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29回国会参議院1958/07/11

社会労働委員会 閉会後第1号

発言数
72
登壇者
15
会派数
2
開催日
1958/07/11

会議録

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) これより社会労働委員会を開きます。  委員の異動を報告いたします。  七月八日付をもって横山フク君が辞任し、その補欠として井上清一君が選任されました。七月十日付をもって、阿具根登君が辞任し、その補欠として山下義信君及び欠員中の補欠として坂本昭君が選任されました。七月十一日付をもって坂本昭君が辞任し、その補欠として戸叶武君が選任されました。     —————————————

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 理事補欠互選についてお諮りいたします。  委員外転出のため欠員中の理事山下義信君の補欠互選を行います。その方法は、成規の手続を省略して、委員長の指名といたすことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。  それでは、山下義信君を理事に指名いたします。     —————————————

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) この際、お諮りいたします。  国際労働条約批准等に関する小委員長から、参考人の出席を求め、小委員会において意見を聴取することにいたしたいとの申し出がございます。国際労働条約批准に関して参考人の出席を求め、意見聴取は国際労働条約批准等に関する小委員会において行うこととし、日時、人選、その他の手続等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 御異議ないと認め、参考人の意見を聴取することに決定いたしました。     —————————————

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 社会保障制度に関する調査の一環として、最近の父親殺しと社会福祉施策に関する件を議題といたします。  本日は、本件調査上の参考資にするため、参考人の御出席を願い、御意見を拝聴することになっております。  参考人の各位にはお忙しいところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。当委員会においては、目下本問題について調査中でございますが、その参考に資するため各位の御出席をお願いして、御意見を拝聴いたすことになりました。その具体的な事項及び参考資料等は、あらかじめお手元に御送付申し上げておきました通りでございますが、時間の関係もございますので、重点的に御意見の発表をお願いいたしまして、次に、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。なお、御発表の時間は、あらかじめ御依頼の際御通知申し上げました通り、お一人十分または十五分以内でお願いいたします。御了承お願いいたします。  次に、委員各位にお諮りいたします。議事の進行上、参考人全部の意見発表が済んでから質疑を願うことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。  なお、本日の委員会は、なるべく午前中に終了いたしたいと存じますので、お含みおきを願い、お進め願いたいと存じます。  それでは、参考人の各位から順次御意見、の発表をお願いいたします。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 上着をおとりになって……。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 参考人の方々も、きょうは非常に暑いさなかでございますしいたしますので、どうぞ上着をおとり下さいまして、御自由にお楽にいたしていただきたいと存じます。

山下義信日本社会党

○山下義信君 厚生大臣の出席を求めてありますが、厚生大臣の出席はどうなっておりますか。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 厚生大臣も出席する予定になっておりますが、閣議中でございますので、閣議の終了次第、追って御出席になる予定でございます。

山下義信日本社会党

○山下義信君 了承しました。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) それでは、参考人の御発言は、委員長の方から向いまして右の方から御発言を願う予定にいたしておりますので、最初に、都丸家唯君にお願いいたしたいと存じます。警視庁の西新井警察署長です。

都丸家唯警視庁西新井警察署長

○参考人(都丸家唯君) どういうことを発言したらよろしゅうございますか。最初に、御指示のありました警察の取扱いについてですか。そのことについて申し上げたいと思います。  父親殺しの犯罪の発覚についてまず申し上げます。  六月の十五日午後二時ごろでございました。南千住署から、子供が父親を殺したと言って自首して来たが、その事実があるかどうかということについて、現場を調査一してその事実の有無を確めてもらいたいという話がありまして、私及び刑事課長が、現場でありますところの足立区本木町二丁目七百八十番地の福澄義雄方の斎藤正躬方に急行して、現場を検分しますと、果して南十住署からの通報通り、父親であるところの斎藤正躬がへこ帯によって絞殺され、死体に毛布がかけてある現場を発見したわけでございます。死体の状況等は省略させていただきますが、直ちにそのを南千住署に返答し、その後の捜査の手続を踏みまして、同日夜になりまして、斎藤洋子並びに徳子の町名を西新井署に同行したわけでございます。斎藤洋子は満十六才になっておりますので、いわゆる尊属殺人被疑者として緊急逮捕、徳子は満十三才でありますところから、これは刑事未成年者でありますので、保護措置の手続をとりまして保護したわけであります。同時に、弟の隆五才も、これを保護したわけでございます。その後捜査を遂げまして斎藤洋子は、六月の十七日に身柄とともに一応検察庁に送致、同日勾留になったわけであります。その後、家庭裁判所に事件が検察庁から送致されまして、練馬少年鑑別所に送られまして、目下練馬少年鑑別所において鑑別調査中であるわけであります。斎藤徳子は、一日保護いたしまして、翌十六日の午後二時ごろ長男でありますところの斎藤伊亮に身柄を引き渡しますとともに、台東児童相談所に非行事実を通告したわけでございます。申しおくれましたが、隆も同様、これは斎藤伊亮に引き渡しております。  警察の捜査手続といたしましては以上で、ここで、犯行に至るまでの、いわゆる殺人を決意するまでの姉妹の行動及びその動機について申し上げてみたいと思います。  斎藤洋子は、南千住署の管内の清水八毛子というコロッケ屋に住み込み奉公中でありました。家庭は、母親フミ、徳子、隆、正躬の四人でありまして、斎藤フミが日雇い、玉姫で職安に登録しております。職安人夫として稼動し、生活を維持し、家計は、家庭の一切の雑事は、妹の徳子が隆の面倒を見つつやっておったわけであります。調べによりますと、斎藤正躬は、ほとんど仕事もせず、昼夜を分たず酒を飲み、家族に相当つらく当っておったようであります。たまたま十三日の日に——十五日は犯行の日でございますが、十三日の日に、次男でありますところの公亮、これは板橋の徳丸本町方面でバーテンをやっておると自称しておりますが、その実態はつかめません。それが執行猶予の恩典になったと言って、母親のところにあいさつに参りまして、母親は同人を送って、西新井橋まで参り、その後自宅に戻りましたところ、夫正躬から相当強い、酔ったしの要求——ここで具体的に申し上げるのははばかりますが、要求をされた。これを拒絶しますと、三千円の金をあした職安へ行ってこしらえてこい、とうてい不可能な要求を出しまして、これに困惑した母親は、これは後の調べでわかりましたが、平素の虐待等を考えまして、十四日の早朝、それを苦にしながら職安に働きに出た。おそらく職安で働いて、帰宅の時間に家出を決意したものと想像されますが、三千円の金もできないというところから、そのまま家出し、自殺しようというような決意を持ったようであります。そういうわけで、母親も十四日からいなくなる。たまたま清水方に奉公に行っておりました洋子が、同僚とけんかをいたしまして、主人に強くこの点を叱責されたため、無断で同家を家出いたしまして、他出いたしまして、母親のいる自宅に帰ろうと思った。母親が、常日ごろ南千住の停留所に夕方帰るのを知っておりますところから、これを待ち受けておりましたが、母親が十四日の晩に帰ってこない。そこで、午後の八時ごろ、父親に、しょうちゅう二合のおみやげを持って自宅へ帰りましたところ、父親は同僚と、いわゆるバタヤ仲間の人と昼間から酒を飲んでおって、相当酔っておったそうであります。なお、持って参ったしょうちゅうを父親に提供しましたところ、お前がしようちゅうを買ってくるなんて珍しい。母親とぐるになって、母親を逃がしたのだろうということで、相当ひどく責められたのでありますが、その晩はそれで済みまして、翌朝四時ごろ父親が、母親を探しに行くのだからと言って、四時半ごろ子供たちを起し、徳子十三才の食事の仕度によりまして、前夜の食べ残りでありますところの冷御飯を早急にかき込みまして、親子四人して山谷の、母親の友だちでございますところの五十嵐しづ方に母親を探しに参ったわけでございます。たまたまそこには、母親が、徳子が来たらこれを渡してくれと言って置いていきましたところの登録手帳、職安で働くところのズックの靴、ズックの地下足袋ですね。弁当箱と、当日働きました現金三百円が置いてありまして、この二人に五十嵐しづから渡されたわけでございます。そこで、母親がすでに決意して家出したということが姉妹にははっきりわかったわけでございます。その後そのお金を父親に渡しましたところ、父親は、さっそくその金によって、付近の酒屋でしょうちゅうを買って飲み、相当酔った上で、親子四人してさらにかつて父親が働いたことのありますところの南千住、場所はちょっと失念いたしましたが、高橋というかわら屋へ寄ったわけです。そこでも、父親はさらに付近の酒屋へ行ってしょうちゅうを飲む。その晩洋子は、無断で他出したことについて、清水八重子、いわゆるコロッケ屋に謝罪の電話をして、これからお父さんを家へ送ってから帰りますがと言って電話をし、相当酔った父親をいたわりながら帰途についたわけでありますが、たまたま西新井橋付近でございましたか、千住新橋の付近の共同便所へ二人の女の子が用を足している間に、父親は酔って路上に寝てしまったというところから、二人でこの父親を介抱しつつ、タクシーでもって自宅に帰ったわけです。二人でかかえながら自宅に帰ったようであります。自宅に行く途中において、付近の長屋のかどに父親の額がぶつついてけがをした。これをどう勘違いしましたか、父親は、おれは関根にいたけれども、額に傷をつけられたことはない。どうするか覚えているというようなことを言っている。さらに、寝かせようとしましたところが、土間において、入口に三尺の土間がありますが、板床になっております。ここで放尿をしてしまった。ようやく座敷に入れて、まくらをして寝かし、やれやれと思って、そこで落ちついたところで姉の洋子は、これから私、南千住へ帰らなければならぬと言ったところが、妹の徳子は、自分はまた母親のない、一人で家庭を、残る父親をかかえて、弟の隆のめんどうを見ながら、炊事万端一切家事をやらなければいかぬ。それが父親にひどくまたいじめられるかもしれぬというような考え方が起きたのでしょう。姉に向って、お父さんをやってしまおうかということを提言したわけであります。そこで姉も、日ごろの父親の状況を知っておるところから、隆ちゃん、お父さんがいなくてもいい、いなくてもいいよというような返事がありましたので、そこで父親殺害を決意するに至ったわけであります。  以上が、警察におきますところの本事件の捜査の経過と、被疑者きょうだいが父親を殺害するに至った、殺害の犯行の決意に至ったところの動機について申し上げたわけでございます。  以上で終ります。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、東京都民生委員福澄義雄君お願いいたします。

福澄義雄東京都民生委員

○参考人(福澄義雄君) どういう点から御説明申し上げたらよろしいでしょうか。あらかじめ御了承を願いたいのですが、私は、業者としては仕切業者をしておりまして、民生委員を拝命しておる者でございます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 時間が非常に短いので、お話になりにくいと思いますが……。

福澄義雄東京都民生委員

○参考人(福澄義雄君) 斎藤一家が私のうちへ来ました動機は、同じ同業者が、たまたま私の留守のときにこの斎藤正躬を連れて来まして、夫婦兵かせぎでまじめに仕事をするから入れてほしいということを私の妻に申したわけであります。妻も、普通でしたら、私がいる場合には、私と相談の上部屋に入れるわけでございますが、私が留守でありましたために、まあまじめに夫婦共かせぎでやるならよかろうということで、うちの部屋に入れたわけでございます。そういう意味合いで、私がたまたま長期の旅行をしまして、帰ってから、こういう四人家族を入れたという話を聞いたときには、どういう家族かと聞きましたときには、夫婦まだ若い、それに子供はまず十五ぐらいの女の子に小さい男の子だ。こういう話を聞きました。そこで私も、営業外の用が多いものでございますから、なかなか仕切場におられませんので、その斎藤正躬に面接したかしないか、私ちょっと記憶ないくらいの状態であります。犯行を犯しましたのが、大体私のうちに来ましてから一カ月とちょっとでございますので、その正躬のいわゆる個人生活と家族の状況はなかなか把握できなかったわけでございます。事件があって初めて、男の兄弟が上の方にいる、家内が職安に勤めている、また一番上の子が、私のうちに来る二カ月も前に南千住のコロッケ魔に勤めている、これは、事件があって、いろいろの人たちが集まって来て、初めて私が知ったような次第でございまして、この家族は、四人以外の家族の状況に関して私は全然聞いてもおりませんし、知る由もなかったわけであります。その犯行がありましたので、その上の子供があるということを知りませんので、これは小さい子供がかわいそうだというので、さっそく足立福祉事務所の吉川少年係、この人と相談しまして、とにかく小さい子供だから、まあ姉はちょっと年が上になっていますし、下はとにかく小さい子供でかわいそうだから、何とかしなければいけない、引き取り方を考慮しなければならないというので相談しまして、台東の施設へ収容するようにお願いしたのです。ところが、たまたま長男の伊亮君が茨城県の龍崎市から上京しまして、死んだ父は私の義父ですけれども、おふくろの実子であります、今まで離れて住んでおりましたけれども、こういうきょうだいに対してかわいそうですから、私がどんなことしても引き取ります。こういうことなんです。君がそういう決意で引き取るのはけっこうだ、しかし、私と吉川さんとの同でこういう施設に収容するような話が進められているから、一ぺん福祉事務所においでになって、よく相談の上しかるべくいい法をとってほしい、こういう意味合いで、福祉事務所に向わしたのであります。あとで聞いたのですが、とにかく私が引き取るというので、吉川さんも、肉親である兄さんに引き百取られるのならばよかろうというので、兄さんのもとに引き取るようになった状態であります。  以上の程度で、あとの詳しいことは、期間が少かったものですから、私としてはちょっとわかりかねるわけでございます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) なお、御担当になっておられる地区内における民生委員としての活動状況について。

福澄義雄東京都民生委員

○参考人(福澄義雄君) この点は、私は、いわゆる民生の面におきましては、こうした立場の人たちが困って、いわゆる病気だという場合に、私のもとに相談に参りました節は、すぐに連絡書を書きまして、一応担当の刈谷さんに行って御相談願うべく、福祉事務所の方へ本人を向けている。こういう意味合いで、その結果ケース・ワークの方の実態調査によってこの保護を受けるか受けないかは、福祉事務所の方のいわゆる決定におまかせ願って、救護の手を伸べておる。かような状態でございます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、東京都足立福祉事務所長木間常理君にお願いします。

木間常理東京都足立福祉事務所長

○参考人(木間常理君) 事件の経過につきましては、ただいま西新井の署長さんからお話がありました通りでございますので、事件の内容につきましては省略いたします。  それから次は、この事件に対しますところの事務所としての処理いたしました経過というようなことが、きょう私に課せられた問題のようでございますが、それにつきましての一端は、ただいま福澄委員からお話がありました通りでございます。私の方といたしましては、事件を承知いたしましたのが事件の翌日、十六日の朝刊によりまして知り、私ども役所に参りましてから、急遽私並びに相談課長、児童福祉司並びに担当のケース・ワーカーと相談いたしまして、直ちに私どもの方の台帳を調査いたしました。台帳を調査いたしましたところ、斎藤正躬なる保護者はございませんので、これが福澄さんのところだということが新聞によって承知いたしましたので、角谷さんに直ちに福澄さんのところに行ってもらったわけでございます。行きましたところ、ちょうど奥さんが警察の方へ行っておられまして、事件の直後でもあり、その子供もすでに警察の方へ行っておりますので、詳細わかりませんので、直ちに帰ってこられたらば事務所の方へ参るように、こういうふうに申し伝えまして、角谷君、ケース・ワーカーは役所に帰りました。その直後、間もなく長男の伊亮君と、それから次女洋子ですか、それに隆という男の子、三人が事務所へ参りまして、われわれといたしましては、まず第一に、父が殺され、母が家出しておるところの子供、これをまず第一に収容するということが第一の問題、次に葬祭の問題、その殺された父の葬式の問題、これがございますので、ちょうど長男にも聞きましたが、別に所持金も持ってこなかったというようなことでございましたので、一応生活保護法によりますところの葬祭扶助を行うと、こういうことに決定いたしたのでございます。そういうことにいたしまして、一応この事件は私の方の手を離れるというような形になったのであります。と申しますのは、この女の子並びに男の子につきましては、ただいま話がありましたように、長男が自分でめんどうを見たいと、こういう申し出がありましたので、やはり収容施設に入れまするよりも、そういった実際の肉親のものの手によって育成されるのが、ほんとうの意味においての子供の幸福であろうと、こういうふうに感じましたので、長男にその子供を託する、こういうことに私どもは決定いたしましたのでございます。事件につきましては、以上のようでございます。  なお、私に課せられたことといたしましては、社会福祉主事の職務の執行状況並びにバタヤ部落に対する生活保護法の実施状況と、こういったようなことがうたわれておりまするが、これらにつきましては、お手元に差し上げてございますところの資料がございますので、それによって御承知おき願いたいと存じます。ただいま申しあげました事務所としてとりました措置につきましては、資料第二ページ、番号6のところでございます——それから、社会福祉主事の職務執行状況については、三ページの(ロ)のところに詳細に記載してございます。なお、それらの機構等の関係につきましては、ここにありまするような次第をもちまして事務所といたしましては職務を執行いたしておるような次第でございます。さらに、バタヤ部落に対する生活保護法の実施状況につきましては、六ページの(ハ)にございますように、ここには、仕切場別に仕切場の世帯数ならびにそこにおりますところの被保護世帯ならびにその家族数というのが出ております。最後の九ページをごらんになりますと、大体被保護世帯のいる仕切場が二十三カ所、そこにおります世帯人員が六百五十五人、そのうち保護の世帯が七十七世帯、人員にいたしまして二百五十七と、こういうようなのが、一応私どもの方におきましてこのバタヤ部落に対するところの保護の現状でございます。  ただ、この機会に皆さま方の御参考までに、私どもの考えておりますことを申し上げます機会を与えていただきたいと存じます。  この事件を見ますると、先ほど来から事件の経過にもございましたように、私どもの考え方からいたしますると、この事件には、何と申しますか、盲点が四つあるのでございます。  まず第一は、この世帯が被保護世帯でなかったということ。現在の生活保護法によりますと、大体保護は申請主義をとっております。本人の申請によりまして、保護をかけるかけないをきめるわけでございますが、それにつきましては、民生委員さんからの連絡あるいは隣り近所からの連絡もありましょうし、あるいはまた風評によりまして、あるいは投書により、そういうようなことによりまして私の方から調査に出向きましてその調査の結果、かけるべきものにつきましては保護をかけるということを決定いたす、こういうようになっておりますが、ただいまのこの件につきましては、民生委員さんの方からの連絡もございません。また本人からの申請もございません。そういった関係からいたしまして、これは被保護世帯でございませんので、私どもの方の事務所におきましては、この世帯についての実態を把握する何らのよすがもなかったということでございます。  第二は、民生委員さんの関係になりますが、元来ああいうような地域におきまして、バタヤの者は、大体酒を飲むのが朝とか昼でございます。かせぐのは、夕方から車を引いて出かけるわけですから、酒を飲むとすれば昼間が多い。そして昼間酒を飲んで夫婦げんかをする、がやがやして、出るの出ないのというような騒ぎをするのは、全くあのかいわいといたしましては日常茶飯事にもひとしいことでございます。従いまして、近隣におきましても、そのようなことになっても、また始まった、うるさいやつだというようなことぐらいで、重大な関心を持つというようなことには至っておりません。かつまた、民生委員さんにいたしましても、積極的にそういうところに飛び込んで行くというわけにもなかなかいかない。家庭のいわゆる一私事につきまして、そう容喙するということもできませんので、一応は関心は持ちますが、なかなかその中に飛び込むというまでに至らないばかりでなく、この家庭は、先ほどから話がありましたように、福澄仕切場に参りましたのが一カ月とちょっと、元来足立区のあの本木の一丁目に参りましたのが昨年の十月でございますが、十月からこの事件がありますまでに、四カ所も仕切場を変えております。いずれの仕切場におきましても一ヵ月ないし二ヵ月くらいしかおらない、ということは、結局、正躬なる者が非常に労働力がないなまけ者であるので、結局仕切場にいたたまれなくなるという形であります。そうような、わずか一ヵ月くらいしかいなかった者につきましては、担当の民生委員さんとしても、なかなかその家庭を把握することは困難ではないか、かように考えられます。なおまた、このケースの旭当の民生委員さんは福澄仕切場の方ではなくて仕切場は少し福澄さんの事務所より離れておりますので、その地区の内山という民生委員さんが担当になっております。福澄さんは仕切場の主人としての立場でございます。また、仕切場の主人としても、先ほど話がありましたように、この家庭についての把握がなかったということ、これは、ただいまのように、移ってこられてから一カ月であるということでありますが、さらに、もう少し掘り下げてみますと、元来仕切場に人が来るということ、新しい人が来るというのは、大ていはだれか仲間からの紹介みたいなもので参ります。そうしてそれによりまして、まず最初にその身元を尋ねる、前身は何であったかというようなことを尋ねたりなどは、一般にはいたさないのが普通でございます。と申しますのは、ああいう所に参ります者は、前科者であるとか、あるいは刑余者であるとか、いろいろな者がありまして、あまりそういったものを初めから根掘り葉掘り聞きますと、かえってその者の労働意欲と申しますか、更生意欲を阻害するということがありますので、次第に日がたつに従ってだんだんに聞くというような態度をとっておるのが普通ではないか、こういうふうに考えられます。従いまして、仕切場の主人としても、あの家庭を十分に把握するところの段階に至っておらなかった、こういうことでございます。  第三は、ただいま警察署長から話がありましたように、あの子供の三男が医療少年院に在院いたしております。医療少年院に在院いたしておりますと、これは司法保護司としての保護観察の段階には入っておりません。少年院を退院いたしますれば、それからしばらくの間は保護観察の対象になりますが、そういったことにまだ至っていない、在院中であったということで、これによりまして、やはり司法保護司の関係におきましてもあの世帯を把握することができなかったということでございます。  第四は、あの子供、十三才になる徳子でございますが、これが長欠児童であると申しますか、長欠というよりも、むしろ不就学に近い状態でございます。私ども、的確なあれはございませんが、本木にあります西新井小学校に二年か三年まで通学し、その後は全然通学いたしておりません。それは、その前に一ぺん西新井の方に行ったことがございますので、そこに入りまして、それから後浅草に変り、また本木に来ました。本木に来てから居を変えること四回ということでございますので、おそらく住所不明ということで、学籍簿から除籍されたのではないかと思います。そういうような関係で、長欠児童の対象にもなっていなかった、学籍簿からすでに除いてあったということでございます。従いまして、長欠児童なら、やはり福祉事務所の調査によりまして、これを学校に連絡し、あるいはまた、児童委員であるところの民生委員にも連絡いたしまして、そうしてこれに就学の指導をするということ、あるいはまた、学費の補助をするということも考えられるのでございますが、長欠児童の対象でなかったということ、これによりまして、われわれの方におきましても、この家庭の把握が以上の四点から申しましても非常に困難であったということを申し上げておきたいと思います。  なお、この機会にもう一言付け加えさしていただきます。しからば、こういった事件をなぜあらかじめ察知することができなかったか、あるいはまた、これをあらかじめ防ぐというような方法はなかったかというようなこと、これが私ども、この事件のあと、盛んにあちらこちらから耳にする言葉でございます。もちろん、こういった世帯というものが日本全国におきまして相当数あるということは、断言しても差しつかえないのではないかと思います。ただ、その家庭がこういった悲劇をもたらしてなかったがために、社会から注目されなかったというだけで、これに至らんとするほんとうに危険な家庭というものは非常に数が多い。従ってこれを一々発見できるか、この事件が起らなければ発見されないということは、まことに悲しむべきことではないかと存じます。しかしながら、ただそれだけではわれわれといたしましても済まされないというように考えております。できるだけわれわれは、ケース・ワーカーの誠意と努力とによりまして、こういったことをなるべく未然に防げるようにするとともに、この方法としましては、私の考えるところは、何と申しましても地域にある民生委員さん、この方がこういった家庭を把握するのに一番適当な者ではないかと、こういうように考えております。  現在このケースの起りました本木一丁目には、民生委員さんが十一名おります。足立全体といたしまして、民生委員さんが百八十七名、そうしてこの地区には十一名、十一名があの一丁目におりますということは、まあ他の町に比べますと非常に数が多いのでございます。また、この地区を担当いたしますケース・ワーカーは四名でございます。ケースにつきましては、大体ケース・ワーカー一人が、平均八十五世帯を持ってやっております。民生委員は、保護世帯につきましては、一民生委員が二十世帯ぐらいを担当されておる、こういうような状態でございます。しかしながら、民生委員さんが、やはりそういったことにつきましては、十分御関心を願いましていくよりほかはな。これは私どもはあのケースの後におきましても、また前々からも、民生委員さんにはそういったことをお願い申し上げておるのでございます。なおまた、福祉事務所におきましても、最善の努力をいたしまして、そしてこういうケースを未然に防げるものならば防がねばならぬというふうに考えておりますが、何といたしましても、私どもがただいまここでこうやっている間でも、あるいは日本全国のどこの片隅でこれと同じような事件が起っていないと、だれが保証できょうかというように考えておりますので、私のお願い申し上げたいのは、民生委員さんにそういった大きな責務と申しますかを持っていただくというにつきましては、さらに今日の民生委員制度というものに対して考慮されなければならないのじゃないだろうか。  まず第一に考えますのは、実は民生委員さんと申しますのは、児童福祉法に基きまして児童委員を兼務いたしております。児童委員といたしましては、児童福祉法の第二十九条によりましてはっきりしたところの調査の権限を持っております。民生委員につきましては、そういった法律上の権限はございません。民生委員法におきましては、ただ自主的に民生委員は自分の地区内を調査しというようなことをうたってあるだけで、児童福祉法におけるような調査と申しますか、調査並びに指導でございますが、その権限というものは、法律上何ら与えられておらない。これにつきましても、こういうようなところから考えますならば、今後は民生委員法なり、あるいは生活保護法の改正等によりまして、民生委員さんにも児童福祉法における児童委員に対すると同等の調査権を与えるということが、まず先決ではないかと、こういうふうに考えられます。  第二は、民生委員さんの処遇の問題でございます。民生委員は厚生大臣の委嘱によりまして各都道府県の民生委員ということに相なりますが、しかしながら、それに対する処遇というものは、それぞれ都道府県によって異なりまするが、全国で、まあ東京などの民生委員の手当はいい方だということを聞いております。それでも民生委員としてのお礼と申しますか、お手当は年額五百円、児童委員といたしまして二百五十円、合せまして民生委員さんのお手当は年額七百五十円ということでございます。これは東京都が負担いたしております。これに対しましては、国家は民生委員の手当につきましては、何ら考慮されておりません。こういったような処遇によりまして、従来の民生委員がいわゆる協力機関としてのボランティアの精神によりまして、そしてこういったことに協力してもらうというのならけっこうでございまするが、だんだん世の中は変ってきております。この機会に、こういったことについても、さらに国といたしましても反省されんことを、私は切望してやまないのでございます。  次は、福祉事務所の問題でございますが、もちろん、私が先ほど申し上げましたように、福祉事務所といたしましても、全職員をあげましてこういった問題につきましても、何らかの手を打ちたいということを考えておりまするが、これはわれわれの現在ありますところの手によってやっていきたいと、こういうふうに考えております。しかし、もう一つ考えていただきたいことは、この調査の中にもあるかと思いまするが、実は社会福祉主事と申しますのは、いわゆる厚生三法と申しまして、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、この三つ、さらに母子福祉資金の貸付、あるいは遺族国庫債券に関する法令、こういったような仕事をやっております。生活保護法一つだけの仕事でございません。これらの全部をやりますと、一人当り件数といたしましては相当な数になります。そういうようなことがありまして、身体障害者につきましては、これは身体障害者という一つの特異性から見まして、一ぺん身体障害者の手帳を交付するなりいたしますれば、しばらくは異動というものはございませんから、これはおくといたしまして、児童問題につきましては、非常に変化が多いのでございます。しかも、これは必ずしも児童問題というものは、生活の困窮ということばかりが問題ではございません。きわめて広範にして、かつまた、複雑多岐の問題が併存しておりますので、特に私がお願い申し上げたいのは、今後は児童問題を特に専用に取り扱うところのケース・ワーカーというものが必要である。今日の生活保護法とその他の三法全部をやるということでなく、児童福祉に関する児童問題のケース・ワーカーを特別に設置する。少くとも大都市、六大都市くらいには、まず最初にテストといたしましても、こういったものを置いていただいたならば非常にいいのではないか、こんなふうに実は私は考えておりますので、何とぞ一つ御研究のほどをお願い申し上げたいと、こういうふうに考えておるのでございます。  さらに、こういったようなケースの起りました最後の問題でございますが、これにつきましても、私といたしましては子供が親を殺すということで、子供のケースが非常に衝撃を与えましたが、その逆に親が子供を殺したという例がたくさんございます。ことに農村などにおきましては二男、などの飲んだくれの十七、八あるいは二十才ぐらいの、毎晩酒を飲んで帰って、そうして年をとったおじいさんにからむ。そのためにおじいさんが堪えられなくなって、この子供がいなくなればということで、その子供が酔っぱらって眠っておるところを、まき割でなぐって殺したというケースがもう新聞にちょいちょい見られる。こういうようなことを考えますと、必ずしも親殺しばかりでなく、子殺しの親もある。その原因がどこにあるかというと、ただいまのように酒を飲んだくれて、ほんとうに家庭の平和を乱し、かつまた社会にも治安に害を及ぼす、こういったような者に対して、これを収容隔離するところの施設、しかも、この収容隔離する施設は、単なる刑法的なものではない。社会施設といたしまして考えていただきたい。この際に先ほど申し上げましたような権限を持ったところの民生委員さんの申告ということも、この場合には大きく取り上げられなければならないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  このほかまだだいぶあるのでありますが、これらにつきましては、また後ほど御質問等によってお答えいたします。また、社会福祉曲率の内容につきましては、社会福祉主事が、そういう者が参っておりますので、その方に譲りたいと思います。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、東京都社会精細主事の角谷文昭君にお願いいたします。なお、時間の点はできる限り一つお願いいたしたいと存じます。

角谷文昭東京都社会福祉主事

○参考人(角谷文昭君) 私は行政機関の第一線を担当いたしておる者として、意見を述べさしていただきます。  足立区の本木、とりわけ一丁目というところは、皆様方からは御想像もできないような場所でございます。世の中のいろいろな困窮のしわ寄せとか、それからひずみとか、そういうものがすべて集まっておる、そういうスラムでございます。そういうところを担当しておるケース・ワーカーとしては、いろいろな方がその対策について論ぜられておることは、まことに喜ばしいのでございますけれども、実態を見ていただかない上での議論というものは、机上の空論にひとしいと僕は思います 生活保護法 児童福祉法、身体障害者福祉法、いわゆる福祉三法を担当しておるわけでごさいますが、それ以前の問題が非常に多いのであります。戸籍の出生届も出ていないような子供もおります。自分の子供の生年月日ももちろんわからない親もいます。その親自身が、籍がない親もいるのです。そういうような場所でわれわれが幾ら努力してみても、とうてい救い得ないある一つの沈澱物が出てきて、今度のような事件が僕は発生したのだろうと思います。まだあれに類似したような、潜在的可能性を持つ世帯が少からずあるのです。だから、その一つ一つについての実態を把握することが先決問題で、その実態を把握した後において、いろいろの対策を立てていただきたいと思います。その一環として去年の暮れと今年の三月に、僕ともう一人のケース・ワーカーが中心になりまして、一つの実態調査をまとめてみたのです。バタヤ部落と題する本木町スラムの現状です。その実態調査すらも、まだ実態をつかんでいるとは、僕は確信を持って言えないのです。だからそういうような意味で、実態をまず把握され、先生方におかれても実態をよく把握されて、それに基いていろいろ議論されていただきたいと思います。 七月一日の本委員会の会議録を拝見さしていただきましたけれども、われわれ第一線の社会福祉事業を担当している者としては、まことに遺憾な点が書かれております。本木スラムに一回も行ったことがない、そういうようなとも書いてあるのです。僕はあれを見て非常に残念に思いました。そういうことですから、ぜひとも実態をよく見て、それに基いていろいろの議論をされるようにお願いいたします。詳細については、御質問の際に説明いたします。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、橋本徳之助君をお願いいたします。

橋本徳之助

○参考人(橋本徳之助君) 私が橋本でございます。  私は今度殺されました斎藤さんと同じ商売をしておる者なんです。福澄さんに非常にお世話になっておる者なんです。それで、ほとんどひまなく働いておるものですから、今度の事件については一さいわからなかったのであります、その当時は。で、今お話を警察署長さんや福祉事務所の方にお聞きして詳しくわかったようなわけで、また、その後も主人からお聞きしましてわかりましたけれども、そういう状態で、何ら私はこれに対して皆さんにお話するようなことはないわけなんです。  それから社会福祉施策について所感を述べろとおっしゃられておるのでございますが、これは私も福澄さんにお世話になって五年ばかりおりますが、その間に子供の病気、自分の病気などで、民生委員の福澄さんや、ここにおられる角谷さんなどに非常にあついお世話になっておりまして、この点は一番深く私感謝しておるところなんでございます。  そのほかに別に私の意見としてはないのでございますが、どうぞそこいらでお願いいたします。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、東京少年鑑別、所長鰭崎轍君にお願いいたします。

鰭崎轍東京少年鑑別所長

○参考人(鰭崎轍君) 御案内のように、東京少年鑑別所は、家庭裁判所から観護措置に基きまして入ってくるのでございます。本事件の本人は、今鑑別所に六月二十六日に送られまして、今現在私のところにおるわけでございます。裁判がまだございませんので、そういう本人のこまかいことをここに申し上げることを、遠慮さしていただきたい。ただ、ここに鑑別所における取扱い状況ということに関しまして、ちょっと簡単に、時間がございませんから簡単に申し上げます。  大体去年の統計にもございますように、東京都は広いところで、人口が非常にいるものでありますから、東京少年鑑別所に入ります少年が、非常に数が多いのでございます。けさ現在も二百三十人ぐらいおるのでございます。その大部分が、刑法に触れた行為をした少年でございまして、大体八%ぐらいが、いわゆる犯罪のおそれのある虞犯少年でございまして、大部分が刑法に触れた行為をしたものでございます。それから殺人のことでございますが、去年は大体二十六人、殺人未遂も入れまして二十六人入って参りました。去年入りましたのは、全部で六千人でございます。六千人のうちに二十六人入って参りましたというような状況でございまして、殺人であるがゆえに特別な取扱いはしておりません。全部事件の内容に関係なく取り扱っております。というのは、御案内のように、鑑別所という役所は、戦後国家が少年というものは、科学をとり入れて審判をすべきだという建前によりまして、これを国家が認めて鑑別所というものが都道府県にできたのだと聞いております。従いまして、私のところでも少年を科学的に、本人についての科学的な診断をする役所ということになっておるわけでございます。それで、家庭の状況やら、事件のいろいろなそういうことにつきましては、家庭裁判所の調査官がこれを全部調査することになっておりまして、私の役所には調査権を持つ、調査人員というものはないわけでございます、御案内の通りでございます。従いまして、私のところでは、まず身体状況及び心の面の状況、心的状況を診断するわけでございます。それから二十六日に入ったわけですが、それからずっと現在まで、本人の行動というものを今度は現実の面から、診断でない現実の面から観察をしておりまして、それらの三つを総合いたしまして、この少年が少年法に盛られました心身を健全に育成するには、どうしたらいいかという所見、およそそういう意見を家庭裁判所の方に出すことになっております。多分来週ごろその裁判があるのだと思うのですが、そのための資料を目下作りつつある状況でございます。  そしてまず入って参りますと、私のところでは大体、これは非常に問題が、簡単に申し上げることも、非常にむつかしいのでございますが、少年というものが犯罪をのけては、われわれと同じ人間だという建前をとりまして、特にそれが診断をする場所として、診断をする病院というようなことにいたしまして、少年を病人扱いするという建前をとっております。もちろん、本人には病人の意識を起させるようなふうにしております。従いまして、それに従って入りましてから、名前を呼び捨てにしない、だれだれ君、だれだれさんというようなそういうことから始めまして、診断を受けやすいようなふうにいたしまして、つまりほんとうの姿がわかるようにということがねらいでございます。そして入りまして、これはからだの病気ならば、すぐおわかりいただけますように、病院に入りますればお医者の言う通りに、特に勝手な食べ物を食べたり、勝手なことをしないわけでございます。それと同じように、鑑別所に入りまして教官の、こちらの職員の指図通りに動くようにということをいたすわけでございます。それによりましてはっきりと診断をつけるように、こういうねらいでございます。  科学ということなんでございますが、これは、国家は少年問題を科学で扱うべきだということを認めて、そして鑑別所というものができたと思うのでございますが、しかし、世の中全体の方は、まだ少年問題、非行少年問題を科学を利用すべきだという点に、世の中の方はなっておらないように感じます。従いまして、鑑別所という役所が、診断をする病院だなどとはとうてい考えられない。身柄をとめておくところのとめ置き場のような、あるいは拘置所、刑務所というようなふうな考え方が、世の中にはあるように伺うのでございます。少年というものを科学を取り入れてやる、つまり非行少年、非行問題については科学をとり入れてやるべきだ、犯罪予防、不良化防止には、科学を取り入れるべきだということを国家が認められたわけでございますが、一般の中には、なかなかそういう考えが認められておらないということでございます。従いまして、その犯罪、刑法の行為に至る以前の姿のときに、必ずしも科学が参与しておらないということでございます。まあ、警察で非常に補導ということをやっておられますが、必ずしも科学は参与をしておらない。これはほかの例を申し上げれば、すぐおわかりいただけるかと思いますが、国会の皆様方でございますから、日本の結核問題をどうする、日本の伝染病対策というようなことをお考えになるときには、必ず科学をお入れになる、あるいは日本の農業政策をどうするというときに、必ず農業という学問をお入れになるのではないかと思うのですが、ただ、この非行少年の問題のときには、科学という面が、どうもおろそかにされる。従いまして、こういう犯罪を犯す以前に、科学の手が伸べられていたならば、いろいろな面で、何とか救いの手が加えられるのじゃないか、たとえば長欠児童がなぜ長欠するのだということにも、これは原因といえばいろいろございますかもしれませんが、少くとも科学というものを入れてやるべきだ、これは国家がこれを認められたのですから、これをもう少しいろいろ広いところにまでこの科学というものが入ったならば、この非行少年問題、あるいはそういう一般においてもいいんではないか、私どものところへ入りました二十六人の去年の殺人関係の少年、今、問題になっておる少年の場合も、これは兄がさっきもありましたように、これは数年前に私どもの鑑別所に来まして、そうして少年院に行っている、そういうようないろいろ関係がありまして、科学を入れて、この非行少年問題を解決するというようなことを、私の、国家が認められた役所ですが、どうもその点をもう少し広く科学というものを入れられたならば、ヨーロッパあるいはアメリカ製のような、もう少しすっきりした姿になるのではないかということでございます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、評論家の阿部眞之助君にお願いいたします。

阿部眞之助評論家

○参考人(阿部眞之助君) 私はここに上ることを、この問題に多少興味を持ったもんですから、ここに上ることを喜んでお引き受けして来たのでありまするが、質問事項を見ますというと、どうも多少これは場違いじゃなかったかという感じがするのでありまするが、従ってこの質問事項の(一)と(二)に対しては、私は資格者じゃないと、かように思うのであります。第三のこの関連した事項ということについて、一、二ふだん考えていたことを申し述べたいと思うのであります。  まあ、御参考になるかならぬかわかりませんが、私自身とすれば、相当自分の経験からも痛切な問題になっていることなんでそれは何かといいますと、この酒飲みの問題なんです。まあ私も酒を飲みます、少々は。ここにおられる皆さんの大多数の方も酒を飲まれる、少々でなしに大いに飲まれる方もあるだろうと思います。これは他人に迷惑を与えない、その限りにおいては、別にこれは問題にならないのでありまするが、だんだんこれはまあ性格ですか、あるいは生理的の原因ですか知りませんが、酒を飲んで中毒症状ということになると、これは容易ならざることになってくるのであります。実は数年前、私の遠縁といいますか、まあ縁がないといってもいいくらいのところの人間がころがり込んで来た。どうしてころがり込んで来たかと申しますと、どうも酒を飲んでどうにもこうにも仕方がない、細君には逃げられる、子供にも逃げられちまう。まあ、親戚のところなんか回って歩いても、どこでももうあいそをつかされて、いられなくなっちゃう、それで行き場所がなくなって、最後に私のところにころがり込んで来たのですが、ふだんは非常に温良な、善良な男なんですが、酒を飲まずにいられない。まあ、初めは遠慮して三日や五日はしんぼうしているようですが、もうがまんができなくなる、金を持たせると酒を買うだろうと思って、小づかいは持たせずに、なるべくたばことか、その他実物をやって金を持たせないようにしていましたら、そうすると今度はもう洋服の上着を売ったり、靴を売ったりして、はだしになって帰ってくるというようなことになって、どうにもこれは手のつけようがない。しまいにはのんだくれで、そこらで行き倒れみたいになって警察の御厄介になる、無銭飲食してしまうということで、そのたびにしりぬぐいするというようなことで、どうにもこうにも手のつけようがない。それで警察にも、荻窪の警察で二、三回お世話になるようなことがありました。それで警察へ行って私は相談してみた。これはどうにも手のつけようがないのだから、これは何とか処置のつけようがないかと言うと、警察としては、犯罪でも犯せばこれはすぐひっくくることもできるが、酒を飲んで、のんだくれだけでは、罪にもならぬから、警察としては手のつけようがない。だから、もしその人がどろぼうをするとか、人殺しをするとか、あるいは火をつけるというようなことがあれば、それはわれわれの領分だから何とかしましようと、こう言うので、いわば犯罪を犯さなければどうにもならぬ。つまり犯罪を犯すことを待っていると、こういうような形なんです。私自身とにかく少々どろぼうをされたところが、そのことは大して苦痛ではないのだが、そういうどうにも始末の負えない人間がうちにいて、酔っぱらって来ると、もう寝ころんでしまって小便だの何だのたれ流すというような状況に置かれることは、これは耐え切れない苦痛なんです。どろぼうされたとかなんとかいうそれ以上の苦痛なんだが、これに対しては、いわゆる警察はどうにもならぬ。どこへ相談してもどうにもならぬ。まあ、精神病院でも相談したら、あるいはどうか知りませんが、しかし、はっきりこれは精神病的な状態であるということのきわめがつくならとにかく、そのいわゆるボーダー・ラインにある者は、精神病とも言えないが、さりとてどうも手のつけようがないという、こういうアルコール中毒者に対しては、まあ、これはどうにも手のつけようがない。国も仕方がない。ころがり込まれただけではどうも手のつけようがない。こういうふうな形なんです。全く放って置かれる。たとえばいわゆるこういうような、今度のような事件のようなことが起ると騒ぎ出す、こういうのでは、これはアルコール患者ばかりでなしに、ヒロポンなんかも同じことだと思います。ずいぶんヒロポンで悩んでいる家庭が多いのです。これをどうするかということになるのです。ヒロポン患者やそういう者を収容してどうするという施設は、あるかないか知りませんが、まあない、あってもなきがごときということです。結局犯罪が起ると騒ぎ出す。だからもし犯罪が起きない前に、精神病でもなし、といって常態でもないという、そういう境目にある者を、ただ普通の道徳判断にのみまかしておかないで、そういう設備を置く必要があるのじゃないか。まあ聞きますと、外国あたりでは、そういうふうな病院のようなものがだいぶできておるそうなんですが、日本では少々あるかもしれませんが、ほとんどないような状態に置かれてある。これが一番私は問題じゃなかったかと思います。足立事務所の所長さんのお話を聞いても、その通りなんです。この人は、殺された親は、ふだんは善良な人だったらしいのです。酒飲まずにいられない、飲むとどうも始末に負えない。それが子供たちにもてあまされて、結局は殺さなければならぬという決意をさせるに至った。まあ、反対に親がのんだくれの子を殺したいう例は、始終新聞に出ております。これはこれほど問題にされない、だが迷惑のことは同じだろうと思う。子供がアルコール中毒でもってどうも始末に負えない。こういう子供を処置する場所がない。酒を飲んだだけではしょうがないじゃないか。何とか悪いことをすればということで、どうも社会は犯罪を待っておるというように、私はとれて仕方がない。まあ、もしも、こういうことが、今度の事件とどういう直接の関連を持っているか、私はわかりませんが、当面の急務とすれば、これらのアルコール中毒患者、ヒロポン中毒患者、その他の麻薬中毒患者の、そういう、まだ犯罪を犯すまでに至らない途中にある、そういう人たちを収容する、収容しなくても、何か直すような、ただいま科学の話がありましたが、科学で直せるかどうか知りませんが、そういう扱う場所を作って相談に応ずるということが、私は当面の急務だろう、かように考えておるわけなんであります。  いま一つ、これに関連して考えられることは、尊属の犯罪だということ。こういう刑法ができたのは、私は法律のことは全くめくらでわかりませんが、どうも民主主義の時代に、人間に尊卑のけじめをつけるということは、一体どういうことかということなんです。それはむろん、われわれの社会生活もしくは実際生活においては、親を尊敬し、親を愛する。親は子を愛するということは、これはありがたいことなんです。だから不当に、愛することなしに親を殺すというような場合には、特に厳重に罰せられるということは当然の話しです。しかしながら、人間に尊卑のけじめをつけて、特に尊い者に対する犯罪は厳罰に処するということになっておる。今度の場合でも、もしも裁判所の問題になるならば、聞くところによると、尊属を殺した者だから執行猶予も何もつかないということだそうですが、こういうふうな実際の事情を聞いてみれば、尊属を殺したことは、実に気の毒だという事情がある。あるだろうにもかかわらず、何か人間に頭から尊卑をつけてしまって、尊い者に対する犯行だから、これは執行猶予も何もつかぬというようなことは、何かあまりに型にはめすぎるような感じがどうもある。むしろ、私はこういうものは取り去って、尊属なんていうものはやめてしまった方が、民主主義のみんなが平等であるということの精神にもなるし、同時に法律の適用の上においても、柔軟性があって、実際に合うような、そういう裁判が行われるようにならなければならぬ、かように思うので、この二点について、ちょっと考えたことを申し上げてみたわけであります。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、朝日新聞論説委員、伊藤昇君にお願いいたします。

伊藤昇朝日新聞論説委員

○参考人(伊藤昇君) 私は、どうもこういう問題では、どういう角度から考えましても、専門的な知識を持ち合せておりませんので、ごく常識的な考え方だけしか述べられないのですが、全体として一口に申しますならば、この事件ほど、何と申しますか、現在の政治の貧困と申しますか、政治の手がいきわだっていない家庭、そして社会が厳然として存在しているということをまざまざと物語っているものではないか、そのように思うわけです。それは現在の政治がどうのこうのということより、少くとも悪法の二十五条の生存権、二十六条の教育を受ける権利といったような、そういう憲法を持ちながら、それが実際の社会の中に、生活の中に、家庭の中にしみ込んでいないというような意味で、私は申しておるわけですが、そういう角度から気のついた二、三の点を申し上げます。  第一は、先ほど来、問題とされておりまする家庭の貧困ということでありますが、今度の殺された父親の家庭を見ますときに、一つ気がかりになりましたのは、戦争の前には、三十人の使用人をかかえて、りっぱにやっておった石屋さんだったということです。その父親が応召して帰ってから再起ができなかった。従って日夜アルコールに浸るような生活をしている。これは新聞で私は承知したのでありますが、今日戦後十数年といわれておりながら、こういった立場で何ら経済的、あるいは恩給のようなもので保障されずに、戦前の生活を取り返し得ないで苦しんでいる家庭が非常に多いということを、私はこの家庭が私たちに、もう一ペん反省を求めているように思ったわけです。  貧困ということにつきましては、一般的に先ほどスラムのみじめな生活についての第一線のケース・ワーカーの方の切実なお話があったわけですが、これも新聞などで読みますと、こういったところのスラム街、あるいはバタヤ街、ハーモニカ横丁といわれるようなところでは、ほとんど義務教育を受けない、あるいは受けても中学を出れば、ほとんどが家出をしてしまう。その子供たちをどういうところに社会が収容するかということについても、いろいろ、言われるかもしれませんが、やはり常識的に、そういう人たちが非行少年となり、不良化していくというようなことを考えますと、やはりこういったスラム街の存在そのものが、一つの社会悪の源をなしてはいないか。売春にしても、人身売買にしても、青少年の不良化といった問題にしても、私はかなり関係のある存在だというふうに考えざるを得ないわけです。ところで、これも国が積極的に奨励をして、かなりの予算を持ってやっておられます新生活運動、蚊とハエをなくなすというようなことについては、もちろん各地において相当の成績を上げておりますけれども、社会悪の源、社会悪が発生するようなところに対して、私は経済的に、あるいは予算的に、あるいは政治的に有効なる薬がまかれてないうらみがないかということを、この問題で考えさせられたわけです。  第二の点は、私は幾らか教育の問題を考えさせられておりますので、今度の問題につきましても、義務教育というようなものについて、もう一ぺん真剣に考えてみなければならないと思ったわけです。先ほど憲法の二十六条を取り出しましたのも、その意味でございますが、この問題が起ったときに、私たちの仲間の一人が、だからこのごろの子供というものは信頼できない。危なくてしょうがないというようなことを申したのでありますが、私はそれよりも、このごろの親は危くてしょうがないというふうに考えざるを得なかったわけであります。この子供たちは、先ほどもお話がございましたが、上の子供は中学二年で退学している。次の子供は小学校二年ないし三年までしか行っていない。そうしますと、国が要求しておるところの義務教育に対する親の責任というものも果しておりません。そういった家庭というものに対して、いろいろの法律なり、規則なりができて、これは助けなければならないことになっておりますけれども、実際の社会の末端においてそのことが実現していないということを、まざまざ示していると思うわけです。今日全国では大体三十二、三万の不就学児童、長期欠席児竜というものがございます。そうして新聞によりますと、足立区だけでも千、五百名の不就学、長期欠席児童、生徒がおる。この人たちを救う道というものは、もちろん民生委員の仕事でもございましょう、また、学校の教師の仕事でもございましょう、社会福祉の問題でもございましょう。そのいずれもが手が届かないでいる、そういう存在をどうしなければならないかというところに問題があるわけでありまして私は、これまた政治の貧困にあえて関連づけさしていただきますならば、現場の先生方にいろいろの手当をお出しになることもけっこうだと思うのでありますけれども、この教育あるいは憲法からさえも見捨てられていこうとする子供たちに、まず、救いの手を伸べなければならないのではないか、こういうことを考えさせられたわけです。  申し述べたかった第三の点は、実はアルコールの問題でございますが、先ほど阿部先生が具体的にお述べになりました通りに、私の承知しておりますところでも、非常に心配な事態が起っておるのは、最近二十才代の、あるいはそれ未満の青年たちのアルコール中毒という、そういったものが、かなり顕著に現われてきておるということであります。このアルコール中毒とか、あるいはアルコールを飲むことによって常習的な事故を起す、犯罪を起すといったような人に対し、あるいはそういった事実に対して、日本が、世界の各国に比べると、一番法律的に規則的に持っているものが少い。従って、この際当然考えられなければならないのは、先ほど阿部先生のお話もありましたが、たとえばヒロポンというものがあれほど問題になりまして、そしてそれに対してかなり適切な指導と対策とが打たれまして、今日幾らか下火になっている、いや多分に下火になっているということを考えますならば、私は、アルコール中毒患者に対する対策というものは、当然積極的に考えられてよいというふうに考えます。それは治療の面から、あるいは収容施設の面からというように、いろいろ考えられますが、この際、アルコールについてもう一つ私が申し述べたいのは、こちらに大濱先生も見えておりますけれども、夫がアルコール患者のために非常に暴行を働き、家庭を破壊しているというような場合には、家庭裁判所において、ある程度取り扱っておるということ。これは、具体的には私事実は存じませんですけれども、今日医学の上からいって、薬を飲ませてアルコールを断たせるというふうな方法さえも、本人が承知すれば、可能だというところまではきておるわけです。そういうことを考えますときに、私は、ここで私の結論的な考え方を述べたいのですけれども、そういうことを考えますときに、いろいろの法律とかいろいろの制度、施設、福祉事業に対して、私は、日本は今日福祉関係の法律を持っている点においては、世界にかなりすぐれたものを持っておると思いますけれども、それが実際に国民の間に知れ渡っていないということです。で、私が申し上げたいのは、社会福祉、児童福祉あるいは教育そのものについても、りっぱな法律制度を持っておりながら、それが国民の間に徹底していないということ、特に今度のような問題を起すような地区には、社会教育といったような手も伸びないでしょう。そういった所に、もう少し、せっかくの制度、施設を持っておるならば、そういったものがあるということを徹底させるために、何か総合的な国としての広報活動と申しますか、そういったものが、私はぜひとも必要だと思う。まずこういうことがあるからここに飛んで来いということを知らせることが、私は必要だというふうに考えるわけです。  もう一つ、この問題から当然起って参ります問題は、教育を中心としても、また、児童福祉という問題からも考えられなければならないのでありますが、その際に、私がかねて気がかりにしておりまするのは、特に青少年問題に対して、各省がセクショナリズムに陥っていないかということであります。たとえば簡単に申しまして、児童憲章のことは厚生省がやる、子供の教育については文部省がやる、これはもう少し進みますと、託児所や保育所は厚生省で、幼稚園は文部省、これが不良か非行少年ということになりますと、もちろん司法当局の問題になりましょうが、それらの就職とかあるいは働く青少年ということになると労働省になる。こういったことでは、私は非常に具体的に現実的に困っておる問題も起り得るわけでして、どうかこういう問題の起った際に、児童青少年対策というものに、総合的な何か考えを立てる必要があるのではないか。その前に、総合的な研究機関というようなものもぜひとも必要だと思う。少し問題の焦点からはずれたかもしれませんですけれども、私は、今度の問題から、以上のような諸点を考えついたわけでございます。それだけ、私は、御参考にはならないかと存じますが、申し上げます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、読売新聞論説委員の高木健夫君にお願いいたします。

高木健夫読売新聞論説委員

○参考人(高木健夫君) 大体、私が申し上げようと思っておりましたことは、阿部さんと伊藤さんがもう詳しくお話しになりました。全然私の考えも同じでありますので、なるべく重複を避けながら、簡単に申し上げたいと思います。  伊藤さんのお話の最後に、各省のセクショナリズムというお話がありましたけれども、これも、私たちは事件が起るごとに、いつも痛感する問題なのであります。どうしたらいいかというと、これは、私たちしろうとにはちょっとわからないけれども、役所の機構がもう少し、もっと機能的に機動的になってほしいと思うことなんです。さっき福祉事務所の方のお話を承わりまして、よくわかりましたけれども、実は、この問題についてある社会事業をやっておられる御婦人に話を聞いたことがあります。その人は、引揚者の寮をやっておるのですが、相談に来た奥さんがある。旦那さんがあるわけですね。その人が、どうしても入れてほしいと言うので、あなたは旦那さんもあるから、もう一ぺん家へ帰って考えてごらんなさい、そして二日考えていらっしゃいと言って帰したということです。そうすると、その晩にその奥さんが自殺してしまったというのですね。そういった第一線の窓口の扱いが、ほんとうにその人のためを思って取り扱い、あるいは折衝しておるつもりでも、その本人には、どうしても一生一代の、一時間もどうにもならないというせっぱ詰まった場合が非常にあるのではないか。これは一つの例なんでありますけれども、ここ東京といわず、地方やなんかのそういう施設、福祉事務所や何かを見ますと、やはりその窓口の扱い方が、その所長やあるいは所員の人となりとか何なりで、かなり違っておるところがあるのではないかというように私は思います。  それからこの問題が起りましてから、これは非常に社会的に大きな反響を巻き起した。そして同情金が何万円か集まった。これは何か事件があるごとにあるケースでありますけれども、非常に世の中の人たちの心を打った事件だと思うのです。そういうふうなことだったら、これはもう少し社会の助け合いの運動という気持を、国民の間にもっと広く持つことが必要じゃないか。赤い羽根運動とかいろんな運動があるけれども、それのやり方とか国民のそれに対するあきっぽい気持とかあって、だんだんあまり盛んでなくなっていくようでありますけれども、これは何度も繰り返してやりたい。  それからこの問題は、そういう貧乏とそれからさっき申しましたおやじのつまり労働意欲がないということ、アルコール中毒、そういうことだろうと思うのですけれども、そういう人たちに接するのは、もちろん民生委員の方々とかケース・ワーカー、いろいろおりますけれども、警察官ですね、これはいわゆるしょっちゅう回って歩いて見ておるわけなんです。ですから、そういう人たちも、もっと積極的に協力して、そしていわゆるもっと広い警察官の気持を持っていただきたい。もちろんそういうふうにして困った親子を救った警官などは、よく記事には出ておりますけれども、そういうことをやった警官が、たとえば交通事故で円タクの運転手をつかまえた点数よりも点数が少いということであったならば、これは非常に残念だと思う。  それからアルコール中毒の問題ですが——いや、その前にもう一つ、子供の長期欠席の問題があります。これは、託児所はあっちこっちにたくさんできておりますけれども、やはり学校に行けないような子供、これは何とかして学校にやるように、学校にいくひまがなかったら、そのまわりに託児所とか、あるいは中共なんかでやっておりますけれども、療養学校みたいなものがある、そういう施設を重点的に作る必要があるんじゃないかと思います。  それからアルコール中毒の問題ですが、これはやはり今、禁酒同盟なんかでアルコール中毒を矯正する収容施設があるようです。しかし、これは有料で、相当金持ちでないと入れない、そこで、無料で強制的に収容するという所が必要なのじゃないかと思うのです。全国で何万おるかわかりませんけれども、私たちの友人の周囲にも、そういう人がかなりおります。で、これは酔っぱらい、酒の上のことというので、大体のことは大目に見られているという社会通念、これから変えていかなければならないかと思うのでありますが、まずさしあたって、アルコール中毒患者をどういうふうに扱うかということをお考え願いたい、このように考えます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、東京都家庭裁判所調停委員大濱英子君にお願いいたします。

大濱英子東京都家庭裁判所調停委員

○参考人(大濱英子君) すでにお話が出ましたので、ごく簡単に一言、私の考えていることを申し上げたいと思います。  この事件で一番感じますことは、先ほど第一線でお働きになっておりますケース・ワーカーの方がおっしゃいましたように、こういう方面のスラム街についても、また、そうでない長欠とかいろんなことについても、福祉三法その他救いの手はあるにはあるのですけれども、それ以前の問題が、日本の家族関係の中には非常にたくさんある、しかもこの事件は、そのただ一つの表に現われた大きな事件で、大へんにみんながショックを受けておりますけれども、これと同じようなことが、幾らでもたくさんあるのだ、そういうことをこの際にみんなが感じて、そうして特に国会でも取り上げていただいて、どうしたらばいいかというようなことについてのお考えを、ぜひ具体化してほしいということが、私の一番考えているところなのでございます。  で、この場合に、もしも一家のうちに一人因った人がいる、これは先ほどからお話が出ておりますように、酒飲みでございますけれども、精神異常者にしても、あるいは病人にしても、その他浪費者にしても、いろんなことでもって一人困った人がいるために、うちの中の者がみな、生活は貧乏のどん底に陥るし、どうにもならないというようなことがたくさんあるので、ただ、そういうものが、非常に大きな事件として出ないで、新聞の片すみに二行か三行に出るということは、数え切れないほどにあるのでございまして、この場合でも私が思いますのは、母親が家出をするのは、もう困りに困って、どこからも救ってもらえないし、死ぬつもりで出たというのですけれども、もしそれじゃこれが、子供も一緒に母子心中をしたらどうかということ、また、そういうことはたくさんある、そういうことにもなりかねないので、もしそうなったらば、あまりに世の中にたくさんあるので、大して取り上げられない、取り上げられないけれども、こういう問題が幾らでもあるということを、これを機会に、ほんとうに考えなければならないと思うのでございます。このごろ、家庭の中のいろんないざこざということが、非常にふえておりまして、普通にはよく、ありゃ夫婦げんかじゃないか、なに親子げんかだと言って、それほど関心を持たないでいる向きもあるのですけれども、それがどうしても、ただ親子のけんか、夫婦のけんかということだけでは、これはもうおさまらない、従来の考えでは、家庭のことは家庭の中だけでもって処理していくべきだというような一般の考え方があるし、そういう考え方が、また私どもを支配しているのでございますけれども、それでは今日はもう動かなくなったので、そういうただ親子のけんか、夫婦のけんかと見えるような事柄にも、非常にいろいろな深い根があるので、どうしても社会の救いの手というものがそこに伸びなければ、これはもう絶対に解決しないものだということは、この事件一つだけでもわかると思うのでございます。  で、福祉荘法があって、それ以前の問題だということを先ほどおっしゃいましたけれども、ほんとうにそれ以前の問題というのは非常に大きいので、それ以前の問題というものを考えなければ、こういうような事件というものは、大きいか小さいか、あるいは外に現われるか現われないかだけであって、非常にたくさんあるのだ、で、それは日本の社会、それから、それぞれの家庭の幸福、現実、それから子供の将来というようなことに対して、一番大きなガンになっているので、ここに目をつけて、今、この機会に何とかしなければ、ほんとうにもっともっと困った悲劇が起るだろう、そういうことを私考えるのでございます。  それで、福祉三法以前のことだという、そのことなのでございますが、先ほども伊藤先生からお話が出ましたけれども、少くとももちろんその福祉三法が、非常に抜け穴が多くて、そうして手の及ばないところがあり、いろんな点で欠点が多いので、もちろん今後の研究に待たなければなりませんけれども、それでも、一応そこにかかってくれば、何とか救いの手があるのですけれども、そこにかかってこないものが多い。そこに大きな関心を持って、そうしてそういう法律の改正あるいは拡充、ケース・ワーカーをもっとふやすとか、ケース・ワーカーの基礎的な訓練をふやすとか、そういうことと同時に、それ以前の問題を特に国会で取り上げて考えていただきたい、そういうことを切にお願いいたしたいと思います。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  次に、都立大学教授磯村英一君にお願いいたします。

磯村英一都立大学教授

○参考人(磯村英一君) 専門の立場から意見を申し上げたいと思います。  総括的に申し上げますると、この事件は、社会保障の谷間に起った問題として、注目すべきことだろうと思います。私の、谷間と申しまするのは、この事件が、バタヤという都会のスラムの中に起ったということが、一番重要な要件だと思うのです。すでにお話があったと思いますけれども、スラムの中でも、特にバタヤの部落というのは、現在の社会保障がいろいろな面で言われている中で、一番搾取の関係の強い社会と、こういうふうに見なければならぬ、搾取の関係が強いということは、一面におきまして、そこの居住者に対して最低限度の生活を保障しているという、非常に矛盾した関係になる。御存じのようにバタヤ部落になりますると、仕切り場を中心にしまして生活をしておりまする者は、大多数の者が、家賃あるいはその他の生活というものを、仕切り場に全部依存をいたしております。従いまして、毎日集めて参りますものを、どの程度の値段で買い取るということは、ほとんどその仕切り場の一方的な考えによってきまるのです。従いまして、値段によって違うというようなことは、それによって与えられる生活費というものが、ほとんど最低限に近いという関係であります。それならば、なぜそんなところに隷属するかと申しますると、こういったような仕事は、職業という中では、一番プリミティヴな、原始的な仕事でありまして、物を拾えばいいということだけでもって生活する、この形の中におきましては、ほかの仕事に移れないところの一つの、これは性格的な問題もあると思うのであります。従ってこの社会は、非常に搾取関係、いわゆる親分子分の関係が非常に強い社会と、こういうふうに見なければならないと思います。結果におきましては、皮肉なことになるのでございますが、バタヤ部落において、これは隠れたる社会保障が行われている社会だということもいえると思います。で、この関係が、そこに住んでおりまする世帯あるいは家族の関係に、やはり同じような傾向が見られるということなんです。私が、単にこの問題を取り上げてみました場合において、普通のバタヤ以外の、スラム以外の社会でありましたならば、十六になる女の子供が、父親あるいは失跡した母親の、そういったような中でもって、これまで最後的に隷属するというような形は、考えられないのであります。従いまして、そこにおいて、父親がどのようにアルコール中毒の状態になりましても、そこでは日本の古いところの親への隷属という形というものが非常に強く現われておる社会だと、こういうふうに児なければならないと思うわけであります。このスラム、バタヤといったようなものの特徴のある社会でもって、もう一つこの問題に対しての致命的の問題は、この十六、十三の二人の少女というものが、義務教育を途中で終えておる、中途でこれを離れているということであります。かりに、もし十六の少女が、少くとも義務教育を終えているような状態にあるとしたならば、私は、こういったような親に対して、最後まで酒乱の親に対して、これだけの隷属の状態にあるとは、ちょっと今の状態としては想像できないのであります。従いまして、この問題というものは、スラムというところのしかもその中でバタヤという最も日本の古いこの親子関係の中でもって、しかも生活能力において弱いところの女、しかも若い二人というものの古い形での親孝行の行き詰まりというものが、こういったような最後の形を生んだのではないかというふうに私は理解しておるのであります。従って、その間において、おそらくこの直接の動機になったものは、その間に支えになるであろうと考えられた母親が、なぜこのスラムからどいて行ったかというところに、この問題を最後的に決定づける——二人の少女をして父親を殺すというような動機に持って行った最終的な問題もこれはあると思います。もちろん、全体的にこういったような生活の貧困に原因していることは、当然考えられるのであります。従って、直接の動機としては、そういう谷間の中で起った事件である。  最後に、私は考えたいのでありまするが、こういったような所に接しましても、私は、民生委員の方なりあるいは福祉事務所の方々は、決してこういったような谷間をおろそかにしておるとは考えておりません。むしろ、積極的にこういったようなものの改善に努力しておるということはわかるのでありまするが、逆に申しますると、このようなバタヤ部落、スラムの人たちは、そういったような方々が接近することに対して、かなりこれは警戒的であるということも注目しなければならぬと思います。積極的に近寄ろうとしても、民生委員なりあるいは福祉事務所の人がそこへ入ってくると、バタヤ部落の生活を乱すということは、私が、たびたびこういったような所に接触しますると、しばしば言われる言葉であります。そこに一つのやっぱり問題点があると思います。と同時に、そういったようなことがあっても、なぜもっとやらなければならないかということになりますると、そこはすでにお話があったと思うのですが、現在の福祉事務所なりの状態では、そこまで手を伸ばして、そこまで積極的にということは、私は、無理なんではないかというふうに考えます。谷間で起った事件であり、それが決して地域的な谷間でなくて、やはり社会保障制度自体の中で若干のやっぱり反省すべきものがあるのじゃないかと思います。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。

福澄義雄東京都民生委員

○参考人(福澄義雄君) ただいま磯村先生からのお話、ちょっと私の営業的立場から説明さしていただきます。磯村先生は、多分アリの町の指導をなされた方だと思います。ですからこの商売については徹頭徹尾くわしいのではないかと思いますので、先生の言葉がわれわれをあまりに搾取家扱いにすることは、先生がかつてこの立場にあったことを、私は指摘したいのです。その点から申しまして先ほど伊藤先生から出ましたのですが、学校の問題です。私たちの住む一丁目は、約四千世帯がありまして、これは四町会であります。これがどうしても長年の計画でありました学校がないのです。そこで、本木三丁目という相当遠距離にあります学校に子供たちが通っております。どうしても地元に学校がほしいというので、昭和二十九年の七月に、私は四町会の町会長さんに話をしまして、地元の有力者に話しかけまして、本木小学校新設促進会を結成したのでありますが、不肖若輩でありますが、そのときの促進委員会の会長になりまして、その後、足立区長さん、足立区議会議長さん、教育長さんに再三きびすを接して嘆願をし、請願をいたしまして、ようやく去年四月にその希望がかなって、本木一丁目地域内に小学校が新設されたのであります。聞くところによりますると、その新設によりまして、子供たちがやはり遠い交通の激しい通りより通うより、現在では、先生が、相当この長欠もなくなり、また、学校へ来るのが多くなったということを聞いておる状態でございます。それに、先ほどこのバタヤの仕切屋が搾取家だということでございますが、現在、私たちが一人のこの部屋へ入る者を収容することは、いわゆる土地から調べましても、七坪ないし八坪、これはやはり簡単ではございますが、部屋を入れ、車の置き場を入れ、その他を入れますと大体七坪から、それに住居を作りますと、少くとも十万近くの金はかかるわけでございます。そういうために、今度行って見ていただけばわかりますけれども、私たち個人の営業といたしましては、現在の住まいで、目一ぱいでございます。私たち業者ですから、何とかしてもっと気持のいい、環境のいい部屋を与えたいというのが人情です。しかし、そこには資力が伴いません。残念ながら五十人おりましても相当な費用がかかります。それに現在は物の売り方がなかなかうまくいきません。それで、ストックもしまして、そうしますと、これは仕切賃は、その日直接現金で払いますけれども、売る物によりましては、すぐに回収ができない。こういう問題です。それに、搾取と申しますけれども、戦争前はそういうきらいがあったかもしれません。しかし現在では、この都内に点々と、いわゆるもぐりバタヤと申しまして、ただはかりだけを持って、途中で抜き買いをしてしまうのです。それで、搾取という言葉は、私たちが受けるのを搾取と申すかもしれませんが、安く買えば、途中で全部おろしてきます。肝心の本木までは持ってきません。その意味合いで、現在の営業では、ほかの商売とやや匹敵した利潤だと私は考えております。私ども二割八分から三割が最高だと私は考えております。この席でそういう言葉を言われますと、私はなはだ残念だと思うのでございます。  以上でございます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) それでは、参考人の方々に対する質疑をお願いいたします。

山下義信日本社会党

○山下義信君 大へん有益な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。  この際、簡単に一、二のことを伺っておきたいと思います。  まず、都丸西新井警察署長さんに伺いますが、あなたの方に、この事件に関しまして、非常な社会の反響が起きまして、いろいろな手紙あるいは電話あるいは口頭、いろいろ各方面の人から、さまざまな申し出、あるいは慰問、激励その他、何と言いますか、金品の恵贈等々があったと新聞で承知いたしております。この際、あなたの所轄警察署で今日までお取扱いになりましたこの家庭に対して寄贈せられました金品の総額、幾らになっておりますか。それをどう処分されましたか。この際、承わりたいと思います。  その事件から、あなた方の方へいろいろな形で現われました反響について、大体どういう反響があったかという点を、簡単に一つここでお示しを願いたいと思うのであります。  それから、阿部先生、伊藤先生、高木先生の三先生のお示しいただきました御意見につきしましては、非常に深く感銘して拝聴いたしました。御指摘になりました諸点につきましては、当委委員会といたしましても、深く考え出せていただきまして、直ちにこれが具体的に施策として現われるように努力させていただきたいと思いますし、かねて前回の委員会以来、同僚委員諸君と検討を加えて参りました諸点と、おおむね合致いたしまして、まことに力強い御意見を拝聴したと感謝いたしておるのでございます。この際、私は三先生にあらためて伺いたいと思いますことは、申すまでもなくこの少女が、ただいま家庭裁判所に付せられまして、近く、今月の十六日にはその処分が決定せられますように差し迫っておるわけでございます。この処分につきましては、おそらく裁判所当局におかれましても慎重なお取調べなり、また、御審議なりがありまして、非常にその処分については深い考慮がおそらく払われることであろうと考えるのでございますが、この処分のあり方につきましては、また、さらに第二の大きな反響が各界、各方面に及ぶのではないかということが考えられるわけでございますので、一般社会におきましても、この事件の処分がどういうふうにされるかということは、非常に注目いたしておるところであろうと存ずるのでございます。ここで私どもが、どういう処分が適当であるかというようなことをかれこれ申しますことは、あるいは裁判所当局にこれが若干の影響も与えまして、当事者のまたお考えをおじゃましては相済まぬのでございますけれども、しかしながら、われわれ部外の者の考え方も、あるいはまたこの際、非常に重大ではないかと考えますので、この家庭裁判所の処分のあり方につきましては、これを端的に申しますと、非常に情状酌量いたしまして、同情的な見地から寛大に処分するのが至当でありますか、あるいは、罪は罪、罰は罰でありまして、少年に相応する、児童は児童としての応分のやはりその責に任ずべきというような、所定のあるいは処分が至当でありまするか、あるいはまた、御承知のごとく、少年院という非常に問題のありまする、その効果も疑わしいような施設もございまするが、この少年院に送るということも処分の一種類に相なっておりまするが、諸先生におかれましては、この当該少女の処分のあり方等につきましては、どういうことにいたしましたのが、まあ第三者の立場として、どういうふうにごらん相なるでございましょうか、ということをお聞かせいただきますと、非常に私どもとしてありがたいと存ずるのでございまして、一つ、三先生にその辺の御所見を順次お示しを願いたい、かように考える次第でございます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) それでは最初に都丸参考人にお願いいたします。

都丸家唯警視庁西新井警察署長

○参考人(都丸家唯君) お答え申し上げます。世間の反響につきましては、新聞紙上その他で御承知のごとく、大きな反響を持ちましたことは申し上げるまでもございません。その結果と申し上げましょうか、各方面からの激励の手紙やら同情金等が、警察署はもとより、各新聞社に殺到いたしまして、新聞社等から警察に寄せられましたものを含めての物品並びに金品の総額等を申し上げまして、その反響がいかに大きかったかについてお答え申し上げたいと思います。  警察へ新聞社その他から委託されました金品を七月一日現在で申し上げますと、百三十五件の、金額にいたしまして十六が七千五百五十市品でございます。これら百三十五件は、全国から寄せられたものでございまして、北海道から南は九州までの人々から寄せられた同情金でございます。中には、小学校の生徒が一円、二円、五円、十円と、零細な金を醵金いたしまして、激励の手紙とともに送って参ったものもございます。物品は約二十点でございまして、これには食糧、絵本、衣料等がございました。  これらの金品は、母親及び長男の伊亮等に、葬儀その他生活のために必要であるという申し入れがございましたので、二万ないし三万と分割的に渡した経緯はございますが、残余の全部は、実は私が六月十八日から六月二十四日まで、視察出張がございまして留守であったために、次長がこれを保管して、署長が帰ってきて後、この処理を考えるということにしておきましたので、私が帰りまして後の七月一日に、母親並びに長男の伊亮に全部これを清算して渡しております。この取扱いは、全部正確に次長において行いました。間違いはございません。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  阿部さん、伊藤さん、高木さん、御発言ございますか。

阿部眞之助評論家

○参考人(阿部眞之助君) これはもういわば司法当局の手に移ったからは、ああしろ、こうしろというのは少しどうもどうかと思うんですが、まあ私個人的の感情から申しますと、こういう犯罪が起ったのは、新聞に報じたところと、ただいま承わっただけの限りにおいては、その動機はまことに気の毒なことである、そういう情状は十分配量されるべきだと思うのですが、やはり結局、罪を犯した子供が、将来どういうふうに更生できるかということを主眼にして、もっとよく一つお調べ願って、適切な処置を講ぜられんことを願っているという以外にはないんじゃないかと、かように存じております。

伊藤昇朝日新聞論説委員

○参考人(伊藤昇君) 私も阿部先生の御意見とほとんど同じでございますが、個人的には、こういった問題に対しての、戦後始められました保護観察制度というものに非常に大きな関心と期待を持っているということを申し上げたいと思います。

高木健夫読売新聞論説委員

○参考人(高木健夫君) これはさっき、阿部さんもおっしゃいましたけれども、つまり尊属の問題ですね、父親を殺す。これはどこから見ても、表面的には決していいことではない、ということが一つ非常に大事なことだと思うのです。また、情状酌量ということになりますと、これは人情の上からいっても、それから娘個人の状態を見ても、これは非常に同情すべきところがたくさんあると思うのですけれども、これがいかにも、父親が困るから、お父ちゃんなんか要らないというお父ちゃんはたくさんいるだろうと思うんですけれども、(笑声)それが一々無罪になって同情金が集まるからというので、みんな無罪になるという、もしもそういう機運が出てきたら、これは非常におそるべきだと思うのです。ですから、法で罰すべきものは罰するけれども、情状酌量するというふうな常識的な結論になるわけなのですが、これでちょっと考えましたのは、ちょうどアメリカのベスト・セラーの小説で「楡の葉のそよぐ町」という女の教師が書いた小説があるのです。十代の少年少女の話ですけれども、その中でやはり義理の父親がその娘を犯すのです、暴力で。これはアルコール中毒なんです。そうして家出をしてしまう。その娘は町で働いてりっぱになっている。そして三、三年たつと、海兵になって夜帰ってくるのです。そうしてもう一度その娘を犯そうとする。そこで、火ばしでもってその父親を殺して、弟と二人で庭の中に埋めてしまうのです。町ではわからないのです。二年ぐらいは犯人が模範少女だということがわからない。結局わかるのですが、わかって今度は町の人たちがみんな寄ってたかって、この娘を弁護をして無罪になったという、これはその小説の本筋ではないのですけれども、一つのサイド・ストーリーに出ているわけです。これなんかちょっと事情は違いますけれども、やや似た問題で、そこで考えさせられるのは、やはりそういう者に対する社会のあたたかい目ということなのです。幸い今この問題では社会のあたたかい目が注がれているわけですから、これを広く不幸な人たちにも行き及ぼさせるようなものの考え方を私はいたしたいと思います。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 ちょっと都丸署長さんにお尋ねいたします。これは何ですか、六月十五日におやじ殺しをやったということになっておりますが、そのお取調べに際して、偶発的に殺意を生じたものか、あるいは故意に殺そうという気に六月の十四日になったものか、そういう点は調書から逐一お話しになることは不可能と思いますけれども、大体その輪郭はどういうふうになっておりますか、それをちょっと聞かしていただきたい、こう思うのです。

都丸家唯警視庁西新井警察署長

○参考人(都丸家唯君) この犯行を決意し、いわゆる犯意を持った点につきましては、先ほど冒頭に申し上げた状況でおわかりかと思いますが、十三日、十四日、前に姉妹で謀議をして十五日に犯行を犯したという点は考えられない。当日父親を介抱して、自宅に連れ込んで後に、長女の洋子が「これから勤め先に帰らなければならないのだ、お父さんが寝たから。」と言ったときに、妹の徳子から、お父さんをやってしまおうかという話が出て、そこで二人で殺意を起して実行を決意した、こういう工合に今までの調べでは、これは部下の報告でございますが、私は考えております。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 そこで、重ねてお尋ねしておきますが、前の目に母親が行方不明になった、そういたしますると、その晩は睡眠は不可能であったと私は見るのです。そういう点ですね、並びに不能であるとすれば、正常な精神状態に殺人の当時返っておったかどうか、そういう点はお調べになりましたか。いわゆる人間が二晩寝ない、しかも、非常に生活に困っておる、父は酒乱で横暴をきわめる、そういうときのいわゆる青少年の——十五、六才の人間の精神状態というものは、当然これは調査官としてはお取調べになる必要があると私は考える、そういう点はどうですか。

都丸家唯警視庁西新井警察署長

○参考人(都丸家唯君) おそらく、この犯行動機につきましては、詳細に調べておるはずでありますし、また、検察庁に送った後も、検事さんにおいて相当こまかに調べておる。検察庁からまた家庭裁判所に送られておりますので、目下これが生活その他について調査中であります。と同時に、その犯行の動機について、こまかく調べられることと思います。私は直接その調べに当っておりませんので、詳細な点については、まことに残念でございますが、申し上げかねます。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 おそらく、私はその点について調べをしていないのじゃないかと想像しているのですが、今日あなたの口からそのことを聞き得なかったということは非常に残念に思いますけれども、これはいたし方がございません。  それから少年鑑別所長さんが来ていらっしゃるようでありますから、お尋ねしたいと思うのです。科学的な調査をしなければならぬ、欧米流に一つやってのけようというようなお話がございまして、まことにけっこうだと思う。これは心理学的にいろいろな分析をされることもけっこうでしょうが、今回の事件は——私は大体、今度のこういう問題がひんぴんとして社会の耳目を聳動ずるという近来の状況は、まことに不幸な日本の悲劇だと考えておりますが、それが、たとえば父親の酒乱からそういうことになる、あるいは政治の貧困、伊藤さんのおっしゃったような、そういうことから来るかもしれません、あるいは経済上の理由から出発するかもしれません、あるいはせつな的な感情からとっさに親を殺すということになるかもわからぬ、それからあるいは道義の頽廃とか生活保護に関する民生委員などの怠慢、そういうことから来るかもわからぬ、あるいは思想上の混乱から来るかもわかりません、あるいは指導階層の腐敗、堕落、これを見よう見まねしまして、そういうところに無意識の間に伝播していっておるかもわかりませんが、そういうことに対するリストを作って分析してあるのですか、それをちょっとお尋ねしたい。少年を鑑別されるときは、科学的なという言葉がありましたから、ちょっとお尋ねしておきます。

鰭崎轍東京少年鑑別所長

○参考人(鰭崎轍君) 申し上げます。私の所に去年六千二百何人入って参ったのでございます。そのうちでいろいろ診断をいたすわけでございます。からだの診断はさておきまして、この問題は心に関係あると存じます。これは本人につきましては、裁判以前でございますから差し控えまして、今まで見ました範囲のことを申し上げます。私の所に入ります少年のうちで、いわゆる精神薄弱というものが去年は五・六%入って参りました。精神薄弱という場合には、知能が低いのでございます。同時に、知能以外にわれわれの感情及び意欲の面で普通の健康な状態にないということでございます。従いまして、今もお話にございました感情が激変して、とっさにやるというお話がございましたが、この感情が激変して、とっさの場合にやるというそのこと、それは実は私たちが見ました範囲におきまして、そういう場合に大多数の者が、それは普通の人が感情が激変するということは、心の健康な人にはまずまずないというように考えるわけでございます。考えるというか、そういうことでございまして、私の方でやりました少年のうち五・六%が精神薄弱、同時に、感情のそういう爆発性とか、いろいろございます。そのほかにまた精神分裂症及びてんかんというような種類の精神病というものが〇・二%入っております。これは数が少いので、年令の低いために、十四人ございまして、〇・二%程度、そのほかに医学的な意味で、今のからだの医学によるところの健康ということを持ち出して参りますと、大体統計が、去年のは非常に健康者が少いのでございまして、二%程度でございます。ですから、五%と二%と〇・二%引きました大体九三%ぐらいが、これがよく調べまして心が健康ではないということでございます。これを同じ方法をもちまして、中学校へ行って診察いたしますと、中学校では、今、練馬区の要請によりまして、中学校の一年生の生徒、これを全部同じ方法をもって診察をしておりますが、中学校へ行きますというと、大体一割程度、一〇先のそういう同じような不健康者がおるわけです。それを感情、意欲の変調者と私たちは申しておりますが、情意の変調状態にあるもの、それは中学校では大体一〇%でございます。前に、昭和二十四年ごろに一万人ぐらいを調べましたとき、これは、杉並を中心にいたしましたけれども、このときは、学校に二〇%、これは、今は非常に厳密にやっておりますので、パーセントが低くなりましたが、昔は、結核の集団検診と同じ程度のことでありましたものですから、パーセントが少し多くなりまして、二〇%ございます。あとの大部分は、大体学校の生徒というものは健康である。しかし、われわれの方に入ります少年の大部分は、そういう意味で健康ではないということでございます。そういうことによりまして今、見ますと、とにかく去年二十六人——殺人未遂も入れますとでございますがこれは健康なるものは実は一人もございませんので、何かしらございまして、そのとっさのときに、それが人間関係でございまして、親と子、その場合には、お母さんである場合、あるいはお父さんである場合も、いろいろございます。家庭の中の人間関係という言葉がこのごろ使われますが、人間関係の圧力の関係で、とっさの場合にいろいろなことをやる、あるいは出会いがしらに知らない人とけんかをする、それが普通の人ですと、かっとなってどうかなるわけではございませんが、変調状態にありますというと、爆発性がひどくなりまして、たちまちそこにけんかが起って傷害致死というようなことになる、それが鑑別所で調べました現状であります。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 もう一点、最後に私お聞きしたい。これは阿部、伊藤、高木の三先生にお尋ねします。これは少し皮肉なお尋ねかもしれませんが、戦後非常にいろいろ社会面において、混乱の実情を招来しておるわけでございますが、その大部分は、新聞雑誌というものによって誘導されたというきらいがあるのじゃないかということを、これは、私が頭が悪いかしれませんが、ふだん私は考えております。少くとも社会の木鐸としての指導的な立場にあります評論家並びに新聞記者、雑誌記者の方々は、この点を非常に注目していただかなければならぬ。ことに映画、演劇等におきましても、そういう傾向が、非常に私は濃厚ではないか、こう考えておる。こういう点について、三先生は常に指導的の立場におられるのでありますから、この際、心がまえを一つお聞かせいただいておきますれば、まことにけっこうだと思うのですが、どうでしょうか。これは率直なお尋ねでございますが、お願いいたしまする。

高木健夫読売新聞論説委員

○参考人(高木健夫君) これはごもっともな御質問だと思いますけれども、いわゆる運転手殺しが起きますと、千円ぐらいの金ですぐ殺したり傷つけたりして取っていくと、そうすると、それをまねするという、これはどっちが先かわかりませんけれども、そういう報道が出れば、そういう事件が多くなると考えられますし、それからまた、そういう報道が出ますと、それと似たようなものがあった場合に、出先の記者のいわゆるニュース・センスで、また運転手殺しだというので、いわゆるニュース価値の判断の上からもまたそれを取り上げるということで、多くなるように見える場合もあるかもしれませんしかし、私たちはそういう事件があったときは、これは社会的な影響が大きいからやめようということは、これは社会的な影響ということは、つまり未成年の場合とか、名誉を傷つけるとか、そういうこと以外は、社会のそういう安全を脅かすような事態が起ったときは、これは警告の意味でどんどん真実を知らせる、積極的に知らせる必要があると思う。そうして今の社会の状態からいいますと、全般的に見ますと、これはもう文化的教養の水準も、ほかの国民に比べて非常に上っておりますし、それから新聞の購読者の数も、やはりパーセンテージにしてみますと多いと思います。日本はそういう記事を、選択判断して読むというくせがだんだんついていると思いますから、そういうまねをするというのが出てくるかもしれませんけれども、これはしかし、まねをすることよりも、それを警戒させるという意味、それからもう一つは、社会をよくするという一つの考え方から、私たちはこういうことがあったらやっぱり積極的に報道していきたいと、こういうふうに考えております。  今度の事件ですが、あれは映画で殺し方を覚えたというふうなことがありましたけれども、それはそうかもしれません。ですから、そういうことは、やはりマス・コミの中の一つの自主的な規制でやっていきたい、それは新聞、放送の方はやっております。

阿部眞之助評論家

○参考人(阿部眞之助君) 私は今この新聞の方は現役でないので、直接携わっていないのであります。まあ、ただいま中山さんのおっしゃったような議論は、もう私は数十年来聞き飽きるほど聞いている議論なんです。なるほど、どうも新聞に書くと、すぐそれを模倣するというようなことが、これは事実あるのです。あるが、そういうものはすっかり捨ててしまって、美事善行ばかりを書いておいたらそれはどうかというと、目先はちょっときれいですが、積り積って、そういう悪いことを包み隠しておくということの終局的の悪い結果というものは、これは大へんなものだ、だから、これは一利一害で、必ずしも私は、ああいうものを報道することが、直ちに模倣を誘発するから悪い、そう断言できない点がある。要するに、まあしかしながら、この扱いについては、よほど用心深くやられることは必要であると、新聞社でも、私どもがやっている時分からでも、相当そういう点は注意している。たとえば、なるべく殺人の場合は、殺人の手段というものはほかして書く。自殺の場合でも、薬なんか、議薬を飲むとかなんとかの程度で、どういう薬を飲むかという点までは君かないというように、そういう工夫はしている。現在でも私はしてると思います。だから新聞、マス・コミが模倣を誘発するということは事実だが、そのことによって、それをすっかりやめてしまうということは、これは反対の意味での危険性があると、かように私は考えているのであります。

伊藤昇朝日新聞論説委員

○参考人(伊藤昇君) ただいまの中山委員の御意見と御質問につきましては、マス・コミュニケーションに当っているわれわれとして、十分に考えなければならない点があると存じます。私、ただ一つ考えますのは、今度の問題の本質というものを、どうかすりかえないようにお願いしたいということです。というのは、私は今度の問題の本質は、何と言っても、バタヤ街における一つの家庭の貧困ということと、アルコール中毒といったような問題がある。これは青少年問題に直接に関係することではないと私は考えております。むしろ問題はおとなの不道徳、親としての義務を果していないおとなの方に問題があるのじゃないか。不良青少年ではなく七、不良おとなの問題というふうに考えざるを得ないのであります。従って、ややもするとこの問題を直接に青少年の不良化の問題にひっかけて、そうしてそれがマス・コミュニケーションにいかにも重大な関係があるように問題を進めていくと、私はこういうところからマス・コミュニケーションに対する一つの法的制約というか、あるいは青少年の不良化防止といったようなことについての立法というようなところに、問題が少し飛躍し過ぎるような傾向がやや出ているのじゃないかという心配をするものですから、その点を、御忠告は十分にわれわれとしても守らなければならないのですけれども、今度の問題に関する本質は、どこまでも私は貧困と、あえて申し上げますならば、やはり政治の問題として考えていただきたい、こういうふうに考えます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。  参考人に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。  参考人各位には長時間にわたりまして貴重なる御意見をお聞かせ下さいまして、まことにありがとうございました。この機会に委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げたいと存じます。どうもありがとう存じました。

山下義信日本社会党

○山下義信君 私はこの際、お手元にお配りいたしましたような「少女の父親殺し事件」等に関する決議案を議題とすることの動機を提出いたします。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ただいま山下君提出の「少女の父親殺し事件」等に関する決議案を議題とすることの動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。よって「少女の父親殺し事件」等に関する決議案を議題といたします。  提出者から御説明を願います。

山下義信日本社会党

○山下義信君 まず、案文を朗読いたします。 「少女の父親殺し事件」等に関する決議   最近発生した少女の父親殺しは、  国民の心を痛まさせる稀有の悲惨事  である。   政府は、その原因、その及ぼす影  響を重視し、政治と施策に深い反省  を加え、とくに左の諸点について、  善処するよう要望する。  一、不遇な児童をわるい還境からま   もるため新たな施策を講ずるこ   と。  二、不幸な事件を起さないため、事   前に生活援助の手を差し延べるよ   う対策を考究すること。  三、社会福祉事務所の刷新強化をは   かり、社会福祉主事の待遇改善等   に努力すること。  四、民間篤志奉仕者の活動を助長   し、福祉分野に活溌な新運動を促   がすこと。  五、長欠児童に周到な関心をはら   い、関係者とのれんけいを緊密に   し、適当な対策を樹立すること。  六、酒乱者(アルコール中毒者)対   策並にその家族の保護等について   適切な措置を講ずること。  七、速やかにスラム街を改善するこ   と。  右決議する。  本決議案提出の理由につきましては、ここにあらためて申し上げるまでもございません。両三回にわたりまして本委員会において御審議、御検討に相なりましたその審議の過程に現われましたように、この問題につきましては、私どもといたしまして非常に衝撃を受けておるのでございます。この事件を契機といたしまして、わが国の社会保障制度、福祉制度等につきましての大きな検討、反省をいたさなければならぬと存じますので、以上、申し述べました諸点につきまして、すみやかに政府において具体的な施策を実現せられるよう強く要望してやまない次第でございます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 本案に対して御質疑はございませんか。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 御質疑もなければ、本案の採決をいたします。  「少女の父親殺し事件」等に関する決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) ありがとうございました。全会一致と認めます。よって少女の父親殺し等に関する決議案を本委員会の決議とすることに決定いたしました。

山下義信日本社会党

○山下義信君 この際、厚生大臣の代理として安田社会局長から政府の所信の表明を願いたいと存じます。

安田巌厚生省社会局長

○説明員(安田巌君) 厚生大臣はただいま宮中の午餐会の方に招かれて参っておりますので、私からお答え申し上げたいと存じます。  今回の少女の父親殺しの事件はまことに悲惨な、不幸なできごとでございまして、私ども社会福祉に関係する者といたしまして、きわめて遺憾に存じ、また、申しわけなく存じておる次第でございます。実はこの事件が起りましてから厚生大臣はさっそく、きょう参考人として呼ばれております足立の福祉事務所長、角谷ケース・ワーカーその他の関係者の方に来ていただきまして、厚生大臣直扱いろいろ実情を承わり、また対策等につきまして協議いたしたのであります。今日当委員会におきましてたくさんの参考人の方々からきわめて詳細な実情を承わり、また有益な御意見等を承わりまして、私ども政府の施策の足りないところ、あるいは政府の施策の浸透していないということにつきましては、深く反省させられるところでございます。ただいまの委員会の決議につきましては、それぞれきわめて適切な、重要な問題ばかりでございます。私ども十分検討いたしまして善処していきたいと存じます。

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) それでは、本件に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

久保等日本社会党

○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。  それでは本日の委員会は、これにて散会をいたします。    午後零時五十八分散会

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