文教委員会 第3号
- 発言数
- 16 件
- 登壇者
- 3 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1958/02/20
会議録
○委員長(湯山勇君) ただいまより文教委員会を開会いたします。 委員の異動について報告いたします。 二月十八日、吉田法晴君が辞任され、その補欠として安部清美君が選任されました。また二月十九日、安部清美君が辞任され、その補欠として吉田法晴君が選任されました。 以上であります。 —————————————
○委員長(湯山勇君) 当面の文教政策を議題といたします。まず文部大臣から御説明を願うことにいたします。
○国務大臣(松永東君) しばらくの間流行性感冒にかかっておりましたため、出席がおくれましてまことに恐縮に存じております。 ただいま御下命になりました文教上の主要問題のことでございますが、私は就任以来かねがね、これはもう私ばかりじゃございません、いやしくも文教に関心を持っている人のすべての考えであろうと思いますが、要するに、まず何と申しましても、第一は義務教育の充実と、その水準の向上であります。義務教育の充実と、その水準の向上をはかりますということは、今申し上げた通り、まことに文教政策上の重要な問題であります。義務教育について学級規模、教員定数、施設など、あらゆる分野についてこのための施策を進めなければなりませんが、当面いわゆるすし詰め学級を少しでも解消いたしまして学級規模の適正化をはかることが緊急のことと考えまして、本年度は児童、生徒の増減その他に伴う必要な経費のほかに、特に中学校の学級規模の適正化に必要な教員の増加五千人を予算に計上いたしました。また教員定数や学級基準に関しましては所要の法的措置を講じまして、今後も強力にこの面の施策を推し進めたいというふうに考えておる次第でございます。 また施設の整備につきましても、不正常授業や老朽危険校舎の改築に意を注ぎまして、学校統合を推進し、さらに教材費その他学校経費の増加をはかるなど、義務教育の充実には格段の考慮を払って参った次第でございます。 第二に、科学技術教育の振興でございます。わが国の科学技術振興のためには小学校から大学を通じて科学技術向上に格段の力を入れなければなりません。 まず、初等中等教育につきましては、教育課程の改善をはかって基礎学力の充実につとめ、さらに理科教育、産業教育を充実するため経費の増強をはかり、高等学校につきましては、新たに工業課程及び産業科を新設して産業界の中堅技術者養成の要望にこたえたい所存であります。 国立大学につきましては、理工系十五学科の増設、短期大学の新増設等によりまして約千七百人の学生増募を行なって技術者の養成に備え、また原子力を初め、科学技術の進歩に即応した分野の研究部門の増強をはかり、教官研究費、学生経費について増額を行なって基準経費の充実をはかりたい次第でございます。 同様の趣旨で私立大学についても研究基礎設備及び理科設備について助成の経費を増額いたしました。また科学研究費の増額に意を用いたのでございます。 第三に、育英事業における進学保障制度の創設であります。優秀な学生生徒で、経済的の理由によりまして修学困難なものに対しましては、従来から日本育英会を通じて奨学資金の貸付を行なってきておるのでござりまするが、本年度は新たに進学保障制度を創設いたしまして、中学校の修了者で特に資質がすぐれておりながら、経済的理由によって進学をはばまれておるものに対して、その進学を強力に援助するため、高等学校生徒五千人について、従来からの採用者とは別ワクで、月額三千円を貸し付けることにいたしたのでございます。 以上のほか、従来その必要は認められながらも、施策の上でややもすればおくれがちであった学校保健の面につきまして、このたび児童生徒の健康の保持、増進をはかり、学習能率の向上に資するため、保健医療費補助を計上いたしまして、これが実施を確保するための新たな立法措置を講じたいと考えておるのでございます。 また保健と並び体育につきましても、その振興をはかるため、文部省に体育局を設置いたしまして、明朗なスポーツの発展を期したい所存でございます。ことに本年五月には、皆さん御承知の通りアジア体育大会が開かれることになっておりまするので、そうした面、並びに来たるべき国際オリンピック招致運動等にもやはり皆さんの御協力を願って、一つ全国をあげて猛烈な体育の奨励を推進したいと存じます。そのために非常な無理なお願いではありましたけれども、体育局を新たに作ることになりまして、そうしてようやっとこれも三十三年度の予算に計上して御承認を得るようになっておる次第でございます。 大体以上が、私どもの考えておりまする文部行政の構想でございます。ただ何と申しましても、せっかく科学技術教育の振興をもくろんでいろいろ研究をして三十三年度から新たに相当の施設をしたいと考えておったのでございまするが、財政上のいろいろの点から考えましても、どうしても一ぺんに飛躍的の施設をすることができませんかったことは、まことに残念と思っておりまするけれども、しかしながら、右大体申し上げたように、量の上においても、質の上においても、多少の進展を見たことは、まあまあ慰めとするに足るというふうに考えておる次第でございます。 右は、大体の私どもの構想だけをお耳に入れた次第でございます。御了承おきを願います。
○委員長(湯山勇君) ただいまの大臣の御説明並びに三十三年度文教予算につきまして、質疑のあります方は、順次御発言を願います。
○竹中勝男君 きょう私ども委員は、少くとも私は、委員として初めて文部大臣のお顔を見ますし、長く大臣の文教政策に関する御高見を伺いたいと期待いたしておりましたのです。御病気その他のことで多少おくれたことは残念ですけれども、お元気できょうはこちらにおいでになったのでお伺いしたいのですが、私どもは大臣の最初の二十三年度における予算の説明と同時に、日本の文教政策の基本的な問題を三十三年度にどのように予算に具現化されておるかということをお伺いしたいと思っておったのです。ただ単に教育の充実とか、科学教育の発達とか、育英事業あるいは児童の保健、体育というだけのことをお伺いするつもりではなくて、日本の現実置かれておる国際的、あるいは国内的な各種の深刻な問題に、われわれは直面しておるわけです。民主主義の前進の状態が、きわめて危機の様相を呈しておる。犯罪の点からしても、国民の建設的な意欲の点からしても、あるいは国民の平和を愛するその真情の点からしても、教育基本法にありますように、「真理と平和を希求する人間の育成を期する」というこの基本的な要請、基本的な問題にきわめて重要な後退が見られておるということを私どもは痛切に感じます。で、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび」云々というこういう教育基本法第一条の点について、大臣はどのように現実の教育的問題を解明され、そうしてそれに対する決意といいますか、日本の民主主義、平和と個人の自由を守る教育が、この逆にいきつつあるところの現実に対して、どのようにして守られるかということをまずお伺いいたしたい。そういう基本的な問題を大臣の口から、この国会の劈頭においてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(松永東君) 御指摘になりました御質問、まことにごもっともな御質問だと考えております。私は、仰せになりました通り、要するに戦後われわれ国民の考え方に非常に虚脱的な気持が横溶いたしておりました。しかし、おかげさまで、ようやっと地につきまして、そうして相当その気持の上に民族意識も取り戻してきました。だがしかし、日常起っておりまする現象を新聞やラジオを通じて見ましても、まだわれわれ国民は、ほんとうに再検討をわれわれ自身の現在の行動の上にもしなければならぬ面がたくさんある。仰せになりました通り、国際的にも、国内的にも、さらに相当研究を要する問題がたくさんある。教育基本法に規定せられておりまするところの基本問題についても、われわれは再検討をせなければならぬというふうに考えて参っております。特に先ほど来申し上げる通り、われわれの考えとするところの、要するに、国内的に、御指摘になりました犯罪が非常にふえている。そうして道義が地に落ちている。これを何とか道義心を復興し、そうして道徳を強化しなければならぬ。ことに次の時代をになう大切な青少年をりっぱな人格者に育て上げなけりゃならぬ。世界のいずれの民族にもおくれをとらないようなりっぱな民族に作り上げなければならね今日、終戦後十三年経過いたしました今日、今までの戦後のいろいろな教育を、それをさらに反省し、再検討を加える時期に直面いたしているというふうに考えております。そういう考え方から道徳教育を強化しなけりゃいかぬということを、私は就任以来叫び続けて参りました。だがしかし、その道徳教育の強化については、国民の多数のうちに異論はないと思いますが、しかしそのやり方については、相当の議論も耳にいたしております。しかしそれは、それぞれのエキスパートの人々にお願いをいたしまして、そうして、どうしてその道徳教育を強化するか、そのやり方、方法等については、専門家の相談にお願いをしていくというような現状でございます。そうして、それについて、まあこの四月の新学期から、できればホーム・ルームの時間でも利用して実践に移していくというふうに実は考えておる次第でございます。さらに御説になりました科学技術振興の問題につきましても、国際的に今日はまことに目ざましい科学技術の進歩した時代です。申すまでもなく原子力時代といわれ、オートメーション時代といわれておりますが、ことに昨年暮には、ソ連製の人工衛星が宇宙圏をもう飛び回る、こういう時代になりました。一口に宇宙時代といわれるようなことになっております。従ってソ連、アメリカはもちろん、英国も、西ドイツあたりも、三年計画あるいは五年計画を立てて、いずれも量の上においても、質の上においても進躍的の計画を立てているようでございます。われわれ日本民族といたしましても、この国あたりに、やはりおくれをとらぬよう施策をせんければなりませんので、それで先ほど来予算の大綱に御説明申し上げたうちにもお耳をけがしたように、右申し上げるような科労技術系統の躍進についても、力を入れて参ったような次第でございます。 しかして、先ほど仰せになりました、要するに平和を基調とする民族の現状についての考え方のお尋ねもございましたが、それは先ほど申し上げました道徳教育の強化も、やはりその一面が織り込まれておるわけでございます。もちろん私どもの道徳という問題は、戦前の、要するに教育勅語の徳目を押しつけたり、さらにまた、いわゆる反対論者の主張するがごとく戦争に引きずり込もうなんというような考え方をみじんも持っておるものではございません。要するに、今日世界人類の共栄共存を目ざして、われわれ民族も進んでいかなけりゃならぬのでございますから、それを基調として、そうしてみずからの人権を尊重すると同時に、相手方の人権も尊重し、そうしてお互い手を握り合って、そうして人類の幸福をもたらすというふうなねらいのもとに道徳教育等もやっていかなけりゃならぬ、そういうふうに考えておるわけなんです。しかし、御承知の通り、そうした面について、きわめて雑駁な頭の持ち主でありますために、学理的にいろいろ説明することについては、なお説明不十分と思いますけれども、しかし、気持だけは右に申し上げる通りでございますから、御了承願いたいと思います。
○竹中勝男君 大臣の御丁重な御答弁ですが、私は今、別に道徳教育のことをここに問題にいたしておるわけではないのです。大臣も言われる通り、犯罪がふえた、あるいは道徳的な核心が民族から失われた。それでは大臣は原因はどこにあると思われますのですか。
○国務大臣(松永東君) これは原因は、いろいろ多方面に原因があるでしょう。しかし、大体の私は、その原因と思いますのは、戦前から、これはもう率直に私は考えておることですが、軍部が非常な勢力を得まして、そうして国の政治を軍部が握って、さらに教育の面まで軍部が握って、御承知の通りその時分は、陸軍大将が文部大臣でありました。そういう時代であったのであります。従って、その当時の教育方針までも戦争に引きずり込んでいくというような意図があったのじゃないかというふうにすら考えられるような点もないでもございません。そういう面と、さらにまた戦争後は、敗戦後はアメリカ軍が御承知の通り占領しております。その占領政策の中には、道徳教育をしてはいかぬ、歴史を教えてはいかぬ、地理を教えてはいかぬということで、われわれの子供たちは、道徳も地理も歴史も教えられていなかった。そういう点が、御指摘になりますように、やはり平和を基調とするような考え方が薄らぎ、道義が地に落ちたというふうな面も現出したのじゃないかというふうにも考えておる。いろいろ他にもありましょう。ありましょうけれども、やはりそういう面も大きな災いをしている面じゃないかというふうに考えております。
○竹中勝男君 大へん明快な御答弁だったと私は思いますが、軍部が日本の政治を支配した。従って、日本の教育行政までを軍部が支配した。軍部の支配が及んだ。これが今日の日本の混乱の原因の一つだ。従って、絶対にこの点は明確にして、排撃しなければならない。いわゆる教育の軍部支配、あるいは権力による教育の支配、中央における強力な教育統制という行政が、日本の教育に混乱を、今日の社会に混乱を来たした原因であるという文相の考え方は、私も大へん明快であると思います。敗戦後、占領政策の中に、道徳教育を否定された、あるいは地歴の教育を否定されたということについては、多少問題があるんじゃないかと思います。いわゆる戦前のような形の、教育勅語中心の道徳教育というものは廃止されておる、あるいは特定なイデオロギーに立った歴史教育を否定されておる、あるいは特定な政策意図を持った地理というものについての教育というものは排撃された、こういうように私は解釈しておるのでありますが、しかしながら、あらゆる機会を通して、はっきりこの人権の尊重、平和を愛する人間を作る、自由を死力をもって守るという、この原則というものは、占領政策のあとにおいて日本に確立された一つの文教政策の基調に、はっきりなっておるのですから、この点はすでにそういう道徳的な原則、あるいは道徳的な教育の方法は、あらゆる機会を通じて、これをやれ、あらゆる科目を通じて、これをやれ、こういう原則はすでに確立されておると解釈するのです。ただ、それにもかかわらず、現実において日本の道徳的な混乱があり、世相がきわめてまだおさまっておるとは思いません。それには、いろいろ原因があると思うのですが、こういう尋ね方をしたいと思いますが、自民党では三悪を追放する、三つの悪というのですから、これは道徳、善悪に関するものですから、悪を、すなわち道徳教育——道徳をそこなっておるところの原因がある。貧乏、汚職、それから暴力、いずれも重要な現実を見ておられると思います。そういう貧乏だとか、汚職だとか、暴力というようなものがなくならない限りは、悪が追放されないという考え方が、自民党の考え方。従って日本のやはり文教の指導者の考えの中におられると思いますが、こういう点が、日本の現実の問題を認識する上に重要ではないかと思うのですが、大臣の御意見をお伺いしたいのです。
○国務大臣(松永東君) お説の通りです。三悪追放はどうしてもせんければなりませんし、しかも、また三悪は現実問題としてまだ現存いたしております。これを何とか根絶するように、それは道義心を培養する面からいっても、やはり強力に推進していかんければならぬというふうに考えております。御指摘になりました点は、いずれもごもっともと了承いたしております。
○竹中勝男君 道義心というものと道義的事実というものとの関係をはっきりしていく必要があると思いますが、幾らよいことをしろ、右を向いておれといっても、地球が逆の方に向っておれば、右を向かしたところで左に向く、だから現実というものが一番大事です。現実というものが道義だと私どもは解釈しておるのですが、だから、どうせい、こうせい、すなわち教えというものは、大した力はないと思う。現実というものから教えというものは規定されてくる。すなわち上からばらっと来たビラのようなものは、教えではない、道義じゃないと私どもは考えております。頭の中で考えておるのじゃない、生活の中に出てくるもの、社会の中に出てくるもの、日本の経済の中に出てくるもの、貧乏の中に出てくるものが悪なんです。悪というものはそういうものだ。すなわち悪を善に向けようと思えば、悪の現実というもの以外には戦う方法がないと見ておりますが、大へんこれは抽象的な議論になって恐縮なんですが、一応きょうは大上段にかまえて一つ大臣から御答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(松永東君) 竹中委員のお説、まことにごもっともです。それは現実の問題として、やはりほんとうに生活の中に、経済の中にすべての道義が見出される。もちろん上から押しつけるものではないということも、私は承知いたしております。しかし、さればといって、義務教育の中で教えておるところの小学校、中学校の子供たちに、ある程度の手引きといいますか、ある程度のやはり教えといいますか、しつけといいますか、それはやはりせんければならぬ、そういうふうに考えまして、そうしてお説のような、今の現実を生かして、そうして善導していきたいというふうに考えておる次第であります。
○竹中勝男君 今の大臣の御答弁の中に善導という言葉が、だいぶ時代的なお考えの言葉が、お考えじゃなくて言葉だろうと思いますが、いわゆる思想善導ということは、軍部がやってきたところのこと、過去の官僚がやってきて失敗をして、今日の混乱を来たしたところなので、その善導というような言葉及びその背後にある歴史的な考え方というものがすでに問題ではないか。もし、道徳教育を善導の一つの道だというふうにお考えになるのだったらば、これは私はまたあと戻りの教育に、道徳教育になるのじゃないかということを非常におそれるものなのです。導くというよりも、民主主義は自発的にそれに協力する、そういう自分から作り出すというところが新しい教育、新しいモラルだと思いますが、だれかが上から導くというようなものであってはならないのじゃないか、民主主義の教育原理に実は逆じゃないかと思うのですが、どうなのですか。
○国務大臣(松永東君) これは学者の議論でございまして、(「いや、学者じゃないのです」と呼ぶ者あり)竹中先生のお説まことにごもっともと私は承知しております。承知しておりますが、さればといって野放しにしておくわけにいきません。やはり手引きをせんければなりません。それが善導と私は申し上げた。そうしてしつけをせんければなりません、子供は……。それがやはり善導の一つだと、私はこう考える。でありますけれども、あなたのお説もなるほど非常に含蓄のある、今ごろの新しい人々はそういうことをよく主張しておられるのです。非常に私も打たれるような点もあります。だから、私もよく研究をいたしまして、善導という言葉がよいか悪いか別として、とにかく善処していきたいと考えます。
○委員長(湯山勇君) ちょっと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(湯山勇君) 速記をつけて下さい。 では、本日はこれにて散会いたします。 午前十一時四十五分散会 —————・—————