気をつけて努めて摩擦を起さないように聡明に政府当局もふるまっていることにわれわれは賛成しておりますから、不祥事件が起らないと思いますけれども、会談が再開されましたら、少くとも日韓会談の進行中にはそういう不祥なことは起さないように、紳士的な話し合いをアジア局長に切に希望いたします。罪なき漁民をつかまえてそれを人質にする、ましてやそれに全く関係のない密入国者の帰還問題とバーターにするごときは、筋違いもはなはだしいものである。従いましてそういうお心組みでやっていただきたいと思います。  それから水産庁関係の方にお願いしたいのですが、帰還漁夫の対策として残された問題で、転職と就職の対策がございます。幸いに中共関係で百二十二名戻って参りました。この人たちに対しましても、やはり就職あっせんについて特別通牒を発して格別の便宜を国策の犠牲者に対してはかっていただきたい。これが一つです。  第二には、病気の数が多いものですから、病気の費用をいただいておりますけれども、病気中の生活保護がやれない状況ですから、このことについて地方庁とも相談してもう少し何か方法を講じてもらいたい。  それから向うへ不当に抑留され、不当に拘留されている漁夫たちに対しまして帰還を促進したいと思います。そのために会談がまた隠忍自重して進んでいくことと思いますけれども、その間非常に栄養が悪いものですから、見舞品の仕送りに対して、私も勘定してみますと、飛行便で各個に送りますから、明らかに郵送料が足らぬと思います。郵送料で食われてしまいます。従いまして郵送料だけは全額別に出すという方法はないものか、一つ農林省の方でぜひ検討していただきたい。この三つの点について御当局の御意見を伺いたい。

中村正路農林技官(水産庁生産部海洋第二課長)

○中村説明員 ただいまの就職の点につきましては、昨年の夏相互釈放の調印がありまして、ことしになりまして当初に労働省の職業安定所、それから運輸省の船舶局等と相談いたしまして、帰還した船員の就職についてはできるだけ優先的にあっせんをしてもらい、また船舶部門だけに吸収が不可能な場合には、やはりその他の職業にできるだけあっせんしていただくというような依頼状を流していただいたのであります。先ほども御指摘のありましたように、就職状況があまりにも思わしくないのでありますが、その後私の方で県から集まりました情報を集計いたしますと、これは県によってまちまちでございますが、大体九月の上旬か中旬くらいと見てよろしいのではないかと思いますが、就職者の数が九百二十二名帰ったうち、五百二十一名というふうにふえておりまして、パーセンテージでみますと、大体五七%ぐらいでございます。失業者につきましては依然百名程度あるという状況でもございますので、さらにまた関係当局と折衝いたしまして、就職あっせんをもう一度依頼なり何なりいたしたいというふうに考えております。  それから病気中の生活費の問題でございます。実は帰還した九百二十二名が旧船主のところへ行く者もあるし、あるいはまたそれぞれの郷里に帰ってしまった者があるということで、非常に全国的に散らばっておりまして、われわれの方といたしましてもこの実態をつかむのに非常に苦労をしておるわけでございます。たびたび県等にも督励いたしまして実態をつかもうとしているのが、非常に困難をしているというような状況もございますし、また一方船員保険に入っていた乗組員が大体八五%ないし九割程度あるわけでございまして、そういう人の中には失業の特約をされている方もあるし、また傷病の場合、傷病手当等も出ているのではないかと思うわけでございますが、そこら辺の実態は実ははなはだ遺憾でございますが十分つかめていない。われわれの方では機会あるごとにそういう点の情報を送ってくれという工合に頼んでおるのでありますが、その点がはっきりいたしませんので、今のところこれという具体案を持ち合せていないわけです。それから最後の見舞、差し入れの問題ですが、これは昨年までは非常に少額だったわけでございますが、いろいろ実態を見ますと、差し入れた品物を金にかえて、それで辛うじて生命の維持をはかっておるというような実態がわかりました。しかも品物を確実に送るためには、航空便によらざるを得ないというようなこともわかりましたので、昨年の暮れに大体一年を二つに分けまして、夏の場合と暮れの冬の場合というふうに分けまして、冬の場合は月当り五千円、夏の場合は月当り四千円という割合で差し入れの補助金を出しておるわけでございます。これの際にはいろいろ資料もとりまして、航空賃を見込みまして、そういう額を実は決定したわけでございます。これをふやすということになりますと、多いにこしたことはないと思うのでございますが、一方先方の受け入れ側の方にいろいろ制限があるようでございまして、一月当りの分量としては、たとえば味の素は一カン以上はいけないというような制限がございますので、金額なりあるいは差し入れの回数をふやしてもそれだけのものが届かないんではないかというような心配もあるわけであります。そういう点を解決いたしましてから善処いたしたいと思います。  病気の療養中の船員の方の家族の生活の問題につきましては、実は非常に気になっておりまして、何とかしなければいけないというふうに考えておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、その実態がはっきりつかめないので、具体的な対策はまだ立てられないという状況でございます。

帆足計日本社会党

○帆足委員 ただいまの御答弁によりまして、ちょっと一、二御要望をいたしますが、就職あっせんのことは一応の通牒は参っておりますけれども、現場に参りますと、まだ十分徹底しておまりせんから、今次の外務委員会の視察を機会にさらに重ねて連絡をしていただきたいと思います。それから病気の割合が一割五分くらいだと私は思っておったのですが、八割まで病人で、数カ月たってもまだなおっておらない。いかに収容生活が悲惨なものであるかを知って、日本の戦争中の監獄よりももっとひどい状況です。従いまして病気の漁民の家族の生活保護につきまして、地方庁と一つお打ち合せを願いたいと思います。それらの家族の方方が――私は岩本さんと御一緒にお供をして現地に参りましたときに、戸叶里子さんが、たまたま女性でありますから、女は女同士というので、戸叶里子さんの部屋にたくさん漁民のおかみさんが来まして、泣きの涙で訴えるのです。主人は病院通いでどうにもならぬ、生活保護を受けるわけにいかぬし、何とかもう少し助けてもらえないかと言うのです。従いましてこういう問題については何とかしていただきたいと思います。  それから委員長にお願いいたしますが、私は大蔵省の御出席をとにかく要望しておきましたが、来ておりません。参考人も見えておられましょうから、そのあとで大蔵省の責任者に来ていただいて、各質問のありました項目は事務局で御承知でしょうから、メモを大蔵省に渡していただいて、現在の状況を説明していただく、そしてそれにわれわれ不満なところがありますれば、同僚委員と一緒に重ねて要望いたします。  それから最後に、私どもが今度視察して参りました五島列島周辺だけでなくて、日本じゅう至るところにあるのですけれども、魚のとれるところがアメリカ海軍の演習場になっているのです。今日のミサイルの段階にそういうことをなさる必要はもうないのではないか。演習なさるならアメリカの海岸でなさればいいのであって、魚で生きている民族の漁場を荒らす必要はない。しかもその演習場の場所に、何とフォックス・トロット地域、ゴルフ地域、ホテル地域――ホテルなら第一ホテルにお泊りになればいいのです。ゴルフなら陸上でおやりになったらいい。フォックス・トロットはダンス・ホールでおやりになるならばいい。こういう不謹慎な名をつけてブリの産地の中心でどかんどかんやっている。しかもそのどかんどかんなどというのは、もう十年時期おくれの武器であって、こんなものは今日の戦術から見れば鼻くそほどのものにならない、ただ単にいたずらに過ぎない。今度の安保条約の改定のときに行政協定の中に入る問題でしょうけれども、今の十年は百年に当るでしょうから、こういう百年も時期おくれの演習なんかはやめてもらいたい。水産庁は魚を守り、国民の蛋白食糧資源を守り、輸出産業の根幹を守る官庁として、一体こういうものを今まで受け入れていたのがおかしい。フォックス・トロット地域があるということを農林省は御承知でしょうか、ちょっとそれを承わりたい。

中村正路農林技官(水産庁生産部海洋第二課長)

○中村説明員 演習場の件は私の所管ではございませんが、そういう名前の区域があるということも承知しております。

帆足計日本社会党

○帆足委員 承知しておったとすれば驚いた。これにはびっくりして、われわれ議員は怒髪天をついた。第何号地域くらいならまだがまんするが、よその国の漁場に来てフォックス・トロットとは何事か。こういう名称をつけたのはだれか、不謹慎だと思う。こういう不良アメリカ人は国外退去を命じたらいい。そういうことを水産庁が知っておって今日まででれっとしておった、そういう水産庁に月給を払っていたのでは、懐疑的精神がいよいよ旺盛になってくると思う。今は安保条約の再検討のよい時期で、外務次官もお聞きでしょうから、こういうことはやめていただきたい。人をばかにしておる。われわれ外務委員は保守たると革新たるとを問わず、日本民族の国、海の国の日本の漁場がこういうことになっておる、その精神に憤激せざるを得ない。私は保守政党の立場からいって、今日の戦術の段階に――ある段階に演習が必要であったというならばそれも論理としてはわかる。しかし今の段階になって、終戦後もう十三年、しかも日本の一番のブリの漁場がフォックス・トロット地域になる、こういうばかなことがあるものですか。これは一つ長官にも話をして、そしてよく水産庁としての責任を果していただきたいと思います。あとの御質問もありますからこれでやめます。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 帆足君に申し上げますが、大蔵省の関係は今日予算委員会の方にとられておりますので、後日機会を得たいと思います。     ―――――――――――――

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 次に日韓問題について参考人より意見を聴取いたします。  まず参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は皆様御多忙のところ特に本委員会のために御出席下さいましてまことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  念のため議事の順序について申し上げますと、まず参考人各位からおのおの御意見を開陳していただく、その後に委員から質疑がある予定でございます。なお御意見の開陳は一人約十五分程度にお願いいたします。  それでは順次参考人の御意見を聴取いたします。金三奎君。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 日本の民主主義と世界平和のために、特にアジア諸民族との善隣外交を推し進めるために日夜努力しておられる皆様にごあいさつを申し上げる機会を得ましたことを光栄に存じます。これから朝鮮問題についての卑見を申し上げたいと思いますが、皆様が当面している問題は、日韓会談をどうするかという問題でありましょうから、まずその問題からお話を進めたいと思います。  日韓会談は、現在四つの分科委員会で討議されており、それらの討議内容は皆様の方がはるかに詳しく御存じのはずであります。従って部外者としての私が申し上げられるのは、その討議内容ではなくて、四つの分科委員会で討議されている四つの論点に対する純然たる私見にほかならないのであります。  論点の第一は、韓国政府を全朝鮮における唯一の合法政府と認めるか、三十八度線以南における合法政府と認めるかの問題でありますが、一九四八年十二月十二日の国連決議によれば、明らかに三十八度線以南における合法政府となっているのであります。  第二に、李ラインには反共防牒線という意義と、漁族、漁民の保護という二つの意義があると主張されております。しかし李ライン自体が鉄条網的な役割をしているのではなく、現に北鮮の武装スパイ団が沿岸伝いにどんどん韓国に入っており、日本への密航者を防ぐわけでもなく、李ライン自体に防牒的意義があるわけではありません。でありますから、漁族保護と両国漁民の互恵を主眼とする漁業協定が成立すれば、李ラインは当然消滅すべき性質のものにほかならないのであります。ところが、この李ラインがあくまでも主張される裏には、李ラインを利権化しようとする動きさえあると伝えられております。これはまことに心外なことでありまして、不明朗な日韓会談をいよいよ鼻持ちならないものにしているのであります。  第三は、韓国側の財産請求権の問題であります。具体的な内容は公表されていないので、知る由もありませんが、この問題で目立つのは、たとえば文化財の返還だ、いや贈与だという言葉じりで表面化されているように、報復主義と恩恵主義の対立であります。時間をかせぐための言葉のやりとりとしか思われません。  第四は、在日朝鮮人の法的地位の問題であります。在日朝鮮人を全部韓国籍に入れるという主張は、韓国政府が全朝鮮における唯一の合法政府であるという主張と不可分に関連する問題でありまして、韓国政府を唯一の合法政府と認めれば、在日朝鮮人の国籍選択の自由は、事実上韓国籍か日本籍に制限される結果となりましょう。日本が自主的に処理できる問題までもこういうふうに制限を受けることになると、日本国内にいろいろと大きく問題を残すことになりましょう。  要するに、日韓会談を通じて一般に印象づけられる韓国側の態度は、反共の名における無理難題と報復的な要求ということになります。実際の会談の内容は知りませんが、表面に現われる限りにおいては、こういう印象しか与えていないのであります。でありますから、一般が日韓会談はえたいが知れない、不明朗だ、何かやみ取引でもしているのではないかと疑うのはむしろ当りまえでありましょう。国交を再開して、善隣友好を推し進めようという会談がこんなに不明朗でよいものでしょうか。国民が共感を持つどころか不快な疑惑しか持てないような会談、両国民の親善に寄与するどころか、不幸なしこりを増大することにしかならないようなこの会談ほど不思議な会談はないのであります。  国民の理解と納得をこえたこの不可解な会談は、一九五一年十月以来満七年の長きにわたって続けられております。そして今やまさに妥結されようとしています。両国民の親善友好のためでしょうか。違います。七年間の会談でかもし出されたものは、双方の不信と猜疑心だけであるといわれても過言ではないでありましょう。日本国民の大部分は、李承晩という人は無理難題ばかり言う人だという印象しか受けておりません。それと終戦後における在日朝鮮人の行き過ぎなどがからみ合って、日本国民一般は、内心では朝鮮人に対する蔑視感を深め、外面的には朝鮮問題に対する無関心を装うようになったのであります。他方、韓国民の大部分は、日本人は全く油断がならぬということを警戒しております。大陸侵略の兵站基地として四十年間も支配しておいて、今になっては恩恵を施したといい、サンフランシスコ条約では在韓財産権を放棄しておきながら、いざとなると、それを持ち出しておるからであります。日韓会談に関する限り、両国民の理解と親善は促進されるかわりに、全くその逆であったということがいえるかと思います。  では、日韓会談が成立すれば、両国民の理解と親善が促進されるかといえば、あながちそうともいえない面が強いということは、何とも残念であり、遺憾であると言わざるを得ません。それは日韓会談の目的が両国民の理解と納得に基く平等互恵、民主提携にあるのではなく、自由陣営の防衛強化にあったからであります。つまり極東におけるアメリカの戦略態勢の強化にあったからであります。でありますから、日韓会談は、実は日韓間の外交交渉の形における対米交渉であり、これがどちら側も決裂の責任をとりたがらなかった理由であります。  では、なぜ今まで成立しなかったかと申しますと、それは日本の主体的条件が整っていないと李承晩が判断したからであります。その主体的条件と申しますのは、日本が反共に踏み切ることであります。日本が反共に踏み切ってくれさえすれば、過去は水に流して、ともに手を携えて共産脅威に立ち向おうというのが李承晩の年来の主張であり、今もその主張は変っていないと思うのであります。日本を反共に踏み切らせるということは、中共に対する融和政策を放棄することであり、憲法を改正し、日本の防衛と治安を強化することであります。さきには澤田廉三氏の発言があり、このたびはセシル・ブラウン記者との会見において、岸首相みずからこのことを明確にしました。そしてこのことは、安保条約の改正、警職法改正の問題としてすでに皆様の前に提起されている通りであります。今や岸首相ははっきりと反共に踏み切りました。李承晩の要求はかなえられた形でありますが、今後の成り行きを考えると、まことにおそろしい気がいたします。李承晩のおかげで、韓国民は、今後日本国民との善隣友好どころか、権力的論理のおそろしさをもう一度体験するかもしれません。まつことにおそろしいことであり、激しい憤りを禁じ得ないのであります。  さて、岸首相が反共に踏み切った以上、李承晩としても、これ以上日韓会談を延ばす理由はないはずであります。澤田廉三氏も指摘されているように、日韓会談の大目的に比べれば、議題などはとるに足らないものであります。もはや売り言葉に買い言葉で時をかせぐ必要はなくなったわけであります。今やお互の面子を立てて取りまとめる段階に入りつつあります。韓国側では、日本側の面子を立てるために李ラインを引っ込めるでありましょうし、日本側は、韓国側の面子を立てるために相当額の補償に応ずるでありましょう。皆様が日韓会談を成立させて韓国と反共同盟の形をとって進まれようと、日韓会談をたな上げして、平和憲法と民主主義を守りつつ、中ソに対しても友好関係を保っていかれようと、日韓会談が成立していない現段階では、皆様の御裁量一つにかかっていることではありますが、いずれにしても皆様は、もはや朝鮮問題に対して無関心ではあり得なくなったと思いますので、それに対するいささかの意見を申し添えておきたいと思います。  皆様がこれほど無理をして日韓会談をまとめ、韓国と反共同盟を推し進めるのもやむを得ないとお考えになる裏には、実は韓国は日本を防衛する第一線であると考えているからであります。つまり三十八度線は日本の防衛線であると考えているからであります。この考えを突き詰めますと、澤田廉三氏が発言されたように、三十八度線を鴨緑江まで押し上げてしまわないと、日本の防衛は不安だということになります。三たび立ってこのことをなし遂げないと祖先に対して申しわけないということになりますと、李承晩の北進統一論と軌を一にするもので、その結果は説明するまでもなく、アジアの天地を核兵器の試験場と化してしまうことになります。皆様はもはや朝鮮問題が、実は日本の国防問題にほかならないということに対して、これ以上そっぽを向くわけにはいかなくなりました。朝鮮問題は朝鮮人にとっては統一独立の問題でありますが、皆様にとっては日本の国防問題にほかならないのであります。日本の国防問題であるばかりでなく、中ソの国防問題でもあるわけであります。要するに朝鮮問題は、対内的には朝鮮民族の統一独立の問題であり、対外的には日米・中ソの国防問題、安全保障問題にほかならないのであります。ここに朝鮮問題の複雑性と困難性がありますが、それがどんなに困難でありましょうとも、関係各国との間の話し合いで取りきめるよりほかに道はないのであります。三十八度線を武力で鴨緑江に押し上げることはできないことでありますが、三十八度線を撤廃して双方の安全保障に寄与するような統一朝鮮を実現することはできるのであります。安全保障に寄与すると言いましても、朝鮮がいずれかの軍事基地になったときに、他方が受ける脅威を取り除くことにほかなりませんから、結論的にはいずれの軍事基地にもならない、民主的で自由な統一朝鮮を実現することにほかなりません。つまり民主的で自由な統一朝鮮を平和的に実現することが、日本の安全保障に寄与することになります。もっと正確に言えば、かかる統一朝鮮こそ朝鮮から起るかもしれない国防上の危険を未然に取り除く最上の方法ということになります。言いかえますと、朝鮮をいずれの国の軍事基地にもしないためには、朝鮮を中立化し、中立化された統一朝鮮の領土と主権を国際的に保障するよりほかに、日米・中ソ間の国防上の利害関係を調整する道はありません。三十八度線を撤廃して統一朝鮮を実現する国内的方法は、南北両政権の敵対的現状にかんがみ、国際管理のもとに南北を通ずる自由秘密一般投票、すなわち自由総選挙を行うよりほかに道はありません。しかもこの自由総選挙は、関係各国の国防上の利害関係が調整されない限り実現されないのでありますから、朝鮮の中立化こそ朝鮮の平和的で民主的な統一を実現するための大前提であり、極東の平和と友好と繁栄を確保する道でもあるということになります。中立化された民主的で自由な統一朝鮮の実現は、ただに朝鮮民族の悲願であるのみならず、今や日米・中ソの共通の課題とならねばならないと信ずるものであります。  朝鮮が南北に分れてすでに十三年になります。この分割は朝鮮民族に言語に絶する苦しみを与えたばかりではなく、極東における絶えざる不安と緊張の原因になっております。日本が今韓国と組もうということも、実はかかる不安と緊張の現われにはほかならないのであります。しかし組んだ結果は、韓国と日本対北鮮と中共の抜きさしならぬ対立となり、極東における不安と緊張をいよいよ高めることにはなりますが、そこからは何ら建設的なものは生まれてきません。要するに日本が韓国と組んで朝鮮問題を処理しようというような対朝鮮政策は、必然的に軍事力増強、治安対策の矢つぎばやな強化を結果し、日本が再び反共軍事国家になることは見やすい道理であります。しかも対朝鮮政策が日本にもたらすプラスは、何も期待できません。期待できないどころか、その道はアジヤの破滅に通ずるものであります。  戦後における日本の民主的発展は世界の驚異であり、アジアの希望であります。日本がその民主的発展を伸張させることこそアジア諸国民に希望を与え、また日本が彼らの信頼と尊敬を得る道であると思うのであります。日本がみずからの民主的発展を確保し、アジアの不安と緊張を緩和する平和政策を堅持することが、また世界の尊敬を集める道でもあると思っておるのであります。民主日本の運命は今や重大な岐路に立っております。しかもその運命は、皆様がこれからきめようとする対朝鮮政策によってきまるのであります。つまり李承晩と組んで北鮮と中共に立ち向う道を選ぶか、全朝鮮を中立化し、民主的で自由な統一朝鮮の実現をはかる道を選ぶかによってきまるのであります。もし皆様が後者の道を選ばれれば、三千万の朝鮮民族は心からの尊敬と拍手を惜しまないでありましょう。アジア諸民族も新たな尊敬と信頼を日本に寄せることでありましょう。アジア諸民族から尊敬され信頼される日本であってこそ、またアメリカとの提携も自主的であり対等的なものになるのではないでしょうか。国を愛し世界の平和を思う皆様の御健康と御健闘を祈ります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 次に金英俊君。

金英俊在日大韓民国居留民団中央総本部事務総長

○金(英)参考人 韓日関係に最も関心を持っておる韓国人の一人として、しかも韓日関係の改善のために御努力なさっておる皆様の前で一言所見を述べる機会を得ましたことは、まことに光栄とするところであります。  私の今から申し述べようとする意見は、いかにして韓日関係の正常化をはかるか、また韓日関係の正常化を妨害しておるものは何かということであります。現在韓日関係の会談が再開され、順調に会議が続行されておる現在において、その内容そのものについてはわれわれ民間人として深く知らないところでありますので、詳しく申し上げることはできませんが、現在日本と韓国との間に行われておる諸問題は私が説明しなくてもよく御存じだろうと思いますので省きますが、今韓国と日本との国際的立場から考えますときに、先ほど参考人から話がありましたように、極東において、アジアにおいて、一番われわれ人類の敵である共産主義をいかにして防ぐか、この問題が先決の問題になると思います。御存じのように、あの韓国動乱が、もし国連の尊い犠牲と韓国青年の犠牲によらなければ、おそらく日本の安泰も現在のような安泰にはならなかったと私は思うのであります。そう申しますと、現在、アジアにおいて日本、韓国あるいは中国――中国と申しますのは国府のことを申すのでありますが、この三つの国が防共に一致団結しなければ、アジアは遠からず赤化するということを考えざるを得ないのであります。従って、日本の国民あるいは韓国国民共通するところは、共産主義を防ぐところに一致しなければならない、こういうように考えるのであります。従って、韓国と日本との間は、歴史的に察しまして、複雑多難な問題がありましたので、容易にこの問題を解決することができないのでありますので、なお国交が正常化されないまま現在に至り、会談が続行中でありますが、この会談を現在妨害し、日本、韓国、国府、この三つの国の団結を破壊することによって共産主義を日本に持ち込むという陰謀をたくらんでおるのであります。その実例といたしまして、現在日本にはわれわれ韓国人が、六十万という多い数字が在留するのであります。このうち左翼系である朝総連、朝鮮人総連合会と申しますが、この朝総連はことしの四月までは、日本におる朝鮮人はなるべく長い間日本で生活基盤を作らなければならないということを主張してきたのでありますが、最近に至りまして、いわゆる北韓に集団的に帰国せよということを突如として申し出たのであります。この集団帰国を申し出た理由としましては、北韓からの依頼によりまして、北韓は今日本におる皆様、帰ってくる同胞に対しては衣食住を保障する、なるべく早く帰ってきてもらいたいということを日本の朝総連に呼びかけ、指令を出したのであります。その実を調べてみますのに、御存じのごとく、北韓に駐屯しておった中共軍は、詳しい数字はわかりませんが、約四十万以上という多い軍隊が駐屯しておったのであります。この中共兵は募兵として北韓建設にいささか役割を果しておったんでありますが、国際情勢のしからしむるところによって撤退をしなければならなくなったのであります。この四十万の兵力を撤退したあとは、いかにしてこの兵力の補充、労働力の不足を補うかという問題にぶつかったのであります。ここで一つ申し上げたいことは、南韓は今二千五百万という人口を擁し、毎日のごとく北韓から越南して人口はふえる一方であります。その越南する年令層から申しますと、ほとんどが青壮年の層でありまして、約五百万という多い避難者が南韓の方へ毎日のごとく越韓してくるのであります。青壮年は南韓に越韓し、それに相待って中共軍は撤退し、そこで労働力が必然的に不足することはさまった話であります。このあと埋めをするために、日本におけるわれわれを強制労働場に引っぱり込むための一つの魔術に使っておるとわれわれは解釈しておるのであります。もう一つは、もちろん日本の政府において国際的正義に立脚して直ちにこの申し出を認めることはできないということは、われわれのみじゃなく、北鮮あるいは日本における朝総連団体も百も承知はしておるのでありますが、承知しながらどういうわけでこういうことを言っておるのか、その裏に、もう一つの陰謀があるのであります。現在朝総連が全国の末端の貧困君たちに、先ほど申し上げましたように、北鮮には皆さんが帰ってくる家と職場を用意しているから帰ってこいというように呼びかけているのでありますが、その集団帰国を申し込ませるときに、一人当り千円ないし千五百円の金を配りながら申請書に判を押させている事実が判明しているのであります。ほんとうに帰らす、あるいは衣食住が保障されるのであれば、集団帰国を申し込ませる人にお金までやって誘って判こを押させる理由がどこにあるか、疑わざるを得ないのでありまして、これは時間をかけて調査すれば釈然とわかるだろうと思います。また過ぎ去った六月の大村収容所の仮放免の問題で騒いで韓日間の空気が悪化したときに、一番手をたたいて喜んだのは朝総連であります。これを味わった朝総連は、このたび集団帰国を理由にして内心できないということは知りつつこれを推し進めることは、日韓関係の間をさいて、その間に共産主義の魔術を打ち込もうとするねらいにほかならないのであります。     〔委員長退席床次委員長代理着席〕  もう一つは、どうしても日本の政府がこの集団帰国を許さないことを知りつつやることは、自分らが帰りたいときにもし帰してくれなかった場合、日本において生活の保障を日本政府に責任を持たせる。現在朝総連として、そのさん下におる一部の同胞は、相当数が生活保護法を適用されておるように聞いておるのでありますが、これをなお拡大してこの責任を日本政府に転嫁し、生活保護法の適用を拡大させ、そうして全責任を日本政府に転嫁する陰謀がここにあることを皆さんが知っておく必要があるのであります。今申し上げましたいろいろな手段を使いまして、日本と韓国との間をさいて、その間に共産主義そのものを打ち込もうとするねらいが最近起っておるのであります。現在本国におるわれわれの国民は、今こそ韓日会談をまとめあげなければならぬということは、いろいろな証拠から見まして、しかも韓日会談の韓国側代表団の態度から見ましても、誠意ある積極的な態度をとったことはかつてないように私は思っております。一部に誤まって伝わっている説によりますと、今韓国の李大統領は反日家である、排日家である、だから李大統領のおる間は韓日会談はまとまらない、あきらめる方がいいという説も一部に聞いておりますが、これははなはだしい間違った考え方でありまして、その真実とは全く異なっておるのであります。御存じのように韓国は解放されて十三年、政府が樹立されて十年余りになりますが、李大統領は八十三の高齢の方で、しかも終始革命政治家の一人として、隣国の日本とはいかにしなければならないかということくらいは、現代政治家の一人としてわれわれの想像以上に考えて関心を持っておるのであります。しかも韓国の国論から考えてみましても、国内には自由党、民主党、両党がおもなる政党でございますが、国民の李大統領を中心としてまとまったこの思想統一は、他に見るときがこないだろうとわれわれは思っておるのであります。ある一部の韓日会談を妨害する人は、李大統領が大統領の席から去ったときに、民主党あるいはそのほかの大統領がなったときに、韓日会談をまとめた方がいいというような説も若干聞いておるのでありますが、今申し上げたように韓国の国民の思想を統一し、しかも李大統領の考え方によって国民思想を統一しておる現状から推してみまして、今のチャンスが韓日会談をまとめる一番絶好なチャンスではないかと思っております。  最近朝総連側では、北韓帰国は人道問題である。簡単に考えますれば、帰りたいところへ帰すのが人道問題のように聞えるかもしれませんが、日本に住んでおる六十万の韓国人は、その九七%が南韓、三十八度線以南に本籍を持っておるのであります。皆さんも御存じだろうと思いますが、外国に来ておるわれわれが、まず国へ帰ろうとする場合、自分の本籍地を選び、しかも知人を選び、血縁的な関係を選ぶのが道理であります。こういう地理的、血縁的なところに帰るのが人道なのか、全然生まれも本籍も、あるいは縁故者もないというところに政治的な陰謀でもって集団帰国を強制させるのが人道なのかということは、時間をかけて計算してみれば御存じだろうと思いますので、これこそ人道を踏みにじり、政治的、思想的陰謀にほかならないということを断言するのであります。  最後に申し上げたいことは、今韓国と日本との間は、先ほど申し上げたように過去四十年の間、非常に複雑な問題がたくさんありましたので、従って会談の内容においても、百年の平和を打ち立てるために、時間は相当かかるだろうと思いますが、根気よくお互に理解し合い、隣国の精神を打ち立てるために日本の皆様の惜しみない理解と協力を願ってやまない次第であります。(拍手)

床次徳二自由民主党

○床次委員長代理 次は中保与作君。

中保与作朝鮮問題研究会理事長

○中保参考人 最近、李ライン問題などを通じて、わが国民の間に李承晩政府に対する不満が高まっていますが、その不満を韓国民全体にぶつけるのは非常に大きな間違いであるということを、まず最初に申し上げたいと思います。  それならなぜであるかといえば、李承晩政府が、韓国民二千数百万の人々の半分からも支持を受けていない政府であるという理由からであります。去る五月二日の民議院すなわち韓国国会の総選挙の結果、李承晩政府の与党たる自由党が、総投票の四二・一%しか得られなかったという事実をごらんになってもきわめて明白であります。韓国の有識者が集中している京城などは、十六名の定員中、野党の民主党は十四名を占め、与党の自由党は無所属とともにわずか一名しか獲得できなかったのであります。釜山などもまた民主党八名に対し、自由党の当選者は二名にしかすぎなかったのであります。この選挙は、張勉副統領が――ここに御参考までに申しますけれども、普通われわれは副大統領と言うのが順序でありましょうが、向うの憲法で副統領というように書いておりますので、あえてそれに従ったわけでありますが、張勉副統領が繰り返して言明しておられるところによりますと、歴史上初めて見る不正な選挙だったそうであります。張勉副統領は、不正であったことの証拠として、政府、各級選挙委員、警察などが、勧誘、脅迫、暴力などによって反対党候補の立候補や当選を妨害した事実を一々指摘しています。選挙干渉がいかに激しかったかは、内務部長官の李根直氏が間もなく辞職せずにおれなかったことでもわかりますが、そのような激しい干渉をしてさえ、なおかつ自由党の得票が総投票の二分の一にも及ばなかったのであります。張勉副統領は、もしもほんとうに公明な選挙が行われたならば民主党が百名以上の当選者を得ること決して困難でなかったと申しております。  李承晩政府の人気をトするに足る最も新しい例は、最近の大邸市長の選挙でありましょう。去る七日、全韓国民注目のもとに開票された結果は、民主党が五九%、無所属が三一・五%、すなわち、李承晩政府にくみせざるものが九〇・五%を占めたのであります。与党の得票は一割にも及ばなかったのであります。自由党内でも、さすがに事の重大さに驚いて、頽勢挽回策をめぐり、いろいろ論議を重ねていますが、李承晩大統領の後継者といわれた李起鵬民議院議長に対してもその統率力についていろいろな議論も出ておるような次第であります。李承晩政府は頽勢挽回策の一つとして、その権力を強化しようとはかり、韓国言論界あげての猛烈なる反対を押し切って国会に国家保安法改正案を提出し、政府反対派の弾圧を企てていますが、その司法部でもこの二十五日には、南北鮮平和統一を提唱したこと、及び北鮮スパイであるという容疑によって進歩党首であり、かつては李承晩氏と大統領選挙に相まみえた曹奉氏に死刑の判決を下したりしています。およそ、李承晩政府に批判的な者には、すべて共産党とか共産主義のスパイという烙印を押しているのでありますが、これはあたかも東條内閣が、およそ東條大将に批判的な者にことごとく赤のレッテルを張ったあの例をほうふつたらしめるのであります。  しかしながら、李承晩政府がいかなる術策を弄しようとも、韓国民の信望がどの程度のものであるかは、さきに申しました選挙における投票数が最もよくこれを立証しているのであります。  実は日本にも、李承晩政府の宣伝に惑わされてか、李承晩政府を批判する者を直ちに北鮮系であるとか、共産主義者であるかのごとく言う者がありますが、それは李承晩政府を痛烈に攻撃している韓国の民主党その他の野党も、その本来の性格は保守的なものであることを知らないためではないかと思います。     〔床次委員長代理退席、櫻内委員長着席〕  ここに自由党と民主党との内政、外政にわたる政策を詳しく検討する時間を持ちませんが、韓国民ことごとくが念願してやまぬ南北鮮の統一問題に対するこの両党の考え方を見ますと、一は武力北進、一は平和的統一を主張するところに大きな相違を見出すことができると思います。  すなわち、李承晩大統領及び自由党は、武力により北緯三十八度線を越え、鴨緑江岸まで北進して、北鮮軍を解体させると同時に、北鮮政府を瓦解させ、北鮮から百名の議員を選挙させて、これを現在の民議院へ入れることによって南北統一をはかろうとしているのであります。これに対して、民主党は、国連監視のもとに南北鮮にわたる総選挙を行い、これによる当選議員によって制憲議会を構成し、新憲法による新政府によってここに統一国家を樹立しようとしているのであります。  また、この両党を、日本に対する政策の点から見ますと、民主党が多年その政策のうちに――多年と申しましても創立以来三年ですが、日韓関係の正常化、すなわち日韓親善関係増進と日韓貿易促進を提唱しているのに対し、李承晩大統領側は、日韓親善を口にする者を利敵亡族の徒とののしり、日韓貿易促進を主張する者に対してば金融その他の面からさまざまの圧迫を加えてきたという点に大きな相違を見出すことができると思います。  この機会に一言申し添えさせていただきたいことは、民主党の方々がこのように利敵亡族の悪名を着せられ、あらゆる経済的な圧迫を受けながらも、なおかつ日韓親善、日韓貿易促進を叫んでいるのに、日本人にして、もしもこれに背を向けるようなことがあるなららば、日本人に信義なしと言われても、もはや返す言葉もないことになるということであります。万一にもこのようなことがあるならば、それこそ日韓両国の将来に大きな災いの根を植えるものと申さなくてはなりません。  なぜかと申しますと、民主党は、先ほど申しました情勢からいって、いつの日か政権の座につくことが予想されるからであります。李承晩大統領はすでに八十四歳の高齢であられ、しかも十年の長い間大統領の激職にあられたことは皆様御承知の通りであります。個人としても養子を迎えて一家の跡継ぎをこさえられ、自由党総裁としても後継者を物色しておられるということでありますから、来たるべき正副大統領選挙に四たび出馬するかどうかは疑問であります。出馬せられましても、この前の選挙で対立候補の申翼照氏が急逝せられたにもかかわらず、なおかつ、その得票は五二%にとどまったことに思い及ぶと、当時よりもっと人気が下り坂にある現在、果して当選するかどうかも疑問といわなくてはなりません。  李承晩大統領を弁護する者は、李承晩大統領に万一のことがあるならば、韓国の政界に収拾すべからざる混乱が起ると言い、それゆえ、日韓交渉は、今のうちにできる限りの譲歩をして、妥結を急がなくてはならぬと説いています。しかし、次の選挙に出馬するかどうかもわからず、出馬しても当選するかどうかわからず、国民の人気が急速度に転落している今日、その人一人の去就が韓国政界を一大混乱に陥れるなぞというのは、すでに相当の民主政治の鍛錬を積みつつある韓国民全体を侮辱するものと申さなくてはなりません。憲法上、大統領万一の場合、その残任期間、大統領となるべき副統領のいすも、圧倒的多数の得票により、民主党の張勉氏がその任についているのであります。野党である民主党としても、着々政権授受の用意を整えているといわれています。今日のところ、民主党内にも、資本主義体制による自由経済を説く趙柄玉氏一派と、計画経済を主張する張勉氏一派とがあり、党の主導権をめぐる対立もあるようでありますが、しかしながら今日の民主党は、昨年の分裂騒ぎのあとに残った人人であり、独裁政権打倒という重大使命を前にして、兄弟かきにせめぐようなことは極力回避すべきであると戒しめ合っているのであります。これらのことから見て、李承晩大統領万一の場合、政権の維持についてはなはだしい混乱を巻き起すようなことは、まずないものといわなくてはなりません。多少の動揺があっても、民主党がこれにかわるべき順路をたどるものと考えます。  かようなことを申しましても、私どもはむろん、韓国の自由党にも、民主党にも何のつながりもなく、また、どの政党にも好悪の感情を抱くものではありません。日ごろ私どもの願うのは、韓国二千数百万の人々と心から手を取り合うことであります。日韓会談も、一時を糊塗しようとするものならいざ知らず、いやしくも将来に及ぶ恒久的な親善関係を結ぼうとするものであるならば、韓国民全体――少くとも韓国民大多数の意思や要望やその感情を対象として一切の話し合いを進めなければならないと思いますので、あえて以上の事実を申し述べたわけであります。  このような見地から、当面の具体的な方策として特に一言申し上げたいのは、この際韓国民大多数の生活安定に、日本として何かの役立つ手伝いをすべきではないかということであります。韓国の物価は上昇の一途をたどっています。十月から公務員の俸給を一挙に二倍ないし二倍半も引き上げなければならぬということも、その一端を立証するものでありますが、一般国民の窮乏は、隣人として、まことに見るに忍びないのであります。  しかし、李承晩政府は、あくまで軍事力増大を政策の第一義とし、今度の追加更正予算でも、国防費は一般経費よりも五十五億ホワンも多く、全体の四八%を計上しているのであります。しかも、経済建設の重点を重工業に置いて、国民に対する消費物資の供給や民生安定を第二義、第三義としているのであります。これでは、国民のうちから、もう息がつまる、生きられない、という叫びが上るのも、けだし当然のことと申さなくてはなりません。  この国民生活の窮迫を救う道は、ただ一つ、日本からできるだけ安くてよい物資を大量に送り込むことであります。かってICA当局も、幾たびか、その経済援助資金をもって日本の消費物資を買い入れるよう李承晩大統領に勧告いたしました。自由党の議員のうちにさえ、連名でそれを陳情したこともあります。ところが李承晩大統領は今でも日本は韓国に対して侵略的野心を抱いていると見、日本の商品を大量に買い入れると、韓国はやがて日本に経済的に隷属することになるという理由で日本品買い入れを極力阻止しているのであります。  今日の日本には、狂人でない限り、韓国を侵略しようとか、いかなる形にせよ韓国を隷属させようなどと考える者は一人もないことは申すまでもありません。また、韓国民のうちには、そのような心配から日本品をボイコットしようとする者などは一人もないと信じます。いや、現に京城、釜山などへ行ってこられた人々の話によりますと、至るところに日本商品を見受けるとのことであります。しかし、それが香港や台湾を経由したり、密輸入されたものであるがために、値段も日本にあるそれの二倍も三倍も高くなっているのであります。これでは、韓国の物価高を押えるのに役立たないこと、これまた申すまでもありません。  従って、日韓会談がたといどのような経路をたどるにせよ、それとは別に、正常な貿易の道を広げることが当面の急務ではなかろうかと思います。かっての日韓貿易ははなはだしい片貿易であり、それがために焦げつき債権もできましたが、一昨年から双方輸出入の開きが次第に狭まって参っております。むろん大量の輸出をする場合は、その代金などにつきまして、ICA経済援助資金によって決済するような交渉も進めなくてはなりませんが、それが二千数百万韓国民の要望に沿うものであるならば、李承晩政府といえども、むげにしりぞけることもできないのではないでしょうか。もしも、それをしも拒むようであるなら、李承晩政府はいよいよ国民から遊離することになるでありましょう。  与えられた時間がきわめて短いので、意を尽しませんが、以上を要約しますと、このように申したいと思います。  第一に、李承晩政府の対日態度に不満であるからといって、その不満を二千数百万の韓国民にぶつけてはならないこと。それは李承晩政府を支持するものが、全韓国民でなく、その一部にすぎないからであること。  第二に、日韓交渉はいかなる譲歩をしても李承晩大統領在任中に妥結しなければならないというのは、李承晩大統領に万一の場合、収拾すべからざる混乱が起るという考えに基くが、それは今日の韓国民を侮辱するものであること。韓国は李承晩氏以外に人なきにあらず、いま日ごとに国民の支持を高めている民主党があるのを忘れてはならないこと。特に民主党は、李承晩政府のばりざんぼうや経済的圧迫をものともせず、多年日韓親善、日韓貿易促進を叫んできたことに深く感謝すべきこと。  第三に、このような分析をしても、決していずれの党派にも偏するものではなく、日本はどこまでも全韓国民大多数の意思や感情を対象として日韓関係を考えるべきであること。この場合、当面緊急の問題として、物価高に悩む全韓国民に、安い日本の消費物資を大量に供給して、何ほどかその生活安定に協力すべきこと。そのためには貿易を促進しなければならないが、その決済方法もまた道なきにあらず、もしも李承晩政府にして、それをしも妨害するなら、ますます国民から遊離するであろうこと。これらの点が今後日韓交渉を考える上において、基本的な問題だと思いましたので、私見を申し上げた次第であります。  御清聴をいただいたことをつつしんで感謝いたします。(拍手)

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 各参考人に対する質疑を許します。大西正道君。

大西正道日本社会党

○大西委員 その前に、今、次官もアジア局長も帰ってしまった。大臣が予算委員会へ出なくちゃならないというのであれば、次官でも置いておくか、局長を置いておくか、どっちかの責任者に来てもらいたい。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 大西君に御了解を得たいと思いますが、できるだけ外務委員会の方へ優先してもらうように、今までいていただいたわけであります。ところが予算委員会の方で、御承知のように今河上さんの御質問で、外務大臣または政務次官あるいはアジア局長、ぜひ出るようにということでございますから、一つ御了承願いたいと思います。

大西正道日本社会党

○大西委員 きょうはお三人の方から、それぞれ専門の分野にわたって貴重な御意見を拝聴いたしました。中保さんは、かねてから朝鮮問題についての権威であられますし、金三奎さんは、これまた南北朝鮮の統一とその中立化という主張を貫いておられる著名な方であります。金英俊さんは、承わりますと大韓民国の方の重要なポストにおられるようでありまして、こういう割り振りから申しますと、もう一人北鮮系の代表の方がお見えになれば非常によかったと思いますが、これはまた後日機会を得まして、そちらの方の御意見を聞きたいと思うのであります。貴重な御意見を拝聴いたしましたが、二、三質問を申し上げます。  まず金三奎さんに。今のお話で、日韓会談を進めて、日韓問題を妥結に導くという根底には、反共陣営の強化、こういうふうな大きな目的があるということ。このことは私どもそのように見ております。ただそれが今妥結の直前にあるというような見通しであるようなふうに私は聞いたのでありますが、これが今日まで六年間、内容的には一歩も進んでおらぬ。そういうふうな過去を顧み、また今の両方の立場を見ますると、そう簡単に妥結が近きにありというふうには見られないのであります。ここのところについて、もう少し妥結近きにありと言われる理由。もし妥結をするとすれば、今懸案になっておる大きな問題、特に李承晩ラインの問題でありますが、これについてどういうふうな折り合いがつくと見て妥結と見られるか、これを一つ御意見を聞いてみたいと思います。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 別に今すぐ妥結するという情報を私持っておるわけではありませんが、一応筋として私そういう気がいたします。というのは、李承晩が年来主張していること、そして最近岸首相がはっきりと、セシル・ブラウン記者との会見であれほど明確に反共に踏み切られたこと、もはや基本的な対立というものはないのだ、私はこう見ております。ですから議題なんというのは実はもう論じ尽されて、根本的な態度、お互いに踏み切るかどうかという腹が問題だったので、私はもう踏み切るべき段階にきていると思う。だから、今はもうもし両方が取りまとめようという腹があるならば、これはすぐにでもできる段階にきた。そういうふうに筋から私申し上げたのでありまして、おそらく歴代の日本の総理や外相で、李承晩の今までのそういった強引な要求に悩まされなかった方はいなかっただろうと思いますけれども、岸首相はそれを踏み切られた。そうして李承晩自身が、岸首相は日本の政治家で最も信頼に足る政治家である、こう言っている。だからお互いの腹はもう熟しつつある。私はそうにらんでおります。そういうことを申し上げたかったんで、別に今それだからといって、すぐ妥結するとかどうとかという、何か特別な情報があるわけではありません。

大西正道日本社会党

○大西委員 その会談に臨んでおる両方の政府の意図がその辺にあるであろうということはよくわかるわけであります。そういう大筋からこの見通しを立てられるというのは、確かに私は一家言だと思うのであります。しかし今、後にお述べになりました中保さんの参考意見にもありましたように、やはり今なお李承晩は国内においてかなり日本を誹謗した意見を吐いておられます。そういうふうなことを見ますると、大きな基本線においてその機が熟しつつあるということは、確かに傾聴に値する意見だが、なお具体的な問題、すなわち李承晩ラインの問題などについて、果してどういうふうな歩み寄りができるであろうか。韓国の政府の腹並びに韓国民の気持はわかりませんが、日本国民としましては、岸政権が自由主義陣営の強化のために踏み切るといたしましても、李承晩ラインというものは、これはどうしても認められない。公海の上にああいう一方的な、前例のないラインを設定して、そうして漁夫を拿捕していく。これに対しては一歩も譲るわけには参らぬというような気持を国民は強く持っておる。こういうように見ますると、大きな目的のために妥結の方向に歩むとはいいながら、李承晩ラインの問題については、李承晩が全面的な譲歩をしなければ、なかなか今の日本国民の気持といたしましては、妥結に踏み切るわけには参らぬと思うのでありますが、韓国政府のこの反共陣営の強化という大目的のために、李承晩ラインに対してかなりの譲歩が見られるかどうかということについての、あなたの御意見を一つ聞いてみたいと思います。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 もし李承晩が、年来言っているようなことに筋を通すならば、当然譲歩していくと思います。つまりさっきも私触れましたけれども、もしお互いに基本的な腹がきまれば、お互いの面子を立てるべき段階に来ております。だから実際李承晩ラインを認めるような漁業協定は、今の日本としては結ばれないでしょう。ですから、日本政府の面子を立てるためには、やはり李ラインで李承晩が譲歩するよりほかにない、私はそう考えます。ですから、もしそれに譲歩をする意思がないということは、今の彼にほかに何か思惑するものがあるということにほかなりません。

大西正道日本社会党

○大西委員 ついでに金参考人の、この李承晩ラインについての御意見、是か非か。まことに幼稚な質問でありますが、お考えを聞かしていただきたい。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 私は李ラインの問題は漁業協定ができるまでの暫定的な措置として、韓国民の感情を現わしていると思います。国際法に合うか合わないか別問題として、日本の漁船が大群をなして、夜南の海をあかあかと照らしながら漁業しているのを韓国民が指をくわえて見ていなければならなということは、それは韓国民としてはおそらく忍び得なかったことでしょう。ですからそういう意味でお互いが魚族を保護し、両国の漁民の共存共栄をはかる、そういうことを主眼とする漁業協定ができるなら、李承晩ラインは当然消滅すべき性質のものだと思います。

大西正道日本社会党

○大西委員 そうしますと、暫定的な処置としてやむを得ないというような御意見だと拝聴するのでありまするが、李承晩ラインを設定したがゆえに、今日それを侵したという理由のもとに、多数の日本人が釜山に拿捕されて抑留されております。いまだにその一部は帰ってこない、こういう悲惨な随伴現象が起っておる。これもまたやむを得ないと見られるかどうか。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 拿捕する必要はなかったと思うのでありますが、李承晩ライン自体が非常に感情的なものであり、そしてむしろ国際法だとか、理性を通り越したいわば非常に感情的なものだと思います。つまり日韓会談自体がそれほど感情的になっていたということ、日韓会談が始まるやいなや、例の海洋宣言として李ラインを宣言するに至ったその詳しい過程は私は知りませんんけれども、今までの日韓会談自体は非常に感情的で、ほんとうにお互いの善隣友好とか、お互いの民主提携、平等互恵の立場に立って、お互いがこれから手を取り合っていくんだというのでなくて、むしろ非常に報復主義的であり、それに対して何かまだ過去の報復的な感情をあらわにし、そしてそれに対してまた過去の日本の行動を合理化しようとし、ほんとうに何か売り言葉に買い言葉を続けてきたような感しか受けないのであります。ちっとも建設的ではありませんでした。だから拿捕がいいとは私は決して思いませんし、そういうことをしなくてもよかったのじゃないかと思いますけれども、非常に感情的になっていたということが、今日のこういう結果をもたらした。従ってさっきも申し上げたように、何かほんとうに筋を通すならば、そうしてお互いが大局的な立場に立って、ほんとうに李承晩がそういうことを言ったならば、私はここら辺でお互いが理性に戻るべき段階だ、そういうふうに思うのであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 これはあなたの御意見を聞く機会でありますから、私からあなたの見解についての反論はいたしませんが、私どもは平和条約に基きまして韓国の独立を認め、その間にいろいろな懸案の解決のために日韓の会談を進める、こういうことであります。漁業の問題につきましては、李ラインというような一方的、挑発的な行為でなくて、お互いの魚族の資源、漁区の設定というような漁業交渉に当然応ずる義務を負うておるのであります。あなたがおっしゃるように理性的な処置がとられずして、世界に類のないようなこういう宣言によってせっかくの漁業交渉が進まないということを私は非常に残念に思っております。  それからもう一つあなたに伺ってみたいのは、あなたの御立場は今の御意見で明らかなように、南北朝鮮の平和的な統一、しかる後にこれを中立化する、かくしてこそ朝鮮民族の幸福があり、ひいては日本の安全保障と関係のあるものであり、それは即極東の平和を招来するものである、こういうお考えであります。私はまことにけっこうだと思うのでありますが、在日朝鮮人が南と北との政治的な色分けによって、かなり鋭い対立をしておる。こういうことは自然のことではあると思いますけれども、私どもこの点について若干疑問を持っておるのであります。六十万の在日朝鮮人がもちろんどのように考えようが、どちらを指向しようが、それは当然であるけれども、今申し上げましたあなたの主張であるところの大目的を達成するために、在日朝鮮人がどのようにあるべきか、生活態度、行動等の問題等でお考えが聞いてみたいと思います。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 終戦後在日朝鮮人の動きは、最初は朝鮮人連盟という形でスタートを切りました。つまり朝鮮人を帰国させる問題、朝鮮人全体の問題に関連してそこで取り計らうのが最初のスタートであったのであります。ところが途中からそれが左翼的なものに傾くと同時に、それと行動をともにできない人々が別に民団というものを組織し、そういうことになってますますお互いの旗色を明らかにしたのですが、私は在日朝鮮人の指導者がもう一ぺん思い直すべきときがきているように思います。  われわれは今南北両政権の支配下にあるのではなくて、日本の法律のもとに、日本政府に税金を納めて、日本の風俗習慣に従って生活を営んでいるのであります。そしてここにおける在日朝鮮人の最大の念願は、どうしたら自分たちの生活を確保し得るかという問題と、分割された自分の祖国がどうしたら一日も早く統一してくれるかということなのでありまして、決して南北に分れて戦っている本国の姿を日本に再現することではない。これは日本における朝鮮人指導者の皆さんがもう一ぺん深刻に考え直さなくちゃならぬ問題、つまりここではわれわれの政治的な活動は本来制限されているのでありまして、われわれが選挙権を持っているわけでも、被選挙権を持っているわけでもありません。われわれの代表を国会に送ることができるわけでもありません。ですから本来の意味における政党的、政治的な活動は、根本的に制限されているわけであります。ただわれわれは終戦後独立民族となった、しかもわれわれは今日本にいる。だから日本との関係、日本国民との親善関係をどういうふうに促進するか、そして同時にわれわれがよきお客さんであり、よき隣人であることを示すべきである。そしてそういう親善関係を促進しながら、みずからの生活を確保すべきである、そういう立地条件にあるのでありまして、ここでたとえば韓国の民主化を叫んだり、あるいは北鮮の公民化を主張してみても、何も南北両政権の支配下にあるのではないので、実にそれは観念遊戯にすぎない。あるいは韓国の旗を振り、北鮮の旗を振ることによって、振っている幹部連中は国会のオブザーバーに一なったり、あるいは北鮮の民族戦線ですか、その民戦の議長団になったりするかもしれません。しかしそれが一体六十万在日朝鮮人とどういう関係があるか、何の意味もない。しかもそういう動きというのは何も在日朝鮮人全体の意思を代表するものではない。ですから在日朝鮮人の指導者であるならば、在日朝鮮人が置かれている立地条件の上に立って、在日朝鮮人の一般意思に従って運動をなすべきである。ここで韓国の旗を振ってみたり、北鮮の旗を振ってみたって、何も得するところはない。むしろ在日朝鮮人をますます不幸のどん底に陥らせるだけである。つまりそういうわれわれの立地条件からすれば、われわれは朝鮮人として思想のいかん、政治的な立場のいかんを問わず、共通な立場にいるのです。ですからその共通の立場に立って、朝鮮人として団結し、朝鮮人としてその共通な運命を打開するよりほかに道がないのです。むしろ二つに分れてけんかするということは、とかく今までの歴史が証明しているように、一方が共産党のお先棒をかつぐようなことになったり、あるいは他方が、李承晩が排日を主張すればやはりそこでも韓国政府の趣旨に従わざるを得ないような状態にみずからを追い込んでしまったものですから、やはり何か排日的なことを考えるというのは実に僕は不自然だと思うのです。それは決して在日朝鮮人を代表するものでも、ほんとうの意思を代弁するものでもないのです。僕は在日朝鮮人の指導団体が非常にひん曲げられた観念遊戯を事とする団体であり、従って在日朝鮮人の要求をかなえられない状態に追い込まれていると思う。北鮮で何か言えばすぐ旗を振ってその指令に動き、韓国で何か言えばすぐまたその旗を振る。一体在日朝鮮人の特殊の立地条件なり、基本的な要求はどこへ吹っ飛んでしまうのでしょうか。そういう意味で在日朝鮮人のあり方は、今非常に深刻な状態に追い込まれておるので、指導者の皆さんももっと考え直さなければなりませんし、そういう状態では在日朝鮮人の問題は根本的に解決されない。われわれの交渉相手は日本政府であって、韓国政府や北鮮の政府ではない。ところが日本政府は一体どっちを相手にしたらいいでしょう。民団を相手にしようと思えば総連が文句をつける。総連を相手にしようと思えば民団が文句をつける。こういうことではみずからをますます不幸のぬかるみに追い込むようなものであります。ですから朝鮮人みずからが朝鮮人として大同団結する方向、思想的な自由は、日本は民主国家ですから、個人がどういう思想を持とうと政治的な立場を持とうと、それは各個人の自由であります。ですから、むしろ最大公約数の上に立って日本における在日朝鮮人の指導者が考え直すべきときであると、私はこう考えます。

大西正道日本社会党

○大西委員 あなたの南北朝鮮の平和的統一、しかるのちの中立化、この目的を達成するために日本としてはどのような役割を果すべきか、どのようなことをすることがあなたの考えておられる目的を達成するために役立つことであるか、こういうことを簡単に御意見をお聞かせ願いたい。でき得べくんば私は朝鮮の平和的統一のために努力したいという気持で一ぱいでありますから、あなたの御意見をお聞かせ願いたい。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 まことにありがとうございます。私は統一したあとに中立化するというのではなくて、中立化を前提としなければ統一独立が実現されないと申しておるのであります。つまり関係各国の安全保障につながる問題が、国際問題としての朝鮮問題なのであります。ですからその関係各国の安全保障につながる問題で関係各国の意見が一致しないと、南北統一総選挙は行われないのであります。ですから中立化をする、つまり、お互いの安全保障に寄与するような統一朝鮮はどうあるべきか、お互いのどっちの国の軍事基地にもならないということで妥協するよりほかに米ソ、日中の防衛上の利害関係を調整する道はないと思いますので、その中立化を前提としなければ、それで関係各国の意見がまとまらないと南北を通ずる統一選挙は行われない。統一選挙の方法は簡単だと思いますが、そんなことが問題ではなくて、どうすれば関係各国の意見を調整できるか、つまり中立化で調整するよりほかに道はないではないか。ですから私は日本が反共に踏み切って、北鮮、中共、あるいはソ連と対抗するようなそういう政策をとられるのは非常に不利だ、それは朝鮮の統一と独立をおくらせるものである。むしろ平和的な政策を、アジア先進国としての日本の自覚のあるところを、アジア諸民族を代弁し――三千万朝鮮人は、国内におる南北の同胞は、今南北両圧制のもとに何も言えない。平和統一の言葉さえ言えない、そんなことを言えば死刑になる、死刑の宣告を受けておるのであります。国内では統一運動は不可能であります。ですから私も日本で統一運動をやっておるのでありますが、要するに日本としてもしほんとうに朝鮮を愛し、朝鮮との善隣友好を促進したいと思われるならば、この三千万の願いをかなえさせてやって下さい。これが第一であります。李承晩を相手にして日韓会談が成功してみても何がどうだというのです。ますます北鮮と中共を敵に回し、そうして共産陣営全体を敵に回すことにしかならない。それが一体日本にとってどういうプラスになるのですか。私はどうもそこら辺がよく理解できないのでありまして、私は決して共産主義に賛成するものでも何でもない。むしろほんとうに朝鮮自体の歴史的な発展段階は朝鮮の民主化にあると考えておるものでありまして、今までの専制的な過去数千年の歴史から、ほんとうに朝鮮人自体がみずからのルネッサンスを持ったことがない。ほんとうの人格の自由と平等をみずから享有したことがない。常に専制に押えられ、抑圧された歴史しか持たない、強国にいじめられ、苦んだ歴史しか持たない、ほんとうに人間として解放され個性の創意を伸ばしたというそういう歴史を持たない。ですから私がほんとうに念願しておるのは、ほんとうに朝鮮人みずからのルネッサンスを持たせるような時代を作りたい。これがほんとうに朝鮮人を解放することになるのです。ですからそういう意味でまず中立化を前提としなければ、私としては日、米、中、ソの国交上、利害関係を調整する道がないと思うので、それを前提としていただきたい。そうして日本がどうすればいいかということは、その前提を、もし日本が――私は反対される理由はないと思いますけれども、賛成していただけるならば、日本は国連にも加盟しておることでありますし、それからよく朝鮮問題は朝鮮人にまかせろといいますが、朝鮮問題を朝鮮人にまかせるということは、南北統一総選挙を行なって、朝鮮人民がその持っておる主権を行使することなのであります。これが要するに朝鮮問題を朝鮮人にまかせることなんです。ところが、その朝鮮問題を朝鮮人にまかせる段階にまだ来ていないのでありまして、朝鮮問題を朝鮮人にまかせるためには、どうしても関係国の意見の一致を見なければならない。私がそういうことを一人でわめいていましても、私の力は実に微々たるものでありまして、限界がある。皆様がそれに賛成して下さるならば、どうぞアメリカに対して忠告していただきたい。そして中国やソ連に対しても、どうも朝鮮をこういうふうに分割しておいては、いつまでも不安でしょうが、南北のこの次の衝突が日中の衝突にならないとは限らない、こういう不安な状態でお互いに生きるのはどうも困るから、一つ朝鮮を中立化することによって朝鮮の統一を達成しようじゃないかということを、責任ある皆様が米、ソ、中国に舞台裏で交渉されて、そういうことを推し進めていただきたい。それから特に今後の両国民の親善関係を思うときに、在日朝鮮人に対する皆様の政策をもっとしっかりしたものにしていただきたい。あまりにも傍観的であり、あまりにも無関心過ぎるように思われる節が多いので、在日朝鮮人がほんとうに日本人と仲良く暮せるように、まず韓国の国民、朝鮮内にいる国民との親善を論ずる前に、日本国にいる朝鮮人と日本国民がどういうふうに仲良くできるかという点を、もう少し考えていただきたい、そういうふうに思います。

大西正道日本社会党

○大西委員 日本が反共の陣営に踏み切るということが、結局あなた方の念願とは反対の結果をもたらす、こういうことでありまして、これは私どもも同じような考えを持っております。私どもの考えは、わが日本の将来の方向は、米ソのいずれの陣営にも属さざる中立的な方向が是なりと、こういうふうに考えております。この点につきましては、あなたのお考えと私は一致するわけであります。  あなたに対する質問は、もう一つだけであります。それは北鮮の帰還の問題をどのように考えられるか。私どもは、これは人道的な立場から、生まれ故郷がどこであろうと、親戚がどちらであろうと、本人が選ぶところに帰すのが人道的な問題だ。人道的な立場という以上、政治的な考慮を排除してなおその立場を貫くという立場が、人道的な立場だと思うのであります。この点について、詳しくは要りません、簡単にあなたの御所見を聞きたい。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 それは人道的な問題であります。しかし、同時に政治的な問題がからんでいるのでありまして、どっちに重点を置くかということを判断するのは、日本政府自体だと思います。それは国際赤十字社がすでに中国にしていると同じでありまして、つまりそれを、国連の人権宣言に沿う純粋な人道問題として扱うべきか、それとも、その背後にある、それにからんでくるいろいろな政治的な問題をどうするかということは、私よりも、むしろ日本政府当局が慎重に考えるべき問題だと思います。

大西正道日本社会党

○大西委員 金英俊さんにお伺いいたしますが、あなたの御意見では、韓国人の血をもっていわば共産主義の侵略を阻止したんだ、もしあの戦いなくんば、日本はもっと危険な状態にある。人類の敵、共産主義、こういうお話でありました。私どもは、そういうあなたのお考えには賛成をしない立場をとっておるのでありますが、私がここで聞きたいのは、人類の敵、共産主義、国際共産主義と、こう言われるのでありますけれども、一体――観念的ではございませんよ。現実に今国際共産主義の被害というものを、どのように人類の敵というふうにきめつけられるのか、具体的な体験でよろしいですが、聞かしていただきたいと思います。

金英俊在日大韓民国居留民団中央総本部事務総長

○金(英)参考人 私は、共産主義者たちが世界の各国において、侵略あるいは侵略を企てておる現実については、津々浦々まで行っていないのでよくわかりませんが、少くとも六・二五のあの動乱以後、共産主義政策によってこうむった南韓二千万の被害者の一人として、まことに憎悪の念を禁じ得ないのであります。一つの例を申し上げますれば――政策面における具体的な実例は、時間の関係上はっきり申しませんが、御存じのように韓国は、昔から貧乏な国であります。現在もなお貧乏な国であります。御存じのように六・二五のあの動乱のときに、共産軍が、釜山一帯をのけて、ほとんど占領した。その占領された地域は、長いところは半年、短かいところは一カ月間、共産主義に基く政策あるいは政治が行われたのでありますから、共産主義者たちが叫んでおることが事実であるとするなら――現在その現われておる現象としまして、釜山一帯の共産軍が入っていないあの地域は、なお共産主義がどんなものかということをあこがれておる人も、中にはあるのでありますが、共産軍が占領した地域においては、占領されていない地域よりももっと共産主義を憎んでおります。一口に言えば、経験をした人がもっと憎んでおる。経験をしない人は、あるいは理屈上、あるいは理論上、いいだろうという人がおったかもしれませんが、経験した人はもっと憎んでおるということが、その証拠として、火を見るより明らかである。しかも占領してからの民衆に対する政治がどんなものであったかは、一々例をあげませんが、民衆のこうむったその被害というものは、口に表わせないほどの残虐であったということについて、私は一口に人民の敵だということを申したのであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 前の金三奎さんに申し上げましたように、北鮮の帰国の問題でありますが、あなたも、人道的な立場だ、国際正義によって云々と言われて、結論は私どもの考えとは違って、北鮮に帰さないことが人道的であり、国際正義だというふうな御意見だと私は聞いたのでありますが、これは、私は今申しましたような意味で、希望する国に帰すということが人道的な立場だと思う。それで人道問題であり、政治問題であると言われるが、政治問題によって左右されるようならそれは人道問題じゃない、政治問題だ。人道問題というものは、そういう政治問題を排除してなお第一義性を持つべきものが人道的な立場だと私は考える。こういう意味で、日本政府がすでに人道的な立場から大村の収容所から国内釈放をいたしました。これに対して、本国の北鮮に帰していこう、そういうやさきに李承晩政府の方から申し入れがあって、これが宙ぶらりんの形で中絶しておるのであります。今回さらに大量の帰国希望者が出ておりますが、それはどういう意図であろうと、私はやはり本人の希望するところに帰すのが当然だと思う。それに対して妨害をするとか、要らざる揣摩憶測してこれを中傷するということは、私は問題の性質上好ましからざるものだと考えるのでありますが、この点についていかがでしょうか。

金英俊在日大韓民国居留民団中央総本部事務総長

○金(英)参考人 さきも概略本件について申し上げたのでありますが、私らの考えておる人道的という問題は、先ほど申し上げるように外国に来ておるわれわれの立場、あくまでも第一番に考えますのは自分の生まれた故郷に帰りたい、しかも自分の親戚のおるところへ帰りたい、もし親戚がおらなかったら、あるいは友人でも知っておるところへ帰りたいというのがこれは人間の本能だろうと思うのです。日本に来ておる六十万のその九七%に相当する同胞が南韓出身である。これはただわれわれが口で言うだけではなくして、日本政府当局の調べ上げた統計に基いてはっきりしておるのであります。そうしてこのたび北韓集団帰国の問題が突如として現われて参りました。これは先ほど申し上げたように一がいに言いますと自分の帰りたいところに帰らすというのが人道のように聞きとれるかもしれませんが、これはあくまでも先ほど金三奎参考人からもお話があったように、政治的な配慮を含んだ一つの陰謀であって、御本人たちとしても真実に北韓に帰りたいという人はないのであります。全然ないとは申しません、幾人かはそれはおるかもしれません。最近の教字から見ますと、今総連が一万七千三百なんぼという数字を新聞紙上に発表しておりますが、私らの手元にあるはっきりした数字では、現在なお二百人前後しか確実なのがありません。もう一つは北韓においてほんとうに受け入れ態勢を整え、日本におる同胞を迎え入れる準備ができておるのかどうか、この問題はわれわれも慎重に検討しなければならぬと思う。ここで名前は申しかねますが、最近北韓から日本に入ってきた重要な人物と会ったことがありますが、この人らの話を聞いてみると、ねらいは先ほど申し上げたように、もしか一人でも帰ってくれば中共軍の引き揚げたあと埋めをする、住宅と職業が果して保障されるかどうかという問題はまだできていない。ただ政治的に韓日会談を妨害する手段としてとられておるのであるということを、その本人の口からもはっきり聞いております。もう一つここで実例を申し上げますと、先般樺太から相当な韓国人が日本に帰ってきたのでありますが、その人らから実情を聞いてみると、樺太にはソ連からの指導者、あるいは北韓からの指導者が相当来て、現地で思想教育をし、各労働組合に入って干渉をしておるのであります。北韓の事情が、朝総連が叫んでいるようにほんとうに極楽のような国であるとするなら、樺太にいる労働者が日本に引き揚げないで、近いところ、しかも北韓の指導者が来て指導を受け、教育を受けている、そこへ行かなければならない。われわれも当然北韓に引き揚げるだろうということを予想しておったのでありますが、それをけって日本に帰ってきた実例、これから考えてみましても北韓の実情、あるいは共産政治下の社会情勢がどうであったかということは、私は北韓に行ったことはありませんけれども、樺太に行って帰ってきた労働者の話を聞いてみて十分に立証されると思うのであります。しかも先ほどちょっと説明申し上げたのでありますが、帰る人に対して、あなたはいつ帰ってもいいからとにかく申し込みなさい、申し込んだら千五百円やる、自分が帰国する、その申請をするのに千五百円の金をもらって判こを押す、その奇形的な実例、これは何を意味するかということは、ここで僕が説明申し上げなくても、その目的が那辺にあるかということは、時間をかけて研究した場合明らかになってくる問題だと思います。

大西正道日本社会党

○大西委員 今のお話で北から南へ五百万越境してきたということでありました。私聞き違えでないと思いますが、この五百万という数字は分れてから今日までの数ですか、またそれは何に基いて五百万ということをおっしゃるのか。大体そういうふうなことだということですか。私どもはこの数字については正確な資料がほしいのです。また一方的に北から南ばかりではなしに、南から北へ行ったのはないのか。まずこの五百万という数字をどこからお出しになったのかちょっと聞いてみたいと思います。

金英俊在日大韓民国居留民団中央総本部事務総長

○金(英)参考人 この南に逃げてきた五百万の数字は、韓国の国勢調査に現われた数字であります。これは終戦から今までの越南した数字でありますが、国連軍が北鮮から撤退するときに一緒に撤退したのが大量越南したときでありますが、今なお、毎月の統計から見ると何百何千という同胞が――年寄り、女はあの鉄条網を抜け出すことができませんので、若い青年、あるいは壮年層がおもですが、その数字は先ほど申し上げた通りに韓国の国勢調査、特に南韓に越えてきた人らをあっせんする役所が別にありますので、そういうところなどの統計に基いて発表された数字であります。

大西正道日本社会党

○大西委員 私はむしろ反対のことを聞いているのでありますが、あなたの御意見も参考にさせていただきりましょう。  もう一つあなたに対して質問いたします。それは日韓会談を早くまとめ上げなければならぬ、こうおっしゃったのであります。私もそう点では同感であります。しかしなかなかまとまらないのが現状であります。その一番のガンは李ラインの問題であります。これを認めるか認めないか、これは何と申しましても他の問題に優先しての問題なんですが、私どもの方の国民感情を申しますと、これはとうてい認められない。自民党政府がどういう妥協をするか、それは知りません。しかし国民の感情は、ここではっきり申しますが、この李承晩ラインを認めるところの妥協ということはあり得ないということです。そうしますと、あなたがこの日韓会談を早くまとめたいという念願を非常に力説されますと、韓国側としてはこの李承晩ラインの撤回というようなことについて何らかの方法と見通しがございますか。あなたの立場は、当然あなたは向うの政府の責任者ではないのですからそういうことは申せないかと思いますが、韓国民の感情としていかがでございましょうか。

金英俊在日大韓民国居留民団中央総本部事務総長

○金(英)参考人 この平和ラインの問題につきましては、現在両政府の代表がいかなる形で臨んでおるかはわれわれはよく知らないのであります。ただ終戦後十三年の間、しかも同じ立場に置かれておる日本と韓国が、こういう不自然な形でいつまでも長引くということは、両国のためによくないように考えておりますので、われわれ在日六十万がこぞって日韓会談の早期妥結という点で民間外交その他の面について推し進めておるのであります。今申しました平和ラインの問題については、形のいかんは別としまして、お互いに感情論にとらわれず、実際両国がいかにすれば将来の国民のための幸福をもたらすかということについて話し合いをしておることだと思いますし、今後も継続することだと思いますが、その具体的な内容については一民間人である私が触れるべき問題ではないので、願わくは一日も早く妥結し、正常な隣国としてつき合っていきたい、こういうように考えております。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 大西君、だいぶ時間が経過しましたし、あと床次君の質問もありますので御協力願います。

大西正道日本社会党

○大西委員 中保さんに二間だけ質問をして打ち切りましょう。  あなたの御意見を非常に興味深く聞きました。李承晩政権が韓国においてどういう支持を受けているかということ、李承晩政権と韓国民との間は必ずしもぴったりしていない、こういうお話であります。私どもはよくその点は考えなければならぬと思うのであります。どこかの国にもそういうのとよく似た例がございます。  さて、選挙に際していろいろと弾圧をやったということ、それから言論の自由ということに対して非常な取締りがあるということもよくわかりました。私の一つの希望は、李承晩に対する韓国民の批判がもしありとすれば、たしか年明けての一月の参議院の選挙にそれがかなり端的に現われてくるんじゃないか、それが韓国の勢力分野に対してかなりの変動を来たすのではないか、こういう期待を持っておるのであります。果して憲法に規定された参議院の選挙が行われるような見通しなのかどうか、また何か勝手な改変をしてこれを引き延ばそうとするのか、私はこの参議院選挙に期待を持っているだけに、一つこの辺の事情を聞かせていただきたいと思います。

中保与作朝鮮問題研究会理事長

○中保参考人 ことしの一月の参議院議員選挙規則によって、一年内に参議院の議員の選挙が行われることになっておりますが、韓国の憲法によりますと、参議院が開設せられると現在の副統領、すなわち張勉副統領が参議院の議長を兼ねることになっておるのであります。御承知の通り張勉副統領は野党である民主党の最高幹部でありまして、この張勉副統領が参議院議長を兼ねるということは、現在の李承晩政府としては好ましからざるものと考えておられるようでございまして、何とかほかの法律的な方法でこれを阻止しようとしておられるようないろいろな報道もございます。ただ予算面を見ますと参議院議員に関する選挙の予算は計上されておりまするけれども、実際は何らかの法律的な方法でこの選挙の延長をはかっておられるやに聞いております。

大西正道日本社会党

○大西委員 日韓会談進行中に岸首相の特使として矢次某という人が行って、いろいろな風評をまいておるのでありますが、あなたはこの矢次特使の問題につきまして、あなたのお立場から、こういうふうな黒幕外交と申しますか、こういうものが果して日本の対韓外交として有利であるかどうか、一つお考えを聞かしていただきたいのであります。かなり具体的ないろいろな問題も私は聞いておるのでありますが、一つ聞かしていただきたいと思います。  もう一つ異質の問題でありますが、この日韓交渉は六年間もやっても一歩も前進しない、それはやはり一番の問題は李承晩ラインの問題なんです。だから、これと平和条約による朝鮮の独立に関する事後処理の他の万般の問題と切り離すべきが当然なんです。それをチャンポンにしておるからいつまでたってもこの解決がしないんだというので、この委員会におきましても、首相、外相に対して李承晩ラインの問題は国際的な紛争でありますから、当然国連に持ち込んで、これを平和的な解決の手段に訴えたらいいのじゃないか。世界の世論の前でこういう李承晩ラインというものが認められるか認められないか。司法裁判所にはこちらが提訴しても向うが応訴しないから、そういう司法的な判決は出なくても、国連憲章三十四条によって、紛争の平和的処理というこの問題で世界の世論の前に出せば、おのずから帰趨が明らかになると思う、こういうことを私はかねがね言っておるのであります。  今金さんも申されたように、あなたも申されたように、この日韓問題は非常に重大な問題でありながら、この日本の外交の問題としては何かタブーにして触れないようになっている。まことに私は残念なのでありますが、そういう意味で私は絶えずこの問題についてしゃべっているのであります。あなたはこの問題について、国際法学者でもありませんが、十分の深いうんちくでもって、こういうところに一つの解決の道を見出すべきじゃないかと思いますが、いかがでありましょうか。  以上、矢次特使の問題に対して、もし矢次さんについてあなたもお知りの点があれば遠慮なくわれわれの蒙を開いてもらいたい。それから国連の持ち込みの問題、この二つで私は終りたいと思います。

中保与作朝鮮問題研究会理事長

○中保参考人 どうも蒙を開くという不遜なことは私にはできませんが、第一点の矢次君の問題は、実は矢次君から私が告訴を受けている現状ですからなるべく触れたくないと思います。ただこの日韓国交に及ぼす影響という点から一つ、二つ申し上げますと、矢次君が向うで声明を発しました。つまり伊藤博文のやったことが非常に間違いであり、岸首相はこのあやまちの償いをしたいと強く感じておる。日本の軍部は非常に大きなあやまちを犯したという意味の声明を出しましたが、これに対して衆議院における岸首相の答弁は、私はさようなことを言った覚えがないし、また矢次君としてもそういうことを言うはずがないという意味のことを言っておられます。これは速記録を見ましたから間違いないと思いますが、これらのことから韓国の間では、しからばあの首相特使というものがはるばるやってきて、出まかせを言ったのであるかというふうな考え方をはっきりと言っている者があります。また矢次君が向うへ行きまして、自分は親韓第一号と称しておりましたが、実はわれわれ日本人の大多数が親韓派であって、一刻も早く韓国と手を握りたいのに、われこそは親韓第一号というふうなことを言うと、あたかも他の多くの日本国民は韓国と手を握ることを何らかきらっておるのではないかという印象を与えやせぬかという気づかいもあったのでありますが、ここにちょうど金三奎さんの主宰しておられる雑誌の東亜日報の取材第一部長の書かれました記事があります。金三奎さんの編集しておられることでありますから、翻訳は絶対に間違いないと私も信ずるのであります。非常に長い文章であって、その中にはいろいろ矢次君個人にわたる記事がございます。これは私の口から朗読することを省かせていただきまして、ただ岸首相との関係だけを申し上げますと、かようなことを書いております。「もし岸首相が以上」――以上というのは矢次君個人のいろいろの問題です――「を承知で矢次氏を派遣したものなら、われわれは岸首相の韓国に対する認識力を疑わねばならないし、韓国側で要請したものなら韓国側の一大失策といわざるをえない。ともあれ、外務省ばかりでなく、岸首相の率いる与党内でも人気のない矢次氏の訪韓に、柳泰夏公使が率先して道案内を買ってでたことにいたってはただただあきれて物がいえない。」という記事が載っております。東亜日報の取材部長が書いたのであります。かような見解が韓国の一部にもあるということで、一つお許しを願いたいと思います。 第二の李ラインの問題でありますが、衆議院における藤山外相の演説を見ましても、自分たちは李ラインはあくまで認めない、また認める立場で日韓会談に臨んでいないということを言明しておられます。同時にまたこの二十四日にソールへ帰られました。張けい根漁業及び平和ライン委員会首席委員が、ソールの空港で、もしも日本がこの平和ラインを認めることを拒否するならば、日韓会談はあくまで進展せぬということを新聞記者団に言明しておられるのでありますから、この点から考えますと、この李ラインをめぐって日韓会談が容易に話がまとまらないんじゃないかと思うのであります。ただ私どもがいつも念頭に浮べますのは、李ラインが李承晩大統領によって、たしか昭和二十八年の一月十八日だったと思いますが、海洋宣言の名によって発布せられた直後、大日本水産会の鍋島さんら三名の方が、その年の二月の初めにソールへ出かけられまして李承晩大統領に会見した。そのとき李承晩大統領のお答えは、この李ラインというものは、本来魚族保護のためのものである、漁業協定が締結されるまでの暫定的なものであって、漁業協定さえできるならば、李ラインの撤回もしくは修正をする、それまではあなたの方で李ラインを守ってくれというお話であったそうであります。もちろんこの大日本水産会の三代表というのは、大日本水産会という団体の代表にすぎないのでありまするが、しかしこれはそのときのたしか一月の初め、五日だったと思いますが、クラーク軍司令官のあっせんで吉田首相が会見したときに、大日本水産会から会見を申し入れ、それでは京城で会おうという話ができたのでありますから、李承晩大統領といえどもこのときの話は十分御存じのことと思うのであります。そういう見地から考えますと、私はこの魚族保護の見地から十分に話し合いがあるかと思いますが、李ラインそのものの本質の問題になりますと、現にこの二月から四月までジュネーヴで開かれました海洋法国際会議でも、各国の沿岸を、画一的に領海をきめようという話がついにまとまらなかったという事実から見ましても、幾多の論争があるかと思うのでございます。ただしあのときには、たとえばインド、メキシコ案が、たしか三海里以上十二海里以内で、各沿岸国が自由に領海を定めることにしてはどうかという案すら通過しなかったのであります。しかしこの当時の提案が十二海里を極限としておるのでありますから、李ラインのごとく、最も遠いところは百九十九海里に及ぶというこの広範なる公海の水域に主権宣言をして、他国の漁船の入ることを拒む、入るものを拿捕するということは、今日の国際法上の観念から果してどうか、私はそういう点から李ラインというものに承服できないのであります。でき得るならば魚族保護の見地に立って、双方の漁業の繁栄をはかる道がないかと、いろいろ腐心しておるのでありますが、具体的な案は、まだこの席で申し上げますほどまとまっていないのであります。ただ大西先生がお話しになりましたように、このようなことでいつまでも対立しておっては、はなはだおかしな結果を招くばかりでなく、大体この沿岸の領海という問題は、その国が独立した後に話し合いをすべきではないかと思うのでありますが、日韓両国の間に――まだ独立国としての日本が承認もしていない際でありますから、もしも基本条約が締結した後にこの話が出るならば、あるいは会談の爼上に乗せてもいいかもしれませんけれども、基本条約のできない前に平和ライン委員会というものが日韓会談の爼上に乗せられておるということは、いささか順序が逆ではないかと考えるのでございます。  そこでこの当面の解決策として、大西先生は国連に提訴してはどうかというお話でありますが、国連憲章などについての解釈を私が申し上げることは、はなはだ私として不遜でありまするけれども、紛争を未然に解決するという一つの方法として、国連がこれを調査するあるいは安保理事会などに報告するというようなあの規定などを見ますと、もしも日韓両国の間にどうしても話し合いがつかないならば、あるいはそれがいろいろの紛糾をもたらす危険があるならば、お話のように国連に提訴することもまた一つの方法ではないかと考える次第であります。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 床次君。

床次徳二自由民主党

○床次委員 私は今日北鮮に帰還したいという集団の希望のありますことを聞いておるのでありますが、この問題に関して伺ってみたいと思います。  金英俊さんからは先ほど大体伺ったのでありますが、あと金三奎さんと中保さんに簡単に向いたいと思います。元来北鮮帰国の問題については、二通りの問題がある、これは大村収容所に収容されておる人の北鮮帰還の問題、それから在日者の帰還の問題と、二通りの問題だと思う。従って私、一括して北鮮帰還の問題が人道問題なんだというようなことはてんで考えておりません。人道問題として考うべきケースもあるけれども、そうでないのもあると思っております。この点に関しては、私は御異存ないんじゃないかと思いますが、お尋ねいたしたいのは大村の収容所に収容されておる人たちでありまして、本来は南鮮から来て北鮮に帰りたいという者がだいぶあるのではないかと思うのでありますが、そういう傾向があるかないか、お二人からそれぞれ承わりたい。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 私、その事情をよく存じませんけれども、韓国に帰りたくない、それではどっちかを選べということになると、韓国に帰ったら殺され、あるいは非常に不遇な状態に陥るということを憂えて、北鮮を選んだ人も相当いるんじゃないか。だからほんとうにどこに住みたいのか、もっと公正に聞かないとほんとうのところはわからないのであります。つまり本心は日本にいたいのか、あるいはよその国へ行きたいのかということになると、また問題は違ってくるんじゃないか。韓国か北鮮かということになると、韓国に行ったら殺されるから北鮮ということになった人もいるんじゃないか、私はそういうふうに思います。

中保与作朝鮮問題研究会理事長

○中保参考人 帰国を希望する人の国いかんということは、あまり問題にならないんじゃないかと思います。これは人権に関する世界宣言の第十三条の第二項によりますると、ただに自分の居住する先を選ぶ自由を持つばかりでなく、また自国からも離れる自由を持っておるのでありますから、彼がかって韓国で生まれた、あるいは韓国の国籍を持っているという理由をもって北鮮へ帰ることを拒むというのは、むしろこの人権に関する世界宣言に反するんじゃないかと思うのでございます。  なお人道上の問題についてのお話でございましたが、この一月以来大村収容所に収容されておりました北鮮帰国希望者の三名の国内仮釈放については、日本当局はたしか人道上の理由を振りかざしておったようでございます。  なお帰国希望者が、最近、松本、鈴木両官房副長官に陳情いたされますると、両副長官は、これは人道上の問題であるから十分考慮するという返事をしておられたそうであります。ただ私どもここに最も注意しなければならないのは、先ほど金英俊さんのお言葉もありましたが、果してほんとうに北鮮へ帰る意思を持っておるのかどうか、それが一つの問題であります。もしもほんとうに帰国する意思を持っておるならば、これは人道上当然帰すべきではないかというのが、私どもの意見でございます。ただこれがゆえに、先ほど申しました大村収容所の三名の国内釈放につきましても、韓国側、民団側でも非常に激高されて反対運動を起されましたが、もし大量の人が北鮮へ行くようなことになるならば、おそらく猛然反対をせられると思います。金英俊さんの言葉を繰り返すのはどうかと思いまするが、これは私は公平に見まして大体北鮮側、総連側は去る五月におきまして、長期滞留ということを決定せられたはずであります。それが八月以来突如として今度集団帰国ということをいわれ出したのは、北鮮の政策の決定によったのでありまして、自来金日成首相、南日外相などがその声明をしておられます。これは北鮮における一九五七年から六一年にわたる第一次五カ年計画を促進しようという計画の一つでありまして、現に平壌の総合工場なり、あるいは黄海製鉄所なり、城津の製鋼所なりでは、一年半もしくは二年の計画繰り上げ決議をしておるような次第でありまして、非常にこの完成を急いでおる。しかも一方先ほどもお話がありましたように、ことしだけでも二十五万の中共軍が引き揚げた。この中国人民義勇軍は、これまで北鮮の経済建設にも大いに力添えをしていろいろ働いておったのでありますが、この人たちが行ったから当然人手が不足する。しかも第一次五カ年計画を推進するということになりますと、いよいよもって人が要るわけでありますが、その見地から北鮮の方で大いに呼びかけているのだと思います。これはしかし人道の問題と切り離すべきが当然でありまして、そのために起るいろいろな政治的問題は、岸内閣において人道上の見地から仮釈放などせられておるのでありますから、岸内閣がしかるべく処置せられるべきものではないかと考えるのでございます。

床次徳二自由民主党

○床次委員 北鮮帰還が人道上の問題と解すべきものもあり、解すべからざるものもあるということを明らかにしたい、そういう意味で私は御質問申し上げたのです。政府といたしましても、全部が人道上の問題に関係しておるという趣旨において今まで申しておるものではないということが明らかになればけっこうなんです。  なお現在運動の対象になっております北鮮の集団帰国でありますが、ただいま中保さんから大体一通りの御説明をいただきましたが、金三奎さんはどのように見ておられますか、伺ってみたいと思います。

金三奎コリヤ評論杜社長

○金(三)参考人 別に変った意見はございません。大体基本的には今中保さんが申されたことと同じだと思います。大体そういう方針のもとに帰還を呼びかけておるのじゃないかと思っております。

床次徳二自由民主党

○床次委員 ありがとうございました。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 参考人の皆さんにごあいさつを申し上げます。長時間にわたって有益な参考意見を承わりましてありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十七分散会      ――――◇―――――

国会会議録検索システムで原文を見る ↗