法務委員会 第9号
- 発言数
- 113 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1958/08/09
会議録
○小島委員長 これより会議を開きます。 この際、先般本委員会より、裁判所の司法行政並びに検察行政等に関する実態調査のため、九州地方に委員の派遣を行なったのでありますが、その調査報告を聴取することにいたします。村瀬宣親君。
○村瀬委員 九州班の調査について御報告いたします。 この班は、菊川、村瀬両委員、それに小木専門員が加わって派遣せられました。調査の場所は、福岡高等裁判所及び長崎地方裁判所でありまして、福岡高等裁判所では、会議室において、七月三十日午前十時から午後にわたって、また長崎地方裁判所においては、会議室において、同月三十一日午後二時から夕刻にわたって、それぞれ懇談会の形式で調査を行いました。さらに二日市法務局出張所、麓女子刑務所、大村外国人収容所等をも視察調査いたしたのであります。 しかして、福岡高等裁判所における懇談会には、裁判所側から、同高等裁判所長官及び裁判官、地方裁判所長及び裁判官、家庭裁判所長、検察庁側から、検事長、検事正及び検察官、在野法曹側から、弁護士会長及び弁護士、警察側から、管区警察局長及び県本部刑事部長が出席いたしました。また、長崎地方裁判所における懇談会には、裁判所側から、所長及び裁判官、書記官四名、検察庁側から、検事正及び検察官、在野法曹側から、弁護士会長及び弁護士、警察側から、県本部長が出席いたしました。なお、各懇談会終了後、全司法労働組合から、書記官等の浄書に関する資料の提出を受け、浄書問題についての簡潔な意見を聴取いたしました。 調査内容は、当委員会の決定に基き、裁判所の司法行政及び検察行政等といたしましたが、時間の関係上、裁判所の司法行政については、主として書記官の浄書問題に関する実態把握及び第一審強化問題に、検察行政については、主として売春及び暴力立法の実地状況及び青少年犯罪の動向にそれぞれ限定いたした次第であります。 以下、一括して簡単に調査の結果を御報告いたします。 第一に、裁判所書記官の浄書問題についてでありますが、現在、書記官、書記補、雇等が簡単な裁判及び処分の原本となるべき書類を作成し、裁判官はこれに署名または記名捺印しているのであります。しかして、書記官等が現実に担当しているこの種事務はきわめて多種多量であり、たとえば、民事については、支払命令、仮差押決定、仮処分決定、期日指定命令、登記嘱託書類等に至るまで多数に及び、刑事についても、略式命令、執行猶予取消決定から逮捕状等の強制令状あるいは公判期日変更決定に至るまで、これまた多数に及んでいるようであります。しかも、現実においては、たとえば民事の支払命令、仮差押決定、仮処分決定、あるいは刑事の略式命令等は、形式こそ異なれ、その実質は判決にひとしいものであるにもかかわらず、書記官等がそれぞれ記録を精査し、法の適用の基礎となる事実関係を確定し、主文を記載し、裁判官の署名捺印を待つだけのものに準備、浄書されているのであります。もちろん、裁判官はさらにこれを精査し、署名捺印し、裁判原本を作成することになるのでありますが、現在、書記官等が作成したこれら書類が、ほとんど裁判官の署名捺印を得て裁判原本となっているのであって、書記官等が作成した書類が裁判官によって訂正されるものはおよそ五%くらいということでありました。また逮捕状、勾引状、勾留状等強制令状についても、警察官、検察官等より提供せられた資料に基き被疑事実を確定し、その他必要事項を記載して、これら令状の原本となるべき書類を作成しているのであります。 これらの問題に関連をいたしましてわれわれが感じましたことは、裁判所には労働組合の組織がありますが、検察庁にはその組織がない理由は何であるかということであります。その理由なり原因を調査するとともに、裁判所及び検察庁におけるこれら職員の定員、欠員状況、待遇等も比較検討する必要があるのではないかと考えたのであります。なお、これら裁判書類は、所要事項記載個所をブランクにして、あらかじめ印刷物となっておりますが、その保管状況について申しますと、福岡においては、係書記官のキャビネット中に通し番号を付して保管し、書損じの分も別とじとして保管しております。長崎においては、裁判書印刷用紙は会計課長が保管し、係書記官は受け書を出して三ヵ月分くらいまとめてこれを受け取り、現在はかぎのない書類箱に保管しておるのであります。 第二に、第一審強化の問題についてでありますが、現在、裁判所、検察庁、弁護士会から構成せられている第一審強化委員会の協議によって、公判審理の迅速化、集中化、充実化の方策が実施されており、漸次相当の成績をあげているとのことであります。特に、裁判所側から、庁舎整備の強い要望がありました。すなわち、福岡地方裁判所及び佐賀地方裁判所武雄支部は明治二十一年の建築にかかるものであり、長崎地方裁判所大村支部は明治十七年の建築にかかるものであり、いずれも七十年以上を経過した老朽建築物であるから、至急に改築してほしいとのことであり、弁護士会側からは、裁判官の欠員を至急に補充すべきである、また欠員補充の一助としては、裁判官の待遇を改善して、在野法曹から欠員を補充すべきである、なお、地方裁判所は、原則として合議制とすべきであるとの意見が述べられ、検察庁側からも、欠員補充、庁舎整備の強い要望がありましたが、その詳細は省略いたしますが、管内大多数の検察庁庁舎には十数名以上の関係人を一斉に取り調べる検察官取調室がなくて、大部屋で選挙違反事件と強盗事件とを隣り合せで取り調べるというような不合理な状態であり、また先に述べた強制令状のごときも、施設不備のため、大部屋で作成せざるを得ない場合もあるので、秘密漏洩のおそれなしとしないとのことでありました。 第三に、暴力立法の実施状況について申し上げます。暴力団の組織概況でありますが、本年三月末現在、九州管区警察局管内における暴力団の総数は五百六十九団体、構成員総数五千九十二名、準構成員総数七千七百三十九名であり、これを前年三月末に比較すると、団体数において百七十四団体、構成員数において千三百六十五名、準構成員数において二千五百八十一名の増加となっております。暴力団の類型別団体数は、博徒が四十四、テキ屋四十二、青少年不良団百九十四、会社ゴロ六、新聞ゴロ七十七、炭坑暴力団四十一、売春暴力団二十一、港湾暴力団十三、その他百三十一となっております。このうち青少年不良団について申しますと、団体数百九十四、構成員数二千五十一名、準構成員数二千二百五十九名であり、青少年不良団の数は、全暴力団の実に三四%を占めており、前年に比べますと五十一団体も増加しているのであります。 次に、暴力事犯検挙状況を調べてみますると、昭和三十三年度は、昭和三十二年度に比べて、検挙件数において七百七十件、検挙人員において千六十六人の増加となっておりますが、このうち特に青少年不良団は九百六十人の増加となっておるのであります。これは昭和三十二年の一月から六月までの間と、昭和三十三年の一月から六月までとの比較でございます。昨年以降における暴力事犯のおもな事例としては、まず別府市におけるいわゆる別府事件があります。この事件については、すでに昨年八月八日の当委員会において調査報告がありますから、その詳細は省略いたしますが、井田組及び石井組の両暴力団に対し、福岡、佐賀、熊本、香川、徳島の五県十一部市から友誼団体の協力応援を得ていること、換言すれば一種の機動力を発揮しておることは注目に値するところであります。その他、佐賀市における博徒、上滝英の恐喝詐欺事件被害額(五千万円)、佐世保市における博徒、小島勇次郎の恐喝事件(被害額一千万円)が相次いで検挙せられたのであります。なかんずく、本年七月二日、熊本市において、青少年不良団山野組と清村組とが双方なぐり込みを企て、おのおの四、五十名ずつ日本刀及び竹やりを準備して結集した事件が発生し、目下、熊本地方検察庁において、四十数名を検挙、捜査中であります。この事件は、新暴力立法(刑法第二百八条ノ二)適用第一号事件として注目に値するものでありますが、この事件においても、両暴力団に対し、福岡、大分、鹿児島、山口等の各県の友誼団体から応援者を送り込んでいるのであります。なお、長崎においては、黒シャツ団と称する輪姦専門の青少年不良団があり、この不良団は、下は十六才から上は二十才そこそこの不良青少年で組織されており、不良団専用のアジトを輪姦場所としているということであります。 第三に、改正暴力立法に対する意見でございますが、改正法により、いわゆるお礼参りも処罰の討象となったので、暴力団取締り上、一般に歓迎されていますが、暴力取締りの範囲を、法廷のみならず、警察及び検察における参考人の保護のためにもできるようにし、また被告事件のみならず、刑の執行を終了した場合にも適用されるように改めてほしい、お礼参り(刑法第百五条ノ二)持凶器集合罪(刑法第二百八条ノ二の第一項)については、法定刑を三年以下の懲役に引き上げるべきであるとの意見が警察及び検察側から述べられたのであります。 第四に、売春立法の実施状況について申し上げます。九州各県下における売春業者及び売春婦は、それぞれ本年三月中に転廃業を完了し、本法が施行せられた四月には、赤線地区における紅灯は一応消えてしまったということであります。九州各県下における業者数は三千七百五十四名であったが、そのうち廃業者は五百一名、残り三千二百五十三名中、風俗営業に八百十五名、旅館業千四百六十九名、飲食店に三百十五名、芸妓置屋に六十九名、間貸業に二百十三名、その他に三百七十二名転業したのであります。また、売春婦の大半は帰郷し、残りは、飲食店、旅館、風俗営業の女中、女給に転業しているもののようであります。転業者のうち、観光地である別府市の料理店、カフエー業者だけはおおむね順調な営業成績を上げているもののようでありますが、その他の転業者は営業不振ということであります。また、売春婦もあるいは帰郷し、あるいは結婚し、あるいは接客婦となって、一応売春婦から足を洗ったものの、その後の更生意のごとくならず、現在においては旧業者のもとへ逆戻りしつつある傾向を生じているようであります。 売春の警察取締りに当っては、各県とも特別捜査本部を編成し、売春を助長する悪質事犯に重点を置き、売春婦に対する補導及び善良な国民の人権侵害にわたらないよう考慮して、捜査、検挙に努力しているようであります。本年四月から六月まで三ヵ月間における九州地区全体の売春事犯の検挙数は三百七十件、三百四名であって、このうち売春防止法違反は三百二十八件、二百七十七名でありますが、売春防止法違反の中では、場所提供、勧誘、周旋が多数を占めております。また、福岡高等検察庁管内における売春防止法違反事件の処理状況は、受理件数二百二十一件、内、起訴七十一件、不起訴五十件、他庁送致十八件、未処理八十二件ということであります。なお、福岡地方検察庁においては、本年四月二十四日から婦人更生保護相談室を設け、勧誘で送致を受けた婦女十八名につきその保護措置をとっております。 第五に、青少年犯罪の動向について申し上げます。青少年の暴力事犯面における動向については、すでに第三、暴力立法の実施状況の中で触れたところでありますが、ここでは主として性犯罪の面について申し上げます。 一般的に見て、福岡県下における強姦罪の発生件数は、昭和三十一年と比較いたしますと、年々上昇の一途をたどっているのであります。すなわち、昭和三十一年には二百四十一件(内二百三十六件検挙)昭和三十二年には二百五十一件(内二百四十七件検挙)発生したのでありますが、本年は六月までにすでに百九十六件(内百八十九件検挙)発生いたしており、前年度に比較して約二倍の倍率を示しているのであります。しかして、本年六月までに発生した性犯罪二百八十名について分析検討してみますと、(1)被疑者の年令、二十才未満百七十七名、六三%(2)被疑者の職業、労働者八十七名、三〇%、学生生徒七十六名、二六%、(3)犯罪動機、好奇心百十四名、四〇%、でき心五十三名、一〇%(4)再犯状況、初犯二百三十一名、九〇%(5)配偶者の有無、未婚者二百四十九名、九〇%、(6)被害者の職業、被害者二百二名中無職七十二名、三四%、学生四十四名、二一%、(7)被害者の配偶の有無、未婚者百六十四名、八〇%となっているのであります。また、輪姦事件発生数百九十六件、内百八十九件検挙について見ますと、(1)被疑者百五十四名の職業、学生生徒五十六人、三六%、労務者四十九人、三二%、無職二十四人、一五%、(2)被害者六十名の職業、学生二十二名、三七%、労務者十名、一七%、無職六名、一〇%となっておるのであります。以上の統計数字からしても、青少年の性犯罪動向の一端をうかがうことができると思います。また、長崎における輪姦専門の青少年不良団黒シャツ団及び熊本における青少年不良団山野組、清村組の犯行については、すでに述べた通りであります。 日本の将来をになうところのわれわれの相続人たる青少年の教育及び補導ないしは不良化防止は、現下における最も緊急にして重大な施策であることを痛感する次第であります。 以上をもって、派遣委員の調査報告を終ります。 ————◇—————
○小島委員長 次に、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。 猪俣浩三君。
○猪俣委員 私は、警察当局並びに法務大臣に伺いたいのであります。それはもう世間の何人も知らざる者のない菅生事件のことでございますが、この事件は、研究すればするほど、警察及び検察の運営につきまして、非常な疑惑をわれわれに抱かせるのであります。端的に言いますならば、検察庁と警察庁が共謀して、交番爆破というような事件の真相を隠蔽したと思われます。これはいかに諸君が弁解しようとも、疑うことのできない証拠が歴然としてある。そこで、もしかようなことが今後も行われますならば、昔の特高時代よりもなおひどい結果を引き起すのであります。これは当局におかれましても、重大なる反省をしなければならぬ。これを、責任のがれの、官僚一流の一時のがれの詭弁でもって過ごすということになりますと、わが国の検察行政の根本的な破壊になります。ですから、もうすでに古い問題でありますけれども、あらためて私はお尋ねしたいと思います。 その動機は、この戸高公徳なるダイナマイトを運んだという人間が検察庁に起訴されましたが、裁判所で無罪に相なっております。その無罪の理由が、いわゆる期待可能性の理論—経済刑事法の責任理論として発展いたして参りました期待可能性の理論をとってもってこれを無罪としているところに、非常に大きな問題が横たわっていると思うのであります。 そこで、裁判所の態度につきましては、われわれはかれこれ言うのではございませんが、私はまず法務大臣にお聞きしたいことは、実際ダイナマイトを運んで、そうして起訴されたこの人物が、裁判所で無罪になっておりますが、これに対して検察庁はどういう態度をおとりになるのであるか。もし裁判所のこの判定をそのまま検察庁が承認するということになりますと、上司の命令において下僚がいかなる悪事をいたしましても、それは責任を追及できないようなことが起ります。検察庁としてはこれを起訴されたのでありまするが、裁判所が無罪にした。これに対していかなる見解を持ち、そして、どういうふうに処置なされるつもりであるか、それを第一点としてお尋ねいたします。
○愛知国務大臣 この戸高事件につきましては、ただいま御指摘のように、昭和三十二年の七月二十五日に、大分地検から検事認知事件として立件捜査をいたしまして、同年九月十七日に爆発物取締罰則第五条の違反として公判請求をいたして参りました。本月の四日に無罪の判決の言い渡しがなされたわけでございます。申すまでもないところでありますが、上訴期間が本月の十八日まででございますので、その間とくと検察庁側といたしましては判決文を精査検討いたしまして、何分の処置を決定いしたたい、かように考えておるわけであります。
○猪俣委員 判決文の要旨はすでに新聞に尽きておりまして、事実そのものを否認したのではない。これは明らかに刑法の責任理論の一つの学説をとってなされたのであります。それですから、検察庁の態度というものはきまっておらなければならぬと存じますが、まだ研究中だとおっしゃればそれもやむを得ません。 そこで、しからばお尋ねいたしまするが、一体警察関係のような、上司の下命によって統一的な動きをするような公務員の場合においては、どの範囲においてその責任を追及すべきものであるか。われわれが思い出すことは、戦前大杉栄なる人物が憲兵隊に絞め殺された、しかも妻も子供も絞め殺された、絞め殺した連中の数人は無罪になったと記憶いたしております。それの指揮命令をした者も、実に三人の命を奪った者としてはまことに軽い判決であります。甘粕なる者がその後満州侵略の中心人物になったことは、よく御存じだろうと思う。考えてみれば、そういう非常に日本の運命を狂わすような大きなことを、この甘粕はやったのであります。これが大杉栄ら三人の命を奪ったけれども、大した罪にならない、その下僚には無罪になった者が数人出ておる。そこで、一体検察庁なり警察なりにおいて、上官の命令に対してどれだけの服従義務があるのであるか。この期待可能性の理論の背景にひそむものは、あの当時上官の命令があったなら、どの警察官でもその立場におったらこの戸高がやったようなことをやるであろう、戸高がダイナマイトを運ぶことを拒むべきであるということがなかなか期待ができないということで無罪になっておるわけでありますならば、その戸高にさような命令をした上司の責任はどうなるのか。言いつけた者も無罪であるが、言いつけられた者も期待可能性の理論で無罪である。そうすると役人というものは、どんなことをやっても責任を負う者がなくなります。そこで、あなたは法務行政の最高責任者として、こういう点についてどういう御所見を持っておられますか。あのままの状態だというと、私らは非常に危険を感ずる。そして、戸高そのものを起訴する際には、彼に命令を下した上司があるはずだ、そういう人たちの責任をも追及しなければならぬはずだと思いますが、それに対して一体検察庁はどういう態度をとられたのであるか。 繰り返しますと、上司と下官の関係にありますところの公務員の服従義務、違法な行為までも服従しなければならぬものであるかどうか、その一下官が上司の命令の違法であるか合法であるか善悪を判斯して、そうして適正なる行動をとる責任があるのであるか、上司の命令は、昔の軍隊のように、何でもこれを守っていかなければならぬとするものであるか、今日の期待可能性の理論のその奥に、そういう問題が横たわっておると存じます。それに対して、抽象的でも私は法務大臣の所信を承わりたい。 それから、いま一点は、一体期待可能性の理論によって無罪になったような場合に、戸高のごとき行動をとらざるを得なくせしめた上司の責任というものは、一体放任されてよろしいものであるかどうか。その点について法務大臣の所見を承わりたい。
○愛知国務大臣 今回のこの事件につきましては、先ほども申し上げましたように、これは判決の全文を詳細に検討いたしませんと、私も意見を申し上げかねるのでございます。もちろん判決の要旨につきましては、私も検討をすでにいたしておるわけでございますが、この期待可能性というようなものにつきましては、なかなかこれは法理論といたしましても、いろいろと意見のある点でございますので、特に本件に関連いたしまして、今、判決文を詳細に検討しないうちに的確なお答えをすることはできないのでございます。ともかく検察庁といたしましては、戸高君のやりました行為につきまして、先ほど申し上げましたように、これは起訴妥当であるとして起訴をいたしました。そうして裁判所の判決を今回得たわけでございますから、これを契機にいたしまして、ただいま御質問のような点について、とくと検討いたしました上でお答えいたしたいと思います。
○猪俣委員 私の質問の全部をお答えになっておらぬ。私はこの戸高事件を離れまして、これを契機として、あなたの所信を承わっておる。それは一体公務員の服従義務の範囲ですか。これをどうお考えになっておるか。期待可能性理論の示唆するところはそこにまたあると思う。上司の命令に対しては、下の者がその違法の命令を拒否する権限があると理解されるかどうか。これは行政法の一ページであると思う。法務大臣は御存じないはずはないと思う。法務大臣として所信を明らかになさることが、私は非常に大切だと思うから質問しておる。公務員の服務規律上、上司の命令を判断して、悪なる命令には服従しないでいいかどうかということの点と、いま一つは、今度は具体的事件に戻りまして、戸高の上司に対しては、何らの責任なしとなさるのかどうか。裁判所において期待することが困難な状況であったとまで判断されておるこの際に、かような地位におりましたところの当時の小林という警備部長、あるいはそのまた元締めでありまする警察庁の山口刑事課長、こういう人たちは一体責任がないのかどうか。この戸高を数年間かくまった点につきましても、われわれは非常に疑問がある。これは警察がみな一体となってやられた。戸高一人に責任をかぶせることは卑怯未練であります。警察が公けの立場において行動した。これはこの検事の起訴状につきましても、あるいは初判の判決文を見ましても、初判の調書を見ましても、戸高個人が彼のほしいままに、彼が好きこのんで愉快にやっておったんじゃない。上司の命令によって、これをやっておったことは明らかでありましょう。そうすると、この戸高自身がかような犯罪を犯した場合に、上司の命令に拒否権がないならばなおさらのことであります。その命令を下した上司は、一体どういう責任があるかということは、これは検察当局としても考えたはずである。そこで今度は具体的にこの戸高事件について、これに命令を下した警察の諸公、少くとも小林警備部長は戸高から一々報告を受けておる。そして、当日もこの小林警備部長の命令によって多数の警官が今やおそしとだれかが投げ込むのを待っておったという状況でありました。これはおとり捜査の事件としても、あなたに私は所信を聞かなければならぬと思いますが、おとり捜査のいわゆる正常な線を越えております。そういう意味において、検察庁が起訴なされたと思うのですから、その点は追及いたしませんけれども、かように戸高をして起訴されるまでに陥れた上の検察庁から下の県の警備部長に至るまで、一体どういう責任があると法務大臣はお考えになっておるか。 今の質問は、一つは抽象的な一般の公務員の服務規律の問題、第二はこの具体的な戸高事件につきましての上司の責任問題であります。この点についてお答え願いたい。
○愛知国務大臣 まず第一点の一般論でございますが、頭から法律に違反することが明白であるようなことを上司が下僚に命令するというようなことは、差し控えなければならないと思います。ただ、今もお話が出ましたように、警察あるいは検察の正常なる運営の方式としてのおとり捜査というものは、否定することができないのでありまして、これの限界をどの辺に置くかということは別の問題があると思いますので、おとり捜査をも私は否定する考えは、ございません。 それから、第二の点でございますが、これは警備部長というのでございましたか、小林君という人のことを具体的には御指摘になっておると思うのでございますが、本件については、たまたま小林君に対して告訴が出ております。これは検察庁においても目下これに基いて捜査中でございます。この点をあわせてお答えいたします。
○猪俣委員 あなたの所信を私は聞いておるのであります。御答弁をお避けになっておる。しかし、あなたもしろうとの大臣のことでございますから、あまりそういうことを追及してもおとなげないと思いますが、私はあなたの法務大臣としての心がまえを聞いておるのであります。かような場合に、上司の責任がどうなるかということを、法務省として確固たる見解を明らかにしませんと、これは大へんなことになる。また甘粕時代に逆転します。私はそれをおそれて言っておる。しかし、なお告訴が出ておって、それについて御検討なさるということでありますから、私はそれでとどめておきますが、早くこういうことに対する法務省の態度を明らかにしてほしいのです。こういう判決なんかが出たのを機会に、法務大臣の談話ぐらい発表してほしいと思う。それをなさらないから、今日ここで質問するように相なっておるのであります。 それから、これは前の大臣のときから私が再三にわたって質問しているにもかかわらず、今日まで明白なる答弁をなさらない。今捜査中であるとか、調査中であるとかいうことで終っております。それはこのダイナマイトを持ち込む前に、脅迫文というものが書かれておる。これは戸高公徳が書いたことが明白になっておる。そうしてこれが持ち込まれておる。しかもこれは警察にはちゃんとあって、警察の領置調書というものができておる。しかるにもかかわらず、検察庁に行ったらその実物がなくなっておる。そうして私の質問に対して、この脅迫文が犯罪と直接関係がないと思ったのでという答弁を前の刑事局長がなさっておる。そこで私は非常に憤慨したのです。ここに交番の爆破事件があり、その数日前に脅迫文が行っておるというのに、この脅迫文が爆破事件とあまり関係がないということはどういうことなんだ。それに対して答弁なさらない。あまり関係がないと思ったから、どっかへやってしまったという意味にとれるのであります。しかし、真犯人が何人であり、この事件の原因、動機がどこから出てきたかということに対しては、決定的な証拠であります。その筆跡を鑑定し、何人が書き、何人がいかなる動機をもって持ち込んだかということは、この交番爆破事件のきめ手でなければならぬ。幸いにして、戸高公徳、市木春秋が同一人ということが関係者の熱心なる調査によって—これは警察や検察庁が出してくれたのではないのです。民間人が出した。そこに諸君は御留意なさらなければいけない。民間人が惨たんたる苦労の後に、この市木春秋なるものの実体をつかんで、しかもこの現物を押えたのは新聞記者なんだ。それに対して警察はこれをごまかそうと努力したことはもう明らかだ。そうじゃないというなら、幾らも私は指摘します。それをとらえた前後の新聞記者に直接私は数時間にわたって聞いたんだ。今これを責めませんけれども、一体被告人に有利な、かような大切な証拠を、検察庁が紛失したというようなことで事が済まされるか。もしその証拠があるならば、有罪、無罪がそれによって決定するというような被告に重大な証拠があったにかかわらず、検察庁がそれをどこかへやってしまった、それがないために有罪になったというようなことになるならばどうなりますか。また、そういうことに対して、何らの責任が追及されないとなりますと、われわれの権利なんというものは風前のともしびです。どんな有力な証拠があっても、それをなくしてしまう。今日この点も問題があると思いますが、検察庁なり警察の捜査は、全く必要のないものまでも全部取り立てて、例の千葉銀行事件の脅迫事件につきましても、話にも何にもならぬ。犯罪と何も関係ないことが、それこそほとんど一見して明白なる女の着物までもみんな取り上げ、毎日のおそうざいを買う金までみんな押収していって、生活すら困窮せしめたというひどいことをやってます。私はこの捜査の範囲というものについて非常に研究しなければならぬと思う。ありとあらゆるものを捜査して持っていっておる。それと、もしその中に被告に有利なものがあったとする際に、その有利なものだけは処置してしまって、不利なものだけ残すようなことをやりましたならば、公正なる裁判を一体することができるか。ですから、この脅迫文を書いたのは戸高公徳ということになっておる今日において、これは最も重大なる証拠でなければならぬはずでありますが、これが一審の裁判所に出ておらぬ。こういう証拠があったことは、検事の聞き取り書きにも警察の聞き取り書きにも、また領置証書にも、みんな出てきておることです。それですから、この前の法務委員会におきましても、警察庁長官は確かにこれは検察庁に渡したと言う。それを検察庁はあいまいのことを言っておる。前の刑事局長はあいまいなことを言っておった。しまいには犯罪にはあまり関係のないことだと思ったのでというようなことを言っておった。私はそういう非常識なことでは済まされないと思う。当時は捜査中だということでありますから、私はそれ以上追及しなかったのでありますが、今日もう相当な時間がたっておる。どういうふうな調査の結果が出、それに対していかなる御処分をなされたか、それを一つ答弁をなさって下さい。
○川井説明員 ただいま御指摘の脅迫文の問題は、たびたび当委員会で御質問を受けまして、そのつどはっきりした御答弁を申し上げることができないのを大へん申しわけないことだと考えております。これはここで最初のいきさつから申し上げるまでもございませんが、ちょうど爆破事件が起きます一ヵ月前にそういう脅迫文が投げ込まれまして、警察では脅迫事件といたしまして、立件して捜査をしておったようでございます。しかし、爆破事件が起きますまでの間は、検察庁にはさような事件はわからなかったようでございます。ところが、一ヵ月後に爆破事件が起きまして、大きな事件が起きたということで警察が捜査いたしまして、検察庁が立件を受理し、検事が参考人、被疑者を取り調べております過程において、一ヵ月ほど前に脅迫文が投げ込まれた、こういうことがわかりましたので、検事の一人がさっそく警察に連絡をいたしまして、こういうふうな脅迫文があるかということを確かめましたところが、実は一ヵ月ほど前にこういうことがあって、事件としては捜査中に爆破事件が起きたので、脅迫事件の方の捜査はそのままになっておる、こういうふうな趣旨の回答があったわけでございます。そこで、検事は本件に密接な関係があると認めましたので、直ちに警察官に連絡いたしまして、その脅迫文を事実上借り受けたことになっておるわけでございます。御承知の通り、検事が警察官から事件を受ける場合には、刑事訴訟法の規定に基きまして、いわゆる領置手続によるわけでございますが、本件の場合には、さような状況にありましたために、正式の領置手続がとられないで、事実上検事と警察官との間におきまして、その脅迫文をその検事が借り受けて、それを点検したということになっております。そこで検事はその脅迫文を見まして、自分が取り調べております菅忠愛という被告人だったと思いますが、その人にそれを示しまして弁解を求めたわけでございます。そこで、ただいま御指摘の通り、その菅忠愛の検事調書の中に脅迫文を示してその弁解を求め、これこれしかじかだという弁解が録取されているわけでございます。そこで、私ども検察庁の方面について御指摘をたびたび受けまして、その都度引き続き厳重な調査を今までしてきたわけでございますが、大へんまた申しわけないことでございますが、今日までその脅迫文が発見できないわけでございます。そこでもし検事に悪意があったといたしますならば、さようなものを示したという調書をまた法廷に出すというようなことは考えられないと思うわけでございまして、これがなくなりましたのは、一たん借り受けたものは、通常の状態ならば、そのまままた警察官に持っていって返すというのが普通の常識でございます。そこで、警察官の当該脅迫文に対します領置証書はございますけれども、検事の領置証書というものは作られていないわけでございます。従いまして、今から考えてみますと、結局検事が警察官に事実上借りましたので、用事が済んだから事実上返したのか、あるいはそのまま検事が持っておりまして、成規の領置手続をとらないままに紛失してしまったのかというふうなことがはっきりいたしていないわけでございます。そこで、それはともかくといたしまして、きわめて重大な、この事件に非常に大切な証拠品がなくなったということは御指摘の通りでございまして、私ども法務省の側といたしましても、当時の監督官あるいは現場のその当時の検事というようなものにつきまして、あるいはやめたりあるいはよそに転任したりしている者がございますけれども、手分けをいたしまして、その当時の記憶あるいはメモあるいは日記というようなものに基きましていろいろ調査をしてきたわけでございますけれども、とうとう今日までそれが出てきていないわけでございます。この前、刑事局長が、ただいまおしかりのように、本件にあまり関係がないからというふうな趣旨のことを申し述べたということでございますが、私も聞いておりましたが、それはたまたま戸高が出てこない場合におきましては、戸高が市木春秋と同一人であるかどうかということを立証するために、一番のきめ手となるきわめて重要なる証拠でありますので、非常に必要だということがあったのでございますけれども、戸高が出て参りましてこれが証人として証言し、また私ども犯罪が成立するものとして検察庁側におきましても公訴を提起したわけでございますので、さようないきさつから申しますと、今日におきましては大切な証拠を失ったという責任はもちろん残りますけれども、本件事案の内容あるいは立証という過程におきましては、こう脅迫文の存在というものは、その効用と申しますか、立証の面におきましてはややその効用はなくなってきたのじゃないかというような起旨を刑事局長がこの前弁解したと私考えておるのでございまして、その点は一つ御了承を賜わりたいと思います。もちろん調査は続行中でございます。返したものか、そのままになったものかわかりませんので、両者通じて調査中ということになっておりまして、出てこないということになりますれば、その責任の所在についてはまたあらためて考えなければならない、かように考えております。
○猪俣委員 同じ答弁ばかり繕り返されておるが、大体その脅迫文が不要になったのはあなた方の努力じゃないのですよ。戸高なる人物が民間人の努力によって現われてきたためじゃないですか。これが現われないときには、この脅迫文は重大なる意義がある。さればこそこれを出さなかったのです。あなたが何と陳弁したって、全記録を読めば明らかだ。なぜならば、昭和二十七年六月十七日、事件直後にもうすでに吉田誠吾判事の勾留尋問のときにこの問題が出ておる。そうしてそれが調書に書かれておる。なおまた六月八日、それから間もなく廣石検事自身の調書の中に、その現物を示して、これかと言ったのが出ておる。それはあなた方悪意があれば出さなかっただろうと言うけれども、それを出さなければ犯罪の立証はできぬ。だから出したのでしょう。もし身が潔白であるならば——もうすでにさように検事の取調べ中に妙な脅迫文などが出ておって、しかもこれは市木春秋という者が書いたものであることまでが被告らによって主張されておるにかかわらず——第一審の公判のときに弁護人からそれについての証人申請をしたのだ。あるいはその市木春秋なる者を雇っておった製材所の主人も証人として呼んでいる。そのときそれを呼び出してくれば、こんな時間をかけないうちに事の真相は明らかになったはずだ。それをことごとくこの検事は反対しておるのです。廣石検事はことごとく猛烈に反対しておる。全部反対しておる。そこがおかしいと思う。現にその現物を見ておるでしょう。そうして、それは市木なる者が書いたらしいこともわかっておるでしょうが、なぜそれを、真相を進んで明らかにしないのですか。弁護人がそれを明らかにしようとすれば、徹底的に反対しておる。ここに警察と検察庁のなれ合いがあるとわれわれは思うより仕方がない。あなた方が何と陳弁したって、事実が雄弁に物語っておる。諸君はさような答弁でいいのかどうかという問題だ。これは本人自身が新聞社の努力によって出てきたのです。だから、これは問題にならなくなったんでしょう。もし出なかった場合にはどうなるかということを考えなければならぬ。これは被告にとっては生殺与奪の証拠だ。それをなくした。今もってわからぬ。一体何年たっておるのですか。もっと調査してみて、そうしてあとでいよいよないということがわかればとおっしゃるけれども、もう数年たっているじゃないですか。ないならないとして、それぞれ信賞必罰で、厳とした態度をとっていただきたい。そうしないと、先ほどあなたが説明したごとく、犯罪に何ら関係ないと思われるようなものまでも、今は一切がっさい全部押収するくせがある。これは関係があるといわれれば、しょせん水かけ論になりますが、実際不可解千万な押収の仕方をやっておる。一家の生活さえできないような押収の仕方をやっておる。私はこれは法律上研究しなければならぬと思っておりますが、そういう際に一切の証拠物を検察庁なり警察が握っておって、それをなくしたというようなことでだれも責任を負う者がなければ、一体どういうことになりますか。私どもは、人権擁護の立場から、はなはだ寒けがする。これはあなた方が考えておられるほど単純なものではないと思うのです。民事事件として考えてみてもそうでしょう。ある有名な証書が一本あれば解決するのに、それをなくしたということになったら、どうすることもできない。何千何百万円の訴訟も不利になるじゃないですか。いわんや刑事事件ならなおさらだ。ことに交番爆破というような、死刑までも予定せられるようなこういう重大な事件に対する大切な証拠をなくしてしまったということでも何の責任を負う者もない。戸高公徳は、これは期待可能性理論で無罪になる。その上司については何ら責任が追及されない。被告に有利な証拠物は検事がなくしたが、それはそのままだ。この一連の事態をこのままにしてよろしいかどうか。これは法務大臣の決意を聞きたい。今申し上げたようなことがそのままでよろしいのかどうか。これでは人権擁護もへったくれもありません。もうしてしまったから仕方がないけれども、責任を明らかにしていただきたい。現在責任が不明確なことは、公務員の綱紀の弛緩の重大な点だと思う。責任を明らかにしていただかなければならぬ。今日まだわからぬ、もう一度調査してみてからというようなことでは、われわれは承服できません。大臣は一体どういうお考えですか。
○愛知国務大臣 この事件が起りましたのは、私の就任前のことでございます。しかし、ただいまいろいろお話になりましたように、重要な証拠物件が今紛失をいたしておるということについては遺憾に存じます。これについては、私も就任後そういったようなことを承知いたしまして、あらためてこの証拠となるような重要な書類が一体どういうふうな経路で紛失したのであるかというようなことについては、なお一段と調査をいたしておるわけでございますが、それによりましては、御指摘のように、その責任の所在を明らかにするというようなことが必要であろうかと考えております。
○猪俣委員 私の時間が迫りましたので、なお警察庁長官に一点質問して終りたいと思いますが、愛知法務大臣は就任日浅いことでありますけれども、どうぞこの事件を少しひまのあるときに研究をしていただきたい。これは法務行政上ゆゆしい問題がたくさん含まれております。どうも警察と検察庁がぐるになって、ことさらに共産党を陥れようとしたおとり捜査の行き過ぎである点が明白であります。これを私がなぜ申しますかというと、いつぞやの宮城前の五月一日のメーデー、そのとき私はうっかり聞いておったのですが、私の知っておるある右翼団体に属しておる人間が言っておったことでありますけれども、あの前日あの公園の前の公園事務所に数十人で寝泊りしておったということを言っておりました。私はそのときはうっかり聞いておったのですが、今から考えると非常に不可解なんです。あのメーデー事件にもそういう誘発行為をわざと、政府と意を通じた右翼団体がやったのではなかろうか。砂川事件にまたその人物が行っておりますが、私はあなたとは反対の立場だけれども、砂川へ行ってきた。こう言っておるのです。おそらく石を投げるとか、何かの誘発をみずから進んでやる人物が伏在しておったのではなかろうか。群衆心理でそれに応じてぱっと群衆が動いたことは、実に危険千万だと思います。一体かようなことで、私は今から戸高事件を研究して思いを起すと、りつ然たるものがありますから、法務大臣よく御研究を願いたい。 なお、警察庁長官にお尋ねをいたしますが、実は時間がなくなりました。ただ全記録を通観いたしまして、はなはだ奇怪に存ずることは、警察法の第二条には犯罪の予防及び鎮圧ということがある。実はこの改正案には相当議論があったのです。犯罪の予防及び鎮圧—予防というようなことにからんで、何か弾圧するのじゃないかというふうにわれわれはとった場合もあるのですが、それほどまでして改正した犯罪の予防及び鎮圧、これをこの事件にどうして活用なさらぬか。いわゆるダイナマイトを、諸君の言うように、後藤一派が投げ込むまで、黙って包囲していて、投げ込んでから現行犯として捕えたというのは奇怪千万だ。今投げ込むか今投げ込むかと百数十人の警官が交番を取り巻いて見ておった。だから毎日新聞の記者がちゃんと写真を出しておるじゃありませんか。これは実に奇怪千万だとはあなたは思いませんか。これはどうしたんだ。投げ込まぬうちは予防にならぬのですか。警察法第二条の犯罪の予防及び鎮圧というこの精神と、この戸高事件、交番爆破事件との関係を御説明願いたい。警察は反省するところがあるのかないのか、その御答弁を願いたい。
○石井説明員 お説の通り、警察は犯罪の予防に努めることが最も大切な任務でございまして、でき得べくんば犯罪を未然に防止するということが最も望ましいのであります。不幸にして犯罪の予防が不可能で、現実に不法事案が発生しました場合には、これに対しましてまたそれ相当の処置をしなければならぬ、こういう建前であろうと思うのでございます。従いまして、あらゆる事案について、およそ犯罪が発生しそうなおそれのある場合、未然にこれを防止するために最善の努力を払うべきものであると考えるのでございます。 具体的な菅生事件についてのお尋ねでございますが、私の承知している限りにおいては、当時警察官が多数菅生村の駐在所付近に出動いたしましたのは、他の犯罪すなわち牛の窃盗事件の検挙のために配置をしたのでありまして、配置されておる警察官個々の者は、その任務のために配置についていたので、当日駐在所が襲撃されるということをあらかじめ知っておって配置についておったものではないのであります。もしあらかじめこれを承知しておって、今か今かと、お説のように待ちかまえておるのでありますならば、それを未然に防止し得なかったとするならば、これはまことに申しわけない警察の職務怠慢かと思うのでありますが、当時の実情は、配置されておった警察官はそういったことは知らない、他の犯罪の検挙の目的のために配置をされておったのでございます。たまたまそのときに、そうした事案が起つたので、おっ取り刀で駐在所の方にはせ参じまして事後の処置をとった、こういういきさつになっているように私は承知をいたしておるのでございます。いずれにしても、先ほど申しました通り、警察としましては、およそ犯罪は未然に防止するということをあくまで理想として最善の努力を払うべきものであると思うのでございます。
○猪俣委員 あなたがそういう答弁をしますと、私は全記録をあげて言わなければならぬが、惜しいかな時間がない。あなたは第二審の判決をお読みになりましたか。判事はこう言っているじゃありませんか。あらゆる証人、あらゆる証拠物を調べた判決ですよ。その判決さえあなた方否認なさるなら、それはやむを得ない。これは控え目でありますけれども、この小林という刑事と渡辺という刑事が証言しているのですが、「小林証言の信憑性を検討してみると、証人は小雨の中を約二時間も駐在所前に張り込み、犯人の来るのを待ち受けていたにもかかわらず、あやしげな二人の人影が駐在所前に立ちどまり、うち一名が駐在所の正門構内に立ち入り軒灯を消しても、なおただ単にアラッと思っただけで、不審尋問の挙にも出ず、さらに、駐在所前県道上で燐寸をすって、シュウというものに点火し、これを駐在所に投げ込むまで何等の措置もとらず傍観していた、というのであって、張り込み中の警察官の態度としては納得し兼ねる節がある。」これはあなた方の子分がでたらめな証言をしておるのに対して、裁判所は深甚な疑惑を持っているのです。これだけでもでたらめなんだ。百人ぐらいで包囲しておって、新聞記者まで用意しておって、今投げ込むか、今投げ込むか—新聞に写真が出ておるじゃありませんか。そんな予防がどこにありますか。これはまあ石井さんよく反省なさらぬと大へんな問題だ。あなたとしてはそういう答弁をなさるのも仕方がないだろうが、私も時間がないからこれでやめますが、これは法務大臣とともによく判決文を研究して、全調書を研究することをお勧めいたします。これはわが国の民主警察、検察の将来にとりまして、画期的な大事件であることを銘記されて、ごまかしの答弁をなさらぬよう希望して、私の質問を終ります。
○小島委員長 坂本君。—坂本君に申し上げますが、警視総監は十二時までにどうしても帰らなければならぬそうでありますから、質問は簡潔に願います。
○坂本委員 私は法務、検察行政並びに警察行政について若干質問いたしたいと思いますが、その前に今の菅生事件に関連して、一点だけ法務大臣にお聞きしたいのです。戸高公徳と警備部長であった小林末喜に対しましては、菅生事件の弁護団から爆発物取締罰則第一条違反で告発をいたしております。これは捜査されておると思いまするが、すでに第二審の判決が出ました今日においては、もうその捜査は終らなければならないと思います。その点の捜査の状態はどういうふうになっておるか。ここに一審疑問になりますのは、先日大分の地方裁判所で、戸高に対しましては、この罰則の第五条の点で、これは公判における検認事件として検察庁で取り上げて、われわれは第一条違反だと確信しているのを、第五条の点で起訴されておる。しかもそれがここに無罪の判決になっておる。そういうふうに第五条の違反として起訴して無罪になるとすると、第一条違反についてうやむやにするんじゃないか、こういうような懸念がありまして、検察当局に対する不信がここに非常にあるわけであります。従いまして、この点についての捜査がどうなっておるか。われわれはもう相当の年月を経ておりまするから、もう終了して処置さるべき段階であると思いまするが、この点についての所見を承わりたいと思います。
○愛知国務大臣 具体的な捜査の進捗状況のことでありますから、事務当局から正確にお答えをいたさせます。
○川井説明員 ずいぶん前に告訴告発がなされまして捜査を開始したわけでございますが、事件が—弁解になりますが、事件が福岡の高裁に係属中でございまして、ほとんど全部の証人、参考人、被告人等の記録が高裁の方に行っておりますので、告訴、告発を受けました大分地検といたしましては、でき得る限り片方において新しい証拠の取調べをするとともに、一方また高裁の方に係属しておりまする記録の中から、さらにそれを謄写あるいは抄録をする等の手続を経まして、ずいぶん広範な捜査を継続して参ったのでございます。そこで、第二審の判決もございましたし、また戸高に対する判決もありまして、大体私ども報告を受けておりますところによれば、あともう少しの捜査でもって、その判断をするだけの資料がまとまる、こういうふうな報告になっておりまするので、近い機会に告訴告発の分についての検察庁の処理があるものと考えております。
○坂本委員 検察行政に関する問題はあと回しにしまして、警視総監に対して私一点だけ伺い、なおあとに他の委員の質問があるそうですから、それが終ってからさらに検察行政に関する質問を続けることにいたします。 警視総監にお伺いしたい点は、去る七月三十日の各新聞に大きく載っておりました「警官に殴られ重傷」という問題でありますが、これは人事院の広報室調査係長加藤尚文という人が、酔っぱらって交番に行った。その交番では、警官が女三人を入れていろいろ休憩室でやっていた。そこに連れ込まれておる。そうして警官からこづかれ、けられ、いろいろの暴行傷害を受けまして、全治一ヵ月間の重傷を負うた、こういう案件でありますが、これについていかなる調査を進め、その結論を出しておられるかどうか。けさの新聞によりますると、人事院の加藤氏は辞職をした、こういう新聞記事が載っておるわけですが、暴行をいたしました警察官の氏名、それからそれに対する調査、処置、この点いかがにされたか、これを承わりたい。
○川合説明員 ただいまの坂本委員のお話の中には、派出所そのものと休憩室とちょっと取り違えていらっしゃるような面もありますので、私どもの方で調査をいたしました事柄の内容を、これは関係者全部につきまして調べましたので、一応申し上げたいと思うのであります。 七月二十八日の午後九時三十分ごろ、岩田という丸之内警察署有楽町駅前巡査派出所の勤務巡査が立番勤務につきますと間もなく、アロハ・シャツを着た一見三十四、五才の酒に酔った男が来まして、おい、うちに電話しろ、こうどなるように申しましたので、同巡査は、これは警察電話で、一般の家庭には通じないからということを断わりますと、じゃ金を借せ、こう言いますので、ポケット・マネーは昼食と夕食に使ってしまい、あいにく持ち合せがない、こう断わりましたところが、お前らは若造のくせになまいきだ、こう言いながら派出所に入ってきまして、右側にある事務机の上に腰をかけて、左側の窓の上に両足を上げて入口をふさぐような格好をいたしましたので、同巡査は、そういう不謹慎なまねはよしなさい、こう言いましたが、知らない顔でたばこを吸い始めたのであります。同巡査は、過去の経験上、このようにして立ち寄る酔っぱらいは相手にしないでおりますと大ていの場合は一人で帰りますので、暫時そのままの状況にしておきましたが、一向に帰る気配がないので、おそくなるから帰りなさい、こう言って足をおろさして、後からかかえるようにして派出所から押し出すようにして出しましたところが、その男は後を振り向きまして、お前は巡査のくせにこういうことをしてもいいのか、税金どろぼうとののしりながら、持っておりましたハトロン紙の大封筒で突然岩田巡査の左ほほをなぐりましたので、同巡査の制帽がはね飛ばされたのであります。この男はなおもなぐりかかってくるので、右手でその手をのけたところが、その手が相手の肩か胸に当ってしりもちをついたので、これを引き起してやったところ、くつばきの右足で同巡査の左足をけとばしたのであります。このときの傷が全治一週間の打撲傷であります。そうしますと、大てい御想像通りヤジウマが盛んに集まってきましたので、このままで争っていてもしようがないというので、休憩所、これは四十メートルほど離れているのでありますが、そこへ連れていきまして冷静に話そう、こう思って当人の右腕を後に回してつかみました。休憩所に連行をして休憩所入口のとびらをあけて畳敷の方をさして、あそこにかけなさい、こう言いましたところ、男はふらふら歩きながらけつまずきまして、奥三畳のあがりがまちに左の胸部を打って倒れたので、すぐ引き起して畳の上にまずすわりなさいと言いますと、自分でくつを脱いで畳の上にあぐらをかいて、相変らず、このやろう、電話をかけねえか、こうどなって静まらないので、岩田という巡査は二十九才でありますが、年がいもなくしっかりしろ、こうやや強く言ったので、それがいたく加藤君の気に触ったと見えまして、何をっと立ち上ってなぐりかかろうとしたので、同巡査はまたなぐられたりあばれられたりしたら大変だと思って、土間に立ったまま二、三べんこずきました。男は、やるか、となおもあばれるので、くつを脱ぐひまもなく、そのまま畳の上に上りまして—これが行き過ぎであります。畳の上に上りまして、左手で首筋をとって、畳の上にねじ伏せて、背中を二、三回なぐりつけたのであります。今坂本委員のおっしゃった親子連れの三人と氷水を飲んでおったというのは別の相勤員でありまして、ちょうど知り人の者が尋ねて来ておったので、そこで氷水を飲んでおったわけであります。岩田巡査とは全然関係はありません。あとのところは大体坂本さんもよく御承知でありますが、巡査の方にも相当激した点がある。それから加藤尚文君におきましても、約二時間半で酔いがさめておるのでありますが、そのときにはこれは次長警視に申しておるのでありますが、若い警察官をなぐったのはわしの一生のミスだった、悪く思わないでくれ、こういうことを言っておるのであります。私どもとしましては非常に残念にたえないのは、加藤係長が書類の封筒でもって巡査になぐりかかったそのときに、これを公人の立場として制止し、なお司法的な処分をやればよかったのでありますが、まあ休憩室にでも連れて行って話せば分別のありそうな年配だから——加藤君は御承知の通り三十四才であります。それでわかるだろうというふうに考えたわけであります。かねがね酔払いの扱い、なかんずく泥酔者で暴行をし、器物をこわしたりあるいは他に迷惑をかけたりする者に対する扱いにつきましては、いろいろと具体的な例を出しまして第一線の巡査に教養しておるのでありますが、私どもが遺憾に思いますことは、加藤係長の方は別といたしまして、警察として考えなければなりませんことは、先ほども申しました通り、かっとなって公人の立場を忘れた。それから具体的な方法としましては、本署の方へ連れて行って監督者その他に事件の陳述をして指揮を仰げばいいものを、休憩所の方へ連れて行ったという点が私どものかねて教えておるところと若干そごしておるわけであります。あとまた御質問によって……。
○坂本委員 今の説明は岩田その他の上司から聞かれただけで、これは自分にいいように言うのは当りまえです。これは負傷した加藤君に対しても聞かれたかどうかという点が第一点。 それからもう一つは、自分で倒れてあがりがまちに打っただけで一ヵ月の重傷を負うかどうか。第七肋骨を折って、背中、左ひざあたりに四カ所に一ヵ月の重傷、こういうふうになっておるのですが、自分で倒れて背中に傷を負うわけはない。これは大へん失礼ですが、あそこの休憩所は刑事部屋と言われておることもある。相当なぐられたりけられたりしなければ、一ヵ月の重傷を負うものではないと思う。酔払いなんか、あまりけがしないはずです。これはやはり外傷である。だから今の報告だけではわれわれは納得できない。もう少しやはり被害者の加藤の方も調査し、そうして処分すべきである、こういうふうに考えるのですが、その点が第二点。 それからもう一点は、ここの休憩室で女と氷水を飲んでおった。休憩室は巡査が休憩するところであって、女なんか来たら、これはもちろん来ないわけにはいかぬのですが、用件は早く足して処置すべきである。それを、ああいうところに女を連れ込んでひやかしたりいろいろやる。これはわれわれも巷間に聞いておる話であるし、さらに逆に酔っぱらっておると、こんちくしょうということで相当のことをやる。しかし、酔っぱらいはなかなかけがしたりなんかしないのです。一ヵ月の重傷を背中にも負うし、肋骨を折る、前に傷があるというのは、これは相当なことをやられたんだと思う。これは一般常識からそういうふうに想像できると思う。だから、その点についてはもっと調査してしかるべきだと思うのですが、第三点としてその点はいかがですか。
○川合説明員 言葉が足りなかった点を補正いたしましておわびしますが、この取調べは、目撃者、それから相勤者、加藤係長はもとよりのこと、近所の人たち全部につきまして調べたのであります。この傷の工合は、これは私の言葉が今足りませんでしたが、休憩室に連れてきましたときに、手をねじたようにしてうしろから彼氏をささえて休憩室に入ってきたのでありますが、そのときにいきなり手を離してしまった。この点が大事でありますので、本人から詳細に聞いたのでありますが、彼氏が休憩室に入りますときに、今までささえておった手をいきなり離してしまった。それで加藤係長はよろけてかまちのところに胸を強打したというのであります。やはりある意味からいいますと、酔っぱらっての扱いでありますから、もっと最後まで見るべきでありますが、その点、私は、やはり連れていく途中で岩田巡査はかなりぷりぷりしておったんじゃないかというふうに想像するのでありますが、あといろいろと両方でなぐり合いをやったり、けったりけられたりしている中では、一番大事だと思われるのは、そのかまちに彼氏が胸を打ちつけたその行為が一番ひどかったというふうに考えられるのであります。 それから、休憩室に女など引き込んでというお話でありますが、これは相勤の巡査の知り人の親子でありまして、まあ普通から申しますと、なるたけそういう公室を使うべきではありませんし、用が済んだらとっとと帰ってもらうのが普通でありますが、たまたま休憩室が閑散で、久しぶりに会ったというので、あずきアイスをごちそうしておったと思われるのでありますが、こういう点も将来はいろいろな人の目につく公室でありますから、注意をしなくちゃならないか、こういうふうに考えるのであります。
○坂本委員 そこで、よろけて強打した、これはねじ上げて、こんちきしょうとやってつついたから、ここを折ったと思うのですよ。その点はもう少し調べなければいかぬと思うのです。それから背中に傷を負っているのですからね。それも一ヵ月の重傷なんですから、今のような、自分でよろけて、酔っぱらいがよろよろしてかまちに当ったくらいであばらが折れるものではないのです。手をねじ上げて持っていって、そうして休憩室に連れていってこづくか何かしなければ、常識上肋骨が折れるなんということは考えられないと思うのです。この点はもう少し調査してもらいたい。 なお、岩田巡査に対しては、事情を聞いただけでそのままにしておくかどうか。全治一ヵ月の重傷といえばこれは相当の重傷なんです。それはもっと調査をして、その処分について考えることがあるかどうか、この点なんです。 それから休憩室で、たまたまこのときは知り合いであずきアイスを食った、こう言うけれども、大体あそこの休憩室なんかは、警視総監なんかよく見られないと、あそこは刑事部屋みたいになっているのです。それからなお半面には、あそこで巡査がふしだらなことをしていることもわれわれは聞いておるわけです。だから、そういう点はよほど考えなきゃならぬと思うのですが、その点についてどうか。それをお聞きしたい。
○川合説明員 まだ不徹底な関係者の調査がありまして、残っている面があると思いますが、大事な点につきまして詳細に調査を遂げました暁は、この岩田巡査はもとよりのこと、相勤者、監督者につきましても、それぞれ行政処分なりあるいは検察庁と打ち合せの上司法処分にもいくんじゃないかというふうに、われわれは考えておるのであります。 休憩室の使い方、有楽町駅前派出所の休憩室は刑事部屋のごときものだ、こう言われますが、私も残念ながらどういうことが日常行われておるか知りませんが、公室であり、また警察署の中には係の捜査の専務者もおりますので、巡査の一存でもって休憩室にいろいろな人間を引き込んで、自己で取り調べてみたり、あるいは示談に持っていったり、あるいは娘などと長時間話したりするというふうなことは、誤解を招くものでありますので、方面本部長その他を通してこれはきつく戒めたい、かように考えております。
○小島委員長 中村高一君。
○中村(高)委員 警視総監はお帰りになるそうでありますから、一言だけお尋ねをいたしておきたいのですが、最近、前の警視総監をやっておった田中榮一君の選挙違反事件が出まして、安井謙君が強制収容されて、私らも実はびっくりしたのでありますけれども、新聞で見ますと、検察庁の特捜部で扱われているようであります。これはどういういきさつで警視庁であれはおやりにならなかったのか、ちょっとお答え願いたい。
○川合説明員 この事件は丸の内警察署及び私ども捜査第二課におきまして事件の端緒を得まして、いろいろな新聞社の関係及び安井参議院議員のことにつきまして取調べをしましたものを、検察庁の方へ書類送検をいたしたのであります。検察庁におきましては私どもの調査にいささか不満のようでありまして、その後捜査を進められました結果、新聞紙上に出ておるような事件が判明をいたしたのであります。捜査の初期におきましては、私どもの係官は検察庁の指示に従いまして協力をいたしておるのでありますが、現在の段階では、特捜部が御自分の手足を使われまして、御自分の捜査機能のもとに審理を進めておられる、こういう段階なのであります。
○中村(高)委員 今警視総監の答弁によりますと、検察庁側は警視庁のやり方に御不満なんだということでありますから、法務省の方から、どういう点が警視庁の扱いに御不満で、直接特捜部でお扱いになって、警視庁にやらないで、部下を使っておやりになっておられるのか。今警視総監の答弁で納得いたしかねますので、御答弁願いたいと思います。
○河井説明員 お尋ねの安井氏の選挙違反につきましては、所轄丸の内警察署から事件の送致を受けまして、東京地検におきましてその捜査を続けたわけであります。それについて不満と申しますのはどういう趣旨かよくわかりませんですけれども、まだ捜査不十分の点があるので、検事の立場でその点について事案の真相を明かにするためになお捜査を継続いたしました結果、新聞で報道されておるような容疑が生じてきた、こういうふうに聞いております。従いまして、別に警察のやり方が不満であるから検事がこれをやったということではなくて、その不満というのは、捜査が足りなかったからその点を十分捜査する必要を認めて、真相究明のために捜査を継続した、こういうのが真相のように聞いております。
○中村(高)委員 ただいま法務省の方で、警視庁の捜査が足りないということから特捜部でさらに部下を督励しておやりになったというのでありますが、これがおかしいのであります。これだけ選挙違反の事件がたくさんありまして、全部警視庁はみずからの手でやっております。立候補いたしました候補者でさえも、検挙されております者がたくさんあります。落選した諸君などは相当、十何人か全国でもうやられておるそうでありますし、警視庁管内でも相当数の候補者がやられておるのでありますが、田中榮一君に対しては、今法務省の刑事課長の御答弁によりましても、不十分な調べしかやらぬとは一体何ですか。他の候補者に対しては実に峻烈にやりながら、元警視総監の事件については自分でおやりにもならないし、また今法務省の監督者からも不十分だというようなことで、一体事件をほうむってしまうこと自体が無理ではありますまいか。田中榮一君が立候補いたしましたときには、まだ告示前にほとんど東京全市に田中榮一君のビラが張られました。よくもこんなに、どんな手で張るのかと思われるほど、全市に田中榮一君の事前運動が行われました。けれども、これは必ずしも他の人にもないことではありませんから、これだけを攻撃するわけには参らないかもしれませんが、今度現われました事件は、飛行機の上から十万枚も、田中榮一立候補決定すというビラをまいておるのです。警視庁の頭の上に十万枚のビラがまかれておるのですよ。こんな明瞭な事件が一体ありますか。選挙に際して飛行機で、田中榮一立候補すというビラをあなたの頭の上にばらまいておるのだ。それを全然調べもしない、いいかげんな調べをしておいて、今検察側の方に事件のいいかげんな書類を送致して、不十分だからというて取り上げられて、ついにこれが検挙されるということになり、しかもあなた方は怠慢だと思うのは、五月の選挙で、安井君が検挙されたのは八月ですよ。それまで一体何をしておったのですか。前警視総監である者に対しては、あなた方は手が加えられないのか。だらしがないじゃないか。前警視総監だからというので、東京の人はみんな、多分どんなことをやってもあれは引っぱられやしないということを、世間ではうわさをしておるのです。多分だめだ、警視総監だから、手下の警察が、元の親玉だから、どんなことをやってもやれはしまいというのが、ほとんど全部のうわさだったのだ。しかもこの人が初めて立候補して、十六万ですか、全国最高の得票を得ておる。なかなか選挙というものはむずかしいものでありまして、長い間苦心をしてもなかなか勝てないのが、初めていきなり出て全国最高、いかにすばらしい戦術が行われたか、想像することができるのであります。この人をあなたは目の前にして何もしない、検挙もしないで、そうしておいていいかげんな書類を検察庁に送るなんていうようなばかなことが許されますかどうか。一体選挙が終ってから八月まで警視庁は何をしておったのか、答弁しなさい。
○川合説明員 この事件につきましての私どもの捜査の力が足りなかったということにつきましては、私どもはその点を認めます。しかし田中候補と他の候補について何か事情があって分けへだてをしておるというふうなことは絶対に承服できませんので、現に田中氏につきましても、他の区におきまして、あるいは丸の内その他におきまして運動員の犯罪が相当あがっておるのであります。われわれとしましては、元警視総監であろうと、そういう点において気兼ねをしておる筋は全然ございません。この点特に申し上げます。
○中村(高)委員 それでは警視庁で扱えないというて、直接特捜部に扱ってもらっておる事件が、今度の選挙違反の事件に幾つありますか、お答え願います。つまり、特捜部に直接やらせている事件が、このほかに何件ありますか。
○川合説明員 最初に探知をいたしまして、そうして検察庁の方へ送ったものが、まるでずさんきわまる、こういうようなことを言われましたが、私どもとしてはベストを尽したものであるということは申し上げます。 それから、この事件のほかに現在特捜部が独自でおやりになっておるという事件は、現在のところではございません。
○中村(高)委員 だから世間で疑いを持つのであって、これだけ東京全体の事件を全部警視庁がやって、そうして相当峻烈に調べて引っぱっているのに、前警視総監の事件だけは手をつけないで、ただ一つだけ特捜部にやらせるということについて、あなたがまことに相済みませんでしたということを申すならわかる。取扱いがへんぱだということはこれでも明らかだと思うのでありまして、ほかの事件でもそういう例があるならば、これはまた言いわけにもなるかもしれませんけれども、ほかには一つもなくて、これだけをあなたがそういう特別な扱いをするということについて、自分でも不思議には思いませんですか。
○川合説明員 先ほども申し上げます通り、この事件につきまして私どもの能力が落ちた、あるいはほかの事件についても能力が落ちておった。—ほかの事件については峻厳にやったのに、この事件について峻厳さが足りないと言われる点を私は反対申し上げておるのでありまして、田中氏に対しましてへんぱな扱いをやったのではないかという御見解に対しましては、そうではございません、われわれとしましては平等にベストを尽したのであります。かように申し上げざるを得ないのであります。
○中村(高)委員 私は警視庁が今度の選挙違反の事件について能力が落ちたとかなんとか言っているのじゃない。よくやっておるのです。この事件だけいいかげんに付して、しかも最後は検察庁に押しつけてしまうというやり方が、法を扱う警視総監として公平であるかどうかということを聞いているのでありまして、いやしくも法の前にはあなたは厳正公平であらねばならない。前警視総監であろうが前法務大臣であろうが、悪いものは悪いと一視同仁にやるべきだということを申し上げているのでありまして、おそらくこの事件についてあの新聞を見たときに、全部が、ああやっぱり警視庁は田中君の事件についてはやれないのだということを、あの安井君の検挙の事件を見たときにみんなそう思ったから、私は市民の声を代表してあなたに言うておるのでありますからして、これは単に私の意見ではないのです。市民のみんなが同じようにこういう疑惑を持っているということを申し上げて、あなたの、反省を求めておるのであります。
○小島委員長 志賀義雄君。
○志賀(義)委員 警視総監。一言だけ伺いますが、この間日本共産党で大会をやったときに、とびらから盗聴機が出ましたが、あれは電波監理法違反になりますかどうですか。それをまず伺いたい。
○川合説明員 私も法律関係を完全に知っておりませんが、多分なると思います。
○志賀(義)委員 それで、だれがやつたか、お調べになりましたか。
○川合説明員 現物はまだ共産党の方の係の手元にございまして、なおこれについて、もう少したってから警視庁の方と打ち合せするからという話でありまして、私どもの方では調査を今手ぐすね引いて待っておるところです。
○志賀(義)委員 石井長官もまた警視総監も、二十三日午後私が電話をかけましたときに、中野の警察大学の方か何かに行かれました。それらのことをあなたの方で手ぐすね引いて待っておられますから、いずれ私の方でも出しますから、私の方ではだれがやったかちゃんとわかっておりますから、いずれそのことは、あなたが電波監理法違反になると思うと言われたことを了承いたしまして、追ってその点の手続はとります。それだけを申し上げておきます。あとから本題に入ります。 法務大臣に伺いたいのでありますが、日本弁護士会の方で、今度最高裁の裁判官四名欠員について、今までの慣例によれば、民間の法曹界から二人、それからまた法務関係の人から二人、こういうことになっておりましたが、それが民間からは一人ということになりました。これについては抗議が参っておりますね。あれはどういう経緯で、今までの慣例を破って、二対二を三対一にかえられたのですか。岸総理が任命されることについて、その点の事情は法務大臣として当然御承知であろうと思いますが、いかがでしょうか。
○愛知国務大臣 最高裁の判事の問題でありますが、実は正確な日取りは記憶いたしませんが、総選挙前の時期だったと思いますが、二人の人が定年で退職をされました。ちょうど総選挙にもかかりますので、若干時間がおくれましたが、新内閣になりましてから、二人の補充の決定をいたしたわけであります。ただいま四人というお話でございましたが、二名でございます。それから、この最高裁の判事の任命につきましては、私の承知しておりますところでは、最高裁が発足いたしましたときに、大体の比率として、十五人の区分けは五、五、五にして、在野法曹、それから学識経験者、並びに司法部内、大体こういうふうな配分がよかろうということが、その当時の話し合いになっておったそうでございます。しかし、これは書類その他において、有権的な決定というようなものではなかったようでございます。それから、今回の任命につきましては、弁護士連合会の方から、今回退任された二名は、在野法曹の出身と自分らは考えるから、この後任の補充はやはり在野法曹から任命してもらいたいという陳情がございました。しかし、これは申すまでもございませんが、内閣の任命でございまして、内閣としては一方においてそういったような慣行をできるだけ尊重したいとは思いますが、同時にいろいろの状況を勘考いたしまして最高裁の判事として適任である方を求めたい、こういうふうに考えました。それからなおこれはこまかくなって恐縮なんでありますが、実はこのごろは在野法曹と申しましても、すでにだいぶ判事その他になっておられる方も相当多いのであります。それから、現に今回退任されました方も、実際は、そもそもは弁護士をされておった方でありますが、やはり裁判官として相当長い経験も積まれた方でございますから、これを果して在野法曹出身と見るべきか、あるいは若干は裁判官の経験の深い方と見るべきかというようなところにも、いろいろ見方もあろうかと思います。それらを彼此勘考いたしまして、適任と思う方を内閣の責任において任命をいたしたのであります。この任命後におきまして、ただいま御指摘のように、自分らの方から、実は二人の推薦じゃなくて、こういう人たちの中から選んだらどうかというようなそもそものお話でございましたが、その中からお一人をとっただけなんだ、これは自分らの意図と反するので、どういうことであるのかという抗議的なお話がございましたが、これは私としては承わりおきました。自後別に大した問題もないようであります。
○志賀(義)委員 ただいまの法務大臣の御答弁を伺うと、慣例はなるべく尊重するが、適任と認める者を任命すると言われたが、今度ははなはだ不適任な人が一人入っているわけです。それは石坂修一判事のことであります。御承知の通り、松川事件は最高裁の大法廷で扱われることになって、現に二人の判事がその下調べをやっております。残念なことでありますが、この事件について係の判事は非常に苦悶している。調べてみると、どうもこれは無罪だ、しかし、無罪にすると、今まで一審、二審でやってきたことがおじゃんになってしまうというので、死刑の判決をして、来年あたりは皇太子が結婚されるので、そのときに減刑でもしようかというふうに考えておる、こういううわさが流れております。ところが、最高裁の最高の責任者の方は、そういう弱腰ではけしからぬという態度、こういうことが巷に流れております。この石坂判事という人は、新聞でも愛知法務大臣も御承知でしょう、最近のできごとだから。松川事件の第二審の判決があったときに、判決内容も何も聞かず、ラジオであったのを留守番の少女—これは石坂君自身の書いた石坂書簡というものに出ておるのですが、「三時の時報は用事があって部屋を外し聞きもらしましたが、留守番の少女から放送の内容を聞きました。貴下及び部員の御苦労を思うとまぶたに涙が湛えます。」これは仙台の高裁長官のときですよ。留守番の少女に長官が内容を聞いて涙を流したというのです。この石坂判事というのは、三・一五、四・一六事件の予審判事でありましたが、どういう人物であるか昔から私よく知っておりますが、この書簡の内容に三点ほど問題がある。この石坂書簡というのは、御承知の通り松川事件の記録の雑書つづりでありまして、その中に入っていたのでありまして、別に共産党が独特の技術を弄して盗み出したものでもなければ、忍び入って写真に撮影したのでもないのです。その中にあったのを、ちゃんと法律に基いて写真にとったものです。その中に三つ問題があります。第一、この書簡によると、裁判官石坂修一の本件に対する不明瞭な関係と偏見が示されていること。第二は、この書簡は、裁判官石坂修一が第二審判決について不当な予断を抱いていること。第三は、この書簡は、裁判官石坂修一が、裁判官としての良心を欠くことを示しておる。こういう三つの点をあげて、この書簡に基いて、実は田中最高裁長官の弟さんで最近なくなられた田中吉備彦弁護士、これは法政大学の教授でありましたが、この人が上告趣意書の中にこの問題を入れて、現に石坂判事は弁護士団から忌避されております。 ちょっと内容を申し上げますと、こういうことをいっているのですよ。「先程も打電した通り、」—その判決の真相を聞いて鈴木禎次郎以下三人の判事にすぐ電報を打ったんです。「先程も打電した通り、貴下等三人を信頼して私が発言をとって仙台高等裁判官会議がこの大事件を貴下等に負託したので責任を感じておりましたが、今日俗論や感情論をけとばして今日の判決に至ったことを感謝もし、又敬意も払う次第であります」。御承知の通り、裁判所に事件が来るときは、特別の法廷の構成をやるといろいろ問題が起りますので、順番でやられることになっている。ところが、仙台の高等裁判官会議で特にこの石坂君が長官として発言を求めて、鈴木判事を裁判長として他の二人の判事を指名しておるのです。こういうでたらめが行われておる。これは明らかに不明朗な関係を持ったものといわなければならないのです。そうしてそのすぐ次にこういうことを書いてある。「勿論私は証拠を見もせず、読みもせず、聞きもしないのでありますから判決の正否を断ずる資格は少しもありませぬ」といっておいて、自分が特に選んでやらせたものがそういう判決をしたから、まぶたに涙を浮べて、感激にたえません、敬意を表します、こういうことをいっているのです。これが第一です。つまり今度の松川事件の第二審裁判所は、当時の石坂仙台高裁長官としての、人意的に構成したものです。こういうことが行われているのです。 第二に、不当な予断を抱いているという点ですが、今の「証拠を見もせず、読みもせず、聞きもしない」から、「判決の正否を断ずる資格は少しもありませぬ。然し私は貴下の誠意、勤勉、能力を信頼して事件を託し、又高橋、佐々木の両君も貴下の補佐役たるにふさわしいと信じていたことであり、以上の信頼に最も適するように貴下等三人が二年有余活動を続けられたのであるから、」「その結果である判決を全面的に信ずるものであります」。証拠を見もせず読みもせず聞きもしない人間が、判決を全面的に信頼する、これは一体何事です。明らかに予断をいだいておったということを証明することです。 第三に、裁判官としての良心を欠いておるという点でありますが、こういうことをいっておる。「判決が客観的事実に符するや否やに心を煩わす勿れ、これを真に判定することは、天のみ之をよくするのであって人の事ではない。相手方の納得したるや否やについても思いを馳せる必要はない。人は唯自己の誠意と努力の尽したることを以て自らを慰め、又満足を感ずべきであります。更にその先に存在することを求めるのは一種の賭博であることを確信して居らるるを期待致します。」とあります。愛知長官は法務大臣になられてから、就任の辞でもずぶのしろうととおっしゃいましたが、官僚界の秀才でありますから、刑事訴訟法にどういうことが書かれてあるかは十分御承知でありましょう。その第一条には、「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」と書かれてある。そうなりますと、当時の石坂高裁長官は、刑事訴訟法第一条にいわれておることをじゅうりんして客観的事実に符合するやいなやに心をわずらわすなかれ、こういうことを言っております。こういう松川事件の第二審を人為的に構成し、予断を持ち、そうして裁判官としての刑事訴訟法に基く良心を欠く人間を、どうして今度の最高裁の大法廷において松川事件が扱われるときに判事として入れたのですか、そういうことを御存じの上であの人選をやられたのですか、この点を伺いたいと思います。
○愛知国務大臣 仙台高裁における裁判に際しまして、どういう裁判官の構成をしたとか、あるいはまた石坂氏御自身の書簡などについて、ここで私は意見を申し上げることを差し控えたいと思います。同時に、先ほど申し上げましたように、最高裁の判事には裁判官として多年の経験を持ち、あるいは在野法曹としてりっぱな識見を持たれ、経験の豊かな方を選びたいという考え方から、私どもとしては石坂修一氏がこの際最高裁判所判事として適任の人であるということを、大所高所から考えまして、決断をいたしたわけであります。 それから、最後のお尋ねの点は、私どもも承知はいたしております。
○志賀(義)委員 この書簡の内容全体にわたって、今私は伺おうとは思いませんが、書簡に、判決が客観的事実に符合するやいなやに心をわずらわすことなかれと書いてある。刑事訴訟法第一条に「公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」と書いてあるのに、客観的事実に判決が符合するかどうかに思いをわずらわさなくてよろしい、これで一体裁判官として内閣が任命するに正しいものであるかどうか。こういう基準がありませんと、こういう場合にその判断がないということです。あなたがさっき認められたそういうことが当らないと思います。これはかりに石坂判事のことについてあなたが言いにくければ、判決が客観的事実に符合するやいなやに心わずらわすなというような人は、刑事訴訟法にいう「事案の真相を明らかにし、」これに適任でありますかどうか、一般的問題としてまずお答え願いたいと思います。そういう事実があった場合に……。
○愛知国務大臣 一般的にはもちろんでございますし、今問題は個人の名前を御指摘でございますから、私は現在における、任命当時における石坂判事の立場というものは、私どもとしては自信を持って最高裁の判事に最適任である、こういうふうに考えた次第です。
○志賀(義)委員 この問題について、松川弁護団がこのことについて問題にしたこと、これはもう忌避をしておることは御存じでありましょうが、この書簡が撮影されたことの真相が明らかになったのは、昨年の十二月二十二日のことであります。その後もそのことはアカハタなんかでも発表しておる。そのことがあなた方にわからないはずはないですよ。ちょうど先ほど猪俣君への答弁において、その後戸高という人物が出た、その前はわからなかったということを言われておったのです。ところが、わからなかったときに第一審の判決が、あの脅迫の方は関係がないという判定を裁判所がしておるようなことがあるのです。事実の誤認、あるいは重大な関係があるというので第二審のような判決になったのです。だから、私が申し上げたところでよくおわかりでございましょうが、そのときには適任と思われたというのは、私が申したことを聞いて、それが事実とするなら、実は、しまった、不適任だったとお考えなのですか、それとも今なお適任だとお考えなのですか、ただいまの御心境を伺いたいのであります。
○愛知国務大臣 ちょっと私の申し上げることが言葉が足りなかったようでございますが、選考いたしまして今日に至るまで、また今後におきましても、私どもとしては国民的に信頼を寄せるに足る、また期待のようにやって下さるであろうという意味におきまして、適任者と存じておるわけであります。
○志賀(義)委員 今日は時間の関係があります。だから申しませんが、この石坂判事というのは、その後も松川事件についてはよくないことをやっておりますよ。いずれその事実をはっきりするときが、来ますが、適任者であると言ったって、刑事訴訟法の第一条に違反するようなことを平気で手紙に書くような男が、どうして適任になりますか。そうなりますと、あなたは、適任とお考えになると、この松川事件についてはめちゃめちゃな判決が出ることを期待しておられるのですか。その危険が多分にありますよ。こういう突拍子もないこと。石坂判事は私予審時代から知っているが、どうもはったりの強い人です。何をやらかすか、わからない。そうすると、私が今申し上げたように、石坂書簡でこういうことが書かれており、刑事訴訟法の第一条の精神と違うということがはっきりわかっておっても、あなたはなお石坂判事を信頼される、今後もやられる、こういうように言われるのですね。もう一度それを確認しておきたい。これは重大な問題ですから……。
○愛知国務大臣 まず、私は先ほど申しましたように、ここで個人の書簡というようなことについてとやかく申し上げるのは差し控えたいと思います。しかし、私は、先ほど申しましたように、いろいろと候補になるような方々を見渡してみまして、そうして大所高所から総合的に最も適任者である、こういうふうに考えておるわけであります。 それから、判決についてお前もそれならば予断をし、何かしておるのではないかというような御趣旨がございましたが、これは一つ私を御信頼願いたいのであります。最高裁におきましていかなる判決が下されるであろうかということについては、予断はもちろんいたしておりませんし、またそれに対してとやこう申し上げるべきところではない、こういうふうに考えております。
○志賀(義)委員 石坂書簡でどういうことが書いてあるか、それは刑事訴訟法の第一条と違うということを私が申し上げたことも、予断を持たずに、一つお心におとめおき願いたいのです。もし判決が下ったら、あなたが首切る、これの判こを押さなければならない人ですよ。それも覚悟しておいていただかなければなりません。 次にもう一つ、諏訪メモについて刑事課長に御答弁願いたいのでありますが、松川事件の佐藤一被告のアリバイに関する重大な証拠があります。これは東芝工場の諏訪という労務課長、今北芝工場の総務課長か何かやっている人ですが、当時佐藤一君はこの諏訪課長と一緒に団体交渉をやっておった。労務課長の諏訪君がメモを書いております。これについて、証拠として本人が申し出たのに出ておりませんので、仙台の弁護士会で決議をして、弁護士法に基きまして照会いたしましたところ、工場の方、諏訪君の方ではそれは提出いたしましたと言うのです。その諏訪メモというものは今どこにありますか。
○川井説明員 この事件は、ただいま申し上げるまでもなく、最高裁に上告中でありまして、近く口頭弁論が十回にわたって開かれて、慎重な審理が行われるという段階になっておりますので、私どもこの事実関係あるいは法律関係、その他につきましては、この際最高裁判所の慎重な審理の結果にすべておまかせして、その結果を待ちたい、こういうふうに考えております。
○志賀(義)委員 そういうことを伺っているのじゃないのですよ。最高裁の裁判のことをあなた方がどうこう言うことを伺っているのではないのですよ。この諏訪メモというものは、一つの証拠書類です。被告にとって最も有利な証拠書類がどこにありますかということを伺っているのです。
○川井説明員 私ども、諏訪メモの所在並びにその押収の経過あるいはその保管の状況というようなことについては、法務省として報告を受けておりませんので、ただいまお答え申し上げられません。
○志賀(義)委員 それは係検事が持っておったのですよ。それが今最高検に行っているのですよ。これは弁護団の方で調べましたところ、わかったことです。一人を死刑にするかどうかという有力な証拠を最高検が握っておって、お出しになるのか出されないのか、その証拠を弁護団に対して、被告に対して公表されるのか、そのことを伺っているのですよ。
○川井説明員 いずれ調査をいたしまして、その上でお答え申し上げたいと存じます。
○志賀(義)委員 これは菅生事件でもあったことです。井本さんが刑事局長のときに、先ほど猪俣君が言われたように、猪俣君からも私からも聞いたのでありますよ。ところが、当時刑事局長の井本さんは、あれは別に証拠にならないものでありますから、押収の物件の中に入っておりませんと言ったら、ここにおられる石井警察庁長官が隣に並んでおって、確かに提出いたしました、その領置書までも受け取っております、こう言ったのですよ。それで、先ほど、あなたは新任者で、何の御事情も知らないながら、はなはだ苦しい答弁をされなければならないことになったでしょう。証拠書類がどこに行ったかわからない、この諏訪メモがどこかへ行って、あとで探してみたがわからぬといったようなことはないでしょうね、その点はどうですか。
○川井説明員 私、まだその諏訪メモのことについては詳細は調べておりませんので、ただいまお説のように、最高検察庁でその諏訪メモなるものを握っているということでございますれば、その処置についてどういうふうなことにするかということについて御指示がございますので、あらためて調査した上でもって、またお答えさせていただきたいと思います。
○志賀(義)委員 こういう大事な事件については、もう少し新聞にも出たらお読みになっていただかなければいけませんよ。これは国会図書館から借り出した切り抜きですが、去年の六月二十三日の東京朝日新聞にこのことが出ております。「死刑覆えす新証拠か、佐藤被告アリバイ・メモ」こういうふうに出ているのですよ。最高検にあることだけはそれでわかったのです。そこで最高検のどなたがお答えになったのかわかりませんが、朝日新聞社に対して最高検が答えられていることが出ております。「まだ弁護団から正式に申入れがないし、口頭弁論も開かれていないので、何とも言えない。」こういうように出ている。そうすると申し入れがあったら、この証拠は最高検で出されるのか、また口頭弁論が始まったら、これは出されるのか、その点を伺いたいのです。
○川井説明員 目下不審理中の事件でございまして、その証拠を訴訟の当事者である者がどういうふうに取り扱うかというふうなことにつきまして、法務省といたしまして、こうしろ、ああしろというような指図をすることは、法律上も、御承知の通りできませんので、ただ国会に対する責任上、ただいま仰せのようなことでございますれば、その経緯について、説明のできる範囲内におきまして、調査をした上で正確なところをお答え申し上げたい、こういうことであります。
○志賀(義)委員 どうも課長さんではそれしか答弁できないでしょう。法務大臣は検察庁に対して指揮権がございますね。今まで指揮権が発動されているから、それは法務大臣もよく御存じでしょう。こういう証拠書類を握っておって検察庁は出さないのですよ。あなたの方から一つ指揮権をふるって出すように、催促願えますか。
○愛知国務大臣 指揮権のありますことは、私もよく存じておりますが、そういう具体的なことに証拠書類を出すか出さぬかということに至りますまでのようなこまかい指揮権は、発動したくないのが私の心情でございます。検察官諸公の良識に待ちたいと思います。
○志賀(義)委員 そうしますと、今これは死刑にしようと思ってやっきになっているんですよ。そういうこまかいことに指揮権を発動したくないというが、それがないとこれはめちゃくちゃに死刑にされるんですよ。そうすると、さっき言ったように、あなたはこれの判こを押さなければならない人ですよ。将来の日本の歴史に残るところにあなたはきておられるのですよ。たまたまこの事件の最高裁の判決が出ようというときに、これは重大な覚悟がなければならぬ。こまかい問題じゃないですよ。造船汚職を隠すとかなんとかいうような指揮権発動のこまかいことじゃないのですよ。もっと重大なことなんですよ。それをこまかいこととお考えになられる感覚を私は少し不思議に思うのですがね。まあ志賀が法務委員会でこういうことを申しておったということは、最高検の検事総長に一つお伝え願いたいのです。またそのほかいろいろなことがあります。それはおいおいに法務委員会でも、国政審査の上で披露いたしましょう。あなた方の善処をお願いしますが、とにかくあなたは判こを押す人だということを忘れないで下さいよ。将来の歴史の審判を受ける。愛知法務大臣というのがいて、この人は剛直で、事件の真相を明らかにすることに努力したりっぱな法務大臣であると言われるかいなかの分れ目ですから、その覚悟でもってこの松川事件のことは、法務大臣として十分に慎重にお臨み願いたいと思います。きょうはこれだけにしておきます。
○小島委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 福岡県における勤評反対闘争に対する警察並びに検察庁の取調べに対して、刑事訴訟法を無視し、さらに人権をじゅうりんし、さらに正しい勤評反対運動を弾圧するおそれのある問題でありますから、法務大臣並びに石井警察庁長官にお伺いしたいと思います。 去る六月六日に任意捜査が福岡県の教職員組合に対して開始されまして、六月六日に千三百名に対する呼び出しがかけられておるのであります。それは三百の福岡県教組の各分会に対しまして、分会長及び分会の役員五、六名に対する呼び出しでありますが、この任意出頭に対して、千三百名のうち二百二十五名が出頭しまして、他は出頭を拒否したわけであります。そこで、福岡地方検察庁は、七月十七日から十九日までに、百二十四名を、出頭しないからというので、刑事訴訟法第二百二十六条に基きまして、公判前の証人調べの要求をしたわけであります。二十四日から月末まで、期間延期その他もありましたが、十三カ所にわたってこの証人調べが行われ、検事が立会い、弁護団は立会いを要求しましたが、柳川の裁判所、八女の裁判所、これだけが弁護団の立会いを許されて、そのほかは許されなかったわけでございます。そうして、さらにこれに出頭しなかった者に対して、刑事訴訟法第百六十条を適用しまして、七名に対して五千円の過料、これは多少の違いはあると思いますが、うち一名は三千円、この過料の制裁が課せられて、この決定に対しましては八月三日に即時抗告をなし、さらに八月四日に準抗告をしておる、こういうふうに聞いておるのであります。さらに七月三十日に、十一名に対しまして、第百六十一条の証言拒否、これに対して、被疑者として呼び出して、地公法第三十七条によるところの問題を聴取いたしたのであります。さらに第百六十一条に基いて逮捕状を要求するのではないか、こういう風評があるわけであります。これが大体の筋道でございますが、そこでお伺いいたしたいのは、刑事訴訟法第二百二十六条についての公判前のこの証人取調べは、これは捜査に欠くことができないという重要な条件がついておるわけであります。このような証人喚問に対して、百二十四名も証人申請をする、こういう点は行き過ぎであり、こういうことについて、いわゆる権力を利用して——これはもちろん政府の立場と日教組の立場は違っておるわけです。われわれはこの勤評反対闘争の問題は、これが教育の中央集権となり、さらには日本の新憲法に基くところの平和主義、民主主義に反するものであるという、これの橋頭堡であり、第一回であるから、これをやったのでは再び日本が戦争前のような状態に陥る、そういうような教育の方針に返ってはいけないという強い信念と憲法に基く主張であるのであります。これは現政府の考え方とは立場が違っておりますが、いずれも日本国民を思い、日本の前途を思う正しい行き方であるのであります。そこで、それが是なりや非なりやということは、これは政治問題あるいはその他のことで解決すべきでありますが、少くとも政府の主張を通すために権力を使い、それによって、反対の立場ではあるけれども、相手方の正しい運動を制圧をする、これは重大なる問題である、かように考えるわけであります。従って、かように多数の者に対して刑訴第二百二十六条を適用して公判前の証人として証言をとる必要があったかどうか、この点について承わりたいと思います。
○愛知国務大臣 勤評問題についていろいろと御意見を承わりました。その点については、遺憾ながら、私の考え方は、全然立場が違いますが、その点についていろいろ御議論申し上げることもいかがかと思いますのでこれを差し控えますが、具体的なお尋ねの、刑訴第二百二十六条によって、証人の尋問請求ということは行き過ぎではないかということが坂本君の一つのお尋ねの点と思います。この点については、なるべく任意捜査によって、任意出頭で事を解決したいというのがこれはもう私どもの原則でございます。今回の場合におきましても、そういう方針で任意出頭を求めたわけでございますが、ただいま御指摘の通りに、応じない人が非常にたくさんある。また応じてくれた者でも、供述を拒否する者がございまして、検察庁としては、やむを得ずこの措置をとったものであります。これは勤評反対というような問題に対する政治的な弾圧の意図に出るものではないのでございまして、法律に基き、私どもの検察官としての立場におきまして、やむを得ずとりました措置でありますことを御了承願いたいと存じます。
○坂本委員 やむを得ざる措置が、やはり政府側の主張を通すために権力を利用してやっておる、こういうふうに客観的に見られるわけであります。任意捜査と申しますけれども、千三百名をあの勤評反対闘争に呼んで調べる必要はないじゃないか。私も、まだ二十数年の弁護士経験でありますが、今この勤評反対闘争が、地方公務員法第三十七条に違反するかいなかという点については、そう千三百名も呼ばなければその被疑事実がつかめないかどうか。もちろん被疑事実がないからつかめない。だから裁判になって有罪、無罪は三年、五年先である。とにかく現段階において、多数の教員を呼び出して調べるということが、それが客観的に政府の意図と反した反対運動の制圧になる、こういうことでやられておる。それがゆえに出頭を拒否する。それをまた多数この第百六十条を適用してさらに過料を負わせる。それに応じなかったならば、今度は証言拒否罪としてこれを逮捕する、こういうことになると、これはやはり国家の権力を利用する暴力である。この千三百名を呼び出し、そのうちの多数を公判前の証人としてやるということは、実際これは弾圧になると考えられるわけでありますが、さらに、まだやっておられませんが、この百六十一条に基いて逮捕状を要求して、被疑者でない参考人を調べられる考えがあるかどうか、その点をお伺いしたい。
○愛知国務大臣 今のお尋ねは、今後どうするかということになって参りますので、これは実はまだ私どもも現地の地検からの報告にも接しておらぬわけでございます。裁判所が刑訴法の第百六十条で過料を課した場合におきましても、別個の立場から、百六十一条を適用いたしまして処分することは当然可能である、私はこう考えるのでありますが、具体的に、それならば地検がそういう措置に出るのがどうかということは、今後の問題でございまして、まだ私どもの方には、やるかやらないかというようなことを含めて報告がございませんので、御了承願いたいと存じます。
○坂本委員 福岡県下では、現在参議院議員の補欠選挙が行われておるわけであります。政府から公認の候補者と、社会党の公認の候補者と二人が立候補いたしまして、今月の二十四日の投票日を目して、今選挙運動をやっておるわけであります。この選挙の際に、千三百名にも上る任意捜査を開始して、これは信念に基いて—われわれは地公法第三十七条の点については、参考人としてもでき得ることじゃないかと反対の立場をとっておる。こういう関係から出ていないのに対して、さらに過料の追い打ちをかけ、さらに逮捕状の追い打ちをかけるということは、これは刑事訴訟法の乱用だけではなく、それが国家権力を利用する人権じゅりんになると同時に、現在行われておる参議院の補欠選挙の、政府側の候補者の支援になるということは、この行為の反射作用と申しますか、当然現われてくるわけであります。この問題については、政府としても公平にやるならば、慎重にやらなければならない。従って、この選挙終了まで、今逮捕状まで要求して、これを遂行するという点を続行されるかどうか。私はこれは中止すべきがしかるべきだと思いますが、その点についての御所見をもう一度お伺いしておきたい。
○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、検察権の発動は、政治的な弾圧とかあるいは選挙にどうとかいうようなことであるべきものではございませんので、私は純粋に検察権の公平な運営ということでやって参りたいと思いますので、ただいまのお問いにはお答えができかねます。
○坂本委員 公平にやるということは、法を乱用せずに、法をやはり守る、法を正しく適用するということなんです。それは単なる法の執行そのものだけ、あるいは逮捕をするとかあるいは拘引状を出すとか、それ自体の公平ということが第一でありますが、さらにそれによっての反射的結果についても、やはりこれを公平にやるというのが必要だと考えるわけであります。その点に立たれましたならば、これはやはり検察庁の監督指揮権までも持っておられる法務大臣としては、十分考慮してやらるべきだ、こういうふうに考えますが、その点についてもう一点だけお伺いしておきます。
○愛知国務大臣 御意見は御意見として十分承わっておきます。
○坂本委員 次に警察庁長官に承わりたいのですが、この福岡県下における福教組の先生方に対する任意捜査の点について、非常に行き過ぎがあると思うのでありまして、そのおもなものを四、五点申し上げますから、それについて御答弁を願いたいと思うわけであります。 第一は、任意出頭に応ぜないというので、学校に出かけて、そして授業中にもかかわらず、五、六人の警官が出かけて参りまして、そこで取り調べをする。授業に差しつかえることになっておるわけですが、この点についての事実があるかどうか。さらにそういうことは今後絶対にやってはいけないと思うのですが、その点が第一点。それから第二は、家庭に来る。はなはだしきは六十数回、出ないからというので警官が一人ないし二人あるいは三人出てくる。そうして女の先生だから炊事をしておると、炊事を手伝いますと言って、のこのこ炊事場まで行ってその手伝いをする。そうしてさあ終ったから来い、こういうふうにして引っぱっていく、こういう事実があるわけであります。それから第三には、警察とPTAと学校とこの三者が青少年の犯罪防止運動—これは各町村でやっておるわけですが、学校側が任意出頭に応じないようならば、われわれは青少年の犯罪防止には協力しない。またこれに出頭しない学校に対しては、これは逆に青少年の犯罪防止運動に対して学校みずからが協力しない、こういうふうに考えるから出ろ、こういうことも言っておる事実があるわけであります。それから第四番目は、町村の有力者のうちに先生を呼ぶ。そうするとそこに警察官が来ておる。だから、せっかく来たから一つ警察官から調べを受けなさい、聞きなさい、話してくれ、こういうふうにしてやるわけです。これは最も自由権の侵害だ、こういうふうに思うわけでありますが、その点はどうか。第五番目は、下宿におる女の先生に対して、夜の九時ごろ警察官が来て調べる。警察官は、先ほども問題になりましたが、若い警察官が、悪いことはしないにしても、若い女の先生の家に九時ごろ行って、そうして調べをする、話してくれと言う。これは最も人権じゅうりんであるし、日没後の取調べ時間外の取調べについては、これはいわゆる押収捜査等も禁じられておる。それを任意出頭だからといって、下宿の独身者の女の先生のところに夜九時ごろ行って、そうして調べる、こういうこともあるわけであります。それから次は、いなかで任意出頭に応じないと、警察が警察のジープにマイクを持ってきて、そうして部落じゅうわかるようにマイクでだれのだれがしは任意出頭に応じないからこれをやる。だから一つ出てきてもらいたいとやる。こういう事実があるわけであります。 以上のような任意捜査について調べがされておるわけでありまして、それでもやはり先生方は、この勤評反対は正しい教育の行き方である、これでなければ日本の子供も守れないし、やはり日本の平和と独立も守れないというかたい信念でやっておる。そういうものに対して、こういうあらゆる権力を利用し、あらゆる手を用いて任意捜査という美名のもとに人権をじゅうりんし、法を悪用しておるという点があるわけであります。まだそのほかにもありまするが、この点について石井長官は、もっと警察は警察法に規定してあるように正しくやる方法はないか。たとい捜査が長引こうとも、またこういう見解の相違の捜査はこれをやろうというのが無理である。だからもっと警察法の運用として善処する方法はないかどうか、この点をお聞きしたい。 もう一つは、防犯協会の機関誌があるわけでありまするが、これに対して、警察官がこの勤評問題についてあるいは任意出頭その他捜査の問題について記事を書いておる。これは実際今現物がありませんが、警察官がそういう機関誌に具体的なそういうような問題を取り上げて記事に書くのは、これこそ公務員法違反になるのではないかと考えますが、この点についての所見を承わりたい。
○石井説明員 申すまでもなく、犯罪捜査に当りましては、あくまで人権を尊重し、相手方の立場をよく考慮に入れて、適正なる捜査を進めるべきことは申すまでもないところであります。特に参考人として事情をお聞きするというような場合には、相手方の勤務の御都合等もいろいろありましょうし、あるいは健康の関係もありましょうし、いろいろのお仕事の関係もありましょうから、十分事情をよくお聞きしまして、都合のいいときに、事情の許すときに、都合のいい場所において事情をお聞かせ願うようにするというのが建前でございます。ただいまお話の福岡県教組の休暇闘争に関連しまして、現在福岡県警察本部におきまして、多数の先生方に事情を参考人としてお聞きしておるということは私も聞いております。しかし、ただいまの御例示になりましたようなやり方をしておるということは、報告に接しておりません。たとえば、授業中に数人の警察官が踏み込んで事情をお聞きしたというお話もありました。おそらくそういう非常識と申しますか、適当でない方法はやっておらないと思います。先生の御都合も伺いまして、それでは何日どこでお会いしましょうという工合に、あらかじめ緊密に連絡をとって、都合のいい場所、都合のいい時間を指定していただいて事情をお聞きしておる、これが原則でございます。その原則通りにやっておると私は考えておるのでございますが、ただいまいろいろ御例示もありましたから、私はさらによく現地の実際のやり方につきましても報告を求めまして、もし行き過ぎの点がありましたならば、今後そういう点につきましては十分戒心いたしまして、慎重な態度をとるように善処させたい、かように考えております。 なお、防犯協会の機関誌等に警察官が勤評問題に関連しての記事を載せたというようなことがありましたが、そういう問題も私は全然聞いておりません。どういう内容のものをどういう必要があって載せたものであるか、これは一がいにいい悪いは即断はできないかと思います。いわゆる一般のPRの立場におきまして、警察の立場を理解していただく、あるいは一般に広く問題の所在やあり方を認識していただくために、そういった関係の団体の機関誌等を利用するということも、時と場合によっては必要であろうかと思います。御例示の点がどういういきさつのものであったか、この点も十分調査をいたしてみたいと思います。
○坂本委員 最後に、この福岡県教組に対する福岡県警察本部の行き方というのは、これは先般日教組本部に対する捜索令状を持って五名の警官が入居しまして、そうしてこれに七十数名の警視庁の私服が応援に来て、さらに日教組本部の表では二個小隊の武装警察官が参りまして、この武装警官が日教組の入口で一々点検をする。電話がかかったから私もそこに行つたのですが、日教組といえども、政府の、文部省には反対でありますが、五十年、百年後になれば、どの教育方針が正しかったということは、歴史が物語るものであると思う。政府の方針に従うものであっても、その取締りの方法については、公平にやらなければいけない。それをそういうふうにやってきて、そうして人数がおるから、一々一人が捜査をするならば、一人の立会人をやるからというのを、どっと押しかけて入ってしまう。そうしてさらに携帯用のマイクを持っておる。写真機を持っておる。それは何をするか。捜査の現場をマイクロホンにとる。そんな必要はない、一方的にとるならば、日教組の方でも置かなければならない、そういうことはできないというので、そういうのは話し合いの上で排除をいたしたわけですが、わずか福岡県教組の問題について、日教組本部全部の家宅捜索令状をとってきておる。私は先般福岡に法務委員として出る場合に、このような捜索令状その他についても調査するはずでしたが、行けなかったので残念であります。そうして、五名上京して、警視庁が、今申し上げましたような私服並びに武装の警官で援護をする。まさに敵対行為をして、そうして政府の方針に従わなければ、権力と威力をもって弾圧する。いかにりっぱな考え方であろうとも、こういうことが実際に現われておるわけであります。そうして日教組と関係のない研究所までも捜索令状をもらって来ておる。そうして今度は千三百名に上るところの任意捜査を始めておる。そうして私が具体的に申しましたような方法がとられておる。これはやはり反対の立場のものもよく聞くべきである。これこそ政治的に解決すべき問題である。それを灘尾文部大臣みたいに、あんな強がりばかり言って、そうしてその裏には警察権力を利用して、学校の先生たちを、学校にあるいは家庭に、こういう捜査をやるということは、これこそ重大な問題だ。人権じゅうりんの問題であるし、また政府は国家の権力を利用して、反対の意見を持つものを制圧する、そしてそれをだめにするという挙に出るとしか、客観的には考えられない。たまたま福岡県では参議院選挙が与党、野党の二名の候補者によって戦われておる時期でありまするから、これは法務大臣としても、その捜査が十日、十五日延びるくらいで—またこの勤評反対闘争については証拠隠滅はないということで、検事の勾留請求に対して裁判所は却下をしておる。証拠隠滅のおそれもない、逃亡のおそれもないというので却下をしさらに最高裁においても検事側の再抗告に対して却下をしておる。こういうような点を考えるならば、これはやはりもっと善処すべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。これに対して法務大臣並びに長官の御答弁を聞いて、私の質問を終りたいと思います。
○愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますところで尽きておるかと思いますが、私はやはり法秩序を維持することが何よりの目的でございますから、検察権の運営につきましては不偏不党でやって参りたい、こういうふうに考えているわけでございます。
○石井説明員 先ほど福岡県警察がわざわざ東京まで出向いてきて、日教組の本部の捜索を行なったことについて、特に詳細に御指摘がございました。御承知の通り、福岡県教組のいわゆる一斎休暇闘争は五月七日に行われたのでありますが、それに対する捜査の必要上、御承知のように、中央の指令によってこの一斎休暇闘争が行われたと疑われるに至りましたので、福岡県警察といたしましては、東京都内の日教組の中央本部に対する捜索令状を得まして、捜索を実施いたしたのでございます。御承知の通り、警察法におきましては、管轄区域外に及ぶこうした犯罪捜査の場合等におきましては、関係都道府県が相互に協力する義務があるのでございます。遠い福岡県から関係の警察官が大ぜい出向くよりは、必要最小限の少数の者が上京しまして、他は警視庁の警察官に協力をしていただくという方が、はるかに能率的でございますので、わずか五名でありましたか、数字は忘れましたが、ただいまお話がありましたように数名の、少数の福岡県の警察官が上京いたしまして、警視庁の警察官の協力のもとに、日教組本部の捜索を実施いたしたのでございます。なおその際国民教育研究所まで捜索するのは行き過ぎではないかというような御指摘でありましたが、国民教育研究所は、御承知の通り、日教組の規約によりますと、日教組に設置された一機関でありまして、いわば日教組と一体的なものであります。この国民教育研究所に、捜索を必要と思料せられる証拠資料というようなものもあり得るという見地から、捜索差押令状を得るにつきましては、同研究所に対しまして、捜索を実施するという許可を得ておるのでございまして、あくまで合法的な手続に基いて捜索が行われておるのでございます。おそらく行き過ぎの点はなかったと私は思うのでございますが、いろいろ御指摘もございましたので、また将来の問題としまして、およそ犯罪捜査等に当りましては、あくまで慎重に、必要な限度にとどめ、行き過ぎのないようにしなければならぬことは申すまでもないことでございますので、今般のことにつきましては、今までのお話を参考にいたしまして、反省すべき点は十分反省いたしたい、かように考えております。いずれにしましても、先ほど来たびたびお話もございましたが、参議院の補欠選挙があるので、いかにもそれに結びついて何か政治的意図のもとにやっておるのではないかというふうに疑われるのはまことに心外でございまして、警察はあくまでも厳正公平、中立の立場を堅持し、政治的意図等によらないで、あくまでも正しく、適正な捜索を行う、こういう態度でございます。
○小島委員長 神近市子君。
○神近委員 私は、このごろの日本の国内情勢について非常に憂うべき事態がたくさん起りつつあるということについて、二、三御質問したいと思います。大臣とか長官とかあるいは局長とかいう高位にいられると、町の声というものがお耳に通らないかもしれませんが、今ちまたでは、しきりに、こういうことがうわさされております。今の日本の情勢は、満州事変の前後の情勢に非常に似てきた、これは一体どういうことかということで、いろいろ憶測が行われておる状態でございます。これはほおっておいては容易ならぬ事態を誘致すると私は考えておるのでございます。いろいろ汚職とか貧乏とか暴力とか、深夜喫茶とか、あるいは政治的な頽廃とか、こういうことはもう少しわれわれがほんとうの気持で立ち上れば、整理ができていくと思いますけれども、国政に対する疑惑を国民が持つようになったときは、私はこれはおしまいだと考えます。ですから、きょう法務委員会に出てきまして私が、委員の一員としてでなく、傍聴者の一人としていろいろ伺っていると、出る問題、出る問題が、ほとんどわれわれの感じ取るものと違ったものが出てくる。私は、委員会に出て委員たちに締め上げられた、それで帰って汗をふく、おなかがすいたというようなことでは、問題は済まないと思うのです。ですから、私はそんなにたくさん質問するつもりはありませんから、どうかその意味で、われわれは一番大事な、国の基本であるところの警察行政、あるいは法務行政に携わっておるものだというようなはっきりした国家の心棒だというお考えを持って、良心的に返事をしていただきたいと思います。 私が第一に石井長官に伺いたいことは、戸高事件の判決がありましたときに、無罪になってよかった、これで警察官が安心して働けるというようなことを談話としておっしゃっていた、それは一体どういうことを意味しますか。そのことについて、たとえば警察官がまたあとで質問しますけれども、上官による誤まった命令でもこれを行なっておけば、あとで戸高君のようにいろいろ手を尽してかばってもらえるというので、安心して働くことができるようになったという意味でございますか、その点をちょっと伺います。
○石井説明員 戸高君に対する今月四日の判決のありましたことに対して、私は外部に対しては何ら私の意見を発表いたしておりません。どういうところでお聞きになったのでございますか、まだ大分地裁で第一審の判決があっただけでございまして、問題が確定したわけではございません。検察当局におかれまして控訴されるかどうかもまだきまっておらないような状況下におきまして、軽々にこの問題について私どもの最終的な見解というものを述べるべき段階でないということは、私も承知をいたしております。外部に対して何らこの点に関しての意思表示をいたしておりませんので、御了承願いたいと存じます。
○神近委員 それは私ここに新聞を持ってきておりませんから、あなたではなくて、あるいは地元の警察署長であったか何かわかりませんが、そのことは別としまして、今われわれが非常にたくさん疑念を抱くことは、これはあとで法務大臣にもちょっとこの裁判について伺うつもりですけれども、さっき志賀さんが出されました盗聴事件ということであります。共産党の大会に盗聴機がつけられていた。これはあのときが始まりでなくて、福島県の郡山で同じようなことが起っております。それからもう一つ、和歌山県の勤評反対の闘争で、警察官が手帳を落して、その手帳を写したものが、この前の臨時国会の最終あたりの法務委員会に配られたと思いますが、あれを拝見いたしますと、今おとり戦術というか、警察の行き過ぎたスパイ戦術というか、そういうものが相当広範に行われているのじゃないかということが想像されるのであります。組合の集会あるいは文化団体の集会、そんなところに全部手が入っていて、それを詳しくノートしたものを報告をしております。私が今出しましたのは三つの事件だけでございますけれども、たまたま不注意で手帳を落してしまった、あるいは隠された盗聴機が何かの偶然でこれが出てきた問題は、ここに事実はわずかに三つしか上っておりませんけれども、これは氷山の一角であって、かなり広範に行われていることが、たまたま何かの機縁で出てきたのじゃないか、こういうふうにわれわれは感じ取るわけでございます。あなたの方で何もかも大っぴらに、こういうようにやっておりますという御報告はできないと思うのです。ですから私どもはそう想像するよりほかはない。これからもそういうような調査あるいは行き過ぎた捜査というものはもっと続けておやりになるつもりなのか、あるいは戸高事件に反省されて、こういうようなことは、たとえば憲法の集会結社の自由、あるいは検閲は一切しない—これは実質的検閲ですからね。ですから、そういうような憲法の趣旨にのっとって、公明にものごとをやっていこうという考えを今お持ちになっているかどうか、あるいは今までの行政は別にあやまちはなかったから、この通りでやっていくとおっしゃるならば、これは国民は一人々々武装して当らなければならなくなると思います。その点を私は長官に伺いたいと思います。
○石井説明員 およそ犯罪捜査に当りましては、先ほども他の委員の御質問のときにお答えしましたように、あくまで人権を尊重するという基本理念に立って、科学的合理的な捜査を行うべきものであるというふうに私どもは考えられるのでございまして、従来とかく旧式の捜査方式と申しますか、勘による捜査、あれがどうも犯人らしいというおよその見当をつけて、そこへ到達すべく若干無理をしてそこへ到達しようとする、その間にいろいろ行き過ぎがあり、人権を侵害するようなことが起り得るということが過去においてありましたことは、私ども遺憾ながら率直に認めます。今日におきましては、そういった旧式な捜査方式をとってはならない、近代的な新しい捜査方式としては、先ほど申しましたように、どこまでも基本的人権を尊重しつつ科学的合理的に捜査を進めて、真実の発見に努めるべきものである、こういうふうに私どもは考えまして、第一線の関係警察官には、機会あるごとに指導教養いたしておるのでありまして、漸次その指導教養が実を結び、改善向上されつつあると私は考えておるのでございます。不幸にしまして、たまたま数多い中に、末端におきまして例外的に一、二の行き過ぎ行為がいまだに跡を断たない点は遺憾に思っております。今後さらに指導教養を十分に加えまして、そうした行き過ぎのないように、一そうの精進をいたしたいと考えている次第であります。先ほど特にスパイ戦術をとってやっているのではないかという御指摘がございましたが、私ども警察は、犯罪捜査の場合のみならず、犯罪の未然防止の見地から、社会のいろいろな動きと申しますか、こういったものを承知しておらなければならぬという必要もあるわけでございます。そういう意味におきまして、国民の各方面の方々の御協力をいただいて、ただ単に警察が机の上において本を読み、書類を読むだけの知識では十分そうした実態を把握できないという面がございますので、国民の各方面の方々からいろいろな教えを願うという必要があるのでございます。そういう意味におきまして、国民の警察に好意を持って下さる方々の協力を得て、各方面の意見をもちまして、警察の執務上参考になるようなものを集めるということは、職務の性質上やむを得ぬ必要でございますので、御了解を願いたいと思うのでございます。それはあくまで合法的な許されたる手段によらなければならぬことは申すまでもないことでございまして、盗聴機というようなものをむやみやたらに用いるというようなことは、これは厳に慎しまなければならぬことはあらためて申し上げるまでもないところでございます。
○神近委員 今あなたは国民との協力によらなければ諸悪が摘発できないとおっしゃった、それは私はほんとうだと思います。今いろいろ青少年の不良化の問題であれ、あるいは売春の問題であれ、あるいは暴力の問題であれ、国民の協力を得なければならぬと思います。そして、それが一番正しい排除の効果を得る方法だと思いますけれども、今のようにスパイ戦術で、あるいは裁判の問題も今出ておりましたけれども、国民といういうような機関との間が中断されたなら、もうあなた方の仕事は上ったりだと思います。独裁政治の手先のようになってしまうと思うのです。だからその点をもっと気をつけて、そして行き過ぎのないように—たとえば科学的というようなことをおっしゃる。そうすると、たとえば盗聴機なんかは科学的で、今までなかった。それを間違った方にばかり使ってはならない。時間がないので、私はいろいろまだあなたにお確かめしたいことがあるのですけれど、私が申し上げることは、あなた方が何と弁明なさろうと、あの戸高事件は露骨に組み立てられた、あるいは作り上げられた犯罪という国民に与えられている疑惑は、消すことができない。それでよかったというのがあなた方のほんとうの腹の中だろうということもまた国民が憶測している。その点で、ああいうような方法は、おとりになってはならない。あるいはたくさんのスパイに金をやって、そして組合の集会、文化団体の集会さえこれをなさる。これは犯罪予防にも何にもならないのです。そういうことを注意していただきたいというのが私があなたに御質問申し上げた要旨でございます。 時間がございませんから、私は法務大臣に一、二の点で伺って私の質問を終りますけれど、さっきから志賀さんが法務大臣は法律のしろうとでいらっしゃるというようなことをしきりに言いまして、世間でも法務大臣はどういうふうになさるだろうというようにいろいろうわさをしたことがございます。ですけれども、私は法律家の間に入っていていろいろの言論を聞いておりますと、これは法務省のお役人方もそうでございますけれど、もう法律の完全なとりことなって、そして、ごく小さなサークルの中で、たとえば期待可能性がどうであるとかなんとかいうような議論に日を暮らして、法律が国民のために作られたという趣旨はときどき忘れられてしまう、こういうことがあるので、私は法務大臣はしろうとであるということを大いに自慢になさって、自分はしろうとであるから、国民の常識の方にウエートを置くのだ、この誇りを持っていただきたいと思うのです。何も職人が偉いというのではございません。いろいろむずかしげな言葉を使って、そして、しろうとにはわからないことを言うのが何か自分たちの特権のように考えている人たちが大ぜいいます。その点は私どもは笑ってやっていい。昔から名裁判官とかあるいは名法律家といわれた人たちは、その範疇を抜け出て、これはどっちの利益であるか。国民の利益であるか大衆の利益であるかということを考えた人が、歴史に残るような裁判官として、あるいは名法律家として残されているのでございますから、私はその点で法務大臣はちっともこのしろうとだというような批評をされることをおそれる必要はないと思うのです。ただ、私が法務大臣に願いたいと思うことは、さっき申し上げたように、日本はまさしく第二の暗黒時代に入るんじゃないかということが非常に憂えられているということ、そしてそれは満州事変というものは戦争突入の機会を作った時代でございます。その態勢が整えられていた時代でございます。今そういう疑いを国民が持ち出したということになったならば、非常に私は危険な状態に行くんじゃないかと思います。今ここで四つ五つの問題が討論されましたけれども、その全部を総括的に考えてみると、権力を持っている者は何でもできるのだというような考え方が、国民の非常な疑惑を招いていると思うのです。私は法務大臣は現在の岸政府の柱石のお一人であるならば、この政府に大過なからしめるのが一つの御任務だと考える。法務行政というものは非常に大事なものでございまして、国民の死命を制する行政であります。さっきからあなたの御答弁を伺っていると、引っ込んだ汗をふけばいいというような、軽い気持で御答弁になっていると見ます。そこでお願いしたいことは、非常に容易ならざる時代にわれわれがいるのでないかということを御反省下さって、この法律に従って、そして、たとえば戸高事件のように万人の目にこれは作られた犯罪だと映るものに、もっと納得のいくような判決を下すという機会を作っていただきたいということでございます。今の松川事件の問題あるいは三鷹事件の問題、何か不明朗なものがたくさんぶら下っている。それに対して今は、死刑になったらあなたが判を押すのだとだいぶおどかされていらっしゃいましたけれども、そういうことは別といたしまして、公平無私な法律の行使ということを強調していただきたいと考えるのですが、それはいかがでございますか。やはり自分たちの法務省中心に、その官僚の庇護、そういうことに努められるつもりなのか、それとも公平な法律の行使をしようというお考えなのか、大臣になられたときのごあいさつの趣旨でそれを貫いていただく勇気がおありになるかどうか、それをちょっと伺わせていただきたい。
○愛知国務大臣 大へん懇々と御説示をいただきまして、また御激励をいただきまして、まことにありがとうございます。私は就任当初の気持を変えておらないのみならず、ますます勇気をふるいまして、法秩序の維持に当って参りたいと思います。
○小島委員長 大貫大八君。
○大貫委員 私は過般宇都宮市において指名手配の犯人と間違えて弁護士を不当逮捕した事件に関して、実は法務大臣と石井長官に二、三お伺いいたしたいのであります。実は詳しくお尋ねするつもりでありましたけれども、最後になってしまって時間がないようでございますから、ほんの要点だけをかいつまんで二、三お尋ねいたします。 この事件は、法務大臣は七日に宇都宮においでになったようでありますので、事件の内容というのを土地の検事正なりあるいはその他からよく御聴取になっておられるものと思います。なお、新聞などにも出ておりますから、大体概要は御承知と思いますが、私どもの調査したところによると、七月二十九日に福岡弁護士会所属の谷川宮太郎という人が、宇都宮市内の泉町香月荘という旅館に泊って、ちょうどやすんでおった、十時半ごろであります。そこへ県警の警備課並びに宇都宮警察署員数名が乱入というか、言葉が強ければ入って参りまして、そうして君を指名手配の朝鮮人趙鐘基として逮捕する、こういうことだったのであります。谷川弁護士は寝耳に水というのはこのことでありまして、非常に驚いて、自分はそんなものじゃない、自分は福岡の弁護士で、しかも裁判のために宇都宮に来ておるのだ。そうして弁護士のバッジをわざわざはずして、これを見てくれ、このバッジの裏には日本弁護士連合会の弁護士としての一連の番号がついておるのだ、こういうことを言ってバッジを示したわけであります。ところが、そこに来た警察官、その中には警部が二人おります。その二人の警部も、バッジなんというものは偽造が幾らでもできる、こういうことで連行をしたのであります。そこでまず第一にお伺いいたしたいのは、バッジ、特に弁護士のバッジに対する公信力についてお尋ねをいたしたいのです。弁護士のバッジというのは、民間で勝手に作る記章ではないのであります。御承知と思いますが、弁護士法の規定に従って、日本弁護士連合会会則で定めております。そして特にまたこの会則に基いて日本弁護士連合会記章規則というのがありまして、それに基いて弁護士のバッジは制定されておりますこの弁護士のバッジは、職務を行うにつき帯用すべしということになっております。御承知のように、戦前までは、弁護士が職務を行うについては、法廷では法服を着なければならなかったのでありますが、戦後法服が廃止されて、このバッジでかえるようになったのであります。要するにこの弁護士の記章というのは、われわれの国会議員のバッジと同じように、法令に基く記章であります。こういう法令に基く記章を簡単に、偽造ということもあるかもしれぬということで、一警察官によって否定されるということになると、これはゆゆしき問題だと思うのです。このバッジに対する信用力というか、そういう点についての法務大臣の見解をまず第一にお伺いしておきたい。
○愛知国務大臣 まず弁護士のバッジのお尋ねでございましたが、私はどうも遺憾ながら規則をはっきりわきまえておりませんが、常識としてお答えいたしますが、これは相当の公信力のあるものと思います。
○大貫委員 そうすると、公信力を持つとすれば、一応弁護士が自分は弁護士であるとしてバッジを示したにもかかわらず、特別の理由なくしてこれを否定をするということは、これは犯罪の捜査などにおいても行き過ぎであるというふうなお考えをお持ちでしょうか。
○愛知国務大臣 やはりこれも常識論でお答えするのでありますが、この件全体についての考え方はどうかというお尋ねでございますれば、それは差し控えますが、常識で考えた場合、代議士のバッジも盗まれることもございましょうし、またちょっと見分けがつかぬようなものを作っておる例もないではないようでありますが、その弁護士のバッジだけを見て、にわかにどうこうという判定がつかない場合もあり得るのではないかと思います。
○大貫委員 もちろん常識論でありますが、これがたとえば二十才未満の者が弁護士バッジをつけておったということならば、常識上だれが見ても怪しいということは言えるのでありますが、やはり普通の年令、相当の年令に達した者がバッジをつけておって、自分は弁護士だと言ってこれを見てくれと言って示した場合には—谷川弁護士の場合は現にそうしておるのです。今、法務大臣は、一応常識的に公信力があるというお答えでございましてこれは当然な話なんですが、そういう場合に、それでも偽造だと特別に疑うところの何らの要素もないのにそれを否定するということは、これは捜査の上で非常に行き過ぎだと思うのですが、どうですか。これは谷川弁護士についてお伺いいたします。
○愛知国務大臣 しかしその環境なりそのほかの条件とあわせてこれは判断すべきものであって、弁護士のバッジをつけておって、おれは弁護士だぞと言われただけを取り上げて、これは行き過ぎであるかどうかということになりますと、これは個々の案件によって判断が違ってしかるべきではないかと思います。
○大貫委員 私は抽象的にまず公信力をお伺いしたのですが、今お尋ねしておるのは谷川弁護士の場合であります。谷川弁護士の場合は、明らかに自分は弁護士である、バッジはこの通り一連番号があります、それから自分は司法修習生の第七期生で、たとえば福岡の検察庁には同期のこういう検事がおる、あるいは東京検察庁には七期生にこういう検事もおるのだと、そこに問い合せておる。さらに自分は総評の弁護士である、炭労の事件を扱い、あるいは日教組の事件を扱っておる、その記録の内容はもちろん見せません。これは当然のことでありますが、表紙を見せて、こういう状況なんだと、ここまでの説明をしておるのに、あえてそのバッジを否定するという捜査のやり方というものは、私は行き過ぎだと思うのですが、どうですか。
○愛知国務大臣 私も非常に詳しい本件についての調書はまだ見ておりませんが、たまたま宇都宮に立ち寄りましたときに、行き違いに本省には報告しておいたからよくそれを見てくれという程度の話は聞きましたけれども、こまかいことはまだ十分に検討いたしておりませんから、今のところ的確にお答えすることはできませんが、今お話のようなことが事実であると仮定いたしました場合には、行き過ぎというよりは注意が十分に行き届いておらなかった、不穏当であったということは、私は言い得ると思います。
○大貫委員 それではもう一つ、その問題について価値判断を……。法務大臣は七日の日に宇都宮に来られて検事正などに会われ、記者団会見をやっておられるようですが、その記者団会見では、明らかに警察側の黒星である、あるいは警察のミスである、あやまちはあやまった方がよいというような談話を発表されたようですが、法務大臣自身が宇都宮に行かれた際に、そういうふうなことを感じられたのじゃないでしょうか。これは実は土地の新聞の下野新聞並びに栃木新聞にこういう見出しが出ております。「弁護士の強制連行事件、警察側の黒星、愛知法相宇地検で語る」、これは栃木新聞の方です。もう一つ下野新聞の方は、「人違い逮捕事件など語る、愛知法相来宇、明らかに警察のミス」、こういう見出しですが、見出しばかりでなくて、内容では、法務大臣がさような談話を発表したようになっておりますが、いかがですか。
○愛知国務大臣 これは談話の発表ではありませんが、こういう事件があるがどういう所見であるかというこにを問われたのに対して、もしこれこれの事実が明らかであるとすれば、これは明らかな失態であるということを申したのでありまして、前段においてただいまここでも申しましたように、こういうことについて責任をもって断定をするのには、まだ私自身としても研究も不十分であります。これは取材の記者の筆の運びにつきましては私は責任を持ちません。
○大貫委員 これはたまたまあやまって連行されたのが弁護士でありましたから、このように大きな問題になったのでありまするが、無名の市井の人が人違いで逮捕されたというような場合——これはたくさんあるであります。こういう人違いだからといった場合に、従来は泣き寝入りをしておったようであります。泣き寝入りどころか、場合によっては警察から恩に着せられて、お前が疑われるような行動をするからいけないんだとあべこべにお説教などされて釈放されるというのが、むしろ普通人の場合じゃないかと思うのです。こういう不当逮捕の場合、人権の擁護の立場から、法務大臣としてはどのような考えを持っておられるでしょうか。
○愛知国務大臣 明らかに間違いであったというような場合につきましては、これはまことに申しわけないことなのでありまして、これについてはそういう間違いをした者において、間違いをやったその原因、あるいは注意その他において欠くるところがありますならば、これはこれとして責任をとらざるを得ないようなことになろうかと思いますし、またその被害を受けた人に対しましては、人権擁護の建前から十分に国家としてもおわびをしなければならぬかと考えますが、こまかい法律関係等につきましては存じませんので、それらの点は詳細、事務当局からお答えいたさせます。
○河井説明員 お尋ねの点につきましては、もしこれを逮捕、拘留というような問題になりますれば、御承知のように被疑者補償規程等がございまして、それによって補償されるわけでございます。なお先ほど来お尋ねの谷川弁護人の逮捕につきましては、宇都宮地検の方から報告が参っておりますが、谷川弁護士をなぜ趙鐘基と認定したかというその前段の問題がもう一つあると思うのでございまして、どういう根拠に基いてそれを趙鐘基と認定したかという点につきましては、地元の検察庁において目下慎重に調査中でございますので、いずれ判明することと存じます。ただ、弁護士のバッジをつけておいでになりましても、私ども現場で長い間経験しておりますと、その方の服装であるとか言動であるとか、あるいはその行動であるとかいうふうなことによって、ときに失礼をするようなことも実務の上では絶無ではないのでございまして、その点は非常にむずかしいことでございます。ただ、おれは弁護士だとおっしゃるだけでそれをすぐ信用するかどうか、あるいはバッジだけでということになりますと、実務ではときどき非常に問題が起る例もございます。
○大貫委員 そのバッジの問題につきましては、日本弁護士連合会の会則の第三条にこうあるのです。もし今御答弁のように弁護士であることに疑いがある場合には、「弁護士が職務を行う場合に、裁判所その他の官庁の要求があるときは、その帯用する弁護士記章の番号を示さなければならない。」、こうなっておるのです。ですから、これはもちろん疑いがあれば失礼でも何でもないのです。弁護士ははずしてそれを呈示する義務がこの会則では定められておるのですから。ですから、そういう疑いがあればちゃんとバッジを示してもらって、その番号を見ればよろしいのです。ところが谷川弁護士の場合は、この通りですとわざわざ番号まで示しておるのです。それにもかかわらず不当に連行しようといたしておるわけであります。そこで前段の何ゆえ指名手配の趙鐘基というのと間違われたかというこの点についてはあとで石井長官にお尋ねしますが、もう一つ今の間違って不当に逮捕された、こういうような場合の国家補償というのは、私の記憶する限りにおいてはいまだないと思うのですが、逮捕の場合間違って不当逮捕する—被疑者として勾留を受けたという場合の刑事補償はありますけれども、間違って逮捕されたという場合の国家補償は私はないと思うのですが、そういう点いかがでしょうか。
○河井説明員 これは御承知にならないかもしれませんが、大臣訓令で出ておりまして、被疑者補償の規程がございますので、それによって現に補償をいたしておる事例もございます。それから被告人の方は御承知の通り法律に規程がございます。
○大貫委員 石井長官にお尋ねします。まず、今お聞きの通りの事件なんですが、谷川弁護士の部屋に県警の警備課の警察官並びに宇都宮署の警察官が入っていきましたのはどういう根拠で入っていったか、つまり具体的にいえば逮捕状あるいは捜索令状を持って行ったかどうか、それをお尋ねします。
○石井説明員 大貫委員は、本件につきましては、地元の関係でおそらくよく御承知になっておられることと思いますが、私は栃木県警察本部からの報告に基いてのみの知識を持っておりますので、あるいは詳細なお答えができないかもしれません。私の承知しておる限りにおいてお答えをいたしたいと思います。 谷川弁護士を人違いしまして御迷惑をかけたということは、とにかくまことに遺憾なことでございます。いろいろ事情はありましたけれども、とにもかくにも指名手配の警察側で考えておる人物でなかったという意味において人違いであったわけでございますので、そのために御迷惑をおかけしました点は、まことに申しわけないと思っております。ただいまお尋ねの県本部の小川警部が香月荘ですか、谷川弁護士のとまっておる宿屋に行きました事情は、実は当日栃木県警察特に宇都宮警察におきまして—最近どこでもそうでございますが、暴力事犯の取締りに非常に力をいたしております。警察力を相当配置いたしまして、管内の取締りに当っておったのでございます。その一つの組である松本、篠崎という二人の巡査が、たまたま路上におきましてかねて承知をいたしております出入国管理令違反の関係で仮釈放になっております趙鐘培という人と一緒に歩いておる方、これが谷川さんだったわけですが、この方がちょうど数日前から指名手配のあります趙鐘基、これは趙鐘培の兄さんといわれておりますが、一見その方ときわめて人相が似ておるということからしまして、先ほどから申します松本、篠崎両巡査、これは暴力事犯のための取締りに当っておったわけでございますが、そういうふうに直感をいたしましたので、一応この趙鐘培並びにそれと同道しておる指名手配の趙鐘基と似た人とが歩いていかれるあとをいわゆる尾行したわけでございます。そうしますと香月荘にお入りになった。そこで両巡査はさっそく署の係の方に連絡をし、署の係の方から県本部の先ほど申しました小川警部の方に連絡があったわけでございます。そこで小川警部がこの松本、篠崎両巡査に案内をしてもらいまして、香月荘に参りました。それがおおむね午後十時四十分であったと聞いております。まず宿屋の女の主人に質問をいたしたのでございますが、お宅に朝鮮の方と一緒に来てお泊りになっておられるお客さんはありませんかというふうにお尋ねしましたところ、おりますということなんです。それではその方にちょっとお尋ねしたいことがあるんですがと言いましたところ、どうぞといって女中が谷川弁護士の泊っておられる部屋まで案内をいたしまして、外から面会の方でございますというふうに声をかけますと、中から谷川氏がどうぞといってふすまをあけられた。そこで小川警部は部屋に入る前に、警察の者ですが、ちょっとお尋ねしたいことがあるのですがということですがということで、了解を得て部屋の中に入っていろいろ事情をお聞きした、こういうふうに聞いておるのでございまして、先ほどお言葉にありましたように、部屋に無断で乱入して云々というふうな状況ではなかったように聞いておるのでございます。そうしていろいろ事情をお聞きしまして、どうも若干ふに落ちないというような点がありまして、福岡からおいでになったということで、さっそく小川警部はその旅館から署を通じまして、県本部から福岡県警察の方に電話を申し込みまして至急に照会をしてみたわけでございます。そうしたら回答がなかなか参らなかった関係上、いろいろやりとりしているうちに、署へ行って署長に話せばわかるだろうというふうに谷川さんの方がおっしゃいまして、それでは行っていただきましょうということで、いわゆる任意出頭をしていただいたわけでございまして、決して警察側が強制的に出頭を求めるというような状況ではなかったのでございます。先ほど来たびたび不当逮捕というようなお言葉がございましたが、私どもは不当逮捕であるというふうには考えておらないのでございます。署に行かれますときに、初めて先ほどいろいろお話のありました弁護士バッジを示された。ところが小川警部がそれを十分認識をしなかったという点はまことに不見識のそしりを免れないかと思いますが、とにもかくにも署へ行って署長に話せばわかってもらえるから行こうということで宿屋を出ることになったわけでございます。そのときは、先ほど申しました松本巡査が署まで案内するということで、松本巡査はそのときは自転車で来ておりました関係上、自転車を自分が押しながら、谷川氏と同道して署の方に向つたのでございます。その日はたまたま先ほど申しました暴力事犯の取締りのために署をあげて配置についておったような関係もあったのでございましょう、他の巡査部長がちょうどその場に出くわしましたので、これも同道いたしておりますが、署に到着しましたときには、松本巡査また途中から同道しました巡査部長はいずれも自転車でありましたために、そのかぎをかけている間に、谷川氏は自分でさっさと署の中に入っていかれた。そうして当日は佐藤警視が最高責任者として在署しており、次席の席におったわけでありますが、そこに谷川氏がつかつかと寄っていかれまして、お話になったわけであります。そこで佐藤警視は、そういうところでは人目につくので、署長応接室に招じ入れまして、そこで話を伺ったわけでございます。佐藤警視はさっそく手配の写真等資料を取り寄せまして、よく話を伺いつつ対照しました結果、これは人違いであるということがはっきりいたしました。そこでまことにお手数をかけ、御迷惑をかけましたということで陳謝いたしまして、署の車で宿屋までお送りし、かつ宿屋の方にも、谷川さんは決して怪しいことはなかったのだから了解してもらいたいということを十分申し伝えておいたのであります。翌朝、小川警部は旅館をたずねまして、谷川弁護士に対しまして陳謝をいたしておるような状況でございます。前後の事情から、指名手配の人間に酷似しておるということで、それを確かめるべく宿屋の方に出向き、そこですぐ人違いであるということが発見できれば一番望ましいことであったのでございますが、若干時間を要した、そのために不必要な御迷惑をかけたという点はまことに遺憾でございますが、その点におきまして、特に著しい警察側の不手ぎわというようなものは、私ども今まで報告に接しておるところではないので、当時の事情やむを得なかったかなという感じがいたすのであります。とにもかくにもこの点につきましてはさらに詳細調査をいたしまして、今後そういう人違いというようなことは絶対あってはならないことでございますので、将来の反省の資料にしたい、かように考えております。
○大貫委員 時間もだいぶたっておりますから簡単に申し上げますが、特に重大なことだと思うのですが、石井長官の方は栃木県警からの報告だけだとおっしゃるからいたし方がありませんけれども、実はこの問題につきましては、私も日本弁護士連合会の人権擁護委員をいたしております関係上、八月四日に日本弁護士連合会の人権擁護委員の一行が宇都宮に参りましたときに、私もこの調査に立ち会っております。その際に、佐藤警視は明らかに私どもにこう言っております。これは日本弁護士連合会が調査したときの調書でありますからちょっと読んでみます。これは佐藤警視が述べた一節ですが、「私は長い間捜査をやっておりますので、そういう関係の観察は比較的なれているとおもう。そうして見ましたら先ず私が一番最初に感じたのは、五尺七寸」、これは指名手配の人間が五尺七寸だった、「本人は五尺二寸せいぜいそれと細っそりやせ型好男子というが」、このほっそりやせ型というのは指名手配の者なんです。「なに私が見たのではずんぐりで好男子とはいえない」これは谷川弁護士です。「それから写真を見ましたら写真はどっちかというと三角の顔に似ている。本人は大貫先生のような丸顔」こう言うのです。「肩がボデービルみたいにいかっておる」これは指名手配の写真の肩がボディ・ビルみたいにいかっておるが、「本人はやせ型これはだめだ、身長がこんなに違う。弁護士さんのバッチは長く捜査をやっておるのでよくわかっておりますから、やたらにそう作れるものでもないし、人違いしてすまなかった、警察で、この署でやったことじゃないが……わしの話があっさりしているものだから」云々、こう言うております。つまり佐藤警視が述べておりますように、指名手配の犯人というのは五尺七寸なんです。谷川弁護士というのは五尺二寸——二寸もないかもしれません。私が五尺一寸なんですが、私と並んでみて、同じくらいの背格好であります。もう一見して違うのであります。しかもほっそりしたやせ型の好男子というのが、実は谷川弁護士には失礼でありますけれども、一見してあまり好男子という範疇に入る人ではないのであります。このくらい指名手配の人相書きと本人が明らかに違っておる、これはもう明白なんであります。しろうとでもわかるようなことなんでありますから、今石井長官はすぐ発見されればよかったんだがと言うが、これはしろうとでも発見できるはずです。それを弁護士のバッチまで見せても、なおかつ警察に行ってもらいたい、こういうような警察の態度というものは、これはもう行き過ぎでなくて何でありましょうか。これは率直に警察は行き過ぎだということであやまるべきなんであります。それをあやまらずに、実は本署まで連行した、こういうところに問題点があるのであります。 なお、今、詳細な長官の内容のお話でありますが、これはまるで違っております。特に旅館などにおきましては、これも人権擁護委員会で調査いたしたのでありますけれども、旅館のおかみの言うのには、旅館を開いてまるでしろうとなものですから、警察の者が来たのであわててしまった。そこで会いたいというのですが、お客様のお部屋はお客様にお貸しした以上は、お客様の承諾を得ないでむやみにお通しすることはできないから、娘をやります。聞いてきなさいと言ったら、その娘が部屋に行くあとについて警察官がどかどかと上ってしまったということをはっきり旅館の女主人は言うております。こういう点については、すでに本人の谷川弁護士が告訴をいたしておるようでありますから、これはいずれ黒白は宇都宮の検察庁においてきめられると思いますから、これ以上私は内容に入ってどうこうは申し上げませんけれども、どうも今申し上げましたように、この手配と本人はまるで人相が違っておるのであります。こういう非常な間違いを犯した警察官に対して、どういう責任を一体石井長官はとらせるつもりか、その点をお伺いいたします。
○石井説明員 先ほどお答えしました通り、私は栃木県警察本部からの報告をもとにしてお答えする以外に、材料の持ち合せがないわけでございますので、地元におられる大貫先生の方がはるかに詳細に真相をお知りであるということは先ほど申し上げた通りでございます。いろいろお話を伺ってみますと、私どもの調査がまだ不徹底の面があるようでございます。十分この際調査をいたしまして、行き過ぎの点に対しましては、責任を追及すべきものは責任を追及する。また将来の全般の問題といたしまして、いやしくも人違いをするというようなことは絶対にあってならぬことでございますので、将来十分戒心して参りたい、かように考えます。
○大貫委員 最後に、そういうように石井長官が栃木県警の報告だけでの御答弁で、これから十分調査されるというのですから、それを一つ信用いたしますからぜひ一つ……。こういうことがこのままにされるということになると、これは警察の威信というものはまるで失墜いたします。特にこれが弁護士だから問題になったんだ、普通人なら常にこういう人権じゅうりんがなされておるのだ、こういうことがちまたの声であります。特に今度の場合ははなはだしい。重ねて申し上げますけれども、今の五尺七寸と五尺二寸は間違いっこないのであります。この事実は一つ十二分に調査されて、責任を明らかにしてやっていただきたい。
○坂本委員 ちょっと一点だけ。法務大臣と警察庁長官にお伺いしますが、これは弁護士の名誉のために私はお聞きしておきたい。谷川弁護士は、私は東京でもよくやっておるし、それから福岡に参りましてからも、菅生事件で一緒にやりました。そのほか一、この事件でも一緒にやってよく知っておるわけですが、彼は五尺一寸か二寸で小さいのです。私は五尺六寸ですが、私と並ぶと肩しかないので、一見して明らかである。人相でも、朝鮮の方か日本の方か、少くとも二年余り弁護士をしているのだから、見てすぐ、指名手配の者か、やはり弁護士というのは紳士ですから、わかるはずなんです。それをバッジを見せて、さらに訴訟記録を見せておる。訴訟記録なんというのは、これは偽造はできないと思うのです。だから訴訟記録を見せ、バッジまで見せてやったのに対して、連行する、それ自体が重大なる問題だと思う。この新聞によりますと、谷川君の泊っておる部屋の中で約三十分間いろいろ押し問答したが、とうとう連行した、こうなっておるが、さっき石井長官の話を聞くと、外へ出た、出たところで訴訟記録も見せて、多少あいまいだったけれども連れていった、ここに問題があると思うのです。ですから、少くとも今大貫さんが申しましたように、長年刑事の経験のある人は、弁護士が、あるいは第三国人のそういう極悪犯人の指名手配かということは、これは見た気持でわからなければならぬはずですよ。それを逮捕状も出ておるから来いといって連行した。これはやさしい言葉じゃないですよ。おかみに言って、おかみがとにかく娘に聞きにやろうといってやったら、娘のあとからどかどか五、六人が入っていって、そうしてお前は指名手配のこれだ、逮捕状も出ておる、いや、そうじゃない、バッジだと言って、バッジを見せた、そんなものは偽造もあるから、承知しない。これは故意にやったか、故意でなかったら、故意に近い重大なる過失だと思う。さっきの警視庁のあの交番の休憩所のように酔っぱらいもしていなくて、そうして訴訟記録も持ってやっておるその弁護士に対して連行をしたというそのこと自体に対して、また五千数百名の日本の弁護士に対して、刑事を七年も八年もやっておって、一見してもわからないようなことで私は勤まるかと思うのです。明らかにこれは故意をもって、そうしてどうせここまできたから警察まで連れていかなければならぬというような、狭い卑劣な警察根性でこれは連れていったんじゃないかと私は疑っておるのです。だから、もっと私は警察は、実際弁護士であるということがはっきりしたときに率直にあやまって、非は非としてやるべきだと思うのです。それを何のかんのと理屈をつけるところに私は現在の警察官の一番悪い点があると思う。もっと石井長官は、昔のような命令なんかはないにしても、やはり善良なる国民の治安を守る警察官を指導し、補導する長官の地位にあられると思うのです。今みたいなようなだらだらした報告を聞いて、それでございますと言って、この法務委員会で報告するようでは、私は勤まらないと思う。どうですか、その点について所見をお伺いしたい。
○石井説明員 先ほど事の経過をお答えしましたときにも申し上げました通り、署に谷川弁護士がおいでになって、佐藤警視が面接された結果、人違いであるということがわかったときにまず陳謝をし、そうして丁重に署の車によって宿屋までお送りをしておるのでございます。そうして人違いであったことを旅館の方にも十分連絡をして誤解のないようにしておるのでございます。さらに当面の小川警部は翌朝旅館に出向きまして、谷川弁護士に陳謝をいたしましたということを私は先ほどお答えしたのでございます。しかし、なおこまかい点につきまして、今後の問題として、およそ人違い等あってはならないにもかかわらずこうした人違いは早期発見できるにもかかわらず発見し得なかったというところに、何か不徹底な点があるのではないか。将来の十分な反省の資料にしたいという意味におきまして、事案の真相をさらに詳細、正確に再調査をいたしたいということを先ほどお答えしたのでございまして、人違いをしたことに対しての申しわけないということは、私は最初おわびを申し上げたつもりでございます。決して警察は正しいことをしておるので、何らやましいところはないというお答えをいたしておらないつもりでございます。御了承願いたいと思います。
○坂本委員 こういう問題は、やはり署長でも行ってあやまってしかるべきだと思うのですよ。法務大臣にお伺いしたいのですが、弁護士は全国で六千人くらいしかいないわけです。そうして谷川君はこの写真にも載っておるが、私はよく本人を知っておる。だからここでバッジを出して弁護士だと言うたら、怪しいなら一人くらいはそこに置いても、署に帰ってまずその弁護士会の会長の自宅にでも聞いて、そうしてやるべきなんですよ。それを福岡に聞いてそういう点で三十分もごたごたした。それには六人も七人も行っておるわけでしょう。ですから、この弁護士という地位にある者に対する逮捕状じゃない、ほかの者の逮捕状でやる。五寸も違う者に対する逮捕状を握っての同行ですから、こういう場合によほど慎重にしなければならぬと思う。署長がその晩でも、眠っていても起きてきて陳謝しておるならばいいけれども、翌日その係の行った者が陳謝をしたくらいでに、私は相済まぬと思う。こういう問題については、法務大臣はどうお考えになられますか。所見を聞いておきたい。
○愛知国務大臣 私は実は取りまとめて私の所見を申し上げたかったのでありますが、そもそもバッジというものについてどうかという大貫君のお尋ねから始まりましたから、私は非常に遺憾に思うのであります。私は先ほど申し上げましたように、新聞記事に書いてありますことは私の公式の談話をこう発表したというものではございませんから、どう書かれるか、これについて責任は持ちませんけれども、しかし宇都宮市におきましてたまたま記者諸君から、ただいまいろいろお話がございましたような事実をあげて、こういうことについての所見をどうだと言われますから、それが事実ならば私はこれは失態としておわびすべきものである、こういうふうに申し上げたわけでございまして、これが私のただいまにおける所見でございます。従って、今警察庁長官からもいろいろ話がございましたが、それらのことも十分にこれは非常に重大な問題であると思いますから、警察の方の見方も十分に調査をいたしまして、そうして私としては善処をいたして、はっきりけりをつけたいと思っております。
○小島委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後二時二十五分散会