外務委員会 第7号
- 発言数
- 108 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1958/10/22
会議録
○櫻内委員長 これより会議を開きます。 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部 アイルランド連合王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、原子力の 非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の 締結について承認を求めるの件及び原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本 国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求 めるの件、以上三件を一括して議題といたします。政府側より提案の理由の説明を求めます。竹内政務次官。 ――――――――――――― ―――――――――――――
○竹内(俊)政府委員 ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件並びに原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の三件につきまして提案理由を一括御説明いたします。 政府は、昭和三十二年七月国際原子力機関に加盟し、同機関の理事国として原子力の平和利用についての国際的協力及び管理機構の整備発展に積極的に努力して参りましたが、一方、すでに昭和三十年十二月二十七日米国政府との間に締結したいわゆる原子力研究協定に基いて、わが国最初の原子炉たる東海村日本原子力研究所のウオーターボイラ一型第一号灯の燃料を米国から賃借し、また最近においては、国際原子力機関に国産炉用天燃ウランの供給を申し入れる等、わが国における原子力平和利用の研究開発の促進に努力してきた次第であります。 しかるところ、その後さらに英米を初めとする欧米各国における原子力発電計画の進展、わが国における原子力発電の見通し等の諸要因を慎重検討の結果、米英両国と動力用原子炉開発の分野での協力を推進することが適当であるとの結論に達し、昨年九月よりかかる協力を実現するための協定の締結に関する交渉をそれぞれ米国及び英国政府との間に行いました結果、本年六月十六日、日米協定についてはワシントンにおいて在米朝海大使とロバートソン国務次官補及びストローズ原子力委員会委員長との間で、また日英協定については、ロンドンにおいて在英大野大使とロイド外務大臣との間でそれぞれ署名が行われた次第であります。 なお、日米協定につきましては、署名後さらに同協定の一部を改正することにつき両国政府間で意見の一致を見、ワシントンにおいて折衝が行われた結果、十月九日同地で在米朝海大使とロバートソン国務次官補及びマッコーン原子力委員会委員長との間で改正議定書の署名を行なった次第であります。 日英、日米両協定は、それぞれ両国か第三国とすでに締結した同種協定とほぼ同様のものでありますが、わが国は、両協定により原子力平和利用の基礎的研究及び動力用原子炉の開発利用の両分野で、燃料を始めとする重要な、原子力関係資材の供給を受け、情報を交換する等の協力を両国との間に行うことができるようになり、また、原子炉の供給等についての民間同士の間の取引も可能となります。また、議定書につきましては、日米協定署名に先だち、同協定に基いて米国政府が日本から買い戻す余剰副産特殊核物質が平和的目的にのみ使用されることについて米国政府から覚書を受領してこれを確認しました経緯がありますところ、かかる米側の平和利用を同協定中に明記すること等三点について同協定を改正せんとするものであります。 これらの協定及び議定書が発効すれば、わが国は、原子力の平和利用の研究開発、ことに動力用原子炉の開発利用に向って大きな一歩を踏み出すことができるようになると信じます。原子力の平和的利用ことに原子力の発電のための実用化は、資源の乏しいわが国の将来にとってはかりしれない意義を有するものでありますので、これらの協定及び議定書の発効のため必要な手続をできる限り早急にとりたいと存じます。 よって、ここにこれらの協定及び議定書の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、以上の三件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
○櫻内委員長 ただいまの三件についての質疑は、次会に譲ることにいたします。 ―――――――――――――
○櫻内委員長 国際情勢等に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
○戸叶委員 私は主として安保条約の問題につきまして、政府の客観的な国際情勢を見た上での基本的な態度というものをまず伺って、その改定内容について数点触れてみたいと思う次第でございます。 まず安保条約の改定ということは非常に大事なことでございまして、国民は非常な不安を持って、どういうふうに改定されるのだろうか、むしろ名を取って実を失うのではないかというようなおそれさえ持っている者が多いのでございまして、この際に一日も早く廃棄の方向へ持っていくべきではないかというような世論も、強くなってきているわけでございます。今回政府が突如として警職法というようなものを出されまして、言論とか行動というようなものをある程度制圧し、そうしてまた警職法の方に国民の目を向けながら、この安保条約を改定していくんじゃないかというような危惧さえも抱いているわけでございます。そこで私どもとしては当然早く廃棄すべきであるという意見を持っているわけでございますけれども、政府がどうしても安保条約を改定しなければならないということになるならば、やはり最も日本にとって安全な形での安保条約の改正というものがなされなければならないと思うのでございます。 そこで、もう日米会談というようなものもきょうは二回目が開かれるというようなことも聞いているわけでございまして、こういうふうにどんどん政府との間に話が進められていくわけでございますけれども、こういう会談に臨まれる藤山外相としては、おそらくいろいろな問題について、基本的な線というものはもうはっきりと持っていらっしゃる、こう思うわけでございます。そこでこうした経過の報告というものは、一体いつ国会になさるのであるかということを私は伺いたいのです。もちろん外交上の問題であるし、これから審議をしていく、こういうふうにお考えになるとするならば、まだアメリカ側の意図するところがよくわからないから、だから話をしているうちにどんな問題が出されるかわからない、その問題が日本の考えていた基本線と違った場合には、いろいろ考え直さなければならない、こういうふうな想定をなさっての交渉をしていられるのか、それとも大体の話はお互いに腹を割って、アメリカでも考えを言ってきているんだから、もう同じだという気持で臨まれているのか、この点を一応伺いたいと思うのでございます。
○藤山国務大臣 御承知のように、また御報告申し上げましたように、ダレス長官と私とのワシントンの話し合いというものは、安保条約改定の日本側の気持なり要求なりをいたしたわけであります。これに対してワシントンで問題に入って討議をいたしたわけではないのであります。先般、東京で外交ルートを通じて話し合いをしようということになりまして、第一回マッカーサー大使と会いました。これは会議の初めのやや形式的な顔合せというようなことであります。一応前提としてワシントン会談後のデビューをいたしたわけであります。その後、マッカーサー大使も病気をして休んでおられましたので、会見する機会がなかったわけでありますが、本日の午後四時からマッカーサー大使と私と会うのでありまして、これがまず実質的な問題を扱う最初の会合になろうかと思うのであります。私といたしましては、こちら側の言うことを相当ワシントンで向う側にはっきり言っておりますので、それらに対するまず米国側の反応を十分聞きました上、問題の扱い方を進めて参りたい、こう思っておりますので、実質的な非常な深い討議にはまだ入る段階ではないと思いますが、きょうはできれば時間の許す限り、アメリカ側の私の提起しました問題についての一応の考え方というものを聞いてみたいというのが、私の考え方であります。ただマッカーサー大使が出て参ります前に打ち合せをいたしておりませんので、大使がどういう意図で参りますか、これはまだ存じておりません。会談の後になりますが、しかし大体まず順序としてはそうした順序で進めていくことになろうか、こう思っております。
○戸叶委員 アメリカ側の反応をきょう大体見た上で、日本の態度をいろいろ討議していくということでございますが、大体においての日本の基本的な態度というものはきまっているわけだと思います。そこでもしもアメリカ側の申し入れといいますか考え方というものが、日本の考えと多少なりとも違うようなことがあった場合に、やはり日本としては当然日本の考え方を譲らずにどこまでもその線を推し進めていって、もしもそれが相一致しないというようなことが起きた場合には、安保条約をそのままにしておかれるのですか、それともどういうふうな形をとられるのですか。
○藤山国務大臣 安保条約改正に対します日本側の希望と申しますか理由と申しますか、そうした点は相当私は申し述べたつもりであめりまして、その上に立って話し合いをしようということをアメリカ側も回答をいたしておるわけでございます。それで外交ルートで交渉をしようということになっておるわけであります。従いまして、改正に対する向う側の考え方というものは、むろんある程度日本側の考え方をくんだ上での向う側の処置だ、こう思っております。しかしこうした大きな問題になりますと、むろん実際の交渉に入って参りますと、意見が食い違うところも出て参りましょうし、あるいはお互いにいろいろ話し合ってみて理解する点も出てくると思うのでありまして、そこいらの点は今一がいに、それであるから全然話し合いをしてみたら食い違ってしまうとは、私は言えないのではないかと思っております。しかし大きな問題でありますから、いろいろな点でもって相当議論を尽さなければならぬということはあると思うのであります。むろんわれわれとしては、何が何でもアメリカの言うことを聞くというつもりでこの会談に臨んでおりませんので、われわれの主張すべきところはやはり強く主張して参らなければならぬ、こういうふうに思っております。
○戸叶委員 岸首相あるいはまた外相が、自由主義陣営の一員としてこれを擁護するということをよく言われておりますけれども、こうした自由主義陣営の一員としての擁護する立場に立つのと、それからまた日本人として日本の民族と国土の保全を擁護する立場に立つ、つまり日本の国土、日本の国民を擁護する義務というものとを、一体どちらを重要に政府は考えていられるのでございましょうか。なぜ私がこういうことを言うかと申しますと、日本が危険な安全保障条約というようなものを維持する限り、わが国というものは戦略的な最前線の基地に置かれるということは、当然考えられなければならないことだと思います。そして今日のような非常におそろしい科学兵器というものが作られて参りますと、どうしても日本が一瞬間にして報復の的となることは考えられることでございまして、こういうような不安、こういうようなこともお考えになった上でアメリカとの話し合いを進められていられるかどうか、これを伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 日本人である限りにおいて、日本人の利益を主として代表してやりますことは、これは当然なことだと思います。ただ私の立場から申せば、自由主義を守るということが日本人の利益になる、こう考えております。
○戸叶委員 日本人の利益を主としてやるということは、これは非常に誤解を招く言葉ではないかと思います。一体自由主義陣営の一員としてそれを擁護する方を優先的にするのか、それとも日本の国土なり日本の民族を擁護するという、そういう責任の上に立ってやるのか、一体どっちを先に考えられておるのかということをもう一度伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 主としてという言葉があれでありましたら、取り消します。日本人を守り、日本の国土を守るということは、私は当然われわれのやるべきことだと思いますが、日本人を守り、日本の国土を守るということは――自由主義の政策が日本の中で行われることが日本人の幸福であって、共産主義社会が日本にできることは日本人の幸福にはならぬ、私はそう確信いたしますので、その意味において、日本人の幸福を守るということと自由主義陣営にあるということとは同じことだと私は考えております。
○戸叶委員 それではお伺いいたしますけれども、多数国による安全保障というようなことはよく政府は否定するのでございますけれども、そういうことは不可能であるというふうに単純に考えていられるようですが、多数国による安全保障というものに対して、政府の考えられているような不可能であるというふうな考えで押しつけられないで、むしろ多数国による安全保障というものを、日本の国を守る上において努力してやっていくというようなお考えをお持ちになることはできないでしょうか。たとえばアメリカだけと安全保障を結んでいけばそれで世界は平和なんだ、日本の国は守れるんだ、こういうふうな形でなくて、もっといろいろな国との集団安全保障ということを考えていった方が、日本の国を守っていく上に重大であるというふうなお考えに立たれないのでございましょうか。この点をお伺いいたします。
○藤山国務大臣 多数国との安全保障――あるいは国連においてお互いに安全保障をやり合うということが一番多数国になると思うのであります。その他、そうした大きな考えを除きまして、数ヵ国ということになりますれば、社会党の皆さんの反対しておられるようなNEATOとかSEATOとかいうものもあります。あるいは共産陣営の中のあれもあろうと思うのであります。日本の現在において、私としては、日本とアメリカとがお互いに話し合って、防衛の体制を整えて、日本の安全を保障する方法を確立するというのが一番適当じゃないか、こう考えておるわけでございます。
○戸叶委員 藤山さんなり岸さんのお考えというのは、どうしてもアメリカに中心を置かれて、アメリカと安全保障を結んでいかなければ、日本の国が平和な方向に持っていかれないというふうなお考えを基本的に持っておられますので、私どもがそういう提案をいたしましても、なかなかそれに耳を傾けていただけないというようなきらいがあるわけでございますけれども、やはり一方の陣営だけに片寄らないで、多数国間で話し合いをして平和を進めていくというふうなことはぜひお考えになっていただきたいということを要望する次第でございます。 それから、この間のブラウン記者と岸さんとのインタビューの問題でございますが、これは藤山さんがなさったことでないので、直接関係はないかもしれませんけれども、しかしときどき藤山さんを含めて侵略というようなものの定義を勝手に解釈しているきらいがあるのではないかと思うのです。たとえば今度のこのブラウン記者とのインタビューで、中共は台湾に対して侵略をしているというようなことをはっきり岸さんが言明しているようでございます。私はこの間ある外国の新聞記者と話をしておりましたときに、憲法九条の廃棄の問題について日本の国民があんなに驚いたということに私たちはむしろ驚いた、われわれにはたびたび岸さんは憲法九条は改正するということを言っていた、だから今度日本の国民がショックを受けたということは自分たちにとっては不思議だというようなことを言われた。一国の首相ともいわれる者が、日本の国民には黙っていて、外国に向ってそういうことを言うのはけしからぬということをはっきり感じまして、岸首相にもそういうことをとくと追及してみたいと思いましたが、きょうはおいでにならなかったわけでございます。そのときにその記者が言われたことは、むしろ外国記者として考えられたことは、中共が侵略者であるということをはっきり岸首相が言ったことを非常に驚くべき発言をしたというように感じた、こういうふうに言ったわけでございます。こういうふうに中共が台湾に対して侵略しているというような言明の仕方をしますと、国内問題で抗争している政治団体の一方を侵略者であるとすることが、一体国際法上妥当と思われるかどうか、こういうことを外務大臣にお伺いしてみたいと思うのでございます。こういうふうな規定をいたしますと、国内紛争におきまして、常にいずれが侵略者であめるかというようなことで定義をされるようにならざるを得ないのでございまして、こういうことは国際法上言えないのではないかと思いますが、この点はいかがでございましょうか、お伺いしたいと思います。
○藤山国務大臣 総理とブラウン記者との会談の内容については、総理が議会を通じてその説明をしておられる通りだと私思っておりますので、総理がそうした断定をされているとは思っておりません。むろんわれわれ政府の衝にあります者は、国際関係のいろいろな問題につきまして発言をいたします場合に、非常に注意をしなければならず、また国際法上と申しますか、国際儀礼上やはり相当な考慮を払わなければならぬ場合が多いのであります。従ってある場合には、どうも責任者の説明があいまいであるというような非難をこうむることさえあると思うのであります。そうした点は十分な注意を要するものだ、こう私は考えております。
○戸叶委員 いずれブラウン記者が帰られまして、そうして中共を侵略者とみなすという発言をされたかどうかということははっきりされるわけでございますが、もしそういうふうなことが事実であったといたしましたならば、外務大臣は岸首相に対して、そういうふうな見方というものは誤まりであるということをお話し合いになることが当然だと思いますが、この点はいかがでございますか。
○藤山国務大臣 私は総理が議会を通じて説明せられたものを信じておりますので、総理がそうした考えを持っておられるとは思っておりません。
○戸叶委員 そういう考えを持っておられないというふうに信じていらっしゃればいいのですけれども、もしもそういう発言をされた場合には、やはりその点をはっきり訂正していただくようにお話になっておいていただきたいと思うわけでございます。 次にお伺いいたしたいことは、政府は中立政策というものに対して非常に反対していられるわけでございますけれども、スイスとかスエーデンとかオーストリアとか中近東の諸国の中立とか中立的政策というものをわが国にどうして取り入れないのであろうかということを、私どもは非常に不思議に思うわけでございますが、こういう点は一体どうして取り入れられないのかを伺いたいと思います。またもしも取り入れないとするならば、日本の国は特殊な関係であるというような見方をしていられるのであるかどうか。あるいは今国際的ないろいろな侵略が非常に行われるというような見方をしているのかどうか、この点もお伺いしたいと思うのでございます。
○藤山国務大臣 御指摘がありましたスイスの中立主義というものと、インドの中立政策というものとは、私は若干違いがあるんじゃないかと思うのであります。スイスのような状態に日本がなることは、ほとんど今の国際情勢の中では無理だと私は考えております。また日本の地位から考えても無理だと考えております。むろんインドの中立政策というものは、私はやはりインドのネール首相の考え方からいえば、自由主義陣営の一人だと思うのでありまして、ネール首相の共産党に対する対策その他を考えてみましても、あるいはインドは自由主義の思想を持っておることであろうと私は考えておるわけであります。ただわれわれはやはり国を立てていきます上において、友好国に対しても親善関係を厚くして参ることむろんでありますけれども、しかしながら、われわれとして言うべきことはできるだけ言って、お互いに間違い合わないようにしていくということは必要だと思うのであります。そういう意味において同じ陣営にありましても、十分意見の交換をし、またおのおのの立場から見たいろいろな問題について、率直に論議し合うことが必要ではないかと思うのでありまして、そうした立場をとって日本はいきたいと思っておりますが、いわゆる中立主義というような看板をあげていくこと自体は私は必要ないことではないか、こう思っております。
○戸叶委員 インドのネールさんなんかの立場というものは、日本の政府が今考えているようなアメリカに追従的な考え方は決して持っているわけではございません。やはり独自の形で、インドのためを思っての政策を立てているわけでございまして、やはりこういうふうな行き方というものは好ましいと思うのですけれども、これに対してどういうふうにお考えになるかということが一点と、それからまたときどきアメリカが世界に非常に侵略の脅威があるというようなことを宣伝しているわけでございますけれども、私どもは先ごろのレバノンの問題にいたしましても、エジプトの問題にいたしましても、この国際的な世論というものが、今日ではそういった侵略というものに対しては黙っていない、こういうふうな状況にあるときに、アメリカがいうような侵略の脅威というものはないのではないかというふうな考え方に立っておりますけれども、安保条約を改定する上において、侵略の脅威などというものはお考えにならない上に立っての改定を考えていられるかどうか、この点を伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 どこの国とも友好親善の関係を持っていくということは、これは私ども外交をあずかっておるものとして、当然やるべきことだと思っております。従いまして共産国といえどもわれわれお互いに他を侵し合わない、また内政に干渉しないという立場においてお互いに友好関係を持っていくということは必要だと思います。が、しかしながら、現在の実情におきまして私は共産国とは――国家ということを特定に申し上げませんけれども、やはり国際共産主義の脅威があるということは、私は現実の事実だと思うのでありまして、そうした国に対して、やはりある程度国を守っていくということは、私ども自由主義を信奉しておりますものの立場からは、当然なすべきことではないかと思うのであります。そういう意味において、やはり全然侵略の脅威がないということは私は言えないんじゃないか。しかも非常に大きな国が非常に膨大な軍備を持っております。人間でもそうでありますし、あるいは国家でも非常な大きな軍備を持っているということは、とかく間違いを侵しやすいもととなるのでありまして、そうしたような問題はやはりある程度頭にも入れておかなければならぬのでありまして、そういう意味からいって自国の安全を日本の立場から保持していくことは、私は現状において絶対に必要なことではないか、こう考えております。
○戸叶委員 それでは、これは基本的な線ですからもう一慶確かめておきたいと思いますけれども、今度の安保条約改正に当りましては、この国際共産主義の脅威というものをはっきり考えて、その上に立ってのこの安保条約の改定ということを考えられている、こういうふうにおっしゃったのでございましょうか。
○藤山国務大臣 むろん一国の自衛をいたすことでありますから、いろいろな場合が考えられると思います。お互い自由主義陣営の中でさえ世界の各地で相争っているところもあるのでありまして、従って自国の防衛というものが、何か一つだけの目的のために作るというわけでないことは、これは申すまでもないところでありますが、しかしながら、日本の現状から見まして、やはりそうした自国の防衛というものをいろいろな角度から考えておかなければなりませんが、その一つとして、国際共産主義の脅威というものも大きくある、こう思っておるわけであります。
○戸叶委員 そういうふうな考え方を強く押し出されますと、結局かえって日本を戦争の渦中に入れるというような結果になることを私どもはおそれるものでございまして、たとえばレバノンとかあるいはエジプトのような、ああいった例を見ましても、そういう脅威というものは、もしも非常な侵略行為というようなものが行われた場合には、世界の世論がこれをたたくわけでございますので、そういう方向に日本の国こそ世界を平和な方向に納得させていく方法といいますか、そういう努力というものがなされなければならないのであって、いたずらに侵略の脅威があるのだというような立場に立っての外交方針を進められるということは非常に危険ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。こういう点はやはりもっとお考え直しを願いたいということを望む次第でございます。 私時間がありませんので、その先に進みたいと思いますけれども、そこで、この安保条約の改定に当っての内容に少し触れて御質問してみたいと思います。今度の安保条約の改定に当りまして、政府が非常に強調して言われておりますことは、日本の憲法上の制約を尊重するということを言われているわけです。このことは当然のことで、非常にけっこうなことだと思うのでありますけれども、ここで私はしろうととして考えられますことは、一体一国が他の国と重大な条約を結ぶときに、憲法に違反する条約なんてものがあるかどうかということを私は非常に不思議に思うわけです。おそらく憲法に違反するような条約というものはないと思うのです。そうだとすると、この憲法の範囲内でということは日本の国民に対する一つのゼスチュアじゃないか。憲法に違反しないでということでは、つまり現行の条約でも、改定しようとするものでも変りはないと考えられるのですけれども、この点はどうでございましょうか。
○藤山国務大臣 今回の安保条約改正に当りまして、日本憲法の範囲内でやりますこと、これはむろんのことでありまして、ただそれに対して、何か憲法を逸脱するようなやり方をやるんじゃないかという議論があるものですから、われわれはその点を強調するわけでありますけれども、憲法の範囲内でやりますことは当然のことだと思っております。
○戸叶委員 それでは念のためにお伺いいたしますけれども、憲法に違反して外国との条約を結ぶなんということはこれは当然あり得ないことだと思いますけれども、そうでございましょうね。
○藤山国務大臣 憲法に違反して外国と条約を結ぶということはあり得ないことだと思います。
○戸叶委員 そこで、政府の言われますことは、日本の中で相互防衛ということになっても、日本には九条という制約された憲法があるから、これをそのままで義務を尽す、そういう意味で、おそらく憲法に抵触しない範囲で改定するというふうに言われておるのだろうと私は思うわけでございますけれども、たとえば、昨年、防衛庁長官は、自衛のためには公海上まで及ぶということを言われている以上は、この自衛という形で、共同して公海上遠く出ることもあるわけでございまして、そうなってくると、憲法のワク内で、つまり日本は海外派兵をしないというようなことを、一方において国民に言っておりますけれども、そういう点が国民には納得されないわけでございまして、この安保条約を日本の憲法のワク内で双務的に改定するんだという、その内容は一体何をさすのか、具体的にお話願いたいと思います。
○藤山国務大臣 日本が海外派兵しないということは、もうたびたび申し上げている通りでありまして、その範囲内においてわれわれは考えて参りたい、こう思っておるし、また、その通りやって参りたい、こう存じておるわけであります。ただ、憲法のワク内において何があるかといいますと、これは私ども、やはりいろいろあると思っております。その問題については今後の交渉の中において、適当にそれらのものをきめていくという考えでございます。
○戸叶委員 今私が申し上げましたように、自衛権の拡大解釈ということになれば、結局ある程の海外派兵ということも考えられなくもないわけでございますけれども、今藤山外務大臣は、憲法のワク内でも、双務的な形になり得るのだ、そういうことは、今後いろいろあるというふうなことでお逃げになったわけですけれども、たとえば、具体的にこういうことがあるというふうなことを、一点でも二点でもいいからお示しを願えませんと、私どもには、一体どういうことがあるのだろうということで、非常に不思議でたまらないわけでございまして、この点、一点なり、二点なり、お考えになっていらっしゃることをお話願いたいと思います。
○藤山国務大臣 交渉の内容でありますから、いろいろ申し上げることは適当だと思いません。これは相手側のあることでありまして、私がとかくのことを申しますことが交渉に利益をするとは私、思っておりません。ただ、現状の安保条約からごらんいただきましても、憲法の範囲内でもって、何らかの形でもって、日本を自衛するために協力するということはこれはできると存じておるのでございまして、私が指摘いたしませんでも、御了解いただける点がたくさんあるのじゃないか、こう思っております。
○戸叶委員 私はやはり外務大臣から指摘いただきませんと、たくさんあるのじゃないかとおっしゃっても、まあ想像だけでわからないわけですが、今後の交渉の過程ということで、それではその程度にいたしますが、一体今度の安保条約の改定で、双務的というのと、それから、安保条約を平等な形にするというふうに言った場合と、内容は変ってくるでしょうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
○藤山国務大臣 言葉というのは非常にむずかしいので、双務的であるとか平等であるとかいう言葉を使いますとはなはだむずかしいのでありますけれども、御承知のように、今回の安保条約の改定というものは、少くも原則として、アメリカと日本とが、お互いに対等の立場で一つ話し合ってみよう、それであるから、一方的に何か押しつけられたという形でなしに、お互いに相互の立場を理解していく、これが現行の安保条約のできましたときと今日との事情の違いであり、日本がそこまで国際社会にも復帰してきたという事実の上から見て、当然お互いに対等の立場で話し合う、それはお互いにそれぞれの憲法の制約もございますし、その中ではありますけれども、対等の気持、対等の立場、それをどういうふうになることが平等であるのかあるいは双務的ということになるのか、その辺は非常に言葉の表現の上ではむずかしいと思いますけれども、心持としては、そういうふうなお互いに対等の立場でもって話し合っていくのだという立場を貫く、まだ今回締結します安保条約というものも、そういう心持あるいはそういうことが具現するような形において問題がきめられていかなければならぬ、こう考えておるわけであります。
○戸叶委員 第二点として伺いたいことは、きょう日米委員会が開かれるということになっておるのですが、おそらく沖縄とか小笠原を含めるかというようなことも出るのじゃないかと思いますけれども、これは外務大臣なり岸首相なりは大へん国会では注意深い答弁をされておるわけでございまして、聞くところによりますと外務省の方でも少数の人は沖縄、小笠原を入れた方がいいと言ってても、大部分がそうしない方がいいというお考えのようですし、防衛庁なり自民党の大多数は沖縄、小笠原を入れていいというふうなお考えの上にあるということも聞いておるわけでございますけれども、今ここで沖縄、小笠原を入れるか入れないかということは、今までの答弁を伺っておりましても、すぐおっしゃることができないにしても、沖縄、小笠原を入れた場合と入れない場合とは、条約の内容あるいは何かの規制の点で変ってくるのではないかと思っておりますけれども、入れた場合でも入れない場合でも全然同じであるとお考えになりますかどうか。この点を伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 沖縄、小笠原の問題は現在各方面に議論がいろいろございます。私どもとしましては、必ずしも一つになった議論だとは今御指摘のように申し上げかねると思いますが、それらの議論を十分聞きました上で判断して参りたい、こう思っております。ただそれを入れるか入れないかということによって、どう違うかということになりますと、これは非常にむずかしい問題でありまして、条約全体がどういうふうに動くかということは、その問題を決定した後でなければ何とも申し上げかねる問題でありまて、今から御返答はできないと思います。
○戸叶委員 外務大臣、おっしゃれないというならわかるのですけれども、もうきょうすでに会談に臨もうとされますときに、沖縄、小笠原を入れるか入れないかというような意思統一もされておらない。そうして、そのまま臨もうとされる。この沖縄、小笠原を入れない場合にはどういうふうになるか、どんなふうに変ってくるかということも、それはやってからでなければわからない、こういうふうなばく然とした答えをされておるわけでございますけれども、これではあまり不親切過ぎると思いますし、それだけではなしに、少し私どもとしては不安に感じるわけでございます。私どもに対して今言えないというのならまだいいのですけれども、沖縄、小笠原を入れるか入れないかの態度は大体きまっておるとか、あるいはそういう場合にはおそらく条約の内容も変るだろうとか、そのくらいのことは私はおっしゃってもいいのじゃないかと思いますけれども、全然何もきめておりませんじゃ、きょう会談に臨まれるのに、少し用意が不十分と思いますが、そんなことで一体会談ができるのでしょうか。この点をもう一度伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 会談は必ずしも地域の問題から始めなくてもいいわけでありまして、われわれとしては、一つの問題について十分の準備をしながら会談に臨んでおるわけであります。従いまして、私がこうやって外務委員会でいろいろな議論を拝聴しておりますのも、やはり国民世論の動向なり何なりを十分伺った上でやりたいと、こう思って拝聴しておるわけでありまして、われわれとして、今既成の、私だけの考え方でこれをやっていこうという気持はないのであります。やはり各方面の意見を十分聞いて、そうして尽すだけのことは尽しながら、それによって私の考えもきめていく、また私の考えをきめただけではいけないのでありまして、内閣全体の考え、総理の考えというものもきめて参らなければならぬ、そういう意味において、現在申し上げかねるということを言っておるわけであります。
○櫻内委員長 ちょっと申し上げますが、相当時間が経過しておりますから、御要約願います。
○戸叶委員 もう少しです。ちょっと大事なことなんですけれども、藤山さんがそういうふうにして、いろいろな意見を聞いて、そうして態度をきめるということでございますけれども、もうすでに今日会談されるに及んでは、当然藤山さん自身のお考えというものはきまっていなければならないと思うのです。もしもきまっていないということが本心であるならば、とても大へんな問題になるのではないかというふうに私は考えます。さらにこの委員会で防衛庁長官ははっきりと沖縄、小笠原については入るような発言もされているわけでございまして、そうなってきますと、防衛庁長官と外務大臣との御意見が一致しないということになりまして、政府与党がばらばらである。そのばらばらな形で日米会談に臨まれるということは、国民にとっては全く不幸なことといわなければならないわけでございまして、こういう点についてもう少し私ははっきりとした態度をこの際持っていていただき、そしてそれが、入れるとか入れないとかいうことは今おっしゃれないにしても、自分としての考えは、きまっているならきまっているということくらいはおっしゃっていただいてもけっこうじゃないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○藤山国務大臣 政府がこの交渉に当りまして閣内で意見が違うということは、私はないと思います。むろん私としまして各方面の意見を十分聞くことは必要だと思うのであります。決して私だけの考え方で押していくというようなつもりは持っておりません。むろん一個の藤山としてのある程度の考えが全然絶無だ、全く白紙であるとは申し上げませんけれども、しかしやはりこうした大きな問題については、各方面の意見も十分聞くということが必要なのでありまして、その意味において私はまだ最終的に、決定的にこれを申し上げることはできないのが当然だと思います。そういう意味で今申し上げかねると申しておるのであります。
○戸叶委員 そこでこのくらいはおっしゃってもいいのではないかと思いますが、沖縄、小笠原が入った場合と入らない場合と条約の内容は変ってくるかこないか、この点だけちょっと……。
○藤山国務大臣 むろん条約上、防衛のと申しますか――地域の問題は大きな問題でありますが、地域の問題の限定そのものが防衛条約を全部変えてしまうというようなことではないと私は思っております。
○戸叶委員 そうすると結局、部分的には入った場合には変ることがあるというふうに了承していいわけでございますね。
○藤山国務大臣 少くも小笠原が入るか入らないかの問題では、地域の上では変ったことになりますが、その他の面でどういうふうな差が出てくるかということはちょっと……。
○戸叶委員 私はそういうふうな問題よりもっと基本的な問題を伺いたいと思いましたけれども、この問題だけにとらわれておりますと時間をとりますのでで先を急ぎまして、もう二点伺いたいと思います。 現行の協定によりますと、日本の基地というものは、その土地の住民の意思いかんにかかわらず、あるときにはその土地の住民の意思を無視しても、基地の設定というようなことが行われていたわけでございます。そこでいろいろな基地問題というものを起しているわけでございますけれども、私どもとしては、そういうふうな点から考えても、当然安保条約を廃棄してもらいたとい思いますが、百歩譲ってこの基地協定を作るといたしましても、新しい協定には基地に対するある程度の規制というものは、ここならここに作るというような規制は設けられると思いますが、この点はいかがでございましょうか。たとえばフィリピンとアメリカの間に基地協定というようなものを設けて基地の規制を行なっておりますけれども、そういうふうな点はお考えになっておられますでしょうか。
○藤山国務大臣 ただいま御指摘になりましたような点は、現行安保条約ではお互いに対等の立場で話し合わないということの原則を貫いておる結果だと思うのでありまして、われわれとしては対等の立場で話し合っていこうという立場を今回の安保条約では貫いて参りたいと思っておりますので、そういう点から問題は解決していくのではないか、こう考えております。
○戸叶委員 先ごろの委員会で、今度の新しい条約には期限を設けるのが当然だというようなことを言われました。米韓、米台、米比、相互防衛条約を見ますと、一年の予告期間で相互とも廃棄の権利が留保できるようにしてありますけれども、これと同じような形にするのが当然で、一年でも長くて、半年くらいでいいんじゃないかということさえも考えられるわけでございますが、聞くところによりますと、十年なり二十年なりと一定の期間が設定されるのではないかというような危惧を持っている人もあるわけでございますけれども、日本の政府としては当然、短かい期間での廃棄の権利というものを留保した期間の設定をお考えになっていると思いますが、この点ではいかがでございましょうか。
○藤山国務大臣 期限の問題については、今回の改正に当って当然われわれ問題にしておる点でありますが、それをどういうふうにきめていくかということは今日申し上げかねます。
○戸叶委員 どういうふうにきめていくかおっしゃれないにしても、希望としてはどっちの方の希望を――私言葉を省略いたしますけれども、どっちをおとりになる希望でございましょうか。
○藤山国務大臣 希望としても私今日申し上げかねます。
○戸叶委員 それはちょっと外務大臣、日本の外務大臣としてそういうお言葉は少しいけないのじゃないかと思います。これから交渉が始まるにしても、自分の考えはこうだというようなことまでおっしゃれないでしょうか、それとも自分は考えていないというのでしょうか。この点を。
○藤山国務大臣 相手と交渉いたすことでありまして、交渉に際しては私は当然われわれの希望を申し上げますが、それを、何を言うかということをここで今申し上げるわけには参りません。
○戸叶委員 どういう気持でいるかということは、こういうところを通して一応世論に聞くという意味でも、世論に知らせるという意味でも、私はおっしゃっていただきたいと思うのです。今のような外務大臣の答弁ですと、外国に向ってははっきりとものを言うけれども、日本の国民に対してはなるべくそっとしておくという岸さんの考え方と全く同じではないかというふうに考えられるわけでございまして、この点についても一つの考え方を持って、できるだけ日本に有利になるような形で臨んでいただきたいということを希望いたします。 そこでもう一点伺いたいのは、核実験禁止の問題でございますけれども、今度の国連の総会におきまして、今核実験禁止決議案が三つ出ておることを、新聞などで私ども読んでおるわけでございます。そこで日本としては一体どういうふうな態度でもって臨まれるか、この際発表していただきたいと思います。
○藤山国務大臣 国連におきます核実験の問題に対する日本の態度でありますが、私どもは基本的にこう考えておるのであります。核実験禁止の問題につきましては、幸いにソ連、米英が実験中止の声明をいたしました。不幸にしてソ連がつい先ごろまた米英がやったから再開するというようなことを申し出たわけでございますけれども、これはまことに私どもからいえば遺憾であったと思います。しかし御承知のように、七月から八月にかけましてのジュネーヴにおける専門家会議におきまして、技術的な面の解決もいたしたわけであります。それを基礎にいたしましてジュネーヴで核実験禁止の三ヵ国の会議が開かれることになっております。私どもはこの会議の成功をひたすら祈りますことが一番大事なことだと思うのでありまして、これを妨害するようないろいろな論議というものがむしろ国連で行われませんで、そうしてこの成功を見るようなふうに持っていかなければならぬと思うのであります。現在国連の中におきましても三つの決議案が出ておりますけれども、相当数の国がやはりなるべくジュネーヴ会議を成功に導くようなユナニマスの決議ができることが望ましい、そういう意味において、それぞれ考えを持っておる国があるわけでありまして、その点は私どもの立場、考え方と同じ考え方ではないかと思うのであります。現在国連でそういう立場に立ちながら、何かジュネーヴ会議を妨げるような内容に関する論議が国連で行われないように、またそうした決議案でなくて、ユナニマスな決議案ができるような努力を続けておりますのが、現在日本の代表団のとっております態度であります。
○戸叶委員 それでは全会一致で何らかの線が出るように努力をしているということでございますので、これはまあ今後の行き方でございましょうけれども、もしも今出されております三つの決議案が、それぞれ表決を求められるというようなことになった場合に、日本は一体どういうふうな態度をとるのでしょうか。これも念のために伺っておきたいと思います。
○藤山国務大臣 日本はただいまそうした態度でもって考えておりますので、あるいは志を同じゅうする国と一つの決議案を出しますか、あるいは今申し上げたような意味において、何らかの活動ができるかどうかということを検討いたしておるわけであります。従って現在も、三つの決議案に対する表決の態度というようなことを問題にいたしませんで、それらに向って努力をいたしておるわけなんでありまして、その段階にありますことを申し上げておきたいと思います。
○戸叶委員 私は質問をこれで打ち切りますけれども、三つの決議案の内容が私どもよくわからないわけでございますので、委員長から外務省の方へ要求していただきまして、三つの決議案を委員に配付していただくことを要求いたします。
○櫻内委員長 承知いたしました。 岩本信行君。
○岩本委員 私はこの際南鮮、北鮮おしなべて旧朝鮮人の帰国問題についてお尋ねをしたいと存じます。実は去る九月に社会党の諸君と外務委員会の派遣で、李承晩ラインの問題、大村収容所の問題、そうしたことで視察に参ったわけでございますが、これらの具体的なことにつきましては、追って詳しく御報告を申し上げようと存じますけれども、その場合において、大村収容所の人々の代表者がわれわれと会見した。その言うところによりますと、帰国のできないということは、かかって日本政府がじゃまをしておる、こういうことであって、朝鮮なりあるいは韓国なりが正しい要求をしているんだが、日本政府が帰してくれないのだ、こういうことを申しておるわけでございます。それについてはわれわれはわれわれの信ずるままに、そうではないということをいろいろと説明して参ったわけでございますが、これから御質問申し上げる前提として今申し上げましたように、韓国、朝鮮としては受け入れる用意があるけれども、日本政府がじゃまをして帰さないのだ、こういうことを言っておるが、それに対する日本政府のお考えをまずお尋ねしておいて、それから申し上げたい、こう存じます。
○藤山国務大臣 この帰国問題については二つの面があると思うのであります。一つは不法入国者の送還ということ、それから一つは一般人の帰国、この二つに分れておると思います。どういうことを抑留所の方々が言われましたかはわかりませんけれども、不法入国者の抑留問題、帰国問題について日本側が何かじゃまをしておるというようなことは私は考えられないと思います。日本が何か悪いという一方的判断は間違っておるのじゃないかと考えておるのであります。
○岩本委員 しからばお伺いいたしますが、これは北鮮糸でございましょうが、中央帰国対策委員会というものがあって、それの発表によりますと、帰国希望者で現に正式に申し出しておるものが一万七千名ある。行く行くは三十万が帰国希望者であるというようなことを言っておるわけであります。そこでそれらの人々の言い分は、朝鮮、韓国というものが今日は非常に隆々発展を遂げておる、教育も上っておる、しかるに在日朝鮮人、韓国人というものはきわめて悲惨な状態に置かれておる、全く困苦に耐えられない、であるからしてこの際どうしても帰国したい、こういうことのようであります。しかも九月七日には金日成首相が建国十周年の大会の演説の中でこういうふうに言っておられます。帰国を希望する在日朝鮮人をいつでも受け入れる、帰国後の生活と子弟教育は一切保障する、こういうふうに言明されておるし、さらに九月十六日には南日外相がさらに声明を発表されて、やはりこういうようなことを言うておられるわけでございます。 そこでわれわれが考えてみまするのに、なるほど向うのおっしゃる通り、日本は貧乏しておる。従って朝鮮人に対する待遇等も満点でないかもしれない。しかしながら在日朝鮮人が六十万人もおって、その中で日本では苦しい財政の中から八万二千有余名というものに生活保護法の適用をしてこれを援助しておる、こういうことでございますので、あちらのおっしゃる通りとすれば、向うはきわめて発展しておって、生活は楽なんだ、日本は貧乏でどうもそういう待遇ができないんだ、それだから帰りたいんだ、こう言う以上は、これは言い分は別にいたしましても、人道上の見地から言えば、ただいま外相の説明にありましたように、日本政府がじゃまするわけじゃないというのであるならば、この希望をいれてやることがよいのじゃないか、いれるべきではないかと私は思うのです。これは南鮮、北鮮を問わず、それらの希望するままにこれを認めてやる。しかも向うでは受け入れ態勢もできておる、船も時には回す、旅費も持つ、こういうようなことであるようでありますから、私は、従来がどういうふうになっておったかは別といたしまして、今回の声明等から考えまして、この際日本政府としては帰国を取り計らうような尽力をしてやる、こういうことに持っていきたい、かように存ずるわけでございます。日本人がソ連にあるいは中国に何年もの間抑留されておって、これを帰国させたいという熱願は日本人の全体にあったわけです。今でもまだ残っている者に対しては、それを熱望して、交渉をしておるわけでありまして、その意味で、実は何ら変るところはないと思うのであります。そういう意味合いにおいて、今回の声明もあるのだから、ぜひこれは実現さしたいものだ、私はかように存ずる次第でございますけれども、外相としてはどういうふうにお考えになりますか。
○藤山国務大臣 先般私は朝連の代表者の方にお目にかかりまして、その問題についてのいろいろな朝連の御希望なり、お考え方を聞いたわけであります。そのときに、政府としては十分お考えが達成できるように、いろいろな方法、手段等を一つ考究してみようということを申しておったわけでありますが、ただいまそういう問題について検討をいたしておるわけでございます。
○岩本委員 ただいま私の申し上げたことについて、いわゆる帰国させる方へ検討しておるということでございますが、これは外務委員会の一員として申し上げることでございますが、検討も、これはいつまで検討しても同じでございますから、この際勇敢に一つこの点は計らわれたらどうか。同時に、特にただいま日本人で韓国側へ不法監禁されておる者が百二十四名ある。中国へ、またぴったりと数字が合っておりますが、これまた百二十四名の漁民が抑留されておる。いずれもわれわれからいえば不法監禁、こういうことに考えるわけでございますが、私は、朝鮮あるいは韓国人の帰国問題について積極的な手段をとってやるべしという論をすると同時に、やはり今のような、日本人の向うへ特に不法抑留されている問題については、この際積極的に働きかけなくちゃならない、実現させなくちゃならない、かように存じますが、この日本人の抑留されている問題についての折衝は、その後どういうふうになっておるか、その点をお尋ねしたい。
○藤山国務大臣 ただいまお話のありました漁船の不法拿捕に伴います抑留につきましては、韓国側については日韓会談を通じてこれを解決していきたいという考え方をもちまして折衝をいたしておるわけであります。また御指摘のような中共の問題につきましては、将来の問題としてできるだけ早い時期にこれらの問題が解決するように道をつけて参りたい、こう考えております。
○岩本委員 外交上特に朝鮮とか韓国とかいうのは、なかなかはかどらないのでありますが、この帰国問題については、赤十字関係――一九五六年だかに日朝赤十字の協定もあるし、あるいはまたその年の十二月には国際赤十字団のメモランダムも出ておる、こういうことでございますから、もしはかどらすとすれば、これらを通じて実現するような方向に持っていかす、こういうことにしていただきたいと思うわけでございまするけれども、現在の国交情勢からいって、政府対政府、そういうことではこの帰国問題は扱いかねるものか、あるいはやり方によっては可能なものか、この点を一つ伺いたい。
○藤山国務大臣 こうした問題につきまして、韓国側とできるだけ二国間で話をして参りますことが、まず第一の必要なことだと思います。従いまして、二国間で話し合いをできるだけ続けて参りたいと思っておりますが、しかしこの問題が終局的に解決するために、国際赤十字を通ずるということが必要である場合もあろうかと思いまして、われわれとしても国際赤十字とは連絡はすでにとっております。しかしこうした問題はできるだけ二国間で片づけることが一番適当だと思いまして、努力はいたしておるわけであります。
○岩本委員 どうも北鮮、南鮮ということでからみ合って、非常に複雑するわけでございますが、かりに、韓国問題が、日韓会談、李承晩ライン問題、こうしたことでなかなかはかどらないということがある場合、私は、これは全く人道上の問題でありますから、いわゆる北鮮、朝鮮といわれておるようでありますが、この帰国問題だけはそういうことをかけ離れても解決する、こういうことでいくべきだ、かように存じますが、この点切り離しても解決する、こういう方向についてはいかがでございますか。
○藤山国務大臣 この問題が人道上の問題でありますことは、私も前国会にも申し上げておるところであります。われわれとしては、できるだけ二国間で話し合いをいたしまして解決するのが一番適当だとは思っております。しかしただいま申し上げましたように、どうしても二国間の話し合いで解決できない場合には、国際赤十字等を通じてこれらの問題を処理していくということに私どもは考えておるわけであります。その意味において、先ほど申し上げましたように、国際赤十字等の意向その他も連絡はすでにいたしておるわけでありますが、しかし二国間の問題はできるだけ二国間で片づけ得るならば片づけたいということが私の考え方で、努力をいたしておるわけでございます。しかし今御質問のように、どうしてもそういうことでは解決しないというときには、やはり別途の方法として、国際赤十字等を利用するといいますか、国際赤十字等のあっせんによってやることが必要だ、こう考えております。
○岩本委員 ただいまの外相の答弁の二国間というのは、日本はきまっておりますが、要するに、韓国、こういうことになるわけですね。そうすると、何か人民共和国とかいう方は、これはもうやりようは、赤十字の手に待つほかない、こういうことになりますか。
○藤山国務大臣 ただいまお話にありましたように、人民共和国の方は、金日成首相がこれを受け入れるというようなことを言っておるといたしますれば、その面での特段の交渉はなくても済むのではないかとも思いますが、技術的な、輸送の関係その他いろいろの問題がございますから、それらの問題について十分検討しておるわけであります。
○櫻内委員長 田中稔男君。田中君にちょっと申し上げますが、警視総監は時間のかげんがございますから先に御質疑を願います。
○田中(稔)委員 十月十日新橋ステージにおきまして右翼主催によって援蒋反共台湾激励大会というのが催されたのでありますが、その会場において、中華人民共和国の国旗に火をつけて、極端な侮辱の意思を表示した者があるのであります。このことにつきまして、日中友好協会は、さっそく十月十三日警視庁に参りまして、事件の真相について説明を求めたのであります。総監もおられず、また部長、課長もおられなかったので、公安第二課の豊田第三係長と会って話を聞いたのであります。その際の豊田係長の態度は、大体においていい態度であった。この事件はきわめて悪質なものだということを率直に認められた上に、こういうことを言われたのであります。こういう事件が起るであろうということは予測されておった、またそれに関する情報も入っておったので、防共新聞編集長の浅沼――この男が火をつけたわけでございますが、それを追いかけて、そしてそういう事件が起らないようにいろいろ手を尽したけれども、とうとう会うこともできなかった、こういうことです。それで自分としては、最近中国側から、国慶節に参りました日本の訪華代表団に対して、邦人の帰国問題あるいは戦犯釈放問題等について援助を再開するというような言明が行われておるやさきでもあり、こういうことが起るということはどうも国際的にまずい、こういうことでいろいろ努力はしたけれども、どうも警察庁あるいは検察庁あたりの態度が非常になまぬるい、こういうことで、自分としては十分手を伸ばせないというような事情にある、今の新橋ステージの事件につきましても、刑法第九十二条の適用はないので、都条例であります火災予防条例というようなものでこれを処理するより仕方がない、こういうきわめて消極的な見解が、警察庁あるいは検察庁にあるので、非常に自分も困っておる。結局これは政治問題だ。この政治問題に対する政府の見解というものが、もっと積極的にならなければ、自分らとしてはどうもやりようがない、こういうふうなことを訴えられた、こういうのであります。このことにつきまして、警視総監が見えておれば、事件の真相あるいは豊田係長が言われましたようなお話の内容その他に関連して、一つ御見解を承わりたいと思います。
○小倉説明員 お答えいたします。ただいまお話がございましたように、十月十日に新橋駅の野外ステージにおいて、お話のような事件がございました。防共新聞の浅沼という者が、自分のポケットから中共の国旗――これは自分で作ったものだそうですが、これを出しまして、これにライターで火をつけた、こういう事件でございます。これは現場におりました警察官が直ちに壇上に上りまして、この行為をやめさせまして、旗を取り上げたのであります。こういう事件がございまして、その後、ただいまお話のように日中友好協会のどなたかがおいでになりまして、私の方の豊田係長といろいろお話があったのであります。そのときのお話を聞きますと、主として刑法第九十二条を適用し得ないのかどうかという問題について、いろいろお話があったのであります。この点につきましては、実は私の方でも事務的にいろいろ研究をいたしまして、警察庁の意見も聞きまして研究したのでありますが、結論といたしまして、この刑法第九十二条は今回のような場合には適用にならない、こういう結論なのでございます。この意味は、刑法第九十二条にあります国旗その他の国章といいますのは、その所属する国を表徴するというか、表わすために現に使用されておるというような場合、すなわち、たとえば大使館とか公使館、領事館、あるいは軍艦というようなところで、当該国家の権威を象徴するものとして使用されておるというような場合に限るものであるという解釈なのであります。この解釈は現在の通説でありまして、警察庁、法務省、最高検察庁におきましても、同一の解釈をいたしておるのであります。従いまして、今回の事件のような一個人が所有する外国の国旗につきましては刑法第九十二条の適用はいたし得ない、こういう実情でございます。従いまして、東京都火災予防条例の第三十二条によりまして、この事件を処理しておるようなわけであります。
○田中(稔)委員 前回の委員会において、私はこの国旗事件につきまして、岸総理に質問をいたしました。総理の御答弁はこうであります。「私はこれらの事件はきわめて遺憾なことであって、これが実情を十分検察関係で調べさせまして、これに対しては法規をもって厳に処断するつもりであります。」こう言うております。きょうは総理は見えておりませんから、一つ外務大臣の御見解を承わりたいと思いますが、ここに、ただ法規と言っておられます。これは刑法第九十二条のことでありましょうか、それとも、その他どういう法規のことをさしておられるのでしょうか、政府としての見解があると思いますから、藤山外務大臣から…。
○藤山国務大臣 総理が法規に照らしてと言われたのが、必ずしも九十二条だけに限ったと考えなくともいいんではないかと思います。その他、ただいま総監から言われましたような、いろいろな法規もあるようでありますから、それらのものに従って、とにかく法規に照らして処断するということを言われたのだと思います。
○田中(稔)委員 これは確かに、国旗を侮辱すると申しましても、その国旗の掲揚されておる場所であるとか、どういう場合に限られておるとか、また、それを侮辱した者が公務員であるか私人であるかというような、それぞれのケースによって問題は違ってくると思います。もし浅沼某が、ただ自分の家の部屋でこっそり中華人民共和国の旗を焼いたならば、おそらくこういう問題にならないと思う。だから、九十二条が適用されるか適用されないかという法律論は私はしばらくここではおきたいと思うのであります。ただ問題は、この新橋ステージの場合は、豊田係長がすでに言っておりますように、そういう事件が発生するであろうということがすでに予測されておった、従って、浅沼を何とかしてつかまえようとしていろいろやった、しかしそれができなかったというわけです。しかし、こういう情報は、一係長だけが入手しておるのでなく、これはおそらくその上司にも報告して、警視総監、あなたのお耳にも入っておったのだろうと思いますが、そのことについて一つお尋ねしたい。
○小倉説明員 事前に私は承知しておりませんが、私の下の公安部長はこのことを承知しておりまして、そういうような非常に軽率な行為は国際関係にも影響するところが大きいからという意味で、極力そういうようなことをしないようにということを係長に指示して、事前に何とか思いとどまらせるようにという措置を講じたのであります。
○田中(稔)委員 総監に伺いたいのでありますが、公安部長まですでにその情報をキャッチしておったとすれば――国旗事件というものが今日日中間の国際問題としては非常に重大化していることはすでに御承知であります、そして総理もあるいは外務大臣も公けの席で、やはり未承認国の国旗といえどもこれは尊重しなければならぬということを言っておる。そういう際に、手を尽せば私はこの事件を未然に防止することは不可能ではなかったと考える。浅沼美知雄とかいう人物は相当右翼では有名であります。おそらくその自宅もちゃんとわかっており、あるいは防共新聞社というものの事務所も警視庁にわかっておると思う。それならば手を尽せば浅沼という者に会って、そしてそういうことをやらせないような方法は私は幾らでもあると思う。なぜそれをおやりにならなかったか、あなたはそれを知らなかったとおっしゃるが、公安部長はあなたの下僚でありますから、警視総監として当然の責任は免れないと思いますが、御見解をお聞きしたい。
○小倉説明員 実はその浅沼以外の者にもそのような行為をしようという者があったのでございます。その人間に対しましては会うことができましてこれを飜意させることができたのであります。浅沼に対しましては、面会をしようとしましてもなかなか会わない、やっと事件発生の当日、会場においてちょっと会って中止を勧告しようとしておりますと、すぐ席をはずして向うに行ってしまうということで、なかなか十分話をすることができない。こちらの係長としましては非常に熱意を持ってやってくれたのでございますが、残念ながら結果的には防ぎ得なかったということでございます。
○田中(稔)委員 それでは私は総監の弁明にはならぬと思います。浅沼にしても、あるいはその他の者にしても右翼として大体みな顔はわかっている、別に居所不定というわけでもない。ルンペンでもないのでありますから、最善の手段を尽せばこの事件を未然に防止することは可能である。このことにつきましては総監の責任問題になるのでありますが、きょうこの外務委員会はそういうことを問題にする場所でもないと思いますから責任の追及はこれ以上いたしませんが、総監に警告しておきたいことは、政府の態度が煮え切らぬということが一番大きな原因だと思いますけれども、総監としてはたとい未承認国の国旗であっても、また刑法第九十二条の刑罰規定の対象になるような事犯でなくても、とにかくこれは中華人民共和国の国旗なんでありますから、これに対していささかでも侮辱するというような事件の発生することのないように十分一つ平素留意していただきたいということを強く要望しておきます。
○小倉説明員 先ほどお話しました具体的の場合におきましては、こちらは本人に会うことに非常に努めましたが、どうしても本人が会わないということであればやむを得ない、実力をもってこれをどうこうするということはできないのであります。しかしながらただいまお話がございましたように、国の旗に対する行為は非常に大きな国際的な影響もございますので、将来も極力こういうことのないように努めたい、こう考えております。
○田中(稔)委員 藤山外相にお尋ねします。六月二十日の衆議院の外務委員会において、藤山外務大臣は「政府は、たとい政治的信条、社会制度を異にする国家との間にも友好関係を保持することは、世界の平和と繁栄に資するものであると考えており、ことに近隣諸国との間においては、善隣関係がそこなわれぬよう努力しなければならないと考えている。」こういうことを言われている。その六月二十日の藤山外務大臣の言明に関連して、黒田君がこの近隣諸国という言葉の中には中華人民共和国も含まれているでしょうと念を押したのでありますが、これに対して「むろん近隣という意味では中華人民共和国が含まれておるということであります。」こういう御答弁があったわけであります。つまり社会制度、政治的信条は違っているけれども、中華人民共和国も善隣である、善隣であれば友好関係を持たなければならぬ、こうおっしゃっている。この御見解はもちろん今日も変っていない――そういう善隣友好の間柄でなければならない中華人民共和国の国旗なんですね。ところがこれについて長崎の国旗事件が起りましたころは、政府は刑法第九十二条は適用されない、だからあの場合の国旗は単なる布きれにすぎないというようなきわめて冷淡な法律論で対処されておりました。ところがその後どうもこれは少し間違っておったとお考えになったのか、たとい承認されていない国の国旗であっても、その国旗の尊厳はやはりわれわれは十分考えなければならぬ、こういうふうになってきているわけであります。そこでこの際、そのお考えに変りばないと思いますが、あらためて中華人民共和国の国旗に対する政府のお考えを述べていただきたいと思います。
○藤山国務大臣 国旗を尊重していくということは、それぞれの国民の願望だと思います。日本人が日本の国旗を尊重する気持がありますことむろんだと思うのであります。そういう意味において、いかなる国の国旗でも尊重していくということは変りなく続けていかなければならぬことだ、こう考えております。
○田中(稔)委員 もし日本の国旗が中華人民共和国において侮辱を受けるというようなことになった場合は、政府は一体これに無関心であり得るかどうか、御見解を伺います。
○藤山国務大臣 もちろん日本の国旗がいずれの国においても、侮辱されるということは、日本人として無関心ではあり得ないし、政府も無関心ではあり得ないと思います。ただそれぞれの事犯の状況等を見てみませんと、これを大問題として取り上げるかあるいはごく部分的な小問題として考えるかということは、それぞれの事犯によると思うのでありまして、たとえば万国旗をつるような場合にそれが破けたとか破いたとかいう程度のことが果して日本国旗の非常な侮辱に当るかどうかというような点は、そのときの状況で判断せざるを得ないのじゃないかと思います。
○田中(稔)委員 むろん法律論でいいますと、中国との間には国交がない、だから相互主義で日本において中華人民共和国がいかような形で侮辱されても、これは刑法第九十二条の適用はない、また逆に中国におきまして日本の国旗がいかような形で侮辱されても、文句の言いようがないということになるわけですね。ところが中国では実際においては日本の国旗に対しまして非常に敬意を払っておる。先般の武漢、広州における日本の商品展覧会の際、日本の国旗に対しては日本帝国主義の侵略を連想して、中国の人民の間にはまだ非常な反感が実はあるのです。それにもかかわらず展覧会の会場の屋上には日章旗が掲揚されまして、しかもこれを中国の軍隊が護衛しておったのであります。不測の事態が起らないように軍隊がこれを防衛しておる。さらにまたこの日章旗がたんだん古びて参りまして、破れたりします。取りかえてはどうかということでありましたけれども、日本側ではちょっと費用その他の関係で取りかえができない。そうすると中国側で新しい日章旗と取りかえてくれた、こういうふうな事実もあるのです。だから中国においては、日本の国旗に対して、いかなる形においても侮辱を加えるというようなことは許されていないのであります。だからそういう侮辱事件が中国において起って、日本の外務省が抗議を申し入れるというようなことは、これは予想されないことでありますが、まあかりにそういったことが起ったとした場合には、日本側としても黙ってはおれないと思う。国民感情がこれを許さぬと思う。そういうわけでありますから、日本側で国旗侮辱事件が起った、その具体的なケースにつきまして、いろいろこれは法律論を考えなければなりませんから、すべての場合第九十二条の適用があるとはもちろん私も考えません。しかし問題は法律論じゃない。やはりこれは中国、あなたのお考えによれば善隣友好の関係になければならない中国人民共和国であります。その国旗を尊重するということは、これはもう政治問題であり道義の問題だと思います。そこで私はむしろ政府のそういう方面のお考えなり措置を、今度はお尋ねしたいと思うのでありますが、まず長崎事件はその後どうなっておりましょうか、一つその結末をお尋ねしたい。
○板垣政府委員 私も詳しくは存じておりませんが、私の承知しておるところによりますれば、御承知のように告発がありまして、警察から地検に回り、現在これをいかなる法律で処罰するかにつきまして最高検当局で検討中であると聞き及んでおります。
○田中(稔)委員 今申しますように、法律の論というようなことになりますと、ここでいろいろ申し上げることでもないと思いますので、それはまた衆議院としましては法務委員会あたりでもいろいろ問題にしなければならないと思います。そこで、私はむしろ政府の行政措置について申し上げたいと思いますが、中国側の意向として、いわゆる佐多報告の伝えるところでは、この国旗事件について謝罪使でも中国に派遣すべきであるということであります。しかしながら、その後中国に参りました人なんかの話をいろいろと聞いてみますと、中国は何も謝罪使をどうしても出さなければいかぬというようなことを考えているわけではないように私受け取るのであります。問題はやはり日本政府の誠意なんです。そこで長崎で起り、横浜で起り、新橋で起った、こういうことについて刑法第九十二条は適用ないのだ。あれは未承認国の国旗であるから国旗としては扱えない、布きれにすぎないというような考えが政府にずっとあって、その後衆議院の委員会等ではこれを訂正するような御発言もありましたけれども、やはりきっぱりと政府の態度の表明がないので、国民の間には、中華人民共和国の国旗なんかに対しては、大して尊敬の念を払わぬでもよろしいというような観念が流布されているのではないか。今の新橋ステージの問題でも、事犯の性質上これは都の火災予防条例ですが、そういうものでただ罰するだけだというようなことになりますと、今後こういうことがどんどん起る心配があります。そうしますと、現在すでに非常に悪化しております日本と中華人民共和国との関係がさらに悪化する、こういうことを私は憂えるのであります。もっともすでに岸総理がブラウン記者とのインタビューについて述べられたああいう言葉がそのままほんとうだとしますならば、岸総理そのものが、そういう日中関係の悪化をさらに激化されておる、こういうことにもなるわけでありまして、それではどうも仕方がない話でありますけれども、しかしながら、藤山外務大臣におきましては、日中関係が今日以上悪くなるということはおそらく希望されないと思う。その場合に、いろいろ問題がありますが、国旗問題、国旗侮辱事件の処理ということについて、政府が何らか具体的な態度をきっぱり示して、政府の誠意を相手国の政府に知らせる、相手国の国民に知らせるということは私はきわめて望ましいことであると考えるのであります。そこで、謝罪使の派遣というようなことを一応別といたしまして、なおほかにとるべきいろいろな方法はあろうと思う。政府が国会の委員会でいろいろ質問にこたえて答弁されるという形式もあります。しかしながらそういう形式では何かほんとうに政府の態度を強く表明する方法としては十分でないように思います。だとすれば、何か政府から中華人民共和国政府に対して口上書というようなものを一つ出していただいて、そこで国旗問題について、政府としては非常に遺憾に思っておるし、それからまた、いろいろな具体的なケースについて、国内法として、刑法第九十二条の適用は、これはないけれども、しかしながら、そのほかの法規の、こういうものによって、これは処断しておるのだとか、あるいは、かりにこれが法規の刑罰規定の対象にならない場合においても、一つ政府は、これは非常に遺憾に考えておるとか、あるいはまた、起ってしまった事件の跡を追っても仕方がないことでありますから、今後中華人民共和国の国旗に対する侮辱事件は、いかなる形においても起らないように、たとえば、種々の官庁に政府としてちゃんと行政措置をとったとか、いろいろなことについて、政府の総合的な見解を内容とする口上書というようなものをお出しになるような方法もあろうと思う。あるいはまた、今日外交関係がないから、それは困るということであれば、政府がこの問題について、詳細にして懇切な一つの声明をあらためて発表するというような方法もあろうと思う。いろいろな方法があろうと思いますが、今まで、たびたびこの衆参の委員会でもこの問題を取り上げられました。断片的にはいろいろの御回答がありましたが、私はこの機会に政府部内において、十分この問題について、総合的に御検討になって、そして今、私が申し上げましたような何らかの措置をおとりになるというようなことが望ましいのではないか、必要ではないかと考えるのでありますが、一つ藤山外務大臣の御見解を伺いたい。
○藤山国務大臣 国旗事件が起りましたことはまことに遺憾であるということは、総理が議会において言われたことであります。現在政府の立場も、そうした総理の遺憾の意を表明されました線に沿っておると私はかたく信じております。従いまして、今後、そうした問題が起らないようにすることは当然でありまして、ただいまの警視総監の話を伺いましても、事前に了知した範囲内においては、警視庁としては相当努力されたのではないかと思っておるのでございます。相当この問題は各方面の論議の対象になっておりますから、十分世間にも周知され、また各官庁においても、十分こうした問題の起らないように努力するようにやっておることと私は信じておるわけであります。要はやはり、国民全体が自国の国旗、各国の国旗を尊重するという観念が十分に浸透して参りまして、国旗の尊厳というものを十分高く評価していくというようなことになって参りますことが、一番大事なことであろうと思うのでありまして、そういう点については、なお自国の国旗等をも含めまして、日本としてはやらなきゃならぬことだ、こう考えております。
○田中(稔)委員 重ねて要望しておきますが、この国旗問題というのは、外交の面と内政の面があると思う。国内におきまして、検察当局、警察当局、そういうふうなところに政府からちゃんと措置をしていただきまして、こういう事件が起らないように万全の方法を講じていただきたいと思います。これは藤山外務大臣の所管でないようでありますが、やはり政府の責任者でありますから、総理にもよくお話し願って、こういう事件が起らないようにしていただく。それから今も申しましたように、この際私は政府として今まで起った三回の国旗事件のいろいろの善後措置として、やはり僕は中華人民共和国に対してあるいは中華人民共和国の国民に対して納得のできるような何らかのやはり対外措置をとっていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終ります。
○櫻内委員長 帆足計君。
○帆足委員 時間も移っておりますので、私はこの次詳しい御質問をいたしますから、きょう簡単に一、二のことをお尋ねいたします。先ほど岩本委員から在日朝鮮人の大量帰国につきまして、きわめて適切な御意見を承わりまして、私ども社会党としましても岩本委員の意見に全面的に賛成でございます。特にわが国には七十万からの朝鮮の友邦の諸君がおりまして、誤まった過去の軍国主義政策のために朝鮮の諸君は民族的偏見に悩まされ、また劣悪な環境に置かれておりまして、非常にこの国でも苦労をいたしておるのでございます。その具体的な現われとして生活保護法の世話を受ける貧窮な朝鮮の友人諸君のそれに払われておる予算が、年額二十五億円をこえるというような、そういうふうな悪い生活環境の朝鮮民族は素朴にして純真な民族でありますのに、悪い環境のためにとかく犯罪の数も多く、一般の検挙数の数倍にも達しておるというような不幸な生活環境におるわけで、私ども日本の政治家として朝鮮の友人諸兄に対する過去の誤まった政策の影響などを考えますると、まことにお気の毒なことだと思っておる次第でございます。今般北朝鮮の建設政治が安定し、そうして経済状況が余裕ができるようになりまして、そうして日本で所を得てない朝鮮の同胞たちを引き取るという南日外務大臣の声明がありましたことは、私は時宜に適したものであると思っております。もちろんわれわれ日本国民として、長いつき合いの朝鮮の友人諸兄を、朝鮮に追い返すような気持はありませんし、またそういう印象を些少でも与えるようなことはよくないと思います。従いまして、日本において所を得、そうして日本の経済、文化に貢献しまた日本の内政に干渉するところなく、隣邦の民として日本に安住の地を求めておられる多くの朝鮮の友人たちに対しては、今後とも友情を持って、十分なる便宜をはかる必要が私はあると思います。同時にまた自分のふるさとに帰国を希望しておる人たちに対しては、それが南朝鮮であるとまたは北朝鮮であるとにかかわりなく、いずれに対しても帰国の便宜を与えるということは、これは当然の論理であろうと思います。そこで、さらに外務大臣に確かめておきたいのですが、かりに北朝鮮の政府が、韓国に帰国することには反対である、日本におる在留朝鮮人が韓国に帰ることには反対であるという主張をしたとしたならば、それは外務大臣は正当なる主張である、教養ある人間の主張であるとお考えでしょうか。それともそういうことは内政干渉であり、愚かな者の言うことであるというふうに判断されるでしょうか。ちょっとお伺いしたい。
○藤山国務大臣 日本として、帰国の希望者がそれぞれ希望地に帰るようにするのがこれは当然なことだと思っております。ただいまお話しのようなことが愚かなことであるか愚かなことでないかというような批評は差し控えますけれども、そう考えます。
○帆足委員 愚かであるか愚かでないかということよりも、北朝鮮の政府が日本におる朝鮮人に対して、韓国に帰ることに対してはあらゆる手段で妨害するぞということを言うとすると、それは妥当でないとお考えですか、そういうことをいう権利があって妥当であると考えておられますか。
○藤山国務大臣 総体的に申し上げますれば、私どもは、本人の希望するところに帰すのが妥当であると思っております。一々の事案については、そのときの事案によらなければわかりませんけれども、本人の希望するところに帰すのが原則であると思います。
○帆足委員 外務大臣のお言葉の通りだと思います。同時にまた、その論理が正当であるとするならば、南朝鮮の李承晩政府が、日本におる朝鮮人が北朝鮮に帰ることを妨害するような言辞を弄するとしたならば、それは正当なるものでないということになるわけでございますから、まことに外務大臣の言われる通りだと思います。 そこで今日の事態は、日本の漁夫百二十名がいわば不当に、韓国で人質のような状況になりまして、そうして私たちはそれに対して韓国と正当な意味の平和友好ということについての顧慮から隠忍自重しておるものと理解しておりますが、そのために、北朝鮮に帰る意思を持っている朝鮮の諸君が、ゆえなくしていつまでも日本政府の犠牲になって、自分の好む祖国に帰り得ないということは、私は妥当でなかろうと思います。従いましてある短かい期間において、政策の必要上、事を穏便に運ばせますために、多少道理にはずれたことが行われますこともいたし方のないことかと思いますけれども、長きにわたってこの問題を放擲しておることは、日本政府が国際法並びに赤十字精神並びに人道的見地からするところの国際慣例に対して忠実でないという非難または疑いを受ける根拠にもなりますから、先ほどせっかく積極的に御検討中ということでありましたけれども、私は朝鮮の諸君が、南北それぞれおのれの自由意思によって選択した場所に帰れるように措置をするという政府の仕事は、時間的にも急いでいただきたいと思いますが、漫然とほうっておかれるおつもりでございましょうか、それともやはりこれは時を適切に急ぐことが必要と御判断なされておるのか、それを伺いたい。
○藤山国務大臣 この問題は漫然とわれわれ考えているわけではございません。ただ帆足委員が今お話しになりましたように、李承晩ラインの線で不法に抑留されております人たちができるだけ早く帰るということも、われわれは念願して参らなければならぬのであります。何かのためにそれらの人たちが非常に長期にわたって、不必要に抑留されることは適切でないと思うのでありまして、私どもとしてはやはりそこいらも同時ににらみ合せながら、できるだけ早い時期に両方の問題が片づくように進めて参りたいというふうに考えておるわけであります。
○帆足委員 日韓問題及び日本と朝鮮の問題をめぐる諸問題につきましては、先ほど岩本委員から、われわれ外務委員が現地を視察したことについて適当な機会に総合的に政府当局と懇談する機会を持つということでございますし、時間の関係もありますので、私はこの問題に移ることは避けまして、ただいまの問題に関連いたしまして、大村収容所に参りましたときに、もとは数千人もおりましたために混乱が非常に大きかったのですけれども、適切な措置によりまして、ただいまは人数が千人前後になりましたので、前に比べますとよほど改善いたされました。しかしなお一まつの不安がありますのは、それぞれの好む国への帰国決定の自由意思というものが、政策によってゆがめられはしないかという不安を一般に抱いておるようでございます。従いまして、人道的見地並びに国際赤十字の定めた諸協定の精神に基きまして、いろいろな事情で他国に避難しております者、また収容所に入れられております者が、自分の帰るべき祖国を決定する自由という、この国際的精神に対して、藤山外務大臣はあくまで忠実であるかどうか、また日本政府の道義的権威にかけてこの問題に対しては常に清潔にして厳格な態度を守るという御決心があるかどうか、それを原則的にお伺いいたしておきたい。
○藤山国務大臣 この問題につきましては、原則的に私どもは本人の希望するところに移していく、あるいは帰国させるということが必要なことであり、まだそうあらねばならないと思っております。それでありますから、先ほど申し上げましたように、いろいろ二国間でできるだけのことは交渉をして片づけて参るのは当然でありますけれども、もしそういうことがとうてい不可能な事態が起りましたときには、国際赤十字等を通じてこの問題を解決するということにきめておるわけでございます。
○帆足委員 まことに明確なる御答弁があって、私は日本の外務省のみならず日本国民の名誉のために、今日の事態にこういう国際的精神を重んじ、人道を重んずるという御決意に敬意を表する次第でございます。その点を具体的に行います場合に、先ほどのように、問題の実行についての検討を急いでいただきますとともに、今日大村の収容所におきまして、北に帰る意思表示をいたしました者の中で、国際情勢が非常に変動が激しくて、たとえば北に帰ろうと思っておりましても、南には自分のおっかさんや妹がいて、やはり南へまた帰ろうかと思う、南へ帰ろうと思っておりますと、御承知のように、南はインフレーションで生活が困難で、やはり北に帰った方が前途のために都合がよいのではないかといって、また北に帰るように意思を変える、こういうことがちょいちょいございますように現場で伺いましたが、私はこれは非難すべきことでなくて、理解し得ることである、私どもが同じ立場になりましても、時々によって迷うであろうと思います。これに対しまして収容所の諸君は、あれは優柔不断で、意思がぐらぐら変る者であるからといって、非難の言葉を浴びせかけておるようでございます。私はこれは正当な行政指導でなかろうと思います。この問題に対しましては絶対不干渉であって、そうして避難民に対して理解と同情ある態度で臨むべきではないかと思います。意思決定を変えました李炳南君という一人の朝鮮人が、一つにはおそらく仮釈放を希望したのでありましょう、他方においては最近北朝鮮に帰りたいということを言い出しました。ところが一千人近くの南朝鮮の連中と同じむねに入れられておりますので、不安を感じましてノイローゼになりまして、自殺をはかって未遂に終ったという事件が一週間前にありました。ちょうどこの問題については岩本さん、戸叶さんと一緒に現地でも私は聞いていたことでございますが、その後自殺をはかって未遂に終ったということを聞きまして、大へんお気の毒だと思っております。この問題について当局からの回答書も拝見したのでありますけれども、意思が始終変って困るということを書いてありますが、私は同情のない見方であると思います。従いまして、北鮮なら北鮮に行く希望者に対しまして、また南朝鮮に行く希望者に対しましても、当局としてはいずれに対しても淡々たる態度をもって臨むべきであって、一方を奨励し、一方を不当とするがごときそぶりは慎しまねばならぬと私は思います。これは南朝鮮に行く人に対してお前は南に行くから李承晩びいきで保守反動であるというようなことを左翼陣営からあびせかけるとするならば、私はそれも不当であると思う。南へ行くからといってもおっかさんが病気で南へ帰る人もありましょうし、思想においては社会主義的思意を持っておっても、ふるさとが南であるから南へ帰ろうとする人もあるでしょうし、また北に行く人もおのおのの気持があると思いますから、そういうことには深く立ち入らぬことが礼儀だと私は思います。従いまして北に行きたい人は、別むねの場所に数十一名おりますから北のグループに入れてやるだけの親切を持って、また一挙に北のグループに入れて意思が動揺するというなら、第三の場所を作っておいて、しばらく第三の場所に入れてあげるというような親切をすべきであって、北に行くというふうにきまった人が千人近くの南の中に一人おって白眼視されれば、それはノイローゼになるにきまってますし、南に行くという人が北の中にぶち込まれて毎日革命歌や社会主義の歌のようなものを聞かされても、これまたノイローゼになろうと思いますから、この問題につきまして大村収容所に対して妥当に取り扱うように、そして適当にむねを別にすることもいいではないか。それを現在は北に行きたい人も、あとで申し出た人は無理に南の千人の人と一緒に入れて、このために摩擦が起っておるのでございます。 また婦人の収容所におきましては全然分けておりません。婦人は穏やかですから、分けないで円満にいけばそれが一番いいと思うのです。しかし北に帰る人が共同の集まりなどをしましたときに、その北に帰る婦人のグループと共同して懇談したり映画を見たりすることは禁止しております。こういうことも私は不当な干渉であると思いますから、もう少し外務省当局首脳部の方においてこれを御勧告され――これは入国管理局の問題ではありますけれども、そういう不当なことが行われておるということ、これを多少でも改善する余地があるということにお気づきになるように希望いたしまして、このことについてはいずれ岩本議員を中心として御懇談の機会に改善を求めたいと思います。 最後にポーランド、チェコスロバキアと国交が回復いたしまして、最近いろいろな会合で両国の大使、公使などにもお目にかかりました。今小国の発言というものが大事でありまするし、小さな国の判断というものは謙虚にしてつつましやかで、また奥ゆかしい文化を持っておるものでございますから、私は大きな国々だけでなくて、小さな国々との親交を深めるということは日本にとって非常に重要なことであると思うのでございます。従いましてポーランド並びにチェコスロバキアと大使を交換し、同時に国交が回復し、最近は経済協定も進み、文化の交流も盛んになって、チェコスロバキアからスメタナ三重奏の有名な、バイオリンの演奏者が十一月に参りますことなども、まことによいことだと思っておりますが、これに引き続きましてルーマニア、ブルガリア並びにハンガリー等と漸次国交を回復することが好ましいことと思いますが、この三国に対して国交回復の見通しを大臣から伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 この三国との国交回復につきましてもわれわれは検討いたしておるわけでありまして、先ほどから申し上げておりますように、私どもは共産国といえどもお互いの立場を害さない限りは、できるだけ友好親善関係を作っていきたいと思っておりますので、そういう問題について今後とも検討をいたして参るつもりでおります。従って今いつということは申し上げかねるかと思いますけれども、将来そういう時期があるかと思います。
○帆足委員 ルーマニア、ブルガリア等はポーランド、チェコスロバキアと大体同じ立場にあるわけですが、延びている理由はどういうところにありましょうか。これは別に政府を攻撃するわけでありませんで、どうして延びておるか、ちょっとわれわれ理解できないわけです。たとえば先方でそれほど希望してないとか、その他の理由でもございましょうか、伺っておきたい。
○藤山国務大臣 私の承知しておる範囲内では、先方でもまだそれほど強く要求してきておらぬと思います。今後ともそういう問題については、お互いに話し合っていくつもりであります。
○帆足委員 実は私は先年ルーマニアに参りましたが、私の同僚の田原君が世話役でルーマニアとの文化親善の協会のようなものも簡素ながらあるのであります。またブルガリアには私も先年参りましたが、今、池田正之輔氏が参っております。それぞれ非常に経済も安定し、政治も安定しておる様子を見て参りました。また先方は日本と遠い国でありますけれども、文化交流、親善を非常に熱望しておりましたので、先方にほんとうに熱意がないかどうか、私は国交の回復を熱望しておるのではないかと思います。さらにいろいろな国際的会合でその代表の方も多く見えられますので、先方の最近の情勢や希望などもわれわれも確かめてみますけれども、どうも政府がそれを急いでおられないのは私は不可解に思っておりますが、このことにつきましてはまた時に応じて進行状況を御質問いたしますが、われわれとしては、それらの国々との国交回復を熱望しておるということについて政府当局に注意を促しておきたいと思います。 それについて、ちょっと不可解なのは、たとえばルーマニアなどはポーランドと同時にそうしてもよさそうでありますが、重ねて外務大臣に……。
○藤山国務大臣 むろん国交回復の問題につきましては、向うから話があった国とか、順序もございますし、それらの点についての熱意なり、お互いに今までの経済関係あるいは国交関係その他も考慮してやって参るわけであります。別に私どもルーマニアだからいけないとかいうことを考えておるわけではございませんで、そういう意味において、やはりおのずから若干の順序はあると思います。
○帆足委員 いずれこの問題につきましてはまた必要に応じまして政府に御督促も申し上げ、要望もいたしますが、社会党といたしましてはチェコスロバキア、ポーランドとの国交回復はその結果を見ましても非常に日本にとってよいことである。文化交流もショパンの音楽が聞けるようになりましたし、先日のチェコスロバキアのガラス展覧会などはすばらしいものでありまして、大へんよい結果をもたらしておりますから、手工業の国といわれておるルーマニア、ブルガリア、それから中ヨーロッパの伝統のゆかしいハンガリア等との国交回復に対して至急もっと御熱心な御注意を向けられることを切望いたしまして質問を終ります。
○櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後零時三十九分散会