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28回国会参議院1958/03/20

外務委員会 第11号

発言数
65
登壇者
12
会派数
3
開催日
1958/03/20

会議録

寺本廣作自由民主党

○委員長(寺本広作君) それではただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国とインドネシア共和国との間の平和条約の締結について承認を求めるの件、日本国とインドネシア共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諸勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国政府とインドネシア共和国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件(以上三件、衆議院送付)を一括して議題といたします。  この三件につきましては、先般、提案理由の説明を聴取いたしており、また、今月十四日衆議院より送付され、本審査になっておりますので、念のため申し上げます。  なお、岸内閣総理大臣が御出席いたされましたので、国際情勢に関する御質疑がございましたら、この際、あわせて行うことといたします。  質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 簡単に一、二問お尋ねいたしますが、最初の第一は、先日、日本と中共との第四次貿易協定が成立をして、その関係もあるのか、国民政府——台湾政府が、日本と国民政府間の貿易協定破棄等、いろいろな動きがあるようでありますが、私としては、そのことによって日本と中共との貿易に対する政府の基本的態度がくずされたり、あるいはまた、問題になっている国旗掲揚事件簿から、日中間の貿易に基本的な影響を与えるようなことにならないように、台湾政府の動きもありますが、政府はこの際強い態度で、きぜんとしてやはり従来の方針をとっていただきたいということであります。もちろん、私は、あえて台湾政府と事をかまえて無用の摩擦を起すということを言うのでは全然ありません。それはそれで、できるだけ話し合いを円満にいくように進めていただくことを希望いたしますが、同時に、そのことから台湾関係の貿易商社等のおそらく要請もあると思いますが、そういうことによって日中貿易が基本的にくずされることのないように、政府がきぜんとした態度を堅持してほしいと思いますが、この点に関する岸総理の御見解を承わりたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 従来、私どもは、日中貿易の促進については、国民の強い要望もございますし、これを推し進めるということにつきましては、従来ともそういう方針をとって参った。ただ、これと関連して、中共政府を承認するということは、現在の段階ではそういう時期ではないということを従来も明確にいたしてきております。この基本観念は、私ども、従来もとってきておりますし、これを国民にも明示いたしておりますし、政府の方針としては、その方針でおります。そこで、第四次協定の問題に対しましては、過般三団体の代表者が向うに参りまして調印して参って、私ども口頭におきましては、いろいろその間の事情の報告を聞いております。しかし、まだ正式の書類も出てきておりませんし、政府としては、正式に書類が出された上において、これを検討して最後の態度をきめるということで進んできております。今申し上げました通り、基本の考え方はそうであり、また、第四次協定につきましては、これはあくまでも民間の協定であって、政府としては、今も申しました根本の趣旨によって、これに対して適当な支持と協力を与えるという考えでおりますが、まだ、今申しましたように、書類も出てきておりませんし、一件書類を十分検討した上に態度をきめる。国民政府の意向につきましては、私どもも、いろいろな方面からその情報なり、あるいは国民政府からの意思の伝達もございます。しかし、それには、私どもが一応口頭で聞いております実情に対して、まだ十分な理解がない、誤解の点もあるように私は見ておるのであります。従いまして、今申しましたように、正式の書類が出ました上において書類において十分検討して、誤解の点や、あるいは日本政府の考え方というものに対して十分な理解がいかないというような点があるならば、十分これは私ども説得していくつもりであります。今申しました基本方針を政府として堅持して今日までも来ておりますし、今後も堅持していくつもりでおります。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 もとより、私は、今度の第四次貿易協定が民間協定であって、政府間のものでないことは承知しておりますし、すぐ国交回復というようなことを今われわれとしては要求しても、政府ができる立場をとっておらぬことも了解しておりますが、ただ、問題は、台湾政府の今度の動きによって貿易協定なんかに影響を与えたり、また、そのことが逆行してはいけないということを憂えるがゆえに申し上げるので、従って、台湾政府の今度のそういう動きがありましても、そういうことによって政府の動きに格別な影響はないと了解してよろしゅございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 今私がお答えを申し上げました通り、政府としては、従来の基本方針通りに進んでいくつもりでおります。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 もう一点は、インドネシアの賠償との関連でありますが、賠償協定も成立するわけでありますけれども、最近のインドネシアの政情が不安定であることは、御承知の通りであります。さきにハッタ氏も見えられて、いろいろ私も話を直接にも伺いましたが、今インドネシアの政情は、非常に困難なところへ来ておるようであります。従って、この日本の賠償協定が具体的に実施された場合のことに関連をして考えてみる場合に、あの政情がどうあるかという情勢判断はある程度重要だと思うのでありますが、政府としては、最近のこのインドネシアの国内政情をどうように判断されておるのか、もしお差しつかえなければお聞かせいただきたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) インドネシアの最近の国内の政治情勢等は、私どもインドトネシアのために、はなはだ悲しむべき事態であって、せっかく独立国として出発したその前途にいろいろな暗影を投ずるような事態か、一日も早く収拾されることを切に望んでいるわけでありますが、この情勢につきましては、私どもあらゆる面から情報をもって正確にこれを判断するように努めております。もちろん、将来のことにつきまして、十分な見通しをもってやるということは、事実上困難な点も非常にたくさんあると思います。しかし、今日までの推移の情勢を見まするというと、スカルノ大統領を中心としておるこの政権そのものが近く何か崩壊するとか、あるいはこれが分裂を来たすというふうな事態に私どもは見ておりません。相当まだ混乱の状態が続くであろうけれども、やはりスカルノを中心として事態が収拾されるであろうということを私どもは大体の方向としては考えております。いろいろハッタ氏との関係、あるいはスマトラ、ジャワの関係、また、政府に反対する勢力の力等につきましては、いろいろな見方もあるようでありますが、昨年ハッタ氏と東京で会い、また、インドネシアに参りましてスカルノ、ハッタ両氏にも会い、また、最近東京においてスカルノ氏と会って私が話を聞いた、意見を聞きました何におきましても、ずっと考え方は、ハッタ氏もスカルノ氏も変っておりませんし、両方の今日まだ妥協ができておらない何がありますようですが、結局においては、両者が提携することによってのみインドネシアのこの政情をある程度安定せしめることである、そのためには協力しなければならぬということは両方とも、ハッタ、スカルノ両氏とも同じ意見を持っておる。また、賠償問題等に対しての考え方につきましても、全然同様な考えであり、協力をいたしておるような関係でございまして、私はまだ相当の経緯をとると思いますが、今のところにおきましては、やはりスカルノ大統領に対する国民的信頼と、ハッタ氏のジャワにおける勢力というものと、やはりこれが協力されるということが事態を収拾するかぎであろう、こういうふうに見ております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 インドネシアとの賠償協定の内部的な問題はまた別といたしまして、政局の見通しとしては、私たちも今の総理の見解と同様でありますので、まあ分裂を期待しておるやの部面も国によってはあるようでありますが、日本としては、あくまで今の総理のような見解で進まれることを希望いたします。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 台湾国民政府との関係の問題ですが、国民政府側の第四次日中貿易協定に対する感情というものは、中共と何か親しげにしているということ自体がおもしろくないのか、紙面に伝えられるように国旗の掲揚の問題とか、代表部員に外交特権が付与されているのではないかというようなことであるのか、もし、あまりに親しげにする、中共承認一歩手前というようなことがもしいけないというなら、ことは非常にめんどうだと思うのですが、その点の判断は総理はどうするのですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 従来、先ほど申し上げましたように、日本は貿易関係においてはこれを増進する、しかし、中国人民政府というものを正式に承認する考えはないというこの根本方針につきましては、従来とも国民政府に十分にわれわれは徹底して参っておりまして、従って、貿易関係をするとか、その他いろいろな事実上の問題等について話し合いをするという事柄に対してそれは衷心、腹の底から言って、それを非常に歓迎し、けっこうだということを考えておるとは私は思いませんけれども、それに対して別段抗議もしたこともありませんし、それに対しては私は相当に理解しておりまして、その点は問題ないと思います。ただ今回の第四次協定、それの覚書、主として覚書に今お話しのような、こちらへ通商代表部の人か来て外交特権もしくはこれに類似したものを持つのじゃないかという点、及び国旗掲揚の権利という点について、それは中国人民政府というものを認めることであり、それは正常な国交関係があり、友好関係にある日本と国民政府との間の友好関係を害するものである、非友好的な態度であるということを申しておるわけであります。その点に関しまして、先ほど来言うように、あの覚書の表面の文句はあいまいでありますけれども、外交特権を与えるものじゃないということについては十分な話し合いがありますし、それからまた、国旗を掲揚するということについては、これが中国人民政府というものを正式に承認するということとは何ら関係ないものだということは、やはり議事録等において明らかにされておるということを私どもは報告を聞いておるわけです。これをはっきり文書で見るならば、今台湾政府の考えておることは相当誤解があり、十分に意思が理解されておらないというような点が私はあるように思うのであります。それで先ほど申し上げましたように、われわれとしては、従来の方針通りの方針をもって、そうして十分に台湾政府に諸般の事情を説明し理解せしめるということによって事態を緩和し得る、相当に緩和できるのじゃないか、また、そういうふうに努力しなければならぬ、こう思っておるわけであります。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 事態を緩和することができる、割合楽観というふうにとられますが、それでよろしゅうございますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 必ずしも、まだ事態につきましては、そう非常に楽なこととは私考えておりません。なかなか蒋総統あるいは立法院あるいは華僑等の間におきましては、相当強硬な意見もあるように私ども聞いておるのでありまして、この間においては、ある点の摩擦もあり得る、これらに対して政府としては、十分慎重に対処していかなければならぬと考えておりますけれども、しかし、それがために、従来考えておるところの方針、基本方針、貿易を増進するということ、まだわれわれが中共政府を認める段階じゃないという考え方という、根本方針を私は変更するとか何とかいう問題ではないと思う、こういうことでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 それでは三団体の結んできた貿易協定の覚書、政府は与党とも話し合いの結果、支持協力の回答を出すだろうと思いますが、その点が一つと、それからこういうふうなことがややこしい問題になってきたので、国民政府に対する了解を、取りつけるまで、協定、覚書に対する回答を待つのか、あるいは一方で回答を出しておいて、それで片方で国民政府に向って了解工作を進めていく、いろいろ方法があるのですが、どんなふうにお考えですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 先ほども申し上げましたように、私ども口頭ではいろいろ報告を受けております。しかし、従来の経過からいいますと、表面に現われておる覚書と、それからこれに付属しておる一種の懇談要旨というものはやはり不可分の内容を持っており、過般代表団等が参りまして調印する際に、相当の両方の懇談の結果、ある点の妥協点といいますか、一致点を見出だしておるような経緯もございますので、口頭だけの報告でなしに大事なことでありますから、書面を出してもらって、書面について正式にわれわれとしては十分検討して、最後の何をきめるというのが今の政府としての態度でございます。われわれが従来聞いているような趣旨であるならば、それがはっきり文書にも表われており、その文書の何もそういうことが明確であるならば、私は従来考えておるような貿易を増進するために、また、民間協定として、これに対して政府が貿易を促進するという見地から支持と協力を与えるということは差しつかえないであろうということを私どもは考えておるのであります。それは正式の書類について審議した上において、最後の決定をしたいと考えております。  それから今後の事態の推移に対して、先にそういう回答を出してやるか、あるいは相当な了解をとった上で出すかというふうな問題につきましては、なお私は事態の推移をもう少し検討する必要がありまして、この際、書類もまだ正式に出ておらないときに申し上げることは適当でなかろう、かように考えます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 先ほど総理の御答弁の中に、あいまいな点はあるがというお言葉があったようですけれども、協定内容で、これはしかし外交特権云々とか国旗掲揚云々というようなお話がありましたけれども、あいまいな点があるというのはどういう点ですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私、あいまいな点があるという言葉を用いた覚えはございませんが、口頭だけの何であるから、文書で見ないと正確に政府として何はできない、そういう意味においてまだ明確に申し上げることはできないという意味でございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 次の核兵器の問題は、私、この前もこの委員会で外務大臣にお尋ねしたのですが、総理も今国会で大へん努力されて、アメリカも黙っているところを見ると了解したようでありますから、この辺で両者が集まって、口頭で、あるいは文書で相互の理解をはっきりさせる、そして国民の感情にこたえて極東の緊張の緩和にも資するようにしてはどうか。総理は相互信頼と理解があれば要らないとこれまで重ねておっしゃっておりますけれども、イギリスとアメリカのIRBM協定等を見てもわかりますように、あのように血の通った英米間ですらそういう協定を結んでおるのであります。多分近く開かれるであろうと思う安全保障委員会にこれを持ち出して、はっきりさせたらどうか、こういうことを伺いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 森委員の御質問でありますが、イギリスとアメリカにおいてIRBMの基地について協定がある、私はアメリカがもしも日本にそういう基地を設けるとか、何かあるならば、当然そういう協定がされなければならぬことは言うを待たないのであって、一方的に持ち込むということのないということを従来申し上げておるわけであります。従いまして、日本にもし持ち込むなら、これはもちろん今のまま持ち込ませるというようなことはさせないということを私は明言しておるのでありますから、協定その他の問題については、これは言うを待たないのでありますが、現在の情勢から見まして、一部においてそういう疑問といいますか、疑惑を持っての考え方もあるようでありますけれども、私はその点については心配要らないと言って、従来お答えしておる通りの見解を持っております。今日あらためて持ち出してどうするという考えは現在のところ持っておりません。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 お尋ねするのは、私たちが得た情報によれば、アメリカもかりに日本からさような申し出があった場合には拒否はしない。何も現在持ち込んでいないのだから、痛くない腹を探られたくない。かようなふうに伺っておるために御質問申し上げるのが一つ。  それからこの前の外務委員会で、同じような趣旨の質問に対して、藤山外務大臣から、そういう問題は、将来安保委員会で取り上げる時期があり得ると考えております。今までは総理の御説明は、こういう問題は、安全保障委員会の議題となり得る、こういう問題を討議することは安全保障委員会の使命であるというのが総理の御答弁であったが、外務大臣は、一段進んで、そういう問題は将来取り上げる時期があり得ると考えておりますと、こういう御答弁をされております。総理と大へんな食い違いがあると思うのですが、いかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は、外務大臣のお答えはどういう趣旨であったか知りませんけれども、もちろんそういう問題が取り上げられるということであれば、当然安全保障条約に基く日米合同委員会で取り上げて論議すべき問題であるということは、従来もそういうふうに申し上げておると思います。  それからその見通しが現在いつあるかという問題については、私は目下のところないということを申し上げてある。外務大臣も私も、永久にそういうことが問題にならないということを申し上げておるわけではございません。しかし、現在のところは、そういうことは問題になっておらないと、また、問題にする必要もないことではないかというのが私の考えであります。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 遠い将来ということでございますが、それならば、さような問題は三月中あるいは四月中にはないと、こういうふうにはっきり考えられるのですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) もちろん三月や四月中にそういうことがあろうとは私は全然考えておりません。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 もう一点だけお伺いいたします。  日ソの平和条約の継続交渉に関してでありますが、平和条約批准に関する交渉を外交関係が回復した後にやるということになっておりますが、当時総理は幹事長であって、あと外相、今日総理で一貫して事情に通じていらっしゃると思うので伺いますが、それはいずれが、申し出るべき筋合はどんなふうに了解されておるか。また、従来の鳩山・ブルガーニンの書簡、松本・グロムイコ書簡をずっと見て、そして共同宣言案をあわせ見ますと、どうも平和条約交渉のイニシアチブをとる比重が日本側に多いように感ずるのですが、総理の判断はいかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) これはこの前の共同宣言を出すときに、要するに、平和条約の問題は、将来継続して審議するということになっておりまして、いずれの国からも提議できると私は思います。日本からしなければならないとか、ソ連からしなければならないということではなしに、両方のどちらから、イニシアチブをとっても差しつかえない、こう思っております。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 日本側の従来の日ソ交渉における態度から見ると、領土問題はどうも思うようにいかないので、何とか、あとで平和条約交渉をやるので、この際は共同宣言でやってくれというふうな、お願いしたような感じが往復書簡の趣旨によく盛られておるように私は判断するのです。そこで、共同宣言ができた一昨年の参議院の本会議に、択捉、国後はあくまで取るように、この共同宣言取りきめができた機会に、大いに政府は今後努力しろという付帯決議がついておりましたが、むしろ私は、従来の経過から見て、どうも日本側の方があとにしてくれ、あとにしてくれと願ったような印象を受ける立場から、また、参議院本会議の付帯決議も、こちらからむしろ出て、そして択捉、国後問題でも政府の方針に従って努力されるのが至当じゃないか。逃げ回っているような感じを受けるのはおかしいじゃないかと思うのですが、どうでしょう。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 平和条約の締結、それは当然領土問題を解決することを前提としておるものであります。また、平和条約の何につきましては、参議院の希望決議というものは、参議院の希望決議だけにとどまらずして、私は日本国民の一致した要望であると思いますので、国後、択捉というものは日本の固有領土であって、これは当然日本に帰属すべきものであるということについては、これまた日本の従来の交渉の経過もそうでありますし、参議院の希望決議もそうだったのであります。のみならず、国民一般の世論でもそういうことを強く要望しておる問題であります。しかるに、この問題に対するソ連側の態度というものも、一貫して強くこれはもうソ連のものとして解決しておる問題である。これを日本に渡さないということもいろいろな機会において示されております。こういう際に、直ちに今の問題を取り出して、平和条約の問題の交渉に入っても、両者の意見がとうてい一致するということは私はまだその時期でないと思う。そこで、それはソ連が真に日本との友好関係を増進し、両国の間の友好関係が深まっていって、そしてソ連の方において、日本のこの国民的要望であり、それの主張の根拠というものに対して正当な理解ができるというような素地を作っていくことが、平和条約に入る前提としてはどうしても必要である。従って、いろいろな問題を積み重ねて両方の友好関係を一そう緊密にし、同時に、日本に対する理解、この領土問題に対する日本国民の考え方というものに対して、正当な理解を持たせるような友好関係を作っていくという考えのもとに、あるいは貿易の点においてもこれを作るとか、その他あらゆる面において友好関係を深めていくという態度をとってきておるわけであります。そして現にその一つとしては、やはり安全操業の問題につきましても、われわれはこれを領土問題を解決するまでの暫定措置としてこういうことをすることが、両国の理解を深め、また、両国の友好関係を増進するために必要であるという見解のもとにこういうものを提起をして話をやろうというようにしておるわけでありまして、私はそういう両者の間の友好関係か、あの共同宣言を出した当時の状態では両方の意見はなかなかこれは一致しない。これはずいぶん努力したが一致しなかったのですが、それよりもさらに友好関係が深まり、われわれの方から言えば、ソ連の日本に対する理解というものが一そう深まってきて、ここに両方の間に従来の関係と違って、ある程度の信頼関係ができ、理解が深まってくれば、この領土問題というものを持ち出して、平和条約を結ぶことは日ソ交渉に入る基礎的な一つの条件ができるわけであります。それを作っていくために、この一年余の間、私どもは努力してきたというのが、私どものやってきたことであり、また、そういう考えに立ってこの平和問題を処理していきたい、かように思っている。逃げ回っているというような考え方は毛頭ないわけであります。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 ただいまここで聞くと、岸総理大臣のお話は大へん近くてはっきり聞えるのですが、そういうことを公式の場で、いわゆるモスクワではっきり私はやってないと思う。それは安全操業に関連しての話としてはやっているかもしらぬが、平和条約の締結の用意がないから、安全操業問題を討議するただいま機が熟してないと向うが言ったときに、そのときに要するに、今のような態度で強く出てはっきり問題をさせていったらいいと思うのですが、そのときには、単に安全操業のソ連側の食言というようなものをつく事務的なことはされておりましたが、根本についての政治の確固たる方針というものが中外に鮮明されてなかったと思うのですが、おやりになったと思いますか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私は今申し上げていることは、ずっと岸内閣がとってきている方針でありまして、私はそれらに関しましては、国会においてもしばしばこの考え方を明瞭にいたしておりますし、その他におきましてもやっております。ただ、モスクワにおいてああいうことが突如提起されたということに対して、従来、これを両国の間に交渉に当っております門脇大使等が、それはその昨年の六月以来ずっと自分が交渉の衝に当っておって今突然そういうことを言い出すということは、まことに自分たちとしては理解に苦しむところだ。何月何日にこう言ったじゃないか。これから見るというと一つの食言だというようにわれわれは考えるというふうに折衝をしたことは、これはその交渉の衝に当っておる大使としては、当然そういうことを言ったと思うのです。方針としては、今申しました通りの私は考えで、あらゆる日ソ間の問題に処しておるというのが政府の方針でございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 願わくば核兵器の問題にしろ、日ソ間の平和条約の継続交渉に関しても、国内でばかり言ってないで、一つ相手にわかるように措置をとられんことを希望して、最後の一点は、択捉、国後の問題について、ソ連側では魚の問題について河野・イシコフ、領土問題についてやはり河野・ブルガーニン、フルシチョフというような、あとに何か引っかかりがあるような含みがあるようなものを盛んに利用しまするが、われわれは、日本の側から見て、日ソ間の話し合いの上で、択捉、国後について何か取れそうなといいますか、引っかかりのあるような言質を取っているのかどうか。こちら側から見て、当時の新聞なんかに見ると、択捉、国後に対する日本人の気持はよくわかる。相談に乗ってもいいというような意味のことを言ったとか、こういうことが報道されていましたか、択捉、国後を主張される裏に、向うがちょっと口をすべらしたか、あるいはうまい引っかかりがあるのかどうか、その点をお伺いしたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) いろいろこの共同宣言に署名するに際し、また、平和、漁業条約の締結に際しましてわれわれの方の代表と向う側の首脳者との間にもしばしば会談があったようであります。しかし、これが私どもの今まで聞いている内容から見まするというと、何かわれわれがそれを手がかりとしてといいますか、何かそれの言った一つの何を基礎として、領土問題を解決するのに非常に都合のいいようなことがあるかというふうな点に関しましては、私ども従来これらの交渉に当った人から、そういう点についての特別のことは聞いておりません。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 先日のこの外務委員会で、私から藤山外務大臣に対して沖繩政権返還について日本政府とアメリカとの間でトップ・レベルの会談を持ったらどうかという質問に対して、外務大臣は、トップ・レベルの会談も一つ考えてみたいという御答弁があり、また、先ごろ本会議において、やはり同様質問を代表質問の際に行なった際に、岸総理としても、できるだけの努力をしたいと答えられておりますが、まあ率直に申し上げて、最近この解散問題等でなにかそういうような問題がなおざりにされておる。そう言うと、総理は気を悪くされるかもしれませんが、事実そういうような印象を与えるのですが、藤山外務大臣と同様に、適当な時期に、沖繩施政権返還について日米間のトップ・レベルの会談を持って、問題解決のために善処される御意思があるのかどうか、この点を承わりたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 沖繩問題に関しましては、昨年私が参ったとき、また、その後の藤山外相が向うへ参りましたとき等に、アメリカ側の首脳部とも話し合いをいたしておりますし、その後のいろいろな経過もありますし、一年たっていろいろな事情の変化等もございます。従いまして、今羽生委員のお話のように、これをさらに推し進めるためにあるいは両国の首脳者の間でトップ・レベルで話をするというようなことに関しましても、私は十分に考えなければならぬと思っております。適当な方法、適当な時期においてそういうことをして、この問題に対する解決の方向をさらに力強く進めていくということは最も必要であろうと思います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 それを期待いたします。

吉江勝保自由民主党

○吉江勝保君 私、先ほどの羽生委員の質問に関連して岸総理に御質問申し上げます。先ほど、本日ここにかかっておりまするインドネシアとの間の案件ですね。案件に関してこれを審議します上に、インドネシアの政局の見通し、そういうことが非常に重要なことでありまして、それに関しまして、羽生委員から総理に質問があったのでありますが、その中で、現在のスカルノ政権についてはいろいろな動きもあるが、スカルノ政権については大体ゆるぎがないといいますか、というようなお答えがあったのであります。このスカルノ政権が変りない、ゆるぎがないというその意味はどういう意味なのか、スカルノ大統領としての地位そのものをおっしゃっておるのか、あるいは現在のジュアンダの内閣そのものも変りない、こういうように含めておっしゃっておるのか、その点、もう少しはっきり御説明願いたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 私の申し上げましたのは、スカルノ大統領に対する国民的信望というものは私は根本的にゆらいでおらない、また、これにかわるような国民的の信望を持っておる人は今インドネシアにないようであります。ただジュアンダ内閣というものの今のこのいわゆる反乱軍なるものの主張も、どちらかというと、スカルノ大統領をやめさすという、現在までのところではそういう動きはなくして、ジュアンダ内閣というものをかえろ、これに対していろいろな要望があり、また、ジュアンダ内閣の政策そのものに対する批判、すなわち、あまりにジャワ中心であって、スマトラその他の島嶼に対する施策が足りないとかいうふうな議論もありますし、また、その内閣の構成、そもそもでき上ってからの構成に対する批判であるとか、あるいは各大臣の顔ぶれに対する批判であるとかいうようなことがいろいろな問題の中心をなしておるように私どもは見ております。従って、私が言っている、スカルノ政権と言っているのは、このスカルノ大統領としての地位であって内閣がかわるか、あるいは改造されるか、そういうことについては必ずしも今のジュアンダ内閣がそのままに持続されるとは私どもは見ておりません。

吉江勝保自由民主党

○吉江勝保君 よくわかりましたが、そこで、今回の案件、日イ平和条約、あるいは賠償協定その他があるのでありますが、こういうものを承認し、批准をしますのにつきましての、まあ相手国の総理大臣あるいは外務大臣というのが現在のジュアンダ内閣の閣僚でもあるのであります。そういう現在の内閣がかわりましても、この批准につきましては、少しも見通しにおきましてスカルノ大統領の地位がかわらなければ支障がない、こういうようにお考えになっておりまするのか、その辺はいかがですか。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) これは結局インドネシアの国会がこれをやはり批准をするということの意思決定をされることが最高の何であろうと思うのであります。私どもの今までいろいろな方面の接触から見ますというと、国会内における各政党の意向も、これを批准する意向を、強く望んでいるというふうな意向であり、従って、それが国会の意思として決定するならば、国のこれに署名、調印した外務大臣や、あるいは総理大臣がかわりましても、インドネシアの意思としては、私はちっとも変らないものである、こういうふうに考えております。

吉江勝保自由民主党

○吉江勝保君 その点もよく了承いたしました。私自身も、少し所見のようになるのでありまするが、現在のインドネシアの大統領に対しまする国民の信望というものは、私も総理と同じような見方をしているのであります。また与党、野党がありまするが、野党の立場にありまする社会党あるいはマシユミ党、こういう党におきましても、今回の日本・インドネシア間の条約、協定等に対しまする国会の承認、こういうことにつきましては、各政党ともに賛意を表しておりまして、議会におきまして、すでに全会一致で承認をいたしているのであります。インドネシアの国の意思表示としましては、正式の意思表示がされているのであります。しかし、国内におきまして、これは日本の国内におきまして、インドネシアの政局の見通しにつきまして、こういう国会の承認あるいは批准をいま少し見合わすべきではないかという一部意見もあるのでありまして、私らもそれにつきましては、それぞれ意見を持つのでありますが、総理としましては、インドネシアのただいまのような国の意思表示がすでに決定しているときに、日本の国としては、総理としましてはどういう御所信をお持ちになっているのか、お伺いしたいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 先ほど来、質疑応答で大体明らかになっていると思いますが、私はこの御審議を願っております条約、協定等については御審議を促進していただいて、日本政府としてはやはり正式に調印をし、今のような情勢、なるほど国内における一種の不安はありますけれども、根本の見通しは先ほど来申しているようなことであり、インドネシアの国会における意思もはっきりしていることでございますから、私はそのために、何か内乱等のために政局の不安のために、これを特におくらすという考えは政府としては持っておりません。

佐藤尚武緑風会

○佐藤尚武君 先ほど社会党の議員諸君から、中共その他の民間貿易協定の関係におきまして、国民政府との間の問題について質問がありました。それに対して総理からの御答弁がそれぞれあったのであります。私はいま一点、日本として常に考えてみなければならない問題であるという点を感じますので、念のため私からもお尋ねを申し上げたいと思います。それは日本としては、国民政府に非常に恩義を感じているという、その点であります。と申しますことは、これはその当時、日本国民の全部が非常な感謝をしたのでありまするが、あの終戦の際、蒋介石総統は、日本に対して恨みに報いるに徳をもってしなければならぬという、あの有名な声明をされたことであります。その声明のおかげで、中国にその終戦当時おりました日本人が多数無事に日本に送還されたのであります。その数は私ははっきりは存じませんけれども、軍人並びに一般居留民を合せて大よそ二百万人を下らない多数の日本人が無事に日本に帰ってくることができたという問題であります。このことは、日本人としては終生忘れることができない、非常な恩義であります。十年も長い間、日本人を抑留し、そしてわずかに今三万人を帰してきたというほかの例と比べましたならば、その底に非常な大きな開きがあるということをわれわれは感ずるのであります。それにもし、日本国民に対してほんとうに恨みを持つ外国の国民があるとしましたならば、それはアメリカ人ないしはロシヤ人よりも一番大きな恨みを持ち得る国民は中国人であったはずであります。何と申しましても、満州事変以来あの長い期間にわたりまして、全国土を日本の軍隊によって荒されたというあの中国にとりましては、そこに住んでおる住民としまして、ほんとうに恨みを感ずれば感ずべきはずであったのであります。しかるに、それにもかかわらず、その恨みに報いるに恨みをもってしない、徳をもってしなければならぬと国民を教えたあの蒋介石総統の言動というものは、これは世界の歴史にも私は特筆大書すべき問題であろうと思うのであります。大よそあういう寛大な気持を持ち得るとしまするならば、それはまさに私は、これは東洋哲学のたまものであって、おそらく西欧人にはそういった考え方は持ち得なかったところであろうと思うのであります。そうだとしまするならば、日本人としては、一そうあの蒋介石総統のとられた態度に対して、終生感謝の念を持つべきであり、また、これを忘れてはならないと思うのであります。してみますれば、今回のこの中共との問題におきまして、日本としては、常にその点を念頭に置いて、そして国民政府に対しましては、文字通り誠意をもって懇切丁寧に説明すべきものは説明し、了解を得べきものは了解を得るという態度をとらなければならぬと思うのでありまして、中共貿易促進に急なるあまり、国民政府との関係を軽んずるというようなことであっては、私は日本民族として、恩義をないがしろにしたというような結果に陥りはしないかということをおそれるのであります。恩義を忘れるような国民であるとしましたならば、これは世界に対して大をなし得る国民ではなくなるのでありまして、その信義の点においても、私は常にこれはそういう点に重きを置いてかからなければならぬ問題だと思うのでありまするが、政府におかれましては、そういう点に対しまして、どういうお考えをお持ちになっておるか、おそらく私と同じような感じをお持ちであろうとは思いまするけれどもも、念のためお尋ね申したいと思います。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) ただいま佐藤委員からお話しの点につきましては、私ども全然同様な考えを持っておるわけであります。これは私だけじゃなしに、日本国民がそういうふうな考えを持つべきであり、持っておると思います。ただ、先ほど来質疑応答でも明らかにいたしております通り、今日までのこの経緯を見まするというと、十分に私どもの、また、この第四次民間の協定ができ上ったまでのいきさつなりあるいは背後の事情等について、十分に理解が、まだ欠けておると思われる点もあるのであります。私は今お話しのようなことを頭に置いて、十分に誠意を持って、この日本政府として最後の決定をいたしますについて、十分なこの理解を得るように、誠意を持って努力をすべきことは当然でありまして、そういうあらゆる手段を尽していきたいと、こう思っておるわけであります。

佐藤尚武緑風会

○佐藤尚武君 ただいまの総理の御答弁、全く私は感謝をもって拝聴したのであります。厚くお礼を申し上げます。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 簡単に一点だけお伺いしたいと思いますが、いよいよ赤城代表もモスクワに行かれまして、北太平洋の公海漁業の本年度の漁獲量の問題について、最終的なと思われる交渉に入るわけですが、これは国民としてひとしく日ソ漁業条約の精神に従って、あくまで双方が納得する科学的な根拠に基いてそして今年度の規制すべき漁獲量というものが定められなきゃならないと思うのです。で、われわれの考え方は、そういう意味におきまして、もとより基本的には先ほど森委員からも言われましたように、日ソ間の基本的な問題としての平和条約が結ばれることは望ましい、また、それのための政府としての努力がわれわれとしてはまだ欠けるところがあると思う。しかし、いやしくも北洋漁業に関する限り、これは平和条約とは別個の問題であります。従って、これはわれわれとして、今申したような方針で解決さるべきものである。また、そういうような懸案の解決がより友好的な空気を作って、そのもとに平和条約が円満に解決されて、日本の正当な領土の主張が入れられることをこいねがわない国民はないと思う。ただその場合に、これから交渉に入られることであるから、あまりこまかい、あるいはデリケートなことを申し上げるつもりはありませんが、どうも政府の方針が、大体平塚代表から赤城代表にきまるいろいろな人選の過程においても、また、交渉に臨まれる基本的態度等についても、どうも筋がはっきりしない、ぐらぐらしておるという感じがして非常に心もとない。で、最終的に赤城代表が立たれる前に、かなり悲壮な決意で行かれたと思うのですが、これはわれわれとしても大いに同情はするわけです。そこで、交渉決裂なんということは軽々に口にすべきことじゃない、あくまで科学的根拠に基いた線で、粘り強く交渉してもらう。ところが、何かというと、すぐにこれはもう平塚代表の交渉の過程において、すでに軽々にも政治的折衝だというようなことで、大物を送ってくれというようなことを言う。大体そういうことからして、私は日本の正しい態度をかえって混迷ならしめ、従ってまた、力関係から言っても弱い地位にある日本の立場なのに、みずからマイナスをかせいだような感がしてならぬ。もとより最終的段階になれば、両方が共通の科学的根拠というものを出し合っていない不幸なる現状からいって、政治的考慮を加える段階におのずからくることがあると思う、しかし、交渉の初期において、すでに平塚代表が政治折衝を云々し、また、赤城代表が立つ前に、今度は政治折衝に行くんだというような態度で行くことが果していいかどうかということ、これは私は非常に疑問です。かえって、もう一ぺんでも粘り強く科学的根拠に基く交渉をする、ソ連側のいわゆる領水内における漁獲の問題についても、われわれが納得するような共同調査をやってくれというような立場で交渉するのか正しいのじゃないか。こちらから政治折衝、政治折衝と言うのがどだい間違っておる、こう思う。その点についてのお考えを承わりたいとともに、特に私が今日発言を求めたのは、実は今日の新聞の記事を見て非常に私は憂えた、それは相当数の新聞に、どういう筋かは知らないけれども、交渉がきまらなければ自由出漁をする、自由出漁に対して妨害があるならば、これは国連の安全保障委員会に提訴するというような記事が出ている、一体そういう記事がどういう筋から出たのか、おそらくこれは記事の書き方から見て、単なる漁業資本等からのあれでなくて、相当の官辺筋から出ている情報だと思います。私は、そういう問題においては、あくまで科学的な根拠でやるべきだという建前を政治折衝でやる、政治折衝と言いながら、もう自由出漁ということをちらほらさせる、そういうような態度というものは根本的に間違っている、私はそういう意味で、一体自由出漁ということを本気にお考えになっているのかどうか。そういうことと、今日うわさされているプレス・キャンペーンをおやりになろうというならば、日本の外交の基としては、はなはだ邪道じゃないか、そのことは私決してソ連の言っている不漁年八万トン、豊漁年十万トンという、これもソ連にばかり責任を負わされないような、かつての河野代表の交渉の結果ではないかと思いますが、八万トンが正しいのだということは申し上げません。十四万五千トンでなければならないということも、これは必ずしも私は固執しない、しかし、今日の段階で自由出漁云々を言うに至っては私は言語道断だ、こういう心配を持ちましたので、政府は一体どういう考えなのか、自由出漁の点にだけしぼってもけっこうですから、御意見を伺いたい。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) 日ソの間の漁業交渉、いわゆる漁業条約に基く北太平洋のサケ、マスの漁獲高をきめる交渉の性質は、曽祢委員が今お話になった通りに私は考えております。すなわち、政府は赤城農相を政府代表として、そうして業界に精通しているところの者を顧問等に任命してやりましたことは、私はあくまでも漁業条約に基くところの、あの条約の精神に基いて、科学的根拠によるところの両方の専門的知識を十分に話し合って、そうして妥結点を見出すというための交渉に出しているわけであります。言うまでもなく、赤城農相は主管大臣として、最後まで、日本のあらゆる面から集めておりますところの科学的根拠の資料に基いて、日本側の主張を向うに了解せしめる使命をもって参っているわけであります。私どもはあくまでも、これは基本的にいえば、日ソの友好関係の基礎に立ってこういう条約ができており、それに基いての科学的の委員会である、こういう性格に基いて——ただ遺憾なことは、御承知の通り、科学的根拠というものが、両方の共同調査がまだできておりませんので、共通した科学的根拠というものがなかなか見出しにくいために、両方の意見が食い違っているということは非常に多いと思います。これはどうしても共同調査をするということが必要であり、本年度からやるということを、ソ連側も条約に基いてはっきりと言っているようでありますから、来年度以降においては、そういうことが完成すれば、でき上るということになれば、こういうめんどうなことを年々繰り返さなくても済むと思います。そうして私どもは、今赤城農相がそういう立場で責任をもって行っておりますから、何とかこの結論を見出すということに最善の努力を最後までいたして、そうして妥結するというのが私どもの方針でありまして、今決裂の場合を想像してどうこうというような考えは政府としては持っておりません。これは明確に申し上げておきます。あくまでも、まあ私どもはその点は赤城農相にもはっきり言っておりますが、なかなか相手を説得するというのも時間がかかるだろう、ゆっくり腰を落ちつけて、十分に粘って話をつけてくれということを言うてありまして、決して決裂の場合を想像して、自由出漁するとか何とかいうことをプレス・キャンペーンをするとか、あるいは政府がそういう意向を持っているということは絶対ないということを明確に申し上げておきます。

曾禰益日本社会党

○曾祢益君 ただいまの御答弁で私は了承いたします。特に申し上げるまでもなく、日ソ漁業条約に基いて、これは公正な基礎に基いて、科学的根拠に基いての持続的生産のために規制するのです。規制をすることはこれはもう条約上の義務なんです。もし向うがこの条約に怠たるところがあるならば、たとえば、科学的根拠に基く共同調査をやらない点は大いにつくべきです。その立場にある日本側から、政府筋から、いわゆる自由出漁を云々するに至っては、これは全く言語道断であって、全くわれわれ日本の立場というものはなくなりますから、今の総理の御答弁は、自由出漁云々を明確に否定されたものと承わって了承いたします。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 私はインドネシアとの平和条約の中にあります文字の解釈の、総理の御意見を聞きたいと思います。実は事務的のことで、総理に伺うのは恐縮なんですが、この文字の解釈が、日本の政府の各自の見解が必ずしも統一していないために、実際この平和条約の運営に非常に困る場合がありますから、私は統一的な見解を承わりたい。それは第四条の規定の中にあります「生産物」という言葉の意味、非常に厳格にこれを解しますと全然日本の原料と日本の労力だけで作ったものでなければならないというような解釈もあるかに聞いておりますけれども、総理の統一的の見解を、私は、どういうふうにこれは解釈したらよろしいのでしょうか、お伺いいたします。

岸信介自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(岸信介君) これは条約の解釈でありますから、事務当局にお答えさせる方がいいと思います。ただ、実際問題として、今永野委員のお尋ねのように、日本のあらゆる原材料からすべて日本の国産であって、すなわち、そのものを作るのに一ドルの外貨も使わないのだということを厳格に解釈すれば、日本の現実の生産状況を見るというと、そういうものは何があるのだというようなことになると思います。私が申し上げるまでもなく、たとえば鋼材を出す場合において、八幡の製鉄所で作られておっても、その鉱石はどこからかきておるのじゃないか、石炭はどうだということをいうと、ほかの生産物においても厳格にいうと、私はそのことはなかなかむずかしいと思います。ただこの趣旨は言うまでもなく、これを賠償するのについて、日本が非常な多くの外貨を費やしてやるということは、日本経済として非常に困る問題であり、従って、日本ででき得る物ということであって、そこの点は、私は相当常識的に考えていいのじゃないかと思いますが、なお念のため、事務当局からお答えさせます。

高橋通敏外務省条約局長

○政府委員(高橋通敏君) ただいまの条約の解釈につきまして補足させていただきます。ただいまの点でございますが、私どもは、おもに第二条の三の問題ではないかと考えます。すなわち、「この協定に基く賠償は、日本国とインドネシア共和国との間の通常の貿易が阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施しなければならない。」従いまして、生産物の場合も、いやしくも外国為替上の問題があるときは絶対にできないというのではなくて、この解釈としましては、そのために特に外国為替上の追加負担が課せられる場合は適当でない。しかし、一般に輸入した物件でございましても、余剰があったり、その他適当な場合はそれを使ってもかまわないのであるが、特にこの特定の生産物のために特に為替上の負担、そのために外国の原材料を輸入するということは適当でないのであります。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 全体的に申しまして、たとえば、通産省の考えているような解釈と、大蔵省の考えておられる解釈との間には、だいぶ大きな開きがあるように思われる。現実の問題の取扱い方で差が往々にしてできておるように思われますから、大局から考えてみまして、今総理の言われたように、それによって非常に大きな負担をドルの収支の上に影響を及ぼさないものは、なるたけ広く考えるのだということを、統一的の解釈として承わることができれば、非常にけっこうだと思います。

藤山愛一郎外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) 総理が言われたことで大体わかると思いますか、条約のことについても、たとえば特別のパテントを買ったり、そのものの作製のために何らか特殊の措置を要し、特別の外貨の負担がある場合等のごときは含まれないものであります。しかし、平常輸入している物資について、それを原材料として使用するということについて、制限があるわけじゃないと解釈している。ただ、実行上の問題として、通産行政なり、あるいは大蔵行政の上で若干の違いはあるかもしれませんけれども、総合的には、政府の解釈として三省ともそういう解釈をとっておることについては間違いございません。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 その賠償に供する生産物を作るために特別の外貨か要るということだと、皆いけないのだということになりますと、それはどんなに小さくてもとなると、非常に窮屈な解釈になります。その賠償に供する生産物がなけらねば、そのドルを使わなくてもいいものは相当多いと思います。従って、そのために通常の生産物を賠償に使うために、特にドルを使うのはいけないのであって、他の目的のために、すでに外国から輸入したものなら使ってもいいのだというような解釈ですと、その程度によっては、やはり非常に窮屈なことになると思いますから、そこは常識にたよるべきでありますけれども、往々にしてその常識が各省によって違う場合が多いのでありますから、何かそこらは常識的の基準といいますか、政府の統一的の見解をお伺いすることができないですか。

藤山愛一郎外務大臣

○国務大臣(藤山愛一郎君) お尋ねは、実際の取扱い上、各省がまちまちになっているということだと思うのであります。それは各省間でよくなお打ち合せしまして、そういう問題については食い違いのないようにいたすことにいたします。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 もう一つ、これもきわめてささいな条約上のことかもしれませんが、今の第四条の第一項の(b)のところに、この条約の効力発生のときに、日本人の持っている財産、権利をインドネシア共和国が処分する権利を持っていると書いてありますが、これは具体的にはどんなものでありますか、例示をしていただきたい。

白幡友敬外務参事官

○説明員(白幡友敬君) 具体的には、政府関係の財産はほとんどないということが言えると思います。家屋等も全部借屋でございます。それから民間のものとしまして一番大きなものは、御承知のように、戦前日本の商社が有しておりましたエステートの問題でございます。エステートに付属しておりますいろいろな物件もございますが、それ以上に比較的大きく評価されますのはエステートの権利でございます。正確なことはなかなかわかりかねるのでありますが、大体金額にいたしまして、約三千万米ドル見当くらいではないかと思っております。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 これは担保という意味なのでありますか。内払いというような形になっていつでも向うは処分する権利ができるわけですか、あるいは日本の賠償の支払いがスムースにいかない場合に処分するというのでありますか、どちらなのですか。

高橋通敏外務省条約局長

○政府委員(高橋通敏君) サンフランシスコ平和条約と全く同文でございまして、そこでは今まで処分したのも有効でございます。いつでも、発効の時期においても処分することができる。従いまして、賠償の担保とか、日本の方の賠償に関係なくやり得るわけです。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 そういう場合の日本の国としての補償はどうなりますか。

林修三法制局長官

○政府委員(林修三君) 御承知のように、サンフランシスコ平和条約にもこれと同様の規定があるわけであります。それからビルマとの平和条約にもたしかあったと思います。全体を通じまして、日本としましては、第二次世界大戦の結果の平和条約といたしまして、こういう問題が課せられた。これは日本としてやむを得ず受諾したことになっておりますが、この事柄の性質として、これは当該国、つまり今度の場合でいえば、インドネシアがそういうアクションをとるわけであります。日本政府として財産を自分の手で没収するというものではないわけでございまして、いわゆる日本の憲法の規定から申せば、直ちに第二十九条の第三項の規定には該当してこないというのか従来からの解釈になっております。今回も同じものと考えております。それに対する措置として御承知のように、昨年、引揚者給付金等支給法が出たわけであります。それは引揚者に一応限っております。海外から引き揚げてこられた方々に対する一つの見舞金的な措置をやって、まあこういう問題の日本政府としての一つの解決に資す、こういうことだと思います。これに対して直ちに私たちとしては、政府は、法律上あるいは憲法上補償の措置をとらなければならないものとは考えておらないわけでございます。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 しかし、これはその金額だけ日本の賠償が減るわけです。国の債務の代払いのような少くとも経済上の効果があるのでありますから、引揚者に対するような、それを見舞金で済ませるという扱い方は、少し法律的に見て納得がいかぬような気がするのですが、どうなんですか。

林修三法制局長官

○政府委員(林修三君) この点は必ずしもそのものを賠償から差し引いたとか、あるいは賠償に充当したという厳密な関係には私なっておらないと思うのでありまして、サンフランシスコ条約の場合にも大体そうだと思います。今度のインドネシアの平和条約の場合にも、これが幾らあるから一方の賠償金額を幾らにしたというものではないように考えております。結局敗戦の結果として、向う側がインドネシアの中にある財産についての自由な処分権を得ると、これに対して普通の場合であれば、日本政府としては、いわゆる在外国民の外交保護権というような問題で、普通ならば抗議を申し込むべきだと思いますが、在外国民の外交保護権を行使しない、そういう自由な立場に立つものと思うわけであります。そういう意味においては、直ちに日本の国内法上これを補償するということにはならない。かように考えております。そこで結局、全体の国内の公平の措置、あるいは国内で非常に困っておられることの措置として、昨年のような保護措置をとった。かように私どもは考えております。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 そうすると、今白幡参事官の御説明によると、相当の金額があるようですが、それは賠償にプラスされる金額になるのですか。結局、日本の負担総額の問題で伺うのですが、これは現在日本人の持っている今の権利が没収されて、あるいは売られたようなものがありますか。

林修三法制局長官

○政府委員(林修三君) いわゆる賠償と賠償のあるいは算定等の直接関係がなく行われておると思います。サンフランシスコ平和条約の場合もそうでありますが、結局いわゆる敗戦の結果として、当該国における日本の勢力を一応払拭するというような考え方から出ておるものと思うわけであります。実はそういう立場から出ておる規定でありまして、これはどうも今度の敗戦の結果、日本側としては受諾せざるを得ないと思う規定だと思います。賠償の金額と直ちに関連いたして、これが幾らあるから幾らにしたというものではないというふうに私どもは承知しております。

永野護自由民主党運輸大臣

○永野護君 これから没収されるであろうと思われるものはどのくらいありますか。

白幡友敬外務参事官

○説明員(白幡友敬君) お答え申し上ます。大体ただいままでに、これはインドネシアだけに限りませんが、終戦後、日本の政府財産あるいは民間財産は敵産管理規定によって押えられておりまして、今後新たに押えられるということはないと思います。

寺本廣作自由民主党

○委員長(寺本広作君) それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五分散会

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