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29回国会衆議院1958/06/27

外務委員会 第4号

発言数
236
登壇者
10
会派数
2
開催日
1958/06/27

会議録

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので順次これを許します。森島守人君。

森島守人日本社会党

○森島委員 日中貿易問題は非常に重要な段階に達しておると思うのです。その問題について補足的に御質問したい。すでに御承知のように社会党といたしましては、いわゆる低姿勢で、不必要な刺激を与えぬというような見地からなすべき質問も控えておったということは御承知の通りです。すでに予算委員会におきましても、また当委員会におきましてもそれぞれ質問がございましたので、私は補足的な意味で御質問をしたい。  藤山さんは赤城官房長官の新聞における談話を個人的な談話だということで、政府の統一ある見解は外務大臣のみを通じて発言せられるのだということをおっしゃっていることは御承知の通りなんです。しかしその後に至りましても、なお二、三相矛盾する発言がなされておることも御承知の通りである。これらにつきましては一体いかに対処されるお考えであるかを承わりたいのです。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 ただいま赤城官房長官の言のことにつきましてお話がありましたですが、私は赤城さんの個人的意見というふうに了解いたしております。またその後いろいろな人がいろいろな意見を言うじゃないかということでありますが、私どもといたしましては、この際各閣僚はもちろん、政府関係者が日中の関係につきましていろいろ発言をすることが、個人的意見であろうと、今日の段階においては誤解を招きやすいような事態を惹起いたしてもいけませんので、できるだけ注意をいたすようにお願いをいたしてございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 その点まことにけっこうなんですが、私は日本内地に不必要な誤解を与えるばかりでなしに、ひいては中共に対しても響いて、中共内部においても不必要な誤解と申しますか、刺激を与えることがあり得ると思うのです。これは政府としてはきわめて早い機会に統一的な見解を公けにされるように御努力あめらんことを願ってやまぬのです。それにつきましては、外務大臣の閣内の勢力は私は知りません。しかし少くとも表面外務大臣において統一して見解を発表される段階に至らなければならぬ。幸い岸君は新聞に、与党と政府との首脳といいますか、少数の閣僚の会議でもって問題を討議したい、その第一には日中問題が議題として取り上げられるだろうということを言っておりますから、なるべく早い機会に政府の統一ある見解を明らかにして、この問題についていたずらに静観ということでなしに、積極的に歩を進められんことを希望してやまぬのです。藤山さんは静観は傍観でないのだということをおっしゃっていますが、これは要するに言葉のあやの問題で、何もしないというのが政府の今の態度です。約二カ月たっております。四月の中旬から今日に至るまで約二カ月間、政府は手をこまねいて何もしてきてない。そうして相互にある誤解を解くのだ、誤解が解かれるのを待つのだとうふうな態度をとっておられるように思うのですが、誤解を与えた原因がもし日本側にありといたしますならば、日本みずから進んで誤解を解く措置をとるべきものと私は信じております。その点につきまして岸総理が長崎事件のような事件の発生を防止し得なかったことは、政府として反省すべき点だったということを言っておられますが、私はもう一歩進んで、事件の発生そのものに対して政府としてこの際遺憾の意を表するだけの雅量をお持ちになっておるかどうかということを伺いたいのです。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 こうした問題につきましては、適当な機会をとらえて総理等からお話があると考えておりますし、また現に議会等におきまして遺憾の意を表されておる点もあるわけでありまして、そういうことにおいて、もし誤解があるとすれば逐次誤解が解けていけるのではないか、こう考えております。

森島守人日本社会党

○森島委員 岸総理が反省すべき点があったと言われるのは、事件の発生を予防し得なかった点が遺憾だというだけでございまして、事件そのものが発生したということに対して遺憾の意を一表明しておられませんと私は了解しております。外務大臣はこの際あのような事件が起きたことは遺憾である、またこの事件に対する政府の処置がきわめて不適当であったということを率直に認めて、遺憾の意を表する用意があるかないか、この点を私はお聞きしている。明確に御答弁願います。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 総理の答弁せられましたことは事件全体を通じて言われたことだと思うのでありまして、その前後を分けてというような意味ではないと存じております。なおこの事件の前後に当りまして遺憾の点があったというお話でありましたが、私どもといたしましても、処理の問題については慎重にさるべきであることは当然でありまして、しかもそれが何らか誤解を起すような処理の方法があったとすれば、それは遺憾だと思っております。

森島守人日本社会党

○森島委員 それでは私は総理は事件全体に関して遺憾の意を表明せられたものと了解して差しつかえありませんか。この点念のためにはっきり一つ御答弁を願います。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は事件を中心にして総理がああいう言明をされたことと信じております。

森島守人日本社会党

○森島委員 言葉のあやの問題ですが、事件を中心としてではなしに、事件それ自体に対して遺憾の意を表明されたと了解して差しつかえありませんか。私はいずれ速記録を見ましてから、もっとこの点を御質問申したいと思っておったのでございますが、まだ速記録が手に入りませんものですか ら、今のような御質問をしたわけです。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 字句上の問題であり、あるいはそういう問題につきましていろいろ論議をいたすことは、また誤解を招く原因を起しても相ならぬわけでありますが、総理はこうした事件が起ったこと自体に対して全体として遺憾であったということを言われたと私は思っております。

森島守人日本社会党

○森島委員 それでは、ついでに御質問いたしますが、総理がそういう遺憾の意を表された以上は、外務大臣としてもこの席上において遺憾であったという意思表明を明白にされることに御異議ありませんか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は総理の言われたことについて同じ考えであることは申すまでもないのであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 それではその当時の言説をさかのぼってみますと、国務大臣として、一国の総理としてきわめて不適当な発言をしておられる。法務省の刑事局長あたりの言われるような発言をしておられる。あるいは刑法の何条に当るとかなんとがいうふうな発言をしておられる。それから藤山さん自身も、参議院の外務委員会においてこの問題が取り上げられましたときに、これは政治家として、国務大臣としてふさわしい答弁をやっておられません。やはり刑法何条云々というふうな、一属僚のやるような答弁をされている。そのときに社会党の議員からもお話があった通り、権利やその他の問題に触れないで、いやしくも国家の国旗である、標章である以上は、これに対してできるだけの保護の措置をとることが必要だというくらいの御答弁をなさっておれば、中国に対しても、さして大きな誤解を与えなかったのじゃないかというふうに私は信じておりますが、その点はいかにお考えになっておりますか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私どもといたしましては、先般も申し上げましたように、それぞれの国民がそれぞれの国旗に対して尊敬を持っておるということを尊重していくことは当然であります。いろいろ法律的取扱いとかいうような問題になりますと、議論がいろいろにまたがって参りますので、今後ともわれわれとしてはそういう点に注意をして参りたいと思っております。

森島守人日本社会党

○森島委員 それじゃもう一つ私進んで聞きますが、この事件に対する善後措置として政府はいかなることをなさっておるか、現状においてでけっこうでございますから、現在までの経過を御説明願いたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。

板垣修外務事務官(アジア局長)

○板垣政府委員 御承知のように五月二日に日中友好協会の長崎支部主催で中国切手等に関する展示会が長崎の百貨店で行われたわけでございます。(森島委員「こまかい経過は要りません。簡単に」と呼ぶ)それに対しまして、直ちに同人を巡査に引き渡しまして、それから旧中友好協会の長崎支部長から長崎警察署に対しまして告訴状が出ております。従いまして長崎警察署は五月二十八日に本件を長崎地検に書類送検をいたしておりますので、ただいま長崎地検におきまして本件について捜査中でございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 その点が明らかになりました以上は、私はその点はこれ以上つきません。この問題と直接の関連がないと思いますけれども、日韓会談の再開を妨げたものに久保田発言というものがある。久保田発言の内容自身につきましては、別に御批判を仰ぐことは要らぬと思いますが、久保田発言があったために、数年間日韓会談が再開に至らなかったということは御承知の通りである。この久保田発言にしましても、当時の岡崎外務大臣がこれを公的に直ちに支持した。これが日韓会談が四、五年間も再開に至らなかった最も大きな原因の一つだと私は了解しております。この久保田発言の取扱いに関する当時の政府の措置がいかがであったかということに対して、この際あらためて外務大臣の御意見を伺いたいと思います。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 久保田発言がなされました当時の事情につきまして、私は事こまかに実は存じておりません。ただその大筋から見まして、いろいろの立場におる人がいろいろよけいな発言をすることは適当でないというふうに考えておるわけで、当時岡崎外務大臣がどういう発言をされたか、現在私存じておりません。

森島守人日本社会党

○森島委員 それは外務大臣としてきわめて不適当な措置だと私は思う。あなたも日韓会談の当面の立役者である。日韓会談をさかのぼって、どういう原因でどうなったということぐらいは外務大臣としてよく御承知にならなければならぬと思う。それを岡崎君がどう言ったか知らぬなんという御答弁では済まされぬと私は思う。この点について岡崎君は国会においてはっきり久保田発言を支持したのです。それが韓国側に無用な刺激と誤解を与えたということはあり得る。私はこの点に関して藤山さんに再度御答弁を願いたいと思います。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私の申し上げましたのは、岡崎発言の内容を事こまかに現在了解しておりません、岡崎さんの久保田発言に対する態度等につきましては存じておりますけれども、しかし内容について事こまかに存じておりませんので、それを申し上げることがまた何か誤解を招いていくことになるかと思いますので、その点を申し上げたわけであります。

森島守人日本社会党

○森島委員 私は岡崎君の発言の内容や久保田発言の内容を問題としているのじゃない。当時の政府がこの問題を取り扱う上においてきわめて不用意だったということを申し上げている。日中貿易協定の問題についても、政府の措置に不用意なものがあるということは私は、否定すべからざる事実だと思う。この際率直にこれを認めて、これに善処されることを希望してやまない。その御覚悟があるかどうかということをもう一度伺いたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私といたしましては、政府がこういう交渉をいたしております際、あるいはいろいろ問題のあります際に、不用意な言説を個人の意見といえども述べることは適当でないと思うのでありまして、そういう意味において、外務大臣として、閣内におきましてはもちろん、下僚に対してもそういう考えを申し述べておるのでございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 問題が発生しまして以来すでに二カ月半ばかりになります。その間において藤山さんはいたずらに静観静観と言っておられます。これは傍観じゃないというふうに言っておられますが、私が申しました通り、これは言葉のあやの問題であります。政府がどういう態度をとるか。すみやかに閣内と党内の意見をまとめられて、統一的な見解をなるべくすみやかに発表して、この問題の善後措置に万全を期せられんことを希望してやまない。  私、もう一つ、これは少し問題の筋から離れるかもしれませんが、藤山さんの御参考までに申し上げたいのは、日本が太平洋戦争に入るずっと前のことであります。まだイギリスがドイツと交戦をやっておったとき、浅間丸だったと思っておりますが、日本から出航いたしました。当時日本におったドイツ人が十六、七名同乗して領海外へ出た。そうしたところが、三海里外ですからイギリスの軍艦がこれを拿捕しました。そのときに日本の国論はどうかと申しますと、霊峰富士山の見える領域内においてかくのごとき行動に出ることは、権利問題は別としても、日本の国民に対する非常な問題であるということで国論が沸騰いたしました。当時の有田外務大臣はこの国論を受けてイギリスと折衝しました結果、浅間丸が拿捕を解かれたという事件があるのであります。もし日本の外務省だったら、おそらく三海里外だから権利の問題だ、当然こっちは——イギリスがやっていいんだというふうな立場で問題を取り扱ったろう。このときにイギリス政府のとった態度は実にりっぱであったと私は思う。権利の問題にとらわれることなく、大局的な見地から日英両国関係を考慮しまして、この問題に善処したという事例がございますが、私は、これくらいの大きな腹がまえで、一つ現在問題となっておる日中貿易協定の問題について善処せられんことを要望してやまないのです。その点に関して藤山さんに御意見がありましたら、御批判でけっこうでございますが、承わりたいと思います。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 ただいまの大局から見た御見解を承わりまして、私としても啓発されるところ多いのであります。まことにどうもありがとうございました。

森島守人日本社会党

○森島委員 どうもありがたいだけでは済みませんが、これを言葉の上でなしに実際に行為によって裏づけしていただきたい。なるべくすみやかに政局が積極的に踏み出して、この問題を具体的に措置されることを希望してやまぬのです。  それからもう一つ、私昔の例ばかり引いて相済みませんが、イシコフ・河野会談、それからまた——藤山さんじゃありません、岸さんが、大陸反攻の意見を支持したという報道が中共側に非常に刺激を与えていることは御承知の通り。私は別に岸さんが進んで蒋介石の大陸反攻説を支持するがごとき言説をなさったことはないものと確信しておる。ただ日本人が対外折衝をやる場合には、ややもいたしますと、向うの意見に対して否定的な態度をとるべきときにも、これをはっきり明示しないで、何事も承わっておくというふうな態度をされることが多い。この点が日中関係においても非常な誤解を与えているのじゃ、ないかというふうに、私は好意的に解釈いたします。河野さんの場合でも私は同様だと思う。そういうふうな点につきましても、私はもしそういうふうな事実があるならば、言ったことはないのだくらいじゃなしに、国会でもっとはっきり日本の態度を中共一に対しても明らかにするというふうな措置を積極的におとりになる意向があるかないかを承わりたいと思います。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 日本人の、ただいま御指摘にありましたような、話し合いその他の場合に、言葉の関係もありまするし、何か外国人からとりますと、肯定的であるか否定的であるかわからないような、これは単に外交の上でなく、日常社会の上において一般的に行われていることだと思うのであります。私ども外交を担当してみまして、やはりそういう従来の日本人的言葉の使い方に対してはよほど注意しなければならぬということは考えておる次第でございます。

森島守人日本社会党

○森島委員 私はもうこの問題についてほかにお聞きすることはないのですが、ただあまりに時日を経過しております。ただいま申した通り、二カ月半であります。この問題については、私は日本と中共との大局から申しましても、日本の貿易上の観点からいたしましても、一日も早く解決するということが必要であると思います。それにはまず、両方が誤解しておる、静観しておれば誤解が解けるのだというくらいな消極的な態度でなしに、もう一歩外務省自身が積極的に動いて、そうして誤解を解くという積極的な措置を講ぜられんことを希望して、質問をやめます。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 松本七郎君。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 前会、一昨日の委員会で大西委員から沢田発言の問題が質問されたのですが、当時はまだ調査されておらないというきわめてのんきな御答弁だったのですが、ああいう重要な発言の問題を提起されたのですから、おそらくすぐ調査されたと思うのですが、その後の外務大臣としての御意見はいかがでございますか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 沢田代表を呼びまして、どういう考えで発言したかを聞いたわけであります。沢田代表は国連の代表でもあったこともありますし、国一連の方式によります平和的な朝鮮の統一という問題を支持しておるわけであります。だから沢田代表がそのとき言いました言い回しがあるいは誤解を招いたものであれば、自分の本意でないということを言っております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それでその沢田さんの釈明によって、沢田発言というものを大臣としては認められるのですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私はその沢田氏の心持と申しますか、精神といいますか、今申し上げたようなことが沢田氏の真意であろうと思います。この間のステーション・ホテルの機会において、そのときのどういう表現だったかは、沢田氏も不注意な表現であったかもしれぬということを釈明いたしておりますので、あるいは聞いた方によっていろいろな感触があったのではないかと思います。沢田代表の精神はそういうところになかったということは、私は直接本人から聞きまして、そう考えておる次第でございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 その精神と違った発言であったとして、沢田氏の釈明によって客観的に記録に残っておることと沢田さんの考えておることとは必ずしも一致してなかったというふうに大臣はその報告に基いて解釈されておられるようでありますけれども、かりにその精神と違ったものであったとして、ああいう席でそのような発言をされたことが認められるか、それとも不当であると結論づけられるか、その点を一つ伺いたいと思います。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 政府の関係者なりあるいは政府を代表して当っております人たちが、かりにいろいろな説明をし、あるいは説をしますときにもそれらの誤解が起りますような用語等を使いますことは、私は適当でないと思います。従いまして十分そういう点について注意して参らなければならぬと考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 大臣が沢田さんの釈明を聞かれて、どうも記録に残っておることと沢田さんの言っておることとは一致してないようだと思われるような発言は、この重大なときに対外的にはもっと影響が大きいのです。しかも日韓会談の首席代表ともあろう人が、考えておることと記録に残ったこととそれほど大きく趣旨が違っておったということをあとで大臣に釈明しなければならないような、そういう問題を起したということは、きわめて軽率な行為だと私は思うのです。これは単に沢田さんがああいう会合で発言したというだけの問題では済ませないと思う。というのは、自民党なりあるいは今の岸内閣の外交方針の基本は、今度の施政方針演説では、形式は従来のような三原則というような形では打ち出されませんでしたけれども、やはり国会における答弁を通じて見ますると、依然として自由主義陣営との協調ということに変りはないと理解しておるのですが、こういう問題と関連して、私はあの発言の今後及ぼす影響というものを重要視しなければならぬと思うのです。そこで一応確認しておきたいのですが、従来通り自由主義陣営との協調ということは藤山外交の基本原則の一つと考えていいでしょうか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 日本が自由主義を信奉しております国であることは申すまでもないことであります。従いまして同じ考え方を持っております国と特に友好親善の関係を深められるということもまた当然のことであります。従いまして私どもとしては自由主義陣営との協調ということをやはり考えておる次第でございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 自由主義陣営との協調を方針とされるという以上は、世界に二つあるいは三つの陣営があるということを認められてのことだろうと思います。今までの答弁でも出ておりますように自由主義陣営並びに中立陣営、中立陣営の中にはあいまいなものもいろいろある、こういう御答弁が首相からも外相からもなされたわけです。少くとも自由主義陣営と中立陣営とそれから共産圏というか、社会主義陣営と、こういうように常識的に対立するものを前提として初めて中立主義陣営、自由主義陣営との協調ということが出されるのだろうと思います。そこで問題は、岸さんはしばしば言っておられるように共産主義には反対だ、しかし国と国との交際にはそれを持ち込むべきではないという考えで、おそらくやられてきておるのだろうと思いまするが、ここで沢田発言というものが問題になると思う。自由主義陣営と協調していくということになれば、自由主義陣営の大御所であるところのアメリカの今の政府は、少くとも岸さんや鳩山さんと同じように反共なんです。そこで次に確認しておきたいことは反共であるということは、やはり依然として藤山さんも変りはないかどうか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 ただいまお述べになりましたことでありますが、私は日本が自由主義を信奉している国の中にいると信じております。ただ私はかねがね必ずしも中立障営というものがあるということを申しておらぬのでありまして、たとえばお話のありましたように、インド等につきましても、思想的にはやはり自由主義陣営である。しかもネール首相の言われたように、経済的施策の上に社会主義的な手法を取り入れていくのだということを言われております。従ってそういう意味の中立主義というものを今までは肯定いたしておらぬのであります。ただ共産主義を信奉している国とは、これは思想的にも対立いたしていることは当然だと思うのであります。むろん自由主義陣営とわれわれは同じ考えを持っておりますので、協調して参ること当然であります。しかしながら思想が違いましても、お互いにその思想を国内的に侵していかないということにおいて、私は両思想の間にもやはり交流もできる。そうしてお互いに親善関係も結んでいけるのではないかと思っているわけであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると現実に不幸にして二つに分れておる南北朝鮮の場合をとってみれば、思想的には北と南は対立しているわけです。これを平和的な統一を望む、こういう答弁が前会あった。平和的統一と一口に言いますけれども、その場合にやはり南朝鮮のとっておる、いわゆる思想的には北と対立するところの自由主義陣営による統一を希望されておる、こう理解してよろしいでしょうか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 韓国の統一につきましては、国連において自由なる選挙のもとに両国が一緒になる方式を打ち出しているわけであります。われわれもその線に沿ってやっているわけであります。統一されました国内における思想的問題は、それぞれの国内において解決されるべき問題だ、こう考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そのやり方の問題ではないのです。やり方は自由なる選挙でやるということでなければいかぬと思いまするが、その統一される場合の日本としての希望があると思うのです。いやしくも自由主義陣営と協調してやるということが外交方針の基本である以上は、よその国の統一がなされる場合には、もちろん干渉はしないけれども、どういう思想に基いて、どういう国内の統一国家ができることが日本として望ましいかという希望というものが、当然そこにあり得ると思うのです。一体北鮮の思想的背景によって統一されることを望むか、あるいは南鮮の思想を背景にして一つの朝鮮ができることを望まれるか、いずれを希望されるのでしょうか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は自由主義を信奉しているものでありますから、世界のそれぞれの国が自由主義を信奉することによって国民の幸福も得られ、また国家も発達していくというふうに考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうするとその自由主義には、現状において南北朝鮮いずれが近いと考えられますか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私どもは自由主義の立場から申しまして、北鮮の方ははっきり共産主義を信奉しておるのではないか、南鮮の方は現在の段階において自由主義の信奉をするのではないか、こう考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると沢田さんの言われた三十八度線を鴨緑江まで移動させるのだ、つまり南鮮によって統一しようということと同じことを言っておるわけですね。沢田さんが武力でやるとか平和的にやるかというようなことは別にして、三十八度線を鴨緑江まで追いやるのだ。この思想を、やはり藤山さんとしては思想的には認められるということになりますか、

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 統一韓国がどういう主義を信奉していくかということは、統一韓国自自身が選ぶわけでありまして、われわれが政治的に干渉するべき問題ではございませんということは、先ほど申し上げた通りであります。私が申し上げましたのは、自由主義者としての私がそういう意味において、自由主義が共産主義よりもまさっておるということを申したのでございます。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると、沢田発言は一体どこが外務大臣としては適当でなかったと考えられますか、具体的に。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 言われるごとく表現を用いられますことに、あるいは武力等によって何か事が解決するような誤解が起るような言辞を弄されたこと、そのことを私は適当だとは考えておりません。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 これはいずれ沢田代表を当委員会に来ていただいて、その真意をただすことになっておりますから、その上でさらに外務大臣にお伺いすることにいたします。  今お伺いしまして、南鮮が思想的には自由主義に近い、それを信奉して、そして将来進んでいくんじゃないかというような外務大臣の意見が明らかにされたわけですが、現在の中国の問題にしろ、この貿易の行き詰まり、これは国旗問題というのは一つの契機にはなったでございましょうけれども、やはり中国なり、いわゆる社会主義陣営が岸内閣、日本の現状というものをどういうふうにながめておるかというところが、一番中心的問題だろうと思うんです。この点についてあれ以後の中国のいろんな論評などを見てみましても、今までは岸さんというのはどっちかというと両岸外交——これは岸さんに限らず、鳩山さんにしろ、あるいは石橋さんにしろ、社会主義諸国ともできるだけ協調していこう。これこそ私はほんとうの両岸的な外交だったと思うんです。ところが岸さんになってから、アメリカとの協調ということを特に強く打ち出しながら、だんだんその社会主義陣営に対する関係が希薄になる、特に中国の場合にそれが強く出てきたんではないか。こういうふうなことで、実は一岸外交だというようなことを中国じゃ論評しておるわけです。私はその批評が当っておるとか当っておらないとかをここで大臣に質問しておるのではないんで、要するにそういう目で社会主義諸国が日本の動向というものを見ておる。大臣に言わせれば、あるいは誤解と言われるかもしれない。もし誤解ならばそれを払拭するだけの具体的な行動を日本政府が起す必要がある。単なる声明ではどうにもならないところまで来ているということを私は申し上げたい。こういう観点から見ますると、どうしても政府で具体的に実行していただきたい問題は、いわゆる社会主義陣営が今の国際問題で何を中心的な課題として重要視しているか、この点を考えて、それに日本政府も取り組むということが、どんな声明を出すよりも一番手っ取り早いのじゃないか。こういう観点から考えてみますると、何といっても核武装を世界に広げることを一刻も早く食いとめるということを非常に重要視しておるわけです。欧州においてもそうである。特に西ドイツの核武装という問題が、具体的にきめられつつある。これに対して社会主義陣営は非常に神経過敏になっておる。アジアにおいても日本が果して岸さんの言うように、アメリカ軍の核兵器の持ち込みをほんとうに食いとめる意思と力があるだろうかということをなお疑いを持って見ておる状態です。これは外国が疑っておるばかりではない。日本の国民もまた疑いを持っておるわけです。ですから日本の国民を安心させるばかりではなしに、なるほど日本の政府も真剣に核兵器による武装の強化というものは、食いとめる方向に具体的に努力をしておるのだ、こういう行動を日本政府が早く起すことが、社会主義諸国を安心させる一番早い道だと私は思うんです。これは百の声明よりもこのこと一つ実行すれば、はるかに好転すると思うのです。そういう意味で、なぜアメリカとの間に核兵器の持ち込みをやらないという協定を結ぶことが今適当でないのかという点を、もっとわれわれの納得できるような御説明をしていただきたい。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 核武装の問題につきましては、総理がたびたび言明しておられますように、日本の国内において核武装をしない、自衛隊を核武装しない、またアメリカからの持ち込みについても、これを拒否する、また今日の現在の段階におきまして、日米の友好関係からして、日本国民の意思に反してそういう問題を持ち出さないということは、私どもも確信を持って総理のその説を支持するものでございます。むろん世界的に核兵器の生産、使用、保有あるいはその前提となります核実験等について、われわれができるだけ熱意を持ってそうした問題の解決に努力することは当然だと思います。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 外務大臣が、岸総理の核武装をしない、自衛隊もしないばかりじゃなく、アメリカ軍の持ち込みにも反対するということに賛成だというなら、なぜ協定を結ぶところまで持っていかないかということを聞いておるのです。ただ総理大臣の核武装しないという方針に賛成だとか反対だとかということは、今まで再三聞いたことです。賛成なら、外国に対する影響、国内の日本国民をほんとうに安心させるために、なぜこの協定を結ぶところまで要求しないか。それを聞いておるわけです。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 現在日本とアメリカとの関係において、そういうことが起り得ないということを考えておりますので、現在の段階において、総理も言われた通り、協定を結ぶというところまでいっておりません。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 あなた自身は、そういうことは起り得ないと考えるからと言われるけれども、私のさっき言ったのは、そういう自己満足して大丈夫だと思っておられても、このことが外国、特に社会主義陣営には非常に大きな悪い影響を与えておるということはお認めにならないですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 核武装の問題につきましては、世界全体の問題だと思います。世界のいずれの国民であろうと、またいずれの人であろうと、核兵器によります第三次世界戦争というようなものが起ることは、人類の破滅として最大不幸であるということをみな考えておると思うのであります。そういう面について世界的に努力をいたしますことが一番必要なことだと考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 世界的にそういう空気にあるならば、なおさらのこと日本が率先して今問題になっているアメリカと日本との間に——アメリカ軍が日本にいるのですから、そのアメリカ軍を核武装しない、いわゆる核兵器を持ち込まないという協定をアメリカと日本が結ぶように努力をするかしないかは、私は世界の核武装を食いとめるかどうかという問題にも大きな影響があるばかりではなしに、日本の今やっておる政府の方針、日本の岸内閣に対する外国からの信頼の問題にかかわってくる中心点だと思うのです。ですからさっきから聞いておるのですが、そういうふうにはっきり協定を結ぶように——できるかできないかわかりませんよ、協定ですから。アメリカが拒否するかもしれない。しかし、少くとも日本の政府が今言ったような観点からアメリカにこれを具体的に要求するというこの運動をやるかやらないかが、私は岸内閣がほんとうに外国に信頼されるかどうかの分れ目だと思う。それをやらなければ、これからは、社会主義陣営からはいよいよ疑惑を招いて、岸内閣は今後窮地に陥るだろうということをここに指摘しておきたいと思う。これ以上ここで追及して聞いてみても同じ答弁しかおそらく得られないだろうと思うから、この問題はまた先で繰り返して申し上げることにしたいと思います。  参議院の方でも待っておるようですから、少し問題をしぼりましてもう一つだけ、この前国会解散になる直前藤山外務大臣にお伺いしておったことが、約束が履行されておらない問題がありますので、これをお伺いしておきたいと思うのでありまするが、解散直前のこの委員会で、私は矢次さんを今後いかなる形でも韓国に派遣するようなことはないかということを念を押しましたところが、藤山外務大臣は、今後はそういうことはないとはっきりお約束された。それにもかかわらず、矢次さんが岸さんの親書を持って韓国に行かれたというのは、一体どういういきさつでございますか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は外務省の仕事を担当しております者として申し上げましたように、矢次君を韓国に特派することはいたしておりません。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 しかし総理大臣の特使として行かれたのでしょう。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 総理が矢次君をどういう形で出されましたか、私は特使という形だとは存じておりません。個人の話し合いの上で矢次君が行かれたという事実はありますけれども、外務省が矢次君を特使もしくは外務省の必要上やったということは、先般から申し上げている通りございません。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 総理がどういう形でやろうが、いやしくも今韓国と日本とは会談という重要な問題を控えておる。そのときに、いかなる形であろうが総理の親書を持って矢次さんが韓国へ行ったということは、これは外務省の関知しないところだといことでは済まないのです。外務大臣は外務大臣としての責任において、この前、こういうやり方というのはいろいろ悪い影響があるからやはり外交ルートでやるべきであって、矢次さんを特に派遣するというようなことは慎重にやってもらいたい、こういう私の質問に対して、今後はやらないとあなたはここで言明された。それにもかかわらず首相がどのような考えであろうがそういう動きをされたときに、自分は知らないで済みますか。どういう意思で総理が矢次さんを派遣するのか、自分はこういう質問に対して外務委員会でこう答弁しておる、従ってその趣旨を明らかにしてもらいたいということを、あなたは国会に対する責任からも総理に念を押してからやるべきだ。外務大臣として重大なる責任事項ですよ。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は、矢次君が参りますときに、矢次君が外交上の関係を持って何らかの交渉に行くというようなことは総理に念を押してもなかったのでありまして、そういう意味において外務省の今後の交渉のために行ったということでは全然ありません。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると、矢次さんが向うへ行って李承晩その他と会った会談の内容については、あなたは全然御存じないのですか。報告もされておらないのでしょうか。あるいは報告は受けておるけれどもここで発表できないという性質のものですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 矢次君は今申し上げましたような立場で参ったと私は存じております。従いまして、矢次君が外交折衝等の方法を講じたということはございませんし、またそういう報告も受けておりません。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それでは外務大臣としては、この重要な段階に、総理が派遣した使節から何らの報告も受けず内容も知らないで、今後の日韓の交渉がやれるとお思いですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は、民間の方々が各方面に出られました場合に、一々その報告によって外交を展開するとは考えておらぬのであります。私としては、むろん矢次君がそういう問題に触れてない限りにおいて向うと親善関係の話をいたしましても、それが今後の外交問題に何らかの影響を与える、あるいは交渉そのものに関係するとは考えておりません。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 これもあとでもう少し質問する機会を作りたいと思いますが、時間がありませんからやめますが、そうすると総理が親書を持たして、やっておる、その親君の内容については外務大臣には何らの相談もなかった、こういうわけですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は、親書の内容はごく普通の意味の親善を強調したものだと考えております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 考えておると言うて、その親書の内容を御存じであったかどうかということを聞いておるのです。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は親書全文を読んでおりません、親書でありますから。従いまして、その趣旨が今後の交渉に関する直接の問題でなかったことだけは承知いたしております。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると、その内容の概略を総理から外務大臣に事前に話はされたわけですか。

藤山愛一郎自由民主党外務大臣

○藤山国務大臣 私は、親書につきまし総理から聞いたわけでありますけれども、それはごく普通のものでありますので、私としては、そういう普通の意味の親書ならば、今後の外交交渉上には差し支えない、こう考えております。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。     午前十一時三十五分休憩      ————◇—————     午後一時十分開議

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢等に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので順次これを許します。大西正道君。

大西正道日本社会党

○大西委員 沢田全権にはきょうは大へん暑いのに御苦労さまです。沢田さんには、非常にむずかしい日韓間の問題につきまして、全権としてかねてから御苦労なさっておるのでありますが、私はこの際その御努力に対しまして、感謝と敬意を表するものであります。ところが御承知のごとく、問題が非常に複雑微妙でありますので、ちょっとしたことが非常に大きな反響を呼んでおるのであります。私はこの際、この間ステーション・ホテルであなたがお話をなさったその内容が、かなり大きな反響を呼んでおりまするので、特にこの点につきまして質問申し上げ、もしあなたの真意でないことが伝えられておるなれば、この際に釈明をいただくし、また私どもの見解とあまりにも相違するものがあれば、一つこの際考え直していただくことが、日韓の問題を解決するためにも必要であろう、こういう意味で私は御質問を申し上げるのでしあります。  あのお話の内容は、何か速記録なり、あるいは録音なりで正確に記録にとどまっておるものがございましょうか。それを一つお聞きしておきます。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私は承知しておりません。

大西正道日本社会党

○大西委員 私どもの入手いたしました資料によりますと、これはメモされたものであって、必ずしも正確ではないと思うが、しかし大体の要点ははずさないで記録しておるものだと思うのであります。それによりますと、あなたが全権を引き受けられるまでの心理的な立場と申しましょうか、非常に困難な状況の中で、自分は全権を引き受けろという交渉を受けた、日本の無条件降伏にも等しいような気持であったというようなことを言っておられるのでありますが、やはりお受けになったそのときの気持というものは、そういうお気持であられたのでありましょうか。この点を一つ……。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 昨年の十二月三十一日のあの声明文の出ましたときに、私は無条件降伏したのと同じようだという気持を持ったのであります。その当時、この間懇話会に来ておった人たちと会ったときに、そういう気持を話し合ったことがあります。しかし、引き受けたときにはそういう状況であるにかかわらず、あとで申しますが、引き受けるについての私の真意というものは持って引き受けたということでございます。

大西正道日本社会党

○大西委員 その引き受けられた決意と申しますか、大きな目的のためにこの困難な仕事を引き受けよう、こういう決意をなさった理由は何でございましょうか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 その引き受けました理由を、つまり、この間私的談話をいたしました真意を、少し述べさせていただきたいと思います。私は今回の日韓全面会談におきまして、当面の懸案解決をはかるのはもちろんでありますが、私としては、日韓関係につきましては、さらに大きな目的と理想とを持ちたいという気持でもって決意したのであります。それと申しますのは、今次の会談において、韓国との間に正常関係を結んだ上は、政治及び外交の力によりまして、そして国際連合の決議に従って、国連の傘下、国連のワク内において、南北朝鮮が統一されることに努力したいというつもりをもって私は引き受けたのであります。なぜそういうことを申すかというと、これは一九五〇年以来数次にわたりまして、国連において決議しているところがあります。すなわち、世界の世論の広場において、世界の世論が決議しているところがあるのでありまして、特に一九五三年、今度の朝鮮の動乱が起りました年の、あれは五月に起ったと思いますが、八月二十六日の国連総会での決議等の趣旨は、国連のあっせんのもとに、南北朝鮮を通じて自由選挙を行わしめる、そしてここに代議政体の政府を作らしめて、民主的かつ自由なる統一韓国を実現せしめることに努力するという決議をしているのであります。たまたま昨年の一月、第十回国連総会に私が政府代表の一人として出席いたしましたときにも、政治委員会において韓国問正題が討議されました。そのときに私自身も、国連は、今私の申しました古い決議を再確認して、そして朝鮮の南北統一のために尽力してもらいたいということを述べた経緯があるのであります。こういうような関係からいりしまして、そしてまた日本が国連に加盟いたしました今日、国連中心の外交を推進するということを、わが国外交の三原則の一つとしております関係上、私は日本が自主的な外交を進めるという意味において、日本が推進力となって、そしてこの世界の世論の広場において、世界世論とともに動いて、今までの国連の決議の実現されることに日本が努力すべきじゃないか、こう思っておるのでありまして、今度の会談の妥結しましたあとでもって、日本はそういうところに進まなくちゃならぬという気持であります。そこでその決議が実行されまして、国連のかさのもとにおいて、ここに南北朝鮮というものが統一されますれば、南北の境界線となっております三十八度線は自然に消滅することでありまするから、この国連の決議が平和的に実行されることを望むということを話したいのが、この間のステーション・ホテルにおける私の談話の趣旨、主眼であったのであります。ただ時間の制約がありましたために、国連との関係などを、ただいま申し述べましたほども詳しく話すこともできなかったのであります。かつまたそのときに私の用いました文句に適切ならざるものもあったかと思いまするので、私の真意を十分徹底せしめ得なかったことと思いまするが、真意は以上述べた通りであったのであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 あなたの御信念のほども理想のほどもよくわかりましたが、全権として依頼を受けられるときに、果してそういう当面の懸案の解決のほかに南北の統一の問題、それから今お述べになったようなことも一つの条件として交渉があって、そうしてお受けになったのですか。この点はいかがです。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 この間の会合は、日韓会談の妥結を希望せられる諸君の私の会合であったのでありまして、従って私は一個の私見を述べたにすぎないのでありまして、今度の交渉を引き受けるに当っての条件などというものにはなっておりません。

大西正道日本社会党

○大西委員 そうであろうと思うのであります。しかし一個の私見を述べたと申されましても、やはりあなたは全権でありますから、その述べられることは非常に大きな影響があるのであります。特にあなたの理想を述べられたことが、今もあるいは適切ならざる表現があったように思う、こういうふうにおっしゃっておるように、私どもはまことに重大な問題があなたの発言の中にあるのを遺憾に思うのであります。あなたのお話では、国連の決議の線に従って南北の統一の平和的な実現を期したい、こういう念願だということであったのでありまするけれども、私どもの記録によりますると、こういうふうなことが言われたと思うのであります。南北の統一と、三十八度線を鴨緑江まで押し返す、そうしなければ日本はまくらを高くして寝られないのだ、これまでわが国の外交の歴史は、一度ならず、二度ならず大陸から日本に対しての侵略の力を阻止した、今三たび立ってこの力をふるわなければらぬ、これが日本の外交の使命であるということをあなたは言っておられるのでありますが、こういう趣旨のことをお述べになったのではないでしょうか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 ただいま私の申しました、文句において適切ならざるものがあったかと思うと申したのはその点であるのでありまするが、真意はどこまでも国連の決議が実現されれば自然に三十八度というものが消滅するという気持であったのであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 これはあなたのためにも、よくかみ分けて御説明を願わなければいかぬ。私どもはかなり詳しいデータを持っております。私はかいつまんで申し上げましたけれども、かなり詳しくあなたの発言があるわけなんですね。ですから、私の感じたのでは、あなたの気持は今わかったような気がしますけれども、しかし当時は、やはり私が申しましたようなことを、これは真意ならずとも、そういうふうな発言をなさったのではございませんか。私は問題はあなたの真意と、それが言葉となって現われて政治的な反響を呼んだという、この二つをはっきりとかみ分けて、そこにいろいろな評価もし、あるいは対策も立てなければならぬと思いますので、私が今お伺いしておりますのは、あなたの責任をどうという前に、あなたの真意はわかりましたけれども、当時は私が申し上げたように、三十八度線を少くとも鴨緑江までというがごとき表現を用いられたということは事実ではございませんか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 先ほど申しましたごとく、そういう言葉を用いたかもしれませんけれども、その真意は、また歴史上のことなども申したかもしれませんが、それは韓国と日本とが歴史的に緊密な関係にあったということを印象づけたかと思って、るる申し述べたところでありまして、そうして北へ返すということは、今の南北の統一さえできれば自然にその境界線が消滅してしまうというつもりで言ったものであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 これを一つ私が読んでみましょう。今の非常にむずかしいのを自分が引き受けたのは、日韓の不和が続けば、好まざる第三の勢力がここにくさびを打ち込んでくることをおそれる。三十八度線はだんだん南下し、ついには釜山に近づくという形勢を心配する。それはやがて日本の全土に及び、われわれはまくらを高くして寝ることができない。日清、日露の両戦争はいずれも日本を脅がす勢力が朝鮮半島に進出してきたので、これを鴨緑江の外に押し返した戦いであった。われわれは三たび立って、鴨緑江の外に押し返さねば、先祖に対し、先達に対し申しわけない。これは日本外交の任務である。さらに語を継いで、日韓両国間に横たわる目前の諸懸案を解決するということももちろん必要なことではあるが、三十八度線を北に返すということに努力しなくてはならぬ。こういうふうにあなたは言っておられるので、これはあなたが初め述べられました当面の目的と、あなたが理想とするところと本末転倒して、むしろ当面の問題の解決よりも、今申し上げました三十八度線を鴨緑江まで返すということが日韓会談の目的であって、あなたの使命もそこにあるということを強調しておられるように私は思うのでありますが、これはまことに重大な問題であります。私はこの点でもう一回お伺いいたしますけれども、真意はともかくといたしまして、そういう表現を用いられたということは、大体において間違いございませんか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 用いたかもしれません。私はだいぶあのときは熱してきましたので、用いたかもしれません。同時に、北に返にすということは、先ほど申しましたように国連の決議が実行されれば自然に消滅するという意味であったのでありまして、しこうしてこれを北に返すなどということが、今日日本の国力をもって、また戦争というものをきらわれている今日の世界の情勢において、実力によって、武力によってそれを返すなんというこの前の戦争のようなことはできないことである。であるから、どうしてもこれは政治と外交の力によって平和的に進まなくてはならぬということは、そのあとで私はつけ加えて言っているわけであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 三十八度線を撤回するということ、そして朝鮮の統一を実現するということは、これはだれしも異議のないところであります。しかしあなたの言われるのは、三十八度線を鴨緑江まで返すということは、これは明らかに今二つの現実の政府があるといたしますると、これは韓国の勢力をもって朝鮮を向うに押しやるということなんでしょう。ここにあなたの意図するところがはっきりと出ていると思う。ただ単に平和的な手段でもって三十八度線を解消するとなれば、それはいろいろな方法がありましょうし、国連の精神にも従っているのでありましょうけれども、鴨緑江まで返すということは、これは明らかに韓国をもって朝鮮を圧服するということになるのではありませんが。そういうふうにお考えになりませんか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私はあのときにも言ったのでありますが、しばしば国連の傘下において、国連のワク内においてということを言っておるのであります。今日の韓国をして、ひとりで三十八度線をどうにかしろと言ったつもりではございません。

大西正道日本社会党

○大西委員 それじゃあなたは外交と政治によって、日本には武力がないから三十八度線を鴨緑江まで返すということを言っておられる。また韓国には韓国だけの力でもっては鴨緑江まで返すことはできぬと言われる。それではあなたはどういう方法で三十八度線を鵯緑江まで押し返そうとされるのか、あなたの構想を一つ聞かしてもらいたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 それは先ほども申しましたように、今回の日韓会談が妥結した後において日本の外交の進むべき道であるという理想を申し上げたのでありまして、実行の上においてはまことに困難な問題であります。今日の世界の大体の情勢にも支配されることが多いと思いますから、困難を伴う問題とは思うけれども、困難だからといって日本がほうってしまうわけにはいかぬ問題である、こういうつもりで私は申したのであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 あなたは外交官のベテランでありながら、朝鮮の統一に対して、韓国をもって北鮮を征服していくと言うようなことは、まさに内政干渉もはなはだしいではありませんか。私はそういうことを当時お考えになったはずじゃないと思います。しかもあなたはただ理想と言われるけれども、その理想をどういう方法で実現されようとせられたのですか。当然一つのあなたの構想があるはずなんです。三十八度線を撤廃するというなれば、三十八度線を釜山まで持って帰ったっていい。そういう方法もあり得る。ところがあえて鴨緑江と言われるゆえんのものは、明らかにあなたに一つの構想があるわけです。しかもそのあなたの構想を実現に移す場合は内政干渉となるか、そのほかのいろんな手段があるわけですが、その点について率直に聞かしてもらいたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 内政干渉というようなことの避くべきことはもちろん仰せの通りでありまして、私もただいまの韓国をして現実に三十八度線を撃退せしめようというようなつもりは毛頭持っておりません。そういうつもりではなくて、先ほどから申します通り、どこまでも国連の決議に世界各国をして忠実ならしめるというところに日本は努力したいというのが私の構想でありまして、さらに詳しいことに至りましては、その事態に立ち至ってから、この会談でも妥結してから、考えてしかるべきことだと思っております。

大西正道日本社会党

○大西委員 私がなぜあなたの考え方を追及しているかと申しますと、あなたは全権ですから、あなたの心の中にあるものがすべての今後の交渉の上に現われてくるから、非常に重大な問題であるので私は申し上げておるのです。特にあなたが言っておられるのは、今日本は軍備が少いから干戈をとって三十八度線を一方に押し返すことはできないから外交と政治による、こう言っておられる。これを裏返せば、日本にもし軍備があれば韓国を支援して、三十八度線を鴨緑江まで返すということも当然予想しておるはずです。ただ残念ながら軍備が少いから政治と外交の力によると言っておられる。だから私は政治と外交の力によるというのはどういう方法によるかということをもう一回追及してみたい。漫然とそれは国交が回復してからということじゃなしに、あなたには構想があるはずなんです。国連の精神に従ってと言うなれば、それに従っての一つの構想があるはずなんです。これをお聞かせ願いたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 武方がないということも申しました。しかしそのあとで、私は今日の世界の情勢からして戦争などということは考うべからざる時代にわれわれは進んできておるんだということを申したのでありまして、その点から言いましても、武力さえあればまたそれによるんだということは全然私は考えておりません。さらにどういうふうにして、政治と外交に進んでいくかというお話に至りましては、私は根本を国連の決議に置いておりますから、日本だけのひとりの考えでも推進はしていかなくちゃならぬけれども、よほど周密なる検討を要する問題であります。私は全権としていろいろ重大なる関係を持つから言動を慎しめというお説に対しましては、ありがたくこれをお受けして十分に考えている次第であります。

大西正道日本社会党

○大西委員 初めからあやまられたのでは追及するのもつい何するのですが、しかし外交的に大きな問題であるから言うのであります。あなたは、個人的な見解を全く自由な立場で言われる立場ではないのでありますから、どういう方法でもってこの三十八度線を解消して鴨緑江までやるかというようなことについて構想もなしに、しかもこの重要な段階に——私どもが外務省に対して日韓交渉のいろいろな過程を聞きましても、微妙な段階であるからというので口を緘して語らない、国民は知りたがっている、それさえもいろいろと口実を設けて話らないときに、あなたがかくも重大なことを言われておる。それはただ単に言葉のやり違いだということに私どもは考えないのです。あなたの思想の中に重大な、新しい日本の外交の方針とそぐわないところのおそるべき思想があるのではないかということをおそれるから申し上げておる。ですから、この席ではあなたはそれは言葉の誤まりであったということで言いのがれようとされるかもしれません。けれども、そのあなたの思想の根底にあるものに非常な危惧の念を私は抱くものであります。聞きますけれども、あなたは朝鮮が韓国と朝鮮と二つの国家に分れておるというこの現実に対して何とお考えになりますか。それは国連の総会の決議というものはあります。しかしこれも非常に無理であるということはあなたも御存じでしょう。万人の首肯するところの決議ではないということも十分おわかりのはずだと思う。それからもう月日も流れておる。こういう重大な段階に軽軽しく三十八度線を鴨緑江までやって、そうして北鮮の存在というものをどのようにお考えになりますか。これを無視してかかられるのかどうか。ただ国連の決議という陰に隠れて、当面しているこの問題に対してあなたはこれをほおかむりされるのかどうか、この点も一つ聞いておきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 国連それ自身も、北鮮というものの存在を事実として無視してはいないと思います。ということは、その決議の中に朝鮮の南北を通じて自由なる選挙を行わしめ、代議政体による政府を作らしめて伝々という決議をしておるのでありまして、決して北鮮を無視してということは国連自身も考えていないと思います。

大西正道日本社会党

○大西委員 それは当然のことなんです。しかし、あなたがこういうにふうな発言をされて、そのときにどういうふうに朝鮮を評価しておられるかということなんです。そういうことで日韓会談を一方的に進めて果して満足な結果が得られるかどうかということの見通しであります。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私はどこまでも国連の決議を尊重して——国連それ自身が、大韓民国政府というものを唯一の法律上の政府であると認めておりますが、しかしながら、北鮮にも事実上の政府があるということを認めて進んでおるのでありまして、私はどこまでも国連の解釈しているところに忠実でありたいと思っております。

大西正道日本社会党

○大西委員 それではあなたは、現実に朝鮮の政府を認めておる、しかしながら今の三十八度線云々の問題からいえば、北鮮がなくなることを期待しておる、そのところに今回の日韓会談の一つの大きな理想がある、こういうふうに私どもはあなたの考えをそんたくしてもよろしゅうございますか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 なくなることを期待しておるのではありません。国連の決議に従って両方の自由選挙によって韓国民の意思による代議政体がそこにできて、そこで初めて統一韓国というものができるというふうに考えております。

大西正道日本社会党

○大西委員 それではあなたは三十八度線を解消するという言葉に重点を置いておられるが、鴨緑江まで押し返すというこの言葉を取り消されますか。自分の重大な誤まりであったというふうに取り消されますか。ここにあなたの重大な意思が現われていると思っている。どうですか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 今の国連の決議に従って自然に消滅するということを私は望んでおりますので、その意味であります。

大西正道日本社会党

○大西委員 国連の決議というのは何も三十八度線を鴨緑江まで押し返せという決議じゃないでしょう。自由なる選挙によってやって、その結果がどうなるかということはわからぬわけですよ。それをあなたは鴨緑江まで押し返すという言葉をはっきり言っておるじゃないですか。そこのところをはっきりしなさいということを言っておるのです。こういう考えでもって日韓交渉の責任をゆだねるということに対して、国民は疑惑を持っておるから私は申し上げておる。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 南北の統一ができれば自然に三十八度線が消滅するという意味において、私はあくまでもその国連の決議を尊重したいと思っております。

大西正道日本社会党

○大西委員 三十八度線を解消することはともに望むところだけれども、三十八度線が鴨緑江まで行くというこの理由は何だというのです。その根拠は何ですか。釜山まで来ることが想定されるのではないですか。それをあえてあなたは鴨緑江までやるというところにあなたの一つの意図があるということを私は言っておる。取り消されますかどうですか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 国連の決議を尊重する意味において、私は三十八度線が自然になくなることを望んでおります。

大西正道日本社会党

○大西委員 だからなくなることをあなたが期待されるということはよろしい。しかしあなたがはっきりと言われておる鴨緑江の線まで押し返すというこの言葉は間違いであったと訂正されますかと言うのです。されたらよろしいと思うのです。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 訂正いたします。

大西正道日本社会党

○大西委員 訂正されました。当然のことであろうと思いますけれども、それに関連してあなたの考えの中に多くの訂正を要求すべきものが私がたくさんあると思いますが、この点につきましてはあとの委員からの質問もあると思いますから、私はこの問題につきましては、なお一つ慎重な態度で、当面するところの日韓間の懸案解決のために努力を願って、その将来のことについていろいろとあなたの私見を述べられるということは、ただでさえ困難な日韓の問題をさらに紛糾させるということだけを十分念頭に置いていただきたい、こういうことを私はあなたに警告をいたします。そのほか表現の問題というほかに、なおあなたがあの席で述べられたところで、自分の真意といたく違って伝えられておると思われるような筋について訂正されるところがありましたらお聞かせ願いたいと思います。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 ただいまの最後のお話の次第はありがたくお受けして十分に考えましょう。しかし私が先ほどから申しておりまする統一朝鮮というものが早く出現して、そうして朝鮮の安泰、静ひつということの保たれることに向って日本は努力しなければならぬと申しました私の最初の真意は、どこまでも間違っていないと思っております。

大西正道日本社会党

○大西委員 もう一つ。日韓の交渉の過程において、あなたを通じていろいろとお話があるのはこれは本筋であります。ところがすでに問題になっておりますところの矢次さんという方が、首相の特使という形だそうでありまするが、韓国を訪問されまして、いろいろ話をされておるようでありまするが、これが派遣をされるまでにあなたは何らかの打ち合せ、あるいは直接ではなくてもいいが外務省その他からも、何かあなたに対する了解がございましたでしょうか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 特に了解も何もありませんが、私は、全面今談の正式式交渉は私のみにおいて遂行されておると信じております。

大西正道日本社会党

○大西委員 何のお話しもなかったようですが、矢次さんの事実の記録なんかによりましても、大へんな効果をあげてきたというようなことも言っております。あなたが交渉をされるのに、この矢次さんの訪問というものは、それが遊びに行ったのでなければ、いろいろと重大な意味があると思うのですが、それについての連絡などがございましたでしょうか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 具体的に何もございません。

大西正道日本社会党

○大西委員 矢次さんが向うに行っていろいろの話しをしてきたということが、向うに言質を与えたようなことになって、将来あなたが交渉される場合に日本政府の立場だ、態度だというので、いろいろと問題が出てくる、そういうおそれがないかということを実は私おそれる。そういう意味で、それが首相の特使ではあれ、交渉の主体になっておるあなた方と、当然十分な連絡があり、帰ってきてからもそれ相当の連絡を保っていってこそしかるべきだと思う。何かの取りきめ等があって、あなたの将来の交渉に支障を来たすという懸念をあなたは持ちませんか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私の携わっております日韓全面会談の議題はきまっております。そこで矢次君があっちに行かれるときも、私の方の議題としておることについて話をされることは困るということを、私は事務当局の方に申し入れております。別に今までのところ支障も何も感じておりません。

大西正道日本社会党

○大西委員 それからきのうのある新聞の社説にも載っておったのでありますけれども、日韓会談は非常に微妙な問題ではあるけれども、あまりにも国民にその真相並びに経過が知らされていない。しかも交渉の見通しが順調なものであるというならば、われわれはもちろん政府の手腕に期待をして待っておればよろしいのでありますが、なかなかそうはいかない。掃摩憶測すればいろいろな心配が出てくるわけでございます。ですからもう少し日韓交渉の経過を、それは外交の秘密はもちろんこれを守らなければならぬけれども、もう少し国民に明らかにすべきではないかという声があるのであります。その明らかにするかせぬかは、当面あなたの責任ではございません。しかしながらあなたとしては、そういう問題につきまして一体どういうようにお考えでありましようか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私はただいまのところ、政府の訓令に基きまして、韓国側代表と友好のうちに会談を続行しております。その内容につきましては、機微なる点もありますので、ここで申し上げることを差し控えさしていただきたいと思いますが、ただいまの交渉の経過は、できるだけすみやかに詳しく国民に知らせなければならぬという御希望はごもっともでございますので、私の方としましても、発表していい段階に至りましたときは、政府を督促してすみやかにこれを発表していただくことにいたしましょう。

大西正道日本社会党

○大西委員 その基本的な態度を了解いたしますが、四つの委員会に分れておるようでありまして、その中でも韓国側の要求している財産請求権の問題だとか、あるいは法的な地位の問題だとか、こういう問題についてはかなりひんぱんに、あるいは三回、四回の会合を持たれておるけれども、李ラインの問題、漁業問題のこの委員会においては、いまだに会合が一回も持たれていない。これはもちろん向うの代表が、韓国の選挙の結果がどうだとかこうだとかいうことがあるようでありますけれども、私どもはやはり世論の指摘するごとく、日本の交渉の進め方に手落ちがあるように思うのでありますが、この点いかがでしょう。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 お話ごもっともでありまして、このすべての委員会が互いの関連性を持っておるという建前で進めたいと思っておりまするけれども、漁業委員会の向うの代表が個人的な理由でもって、いまだにこちらにこれないということでありますので、私も、ただいま申しましたすべての委員会に関連をして考えなくちゃならぬ問題が多いのだから、これも早く始めてもらいたいということは、催促は怠っていないつもりであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 具体的に漁業、李ラインの委員会はいつ開かれるようなはずに相なっておりますか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 代表団の話では来月の初めと言っております。初めには委員がこれると思う。余人をもってかえさしたらという考えに対しましては、この人は日韓会談の初めからこの漁業の問題に携わっておる人で、どうも余人をもってかえられないのだから待ってくれということですから、せっかく待っておる次第であります。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 大西君、簡単に……。

大西正道日本社会党

○大西委員 ごく簡単にやりますが、問題になっておりまする美術品の返還の問題ですけれども、これはあなたは当然御承知であったでしょうね。返還の当時から。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 存じておりません。

大西正道日本社会党

○大西委員 これはどういうわけであなたの承知以外のことなんでしょうか。私どもは当然この全面会談に至る以前の条件とはいいながら、やはり一つの大きな日韓間の懸案の一つだと思うのでありますが、どういうわけでしょうか。またあなたはそれに対して、全権の使命を果すために、こういう重大な問題が全権の知らないときに処置されたということに対してのあなたの立場からの感想はいかがですか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私も今度の全面会談でもりて、これを取り上げなければならぬ事態もくるのでありますから、この意味において、この間引き渡した文化財の問題についても聞いておりますが、どういう事情で、どういう事態のもとに返したかということは、今まで外務大臣、並びに政府委員からこの委員会でもお話があったと思いますので、私から申し上げることはありません。

大西正道日本社会党

○大西委員 いや、私が言っておるのは、私どもが聞いておるのは、あなたが御承知で、そういう条件のもとにおいて、いろいろな交渉を進められてきたかどうかということで、それを知らなかったとおっしゃるのですか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 文化財の交渉はまだ始まっておりません。

大西正道日本社会党

○大西委員 文化財でなく重要美術品百六点を返したという問題です。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 それを私は申しているのです。

大西正道日本社会党

○大西委員 その話はまだ進んでいないのですか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 まだ全面会談の問題になっておりません。聞いておりません。

大西正道日本社会党

○大西委員 この百六点の美術品を向うへ返したということは、全然あなたは御存じないのですか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私は代表の任命を受けましたのは三月初めであります。その返還ということの話し合いは、すでに去年の十二月のときの話し合いできまっておったということであります。

大西正道日本社会党

○大西委員 あなたが引き受けられたのはいつですか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 この三月初めです。

大西正道日本社会党

○大西委員 もう一つ、きのうですかおとといですかしばらく中絶されておりました、日本人漁夫をまた拿捕しておおりますね。これは友好的な零囲気の中に話を進めるという建前から申しますと、非常に遺憾なことであります。私どもは、美術品を返したり、いろいろと手を打っておる、その中の一つに、李ラインの問題については、これは友好な零囲気を盛り上げるために、当分この拿捕なんということかないようにという了解があったと思う。私はそうなければならぬと思うのでありますが、そうだといたしますならば、今この会談の最中においてまた再び、従来中絶しておりたところの漁夫の拿捕か始まったということは、まことに重大な問題であると思います。これについての所見はいかがでしょうか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 この会談を進めているうちには拿捕しないという了解があったとは承知しておりません。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 大西君、だいぶ時間が経過しました。

大西正道日本社会党

○大西委員 そういうふうなことで話を進めておるから、国民の政府に対する信頼が裏切られてしまう。これでは何のための友好な雰囲気かわからぬのであります。こういう中であなたとしては全権としての使命を果すというのですから、まことにお気の毒であります。きょうはこれ以上追及いたしませんが、非常に危険な考え方があると思いますが、きょうは二、三訂正されましたから、一つその基本線を十分了解されまして、あなたの立場から全権の任務を果されないということでは重大な問題が起きるということを、私はここに警告せざるを得ないのであります。  大体それだけでありますが、一つ忘れておったので、矢次さんが岸さんの特使として向うへ行ったときに、岸さんは日韓併合はこれはやむを得ぬ事情ではあったといいながら、あれは間違っておった、非常に後悔しておるということを言っておるのです。私は岸さんがそういう反省をするということは、これは殊勝なことだと思いますが、あなたは一体この問題に対してどういうふうにお考えになっておりますか。あなたは今までいろいろと反省もされたのでありますが、この問題について一つ明確な御意見を聞かしていただいて、私の考えと同じようでないとどうも危険を感ずるのであります。一つお聞かせ願いたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 きょうは私は、先日のステーション・ホテルにおける私の所見に御説明を申し上げるということで、説明員という名前をいただいたわけであります。今のお話につきましては、あるいはあなたとひざを交えて話す機会があると思います。本日はこれでもって終っておきます。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 田中稔男君。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 沢田全権のステーション・ホテルにおける演説の内容について、今六四委員から追及的な質問がありました。大体これで済んでおると思いますが、若干要点についてさらに深めた御質問を申し上げてみたいと思います。  あなたはだいぶお年だと思います。つまりあなたが教養を受けられた時代というのは、やはり明治のよき時代であったわけで、大日本帝国はなやかなりし時代であったのであります。人間はやはり環境の産物でありますから、あなたの今日のいろいろなものの考え方というものは、やはり一つの時代性を持っておる。あなたの発言の中に、これは形容的な言葉でありますけれども、日清、日露の両戦争は、いずれも日本を脅かす勢力が朝鮮半島に進出してきたので——こういうふうなことを言われておる。しかしこれは単に形容というより、やはりものの考え方の本質に触れた問題だと思うので、そういうことに関連して少し御質問申し上げたい。なるほどこの日清戦争の時代には、中国には大清帝国というものがあったわけです。これは前近代的なもので、なるほどそれが朝鮮半島に勢力を拡張する、こういう政策をとった。また日露戦争の当時は、ツアーリズムの帝国がロシアにあった。それがやはり一つの膨脹政策をとって、朝鮮半島を南下してきたわけです。これははっきりした歴史的な事実であります。今日一体、どういう勢力が中国やソ連にあって、そして朝鮮に対する侵略政策あるいは南下政策をとろうとしておるのか、あなたの非常に危惧されるそういう勢力というものは、一体、どういうものであるか、御説明願いたいと思います。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私がこの間、日清、日露の両戦争について話しましたところは、ちょっと先刻も申しましたが、朝鮮というものが、歴史的に日本ときわめて緊密な関係にあめったという意味で申したのでありまして、そして三十八度線というものが、国連の決議に従って自然になくなることを望みたいというのは、朝鮮が南北に分れて抗命、紛争を続けるという二とは、朝鮮国民のために、まことに不幸なことであるのみならず、この一衣帯水を隔てた朝鮮半島においてそういう紛争のあることは、一々日本の安泰静ひつに微妙なる響きを与えてくる、こういう意味で、私は、これが自然になくなるように努力したいものであるということを言ったのであります。今、現にいかなる勢力がそこにくさびを打ち込んでくるかということについては、特に考えておるところもありません。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 私の質問の的を巧みにはずされたのですが、私は、あなたのはずされた的に当る、そういう御答弁を実は要求しておるのです。朝鮮半島を南下する危険な勢力というものは、一体何をお考えになっておるのか。こういうことを言われている以上は、あなたに一つのはっきりしたお考えがあると思うのです。あるいはソ連の勢力あるいは中国の勢力ということになると思いますが、一体それがそういう侵略主義をとる勢力であるとお考えになっているのかどうか、やがてはまた日本まで侵略しようとする勢力とお考えになっておるのかどうか。その辺について、歯に衣を着せないで、はっきりあなたの所信を披瀝してもらいたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 ただいま申しましたように、朝鮮の動乱というものの原因となっておる勢力を言うのでありまして、それがどこであるかということは考えておりません。その動乱の原因となっておる勢力によって、現に動乱が続いておる、紛争が続いておるわけでありますから、その紛争が続くという現実は、日本の安泰静ひつのために、できるだけこれを早くなくするという方向を考えていかなければならぬ。そこで国連の決議に、ということを私は言っておるわけであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 私の方から申しますと、あなたは中華人民共和国あるいは中華人民共和国の義勇軍——中国から朝鮮に参りましたあの義勇軍、そういうふうなものをさしておっしゃっているんじゃないかと思いますが、その点どうです。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 特定な人、特定な勢力を音意味しているわけではありません。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 そうすると、ばく然と何か夢でもお考えになっておるのですか、何か具体的なものがあると思います。朝鮮戦争のときに中国は義勇軍を送りましたね。その義勇軍、あの軍隊が、やはり朝鮮の——あなた動乱とおっしゃったが、私は動乱じゃないと思う。朝鮮戦争ですね、これを引き起した、あるいは激化させた勢力、そしてそれは今日もやはり一つのそういう激化させる潜在的な力としては、まだあるんだ、こういうふうにお考えになっておると考えるよりか仕方がないのですが、その辺ばく然たることでなくて、率直におっしゃって下さい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 突き詰めて言えば、共産勢力であります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 そこで、共産勢力ということになりますが、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北鮮、これははっきり共産主義を目ざして進んでいる国であり、今日は社会主義段階でありますが、そうすると、北鮮の政府あるいは北鮮の政府を支持する人民の勢力、これを共産勢力とお考えになるのか。それとも、たとえば中国の義勇軍みたいな、外部からやってきて応援した国なりその軍隊のことをさすのでありますか、その点……。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 北鮮自身にそういう勢力があって、外部からまたこれを援助するという形勢があるのかもしれません。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 そうすると、朝鮮民主主義人民共和国、つまり北鮮ですね、それが三十八度線を越えて、いわゆる韓国を侵略しようとしておる、また朝鮮戦争は、そういう侵略の行動がきっかけになって起ったものだ、こういうふうにお考えになるのか、その点……

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 国連はそういうふうに考えておるようであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 あなたはどうお考えになりますか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私は国連の決議を尊重したいと思っております。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 なるほど、いわゆる国連の決議なんというものも、そういうことを前提としていることはもうはっきりしている。しかし、あなたがたびたび引用された国連の決議なるものは、御承知の通りあれは何りか国連の総会の中に設けられた小委員会があって、そこでいろいろなことをやりまして、それを国連の権威をもって裏づけているのであるが、そういう決議には、ソ連を初め、いわゆる共産主義陣営の諸国は全然関係していないんですね。だから、国連というものは——御承知のように今日世界は、資本主義圏、共産主義圏の二つに分れているが、それを全体にわたるグローバルな存在としてこそ意義がある。これが国連創設の精神でもあった。ところが朝鮮戦争のときには、国連というものは、ただアメリカを先頭とする資本主義諸国、しかも、大体アメリカの家来みたような南米あたりの小さい国がたくさん集まって、数だけ整えて、そうしてできた決議でしょう。だから、これじゃ一方的にならざるを得ないと思う。それで朝鮮戦争の発端にしてからが、御承知のようにアメリカにも、ストーンなんという人の書いた本を見ましても、またいろいろな良識ある評論家その他の言説を見てみましても、必ずしも国連の形式的な説明のようには受け取れないわけなんです。それであなたがきわめてナイーヴに、国連がおっしゃるならその通りというふうにお考えになる。それは一応、形式的にはそれでもいいのですが、しかし、ほんとうに日韓会談に臨まれる場合、朝鮮問題というものはきわめて複雑な、微妙な問題です。こういう問題の処理に当って、ただ形式的に、国連の決議だ。——しかも、それは今から十年近く前のことですから、情勢がずっと変ってきております。この際ただそういう古い決議の文書だけにしがみついて、そうして交渉に当られるということは、少し大きく言えば国を誤まることになると私は思うんだが、もう少し流動的にお考えいただきたい。今言ったように、朝鮮戦争の真相にしてからが、世界いろいろ違った解釈があるのですから、私は、このことについてもっと述べたいのでありますが、ここはそういうことをあまり詳しく言うところではないから、そのくらいにしておきます。  そこで今度は、そういうこととは別にして、いわゆる北鮮において、今日は政府が人民を率いて大建設をどんどん進めておる。しかもそれが着々と成功をおさめておるという事実は、これはあなたも御存じだろうと思います。そうしていわゆる北鮮の人民が、やはり今非常に平和のうちに喜んで暮しておるということですね。ここにしょっちゅう何か騒動があって、人民が塗炭の苦しみを受けているというようなことはないということだけを一つはっきりっしていただきたいと思いますが、あなた自身が得られた情報で北鮮の状態はどうです。私の今申し上げたことと違うか違わないか、北鮮は建設も何もできていない、人民は非常に苦しい生活をしている、いつも政府の権力におびえて暮しておる、こういう暗い姿の北鮮をお考えになっておるのか、いやむしろそういう暗い姿は韓国にこそあるのであって、李承晩の独裁のもとに生活している韓国の人民こそそうであるのであって、北鮮の人民はそうではないという私の解釈が間違っておるかどうか、私はあなたからちょっとお教えをこいたいと思います。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私は新聞に出ている知識以外に研究しておりません。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 あなたはやはり朝鮮が二つに分れておるときに、二つの地域の政治的、経済的な事情、その他人民の気持というようなものを一応勉強してかからないと、それは無理だと私は思うのです。全然知らないということじゃ、それだけでも私は全権をおやめになる必要があるんじゃないかと思うくらいなんだが、知らぬというのに聞いても仕方がない。  次に、いわゆる北鮮は別にして、中国から義勇軍を送りましたが、あの義勇軍は、今もうどんどん撤退を始めたんですね。そうしてことし中には全部撤退するということを約束して、これは確実に約束が実行されると私は見ておりますが、一方国連軍と称する、これは大体ほとんどアメリカ軍ですが、それは依然として韓国から撤退しようとしない。それどころか、沖縄におったり一部の軍隊は韓国に移動しておりますね。こういうことは一体、どうお考えになるのか。いわゆるあなたの侵略を恐れられるその共産勢力なるもの、中国から参りました共産勢力なるものはどんどん引き揚げているのに、一方アメリカの軍隊を中心としたいわゆる国連軍が韓国において増強されつつあるのは事実ですね。これについてあなたは一体どうお考えになるか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 アメリカの軍事上の行動については何も存じておりません。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 何を聞いても知らぬじゃ、全く困る。こういうことは秘密情報でも何でもないのです。公然と新聞に載っておる情報なんで、あなたは新聞はごらんになっているんでしょう。新聞に載っておるだけの情報で、この二つの事実をどうお考えになるか、一つ感想を聞きたいと思います。こういう状態にあるにもかかわらず、なお共産勢力が朝鮮半島にだんだん入ってきて、南下を続けて釜山まで来て、あるいは博多までくるんじゃないかという、こういう速説をされているんですからね。そうすると、あなたのおっしゃっていることはでたらめだということになるわけですね。だから今のことについて、あなたの御感想を聞きたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 先ほどから繰り返しておりまする通り、朝鮮の紛争の続くということは日本の安泰、静ひつの上におもしろくないという点からして私は言っておるのでありまして、現在アメリカの軍隊がどう動いておるかどうかということについては、正確なる情報もありませんし、判断することができない、こうお答えしているのであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 別な角度から質問しますが、そうすると中国の義勇軍がどんどん撤退を始めておる。まあ年内には撤退してしまう。そうするとアメリカの軍隊がやはり韓国から、どんどん引き揚げてしまう方が、朝鮮の平和的統一を促進する上には望ましいとお考えになるのか。それとも、アメリカの軍隊はむしろもっと長期にわたって韓国にがんばっておってもらいたい、むしろ増強してもらいたい、一方また中国の義勇軍だけはどんどん撤退してもらいたい、そういうことが朝鮮の平和的統一のために望ましいとお考えになるのか。また日本のために望ましいとお考えになるのか。率直に一つ答えてもらいたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私の平凡な考えから申しますれば、今あなたのお話の中共軍が撤退するに従って国連軍がやはり撤退していくということが私は望ましいことと思います。外国の軍隊が外国の土地に存在するというようなことは、これは政治的にいろいろな複雑な問題が起るものでありますから、できるならばそういう事態は早く終止してもらいたいということは、一般論として私は望むのでありますけれども、ただアメリカの軍隊、国連軍が引き得ない、そういう車事上の事情については私存じませんから、一般論だけで言うわけにいかぬような気がするわけであります。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 昔はよく外交官は外交のことだけで軍事のことは知らぬとか言って済ましておったのです。それが日本の外交を誤まったのです。一方日本の軍の方は外交の分野までどんどん進出して外交官を引きずり回しておったでしょう。今日は戦前と違うのですかつら、日本の外務省なり日本の外交官もやはり自主性を持たなければならぬ。その場合に外交官はただ外交上のエチケットだけ知っておればいい、外交上の技術的な手続さえ知っておればいいというわけじゃなくて、やはり政治、軍事、経済、あらゆる情勢を十分把握して、その上で一つの総合的な判断を持って外交に臨まなければならぬと思うのです。あなたの今の態度は、私は軍事のことは全然知りませんというようなお考えだが、それは私は、あなたが外交官として今日の日本の外交を処理する上にあまり適格者じゃないという証明じゃないかと思う。実は私は、あなたがこういうでたらめな発言を、これはたとい真意でなかったとしてもおやりになるのであったら、全権をおやめになった方がいいのじゃないかと思うのです。  次に話を進めまして、あなたが東京大学なんかで学ばれた時代は、ソ連もなければ中華人民共和国もなかったわけです。しかし今は世界は大体二つに大きく分れておるのです。あなたの崇拝されるアメリカを先頭とする資本主義の世界、これは別なことでいえば自由主義陣営というのですが、ところが一方ソ連や中国、東欧諸国などとにかく広大な地域にわたって社会主義の世界というものが一つできておるのです。そしてこの社会主義の世界も、人民はみんな幸福に暮しておるのです。しかも驚異すべき大建設が行われておるのです。ソ連なんか御承知の通りこれから十五年くらいもしたら鉄や石油、石炭、電力、こういう生産においてアメリカを追い越すといっておる。中国はイギリスを追い越すといっておる。これはでたらめな放言じゃないと思う。過去の実績からいって大体これは間違いなく達成できる一つの目標だと思うのであります。資本主義が善で社会主義が悪だとか、資本主義が正義で社会主義が不正義だというような判断をあなたはお持ちになっておるのじゃないかと思いますが、その価値判っ断は別として、たとえば社会主義が悪である、社会主義が不正義であるといったって、今日はとにかくどうもできないような時代になっておるのですよ。御承知の通り今日は平和共存の時代で、平和共存というのは、何もアメリカとソ連とが兄弟の交わりを結ぶという意味じゃない。しかしながら地球上に二つの国、二つの勢力、一つの陣営があって、これがお互いにもう戦争はできない事情——戦争をやれば両方ともだめになるのですから、いやでもおうでも、地球上に国を立てている以上は、お互いにとにかくつき合っていかなければならぬ。そして一体どちらの体制がいいのか、どちらの陣営がいいのか、それは哲学者の価値判断でなく実際の経済競争、文化競争、その実際の競争によって、平和競争によって、優劣をきめようじゃないかという時代がきているのだ。だから、あなたは三十八度線を鴨緑江まで押しやるということをおっしゃった。今あなたは訂正されましたが、なお私はあなたのほんとうの腹はどうかわからぬ。あなたの希望的な主張としてはそれがあると思う。しかしそれはやろうとすれば、そしてこれを武力でやろというこすとになれば大へんなことになります。それをやろうとして戦争にでもなりったならば、日本はもうまっ先にひどい目に会います。人類が滅亡するのですからね。三十八度線というものは、ただ朝鮮にある三十八度線と考えてはいけない。一つのグローバルの、大きなイデオロギーの線であり、体制の線で、この三十八度線は今日において一寸でも北に押し返すということはこれは重大な結果を来たすが、また一寸といえども南に移動することもまた大へんなつことになります。だから三十八度線というのは、これをなくすることはいいのですけれども、これを北か南に少し一ずつ動かそうとしていじくると大へんなことになるのですね。この重大性をあなたは十分認識しておられぬようだ。一つその三十八度線についてのあなたのお考えを少し体系的に述べてもらいたい。三十八度線論を一つやってもらいたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 それは先ほども繰り返して申しましたように、事実において三十八度線を今あなたがおっしゃるように南にでも北にでも動かそうということを私は言っておるのじゃありませんので、朝鮮南北の統一ということができれば、自然にこれはなくなることなんだから、それを私は望んでおるわけであります。決して実力であるいは干戈に訴えてなんというようなとほうもない考えを持っているのじゃありません。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 あなたもきょうあたり、だいぶわれわれが追及したので、だいぶお考えも変っているようで、実は全権をやめてもらいたいけれども、われわれがやめろといったっておやめにならぬだろうから、おやめにならぬなら、実際事に当ってあなたの明治の教養に基く古い外交官意識は一つ払拭してもらって、今日の平和共存のこの時代に即応した世界観をやはり持ってもらわぬと、これはむずかしいと思うのです。朝鮮問題というのは、単に外交技術の問題じゃないのです。非常に複雑な国際政治の問題なんですね。それを一つよくわかってもらうことが、私こういう質問をしました趣旨なんです。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 全権としての私に対するお話はまことに耳を傾くるに足る一説だとして、ありがたく承わっておきます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 もう一つ最後に申し上げたい点は、四つの分科会ができておるそうですが、第一の基本関係といいますか、これは一回も開かれてないそうですが、それとか、もう一つ在日韓国人の法的な地位ですか、これはまた別な委員会ですね。そういうものもあるのです。これは非常に重要な内容を含むと思うが、そのうちの特に在日朝鮮人の問題ですが、この委員会でどういうことが審議されるか、その結果いかんによっては現在日本におる朝鮮人諸君の身分について、重大な影響を及ぼす。このことについて……。委員会はまだ開かれていないのでしょう。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 開いています。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 開いてますか。そこであなたのお考えですが、たとえば全部韓国人として扱って韓国の国籍を取得させるというようなことにでもなったら大へんで、あまら交渉が具体的に進んでしまって取り返しのつかぬようになっては、そのときではおそいのですから、交渉のスタートに当ってそういうことのないように、三十八度線は今申しましたような三十八度線りであって、これは日本運命線と書いてありますが、日本の運命線というよりも朝鮮民族にとっても大へんな一種の生命線で、これがなくなればはいいけれども、ある場合はこの三十八度線というものによって非常に影響が大つきいでしょう。今言ったように全部の在日朝鮮人を韓国人というようなことにしてしまえば、李承晩の気に食わぬ日本におる朝鮮人は片っ端から本国送還を命じて、そうして釜山に上陸したら直ちに処刑でもするということになると、大へんなことになるのです。現に大村でもそういうふうな問題が起っておるわけですから、これについてのあなたの考え方の基本的なものを少し聞かしておいていただきたいと思います。私どもはもちろん、日本におります朝鮮人は韓国を支持するのも一部あるでしょう、しかし大部分は朝鮮民主主義人民共和国を支持しておるのですから、そういう人々が非常に不幸な状態にならぬように、これは国籍の選択は自由だ、赤城さんが二つの中国は国が全然違うとおっしゃったが、ああいう意味と少し違うけれども、とにかく中国の場合と違って、朝鮮の場合は南北の二つの政権が中国の場合ともっと違った意味で重大なウエートを持って併存しているわけですから、国籍の選択は自由だ、こういうふうな方向で問題を処理していただきたい。お考えを伺いたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 在日韓人の法的地位の委員会というのは、討議を始めたばかりでございまして、その進行中にありますので、内容につきましては機微な点に触れる点もありますので、その意味で私からの発言は遠慮させていただきたい。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 今までだって大村収容所にいる朝鮮人で、政治的亡命者もしくは政治的亡命者に準ずるような人を、本人の意思に反して韓国に送還することはしないというのが政府の大体一貫した方針だったのです。だから政府の方針を確認して、そうして交渉に臨んでもらえば大体間違いないと思うのですが、それでよろしいかどうか、一つ伺っておきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 承わっておきます。

田中稔男日本社会党

○田中(稔)委員 承わるじゃない、あなたの御意見を聞きたい。あなたはそれに賛成か反対か。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 政府の訓令によって私はやっているところでありますから、ただいま申しました通り機微の点に触れることはしばらく発言を控えさせていただきたい。ただしあなたの御希望の点は承わっておきます。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 松本七郎君。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 問題になりました十一日のステーション・ホテルの会合は、朝鮮懇和会が主催で沢田全権を囲む会、こういうふうになっておったようでありますが、この会合の発言が公けにされることを予期されておったでしょうか、それとも公けにならないと思われて発言されたのですか、あるいは全然そういうことには無関心でただああいう発言をされたのか、この点をまず伺っておきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 全然無関心であります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 そうすると、今大西さんの質問で押し返すという言葉は訂正されたのですけれども、私はあの中に流れておる考え方というものが、先ほどから言われた朝鮮の統一に相当悪い影響を及ぼしたのじゃないかと思う。日韓会会談だけをとってみれば、あなたの発言がどういう影響を及ぼしておるか、これは即断できないと思いますけれども、日韓会談というものはやはり朝鮮の統一という大きな世界的な議題と結びついた問題でなければならない。少々統一のじゃまにはなっても日韓会談さえ両国の間がうまく話がついて問題が解決すればいいという立場と、やはり統一の問題を常に念頭に置きながら日韓の会談をやっていく立場と私は両方あると思うのです。この点から沢田さんの発言を見てみますると、日韓会談で特に韓国側の希望に沿うような発言をあらゆる機会にし、できるだけ向うの要求する条件を満たしてやろう、それが朝鮮の統一問題に少少支障を来たしてもそれは先のことだというような行き方で、全権は臨んでおられるのじゃなかろうかという気がするのですが、この点はいかがでありましょう。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 先ども申しました通り、朝鮮の統一ということに日本が乗り出していくべきであるということは、今回の全面会談がともかくも妥結してからのことでありますというように私はあのときも話したのであります。この会談の妥結のためには、私は日本として渡るべからざる一線は画しておりまするけれども、その他の点においては、たとえば委員会の数であるとかあるいはその名称であるとかいうようなこと、実質に差しつかえがないと認めるところは向うの言う通りに——委員会の数もこっちは五つの委員会ができるのが普通と思っておったのでありますけれども、これも向うの希望に従って四つにしました。そのほかこれも新聞にもよく出た漁業並びに平和ライン委員会というものが一つできております。これも今まで李承晩ラインと言っておったのをなぜ平和ラインと譲ったんだというようなこともあったのでありますが、一体あの李承晩ラインというのは日本側でつけた呼称であって、韓国側では初めからあれはピース・ライン、平和ラインと言っておったのであります。その名前のいかんにかかわらず、問題は、実質の討議に入って、こっちが譲るべからざるところは譲らず、振ってもらうべきところを譲ってもらうということで妥結すればいいんだという意味であれも平和ラインということになったわけであります。そういうことで、できるだけのことは大きい気持を持って譲って、今回の会談はともかくも妥結に持っていきたい。そしてその上で今の日本の対韓外交というものを国連を舞台として進めていきたいというのが、この間の私の話であったわけであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 その考え方に基いてやられて、政府なりあなた方が、この程度なら大したことはあるまいと思われていることが、意外に朝鮮の統一には大きく響いておる。また今後響く問題が出てくると思う。現にいろいろ出てきておるわけです。さっき午前中に私はあなたの発言をめぐって外務大臣にも伺った。自由主義陣営と協調するということが今の内閣の外交方針の基本なんですね。そうした場合に、この朝鮮の統一ということを考える場合、やはり韓国の勢力による統一ということを希望されるのではないか。これは当然だれもが考えつくところです。政府としては、それは北と南と比較してみれば、南の方が自由主義陣営に近い、こういうことを外務大臣ははっきり言われるわけです。そうすると、今南の朝鮮の政権をになうところの李承晩政権を陰に陽に援助して、これに協力しようということは当然の帰結として出てくると思う。ですから、あなたは十一日の発言で、押し返すという言葉は悪かったからと今訂正されたけれども、おそらくあの言葉を李承晩が聞いたらもろ手をあげて賛成しておると思う、拍手を送っておると思う。そういう気持で沢田全権が臨んでくれるならば、韓国側としてもできるだけ日幹会談をうまくやろうという気持にやはりなるだろう。そういう気持があなた自身にあっての発言かどうか知りませんけれども、結果は私はそういう結果になると思う。その反面、どうかと申しますると、在日朝鮮人、六十万というたくさんの人がおるでしょう。こういう人たちも、ほんとうに朝鮮の統一を日本人以上に熱望しておるわけです。自分たちの生命に関する問題ですから熱望しておる。この人たちの中には、それは藤山さんと同じように、韓国が自由主義陣営に近いのだ、この勢力によって統一をしたいと考えておる人もあるかもしれぬ。しかし大部分の人は、私の聞くところでは、むしろ北朝鮮によって朝鮮を統一したいと念願をしておる人がずいぶんおるわけですね。そうすると、あなたの、公けにされようがされたまいがそんなことには無関心で発言された十一日の発言内容というものが、それらの朝鮮人の非常な不安のもとになっておるわけです。こう考えてみますると、それは当面の日韓会談そのものには——あるいは李承晩に好意をもって迎えられる発言であったがもしれぬ。しかし今日国会で問題にされておるように、押し返すという言葉それ一つをとってみても、これは大きな問題です。ましてやあすこに流れておる精神は、あなたが予想された以上に朝鮮の統一に悪い影響があると思う。ですから、先ほどから伺っておるように、日韓会談も朝鮮統一ということと切り離してやられることは、将来の日本に必ずしもいい結果は招かない、やはりもっと朝鮮の統一ということを優先に考えて、その中の一つつの問題として日韓会談というものを取り上げるという態度でなければ、私は、ほんとうにアジアの平和のうちに朝鮮を統一するという国連の精神を具体的に朝鮮に表わすことはむずかしいと思うのでございますが、この点についてはどういうお考えを持っておられましょうか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私はこの会談によって、どの勢力を助けて、そうしてそれを朝鮮統一に持っていこうという考えなどは毛頭ありません。この会談は会談として誠意を披瀝して、できるだけまとめていきたいという考えを持っております。同時に、朝鮮の統一につきましては、李承晩政権を助けて、その他の政権を無視してここに統一をはかろうなんという考えは、毛頭私は持っておりません。国連の決議に言っております通り、南北を通じての朝鮮人民の自由の意思の発露による自由選挙によって彼らをして代議政体の政府を作って、そこに民主的なかつ自由な統一韓国を作ることに世界各国尽力しようじゃないか。この国連の決議というものは世界世論の賛同を経て成立しておる総会の決議であります。世界世論が認めておる決議なのであります。その線に沿って、日本もこの朝鮮の統一のために努力すべきではないかと考えて、この間も話したのであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 国連も朝鮮が南北に今三十八度線で分れておる現状を認めておる。さっきも言われたように、その現実の上に立った場合に、十一日のような発言をされれば、これが北鮮に好意を寄せ、味方をしている人々に大きな反響を呼んで、朝鮮の統一ということに悪い影響を与えるということは予想されずに、あれは発言されたのでしょうか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 私はどこまでも国連の決議に加盟国の一つとして、忠実にこれに沿うていきたいというつもりであったのであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 それが意外に大きな問題になったということは、やはりこれが朝鮮の統一ということにいかに敏感に響いておるかということを物語っておるのです。それで先ほど言われたように、とにかく朝鮮の統一は日韓会談が終ってからだ、こういう考えでは、私は日韓会談そのものが、かえって日本を中心にしたアジアの平和の障害になるような問題を背負い込まなければならぬ可能性が十分あると思う。ですからたとえば美術品返還の問題にしましても、これは外務省の説明によれば、本会談を友好な零囲気にするための一つのゼスチュアだ、こういう発言でもって説明しているのです。しかしほんとうにこれが朝鮮の統一、統一朝鮮ということをもっと重視して考えれば、それらの美術品をもし返還するとすれば、当然統一された朝鮮に私は返還すべきものだと思うんですね。これがこの重要な会談中にその一方の韓国だけに返されるということは、やはり朝鮮の統一にもこれは大きな支障を来たすものを含んでおるわけですから、今全権として立たれておる沢田さんがこういうことについて何らかのお考えなしに、ただ政府の言うなりにやっておられるとすれば、私はこれは田中さんじゃないけれども、今日のような複雑した事態における全権としては、はなはだ不適任だといわざるを得ないのです。そういう点は、南北朝鮮の統一ということをもう少し考慮して、この日韓会談に臨むべきであるということを、この発言問題を契機に少しお考え願えるかどうか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 今のお話、ありがたく承わって考えてみましょう。美術品の問題につきましても、これからだんだんその討議に入っていくと思います。もちろん私としても考えを持っておりますけれども、現実の交渉に関する問題でありますから、機微な点があるので発言を控えさしていただきたいということを、先ほどから申し上げておるわけであります。

松本七郎日本社会党

○松本(七)委員 最後に私は、田中さんもさっき全権の辞任の問題を出されましたが、これはああいう発言をされた反響から考えても、それから先ほどから伺っておる全権の考え方からしましても、この重大な段階において全権を続けられることは不適任だと思うのです。むしろああいう重大な発言をされた責任をとられて、この際辞任を申し出られた方が、会談のためにも、それから朝鮮の統一のためにも、私はむしろ適当だと思うのですが、そういう辞任を出し出られる御意思はないかどうか、はっきり御返事を聞きたいのです。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 先ほどからいろいろ全権としての心がまえについて話していただいたことについては、ありがたく思っておりますけれども、これをもって直ちに私が辞任しなくちゃならぬという決意に達しておりません。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 穗積七郎君。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 本会議も始まりますから、簡単に基本的な問題だけについてお尋ねしますかりら明確にしていただきたい。  第一にお尋ねいたしたいと思いますのは、ただいまあなたが交渉の相手にしておる韓国ですね、これは全朝鮮地域、全朝鮮人民を代表する政府としてでなくて、三十八度線南の地域並びにその地域に住む人民を代表する限定された政府として交渉しておられるだろうと思いますが、それに間違いありませんね。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 国連並びにこれに加盟する諸国のとっております態度に準じまして、日本も大韓民国政府というものを法律的に唯一の政府であるとして取り扱っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 ちょっと大事な点ですが、韓国というのはどこですか、具体的に言っていただきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 李承晩政府……。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 鴨緑江から南の地域並びに全朝鮮地域における人民を代表する唯一の政府としてという意味ですか、あるいは私が今申しましたように、三十八度線の南の領土並びにその地域に住む人民を代表する限定された政権としての韓国政府として取り扱っておられるのか、いずれかということを聞いておるのです。あなたの今のお答えはちょっと不明確ですから、明確にしていただきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 大韓民国政府というのは、ただいまのところ、事実上は三十八度線以南に限られておりますが、これが国際的に法的に認められた唯一の政府であるというっふうにして取り扱っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうすると降伏文書によりますと、当時の事情は、二つの政権によって全朝鮮地域並びに人民が統治されるということを予想いたしておりませんから、全朝鮮の独立を承認し、日本側はそれに対する一切の権利を放棄をする、こういうことになっておるわけであります。事情が違います。さらに国連の決定というものは、先ほどお話があったように、南北朝鮮の武力によらざる平和的な統一を願望するということになれば、三十八度線から南の韓国政府を認めるとともに、三十八度線から北の朝鮮人民共和国の存在も認める、それが前提になっておるわけなんです。現在承認するしないは別ですよ、あるいは平和条約締結のために交渉するしない、その時期については別だけれども、それが事実上国家を形成し、統治権を形成して存在している事実は、国連決定でもこれを認める原則に立って平和統一の問題が提案されておる、そう思うのです。そうでありますならば、今日本政府を代表してあなたが交渉している韓国政権というのは、三十八度線の南の領土並びにその領土に住む人民を代表する政権、そう理解すべきだ、これは当然だと思いますが、念を押しておきます。言葉を横にそらさないで下さい。同じことを何べんも質問することとは、お互に精力を消耗するだけで、時間もむだですから、明確にしていただきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 何と申しましても、大韓民国政府というものは、法律上の唯一の政府として取り扱っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 どこの唯一の政府ですか、地域はどこですか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 北には事実上の政府があることは認めますけれども、法律上には大韓民国政府というものを唯一の相手としてやっております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうしますと、財産請求権の問題、それから在日朝鮮人の法律上の地位を決定する場合に、全朝鮮人民に対する財産補償をする、こういう考え方でおやりになるつもりでございますか。三十八度線以南の人民、その地域を統治しておるところの政府に対する請求権、それをこちらから支払う、そういう考え方ですか、鴨緑江地域までを含む全朝鮮人民に対する請求権を支払うんだ、こういう考え方でおやりになるのか、その点明確にしていただきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 まだ財産請求権の問題には入っておりませんので、どういうふうにやりますかわかりませんが、事の機微に属しますがゆえに、申し上げることをはばかります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 でたらめなことを言われては困りますよ。あなたみたいな大家が、そういう人を嘲弄したような態度はやめて下さい。いやしくもわれわれは衆議院の外務委員をやっておるんですよ。あなたはしろうとにものを言うような調子で、しろうとが何聞いているんだというような態度でさっきからやっておられる。そういうことはけしからぬことですよ。財産請求権の問題を、韓国の李承晩政権を鴨緑江地域及びその地域まで住んでおるところの全朝鮮人民を統治する唯一の政権だ、そういう立場で交渉するのと、それから三十八度線から南の地域並びにその領土内に住む人民の政府として交渉する場合と根本的に違いますよ。そうしてあなたが言われるように——私は聞き違い、誤解であることを希望するのだが、その私の誤解が誤解でなくて正解であるとするならば、あなたは三十八度線から南の李承晩政権を全朝鮮地域の唯一の正統政権である、こういう立場に立っておられるわけだが、財産請求権の問題について、交渉するしないは別として、原則としては全朝鮮人に対する財産請求権ですよ。従って今後日本においても政治情勢が変り、国際情勢も変り、そして北の朝鮮人民共和国との間でいろいろな交渉が始まったときには、これは認めないということになるわけなんだ。すでにもう支払っておる、お前らの存在は認めてないのだということになるわけですから、法律上は大事なことなんです。そんなことをあなた人を嘲弄するような態度でごまかしてお通りになろうとする誠意を疑う。第一質問する前にあなたの誠意を聞きたい。衆議院外務委員会をそう侮辱しちゃいけませんよ。どういう神経で言っておられるんですか。先輩ですから私は礼を尽してお尋ねしたいと思っている。考えは違いましても、私は礼を失しないつもりでおるのであります。そういう基本的な問題について、嘲弄するかのごとき態度をもってこの外務委員会に当られるということに対しては、外務省の先輩であるか何か知らぬけれども、私は聞き捨てになりません。第一あなたの誠意を言って下さい。どういうつもりできょうここの答弁に臨んでおられるのか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 まことにあなたに誤解を与えるような態度をとったことを遺憾に思います。ただいまの問題につきましては、李承晩政府というものを法律上の唯一の政府として取り扱っておりまして、そうして後に、事実上存在しておる北鮮との間に起るべき問題については、もう取引は済んでおるから知らないというような立場に置こうとは思っておりません。そこには何らか調節のできるようなことだけはしておかなくちゃならないと思っておりまするが、表面においてはともかくも、これを法的の唯一の政府として取り扱うということにしないと、初めからもうこんがらがってしまって何もできないということになりますから、そういう手当を考えながらやりたい、こういうふうに思っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 降伏文書における朝鮮の独立、それに対する権利の放棄の規定、それから国連における南北朝鮮の平和的統一、それらの文書からいたしまして、韓国政府というものは、李承晩政権というものは、三十八度線から南並びにその地域に住む人民を代表する限定政権としてこれは取り扱うべきものである。それをあなたはそうではなくて、全朝鮮地域における唯一の正統政府としてこれを取り扱う、こういうことでありますならば、私の承知しておる今までの国際条約上からは、あなたの即断は条約解釈上非常な飛躍があると思います。国連決定もそれを前提といたしておりません。限定政府というものを前提としておる。ただ、朝鮮人民民主主義共和国との間に友好的な平和条約を結ぶかどうかということの態度については、これはまた別個の問題です。別個の問題ですが、李承晩政権の取扱い方については、これはもう明らかに降伏文書による全朝鮮の、一本としての独立政権というものではありません。国連の決定もまた二つに分割した後における統一ですから、二つの政権を存在しておると認めておる。これは大事なことです。あなたがそういう解釈をされる法律上の根拠を明らかにしていただきたい。私どもは、法律上の根拠からいくならば、李承晩政権は明らかに限定政権として交渉をすべきである、そういう前提に立っておる、こう思うのであります。これは重大なことですから、時間がなければきょうだけで打ち切るわけに参りません。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 国連の方も、私が先ほどから言っております国際的に承認せられたる法的の存在としては、やはり南の政府だけしか認めてないのでありまして、その他の政府はいわゆる事実上の政府としてこれにいろいろな交渉を持つということであるのであります。私もその精神に従って、法律的には南の政府と交渉しながら、ただいま申し上げましたように事実上の政府というものがあるのだから、それとの調節をしていくということは、交渉中にもあるいは交渉後に残る問題としても、そういうところを手当しながら交渉を進めていかなくちゃならぬ、非常に微妙な問題であると思います。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 それはちょっと困りますね。そういうことではわれわれ日韓交渉に対しては全面的に反対せざるを得ない。  それじゃ順を追うてお尋ねいたしましょう。あなたは法律上々々々ということを言われますが、私はわれわれの何ら知らない法律なり条約があってそういうことを言われるのかと思ったら、その説明は何らない。そこで私は蒙を開いていただくためにお尋ねをいたしましょう。降伏文書によると、朝鮮の独立を認めてこれに対する一切の請求権を日本側が放棄するということになっておりますが、その場合には今のように南北二つに分れた二つの統治権が存在することは全然頭の中に置いてなかったのです。そういたしますならば、この文書というものと、現在二つに分れておる一方の韓国の李承晩政府というものとは違うのです。一部ではあるが違う。それはどうお考えになりますか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 初めの文書の通りにしていきたいと思っております。それで支障がありましょうか。その降伏文書において、朝鮮全土を対象とするものとして取り扱った、その後において事態は変ってきたのだけれども、その当初の事態において交渉を進めていきたいと思っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうしますと、朝鮮に存在するところの政権との国交回復、全面交渉というものは、あなたが願望し、われわれも共通に願望しておるように、朝鮮の平和的統一政権ができた後に初めて交渉すべきである、それが降伏文書の中にある規定であり、精神である、そういう意味でありますか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 理想的にいえばそういうことになるでしょう。しかしながら、今日日韓の間に正常国交のないという事態が、もう十年も続いておるのでありますから、そこで南鮮の政府とだけでも早く国交を回復して、それからあとの統一ということには別に進んでいっていいのじゃないかと思っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 それは違いますよ。それは条約の非常なる曲解なんですよ。降伏文書のときの条約の関係というものは、現在の状態における李承晩政権を予定しておるものではありません。従ってこの場合におきまして、李承晩政権とやむを得ず不本意ながら全面交渉をするということは、その場合には限定政府として認めて交渉をする。一切の権利義務は限定されたものです。三十八度線の南に限定されたものである。そう理解すべきであって、途中にもしその他の存在するところの政府が、政府みずからを人民の意思によって解体をして、それで李承晩政権のもとに戻るならば別ですよ。そうでなくて、逆になったらどうなりますか。三十八度線の南にあるところの政権並びにその人民が、これはいけないというので、統一ではなくてむしろ合併して、北における人民民主主義共和国の政権のもとに全部入ってしまったという場合においては、一体今の交渉によって成立したと仮定するならば、その権利義務関係はどこにどういうふうに継承されますか。されないじゃありませんか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 朝鮮統一がどういうふうな形でできるかということは、今から予測できないと思います。それは朝鮮人自身の自由意思によって選択されるところでありますから、それによってまた新しい事態が起ればそれに従って考えるということよりほかにないじゃないかと思いますが……。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 だからその通りでいいのですよ。それを限定政権としてやっておれば今おっしゃる通りできる。ところがそれを唯一の政権としてやっておれば、消えてなくなったとき困るし、いろいろ問題が出て参りますよ。この際は限定政府として交渉すべきだ、権利義務一切そこに規定すべきだ。  それからもう一つ続いてお尋ねいたしましょう。国連決定は承認するしないは別として、北の政権というものは明らかに認めておりますよ。しかも国連は李承晩政権を唯一の政権だと決定したというならば、国連のどういう規定がありますか。同じ国連に入っておるソビエトにいたしましても、その他の多くの国が北の政権というものを認めておりますよ。にもかかわらず国連が李承晩政権を唯一の全朝鮮の正統政府だという決定をした、どこでどういう条約があるのか聞かしていただきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 条約も規定も何もありません。ただソビエトは北の北鮮政府というものを認めているとおっしゃるが、ほかにも認めておる国がありましょう。(穗積委員「そういう認めておる国は国連に入っておる。」と呼ぶ)そうです。が、南の政府ほどの多数の承認を得ておりません。そこで国連は南鮮自身を朝鮮における唯一の政府として今取り扱っておるわけであります。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 穗積君に申し上げますが、相当お約束の時間も過ぎておりますから……。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 非常に重要なことですし、簡単に済まそうと思ったのだけれども、基本問題に触れているので……。これではわれわれ日韓会談というようなものはストップしてもらわなければ困る。こういう考えでは信任するわけにいかぬ。それだからこそああいう押し返すという言葉が出てくるのです。そういう認識に立っておるから、力であろうと他の方法であろうと、そういうことなんです。非常に重要なことなんです。だから委員長におかれては、僕は質問を続行することを希望いたしますけれども、もし沢田さんがきょうは御都合が悪く、また本会議の都合もあるから日を改めてやるというならば、この次必ず今会期中に来ていただくことを予約していただけるなら……。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 沢田さん、お尋ねいたしますが、今希望は本会議のベルが鳴るまでやりたいという希望ですが、まだ時間をお許し願えますか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 ええ。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 それではどうぞ御続行下さい。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 これは非常に重要なことである。あなたは法律上とおっしゃいますが、どこに法律があるのですか。多数と少数で、やるならば、中華人民共和国に対してもそうです。これを承認しておる国は三十ヵ国か三十一ヵ国です。台湾政府を承認しておる国はそれより多い。だからこちらが正統政府だ、そんな理屈はありませんよ。日本政府だってこの二つの政権に対して一方をネグレクトしておりません。だんだんその事実を認めて、場合によれば政府間協定もやっていこう、やる時期、方法は別ですよ。しかしそのことは頭の中に入っておる。これは重要なことですから、限定政府としてのみ交渉することが妥当であって、国際条約上の、または国連における決議の基本的な考え方もそこにある。それをくつがえす理由があるならば、ここで具体的に示していただきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 国際条約、国際協定によって認めた法律上の政府という意味ではありません。先ほど申しましたように多数国が南鮮政府というものを承認しておるという事実に基いて、日本政府も日本政府の法律上の承認を与えようとしておる。(「まだ与えていない」「政府の答弁と違う」と呼ぶ者あり)その意味において唯一の政府として今度の交渉の相手として、こういうことになると思います。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 それはちょっと違いますよ。やはり一ぺん政府と打ち合わされて、重要なことですからもう一ぺん次の委員会で御答弁を願いたいと思う。私は今の御答弁では納得できません。ですからこれは留保しておきます。  そうであるならば続いてお尋ねいたしますが、さっき田中君の質問中に在日朝鮮人の法律上の地位に関する委員会がある、そこにおいて一体どういうふうにきめるかと言ったときに、あなたは在日韓国人の云々という言葉に置きかえられて言っておられるわけです。委員会のあれは朝鮮人という言葉になっておるのです。それではちょっと念のために申し上げておきますが、同じ保守党の政権が今まで続いておりますけれども、日本政府が今まで明らかにしたところは、日本におる朝鮮人の中で韓国政権に国籍を持つ者、それから朝鮮人民民主主義共和国に国籍を持つ者、両方ともちゃんと認めておるのです。しかもその帰還の場合においては本人の意思に従って選択の自由を認めるというのが外務省並びに法務省の一致した方針でございました。今のあなたの原則によると、そうすると日本に住んでおる七十万の全朝鮮人の正当なる国籍というものは全部大韓民国の国籍なんだ、そういう取扱いになっていく危険が生ずる。従って国籍並びに帰還に対する本人の自由意思なんというものは全然認めない、そういうことになりますか。これは非常に危険な御発言だと思う。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 これは今委員会において討議しておるところでありますから、まだちょっと申し上げにくいところであります。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 それではお尋ねいたしますが、今まで日本政府が、外務省並びに法務省がこの国会において大臣が明確に言われました、国籍については選択の自由を与える、並びにその帰還についても本人の自由意思にまかせる、この原則をお認めになりますか。認めませんか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 政府が従来声明しておりますところに従って、私ども委員会の事務も処理していきたいと思っております。

穗積七郎日本社会党

○穗積委員 そうすると今あなたはわからぬと言って御答弁になりました。まだ交渉していないのでわからぬとおっしゃったのだが、原則は交渉前に明確になっておる。私は原則のことを言っておる。デテールにわたっての交渉の結果のことを言っておるのじゃありません。原則を言っておるのです。原則は交渉の前から明確でなければならない。それでなければ交渉ができないはずなんです。従ってその原則についてはあなたはあいまいなことを言っておられますが、原則については私の言ったように二つの政権を前提として認めて、そうして在日朝鮮人の国籍並びに帰還の自由についても認めるという従来の日本政府の方針に従って、交渉に当られるべきだと思いますが、その通りなさいますか。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 もちろん政府の方針に従ってやるつもりでおります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 ベルが鳴りましたので簡単に伺いますが、さっき非常に重要な点の御答弁があったと思うのですよ。今の穗積委員の質問に関連して、三十八度線までをもって李承晩政権の範囲といいますか、そういうような根拠に基いて交渉しておられるのか。鴨緑江までが李承晩政権の範囲であるかということ、この点は結局どういう答弁になったのですか、今の御答弁は。この点非常に重要な点なのです。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 どうもその点は大へん微妙なところでして申し上げにくいことなんだが、事実上は三十八度線までしか及んでいないわけです。及んでいないわけなのだが、話をするときにはやはり朝鮮全土にわたっての話をしなければいかぬのじゃないか。そこでさっきから言っております通りに、朝鮮全土について話をしたときに、あとで問題になるようなところにはくさびを打ちながら、その話を進めていかなければならないと思っております、こう言っておるのです。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 それが最も根本問題なのですけれども、あなたの交渉される相手国政府というものが、いわゆる限定された政権であるかどうかによって、その交渉をしてみてもむだであるかどうかという根本問題に関係するわけです。あなた自身は先ほども鴨緑江までというような意味で、いわゆる唯一の正統政府という御答弁になっておるのですが、こういう考え方であくまでもいかれるというならば、私もう少し申し上げたい点がある。というのは、時間がありませんから簡単に申し上げますが、あなたは鴨緑江までをもって唯一の正統政府というふうに見ておられるのだとするならば、現在の岸総理大臣が外務大臣当時、去年の春ですが、私はこれを質問しておるのです。そして岸、当時の外務大臣は、はっきり三十八度線以南をもって李承晩政権の範囲とすると言っておるのです。そうすると、あなた自身全権として、そういう根本問題からして現在の政府の方針と違うような全権じゃ困るんです。そこの点が一点、この点は時間がありませんから十分御研究願いたいと思います。  それから、そういうことで今交渉の経過の中で唯一の正統政府ということで進めるが、実際問題としては三十八度線以南の問題にたるであろう、こういうようなお話ですね。そこで私は法律上の点をもう一点伺っておきますが、国連の決議によっても南と北とがいずれ統一されることになっている。いずれかの時期においてあなたの希望しておられるように統一されるわけです。そうすると、南と北とを統一された統一政権というものがいずれかの日においてできるわけです。そのときにできた政権が、今日本政府と李承晩との間に結ばれた協定は一切無効であるということを宣言した場合に、当然今日あなたが努力されている協定というものは無効になる。これは事情変更の原則からいって当然です。それじゃあなたは何のためにそんな交渉をしているのですか。そんな交渉をして一生懸命苦労してみても、統一後においてそんなものはむだです。文化財なりそういうものは引き渡しているけれども、こういうのを全部初めからやり直しましょうと言われたら、それは当然有効なんです。これは当然で、私より昔の話はよく御存じだろうと思うのだが、王兆銘政権と日本との間に何か結ばれた、蒋介石や国民政府が、戦争が済んでまだ中華人民共和国政権のできないときに、王兆銘政権が作ったものは全部無効であります、これは当然国際法上できているじゃないですか。今あなたはそれと同じようなことをやっている。王兆銘のやったことと同じことをやっている。むだですよ、こんなことはおやめになった方がいいです。全権をおやめになるばかりでなく、日韓会談もおやめになった方がいいですよ。あなたは一生懸命苦労なさっているけれども、むだになることをやっておるのですから、おやめになったらどうかということを一言申し上げておきます。もしこれについての法律上の御意見がありましたならば、特にこの事情変更の原則についての御意見を、先ほどから法律上の問題があったようですから、御見解を伺っておきたい。

沢田廉三日韓全面会談日本政府代表

○沢田説明員 王兆銘政権のごときものであってこれと交渉することはむだであるという御見解は、一つの見解であると思います。それにもかかわらず、日韓の不和の状態はすでにもう十年も経過しておるのでありまして、このままにほうっておくことは韓国のためにも日本のためにも東亜の平和のためにもおもしろくないというそっちの方の要求から、正常国交を李承晩政権とだけでも早く開いておきたいというつもりでやっておるのであります。

岡田春夫日本社会党

○岡田委員 まだありますけれども、もう時間がありませんから……。

櫻内義雄自由民主党

○櫻内委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時十六分散会

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